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特表2024-507983熱、腐食および溶解に耐性を有するスタティックミキサ
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  • 特表-熱、腐食および溶解に耐性を有するスタティックミキサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】熱、腐食および溶解に耐性を有するスタティックミキサ
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/42 20220101AFI20240214BHJP
   B01F 23/45 20220101ALI20240214BHJP
   B01F 23/47 20220101ALI20240214BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20240214BHJP
   B01F 23/57 20220101ALI20240214BHJP
   B01F 25/435 20220101ALI20240214BHJP
   B01F 23/60 20220101ALI20240214BHJP
【FI】
B01F25/42
B01F23/45
B01F23/47
B01F23/50
B01F23/57
B01F25/435
B01F23/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552175
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022054543
(87)【国際公開番号】W WO2022180106
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】2101787
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506410305
【氏名又は名称】アフィヴァル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ダリントン
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB37
4G035AB41
4G035AB44
4G035AB49
4G035AC11
4G035AE13
(57)【要約】
本発明は、少なくとも、隣接した第1の混合セル(2)および第2の混合セル(3)を含むハウジングを備えるミキサ装置であって、各セル(2、3)が、流体入口開口(21、31)および流体出口開口(22、32)を含み、入口開口が、入口開口の軸が出口開口の軸に対して平行になるように出口開口からオフセットされ、第1のセルの出口開口が、連結路を介して第2のセルの入口開口に連結される、ミキサ装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 混合される成分を送り込むための少なくとも1つの入口ポート(11)と、
- 前記成分からなる混合物の回収のための出口ポート(13)と、
を備える、ミキサ装置であって、
前記ミキサ装置は、少なくとも、隣接した第1の混合セル(2)および第2の混合セル(3)を含むハウジング(1)をさらに備え、前記第2の混合セル(3)が、前記第1の混合セル(2)の上に延在し、各セル(2、3)が、対向壁(23、33および24、34)上に設けられた入口開口(21、31)および出口開口(22、32)を含み、前記入口開口(21、31)が、前記入口開口(21、31)の軸が前記出口開口(22、32)の軸に対して平行になるように前記出口開口(22、32)からオフセットされ、前記第1の混合セル(2)の前記出口開口(22)が、前記第2の混合セル(3)の前記入口開口(31)に連結されることを特徴とする、
ミキサ装置。
【請求項2】
前記ハウジング(1)が、円筒形であり、前記第1の混合セル(2)および前記第2の混合セル(3)を受容するための空間を画定する同軸の管状の外壁(14)および内壁(15)を有する、請求項1に記載のミキサ装置。
【請求項3】
各混合セル(2、3)が、円筒形形状を有し、前記ハウジング(1)の前記外壁(14)と前記内壁(15)との間に延在する、請求項2に記載のミキサ装置。
【請求項4】
前記第1の混合セル(2)および前記第2の混合セル(3)のうちの少なくとも一方が、直径方向に対向する流体入口開口(21、22)および流体出口開口(31、32)を備える、請求項3に記載のミキサ装置。
【請求項5】
前記ミキサ装置が、複数の重畳混合セル(2、3)を備え、前記重畳混合セルが、各上側セル(2)の前記出口開口(22)が下側セル(3)であって、その上に前記上側セル(2)が配置される、下側セル(3)の前記入口開口(31)の前に延在するように配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載のミキサ装置。
【請求項6】
前記複数の重畳混合セルが、
- 前記混合される成分が送り込まれる最初のセル(4)と、
- 前記混合物が放出される最後のセル(5)と、
を備え、
前記ハウジング(1)の前記外壁(14)が、前記最後のセル(5)から放出される前記混合物を回収するための底部(141)を備える、
請求項5に記載のミキサ装置。
【請求項7】
前記ハウジング(1)の前記内壁(15)が、前記混合物のための放出路を画定し、前記ミキサ装置は、前記混合物の抜き取りのために前記放出路内に配置されることが意図される吸引ノズルを備える、請求項6に記載のミキサ装置。
【請求項8】
前記ハウジング(1)が、長手方向に延在し、前記入口ポート(11、12)および前記出口ポート(13)が、前記ハウジング(1)の同じ端に延在する、請求項1から7のいずれか一項に記載のミキサ装置。
【請求項9】
前記セル(2、3)のうちの少なくとも1つが、第1の成分および第2の成分の流路上にボールなどの障害物を形成する要素を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のミキサ装置。
【請求項10】
前記ミキサ装置が、
・底部(141)を含む第1の管状ケーシング(14)と、
・前記第1の管状ケーシング(14)の内径よりも小さい外径を有する第2の管状ケーシング(15)と、
を備え、
前記第2の管状ケーシング(15)が、その外面上に、少なくとも1つの貫通アパーチャをそれぞれ有する円形リング(151)を含み、前記円形リング(151)が、径方向に延在し前記第2の管状ケーシング(15)の外側の方に向けて突出しており、前記円形リング(151)の直径が、前記第1の管状ケーシング(14)の前記内径と実質的に等しく、前記第2の管状ケーシング(15)が、前記第1の管状ケーシング(14)および前記第2の管状ケーシング(15)が同軸に延在するように前記第1の管状ケーシング(14)に挿入されることが意図され、前記円形リング(151)が、前記第1の管状ケーシング(14)および前記第2の管状ケーシング(15)とともに、前記混合セル(2、3)を画定する、
請求項1から9のいずれか一項に記載のミキサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体物の混合を意図するスタティックミキサまたは分散機の一般的な技術分野に関する。
【0002】
本発明の枠組み内において、「流体物」は、粉末、液体、または適切であれば、片内に固体要素を含有する可能性がある粘性物を示す。
【0003】
そのようなミキサは、具体的には食品産業、冶金、製薬産業、石油化学産業、水処理、冷却、原子力発電などの分野において、少なくとも2つの生成物(product)の混合を必要とする多くの用途に使用され得る。
【背景技術】
【0004】
混合物を形成するために2つの(または2つを上回る)構成物質(constituent)を混合する様々な装置が知られている。
【0005】
そのような装置は、混合される構成物質の通路上に障害物を置くことによる攪乱効果に基づいている。そのような効果は、
- 流れの別個の細流(streamlet)への連続的な分留、
- または、非軸方向における細流の偏向、
- または、流体の回転の導入において、
- または、後流効果による、もしくは相互に関連する細流間の速度の差による、乱流の生成において
のいずれかであり得る。
【0006】
図1は、不均質流体流を均質流体流に変えることに使用されるミキサの一例を示す。そのようなミキサは、混合される流体が循環するチューブ1を備える。一連のヘリカルブレード2a、2b、2c、2dは、チューブ1内に延在し、各ヘリカルブレード2b、2dは、流体流を混合しやすくするために流体流を別個の細流に分割するように、チューブ1の軸A-A’に沿って隣接するヘリカルブレード2a、2bから角度方向でオフセットされている。
【0007】
しかし、そのようなミキサには、
- 一連のヘリカルブレード2a~2dが、製造費用が高額な複雑な形状を有し、チューブ1へのその挿入が難しい、
- そのような複雑な形状はしばしば、混合される流れの構成物質と反応することがあるプラスチックまたは金属材料の使用を必要とする、
- その容積が、特に長手方向に、相当大きい、
- 混合される流体のための入口ポート、および混合済み流体のための出口ポートが、チューブ1の両端に配置され、それによって、容積の問題に加えて、特にそのようなミキサが槽(bath)上で直に使用されるとき、均質性および漏れの問題が生じることがある、
- 一連のヘリカルブレードを溶かす傾向がある、特に高温である、極端な温度にあまり強くない、
という欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した欠点のうちの少なくとも1つを改善するミキサ装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明は、管状ハウジングを備えるミキサ装置であって、ハウジングが、少なくとも、
- 混合される構成物質を送り込むための少なくとも1つの入口ポートと、
- 前記構成物質からなる混合物の回収のための少なくとも1つの出口ポートと、
を含み、
ハウジングが、少なくとも、隣接した第1の混合セルおよび第2の混合セルをさらに備え、第2のセルが、第1のセルの上に延在し、第1のセルおよび第2のセルのそれぞれが、対向壁上に設けられた流体入口開口および流体出口開口を含み、入口開口が、入口開口の軸が出口開口の軸に対して平行になるように出口開口からオフセットされ、第1のセルの出口開口が、連結路を介して第2のセルの入口開口に連結されるという点で注目に値する、ミキサ装置を提案する。
【0010】
各セルの入口および出口開口がオフセットされることによって、各セル内において構成物質の流路が最大になる。さらに、セルが互いに連続して連結されることによって、ハウジング全体を通る循環経路が最大になる。
【0011】
ハウジングの様々なセルを通る循環の結果、ハウジングに送り込まれた第1の成分(component)および第2の成分は、混ざり合って混合物を形成する。混合物は、出口ポートを介してミキサ装置から抜き取られる。読者には、ハウジングに収容されるセルの数、および/またはその寸法、および/または各セルを形成する材料は、所期の用途、混合物の所望の均質性、および混合される成分の特性(溶解度、粘度など)に応じて決まることを理解されたい。
【0012】
本明細書において以降、ある混合セルが他の混合セルの「上」にあるように言及される場合、そのセルは、
- 他のセルの上に直接あることがある、あるいは、
- 他のセルの上に、(熱的および/もしくは電気的および/もしくは化学的な)絶縁材料の層、または中間混合セルなど、1つ(または複数)の要素によって前記他のセルから間隔を置いて配置されることがある
ことを理解されよう。
【0013】
さらに、あるセルが他のセルの「上」にあるように言及される場合、そのセルは、他のセルの表面全体、または他のセルの一部分を覆うことがあることを理解されよう。
【0014】
非限定的に、本発明によるミキサ装置の特定の好ましい態様は、以下のとおりであり、
- ハウジングが、円筒形であり、混合セルを受容するための空間を画定する同軸の管状の内壁および外壁を有することができ、
したがって、(電気ケーブル、耐熱、流体冷却、混合流体の放出、(例えば、少なくとも1つのブレードを含む)回転要素の装着、など)所期の用途により必要とされる可能性のある関連の技術要素の通路のための、またはさらに、第1の構成物質および第2の構成物質の混合の間に生成される任意のガスの放出を容易にするための、中央路の画定が可能になり、
- 各混合セルが、円筒形形状を有し、ハウジングの内壁と外壁との間に延在することができ、
したがって、第1の構成物質および第2の構成物質の混合を均質にするように、各セル内の流体の対流運動を促進することが可能になり、
- 混合セルのうちの少なくとも1つが、直径方向に対向する流体入口および出口開口を有することができ、
したがって、混合セル内の流路の長さが最大になり、
- ミキサ措置が、複数の重畳混合セルを備えることができ、重畳セルが、各上側セルの出口が下側セルであって、その上に上側セルが配置される、下側セルの入口の前に延在するように配置され、
したがって、ハウジング全体を通る流体の循環路の長さを最大にしつつ、ミキサ装置の容積を制限することが可能になり、
- 複数の混合セルが、
・混合される成分が送り込まれる最初のセルと、
・混合物が放出される最後のセルと、
を備えることができ、
ハウジングの外壁が、最後のセルから放出される混合物を回収するための底部を備え、
したがって、混合物は、ミキサ装置からのその抜き取りの前に収納可能であり、
- ハウジングの内壁が、混合物のための放出路を画定し、ミキサ装置は、混合物の抜き取りのために放出路内に配置されることが意図される吸引ノズルを備え、
したがって、入口ポートおよび出口ポートは、ミキサ装置の容積全体を増加させることなく、ミキサ装置の同じ端に配置することが可能になり、
- ハウジングが、長手方向に延在し、入口ポートおよび出口ポートが、ハウジングの同じ端に延在することができ、
- セルのうちの少なくとも1つが、第1の成分および第2の成分の流路上にボールなどの障害物を形成する要素を備えることができ、
したがって、第1の構成物質および第2の構成物質のより良好な均質化が達成可能になり、
- ミキサ装置は、
・底部を含む第1の管状ケーシングと、
・第1のケーシングの内径よりも小さい外径を有する第2の管状ケーシングと、
を備えることができ、
第2のケーシングが、その外面上に、少なくとも1つの貫通アパーチャをそれぞれ有する円形リングを含み、前記リングが、径方向に延在し第2のケーシングの外側の方に向けて突出しており、リングの直径が、第1のケーシングの内径と実質的に等しく、
第2のケーシングが、第1のケーシングおよび第2のケーシングが同軸に延在するように第1のケーシングに挿入されることが意図され、リングが、第1のケーシングの内面とともに、ミキサ装置の混合セルを画定し、
したがって、第1のケーシングおよび第2のケーシングが、脆くあまり柔軟性が高くない材料から作られ得る単純な加工部を形成するので、耐食性および耐高温性を有するミキサ装置の製造を簡素化することが可能になる。
【0015】
本発明によるミキサ装置の他の利点および特徴は、これらに限定されないが、添付の図面から、例として与えられる実施形態の複数の変形形態の以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術のミキサ装置の図である。
図2】本発明によるミキサ装置の動作の概略図である。
図3】本発明によるミキサ装置のハウジングの実施形態の一変形形態の斜視図である。
図4】本発明によるミキサ装置のセルの一例の概略的な斜視図である。
図5】本発明によるミキサ装置の概略的な横断面図である。
図6】本発明によるミキサ装置の概略的な縦断面図である。
図7】ミキサ装置の実施形態の一例の概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明によるミキサ装置を、図を参照してより詳細に述べる。異なる図において、均等の要素は同じ数字符号を有する。
【0018】
1.ミキサ装置
1.1.概要
図2を参照すると、ミキサ装置は、ハウジング3と、ハウジング内に積み重ねられた複数のセルC~Cと、を備える。「スタティックミキサ」と呼ばれるそのようなミキサ装置は、2つの(または2つを上回る)流体構成物質の混合に使用される。
【0019】
ハウジングは、混合される成分の投入(inlet)のための1つまたは複数の入口ポートを備える。例えば、いくつかの実施形態では、ハウジングは、混合される2つ(または2つを上回る)の成分からなる不均質流体の投入(すなわち、単一入口ポートを介した混合される複数の成分の同時投入)のための単一入口ポートを備える。
【0020】
一変形形態では、図2に示されるように、ハウジングは、第1の流体構成物質の進入のための第1の入口ポートE1と、第2の流体構成物質の進入のための第2の入口ポートE2と、を備えることができる。当然のことながら、読者には、所期の用途に応じて、ハウジングは、混合される2つを上回る流体成分の取り入れのための(3つ、4つ、5つなどを含む)2つを上回る入口ポートを備えてもよいことを理解されたい。
【0021】
ハウジング3は、第1の流体成分および第2の流体成分から得られる混合物を放出するための1つまたは複数の出口ポートSをさらに備える。
【0022】
第1の流体成分および第2の流体成分は、異なる材料から、または異なる特性(濃度、粘度など)を有する同一材料からなってもよい。
【0023】
各セルC~Cは、互いに混合される流体構成物質のための循環チャンバを画定する。図2に示されるように、セルC~Cは、混合される流体構成物質のための循環路を形成するように互いに連通している。
【0024】
1.2.ハウジング
図3には、ハウジング3の実施形態の一変形形態が示されている。このような変形実施形態では、ハウジング3は、長手方向軸A-A’を含む全体的に円筒形の形状を有する。当然のことながら、ハウジング3は、平行六面体形状、卵形など、他の形状を有してもよい。
【0025】
図3を参照すると、ハウジング3は、
- 円形底部31と、
- 底部31に取り付けられた縁32’を有する外側側壁32と、
- (外側側壁32と同軸の)内側側壁33と、
- 底部31と対向する、内側側壁33の縁33’’と外側側壁32の縁32’’との間に延在する環状上壁34と、
を備える。
【0026】
本明細書において上述したように、ハウジング3は、混合される流体構成物質を送り込むための第1の入口ポートE1および第2の入口ポートE2を備える。入口ポートE1、E2は、互いに隣接して配置され、環状上壁34内へと延在することができる。一変形形態では、入口ポートE1、E2は、直径方向に対向する、かつ/または外側側壁32内へと延在することがある。
【0027】
ハウジング3は、混合物を放出するための出口をさらに備える。図3に示される実施形態では、出口ポートは、底部31と内側側壁33の自由縁33’(環状上壁34の反対の縁)とを隔てる間隙からなる。より具体的には、内側側壁33の自由縁33’は、底部31から距離「d」だけ間隔があいている。
【0028】
ハウジングは、セルを受容するように構成される。より具体的には、ハウジングの壁は、複数の積み重ねられたセルC~Cを受容するための空間を画定する。
【0029】
したがって、ハウジングの形状は、収容するセルの形状を決定する。例えば、ハウジングが卵形の断面形状を有する場合、セルも卵形の断面形状を有する。
【0030】
本明細書において以降、セルは、円筒形ハウジングに関して述べられるが、セルは他の形状を有することもあることを理解されよう。
【0031】
1.3.セル
1.3.1.中間セル
図4を参照すると、各セルは、
- 内側および外側の周縁を含む、具体的には環状の、下側パーティション41と、
- 内側および外側の周縁を含む、具体的には環状の、上側パーティション42と、
- 下側パーティション41および上側パーティション42の内側周縁同士の間の内側側方パーティション43と、
- 下側パーティション41および上側パーティション42の外側周縁同士の間の外側側方パーティション44と、
を備える。
【0032】
セルCのパーティション41~44は、混合される流体構成物質の循環のためのチャンバを画定する。各セルCの内側側方パーティション43は、セルCのチャンバ内での循環の間、流体構成物質が迂回しなければならない障害物を形成する。流体構成物質の主流Fpは細分化され、各細分部は、循環する二次流Fsを形成し、二次流Fsが、主流Fpと再結合し、次いで再び細分化され、他も同様である。二次流Fsと主流Fpとの細分化および再結合の連続は、混合される構成物質の混合を促進する。
【0033】
各セルCは、
- 混合される第1の成分および第2の成分を送り込むための入口開口45と、
- セルCのパーティション41~44によって境界が定められたチャンバ内での循環後の第1の構成物質および第2の構成物質の放出のための出口開口46と、
をさらに備える。
【0034】
有利には、入口開口45は、上側パーティション42内に設けられ得、出口開口46は、下側パーティション41内に設けられ得る。したがって、重力によって、混合される第1の構成物質および第2の構成物質の循環が可能である。
【0035】
セルのパーティション間に画定される循環チャンバの寸法は、構成物質がセル内を流れるとき、構成物質の混合を促進するように設計される。具体的には、
- 内側側壁と外側側壁との間の距離は、1ミリメートルから10センチメートルの間に含まれ得る、かつ、
- 上側パーティションと下側パーティションとを隔てる距離は、1ミリメートルから10センチメートルの間に含まれ得る。
【0036】
例えば、混合される成分の入口流量が約3cm/秒の場合、
- 側方パーティション同士を隔てる距離は、2ミリメートル~3ミリメートルの間となるように選ばれ得る、かつ、
- 上側パーティションと下側パーティションとを隔てる距離は、1ミリメートルに等しくなるように選ばれ得る。
【0037】
当然のことながら、各セルによって画定される循環チャンバの寸法の選択は、所期の用途、具体的には、混合される構成物質の種類、それぞれの粘度などに応じて決まる。具体的には、読者には、各セルによって画定される循環チャンバの寸法は、1センチメートルを上回り得る(例えば、約1dm/secの入口流量の場合、約1メートルの大きさである)ことを理解されたい。
【0038】
第1の構成物質および第2の構成物質の混合を促進するために、1つ(または複数もしくはそれぞれ)のセルは、第1の構成物質および第2の構成物質の流路上に配置されるボールなどの障害物を形成する1つ(または複数)の要素を備えることができる。障害物を形成する要素は、混合される構成物質の混合を引き起こすために、主流を乱し、主流と再結合する複数の二次流へのその細分化を促進する。
【0039】
したがって、記載のセルは、ハウジング3内において互いに上下に積み重ねられることが意図される。セルは、
- ハウジングの第1の入口ポートE1および第2の入口ポートE2に連結された最初のセルと、
- ハウジングの出口ポートに連結された最後のセルと、
との間に配置される。
【0040】
1.3.2.最初および最後のセル
ミキサ装置の最初のセルは、内側側方パーティションおよび外側側方パーティション、ならびに上側パーティションおよび下側パーティションを備える。最初のセルは、
- 混合される第1の成分および第2の成分を送り込むための、ハウジングの第1の入口ポートE1および第2の入口ポートE2に連結(または合体)された第1の送り込み貫通キャビティ(through cavity)および第2の送り込み貫通キャビティと、
- 中間セルの入口開口45に連結(または合体)された吐出貫通キャビティと、
をさらに備える。
【0041】
ミキサ装置の最後のセルは、内側側方パーティションおよび外側側方パーティション、ならびに上側パーティションおよび下側パーティションをさらに備える。最後のセルは、
- 中間セルの出口開口46に連結(または合体)された入口孔と、
- ハウジング3の出口ポートに連結(または合体)された出口孔と、
をさらに含む。
【0042】
次に、ミキサ装置の動作原理を、図6を参照してより詳細に述べる。
【0043】
2.動作原理
第1のステップにおいて、混合される第1の構成物質および第2の構成物質が、ハウジング3の入口ポートE1、E2から装置内へと同時に注入される。2つの構成物質の注入は、優先的に、最小流量から最大流量までのその間の一定比のままの流量で実施される。
【0044】
第1の構成物質および第2の構成物質は、最初のセル4に入り、第1の主流および第2の主流に分かれ、最初のセル4の内側パーティションの周りを流れる。
【0045】
第1の構成物質および第2の構成物質が最初のセル4の貫通出口キャビティの方に向けて流れるとき、第1の主流および第2の主流のそれぞれが循環する二次流に細分化され、二次流が対流の動きを追従することによって結合されることで(図5参照)、主流と合流する。第1の構成物質および第2の構成物質の互いの混合は、こうして促進される。
【0046】
貫通出口キャビティに到達すると、第1の主流および第2の主流は合流し、それによって、混合される第1の構成物質および第2の構成物質の混合がさらに促進される。
【0047】
次いで、第1の構成物質および第2の構成物質は、複数の積み重ねられた中間セル2、3に次々と入る。各中間セル2、3を横切った後、生成物の重畳層が形成され、螺旋運動の流れによって、それらの層が互いに対して滑り、それによってその混合が促進される。
【0048】
最終混合物は、集結器(concentrator)のように機能するハウジングの出口ポートに連結された最後のセル5の出口で得られる。次いで、最終混合物は、例えば吸引によって、装置から抜き取られ得る。
【0049】
3.実施形態の例
図7は、本明細書において上述したミキサ装置の実施形態の一例を示す。
【0050】
前記実施形態では、ハウジングの壁は、セルの内側パーティションおよび外側パーティションと一致している。
【0051】
より具体的には、ミキサ装置は、
- 底部141を含む第1の管状ケーシング14、および、
- 径方向外方に突出している円形リング151を含む、第1のケーシング14の内径よりも小さい外径の、第2の管状ケーシング15
である第1の管状ケーシングおよび第2の管状ケーシングを備える。
【0052】
各リングは、それぞれのセルの上側または下側のパーティションを形成する。各リングは、1つ(または複数)の貫通アパーチャ「Lu」であって、
- 上流セル(すなわち、他のセルの上に位置するセル)のための出口開口、および、
- 下流セル(すなわち、他のセルの下に位置するセル)のための入口開口
を画定する貫通アパーチャを備える。
【0053】
図7に示されるように、第2のケーシング15は、第1のケーシング14および第2のケーシング15が同軸に延在するように第1のケーシング14に挿入されることが意図され、そのため、リング151は、第1のケーシング14および第2のケーシング15ととともに混合セル2、3を画定する。
【0054】
4.結論
上述のミキサ装置は、槽全体を混合することなく、低合金金属を工業的にフレキシブルに生成することに使用され、それによって槽間の長く難しい清浄作業を回避し、それによって同じ融解で、異なる金属の生成が可能になる。
【0055】
当然のことながら、ミキサ装置は、合金を形成するために異なる金属を混合する以外の用途に使用することもできる。
【0056】
読者には、本明細書に記載の新しい教示および利点から著しく逸脱することなく、本明細書において上述したミキサに多くの修正を加えることができることが理解されよう。
【0057】
例えば、先の説明では、セルおよびハウジングは、略円筒形形状を有するとして記載した。当業者には、セルおよび/またはハウジングが平行六面体形状、卵形など他の形状を有することもあることが一目瞭然である。
【0058】
さらに、読者には、項目3に記載した例から、セルおよびハウジングを形成する壁は、特に内側および外側の壁/パーティションに関して、部分的に合体されてもよいことが理解されよう。
【0059】
したがって、セルおよびハウジングは、
- 本発明によるミキサ装置を形成するように組み立てられた、セルかハウジングのどちらかに対応する別個の物理的要素、
- ハウジングの壁およびセルのパーティションを画定するように協働することが意図される、適合する形状の部材であって、各部材が、セルの一部分および/もしくはハウジングの一部分を画定する、部材(項目3に示される実施形態の例を参照)、または、
- ハウジングの壁およびセルのパーティションを画定する多数のパネルからなる単一部材
であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 ハウジング
2 中間セル、混合セル
3 ハウジング、中間セル、混合セル
4 最初のセル
5 最後のセル
11 入口ポート
12 入口ポート
13 出口ポート
14 第1の管状ケーシング、外壁
15 第2の管状ケーシング、内壁
21 入口開口
22 出口開口
23 壁
24 壁
31 円形底部、入口開口
32 外側側壁、出口開口
32’、32’’ 縁
33 内側側壁
33’ 自由縁
33’’ 縁
34 環状上壁
41 下側パーティション
42 上側パーティション
43 内側側方パーティション
44 外側側方パーティション
45 入口開口
46 出口開口
141 底部
151 円形リング
A-A’ 長手方向軸
~C セル
E1 第1の入口ポート
E2 第2の入口ポート
Fp 主流
Fs 二次流
Lu 貫通アパーチャ
S 出口ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 混合される成分を送り込むための少なくとも1つの入口ポート(11)と、
- 前記成分からなる混合物の回収のための出口ポート(13)と、
を備える、ミキサ装置であって、
前記ミキサ装置は、少なくとも、隣接した第1の混合セル(2)および第2の混合セル(3)を含むハウジング(1)をさらに備え、前記第2の混合セル(3)が、前記第1の混合セル(2)の上に延在し、各セル(2、3)が、対向壁(23、33および24、34)上に設けられた入口開口(21、31)および出口開口(22、32)を含み、前記入口開口(21、31)が、前記入口開口(21、31)の軸が前記出口開口(22、32)の軸に対して平行になるように前記出口開口(22、32)からオフセットされ、前記第1の混合セル(2)の前記出口開口(22)が、前記第2の混合セル(3)の前記入口開口(31)に連結されることを特徴とする、
ミキサ装置。
【請求項2】
前記ハウジング(1)が、円筒形であり、前記第1の混合セル(2)および前記第2の混合セル(3)を受容するための空間を画定する同軸の管状の外壁(14)および内壁(15)を有する、請求項1に記載のミキサ装置。
【請求項3】
各混合セル(2、3)が、円筒形形状を有し、前記ハウジング(1)の前記外壁(14)と前記内壁(15)との間に延在する、請求項2に記載のミキサ装置。
【請求項4】
前記第1の混合セル(2)および前記第2の混合セル(3)のうちの少なくとも一方が、直径方向に対向する流体入口開口(21、22)および流体出口開口(31、32)を備える、請求項3に記載のミキサ装置。
【請求項5】
前記ミキサ装置が、複数の重畳混合セル(2、3)を備え、前記重畳混合セルが、各上側セル(2)の前記出口開口(22)が下側セル(3)であって、その上に前記上側セル(2)が配置される、下側セル(3)の前記入口開口(31)の前に延在するように配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載のミキサ装置。
【請求項6】
前記複数の重畳混合セルが、
- 前記混合される成分が送り込まれる最初のセル(4)と、
- 前記混合物が放出される最後のセル(5)と、
を備え、
前記ハウジング(1)の前記外壁(14)が、前記最後のセル(5)から放出される前記混合物を回収するための底部(141)を備える、
請求項5に記載のミキサ装置。
【請求項7】
前記ハウジング(1)の前記内壁(15)が、前記混合物のための放出路を画定し、前記ミキサ装置は、前記混合物の抜き取りのために前記放出路内に配置されることが意図される吸引ノズルを備える、請求項6に記載のミキサ装置。
【請求項8】
前記ハウジング(1)が、長手方向に延在し、前記入口ポート(11、12)および前記出口ポート(13)が、前記ハウジング(1)の同じ端に延在する、請求項1から7のいずれか一項に記載のミキサ装置。
【請求項9】
前記セル(2、3)のうちの少なくとも1つが、障害物を形成する要素を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のミキサ装置。
【請求項10】
障害物を形成する前記要素が、第1の成分および第2の成分の流路上のボールである、請求項9に記載のミキサ装置。
【請求項11】
前記ミキサ装置が、
・底部(141)を含む第1の管状ケーシング(14)と、
・前記第1の管状ケーシング(14)の内径よりも小さい外径を有する第2の管状ケーシング(15)と、
を備え、
前記第2の管状ケーシング(15)が、その外面上に、少なくとも1つの貫通アパーチャをそれぞれ有する円形リング(151)を含み、前記円形リング(151)が、径方向に延在し前記第2の管状ケーシング(15)の外側の方に向けて突出しており、前記円形リング(151)の直径が、前記第1の管状ケーシング(14)の前記内径と実質的に等しく、前記第2の管状ケーシング(15)が、前記第1の管状ケーシング(14)および前記第2の管状ケーシング(15)が同軸に延在するように前記第1の管状ケーシング(14)に挿入されることが意図され、前記円形リング(151)が、前記第1の管状ケーシング(14)および前記第2の管状ケーシング(15)とともに、前記混合セル(2、3)を画定する、
請求項1から10のいずれか一項に記載のミキサ装置。
【国際調査報告】