(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】非自己多重ストレスを受けたがん細胞ならびにがんのワクチン接種および処置ためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/09 20100101AFI20240214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240214BHJP
A61K 39/385 20060101ALI20240214BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 35/36 20150101ALI20240214BHJP
A61K 35/37 20150101ALI20240214BHJP
A61K 35/13 20150101ALI20240214BHJP
【FI】
C12N5/09
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/385
A61K39/00 Z
A61K39/00 B
A61K35/36
A61K35/37
A61K35/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552331
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2022054883
(87)【国際公開番号】W WO2022180251
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523326366
【氏名又は名称】ブレニュス ファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ピントゥール,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ブラヴェッティ,ポール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC02
4B065AC20
4B065BA21
4B065BB31
4B065BB40
4B065BD03
4B065BD04
4B065CA45
4C085AA03
4C085AA38
4C085BB01
4C085CC03
4C085DD21
4C085DD86
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF24
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
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4C085GG05
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、細胞療法のための先端医療医薬品(AMTP)の分野に関する。特に、本発明は、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む組成物、ならびにインビトロで適用されたストレスに応答してこれらの細胞により産生される免疫原性ストレスタンパク質を含む組成物に関する。組成物は、がん細胞においてその場で観察される複数の細胞耐性機構に同時に対抗することを可能にし、したがって、ヒト患者におけるがんのワクチン接種および処置にとって好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、ならびに(ii)インビトロで適用されたストレスに応答してこれらの細胞により産生された免疫原性ストレスタンパク質を含む組成物。
【請求項2】
ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞が、ストレスタンパク質の前記産生をもたらす、放射線照射、熱ストレス、化学的ストレス、代謝ストレスおよび任意のそれらの組み合わせを含む群から選択される、インビトロで適用された1つまたは複数のストレスに応答して耐性機構を発達させている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞が、非増殖性である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
免疫原性ストレスタンパク質が、好ましくは、
2,4-ジニトロフェニル(DNP);2,4-ジニトロフルオロベンゼン;スルファニル酸;N-ヨードアセチル-N’-(5-スルホン酸-ナフチル)エチレンジアミン;アニリン;p-アミノ安息香酸;ビオチン;フルオレセインおよびこれらの誘導体(FITC、TAMRA、およびTexas Red);ジゴキシゲニン;5-ニトロ-3-ピラゾールカルバミド;4,5-ジメトキシ-2-ニトロシンアミド;2-(3,4-ジメトキシフェニル)-キノリン-4-カルバミド;2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-カルバミド;3-ヒドロキシ-2-キノキサリンカルバミド;4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL);ロテノンイソキサゾリン:(E)-2-(2-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン-4-イル)フェノジ)アセトアミド;7-(ジエチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸;2-アセトアミド-4-メチル-5-チアゾールスルホンアミド;およびp-メトキシフェニルピラゾポドフィルアミド、を含む群から選択されるハプテンを用いて、より好ましくは、2,4-ジニトロフェニル(DNP)を用いてハプテン化される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
医薬組成物またはワクチン組成物であり、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
約10
5~約10
8個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
それを必要とする対象におけるがんの処置に使用するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞およびストレスを受けたLoVo細胞のうちの1つ、ならびに(ii)ストレスタンパク質、を含む中間組成物であって、
ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞、またはストレスを受けたLoVo細胞のうちの前記1つが、前記ストレスタンパク質の産生をもたらす、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して耐性機構を発達させている、中間組成物。
【請求項9】
(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞またはストレスを受けたLoVo細胞のうちの1つ、および(ii)ストレスタンパク質、を含む中間組成物であって、
ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞、またはストレスを受けたLoVo細胞のうちの前記1つが、前記ストレスタンパク質の産生をもたらす、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して耐性機構を発達させている、中間組成物。
【請求項10】
請求項8または9に記載の中間組成物の製造方法であって、以下のステップ:
a)HT-29、HCT-116またはLoVo細胞を好適な培地中で培養するステップ;
b)ステップa)で培養されたHT-29、HCT-116またはLoVo細胞を、1つまたは複数のストレスにインビトロで供し、これらのHT-29、HCT-116またはLoVo細胞が、前記1つまたはいくつかのストレスに応答して耐性機構を発達させ、それによりストレスタンパク質を産生するステップ;
c)前記ストレスを受けたHT-29、HCT-116またはLoVo細胞を、それらがステップb)で産生したストレスタンパク質と共に回収するステップ;
d)ステップc)で共に回収した、ストレスを受けたHT-29、HCT-116またはLoVo細胞、およびそれらが産生したストレスタンパク質を、前記ストレスタンパク質を免疫原性にすることが可能な分子または方法により処置するステップ、
を含む、方法。
【請求項11】
ステップc)が、ステップb)の完了の少なくとも数時間後、好ましくは、少なくとも12時間後またはそれ以降に実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップd)が、ストレスタンパク質を、免疫原性を付与することが可能な手段にストレスタンパク質を連結するかまたはそれと複合体形成させるステップを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
免疫原性を付与することが可能な手段がハプテンであり、
好ましくは、前記ハプテンが、2,4-ジニトロフェニル(DNP);2,4-ジニトロフルオロベンゼン;スルファニル酸;N-ヨードアセチル-N’-(5-スルホン酸-ナフチル)エチレンジアミン;アニリン;p-アミノ安息香酸;ビオチン;フルオレセインおよびこれらの誘導体(FITC、TAMRA、およびTexas Red);ジゴキシゲニン;5-ニトロ-3-ピラゾールカルバミド;4,5-ジメトキシ-2-ニトロシンアミド;2-(3,4-ジメトキシフェニル)-キノリン-4-カルバミド;2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-カルバミド;3-ヒドロキシ-2-キノキサリンカルバミド;4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL);ロテノンイソキサゾリン;(E)-2-(2-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン-4-イル)フェノジ)アセトアミド;7-(ジエチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸;2-アセトアミド-4-メチル-5-チアゾールスルホンアミド;およびp-メトキシフェニルピラゾポドフィルアミド、を含む群から選択され、より好ましくは、前記ハプテンが、2,4-ジニトロフェニル(DNP)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップb)が、ステップa)で培養された前記HT-29、HCT-116またはLoVo細胞を、同時にまたは逐次にインビトロで適用された次記のストレス:
(i)枯渇培地中、低酸素下、および/または低いpHでインビトロ培養;好ましくは、2%FBS培地中の低血清培養条件でのインビトロ培養、
(ii)約0.25~約25Gy、好ましくは約1~約15Gyの範囲の総線量で、好ましくは約1~約20分の範囲の時間にわたる;好ましくは約10Gyの総線量で約1~約5分間にわたるインビトロ放射線照射、および
(iii)約38℃~約45℃の範囲の温度で、約15分間~約4時間の範囲の時間にわたり、細胞に適用されたインビトロ熱ショック;好ましくは約42℃の温度で約60分間にわたり細胞に適用されたインビトロ熱ショック、
に供することを含む、請求項8に記載の中間組成物を製造するための、請求項10から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ステップb)が、ステップa)で培養された前記HT-29、HCT-116またはLoVo細胞を、同時にまたは逐次にインビトロで適用された次記のストレス:
(i)枯渇培地中、低酸素下、および/または低いpHでのインビトロ培養;好ましくは、2%FBS培地中の低血清培養条件でのインビトロ培養、
(ii)少なくとも1つまたは複数の化学療法剤および/またはアルコールへの約6時間~約120時間の範囲の時間にわたるインビトロ曝露、
に供することを含む、請求項9に記載の中間組成物の製造のための、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
-前記細胞がHT-29細胞であり、(ii)での前記インビトロ曝露が約13μMのオキサリプラチンに対し約72時間にわたる曝露であり;または
-前記細胞がHCT-116細胞であり、(ii)でのインビトロ曝露が約48時間にわたる、約315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)に対する曝露であり;または
-前記細胞がLoVo細胞であり、(ii)でのインビトロ曝露が約48時間にわたる、約5μMのフルオロウラシル(5-FU)に対する曝露である、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
a.請求項8および9に記載の6つの中間組成物を得るステップであって、
前記6つの中間組成物が:
1)ストレスを受けたHT-29細胞およびストレスタンパク質を含む、請求項8に記載の中間組成物、
2)ストレスを受けたHCT-116細胞およびストレスタンパク質を含む、請求項8に記載の中間組成物、
3)ストレスを受けたLoVo細胞およびストレスタンパク質を含む、請求項8に記載の中間組成物、
4)ストレスを受けたHT-29細胞およびストレスタンパク質を含む、請求項9に記載の中間組成物、
5)ストレスを受けたHCT-116細胞およびストレスタンパク質を含む、請求項9に記載の中間組成物、
6)ストレスを受けたLoVo細胞およびストレスタンパク質を含む、請求項9に記載の中間組成物、を含むステップ;
b.これらの6つの中間組成物を共に混合するステップであって、
好ましくは、これらの6つの中間組成物が、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞と等しい比率で共に混合されるステップ、
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、細胞療法のための先端医療医薬品(AMTP)の分野に関する。特に、本発明は、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む組成物、ならびにインビトロで加えられたストレスに応答してこれらの細胞により産生される免疫原性のストレスタンパク質に関する。この組成物は、がん細胞で観察される複数の細胞耐性機構に同時に対抗することを可能にし、したがって、ヒト患者におけるがんのワクチン接種および処置に好適である。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、2つの防護機構,即ち、急速であるが非特異的である自然免疫、および遅いが特異的であり、記憶を有する獲得免疫に基づく。これらの2つの補完的機構は、細胞媒介免疫応答の際に直接的に、または液性免疫応答の際に活性分子(例えば、免疫グロブリン、サイトカインなど)の分泌を介して細胞を動員することにより、外部および内側からの「攻撃」に対して戦う能力を与える。
【0003】
免疫は、原発性非ウィルス性がんの発生に対し、宿主を保護するのみでなく、腫瘍免疫原性も形成する。がん免疫編集は、3つの段階:排除(すなわち、がんの免疫監視)、平衡、および逃避からなる過程である。第1段階では、免疫系は、腫瘍増殖に対し戦い、これは、腫瘍に関連する組織および環境変化(マクロファージ、NK細胞、DC細胞などの非特異的細胞の動員、抗増殖性および/またはアポトーシス性分子の分泌、サイトカインの産生、ならびにCD4+およびCD8+T細胞の動員および活性化)の関与を必然的に伴う。第2段階の間に、感受性のあるがん細胞は排除され、最も耐性である細胞の免疫選択が作動する。作動している耐性機構は、アポトーシスに対する耐性、阻害性サイトカイン(TGF-β、IL-10、PGE2またはIDO)の分泌、抗原提示の変化(クラスI主要組織適合抗原(MHC)の発現の部分的または完全な消失)、中和分子の分泌、および細胞性免疫系に反撃するためのMICAまたはMICB転写物の発現である。この段階の間に、破壊されるがん細胞の数は、耐性細胞の数と平衡状態にあり、したがって、この段階の名前になっている。第2段階は、特に、がん患者の処置の際に観察される寛解期に対応する。第3段階の間に、免疫系の種々の保護機構に対して耐性のがん細胞が、増殖する。これらのがん細胞はその後、腫瘍塊を発達させ、これが、生理学的逃避現象の臨床発現である。関連する逃避現象は、がんの進行および転移段階でも観察される。
【0004】
抗がんの処置は、手術を含み、その目的は、主に、腫瘍塊を除去または低減させることであるが、発がんの過程に対し何ら実際的阻害効果はなく、したがって、手術は通常、がん細胞を完全に除去するために、種々の処置療法を補充される。
【0005】
放射線療法は、がん細胞の場合のように、急速に増殖している細胞のDNAの変化をもたらすことが意図されている。放射線療法の副作用には2つの要素があり、第1は、がん細胞だけが照射されるのではなく、健全細胞も同様に照射され、これは、健全細胞の「がん化」を引き起こし得る;第2に、がん細胞は、HSP、GRPなどのシャペロンタンパク質を発現することにより、照射誘導アポトーシスに対し耐性を生じ、逃避現象をもたらす。
【0006】
化学療法剤は、がん細胞それ自体に対し作用すること、または特定の代謝経路を阻害することのいずれかにより、がん細胞を排除することが意図されている。化学療法剤は、求電子剤、インターカレート剤、または分解剤などのDNAと直接相互作用する薬剤、DNA合成阻害剤(代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、紡錘体形成阻害剤、など)、新生血管形成阻害剤、プロテアソーム阻害剤などのDNAと間接的に相互作用する薬剤を含む。ここで再度、耐性機構ががん細胞により発達し、多剤化学療法戦略にも関わらず、大量の腫瘍増殖を伴う再発現象が観察され得る。
【0007】
免疫療法は、受容体を遮断し、細胞溶解を誘導し、細胞傷害性を刺激する、またはアポトーシスの阻害を解除する抗体またはサイトカインの注射に基づく受動免疫療法;および「ワクチン接種による免疫化」とも呼ばれる能動免疫療法を含み、後者の場合、患者は、EU規則1394/2007により欧州で定義された新規クラスの医薬品である「先端医療医薬品」(ATMP)を用いてがんに対し免疫される。
【0008】
遺伝子療法(GTMPと呼ばれる)のための各種ATMPが多様ながんの臨床試験で使用されている;若干の例を示すと、アデノウィルスベクターは、頭頸部がんにおいてp53を発現させるために、または膀胱がんにおいてCD40Lを発現させるために使用された;GM-CSFをコードする腫瘍溶解性ヘルペスウィルスが黒色腫の患者に使用された;および種々の腫瘍関連抗原に向け直されたキメラ抗原受容体(CAR)によって操作されたT細胞も最近使用されている。
【0009】
臨床的に意味のある免疫応答を誘発する試みで、腫瘍抗原をロードした自家樹状細胞(DC)を含む細胞療法のためのAMTP(CTMPと呼ばれる)も使用されている。例えば、FDAおよびEMAは、2010年および2013年にそれぞれ、前立腺がんのためのDCベースの治療ワクチン(Dendreon Pharmaceuticals,LLCにより開発された、シプロイセル-T、商品名「プロベンジ」)を承認したが、欧州委員会は、2015年に、欧州連合でのシプロイセル-Tの製造承認を取り消した。
【0010】
しかし、AMTPによっても同様に、免疫系を伴う3段階がん免疫編集で記載された天然の逃避現象と類似の逃避現象が観察される。
したがって、固有の有効性を提供し、および/または複数治療戦略に寄与することができる、がんの処置のための治療戦略がなおも必要である。
【0011】
がんの耐性現象、特に、アポトーシスに対する耐性におけるシャペロンタンパク質の役割をより良好に理解するために、多くの試験が行われている。特に、ヒートショックタンパク質(HSP)、グルコース制御タンパク質(GRP)および多剤耐性タンパク質(MRP)は、耐性因子であり、保護作用を有することは公知である。これらのタンパク質は、低酸素、低い炭水化物濃度などの代謝攻撃、熱ストレス、放射線照射などの物理的攻撃、または薬物などの化学的攻撃の結果としての耐性の機構として、がん細胞により産生される。
【0012】
結果として、これらのシャペロンタンパク質の阻害に基づく処置戦略を開発するための試験が行われているが、これらは、全体としてまちまちな結果のために、高い毒性レベルを含む副作用がないわけではない。シャペロンタンパク質、特に、HSP70を、マウスのがん細胞に対する免疫化の因子として使用する試験も行われている。しかし、この手法は、特定のシャペロンタンパク質に焦点を絞り、がん細胞により発達した保護機構全体を考慮してはいない。
【0013】
この問題に対処するために、発明者らは、がん細胞耐性機構に対抗することが可能な医薬またはワクチン組成物を得るためのインビトロ法を記載し、この方法は、患者に適用された処置プロトコルの過程で、特定のストレス(複数のストレス)にインビボで供されたがん細胞によりその場で発達した機構と同一の特定の耐性機構を有する自家がん細胞のインビトロ産生にその他の点で適合する(米国特許第11,096,995号;欧州特許第3 057 981号)。これらの組成物のマウスへのインビボ投与後に、データは、腫瘍体積および重量に対して好ましい影響を示し、概念の証拠を確証した。
【0014】
ここで、発明者らは、更に進めて、多剤耐性機構に同時に対抗する、ヒト患者のワクチン接種および種々のがんの処置に好適である、非自己の多重ストレスを受けた細胞の選択を含む新規組成物を提供する。
【発明の概要】
【0015】
本発明は以降、特に、添付の特許請求の範囲で開示される通りである。
特に、本発明は、(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、および(ii)インビトロで適用されたストレスに応答して、これらの細胞により産生された免疫原性ストレスタンパク質を含む組成物に関する。
【0016】
一実施形態では、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞は、ストレスタンパク質の産生をもたらす、放射線照射、熱ストレス、化学的ストレス、代謝ストレスおよび任意のそれらの組み合わせを含む群から選択される、インビトロで適用された1種または複数のストレスに応答して耐性機構を発達させている発現した。
一実施形態では、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVoは、非増殖性である。
【0017】
一実施形態では、免疫原性ストレスタンパク質は、ハプテン化される。一実施形態では、免疫原性ストレスタンパク質は、2,4-ジニトロフェニル(DNP);2,4-ジニトロフルオロベンゼン;スルファニル酸;N-ヨードアセチル-N’-(5-スルホン酸-ナフチル)エチレンジアミン;アニリン;p-アミノ安息香酸;ビオチン;フルオレセインおよびこれらの誘導体(FITC、TAMRA、およびTexas Red);ジゴキシゲニン;5-ニトロ-3-ピラゾールカルバミド;4,5-ジメトキシ-2-ニトロシンアミド;2-(3,4-ジメトキシフェニル)-キノリン-4-カルバミド;2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-カルバミド;3-ヒドロキシ-2-キノキサリンカルバミド;4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL);ロテノンイソキサゾリン;(E)-2-(2-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン-4-イル)フェノジ)アセトアミド;7-(ジエチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸;2-アセトアミド-4-メチル-5-チアゾールスルホンアミド;およびp-メトキシフェニルピラゾポドフィルアミドを含む群から選択されるハプテンでハプテン化される。一実施形態では、免疫原性ストレスタンパク質は、2,4-ジニトロフェニル(DNP)でハプテン化される。
【0018】
一実施形態では、組成物は、医薬組成物またはワクチン組成物であり、少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤を更に含む。
一実施形態では、組成物は、約105~約108個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む。
本開示は、それを必要とする対象におけるがんの処置に使用するためのこの組成物に更に関する。本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、この組成物を対象に投与することを含む方法にも関する。
【0019】
本発明は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞およびストレスを受けたLoVo細胞のうちの1つ、ならびに(ii)ストレスタンパク質、を含む中間組成物であって、ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞、またはストレスを受けたLoVo細胞のうちの1つが、ストレスタンパク質の産生をもたらす、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して耐性機構を発達させている、中間組成物に更に関する。
本発明は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞およびストレスを受けたLoVo細胞のうちの1つ、および(ii)ストレスタンパク質、を含む中間組成物であって、ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞、またはストレスを受けたLoVo細胞のうちの1つが、ストレスタンパク質の産生をもたらす、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)化学的ストレスに応答して耐性機構を発達させている。
【0020】
本発明は、更に前記中間組成物の製造方法であって、以下のステップ:
a)HT-29、HCT-116またはLoVo細胞を好適な培地中で培養するステップ;
b)ステップa)で培養されたHT-29、HCT-116またはLoVo細胞を、1つまたは複数のストレスにインビトロで供するステップであって、これらのHT29,HCT-116またはLoVoが、1つまたは複数のストレスに応答して耐性機構を発達させ、それによりストレスタンパク質を産生するステップ;
c)ストレスを受けたHT-29、HCT-116またはLoVo細胞を、それらがステップb)で産生したストレスタンパク質と一緒に回収するステップ;
d)ステップc)で全てが共に回収された、ストレスを受けたHT-29、HCT-116またはLoVo細胞、およびそれらが産生したストレスタンパク質を、ストレスタンパク質を免疫原性にすることが可能な分子または方法により処置するステップ
を含む方法に関する。
一実施形態では、ステップc)は、ステップb)の完了後少なくとも数時間、好ましくはステップb)の完了後少なくとも12時間以上、実施される。
一実施形態では、ステップd)は、ストレスタンパク質を、免疫原性を付与することが可能な手段に連結するか、またはそれと複合体形成するステップを含む。一実施形態では、免疫原性を付与することが可能な手段は、ハプテンである。一実施形態では、免疫原性を付与することが可能な手段は、2,4-ジニトロフェニル(DNP);2,4-ジニトロフルオロベンゼン;スルファニル酸;N-ヨードアセチル-N’-(5-スルホン酸-ナフチル)エチレンジアミン;アニリン;p-アミノ安息香酸;ビオチン;フルオレセインおよびこれらの誘導体(FITC、TAMRA、およびTexas Red);ジゴキシゲニン;5-ニトロ-3-ピラゾールカルバミド;4,5-ジメトキシ-2-ニトロシンアミド;2-(3,4-ジメトキシフェニル)-キノリン-4-カルバミド;2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-カルバミド;3-ヒドロキシ-2-キノキサリンカルバミド;4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL);ロテノンイソキサゾリン;(E)-2-(2-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン-4-イル)フェノジ)アセトアミド;7-(ジエチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸;2-アセトアミド-4-メチル-5-チアゾールスルホンアミド;およびp-メトキシフェニルピラゾポドフィルアミドを含む群から選択されるハプテンである。一実施形態では、免疫原性を付与することが可能な手段は、2,4-ジニトロフェニル(DNP)である。
【0021】
一実施形態では、方法は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞およびストレスを受けたLoVo細胞のうちの1つ、ならびに(ii)ストレスタンパク質を含む中間組成物「DS-A」を製造するためであり、ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞、またはストレスを受けたLoVo細胞のうちの1つは、ストレスタンパク質の産生をもたらす、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して耐性機構を発達させており、前記方法のステップb)は、ステップa)で培養したHT-29、HCT-116またはLoVo細胞を、同時にまたは逐次にインビトロで適用された以下のストレスに供することを含む:
(i)枯渇培地中、低酸素下、および/または低いpHでのインビトロ培養;好ましくは、2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)約0.25~約25Gy、好ましくは約1~約15Gyの範囲の総線量で、好ましくは約1~約20分の範囲の時間にわたるインビトロ放射線照射;好ましくは約10Gyの総線量で約1~約5分間にわたるインビトロ放射線照射、ならびに
(iii)約38℃~約45℃の範囲の温度で、約15分間~約4時間の範囲の時間にわたり適用されたインビトロ熱ショック;好ましくは約42℃の温度で約60分間にわたり適用されたインビトロ熱ショック。
【0022】
一実施形態では、方法は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞およびストレスを受けたLoVo細胞のうちの1つ、ならびに(ii)ストレスタンパク質を含む中間組成物「DS-B」を製造するためであり、ストレスを受けたHT-29細胞、ストレスを受けたHCT-116細胞、またはストレスを受けたLoVo細胞のうちの1つは、ストレスタンパク質の産生をもたらす、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して耐性機構を発達させており、前記方法のステップb)は、ステップa)で培養したHT-29、HCT-116またはLoVo細胞を、同時にまたは逐次にインビトロで適用された以下のストレスに供することを含む:
(i)枯渇培地中、低酸素下、および/または低いpHでのインビトロ培養;好ましくは、2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)少なくとも1つまたは複数の化学療法剤および/またはアルコールへの約6時間~約120時間の範囲の時間にわたるインビトロ曝露。
最新の実施形態では、少なくとも1つまたは複数の化学療法剤および/またはアルコールへのインビトロ曝露は、以下の通りであり得る:
-細胞がHT-29細胞の場合、(ii)でのインビトロ曝露は、約72時間にわたる、約13μMのオキサリプラチンに対するものであり;または
-細胞がHCT-116細胞の場合、(ii)でのインビトロ曝露は、約48時間にわたる、約315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)に対するものであり;または
-細胞がLoVo細胞の場合、(ii)でのインビトロ曝露は、約48時間にわたる、約5μMのフルオロウラシル(5-FU)に対するものである。
【0023】
本発明は、更に本発明の組成物の製造方法であって、以下のステップ:
a.6つの中間組成物を得るステップであって、6つの中間組成物が:
1)ストレスを受けたHT-29細胞およびストレスタンパク質を含む中間組成物「DS-A」、
2)ストレスを受けたHCT-116細胞およびストレスタンパク質を含む中間組成物「DS-A」、
3)ストレスを受けたLoVo細胞およびストレスタンパク質を含む中間組成物「DS-A」、
4)ストレスを受けたHT-29細胞およびストレスタンパク質を含む中間組成物「DS-B」、
5)ストレスを受けたHCT-116細胞およびストレスタンパク質を含む中間組成物「DS-B」、
6)ストレスを受けたLoVo細胞およびストレスタンパク質を含む中間組成物「DS-B」、であるステップ、
b.これら6つの中間組成物を共に混合するステップ
を含む方法に関する。
一実施形態では、6つの中間組成物は、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞と等しい比率で共に混合される。
【0024】
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
本明細書で使用される場合、「HT-29細胞」は、1964年に44才の女性の原発腫瘍から単離されたヒト結腸腺癌細胞株を指す。これは、特に、下記の配列多様性を含む:
-APC p.Blu853Ter(c.2557G>T)に関してヘテロ接合、
-APC p.Thr1556Asnfs*3(c.4666dupA)に関してヘテロ接合、
-BRAF p.Val600Glu(c.1799T>A)に関してヘテロ接合、
-PIK3CA p.Pro449Thr(c.1345C>A)に関してヘテロ接合、
-SMAD4 p.Gln311Ter(c.931C>T)に関してホモ接合、および
-TP53 p.Arg273His(c.818G>A)に関してホモ接合。
【0025】
この細胞株は、Cellosaurusデータベースでは受入番号「CVCL_0320」として、およびATCCリポジトリコレクションでは「HTB-38(商標)」として参照され、それぞれのリポジトリから販売されている。この細胞株に対する他の受入番号は、Banco Celulas do Rio de Janeiro(BCRJ)の「0111」;Leibniz Institute DSMZ-German Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbHの「ACC299」;General Collection of the European Collection of Authenticated Cell Cultures(ECACC)の「91072201」;Korean Cell Line Bank(KCLB)の「30038」;およびChina Center for Type Culture Collection(CCTCC)の「GDC0149」を含む。これらのコレクションの内容、特に、この細胞株の遺伝子型、HLA型判定、STRプロファイルおよび表現型に関する説明は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「HCT-116細胞」は、1981年に48才の男性の原発腫瘍から単離されたヒト結腸癌腫細胞株を指す。これは、特に、下記の配列多様性を含む:
-ACVR2A p.Lys437Argfs*5(c.1310delA)に関してホモ接合、
-BRCA2 p.Ile2675Aspfs*6(c.8021dupA)に関してヘテロ接合、
-CDKN2A p.Arg24Serfs*20(c.68dupG)に関してヘテロ接合、
-CDKN2A p.Asp74fs*21(c.220delG)に関してヘテロ接合、
-CDKN2A p.Glu33Argfs*20(c.97delG)に関してヘテロ接合、
-CTNNB1 p.Ser45del(c.133_135delTCT)に関してヘテロ接合、
-EP300 p.Met1470Cysfs*22(c.4408delA)に関してヘテロ接合、
-EP300 p.Asn1700Thrfs*9(c.5099delA)に関してヘテロ接合、
-KRAS p.Gly13Asp(c.38G>A)に関してヘテロ接合、
-PIK3CA p.His1047Arg(c.3140A>G)に関してヘテロ接合、および
-TGFBR2 p.Lys128Serfs*35(c.383delA)に関してホモ接合。
【0027】
この細胞株は、Cellosaurusデータベースでは受入番号「CVCL_0291」として、およびATCCリポジトリコレクションでは「CCL-247(商標)」として参照され、それぞれのリポジトリから販売されている。この細胞株に対する他の受入番号は、Banco Celulas do Rio de Janeiro(BCRJ)の「0288」;Leibniz Institute DSMZ-German Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbHの「ACC581」;General Collection of the European Collection of Authenticated Cell Cultures(ECACC)の「91091005」;およびKorean Cell Line Bank(KCLB)の「10247」を含む。これらのコレクションの内容、特に、この細胞株の遺伝子型、HLA型判定、STRプロファイルおよび表現型に関する説明は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「LoVo細胞」は、1971年に56才の男性の左鎖骨上領域の転移腫瘍のフラグメントから単離されたヒト結腸直腸腺癌を指す。これは、特に、下記の配列多様性を含む:
-ACVR2A p.Lys437Argfs*5(c.1310delA)に関してヘテロ接合、
-APC p.Arg1114Ter(c.3340C>T)に関してヘテロ接合、
-APC p.Met1431fs*42(c.4289delC)に関してヘテロ接合、
-APC p.Arg2816Gln(c.8447G>A)に関してヘテロ接合、
-B2M p.Leu15Phefs*41(c.43_44delCT)に関してヘテロ接合、
-FBXW7 p.Arg505Cys(c.1513C>T)に関してヘテロ接合、
-KRAS p.Gly13Asp(c.38G>A)に関してヘテロ接合、
-SMAD2 p.Ala292Val(c.875C>T)に関してヘテロ接合、および
-TGFBR2 p.Lys128Serfs*35(c.383delA)に関してホモ接合。
【0029】
この細胞株は、Cellosaurusデータベースでは受入番号「CVCL_0399」として、およびATCCリポジトリコレクションでは「CCL-229(商標)」として参照され、それぞれのリポジトリから販売されている。この細胞株に対する他の受入番号は、Banco Celulas do Rio de Janeiro(BCRJ)の「0332」;Leibniz Institute DSMZ-German Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbHの「ACC350」;General Collection of the European Collection of Authenticated Cell Cultures(ECACC)の「87060101」;およびKorean Cell Line Bank(KCLB)の「10229」を含む。これらのコレクションの内容、特に、この細胞株の遺伝子型、HLA型判定、STRプロファイルおよび表現型に関する説明は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」は、腫瘍成長の阻害に有効な任意の分子を指す。化学療法剤の例には、解剖治療化学(ATC)分類システムの亜群L01に記載のものが含まれる。化学療法剤のさらなる例としては、限定されないが、下記が挙げられる:
i.アルキル化剤、例えば、:
・クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、トロフォスファミド、クロラムブシル、メルファラン、プレドニムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、メクロレタミン、メクロレタミン酸化物・塩酸塩、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、ウラシルマスタードなどを含むナイトロジェンマスタード;
・カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、フォテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ストレプトゾシン、クロロゾトシンなどを含むニトロソウレア;
・ブスルファン、マンノスルファン、トレオスルファンなどを含むスルホン酸アルキル
・カルボコン、チオテパ、トリアジクオン、トリエチレンメラミン、ベンゾドーパ、メツレドーパ、ウレドーパ、などを含むアジリジン;プロカルバジンなどを含むヒドラジン;
・ダカルバジン、テモゾロミドなどを含むトリアゼン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaorarnide)、トリメチロールメラミンなどを含むエチレンイミンおよびメチラメラミン;
・およびミトブロニトール、ピポブロマン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンC、などを含む)、プリカマイシンなどを含むその他のアルキル化剤;
ii.アセトゲニン、例えば、ブラタシン、ブラタシノンなど;
iii.ベンゾジアゼピン、例えば、2-オキソクアゼパム、3-ヒドロキシフェナゼパム、ブロマゼパム、カマゼパム、カルブラゼパム、クロルジアゼポキシド、シナゼパム、シノラゼパム、クロナゼパム、クロニプラゼパム、クロラゼプ酸、シプラゼパム、デロラゼパム、デモキセパム、デスメチルフルニトラゼパム、デバゼピド、ジアゼパム、ジクラゼパム、ジフルジアゼパム、ドキセファゼパム、エルファゼパム、カルフルゼプ酸エチル、ジラゼプ酸エチル、ロフラゼプ酸エチル、フルブロマゼパム、フレタゼパム、フルジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルテマゼパム(Flutemazepam)、フルトプラゼパム、ホサゼパム、ギダゼパム、ハラゼパム、イクラゼパム、イラゼピン、ケナゼピン、ケタゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、ルフラドム、メクロナゼパム、メダゼパム、メニトラゼパム、メタクラゼパム、モトラゼパム、N-デスアルキルフルラゼパム、ニホキシパム、ニメタゼパム、ニテマゼパム、ニトラゼパム、ニトラゼパテ、ノルダゼパム、ノルテトラゼパム、オキサゼパム、フェナゼパム、ピナゼパム、ピボキサゼパム、プラゼパム、プロフラゼパム、クアゼパム、QH-II-66、レクラゼパム、RO4491533、Ro5-4864、SH-I-048A、スラゼパム、テマゼパム、テトラゼパム、チフルアドム、トルファゼパム、トリフルノルダゼパム(triflunordazepam)、ツクラゼパム、ウルダゼパム、アルフェンダザム、クロバザム、CP-1414S、ロフェンダザム、トリフルバザム、ギリソパム、GYKI-52466、GYKI-52895、ネリソパム、タランパネル、トフィソパム、アジナゾラム、アルプラゾラム、ブロマゾラム、クロナゾラム、エスタゾラム、ルアルプラゾラム、フルブロマゾラム、フルニトラゾラム、ニトラゾラム、ピラゾラム、トリアゾラム、ブレタゼニル、クリマゾラム、EVT-201、FG-8205、フルマゼニル、GL-II-73、イミダゼニル、123I-イオマゼニル、L-655,708、ロプラゾラム、ミダゾラム、PWZ-029、レミマゾラム、Ro15-4513、Ro48-6791、Ro48-8684、Ro4938581、サルマゼニル、SH-053-R-CH3-2’F、クロキサゾラム、フルタゾラム、ハロキサゾラム、メキサゾラム、オキサゾラム、ベンタゼパム、クロチアゼパム、ブロチゾラム、シクロチゾラム、デスクロロエチゾラム、エチゾラム、フルクロチゾラム、イスラパファント、JQ1、メチゾラム、オランザピン、テレンゼピン、ロピラゼパム、ザピゾラム、ラゾバザム、リパゼパム、ゾラゼパム、ゾメバザム、ゾメタピン、プレマゼパム、クラゾラム、アントラマイシン、アビザホン、リルマザホン、など。
iv.代謝拮抗薬、例えば、:
・アミノプテリン、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、プテロプテリン、ラルチトレキセド、デノプテリン、トリメトレキサート、ペメトレキセドなどを含む葉酸代謝拮抗薬;
・ペントスタチン、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、ネララビン、チオグアニン、メルカプトプリンなどを含むプリン類似体;
・フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン、ドキシフルリジン、テガフール、テガフール/ギメラシル/オテラシル、カルモフール、フロクスウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、アザシチジン、デシタビンなどを含むピリミジン類似体;および
・ヒドロキシカルバミドなど。
v.アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど;
vi.抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど;
vii.葉酸補充剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid)など;
viii.メイタンシノイド、例えば、メイタンシン、アンサミトシンなど;
ix.白金類似体、例えば、白金、カルボプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチンなど;
x.抗ホルモン剤、例えば、:
・タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾ-ル,4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、トレミフェンなどを含む抗エストロゲン剤;
・フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリンなどを含む抗アンドロゲン剤;
xi.トリコテセン、例えば、T2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、アングイディンなど;
xii.トキソイド、例えば、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、テセタキセルなど;
xiii.その他の化学療法剤、例えば、カンプトテシン(その誘導体:ベロテカン、コシテカン、エチリノテカン、ペゴル、エキサテカン、ギマテカン、イリノテカン、ラルトテカン、ルビテカン、シラテカン、SN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)、およびトポテカン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(その アドゼレシン、カルゼルシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8を含む);ドラスタチン;デュオカルマイシン(その合成類似体:KW-2189およびCBI-TMIを含む);エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチン、スポンギスタチン、アクラシノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カンニノマイシン;カルジノフィリン;クロモマイシン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン;デトルビシン;6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン;ドキソルビシン(モルフォリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン、デオキシドキソルビシンなどを含む);エピルビシン;エソルビシン;イダルビシン(idanrbicin);マルセロマイシン;ミコフェノール酸;ノガラルナイシン(nogalarnycin);オリボマイシン;ペプロマイシン;ポトフィロマイシン;ピューロマイシン;クエラマイシン;ロドルビシン;ストレプトニグリン(streptomgrin);ストレプトゾシン;ツベルシジン;ウベニメクス;ジノスタチン;ゾルビシン;アセグラトン;アルドホスファルニド(aldophospharnide)グリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルニチン;エリプチニウム酢酸;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンティナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲンナニウム(spirogennanium);テヌアゾン酸;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン(2,2’,2’’-trichlorotriethylarnine);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロムトール(mitobromtol);ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド;6-チオグアニン;ビンブラスチン;エトポシド;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;トポイソメラーゼI阻害剤SN38;ヂルルオロメチルオルニチン;レチノイン酸;など。
【0031】
本明細書で、タンパク質、ストレスタンパク質の文脈で使用される場合、「検出可能レベル」は、前記タンパク質が、従来からタンパク質の検出のために当業者により使用された手段および方法により検出できる量または濃度で、当該組成物中に存在することを意味する。このような手段および方法は、当該技術分野で周知であり、限定されないが、下記の実施例3~5で詳述した液体クロマトグラフタンデム型質量分析法(LC-MS/MS)などの質量分析法が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「ハプテン」は、タンパク質などの大きな担体に結合した場合にのみ免疫応答を誘発する小分子を指す。患者がハプテン-担体コンジュゲートに対する抗体を生成すると、ハプテンは、抗体に結合することができ得るが、通常、免疫応答を開始しない;この作用を行うことができるのは、ハプテン-担体コンジュゲートのみである。ハプテンの例には、限定されないが、2,4-ジニトロフェニル(DNP);2,4-ジニトロフルオロベンゼン;スルファニル酸;N-ヨードアセチル-N’-(5-スルホン酸-ナフチル)エチレンジアミン;アニリン;p-アミノ安息香酸;ビオチン;フルオレセインおよびこれらの誘導体(FITC、TAMRA、およびTexas Red);ジゴキシゲニン;5-ニトロ-3-ピラゾールカルバミド;4,5-ジメトキシ-2-ニトロシンナムアミド(nitrocinnamide);2-(3,4-ジメトキシフェニル)キノリン-4-カルバミド;2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-カルバミド;3-ヒドロキシ-2-キノキサリンカルバミド;4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL);ロテノンイソキサゾリン;(E)-2-(2-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン-4-イル)フェノジ)アセトアミド;7-(ジエチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸;2-アセトアミド-4-メチル-5-チアゾールスルホンアミド;およびp-メトキシフェニルピラゾポドフィルアミドが挙げられる。
【0033】
「過剰発現」、およびその逸脱は、本明細書では、参照細胞または参照細胞集団と比較して、対象細胞または対象細胞集団において、10%高い、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれより高い、マーカーまたはタンパク質の相対的または絶対的な発現および/または存在量を指す。或いはまたは更に、過剰発現は、参照細胞または参照細胞集団と比較して、対象細胞または対象細胞集団において、少なくとも10%高い、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%高い、またはそれより高い、平均蛍光強度(MFI)も指し得る。特に、参照細胞は、対象細胞と同じ細胞株由来であるが、本明細書で記載の組成物または中間組成物を製造する方法に供されていない細胞(または参照細胞集団は、それらの細胞を含む、好ましくは、それらの細胞からなる集団である);特に、例えば、10%FBS中などの古典的条件で培養され、以下に記載される、インビトロで適用された代謝ストレス、放射線照射、熱および/または化学的ストレスのいずれにも供されていない;或いは、枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中で、低酸素下で、または低いpH(例えば、pH6.5未満)で(すなわち、代謝ストレスに供されて)培養され、以下に記載される、インビトロで適用された放射線照射、熱ストレスおよび/または化学的ストレスのいずれの他のストレスにも供されていない、対象細胞と同じ細胞株由来の細胞(好ましくは、それらの細胞を含むまたは好ましくは、それらの細胞からなる集団)である。
【0034】
「過少発現」、およびその逸脱は、本明細書では、参照細胞または参照細胞集団と比較して、対象細胞または対象細胞集団において、10%低い、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれより低い、マーカーまたはタンパク質の相対的または絶対的な発現および/または存在量を指す。或いはまたは更に、過少発現(overexpression)は、参照細胞または参照細胞集団と比較して、対象細胞または対象細胞集団において、少なくとも10%低い、好ましくは少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれより低い、平均蛍光強度(MFI)も指し得る。特に、参照細胞は、対象細胞と同じ細胞株由来であるが、本明細書で記載の組成物または中間組成物を製造する方法に供されていない細胞である(または参照細胞集団は、それらの細胞を含む、好ましくは、それらの細胞からなる集団である);特に、例えば、10%FBS中などの古典的条件で培養され、以下に記載される、インビトロで適用された代謝ストレス、放射線照射、熱および/または化学的ストレスのいずれにも供されていない;或いは、枯渇培地(例えば、がん細胞の増殖および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中で、低酸素下で、または低いpH(例えば、pH6.5未満)で(すなわち、代謝ストレスに供されて)培養され、以下に記載される、インビトロで適用された放射線照射、熱ストレスおよび/または化学的ストレスのいずれの他のストレスにも供されていない、対象細胞と同じ細胞株由来の細胞(好ましくは、それらの細胞を含むまたは好ましくは、それらの細胞からなる集団)である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ワクチン組成物」は、薬学的に許容可能な賦形剤中に、少なくとも1つの抗原または免疫原(例えば、免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質など)および必要に応じてアジュバントを含み、投与時に患者において免疫応答を誘導するために有用である組成物を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アジュバント」は、投与時に対象において、抗原(例えば、免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質など)に対する免疫応答を高める、増大させるおよび/または増強する物質を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な賦形剤」は、活性成分ではなく(すなわち、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞でも、免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質でもない)、患者に投与した際に、有害な、アレルギーまたは他の好ましくない反応を生じない、医薬組成物またはワクチン組成物の固体、半固体または液体成分を指す。ほとんどのこれらの薬学的に許容可能な賦形剤は、例えば、Allen(Ed.),2017.Ansel’s pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems(11th ed.).Philadelphia,PA:Wolters Kluwer;Remington,Allen & Adeboye(Eds.),2013.Remington:The science and practice of pharmacy(22nd ed.).London:Pharmaceutical Press;and Sheskey,Cook & Cable(Eds.),2017.Handbook of pharmaceutical excipients(8th ed.).London:Pharmaceutical Press、に詳細に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0038】
薬物製剤(DP/STC-1010)
本発明は、(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116、またはLoVo細胞のうちの少なくとも1つ、ならびに(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる組成物であって、ストレスおよび/または耐性タンパク質が、インビトロで適用されたストレスに応答して、これらのHT-29、HCT-116またはLoVo細胞のうちの少なくとも1つにより産生された組成物に関する。
【0039】
一実施形態では、組成物は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ならびに(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用されたストレスに応答して、これらのHT-29細胞により産生された。
一実施形態では、組成物は、(i)ストレスを受けたHCT-116細胞、および(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用されたストレスに応答して、これらのHCT-116細胞により産生された。
一実施形態では、組成物は、(i)ストレスを受けたLoVo細胞、および(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用されたストレスに応答して、これらのLoVo細胞により産生された。
一実施形態では、組成物は、(i)ストレスを受けたHT-29およびHCT-116細胞、および(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用されたストレスに応答して、これらのHT-29およびHCT-116細胞により産生された。
一実施形態では、組成物は、(i)ストレスを受けたHT-29およびLoVo細胞、および(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用されたストレスに応答して、これらのHT-29およびLoVo細胞により産生された。
一実施形態では、組成物は、(i)ストレスを受けたHCT-116およびLoVo細胞、および(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用されたストレスに応答して、これらのHCT-116およびLoVo細胞により産生された。
一実施形態では、組成物は、(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、および(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用されたストレスに応答して、これらのHT-29、HCT-116およびLoVo細胞により産生された。
【0040】
以下では、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む組成物に対するいかなる言及も、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞のうちの1つ、2つまたは3つを含む組成物を包含することが意図される。
本発明では、組成物は、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む。「ストレスを受けた」とは、これらの細胞がインビトロで適用されたストレスに応答して、耐性機構を発達させていることを意味する。結果として、これらの細胞は、組成物の一部を形成するストレスおよび/または耐性タンパク質を産生している。
【0041】
一実施形態では、ストレスは、放射線照射、熱ストレス、化学的ストレス、代謝ストレスおよび任意のそれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択される。
一実施形態では、ストレスは組み合わせであり、同時または逐次であるかに関係なく、放射線照射、熱ストレス、化学的ストレス、および代謝ストレスのうちの2種、3種またはそれより多くを含む。
【0042】
一実施形態では、本発明の組成物は、下記を含むかまたはそれからなる:
一ストレスを受けたHT-29細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して、これらのHT-29細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
一ストレスを受けたHCT-116細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して、これらのHCT-116細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;および
一ストレスを受けたLoVo細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して、これらのLoVo細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質。
【0043】
一実施形態では、本発明の組成物は、下記を含むまたは下記からなる:
一ストレスを受けたHT-29細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して、これらのHT-29細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
一ストレスを受けたHCT-116細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して、これらのHCT-116細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
一ストレスを受けたLoVo細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して、これらのLoVo細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質。
【0044】
一実施形態では、本発明の組成物は、下記を含むかまたはそれからなる:
一ストレスを受けたHT-29細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して、これらのHT-29細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質。
一ストレスを受けたHCT-116細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して、これらのHCT-116細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
一ストレスを受けたLoVo細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して、これらのLoVo細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
一ストレスを受けたHT-29細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して、これらのHT-29細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
一ストレスを受けたHCT-116細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して、これらのHCT-116細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
一ストレスを受けたLoVo細胞、ならびにインビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して、これらのLoVo細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質。
【0045】
一実施形態では、ストレスは放射線照射である。放射線照射は、好ましくは、細胞を死滅または不活性化させないように十分に低いが、ストレスおよび/または耐性タンパク質の産生を誘導するために十分に高い線量である。一実施形態では、放射線照射は、約0.25~約25Gyの範囲の総線量、好ましくは約1~約15Gy、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15Gyの総線量を細胞に照射することを含む、またはそれらの総線量で細胞に照射することからなる。一実施形態では、照射時間は、約1~約20分の範囲、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20分であり、好ましくは、約1~約5分である。一実施形態では、放射線照射は、10Gyの総線量で約1.5~2分間の時間にわたり、すなわち、約5~約6.6Gy/分の線量で、細胞に照射することを含むかまたはそれからなる。一実施形態では、放射線照射は、10Gyの総線量で約5分間の時間にわたり、すなわち、約2Gy/分の線量で、細胞に照射することを含むかまたはそれからなる。
【0046】
一実施形態では、ストレスは熱ストレスである。熱ストレスは、好ましくは、細胞を死滅または不活性化させないように十分に低いが、ストレスおよび/または耐性タンパク質の産生を誘導するために十分に高い温度である。一実施形態では、熱ストレスは、37℃より高い温度で、好ましくは、約38℃~約45℃の範囲の温度で、例えば、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、または45℃の温度で、細胞を培養することを含むかまたはそれからなる。一実施形態では、熱ストレスは、約15~約4時間、好ましくは、約30分~約2時間の範囲にわたり、例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分の時間にわたり細胞に適用された。一実施形態では、熱ストレスは、約42℃の温度で約60分間の時間にわたり細胞を培養することを含むかまたはそれからなる。
【0047】
一実施形態では、ストレスは化学的ストレスである。化学ストレスは、細胞を少なくとも1つまたは複数の化学薬剤に、好ましくは、細胞を死滅または不活性化させないように十分に低いが、ストレスおよび/または耐性タンパク質の産生を誘導するために十分に高い用量で用量曝露することにより実施される。一実施形態では、化学的ストレスは、細胞を少なくとも1つまたは複数の化学療法剤および/またはアルコールに曝露することを含むかまたはそれからなる。一実施形態では、化学的ストレスは、約6~約120時間、好ましくは、約24~約96時間の範囲にわたり、例えば、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、または96時間にわたり細胞に適用された。一実施形態では、化学的ストレスは、細胞、好ましくは、HT-29細胞を、オキサリプラチンに、好ましくは、約1μM~約20μMの範囲の濃度で、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20μMの濃度で、より好ましくは、約13μMの濃度で、約60時間~約84時間にわたり、好ましくは、約72時間にわたり、曝露することを含むかまたはそれからなる。一実施形態では、化学的ストレスは、細胞、好ましくは、HCT-116細胞を、SN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)に、好ましくは、約20nM~約400nMの範囲の濃度で、例えば、20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、または400nMの濃度で、より好ましくは、約31.5nM,100nMまたは315nMの濃度で、約36時間~約60時間にわたり、好ましくは、約48時間にわたり、曝露することを含むかまたはそれからなる。一実施形態では、化学的ストレスは、細胞、好ましくは、LoVo細胞を、フルオロウラシル(5-FU)に、好ましくは、約0.5μM~約15μMの範囲の濃度で、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、または15μMの濃度で、より好ましくは、約5μMの濃度で、約36時間~約60時間にわたり、好ましくは、約48時間にわたり、曝露することを含むかまたはそれからなる。
【0048】
一実施形態では、ストレスは代謝ストレスである。代謝ストレスは、細胞を死滅または不活性化させないが、ストレスおよび/または耐性タンパク質の産生を誘導する非生理学的細胞培地中で細胞を培養することにより実施される。一実施形態では、代謝ストレスは、枯渇培地(例えば、がん細胞の増殖および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中で、低酸素下で、低いpH(例えば、pH6.5未満)で、細胞を培養することを含むかまたはそれからなる。一実施形態では、代謝ストレスは、例えば、2%FBS培地(古典的に使用される10%FBS培地ではなく)などの低血清培養条件中で細胞を培養することを含むかまたはそれからなる。
【0049】
一実施形態では、本発明の組成物は、下記を含むかまたはそれからなる:
-ストレスを受けたHT-29細胞、ならびに(i)2%FBS培地中の低血清培養条件下でのインビトロ培養、(ii)10Gyの総線量による約1~約5分の時間にわたるインビトロ放射線照射、および(iii)約42℃の温度で約60分間にわたるインビトロ熱ショック、に応答して、これらのHT-29細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
-ストレスを受けたHCT-116細胞、ならびに(i)2%FBS培地中の低血清培養条件下でのインビトロ培養、(ii)10Gyの総線量による約1~約5分の時間にわたるインビトロ放射線照射、および(iii)約42℃の温度で約60分間にわたるインビトロ熱ショック、に応答して、これらのHCT-116細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
-ストレスを受けたLoVo細胞、ならびに(i)2%FBS培地中の低血清培養条件下でのインビトロ培養、(ii)10Gyの総線量による約1~約5分の時間にわたるインビトロ放射線照射、および(iii)約42℃の温度で約60分間にわたるインビトロ熱ショック、に応答して、これらのLoVo細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
-ストレスを受けたHT-29細胞、ならびに(i)2%FBS培地中の低血清培養条件下でのインビトロ培養、および(ii)約72時間にわたる約13μMのオキサリプラチンへのインビトロ曝露、に応答して、これらのHT-29細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;
-ストレスを受けたHCT-116細胞、ならびに(i)2%FBS培地中の低血清培養条件下でのインビトロ培養、および(ii)約48時間にわたる約31.5nM、100nMまたは315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)へのインビトロ曝露、に応答して、これらのHCT-116細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質;および
-ストレスを受けたLoVo細胞、ならびに(i)2%FBS培地中の低血清培養条件下でのインビトロ培養、および(ii)約48時間にわたる約5μMのフルオロウラシル(5-FU)へのインビトロ曝露、に応答して、これらのLoVo細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質。
【0050】
一実施形態では、組成物は、非増殖性であるHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む。「非増殖性」または「不活性」により、これらの細胞が、細胞増殖、すなわち、細胞が成長および分裂して2個の娘細胞を産生するプロセスを実行することが可能ではないことを意味する。
【0051】
当業者なら、細胞を非増殖性にする手段および方法をよく知っている。例えば、細胞は、細胞を死滅させるまたは不活化するのに十分な線量での放射線照射により、非増殖性にすることができる。一実施形態では、放射線照射は、細胞を非増殖性にするために、細胞を25Gy以上の総線量で照射することを含むかまたはそれからなる。或いはまたは更に、細胞は、例えば、約10%~約50%v/vのエタノールを用いた、エタノール固定により非増殖性にすることができる。或いはまたは更に、細胞は、例えば、少なくとも1回の凍結-解凍サイクルにより、非増殖性にすることができる。或いはまたは更に、細胞は、例えば、ハプテン化によるなどの免疫原性を付与することが可能な手段に連結するか、またはそれと複合体形成することにより、非増殖性にすることができる。
【0052】
当業者はまた、細胞が非増殖性かそうでないかを判断する手段および方法、例えば、(増殖の完全な欠如を評価するために)細胞培養による及び/又はヨウ化プロピジウム(生細胞と死細胞を識別する)による生存率試験を実施することにより判断する方法、をよく知っている。
【0053】
一実施形態では、非増殖性細胞は、構造的に損なわれておらず、即ち、それらは、完全な細胞膜を示す。一実施形態では、非増殖性細胞は、構造的に完全ではなく、即ち、それらは、完全な細胞膜を示さない。後者の場合では、細胞は、組成物中に、膜フラグメント、オルガネラおよび他の細胞質成分の形態で存在する。
【0054】
一実施形態では、細胞は、インビトロで適用されたストレスに応答して、それらの耐性機構を発達させた後、したがって、ストレスおよび/または耐性タンパク質を産生した後、非増殖性になっている。一実施形態では、細胞は、ストレスを受けた数時間後に、好ましくは、ストレスを受けた12、24、36、48、60、72、84、96時間超後に、非増殖性になっている。
【0055】
一実施形態では、組成物は、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)、CD95(FAS受容体)および/またはCD243(MDR-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つを過剰発現している、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む。
【0056】
一実施形態では、組成物は、例えば、10%FBS中などの古典的条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、(iii)熱ストレスおよび(iv)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞と比較して;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、(ii)熱ストレスおよび(iii)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞と比較して;少なくとも10%多くの、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多くの、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)、CD95(FAS受容体)および/またはCD243(MDR-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つを発現するストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む。更にまたは或いは、例えば、10%FBS中などの古典的条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、(iii)熱ストレスおよび(iv)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞より;ならびに/またはインビトロで適用された、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、(ii)熱ストレスおよび(iii)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞集団より;少なくとも10%多くの、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多くの、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)、CD95(FAS受容体)および/またはCD243(MDR-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つが、組成物中で発現されている。更にまたは或いは、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)、CD95(FAS受容体)および/またはCD243(MDR-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つに関するの平均蛍光強度(MFI)は、例えば、10%FBS中などの古典的条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、(iii)熱ストレスおよび(iv)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞より;ならびに/またはインビトロで適用された、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、(ii)熱ストレスおよび(iii)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞集団より、組成物中で少なくとも2倍高い、好ましくは少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍またはそれより高い。
【0057】
本発明では、組成物は、ストレスおよび/または耐性タンパク質を含む。
一実施形態では、これらのストレスおよび/または耐性タンパク質は、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞の膜に会合されており、すなわち、外表面または内表面に関わらず、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞の表面に露出しており;および/またはHT-29、HCT-116およびLoVo細胞内に含まれ、即ち、それらの細胞質またはそれらのオルガネラのいずれか内に含まれ;および/または例えば、それらがこれらの細胞により分泌されたために、組成物中で遊離状態であり、即ち、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞の膜に結合せず、またそれらの細胞内に含まれてもいない。
本発明では、組成物は、免疫原性であるストレスおよび/または耐性タンパク質を含む。「免疫原性」または「免疫コンピテント」とは、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、前記患者に投与される場合、患者において免疫応答(例えば、抗体の産生)を誘発することが可能であることを意味する。
【0058】
一実施形態では、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、それらを免疫原性にすることが可能な分子の存在下、またはプロセスによって免疫原性にされている。一実施形態では、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、免疫原性を付与することが可能な手段との連結により、または複合体形成により、免疫原性にされている。
免疫原性を付与することが可能な手段および方法は、当業者に周知である。一実施形態では、免疫原性を付与することが可能な手段は、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞に、またはそれらの環境に天然で存在しない1つまたは複数の分子を含むかまたはからなる。このような手段は一般的に、「抗原」と呼ばれる。いくつかの抗原は、それ自体で液性または細胞性免疫応答を誘発でき、したがって、「免疫原」と見なされる。このような抗原のいくつかの例には、限定されないが、アジュバントが挙げられる。当業者は、がんワクチンでの使用に好適するアジュバントをよく知っており、これは、ストレスおよび/または耐性タンパク質と複合体を形成すると、それらを免疫原性にする。例えば、Dubensky & Reed,2010(Semin Immunol.22(3):155-61)またはCuzzubbo et al.,2021(Front Immunol.11:615240)を参照されたい。
【0059】
しかし、一部の抗原は、それ自体では免疫応答を開始できず、前もって、担体、例えば、ストレスおよび/または耐性タンパク質とコンジュゲート化することが必要である。後者の抗原は、「不完全抗原」と呼ばれることもあり、限定されないが、ハプテンが含まれる。
ハプテンのいくつかの例には、限定されないが、2,4-ジニトロフェニル(DNP);2,4-ジニトロフルオロベンゼン;スルファニル酸;N-ヨードアセチル-N’-(5-スルホン酸-ナフチル)エチレンジアミン;アニリン;p-アミノ安息香酸;ビオチン;フルオレセインおよびこれらの誘導体(FITC、TAMRA、およびTexas Red);ジゴキシゲニン;5-ニトロ-3-ピラゾールカルバミド;4,5-ジメトキシ-2-ニトロシンアミド;2-(3,4-ジメトキシフェニル)キノリン-4-カルバミド;2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-カルバミド;3-ヒドロキシ-2-キノキサリンカルバミド;4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL);ロテノンイソキサゾリン;(E)-2-(2-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン-4-イル)フェノジ)アセトアミド;7-(ジエチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸;2-アセトアミド-4-メチル-5-チアゾールスルホンアミド;およびp-メトキシフェニルピラゾポドフィルアミドが挙げられる。
【0060】
一実施形態では、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、ハプテン化される。一実施形態では、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、2,4-ジニトロフェニル化(DNP)される。
当業者なら、ストレスおよび/または耐性タンパク質などのタンパク質をハプテン化する手段および方法をよく知っている。
【0061】
免疫原性を付与することが可能な別の手段は、オプソニン化を含み、これは、ストレスおよび/または耐性タンパク質へのオプソニンの結合を伴う周知の方法である。
【0062】
一実施形態では、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、放射線照射耐性タンパク質、熱ストレス耐性タンパク質、化学的ストレス耐性タンパク質、代謝ストレス耐性タンパク質、およびこれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0063】
一実施形態では、組成物は、具体的に例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、(iii)熱ストレスおよび(iv)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116もしくはLoVo細胞のいずれかと比較して;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどによる代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、(ii)熱ストレスおよび(iii)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞と比較して;検出可能なレベルで、以下のタンパク質のうちの少なくとも1つまたは複数を特に含む:チロシン-タンパク質キナーゼHCK、ポリピリミジントラクト-結合タンパク質3、E3ユビキチン-タンパク質リガーゼRNF213、セリン/アルギニンリッチスプライシング因子8、EHドメイン含有タンパク質4、LIMドメインのみのタンパク質7、DNA依存性RNAポリメラーゼRNAポリメラーゼIサブユニットRPA2、2’-5’-オリゴアデニル酸シンターゼ3、WDリピートおよびHMGボックスDNA結合タンパク質1、β-2-糖タンパク質1、セリン/トレオニンタンパク質ホスファターゼPP1-γ触媒サブユニット、アニリーン、非定型ミオシン-Ib、AP-2複合体サブユニットα-2、サイクリン依存性キナーゼ2、転写1-α/βのシグナル伝達物質および活性化剤、プミリオホモログ1、ATP結合カセットサブファミリーFメンバー1、Rac GTPアーゼ活性化タンパク質1、シンギュリン、シンタキシン結合タンパク質3、ミトコンドリアカルニチン/アシルカルニチン担体タンパク質、インポーチンサブユニットα-7、リボソームタンパク質S6キナーゼα-4、Ras関連タンパク質Rab-5A、リボヌクレオシド二リン酸レダクターゼ大サブユニット、低分子量フォスフォチロシンタンパク質ホスファターゼ、リボヌクレオシド二リン酸レダクターゼサブユニットM2、ADPリボース化因子様タンパク質1、ダイナミン-2、Ras関連タンパク質Rab-13、IST1ホモログ、フォークヘッドボックスタンパク質K1、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、Bcl2様タンパク質1、三要素モチーフ含有タンパク質29、キネシン様タンパク質KIF22、メチルステロールモノオキシゲナーゼ1、カベオラ関連タンパク質1、BRCA1関連ATM活性化剤1、タンパク質FAM83H、タンパク質O-マンノシルトランスフェラーゼTMTC3、核内転写因子カッパ-Bキナーゼ相互作用タンパク質の阻害剤、ジンクフィンガーCCCH型抗ウィルスタンパク質1、核小体タンパク質9、ロイシンジッパータンパク質1、ポリホメオティック様タンパク質2、テンシン-4、LEMドメイン含有タンパク質2、インポーチン-4、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子1、PDZおよびLIMドメインタンパク質5、UAP56相互作用因子、MMS19ヌクレオチド除去修復タンパク質ホモログ、キネシン様タンパク質KIF2C、ADPリボースグリコヒドラーゼMACROD1、キネシン様タンパク質KIFC1、ATP依存性RNAヘリカーゼDHX33、棘皮動物微小管関連タンパク質様4、ファンコーニ貧血グループIタンパク質、EHドメイン含有タンパク質3、オピオイド成長因子受容体、γ-アデュシン、DNA dC-dU編集酵素APOBEC-3B、ニューロプラスチン、亜鉛トランスポーター1、グルタレドキシン-3、サイトゾルチミジンキナーゼ、ミリストイル化アラニンリッチC-キナーゼ基質、UMP-CMPキナーゼ、マクロファージキャッピングタンパク質、高移動度グループタンパク質HMGI-C、スムーセリン、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼIBサブユニットγ、転写開始因子TFIIDサブユニット9、不活性水酸化ステロイドデヒドロゲナーゼ様タンパク質1、ボレアリン、la関連タンパク質4、NADHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1αサブ複合体アセンブリ因子2、オーロラキナーゼB、ゴルジ結合植物病因関連タンパク質1、ATP-結合カセットサブファミリーFメンバー2、アルマジロリピート含有X連鎖タンパク質3、ラギュレーター複合体タンパク質LAMTOR3、推定ATP依存性RNAヘリカーゼDDX20、V型プロトンATPアーゼサブユニットH、およびカルシウム結合タンパク質39。
【0064】
一実施形態では、組成物は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、(iii)熱ストレスおよび(iv)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116もしくはLoVo細胞のいずれかと比較して;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどによる代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、(ii)熱ストレスおよび(iii)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞と比較して、以下のタンパク質のうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している:HLAクラスI組織適合抗原Bアルファ鎖、HLAクラスI組織適合抗原Aアルファ鎖、HLAクラスI組織適合抗原Cアルファ鎖、CD9抗原、核自己抗原Sp-100、ATP結合カセットサブファミリーDメンバー3、ATP結合カセットサブファミリーEメンバー1、ATP結合カセットサブファミリーFメンバー1、ATP結合カセットサブファミリーFメンバー2、Bcl2様タンパク質1、Bcl2結合転写因子1、シトクロムcオキシダーゼサブユニット2、ミトコンドリアシトクロムcオキシダーゼサブユニット4アイソフォーム1、ミトコンドリアシトクロムcオキシダーゼサブユニット5A、ペルオキシソームアシルコエンザイムAオキシダーゼ1、ヒートショックタンパク質β1、ヒートショックタンパク質HSP90β、ヒートショック同族71kDaタンパク質、ヒートショック70kDaタンパク質6、ヒートショック70kDaタンパク質4、リボヌクレアーゼ阻害剤、核内転写因子κ-Bキナーゼ相互作用タンパク質の阻害剤、Ras関連タンパク質Rab-5A、Ras関連タンパク質Rab-6A、Ras関連タンパク質Rab-5C、Ras関連タンパク質Rab-7a、Ras関連タンパク質Rab-13、Ras関連タンパク質Rab-25、Ras関連タンパク質Rab-15、Ras関連タンパク質Rab-8A、Ras関連タンパク質Rab-10、Ras関連タンパク質Rab-1b、Ras関連タンパク質Rab-1A、Ras関連タンパク質Rap-1A、Ras関連C3ボツリヌス毒素基質1、Ras関連タンパク質Rab-8B、Ras関連タンパク質Rab-18、Ras関連タンパク質Rab-2c、X線修復交差補完タンパク質6、DNAミスマッチ修復タンパク質Msh6、MMS19ヌクレオチド除去修復タンパク質ホモログ、タンパク質輸送タンパク質SEc16A、ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットα1、促進性グルコーストランスポーターメンバー1溶質輸送体ファミリー2、ミトコンドリアトリカルボン酸輸送タンパク質、モノカルボン酸トランスポーターメンバー1、タンパク質輸送タンパク質Sec61サブユニットβ、タンパク質輸送タンパク質Sec61サブユニットαアイソフォーム1、輸送およびゴルジ組織タンパク質1ホモログ、アデノシン3’-ホスホ5’-ホスホ硫酸トランスポーター1、トランスポーチン-1、および亜鉛トランスポーター1。
【0065】
一実施形態では、組成物は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、(iii)熱ストレスおよび(iv)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116もしくはLoVo細胞のいずれかと比較して;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどによる代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、(ii)熱ストレスおよび(iii)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞と比較して、以下の膜タンパク質のうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している:HLAクラスI組織適合抗原Bアルファ鎖、HLAクラスI組織適合抗原Aアルファ鎖、HLAクラスI組織適合抗原Cアルファ鎖、CD9抗原、ATP結合カセットサブファミリーDメンバー3、Bcl2様タンパク質1、シトクロムcオキシダーゼサブユニット2、ミトコンドリアシトクロムcオキシダーゼサブユニット4アイソフォーム1、核内転写因子カッパBキナーゼ相互作用タンパク質の阻害剤、ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットα1、促進性グルコーストランスポーターメンバー1溶質輸送体ファミリー2、ミトコンドリアトリカルボン酸輸送タンパク質、モノカルボン酸トランスポーターメンバー1、タンパク質輸送タンパク質Sec61サブユニットβ、タンパク質輸送タンパク質Sec61サブユニットαアイソフォーム1、輸送およびゴルジ組織タンパク質1ホモログ、アデノシン3’-ホスホ5’-ホスホ硫酸トランスポーター1、および亜鉛トランスポーター1。
【0066】
一実施形態では、組成物は特に、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、(iii)熱ストレスおよび(iv)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116もしくはLoVo細胞のいずれかと比較して;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、(ii)熱ストレスおよび(iii)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞と比較して以下のタンパク質のうちの少なくとも1つまたは複数を検出可能なレベルで含む:ATP結合カセットサブファミリーFメンバー1、ATP結合カセットサブファミリーFメンバー2、Bcl2様タンパク質1、核内転写因子カッパBキナーゼ相互作用タンパク質の阻害剤、Ras関連タンパク質Rab-5A、Ras関連タンパク質Rab-13、MMS19ヌクレオチド除去修復タンパク質ホモログ、および亜鉛トランスポーター1。
【0067】
一実施形態では、組成物は特に、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、(iii)熱ストレスおよび(iv)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116もしくはLoVo細胞のいずれかと比較して;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、(ii)熱ストレスおよび(iii)化学的ストレスのいずれにも供されていないHT-29、HCT-116および/もしくはLoVo細胞と比較して、以下の膜タンパク質のうちの少なくとも1つまたは複数を、検出可能なレベルで含む:Bcl2様タンパク質1、核内転写因子カッパBキナーゼ相互作用タンパク質の阻害剤、および亜鉛トランスポーター1。
【0068】
一実施形態では、組成物は、腫瘍関連抗原(TAA)および/または腫瘍特異的抗原(TSA)を更に含み得る。
「腫瘍抗原」は、がん細胞により産生された抗原性物質または分子を意味する。腫瘍抗原は、2つのカテゴリー:がん細胞上にのみ存在し、非がん細胞上には存在しない「腫瘍特異的抗原」または「TSA」;ならびにがん細胞および非がん細胞上に存在する「腫瘍関連抗原」または「TAA」に分類される。
【0069】
共通のTSA、特に、ネオ抗原である。本明細書で使用される場合、「ネオ抗原」は、例えば、発がん時に遺伝子不安定性により生じた1つまたは複数の変異を含む遺伝子によりがん細胞でコードされる異常な腫瘍特異的抗原を指す。結果として、この変異遺伝子によりコードされるアミノ酸配列は、正常な細胞には見出されない異常なタンパク質の産生をもたらす変異をそれ自体に含み得る。これらの変異タンパク質は、非自己タンパク質または異種タンパク質と見なされ、したがって、ネオ抗原特異的T細胞受容体により認識され、免疫系を活性化し、がん細胞に対する免疫系の攻撃を引き起こし得る。ネオ抗原はまた、ウィルス感染症、選択的スプライシングおよび/または遺伝子再構成によっても産生され得る。例えば、Zhang et al.(2021.Front Immunol.12:672356)またはJiang et al.(2019.J Hematol Oncol.12(1):93)を参照されたい。
【0070】
一実施形態では、TAAおよび/またはTSAは、HT-29、HCT-116およびLoVoに特異的である。
一実施形態では、TAAおよび/またはTSAは本来免疫原性である。一実施形態では、TAAおよび/またはTSAは、それらを免疫原性にすることが可能な分子または方法により、免疫原性にされ得る、またはそれらの免疫原性が高められ得る。
免疫原性を付与することが可能な手段は、当業者に周知であり、上記で記載されている。これらには、限定されないが、特に、ハプテンが挙げられる。
【0071】
一実施形態では、これらのTAAおよび/またはTSAは、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞の膜に会合しており、すなわち、外表面または内表面に関わらず、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞の表面に露出しており;および/またはHT-29、HCT-116およびLoVo細胞内に含まれ、即ち、それらの細胞質またはそれらのオルガネラのいずれか内に含まれ;および/または例えば、それらがこれらの細胞により分泌されたために、組成物中で遊離状態であり、即ち、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞の膜に会合せず、またそれらの細胞内に含まれてもいない。
【0072】
一実施形態では、組成物は、医薬組成物またはワクチン組成物であり、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を更に含む。
薬学的に許容可能な賦形剤としては、限定されないが、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液およびエタノール、グルコース、スクロース、デキストラン、マンノース、マンニトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)、リン酸塩および酢酸塩の溶液、ゼラチン、コラーゲン、カーボポール(登録商標)、植物油などが挙げられる。また、好適な防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、抗菌剤および緩衝剤、例えば、BHA、BHT、クエン酸、アスコルビン酸、テトラサイクリンなどを更に含んでもよい。
本発明の組成物中に使されし得る薬学的に許容可能な賦形剤の他の例としては、限定されないが、イオン交換体、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムなどのミョウバン、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒトの血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
更に、いくつかの薬学的に許容可能な賦形剤には、界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、担体(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)を含有する、例えば溶媒および分散媒、好適なそれらの混合物および例えば落花生油および胡麻油などの植物油など)、等張剤(例えば、糖類または塩化ナトリウムなど)、被覆剤(例えば、レシチンなど)、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、チメロサールなど)、緩衝液(例えば、ホウ酸、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、等張化剤(例えば、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなど)、抗酸化剤および安定化剤(例えば、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素など)、非イオン性浸潤剤または清澄剤(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282およびチロキサポールなど)、粘度調整剤(例えば、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ワセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなど)が含まれ得る。
【0073】
アジュバントの例としては、限定されないが、ヘルパーペプチド、アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム(ミョウバンとも呼ばれる)、リン酸アルミニウム、など)、フロイント不完全アジュバント、フロイント完全アジュバント、サポニン、Merckアジュバント65、スミスクライン・ビーチャムアジュバントAS-2、AquillaアジュバントQS-21、MPL(商標)免疫賦活薬、3d-MPL、LEIF、カルシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、アシル化チロシン、アシル化糖、カチオン誘導体化ポリサッカライド、アニオン誘導体化ポリサッカライド、ポリホスファゼン、生分解性マイクロスフェア、モノホスホリルリピドA、ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン、サイトカイン(例えば、インターロイキン-2、インターロイキン-12、インターロイキン-4、インターロイキン-7、など)、CpG含有オリゴヌクレオチド、およびこれらの組み合わせ、が挙げられる。
【0074】
一実施形態では、組成物は、約105~約108個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、好ましくは、約106~約107個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、例えば、約1x106、2x106、3x106、4x106、5x106、6x106、7x106、8x106、9x106、または1x107個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む。一実施形態では、約3x106個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む。
【0075】
一実施形態では、組成物は、組成物1mL当り、約106~約109個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、好ましくは、組成物1mL当り、約106~約108個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、例えば、組成物1mL当り、約1x107、2x107、3x107、4x107、5x107、6x107、7x107、8x107、9x107、または1x108個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む。一実施形態では、組成物1mL当り、約3x107個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含む。
【0076】
一実施形態では、組成物は、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞(即ち1:1:1)の等しい比率を含む。一実施形態では、組成物は、ストレスを受けたHCT-116またはLoVo細胞よりも、少なくとも1.5、2または2.5倍多くのストレスを受けたHT-29を含む。一実施形態では、組成物は、ストレスを受けたHT-29またはLoVo細胞よりも、少なくとも1.5、2または2.5倍多くのストレスを受けたHCT-116細胞を含む。一実施形態では、組成物は、ストレスを受けたHT-29またはHCT-116細胞よりも、少なくとも1.5、2または2.5倍多くのストレスを受けたLoVo細胞を含む。
【0077】
一実施形態では、組成物は、下記を含む:
-約105~約108個のストレスを受けたHT-29細胞、好ましくは、約106~約107個のストレスを受けたHT-29細胞、例えば、約1x106、2x106、3x106、4x106、5x106、6x106、7x106、8x106、9x106、または1x107個のストレスを受けたHT-29細胞、
-約105~約108個のストレスを受けたHCT-116細胞、好ましくは、約106~約107個のストレスを受けたHCT-116細胞、例えば、約1x106、2x106、3x106、4x106、5x106、6x106、7x106、8x106、9x106、または1x107個のストレスを受けたHCT-116細胞、および
-約105~約108個のストレスを受けたLoVo細胞、好ましくは、約106~約107個のストレスを受けたLoVo細胞、例えば、約1x106、2x106、3x106、4x106、5x106、6x106、7x106、8x106、9x106、または1x107個のストレスを受けたLoVo細胞。
【0078】
中間生成物
本発明は、上述の組成物の調製に有用な中間組成物にも関する。
一実施形態では、中間組成物は、上記で定義される少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む。
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、および(ii)ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれからなり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して、これらのHT-29、HCT-116およびLoVo細胞により産生された。放射線照射、熱ストレスおよび代謝ストレスは、前に記載されている。
一実施形態では、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、免疫原性である。ストレスおよび/または耐性タンパク質を免疫原性にするための手段および方法は、前に記載されている。
【0079】
一実施形態では、中間組成物は、上述の、腫瘍関連抗原(TAA)および/または腫瘍特異的抗原(TSA)を更に含み得る。一実施形態では、TAAおよび/またはTSAは、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞に特異的である。一実施形態では、TAAおよび/またはTSAは本来免疫原性である。一実施形態では、TAAおよび/またはTSAは、免疫原性を付与することが可能な手段に連結するか、またはそれと複合体形成することにより、免疫原性にされ得る、またはそれらの免疫原性が高められ得る。免疫原性を付与することが可能な手段は、当業者に周知であり、上記で記載されている。これらには、限定されないが、特に、ハプテンが挙げられる。
【0080】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ならびに(ii)下記に応答してこれらのHT-29細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)約0.25~約25Gyの範囲の総線量、好ましくは約1~約15Gy、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15Gyの総線量での放射線照射(一実施形態では、照射時間は、約1~約20分の範囲、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20分であり、好ましくは、約1~約5分の範囲である)、ならびに
(iii)約15~約4時間、好ましくは、約30分~約2時間の範囲にわたり、例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分の時間にわたり細胞に適用された、約38℃~約45℃の範囲の温度、例えば、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、または45℃の温度でのインビトロ熱ショック。
【0081】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ならびに(ii)下記に応答してこれらのHT-29細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)10Gyの総線量で約1~約5分間にわたるインビトロ照射、および
(iii)約42℃の温度で約60分間にわたるインビトロ熱ショック。
この中間組成物は、本明細書では、「HT-29 DS-A」と呼ばれる。
【0082】
一実施形態では、HT-29 DS-Aは、放射線照射耐性タンパク質、熱ストレス耐性タンパク質、代謝ストレス耐性タンパク質、およびこれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択されるストレスおよび/または耐性タンパク質を含む。
一実施形態では、HT-29 DS-A細胞は、以下のマーカーのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つを過剰発現している:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)および/またはCD107(LAMP-1)。
一実施形態では、HT-29 DS-A細胞は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、および(iii)熱ストレスのいずれにも供されていないHT-29細胞と比較して;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHT-29細胞と比較して;少なくとも10%多い、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多くの、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)、および/またはCD107(LAMP-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つを発現している。更にまたは或いは、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)、および/またはCD107(LAMP-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つは、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、および(iii)熱ストレスのいずれにも供されていないHT-29細胞の集団より;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHT-29細胞の集団より、HT-29 DS-A細胞の集団において、少なくとも10%多く、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多く発現される。更にまたは或いは、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)および/またはCD107(LAMP-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つの平均蛍光強度(MFI)は、例えば、10%FBS中などの古典的条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、および(iii)熱ストレスのいずれにも供されていないHT-29細胞の集団より;ならびに/またはインビトロで適用された、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHT-29細胞の集団より;HT-29 DS-A細胞の集団において、少なくとも2倍高い、好ましくは少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍またはそれより高い。
【0083】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHT-29細胞と比較して、HT-29 DS-A細胞は、以下のタンパク質:ポリ(rC)結合タンパク質2、rhoグアニンヌクレオチド交換因子1、ゴルジンサブファミリーBメンバー1、β-2-糖タンパク質1、プラコフィリン-3、タンパク質FAM83H、タンパク質輸送タンパク質Sec16A、逆フォルミン-2、アニリーン、タンパク質ECT2、プレクチン、エピプラキン、増殖マーカータンパク質Ki-67、小胞体膜内在性タンパク質VIP36、およびリソソーム膜糖タンパク質1のうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している。
【0084】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHT-29細胞と比較して、HT-29 DS-A細胞は、以下のタンパク質:ポリ(rC)結合タンパク質2、rhoグアニンヌクレオチド交換因子1、ゴルジンサブファミリーBメンバー1、β-2-糖タンパク質1、プラコフィリン-3、タンパク質FAM83H、タンパク質輸送タンパク質Sec16A、逆フォルミン-2、アニリーン、およびタンパク質ECT2のうちの少なくとも1つまたは複数を、検出可能なレベルで、特異的に発現している。
【0085】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHT-29細胞と比較して、HT-29 DS-A細胞は、以下の膜および/または細胞表面タンパク質:小胞体膜内在性タンパク質VIP36、リソソーム膜糖タンパク質1、リボソーム結合タンパク質1、クニッツ型プロテアーゼ阻害剤2、リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ5、エメリン、タンパク質LYRIC、極長鎖脂肪酸伸長酵素タンパク質1、およびタンパク質輸送タンパク質Sec61サブユニットγの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している。
【0086】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHT-29細胞と比較して、HT-29 DS-A細胞は、以下の細胞表面タンパク質:ヒートショック関連70kDaタンパク質、アネキシン、アノクタミン-6、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3、セロトランスフェリン、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10B、クラスタリン、フューリン、HLAクラスII組織適合抗原γ鎖、CD109抗原、塩化物細胞内チャネルタンパク質4、プロトカドヘリン脂肪1、天然耐性関連マクロファージタンパク質2、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10A、カルパイン-5、MHCクラスIポリペプチド関連配列A、高移動度グループタンパク質B1、テトラスパニン-15、UL16結合タンパク質2、インテグリンβ-7、ソニックヘッジホッグタンパク質、トール様受容体3、β-2-糖タンパク質1、組織因子、プロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシンタイプ6、内皮タンパク質C受容体、容積感受性アニオンチャネルサブユニットLRRC8A、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体3、亜鉛トランスポーターZIP6、HLAクラスII組織適合抗原DMアルファ鎖、シスチン/グルタミン酸トランスポーター、リゾホスファチジン酸受容体2、シンデカン-1、ヒアルロニダーゼ-2、インテグリンα4、ヒスチジンリッチ糖タンパク質、形質転換増殖因子β-1プロタンパク質、およびメタロプロテイナーゼ阻害剤2のうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している。
【0087】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたHCT-116細胞、ならびに(ii)下記に応答してこれらのHCT-116細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)約0.25~約25Gyの範囲の総線量、好ましくは約1~約15Gy、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15Gyの総線量での放射線照射(一実施形態では、照射時間は、約1~約20分の範囲、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20分であり、好ましくは、約1~約5分の範囲である)、および
(iii)約15~約4時間、好ましくは、約30分~約2時間の範囲にわたり、例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分の時間にわたり細胞に適用された、約38℃~約45℃の範囲の温度、例えば、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、または45℃の温度でのインビトロ熱ショック。
【0088】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたHCT-116細胞、ならびに(ii)下記に応答してこれらのHCT-116細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)10Gyの総線量で約1~約5分間にわたるインビトロ放射線照射、および
(iii)約42℃の温度で約60分間にわたるインビトロ熱ショック。
この中間組成物は、本明細書では、「HCT-116 DS-A」と呼ばれる。
【0089】
一実施形態では、HCT-116 DS-Aは、放射線照射耐性タンパク質、熱ストレス耐性タンパク質、代謝ストレス耐性タンパク質、およびこれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択されるストレスおよび/または耐性タンパク質を含む。
一実施形態では、HCT-116 DS-A細胞は、以下のマーカーのうちの少なくとも1つまたは2つを過剰発現している:Cmhsp70.1(HSP70)および/またはCD227(MUC1)。
【0090】
一実施形態では、HCT-116 DS-A細胞は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、および(iii)熱ストレスのいずれにも供されていないHCT-116細胞と比較して;および/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHCT-116細胞と比較して;少なくとも10%多い、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多い、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、および/またはCD227(MUC1)のうちの少なくとも1つまたは2つを発現している。更にまたは或いは、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)およびCD227(MUC1)のうちの少なくとも1つまたは2つは、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、および(iii)熱ストレスのいずれにも供されていないHCT-116細胞の集団より;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHCT-116細胞の集団より;HCT-116 DS-A細胞の集団において、少なくとも10%多く、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多く発現される。更にまたは或いは、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)およびCD227(MUC1)のうちの少なくとも1つまたは2つの平均蛍光強度(MFI)は、例えば、10%FBS中などの古典的条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、および(iii)熱ストレスのいずれにも供されていないHCT-116細胞の集団より;ならびに/またはインビトロで適用された、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHCT-116細胞の集団より;HCT-116 DS-A細胞の集団において、少なくとも2倍高い、好ましくは少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍またはそれより高い。
【0091】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHCT-116細胞と比較して、HCT-116 DS-A細胞は、以下のタンパク質:ポリ(rC)結合タンパク質2、rhoグアニンヌクレオチド交換因子1、ゴルジンサブファミリーBメンバー1、β-2-糖タンパク質1、プラコフィリン-3、タンパク質FAM83H、タンパク質輸送タンパク質Sec16A、逆フォルミン-2、アニリーン、タンパク質ECT2、プレクチン、エピプラキン、増殖マーカータンパク質Ki-67、小胞体膜内在性タンパク質VIP36、およびリソソーム膜糖タンパク質1のうちのの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している。
【0092】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHCT-116細胞と比較して、HCT-116 DS-A細胞は、以下のタンパク質:ポリ(rC)結合タンパク質2、rhoグアニンヌクレオチド交換因子1、ゴルジンサブファミリーBメンバー1、β-2-糖タンパク質1、プラコフィリン-3、タンパク質FAM83H、タンパク質輸送タンパク質Sec16A、逆フォルミン-2、アニリーン、およびタンパク質ECT2のうちの少なくとも1つまたは複数を、検出可能なレベルで、特異的に発現している。
【0093】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないHCT-116細胞と比較して、HCT-116 DS-A細胞は、以下の膜および/または細胞表面タンパク質の少なくとも1つまたは複数を過剰発現している:インテグリンα6、リソソーム膜糖タンパク質リソソーム膜糖タンパク質1、リボソーム結合結合タンパク質1、デルタ(14)ステロールレダクターゼLBR、ミトコンドリアプロトン/カルシウム交換輸送体タンパク質、RRP12様タンパク質、拡張シナプトタグミン(extended synaptotagmin)-1、タンパク質輸送タンパク質Sec61サブユニットαアイソフォーム1、溶質輸送体ファミリー2、促進性グルコーストランスポーターメンバー1、デスモグレイン-2、キネクチン、タンパク質LYRIC、スフィンゴシン-1-リン酸リアーゼ1、小胞関連膜タンパク質関連タンパク質A、リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ7、シグナル認識粒子受容体サブユニットβ、トーシン-1A-相互作用タンパク質1、ER膜タンパク質複合体サブユニット1、ステロール-4α-カルボン酸-3-デヒドロゲナーゼ(脱炭酸)、膜関連プロゲステロン受容体成分1、CD44抗原MICOS複合体サブユニットMIC26、膜貫通型emp24ドメイン含有タンパク質4、ORM1-様タンパク質2、ドリコールリン酸、マンノシルトランスフェラーゼサブユニット3、細胞骨格関連タンパク質4、膜貫通型タンパク質43、レチノールデヒドロゲナーゼ(dehydrogenase)11、シグナルペプチダーゼ複合体サブユニット2、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ2、コイルドコイルドメイン含有タンパク質47、超長鎖エノイルCoAレダクターゼ、プロトカドヘリンFat 1、膜貫通型emp24ドメイン含有タンパク質7、カベオリン-1、NF-X1タイプジンクフィンガータンパク質NFXL1、受容体発現強化タンパク質6、受容体発現促進タンパク質6、ミトコンドリアHIG1ドメインファミリーメンバー2A、小型内在性膜タンパク質20、DHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1αサブ複合体サブユニット13、DHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1βサブ複合体サブユニット3、ミトコンドリアチアミンピロリン酸担体、ミトコンドリア分裂1タンパク質、アミンオキシダーゼ[フラビン含有]B、ミトコンドリア内膜タンパク質膜タンパク質OXA1L、2-ヒドロキシアシル-CoAリアーゼ2、ニカリン、細胞膜カルシウム輸送ATPアーゼ1、ミオフェリン、およびカチオン非依存性マンノース6リン酸受容体。
【0094】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたLoVo細胞、ならびに(ii)下記に応答してこれらのLoVo細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)約0.25~約25Gyの範囲の総線量、好ましくは約1~約15Gy、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15Gyの総線量での放射線照射(一実施形態では、照射時間は、約1~約20分の範囲、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20分であり、好ましくは、約1~約5分の範囲である)、ならびに
(iii)約15~約4時間、好ましくは、約30分~約2時間の範囲にわたり、例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分の時間にわたり細胞に適用された、約38℃~約45℃の範囲の温度、例えば、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、または45℃の温度でのインビトロ熱ショック。
【0095】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたLoVo細胞、ならびに(ii)下記に応答してこれらのLoVo細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)10Gyの総線量で約1~約5分間にわたるインビトロ放射線照射、および
(iii)約42℃の温度で約60分間にわたるインビトロ熱ショック。
この中間組成物は、本明細書では、「LoVo DS-A」と呼ばれる。
【0096】
一実施形態では、LoVo DS-Aは、放射線照射耐性タンパク質、熱ストレス耐性タンパク質、代謝ストレス耐性タンパク質、およびこれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択されるストレスおよび/または耐性タンパク質を含む。
【0097】
一実施形態では、LoVo DS-A細胞は、以下のマーカーのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つを過剰発現している:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)および/またはCD107(LAMP-1)。
【0098】
一実施形態では、LoVo DS-A細胞は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、および(iii)熱ストレスのいずれにも供されていないLoVo細胞と比較して;および/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないLoVo細胞と比較して、少なくとも10%多い、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多い、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)、および/またはCD107(LAMP-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つを発現している。更にまたは或いは、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)、および/またはCD107(LAMP-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つは、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、および(iii)熱ストレスのいずれにも供されていないLoVo細胞の集団より;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないLoVo細胞の集団より;LoVo DS-A細胞の集団において、少なくとも10%多く、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多く発現される。更にまたは或いは、以下のマーカー:Cmhsp70.1(HSP70)、CD227(MUC1)およびCD107(LAMP-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つの平均蛍光強度(MFI)は、例えば、10%FBS中などの古典的条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射、および(iii)熱ストレスのいずれにも供されていないLoVo細胞の集団より;ならびに/またはインビトロで適用された、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射、および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないLoVo細胞の集団より、LoVo DS-A細胞の集団において、少なくとも2倍高い、好ましくは少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍またはそれより高い。
【0099】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないLoVo細胞と比較して、LoVo DS-A細胞は、以下のタンパク質:ポリ(rC)結合タンパク質2、rhoグアニンヌクレオチド交換因子1、ゴルジンサブファミリーBメンバー1、β-2-糖タンパク質1、プラコフィリン-3、タンパク質FAM83H、タンパク質輸送タンパク質Sec16A、逆フォルミン-2、アニリーン、タンパク質ECT2、プレクチン、エピプラキン、増殖マーカータンパク質Ki-67、小胞体膜内在性タンパク質VIP36、およびリソソーム膜糖タンパク質1のうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している。
【0100】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないLoVo細胞と比較して、LoVo DS-A細胞は、以下のタンパク質:ポリ(rC)結合タンパク質2、rhoグアニンヌクレオチド交換因子1、ゴルジンサブファミリーBメンバー1、β-2-糖タンパク質1、プラコフィリン-3、タンパク質FAM83H、タンパク質輸送タンパク質Sec16A、逆フォルミン-2、アニリーン、およびタンパク質ECT2のうちの少なくとも1つまたは複数を、検出可能なレベルで、特異的に発現している。
【0101】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された(i)放射線照射および(ii)熱ストレスのいずれにも供されていないLoVo細胞と比較して、LoVo DS-A細胞は、以下の膜および/または細胞表面タンパク質の少なくとも1つまたは複数を過剰発現している:小胞体膜内在性タンパク質VIP36、核小体複合体タンパク質4ホモログ、シグナルペプチダーゼ複合体触媒サブユニットSEC11A、シグナル認識粒子受容体サブユニットβ、マイクロソームグルタチオンS-トランスフェラーゼ1、DPH-シトクロムP450レダクターゼ、超長鎖(3R)-3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドラターゼ3、マンノシルオリゴ糖グルコシダーゼ、オキシステロール結合タンパク質関連タンパク質8、受容体発現促進タンパク質5、MICOS複合体サブユニットMIC26、β-1,3-ガラクトシル-O-グリコシル糖タンパク質 β-1,6-N-アセチルグルコサミニル転移酵素3、ミトコンドリアATPシンターゼ膜サブユニットDAPIT、ミトコンドリアATPシンターゼサブユニットf、CDGSH鉄硫黄ドメイン含有タンパク質2、ビタミンKエポキシドレダクターゼ複合体サブユニット1様タンパク質1、タンパク質FAM162A、エルリン-1、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ1、CYB5B_ヒトシトクロムb5タイプB、レチノールデヒドロゲナーゼ11、膜貫通型emp24ドメイン含有タンパク質2、超長鎖エノイル-CoAレダクターゼ、3-β-ヒドロキシステロイド-デルタ(8),デルタ(7)-イソメラーゼ、モノカルボン酸トランスポーター1,HLAクラスI組織適合抗原Bアルファ鎖、エルリン-2、CD9抗原、ATPシンターゼタンパク質8、ミトコンドリア分裂プロセスタンパク質1、シトクロムcオキシダーゼサブユニットNDUFA4、DHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1αサブ複合体サブユニット13、DHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1βサブ複合体サブユニット4、DHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1βサブ複合体サブユニット3、ミトコンドリア分裂1タンパク質、およびBRI3結合タンパク質。
【0102】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、ならびに(ii)ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して、これらのHT-29、HCT-116およびLoVo細胞により産生された。化学的ストレスおよび代謝ストレスは、前に記載されている。
一実施形態では、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、免疫原性である。ストレスおよび/または耐性タンパク質を免疫原性にするための手段および方法は、前に記載した。
【0103】
一実施形態では、中間組成物は、上述の、腫瘍関連抗原(TAA)および/または腫瘍特異的抗原(TSA)を更に含み得る。一実施形態では、TAAおよび/またはTSAは、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞に特異的である。一実施形態では、TAAおよび/またはTSAは本来免疫原性である。一実施形態では、TAAおよび/またはTSAは、免疫原性を付与することが可能な手段に連結するか、またはそれと複合体形成することにより、免疫原性にされ得る、またはそれらの免疫原性が高められ得る。免疫原性を付与することが可能な手段は、当業者に周知であり、前に記載されている。これらには、限定されないが、特に、ハプテンが挙げられる。
【0104】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ならびに(ii)下記に応答してこれらのHT-29細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)少なくとも1つまたは複数の化学療法剤および/またはアルコールへの約6時間~約120時間、好ましくは、約24~約96時間の範囲にわたり、例えば、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、または96時間にわたるインビトロ曝露。
【0105】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ならびに(ii)下記に応答してこれらのHT-29細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、および
(ii)約72時間にわたる、約13μMのオキサリプラチンへのインビトロ曝露。
この中間組成物は、本明細書では、「HT-29 DS-B」と呼ばれる。
【0106】
一実施形態では、HT-29 DS-Bは、放射線照射耐性タンパク質、熱ストレス耐性タンパク質、代謝ストレス耐性タンパク質、およびこれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択されるストレスおよび/または耐性タンパク質を含む。
【0107】
一実施形態では、HT-29 DS-B細胞は、以下のマーカーのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つを過剰発現している:CD54(ICAM-1)、CD95(FAS受容体)および/またはCD107(LAMP-1)。
【0108】
一実施形態では、HT-29 DS-B細胞は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)化学的ストレス(例えば、約72時間にわたる約13μMのオキサリプラチンへのインビトロ曝露)のいずれにも供されていないHT-29細胞と比較して;および/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレス(例えば、約72時間にわたる約13μMのオキサリプラチンへのインビトロ曝露)に供されていないHT-29細胞と比較して、少なくとも10%多い、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多い、以下のマーカー:CD54(ICAM-1)、CD95(FAS受容体)、および/またはCD107(LAMP-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つを発現している。更にまたは或いは、以下のマーカー:CD54(ICAM-1)、CD95(FAS受容体)、および/またはCD107(LAMP-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つは、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)化学的ストレス(例えば、約72時間にわたる約13μMのオキサリプラチンへのインビトロ曝露)のいずれにも供されていないHT-29細胞の集団より;および/または例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレス(例えば、約72時間にわたる約13μMのオキサリプラチンへのインビトロ曝露)に供されていないHT-29細胞の集団より、HT-29 DS-B細胞の集団において、少なくとも10%多い、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多く発現される。更にまたは或いは、以下のマーカー:CD54(ICAM-1)、CD95(FAS受容体)、および/またはCD107(LAMP-1)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つの平均蛍光強度(MFI)は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)化学的ストレス(例えば、約72時間にわたる約13μMのオキサリプラチンへのインビトロ曝露)のいずれにも供されていないHT-29細胞の集団より;および/または例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレス(例えば、約72時間にわたる約13μMのオキサリプラチンへのインビトロ曝露)に供されていないHT-29細胞の集団より、HT-29 DS-B細胞の集団において、少なくとも2倍高い、好ましくは、少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍またはそれより高い。
【0109】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレスに供されていないHT-29細胞と比較して、HT-29 DS-B細胞は、以下のタンパク質:β-2-糖タンパク質1、ヒストンH2Aタイプ1、ポリ(rC)結合タンパク質2、キネクチン、プレクチン、およびNADHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1αサブ複合体サブユニット7のうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している。
【0110】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレスに供されていないHT-29細胞と比較して、HT-29 DS-B細胞は、以下のタンパク質:β-2-糖タンパク質1、ヒストンH2Aタイプ1、およびポリ(rC)結合タンパク質2のうちの少なくとも1つまたは複数を検出可能なレベルで、特異的に発現している。
【0111】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレスに供されていないHT-29細胞と比較して、HT-29 DS-B細胞は、以下の膜および/または細胞表面タンパク質:リボソーム結合タンパク質1、およびNADPH--シトクロムP450レダクターゼのうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している。
【0112】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレスに供されていないHT-29細胞と比較して、HT-29 DS-B細胞は、以下の細胞表面タンパク質のうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している:CD109抗原、HLAクラスII組織適合抗原γ鎖、HLAクラスI組織適合抗原アルファ鎖F、ヒアルロナン媒介運動受容体、インテグリンβ8、インテグリンβ3、プロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシンタイプ6、クラスタリン、セロトランスフェリン、天然耐性関連マクロファージタンパク質2、MHCクラスIポリペプチド関連配列A、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10B、内皮タンパク質C受容体、カドヘリンEGF LAG7回膜貫通G型受容体3、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10A、シスチン/グルタミン酸トランスポーター、組織因子、形質転換増殖因子β-1プロタンパク質、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3、アノクタミン-6、メタロプロテイナーゼ阻害剤2、トール様受容体3、容量調節性アニオンチャネルサブユニットLRRC8A、テトラスパニン-15、亜鉛トランスポーターZIP6、フューリン、プロトカドヘリンfat 1、ヒアルロニダーゼ-2、リゾホスファチジン酸受容体2、高移動度グループタンパク質B1、塩化物細胞内チャネルタンパク質4、UL16結合タンパク質2、カルパイン-5、アネキシンA9、ヒスチジンリッチ糖タンパク質、インテグリンα4、およびヒートショック関連70kDaタンパク質2。
【0113】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたHCT-116細胞、および(ii)下記に応答してこれらのHCT-116細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)少なくとも1つまたは複数の化学療法剤および/またはアルコールへの約6時間~約120時間、好ましくは、約24~約96時間の範囲にわたる、例えば、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、または96時間にわたるインビトロ曝露。
【0114】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたHCT-116細胞、ならびに(ii)下記に応答してこれらのHCT-116細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、および
(ii)約48時間にわたる、約31.5nM、100nMまたは315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)へのインビトロ曝露。
この中間組成物は、本明細書では、「HCT-116 DS-B」と呼ばれる。
【0115】
一実施形態では、HCT-116 DS-Bは、放射線照射耐性タンパク質、熱ストレス耐性タンパク質、代謝ストレス耐性タンパク質、およびこれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択されるストレスおよび/または耐性タンパク質を含む。
【0116】
一実施形態では、HCT-116 DS-B細胞は、以下のマーカー:CD66(CEA)を過剰発現している。
【0117】
一実施形態では、HCT-116 DS-B細胞は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる約31.5nM、100nMまたは315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)へのインビトロ曝露)のいずれにも供されていないHCT-116細胞と比較して;および/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる約31.5nM、100nMまたは315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)へのインビトロ曝露)に供されていないHCT-116細胞と比較して、少なくとも10%多い、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多い、マーカーCD66(CEA)を発現している。更にまたは或いは、マーカーCD66(CEA)は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる約31.5nM、100nMまたは315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)へのインビトロ曝露)のいずれにも供されていないHCT-116細胞の集団より;および/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる約31.5nM、100nMまたは315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)へのインビトロ曝露)へのインビトロ曝露)に供されていないHCT-116細胞の集団より、HCT-116 DS-B細胞の集団中で、少なくとも10%多く、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多く発現されている。更にまたは或いは、マーカーCD66(CEA)の平均蛍光強度(MFI)は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる約31.5nM、100nMまたは315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)へのインビトロ曝露)のいずれにも供されていないHCT-116細胞の集団より、および/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる約31.5nM、100nMまたは315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)へのインビトロ曝露)に供されていないHCT-116細胞の集団より、HCT-116 DS-B細胞の集団において、少なくとも2倍高く、好ましくは、少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍またはそれより高い。
【0118】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレスに供されていないHCT-116細胞と比較して、HCT-116 DS-B細胞は、以下のタンパク質:β-2-糖タンパク質1、ヒストンH2Aタイプ1、ポリ(rC)結合タンパク質2、キネクチン、プレクチン、およびNADHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1αサブ複合体サブユニット7のうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している。
【0119】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレスに供されていないHCT-116細胞と比較して、HCT-116 DS-B細胞は、以下のタンパク質:β-2-糖タンパク質1、ヒストンH2Aタイプ1、およびポリ(rC)結合タンパク質2のうちの少なくとも1つまたは複数を検出可能なレベルで、特異的に発現している。
【0120】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレスに供されていないHCT-116細胞と比較して、HCT-116 DS-B細胞は、以下の膜および/または細胞表面タンパク質のうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している:ミトコンドリアリン酸担体タンパク質、インテグリンβ4、リソソーム膜糖タンパク質1、CD44抗原、リボソーム結合タンパク質1、タンパク質輸送タンパク質Sec61サブユニットαアイソフォーム1、キネクチン、HLAクラスI組織適合抗原Aアルファ鎖、リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ7、膜関連プロゲステロン受容体成分1、マイクロソームグルタチオンS-トランスフェラーゼ1、NADHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1βサブ複合体サブユニット4、デスモグレイン-2、インテグリンα3、トーシン-1A-相互作用タンパク質1、細胞膜カルシウム輸送ATPアーゼ1、スフィンゴシン-1-リン酸リアーゼ1、V型プロトンATPアーゼ116kDaサブユニットa1、ミトコンドリア内膜タンパク質OXA1L、ミトコンドリアNADHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1βサブ複合体サブユニット5、膜貫通型タンパク質43、アミンオキシダーゼ[フラビン含有]B、タンパク質輸送タンパク質Sec61サブユニットβ、分泌担体関連膜タンパク質3、タンパク質FAM162A、レチノールデヒドロゲナーゼ11、ADPリボース化因子様タンパク質8B、NADHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1βサブ複合体サブユニット3、ドリコールリン酸マンノシルトランスフェラーゼサブユニット3、ミトコンドリアチアミンピロリン酸担体、およびORM1様タンパク質2。
【0121】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたLoVo細胞、および(ii)下記に応答してこれらのLoVo細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)少なくとも1つまたは複数の化学療法剤および/またはアルコールへの約6時間~約120時間、好ましくは、約24~約96時間の範囲にわたる、例えば、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、または96時間にわたるインビトロ曝露。
【0122】
一実施形態では、中間組成物は、(i)ストレスを受けたLoVo細胞、ならびに(ii)下記に応答してこれらのLoVo細胞により産生されたストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、および
(ii)約48時間にわたる、約5μMのフルオロウラシル(5-FU)へのインビトロ曝露。
この中間組成物は、本明細書では、「LoVo DS-B」と呼ばれる。
【0123】
一実施形態では、LoVo DS-Bは、放射線照射耐性タンパク質、熱ストレス耐性タンパク質、代謝ストレス耐性タンパク質、およびこれらの組み合わせを含むかまたはそれらからなる群から選択されるストレスおよび/または耐性タンパク質を含む。
【0124】
一実施形態では、LoVo DS-B細胞は、以下のマーカー:CD243(MDR-1)およびCD66(CEA)のうちの少なくとも1つまたは2つを過剰発現している;好ましくは、LoVo DS-B細胞は、CD243(MDR-1)を過剰発現している。
【0125】
一実施形態では、LoVo DS-B細胞は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる、約5μMのフルオロウラシル(5-FU)へのインビトロ曝露)のいずれにも供されていないLoVo細胞と比較して;ならびに/または例えば、2%FBS中で培養されるなどにより代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる、約5μMのフルオロウラシル(5-FU)へのインビトロ曝露)に供されていないLoVo細胞と比較して、少なくとも10%多くの、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多くの、マーカー:CD243(MDR-1)およびCD66(CEA)のうちの少なくとも1つまたは2つ、好ましくは、マーカー:(MDR-1)を発現している。更にまたは或いは、以下のマーカー:CD243(MDR-1)およびCD66(CEA)のうちの少なくとも1つまたは2つ、好ましくは、CD243(MDR-1)は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる、約5μMのフルオロウラシル(5-FU)へのインビトロ曝露)のいずれにも供されていないLoVo細胞の集団より、および/または例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる、約5μMのフルオロウラシル(5-FU)へのインビトロ曝露)に供されていないLoVo細胞の集団より、LoVo DS-B細胞の集団において、少なくとも10%多く、好ましくは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれより多く発現されている。更にまたは或いは、以下のマーカー:CD243(MDR-1)およびCD66(CEA)のうちの少なくとも1つまたは2つ、好ましくは、CD243(MDR-1)の平均蛍光強度(MFI)は、例えば、10%FBS中などの古典的な条件で培養され、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる、約5μMのフルオロウラシル(5-FU)へのインビトロ曝露)のいずれにも供されていないLoVo細胞の集団より、および/または例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレス(例えば、約48時間にわたる、約5μMのフルオロウラシル(5-FU)へのインビトロ曝露)に供されていないLoVo細胞の集団より;LoVo DS-B細胞の集団において、少なくとも10%多い、好ましくは、少なくとも2倍高い、好ましくは、少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍またはそれより高い。
【0126】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレスに供されていないLoVo細胞と比較して、LoVo DS-B細胞は、以下のタンパク質:β-2-糖タンパク質1、ヒストンH2Aタイプ1、ポリ(rC)結合タンパク質2、キネクチン、プレクチン、およびNADHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]1αサブ複合体サブユニット7のうちの少なくとも1つまたは複数を過剰発現している。
【0127】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレスに供されていないLoVo細胞と比較して、LoVo DS-B細胞は、以下のタンパク質:β-2-糖タンパク質1、ヒストンH2Aタイプ1、およびポリ(rC)結合タンパク質2のうちの少なくとも1つまたは複数を検出可能なレベルで、特異的に発現している。
【0128】
一実施形態では、例えば、2%FBS中で培養されるなどの代謝ストレスに供されているが、インビトロで適用された化学的ストレスに供されていないLoVo細胞と比較して、LoVo DS-B細胞は、以下の膜および/または細胞表面タンパク質のうちの少なくとも1つまたは複数の次を過剰発現している:核孔膜糖タンパク質210、レチクロン-4、NADPH--シトクロムP450レダクターゼ、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ3、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4、小胞関連膜タンパク質関連タンパク質A、ミトコンドリアトリカルボン酸輸送タンパク質、キネクチン、小胞関連膜タンパク質関連タンパク質B/C、超長鎖(3R)-3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドラターゼ3、小胞体膜内在性タンパク質VIP36、超長鎖エノイルCoAレダクターゼ、マイクロソームグルタチオンS-トランスフェラーゼ1、シトクロムb5タイプB、ミトコンドリアATPシンターゼ膜サブユニットDAPIT、ミトコンドリアATPシンターゼサブユニットf、シトクロムcオキシダーゼサブユニット2、ミトコンドリアヘムタンパク質シトクロムc1、HLAクラスI組織適合抗原Bアルファ鎖、タンパク質LYRIC、モノカルボン酸トランスポーター1、シトクロムcオキシダーゼサブユニットNDUFA4、マンノシルオリゴ糖グルコシダーゼ、シグナルペプチダーゼ複合体触媒サブユニットSEC11A、タンパク質FAM162A、膜貫通型emp24ドメイン含有タンパク質2、レチノールデヒドロゲナーゼ11、エルリン-1、BRI3結合タンパク質、3-β-ヒドロキシステロイド-デルタ(8),デルタ(7)-イソメラーゼ、受容体発現促進タンパク質5、CDGSH鉄硫黄ドメイン含有タンパク質2、CD9抗原、拡張シナプトタグミン-2、超長鎖アシルCoAシンテターゼ、クニッツ型プロテアーゼ阻害剤2、CD166抗原、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ1、白血球表面抗原表面抗原CD47、タパシン、およびβ-1,3-ガラクトシル-O-グリコシル糖タンパク質 β-1,6-N-アセチルグルコサミニル転移酵素3。
【0129】
製造方法
本発明はまた、上記中間組成物を製造する方法にも関する。
一実施形態では、上記の中間組成物の製造方法は、以下のステップ:
a)HT-29、HCT-116またはLoVo細胞を好適な培地中で培養するステップ;
b)ステップa)で培養されたHT-29、HCT-116またはLoVo細胞を、1つまたは複数のストレスにインビトロで供し、1つまたは複数のストレスに応答して、これらのHT-29、HCT-116またはLoVo細胞が耐性機構を発達させ、それによりストレスおよび/または耐性タンパク質を産生するステップ;ならびに
c)ストレスを受けたHT-29、HCT-116またはLoVo細胞を、それらがステップb)で産生したストレスおよび/または耐性タンパク質と共に回収するステップ
を含む。
【0130】
一実施形態では、ステップa)は、枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中で、低酸素下で、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)で、実施される。一実施形態では、ステップa)は、2%FBS培地中の低血清培養条件下で実施される。一実施形態では、枯渇培地中のこの培養は、ステップb)の間維持される。
ステップb)で適用されたストレスは、前に記載されている。
【0131】
一実施形態では、ステップc)は、ステップb)の完了の少なくとも数時間後、好ましくは、ステップb)の完了の12、24、36、48、60、72、84、96時間後またはそれより後に実施される。これにより、HT-29、HCT-116またはLoVo細胞は、1つまたは複数のストレスに応答して、それらの耐性機構を発達させるのに十分な時間、その結果、ストレスおよび/または耐性タンパク質を産生するのに十分な時間を確実に有している。
【0132】
一実施形態では、方法は、ステップc)で全て共に回収された、ストレスを受けたHT-29、HCT-116またはLoVo細胞、およびそれらが産生したストレスおよび/または耐性タンパク質を、該ストレスおよび/または耐性タンパク質を免疫原性にすることが可能な分子または手段により、処置するステップd)を更に含む。
【0133】
一実施形態では、ステップd)は、ストレスおよび/または耐性タンパク質を、免疫原性を付与することが可能な手段に連結するかまたはそれと複合体形成することを含むかまたはそれからなる。
【0134】
免疫原性を付与することが可能な手段は、当業者に周知である。一実施形態では、免疫原性を付与することが可能な手段は、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞中に、またはそれらの環境中に天然で存在しない1個または複数の分子を含むかまたはそれからなる。このような手段は上記で詳述されており、限定されないが、ハプテンが挙げられる。
【0135】
ハプテンの例には、限定されないが、2,4-ジニトロフェニル(DNP);2,4-ジニトロフルオロベンゼン;スルファニル酸;N-ヨードアセチル-N’-(5-スルホン酸-ナフチル)エチレンジアミン;アニリン;p-アミノ安息香酸;ビオチン;フルオレセインおよびこれらの誘導体(FITC、TAMRA、およびTexas Red);ジゴキシゲニン;5-ニトロ-3-ピラゾールカルバミド;4,5-ジメトキシ-2-ニトロシンアミド;2-(3,4-ジメトキシフェニル)-キノリン-4-カルバミド;2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-カルバミド;3-ヒドロキシ-2-キノキサリンカルバミド;4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL);ロテノンイソキサゾリン;(E)-2-(2-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[b][1,4]ジアゼピン-4-イル)フェノジ)アセトアミド;7-(ジエチルアミノ)-2-オキソ-2H-クロメン-3-カルボン酸;2-アセトアミド-4-メチル-5-チアゾールスルホンアミド;およびp-メトキシフェニルピラゾポドフィルアミドが挙げられる。
【0136】
一実施形態では、ステップd)は、ストレスおよび/または耐性タンパク質を、ハプテン化することを含むかまたはそれからなる。一実施形態では、ステップd)は、ストレスおよび/または耐性タンパク質を、2,4-ジニトロフェニル化すること(すなわち、ストレスおよび/または耐性タンパク質を2,4-ジニトロフェニルでハプテン化すること)を含むかまたはそれからなる。
当業者なら、ストレスおよび/または耐性タンパク質などのタンパク質をハプテン化する手段および方法をよく知っている。
【0137】
中間組成物が、HT-29、HCT-116またはLoVo細胞に特異的な腫瘍関連抗原(TAA)および/または腫瘍特異的抗原(TSA)を更に含む一実施形態では、ステップd)はまた、ストレスおよび/または耐性タンパク質に対する上述と同じ条件で、これらのTAAおよび/またはTSAを、免疫原性を付与することが可能な手段に連結するかまたはそれと複合体形成することも含む。
【0138】
一実施形態では、方法は、HT-29、HCT-116またはLoVo細胞を不活化して、それらを非増殖性にするステップを更に含む。適用可能な場合は、HT-29、HCT-116またはLoVo細胞がインビトロで適用されたストレスに応答して、それらの耐性機構を発達させた後、したがって、HT-29、HCT-116またはLoVo細胞がストレスおよび/または耐性タンパク質を産生した後はいつでも、このステップを行える。一実施形態では、HT-29、HCT-116またはLoVo細胞を不活化するステップは、ステップb)の完了後、少なくとも数時間で、好ましくは、ステップb)の完了の12、24、36、48、60、72、84、96時間後またはそれより後に実施される。一実施形態では、HT-29、HCT-116またはLoVo細胞を不活化するステップは、ステップc)の完了後に実施される。一実施形態では、HT-29、HCT-116またはLoVo細胞を不活化するステップは、適用可能な場合は、ステップd)の完了後に実施される。
【0139】
当業者なら、細胞を非増殖性にする手段および方法をよく知っている。例えば、細胞は、細胞を死滅させるまたは不活化するのに十分な線量での放射線照射により、非増殖性にすることができる。一実施形態では、放射線照射は、細胞を非増殖性にするために、細胞に25Gy以上の総線量を照射することを含むかまたはそれからなる。或いはまたは更に、細胞は、例えば、約10%~約50%v/vのエタノールを使用するエタノール固定により非増殖性にすることができる。或いはまたは更に、細胞は、例えば、少なくとも1回の凍結-解凍サイクルにより、非増殖性にすることができる。或いはまたは更に、細胞は、例えば、ハプテン化によるなどの免疫原性を付与することが可能な手段に連結するかまたはそれと複合体形成することにより、非増殖性にすることができる。
【0140】
当業者はまた、細胞が非増殖性かそうでないかを判断する手段および方法、例えば、細胞培養(増殖の完全な欠如を評価するために)により、および/またはヨウ化プロピジウム(生細胞と死細胞を識別する)により、生存率試験を実施することにより判断する方法、をよく知っている。
【0141】
一実施形態では、方法は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、ならびに(ii)ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる中間組成物「HT-29 DS-A」の製造のためであり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して、これらのHT-29細胞により産生された。
【0142】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHT-29細胞を以下のストレス:代謝ストレス、放射線照射および熱ストレスにインビトロで供することを含むかまたはそれからなる。放射線照射、熱ストレスおよび代謝ストレスは、前に記載されている。
【0143】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHT-29細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)約0.25~約25Gyの範囲の総線量、好ましくは約1~約15Gy、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15Gyの総線量での放射線照射(一実施形態では、照射時間は、約1~約20分の範囲、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20分であり、好ましくは、約1~約5分の範囲である)、および
(iii)約15~約4時間、好ましくは、約30分~約2時間の範囲にわたり、例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分の時間にわたり細胞に適用された、約38℃~約45℃の範囲の温度、例えば、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、または45℃の温度でのインビトロ熱ショック。
【0144】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHT-29細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)10Gyの総線量で約1~約5分間にわたるインビトロ放射線照射、および
(iii)約42℃の温度で約60分間にわたるインビトロ熱ショック。
【0145】
一実施形態では、(i)によるストレスは、ステップb)の全期間にわたり適用される。一実施形態では、(iii)によるストレスは、(ii)によるストレスのすぐ後または直後、例えば、(i)によるストレスを維持している間で、(ii)によるストレスの終了の、10分未満、20分、30分、45分、1時間、2時間、または3時間後に適用される。
【0146】
一実施形態では、方法は、(i)ストレスを受けたHCT-116細胞、および(ii)ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる中間組成物「HCT-116 DS-A」の製造のためであり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して、これらのHCT-116細胞により産生された。
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHCT-116細胞を以下のストレス:代謝ストレス、放射線照射および熱ストレスにインビトロで供することを含むかまたはそれからなる。放射線照射、熱ストレスおよび代謝ストレスは、前に記載されている。
【0147】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHCT-116細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)約0.25~約25Gyの範囲の総線量、好ましくは約1~約15Gy、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15Gyの総線量での放射線照射(一実施形態では、照射時間は、約1~約20分の範囲、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20分であり、好ましくは、約1~約5分の範囲である)、および
(iii)約15~約4時間、好ましくは、約30分~約2時間の範囲にわたり、例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分の時間にわたり細胞に適用された、約38℃~約45℃の範囲の温度、例えば、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、または45℃の温度でのインビトロ熱ショック。
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHCT-116細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)10Gyの総線量で約1~約5分間にわたるインビトロ放射線照射、および
(iii)約42℃の温度で約60分間にわたるインビトロ熱ショック。
【0148】
一実施形態では、(i)によるストレスは、ステップb)の全期間にわたり適用される。一実施形態では、(iii)によるストレスは、(ii)によるストレスの直後またはすぐ後、例えば、(i)によるストレスを維持している間で、(ii)によるストレスの終了の10分、20分、30分、45分、1時間、2時間、または3時間後などに適用される。
【0149】
一実施形態では、方法は、(i)ストレスを受けたLoVo細胞、および(ii)ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる中間組成物「LoVo DS-A」の製造のためであり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、(ii)放射線照射および(iii)熱ストレスに応答して、これらのLoVo細胞により産生された。
【0150】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたLoVo細胞を以下のストレス:代謝ストレス、放射線照射および熱ストレスにインビトロで供することを含むかまたはそれからなる。放射線照射、熱ストレスおよび代謝ストレスは、前に記載されている。
【0151】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたLoVo細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)約0.25~約25Gyの範囲の総線量、好ましくは約1~約15Gy、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15Gyの総線量での放射線照射(一実施形態では、照射時間は、約1~約20分の範囲、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20分であり、好ましくは、約1~約5分の範囲である)、および
(iii)約15~約4時間、好ましくは、約30分~約2時間の範囲にわたり、例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、または120分の時間にわたり細胞に適用された、約38℃~約45℃の範囲の温度、例えば、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、または45℃の温度でのインビトロ熱ショック。
【0152】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたLoVo細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)10Gyの総線量で約1~約5分間にわたるインビトロ放射線照射、および
(iii)約42℃の温度で約60分間にわたるインビトロ熱ショック。
【0153】
一実施形態では、(i)によるストレスは、ステップb)の全期間にわたり適用される。一実施形態では、(iii)によるストレスは、(ii)によるストレスの直後またはすぐ後、例えば、(i)によるストレスを維持している間で、(ii)によるストレスの終了の10分、20分、30分、45分、1時間、2時間、または3時間後などに適用される。
【0154】
一実施形態では、方法は、(i)ストレスを受けたHT-29細胞、および(ii)ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる中間組成物「HT-29 DS-B」の製造のためであり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して、これらのHT-29細胞により産生された。
【0155】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHT-29細胞を以下のストレス:代謝ストレス、および化学的ストレスにインビトロで供することを含むかまたはそれからなる。化学的ストレスおよび代謝ストレスは、前に記載されている。
【0156】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHT-29細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)少なくとも1つまたは複数の化学療法剤および/またはアルコールへの約6時間~約120時間、好ましくは、約24~約96時間の範囲にわたる、例えば、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、または96時間にわたるインビトロ曝露。
【0157】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHT-29細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)約72時間にわたる、約13μMのオキサリプラチンへのインビトロ曝露。
【0158】
一実施形態では、(i)によるストレスは、ステップb)の全期間にわたり適用される。一実施形態では、(ii)によるストレスは、(i)によるストレスを維持している間に適用される。
【0159】
一実施形態では、方法は、(i)ストレスを受けたHCT-116細胞、および(ii)ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる中間組成物「HCT-116 DS-B」の製造のためであり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して、これらのHCT-116細胞により産生された。
【0160】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHCT-116細胞を以下のストレス:代謝ストレス、および化学的ストレスにインビトロで供することを含むかまたはそれからなる。化学的ストレスおよび代謝ストレスは、前に記載されている。
【0161】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHCT-116細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)少なくとも1つまたは複数の化学療法剤および/またはアルコールへの約6時間~約120時間、好ましくは、約24~約96時間の範囲にわたる、例えば、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、または96時間にわたるインビトロ曝露。
【0162】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたHCT-116細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)約48時間にわたる、約31.5nM、100nMまたは315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)へのインビトロ曝露。
一実施形態では、(i)によるストレスは、ステップb)の全期間にわたり適用される。一実施形態では、(ii)によるストレスは、(i)によるストレスを維持している間に適用される。
【0163】
一実施形態では、方法は、(i)ストレスを受けたLoVo細胞、および(ii)ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる中間組成物「LoVo DS-B」の製造のためであり、ストレスおよび/または耐性タンパク質は、インビトロで適用された(i)代謝ストレス、および(ii)化学的ストレスに応答して、これらのLoVo細胞により産生された。
【0164】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたLoVo細胞を以下のストレス:代謝ストレス、および化学的ストレスにインビトロで供することを含むかまたはそれからなる。化学的ストレスおよび代謝ストレスは、前に記載した。
【0165】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたLoVo細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)枯渇培地(例えば、がん細胞の成長および/または生存に有用な、または不可欠でさえある1つまたは複数の物質を部分的にまたは完全に欠く培地)中での、低酸素下での、および/または低いpH(例えば、pH6.5未満)での、インビトロ培養、
(ii)少なくとも1つまたは複数の化学療法剤および/またはアルコールへの約6時間~約120時間、好ましくは、約24~約96時間の範囲にわたる、例えば、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、または96時間にわたるインビトロ曝露。
【0166】
この実施形態では、方法のステップb)は、方法のステップa)で培養されたLoVo細胞を以下のインビトロストレスに供することを含むかまたはそれからなる:
(i)2%FBS培地中の低血清培養条件中でのインビトロ培養、
(ii)約48時間にわたる、約5μMのフルオロウラシル(5-FU)へのインビトロ曝露。
一実施形態では、(i)によるストレスは、ステップb)の全期間にわたり適用される。一実施形態では、(ii)によるストレスは、(i)によるストレスを維持している間に適用される。
【0167】
本発明はまた、上述の(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、ならびに(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる組成物の製造方法にも関する。この最終組成物は、本明細書では、「DP」と呼ばれる。
【0168】
一実施形態では、上述の(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、ならびに(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる組成物の製造方法は、以下のステップ:
a)上記の中間組成物の製造方法を使用して、HT-29 DS-A、HCT-116 DS-A、LoVo DS-A、HT-29 DS-B、HCT-116 DS-BおよびLoVo DS-B中間組成物を得るステップ;ならびに
b)HT-29 DS-A、HCT-116 DS-A、LoVo DS-A、HT-29 DS-B、HCT-116 DS-BおよびLoVo DS-B中間組成物を共に混合するステップ
を含む。
【0169】
一実施形態では、ステップb)は、6つの中間組成物を、組成物1mL当り、約106~約109個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、好ましくは、組成物1mL当り、約106~約108個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、例えば、組成物1mL当り、約1x107、2x107、3x107、4x107、5x107、6x107、7x107、8x107、9x107、または1x108個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞の最終濃度と混合することを含む。一実施形態では、ステップb)は、6つの中間組成物を、組成物1mL当り、約3x107個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞の最終濃度と混合することを含む。
【0170】
一実施形態では、ステップb)は、6つの中間組成物を、ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞(すなわち、約1:1:1:1:1:1)と等しい比率で混合することを含む。一実施形態では、ステップb)は、6つの中間組成物を、ストレスを受けたHCT-116またはLoVo細胞よりも、少なくとも1.5、2または2.5倍多いストレスを受けたHT-29を含むかまたはそれからなる比率で混合することを含む。一実施形態では、ステップb)は、6つの中間組成物を、ストレスを受けたHT-29またはLoVo細胞よりも、少なくとも1.5、2または2.5倍多いストレスを受けたHCT-116を含む、またはそれからなる比率で混合することを含む。一実施形態では、ステップb)は、6つの中間組成物を、ストレスを受けたHT-29またはHCT-116細胞よりも、少なくとも1.5、2または2.5倍多いストレスを受けたLoVo細胞を含む、またはそれからなる比率で混合することを含む。
【0171】
一実施形態では、ステップb)は、下記を共に混合することを含む:
-約105~約108個のストレスを受けたHT-29細胞(HT-29 DS-AおよびHT-29 DS-B由来)、好ましくは、約106~約107個のストレスを受けたHT-29細胞、例えば、約1x106、2x106、3x106、4x106、5x106、6x106、7x106、8x106、9x106、または1x107個のストレスを受けたHT-29細胞、
-約105~約108個のストレスを受けたHCT-116細胞(HCT-116 DS-AおよびHCT-116 DS-B由来)、好ましくは、約106~約107個のストレスを受けたHCT-116細胞、例えば、約1x106、2x106、3x106、4x106、5x106、6x106、7x106、8x106、9x106、または1x107個のストレスを受けたHCT-116細胞、および
-約105~約108個のストレスを受けたLoVo細胞(LoVo DS-AおよびLoVo DS-B)、好ましくは、約106~約107個のストレスを受けたLoVo細胞、例えば、約1x106、2x106、3x106、4x106、5x106、6x106、7x106、8x106、9x106、または1x107個のストレスを受けたLoVo細胞。
【0172】
治療的使用および方法
本発明はまた、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、本明細書の上記で定義される、(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、ならびに(ii)インビトロで適用されたストレスに応答して、これらの細胞により産生された免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる組成物を、前記対象に投与することを含む方法にも関する。
【0173】
本発明はまた、それを必要とする対象におけるがんの処置に使用するための、本明細書の上記で定義される、(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、ならびに(ii)インビトロで適用されたストレスに応答して、これらの細胞により産生された免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質、を含むかまたはそれらからなる組成物にも関する。
【0174】
本発明はまた、それを必要とする対象におけるがんの処置のための、本明細書の上記で定義される、(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、ならびに(ii)インビトロで適用されたストレスに応答して、これらの細胞により産生された免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質、を含むかまたはそれらからなる組成物の使用にも関する。
【0175】
本発明はまた、それを必要とする対象におけるがんの処置のための医薬の製造のための、本明細書の上記で定義される、(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、ならびに(ii)インビトロで適用されたストレスに応答して、これらの細胞により産生された免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質、を含むかまたはそれらからなる組成物の使用に関する。
一実施形態では、がんを処置することは、前記がん由来のがん細胞に対する免疫応答を誘発することを含む。
【0176】
がんの例には、疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)、の第10版、II章、ブロックC00~D48に列挙されているものが挙げられる。
がんのさらなる例としては、限定されないが、再発、転移または多剤耐性がんが挙げられる。
がんのさらなる例には、限定されないが、腺線維腫、腺腫、原発性骨髄線維症、AIDS関連悪性腫瘍、エナメル上皮腫、肛門がん、血管嚢胞性縦隔リンパ節過形成、被角血管腫、好酸球性血管リンパ球増殖症、血管腫症、無汗性外胚葉形成異常症、前後異形成、アポクリン化生、アプドーマ、窒息性胸郭異形成症、星状細胞腫(例えば、小脳星細胞腫および大脳星細胞腫を含む)、心房指形成異常、非定型メラニン細胞過形成、非定型異形成、自己実質化生、基底細胞過形成、良性巨大リンパ節増殖症、胆管がん(例えば、肝外胆管がんを含む)、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍(例えば、脳幹神経膠腫、小脳星細胞腫神経膠腫、悪性神経膠腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、視経路および視床下部膠腫、上衣腫、髄芽腫、妊娠性絨毛性腫瘍神経膠腫および傍神経節腫を含む)、鰓腫、女性乳がん、男性乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、気管支肺異形成症、上皮細胞のがん成長、上皮細胞の前がん様成長、上皮細胞の転移成長、カルチノイド心臓疾患、カルチノイド腫瘍(例えば、消化管カルチノイド腫瘍を含む)、癌腫(例えば、原発不明癌、副腎皮質癌、膵島細胞癌、腺癌、副腎皮質癌、基底細胞癌、基底扁平細胞癌、細気管支癌、ブラウン・ピアース癌、嚢胞腺癌、腺管癌、肝細胞癌、クレブス癌、乳頭癌、燕麦細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平細胞癌、移行上皮癌、ウォーカー癌、メルケル細胞癌、および皮膚癌を含む)、セメント質腫、セメント質過形成、大脳の形成異常症、子宮頸がん、子宮頸部異形成、胆管癌、真珠腫、軟骨芽細胞腫、軟骨外胚葉異形成、脊索腫、分離腫、軟骨腫(chrondroma)、鎖骨頭蓋異形成症、結腸腺癌、結腸がん、結腸癌、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、結腸直腸癌、局所転移結腸直腸がん、先天性副腎過形成、先天性の外胚葉異形成症、先天性脂腺過形成、結合組織異形成、頭蓋手根足根骨形成不全、頭蓋骨幹異形成、頭蓋骨幹端異形成、頭蓋咽頭腫、円柱腫、嚢胞腺腫、嚢胞性過形成(例えば、乳房の嚢胞性過形成を含む)、葉上嚢肉腫(cystosarconia phyllodes)、象牙質異形成症、義歯性線維症、骨幹異形成、乳管過形成、未分化胚細胞腫、片肢性骨端異形成症、多発性骨端異形成、骨端線離開異形成、点状骨端異形成(dysplasia epiphysialis punctata)、外胚葉異形成症、エールリッヒ腫瘍、エナメル異形成症、脳眼形成不全症、子宮内膜がん(例えば、上衣腫および子宮内膜過形成を含む)、上衣腫、上皮がん、上皮異形成、上皮化生、食道がん、ユーイング腫瘍ファミリー(例えば、ユーイング肉腫を含む)、肝外胆管がん、眼がん(例えば、眼内黒色腫および網膜芽細胞腫を含む)、顔面指趾生殖器異形成、家族性線維性顎異形成、家族性白色襞性異形成、線維腫、線維筋性異形成、線維筋過形成、線維性骨異形成症、開花性骨異形成、局所性上皮肥厚、膀胱がん、神経節腫、胃がん(例えば、胃がん(stomach cancer)を含む)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管がん、消化管腫瘍、ゴーシェ病、生殖細胞腫瘍(例えば、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、および卵巣胚細胞腫瘍を含む)、巨細胞腫、歯肉過形成、神経膠芽腫、グロムス血管腫、顆粒膜細胞腫、半陰陽性卵巣腫瘍、過誤腫、頭頸部がん、血管内皮腫、血管腫、血管外皮細胞腫、肝細胞がん、肝細胞腫、遺伝性腎-網膜形成異常、発汗性外胚葉形成異常症、組織球腫(histiocytonia)、組織球症、高ガンマグロブリン血症、発汗減少症性外胚葉性異形成、下咽頭がん、炎症性線維性歯肉増殖、炎症性乳頭状歯肉増殖、腸がん、腸上皮化生、腸ポリープ、眼内黒色腫、血管内乳頭状内皮過形成、腎臓がん、咽喉がん、平滑筋肉腫、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、急性ヘアリー細胞白血病、急性B細胞白血病、急性T細胞白血病、HTLV白血病、慢性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性ヘアリー細胞白血病、慢性B細胞白血病、慢性T細胞白血病、および慢性HTLV白血病を含む)、ライディッヒ細胞腫、口唇がんおよび口腔がん、脂肪腫、肝臓がん、肺がん(例えば、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんを含む)、管筋腫、リンパ管腫、リンパ腫(例えば、AIDS関連リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、マスト細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、腺リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、および小細胞リンパ腫を含む)、リンパ球減少性胸腺異形成、リンパ増殖性障害、マクログロブリン血症(例えば、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む)、悪性カルチノイド症候群、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、乳腺異形成症、下顎顔面異形成、髄芽腫、髄膜腫、間葉腫、中腎腫、中皮腫(例えば、悪性中皮腫を含む)、骨幹端異形成、化生性貧血、変形骨化、化生性ポリープ、 転移性頸部扁平上皮がん(例えば、原発不明転移性頸部扁平上皮がんを含む)、モンディーニ異形成、単骨性線維性骨異形成症、粘膜上皮異形成、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨端形成異常、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄化生、骨髄増殖性疾患、慢性骨髄増殖性疾患、筋芽細胞腫、筋腫、粘液腫、鼻副鼻腔がん、上咽頭がん、前立腺腫瘍、結腸腫瘍、腹部腫瘍、骨腫瘍、乳房腫瘍、消化管腫瘍、肝腫瘍、膵臓腫瘍、腹膜腫瘍、内分泌腺腫瘍(例えば、副腎腫瘍、上皮小体腫瘍、下垂体腫瘍、精巣腫瘍、卵巣腫瘍、胸腺腫瘍、および甲状腺腫瘍を含む)、眼腫瘍、頭頸部腫瘍、神経系腫瘍(例えば、中枢神経系腫瘍および末梢神経系腫瘍を含む)、リンパ系腫瘍、骨盤腫瘍、皮膚腫瘍、軟組織腫瘍、脾臓腫瘍、胸部腫瘍、尿生殖路腫瘍、神経鞘腫、神経芽腫、神経上皮腫、神経線維腫、神経線維腫症、神経腫、結節性前立腺過形成、結節性再生性過形成、眼耳脊椎異形成、眼歯指形成異常、眼脊椎異形成、歯牙異形成、歯牙腫、眼下顎異形成、中咽頭がん、骨腫、卵巣がん(例えば、卵巣上皮がんおよび卵巣低悪性度腫瘍を含む)、膵臓がん(例えば、島細胞膵がんおよび外分泌膵臓がんを含む)、乳頭腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、副鼻腔および鼻腔がん、異常蛋白血症、副甲状腺がん、根尖性セメント質異形成症、褐色細胞腫(例えば、陰茎がんを含む)、松果体およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、松果体腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、形質細胞腫、胸膜肺芽腫、多骨性線維性骨異形成症、ポリープ、妊娠がん、新生物発生前障害(例えば、良性増殖異常傷害、例えば、良性腫瘍、線維嚢胞性状態、組織肥大、腸ポリープ、結腸ポリープ、食道異形成症、白斑症、角化症、ボーエン病、農夫皮膚、日光口唇炎、および日光角化症を含む)、原発性肝細胞がん、原発性肝臓がん、原発性骨髄化生、前立腺がん、偽軟骨発育不全脊椎骨端異形成、偽上皮腫性増殖、紫斑病、直腸がん、腎がん(例えば、腎臓がん、腎盂、尿管がん、腎盂および尿管の移行細胞がん、を含む)、細網内皮症、網膜異形成、網膜芽細胞腫、唾液腺がん、肉腫(例えば、子宮肉腫、軟部肉腫、癌肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、筋肉腫、粘液肉腫、横紋筋肉腫、サルコイドーシス肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、および腱鞘の明細胞肉腫を含む)、硬化性血管腫、二次性骨髄様化生、老人性脂腺増生症、中隔視神経形成異常症、セルトリ細胞腫、セザリー症候群、皮膚がん(例えば、黒色腫皮膚がんおよび非黒色腫皮膚がんを含む)、小腸がん、脊椎骨端異形成、扁平上皮化生(例えば、羊膜の扁平上皮化生を含む)、胃がん、テント上原始神経外胚葉および松果体腫瘍、テント上原始神経外胚葉腫瘍、症候性骨髄様化生、奇形腫、精巣がん、莢膜細胞腫、胸腺腫(例えば、悪性胸腺腫を含む)、甲状腺がん、栄養膜腫瘍(例えば、妊娠性栄養膜腫瘍を含む)、尿管がん、尿道がん、子宮がん、膣がん、心室橈骨異形成、ゆうぜい性肥厚、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、およびウイルムス腫瘍、が挙げられる。
一実施形態では、がんは、腎がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん、卵巣がん、乳がん、肺がん、頭頸部がん、子宮頸がん、黒色腫および神経膠腫を含むかまたはそれらからなる群より選択される。
一実施形態では、がんは、限定されないが、結腸腺癌、結腸がん、結腸癌、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、および結腸直腸癌を含む結腸がんおよび結腸直腸がんを含むかまたはそれらからなる群から選択される。
【0177】
一実施形態では、組成物は、1回投与されるか、または1回投与される予定である。一実施形態では、組成物は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15回またはそれより多くなどの数回投与されるか、または投与される予定である。
一実施形態では、組成物は、毎週、2週毎、3週毎、毎月、2ヶ月毎、3ヶ月毎、6ヶ月毎、毎年投与されるか、または投与される予定である。
一実施形態では、導入レジメンまたはボーラスレジメンとして、好ましくは、最初の数週間にわたり、例えば、最初の2、3、4、5、6、7、8、9、10週間またはそれより長い期間にわたり、好ましくは、最初の6~8週間にわたり、毎週、2週毎、3週毎、毎月、好ましくは毎週投与されるか、または投与される予定である。
一実施形態では、組成物は、導入レジメンまたはボーラスレジメン後、追加のレジメンとして、毎月、2ヶ月毎、3か月毎、6ヶ月毎、毎年投与されるか、または投与される予定である。
一実施形態では、組成物は、最初の6~8週間は毎週;その後、約1か月後;その後、約3か月後;その後、がんが処置されるまで6ヶ月毎に投与されるか、または投与される予定である。
一実施形態では、組成物は、約105~約108個の範囲のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、好ましくは、約106~約107個の範囲のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、例えば、約1x106、2x106、3x106、4x106、5x106、6x106、7x106、8x106、9x106、または1x107個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞の総用量で投与されるか、または投与される予定である。
一実施形態では、組成物は、単回用量として投与されるか、または投与される予定である。
一実施形態では、組成物は、少なくとも2回用量、例えば、2、3、4、5またはそれより多くの回数の用量で投与されるか、または投与される予定である。
一実施形態では、組成物は、約3x106個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞の総用量で投与されるか、または投与される予定である。一実施形態では、組成物は、約6x106個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞の総用量で投与されるか、または投与される予定である。一実施形態では、組成物は、6x106個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞の単回用量、または約3x106個のストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞の2回用量で投与されるか、または投与される予定である。
一実施形態では、組成物は、約10μL~約1mLの範囲の体積、例えば、約10μL、約50μL、約100μL、約200μL、約300μL、約400μL、約500μL、約600μL、約700μL、約800μL、約900μL、または1mL、好ましくは約100μLの体積で投与されるか、または投与される予定である。
一実施形態では、組成物は、全身投与されるか、または全身投与される予定である。一実施形態では、組成物は、注射により、好ましくは、全身注射により投与されるか、または投与される予定である。
【0178】
全身注射の例には、限定されないが、静脈内(iv)、皮下(sq)、皮内(id)、筋肉内(im)、動脈内、非経口、結節内、腹腔内(ip)、心臓内、病巣内、前立腺内、膣内、直腸内、髄腔内、鼻腔内、腫瘍内(it)、小胞内、および灌流が挙げられる。
一実施形態では、組成物は、皮内、皮下、腫瘍内または静脈内に投与されるか、投与される予定である。
一実施形態では、組成物は、皮内投与されるか、または皮内投与される予定である。
他の好適な投与経路も同様に、本発明で同様に意図され、投与方法は最終的に、健全な医学的判断の範囲内で主治医により決定される。
【0179】
一実施形態では、組成物は、少なくとも1つの追加の療法の投与の前に、それと同時に、またはその後に対象に投与されるか、または投与される予定である。
【0180】
好適な追加の療法の例には、上記で定義の化学療法剤、放射線療法および免疫刺激剤が挙げられる。
放射線療法の好適な例には、限定されないが、体外照射療法(例えば、表在性X線療法、常用電圧X線療法、メガボルトX線療法、放射線外科、定位放射線治療、コバルト療法、電子療法、高速中性子治療、中性子捕獲治療、陽子線治療、など);密封小線源治療;非密封線源放射線治療;トモセラピー、などが挙げられる。
【0181】
化学療法剤の好適例には、解剖治療化学分類法の亜群L03に記載のものが含まれる。免疫刺激剤のさらなる例には、限定されないが、サイトカイン(例えば、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、レノグラスチム、モルグラモスチム、サルグラモスチム、アンセスチム、アルブインターフェロン、インターフェロンアルファ天然、インターフェロンアルファインターフェロンアルファ2a、ペグインターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファ2b、インターフェロンアルファn1、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンα-n3、インターフェロンベータ天然、インターフェロンベータ1b、インターフェロンガンマ、アルデスロイキン、オプレルベキン、など );免疫チェックポイント阻害剤(例えば、CTLA4、PD-1、PD-L1、LAG-3、B7-H3、B7-H4、TIM3、A2AR、および/またはIDOの阻害剤で、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、MPDL3280A、MDX-1105、MEDI-4736、アレルマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、ピディリズマブ、IMP321、MGA271、BMS-986016、リリルマブ、ウレルマブ、PF-05082566、IPH2101、MEDI-6469、CP-870,893、モガムリズマブ、バルリルマブ、アベルマブ、ガリキシマブ、AMP-514、AUNP 12、インドキシモド、NLG-919、INCB024360、などを含む);toll様受容体アゴニストス(例えば、ブプレノルフィン、カルバマゼピン、エタノール、フェンタニル、GS-9620、イミキモド、レフィトリモド、レボルファノール、メタドン、モルヒネ、(+)-モルヒネ、モルヒネ-3-グルクロニド、オクスカルバゼピン、オキシコドン、ペチジン、レシキモド、SD-101、タペンタドール、チルソトリモド、VTX-2337、クリプトコッカス由来グルクロノキシロマンナン、マイコプラズマ由来MALP-2、マイコプラズマ由来MALP-404、ボレリア由来OspA、ナイセリアまたはヘモフィルス由来ポリン、hsp60、ヘマグルチニン、エルシニア由来LcrV、細菌性フラゲリン、リポ多糖類、リポテイコ酸、マイコバクテリウム由来リポマンナン、グリコシルホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリン、リーシュマニア由来リポホスホグリカン、サッカロマイセス由来ザイモサン、Pam2CGDPKHPKSF、Pam3CSK4、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ポリ(I:C)核酸配列、ポリ(A:U)核酸配列、STING受容体作動薬(例えば、国際公開第2017100305号の§0240に記載のもの、バジメザン、CL656、ADU-S100、3’3’-cGAMP、2’3’-cGAMP、ML RR-S2 CDG、ML RR-S2 cGAMP、環状ジ-GMP、DMXAA、DiABZI、など);CD1リガンド;成長ホルモン;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);イムノシアニン;ペガデマーゼ;プロラクチン;タソネルミン;女性の性ステロイドホルモン;ヒスタミン二塩酸塩;ポリICLC;ビタミンD;レンティナン;プレリキサホル;ロキニメックス;ミファムルチド、酢酸グラチラマー;チモペンチン;チモシンα1;チムリン;ポリイノシン(酸)ポリシチジル酸;ピドチモド;カルメットゲラン桿菌;メラノーマワクチン;シプロイセル-T;などが挙げられる。
【0182】
一実施形態では、組成物は、例えば、シクロホスファミドなどの化学療法剤の投与後に対象に投与され得る。
更にまたは或いは、組成物は、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの免疫刺激剤の投与と同時に対象に投与され得る。
【0183】
キットオブパーツ(部品キット)
本発明は、キットオブパーツにも関する。
用語「キットオブパーツ」は、「パッケージ」、「商業用パッケージ」、または「医薬品パッケージ」とも呼ばれ、個別に貯蔵および/または使用されるが、相互に機能的に関連することが意図される、物理的に分離された成分の実体を包含する。特に、用語「キットオブパーツ」は、任意の順に、必須ではないが典型的には、数時間~数日、数週間もしくはそれより長いの範囲の所与の時間間隔で、別々に;または即時製剤として同時に、または個別に任意の順で、数秒~数分または数時間の範囲の時間間隔内に、使用または投与できる物理的に分離された成分物質を包含する。
【0184】
一実施形態では、キットオブパーツは、下記を含む:
-「HT-29 DS-A」と命名された上記で定義の中間組成物;
-「HCT-116 DS-A」と命名された上記で定義の中間組成物;および
-「LoVo DS-A」と命名された上記で定義の中間組成物。
【0185】
一実施形態では、キットオブパーツは、下記を含む:
-「HT-29 DS-B」と命名された上記で定義の中間組成物;
-「HCT-116 DS-B」と命名された上記で定義の中間組成物;および
-「LoVo DS-B」と命名された上記で定義の中間組成物。
【0186】
一実施形態では、キットオブパーツは、下記を含む:
-「HT-29 DS-A」と命名された上記で定義の中間組成物;
-「HCT-116 DS-A」と命名された上記で定義の中間組成物;
-「LoVo DS-A」と命名された上記で定義の中間組成物;
-「HT-29 DS-B」と命名された上記で定義の中間組成物;
-「HCT-116 DS-B」と命名された上記で定義の中間組成物;および
-「LoVo DS-B」と命名された上記で定義の中間組成物。
【0187】
一実施形態では、キットオブパーツは、上述の(i)ストレスを受けたHT-29、HCT-116およびLoVo細胞、ならびに(ii)免疫原性ストレスおよび/または耐性タンパク質を含むかまたはそれらからなる上述の組成物(「DPと命名された」)の製造方法にしたがって、中間組成物を混合するための説明書を更に含む。
一実施形態では、キットオブパーツは、例えば、上記で定義の、少なくとも1つの化学療法剤および/または免疫刺激剤などの少なくとも1つの追加の治療薬を更に含む。
【0188】
一実施形態では、キットオブパーツは、下記を含む:
-「DP」と命名された上記で定義の組成物;
-例えば、上記で定義の、少なくとも1つの化学療法剤および/または免疫刺激剤などの少なくとも1つの追加の治療薬。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【
図1A】無処置試料に関する、3つのヒト細胞株(HT-29、HCT-116およびLoVo)のそれぞれで特定されたタンパク質の数を比較した2つのベン図である。
図1A:RCB試料。
図1B:MCB試料。
【
図1B】無処置試料に関する、3つのヒト細胞株(HT-29、HCT-116およびLoVo)のそれぞれで特定されたタンパク質の数を比較した2つのベン図である。
図1A:RCB試料。
図1B:MCB試料。
【
図2】古典的条件(10%FBSを含む)で培養したHCT-116 RCBと比較した、HCT-116 MCB、DS-A、DS-B、および上記の6つ全てのDSを含む最終産物(DP)(したがって、HCT-116 DS-AおよびDS-Bを含む)において発現したタンパク質の数の差異を示すグラフである。「+」は、新しく発現したタンパク質を示し、「-」は、もはや全く発現しないタンパク質の数を示す。
【
図3】古典的条件(10%FBSを含む)で培養した初期HCT-116 RCBと比較した、HCT-116 MCB、DS-AおよびDS-Bにおいて過剰発現および過少発現したタンパク質の数を示すグラフである。
【
図4】古典的条件(10%FBSを含む)で培養したHT-29 RCBと比較した、HT-29 MCB、DS-A、DS-B、および上記の6つ全てのDSを含む最終産物(DP)(したがって、HT-29 DS-AおよびDS-Bを含む)において発現したタンパク質の数の差異を示すグラフである。「+」は、新しく発現したタンパク質を示し、「-」は、もはや全く発現しないタンパク質の数を示す。
【
図5】古典的条件(10%FBSを含む)で培養した初期HT-29 RCBと比較した、HT-29 MCB、DS-AおよびDS-Bにおける過剰発現および過少発現したタンパク質の数を示すグラフである。
【
図6】古典的条件(10%FBSを含む)で培養したLoVo RCBと比較した、LoVo MCB、DS-A、DS-B、および上記の6つ全てのDSを含む最終産物(DP)(したがって、LoVo DS-AおよびDS-Bを含む)において発現したタンパク質の数の差異を示すグラフである。「+」は、新しく発現したタンパク質を示し、「-」は、もはや全く発現しないタンパク質の数を示す。
【
図7】古典的条件(10%FBSを含む)で培養した初期LoVo RCBと比較した、LoVo MCB、DS-AおよびDS-Bにおける過剰発現および過少発現したタンパク質の数を示すグラフである。
【
図8】HT-29細胞:HT-29 MCB、HT-29 DS-A、およびHT-29 DS-Bのいくつかの組成物における、ならびにHT-29 DS-A、HT-29 DS-B、HCT-116 DS-A、HCT-116 DS-B、LoVo DS-AおよびLoVo DS-Bの混合物を含む薬物製剤(DP)における、膜および/または細胞表面タンパク質またはその他(すなわち、用語「膜」または「細胞表面」が、Thermo Protein Center databaseの「細胞成分」領域においてアノーテーションとして報告されなかったいずれか他のタンパク質)に関わらず、同定されたタンパク質の数を示す(y軸上に)グラフである。実験は、3連で実施し、「#1」、「#2」および「#3」として示した。
【
図9A】HT-29 DS-A対HT-29 MCB(
図9A)、HT-29 DS-B対HT-29 MCB(
図9B)、HT-29 DS-A対HT-29 DS-B(
図9C)、およびDP対HT-29 MCB(
図9D)の間のp値および倍率変化によるタンパク質分布を示すパイチャートである。
【
図9B】HT-29 DS-A対HT-29 MCB(
図9A)、HT-29 DS-B対HT-29 MCB(
図9B)、HT-29 DS-A対HT-29 DS-B(
図9C)、およびDP対HT-29 MCB(
図9D)の間のp値および倍率変化によるタンパク質分布を示すパイチャートである。
【
図9C】HT-29 DS-A対HT-29 MCB(
図9A)、HT-29 DS-B対HT-29 MCB(
図9B)、HT-29 DS-A対HT-29 DS-B(
図9C)、およびDP対HT-29 MCB(
図9D)の間のp値および倍率変化によるタンパク質分布を示すパイチャートである。
【
図9D】HT-29 DS-A対HT-29 MCB(
図9A)、HT-29 DS-B対HT-29 MCB(
図9B)、HT-29 DS-A対HT-29 DS-B(
図9C)、およびDP対HT-29 MCB(
図9D)の間のp値および倍率変化によるタンパク質分布を示すパイチャートである。
【
図10】HT-29 DS-A対HT-29 MCB、HT-29 DS-B対HT-29 MCB、HT-29 DS-A対HT-29 DS-B、およびDP対HT-29 MCBの間で、統計学的に有意に過少発現(すなわち、p値≦0.05および存在量比率≦0.5)または過剰発現(すなわち、p値≦0.05および存在量比≧2)された、膜および/または細胞表面タンパク質の数(y軸上に)を示すグラフである。過少発現したタンパク質の数は、負の数として示される。
【
図11A】樹状細胞からのIL-8またはIL-12の分泌を示す、pg/mLで表す3つのグラフである。
図11A:CD40Lの非存在下のIL-8の分泌;
図11B:0.6μg/mLのCD40Lの存在下でのIL-8の分泌;
図11C:0.6μg/mLのCD40Lの存在下でのIL-12の分泌。
【
図11B】樹状細胞からのIL-8またはIL-12の分泌を示す、pg/mLで表す3つのグラフである。
図11A:CD40Lの非存在下のIL-8の分泌;
図11B:0.6μg/mLのCD40Lの存在下でのIL-8の分泌;
図11C:0.6μg/mLのCD40Lの存在下でのIL-12の分泌。
【
図11C】樹状細胞からのIL-8またはIL-12の分泌を示す、pg/mLで表す3つのグラフである。
図11A:CD40Lの非存在下のIL-8の分泌;
図11B:0.6μg/mLのCD40Lの存在下でのIL-8の分泌;
図11C:0.6μg/mLのCD40Lの存在下でのIL-12の分泌。
【
図12】種々の比率のSTC-1010で処置されたmDCおよび自家CD8
+T細胞の共培養から収集した上清中のIFNγ放出を示すグラフである。ハッシュのラインは、IFNγの検出限界を示す。
【
図13A】種々の用量のSTC-1010での処置時にRT-qPCRにより評価された、DC活性化マーカーCD40、CD83およびCD86の発現を示す3つのグラフである。データは、ニワトリGAPDHの発現に対して正規化した相対量として表される。
図13A:CD40の発現;
図13B:CD83の発現;
図13C:CD86の発現。
【
図13B】種々の用量のSTC-1010での処置時にRT-qPCRにより評価された、DC活性化マーカーCD40、CD83およびCD86の発現を示す3つのグラフである。データは、ニワトリGAPDHの発現に対して正規化した相対量として表される。
図13A:CD40の発現;
図13B:CD83の発現;
図13C:CD86の発現。
【
図13C】種々の用量のSTC-1010での処置時にRT-qPCRにより評価された、DC活性化マーカーCD40、CD83およびCD86の発現を示す3つのグラフである。データは、ニワトリGAPDHの発現に対して正規化した相対量として表される。
図13A:CD40の発現;
図13B:CD83の発現;
図13C:CD86の発現。
【0190】
実施例
本発明は、以下の実施例により更に説明される。
実施例1
ヒト結腸直腸がんワクチンのための細胞株の選択
本発明者らは、がん細胞株においてインビトロ耐性機構を人為的に発達させ、それらを免疫原性にすることにより、それら自体に対するがん細胞耐性機構を調整する抗がん処置の開発を目的とした。
いくつかの結腸直腸ヒト細胞株をヒト結腸直腸がんワクチンの開発のための好適な候補として選択した。
【0191】
最初の細胞株の選択は、最大の臨床類型学パネル:マイクロサテライト安定性(MSS対MSI状態);変異対野性型BRAF、KRAS、PIK3CA、PtenおよびTP53遺伝子;共通の抗がん治療に対する既知の耐性(フルオロウラシル「5-FU」、オキサリプラチン、SN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)、抗VEGF抗体)を範囲に含むように、それらの生物学的および遺伝的特徴に基づいて行った。
文献およびデータベース(SelTARbase,CellosaurusおよびGDSCデータベース)に基づいて、以下の細胞株を選択した:
-LS174T(ATCC(登録商標)参照番号:CL-188(商標))、
-SW620(ATCC(登録商標)参照番号:CCL-227(商標))、
-SW480(ATCC(登録商標)参照番号:CCL-228(商標))、
-LoVo(ATCC(登録商標)参照番号:CCL-229(商標))、
-SW48(ATCC(登録商標)参照番号:CCL-231(商標))、
-HCT-116(ATCC(登録商標)参照番号:CCL-247(商標))、および
-HT-29(ATCC(登録商標)参照番号:HTB-38(商標))。
【0192】
予備研究用細胞バンク(RCB):これらの細胞株を、ATCCから取得し、10%FBS中で培養し、7つのRCBを得たが、これらの7つから6つのみが予想される成長プロファイルを有し、凍結-解凍サイクル後、生存可能であった:SW620をこの段階で廃棄した(表1)。
【表1】
【0193】
プレRCB2%:予想される成長プロファイルを有するこれらの6つのRCBは、抗VEGF抗体で観察された栄養源枯渇作用を模倣するために、低血清培養条件(10%FBS→5%FBS→2%FBS)に適応させた。
4つの細胞株のみga、低血清培養条件中で成長することが可能であり、凍結-解凍サイクル後に生存可能であった(HCT-116、HT-29、LoVo、およびSW480)(表2)。
【表2】
これらの4つの細胞株をその後、2つの更なるタイプのストレスに曝露して、「DS-A」および「DS-B」を得た。
【0194】
DS-A:ヒートショックタンパク質HSP70の発現を誘導するために、細胞を(1)低線量電離放射線(10Gy)に5分間、および(2)熱ストレス(42℃で1時間)の組み合わせを含む物理的ストレスに曝露した。
【0195】
DS-B:細胞を、結腸直腸がんに対し一般的に使用される化学療法剤:5-FU(Sigma、F6627)、オキサリプラチン(Sigma、Y0000271)またはSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)(Sigma、H0165)による化学的刺激を含む化学的ストレスに曝露した。特に、化学療法剤と各細胞株との会合は、文献の前提(表3)、および更に各化学療法剤に対する細胞株の耐性の程度に基づいた。各細胞株に関して、各化学療法剤に対するこの耐性レベルを、細胞傷害性アッセイにおいて50%阻害濃度(IC
50)を測定することにより評価した。IC
50を表4に示す。
【表3】
【表4】
【0196】
ストレスに曝露後、物理的または化学的曝露に関係なく、細胞はハプテン化され、すなわち、ストレスに応答して耐性機構として発現されたストレスタンパク質に対する免疫原性を付与することが可能な担体分子の結合を通して、これらのストレスタンパク質が遊離であるか、がん細胞の表面に結合しているか、またはその内部に存在するかどうかにかかわらず、免疫原性となった。担体分子は、ジニトロフェニルである。
最終的に、ストレス曝露後に低減された血清(2%FBS)を有する培地中で最良の増殖能を有する3つの細胞株:LoVo、HCT-116およびHT-29が選択された。
【0197】
マスターセルバンク(MCB):これらの選択された3つの細胞株を、代謝ストレス(抗VEGF抗体による処置療法で観察される栄養源枯渇)を模倣する低血清培養条件(2%FBS)中で培養し、マスターセルバンク(MCB)を得た。
【0198】
実施例2
ヒト結腸直腸がんワクチン製造工程
実施例1で得られた予備的結果に基づいて、本発明者らは、多重ストレスを受け、ハプテン化された、非増殖性のHT-29、HCT-116およびLoVo細胞を含むワクチン組成物を製造した。
各細胞株に対し、MCBから出発して、DS-AおよびDS-Bを製造した。
DS-Aの場合、各細胞株のMCBを解凍し(凍結されている場合)、インビトロで培養した。それらの成長相またはそれらの定常相の間に、熱ストレス(42℃で1時間)と共に、5分間の低線量の電離放射線(10Gy)を含む物理的ストレスを適用した。このストレスに反応して発現されたストレスタンパク質を次に、ジニトロフェニルでハプテン化した。3千万個の細胞/mLで製剤化して貯蔵目的のための凍結後に、これらの細胞(ハプテン化されたストレス分子を含む)を高電離放射線(25Gy)で不活化、即ち、非増殖性にし、細胞構造を損なわれないまま維持しながら、細胞増殖を阻害した。
DS-Bの場合、各細胞株のMCBを解凍し(凍結されている場合)、インビトロで培養した。それらの成長相またはそれらの定常相の間に、化学療法剤による化学刺激を含む化学的ストレスを適用した:HT-29細胞の場合、13μMのオキサリプラチンを72時間適用した;HCT-116細胞の場合、315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)(または直近の実験で類似の最終結果であった100nMのSN-38)を48時間適用した;およびLoVo細胞の場合、5μMの5-FUを48時間適用した。このストレスに反応して発現されたストレスタンパク質を次に、ジニトロフェニルでハプテン化した。3千万個の細胞/mLで製剤化して貯蔵目的のための凍結後に、これらの細胞(ハプテン化されたストレス分子を含む)を高電離放射線(25Gy)で不活化、即ち、非増殖性にし、、細胞構造を損なわれないまま維持しながら、細胞増殖を阻害した。
【0199】
マーカー発現の比較を実施し、各DS-AおよびDS-Bを検証した。
3つのDS-Aに関して、3つの細胞株に適用された放射線照射および熱ストレスは、3つ全てのDS-Aにおいて同じ表現型変化を誘導し、非ストレス細胞と比較して、HSP70およびCD227を過剰発現した(表5)。これらのデータは、同様に処置されたいくつかの他の細胞バッチで実施された実験で確認され、全て、放射線照射および熱ストレス後に、HSP70およびCD227の過剰発現を確証した。
【表5】
【0200】
DS-Bの場合、オキサリプラチンによるHT-29細胞の処置は、非ストレス細胞と比較して、CD95、CD107およびCD54マーカーの過剰発現をもたらした;およびSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)によるHCT-116細胞の処置または5-FUによるLoVo細胞の処置は、非ストレス細胞と比較して、CD66マーカーの過剰発現をもたらし、および5-FUによるLoVo細胞の処置はCD243の過剰発現をもたらした(表6)。これらのデータは、同様に処置されたいくつかの他の細胞バッチで実施された実験で確認され、これら全ては、下記を確証した:
-予備的細胞培養条件に関係なく(T25またはT225 CellStackに関わらず)、SN-38による処置後、HCT-116細胞におけるCD66の過剰発現;
-オキサリプラチンで処置後のHT-29細胞におけるCD54、CD95およびCD107の過剰発現;および
-5-FUで処置後のLoVo細胞におけるCD243(および、より少ない程度で、CD66)の過剰発現。
【0201】
最終的に、ワクチン組成物(DPまたは「STC-1010」)は、6つ全てのDS(3つのDS-A:各細胞株に対し1つ;および3つのDS-B:各細胞株に対し1つ)を100μL用量(それぞれ3百万個の細胞を含む)にプールすることによって製剤化され得る。FACS解析により、この最終産物中のHSP70、CD227、CD95およびCD243の高発現が明らかとなった(総細胞数中のマーカー発現細胞のパーセンテージとして、および平均蛍光強度として評価)(表7)。
【表6】
【表7】
【0202】
実施例3
6つの中間組成物中のタンパク質のLC-MS/MS特定および相対的定量化
この調査中、放射線照射、熱ストレス、化学的ストレス、代謝ストレスまたはそれらの組み合わせにインビトロで供された、および供されていない、種々の分類法による種々の細胞株を分析した。
発現タンパク質を特異的データベースで特定した。適合させた試料調製を実施して、タンパク質検出を改善した。
検出されたタンパク質の個々の量を評価した。
各タンパク質に対し得られた正規化シグナルを他のものと比較した。
【0203】
材料および方法
産生中、異なるストレス(放射線照射、熱ストレス、化学的ストレス、代謝ストレスまたはそれらの組み合わせ)に曝露後、細胞株を、遺伝子発現に応じて収集する必要がある。これらの異なるストレスは、抗原の過剰発現を誘導した。免疫原性もまた、ハプテンによって表面タンパク質を化学的に標識することにより高められている。タンパク質発現を、異なるストレスに曝露後、異なる細胞試料間で比較した。この試験で分析した種々の組成物の要約を表8に示す。
【表8】
【0204】
試料調製方法
タンパク質を検出するための細胞ペレットに適用した試料調製方法は、細胞の化学的溶解とそれに続くタンパク質消化を含んだ。それぞれ生成されたペプチドを、物理化学的特性に従って、高分解能質量分析計と組み合わせたナノフロークロマトグラフシステム(ナノLC-MS/MS)を使用して分離した。この技術を使用する主要な利点は、装置の感度を改善し、特定されるタンパク質の数を増大させることである。
【0205】
分析法
ショットガンプロテオミクスまたはペプチドマッピングとも呼ばれる、データ依存型分析(DDA)モードでナノLC-MS/MS分析を実施した。この分析ツールは、全クロマトグラフ分離を通して数千ペプチドのMSおよびMS/MSスペクトルの獲得を可能にする。
【0206】
タンパク質特定
実験によりMSおよびMS/MSスペクトルが獲得されると、質量分析データを使用してプロテオームデータベースからタンパク質を特定するソフトウェア探索エンジン使用して、データ処理を実施した。この場合、実験データを、タンパク質特定のために、完全ヒトプロテオーム(スイスプロットデータベース)と相関させた。
【0207】
特定されたタンパク質を検証するために、いくつかの特定パラメーターを実装して、特異性を確保し、擬陽性を排除した。タンパク質特定を、特定されるタンパク質に関し極めて厳密となるように、少なくとも1つのタンパク質特異的ペプチドと共に2つのペプチドで実施した。特定されたタンパク質は、より多い量で存在するものであった。更に、特定方法に関して、いくつかの高頻度で観察されるメチオニン酸化またはグルタミンからのピログルタミン酸形成などのペプチド修飾を、探索エンジンに追加した。
タンパク質の量の正規化も行った。
【0208】
個別の定量化評価
この戦略は、Readybeads(商標)technology(Anaquant,Villeurbanne,France)により正確に較正された合成ペプチドのユニバーサル検量線を加えることを含んだ。この検量線は、全ての特定されたタンパク質の量のペプチドシグナルの変換を可能にした。検量線で使用したペプチドは、特異性により選択されている;それらの配列は、バイオプロセスで使用された細胞株のプロテオームのいずれにも対応しない。
これらの標準は、任意のタンパク質の量を定量化するように適合させた正確な検量線を表す。この検量線の再現性および安定性は、Readybeads(商標)technologyにより保証される。全ての特定されたペプチドおよびタンパク質は、この検量線を用いて正規化することができる。正規化シグナルは、バッチ間比較を可能にした。
【0209】
結果
13個の試料を同時に処置および分析した。いくつかのペレット試料は溶解が困難であり、同じ注入タンパク質量を比較するために、Pierce(商標)BCAタンパク質アッセイキットを用いて、消化の前にタンパク質の定量を実施した。この定量ステップにも関わらず、試料分析後、注入タンパク質の量は、試料間で大きく異なるように思われた。
この差異は、注入したタンパク質の量の差異に由来するか、または試料中のタンパク質の動的範囲の差異に由来し得る。
それらの仮説を評価するために、試料に添加されたAQTBeadsを品質管理として使用した。Readybeads(商標)品質管理は、勾配およびr
2>0.9を有する良好な直線性ならびに1~500 fmolの範囲の注入タンパク質量の定量を示した。ペプチド消化物もまた、LC-MS注入後に定量化された。結果を表9に示す。
【表9】
【0210】
全体タンパク質比較
無処置細胞
RCB(研究用セルバンク)試料は、10%FBS培地中の無処置試料であった。
MCB(マスターセルバンク)は、培地適応(2%FBS)させたRCBに由来する。
3つのヒト細胞株(HT-29、HCT-116およびLoVo)において特定されたタンパク質を比較した(
図1Aおよび1B)。
特定されたタンパク質のほぼ50%は、通常、3つ全ての無処置ヒト細胞株中で特定された。これら3つの細胞株は、結腸または結腸直腸癌由来であるので、この結果は予測された。
【0211】
DS-A処置
DS-A処置は、熱ストレス(42℃で1時間)と共に、5分間の低線量の電離放射線(10Gy)に細胞を曝露することを含む。これらの細胞はまた、代謝ストレス(すなわち、RCBおよびMCBの間の10%~2%のFBSへの培地適応)にも供された。
このDS-A処置後、いくつかのタンパク質は、3つ全ての細胞株において過剰発現されるように見えた(全タンパク質量に対して、DS-A試料中およびMCB試料の間のタンパク質比率>2.5)。これらの結果を表10に示す。
【表10】
DS-A試料中でのみ特定され、MCB試料中では特定されなかったこれらの10個のタンパク質は、DS-A処置が細胞に耐性機構を発達させ、それによってストレスタンパク質を産生することを反映している。
【0212】
DS-B処置
DS-B処置は、細胞を化学療法剤への曝露、即ち、HT-29細胞に対しては72時間の13μMのオキサリプラチンの適用;HCT-116細胞に対しては48時間の315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)の適用;およびLoVo細胞に対しては48時間の5μMの5-FUの適用を含む。これらの細胞はまた、代謝ストレス(すなわち、RCBおよびMCBの間の10%~2%のFBSへの培地適応)にも供された。
このDS-B処置後、いくつかのタンパク質は、過剰発現されるように見えた(全タンパク質量に対して、DS-B試料とMCB試料の間のタンパク質比率>2.5)。これらのタンパク質を表11に報告する。
【表11】
過剰発現されたタンパク質は、主に、DNA修復に関連しているように見えた。結果の分析をより深く行うために、膜タンパク質に注力することにした。
【0213】
膜タンパク質に対する注力
無処置細胞
表12~14は、1つのヒト細胞株(無処置RCBおよびMCB)における、他の2つの細胞株と比較した、過剰発現された膜タンパク質(全タンパク質量に対して、タンパク質の割合比率>2.5)である。
【表12】
【表13】
【表14】
【0214】
DS-A処置
DS-A処置は、熱ストレス(42℃で1時間)と共に、5分間の低線量の電離放射線(10Gy)に対する細胞曝露を含む。これらの細胞はまた、代謝ストレス(すなわち、RCBおよびMCBの間の10%~2%のFBSへの培地適応)にも供された。
膜タンパク質は、過少発現ではなく、主に過剰発現されるように見えた。
表15~17は、その対応するMCB試料と比較して、各ヒト細胞株(DS-A試料)において過剰発現された膜タンパク質(全タンパク質量に対して、タンパク質の割合比率>2.5)を記載する。
【表15】
【表16】
【表17】
【0215】
DS-B処置
DS-B処置は、細胞の化学療法剤への曝露、即ち、HT-29細胞に対しては72時間の13μMのオキサリプラチンの適用;HCT-116細胞に対しては48時間の315nMのSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)の適用;およびLoVo細胞に対しては48時間の5μMの5-FUの適用を含む。これらの細胞はまた、代謝ストレス(すなわち、RCBおよびMCBの間の10%~2%のFBSへの培地適応)にも供された。
膜タンパク質は、過少発現ではなく、主に過剰発現されるように見えた。
表18~20は、その対応するMCB試料と比較して、各ヒト細胞株(DS-B試料)において過剰発現された膜タンパク質(全タンパク質量に対して、タンパク質比率>2.5)を記載する。
【表18】
【表19】
【表20】
【0216】
実施例4
最終組成物中のタンパク質のLC-MS/MS特定および相対的定量化
本研究は、最終ワクチン組成物(DP、上記の6つ全て(3つのDS-A:各細胞株を1つ;および3つのDS-B:各細胞株を1つ)を共にプールしたDSを含む)中の差次的発現タンパク質を特定することを目的とした。
図2は、古典的条件(10%FBSを含む)で培養したHCT-116 RCBと比較した、HCT-116 MCB、DS-A、DS-B、および上記の6つ全てのDSを含む最終産物(DP)(したがって、HCT-116 DS-AおよびDS-Bを含む)において発現したさせたタンパク質の数の差異を示す。「+」は、新しく発現したタンパク質を示し、「-」は、もはや全く発現しないタンパク質の数を示す。
図3は、古典的条件(10%FBSを含む)で培養した初期HCT-116 RCBと比較した、HCT-116 MCB、DS-AおよびDS-Bにおける過剰および過少発現したタンパク質の数を示す。
図4は、古典的条件(10%FBSを含む)で培養したHT-29 RCBと比較した、HT-29 MCB、DS-A、DS-B、および上記の6つ全てのDSを含む最終産物(DP)(したがって、HT-29 DS-AおよびDS-Bを含む)において発現したタンパク質の数の差異を示す。「+」は、新しく発現したタンパク質を示し、「-」は、もはや全く発現しないタンパク質の数を示す。
図5は、古典的条件(10%FBSを含む)で培養した初期HT-29 RCBと比較した、HT-29 MCB、DS-AおよびDS-Bにおける過剰および過少発現したタンパク質の数を示す。
図6は、古典的条件(10%FBSを含む)で培養したLoVo RCBと比較した、LoVo MCB、DS-A、DS-B、および上記の6つ全てのDSを含む最終産物(DP)(したがって、LoVo DS-AおよびDS-Bを含む)において発現したタンパク質の数の差異を示す。「+」は、新しく発現したタンパク質を示す。
「-」は、もはや全く発現しないタンパク質の数を示す。
図7は、古典的条件(10%FBSを含む)で培養した初期LoVo RCBと比較した、LoVo MCB、DS-AおよびDS-Bにおいて過剰および過少発現したタンパク質の数を示す。
【0217】
これらのLC/MSデータに比較を表21に示し、この表では、最終組成物(DP)中にのみ存在する(すなわち、RCB段階の3つの細胞株のいずれにおいても特定されない)、最終組成物(DP)において過剰発現されている(RCB段階の3つの細胞株と比較して)、および最終組成物(DP)において類似かまたはより少なく発現されている、タンパク質の数およびパーセンテージを示している。
【表21】
表22は、最終組成物(DP)中にのみ見出され、RCBのいずれにも見出されなかったタンパク質のリストを示す。これらのタンパク質のいずれかの存在は、したがって、上記の全ての異なる処置を受けた最終組成物の特徴である。
【表22】
最終組成物(DP)において特定された1556個のタンパク質のさらなる分析は、それらの97個が特に重要であり、生物学的、臨床的、およびがん予後値に基づいて、12個のスーパーファミリーに分類できることを示した。最終組成物(DP)中の97個のタンパク質のうち、52個は、RCB段階の3つの細胞株と比較して、過剰発現され、8個は最終組成物(DP)においてのみ見出されたが、いずれのRCB中にも見出されなかった。表23は、これらの12個のスーパーファミリー中のタンパク質の数を要約する。
【表23】
「接着」は、IgCAM(例えば、ICAM1)、カドヘリン、インテグリン、およびセレクチンを含むCAMタンパク質(細胞接着分子)に対応する。
「ATP結合カセット」は、薬剤耐性現象に関連する、輸送システムスーパーファミリーの膜貫通型タンパク質に対応する。
「BCL」は、アポトーシス促進性(例えば、BAX、BAK1/Bcl-2同族アンタゴニストキラー、およびBcl-2関連デスプロモーター)であるか、または抗アポトーシス性(例えば、Bcl-2、およびBcl-xL)である、細胞死を調節するタンパク質に対応する。
「COX」は、ミトコンドリア呼吸鎖の末端成分由来のタンパク質である、シトクロムCオキシダーゼタンパク質(「複合体IV」とも呼ばれる)に対応する。シトクロムCオキシダーゼ中の変異は、がんに関与する(特に、シトクロムCオキシダーゼサブユニット4中の変異)。
「EGFR」は、種々のがん腫タイプの病因および進行に関与する上皮増殖因子に対応する。
「HSP」は、広範囲のヒトがんにおいて過剰発現されタンパク質のクラスであり、腫瘍細胞増殖、分化、浸潤、転移、死亡、および免疫系による認識に関連する、ヒートショックタンパク質に対応する。
「阻害剤」は、促進性または抗がん増殖に関連するタンパク質に対応する。
「MUC」は、高度にグリコシル化されたタンパク質である、ムチンタンパク質に対応する。MUC13は特に、胃、結腸直腸、および卵巣がんを含む種々の上皮がんにおいて高頻度かつ異常に発現される。
「RAS関連」は、低分子量GTPアーゼの1タイプである、Rap GTP結合たんぱく質に対応する。95%の膵臓がんおよび45%の結腸直腸がんを含む、全てのヒトがんの30%超が、RAS遺伝子ファミリーの変異により促進される。
「修復」は、腫瘍進行に関連するタンパク質に対応する。
「トランスポーター」は、薬剤耐性において機能を有する膜貫通型タンパク質に対応する。
表24は、過剰発現されているこれらの52個のタンパク質を特定し、このうちの8個は、RCBと比較して最終組成物(DP)においてのみ発現される。
【表24】
表25:種々のタイプのがんにおけるこれらの97個のタンパク質の生物学的、臨床的、およびがん予後値の関係を示す。認められるように、最終組成物(DP)は、HT-29、HCT-116およびLoVo細胞が結腸直腸の細胞株であることを考慮すれば予測されるように、結腸直腸がんに関連するのみでなく、他のタイプのがんにも関連するマーカーを発現する。このことは、本明細書で記載される組成物が、結腸直腸がんのみでなく、広く多様な他のがんの処置にとっても有用であり得ることを示唆する。
【表25】
【0218】
実施例5
2つの中間組成物および最終産物中の表面タンパク質のLC-MS/MSによる特定および相対的定量化
本研究は、1つの出発物質(HT-29 MCB)、2つの対応する中間組成物(HT-29 DS-AおよびHT-29 DS-B)および上記6つ全てを含む(したがって、HT-29 DS-AおよびHT-29 DS-Bを含む)最終産物(DP)における、異なる産生ステップでの腫瘍性細胞の表面プロテオームを特徴付けること、および最終的に差次的発現表面タンパク質を特定することを目的とした。
【0219】
材料および方法
前の実施例3および4で記載の産物と類似のタイプの産物(DS/DP)を分析した。同じステップ、特に、異なるストレス(放射線照射、熱ストレス、化学的ストレス、代謝ストレスまたはそれらの組み合わせ)への曝露が適用されている。これらの異なるストレスは、抗原の過剰発現を誘導した。免疫原性もまた、表面タンパク質をハプテンによって化学標識することにより高められている。タンパク質発現を、異なるストレスに曝露後の異なる細胞試料間で比較した。本研究で分析した種々の組成物の要約を表26に示す。
【表26】
【0220】
試料処置
可能な場合には、6x10
6個の細胞の量(それが可能でない場合は、全試料を使用)をPBSで穏やかに洗浄した後、Pierce(商標)Cell Surface Protein Biotinylationを用いてビオチン化した。その後、細胞を溶解し、Pierce(商標)細胞表面タンパク質ビオチン化および単離キット(Thermo Scientific、カタログ番号A44390)を用いて、タンパク質を単離した。いずれの調製ステップも、製造業者の説明書に従って実施した。
その後、タンパク質をメタノール-クロロホルムを用いて沈殿させ、沈殿物をメタノールで洗浄し、乾燥およびiST LYSE(PreOmics Gmbh)緩衝液でマイクロキャビテーション(Bioruptor Pico,Diagenode)により可溶化した。
LysCおよびトリプシンを用いてタンパク質を消化した。ペプチドを、混合モード逆相カチオン交換輸送体SPEカラム(PreOmics Gmbh)を用いて精製し、乾燥後、100μLの3%アセトニトリル、0.1%ギ酸含有水溶液中に可溶化した。
BCA方法を用いてペプチド濃度を測定した(表27)。測定したペプチド濃度が低かったにも関わらず、それらの量は、この実現可能性研究にとって十分であった。
【表27】
【0221】
分析法
LC-MS/MS
250ngのペプチドを各試料に関して3連で注入した。
クロマトグラフィーは、RepMap100 C18(75μmx50cm、2μmの材料)カラムを備えたUltimate 3000(Dionex)装置を用い、プレカラム上の3分間のトラッピングステップ後に、2.5%~35%アセトニトリルの120分勾配を300nL/分の流速で適用して実施した。
表28に記載の実験設定を用いて、Q-Exactive(Thermo)質量分析計を使用してデータを取得した。各サイクルの最も強い10個のイオンについて、MS/MSスキャンを実施し、6545サイクル、したがって、クロマトグラフピーク当り平均で17サイクルを行った。
【表28】
【0222】
タンパク質特定
データは、Proteome Discoverer 2.4で処理した。
NeXtProtから取得したヒト参照プロテオームを収集するデータベースおよびヒトタンパク質を除くcRAP混入物データベースに対して、SEQUEST-HTアルゴリズムを用いてタンパク質を特定した。
パラメーターは以下の通りであった:
-酵素=トリプシン(完全);
-許容される誤切断=2;
-前駆体エラー許容範囲=10ppm;
-フラグメントエラー許容範囲=0.02Da;
-動的修飾=酸化(M)、脱アミド化(N/Q)、CAMチオプロパノイル(K);
-タンパク質末端修飾=アセチル化、CAMチオプロパノイル;
-静的修飾=カルバミドメチル(carbamidomethI)(C)。
偽発見率(FDR)測定は、Percolatorアルゴリズムを用いて実施した。
SEQUEST-HTより劣る信頼性で報告された、すなわち、特定されていないと考えられる全てのスペクトルを、上記と同じデータベースに対し、以下の変更した設定を用いて、同じアルゴリズムにより二度目に処理した:
-酵素=トリプシン_R(半分);
-許容される誤切断=2;
-前駆体エラー許容範囲=10ppm;
-フラグメントエラー許容範囲=0.02Da;
-動的修飾=酸化(M)、脱アミド化(N/Q)、CAMチオプロパノイル(K);
-タンパク質末端修飾=アセチル化、CAMチオプロパノイル;
-静的修飾=カルバミドメチル(carbamidomethI)(C)。
偽発見率(FDR)測定は、Percolatorアルゴリズムを用いて実施した。
タンパク質は、「膜」または「細胞表面」のキーワードが、Thermo Protein Centerデータベースの「細胞成分」の領域中にアノーテーションとして報告されている場合には、「膜」または「細胞表面」の一部と見なされた。同じタンパク質に関していくつかの細胞成分が報告され得ることに留意しなければならない。更に、用語「膜」は、細胞膜(例えば、核膜、オルガネラ膜、小胞膜、など)以外の膜を指し得る。
【0223】
タンパク質定量化
データは、Proteome Discoverer 2.4ソフトウェア用のMinora and feature mapperを用いて処置した。
ピーク積分パラメーターは以下の通りであった:
-取得後再較正=有り(精密パラメーター);
-最小トレース長=5;
-同位体の最大デルタRT=0.2分;
-積分のPSM信頼水準=高。
クロマトグラフ整列パラメーターは以下の通りであった:
-RT整列=有り:
-パラメーター調整=精密;
-最大RTシフト=5分;
-質量許容誤差=10ppm。
特徴マッピングパラメーターは以下の通りであった:
-RT許容範囲=自動;
-質量許容誤差=自動;
-S/N閾値=2.
Proteome Discoverer 2.4ソフトウェア用の前駆体イオンクオンティファイアーノードを使用することにより、統計解析を実施した。
一般的定量化設定は以下の通りであった:
-使用ペプチド=ユニーク+RAZOR(ユニークは、異なるタンパク質またはタンパク質群により共有されないペプチドを意味する;RAZORは、複数タンパク質群により共有されるが、最大数のユニークペプチドを有し、最大長のアミノ酸配列を有するタンパク質を定量するためにのみ使用されるペプチドを意味する);
-ペプチドのユニークさに対するタンパク質群を考慮する=有り;
-欠測チャネルを有する定量分析結果を拒絶する=無し;
前駆体定量化設定は以下の通りであった:
-前駆体存在量は=面積に基づく;
-特徴を再現する最小数=50%(定量化に使用するために試料の1群の少なくとも50%でペプチドが検出されなければならない)。
正規化設定は以下の通りであった:
-正規化モード=総ペプチド量(特定された全てのペプチドに対する各注入の存在量値の総計を計算し、最高の総存在量を有する注入を、全ての他の注入の存在量値を、注入当りの定数係数により補正するための基準として使用し、それにより最終的に総存在量は、全ての注入に対し同じである)。
定量解析ロールアップ仮説試験設定は以下の通りであった:
-比率計算=ペアワイズ比率ベース(ペプチド比率は、選択された試験因子に関する全ての反復実験からの全ての組み合わせ比率の幾何学的中央値として計算される。タンパク質比率は、その後、ペプチド群比率の幾何学的中央値として計算される)。
-補完モード=反復試料ベースの再サンプリング(欠測値を、(技術的、生物学的)反復試料の検出された値の中央値周辺を中心とする分布からサンプリングしたランダム値と置き換える);
-仮説検定=t-検定(バックグラウンドベース)。
p値を与える仮説検定は、t-バックグラウンド検定(またはANOVAバックグラウンド)である。この検定は、ほとんどのタンパク質存在量が、プロテオミクスにおいて刺激に応答して変化しないという仮設に基づいている。この方法は、この一定集団の中央値および分散に対して各タンパク質の存在量比を試験する前の条件間で主に一定であると考えられるタンパク質比のランクを決定する。この検定は、欠測値を有する試験に有用であり、数百個のタンパク質が特定される場合にのみ使用できる。それは、技術的反復を要しない。
【0224】
結果
タンパク質検出数
各試料中で特定されたタンパク質およびペプチドの数を表29および
図8に示す。
【表29】
【0225】
タンパク質の相対的定量化
以下を比較する4つの比較を実施した:
-HT-29 DS-AとHT-29 DS-B、
-HT-29 DS-AとHT-29 MCB、
-HT-29 DS-BとHT-29 MCB、および
-HT-29 MCBとDP。
注記1:トレースデータの質量分析による取得の生物学的もしくは技術的変動および/または確率論的性質のために、いくつかのタンパク質存在量値が失われる可能性がある。したがって、我々は、いずれの群においても、その定量可能なペプチドが注入物の少なくとも50%に存在するタンパク質を定量可能と見なしている。
注記2:いくつかのタンパク質またはペプチドの場合、存在量比は、1000または0.001に等しい。これらの値は、任意である。最初の例では、それらは、このタンパク質またはペプチドが分子条件でのみ定量化され、第2の例では、分母条件でのみ定量化されていることを意味する。
注記3:それらのペプチドのMS/MSフラグメント化スペクトルに基づいて特定されないタンパク質は、それでも、「実行間の一致(match between run)」により定量化できる。この定量化は、それらのペプチドのXIC(MS1)クロマトグラフィー特性(正確な質量、保持時間)と、同じ実験の少なくとも1回の取得で特定されたペプチドの特性との類似性に基づいている。
注記4:タンパク質存在量は、関連するp値が0.05以下であり、0.5以下または2以上の存在量比を有する場合に、統計学的におよび有意に異なると見なされる。
図9A~Dは、4つの比較のそれぞれにおける、p値および倍率変化に従ったタンパク質分布を示す。
図10は、4つの比較のそれぞれにおける、統計学的および有意な差を有する膜および/または細胞表面由来のタンパク質の数を示す。
全ての注入に対して、特定されたタンパク質の65%が、Thermo Protein Centerデータベースの「細胞成分」の領域中の用語「膜」または「細胞表面」に関連した(
図8)。比較として、非ビオチン化HeLa細胞中では、より低い比率の特定されたタンパク質(51%、すなわち、3562個中の816個)が同じデータベース中で用語「膜」または「細胞表面」に関連する。これは、4つ全ての試料において表面プロテオームの濃縮の成功を示す傾向がある。
相対的定量化および試料間の比較は、ストレスを受け/ハプテン化された細胞(DS-AまたはDS-B)または薬物製剤(DP)を、無処置細胞(MCB)と比較する場合、タンパク質の約29%~34%が有意に変化したことを示した(それぞれ、
図9A~C)。ストレスを受け/ハプテン化された細胞試料(DS-AおよびDS-B)の両方を相互に比較する場合、より低い割合(15%)が観察される(
図9D)。
有意に過剰発現または過少発現されたタンパク質の半分より多くが、膜および細胞表面タンパク質としてアノーテーションされている(
図10)。
【0226】
比較結果
HT-29 DS-A/HT-29 MCB
生データに基づいて、放射線照射および熱ショックによるストレスに続けてハプテン化後に過剰発現された膜または細胞表面タンパク質を選別するために、存在量比DS-A/MCB≧1000が選択されている。
細胞膜タンパク質を考慮する場合、MCBと比較して、存在量≧1000を有する455個のタンパク質が、DS-Aにおいて過剰発現されたと特定された。
特異的細胞表面タンパク質を考慮する場合、MCBと比較して、存在量比≧2を有する127個のタンパク質が、DS-Aにおいて過剰発現されたと特定され、それらのうち38個が1000の存在量比を有した(表30)。
【表30】
HT-29 DS-A/HT-29 MCB
生データに基づいて、熱ショックに続けてハプテン化後に過剰発現された膜または細胞表面タンパク質を選別するために、存在量比DS-A/MCB≧1000が選択されている。
細胞膜タンパク質を考慮する場合、MCBと比較して、存在量≧1000を有する430個のタンパク質が、DS-Bにおいて過剰発現されたと特定された。
特異的細胞表面タンパク質を考慮する場合、MCBと比較して、存在量比≧2を有する127個のタンパク質が、DS-Bにおいて過剰発現されたと特定され、それらのうち37個が、1000の存在量比を有した(表31)。
【表31】
DP/HT-29 MCB
注記:HT-29 DS-AおよびHT-29 DS-Bのみならず、HCT-116 DS-A、HCT-116 DS-B、LoVo DS-AおよびLoVo DS-Bを収集するDPの組成により、この比較は、実際のタンパク質過剰発現を代表するものではない;したがって、MCB比較のためには、希釈因子を考慮に入れることが必要となるであろう。
生データに基づいて、過剰発現された膜または細胞表面タンパク質を選別するために、存在量比DP/MCB≧1000が選択されている。
細胞膜タンパク質を考慮する場合、MCBと比較して、存在量≧1000を有する343個のタンパク質が、DPにおいて過剰発現されたと特定された。
特異的細胞表面タンパク質を考慮する場合、MCBと比較して、存在量比≧2を有する112個のタンパク質が、DPにおいて過剰発現されたと特定され、それらのうち34個が、1000の存在量比を有した(表32)。
【表32】
【0227】
薬物製剤(DP)中のプロテオーム特定
表33は、HT-29 DS-A、HT-29 DS-B、HCT-116 DS-A、HCT-116 DS-B、LoVo DS-AおよびLoVo DS-Bの混合物を含むDPの3回の反復実験で特定された132個の細胞表面タンパク質である。
【表33】
【0228】
実施例6
混合リンパ球反応アッセイによるSTC-1010の機能活性のインビトロ評価
目的は、最終産物(DPまたは「STC-1010」)を、単独でまたはCD40L(天然にインビボで存在する)と組み合わせて適用した場合の、ヒト単球由来樹状細胞(DC)の免疫原性プロファイルの誘導能に関してインビトロで評価すること、および樹状細胞により媒介されるT細胞活性化を混合リンパ球反応(MLR)アッセイで評価することであった。本試験を、HLA適合単球由来mDCおよびCD8+T細胞の共培養に関して実施し、この系では、i)DCのサイトカインプロファイルを、培養上清(IL-12およびIL-8を含む)中に放出されたサイトカインの定量化により測定し、ii)DC媒介T細胞活性化を、特定のホモジニアス時間分解蛍光法(HTRF)ベースの検出キットを用いて、放出されたIFNγの定量化によるMLR応答の評価により測定した。
【0229】
材料および方法
i)分化/成熟プロトコルを通して成熟DCを得るために使用される単球、ならびにii)CD8+リンパ球、を新しく単離するために、健康なドナー由来のヒトPBMCをこの試験に使用した。
手短に説明すると、ヒト単球をPBMCから新しく単離し、GM-CSFおよびIL-4の存在下で培養し、DCに分化させた。分化過程の最後に、3つの異なる比率(1:1、3:1および10:1の比率の条件と、これに加えて、陰性対照として、STC-1010を含まない条件)でSTC-1010を含むLPSおよびIFNγの存在下、0.6μg/mLのCD40Lの存在および非存在下で、特異的カクテル中でDCを成熟させた
成熟すると、mDCは、CD209+CD1a+CD80+CD83+CD86+として検証され、細胞培養上清を、HTRFによるIL-12およびIL-8の定量化のために回収した。
その後、DCを適切な1:4の刺激剤:応答体比率で、同じドナーから単離したCD8+T細胞と共に、共培養した。対照条件(無処置)、ならびにT細胞単独およびmDC単独を実験に含めた。共培養の72時間後、上清を収集し、CD8+T細胞活性化に及ぼすSTC-1010の効果を、T細胞活性化の重要な代表的代替物として使用される、放出されたIFNγレベルの定量化により評価した。サイトカインレベル定量化は、HTRFにより実施した。
【0230】
結果
mDCサイトカインに及ぼすSTC-1010の効果
STC-1010は、CD40Lの存在下、非存在下の両方の条件で、mDCによるIL-8の分泌を比率依存的に制限することができた(それぞれ、
図11Aおよび11B)。STC-1010はまた、CD40Lの存在下で、mDCによるIL-12の分泌を比率依存的に高めることができる(
図11C)。この比率依存的応答は、DCの成熟に及ぼすSTC-1010の作用を確証する。
【0231】
2つの他のサイトカイン(IL-10およびTNFα)もこの試験の過程で評価した:STC-1010は、CD40Lの存在下でIL-10分泌を制限する傾向を実証した;一方、TNFα分泌は、CD40Lの非存在または存在の両方で、STC-1010曝露によりわずかに減少し、効果は最高比率で最高に達した。
IFNγ定量化によるMLR応答に及ぼすSTC-1010の効果
自家CD8
+T細胞と共培養したmDCは、以前に成熟期間中にCD40Lに曝露した場合、効果的なMLR応答を示した。この効果は、対照およびビークルと比較して、共培養から収集された上清中のIFNγ放出が有意な上方調節を示したという評価により立証された(
図12)。
【0232】
結論
これらのデータを考慮すると、STC-1010は、サイトカインプロファイルを通して立証されたように、STC-1010の免疫原性および比率依存性活性と共に、DC成熟を調節するその能力を実証した。
この免疫原性プロファイルは、MLRにより確認され、STC-1010プライミングDCと共培養されたCD8+T細胞は、改善された機能的活性を有した。
【0233】
実施例7
漿尿膜アッセイによるSTC-1010の機能活性のインオボ評価
この目的は、最終産物(DPまたは「STC-1010)」を、漿尿膜(CAM)アッセイにおける免疫応答の誘導能に関してインオボで評価することであった。
【0234】
材料および方法
ニワトリ胚の調製
白色レグホンの受精卵を37.5℃、50%の相対湿度下で9日間インキュベートした。その時点(E9)で、卵殻に小さい穴を開けることにより、CAMを気嚢中に落下させ、CAMの上部の卵殻中で1cm2のウィンドウを切り取った。各試験群に関して少なくとも20個の卵を開口した(しかし、卵殻開口は、侵襲的外科行為であるので、開口後の最初の数時間中に数例の死亡が起こり得るため、データは、群あたり15~20個の卵で収集されていてもよい)。
【0235】
処置
処置の前に、各卵の生存率をチェックし、生存卵をいくつかの群に無作為化した。全ての群の卵を、100μLの体積のSTC-1010によって、以下の3つの試験条件で処置した:
-試験条件「STC1010[1]」;105細胞/mL、すなわち、104細胞/胚;
-試験条件「STC1010[2]」;5x105細胞/mL、すなわち、5x104細胞/胚;および
-試験条件「STC1010[3]」;106細胞/mL、すなわち、105細胞/胚。
STC-1010を含まない陰性対照(「Neg Ctrl」)を同時に実施した。
ニワトリ免疫細胞の定量的評価
E18日目に、末梢血を採取し、血液凝固を防止するためにヘパリンで処置した。
樹状細胞(DC)評価に関しては、100μLの個々の試料(n=8/群)を回収し、そこからRNAを抽出し、逆転写、前増幅し、ニワトリCD40、CD83およびCD86配列に特定的なプライマーを用いて、qPCRにより分析した。qPCRで実施した全てのポイントに対し、参照遺伝子発現として、ニワトリGAPDHの発現も分析し、これを使用して試料間の免疫バイオマーカー発現を正規化した。各試料のCqの計算、平均Cqおよび各群の免疫細胞の相対量をBio-Rad(登録商標)CFX Maestroソフトウェアにより直接管理した。
Tリンパ球評価のために、残りの血液試料を群内でプールした。次に、末梢血単核球(PBMC)単離のために、血液試料をHypaque-Ficoll(HF)分離によって処理した。その後、フローサイトメトリー分析によるTリンパ球評価のために、精製PBMCを抗ニワトリCD45(ThermoFisher、参照番号:MA5-28679)、抗ニワトリCD3(Southern Biotech、参照番号:8200-26)、抗ニワトリCD4(Thermo Fisher、参照番号:MA5-28686)および抗ニワトリCD8(Thermo Fisher、参照番号:MA5-28686)で標識した。
免疫サイトカインの定量的評価
E18日目に、末梢血を個々に採取し(n=5/群)、血液凝固を防止するためにヘパリンで処置した。その後、血液試料を血漿収集のために遠心分離し、続いて、IL-12およびIFNγ発現に関するELISA分析を実施し、各血漿試料を3つの希釈で評価した。全てのELISAキットを、Cusabioに注文した(ニワトリIL-12 ELISAキット、参照番号:CSB-E12836C;ニワトリIFN ELISAキット、参照番号:CSB-E08550Ch)。
【0236】
統計解析および有意性
全ての定量データに対し、外れ値特定および一元配置分散分析(各2組の群間で事後検定)を、Prism(登録商標)(GraphPad Software)を用いて実施した。
【0237】
結果
FACSによるニワトリ免疫細胞の定量的評価
E18で精製したPBMC中のCD45
+、CD3
+、CD4
+、およびCD8
+細胞のFACS定量化により、群「Neg Ctrl」および「STC-1010[3]」における白血球活性化を評価した。表34は、末梢白血球中に含まれるこれらの異なる細胞サブセットのFACS分析データを示す(末梢CD45
+白血球中の%として)。
【表34】
これらのデータは、CD4
+およびCD8
+白血球の増加、特にCD3
-/CD4
+白血球の高い増加を示す。
【0238】
免疫サイトカインの定量的評価
E18の全ての群中の末梢血液中のIL-12およびIFNγの発現レベルを推定した。サイトカイン分泌を適切に評価するために、各血漿試料を3つの希釈1/2、1/10および1/50で評価した。
【表35】
これらの結果からわかるように、陰性対照と比較して、3つ全ての試料希釈で、STC-1010により誘導されたIL-12分泌の真の増加が観察された。しかし、STC-1010処置後にIFNγの有意な増加は観察されなかった(データは示さず)。
【0239】
RT-qPCRによるニワトリ免疫細胞の定量的評価
3つのDC活性化マーカー(CD40、CD83、CD86)の発現をRT-qPCRにより評価した。結果は、STC-1010により誘導されたこれらのマーカー、特に、最高用量時のCD40およびCD86の上方調節、ならびにCD83の全用量での上方調節、および、最低用量でのより有意な上方調節を示す(
図13A~C)。
【0240】
結論
この試験全体を通して、胚の大多数が生存したことから、STC-1010の毒性がないことが確証された:
-陰性対照:n=50、3個の胚が死亡した(6%の死亡率);
-群「STC1010[1]」:n=48、2個の胚が死亡した(4.17%の死亡率);
-群「STC1010[2]」:n=33、0個の胚が死亡した(0%の死亡率);
-群「STC1010[3]」:n=29、1個の胚が死亡した(3.45%の死亡率)。
STC-1010は、このCAMアッセイを用いて、免疫系を増強し、自然および/または適応免疫応答を活性化できることが示された。
これらの有望な結果に基づいて、ヒト結腸直腸腺癌をグラフトしたニワトリ胚に対するSTC-1010のインオボ有効性を評価する新規研究が実施されるであろう。
【国際調査報告】