(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】バイポーラプレートを前処理するための方法及びシステム、並びにレドックスフロー電池におけるその使用
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240214BHJP
H01M 8/0204 20160101ALI20240214BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20240214BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/0204
H01M8/02
H01M8/0213
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552141
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 US2022070596
(87)【国際公開番号】W WO2022183162
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519297300
【氏名又は名称】イーエスエス テック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ESS Tech,Inc.
【住所又は居所原語表記】26440 SW Parkway Avenue,Wilsonville,Oregon 97070 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ヤン
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン ブレディー
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA03
5H126AA14
5H126BB10
5H126GG06
5H126GG11
5H126HH02
5H126HH04
5H126HH10
5H126JJ06
5H126RR01
(57)【要約】
一実施例では、方法は、バイポーラプレートの表面を崩壊させることによって、レドックスフロー電池のためのバイポーラプレートを前処理することを含み得る。いくつかの実施例では、バイポーラプレートを前処理することは、バイポーラプレートをレドックスフロー電池内に位置付けることと、その後、表面を電気化学的にエッチングするために、1つ以上の初期充電サイクルの各々について、多数の別個のめっき電流密度でレドックスフロー電池を充電することと、を含み得る。追加的又は代替的な実施例では、バイポーラプレートを前処理することは、バイポーラプレートを溶液中に浸漬して、表面を化学的に処理することを含み得る。このようにして、バイポーラプレートは、レドックスフロー電池における電気化学的性能損失及び樹状突起形成を低減するように、電気化学エッチング及び/又は化学処理を介して前処理され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池のための方法であって、
バイポーラプレートの少なくとも1つの表面を崩壊させることによって、前記レドックスフロー電池のための前記バイポーラプレートを前処理することと、
前記レドックスフロー電池の充電サイクリングを開始することと、を含み、
前記レドックスフロー電池が、電極コンパートメントを含み、前記電極コンパートメントが、充電サイクリングの開始時に、前記前処理されたバイポーラプレートを収容する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの表面を崩壊させることによって、前記バイポーラプレートを前処理することが、
前記電極コンパートメント内に前記バイポーラプレートを位置付けることと、
1つ以上の初期充電サイクルの各充電サイクルについて、多数の別個のめっき電流密度で前記レドックスフロー電池を充電して、前記少なくとも1つの表面を電気化学的にエッチングすることと、を含み、
充電サイクリングを開始することが、前記電極コンパートメント内に収容されためっき電極を均一にめっきするために、前記1つ以上の初期充電サイクルの後の各充電サイクルについて、前記レドックスフロー電池を単一のめっき電流密度で充電することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の初期充電サイクルが、1つの初期充電サイクルのみを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの表面が、前処理の前に、初期状態かつ未エッチング状態であり、
前記少なくとも1つの表面が、前処理の後にエッチングされる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前処理の後、かつ充電サイクリングの前に、前記電極コンパートメント内に収容されためっき電極において、鉄めっきを予備成形することを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの表面を崩壊させることによって、前記バイポーラプレートを前処理することが、
前記バイポーラプレートをイソプロピルアルコールで洗浄することと、
前記洗浄されたバイポーラプレートを溶液中に長い持続時間浸漬して、前記少なくとも1つの表面を化学的に処理することと、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液が、塩化第二鉄溶液を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記長い持続時間が、少なくとも12時間である、請求項6及び7に記載の方法。
【請求項9】
レドックスフロー電池のための方法であって、
前記バイポーラプレートが前記レドックスフロー電池のめっき電極と流体連通するように、前記レドックスフロー電池内にバイポーラプレートを位置付けることと、その後、
1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、完全めっき電流密度まで、前記レドックスフロー電池のめっき電流密度を徐々に増加させることと、
前記1つ以上の前処理充電サイクルの後の1つ以上の後続充電サイクルの各々について、前記めっき電流密度を徐々に増加させることなく、前記完全めっき電流密度で電流を印加することと、を含む、方法。
【請求項10】
前記1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、前記めっき電流密度を徐々に増加させることが、前記1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、複数の充電ステップにわたって、前記めっき電流密度を増加させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、前記複数の充電ステップにわたって、前記めっき電流密度を増加させることが、順に、
第1のめっき電流密度で第1の充電状態(SOC)まで、前記レドックスフロー電池を充電するステップと、
前記第1のSOCから第2のSOCまで、第2のめっき電流密度で、前記レドックスフロー電池を充電するステップであって、前記第2のめっき電流密度が、前記第1のめっき電流密度よりも大きい、充電するステップと、前記第2のSOCから第3のSOCまで、第3のめっき電流密度で、前記レドックスフロー電池を充電するステップであって、前記第3のめっき電流密度が、前記第2のめっき電流密度よりも大きい、充電するステップと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の前処理充電サイクルの各々が、放電前に、前記レドックスフロー電池を最大で90%SOCまで充電する、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の後続の充電サイクルの各々について、前記めっき電流密度を徐々に増加させることなく、前記完全めっき電流密度を印加することが、前記めっき電極を鉄金属で均一にめっきする、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の後続の充電サイクルの前に、前記バイポーラプレートをFeCl
3溶液中に浸漬することを更に含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記バイポーラプレートを浸漬することが、前記1つ以上の前処理充電サイクルの前に行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記バイポーラプレートを浸漬することが、前記1つ以上の前処理充電サイクルの後に行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
レドックスフロー電池システムであって、
正及び負電極をそれぞれ収容する、正及び負電極コンパートメントと、
前記負電極コンパートメント内に位置付けられており、かつ前記負電極と流体連通している、第1のバイポーラプレートと、
前記正電極コンパートメント内に位置付けられており、かつ前記正電極と流体連通している、第2のバイポーラプレートと、を備え、
前記負電極に向かって面する前記第1のバイポーラプレートの表面が、エッチング及び粗面加工され、
前記表面上に形成された金属めっきが、ひび割れ及び過剰な微粒子並びにフレークを実質的に含まない、レドックスフロー電池システム。
【請求項18】
前記表面が、複数の順次増加するめっき電流密度で前記レドックスフロー電池システムのステップ充電を実行することと、前記表面を溶液中に浸漬することと、の各々によってエッチング及び粗面加工される、請求項17に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項19】
前記第1のバイポーラプレートが、グラファイト複合材出発材料を射出成形又は圧縮成形することによって形成される、請求項17及び18に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項20】
前記レドックスフロー電池システムが、全鉄ハイブリッドレドックスフロー電池システムである、請求項17~19のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月26日に出願された「METHOD AND SYSTEMS FOR PRETREATING BIPOLAR PLATE AND USE THEREOF IN REDOX FLOW BATTERY」と題された米国仮出願第63/154,494号の優先権を主張する。上記出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、概して、バイポーラプレートを前処理するための、特に、レドックスフロー電池におけるめっき電極とともに使用するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
レドックスフロー電池は、電力と容量とを独立してスケーリングする能力があるため、グリッドスケールの蓄電アプリケーションに適しており、並びに、従来の電池技術と比較して、性能損失が少なくて数千サイクルにわたる充電及び放電に適している。全鉄ハイブリッドレドックスフロー電池は、低コストで地球に豊富に存在する材料を組み込むため、特に魅力的である。一般に、鉄レドックスフロー電池(IFB)は、電解質として鉄、塩、及び水に依存し、したがって、単純で、地球に豊富に存在し、安価な材料を含み、過酷な化学物質の組み込みを排除し、その環境フットプリントを低減する。
【0004】
IFBは、レドックス反応が生じる正(レドックス)電極、及び電解質中の第一鉄(Fe2+)が還元され、めっきされ得る負(めっき)電極を含み得る。プロトン還元、鉄腐食、及び鉄めっき酸化を含む様々な副反応は、Fe2+還元と競合する可能性がある。
H++e-⇔1/2H2(プロトン還元)(1)
Fe0+2H+⇔Fe2++H2(鉄腐食)(2)
2Fe3++Fe0⇔3Fe2+(鉄めっき酸化)(3)
ほとんどの副反応はめっき電極で発生するため、IFBサイクル能力は、めっき電極上で利用可能な鉄めっきによって制限される可能性がある。鉄めっき損失を改善するための例示的な試みは、式(1)及び(2)から式(4)を介して水素ガス発生に対処するための触媒電解質リバランシングに焦点を当てている:
Fe3++1/2H2→Fe2++H+(電解質リバランシング)(4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いくつかの実施例では、レドックス及びめっき電極は、それぞれのバイポーラプレートと物理的又は流体的に接触し得る。バイポーラプレートは、電解質がレドックス及びめっき電極の反応部位に輸送され得るように、望ましくは高伝導性であり得、電解質の流れ及び分布のための流体セパレータとして更に機能し得る。一実施例では、めっき電極とともに使用するために設置されたバイポーラプレートは、グラファイト複合材から形成され得る。グラファイト複合材ベースのバイポーラプレートの調製は、グラファイト複合材出発材料の圧縮又は射出成形を含み得る。いくつかの実施例では、そのような成形プロセスは、バイポーラプレートの1つ以上の表面上に樹脂リッチ層を生成し得る。しかしながら、このように形成されたバイポーラプレートは、樹脂リッチ層が比較的高い抵抗及び比較的悪い伝導率を引き起こし、比較的悪いめっき品質をもたらす可能性があるため、IFB包含物には不適切であり得る。
【0006】
したがって、成形されたグラファイト複合材ベースのバイポーラプレートの前処理は、IFB動作中にそこからの不十分な電気化学的性能を軽減するために用いられ得る。例えば、バイポーラプレートは、研磨、サンドブラスト、サンドペーパーポリッシング、タイミングベルト、等を介して機械的に前処理されてもよい。しかしながら、そのような機械的前処理は、望ましくない断片がバイポーラプレートに保持されること、並びにワークフロー実装の困難(例えば、大規模なIFB製造を妨げる、追加の製造ステップ及び比較的長いタイムスケール)をもたらし得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施例では、上述の問題は、レドックスフロー電池のための方法によって対処されてもよく、この方法は、バイポーラプレートの少なくとも1つの表面を崩壊させることによってレドックスフロー電池のためのバイポーラプレートを前処理することと、レドックスフロー電池の充電サイクリングを開始することと、を含み、レドックスフロー電池は、電極コンパートメントを含み得、電極コンパートメントは、充電サイクリングの開始時に前処理されたバイポーラプレートを収容する。いくつかの実施例では、バイポーラプレートを前処理することは、バイポーラプレートを電極コンパートメント内に位置付けし、その後、少なくとも1つの表面を電気化学的にエッチングするために、1つ以上の初期充電サイクルの各々について、多数の別個のめっき電流密度でレドックスフロー電池を充電することを含み得る。追加的又は代替的な実施例では、バイポーラプレートを前処理することは、バイポーラプレートをFeCl3溶液に浸漬して、少なくとも1つの表面を化学的に処理することを含み得る。このようにして、バイポーラプレートの少なくとも1つの表面は、エッチング及び粗面加工され、ひび割れ及び過剰な粒子及びフレークを実質的になくし得、その結果、レドックスフロー電池の電気化学的性能が長期的な耐久性を犠牲にすることなく維持され得る。
【0008】
上記の概要は、詳細な説明で更に説明される概念の抜粋を簡略化された形で導入するために提供されていることを理解されたい。これは、特許請求される主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図せず、その範囲は、詳細な説明に続く特許請求の範囲によって一意に定義される。更に、特許請求される主題は、上記又は本開示のいずれかの部分に記述されるいずれかの不利点を解決する実装に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】レドックス及びめっき電極を有する電池セル、バイポーラプレート、及び膜セパレータを含む、例示のレドックスフロー電池システムの概略図を示す。
【
図2A】前処理されたバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムを調製及び作動するための方法のフローチャートを示す。
【
図2B】
図2Aのレドックスフロー電池システムで使用するためのバイポーラプレートを電気化学的及び化学的に前処理するための方法のフローチャートを示す。
【
図3】初期状態のかつ電気化学的にエッチングされたバイポーラプレートの上面斜視図を示す。
【
図4】第1の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの電気化学的ステップ充電前処理及び初期充電サイクリングの各々の前の、第1の例示的なバイポーラプレートの拡大図を示す。
【
図5】電気化学的ステップ充電前処理の後、及び第1の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリング前の、第1の例示的なバイポーラプレートの拡大図を示す。
【
図6A】第1の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの電気化学的ステップ充電前処理及び初期充電サイクリングの各々に続く、第1の例示的なバイポーラプレートの上面図を示す。
【
図6B】
図6Aの第1の例示的なバイポーラプレートの第1の拡大図を示す。
【
図6C】
図6Aの第1の例示的なバイポーラプレートの第2の拡大図を示す。
【
図7】電気化学的ステップ充電前処理の後、及び第2の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリング前の、第2の例示的なバイポーラプレートの上面図を示す。
【
図8A】第2の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの電気化学的ステップ充電前処理及び初期充電サイクリングの各々に続く、第2の例示的なバイポーラプレートの上面図を示す。
【
図8B】
図8Aの第2の例示的なバイポーラプレートの拡大図を示す。
【
図9】第3の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの電気化学的ステップ充電前処理の前の第3の例示的なバイポーラプレートの拡大図を示す。
【
図10】第3の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの電気化学的ステップ充電前処理の後の第3の例示的なバイポーラプレートの拡大図を示す。
【
図11】化学的前処理の後、及び第4の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリング前の、第4の例示的なバイポーラプレートの上面図を示す。
【
図12】第4の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの化学的前処理及び初期充電サイクリングの各々に続く、第4の例示的なバイポーラプレートの上面図を示す。
【
図13】レドックスフロー電池システムの化学的前処理及び初期充電サイクリングの各々に続く、第4の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの膜セパレータの上面図を示す。
【
図14】レドックスフロー電池システムの初期充電サイクリングに続く、第4の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムのクーロン、ボルタ、及びエネルギー効率の各々を図示する例示的なプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明は、例えば、レドックスフロー電池において負電極とともに使用するためのバイポーラプレートを電気化学的及び/又は化学的に前処理するためのシステム及び方法に関する。レドックスフロー電池が、別個の正及び負の電解質チャンバを有する統合されたマルチチャンバタンクを用いて
図1に概略的に示されている。いくつかの実施例では、レドックスフロー電池は、IFBの正(レドックス)電極及び負(めっき)電極の両方で鉄レドックス化学を利用する全鉄フロー電池(IFB)であり得る。電解質チャンバは、1つ以上の電池セルに結合され得、各セルは正及び負電極を含む。そこから、電解質は、正及び負電極をそれぞれ収容する正及び負電極コンパートメントを通ってポンプされ得る。正及び負電極コンパートメントは、それぞれの電極コンパートメントを通ってそれぞれの電極の反応部位への電解質の流れを促進するように位置付けられた、それぞれのバイポーラプレートを更に収容し得る。
【0011】
追加的又は代替的に、レドックスフロー電池は、ハイブリッドレドックスフロー電池であり得る。ハイブリッドレドックスフロー電池は、電極(例えば、負電極)上の固体層としての1つ以上の電気活性材料の堆積によって特徴付けられ得るレドックスフロー電池である。ハイブリッドレドックスフロー電池は、例えば、電池充電プロセス全体を通じて基板上に固体として電気化学反応を介してめっきし得る化学種を含み得る。電池放電中、めっきされた種は、更なる電気化学反応を介してイオン化し、電解質中に可溶性になり得る。ハイブリッドレドックスフロー電池システムでは、レドックスフロー電池の充電容量(例えば、蓄積される最大エネルギー量)は、電池充電中にめっきされた金属の量によって制限され得、したがって、めっきシステムの効率(例えば、バイポーラプレートを含む)、並びにめっきに利用可能な体積及び表面積に依存し得る。
【0012】
いくつかの実施例では、バイポーラプレートは、製造後に樹脂リッチ層を含み得、これは、負電極で比較的高い抵抗及び比較的悪いめっき及び導電性をもたらし得る。例えば、負電極コンパートメントに含まれるバイポーラプレートは、グラファイト複合材料を射出成形又は圧縮成形することによって形成され、樹脂リッチ層をもたらし得る。このようなバイポーラプレートは、樹脂リッチ層を崩壊、低減、及び/又はそうでなければ変形させ、それによってそれに起因する電気化学的性能損失を軽減するように、望ましくは前処理され得る。したがって、本明細書に提供される実施形態では、レドックスフロー電池システムは、その樹脂リッチ層がエッチングされるか、又はそうでなければ粗面加工されるように、電気化学的及び/又は化学的に前処理されたバイポーラプレートを含み得る。バイポーラプレートを前処理するための、及び前処理されたバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムを調製及び作動するための例示的な方法が、
図2A及び
図2Bに示されている。
【0013】
比較のために、初期状態の(例えば、未処理の)かつ電気化学的にエッチングされたバイポーラプレートの上面斜視図が、
図3に示されている。電気化学エッチングは、後続の剥離なしにエッチングの十分な粗さ及びカバレッジを得るために、ステップ充電プロセスを介して実現され得る。一例として、それぞれ電気化学的前処理の前及び後の第1の例示的なバイポーラプレートの拡大図が、
図4及び
図5に示されている。
図6A~
図6Cは、第1の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの電気化学的前処理及び初期充電サイクリングの各々に続く、第1の例示的なバイポーラプレートを更に示す。別の例として、電気化学的前処理後の、並びに第2の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムのそれぞれ初期充電サイクリングの前及び後の第2の例示的なバイポーラプレートが、
図7及び
図8A~
図8Bに示されている。更に別の例として、第3の例示的なバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムのそれぞれ電気化学的前処理の前及び後の第3の例示的なバイポーラプレートが、
図9及び
図10に示されている。
【0014】
追加的又は代替的に、バイポーラプレートは、FeCl
3浸漬を介して化学的に処理され得る。一例として、例示的な化学的に前処理されたバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリングの前及び後の例示的な化学的に前処理されたバイポーラプレートが、それぞれ
図11及び
図12に示されている。
図13は、初期充電サイクリングの後の例示的な化学的に前処理されたバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの膜セパレータを更に示す。
図14は、初期充電サイクリングの後の例示的な化学的に前処理されたバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムのクーロン、ボルタ、及びエネルギー効率の各々を図示する例示的なプロットを更に示す。
【0015】
図1に示されるように、レドックスフロー電池システム10では、負電極26は、めっき電極と呼ばれ得、正電極28は、レドックス電極と呼ばれ得る。レドックスフロー電池セル18のめっき側(例えば、負電極コンパートメント20)内の負電解質は、めっき電解質と呼ばれ得、レドックスフロー電池セル18のレドックス側(例えば、正電極コンパートメント22)上の正電解質は、レドックス電解質と呼ばれ得る。
【0016】
「アノード」は、電気活性材料が電子を失う電極を指し、「カソード」は、電気活性材料が電子を得る電極を指す。電池充電中、正電解質は、負電極26で電子を得、負電極26は、電気化学反応のカソードである。電池放電中、正電解質は電子を失い、負電極26は、電気化学反応のアノードである。代替的には、電池放電中、負電解質及び負電極26は、それぞれ、電気化学反応のアノード液及びアノードと呼ばれ得、一方、正電解質及び正電極28は、それぞれ、電気化学反応のカソード液及びカソードと呼ばれ得る。電池充電中、負電解質及び負電極26は、それぞれ、電気化学反応のカソード液及びカソードと呼ばれ得、一方、正電解質及び正電極28は、それぞれ、電気化学反応のアノード液及びアノードと呼ばれ得る。簡潔にするために、「正」及び「負」という用語は、レドックスフロー電池システムにおける電極、電解質、及び電極コンパートメントを指すために本明細書で使用される。
【0017】
ハイブリッドレドックスフロー電池の一例は、全鉄レドックスフロー電池(IFB)であり、電解質は、鉄塩(例えば、FeCl2、FeCl3など)の形態の鉄イオンを含み、負電極26は、金属鉄を含む。例えば、負電極26において、第一鉄(Fe2+)は、電池充電中に2つの電子を獲得し鉄金属(Fe0)として負電極26上にめっきし、Fe0は、電池放電中に2つの電子を失い、Fe2+として再溶解する。正電極28において、Fe2+は、電池充電中に電子を失って第二鉄(Fe3+)を形成し、Fe3+は、電池放電中に電子を獲得してFe2+を形成する。電気化学反応は、式(5)及び式(6)に要約され、ここで、順方向反応(左から右)は、電池充電中の電気化学反応を示し、一方、逆方向反応(右から左)は、電池放電中の電気化学反応を示す:
Fe2++2e-⇔Fe0-0.44V(負電極)(5)
Fe2+⇔2Fe3++2e-+0.77V(正電極)(6)
【0018】
上述のように、IFBで使用される負電解質は、電池充電中に、Fe2+が負電極26から2つの電子を受け入れてFe0を形成し、基板上にめっきし得るように、十分な量のFe2+を提供し得る。電池放電中、めっきされたFe0は2つの電子を失い、Fe2+にイオン化し、電解質に溶解して戻り得る。上記反応の平衡電位は-0.44Vであり、したがって、この反応は所望のシステムに負の端子を提供する。IFBの正側では、電解質は、電子を失い、Fe3+に酸化する電池充電中にFe2+を提供し得る。電池放電中、電解質によって提供されるFe3+は、正電極28によって提供される電子を吸収することによってFe2+になる。この反応の平衡電位は+0.77Vであり、所望のシステムに正の端子を作成する。
【0019】
IFBは、非再生電解質を利用する他の電池タイプとは対照的に、その中で電解質を充電及び再充電する能力を提供し得る。充電は、端子40及び42を介して電極26及び28にそれぞれ電流を印加することによって達成され得る。負電極26は、電子が正電極28を介して負電解質に送達され得るように、端子40を介して電圧源の負側に結合され得る(例えば、正電極コンパートメント22内の正電解質中でFe2+がFe3+に酸化されるように)。負電極26に提供される電子は、負電解質中のFe2+を還元して(めっき)基板にFe0を形成し得、Fe2+を負電極26上にめっきさせる。
【0020】
放電は、Fe0が酸化のために負電解質に利用可能なままである間、及びFe3+が還元のために正電解質において利用可能なままである間、持続し得る。一例として、Fe3+利用可能性は、外部正電解質チャンバ52などの外部ソースを介して追加のFe3+イオンを提供するために、レドックスフロー電池セル18の正電極コンパートメント22側の正電解質の濃度又は体積を増加させることによって維持され得る。より一般的には、放電中のFe0の利用可能性は、IFBシステムで問題となり得、放電のために利用可能なFe0は、負電極基板の表面積及び体積、並びにめっき効率に比例し得る。充電容量は、負電極コンパートメント20内のFe2+の利用可能性に依存し得る。一例として、Fe2+の利用可能性は、外部負電解質チャンバ50などの外部ソースを介して追加のFe2+イオンを提供して、レドックスフロー電池セル18の負電極コンパートメント20側への負電解質の濃度又は体積を増加させることによって維持され得る。
【0021】
IFBでは、正電解質は、第一鉄、第二鉄、第二鉄錯体、又はそれらの任意の組み合わせを含み得、一方、負電解質は、IFBシステムの充電状態(SOC)に応じて、第一鉄又は第二鉄錯体を含み得る。前述のように、負電解質及び正電解質の両方における鉄イオンの利用は、レドックスフロー電池セル18の両側で同じ電解質種の利用を可能にし得、これは、電解質交差汚染を低減し得、IFBシステムの効率を高め得、その結果、他のレドックスフロー電池システムと比較して電解質交換が少なくなる。
【0022】
IFBにおける効率損失は、セパレータ24(例えば、イオン交換膜バリア、微孔性膜、など)を通る電解質交差から生じ得る。例えば、正電解質中のFe3+イオンは、Fe3+イオン濃度勾配及びセパレータ24を横切る電気泳動力によって負電解質に向かって駆動され得る。その後、セパレータ24を貫通し、負電極コンパートメント20に交差するFe3+イオンは、クーロン効率損失をもたらし得る。低pHレドックス側(例えば、より酸性の正電極コンパートメント22)から高pHめっき側(例えば、より酸性の負電極コンパートメント20)に交差するFe3+イオンは、Fe(OH)3の沈殿をもたらし得る。Fe(OH)3の沈殿は、セパレータ24を劣化させ、永久的な電池性能及び効率の損失を引き起こす可能性がある。例えば、Fe(OH)3沈殿物は、イオン交換膜の有機官能基を化学的に汚すか、又はイオン交換膜の微細孔を物理的に詰まらせる場合がある。いずれの場合も、Fe(OH)3沈殿物のために、膜のオーム抵抗が時間の経過とともに上昇し、電池の性能が低下する可能性がある。沈殿物は、IFBを酸で洗浄することによって除去され得るが、一定のメンテナンス及びダウンタイムは、商業用電池用途にとって不利であり得る。更に、洗浄は、電解質の定期的な調製に依存し得、追加の処理コスト及び複雑さに寄与する。代替的には、電解質のpH変化に応答して正電解質及び負電解質に特定の有機酸を添加することは、全体的なコストを押し上げることなく、電池充電及び放電サイクリング中の沈殿物の形成を軽減し得る。追加的に、Fe3+イオン交差を抑制する膜バリアを実装することはまた、汚れを軽減し得る。
【0023】
追加のクーロン効率の損失が、H+(例えば、プロトン)の還元及びその後のH2(例えば、水素ガス)の形成、並びに負電極コンパートメント20内のプロトンと、負電極26のめっきされた鉄金属に供給される電子との反応によって引き起こされて水素ガスを形成し得る。
【0024】
IFB電解質(例えば、FeCl2、FeCl3、FeSO4、Fe2(SO4)3、など)は、容易に入手可能であり得、低コストで製造され得る。一実施例では、IFB電解質は、塩化第一鉄(FeCl2)、塩化カリウム(KCl)、塩化マンガン(II)(MnCl2)、及びホウ酸(H3BO3)から形成され得る。IFB電解質は、負電解質及び正電解質に同じ電解質が使用され得るため、より高い再利用値を提供し得、結果として、他のシステムと比較して交差汚染の問題を低減する。更に、鉄の電子配置のため、鉄は、負電極基板へのめっき中に概して均一な固体構造に固化する可能性がある。ハイブリッドレドックス電池で一般的に使用される亜鉛及び他の金属の場合、めっき中に固体樹枝状構造が形成される場合がある。IFBシステムの安定した電極形態は、他のレドックスフロー電池と比較して電池の効率を高め得る。なお更に、鉄レドックスフロー電池は、有毒な原材料の使用を低減し得、他のレドックスフロー電池電解質と比較して比較的中性のpHで動作し得る。したがって、IFBシステムは、生産中の他の全ての現在の先進的なレドックスフロー電池システムと比較して、環境有害性を低減し得る。
【0025】
図1を続けると、レドックスフロー電池システム10の概略図が示されている。レドックスフロー電池システム10は、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に流体的に結合されたレドックスフロー電池セル18を含み得る。レドックスフロー電池セル18は、負電極コンパートメント20、セパレータ24、及び正電極コンパートメント22を含み得る。セパレータ24は、電気絶縁イオン伝導障壁を含み得、これは、特定のイオンの伝導を可能にしながら、正電解質と負電解質とのバルク混合を防止する。例えば、上述したように、セパレータ24は、イオン交換膜及び/又は微孔性膜を含み得る。
【0026】
負電極コンパートメント20は、負電極26を含み得、負電解質は、電気活性材料を含み得る。正電極コンパートメント22は、正電極28を含み得、正電解質は、電気活性材料を含み得る。いくつかの実施例では、多数のレドックスフロー電池セル18を直列又は並列に組み合わせて、レドックスフロー電池システム10でより高い電圧又は電流を生成し得る。
【0027】
図1に更に示されているのは、負及び正電解質ポンプ30及び32であり、両方とも、レドックスフロー電池システム10を通して電解質溶液をポンプするために使用される。電解質は、セルの外部の1つ以上のタンクに貯蔵され、それぞれ、レドックスフロー電池セル18の負電極コンパートメント20側及び正電極コンパートメント22側を通して、負及び正電解質ポンプ30及び32を介してポンプされる。
【0028】
レドックスフロー電池システム10はまた、第1のバイポーラプレート36及び第2のバイポーラプレート38を含み得、各々は、それぞれ、負電極26及び正電極28の背面側、例えば、セパレータ24に面する側の反対側、に沿って位置付けられる。第1のバイポーラプレート36は負電極26と接触し得、第2のバイポーラプレート38は正電極28と接触し得る。しかしながら、他の実施例では、バイポーラプレート36及び38は、電極26及び28に近接して配列され得るが、電極26及び28から離間され、それぞれの電極コンパートメント20及び22内に収容されてもよい。IFB電解質は、バイポーラプレート36及び38の材料の導電特性に起因して、第1及び第2のバイポーラプレート36及び38によって、負及び正電極26及び28の反応部位に輸送され得る。電解質の流れはまた、負及び正電解質ポンプ30及び32によって補助され得、レドックスフロー電池セル18を通る強制対流を容易にする。反応した電気化学種はまた、強制対流並びに第1及び第2のバイポーラプレート36及び38の存在の組み合わせによって、反応部位から離れるように導かれ得る。
【0029】
いくつかの実施例では、バイポーラプレート36及び38の一方又は両方は、炭素系材料(グラファイト又は炭素繊維など)又は炭素系複合材料(グラファイト複合材料など)から形成され、結合剤(樹脂など)によって結合されてもよい。例えば、グラファイト複合材料は、圧縮成形プロセス又は射出成形プロセスを介して所与のバイポーラプレートに成形され得る。成形プロセスの結果として、所与のバイポーラプレートの外面に樹脂リッチ層が形成され得る。樹脂リッチ層は、電気化学的性能には望ましくない可能性があり、層は、比較的高い抵抗及び比較的低い伝導率に寄与する。更に、樹脂リッチ層が後続の処理なしに負電極コンパートメント20内の第1のバイポーラプレート36に含まれる場合、層は、比較的悪いめっき品質及び容量に更に寄与し得る。例えば、そのような樹脂リッチ層を含む初期状態の(例えば、未処理の)バイポーラプレート上にめっきされた任意のFe0は、ひび割れ及び薄片化し、潜在的に詰まりをもたらすか、又は不均一であり、潜在的に、劣化した膜(例えば、セパレータ24)及び延長されたサイクリングにわたるFe0の蓄積及び樹状突起形成による短絡をもたらす可能性がある。
【0030】
このようなめっきの問題を軽減するために、並びに電気化学的性能損失を防止するために、樹脂リッチ層の連続表面形態は、レドックスフロー電池セル18の完全充電サイクリング(例えば、単一の予め設定されためっき電流密度でのサイクル充電、その後の放電)の前に、第1のバイポーラプレート36の前処理を介して崩壊され得る。本明細書で使用される場合、表面形態を説明するときの「連続的な」は、実質的に滑らかで中断されていない表面を指し得る(「実質的に」は、「効果的に」又は「実用的に」を意味する修飾語として本明細書で使用され得る)。対照的に、表面形態を説明するときの「崩壊された」とは、実質的に穴あけされた、コンディショニングされた、エッチングされた、粗面加工された、粗くされた、ひび割れた、切開された、又はそうでなければ変形された表面を指し得る(適宜に、ひび割れが樹脂リッチ層に限定され、樹脂リッチ層又はその上のめっきの剥離をもたらさないときなどの選択された条件下で、ひび割れが望ましい場合がある)。更に、所与のバイポーラプレート構成を説明するときの「初期状態の」は、所与のレドックスフロー電池システムで完全充電サイクリングを受ける前に、任意の後続の処理なしに(例えば、圧縮又は射出成形から)形成されるバイポーラプレートを指し得る。対照的に、所与のバイポーラプレート構成を説明するときの「前処理された」は、改善された電気化学的性能及び/又は構造的完全性のためにバイポーラプレートの表面形態を崩壊させるか、又はそれ以外の場合調節するための形成後処理を指し得る(後処理は、所与のレドックスフロー電池システムでバイポーラプレートが完全充電サイクリングを受ける前に実行され、それ故に「前処理された」である)。
【0031】
前処理は、研磨、サンドブラスト、サンドペーパーポリッシング、タイミングベルト、等などの機械的前処理であってもよい。しかしながら、そのような機械的前処理は、特定の場合にはいくつかの電気化学的性能損失を軽減し得るが、長期的な耐久性を維持することは困難であり得る(例えば、樹枝状形成につながる不均一なめっき、等のため)。予想外に、所与の機械的前処理プロセスが、樹脂リッチ層内に深いエッチングを切開するように設計されている場合でも、めっき性能が低下する可能性がある。追加的又は代替的に、不正確な機械的処理は、電池環境において前処理されたバイポーラプレートを含める前に除去しなければならない小さなフレーク及び微粒子をもたらし得る。そのようなフレーク及び微粒子の除去は、余分な処理時間、コスト、及び複雑さをもたらし、不完全である場合、電池動作に有害である少量のフレーク又は微粒子が残る可能性がある。
【0032】
したがって、実施形態は、レドックスフロー電池システム(例えば、レドックスフロー電池システム10)の電極(例えば、負電極26)をめっきするためのバイポーラプレート(例えば、第1のバイポーラプレート36)を前処理することを介して、電気化学的性能損失を軽減し、長期的な耐久性を保持するために本明細書で提供される。例示的な実施形態では、
図2A及び
図2Bを参照して以下に詳細に説明するように、バイポーラプレートは、その少なくとも1つの表面の化学的崩壊を介して前処理され得、化学的崩壊は、少なくとも1つの表面の電気化学エッチング及び/又は化学処理を含み得る。前処理されたバイポーラプレートは、レドックスフロー電池システム内に位置付けられ得、そこで完全な充電サイクリングを受けると、前処理されたバイポーラプレートは、レドックスフロー電池システムの耐用年数にわたって、均一なめっき及び実質的に一貫しためっき性能を引き起こし得る[本明細書で使用する場合、「均一な」とは、めっき又は所与の表面特徴を指すとき、所与の表面又は所与の表面の任意の閾値部分(例えば、総表面積又は総表面積未満)上のその実質的に類似したカバレッジ及び深さを指し得る]。このようにして、バイポーラプレートの機械的前処理に関連付けられた長期的な耐久性及び処理上の問題は、そのような機械的前処理を電気化学的及び/又は化学的前処理に置き換えることを介して、電気化学的性能を犠牲にすることなく、取り除かれ得る。
【0033】
図1を続けると、レドックスフロー電池セル18は、負の電池端子40と正の電池端子42とを更に含み得る。充電電流が電池端子40及び42に印加されると、正電解質は正電極28で酸化され得(1つ以上の電子を失い)、負電解質は負電極26で還元され得る(1つ以上の電子を獲得する)。電池放電中に、逆レドックス反応が電極26及び28上で生じ得る。言い換えれば、正電解質は、正電極28で還元され得(1つ以上の電子を獲得する)、負電解質は、負電極26で酸化され得る(1つ以上の電子を失う)。電池を横切る電位差は、正電極コンパートメント22及び負電極コンパートメント20における電気化学的レドックス反応によって維持され得、反応が持続している間、集電体を通る電流を引き起こし得る。レドックス電池によって貯蔵されたエネルギーの量は、電解質の総量及び電気活性材料の溶解度に応じて、放電のために電解質中で利用可能な電気活性材料の量によって制限され得る。
【0034】
レドックスフロー電池システム10は、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110を更に含み得る。マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、バルクヘッド98によって分割され得る。バルクヘッド98は、正電解質及び負電解質の両方が単一のタンク内に含まれ得るように、マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110内に多数のチャンバを作成し得る。負電解質チャンバ50は、電気活性材料を含む負電解質を保持し、正電解質チャンバ52は、電気活性材料を含む正電解質を保持する。バルクヘッド98は、負電解質チャンバ50と正電解質チャンバ52との間に所望の体積比をもたらすように、マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110内に位置付けられ得る。一実施例では、バルクヘッド98は、負のレドックス反応と正のレドックス反応との間の化学量論比に従って、負電解質チャンバ50及び正電解質チャンバ52の体積比を設定するように位置付けられ得る。
図1は、マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110の充填高さ112を更に示し、これは、各タンクコンパートメント内の液体レベルを示し得る。
図1はまた、負電解質チャンバ50の充填高さ112の上に位置するガスヘッドスペース90、及び正電解質チャンバ52の充填高さ112の上に位置するガスヘッドスペース92を示す。ガスヘッドスペース92は、レドックスフロー電池の動作を通じて(例えば、プロトン還元及び鉄腐食の副反応により)生成され、レドックスフロー電池セル18から戻る電解質とともにマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に運ばれる水素ガスを貯蔵するために利用され得る。水素ガスは、マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110内の気体-液体界面(例えば、充填高さ112)で自然に分離され得、それによって、レドックスフロー電池システム10の一部として追加の気体-液体セパレータを有することを排除する。電解質から分離されると、水素ガスは、ガスヘッドスペース90及び92を満たし得る。こうして、貯蔵された水素ガスは、マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110から他のガスをパージするのに役立ち得、それによって、電解質種の酸化を低減するための不活性ガスブランケットとして機能し、これは、レドックスフロー電池容量損失を低減するのに役立ち得る。このようにして、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110を利用することは、従来のレドックスフロー電池システムに共通の別個の負及び正電解質貯蔵タンク、水素貯蔵タンク、及び気体-液体セパレータを有することを放棄し得、それによって、システム設計を簡素化し、レドックスフロー電池システム10の物理的フットプリントを低減し、システムコストを低減する。
【0035】
図1はまた、スピルオーバホール96を示し、これは、ガスヘッドスペース90と92との間のバルクヘッド98に開口部を作成し得、チャンバ50と52との間でガス圧を均等化する手段を提供し得る。スピルオーバホール96は、充填高さ112の上の閾値高さに位置付けられ得る。スピルオーバホール96は、電池クロスオーバが発生した場合に、負及び正電解質チャンバ50及び52の各々における電解質の自己バランスをとる能力を更に可能にし得る。全鉄レドックスフロー電池システムの場合、同じ電解質(Fe
2+)が、負及び正電極コンパートメント20及び22の両方で使用され、それにより負電解質チャンバ50と正電解質チャンバ52との間の電解質のスピルオーバは、全体的なシステム効率を低下させる可能性があるが、全体的な電解質組成、電池モジュール性能、及び電池モジュール容量が維持され得る。フランジ管継手が、漏れのない連続的に加圧された状態を維持するために、入口及び出口のマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110との間の全ての配管接続に利用され得る。マルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、負及び正電解質チャンバ50及び52の各々からの少なくとも1つの出口、並びに負及び正電解質チャンバ50及び52の各々への少なくとも1つの入口を含み得る。更に、1つ以上の出口接続が、水素ガスをリバランシング反応器80及び82に導くために、ガスヘッドスペース90及び92から提供され得る。
【0036】
図1には示されていないが、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、負電解質チャンバ50及び正電解質チャンバ52の各々に熱的に結合された1つ以上のヒータを更に含み得る。代替の例では、負及び正電解質チャンバ50及び52のうちの1つだけが、1つ以上のヒータを含んでもよい。正電解質チャンバ52のみが1つ以上のヒータを含む場合には、負電解質は、レドックスフロー電池セル18において生成される熱を負電解質に伝達することによって加熱されてもよい。このようにして、レドックスフロー電池セル18は、負電解質を加熱し、負電解質の温度調節を容易にし得る。1つ以上のヒータは、コントローラ88によって作動されて、負電解質チャンバ50及び正電解質チャンバ52の温度を独立して又は一緒に調節し得る。例えば、閾値温度を下回る電解質温度に応答して、コントローラ88は、電解質への熱流束が増加し得るように、1つ以上のヒータに供給される電力を増加させ得る。電解質温度は、センサ60及び62などのマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に取り付けられた1つ以上の温度センサによって示され得る。例として、1つ以上のヒータは、電解質流体に浸漬されたコイル型ヒータ若しくは他の浸漬ヒータ、又はその中の流体を加熱するために負及び正電解質チャンバ50及び52の壁を通して熱を伝導的に伝達する表面マントル型ヒータを含み得る。本開示の範囲から逸脱することなく、他の既知のタイプのタンクヒータが使用されてもよい。更に、コントローラ88は、固体充填閾値レベルを下回る液体レベルに応答して、負及び正電解質チャンバ50及び52内の1つ以上のヒータを非アクティブ化し得る。別の方法で言えば、いくつかの実施例では、コントローラ88は、固体充填閾値レベルを上回る液体レベルに応答してのみ、負及び正電解質チャンバ50及び52内の1つ以上のヒータをアクティブ化し得る。このようにして、負及び/又は正電解質チャンバ50、52内に十分な液体なしで1つ以上のヒータをアクティブ化することは回避され得、それによって、ヒータの過熱又は焼損のリスクを低減する。
【0037】
なお更に、1つ以上の入口接続が、フィールド水和システム(図示せず)から負及び正電解質チャンバ50及び52の各々に提供され得る。このようにして、フィールド水和システムは、最終使用場所での、レドックスフロー電池システム10の設置、充填、及び水和を含む、レドックスフロー電池システム10の試運転を容易にし得る。更に、最終使用場所でレドックスフロー電池システム10を試運転する前に、レドックスフロー電池システム10は、レドックスフロー電池システム10を最終使用場所に配送する前に、レドックスフロー電池システム10を充填及び水和することなく、最終使用場所とは異なる電池製造施設で乾式組み立てされ得る。一実施例では、最終使用場所は、レドックスフロー電池システム10が設置され、オンサイトエネルギー貯蔵のために利用される場所に対応し得る。言い換えれば、レドックスフロー電池システム10は、いったん最終使用場所に設置され、水和されると、レドックスフロー電池システム10の位置が固定され、レドックスフロー電池システム10がもはやポータブルな乾燥システムとみなされなくてもよいように設計され得る。したがって、エンドユーザの観点から、乾燥したポータブルレドックスフロー電池システム10は、現場に配送されてもよく、その後、レドックスフロー電池システム10は、設置、水和、及び試運転されてもよい。水和の前に、レドックスフロー電池システム10は、乾式のポータブルシステムと呼ばれ得、レドックスフロー電池システム10は、水及び湿った電解質を含まないか、又はない。水和されると、レドックスフロー電池システム10は、湿式の非ポータブルシステムと呼ばれ得、レドックスフロー電池システム10は、湿った電解質を含む。
【0038】
図1に更に示されているように、最初にマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に貯蔵された電解質溶液は、負及び正電解質ポンプ30及び32を介して、レドックスフロー電池システム10全体にポンプで送られ得る。負電解質チャンバ50に貯蔵された電解質は、負電解質ポンプ30を介してレドックスフロー電池セル18の負電極コンパートメント20側を通ってポンプで送り込まれ得、正電解質チャンバ52に貯蔵された電解質は、正電解質ポンプ32を介してレドックスフロー電池セル18の正電極コンパートメント22側を通ってポンプで送り込まれ得る。
【0039】
電解質リバランシング反応器80及び82は、それぞれ、レドックスフロー電池システム10内のレドックスフロー電池セル18の負及び正側で、電解質の再循環流路とインライン又は並行して接続され得る。1つ以上のリバランシング反応器は、電池の負及び正側で電解質の再循環流路とインラインに接続されてもよく、他のリバランシング反応器は、冗長性のために(例えば、リバランシング反応器は、電池及びリバランシング動作を中断することなく保守され得る)、及び増加したリバランシング容量のために、並行して接続されてもよい。一実施例では、電解質リバランシング反応器80及び82は、それぞれ、負及び正電極コンパートメント20及び22から負及び正電解質チャンバ50及び52への戻り流路に配置されてもよい。電解質リバランシング反応器80及び82は、本明細書に記載されるように、副反応、イオン交差、などのために発生するレドックスフロー電池システム10における電解質充電の不均衡をリバランスするのに役立ち得る。一実施例では、電解質リバランシング反応器80及び82は、トリクルベッド反応器を含み得、ここで、水素ガス及び電解質は、電解質リバランシング反応を実施するために、充填されたベッド内の触媒表面で接触され得る。他の例では、リバランシング反応器80及び82は、水素ガスと電解質液体とを接触させ、充填された触媒ベッドなしで電解質リバランシング反応を実施することができるフロースルー型反応器を含み得る。
【0040】
レドックスフロー電池システム10の動作中、センサ及びプローブは、電解質のpH、濃度、SOC、などのような電解質の化学特性を監視及び制御し得る。例えば、
図1に示されるように、センサ62及び60は、それぞれ正電解質チャンバ52及び負電解質チャンバ50で正電解質及び負電解質の状態を監視するように位置付けられ得る。別の例では、センサ62及び60は各々、それぞれ正電解質チャンバ52及び負電解質チャンバ50内の電解質のレベルを示すために、1つ以上の電解質レベルセンサを含んでもよい。別の例として、また
図1に示されたセンサ72及び70は、それぞれ正電極コンパートメント22及び負電極コンパートメント20における正電解質及び負電解質の状態を監視し得る。センサ72及び70は、pHプローブ、光学プローブ、圧力センサ、電圧センサ、等であり得る。センサは、電解質化学的特性及び他の特性を監視するために、レドックスフロー電池システム10全体の他の場所に位置付けられてもよいことが理解されるであろう。
【0041】
例えば、センサは、外部酸タンク(図示せず)の酸量又はpHを監視するために外部酸タンク内に位置付けられてもよく、外部酸タンクからの酸は、電解質中の沈殿物形成を低減するために、外部ポンプ(図示せず)を介してレドックスフロー電池システム10に供給されてもよい。追加の外部タンク及びセンサは、他の添加剤をレドックスフロー電池システム10に供給するために設置されてもよい。例えば、フィールド水和システムの温度、導電率、及びレベルセンサを含む様々なセンサは、コントローラ88に信号を送信し得る。更に、コントローラ88は、レドックスフロー電池システム10の水和中に、フィールド水和システムのバルブ及びポンプなどのアクチュエータに信号を送信し得る。センサ情報は、コントローラ88に送信され得、それは次に、ポンプ30及び32を作動させて、レドックスフロー電池セル18を通る電解質流を制御するか、又は例として他の制御機能を実行し得る。このようにして、コントローラ88は、センサ及びプローブの1つ又は組み合わせに応答し得る。
【0042】
レドックスフロー電池システム10は、水素ガスの供給源を更に含み得る。一実施例では、水素ガスの供給源は、別個の専用水素ガス貯蔵タンクを含み得る。
図1の例では、水素ガスは、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に貯蔵され、それから供給されてもよい。統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、正電解質チャンバ52及び負電解質チャンバ50に追加の水素ガスを供給し得る。統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、電解質リバランシング反応器80及び82の入口に追加の水素ガスを交互に供給し得る。一例として、質量流量計又は他の流量制御デバイス(コントローラ88によって制御され得る)は、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110からの水素ガスの流れを調節し得る。統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110は、レドックスフロー電池システム10で生成された水素ガスを補足し得る。例えば、レドックスフロー電池システム10でガス漏れが検出された場合、又は低水素分圧で還元反応速度が低すぎる場合、水素ガスは、正電解質及び負電解質中の電気活性材料のSOCをリバランスさせるために、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110から供給され得る。一例として、コントローラ88は、pHの測定された変化に応答して、若しくは電解質又は電気活性材料のSOCの測定された変化に応答して、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110から水素ガスを供給し得る。
【0043】
例えば、負電解質チャンバ50、又は負電極コンパートメント20のpHの増加は、水素がレドックスフロー電池システム10から漏れていること、及び/又は利用可能な水素分圧では反応速度が遅すぎることを示し得、コントローラ88は、pHの増加に応答して、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110からレドックスフロー電池システム10への水素ガスの供給を増加させ得る。更なる例として、コントローラ88は、pH変化に応答して、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110から水素ガスを供給し得、pHは、第1の閾値pHを超えて増加するか、又は第2の閾値pHを超えて減少する。IFBの場合、コントローラ88は、追加の水素を供給して、Fe3+イオンの還元速度及びプロトンの生産速度を増加させ、それによって正電解質のpHを減少させ得る。更に、負電解質のpHは、正電解質から負電解質に交差するFe3+イオンの水素還元によって、又はプロトン濃度勾配及び電気泳動力に起因して負電解質に交差する正の側で生成されるプロトンによって低下され得る。このようにして、負電解質のpHは、Fe(OH)3としてFe3+イオン(正電極コンパートメント22から交差する)の沈殿のリスクを低減しながら、安定した領域内に維持され得る。
【0044】
酸素還元電位(ORP)メータ又は光学センサなどの他のセンサによって検出される、電解質pHの変化又は電解質SOCの変化に応答して、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110からの水素ガスの供給速度を制御するための他の制御スキームが、実装され得る。なお更に、pH又はコントローラ88のSOCトリガアクションの変化は、変化率又はある期間にわたって測定された変化に基づき得る。変化率の期間は、レドックスフロー電池システム10の時定数に基づいて予め決定又は調整され得る。例えば、再循環速度が高い場合、期間を短縮することができ、時定数が小さい場合があるため、濃度の局所変化(例えば、副反応又はガス漏れに起因する)は迅速に測定され得る。
【0045】
コントローラ88は、レドックスフロー電池システム10の動作モードに基づいて制御スキームを更に実行し得る。例えば、
図2A及び
図2Bを参照して以下で考察するように、コントローラ88は、ステップ充電プロセスを介して負電極26で使用するために第1のバイポーラプレート36を電気化学的にエッチングするように、レドックスフロー電池セル18の充電及び放電を制御し得る。具体的には、(初期状態の)第1のバイポーラプレート36が電極コンパートメント20及び22のうちの1つに位置付けられた後、コントローラ88は、初期状態のバイポーラプレートの少なくとも1つの表面を電気化学的にエッチングするために、1つ以上の初期充電サイクルの各充電サイクルに対して、多数の別個のめっき電流密度でレドックスフロー電池セル18の充電を命令し得る。その後、完全充電サイクリングが、エッチングされた(例えば、前処理された)第1のバイポーラプレート36で開始され得、コントローラ88は、完全充電サイクリング中の各充電サイクルについて、単一のめっき電流密度でレドックスフロー電池セル18の充電を命令し得、その結果、負電極26が均一にめっきされ得る(エッチングされた第1のバイポーラプレート36によって容易にされるため)。
【0046】
別の例として、コントローラ88は、システムコンディショニング中に負電極26で鉄の予備成形を引き起こすように、レドックスフロー電池セル18の充電及び放電を更に制御し得る(システムコンディショニングは、電池サイクリングの外でレドックスフロー電池システム10の電気化学的性能を最適化するために用いられる動作モードを含み得る)。すなわち、システムコンディショニング中、コントローラ88は、負電極26上に鉄金属をめっきするようにレドックスフロー電池システム10の1つ以上の動作条件を調整して、それに続く電池サイクリング中に電池充電容量を改善し得る(したがって、鉄金属は、電池サイクリングのために予め形成され得る)。コントローラ88は、上で考察されたように電解質リバランシングを更に実行して、レドックスフロー電池システム10から過剰な水素ガスを取り除き、Fe3+イオン濃度を低減し得る。このようにして、負電極26で鉄を予備成形し、システムコンディショニング中に電解質リバランシングを実行することは、鉄めっき損失を軽減することによって、電池サイクリング中のレドックスフロー電池セル18の全体的な容量を増加させ得る。本明細書で使用される場合、電池サイクリング(「充電サイクリング」とも称される)は、レドックスフロー電池システム10の充電モードと放電モードとの間で交互することを含み得る。
【0047】
センサ60及び62並びに統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110(及びそこに含まれる構成要素)を除く全ての構成要素は、電力モジュール120に含まれるとみなされ得ることが理解されよう。このように、レドックスフロー電池システム10は、統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110に流体的に結合され、センサ60及び62に通信可能に結合された電力モジュール120を含むと説明され得る。いくつかの実施例では、電力モジュール120及びマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110の各々は、単一のハウジング(図示せず)に含まれてもよく、その結果、レドックスフロー電池システム10は、単一の場所における単一のユニットとして含まれ得る。正電解質、負電解質、センサ60及び62、電解質リバランシング反応器80及び82、並びに統合されたマルチチャンバ電解質貯蔵タンク110(及びそれらに含まれる構成要素)は、電解質サブシステム130に含まれるとみなされ得ることが更に理解されるであろう。このように、電解質サブシステム130は、1つ以上の電解質をレドックスフロー電池セル18(及びその中に含まれる構成要素)に供給し得る。
【0048】
ここで
図2A及び
図2Bを参照すると、前処理されたバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムを調製及び作動するための方法200のフローチャートと、レドックスフロー電池システムで使用するためのバイポーラプレートを電気化学的及び化学的に前処理するための方法250のフローチャートとがそれぞれ示されている。例示的な実施形態では、レドックスフロー電池システム及び前処理されたバイポーラプレートは、それぞれ、
図1を参照して上に詳細に説明されたレドックスフロー電池システム10及び第1のバイポーラプレート36であり得る。したがって、方法200及び方法250の各々は、
図1の実施形態を参照して考慮され得る(ただし、本開示の範囲から逸脱することなく、同様の方法が他のシステムに適用され得ることが理解されよう)。例えば、方法200及び方法250の少なくともいくつかのステップ(電気化学的前処理、鉄の予備成形、及びレドックスフロー電池システムの充電サイクリングに関与するステップなど)は、コントローラ88を介して実行され得、コントローラ88に通信可能に結合された非一時的な記憶媒体(例えば、メモリ)に実行可能な命令として記憶され得る。
図2A及び
図2Bを参照して説明される更なる構成要素は、
図1のレドックスフロー電池システム10の対応する構成要素の例であり得る。
【0049】
ここで
図2Aを参照すると、202において、方法200は、初期状態のバイポーラプレートを形成することを含む。一実施例では、グラファイト複合材出発材料が、初期状態のバイポーラプレートを形成するように圧縮成形又は射出成形され得る。しかしながら、成形の結果として、成形されたグラファイト複合材出発材料の外面に樹脂リッチ層が形成され得る。樹脂リッチ層は、電気化学的観点から望ましくない可能性があり、レドックスフロー電池システムに初期状態のバイポーラプレートを含めると、高抵抗、悪い伝導率、及び悪いめっきをもたらす可能性がある。
【0050】
したがって、204において、方法200は、初期状態のバイポーラプレートの少なくとも1つの表面を崩壊させることを含み、初期状態のバイポーラプレートの少なくとも1つの表面は、樹脂リッチ層を含み得る。いくつかの実施例では、少なくとも1つの表面を崩壊させることは、例えば、研磨を介して、樹脂リッチ層を機械的に摩耗させることを含み得る。しかしながら、そのような機械的摩耗は、結果として生じる表面形態及び機械的摩耗に続いてバイポーラプレート上に残る過剰残留物の量の両方の点から不正確であり得る。そのような問題に対処することは、余分な処理ステップをもたらし得、それによって処理時間、複雑さ、及びコストを増加させる。
【0051】
機械的摩耗の代替として、少なくとも1つの表面は、バイポーラプレートがレドックスフロー電池システムのために前処理され得るように、化学的及び/又は電気化学的に崩壊又は改変され得る。いくつかの実施例では、化学的崩壊は、電気化学エッチング及び化学処理のうちの1つ以上を含み得る(例えば、溶液中での少なくとも1つの表面の浸漬を介して)。電気化学エッチング又は化学処理のいずれかが単独で実行され得るが、それらの組み合わせは、電気化学エッチング又は化学処理単独のいずれかと比較して、レドックスフロー電池システムにおける電気化学的性能のために少なくとも1つの表面の表面形態を相乗的に改善し得る。そのような相乗効果を、
図2Bの方法250を参照して以下でより詳細に説明する。一実施形態として、
図2Bの方法250は、部分的又は全体的に204を置換し得る。しかしながら、
図2Bの方法250は、電気化学的/化学的表面崩壊の1つの例示的な実施形態を構成し、追加的又は代替的な前処理方法が本開示の範囲内で実装され得ることが理解されよう。
【0052】
例示的な実施形態では、バイポーラプレートは、バイポーラプレートが負電極に向かって面し、負電極と流体連通するように、レドックスフローシステムの負電極コンパートメント内に負(めっき)電極とともに位置付けられ得る。電気化学エッチングが採用されている実施形態では、バイポーラプレートは、電気化学エッチングが(例えば、別個に特化したシステムとは対照的に)レドックスフロー電池システムの充電サイクリングを介して行われ得るように、レドックスフロー電池システム内に位置付けられ得る。例示的な実施形態では、電気化学エッチングは、ステップ充電プロセスを介して実現され得、この場合、レドックスフロー電池システムの完全めっき電流密度(例えば、電流密度制限)は、1つ以上の初期(前処理)充電サイクルの間、段階的な電流密度の増加を介して徐々にアプローチされ得る。このようにして、電気化学エッチングは、処理の複雑さを大幅に増加させることなく、又はレドックスフロー電池システムの動作に既に利用されている構成要素(
図1を参照して上記で詳細に考察されている構成要素など)を超える追加の構成要素を使用することなく実行され得る。
【0053】
化学処理が採用されている実施形態では、少なくとも1つの表面は、レドックスフロー電池システム内又はレドックスフロー電池システムとは別の容器内のいずれかで化学処理を受けることができる。いくつかの実施例では、バイポーラプレートの化学処理は、電気化学エッチングのためのレドックスフロー電池システムへのバイポーラプレートの挿入の前(例えば、1つ以上の初期充電サイクルの前)又は完全充電サイクリングの前に行われ得る。他の実施例では、バイポーラプレートの化学処理は、電気化学エッチングのためのレドックスフロー電池システムへのバイポーラプレートの挿入の後(例えば、1つ以上の初期充電サイクルの後)に、しかし完全充電サイクリングの前に行われ得る。一実施例では、電気化学エッチングの後、バイポーラプレートは、レドックスフロー電池システムから除去され、別個の容器内で化学的に処理され、次いで、完全充電サイクリングのために負電極コンパートメント内に再位置付けされ得る。
【0054】
電気化学エッチング及び化学処理に続いて、並びにその結果として、少なくとも1つの表面(例えば、樹脂リッチ層を含む)は、エッチングされ、広範囲に粗面加工され得、その結果、少なくとも1つの表面上の後続のめっき(例えば、Fe0めっき)は、ひび割れ及び過剰な微粒子及びフレークが実質的になくなり得る(例えば、めっきの5%未満は、その上にひび割れを含み得、過剰な微粒子及びフレークは、実用的な目的のために存在しないとみなされ得る)。このようにして、及び以下で詳細に考察されるように、バイポーラプレートは、その中の樹脂リッチ層の形態が崩壊され、それによって延長されたサイクリングにわたって均一なめっきのために最適化されるように、電気化学的及び化学的に前処理され得る。
【0055】
206において、方法200は、例えば、崩壊された樹脂リッチ層を有する、前処理されたバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの負(めっき)電極上にめっきを予備成形することを含む。めっき予備成形は、放電の終わりに向かって全体の電気負荷を支持するために負電極に十分なめっきが提供されることを保証することによって、電池サイクリング中にレドックスフロー電池システムの全体容量を増加させるために望ましい場合がある。いくつかの実施例では、めっき予備成形は、レドックスフロー電池システムを設定点に、又は所望のSOCまで充電することによって実現され得る。例えば、所望のSOCは、一実施例では15%であり得る。例示的な実施形態では、レドックスフロー電池システムは、全鉄ハイブリッドレドックスフロー電池システムであってもよく、めっきは、電池充電中のめっき電極におけるFe2+の減少に起因するFe0めっきであってもよい。
【0056】
208において、方法200は、前処理されたバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムの完全充電サイクリングを開始することを含む。電気化学エッチングのステップ充電プロセスとは対照的に、完全充電サイクリングは、段階的なアプローチなしに、完全めっき電流密度でレドックスフロー電池を充電することを含み得る。具体的には、レドックスフロー電池システムのめっき電流密度は、1つ以上の初期充電サイクルの後の1つ以上の後続の充電サイクルの各々について、単一のステップで完全めっき電流密度まで増加され得る。バイポーラプレートは上記のように前処理されており、レドックスフロー電池システムの完全充電サイクリングは、延長されたサイクリングにわたって負電極の均一なめっきをもたらし得る。したがって、不十分なめっき(例えば、ひび割れ又は剥離及び関連する目詰まり及び不十分な電気化学的性能をもたらす)又は不均一なめっき(例えば、樹枝状形成及び関連する膜損傷及び短絡をもたらす)に関連付けられた問題が回避され得る。このようにして、レドックスフロー電池システムは、長期的な耐久性を犠牲にすることなく電気化学的性能損失を軽減するように、前処理されたバイポーラプレートを用いて調製及び作動され得る。
【0057】
ここで
図2Bを参照すると、252において、方法250は、初期状態かつ未エッチング状態のバイポーラプレートを得ることを含む。例示的な実施形態では、バイポーラプレートは、
図2Aの202で上記に詳細に説明されたように形成され得る。具体的には、バイポーラプレートは、グラファイト複合材出発材料を射出成形又は圧縮成形することによって形成され得る。こうして、バイポーラプレートの少なくとも1つの表面は、樹脂リッチ層を含み得、その樹脂リッチ層は、初期状態かつ未エッチング状態のままであり、レドックスフロー電池システムにバイポーラプレートを含めると、高抵抗、低い伝導率、及び悪いめっきに寄与し得る。
【0058】
そのような電気化学的性能の問題を軽減するために、バイポーラプレートの少なくとも1つの表面は、電気化学的にエッチングされ、化学的に処理され得、その結果、樹脂リッチ層の少なくとも一部が、初期状態かつ未エッチング状態の樹脂リッチ層に対して改善されためっきのために改変され得る。このようにして電気化学的及び化学的前処理プロセスを組み合わせることによって、電気化学的性能に関するバイポーラプレートの少なくとも1つの表面の形態の相乗的改善が、前処理プロセス単独のいずれかに対して実現され得る。具体的には、かつ258、260、262、及び264を参照して以下で考察するように、電気化学エッチングは、比較的高い粗さの大きさ及び比較的広範なカバレッジを有する少なくとも1つの表面上でエッチングを生成するように調整され得るステップ充電プロセスを採用し得る。化学処理は、少なくとも1つの表面の少なくとも一部分を溶解することによって、エッチングの深さを更に変えるように加えて採用され得る。254及び268を参照して以下で考察するように、化学処理は、電気化学エッチングの前又は後のいずれかで行ってもよい。したがって、
図2Bでは、254又は268のいずれかが、化学処理がいつ実行されるかに応じて選択され得るため、254及び268が破線で示されている。
【0059】
254において、方法250は、任意選択で、電気化学エッチングの前に、前処理溶液に浸漬することを介して、バイポーラプレートの少なくとも1つの表面を化学的に処理することを含み得る。具体的には、バイポーラプレートは、少なくとも1つの表面を化学的に処理するために、長い持続時間前処理溶液に浸漬され得る。一実施例では、前処理溶液は、塩化第二鉄(FeCl3)溶液を含み得る。一実施例では、塩化第二鉄溶液は、水溶液であり得る。例えば、塩化第二鉄は、1.0M~6.0Mの濃度で前処理溶液中に提供されてもよい。一実施例では、長い持続時間は、少なくとも12時間(例えば、一晩中)又は最大で60時間(例えば、週末中)であってもよい。いくつかの実施例では、バイポーラプレートを化学的に処理することは、(例えば、前処理溶液に浸漬する前に)イソプロピルアルコール、過酸化水素、酸、追加の塩化第二鉄溶液、又はそれらの組み合わせでバイポーラプレートを洗浄することを更に含み得る。いくつかの実施例では、バイポーラプレートを化学的に処理することは、(例えば、前処理溶液に浸漬した後)バイポーラプレートを水ですすぐことを更に含み得る。
【0060】
いくつかの実施例では、前処理溶液中の少なくとも1つの表面の浸漬は、レドックスフロー電池システムとは別の容器内で(例えば、現場外で)実行されてもよい。一実施例では、別個の容器は、十分な換気を備えて構成された環境に配置され得、長い持続時間酸性溶液を保持するための任意の適切な容器(例えば、ガラス皿)を含み得る。他の実施例では、バイポーラプレートは、少なくとも1つの表面の浸漬がその場で行われ得るように、化学処理のためにレドックスフロー電池システム内に位置付けられ得る。例示的な実施形態では、バイポーラプレートは、電極コンパートメント内に更に収容された負(めっき)電極に向かって面し、それと流体連通して電極コンパートメント内に位置付けられ得る。負電極に対するバイポーラプレートのより具体的な位置付けは、
図1を参照して上記で詳細に考察されている。このようにして、少なくとも1つの表面の化学処理に特殊な装置を使用せず、それによって、処理の複雑さ及びコストを最小限に抑え得る。
【0061】
256において、方法250は、任意選択で、電気化学エッチングのためにレドックスフロー電池システム内にバイポーラプレートを位置付けることを含み得る(例えば、バイポーラプレートが前処理溶液に浸漬するためにレドックスフロー電池システム内にまだ位置付けられていない場合)。一実施例では、バイポーラプレートは、上記の254で又は
図1を参照して詳細に説明されているように位置付けられ得る。
【0062】
258において、方法250は、1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、レドックスフロー電池システムのめっき電流密度を完全めっき電流密度まで徐々に増加させることによって、バイポーラプレートの少なくとも1つの表面を電気化学的にエッチングすることを含む。理論に束縛されることなく、負電極でのめっき及び脱めっきを引き起こすためのレドックスフロー電池システムの充電サイクリングは、少なくとも1つの表面のより粗い形態及び望ましい接着特性を備えためっきをもたらし得る。しかしながら、少なくとも1つの表面の少なくとも一部のエッチングを生成しながら、完全めっき電流密度への急速な単一ステップの増加は、めっきの剥離をもたらし得、これは、負電極コンパートメント内の電解質ポートの目詰まりに寄与し得る。更に、完全めっき電流密度のみで充電することは、最低限4回又は5回の充電サイクルを採用する可能性があり、これは、それから生じる過剰な処理時間(例えば、4回又は5回の充電サイクルをまとめて1日以上)を考慮すると望ましくない場合がある。
【0063】
代わりに、本明細書に提供される実施形態は、ステップ充電プロセスを介してめっき電流密度を徐々に増加させることによって、電気化学的にエッチングされた表面を実現し得る。具体的には、1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、めっき電流密度を徐々に増加させることは、1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、複数の充電ステップにわたってめっき電流密度を増加させることを含み得る。例示的な実施形態では、1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、複数の充電ステップにわたってめっき電流密度を増加させることは、順に、(i)260において、第1のめっき電流密度で第1のSOCまでレドックスフロー電池システムを充電するステップと、(ii)262において、第1のSOCから第2のSOCまで、第2のめっき電流密度でレドックスフロー電池システムを充電するステップであって、第2のめっき電流密度が第1のめっき電流密度よりも大きい、充電するステップと、(iii)264において、第2のSOCから第3のSOCまで、第3のめっき電流密度でレドックスフロー電池システムを充電するステップであって、第3のめっき電流密度が第2のめっき電流密度よりも大きく、第3のめっき電流密度が完全めっき電流密度であり得る、充電するステップ、を含み得る。第1、第2、及び第3のSOCにそれぞれ到達するために、第1、第2、及び第3のめっき電流密度での充電は、それぞれ第1、第2、及び第3の持続時間にわたって行われ得る。
【0064】
一実施例では、2.25Aのめっき電流は、順次、6.7mA/cm2の第1の電流密度、15mA/cm2の第2のめっき電流密度、及び45mA/cm2の第3のめっき電流密度(例えば、完全めっき電流密度)で印加されてもよい。追加又は代替の実施例では、第1、第2、及び第3の持続時間の各々は1.5時間であり得る。追加又は代替の実施例では、第1のSOCは10%であり得、第2のSOCは30%であり得、第3のSOCは80%であり得る。いくつかの実施例では、1つ以上の前処理充電サイクルの各々は、放電の前に、レドックスフロー電池システムを最大で90%のSOCまで充電し得る。本明細書に記載のステップ充電プロセスの実施形態は、前述の値に限定されるべきではなく、更なる実施形態では、他の値(例えば、他のめっき電流密度、持続時間、SOC、全体のステップ数、等)が、本開示の範囲内のステップ充電プロセスに使用されてもよい。
【0065】
ステップ充電プロセスは、1つ以上の前処理充電サイクルの各々を用いて凝集性めっきを実現し得、並びに完全めっき電流密度への単一ステップ増加を利用する電気化学的前処理よりも少ない充電サイクルで所望のエッチングを実現し得る。こうして、いくつかの実施例では、1つ以上の前処理充電サイクルは、4つ未満の前処理充電サイクルを含み得る。一実施例では、1つ以上の前処理充電サイクルは、1つの前処理充電サイクルのみを含み得る。
【0066】
電気化学的性能に対する樹脂リッチ層の有害な影響を軽減するために、樹脂リッチ層の完全な除去が望まれ得る。しかしながら、そのような完全な除去は、実際には達成可能ではない場合があるため、代わりに、エッチング、粗面加工、等を介した表面崩壊を用いて、樹脂リッチ層を摩耗させ得る。したがって、ステップ充電プロセスを介してエッチングされたバイポーラプレートの1つの予期しない効果は、機械的研磨又はサンディングを介して深くエッチングされたバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池システムと比較して、レドックスフロー電池システムにおけるエッチングされたバイポーラプレートの実装時に、同等又は改善されためっき品質、並びに同等の長期耐久性が達成され得ることである。このため、バイポーラプレート上のエッチングの深さの大きさは、エッチングの粗さの大きさよりも、レドックスフロー電池システムの電気化学的性能及び耐久性にあまり関連しない可能性がある。ステップ充電プロセスは、バイポーラプレート上のエッチングの広範なカバレッジに加えて、十分な粗さを達成し得、それにより、レドックスフロー電池システムのそのような望ましい特性が実現され得る。
【0067】
266において、方法250は、電気化学エッチングの後に酸性溶液に浸漬することを介して、過剰なめっき残留物をバイポーラプレートから洗浄することを含む。具体的には、電気化学的にエッチングされたバイポーラプレートは、レドックスフロー電池システムから除去され、別個の容器内の酸性溶液に浸され(例えば、現場外で)、その後、負電極コンパートメント内に再位置付けされ得る。
【0068】
268において、方法250は、任意選択で、電気化学エッチングの後に、前処理溶液に浸漬することを介して、バイポーラプレートの少なくとも1つの表面を化学的に処理することを含み得る。具体的には、電気化学的にエッチングされたバイポーラプレートは、レドックスフロー電池システムから除去され、別個の容器内の前処理溶液に浸され(例えば、現場外で)、その後、負電極コンパートメント内に再位置付けされ得る。代替的に、電気化学的にエッチングされたバイポーラプレートは、負電極コンパートメント内の前処理溶液で処理され得る(例えば、その場で)。溶液中での浸漬を介した少なくとも1つの表面の化学処理の更なる詳細は、上記の254で詳細に説明されている。しかしながら、いくつかの実施例では、前処理溶液に浸漬する前のバイポーラプレートの洗浄(上記の254で詳細に説明されたような)は、266での洗浄を介して回避され得る。上記で更に考察されたように、化学処理が254で行われた場合、268での化学処理は省略されてもよく、バイポーラプレートは、電気化学エッチングの後にレドックスフロー電池システム内に保持され得る。
【0069】
ここで
図3を参照すると、初期状態の(例えば、未エッチング状態の)バイポーラプレート302及び電気化学的にエッチングされたバイポーラプレート304の各々を示す上面斜視
図300が示される。例示的な実施形態では、バイポーラプレート302及び304の一方又は両方は、
図1を参照して上記で詳しく説明したように、負電極26及びレドックスフロー電池システム10などのレドックスフロー電池システムのめっき電極とともに使用するために前処理され得る。例えば、初期状態のバイポーラプレート302は、初期状態のバイポーラプレート302がめっき電極と流体連通し得るように、レドックスフロー電池システムの負電極コンパートメント内に位置付けられ得る。その点で、いくつかの実施例では、初期状態のバイポーラプレート302は、上記のようなステップ充電プロセスを介して電気化学的にエッチングされ得、その後、充電サイクリングが開始され得る。延長された充電サイクル(例えば、100を超える充電/放電サイクル)の後、めっき電極での繰り返しのめっき及び脱めっきは、初期状態のバイポーラプレート302に広範囲の崩壊、エッチング、切開、及び他の変形306が生成されることをもたらし得、それによって、電気化学的にエッチングされたバイポーラプレート304を形成し得る。したがって、かつ上面斜視
図300に示されるように、初期状態のバイポーラプレート302は、実質的に連続した表面を含み、電気化学的にエッチングされたバイポーラプレート304よりも大幅に少ない崩壊、エッチング、切開、及び他の変形306を含む。
【0070】
電気化学的にエッチングされたバイポーラプレート304は、100を超える充電/放電サイクルを介して形成され得るが、望ましいめっき品質のために十分な電気化学エッチングを達成するために、初期状態のバイポーラプレート302の前処理中に、完全めっき電流密度(例えば、45mA/cm2)での最低限4回又は5回の20~80%SOC充電/放電サイクルが採用され得る。しかしながら、4回又は5回の充電/放電サイクルであっても、処理時間が長くなる可能性がある。更に、徐々に増加することなく完全めっき電流密度で充電電流を印加することは、めっきの剥離をもたらし得、これは、レドックスフロー電池システムにおける目詰まり及び結果として生じる電気化学的性能及び耐久性の問題の一因となり得る。
【0071】
したがって、
図4~
図10は、電気化学的前処理の前及び後にレドックスフロー電池システムに含まれるバイポーラプレートの例を示し、電気化学的前処理は、ステップ充電プロセスを含む。例えば、ステップ充電プロセスは、最大で10%SOC(例えば、1866C)までの1.5時間、6.7mA/cm
2の第1の電流密度で2.25Aの充電電流を印加することと、最大で30%SOC(例えば、4377C)までの1.5時間、15mA/cm
2の第2の電流密度で充電電流を印加することと、及び最大で80%SOC(例えば、14994C)までの1.5時間、45mA/cm
2の完全めっき電流密度で充電電流を印加することとを含み得、充電電圧は2.5Vであり得る。したがって、ステップ充電プロセスは、レドックスフロー電池システムの充電中に、めっき電流密度を完全めっき電流密度まで徐々に増加させ得る。その結果、完全めっき電流密度での4回又は5回の20~80%SOC充電/放電サイクルと比較して、より少ない充電/放電サイクル(例えば、1回の充電/放電サイクルのみ)にわたってより高いめっき品質が実現され得る(例えば、より少ない剥離を有する)。
【0072】
具体的には、
図4~
図6は、第1の例示的なバイポーラプレート401の図を示し、
図7及び
図8A~
図8Bは、第2の例示的なバイポーラプレート701の図を示し、
図9及び
図10は、第3の例示的なバイポーラプレート901の図を示す。第1及び第2の例示的なバイポーラプレートの各々は、第1のグラファイト複合材出発材料の射出成形又は圧縮成形を介して形成され、第1のグラファイト複合材出発材料は、結合剤(ビニルエステル樹脂)によって結合された炭素粒子及びグラファイトプレートを含んだ。
図4~
図6の図では、第1の例示的なバイポーラプレートは、Hセルセットアップで構成された第1のレドックスフロー電池システム内に位置付けられ、第1のレドックスフロー電池システムは、正電極側と負電極側の各々に第1の例示的なバイポーラプレートのそれぞれのストリップ(幅約1cmを有する)を含み、それらの間のセパレータとしてVANADion(商標)膜を有した。2.5cm
2のアクティブエリアを除いて、ストリップの各々は、絶縁目的で、エポキシ接着剤でコーティングされた。
図7~
図10の図では、第2及び第3の例示的なバイポーラプレートは、それぞれ、第2及び第3のレドックスフロー電池システム内に位置付けられ、第2及び第3のレドックスフロー電池システムの各々は、正電極側で5%のフェルト圧縮を有する2.8mmのAvCarb(登録商標)フェルトを有し、それぞれの例示的なバイポーラプレートは、負電極側で50cm
2の表面積を有し、Chemours(商標)膜をその間のセパレータとして有した。メッシュスペーサが、第2及び第3のレドックスフロー電池システムの各々においてその負電極の一部として、更に含まれていた。第1、第2、及び第3のレドックスフロー電池システムの各々におけるめっきは、最初は、60℃の電池温度でステップ充電プロセスを使用して単一充電サイクルで行われた。液体電解質が、第1、第2、及び第3のレドックスフロー電池システムの各々に提供され、電解質は、1.40~1.50MのFe
2+濃度、0.1MのMn
2+濃度、0.1MのH
3BO
3濃度、及び2.0MのKCl濃度を有し、流速は120mL/分であった。第1、第2、及び第3のレドックスフロー電池システムの各々の正電極側での電解質のpHは0.4~0.5であり、第1、第2、及び第3のレドックスフロー電池システムの各々の負電極側での電解質のpHは1.3~1.5であった。250mLの電解質を、第1、第2、及び第3のレドックスフロー電池システムの各々の正及び負電極側の各々に供給した。
【0073】
ここで
図4を参照すると、電気化学的ステップ充電(例えば、多数の充電ステップを介して完全めっき電流密度まで充電電流を印加することを含む)及び第1のレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリング(例えば、単一の充電ステップを介して完全めっき電流密度で充電電流を印加することを含む)の各々に先立つ第1の例示的なバイポーラプレート401の初期状態の表面402を示す拡大
図400が示されている。表面402は、比較的滑らかで平坦な結合剤(樹脂)リッチ層とみなされ得る。具体的には、表面402の形態は、結合剤クラスタ406によって中断された比較的浅い隆起404によって特徴付けられ得る。
【0074】
ここで
図5を参照すると、電気化学的ステップ充電の後の、かつ第1のレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリングの前の、第1の例示的なバイポーラプレート401上のめっき552を示す拡大
図500が示されている。具体的には、電気化学的ステップ充電は、第1の例示的なバイポーラプレートの少なくとも1つの表面上にエッチングを生成し得、これは、均一かつ連続的なめっきをもたらし、その接着を改善し得る。示されるように、めっき552の欠陥は、H
2発生による気泡558に限定され得る。
【0075】
ここで
図6A~
図6Cを参照すると、第1の例示的なバイポーラプレート401の上面
図600が
図6Aに示され、第1の例示的なバイポーラプレート401の第1の拡大挿入
図654が
図6Bに示され、第1の例示的なバイポーラプレート401の第2の拡大挿入
図656が
図6Cに示されている。第1の例示的なバイポーラプレート401の図は、第1のレドックスフロー電池システムの電気化学的ステップ充電及び初期充電サイクリングの各々の後の、第1の例示的なバイポーラプレート401上のめっき652を示す。具体的には、電気化学的ステップ充電の後、第1の例示的なバイポーラプレート401を一晩酸浸漬して任意の残留物を除去し、次いで、60℃で2時間、45mA/cm
2の完全めっき電流密度で再めっきした。
【0076】
図6Aの上面
図600は、再めっき後のアクティブエリアを含む、第1の例示的なバイポーラプレート401の一部を示す。示されるように、アクティブエリアは、その上にめっき652を含み、めっき652は、電気化学的ステップ充電中のH
2発生による気泡558を除いて均一かつ連続的である。しかしながら、より詳細に、第1及び第2の拡大挿入
図654及び656が、それぞれ
図6B及び
図6Cに示されており、それぞれ、
図6Aの破線ボックス604及び606によって示されるエリアを示す。第1及び第2の拡大挿入
図654及び656は、めっき652が大部分は均一かつ連続であり、その表面が気泡558によってまれに中断されていることを示している。
図6Cの第2の拡大挿入
図656(
図6Aに示される第1の例示的なバイポーラプレート401の一部のコーナーを示す)は、局所的な高電流密度に起因する軽微なひび割れ658を更に示す。しかしながら、軽微なひび割れ658は、最初に電気化学的ステップ充電を行わずに完全めっき充電密度の単一ステップ印加から生じるひび割れよりも著しく小さい可能性がある。更に、
図8A~
図8Bを参照して以下で詳細に考察するように、そのような軽微なひび割れは、電気化学的性能に無視できるほどの影響を有し得る。
【0077】
ここで
図7を参照すると、電気化学的ステップ充電の後の、かつ15%SOCでの鉄の予備成形及び第2のレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリングの各々の前の、第2の例示的なバイポーラプレート701のめっき752を示す上面
図700が示されている。示されるように、第2の例示的なバイポーラプレート701は、試験スタンド704内に構成されている。第1の例示的なバイポーラプレート401のめっきと同様に、電気化学的ステップ充電の後の第2の例示的なバイポーラプレート701のめっき752は、大部分は均一かつ連続である。しかしながら、軽微なひび割れ758がある。
【0078】
ここで
図8A~
図8Bを参照すると、電気化学的ステップ充電、15%SOCでの鉄の予備成形、及び第2のレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリングの各々の後の、第2の例示的なバイポーラプレート701のめっき852を示す上面
図800(
図8A)及び拡大挿入
図854(
図8B)の各々が示されている。
図7に示されるように、第2の例示的なバイポーラプレート701は、試験スタンド704内に構成されている。電気化学的ステップ充電及び鉄の予備成形の各々に続いて、7回の20~80%充電/放電サイクルを含む初期充電サイクリングを行った。次いで、電解質が交換され、第2のレドックスフロー電池システムは、完全めっき電流密度で80%SOCまで充電された。
【0079】
図8Aの上面
図800に示されているように、初期電荷サイクルの後に、めっき852に有意なひび割れは観察されない。更により詳細には、
図8Aの破線ボックス804によって示されるエリアを示す
図8Bの拡大挿入
図854によって示されるように、めっき852は、均一で、連続しており、欠陥がないことが示されている。更に、初期充電サイクリング中に、短絡又は電気化学的性能低下の証拠は観察されなかった。したがって、(
図7に示されるように)電気化学的ステップ充電の後にわずかなひび割れが最初に現れるかもしれないが、そのようなひび割れは、著しい電気化学的性能損失をもたらさない可能性がる。このようにして、短絡、電気化学的性能損失、又はレドックスフロー電池システムの様々な構成要素への物理的損傷なしに、バイポーラプレートをエッチングするための電気化学的ステップ充電の後に、レドックスフロー電池システムの完全充電サイクリング中に均一かつ連続的なめっきが生成され得る。
【0080】
ここで
図9を参照すると、電気化学的ステップ充電(例えば、多数の充電ステップを介して完全めっき電流密度まで充電電流を印加することを含む)及び第3のレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリング(例えば、単一の充電ステップを介して完全めっき電流密度で充電電流を印加することを含む)の各々の前の、第3の例示的なバイポーラプレート901の初期状態の表面902を示す拡大
図900が示されている。表面902は、比較的高い樹脂含有量を有すると赤外線(IR)分光法によって特徴付けられる、比較的滑らかで平坦な結合剤(樹脂)リッチ層とみなされ得る。具体的には、表面902の形態は、結合剤クラスタ906によって中断された比較的浅い隆起904によって特徴付けられ得る。70°の接触角が表面902上で観察され、第3の例示的なバイポーラプレートの吸水性は、0.013g/cm
3であると決定された。更に、第3の例示的なバイポーラプレートの密度は、1.759g/cm
3であると決定された。
【0081】
ここで
図10を参照すると、電気化学的ステップ充電(例えば、多数の充電ステップを介して完全めっき電流密度まで充電電流を印加することを含む)及び第3のレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリング(例えば、単一の充電ステップを介して完全めっき電流密度で充電電流を印加することを含む)の各々の後の、第3の例示的なバイポーラプレート901の表面1002を示す拡大
図1000が示されている。表面1002は、
図9を参照して上記で詳細に考察された初期状態の表面902と比較して、結合剤(樹脂)含有量(IR分光法によって特徴付けられる)が著しく減少している可能性がある。
【0082】
具体的には、表面1002の形態は、結合剤リッチ層内の複数の孔1008によって特徴付けられ得、複数の孔1008は、いくつかの実施例では、「インクボトル」形状を有する。複数の孔1008の幅は、100~500μmの範囲であり得、複数の孔1008の深さは、118μmであり得る。45°の接触角が表面1002上で観察され、第3の例示的なバイポーラプレートの吸水性は、0.041g/cm3であると決定された。更に、第3の例示的なバイポーラプレート901の密度は、1.724g/cm3であると決定された。
【0083】
電気化学的ステップ充電(又は研磨機械的前処理)がなくても、レドックスフロー電池システムにおける電気化学的性能は、そこに含まれるバイポーラプレートの化学処理を介して維持され得る。したがって、
図11~
図14は、化学処理の前及び後の第4の例示的なバイポーラプレート1101の図、及び第4の例示的なバイポーラプレート1101を第4のレドックスフロー電池システムに含めたときのそこから生じる電気化学的性能結果を示す。例えば、化学処理には、イソプロピルアルコール内の第4の例示的なバイポーラプレート1101の洗浄、それに続く1MのFeCl
3溶液に少なくとも48時間浸漬することが含まれ得る。
【0084】
第4の例示的なバイポーラプレート1101は、第2のグラファイト複合材出発材料の射出成形又は圧縮成形を介して形成され、第2のグラファイト複合材出発材料は、熱硬化性ポリマー結合剤(樹脂)によって結合された層状グラファイトを含んだ。具体的には、第4の例示的なバイポーラプレートは、ポリマー含有量が10%、密度が1.85g/cm3、厚さが1.6mm、引張強度が40MPa、圧縮強度が400MPa、第4の例示的なバイポーラプレートの垂直方向(例えば、その厚さと平行)に沿った電気抵抗率が0.00035Ω・cm、第4の例示的なバイポーラプレートの垂直方向に沿った面積比抵抗が0.0002Ω、透過率(Heガス中)が<5×10-3、総不純物が150ppmであることを特徴とすることができる。第4の例示的なバイポーラプレートは、第4のレドックスフロー電池システム内に位置付けられ、第4のレドックスフロー電池システムは、正電極側で5%のフェルト圧縮を有する2.8mm AvCarb(登録商標)フェルトを有し、第4の例示的なバイポーラプレートは、負電極側で50cm2の表面積を有し、VANADion(商標)膜をその間のセパレータとして有した。メッシュスペーサが、負電極の一部として第4のレドックスフロー電池システム内に更に含まれた。液体電解質が、第4のレドックスフロー電池システムのために提供され、電解質は、1.50MのFe2+濃度(例えば、溶解したFeCl2からの)、0.8MのMn2+濃度(例えば、溶解したMnCl2からの)、0.4MのH3BO3濃度、並びに2.0MのKCl濃度、及び120mL/分の流速を有した。
【0085】
ここで
図11を参照すると、化学処理の後の及び第4のレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリング前の第4の例示的なバイポーラプレート1101のめっき1152を示す上面
図1100が示されている。示されるように、第4の例示的なバイポーラプレート1101は、試験スタンド1104内に構成されている。化学処理の後の第4の例示的なバイポーラプレート1101のめっき1152は、連続的であり、欠陥がなく、見かけ上均一である。
【0086】
ここで
図12を参照すると、第4のレドックスフロー電池システムの化学処理、15%SOCでの鉄の予備成形、及び初期充電サイクリング(120 20~80%SOC充電/放電サイクル)の各々の後の第4の例示的なバイポーラプレート1101のめっき1252を示す上面
図1200が示されている。示されるように、第4の例示的なバイポーラプレート1101は、
図11の試験スタンド1104から取り外されている。化学処理及び初期充電サイクリングの各々の後のめっき1252は、電気化学的ステップ充電及び初期充電サイクリング(
図8A~
図8Bを参照して上で詳細に説明された)の後のめっきよりも著しく粗く、均一性が低かった。そのような不均一なめっきは、延長された充電サイクリング(例えば、初期充電サイクリングの後の充電/放電サイクル)にわたって、樹枝状形成及びその後の短絡をもたらし得る。
【0087】
ここで
図13を参照すると、第4の例示的なバイポーラプレート1101の化学処理及び第4のレドックスフロー電池システムの初期充電サイクリングの各々の後の、第4のレドックスフロー電池システムの(膜)セパレータ1302の上面
図1300が示されている。示されるように、セパレータ1302は、
図12のめっき1252との物理的接触に起因する軽い擦り傷1358を含む。セパレータ1302の断裂は、
図12のめっき1252の過剰な粗面化及び不均一性の結果として樹状突起が形成される場合に生じ得、それによって第4のレドックスフロー電池システム内の短絡につながる。このようにして、レドックスフロー電池システムの長期耐久性は、そこに含まれるバイポーラプレートの化学処理だけで実現することは困難であり得る。しかしながら、
図8A~
図8Bを参照して上記で詳細に考察したように、完全充電サイクリングの前にバイポーラプレートの化学処理と組み合わせた電気化学的ステップ充電は、その耐用年数にわたって、レドックスフロー電池システムの電気化学的性能及び耐久性の両方を維持し得る。
【0088】
ここで
図14を参照すると、初期充電サイクリングの後の第4のレドックスフロー電池システムのクーロン、ボルタ、及びエネルギー効率の各々を示す例示的なプロット1400が示されている。例示的なプロット1400に示されるように、横軸は、充電/放電サイクルの数を表し、縦軸は、充電/放電サイクルにわたってプロットされたクーロン、ボルタ、及びエネルギー効率の各々を表す。具体的には、マーカ1402(オープンサークル)のセットはクーロン効率を示し、マーカ1404(オープンスクエア)のセットはボルタ効率を示し、マーカ1406(三角形)のセットはエネルギー効率を示す。
【0089】
マーカ1402、1404、及び1406のセットによってそれぞれ示されたクーロン、ボルタ、及びエネルギー効率の各々における一貫した傾向は、第4の例示的なバイポーラプレートの化学処理の後の完全充電サイクリングにわたる電気化学的性能の維持を示した(
図12を参照して上記で詳細に説明したような、めっき1252の過剰な粗面化及び不均一性があっても)。こうして、電気化学的性能は、そこに含まれるバイポーラプレートの化学処理を通して、レドックスフロー電池システムにおいて維持され得る。
【0090】
このようにして、本明細書では、レドックスフロー電池の負電極とともに使用するためのバイポーラプレートを電気化学的及び/又は化学的に前処理するための実施形態が提供される。具体的には、バイポーラプレートは、レドックスフロー電池の負電極コンパートメント内に位置付けられ、その負電極と流体連通し得る。いくつかの実施例では、バイポーラプレートは、その上に樹脂リッチ層を有する射出成形又は圧縮成形されたグラファイト複合材から形成され得る。バイポーラプレートを前処理することによって、樹脂リッチ層は、層の存在に起因する電気化学的性能損失が軽減され得るように、エッチング及び粗面加工され得る。
【0091】
一実施例では、バイポーラプレートは、ステップ充電プロセスを介してエッチングされ得る。具体的には、めっき電流密度は、十分にエッチングされたバイポーラプレートを得るために、1回の充電サイクルにわたって、電流密度制限まで徐々に増加され得る。そのような短い充電サイクリングは、同様のエッチングを達成しながら、めっき電流密度の大きな段階的増加(例えば、電流密度限界まで直接)を有する多数(例えば、4回又は5回)の充電サイクルを採用することと比較して、エッチングされたバイポーラプレートを含むレドックスフロー電池のスケーリング製造に望ましい場合がある。予想外に、ステップ充電プロセスによって生成されたエッチングされたバイポーラプレートはまた、機械的サンディングを介して深くエッチングされたバイポーラプレートと比較して、同等又は改善されためっき品質及び長期耐久性を示し得る。具体的には、ステップ充電プロセスは、バイポーラプレート上のエッチングの十分な粗さ及びカバレッジを達成することによって、長期的な耐久性を犠牲にすることなく、電気化学的性能損失を軽減し得る。
【0092】
いくつかの実施例では、ステップ充電プロセスの前又は後に、バイポーラプレートはまた、溶液中に浸漬されて(例えば、一晩)、バイポーラプレートのエッチングされた表面を更に粗くし得る。このような化学処理(溶液中の浸漬)と電気化学エッチング(ステップ充電)との組み合わせは、浸漬又はステップ充電プロセス単独のいずれかと比較して、電気化学的性能に関してバイポーラプレートの表面形態を相乗的に改善し得る。具体的には、ステップ充電プロセスは、エッチングの十分な粗さを提供し得、一方、バイポーラプレートを溶液中に浸漬することは、最小限の余分な処理でエッチングの深さを変化させ得る。
【0093】
バイポーラプレートの化学処理を介した表面形態のそのような改善は、更なるハードルが、さもなければ、レドックスフロー電池の調製中に追加の化学物質を導入することから生じることが予想され得るため、完全に予期されない場合がある。具体的には、電解質pH及び電解質組成物のバランスをとることは、レドックスフロー電池の電気化学的性能を維持する上で特に重要であり得る。したがって、化学処理溶液の濃度(例えば、1M)及び組成物(例えば、FeCl3)は、それぞれ、レドックスフロー電池の正側及び負側のレドックス化学及びめっき品質に悪影響を及ぼさないように、慎重かつ賢明に選択され得る。
【0094】
一実施例では、レドックスフロー電池のための方法であって、本方法は、バイポーラプレートの少なくとも1つの表面を崩壊させることによって、レドックスフロー電池のためのバイポーラプレートを前処理することと、レドックスフロー電池の充電サイクリングを開始することと、を含み、レドックスフロー電池が、電極コンパートメントを含み、電極コンパートメントが、充電サイクリングの開始時に、前処理されたバイポーラプレートを収容する。本方法の第1の実施例は、少なくとも1つの表面を崩壊させることによって、バイポーラプレートを前処理することが、電極コンパートメント内にバイポーラプレートを位置付けることと、その後、1つ以上の初期充電サイクルの各充電サイクルについて、多数の別個のめっき電流密度でレドックスフロー電池を充電して、少なくとも1つの表面を電気化学的にエッチングすることと、を含むこと、及び、充電サイクリングを開始することが、電極コンパートメント内に収容されためっき電極を均一にめっきするために、1つ以上の初期充電サイクルの後の各充電サイクルについて、レドックスフロー電池を単一のめっき電流密度で充電することを含むこと、を更に含む。任意選択で、方法の第1の実施例を含む、本方法の第2の実施例は、1つ以上の初期充電サイクルが、1つの初期充電サイクルのみを含むこと、を更に含む。任意選択で、方法の第1及び第2の実施例のうちの1つ以上を含む、本方法の第3の実施例は、少なくとも1つの表面が、前処理の前に、初期状態かつ未エッチング状態であること、及び、少なくとも1つの表面が、前処理の後にエッチングされること、を更に含む。任意選択で、方法の第1から第3の実施例のうちの1つ以上を含む、本方法の第4の実施例は、前処理の後、かつ充電サイクリングの前に、電極コンパートメント内に収容されためっき電極において、鉄めっきを予備成形することを更に含む。任意選択で、方法の第1から第4の実施例のうちの1つ以上を含む、本方法の第5の実施例は、少なくとも1つの表面を崩壊させることによって、バイポーラプレートを前処理することが、バイポーラプレートをイソプロピルアルコールで洗浄することと、洗浄されたバイポーラプレートを溶液中に長い持続時間浸漬して、少なくとも1つの表面を化学的に処理することと、を含むこと、を更に含む。任意選択で、方法の第1から第5の実施例のうちの1つ以上を含む、本方法の第6の実施例は、溶液が、塩化第二鉄溶液を含むこと、を更に含む。任意選択で、方法の第1から第6の実施例のうちの1つ以上を含む、本方法の第7の実施例は、長い持続時間が、少なくとも12時間であること、を更に含む。
【0095】
別の実施例では、レドックスフロー電池のための方法であって、本方法は、バイポーラプレートがレドックスフロー電池のめっき電極と流体連通するように、レドックスフロー電池内にバイポーラプレートを位置付けることと、その後、1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、完全めっき電流密度まで、レドックスフロー電池のめっき電流密度を徐々に増加させることと、1つ以上の前処理充電サイクルの後の1つ以上の後続の充電サイクルの各々について、めっき電流密度を徐々に増加させることなく、完全めっき電流密度で電流を印加することと、を含む。本方法の第1の実施例は、1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、めっき電流密度を徐々に増加させることが、1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、複数の充電ステップにわたって、めっき電流密度を増加させることを含むこと、を更に含む。任意選択で、方法の第1の実施例を含む、方法の第2の実施例は、1つ以上の前処理充電サイクルの各々について、複数の充電ステップにわたって、めっき電流密度を増加させることが、順に、第1のめっき電流密度で第1の充電状態(SOC)まで、レドックスフロー電池を充電するステップと、第1のSOCから第2のSOCまで、第2のめっき電流密度で、レドックスフロー電池を充電するステップであって、第2のめっき電流密度が、第1のめっき電流密度よりも大きい、充電するステップと、第2のSOCから第3のSOCまで、第3のめっき電流密度で、レドックスフロー電池を充電するステップであって、第3のめっき電流密度が、第2のめっき電流密度よりも大きい、充電するステップと、を含むこと、を更に含む。任意選択で、方法の第1及び第2の実施例のうちの1つ以上を含む、本方法の第3の実施例は、1つ以上の前処理充電サイクルの各々が、放電前に、レドックスフロー電池を最大で90%SOCまで充電すること、を更に含む。任意選択で、方法の第1から第3の実施例のうちの1つ以上を含む、本方法の第4の実施例は、1つ以上の後続の充電サイクルの各々について、めっき電流密度を徐々に増加させることなく、完全めっき電流密度で電流を印加することが、めっき電極を鉄金属で均一にめっきすること、を更に含む。任意選択で、方法の第1から第4の実施例のうちの1つ以上を含む、本方法の第5の実施例は、1つ以上の後続の充電サイクルの前に、バイポーラプレートを浸漬することを更に含む。任意選択で、方法の第1から第5の実施例のうちの1つ以上を含む、本方法の第6の実施例は、バイポーラプレートを浸漬することが、1つ以上の前処理充電サイクルの前に行われること、を更に含む。任意選択で、方法の第1から第6の実施例のうちの1つ以上を含む、本方法の第7の実施例は、バイポーラプレートを浸漬することが、1つ以上の前処理充電サイクルの後に行われること、を更に含む。
【0096】
更に別の実施例では、レドックスフロー電池システムは、正及び負電極をそれぞれ収容する、正及び負電極コンパートメントと、負電極コンパートメント内に位置付けられており、かつ負電極と流体連通している、第1のバイポーラプレートと、正電極コンパートメントに位置付けられており、かつ正電極と流体連通している、第2のバイポーラプレートと、を備え、負電極に向かって面する第1のバイポーラプレートの表面が、エッチング及び粗面加工され、表面に形成された金属めっきが、ひび割れ及び過剰な微粒子並びにフレークを実質的に含まない。レドックスフロー電池システムの第1の実施例は、表面が、複数の順次増加するめっき電流密度でレドックスフロー電池システムのステップ充電を実行することと、表面を溶液中に浸漬することと、の各々よってエッチング及び粗面加工されること、を更に含む。任意選択で、レドックスフロー電池システムの第1の実施例を含む、レドックスフロー電池システムの第2の実施例は、第1のバイポーラプレートが、グラファイト複合材出発材料を射出成形又は圧縮成形することによって形成されること、を更に含む。任意選択で、レドックスフロー電池システムの第1及び第2の実施例のうちの1つ以上を含む、レドックスフロー電池システムの第3の実施例は、レドックスフロー電池システムが、全鉄ハイブリッドレドックスフロー電池システムであること、を更に含む。
【0097】
以下の特許請求の範囲は、新規かつ自明ではないとみなされる特定の組み合わせ及びサブ組み合わせを特に指摘している。これらの特許請求の範囲は、「1つの」要素又は「第1の」要素若しくはその等価物を指し得る。そのような特許請求の範囲は、1つ以上のそのような要素の組み込みを含むと理解されるべきであり、2つ以上のそのような要素を要求したり排除したりするものではない。開示された特徴、機能、要素、及び/又は特性の他の組み合わせ及びサブ組み合わせは、本特許請求の範囲の修正を通じて、又は本出願若しくは関連出願における新しい特許請求の範囲の提示を通じて請求され得る。そのような特許請求の範囲は、元の特許請求の範囲に対して範囲がより広いか、より狭いか、等しいか、又は異なるかにかかわらず、また、本開示の主題内に含まれるとみなされる。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池のための方法であって、
バイポーラプレートの少なくとも1つの表面を崩壊させることによって、前記レドックスフロー電池のための前記バイポーラプレートを前処理することと、
前記レドックスフロー電池の充電サイクリングを開始することと、を含み、
前記レドックスフロー電池が、電極コンパートメントを含み、
前記電極コンパートメントが、充電サイクリングの開始時に、前記前処理されたバイポーラプレートを収容する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの表面を崩壊させることによって、前記バイポーラプレートを前処理することが、
前記電極コンパートメント内に前記バイポーラプレートを位置付けることと、
1つ以上の初期充電サイクルの各充電サイクルについて、
複数の別個のめっき電流密度で前記レドックスフロー電池を充電して、前記少なくとも1つの表面を電気化学的にエッチングすることと、を含み、
充電サイクリングを開始することが、前記電極コンパートメント内に収容されためっき電極を均一にめっきするために、前記1つ以上の初期充電サイクルの後の各充電サイクルについて、前記レドックスフロー電池を単一のめっき電流密度で充電することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の初期充電サイクルが、1つの初期充電サイクルのみを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
多数の別個のめっき電流密度で前記レドックスフロー電池を充電することが、前記1つ以上の初期充電サイクルの各々について、複数の充電ステップにわたって、前記1つ以上の初期充電サイクルの各充電サイクルについて、めっき電流密度を徐々に増加させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の初期充電サイクルの各充電サイクルについて、前記めっき電流密度を増加させることが、順に、
第1のめっき電流密度で第1の充電状態(SOC)まで、前記レドックスフロー電池を充電することと、
前記第1のSOCから第2のSOCまで、第2のめっき電流密度で、前記レドックスフロー電池を充電することであって、前記第2のめっき電流密度が、前記第1のめっき電流密度よりも大きい、充電することと、前記第2のSOCから第3のSOCまで、第3のめっき電流密度で、前記レドックスフロー電池を充電することであって、前記第3のめっき電流密度が、前記第2のめっき電流密度よりも大きい、充電することと、を含み、前記第1のSOC、前記第2のSOC、及び前記第3のSOCが、最大で90%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの表面が、前処理の前に、初期状態かつ未エッチング状態であり、前記少なくとも1つの表面が、前処理の後にエッチングされる、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前処理の後、かつ充電サイクリングの前に、前記電極コンパートメント内に収容されためっき電極において、鉄めっきを予備成形することを更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの表面を崩壊させることによって、前記バイポーラプレートを前処理することが、
前記バイポーラプレートをイソプロピルアルコールで洗浄することと、
前記洗浄されたバイポーラプレートを溶液中に長い持続時間浸漬して、前記少なくとも1つの表面を化学的に処理することと、を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が、塩化第二鉄溶液を含
み、かつ前記長い持続時間が、少なくとも12時間である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記レドックスフロー電池の充電サイクリングを開始することが、めっき電流密度を徐々に増加させることなく、完全めっき電流密度を印加することを含み、めっき電極を鉄金属で均一にめっきする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの表面を崩壊させることによって、前記バイポーラプレートを前処理することが、
前記電極コンパートメント内に前記バイポーラプレートを位置付けることと、
1つ以上の初期充電サイクルの各充電サイクルについて、多数の別個のめっき電流密度で前記レドックスフロー電池を充電して、前記少なくとも1つの表面を電気化学的にエッチングすることと、
前記電極コンパートメント内に前記バイポーラプレートを位置付ける前または後に、前記バイポーラプレートをイソプロピルアルコールで洗浄し、前記洗浄されたバイポーラプレートを溶液中に長い持続時間浸漬して、前記少なくとも1つの表面を化学的に処理することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
レドックスフロー電池システムであって、
正
電極及び負電極をそれぞれ収容する、正
電極コンパートメント及び負電極コンパートメントと、
前記負電極コンパートメント内に位置付けられており、かつ前記負電極と流体連通している、第1のバイポーラプレートと、
前記正電極コンパートメント内に位置付けられており、かつ前記正電極と流体連通している、第2のバイポーラプレートと、を備え、前記負電極に向かって面する前記第1のバイポーラプレートの表面が、エッチング及び粗面加工され、前記表面上に形成された金属めっきが、ひび割れ及び過剰な微粒子並びにフレークを実質的に含まない、レドックスフロー電池システム。
【請求項13】
前記表面が、複数の順次増加するめっき電流密度で前記レドックスフロー電池システムのステップ充電を実行することと、前記表面を溶液中に浸漬することと、の各々によってエッチング及び粗面加工される、請求項1
2に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項14】
前記第1のバイポーラプレートが、グラファイト複合材出発材料を射出成形又は圧縮成形することによって形成される、請求項1
2に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項15】
前記レドックスフロー電池システムが、全鉄ハイブリッドレドックスフロー電池システムである、請求項1
2に記載のレドックスフロー電池システム。
【国際調査報告】