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  • 特表-多孔質負極活物質及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】多孔質負極活物質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20240214BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240214BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
C01B33/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552097
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 CN2021078017
(87)【国際公開番号】W WO2022178798
(87)【国際公開日】2022-09-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506155598
【氏名又は名称】上海杉杉科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】馬飛
(72)【発明者】
【氏名】魏良勤
(72)【発明者】
【氏名】呉志紅
(72)【発明者】
【氏名】李鳳鳳
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA02
4G072BB05
4G072BB15
4G072DD07
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH01
4G072HH14
4G072JJ02
4G072JJ09
4G072LL03
4G072MM02
4G072MM36
4G072MM38
4G072QQ09
4G072RR11
4G072RR12
4G072RR15
4G072TT01
4G072TT08
4G072UU30
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA14
(57)【要約】
本出願は、多孔質負極活物質及びその製造方法を提供し、ここで、前記多孔質負極活物質は、0~4価のシリコン元素と金属ドーピング元素とを含む第1の構造を含み、ここで、前記シリコン元素の質量パーセントは40%以上であり、前記金属ドーピング元素の質量パーセントは1%~15%であり、前記第1の構造は、孔径が2nm未満であるミクロ細孔と、孔径が2nm~50nmであるメソ細孔とを含む多孔質構造を含み、前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒をさらに含み、前記多孔質負極活物質の吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5cm/g~25cm/gである。本出願の技術案の多孔質負極活物質は、電池の急速充電能力及びサイクル性能を向上させることができ、またサイクル過程での電池の膨張を低減することもできる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質負極活物質であって、
0~4価のシリコン元素と金属ドーピング元素とを含む第1の構造を含み、ここで、前記シリコン元素の質量パーセントは40%以上であり、前記金属ドーピング元素の質量パーセントは1%~15%であり、
前記第1の構造は、孔径が2nm未満であるミクロ細孔と、孔径が2nm~50nmであるメソ細孔とを含む多孔質構造を含み、
前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒をさらに含み、
前記多孔質負極活物質の吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5cm/g~25cm/gである、ことを特徴とする多孔質負極活物質。
【請求項2】
前記第1の構造において、0≦mSi(4価)/mSi(0価)≦1であり、ここで、前記mSi(4価)は4価のシリコン元素の質量であり、mSi(0価)は0価のシリコン元素の質量である、ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質負極活物質。
【請求項3】
前記金属ドーピング元素は、Li、Na、Ge、Mg、Ca、Al及びBeのうちの少なくとも一つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質負極活物質。
【請求項4】
前記第1の構造の表面に塗布される第2の構造をさらに含み、前記第2の構造は、無定形炭素又は黒鉛化炭素のうちの少なくとも一つを含み、前記第2の構造の総質量に対する炭素元素の質量の割合は80%以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質負極活物質。
【請求項5】
前記第2の構造の厚さは0nm~40nmであり、前記多孔質負極活物質の平均粒径は0.1μm~18μmである、ことを特徴とする請求項4に記載の多孔質負極活物質。
【請求項6】
多孔質負極活物質の製造方法であって、
単体状態のシリコンと、シリコンの4価の酸化状態と、金属ドーピング元素とを含む混合物を提供することであって、前記シリコン元素の質量パーセントが40%以上であり、前記金属ドーピング元素の質量パーセントが1%~15%であることと、
前記混合物を溶融させ、20℃/min以上の冷却速度で室温まで冷却させ、第1の構造を得ることとを含み、
前記第1の構造は、0~4価のシリコン元素と金属ドーピング元素とを含み、
前記第1の構造は、孔径が2nm未満であるミクロ細孔と、孔径が2nm~50nmであるメソ細孔とを含む多孔質構造を含み、
前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒をさらに含み、
前記多孔質負極活物質の吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5cm/g~25cm/gである、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記第1の構造において、0≦mSi(4価)/mSi(0価)≦1であり、ここで、前記mSi(4価)は4価のシリコン元素の質量であり、mSi(0価)は0価のシリコン元素の質量である、ことを特徴とする請求項6に記載の多孔質負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記金属ドーピング元素は、Li、Na、Ge、Mg、Ca、Al及びBeのうちの少なくとも一つを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の多孔質負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記第1の構造の表面に第2の構造を塗布することをさらに含み、前記第2の構造は、無定形炭素又は黒鉛化炭素のうちの少なくとも一つを含み、前記第2の構造の総質量に対する炭素元素の質量の割合は80%以上である、ことを特徴とする請求項6に記載の多孔質負極活物質の製造方法。
【請求項10】
多孔質負極活物質の製造方法であって、
単体状態のシリコンと、シリコンの4価の酸化状態と、金属ドーピング元素とを含む混合物を提供することであって、前記シリコン元素の質量パーセントが40%以上であり、前記金属ドーピング元素の質量パーセントが1%~15%であることと、
前記混合物を第1の温度まで昇温させ、所定の真空度で、前記混合物を第2の温度まで降温させ、前記第1の温度と前記第2の温度との温度差が300℃以上であり、第1の構造を得ることとを含み、
前記第1の構造は、0~4価のシリコン元素と金属ドーピング元素とを含み、
前記第1の構造は、孔径が2nm未満であるミクロ細孔と、孔径が2nm~50nmであるメソ細孔とを含む多孔質構造を含み、
前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒をさらに含み、
前記多孔質負極活物質の吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5cm/g~25cm/gである、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第1の温度は1000℃~1400℃であり、前記第2の温度は400℃~900℃であり、前記所定の真空度は10-3Pa~10Paである、ことを特徴とする請求項10に記載の多孔質負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記第1の構造において、0≦mSi(4価)/mSi(0価)≦1であり、ここで、前記mSi(4価)は4価のシリコン元素の質量であり、mSi(0価)は0価のシリコン元素の質量である、ことを特徴とする請求項10に記載の多孔質負極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記金属ドーピング元素は、Li、Na、Ge、Mg、Ca、Al及びBeのうちの少なくとも一つを含む、ことを特徴とする請求項10に記載の多孔質負極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記第1の構造の表面に第2の構造を塗布することをさらに含み、前記第2の構造は、無定形炭素又は黒鉛化炭素のうちの少なくとも一つを含み、前記第2の構造の総質量に対する炭素元素の質量の割合は80%以上である、ことを特徴とする請求項10に記載の多孔質負極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウムイオン電池分野に関し、特に多孔質負極活物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン系材料は、リチウム貯蔵容量の顕著な優位性を有するが、現在、高圧密系においてそのレート特性が従来の黒鉛負極に及ばないため、日増しに高まる電池の急速充電要求に対応するために、シリコン系材料の動力学的性能を向上させる必要性が依然として存在する。
電池の急速充電能力を向上させるために、負極材料にトンネル構造を設計することが提案されており、電池の急速充電能力を良好にすることができるが、電池のサイクル失効が加速された。また、従来技術において、多孔質負極材料を製造する際に、シリコン酸化物を用いて、酸処理により多孔質構造を得る場合が多く、酸腐食性が強く、コストが高く、造孔後の体積密度の低下が激しく、サイクル性能が悪化するなどの問題があり、大規模な応用が困難である。
【発明の概要】
【0003】
本出願は、多孔質負極活物質及びその製造方法を提供し、負極材料が良好な細孔フィーチャを有するようにし、電池の急速充電能力及びサイクル性能を向上させるとともに、サイクル過程での電池の膨張を低減することができる。
本出願の一態様は、多孔質負極活物質を提供し、0~4価のシリコン元素と金属ドーピング元素とを含む第1の構造を含み、ここで、前記シリコン元素の質量パーセントは40%以上であり、前記金属ドーピング元素の質量パーセントは1%~15%であり、前記第1の構造は、孔径が2nm未満であるミクロ細孔と、孔径が2nm~50nmであるメソ細孔とを含む多孔質構造を含み、前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒をさらに含み、前記多孔質負極活物質の吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5cm/g~25cm/gである。
本出願の実施例では、前記第1の構造において、0≦mSi(4価)/mSi(0価)≦1であり、ここで、前記mSi(4価)は4価のシリコン元素の質量であり、mSi(0価)は0価のシリコン元素の質量である。
本出願の実施例では、前記金属ドーピング元素は、Li、Na、Ge、Mg、Ca、Al及びBeのうちの少なくとも一つを含む。
本出願の実施例では、前記の多孔質負極活物質は、前記第1の構造の表面に塗布される第2の構造をさらに含み、前記第2の構造は、無定形炭素又は黒鉛化炭素のうちの少なくとも一つを含み、前記第2の構造の総質量に対する炭素元素の質量の割合は80%以上である。
本出願の実施例では、前記第2の構造の厚さは0nm~40nmであり、前記多孔質負極活物質の平均粒径は0.1μm~18μmである。
本出願の別の態様は、多孔質負極活物質の製造方法をさらに提供し、前記方法は、単体状態のシリコンと、シリコンの4価の酸化状態と、金属ドーピング元素とを含む混合物を提供することであって、前記シリコン元素の質量パーセントが40%以上であり、前記金属ドーピング元素の質量パーセントが1%~15%であることと、前記混合物を溶融させ、20℃/min以上の冷却速度で室温まで冷却させ、第1の構造を得ることとを含み、前記第1の構造は、0~4価のシリコン元素と金属ドーピング元素とを含み、前記第1の構造は、孔径が2nm未満であるミクロ細孔と、孔径が2nm~50nmであるメソ細孔とを含む多孔質構造を含み、前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒をさらに含み、前記多孔質負極活物質の吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5cm/g~25cm/gである。
本出願の実施例では、前記第1の構造において、0≦mSi(4価)/mSi(0価)≦1であり、ここで、前記mSi(4価)は4価のシリコン元素の質量であり、mSi(0価)は0価のシリコン元素の質量である。
本出願の実施例では、前記金属ドーピング元素は、Li、Na、Ge、Mg、Ca、Al及びBeのうちの少なくとも一つを含む。
本出願の実施例では、前記の多孔質負極活物質の製造方法は、前記第1の構造の表面に第2の構造を塗布することをさらに含み、前記第2の構造は、無定形炭素又は黒鉛化炭素のうちの少なくとも一つを含み、前記第2の構造の総質量に対する炭素元素の質量の割合は80%以上である。
本出願は、多孔質負極活物質の別の製造方法をさらに提供し、前記方法は、単体状態のシリコンと、シリコンの4価の酸化状態と、金属ドーピング元素とを含む混合物を提供することであって、前記シリコン元素の質量パーセントが40%以上であり、前記金属ドーピング元素の質量パーセントが1%~15%であることと、前記混合物を第1の温度まで昇温させ、所定の真空度で、前記混合物を第2の温度まで降温させ、前記第1の温度と前記第2の温度との温度差が300℃以上であり、第1の構造を得ることとを含み、前記第1の構造は、0~4価のシリコン元素と金属ドーピング元素とを含み、前記第1の構造は、孔径が2nm未満であるミクロ細孔と、孔径が2nm~50nmであるメソ細孔とを含む多孔質構造を含み、前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒をさらに含み、前記多孔質負極活物質の吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5cm/g~25cm/gである。
本出願の実施例では、前記第1の温度は1000℃~1400℃であり、前記第2の温度は400℃~900℃であり、前記所定の真空度は10-3Pa~10Paである。
本出願の実施例では、前記第1の構造において、0≦mSi(4価)/mSi(0価)≦1であり、ここで、前記mSi(4価)は4価のシリコン元素の質量であり、mSi(0価)は0価のシリコン元素の質量である。
本出願の実施例では、前記金属ドーピング元素は、Li、Na、Ge、Mg、Ca、Al及びBeのうちの少なくとも一つを含む。
本出願の実施例では、前記の多孔質負極活物質の製造方法は、前記第1の構造の表面に第2の構造を塗布することをさらに含み、前記第2の構造は、無定形炭素又は黒鉛化炭素のうちの少なくとも一つを含み、前記第2の構造の総質量に対する炭素元素の質量の割合は80%以上である。
本出願の技術案の多孔質負極活物質は、第1の構造を含み、前記第1の構造は、ミクロ細孔とメソ細孔の両方を含み、ここで、前記ミクロ細孔は、拡散経路を増加させ、レートの向上に有利であり、メソ細孔は、体積膨張によるサイクル性能の減衰を緩和することができ、サイクル安定性に有利であり、それとともに前記第1の構造は、シリコン結晶粒をさらに含み、前記シリコン結晶粒のサイズは10nm以下であり、そのため前記多孔質負極活物質を負極に用いる場合、リチウムとの化合の動力学的性能がより良好であり、ひいては電池の急速充電能力及びサイクル性能を向上させる。
本出願の技術案の多孔質負極活物質の製造方法において、その原料は、単体状態のシリコンと、シリコンの4価の酸化状態と、金属ドーピング元素とを含み、ここで、前記シリコン元素の質量パーセントは40%以上であり、前記金属ドーピング元素の質量パーセントは1%~15%であり、製造プロセスに対する調整と合わせて、製造された多孔質負極活物質が良好な細孔フィーチャを有するようにし、ひいては電池の急速充電能力及びサイクル性能を向上させるとともに、サイクル過程での電池の膨張を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
以下の図面には、本出願に開示された例示的実施例が詳しく記述されている。ここで、図面のいくつかの図において、同じ参照番号は、類似している構造を表す。当業者によって理解されるように、これらの実施例は非限定的で例示的な実施例であり、図面は単に例示及び説明のみのために用いられ、本出願の範囲を限定することを意図するものではなく、他の形態の実施例も本出願の発明の目的を同様に達成することができる。図面は縮尺どおりに描かれていないことが理解されるべきである。ここで、
図1】本出願の実施例1、実施例2及び比較例1で製造された負極活物質の孔径分布図である。
図2】本出願の実施例1、実施例2及び比較例1で製造された負極活物質の吸脱着曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の説明は、当業者が本出願における内容を作成及び使用することを可能にするために、本出願の特定の応用シナリオと要件を提供した。開示された実施例に対する様々な部分的な修正は、当業者にとって明らかであり、且つここで定義された一般原理は、本出願の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施例及び用途に応用され得る。そのため、本出願は、示された実施例に限定されるものではなく、請求項と一致する最も広い範囲である。
【0006】
以下では、実施例及び図面を参照して、本発明の技術案を詳しく説明する。
本出願の実施例は、多孔質負極活物質を提供し、前記多孔質負極活物質は、原子価が0~4価であるシリコン元素と金属ドーピング元素とを含む第1の構造を含み、前記金属ドーピング元素の存在により、材料全体は電気的中性を示すことができ、前記金属ドーピング元素は、Li、Na、Mg、Ca、Al及びBeのうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記金属ドーピング元素は、多孔質負極活物質において、原子状態又はイオン状態、例えば、Mg単体、Al単体などで存在してもよく、又は前記金属ドーピング元素は、電子受容能を持つ元素と結合して、金属酸化物又は金属塩、例えば、MgO、NaO、CaO、NaPO、MgSOなどを形成することができる。前記金属ドーピング元素はまた、原子価が0~4価であるシリコン元素と結合して、ケイ酸塩、例えば、MgSiO、CaSiO、LiSiO又はNaSiOなどを形成することもできる。それとともに、前記金属ドーピング元素と、原子価の0~4価であるシリコン元素とが結合して形成されたケイ酸塩は、堆積時にトンネル構造を形成することができる。
前記金属ドーピング元素のドーピング量は、電池の1サイクル目のクーロン効率、サイクル性能及び負極材料のグラム容量と密接な関係があり、前記金属ドーピング元素のドーピング量が高いほど、電池の1サイクル目のクーロン効率が高くなり、しかしながら電池のサイクル性能が、上昇してから低下する傾向を呈し、金属ドーピング元素の添加量の増加に伴って、単位質量当たりに吸蔵可能な活性リチウムの含有量が減少する。これにより、金属ドーピング元素のドーピング量を制御することによって、活性リチウムを吸蔵した後の多孔質負極活物質の高温保存条件下での特性を変えることができ、それとともに電池のサイクル性能及び1サイクル目のクーロン効率を改善することもできる。なお、研究開発の過程で、前記金属ドーピング元素のドーピング量がケイ酸塩の堆積形態に影響を与え、前記ドーピング元素の質量パーセントが1%~15%である場合、ケイ酸塩の堆積形態が良好な細孔構造特性を有することが分かった。
【0007】
本出願の実施例では、前記第1の構造の総質量に対する前記シリコン元素の質量の割合は40%以上であり、0≦mSi(4価)/mSi(0価)≦1であり、ここで、前記mSi(4価)は4価のシリコン元素の質量であり、mSi(0価)は0価のシリコン元素の質量である。原子価が0~4価であるシリコン元素は、単体状態で存在するシリコン、シリコン酸化物SiOx(0<x≦2)及びケイ酸塩であってもよく、前記ケイ酸塩の一般式はRySiOであり、ここで、1≦y≦2であり、Rは前記のドーピング元素である。シリコン元素及び金属ドーピング元素の含有量は、第1の構造に含まれるシリコン単体、シリコン酸化物及びケイ酸塩の間の相対的な含有量を調整することによって実現され得る。
前記第1の構造は、ミクロ細孔とメソ細孔とを含む多孔質構造を含み、ここで、前記ミクロ細孔の存在により、負極材料は、多くの拡散経路を有し、レートの向上に有利であり、一方メソ細孔は、体積膨張によるサイクル性能の減衰を緩和することができ、サイクル安定性に有利である。前記ミクロ細孔の孔径は2nm未満であり、例えば、前記ミクロ細孔の孔径は0.2nm、0.5nm、0.8nm、1nm、1.5nmなどであり、前記メソ細孔の孔径は2nm~50nmであり、例えば、前記メソ細孔の孔径は2nm、5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nmなどである。前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒をさらに含み、サイズの小さいシリコン結晶粒は、リチウムとの化合の動力学的性能が良好であるため、負極材料に良好な急速充電能力及びサイクル性能を付与することができる。
【0008】
前記第1の構造が多孔質構造を有するため、前記多孔質負極活物質の吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5cm/g~25cm/gであり、多孔質負極活物質は、吸脱着曲線におけるヒステリシスループが該範囲にある場合、電池に応用されて、良好なサイクル性能及び急速充電能力を有する。これは、多孔質負極活物質にはトンネル構造があり、リチウムイオンの拡散及び電解液の含浸に有利であり、形成された固体電解質膜(SEI)の構造が安定的であり、サイクル中の電池故障を防止することができ、それとともに多重化されたリチウムイオン拡散経路が、急速充電特性の改善に有利であるからである。吸着量が小さすぎ、即ち細孔体積が小さい場合、拡散経路が不十分になり、動力学に影響を与え、吸着量が大きすぎ、即ち細孔体積が大きすぎる場合、電解液の分解が多くなりすぎ、抵抗が大きくなり、それによって急速充電性能が低下し、サイクル減衰が速くなる。
【0009】
多孔質負極活物質は、多孔質構造が存在するため、高い比表面積を有し、本出願の実施例の多孔質負極活物質の比表面積は2m/g~15m/gである。
【0010】
いくつかの実施例において、前記多孔質負極活物質は、前記第1の構造の表面に塗布される第2の構造をさらに含み、前記第2の構造は、無定形炭素又は黒鉛化炭素のうちの少なくとも一つを含み、前記第2の構造の総質量に対する炭素元素の質量の割合は80%以上である。前記第2の構造の厚さは、例えば、0nm~40nmであり、前記多孔質負極活物質の平均粒径は0.1μm~18μmである。前記第2の構造の厚さが0nmであり、即ち前記多孔質負極活物質が第1の構造のみを含む場合、前記第2の構造は、多孔質負極活物質の導電性能を改善することができる。
【0011】
いくつかの実施例において、前記第2の構造は単層構造であってもよく、例えば、前記第2の構造は、無定形炭素を含む単層構造であってもよく、又は黒鉛化炭素を含む単層構造であってもよく、さらに又は無定形炭素と黒鉛化炭素の両方を含む単層構造であってもよい。別のいくつかの実施例において、前記第2の構造は、多層構造であってもよく、例えば、無定形炭素層と黒鉛化炭素層とを含んでもよく、無定形炭素層及び黒鉛化炭素層の層数及び塗布順序が限定されない。本出願の実施例に記載の「塗布」は、部分的な塗布であってもよく、完全な塗布であってもよく、塗布の程度が前記多孔質負極活物質の製造プロセスによって異なる。
【0012】
本出願の実施例は、多孔質負極活物質の製造方法をさらに提供し、以下を含む:
ステップS1:単体状態のシリコンと、シリコンの4価の酸化状態と、金属ドーピング元素とを含む混合物を提供し、前記金属ドーピング元素は、Li、Na、Ge、Mg、Ca、Al及びBeのうちの少なくとも一つを含む。
前記単体状態のシリコンは、例えば、ポリシリコンであり、前記シリコンの4価の酸化状態は、例えば、シリカであり、シリカを含む原料は、例えば、石英である。前記シリコンの4価の酸化状態はさらに、ケイ酸塩、例えば、一般式がRySiOである化合物であってもよく、ここで、1≦y≦2であり、RはI、II、III族の主族元素、例えば、Li、Na、Mg、Caなどである。
【0013】
前記金属ドーピング元素は、金属単体、金属酸化物、金属の水酸化物又は金属塩などに由来するものであってもよく、例えば、Mg単体、Li単体、Ca単体、Ge単体、MgO、NaO、CaO、NaPO、MgSO、LiOH、LiCO、MgCO、MgSiO、CaSiO、LiSiO又はNaSiOなどである。本出願のいくつかの実施例において、前記第1の混合物を形成する原料物質は、シリコン単体、シリカ及びMg単体を含み、本出願の他のいくつかの実施例において、前記原料物質は、シリコン単体、シリカ及び酸化マグネシウムを含み、本出願のさらにいくつかの実施例において、前記原料物質は、シリコン単体、シリカ及び水酸化リチウムを含む。
【0014】
前記混合物において、前記シリコン元素の質量パーセントは40%以上であり、前記金属ドーピング元素の質量パーセントは1%~15%であり、且つ形成された前記第1の構造において、0≦mSi(4価)/mSi(0価)≦1であるように、各原料物質の組成比を制御し、ここで、前記mSi(4価)は4価のシリコン元素の質量であり、mSi(0価)は0価のシリコン元素の質量である。
【0015】
ステップS2:前記混合物を溶融させ、室温まで冷却させ、第1の構造を得る。いくつかの実施例において、前記混合物を非酸化性ガス保護下で溶融状態に加熱してもよく、前記非酸化性ガスは、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどのガスのような不活性ガスであり、前記の、溶融状態に加熱される時の温度は限定されず、実際の状況に応じて確定される。注意すべきこととして、形成された第1の構造には多孔質構造が含まれ、前記多孔質構造は、孔径が2nm未満であるミクロ細孔と、孔径が2nm~50nmであるメソ細孔との両方を含み、それとともに前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒を含み、製造された多孔質負極活物質の吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5m/g~25m/gであるように、冷却速度を厳しく制御し、冷却速度を20℃/min以上にする必要があり、そのため本出願の実施例による製造方法で得られた多孔質負極活物質は、良好な細孔フィーチャを有し、電池の急速充電能力及びサイクル性能を有効に向上させるとともに、サイクル過程での電池の膨張を低減することができる。
【0016】
本出願のいくつかの実施例において、前記多孔質負極活物質の製造方法は、前記第1の構造の表面に第2の構造を塗布することをさらに含み、前記第2の構造は、無定形炭素又は黒鉛化炭素のうちの少なくとも一つを含み、前記第2の構造の総質量に対する炭素元素の質量の割合は80%以上である。
前記第2の構造を形成する方法は、非酸化性雰囲気において、炭素源物質を分解させ、分解生成物を得ることを含んでもよく、前記分解生成物に対応するラマンスペクトルId/Ig<0.5であり、電気伝導率>10S・m-1であり、ここで、前記炭素源物質は、ガス状炭素源物質、気化した炭素源物質又は霧化した炭素源物質のうちの一つ以上を含み、前記ガス状炭素源物質は、室温でガス状である炭化水素系及び室温でガス状であるアルデヒド系を含み、前記ガス状炭素源物質は、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、及びプロピレンを含み、前記気化した炭素源物質は、室温で液体であり、室温より高いが、予備分解領域の温度より低い場合にガス状である炭素質物質であり、前記気化した炭素源物質は、n-ヘキサン、エタノール、ベンゼンを含む。前記霧化した炭素源物質は、加熱によって蒸発しにくいが、アトマイズ装置を介して小さな液滴に製造することができる物質であり、例えば、温度が予備分解領域よりも低い時に液体である物質であり、前記霧化した炭素源物質は、ポリエチレン、ポリプロピレンを含み、前記粉末化処理された第1の構造と前記分解生成物を蒸着塗布反応させて、前記粉末化処理された第1の構造の表面に、無定形炭素塗布層又は黒鉛化炭素塗布層又は無定形炭素塗布層と黒鉛化炭素塗布層とを含む複合層を形成する。
【0017】
蒸着塗布反応が発生する場合、窒素含有物質を通過させてもよく、前記窒素含有物質は、NH、メラミン、アセトニトリル、アニリン又はブチルアミンのうちの少なくとも一つを含む。前記窒素含有物質を通過させることにより、窒素原子がドーピングされた無定形炭素塗布層及び/又は黒鉛化炭素塗布層を得ることができる。窒素原子がドーピングされた前記無定形炭素塗布層及び/又は黒鉛化炭素塗布層は、材料の導電性をさらに向上させることによって、電池の内部抵抗を低減し、ひいては電池の大電流充放電能力を確保することができる。
【0018】
本出願の実施例に記載の多孔質負極活物質の製造方法において、混合物におけるシリコン元素とドーピング元素との相対的配合比率を制御し、溶融状態の混合物を20℃/min以上の冷却速度で室温まで冷却させることによって、得られた第1の構造は、孔径が2nm未満であるミクロ細孔と、孔径が2nm~50nmであるメソ細孔とを含む多孔質構造を有し、それとともに前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒をさらに含み、電池の急速充電能力及びサイクル性能を有効に向上させるとともに、サイクル過程での電池の膨脹を低減することができる。
本出願の実施例に記載の製造方法を用いて形成された多孔質負極活物質は、その吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5m/g~25m/gである。
【0019】
本出願の実施例は、多孔質負極活物質の別の製造方法をさらに提供し、以下を含む:
ステップS1:単体状態のシリコンと、シリコンの4価の酸化状態と、金属ドーピング元素とを含む混合物を提供する。
前記単体状態のシリコンは、例えば、ポリシリコンであり、前記シリコンの4価の酸化状態は、例えば、シリカであり、シリカを含む原料は、例えば、石英である。前記シリコンの4価の酸化状態はさらに、ケイ酸塩、例えば、一般式がRySiOである化合物であってもよく、ここで、1≦y≦2であり、RはI、II、III族の主族元素、例えば、Li、Na、Mg、Caなどである。
【0020】
前記金属ドーピング元素は、Li、Na、Ge、Mg、Ca、Al及びBeのうちの少なくとも一つを含み、前記金属ドーピング元素は、金属単体、金属酸化物、金属の水酸化物又は金属塩などに由来するものであってもよく、例えば、Mg単体、Li単体、Ca単体、Ge単体、MgO、NaO、CaO、NaPO、MgSO、LiOH、LiCO、MgCO、MgSiO、CaSiO、LiSiO又はNaSiOなどである。本出願のいくつかの実施例において、前記第1の混合物を形成する原料物質は、シリコン単体、シリカ及びMg単体を含み、本出願の他のいくつかの実施例において、前記原料物質は、シリコン単体、シリカ及び酸化マグネシウムを含み、本出願のさらにいくつかの実施例において、前記原料物質は、シリコン単体、シリカ及び水酸化リチウムを含む。
前記混合物において、前記シリコン元素の質量パーセントは40%以上であり、前記金属ドーピング元素の質量パーセントは1%~15%であり、且つ形成された第1の構造において、0≦mSi(4価)/mSi(0価)≦1であるように、各原料物質の組成比を制御し、ここで、前記mSi(4価)は4価のシリコン元素の質量であり、mSi(0価)は0価のシリコン元素の質量である。
【0021】
ステップS2:前記混合物を第1の温度まで昇温させ、所定の真空度で、前記混合物を第2の温度まで降温させ、前記第1の温度と前記第2の温度との温度差が300℃以上であり、第1の構造を得る。前記混合物を第1の温度まで昇温させる過程は非酸化性ガス保護下で行われてもよく、前記非酸化性ガスは、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどのガスのような不活性ガスである。前記第1の温度と前記第2の温度との温度差が300℃以上であるように制御することにより、形成された第1の構造は良好な細孔フィーチャを有し、前記第1の構造は、孔径が2nm未満であるミクロ細孔と、孔径が2nm~50nmであるメソ細孔との両方を含み、それとともに前記第1の構造は、サイズが10nm以下であるシリコン結晶粒をさらに含み、製造された多孔質負極活物質の吸脱着曲線にはヒステリシスループがあり、前記ヒステリシスループに対応する相対圧が0.4~1であり、吸着量が5m/g~25cm/gである。
【0022】
本出願のいくつかの実施例において、前記第1の温度は1000℃~1400℃であり、前記第2の温度は400℃~900℃であり、前記所定の真空度は10-3Pa~10Paである。
本出願のいくつかの実施例において、前記多孔質負極活物質の製造方法は、前記第1の構造の表面に第2の構造を塗布することをさらに含み、前記第2の構造は、無定形炭素又は黒鉛化炭素のうちの少なくとも一つを含み、前記第2の構造の総質量に対する炭素元素の質量の割合は80%以上である。前記第2の構造の形成方法は、前述の内容を参照してもよく、ここでは説明を省略する。
【0023】
実施例1
シリコン単体と、シリカと、Mg単体とを含む混合物を提供し、ここで、シリコン元素の質量パーセントは45%であり、前記マグネシウム元素の質量パーセントは10%である。
前記混合物をアルゴンガス保護下で、溶融状態に加熱した後、20℃/minの冷却速度で室温まで冷却させ、第1の構造を得た。
そして、前記第1の構造を粉末化処理し、形成された粉末の表面に8nmの無定形炭素塗布層及び黒鉛化炭素塗布層を蒸着させ、形成された前記多孔質負極活物質の性能パラメータは表1に示されるものを参照されたい。
【0024】
実施例2~5
具体的なプロセスの説明は、実施例1を参照されたく、具体的なプロセスデータ及び形成された前記多孔質負極活物質の性能パラメータは表1に示されるものを参照されたい。
【0025】
比較例1
具体的なプロセスの説明は、実施例1を参照されたく、具体的なプロセスデータ及び形成された前記多孔質負極活物質の性能パラメータは表1に示されるものを参照されたい。
【0026】
実施例6
シリコン単体と、シリカと、マグネシウム単体とを含む混合物を提供し、ここで、シリコン元素の質量パーセントは43%であり、前記マグネシウム元素の質量パーセントは10%である。
前記混合物をアルゴンガス保護下で第1の温度まで昇温させ、真空度を10-1Paにし、前記混合物を第2の温度まで降温させ、第1の構造を得て、前記第1の温度は1000℃~1400℃であり、前記第2の温度は400℃~900℃であり、第1の温度と第2の温度との温度差を300℃に制御した。
そして、前記第1の構造を粉末化処理し、形成された粉末の表面に8nmの無定形炭素塗布層及び黒鉛化炭素塗布層を蒸着させ、形成された前記多孔質負極活物質の性能パラメータは表2に示されるものを参照されたい。
【0027】
実施例7~10
具体的なプロセスの説明は、実施例6を参照されたく、具体的なプロセスデータ及び形成された前記多孔質負極活物質の性能パラメータは表2に示されるものを参照されたい。
【0028】
比較例2
具体的なプロセスの説明は、実施例6を参照されたく、具体的なプロセスデータ及び形成された前記多孔質負極活物質の性能パラメータは表2に示されるものを参照されたい。
【0029】
実施例1~10及び比較例1~2で得られた負極活物質を以下のように試験した:
(1)試験機器としてマイクロメリティックス社のASAP2020を用い、図1及び図2に示すように、実施例1、実施例2及び比較例1の孔径分布図及び吸脱着曲線を得た。試験方法は以下のとおりである:
ソフトウェアバージョンがV3.04Hであり、吸着媒体がNであり、真空脱気前処理温度が150度であり、前処理時間が1時間であり、試料質量が0.3±0.05gであり、BJH モデルを用い、Faasで修正し、Halsey:t=3.54*[-5/ln(P/P)]^0.333であり、孔径範囲が0.1nm~300.0000nmであり、吸着質特性因子kが0.95300nmであり、密度換算係数が0.0015468であり、両端開孔率が0.00であり、BJHモデルの脱着により得られた孔径分布範囲に基づいて、自動的に計算して平均孔径を得て、結果は表1及び表2に示されている。BJHモデルの脱着のdV/dlog(w) Pore Volumeに基づいて、孔径分布図を得た。
(2)実施例1~10及び比較例1~2で製造された負極活物質、PAA(ポリプロピレン酸接着剤)及びSP(導電性カーボンブラック)を80:10:10の質量比で混合し、1mol/LのLiPFを電解液として、ボタン電池系(型番CR2430)に応用し、25℃下で、以下の電気化学的性能試験を行った:
サイクル性能試験:0.1Cの定電流で10mV放電し、10分間静置し、そして0.02Cの定電流で5mVまで放電を続け、10分間静置した後、0.1Cで1.5Vまで定電流充電し、このように後続のサイクルを行い、試験結果は表1及び表2に示されている。
レート充電試験:まず0.1Cの定電流で10mV放電し、10分間静置し、そして0.02Cの定電流で5mVまで放電を続け、10分間静置した後、0.1Cで1.5Vまで定電流充電し、0.2Cで5mVまで定電流放電を続け、0.2C容量と記した後、0.1Cで1.5Vまで定電流充電し、その後に、それぞれ0.5C、1.5C、3.0Cで5mVまで放電し、0.1Cで1.5Vまで充電し、0.5C/1.5C/3.0C/0.2Cの容量比を比較し、試験結果は表1及び表2に示されており、
レート放電試験:まず0.1Cの定電流で10mV放電し、10分間静置し、そして0.02Cの定電流で5mVまで放電を続け、10分間静置した後、0.2Cで1.5Vまで定電流充電し、その後に統一的に0.1Cで5mVまで放電し、それぞれ0.5C、1.5C、3.0Cで1.5Vまで充電し、0.5C/1.5C/3.0C/0.2Cの容量比を比較し、試験結果は表1及び表2に示すとおりである。
【0030】
図1及び図2から分かったように、実施例1及び実施例2は細孔体積が最適な範囲内にあり、比較例1は、冷却速度が遅すぎるため、ミクロ細孔がほとんどなく、メソ細孔の平均孔径が、43nmであり、実施例1及び実施例2よりはるかに大きく、したがって比較例1のレート充放電及び50サイクル後の容量維持率が実施例1及び実施例2より明らかに低い。
【0031】
表1及び表2を合わせてみると、本出願の実施例の製造方法で得られた多孔質負極活物質は、いずれも適切な孔径のミクロ細孔及びメソ細孔並びにサイズが10nm未満であるシリコン結晶粒を有し、得られた多孔質負極活物質をリチウム電池の負極材料として用いた場合、良好な急速充電能力及びサイクル性能を有するとともに、電池の膨張率を大幅に低減することができる。
【表1】
【表2】
【0032】
最後に、本明細書に開示された出願の実施形態は、本出願の実施形態の原理についての説明であることを理解されたい。他の修正された実施例も本出願の範囲内にある。そのため、本出願に開示された実施例は、単なる例に過ぎず、限定するものではない。当業者は、本出願における実施例に基づいて、代替的な構成を用いて本出願における出願を実現することができる。そのため、本出願の実施例は、出願において正確に説明されたものに限定されない。
図1
図2
【国際調査報告】