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特表2024-507965ギアポンプをハンドリングする方法、制御システム、コーティング装置、およびロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ギアポンプをハンドリングする方法、制御システム、コーティング装置、およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
F04B49/06 311
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552103
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2021055281
(87)【国際公開番号】W WO2022184246
(87)【国際公開日】2022-09-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロゲダル、アルヌルフ
(72)【発明者】
【氏名】グロゲダル、ゲイル
(72)【発明者】
【氏名】トライダル、ヤーコブ
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA05
3H145AA24
3H145AA39
3H145BA12
3H145BA28
3H145BA39
3H145CA06
3H145CA09
3H145CA30
3H145DA48
3H145EA13
3H145EA14
(57)【要約】
ギアポンプ(42)をハンドリングする方法であって、ギアポンプは、複数の駆動歯(48)を有する駆動ギアホイール(44)と、駆動歯と噛み合っている複数の被駆動歯(50)を有する被駆動ギアホイール(46)とを備え、方法は、下流デバイス(62)に向けて液体をポンプ送りするようにギアポンプの駆動を命令することと、ギアポンプの回転速度の増加を命令することとを備える試験モードで、ギアポンプを制御することと、試験モードの間の回転速度を示す回転値(82)をモニタリングすることと、試験モードの間に少なくとも下流圧力センサー(64)によって圧力値(68)をモニタリングすることと、下流圧力センサーは、ギアポンプと下流デバイスとの間の液体の下流圧力を測定するように配置されている、圧力値および回転値に基づいてギアポンプの少なくとも1つの動作条件を決定することとを備える、方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアポンプ(42)をハンドリングする方法であって、前記ギアポンプ(42)は、複数の駆動歯(48)を有する駆動ギアホイール(44)と、前記駆動歯(48)と噛み合っている複数の被駆動歯(50)を有する被駆動ギアホイール(46)とを備え、前記方法は、
- 下流デバイス(62)に向けて液体をポンプ送りするように前記ギアポンプ(42)の駆動を命令することと、前記ギアポンプ(42)の回転速度の増加を命令することとを備える試験モードで、前記ギアポンプ(42)を制御することと、
- 前記試験モードの間の前記回転速度を示す回転値(82)をモニタリングすることと、
- 前記試験モードの間に少なくとも下流圧力センサー(64)によって圧力値(68)をモニタリングすることと、前記下流圧力センサー(64)は、前記ギアポンプ(42)と前記下流デバイス(62)との間の前記液体の下流圧力を測定するように配置されている、
- 前記圧力値(68)および前記回転値(82)に基づいて前記ギアポンプ(42)の少なくとも1つの動作条件を決定することと
を備える、方法。
【請求項2】
- 前記ギアポンプ(42)にわたる圧力差を示す圧力差値をモニタリングすることと、前記圧力差値は、前記圧力値(68)に基づいて決定される、
- 前記圧力差値がターゲット圧力差値に到達するときの前記回転値(82)に基づいて、前記ギアポンプ(42)の前記少なくとも1つの動作条件を決定することと
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの動作条件は、前記ギアポンプ(42)の漏出、前記駆動ギアホイール(44)と前記被駆動ギアホイール(46)との間のミスアライメント、ならびに/または、前記駆動歯(48)および前記被駆動歯(50)のうちの1つの欠陥を備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの動作条件を自動的に補償するように前記ギアポンプ(42)を制御しながら、前記下流デバイス(62)を通して液体をポンプ送りするように前記ギアポンプ(42)の駆動を命令することを備える動作モードで、前記ギアポンプ(42)を制御することをさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの動作条件に基づいて警告を自動的に発行することをさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記下流デバイス(62)は、下流バルブであり、ここにおいて、前記下流バルブは、前記試験モードの間に閉じられている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ギアポンプ(42)をハンドリングするための制御システム(76)であって、前記ギアポンプ(42)は、複数の駆動歯(48)を有する駆動ギアホイール(44)と、前記駆動歯(48)と噛み合っている複数の被駆動歯(50)を有する被駆動ギアホイール(46)とを備え、前記制御システム(76)は、少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)と少なくとも1つのメモリー(80)とを備え、前記少なくとも1つのメモリー(80)は、その上に記憶されたコンピュータープログラムを有しており、前記コンピュータープログラムは、プログラムコードを備え、前記プログラムコードは、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)によって実行されるときに、
- 試験モードで前記ギアポンプ(42)を制御するステップと、前記試験モードは、下流デバイス(62)に向けて液体をポンプ送りするように前記ギアポンプ(42)の駆動を命令することと、前記ギアポンプ(42)の回転速度の増加を命令することとを備える、
- 前記試験モードの間の前記回転速度を示す回転値(82)を提供するステップと、
- 前記試験モードの間に少なくとも下流圧力センサー(64)によってモニタリングされた圧力値(68)を提供するステップと、前記下流圧力センサー(64)は、前記ギアポンプ(42)と前記下流デバイス(62)との間の前記液体の下流圧力を測定するように配置されている、
- 前記圧力値(68)および前記回転値(82)に基づいて前記ギアポンプ(42)の少なくとも1つの動作条件を決定するステップと
を、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)に実施させる、制御システム(76)。
【請求項8】
前記コンピュータープログラムは、プログラムコードを備え、前記プログラムコードは、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)によって実行されるときに、
- 前記ギアポンプ(42)にわたる圧力差を示す圧力差値を提供するステップと、前記圧力差値は、前記圧力値(68)に基づいて決定される、
- 前記圧力差値がターゲット圧力差値に到達するときの前記回転値(82)に基づいて、前記ギアポンプ(42)の前記少なくとも1つの動作条件を決定するステップと
を、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)に実施させる、請求項7に記載の制御システム(76)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの動作条件は、前記ギアポンプ(42)の漏出、前記駆動ギアホイール(44)と前記被駆動ギアホイール(46)との間のミスアライメント、ならびに/または、前記駆動歯(48)および前記被駆動歯(50)のうちの1つの欠陥を備える、請求項7または8に記載の制御システム(76)。
【請求項10】
前記コンピュータープログラムは、プログラムコードを備え、前記プログラムコードは、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)によって実行されるときに、
- 動作モードで前記ギアポンプ(42)を制御するステップ、前記動作モードは、前記少なくとも1つの動作条件を自動的に補償するように前記ギアポンプ(42)を制御しながら、前記下流デバイス(62)を通して液体をポンプ送りするように前記ギアポンプ(42)の駆動を命令することを備える、
を、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)に実施させる、請求項7から9のいずれか一項に記載の制御システム(76)。
【請求項11】
前記コンピュータープログラムは、プログラムコードを備え、前記プログラムコードは、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)によって実行されるときに、
- 前記少なくとも1つの動作条件に基づいて警告の発行を自動的に命令するステップ
を、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)に実施させる、請求項7から10のいずれか一項に記載の制御システム(76)。
【請求項12】
コーティング媒体(16)を対象物(18)に塗布するための装置(14)であって、前記装置(14)は、前記ギアポンプ(42)と、前記下流デバイス(62)と、前記下流圧力センサー(64)と、請求項7から11のいずれか一項に記載の制御システム(76)とを備える、装置(14)。
【請求項13】
前記下流デバイス(62)は、下流バルブであり、ここにおいて、前記コンピュータープログラムは、プログラムコードを備え、前記プログラムコードは、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)によって実行されるときに、
- 前記試験モードの間に前記下流バルブの閉鎖を命令するステップ
を、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(78)に実施させる、請求項12に記載の装置(14)。
【請求項14】
前記コーティング媒体(16)を供給するコーティング媒体ライン(40)をさらに備え、ここにおいて、前記ギアポンプ(42)、前記下流デバイス(62)、および前記下流圧力センサー(64)が、前記コーティング媒体ライン(40)の上に配置されている、請求項13に記載の装置(14)。
【請求項15】
産業用ロボット(12)と、請求項12から14のいずれか一項に記載の装置(14)とを備えるロボットシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ギアポンプに関する。とりわけ、ギアポンプをハンドリングする方法、ギアポンプをハンドリングするための制御システム、コーティング媒体を対象物に塗布するための装置、および、産業用ロボットとコーティング装置とを備えるロボットシステムが提供される。
【背景技術】
【0002】
ロボット化された塗装プロセスでは、アトマイザーへのペイントの投与を制御するために、ギアポンプが使用されることが多い。ペイント結果は、ペイント流量の正確な制御に大きく依存する。自動車ロボット塗装に関して、ギアポンプによるペイント投与精度は、塗装結果に直接的に影響を与える。
【0003】
時間の経過とともに、ギアポンプは摩耗し、したがって、所与の回転速度においてギアポンプを通る流量は、ギアポンプの内部漏出の増加に起因して減少する。摩耗が特定の限界値を超えるとき、ギアポンプは、交換または補修されなければならない。また、いくつかのギアポンプは、機械的に損傷を受けるようになり、または、不適正に装着され、液体の不正確な投与を結果として生じさせる。
【0004】
いくつかの用途では、ギアポンプの内部漏出は、カップテストを実施することによってチェックされ、カップテストでは、実際の累積フローが基準値に対してチェックされる。そのようなカップテストは、ギアポンプからの所与のペイントフロー(たとえば、500ml/分)を要求することを備える場合がある。カップテストは、所与の時間(たとえば、30秒)にわたって実行される。カップテストの間に、ギアポンプからの出力ペイントは、カップの中に収集され、カップの中のペイントの体積が測定される。要求されたフローおよびテストの持続期間に基づいて、基準値に対応する体積が、カップの中に測定されるべきである(この例では、250ml)。次いで、測定された体積と基準体積との間の偏差は、ギアポンプの摩耗の尺度として受け取られることが可能である。
【0005】
カップテストは、多くの手作業による労力を必要とし、通常は、長い時間間隔で実施される。カップテスト間には、ギアポンプの実際の健全性状態についての情報がない。これは、ギアポンプのメンテナンスを計画することを困難にする。
【0006】
EP1522731A2は、容積移送式油圧ポンプの健全性をモニタリングする方法を開示している。この方法は、ポンプの高圧出口ラインとシステムの低圧ラインとの間に既知の流量係数を有する流路を確立するステップと、ポンプの動作の速度を徐々に変化させるステップと、ポンプの下流圧力に応答するパラメーターにおけるポンプの動作の速度が、ポンプの回転速度の前記変化に応答して変化することに注目するステップとを備える。
【発明の概要】
【0007】
本開示の1つの目的は、ギアポンプをハンドリングする方法を提供することであり、この方法は、ギアポンプの少なくとも1つの動作条件を効率的に決定することが可能である。
【0008】
本開示のさらなる目的は、ギアポンプをハンドリングする方法を提供することであり、この方法は、ギアポンプの少なくとも1つの動作条件を自動的に決定することが可能である。
【0009】
本開示のさらなる目的は、ギアポンプをハンドリングする方法を提供することであり、この方法は、ギアポンプの少なくとも1つの動作条件を信頼性高く決定することが可能である。
【0010】
本開示のさらなる目的は、ギアポンプをハンドリングする方法を提供することであり、この方法は、コスト効率的な様式でギアポンプの少なくとも1つの動作条件を決定することが可能である。
【0011】
本開示のさらなる目的は、ギアポンプをハンドリングする方法を提供することであり、この方法は、ギアポンプの性能が改善されることを可能にする。
【0012】
本開示のさらなる目的は、ギアポンプをハンドリングする方法を提供することであり、この方法は、ギアポンプの寿命時間がより良好に利用されることを可能にする。
【0013】
本開示のさらなる目的は、ギアポンプをハンドリングする方法を提供することであり、この方法は、先述の目的のうちのいくつかまたはすべてを組み合わせて解決する。
【0014】
本開示のさらなる目的は、ギアポンプをハンドリングするための制御システムを提供することであり、この制御システムは、先述の目的のうちの1つ、いくつか、またはすべてを解決する。
【0015】
本開示のさらなる目的は、コーティング媒体を対象物に塗布するための装置を提供することであり、この装置は、先述の目的のうちの1つ、いくつか、またはすべてを解決する。
【0016】
本開示のさらなる目的は、産業用ロボットと装置とを備えるロボットシステムを提供することであり、このロボットシステムは、先述の目的のうちの1つ、いくつか、またはすべてを解決する。
【0017】
1つの態様によれば、ギアポンプをハンドリングする方法であって、ギアポンプは、複数の駆動歯を有する駆動ギアホイールと、駆動歯と噛み合っている複数の被駆動歯を有する被駆動ギアホイールとを備え、本方法は、下流デバイスに向けて液体をポンプ送りするようにギアポンプの駆動を命令することと、ギアポンプの回転速度の増加を命令することとを備える試験モードで、ギアポンプを制御することと、試験モードの間の回転速度を示す回転値をモニタリングすることと、試験モードの間に少なくとも下流圧力センサーによって圧力値をモニタリングすることと、下流圧力センサーは、ギアポンプと下流デバイスとの間の液体の下流圧力を測定するように配置されている、圧力値および回転値に基づいてギアポンプの少なくとも1つの動作条件を決定することとを備える、方法が提供される。
【0018】
本方法は、ギアポンプの少なくとも1つの動作条件の自動的なモニタリングを提供する。本方法は、最小の労力によって実施されることが可能である。したがって、本方法は、ギアポンプの健全性状態に関する更新された情報が常に利用可能であるということを確認するために、短い間隔で実施されることが可能である。それによって、ギアポンプの健全性状態の悪化が、早期の段階で検出されることが可能である。本方法によって決定されるような少なくとも1つの動作条件は、いつギアポンプがメンテナンスを必要とすることとなるかを決定および/または予測するために使用されることが可能である。
【0019】
本方法は、ギアポンプの回転速度の連続的な増加またはインクリメンタルな増加を命令することを備えることが可能である。いずれのケースにおいても、ギアポンプの回転速度は、比較的に低い回転速度から比較的にゆっくりと増加されることが可能である。本方法は、本開示による任意のタイプの装置によって実施されることが可能である。
【0020】
本方法によって決定されるような少なくとも1つの動作条件は、さまざまな目的のために使用されることが可能である。たとえば、定期的な間隔で少なくとも1つの動作条件を決定することによって、ギアポンプの健全性状態を正確に追跡し続けることが可能である。少なくとも1つの動作条件のトレンドは、いつギアポンプの修理および/またはメンテナンスが必要とされることとなるかを正確に予測するためにモニタリングされることが可能である。したがって、そのような修理および/またはメンテナンスは、ギアポンプを含むプロセスに対する最小限の影響を伴って、余裕を持って計画されることが可能である。したがって、ギアポンプの不必要なダウンタイムが回避されることが可能である。
【0021】
本方法は、試験モードからの回転値および圧力値の特性に基づいて少なくとも1つの動作条件を決定することを備えることが可能である。このケースでは、圧力値は、試験モードの間に下流圧力センサーによって読み取られるような下流圧力値であることが可能である。試験モードからの下流圧力値を分析することによって、ギアポンプのさまざまな動作条件が検出および分類されることが可能である。そのような動作条件の例は、ギアポンプの個々の歯における損傷、または、駆動ギアホイールと被駆動ギアホイールとの間のミスアライメントを含む。
【0022】
ギアポンプは、シャフトを介してモーターによって駆動されることが可能である。また、本方法は、シャフトがギアポンプおよびモーターに実際に接続されているかどうかの決定を可能にする。したがって、ギアポンプの駆動が試験モードの間に命令され、圧力値が予期される通りに増加しないかまたは全く増加しないときには、ギアポンプの少なくとも1つの動作条件は、モーターとギアポンプとの間の接続が正しくないかまたは存在しないことに起因して、欠陥のあるものとして決定されることが可能である。いくつかの先行技術の装置では、シャフトは、たとえばメンテナンス目的のために、モーターおよび/またはギアポンプに取り外し可能に接続されている。しかし、オペレーターは、シャフトを介してモーターをギアポンプに接続することを忘れる可能性がある。次いで、塗装ロボットは、対象物を実際に塗装することなく、塗装プログラムを実行する可能性がある。いくつかのそのような先行技術の装置は、モーターがギアポンプに正しく接続されていることを確認するための専用のセンサーを使用する。本方法は、そのようなセンサーが排除されることを可能にする。
【0023】
本方法は、ギアポンプにわたる圧力差を示す圧力差値をモニタリングすることと、圧力差値は、圧力値に基づいて決定される、圧力差値がターゲット圧力差値に到達するときの回転値に基づいて、ギアポンプの少なくとも1つの動作条件を決定することとをさらに備えることが可能である。ターゲット圧力差値は、予め定義された一定の値であることが可能である。ターゲット圧力差値は、少なくとも3バール(たとえば、5バールなど)に設定されることが可能である。
【0024】
圧力差値がターゲット圧力差値に到達するときに、ギアポンプの回転は停止されることが可能である。ギアポンプの摩耗は時間の経過とともに増加するので、圧力差値がターゲット圧力差値に到達するときの回転値は増加することとなる。したがって、試験モードの間に決定されるような、圧力差値がターゲット圧力差値に到達するときの回転値は、ギアポンプの健全性状態のインディケーションを提供することとなる。
【0025】
本方法は、試験モードの間に圧力値を提供する下流圧力センサーを使用するので、本方法は、特定の圧力において開くようにトリガーされなければならない下流バルブを必要としない。それによって、ギアポンプを備える装置のよりコスト効率的な設計が可能にされる。
【0026】
圧力差は、下流圧力センサーによって測定される下流圧力値、および、上流圧力センサーによって測定される上流圧力値に基づいて決定されることが可能である。上流圧力センサーは、ギアポンプに対する液体の上流圧力を測定するように配置されることが可能である。しかし、上流圧力センサーは随意的なものである。また、下流圧力および上流圧力は、それぞれ出力圧力および入力圧力と称されることも可能である。
【0027】
少なくとも1つの動作条件は、ギアポンプの漏出、駆動ギアホイールと被駆動ギアホイールとの間のミスアライメント、ならびに/または、駆動歯および被駆動歯のうちの1つの欠陥を備えることが可能である。漏出は、試験モードの間に圧力差値がターゲット圧力差値に到達するときの回転値に実質的に比例するかまたは比例することが可能である。
【0028】
本方法は、少なくとも1つの動作条件を自動的に補償するようにギアポンプを制御しながら、下流デバイスを通して液体をポンプ送りするようにギアポンプの駆動を命令することを備える動作モードで、ギアポンプを制御することをさらに備えることが可能である。たとえば、少なくとも1つの動作条件がギアポンプの摩耗を示すケースでは、この動作条件に関する情報は、ギアポンプの回転速度を増加させることによって摩耗を補償するために使用されることが可能である。このように、ギアポンプの寿命時間はより良好に利用され、ギアポンプの性能が改善される。
【0029】
本方法は、少なくとも1つの動作条件に基づいて警告を自動的に発行することをさらに備えることが可能である。警告は、ユーザーに対する視覚的な警告および/または可聴の警告であることが可能である。それによって、ユーザーは、ギアポンプの劣化が不可避的にプロセスに対して悪影響を有する十分に前に、対抗措置(たとえば、メンテナンスをスケジュールするなど)を開始することが可能である。
【0030】
下流デバイスは、下流バルブであることが可能である。このケースでは、下流バルブは、試験モードの間に閉じられていることが可能である。この変形例では、ギアポンプの回転速度は、下流デバイスが絞り部であるときと比較して、よりゆっくりと増加されることが可能である。回転速度は、ギアポンプにわたる圧力差がモニタリングされながら、試験モードの間に比較的に低い回転速度からゆっくりと増加される。
【0031】
閉じられた下流バルブに対してギアポンプが液体をポンプ送りするように駆動され得る時間期間は、とりわけ、ギアポンプの漏出およびギアポンプの回転速度に依存する。ギアポンプは、下流バルブが閉じられているときに、ギアポンプの漏出が液体の唯一の流路を構成するように配置されることが可能である。
【0032】
しかし、本開示による本方法は、閉じられた下流バルブではなく、絞り部の形態の下流デバイスによって実施されることも可能である。これは、たとえば、閉鎖可能な下流バルブが利用可能でない用途において有利である可能性がある。このケースでは、2つの流路(ギアポンプの内部漏出、および、絞り部を通るフロー)が存在することとなる。
【0033】
いずれのケースにおいても、下流デバイスは、試験モードの間に静的であることが可能である。したがって、下流デバイスによるギアポンプからの出力フローに対する抵抗は、試験モードの間に一定であることが可能である。下流デバイスが下流バルブであるケースでは、下流バルブのバルブ位置は、試験モードの間に一定のままであることが可能である。
【0034】
さらなる態様によれば、ギアポンプをハンドリングするための制御システムであって、ギアポンプは、複数の駆動歯を有する駆動ギアホイールと、駆動歯と噛み合っている複数の被駆動歯を有する被駆動ギアホイールとを備え、制御システムは、少なくとも1つのデータ処理デバイスと少なくとも1つのメモリーとを備え、少なくとも1つのメモリーは、その上に記憶されたコンピュータープログラムを有しており、コンピュータープログラムは、プログラムコードを備え、プログラムコードは、少なくとも1つのデータ処理デバイスによって実行されるときに、試験モードでギアポンプを制御するステップと、試験モードは、下流デバイスに向けて液体をポンプ送りするようにギアポンプの駆動を命令することと、ギアポンプの回転速度の増加を命令することとを備える、試験モードの間の回転速度を示す回転値を提供するステップと、試験モードの間に少なくとも下流圧力センサーによってモニタリングされた圧力値を提供するステップと、下流圧力センサーは、ギアポンプと下流デバイスとの間の液体の下流圧力を測定するように配置されている、圧力値および回転値に基づいてギアポンプの少なくとも1つの動作条件を決定するステップとを、少なくとも1つのデータ処理デバイスに実施させる、制御システムが提供される。
【0035】
コンピュータープログラムは、プログラムコードを備えることが可能であり、プログラムコードは、少なくとも1つのデータ処理デバイスによって実行されるときに、ギアポンプにわたる圧力差を示す圧力差値を提供するステップと、圧力差値は、圧力値に基づいて決定される、圧力差値がターゲット圧力差値に到達するときの回転値に基づいて、ギアポンプの少なくとも1つの動作条件を決定するステップとを、少なくとも1つのデータ処理デバイスに実施させる。
【0036】
少なくとも1つの動作条件は、ギアポンプの漏出、駆動ギアホイールと被駆動ギアホイールとの間のミスアライメント、ならびに/または、駆動歯および被駆動歯のうちの1つの欠陥を備えることが可能である。
【0037】
コンピュータープログラムは、プログラムコードを備えることが可能であり、プログラムコードは、少なくとも1つのデータ処理デバイスによって実行されるときに、動作モードでギアポンプを制御するステップ、動作モードは、少なくとも1つの動作条件を自動的に補償するようにギアポンプを制御しながら、下流デバイスを通して液体をポンプ送りするようにギアポンプの駆動を命令することを備える、を、少なくとも1つのデータ処理デバイスに実施させる。
【0038】
コンピュータープログラムは、プログラムコードを備えることが可能であり、プログラムコードは、少なくとも1つのデータ処理デバイスによって実行されるときに、少なくとも1つの動作条件に基づいて警告の発行を自動的に命令するステップを、少なくとも1つのデータ処理デバイスに実施させる。
【0039】
さらなる態様によれば、コーティング媒体を対象物に塗布するための装置であって、装置は、本開示によるギアポンプと、下流デバイスと、下流圧力センサーと、制御システムとを備える、装置が提供される。装置は、上流圧力センサーをさらに備えることが可能である。装置は、コーティング媒体(たとえば、ペイントなど)を霧化するためのアプリケーター(たとえば、アトマイザーなど)をさらに備えることが可能である。コーティング媒体を対象物に塗布するための装置は、代替的に、コーティング装置と称されることが可能である。この態様では、試験モードにおいてギアポンプによってポンプ送りされる液体は、クリーニング液体であることが可能である。
【0040】
多くのコーティング装置は、ギアポンプと、下流センサーと、ギアポンプと下流デバイスとの間の下流圧力を測定するための下流圧力センサーとをすでに備えるので、本方法は、たとえばソフトウェアの変更のみによって、既存のコーティング装置の中に比較的に容易に実装されることが可能である。これは、装置のコスト効率に寄与する。
【0041】
下流デバイスは、下流バルブであることが可能である。このケースでは、コンピュータープログラムは、プログラムコードを備えることが可能であり、プログラムコードは、少なくとも1つのデータ処理デバイスによって実行されるときに、試験モードの間に下流バルブの閉鎖を命令するステップを、少なくとも1つのデータ処理デバイスに実施させる。少なくとも1つの動作条件は、下流バルブが閉じられた状態で決定されることが可能であるので、本方法は、コーティングされることとなる対象物の隣にアプリケーターが位置決めされている状態で実施されることが可能である。したがって、本方法は、コーティング媒体の無駄の排除を可能にする。そのうえ、装置は、環境の汚染のリスクなしに、本方法を実施するときに任意に位置決めされることが可能である。これは、装置を含むプロセス(たとえば、塗装プロセスなど)のダウンタイムをさらに低減させる。
【0042】
装置は、コーティング媒体を供給するコーティング媒体ラインをさらに備えることが可能である。このケースでは、ギアポンプ、下流デバイス、および下流圧力センサーが、コーティング媒体ラインの上に配置されることが可能である。また、上流圧力センサーは、コーティング媒体ラインの上に配置されることが可能である。
【0043】
装置は、バルブ構成体をさらに備えることが可能である。バルブ構成体は、複数の加圧流体供給源のそれぞれを選択的にギアポンプと流体連通した状態にするように構成されることが可能である。そのような加圧流体供給源の例は、固有のタイプの加圧コーティング媒体をそれぞれ含有するコーティング媒体供給源、および、加圧クリーニング液体(たとえば、溶媒など)を含有するクリーニング液体供給源である。
【0044】
コーティング媒体ラインは、ギアポンプと下流デバイスとの間の唯一の下流体積を構成することが可能である。代替的にまたは加えて、コーティング媒体ラインは、バルブ構成体とギアポンプとの間の唯一の上流体積を構成することが可能である。
【0045】
装置は、モーターとシャフトとをさらに備えることが可能である。このケースでは、ギアポンプは、シャフトを介してモーターによって駆動されるように配置されることが可能である。
【0046】
さらなる態様によれば、産業用ロボットと、本開示による装置とを備えるロボットシステムが提供される。産業用ロボットは、3軸以上(たとえば、6軸または7軸)においてプログラム可能なマニピュレーターを備えることが可能である。装置は、マニピュレーターによって実施されることが可能である。
【0047】
本開示のさらなる詳細、利点、および態様は、図面と関連して考慮される以下の説明から明らかになることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】産業用ロボットと、ギアポンプを有するコーティング装置とを備えるロボットシステムの側面図を概略的に表す図。
図2】コーティング装置のブロックダイアグラムを概略的に表す図。
図3】ギアポンプが正しく機能するときのギアポンプの下流圧力のダイアグラムを概略的に表す図。
図4】駆動ギアホイールおよび被駆動ギアホイールがミスアライメント状態になっているときのギアポンプの下流圧力のダイアグラムを概略的に表す図。
図5】ギアホイールの歯が損傷を受けたときのギアポンプの下流圧力のダイアグラムを概略的に表す図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下では、ギアポンプをハンドリングする方法、ギアポンプをハンドリングするための制御システム、コーティング媒体を対象物に塗布するための装置、ならびに、産業用ロボットとコーティング装置とを備えるロボットシステムが説明されることとなる。同じまたは同様の参照番号は、同じまたは同様の構造的特徴を示すために使用されることとなる。
【0050】
図1は、ロボットシステム10の側面図を概略的に表している。ロボットシステム10は、産業用ロボット12とコーティング装置14とを備える。産業用ロボット12は、少なくとも3軸に(たとえば、6軸または7軸に)移動可能なマニピュレーターを備える。コーティング装置14は、マニピュレーターによって担持されている。コーティング装置14は、図1に示されているように、対象物18にペイント16を塗布するように構成されている。ペイント16は、本開示によるコーティング媒体の1つの例である。対象物18は、たとえば、車両のボディーパーツであることが可能である。
【0051】
図1は、コーティング装置14がアトマイザー20を備えることをさらに示している。アトマイザー20は、本明細書で説明されているようなアプリケーターの1つの例である。アトマイザー20は、ここでは、マニピュレーターの遠位端部に位置決めされている。
【0052】
図2は、コーティング装置14のブロックダイアグラムを概略的に表している。この例のコーティング装置14は、第1のタイプの(たとえば、第1のカラーの)加圧液体ペイント16を含有する第1のペイント供給源22と、第2のタイプの(たとえば、第2のカラーの)加圧液体ペイント16を含有する第2のペイント供給源24と、加圧クリーニング液体(たとえば、溶媒)を含有するクリーニング液体供給源26とをさらに備える。2つのペイント供給源22および24のみが図示されているが、コーティング装置14は、少なくとも10個の異なるペイント供給源(たとえば、20個から30個の異なるペイント供給源(たとえば、ペイント供給源)など)を備えることが可能である。
【0053】
コーティング装置14は、バルブ構成体28をさらに備える。この例のバルブ構成体28は、第1のペイント供給源22に関連付けられた第1のペイントバルブ30と、第2のペイント供給源24に関連付けられた第2のペイントバルブ32と、クリーニング液体供給源26に関連付けられたクリーニング液体バルブ34とをさらに備える。第1のペイントバルブ30、第2のペイントバルブ32、およびクリーニング液体バルブ34のそれぞれは、ここでは、2/2バルブとして例示されている。バルブ構成体28は、ここでは、カラーチェンジャーとして機能する。
【0054】
この例のバルブ構成体28は、接合部36をさらに備える。第1のペイントバルブ30、第2のペイントバルブ32、およびクリーニング液体バルブ34は、接合部36と直接的に流体連通している。
【0055】
アトマイザー20は、回転可能な偏向要素(ここでは、ベルカップ38として例示されている)を備える。ベルカップ38は、ペイント16を霧化するように構成されている。
【0056】
コーティング装置14は、ペイントライン40をさらに備える。ペイントライン40は、本開示によるコーティング媒体ラインの1つの例である。ペイントライン40は、ここでは、接合部36からベルカップ38へ延在している。したがって、バルブ構成体28は、第1のペイント供給源22、第2のペイント供給源24、およびクリーニング液体供給源26のそれぞれを、ペイントライン40を通して独立してアトマイザー20と流体連通させるように構成されている。
【0057】
コーティング装置14は、ギアポンプ42をさらに備える。ギアポンプ42は、ペイントライン40の上に位置決めされている。この例では、ギアポンプ42は、バルブ構成体28とアトマイザー20との間に位置決めされている。
【0058】
ギアポンプ42は、駆動ギアホイール44と被駆動ギアホイール46とを備える。駆動ギアホイール44は、複数の駆動歯48を備える。被駆動ギアホイール46は、複数の被駆動歯50を備える。駆動歯48および被駆動歯50は、噛み合って係合している。
【0059】
ギアポンプ42は、ハウジング52をさらに備える。駆動ギアホイール44および被駆動ギアホイール46は、ハウジング52の内側に収容されている。ペイントライン40の上流接続部および下流接続部は、ハウジング52に対する唯一の開口部である。
【0060】
駆動ギアホイール44は、駆動軸線54の周りに回転可能である。被駆動ギアホイール46は、被駆動軸線56の周りに回転可能である。駆動軸線54および被駆動軸線56は、平行である。
【0061】
コーティング装置14は、ギアポンプ42を駆動するためのモーター58をさらに備える。コーティング装置14は、モーター58と駆動ギアホイール44との間に接続されているシャフト60をさらに備える。
【0062】
コーティング装置14は、下流バルブ62をさらに備える。下流バルブ62は、本開示による下流デバイスの1つの例である。下流バルブ62は、ギアポンプ42の下流においてペイントライン40の上に位置決めされている。この例では、下流バルブ62は、ギアポンプ42とアトマイザー20との間においてペイントライン40の上に位置決めされている。1つの下流バルブ62のみが図2に示されているが、コーティング装置14は、プロセスに応じて、ギアポンプ42とアトマイザー20との間に複数のそのような下流バルブ62を備えることが可能である。
【0063】
コーティング装置14は、下流圧力センサー64をさらに備える。下流圧力センサー64は、ギアポンプ42と下流バルブ62との間においてペイントライン40の上に位置決めされている。下流圧力センサー64は、ギアポンプ42の出力側66におけるペイントライン40の中の液体の下流圧力を読み取るように構成されている。下流圧力センサー64は、出力側66における圧力を示す下流圧力値68を出力する。
【0064】
この例のコーティング装置14は、上流圧力センサー70をさらに備える。上流圧力センサー70は、随意的なものである。上流圧力センサー70は、ギアポンプ42の上流においてペイントライン40の上に位置決めされている。この例では、上流圧力センサー70は、バルブ構成体28とギアポンプ42との間に位置決めされている。上流圧力センサー70は、ギアポンプ42の入力側72におけるペイントライン40の中の液体の上流圧力を読み取るように構成されている。上流圧力センサー70は、入力側72の圧力を示す上流圧力値74を出力する。
【0065】
コーティング装置14は、制御システム76をさらに備える。制御システム76は、データ処理デバイス78とメモリー80とを備え、メモリー80は、その上に記憶されたコンピュータープログラムを有している。コンピュータープログラムは、プログラムコードを備え、プログラムコードは、データ処理デバイス78によって実行されるときに、本明細書で説明されているようなさまざまなステップをデータ処理デバイス78に実施させる、および/または、それらの実施を命令させる。制御システム76は、バルブ構成体28と信号通信している。この例では、制御システム76は、第1のペイントバルブ30、第2のペイントバルブ32、およびクリーニング液体バルブ34のそれぞれの開閉を命令するために、それらと信号通信している。
【0066】
制御システム76は、下流バルブ62とさらに信号通信しており、その開度を命令する。制御システム76は、モーター58とさらに信号通信している。制御システム76は、モーター58の回転速度を制御する。モーター58は、回転値82を制御システム76に送る。回転値82は、ギアポンプ42の回転速度を示す。しかし、ギアポンプ42の回転速度を示す回転値82は、広範囲の方式で取得され、制御システム76に通信されることが可能である。
【0067】
下流圧力センサー64および上流圧力センサー70は、制御システム76と信号通信しており、それぞれ下流圧力値68と上流圧力値74とを制御システム76に送る。
【0068】
コーティング装置14による塗装プロセスにおいて、ギアポンプ42は、アトマイザー20へのペイントの投与を制御するために使用されている。ギアポンプ42の1つの共通の故障は、駆動歯48および/または被駆動歯50が摩耗するということである。これは、ギアポンプ42の高圧下流側から低圧上流側への漏出を結果として生じさせる。また、漏出は、ハウジング52の摩耗に起因して起こる可能性がある。ギアポンプ42の漏出は、ギアポンプ42の所与の回転速度に対して、アトマイザー20からのペイントの流量が低減されるという形で現れる。したがって、塗装結果は悪化する。
【0069】
ギアポンプ42の故障のさらなるタイプは、駆動ギアホイール44および被駆動ギアホイール46がミスアライメント状態になっているときである。そのようなミスアライメントは、たとえば、駆動軸線54および被駆動軸線56が完全には平行でないとき、駆動軸線54と被駆動軸線56との間の距離が正しくないとき、ならびに/または、駆動軸線54および被駆動軸線56の位置決めがハウジング52に対して正確ではないときに起こる可能性がある。
【0070】
故障のさらなるタイプは、ギアホイール44および46の壊れた歯または他の構造的欠陥である。駆動歯48および被駆動歯50のうちの1つまたは複数が壊れた場合には、ペイントは、ギアポンプ42のこの時点において効率的に投与されないこととなる。
【0071】
先行技術の解決策では、これらのタイプの故障は、手動で検出される。たとえば、カップテストによって、予期されるよりも高いまたは低いフローをギアポンプ42が与えるかどうかが検出されることが可能である。さらなる例として、テスト対象物に対する(または、対象物18に対する)塗装結果は、ギアポンプ42の故障の可能性があるかどうかを見るために視覚的に検査されることが可能である。これらのチェックの両方は、ロボットシステム10を含むプロセスラインが停止することを必要とし、時間とペイントとの両方を浪費する。また、これらの措置は、最終的に、チェックを実施するオペレーターの技量に依存し、それは、ギアポンプ42の健全性状態に関して異なる結論につながる可能性がある。
【0072】
以下では、ギアポンプ42をハンドリングする方法の1つの例が説明されることとなる。この例の方法は、下流バルブ62と、下流圧力センサー64と、上流圧力センサー70と、ギアポンプ42自身とを利用し、ギアポンプ42の1つまたは複数の動作条件を決定する。この方法は、ギアポンプ42の動作条件を自動的に決定するために、試験モードでギアポンプ42を制御することを備える。この方法は、制御システム76によって制御される。
【0073】
試験モードは、たとえば、ペイントライン40がクリーニングされたときに毎回、毎日、毎週、または、ユーザーの所望に応じて、開始されることが可能である。クリーニングは、コーティング装置14を通してクリーニング液体(たとえば、溶媒など)を案内することを備えることが可能である。次いで、クリーニング液体が、ペイントライン40の中に残され、下流バルブ62が閉じられる。また、第1のペイントバルブ30、第2のペイントバルブ32、およびクリーニング液体バルブ34も閉じられる。したがって、クリーニング液体の閉鎖された体積が、バルブ構成体28と下流バルブ62との間に提供される。したがって、試験モードは、この閉鎖された体積の外側の任意のパーツに機械的に影響を与えることなく実施されることが可能である。ギアポンプ42の健全性状態をチェックするために、マニピュレーターがコーティング装置14を塗装現場から離れるように移動させる必要がないので、これは有利である。その代わりに、この方法は、コーティング装置14が対象物18に面して位置決めされているときでも実施されることが可能である。
【0074】
試験モードでは、ギアポンプ42は、下流バルブ62に向けて液体をポンプ送りする。ギアポンプ42の回転速度は、初期には低く、次いで、ゆっくりと増加され、たとえば連続的に増加される。回転速度は、回転速度が増加される前に、一定の低い速度であることが可能である。下流圧力値68、上流圧力値74、および回転値82は、試験モードの間の共通のタイミングで、制御システム76によって記録される。また、制御システム76は、下流圧力値68から上流圧力値74を引くことによって、ギアポンプ42にわたる圧力差を連続的に決定する。回転値、上流圧力値74、下流圧力値68、および圧力差値は、試験モードデータと称されることが可能である。
【0075】
ギアポンプ42が摩耗される場合には、ギアポンプ42の内部漏出が、比較的に高くなる可能性がある。次いで、下流圧力は、漏出の少ない新しいギアポンプのものほど高くならないこととなる。試験モードによって、ギアポンプ42の内部漏出の自動的なモニタリングが、ギアポンプ42にわたる圧力差をモニタリングしながら、閉じられた下流バルブ62に対してギアポンプ42を稼働させることによって実施されることが可能である。上流圧力センサー70が排除されているケースでは、上流圧力は、試験モードの目的のために一定であると仮定されることが可能である。
【0076】
下流バルブ62を閉じることによって、および、次いで、ギアポンプ42の回転速度をゆっくりと増加させることによって、ギアポンプ42は、行き止まりに向けて液体を効果的に押している。ペイントライン40および下流バルブ62の臨界レベルを上回って下流圧力を増加させないように、ギアポンプ42は、ゆっくりと回転させられる。
【0077】
ギアポンプ42の回転速度が増加されるにつれて、ほとんどの状況における圧力差値は、最終的に、所定のターゲット圧力差値(たとえば、5バールなど)に到達する。次いで、ギアポンプ42は、追加的な実用的な試験モードデータを収集するために、追加的に数回転駆動される。ここで記録は完了し、コーティング装置14は、次の塗装プロセスの準備ができている。試験モードデータは、次の塗装プロセスがコーティング装置14によって実施されるのと同時に処理されることが可能である。この方法では、圧力差がターゲット圧力差値に到達するときのギアポンプ42の回転速度が、ギアポンプ42の漏出の測定値として、ひいては、ギアポンプ42の動作条件として受け取られる。この回転速度が高いときには、漏出が高く、その逆もまた同様である。これは、ギアポンプ42にわたる圧力差が所与の回転速度に対する漏出に比例すると仮定され得るということに起因する。
【0078】
下流バルブ62が閉じられているので、圧力差は、ギアポンプ42の回転速度が増加されるにつれて、連続して増加することとなる。制御システム76がギアポンプ42の回転速度の増加を命令するときに、圧力差が増加しないケースでは、モーター58とギアポンプ42との間の接続に欠陥があるということが結論付けられることが可能である。次いで、警告が、ユーザーに自動的に発行されることが可能である。したがって、モーター58とギアポンプ42との間の欠陥のある接続は、この目的のための専用のセンサーを必要とすることなく、本方法によって決定され得る、ギアポンプ42の動作条件の1つの例である。
【0079】
図3は、ギアポンプ42が正しく機能しているときの試験モードの間の時間tの関数として、ギアポンプ42の下流圧力値68のダイアグラムを概略的に表している。ギアポンプ42が試験モードの間にゆっくりと回転するとき、下流圧力センサー64からの読み値は、駆動ギアホイール44および被駆動ギアホイール46の上のそれぞれの歯のレベルまで、非常に明白な兆候を与えることとなる。駆動歯48間のスペースまたは被駆動歯50間のスペースから新たな投与量の液体が送達されるたびに、圧力が増加することとなる。次いで、液体は、駆動ギアホイール44および/または被駆動ギアホイール46を上流方向に通過して漏出することとなり、下流圧力が降下することとなる。図3に示されているように、下流圧力のそれぞれの上側ピークは、ギアポンプ42の歯に対応している。したがって、単一の歯に対応する上側ピークの振幅が低いケースでは、この歯が損傷を受けている可能性がある。図3において、参照番号84は、ギアポンプ42の1回転を示している。試験モードの間の下流圧力値68に基づいて、制御システム76は、ピーク間圧力値と、上側ピーク値の変化と、下側ピーク値の変化と、局所的な最小値または最大値との間の急激な変化とを検出する。
【0080】
図4は、駆動ギアホイール44および被駆動ギアホイール46がミスアライメント状態になっているときの、ギアポンプ42の下流圧力値68のダイアグラムを時間tの関数として概略的に表している。全体的な正弦曲線が上下に移動しており、駆動ギアホイール44および被駆動ギアホイール46のミスアライメントを示している。したがって、駆動ギアホイール44および被駆動ギアホイール46のミスアライメントは、本方法によって検出され得るギアポンプ42のさらなる動作条件である。
【0081】
図4において、参照番号86は、1回転84の中の下流圧力値68の全回転圧力差を示しており、参照番号88は、ギアポンプ42のピーク間圧力差を示している。制御システム76は、試験モードからの下流圧力値68に基づいて、全回転圧力差86とピーク間圧力差88とを自動的に決定する。
【0082】
ギアポンプ42の回転値82と組み合わせられたピーク間圧力差88は、ギアポンプ42と新しいギアポンプとの間の比較の基礎を形成する。ギアポンプ42が、正常な回転速度において高いピーク間圧力差88と高い最大圧力とを実現することができない場合には、これは、ギアポンプ42が交換されることを必要とする前に、所定の範囲内で補償されることが可能である。
【0083】
局所的な最小値および最大値の周期的な変化(1回転84以上にわたる)は、不均一なギアホイールを示すこととなる。これは、より高い流量で塗装するときにペイントフローの「心拍」として現れる可能性がある。
【0084】
下流圧力値68の2つの局所的な最小値の間のまたは2つの局所的な最大値の間の急激な変化は、ギアホイールの上の単一のポイント(たとえば、歯)に対する損傷を示すこととなる。これに該当するケースでは、同じ「心拍」が見られる可能性がある。
【0085】
下流圧力値68におけるこれらの兆候の結果は、ギアポンプ42の動作条件を決定するための比較の基礎を形成することが可能である。ギアポンプ42が動作の推奨エリアの外側にある場合には、警告および随意的に関連の情報が、たとえば、ロボットシステム10のシステムエラーおよび警告インフラストラクチャーを通して、ユーザーに発行されることが可能である。
【0086】
駆動ギアホイール44および被駆動ギアホイール46のうちの一方がミスアライメント状態になっている場合には、下流圧力値68は、全回転84の一方の半分において降下することとなり、一方では、それは、他方の半分に関してより高くなることとなる。歯が壊れた場合には、起こることが予期される圧力上昇は起こらないこととなる。
【0087】
駆動ギアホイール44および被駆動ギアホイール46のうちの一方のみが、ハウジング52に対して不正確に位置決めされているときには、下流圧力は、ギアポンプ42の回転速度と相関して脈動していることとなる。
【0088】
図5は、駆動ギアホイール44および被駆動ギアホイール46のうちの一方が損傷を受けたときのギアポンプ42の下流圧力値68のダイアグラムを時間tの関数として概略的に表している。ミスアライメントに加えて、下流圧力の兆候は、ギアポンプ42の歯が損傷を受けているということを示している。したがって、1つの歯の欠陥は、本方法によって決定され得るギアポンプ42の動作条件のさらなる例である。図5において、領域90は、損傷を受けた歯に起因するギアポンプ42の異常な挙動を示している。
【0089】
試験モードは、ギアポンプ42の迅速な診断チェックとして実行されることが可能である。回転値82および下流圧力値68は、ギアポンプ42の1つまたは複数の動作条件を決定するために、制御システム76によって記録および処理される。制御システム76によって決定されるようなギアポンプ42の健全性状態に関する情報は、次いで、ユーザーに伝達される。また、警告は、ギアポンプ42がメンテナンスまたは修理を必要とする前に、余裕を持って発行されることが可能である。
【0090】
次の塗装プロセスでは、制御システム76は、ギアポンプ42の決定された動作条件を自動的に補償する。たとえば、回転速度は、ペイントの所望の流量を実現するために、ギアポンプ42の決定された漏出に基づいて増加される。
【0091】
いくつかの先行技術の装置では、ギア流量計が、ギアポンプ42の下流に据え付けられ、リアルタイムで実際の流量をモニタリングする(要求された流量と実際の流量との間の差をモニタリングする)。本開示による方法を頻繁に実行することによって、そのようなギア流量計は排除されることが可能である。これは、コストを節約し、コーティング装置14の複雑さを低減させる。
【0092】
上流圧力センサー70、下流圧力センサー64、および下流バルブ62がそのように既知であるので、本方法は、単に制御システム76の中のソフトウェアを変化させることによって、先行技術の装置によって実施されることが可能である。
【0093】
本開示は、例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本発明は、上記に説明されてきたものに限定されないということが認識されることとなる。たとえば、パーツの寸法は必要に応じて変化され得るということが認識されることとなる。したがって、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ限定され得るということが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】