(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】コーティング装置の洗浄を監視する方法、コーティング装置を洗浄する方法、コーティング装置、及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B05B 5/08 20060101AFI20240214BHJP
B05B 5/04 20060101ALI20240214BHJP
B05B 15/55 20180101ALI20240214BHJP
B05B 3/10 20060101ALI20240214BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20240214BHJP
【FI】
B05B5/08 G
B05B5/04 A
B05B15/55
B05B3/10 B
B05B12/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552105
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2021055010
(87)【国際公開番号】W WO2022184226
(87)【国際公開日】2022-09-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィネスタッド、イングベ
(72)【発明者】
【氏名】トライダル、ヤーコブ
(72)【発明者】
【氏名】モッシゲ、モルテン
(72)【発明者】
【氏名】サンドビク、ビャルネ
【テーマコード(参考)】
4D073
4F033
4F034
4F035
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CB20
4D073CB21
4D073CB23
4D073CB24
4D073CC03
4D073CC15
4D073CC20
4F033PA11
4F033PB16
4F033PD03
4F033PD06
4F034AA04
4F034BA22
4F034BA27
4F034BB02
4F034BB05
4F034BB24
4F034BB25
4F034BB28
4F034CA11
4F034DA06
4F034DA11
4F034DA16
4F035AA03
4F035BA11
4F035BA15
4F035BB35
4F035BC02
(57)【要約】
コーティング媒体(16)を物体(18)に塗布するための装置(14a)の洗浄を監視する方法であって、装置(14a)は、コーティング媒体(16)を霧化するための回転可能な偏向要素(44)と、洗浄媒体を偏向要素(44)に導くための洗浄媒体管路(58)と、を備え、ここで、方法は、偏向要素(44)を回転させながら、偏向要素(44)に向かって洗浄媒体管路(58)を通る洗浄媒体の送達を備える洗浄動作の実行を命令することと、洗浄動作についての装置(14a)の少なくとも1つの動作パラメータの動作値を収集することと、動作値を、洗浄動作についての少なくとも1つの動作パラメータの基準値と比較することと、比較に基づいて、洗浄動作が成功したか又は失敗したかを決定することと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング媒体(16)を物体(18)に塗布するための装置(14a)の洗浄を監視する方法であって、前記装置(14a)は、
-前記コーティング媒体(16)を霧化するための回転可能な偏向要素(44)と、
-洗浄媒体を前記偏向要素(44)に導くための洗浄媒体管路(58)と、を備え、
前記方法は、
-前記偏向要素(44)を回転させながら、前記偏向要素(44)に向かって前記洗浄媒体管路(58)を通る前記洗浄媒体の送達を含む洗浄動作の実行を命令することと、
-前記洗浄動作についての前記装置(14a)の少なくとも1つの動作パラメータの動作値を収集することと、
-前記動作値を、前記洗浄動作についての前記少なくとも1つの動作パラメータの基準値と比較することと、
-前記比較に基づいて、前記洗浄動作が成功したか又は失敗したかを決定することと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの動作パラメータは、前記偏向要素(44)の回転速度(ω)を示すパラメータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装置(14a)は、前記偏向要素(44)の回転を駆動するように配置されるとともに、加圧空気によって駆動されるように配置されたタービン(46)を更に備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの動作パラメータは、前記加圧空気を示すパラメータである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記装置(14a)は、前記加圧空気の流れを調整するように配置された空気流調整器(54)を更に備え、前記少なくとも1つの動作パラメータは、前記空気流調整器(54)の状態を示すパラメータである、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
コーティング媒体(16)を物体(18)に塗布するための装置(14a)であって、前記装置(14a)は、
-前記コーティング媒体(16)を霧化するための回転可能な偏向要素(44)と、
-洗浄媒体を前記偏向要素(44)に導くための洗浄媒体管路(58)と、
-少なくとも1つのデータ処理デバイス(62)、及びコンピュータプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリ(64)を備える制御システム(60)と、を備え、
前記コンピュータプログラムがプログラムコードを備え、前記プログラムコードは、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(62)によって実行されると、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(62)に、
-前記偏向要素(44)に回転するように命令しながら、前記偏向要素(44)に向かって前記洗浄媒体管路(58)を通る前記洗浄媒体の送達を備える洗浄動作の実行を命令するステップと、
-前記洗浄動作についての前記装置(14b、14c)の少なくとも1つの動作パラメータの動作値を収集するステップと、
-前記動作値を、前記洗浄動作についての前記少なくとも1つの動作パラメータの基準値と比較するステップと、
-前記比較に基づいて、前記洗浄動作が成功したか又は失敗したかを決定するステップと、
を行わせる、装置(14a)。
【請求項7】
コーティング媒体(16)を物体(18)に塗布するための装置(14b、14c)を洗浄する方法であって、前記方法は、
-コーティング媒体管路(50b)内の封止部材(82)を、前記封止部材(82)が前記コーティング媒体管路(50b)の内面(94)に対して封止しながら、前記装置(14b、14c)の出口(20)に向かって前方に移動させることと、
-前記コーティング媒体管路(50b)内の前記封止部材(82)の通過を検出することと、
を備える、方法。
【請求項8】
前記封止部材(82)の前記通過の検出は、前記コーティング媒体管路(50b)を通じて送られる超音波によって行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コーティング媒体(16)を物体(18)に塗布するための装置(14b、14c)であって、前記装置(14b、14c)は、
-コーティング媒体管路(50b)と、
-出口(20)と、
-第1のコーティング媒体を収容する第1のコーティング媒体源(22)と、
-第2のコーティング媒体を収容する第2のコーティング媒体源(24)と、
-前記第1のコーティング媒体源(22)及び前記第2のコーティング媒体源(24)の各々を、前記コーティング媒体管路(50b)を通じて前記出口(20)と独立に連通させるように構成された弁配置(30)と、
-前記コーティング媒体管路(50b)を通る封止部材(82)の通過を検出するように構成された検出デバイス(84)と、
を備え、
前記コーティング媒体管路(50b)は、前記弁配置(30)から、前記検出デバイス(84)を通って、前記検出デバイス(84)の下流の下流点(78)まで、実質的に遮られていない、装置(14b、14c)。
【請求項10】
前記検出デバイス(84)は、
-前記コーティング媒体管路(50b)内の流体に超音波を送ることと、
-前記超音波によって前記流体中に誘起されたエコー信号を感知することと、
-前記エコー信号を電子応答データ(86)に変換することと、
を行うように構成された超音波デバイスを備える、請求項9に記載の装置(14b、14c)。
【請求項11】
前記装置(14b、14c)は、前記封止部材(82)が前記コーティング媒体管路(50b)の内面(94)に対して封止しながら、前記コーティング媒体管路(50b)内で前記検出デバイス(84)を通って移動するように配置された封止部材(82)を更に備える、請求項9又は10に記載の装置(14b、14c)。
【請求項12】
前記装置(14b、14c)は、前記封止部材(82)を、前記コーティング媒体管路(50b)内で、前記検出デバイス(84)を通って移動させるように構成されている、請求項11に記載の装置(14b、14c)。
【請求項13】
前記封止部材(82)は、前記コーティング媒体管路(50b)内で、前記封止部材(82)が前記内面(94)に対して封止しながら、前記弁配置(30)から、前記検出デバイス(84)を通って、前記下流点(78)まで移動するように配置されている、請求項11又は12に記載の装置(14b、14c)。
【請求項14】
前記装置(14b、14c)は、前記封止部材(82)を、前記コーティング媒体管路(50b)内で、前記弁配置(30)から、前記検出デバイス(84)を通って、前記下流点(78)まで移動させるように構成されている、請求項13に記載の装置(14b、14c)。
【請求項15】
産業用ロボット(12)と、請求項6又は請求項9~14のいずれか一項に記載の装置(14a~14c)と、を備えるロボットシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、コーティング装置に関する。特に、コーティング媒体を物体に塗布するための装置の洗浄を監視する方法、コーティング媒体を物体に塗布するための装置を洗浄する方法、コーティング媒体を物体に塗布するための装置、及び、産業用ロボットと、コーティング媒体を物体に塗布するための装置と、を備えるロボットシステムが提供される。
【背景技術】
【0002】
自動車両車体部品への塗料の塗布等、コーティング媒体を物体に塗布するために、コーティング媒体は、回転するベルカップによって霧化され、例えば、シェーピングエア及びコーティング媒体の静電帯電によって、物体に塗布され得る。塗料又はワニス等の、様々なタイプの液体ベースのコーティング媒体が、このようにして物体に塗布され得る。
【0003】
ベルカップが液体塗料を粉砕するとき、ベルカップもまた塗料によって汚染される。第1の塗料がベルカップ上に残っている場合、後続の第2の塗料が、第1の塗料によって汚染されることになる。従って、ベルカップを備えるコーティング装置は、例えば、ある色から別の色に切り替えるときに、頻繁に洗浄される必要がある。
【0004】
洗浄は、ベルカップに溶剤を供給することを備え得る。しかしながら、洗浄媒体管路が遮断された場合、洗浄媒体は、ベルカップに到達し得ず、従って、ベルカップは、汚染されたままである。洗浄媒体が正しい流れでベルカップに到達しない理由は、洗浄媒体管路の遮断及び/又は制限、並びに洗浄媒体弁が正しく開かないことを含む。
【0005】
いくつかの先行技術の解決策は、ベルカップ及び/又は洗浄媒体管路の手動検査に依拠する。これは、自動化された工場設定において理想的ではない。いくつかの他の先行技術の解決策では、流量計が、洗浄媒体の流れを測定するために使用される。このような解決策は高価であり、プロセスを複雑にする。
【0006】
いくつかの自動車塗装用途では、塗料が汚染されていることを検出する前に、数台の自動車が塗装ステーションを通過し得る。これらの自動車は、再塗装される前に、汚染された塗料を除去するために、手作業で研磨されなければならなくなり得る。これは非常に高価であり、時間がかかり、生産フローを中断させる。
【0007】
更に、色切替装置からベルカップまでのコーティング媒体管路を通る流量は、高品質の塗面を確保するために、正確に制御されなければならない。従来、塗料の流れの測定及び/又は投与は、コーティング媒体と物理的に接触している、ギアポンプ又はギア流量計等の機械デバイスを用いて行われる。しかしながら、ギアがコーティング媒体管路の内部に位置する場合、一定量の塗料が、ギアの内部に捕捉される。この量の塗料は、装置が洗浄されるたびに、例えば、新しい色が要求されるときに浪費される。
【0008】
US2016030962A1には、目標回転速度、目標空気流量、目標トルク、及び目標静電電流を決定することと、動作回転速度、動作空気流量、動作トルク、及び動作静電電流を測定することと、を含む回転式塗料噴霧器を監視する方法が開示されている。この方法は、動作回転速度が目標回転速度と異なる第1の状態と、動作空気流量が目標空気流量と異なる第2の状態と、動作トルクが目標トルクと異なる第3の状態と、動作静電電流が目標静電電流と異なる第4の状態と、のうちの少なくとも1つを検出することを含む。検出後、方法は、第1、第2、第3、及び第4の状態のうちの少なくとも1つを示すインジケータ信号を生成することを含む。回転式塗料噴霧器ロボットシステムもまた、開示されている。
【発明の概要】
【0009】
本開示の1つの目的は、成功した洗浄動作の信頼できる検証を提供する、コーティング媒体を物体に塗布するための装置の洗浄を監視する方法を提供することである。
【0010】
本開示の更なる目的は、成功した洗浄動作のより複雑でない検証を提供する、コーティング媒体を物体に塗布するための装置の洗浄を監視する方法を提供することである。
【0011】
本開示のなお更なる目的は、費用効果が高く、及び/又は、当該装置の費用効果が高い設計を可能にする、コーティング媒体を物体に塗布するための装置の洗浄を監視する方法を提供することである。
【0012】
本開示のなお更なる目的は、前述の目的のいくつか又は全てを組み合わせて解決する、コーティング媒体を物体に塗布するための装置の洗浄を監視する方法を提供することである。
【0013】
本開示のなお更なる目的は、コーティング媒体管路の洗浄を改善する、コーティング媒体を物体に塗布するための装置を洗浄する方法を提供することである。
【0014】
本開示のなお更なる目的は、コーティング媒体の浪費を低減する、コーティング媒体を物体に塗布するための装置を洗浄する方法を提供することである。
【0015】
本開示のなお更なる目的は、前述の目的のうちの1つ、いくつか、又は全てを組み合わせて解決する、コーティング媒体を物体に塗布するための装置を提供することである。
【0016】
第1の態様によれば、コーティング媒体を物体に塗布するための装置の洗浄を監視する方法が提供され、装置は、コーティング媒体を霧化するための回転可能な偏向要素と、洗浄媒体を偏向要素に導くための洗浄媒体管路と、を備え、ここで、方法は、偏向要素を回転させながら、偏向要素に向かって洗浄媒体管路を通る洗浄媒体の送達(delivery)を備える洗浄動作の実行を命令することと、洗浄動作についての装置の少なくとも1つの動作パラメータの動作値を収集することと、動作値を、洗浄動作についての少なくとも1つの動作パラメータの基準値と比較することと、比較に基づいて、洗浄動作が成功したか又は失敗したかを決定することと、を備える。
【0017】
洗浄媒体を供給する洗浄媒体管路が、意図的に又は故障によってのいずれかで遮断された場合、洗浄媒体は、偏向要素に到達せず、その結果、偏向要素は、洗浄されないことになる。これはまた、洗浄媒体チャネルは遮断されていないが、洗浄媒体源内に洗浄媒体がもはや残っていない場合にも起こり得る。これらの状況は、洗浄されていない偏向要素をもたらすことになり、次の物体が汚染される可能性がある。
【0018】
方法は、装置のいくつかの動作パラメータが、成功した洗浄動作について経時的な特徴的パターンを有するという発見に基づいている。例えば、偏向要素が、それにある一定の流れで洗浄媒体が当たったときに、ある一定の速度で回転する場合、回転速度対時間の特性曲線が見られ得る。従って、偏向要素の回転速度の突然の減速が、成功した洗浄動作について見られ得る。何らかの理由で、洗浄媒体が洗浄動作中に偏向要素に到達しない場合、偏向要素の回転速度における低減は、検出されないことになる。更に、偏向要素への洗浄媒体の流れが高すぎるか又は低すぎる場合、偏向要素の回転速度における低下は、予想通りにはならない。この場合も、洗浄動作は成功しなかったと、方法によって結論付けられ得る。
【0019】
動作値を基準値と比較することによって、方法は、偏向要素への洗浄媒体の流れの自動検証を可能にする。方法は、1つ以上の間接センサ読み取り値(indirect sensor readings)からの動作値を用いて行われ得る。従って、方法は、多くのコーティング装置において既存でないセンサの導入を必ずしも必要としない。従って、方法は、費用効果が高い。
【0020】
方法は、失敗した洗浄動作の早期検出を可能にする。このようにして、コーティング媒体が、汚染された偏向要素を用いて更なる物体に塗布されることが、回避され得る。これにより、大幅な費用の節約及び時間の節約がもたらされる。
【0021】
方法は、洗浄動作が成功しなかったと決定すると、警告を発することを更に備え得る。警告は、例えば、視覚的警告及び/又は可聴警告であり得る。
【0022】
本開示全体を通して、洗浄媒体は、溶剤であり得る。コーティング媒体は、塗料又はワニス等の、液体であり得る。偏向要素は、回転可能なベルカップであり得る。
【0023】
本方法は、例えば、洗浄媒体チャネルが洗浄媒体を供給するために開かれるたびに、自動的に行われ得る。方法は、洗浄動作中に一定の速度で回転するように偏向要素を制御することを更に備え得る。
【0024】
洗浄媒体管路は、洗浄媒体源と偏向要素との間の管路であり得る。洗浄媒体管路は、洗浄媒体専用の管路であり得る。代替又は追加として、洗浄媒体管路は、コーティング媒体を偏向要素に導くためのコーティング媒体管路と共通であり得る。
【0025】
少なくとも1つの動作パラメータは、偏向要素の回転速度を示すパラメータを備え得る。従って、少なくとも1つの動作パラメータは、偏向要素の回転速度を備え得る。回転速度を示すパラメータは、偏向要素の回転位置、回転速度、及び回転加速度を含む。装置は、例えば、回転速度を決定するための回転センサを備え得る。多くの従来の回転センサは、偏向要素の回転速度を非常に精確に測定し得る。
【0026】
本装置は、偏向要素の回転を駆動するように配置され且つ加圧空気によって駆動されるように配置されたタービンを更に備え得る。加圧空気は、例えば、偏向要素の目標回転速度に基づいて、装置によって調整及び測定され得る。
【0027】
本装置は、加圧空気をタービンに供給するための空気管路を備え得る。装置は、加圧空気を空気管路に供給するための、圧縮機等の圧力源を更に備え得る。装置は、空気管路内の空気圧を決定するための圧力センサを更に備え得る。
【0028】
少なくとも1つの動作パラメータは、加圧空気を示すパラメータであり得る。従って、少なくとも1つの動作パラメータは、タービンへの空気の圧力を備え得る。洗浄媒体が当たったことにより回転速度が低下したときに、偏向要素の回転速度を増大させるために、より高い空気圧がタービンに供給されることになる。従って、少なくとも2バールの上昇等の空気圧における急激な上昇が、成功した洗浄動作中に見られ得る。
【0029】
本装置は、加圧空気の流れを調整するように配置された空気流調整器を更に備え得る。この場合、少なくとも1つの動作パラメータは、空気流調整器の状態を示すパラメータであり得る。例えば、空気流調整器は、洗浄媒体が当たったことにより回転速度が低下したときに、偏向要素の回転速度を増大させるために、タービンに増大された空気圧を供給するために、より多く開き得る。従って、空気流調整器の、少なくとも5%の増大等の開度における急激な増大が、成功した洗浄動作中に見られ得る。これにより、空気流調整器の状態を示すパラメータの一例が、空気流調整器の開度である。空気流調整器は、調整弁であり得る。
【0030】
第2の態様によれば、コーティング媒体を物体に塗布するための装置が提供され、装置は、コーティング媒体を霧化するための回転可能な偏向要素、洗浄媒体を偏向要素に導くための洗浄媒体管路、及び、少なくとも1つのデータ処理デバイスと、コンピュータプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリと、を備える制御システムであって、コンピュータプログラムは、プログラムコードを備え、プログラムコードは、少なくとも1つのデータ処理デバイスによって実行されると、少なくとも1つのデータ処理デバイスに、偏向要素に回転するように命令しながら、偏向要素に向かって洗浄媒体管路を通る洗浄媒体の送達を備える洗浄動作の実行を命令するステップと、洗浄動作についての装置の少なくとも1つの動作パラメータの動作値を収集するステップと、動作値を、洗浄動作についての少なくとも1つの動作パラメータの基準値と比較するステップと、比較に基づいて、洗浄動作が成功したか又は失敗したかを決定するステップと、を行わせる、制御システムを備える。従って、コンピュータプログラムは、偏向要素を十分に洗浄するのに必要な洗浄媒体の流れが、洗浄動作中に存在するかどうか、又は洗浄動作中に存在したかどうかを推定するためのアルゴリズムであり得る。
【0031】
第2の態様の装置は、第1の態様に関して説明されたような任意のタイプのものであり得、逆もまた同様である。
【0032】
第3の態様によれば、コーティング媒体を物体に塗布するための装置を洗浄する方法が提供され、方法は、コーティング媒体管路内の封止部材を、封止部材がコーティング媒体管路の内面に対して封止しながら、装置の出口に向かって前方に移動させることと、コーティング媒体管路内の封止部材の通過を検出することと、備える。封止部材をコーティング媒体管路に通過させることは、以前に使用されたコーティング媒体を前方に押し進めるために使用され得る。このようにして、コーティング媒体の浪費が、実質的に又は完全に排除され得る。従って、コーティング媒体は、浪費されることなく、物体への塗布に使用され得る。
【0033】
封止部材は、プラグ等の中実体であり得る。中実体は、剛性又は可撓性であり得る。いずれの場合も、封止部材は、封止部材の下流の塗料及び封止部材の上流の空気又は溶剤等、2つの異なる媒体間に障壁を設けるように構成されている。従って、封止部材は、2つの媒体の混合を防止する。
【0034】
封止部材は、手動で又は自動的にのいずれかで、様々な方法でコーティング媒体管路に導入され得る。代替として、封止部材は、最初に開始位置、例えば、コーティング媒体管路の上流端において配置され、次いで、開始位置からコーティング媒体管路内を下流に移動し得る。封止部材は、封止部材の上流に、封止部材を押す、加圧空気、加圧洗浄媒体又は加圧コーティング媒体等の加圧媒体を導入することによって、コーティング媒体管路内で下流に移動され得る。
【0035】
方法は、封止部材を開始位置に戻すことを更に備え得る。封止部材は、コーティング媒体管路を通って開始位置に戻され得る。代替として、封止部材は、コーティング媒体管路と平行な戻り管路を通って開始位置に戻され得る。戻り管路は、複数の封止部材を収容するマガジンとして機能し得る。
【0036】
代替として、封止部材は、下流点で除去され得る。この場合、新しい封止部材が、毎回開始位置に導入され得る。従って、各封止部材は、単回使用又は複数回使用のものであり得る。
【0037】
封止部材の通過の検出は、コーティング媒体管路を通じて送られる超音波によって行われ得る。
【0038】
第4の態様によれば、コーティング媒体を物体に塗布するための装置が提供され、装置は、コーティング媒体管路と、出口と、第1のコーティング媒体を収容する第1のコーティング媒体源と、第2のコーティング媒体を収容する第2のコーティング媒体源と、第1のコーティング媒体源及び第2のコーティング媒体源の各々を、コーティング媒体管路を通じて出口と独立に連通させるように構成された弁配置と、コーティング媒体管路を通る封止部材の通過を検出するように構成された検出デバイスと、を備え、ここにおいて、コーティング媒体管路は、弁配置から、検出デバイスを通って、検出デバイスの下流の下流点まで、実質的に遮られていないか、又は遮られていない。
【0039】
第4の態様の装置は、第3の態様に関して説明されたような任意のタイプのものであり得、逆もまた同様である。弁配置は、コーティング媒体が塗料である場合には、色切替装置であり得る。
【0040】
コーティング媒体管路の内部に1つ以上のギアホイール又は他の機械デバイスを備える先行技術の解決策とは対照的に、この態様による遮られていないコーティング媒体管路は、例えば、色を変更するために、封止部材がコーティング媒体管路を通り抜けることを可能にする。
【0041】
検出デバイスがコーティング媒体管路を遮らないので、コーティング媒体は、検出デバイスを通って遮られることなく流れ得る。封止部材の通過を検出するように構成されていることに加えて、検出デバイスは、コーティング媒体管路内のコーティング媒体の流れを測定するように構成され得る。
【0042】
検出デバイスは、流れ検出デバイスであり得る。コーティング媒体管路は、少なくとも弁配置から下流点まで、実質的に直線状であり得るか、又は直線状であり得る。
【0043】
下流点は、コーティング媒体管路における制限部であり得る。一例によれば、下流点は、コーティング媒体管路の内径を低減させる段差(step)等の制限部である。
【0044】
装置は、コーティング媒体管路内の流れを制御するための流量制御弁を更に備え得る。流量制御弁は、検出デバイスの下流に配置され得る。この場合、下流点は、流量制御弁によって構成され得るか、又は、下流点は、検出デバイスと流量制御弁との間に配置され得る。代替又は追加として、流量制御弁が検出デバイスの下流に位置する場合には、コーティング媒体管路は、弁配置を通じて、実質的に遮られていないか、又は遮られていない場合がある。
【0045】
検出デバイス及び流量制御弁は、流量調整デバイスとして使用され得る。この場合、流量制御弁は、検出デバイスからの流量測定値に基づいて、閉ループで制御され得る。
【0046】
代替として、流量制御弁は、検出デバイスの上流、例えば、弁配置において配置され得る。この場合、封止部材のための開始位置は、流量制御弁のすぐ下流等の、流量制御弁の下流、且つ検出デバイスの上流であり得る。流量制御弁が弁配置の上流に配置されている場合、コーティング媒体管路は、弁配置を通じて、実質的に遮られていないか、又は遮られていない場合がある。
【0047】
流量制御弁は、比例弁であり得る。代替又は追加として、流量制御弁は、電気的に制御され得る。
【0048】
検出デバイスは、コーティング媒体管路内の流体に超音波を送ることと、超音波によって流体中に誘起されたエコー信号を感知することと、エコー信号を電子応答データに変換することと、を行うように構成された超音波デバイスを備え得る。超音波デバイスは、コーティング媒体管路の外側に位置するトランスデューサを備え得る。このようにして、封止部材の通過は、コーティング媒体管路を遮ることなく検出され得る。
【0049】
超音波デバイスは、流れの様々な性質を正確に決定するために使用され得るので、封止部材の通過の検出は、超音波デバイスの有利なボーナス特徴である。可能な代替として、超音波デバイスは、光学センサであり得る。
【0050】
装置は、封止部材がコーティング媒体管路の内面に対して封止しながら、コーティング媒体管路内で検出デバイスを通って移動するように配置された封止部材を更に備え得る。
【0051】
装置は、封止部材を、コーティング媒体管路内で、検出デバイスを通って移動させるように構成され得る。この目的のために、装置は、封止部材の上流に、封止部材を押す、加圧空気、加圧洗浄媒体又は加圧コーティング媒体等の加圧媒体を導入するように構成され得る。
【0052】
封止部材は、コーティング媒体管路内で、封止部材が内面に対して封止しながら、弁配置から、検出デバイスを通って、下流点まで移動するように配置され得る。
【0053】
装置は、封止部材を、コーティング媒体管路内で、弁配置から、検出デバイスを通って、下流点まで移動させるように構成され得る。この目的のために、装置は、封止部材の上流に、封止部材を押す、加圧空気、加圧洗浄媒体又は加圧コーティング媒体等の加圧媒体を導入するように構成され得る。
【0054】
更なる態様によれば、産業用ロボットと、本開示による装置と、を備えるロボットシステムが提供される。産業用ロボットは、6軸又は7軸等、3軸以上においてプログラム可能なマニピュレータを備え得る。装置は、マニピュレータによって担持され得る。
【0055】
本開示の更なる詳細、利点及び態様が、図面と併せて以下の説明態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、産業用ロボットと、コーティング装置と、を備えるロボットシステムの側面図を概略的に表す。
【
図2】
図2は、コーティング装置のブロック図を概略的に表す。
【
図3】
図3は、洗浄動作中のコーティング装置のベルカップの回転速度を概略的に表す。
【
図4】
図4は、更なるコーティング装置のブロック図を概略的に表す。
【
図5a】
図5aは、
図4のコーティング装置の超音波デバイスの斜視図を概略的に表す。
【
図5b】
図5bは、超音波デバイスの側断面図を概略的に表す。
【
図6】
図6は、封止部材がコーティング媒体管路内を移動したときの
図4のコーティング装置のブロック図を概略的に表す。
【
図7】
図7は、更なるコーティング装置のブロック図を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下では、コーティング媒体を物体に塗布するための装置の洗浄を監視する方法、コーティング媒体を物体に塗布するための装置を洗浄する方法、コーティング媒体を物体に塗布するための装置、及び、産業用ロボットと、コーティング媒体を物体に塗布するための装置と、を備えるロボットシステムが説明される。同一又は同様の参照番号は、同一又は同様の構造的特徴を示すために使用される。
【0058】
図1は、ロボットシステム10の側面図を概略的に表す。ロボットシステム10は、産業用ロボット12と、コーティング装置14aと、を備える。産業用ロボット12は、6軸又は7軸において等、少なくとも3軸において移動可能なマニピュレータを備える。装置14aは、
図1に示されるように、コーティング媒体16を物体18に塗布するように構成されている。コーティング媒体16は、例えば、塗料であり得る。物体18は、例えば、車両の車体部分であり得る。
【0059】
図1は、装置14aが噴霧器20を備えることを更に示す。噴霧器20は、本明細書で説明されるような出口の一例である。噴霧器20は、ここでは、マニピュレータの遠位端に配置されている。
【0060】
図2は、装置14aのブロック図を概略的に表す。この例の装置14aは、第1のタイプの加圧コーティング媒体16(例えば、第1の色の塗料)を収容する第1のコーティング媒体源22と、第2のタイプの加圧コーティング媒体16(例えば、第2の色の塗料)を収容する第2のコーティング媒体源24と、加圧洗浄媒体(例えば、溶剤)を収容する洗浄媒体源26と、圧縮空気を供給するための圧縮機28と、を更に備える。2つのコーティング媒体源22及び24のみが例示されているが、装置14aは、20~30個の異なるコーティング媒体源(例えば、塗料源)等の、少なくとも10個の異なるコーティング媒体源を備え得る。
【0061】
装置14aは、弁配置30を更に備える。この例の弁配置30は、第1のコーティング媒体源22に関連付けられた第1のコーティング媒体弁32と、第2のコーティング媒体源24に関連付けられた第2のコーティング媒体弁34と、洗浄媒体源26に関連付けられた第1の洗浄媒体弁36と、洗浄媒体源26に関連付けられた第2の洗浄媒体弁38と、圧縮機28に関連付けられた圧縮機弁40と、を更に備える。第1のコーティング媒体弁32、第2のコーティング媒体弁34、第1の洗浄媒体弁36、第2の洗浄媒体弁38、及び圧縮機弁40の各々は、ここでは、2/2弁として例示されている。弁配置30は、ここでは、色切替装置として機能する。
【0062】
この例の弁配置30は、接合部42を更に備える。第1のコーティング媒体弁32、第2のコーティング媒体弁34、及び第1の洗浄媒体弁36は、接合部42と直接流体連通している。
【0063】
噴霧器20は、ここでは、ベルカップ44として例示されている、回転可能な偏向要素を備える。ベルカップ44は、コーティング媒体16を霧化するように構成されている。
【0064】
噴霧器20は、タービン46を更に備える。タービン46は、ベルカップ44の回転を駆動するように配置されている。タービン46は、加圧空気によって駆動される。
【0065】
噴霧器20は、回転センサ48を更に備える。回転センサ48は、ベルカップ44の回転速度ωを測定する。回転センサ48は、例えば、回転エンコーダディスクを備え得る。
【0066】
装置14aは、コーティング媒体管路50aを更に備える。コーティング媒体管路50aは、ここでは、接合部42からベルカップ44まで延在する。従って、弁配置30は、第1のコーティング媒体源22、第2のコーティング媒体源24、及び洗浄媒体源26の各々を、コーティング媒体管路50aを通じて噴霧器20と独立に流体連通させるように構成されている。
【0067】
装置14aは、空気管路52を更に備える。空気管路52は、ここでは、圧縮機弁40からタービン46まで延在する。
【0068】
装置14aは、ここでは、調整弁として例示されている、空気流調整器54を更に備える。空気流調整器54は、空気管路52上に配置されている。空気流調整器54は、その開度を制御することによって、タービン46に供給される加圧空気の流れを調整するように構成されている。
【0069】
装置14aは、圧力センサ56を更に備える。圧力センサ56は、空気管路52上に配置されている。圧力センサ56は、空気管路52内の空気圧を読み取るように構成されている。この例では、空気流調整器54は、圧力センサ56とタービン46との間に配置されている。
【0070】
装置14aは、洗浄媒体管路58を更に備える。洗浄媒体管路58は、洗浄媒体をベルカップ44に、この例では、ベルカップ44の外側に導くように構成されている。洗浄媒体管路58は、ここでは、第2の洗浄媒体弁38からベルカップ44まで延在する。この例では、洗浄媒体のみが洗浄媒体管路58を通過する。
【0071】
装置14aは、制御システム60を更に備える。制御システム60は、データ処理デバイス62と、コンピュータプログラムを記憶したメモリ64と、を備える。コンピュータプログラムは、プログラムコードを備え、プログラムコードは、データ処理デバイス62によって実行されると、データ処理デバイス62に、本明細書に説明されるような様々なステップを実行させ、及び/又はその実行を命令させる。制御システム60は、弁配置30と信号通信状態にある。この例では、制御システム60は、第1のコーティング媒体弁32、第2のコーティング媒体弁34、圧縮機弁40、第1の洗浄媒体弁36及び第2の洗浄媒体弁38の各々の開閉を命令するために、それらの各々と信号通信状態にある。
【0072】
制御システム60は、更に空気流調整器54と信号通信状態にあり、その開度を命令する。オプションで、空気流調整器54は、その開度を示す信号を制御システム60に送り返すように構成されている。
【0073】
圧力センサ56は、制御システム60と信号通信状態にある。従って、圧力センサ56は、空気管路52内の圧力を表す信号を制御システム60に送るように配置されている。圧力センサ56が使用されず、空気流調整器54が、その開度を示す信号を制御システム60に送り返すように構成されていない場合、空気流調整器54に対して命令された開度が、空気管路52を通る流れを推定するために使用され得る。
【0074】
回転センサ48は、制御システム60と信号通信状態にある。従って、回転センサ48は、ベルカップ44の回転速度ωを表す信号を、制御システム60に送るように配置されている。
【0075】
コーティング媒体16を霧化するために、ベルカップ44の回転速度ωが制御される。ベルカップ44についての異なる目標回転速度が、異なるタイプのコーティング媒体16に対して設定され得る。ベルカップ44、回転センサ48、及び空気流調整器54は、そのようなものとして以前から知られている。
【0076】
ベルカップ44の回転速度ωを制御するために、制御システム60は、圧力センサ56から空気管路52内の圧力を受信し、回転センサ48から回転速度ωを受信し、閉制御ループにおいて空気流調整器54を制御する。様々な塗料等の、いくつかのコーティング媒体16について、ベルカップ44の目標回転速度は、例えば、45krpmであり得る。
【0077】
噴霧器20がベルカップ44によってコーティング媒体16を霧化すると、ベルカップ44の両側が、コーティング媒体16で汚染される。ベルカップ44を洗浄するために、例えば、塗料の色を変更するために、洗浄動作の実行が、制御システム60によって命令される。洗浄動作は、コーティング媒体16を変更するたびに自動的に行われ得る。
【0078】
洗浄動作は、第2の洗浄媒体弁38に開くように命令し、ベルカップ44に目標回転速度で回転するように命令することによって開始され得る。第2の洗浄媒体弁38が開かれると、洗浄媒体は、ベルカップ44の外側に供給される。洗浄動作を終了するために、第2の洗浄媒体弁38は、閉じるように命令される。洗浄動作はまた、ベルカップ44の内側を洗浄するために、第1の洗浄媒体弁36によって、コーティング媒体管路50aを通じて洗浄媒体を供給することを備え得る。
【0079】
洗浄媒体は、1000ml/分の流れで、洗浄媒体管路58を通ってベルカップ44に適用され得る。流れは、自動的に又は手動で設定され得る。洗浄媒体の特性は、比較的同一であり、略0.9g/cc(グラム/立方センチメートル)である。
【0080】
何らかの理由で、洗浄媒体がベルカップ44に到達しない場合、ベルカップ44は、洗浄されないことになる。これは、典型的に、費用及び時間のかかる結果をもたらす。
【0081】
図3は、洗浄媒体管路58を通じた洗浄媒体の供給を備える典型的な洗浄動作中の経時的なベルカップ44の回転速度ωを概略的に表す。ベルカップ44の回転速度ωは、第2の洗浄媒体弁38が開いてから閉じるまでの、洗浄動作全体を通して記録される。ベルカップ44の回転速度ωは、本開示による動作パラメータの一例である。
【0082】
図3に示されるように、洗浄媒体がベルカップ44に当たる前は、回転速度ωは、目標回転速度ω
Tarにおいて安定している。目標回転速度ω
Tarは、圧力センサ56からの圧力読み取り値と、回転センサ48からのベルカップ44の測定された回転速度ωとに基づいて、空気流調整器54の閉ループ制御において使用される。洗浄媒体管路58を通る洗浄媒体がベルカップ44に当たると、回転速度ωは低減する。速度は、洗浄媒体がベルカップ44に当たるとき、例えば、500rpmで低減し得る。
【0083】
洗浄媒体は、パルス状にベルカップ44に送達され得る。
図3では、洗浄媒体の1つのパルスが示されている。洗浄媒体の各パルスは、例えば、1~2秒の持続時間を有し得る。
【0084】
回転速度ωの低下に応答して、制御システム60における閉制御ループは、補償するために、タービン46への空気の流れを増大させるように空気流調整器54を制御する。流れにおけるこの変化は、速度低下を補償するために、ベルカップ44の回転速度ωの変化をもたらし、ベルカップ44を目標回転速度ωTarに戻し、ここでは、回転速度ωが再び目標回転速度ωTarにおいて安定するまで、わずかなオーバーシュートを伴う。
【0085】
洗浄媒体の成功したパルス、即ち、正確な流れでベルカップ44に到達する洗浄媒体のパルスについては、経時的な回転速度ωのパターンは、同じ、又は実質的に同じに見える。従って、パターンは、ベルカップ44に当たった洗浄媒体の各パルスについて繰り返される。これにより、このようなパターンは、ベルカップ44の回転速度ωの基準値の例となる。
【0086】
制御システム60は、回転速度の収集された動作値を、回転速度ωの基準値と比較する。例えば、回転速度ωが洗浄動作中に500rpmより多く低下した場合、洗浄動作が成功したと結論付けられ得る。即ち、十分な流れを有する洗浄媒体がベルカップ44に当たっている。
【0087】
ベルカップ44の回転速度ωに有意な変化がない場合(例えば、回転速度ωが500rpmより少なく低下した場合)、洗浄動作は、成功しなかったと結論付けられ得る。この理由は、洗浄媒体管路58が遮断されていること、及び/又は洗浄媒体源26が空であることであり得る。
【0088】
洗浄動作が成功していないと結論付けられた場合、警告が、直ちに且つ自動的にオペレータに対して発せられる。警告は、視覚的警告及び/又は可聴警告であり得る。更に、コーティング媒体塗布プロセスは、洗浄動作が成功しなかったと結論付けることに応答して、自動的に停止され得る。このようにして、後続のコーティング媒体プロセスにおける汚染を回避するために、エラーの原因を修復するための対策が講じられ得る。本発明者らは、方法が、成功した洗浄動作と失敗した洗浄動作とを区別するのに十分に機能することを示す試験を行った。圧力センサ56、空気流調整器54及び回転センサ48は、そのようなものとして知られているので、洗浄動作が成功したか否かを決定するための専用のセンサを方法のために導入する必要はない。
【0089】
(ベルカップ44の回転速度ωに加えて)洗浄作業が成功したか否かを決定するために収集され、基準値と比較され得る、洗浄作業についての装置14aの動作パラメータの更なる例は、(例えば、圧力センサ56によって測定されるような)空気圧及び空気流調整器54の開度を含む。
【0090】
コーティング媒体管路50aを通じたベルカップ44への洗浄媒体の送達を備える洗浄動作の成功を検出するために、対応する方法が使用され得る。
【0091】
図4は、更なるコーティング装置14bのブロック図を概略的に表す。主に
図2との相違点が説明される。第1のコーティング媒体弁32及び第2のコーティング媒体弁34に加えて、この例の弁配置30は、洗浄媒体源26にそれぞれ関連付けられた、第1の洗浄媒体弁66と、第2の洗浄媒体弁68と、第3の洗浄媒体弁70と、を備える。この例の弁配置30は、圧縮機28にそれぞれ関連付けられた、第1の圧縮機弁72と、第2の圧縮機弁74と、を更に備える。第1の洗浄媒体弁66、第2の洗浄媒体弁68、第3の洗浄媒体弁70、第1の圧縮機弁72、及び第2の圧縮機弁74の各々は、ここでは、2/2弁として例示されている。
【0092】
この例の装置14bは、コーティング媒体管路50bを更に備える。コーティング媒体管路50bは、開始位置76からベルカップ44まで延在する。コーティング媒体管路50bは、段差78を備え、ここで、下流方向に見られるように、コーティング媒体管路50bの内部面積が低減される。段差78は、本開示による下流点の一例である。
【0093】
この例の装置14bは、ここでは、電気的に制御された比例弁として例示されている、流量制御弁80を更に備える。流量制御弁80は、コーティング媒体管路50b内の流れを制御するように構成されている。この例では、流量制御弁80は、コーティング媒体管路50b内で、段差78と噴霧器20との間に配置されている。
【0094】
第1の洗浄媒体弁66及び第1の圧縮機弁72は、開始位置76と直接流体連通している。第2の洗浄媒体弁68は、接合部42と直接流体連通している。
【0095】
この例の第2の洗浄媒体弁68は、接合部42と直接流体連通している。この例の第3の洗浄媒体弁70は、段差78と流量制御弁80との間で、コーティング媒体管路50bと直接流体連通している。第2の圧縮機弁74は、段差78と流量制御弁80との間で、コーティング媒体管路50bと直接流体連通している。
【0096】
装置14bは、封止部材82を更に備える。封止部材82は、コーティング媒体管路50bの内部に配置されている。
図4では、封止部材82は、開始位置76において配置されている。封止部材82は、コーティング媒体管路50bの内面に対して封止する。
【0097】
封止部材82は、ここでは、中実且つ可撓性のプラグとして例示されている。封止部材82は、2つの媒体の混合を防止するために、コーティング媒体管路50b内で2つの媒体間に障壁を設けるように構成されている。封止部材82は、「ピッグ(pig)」と呼ばれ得る。
【0098】
装置14bは、超音波デバイス84を更に備える。弁配置30は、ここでは、開始位置76と超音波デバイス84との間に配置されている。超音波デバイス84は、本開示による検出デバイスの一例である。超音波デバイス84は、コーティング媒体管路50b内の流体に超音波を送ることと、超音波によって流体中に誘起されたエコー信号を感知することと、エコー信号を電子応答データ86に変換することと、を行うように構成されている。コーティング媒体管路50bは、弁配置30を通り且つ超音波デバイス84を通る、一定の直径を有する直線状で遮られていない穴を備える。
【0099】
この例の超音波デバイス84は、第1の超音波トランスデューサ88と、ここでは、第1の超音波トランスデューサ88の下流に配置された、第2の超音波トランスデューサ90と、を備える。制御システム60は、超音波デバイス84を制御することと、第1の超音波トランスデューサ88及び第2の超音波トランスデューサ90の各々から、電子応答データ86を受信することと、を行うように構成されている。
【0100】
図4に示されるように、コーティング媒体管路50bは、開始位置76から、弁配置30を通り、超音波デバイス84を通って、遮られていない。従って、装置14bは、先行技術の装置よりも大幅に少ないコーティング媒体の捕捉を有する。この例では、コーティング媒体管路50bの内面は、開始位置76から段差78まで、一定の内径を有する。
【0101】
図5aは、超音波デバイス84の斜視図を概略的に表し、
図5bは、超音波デバイス84の側断面図を概略的に表す。
図5a及び5bをまとめて参照すると、超音波デバイス84は、管92を備える。管92は、ここでは、直線状及び剛性である。管92は、例えば、プラスチック又は金属で作製され得る。この実装形態では、管92は、コーティング媒体管路50bの一部を構成する。
図5bでは、コーティング媒体管路50bの内面94が見られ得る。
【0102】
第1の超音波トランスデューサ88及び第2の超音波トランスデューサ90の各々は、コーティング媒体管路50bを取り囲み、完全に(entirely)コーティング媒体管路50bの外部に配置されている。これにより、コーティング媒体管路50bを通って流れる流体は、干渉されない。従って、直管92と、コーティング媒体管路50bの外部の超音波デバイス84の配置とは、流体のための遮られていない流路を提供する。
【0103】
第1の超音波トランスデューサ88は、第1の超音波送信機及び第1の超音波受信機(図示せず)を備える。第2の超音波トランスデューサ90は、第2の超音波送信機及び第2の超音波受信機(図示せず)を備える。第1の超音波送信機は、第1の方向96に超音波を送るように構成されている。第1の方向96への超音波によって流体中に誘起されたエコー信号は、第2の超音波受信機によって感知される。第2の超音波送信機は、第1の方向96とは反対の第2の方向98に超音波を送るように構成されている。第2の方向98への超音波によって流体中に誘起されたエコー信号は、第1の超音波受信機によって感知される。各超音波トランスデューサ88及び90は、例えば、それらの間の超音波の飛行時間を決定するように構成され得る。飛行時間は、電子応答データ86として制御システム60に通信され得る。
【0104】
コーティング媒体の塗布中、超音波デバイス84は、コーティング媒体管路50b内のコーティング媒体16を超音波パルスに連続的にさらし、対応する電子応答データ86を提供する。超音波デバイス84は、気泡検出及び音速測定値等、コーティング媒体16(又はそれを通過する他の流体)の流れに関連する性質を決定するための可能性を提供する。制御システム60は、超音波デバイス84からの電子応答データ86に基づいて、流体の1つ以上のパラメータ値をリアルタイムで決定し得る。この例では、コーティング媒体管路50b内のコーティング媒体16を通る、超音波トランスデューサ88と90との間の音速が、コーティング媒体16のパラメータとして使用される。
【0105】
超音波デバイス84及び流量制御弁80は、流量調整デバイスとして使用される。流量制御弁80は、超音波デバイス84からの電子応答データ86に基づいて制御される。しかしながら、超音波デバイス84はまた、封止部材82の成功した通過を検出するためにも使用され得る。超音波信号は、封止部材82が超音波トランスデューサ88と90との間を通過するにつれて、ゼロまで低下することになる。
【0106】
図5a及び
図5bに示されるように、超音波デバイス84は、コーティング媒体管路50bを遮らない。これにより、コーティング媒体16及び封止部材82は、遮られることなく超音波デバイス84を通過し得る。
【0107】
ギアポンプ及び/又はギア流量計がコーティング媒体管路50b内に配置されている先行技術のコーティング装置では、これらのデバイス内に捕捉された塗料は、色変更中に失われる。このような装置では、ギアポンプ及び/又はギア流量計から生じるコーティング媒体16の損失は、全損失のかなりの部分に相当する。封止部材82を超音波デバイス84に通過させることにより、この損失を除去することによって、大幅な費用の節約及び環境影響の低減が達成され得る。
【0108】
図4の例では、開始位置76と噴霧器20との間のコーティング媒体管路50bの内部のコーティング媒体16の総容積は既知である。第1のコーティング媒体16によるコーティングプロセスがほぼ終了すると、第1のコーティング媒体弁32が閉じ、第1の洗浄媒体弁66が開く。これにより、洗浄媒体源26からの洗浄媒体が、封止部材82の上流のコーティング媒体管路50bの開始位置76に供給される。洗浄媒体からの圧力は、封止部材82をコーティング媒体管路50b内で前方に押し進めさせる。封止部材82の前進中、封止部材82の下流のコーティング媒体16は、封止部材82によって、噴霧器20を通って押し出される。これにより、コーティングプロセスは、第1のコーティング媒体弁32が閉じられているにもかかわらず、継続され得る。封止部材82の前方におけるかなりの量の残りのコーティング媒体16は、噴霧器20を通って押し出される。従って、このコーティング媒体16を浪費させる代わりに、それは、物体18をコーティングするために使用される。これは、コーティングプロセスに関連付けられた総コーティング媒体損失のかなりの部分を除去する。
【0109】
封止部材82の前進中、封止部材82は、内面94に対して封止し、封止部材82の下流のコーティング媒体16と、封止部材82の上流の洗浄媒体との間に障壁を作り出す。封止部材82は、下流のコーティング媒体16と上流の洗浄媒体との混合を防止する。
【0110】
封止部材82を前方に押し進める代替の方法として、第1の圧縮機弁72は、圧縮機28からの加圧空気を、封止部材82の上流のコーティング媒体管路50bの開始位置76に導入するために、開き得る。
【0111】
図6は、封止部材82がコーティング媒体管路50b内を移動したときの
図4のコーティング装置14bのブロック図を概略的に表す。封止部材82は、コーティング媒体管路50b内を噴霧器20に向かって下流方向に、開始位置76から、弁配置30を通り、超音波デバイス84を通り、段差78まで移動している。移動中、封止部材82は、コーティング媒体管路50bの内面94に対して封止する。段差78は、封止部材82より小さいので、封止部材82は、段差78によって止められる。
【0112】
封止部材82が超音波デバイス84を通過すると、超音波デバイス84は、コーティング媒体管路50bを通じて送られる超音波によって、封止部材82の通過を検出する。即ち、電子応答データ86に基づいて、制御システム60は、封止部材82が超音波デバイス84を通過したと結論付け得る。
【0113】
封止部材82を開始位置76に戻すために、第2の圧縮機弁74は、圧縮機28からの加圧空気を、段差78及び封止部材82の下流のコーティング媒体管路50bに導入するために、開き得る。この導入された加圧空気は、封止部材82を、開始位置76に戻るようにコーティング媒体管路50b内を後戻りさせる。
【0114】
図7は、更なるコーティング装置14cのブロック図を概略的に表す。主に
図4~
図6との相違点が説明される。
図7の装置14cは、戻り管路100を更に備える。戻り管路100は、コーティング媒体管路50bと平行に配置されている。戻り管路100の入口は、超音波デバイス84と段差78との間のコーティング媒体管路50b内に配置されている。戻り管路100の出口は、コーティング媒体管路50bの開始位置76において配置されている。
【0115】
封止部材82が段差78に到達すると、封止部材82は、加圧媒体によって、戻り管路100内へ押し込まれ得る。複数の封止部材82が、戻り管路100内に格納され得る。これにより、封止部材82を開始位置76に戻すことに加えて、戻り管路100は、マガジンとしても機能し得る。
【0116】
本開示は、例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本発明は、上記で説明されたものに限定されないことが理解されよう。例えば、部品の寸法は、必要に応じて変更され得ることが理解されよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され得ることが意図される。
【国際調査報告】