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特表2024-507987インバータを動作させる方法およびインバータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】インバータを動作させる方法およびインバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240214BHJP
   H02J 3/12 20060101ALI20240214BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 E
H02J3/12
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552184
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022055383
(87)【国際公開番号】W WO2022184819
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102021105119.3
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シューリヒ,ジモン
(72)【発明者】
【氏名】アンル,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
5G066
5H770
【Fターム(参考)】
5G066DA06
5G066HA13
5G066HB04
5H770BA11
5H770CA05
5H770DA01
5H770EA27
5H770HA02Y
5H770HA03Y
(57)【要約】
本出願は、AC接続部(14)、DC接続部(18)、およびAC接続部(14)とDC接続部(18)の間に配置されたインバータブリッジ(16)を有するインバータ(10)を動作させる方法を説明する。
本方法は、
S1) AC接続部(14)でAC送電網(12)にインバータ(10)を介して電力が供給され、AC送電網(12)の電圧が、インバータ(10)の調整によって制御される、第1の動作モードで、インバータ(10)を動作させるステップと、
S2) 定義可能な電流制限値を超える、AC接続部(14)での電流(IINV)の増加が認識された場合、
仮想インピーダンス(ZVI(s))によってAC接続部(14)での電流(IINV)を制限するように調整が行われる、第2の動作モードに変更し、第2の動作モードでインバータ(10)を動作させる、ステップと、
S3) 第2の動作モードでは、
S3.1) 定義可能な閾値(SW)を超える、AC接続部(14)での電圧(Vpcc)の増加が認識された場合、
第1の動作モードに変更し、第1の動作モードでインバータを動作させる、ステップと、
S4) 第1の動作モードでは、
S4.1) 定義可能な第1の期間を超える期間中に、定義可能な電流制限値を超える、AC接続部(14)での電流(IINV)の増加が認識された場合、
調整を適用した第2の動作モードに変更し、インバータ(10)を第2の動作モードで動作させ、閾値(SW)を上げる、ステップと、
を含む。
本出願はさらに、インバータについて説明する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC接続部(14)、DC接続部(18)、およびAC接続部(14)とDC接続部(18)の間に配置されたインバータブリッジ(16)を有するインバータ(10)を動作させるための方法であって、
S1) AC送電網(12)に前記インバータ(10)を介してAC接続部(14)で電力が供給され、前記AC送電網(12)の電圧が、前記インバータ(10)の調整によって制御される、第1の動作モードで、インバータ(10)を動作させるステップと、
S2) 事前定義可能な電流制限値を超える、前記AC接続部(14)での電流(IINV)の増加が検出された場合、仮想インピーダンス(ZVI(s))によって前記AC接続部(14)での前記電流(IINV)を制限するように調整が行われる、第2の動作モードに変更し、前記第2の動作モードで前記インバータ(10)を動作させる、ステップと、
S3) 前記第2の動作モードでは、
S3.1) 事前定義可能な閾値(SW)を超える、前記AC接続部(14)での電圧の増加が検出された場合、前記第1の動作モードに変更し、前記第1の動作モードで前記インバータを動作させる、ステップと、
S4) 前記第1の動作モードでは、
S4.1) 事前定義可能な第1の期間を超える期間中に、事前定義可能な電流制限値を超える、前記AC接続部(14)での前記電流(IINV)の増加が検出された場合、前記第2の動作モードに変更し、前記インバータ(10)を前記第2動作モードで動作させ、前記閾値(SW)を上げる、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップS4.1)の後にステップS3)が再び実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記閾値(SW)は、事前定義可能な離散値の事前定義可能な数を取ることができ、前記方法の開始時に初期値を取り、ステップS4.1)において、次のより高い前記離散値に引き上げられることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記初期値は、前記インバータの公称電圧の80%~100%、好ましくは約85%にあることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの隣接する離散値間の距離は、前記インバータの前記公称電圧の3%~7%、好ましくは約5%であることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
隣接する2つの離散値間の距離は、異なることを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
隣接する2つの離散値間の距離は、前記値が大きくなるにつれて大きくなることを特徴とする、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
隣接する2つの離散値間の距離は、前記値が大きくなるにつれて小さくなることを特徴とする、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
S4.2) 前記インバータ(10)は、事前定義可能な第2の期間を超える期間にわたって前記第1の動作モードで動作する場合、前記閾値(SW)を前記初期値まで下げるステップを特徴とする、請求項3~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
S3.2) 前記インバータ(10)は、事前定義可能な第3の期間を超える期間にわたって前記第2の動作モードで動作する場合、前記閾値(SW)を下げるステップを特徴とする、請求項3~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記インバータ(10)は、少なくとも事前定義可能な第4の期間に対応する期間の間、前記第2の動作モードで動作することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
AC接続部(14)、DC接続部(18)、およびAC接続部(14)とDC接続部(18)の間に配置されたインバータブリッジ(16)を有するインバータ(10)であって、AC送電網(12)に前記インバータ(10)を介して前記AC接続部(14)で電力が供給され、前記AC送電網(12)の電圧が、前記インバータ(10)の調整によって制御される、第1の動作モードで前記インバータ(10)を動作させることができ、前記インバータ(10)の制御ユニット(20)は、前記調整を実行し、
前記第1の動作モードでは、事前定義可能な電流制限値を超える、前記AC接続部(14)での電流(IINV)の増加を検出し、それに応答して、前記調整が、仮想インピーダンス(ZVI(s))によって前記AC接続部(14)での前記電流(IINV)を制限する、第2の動作モードに変更し、
前記第2の動作モードでは、事前定義可能な閾値(SW)を超える、前記AC接続部(14)での電圧の増加を検出し、それに応答して、前記第1の動作モードに変更し、
前記第1の動作モードでは、事前定義可能な第1の期間を超える期間中に、事前定義可能な電流制限値を超える、前記AC接続部(14)での前記電流(IINV)の増加を検出し、それに応答して、前記第2の動作モードに変更し、前記閾値(SW)を増加させるように構成される、インバータ(10)。
【請求項13】
前記インバータ(10)の記憶部には、前記閾値(SW)が取り得る事前定義可能な離散値の事前定義可能な数が記憶されており、増加した場合の前記閾値(SW)は、それぞれの場合において、次のより高い離散値に引き上げられることを特徴とする、請求項12に記載のインバータ。
【請求項14】
前記調整は、前記インバータ(10)が事前定義可能な第3の期間を超える期間にわたって前記第2の動作モードで動作する場合に、前記閾値(SW)を下げるように構成されることを特徴とする、請求項12または13に記載のインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インバータは、例えば太陽光発電システムの場合、DC電源から公共エネルギー供給網に電気エネルギーを供給するために使用される。公共エネルギー供給網では、インバータは送電網形成または送電網支援機能も実行する。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽光発電システムの場合など、DC電源から公共エネルギー供給網に電気エネルギーを供給するには、主に送電網整流型インバータが使用される。これらは、電流制御で動作する。電圧制御インバータは、独立型送電網の送電網形成インバータとして使用されるが、公共エネルギー供給網では電圧制御インバータが送電網形成または送電網支援機能を実行することが増えている。
【0003】
送電網の障害による電圧低下が発生した場合、インバータは電圧を支援するために送電網に電力を供給し続ける必要がある(FRT-フォルトライドスルー)。電圧調整により、障害が発生した場合、インバータに設けられた電流制限がアクティブになるまで、電流が最初に増加する。最大電流制限の超過を防ぐために、電圧は、仮想インピーダンスを利用してFRTモードで制御される。
【0004】
電圧が再び事前定義可能な閾値を超えるとすぐに、送電網形成モードに戻る。この目的のために、固定の最適化された値が定義されており、送電網のインピーダンスが変化した場合には、その値を新たに調節する必要がある。
【0005】
特に弱い送電網または遠隔短絡の場合、閾値の本来の最適値を早期に超えてしまい、その結果、FRTモードが早期に終了し、電流制限がアクティブになる範囲が繰り返し入力されることが起こり得る。一方、弱い送電網または遠隔短絡の場合、送電網障害が解消した後に、本来の最適な閾値に到達せず、その結果、FRTモードが永続的に継続することになることも起こり得る。
【0006】
A.Gkountaras、S.Dieckerhoff、およびT.Seziの技術記事、「Evaluation of current limiting methods for grid forming inverters in medium voltage microgrids(中電圧マイクロ送電網における送電網形成インバータの電流制限方法の評価)」、2015 IEEE Energy Conversion Congress and Exposure (ECCE)、モントリオール、QC、2015、1223~1230頁は、送電網形成インバータにおける電流制限の様々な形式と、その一形式としての仮想インピーダンスの使用について説明している。
【0007】
本出願では、略語DC(直流)は、直流または直流電圧を表し、AC(交流)は、交流または交流電圧を表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、特に送電網障害時の、インバータの動作をさらに改善するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項1の構成を有する方法、および独立請求項12の構成を有するインバータによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
AC接続部、DC接続部、およびAC接続部とDC接続部との間に配置されたインバータブリッジを有するインバータを動作させるための方法が説明される。この方法は、少なくともステップS1)、S2)、S3)、S4)を含む。
S1) AC接続部でAC送電網にインバータを介して電力が供給され、AC送電網の電圧が、インバータの調整によって制御される、第1の動作モードで、インバータを動作させるステップ。
S2) 事前定義可能な電流制限値を超える、AC接続部での電流の増加が認識された場合、
仮想インピーダンスによってAC接続部での電流を制限するように調整が行われる、第2の動作モードに変更し、第2の動作モードでインバータを動作させるステップ。
S3) 第2の動作モードでは、
S3.1) 事前定義可能な閾値を超える、AC接続部での電圧の増加が認識された場合、
第1の動作モードに変更し、第1の動作モードでインバータを動作させる。ステップ3.1)は、ステップ3)の一部である。
S4) 第1の動作モードでは、
S4.1) 事前定義可能な第1の期間を超える期間中に、事前定義可能な電流制限値を超える、AC接続部での電流の増加が認識された場合、調整を適用した第2の動作モードに変更し、インバータを第2の動作モードで動作させ、閾値を増加させる。ステップ4.1)は、ステップ4)の一部である。
【0011】
この方法は、特に電圧制御インバータに関するものであり、このインバータは、一方では、独立型送電網のために送電網形成方式で使用することができ、他方では、AC接続部に接続されたAC送電網、特に公共の供給網のために送電網支持方式および/または送電網形成方式で使用することができる。第2の動作モードでは、電圧制御動作で送電網調整、特にFRT(フォルトライドスルー)が可能になる。これは、仮想インピーダンスを利用して行われる。FRTでの堅牢な制御動作は、特に堅固なAC送電網または弱いAC送電網における遠隔障害の場合に可能になる。
【0012】
インバータは、一度第2の動作モードになった後、再び第1の動作モードに切り替わり、事前定義可能な電流制限値を超える、AC接続部での電流の上昇を検出することによって送電網障害が再度検出された場合、一方では、第2の動作モードに戻る変化があり、他方では、電圧の閾値を上昇させる。これにより、この状況でエスカレーションレベルを上げ、動作モードの新たな変更に対してインバータをより堅牢にすることができる。
【0013】
この方法の一実施形態では、ステップS4.1)の後にステップS3)が再度実行される。その後、インバータが第2の動作モードから第1の動作モードに再び変化し、AC接続部での電流が電流制限値を超えていることが再度検出されると、電圧の閾値が再び引き上げられる。このようにして、調整の堅牢性をさらに調節できる。
【0014】
AC接続部で(送電網電源の場合、送電網障害の結果として、例えばインバータ出力または送電網接続点で)電圧降下が発生した場合、インバータの調整により、調整が電圧を維持しようとするため、電流が増加する。その後、電流の増加はインバータによって、例えばハードウェア電流制限によって、制限される。事前定義可能な電流制限値を超える電流増加を検出することにより、これから送電網障害の存在が推定され、インバータの第2の動作モード、特にFRTモードが起動される。特にFRTモードとすることができる第2の動作モードでは、インバータは、送電網電圧を維持しようとし続けるが、仮想インピーダンスの助けにより、例えばハードウェア電流制限が介入する、制限範囲内にある値を電流が取ることが防止される。電圧が電圧の事前定義可能な閾値を超えるとすぐに、第2の動作モードから第1の動作モード、特に送電網形成モードに再び切り替わる。その後、特定の事前定義可能な第1の期間(例えば、100ミリ秒~300ミリ秒、好ましくは200ミリ秒)を超えて、電流が再び電流制限値を超える値を取るならば、送電網障害がまだ存在するため、電圧の閾値は引き上げられ、第2の動作モード、特にFRTモードに再び変更が行われる。調整の設定時間をカバーするために、第1の期間を待つことが有利である。閾値を上げることは、エスカレーションレベルを上げることに相当する。
【0015】
一実施形態では、閾値は、事前定義可能な離散値の事前定義可能な数を取ることができ、方法の開始時に初期値を取ることができ、ステップS4.1)において、次のより高い離散値に引き上げることもできる。初期値は、方法の開始時に、例えば、インバータが起動されるとき、および/またはステップS1を実行中に、閾値が取る値である。
【0016】
このように、エスカレーションレベルは、インバータが第2の動作モードで既に動作している頻度に応じて、段階的に増加する。エスカレーションレベルという用語は、例えば、ここでインクリメントされるカウンタと考えることができる。
【0017】
一実施形態では、閾値の初期値は、インバータの公称電圧の80%~100%にあり、好ましくは約85%である。
【0018】
一実施形態では、少なくとも2つの隣接する離散値の間の距離は、インバータの公称電圧の3%~7%、好ましくは約5%である。
【0019】
この方法の一実施形態では、任意の2つの隣接する離散値の間の距離は異なる。
【0020】
この方法の一実施形態では、任意の2つの隣接する離散値の間の距離は、値が大きくなると大きくなる。
【0021】
この方法の一実施形態では、任意の2つの隣接する離散値の間の距離は、値が大きくなると小さくなる。
【0022】
閾値の値は、例えば、エスカレーションレベルが増加するたびに、公称電圧の5%ずつ増加させることができる。値間の距離、すなわち値間のステップサイズも、可変にすることができる、すなわち、特定のエスカレーションレベルから小さくなったり大きくなったりすることができる。一実施形態では、ステップサイズは、例えばルックアップテーブルの形式の値テーブルを介して、エスカレーションレベルに割り当てることができる。
【0023】
一実施形態では、この方法は、インバータが事前定義可能な第2の期間を超える期間、第1の動作モードで動作する場合、閾値が初期値まで引き下げられるステップS4.2)を含む。ステップ4.2)は、ステップ4)の任意選択の部分である。
【0024】
エスカレーションレベルは、例えば、インクリメントまたはデクリメントされるカウンタとして理解できる。エスカレーションレベルに応じて、これは、初期値と比較して増加または減少する閾値をもたらす。エスカレーションレベルは、閾値が、仮想インピーダンスにおける電圧降下によって低下する障害時に存在する電圧を超えるまでの間、任意選択でいくつかの反復ステップで増加され、したがって、システムは、第2の動作モードで安定した状態を保つ。送電網障害が実際に解消した場合にのみ、電圧はエスカレーションシステムによって増加した電圧の閾値を超えて再び上昇する。その結果として第1の動作モードに変更された場合、システムは、電流がハードウェア電流制限まで再び増加することなく、このモードで安定した状態を保つ。この状態が、事前定義可能な第2の期間、例えば200ミリ秒にわたって存在する場合、閾値をその初期値にリセットすることによって、エスカレーションレベルは、再度リセットされる。
【0025】
一実施形態では、この方法は、インバータが事前定義可能な第3の期間を超える期間にわたって第2の動作モードで動作する場合、閾値が引き下げられるステップS3.2)を含む。ステップ3.2)は、ステップ3)の任意選択の部分である。
【0026】
したがって、この実施形態では、システムが第2の動作モードにあり、電圧が正に変化する場合、事前定義可能な第3の期間の後にエスカレーションレベルを低下させて、第2の動作モードからの離脱を促進することができる。この第3の期間は、必要に応じて、電圧の上昇中であっても閾値をいくつかの段階で連続的に下げることができるように十分に短く選択する必要がある。電圧の増加が閾値の減少を引き起こし、その後閾値は、電圧を下回って第2の動作モードが終了するまで連続的に減少することも考えられる。閾値が誤って低下した場合には、その後、方法ステップS3)およびS4)によって再び閾値が上げられる。
【0027】
閾値の増加に加えて、閾値は、例えばエスカレーションレベルの増加または減少ごとに公称電圧の5%のステップで低減させることもできる。値間の距離、すなわち値間のステップサイズも、閾値が低下するときに可変にすることができる、すなわち、特定のエスカレーションレベルの後に小さくなったり大きくなったりすることができる。一実施形態では、例えばルックアップテーブルの形式の値テーブルを介して、その低減のためにステップサイズをエスカレーションレベルに割り当てることも可能である。
【0028】
この方法の一実施形態では、インバータは、少なくとも事前定義可能な第4の期間に対応する期間の間、第2の動作モードで動作する。これにより、第1の動作モードに再び変化して戻る前に、インバータの調整を安全に安定させることができる。これは、FRT調整の第4の期間により、再び送電網形成モードに変化して戻る前に十分な時間が認められるため、特にFRTモードにとって有利である。
【0029】
したがって、特に送電網障害の場合のインバータの動作は、この方法がエスカレーションシステムによって閾値を適応させるという事実によってさらに改善される。特定の基準に従って、エスカレーションレベルは、上げられるか、または下げられる。その後、閾値は、エスカレーションレベルに応じて適応的に調節される。
【0030】
インバータは、AC接続部、DC接続部、およびAC接続部とDC接続部との間に配置されたインバータブリッジを有し、インバータは、AC送電網にインバータを介してAC接続部で電力が供給され、AC送電網の電圧はインバータの調整によって制御され、インバータの制御ユニットは調整を実行するように構成される、第1の動作モードで動作することができる。制御ユニットは、第1の動作モードにおいて、事前定義可能な電流制限値を超える、AC接続部での電流の増加を検出し、それに応答して、調整が、仮想インピーダンスによってAC接続部での電流を制限する、第2の動作モードに変更するように構成される。制御ユニットはさらに、第2の動作モードにおいて、事前定義可能な閾値を超える、AC接続部での電圧の増加を検出し、それに応答して、第1の動作モードに変更するように構成される。インバータが、繰り返し第1の動作モードにある場合、制御ユニットは、事前定義可能な第1の期間を超える期間中に、事前定義可能な電流制限値を超える、AC接続部での電流の増加を検出し、それに応答して、第2の動作モードに変更し、閾値を増加させることができる。
【0031】
DCユニット、例えば太陽光発電システムは、DC接続部に接続することができる。インバータブリッジは、双方向設計にすることができ、インバータの制御ユニットによって動作する電力を変換するためのスイッチングユニットを有する。したがって、インバータは整流器としても機能し、例えばAC送電網からの電力をDCユニットとしての電池に供給できる。
【0032】
インバータの一実施形態では、閾値が取り得る事前定義可能な離散値の事前定義可能な数が、インバータのメモリユニットに記憶され、閾値は、増加する場合、それぞれの場合において、次により高い離散値に引き上げられる。
【0033】
インバータの一実施形態では、インバータが事前定義可能な第3の期間を超える期間にわたって第2の動作モードで動作している場合、閾値を下げるように調整が設定される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下、図を用いて例をより詳細に説明する。
【0035】
図1図1は、電圧供給インバータを備えたシステムの例示的な一実施形態を概略的に示す。
図2図2は、FRTモードにおけるインバータの例示的な一実施形態を等価回路図として概略的に示す。
図3図3は、AC接続部での電圧と電流の挙動の一例を示す。
図4図4は、調節された閾値によるAC接続部での電圧と電流の挙動の一例を示す。
図5図5は、AC接続部での電圧と電流の挙動の一例を示す。
図6図6は、調節された閾値によるAC接続部での電圧と電流の挙動の一例を示す。
図7図7は、電圧供給インバータを動作させる方法の例示的な一実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1には、電圧供給インバータ10を備えたシステムが、概略的に示されている。インバータ10は、DC接続部18およびAC接続部14を有する。インバータブリッジ16は、DC接続部18とAC接続部14との間に配置され、交流または交流電圧を直流または直流電圧に、またはその逆に変換するように構成される。この目的のために、インバータブリッジ16は、制御ユニット20内で動作する調整によって適切に制御されるスイッチングユニットを有する。制御ユニット20の調整は、AC接続部に提供される電圧Uを同時に設定する。図示の例では、AC接続部14は、AC送電網12がAC接続部14に接続される送電網接続点に対応する。DCユニット、例えば太陽光発電システムは、DC接続部に接続できる。以下に説明する例示的な実施形態では、AC送電網にインバータを介して電力がAC接続部で供給され、AC送電網の電圧がインバータの調整によって制御される第1の動作モードは、例えば、送電網形成モードであり、第2の動作モードは、調整が適用された動作モード、例えば、FRTモードである。
【0037】
図2は、FRTモードにおけるインバータの例示的な一実施形態を等価回路図として概略的に示す。インバータ10は、そのインピーダンスZINV(s)によって特徴付けられる。AC送電網12は、そのインピーダンスZnetz(s)によって特徴付けられる。以下に、図2を参照して仮想インピーダンスZVI(s)の原理を説明する。FRTモードでは、仮想インピーダンスZVI(s)は、好ましくは制御ユニット20内で動作する、調整において事実上考慮され、一方では電流IINVの減少を引き起こし、他方では追加の電圧降下を引き起こすため、FRTモードにおいてインバータ10によって送電網接続点(この例ではAC接続部14)に供給される電圧U=Vpccは、送電網形成モードよりもこの電圧降下分だけ低くなる。
【0038】
図3には、AC接続部14での電圧U(上のグラフ)および電流IINV(中央のグラフ)の挙動が示されており、これは、弱いAC送電網または遠隔短絡の場合に閾値SWが低すぎる場合と同様であり、したがって、システムは、FRTモード(下のグラフの1)と送電網形成モード(下のグラフの0)の間で継続的に変化する。時刻t=7秒で、送電網障害が発生し、電圧Uが低下し、調整により電流IINVが電流制限値まで増加する。システムはその後すぐにFRTモードに変更され、図示の例では100ミリ秒の事前定義された第4の期間、そのままである。FRTモードでは、電流IINVは、仮想インピーダンスZVI(s)によって制限され、電圧Uは、仮想インピーダンスZVI(s)での電圧降下によって減少する。しかしながら、上のグラフに一点鎖線で示されているように、電圧Uが依然として選択された閾値SWを超えているため、システムは、再び送電網形成モードに変化して戻り、その結果、仮想インピーダンスZVIが消えるため、電流IINVは、再び電流制限値まで上昇する。事前定義可能な第1の時間(図の例では200ミリ秒)待機した後、インバータは再びFRTモードに変わる。これは、時刻t=9秒で送電網障害が解消し、調整の必要な設定時間が経過した後、現在のIINVが再び正常値を取るまで続く。
【0039】
図4には、閾値SW(上のグラフの一点鎖線)が本出願で説明される方法を使用して調節されたときの、送電網接続点14での電圧Uおよび電流IINVの挙動が示されている。送電網障害が存在する間、システムは、FRTモードから送電網形成モードに2回変化して戻り、その結果、閾値SWは、エスカレーションシステムによって2回調節され、その後システムは、閾値SWが仮想インピーダンスZVI(s)の両端の電圧降下によって低減された送電網接続点14の電圧を超えるので、FRTモードで安定した状態を保つ。時刻t=9秒で送電網障害が消滅した場合にのみ、電圧は、増加した閾値SWを超えて再び上昇し、システムは再び送電網形成モードに変わる。
【0040】
図5は、送電網接続点での電圧Uと電流IINVの挙動を示しており、これは、弱い送電網または遠隔短絡の場合に閾値SWが高すぎるため、システムが常にFRTモードのままである場合に生じる。時刻t=9秒で送電網障害が消滅すると電圧Uは上昇するが、この場合、仮想インピーダンスZVI(s)での電圧降下による低下により、電圧Uは、まだ閾値SWを下回っているため、FRTモードは終了しない。
【0041】
図6は、閾値SW(上のグラフの一点鎖線)が本方法の一実施形態に従って調節されたときの、送電網接続点での電圧Uおよび電流IINVの挙動を示す。時刻t=9秒で、送電網障害が解消され、電圧が上昇する。その後、電圧が閾値SWを超えてFRTモードが終了するまで、閾値SWは、連続的に低下する。
【0042】
図7は、電圧供給インバータを動作させる方法の例示的な一実施形態の概略フローチャートを示す。
【0043】
ステップS1)では、インバータ10は、AC送電網12、例えば公共電力供給網に、インバータ10を介してAC接続部14で電力が供給され、AC送電網12の電圧が、インバータ10の調整を介して制御される、第1の動作モードで動作する。
【0044】
ステップS2)では、事前定義可能な電流制限値を超える、AC接続部14での電流IINVの増加が認識された場合、第2の動作モードへの変更があり、その後、インバータ10は、第2の動作モードで動作する。第2の動作モードでは、調整は、仮想インピーダンスZVI(s)によってAC接続部14での電流IINVを制限するように適合される。
【0045】
ステップS3)は、インバータ10が第2の動作モードにあるときに実行される。事前定義可能な閾値SWを超える、AC接続部14での電圧の増加が検出された場合、第1の動作モードへの変更があり、その後インバータは第1の動作モードで動作する。
【0046】
ステップS4)は、インバータ10がステップS3)から第1の動作モードに変化したときに実行される。事前定義可能な第1の期間を超える期間中に、事前定義可能な電流制限値を超える、AC接続部14での電流IINVの増加が検出された場合、第2の動作モードへの変更があり、インバータ10は、その後、第2の動作モードで動作し、閾値SWは増加する。ステップS4の後、第2の動作モードに戻ると、ステップS3)が再度実行される。
【0047】
インバータ10は、事前定義可能な第2の期間を超える期間にわたって第1の動作モードで動作する場合、閾値SWは、その初期値に設定される。
【0048】
インバータ10は、事前定義可能な第3の期間を超える期間にわたって第2の動作モードで動作する場合、閾値SWは、任意選択で下げられる。
【0049】
あるいはまた、例えば図6に示されるように、第2の動作モードにおいて、AC接続部14における電流IINVが事前定義可能なさらなる電流制限値を下回った場合、または電圧Uの増加、特に急激な増加が、例えば電圧勾配を評価することによって検出される場合は、電圧Uの閾値SWを段階的に減少させる。このアプローチでは、初期値を下回る値まで閾値SWを減少させることもできる。
【符号の説明】
【0050】
S1、S2、S3、S4 方法ステップ
10 インバータ
12 AC送電網
14 AC接続部
16 インバータブリッジ
18 DC接続部
20 制御ユニット
U AC接続部の電圧
pcc FRTモードでの電圧U
INV AC接続部の電流
VI(s) 仮想インピーダンス
SW 閾値
grid AC送電網のインピーダンス
INV(s) インバータのインピーダンス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】