(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電気赤外線加熱膜、その調製方法、電気赤外線加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/10 20060101AFI20240214BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20240214BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20240214BHJP
【FI】
H05B3/10 B
C01B32/194
C01B32/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552254
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 CN2022071866
(87)【国際公開番号】W WO2022179332
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】202110220155.6
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523325565
【氏名又は名称】鄭州新世紀材料基因組工程研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】邵 国勝
(72)【発明者】
【氏名】張 鵬
(72)【発明者】
【氏名】李 子軒
(72)【発明者】
【氏名】陸 柳
【テーマコード(参考)】
3K092
4G146
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA02
3K092QA05
3K092QB14
3K092QB17
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC02B
4G146AC15A
4G146AD21
4G146AD37
4G146BA01
4G146BA11
4G146BC33A
4G146BC34A
4G146CB09
4G146CB10
4G146CB11
4G146CB17
4G146CB26
4G146CB33
(57)【要約】
電気赤外線加熱膜、その調製方法、電気赤外線加熱装置を提供し、電気加熱材料の技術分野に関する。電気赤外線加熱膜は、重量部で、主に、10~15部の低欠陥グラフェンと、5~20部の無機充填剤と、5~10部の無定形炭素とを含む。電気赤外線加熱膜において、低欠陥グラフェン、無機充填剤、無定形炭素により電気赤外線加熱膜の体積膨張係数を小さくし、電気赤外線加熱膜と、セラミック、石英、高ホウ素耐熱ガラスなどの基材との体積膨張係数の差を小さくし、これらの材料の表面からの電気赤外線加熱膜の脱落を防止し、電気赤外線加熱膜を採用する電気赤外線加熱装置の使用寿命を延ばすことができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部で、主に、10~15部の低欠陥グラフェンと、5~20部の無機充填剤と、5~10部の無定形炭素とを含む
ことを特徴とする電気赤外線加熱膜。
【請求項2】
前記低欠陥グラフェンのラマンスペクトルにおいて、Dピーク強度とGピーク強度との比が1/10以下であり、低欠陥グラフェンにおける炭素と酸素とのモル比が20:1以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の電気赤外線加熱膜。
【請求項3】
前記低欠陥グラフェンのラマンスペクトルにおいて2Dピークを有し、前記2DピークとGピークとの間隔が、天然鱗片状黒鉛の2DピークとGピークとの間隔に対して、5cm
-1以上減少する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電気赤外線加熱膜。
【請求項4】
前記無機充填剤は、電気赤外加熱膜の仕事温度範囲内においてまたは0~600℃の範囲内において熱膨張係数が5×10
-7/K以下である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜。
【請求項5】
前記無機充填剤の粒度D50が前記低欠陥グラフェンの粒度D50より小さく、
好ましくは、前記無機充填剤の粒度D50が前記低欠陥グラフェンの粒度D50の1/150よりも小さい
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜。
【請求項6】
前記無機充填剤は、アルミナセラミック粉末、ジルコニアセラミック粉末、酸化ケイ素粉体、マイカ粉末、炭化ケイ素粉末の充填材の任意の1種または任意の組み合わせであり、前記無機充填剤の粒度D50が100nm以下である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜。
【請求項7】
前記電気赤外線加熱膜の厚さは、100μm以下である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜。
【請求項8】
前記電気赤外線加熱膜の厚さは、10~30μmである
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜。
【請求項9】
請求項1に記載の電気赤外線加熱膜の調製方法であって、
主に低欠陥グラフェン、無機充填剤、成膜剤および溶剤を含むスラリーを塗布し、成膜し、溶剤を揮発させたあと炭化処理を施し、前記電気赤外線加熱膜を得るステップを含み、前記成膜剤が有機ポリマーである
ことを特徴とする電気赤外線加熱膜の調製方法。
【請求項10】
前記有機ポリマーは、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート系ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂の1種または任意の組み合わせである
ことを特徴とする請求項9に記載の電気赤外線加熱膜の調製方法。
【請求項11】
前記スラリーは、グラフェン分散剤をさらに含み、前記グラフェン分散剤は、スラリー分散剤と薄膜分散剤とを含み、前記スラリー分散剤は、ジフェニルエーテル、C12-C16アルキルベンゼンスルホネート、エチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、二塩基酸エステル、C12-C16アルキルジフェニルエーテルモノスルホン酸塩、C12-C16アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、C12-C16アルキルスルホナート、p-C12-C16アルキルベンゼンスルホネートから選択される1種または任意の組み合わせであり、前記薄膜分散剤は、C12-C16アルキルジフェニルエーテルモノスルホン酸塩、C12-C16アルキルスルホナート、ポリデキストロースのアルキル化誘導体、プロピレンオキサイド、脂肪アルコールアルコキシレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選択される1種または任意の組み合わせである
ことを特徴とする請求項9または10に記載の電気赤外線加熱膜の調製方法。
【請求項12】
前記炭化処理の温度が600~1200℃であり、炭化処理の時間が4時間以上である
ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜の調製方法。
【請求項13】
電気赤外加熱素子と、請求項1~8のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜とを備え、
前記電気赤外線加熱膜が、前記電気赤外加熱素子の内壁に設置され、前記電気赤外加熱素子の内部に密封され、
好ましくは、前記電気赤外加熱素子は、ランプ型電気赤外加熱素子、管型電気赤外加熱素子または板型電気赤外加熱素子の1種を含む
ことを特徴とする電気赤外線加熱装置。
【請求項14】
電気赤外線加熱装置であって、
管体と、請求項1~8のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜と、2つの電極とを備え、
前記電気赤外線加熱膜が前記管体の内壁に設置されるとともに前記管体の内部に密封され、
2つの電極が、いずれも前記電気赤外線加熱装置と電気的に接続され、通電すると電気赤外線加熱膜を発熱させるように構成される
ことを特徴とする電気赤外線加熱装置。
【請求項15】
前記管体は、石英管、セラミック管またはガラス管である
ことを特徴とする請求項14に記載の電気赤外線加熱装置。
【請求項16】
電気赤外線加熱装置であって、
板型電気赤外加熱素子と、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜とを備え、
前記板型電気赤外加熱素子が板体と電極とを含み、前記電気赤外線加熱膜が前記板体の内壁に設置されるとともに前記板体の内部に密封され、前記電極が前記電気赤外線加熱装置と電気的に接続され、通電すると前記電気赤外線加熱膜を発熱させるように構成される。
ことを特徴とする電気赤外線加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気赤外線加熱膜、その調製方法、電気赤外線加熱装置に関し、電気加熱材料の技術分野に属する。
【0002】
関係出願の相互参照
本開示は、2021年02月26日に中国専利局に提出された、出願番号がCN202110220155.6であり、名称が「電気赤外線加熱膜、その調製方法、電気赤外線加熱装置」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本開示に参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
現在、空気熱源とする高温加熱管製品は、多くがパッケージ(ハウジング)として管体を採用し、その中にヒータ線が配置され、通電により昇温したあと不活性ガスを介して伝熱し、石英/セラミック/金属管を介して放射して発光、発熱する。通電後、ヒータ線により発生した熱が電気加熱線の表面を介して、封入された不活性ガスまたは真空(密度の低い空気)を加熱し、そして熱がハウジングの内面に伝達され、さらにハウジング壁の径方向に沿ってハウジングの外面に伝達されて空気が加熱される。熱力学第一法則に従って、ハウジング外面の温度がハウジング内面よりも低く伝熱媒体(封入されたガス)よりも低く/内壁界面の温度が伝熱媒体/ヒータ線表面の界面よりも低い。伝熱速度が低下し、電気エネルギー利用率が低下するなどの欠点がある。この問題を解決するため、電熱材料をパッケージハウジングの内面に塗布することにより、熱伝達における熱交換を減らし、伝熱効率および電気エネルギー利用率を向上させることができる。
【0004】
しかしながら、現在の電気加熱材料は、主に金属/合金(電熱線)材料または炭素材料であり、熱膨張係数が主流のパッケージハウジング材料(セラミック、石英、高ホウ素耐熱ガラス)よりもはるかに大きい。複数回昇温したり、降温したりしたあと、特に高温の使用場面で、比較的大きい熱膨張係数の差に起因した材料応力の変化により、加熱材料がハウジングの内面から脱落しやすく、加熱機器の使用寿命が短くなる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、電気赤外線加熱膜を提供する。前記電気赤外線加熱膜は、重量部で、主に、10~15部の低欠陥グラフェンと、5~20部の無機充填剤と、5~10部の無定形炭素とを含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記低欠陥グラフェンのラマンスペクトルにおいて、Dピーク強度とGピーク強度との比が1/10以下であり、低欠陥グラフェンにおける炭素と酸素とのモル比が20:1以上である。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記低欠陥グラフェンのラマンスペクトルにおいて2Dピークを有し、前記2DピークとGピークとの間隔が、天然鱗片状黒鉛の2DピークとGピークとの間隔に対して、5cm-1以上減少する。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記無機充填剤は、電気赤外加熱膜の仕事温度範囲内においてまたは0~600℃の範囲内において熱膨張係数が5×10-7/K以下である。
いくつかの実施形態において、前記無機充填剤の粒度D50が前記低欠陥グラフェンの粒度D50より小さい。
いくつかの実施形態において、前記無機充填剤の粒度D50が前記低欠陥グラフェンの粒度D50の1/150よりも小さい。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記無機充填剤は、アルミナセラミック粉末、ジルコニアセラミック粉末、酸化ケイ素粉体、マイカ粉末、炭化ケイ素粉末の充填材の任意の1種または任意の組み合わせであり、前記無機充填剤の粒度D50が100nm以下である。
いくつかの実施形態において、前記電気赤外線加熱膜の厚さは、100μm以下である。
いくつかの実施形態において、前記電気赤外線加熱膜の厚さは、10~30μmである。
【0010】
いくつかの実施形態において、主に低欠陥グラフェン、無機充填剤、成膜剤および溶剤を含むスラリーを塗布し、成膜し、溶剤を揮発させたあと炭化処理を施し、前記電気赤外線加熱膜を得るステップを含み、前記成膜剤が有機ポリマーである。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記有機ポリマーは、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート系ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂の1種または任意の組み合わせである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記スラリーは、グラフェン分散剤をさらに含み、前記グラフェン分散剤は、スラリー分散剤と薄膜分散剤とを含み、前記スラリー分散剤は、ジフェニルエーテル、C12-C16アルキルベンゼンスルホネート、エチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、二塩基酸エステル、C12-C16アルキルジフェニルエーテルモノスルホン酸塩、C12-C16アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、C12-C16アルキルスルホナート、p-C12-C16アルキルベンゼンスルホネートから選択される1種または任意の組み合わせであり、前記薄膜分散剤は、C12-C16アルキルジフェニルエーテルモノスルホン酸塩、C12-C16アルキルスルホナート、ポリデキストロースのアルキル化誘導体、プロピレンオキサイド、脂肪アルコールアルコキシレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選択される1種または任意の組み合わせである。
いくつかの実施形態において、前記炭化処理の温度が600~1200℃であり、炭化処理の時間が4時間以上である。
本開示は、電気赤外線加熱装置をさらに提供する。前記電気赤外線加熱装置は、
【0013】
電気赤外加熱素子と、上記のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜とを備え、前記電気赤外線加熱膜が、前記電気赤外加熱素子の内壁に設置され、前記電気赤外加熱素子の内部に密封される。
いくつかの実施形態において、前記電気赤外加熱素子は、ランプ型電気赤外加熱素子、管型電気赤外加熱素子または板型電気赤外加熱素子の1種を含む。
【0014】
本開示は、電気赤外線加熱装置をさらに提供する。前記電気赤外線加熱装置は、管体と、上記のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜と、2つの電極とを備え、前記電気赤外線加熱膜が前記管体の内壁に設置されるとともに前記管体の内部に密封され、2つの電極が、いずれも前記電気赤外線加熱装置と電気的に接続され、通電すると電気赤外線加熱膜を発熱させるように構成される。
いくつかの実施形態において、前記管体は、石英管、セラミック管またはガラス管である。
【0015】
本開示は、電気赤外線加熱装置をさらに提供する。電気赤外線加熱装置は、板型電気赤外加熱素子と、上記のいずれか1項に記載の電気赤外線加熱膜とを備え、前記板型電気赤外加熱素子が板体と電極とを含み、前記電気赤外線加熱膜が前記板体の内壁に設置され、前記電極が前記電気赤外線加熱装置と電気的に接続され、通電すると前記電気赤外線加熱膜を発熱させるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例13による電気赤外線加熱装置の模式的構成図である。
【
図2】実施例13、19、20による電気赤外線加熱装置の横断面の模式図である。
【
図3】実験例2において実施例および比較例のそれぞれによる電気赤外線加熱装置の、300℃まで昇温したときの昇温曲線を示すグラフである。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による電気赤外線加熱装置の模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態および実施例を利用して本発明を説明するが、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態および実施例の目的を説明するためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0018】
本明細書に使用される用語の「欠陥グラフェン」は、グラフェンの調製過程において原料の各種の欠陥が導入されたり、残されたりしたことを意味する。グラフェンにおける欠陥は、三種に分類される。第1種の欠陥として、グラフェンのsp2混成する炭素原子の置換位置における炭素原子の欠損、すなわち炭素空孔が存在し、並びに炭素原子の格子間の空隙にある炭素原子、すなわち格子間炭素が存在する。第2種の欠陥は「真性欠陥」であり、この欠陥が非sp2軌道混成の炭素原子によるものであり、これらの炭素原子の軌道混成の方式の変化は、それ自体の位置する炭素六員環、または周囲の炭素六員環における炭素原子の不足または過剰によるものである。代表的に、真性欠陥が、グラフェン片径に限界があり、縁部に非結合電子を有し、グラフェンにおける非sp2軌道混成の炭素原子によるものである。第3種の欠陥は、不純物欠陥であり、「不純欠陥」とも呼ばれ、炭素以外の他の元素が置換位置で結合を形成し、格子間位置で結合を形成し、または炭素原子と(001)面で結合を形成する不純物によるものであり、これらの欠陥が、グラフェン炭素原子と共有結合を形成する非炭素原子によるものである。例えば、化学方法による酸化黒鉛還元法において、調製過程において酸化グラフェンに大量の含酸素官能基が導入されるため、sp2炭素格子構造がひどく破壊され、これによって調製されたグラフェンに、炭素sp2格子無秩序化欠陥が大量ある(代表的に、ラマンスペクトルに2Dピークを有しない)。本明細書において、「低欠陥グラフェン」は、通常、第1種の欠陥および第3種の欠陥(不純物欠陥)がほとんどないグラフェン材料、または第1種の欠陥および第3種の欠陥が比較的低いグラフェン材料を指す。代表的に、グラフェン材料は、その欠陥が主に第2種の欠陥(真性欠陥)であるグラフェン材料であり、第1種の欠陥および第3種の欠陥がほとんどなくまたは比較的低い。代表的に、「低欠陥グラフェン」の真性欠陥は、主にグラフェンシート層エッジの炭素原子によるものである。代表的に、「低欠陥グラフェン」は、一般的に、sp2炭素を主とする結晶構造を有し、炭素と酸素の比が高い特性を有する。代表的に、低欠陥グラフェンのラマンスペクトルにおいて、Dピーク強度とGピーク強度との比(Dピーク強度/Gピーク強度)が1/10以下である。代表的に、低欠陥グラフェンにおいて炭素原子と非炭素原子(例えば、N、Oなどのヘテロ原子)とのモル比(炭素原子/非炭素原子)が20:1以上である。例えば、低欠陥グラフェンにおいて炭素と酸素とのモル比(炭素/酸素)が20:1以上である。例えば、低欠陥グラフェンは、物理的膨張法により調製されるグラフェンであり得る。
本明細書に使用される用語の「無定形炭素」は、結晶化度が極めて低く、非晶質状態(すなわち、炭素原子配置が長距離規則性を持たず、ガラス状の凝集状態とも呼ばれる)の炭素材料であり、例えばカーボンブラックであり、炭素の同素体のうちの1種である。
【0019】
本明細書に使用される用語の「天然鱗片状黒鉛」は、天然顕晶質黒鉛であり、形状が鱗状に似ており、六方晶系に属し、層状構造を呈する。通常、天然鱗片状黒鉛は、耐高温性、導電性、熱伝導性、潤滑性、可塑性、耐酸性、耐アルカリ性などが良好である。
本明細書に使用される用語の「Dピーク」がC原子結晶のラマン特徴的なピークに属し、D-ピークがC原子結晶の欠陥を表す。
本明細書に使用される用語の「Gピーク」がC原子結晶のラマン特徴的なピークに属し、G-ピークがC原子sp2混成の面内伸縮振動を表す。
【0020】
本明細書に使用される用語の「2Dピーク」がG* ピークとも呼ばれ、二フォノンによる二重共鳴ラマン散乱によるものであり、「2Dピーク」が現れる基本的な条件として、長距離秩序あるsp2炭素結合によって形成される六角網面の結晶構造特徴を有することである。
本開示は、加熱機器の使用寿命を顕著に延ばすことができる、パッケージハウジング材料と熱膨張係数の差異が比較的小さい電気赤外線加熱膜を提供する。
本開示は、上記の電気赤外線加熱膜の調製方法と、上記の電気赤外線加熱膜を使用する電気赤外線加熱装置をさらに提供する。
本開示の一実施形態は、電気赤外線加熱膜を提供する。該電気赤外線加熱膜は、下記の技術案を採用する。
【0021】
電気赤外線加熱膜は、重量部で、主に、10~15部の低欠陥グラフェンと、5~20部の無機充填剤と、5~10部の無定形炭素とを含む。いくつかの実施形態において、電気赤外線加熱膜は、重量部で、主に下記の成分を含む。低欠陥グラフェンは、例えば10部、10.5部、11部、11.5部、12部、12.5部、13部、13.5部、14部、14.5部、15部であり、無機充填剤は、例えば5部、6部、7部、8部、9部、10部、11部、12部、13部、14部、15部、16部、17部、18部、19部、20部であり、無定形炭素は、例えば5部、5.5部、6部、6.5部、7部、7.5部、8部、8.5部、9部、9.5部、10部である。
【0022】
本開示に係る電気赤外線加熱膜は、低欠陥グラフェンを採用することにより、電気赤外線加熱膜が通電するときに300℃以上(300℃を含み)まで速く昇温できるとともに電気赤外線加熱膜の膨張係数を抑えることができ、そして、無機充填剤が低欠陥グラフェンに対してより小さい膨張係数を有し、電気赤外線加熱膜の体積膨張係数を抑え、速く昇温するときに生じた熱応力を低減することができ、無定形炭素が弾性を有するので低欠陥グラフェンおよび無機充填剤の体積膨張を緩衝することができ、電気赤外線加熱膜の体積膨張をさらに低減することができ、これによって、電気赤外線加熱膜と、セラミック、石英、高ホウ素耐熱ガラスなどの基材との体積膨張係数の差を小さくし、これらの材料の表面からの電気赤外線加熱膜の脱落を防止し、電気赤外線加熱膜を採用する電気赤外線加熱装置の使用寿命を延ばすことができる。
【0023】
また、本開示に係る電気赤外線加熱膜における無機充填剤の低熱膨張特性によれば、発熱過程における膜の完全性を向上させることができ、そして、低欠陥グラフェンが電気赤外線加熱膜の熱伝導率を向上させることができ、したがって、電気赤外線加熱膜と基材との熱交換効率を向上させることができ、そして、低欠陥グラフェンの特有の半導体電子構造は電子緩和により波長が赤外-遠赤外領域にある光子を放出して対象物体を輻射加熱する能力を有し、低欠陥グラフェンにおける炭素原子のpz軌道とsp2-σ軌道とが高度に結合するため、他の導電材料と比べて低欠陥グラフェンが良好な耐高温能力、高温下での良好な構造的安定性を提供することができ、電気赤外線加熱膜を使用するデバイスの安全性を向上させ、使用寿命を延ばすことができる。従来の高温電気加熱材料に比べて、本開示に係る電気赤外線加熱膜は、熱膨張係数が小さく、熱伝導が速いなどのメリットを有する。
【0024】
本開示電気赤外線加熱膜は、石英管と熱膨張係数がよく合い、50℃/sの昇温速度で、800℃の温度で石英との熱体積膨張の差による応力が電気赤外線加熱膜の剥離強度より小さく、これによって、電気赤外線加熱膜の発熱温度上限が大幅に高まる。
本開示に係る電気赤外加熱膜には欠陥グラフェン、無定形炭素および無機充填剤外のほか、ある程度の不純物成分がさらに含まれ得る。
【0025】
電気赤外線加熱膜の熱伝導性能をさらに向上させるため、前記低欠陥グラフェンのラマンスペクトルにおいて、Dピーク強度とGピーク強度との比が1/10以下である。例えば、Dピーク強度とGピーク強度との比が1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/60または1/70である。一般的に、ラマンスペクトルにおけるDピーク強度とGピーク強度との比によりグラフェンの欠陥密度を表す。本開示において、低欠陥グラフェンの欠陥密度を低下させることにより低欠陥グラフェン熱交換膜の熱伝導性能をさらに向上させることができる。前記低欠陥グラフェンにおける酸素と炭素とのモル比が1/20以下である(すなわち、低欠陥グラフェンにおける炭素と酸素とのモル比が20:1以上である)。例えば、低欠陥グラフェンにおける酸素と炭素とのモル比が、1/20、1/30、1/40、1/50、1/60または1/70である。本開示において、低欠陥グラフェンにおける酸素と炭素とのモル比を上記の範囲に収めることにより、材料の良好な熱伝導性および導電性を確保し、高温下で主要な導電材料としてのグラフェンの原子再配列に起因したパワーおよび熱交換性能の変化を防止することができる。本開示において、使用する低欠陥グラフェンの欠陥濃度を下げることにより、赤外加熱膜は、厚さが30μm未満であるとき、熱伝導係数が200W/(K・m)超である。低欠陥グラフェンの安定性および熱伝導率などの熱力学的特性をさらに確保するため、いくつかの代表的な実施形態において、前記低欠陥グラフェンのラマンスペクトルにおいて2Dピークを有し、前記低欠陥グラフェンの2DピークとGピークとの間隔が、天然鱗片状黒鉛の2DピークとGピークとの間隔に対して、5cm-1以上減少し、例えば5cm-1、8cm-1、10cm-1、12cm-1、14cm-1、16cm-1減少する。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記低欠陥グラフェンの粒度D50は、10~20μmであり、例えば、10~15μm、15~20μmまたは12~18μmであり、例えば、10μm、12μm、14μm、16μm、18μm、20μmである。
【0027】
本開示に使用する無機充填剤は、電気赤外加熱膜の仕事温度範囲内で化学安定性および構造的安定性が良好である。いくつかの代表的な実施形態において、前記無機充填剤は、電気赤外加熱膜の仕事温度範囲内の熱膨張係数が5×10-7/K以下(5×10-7/Kを含み)である。
【0028】
コスト、スラリー分散性、電気赤外線加熱膜の構造的安定性の面から総合に考慮すると、前記無機充填剤は、アルミナセラミック粉末、ジルコニアセラミック粉末、酸化ケイ素粉体(すなわち、二酸化ケイ素粉体)、マイカ粉末、炭化ケイ素粉末の充填材の任意の1種または任意の組み合わせである。上記列挙された無機充填剤は、0~600℃での熱膨張係数が5×10-7/K以下(5×10-7/Kを含み)である。
【0029】
いくつかの代表的な実施形態において、前記無機充填剤の粒度D50が低欠陥グラフェンの粒度D50より小さく、いくつかの代表的な実施形態において、無機充填剤の粒度D50が低欠陥グラフェンの粒度D50の1/150よりも小さい。
【0030】
電気赤外線加熱膜の膨張係数をさらに小さくするため、いくつかの代表的な実施形態において、前記無機充填剤の粒度D50が100nm以下である。いくつかの実施形態において、前記無機充填剤の粒度D50が20nm以上である。二次元的構造材料としてのグラフェン片の径が無機充填剤の粒径よりはるかに大きいため、成膜後に無機充填剤と無定形炭素とによりグラフェン片間の隙間を充填しており、高温下でグラフェンの振動に起因する薄膜の応力全体の上がりを抑制し、これによって高温下でのグラフェン複合薄膜の完全性を保つ。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記無定形炭素は、一部または全部が有機ポリマーの炭化により形成される。いくつかの実施形態において、前記有機ポリマーは、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート系ポリマー、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリルおよびその改質された誘導体、フェノール樹脂の1種または任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレンの1種または任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。前記ポリアクリレート系ポリマーは、例えばポリメチルメタアクリレートであり得る。
【0032】
本開示に係る電気赤外線加熱膜の厚さは、応用場面に応じて自由に設定することができ、例えば、100μm以下である。いくつかの実施形態において、前記電気赤外線加熱膜の厚さは、10~30μmである。厚さが10~30μmである電気赤外線加熱膜は、急速加熱機器などの、製品を加熱するときの熱交換効率を要求する場面に使用される場合、より厚い電気赤外線加熱膜に比べて使用上の優勢がある。
本開示の一実施形態は、電気赤外線加熱膜の調製方法を提供する。該方法は、下記の技術案を採用する。
【0033】
上記の電気赤外線加熱膜の調製方法は、主に低欠陥グラフェン、無機充填剤、有機ポリマーである成膜剤、グラフェン分散剤および溶剤を含む製膜スラリーを塗布し、成膜し、溶剤を揮発させたあと炭化処理を施し、電気赤外線加熱膜を得る。
【0034】
本開示に係る電気赤外線加熱膜の調製方法は、成膜スラリーを塗布したあと溶剤を揮発させる方式により塗布薄膜を成形(固化)させ、そして薄膜全体に対して保護雰囲気下で焼成して薄膜内の成膜剤が炭化して無定形炭素として形成することを促進し、電気赤外加熱膜を形成する。該方法によれば、容易に電気赤外線加熱膜の均一性を制御でき、薄膜内の応力、および薄膜と基材との間の応力を解放して材料寿命を延ばし、電気赤外線加熱膜の熱交換効率を向上させ、一連の異なる高温加熱製品に適し、生産コストを抑えることができる。
【0035】
いくつかの代表的な実施形態において、前記無機充填剤と前記低欠陥グラフェンとの質量比は、5~20:10~15であり、例えば、5~15:10~15、10~20:11~15または15~20:11~14である。
【0036】
前記有機ポリマーは、炭化処理により無定形炭素として形成可能なポリマーであり、例えば、樹脂である。上記の製膜スラリーの成膜性能を向上させ、生産コストを抑えるため、いくつかの実施形態において、前記有機ポリマー成膜剤は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート系ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアクリロニトリルおよびその改質された誘導体、フェノール樹脂の1種または任意の組み合わせである。上記列挙された有機ポリマーは、いずれも高温炭化に使用可能である市販の一般的な高分子樹脂であり、成膜性能が優れる。いくつかの実施形態において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレンの1種または任意の組み合わせである。前記ポリアクリレート系ポリマーは、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリル酸エチルの1種または任意の組み合わせである。
【0037】
いくつかの代表的な実施形態において、前記成膜剤と低欠陥グラフェンとの質量比は、2.6~9.8:4.9~10.4であり、例えば、3.0~9.8:5.0~10.4、2.6~8.0:5.0~9.0または3.5~8.5:5.5~7.5である。
【0038】
上記の製膜スラリーの低温固化成膜の過程において低欠陥グラフェン成分が良好に分散し、成膜したあと低欠陥グラフェンおよび成膜剤が均一に分布できるように、グラフェン分散剤として、系におけるグラフェンの分散を促進可能な分散剤であればよい。上記の製膜スラリーにおける低欠陥グラフェンの分散性能を向上させ、スラリーが塗布されたあとの材料の均一性を保証するため、前記グラフェン分散剤は、スラリー分散剤を含み得る。前記スラリー分散剤は、例えば、ジフェニルエーテル、C12-C16アルキルベンゼンスルホネート、エチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、二塩基酸エステル、C12-C16アルキルジフェニルエーテルモノスルホン酸塩、C12-C16アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、C12-C16アルキルスルホナート、p-C12-C16アルキルベンゼンスルホネートから選択される任意の1種または複数種の組み合わせである。いくつかの代表的な実施形態において、前記ポリエチレングリコールの分子量(Mw)は、400未満である。上記列挙されたスラリー分散剤は、いずれも市販の一般的な化合物であり、溶剤の揮発過程において効果的に揮発され、または成形された薄膜内の残留が極めて少なくて炭化のときに完全に揮発できるものである。低欠陥グラフェンが、如何なる中性溶剤にも不溶であり、ほとんどの溶剤との溶媒和の程度が低く、低欠陥グラフェン粉体が製膜スラリーにおいて十分に均一に分散できることを保証できるように、いくつかの実施形態において、スラリー分散剤と前記低欠陥グラフェンとの質量比は、1.1:1以上であり、例えば、1.1~2.1:1である。
【0039】
薄膜成形において低欠陥グラフェンの分散(浸潤)の安定性を向上させるため、前記分散剤は、薄膜分散剤を含む。いくつかの代表的な実施形態において、前記薄膜分散剤は、C12-C16アルキルジフェニルエーテルモノスルホン酸塩、C12-C16アルキルスルホナート、ポリデキストロースのアルキル化誘導体、プロピレンオキサイド、脂肪アルコールアルコキシレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンの1種または任意の組み合わせである。大量の極性官能基を有する薄膜分散剤は炭化過程においてガスが放出され、電気赤外線加熱膜の完全性および緻密性を損なう虞れがある。いくつかの代表的な実施形態において、製膜スラリーにおいて前記薄膜分散剤の質量の割合は1%以下である。炭化後の薄膜分散剤の質量の割合は、炭化後の成膜剤の質量の割合に対して無視できるほど小さい。上記列挙された有機ポリマーは、いずれも市販の一般的な分散剤である。
【0040】
いくつかの代表的な実施形態において、前記C12-C16アルキルジフェニルエーテルモノスルホン酸塩は、例えば、ヘキサデカンジフェニルエーテルモノスルホン酸ナトリウムである。前記C12-C16アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩は、例えば、ヘキサデカンジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムである。前記p-C12-C16アルキルベンゼンスルホネートは、例えば、p-トルエンスルホン酸プロピルである。前記C12-C16アルキルスルホナートは、例えば、ヘキサデカンスルホン酸ナトリウムである。
【0041】
導電層の加工性をさらに最適化するため、前記スラリーは、添加剤をさらに含む。前記添加剤は、レベリング剤、増粘剤、チクソ剤、導電剤の任意の1種または複数種の組み合わせである。前記添加剤の添加量と低欠陥グラフェンとの質量比は、1:20以下である。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記製膜スラリーは、粘度が3000Pa・s超であり、固形分が10wt%超である。いくつかの実施形態において、前記製膜スラリーは、固形分が18.9~25.5%であり、例えば、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%であり、粘度が3800~7300Pa・sであり、例えば、4000~7300Pa・s、3800~7000Pa・sまたは4500~6500Pa・sであり、例えば、4000Pa・s、4500Pa・s、5000Pa・s、5500Pa・s、6000Pa・s、6500Pa・s、7000Pa・s、7200Pa・sである。
いくつかの実施形態において、前記製膜スラリーにおける低欠陥グラフェンの粒度D50は、10~20μmである。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記製膜スラリーの調製方法は、主に低欠陥グラフェン粉体材料と、無機充填剤と、スラリー分散剤と、一部の溶剤からなる混合材料に対してビーズミリング処理を施したあと、成膜剤、薄膜分散剤および残りの溶剤を入れ、均一に混合することにより、前記製膜スラリーを得る。ビーズミリング処理により、低欠陥グラフェンをより良好に分散させ、グラフェンシートの再積層を防止することができる。特に、使用する低欠陥グラフェンに欠陥および酸化官能基が欠いており、溶剤との極化作用が比較的劣り、低欠陥グラフェン原材料に対する破砕、混合材料に対するビーズミリング処理、分散剤の使用は、いずれもスラリーでの低欠陥グラフェンの均一な分散を促進するとともにグラフェンシートの再積層を防止し、低欠陥グラフェンが少ないシート層かつ完全の構造の形態で電気赤外線加熱膜に存在することを保証し、これによって、膜の赤外線輻射性能を向上させることができる。
【0044】
コストを抑え、分散効果を向上させるため、いくつかの実施形態において、前記溶剤は、メタノール、エタノール、n-ブタノール、プロピレングリコール、エチルアセテート、トルエン、キシレン、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、エポキシ反応性希釈剤、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルの1種または任意の組み合わせである。
【0045】
ビーズミリング分散の効果のバランスを取るため、いくつかの代表的な実施形態において、スラリーにおいて低欠陥グラフェンスラリーとスラリー分散剤との質量比は、8~15:1~5であり、例えば、10~15:1~5、11~15:1~4または12~15:1~3であり、例えば、2.9~9.5:1である。低欠陥グラフェンスラリーを調製するとき一部の溶剤を主溶剤として使用し、残りの溶剤を希釈溶剤として、調製できた低欠陥グラフェンスラリー内に入れる。いくつかの代表的な実施形態において、前記主溶剤は、N-メチルピロリドン、エチルアセテートから選択される1種または任意の組み合わせである。前記希釈溶剤はN-メチルピロリドンである。希釈溶剤と主溶剤との質量比は、39~54.8:11.4~22.1であり、例えば、40~54:11.5~22.0、39~54:12~20または40~52:15~20である。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記炭化処理の温度が600~1200℃であり、炭化処理の時間が4時間以上である。いくつかの実施形態において、炭化処理の前、まず400℃まで昇温して1時間保温し、そして炭化処理の温度まで昇温して炭化処理を施す。前記昇温の速度は、5℃/minである。炭化処理を施したあと、まず炭化処理の温度から500℃まで降温して1時間保温し、そしてさらに降温する。前記炭化処理は、保護雰囲気下で施される。
【0047】
本開示の一実施形態は、電気赤外線加熱装置を提供する。該装置は、電気赤外加熱素子と、上記の任意の1種の電気赤外線加熱膜とを備え、前記電気赤外線加熱膜が、前記電気赤外加熱素子の内壁に設置され、前記電気赤外加熱素子の内部に密封される。
いくつかの実施形態において、電気赤外加熱素子は、ランプ型電気赤外加熱素子、管型電気赤外加熱素子または板型電気赤外加熱素子のうちの1種を含む。
いくつかの実施形態において、電気赤外加熱素子は、管型電気赤外加熱素子である。いくつかの実施形態において、管型電気赤外加熱素子は、管体を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、電気赤外線加熱装置は、管型電気赤外加熱素子と、上記の任意の1種の電気赤外線加熱膜とを備え、管型電気赤外加熱素子が管体と電極とを含み、電気赤外線加熱膜が管体の内壁に設置され、電極が電気赤外線加熱装置と電気的に接続され、通電すると電気赤外線加熱膜を発熱させるように構成される。
本開示の一実施形態は、電気赤外線加熱装置を提供する。該装置は、下記の技術案を採用する。
【0049】
電気赤外線加熱装置は、管体と、上記の任意の1種の電気赤外線加熱膜と、2つの電極とを備え、前記電気赤外線加熱膜が前記管体の内壁に設置されるとともに前記管体の内部に密封され、2つの電極が、いずれも前記電気赤外線加熱装置と電気的に接続され、通電すると電気赤外線加熱膜を発熱させるように構成される。
【0050】
本開示に係る電気赤外線加熱装置は、膨張率の比較的小さい上記の電気赤外線加熱膜を使用することにより、電気赤外線加熱膜と基体とが通電するときに膨張率がよく合い、基体からの電気赤外線加熱膜の脱落を防止でき、使用寿命が比較的長い。
【0051】
本開示に係る電気赤外線加熱装置は、本開示に係る電気赤外線加熱膜を管体(または電気赤外加熱素子)の内壁に設置することにより高温(>300℃)まで急速に昇温することを実現でき、そして、電気赤外線加熱膜は、その主な成分が低欠陥グラフェン、無機充填剤および無定形炭素であり、これによって、繰り返して昇温したリ降温したりする仕事状態および高温の仕事状態での電気赤外線加熱装置の仕事性能および構造的安定性を確保することができる。電気赤外線加熱膜は低欠陥グラフェンのシート構造の特徴を十分に保っているため、電気赤外線加熱装置は、赤外線輻射率が高く、熱伝導が高いという低欠陥グラフェン材料の固有の利点を十分に発揮することができる。
【0052】
電気赤外線加熱膜の使用寿命をさらに延ばすため、管体(または電気赤外加熱素子)内部が真空排気されまたは不活性ガスが導入される。管型(または電気赤外加熱素子)の基体内部を真空排気しまたは管型の基体内に不活性ガスを導入することにより、低欠陥グラフェンおよび無定形炭素の高温下での酸化を防止することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、管体は、石英管、セラミック管、ガラス管のうちの1種であり、例えば、石英管である。いくつかの実施形態において、石英管を管体として選択し、本開示に係る電気赤外線加熱膜と石英との膨張係数の差異が比較的小さいため、石英管を基体として使用すれば電気赤外線加熱装置の使用寿命をさらに延ばすことができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記管体の内径は、8~13mmであり、例えば、8mm、8.5mm、9mm、9.5mm、10mm、10.5mm、11mm、12mm、13mmである。前記管体の壁の肉厚は、0.1~2mmであり、例えば、0.2mm、0.5mm、0.7mm、1mm、1.5mm、1.8mm、2mmである。
【0055】
いくつかの実施形態において、電気赤外加熱素子は、板型電気赤外加熱素子である。いくつかの実施形態において、板型電気赤外加熱素子は、セラミック板型電気赤外加熱素子、マイカ板型電気赤外加熱素子、石英板型電気赤外加熱素子およびセラミックマスク付き金属板型電気赤外加熱素子を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、電気赤外線加熱装置は、板型電気赤外加熱素子と、上記の任意の1種の電気赤外線加熱膜とを備え、板型電気赤外加熱素子が板体と電極とを含み、電気赤外線加熱膜が板体の内壁に設置され、電極が電気赤外線加熱装置と電気的に接続され、通電すると電気赤外線加熱膜を発熱させるように構成される。いくつかの実施形態において、板体は、第1ベース板と第2ベース板とを含む。いくつかの実施形態において、第1ベース板と第2ベース板とは、例えば、熱圧着などの方式で合着して密封体を形成するように構成され、電気赤外線加熱膜は、第1ベース板および第2ベースの合着側の第1ベース板、または第2ベース板、または第1ベース板と第2ベース板との両方に位置する。いくつかの実施形態において、板体の材質は、石英、ホウケイ酸塩、マイカ、絶縁セラミック層を有する炭素鋼板、絶縁セラミック層を有するアルミニウム合金板を含む。
【0057】
本開示に係る電気赤外線加熱装置の製造方法は、主に低欠陥グラフェン、無機充填剤、成膜剤および溶剤を含むスラリーを管体の内壁に塗布して成膜し、溶剤を揮発させたあと炭化処理を施し、降温し、そして電極を取り付けて管体を密封するステップを含む。
本開示に使用する低欠陥グラフェンは、購入してもよく、公開番号がCN108622887Aである中国出願に開示された方法で調製してもよい。
以下、具体的な実施形態を参照しながら、本開示の技術案をさらに説明する。
実施例
一.本開示に係る電気赤外線加熱膜の実施例
【0058】
実施例1
本実施例による電気赤外線加熱膜は、重量部で、5部の無定形炭素と、10部の低欠陥グラフェンと、10部の無機充填剤とからなっている。無機充填剤は、ナノシリカであり、粒度D50が20nmであった。低欠陥グラフェンは、粒度D50が15μmであり、低欠陥黒鉛のラマンスペクトルにおいて2Dピークを有し、2DピークとGピークとの間隔が、天然鱗片状黒鉛の2DピークとGピークとの間隔に対して、5cm-1以上(5cm-1を含み)減少し、Dピーク強度とGピーク強度との比が1/20であり、低欠陥グラフェンにおける炭素と酸素とのモル比が30:1であった。電気赤外線加熱膜の厚さが15μmであった。
【0059】
実施例2~6
実施例2~6のそれぞれによる電気赤外線加熱膜は、いずれも無定形炭素と、低欠陥グラフェンと、無機充填剤とからなっている。各実施例による低欠陥グラフェンのラマンスペクトルにおいて2Dピークを有し、2DピークとGピークとの間隔が、天然鱗片状黒鉛の2DピークとGピークとの間隔に対して、5cm-1以上(5cm-1を含み)減少し、Dピーク強度とGピーク強度との比が1/20であり、低欠陥グラフェンにおける炭素と酸素とのモル比が30:1であった。各実施例のそれぞれによる電気赤外線加熱膜における無定形炭素、低欠陥グラフェンおよび無機充填剤のそれぞれの重量部、低欠陥グラフェンの粒度、無機充填剤の種類および粒度D50、電気赤外線加熱膜の厚さは、表1に示されている。
【0060】
【0061】
実施例7~12のそれぞれに使用した低欠陥グラフェン原材料は、鄭州新材料科技有限公司から入手され(CP1002低欠陥グラフェン微細粉体シリーズ製品)、物理的膨張法により調製されたグラフェンであった。該低欠陥グラフェン原材料に対してラマンスペクトル検出を行えば、低欠陥グラフェンのラマンスペクトルにおいて2Dピークを有し、2DピークとGピークとの間隔が、天然鱗片状黒鉛の2DピークとGピークとの間隔に対して、5cm-1以上(5cm-1を含み)減少し、Dピーク強度とGピーク強度との比が1/20であり、炭素と酸素とのモル比が30:1であった。
二.本開示に係る電気赤外線加熱膜の調製方法の実施例
【0062】
実施例7
本実施例による電気赤外線加熱膜の調製方法は、実施例1による電気赤外線加熱膜の調製方法(成分配合比、規格およびパラメータ)を例とし、下記のステップを含んだ。
(1)低欠陥グラフェン原材料に対して気流粉砕処理を施し、低欠陥グラフェン粉体材料を得た。
(2)製膜スラリーを調製した。
【0063】
スラリー分散剤と主溶剤とを均一に混合して複合ベース液を得、そして複合ベース液内に主炭素材と無機充填剤とを入れ、主炭素材と無機充填剤とが複合ベース液内に均一に分散するまで撹拌し、20℃の温度で、0.3mmのジルコニウムボールを研磨媒体として使用し、15m/sの線速度でビーズミリング処理を施し、低欠陥グラフェン分散液を得、そして低欠陥グラフェン分散液に成膜剤、希釈溶剤および薄膜分散剤を入れ、そして40℃の温度で500rpmの速度で2時間撹拌し、製膜スラリーを得た。
【0064】
使用したスラリー分散剤は、エチレンオキサイドと二塩基酸エステル(DBE)との組み合わせであり、エチレンオキサイドとDBEとの質量比が1:2であり、主溶剤はN-メチルピロリドン(NMP)であり、無機充填剤はナノシリカであり、成膜剤はポリアクリロニトリル(PAN)であり、希釈溶剤はN-メチルピロリドンであり、薄膜分散剤はポリビニルピロリドン(PVP K30)であった。
【0065】
使用した主炭素材は低欠陥グラフェンであり、低欠陥グラフェン分散液において、低欠陥グラフェンの粒度D50が15μmであり、無機充填剤の粒度D50が20nmであった。
【0066】
使用したスラリー分散剤が製膜スラリーの質量の15%を占め、使用した主溶剤が製膜スラリーの質量の44.1%を占め、使用した低欠陥グラフェン粉体材料および無機充填剤がいずれも製膜スラリーの質量の7.4%を占め、使用した成膜剤が製膜スラリーの質量の3.7%を占め、使用した薄膜分散剤が製膜スラリーの質量の0.7%を占め、使用した希釈溶剤が製膜スラリーの質量の29.1%を占め、得た製膜スラリーは、固形分が19.1wt%であり、粘度が6000Pa・sであった。
【0067】
(3)製膜スラリーを内径8mmの石英管内に注ぎ、50℃の温度環境でスラリーを石英管内で繰り返して反転させ、そして、石英管の両端のそれぞれからスラリーを出すときに両端のいずれも1min内にスラリーの流出がなくなるまでスラリーを石英管の両端から出した(石英管を逆さにしたり傾けたりするようにスラリーを出す)。
【0068】
(4)ステップ(3)における、スラリーを出した石英管を90℃にした送風オーブンに入れ、4rpmの速度で石英管を一方向に沿って同軸に30min回転させ、管の内壁のスラリーが固化した。
(5)固化後の石英管を200℃にした送風オーブンに入れて30min乾燥させ、厚さが20μmである均一な管内壁塗布層を得た。
【0069】
(6)石英管をチューブ炉に入れて、流速0.25L/minでアルゴンガスを導入し、5℃/minの昇温速度で昇温し、400℃の温度で1時間保温してさらに800℃まで昇温して4時間保温し、そして500℃まで降温して1時間保温し、自然に降温し、これによって、石英管の内壁に厚さが15μmである電気赤外線加熱膜が形成された。
【0070】
実施例8~12
実施例8~12が実施例2~6による電気赤外線加熱膜の調製方法(成分配合比、規格およびパラメータ)にそれぞれ対応し、実施例8~12による電気赤外線加熱膜の調製方法が実施例7による電気赤外線加熱膜の調製方法を参照し、各実施例による製膜スラリーの成分が表2および表3に示されており、調製された製膜スラリーの固形分および粘度、使用した管体、管体の内径および壁厚、調製された電気赤外線加熱膜の厚さが表4に示されている。表2~4に示されていない内容は、実施例7による電気赤外線加熱膜の調製方法と同じであった。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
本開示に係る電気赤外線加熱膜の調製方法の他の実施例として、実施例9および実施例12による電気赤外線加熱膜の調製方法における石英管の代わりにセラミック管を使用し、実施例11による調製方法における石英管の代わりにガラス管を使用するようにしてもよい。
三.本開示に係る電気赤外線加熱装置の実施例
【0075】
実施例13
実施例13による電気赤外線加熱装置は、
図1~
図2に示されており、石英管1と、電気赤外線加熱膜2と、2つの引出電極3と、2つの密封ヘッド4とを備え、電気赤外線加熱膜2が、実施例7による調製方法で調製された電気赤外線加熱膜を石英管1の内壁に塗布してなしたものであり、2つの引出電極3が、それぞれ石英管1の両端から石英管1内に嵌め合うように設置されるとともに石英管1の両端でそれぞれ電気赤外線加熱膜2と電気的に接続され、2つの密封ヘッド4が石英管1の両端にそれぞれ位置するとともに石英管1を密封し、2つの引出電極3および電気赤外線加熱膜2が石英管1の密封空間内に位置し、2つの密封ヘッド4のそれぞれに、対応する端の引出電極と電気的に接続するリード線を通すための線通し孔が設けられている。
【0076】
実施例14
本実施例による電気赤外線加熱装置は、石英管内壁の電気赤外線加熱膜が実施例8による調製方法で調製された電気赤外線加熱膜であったことだけにおいて実施例13による電気赤外線加熱装置と相違している。
【0077】
実施例15
本実施例による電気赤外線加熱装置は、石英管内壁の電気赤外線加熱膜が実施例9による調製方法で調製された電気赤外線加熱膜であったことだけにおいて実施例13による電気赤外線加熱装置と相違している。
【0078】
実施例16
本実施例による電気赤外線加熱装置は、石英管内壁の電気赤外線加熱膜が実施例10による調製方法で調製された電気赤外線加熱膜であったことだけにおいて実施例13による電気赤外線加熱装置と相違している。
【0079】
実施例17
本実施例による電気赤外線加熱装置は、石英管内壁の電気赤外線加熱膜が実施例11による調製方法で調製された電気赤外線加熱膜であったことだけにおいて実施例13による電気赤外線加熱装置と相違している。
【0080】
実施例18
本実施例による電気赤外線加熱装置は、石英管内壁の電気赤外線加熱膜が実施例12による調製方法で調製された電気赤外線加熱膜であったことだけにおいて実施例13による電気赤外線加熱装置と相違している。
【0081】
実施例13~18のそれぞれによる電気赤外線加熱装置は、その採用した電気赤外線加熱膜の調製方法により石英管内に電気赤外線加熱膜を形成したあと、リード線を引出電極に溶接し、そして石英管の両端の電気赤外線加熱膜に銀ナノペーストを塗布し、2つの引出電極を石英管の両端のそれぞれにより石英管内に配置し、電気赤外線加熱膜の、銀ナノペーストが塗布された位置で電気赤外線加熱膜と貼り合わせるように固定し、高純度アルゴンガス環境で石英管の両端のそれぞれに密封ヘッドを取り付け、リード線を対応する端の密封ヘッドに設けられた線通し孔から引き出したあと、耐熱密封接着剤によりリード線と線通し孔との間の隙間、密封ヘッドと石英管との間の隙間を密封した。
【0082】
実施例19
本実施例による電気赤外線加熱装置は、実施例13の電気赤外装置における石英管の代わりにセラミック管を使用し、高温ガラス管の1つの端だけの密封ヘッドに線通し孔が設けられており、線通し孔の数が2つであり、線通し孔が、2つの引出電極と電気的に接続されるリード線のそれぞれを通すためのものであった。
【0083】
実施例20
本実施例による電気赤外線加熱装置は、実施例18の電気赤外線加熱装置における石英管の代わりに高温ガラス管を使用し、密封ヘッドの代わりにホットラミネートを利用しただけであり、ここで説明を省略する。
【0084】
実施例21
本実施例による電気赤外線加熱装置は、
図4に示すように、板体5と、電気赤外線加熱膜2と、凹字形金属電極6とを備え、板体5は第1ベース板51と第2ベース板52とを含み、第1ベース板51と第2ベース板52とは材質が同じであり、いずれも石英材質であった。電気赤外線加熱膜2は、実施例7のステップ(1)~(2)の調製方法で調製できた製膜スラリーを第2ベース板52の表面に塗布し、第2ベース板52が垂直にされるときに1min内にスラリーの流出がなくなるまで50℃の環境で静置して固定させ、そして電気赤外線加熱膜2が塗布された第2ベース板52を90℃にした送風オーブンに入れて30min維持し、該第2ベース板52の壁におけるスラリーが固化し、実施例7のステップ(5)~(6)に従って操作し、該第2ベース板52において厚さが25μmである電気赤外線加熱膜を形成した。
【0085】
2つの凹字形金属電極6を電気赤外線加熱膜2の両端にそれぞれ固定し、電気赤外線加熱膜2と接続させ、第1ベース板51と第2ベース板52との間に嵌め合うように設置し、線と接続するように、凹字形金属電極6の2つのアームが電極として板の外部に露出している。そして、電気赤外線加熱膜2が塗布された第2ベース板52の表面を第1ベース板51で覆い、熱圧着により封じる方式で密着させ、密封空間を形成した(圧着により封じることによる応力、ガス漏れ箇所を抑えるように、凹字形金属電極6を選択した)。
【0086】
実施例22
本実施例による電気赤外線加熱装置は、板体5がホウケイ酸塩材質であることだけにおいて実施例21と相違している。熱圧着により封じた。
【0087】
実施例23
本実施例による電気赤外線加熱装置は、板体5がマイカ材質であり、耐高温接着剤により封じたことだけにおいて実施例21と相違している。
【0088】
実施例24
本実施例による電気赤外線加熱装置は、板体5が、絶縁セラミック層を有する炭素鋼板であり、絶縁層がより内側に設置され、炭素鋼板材質の部分が外側に向いていることだけにおいて実施例21と相違している。耐高温接着剤により封じた。
【0089】
実施例25
本実施例による電気赤外線加熱装置は、板体5が、絶縁セラミック層を有するアルミニウム合金板であり、絶縁層がより内側に設置され、アルミニウム合金材質の部分が外側に向いていることだけにおいて実施例21と相違している。耐高温接着剤により封じた。
比較例に使用した酸化還元グラフェンは、HUMMER法により調製された酸化還元グラフェンであり、大量の欠陥を有する。
【0090】
比較例1~6
比較例1~6による電気赤外線加熱装置は、石英管における電気赤外線加熱膜が異なったことだけにおいて実施例13による電気赤外線加熱装置と相違している。
【0091】
比較例1~6のそれぞれによる石英管の内壁における電気赤外線加熱膜を調製したとき、実施例7による電気赤外線加熱膜の調製方法を参照した。比較例2~6において、石英管の内部に厚さ15μmの電気赤外線加熱膜が均一に塗布できるように、希釈溶剤の添加割合(固形分)を調製した。また、各比較例で調製された製膜スラリーにおける主炭素材、固形分、ビーズミリング処理の線速度、循環数、調製できた電気赤外線加熱膜の厚さ、電気赤外線加熱膜における主炭素材と充填剤と無定形炭素との質量比が表5に示されており、示されていない内容が実施例7と同じであった。
【0092】
【0093】
実験例1
石英管に電気赤外線加熱膜を形成する過程において製膜スラリーの成膜性能に関して実施例13、16、18と、比較例1~6とを比較し、比較結果が表6に示されている。
【0094】
【0095】
表6から分かるように、本開示に係る電気赤外線加熱膜(実施例13、16、18を例とし)において低欠陥グラフェンを使用し、低欠陥グラフェンの溶媒和性能が低く、機械的混合することにより低欠陥グラフェンの電気赤外線加熱膜材料における固形分を高めることができる。
【0096】
比較例に使用した市販の酸化還元グラフェンの欠陥濃度が比較的高く、酸化還元法により調製されたグラフェンは、一般的に片径が比較的小さく、スラリー内において溶媒和の程度が高く、グラフェン分散液の成分および各成分の含有量が同じである場合、市販の酸化還元グラフェンを使用するとスラリーの稠度が顕著に上昇し流動性が顕著に下がり、ステップ(4)(実施例7のステップ(4))の方法および他の方式で管内での均一な塗布を実現することができなかった。片径が大きいグラフェン材料を使用した場合、酸化還元グラフェンエッジの濃度(密度)が下がり、溶媒和の程度が下がり、修復された酸化グラフェン材料の(110)面における欠陥が下がるため、溶媒和の程度をさらに下げることができ、したがって、スラリー固形分を著しく高めることができる。同様に、カーボンナノチューブおよびカーボンナノボールは、比表面積が比較的大きく、溶媒和の程度が高く、固形分を高めることができない。このため、比較例2~6において固形分を下げる方法でスラリーの調製を行った。しかしながら、スラリー固形分を下げることによりスラリーの流動性を向上させるやり方では、スラリーの粘度(稠度ではない)を下げて円滑な管壁内でのスラリーの安定な付着に不利である(比較例2)とともに、乾燥過程において、塗布されたスラリーにおける溶剤が大量蒸発することに起因して膜の内部構造が疎になってピンホールなどが発生しやすく、乾燥後の材料の成膜性能に不利であった。
【0097】
実験例2~4において、すべての並行比較テストは、開放、対流のない環境で行われ、特に断りがない限り、すべてのテストの環境温度が25±0.5℃であった。実施例13、16、18および比較例4~6による電気赤外線加熱装置は、外径が10mmであり、有効発熱長が285mmであり、すなわち有効発熱面積が89.5cm2であった。温度の測定が、赤外線イメージャを用い、精度が±0.1℃であり、誤差が±2℃であった。実験用電源が、定電圧可変AC電源であり、周波数が50Hzであり、精度が±0.1Vであり、誤差が±1Vであった。
【0098】
実験例2
180Wの定パワーで実施例13、16、18および比較例4~6のそれぞれによる電気赤外線加熱装置に対して繰り返した昇温テストを行い、定温(温度が一定)になったあと15分間保温し、26℃以下まで冷却したあと再度テストし、定温温度まで昇温して保温することを10回繰り返し、各電気赤外線加熱装置の有効加熱面積、定温温度、定温温度まで昇温したあとの保温時間、繰り返して昇温したあとの電気赤外線加熱装置の状態は、表7に示されており、テストにより得た各電気赤外線加熱装置の昇温曲線が
図3を参照できる。
【0099】
【0100】
表7のデータから分かるように、本開示の実施例により調製できた電気赤外線加熱膜(実施例13、16、18を例とし)は、表面温度が比較的高く耐久性が優れ、そして、本開示の実施例における低欠陥グラフェンの電気加熱材料における高い固形分により、本開示に係る電気赤外線加熱膜は、繰り返した昇温テストにおいて耐久性が高かった。加熱材料において導電回路が主炭素材-主炭素材、主炭素材-無定形炭素が物理的接触で導電を実現する。本開示の実施例により調製された電気赤外線加熱膜(実施例13、16、18を例とし)は、この過程において対応すべき下記の特性をよく対応することができる。(a)昇温、降温の過程における薄膜の全体応力の変化、(b)繰り返して昇温したり降温したりする過程において主炭素材が膨張したり収縮したりしたあとの導電回路の接触の安定性:点-点接触<線-線接触<面-面接触、(c)高温、電界環境での主炭素材と酸化物セラミックとの化学的安定性。
【0101】
比較例4に使用した商用グラフェンは、欠陥が高く、熱安定性が劣り、高純度の不活性ガスの保護下であっても、高温通電の使用状態の場合に依然として構造の再配列が発生し、酸化還元グラフェン材料に不可逆的構造破壊が発生し、抵抗が高くなり、使用寿命を損なった。比較例4に使用したグラフェンは、高温法により第3種の欠陥の大部分を除去したが、第1種の欠陥を該プロセスにより修復することが困難であり、したがって、上記の要求の(c)を満たしない。比較例5におけるカーボンナノチューブは、構造的安定性が比較的よくて電気赤外線加熱膜の構造を安定させる効果を有するが、構造上の原因で分散性能が劣り、固形分を高めることが困難であるので溶剤含有量の成膜への影響を低減することが困難である。また、その一次元の電気伝導熱伝導特性により、成膜後、カーボンナノチューブの、壁径に沿う熱伝導能力が相対的低かった。比較例6におけるSuper-Pは、カーボンナノボールは、良好な三次元電気伝導熱伝導効果を有するが、他の材料と点接触し、それ自体が加熱する過程においてブラウン運動および熱膨張応力の影響を受けやすく、これによって、構築された三次元導電ネットワークの局所が破壊され、使用状態で電気赤外線加熱膜の全体の電気加熱性能を維持することに不利であった。比較例6に使用したsuper-Pは、カーボンナノボールであり、要求の(b)を満たすことが困難であった。このため、繰り返して昇温したり降温したりしたあと、主炭素材と主炭素材との接触に、熱膨張、冷収縮のため短絡が発生し、これによって、局所温度が高すぎになり、放電が発生し、薄膜の裂きを招く。
【0102】
実験例3
本開示の実施例13、16、18および市販のいくつの発熱管の昇温速度を比較し、結果が表8に示されている。
購買によって入手できる高温空気熱源(定格パワー≧400W、作動温度≧300℃、空焚き可能)としての市販の加熱管は、いずれも発熱ワイヤが管体の中心軸を通るように組み立てられ、市販の消毒キャビネットの発熱管の定格パワーが400W(加熱体が螺旋状合金加熱ワイヤであった)であり、市販のハロゲンオーブンの発熱管の定格パワーが400W(加熱体がカーボンファイバー加熱ワイヤであった)であり、市販のカーボンファイバー発熱管の定格パワーが800W(加熱体がカーボンファイバーであった)であり、市販の金属線短波赤外線発熱管の定格パワーが500W(加熱体が合金加熱ワイヤであった)であった。定パワーを利用して加熱管を昇温させ、温度のサンプリング間隔が7.5Hzであり、管体表面が300℃まで昇温したことにかかる時間を測定し、パワー密度を算出し、結果が表8に示されている。
【0103】
【0104】
表8のデータから分かるように、実施例による電気赤外線加熱装置が比較例による発熱管に比べて、同じパワーまたはより低いパワー/パワー密度で、開放環境で実施例による電気赤外線加熱装置の管体表面昇温速度が明らかにより良好であった。本開示に係る電気赤外線加熱装置は、市販の各種の加熱管に比べて電気エネルギー利用率、伝熱効率および加熱効率の面で著しく向上した。市販の金属線短波赤外線発熱管で例示すると、加熱体の体積が最も小さく、外廓から管体までの距離が最も長く、昇温速度が最も遅く、これに対して、本開示に係る電気赤外線加熱装置の昇温性能の優勢が明らかである。
【0105】
実験例4
定パワー下(180~185W)で赤外線サーモグラフィ(FLIR E60、誤差:±2℃)を利用して実施例13、16、18および実験例3で挙げられたいくつかの市販の発熱管に対して仕事状態温度の測定を行い、ステファン・ボルツマンの法則に従って赤外線輻射変換率を算出し、相応のテストパラメータおよび結果が表9に示されている。
【0106】
【0107】
表9のデータから分かるように、実施例による電気赤外線加熱装置は、赤外線変換率が75%以上に達し、発熱体が加熱装置の外壁と密接し、これによって、その熱交換メカニズムとして、輻射熱交換が主であり、熱伝導方式で補助するものであると判断できる。一般的な市販の加熱管の発熱体と管壁とが別体に設計されていることに対して、装置の外壁の温度が加熱膜からの温度であり、対流熱交換、発熱体-内環境-管壁という伝熱メカニズムが存在せず、管表面~加熱体の温度の差が比較的小さく、電気加熱エネルギー利用率がより高く、赤外線輻射変換率での優勢が明らかである。市販の電気加熱管の通常の40~56.2%の電気赤外線変換率に対して、実施例による電気赤外線加熱装置の電気赤外線変換率は、市販の加熱管の平均パワー(400~500W)の半分未満である場合も75%超の赤外線輻射変換率を有し、その原因として、低欠陥グラフェンによる追加の赤外線輻射能力、電気赤外線加熱膜の高温での優れた材料力学的性能により、管壁との隙間のない伝熱を実現し、優れた赤外線輻射性能を有する。
【0108】
上記の実験例のうち、実施例13、16、18が比較例と比較するための例示的なものにすぎず、本開示の明細書および特許請求の範囲を限定するものではない。本開示の実施例14、15、17、19~20および他の実施形態により調製できた電気赤外線加熱装置も、実施例13、16および18と上記の実験例のすべての実験効果において類似する技術効果を有する。
【0109】
本開示に係る電気赤外線加熱装置の管体内壁と電気赤外線加熱膜とが昇温する過程において膨張係数が小さくて、装置内壁からの電気赤外線加熱膜の分離の確率が低減し、したがって、電気赤外線加熱装置の構造的安定性および性能安定性を保証することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本開示に係る電気赤外線加熱膜において、低欠陥グラフェン、無機充填剤、無定形炭素により電気赤外線加熱膜の体積膨張係数を小さくし、電気赤外線加熱膜と、セラミック、石英、高ホウ素耐熱ガラスなどの基材との体積膨張係数の差を小さくし、これらの材料の表面からの電気赤外線加熱膜の脱落を防止し、電気赤外線加熱膜を採用する電気赤外線加熱装置の使用寿命を延ばすことができる。本開示に係る方法により調製できた電気赤外線加熱膜、およびそれを備える電気赤外線加熱装置は、応用価値が優れる。
【符号の説明】
【0111】
1 石英管
2 電気赤外加熱膜
3 電極
4 密封ヘッド
5 板体
51 第1ベース板
52 第2ベース板
6 凹字形金属電極
【国際調査報告】