(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】リンパ球を標的とするレンチウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/867 20060101AFI20240214BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240214BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240214BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20240214BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240214BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240214BHJP
C07K 14/145 20060101ALN20240214BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240214BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240214BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240214BHJP
C12N 1/02 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C12N7/01
C12N5/0783
C12N5/0781
A61K35/76
A61P37/04
C07K14/145
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N5/10
C12N1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552220
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 US2022018027
(87)【国際公開番号】W WO2022183072
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523324960
【氏名又は名称】ケロニア セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス, モリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン, ケビン エム.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
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4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
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4C087MA56
4C087MA65
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4C087NA14
4C087ZB09
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書に提供するのは、標的タンパク質によって特徴づけられる細胞に送達するため、及び該細胞による発現のための、変異型、異種エンベロープタンパク質、標的タンパク質、及び少なくとも1つの導入遺伝子を含むレンチウイルスベクターである。同様に提供するのは、本明細書に記載のレンチウイルスベクターを産生するための方法及び材料、標的細胞を形質導入する方法、ならびに本開示に従ってレンチウイルスベクターによって形質導入された細胞である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、レンチウイルスベクター:
(a)異種リンパ球を標的とするタンパク質を含むウイルスエンベロープであって、前記リンパ球を標的とするタンパク質が、
リンパ球を標的とするドメインを含む細胞外ドメイン、及び
膜貫通ドメインを含む前記ウイルスエンベロープ、ならびに
(b)LDL-Rに対する結合の阻害を示すが、膜融合を媒介する変異型VSV-Gエンベロープタンパク質、ならびに
(c)異種導入遺伝子を含む発現カセット。
【請求項2】
前記異種リンパ球を標的とするタンパク質が、T細胞を標的とするドメインを含む細胞外ドメインを含む異種T細胞を標的とするタンパク質である、請求項1に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項3】
前記異種リンパ球を標的とするタンパク質が、ナチュラルキラー(NK)細胞を標的とするドメインを含む細胞外ドメインを含む異種NK細胞を標的とするタンパク質である、請求項1に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項4】
前記異種リンパ球を標的とするタンパク質が、B細胞を標的とするドメインを含む細胞外ドメインを含む異種B細胞を標的とするタンパク質である、請求項1に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項5】
前記異種リンパ球を標的とするタンパク質が、以下に特異的に結合する異種T細胞を標的とするタンパク質である、請求項1または2に記載のレンチウイルスベクター:
(a)CD3、CD28、CD80、4-1BB、AhR、CD3、CD2、CD7、CD4、CD8、CD25、CD44、CD45RA、CD47、CD62L、CD69、CD94、CD95、CD127、CD161、CD183(CXCR3)、CD184(CXCR4)、CD185(CXCR5)、CD193(CCR3)、CD194(CCR4)、CD195(CCR5)、CD196(CCR6)、CD197(CCR7)、CCR10、PD-1、TCRa/b、CD5、CD27、CD45RO、CD45RB、CD57、CD103、CD122、P2RX7、TIGIT、LAG-3、TIM-3、及びIL6ST、もしくはそれらの任意の組み合わせから選択されるT細胞マーカー、
(b)γδTCR、Vデルタ1、Vデルタ2、及びNKG2D(KLRK1、CD314)から選択されるγδT細胞マーカー、
(c)インバリアントTCR(Va24-Ja18)、CD185(CXCR5)、CXCR6、及びIL-21R、もしくはそれらの任意の組み合わせから選択されるNK T細胞マーカー、または
(d)Va7.2、Ja33、CXCR6、IL-18R、KLRB1(CD161)、及びVLA4(アルファ4ベータ1インテグリン)、もしくはそれらの任意の組み合わせから選択されるMAIT細胞マーカー。
【請求項6】
前記異種リンパ球を標的とするタンパク質が、CD3タンパク質またはCD28タンパク質に特異的に結合するT細胞を標的とするドメインを含む細胞外ドメインを含む異種T細胞を標的とするタンパク質である、請求項1、2、または5に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項7】
前記異種リンパ球を標的とするタンパク質が、CD56、NKp46、CD16、KIR(複数可)、NKG2タンパク質(例えば、NKG2D(KLRK1、CD314))、KLRB1(CD161)、KLRD1(cd94)、IL2Rb(CD122)、IL-21R、SLAMF6(CD352)、SLAMF7(CD319)、及びIL-18R、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるNK細胞マーカーに特異的に結合する異種NK細胞を標的とするタンパク質である、請求項1または3に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項8】
前記異種リンパ球を標的とするタンパク質が、CD19、CD20、CD21、CD22、CD24、CD38、CD40、CD72、CD32b、CD268、CD269、CD267、CD86、CD80、CD52、CD138、CD27、CD28、CD23、CD84、CD257、CD270、CD37、CD74、及びCD269、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるB細胞マーカーに特異的に結合するB細胞を標的とするタンパク質である、請求項1または4に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項9】
前記標的とするタンパク質が、配列番号6に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する細胞外ドメインを含むCD80タンパク質を含む、請求項1、2、5、及び6のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項10】
前記標的とするタンパク質が、配列番号8に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する膜貫通及び細胞内ドメインを含むCD80タンパク質を含む、請求項1、2、5、6、及び9のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項11】
前記標的とするタンパク質が、配列番号2を含む、または配列番号4のシグナルペプチドが欠けている配列番号2を含むCD80タンパク質を含む、請求項1、2、5、6、9、または10に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項12】
前記標的とするタンパク質が、配列番号14に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する軽鎖可変領域、及び配列番号18に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する重鎖可変領域を有する抗CD3 scFvを含む、請求項1、2、5、及び6のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項13】
前記標的とするタンパク質が、(i)配列番号10、もしくは配列番号12のシグナルペプチドが欠けている配列番号10、または(ii)配列番号117、もしくは配列番号12のシグナルペプチドが欠けている配列番号117を含む抗CD3標的タンパク質を含む、請求項12に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項14】
宿主細胞で発現される前記標的とするタンパク質が、シグナル配列を含む、先行請求項のいずれかに記載のレンチウイルスベクター。
【請求項15】
成熟型の標的とするタンパク質が、シグナル配列を含まない、先行請求項のいずれかに記載のレンチウイルスベクター。
【請求項16】
前記成熟型の標的とするタンパク質が、シグナル配列からの少なくとも1つのアミノ酸を含む、請求項1~14のいずれかに記載のレンチウイルスベクター。
【請求項17】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、以下のうちの1つ以上から選択される変異を含む、先行請求項のいずれかに記載のレンチウイルスベクター:
H8、N9、Q10、K47、K50、A51、S183、S179、N180、I182、M184、Y209、I347、T350、T352、E353、及びR354での変異、
N9とQ10の間にTTの挿入、H8とN9の間にGGSの挿入、N9とQ10の間にGGSの挿入、N208とY209の間にTTの挿入、P46とK47の間にGGSの挿入、及びN208とY209の間にGGSの挿入、ならびに
残基1~8の欠失。
【請求項18】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、以下のうちの2つ以上から選択される変異を含む、先行請求項のいずれかに記載のレンチウイルスベクター:
H8、N9、Q10、K47、K50、A51、S183、S179、N180、I182、M184、Y209、I347、T350、T352、E353、及びR354での変異、
N9とQ10の間にTTの挿入、H8とN9の間にGGSの挿入、N9とQ10の間にGGSの挿入、N208とY209の間にTTの挿入、P46とK47の間にGGSの挿入、及びN208とY209の間にGGSの挿入、ならびに
残基1~8の欠失。
【請求項19】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、H8A、N9A、Q10A、K47A、K47Q、N180A、I182A、Y209A、T352A、T352W、E353A、R354A、及びR354Qのうちの1つ以上から選択される変異を含む、先行請求項のいずれかに記載のレンチウイルスベクター。
【請求項20】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、H8A、K47A、K47Q、Y209A、R354A、及びR354Qのうちの1つ以上から選択される変異を含む、先行請求項のいずれかに記載のレンチウイルスベクター。
【請求項21】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、以下を含む、先行請求項のいずれかに記載のレンチウイルスベクター:
(a)K47の変異及びR354の変異、
(b)N180の変異、I182の変異、T352の変異、及びE353の変異、
(c)T352の変異及びE353の変異、
(d)N9の変異、Q10の変異、及びN180の変異、または
(e)H8とN9の間にGGSの挿入、及びN9とQ10の間にGGSの挿入、
(f)N9とQ10の間にTTの挿入、もしくは
(g)P46とK47の間にGGSの挿入。
【請求項22】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、以下を含む、請求項21に記載のレンチウイルスベクター:
(a)K47Qの変異及びR354Aの変異、
(b)N180Aの変異、I182Aの変異、T352Aの変異、及びE353Aの変異、
(c)T352Wの変異及びE353Aの変異、
(d)N9Aの変異、Q10Aの変異、及びN180Aの変異。
【請求項23】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、配列番号74、93、95、97、99及び103のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項24】
前記異種導入遺伝子が、キメラ抗原受容体(CAR)をコードし、前記CARは、標的分子に特異的に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメイン、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)及び任意に共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびに前記細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを接続する膜貫通ドメインを含む、先行請求項のいずれかに記載のレンチウイルスベクター。
【請求項25】
前記導入遺伝子によりコードされるCARが、以下を含む、請求項24に記載のレンチウイルスベクター:
(a)CD19、BCMA、アルファ葉酸受容体、5T4、Abインテグリン、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD20、CD22、CD23、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD52、CD70、CD79a、CD79b、CD80、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EpCAM、FAP、胎児AchR、FLT3、Fra、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、HLADR、IL-11Rアルファ、IL-13Rアルファ2、ラムダ、ルイス-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、BAFF-R、クローディン18.2、CD86、FcRL5、GPRC5、及びTACIのうちの1つ以上に特異的に結合する結合ドメイン、
(b)CD28、CD2、CD4、CD8a、CD5、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD9、CD16、CD22、CD25、CD27、CD33、CD37、CD40、CD45、CD64、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD154(CD40L)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIM、LPA5、及びZap70の膜貫通ドメインから選択される膜貫通ドメイン、
(c)CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD5、CD22、CD79a、CD278(ICOS)、DAP10、DAP12、FcRγ及びCD66dドメインから選択される細胞内シグナル伝達ドメイン、
(d)CD27、CD28、CD40L、GITR、NKG2C、CARD1、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD226、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、LFA-1、LIGHT、NKG2C、NKD2C、SLP76、TRIM、及びZAP70ドメインのうちの1つ以上から選択される共刺激ドメイン、ならびに
(e)任意に、前記結合ドメインと前記膜貫通ドメインとの間に、以下から選択される細胞外、非シグナル伝達リンカードメイン:
(i)野生型または改変IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgDのヒンジ領域から選択される免疫グロブリンヒンジ領域、
(ii)野生型または改変CD8a、CD4、CD28及びCD7ヒンジ領域から選択されるヒンジ領域、
(iii)CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインのうちの1つ以上から選択されるFcドメインのすべてまたは一部、ならびに
(iv)CD23、CD69、CD72、CD94、NKG2A及びNKG2Dの柄領域に由来するII型C-レクチンの柄領域。
【請求項26】
前記導入遺伝子によりコードされるCARが、以下を含む抗CD19CARである、請求項24または25のいずれかに記載のレンチウイルスベクター:
配列番号46に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する軽鎖可変領域、及び配列番号50に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する重鎖可変領域を含む抗CD19scFvを含む結合ドメイン、
配列番号52に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD8aのヒンジ及び膜貫通ドメイン、
配列番号56に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD3ζエフェクタードメイン、及び
配列番号54に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する4-1BB共刺激ドメイン。
【請求項27】
前記導入遺伝子によってコードされるCARが、配列番号42、または配列番号44のシグナルペプチドが欠けている配列番号42を含む、請求項26に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項28】
前記導入遺伝子によりコードされるCARが、以下を含む抗BCMA CARである、請求項24または25のいずれかに記載のレンチウイルスベクター:
配列番号62に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する軽鎖可変領域、及び配列番号66に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する重鎖可変領域を含む抗BCMA scFvを含む結合ドメイン、
配列番号52に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD8aのヒンジ及び膜貫通ドメイン、
配列番号122に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD3ζエフェクタードメイン、及び
配列番号54に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する4-1BB共刺激ドメイン。
【請求項29】
前記導入遺伝子によってコードされる前記CARが、配列番号58、または配列番号60のシグナルペプチドが欠けている配列番号58を含む、請求項26に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項30】
先行請求項のいずれか1項に記載のリンパ球を標的とするレンチウイルスベクターを産生する方法であって、以下を含む、前記方法:
(a)プロデューサー細胞をGagPolプラスミド、Revプラスミド、導入遺伝子プラスミド、及びVSV-G envプラスミドでトランスフェクトすること、ここで、
(i)前記GagPolプラスミドは、レンチウイルスgag遺伝子及びレンチウイルスpol遺伝子をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、レンチウイルスGagポリタンパク質及びレンチウイルスPolポリタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、
(ii)前記Revプラスミドは、レンチウイルスrev遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含み、レンチウイルスRevタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、
(iii)前記導入遺伝子プラスミドは、CARをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含み、
(iv)前記VSV-G envプラスミドは、タンデム発現カセットを含み、前記タンデム発現カセットは、変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチド及びリンパ球を標的とするタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記VSV-G envプラスミドは、前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質及び前記リンパ球を標的とするタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であること、
(b)前記プロデューサー細胞を培地内で培養すること、ならびに
(c)レンチウイルスベクターを前記培地から採取すること。
【請求項31】
請求項1~29のいずれか1項に記載のリンパ球を標的とするレンチウイルスベクターを産生する方法であって、以下を含む、前記方法:
(a)プロデューサー細胞をGagPolプラスミド、Revプラスミド、導入遺伝子プラスミド、及びVSV-G envプラスミドでトランスフェクトすること、ここで、
(i)前記GagPolプラスミドは、Gagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体ならびにリンパ球を標的とするタンパク質をコードするタンデム発現カセットを含み、前記GagPolプラスミドは、レンチウイルスGagポリタンパク質、レンチウイルスPolポリタンパク質、及び前記リンパ球を標的とするタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、
(ii)前記Revプラスミドは、レンチウイルスrev遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含み、レンチウイルスRevタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、
(iii)前記導入遺伝子プラスミドは、CARをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含み、
(iv)前記VSV-G envプラスミドは、変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記VSV-G envプラスミドは、前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能である。
(b)前記プロデューサー細胞を培地内で培養すること、ならびに
(c)レンチウイルスベクターを前記培地から採取すること。
【請求項32】
請求項1~29のいずれか1項に記載のリンパ球を標的とするレンチウイルスベクターを産生する方法であって、以下を含む、前記方法:
(a)プロデューサー細胞をGagPolプラスミド、Revプラスミド、導入遺伝子プラスミド、及びVSV-G envプラスミドでトランスフェクトすること、ここで、
(i)前記GagPolプラスミドは、レンチウイルスgag遺伝子及びレンチウイルスpol遺伝子をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、レンチウイルスGagポリタンパク質及びレンチウイルスPolポリタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、
(ii)前記Revプラスミドは、タンデム発現カセットを含み、前記タンデム発現カセットは、レンチウイルスrev遺伝子をコードするポリヌクレオチド及びリンパ球を標的とするタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記Revプラスミドは、レンチウイルスRevタンパク質及び前記リンパ球を標的とするタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、
(iii)前記導入遺伝子プラスミドは、CARをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含み、
(iv)前記VSV-G envプラスミドは、変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記VSV-G envプラスミドは、前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であること、
(b)前記プロデューサー細胞を培地内で培養すること、ならびに
(c)レンチウイルスベクターを前記培地から採取すること。
【請求項33】
請求項1~29のいずれか1項に記載のリンパ球を標的とするレンチウイルスベクターを産生する方法であって、以下を含む、前記方法:
(a)プロデューサー細胞をGagPolプラスミド、Revプラスミド、導入遺伝子プラスミド、VSV-G envプラスミド、及びリンパ球を標的とするタンパク質プラスミドでトランスフェクトすること、
(i)前記GagPolプラスミドは、レンチウイルスgag遺伝子及びレンチウイルスpol遺伝子をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、レンチウイルスGagポリタンパク質及びレンチウイルスPolポリタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、
(ii)前記Revプラスミドは、レンチウイルスrev遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含み、レンチウイルスRevタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、
(iii)前記導入遺伝子プラスミドは、CARをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含み、
(iv)前記VSV-G envプラスミドは、変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、
(v)前記リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドは、リンパ球を標的とするタンパク質をコードするポリヌクレオチド含み、前記リンパ球を標的とするタンパク質を前記プロデューサー細胞内で発現することが可能であること、
(b)前記プロデューサー細胞を培地内で培養すること、ならびに
(c)レンチウイルスベクターを前記培地から採取すること。
【請求項34】
前記リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドによってコードされる前記リンパ球を標的とするタンパク質が、T細胞を標的とするタンパク質である、請求項30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドによってコードされる前記リンパ球を標的とするタンパク質が、NK細胞を標的とするタンパク質である、請求項30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドによってコードされる前記リンパ球を標的とするタンパク質が、B細胞を標的とするタンパク質である、請求項30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドによってコードされる前記リンパ球を標的とするタンパク質が、以下に特異的に結合するT細胞を標的とするタンパク質である、請求項30~33及び34のいずれか1項に記載の方法:
(a)CD3、CD28、CD80、4-1BB、AhR、CD3、CD2、CD7、CD4、CD8、CD25、CD44、CD45RA、CD47、CD62L、CD69、CD94、CD95、CD127、CD161、CD183(CXCR3)、CD184(CXCR4)、CD185(CXCR5)、CD193(CCR3)、CD194(CCR4)、CD195(CCR5)、CD196(CCR6)、CD197(CCR7)、CCR10、PD-1、TCRa/b、CD5、CD27、CD45RO、CD45RB、CD57、CD103、CD122、P2RX7、TIGIT、LAG-3、TIM-3、及びIL6ST、もしくはそれらの任意の組み合わせから選択されるT細胞マーカー、
(b)γδTCR、Vデルタ1、Vデルタ2、及びNKG2D(KLRK1、CD314)、もしくはそれらの任意の組み合わせから選択されるγδT細胞マーカー、
(c)インバリアントTCR(Va24-Ja18)、CD185(CXCR5)、CXCR6、及びIL-21R、もしくはそれらの任意の組み合わせから選択されるNK T細胞マーカー、または
(d)Va7.2、Ja33、CXCR6、IL-18R、KLRB1(CD161)、及びVLA4(アルファ4ベータ1インテグリン)、もしくはそれらの任意の組み合わせから選択されるMAIT細胞マーカー。
【請求項38】
前記標的とするタンパク質が、配列番号6に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する細胞外ドメインを含むCD80タンパク質を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記標的とするタンパク質が、配列番号8に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する膜貫通及び細胞内ドメインを含むCD80タンパク質を含む、請求項37及び38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記標的とするタンパク質が、配列番号2を含む、または配列番号4のシグナルペプチドが欠けている配列番号2を含むCD80タンパク質を含む、請求項37、38、及び39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記標的とするタンパク質が、(i)配列番号14に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する軽鎖可変領域、及び配列番号18に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する重鎖可変領域を有する抗CD3 scFv、または(ii)配列番号115に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する軽鎖可変領域、及び配列番号113に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する重鎖可変領域を有する抗CD3 scFvを含む、請求項30~34及び37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記標的とするタンパク質が、(i)配列番号10、もしくは配列番号12のシグナルペプチドが欠けている配列番号10、または(ii)配列番号117、もしくは配列番号12のシグナルペプチドが欠けている配列番号117を含む抗CD3標的タンパク質を含む、請求項30~34、37、及び41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドによってコードされる前記リンパ球を標的とするタンパク質が、CD56、NKp46、CD16、KIR(複数可)、NKG2タンパク質(例えば、NKG2D(KLRK1、CD314))、KLRB1(CD161)、KLRD1(cd94)、IL2Rb(CD122)、IL-21R、SLAMF6(CD352)、SLAMF7(CD319)、及びIL-18R、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるNK細胞マーカーに特異的に結合するNK細胞を標的とするタンパク質である、請求項30~33及び35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドによってコードされる前記リンパ球を標的とするタンパク質が、CD19、CD20、CD21、CD22、CD24、CD38、CD40、CD72、CD32b、CD268、CD269、CD267、CD86、CD80、CD52、CD138、CD27、CD28、CD23、CD84、CD257、CD270、CD37、CD74、及びCD269、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるB細胞マーカーに特異的に結合するB細胞を標的とするタンパク質である、請求項30~33及び36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記VSV-G envプラスミドによってコードされる前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、以下のうちの1つ以上から選択される変異を含む、請求項30~44のいずれかに記載の方法:
H8、N9、Q10、K47、K50、A51、S183、S179、N180、I182、M184、Y209、I347、T350、T352、E353、及びR354での変異、
N9とQ10の間にTTの挿入、H8とN9の間にGGSの挿入、N9とQ10の間にGGSの挿入、N208とY209の間にTTの挿入、P46とK47の間にGGSの挿入、及びN208とY209の間にGGSの挿入、ならびに
残基1~8の欠失。
【請求項46】
前記VSV-G envプラスミドによってコードされる前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、以下のうちの2つ以上から選択される変異を含む、請求項30~45のいずれかに記載の方法:
H8、N9、Q10、K47、K50、A51、S183、S179、N180、I182、M184、Y209、I347、T350、T352、E353、及びR354での変異、
N9とQ10の間にTTの挿入、H8とN9の間にGGSの挿入、N9とQ10の間にGGSの挿入、N208とY209の間にTTの挿入、P46とK47の間にGGSの挿入、及びN208とY209の間にGGSの挿入、ならびに
残基1~8の欠失。
【請求項47】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、H8A、N9A、Q10A、K47A、K47Q、N180A、I182A、Y209A、T352A、T352W、E353A、R354A、及びR354Qのうちの1つ以上から選択される変異を含む、請求項30~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記VSV-G envプラスミドによってコードされる前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、H8A、K47A、K47Q、Y209A、R354A、及びR354Qのうちの1つ以上から選択される変異を含む、請求項30~47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、以下を含む、請求項30~48のいずれかに記載の方法:
(a)K47の変異及びR354の変異、
(b)N180の変異、I182の変異、T352の変異、及びE353の変異、
(c)T352の変異及びE353の変異、
(d)N9の変異、Q10の変異、及びN180の変異、または
(e)H8とN9の間にGGSの挿入、及びN9とQ10の間にGGSの挿入、
(f)N9とQ10の間にTTの挿入、もしくは
(g)P46とK47の間にGGSの挿入。
【請求項50】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、以下を含む、請求項49に記載の方法:
(a)K47Qの変異及びR354Aの変異、
(b)N180Aの変異、I182Aの変異、T352Aの変異、及びE353Aの変異、
(c)T352Wの変異及びE353Aの変異、
(d)N9Aの変異、Q10Aの変異、及びN180Aの変異。
【請求項51】
前記変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が、配列番号74、93、95、97、99及び103のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項30~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記導入遺伝子プラスミドによってコードされる前記CARが、標的分子に特異的に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメイン、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)及び任意に共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン、ならびに前記細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを接続する膜貫通ドメインを含む、請求項30~51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記導入遺伝子プラスミドによってコードされる前記CARが、以下を含む、請求項30~52のいずれかに記載の方法:
(a)CD19、BCMA、アルファ葉酸受容体、5T4、Abインテグリン、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD20、CD22、CD23、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD52、CD70、CD79a、CD79b、CD80、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EpCAM、FAP、胎児AchR、FLT3、Fra、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、HLADR、IL-11Rアルファ、IL-13Rアルファ2、ラムダ、ルイス-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、BAFF-R、クローディン18.2、CD86、FcRL5、GPRC5、及びTACIのうちの1つ以上に特異的に結合する結合ドメイン、
(b)CD28、CD2、CD4、CD8a、CD5、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD9、CD16、CD22、CD25、CD27、CD33、CD37、CD40、CD45、CD64、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD154(CD40L)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIM、LPA5、及びZap70の膜貫通ドメインから選択される膜貫通ドメイン、
(c)CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD5、CD22、CD79a、CD278(ICOS)、DAP10、DAP12、FcRγ及びCD66dドメインから選択される細胞内シグナル伝達ドメイン、
(d)CD27、CD28、CD40L、GITR、NKG2C、CARD1、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD226、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、LFA-1、LIGHT、NKG2C、NKD2C、SLP76、TRIM、及びZAP70ドメインのうちの1つ以上から選択される共刺激ドメイン、ならびに
(e)任意に、前記結合ドメインと前記膜貫通ドメインとの間に、以下から選択される細胞外、非シグナル伝達リンカードメイン:
(i)野生型または改変IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgDのヒンジ領域から選択される免疫グロブリンヒンジ領域、
(ii)野生型または改変CD8a、CD4、CD28及びCD7ヒンジ領域から選択されるヒンジ領域、
(iii)CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインのうちの1つ以上から選択されるFcドメインのすべてまたは一部、ならびに
(iv)CD23、CD69、CD72、CD94、NKG2A及びNKG2Dの柄領域に由来するII型C-レクチンの柄領域。
【請求項54】
前記導入遺伝子プラスミドによりコードされる前記CARが、以下を含む抗CD19 CARである、請求項30~53のいずれかに記載の方法:
(a)配列番号46に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する軽鎖可変領域、及び配列番号50に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する重鎖可変領域を含む抗CD19scFvを含む結合ドメイン、
(b)配列番号52に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD8aのヒンジ及び膜貫通ドメイン、
(c)配列番号56に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD3ζエフェクタードメイン、及び
(d)配列番号54に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する4-1BB共刺激ドメイン。
【請求項55】
前記導入遺伝子によってコードされる前記CARが、配列番号42、または配列番号44のシグナルペプチドが欠けている配列番号42を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記導入遺伝子プラスミドによりコードされる前記CARが、以下を含む抗BCMA CARである、請求項30~53のいずれかに記載の方法:
(a)配列番号62に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する軽鎖可変領域、及び配列番号66に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する重鎖可変領域を含む抗BCMA scFvを含む結合ドメイン、
(b)配列番号52に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD8aのヒンジ及び膜貫通ドメイン、
(c)配列番号122に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD3ζエフェクタードメイン、及び
(d)配列番号54に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する4-1BB共刺激ドメイン。
【請求項57】
前記導入遺伝子によってコードされる前記CARが、配列番号58、または配列番号60のシグナルペプチドが欠けている配列番号58を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記プロデューサー細胞が、規定の比率の導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドで形質導入され、任意に、前記規定の比率の導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、及びVSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドが、それぞれ、約1:1:1:1~約5:4:1:1である、請求項30~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記プロデューサー細胞が、規定の比率の導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、及びVSV-G envプラスミド、及びRevプラスミド約4:2:1:1で形質導入される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記プロデューサー細胞が、規定の比率の導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、及びVSV-G envプラスミド、及びRevプラスミド約3.125:3.125:2.5:1.25で形質導入される、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記培地からレンチウイルスベクターを採取することが、遠心分離、アニオン交換、クロマトグラフィー、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項30~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記培地から採取されたLVV産物が、濃縮されたLVV産物において約1e7TU/mL~約1e12TU/mLのウイルス力価を有する、請求項30~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
異種導入遺伝子を発現するT細胞を産生するための方法であって、
前記T細胞を、請求項1、2、5、6及び9~29のいずれか1項に記載の1つ以上のLVVで形質導入することを含む、前記方法であり、前記T細胞の形質導入により、前記T細胞による前記異種導入遺伝子の発現が生じる、前記方法。
【請求項64】
前記T細胞が、休止T細胞である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記T細胞の形質導入が、インビボまたはエキソビボで行われる、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記1つ以上のLVVが、対象に対して、静脈内、腹腔内、腫瘍内、骨内、または節内投与される、請求項63~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記T細胞を形質導入することが、対象から得られた全血または末梢血単核細胞(PBMC)内のT細胞を、前記1つ以上のLVVと接触させることを含む、請求項63~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
形質導入が、外因性T細胞刺激剤を使用せずに達成される、請求項63~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記外因性T細胞刺激剤が、抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD28抗体もしくはその抗原結合断片、またはその両方を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
CARを発現するT細胞を産生するための方法であって、
前記T細胞を、請求項24~29のいずれか1項に記載の1つ以上のLVVで形質導入することを含み、前記T細胞の形質導入により、前記T細胞による前記CAR導入遺伝子の発現が生じる、前記方法。
【請求項71】
前記T細胞が、休止T細胞である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記T細胞の形質導入が、インビボまたはエキソビボで行われる、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記1つ以上のLVVが、対象に対して、静脈内、腹腔内、腫瘍内、骨内、または節内投与される、請求項70~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記T細胞を形質導入することが、対象から得られた全血または末梢血単核細胞(PBMC)内のT細胞を、前記1つ以上のLVVと接触させることを含む、請求項70~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
形質導入が、外因性T細胞刺激剤を使用せずに達成される、請求項70~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記外因性T細胞刺激剤が、抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD28抗体もしくはその抗原結合断片、またはその両方を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
異種導入遺伝子を発現するNK細胞を産生するための方法であって、
前記NK細胞を、請求項1、3、7、及び14~29のいずれか1項に記載の1つ以上のLVVで形質導入することを含み、前記NK細胞の形質導入により、前記NK細胞による前記異種導入遺伝子の発現が生じる、前記方法。
【請求項78】
前記NK細胞が、休止NK細胞である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記NK細胞の形質導入が、インビボまたはエキソビボで行われる、請求項77または78に記載の方法。
【請求項80】
前記1つ以上のLVVが、対象に対して、静脈内、腹腔内、腫瘍内、骨内、または節内投与される、請求項77~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記NK細胞を形質導入することが、対象から得られた全血または末梢血単核細胞(PBMC)内のNK細胞を接触させることを含む、請求項77~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
形質導入が、外因性NK細胞刺激剤を使用せずに達成される、請求項77~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
CARを発現するNK細胞を産生するための方法であって、
前記NK細胞を、請求項24~29のいずれか1項に記載の1つ以上のLVVで形質導入することを含み、前記NK細胞の形質導入により、前記NK細胞による前記CAR導入遺伝子の発現が生じる、前記方法。
【請求項84】
前記NK細胞が、休止NK細胞である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記NK細胞の形質導入が、インビボまたはエキソビボで行われる、請求項83または84に記載の方法。
【請求項86】
前記1つ以上のLVVが、対象に対して、静脈内、腹腔内、腫瘍内、骨内、または節内投与される、請求項83~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記NK細胞を形質導入することが、対象から得られた全血または末梢血単核細胞(PBMC)内のNK細胞を、前記1つ以上のLVVと接触させることを含む、請求項83~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
形質導入が、外因性NK細胞刺激剤を使用せずに達成される、請求項83~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
異種導入遺伝子を発現するB細胞を産生するための方法であって、
前記B細胞を、請求項1、4、8、及び14~29のいずれか1項に記載の1つ以上のLVVで形質導入することを含む、前記方法であり、前記B細胞の形質導入により、前記B細胞による前記異種導入遺伝子の発現が生じる、前記方法。
【請求項90】
前記B細胞が、休止B細胞である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記B細胞の形質導入が、インビボまたはエキソビボで行われる、請求項89または90に記載の方法。
【請求項92】
前記1つ以上のLVVが、対象に対して、静脈内、腹腔内、腫瘍内、骨内、または節内投与される、請求項89~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記B細胞を形質導入することが、対象から得られた全血または末梢血単核細胞(PBMC)内のB細胞を接触させることを含む、請求項89~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
形質導入が、B細胞刺激剤を使用せずに達成される、請求項89~93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
CARを発現するB細胞を産生するための方法であって、
前記B細胞を、請求項24~29のいずれか1項に記載の1つ以上のLVVで形質導入することを含む、前記方法であり、前記NK細胞の形質導入により、前記B細胞による前記CAR導入遺伝子の発現が生じる、前記方法。
【請求項96】
前記B細胞が、休止B細胞である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記B細胞の形質導入が、インビボまたはエキソビボで行われる、請求項95または96に記載の方法。
【請求項98】
前記1つ以上のLVVが、対象に対して、静脈内、腹腔内、腫瘍内、骨内、または節内投与される、請求項95~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記B細胞を形質導入することが、対象から得られた全血または末梢血単核細胞(PBMC)内のB細胞を、前記1つ以上のLVVと接触させることを含む、請求項95~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
形質導入が、外因性B細胞刺激剤を使用せずに達成される、請求項95~99のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する記述
本出願に関連する配列表は、紙媒体の代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、930207_401WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。該テキストファイルは、158KBであり、2022年2月25日に作成され、EFS-Webを介して電子提出された。
【背景技術】
【0002】
レンチウイルスベクターは、遺伝子改変細胞療法、特に、T細胞療法において重要な役割を果たす。最近承認されたT細胞療法は、レトロウイルスベクターに依存して治療分子(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))をTリンパ球に形質導入する。CAR T細胞の産生に関連するリスクは、他の細胞型への導入遺伝子の導入である。広範な細胞指向性を備えた組み込みベクター、例えば、VSV-Gエンベロープタンパク質でシュードタイプ化されたレンチウイルスベクターの使用は、まれとはいえ、重大な安全上の懸念となる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】第3世代のLVV産生系での使用に適したヘルパープラスミドの概略図である。
【
図2A】LDL受容体結合を無効にするための変異型VSV-Gエンベロープ(Trop-002、Trop-051、Trop-052、Trop-055、及びTrop-061)ならびにT細胞標的タンパク質CD80を有するレンチウイルスベクターによるJurkat T細胞及びRaji B細胞のオンターゲット及びオフターゲットの侵入を示すグラフを示す。各サンプルの左側のバーがオンターゲットの侵入であり、右側のバーがオフターゲットである。T細胞標的タンパク質がT細胞上のその同族リガンドに結合すると、レンチウイルスベクターが侵入し、その後レポーター緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現が測定される
【
図2B】LDL受容体結合を無効にするための変異型VSV-Gエンベロープ(Trop-002、Trop-051、Trop-052、Trop-055、及びTrop-061)ならびにT細胞標的タンパク質CD80を有するレンチウイルスベクターによるJurkat T細胞及びRaji B細胞のオンターゲット及びオフターゲットの侵入を示すFACSプロットを示す。T細胞標的タンパク質がT細胞上のその同族リガンドに結合すると、レンチウイルスベクターが侵入し、その後レポーター緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現が測定される。
【
図3A】VSV-Gパッケージングプラスミドから発現されるT細胞標的タンパク質CD80が、HEK293プロデューサー細胞の表面の変異型VSV-Gとして比較的同等のレベルで発現されることを示す図を示す
【
図3B】このアプローチで生成されたLVVが、標的Jurkat T細胞を形質導入することができるが、Raji B細胞を形質導入しないことを示す図を示す。
【
図4】(上段)CD80標的タンパク質をRevパッケージングプラスミドにクローニングすること、または変異型VSV-Gパッケージングプラスミドにクローニングすることによって生成されたLVVを使用した、HEK293Tプロデューサー細胞の表面のCD80及び変異型VSV-Gの発現レベルを示す図、及び(下段)CD80標的タンパク質をRevパッケージングプラスミドまたは変異型VSV-Gパッケージングプラスミドにクローニングすることによって生成されたLVVが、標的Jurkat T細胞を形質導入することを示す図を示す。
【
図5】(左)5つのプラスミドパッケージング系を使用したHEK293Tプロデューサー細胞の表面でのCD80標的タンパク質の発現をCD80プラスミド濃度の関数として示す。(右)5つのプラスミドパッケージング系によって生成されたLVVが、標的Jurkat T細胞を形質導入すること及び形質導入効率が、CD80パッケージングプラスミドの濃度に関連したことを示す。
【
図6A】接着性HEK293プロデューサー細胞で産生されたリンパ球を標的とするLVVの力価を示す。LVVは、HEK293接着細胞培地から遠心分離によって採取された。
【
図6B】接着性HEK293プロデューサー細胞で産生されたリンパ球を標的とするLVVの力価を示す。LVVは、HEK293接着細胞培地からアニオン交換クロマトグラフィーに続いてタンジェンシャルフロー濾過によって採取された。
【
図6C】浮遊HEK293プロデューサー細胞で産生されたリンパ球を標的とするLVVの力価を示す。LVVは、HEK293浮遊細胞培地からアニオン交換クロマトグラフィーによって採取された。
【
図6D】接着性HEK293または浮遊HEK293プロデューサー細胞で産生されたリンパ球を標的とするLVVの力価を示す。AEX/TFFによる濃縮は、高レベルの純度及び回収でのLVVの調製につながった。
【
図7】健康なヒトドナー由来のPBMCにおいて、BCMA CAR導入遺伝子を含むLVVまたはBCMA CAR導入遺伝子を含むT細胞を標的とするLVV(抗CD3及びCD80)によるT細胞形質導入を調べる概略図を示す。右下に示されているグラフは、低MOIであっても、T細胞を標的とするLVVが、標準LVVよりも高いレベルでT細胞を形質導入し、T細胞を標的とするLVVが、標準LVVとは対照的に、IL-2及び外因性活性化抗体(抗CD3及び抗CD28)の存在なしでT細胞を形質導入することが可能であることを示す。
【
図8】3人の異なるドナーから得られ、標準LVVまたはT細胞再指向型LVV(抗CD3及びCD80)を使用して、外因性活性化抗CD3及び抗CD28抗体の存在下または非存在下で形質導入されたPBMCからのT細胞増殖を示すグラフを示す。
【
図9】健康なヒトドナー由来のPBMCにおいて、CD19 CAR導入遺伝子を含むLVVまたはCD19 CAR導入遺伝子を含むT細胞を標的とするLVV(抗CD3及びCD80)によるT細胞形質導入を調べる概略図を示す。右下に示されているグラフは、T細胞を標的とするLVVが、標準LVVよりも高いレベルでT細胞を形質導入し、T細胞を標的とするLVVが、標準LVVとは対照的に、外因性活性化抗体(抗CD3及び抗CD28)の存在なしでT細胞を形質導入することが可能であることを示す。
【
図10】T細胞を標的とするLVVを生成するために使用された抗CD3標的タンパク質(VH-VL配向及びVL-VH配向の12F6)によるT細胞の形質導入効率及びT細胞活性化のレベルを示すグラフを示す。
【
図11】BCMA CAR T細胞が、BCMA陽性細胞株との培養後に、T細胞エフェクターサイトカイン(TNFα-左、TNFα及びIFNγ-右)の発現の増加を示し、これが、標準LVVによって生成されたものであってもT細胞再指向型LVV(抗CD3及びCD80)によって生成されたものであっても、BCMA陰性細胞株では観察されないことを示すグラフを示す。
【
図12A】T細胞を標的とするLVVを使用した導入遺伝子のインビボ送達を示すグラフを示す。T細胞を標的とするLVV(抗CD3及びCD80)は、ヒト化マウスモデル(n=5)において、ヒトT細胞(CD3+)を特異的に形質導入し、ヒトB細胞(CD20+)を形質導入しない
【
図12B】T細胞を標的とするLVVを使用した導入遺伝子のインビボ送達を示すグラフを示す。T細胞を標的とするLVVは、CD8+及びCD8-(CD4)T細胞の両方を形質導入するのと比較して、標準LVVではしなかった。
【
図13】CD80標的LVVが、標準LVVと比較して、CD4T細胞の形質導入を高めることを示すグラフを示す。
【
図14】T細胞を標的とする(抗CD3及びCD80)LVVが、標準LVVと比較して、標的Jurkat T細胞を形質導入するが、オフターゲット腫瘍細胞(Raji、Ramos、Jeko-1、及びNALM-6)を形質導入しないことを示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
操作されたレンチウイルスベクターを本明細書に記載する。該レンチウイルスベクターは、変異型、異種エンベロープタンパク質、標的タンパク質、及び少なくとも1つの導入遺伝子を、該標的タンパク質によって特徴づけられる細胞に送達するため、及び該細胞による発現のために含む。いくつかの実施形態では、該標的タンパク質は、例えば、リンパ球またはT細胞を含む免疫細胞を標的とするように選択される。ある特定のかかる実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、休止リンパ球、例えば、T細胞を選択的に標的化すること及び効率的に形質導入することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、外因性T細胞刺激剤の非存在下でT細胞を形質導入すること及び/または活性化することが可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、標準レンチウイルスベクターと比較して、CD4T細胞の形質導入を高める。
【0005】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変異型env及び標的タンパク質を組み込んだレンチウイルスベクターは、別の融合性envタンパク質(例えば、球菌env、パラミクソウイルスenv、切断型VSV-G env)を組み込む標準LVVと比較して、高力価のLVV産物を産生することが可能である。
【0006】
同様に提供するのは、本明細書に記載のレンチウイルスベクターを産生するための方法及び材料、標的細胞を形質導入する方法、ならびに本開示に従うレンチウイルスベクターによって形質導入された細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクター及び/またはかかるベクターによって形質導入された細胞は、該ベクターによって送達される導入遺伝子を発現する細胞の存在に応答する疾患または障害の治療に使用され得る。
【0007】
定義
本開示をより詳細に説明する前に、本明細書で使用されるある特定の用語の定義を提供することがその理解に役立ち得る。
【0008】
本明細書において、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、または整数範囲は、特に指定のない限り、列挙される範囲内の任意の整数の値を含み、必要に応じて、その分数(例えば、整数の1/10及び1/100)を含むものと理解される。また、任意の物理的特性、例えば、ポリマーのサブユニット、サイズまたは厚さに関する本明細書に列挙される任意の数値範囲は、特に指定のない限り、列挙された範囲内の任意の整数を含むと理解される。本明細書で使用される、「約」という用語は、特に指定のない限り、指示された範囲、値、または構造の±20%を意味する。本明細書で使用される、「a」及び「an」という用語は、列挙される成分のうちの「1つ以上」を指すことを理解されたい。選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢の一方、両方またはその任意の組み合わせのいずれかを意味することを理解されたい。本明細書で使用される、「含む(include)」、「有する」、及び「含む(comprise)」という用語は、同義で使用され、これらの用語及びその変形は、非限定的と見なされることが意図される。
【0009】
抗体技術の分野の当業者によって理解される用語には、本明細書で明示的に別段の定義がない限り、各々当技術分野で得られる意味が与えられる。「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖、ならびに標的分子に結合する能力を有するまたは保持する無傷の抗体の抗原結合部分(または抗原結合ドメイン)を含む無傷の抗体を指し得る。抗体は、免疫グロブリンの天然に存在する、組み換え的に産生された、遺伝子操作された、または改変された形態、例えば、細胞内抗体、ペプチボディ、ナノボディ、単一ドメイン抗体、SMIP、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、タンデムジscFv、タンデムトリscFv、ADAPTIR)であり得る。モノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、非ヒト、キメラ、ヒト化、またはヒト、好ましくは、ヒト化またはヒトであり得る。免疫グロブリンの構造及び機能は、例えば、Harlow et al.,Eds.,Antibodies:A Laboratory Manual,Chapter 14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,1988)で概説されている。無傷の抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合ドメイン」とは、「抗体断片」を包含することを意図しており、これは、無傷の抗体の一部を指し、無傷の抗体の抗原決定可変領域または相補性決定領域を指す。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、scFv抗体、VH、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されない。「Fab」(断片抗原結合)は、抗原に結合する抗体の一部であり、鎖間ジスルフィド結合を介して軽鎖に結合した重鎖の可変領域及びCH1を含む。抗体は、IgG及びそのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgE、IgA、及びIgDを含めた任意のクラスまたはサブクラスのものであり得る。
【0010】
抗体の文脈での「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体を抗原に結合することに関与する、抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(または領域)(それぞれ、VH及びVL)は一般に、同様の構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの相補性決定領域(CDR)を含む(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)参照)。抗原結合特異性を付与するためには、単一のVHまたはVLドメインで十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、該抗原に結合する抗体のVHまたはVLドメインを使用して単離し、それぞれ、相補的VLまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングしてもよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0011】
「相補性決定領域」及び「CDR」という用語は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、抗原特異性及び/または結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の不連続配列を指すことが当技術分野で知られている。一般に、各重鎖可変領域には、3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)があり、各軽鎖可変領域には、3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)がある。
【0012】
本明細書で使用される、「結合ドメイン」、「結合領域」、及び「結合部分」という用語は、標的分子(例えば、腫瘍抗原)と特異的かつ非共有結合的に結合する、会合する、合体する、これを認識する、またはこれと化合する能力を有する分子、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を指す。結合ドメインとしては、生体分子または目的の他の標的に対する、任意の天然に存在する、合成、半合成、または組み換え的に産生された結合パートナーが挙げられる。いくつかの実施形態では、該結合ドメインは、抗原結合ドメイン、例えば、抗体または機能的結合ドメインもしくはその抗原結合部分である。例示的な結合ドメインとしては、一本鎖抗体可変領域(例えば、ドメイン抗体、sFv、scFv、Fab)、受容体外部領域(例えば、TNF-α)、リガンド(例えば、サイトカイン、ケモカイン)、または生体分子への特異的結合能力のために選択される合成ポリペプチドが挙げられる。
【0013】
「主要組織適合抗原分子」(MHC分子)は、ペプチド抗原を細胞表面に送達する糖タンパク質を指す。MHCクラスI分子は、膜貫通α鎖(3つのαドメインを含む)及び非共有結合したβ2ミクログロブリンで構成されるヘテロ二量体である。MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質、すなわち、α及びβで構成されており、どちらも膜を貫通している。各鎖は、2つのドメインを有する。MHCクラスI分子は、サイトゾルに由来するペプチドを細胞表面に送達し、そこで、ペプチド:MHC複合体がCD8+T細胞によって認識される。MHCクラスII分子は、小胞系に由来するペプチドを細胞表面に送達し、そこで、それらはCD4+T細胞によって認識される。MHC分子は、ヒト、マウス、ラット、または他の哺乳類を含めた様々な動物種に由来し得る。
【0014】
「キメラ抗原受容体」(CAR)は、宿主細胞内で自然には生じず、細胞の表面で発現された際に受容体として機能し得る方法で互いに連結された2つ以上の異なるドメインを含むキメラ融合タンパク質を指す。CARは一般に、標的抗原に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメイン、任意の細胞外スペーサドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む)、ならびに任意に細胞内共刺激ドメインで構成される。ある特定の実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメイン及び細胞内共刺激ドメイン(例えば、4-1BB)を含むITAM(例えば、CD3ζ)を有する。ある特定の実施形態では、CARは、単一のポリペプチド鎖として合成されるか、または一本鎖ポリペプチドとして核酸分子によってコードされる。
【0015】
特定の標的に特異的に結合する本開示の結合ドメインを同定するため、ならびに結合ドメインの親和性を特定するための様々なアッセイ、例えば、ウェスタンブロット、ELISA、分析用超遠心、分光法、表面プラズモン共鳴(BIACORE(登録商標))分析、及びMHC四量体分析が知られている(例えば、Scatchard et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660,1949、Wilson,Science 295:2103,2002、Wolff et al.,Cancer Res.53:2560,1993、Altman et al.,Science 274:94-96,1996、及び米国特許第5,283,173号、第5,468,614号、または同等物も参照のこと)。本明細書で使用される、「特異的に結合する」とは、結合ドメイン、またはその融合タンパク質が、標的分子に対して、105M-1以上の親和性またはKa(すなわち、1/Mを単位とする特定の結合相互作用の平衡結合定数)で結合または合体すると同時に、サンプル中の任意の他の分子または成分とは有意に結合も合体もしないことを指す。
【0016】
「抗原」及び「Ag」という用語は、免疫応答を誘導することが可能な分子を指す。誘導される免疫応答は、抗体産生、特定の免疫適格細胞の活性化、またはその両方を含み得る。タンパク質、糖タンパク質、及び糖脂質を含めた高分子は、抗原として機能し得る。抗原は、組み換えDNAに由来する場合もゲノムDNAに由来する場合もある。本明細書で企図されるように、抗原は、(i)遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要も、(ii)「遺伝子」によってコードされる必要も全くない。抗原は、生成されても合成されてもよく、または抗原は、生体サンプルから得ることもできる。かかる生体サンプルとしては、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞、または生体液を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0017】
「エピトープ」または「抗原エピトープ」という用語は、同種免疫結合分子、例えば、抗体もしくはその断片(例えば、scFv)、T細胞受容体(TCR)、CAR、または他の結合分子、ドメインもしくはタンパク質が特異的に結合する抗原内の任意の分子、構造、アミノ酸配列またはタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は通常、化学的に活性な分子の表面分類、例えば、アミノ酸または糖側鎖を含み、特定の3次元構造特性及び特定の電荷特性を有し得る。エピトープは、線状エピトープでも立体構造エピトープでもよい。
【0018】
本明細書で使用される、「エフェクタードメイン」は、適切なシグナルを受信した際に、エフェクタードメインを発現する細胞において生物学的または生理学的応答を直接的または間接的に促進することができる融合タンパク質またはキメラ受容体の細胞内部分である。ある特定の実施形態では、エフェクタードメインは、結合時にシグナルを受け取るタンパク質またはタンパク質複合体の一部である。他の実施形態では、エフェクタードメインは、該エフェクタードメインからのシグナルを誘発する標的分子に直接結合するタンパク質またはタンパク質複合体の一部である。例えば、CARの標的分子への結合に応答して、該エフェクタードメインは、宿主細胞の内部にシグナルを伝達し、エフェクター機能を誘発し得る。エフェクタードメインが1つ以上のシグナル伝達ドメインまたはモチーフを含む場合、エフェクタードメインは細胞応答を直接促進し得る。他の実施形態では、エフェクタードメインは、細胞応答を直接促進する1つ以上の他のタンパク質と結合することによって、細胞応答を間接的に促進する。
【0019】
「接合部アミノ酸」または「接合部アミノ酸残基」は、ポリペプチドの2つの隣接するモチーフ、領域またはドメイン間の1つ以上(例えば、約2~20個)のアミノ酸残基を指す。接合部アミノ酸は、キメラタンパク質の構築設計から生じ得る(例えば、融合タンパク質をコードする核酸分子の構築中の制限酵素部位の使用から生じるアミノ酸残基)。
【0020】
「疾患」は、対象が恒常性を維持できない該対象の健康状態であり、該疾患が改善されない場合、該対象の健康状態は悪化し続ける。対照的に、対象における「障害」または「望ましくない状態」とは、該対象が恒常性を維持することはできるが、該対象の健康状態が、該障害または望ましくない状態が存在しない場合よりもよくない健康状態である。治療せずに放置しても、障害または望ましくない状態は、必ずしも該対象の健康状態のさらなる低下をもたらすわけではない。
【0021】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」は、RNAの形態でも、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAを含むDNAの形態でもよい。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチド)、天然に存在するヌクレオチドのアナログ(例えば、天然に存在するヌクレオチドのα-エナンチオマー型)、またはその両方の組み合わせで構成され得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分、またはピリミジンもしくはプリン塩基部分の修飾または置換を有し得る。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合またはかかる結合のアナログによって連結され得る。ホスホジエステル結合のアナログとしては、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニリデート(phosphoranilidate)、ホスホロアミデート等が挙げられる。核酸分子は、二本鎖であっても一本鎖であってもよく、一本鎖の場合は、コード鎖であっても非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。コード分子は、当技術分野で知られているコード配列と同一のコード配列を有する場合もあれば、遺伝コードの冗長性もしくは縮重の結果として、またはスプライシングによって、同じポリペプチドをコードすることができる異なるコード配列を有する場合もある。
【0022】
「コードすること」とは、特定のポリヌクレオチド配列、例えば、DNA、cDNA、及びmRNA配列が、生物学的プロセスにおける規定のヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)の配列または規定のアミノ酸の配列のいずれか及びそれから生じる生物学的特性を有する他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型として機能する固有の特性を指す。したがって、ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドに対応するmRNAの転写及び翻訳が、細胞または他の生体系においてタンパク質を産生する場合、該タンパク質をコードする。コード鎖と非コード鎖の両方が、タンパク質またはポリヌクレオチドの他の産物をコードすると言うことができる。特に指定のない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。
【0023】
本明細書で使用される、「内因性」または「天然」という用語は、宿主または宿主細胞に通常存在する遺伝子、タンパク質、化合物、分子または活性を指し、該遺伝子、タンパク質、化合物、分子、または活性の天然に存在するバリアントを含む。
【0024】
本明細書で使用される、「同種」または「ホモログ」とは、第二の遺伝子または活性に対して、祖先がつながっている宿主細胞からの、例えば、同じ宿主細胞からの、異なる宿主細胞からの、異なる生物からの、異なる株からの、異なる種からの分子または活性を指す。例えば、異種分子または該分子をコードする異種遺伝子は、それぞれ、天然の宿主細胞分子または該分子をコードする遺伝子と同種であってもよく、任意に、変更された構造、配列、発現レベルまたはそれらの任意の組み合わせを有してもよい。
【0025】
本明細書で使用される、「異種」核酸分子、構築物、または配列とは、宿主細胞にとって天然ではないが、該宿主細胞からの核酸分子または核酸分子の一部に対して同種であることができる核酸分子または核酸分子の一部を指す。該異種核酸分子、構築物、または配列の供給源は、異なる属または種に由来し得る。いくつかの実施形態では、該異種核酸分子は天然に存在しない。ある特定の実施形態では、異種核酸分子は、例えば、コンジュゲーション、形質転換、トランスフェクション、形質導入、エレクトロポレーション等によって宿主細胞または宿主ゲノムに追加され(すなわち、内因性でも天然でもない)、追加された分子は、該宿主細胞のゲノムに組み込まれる場合もあれば、染色体外遺伝物質として(例えば、プラスミドまたは他の形態の自己複製ベクターとして)存在する場合もあり、複数のコピーで存在することができる。さらに、「異種」とは、宿主細胞が同種タンパク質または活性をコードする場合であっても、該宿主細胞に導入された非内因性核酸分子によってコードされる非天然の酵素、タンパク質または他の活性を指す。
【0026】
本明細書で使用される、「操作された」、「組み換え」、「変異体」、「改変された」または「非天然」という用語は、異種核酸分子の導入によって改変された生物、微生物、細胞、核酸分子、もしくはベクターを指すか、または人間の介入によって遺伝子操作された、すなわち、異種核酸分子の導入によって改変された細胞もしくは微生物を指すか、または内因性核酸分子もしくは遺伝子の発現が制御されるように、調節解除されるように、もしくは構成的であるように変更された細胞もしくは微生物を指し、ここで、かかる変更または改変は、遺伝子操作によって導入され得る。人間が生み出す遺伝子変化としては、例えば、1つ以上のタンパク質、キメラ受容体、もしくは酵素をコードする核酸分子(プロモーター等の発現制御要素を含み得る)を導入する改変、または他の核酸分子の追加、削除、置換、もしくは細胞の遺伝物質の他の機能破壊もしくは細胞の遺伝物質への付加を挙げることができる。例示的な改変としては、異種または同種ポリペプチドをコードする領域またはその機能的断片における参照分子または親分子からの改変が挙げられる。追加の例示的な改変としては、例えば、改変によって遺伝子またはオペロンの発現が変化する非コード調節領域における改変が挙げられる。
【0027】
本明細書で使用される、「導入遺伝子」という用語は、その発現が宿主細胞で望まれ、それが遺伝子操作技術によって細胞に導入された、目的のタンパク質(例えば、CAR)をコードする遺伝子またはポリヌクレオチドを指す。導入遺伝子は、治療目的のタンパク質のほか、レポーター、タグ、マーカー、自殺タンパク質等のタンパク質をコードし得る。導入遺伝子は、天然源、天然遺伝子の改変、または組み換え分子もしくは合成分子に由来し得る。ある特定の実施形態では、導入遺伝子は、ベクターの成分である。
【0028】
用語「過剰発現した」抗原または抗原の「過剰発現」とは、細胞における異常に高いレベルの抗原発現を指す。過剰発現した抗原または抗原の過剰発現は、多くの場合、病態と、例えば、血液悪性腫瘍及び対象の特定の組織または器官内で固形腫瘍を形成する細胞において、関連している。腫瘍抗原の過剰発現を特徴とする固形腫瘍または血液悪性腫瘍は、当技術分野で知られている標準的なアッセイによって特定され得る。
【0029】
本明細書で使用される、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は同義で使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含む必要があり、タンパク質またはペプチド配列を構成することができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書で使用される該用語は、例えば、当技術分野では一般にペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも呼ばれる短鎖、及び当技術分野では一般にタンパク質と呼ばれ、多くのタイプが存在するより長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」としては、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に同種のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、改変ポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質が特に挙げられる。該ポリペプチドとしては、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される、「成熟型ポリペプチド」または「成熟型タンパク質」という用語は、細胞膜内に、またはある特定の細胞小器官(例えば、小胞体、ゴルジ、またはエンドソーム)の内部に分泌されるまたは局在するタンパク質またはポリペプチドを指し、部分的に切断されたN末端シグナル配列(例えば、残っているが全シグナル配列には満たないシグナル配列の1つ以上のアミノ酸)を含むか、またはN末端シグナル配列を含まない(すなわち、N末端シグナル配列が、該タンパク質またはポリペプチドから、例えば、内因性切断プロセスによって完全に除去されている)。
【0031】
「シグナル配列」は、「シグナルペプチド」、「リーダー配列」、「リーダーペプチド」、「局在化シグナル」または「局在配列」とも呼ばれ、原形質膜または分泌経路に向かう新たに合成されるタンパク質のN末端に存在する短いペプチド(通常は13~36アミノ酸長)である。シグナル配列は通常、N末端の短い一続きの親水性の正電荷アミノ酸、5~15残基の中央の疎水性ドメイン、及びシグナル配列の切断部位を備えたC末端領域を含む。真核生物では、シグナル配列は、新たに合成されたタンパク質の小胞体への転位を促し、そこでシグナルペプチダーゼによって切断され、成熟型タンパク質が生成され、その後それが適切な目的地に進む。シグナル配列の長さ及びアミノ酸組成の多様性が、切断部位を正確に予測することを困難にする。本明細書において、シグナル配列に言及されるポリペプチド配列の開示の場合、シグナル配列が存在しないポリペプチド配列、または部分的なシグナル配列を有するポリペプチド配列もまた企図される。
【0032】
2つ以上の核酸またはアミノ酸配列間の「同一性パーセント」は、ギャップの数、及び2つ以上の配列のアラインメントを最適化するために導入することが必要な各ギャップの長さを考慮した、該配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一の位置の数/全位置数×100)。配列の比較及び2つ以上の配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズム、例えば、BLAST及びGapped BLASTプログラムをそのデフォルトパラメータを使用して達成され得る(例えば、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403,1990、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTのBLASTNも参照のこと)。
【0033】
「保存的置換」は、当技術分野において、1つのアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸に置換することとして認識されている。例示的な保存的置換は、当技術分野で周知である(例えば、1997年3月13日公開のWO97/09433、10ページ、Lehninger,Biochemistry,Second Edition;Worth Publishers,Inc.NY:NY(1975),pp.71-77、Lewin,Genes IV,Oxford University Press,NY and Cell Press,Cambridge,MA(1990),p.8参照)。
【0034】
「キメラ」という用語は、内因性ではなく、自然界では互いに自然に結合または連結して見出されない、互いに結合または連結した配列の組み合わせを含む、任意の核酸分子またはタンパク質を指す。例えば、キメラ核酸分子は、複数の異なる遺伝子からの様々なドメインをコードする核酸を含み得る。別の例では、キメラ核酸分子は、異なる供給源に由来する調節配列及びコード配列を含む場合もあれば、同じ供給源に由来するが自然界に見られるものとは異なる様式で配置された調節配列及びコード配列を含む場合もある。
【0035】
本明細書で使用される、「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するのに必要な、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列として定義される。
【0036】
本明細書で使用される、「プロモーター/調節配列」という用語は、該プロモーター/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を意味する。場合によっては、この配列はコアプロモーター配列であり、他の例では、この配列は、エンハンサー配列及び遺伝子産物の発現に必要な他の調節要素を含み得る。該プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的な様式で遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0037】
「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合、細胞のほとんどまたはすべての生理学的条件下、該細胞で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0038】
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合、該プロモーターに対応するインデューサーが細胞に存在する場合にのみ実質的に、該細胞で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0039】
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子によってコードされたまたは特定されたポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合、細胞が、該プロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ実質的に、該細胞で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0040】
本明細書で使用される、「転写制御下にある」または「作動可能に連結された」という表現は、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始及びポリヌクレオチドの発現を制御するために、ポリヌクレオチドに関して正しい位置及び配向にあることを意味する。
【0041】
「ベクター」とは、別の核酸を輸送することが可能な核酸分子である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、またはファージであり得る。該用語は、細胞への核酸の導入を促進する非プラスミド及び非ウイルス化合物も含むものとも解釈されるべきである。「発現ベクター」は、それが適切な環境に存在する場合、該ベクターが担持する1つ以上の導入遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を指示することが可能なベクターである。本明細書に記載のベクターによって発現される1つ以上の導入遺伝子は、発現カセットにコードされる。
【0042】
「レンチウイルスベクター」は、レンチウイルスに由来するベクターであり、1つ以上のレンチウイルスパッケージングタンパク質、及び/または該ベクターが担持する1つ以上の遺伝子の発現に必要な1つ以上のレンチウイルスタンパク質を含む。略語「LVV」は、本明細書では、レンチウイルスベクター(単数形)及び複数のレンチウイルスベクター(複数形)を指すために使用される。
【0043】
「レンチウイルス」とは、分裂細胞及び非分裂細胞に感染することが可能なレトロウイルス属を指す。レンチウイルスの例としては、HIV(HIV 1型及びHIV 2型を含めたヒト免疫不全ウイルス、ウマ感染性貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、及びサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0044】
「レトロウイルス」が指すのは、一本鎖プラス・センスRNA分子のRNAウイルスである。レトロウイルスは、逆転写酵素及びインテグラーゼ酵素を含む。レトロウイルスは、標的細胞に侵入すると、逆転写酵素を利用して、それらのRNA分子をDNA分子に転写する。続いて、該インテグラーゼ酵素が使用され、該DNA分子が宿主細胞のゲノムに組み込まれる。該宿主細胞のゲノムに組み込まれた後、レトロウイルス由来の配列は、プロウイルス(例えば、プロウイルス配列またはprovims配列)と呼ばれる。
【0045】
本明細書で使用される、「発現カセット」という用語は、宿主細胞において少なくとも1つの導入遺伝子及びその発現を制御する調節配列(例えば、プロモーター、3’UTR)を含むベクター核酸の特有の成分を指す。タンデム発現カセットとは、少なくとも2つの導入遺伝子のタンデム発現のための同じセットの調節配列の制御下にある少なくとも2つの導入遺伝子を含むベクター核酸の成分を指す。ある特定の実施形態では、該タンデム発現カセットは、同じプロモーターの制御下にある少なくとも2つの導入遺伝子を含む。ある特定の実施形態では、該第一の導入遺伝子と第二の導入遺伝子は、単一のmRNAからの2つのタンパク質の共発現を可能にするために、配列内リボソーム進入部位(IRES)、フューリン切断部位、または自己開裂ウイルス2Aペプチドによって分離されている。
【0046】
「免疫系細胞」または「免疫細胞」という用語は、骨髄内の造血幹細胞に由来する免疫系の任意の細胞を意味する。造血幹細胞は、2つの主要な系統、すなわち、骨髄系前駆細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球及び顆粒球等の骨髄細胞を生じさせる)及びリンパ球前駆細胞(T細胞、B細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞等のリンパ系細胞を生じさせる)を生じさせる。免疫系細胞の例としては、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD4-CD8-ダブルネガティブT細胞、γδT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞、及び樹状細胞が挙げられる。マクロファージ及び樹状細胞は、「抗原提示細胞」または「APC」とも呼ばれることもあり、これらは、ペプチドと複合体を形成したAPC表面の主要組織適合抗原(MHC)受容体がT細胞表面のTCRと相互作用する際にT細胞を活性化することができる特殊な細胞である。
【0047】
「リンパ球」という用語は、リンパ球由来の免疫細胞を指し、これらは、赤血球系または骨髄系の細胞から該細胞を区別する、リンパ球またはその前駆体(precursor)もしくは前駆体(progenitor)に特徴的な少なくとも1つの表現型を示す細胞である。「リンパ球」という用語は、T細胞、B細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞を包含する。
【0048】
「T細胞」という用語は、T細胞系統の細胞を指す。「T細胞系統の細胞」とは、他のリンパ系細胞由来の細胞、及び赤血球または骨髄系統の細胞から該細胞を区別する、T細胞またはその前駆体(precursor)もしくは前駆体(progenitor)に特徴的な少なくとも1つの表現型を示す細胞を指す。かかる表現型の特徴としては、T細胞に特異的な1つ以上のタンパク質(例えば、CD3+、CD4+、CD8+)の発現、またはT細胞に特異的な生理学的、形態学的、機能的、もしくは免疫学的特徴を挙げることができる。例えば、T細胞系統の細胞は、T細胞系統に入れられる前駆(progenitor)もしくは前駆(precursor)細胞、CD25+未熟及び不活化T細胞、CD4もしくはCD8系統関与を受けた細胞、CD4+CD8+二重陽性である胸腺細胞前駆細胞、単一陽性のCD4+もしくはCD8+、TCRαβもしくはTCRγδ、または成熟型の機能的もしくは活性化T細胞であり得る。「T細胞」という用語は、ナイーブT細胞(CD45RA+、CCR7+、CD62L+、CD27+、CD45RO-)、セントラルメモリーT細胞(CD45RA-、CD45RO+、CD62L+、CCR7+、CD27+)、エフェクターメモリーT細胞(CD45RA-、CD45RO+、CCR7-、CD62L-、CD27-)、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、γδT細胞、Treg、ナチュラルキラーT細胞、及び組織常在性T細胞を包含する。
【0049】
「ナチュラルキラー細胞」または「NK細胞」という用語は、大顆粒リンパ球(LGL)を指し、共通のリンパ球前駆体を生成するB及びTリンパ球から分化した第三の種類の細胞を構成する。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃腺、及び胸腺で分化して成熟し、そこで循環に入ることが知られている。NK細胞は、ナチュラルキラーT細胞(NKT)とは表現型、起源、及びそれぞれのエフェクター機能が異なり、多くの場合、NKT細胞の活性は、IFNγを分泌することによってNK細胞の活性を促進する。NKT細胞とは対照的に、NK細胞は、T細胞抗原受容体(TCR)、汎TマーカーCD3または表面免疫グロブリン(Ig)B細胞受容体を発現しないが、ヒトでは通常、表面マーカーCD16(FcγRIII)及びCD56を発現し、C57BL/6マウスでは、NK1.1またはNK1.2を発現する。ヒトNK細胞の最大80%は、CD8も発現する。
【0050】
「B細胞」という用語は、B細胞系統の細胞を指す。「B細胞系統の細胞」とは、他のリンパ系細胞由来の細胞、及び赤血球または骨髄系統の細胞から該細胞を区別する、B細胞またはその前駆体(precursor)もしくは前駆体(progenitor)に特徴的な少なくとも1つの表現型を示す細胞を指す。かかる表現型の特徴としては、B細胞に特異的な1つ以上のタンパク質(例えば、CD19+、CD72+、CD24+、CD20+、CD21+、CD22+、CD38+、CD40+、CD72+、CD32b+、CD268+、CD269+、CD267+、CD86+、CD80+、CD40+、CD52+、CD138+、CD27+、CD28+、CD21+、CD23+、CD84+、CD257+、CD270+、CD37+、及びCD74+のうちの1つ以上が陽性の細胞)の発現、またはB細胞に特異的な生理学的、形態学的、機能的、または免疫学的特徴を挙げることができる。例えば、B細胞系統の細胞は、B細胞系統に入れられる前駆(progenitor)もしくは前駆(precursor)細胞(例えば、プレプロB細胞、プロB細胞、及びプレB細胞)、未熟及び不活化B細胞、または成熟型及び機能的もしくは活性化B細胞であり得る。したがって、「B細胞」は、ナイーブB細胞、形質細胞、制御性B細胞、辺縁帯B細胞、濾胞性B細胞、リンパ形質細胞様細胞、形質芽細胞、及びメモリーB細胞(例えば、CD27+、IgD-)を包含する。
【0051】
免疫受容体(例えば、CAR)をその表面に発現する細胞(例えば、T細胞)に関する「細胞傷害活性」という用語は、「細胞溶解活性」とも呼ばれ、抗原特異的シグナル伝達(例えば、該CARを介した)の際に、該細胞が、標的細胞がアポトーシスを起こすように誘導することを意味する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性細胞は、顆粒からの細胞毒素、例えば、パーフォリン、グランザイム、及びグラニュリシンの放出を介して、標的細胞においてアポトーシスを誘導し得る。パーフォリンは、標的の細胞膜に挿入されて孔が形成され、それにより、水及び塩が急速に標的細胞に侵入する。グランザイムは、セリンプロテアーゼであり、標的細胞にアポトーシスを誘導する。グラニュリシンもまた、標的の細胞膜に孔を形成することが可能であり、炎症性分子である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性細胞は、抗原特異的シグナル伝達の後にT細胞上で上方制御されるFasリガンドと、該標的細胞上で発現されるFas分子との相互作用を介して、標的細胞においてアポトーシスを誘導し得る。Fasは、いくつかの異なる細胞の表面にあるアポトーシスシグナル伝達受容体分子である。
【0052】
「疾患」は、対象が恒常性を維持できない該対象の健康状態であり、該疾患が改善されない場合、該対象の健康状態は悪化し続ける。対照的に、対象における「障害」または「望ましくない状態」とは、該対象が恒常性を維持することはできるが、該対象の健康状態が、該障害または望ましくない状態が存在しない場合よりもよくない健康状態である。治療せずに放置しても、障害または望ましくない状態は、必ずしも該対象の健康状態のさらなる低下をもたらすわけではない。
【0053】
本明細書で使用される、「がん」という用語は、異常な細胞の急速かつ制御されない増殖を特徴とする疾患として定義される。該異常な細胞は、固形腫瘍を形成する場合もあれば、血液悪性腫瘍を構成する場合もある。がん細胞は、局所的に広がることもあれば、血流及びリンパ系を通って体の他の部分に広がることもある。様々ながんの例としては、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
「対象」、「患者」及び「個体」という用語は、本明細書では同義で使用され、免疫応答が誘発され得る生存生物(例えば、哺乳類)を含むことが意図される。対象の例としては、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、及びそれらのトランスジェニック種が挙げられる。
【0055】
「養子細胞免疫療法」または「養子免疫療法」とは、天然に存在する、または遺伝子操作された疾患抗原特異的免疫細胞(例えば、T細胞)の投与を指す。養子細胞免疫療法は、自己(免疫細胞はレシピエント由来)、同種異系(免疫細胞は同じ種のドナー由来)または同系(免疫細胞はレシピエントと遺伝的に同一のドナーからのもの)であり得る。
【0056】
「自己」とは、後に再導入される同じ対象に由来する移植片(例えば、臓器、組織、細胞)を指す。
【0057】
「同種」とは、同じ種の異なる対象に由来する移植片を指す。
【0058】
本明細書に記載のレンチウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターによって形質導入された細胞(例えば、レンチウイルスベクターの導入遺伝子によってコードされるCARを発現するT細胞)の「治療有効量」または「有効量」とは、治療される疾患、障害、または望ましくない状態の1つ以上の症状の改善をもたらすのに十分なレンチウイルス粒子または細胞の量を指す。
【0059】
「治療する」または「治療」または「改善する」とは、対象の疾患、障害、または望ましくない状態の医療管理を指す。一般に、本開示のレンチウイルスベクターまたはCARを発現する細胞を含む適切な用量または治療レジメンは、治療効果または予防効果を引き出すのに十分な量で投与される。治療効果または予防(prophylactic)/予防(preventive)効果としては、臨床転帰の改善、疾患、障害、もしくは望ましくない状態と関連する症状の緩和もしくは軽減、症状の発生の減少、生活の質の改善、無病状態の延長、疾患、障害、もしくは望ましくない状態の程度の減少、病態の安定化、疾患進行の遅延、寛解、生存、生存期間の延長、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0060】
「抗腫瘍効果」という用語は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の延長、またはがん性状態と関連する様々な生理的症状の改善により明らかになり得る生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」は、血液悪性腫瘍または腫瘍形成の予防によっても明らかになり得る。
【0061】
さらなる定義は、本開示を通して提供される。
【0062】
レンチウイルスベクター
レンチウイルスは、宿主ゲノムに組み込まれる能力により、通常、ゆっくりと進行する疾患を引き起こすレトロウイルスの属である。改変されたレンチウイルスゲノムは、宿主細胞に核酸を送達するためのウイルスベクターとして有用である。
【0063】
本開示は、変異型の異種エンベロープタンパク質を含むウイルスエンベロープ及び指向性を特徴づける分子(「標的タンパク質」とも呼ばれる)を含む自己不活性化レンチウイルスベクター(「LVV」)を提供する。本明細書に記載のLVVは、さらに導入遺伝子を含み、該LVVは、標的免疫細胞に特異的に結合すること、及び該導入遺伝子が該免疫細胞によって発現されるように該標的免疫細胞を形質導入することが可能である。いくつかの実施形態では、該LVVは、2つ以上の導入遺伝子を担持し得る。さらなる特定の実施形態では、該導入遺伝子は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。
【0064】
変異型ウイルスエンベロープタンパク質
本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、変異が存在しない場合、細胞付着と膜融合の両方を媒介する、変異型異種ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイプ化されている。特定の実施形態では、該変異型エンベロープタンパク質は、エンベロープタンパク質の融合特性を保存しながら、エンベロープタンパク質がその天然の標的に結合する能力を阻害する少なくとも1つの変異を含む。特定の実施形態では、該異種エンベロープタンパク質は、1つ以上の変異を含む水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(「VSV-G」、「VSV-Gエンベロープタンパク質」または「VSV-Gタンパク質」)であり、該変異は、VSV-Gタンパク質の融合機能を保存しながら、VSV-Gの低密度リポタンパク質受容体(「LDL-R」)への結合を阻害する。
【0065】
該エンベロープタンパク質がその天然の標的に結合する能力に言及する場合、「阻害する(inhibit)」及び「阻害する(inhibits)」という用語は、エンベロープタンパク質によるその天然の標的への結合の完全な排除と、該エンベロープタンパク質によるその天然の標的への結合の有意な減少の両方を包含する。特定の実施形態では、「有意な減少」とは、該天然の標的に対する結合の少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも20%、少なくとも15%、及び少なくとも10%の減少から選択される減少を指す。
【0066】
表10に示す核酸配列及びアミノ酸配列は、野生型VSV-Gエンベロープタンパク質の参照配列、及び本開示に従う変異型VSV-Gエンベロープタンパク質の例を提供する。配列番号77は、該VSV-Gエンベロープタンパク質をコードする参照核酸配列であり、配列番号78は、参照VSV-Gエンベロープタンパク質のアミノ酸配列である。配列番号87は、該参照VSV-Gエンベロープタンパク質の切断可能なシグナルペプチドをコードする核酸配列である。配列番号88は、該参照VSV-Gエンベロープタンパク質の切断可能なシグナルペプチドのアミノ酸配列である。配列番号89は、該シグナル配列が欠けている、VSV-Gエンベロープタンパク質をコードする参照核酸配列である。配列番号90は、該配列が欠けている、参照VSV-Gエンベロープタンパク質のアミノ酸配列である。本明細書に開示するVSV-G変異の位置及び性質は、配列番号87のN末端シグナル配列が欠けている配列番号77、及び配列番号88のN末端シグナル配列が欠けている配列番号78によってそれぞれ示される、核酸配列及びアミノ酸配列を参照して記載される。したがって、変異位置を特定する目的でのVSV-G envアミノ酸配列の1位への言及は、配列番号78の野生型VSV-Gアミノ酸配列のリジン(K)である17位、または配列番号90の野生型VSV-Gアミノ酸配列の1位を指す。
【0067】
いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、変異をアミノ酸位置H8、N9、Q10、K47、K50、A51、S183、S179、N180、I182、M184、Y209、I347、T350、T352、E353、R354に、TTの挿入をN9とQ10の間に、GGSの挿入をH8とN9の間に、GGSの挿入をN9とQ10の間に、TTの挿入をN208とY209の間に、GGSの挿入をP46とK47の間に、GGSの挿入をN208とY209の間に、及び/または残基1~8の欠失を含む。ある特定の実施形態では、該VSV-Gエンベロープタンパク質は、2つ以上の変異をH8、N9、Q10、K47、K50、A51、S183、S179、N180、I182、M184、Y209、I347、T350、T352、E353、R354から選択されるアミノ酸位置に、TTの挿入をN9とQ10の間に、GGSの挿入をH8とN9の間に、GGSの挿入をN9とQ10の間に、TTの挿入をN208とY209の間に、GGSの挿入をP46とK47の間に、GGSの挿入をN208とY209の間に、及び残基1~8の欠失を含む。他の実施形態では、該VSV-Gエンベロープタンパク質は、3つ以上の変異をH8、N9、Q10、K47、K50、A51、S183、S179、N180、I182、M184、Y209、I347、T350、T352、E353、R354から選択されるアミノ酸位置に、TTの挿入をN9とQ10の間に、GGSの挿入をH8とN9の間に、GGSの挿入をN9とQ10の間に、TTの挿入をN208とY209の間に、GGSの挿入をP46とK47の間に、GGSの挿入をN208とY209の間に、及び残基1~8の欠失を含む。他の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、H8A、K47A、K47Q、Y209A、R354A、及び/またはR354Qの変異を含む。さらに他の実施形態では、該VSV-Gエンベロープタンパク質は、N9、Q10、K50、A51、S183、S179、N180、I182、M184、I347、T350、T352、及びE353から選択される1つ以上の変異、TTの挿入をN9とQ10の間に、GGSの挿入をH8とN9の間に、GGSの挿入をN9とQ10の間に、TTの挿入をN208とY209の間に、GGSの挿入をP46とK47の間に、GGSの挿入をN208とY209の間に、及び残基1~8の欠失を含む。さらに他の実施形態では、該VSV-Gエンベロープタンパク質は、N9、Q10、K50、A51、S183、S179、N180、I182、M184、I347、T350、T352、及びE353のうちの1つ以上での変異から選択される2つ以上の変異、TTの挿入をN9とQ10の間に、GGSの挿入をH8とN9の間に、GGSの挿入をN9とQ10の間に、TTの挿入をN208とY209の間に、GGSの挿入をP46とK47の間に、GGSの挿入をN208とY209の間に、及び残基1~8の欠失を含む。いくつかの実施形態では、変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、H8A、N9A、Q10A、K47A、K47Q、N180A、I182A、Y209A、T352A、T352W、E353A、R354A、及びR354Qの変異のうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態では、変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、H8A、K47A、K47Q、Y209A、R354A、及びR354Qの変異のうちの1つ以上から選択される。いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、K47の変異及びR354の変異を含む。いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、K47Qの変異及びR354Aの変異を含む。いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、N180の変異、I182の変異、T352の変異、及びE353の変異を含む。いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、N180Aの変異、I182Aの変異、T352Aの変異、及びE353Aの変異を含む。いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、T352の変異及びE353の変異を含む。さらなる実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、T352Wの変異及びE353Aの変異を含む。いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、N9の変異、Q10の変異、及びN180の変異を含む。いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、N9Aの変異、Q10Aの変異、及びN180Aの変異を含む。いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、GGSの挿入をH8とN9の間に、及びGGSの挿入をN9とQ10の間に含む。いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、TTの挿入をN9とQ10の間に含む。いくつかの実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、GGSの挿入をP46とK47の間に含む。他の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、Nikolic et al.,“Structural basis for the recognition of LDL-receptor family members by VSV glycoprotein.”Nature Comm.,2018,9:1029に記載されている通りであり、その関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
特定の実施形態では、該変異型VSVエンベロープタンパク質は、K47Qの変異及びR354Aの変異を含む。特定の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、配列番号74に従うアミノ酸配列を有する。
【0069】
特定の実施形態では、該変異型VSVエンベロープタンパク質は、N180Aの変異、I182Aの変異、T352Aの変異、及びE353Aの変異を含む。特定の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、配列番号93に従うアミノ酸配列を有する。
【0070】
特定の実施形態では、該変異型VSVエンベロープタンパク質は、T352Wの変異及びE353Aの変異を含む。特定の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、配列番号95に従うアミノ酸配列を有する。
【0071】
特定の実施形態では、該変異型VSVエンベロープタンパク質は、N9Aの変異、Q10Aの変異、及びN180Aの変異を含む。特定の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、配列番号97に従うアミノ酸配列を有する。
【0072】
特定の実施形態では、該変異型VSVエンベロープタンパク質は、N9とQ10の間にTTの挿入変異を含む。特定の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、配列番号99に従うアミノ酸配列を有する。
【0073】
特定の実施形態では、該変異型VSVエンベロープタンパク質は、P46とK47の間にGGSの挿入変異を含む。特定の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、配列番号101に従うアミノ酸配列を有する。
【0074】
特定の実施形態では、該変異型VSVエンベロープタンパク質は、GGSの挿入をH8とN9の間に、及びGGSの挿入をN9とQ10の間に含む。特定の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質は、配列番号103に従うアミノ酸配列を有する。
【0075】
標的タンパク質
標的タンパク質は、ウイルスエンベロープ上に提示される膜結合タンパク質であり、リンパ球を標的とするドメインを含む細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを含む。リンパ球を標的とするドメインは、あるアミノ酸配列を有する任意のタンパク質またはペプチドであり、標的リンパ球細胞表面上の標的分子またはリガンド(例えば、同種タンパク質またはリガンド)の結合パートナーである。いくつかの実施形態では、リンパ球を標的とするドメインは、T細胞を標的とするドメインである。いくつかの実施形態では、リンパ球を標的とするドメインは、NK細胞を標的とするドメインである。いくつかの実施形態では、リンパ球を標的とするドメインは、B細胞を標的とするドメインである。例えば、ある特定の実施形態では、該標的タンパク質の細胞外ドメインは、リンパ球を標的とするドメインを含み、該ドメインは、規定の細胞集団、例えば、該細胞表面の標的タンパク質またはリガンドの存在を特徴とするリンパ球の集団の表面の該タンパク質またはリガンドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、リンパ球を標的とするドメインは、特定の型のリンパ球、例えば、T細胞、B細胞、またはナチュラルキラー(NK)細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、該標的タンパク質は、さらに、該膜貫通ドメインと該細胞外ドメインとの間に位置する細胞外リンカーまたはヒンジドメインを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、該標的タンパク質は、完全長の細胞表面タンパク質または受容体であり、各成分(例えば、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインの各々)は、単一のタンパク質または受容体に由来する。他の実施形態では、該標的タンパク質は、キメラタンパク質であり、異なるタンパク質または受容体に由来する少なくとも2つの成分を有する。いくつかの実施形態では、該標的タンパク質は、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、及びブタを含む哺乳類種から得られる。いくつかの実施形態では、該標的タンパク質は、完全ヒト配列である。いくつかの実施形態では、該標的タンパク質は、ヒト配列成分(複数可)及び別の種に由来する成分(複数可)または合成成分(複数可)を含むキメラ配列である。いくつかの実施形態では、キメラ標的タンパク質は、完全合成タンパク質であり得る。さらに他の実施形態では、キメラ標的タンパク質は、細胞外ドメイン、細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン、ヒンジドメイン、または完全合成タンパク質であるリンカーのうちの1つ以上を含み得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、該リンパ球を標的とするドメインは、抗体を含む。かかる実施形態では、該細胞外標的指向性ドメインは、完全長抗体、抗体断片、ナノボディ、または一本鎖Fv断片(scFv)であり得る。
【0078】
特定の実施形態では、該標的指向性分子は、T細胞を標的とするドメインを含み、該ドメインは、例えば、T細胞抗原、T細胞表面受容体、または標的T細胞の表面に存在する任意の他のタンパク質を含めた、T細胞表面マーカーに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、該標的タンパク質は、CD3、CD28、CD80、4-1BB、AhR、CD3、CD2、CD7、CD4、CD8、CD25、CD44、CD45RA、CD47、CD62L、CD69、CD94、CD95、CD127、CD161、CD183(CXCR3)、CD184(CXCR4)、CD185(CXCR5)、CD193(CCR3)、CD194(CCR4)、CD195(CCR5)、CD196(CCR6)、CD197(CCR7)、CCR10、PD-1、TCRa/b、CD5、CD27、CD45RO、CD45RB、CD57、CD103、CD122、P2RX7、TIGIT、LAG-3、TIM-3、IL6ST、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるT細胞マーカーに特異的に結合する。
【0079】
さらなる実施形態では、該標的タンパク質は、γδTCR、Vデルタ1、Vデルタ2、NKG2D(KLRK1、CD314)、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるγδT細胞マーカーに特異的に結合する。
【0080】
他の実施形態では、該標的タンパク質は、インバリアントTCR(Va24-Ja18)、CD185(CXCR5)、CXCR6、IL-21R、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるNK T細胞マーカーに特異的に結合する。
【0081】
他の実施形態では、該標的タンパク質は、Va7.2、Ja33、CXCR6、IL-18R、KLRB1(CD161)、VLA4(アルファ4ベータ1インテグリン)、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるMAIT細胞マーカーに特異的に結合する。
【0082】
他の実施形態では、該標的タンパク質は、CD56、NKp46、CD16、KIR(複数可)、NKG2タンパク質(例えば、NKG2D(KLRK1、CD314))、KLRB1(CD161)、KLRD1(cd94)、IL2Rb(CD122)、IL-21R、SLAMF6(CD352)、SLAMF7(CD319)、IL-18R、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるNK細胞マーカーに特異的に結合する。
【0083】
他の実施形態では、該標的タンパク質は、CD19、CD20、CD21、CD22、CD24、CD38、CD40、CD72、CD32b、CD268、CD269、CD267、CD86、CD80、CD52、CD138、CD27、CD28、CD23、CD84、CD257、CD270、CD37、CD74、及びCD269、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択されるB細胞マーカーに特異的に結合する。
【0084】
実施形態では、該標的タンパク質は、CD80、CD27、CD28、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるリンパ球マーカー(例えば、B細胞及びT細胞)に特異的に結合する。
【0085】
該標的タンパク質のいくつかの実施形態では、リンカーは、該膜貫通ドメインと該リンパ球を標的とするドメインとの間に位置する。リンカーは、アミノ酸リンカーであり、剛直なリンカー、柔軟なリンカー、またはオリゴマー化リンカーであり得る。剛直なリンカーは、柔軟性に欠けるアミノ酸配列である(例えば、少なくとも1つのプロリンを含み得る)。いくつかの実施形態では、剛直なリンカーは、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)柄またはCD8a柄を含む。いくつかの実施形態では、PDGFR柄は、AVGQDTQEVIVVPHSLPFK(配列番号104)を含むアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、PDGFR柄は、ASAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEAARPAAGGAVHTRGLDFAK(配列番号105)を含むアミノ酸配列を含む。
【0086】
柔軟なリンカーは、多くの自由度を有するアミノ酸配列である(例えば、小さな側鎖を有する複数のアミノ酸、例えば、グリシンまたはアラニンを含み得る)。いくつかの実施形態では、柔軟なリンカーは、GAPGASを含むアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、柔軟なリンカーは、GAPGSGGGGSGGGGSAS(配列番号106)からなるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、柔軟なリンカーは、GGGGSを含むアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、柔軟なリンカーは、GGGSを含むアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、柔軟なリンカーは、(GAPGAS)N、(G3S)N、または(G4S)Nを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上である。
【0087】
オリゴマー化リンカーは、別の関連アミノ酸にオリゴマー化され得るアミノ酸である。いくつかの実施形態では、オリゴマー化リンカーは、二量体、三量体、または四量体を形成し得るアミノ酸配列である。いくつかの実施形態では、オリゴマー化リンカーは、IgG4ヒンジドメイン(例えば、ESKYGPPCPPCPAVGQDTQEVIVVPHSLPFK(配列番号107))を含む。いくつかの実施形態では、オリゴマー化リンカーは、四量体コイルドコイルを形成し得るアミノ酸配列(例えば、ASGGGGSGELAAIKQELAAIKKELAAIKWELAAIKQGAG(配列番号108))を含む。いくつかの実施形態では、オリゴマー化リンカーは、二量体コイルドコイルを形成し得るアミノ酸配列(例えば、ASESKYGPPCPPCP(配列番号109))を含む。
【0088】
該標的タンパク質は、通常、シグナル配列(局在配列のシグナルペプチドとも呼ばれる)を含む。該シグナル配列は、該標的タンパク質のN末端またはC末端に位置し得る。シグナル配列は、該標的タンパク質を、該レンチウイルスベクターのエンベロープとして機能する膜に移動させるように機能する。本明細書に記載の標的タンパク質に含まれ得るシグナル配列の非限定的な例としては、Igカッパリーダー配列(例えば、METDTLLLWVLLLWVPGSTG(配列番号110)を含むマウスIgカッパリーダー配列、CD8aシグナルペプチド配列(例えば、MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号12)を含むCD8aシグナルペプチド)、及びB2Mシグナルペプチド配列(例えば、MSRSVALAVLALLSLSGLEA(配列番号123)を含むB2Mシグナルペプチド配列)が挙げられる。ある特定の実施形態では、成熟型標的タンパク質は、該完全長シグナル配列の1つ以上のアミノ酸を保持する、部分的に切断されたシグナル配列を有する。他の実施形態では、シグナルペプチダーゼによる切断により、シグナル配列が完全に除去され、シグナル配列が完全に欠如した成熟型標的タンパク質が得られる。
【0089】
いくつかの実施形態では、該標的タンパク質は、CD80タンパク質である。該標的タンパク質がCD80タンパク質である場合、それは、配列番号6に従う細胞外ドメインを含み得る。かかる実施形態では、CD80タンパク質は、配列番号4に従うシグナルペプチドならびに配列番号8に従う膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインと、を含み得る。特定の実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターに含まれるCD80標的タンパク質は、配列番号2に従うアミノ酸配列、または配列番号4のシグナルペプチドが欠けている配列番号2に従うアミノ酸配列を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、該標的タンパク質がCD80タンパク質の場合、それは、配列番号6に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する細胞外ドメインを含み得る。かかる実施形態では、CD80タンパク質は、配列番号4に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するシグナルペプチド、及び/または配列番号8に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する膜貫通及び細胞内ドメインを含み得る。特定の実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターに含まれるCD80標的タンパク質は、配列番号2に対して、または配列番号4のシグナルペプチドが欠けている配列番号2に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【表1-1】
【表1-2】
【0091】
いくつかの実施形態では、CD80標的タンパク質を含むレンチウイルスベクターは、標準LVVによる形質導入と比較して、全CD4及びCD8T細胞の相対パーセンテージとして、CD8T細胞よりも高いCD4T細胞の形質導入を示す。本明細書で使用される、「標準レンチウイルスベクター」または「標準LVV」は、本開示の変異型VSV-Gエンベロープタンパク質及びリンパ球を標的とするタンパク質を含まないレンチウイルスベクターを指す。いくつかの実施形態では、標準LVVは、第3世代のLVVパッケージング系を使用して生成される。いくつかの実施形態では、CD80標的タンパク質を含むレンチウイルスベクターは、全CD4及びCD8T細胞の相対パーセンテージとして、標準LVVと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれ以上、CD8T細胞よりもCD4T細胞の形質導入を高める。
【0092】
いくつかの実施形態では、該標的タンパク質は、抗CD3標的タンパク質である。いくつかの実施形態では、抗CD3標的タンパク質は、抗体またはその結合断片であり、例えば、scFvを含む。該標的タンパク質が抗CD3標的タンパク質である場合、それは、配列番号14に従う軽鎖可変領域を有する抗CD3 scFv、配列番号16に従うG3Sリンカー、及び配列番号18に従う重鎖可変領域を含み得る。いくつかの実施形態では、抗CD3標的タンパク質は、配列番号115に従う軽鎖可変領域を有する抗CD3 scFv、配列番号16に従うG3Sリンカー、及び配列番号113に従う重鎖可変領域を含み得る。記載の抗CD3標的タンパク質は、配列番号12に従うシグナルペプチド、ならびに配列番号20に従うヒンジ及び膜貫通ドメインを含み得る。特定の実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターに含まれる抗CD3標的タンパク質は、配列番号10に従うアミノ酸配列、または配列番号12のシグナルペプチドが欠けている配列番号10に従うアミノ酸配列を含む。別の特定の実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターに含まれる抗CD3標的タンパク質は、配列番号117に従うアミノ酸配列、または配列番号12のシグナルペプチドが欠けている配列番号117に従うアミノ酸配列を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、該標的タンパク質が抗CD3標的タンパク質である場合、それは、配列番号14に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する軽鎖可変領域、及び配列番号18に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する重鎖可変領域を有する抗CD3 scFvを含み得る。記載の抗CD3標的タンパク質は、配列番号12に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するシグナルペプチド、及び配列番号20に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するヒンジ及び膜貫通ドメインを含み得る。特定の実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターに含まれる抗CD3標的タンパク質は、配列番号10、または配列番号12のシグナルペプチドが欠けている配列番号10に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、該標的タンパク質が抗CD3標的タンパク質である場合、それは、配列番号115に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する軽鎖可変領域、及び配列番号113に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する重鎖可変領域を有する抗CD3 scFvを含み得る。記載の抗CD3標的タンパク質は、配列番号12に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するシグナルペプチド、及び配列番号20に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するヒンジ及び膜貫通ドメインを含み得る。特定の実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターに含まれる抗CD3標的タンパク質は、配列番号117、または配列番号12のシグナルペプチドが欠けている配列番号117に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0095】
なおさらなる実施形態では、本明細書に従うレンチウイルスベクターは、複数の標的タンパク質、または複数の異なるリンパ球を標的とするドメインを有する単一の標的タンパク質を含み得る。例えば、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、少なくとも2つの標的タンパク質を含むことができ、該標的タンパク質の各々は、異なる標的に特異的に結合するNK細胞を標的とするドメインを有する。別の例では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、少なくとも2つの標的タンパク質を含むことができ、該標的タンパク質の各々は、異なる標的に特異的に結合するT細胞を標的とするドメインを有する。別の例では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、少なくとも2つの標的タンパク質を含むことができ、該標的タンパク質の各々は、異なる標的に特異的に結合するB細胞を標的とするドメインを有する。さらに別の例では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、少なくとも2つの標的タンパク質を含むことができ、第一の標的タンパク質は、T細胞を標的とするドメインを有し、第二の標的タンパク質は、NK細胞を標的とするドメインを有する。さらに別の例では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、少なくとも2つの標的タンパク質を含むことができ、第一の標的タンパク質は、T細胞を標的とするドメインを有し、第二の標的タンパク質は、B細胞を標的とするドメインを有する。さらに別の例では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、少なくとも2つの標的タンパク質を含むことができ、第一の標的タンパク質は、B細胞を標的とするドメインを有し、第二の標的タンパク質は、NK細胞を標的とするドメインを有する。代替的な実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、2つ以上の異なるリンパ球を標的とするドメイン、2つ以上の異なるT細胞を標的とするドメイン、2つ以上の異なるNK細胞を標的とするドメイン、または2つ以上の異なるB細胞を標的とするドメインを有する単一の標的タンパク質を含む(例えば、二重特異性または多重特異性標的タンパク質)。任意のかかる実施形態では、該標的タンパク質に含まれるTリンパ球を標的とするドメインは、本明細書に記載のもののいずれかから選択され得る。さらに別の例では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、少なくとも2つの標的タンパク質を含むことができ、第一の標的タンパク質は、リンパ球を標的とするドメインを有し、第二の標的タンパク質は、T細胞を標的とするドメインを有する。さらに別の例では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、少なくとも2つの標的タンパク質を含むことができ、第一の標的タンパク質は、リンパ球を標的とするドメインを有し、第二の標的タンパク質は、B細胞を標的とするドメインを有する。
【0096】
例示的な実施形態では、複数の標的タンパク質を有するレンチウイルスベクターは、それぞれ、表1及び表2に詳述されるCD80標的タンパク質及び抗CD3標的タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CD80標的タンパク質は、配列番号2に従うアミノ酸配列、または配列番号4のシグナルペプチドが欠けている配列番号2に従うアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3標的タンパク質は、配列番号10に従うアミノ酸配列、または配列番号12のシグナルペプチドが欠けている配列番号10に従うアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD3標的タンパク質は、配列番号117に従うアミノ酸配列、または配列番号12のシグナルペプチドが欠けている配列番号117に従うアミノ酸配列を含む。該レンチウイルスベクターがCD80標的タンパク質及び抗CD3標的タンパク質を含む場合、該標的タンパク質は、該レンチウイルスベクターの産生に使用される別個の発現ベクター上にコードされ得る。代替的に、CD80標的タンパク質と抗CD3標的タンパク質の両方をタンデム発現カセット上にコードしてもよく、該レンチウイルスベクターの産生のために両方の標的タンパク質の発現をもたらす単一の発現ベクター内で単一の発現カセットが提供される。CD80標的タンパク質の核酸配列及び対応するアミノ酸配列ならびに同じ発現カセットから発現される抗CD3標的タンパク質の例示的な実施形態を表3に示す。かかる実施形態では、これら2つの標的タンパク質は、P2A自己開裂ペプチドによって連結され得る。表3は、P2A配列を介して抗CD3結合タンパク質に連結されたCD80結合タンパク質を含むタンデム発現カセットに使用され得る例示的な核酸を提供する。特定の実施形態では、該P2A配列は、配列番号29に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列によってコードされ、該P2A配列のアミノ酸配列は、配列番号30に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗CD3結合タンパク質に連結されたCD80結合タンパク質を含むタンデム発現カセットは、配列番号21の核酸配列を含むか、または配列番号21に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗CD3結合タンパク質に連結されたCD80結合タンパク質を含むタンデム発現カセットは、配列番号22のアミノ酸配列をコードするか、または配列番号24のシグナルペプチドが欠けている配列番号22のアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態では、抗CD3結合タンパク質に連結されたCD80結合タンパク質を含むタンデム発現カセットは、配列番号22に対して、または配列番号24のシグナルペプチドが欠けている配列番号22に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0097】
導入遺伝子
本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、該ベクターによって標的とされるリンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)に送達され、該リンパ球によって発現される1つ以上のタンパク質をコードする導入遺伝子を含む。特定の実施形態では、該導入遺伝子は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードし、該CARは、標的分子に特異的に結合する結合ドメインを含む細胞外ドメイン、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む細胞内シグナル伝達ドメイン、及び該細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを接続する膜貫通ドメインを含む。
【0098】
本開示のCARにおける使用に適した結合ドメインは、任意の抗原結合ポリペプチドを含む。結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片を含んでよく、例えば、標的疾患抗原に特異的な全長重鎖、Fab断片、Fab’、F(ab’)2、sFv、VHドメイン、VLドメイン、dAb、VHH、CDR、及びscFvを含む。ある特定の実施形態では、CAR結合ドメインは、マウス、キメラ、ヒト、またはヒト化である。さらなる実施形態では、該CAR結合ドメインは、ヒトまたはヒト化VH及びVL領域を有するscFvである。さらなる実施形態では、該CAR結合ドメインは、該VH及びVL領域を結合する、N=1-10の(GGGS)Nリンカーまたは(GGGGS)Nリンカーを有するscFvである。他の実施形態では、該CAR結合ドメインは、VH及びVL領域を結合する配列番号64を含むリンカーを有するscFvである。
【0099】
本開示のCARの細胞外ドメインによって結合された標的分子は、標的細胞上で見出される場合もあれば、標的細胞と関連して見出される場合もある。例示的な標的細胞としては、がん細胞、自己免疫疾患もしくは障害、神経変性疾患、または炎症性疾患もしくは障害に関連する細胞、感染性微生物(例えば、細菌、ウイルスもしくは真菌)及び感染細胞(例えば、ウイルス感染細胞)が挙げられる。感染性生物の細胞、例えば、哺乳類の寄生虫もまた標的細胞として企図される。
【0100】
本明細書に記載のCARに含まれる細胞外ドメインは、様々な標的分子のうちの1つ以上を標的とする結合ドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、該CARは、腫瘍抗原に特異的に結合する結合ドメインを含む。いくつかのかかる実施形態では、該CAR結合ドメインは、CD19、BCMA、アルファ葉酸受容体、5T4、Abインテグリン、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD20、CD22、CD23、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD52、CD70、CD79a、CD79b、CD80、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ErbB2(HER2)、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EpCAM、FAP、胎児AchR、FLT3、Fra、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A2+MAGE1、HLA-A3+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-A2+NY-ESO-1、HLA-A3+NY-ESO-1、HLADR、IL-11Rアルファ、IL-13Rアルファ2、ラムダ、ルイス-Y、カッパ、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSCA、PSMA、ROR1、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、VEGFR2、BAFF-R、クローディン18.2、CD86、FcRL5、GPRC5、及びTACIのうちの1つ以上に特異的に結合する。
【0101】
ある特定の実施形態では、本開示に記載のレンチウイルスベクターの導入遺伝子によりコードされたCARの細胞外ドメインは、任意に、該結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に、細胞外、非シグナル伝達スペーサまたはリンカードメインを含む。含まれる場合、かかるスペーサまたはリンカードメインは、結合ドメインを宿主細胞表面から離して配置し、さらに細胞と細胞との適切な接触、結合、及び活性化を可能にし得る。細胞外スペーサドメインは、一般に、該CARの細胞外結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置している。該細胞外スペーサの長さは、選択された標的分子、選択された結合エピトープ、結合ドメインのサイズ及び親和性に基づいて、標的分子の結合を最適化するように変化させてもよい(例えば、Guest et al.,J.Immunother.28:203-11,2005、PCT公開第WO2014/031687号参照)。ある特定の実施形態では、細胞外スペーサドメインは、免疫グロブリンのヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD)である。免疫グロブリンのヒンジ領域は、野生型免疫グロブリンのヒンジ領域、または変更された野生型免疫グロブリンのヒンジ領域であり得る。変更されたIgG4のヒンジ領域は、PCT公開第WO2014/031687号に記載されており、このヒンジ領域は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、細胞外スペーサドメインは、アミノ酸配列ESKYGPPCPPCP(配列番号118)を有する改変されたIgG4のヒンジ領域を含む。
【0102】
本明細書に記載のCARに使用され得るヒンジ領域の他の例としては、CD8a、CD4、CD28及びCD7等の1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域を含む、これらは、野生型でもそのバリアントでもよい。いくつかの実施形態では、細胞外スペーサドメインは、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそれらの組み合わせから選択される免疫グロブリンFcドメインの全部または一部を含む(例えば、PCT公開第WO2014/031687号参照。これらのスペーサは、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。さらなる実施形態では、細胞外スペーサドメインは、II型C-レクチンの柄領域(C型レクチンドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する細胞外ドメイン)を含み得る。II型C-レクチンは、CD23、CD69、CD72、CD94、NKG2A及びNKG2Dを含む。
【0103】
本開示のCARは、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを接続しかつ細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に配置された膜貫通ドメインを含む。該膜貫通ドメインは、通常、約15アミノ酸~約30アミノ酸長に及ぶ。該膜貫通ドメインは、宿主細胞膜を横断して該宿主細胞膜内にCARを固定する疎水性アルファヘリックスである。該膜貫通ドメインは、結合ドメインまたは存在する場合には細胞外スペーサドメインに直接融合され得る。ある特定の実施形態では、該膜貫通ドメインは、内在性膜タンパク(例えば、受容体、表面抗原分類(CD)分子、酵素、トランスポーター、細胞接着分子等)に由来する。該膜貫通ドメインは、該細胞外ドメインまたは該細胞内シグナル伝達ドメインと同じ分子から選択され得る。いくつかの実施形態では、該膜貫通ドメイン及び該細胞外ドメインは、各々異なる分子から選択される。いくつかの実施形態では、該膜貫通ドメイン及び該細胞内シグナル伝達ドメインは、各々異なる分子から選択される。さらに他の実施形態では、該膜貫通ドメイン、該細胞外ドメイン、及び該細胞内シグナル伝達ドメインは、各々異なる分子から選択される。
【0104】
本開示のCARに使用するための例示的な膜貫通ドメインとしては、CD28、CD2、CD4、CD8a、CD5、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD9、CD16、CD22、CD25、CD27、CD33、CD37、CD40、CD45、CD64、CD79A、CD79B、CD80、CD86、CD95(Fas)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD154(CD40L)、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD279(PD-1)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、GAL9、KIR、Lck、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR2、Ryk、Slp76、SIRPα、pTα、TCRα、TCRβ、TIM3、TRIM、LPA5、及びZap70の膜貫通ドメインが挙げられる。CD8aヒンジ領域を有する例示的なCD8a膜貫通ドメインは、配列番号52のアミノ酸配列を含む。
【0105】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内エフェクタードメインであり、該CARの細胞外ドメインの標的分子への結合に応答して細胞に機能的シグナルを伝達することが可能であり、かつ免疫細胞、例えば、該CARを発現するよう操作されたT細胞の正常なエフェクター機能または応答の少なくとも1つを活性化する。いくつかの実施形態では、該CARは、T細胞の機能、例えば、細胞傷害活性またはTヘルパー活性、例えば、サイトカインまたは他の因子の分泌を誘導する。該細胞内シグナル伝達ドメインは、十分なシグナル伝達活性を保持する細胞内シグナル伝達分子の任意の部分であり得る。いくつかの実施形態では、該細胞内シグナル伝達ドメインは、抗原受容体成分(例えば、TCR)または共刺激分子から得られる。いくつかの実施形態では、抗原受容体または共刺激分子の完全長細胞内シグナル伝達ドメインが使用される。いくつかの実施形態では、抗原受容体または共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの切断された部分が使用されるが、ただし、この切断された部分は、十分なシグナル伝達活性を保持している。さらなる実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、抗原受容体共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの全長または切断された部分のバリアントであるが、ただし、該バリアントは、十分なシグナル伝達活性を保持している(すなわち、機能的バリアントである)。
【0106】
ある特定の実施形態では、該CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、シグナル伝達ドメインを含む免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。ITAM含有シグナル伝達ドメインは、一般に、少なくとも1つ(1、2、3、4、またはそれ以上)のITAMを含み、これは、YXXL/I-X6-8-YXXL/Iの保存されたモチーフを指す。ITAMを含むシグナル伝達ドメインは、抗原結合またはリガンド係合後に、T細胞活性化シグナル伝達を開始し得る。ITAM-シグナル伝達ドメインとしては、例えば、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD5、CD22、CD79a、CD278(ICOS)、DAP10、DAP12、FcRγ及びCD66dの細胞内シグナル伝達ドメインが挙げられる。本開示のCARにおいて使用され得る例示的なCD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号56または配列番号122のアミノ酸配列を含む。
【0107】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、任意に、第一級または古典的な(例えば、ITAM駆動の)活性化シグナルと併せて活性化された場合に、T細胞応答、例えば、T細胞の活性化、サイトカイン産生、増殖、分化、生存、エフェクター機能、またはそれらの組み合わせを促進または増強する共刺激シグナル伝達ドメインを含む。CARに使用するための共刺激シグナル伝達ドメインとしては、例えば、CD27、CD28、CD40L、GITR、NKG2C、CARD1、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD152(CTLA4)、CD223(LAG3)、CD226、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、LFA-1、LIGHT、NKG2C、NKD2C、SLP76、TRIM、ZAP70、またはそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、該共刺激シグナル伝達ドメインは、OX40、CD2、CD27、CD28、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、または4-1BB(CD137)のシグナル伝達ドメインを含む。例示的な4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインは、配列番号54のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、CARは、1つ、2つまたはそれより多くの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、第1世代のCAR、第2世代のCAR、または第3世代のCARである。第1世代のCARは、一般に、CD3ζ、FcγRIまたは他のITAM含有活性化ドメインの細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを有し、T細胞活性化シグナルを提供する。第2世代のCARはさらに、共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、CD28、4-1BB、またはICOS等の内因性T細胞共刺激受容体からの共刺激シグナル伝達ドメイン)を含む。第3世代のCARは、ITAM含有活性化ドメイン、第一の共刺激シグナル伝達ドメイン、及び第二の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、該細胞外ドメイン、該結合ドメイン、該リンカー、該膜貫通ドメイン、該細胞内シグナル伝達ドメイン、または該共刺激ドメインの1つ以上は、接合部アミノ酸を含む。「接合部アミノ酸」または「接合部アミノ酸残基」とは、2つの隣接するドメイン、モチーフ、領域、モジュール、またはタンパク質の断片間、例えば、結合ドメインと隣接するリンカーとの間、膜貫通ドメインと隣接する細胞外もしくは細胞内ドメインとの間、または2つのドメイン、モチーフ、領域、モジュール、もしくは断片を連結するリンカーの一方または両方の末端(例えば、リンカーと隣接する結合ドメインとの間、またはリンカーと隣接するヒンジとの間)の1つ以上(例えば、約2~20個)のアミノ酸残基を指す。接合部アミノ酸は、融合タンパク質の構築設計から生じ得る(例えば、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの構築中の制限酵素部位または自己開裂ペプチド配列の使用から生じるアミノ酸残基)。例えば、融合タンパク質の膜貫通ドメインは、アミノ末端、カルボキシ末端、またはその両方に1つ以上の接合部アミノ酸を有し得る。
【0110】
特定の実施形態では、該導入遺伝子は、抗CD19 CAR分子をコードする。かかる実施形態では、該細胞外結合ドメインは、配列番号46の抗CD19軽鎖可変領域、配列番号48のG4Sリンカー、及び配列番号50の抗CD19重鎖可変領域を有する、表4に詳述されるscFvを含み得る。本明細書の文脈において有用な抗CD19 CARは、配列番号52のCD8aのヒンジ及び膜貫通ドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、抗CD19 CARは、配列番号54に従う4-1BB共刺激ドメイン及び配列番号56に従うCD3ζエフェクタードメインを含む。特定の実施形態では、該導入遺伝子によりコードされる抗CD19 CARは、配列番号42に従うアミノ酸配列、または配列番号44のシグナルペプチドが欠けている配列番号42に従うアミノ酸配列を有する。
【0111】
他の実施形態では、該導入遺伝子は、抗CD19 CAR分子をコードし、細胞外結合ドメインは、配列番号46に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する抗CD19軽鎖可変領域、及び配列番号50に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する抗CD19重鎖可変領域を有するscFvを含み得る。本明細書の文脈において有用な抗CD19 CARは、配列番号52に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD8aのヒンジ及び膜貫通ドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、該抗CD19 CARは、配列番号54に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する4-1BB共刺激ドメイン、及び配列番号56に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD3ζエフェクタードメインを含む。特定の実施形態では、該導入遺伝子によりコードされる抗CD19 CARは、配列番号42に対して、または配列番号44のシグナルペプチドが欠けている配列番号42に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0112】
他の実施形態では、該導入遺伝子は、抗BCMA CAR分子をコードする。かかる実施形態では、該細胞外結合ドメインは、配列番号62の抗BCMA軽鎖可変領域、配列番号64のリンカー、及び配列番号66の抗BCMA重鎖可変領域を有する、表5に詳述されるscFvを含み得る。本明細書の文脈において有用な抗BCMA CARは、配列番号52のCD8aのヒンジ及び膜貫通ドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号54に従う4-1BB共刺激ドメイン及び配列番号122に従うCD3ζエフェクタードメインを含む。特定の実施形態では、該導入遺伝子によりコードされる抗BCMA CARは、配列番号58に従うアミノ酸配列、または配列番号60のシグナルペプチドが欠けている配列番号58に従うアミノ酸配列を有する。
【0113】
いくつかの実施形態では、該導入遺伝子は、抗BCMA CAR分子をコードする。かかる実施形態では、該細胞外結合ドメインは、配列番号62に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する抗BCMA軽鎖可変領域、及び配列番号66に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する抗BCMA重鎖可変領域を有するscFvを含み得る。本明細書の文脈において有用な抗BCMA CARは、配列番号52に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD8aのヒンジ及び膜貫通ドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、該抗BCMA CARは、配列番号54に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する4-1BB共刺激ドメイン、及び配列番号122に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するCD3ζエフェクタードメインを含む。特定の実施形態では、該導入遺伝子によりコードされる抗BCMA CARは、配列番号58に対して、または配列番号60のシグナルペプチドが欠けている配列番号58に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【0114】
本開示のCARは、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、それらのトランスジェニック種、またはそれらの任意の組み合わせを含めた任意の哺乳類種に由来するポリヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの実施形態では、該キメラ抗原受容体は、マウス、キメラ、ヒトまたはヒト化である。
【0115】
レンチウイルスベクターの産生方法
本開示のLVVの産生方法を提供する。LVVは、レトロウイルスのゲノムに基づいて、その成分を組み換えプラスミドDNAベクターに結合することによって開発された。次いで、該プラスミドDNAベクターを、プロデューサー細胞株にトランスフェクトして、レンチウイルス粒子の産生に必要な遺伝子が導入され得る。LVVパッケージング系は一般に、目的の導入遺伝子をコードするトランスファープラスミド、エンベローププラスミド(例えば、VSV-G)、及びパッケージングプラスミド(複数可)を含む。第2世代のLVVパッケージング系は、Gag、Pol、Rev、及びTat遺伝子をコードする単一のパッケージングプラスミドならびに別個のEnvプラスミドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、LVVを産生するために第3世代のベクター系を利用する。第3世代のベクター産生系は、第2世代のLVVパッケージング系の安全性を向上させ、通常は3つのパッケージングプラスミド、VSV-G、GagPol及びRevと組み合わされた導入遺伝子プラスミドを含む4つのプラスミド系である。したがって、Rev及びGagPolは、2つのプラスミドに分離される。Tatはまた、トランスファープラスミド上の異種プロモーター(例えば、CMVまたはRSVプロモーター)に融合したキメラ5’LTRを追加することによって、第3世代のLVVパッケージング系から除去される。該gag遺伝子は、マトリックス、カプシド、及びヌクレオカプシドを含めたレンチウイルスの構造タンパク質を含むGagポリタンパク質前駆体をコードする。pol遺伝子は、プロテアーゼ、逆転写酵素、インテグラーゼを含めた、複製に必須のレンチウイルスの酵素機能を供給するPolポリタンパク質前駆体をコードする。該rev遺伝子は、Rev応答エレメント(RRE)に結合するRevタンパク質をコードし、ウイルス複製中にスプライスされていないHIV RNA及び単一スプライスされたHIV RNAの核外輸送を可能にする。該Gag及びPolポリタンパク質前駆体は、ウイルス粒子の産生中に切断される。
【0116】
本開示のLVVを作製するために使用され得るプロデューサー細胞としては、ヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞及びその派生物が含まれる。プロデューサー細胞は、接着細胞株、例えば、HEK293Tプロデューサー細胞、または浮遊細胞株、例えば、HEK293T/17 SFプロデューサー細胞であってもよい。
【0117】
該導入遺伝子プラスミドは、3つのパッケージングプラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドと組み合わせられ、プロデューサー細胞、例えば、HEK293プロデューサー細胞をトランスフェクトするために使用される。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、規定の比率の導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、パッケージングプラスミドの比率は、質量によって決定される。いくつかの実施形態では、該導入遺伝子プラスミド及びGagPolプラスミドの各々の質量は、該VSV-G envプラスミド及びRevプラスミドの各々の質量よりも高い。いくつかの実施形態では、該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドの規定の比率は、約1:1:1:1~約5:4:1:1である。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約2:1:1:1~約5:4:1:1の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約2:1:1:1の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約3:1:1:1の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約3.125:3.125:2.5:1.25の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約4:2:1:1の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約5:4:1:1の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。生産的なレンチウイルス粒子は、該プロデューサー細胞培地から採取される。LVV粒子を産生するための例示的な材料及び方法は、Production of Lentiviral Vectors,Merten et al.,Molecular Therapy - Methods & Clinical Development(2016),3,16017に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。第3世代の産生系は、研究開発及び臨床目的に使用されている。第3世代のLVV産生系での使用に適したヘルパープラスミドの概略図を
図1に示す。
【0118】
該導入遺伝子プラスミドは、得られるLVVによって標的とされるリンパ球(例えば、T細胞またはNK細胞)に導入される遺伝物質のみをコードし、カプシド形成、逆転写及び組み込みのためのシス作用性エレメントに隣接される導入遺伝子発現カセットを含むレンチウイルス骨格を含む。特定の実施形態では、該導入遺伝子プラスミドは、標的細胞に移入されるとウイルスLTRの転写能力の損失を引き起こす3’LTRのU3エレメントの欠失を含む。該導入遺伝子プラスミドに含まれる発現カセットは、標的細胞への導入及び標的細胞による発現のために、単一の異種タンパク質(例えば、本明細書に記載の単一のCAR)または複数の異種タンパク質(例えば、本明細書に記載の複数のCAR)をコードし得る。
【0119】
4つのプラスミドLVV系のいくつかの実施形態では、該VSV-G envプラスミドは、本明細書に開示する変異型VSV-Gエンベロープタンパク質及び標的タンパク質をコードするタンデム発現カセットを含む。特定の実施形態では、該VSV-G envプラスミドに含まれるタンデム発現カセットは、第一のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、配列内リボソーム進入部位(IRES)、フューリン切断部位、またはウイルス2Aペプチドのうちの1つをコードするポリヌクレオチド、第二のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’側に位置する。他の実施形態では、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’側に位置する。該標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び該変異型VSV-Gをコードするポリヌクレオチドは、単一のmRNAから2つのタンパク質の共発現を可能にするIRES、フューリン切断部位、またはウイルス2Aペプチドをコードするポリヌクレオチドによって、タンデムカセットで分離される。ある特定の実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、ブタテッショウウイルス-1(P2A)、Thosea asignaウイルス(T2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)、口蹄疫ウイルス(F2A)、またはそれらのバリアントである。該ウイルス2Aペプチドのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列の具体例を表7に示す。
【表7】
【0120】
ある特定の実施形態では、本開示は、先行する請求項のいずれか1項に記載のリンパ球を標的とするレンチウイルスベクターの産生方法を提供し、該方法は、以下を含む:プロデューサー細胞をGagPolプラスミド、Revプラスミド、導入遺伝子プラスミド、及びVSV-G envプラスミドでトランスフェクトすること、ここで、該GagPolプラスミドは、レンチウイルスgag遺伝子及びレンチウイルスpol遺伝子をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、レンチウイルスgagポリタンパク質及びレンチウイルスpolポリタンパク質を該プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、該Revプラスミドは、レンチウイルスrev遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含み、レンチウイルスrevタンパク質を該プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、該導入遺伝子プラスミドは、CARをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含み、該VSV-G envプラスミドは、タンデム発現カセットを含み、該タンデム発現カセットは、本明細書に開示する変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチド及び本明細書に開示するリンパ球を標的とするタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、該VSV-G envプラスミドは、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質及び該リンパ球を標的とするタンパク質を該プロデューサー細胞内で発現することが可能であること、該プロデューサー細胞を培地内で培養すること、ならびに該培地からレンチウイルスベクターを採取すること。
【0121】
いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、規定の比率の導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドの規定の比率は、約1:1:1:1~約5:4:1:1である。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約2:1:1:1~約5:4:1:1の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約2:1:1:1の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約3:1:1:1の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約3.125:3.125:2.5:1.25の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約4:2:1:1の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、約5:4:1:1の規定の比率の該導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、及びRevプラスミドでトランスフェクトされる。
【0122】
1つの実施形態では、該VSV-G envプラスミドのタンデム発現カセットは、抗CD3標的タンパク質及び変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードする。例えば、特定の実施形態では、該タンデム発現カセットは、配列番号67に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するポリヌクレオチドを含んでもよく、これは、配列番号68に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。かかる実施形態は、表8により詳細に記載されている。別の実施形態では、該タンデム発現カセットは、配列番号31のシグナルペプチドが欠けている配列番号67に対して、約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するポリヌクレオチドを含んでもよく、これは、配列番号32のシグナルペプチドが欠けている配列番号68に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。表8に示すように、該抗CD3標的タンパク質は、P2A自己開裂ペプチドを介して変異型VSV-Gエンベロープタンパク質から分離される。ある特定の実施形態では、該P2Aペプチドは、配列番号69に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列によってコードされ得るとともに、該P2Aペプチドは、配列番号70に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【0123】
別の実施形態では、該VSV-G envプラスミドのタンデム発現カセットは、CD80標的タンパク質及び変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードする。例えば、特定の実施形態では、該タンデム発現カセットは、配列番号75に従うポリヌクレオチドを含み、これは、配列番号76のアミノ酸配列をコードする。かかる実施形態は、表9により詳細に記載されている。表9に示すように、該CD80標的タンパク質は、配列番号69によってコードされ、配列番号70に従うアミノ酸配列を有するP2A自己開裂ペプチドを介して変異型VSV-Gエンベロープタンパク質から分離される。
【0124】
該VSV-G envプラスミドのタンデム発現カセットがCD80標的タンパク質及び変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするいくつかの実施形態では、該タンデム発現カセットは、配列番号75に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するポリヌクレオチドを含んでもよく、これは、配列番号76に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。ある特定の実施形態では、該CD80標的タンパク質は、配列番号69に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列によってコードされるP2A自己開裂ペプチドを介して該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質から分離され、該P2A自己開裂ペプチドは、配列番号70に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
【0125】
別の実施形態では、該VSV-G envプラスミドのタンデム発現カセットは、CD80標的タンパク質、抗CD3標的タンパク質、及び変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードする。例えば、特定の実施形態では、該タンデム発現カセットは、配列番号2のアミノ酸配列をコードする配列番号1に従うCD80標的ポリヌクレオチドを含み得る。特定の実施形態では、該タンデム発現カセットは、配列番号10のアミノ酸配列をコードする配列番号9に従う抗CD3標的ポリヌクレオチドを含み得る。かかる実施形態は、表3により詳細に記載されている。表3に示すように、該CD80標的タンパク質は、配列番号29によってコードされ、配列番号30に従うアミノ酸配列を有するP2A自己開裂ペプチドを介して該抗CD3標的タンパク質から分離される。
【0126】
該VSV-G envプラスミドのタンデム発現カセットがCD80標的タンパク質、抗CD3標的タンパク質、及び変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするいくつかの実施形態では、該タンデム発現カセットは、該CD80標的タンパク質、及び配列番号21に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する抗CD3標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでもよく、これは、配列番号22に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。ある特定の実施形態では、該CD80標的タンパク質は、配列番号29に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列によってコードされるP2A自己開裂ペプチドを介して該抗CD3標的タンパク質から分離され、該P2A自己開裂ペプチドは、配列番号30に対して、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0127】
該VSV-G envプラスミドのタンデム発現カセットがCD80標的タンパク質、抗CD3標的タンパク質、及び変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするいくつかの実施形態では、該CD80標的タンパク質及び抗CD3標的タンパク質は、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質から、2A自己開裂ペプチドを介して分離される。
【0128】
4つのプラスミドLVV系のいくつかの実施形態では、該GagPolプラスミドは、Gagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体ならびに本明細書に開示する標的タンパク質をコードするタンデム発現カセットを含む。特定の実施形態では、該GagPolプラスミドに含まれるタンデム発現カセットは、第一のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、配列内リボソーム進入部位(IRES)、フューリン切断部位、またはウイルス2Aペプチドのうちの1つをコードするポリヌクレオチド、第二のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびにGagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体をコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、該Gagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体をコードするポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’側に位置する。他の実施形態では、該Gagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体をコードするポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’側に位置する。該標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、ならびに該Gagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体をコードするポリヌクレオチドは、単一のmRNAからGagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体ならびに該標的タンパク質の共発現を可能にするIRES、フューリン切断部位、またはウイルス2Aペプチドをコードするポリヌクレオチドによって、タンデムカセットで分離される。ある特定の実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、ブタテッショウウイルス-1(P2A)、Thosea asignaウイルス(T2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)、口蹄疫ウイルス(F2A)、またはそれらのバリアントである。該ウイルス2Aペプチドのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列の具体例を表7に示す。
【0129】
いくつかの実施形態では、Gagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体ならびに該標的タンパク質をコードするタンデム発現カセットを含むGagPolプラスミドは、VSV-G envプラスミドよりも高いモル濃度でプロデューサー細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、Gagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体ならびに該標的タンパク質をコードするタンデム発現カセットを含むGagPolプラスミドは、VSV-G envプラスミドよりも低いモル濃度でプロデューサー細胞にトランスフェクトされる。
【0130】
1つの実施形態では、該GagPolプラスミドのタンデム発現カセットは、抗CD3標的タンパク質ならびにGagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体をコードする。いくつかの実施形態では、該抗CD3標的タンパク質は、Gagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体から、P2A自己開裂ペプチドを介して分離される。
【0131】
別の実施形態では、該GagPolプラスミドのタンデム発現カセットは、CD80標的タンパク質ならびにGagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体をコードする。いくつかの実施形態では、該CD80標的タンパク質は、Gagポリタンパク質前駆体及びPolポリタンパク質前駆体から、P2A自己開裂ペプチドを介して分離される。
【0132】
4つのプラスミドLVV系のいくつかの実施形態では、該Revプラスミドは、該Revタンパク質及び本明細書に開示する標的タンパク質をコードするタンデム発現カセットを含む。特定の実施形態では、該Revプラスミドに含まれるタンデム発現カセットは、第一のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、配列内リボソーム進入部位(IRES)、フューリン切断部位、またはウイルス2Aペプチドのうちの1つをコードするポリヌクレオチド、第二のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド、及びRevタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、該Revタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’側に位置する。他の実施形態では、該Revタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’側に位置する。該標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び該Revタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、単一のmRNAから該Revタンパク質及び該標的タンパク質の共発現を可能にするIRES、フューリン切断部位、またはウイルス2Aペプチドをコードするポリヌクレオチドによって、タンデムカセットで分離される。ある特定の実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、ブタテッショウウイルス-1(P2A)、Thosea asignaウイルス(T2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)、口蹄疫ウイルス(F2A)、またはそれらのバリアントである。該ウイルス2Aペプチドのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列の具体例を表7に示す。
【0133】
いくつかの実施形態では、該Revタンパク質及び該標的タンパク質をコードするタンデム発現カセットを含むRevプラスミドは、VSV-G envプラスミドよりも高いモル濃度でプロデューサー細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、該Revタンパク質及び該標的タンパク質をコードするタンデム発現カセットを含むRevプラスミドは、VSV-G envプラスミドよりも低いモル濃度でプロデューサー細胞にトランスフェクトされる。
【0134】
1つの実施形態では、該Revプラスミドのタンデム発現カセットは、抗CD3標的タンパク質及びRevタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、該抗CD3標的タンパク質は、該Revタンパク質から、P2A自己開裂ペプチドを介して分離される。
【0135】
別の実施形態では、該GagPolプラスミドのタンデム発現カセットは、CD80標的タンパク質及びRevタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、該CD80標的タンパク質は、該Revタンパク質から、P2A自己開裂ペプチドを介して分離される。
【0136】
本開示の4つのプラスミド、第3世代のレンチウイルスベクター系で使用され得る変異型VSV-G配列の例を、表10に示す。
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【表10-5】
【表10-6】
【表10-7】
【表10-8】
【表10-9】
【表10-10】
【表10-11】
【表10-12】
【表10-13】
【表10-14】
【0137】
他の実施形態では、本開示に従うLVVの産生方法は、5つのプラスミド系を利用してもよい。5つのプラスミド系を使用する場合、該LVV産生系は、第3世代のベクター系から4つのプラスミド(すなわち、導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、Envプラスミド、及びVSV-G envプラスミド)を利用する。さらに、本明細書に記載の5つのプラスミド系は、標的タンパク質をコードする第五のプラスミド(「標的タンパク質プラスミド」)を含む。5つのプラスミド系に含まれるGagPol及びEnvパッケージングプラスミドは、Production of Lentiviral Vectors,Merten et al.,Molecular Therapy-Methods & Clinical Development(2016),3,16017に記載される標準的なパッケージングプラスミドであってよい。該導入遺伝子プラスミドは、本開示に従う1つ以上のCAR導入遺伝子をコードする発現カセットを含み、該VSV-G envプラスミドは、本明細書に記載の変異型VSV-Gをコードする発現カセットを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、該第五のプラスミドは、CD80標的タンパク質をコードする発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、該第五のプラスミドは、抗CD3標的タンパク質をコードする発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、該第五のプラスミドは、CD80標的タンパク質及び抗CD3標的タンパク質をコードする発現カセットを含む。該第五のプラスミドに使用され得るCD80標的タンパク質及び抗CD3標的タンパク質の例は、表1~3に示されている。
【0139】
ある特定の実施形態では、本開示は、先行する請求項のいずれか1項に記載のリンパ球を標的とするレンチウイルスベクターの産生方法を提供し、該方法は、以下を含む:プロデューサー細胞をGagPolプラスミド、Revプラスミド、導入遺伝子プラスミド、VSV-G envプラスミド、及びリンパ球を標的とするタンパク質プラスミドでトランスフェクトすること、ここで、該GagPolプラスミドは、レンチウイルスgag遺伝子及びレンチウイルスpol遺伝子をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含み、レンチウイルスgagタンパク質及びレンチウイルスpolタンパク質を該プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、該Revプラスミドは、レンチウイルスrev遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含み、レンチウイルスrevタンパク質を該プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、該導入遺伝子プラスミドは、CARをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含み、該VSV-G envプラスミドは、本明細書に記載の変異型VSV-Gエンベロープタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、該変異型VSV-Gエンベロープタンパク質を該プロデューサー細胞内で発現することが可能であり、該リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドは、本明細書に記載のリンパ球を標的とするタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、該リンパ球を標的とするタンパク質を該プロデューサー細胞内で発現することが可能であること、該プロデューサー細胞を培地内で培養すること、ならびにレンチウイルスベクターを該培地から採取すること。
【0140】
いくつかの実施形態では、該プロデューサー細胞は、規定の比率の導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、Revプラスミド、及びリンパ球を標的とするプラスミドでトランスフェクトされる。該リンパ球を標的とするプラスミドは、該VSV-G envプラスミドに対して、(質量基準で)約0.25~約5の比であり得る。例えば、本明細書に記載の4つのパッケージングプラスミド系(導入遺伝子プラスミド、GagPolプラスミド、VSV-G envプラスミド、Revプラスミド)について規定の比率を使用して、該リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドの該VSV-G envプラスミドに対する比率を調節することができる。例えば、該リンパ球を標的とするプラスミドは、該VSV-G envプラスミドに対して、約0.25:1、0.5:1、1:1、1.25:1、1.5:1、1.75:1、2:1、2.25:1、2.5:1、2.75:1、3:1、3.25:1、3.5:1、3.75:1、4:1、4.25:1、4.5:1、4.75:1または5:1の比であり得る。
【0141】
5つのプラスミドの組み合わせを利用するLVVの産生方法の実施形態では、第五のプラスミドは、標的タンパク質プラスミドであり、1つ以上の標的タンパク質をコードする発現カセットを含む。例えば、該標的タンパク質プラスミドは、CD80標的タンパク質、抗CD3標的タンパク質、またはCD80標的タンパク質と抗CD3標的タンパク質の両方をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含み得る。ある特定の実施形態では、標的タンパク質ベクタープラスミドは、配列番号2に従うCD80標的タンパク質をコードする配列番号1に従うポリヌクレオチドを含む発現カセット。他の実施形態では、標的タンパク質プラスミドは、配列番号10に従う抗CD3標的タンパク質をコードする配列番号9に従うポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。他の実施形態では、標的タンパク質プラスミドは、配列番号117に従う抗CD3標的タンパク質をコードする配列番号116に従うポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。他の実施形態では、標的タンパク質プラスミドは、配列番号22に従うポリペプチドをコードする配列番号21に従うポリヌクレオチドを含むタンデム発現カセットを含む。本開示の5つのプラスミド、第3世代のレンチウイルスベクター系に使用され得る変異型VSV-G配列の例が表10に示されている。
【0142】
該4つのプラスミドパッケージング系では、形質導入された細胞の表面におけるリンパ球を標的とするタンパク質の濃度は、該標的タンパク質を含むプラスミドの濃度と関連し得る。例えば、該リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドプラスミドが、該VSV-G envプラスミドに含まれる場合、該リンパ球を標的とするタンパク質の該形質導入された細胞の表面での濃度は、該VSV-G envプラスミドの濃度と関連し得る。別の例では、該リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドプラスミドが、該GagPolプラスミドに含まれる場合、該リンパ球を標的とするタンパク質の該形質導入された細胞の表面での濃度は、該GagPolプラスミドの濃度と関連し得る。別の例では、該リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドプラスミドが該Revプラスミドに含まれる場合、該リンパ球を標的とするタンパク質の該形質導入された細胞の表面での濃度は、該Revプラスミドの濃度と関連し得る。該5つのプラスミドパッケージング系では、形質導入された細胞の表面におけるリンパ球を標的とするタンパク質の濃度は、該標的タンパク質を含むプラスミドの濃度と関連し得る。
【0143】
該4つのプラスミドパッケージング系では、形質導入効率は、該標的タンパク質を含むプラスミドの濃度と関連し得る。例えば、該リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドプラスミドが該VSV-G envプラスミドに含まれる場合、該形質導入効率は、該VSV-G envプラスミドの濃度と関連し得る。別の例では、該リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドプラスミドが該GagPolプラスミドに含まれる場合、該形質導入効率は、該GagPolプラスミドの濃度と関連し得る。別の例では、該リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドプラスミドが該Revプラスミドに含まれる場合、該形質導入効率は、該Revプラスミドの濃度と関連し得る。該5つのプラスミドパッケージング系では、該形質導入効率は、該リンパ球を標的とするタンパク質プラスミドの濃度と関連し得る。
【0144】
プロデューサー細胞のトランスフェクションに続いて、該レンチウイルス粒子産物が細胞上清または培地から採取され得る。有効性または安全性に悪影響を与える可能性のある成分を最小限に抑えながら、LVVの回収を最大化するためのLVVの下流プロセスは、当技術分野で知られている。通常のプロセスは、細胞及びその破片の除去、その後のLVVの濃縮、及び宿主細胞または血清タンパク質、核酸及び脂質の除去を含む一連の精製ステップを含む。該LVV産物はさらに、安定性に適した製剤緩衝液に交換する前にさらに濃縮されてもよく、その後最終的に滅菌濾過を受け、保存または適用される。採取されたLVV上清に対して最初に清澄化ステップを行い、大きな不純物、例えば、凝集物及び細胞の破片を除去してもよい。いくつかの実施形態では、該清澄化ステップは、遠心分離及び/または従来のフロー濾過を含む。いくつかの実施形態では、該清澄化ステップは、ヌクレアーゼ消化ステップを含む。いくつかの実施形態では、該LVV産物はさらに、例えば、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、アニオン交換クロマトグラフィー)を含めた精製ステップを受ける。該LVVは、例えば、タンジェンシャルフロー濾過または限外濾過/透析濾過によっても濃縮され得る。いくつかの実施形態では、培地からのLVVの採取は、遠心分離を含む。いくつかの実施形態では、培地からのLVVの採取は、アニオン交換クロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態では、培地からのLVVの採取は、アニオン交換クロマトグラフィー及びタンジェンシャルフロー濾過を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、変異型VSV-G env及び1つ以上のリンパ球を標的とするタンパク質を組み込む本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、別の融合性envタンパク質(例えば、球菌env、パラミクソウイルスenv、切断型VSV-G env)を組み込む標準LVVと比較して、高力価のLVV産物を産生することが可能である。本明細書で使用される、ウイルス力価とは、1mLあたりの形質導入単位(TU)によって測定される感染性ウイルス粒子力価を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のLVVの力価は、濃縮されたLVV産物で測定して、少なくとも1e7TU/mL、少なくとも1e8TU/mL、少なくとも1e9TU/mL、少なくとも1e10TU/mL、少なくとも1e11TU/mL、または少なくとも1e12TU/mLである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のLVVの力価は、濃縮されたLVV産物において約1e7TU/mL~約1e12TU/mLである。
【0146】
操作されたリンパ球
本明細書に記載のLVVを使用して、該LVVが担持する導入遺伝子によってコードされるCARを発現するように標的リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)を改変することができる。ある特定の実施形態では、該リンパ球を本開示のLVVと接触させることによって、該操作されたリンパ球は、本開示に従うLVVによって形質導入されている。かかる実施形態では、該操作されたリンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)は、該LVVが担持する導入遺伝子によってコードされるCARを発現する。これらのリンパ球は、本明細書では「CAR改変リンパ球」とも呼ばれる。特定の実施形態では、該操作されたT細胞は、本明細書では「CAR改変T細胞」と呼ばれる。他の特定の実施形態では、該操作されたNK細胞は、本明細書では「CAR改変NK細胞」と呼ばれる。特定の実施形態では、該操作されたT細胞は、本明細書では「CAR改変B細胞」と呼ばれる。特定の実施形態では、該CAR改変T細胞は、本明細書に記載のLVVが担持する導入遺伝子によってコードされるCARを発現し、ナイーブT細胞(CD45RA+、CCR7+、CD62L+、CD27+、CD45RO-)、セントラルメモリーT細胞(CD45RA-、CD45RO+、CD62L+、CCR7+、CD27+)、エフェクターメモリーT細胞(CD45RA-、CD45RO+、CCR7-、CD62L-、CD27-)、γδT細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、Treg、ナチュラルキラーT細胞、及び組織常在性T細胞から選択される。
【0147】
本明細書に記載のLVVによる標的リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)の形質導入は、エキソビボまたはインビボで行われ得る。
【0148】
ある特定の実施形態では、該リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)は、ヒト、マウス、ラット、または他の哺乳類に由来する一次細胞または細胞株であり得る。哺乳類から得られる場合、リンパ球は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、または他の組織もしくは流体を含めた多数の供給源から得ることができる。リンパ球組成物(例えば、T細胞組成物、B細胞組成物、またはNK細胞組成物)は、濃縮または精製され得る。T細胞株は、当技術分野で周知であり、そのいくつかは、Sandberg et al.,Leukemia 21:230,2000に記載されている。ある特定の実施形態では、該T細胞は、TCRα遺伝子、TCRβ遺伝子、またはその両方の内因性発現を欠く。かかるT細胞は、TCRα及びβ鎖の内因性発現を天然に欠いている場合もあれば、TCRα鎖、TCRβ鎖、またはその両方の遺伝子の発現をブロックするように(例えば、TCRα及びβ鎖を発現しないトランスジェニックマウスのT細胞またはTCRα及びβ鎖の発現を阻害するように操作された細胞)またはTCRα鎖、TCRβ鎖、またはその両方の遺伝子をノックアウトするように改変されている場合もある。
【0149】
いくつかの実施形態では、CAR分子をコードするポリヌクレオチドで該リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)を遺伝子改変する前に、リンパ球(例えば、T細胞またはNK細胞)の供給源を、対象(例えば、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織)から得てもよい。リンパ球、T細胞、B細胞、またはNK細胞は、当技術分野で知られている方法を使用して、該対象から採取したサンプルから濃縮または単離することができる。例えば、T細胞は、赤血球の低張溶解のための既知の方法を使用して対象から採取した全血サンプルで濃縮される場合もあれば、T細胞は、既知の勾配沈降、例えば、Ficoll(登録商標)還元技術を使用して対象から採取したサンプルから単離される場合もある。代替的に、T細胞は、抗体標識磁気ビーズを使用し、その後カラム分離によって全血から単離され得る。特定の宿主細胞のサブセットは、公知の技術に従って収集され、既知の技術、例えば、抗体に対する親和性結合、フローサイトメトリー及び/または免疫磁気選択によって濃縮または枯渇され得る。いくつかの実施形態では、濃縮及び/または枯渇ステップの後、該T細胞は、対象から得られたT細胞がLVVによって形質導入され、該LVVが担持する導入遺伝子によってコードされるCARを発現するように、開示のLVVと接触して配置される。いくつかの実施形態では、濃縮及び/または枯渇ステップの後、該NK細胞は、対象から得られたNK細胞がLVVによって形質導入され、該LVVが担持する導入遺伝子によってコードされるCARを発現するように、開示のLVVと接触して配置される。いくつかの実施形態では、濃縮及び/または枯渇ステップの後、該B細胞は、対象から得られたB細胞がLVVによって形質導入され、該LVVが担持する導入遺伝子によってコードされるCARを発現するように、開示のLVVと接触して配置される。
【0150】
一般に、休止T細胞、例えば、休止CD4及びCD8リンパ球、休止B細胞、ならびに休止NK細胞は、レンチウイルスベクターによる遺伝子導入が無効である。休止T細胞は、静止T細胞またはナイーブT細胞としても知られ、有糸分裂的に活性ではないか、または抗原提示細胞、例えば、マクロファージまたは樹状細胞で提示される同種抗原に曝露されたことがないT細胞を指す。休止T細胞のマーカーの例は、CD28である。代替的に、活性化T細胞で発現され、休止T細胞では発現されないマーカーとしては、例えば、4-1BB、PD-1、及びHLA-DRが挙げられる。同様に、休止B細胞及び休止NK細胞は、有糸分裂的に活性ではないか、または同種抗原に曝露されたことがないB細胞及びNK細胞をそれぞれ指す。休止B細胞のマーカーの例としては、CD21及びCD23が挙げられるとともに、CD80、CD86、CD95またはCD25の不在が挙げられる。活性化NK細胞上で発現するCD137及びGITRは、休止NK細胞上では存在しない。その結果、レンチウイルスベクターを用いたT細胞、B細胞、またはNK細胞の形質導入を容易にするために、該T細胞、B細胞、またはNK細胞は、通常、刺激試薬を用いてインビトロで活性化された後、レンチウイルスベクターを介した遺伝子改変が行われ得る。刺激及び形質導入の後、該遺伝子改変された細胞を、次いで、通常はインビトロで増殖させ、その後、患者に再導入する。しかしながら、本明細書に記載のLVVは、休止T細胞、B細胞及び/または休止NK細胞を形質導入することが可能である。ある特定の実施形態では、本明細書に従うLVVでT細胞を形質導入する方法としては、該LVVをT細胞の集団と接触して配することを含み、ここで、該T細胞は、形質導入プロセスの間に活性化されず、また、該T細胞は、外因性の刺激剤に曝露されない。いくつかのかかる実施形態では、該T細胞が形質導入プロセスの間に活性化されず、また、該T細胞が、外因性の刺激剤に曝露されないT細胞の形質導入方法は、T細胞を、CD80標的タンパク質、抗CD3標的タンパク質、またはCD80標的タンパク質と抗CD3標的タンパク質の両方を含むLVVで形質導入することを含む。外因性T細胞刺激剤の例としては、抗CD3抗体またはその抗原結合断片(すなわち、LVVの一部ではない抗CD3抗体またはその抗原結合断片)、抗CD28抗体またはその抗原結合断片(すなわち、LVVの一部ではない抗CD28抗体またはその抗原結合断片)、抗CD2抗体またはその抗原結合断片、IL-2、IL-7、IL-15、PHA、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。外因性刺激剤は、可溶性形態でT細胞に接触させてもよいし、固体基剤、例えば、ビーズまたは細胞培養プレートに固定化してT細胞と接触させてもよい。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片、抗CD28抗体もしくはその抗原結合断片、または抗CD3抗体及び抗CD28抗体もしくはそれらの抗原結合断片の両方を、可溶性形態でまたは固体基材上に固定化してT細胞に接触させる。抗CD3抗体の例としては、OKT3、UCTH1及びBW264/56が挙げられる。抗CD2抗体の一例は、LT2である。抗CD28抗体の一例は、15E8である。ある特定の実施形態では、本明細書に従うLVVでNK細胞を形質導入する方法としては、該LVVをNK細胞の集団と接触して配することを含み、ここで、該NK細胞は、形質導入プロセスの間に活性化されず、また、該NK細胞は、外因性の刺激剤に曝露されない。外因性NK細胞刺激剤の例としては、抗CD2抗体またはその抗原結合断片、抗CD335抗体またはその抗原結合断片、IL-2、IL-15、IL-12、IL-18、IL-21、またはそれらの組み合わせが挙げられる。ある特定の実施形態では、本明細書に従うLVVでB細胞を形質導入する方法としては、該LVVをB細胞の集団と接触して配することを含み、ここで、該B細胞は、形質導入プロセスの間に活性化されず、また、該B細胞は、外因性の刺激剤に曝露されない。外因性B細胞刺激剤の例としては、CD154及び混合Ig F(ab)2が挙げられる。
【0151】
いくつかの実施形態では、CD80標的タンパク質及び抗CD3標的タンパク質を有するレンチウイルスベクターは、標準LVVと比較して、CD4及びCD8T細胞の両方を効率的に形質導入することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、CD80標的タンパク質及び抗CD3標的タンパク質を有するレンチウイルスベクターは、外因性刺激(例えば、T細胞刺激剤)なしで、外因性刺激によって処理された標準LVVで形質導入されたT細胞と同等のレベルまでT細胞を活性化することが可能である。外因性T細胞刺激剤の例としては、抗CD3抗体またはその抗原結合断片(すなわち、LVVの一部ではない抗CD3抗体またはその抗原結合断片)、抗CD28抗体またはその抗原結合断片(すなわち、LVVの一部ではない抗CD28抗体またはその抗原結合断片)、抗CD2抗体またはその抗原結合断片、IL-2、IL-7、IL-15、PHA、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0153】
ある特定の実施形態では、本明細書に従うLVVでT細胞を形質導入する方法は、標準LVVと比較して、CD4T細胞の形質導入の向上を示す。いくつかのかかる実施形態では、T細胞の混合集団(例えば、CD4及びCD8T細胞から構成される)におけるCD4T細胞の形質導入を高める方法は、該T細胞の混合集団を、CD80標的タンパク質を含む本明細書に従うLVVで形質導入することを含む。
【0154】
ある特定の実施形態では、本明細書に従うLVVでT細胞を形質導入する方法は、CD4及びCD8T細胞の両方を効率的に形質導入する。いくつかのかかる実施形態では、CD4及びCD8T細胞の両方が効率的に形質導入されるT細胞の形質導入方法は、CD80標的タンパク質及び抗CD3標的タンパク質を含むLVVでT細胞を形質導入することを含む。
【0155】
ある特定の実施形態では、本明細書に従うLVVは、形質導入の過程で、「ストレス」条件下、例えば、低い感染の多重度(MOI)で、または外因性IL-2での処理を行わずに、T細胞を形質導入することができる。いくつかの実施形態では、該LVVは、CD80標的タンパク質及び抗CD3標的タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に従うLVVは、リンパ球を標的としないLVVより約5~約25倍低いLVV濃度でT細胞を形質導入することが可能である。
【0156】
宿主細胞上でのCAR分子の発現は、当技術分野で知られる方法、例えば、定量的PCRまたはCAR結合ドメインについての蛍光標識抗原での染色後のフローサイトメトリーによって評価され得る。
【0157】
宿主細胞上でのCAR分子の発現は、T細胞の結合、活性化または誘導の測定、ならびに抗原特異的なT細胞応答の測定を含めた、宿主T細胞の活性をアッセイするための多数の当技術分野で受け入れられている方法のいずれかに従って機能的に特徴付けることができる。例としては、T細胞増殖、T細胞サイトカイン放出、抗原特異的T細胞刺激、CTL活性(例えば、予めロードされた標的細胞からの51Crまたはユウロピウム放出の検出、標的細胞におけるカスパーゼ活性の誘導、標的細胞による乳酸デヒドロゲナーゼの細胞外放出による)、T細胞表現型マーカー発現の変化、及びT細胞機能の他の尺度の測定が挙げられる。同様の方法を用いて、宿主のNK細胞活性のアッセイもアッセイされ得る。これら及び同様のアッセイを行う手順は、例えば、Lefkovits(Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques,1998)に見出され得る。同様に、Current Protocols in Immunology;Weir,Handbook of Experimental Immunology,Blackwell Scientific,Boston,MA(1986)、Mishell and Shigii(eds.)Selected Methods in Cellular Immunology,Freeman Publishing,San Francisco,CA(1979)、Green and Reed,Science 281:1309(1998)及びそこで引用されている参考文献も参照されたい。サイトカインレベルは、例えば、ELISA、ELISPOT、細胞内サイトカイン染色、フローサイトメトリー、及びそれらの任意の組み合わせ(例えば、細胞内サイトカイン染色とフローサイトメトリー)を含めた、当技術分野で知られている方法に従って測定され得る。免疫応答の抗原特異的誘発または刺激に起因する免疫細胞の増殖及びクローン性増殖は、末梢血細胞またはリンパ節の細胞のサンプル中の循環リンパ球等のリンパ球を単離し、該細胞を抗原で刺激し、サイトカイン産生、細胞増殖及び/または細胞生存率を測定すること、例えば、トリチウム化したチミジンの組み込みまたは非放射性アッセイ、例えば、MTTアッセイ等によって特定され得る。
【0158】
治療のための方法及び組成物
1つの態様では、本開示は、対象における疾患の治療方法を提供し、該方法は、該対象に対して、有効量の本明細書に記載のLVV、本明細書に記載のCAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、もしくはNK細胞)、またはその医薬組成物を投与することを含む。別の態様では、本明細書に従う対象における疾患の治療方法は、該対象に対して、有効量の本明細書に記載のLVV、本明細書に記載のCAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、もしくはNK細胞)、またはその医薬組成物を、1つ以上のさらなる治療薬と組み合わせて投与することを含む。
【0159】
本明細書に従うLVVまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、もしくはNK細胞)で治療され得る疾患としては、がんが挙げられる。養子免疫療法及び遺伝子治療は、様々な種類のがん(Morgan et al.,Science 314:126,2006、Schmitt et al.,Hum.Gene Ther.20:1240,2009、June,J.Clin.Invest.117:1466,2007)及び感染症(Kitchen et al.,PLoS One 4:38208,2009、Rossi et al.,Nat.Biotechnol.25:1444,2007、Zhang et al.,PLoS Pathog.6:e1001018,2010、Luo et al.,J.Mol.Med.89:903,2011)に対する有望な治療法である。
【0160】
固形腫瘍及び白血病を含めた広範ながんが、本明細書に開示する組成物及び方法に適している。本明細書に記載の受容体、改変宿主細胞、及び組成物を使用して治療され得る例示的ながんとしては、乳房、前立腺、及び結腸の腺癌、あらゆる形態の肺の気管支癌、骨髄性白血病、黒色腫、肝癌、神経芽細胞腫、乳頭腫、アプドーマ、分離腫、鰓腫、悪性カルチノイド症候群、カルチノイド心疾患、ならびに癌腫(例えば、ウォーカー、基底細胞、基底扁平上皮、ブラウン・ピアース、腺管、エールリッヒ腫瘍、クレブス2、メルケル細胞、粘液性、非小細胞肺、エンバク細胞、乳頭、硬性、細気管支、気管支原性、扁平上皮細胞、及び移行上皮)が挙げられる。本明細書に記載の受容体、改変宿主細胞、及び組成物を使用して治療され得るさらなるがんの種類としては、組織球性障害、悪性組織球増殖症、白血病、ホジキン病、免疫増殖性小、非ホジキンリンパ腫、形質細胞腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、形質細胞腫、細網内皮症、黒色腫、軟骨芽細胞腫、軟骨腫、軟骨肉腫、線維腫、線維肉腫、巨細胞腫、組織球腫、脂肪腫、脂肪肉腫、中皮腫、粘液腫、粘液肉腫、骨腫、骨肉腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫、間葉腫、中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント腫、歯牙腫、奇形腫、胸腺腫、絨毛性腫瘍が挙げられる。さらに、以下の種類のがんも、本明細書に記載の受容体、改変宿主細胞、及び組成物を使用した治療に適していることが企図される:アデノーマ、胆管腫、真珠腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢胞腺腫、顆粒膜細胞腫、男性胚腫、肝癌、汗腺腫、膵島細胞腫瘍、ライディッヒ細胞腫瘍、乳頭腫、セルトリ細胞腫、莢膜細胞腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋芽細胞腫、筋腫、筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、上衣腫、神経節神経腫、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム性親和性傍神経節腫。治療され得るがんの種類としては、被角血管腫、好酸球性血管リンパ球増殖症、硬化性血管腫、血管腫症、グロムス血管腫、血管内皮腫、血管腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、リンパ管腫、リンパ管肉腫、松果体腫、がん肉腫、軟骨肉腫、葉状嚢肉腫、線維肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、白血肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、筋肉腫、粘液肉腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、肉腫、新生物、神経線維腫症、子宮頸部異形成、及び腹膜癌も挙げられる。
【0161】
本明細書に記載の受容体、改変宿主細胞、及び組成物を使用した治療に適している過剰増殖性障害の例としては、B細胞リンパ腫(例えば、様々な形態のホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)または中枢神経系リンパ腫)を含めたB細胞癌(B細胞悪性腫瘍)、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄性白血病のB細胞芽球化現象、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、及び骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)が挙げられる。本明細書に記載の受容体、改変宿主細胞、及び組成物を使用して治療され得るさらなるB細胞癌としては、小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、孤立性骨形質細胞腫、骨外形質細胞腫、粘膜内リンパ組織(MALT)の節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体液性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、悪性度が不明確なB細胞増殖、リンパ腫様肉芽腫症、及び移植後リンパ増殖性疾患が挙げられる。
【0162】
本明細書に開示する組成物に含まれ、対象に投与されるCAR改変リンパ球としては、CAR改変T細胞、例えば、CD4+T細胞、CD8+T細胞、ナチュラルキラー細胞、ガンマデルタT細胞、もしくはMAIT細胞、CAR改変B細胞、またはCAR改変NK細胞を挙げてもよい。ある特定の実施形態では、対象の治療方法は、有効量の本明細書に記載のLVVまたは本開示に従うCAR改変リンパ球(すなわち、1つ以上のCARを発現する組み換え細胞)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、CAR改変T細胞が、対象に投与される。いくつかの実施形態では、CAR改変NK細胞が、対象に投与される。いくつかの実施形態では、CAR改変B細胞が、対象に投与される。該CAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)は、対象にとって異種、同系、同種、または自己であり得る。
【0163】
該LVVまたはCARで操作されたリンパ球を含む医薬組成物は、医学分野の当業者によって決定される、治療(または予防)される疾患または状態に適切な方法で投与され得る。該組成物の適切な用量、適切な投与期間、及び投与頻度は、患者の状態、サイズ、体重、体表面積、年齢、性別、疾患の種類及び重症度、投与される特定の療法、活性成分の特定の形態、投与の時間及び方法、ならびに同時に投与される他の薬物等の要因によって決定される。本開示は、LVVまたはCAR改変リンパ球、及び医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。適切な賦形剤としては、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール等及びそれらの組み合わせが挙げられる。他の適切な注入媒体は、生理食塩水、Normosol R(Abbott)、Plasma-Lyte A(Baxter)、5%デキストロース水溶液、または乳酸リンゲル液を含めた任意の等張媒体配合物でよい。
【0164】
医薬組成物に含まれる治療有効量の操作されたリンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)は、少なくとも1個の細胞(例えば、1個のCAR改変T細胞)であり、より典型的には、102個より多く、例えば、最大106個、最大107個、最大108個、最大109個、最大1010個、または最大1011個もしくはそれを超える。ある特定の実施形態では、該細胞は、約106~約1010個/m2の範囲で、好ましくは、約107~約109細胞/m2の範囲で投与される。細胞の数は、該組成物が意図される最終的な用途ならびにその中に含まれる細胞の種類に依存する。例えば、CARを含むように改変されたT細胞を含む組成物は、かかる細胞を約5%~約95%またはそれ以上含むT細胞集団を含む。ある特定の実施形態では、CAR改変T細胞を含む組成物は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上のかかる細胞を含む細胞集団を含む。ある特定の実施形態では、CAR改変NK細胞を含む組成物は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上のかかる細胞を含む細胞集団を含む。ある特定の実施形態では、CAR改変B細胞を含む組成物は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上のかかる細胞を含む細胞集団を含む。本明細書に提供する使用の場合、該リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)は、一般に、1リットル以下、500ml以下、250ml以下、または100ml以下の体積である。したがって、所望の細胞の密度は、通常は、104細胞/mlより高く、一般に、107細胞/mlより高く、一般に108細胞/ml以上である。該リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)は、単一の注入として投与される場合もあれば、一定時間にわたる複数回の注入で投与される場合もある。CAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)の繰り返しの注入は、疾患または疾患活動性の再発が存在する場合、数日、数週間、数ヶ月、またはさらには数年間隔でよい。臨床的に意義のある数の免疫細胞を、累積で106、107、108、109、1010、または1011個の細胞以上となるように複数回の注入に分配することができる。本明細書に記載の組み換え発現ベクターを含む宿主細胞の投与に好ましい用量は、約107細胞/m2、約5x107細胞/m2、約108細胞/m2、約5x108細胞/m2、約109細胞/m2、約5x109細胞/m2、約1010細胞/m2、約5x1010細胞/m2、または約1011細胞/m2である。
【0165】
本明細書に記載のLVV及び/またはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)組成物は、対象に対して、静脈内、腹腔内、腫瘍内、骨髄内(例えば、骨内投与)、リンパ節内(節内)、及び/または脳脊髄液内投与され得る。
【0166】
該LVVベクター及び/またはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)組成物は、1つ以上のさらなる治療薬と組み合わせて対象に投与され得る。本明細書に従うLVVベクターまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)と組み合わせて投与され得る治療薬の例としては、放射線療法、養子細胞免疫療法薬(例えば、組み換えTCR、親和性強化TCR、CAR、TCR-CAR、scTCR融合タンパク質、樹状細胞ワクチン)、抗体療法、免疫チェックポイント分子阻害剤療法、紫外線療法、電気パルス療法、高密度焦点式超音波療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、または薬物療法、例えば、化学療法薬、治療用ペプチド、ホルモン、アプタマー、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗炎症剤、小分子療法、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0167】
放射線療法としては、外照射療法(例えば、従来の外照射療法、定位放射線、3次元原体放射線治療、強度変調放射線治療、強度変調回転放射線治療、粒子線治療、陽子線療法、及びオージェ療法)、小線源療法、全身放射性同位体療法、術中放射線療法、またはそれらの任意の組み合せが挙げられる。
【0168】
本明細書に記載のLVVまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)組成物と併用され得る例示的な抗体としては、リツキシマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ブレンツキシマブベドチン、セツキシマブ、ベバシズマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アレファセプト、バシリジマブ(basilizimab)、ベリムマブ、ベズロトクスマブ、カナキヌマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、デノスマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、オララツマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、及びトシリズマブが挙げられる。
【0169】
本明細書に記載のLVVまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)組成物と併用され得る例示的な免疫チェックポイント分子の阻害剤としては、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、HVEM、アデノシン、GAL9、VISTA、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5、PVRL2、PD-1、CTLA-4、BTLA、KIR、LAG3、TIM3、A2aR、CD244/2B4、CD160、TIGIT、LAIR-1、PVRIG/CD112R、またはそれらの任意の組み合わせを標的とするチェックポイント阻害剤が挙げられる。ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体、ペプチド、RNAi剤、または小分子であり得る。CTLA-4に特異的な抗体は、イピリムマブまたはトレメリムマブであり得る。PD-1に特異的な抗体は、ピジリズマブ、ニボルマブ、またはペムブロリズマブであり得る。PD-L1に特異的な抗体は、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、またはアベルマブであり得る。
【0170】
本明細書に記載のLVVまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、またはNK細胞)組成物と併用され得る例示的な化学療法剤としては、アルキル化剤、白金系薬剤、細胞傷害性薬、クロマチン機能の阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害薬、DNA損傷剤、代謝拮抗剤(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、糖修飾アナログ)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(例えば、挿入剤)、及びDNA修復阻害剤を挙げてもよい。
【0171】
本明細書で言及される化学療法としては、有糸分裂または細胞分裂を阻害する非特異的な細胞傷害剤、ならびに腫瘍増殖、進行及び転移に関与する特定の分子(例えば、発がん遺伝子)を標的とすることによってがん細胞の増殖及び拡大をブロックする分子標的療法が挙げられる。本明細書に記載の発現カセット組成物と併用される例示的な非特異的化学療法剤としては、アルキル化剤、白金系薬剤、細胞傷害性薬、クロマチン機能の阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害薬、DNA損傷剤、代謝拮抗剤(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、糖修飾アナログ)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(例えば、挿入剤)、低メチル化剤、及びDNA修復阻害剤を挙げてもよい。
【0172】
本明細書で企図される併用療法での使用が考慮される化学療法剤の例としては、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、アナストロゾール(Arimidex(登録商標))、ビカルタミド(Casodex(登録商標))、硫酸ブレオマイシン(Blenoxane(登録商標))、ブスルファン(Myleran(登録商標))、ブスルファン注射液(Busulfex(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、クラドリビン(Leustatin(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)またはNeosar(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(Cytosar-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射液(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(Actinomycin D、Cosmegan)、塩酸ダウノルビシン(Cerubidine(登録商標))、ダウノルビシンクエン酸塩リポソーム注射液(DaunoXome(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、塩酸ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)、Rubex(登録商標))、エトポシド(Vepesid(登録商標))、リン酸フルダラビン(Fludara(登録商標))、5-フルオロウラシル(Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、テザシチビン(tezacitibine)、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標))、イダルビシン(Idamycin(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(Alkeran(登録商標))、6-メルカプトプリン(Purinethol(登録商標))、メトトレキサート(Folex(登録商標))、ミトキサントロン(Novantrone(登録商標))、マイロターグ、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、フェニックス(イットリウム90/MX-DTPA)、ペントスタチン、ポリフェプロサン20とカルムスチンインプラント(Gliadel(登録商標))、fdabraクエン酸タモキシフェン(Nolvadex(登録商標))、テニポシド(Vumon(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(Tirazone(登録商標))、注射用トポテカン塩酸塩(Hycamptin(登録商標))、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、イブルチニブ、ベネトクラクス、クリゾチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、セリチニブ、及びビノレルビン(Navelbine(登録商標))が挙げられる。
【0173】
本明細書で企図される併用療法での使用のための例示的なアルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレア及びトリアゼン、ウラシルマスタード(Aminouracil Mustard(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、Uracil nitrogen Mustard(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、クロルメチン(Mustargen(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、Endoxan(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(Alkeran(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、ピポブロマン(Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標))、トリエチレンメラミン(Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標))、トリエチレンチオホスホルアミン、テモゾロミド(Temodar(登録商標))、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(Busilvex(登録商標)、Myleran(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))、ならびにダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))が挙げられる。本明細書で企図される併用療法での使用のためのさらなる例示的なアルキル化剤としては、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標))、テモゾロミド(Temodar(登録商標)及びTemodal(登録商標))、ダクチノマイシン(別名アクチノマイシン-D、Cosmegen(登録商標))、メルファラン(別名L-PAM、L-サルコリシン、及びフェニルアラニンマスタード、Alkeran(登録商標))、アルトレタミン(別名ヘキサメチルメラミン(HMM)、Hexalen(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ベンダムスチン(Treanda(登録商標))、ブスルファン(Busulfex(登録商標)及びMyleran(登録商標))、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、ロムスチン(別名CCNU、CeeNU(登録商標))、シスプラチン(別名CDDP、Platinol(登録商標)及びPlatinol(登録商標)-AQ)、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)及びNeosar(登録商標))、ダカルバジン(別名DTIC、DIC及びイミダゾールカルボキサミド、DTIC-Dome(登録商標))、アルトレタミン(別名ヘキサメチルメラミン(HMM)、Hexalen(登録商標))、イホスファミド(Ifex(登録商標))、プレドヌムスチン(Prednumustine)、プロカルバジン(Matulane(登録商標))、メクロレタミン(別名ナイトロジェンマスタード、ムスチン及び塩酸メクロレタミン、Mustargen(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))、チオテパ(別名チオホスホアミド、TESPA及びTSPA、Thioplex(登録商標))、シクロホスファミド(Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標))、ならびにベンダムスチンHCl(Treanda(登録商標))が挙げられるがこれらに限定されない。
【0174】
本明細書で企図される併用療法での使用のための例示的な白金系薬剤としては、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、フェナントリプラチン、及びトリプラチンテトラニトレートが挙げられる。
【0175】
併用療法での使用のための例示的な低メチル化剤としては、アザシチジン及びデシタビンが挙げられる。
【0176】
本明細書で企図される併用療法での使用するための例示的な分子標的阻害剤としては、例えば、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、RAF阻害剤、BCL-2阻害剤、ABL阻害剤、TRK阻害剤、c-KIT阻害剤、c-MET阻害剤、CDK4/6阻害剤、FAK阻害剤、FGFR阻害剤、FLT3阻害剤、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、PDGFRA阻害剤、及びRET阻害剤を含めたがん細胞の増殖及び生存に関与する分子を標的とする小分子が挙げられる。
【0177】
例示的な分子標的治療としては、ホルモンアンタゴニスト、シグナル伝達阻害剤、遺伝子発現阻害剤(例えば、翻訳阻害剤)、アポトーシス誘導剤、血管新生阻害剤(例えば、VEGF経路阻害剤)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、EGF/EGFR経路阻害剤)、成長因子阻害剤、GTPase阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、転写因子阻害剤、がんに関連するドライバー変異の阻害剤、B-Raf阻害剤、RAF阻害剤、MEK阻害剤、mTOR阻害剤、アデノシン経路阻害剤、EGFR阻害剤、PI3K阻害剤、BCL2阻害剤、VEGFR阻害剤、MET阻害剤、MYC阻害剤、BCR-ABL阻害剤、ABL阻害剤、HER2阻害剤、H-RAS阻害剤、K-RAS阻害剤、PDGFR阻害剤、ALK阻害剤、ROS1阻害剤、BTK阻害剤、TRK阻害剤、c-KIT阻害剤、c-MET阻害剤、CDK4/6阻害剤、FAK阻害剤、FGFR阻害剤、FLT3阻害剤、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、PARP阻害剤、PARP阻害剤、PDGFRA阻害剤、及びRET阻害剤が挙げられる。
【0178】
例示的な血管新生阻害剤としては、A6(Angstrom Pharmaceuticals)、ABT-510(Abbott Laboratories)、ABT-627(Atrasentan)(Abbott Laboratories/Xinlay)、ABT-869(Abbott Laboratories)、Actimid(CC4047、ポマリドミド)(Celgene Corporation)、AdGVPEDF.11D(GenVec)、ADH-1(Exherin)(Adherex Technologies)、AEE788(Novartis)、AG-013736(Axitinib)(Pfizer)、AG3340(Prinomastat)(Agouron Pharmaceuticals)、AGX1053(AngioGenex)、AGX51(AngioGenex)、ALN-VSP(ALN-VSP O2)(Alnylam Pharmaceuticals)、AMG 386(Amgen)、AMG706(Amgen)、アパチニブ(YN968D1)(Jiangsu Hengrui Medicine)、AP23573(Ridaforolimus/MK8669)(Ariad Pharmaceuticals)、AQ4N(Novavea)、ARQ 197(ArQule)、ASA404(Novartis/Antisoma)、Atiprimod(Callisto Pharmaceuticals)、ATN-161(Attenuon)、AV-412(Aveo Pharmaceuticals)、AV-951(Aveo Pharmaceuticals)、アバスチン(ベバシズマブ)(Genentech)、AZD2171(セディラニブ/Recentin)(AstraZeneca)、BAY 57-9352(テラチニブ)(Bayer)、BEZ235(Novartis)、BIBF1120(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals)、BIBW 2992(Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals)、BMS-275291(Bristol-Myers Squibb)、BMS-582664(ブリバニブ)(Bristol-Myers Squibb)、BMS-690514(Bristol-Myers Squibb)、カルシトリオール、CCI-779(トーリセル)(Wyeth)、CDP-791(ImClone Systems)、セフラトニン(Ceflatonin)(ホモハリングトニン/HHT)(ChemGenex Therapeutics)、セレブレックス(セレコキシブ)(Pfizer)、CEP-7055(セファロン/Sanofi)、CHIR-265(Chiron Corporation)、NGR-TNF、COL-3(メタスタット)(Collagenex Pharmaceuticals)、コンブレタスタチン(Oxigene)、CP-751,871(フィギツムマブ)(Pfizer)、CP-547,632(Pfizer)、CS-7017(Daiichi Sankyo Pharma)、CT-322(Angiocept)(Adnexus)、クルクミン、ダルテパリン(Fragmin)(Pfizer))、ジスルフィラム(アンタビュース)、E7820(Eisai Limited)、E7080(Eisai Limited)、EMD 121974(Cilengitide)(EMD Pharmaceuticals)、ENMD-1198(EntreMed)、ENMD-2076(EntreMed)、Endostar(Simcere)、アービタックス(ImClone/Bristol-Myers Squibb)、EZN-2208(Enzon Pharmaceuticals)、EZN-2968(Enzon Pharmaceuticals)、GC1008(Genzyme)、ゲニステイン、GSK1363089(フォレチニブ)(GlaxoSmithKline)、GW786034(パゾパニブ)(GlaxoSmithKline)、GT-111(Vascular Biogenics Ltd.)、IMC-1121B(ラムシルマブ)(ImClone Systems)、IMC-18F1(ImClone Systems)、IMC-3G3(ImClone LLC)、INCB007839(Incyte Corporation)、INGN 241(Introgen Therapeutics)、イレッサ(ZD1839/Gefitinib)、LBH589(Faridak/Panobinostst)(Novartis)、ルセンティス(ラニビズマブ)(Genentech/Novartis)、LY317615(エンザスタウリン)(Eli Lilly and Company)、マクジェン(ペガプタニブ)(Pfizer)、MEDI522(Abegrin)(MedImmune)、MLN518(タンズチニブ)(Millennium)、Neovastat(AE941/ベネフィン)(Aeterna Zentaris)、ネクサバール(Bayer/Onyx)、NM-3(Genzyme Corporation)、ノスカピン(Cougar Biotechnology)、NPI-2358(Nereus Pharmaceuticals)、OSI-930(OSI)、Palomid 529(Paloma Pharmaceuticals,Inc.)、Panzem Capsules(2ME2)(EntreMed)、Panzem NCD(2ME2)(EntreMed)、PF-02341066(Pfizer)、PF-04554878(Pfizer)、PI-88(Progen Industries/Medigen Biotechnology)、PKC412(Novartis)、ポリフェノンE(緑茶抽出物)(Polypheno E International,Inc.)、PPI-2458(Praecis Pharmaceuticals)、PTC299(PTC Therapeutics)、PTK787(バタラニブ)(Novartis)、PXD101(ベリノスタット)(CuraGen Corporation)、RAD001(エベロリムス)(Novartis)、RAF265(Novartis)、レゴラフェニブ(BAY73-4506)(Bayer)、レブラミド(Celgene)、Retaane(Alcon Research)、SN38(Liposomal)(Neopharm)、SNS-032(BMS-387032)(Sunesis)、SOM230(パシレオチド)(Novartis)、スクアラミン(Genaera)、スラミン、スーテント(Pfizer)、タルセバ(Genentech)、TB-403(Thrombogenics)、Tempostatin(Collard Biopharmaceuticals)、テトラチオモリブデート(Sigma-Aldrich)、TG100801(TargeGen)、サリドマイド(Celgene Corporation)、チンザパリンナトリウム、TKI258(Novartis)、TRC093(Tracon Pharmaceuticals Inc.)、VEGF Trap(アフリベルセプト)(Regeneron Pharmaceuticals)、VEGF Trap-Eye(Regeneron Pharmaceuticals)、Veglin(VasGene Therapeutics)、ボルテゾミブ(Millennium)、XL184(Exelixis)、XL647(Exelixis)、XL784(Exelixis)、XL820(Exelixis)、XL999(Exelixis)、ZD6474(AstraZeneca)、ボリノスタット(Merck)、及びZSTK474が挙げられるがこれらに限定されない。
【0179】
例示的なB-Raf阻害剤としては、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、及びエンコラフェニブが挙げられる。
【0180】
例示的なMEK阻害剤としては、ビニメチニブ、コビメチニブ、レファメチニブ(refametinib)、セルメチニブ、及びトラメチニブが挙げられる。
【0181】
例示的なBTK阻害剤としては、イブルチニブ、Loxo-305、チラブルチニブ(tirabrutinib)、GDC-0853、アカラブルチニブ、ONO-4059、スペブルチニブ(spebrutinib)、BGB-3111、HM71224、及びM7583が挙げられる。
【0182】
例示的なTRK阻害剤としては、エントレクチニブ(entrectinib)、ラロトレクチニブ(larotrectinib)、CH7057288、ONO-7579、LOXO-101、レスタウルチニブ、及びLOXO-195が挙げられる。
【0183】
例示的なc-KIT阻害剤としては、イマチニブ、スニチニブ、及びポナチニブが挙げられる。
【0184】
例示的なc-MET阻害剤としては、カプマチニブ、クリゾチニブ、チバンチニブ、オナルツズマブ(onartuzumab)、INCB28060、AMG-458、サボリチニブ(savolitinib)、及びテポチニブ(tepotinib)が挙げられる。
【0185】
例示的なCDK4/6阻害剤としては、パルボシクリブ、リボシクリブ(ribociclib)、アベマシクリブ、及びトリラシクリブ(trilaciclib)が挙げられる。
【0186】
例示的なFAK阻害剤には、デファクチニブ(defactinib)、GSK2256098、BI853520、及びPF-00562271が挙げられる。
【0187】
例示的なFGFR阻害剤としては、エルダフィチニブ(erdafitinib)、ペミガチニブ、インフィグラチニブ(infigratinib)、ロガラチニブ(rogaratinib)、AZD4547、BGJ398、FP-1039、及びARQ087が挙げられる。
【0188】
例示的なFLT-3阻害剤としては、キザルチニブ、クレノラニブ(crenolanib)、ギルテリチニブ、ミドスタウリン(midostaurin)、及びレスタウルチニブが挙げられる。
【0189】
例示的なIDH1阻害剤としては、イボシデニブ(ivosidenib)、BAY-1436032、及びAGI-5198が挙げられる。
【0190】
例示的なIDH2阻害剤としては、エナシデニブ(enasidenib)が挙げられる。
【0191】
例示的なPARP阻害剤としては、タラゾパリブ(talazoparib)、ニラパリブ、ルカパリブ(rucaparib)、オラパリブ、ベリパリブ(veliparib)、CEP 9722、E7016、AG014699、MK4827、BMN-673、及びパミパリブ(Pamiparib)(BGB-290)が挙げられる。
【0192】
例示的なPDGFRA阻害剤としては、イマチニブ、レゴラフェニブ、クレノラニブ(crenolanib)、及びオララツマブ(olaratumab)が挙げられる。
【0193】
例示的な汎RAF阻害剤としては、ベルバラフェニブ(belvarafenib)、LXH254、LY3009120、INU-152、及びHM95573が挙げられる。
【0194】
例示的なRET阻害剤としては、レンバチニブ、アレクチニブ、バンデタニブ、カボザンチニブ、BLU-667、及びLOXO-292が挙げられる。
【0195】
例示的なROS1阻害剤としては、セリチニブ、ロルラチニブ、エントレクチニブ、クリゾチニブ、TPX-0005、及びDS-6051bが挙げられる。
【0196】
例示的な血管内皮増殖因子(VEGF)受容体阻害剤としては、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、アキシチニブ(Inlyta(登録商標))、ブリバニブアラニネート(BMS-582664、(S)-((R)-1-(4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イルオキシ)-5-メチルピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-6-イルオキシ)プロパン-2-イル)2-アミノプロパノエート)、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、パゾパニブ(Votrient(登録商標))、リンゴ酸スニチニブ(Sutent(登録商標))、セディラニブ(AZD2171、CAS 288383-20-1)、バルガテフ(Vargatef)(BIBF1120、CAS 928326-83-4)、フォレチニブ(GSK1363089)、テラチニブ(BAY57-9352、CAS 332012-40-5)、アパチニブ(YN968D1、CAS 811803-05-1)、イマチニブ(Gleevec(登録商標))、ポナチニブ(AP24534、CAS 943319-70-8)、チボザニブ(AV951、CAS 475108-18-0)、レゴラフェニブ(BAY73-4506、CAS 755037-03-7)、バタラニブ二塩酸塩(PTK787、CAS 212141-51-0)、ブリバニブ(BMS-540215、CAS 649735-46-6)、バンデタニブ(Caprelsa(登録商標)またはAZD6474)、モテサニブ二リン酸塩(AMG706、CAS 857876-30-3、N-(2,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1H-インドール-6-イル)-2-[(4-ピリジニルメチル)アミノ]-3-ピリジンカルボキサミド、PCT公開第WO02/066470号に記載されている)、ドビチニブ(Dovitinib)ジ乳酸(TKI258、CAS 852433-84-2)、リンファニブ(Linfanib)(ABT869、CAS 796967-16-3)、カボザンチニブ(XL184、CAS 849217-68-1)、レスタウルチニブ(CAS 111358-88-4)、N-[5-[[[5-(1,1-ジメチルエチル)-2-オキサゾリル]メチル]チオ]-2-チアゾリル]-4-ピペリジンカルボキサミド(BMS38703、CAS 345627-80-7)、(3R,4R)-4-アミノ-1-((4-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-5-イル)メチル)ピペリジン-3-オール(BMS690514)、N-(3,4-ジクロロ-2-フルオロフェニル)-6-メトキシ-7-[[(3aα,5β,6aα)-オクタヒドロ-2-メチルシクロペンタ[c]ピロール-5-イル]メトキシ]-4-キナゾリンアミン(XL647、CAS 781613-23-8)、4-メチル-3-[[1-メチル-6-(3-ピリジニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]アミノ]-N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-ベンズアミド(BHG712、CAS 940310-85-0)、及びアフリベルセプト(Eylea(登録商標))が挙げられるがこれらに限定されない。
【0197】
例示的なEGF経路阻害薬としては、チロホスチン46、EKB-569、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、アービタックス、ニモツズマブ、ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、セツキシマブ(抗EGFR mAb)、188Re標識ニモツズマブ(抗EGFR mAb)、ならびにWO 97/02266、EP 0 564 409、WO 99/03854、EP 0 520 722、EP 0 566 226、EP 0 787 722、EP 0 837 063、米国特許第5,747,498号、WO 98/10767、WO 97/30034、WO 97/49688、WO 97/38983及びWO 96/33980に一般的及び具体的に開示される化合物が挙げられるがこれらに限定されない。例示的なEGFR抗体としては、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、マツズマブ(EMD-72000)、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、ニモツズマブ(hR3)、ザルツムマブ、TheraCIM h-R3、MDX0447(CAS 339151-96-1)、及びch806(mAb-806、CAS 946414-09-1)が挙げられるがこれらに限定されない。例示的な上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤としては、塩酸エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、セリチニブ、ブリガチニブ、オシメリチニブ(osimeritinib)、イコチニブ(icotinib)、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3“S”)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド、Tovok(登録商標))、バンデタニブ(Caprelsa(登録商標))、ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、(3R,4R)-4-アミノ-1-((4-((3-メトキシフェニル)アミノ)ピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-5-イル)メチル)ピペリジン-3-オール(BMS690514)、カネルチニブ二塩酸塩(CI-1033)、6-[4-[(4-エチル-1-ピペラジニル)メチル]フェニル]-N-[(1R)-1-フェニルエチル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(AEE788、CAS 497839-62-0)、ムブリチニブ(Mubritinib)(TAK165)、ペリチニブ(EKB569)、アファチニブ(BIBW2992)、ネラチニブ(HKI-272)、N-[4-[[1-[(3-フルオロフェニル)メチル]-1H-インダゾール-5-イル]アミノ]-5-メチルピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-6-イル]-カルバミン酸、(3S)-3-モルホリニルメチルエステル(BMS599626)、N-(3,4-ジクロロ-2-フルオロフェニル)-6-メトキシ-7-[[(3aα,5β,6aα)-オクタヒドロ-2-メチルシクロペンタ[c]ピロール-5-イル]メトキシ]-4-キナゾリンアミン(XL647、CAS 781613-23-8)、4-[4-[[(1R)-1-フェニルエチル]アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール(PKI166、CAS 187724-61-4)、ロセリチニブ(rocelitinib)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0198】
例示的なmTOR阻害剤としては、ラパマイシン(Rapamune(登録商標))、ならびにそのアナログ及び誘導体、SDZ-RAD、テムシロリムス(Torisel(登録商標)、別名CCI-779)、リダフォロリムス(正式にはデフェロリムス(deferolimus)として知られ、(1R,2R,4S)-4-[(2R)-2[(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28Z,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-2,3,10,14,20-ペンタオキソ-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-12-イル]プロピル]-2-メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネート、別名AP23573及びMK8669、PCT公開第WO03/064383に記載されている)、エベロリムス(Afinitor(登録商標)またはRAD001)、ラパマイシン(AY22989、Sirolimus(登録商標))、シマピモド(Simapimod)(CAS 164301-51-3)、(5-{2,4-ビス[(3S)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル}-2-メトキシフェニル)メタノール(AZD8055)、2-アミノ-8-[トランス-4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]-6-(6-メトキシ-3-ピリジニル)-4-メチル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-1-オン(PF04691502、CAS 1013101-36-4)、及びN2-[1,4-ジオキソ-[[4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)モルホリニウム-4-イル]メトキシ]ブチル]-L-アルギニルグリシル-L-α-アスパルチル-L-セリン-、分子内塩(SF1126、CAS 936487-67-1)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0199】
例示的なホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤としては、デュベリシブ(duvelisib)、イデラリシブ、4-[2-(1H-インダゾール-4-イル)-6-[[4-(メチルスルホニル)ピペラジン-1-イル]メチル]チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン(別名GDC 0941、PCT公開第WO 09/036082号及び第WO 09/055730号に記載されている)、2-メチル-2-[4-[3-メチル-2-オキソ-8-(キノリン-3-イル)-2,3-ジヒドロイミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]フェニル]プロピオニトリル(別名BEZ 235またはNVP-BEZ 235、PCT公開第WO06/122806号に記載されている)、4-(トリフルオロメチル)-5-(2,6-ジモルホリノピリミジン-4-イル)ピリジン-2-アミン(別名BKM120またはNVP-BKM120、PCT公開第WO2007/084786号に記載されている)、Tozasertib(VX680またはMK-0457、CAS 639089-54-6)、(5Z)-5-[[4-(4-ピリジニル)-6-キノリニル]メチレン]-2,4-チアゾリジンジオン(GSK1059615、CAS 958852-01-2)、(1E,4S,4aR,5R,6aS,9aR)-5-(アセチルオキシ)-1-[(ジ-2-プロペニルアミノ)メチレン]-4,4a,5,6,6a,8,9,9a-オクタヒドロ-11-ヒドロキシ-4-(メトキシメチル)-4a,6a-ジメチル-シクロペンタ[5,6]ナフト[1,2-c]ピラン-2,7,10(1H)-トリオン(PX866、CAS 502632-66-8)、ならびに8-フェニル-2-(モルホリン-4-イル)-クロメン-4-オン(LY294002、CAS 154447-36-6)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0200】
例示的なプロテインキナーゼB(PKB)またはAKT阻害剤としては、8-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン(MK-2206、CAS 1032349-93-1)、Perifosine(KRX0401)、4-ドデシル-N-1,3,4-チアジアゾール-2-イル-ベンゼンスルホンアミド(PHT-427、CAS 1191951-57-1)、4-[2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-1-エチル-7-[(3S)-3-ピペリジニルメトキシ]-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-イル]-2-メチル-3-ブチン-2-オール(GSK690693、CAS 937174-76-0)、8-(1-ヒドロキシエチル)-2-メトキシ-3-[(4-メトキシフェニル)メトキシ]-6H-ジベンゾ[b,d]ピラン-6-オン(palomid 529、P529、またはSG-00529)、Tricirbine(6-アミノ-4-メチル-8-(β-D-リボフラノシル)-4H,8H-ピロロ[4,3,2-de]ピリミド[4,5-c]ピリダジン)、(αS)-α-[[[5-(3-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-3-ピリジニル]オキシ]メチル]-ベンゼンエタンアミン(A674563、CAS 552325-73-2)、4-[(4-クロロフェニル)メチル]-1-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-4-ピペリジンアミン(CCT128930、CAS 885499-61-6)、4-(4-クロロフェニル)-4-[4-(1Hピラゾール-4-イル)フェニル]-ピペリジン(AT7867、CAS 857531-00-1)、及びArchexin(RX-0201、CAS 663232-27-7)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0201】
ある特定の実施形態では、該LVVまたはCAR改変T細胞と組み合わせて使用されるチロシンキナーゼ阻害剤は、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤である。例示的なALK阻害剤としては、クリゾチニブ、セリチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、ダランテルセプト(dalantercept)、エヌトレクチニブ、及びロラチニブが挙げられる。
【0202】
該LVVまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞またはNK細胞)が1つ以上のさらなる療法と組み合わせて投与されるある特定の実施形態では、該LVV、CAR改変リンパ球(例えば、T細胞もしくはNK細胞)、または1つ以上のさらな療法は、単剤療法として投与された場合に治療量以下と見なされ得る用量で投与され得る。併用療法は、さらなる療法の前(例えば、さらなる療法の1日~30日前もしくはそれ以前)、さらなる療法と同時(同日)、またはさらなる療法の後(例えば、さらなる療法の1日~30日後もしくはそれ以降)の本明細書に記載のLVVまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞またはNK細胞)組成物の投与を含む。ある特定の実施形態では、該LVVまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞またはNK細胞)は、該1つ以上のさらなる療法と同時に投与される。さらなる実施形態では、該LVVまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞またはNK細胞)は、該1つ以上のさらなる療法の投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30日前または後に投与される。なおさらなる実施形態では、該LVVまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞またはNK細胞)は、該1つ以上のさらなる療法の投与の前または後4週間以内、3週間以内、2週間以内、もしくは1週間以内に投与される。該1つ以上のさらなる療法が複数回の投与を含む場合、該LVVまたはCAR改変リンパ球(例えば、T細胞またはNK細胞)は、該1つ以上のさらなる療法の最初の投与の前もしくは後、該1つ以上のさらなる療法の最後の投与の後、または該1つ以上のさらなる療法の複数回の投与の間に投与され得る。
【0203】
本開示の組成物及び方法によって治療され得る対象としては、動物、例えば、ヒト、霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、またはブタが挙げられる。該対象は、雌雄どちらでもよく、幼年、若年、青年、成年、及び老年対象を含めた任意の適切な年齢でよい。
【実施例】
【0204】
実施例1:規定の指向性を有するレンチウイルスベクターの生成方法
本明細書に記載の自己不活性化レンチウイルスベクター(LVV)を、第3世代の産生系を使用して産生した。LVVによる送達に必要な遺伝子配列を含む発現プラスミドを、規定の比率で3つのパッケージングプラスミド、VSV-G、GagPol、及びRevと組み合わせ、HEK293プロデューサー細胞をトランスフェクトするために使用した。2~3日後に、生産的なウイルス粒子をHEK293培地から採取した。
【0205】
得られたLVVの指向性を調べ、3つのパッケージングプラスミドのうちの1つから発現される、本明細書に記載の非ウイルス標的タンパク質を使用して、またはトランスフェクションミックスへの第五のプラスミドの添加によって向けなおすことができるかどうかを判断した。このLVVベクターには、変異型VSV-Gエンベロープタンパク質が含まれており、この変異型VSV-Gには、変異型VSV-Gの天然受容体への結合を無効にする変異が含まれており、ウイルスの侵入が、非ウイルスの指向性を規定する標的タンパク質を介して生じる。VSV-GのLDL受容体結合部位の変異により、その天然の受容体への結合が無効になることが分かった。様々な変異を有するVSV-G(Trop-002(配列番号74)、Trop-051(配列番号93)、Trop-052(配列番号95)、Trop-055(配列番号97)、またはTrop-061(配列番号103))を、LVV上でCD80(配列番号2)とともに発現させた。CD80は、T細胞表面受容体、CD28及びCTLA4に対する天然のリガンドであり、B細胞ではなくT細胞に指向性を与える。VSV-Gの天然受容体への結合は、Raji B細胞の形質導入によって評価される。VSV-Gにおけるいくつかの変異は、Raji B細胞の形質導入を禁止するが、Jurkat T細胞の形質導入は維持される(
図2A~2B)。
【0206】
第一の方法では、CD80由来の指向性を規定する標的タンパク質(配列番号76)をVSV-Gパッケージングプラスミドから発現させた。CD80は、T細胞表面受容体、CD28及びCTLA4に対する天然のリガンドであり、T細胞に指向性を与える。コドン最適化されたCD80分子(配列番号2をコードする)を、LDL受容体結合を無効にする変異を含む変異型VSV-G(Trop-002、配列番号74をコードする)の下流にクローニングし、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するLVVのパッケージングに使用した。CD80及びVSV-Gは、HEK293プロデューサー細胞の表面上で比較的同等のレベルで発現され、LVV粒子での同等の装飾が示唆された(
図3A)。このアプローチで生成されたLVVは、GFP発現によって評価して、T細胞を形質導入することが可能であった(
図3B)。
【0207】
第二の方法では、指向性を規定するCD80標的タンパク質(配列番号2をコードする)を、Revパッケージングプラスミドにクローニングし、より低いモル濃度でVSV-G env(Trop-002(配列番号74))プラスミドにトランスフェクトした。この改変プラスミドを使用して、GFP発現LVVをパッケージングした。HEK-293プロデューサー細胞上のVSV-G及びCD80発現の評価により、パッケージングプラスミドのモル濃度に応じて相対的な発現レベルの傾向が示された。これらのパッケージングアプローチで生成されたLVVは、GFP発現によって評価して、T細胞を形質導入することが可能であった(
図4)。Revパッケージングプラスミドに含まれるCD80標的タンパク質でパッケージングしたLVVでは、Revプラスミドの比率が低いためにCD80の発現の低下が観察された。
【0208】
第三の方法では、指向性を規定するCD80標的タンパク質(配列番号2をコードする)を、LVV(Trop-002 VSV-G env)を産生することを目的としたHEK293細胞のトランスフェクションの過程でさらなるプラスミドとして添加した。LVV産生中に使用されたCD80プラスミドの量は、HEK293プロデューサー細胞での発現と関連しており、おそらくはLVV粒子の装飾を表していると考えられる。このパッケージング手法で生成されたLVVは、GFP発現によって評価されるT細胞の形質導入が可能であり、形質導入効率は、LVV粒子上のCD80レベルと関連していた(
図5)。
【0209】
選択された方法に関係なく、高力価の向性再指向型LVVは、接着性または浮遊HEK293プロデューサー細胞で産生され、遠心分離またはアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)に続いてタンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって濃縮され得る(
図6A~6C)。AEX/TFFによる濃縮は、高レベルの純度及び回収でのLVVの調製につながった(
図6D)。
【0210】
実施例2:CD80LVVにより濃縮されたCD4T細胞
指向性を定義する標的指向性分子は、このLVVで形質導入される特定の細胞型を正確に定義する。CD80のリガンドであるCD28は、T細胞上で自然に発現される。しかしながら、ヒト末梢血中では、CD4T細胞の方が、CD8T細胞と比較してCD28を発現する頻度が高い(80%対50%)。Trop-002 VSV-GエンベロープをCD80標的タンパク質(配列番号76)で装飾するようにLVVをパッケージングし、ヒトPBMCを形質導入するために使用した場合、形質導入されたCD8T細胞と比較して、形質導入されたCD4T細胞のより高い組成が観察され、培養中で最長1週間維持された(
図13)。
【0211】
実施例3:T細胞特異的指向性を含むレンチウイルスベクターを使用して、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作された腫瘍反応性T細胞のエキソビトロ(ex vitro)生成のための方法
一般的な第三世代のパッケージング系を使用する標準的なレンチウイルスベクター(LVV)と比較して、本明細書に提供する指向性を向けなおすようにパッケージングされたLVVは、改善された形質導入効率及び特異性を有し得る。このLVV粒子は、他の望ましくない細胞型に取り込まれないため、不均一混合物の一部として特定の細胞型に形質導入する場合、利用可能なウイルス粒子のレベルが増加すると考えられる。CAR分子によるT細胞の形質導入の改善が、不均一な末梢血単核細胞(PBMC)混合物中で可能であるかどうかを評価した。多発性骨髄腫の治療に使用される代表的な抗BCMA CAR(配列番号58)または非ホジキンリンパ腫の治療に使用される代表的な抗CD19 CAR(配列番号42)を使用した。GFPレポーターを対照として使用した。LVVを、エンベロープを抗CD3標的タンパク質及びCD80標的タンパク質で修飾し、指向性をT細胞表面分子、CD3、CD28及びCTLA4に向けなおすようにパッケージングした。このCD80標的タンパク質をTrop-002 VSV-G envパッケージングプラスミド(配列番号76)にクローニングし、抗CD3標的タンパク質(配列番号10をコードする)を第五のパッケージングプラスミドから発現させた。
【0212】
インフォームド・コンセント後の健康なドナーの白血球アフェレーシスから得られたPBMC内でのT細胞の形質導入効率を調べた。赤血球溶血を使用してPBMCを濃縮し、対応するドナーに標準LVVまたはT細胞再指向型の指向性(抗CD3及びCD80)を備えたLVVで、CAR T細胞形質導入に通常使用されるLVV濃度より5~25倍低いLVV濃度で形質導入した。抗BCMA CARの発現は、抗BCMA CAR T細胞を特異的に検出するために蛍光標識されたBCMA分子で染色した後、フローサイトメトリーによって評価した。ウイルスレベルが極めて低い場合でも、T細胞指向性LVVを使用して形質導入されたT細胞は、標準LVVと比較してより高いレベルの形質導入を示した(
図7)。
【0213】
同じ試験で、T細胞を活性化する抗体を使用せずに抗BCMA CAR T細胞を生成できるかどうかを評価した。T細胞活性化抗体(例えば、抗CD28及びCD3)は通常、CAR T細胞生成の過程で標準LVVを使用して形質導入するのに必要である。標準LVVは実際に、正常なヒト初代T細胞を形質導入するために抗体を用いた活性化を必要とすることが確認された(
図7)。対照的に、T細胞再指向型LVV(抗CD3及びCD80)は、事前のT細胞活性化がない場合でも(IL-2ならびに外因性活性化抗体である抗CD3及び抗CD28が存在しない場合でも)形質導入を引き起こすことができる(
図7)。IL-2を含む培地で培養すると、T細胞活性化の結果、その後の細胞増殖が起こる。標準LVVまたはT細胞再指向型LVV(抗CD3及びCD80)の後に、外因性活性化抗CD3及び抗CD28抗体の存在下または非存在下で形質導入されたPBMCは、T細胞再指向型LVVが、抗体活性化がない場合であっても特異的にT細胞を増殖させることができることを示した(
図8)。別の例では、抗CD19CARの形質導入も、T細胞再指向型LVV(抗CD3及びCD80)を使用した場合、事前のT細胞活性化なしで達成された(
図9)。
【0214】
T細胞の活性化及び形質導入効率は、T細胞再指向型LVVの生成に使用される抗CD3抗体の選択によって決定され得る。VH(配列番号113)-VL(配列番号115)配向及びVL(配列番号115)-VH(配列番号113)配向の12F6結合ドメインを有するエンベロープ結合抗CD3結合タンパク質の例は、可変量のT細胞形質導入及びT細胞活性化を引き起こすことが示されている(
図10)。
【0215】
実施例4:T細胞を標的とするレンチウイルスベクターのT細胞特異性
抗CD3標的タンパク質(配列番号10)及びCD80標的タンパク質(配列番号2)でエンベロープを修飾するようにパッケージングしたLVV(Trop-002 VSV-G env)のT細胞特異性を、T細胞株及びB細胞株のパネル(Raji、Ramos、Jeko-1、NALM-6)の形質導入によって確認した。GFP導入遺伝子のフローサイトメトリーによって評価されたこれらの細胞株の形質導入を、標準LVVと比較した。標準LVVとT細胞を標的とするLVVの両方が、T細胞株(Jurkat)を効果的に形質導入した。標準LVVはこれらすべてのB細胞株を効果的に形質導入し、これらの株がLVV形質導入に対して感受性であることを確認したが、T細胞を標的とするLVVによる実質的な形質導入はいずれのB細胞株でも検出されなかった(
図14)。
【0216】
実施例5:T細胞を標的とするレンチウイルスベクターを使用して生成された腫瘍特異的T細胞
本明細書に記載の方法を使用して、健康なドナーのPBMCに、Trop-002 VSV-G envならびにCD80標的タンパク質及び抗CD3標的タンパク質を有するLVVを形質導入することによって、抗BCMA CAR(配列番号58)を発現するT細胞を生成した。このCD80標的タンパク質をTrop-002 VSV-G envパッケージングプラスミド(配列番号76)にクローニングし、抗CD3標的タンパク質(配列番号10をコードする)を第五のパッケージングプラスミドから発現させ、T細胞を標的とするLVVを産生した。このT細胞形質導入は、効率的なLVV媒介遺伝子導入に通常必要とされるT細胞刺激(外因性抗CD3及び抗CD28)の非存在下で実施した。
【0217】
まず、T細胞再指向型LVVによって生成された抗BCMA CAR T細胞の活性を、標準LVVと比較して調べた。抗腫瘍活性は、BCMA陰性細胞株(Nalm-6)またはBCMA陽性細胞株(RPMI-8826)との共培養後のインターフェロンガンマ及び腫瘍壊死因子アルファの細胞内サイトカイン染色によって評価した。抗BCMA CAR T細胞は、BCMA陽性細胞株との培養後に、T細胞エフェクターサイトカインの発現の増加を示し、これは、標準LVVによって生成されたものであってもT細胞再指向型LVVによって生成されたものであっても、BCMA陰性細胞株では観察されない(
図11)。
【0218】
実施例6:T細胞指向性レンチウイルスベクターを使用した遺伝物質のT細胞特異的インビボ送達方法
T細胞を標的とするLVVによるT細胞の効率的かつ特異的な形質導入により、インビボでのT細胞への遺伝物質の安全かつ効果的な送達を可能にすることができる。GFPを発現するT細胞を標的とするLVVを静脈内注入したヒト化マウスモデルを使用して、この仮説を検証した。Trop-002変異型VSV-Gを有し、抗CD3標的タンパク質及びCD80標的タンパク質でコーティングされたLVVを産生した。このCD80標的タンパク質をTrop-002 VSV-G envパッケージングプラスミド(配列番号76)にクローニングし、抗CD3標的タンパク質(配列番号10をコードする)を第五のパッケージングプラスミドから発現させ、T細胞を標的とするLVVを産生した。免疫不全NCGマウスを、ヒトPBMCの静脈内注射によりヒト化し、4日間毎日の組み換えIL-2の腹腔内投与により支持した。PBMC投与の1日後、T細胞を標的とするレンチウイルスベクターをこのマウスに静脈内投与した。7日目に末梢血及び脾臓細胞を採取し、T細胞の特異性をフローサイトメトリーで評価した。GFP陽性細胞は、ヒトT細胞(CD3+)においてのみ検出され、ヒトB細胞(CD20+)においては検出されず、LVV形質導入のT細胞特異性が確認された(
図12A)。GFPは、CD8+及びCD8-(CD4)T細胞の両方で検出され、T細胞特異的LVVがインビボでCD4及びCD8T細胞の両方を形質導入することが示された(
図12B)。
【0219】
特異的T細胞形質導入は、腫瘍細胞を形質導入するリスクを最小限に抑えることで、他のインビボCAR送達アプローチに比べて重要な安全性の利点を有する。腫瘍細胞の形質導入を伴わないT細胞の形質導入は、検出可能なCD19腫瘍細胞を有する慢性リンパ性白血病患者のPBMCを用いて評価する。PBMCを、T細胞を標的とするLVVで形質導入し、形質導入された細胞を、フローサイトメトリーを使用して評価する。
【0220】
上記の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。2021年2月26日に出願された米国仮特許出願第63/154,639号が挙げられるがこれに限定されない本明細書中で言及される、及び/または出願データシートに列挙されるすべての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。これら実施形態の態様は、必要に応じて、様々な特許、出願及び公開の概念を使用して、さらなる実施形態を提供するように修正することができる。
【0221】
これら及び他の変更は、上記の説明に照らして、該実施形態になされ得る。一般に、以下の特許請求の範囲で使用される用語は、該特許請求の範囲を本明細書及び該特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、すべての可能な実施形態と、かかる特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲を含むものと解釈されるべきである。したがって、該特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【配列表】
【国際調査報告】