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特表2024-507990セントラルレベル追跡アーキテクチャにおいてセンサの不確かさをモデリングする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】セントラルレベル追跡アーキテクチャにおいてセンサの不確かさをモデリングする方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/86 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G01S13/86
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552196
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2022057075
(87)【国際公開番号】W WO2022200188
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21164726.8
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21184188.7
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322007626
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートナマス・モビリティ・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】バッツァーナ・ピエルジョバンニ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AF03
5J070AF04
5J070AH19
5J070AK40
5J070BD08
(57)【要約】
セントラルレベル追跡アーキテクチャにおいてセンサの不確かさをモデリングする方法
本特許は、少なくとも1つのセンサ物体に関して複数のセンサ検出を融合するセントラルレベル追跡アーキテクチャシステムにおいてセンサの不確かさをモデリングする方法に関する。センサにより取得された検出は少なくとも1つのセンサ物体の少なくとも1つの次元に対応する。各次元についてセンサ検出誤差所定量を設定することにより、各センサに関して各次元について所定の連関ゲート最小閾値を設定し、センサ検出誤差所定量に基づいて、距離の関数として、各センサ検出誤差の増加をモデリングする。所定の連関ゲート最小閾値を超える各センサ検出誤差をモデリングに従って増加させることにより、連関ゲートを計算する。各センサに関して各センサ検出と連関する共分散行列を計算する。最後に、全てのセンサに対応する複数の共分散行列を保存し、複数のセンサ検出を融合するためにセントラルレベル追跡システムに対して利用可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのセンサ物体(O)に関して複数のセンサ検出を融合するセントラルレベル追跡アーキテクチャシステムにおいてセンサの不確かさをモデリングするコンピュータ実装方法であって、各前記少なくとも1つのセンサ物体(O)は各前記センサ各々から各々の距離(d)に位置し、前記距離(d)は各前記センサ各々の主軸に関して計算される方法において、
現在の観測シーケンスにおいて実行される以下のステップ:
S1.1.各前記センサに関して前記少なくとも1つのセンサ物体(O)の前記センサ検出を取得して保存するステップであって、各前記センサ検出は前記少なくとも1つのセンサ物体(O)の少なくとも1つの次元に対応し、各前記センサ検出は各々のセンサ検出誤差を含むステップ;
S1.2.各前記センサに関して各次元についてセンサ検出誤差所定量を設定することにより、各前記センサに関して各次元について所定の連関ゲート最小閾値を設定するステップ;
S1.3.前記距離(d)の関数として、前記センサ検出誤差所定量を用いて、各前記センサに関して各前記センサ検出誤差の増加をモデリングするステップ;
S1.4.前記所定の連関ゲート最小閾値を超える各々の前記センサ検出誤差をモデリングに従って増加させることにより、各前記センサに関して各次元に対応する各前記センサ検出について連関ゲートを計算するステップ;
S1.5.各前記センサに関してスケーリング手法を用いて各前記センサ検出と連関する共分散行列を計算するステップ;および
S1.6.全ての前記センサに対応する複数の共分散行列を保存し、前記現在の観測シーケンスの前記複数のセンサ検出をその直前の観測シーケンスの少なくとも1つの融合物体(FO)と融合するために前記セントラルレベル追跡システムに対して前記複数の共分散行列を利用可能にするステップであって、各前記少なくとも1つの融合物体(FO)は各前記少なくとも1つのセンサ物体(O)に対応するステップを備え、
各前記共分散行列が、各次元に対応するその対応する前記センサの不確かさの形状を示す
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
S2.5.各前記共分散行列についてマッチング楕円体を、各々の前記共分散行列のサイズに比例して、各次元に対応する前記連関ゲートのサイズに比例して、グラフィック表示するステップ
をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサ物体(O)の位置である1つの次元について実行される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのセンサ物体(O)の速度であるさらなる次元について実行される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのセンサ物体(O)の加速度であるさらなる次元について実行される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの次元の測定が同じタイプのセンサによるセンサ検出を取得することにより行われる請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの次元の測定が異なるタイプのセンサによるセンサ検出を取得することにより行われる請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記センサ検出が少なくとも1つのカメラおよび少なくとも1つのレーダにより取得される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
本発明の1つまたは複数のステップの表示を極座標またはデカルト座標の何れかで行い、各ステップ各々の結果を極座標からデカルト座標へとまたはデカルト座標から極座標へと各々変換可能である請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのコンピュータ処理装置コアを有し、少なくとも1つの揮発性メモリRAMと少なくとも1つの不揮発性メモリROMとを備えるデータ処理ハードウェアにおいて、請求項1~9の何れか1項に記載のセンサの不確かさをモデリングするコンピュータ実装方法を実行するように構成されることを特徴とするデータ処理ハードウェア。
【請求項11】
センサ処理装置とは別体の処理装置であって、前記センサ処理装置と通信プロトコルにより通信する請求項10に記載のデータ処理ハードウェア。
【請求項12】
1つまたは複数のセンサ処理装置に含まれている請求項10に記載のデータ処理ハードウェア。
【請求項13】
プログラムが請求項10~12の何れか1項に記載のデータ処理ハードウェアにより実行されると前記データ処理ハードウェアに請求項1~9の何れか1項に記載のコンピュータ実装方法のステップを実行させる命令を備えることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数センサ追跡システムにおいて異なるタイプのセンサによる検出を融合することに関する。特に、本発明は、セントラルレベル追跡システムアーキテクチャにおいてセンサの不確かさをモデリングすることに関する。
【0002】
本発明において用いられる用語
測定、別称、検出またはセンサ検出は、複数センサ追跡システムにおけるセンサにより現在の観測シーケンスにおいて受信される値に対応するデータである。
【0003】
センサ物体、別称、目標物体は、1つまたは複数のセンサにより検出される現実世界の物体である。
【0004】
融合物体は、測定の融合がその直前の観測シーケンスにおいて行われたセンサ物体である。
【0005】
各センサ物体についての目標位置は、現在の観測シーケンスにおける各々のセンサ物体の推定位置である。
【背景技術】
【0006】
複数センサ追跡システムにおいて異なるタイプのセンサによる検出を融合することは、センサ物体のカバレッジがより広くなり、目標物体のその後の位置の推定がより正確になるという有利な点を有することが先行技術により知られている。
【0007】
目標物体は、単一目標物体または複数目標物体であってよい。
【0008】
セントラルレベル追跡アーキテクチャにおいて、センサにより取得された全ての検出は、各検出についてその対応する追跡を継続するセントラル追跡システムに送信される。
【0009】
セントラルレベル追跡アーキテクチャの理論的に有利な点は、検出に含まれる全ての情報を最大限に活用することである。
【0010】
複数センサ推定の1つの知られている問題はいわゆるデータ連関問題であり、基本的には、どの既存の融合物体を、複数センサのうちの特定のセンサに由来するどの新規測定と連関させるべきかを知ることに関する。
【0011】
非特許文献1において指摘されているように、「行われた多数の測定は、観測されている基礎となる状態と正しく連関させる必要がある。これがデータ連関問題である。データ連関問題は、データを検証すること(例えば、エラーではないことまたはクラッタから生じているのではないことを確実にすること)、(特に、複数目標追跡課題において)正しい測定を正しい状態と連関させること、および新規追跡または状態を必要に応じて初期化することの問題を含む。従来の追跡が実際に測定位置の不確かさに関係する一方で、データ連関は測定出所の不確かさに関係する。」
【0012】
先行技術の不利な点
周知であるセンサ不確かさを取り扱う方法の1つは、センサ誤差の「データドリブンモデリング」に基づいており、つまり、測定行動の実行、センサからのデータの抽出、および不確かさを決定するためのフィッティング手法の使用である。
【0013】
このアプローチは2つの不利な点を有する。一方では、センサの視野に関してデータを収集するには特別なドライブおよび測定セッションが必要であるため、一般に高価であり、他方では、保存に大きいメモリを必要とする不確かさのマップが生じ、組み込みシステムにとってはその性能を低下させるため、問題である。
【0014】
先行技術文献から知られている他のアプローチは、センサにより供給される情報を直接的に使用することである。このアプローチは、センサにより提供されるデータに関して十分な統計情報をセンサが供給する場合にのみ適用可能である。このことは、実際上センサメーカがこのタイプの情報を提供しない場合には通常当てはまらないため、また不利な点である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Hugh Durrant-Whyte, “Multi Sensor Data Fusion”, Australian Centre for Field Robotics, The University of Sydney, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、セントラルレベル追跡アーキテクチャにおいてセンサ不確かさをより正確にモデリングすることであり、つまり、異なるセンサについて連関ゲートをより高速かつより安価に定義することであり、これにより、追跡性能が改善され、異なるセンサについて連関ゲートがより良好に定義される。本発明の目的は、センサ検出の融合に役に立つセンサによる測定誤差の記述についてより良好なツールを意思決定者に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本課題を解決するために、発明者は、本発明の第1態様において、少なくとも1つのセンサ物体に関して複数のセンサ検出を融合するセントラルレベル追跡アーキテクチャシステムにおいてセンサの不確かさをモデリングするコンピュータ実装方法であって、各少なくとも1つのセンサ物体は各センサ各々から各々の距離に位置し、距離は各センサ各々の主軸に関して計算される方法において、
現在の観測シーケンスにおいて実行される以下のステップ:
S1.1.各センサに関して少なくとも1つのセンサ物体のセンサ検出を取得して保存するステップであって、各センサ検出は少なくとも1つのセンサ物体の少なくとも1つの次元に対応し、各センサ検出は各々のセンサ検出誤差を含むステップ;
S1.2.各センサに関して各次元についてセンサ検出誤差所定量を設定することにより、各センサに関して各次元について所定の連関ゲート最小閾値を設定するステップ;
S1.3.距離の関数として、センサ検出誤差所定量を用いて、各センサに関して各センサ検出誤差の増加をモデリングするステップ;
S1.4.所定の連関ゲート最小閾値を超える各々のセンサ検出誤差をモデリングに従って増加させることにより、各センサに関して各次元に対応する各センサ検出について連関ゲートを計算するステップ;
S1.5.各センサに関してスケーリング手法を用いて各センサ検出と連関する共分散行列を計算するステップ;および
S1.6.全てのセンサに対応する複数の共分散行列を保存し、現在の観測シーケンスの複数のセンサ検出をその直前の観測シーケンスの少なくとも1つの融合物体と融合するためにセントラルレベル追跡システムに対して複数の共分散行列を利用可能にするステップであって、各少なくとも1つの融合物体は各少なくとも1つのセンサ物体に対応するステップを備える方法を案出した。
【0018】
各共分散行列は、各次元に対応するその対応するセンサの不確かさの形状を示す。
【0019】
本発明の第2態様において、少なくとも1つのコンピュータ処理装置コアを有し、少なくとも1つの揮発性メモリRAMと少なくとも1つの不揮発性メモリROMとを備えるデータ処理ハードウェアにおいて、任意の好ましい実施形態によるセンサの不確かさをモデリングするコンピュータ実装方法を実行するように構成されることを特徴とするデータ処理ハードウェアが提供される。
【0020】
本発明の第3態様において、プログラムがデータ処理ハードウェアにより実行されるとデータ処理ハードウェアに任意の好ましい実施形態によるコンピュータ実装方法のステップを実行させる命令を備えることを特徴とするコンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0021】
発明の有利な点
本発明の主な有利な点は以下の通りである。
本発明の方法は、先行技術と比較して、センサにより供給される測定の不確かさをより高速かつより安価に推定することを可能にする。不確かさの推定が改善されることにより、センサによる誤差の補正を改善するためのより多くのツールが意思決定者に提供され、融合における各センサの特徴がより良好に活用される。
【0022】
本発明の方法はロバストであり、大きいメモリまたは大きい処理能力を必要とすることなく、センサメーカからの十分な統計情報を必要とすることなく、組み込みシステムに簡単にフィットすることが可能である。
【0023】
本発明の方法は、センサ物体が移動中であって異なるタイプのセンサのうちの少なくとも1つがセンサ物体の動きを検出する、任意の技術分野において用いることができる。例えば、本方法は、自動車産業または土工産業または建設産業において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、極座標表示を用いて連関ゲートを計算する原理を示し、本発明の理解を容易にするため、少なくとも1つの融合物体FOの位置が平面において2次元表示されている。
図2図2は、デカルト座標表示を用いて連関ゲートを計算する原理を示し、本発明の理解を容易にするため、少なくとも1つの融合物体FOの位置が平面において2次元表示されている。
図3A図3Aは、デカルト座標表示を用いて車両の1つのレーダおよび1つのカメラについて連関ゲートを作成する原理を示す。
図3B図3Bは、デカルト座標表示を用いて車両の1つのレーダおよび1つのカメラについての連関ゲートを作成する原理を示す。
図4図4は、カメラおよびレーダについての共分散行列のマッチング楕円体を示し、本発明の理解を容易にするため、少なくとも1つの融合物体FOの位置が平面において2次元表示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る方法は、単一のセンサ物体または複数のセンサ物体に関して、センサにより取得されたセンサ検出を融合するセントラルレベル追跡アーキテクチャシステムにおいて用いられる。
【0026】
本発明の方法は、センサを備える任意の陸上車両に適用することができ、陸上車両は自車両と称される。自車両は、例えば、乗用車、トラック、トレーラロール、バス、クレーン、土工機械、トラクタ、自動二輪車、二輪車等である。
【0027】
自車両は、自動または有人であってよい。
【0028】
簡潔のため、実施形態の詳細な説明および例示を通して、自車両の各センサ各々から距離dに位置する単一のセンサ物体Oであって、距離dは各センサ各々の主軸に関して計算され、各センサ検出はセンサ物体Oの少なくとも1つの次元に対応する、単一のセンサ物体Oが言及されるどの場合においても、単一のセンサ物体Oについて開示される教示を準用して、全てのセンサ物体Oに適用すると理解されるべきである。
【0029】
本発明に係る方法は、少なくとも2つのセンサを用いることを必要とするのは、単一のセンサにより取得されるセンサ検出においては融合は存在しないからである。
【0030】
簡潔のため、本明細書を通して、「センサ」という用語は、任意の実施形態において本発明の方法を実施するためにセンサ検出を供給するように選択された自車両のセンサを示す。自車両には、本発明に関連しない他のセンサが設けられてもよい。
【0031】
本発明のセンサ物体Oは移動中である。自車両は、一般に、移動中であるが、その一方、例えば、交通信号灯での待機時等のように、一時的に停止している場合がある。
【0032】
各センサ物体Oは、技術、物体の位置およびセンサ搭載位置に応じて、それ自体に固有の形状を有する。
【0033】
センサは、各センサ物体Oの移動を追跡し、各センサ各々の視野FOV内に位置する各センサ物体Oについて少なくとも1つの次元を測定する。本発明の方法は、2つまたは3つ以上のセンサの視野FOVに同時に位置するセンサ物体Oに適用する。
【0034】
測定は、各センサ各々のメーカの仕様に応じて、センサにより行われる。
【0035】
本発明の適用に関わらず、センサの測定は、センサ融合のためのセントラルレベル追跡システムアーキテクチャにおける1つまたは様々な融合ユニットに送信される。
【0036】
センサの測定は、本発明の全てのステップを実行するデータ処理ハードウェアにより取得される。取得されたセンサの測定は、「検出」または「センサ検出」とも別称され、各々のセンサにより取得された値のデータを意味し、このデータは、その後、開示されているように、本方法のステップにおいてデータ処理ハードウェアにより処理される。
【0037】
本発明に係る方法は6つのステップを備える。全てのステップは、現在の観測シーケンスにおいてデータ処理ハードウェアにより実行される。
【0038】
その直前の観測シーケンスにおいて、特定のセンサ物体Oに対応する少なくとも1つの融合物体FOが計算されたものと理解されるべきである。
【0039】
第1ステップにおいて、各センサ物体Oに関して各センサによるセンサ検出を現在の観測シーケンスにおいて取得して保存し、各センサ検出は少なくとも1つのセンサ物体Oの少なくとも1つの次元に対応する。各センサ検出は各々のセンサ検出誤差を含む。
【0040】
第2ステップにおいて、距離dの関数として、各センサに関して各次元についてセンサ検出誤差所定量を設定することにより、各センサに関して各次元について所定の連関ゲート最小閾値を設定する。
【0041】
第3ステップにおいて、距離dの関数として、センサ検出誤差所定量を用いて、各センサに関して各センサ検出誤差の増加をモデリングする。
【0042】
不確かさのモデリングは、各センサおよび各センサ物体Oについて独立して行われ、つまり、モデリングのパラメータは、
センサについては、
全てのセンサについて同じパラメータまたは
一部もしくは全てのセンサについて異なるパラメータの何れかであってよく、
センサ物体Oについては、
全てのセンサ物体Oについて同じパラメータまたは
一部もしくは全てのセンサ物体Oについて異なるパラメータの何れかであってよい。
【0043】
不確かさのモデリングは、センサメーカが提供する情報を用いて行われ、この情報から、センサ誤差記述に用いるべき標準偏差が推定される。
【0044】
次に、第4ステップにおいて、所定の連関ゲート最小閾値を超える各々のセンサ検出誤差をモデリングに従って増加させることにより、各センサに関して各次元に対応する各センサ検出について連関ゲートを計算する。
【0045】
増加の上限値は、それに対応する技術仕様に記載されている各センサの測定の限界値により定義される。
【0046】
連関ゲート、別称、検証ゲートは、現在の観測シーケンスの各センサ検出およびその直前の観測シーケンスの融合物体FOの周辺の観測領域である。各センサ検出は、それに対応するセンサ物体Oの目標位置を示す。
【0047】
ゲートのサイズは、欠損連関の確率に対する偽連関の確率の評価に基づき先行技術文献から利用可能な基準を用いて、つまり、カイ二乗分布を使用して設定される。ゲートのサイズは、間接的にではあるものの融合アルゴリズム以外により、ステップ2および3においてモデリングされたセンサ誤差のサイズおよび形状に大きく影響を及ぼされる。
【0048】
先行技術文献により周知であるように、センサ不確かさのモデルは、測定を最良に用いることを可能とするために重要である。
【0049】
極端な例として、2つのセンサによる検出を融合する場合であって、1つのセンサはX方向の位置測定が非常に精度が高くY方向の位置測定が非常に不良であり、2つ目のセンサは反対の特性、つまり、Y方向において非常に精度が高くX方向において非常に不良である場合が考えられる。用いられる融合方法はカルマンフィルタ(例えば、https://en.wikipedia.org/wiki/Kalman_filterを参照)であり、ここでは既知であると仮定される関連する方程式に基づくものと仮定すると、その結果得られる推定位置は第1センサのX位置および第2センサのY位置を多くの場合用いる。この結果を融合アルゴリズムから得るために、そして、カルマンフィルタの場合に限定しない場合、測定誤差の正確な記述を融合アルゴリズムに供給することが重要である。また、同じ記述が連関ゲート定義に影響を及ぼすのは、センサによる値がより高い精度ならばより厳密な連関基準となりより低い精度ならばより脆弱な連関基準となることに起因する。このことは、上記第5ステップにおいてカイ二乗分布が用いられる場合に反映される。
【0050】
第5ステップにおいて、各センサに関してスケーリング手法を用いて各センサ検出と連関する共分散行列を計算する。
【0051】
共分散行列は、センサの視野FOVにおける距離dに依存し、スケーリングによる、各々の連関ゲートについて計算可能な各次元についての関数である。スケーリングは、様々な式を用いて行うことができ、非限定的な例は、距離と角度に関する線形補間である。
【0052】
共分散行列は、各次元に対応するその対応するセンサの不確かさの形状を示す。
【0053】
第6ステップにおいて、全てのセンサに対応する複数の共分散行列を保存し、現在の観測シーケンスの複数のセンサ検出をその直前の観測シーケンスの少なくとも1つの融合物体FOと融合するためにセントラルレベル追跡システムに対して複数の共分散行列を利用可能にし、各少なくとも1つの融合物体FOは各少なくとも1つのセンサ物体Oに対応する。
【0054】
その直前の観測シーケンスにおける融合物体の連関ゲートまたはその各々の連関ゲートと現在の観測シーケンスの各センサ検出の連関ゲートまたはその各々の連関ゲートとのオーバラップは、各々のセンサ検出が検証され、これにより、1つまたは複数の融合物体FOと融合されてよいことを示すものと見なされる。本発明はセンサ検出の不確かさを決定するためのより良好なツールを提供するに過ぎないため、検証およびセンサ検出融合の規則は、本発明の範囲外である。
【0055】
開示される本発明の方法は、センサにより供給される測定の不確かさを推定するための、単純ではあるものの量的で、先行技術と比較して、より高速かつより安価な方法であるという有利な点を有するのは、本方法により不確かさの数式として出力される共分散行列は、理論およびセンサメーカのセンサ文書資料において利用可能なデータに基づいていることから計算を行う時間が先行技術よりも短期間であり、他方では、センサ正確度を有する長期間で複雑で高価な測定行動を必要としないからであり、共分散行列および本方法は先行技術の方法よりも安価である。
【0056】
不確かさの記述を改善することにより、センサの検出の使用を改善して融合において各センサの特徴をより高速かつより安価に活用するためのより多くのツールが意思決定者に提供される。
【0057】
本発明の方法は、ロバストであり、大きいメモリまたは大きい処理能力を必要とすることなく、組み込みシステムに簡単にフィットすることが可能であるのは、共分散行列の計算は大きいメモリまたは大きい処理能力を必要としないからである。また、本発明の方法を用いることにより、センサメーカからの十分な統計情報はもはや必要とされないのは、センサデータシートに記載されている簡略化された情報セットがあればセンサ融合の目的にかなう記述を供給するために十分な共分散行列を計算するのに通常足りるからであり、これにより、センサメーカが誤差に関して十分な情報を提供していないようなセンサについて、本発明は特に有利となっている。
【0058】
好ましい実施形態において、本方法は第5ステップのサブステップをさらに備える。
第5ステップにおいて、各共分散行列を、マッチング楕円体を用いて、各々の共分散行列のサイズに比例して、各次元に対応する連関ゲートのサイズに比例して、グラフィック表示する。
【0059】
各マッチング楕円体は各次元に対応するその対応するセンサの不確かさの形状を示し、楕円体のサイズが大きいほど、それに対応して、各々のセンサの検出の不確かさの程度は大きくなる。
【0060】
複数の共分散行列をマッチング楕円体としてグラフィック表示することにより、本発明は、不確かさを低減させるためにどのセンサおよび/またはセンサの視野FOVのどの領域が意思決定者によるアクションを必要とするかについて、グラフィック全体像を有することが意思決定者に可能になるというさらなる有利な点を有する。実装例および図4は、そのような全体像を概略的に示す。
【0061】
複数の共分散行列のグラフィック表示を用いる本発明の方法またはそれを用いない本発明の方法は、様々な数の次元に適用可能であり、それらのうち3つの好ましい実施形態が以下に示される。
【0062】
1つの好ましい実施形態において、1つの次元のみ、つまり、センサ物体Oの位置が存在する。グラフィック表示の簡潔のため、全ての図はセンサ物体Oの位置についての本方法の適用を示している。
【0063】
不図示である別の好ましい実施形態において、2つの次元、つまり、センサ物体Oの位置および、簡潔のため、センサ物体Oの速度と称される、自車両に対するセンサ物体Oの相対速度が存在する。
【0064】
不図示である別の好ましい実施形態において、3つの次元、つまり、センサ物体Oの位置、速度および加速度が存在する。
【0065】
次元のタイプおよび数の選択には、それに対応する変数を推定するための特定の必要性が考慮に入れられる。例えば、自車両が土工機械であって、このタイプの機械は乗用車と比較して非常に移動が緩慢であることが分かっている場合、センサ物体Oの加速度を用いる必要はなく、状況によっては、速度も用いる必要はない。
【0066】
これとは対照的に、自車両が路上走行車両である場合、特に、自車両が所定の速度を超えて、例えば、60km/hを超えて移動している時にセンサの不確かさを低減する必要がある場合、センサ物体Oの位置、速度および加速度を本方法において用いるために選択することは好都合である。
【0067】
好ましい実施形態において、センサは同じタイプからなり、つまり、レーダセンサ、カメラ、超音波センサ、ライダセンサ等からなる。
【0068】
別の好ましい実施形態において、センサは2つまたは3つ以上のタイプからなり、つまり、レーダセンサおよびカメラ、レーダセンサおよび超音波センサ、レーダセンサおよびライダセンサ、カメラ、レーダセンサおよび超音波センサ等からなる。
【0069】
センサのタイプの数および組み合わせは、自車両のセンサの既存の構成および意思決定者が行うセンサの選択により定義される。
【0070】
不図示である1つの例において、いくつかの自車両には単一のタイプのセンサ、例えば、カメラが設けられる。この場合、一部または全てのカメラが本発明の方法の適用に用いられる。
【0071】
不図示である他の例において、他の自車両には3つのタイプのセンサ、つまり、カメラ、レーダセンサおよび超音波センサが設けられる。
【0072】
全ての例において、本方法は、車両の全てのセンサまたは一部のセンサのみに適用することができる。
【0073】
自車両の一部のセンサのみに本発明の方法を用いることは、例えば、自車両に関して所定の領域、例えば、ブラインドスポットから物体を検出するセンサの不確かさを低減させる必要があることを意思決定者がわかっている場合に、有用である。
【0074】
別の好ましい実施形態において、センサ検出が少なくとも1つのカメラおよび少なくとも1つのレーダにより取得される。この実施形態は実装例において示され、図3A、3Bおよび4に図示されている。
【0075】
センサの数およびタイプの複数の組み合わせならびに各センサにより測定される次元の数およびタイプの複数の組み合わせを可能とすることにより、本発明は、自車両のセンサの不確かさを低減する各特定の必要性に適合し、自車両のセンサの既存の構成に適合するという有利な点を有する。
【0076】
本発明は、基準系、つまり、極座標系またはデカルト座標系から独立している。
【0077】
任意の好ましい実施形態による方法の何れかのステップにおいてなされる全ての計算は、極座標またはデカルト座標の何れかにおいて行うことができる。
【0078】
必要に応じて、本方法の何れかのステップの結果および本方法自体の結果は、極座標からデカルト座標へと変換可能であり、その逆方向の変換も可能である。
【0079】
極座標表示を用いるかまたはデカルト座標表示を用いるかの選択は、どちらの基準系が計算をより簡略化し、どちらの基準系が融合に用いられるかに依存する、便宜な選択である。
【0080】
例えば、追跡システムはデカルト基準系を用いるように構成されていると仮定すると、その一方で、グローバルの不確かさは動径および角度の不確かさに当然分割されることから、レーダの計測の不確かさは極座標においてより単純に記述される。この例については、主基準システムはデカルト基準系であり、レーダの測定の不確かさは極座標からデカルト座標へと変換される。
【0081】
図1は、1つの次元のみ、つまり、位置のみが存在する実施形態について極座標において連関ゲートを計算する原理を概略的に示す。図1から、径方向の距離が距離dであり、方位角がセンサの主軸と各々のセンサの基準方向との間の角度θであることを見ることができる。従って、図1において例示される位置pは(d,θ)と書かれる。
【0082】
図2は、同じ実施形態について、デカルト座標x,yにおける連関ゲートの同じ計算を概略的に示し、簡潔のため、基準方向はy軸である。図2から、位置pはp(x,y)と書かれることを見ることができる。
【0083】
本発明の第2態様において、少なくとも1つのコンピュータ処理装置コアを有し、少なくとも1つの揮発性メモリRAMと少なくとも1つの不揮発性メモリROMとを備えるデータ処理ハードウェアにおいて、任意の好ましい実施形態によるセンサの不確かさをモデリングするコンピュータ実装方法を実行するように構成されることを特徴とするデータ処理ハードウェアが提供される。
【0084】
好ましい実施形態において、データ処理ハードウェアはセンサ処理装置とは別体の処理装置であって、センサ処理装置と通信プロトコルにより通信する。
【0085】
別の好ましい実施形態において、データ処理ハードウェアは1つまたは複数のセンサ処理装置に含まれ、本発明の方法に加えて、センサ処理装置の通常のタスクを実行する。
【0086】
本発明の第3態様において、プログラムがデータ処理ハードウェアにより実行されるとデータ処理ハードウェアに任意の好ましい実施形態によるコンピュータ実装方法のステップを実行させる命令を備えることを特徴とするコンピュータプログラムが提供される。
【0087】
実装例
図3A、3Bおよび4を参照して、実装例において、2つのタイプのセンサ、つまり、レーダおよびカメラを用いる好ましい実施形態を概略的に示す。
【0088】
理解を容易にするため、単一のセンサ物体Oに対応する単一の融合物体FOが図示され、センサ物体Oの位置p(x,y)のみが示される。
【0089】
図3Aおよび3Bは、自車両の1つのレーダおよび1つのカメラについて連関ゲートを作成する原理を示す。
【0090】
図3Aにおいて、レーダおよびカメラによるセンサ検出を取得した後の状況が概略的に示される。各楕円は、受信された測定が与えられた時、融合物体FOが約68%の信頼度で実際にセンサ物体Oである可能性がある領域を記述する。
【0091】
その直前の観測シーケンスの融合物体FOも概略的に示されている。問題は、現在の観測シーケンスの2つのセンサ検出を融合物体FOと融合させるべきか否かである。
【0092】
図3Bにおいて、両方のセンサについての連関ゲートの増加の結果が概略的に示され、連関ゲートは2つの矩形として示される。また、図3Bは、一方はレーダについての共分散行列、他方はカメラについての共分散行列である2つの共分散行列についてのマッチング楕円体表示を示している。
【0093】
一般に、径方向に位置する連関ゲート、この場合、レーダについての連関ゲートの増加は、幅よりも長さにおいて顕著である。同様に、一般に、横方向に位置する連関ゲート、この場合、カメラの連関ゲートの増加は、長さよりも幅において顕著である。
【0094】
融合物体FOとの連関ゲートのオーバラップは、現在の観測シーケンスのセンサ検出が検証され、融合物体FOと融合されるべきであることを示すものと見なされる。
【0095】
オーバラップは、分布間の距離測度を計算する式、例えば、マハラノビス距離またはカルバック・ライブラー情報量を用いて評価される。
【0096】
図3Aおよび3Bと図4に示される原理に基づいて、自車両は、前方右角度、前方左角度、後方右角度および後方左角度に設けられた4つのサイドレーダであって、左および右はx軸の正側への移動方向に関して考慮される4つのサイドレーダと、3つのカメラであって、1つのカメラは前方を向き、2つのカメラは側方、つまり、側方左と側方右を向く3つのカメラとを有する乗用車またはバスである例が示される。
【0097】
また、レーダセンサの視野FOVの限界線が図4においてFR,FL,RR,RLにより示されている一方、カメラのFOVの限界線が図4においてCにより示されている。
【0098】
図4は、2つのタイプの共分散行列のマッチング楕円体を示し、2つのタイプの共分散行列とは
カメラならびに前方左レーダおよび前方右レーダについての共分散行列CRであって、2つの楕円体は互いに対して垂直であり、
視野FOVの他の部分の全てについて、2つのレーダについての自車両レーダ共分散Rcおよび2つのカメラについてのカメラ共分散Ccであって、2つの楕円体は一方が他方の内側にある。
【0099】
図4から、距離と角度が増加する場合にどのようにセンサの不確かさが一般に増加するかを見ることができる。このことの厳密な生じ方は、センサ文書資料により記述される特定のセンサの特徴に関連するものであり、共分散行列の係数に反映される。
【0100】
本方法および本システムの詳細な説明が好ましい実施形態に関して開示されている一方、本発明の様々な変形および変更は、本発明の教示の本質的な範囲を逸脱することなく、その有利な点を減じることなく当業者には明らかであることを当業者は理解するだろう。従って、そのような変形および変更は添付の請求項の範囲内であることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
自車両
FO 融合物体
距離
径方向の距離 d および 方位角 θ 融合物体 FO の極座標
p 位置
x,y 融合物体FOのデカルト座標
FL 前方左レーダの視野FOVの限界線
FR 前方右レーダの視野FOVの限界線
RL 後方左レーダの視野FOVの限界線
RR 後方右レーダの視野FOVの限界線
C 前方を向くカメラの視野FOVの限界線
Rc レーダ・レーダ共分散
Cc カメラ・カメラ共分散
CR カメラ・レーダ共分散
図1
図2
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】