(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】新規トナー外添剤及びそれを含むトナー組成物
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240214BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G03G9/097 371
G03G9/08 381
G03G9/08 384
G03G9/097 374
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552329
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 IB2022054591
(87)【国際公開番号】W WO2022195570
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0035988
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508130188
【氏名又は名称】ロッテ精密化學株式会社
【氏名又は名称原語表記】LOTTE Fine Chemical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】19,Yeocheon-ro 217beon-gil,Nam-gu,Ulsan,44714,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ、テ ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジ ス
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA08
2H500AA09
2H500AA11
2H500BA11
2H500BA27
2H500CA34
2H500CB06
2H500CB09
2H500EA42D
2H500EA60D
(57)【要約】
本発明のトナー外添剤組成物は、錫酸化物がコア成分として含まれて従来の二酸化チタン(TiO
2)の代替材料として使用できるため、今後の二酸化チタンの使用及び環境規制に対応することができる。また、前記トナー外添剤組成物及びそれを含むトナー組成物は、シェルの成分としてシラン系化合物及び水酸化アルミニウムを含むことで摩擦帯電量が減少することにより、ゴースト現象が改善され、画像濃度が増加して印刷品質を向上させるという効果がある。特に、前記水酸化アルミニウムを特定の含有量の範囲だけ使用する場合には、印刷品質向上効果をさらに高めることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫酸化物を含むコアと、
シラン系化合物及び水酸化アルミニウムが前記コアの全部または一部を被覆しているシェルと、から構成された粒子を含むことを特徴とする、トナー外添剤。
【請求項2】
前記シラン系化合物がアルコキシシランであることを特徴とする、請求項1に記載のトナー外添剤。
【請求項3】
前記シラン系化合物がアルキルトリアルコキシシランであることを特徴とする、請求項1に記載のトナー外添剤。
【請求項4】
前記シラン系化合物がイソブチルトリアルコキシシランであることを特徴とする、請求項1に記載のトナー外添剤。
【請求項5】
前記錫酸化物の含有量は40~89.95重量%、前記シラン系化合物の含有量は10~50重量%、前記水酸化アルミニウムの含有量は0.05~10重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のトナー外添剤。
【請求項6】
(A)錫酸化物粒子をシラン系化合物の含まれた溶液に滴下及び攪拌して、シラン系化合物の塗布された錫酸化物粒子を得る段階と、
(B)前記(A)段階で得たシラン系化合物の塗布された錫酸化物粒子を水酸化アルミニウムの含まれた溶液に滴下及び攪拌してトナー外添剤粒子を得る段階と、を含むことを特徴とする、トナー外添剤の製造方法。
【請求項7】
トナー組成物全体100重量%に対して、
請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー外添剤を0.1~1.5重量%で含むことを特徴とする、トナー組成物。
【請求項8】
(a)樹脂モノマーを用いて高分子ラテックスを乳化重合し、前記高分子ラテックスと顔料分散液、ワックス分散液及び凝集剤とを混合した後、凝集及び合一過程を経てトナー母粒子を製造する段階と、
(b)前記トナー母粒子を選別した後、洗浄及び乾燥させる段階と、
(c)前記トナー母粒子に対して、請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー外添剤を添着する段階と、を含むことを特徴とする、トナー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー外添剤及びそれを含むトナー組成物に関し、前記トナー外添剤は、コアに錫酸化物を含み、シェルに水酸化アルミニウム及びシラン系化合物を同時に含んでいるコア-シェル構造からなることを特徴とする、トナー外添剤及びそれを含むトナー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター機器の現像材料であるトナー(Toner)は、一般に、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面の全部または一部に被覆されるトナー外添剤(Toner External Additives)とを含む。前記トナー外添剤は、トナー母粒子に被覆されて摩擦帯電安定性、環境安定性及び粉体流動性等を調節することにより印刷品質に影響を及ぼす重要な構成要素である。
【0003】
従来のトナー外添剤の主要成分としては二酸化チタン(TiO2)が使用されたが、2019年10月に、EUは、委員会委任規制2020/217(Commission Delegated Regulation(EU)2020/217)の規定修正によって従来発がん性物質と推定された粒径10ミクロン以下の二酸化チタンを規制対象として指定した。具体的には、二酸化チタンがトナー中に1重量%以上含まれる場合には、包装紙の表面に吸引注意に関する警告文を標識することを主要内容とする。上記の改正規定は、二酸化チタンを含むトナー組成物及びその添加剤に対して2021年10月付で適用される予定であるので、前記二酸化チタン代替材料の必要性が台頭された。
【0004】
金属酸化物の金属イオン電気陰性度による排出帯電量図表である
図1を参照すると、トナー外添剤の主要成分である、コアを構成する二酸化チタン(TiO
2)の代替材料として、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)及び酸化鉄(Fe
3O
4)などが知られているが、二酸化チタンと類似した電気陰性度を示すという観点からは、二酸化錫(SnO
2)が選択できる。
【0005】
二酸化錫を含む錫酸化物が使用されたトナー組成物及びその添加剤に関連し、米国登録特許第5,135,832号(1992年8月4日登録)は、有色のトナー組成物に関するものであり、詳細には、前記トナー組成物は、金属酸化物の含まれた高分子シェルによってカプセル化されたコア物質、結着樹脂、顔料などを含み、前記コア物質は、シラン化合物によって疎水性表面処理できることが開示されている。
【0006】
また、米国登録特許第5,783,345A号公報(1998年7月21日登録)は、画像形成方法に関するものであり、詳細には、ローラー回転体上に形成される現像層は、キャリアとトナーを含み、前記トナーは、酸化チタン、酸化錫などの伝導性無機微粒子で構成され、シランカップリング剤によって表面処理できることが開示されている。
【0007】
さらに、韓国登録特許第10-0427201号公報(2004年4月17日公告)は、磁性トナーに関するものであり、詳細には、前記磁性トナーは、結着樹脂、磁性粉体を含む磁性トナー粒子及び無機微粉体を含み、前記無機微粉体は、酸化亜鉛、酸化錫などを含むことができ、前記無機微粉体は、シラン系物質で疎水性表面処理できることが開示されている。
【0008】
しかし、これらの先行文献の属するトナー組成物、特にトナー外添剤の技術分野は、コア成分として二酸化チタン代替材料の研究開発と同時に、前記二酸化チタン代替材料に対する機能性付与及び物性向上効果を発揮することができる後処理技術は、前記外添剤を含むトナー組成物の印刷品質に影響を及ぼすので、その研究開発も必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる問題点を解決するために、コア及びシェルからなる本発明のトナー外添剤組成物は、コア成分である二酸化チタン(TiO2)の代替材料として錫酸化物を含むことにより、環境規制を満たすことを目的とする。
【0010】
また、前記トナー外添剤組成物及びそれを含むトナー組成物は、コアの全部または一部を被覆しているシェルの一成分としてシラン系化合物を含むことで優れた耐久性を維持し、他の成分として水酸化アルミニウムを含むことで摩擦帯電量が減少することにより、ゴースト現象(トナーの摩擦帯電量が過度に高い場合、現像ローラーからOPCへの移動が容易にならず、結果としてトナーが紙へ十分に移動できなくて発生する画像欠陥)が改善され、画像濃度が増加して印刷品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、錫酸化物を含むコアと、シラン系化合物及び水酸化アルミニウムが前記コアの全部または一部を被覆しているシェルと、から構成された粒子を含むことを特徴とする、トナー外添剤を提供する。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記シラン系化合物は、アルコキシシランであってもよく、具体的にはアルキルトリアルコキシシランであってもよく、さらに具体的にはイソブチルトリエトキシシランであってもよい。
【0013】
本発明の他の一実施形態において、前記トナー外添剤の錫酸化物の含有量は40~89.95重量%、シラン系化合物の含有量は10~50重量%、水酸化アルミニウムの含有量は0.05~10重量%の範囲であることを特徴とする。
【0014】
本発明は、トナー外添剤組成物の製造方法であって、(A)錫酸化物粒子をシラン系化合物の含まれた溶液に滴下及び攪拌して、シラン系化合物の塗布された錫酸化物粒子を得る段階と、(B)前記(A)段階で得たシラン系化合物の塗布された錫酸化物粒子を水酸化アルミニウムの含まれた溶液に滴下及び攪拌してトナー外添剤粒子を得る段階と、を含むことを特徴とする、トナー外添剤の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の他の一実施形態において、トナー母粒子100重量部に対して、本発明によるトナー外添剤を0.1~1.5重量部で含むことを特徴とする、トナー組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、(a)樹脂モノマーを用いて高分子ラテックスを乳化重合し、前記高分子ラテックスと顔料分散液、ワックス分散液及び凝集剤とを混合した後、凝集及び合一過程を経てトナー母粒子を製造する段階と、(b)前記トナー母粒子を選別した後、洗浄及び乾燥させる段階と、(c)前記トナー母粒子に対して、本発明によるトナー外添剤を添着する段階と、を含むことを特徴とする、トナー組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のトナー外添剤は、錫酸化物がコア成分として含まれて従来の二酸化チタン(TiO2)の代替材料として使用できるため、今後の二酸化チタンの使用及び環境規制に対応することができる。
【0018】
また、本発明の前記トナー外添剤を含むトナー組成物は、優れた耐久性を有し、ゴースト現象が改善されるうえ、画像濃度が増加して印刷品質が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】金属酸化物の金属イオン電気陰性度による排出帯電量図表を示す。
【
図2】実験例3によるゴースト(Ghost)現象の発生有無を把握するために印刷された画像チャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
他に定義しない限り、本明細書で使用されたすべての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用された命名法は、当技術分野で周知であり、通常使用されるものである。
【0021】
また、本発明を説明するにあたり、関連する公知の技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要に曖昧にするおそれがあると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0022】
本発明の様々な実施形態のそれぞれの特徴が部分的または全体的に互いに結合または組み合わせ可能であり、技術的に様々な連動及び駆動が可能であり、各実施形態が互いに対して独立して実施されてもよく、関連して一緒に実施されてもよい。
【0023】
以下、本発明のトナー外添剤について詳細に説明する。
【0024】
本発明は、トナー外添剤に関するものであって、錫酸化物を含むコアと、シラン系化合物と水酸化アルミニウムが前記コアの全部または一部を被覆しているシェル;から構成された外添剤粒子を含むことを特徴とし、前記トナー外添剤がナー組成物に含まれる場合、前記外添剤粒子がトナー母粒子に添着されることにより、印刷品質を向上させることを技術的特徴とする。
【0025】
前記錫酸化物は、トナー外添剤組成物内の粒子を構成するコアの主要成分であって、下記化学式1で表される金属酸化物である。
(化学式1)
SnxOy(但し、y/xは1~2の範囲である。)
【0026】
金属酸化物の金属イオン電気陰性度による排出帯電量図表である
図1を参照すると、二酸化チタン(TiO
2)の代替材料として、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)及び酸化鉄(Fe
3)O
4)などが公知になっているが、二酸化チタンと類似した電気陰性度を示す二酸化錫(SnO
2)が好ましく使用できる。
【0027】
一方、前記シラン系化合物は、トナー外添剤組成物内の粒子を構成するコアの全部または一部を被覆するシェルの一構成要素であって、耐久性を含む環境安定性の向上に寄与する。
【0028】
前記シラン系化合物は、アルコキシシラン(Alkoxysilane)を含み、前記アルコキシシランの例示としては、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリアセトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、オクチルメチルジイソプロポキシシラン、ラウリルトリメトキシシラン、2-エチルヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリブロモシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン及びオクタデシルトリエトキシシランが使用できるが、好ましくはトリアルコキシシランが使用でき、最も好ましくはイソブチルトリエトキシシランが使用できる。
【0029】
前記シラン系化合物としてアルコキシシランを使用する場合、外添剤の疎水化度が高くなるため、トナーの耐久性及び耐環境性を効果的に向上させることができる。
【0030】
本発明の技術的特徴である前記水酸化アルミニウム(Al(OH)3)は、前記シラン系化合物と共にトナー外添剤組成物内の粒子を構成するコアの全部または一部を被覆するシェルの他の一構成要素である。前記水酸化アルミニウムの含まれたトナー外添剤粒子がトナー母粒子に添着される場合には、トナー組成物内の粒子間に発生する摩擦帯電量を減少させてゴースト現象を改善し、画像濃度を増加させて印刷品質を向上させる。
【0031】
本発明によるトナー外添剤において、前記錫酸化物の含有量は40~89.95重量%、シラン系化合物の含有量は10~50重量%、及び水酸化アルミニウムの含有量は0.05~10重量%の範囲であり、さらに好ましくは、錫酸化物の含有量は53~79.9重量%、シラン系化合物の含有量は20~40重量%、及び水酸化アルミニウムは0.1~7重量%の範囲である。
【0032】
前記シラン系化合物の含有量が10wt%未満であれば、外添剤の疎水化度が低くなってトナーの耐環境性が悪化し、前記シラン系化合物の含有量が50wt%超過であれば、過剰な投入量により経済性が低下するという問題が発生する。
【0033】
また、前記水酸化アルミニウムの含有量が0.05重量%未満である場合、前記水酸化アルミニウムを含むトナー組成物は、摩擦によるLL環境帯電量が高くなってゴースト現象が発生し、画像濃度が減少して印刷品質が悪化するという問題点があり、前記水酸化アルミニウムの含有量が10重量%超過である場合、錫酸化物コアに対して水酸化アルミニウムの量が過剰であってコアに対する被覆効率及び経済性が減少し、過度に摩擦帯電量が減少して画像濃度があまり過剰に増加し、トナー消費量が過剰に増加する現象が発生するおそれがあるという問題点がある。
【0034】
本発明は、他の観点から、トナー外添剤組成物の製造方法を提供する。また、下記トナー外添剤組成物の製造方法において、前述したトナー外添剤組成物を全て適用することができるが、本発明の本質を損なうことを防止するために繰り返し記述を省略する。
【0035】
また、本発明は、(A)錫酸化物粒子をシラン系化合物の含まれた溶液に投入及び攪拌してシラン系化合物の塗布された錫酸化物粒子を得る段階と、(B)前記(A)段階で得たシラン系化合物の塗布された錫酸化物粒子を水酸化アルミニウムの含まれた溶液に滴下及び攪拌してトナー外添剤粒子を得る段階と、を含む、トナー外添剤組成物の製造方法を提供することができる。
【0036】
前記(A)段階または(B)段階の錫酸化物粒子の塗布後に洗浄、乾燥過程が選択的に伴われてもよく、前記洗浄及び乾燥過程は、公知の金属酸化物に対するコーティング後の洗浄及び乾燥方法によって行われ得る。
【0037】
前記本発明トナー外添剤組成物の製造方法は、一実施形態として、シラン系化合物に続く水酸化アルミニウムの順次コーティングを行うことを記載したものに過ぎず、前記順次コーティングの順序に限定されるものではない。本発明の他の一実施形態として、前記順次コーティングにおける順序を変えてシラン系化合物に続く水酸化アルミニウムの順次コーティングを行ってもよく、水酸化アルミニウム及びシラン系化合物の混合溶液での同時コーティングを行ってもよい。
【0038】
また、本発明は、トナー組成物であって、本発明によるトナー外添剤は、トナー母粒子100重量部に対して0.1~1.5重量部で含むことを特徴とする。
【0039】
前記トナー組成物において、本発明によるトナー外添剤を0.1重量%未満で含む場合には、耐久性維持及び摩擦帯電量減少効果を発揮することができないという問題点があり、1.5重量%超過で含む場合には、添加量対比の耐久性維持及び摩擦帯電量減少効果がそれ以上向上しないため非経済的であるという問題点がある。
【0040】
前記トナー母粒子は、トナー粒子の形状、直径及び粒度を決定し、前記トナー外添剤が添着される基材として、高分子ラテックス樹脂、顔料及びワックスを含む。前記トナー母粒子の含有量は、トナー組成物全体100重量%に対して90~98重量%であり得る。
【0041】
前記高分子ラテックス樹脂は、トナー母粒子のマトリックス樹脂であって、公知のラテックス樹脂が使用できるが、ラテックス樹脂の一般な素材として広く知られているポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂混合物及びポリエステル共重合体樹脂、スチレン-アクリレート樹脂などが使用できる。
【0042】
前記顔料は、トナー組成物の発色のための構成要素であって、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエロー色の中から選択される1種以上の顔料が使用できる。
【0043】
前記ワックスは、トナーが印刷用紙などの画像受容体に転写されて定着される段階で感光ローラー及びトナー間の離型性を向上させる構成要素であって、ワックスの種類としては、非制限的にポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、シリコンワックス、パラフィン系ワックス、合成エステル系ワックス、カルバウナワックス及びメタロセン(metallocene)ワックスのうちの1種以上が使用できる。
【0044】
また、トナーに要求される機能性を付与する付加構成要素としてその他の添加剤が含まれ得る。前記その他の添加剤の種類には、UV安定剤、防黴剤、殺菌剤、帯電制御剤、光沢改質剤、酸化防止剤などが含まれ得る。例えば、疎水性シリカ、チタン酸ストロンチウム、ポリマービーズなどが使用できる。前記その他の添加剤の含有量は、トナー組成物全体100重量%に対して1~9重量%の範囲であり得る。
【0045】
本発明は、他の観点から、トナー組成物の製造方法を提供する。なお、下記トナー組成物の製造方法において前述したトナー組成物を全て適用することができるが、本発明の本質を損なうことを防止するために、繰り返し記述を省略する。
(a)樹脂モノマーを用いて高分子ラテックスを乳化重合し、前記高分子ラテックスと顔料分散液、ワックス分散液及び凝集剤とを混合した後、凝集及び合一工程を経てトナー母粒子を製造する段階と、(b)前記トナー母粒子を選別した後、洗浄及び乾燥させる段階と、(c)前記トナー母粒子に対して、本発明によるトナー外添剤を添着する段階と、を含むことを特徴とする、トナー組成物の製造方法を提供する。
【0046】
前記(a)段階において、トナー母粒子は、乳化重合工程によって製造された高分子ラテックスに溶媒、顔料分散液、ワックス分散液及び凝集剤を混合することにより製造される。
【0047】
前記溶媒は、水、水溶液または有機溶剤であってもよく、好ましくは水が使用できる。
【0048】
前記凝集剤は、Si及びFe含有金属塩であってもよく、好ましくはポリシリカ鉄(PSI)が使用できる。
【0049】
前記(b)段階は、トナー母粒子の洗浄及び乾燥段階であって、(a)段階で製造されたトナー母粒子は、巨大粒子が除去された後、洗浄溶媒によって洗浄及び乾燥される。
【0050】
前記トナー母粒子の巨大粒子の除去は、公知の濾過装置及び方法によって行われることができ、洗浄及び乾燥段階も公知の装置及び方法によって行われることができる。
【0051】
前記(c)段階は、(b)段階で回収した乾燥トナー母粒子にトナー外添剤を添着してトナー組成物を最終的に得る段階である。
【0052】
前記トナー外添剤は、前述したトナー外添剤組成物、及びトナー外添剤組成物の製造方法から製造されたトナー外添剤組成物に由来するものを含む。
【実施例】
【0053】
以下、好適な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれによって限定されないのは、当該分野における通常の知識を有する者に自明であろう。
【0054】
<製造例1~7及び比較製造例1~3:トナー外添剤組成物の製造>
二酸化錫(SnO2)をイソブチルトリエトキシシラン(IBTES、Isobutyltriethoxy silane)の含まれた溶液に投入及び撹拌し、濾過乾燥させてイソブチルトリエトキシシランの塗布された二酸化錫粒子を得た。得られたイソブチルトリエトキシシランの塗布された二酸化錫粒子を水酸化アルミニウム(Al(OH)3)の含まれた溶液に投入及び攪拌してトナー外添剤粒子を製造した。前記二酸化錫(SnO2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)及びイソブチルトリエトキシシラン(IBTES)の含有量は、表1に示す通りである。
【0055】
【0056】
<実施例1~7及び比較例1~3:トナー組成物の製造>
ラテックス樹脂を乳化重合し、前記ラテックス樹脂に溶媒、顔料分散液、ワックス分散液、凝集剤、及びその他の添加剤である疎水性シリカを混合してトナー母粒子を製造した後、前記トナー母粒子を濾過してトナー母粒子を選別した。その後、洗浄及び乾燥させた。前記トナー母粒子に対して、製造例1~7及び比較製造例1~3のうちのいずれかのトナー外添剤組成物に由来するトナー外添剤を添着してトナー組成物を製造した。前記トナー母粒子、トナー外添剤、疎水性シリカの含有量は、下記表2に示す通りである。
【0057】
【0058】
<実験例1:粉体流動性の測定>
実施例及び比較例のトナー組成物3gをN/N環境条件23℃、相対湿度55%で2時間放置した後、前記トナー組成物2gを、上部(53μm)、中間部(45μm)及び下部(38μm)から構成された篩(sieve)の上部に積載した。その後、振幅(Amplitude)をダイヤル3(Dial3)に固定した後、40秒間振動を加えた。振動が止まったら、前記篩で当該直径を有する上部、中間部または下部に残存するトナー組成物の重量を測定して粉体流動性を測定し、その結果を下記表3に記載した。前記粉体流動性は、下記の計算式によって計算した。
[(m(53μm)×5/5+m(45μm)×3/5+m(38μm)×1/5)÷m(初期)]×100
*m(直径):篩で当該直径を有する上部、中間部または下部に残存するトナー組成物の重量(g)
*m(初期):最初篩の上部に積載したトナー組成物の重量(g)
【0059】
<実験例2:LL環境帯電量の分析>
実施例及び比較例のトナー組成物及びキャリア(Carrier)を50mlの容器にそれぞれ7g、93gずつ投入し、LL環境条件である10℃、相対湿度10%で10時間放置した後、ミキサー(Tumbler mixer)を用いて10分間混合した。トナー組成物及びャリア混合物1gを5分間LL環境チャンバー内に放置した後、Epping Q/M meter帯電量分析装置のCell内に投入し、90秒間帯電量分析を行う。帯電量分析を終えた前記Cellの重量を測定し、最初の重量を入力すると、帯電量数値が導出され、前記帯電量数値を下記表3に記載した。
【0060】
<実験例3:ゴースト現象の発生有無を把握するための画像チャート分析>
実施例及び比較例のトナー組成物を用いてGhost現像確認用画像チャートを印刷した後、Ghost現像の発生有無を確認した。
【0061】
ゴースト現象発生有無の判断基準は、前記画像チャートから30cmほど離間した距離で肉眼観察するときに、すべての観測者からゴースト現象が観測されない場合には「優秀」、一部の観測者からゴースト現象が微細に見える場合には「良好」、すべての観測者からゴースト現象が明確に観察される場合には「不良」とそれぞれ判断した。
【0062】
前記印刷された画像チャートは、
図2に示しており、ここで、ゴースト現象が発生した部分を点線のボックスで表示した。また、ゴースト現象の発生有無を把握するための画像チャート分析結果は、下記表3に記載した。
【0063】
<実験例4:画像濃度の測定>
実施例及び比較例のトナー組成物100gをレーザープリンター(モデル名:C-3010)のトナーカートリッジに充填した後、一定間隔で印刷されたパターンチャートに対してSpectroEye測色分析装備を用いて画像濃度を測定し、その結果を下記表3に記載した。
【0064】
<実験例5:耐久性の評価>
実施例及び比較例のトナー組成物100gをレーザープリンター(モデル名:C-3010)のトナーカートリッジに充填した後、前記レーザープリンターの保障印刷枚数分だけ全量出力して印刷方向に縞模様(streak)現象が発生するかを確認した。前記縞模様現象は、トナー組成物の耐久性が不良である場合、カートリッジ内部の圧力(ストレス)に耐えられず、融着物又は固着物となって印刷方向に縞模様の欠陥を誘発する現象である。
【0065】
耐久性評価判断基準は、前記保障印刷枚数出力物のうち全量の出力物から印刷方向に縞模様現象が肉眼で発見されない場合には「優秀」、ページ当たり5ポイント以下で縞模様現象が発見される場合には「普通」、ページ当たり10ポイント以上の縞模様現象が発見される場合には「不良」とそれぞれ判断した。
【0066】
前記耐久性評価結果は、下記表3に記載した。
【0067】
【0068】
前記表3を参照すると、前記実施例1~7のトナー組成物は、比較例1~3のトナー組成物に比べて、摩擦帯電量指標であるLL環境帯電量が低いため、ゴースト現象が改善され、画像濃度が増加して印刷品質が向上したことを確認した。
【0069】
特に、実施例1~5のトナー組成物は、水酸化アルミニウムの含有量が増加するにつれて、LL環境帯電量が減少し、ゴースト現象が改善されるうえ、画像濃度が増加した。
【0070】
前記表3の耐久性評価結果を参照すると、比較例1~3に比べて、実施例1~7のトナー組成物は、組成物内の外添剤粒子を塗布する一部のシラン系化合物が水酸化アルミニウムに置き換えられたにも拘らず、優れた耐久性を維持することが分かった。
【0071】
前述した本発明の一実施形態は、本発明の技術的思想を限定するものと解釈されてはならない。本発明の保護範囲は、請求の範囲に記載された事項によってのみ制限され、本発明の技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想を様々な形態に改良変更することが可能である。よって、このような改良及び変更も、通常の知識を有する者にとって自明である限り、本発明の保護範囲に属するであろう。
【国際調査報告】