(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】インタリーブ粉末
(51)【国際特許分類】
C08L 1/02 20060101AFI20240214BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08L1/02
C08L97/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552187
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2022054814
(87)【国際公開番号】W WO2022180222
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517284496
【氏名又は名称】ケメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】エサー,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】スクリショヴスキー,ケフィン
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ,ヘンドリク
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB011
4J002AH001
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ016
4J002EF067
4J002FD206
4J002FD207
4J002GT00
(57)【要約】
ガラス板を積み重ねる際にガラス板の相互間に間隔をあける方法が記載されている。この方法は、
― 隣接するガラス板の間にインタリーブ粉末材料を塗布することを含み、それにより、
― 隣接するガラス板の間のインタリーブ粉末材料として、セルロース、ヘミセルロース及び/又はリグニンをベースとする、天然複合材料から選択された粉末状支持体材料を含む組成物を使用する
方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板を積み重ねる際に該ガラス板の相互間に間隔をあける方法であって、
― 隣接するガラス板の間にインタリーブ粉末材料を塗布することを含み、それにより、
― 前記隣接するガラス板の間の前記インタリーブ粉末材料として、セルロース、ヘミセルロース及び/又はリグニンをベースとする、天然複合材料から選択された粉末状支持体材料を含む組成物を使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記天然複合材料が、果実核粉、セルロースベースの粉末、リグニンベースの粉末又はそれらの混合物からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記天然複合材料が果実核粉であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記果実核粉が、オリーブピットフラワー、アーモンドシェルパウダー、ピーチストーンパウダー、ピスタチオシェルパウダー、アボカドストーンパウダー、ブドウパウダー、アプリコットストーンパウダー、アルガンシェルパウダー、コーンコブフラワー、クルミシェルフラワー、マニオクフラワー、グアーガム、大豆フラワー、ひよこ豆フラワー、又はそれらの混合物からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記天然複合材料がセルロースベースの粉末であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記天然複合材料がリグニンベースの粉末であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記天然複合材料が少なくとも1種の流動添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記流動添加剤が、焼成シリカ、焼成酸化アルミニウム又はそれらの混合物からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、ガラス腐食を防止するための酸をさらに含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸が、アジピン酸、コハク酸及びホウ酸からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、組成物の総質量に基づいて、
粉末状支持体材料を15~99.9質量%、
流動添加剤を0~5質量%、及び
アジピン酸、コハク酸及びホウ酸から選択される酸を0~80質量%
を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、組成物の総質量に基づいて、
粉末状支持体材料を45~99.9質量%、
流動添加剤を0.15~1質量%、及び
アジピン酸、コハク酸及びホウ酸から選択される酸を0~60質量%又は5~60質量%
を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記粉末状支持体材料が、オリーブピットフラワー、アーモンドシェルパウダー、ピーチストーンパウダー、ピスタチオシェルパウダー、アボカドストーンパウダー、ブドウカーネルパウダー、アプリコットストーンパウダー、アルガンシェルパウダー、コーンコブフラワー、クルミシェルフラワー、マニオクフラワー、グアーガム、大豆フラワー、ひよこ豆フラワー又はそれらの混合物からなる群から選択された果実核粉、又は、少なくとも90質量%のセルロースを含むセルロースベースの材料、又は、果実核粉と、少なくとも90質量%のセルロースを含むセルロースベースの材料との混合物から選択されたものであり;
前記流動添加剤が、焼成シリカ、焼成酸化アルミニウム又はそれらの混合物から選択されたものであり;及び
前記酸が、アジピン酸、コハク酸又はそれらの混合物から選択されたものである
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記粉末状支持体材料が、オリーブピットフラワー、アーモンドシェルパウダー、ブドウカーネルパウダー、コーンコブフラワー及びクルミシェルフラワー又はそれらの混合物、又は、少なくとも95質量%のセルロースを含むセルロースベースの材料、又は、オリーブピットフラワー、アーモンドシェルパウダー、ブドウカーネルパウダー、コーンコブフラワー及びクルミシェルフラワーのうちの1種以上と少なくとも95質量%のセルロースを含むセルロースベースの材料との混合物から選択されたものであり;
前記流動添加剤が焼成酸化アルミニウムであり;そして
前記酸がアジピン酸である
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記天然複合材料と前記流動添加剤のメディアン粒子径が50~250μm、より好ましくは60~210μm、最も好ましくは80~150μmであることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
積み重ねたガラス板と、該積み重ねたガラス板の間に設けられたインタリーブ粉末材料との組合せであって、該インタリーブ粉末材料が、隣接する積層ガラス板の間に位置するものであり、該インタリーブ粉末材料が、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする組合せ。
【請求項17】
ガラス板を積み重ねる際に該ガラス板の相互間に間隔をあけることによって、請求項16に記載の、積み重ねたガラス板とインタリーブ材料との組合せを製造する方法であって、該方法が、
- 隣接するガラス板の間にインタリーブ粉末を塗布することを含み、それにより、
- 前記隣接するガラス板の間のインタリーブ粉末材料として、請求項1~15のいずれか一項に定義した天然複合材料から選択された、粉末状支持体材料を含む組成物を使用する
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
ガラスの保管及び輸送、コーティングされていない板ガラスの保管及び輸送、防食コーティングをコーティングされたガラスの保管及び輸送のための防食コーティングをコーティングされたガラスの保管及び輸送、及び、コーティングされたガラス(スパッタガラス及びラッカーガラス)の保管及び輸送をするために、請求項1~15のいずれか一項に記載のガラス板を積み重ねる際に該ガラス板の相互間に間隔をあける方法を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ガラス板(glass sheets)を積み重ねる際にガラス板の相互間に間隔をあける方法、積み重ねたガラス板と積み重ねたガラス板の間に位置するインタリーブ粉末(interleaving powder)との組合せ、ガラス板を積み重ねる際にガラス板の相互間に間隔をあけることによって、上記の、積み重ねたガラス板とインタリーブ材料との組合せを製造する方法、及び、ガラス用の持続可能なインタリーブ粉末としての本発明に係る組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準
板ガラス(flat glass)は、大きなシート(例えば6×3m)にしてラックに保管され輸送される。ガラス表面の化学反応性により、ガラス表面は互いに反応する可能性があり、一定時間後には分離することができなくなることがある。そのため、個々のガラス板(glass sheet)の間に分離剤を入れる必要がある。この目的のため、よく知られているのは、紙又はプラスチックビーズである。また、輸送中や保管中に、ガラス板の間に水が凝縮し、「ガラス腐食」として知られるガラスの加水分解を引き起こすことがある。これは、使用する紙又はプラスチックビーズに、化学物質を添加することで防ぐことができる。
【0003】
US2005/0260342A1には、ポリメチルメタクリレートのような材料のビーズ又は粒子を含むポリマーと、酸性ステアリン酸塩などのステアリン酸塩又は酸性ステアリン酸塩の金属塩との混合物を含む、ガラス板用インタリーブ材料が開示されている。このインタリーブ材料混合物は、任意の適切な方法でガラス板に塗布することができる。
【0004】
EP0192810A2には、ガラス板とガラス板とを分離し、かつ、ガラス表面に耐汚染性を付与するための、インタリーブ材料として有用な組成物が記載されている。この組成物は、強有機酸を含浸させた多孔質粉末状の支持体材料を含んで成る。多孔質粉末状の支持体材料は木粉(wood flour)であり、有機酸はハロゲン化有機スズである。
【0005】
EP2940208A1には、ガラス板合紙用木材パルプが開示されている。この木材パルプ中には、木材パルプの絶乾質量に対して0.5ppm以下の量のシリコーンが含まれる。この文献に記載されているシリコーンは、シリコーンオイル、すなわち、ジメチルポリシロキサンである。
【0006】
現代の板ガラス産業では、ガラスを保管及び輸送した後、ガラスを簡単に分離することができるようにするため、ガラス板の間にプラスチック粉末(インタリーブ粉末(介在する粉末))を挟み込んでいる。
【0007】
このプラスチック粉末は、好ましくは、50~170μmの中位粒径(medium grain size)を持つPMMAビーズポリマーで構成されている。
【0008】
特殊な用途には、異なるプラスチック材料を使用することができる(例えば、UHMWポリエチレン又は架橋ポリスチレン)。これらのプラスチック材料は、50~200μmの中位粒径を持つ微粉末で構成されている。
【0009】
これらのプラスチック粉末には、ガラスの腐食を防ぐために、化学物質を添加することができる。主に使用されるのは粉末状の酸(例えば、アジピン酸及びホウ酸など)である。
【0010】
使用するプラスチック材料は、ガラスの欠陥及び破損を避けるため、輸送中の機械的衝撃に耐える(耐圧性及び耐摩耗性を有する)ものでなければならない。また、最終顧客の用途でビーズを容易に除去することができるようにするため、耐熱性及び耐候性が高くなければならない。インタリーブ粉末は、最終用途で全てガラスから除去される。この製品は濾過装置又は下水に送られる。
【0011】
Chemetall GmbH社は、30年以上にわたって地球規模で、上記の製品(AC Separol製品)を全ての大手の板ガラス系列企業に販売している。このAC Separol(セパロール)製品は、ガラス腐食を防ぐための、純粋なポリマー製品又は酸混合製品である。
【0012】
Chemetall GmbH社は、様々な種類のポリマー(PMMA、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド)を提供しており、ポリマー粉末がガラス表面に与える影響やガラスの腐食防止について、高い知識を持っている。そのため、適切なラボ試験法を開発してきた。
【0013】
現在、板ガラス産業で使用されているインタリーブ粉末のほとんどは、プラスチック材料からなるものである。プラスチック材料は塗布使用後に完全に除去され、環境区画に到達し、環境問題を引き起こす可能性がある。
【0014】
微細なプラスチック材料は、海洋区画にとって有害であると考えられている(マイクロプラスチックビーズ)。これらの物質を禁止する世界的な規制が始まっている。
【0015】
欧州連合(EU)では、2018年1月からこれらの物質の使用制限に関する議論(あらゆる種類の消費者用又は業務用製品に、意図的に添加されたマイクロプラスチック粒子の使用を制限する議論)が始まっている。
【0016】
2020年6月の新ガイドライン案では、ガラス板の輸送に(また産業への応用についても)マイクロプラスチックを使用することは禁止されている。
【0017】
2022年には、現在使用されているプラスチック製インタリーブ粉末は、ガラス板の輸送にはもはや使用できなくなると考えるのが妥当である。したがって、欧州連合(EU)のマイクロプラスチックガイドラインに制限されない「持続可能なインタリーブ粉末」の開発が必要であり、さらに、ガラス板を積み重ねる際にガラス板相互間に間隔をあけるための適切な方法を実現する必要がある。
【0018】
持続可能性と経済的な側面の理由から、従来のインタリーブ粉末に代わる解決策、及び、ガラス板を積み重ねる際にその相互間に間隔をあけるための関連方法を模索する努力がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】US2005/0260342A1
【特許文献2】EP0192810A2
【特許文献3】EP2940208A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の課題は、環境に優しく、適用が容易で、例えばハロゲン化有機スズのような有機スズ化合物で処理されていない、ガラス板を積み重ねる際にガラス板の相互間に間隔をあけるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
概要と詳細な説明
この課題は、ガラス板(glass sheet)を積み重ねる際にガラス板の相互間に間隔をあけるための方法であって、該方法は、
― 隣接するガラス板の間にインタリーブ粉末(interleaving powder)材料を塗布することを含み、それにより、
― 隣接するガラス板の間のインタリーブ粉末材料として、セルロース、ヘミセルロース及び/又はリグニンをベースとする、天然複合材料から選択された粉末状支持体材料を含む組成物を使用する
ことを特徴とする方法を提供することによって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
Chemetall社は数年来、持続可能なインタリーブ粉末の開発に取り組んできた。試験した材料は、天然ポリマーと化学変性ポリマーである。欧州連合(EU)のマイクロプラスチックガイドラインの新しい草案によると、現在は天然ポリマーのみが検討されている。
【0023】
天然複合材料は、果実核粉(fruit kernel flour)、セルロースベースの粉末、リグニンベースの粉末、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
インタリーブ粉末材料として、
― 天然複合材料から選択される粉末状の支持体材料を含み、
― 該天然複合材料が、果実核粉、セルロースベースの粉末、リグニンベースの粉末、又はそれらの混合物からなる群から選択されるものである、組成物を使用することから、
粉末状の支持体材料が、果実核粉、セルロースベースの粉末、リグニンベースの粉末、又はそれらの混合物からなる群から選択されるものであることと同等である。
【0025】
したがって、ガラス板を積み重ねる際にガラス板の相互間に間隔をあけるための方法は、
― 隣接するガラス板の間にインタリーブ粉末材料を塗布すること
を含む方法であり、それによって、
― 隣接するガラス板の間のインタリーブ粉末材料が、粉末状の支持体材料を含む組成物として使用され、該粉末状の支持体材料が、果実核粉、セルロースベースの粉末、リグニンベースの粉末、又はそれらの混合物からなる群から選択されるものである、
と言い表すこともできる。
【0026】
いくつかの天然素材について、独自に開発した「インタリーブ粉末のテストセット」に従って試験を実施したところ、ガラス板の輸送と保管のためのインタリーブ粉末として使用可能である。
【0027】
以下に挙げる天然の粉末が、ガラス工業用インタリーブ粉末として使用可能であることが判明している。すなわち、
― オリーブピットフラワー(olive pit flour)、アーモンドシェルパウダー(almond shell powder)、ピーチストーン(peach stone)パウダー、ピスタチオシェルパウダー、アボカドストーンパウダー、ブドウカーネル(kernel)パウダー、アプリコットストーンパウダー、アルガン(argan)シェルパウダー、コーンコブ(corncob)フラワー、クルミシェルフラワー、マニオクフラワー、グアーガム、大豆(soya)フラワー、ひよこ豆(chickpea)フラワー、又はそれらの混合物からなる群から選択される果実核粉(fruit kernel flour、フルーツカーネルフラワー)。特に好適な果実核粉は、オリーブピットフラワー、クルミシェルパウダー、アーモンドシェルパウダー、ブドウカーネルパウダー及びコーンコブフラワーから選択され、中でもオリーブピットフラワー及びクルミシェルパウダーがさらに好適である。
― セルロースベースの粉末(物理的に修飾したセルロース粒子)。ベースとなる材料は主に樹木に由来する。これらの製品はさまざまな純度及び形状のものが利用できる。セルロースベースの粉末としては、木粉ではなく、例えば木粉から作った精製セルロース材料であることが好ましい。先行技術で使用する木粉は、典型的には、後述する有機スズのハロゲン化物のような有機スズ化合物で処理している。セルロースベースの粉末として特に好ましいのは、セルロースであり、好ましくは、セルロースベースの粉末の総質量に基づいて、少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、さらに好ましくは少なくとも97質量%、最も好ましくは少なくとも99質量%の純度を有するセルロースである。
― リグニンをベースにした製品(例えば、Lignocelなど)
である。
【0028】
また、上記の粉末の組合せも適切である。
【0029】
原料は、試験を実施するために特定の粒度分布に選別する必要がある。
【0030】
さらに、インタリーブ粉末材料は、少なくとも1種の流動添加剤を含む。
【0031】
これらの粉末には、特定の特性(流動性など)を高めるために添加剤を混ぜることができる。
【0032】
これらの添加剤の量は0~5%、好ましくは0.2~0.5%の範囲であり、したがって、このような添加剤は存在することができるが、必ずしも存在するものではない。
【0033】
このような添加剤の例としては、焼成(pyrogenic)シリカ、沈降シリカ、焼成(pyrogenic)金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン)をベースとする添加剤を挙げることができる。
【0034】
修飾した材料について、下記の評価基準、すなわち、
- 耐温度性(分離と除去の容易さ)
- 耐候性試験中の挙動(分離性、防食性、洗浄性)
- 流動性
- ガラス付着性、パウダリング散粉装置での挙動
に従って試験した。
【0035】
防食抵抗(anticorrosion resistance)を確保し、ガラス腐食を防止するために、試験材料に酸を混合することができる。
【0036】
好ましくは、そのような酸は、ホウ酸、アジピン酸又はコハク酸であり得る。酸の混合範囲は、組成物の総質量に基づいて、最大80質量%、例えば5~80質量%、より好ましくは5~70質量%又は8~60質量%、最も好ましくは10~50質量%である。
【0037】
酸は、アジピン酸、コハク酸、及びホウ酸からなる群から選択する。また、酸を加えなくても防食抵抗を発揮する製品(例えばオリーブピットフラワー)もあることが判明した。
【0038】
流動添加剤の量が組成物の総質量に基づいて0~5質量%であることを考慮すると、組成物は、組成物の総質量に基づき、5~95質量%の粉末状支持体材料、及び0~5質量%の流動添加剤を含むことが好ましい。また、上記の酸が存在する場合、その酸の量が5~80質量%であることをさらに考慮すると、組成物は、組成物の総質量に基づいて、5~95質量%の粉末状支持体材料、及び0~80質量%の上記の酸を含むことが好ましい。また、上記の酸及び流動材料を考慮すると、組成物は、好ましくは、組成物の総質量に基づいて、5~95質量%の粉末状支持体材料、0~5質量%の流動添加剤、及び0~80質量%の上記の酸を含むことが好ましい。
【0039】
本発明に係る組成物は、好ましくは、組成物の総質量に基づいて、
5~95質量%の粉末状支持体材料、
0.1~5質量%の流動添加剤
を含み、
より好ましくは、組成物の総質量に基づいて、
7~95質量%の粉末状支持体材料、
0.1~3質量%の流動添加剤
を含み、
最も好ましくは、組成物の総質量に基づいて、
9.5~95質量%の粉末状支持体材料、
0.2~0.5質量%の流動添加剤
を含む。
【0040】
本明細書で上述したように、また、後述するように、組成物の、ガラス腐食に対する保護がさらなる改善が望まれる場合、該組成物に、組成物の総質量に基づいて、最大で80質量%まで、好ましくは5~80質量%、より好ましくは5~70質量%、さらに好ましくは8~60質量%、最も好ましくは10~50質量%の範囲で、上述の酸、好ましくはアジピン酸又はコハク酸を混合することができる。
【0041】
以下では、上記の範囲を考慮して、好適な組成物について説明する。好適な組成物は、例えば、15~99.9質量%の粉末状支持体材料、0.1~5質量%の流動添加剤、0~80質量%の上記の酸を含み(すべてのパーセンテージは組成物の総質量に基づく);又は、より好ましくは、30~99.9質量%の粉末状支持体材料、0.1~3質量%の流動添加剤、0~70質量%の上記の酸を含み(すべてのパーセンテージは組成物の総質量に基づく);又は、さらに好ましくは、40~99.9質量%の粉末状支持体材料、0.15~1質量%の流動添加剤、0~70質量%の上記の酸を含み(すべてのパーセンテージは組成物の総質量に基づく);又は、最も好ましくは、45~99.9質量%の粉末状支持体材料、0.2~1質量%の流動添加剤、0~60質量%又は5~60質量%又は8~60質量%の上記の酸を含む(すべてのパーセンテージは組成物の総質量に基づく)。
【0042】
前段落で述べた粉末状支持体材料は、好ましくは、セルロース、さらに好ましくは、粉末状支持体材料の総質量に基づいて、少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、さらに好ましくは少なくとも97質量%、最も好ましくは少なくとも99質量%の純度を有するセルロースのような、セルロースベースの材料から選択される;又は、好ましくは、オリーブピットフラワー、アーモンドシェルパウダー、ピーチストーンパウダー、ピスタチオシェルパウダー、アボカドストーンパウダー、ブドウカーネルパウダー、アプリコットストーンパウダー、アルガンシェルパウダー、コーンコブフラワー、クルミシェルフラワー、マニオクフラワー、グアーガム、大豆フラワー、ひよこ豆フラワー又はそれらの混合物からなる群から選択される果実核粉から選択され、特に好ましくは、オリーブピットフラワー、クルミシェルパウダー、アーモンドシェルパウダー、ブドウカーネルパウダー及びコーンコブフラワー、及び、それらの混合物から選択され、中でも、オリーブピットフラワー及びクルミシェルパウダー及びそれらの混合物から選択され、オリーブピットフラワーがさらに好ましい。もちろん、混合物、すなわち、上記のセルロースベースの材料と果実核粉との混合物も、この方法に使用することができる。また、前段落で説明した流動添加剤は、焼成シリカ、沈降シリカ、又は酸化アルミニウム及び酸化チタンのような焼成金属酸化物、及びそれらの混合物から選択することが好ましく、さらには、焼成シリカ及び焼成酸化アルミニウム及びそれらの混合物から選択することがより好ましい。また、前段落で説明した酸は、好ましくはホウ酸、アジピン酸及び/又はコハク酸から、さらに好ましくはアジピン酸及びコハク酸並びにそれらの混合物から、さらに好ましくはアジピン酸から選択する。なお、前段落で述べた量的範囲はいずれも、好ましくは本段落で列挙した好適な成分と組み合わせることができる。
【0043】
粉末支持体材料は天然材料であり、したがって、有機スズ化合物、特にメチルスズトリクロリド、ジメチルスズジクロリド、トリメチルスズクロリド及びそれらの混合物のような、有機スズハロゲン化物を含浸したり、その他の方法でも関連付けしたりしないことが好ましい。
【0044】
組成物に使用する上記の成分のすべては、合計で組成物の100質量%になることが好ましい。
【0045】
前述したように、試験を実施するためには、原材料を特定の粒度分布に選別する必要がある。
【0046】
粉末状支持体材料及び流動添加剤の中位(メディアム、medium)粒子径(レーザー回折法で、例えば、Malvern Panalytic社製のMalvern Mastersizer 3000を使用して測定した体積メディアン(median)粒子径Dv(50))は、50~250μm、より好ましくは60~210μm、最も好ましくは80~150μmであることが好適である。
【0047】
粉末状支持体材料と流動添加剤は、50~250μm、より好ましくは60~210μm、最も好ましくは80~150μmの特定の粒子径に篩分けする。
【0048】
本発明のさらに別の態様は、積み重ねたガラス板と、積み重ねたガラス板の間に位置するインタリーブ粉末との組合せであって、該インタリーブ粉末が本発明に係る組成物を含むことを特徴とする組合せである。
【0049】
本発明の別の態様は、ガラス板の積み重ねの際にガラス板の相互間に間隔をあけることによって、上述の積み重ねたガラス板とインタリーブ材料との組合せを製造するための方法であって、該方法は、
― 隣接するガラス板の間にインタリーブ粉末を塗布すること
を含み、これにより、
― 隣接するガラス板の間のインタリーブ粉末材料として、上記の天然複合材料から選択される粉末状支持体材料を含む組成物を使用する
方法である。
【0050】
さらなる態様は、ガラス、コーティングされていない板ガラス及び防食コーティングをコーティングされたガラス(スパッタガラス及びラッカーガラス)を保管及び輸送するために、ガラス板の積み重ねの際にガラス板の相互間に間隔をあける上述の方法を使用する方法である。
【0051】
核粉(kernel flours)をベースにした製品(例えば、オリーブピットフラワー及びコーンコブフラワー)は、コーティングされていない板ガラスを保管及び輸送するのに使用することができる。これらの製品は、防食コーティング(例えばAC Resistain TC)をコーティングされたガラスにも使用することができる。
【0052】
セルロースベースの粉末(例えば、Arbocelタイプ、Vivapur及びVivapur球状タイプ)をベースにした製品は、コーティングされたガラス(スパッタガラス及びラッカーガラス)に使用することができる。このような製品を酸(アジピン酸)と混合したものは、コーティングされていない板ガラスを保管及び輸送するのにも使用することができる。
【0053】
本発明について、実施例によってさらに説明する。これらは、いかなる方法でも本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0054】
製品説明
製品タイプ1 これは必要な粒度まで粉砕した果実の核(果実核粉)で構成されている。
【0055】
そのような製品の例には、オリーブ、クルミ、コーンコブ(トウモロコシの芯)、アーモンド及びブドウの核(kernels)がある。
【0056】
オリーブピット及びクルミ核により、良好な結果が得られた。
【0057】
これらの製品は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンをベースとした天然複合材料で構成されている。
【0058】
製品タイプ2 これは木材又は植物繊維から生成され精製されたセルロース粒子で構成されている。
【0059】
このような製品は、例えばレッテンマイヤー社から入手可能である(Arbocelタイプ、Vivapurタイプ、Vivaspheresタイプ、Lignocelタイプ、Hewetenタイプ)。Arbocelタイプの製品で良好な結果が得られている。
【0060】
これらの製品は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンをベースとした天然複合材料で構成されている。
【0061】
これらの製品の粒度範囲は以下のとおりである。
【0062】
中位(medium)粒子径:50~250μm、好ましくは:80~150μm。好ましくは、40μm未満の微細部分及び300μmを超える過大サイズ部分は5%未満である。粒子径の確認は、レーザーシステム、ふるい分析、又は顕微鏡分析により行う。特に好適なのは、マルバーン社製のMalvern Mastersizer3000を用いたレーザー回折分析である。
【0063】
これらの粉末には、特定の特性(例えば流動性)を高めるために添加剤を混合することができる。これらの添加剤の量は0~5%、好ましくは0.2~0.5%の範囲である。このような添加剤の例としては、焼成シリカ、沈降シリカ又は焼成金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン)をベースとする添加剤であることができる。
【0064】
ガラス貯蔵及び輸送用のインタリーブ粉末ベースポリマーは、次の特性を備えている必要がある。すなわち、
・ 耐圧/耐温度性に優れる。
・ 耐候性に優れる。
・ 保管及び輸送後の分離挙動に優れる。
・ 分離後の粉末は、加圧空気で吹き飛ばすか、内部洗浄法で良好に除去することができる。
・ 一般的なパウダリング散粉装置(スプレーライン又はローラーラインなど)で製品を塗布した後の、製品の分布とガラス付着性が良好である。
・ 安全性を考慮した粉塵挙動が低い。
・ ガラス腐食に対する良好な保護を確保するため、無機酸又は有機酸との混和性を有する。
【0065】
好ましくは、そのような酸は、ホウ酸、アジピン酸又はコハク酸である。酸の混合範囲は、組成物の総質量に基づいて5~80%、好ましくは10~50%である。
【0066】
これらの特性を評価するための標準化された試験は存在しない。そこで、新製品は独自に開発した方法に従って試験した。
【0067】
耐圧/耐温度性
この試験は、特殊なクランプ装置内にガラス板を設置して実施する。試験するガラス試料には、手作業で又は散粉装置を用いて100~1000mg/m2の量で粉末を振りかける。これを2枚目のガラス試料で覆う。サンドイッチにした試料をクランプ装置の中に入れ、500N~2000N(好ましくは800N)の範囲の大きな力を加える。試験ユニットは80~180℃(好ましくは80~120℃)のオーブン内に2~24時間(好ましくは4時間)入れておく。試験終了後、試験ユニットを取り外す。サンドイッチにしたガラスが、容易に分離できるかどうか、手動でチェックする。また、加圧空気を吹き付ける方法と、ラボ用洗濯機内で洗浄する方法によって、除去性能をチェックする。(60℃で20分間、脱塩水)。
【0068】
耐候性試験
この試験は、特殊なクランプ装置内にガラス板を設置して実施する。試験ガラスユニットは最低3枚のガラス板からなる。ガラス腐食をチェックするガラス板は、サンドイッチ状にしたとき、その中央に置く。ガラス試料には、手作業で又は散粉装置を用いて100~1000mg/m2の量で粉末を振りかける。サンドイッチにした試料をクランプ装置の中に入れ、500N~2000N(好ましくは800N)の範囲の大きな力を加える。試験ユニットは耐候性チャンバー内に置く。さまざまな耐候性試験を実施することができる(相対湿度92%で60℃、試験期間14日間が好ましい)。試験終了後、試験ユニットを取り外す。サンドイッチにしたガラスが、容易に分離できるかどうか、手動でチェックする。また、加圧空気を吹き付ける方法、及びラボ用洗濯機内で洗浄する方法によって、除去性能をチェックする。(60℃で20分間、脱塩水)。洗浄後、中間のガラス試料について、ガラス腐食のチェックを行う。ガラス腐食は、昼光条件下又はエッジ照明下で目視検査によって評価する。
【0069】
散粉装置内での塗布
散粉装置内の挙動は、市販のローラー又はスプレー装置(例えば、Grafix又はGrafotec)で行う。ガラス試料はベルトコンベヤーで供給する。均質性、粉塵挙動、及びガラス付着性について検査し照査する。
【0070】
流動性
流動性は、フォードカップ(Ford Cup)による試験での流動挙動によってチェックする。主な流動挙動と流動時間とが記録できる。
【0071】
すべての試験を実施した結果、製品タイプ1及び2をベースとする製品が優れた結果を示すことが判明した。その結果を次の表に要約する。
【0072】
【0073】
いずれの製品タイプも、温度/圧力試験で優れた挙動を示している。
【0074】
耐候性試験では、洗浄性は、PMMAビーズポリマーと比較してそれほど良くはないが、それでもなお十分な結果である。しかし、分離機能は良好に機能している。
【0075】
どちらの製品も、ガラス産業で使用している市販の散粉装置で塗ることができる。
【0076】
ガラス付着力はPMMAベースのポリマーに比べるとやや低いが、それでも十分である。
【0077】
どちらのタイプの製品も、流動性は範囲内である。
【0078】
どちらのタイプの製品も、酸(好ましくはアジピン酸又はコハク酸)と混合することができ、その結果、ガラス腐食に対して十分な保護を実現した製品が得られる。混合比率は、5~80%(好ましくは10~50%)の範囲にあることが好ましい。
【国際調査報告】