(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】一成分(1K)硬化性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/02 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
C09J4/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552123
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2022052683
(87)【国際公開番号】W WO2022179825
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】シュタップフ,シュテファニー
(72)【発明者】
【氏名】ズンダーマイアー,ウータ
(72)【発明者】
【氏名】ブルンシュテット,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】カム,トーマス
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040ED111
4J040EF181
4J040FA131
4J040GA05
4J040GA07
4J040GA25
4J040HB41
4J040HC14
4J040HC23
4J040HD13
4J040JA12
4J040KA12
4J040KA17
4J040KA31
4J040KA32
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA09
4J040PA42
(57)【要約】
本発明は、組成物の重量に基づいて、40~90重量%のi)少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマー;0.1~30重量%のii)非重合性電解質;0.1~10重量%のiii)少なくとも1つのラジカル発生熱開始剤;0~20重量%のiv)フィラー;および0~20重量%のv)強化剤を含む、硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の重量に基づいて、
40~90重量%のi)少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマー;
0.1~30重量%のii)非重合性電解質;
0.1~10重量%のiii)少なくとも1つのラジカル発生熱開始剤;
0~20重量%のiv)フィラー;および
0~20重量%のv)強化剤
を含む、硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項2】
前記組成物は、組成物の重量に基づいて、
60~90重量%、好ましくは70~90重量%のi)前記少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマー;
1~20重量%のii)前記非重合性電解質;
0.1~10重量%、好ましくは0.1~5重量%のiii)前記少なくとも1つのラジカル発生熱開始剤;
0~20重量%、好ましくは0.5~20重量%のiv)前記フィラー;および
0~20重量%、好ましくは0.5~20重量%のv)前記強化剤
を含む、請求項1に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリレートモノマーは、エチレン性不飽和非イオン性モノマーの総モル量の少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%を構成する、請求項1または請求項2に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリル酸のC
1-C
6ヒドロキシアルキルエステルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートから成る群から選択される1つまたは複数のオリゴマーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項5に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項7】
前記非重合性電解質は、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチルサルフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム 2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムイミド、1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウム 2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウムイミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホリウム 2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムトリフルオロアセテート、N,N-ジメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムオクタノエート、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-エチル-N-N-N-N-テトラメチルグアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、グアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムエチルサルフェート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-エチルメチルイミダゾリウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムクロリド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムヨージド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチルイミダゾール、1-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項8】
前記電解質は、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチルサルフェートおよびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項7に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのラジカル発生熱開始剤は、クメンヒドロペルオキシド(CHP);パラ-メンタンヒドロペルオキシド;t-ブチルヒドロペルオキシド(TBH);t-ブチルペルベンゾエート;t-ブチルペルオキシピバレート;ジ-t-ブチルペルオキシド;t-ブチルペルオキシアセテート;t-ブチルペルオキシ-2-ヘキサノエート;t-アミルヒドロペルオキシド;1,2,3,4-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;ジアセチルペルオキシド;ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート;p-クロロベンゾイルペルオキシド;t-ブチルクミルペルオキシド;ジ-t-ブチルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキス-3-イン;および4-メチル-2,2-ジ-t-ブチルペルオキシペンタンから成る群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性および電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項10】
組成物の重量に基づいて最大5重量%の少なくとも1つの硬化促進剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項11】
組成物の重量に基づいて、0.5~10重量%の非導電性微粒子フィラーをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項12】
0.5~15重量%のv)前記強化剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物。
【請求項13】
導電性表面を有する第1の材料層;
導電性表面を有する第2の材料層;
を含む接着構造であって、
請求項1~12のいずれか一項に定義される硬化した電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物が、前記第1の材料層と第2の材料層との間に配置される、接着構造。
【請求項14】
1)両表面に電圧を印加して、陽極界面と陰極界面とを形成する工程、および
2)該表面を剥離する工程
を含む請求項13に記載の前記接合構造を剥離する方法であって、
工程1で印加される電圧は、好ましくは0.5~200Vであり、好ましくは1秒~60分間印加される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適用された特定の基材から剥離できる接着剤組成物に関する。より具体的には、本発明は、(メタ)アクリレートモノマーをベースとする一成分(1K)硬化性かつ電気化学的に剥離可能な接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤とポリマーコーティングは、一般的に製造品の組み立てや仕上げに使用される。それらはねじ、ボルト、リベットなどの機械的ファスナーの代わりに使用され、機械加工コストを削減し、製造プロセスにおけるより高い適応性を有する接着を提供する。接着材は応力を均等に分散し、疲労の可能性を低減し、腐食種から接合部を遮断する。
【0003】
従って、接着結合はメカニカルファスナーと比べて多くの利点をもたらすが、実際の適用で必要とされる場合、接着された物品を分解することは難しくなる傾向がある。サンドブラストやワイヤブラシなどの機械的プロセスによる接着剤の除去は、1つには接着剤が基材間に配置されているため、基材の表面を傷つけずにアクセスできないか、研磨しにくいため排除される場合が多い。米国特許第4,171,240号明細書(Wong)および米国特許第4,729,797号明細書(Linde他)に開示されているような化学物質および/または高温の適用による分解は効果的かもしれないが、実施に時間がかかり、複雑になることがある。さらに、要求される攻撃的な化学薬品および/または過酷な条件により、分離される基材が損傷し、その後の適用に適さないものとなり得る。
【0004】
これらの問題に留意して、特定の著者は、硬化した組成物に電流を流すことで接着剤と基材との界面における接着を破壊するように作用する、電気化学的に剥離可能な接着剤組成物を開発しようとしてきた。
【0005】
国際公開第2007/142600号(Stora Enso AB)には、導電性表面に接着結合を提供し、接着剤組成物への電圧印加時に前記接着結合の弱体化を可能にするのに十分なイオン伝導特性を提供する電気化学的に弱体化した接着剤組成物であって、前記組成物が、前記イオン伝導特性を与えるのに有効な量の少なくとも1つのイオン性化合物を含み、前記イオン性化合物は、120℃以下の融点を有する、組成物が記載されている。
【0006】
欧州特許出願公開第3363875号明細書(日東電工株式会社)は、高い接着性を有し、短時間の電圧印加で容易に剥離できる接着剤層を形成する電気的に剥離可能な接着剤組成物を提供する。本発明の電気的に剥離可能な接着剤組成物は、ポリマー、およびポリマーの重量に基づいて0.5~30重量%のイオン液を含み、前記イオン液のアニオンがビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンである。
【0007】
国際公開第2017/133864号(Henkel AG & Co.KGaA)には、第1および第2の基材を可逆的に接着する方法であって、少なくとも前記第1の基材が非導電性基材であり、前記方法が、a)前記非導電性基材の表面を導電性インクでコーティングする工程、b)前記導電性インクがコーティングされた前記第1の基材および/または前記第2の基材の表面に、電気的に剥離可能なホットメルト接着剤組成物を適用する工程、c)前記電気的に剥離可能なホットメルト接着剤組成物が前記2つの基材の間に介在するように、前記第1の基材と第2の基材とを接触させる工程、d)前記2つの基材間に接着結合を形成して接着基材を提供する工程、およびe)前記接着基材に電圧を印加し、それにより、前記電気的に剥離可能なホットメルト接着剤組成物と基材表面との間の少なくとも1つの界面の接着を実質的に弱める工程、を含む方法が記載されている。
【0008】
国際公開第2013/135677号(Henkel AG & Co. KGaA)には、10,000~250,000g/molの分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリアミド20~90重量%;少なくとも1つの有機塩または無機塩1~25重量%;およびさらなる添加剤0~60重量%を含むホットメルト接着剤であって、前記接着剤が100℃~220℃の軟化点を有する、接着剤が記載されている。
【0009】
米国特許出願公開第2007/0269659号(Gilbert)には、2つの界面で剥離可能な接着剤組成物であって、前記組成物が(i)ポリマーおよび電解質を含み、(ii)2つの表面の結合を容易にし、(iii)陽極界面および陰極界面を形成するように両表面に印加された電圧に応答して、前記陽極および陰極表面の両方から剥離する、組成物が記載されている。
【0010】
米国特許出願公開第2008/0196828号(Gilbert)には、熱可塑性成分、および電解質を含み、前記電解質が、前記組成物に十分なイオン伝導性を提供して、前記組成物と導電性表面との間に形成された結合におけるファラデー反応を可能にして、前記組成物を前記表面から剥離させることを可能にする、ホットメルト接着剤組成物が記載されている。
【0011】
米国特許第7,465,492号明細書(Gilbert)には、アクリル、メタクリルおよびそれらの組み合わせから成る群から選択されるモノマーを含むマトリックス官能性、フリーラジカル開始剤、および電解質を含み、前記電解質が前記組成物と導電性表面との間に形成された接着におけるファラデー反応を支えるのに十分なイオン伝導性を前記組成物に提供して、それにより前記組成物を前記表面から剥離できる、電気化学的に剥離可能な組成物が記載されている。この引用において、電解質は、組成物中に溶媒和することができ、アンモニウム(NH4
+)、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、トリフレートおよびトリフリミドアニオンのアルカリ金属塩、アルカリ土類塩または希土類塩から成る群の一員である塩を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,171,240号明細書
【特許文献2】米国特許第4,729,797号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/142600号
【特許文献4】欧州特許出願公開第3363875号明細書
【特許文献5】国際公開第2017/133864号
【特許文献6】国際公開第2013/135677号
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0269659号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/0196828号明細書
【特許文献9】米国特許第7,465,492号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
接着される基材の表面に都合よく適用でき、その硬化時に前記基材を含む複合構造内に効率的な接着を提供できるが、硬化した接着剤に簡便に電位を印加することによってそれらの基材から効率的に剥離できる、硬化性一成分(1K)接着剤組成物を提供する必要性が当技術分野には依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一の態様によれば、組成物の重量に基づいて、
40~90重量%、好ましくは60~90重量%、より好ましくは70~90重量%の少なくとも1つのi)エチレン性不飽和非イオン性モノマー;
0.1~30重量%、好ましくは1~20重量%のii)非重合性電解質;
0.1~10重量%、好ましくは0.1~5重量%のiii)少なくとも1つのラジカル発生熱開始剤;
0~20重量%、好ましくは0.5~10重量%のiv)フィラー;および
v)0~20重量%、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは0.5~15重量%の強化剤
を含む、硬化性かつ電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物が提供される。
【0015】
組成物の特定の実施形態において、(メタ)アクリレートモノマーが、エチレン性不飽和非イオン性モノマーの総モル量の少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%を構成する。前記(メタ)アクリレートモノマーが、(メタ)アクリル酸のC1-C6ヒドロキシアルキルエステルを含むことが好ましい。この選好性の記載とは無関係に、または補足的に、前記(メタ)アクリレートモノマーが、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートから成る群から選択される1つまたは複数のオリゴマーを含むことが好ましい。組成物中に少なくとも1つのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことに対する特別な選好性を言及することができるかもしれない。
【0016】
本明細書では、複数の電解質が適当であるとして考察されるが、前記電解質が、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチルサルフェートおよびそれらの混合物から成る群から選択される場合、良好な結果が得られている。
【0017】
本発明の組成物は、重要な実施形態において、iv)前記フィラーまたはv)前記強化剤のうちの少なくとも1つを含むことができる。フィラーと強化剤の両方が存在することで、例えば、基材表面への組成物の接着性を促進できる。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、
導電性表面を有する第1の材料層、および
導電性表面を有する第2の材料層を含む接着構造であって、
本明細書の上文および添付の特許請求の範囲で定義される硬化した電気化学的に剥離可能な一成分(1K)接着剤組成物が、前記第1および第2の材料層の間に配置される、接着構造が提供される。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、本明細書の上文および添付の特許請求の範囲で定義される前記接着構造を剥離する方法であって、
i)両表面に電圧を印加して、陽極界面と陰極界面を形成する工程、および
ii)該表面を剥離する工程
を含む方法が提供される。
【0020】
この方法の工程i)は好ましくは
a)0.5~200Vの印加電圧;および
b)1秒~60分の間印加される該電圧の少なくとも1つを特徴とする。
【0021】
組成物と導電性表面との結合線にわたって電位が印加されることにより、組成物の接着力が破壊される。理論に拘束される意図はないが、接着剤組成物と導電性表面との界面で起こるファラデー反応によって、接着剤と基材との相互作用を破壊し、それによってその間の結合を弱めると考えられる。その界面崩壊は、例えば、接着剤組成物の架橋密度が変化することによる、剥離可能な材料の化学的劣化、界面でのガス発生、および/または材料の脆化など、1つまたは複数のプロセスの結果であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1a】
図1aは、本発明の第1実施形態の接着構造を描写している。
【
図1b】
図1bは、本発明の第2実施形態の接着構造を描写している。
【
図2a】
図2aは、第1実施形態の構造に電流を流した時のその構造の初期剥離を描写している。
【
図2b】
図2bは、第2実施形態の構造に電流を流した時のその構造の初期剥離を描写している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書で使用されるとき、単数形の「a」、「an」、「the」は、文脈から明らかにそうでないと判断されない限り、複数形の参照語を含む。
【0024】
本明細書で使用される用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、および「から構成される(comprised of)」は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「含有している(containing)」、または「含有する(contains)」と同義であり、包含的またはオープンエンドであり、追加の記載されていない部材、要素、または方法工程を除外しない。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「から成る」は、特定されていない成分、要素、部材または方法工程を除外する。
【0026】
量、濃度、寸法および他のパラメータが、範囲、好ましい範囲、上限値、下限値、または好ましい上限値の形態で表現されている場合、得られた範囲が文脈で明確に言及されているかどうかにかかわらず、任意の上限値または好ましい値を任意の下限値または好ましい値と組み合わせることによって得られる範囲も具体的に開示されていると理解すべきである。
【0027】
さらに、標準的な理解に従って、「0からxまで」であるとして表される重量範囲は、具体的には0重量%を含み、すなわち前記範囲によって定義される成分は、組成物中に存在しなくてもよいし、組成物中に最大x重量%までの量で存在してもよい。
【0028】
好ましい「好ましい(preferred)」、「好ましくは(preferably)」、「望ましくは(desirably)」、および「特に(particularly)」という語は、ある状況下で、特定の利点を与え得る本開示の実施形態を指すために、本明細書で頻繁に使用される。しかしながら、1つまたは複数の好ましい(preferable)、好ましい(preferred)、望ましい(desirable)、または特定の(particular)実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないという意味を含むものではなく、それらの他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものではない。
【0029】
本出願全体を通して使用されている「してよい(may)」という語は、強制的な意味ではなく、容認的な意味、つまり可能性があるという意味で使用されている。
【0030】
本明細書で使用されるとき、室温は23℃プラスマイナス2℃である。
【0031】
硬化性組成物の高分子、オリゴマーおよびポリマー成分について説明するために本明細書中で言及される分子量は、ASTM3536に準拠して行われるような、ポリスチレン校正標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0032】
本明細書に記載される組成物の粘度は、特に規定がない限り、20℃、相対湿度50%(RH)の標準条件でブルックフィールド粘度計を用いて測定される。ブルックフィールド粘度計の校正方法、スピンドルの種類および回転速度は、測定する組成に関する製造元の指示に適宜従って選択される。
【0033】
本明細書で使用される「電気化学的に剥離可能」という用語は、接着剤の硬化後、30Vの電位を20分間の間印加すると、接着強度を少なくとも50%弱めることができることを意味する。硬化した接着剤は、接着結合線を通って電流が流れるように、その接着剤で接着される2つの基材の間に適用される。接着強度は、室温で行われるASTMD 3163-01「引張荷重による接着接合された硬質プラスチックの重ねせん断接合部のせん断強度を測定する標準試験方法」に基づいて、引張ラップせん断(TLS)試験により測定される。接着の重なり領域は25mm×10mm(1インチ×0.4インチ)で、0.15cm(60ミル)の接着厚さを有していた。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「モノマー」は、重合反応を起こしてポリマーの化学構造に構成単位を提供することができる物質を指す。用語「単官能性」は、本明細書で使用されるとき、1つの重合可能な部位を有することを意味する。本明細書で使用されるとき、「多官能性」という用語は複数の重合可能な部位を有することを意味する。
【0035】
用語「電解質」は、帯電した担体種の移動によって電気を伝導できる遊離イオンを含む物質として、当該技術分野における標準的な意味に従って本明細書で使用される。この用語は、溶融電解質、液体電解質、半固体電解質、固体電解質を包含することを意図しており、それらの電解質構造のカチオン性またはアニオン性成分の少なくとも一方が本質的に自由に移動し、従って電荷担体として作用する。
【0036】
本発明の硬化性接着剤組成物およびそれから得られる硬化した接着剤は、接着材料がアニオン、カチオンまたはその両方のイオンの導電を可能にするという点で、「電解質機能性」を有する。電解質機能性は、組成物および硬化した接着剤が少なくとも1つの極性のイオンを溶媒和する能力に由来すると理解される。
【0037】
用語「ファラデー反応」は、物質が酸化または還元される電気化学反応を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を指す略語である。従って、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートとメタクリレートをまとめて指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「C1-Cnアルキル」基は、1~n個の炭素原子を含む一価の基を指し、アルカンのラジカルであり、直鎖および分枝状の有機基を含む。そのため、「C1-C18アルキル」基は、1~18個の炭素原子を含む一価の基を指し、アルカンのラジカルであり、直鎖および分枝状の有機基を含む。アルキル基の例としては、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;n-ブチル;イソブチル;sec-ブチル;tert-ブチル;n-ペンチル;n-ヘキシル;n-ヘプチル;および2-エチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明では、こうしたアルキル基は非置換であっても、1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよい。所定の部位(R)に適用可能な場合、アルキル基内の1つまたは複数の非ハロゲン置換基に対する許容性は明細書に記載する。
【0040】
本明細書で使用される用語「C1-C18ヒドロキシアルキル」は、1~18個の炭素原子を有するHO-(アルキル)基を指し、置換基の結合点は酸素原子を介しており、アルキル基は上記で定義した通りである。
【0041】
「アルコキシ基」は、-OAで表される一価の基を指し(ここでAはアルキル基である)、その非限定的な例は、メトキシ基、エトキシ基およびiso-プロピルオキシ基である。本明細書で使用される用語「C1-C18アルコキシアルキル」は、上記で定義したアルコキシ置換基を有するアルキル基を指し(ここで、部分(アルキル-O-アルキル)は、合計で1~18個の炭素原子を含む)、こうした基としては、メトキシメチル(-CH2OCH3)、2-メトキシエチル(-CH2CH2OCH3)および2-エトキシエチルが挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される用語「C2-C4アルキレン」は、2~4個の炭素原子を有する飽和二価炭化水素ラジカルとして定義される。
【0043】
用語「C3-C18シクロアルキル」は、3~18個の炭素原子を有する飽和、単環式または多環式炭化水素基を意味すると理解される。本発明において、こうしたシクロアルキル基は非置換であってもよいし、1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよい。所定の部位(R)に適用可能な場合、シクロアルキル基内の1つまたは複数の非ハロゲン置換基に対する許容性は明細書に記載する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;アダマンタン;およびノルボルナンが挙げられる。
【0044】
本明細書で使用される場合、単独で、または「アラルキル基」のように、より大きな部分の一部として使用される「C6-C18アリール」基は、単環式環系が芳香族である、または二環式環系もしくは三環式環系の環の少なくとも1つが芳香族である単環式、二環式および三環式環系を指す。二環式および三環式環系としては、ベンゾ縮合2-3員炭素環が挙げられる。本発明において、こうしたアリール基は、非置換であってもよいし、1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよい。所定の部位(R)に適用可能な場合、アリール基内の1つまたは複数の非ハロゲン置換基に対する許容性は明細書に記載する。例示的なアリール基としては、フェニル;(C1-C4)アルキルフェニル、例えばトリルおよびエチルフェニルなど;インデニル;ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル;テトラヒドロアントラセニル;およびアントラセニルが挙げられる。また、フェニル基が好適であることに留意し得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「C2-C24アルケニル」は、2~24個の炭素原子および少なくとも1単位のエチレン性不飽和を有するヒドロカルビル基を指す。アルケニル基は直鎖状、分枝状または環状であり得、任意選択で1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよい。所定の部位(R)に適用可能な場合、アルケニル基内の1つまたは複数の非ハロゲン置換基に対する許容性は明細書に記載する。用語「アルケニル」はまた、当業者によって理解されるように、「シス」および「トランス」配置、または別法として「E」および「Z」配置を有するラジカルを包含する。しかしながら、一般的には、2~10個(C2-10)もしくは2~8個(C2-8)の炭素原子を含む非置換アルケニル基が好適であることに留意すべきである。前記C2-C12アルケニル基の例としては、-CH=CH2;-CH=CHCH3;-CH2CH=CH2;-C(=CH2)(CH3);-CH=CHCH2CH3;-CH2CH=CHCH3;-CH2CH2CH=CH2;-CH=C(CH3)2;-CH2C(=CH2)(CH3);-C(=CH2)CH2CH3;-C(CH3)=CHCH3;-C(CH3)CH=CH2;-CH=CHCH2CH2CH3;-CH2CH=CHCH2CH3;-CH2CH2CH=CHCH3;-CH2CH2CH2CH=CH2;-C(=CH2)CH2CH2CH3;-C(CH3)=CHCH2CH3;-CH(CH3)CH=CHCH;-CH(CH3)CH2CH=CH2; -CH2CH=C(CH3)2;1-シクロペント-1-エニル;1-シクロペント-2-エニル;1-シクロペント-3-エニル;1-シクロヘキス-1-エニル;1-シクロヘキス-2-エニル;および1-シクロヘキシル-3-エニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される場合、「アルキルアリール」は、アルキル置換されたアリール基を指し、「置換アルキルアリール」は、ハロ、ニトロ、シアノ、アミド、アミノ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミドおよびヒドロキシなどの1つまたは複数の置換基をさらに有するアルキルアリール基を指す。さらに、本明細書で使用される場合「アラルキル」は、上記で定義した通りアリールラジカルで置換されたアルキル基を意味する。
【0047】
本明細書で使用される用語「ヘテロ」は、N、O、SiおよびSなどのヘテロ原子を1つまたは複数含む基または部位を指す。従って、例えば「ヘテロ環式」は、例えば環構造の一部としてN、O、SiまたはSを有する環式基を指す。「ヘテロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」および「ヘテロアリール」部分は、本明細書の上文で定義されるようにそれらの構造の一部としてそれぞれN、O、SiまたはSを含むアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基である。
【0048】
本組成物は、本明細書において、特定の化合物、元素、イオンまたは他の同様の成分を「実質的に含まない」と定義できる。用語「実質的に含まない」は、化合物、元素、イオンまたは他の同種の成分が組成物に故意に添加されておらず、せいぜい、コーティングの所望の特性に(悪)影響を及ぼさない微量しか存在しないことを意味することを意図している。例示的な微量は、組成物の重量の1000ppm未満である。用語「実質的に含まない」は、特定の化合物、元素、イオン、または他の同様の成分が組成物から完全に存在しない、または当該技術分野で一般的に使用される技術によって測定可能な量で存在しない実施形態を包含する。
【0049】
発明の詳細な説明
1. 非イオン性マトリックスモノマー
本発明の組成物は、前記組成物の重量に基づいて、40~90重量%の少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含み、その(共)重合によって、剥離可能な接着剤のマトリックスを生じる。組成物は、前記少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマーを60~90重量%、例えば70~または75~90重量%含むことが好ましい。こうしたモノマーは、原則として、エチレン性不飽和非イオン性モノマーであれば何でもよい。しかしながら、本発明は、(メタ)アクリレートモノマーが、存在するエチレン性不飽和非イオン性モノマーの総モル量の少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%を構成する組成物に特に適用可能である。
【0050】
1.1 (メタ)アクリレートモノマー
本明細書において、有用性を有する(メタ)アクリレートエステルを限定する意図は特になく、(メタ)アクリレートモノマーは、当該技術分野で公知のアクリル酸またはメタクリル酸の任意のエステルであり得ると考えられる。とはいえ、例示的な(メタ)アクリルモノマーとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0051】
・ (メタ)アクリル酸のC1-C18アルキルエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート(すべての異性体)、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレートおよびn-ステアリル(メタ)アクリレートなど;
・ (メタ)アクリル酸のC3-C18シクロアルキルエステル、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレートなど;
・ (メタ)アクリル酸のC6-C18アリールエステル、例えばフェニル(メタ)アクリレートおよびトリル(メタ)アクリレートなど;
・ (メタ)アクリル酸のC7-C24アラルキルエステル、例えばベンジル(メタ)アクリレートなど;
・ (メタ)アクリル酸のC1-C18アルコキシアルキルエステル、例えば2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレートおよび3-メトキシブチル(メタ)アクリレートなど;
・ (メタ)アクリル酸のフッ素含有C1-C18アルキルエステル、例えばトリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジパーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレートおよび2-パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレートなど;
・ (メタ)アクリル酸のC1-C18ヒドロキシアルキルエステル、特に(メタ)アクリル酸のC1-C6ヒドロキシアルキルエステル、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなど;
・ ジ/ポリ官能性アルコールのジ/ポリエステル、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3または1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど;
・ (メタ)アクリル酸のC1-C18アミノアルキルエステル、例えば2-アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリロキシエトキシエチルアミンなど;
・ (メタ)アクリル酸のC1-C18アルコキシシリル含有アルキルエステル、例えばγ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシランなど;
・ (メタ)アクリル酸のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物;および
・ 他の官能基を有するアルコールによって形成される(メタ)アクリレートエステル、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなど。
【0052】
完全を期すために、組成物が、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートおよびポリエーテル(メタ)アクリレートから成る群から選択される1つまたは複数のオリゴマーから成るマクロモノマー成分を含むことを排除しない。しかしながら、こうしたオリゴマー化合物、-これらは重合性(メタ)アクリレート官能性に関して単官能性もしくは多官能性であり得るが、繰り返し構造ウレタン、エステルおよびエーテルサブユニットをベースとする-は通常前記組成物中の(メタ)アクリレートモノマーの合計の30重量%より多くを構成してはならない。
【0053】
当該技術分野で知られているように、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、本明細書の上文で定義されるヒドロキシル基を有する多官能性(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネートとの反応によって調製できる。特に、ヒドロキシル基を有する多官能性(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート;4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチルカプロラクトン(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;およびこれらの組み合わせから成る群から選択できる。
【0054】
適当なポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル酸を、多塩基酸またはその無水物と多価アルコールから調製したポリエステルと反応させることによって得られる。多塩基酸の例としては、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、イソセバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ピメリン酸、およびアゼライン酸が挙げられるが、これらに限定されない。多価アルコールの例としては、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
当該技術分野で知られているように、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエーテルと(メタ)アクリル酸エステル、例えばメタクリル酸エチルなどとのエステル交換反応によって得ることができる。例示的なポリエーテルとしては、エトキシ化もしくはプロポキシ化されたトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどから得られるポリエーテル、または1,4-プロパンジオールなどをポリエーテル化することにより得られるポリエーテルが挙げられる。
【0056】
好ましい実施形態において、組成物は、以下から成る群から選択される少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含む:メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;n-プロピル(メタ)アクリレート;イソプロピル(メタ)アクリレート;n-ブチル(メタ)アクリレート;イソブチル(メタ)アクリレート;tert-ブチル(メタ)アクリレート;n-ペンチル(メタ)アクリレート;n-ヘキシル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート;n-ヘプチル(メタ)アクリレート;n-オクチル(メタ)アクリレート;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート;ノニル(メタ)アクリレート;デシル(メタ)アクリレート;ドデシル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート;トリル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート;3-メトキシブチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ステアリル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート;2-アミノエチル(メタ)アクリレート;y-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン;(メタ)アクリル酸-エチレンオキシド付加物;トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート;2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート;2-パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート;2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート;2-パーフルオロエチル(メタ)アクリレート;パーフルオロメチル(メタ)アクリレート;ジパーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート;2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート;2-パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート;2-パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート;2-パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレート;エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;1,2-ブチレングリコールジアクリレート;トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート;グリセリルプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート;トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート;およびエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート。
【0057】
組成物が(メタ)アクリル酸のC1-C6ヒドロキシアルキルエステルから成る群から選択される少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含む場合、良好な結果が得られている。
【0058】
1.2 共重合性酸
上述したように、組成物は任意選択で少なくとも1つの共重合性酸を含んでいてもよい。使用する場合、前記酸は、存在するエチレン性不飽和非イオン性モノマーの総モル量の最大40モル%、例えば最大20モル%の量で添加できる。例えば、前記少なくとも1つの共重合性酸は、エチレン性不飽和非イオン性モノマーの総モル量の0~15モル%を構成し得る。完全を期すために、こうしたモノマーは通常遊離酸の形態で使用すべきであるが、共重合への関与が損なわれないという条件で、モノマーの構成酸基が適当な塩基で部分的または完全に中和されることを排除しない。
【0059】
本発明を限定する意図はないが、共重合性酸モノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸;エチレン性不飽和スルホン酸;およびビニルホスホン酸から選択すべきである。適当なエチレン性不飽和スルホン酸は、例えばビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸およびアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸である。
【0060】
好ましくは、組成物の前記少なくとも1つの共重合性酸は、α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸;α,β-モノエチレン性不飽和ジカルボン酸;α,β-モノエチレン性不飽和ジカルボン酸のC1-C6アルキルハーフエステル;α,β-モノエチレン性不飽和トリカルボン酸;少なくとも1つの遊離カルボン酸基を有するα,β-モノエチレン性不飽和トリカルボン酸のC1-C6アルキルエステル;およびそれらの混合物から成る群から選択されるエチレン性不飽和カルボン酸を含む、またはから成る。特に、組成物の前記少なくとも1つの共重合性酸は、メタクリル酸;アクリル酸、イタコン酸;マレイン酸;アコニット酸;クロトン酸;フマル酸;およびそれらの混合物から成る群から選択されるエチレン性不飽和カルボン酸を含む、またはから成る。
【0061】
1.3 さらなるモノマー
本発明は、(メタ)アクリレートモノマーと共重合でき、スチレンモノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンおよびクロロスチレン;フッ素含有ビニルモノマー、例えばパーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレンおよびフッ素化ビニリデン;ケイ素含有ビニルモノマー、例えばビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシラン;マレイミドモノマー、例えばマレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミドなど;ニトリル基含有ビニルモノマー、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなど;アミド基含有ビニルモノマー、例えばアクリルアミドおよびメタクリルアミドなど;ビニルエステル、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート、ビニルベンゾエートおよびビニルシンナメートなど;アルケン、例えばエチレンおよびプロピレンなど;共役ジエン、例えばブタジエン、イソプレンなど;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、およびアリルアルコールから成る群から選択されるビニルモノマーの組成物中の存在を排除しないことに留意されたい。
【0062】
2. 非重合性電解質
組成物は、組成物の重量に基づいて、0.1~30重量%の非重合性電解質を含む。前記非重合性電解質は、好ましくは、組成物の1~20重量%、例えば1~15重量%を構成し得る。
【0063】
非重合性電解質は、好ましくは、以下から成る群から選択される式を有する少なくとも1つの塩を含む:
【化1】
(式中R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、独立して、水素、C
1-C
18アルキル、C
3-C
18シクロアルキル、C
6-C
18アリール、C
7-C
24アラルキル、C
2-C
20アルケニル、-C(O)R
q、-C(O)OH、-CNおよび-NO
2から選択され;
R
qは、C
1-C
6アルキルである)。
【0064】
アンモニウム塩が使用される場合、それは基R1~R4のうち、多くとも3つ、望ましくは多くとも2つが水素であるという条件に従う。
【0065】
完全性を期すために、用語C1-C18アルキル、C3-C18シクロアルキル、C6-C18アリール、C7-C24アラルキル、C2-C20アルケニルは、1つまたは複数の水素原子がハロゲン原子(例えばC1-C18ハロアルキル)またはヒドロキシル基(例えばC1-C18ヒドロキシアルキル)で置換されている基を明示的に含む。特に、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は好ましくは独立して、水素、C1-C12アルキル、C1-C12ハロアルキル、C1-C12ヒドロキシアルキルおよびC3-C12シクロアルキルから独立して選択される。例えば、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、独立して、水素、C1-C6アルキル、C1-C6ハロアルキルおよびC1-C6ヒドロキシアルキルから独立して選択され得る。
【0066】
非重合性電解質に使用できる対アニオン(X-)を特に限定する意図はない。例示的なアニオンは、以下から選択できる:
・ ハロゲン化物;
・ 式PF
6
-、CF
3SO
3
-、(CF
3SO
3)
2N
-、CF
3CO
2
-およびCCl
3CO
2
-の擬似ハロゲン化物およびハロゲン含有化合物;
・ CN
-、SCN
-、およびOCN
-;
・ フェネート;
・ 一般式SO
4
2-、HSO
4
-、SO
3
2-、HSO
3
-、R
aOSO
3
-およびR
aSO
3
-のサルフェート、サルファイトおよびスルホネート;
・ 一般式PO
4
3-、HPO
4
2-、H
2PO
4
-、R
aPO
4
2-、HR
aPO
4
-およびR
aR
bPO
4のホスフェート;
・ 一般式R
aHPO
3
-、R
aR
bPO
2
-およびR
aR
bPO
3
-のホスホネートおよびホスフィネート;
・ 一般式PO
3
3-、HPO
3
2-、H
2PO
3
-、R
aPO
3
2-、R
aHPO
3
-およびR
aR
bPO
3
-のホスファイト;
・ 一般式R
aR
bPO
2
-、R
aHPO
2
-、R
aR
bPO
-およびR
aHPO
-のホスホニットおよびホスフィニット;
・ 一般式R
aCOO
-のカルボン酸アニオン;
・ ヒドロキシカルボン酸アニオンおよび糖酸アニオン;
・ サッカリネート(o-安息香酸スルフィミドの塩);
・ 一般式BO
3
3-、HBO
3
2-、H
2BO
3
-、R
aR
bBO
3
-、R
aHBO
3
-、R
aBO
3
2-、B(OR
a)(OR
b)(OR
c)(OR
d)
-、B(HSO
4)
-およびB(R
aSO
4)
-のボレート;
・ 一般式R
aBO
2
2-およびR
aR
bBO
-のボロネート;
・ 一般式HCO
3
-、CO
3
2-およびR
aCO
3
-のカーボネートおよび炭酸エステル;
・ 一般式SiO
4
4-、HSiO
4
3-、H
2SiO
4
2-、H
3SiO
4
-、R
aSiO
4
3-、R
aR
bSiO
4
2-、R
aR
bR
cSiO
4
-、HR
aSiO
4
2-、H
2R
aSiO
4
-およびHR
aR
bSiO
4
-のシリケートおよびケイ酸エステル;
・ 一般式R
aSiO
3
3-、R
aR
bSiO
2
2-、R
aR
bR
cSiO
-、R
aR
bR
cSiO
3
-、R
aR
bR
cSiO
2
-およびR
aR
bSiO
3
2-のアルキル-およびアリールシラノレート;
・ ピリジネートおよびピリミジネート;
・ 一般式:
【化2】
のカルボン酸イミド、ビス(スルホニル)イミドおよびスルホニルイミド;
・ 一般式:
【化3】
のメチド;
・ 一般式R
aO
-のアルコキシドおよびアリールオキシド;および
・ 一般式S
2-、HS
-、[S
v]
2-、[HS
v]
-および[R
aS]
-の硫化物、硫化水素、多硫化物、多硫化水素およびチオレート
(一般式中、vは2~10の正の整数であり、R
a、R
b、R
cおよびR
dは、独立して、水素、C
1-C
12アルキル、C
5-C
12シクロアルキル、C
5-C
12ヘテロシクロアルキル、C
6-C
18アリールおよびC
5-C
18ヘテロアリールから独立して選択される)。
【0067】
上記のリストの定義に基づいて、好ましい陰イオンは上記で定義したハロゲン化物、疑似ハロゲン化物およびハロゲン含有化合物;カルボン酸アニオン、特にフォルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレートおよびオクタノエート;ヒドロキシカルボン酸アニオン、例えばラクテートなど;ピリジネートおよびピリミジネート;カルボン酸イミド、ビス(スルホニル)イミドおよびスルホニルイミド;サルフェート、特にメチルサルフェートおよびエチルサルフェート;サルファイト;スルホネート、特にメタンスルホネート;および、ホスフェート、特にジメチルホスフェート、ジエチルホスフェートおよびジ-(2-エチルヘキシル)-ホスフェートから成る群から選択される。
【0068】
組成物の非重合性電解質は、好ましくは以下の群から成る群から選択される:1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチルサルフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムイミド、1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウムイミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムトリフルオロアセテート、N,N-ジメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムオクタノエート、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-エチル-N-N-N-N-テトラメチルグアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、グアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムエチルサルフェート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-エチル-メチルイミダゾリウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムクロリド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムヨージド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチルイミダゾール、1-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、およびこれらの混合物。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネートおよび1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムメチルサルフェートのうちの少なくとも1つの使用に対する選好性を言及することができる。
【0069】
3. 熱開始剤
本発明の組成物は、少なくとも1つのラジカル発生熱開始剤を含む。当業者には理解されるように、熱開始剤は、例えば、赤外線またはマイクロ波波長領域の加熱または照射を行うと、熱エネルギーにより活性化されてそのラジカルを発生させることができる化合物である。本組成物は、通常、組成物の総重量に基づいて、0.1~10重量%、例えば0.1~5重量%または0.1~2.5重量%の前記少なくとも1つのラジカル発生熱開始剤を含むべきである。
【0070】
本発明を限定する意図はないが、本明細書での使用に適したラジカル発生熱開始剤の例示的な分類は、例えば環状ペルオキシド;ジアシルペルオキシド;ジアルキルペルオキシド;ヒドロペルオキシド;ペルオキシカーボネート;ペルオキシジカーボネート;ペルオキシエステル;およびペルオキシケタールから選択される有機過酸化物である。
【0071】
ジアルキルペルオキシドなどの特定の過酸化物はとりわけ米国特許第3,419,512号明細書(Lees)および米国特許第3,479,246号明細書(Stapleton)において有用な開始剤として開示されており、実際に本明細書において有用性を有し得るが、ヒドロペルオキシドが本発明の開始剤の好ましい分類を表す。さらに、過酸化水素自体を使用することもできるが、最も望ましい重合開始剤は有機ヒドロペルオキシドである。完全を期すために、ヒドロペルオキシドの定義に含まれるのは、分解または加水分解してその場で有機ヒドロペルオキシドを形成する有機過酸化物または有機過エステルなどの材料である。こうした有機過酸化物および有機過エステルの例は、それぞれシクロヘキシルおよびヒドロキシシクロヘキシルペルオキシドおよびt-ブチルペルベンゾエートである。
【0072】
本発明の一実施形態において、ラジカル発生熱開始剤は、式:RpOOH
(式中、Rpは、最大18個の炭素原子を含む脂肪族基または芳香族基であり、好ましくはRpは、C1-C12アルキル基、C6-C18アリール基またはC7-C18アラルキル基である)
で表される少なくとも1つのヒドロペルオキシド化合物を含むまたはから成る。
【0073】
単独または組み合わせて使用できる例示的な過酸化物開始剤として、クメンヒドロペルオキシド(CHP);パラ-メンタンヒドロペルオキシド;t-ブチルヒドロペルオキシド(TBH);t-ブチルペルベンゾエート;t-ブチルペルオキシピバレート;ジ-t-ブチルペルオキシド;t-ブチルペルオキシアセテート;t-ブチルペルオキシ-2-ヘキサノエート;t-アミルヒドロペルオキシド;1,2,3,4-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;ジアセチルペルオキシド;ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート;p-クロロベンゾイルペルオキシド;t-ブチルクミルペルオキシド;ジ-t-ブチルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキス-3-イン;および4-メチル-2,2-ジ-t-ブチルペルオキシペンタンを言及できる。
【0074】
本発明を限定する意図はないが、本明細書での使用に好適なラジカル発生熱開始剤のさらなる例示的な分類は、例えばアゾニトリル;アゾエステル;アゾアミド;アゾアミジン;アゾイミダゾリン;およびマクロアゾ開始剤から選択されるアゾ重合開始剤である。
【0075】
適当なアゾ重合開始剤の代表例として、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル);2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル);2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル);2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル);1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル);4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸);ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート);2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド];2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド);2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン];2,2’-アゾビス(2-メルプロピオンアミジン)二塩酸塩;2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物;4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(VPS-1001、富士フィルム和光純薬株式会社から入手可能)とのポリマーおよび、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)ポリエチレングリコールポリマー(VPE-0201、富士フィルム和光純薬株式会社から入手可能)を言及できる。
【0076】
4. 硬化促進剤
本組成物は、組成物の重量で、0~5重量%、好ましくは0.1~2.5重量%の少なくとも1つの硬化促進剤を含むことができる。組成物中に単独でまたは組み合わせて存在し得る有用な硬化促進剤の非限定的な例としては、
(i)一般式:
【化4】
(式中、R
1
’は、置換されていてもよいアリール基、特にアルキル置換されていてもよいフェニル基であり、
R
2’は、R
1’と同じ意味を有する、または置換されていてもよい直鎖状もしくは分枝状のアルキル基であり、
R
3’は、置換されていてもよい、窒素に対してα-位に少なくとも1個の水素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキル基であり、
R
1’からR
3’の任意の2つは、共に単環式または多環式の環構造を形成してもよく、これらは場合によっては縮合環式構造であってもよく、順に置換され得る)
のアリールアミン;
(ii)一般式:
【化5】
(式中、R
4’はC
1-C
4アルキル基で置換されたフェニルであり、
R
5’は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、アミノおよび以下の基:
【化6】
(式中R
7
’は、1~10個の炭素原子を含むアルキル基から選択される))
を有する化合物;
(iii)スルホニルヒドラジン;または
(iv)ヒドロピリジン
が挙げられる。
【0077】
さらなる硬化促進剤の具体的な非限定的例としてはサッカリン;トルイジン、例えばN,N-ジエチル-p-トルイジン(DE-p-T)およびN,N-ジメチル-o-トルイジン(DM-o-T)など;アセチルフェニルヒドラジン(APH);およびマレイン酸が挙げられる。さらに例示的な硬化促進剤としては、米国特許第6,958,368号(Klemarczyk)に記載されているようなスルフィイミド、並びにその酸素および硫黄誘導体;フェニルギシンおよびその誘導体;1,4-アミノベンゾイル化合物;米国特許第7,411,025号(Messana)に開示されているフェニルピラゾリノン、スルホンイミド誘導体およびスルホンアミド誘導体;米国特許第6,583,289号(McCardle)に記載されているトリチアジアザペンタレン;米国特許第6,835,782号(Morita)に従って調製できる無水コハク酸とフェニルヒドラジンの反応生成物(SPH);および米国特許第6,835,762号(Klemarczyk)に開示されている、-C(=O)-NH-NH-結合を同一分子上に有機酸官能基と共に含む化合物が挙げられる。
【0078】
5. 可溶化剤
本発明の組成物は、任意選択で可溶化剤を含むことができる。組成物は、例えば、組成物の重量を基準として、0~10重量%または0~5重量%の可溶化剤を含むことができる。可溶化剤は、接着剤組成物内の電解質ii)の混和性を促進する機能を有する。つまり、可溶化剤は、接着剤組成物の硬化時に形成されるポリマーマトリックスの一部を形成するかどうかはわからないが、その中でのイオン移動を促進する働きをする。そのため、可溶化剤は好ましくは極性化合物であり、室温で液体であることが望ましい
【0079】
適当な可溶化剤の分類としては、ポリホスファゼン;ポリメチレンスルフィド;ポリオキシアルキレングリコール;ポリエチレンイミン;シリコーン界面活性剤、例えばポリアルキルシロキサンおよびポリ(C2-C3)オキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンを含むがこれらに限定されない;ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンなど;官能化されたポリアルキルシロキサンとエポキシ樹脂の共重合体、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)とエポキシ樹脂の共重合体など;多価アルコール、および糖類などが挙げられる。完全性を期すため、フッ素化シリコーン界面活性剤、例えばフッ素化ポリシランなどは、シリコーン界面活性剤という用語に包含されることが意図されている。
【0080】
多価アルコールおよび糖、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、フロログルシノール、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、3個のメチルまたはエチル置換基が残りのベンゼン炭素原子に結合したトリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、グリセロール、シクロヘキサン-1,2,4-トリオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、ペンタン-1,2,3-トリオール、ヘキサン-1,3,5-トリオール、エリスリトール、1,2,4,5-テトラヒドロキシベンゼン、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、フルクトース、グルコース、マンノース、ラクトース、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリメチロールプロパンエトキシレート、2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、ペンタエリスリトールアリルエーテル、およびペンタエリスリトールなど。
【0081】
ポリオキシアルキレングリコールの中で、200~10000g/mol、例えば200~2000g/molの平均分子量(Mw)を有するポリオキシ(C2-C3)アルキレングリコールの使用について特に好適であると留意し得る。完全を期すために、ポリオキシ(C2-C3)アルキレンという用語は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドの両方から誘導されるポリエーテルラジカルを指す。
【0082】
添加剤および補助成分
本発明で得られる前記組成物は通常これらの組成物に改善された特性を付与できる補助剤および添加剤をさらに含む。例えば、補助剤および添加剤は、弾性特性の改善、弾性回復の改善、より長時間の加工に対応、より速い硬化時間、およびより低い残留タックの1つまたは複数を付与でき、こうした補助剤および添加剤に含まれるものには、強化剤;導電性粒子;非導電性フィラー;可塑剤;熱可塑性ポリウレタンなどの耐摩耗性を付与する添加剤;UV安定剤などの安定剤;酸化防止剤;反応性希釈剤;乾燥剤;接着促進剤;殺菌剤;難燃剤;レオロジー補助剤;着色顔料または着色ペースト;および/または任意選択で、わずかに非反応性希釈剤がある。
【0083】
こうした補助剤および添加剤は、組成物の性質および本質的特性に悪影響を及ぼさないという条件で、所望の組み合わせおよび割合で使用できる。例外が存在する場合もあるが、これらの補助剤および添加剤は全体として組成物全体の30重量%より多くを構成すべきではなく、好ましくは20重量%より多くを構成すべきではない。
【0084】
本組成物中の強化剤の存在は、硬化した接着剤の剥離に有利であり得る。理論に拘束される意図はないが、強化剤は電位印加下で硬化接着剤内の相分離を促進する。特に、本発明の組成物が、組成物の重量に基づいて0~20重量%、例えば0.5~20重量%または0.5~15重量%のマトリックスポリマー中に分散したコアシェル粒子の形態のエラストマー付加物および強化ゴムから選択される少なくとも1つの強化剤を含む場合に、良好な剥離結果が得られている。
【0085】
用語「コアシェルゴム」またはCSRは、弾性もしくはゴム状ポリマーを主成分とするポリマーによって形成されたゴム粒子コアと、該コア上にグラフト重合されたポリマーによって形成されたシェル層とを示すものとして、当該技術分野における標準的な意味に従って使用されている。シェル層は、グラフト重合工程において、ゴム粒子コアの表面を部分的または完全に覆う。重量で、コアはコア-シェルゴム粒子の少なくとも50重量%を構成する必要がある。
【0086】
コアのポリマー材料は、0℃以下のガラス転移温度(Tg)、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-40℃以下、さらに好ましく-60℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する必要がある。シェルのポリマーは、室温を超える、好ましくは30℃を超える、より好ましくは50℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有する非弾性の、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーである。
【0087】
本発明を限定する意図はないが、コアはジエンホモポリマー、例えばブタジエンまたはイソプレンのホモポリマー;ジエンコポリマー、例えばブタジエンまたはイソプレンと、1つまたは複数のエチレン性不飽和モノマー、例えばビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリルまたは(メタ)アクリレートなど、とのコポリマー;(メタ)アクリル酸エステルモノマーをベースとするポリマー、例えばポリブチルアクリレートなど;およびポリシロキサンエラストマー、例えばポリジメチルシロキサンおよび架橋ポリジメチルシロキサンなどで構成されていてよい。
【0088】
同様に、本発明を限定する意図はないが、シェルは(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレートなど;ビニル芳香族モノマー、例えばスチレンなど;ビニルシアニド、例えばアクリロニトリルなど;不飽和酸および無水物、例えばアクリル酸など;および(メタ)アクリルアミドから選択される1つまたは複数のモノマーのポリマーまたはコポリマーで構成できる。シェルに使用されるポリマーまたはコポリマーは、金属カルボキシレート形成、特に二価金属カチオンの塩形成を通じてイオン的に架橋される酸基を有し得る。シェルポリマーまたはコポリマーは、1分子あたり2つ以上の二重結合を有するモノマーによって共有結合的に架橋されてもよい。
【0089】
含まれるコア-シェルゴム粒子はどれも10nm~300nm、例えば50nm~250nmの平均粒度(d50)を有することが好ましい。つまり、該粒度は、粒子の分布における粒子の直径または最大寸法のことを指し、動的光散乱法によって測定される。完全を期すために、本出願は、せん断強度、剥離強度および樹脂破壊靭性など、得られる硬化生成物の重要な特性のバランスを提供するために、組成物中において異なる粒度分布を有する2種以上のコアシェルゴム(CRS)粒子の存在を排除しない。
【0090】
コア-シェルゴムは、市販品から選択でき、その例としてはDow Chemical社から入手可能なParaloid EXL2650A、EXL2655およびEXL2691A;Arkema社から入手可能なClearstrength(登録商標)XT100;カネカ社から入手可能なKane Ace(登録商標)MXシリーズ、特にMX120、MX125、MX130、MX136、MX551、MX553;および三菱レイヨンから入手可能なMETABLEN SX-006が挙げられる。
【0091】
上述したように、本発明の組成物は、0~20重量%、例えば0.5~10重量%のフィラーを含む。前記フィラーは、前記強化剤から独立して、またはこれと組み合わせて使用できる。導電性フィラーおよび/または非導電性フィラーの使用が想定されるが、一実施形態では、組成物に含まれるフィラーは、非導電性微粒子フィラーを含む、または本質的に該非導電性微粒子フィラーから成る。
【0092】
従って上述のように、本発明の組成物は、導電性微粒子フィラーを含むことができる。組成物は、例えば、組成物の重量に基づいて、0~10重量%または0.5~5重量%の導電性粒子を含むことができる。
【0093】
一般に、導電性フィラーとして使用される粒子の形状を限定する意図は特になく、針状、球状、楕円体状、円柱状、ビーズ状、立方体状、またはプレートレット状の粒子を単独または組み合わせて使用できる。さらに、複数の粒子タイプの凝集体を使用することも想定される。同様に、導電性フィラーとして使用される粒子の大きさを特に限定する意図はない。しかしながら、こうした導電性フィラーは、従来レーザー回折/散乱法で測定される平均体積粒度が0.1~1500μm、例えば1~1250μmである。
【0094】
例示的な導電性微粒子フィラーとしては、銀;銅;金;パラジウム;白金;ニッケル;金または銀被覆ニッケル;カーボンブラック;炭素繊維;グラファイト;アルミニウム;酸化インジウムスズ;銀被覆銅;銀被覆アルミニウム;金属被覆ガラス球;金属被覆フィラー;金属被覆ポリマー;銀被覆繊維;銀被覆球;アンチモンドープ酸化スズ;導電性ナノ球;ナノ銀;ナノアルミニウム;ナノ銅;ナノニッケル;カーボンナノチューブ;およびこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。導電性フィラーとして微粒子状銀および/またはカーボンブラックの使用が好ましい。
【0095】
本発明の組成物は、非導電性の微粒子フィラーをさらに含むことができる。組成物は、例えば、組成物の重量に基づいて、0~10重量%または0.5~10重量%の非導電性粒子を含むことができる。
【0096】
一般に、非導電性フィラーとして使用される粒子の形状を限定する意図は特になく、針状、球状、楕円体状、円柱状、ビーズ状、立方またはプレートレット状の粒子を単独または組み合わせて使用できる。さらに、複数の粒子タイプの凝集体を使用することが想定される。同様に、非導電性フィラーとして使用される粒子の大きさを特に限定する意図はない。しかし、こうした非導電性フィラーは、従来レーザー回折/散乱法で測定される平均体積粒度が0.1~1500μm、例えば1~1250μmである。
【0097】
例示的な非導電性フィラーとしては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム(石灰粉)、ヒュームドシリカ、非晶質シリカ、沈降および/または発熱性ケイ酸、ゼオライト、ベントナイト、ケイ灰岩、炭酸マグネシウム、ケイ藻岩、硫酸バリウム、アルミナ、粘土、タルク、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、石英、フリント、雲母、ガラスビーズ、ガラス粉、およびその他の粉砕鉱物物質が挙げられるが、これらに限定されない。有機フィラーも使用でき、特に木質繊維、木粉、おがくず、セルロース、綿、パルプ、綿、木材チップ、刻みわら、籾殻、粉砕したクルミの殻、その他の刻み繊維が挙げられる。短繊維、例えばガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、短繊維、例えば炭素繊維、ケブラー(登録商標)繊維、またはポリエチレン繊維などを加えることもできる。
【0098】
発熱性および/または沈降ケイ酸は、有利には10~90m2/gのBET比表面積を有する。それらが使用される場合、本発明の組成物の粘度のさらなる増加を引き起こすのではなく、硬化した組成物の強化に寄与する。
【0099】
同様にフィラーとしてより大きいBET表面積、有利には100~250m2/gを有する発熱性および/または沈降ケイ酸を使用することも考えられる。つまりより大きいBET表面積のために、硬化した組成物を強化する効果がより小さいケイ酸の重量比率で達成される。
【0100】
鉱物の殻やプラスチックの殻を有する中空球体もまた非導電性フィラーとして適当である。これらは、例えば、Glass Bubbles(登録商標)という商品名で市販されている中空のガラス球である。プラスチックベースの中空球体、例えばExpancel(登録商標)またはDualite(登録商標)などを使用してもよく、欧州特許第0520426号明細書に記載されている。それらは無機または有機物質で構成され、それぞれ1mm以下、好ましくは500μm以下の直径を有する。
【0101】
組成物にチクソ性を付与する非導電性フィラーは、多くの用途に好ましい場合がある。こうしたフィラーは、レオロジー補助剤、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アミド、またはPVCなどの膨潤性プラスチックとしても記載されている。
【0102】
形成される硬化性組成物の所望の粘度は、使用されるフィラーの量によって決定され得る。後者の検討事項を考慮すると、組成物中に存在するフィラー(導電性および非導電性の両方)の総量は、組成物が選択された適用方法によって基材へ容易に適用できることを妨げてはならない。例えば、チューブなどの適当な吐出装置から押し出し可能であることが意図されている硬化性組成物は、1000~150,000mPas、好ましくは10,000~100,000mPasの粘度を有さなくてはならない。
【0103】
本発明の目的のための「可塑剤」は、組成物の粘度を低下させ、従ってその加工性を容易にする物質である。本明細書中で可塑剤は、組成物の全重量に基づいて、最大10重量%または最大5重量%を構成でき、好ましくはジウレタン;単官能性、直鎖状または分枝状C4-C16アルコールのエーテル類、例えばCetiol OE(Cognis Deutschland Gmbh, Duesseldorfから得られる)など;アビエチン酸、酪酸、チオ酪酸、酢酸、プロピオン酸およびクエン酸のエステル類;ニトロセルロースおよびポリ酢酸ビニルをベースとするエステル類;脂肪酸エステル類;ジカルボン酸エステル類;OH基を有するまたはエポキシ化脂肪酸のエステル類;グリコール酸エステル類;安息香酸エステル類;リン酸エステル類;スルホン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリエーテル可塑剤、例えば末端がキャップされたポリエチレンまたはポリプロピレングリコール類など;ポリスチレン類;炭化水素可塑剤;塩素化パラフィン;およびこれらの混合物から成る群から選択される。原則として、フタル酸エステル類を可塑剤として使用できるが、これらは毒性学的な可能性のため好ましくないことに留意されたい。
【0104】
本発明の目的のための「安定剤」は、酸化防止剤、熱安定剤または加水分解安定剤として理解される。本明細書中で、安定剤は組成物の全重量に基づいて、全体として最大10重量%または最大5重量%を構成し得る。本明細書での使用に適した安定剤の標準的な市販例としては、立体障害フェノール類;チオエーテル類;ベンゾトリアゾール類;ベンゾフェノン類;ベンゾエート類;シアノアクリレート類;アクリレート類;ヒンダードアミン光安定剤(HALS)タイプのアミン類;リン;硫黄;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0105】
金属キレート特性を有する化合物を本発明の組成物に使用すると硬化した接着剤の基材表面への接着性を高めるのを促進することができることに留意されたい。さらに、King Industries社からK-FLEX XM-B301の商品名で販売されているアセトアセテート官能化改質樹脂も、接着促進剤としての使用に適している。
【0106】
保存可能期間をさらに延ばすために、乾燥剤を用いて本発明の組成物を水分浸透に対してさらに安定させることが望ましい場合が多い。反応性希釈剤を使用することによって、特定の用途のために本発明の接着剤組成物の粘度を下げる必要性も時折存在する。存在する反応性希釈剤の総量は、通常、組成物の総重量に基づいて0~10重量%、例えば0~5重量%である。
【0107】
本発明の組成物中に溶媒および非反応性希釈剤が存在することも、その粘度を有用に調節できる場合には排除されない。例えば、例示のためにすぎないが、組成物は、以下の1つまたは複数を含んでもよい:キシレン;2-メトキシエタノール;ジメトキシエタノール;2-エトキシエタノール;2-プロポキシエタノール;2-イソプロポキシエタノール;2-ブトキシエタノール;2-フェノキシエタノール;2-ベンジルオキシエタノール;ベンジルアルコール;エチレングリコール;エチレングリコールジメチルエーテル;エチレングリコールジエチルエーテル;エチレングリコールジブチルエーテル;エチレングリコールジフェニルエーテル;ジエチレングリコール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル;ジエチレングリコールモノエチルエーテル;ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル;ジエチレングリコールジエチルエーテル;ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル;プロピレングリコールブチルエーテル;プロピレングリコールフェニルエーテル;ジプロピレングリコール;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;ジプロピレングリコールジメチルエーテル;ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル;N-メチルピロリドン;ジフェニルメタン;ジイソプロピルナフタレン;石油留分、例えばソルベッソ(登録商標)製品(エクソン社から入手可能)など;アルキルフェノール類、例えばtert-ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールおよび8,11,14-ペンタデカトリエニルフェノールなど;スチレン化フェノール;ビスフェノール類;芳香族炭化水素樹脂、特にエトキシ化またはプロポキシ化フェノールなどのフェノール基含有樹脂;アジペート類;セバケート類;フタレート類;ベンゾエート類;有機リン酸エステル類または有機スルホン酸エステル類;およびスルホンアミド類。
【0108】
上記はさておき、前記非反応性希釈剤は、組成物の総重量に基づいて、全体として10重量%未満、特に5重量%未満または2重量%未満を構成することが好ましい。
【0109】
方法および適用
定義された硬化性組成物を形成するために成分を一緒にして混合する。混合によって電解質、すなわち非重合性化合物(上記2)、を接着剤組成物内に均一に分布させることが重要である。こうした徹底的かつ効果的な混合は、硬化後に得られるポリマーマトリックス内の帯電種の均一な分布を決定し得、それによって導電性基材との界面における電気化学反応を支えるのに十分なイオン伝導性を提供できる。
【0110】
当技術分野で知られているように、一成分(1K)硬化性組成物を形成するために、反応性成分の反応を抑制または防止する条件下で、組成物の要素を一緒にして均一に混合する。こうした条件は、当業者には容易に理解できるだろう。そのため、硬化性要素を手動で混合するのではなく、例えば静的もしくは動的ミキサーなどの機械によって、意図的な光照射を行うことなく、無水条件下で予め決められた量だけ混合することが好ましい場合が多い。
【0111】
本発明の最も広範なプロセス態様に従って、上述した組成物を材料層に適用し、次いでその場で硬化させる。組成物を適用する前に関連する表面を前処理して異物をそこから除去することが望ましい場合が多い。該当する場合、この工程によってその後の組成物の関連する表面への接着を容易にできる。こうした処理は、当該技術分野において公知であり、例えば、基材に適した酸および任意選択で酸化剤によるエッチング処理;超音波処理;化学プラズマ処理、コロナ処理、大気プラズマ処理および火炎プラズマ処理などのプラズマ処理;水性アルカリ脱脂浴への浸漬;水性洗浄エマルジョンによる処理;アセトン、四塩化炭素またはトリクロロエチレンなどの洗浄溶媒による処理;および好ましくは脱イオン水または脱塩水による水洗のうちの1つまたは複数の使用で構成される単段または多段の方法で実施できる。水性アルカリ脱脂浴を使用する場合、脱脂剤が表面に残っている場合、望ましくは脱イオン水または脱塩水で基材表面をすすいで除去すべきである。
【0112】
いくつかの実施形態において、好ましく前処理された基材への本発明のコーティング組成物の接着が、基材にプライマーを適用することによって容易になり得る。実際、プライマー組成物は、不活性な基材上での接着剤組成物の有効な定着および/または硬化時間を確保するために必要な場合がある。当業者であれば適切なプライマーを選択できるであろうが、プライマーの選択に関する有益な参考文献には、米国特許第3,855,040号明細書、米国特許第4,731,146号明細書、米国特許第4,990,281号明細書、米国特許第5,811,473号明細書、英国特許出願公開第2502554号明細書、および米国特許第6,852,193号明細書が挙げられるがこれらに限定されない。
【0113】
次いで組成物は、好ましくは前処理され、任意選択で下塗りされた基材の表面に従来の適用方法、例えば刷毛塗り、ロールコーティング、ドクターブレード塗布、印刷法、および、空気噴霧スプレー、空気支援スプレー、無気スプレーおよび高容量低圧スプレーを含むがこれらに限定されないスプレー法などによって適用される。
【0114】
上述のように、本発明は、導電性表面を有する第1の材料層;および導電性表面を有する第2の材料層を含む接着構造であって、本明細書の上文および添付の特許請求の範囲で定義される前記硬化した電気化学的に剥離可能な接着剤組成物が、前記第1および第2の材料層の間に配置される、接着構造を提供する。こうした構造を生成するために、電気的に剥離可能な接着剤組成物が2つの層の間に介在するように、接着剤組成物を第1の材料層および/または第2の材料層の少なくとも1つの内面に適用し、その後2つの層を場合によっては加圧下で接触させることができる。
【0115】
組成物は、10~500μmの湿潤膜厚で表面に適用することが推奨される。この範囲内でより薄い層を適用することは、より経済的であり、有害な厚い硬化領域が生じる可能性を低減する。しかしながら、不連続な硬化膜の形成を避けるため、より薄いコーティングや層を適用する際には大きな制御を行わなければならない。
【0116】
組成物が熱開始剤を含んでいることを考えると、組成物の温度を開始剤の活性化温度を超える温度に上げることによって硬化させなければならない。活性化温度はもちろん、存在する特定の化合物によるが、所望の硬化速度を確保するために必要な温度は、必要に応じて簡単な予備試験を用いて、当業者が個々のケースで決定できる。本発明を限定する意図はないが、適用された硬化性組成物の完全な硬化は、典型的には20℃~150℃、好ましくは20℃~120℃、特に45℃~100℃の範囲の温度で起こらなければならない。該当する場合、硬化性組成物の温度は、マイクロ波誘導などの従来の手段を用いて、混合温度および/または適用温度を超える温度に上げることができる。
【0117】
本発明を添付図面を参照して説明する。
図1aは、本発明の第1実施形態の接着構造を描写している。
図1bは、本発明の第2実施形態の接着構造を描写している。
図2aは、第1実施形態の構造に電流を流した時のその構造の初期剥離を描写している。
図2bは、第2実施形態の構造に電流を流した時のその構造の初期剥離を描写している。
【0118】
添付の
図1aに描写されるように、硬化した接着剤の層(10)が2つの導電性基材(11)の間に配置された接合構造が提供される。
図1bに描写されるように、導電性基材(11)上に非導電性材料の層(12)を配置するとより複雑な接着構造を形成することができる。導電性基材(11)の各層は、電池または直流(DC)の交流(AD)駆動源であり得る電源(13)に電気的に接触している。その電源(13)の正および負端子は1つの固定位置で示されているが、当業者は当然系の極性を反転できることを認識するであろう。
【0119】
2つの導電性基材(11)は、特に、金属フィルム、金属メッシュもしくはグリッド、蒸着金属粒子、内部に配置された導電性要素によって導電化された樹脂材料、または導電性酸化物層によって構成され得る層の形態で示されている。例示的な導電性要素として、銀フィラメント、単層カーボンナノチューブ、および多層カーボンナノチューブを言及できる。例示的な導電性酸化物として、酸化インジウムスズ(ITO)などのドープ酸化インジウム;ドープ酸化亜鉛;酸化アンチモンスズ;スズ酸カドミウム;スズ酸亜鉛を言及できる。導電性材料の選択はさておき、当業者であれば、導電性基材(11)が硬化した接着剤(10)の層との接触が制限される格子状またはメッシュ状である場合、剥離操作の有効性が低下し得ることを認識するであろう。
【0120】
各導電性基材(11)間に電圧を印加すると、その間に配置された接着剤組成物(10)に電流が供給される。これにより、基材(11)と接着剤組成物との界面で電気化学反応が誘発されるが、この電気化学反応は、正に帯電したまたは陽極の界面では酸化的であり、負に帯電したまたは負極の界面では還元的であると理解される。この反応は、基材間の接着結合を弱め、基材から剥離可能な組成物を容易に除去できると考えられる。
【0121】
図2aおよび2bに描写されるように、剥離は、正極と電気的に接触している接着剤組成物(10)と導電性表面(11)との界面である正の界面で起こる。基材を分離する前に電流方向を反転させることで、両方の基材界面で接着結合が弱まり得る。
【0122】
しかしながら、接着剤層(10)の組成は、正界面もしくは負界面のいずれか、または両方から同時に剥離が起こるように調整できることに留意されたい。いくつかの実施形態については、陽極界面および陰極界面を形成するように両表面に電圧を印加すると、陽極および陰極接着剤/基材界面で同時に剥離を生じさせる。別法の実施形態では組成物が両方の界面で直流に応答しない場合、逆極性を使用して両方の基材/接着剤界面を同時に剥離できる。電流は各極性での剥離が生じるのに十分な合計時間が許容されるという条件で、任意の適当な波形で印加できる。正弦波、矩形波、三角形の波形がこの点で適切であるかもしれず、制御電圧または制御電流源から適用できる。
【0123】
本発明を限定する意図はないが、剥離操作は以下の条件の少なくとも1つ、好ましくは両方が引き起こされる場合に効果的に行うことができると考えられる。
a)0.5~200V、例えば10~100Vの印加電圧;およびb)1秒~120分間、例えば1秒~60分間の間印加される電圧。硬化した接着剤からの導電性基材の剥離が、例えば重りやバネを介した力の印加によって促進できる場合、電位は数秒程度しか印加する必要がないかもしれない。
【0124】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、いかなる方法でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0125】
以下の材料を実施例で使用した。
【0126】
【0127】
実施例1~3
以下の表1に従って組成物を調製した。所定の成分をスピードミキサー(1200rpm;1分間)で混合し、均一な混合物を確実に形成した。
【0128】
【0129】
試験基材は表面を酢酸エチルで拭き取り洗浄したアルミニウム(AA6016)であった。基材を0.1インチの厚さで準備し、引張試験用に2.5cm×10cm(1インチ×4インチ)の試料6個に切断した。引張ラップせん断(TLS)試験は、ASTM D3163-01「引張荷重による接着接合された硬質プラスチックの重ねせん断接合部のせん断強度を測定する標準試験方法」に基づいて室温で実施した。各基材の接着の重なり領域は2.5cm×1.0cm(1インチ×0.4インチ)で、0.15cm(60ミル)の接着厚さを有していた。
【0130】
適用した接着剤組成物は、100℃の温度を30分間適用することにより、重なり合う領域で硬化した。接着構造体を最初の引張試験に先立って25℃、相対湿度20%で24時間保存した。
【0131】
各接着基材について、前記24時間保存後、接着剤層に30Vの定電位を20分間の間印加する前と後の引張ラップせん断強度を調べた。平均した結果を以下の表2に記す。
【0132】
【0133】
上述の説明および実施例を考慮すると、特許請求の範囲から逸脱することなく、これらと同等の変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】