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特表2024-507948呼吸器ウイルス感染症に対する防御抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】呼吸器ウイルス感染症に対する防御抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/08 20060101AFI20240214BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240214BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240214BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C07K16/08
C07K16/46
A61K39/395 S
A61P31/16
A61P31/14
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/26
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552013
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 US2022017945
(87)【国際公開番号】W WO2022183018
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/154,166
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】522176001
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ジャスティン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブーンヤラタナコーンキット,ジム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC35
4C076DD23
4C076DD25
4C076DD43
4C076DD67
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB41
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
4H045GA22
4H045GA26
(57)【要約】
ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、RSウイルス(RSV)およびヒトメタニューモウイルス(HMPV)を含む呼吸器ウイルス感染症に対する防御抗体について述べる。本明細書に開示された特定の抗体は、2種以上のウイルス(例えばRSVとHMPV)を中和する。この抗体の結合断片は、様々な種類のフォーマットに組換えることができ、これには、複数の種類のウイルスを同時に防御することが可能なフォーマットも含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MxR-B11、PI3-E12、PI3-A3、PI3-B5、PI3-A10、PI3-A12、3x1またはMxR-D10の相補性決定領域(CDR)を含む抗体またはその結合断片。
【請求項2】
前記CDRが、Kabat、Chothia、Martin、Contact、IMGT、AHoまたはNorthのナンバリングに従ってナンバリングされている、請求項1に記載の抗体またはその結合断片。
【請求項3】
前記抗体またはその結合断片が、
GFPFSSYK(配列番号43)を含むCDRH1;ISASGSYI(配列番号44)を含むCDRH2;ARDGGRELSPFEK(配列番号45)を含むCDRH3;NSNIGTGYD(配列番号46)を含むCDRL1;DNNを含むCDRL2;およびQSYDKSLGGWV(配列番号47)を含むCDRL3;
GFTFSDHY(配列番号1)を含むCDRH1;ISSSGSNT(配列番号2)を含むCDRH2;ARAKWGTMGRGAPPTIYDH(配列番号3)を含むCDRH3;QSLLQSNGNNY(配列番号4)を含むCDRL1;LGSを含むCDRL2;およびMQALQTPLT(配列番号5)を含むCDRL3;
GFTFSNYW(配列番号8)を含むCDRH1;VKEEGSEK(配列番号9)を含むCDRH2;AGEVKSGWFGRYFDS(配列番号10)を含むCDRH3;QSVGSW(配列番号11)を含むCDRL1;KTSを含むCDRL2;およびQQYSSFPYT(配列番号12)を含むCDRL3;
GYNFTNYW(配列番号15)を含むCDRH1;IYPADSDT(配列番号16)を含むCDRH2;ARPSTRWFVPGGMDV(配列番号17)を含むCDRH3;QSIGAW(配列番号18)を含むCDRL1;KASを含むCDRL2;およびQQHSSYPST(配列番号19)を含むCDRL3;
GFNFNNYG(配列番号22)を含むCDRH1;VSFDGSNR(配列番号23)を含むCDRH2;SKSKYSDFWSEI(配列番号24)を含むCDRH3;QNVMRY(配列番号25)を含むCDRL1;DASを含むCDRL2;およびQQRTNHRFS(配列番号26)を含むCDRL3;
GDSVKSDDFY(配列番号29)を含むCDRH1;IYYGGRT(配列番号30)を含むCDRH2;VRVEGLLWFGELFDY(配列番号31)を含むCDRH3;NSNIGNNF(配列番号32)を含むCDRL1;KDYを含むCDRL2;およびAAWQDGLSGPL(配列番号33)を含むCDRL3;
GFTFSSFG(配列番号36)を含むCDRH1;ISHSAGFL(配列番号37)を含むCDRH2;AKRLAGLPDLEWLLYPNFLDH(配列番号38)を含むCDRH3;ILRTYY(配列番号39)を含むCDRL1;GKNを含むCDRL2;およびSSRDRSGNHVL(配列番号40)を含むCDRL3;または
GFIFSNYD(配列番号50)を含むCDRH1;ITGGSSFI(配列番号51)を含むCDRH2;ARDGGRQLSPCEH(配列番号52)を含むCDRH3;SSNIGAGYD(配列番号53)を含むCDRL1;DNNを含むCDRL2;およびQSYDRGLSGWA(配列番号54)を含むCDRL3
を含む、請求項1に記載の抗体またはその結合断片。
【請求項4】
前記抗体またはその結合断片が、
配列番号178に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号179に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号166に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号167に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号168に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号169に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号170に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号171に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号172に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号173に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号174に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号175に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号176に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号177に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;または
配列番号180に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号181に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗体またはその結合断片。
【請求項5】
抗体またはその結合断片であって、
配列番号178に示される配列を有する重鎖可変領域と、配列番号179に示される配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号166に示される配列を有する重鎖可変領域と、配列番号167に示される配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号168に示される配列を有する重鎖可変領域と、配列番号169に示される配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号170に示される配列を有する重鎖可変領域と、配列番号171に示される配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号172に示される配列を有する重鎖可変領域と、配列番号173に示される配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号174に示される配列を有する重鎖可変領域と、配列番号175に示される配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号176に示される配列を有する重鎖可変領域と、配列番号177に示される配列を有する軽鎖可変領域;または
配列番号180に示される配列を有する重鎖可変領域と、配列番号181に示される配列を有する軽鎖可変領域;
を含む、抗体またはその結合断片。
【請求項6】
抗体またはその結合断片であって、
配列番号48に示される配列および配列番号49に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列;
配列番号6に示される配列および配列番号7に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列;
配列番号13に示される配列および配列番号14に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列;
配列番号27に示される配列および配列番号28に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列;
配列番号34に示される配列および配列番号35に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列;
配列番号41に示される配列および配列番号42に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列;または
配列番号55に示される配列および配列番号56に示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列
によってコードされる、抗体またはその結合断片。
【請求項7】
抗体またはその結合断片であって、配列番号48に示される配列と配列番号49に示される配列とを含む配列;配列番号6に示される配列と配列番号7に示される配列とを含む配列;配列番号13に示される配列と配列番号14に示される配列とを含む配列;配列番号27に示される配列と配列番号28に示される配列とを含む配列;配列番号34に示される配列と配列番号35に示される配列とを含む配列;配列番号41に示される配列と配列番号42に示される配列とを含む配列;または配列番号55に示される配列と配列番号56に示される配列とを含む配列によってコードされる抗体またはその結合断片。
【請求項8】
Fc領域にM252Y変異、S254T変異およびT256E変異を有するIgG抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
請求項1に記載の少なくとも2種の抗体の結合断片を含む結合分子。
【請求項10】
請求項1に記載の少なくとも2種の抗体の結合断片が、Fabまたは一本鎖可変領域断片(scFv)を含む、請求項9に記載の結合分子。
【請求項11】
前記結合断片が、knobs-into-holes技術による重鎖間の結合を介して連結されたFabを含む、請求項9に記載の結合分子。
【請求項12】
前記結合断片が、scFvの1つの結合断片がこれとは異なる別の結合断片を有する抗体の定常領域に連結されたscFvを含む、請求項9に記載の結合分子。
【請求項13】
Gly-Serリンカーを含むリンカーを含む、請求項12に記載の結合分子。
【請求項14】
請求項1に記載の少なくとも2種の抗体の結合断片がscFvを含む、請求項9に記載の結合分子。
【請求項15】
PI3抗体の結合断片とMxR抗体の結合断片とを含むか;
PI3抗体の結合断片と3x1抗体の結合断片とを含むか;または
3x1抗体の結合断片とMxR抗体の結合断片とを含む、
請求項9に記載の結合分子。
【請求項16】
PI3抗体の結合断片と、3x1抗体の結合断片と、MxR抗体の結合断片とを含む、請求項9に記載の結合分子。
【請求項17】
前記結合断片がFabおよび/またはscFvを含む、請求項9に記載の結合分子。
【請求項18】
MxR-B11 Fabと3x1 Fabとを含むか;MxR-B11 scFvと3x1 Fabとを含むか;MxR-B11 Fabと3x1 scFvとを含むか;またはMxR-B11 scFvと3x1 scFvとを含む、請求項9に記載の結合分子。
【請求項19】
MxR-D10 Fabと3x1 Fabとを含むか;MxR-D10 scFvと3x1 Fabとを含むか;MxR-D10 Fabと3x1 scFvとを含むか;またはMxR-D10 scFvと3x1 scFvとを含む、請求項9に記載の結合分子。
【請求項20】
請求項1に記載の結合断片と、第2のウイルスに結合する抗体の結合断片とを含む結合分子。
【請求項21】
第2のウイルスが、アデノウイルス、ボカウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスおよび/またはライノウイルスから選択される、請求項20に記載の結合分子。
【請求項22】
第2のウイルスが、ヒトアデノウイルス、ヒトボカウイルス(HBoV)および/またはヒトコロナウイルス(HCoV)から選択される、請求項20に記載の結合分子。
【請求項23】
第2のウイルスが、SARS-CoV、MERS-CoV、コロナウイルス229E、コロナウイルスOC43、コロナウイルスNL63、コロナウイルスHKU1、コロナウイルスNLおよび/またはコロナウイルスNHから選択されるコロナウイルスである、請求項20に記載の結合分子。
【請求項24】
第2のウイルスが、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス2(HPIV2)、HPIV4、ヒトライノウイルス(HRV)A、HRVBおよび/またはHRVCから選択される、請求項20に記載の結合分子。
【請求項25】
前記結合断片が、8C4、5Hx-l、5Hx-2、5Hx-3、5Hx-4、5Hx-5、5.100K-1、5PB-1、5Fb-l、1E11、EPR23305-44、47D11、CR3022、CDC2-A2、G2、5F9、FIB-H1、JC57-13、32D6、CH65、CR9114、MAb 22/1、MAb70/l、MAb 110/1、MAb 264/2、MAb W18/1、MAb 14/3、MAb 24/4、MAb 47/8、MAb 198/2、MAb 215/2、H2/6A5、H3/4C4、H2/6C4、H2/4B3、H9/B20、H2/4B1、CA6261、6F12、CR9114、PEG-1、CR8033、CR8071、113/2、124/4、128/2、134/1、146/1、152/2、160/1、162/1、195/3、206/2、238/4、280/2、PAR2(boca231/9F)またはTCN-711から選択される抗体のCDRを含む、請求項20に記載の結合分子。
【請求項26】
請求項1に記載の結合断片と、免疫細胞を活性化する結合断片とを含む結合分子。
【請求項27】
免疫細胞を活性化する前記結合断片が、CD3、CD28または4-1BBに結合する、請求項26に記載の結合分子。
【請求項28】
免疫細胞を活性化する前記結合断片が、OKT3またはTGN1412のCDRを含む、請求項26に記載の結合分子。
【請求項29】
請求項1に記載の抗体またはその結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項30】
前記薬学的に許容される担体が水溶液を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記薬学的に許容される担体が生理食塩水を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記薬学的に許容される担体が、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化カルシウムを含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記薬学的に許容される担体が、炭酸水素ナトリウムまたは乳酸ナトリウムをさらに含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記薬学的に許容される担体が、無機塩を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項35】
前記薬学的に許容される担体が、糖をさらに含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記薬学的に許容される担体が、酸化防止剤、緩衝剤、キレート剤、等張化剤、保存剤および/または安定剤を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項37】
前記薬学的に許容される担体が放出調節剤を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項38】
対象への投与用の前記抗体またはその結合断片の治療有効量を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項39】
抗ウイルス作用を必要とする対象に抗ウイルス作用を提供する方法であって、請求項29に記載の組成物の治療有効量を対象に投与することにより、抗ウイルス作用を提供することを含む方法。
【請求項40】
前記抗ウイルス作用が、抗HPIV3作用、抗HPIV1作用、抗RSウイルス(RSV)作用および/または抗ヒトメタニューモウイルス(HMPV)作用を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗ウイルス作用が、抗HPIV3作用および抗HPIV1作用を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記抗ウイルス作用が、抗RSV作用および抗HMPV作用を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記抗ウイルス作用が、抗HPIV作用、抗RSV作用および抗HMPV作用を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
抗ウイルス作用を必要とする前記対象が、造血幹細胞移植(HCT)のレシピエント、肺移植のレシピエント、未熟児、65歳を超える年齢のヒト、路上生活者、または肺疾患を有するヒトである、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記抗ウイルス作用が、第2のウイルスに対する抗ウイルス作用を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
第2のウイルスが、アデノウイルス、ボカウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスおよび/またはライノウイルスから選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
第2のウイルスが、ヒトアデノウイルス、ヒトボカウイルス(HBoV)および/またはヒトコロナウイルス(HCoV)から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
第2のウイルスが、SARS-CoV、MERS-CoV、コロナウイルス229E、コロナウイルスOC43、コロナウイルスNL63、コロナウイルスHKU1、コロナウイルスNLおよび/またはコロナウイルスNHから選択されるコロナウイルスである、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
第2のウイルスが、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス2(HPIV2)、HPIV4、ヒトライノウイルス(HRV)A、HRVBおよび/またはHRVCから選択される、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月26日に出願された米国仮特許出願第63/154,166号の優先権を主張するものであり、この出願の内容は、本明細書に記載されているかのように、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表の参照
本願に付随する配列表は、ハードコピーではなくテキストフォーマットで提供され、この配列表は参照により本明細書に援用される。この配列表を含むテキストファイルには、F053-0125PCT_ST25.txtという名称が付けられている。このテキストファイルのサイズは68.4kbであり、2022年2月24日に作成されたものであり、EFS-Webを経由して電子的に提出されたものである。
【0003】
本開示は、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、RSウイルス(RSV)およびヒトメタニューモウイルス(HMPV)を含む呼吸器ウイルス感染症に対する防御抗体を提供する。本明細書に開示される特定の抗体は、2種以上のウイルス(例えばRSVとHMPV)を中和する。この抗体の結合断片は、様々な種類のフォーマットに組換えることができ、これには、複数の種類のウイルスを同時に防御することが可能なフォーマットも含まれる。
【背景技術】
【0004】
パラミクソウイルスおよびニューモウイルスによる呼吸器感染症は、毎年、米国で何万人もの死亡を引き起こしている。特に、造血幹細胞移植(HCT)の治療中の患者は、免疫系が再増殖するまでの間に感染症にかかりやすい状態になる。造血幹細胞移植を行った後は、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、RSウイルス(RSV)およびヒトメタニューモウイルス(HMPV)による感染症が、最も致命的となる。残念ながら、高齢者や造血幹細胞移植レシピエントにおけるRSV感染症、HMPV感染症およびHPIV感染症に対する予防法や治療法は存在しない。RSV感染症を防ぐために、抗体製剤パリビズマブが未熟児に投与されているが、HMPV感染症やHPIV感染症に対する予防策は存在しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV1および/またはHPIV3)、RSウイルス(RSV)ならびにヒトメタニューモウイルス(HMPV)のうちの1種以上を防ぐ新規な抗体を提供する。本明細書に開示される特定の抗体は、HPIV3に対する防御抗体である。本明細書に開示される別の抗体は、HPIV3およびHPIV1に対する防御抗体である。また、本明細書に開示される別の抗体は、RSVおよびHMPVに対する防御抗体である。本明細書に開示される新規な抗体は、様々な形態の呼吸器ウイルスの防御に使用することができる。
【0006】
特定の実施形態において、これらの新たに開示された抗体およびその他の抗体に由来する様々な結合断片を組み換えることによって、複数の種類のウイルス(様々な種類の別の呼吸器ウイルスを含む)を同時に防御することができる多重特異性フォーマットを得ることができる。特定の実施形態において、これらの抗体およびその組換えフォーマットにより、小児、高齢者および免疫抑制状態の患者が罹患する医学的に重要な複数の呼吸器ウイルスからの同時防御が可能となる。
【0007】
本明細書に開示されるPI3抗体は、HPIV3に結合して、これを中和する。また、本明細書に開示される「3x1」抗体は、HPIV3とHPIV1に結合して、これらを中和する。さらに、本明細書に開示されるMxR抗体は、RSVとHMPVに結合して、これらを中和する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本願で提出された図面の多くは、カラーの方が理解しやすいと考えられる。本出願人らは、これらの図面のカラー版も原出願の一部と見なしており、後の手続きにおいて、図面のカラー画像を提出できる権利を保有している。
【0009】
図1】本明細書に開示された抗体を用いて、造血幹細胞移植レシピエントの易感染期を埋める態様の一例を示す。
【0010】
図2A-2I】HPIV3特異的B細胞を得るための、ヒトPBMC、ヒト扁桃腺およびヒト脾臓のスクリーニングを示す。図2A)ビオチン化したHPIV3の膜融合(F)タンパク質をAPC標識ストレプトアビジンで4量体化(テトラマー化)し、このテトラマーを用いてHPIV3特異的B細胞を標識し、抗APCマイクロビーズで磁気濃縮した。生細胞(固定可能な生存率測定用色素で陰性)、CD3/CD14/CD16-、およびCD19+B細胞にゲートをかけた後に濃縮したHPIV3特異的B細胞の代表的なフローサイトメトリープロットを示す。灰色の枠で示した濃縮画分の細胞は、HPIV3 Fタンパク質の融合前構造(preF)に結合したが、HPIV3 Fタンパク質の融合後構造(postF)には結合しなかったB細胞である。フローサイトメトリープロットに示した割合は、各フローサイトメトリープロットに示した全細胞に対する割合を示す。図2B)ヒトPBMC(N=2人のドナー)、ヒト扁桃腺(N=2人のドナー)およびヒト脾臓(N=2人のドナー)におけるHPIV3 preF特異的B細胞の頻度を示す。図2C図2D)PBMC(N=2人のドナー)、扁桃腺(N=2人のドナー)および脾臓(N=2人のドナー)における全B細胞中の割合として示したクラススイッチした(IgM-/IgD-)B細胞の代表的なフローサイトメトリープロットを示す。図2E図2F)PBMC(N=2人のドナー)、扁桃腺(N=2人のドナー)および脾臓(N=2人のドナー)における全B細胞中の割合として示したクラススイッチした(IgM-/IgD-)HPIV3 preF特異的B細胞の頻度を示す。図2G)選別した個々のHPIV3 preF特異的B細胞から直接クローニングした25種のモノクローナル抗体(mAb)とHPIV3 preFタンパク質の間での結合と解離をバイオレイヤー干渉法で測定した結果を示す。図2H)バイオレイヤー干渉法により測定されたPI3-E12モノクローナル抗体またはPI3-C9モノクローナル抗体とHPIV3 preFタンパク質の結合動態を示す。図2I)PI3-E12モノクローナル抗体のプラーク減少中和試験を示す。アスタリスクは、PBMCと比較したt検定によりP<0.05であったことを示す。
【0011】
図3A-3F】ヒトPBMC、ヒト扁桃腺およびヒト脾臓での、HPIV3に対する中和抗体を産生することができるB細胞の高スループットスクリーニングを示す。(図3A)個別に選別したB細胞から無作為に選択したB細胞の上清中のIgGをELISAで検出し(N=2、独立した実験)、フィーダー細胞上で増殖させた。(図3B)個別に選別した後フィーダー細胞上で増殖させたHPIV3 preF特異的B細胞の上清のプラーク減少中和試験を示す(PBMC由来B細胞:N=120個、扁桃腺由来B細胞:N=120個、脾臓由来B細胞:N=1,235個)。(図3C)GFPで標識したHPIV3を用いたVero細胞に対して行った60%プラーク減少中和試験によって、HPIV3特異的モノクローナル抗体の中和力価を測定した。Penta-HISプローブに、HPIV3 Fタンパク質のpreF構造(図3D)またはpostF構造(図3E)を固定化した。次に、各モノクローナル抗体との結合をバイオレイヤー干渉法により測定した。すべての測定は陰性コントロール抗体に対して補正する。陽性コントロール抗体は、HPIV3 postF構造に結合することが知られているヒトモノクローナル抗体である。(図3F)HPIV3 preF構造を標的とするモノクローナル抗体を用いたHEp-2細胞における抗核抗体アッセイを示す。Alexa Fluor 647(AF647)標識ヤギ抗ヒト抗体を二次抗体として用いて結合を検出した。自己反応性アッセイの陰性コントロールとして、モノクローナル抗体であるパリビズマブを使用し、陽性コントロールとして2F5抗体を使用した。蛍光強度の平均値は、2つの独立した実験から計算した。
【0012】
図4A-4D】抗HPIV3 preFモノクローナル抗体の構造解析を示す。(図4A)PI3-E12 Fabと複合体を形成したHPIV3 preFのネガティブ染色電子顕微鏡法(EM)の2D分類を示す。(図4B)ネガティブ染色電子顕微鏡法の3D再構成を示す。HPIV3 preF三量体(ラベル:PDB ID 6MJZ)の座標、GCN4三量体ドメイン(ラベル:PDB ID 4DME)の座標、およびPI3-E12 Fab(ラベル:本研究)の結晶構造の座標を、3Dマップにフィッティングした。(図4C)CDRに印を付けたPI3-E12 Fabの構造を示す。左:カートゥーンモデル。右:サーフェスモデル。(図4E)(星印で示した)PIA174の構造アライメントを示す。CDR配列のドットは、IMGTユニークナンバリングに基づいたギャップを示す。
【0013】
図5A-5E】インビボにおけるHPIV3モノクローナル中和抗体の予防的投与および治療的投与の有効性を示す。(図5A)コットンラット(1群あたりN=4匹)において実施した予防実験の模式図を示す。(図5B)感染後4日目のコットンラットの肺の組織病理検査を示す。矢印は、細気管支周囲炎の領域を示す。細気管支周囲炎は重症度(%)として点数化した。(図5C)感染後4日目の鼻ホモジネートおよび肺ホモジネートにおけるプラークアッセイによるウイルス力価を示す。(図5D)免疫不全コットンラット(1群あたりN=5匹)において実施した治療実験の模式図を示す。(図5E)感染後4日目の鼻ホモジネート(上段)および肺ホモジネート(下段)におけるプラークアッセイによるウイルス力価を示す。アスタリスクは、PBSコントロールと比較したt検定によりP<0.05であったことを示す。
【0014】
図6A-6B】MxR系モノクローナル抗体による二重結合および二重中和を示す。(図6A)バイオレイヤー干渉法により、MxR-01モノクローナル抗体とRSV preFの結合(上段)と、MxR-01モノクローナル抗体とHMPV preFの結合(下段)を検出した結果を示す。MxR-01抗体はMxR-B11とも呼ぶ。(図6B)RSVまたはHMPVに対するMxR-01抗体またはパリビズマブの中和力価を、プラーク減少中和試験で測定した。MxR-01抗体の中和力価の測定では、0.07μg/mLという低い値が示されたことから、MxR-01抗体が、インビトロにおいて、HMPVまたはRSVによる感染に対して強力な防御作用を示すことが示された。また、このアッセイでは、MxR-01抗体が、RSVの中和において、パリビズマブのほぼ10倍という優れた中和作用を有することが示された。
【0015】
図7】組換え抗体のフォーマットと代表的な使用を示す。
【0016】
図8】異なる種類の二重特異性フォーマットを利用して、MxR-01抗体の抗原結合部位と3x1抗体の抗原結合部位を、単一のモノクローナル抗体に組み込んだ四重防御抗体の設計を示す。(上段)knobs-into-holesアプローチを用いて得られた構成を示す。このアプローチでは、ヘテロ二量体化が促進されることによって、MxR-01抗体由来の1つの抗原結合断片(Fab)と、3x1抗体由来の1つの抗原結合断片(Fab)とを含み、定常(Fc)領域で連結された抗体が得られる。別のアプローチとして(下段)、一方の抗体のscFvが、別の抗体の定常領域に連結されたIgG-scFv融合抗体を示す。
【0017】
図9A-9C】HMPV/RSV(MxR)交差中和モノクローナル抗体およびHPIV3/HPIV1(3x1)交差中和モノクローナル抗体の単離を示す。(図9A)ヒト血液から、RSVに結合するB細胞と、HMPVに結合するB細胞を単離し、RSVに結合するB細胞を、ビオチン化RSV融合前タンパク質(preF)のAPC標識ストレプトアビジンテトラマーで標識するとともに、これとは別にHMPVに結合するB細胞を、ビオチン化HMPV preFのPE標識ストレプトアビジンテトラマーで標識した。フローサイトメトリーにおいて、生細胞、CD3-CD14-CD16-(非B細胞の除外)、CD19+CD20+(B細胞)、IgD-/IgM-(アイソタイプスイッチ)、およびAPC/Dylight755-HMPV postF-PE/DL650-RSV postF-(RSV/HMPV postF、APC、PEまたはストレプトアビジンに結合する細胞を除外するためのデコイ)にゲートをかけた後の、RSV preFに結合するB細胞およびHMPV preFに結合するB細胞のフローサイトメトリープロットを示す。灰色の囲み枠は、MxR抗体が得られたB細胞を示す。(図9B)ヒト脾臓から、HPIV3に結合するB細胞を単離し、ビオチン化HPIV3 preFのAPC標識ストレプトアビジンテトラマーで標識した。生細胞、CD3-CD14-CD16-、CD19+CD20+およびIgD-/IgM-にゲートをかけた後の、HPIV3に結合するB細胞のフローサイトメトリープロットを示す。結合画分の黒色の囲み枠の細胞は、HPIV3 preFに結合するが、HPIV3 postFには結合しないB細胞である。灰色の囲み枠は、3x1抗体が得られたB細胞を示す。(図9A図9B)結合画分は、抗アロフィコシアニン(APC)マイクロビーズまたは抗フィコエリトリン(PE)マイクロビーズを用いて磁気濃縮した細胞を示す。各ゲートの数値は、そのフローサイトメトリープロットにおける全細胞に対する割合である。(図9C)単一の抗原を用いて、交差中和作用を有するB細胞を同定するための「bait-and-switch」法の模式図を示す。この方法を利用して、RSVとHMPVを中和するMxR抗体と、HPIV3とHPIV1を中和する3x1抗体の2種のリード候補抗体が同定された。
【0018】
図10A-10C】MxR交差中和モノクローナル抗体と3x1交差中和モノクローナル抗体のB細胞における表現型とその効力を示す。(図10A)MxR抗体を産生するB細胞および3x1抗体を産生するB細胞の由来源、表現型および関与するアレルを示す。(図10B)段階希釈したパリビズマブ(Pali.)またはMxR抗体の存在下でVero細胞にRSVを感染させた。上側の点線はPRNT60を示す。(図10C)RSVに対するパリビズマブのPRNT60の結果;RSV-A、RSV-BまたはHMPVに対するMxR抗体のPRNT60の結果;およびHPIV1またはHPIV3に対する3x1抗体のPRNT60の結果を示す。各データ点は、3つの独立した実験から得られたものであり、各実験において技術的反復測定を2回行った。アスタリスクは、ウェルチの補正による対応がない両側t検定を用いて、パリビズマブと比較して、P値<0.01であったことを示す。インビトロにおいて、MxR抗体と3x1抗体は、各ウイルスに対してパリビズマブよりも強力な中和能力を有する。
【0019】
図11A-11C】エピトープビニングおよび構造解析を示す。(図11A)Penta-HISプローブをHisタグHPIV3 preFでコーティングした。コーティングしたプローブに、図表の左側に示したモノクローナル抗体を固定し、図表の上段に示したモノクローナル抗体と反応させた。凡例は、抗体同士の競合の程度を示しており、上段に示したモノクローナル抗体のみでの最大シグナルと比較した場合の、左側に示したモノクローナル抗体の存在下での、上段に示したモノクローナル抗体の最大シグナルの低下の割合として示している。部位0は、HPIV3 preF36の頂端部に位置する。部位Xは、新たに発見された抗原部位である。クライオ電子顕微鏡法により、(図11B)3.7Åの分解能で解析したHPIV3 preFと複合体を形成した3x1抗体の構造、および(図11C)2.3Åの分解能で解析したRSV preFと複合体を形成したMxR抗体の構造を示す。上面図を左側に示す。側面図は右側に示す。3x1抗体は、HPIV3 preF上の新規な抗原部位に結合する。MxR抗体は、RSV preFの赤道部に結合する。
【0020】
図12】インビトロでの耐性分析を示す。濃度を段階的に上昇させた3x1抗体、MxR抗体またはパリビズマブ(Pali.)の存在下において、Vero細胞にHPIV3またはRSVを接種した。各継代培養において、感染の5日後に、細胞変性効果(CPE)の測定によりウイルスの複製が検出可能であった最も高い抗体濃度のウェルを選択し、このウェルから上清を回収し、濃度を段階的に上昇させた各モノクローナル抗体の存在下で新鮮なVero細胞に上清を接種した。MxRおよびHPIV3は、パリビズマブよりも耐性障壁が高いと見られた。
【0021】
図13】バイオレイヤー干渉法(BLI)によるMxR抗体とRSV preFの結合動態の測定を示す。BLIアッセイは、Octet.Red装置(ForteBio)を用いて、500rpmで振盪しながら室温で行った。Penta-Hisキャプチャーセンサー(ForteBio、カタログNo.18-5120)を、1μM HisタグFタンパク質を含むkineticsバッファーに入れ、300秒かけてHisタグFタンパク質を固定化した。キャプチャーセンサーにHisタグFタンパク質を固定化した後、kineticsバッファー中でベースラインシグナルを60秒間記録した。次に、精製したMxR抗体を含むkineticsバッファーにキャプチャーセンサーを浸漬して、300秒間の結合工程を実施した後、抗体を含まないkineticsバッファーに浸漬して、1200秒間の解離相の測定を行った。1:1の結合モデルを用いて、ForteBioデータ解析ソフトウェアによりカーブフィッティングを行った。MxR抗体は、測定限界を超える非常に高い親和性でRSV preFタンパク質に結合した。
【0022】
図14】バイオレイヤー干渉法(BLI)によるMxR抗体とHMPV preFの結合動態の測定を示す。BLIアッセイは、Octet.Red装置(ForteBio)を用いて、500rpmで振盪しながら室温で行った。Penta-Hisキャプチャーセンサー(ForteBio、カタログNo.18-5120)を、1μM Hisタグ付きFタンパク質を含むkineticsバッファーに入れ、300秒かけてHisタグ付きFタンパク質を固定化した。キャプチャーセンサーにHisタグFタンパク質を固定化した後、kineticsバッファー中でベースラインシグナルを60秒間記録した。次に、精製したMxR抗体を含むkineticsバッファーにキャプチャーセンサーを浸漬して、300秒間の結合工程を実施した後、抗体を含まないkineticsバッファーに浸漬して、600秒間の解離相の測定を行った。1:1の結合モデルを用いて、ForteBioデータ解析ソフトウェアによりカーブフィッティングを行った。MxR抗体は、ナノモルレベルの親和性でHMPV preFタンパク質に結合した。
【0023】
図15】バイオレイヤー干渉法(BLI)による3x1抗体とHPIV3 preFの結合動態の測定を示す。BLIアッセイは、Octet.Red装置(ForteBio)を用いて、500rpmで振盪しながら室温で行った。Penta-Hisキャプチャーセンサー(ForteBio、カタログNo.18-5120)を、1μM Hisタグ付きFタンパク質を含むkineticsバッファーに入れ、300秒かけてHisタグ付きFタンパク質を固定化した。キャプチャーセンサーにHisタグFタンパク質を固定化した後、kineticsバッファー中でベースラインシグナルを60秒間記録した。次に、精製した3x1抗体を含むkineticsバッファーにキャプチャーセンサーを浸漬して、300秒間の結合工程を実施した後、抗体を含まないkineticsバッファーに浸漬して、1200秒間の解離相の測定を行った。1:1の結合モデルを用いて、ForteBioデータ解析ソフトウェアによりカーブフィッティングを行った。3x1抗体は、測定限界を超える非常に高い親和性でHPIV3 preFタンパク質に結合した。
【0024】
図16】MxR抗体の予防的投与によるハムスターの肺および鼻甲介におけるRSVの複製の抑制を示す。ハムスターのチャレンジ実験は、1群あたりN=4~5匹として行った。105pfuのウイルス100μLを鼻腔内投与することによりハムスターに感染させた。この感染の2日前に、MxRモノクローナル抗体(5mg/kg)またはPBSコントロールを筋肉内投与した。感染後5日目に、鼻甲介および肺を採取して、プラークアッセイによりウイルスの力価を測定した。肺ホモジネートおよび鼻ホモジネートは遠心分離により清澄化した。24ウェルプレートに入れた希釈した各ホモジネートに、コンフルエントまで培養した単層Vero細胞を二連で播種した。37℃で1時間インキュベートした後、各ウェルにメチルセルロースを重層した。4日後に、プラークの数を数えて、組織1gあたりのpfuとして力価を測定した。MxR抗体の予防的投与により、ハムスターの鼻腔および肺におけるRSVの複製を抑制することができる。
【0025】
図17】3x1抗体の予防的投与によるハムスターの肺および鼻甲介におけるHPIV3の複製の抑制を示す。ハムスターのチャレンジ実験は、1群あたりN=4~5匹として行った。105pfuのウイルス100μLを鼻腔内投与することによりハムスターに感染させた。この感染の2日前に、3x1モノクローナル抗体(5mg/kg)またはPBSコントロールを筋肉内投与した。感染後5日目に、鼻甲介および肺を採取して、プラークアッセイによりウイルスの力価を測定した。肺ホモジネートおよび鼻ホモジネートは遠心分離により清澄化した。24ウェルプレートに入れた希釈した各ホモジネートに、コンフルエントまで培養した単層Vero細胞を二連で播種した。37℃で1時間インキュベートした後、各ウェルにメチルセルロースを重層した。4日後に、プラークの数を数えて、組織1gあたりのpfuとして力価を測定した。3x1抗体の予防的投与により、ハムスターの肺におけるHPIV3の複製を抑制することができる。
【0026】
図18】MxR抗体と3x1抗体(各5mg/kg)の予防的投与によるハムスターの肺および鼻甲介におけるRSVとHPIV3の重複感染の抑制を示す。ハムスターのチャレンジ実験は、1群あたりN=4~5匹として行った。100μL中に含まれる各ウイルス105pfuを鼻腔内投与することによりハムスターに感染させた。この感染の2日前に、各モノクローナル抗体またはPBSコントロールを筋肉内投与した。感染後5日目に、鼻甲介および肺を採取して、プラークアッセイによりウイルスの力価を測定した。肺ホモジネートおよび鼻ホモジネートは遠心分離により清澄化した。24ウェルプレートに入れた希釈した各ホモジネートに、コンフルエントまで培養した単層Vero細胞を二連で播種した。37℃で1時間インキュベートした後、各ウェルにメチルセルロースを重層した。4日後に、プラークの数を数えて、組織1gあたりのpfuとして力価を測定した。MxR抗体と3x1抗体を含むカクテルの予防的投与により、ハムスター重複感染モデルにおいて、RSVとHPIV3の複製を抑制することができる。
【0027】
図19A-19E】(図19A)RSVとHPIV3を重複感染させたハムスターの肺および鼻甲介において、MxR抗体と3x1抗体(各5mg/kg)の予防的投与によりRSVとHPIV3の複製を抑制する実験の模式図を示す。ハムスターのチャレンジ実験は、1群あたりN=6~10匹として行った。105pfuの各ウイルス100μLを鼻腔内投与することによりハムスターに感染させた。この感染の2日前に、各モノクローナル抗体またはPBSコントロールを筋肉内投与した。感染後5日目に、鼻甲介および肺を採取して、リアルタイムPCRによりウイルスの定量を行った。肺ホモジネートおよび鼻ホモジネートは遠心分離により清澄化した。QIAamp vRNA Mini Kitを用いて、各試料ホモジネートからウイルスRNAを抽出した。RSV用のカスタム逆転写プライマー(TCCAGCAAATACACCATCCAAC(配列番号187))とHPIV3用のカスタム逆転写プライマー(CTAGAAGGTCAAGAAAAGGGAACTC(配列番号188))を用いて逆転写を行った。リアルタイムPCR用のウイルス特異的カスタムTaqmanプローブを作製した。RSV用の20x Gene Expression Assays(フォワードプライマー:TGACTCTCCTGATTGTGGGATGATA(配列番号189)、リバースプライマー:CGGCTGTAAGACCAGATCTGT(配列番号190)およびレポーター:CCCCTGCTGCTAATTT (配列番号191))と、HPIV3用の20x Gene Expression Assays(フォワードプライマー:CGGTGACACAGTGGATCAGATT(配列番号192)、リバースプライマー:TGTTTCAACCATAAGAGTTACCAAGCT(配列番号193)およびレポーター:ACCGCATGATTGACCC(配列番号194))を、Taqman Universal mastermix II with UNGとともに使用した。QuantStudio 7 Flex Real-Time PCR Systemで試料の測定を行った。試料の定量は、力価が既知のRSVのウイルスストックおよびHPIV3のウイルスストックから抽出したvRNAから作成した検量線に基づいて行った。サイクルの閾値を内挿して、pfu/gの単位でウイルス力価を求めた。PBSまたはモノクローナル抗体カクテルを投与した際のウイルスの定量結果を、(図19B)肺内のRSV、(図19C)鼻甲介内のRSV、(図19D)肺内のHPIV3および(図19E)鼻甲介内のHPIV3に示す。アスタリスクは、マン・ホイットニーの検定によりP<0.01であったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
パラミクソウイルスおよびニューモウイルスによる呼吸器感染症は、毎年、米国で何万人もの死亡を引き起こしており、世界的に見ても何十万人もの死亡を引き起こしている。これらの呼吸器感染症は、多額の医療費がかかることに加えて、免疫抑制状態の患者や高リスクの成人および乳児において特に病原性が高く致命的である。
【0029】
造血幹細胞移植のレシピエント:
造血幹細胞移植(HCT)の治療中の患者は、免疫系が再増殖するまでの6ヶ月間に特に感染症にかかりやすい状態になる。50,000件を超える造血幹細胞移植が世界的に行われおり、米国での件数は20,000件に上る。造血幹細胞移植レシピエントの最大で3分の1が、移植から6ヶ月以内に呼吸器ウイルス感染症に罹患する。最大で3分の1を占めるこのような患者では、ウイルス感染が上気道から下気道へと進行する。ウイルスが下気道で足場を固めてしまうと、大半のウイルスでは、支持療法以上のことを行うことはできない。その結果、下気道疾患に罹患した患者の最大40%が3ヶ月以内に死亡する。RSV、HMPVおよびHPIVは、造血幹細胞移植後の重篤な呼吸器ウイルス感染症全体の半分を占める。急性感染症から回復した患者のうち、25%を超える患者が固定性気道閉塞を発症し、肺機能の喪失が加速するこの消耗性疾患により死亡率も増加する。
【0030】
肺移植のレシピエント:
肺移植レシピエントは、罹患率と死亡のリスクが特に高い別の免疫抑制集団である。世界中で3,000件を超える肺移植が毎年行われており、米国では毎年2,000件の肺移植が行われている。肺移植レシピエントの最大25%は、RSV、HMPVまたはHPIVに感染し、これらの感染症の大半は、移植から1年経過後に、患者が社会活動に復帰した時期に起こる。これらのウイルスによる感染症は、細菌重複感染、組織拒絶反応および慢性同種移植片機能不全を引き起こすことがある。
【0031】
成人:
65歳を超える年齢の人や、路上生活を送っている人、慢性肺疾患に罹患している人は、重度肺疾患にかかるリスクがある。米国において65歳を超える年齢の人口は、5000万人に達しつつあり、人口全体の15%を占めている。また、米国では550,000人が路上生活を余儀なくされており、さらに米国では推定で2400万人の成人が慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患している。
【0032】
乳児:
未熟児は、RSV感染後に重度肺疾患を発症する危険因子であることがよく知られている。米国において妊娠37週未満の早産は11%を占める。1歳未満に発症した感染症は、その後に肺に長期的な影響を及ぼし、肺機能を低下させる。下気道ウイルス感染症による入院は、RSVが大部分を占め、その次にHMPVが多く、これにHPIVが続く。
【0033】
現在、成人や移植レシピエントのRSV感染症、HMPV感染症またはHPIV感染症に対して臨床的に利用可能な予防法や治療法は存在しない。未熟児では、RSV感染症を予防するための防御策として、抗体製剤パリビズマブが投与されているが、HMPV感染症やHPIV感染症に対する防御策は存在しない。パリビズマブは、半減期が短いことから、再注射を毎月行う必要があり、この理由により、その使用が制限されている。
【0034】
本開示は、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、RSウイルス(RSV)ならびにヒトメタニューモウイルス(HMPV)のうちの1種以上を防ぐ新規な抗体を提供する。本明細書に開示される特定の抗体は、HPIV3に対する防御抗体である。本明細書に開示される別の抗体は、HPIV3およびHPIV1に対する防御抗体である。また、本明細書に開示される別の抗体は、RSVおよびHMPVに対する防御抗体である。本明細書に開示される新規な抗体は、様々な形態の呼吸器ウイルスの防御に使用することができる。
【0035】
特定の実施形態において、これらの新たに開示された抗体およびその他の抗体に由来する様々な結合断片を組み換えることによって、複数の種類のウイルスを同時に防御することができる多重特異性フォーマットを得ることができる。すなわち、交差中和抗体は、医学的に重要な複数の呼吸器ウイルスを防御することができる単一の化合物に組換えることができる。本明細書においてMRP3/1と呼ぶ一例としての抗体は、2種のモノクローナル交差中和抗体をつなぎ合わせることにより作製された半減期が延長した四重防御二重特異性抗体を含む(例えば、図7および図8を参照されたい)。MRP3/1は、HMPV、RSV、HPIV3およびHPIV1を同時に防御することができる。この抗体は、インビトロにおいて高い効力と広い適用範囲を有し、パリビズマブよりも4~6倍長い半減期を持つと予想される。したがって、MRP3/1は、未熟児のRSV予防用の標準治療としてパリビズマブと置き換えることができ、さらに、RSVに加えて3種のウイルスを防御することができるという利益がある。さらに、このような組換えコンストラクトは、造血幹細胞移植レシピエントにおいて移植後6ヶ月間の易感染期に免疫防御として用いることができ、あるいは前述の感染症のいずれかにより入院した患者の治療として用いることができる。
【0036】
本開示の様々な態様について、さらに詳しく補足しながら以下で説明する。本開示の様々な態様は、以下の項目、すなわち、(i)抗体および組換え結合分子;(ii)製剤;(iii)使用方法;(iv)代表的な実施形態;(v)実験例;および(vi)結語に沿って説明する。これらの見出しは、系統的に説明する目的のみで記載されており、本開示の範囲や解釈を限定するものではない。
【0037】
(i)抗体および組換え結合分子
天然抗体の構造単位には四量体が含まれる。各四量体には、ポリペプチド鎖のペアが2組含まれ、各ポリペプチド鎖のペアは、1つの軽鎖と1つの重鎖を有する。各軽鎖と各重鎖のアミノ末端部分は、抗原認識とエピトープへの結合を担う可変領域が含まれる。可変領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域によって連結された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)からなる共通の一般構造を有する。各ペアの2つの鎖のCDRは、フレームワーク領域を挟んで整列しており、特異的なエピトープへの結合を可能としている。軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、N末端からC末端の方向に、FR1ドメイン、CDR1ドメイン、FR2ドメイン、CDR2ドメイン、FR3ドメイン、CDR3ドメインおよびFR4ドメインを含んでいる。
【0038】
各ドメインのアミノ酸の割り当ては、Kabatのナンバリング(Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(「Kabat」ナンバリングスキーム));Chothia(Al-Lazikani et al. (1997) JMB 273:927-948(「Chothia」ナンバリングスキーム));Martin(Abinandan et al., Mol Immunol. 45:3832-3839 (2008), “Analysis and improvements to Kabat and structurally correct numbering of antibody variable domains”);Gelfand;Contact(MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996), “Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography,” J. Mol. Biol. 262, 732-745.(Contactナンバリングスキーム));IMGT(Lefranc M P et al., “IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev Comp Immunol, 2003 January; 27(1):55-77(「IMGT」ナンバリングスキーム));AHo(Honegger A and Pluckthun A, “Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool,” J Mol Biol, 2001 Jun. 8; 309(3):657-70(AHoナンバリングスキーム));North(North et al., J Mol Biol. 406(2):228-256 (2011), “A new clustering of antibody CDR loop conformations”);またはその他のナンバリングスキームに従って行うことができる。
【0039】
ABodyBuilderやParatomeなどのソフトウエアプログラムやバイオインフォマティクスツールを利用してCDR配列を決定することもできる。さらに、X線結晶構造解析を利用して、CDRを決定することもできる。
【0040】
各軽鎖と各重鎖のカルボキシ末端部分には定常領域が存在し、定常領域は、特に重鎖(Fc)においてエフェクター機能を担っている。エフェクター機能の例として、C1qへの結合および補体依存性細胞傷害(CDC);抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレーション;およびB細胞の活性化が挙げられる。
【0041】
全長軽鎖および全長重鎖では、「J」領域のアミノ酸配列によって可変領域と定常領域が連結されており、重鎖には「D」領域のアミノ酸配列がさらに含まれる。例えば、Fundamental Immunologyの第7章(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。
【0042】
ヒト軽鎖は、κ軽鎖とλ軽鎖に分類される。重鎖は、μ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖またはε鎖に分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEという抗体のアイソタイプを規定する。IgGには、いくつかのサブクラスがあり、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が含まれる。IgMは、IgM1およびIgM2を含むサブクラスがある。IgAも、IgA1およびIgA2を含むサブクラスに分類される。
【0043】
本明細書で述べるように、抗体は抗原上のエピトープに結合する。「抗原」は、抗体による結合を受けることができる分子またはその一部を指す。エピトープは、抗体の可変領域の結合を受ける抗原領域である。エピトープ決定因子は、アミノ酸、糖類側鎖、ホスホリル基、スルホニル基などの、化学的に活性な表面分子群を含んでいてもよく、特定の三次元構造特性および/または特定の電荷特性を有していてもよい。抗原がタンパク質またはペプチドである場合、エピトープは、そのタンパク質またはペプチド内の、抗体の可変領域と接触する特定のアミノ酸を含む。
【0044】
特定の実施形態において、エピトープは、これに対応する抗体の可変領域の結合を受けるウイルスペプチド上の結合部位を指す。可変領域は、線状エピトープ(例えば、連続した5~12個のアミノ酸からなる配列を含むエピトープ)に結合するか、あるいは可変領域は、標的となるタンパク質のいくつかの短い配列の空間的配置により形成された三次元構造に結合する。例えば、抗体または抗体断片のエピトープ認識部位すなわちパラトープのような可変領域によって認識される三次元エピトープは、エピトープ分子の三次元表面の特徴と見なすことができる。このようなエピトープ分子の三次元表面の特徴は、これに対応する可変領域結合部位にぴったりと嵌まり(嵌まり込み)、これによって、可変領域とその標的タンパク質(より一般的には抗原)の結合が促される。特定の実施形態において、エピトープには2種類のものがあると見なすことができ、すなわち、(i)抗体の可変領域が結合する抗原上に投影された影と見なすことができる「覆われた部分」と;(ii)結合の促進に関与する個々の側鎖および骨格残基とがある。次に、イオン相互作用、水素結合および疎水性相互作用によって結合が起こる。
【0045】
本開示の抗体のエピトープ(すなわち、本開示の抗体が結合するエピトープ)は、HPIV3、HPIV1、RSVおよび/またはHMPVから選択されるウイルス上に存在する。特定の実施形態において、本開示の抗体のエピトープは、ウイルスのFタンパク質に存在し、例えば、融合前状態のウイルスFタンパク質に存在する。
【0046】
特定の実施形態において、「結合」とは、可変領域が、10-8M以下の解離定数(KdまたはKD)で、その標的エピトープに結合することを意味し、特定の実施形態では、10-5M~10-13Mの解離定数(KdまたはKD)で、その標的エピトープに結合することを意味し、特定の実施形態では、10-5M~10-10Mの解離定数(KdまたはKD)で、その標的エピトープに結合することを意味し、特定の実施形態では、10-5M~10-7Mの解離定数(KdまたはKD)で、その標的エピトープに結合することを意味し、特定の実施形態では、10-8M~10-13Mの解離定数(KdまたはKD)で、その標的エピトープに結合することを意味し、または特定の実施形態では、10-9M~10-13Mの解離定数(KdまたはKD)で、その標的エピトープに結合することを意味する。さらに、「結合」という用語は、可変領域が、周囲に存在するその他の生体分子に結合しないことを示すために使用することができる(例えば、可変領域が10-4M以上の解離定数(Kd)でその他の生体分子と結合することを示すために使用することができ、特定の実施形態では、10-4M~1Mの解離定数(Kd)でその他の生体分子と結合することを示すために使用することができる)。
【0047】
特定の実施形態において、Kdは、BIAcoreを用いて評価することができる。例えば、特定の実施形態において、Kdは、BIACORE(登録商標) 2000またはBIACORE 3000(BIAcore, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイにより、10レスポンスユニット(RU)の濃度で抗原が固定されたCM5チップを用いて、25℃で測定することができる。簡潔に述べると、製造業者の説明書に従って、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE, Inc.)を、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)とN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化することができる。10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で抗原を5μg/ml(0.2μM)に希釈して、5μl/分の流速でインジェクトすることにより、10レスポンスユニット(RU)の濃度で抗原タンパク質をバイオセンサーチップに結合させることができる。抗原のインジェクション後、1Mエタノールアミンをインジェクトして未反応基をブロッキングすることができる。動態測定では、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20TM)界面活性剤を添加したPBS(PBST)中に、2倍段階希釈したFab(0.78nM~500nM)を25℃、25μl/分の流速でインジェクトする。結合速度定数(kon)および解離速度定数(koff)は、単純な1:1のラングミュア結合モデル(BIACORE評価ソフトウェア、バージョン3.2)を用いて、結合のセンサーグラムと解離のセンサーグラムを同時にカーブフィッティングさせることによって計算することができる。平衡解離定数(Kd)は、koff/konの比率として計算することができる。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881, 1999を参照されたい。この表面プラズモン共鳴アッセイにおいて、結合速度定数が106M-1s-1を超えた場合、次に、蛍光クエンチング技術を用いて結合速度定数を測定することができる。この蛍光クエンチング技術では、ストップフローシステムを備えた分光光度計(Aviv Instruments)や攪拌可能なキュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCOTM分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計を用いて、段階的に濃度を上昇させた抗原の存在下で、PBS(pH7.2)中25℃で20nMの(Fabの形態の)抗抗原抗体の蛍光発光強度の増加または減少を測定する(励起光=295nm;発光=340nm、バンド幅:16nm)。
【0048】
別段の記載がない限り、「抗体」は、(前述したような2つの重鎖全長および2つの軽鎖全長を有する抗体に加えて)そのバリアント、誘導体および断片を含む。これらの例も後述している。さらに、明示的に除外されない限り、抗体には、モノクローナル抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、多重特異性抗体、ポリクローナル抗体、線状抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体、キメラ抗体、融合抗体およびこれらの断片が含まれていてもよい。特定の実施形態において、抗体には、オリゴマーの形態の抗体または多重化された抗体が含まれていてもよい。
【0049】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体集団から得られた抗体を指し、すなわち、抗体集団に含まれる個々の抗体が、発生しうるバリアント抗体を除いて、同一のものであり、かつ/または同じエピトープに結合することを指し、バリアント抗体とは、例えば、天然の変異を含むバリアントや、モノクローナル抗体の調製過程において発生するバリアントであり、そのようなバリアントは、通常、微量にしか存在しない。様々なエピトープを標的とする様々な抗体が含まれるポリクローナル抗体の調製物とは対照的に、モノクローナル抗体の調製物に含まれる各モノクローナル抗体は、抗原上の単一のエピトープを標的とする。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から得られた抗体であるという特徴を示し、特定の方法で抗体の作製を行う必要があると解釈すべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、様々な技術で作製することができ、このような技術として、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリンの遺伝子座の全体またはその一部を含むトランスジェニック動物を利用した方法が挙げられる。
【0050】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を含む抗体、またはヒト抗体レパトアもしくはその他のヒト抗体のコード配列を利用した非ヒト起源に由来する抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を含む抗体である。
【0051】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンのVLまたはVHのフレームワーク配列の選択において最もよく見られるアミノ酸残基を有するフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンのVL配列またはVH配列は、可変ドメイン配列のサブグループから選択される。可変ドメイン配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda Md. (1991), vols. 1-3に記載の可変ドメイン配列のサブグループであってもよい。特定の実施形態において、VLのサブグループは、Kabatら(前掲)により報告されているサブグループκIである。特定の実施形態において、VHのサブグループは、Kabatら(前掲)により報告されているサブグループIIIである。
【0052】
「ヒト化された」抗体は、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基とヒトFR由来のアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つの可変ドメイン(通常は2つの可変ドメイン)のすべてを実質的に含み、CDRのすべてまたは実質的にCDRのすべてが、非ヒト抗体のCDRに相当し、FRのすべてまたは実質的にFRのすべてが、ヒト抗体のFRに相当する。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の一部を少なくとも含んでいてもよい。「ヒト化形態」の抗体、例えば非ヒト抗体は、ヒト化を行った抗体を指す。
【0053】
ヒト化抗体およびその製造方法は、例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633, 2008に概説されており、さらに、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329, 1988; Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033, 1989;米国特許第5,821,337号、米国特許第7,527,791号、米国特許第6,982,321号および米国特許第7,087,409号; Kashmiri et al., Methods 36:25-34, 2005(SDR(a-CDR)の移植について述べられている);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498, 1991(「resurfacing」について述べられている);Dall’Acqua et al., Methods 36:43-60,2005(「フレームワーク領域シャッフリング」について述べられている);ならびにOsbourn et al., Methods 36:61-68, 2005およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260, 2000(フレームワーク領域シャッフリングの「ガイドによる選択」方法が述べられている)にも記載されている。欧州特許公開第0239400(B)号では、「CDRの移植法」に関して詳しく説明されており、この方法では、第1の抗体の1つ以上のCDR配列を、その抗体以外の抗体(例えば別の抗体)の配列のフレームワーク領域内に配置する。
【0054】
ヒト化に使用してもよいヒトフレームワーク領域として、「ベストフィット」法により選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al. J. Immunol. 151:2296, 1993を参照されたい);軽鎖可変領域または重鎖可変領域の特定のサブグループに含まれるヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al., Proc. Nati. Acad. Sci. USA, 89:4285, 1992;およびPresta et al., J. Immunol., 151:2623, 1993を参照されたい);ヒト成熟フレームワーク領域(体細胞変異フレームワーク領域)またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633, 2008)を参照されたい);ならびにフレームワーク領域ライブラリーのスクリーニングにより得られたフレームワーク領域(例えば、Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684, 1997;およびRosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618, 1996を参照されたい)が挙げられる。
【0055】
特定の実施形態において、本明細書に開示されたモノクローナル抗体であるPI3-E12は、GFTFSDHY(配列番号1)を含むCDRH1;ISSSGSNT(配列番号2)を含むCDRH2;ARAKWGTMGRGAPPTIYDH(配列番号3)を含むCDRH3;QSLLQSNGNNY(配列番号4)を含むCDRL1;LGSを含むCDRL2;およびMQALQTPLT(配列番号5)を含むCDRL3を有する。
【0056】
特定の実施形態において、PI3-E12は、QVQLLESGGKLVKPGGSLRLSCAASGFTFSDHYMIWIRQAPGKGLEWISYISSSGSNTIYADSLMGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRTEDTAVYYCARAKWGTMGRGAPPTIYDHWGQGTLVTVSS(配列番号166)を含む重鎖配列と、DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLLQSNGNNYLEWYLQKPGQSPQLLIYLGSNRASGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDAGVYYCMQALQTPLTFGGGTKVEIK(配列番号167)を含む軽鎖配列とを有する。
【0057】
特定の実施形態において、PI3-E12抗体は、CAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAAAGTTGGTCAAGCCTGGAGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTGACCACTACATGATCTGGATCCGCCAGGCTCCCGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTTCATACATAAGTAGTAGTGGTAGTAACACAATCTACGCAGACTCTTTGATGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCTCTGTATCTACAAATGAACAGCCTGAGGACCGAGGACACGGCCGTTTATTACTGTGCGAGAGCAAAGTGGGGTACTATGGGTCGGGGAGCACCCCCGACAATTTATGACCACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA(配列番号6)によってコードされる重鎖可変領域配列と、GATATTGTGATGACTCAGTCTCCACTCTCCCTGCCCGTCACCCCTGGAGAGCCGGCCTCCATCTCCTGTAGGTCTAGTCAGAGCCTCCTGCAAAGTAATGGAAACAATTATTTGGAGTGGTACCTGCAGAAGCCAGGGCAGTCTCCACAACTCCTGATCTATTTGGGTTCCAATCGGGCCTCCGGGGTCCCTGACAGGTTCAGTGGCAGTGGATCAGGCACAGATTTTACACTGAAGATCAGCAGAGTGGAGGCTGAGGATGCTGGGGTTTATTACTGCATGCAAGCTCTACAAACTCCGCTCACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTGGAGATCAAAC(配列番号7)によってコードされるκ軽鎖可変領域配列とを含む。
【0058】
特定の実施形態において、本明細書に開示されたモノクローナル抗体であるPI3-A3は、GFTFSNYW(配列番号8)を含むCDRH1;VKEEGSEK(配列番号9)を含むCDRH2;AGEVKSGWFGRYFDS(配列番号10)を含むCDRH3;QSVGSW(配列番号11)を含むCDRL1;KTSを含むCDRL2;およびQQYSSFPYT(配列番号12)を含むCDRL3を有する。
【0059】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体であるPI3-A3は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCTASGFTFSNYWMSWVRQAPGKGLEWVANVKEEGSEKHYVDSVKGRFTISRDNAKNSVYLQMSSLRAEDTAVYYCAGEVKSGWFGRYFDSWGQGTLVTVSS(配列番号168)を含む重鎖配列と、DIQMTQSPSTLSASVGDRVTINCRASQSVGSWLAWYQQKPGKAPKLLMYKTSTLQRGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFAAYYCQQYSSFPYTFGQGTKLEIK(配列番号169)を含む軽鎖配列とを有する。
【0060】
特定の実施形態において、PI3-A3抗体は、GAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTCCAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTACAGCCTCTGGATTCACCTTTAGCAATTATTGGATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTGGCCAATGTGAAGGAAGAAGGAAGTGAGAAACACTATGTAGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCAGTGTATCTGCAGATGAGCAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCTGTCTATTACTGTGCGGGAGAGGTTAAGAGTGGCTGGTTCGGTCGGTACTTTGACTCCTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAG(配列番号13)によってコードされる重鎖可変領域配列と、GACATCCAGATGACCCAGTCTCCTTCCACCCTGTCTGCATCTGTTGGAGACAGAGTCACCATCAATTGCCGGGCCAGTCAGAGTGTTGGTAGCTGGTTGGCCTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATGTATAAGACATCTACTTTACAAAGAGGGGTCCCATCAAGGTTCAGCGGCAGTGGATCTGGGACAGAATTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGATGATTTTGCAGCTTATTACTGCCAACAGTATAGTAGTTTTCCGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAAC(配列番号14)によってコードされるκ軽鎖可変領域配列とを含む。
【0061】
特定の実施形態において、本明細書に開示されたモノクローナル抗体であるPI3-B5は、GYNFTNYW(配列番号15)を含むCDRH1;IYPADSDT(配列番号16)を含むCDRH2;ARPSTRWFVPGGMDV(配列番号17)を含むCDRH3;QSIGAW(配列番号18)を含むCDRL1;KASを含むCDRL2;およびQQHSSYPST(配列番号19)を含むCDRL3を有する。
【0062】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体であるPI3-B5は、EVQLVQSGAEVKKPGESLRISCKGSGYNFTNYWIAWVRQMPGKGLEWMGIIYPADSDTRYSPSFQGQVTISADKSITTAYLQWSSLKASDTAIYYCARPSTRWFVPGGMDVWGQGTTVIVSS(配列番号170)を含む重鎖配列と、DIQMTQSPSTLSASVGDRVTISCRATQSIGAWLAWYQQKPGEPPKLLIYKASTLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDSATYYCQQHSSYPSTFGGGTKVEIK(配列番号171)を含む軽鎖配列とを有する。
【0063】
特定の実施形態において、PI3-B5抗体は、GAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGAGCAGAGGTGAAAAAGCCCGGGGAGTCTCTGAGGATCTCCTGTAAGGGTTCTGGATACAACTTTACCAACTACTGGATCGCCTGGGTGCGCCAGATGCCCGGGAAAGGCCTGGAGTGGATGGGGATCATCTATCCTGCTGACTCGGATACCAGATACAGCCCGTCCTTCCAAGGCCAAGTCACCATCTCAGCCGACAAGTCCATCACCACCGCCTACCTGCAGTGGAGCAGCCTGAAGGCCTCGGACACCGCCATATACTACTGTGCGAGACCGAGTACTAGGTGGTTCGTCCCTGGCGGTATGGACGTCTGGGGCCAAGGCACCACGGTCATCGTCTCCTCA(配列番号20)によってコードされる重鎖可変領域配列と、GACATCCAGATGACCCAGTCTCCTTCCACCCTGTCTGCTTCTGTAGGAGACAGAGTCACCATTTCTTGCCGGGCCACTCAGAGTATTGGTGCCTGGTTGGCCTGGTATCAGCAGAAACCAGGGGAACCCCCTAAGCTCCTGATCTATAAGGCGTCTACTTTAGAGAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGCGGCAGTGGATCTGGGACAGAATTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGATGATTCTGCAACTTATTACTGCCAACAGCATAGTAGTTATCCTTCTACTTTCGGCGGAGGGACCAAGGTGGAGATCAAAC(配列番号21)によってコードされるκ軽鎖可変領域配列とを含む。
【0064】
特定の実施形態において、本明細書に開示されたモノクローナル抗体であるPI3-A10は、GFNFNNYG(配列番号22)を含むCDRH1;VSFDGSNR(配列番号23)を含むCDRH2;SKSKYSDFWSEI(配列番号24)を含むCDRH3;QNVMRY(配列番号25)を含むCDRL1;DASを含むCDRL2;およびQQRTNHRFS(配列番号26)を含むCDRL3を有する。
【0065】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体であるPI3-A10は、QVQLVESGGGVVRPGRSLRLSCVASGFNFNNYGLQWIRQAPGKGLEWVAGVSFDGSNRYYADSVKGRVTISRDDSKNTLYLEMNSLRAEDTGIYYCSKSKYSDFWSEIWGQGTLVTVSS(配列番号172)を含む重鎖配列と、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQNVMRYLAWYQQRPGQAPRLLFYDASSRATGIPARFTASGSGTDFTLTISGLEPGDFAVYYCQQRTNHRFSFGPGTKVDIK(配列番号173)を含む軽鎖配列とを有する。
【0066】
特定の実施形態において、PI3-A10抗体は、CAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCGTGGTCCGGCCTGGGAGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGTAGCCTCTGGATTCAACTTCAATAACTATGGGCTGCAGTGGATCCGCCAGGCTCCAGGCAAGGGGCTGGAGTGGGTGGCAGGTGTCTCGTTTGATGGGAGTAATAGATATTATGCAGACTCCGTGAAGGGCCGAGTCACCATATCCAGAGACGATTCCAAGAACACCCTGTATCTAGAAATGAACAGCCTGAGAGCTGAGGACACAGGAATATATTACTGTTCGAAGTCCAAGTACTCCGACTTTTGGAGCGAAATATGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAG(配列番号27)によってコードされる重鎖可変領域配列と、GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAATGTTATGAGGTACTTAGCCTGGTACCAACAGAGACCTGGCCAGGCTCCCAGACTCCTCTTCTATGATGCATCCAGCCGGGCCACTGGCATCCCAGCCCGGTTCACTGCCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCGGCCTCGAGCCTGGAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCAGCGTACCAACCATAGATTCTCTTTCGGCCCTGGGACCAAGGTGGATATCAAAC(配列番号28)によってコードされるκ軽鎖可変領域配列とを含む。
【0067】
特定の実施形態において、本明細書に開示されたモノクローナル抗体であるPI3-A12は、GDSVKSDDFY(配列番号29)を含むCDRH1;IYYGGRT(配列番号30)を含むCDRH2;VRVEGLLWFGELFDY(配列番号31)を含むCDRH3;NSNIGNNF(配列番号32)を含むCDRL1;KDYを含むCDRL2;およびAAWQDGLSGPL(配列番号33)を含むCDRL3を有する。
【0068】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体であるPI3-A12は、QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGDSVKSDDFYWSWIRQPPGKGLEWIGFIYYGGRTYYNPSLSGRGTISVDTSKNHFFLELTSVTAADTAVYYCVRVEGLLWFGELFDYWGQGTLVTVSS(配列番号174)を含む重鎖配列と、QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSNSNIGNNFVYWYQQVPGSAPKVVIYKDYQRPSGVPDRFSASKSGTSASLTISGLRSDDEAHYYCAAWQDGLSGPLFGGGTKLTVL(配列番号175)を含む軽鎖配列とを有する。
【0069】
特定の実施形態において、PI3-A12抗体は、CAGGTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCAGAGACCCTGTCCCTCACTTGCACTGTCTCTGGTGACTCCGTCAAGAGTGATGATTTCTACTGGAGTTGGATCCGGCAGCCCCCAGGGAAGGGCCTGGAGTGGATTGGCTTCATCTATTACGGTGGCAGAACTTACTACAACCCGTCCCTCAGTGGTCGAGGAACCATTTCAGTGGACACGTCCAAGAACCACTTCTTCCTGGAGCTGACCTCTGTGACTGCCGCAGACACGGCCGTATACTACTGTGTCAGGGTCGAAGGATTACTGTGGTTCGGGGAGTTATTCGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAG(配列番号34)によってコードされる重鎖可変領域配列と、CAGTCTGTGCTGACGCAGCCACCCTCAGCGTCTGGGACCCCCGGGCAGAGGGTCACCATCTCTTGTTCTGGAAGCAACTCCAACATCGGAAATAATTTTGTCTACTGGTACCAACAAGTCCCAGGATCGGCCCCCAAAGTCGTCATTTACAAGGATTATCAGCGCCCCTCAGGGGTCCCTGACCGATTCTCTGCCTCCAAGTCTGGCACCTCAGCCTCCCTGACCATCAGCGGGCTCCGGTCCGACGATGAGGCCCATTATTACTGTGCAGCATGGCAGGACGGTCTGAGTGGGCCGTTATTTGGCGGAGGGACCAAGCTGACCGTCCTAG(配列番号35)によってコードされるλ軽鎖可変領域配列とを含む。
【0070】
特定の実施形態において、本明細書に開示されたモノクローナル抗体である3x1は、GFTFSSFG(配列番号36)を含むCDRH1;ISHSAGFL(配列番号37)を含むCDRH2;AKRLAGLPDLEWLLYPNFLDH(配列番号38)を含むCDRH3;ILRTYY(配列番号39)を含むCDRL1;GKNを含むCDRL2;およびSSRDRSGNHVL(配列番号40)を含むCDRL3を有する。
【0071】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体である3x1は、EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSFGMSWVRQSPGKGLEWVADISHSAGFLNYADSVKGRFTVSRDNSKSTLHLQMKSLRAEDTAVYYCAKRLAGLPDLEWLLYPNFLDHWGQGTLVTVSS(配列番号176)を含む重鎖配列と、SSELTQDPAVSVALGQTVRITCQGDILRTYYVSWYQQKPGQAPLLVIYGKNNRPSVIPDRFSGSTSGDTASLTITGAQAEDEAEYYCSSRDRSGNHVLFGGGTKLTVL(配列番号177)を含む軽鎖配列とを有する。
【0072】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体である3x1は、GAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGTGGGTCCCTGAGACTGTCTTGTGCGGCCTCAGGATTCACCTTTAGCAGCTTTGGCATGAGCTGGGTCCGCCAATCTCCAGGAAAGGGGCTGGAGTGGGTCGCAGATATAAGCCATAGTGCTGGCTTCTTAAACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCGTCTCCAGAGACAATTCTAAGAGCACGCTGCATCTCCAAATGAAGAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAAAAGACTTGCCGGATTACCAGATTTGGAGTGGTTACTTTACCCTAACTTCTTAGACCACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAG(配列番号41)によってコードされる重鎖可変領域配列と、TCTTCTGAGCTGACTCAGGACCCTGCTGTGTCTGTGGCCTTGGGACAGACAGTCAGGATCACATGCCAAGGAGACATACTGAGAACCTATTATGTAAGCTGGTACCAGCAGAAACCAGGACAGGCCCCGCTACTTGTCATCTATGGTAAAAACAACCGACCCTCAGTGATCCCAGACCGATTCTCTGGCTCCACCTCAGGAGACACAGCTTCCTTGACCATCACTGGGGCTCAGGCGGAAGATGAGGCTGAGTATTATTGTAGCTCTCGGGACAGGAGTGGAAACCATGTGCTATTCGGCGGAGGGACCAAGCTGACCGTCCTAG(配列番号42)によってコードされるλ軽鎖可変領域配列とを含む。
【0073】
特定の実施形態において、本明細書に開示されたモノクローナル抗体であるMxR-B11(MxR-01とも呼ぶ)は、GFPFSSYK(配列番号43)を含むCDRH1;ISASGSYI(配列番号44)を含むCDRH2;ARDGGRELSPFEK(配列番号45)を含むCDRH3;NSNIGTGYD(配列番号46)を含むCDRL1;DNNを含むCDRL2;およびQSYDKSLGGWV(配列番号47)を含むCDRL3を有する。
【0074】
特定の実施形態において、MxR-B11(MxR-01)は、EVQVVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFPFSSYKMDWVRQAPGKGLEWVSSISASGSYINYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMKSLRADDTAVYFCARDGGRELSPFEKWGQGILVTVSS(配列番号178)に示される配列を有する重鎖可変領域と、QSVLTQPPSVSGAPGQRVTISCTGTNSNIGTGYDVHWYQQLPGTAPKVVLFDNNNRPSGVPDRFSGSKSGTSAALAITGLQAEDEAVYYCQSYDKSLGGWVFGGGTKLTVL(配列番号179)に示される配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0075】
特定の実施形態において、MxR-B11抗体は、GAGGTGCAGGTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCCTGGTCAAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCCCCTTCAGTTCTTATAAGATGGACTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCGTCCATCAGTGCTAGTGGAAGTTACATAAACTATGCAGACTCAGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCACTGTATCTGCAAATGAAAAGCCTGAGAGCCGACGACACGGCTGTATATTTTTGTGCGAGAGACGGCGGAAGAGAACTGAGCCCCTTTGAAAAGTGGGGCCAGGGAATCCTGGTCACCGTCTCCTCAG(配列番号48)で示される配列によってコードされる重鎖可変領域と、CAGTCTGTGCTGACGCAGCCGCCCTCAGTGTCTGGGGCCCCAGGACAGAGGGTCACCATCTCCTGCACTGGGACCAACTCCAACATCGGGACAGGTTATGATGTACACTGGTACCAGCAGCTTCCGGGAACAGCCCCCAAAGTCGTCCTCTTTGATAACAACAATCGGCCCTCAGGGGTCCCTGACCGATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACTTCAGCCGCCCTGGCCATCACTGGCCTCCAGGCTGAGGATGAGGCTGTTTATTACTGCCAGTCCTATGACAAGAGCCTGGGTGGTTGGGTGTTCGGCGGAGGGACCAAGCTGACCGTCCTAG(配列番号49)で示される配列によってコードされる軽鎖可変領域とを含む。
【0076】
特定の実施形態において、本明細書に開示されたモノクローナル抗体であるMxR-D10(MxR-02とも呼ぶ)は、GFIFSNYD(配列番号50)を含むCDRH1;ITGGSSFI(配列番号51)を含むCDRH2;ARDGGRQLSPCEH(配列番号52)を含むCDRH3;SSNIGAGYD(配列番号53)を含むCDRL1;DNNを含むCDRL2;およびQSYDRGLSGWA(配列番号54)を含むCDRL3を有する。
【0077】
特定の実施形態において、モノクローナル抗体であるMxR-D10(MxR-02)は、EVQVVESGGGLVKPGGSLRLSCTASGFIFSNYDMNWVRQAPGKGLEWVASITGGSSFINYADSVKGRFTISRDNAKKSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDGGRQLSPCEHWGQGTLVTVSS(配列番号180)で示される配列を有する重鎖可変領域と、QSVLTQPPSVSGSPGQRVTISCTGGSSNIGAGYDVHWYQQLPGSAPKLLMYDSNNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAITGLQAEDEADYYCQSYDRGLSGWAFGGGTKLTVL(配列番号181)で示される配列を有する軽鎖可変領域とを含む。
【0078】
特定の実施形態において、MxR-D10抗体は、GAGGTGCAGGTGGTGGAGTCGGGGGGAGGCCTGGTCAAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTACAGCCTCTGGATTCATATTCAGTAATTATGACATGAACTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGCCTGGAGTGGGTCGCCTCCATTACTGGTGGTAGTAGTTTCATAAATTACGCAGACTCAGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAAGTCACTGTATCTGCAAATGAACAGCCTCAGAGCCGAGGACACGGCTGTCTATTACTGTGCGAGAGATGGCGGGAGACAGTTGAGTCCGTGTGAACATTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAG(配列番号55)で示される配列によってコードされる重鎖可変領域と、CAGTCTGTGCTGACGCAGCCGCCCTCAGTGTCTGGGTCCCCAGGGCAGAGGGTCACCATCTCCTGCACTGGGGGCAGCTCCAACATCGGGGCAGGTTATGATGTACACTGGTACCAACAACTTCCAGGATCAGCCCCCAAACTCCTCATGTATGATAGTAATAATCGACCCTCAGGGGTCCCTGACCGATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACCTCAGCCTCCCTGGCCATCACTGGGCTCCAGGCTGAGGATGAGGCTGATTATTACTGCCAGTCCTATGACAGGGGCCTGAGTGGGTGGGCGTTCGGCGGAGGGACCAAGCTGACCGTCCTGG(配列番号56)で示される配列によってコードされる軽鎖可変領域とを含む。
【0079】
本明細書で述べるように、本明細書に開示された抗体を利用して、本発明に関連する結合断片分子を様々な形態で調製することができる。例えば、特定の実施形態は、抗体の結合断片を含んでいてもよく、例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2および一本鎖Fv断片(scFv)、または本明細書に記載のエピトープに特異的に結合する免疫グロブリンの生物学的に有効な断片を含んでいてもよい。
【0080】
特定の実施形態では、抗体断片が使用される。「抗体断片」は、完全な形の抗体または全長抗体の一部であり、エピトープに結合する能力を保持しているものを指す。抗体断片は、本明細書で述べるように、全長抗体のタンパク質分解や、組換え宿主細胞(例えば、哺乳動物の浮遊細胞株、大腸菌またはファージ)による産生などの様々な技術で作製することができる。抗体断片は、全長抗体と同じ方法で、結合特性をスクリーニングすることができる。抗体断片の例として、Fv、scFv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;および線状抗体が挙げられる。
【0081】
「一本鎖可変領域断片(scFv)」は、短いリンカーペプチドで連結された免疫グロブリンの重鎖可変領域と軽鎖可変領域からなる融合タンパク質である。Fv断片は、抗体の1本の腕に由来するVLドメインとVHドメインを含むが、定常領域を欠失している。Fv断片の2つのドメイン、すなわち、VLドメインとVHドメインは、別々の遺伝子によってコードされているが、例えば、組換え法を利用して、これらのドメインを1本のタンパク質鎖とすることが可能な合成リンカーでこれらのドメインを連結することによって、一対のVL領域とVH領域からなる1価の分子(一本鎖Fv(scFv))を形成させることができる。FvおよびscFvに関するさらなる情報は、例えば、Bird, et al., Science 242:423-426, 1988;Huston, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883, 1988;The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore (eds.), Springer-Verlag, New York, (1994) 269-315に記載のPlueckthunによる報告;WO1993/16185;米国特許第5,571,894号;および米国特許第5,587,458号を参照されたい。
【0082】
scFvのVLとVHの連結に使用されるリンカー配列は、通常、5~35アミノ酸長である。特定の実施形態において、VL-VHのリンカーとして、5~35アミノ酸長、10~30アミノ酸長または15~25アミノ酸長が挙げられる。リンカーの長さを変えても、活性が保持されていてもよく、活性が増強されてもよく、これによって、活性研究において優れた有効性が得られてもよい。scFvのリンカー配列は、通常、Gly-Serリンカーであり、これについては、本明細書で詳しく別に述べている。
【0083】
抗体ベースの結合断片フォーマットの別の例として、scFvから作製されたgrababodyや、可溶性VHドメイン抗体が挙げられる。これらの抗体は重鎖可変領域のみを用いて結合領域を形成している。例えば、Jespers et al., Nat. Biotechnol. 22:1161, 2004; Cortez-Retamozo et al., Cancer Res. 64:2853, 2004; Baral et al., Nature Med. 12:580, 2006; およびBarthelemy et al., J. Biol. Chem. 283:3639, 2008を参照されたい。
【0084】
Fab断片は、VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインを含む一価の抗体断片である。F(ab’)2断片は、ヒンジ領域のジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片である。インビボでの半減期を延長させたFab断片およびF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。ダイアボディは、二価であってもよい2つのエピトープ結合部位を含む。例えば、欧州特許公開第0404097号;WO1993/01161;およびHolliger, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448, 1993を参照されたい。Dual affinity retargeting antibody(DARTTM;ダイアボディのフォーマットに基づくが、さらに安定化させるためにC末端にジスルフィド架橋を有することを特徴する(Moore et al., Blood 117:4542-51, 2011))を用いることもできる。抗体断片は、単離されたCDRを含むこともできる。抗体断片の総説については、Hudson, et al., Nat. Med. 9:129-134, 2003を参照されたい。
【0085】
本明細書に記載の抗体のバリアントも本発明に含まれる。抗体のバリアントには、1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するもの、またはタンパク質の結合に悪影響を及ぼさない1つ以上の非保存的置換を有するものが含まれていてもよい。
【0086】
特定の実施形態において、保存的アミノ酸置換は、参照配列の構造特性を実質的に変更しないものであってもよい(例えば、置換アミノ酸は、参照配列に見られるヘリックスを破壊する傾向を持つべきではなく、あるいは参照配列に特徴的なその他の種類の二次構造を破壊するものであってはならない)。当技術分野で知られているポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton, Ed., W. H. Freeman and Company, New York (1984);Introduction to Protein Structure (C. Branden & J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, N.Y. (1991));およびThornton et al., Nature, 354:105 (1991)に記載されている。
【0087】
特定の実施形態において、VL領域は本開示のVLに由来するものであってもよく、または本開示のVLに基づくものであってもよく、本開示のVLと比較して、1個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)の挿入、1個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)の欠失、1個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)のアミノ酸置換(例えば保存的アミノ酸置換)、またはこれらの変化の組み合わせを有していてもよい。各CDRに変化が含まれていないか、多くても1個、2個または3個の変化しか含まれておらず、かつ組換えられたVL領域を含む抗体が、野生型の結合断片と同程度の親和性で標的エピトープに特異的に結合できる限り、挿入、欠失または置換は、VL領域のアミノ末端もしくはカルボキシ末端または両端を含むVL領域のどの位置に存在していてもよい。
【0088】
特定の実施形態において、VH領域は本開示のVHに由来するものであってもよく、または本開示のVHに基づくものであってもよく、本開示のVHと比較して、1個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)の挿入、1個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)の欠失、1個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換もしくは非保存的アミノ酸置換)、またはこれらの変化の組み合わせを有していてもよい。各CDRに変化が含まれていないか、多くても1個、2個または3個の変化しか含まれておらず、かつ組換えられたVH領域を含む抗体が、野生型の結合断片と同程度の親和性で標的エピトープに特異的に結合できる限り、挿入、欠失または置換は、VH領域のアミノ末端もしくはカルボキシ末端または両端を含むVH領域のどの位置に存在していてもよい。
【0089】
特定の実施形態において、バリアントは、本明細書に開示された抗体配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%の配列同一性を有する配列を含むか、このような配列同一性を有する配列である。特定の実施形態において、バリアントは、軽鎖可変領域(VL)および/もしくは重鎖可変領域(VH)またはその両方と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%の配列同一性を有する配列を含むか、このような配列同一性を有する配列であり、標的ウイルスエピトープに特異的に結合する本明細書に開示された基準となる抗体またはその断片もしくは誘導体と比べて、各CDRに変化が含まれていないか、多くても1個、2個または3個の変化しか含まれていない。
【0090】
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾を抗体のFc領域に導入して、Fc領域バリアントを作製してもよい。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3またはヒトIgG4のFc領域)を含んでいてもよい。
【0091】
特定の実施形態において、バリアントは、投与に際して利点が得られるように参照配列から改変されている。代表的な投与上の利点としては、(1)加水分解に対する感受性の低下、(2)酸化に対する感受性の低下、(3)タンパク質複合体を形成する結合親和性の改変、(4)結合親和性の改変、(5)免疫原性の低下;および/または(6)半減期の延長が挙げられる。以下の開示では、これらの改変の抗体への適用について述べているが、別の特定の結合断片フォーマット(例えば、scFvや二重特異性抗体)に適用可能な場合、これらの別のフォーマットにもこれらの改変を適用することができる。
【0092】
特定の実施形態において、Fc受容体に対する親和性を増加させるために、抗体に変異を導入することができる。Fc受容体に対する親和性を増加させる代表的な変異として、G236A/S239D/A330L/I332E(GASDALIE)が挙げられる(Smith et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 109(16), 6181-6186, 2012)。特定の実施形態において、抗体バリアントとして、ADCCを向上させる1つ以上のアミノ酸置換を有するFc領域が挙げられ、ADCCを向上させる1つ以上のアミノ酸置換として、例えば、Fc領域の298番目、333番目および/または334番目の置換(EUナンバリングによる残基位置)が挙げられる。特定の実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号およびWO99/51642ならびにIdusogie et al., J. Immunol. 164: 4178-4184, 2000に記載されているように、Fc領域を改変することによって、C1qへの結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を改変することができる。
【0093】
特定の実施形態において、例えば、抗体上の1つ以上の残基をシステイン残基で置換した「thioMAb」などの、システインを組み込んだ抗体の作製が望ましい場合がある。特定の実施形態において、このような残基の置換は、抗体のアクセス可能な部位に導入される。これらの部位の残基をシステインで置換することによって、反応性を持つチオール基を、抗体上のアクセス可能な部位に配置させることができ、このチオール基を利用して、抗体を別の部分に結合させてもよく、例えば、後述するように、薬物部分またはリンカー-薬物部分と抗体を結合させて免疫複合体を作製してもよい。特定の実施形態では、重鎖Fc領域の5400番目の残基(EUナンバリング)を選択する。システインを組み込んだ抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号の記載に従って作製してもよい。
【0094】
さらに、Fc領域に(直接または間接的に)連結されたフコースを欠失する糖鎖構造を有する抗体バリアントを提供する。例えば、このような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であってもよい。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されているように、MALDI-TOF質量分析による測定により、Asn297に連結されたすべての糖鎖構造(例えば、複合体、ハイブリッド構造および高マンノース構造)の合計量に対して、Asn297に連結されている糖鎖内のフコースの平均量が占める割合を計算することによって測定することができる。Asn297は、Fc領域の297番目のアスパラギン残基(EUナンバリングによるFc領域の残基位置)を指すが、Asn297は、抗体の稀な変化によって、297番目から±3残基上流または下流、すなわち、294番目~300番目の間に位置していてもよい。このようなフコシル化バリアントは、ADCC活性が向上していてもよい。例えば、WO2000/61739;WO2001/29246;WO2002/031140;米国特許公開第2002/0164328号;WO2003/085119;WO2003/084570;米国特許公開第2003/0115614号;米国特許公開第2003/0157108号;米国特許公開第2004/0093621号;米国特許公開第2004/0110704号;米国特許公開第2004/0132140号;米国特許公開第2004/0110282号;米国特許公開第2004/0109865号;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004);およびYamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)を参照されたい。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例として、タンパク質のフコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545, 1986)、およびα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8)ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87: 614, 2004; Kanda et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688, 2006;およびWO2003/085107を参照されたい)が挙げられる。
【0095】
特定の実施形態において、改変抗体として、1つ以上のアミノ酸が非アミノ酸成分と置換された抗体、官能基がアミノ酸に結合された抗体、またはアミノ酸とは関連しない官能基がアミノ酸に結合された抗体が挙げられる。修飾アミノ酸は、例えば、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合したアミノ酸、または有機誘導体化因子に結合したアミノ酸であってもよい。例えば、遺伝子組換え製造過程において翻訳と同時または翻訳後にアミノ酸を修飾することができ(例えば、哺乳動物細胞において発現させる際の、N-X-S/TモチーフにおけるN-結合型グリコシル化)、あるいは合成方法によりアミノ酸を修飾することができる。修飾されたアミノ酸は、配列内または配列の末端に存在していてもよい。修飾には、亜硝酸化コンストラクトも含まれる。
【0096】
特定の実施形態において、バリアントは、参照配列のアミノ酸配列と比べてグリコシル化部位の数および/または種類が改変されたグリコシル化バリアントを含む。特定の実施形態において、グリコシル化バリアントは、参照配列よりもN-結合型グリコシル化部位の数が多いまたは少ない。N-結合型グリコシル化部位は、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrで示される配列を特徴とし、Xで示すアミノ酸残基は、プロリン以外のどのアミノ酸残基であってもよい。この配列を得るためのアミノ酸残基の置換によって、N-結合型糖鎖を付加することができる新たな部位が得られる。別の方法として、置換によりこの配列を除去して、既存のN-結合型糖鎖を除去することができる。また、1つ以上の(例えば天然の)N-結合型グリコシル化部位が除去され、かつ1つ以上の新たなN-結合型部位が形成されたN-結合型糖鎖を再配置することもできる。別の抗体バリアントとして、参照配列と比較して、1つ以上のシステイン残基が除去されたシステインバリアント、または参照配列と比較して、1つ以上のシステイン残基が別のアミノ酸(例えばセリン)で置換されたシステインバリアントが挙げられる。このようなシステインバリアントは、不溶性封入体を単離した後などに、生物学的に活性な構造に抗体をリフォールディングする必要がある場合に有用である場合がある。このようなシステインバリアントに含まれるシステイン残基の数は、通常、参照配列よりも少なく、結合パートナーがないシステインによる相互作用を最小限に抑えるため、システイン残基の数は、通常、偶数である。
【0097】
PEG化とは、具体的には、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖が、タンパク質などの別の分子に共有結合で結合するプロセスである。タンパク質をPEG化する方法は、文献においていくつか報告されている。例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)-PEGは、リシン残基の遊離アミン基とタンパク質のN末端のPEG化に使用されており;アルデヒド基を有するPEGは、還元剤の存在下でのタンパク質のアミノ末端のPEG化に使用されており;マレイミド官能基を有するPEGは、タンパク質のシステイン残基の遊離チオール基の選択的なPEG化に使用されており;アセチルフェニルアラニン残基の部位特異的なPEG化も実施可能である。
【0098】
タンパク質へのPEGの共有結合は、生体内でのタンパク質の半減期の延長に有用な方法であることが証明されている(Abuchowski, A. et al., Cancer Biochem. Biophys.,1984, 7:175-186; Hershfield, M. S. et al., N. Engl. J. Medicine, 1987, 316:589-596; およびMeyers, F. J. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 49:307-313, 1991)。タンパク質へのPEGの結合は、酵素による分解から分子を保護するだけでなく、生体内からのクリアランス率を低下させる。タンパク質に結合されたPEGの大きさは、このタンパク質の半減期に大きな影響を与える。PEG化によるクリアランスの低下は、通常、タンパク質に連結させたPEG基の数には関係なく、PEG化したタンパク質の総分子量に応じて変化する。通常、PEGが大型であるほど、PEGを付加したタンパク質のインビボでの半減期が長くなる。さらに、PEG化によりタンパク質の凝集を減少させることができ(Suzuki et al., Biochem. Bioph. Acta 788:248, 1984)、タンパク質の免疫原性を変化させることができ(Abuchowski et al., J. Biol. Chem. 252: 3582, 1977)、例えば、PCT公開特許第WO92/16221に記載されているように、タンパク質の溶解性を増加させることができる。
【0099】
所望の血中半減期を有するタンパク質の製造に適した様々なサイズのPEGを市販品として入手可能である(Nektar Advanced PEGylation Catalog 2005-2006;およびNOF DDSカタログVer 7.1)。様々な種類の活性型PEGが使用されており、例えば、mPEGスクシンイミジルコハク酸エステル、mPEGスクシンイミジル炭酸エステルおよびPEGアルデヒド(例えばmPEG-プロピオンアルデヒド)が使用されている。
【0100】
特定の実施形態において、インビボでの抗体の半減期を延長することができるアミノ酸変化を含むFcポリペプチドに抗体を融合または連結させてもよく、この改変されたFcポリペプチドを含む抗体は、このアミノ酸変化を含まないこと以外は同じFcポリペプチドを含む類似の抗体の半減期と比べてインビボでの半減期が延長している。
【0101】
特定の実施形態において、Fcポリペプチドのアミノ酸変化として、M252Y、S254T、T256E、M428Lおよび/またはN434Sが挙げられ、これらのアミノ酸変化は、同時に用いることができ、別々に用いることもでき、任意の組み合わせで用いることもできる。例えば、IgGのFc領域に「YTE」変異(M252Y、S254TおよびT256E)を導入することによって、非ヒト霊長類に投与した際の半減期を、3週間から3ヶ月以上へと、4倍の長さに延長することができ、呼吸器ウイルスが蔓延する季節全体にわたり1回の投与だけでその効果を持続させることができる。YTE変異に関するさらに詳しい情報は、Acqua et al., J. Immunol. 169(9) 5171-5180 (2002)に記載されている。M428L/N434Sのペアは、血清中での抗体の半減期を延長させることができる変異であり、これについては、Zalevsky et al., Nature Biotechnology 28, 157-159, 2010において述べられている。有用である可能性のあるその他の変化は、米国特許第7,083,784号、米国特許第7,670,600号、米国特許公開第2010/0234575号、PCT米国特許公開第2012/070146号およびZwolak, Scientific Reports 7: 15521, 2017において述べられている。特定の実施形態において、Fcポリペプチドにおいて、250番目、251番目、252番目、259番目、307番目、308番目、332番目、378番目、380番目、428番目、430番目、434番目または436番目のアミノ酸位置を置換することによって、半減期を延長することができると考えられる。これらの各変化またはこれらの変化の組み合わせを利用して、本明細書に記載の二重特異性抗体の半減期を延長することができる。
【0102】
特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体は、Pechmanら (Am J Physiol 294: R1234-R1239 (2008))によって報告されているDaedalus発現系を用いて形成される。Daedalus発現系では、最小限の遍在性クロマチンオープニングエレメントを形質導入ベクターに導入することによって、ゲノムのサイレンシングを抑制または阻止し、デシグラムレベルでの発現を安定に維持する。Daedalus発現系は、293 Freestyle株などの無血清培地に適したヒト浮遊細胞株の分泌経路を利用することによって、その他のタンパク質作製方法での労力や時間を要する工程を省くことができる。最適化されたレンチウイルスベクターを用いることによって、従来の小規模培養(100ml)で、正しくフォールディングされ、翻訳後修飾され、エンドトキシンフリーで、最大で70kDaの大きさのタンパク質を20~100mg/lの収率で得ることができる。このような収率であると、タンパク質の大半を1回のサイズ排除クロマトグラフィー工程で精製することができ、構造的用途、生物物理学的用途または治療用途に直ちに適切に使用することができる(Bandaranayake et al., Nucleic Acids Res., 39(21) 2011)。場合によっては、本明細書に記載の方法に従った製造の純度により、クロマトグラフィーによる精製が必要とされない場合がある。
【0103】
本発明の抗ウイルス二重特異性抗体は、少なくとも2つのエピトープに結合し、これらのエピトープの少なくとも1つは、HPIV3、HPIV1、RSVまたはHMPVに存在する。本発明の抗ウイルス三重特異性抗体は、少なくとも3つのエピトープに結合し、これらのエピトープの少なくとも1つは、HPIV3、HPIV1、RSV、HMPVなどに存在する。二重特異性抗体は全長抗体または抗体断片(例えばF(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。例えば、WO1996/016673では、二重特異性抗ErbB2/抗FcγRIII抗体について述べられており;米国特許第5,837,234号では、二重特異性抗ErbB2/抗FcγRI抗体について述べられており;WO1998/002463では、二重特異性抗ErbB2/Fcα抗体について述べられており;米国特許公開第5,821,337号では、二重特異性抗ErbB2/抗CD3抗体について述べられている。特定の実施形態において、二重特異性抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))抗体の形態であってもよい。
【0104】
いくつかの別の代表的な二重特異性抗体は、2つの重鎖(それぞれの重鎖は、3つの重鎖CDRと、これに続いて(N末端からC末端の方向に)CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメインを有する)と、各重鎖との結合を介して抗原結合特異性を付与する2つの免疫グロブリン軽鎖とを有する。しかし、本明細書で述べたように、別の構成も想定されており、例えば、1つ以上の軽鎖がそれぞれの重鎖と結合しているが、抗原結合特異性には寄与しない(もしくは最小限しか寄与しない)二重特異性抗体;重鎖の抗原結合領域が結合する1つ以上のエピトープに1つ以上の軽鎖が結合することができる二重特異性抗体;または1つ以上の軽鎖がそれぞれの重鎖と結合することができ、1つまたは2つのエピトープに重鎖の一方または両方を結合させることができる二重特異性抗体が挙げられる。
【0105】
全長抗体ではなく、scFv二量体またはダイアボディを用いてもよい。ダイアボディおよびscFvは、Fc領域を含まずに可変ドメインのみで構築することができ(通常、元の抗体の軽鎖と重鎖に由来する可変ドメイン部分を含み)、抗イディオタイプ反応による影響を弱めることができる。別の形態の二重特異性抗体として、Trauneckerら(Embo Journal, 10, 3655-3659, 1991)により報告されている一本鎖抗体の「Janusin」が挙げられる。
【0106】
半減期が延長された二重特異性抗体は、例えば、米国特許第8,921,528号および米国特許公開第2014/0308285号に記載されている。
【0107】
二重特異性抗体の作製方法は当技術分野で公知である。例えば、全長二重特異性抗体の従来の作製方法は、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖と軽鎖のペアを共発現させることに基づいている(例えば、Millstein et al. Nature 305:37-39, 1983を参照されたい)。例えば、類似の手法は、WO1993/008829、Traunecker et al., EMBO J. 10:3655-3659, 1991およびHolliger & Winter, Current Opinion Biotechnol. 4, 446-449 (1993)に開示されている。
【0108】
特定の実施形態において、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。例えば、Brennanら(Science 229: 81, 1985)により報告されている操作では、タンパク質分解により全長抗体を切断することによってF(ab’)2断片を得る。次に、F(ab’)2断片を、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元することによって隣接するジチオールを安定化させ、分子間でジスルフィド結合が形成されることを防ぐ。次に、得られたFab’断片をチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換する。次に、Fab’-TNB誘導体の一方をメルカプトエチルアミンで還元してFab’-チオールに変換し、もう一方のFab’-TNB誘導体と等モル量で混合して、二重特異性抗体を形成させる。
【0109】
特定の実施形態において、二重特異性抗体は、knobs-into-holes技術を用いて調製することができる。knobs-into-holes技術とは、2種の抗体重鎖の各CH3ドメインに異なる変異を導入することによって、各CH3ドメインの接触界面を改変して、これらの抗体重鎖同士を強制的にペアリングさせる技術を指す。一方の重鎖の嵩高いアミノ酸を短い側鎖のアミノ酸で置換して「hole」を形成する。もう一方の重鎖のCH3ドメインには、大きな側鎖のアミノ酸を導入して「knob」を形成する。これら2つの重鎖(および2つの同一の軽鎖(両方の重鎖に適切である必要がある))を共発現させることによって、ホモ二量体(「hole-hole」または「knob-knob」)よりもヘテロ二量体(「knob-hole」)が高収率で形成される(Ridgway, J. B., Protein Eng. 9 (1996) 617-621;およびWO96/027011)。
【0110】
特定の実施形態において、「knob」および/または「hole」は、ポリペプチドに元々存在するものであってもよく、または(例えば、そのポリペプチドをコードする核酸を改変することによって)合成的に導入してもよい。knobおよび/またはholeの合成的な導入は、ポリペプチドの接触界面に存在する元のアミノ酸残基(または例えば、炭化水素基などのその他の非アミノ酸基)をコードする核酸を、少なくとも1つの挿入アミノ酸残基をコードするDNAで置換することによって行われる。接触界面は、第1の重鎖定常領域と第2の重鎖定常領域の間で接触している1つ以上のアミノ酸残基(またはその他の非アミノ酸基)を指す。holeを形成するための挿入残基としては、元のアミノ酸残基よりも側鎖の体積が小さいアミノ酸が好ましく、例えば、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)、グリシン(G)などが好ましい。knobを形成するための挿入残基としては、元のアミノ酸残基よりも側鎖の体積が大きいアミノ酸が好ましく、例えば、チロシン(Y)、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)などが好ましい。また、ファージディスプレイ法と、ヘテロ二量体を安定化するジスルフィド架橋の導入を利用して、2つのCH3ドメインの相互作用面をリモデリングすることによって、ヘテロ二量体の割合を増加させることもできる(Merchant A. M, et al., Nature Biotech 16 (1998) 677-681; Atwell, S., et al., J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)。
【0111】
特定の実施形態において、本明細書に開示された結合断片を用いて、第2のウイルスに結合する二重特異性抗体コンストラクト、三重特異性抗体コンストラクトまたは四重特異性抗体コンストラクト(またはそれ以上の種類の特異性を有する特異性抗体コンストラクト)を作製することができる。本明細書において、第2のウイルスは、HPIV3、HPIV1、RSV、HMPV以外のウイルスである。特定の実施形態において、第2のウイルスは呼吸器ウイルスである。特定の実施形態において、第2の呼吸器ウイルスは、アデノウイルス、ボカウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスおよび/またはライノウイルスから選択される。特定の実施形態において、呼吸器ウイルスとして、ヒトアデノウイルス、ヒトボカウイルス(HBoV)、ヒトコロナウイルス(HCoV)(SARS-CoV、MERS-CoV、コロナウイルス229E、コロナウイルスOC43、コロナウイルスNL63、コロナウイルスHKU1、コロナウイルスNL、コロナウイルスNHを含む)、インフルエンザウイルス(A型およびB型)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV2もしくはHPIV4)および/またはヒトライノウイルス(HRVA~HRVC)が挙げられる。
【0112】
第2のウイルスに結合する組換えフォーマットに使用することができる代表的な結合断片は、アデノウイルスに結合する8C4、5Hx-l、5Hx-2、5Hx-3、5Hx-4、5Hx-5、5.100K-1、5PB-1、5Fb-lおよび1E11;コクサッキーウイルスおよびアデノウイルスに結合するEPR23305-44;SARS-CoVおよびSARS-CoV-2に結合する47D11抗体;SARS-CoV-2に結合するCR3022;MERS-CoVに結合するCDC2-A2、G2、5F9、FIB-H1およびJC57-13;H1N1インフルエンザウイルスに結合する32D6;H1インフルエンザウイルスに結合するCH65;A型インフルエンザウイルスに結合するCR9114、MAb 22/1、MAb70/l、MAb 110/1、MAb 264/2、MAb W18/1、MAb 14/3、MAb 24/4、MAb 47/8、MAb 198/2、MAb 215/2、H2/6A5、H3/4C4、H2/6C4、H2/4B3、H9/B20、H2/4B1、CA6261、6F12、CR9114およびPEG-1;B型インフルエンザウイルスに結合するCR8033、CR8071、113/2、124/4、128/2、134/1、146/1、152/2、160/1、162/1、195/3、206/2、238/4および280/2;HPIV2に結合するPAR2(boca231/9F);またはライノウイルスに結合するTCN-711を含む。
【0113】
MERS-CoVなどの第2のウイルスに結合する組換えフォーマットに使用することができる代表的な結合断片は、EFTFNTYG(配列番号57)で示されるアミノ酸配列、ISYDGTKK(配列番号58)で示されるアミノ酸配列およびARSGDSDAFDI(配列番号59)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する重鎖、ならびに/またはELGDKF(配列番号60)で示されるアミノ酸配列、QDSで示されるアミノ酸配列およびQAWDSNSYV(配列番号61)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する軽鎖を含む。
【0114】
MERS-CoVなどの第2のウイルスに結合する組換えフォーマットに使用することができる代表的な結合断片は、GGTFGSYA(配列番号62)で示されるアミノ酸配列、IDAANGNT(配列番号63)で示されるアミノ酸配列およびARDRWMTTRAFDI(配列番号64)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する重鎖、ならびに/またはSSNIGSNY(配列番号65)で示されるアミノ酸配列、RNNで示されるアミノ酸配列およびAAWDDSLRGPV(配列番号66)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する軽鎖を含む。
【0115】
MERS-CoVなどの第2のウイルスに結合する組換えフォーマットに使用することができる代表的な結合断片は、GGTFSSYA(配列番号135)で示されるアミノ酸配列、IIPIFGKA(配列番号136)で示されるアミノ酸配列およびARDQGISANFKDAFDI(配列番号137)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する重鎖、ならびに/またはESVGSN(配列番号138)で示されるアミノ酸配列、GASで示されるアミノ酸配列およびQQYNNWPLT(配列番号139)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する軽鎖を含む。
【0116】
MERS-CoVなどの第2のウイルスに結合する組換えフォーマットに使用することができる代表的な結合断片は、GGTFSSYA(配列番号135)で示されるアミノ酸配列、IIPIFGTA(配列番号141)で示されるアミノ酸配列およびARVGYCSSTSCHIGAFDI(配列番号142)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する重鎖、ならびに/またはQSVSSS(配列番号143)で示されるアミノ酸配列、DSSで示されるアミノ酸配列およびQQYSSSPYT(配列番号144)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する軽鎖を含む。
【0117】
MERS-CoVなどの第2のウイルスに結合する組換えフォーマットに使用することができる代表的な結合断片は、GGTFSSYA(配列番号135)で示されるアミノ酸配列、IIPIFGTA(配列番号141)で示されるアミノ酸配列およびARASYCSTTSCASGAFDI(配列番号147)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する重鎖、ならびに/またはQSVLYSSNNNY(配列番号148)で示されるアミノ酸配列、WASで示されるアミノ酸配列およびQQYYSVPFT(配列番号149)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する軽鎖を含む。
【0118】
MERS-CoVなどの第2のウイルスに結合する組換えフォーマットに使用することができる代表的な結合断片は、GYTFNVYA(配列番号150)で示されるアミノ酸配列、IIPILGIA(配列番号151)で示されるアミノ酸配列およびARDYYGSGARGFDY(配列番号152)をそれぞれ含む3つのCDRを有する重鎖、ならびに/またはSNNVGNQG(配列番号153)で示されるアミノ酸配列、TNNで示されるアミノ酸配列およびASWDSSLSVWV(配列番号154)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する軽鎖を含む。
【0119】
MERS-CoVなどの第2のウイルスに結合する組換えフォーマットに使用することができる代表的な結合断片は、GGTFSSYA(配列番号135)で示されるアミノ酸配列、IIPIFGIA(配列番号156)で示されるアミノ酸配列およびASSNYYGSGSYYPRSAFDI(配列番号157)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する重鎖、ならびに/またはQSISND(配列番号158)で示されるアミノ酸配列、GASで示されるアミノ酸配列およびQQYGVSPLT(配列番号159)で示されるアミノ酸配列をそれぞれ含む3つのCDRを有する軽鎖を含む。さらなる例は、米国特許第9,718,872号に記載されている。
【0120】
SARS-CoVなどの第2のウイルスに結合する組換えフォーマットにおいて使用することができる代表的な重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYGISWVRQAPGQGLEWMGWISAYNGNTNYAQKLQGRVTMTTDTSTNTAYMELRSLRSDDTAVYYCAVGRYLDYWGQGTLVTV(配列番号160)を含む重鎖可変領域配列と、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQYNSYPLTFGGGTKVEIK(配列番号161)を含む軽鎖可変領域配列とを含む。
【0121】
SARS-CoVなどの第2のウイルスに結合する組換えフォーマットにおいて使用することができる代表的な重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYGISWVRQAPGQGLEWMGWISAYNGNTNYAQKLQGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCAVGRYLDYWGQGTLVTVSS(配列番号162)を含む重鎖可変領域配列と、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQYNSYPLTFGGGTKVEIK(配列番号161)を含む軽鎖可変領域配列とを含む。
【0122】
SARS-CoVなどの第2のウイルスに結合する組換えフォーマットにおいて使用することができる代表的な重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、QVHLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYVHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYFCAGGRYLDYWGQGTLVTVSS(配列番号164)を含む重鎖可変領域配列と、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKSGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQYNSYPITFGQGTRLEIK(配列番号165)を含む軽鎖可変領域配列とを含む。さらなる例は、米国特許第7,728,110号に記載されている。
【0123】
特定の実施形態において、本明細書に開示された結合断片を用いて、免疫細胞エンゲージャーとして機能する二重特異性抗体コンストラクトまたは三重特異性抗体コンストラクト(またはそれ以上の種類の特異性を有する特異性抗体コンストラクト)を作製することができる。免疫細胞エンゲージャーとして機能する多重特異性抗体コンストラクトの例として、本明細書に開示された抗体が結合するHPIV3、HPIV1、RSVまたはHMPVのウイルスエピトープを提示するウイルス感染細胞に免疫細胞を近づけることを目標として、HPIV3、HPIV1、RSVまたはHMPV上のウイルスエピトープと、免疫細胞(例えばT細胞やNK細胞)を活性化するエピトープとに結合する多重特異性抗体コンストラクトが挙げられる。例えば、米国特許公開2008/0145362号を参照されたい。本明細書において、このようなコンストラクトを、免疫活性化多重特異性コンストラクト(immune-activating multi-specifics)あるいはI-AMSと呼ぶ。BiTE(登録商標)(Amgen、カリフォルニア州サウザンドオークス)は、I-AMSの一形態である。本開示において、I-AMSによる局所的な活性化の標的となりうる免疫細胞として、例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞およびマクロファージが挙げられ、これらの細胞については詳細に後述する。
【0124】
T細胞の活性化は、2種類のシグナルによって媒介されうる。1つ目のシグナルは、抗原依存性一次活性化を開始して、T細胞受容体様シグナルを提供するシグナル(一次細胞内シグナル伝達配列)であり、もう一方は、抗原非依存性に二次シグナルまたは共刺激シグナルを提供するシグナル(二次細胞内シグナル伝達配列)である。本明細書に開示されたI-AMSは、このI-AMSの結合によりT細胞の活性化を誘導することができるT細胞活性化エピトープを標的とすることができる。このようなT細胞活性化エピトープの例として、T細胞マーカー上のエピトープが挙げられ、このT細胞マーカーとして、CD2、CD3、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD83、4-1BB(CD 137)、OX40、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、LIGHT、NKG2CおよびB7-H3が挙げられる。
【0125】
特定の実施形態において、CD3結合断片(例えばscFv)は、OKT3抗体(ブリナツモマブにおいて利用されているものと同じ抗体)に由来するものである。OKT3抗体は、米国特許第5,929,212号に詳細に述べられている。OKT3抗体は、SASSSVSYMN(配列番号67)を含むCDRL1配列と、RWIYDTSKLAS(配列番号68)を含むCDRL2配列と、QQWSSNPFT(配列番号69)を含むCDRL3配列とを含む軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態において、CD3 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、KASGYTFTRYTMH(配列番号70)を含むCDRH1配列と、INPSRGYTNYNQKFKD(配列番号71)を含むCDRH2配列と、YYDDHYCLDY(配列番号72)を含むCDRH3配列とを含む重鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。
【0126】
QVQLQQSGAELARPGASVKMSCKASGYTFTRYTMHWVKQRPGQGLEWIGYINPSRGYTNYNQKFKDKATLTTDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARYYDDHYCLDYWGQGTTLTVSSSGGGGSGGGGSGGGGSQIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMNWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPAHFRGSGSGTSYSLTISGMEAEDAATYYCQQWSSNPFTFGSGTKLEINR(配列番号73)で示される配列は、OKT3に由来するscFvであり、CD3結合能を保持している。この配列をCD3結合断片として使用してもよい。
【0127】
特定の実施形態において、CD3 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、QSLVHNNGNTY(配列番号74)を含むCDRL1配列と、KVSを含むCDRL2配列と、GQGTQYPFT(配列番号75)を含むCDRL3配列とを含む軽鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。特定の実施形態において、CD3 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、GFTFTKAW(配列番号76)を含むCDRH1配列と、IKDKSNSYAT(配列番号77)を含むCDRH2配列と、RGVYYALSPFDY(配列番号78)を含むCDRH3配列とを含む重鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。これらのCDR配列は、20G6-F3抗体のCDR配列を構成する。
【0128】
特定の実施形態において、CD3 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、QSLVHDNGNTY(配列番号79)を含むCDRL1配列と、KVSを含むCDRL2配列と、GQGTQYPFT(配列番号75)を含むCDRL3配列とを含む軽鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。特定の実施形態において、CD3 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、GFTFSNAW(配列番号80)を含むCDRH1配列と、IKARSNNYAT(配列番号81)を含むCDRH2配列と、RGTYYASKPFDY(配列番号82)を含むCDRH3配列とを含む重鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。これらのCDR配列は、4B4-D7抗体のCDR配列を構成する。
【0129】
特定の実施形態において、CD3 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、QSLEHNNGNTY(配列番号83)を含むCDRL1配列と、KVSを含むCDRL2配列(配列表には記載せず)と、GQGTQYPFT(配列番号75)を含むCDRL3配列とを含む軽鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。特定の実施形態において、CD3 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、GFTFSNAW(配列番号80)を含むCDRH1配列と、IKDKSNNYAT(配列番号84)を含むCDRH2配列と、RYVHYGIGYAMDA(配列番号85)を含むCDRH3配列とを含む重鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。これらのCDR配列は、4E7-C9抗体のCDR配列を構成する。
【0130】
特定の実施形態において、CD3 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、QSLVHTNGNTY(配列番号86)を含むCDRL1配列と、KVSを含むCDRL2配列と、GQGTHYPFT(配列番号87)を含むCDRL3配列とを含む軽鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。特定の実施形態において、CD3 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、GFTFTNAW(配列番号88)を含むCDRH1配列と、KDKSNNYAT(配列番号89)を含むCDRH2配列と、RYVHYRFAYALDA(配列番号90)を含むCDRH3配列とを含む重鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。これらのCDR配列は、18F5-H10抗体のCDR配列を構成する。
【0131】
抗CD3抗体、結合断片およびCDRのさらなる例は、WO2016/116626に記載されている。TR66を使用することもできる。
【0132】
CD28は、ヒトの末梢T細胞の80%に存在する表面糖タンパク質であり、休止T細胞と活性化T細胞の両方に存在する。CD28は、B7-1(CD80)とB7-2(CD86)に結合し、公知の共刺激分子の中で最も強力である(June et al., Immunol. Today 15:321, 1994; Linsley et al., Ann. Rev. Immunol. 11:191, 1993)。特定の実施形態において、CD28結合断片(例えばscFv)はCD80、CD86または9D7抗体に由来するものである。CD28に結合する別の抗体として、9.3、KOLT-2、15E8、248.23.2およびEX5.3D10が挙げられる。さらに、細胞分裂促進抗体(5.11A1)のFab断片と複合体化したヒトCD28の結晶構造である1YJDがある。
【0133】
特定の実施形態において、CD28結合断片はTGN1412に由来するものである。特定の実施形態において、TGN1412の重鎖可変領域は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYIHWVRQAPGQGLEWIGCIYPGNVNTNYNEKFKDRATLTVDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYFCTRSHYGLDWNFDVWGQGTTVTVSS(配列番号91)を含み、TGN1412の軽鎖可変領域は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCHASQNIYVWLNWYQQKPGKAPKLLIYKASNLHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGQTYPYTFGGGTKVEIK(配列番号92)を含む。
【0134】
特定の実施形態において、CD28結合断片は、HASQNIYVWLN(配列番号93)を含むCDRL1配列、KASNLHT(配列番号94)を含むCDRL2配列、およびQQGQTYPYT(配列番号95)を含むCDRL3配列を含む軽鎖可変領域と、GYTFTSYYIH(配列番号96)を含むCDRH1配列、CIYPGNVNTNYNEK(配列番号97)を含むCDRH2配列、およびSHYGLDWNFDV(配列番号98)を含むCDRH3配列を含む重鎖可変領域と含む。
【0135】
特定の実施形態において、CD28結合断片は、HASQNIYVWLN(配列番号93)を含むCDRL1配列、KASNLHT(配列番号94)を含むCDRL2配列、およびQQGQTYPYT(配列番号95)を含むCDRL3配列を含む軽鎖可変領域と、SYYIH(配列番号99)を含むCDRH1配列、CIYPGNVNTNYNEKFKD(配列番号100)を含むCDRH2配列、およびSHYGLDWNFDV(配列番号98)を含むCDRH3配列を含む重鎖可変領域と含む。
【0136】
活性化T細胞は4-1BB(CD137)を発現する。特定の実施形態において、4-1BB結合断片は、RASQSVS(配列番号101)を含むCDRL1配列、ASNRAT(配列番号102)を含むCDRL2配列、およびQRSNWPPALT(配列番号103)を含むCDRL3配列を含む軽鎖可変領域と、YYWS(配列番号104)を含むCDRH1配列、INHを含むCDRH2配列、およびYGPGNYDWYFDL(配列番号105)を含むCDRH3配列を含む重鎖可変領域と含む。
【0137】
特定の実施形態において、4-1BB結合断片は、SGDNIGDQYAH(配列番号106)を含むCDRL1配列、QDKNRPS(配列番号107)を含むCDRL2配列、およびATYTGFGSLAV(配列番号108)を含むCDRL3配列を含む軽鎖可変領域と、GYSFSTYWIS(配列番号109)を含むCDRH1配列、KIYPGDSYTNYSPS(配列番号110)を含むCDRH2配列、およびGYGIFDY(配列番号111)を含むCDRH3配列を含む重鎖可変領域と含む。
【0138】
本明細書に開示される特定の実施形態は、CD8上のエピトープに結合する結合断片を含む。特定の実施形態において、CD8結合断片(例えばscFv)は、OKT8抗体に由来するものである。例えば、特定の実施形態において、CD8 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、RTSRSISQYLA(配列番号112)を含むCDRL1配列と、SGSTLQS(配列番号113)を含むCDRL2配列と、QQHNENPLT(配列番号114)を含むCDRL3配列とを含む軽鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。特定の実施形態において、CD8 T細胞を活性化するエピトープ結合断片は、GFNIKD(配列番号115)を含むCDRH1配列と、RIDPANDNT(配列番号116)を含むCDRH2配列と、GYGYYVFDH(配列番号117)を含むCDRH3配列とを含む重鎖可変領域を含むヒト結合断片またはヒト化結合断片(例えばscFv)である。これらのCDR配列は、OKT8抗体のCDR配列を構成する。
【0139】
特定の実施形態において、ナチュラルキラー細胞(NK細胞、K細胞およびキラー細胞としても知られている)は、I-AMSによる局所的な活性化の標的となる。NK細胞は、細胞膜を破壊する顆粒を放出することによってアポトーシスまたは細胞溶解を誘導することができ、サイトカインを分泌してその他の免疫細胞を動員することができる。
【0140】
NK細胞の表面に発現される活性化作用を有するタンパク質の例として、NKG2D、CD8、CD16、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR3DS1、NKG2C、NKG2E、NKG2D、および天然の細胞傷害性受容体(NCR)ファミリーのいくつかメンバーが挙げられる。リガンドの結合によりNK細胞を活性化することができるNCRの例として、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80およびDNAM-1が挙げられる。
【0141】
NK細胞受容体に結合して、NK細胞の活性化を誘導および/または増強する市販の抗体の例として、NKG2Dに結合してこれを活性化する5C6および1D11(BioLegend(登録商標)(カリフォルニア州サンディエゴ)から入手可能);KIR2DL4に結合してこれを活性化するmAb 33(BioLegendから入手可能);NKp44に結合してこれを活性化するP44-8(BioLegendから入手可能);CD8に結合してこれを活性化するSK1;ならびにCD16に結合してこれを活性化する3G8が挙げられる。
【0142】
特定の実施形態において、I-AMSは、NK細胞抑制性受容体に結合してこれを遮断することにより、NK細胞の活性化を増強することができる。I-AMSの結合により遮断することが可能なNK細胞抑制性受容体の例として、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR3DL1、NKG2AおよびKLRG1が挙げられる。特定の実施形態において、NK細胞抑制性受容体であるKIR2DL1およびKIR2DL2/3に結合してこれらを遮断する結合断片は、EIVLTQSPVTLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWMYTFGQGTKLEIKRT(配列番号118)で示される配列からなる軽鎖可変領域と、QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSFYAISWVRQAPGQGLEWMGGFIPIFGAANYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSDDTAVYYCARIPSGSYYYDYDMDVWGQGTTVTVSS(配列番号119)で示される配列からなる重鎖可変領域とを含む。NK細胞を活性化する抗体のさらなる例は、WO/2005/0003172および米国特許第9,415,104号に記載されている。
【0143】
特定の実施形態において、I-AMSによる局所的な活性化の標的はマクロファージである。マクロファージは、食作用として知られているプロセスにより、細胞、細胞デブリおよび/または夾雑物を貪食してこれらを消化することができる白血球の1種である。
【0144】
I-AMSは、マクロファージの表面に発現されるタンパク質に結合するように設計することができる。マクロファージ(およびその前駆細胞である単球)の表面に発現される活性化作用を有するタンパク質の例として、CD11b、CD11c、CD64、CD68、CD119、CD163、CD206、CD209、F4/80、IFGR2、Toll様受容体(TLR)1~9、IL-4RαおよびMARCOが挙げられる。マクロファージの表面に発現されるタンパク質に結合する市販の抗体として、CD11bに結合してこれを活性化するM1/70(BioLegendから入手可能);CD68に結合してこれを活性化するKP1(ABCAM(登録商標)(英国ケンブリッジ)から入手可能);およびCD163に結合してこれを活性化するab87099(ABCAMから入手可能)が挙げられる。
【0145】
特定の実施形態において、I-AMSは病原体認識受容体(PRR)を標的とすることができる。PRRは、危険シグナル(danger signal)を認識して、自然免疫応答を活性化および/または増強するタンパク質またはタンパク質複合体である。PRRの例として、グラム陰性細菌を認識するTLR4/MD-2複合体;真菌およびその他の病原体のマンノース部分を認識するデクチン1およびデクチン2;グラム陽性細菌を認識するTLR2/TLR6ヘテロ二量体またはTLR2/TLR1ヘテロ二量体;フラジェリンを認識するTLR5;およびDNAのCpGモチーフを認識するTLR9(CD289)が挙げられる。特定の実施形態において、I-AMSは、TLR4/MD-2、デクチン1、デクチン2、TRL2/TLR6、TLR2/TLR1、TLR5および/またはTLR9に結合してこれらを活性化することができる。
【0146】
特定の実施形態において、I-AMSは補体系を標的とすることができる。補体系は、抗原に結合した抗体によって誘導される免疫経路であり、補体タンパク質のシグナル伝達に関与して、抗体で覆われた抗原の免疫認識と排除を担う。
【0147】
本明細書に記載のI-AMSおよびその他の組換えフォーマットに含まれる結合断片は、リンカーを介して連結されていてもよい。リンカーは、I-AMSに含まれる結合断片同士の立体構造的な動きの柔軟性および空間を提供することができるアミノ酸配列である。適切なリンカーであれば、どのようなものを使用してもよい。
【0148】
リンカーの例は、Chen et al., Adv Drug Deliv Rev. 2013 Oct 15; 65(10): 1357-1369に記載されている。リンカーは、標的に対して提示される所望の機能ドメインに応じて、柔軟なリンカー、剛直なリンカー、半剛直なリンカーのいずれであってもよい。
【0149】
一般的に使用される柔軟なリンカーとして、アミノ酸であるグリシンとセリンからなるリンカー配列(Gly-Serリンカー)が挙げられる。特定の実施形態において、リンカー配列は、グリシンとセリンの反復配列を含み、例えば、1~10個の(GlyxSery)n(配列番号120)からなる反復配列などが挙げられ、ここで、xおよびyは独立して0~10の整数であり、ただし、xとyの両方が0の場合は除かれ、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である。特定の例として、(Gly4Ser)n(配列番号121)、(Gly3Ser)n(Gly4Ser)n(配列番号122)、(Gly3Ser)n(Gly2Ser)n(配列番号123)、および(Gly3Ser)n(Gly4Ser)1(配列番号124)が挙げられる。特定の実施形態において、Gly-Serリンカーは、(Gly4Ser)4(配列番号125)、(Gly4Ser)3(配列番号126)、(Gly4Ser)2(配列番号127)、(Gly4Ser)1(配列番号128)、(Gly3Ser)2(配列番号129)、(Gly3Ser)1(配列番号130)、(Gly2Ser)2(配列番号131)、(Gly2Ser)1、GGSGGGSGGSG(配列番号132)、GGSGGGSGSG(配列番号133)またはGGSGGGSG(配列番号134)である。
【0150】
また、1つ以上の抗体ヒンジ領域および/または免疫グロブリン重鎖定常領域を含むリンカー、例えば、CH3のみからなるリンカーやCH2CH3配列からなるリンカーも使用することができる。
【0151】
場合によっては、柔軟なリンカーでは、特定の用途において要求される結合断片の距離や位置を保持することができない場合がある。このような場合、剛直なリンカーや半剛直なリンカーが有用である場合がある。剛直なリンカーまたは半剛直なリンカーの例として、プロリンリッチリンカーが挙げられる。特定の実施形態において、プロリンリッチリンカーは、偶然性のみに依存して配列に含まれることが期待される数よりも多くのプロリン残基を有するペプチド配列である。特定の実施形態において、プロリンリッチリンカーは、その配列においてプロリン残基が全体の少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも48%、少なくとも50%または少なくとも51%を占めるリンカーである。プロリンリッチリンカーの特定の例として、唾液プロリンリッチタンパク質(PRP)の断片が挙げられる。
【0152】
I-AMS分子の細胞溶解性は、インビトロ比較アッセイにより確認することができる。簡潔に述べると、細胞株を用いた実験では、段階的に濃度を上昇させた様々な種類のI-AMS抗体を入れた96ウェル丸底プレートに、健康なドナー由来のT細胞の存在下(E:T比=1:1もしくは3:1で使用)または非存在下において、標的となるウイルス感染細胞を5~10,000個/ウェルの密度で播種してインキュベートすることができる(例えば、ウイルスエピトープ-CD3二重特異性抗体(BiAb)などのCD3 I-AMSと、ウイルスエピトープをインキュベートすることができる)。48時間後に、死細胞検出用の4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を用いて、フローサイトメトリーにより細胞数と薬物誘導性細胞傷害性を測定することができる。健康なドナー由来のT細胞を添加した実験では、前方散乱光/側方散乱光の特性と、CellVue Burgundy色素による染色が陰性であることから、ウイルス感染細胞を同定することができる。実験は、技術的反復を2回とすることができる。
【0153】
I-AMSコンストラクトを含む特定の実施形態において、T細胞を活性化させるエピトープ結合断片は、公知のTCRのVα、Vβ、CαまたはCβと比較して、1個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)の挿入、1個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)の欠失、1個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個)のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換もしくは非保存的アミノ酸置換)、またはこれらの変化の組み合わせを含む。各CDRに変化が含まれていないか、多くても1個、2個または3個の変化しか含まれておらず、かつ組換えられたVα領域、Vβ領域、Cα領域またはCβ領域を含む結合断片が、野生型と同程度の親和性で標的に特異的に結合できる限り、挿入、欠失または置換は、Vα領域、Vβ領域、Cα領域またはCβ領域のアミノ末端もしくはカルボキシ末端または両端を含むVα領域、Vβ領域、Cα領域またはCβ領域のどの位置に存在していてもよい。
【0154】
特定の実施形態において、二重特異性分子は、ギブソンアッセンブリーに適合したオーバーラップする末端を有するDNA断片として各scFvを合成することによって、標準的なBiTE抗体フォーマットで構築することができる。例えば、(Gly4Ser)3リンカー(配列番号126)などのプロトタイプの介在領域を、ペアにした可変ドメイン間に使用することができ、短いGly4Serリンカー(配列番号128)を2つのscFv間に使用することができる。
【0155】
抗ウイルス三重特異性抗体は、3種の抗原に同時に結合する人工タンパク質であり、これらの抗原のうちの少なくとも1種は、本明細書に開示された抗体の結合を受けるHPIV1、HPIV3、RSVまたはHMPV上のウイルスエピトープである。三重特異性抗体は、例えば、WO2016/105450、WO2010/028796;WO2009/007124;WO2002/083738;米国特許公開第2002/0051780号;およびWO 2000/018806に記載されている。
【0156】
(ii)製剤
代表的なフォーマットの本明細書に記載の様々な抗体は、これらの抗体のいずれかを単独で用いて、対象への投与用の組成物を調製することができ、あるいは、これらの抗体のいくつかを組み合わせて、対象への投与用の組成物を調製することもできる。これらの抗体の塩および/またはプロドラッグを使用することもできる。
【0157】
薬学的に許容される塩として、本明細書に記載の抗体の活性を保持し、かつ薬学的用途に許容される塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、酸、別の塩、または酸もしくは塩に変換されるプロドラッグを投与することによって、インビボで形成されてもよい塩も意味する。
【0158】
適切な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製することができる。このような無機酸の例として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸およびリン酸が挙げられる。適切な有機酸は、脂肪族有機酸、脂環族有機酸、芳香族有機酸、芳香族脂肪族有機酸、複素環族有機酸、カルボン酸およびスルホン酸から選択することができる。
【0159】
適切な薬学的に許容される塩基付加塩として、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛から調製される金属塩;ならびにN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、リシン、アルギニンおよびプロカインから調製される有機塩が挙げられる。
【0160】
プロドラッグとして、切断または生物学的に不安定な基の加水分解などによって、投与後に治療的に活性な化合物に変換される有効成分が挙げられる。
【0161】
特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、組成物全体に対して少なくとも0.1%w/vもしくは少なくとも0.1%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも1%w/vもしくは少なくとも1%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも10%w/vもしくは少なくとも10%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも20%w/vもしくは少なくとも20%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも30%w/vもしくは少なくとも30%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも40%w/vもしくは少なくとも40%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも50%w/vもしくは少なくとも50%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも60%w/vもしくは少なくとも60%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも70%w/vもしくは少なくとも70%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも80%w/vもしくは少なくとも80%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも90%w/vもしくは少なくとも90%w/wの抗体;組成物全体に対して少なくとも95%w/vもしくは少なくとも95%w/wの抗体;または組成物全体に対して少なくとも99%w/vもしくは少なくとも99%w/wの抗体を含む。
【0162】
一般的に使用されている代表的な薬学的に許容される担体として、あらゆる吸収遅延剤、酸化防止剤、結合剤、緩衝剤、増量剤もしくは充填剤、キレート剤、コーティング剤、崩壊剤、分散媒、ゲル、等張化剤、滑沢剤、保存剤、塩類、溶媒もしくは共溶媒、安定剤、界面活性剤および/または送達媒体が挙げられる。
【0163】
代表的な酸化防止剤として、アスコルビン酸、メチオニンおよびビタミンEが挙げられる。
【0164】
代表的な緩衝剤として、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液および/またはトリメチルアミン塩が挙げられる。
【0165】
代表的なキレート剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)である。
【0166】
代表的な等張化剤として、三価糖アルコールまたはそれよりも価数の大きい糖アルコールを含む多価糖アルコールが挙げられ、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールまたはマンニトールが挙げられる。
【0167】
代表的な保存剤として、フェノール、ベンジルアルコール、m-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハロゲン化物、塩化ヘキサメトニウム、アルキルパラベン類(例えば、メチルパラベンやプロピルパラベン)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノールおよび3-ペンタノールが挙げられる。
【0168】
安定剤は、抗体を可溶化したり、抗体の変性を阻止したり、容器の壁面への抗体の付着を防いだりすることが可能な添加物から増量剤といった様々な機能を有することができる幅広い種類の賦形剤を指す。典型的な安定剤として、多価糖アルコール;アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなどのアミノ酸;ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えばイノシトール)などの有機糖類または糖アルコール類;PEG;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール、チオ硫酸ナトリウムなどの硫黄含有還元剤;低分子量ポリペプチド(すなわち残基数が10個未満のポリペプチド);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;キシロース、マンノース、フルクトース、グルコースなどの単糖類;ラクトース、マルトース、スクロースなどの二糖類;ラフィノースなどの三糖類;およびデキストランなどの多糖類が挙げられる。安定剤は、通常、治療剤の総重量に対して0.1~10,000重量部の範囲で含まれる。
【0169】
本明細書に開示された組成物は、注射、吸入、点滴、灌流、洗浄または経口摂取による投与用に製剤化することができる。さらに、本明細書に開示された組成物は、静脈内投与、皮内投与、動脈内投与、リンパ節内投与、リンパ管内投与、腹腔内投与、病巣内投与、前立腺内投与、膣内投与、直腸内投与、外用投与、髄腔内投与、腫瘍内投与、筋肉内投与、膀胱内投与、経口投与、舌下投与および/または皮下投与用に製剤化することができる。
【0170】
注射用組成物は、ハンクス溶液、リンゲル溶液、生理食塩水などの緩衝液中の水溶液として製剤化することができる。ハンクス溶液は、無機塩類および糖類を含む等張緩衝溶液を指す。リンゲル溶液は、生理学的な濃度で塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化カルシウムを含み、炭酸水素ナトリウム(または乳酸ナトリウム)でpHを調節したものである。前記水溶液は、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化用添加剤を含んでいてもよい。あるいは、製剤は、例えば、発熱性物質を含まない滅菌水などの適切な溶媒で再構成される凍結乾燥形態および/または粉末形態であってもよい。
【0171】
経口投与用の組成物は、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに製剤化することができる。散剤、カプセル剤、錠剤などの経口固形製剤に適切な賦形剤として、トラガカントガム、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチンなどの結合剤;例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトールなどの糖類などの充填剤;リン酸二カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム;トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物;造粒剤;および結合剤が挙げられる。所望であれば、崩壊剤を添加することができ、このようなものとして、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルギン酸、架橋ポリビニルピロリドン、カンテンおよびアルギン酸またはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)が挙げられる。所望に応じて、固形剤形は、標準的な技術によって糖コーティングまたは腸溶コーティングを施してもよい。ペパーミント、ウインターグリーン油、サクランボ香料、オレンジ香料などの香料も用いることができる。
【0172】
本明細書に記載の組成物は、エアロゾル剤として製剤化することができる。特定の実施形態において、エアロゾル剤は、無水物吸入器、液体吸入器または乾燥粉末吸入器の一部として提供される。加圧パックまたはネブライザーから噴射されるエアロゾルスプレーは、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の適切な気体などの適切な噴射剤と組み合わせて用いることができる。加圧エアロゾル剤の場合、投与単位は、定量を送達するバルブを提供することによって決定してもよい。吸入器または噴霧器で使用されるゼラチンカプセル剤およびゼラチンカートリッジに製剤化してもよく、このようなゼラチンカプセル剤およびゼラチンカートリッジは、本明細書に記載の組成物と、ラクトースやデンプンなどの適切な粉末基剤とからなる混合粉末を含む。
【0173】
本明細書に記載の組成物は、デポー製剤として製剤化することもできる。デポー製剤は、適切な重合性材料もしくは疎水性材料を用いて(例えば、薬学的に許容される油剤中エマルションとして)製剤化することができ、イオン交換樹脂を用いて製剤化することもでき、あるいは難溶性の誘導体(例えば難溶性の塩)として製剤化することもできる。
【0174】
さらに、本明細書に記載の組成物は、固体ポリマーからなる半透過性マトリックスを利用して、少なくとも1種の抗体を含む徐放システムとして製剤化することができる。様々な徐放性材料が開発されており、当業者によく知られている。徐放システムは、その化学的性質に応じて、投与後に数週間から最長で100日を超えて1種以上の抗体を放出してもよい。デポー製剤は、注射;非経口注射;点滴;または軟部組織もしくは体腔への移植、もしくは状況に応じて、細い針を用いた注射による血管内への移植により投与することができる。
【0175】
デポー製剤は、様々な生体分解性ポリマーを含んでいてもよく、このような生体分解性ポリマーとして、所望のラクチドとグリコリドの比率、平均分子量、多分散性および末端基化学構造を有するポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)およびポリ(ラクチド)-co-(グリコリド)(PLG)が挙げられる。様々なグレードの様々な種類のポリマーを様々な比率で混合することによって、各構成ポリマーに由来する特徴を得ることができる。
【0176】
様々な種類の溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、トリアセチン、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、フェノールまたはこれらの組み合わせ)を使用することによって、微粒子の大きさおよび構造を改変して放出特性を調節することができる。その他の有用な溶媒として、水、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトン、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、安息香酸エチルおよび安息香酸ベンジルが挙げられる。
【0177】
代表的な放出調節剤として、界面活性剤、洗浄剤、内相粘度増強剤、錯化剤、表面活性分子、共溶媒、キレート剤、安定剤、セルロース誘導体、(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース(HPMC)、酢酸HPMC、酢酸セルロース、pluronic(例えばF68/F127)、ポリソルベート、スパン(登録商標)(Croda Americas、デラウェア州ウィルミントン)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、Brij(登録商標)(Croda Americas、デラウェア州ウィルミントン)、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、塩類および緩衝剤が挙げられる。
【0178】
ポリソルベート、スルホコハク酸ジオクチル、ポロキサマー、PVAなどの界面活性剤などの賦形剤を微粒子の外相界面に添加することによって、微粒子の安定性、浸食速度、水和、流路構造、界面輸送および薬物動態などの特性を有利に改変することができる。
【0179】
本開示の徐放性デポー製剤のさらなる加工では、Tris緩衝液、クエン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液などの緩衝液中に、マンニトール、スクロース、トレハロースおよびグリシンと、ポリソルベート、PVA、スルホコハク酸ジオクチルなどのその他の成分とを含む安定化添加剤を利用することができる。さらに、凍結乾燥サイクルを利用して、元の懸濁液に類似した体積と性能特性に再構成可能な、水分含有量が非常に少ない粉末を製造することができる。
【0180】
本明細書に開示された組成物は、投与の利点を上回る顕著な有害反応、アレルギー反応またはその他の不都合な反応を生じない担体などのその他の薬学的に許容される担体を含んでいると有利な場合がある。代表的な薬学的に許容される担体および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990に開示されている。さらに、製剤は、米国FDAの生物製剤標準局および/またはその他の関連する他国の規制当局により要求されるような、無菌性、発熱性、一般的安全性および純度の基準を満たすように調製することができる。
【0181】
(iii)使用方法
本明細書に開示された方法は、本明細書に開示された組成物を用いて、対象(例えば、ヒト、愛玩動物(イヌ、ネコ、爬虫類、トリ)、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、ニワトリ)または研究用動物(例えば、サル、ラット、マウス、魚類))を治療することを含む。対象の治療には、治療有効量を送達することが含まれる。治療有効量は、有効量、予防的処置および/または治療的処置を提供できる量を含む。
【0182】
「有効量」は、対象において所望の生理的変化を起こさせるのに必要な組成物の量である。有効量は、研究目的で投与されることが多い。本明細書に開示された有効量は、感染症の発症、進行および/または消散の評価に関連する動物モデルまたはインビトロアッセイにおいて、統計学的に有意な効果を引き起こすことができる量である。
【0183】
「予防的処置」は、感染症の徴候もしくは症状を示していない対象または感染症の初期徴候もしくは初期症状のみを示す対象に対して、その感染症がさらに進展するリスクを軽減または低減する目的で行われる処置を含む。したがって、予防的処置は、感染症を予防する処置として機能する。特定の実施形態において、予防的処置は、感染症の悪化を抑制するか、遅延させるか、阻止するものである。
【0184】
「治療的処置」は、感染症の症状または徴候を示す対象に対して、感染症の徴候または症状を軽減または排除する目的で行われる処置を含む。治療的処置により、感染症の存在または活性の抑制、制御もしくは排除を行うことができ、かつ/または感染症の副作用の抑制、制御もしくは排除を行うことができる。
【0185】
有効量、予防的処置または治療的処置としての機能は、互いに排他的ではなく、特定の実施形態では、投与された用量によって2種以上の処置を行ってもよい。
【0186】
特定の実施形態において、治療有効量により抗感染症作用を得ることができる。抗感染症作用には、ウイルスによる細胞感染の抑制または予防、感染細胞数の減少、感染した組織の体積の減少、寿命の延長、平均余命の延長、および感染症の随伴症状(例えば、肺活量の減少)の減少または排除が含まれる。特定の実施形態において、治療有効量により免疫応答が誘導される。この免疫応答はウイルスに対するものであってもよい。
【0187】
投与に際して、治療有効量(本明細書において「用量」とも呼ぶ)は、初めに、インビトロアッセイおよび/または動物モデル研究の結果に基づいて推定することができる。このような情報を使用して、目的の対象に有用な投与量をより正確に決定することができる。特定の対象に投与される実際の用量は、標的、体重、疾患の重症度、感染症の種類、感染症の段階、過去の治療的介入または併用されている治療的介入、対象の特発性疾患および投与経路などの物理的要因および生理学的要因などのパラメータを考慮に入れて、医師、獣医師または研究者により決定することができる。
【0188】
有用な用量は、0.1~5μg/kgまたは0.5~1μg/kgの範囲であってもよい。別の例において、用量として、1μg/kg、15μg/kg、30μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、70μg/kg、90μg/kg、150μg/kg、350μg/kg、500μg/kg、750μg/kg、1000μg/kg、0.1~5mg/kgまたは0.5~1mg/kgが挙げられる。別の例において、用量として、1mg/kg、10mg/kg、30mg/kg、50mg/kg、70mg/kg、100mg/kg、300mg/kg、500mg/kg、700mg/kg、1000mg/kgまたはそれ以上の用量が挙げられる。
【0189】
治療有効量は、治療レジメンのコース中(例えば、毎日、1日おき、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、週1回、2週ごと、3週ごと、毎月、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、5ヶ月ごと、6ヶ月ごと、7ヶ月ごと、8ヶ月ごと、9ヶ月ごと、10ヶ月ごと、11ヶ月ごと、または年1回)に、1回の投与または複数回の投与により達成することができる。特定の実施形態において、治療プロトコールは、臨床試験プロトコールまたはFDAに承認された治療プロトコールに応じて決定してもよい。
【0190】
本明細書で述べるように、特定の方法は、易感染性個体における使用を含み、易感染性個体として、造血幹細胞移植を受けた個体、肺移植レシピエント、未熟児、65歳を超える年齢の成人、または呼吸器ウイルスによる感染症に対する感受性を増加させるその他の健康問題を抱える個体が挙げられる。
【0191】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、注射、吸入、点滴、灌流、洗浄または経口摂取により投与することができる。投与経路として、静脈内投与、皮内投与、動脈内投与、リンパ節内投与、膀胱内投与、髄腔内投与、腹腔内投与、非経口投与、鼻腔内投与、病巣内投与、筋肉内投与、経口投与、皮下投与および/または舌下投与を挙げることができる。
【0192】
以下の代表的な実施形態および実施例は、本開示の特定の実施形態を示すために記載されている。本開示を参照した当業者であれば、本明細書に開示された特定の実施形態に様々な変化を加えることができることを理解し、このような変化を加えたとしても、本開示の要旨および範囲から逸脱することなく、同様の結果または類似した結果が得られることも理解できるであろう。
【0193】
(iv)代表的な実施形態
1.PI3-E12、PI3-A3、PI3-B5、PI3-A10、PI3-A12、3x1、MxR-B11またはMxR-D10の相補性決定領域(CDR)を含む抗体またはその結合断片。
2.前記CDRが、Kabat、Chothia、Martin、Contact、IMGT、AHoまたはNorthのナンバリングに従ってナンバリングされている、実施形態1に記載の抗体または結合断片。
3.前記抗体またはその結合断片が、
GFTFSDHY(配列番号1)を含むCDRH1;ISSSGSNT(配列番号2)を含むCDRH2;ARAKWGTMGRGAPPTIYDH(配列番号3)を含むCDRH3;QSLLQSNGNNY(配列番号4)を含むCDRL1;LGSを含むCDRL2;およびMQALQTPLT(配列番号5)を含むCDRL3;
GFTFSNYW(配列番号8)を含むCDRH1;VKEEGSEK(配列番号9)を含むCDRH2;AGEVKSGWFGRYFDS(配列番号10)を含むCDRH3;QSVGSW(配列番号11)を含むCDRL1;KTSを含むCDRL2;およびQQYSSFPYT(配列番号12)を含むCDRL3;
GYNFTNYW(配列番号15)を含むCDRH1;IYPADSDT(配列番号16)を含むCDRH2;ARPSTRWFVPGGMDV(配列番号17)を含むCDRH3;QSIGAW(配列番号18)を含むCDRL1;KASを含むCDRL2;およびQQHSSYPST(配列番号19)を含むCDRL3;
GFNFNNYG(配列番号22)を含むCDRH1;VSFDGSNR(配列番号23)を含むCDRH2;SKSKYSDFWSEI(配列番号24)を含むCDRH3;QNVMRY(配列番号25)を含むCDRL1;DASを含むCDRL2;およびQQRTNHRFS(配列番号26)を含むCDRL3;
GDSVKSDDFY(配列番号29)を含むCDRH1;IYYGGRT(配列番号30)を含むCDRH2;VRVEGLLWFGELFDY(配列番号31)を含むCDRH3;NSNIGNNF(配列番号32)を含むCDRL1;KDYを含むCDRL2;およびAAWQDGLSGPL(配列番号33)を含むCDRL3;
GFTFSSFG(配列番号36)を含むCDRH1;ISHSAGFL(配列番号37)を含むCDRH2;AKRLAGLPDLEWLLYPNFLDH(配列番号38)を含むCDRH3;ILRTYY(配列番号39)を含むCDRL1;GKNを含むCDRL2;およびSSRDRSGNHVL(配列番号40)を含むCDRL3;
GFPFSSYK(配列番号43)を含むCDRH1;ISASGSYI(配列番号44)を含むCDRH2;ARDGGRELSPFEK(配列番号45)を含むCDRH3;NSNIGTGYD(配列番号46)を含むCDRL1;DNNを含むCDRL2;およびQSYDKSLGGWV(配列番号47)を含むCDRL3;または
GFIFSNYD(配列番号50)を含むCDRH1;ITGGSSFI(配列番号51)を含むCDRH2;ARDGGRQLSPCEH(配列番号52)を含むCDRH3;SSNIGAGYD(配列番号53)を含むCDRL1;DNNを含むCDRL2;およびQSYDRGLSGWA(配列番号54)を含むCDRL3
を含む、実施形態1に記載の抗体または結合断片。
4.抗体またはその結合断片であって、
配列番号166に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号167に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号168に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号169に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号170に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号171に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号172に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号173に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号174に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号175に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号176に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号177に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;
配列番号178に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号179に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域;または
配列番号180に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する重鎖可変領域と、配列番号181に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する軽鎖可変領域
を含む、抗体またはその結合断片。
5.抗体またはその結合断片であって、
配列番号166に示される配列を含む重鎖可変領域と、配列番号167に示される配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号168に示される配列を含む重鎖可変領域と、配列番号169に示される配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号170に示される配列を含む重鎖可変領域と、配列番号171に示される配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号172に示される配列を含む重鎖可変領域と、配列番号173に示される配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号174に示される配列を含む重鎖可変領域と、配列番号175に示される配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号176に示される配列を含む重鎖可変領域と、配列番号177に示される配列を含む軽鎖可変領域;
配列番号178に示される配列を含む重鎖可変領域と、配列番号179に示される配列を含む軽鎖可変領域;または
配列番号180に示される配列を含む重鎖可変領域と、配列番号181に示される配列を含む軽鎖可変領域;
を有する、抗体またはその結合断片。
6.抗体またはその結合断片であって、
配列番号6に示される配列および配列番号7に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列;
配列番号13に示される配列および配列番号14に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列;
配列番号27に示される配列および配列番号28に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列;
配列番号34に示される配列および配列番号35に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列;
配列番号41に示される配列および配列番号42に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列;
配列番号48に示される配列および配列番号49に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列;または
配列番号55に示される配列および配列番号56に示される配列と少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列
によってコードされる、抗体またはその結合断片。
7.抗体またはその結合断片であって、配列番号6に示される配列と配列番号7に示される配列とを含む配列;配列番号13に示される配列と配列番号14に示される配列とを含む配列;配列番号27に示される配列と配列番号28に示される配列とを含む配列;配列番号34に示される配列と配列番号35に示される配列とを含む配列;配列番号41に示される配列と配列番号42に示される配列とを含む配列;配列番号48に示される配列と配列番号49に示される配列とを含む配列;または配列番号55に示される配列と配列番号56に示される配列とを含む配列によってコードされる抗体またはその結合断片。
8.Fc領域にM252Y変異、S254T変異およびT256E変異を有するIgGを含む、実施形態1~7のいずれかに記載の抗体またはその結合断片。
9.実施形態1~8のいずれかに記載の少なくとも2種の抗体の結合断片を含む結合分子。
10.実施形態1~3のいずれかに記載の少なくとも2種の抗体の結合断片が、Fabまたは一本鎖可変領域断片(scFv)を含む、実施形態9に記載の結合分子。
11.前記結合断片が、knobs-into-holes技術による重鎖間の結合を介して連結されたFab(図8、上段)を含む、実施形態9または10に記載の結合分子。
12.前記結合断片が、scFvの1つの結合断片がこれとは異なる別の結合断片を有する抗体の定常領域に連結されたscFv(図8、下段)を含む、実施形態9~11のいずれかに記載の結合分子。
13.Gly-Serリンカーを含むリンカーを含む、実施形態12に記載の結合分子。
14.実施形態1~8のいずれかに記載の少なくとも2種の抗体の結合断片がscFvを含む、実施形態9~13のいずれかに記載の結合分子。
15.PI3抗体の結合断片とMxR抗体の結合断片とを含むか;
PI3抗体の結合断片と3x1抗体の結合断片とを含むか;または
3x1抗体の結合断片とMxR抗体の結合断片とを含む、
実施形態9~14のいずれかに記載の結合分子。
16.PI3抗体の結合断片と、3x1抗体の結合断片と、MxR抗体の結合断片とを含む、実施形態9~15のいずれかに記載の結合分子。
17.前記結合断片がFabおよび/またはscFvを含む、実施形態15に記載の結合分子。
18.MxR-B11 Fabと3x1 Fabとを含むか;MxR-B11 scFvと3x1 Fabとを含むか;MxR-B11 Fabと3x1 scFvとを含むか;またはMxR-B11 scFvと3x1 scFvとを含む、実施形態9~17のいずれかに記載の結合分子。
19.MxR-D10 Fabと3x1 Fabとを含むか;MxR-D10 scFvと3x1 Fabとを含むか;MxR-D10 Fabと3x1 scFvとを含むか;またはMxR-D10 scFvと3x1 scFvとを含む、実施形態9~18のいずれかに記載の結合分子。
20.実施形態1~8のいずれかに記載の結合断片と、第2のウイルスに結合する抗体の結合断片とを含む結合分子。
21.第2のウイルスが、アデノウイルス、ボカウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスおよび/またはライノウイルスから選択される、実施形態20に記載の結合分子。
22.第2のウイルスが、ヒトアデノウイルス、ヒトボカウイルス(HBoV)および/またはヒトコロナウイルス(HCoV)から選択される、実施形態20または21に記載の結合分子。
23.第2のウイルスが、SARS-CoV、MERS-CoV、コロナウイルス229E、コロナウイルスOC43、コロナウイルスNL63、コロナウイルスHKU1、コロナウイルスNLおよび/またはコロナウイルスNHから選択されるコロナウイルスである、実施形態20~22のいずれかに記載の結合分子。
24.第2のウイルスが、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス2(HPIV2)、HPIV4、ヒトライノウイルス(HRV)A、HRVBおよび/またはHRVCから選択される、実施形態20~23のいずれかに記載の結合分子。
25.前記結合断片が、8C4、5Hx-l、5Hx-2、5Hx-3、5Hx-4、5Hx-5、5.100K-1、5PB-1、5Fb-l、1E11、EPR23305-44、47D11、CR3022、CDC2-A2、G2、5F9、FIB-H1、JC57-13、32D6、CH65、CR9114、MAb 22/1、MAb70/l、MAb 110/1、MAb 264/2、MAb W18/1、MAb 14/3、MAb 24/4、MAb 47/8、MAb 198/2、MAb 215/2、H2/6A5、H3/4C4、H2/6C4、H2/4B3、H9/B20、H2/4B1、CA6261、6F12、CR9114、PEG-1、CR8033、CR8071、113/2、124/4、128/2、134/1、146/1、152/2、160/1、162/1、195/3、206/2、238/4、280/2、PAR2(boca231/9F)またはTCN-711から選択される抗体のCDRを含む、実施形態20~34のいずれかに記載の結合分子。
26.実施形態1~8のいずれかに記載の結合断片と、免疫細胞を活性化する結合断片とを含む結合分子。
27.免疫細胞を活性化する前記結合断片が、CD3、CD28または4-1BBに結合する、実施形態26に記載の結合分子。
28.免疫細胞を活性化する前記結合断片が、OKT3またはTGN1412のCDRを含む、実施形態26または27に記載の結合分子。
29.実施形態1~28のいずれかに記載の抗体またはその結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
30.前記薬学的に許容される担体が水溶液を含む、実施形態29に記載の組成物。
31.前記薬学的に許容される担体が生理食塩水を含む、実施形態29または30に記載の組成物。
32.前記薬学的に許容される担体が、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化カルシウムを含む、実施形態29~31のいずれかに記載の組成物。
33.前記薬学的に許容される担体が、炭酸水素ナトリウムまたは乳酸ナトリウムを含む、実施形態29~32のいずれかに記載の組成物。
34.前記薬学的に許容される担体が、無機塩を含む、実施形態29~33のいずれかに記載の組成物。
35.前記薬学的に許容される担体が、糖を含む、実施形態29~34のいずれかに記載の組成物。
36.前記薬学的に許容される担体が、酸化防止剤、緩衝剤、キレート剤、等張化剤、保存剤および/または安定剤を含む、実施形態29~35のいずれかに記載の組成物。
37.前記薬学的に許容される担体が放出調節剤を含む、実施形態29~36のいずれかに記載の組成物。
38.対象への投与用の前記抗体またはその結合断片の治療有効量を含む、実施形態29~37のいずれかに記載の組成物。
39.抗ウイルス作用を必要とする対象に抗ウイルス作用を提供する方法であって、実施形態29~38のいずれかに記載の組成物の治療有効量を対象に投与することにより、抗ウイルス作用を提供することを含む方法。
40.前記抗ウイルス作用が、抗HPIV3作用、抗HPIV1作用、抗RSウイルス(RSV)作用および/または抗ヒトメタニューモウイルス(HMPV)作用を含む、実施形態39に記載の方法。
41.前記抗ウイルス作用が、抗HPIV3作用および抗HPIV1作用を含む、実施形態39または40に記載の方法。
42.前記抗ウイルス作用が、抗RSV作用および抗HMPV作用を含む、実施形態39~32のいずれかに記載の方法。
43.前記抗ウイルス作用が、抗HPIV作用、抗RSV作用および抗HMPV作用を含む、実施形態39~42のいずれかに記載の方法。
44.抗ウイルス作用を必要とする前記対象が、造血幹細胞移植(HCT)のレシピエント、肺移植のレシピエント、未熟児、65歳を超える年齢のヒト、路上生活者、または肺疾患を有するヒトである、実施形態39~43のいずれかに記載の方法。
45.前記対象が慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する、実施形態39~44のいずれかに記載の方法。
46.前記抗ウイルス作用が、第2のウイルスに対する抗ウイルス作用を含む、実施形態39~45のいずれかに記載の方法。
47.第2のウイルスが、アデノウイルス、ボカウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスおよび/またはライノウイルスから選択される、実施形態46に記載の方法。
48.第2のウイルスが、ヒトアデノウイルス、ヒトボカウイルス(HBoV)および/またはヒトコロナウイルス(HCoV)から選択される、実施形態46または47に記載の方法。
49.第2のウイルスが、SARS-CoV、MERS-CoV、コロナウイルス229E、コロナウイルスOC43、コロナウイルスNL63、コロナウイルスHKU1、コロナウイルスNLおよび/またはコロナウイルスNHから選択されるコロナウイルスである、実施形態46~48のいずれかに記載の方法。
50.第2のウイルスが、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス2(HPIV2)、HPIV4、ヒトライノウイルス(HRV)A、HRVBおよび/またはHRVCから選択される、実施形態46~49のいずれかに記載の方法。
【0194】
(v)実験例
序論
HPIV3は、乳児および小児の呼吸器疾患の原因としてよく認められる。米国でのHPIV3による発熱または急性呼吸器疾患による入院は、毎年11,000件を超える。HPIV3は、RSウイルス(RSV)と同様に、幼年期に感染が見られ、強力な抗体産生応答を惹起することができない6ヶ月齢未満の乳児において重度の細気管支炎および肺炎を引き起こすことが多い。HPIV3は、特に免疫抑制状態の造血幹細胞移植(HCT)レシピエントなどのその他の易感染性集団においても、死亡率、罹患率および医療費に影響を及ぼす要因として重要である。造血幹細胞移植レシピエントの最大で3分の1は、移植から6ヶ月以内に呼吸器ウイルス感染症に罹患する。最大で3分の1を占めるこのような患者では、ウイルス感染が上気道から下気道へと進行する。ウイルスが下気道で足場を固めてしまうと、大半のウイルスでは、支持療法以上のことを行うことはできず、下気道疾患に罹患した患者の最大40%は3ヶ月以内に死亡する。HPIV3は、造血幹細胞移植後の重篤な呼吸器ウイルス感染症の原因として重要であり、いくつかの医療機関では移植後の発症率は18%に上る。ワクチンや治療法が存在しないことから、HPIV3に対する予防的介入および治療的介入の必要性が重要視されている。
【0195】
モノクローナル中和抗体は、RSVやインフルエンザなどのいくつかの呼吸器ウイルスに対する防御と相関性が見られる。モノクローナル抗体のパリビズマブは、RSVの融合(F)タンパク質を標的とするヒト化抗体であり、ハイリスク新生児において重症疾患を予防するために、免疫学的予防としての使用において認可を受けている。RSVのFタンパク質は必須の表面糖タンパク質であることから、中和抗体の標的として利用されることが多い。Fタンパク質は、クラスI融合タンパク質として、準安定な融合前(preF)構造と安定な融合後(postF)構造の間を遷移することによってウイルスの侵入を媒介する。preF構造は、感染性ウイルスによく見られる構造であることから、抗preF抗体は強力なウイルス中和作用を有するが、通常、postF構造を標的とする抗体は、このような強力なウイルス中和作用は発揮しない(Ngwuta, et al. Sci Transl Med 7, 309ra162, (2015); Gilman, et al. Sci Immunol 1, (2016))。RSVと同様に、HPIV3のFタンパク質でも、preF構造とpostF構造が認められる。近年、HPIV3 Fタンパク質の融合前構造の安定化に成功したことから、preF構造で安定化させたFタンパク質免疫原を利用して、postF構造の同じFタンパク質免疫原よりも高い中和抗体力価を誘導できることが報告されている(Stewart-Jones, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 115, 12265-12270, (2018))。さらに、予防用および治療用のモノクローナル抗体候補を単離することを目的として、HPIV3に対する中和能を調べるための、HPIV3 preFタンパク質に特異的なヒトB細胞の迅速な選択と試験が可能な、ハイスループットスクリーニング方法が開発された。この方法を利用して、強力なモノクローナル中和抗体をいくつか単離し、それらの結合を評価し、これらの抗体候補のうちの1つをインビボのチャレンジモデルにおいて試験した。
【0196】
結果
ヒトB細胞レパトアにおけるHPIV3特異的B細胞の同定およびそのアイソタイプ
融合前構造(preF)のHPIV3 Fタンパク質と融合後構造(postF)のHPIV3 Fタンパク質をそれぞれ別々にビオチン化し、蛍光色素で標識したストレプトアビジンと混合した。次に、この蛍光色素を標的とする抗体を結合した磁気マイクロビーズを用いて、HPIV3 preF特異的B細胞とHPIV3 postF特異的B細胞を濃縮した。preF構造のHPIV3 Fタンパク質を接種した動物では、postF構造のHPIV3 Fタンパク質を接種した動物と比べて、非常に高い中和力価が誘導されることが過去に報告されている(Stewart-Jones, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 115, 12265-12270, (2018))。
【0197】
このアプローチを利用して、フローサイトメトリーを行うことによって、蛍光色素で標識したストレプトアビジンにより、preF構造に結合するが、postF構造には結合しないB細胞が同定された(図2A)。ヒトでのHPIV3の抗体保有率はほぼ100%であることから(Henrickson, Clin Microbiol Rev 16, 242-264, (2003))、HPIV3に対する血清反応陽性を確認するためにドナーを事前にスクリーニングする必要はなかった。末梢血、扁桃腺、脾臓といった二次リンパ器官には、HPIV3への結合に対して親和性成熟を経たB細胞が豊富に存在すると考えられたことから、条件を揃えていないドナーから得た末梢血試料、扁桃腺試料および脾臓試料を用いて、前記のアプローチによる評価を行った。全体的な結果として、これらの組織試料ではB細胞全体の0.20~1.75%がHPVI3 preFタンパク質に結合した(図2B)。IgM-IgD-アイソタイプスイッチを起こしたB細胞の全体的な頻度は、脾臓および扁桃腺で高く(図2Cおよび図2D)、扁桃腺および脾臓において検出されたHPIV3 preF+集団の増加は、統計学的有意差を示した(図2Eおよび図2F)。
【0198】
ヒトB細胞レパトアにおけるHPIV3の結合および中和
次に、フローサイトメトリーにより同定されたHPIV3 preF特異的B細胞のうちのいくつが、HPIV3に結合してこれを中和することができる抗体を産生するのかを評価した。この評価を行うため、2人のドナー由来のPBMCから選別された92個のHPIV3 preF特異的B細胞を、96ウェルプレートの各ウェルに播種したところ、25対の重鎖配列と軽鎖配列が得られた(表1)。
【0199】
【表1】
【0200】
これらの25対の重鎖配列と軽鎖配列はいずれもモノクローナル抗体としてクローニングされ、バイオレイヤー干渉法(BLI)により結合を試験したところ、このうちの100%(25種のうち25種)が精製HPIV3 preFタンパク質に結合することが確認された(図2G)。この群のうち、PI3-E12またはPI3-C9と命名した2種のモノクローナル抗体は、それぞれ1×10-12Mおよび2.5×10-9Mという高い親和性(KD)でHPIV3 preFタンパク質に結合した(図2H)。しかし、結合動態分析の結果、PI3-E12とPI3-C9の解離速度はそれぞれ1×10-7/sおよび2.7×10-4/sであり、PI3-E12はPI3-C9よりも解離速度が遅いことから、PI3-E12はPI3-C9よりもHPIV3 preFタンパク質に対する親和性が高いことが示された(図2H)。これに応じて、PI3-E12は、インビトロにおいて生きたウイルスを中和することができたが、PI3-C9ではこのような中和作用は認められなかった(図2I)。これらのデータから、HPIV3 preFテトラマーに結合するB細胞は低頻度にしか見出されないが、HPIV3を中和することができる高親和性抗体を発現することが示された。
【0201】
中和抗体を産生するB細胞に着目するため、アッセイを一部変更して、個々のB細胞を選別し、放射線照射したCD40L/IL2/IL21発現3T3フィーダー細胞上で増殖させた。抗体分泌を刺激することによって、中和用培養上清の高スループットスクリーニングを実施し、次に抗体のクローニングを行った。全体として、選別したB細胞の半数以上が、ELISAで検出可能な抗体を産生した(図3A)。このアッセイでは、HPIV3 preFに特異的な単一のB細胞を刺激するとともに、強力な中和作用に必要とされる体細胞超変異や親和性成熟を起こす可能性が最も低いと考えられたIgD発現細胞をアッセイから除外した。この方法によって、扁桃腺から選別されたHPIV3 pre-F特異的IgD-B細胞の14%からHPIV3中和抗体が産生されたのに対して、脾臓から選別されたHPIV3 pre-F特異的IgD-B細胞の5%からHPIV3中和抗体が産生され、末梢血から選別されたHPIV3 pre-F特異的IgD-B細胞の2%からHPIV3中和抗体が産生された(2%)(図3B)。
【0202】
前述の新規なスクリーニング方法によって、HPIV3を中和する4種の新たなモノクローナル抗体が見出され、それぞれPI3-A3、PI3-B5、PI3-A10およびPI3-A12と命名し、シーケンスし、クローニングし、製造した(図3C)。これらの抗体の中和力は、7.0~61.4ng/mLの範囲であった(図3C)。各モノクローナル中和抗体では、免疫グロブリンの重鎖アレルが異なっていた(表2)。
【表2】
【0203】
κ鎖遺伝子のアレルが1-5*03であったPI3-A3とPI3-B5以外は、免疫グロブリン軽鎖のアレルがすべて異なっていた。過去に報告されているHPIV3抗体PIA174(Stewart-Jones, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 115, 12265-12270, (2018))とアレルが一致していた中和抗体はなかった。可変領域遺伝子の生殖細胞系列配列とこれらの中和抗体との類似性は、90~97%の範囲であった(表2)。本研究で新たに見出された中和抗体はいずれもpreF構造に強く結合したが、postF構造では検出可能な結合は見られなかった(図3Dおよび図3E)。過去に報告されている抗体であるPIA174も同様にHPIV3 preF構造に強く結合したが、postF構造にも弱く結合した(図3Dおよび図3E)。インビボでこれらの抗体を投与することを考慮に入れて、一般的な自己反応性の評価方法に従って実験を行ったところ(Steach, et al. J Immunol 204, 498-509, (2020); Bancroft, et al. J Exp Med 216, 2331-2347, (2019))、透過処理したHEp-2細胞に結合した抗体は認められなかった(図3F)。
【0204】
次に、交差競合結合実験を実施して、中和を可能とするHPIV3 preF上の抗原部位を評価した。前記の新規な4種のモノクローナル中和抗体のうちの2種(PI3-A3およびPI3-B5)は互いに完全に競合し、過去に報告されている抗体であるPIA174とも完全に競合した(図12A)。PI3-A10もこの群と競合したが、PI3-E12とは部分的にしか競合しなかった(図12A)。PIA174の既知の結合部位に基づくと、この抗原部位は、恐らくはHPIV3 preFの頂端部に位置すると見られた(Stewart-Jones, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 115, 12265-12270, (2018))。
【0205】
【0206】
【0207】
ネガティブ染色電子顕微鏡法(nsEM)を用いて、HPIV3 preFと複合体を形成したPI3-E12 Fabの低分解能3D再構成像を得た。事前に予測したように、PI3-E12 Fabは、1:1の比率(Fab:三量体)でHPIV3 preFの頂端部に結合した。しかし、PI3-E12 Fabは、PIA174とは異なる結合角でHPIV3 preFに結合すると見られる(図4Aおよび図4B)。X線結晶構造解析を用いて、2.1Åの分解能でPI3-E12 Fabの構造を得た(図4Bおよび図4Cならびに表3)。
【表3】
【0208】
PI3-E12 Fabの構造とPIA174の構造を重ね合わせたところ(平均二乗偏差:1.4A2)、構造組織の主な違いは、CDRL1とCDRH3にあることが判明し、PI3-E12ではCDRL1が長いことが分かった(図4D)。
【0209】
【0210】
インビボにおけるHPIV3感染症からの防御
次に、HPIV3感染症の動物チャレンジモデルにおいて、PI3-E12の臨床的有用性を調べた。ヒトパラインフルエンザウイルスはマウスの体内では自己複製しないが、HPIV3を鼻腔内感染させたコットンラットでは、下気道病変とウイルスの複製を観察することができる(Henrickson, Clin Microbiol Rev 16, 242-264, (2003); Ottolini, et al. J Gen Virol 77 (Pt 8), 1739-1743, (1996))。
【0211】
コットンラットモデルは、過去の実験において、抗体を用いた免疫学的予防の有効性の予測だけでなく、ヒト乳児のRSVに対して効果的だと考えられる15mg/kgという用量のパリビズマブの有効性の予測にも使用されている(Johnson, et al. J Infect Dis 176, 1215-1224, (1997))。これを踏まえて、同様の実験計画を採用した。105pfuのHPIV3をコットンラットに鼻腔内感染させ、その翌日に0.625~5mg/kgのPI3-E12を筋肉内注射した(図5A)。PI3-E12を投与したラットはいずれも細気管支周囲炎を発症しなかったが、PBSを投与したラットでは感染の4日後に細気管支周囲炎が検出された(図5B)。細気管支周囲炎の抑制と一致して、このような低用量のPI3-E12でも、肺において検出されたHPIV3の量は6分の1に減少し、2.5mg/kg以上の用量を注射した9匹のうち8匹において検出限界未満になった(図5C)。鼻腔でもHPIV3の複製が緩やかに低下したことが検出され(図5C)、IgG抗体が鼻腔に比較的侵入しにくいことを考慮に入れると、この結果は予想どおりであった(Kirkeby, et al. Clin Diagn Lab Immunol 7, 31-39, (2000); Fisher, et al. J Infect Dis 180, 1324-1327, (1999))。以上のデータから、肺においてPI3-E12によりHPIV3を防御する際のEC50は0.35mg/kgであり、EC99は1.80mg/kgであることが示された。
【0212】
がんまたは自己免疫疾患に対して細胞傷害性療法を受けている患者およびその他の免疫抑制群は、HPIV3感染症を介して重症疾患に罹患したり死亡したりするリスクが最も高いことから、免疫抑制動物における治療としてのPI3-E12の有効性を試験した。この試験を行うため、前記と同様にして、免疫不全コットンラットにおいてRSVのモデル化を行う実験計画を採用した(Boukhvalova, et al. Bone Marrow Transplant 51, 119-126, (2016); Johnson, et al. Infect Immun 37, 369-373 (1982); Ottolini, et al. Bone Marrow Transplant 29, 117-120, (2002))。
【0213】
5mg/kgのシトキサンを3日ごとに3週間にわたりコットンラットに注射して処置し、その後、105pfuのHPIV3を鼻腔内感染させた(図5D)。感染の5日後に、PI3-E12を投与しなかったコントロール動物の肺および鼻腔において104pfu/gのHPIV3が検出された(図5E)。これに対して、感染の1日後に5mg/kgのPI3-E12を注射した場合、肺のウイルス力価は28分の1に低下し、鼻腔のウイルス力価は2分の1に低下した(図5E)。
【0214】
以上のデータから、PI3-E12によりHPIV3感染症の予防と治療を行うことができることが示された。
【0215】
材料と方法
研究デザイン
実験群のサイズは図中の凡例に記載している。研究の実施の監視に当たる施設内審査委員会によって承認されたSeattle Areaコントロール研究に登録されたHIV血清反応陰性の健康な成人ボランティアから静脈穿刺により末梢血を採取した。Accuspin System Histopaque-1077(シグマ アルドリッチ)を用いて全血からPBMCを単離した。
【0216】
ヒト扁桃腺を用いた研究の施設内審査委員会による承認は、Seattle Children’s Hospitalから得た。ヒト脾臓を用いた研究は、脾臓組織が匿名化されているか、廃棄されるものであるか、死亡した個人から得られたものであったため、非ヒト対象研究であると見なした。組織片をカゴ型ふるいに通し、1400rpmで7分間遠心分離し、ACK溶解バッファー(サーモフィッシャー)を加えて3.5分間インキュベートし、RPMI培地(Gibco)中に再懸濁し、500μmのセルストレーナーと70μmのセルストレーナーを重ねたものに通した。10%ジメチルスルホキシドを含む熱不活性化ウシ胎仔血清(Gibco)中に細胞を再懸濁し、使用まで液体窒素中で凍結保存した。
【0217】
細胞株
293F細胞(サーモフィッシャー)は、Freestyle 293培地(サーモフィッシャー)中で培養した。Vero細胞(ATCC CCL-81)、LLC-MK2細胞(ATCC CCL-7.1)およびHEp-2(ATCC CCL-23)は、10%ウシ胎仔血清と100U/mlペニシリンと100μg/mLストレプトマイシン(Gibco)を添加したDMEM培地(Gibco)中で培養した。3T3-CD40L/IL2/IL21フィーダー細胞は、10%ウシ胎仔血清と、ペニシリンおよびストレプトマイシンと、0.4mg/mLジェネティシンを添加したDMEM培地中で培養した。放射線照射は5,000radで行った。
【0218】
ウイルス
野生型のrHPIV3は、JS株(GenBankアクセッション番号:Z11575)の組換え体であり、過去の報告に従って、GFPの発現が増強するように組換えた(Liu, et al. PLoS One 15, e0228572, (2020))。LLC-MK2細胞でウイルスを培養し、0.05M HEPESと0.1M MgSO4を含む30%/60%不連続ショ糖密度勾配(シグマ アルドリッチ)で、120,000×g、4℃で90分間遠心分離することによって精製した。ウイルス力価の測定は、24ウェルプレートに播種したVero細胞単層に10倍段階希釈したウイルスを感染させ、4%メチルセルロース(シグマ アルドリッチ)を含むDMEMを重層し、感染の5日後にTyphoonスキャナー(GEライフサイエンス)を用いて蛍光性プラークを計数することによって行った。
【0219】
抗原の発現および精製
HisタグHPIV3 preF抗原を発現させるための発現プラスミド、およびHisタグpostF抗原を発現させるための発現プラスミドは、Stewart-Jones, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 115, 12265-12270, (2018)に記載されている。Freestyle 293培地中において、1mg/mL PEI Max(ポリサイエンス)を用いて、106個/mLの密度の293F細胞に各発現プラスミドをトランスフェクトさせた。トランスフェクトした細胞を、緩やかに振盪しながら37℃で7日間培養した。培養物を2,500×gで30分間遠心分離することによって上清を回収し、0.2μMのフィルターに通して濾過した。清澄化した上清にNi-セファロースビーズを加えて4℃で一晩インキュベートし、50mM Tris、300mM NaClおよび8mMイミダゾールを含む洗浄バッファーで洗浄した。次に、25mM Tris、150mM NaClおよび500mMイミダゾールを含む溶出バッファーでHisタグタンパク質を溶出した。精製したタンパク質を、10/300 Superose 6サイズ排除カラム(GEライフサイエンス)に流した。三量体であるHPIV3 Fタンパク質を含む画分をプールし、分子量カットオフが50kDaのアミコン限外濾過ユニット(Millipore)に入れて遠心分離して濃縮した。1mgの各タンパク質に2単位のビオチン化トロンビン(Millipore)を混合して一晩インキュベートすることによってタグを切断した後、ストレプトアビジンアガロース(Millipore)を加えて、さらに1時間インキュベートしてトロンビンと切断されたタグを除去し、得られた混合物をPVDFフィルター(Millipore)に通して遠心分離して、ストレプトアビジンアガロースを除去した。濃縮した試料を50%グリセロールに入れ、-20℃で保存した。
【0220】
抗原のテトラマー化
EZ-link Sulfo-NHS-LC-Biotinylation kit(サーモフィッシャー)を用いて、ビオチンとHPIV3 Fタンパク質のモル比を1:1.3として、精製したHPIV3 Fタンパク質をビオチン化した。50kDaのアミコンウルトラサイズ排除カラム(Millipore)を用いて遠心分離を行うことによって、結合しなかったビオチンを除去した。Fタンパク質の各分子に結合したビオチン分子の平均個数を測定するため、ビオチン化Fタンパク質の量を一定にし、段階的に濃度を増加させたストレプトアビジン-PE(ProZyme)で滴定を行い、室温で30分間インキュベートした。各試料をSDS-PAGEゲル(インビトロジェン)で泳動して、ニトロセルロースに転写し、1:10,000に希釈したストレプトアビジン-Alexa Fluor 680(サーモフィッシャー)とインキュベートして、ストレプトアビジン-Alexa Fluor 680試薬に結合可能なビオチンが過剰に存在していた時点を調べた。前記で決定した比率でビオチン化Fタンパク質とストレプトアビジン-APCを混合し、ストレプトアビジンを完全に飽和させ、室温で30分間インキュベートした。300Kナノセップ遠心装置(ポール・コーポレーション)を用いて、結合しなかったFタンパク質を遠心分離により除去した。製造業者の説明書に従って、ストレプトアビジン-APCであらかじめ標識したFタンパク質とDyLight 755(サーモフィッシャー)を混合して、APC/DyLight 755テトラマーを作製した。APC/DyLight 755は、1個のAPCあたり平均して4~8個のDyLight分子を含んでいた。各Fタンパク質テトラマーの濃度は、APCの吸光度(650nm、吸光係数= 0.7μM-1cm-1)を測定することによって計算した。
【0221】
テトラマーによる濃縮
10%ウシ胎仔血清と100U/mlペニシリンと100μg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM中で、100~200×106個の凍結PBMC、20~50×106個の凍結扁桃腺細胞または40~80×106個の凍結脾細胞を解凍した。細胞を遠心分離し、1%新生仔ウシ血清(サーモフィッシャー)とPBSからなる氷冷FACSバッファー50μL中に再懸濁した。2%ラットおよびマウス血清(サーモフィッシャー)の存在下で、APC/DyLight 755標識テトラマーを25nMの最終濃度で加え、室温で10分間インキュベートした。次に、APCテトラマーを5nMの最終濃度で加え、氷上で25分間インキュベートし、氷冷FACSバッファー10mLで洗浄した。各APCを認識する抗APC標識マイクロビーズ(ミルテニーバイオテク)50μLを加え、氷上で30分間インキュベートした。次に、FACSバッファー3mLを加え、磁場を印加したLSカラム(ミルテニーバイオテク)に通した。氷冷FACSバッファー5mLでカラムを1回洗浄した後、磁場から外した。プランジャーを用いて、磁場を外したカラムに氷冷FACSバッファー5mLを2回通過させ、カラムに結合していた細胞画分を溶出させた。
【0222】
フローサイトメトリー
抗体カクテルを含むFACSバッファー50μL中で細胞を氷上で30分間インキュベートし、洗浄し、FACS Aria(BD)で分析した。この抗体カクテルには、抗IgM FITC(G20-127、BD)、抗CD19 BUV395(SJ25C1、BD)、抗CD3 BV711(UCHT1、BD)、抗CD14 BV711(M0P-9、BD)、抗CD16 BV711(3G8、BD)、抗CD20 BUV737(2H7、BD)、抗IgD BV605(IA6-2、BD)、および固定可能な生存率測定用色素(FV)が含まれていた。各試料中に含まれる細胞の絶対数は、既知量のAccuCheck Counting Beads(サーモフィッシャー)を加えることにより計算した。個々のB細胞の選別は、1)空の96ウェルPCRプレートに播種し、直ちに凍結するか、または2)B細胞の播種の前日に、10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンならびに2.5μg/mLアムホテリシンを含むIMDM培地(Gibco)100μL中にフィーダー細胞を28,600個/ウェルの密度で96ウェル平底プレートにあらかじめ播種しておき、この96ウェル平底プレートにB細胞を播種することによって行った。フィーダー細胞上で選別したB細胞を37℃で13日間培養した。
【0223】
ELISA
Nuncマキシソープ96ウェルプレート(サーモフィッシャー)を、100ngのヤギ抗ヒトFab(Jackson ImmunoResearch)で4℃で90分間かけてコーティングした。各ウェルをPBSで3回洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(シグマ アルドリッチ)を含むPBSで室温で1時間ブロッキングした。抗原でコーティングしたプレートを培養上清と4℃で90分間インキュベートした。検量線は、パリビズマブの2倍段階希釈系列を用いて作製した。各ウェルをPBSで3回洗浄し、1:6000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒト全長免疫グロブリン(インビトロジェン)と1時間インキュベートした。次に、各ウェルをPBSで4回洗浄し、TMB基質(SeraCare)と5~15分間インキュベートした。Softmax Proプレートリーダー(モレキュラーデバイス)を用いて405nmで吸光度を測定した。検量線と希釈倍率を参照して各試料中の抗体の濃度を測定した。

中和アッセイ
培養上清の中和スクリーニングを行うため、Vero細胞を96ウェル平底プレートに播種し、48時間培養した。13日間培養した後、ショ糖密度勾配で精製したGFP-HPIV3を2,000プラーク形成単位(pfu)/mLに希釈したウイルス液25μLと培養上清40μLを混合して、37℃で1時間インキュベートした。培養上清とウイルスの混合液50μLをVero細胞に加えて37℃で1時間インキュベートし、ウイルスを吸着させた。次に、4%メチルセルロースを含むDMEM 100μLを各ウェルに重層した。感染の5日後に、Typhoon撮像装置を用いて蛍光性プラークを計数した。HPIV3に特異的なモノクローナル抗体の力価は、60%プラーク減少中和試験(PRNT60)により測定した。Vero細胞を24ウェルプレートに播種し、48時間培養した。1:4で段階希釈したモノクローナル抗体をDMEM 120μLに入れ、2,000pfu/mLに希釈したショ糖密度勾配精製HPIV3 120μLと混合して、37℃で1時間インキュベートした。抗体とウイルスの混合液100μLをVero細胞に加えて37℃で1時間インキュベートし、ウイルスを吸着させた。次に、4%メチルセルロースを含むDMEM 500μLを各ウェルに重層した。感染の5日後に、Typhoon撮像装置を用いて蛍光性プラークを計数した。PRNT60で測定した力価は、線形回帰分析により計算した。
【0224】
B細胞受容体のシーケンスおよびクローニング
空の96ウェルPCRプレートに入れて凍結保存した選別した個々のB細胞は、B細胞を含むプレートを解凍した後、過去の報告に従ってSuperScript IV(サーモフィッシャー)を用いて逆転写(RT)を直接行った(Wu, et al. Science 329, 856-861, (2010); Tiller, et al. J Immunol Methods 329, 112-124, (2008))。
【0225】
簡潔に述べると、50μMランダムヘキサマー(サーモフィッシャー)3μL、25mMデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP;サーモフィッシャー)0.8μL、(20U)SuperScript IV RT 1μL、(20U)RNaseOUT(サーモフィッシャー)0.5μL、10%Igepal(シグマ アルドリッチ)0.6μLおよびRNaseフリー水15μLからなるRT反応ミックス3μLを、選別された単一のB細胞を含む各ウェルに加え、50℃で1時間インキュベートした。フィーダー細胞上で選別した個々のB細胞は、13日間培養した後、上清を除去し、ドライアイス上でプレートを直ちに凍結し、-80℃で保存し、解凍した後、RNeasy Micro Kit(キアゲン)を用いてRNAを抽出した。RNA抽出により得られた全溶出液を水に代えて使用して逆転写(RT)反応を行った。RT反応を行った後、得られたcDNA 2μLをPCR反応ミックス19μlに加えて、(0.5U)HotStarTaqポリメラーゼ(キアゲン)0.2μL、50μM 3’リバースプライマー0.075μL、50μM 5’フォワードプライマー0.115μL、25mM dNTP 0.24μL、10×バッファー(キアゲン)1.9μLおよび水16.5μLを含む反応物を得た。重鎖およびκ軽鎖のPCRプログラムは、94℃で30秒、57℃で30秒および72℃で55秒を50サイクル行い、最後に72℃で10分とした。λ軽鎖のPCRプログラムは、94℃で30秒、60℃で30秒および72℃で55秒を50サイクル行い、最後に72℃で10分とした。1回目のPCRの後、得られたPCR産物2μLを2回目のPCR反応ミックス19μLに加え、(0.5U)HotStarTaqポリメラーゼ0.2μL、50μM 3’リバースプライマー0.075μL、50μM 5’フォワードプライマー0.075μL、25mM dNTP 0.24μL、10×バッファー1.9μL および水16.5μLを含む反応物を得た。1回目のPCRと同じPCRプログラムを使用した。PCR産物4μLをアガロースゲル上で泳動して、500bpの重鎖のバンドまたは450bpの軽鎖のバンドが存在することを確認した。重鎖または軽鎖のアンプリコンの存在が示されたPCR反応物5μLをExoSAP-IT(サーモフィッシャー)2μLと混合して37℃で15分間インキュベートし、次いで80℃で15分間インキュベートして過剰なプライマーとヌクレオチドを加水分解した。加水分解した2回目のPCR産物を、2回目のPCRで使用した各リバースプライマーを用いてGenewiz社にてシーケンスし、IMGT/V-Questで配列を分析して、V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメントを同定した。McGuire, et al. Nat Commun 7, 10618, (2016)の記載に従ってIn-Fusion cloning(クロンテック)を用いて、ヒトIgG1定常領域、ヒトIgK定常領域またはヒトIgL定常領域を含むpTT3由来発現ベクターに、重鎖のVDJ配列と軽鎖のVJ配列のペアをクローニングした。
【0226】
モノクローナル抗体の産生
1mg/mLのPEI Maxを用いて、Freestyle 293培地中で、重鎖発現プラスミドと軽鎖発現プラスミドのペアを1:1の比率で106個/mLの密度の293F細胞に同時にトランスフェクトさせて分泌型IgGを産生させた。トランスフェクトした細胞を、緩やかに振盪しながら37℃で7日間培養した。培養物を2,500×gで15分間を遠心分離することによって上清を回収し、0.2μMのフィルターを通して濾過した。次に、清澄化した上清をプロテインAアガロース(サーモサイエンティフィック)とインキュベートし、IgG結合バッファー(サーモサイエンティフィック)で洗浄した。IgG溶出バッファー(サーモサイエンティフィック)を用いて、1M Tris塩基含有中和バッファー(pH9.0)中に抗体を溶出させた。分子量カットオフが50kDaのアミコン限外濾過ユニットを用いて、精製抗体を濃縮するとともに、DBPSにバッファー交換した。
【0227】
バイオレイヤー干渉法(BLI)
BLIアッセイは、Octet.Red装置(ForteBio)を用いて行った。結合アッセイは、500rpmで振盪しながら室温で行った。まず、40μg/mLの精製モノクローナル抗体を含むkineticsバッファー(0.01%BSA、0.02%Tween 20および0.005%NaN3を含むPBS(pH 7.4))に抗ヒトIgGキャプチャーセンサー(ForteBio)を入れ、150秒かけて精製モノクローナル抗体をキャプチャーセンサーに固定化した。キャプチャーセンサーに精製モノクローナル抗体を固定化した後、kineticsバッファー中でベースラインシグナルを60秒間記録した。次に、精製した1μM HPIV3 Fタンパク質を含むkineticsバッファーにキャプチャーセンサーを浸漬して、300秒間の結合工程を実施した後、抗体を含まないkineticsバッファーに浸漬して、300秒間の解離相の測定を行った。最大反応は、陰性コントロール用モノクローナル抗体を用いて、アナライトを含む各時点の各ウェルからバックグラウンドシグナルを差し引いた後、結合工程の最後の5秒間のシフト(nm)を平均することによって求めた。1:1の結合モデルを用いて、ForteBioデータ解析ソフトウェアによりカーブフィッティングを行った。競合結合アッセイでは、Penta-Hisキャプチャーセンサー(ForteBio)を、1μM HisタグHPIV3Fタンパク質を含むkineticsバッファーに入れ、300秒かけてHisタグHPIV3 Fタンパク質を固定化した。キャプチャーセンサーにHisタグHPIV3 Fタンパク質を固定化した後、kineticsバッファー中でベースラインシグナルを30秒間記録した。次に、40μg/mLの第1の抗体を含むkineticsバッファーにキャプチャーセンサーを300秒間浸漬した後、40μg/mLの第2の抗体を含むkineticsバッファーに300秒間浸漬した。競合率は、第1の抗体の存在下での第2の抗体のシグナルの最大増加量を、第2の抗体のみでの最大シグナルで割ることによって求めた。
【0228】
自己反応性アッセイ
HEp-2細胞を50,000個/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、その翌日に、50%アセトンおよび50%メタノールで-20℃で10分間固定した。次に、1%Triton(シグマ アルドリッチ)と1%ウシ血清アルブミンを含むPBSを用いて室温で30分間インキュベートすることにより、細胞の透過処理とブロッキングを行った。0.1mg/mLの各モノクローナル抗体100μLを加えて、室温で30分間インキュベートした。2F5陽性コントロールは、米国国立衛生研究所のAIDS Reagent Programから入手した。次に、各ウェルをPBSで4回洗浄し、PBSで1:200に希釈したヤギ抗ヒトIgG Alexa Fluor 594(サーモフィッシャー)を加えて、暗所の室温で30分間インキュベートした。1×PBSで4回洗浄した後、EVOS Cell Imaging System(サーモフィッシャー)を用いて画像を取得した。
【0229】
構造解析
10μgのLysC(ニュー・イングランド・バイオラボ)を10mgの各IgGに加えて37℃で一晩インキュベートし、プロテインAを加えて室温で1時間インキュベートすることによりPI3-E12 Fabを作製した。得られた混合物をPVDFフィルターに通して遠心分離した後、30kDaアミコンウルトラサイズ排除カラムに通してPBS中で濃縮し、Superdex 200(GEヘルスケアライフサイエンス)を用いて、5mM Hepesと150mM NaClで溶出したサイズ排除クロマトグラフィーでさらに精製した。NT8分注ロボット(Formulatrix)を使用し、市販のスクリーニングキット(Rigaku Wizard Precipitant Synergy block #2、Molecular Dimensions Proplex screen HT-96、Hampton Research Crystal Screen HT)を使用して、蒸気拡散法により、タンパク質0.1μLとリザーバー溶液0.1μLを混合してスクリーニングを行ってPI3-E12 Fabの結晶を得た。回折データの取得に用いた結晶は、0.2Mリン酸一アンモニウム、0.1M Tris(pH8.5)および50%(±)-2-メチル-2,4-ペンタンジオールを含む溶液中で成長させた。得られた結晶はParabarオイル(Hampton)で凍結保護した。2.1Åの分解能で結晶の回折解析を行った(表3)。Fred Hutchinson Cancer Research Centerの研究所内X線発生装置を用いてデータを収集し、HKL200055を用いてデータ処理を行った。CCP4(Collaborative Computational Project, Number 4)に含まれるPhaserを用いて、PDBアクセッション番号6MJZのHPIV3 preFを探索モデルとして、分子置換法により構造を解明した(Stewart-Jones, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 115, 12265-12270, (2018); Collaborative Computational Project, N. The CCP4 suite: programs for protein crystallography. Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50, 760-763, (1994))。COOT(Emsley & Cowtan, Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 60, 2126-2132, (2004))およびPhenix(Adams, et al. Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 66, 213-221, (2010))を用いて、構造の構築および構造の精密化を繰り返し実施した。Pymol(DeLano, Curr Opin Struct Biol 12, 14-20, (2002))およびChimera(Pettersen, et al. J Comput Chem 25, 1605-1612, (2004))を用いて構造図を作製した。
【0230】
PI3-E12 FabとHPIV3 preFを1:1のモル比で混合し、4℃で一晩インキュベートすることによって、PI3-E12 Fab+HPIV3 preF複合体を形成させた。Superdex 200を用いて、5mM Hepesと150mM NaClからなる溶離液(pH 7.4)で溶出したサイズ排除クロマトグラフィーにより、PI3-E12 Fab+HPIV3 preF複合体を精製した。Kong, et al. Nat Struct Mol Biol 20, 796-803, (2013)の記載に従ってネガティブ染色電子顕微鏡法を行った。120keVのFEI Tecnai T12電子顕微鏡を用いて、30e-/Å2の電子線量で52,000倍で撮影することによりデータを収集した。この倍率は、試料の平面で1.6Åのピクセルサイズに相当する。Leginonインターフェースを用いて、デフォーカス量(公称値)を800~1,000nmとして、Tietz社製TemCam-F416 CMOSカメラで画像を取得した。cisTEMを用いて画像処理を行った(Grant, et al. Elife 7, doi:10.7554/eLife.35383 (2018))。ビニング処理を行っていない12,000個のピクセルを用いて、対称性のないC1対称として計算し、精密化を20回繰り返して最終的な再構成を行った。PI3-E12 Fab(本開示)、HPIV3(PDB ID 6MJZ(Stewart-Jones, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 115, 12265-12270, (2018))およびGNC4(PDB ID 4DME(Oshaben, et al. Biochemistry 51, 9581-9591, (2012))。フィッティングは、ChimeraのFit機能を用いて行った(Pettersen, et al. J Comput Chem 25, 1605-1612, (2004))。
【0231】
動物およびHPIV3チャレンジ
コットンラットのチャレンジ実験は、動物実験委員会の承認を受けて実施した。1群あたりN=4~5匹のラットに、105pfuのHPIV3 100μLを鼻腔内感染させた。感染の前日または翌日にモノクローナル抗体を筋肉内投与した。感染の21日前にシクロホスファミド(50mg/kg)を筋肉内投与し、免疫抑制を実施した実験期間中、3日ごとに再投与した。感染後4日目に、鼻甲介を採取して、プラークアッセイによりウイルス力価を測定した。また、感染後4日目に、肺を採取して、プラークアッセイによりウイルス力価を測定し、組織病理検査を行った。肺ホモジネートおよび鼻ホモジネートは、EMEM培地(Gibco)中で遠心分離により清澄化した。24ウェルプレートに入れた希釈した各ホモジネートに、コンフルエントまで培養した単層HEp-2細胞を二連で播種した。37℃で2時間インキュベートした後、各ウェルに0.75%メチルセルロースを重層した。4日後に、細胞を固定し、0.1%クリスタルバイオレットで1時間染色し、プラークの数を数えて、組織1gあたりのpfuとして力価を測定した。組織病理検査は、切除した肺を10%ホルマリンで膨張させ、10%ホルマリンに浸漬し、パラフィンに包埋し、薄切し、ヘマトキシリン・エオシン染色することにより行った。各スライドは、盲検化して0~4段階の重症度で点数化した。各点数を、過去に報告されている0~100%の組織病理検査尺度に変換した。Boukhvalova, et al. Bone Marrow Transplant 51, 119-126, (2016); Porter, et al. J Virol 65, 103-111 (1991)を参照されたい。
【0232】
統計分析
統計分析は、GraphPad Prism 7を用いて行った。一対統計比較は、対応のない両側t検定を用いて行った。P<0.05の場合に統計学的に有意差があると見なした。個々の試料から得たデータ点を示している。
【0233】
仮想実施例1
小型動物モデルとして、ゴールデンシリアンハムスターまたはコットンラットを使用する。予防的処置を行うため、5mg/kgの3x1抗体またはコントロール抗体をハムスターに投与し、その翌日に、HPIV1とHPIV3とを感染させ、ハムスターの体内でウイルスの複製がピークに達する感染4日後に、鼻腔および肺においてウイルスの力価を測定する。治療的処置を行うため、感染の1日後に、5mg/kgの3x1抗体またはコントロール抗体を投与する。各条件につき、5匹の動物からなる群を含める。3x1抗体を用いた処置により抗ウイルス作用を付与することができる。
【0234】
仮想実施例2
小型動物モデルとして、ゴールデンシリアンハムスターまたはコットンラットを使用する。予防的処置を行うため、5mg/kgのMxR-01抗体またはコントロール抗体をハムスターに投与し、その翌日に、RSVまたはHMPVを感染させ、ハムスターの体内でウイルスの複製がピークに達する感染4日後に、鼻腔および肺においてウイルスの力価を測定する。治療的処置を行うため、感染の1日後に、5mg/kgのMxR-01抗体またはコントロール抗体を投与する。各条件につき、5匹の動物からなる群を含める。MxR-01抗体を用いた処置により抗ウイルス作用を付与することができる。
【0235】
(vi)結語
本明細書に開示された配列および引用された配列のバリアントも本願に含まれる。生物学的活性を失うことなく、どのアミノ酸残基を置換、挿入あるいは欠失できるのかということを判断するための指標は、当技術分野でよく知られているコンピュータプログラム、例えば、DNASTARTMソフトウェア(米国ウィスコンシン州マディソン)を使用して見出すことができる。本明細書に開示されたタンパク質バリアントのアミノ酸変化は保存的アミノ酸変化であることが好ましく、すなわち、電荷が同程度のアミノ酸同士の置換または非電荷のアミノ酸同士の置換であることが好ましい。保存的アミノ酸変化には、側鎖が関連するアミノ酸ファミリーのメンバーによる置換が含まれる。
【0236】
ペプチドまたはタンパク質におけるアミノ酸の適切な保存的置換は当業者に公知であり、通常、最終的に得られる分子の生物学的活性を変えることなく、このような保存的置換を行うことができる。当業者であれば、通常、ポリペプチドの重要でない領域の1個のアミノ酸を置換しても、生物学的活性は実質的に変化しないことを熟知しているであろう(例えば、Watson et al. Molecular Biology of the Gene, 4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. Co., p. 224を参照されたい)。天然のアミノ酸は、通常、保存的置換ファミリーに分類され、具体的には、第1群:アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)およびトレオニン(Thr);第2群:(酸性):アスパラギン酸(Asp)およびグルタミン酸(Glu);第3群:(酸性;極性を持つ負電荷残基およびそれらのアミドとしても分類される):アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、AspおよびGlu;第4群:GlnおよびAsn;第5群:(塩基性;極性を持つ正電荷残基としても分類される):アルギニン(Arg)、リシン(Lys)およびヒスチジン(His);第6群(大型脂肪族非極性残基):イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、バリン(Val)およびシステイン(Cys);第7群(極性無電荷):チロシン(Tyr)、Gly、Asn、Gln、Cys、SerおよびThr;第8群(大型芳香族残基):フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)およびTyr;第9群(非極性):プロリン(Pro)、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、MetおよびTrp;第11群(脂肪族):Gly、Ala、Val、LeuおよびIle;第10群(非極性の小型脂肪族残基またはわずかに極性を持つ小型脂肪族残基):Ala、Ser、Thr、ProおよびGly;ならびに第12群(硫黄含有残基):MetおよびCysに分類される。さらなる情報は、Creighton (1984) Proteins, W.H. Freeman and Companyに記載されている。
【0237】
そのような変化を加える際に、アミノ酸の疎水性指標を考慮に入れてもよい。タンパク質上で相互に作用する生物学的機能を付与する際に、アミノ酸の疎水性指標が重要であることは、当技術分野で広く理解されている(Kyte and Doolittle, 1982, J. Mol. Biol. 157(1), 105-32)。各アミノ酸は、その疎水性と電荷特性に基づいて疎水性指標が割り当てられている(KyteおよびDoolittle、1982)。各アミノ酸の疎水性指標は、Ile(+4.5);Val(+4.2);Leu(+3.8);Phe(+2.8);Cys(+2.5);Met(+1.9);Ala(+1.8);Gly(-0.4);Thr(-0.7);Ser(-0.8);Trp(-0.9);Tyr(-1.3);Pro(-1.6);His(-3.2);グルタミン酸(-3.5);Gln(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);Asn(-3.5);Lys(-3.9);およびArg(-4.5)となっている。
【0238】
同程度の疎水性指標または疎水度を有する別のアミノ酸で特定のアミノ酸を置換しても、類似した生物学的活性を有するタンパク質が得られ、すなわち、生物学的に同等の機能性を有するタンパク質が得られることは当技術分野でよく知られている。そのような変化を加える場合、疎水性指標が±2の範囲内のアミノ酸同士の置換が好ましく、疎水性指標が±1の範囲内のアミノ酸同士の置換が特に好ましく、疎水性指標が±0.5の範囲内のアミノ酸同士の置換がさらに特に好ましい。さらに、類似のアミノ酸同士の置換は、親水性に基づいて効果的に行えることも当技術分野でよく知られている。
【0239】
米国特許公開第4,554,101号に詳しく述べられているように、各アミノ酸残基には親水性値が割り当てられており、各アミノ酸残基の親水性値は、Arg(+3.0);Lys(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);Ser(+0.3);Asn(+0.2);Gln(+0.2);Gly(0);Thr(-0.4);Pro(-0.5±1);Ala(-0.5);His(-0.5);Cys(-1.0);Met(-1.3);Val(-1.5);Leu(-1.8);Ile(-1.8);Tyr(-2.3);Phe(-2.5);Trp(-3.4)となっている。同程度の親水性値を有する別のアミノ酸で特定のアミノ酸を置換することができ、このような置換を行っても、生物学的に同等のタンパク質が得られ、特に、免疫学的に同等のタンパク質が得られることはよく知られている。そのような変化を加える場合、親水性値が±2の範囲内のアミノ酸同士の置換が好ましく、親水性値が±1の範囲内のアミノ酸同士の置換が特に好ましく、親水性値が±0.5の範囲内のアミノ酸同士の置換がさらに特に好ましい。
【0240】
先に概説したように、アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖の置換基の相対的な類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいて行ってもよい。また、本明細書に別記するように、遺伝子配列のバリアントには、コドン最適化バリアント、配列多型、スプライスバリアント、および/またはコードされた産物の機能に統計学的に有意な影響を与えない変異が含まれる。
【0241】
本明細書に開示したタンパク質、核酸および遺伝子配列のバリアントには、本明細書に開示されたタンパク質、核酸または遺伝子配列と少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性または少なくとも99%の配列同一性を有する配列も含まれる。
【0242】
「配列同一性(%)」は、配列同士を比較することによって測定された2つ以上の配列の関係性を指す。当技術分野において、「同一性」は、タンパク質配列鎖間、核酸配列鎖間または遺伝子配列鎖間のマッチングによって測定された、タンパク質配列同士、核酸配列同士または遺伝子配列同士の関連性の程度も意味する。「同一性」(「類似性」と呼ぶことも多い)は、公知の方法により容易に計算することができ、このような方法として、Computational Molecular Biology (Lesk, A. M., ed.) Oxford University Press, NY (1988);Biocomputing: Informatics and Genome Projects (Smith, D. W., ed.) Academic Press, NY (1994);Computer Analysis of Sequence Data, Part I (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds.) Humana Press, NJ (1994);Sequence Analysis in Molecular Biology (Von Heijne, G., ed.) Academic Press (1987);およびSequence Analysis Primer (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.) Oxford University Press, NY (1992)に記載のものが挙げられる。同一性の測定方法としては、試験した配列間でベストマッチが得られるように設計されたものが好ましい。同一性および類似性の測定方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにおいて体系化されている。配列アラインメントと同一性の計算は、バイオインフォマティクス計算ソフトウェアであるLASERGENEスイートに含まれるMegalignプログラム(DNASTAR社、ウィスコンシン州マディソン)を用いて行ってもよい。配列のマルチプルアラインメントは、Clustal形式のアライメント法を用いて行うこともできる(Higgins and Sharp CABIOS, 5, 151-153 (1989)、デフォルトパラメータ(ギャップペナルティ=10、ギャップ長ペナルティ=10)を使用)。関連するプログラムとして、さらに、GCGプログラムスイート(Wisconsinパッケージバージョン9.0、Genetics Computer Group(GCG)、ウィスコンシン州マディソン);BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul, et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990));DNASTAR(DNASTAR社、ウィスコンシン州マディソン);およびSmith-Watermanアルゴリズムが組み込まれたFASTAプログラム(Pearson, Comput. Methods Genome Res., [Proc. Int. Symp.] (1994), Meeting Date 1992, 111-20. Editor(s): Suhai, Sandor. Publisher: Plenum, New York, N.Y.)が挙げられる。本開示において、配列分析ソフトウェアを分析に使用した場合、分析結果は、プログラムの基準となる「デフォルト値」に基づくと解釈される。本明細書において、「デフォルト値」は、ソフトウェアの初期化時に、ソフトウェアにあらかじめ登録されている一連の数値またはパラメータを意味する。
【0243】
バリアントには、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に開示された配列にハイブリダイズし、参照配列と同じ機能を持つ核酸分子も含まれる。代表的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストランおよび断片処理済み20μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中において42℃で一晩インキュベーションした後に、0.1×SSCを用いて50℃でフィルターを洗浄することが含まれる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーの変更およびシグナル検出の変更は、主に、ホルムアミドの濃度(ホルムアミドの割合を低くすると、ストリンジェンシーが低くなる)、塩条件または温度を調節することによって行われる。例えば、中程度に高いストリンジェントな条件には、6×SSPE(20×SSPE=3M NaCl;0.2M NaH2PO4;0.02M EDTA、pH 7.4)、0.5%SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlブロッキング用サケ精子DNAを含む溶液中において37℃で一晩インキュベーションした後に、1×SSPEと0.1%SDSを用いて50℃で洗浄することが含まれる。さらに、さらに低いストリンジェンシーは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション後の洗浄を高い塩濃度(例えば5×SSC)で行うことによって達成される。前述の条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを低下させるために使用される別のブロッキング試薬を添加し、かつ/またはこのような別のブロッキング試薬に置き換えることによって様々に変更することができる。一般的なブロッキング試薬として、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNAおよび市販の専売製剤が挙げられる。特定のブロッキング試薬を添加する場合、適合性の問題により、前述のハイブリダイゼーション条件を一部変更することが必要になる場合がある。
【0244】
「特異的に結合する」とは、関連する環境試料中のその他の分子や成分とは有意に結合しないが、105M-1と同等以上の親和性またはKa(すなわち、1/Mの単位で表される特定の結合相互作用の平衡結合定数)で、結合断片(例えば、特定の結合断片)とその認識結合分子とが結合することを指す。本明細書において、「特異的に結合する」は「結合」とも言う。結合断片は、「高親和性」または「低親和性」として分類してもよい。特定の実施形態において、「高親和性」の結合断片は、少なくとも107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも1012M-1または少なくとも1013M-1のKaを有する結合断片を指す。特定の実施形態において、「低親和性」の結合断片は、107M-1以下、106M-1以下または105M-1以下のKaを有する結合断片を指す。あるいは、親和性は、特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)(単位:M)(例えば、10-5M~10-13M)として定義してもよい。特定の実施形態において、結合断片は「増強された親和性」を有していてもよく、これは、選択された結合断片または組換えられた結合断片が、その認識結合分子に対して野生型(または親の)結合断片よりも強力な結合を示すことを指す。例えば、増強された親和性は、その認識結合分子に対するKa(平衡結合定数)が基準となる結合断片よりも高いことによるものであってもよく、その認識結合分子に対するKd(解離定数)が基準となる結合断片よりも低いことによるものであってもよく、その認識結合分子に対する解離速度(Koff)が基準となる結合断片よりも低いことによるものであってもよい。特定の認識結合分子に特異的に結合する結合断片を検出するためのアッセイや、結合親和性を測定するアッセイとして、ウエスタンブロット、ELISA、BIACORE分析などの様々なものが知られている(さらに、例えば、Scatchard, et al., 1949, Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660;および米国特許公開第5,283,173号、米国特許公開第5,468,614号または類似の刊行物も参照されたい)。
【0245】
別段の記載がない限り、本開示は、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAに関する従来技術を使用して実施することができる。これらの方法は以下の刊行物に記載されている。例えば、Sambrook, et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition (1989); F. M. Ausubel, et al. eds., Current Protocols in Molecular Biology, (1987); the series Methods IN Enzymology (Academic Press, Inc.); M. MacPherson, et al., PCR: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press (1991); MacPherson et al., eds. PCR 2: Practical Approach, (1995); Harlow and Lane, eds. Antibodies, A Laboratory Manual, (1988);およびR. I. Freshney, ed. Animal Cell Culture (1987)を参照されたい。
【0246】
当業者であれば理解できるように、本明細書に開示された各実施形態は、記載された特定の構成要素、工程、材料または成分を含むか、実質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。したがって、「含む」または「含んでいる」という用語は、「含むか、実質的に~からなるか、または~からなる」という意味を有すると解釈すべきである。「含む」という移行句は、その量が多くても、記載されていない構成要素、工程、材料または成分が含まれていることを意味するが、これに限定されない。「からなる」という移行句は、記載されていない構成要素、工程、材料、成分をすべて除外する。「実質的に~からなる」という移行句は、記載された構成要素、工程、材料または成分、および実施形態に重大な影響を及ぼさない構成要素、工程、材料または成分に、実施形態の範囲を限定する。重大な影響とは、本明細書に開示した抗体とウイルスのエピトープの間での結合を統計学的に有意に低下させる影響を指す。
【0247】
別段の記載がない限り、本明細書および請求項において、分子量や反応条件などの、材料の量や特性を表すあらゆる数値は、あらゆる場合において、「約」という用語で修飾されていると解釈される。したがって、別段の記載がない限り、本明細書および添付の請求項に記載の数値パラメータは、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変動する近似値である。請求項に記載の範囲と等価の原則の適用範囲を限定するものではないが、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数値に照らして、かつ通常の端数処理を行うことによって解釈されるべきである。さらに明確に述べれば、「約」という用語は、記載の数値または範囲とともに使用された場合、当業者によって合理的に解釈される意味を有し、すなわち、記載の数値の±20%の範囲;記載の数値の±19%の範囲;記載の数値の±18%の範囲;記載の数値の±17%の範囲;記載の数値の±16%の範囲;記載の数値の±15%の範囲;記載の数値の±14%の範囲;記載の数値の±13%の範囲;記載の数値の±12%の範囲;記載の数値の±11%の範囲;記載の数値の±10%の範囲;記載の数値の±9%の範囲;記載の数値の±8%の範囲;記載の数値の±7%の範囲;記載の数値の±6%の範囲;記載の数値の±5%の範囲;記載の数値の±4%の範囲;記載の数値の±3%の範囲;記載の数値の±2%の範囲;または記載の数値の±1%の範囲で、記載の数値または範囲よりもある程度多いまたは少ないことを示す。
【0248】
広範な本発明の範囲を示す数値範囲およびパラメータは、近似値および近似範囲であるものの、具体例に記載された数値は、可能な限り正確に報告している。しかし、すべての数値は、各試験用測定に付随する標準偏差により必然的に生じる特定の誤差を本質的に含んでいる。
【0249】
本発明の説明において(特に以下の請求項の説明において)使用されている「a」、「an」、「the」およびこれらに類似した指示語は、別段の記載がない限り、または文脈上別の意味が明示されていない限り、単数ものも複数のものも包含すると解釈される。本明細書に記載の数値範囲は、その数値範囲に含まれる各数値を個別に指す簡略的な方法であることを意図している。別段の記載がない限り、各数値は、あたかも個別に本明細書に記載されているかのように、本明細書に記載されている。別段の記載がない限り、または文脈上別の意味が明示されていない限り、本明細書に記載の方法はいずれも任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるあらゆる例示の使用、または例示を示す言語(例えば「など」)は、本発明を詳しく説明することのみを目的としたものであり、請求項に記載の本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載の用語は、本発明の実施に必須の、請求項に記載されていない構成要素を示していると解釈すべきではない。
【0250】
本明細書に開示された本発明のその他の構成要素の群分けまたは本発明の様々な実施形態の群分けは、本発明を限定するものであると解釈すべきではない。各群のメンバーは、本明細書または請求項に個別に記載されていてもよく、本明細書に記載の群のその他のメンバーまたはその他の構成要素と組み合わせて本明細書または請求項に記載されていてもよい。便宜上および/または特許性の理由で、ある群の1つ以上のメンバーを別の群に加えてもよく、あるいは、ある群から1つ以上のメンバーを削除してもよいことが予想される。そのような付加や削除を行う場合、本明細書は、添付の請求項に記載のすべてのマーカッシュ群の説明を充足するように構成された群を含む。
【0251】
本発明の特定の実施形態を本明細書に記載しており、これには、本発明の実施に際して本発明者らが最良の形態であると認識している実施形態が含まれている。当然のことながら、当業者であれば、前述の詳細な説明を熟読することにより、本明細書に記載の実施形態を様々に変更できることを容易に理解できるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変形例を適宜採用することができると予想しており、本明細書に具体的に記載された態様以外の態様で本発明が実施されることも意図している。したがって、本発明は、準拠法の範囲内で可能な限り、添付の請求項に記載の本発明の主題からのあらゆる変更および本発明の主題のあらゆる等価物を含む。さらに、別段の記載がない限り、または文脈上別の意味が明示されていない限り、あらゆる変形例における前述の構成要素のあらゆる組み合わせも本発明に含まれる。
【0252】
さらに、本明細書を通して、様々な特許、刊行物、雑誌記事およびその他の文書(本明細書の引用文献)を引用している。本明細書において引用された各文献は、本明細書の一部を構成するものとして、その引用された教示が引用により本明細書に個別に援用される。
【0253】
最後に、本明細書に開示された本発明の実施形態は、本発明の原理を説明するものであると解釈される。本発明の範囲内で、その他の変更を採用してもよい。したがって、一例として、本明細書の教示に従って、本発明の別の構成を使用してもよいが、これに限定されない。したがって、本発明は、本明細書の明示および記載に厳密に限定されるものではない。
【0254】
本明細書に記載の詳細は一例であり、本発明の好ましい実施形態を例示することのみを目的としており、最も有用なものであると考えられるものを提供するため、かつ本発明の様々な実施形態の原理と概念上の態様を容易に理解できるものするために提示している。この点に関して、本発明の基本的な理解に必要な情報よりも詳しく本発明の構造の詳細を説明することはしておらず、当業者であれば、図面および/または実施例を参照しながら本発明の説明を熟読することによって、本発明のいくつかの形態をどのようにして実際に具現化すればよいのかを容易に理解できるであろう。
【0255】
本開示において用いられる定義および説明は、実施例において明白かつ明確な変更が加えられない限り、あるいは用語の意味によって解釈が意味をなさなくなったり、実質的に意味なさなくなる場合を除いて、将来的な解釈を制御することが意図されている。用語の解釈から用語の定義が意味をなしていなかったり、実質的に意味をなしていない場合は、ウェブスター辞典(第3版)またはOxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Eds. Attwood T et al., Oxford University Press, Oxford, 2006)などの当業者に公知の辞書から用語の定義を引用されたい。
図1
図2A-1】
図2A-2】
図2A-3】
図2B
図2C-1】
図2C-2】
図2C-3】
図2D
図2E-1】
図2E-2】
図2E-3】
図2F
図2G
図2H-1】
図2H-2】
図2I
図3A-B】
図3C
図3D-E】
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D-1】
図4D-2】
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A-B】
図7
図8
図9A-B】
図9C
図10A-C】
図11A-B】
図11C
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B-C】
図19D-E】
【配列表】
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【国際調査報告】