(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】基材に対するボディの粘着力を試験するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 19/00 20060101AFI20240214BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20240214BHJP
G01N 3/32 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01N19/00 E
G01N3/00 Q
G01N3/32 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553051
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2022054780
(87)【国際公開番号】W WO2022184572
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102021104874.5
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508163924
【氏名又は名称】エルテーエス・ローマン・テラピー-ズユステーメ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】LTS Lohmann Therapie-Systeme AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】パウルカット,ディーター
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA16
2G061AB05
2G061BA15
2G061CA16
2G061CB01
2G061CB18
2G061CC13
2G061DA01
2G061DA16
2G061EA10
2G061EB07
2G061EC02
(57)【要約】
本発明は、面状の基材に対する粘着性を有する面状のボディの粘着力を試験するための方法および装置に関する。面状のボディは基材に粘着的に貼付される。基材は湿らされ、粘着的に貼付されたボディとは反対側の基材の側に作用するダンベル形状の磁気撹拌子の形態を有する要素によって基材に機械力が作用する。基材は、面状のボディの粘着領域の少なくとも一部において繰り返し可逆的に変形され、力の作用を測定し、一定の時間が経過した後、機械的な力の作用を終了し、面状のボディの残りの粘着力を定性的におよび/または定量的に評価する。試験装置も開示される。貼付された粘着性を有する面状のボディとは反対側の面状の基材の側に作用し、基材の下で回転し、基材を変形させるダンベル形状の磁気撹拌子の形態の可動の要素によって、面状の基材に力が作用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(17)に対する粘着性を有する面状のボディ(18)の粘着力を試験するための方法であって、好ましくは多層の経皮吸収治療システムの粘着力を評価するための方法であって、前記ボディ(18)が前記基材(17)に粘着的に貼付され、前記基材(17)を湿らせ、前記ボディ(18)とは反対側の前記基材(17)の側に作用するダンベル形状の磁気撹拌子(3)の形態を有する要素によって機械的な力が前記基材に作用して、前記基材(17)は、前記力の作用によって前記ボディ(18)の粘着領域の少なくとも一部が繰り返し可逆的に変形され、所定の負荷ポピュレーションを含む期間の後に、機械的負荷が終了して、前記ボディ(18)の残りの粘着力が定性的におよび/または定量的に評価され、
前記基材を変形させる間、前記ダンベル形状の磁気撹拌子が前記基材の下で回転するように、磁気攪拌装置(7)で駆動されるとともに上部が開口した容器(2)内で可動である前記ダンベル形状の磁気撹拌子(3)によって、前記基材(17)を繰り返し変形させる力が作用する、方法。
【請求項2】
前記基材(17)として、ウォッシュレザー、スプリットレザー、グレイン合成皮革フィルム、人工皮膚、動物の皮膚または人間の皮膚が、使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材(17)を、飽和または含浸まで、好ましくは純水で飽和まで、湿らせる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基材(17)を繰り返し変形させる前記力は、前記基材の表面に対して直角である前記基材の撓みを生じさせる圧力として構成され、前記撓みが前記粘着領域において移動または回転を行う、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記力が作用する間に前記基材が応力を受ける、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基材を変形させる間、前記ダンベル形状の磁気撹拌子(3)は、100rpm~120rpmの回転速度で24時間にわたって前記基材の下で回転する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ダンベル形状の磁気撹拌子(3)を収容する前記容器(2)が潤滑剤で満たされ、好ましくはその体積の50%~75%が純水で満たされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粘着性を有する面状のボディ(18)の残りの粘着力は、剥離現象についての目視検査によって定性的に評価され、特に、前記ボディ(18)のエッジ(19)における粘着力が評価される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記粘着性を有する面状のボディ(18)の残りの粘着力は、残りの粘着領域を決定することによって定量的に評価される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ボディ(18)の全領域に対する粘着がまだ残っている領域の比率は、前記粘着性を有する面状のボディ(18)上に配置された、メッシュによって、好ましくは透明なメッシュフィルムによって、決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記透明で粘着性を有する面状のボディ(18)の残りの粘着力を評価する方法であって、前記粘着性を有する面状のボディ(18)の透明表面部分に対する不透明表面部分の割合が決定される、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記粘着性を有する面状のボディ(18)の残りの粘着力が、前記機械的負荷の前後の前記基材からの引き剥がし力の測定および比較によって、好ましくは剥離試験によって、定量的に評価される、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法によって、基材(17)に対する粘着性を有する面状のボディ(18)の粘着力を試験するための装置(1)であって、
好ましくは円筒形のビーカー(2)である、上部が開口した容器(2)と、
前記容器(2)において可動に配置され、容器縁の上方に垂直に突出した、ダンベル形状の磁気撹拌子(3)の形態を有する要素(3)と、
前記容器(2)における前記要素の回転運動および/または撹拌運動をもたらす駆動装置(7)であって、前記容器の下に配置された磁気攪拌装置(7)として構成された駆動装置(7)と、を備え、
容器開口部は、前記面状の基材(17)を配置するように構成されており、前記面状の基材(17)は、前記容器開口部の領域を越えて突出することができるとともに、回転運動および撹拌運動をもたらす前記要素(3)を覆い、粘着性を有する面状のボディ(18)が、前記面状の基材(17)の上側に設けられ、前記面状のボディ(18)が、少なくとも部分的に前記容器開口部の上方に位置するとともに回転運動および/または撹拌運動の領域に位置して、
該装置は、前記面状の基材(17)を固定するための保持装置(9,10,12,14,15)をさらに有し、前記保持装置は、前記容器開口部を越えて突出する基材表面に係合でき、前記保持装置(9,10,12,14,15)の下側が前記容器開口部および前記可動の要素(3)をクランプしてオプションで跨がるように前記面状の基材(17)を固定できる、試験装置(1)。
【請求項14】
前記容器縁を越えて突出する前記可動の要素(3)は、端部でボールまたはディスク(4,5)に接続されたロッド(6)の形態でダンベル形状に構成されて、前記ボールまたは前記ディスク(4,5)の直径は、前記容器(2)の内縁の高さよりも大きい、請求項13に記載の試験験置。
【請求項15】
前記可動の要素は、磁性の、好ましくはプラスチックでコーティングされた磁気撹拌子(3)として構成される、請求項13または請求項14に記載の試験装置。
【請求項16】
前記保持装置は、前記容器(2)用のレセプタクルまたは貫通した開口部(11)が設けられたベース板(9)を有し、前記レセプタクルまたは前記開口部(11)の周りのエッジ領域に配置された保持装置またはクランプ装置(12,14,15)、好ましくは蝶ナット(15)を備えたネジ付きロッド(12)が設けられ、これによって前記基材(17)を取り付けることができ、前記ネジ付きロッド(12)用の対応する打ち抜き部(16)が前記基材(17)に設けられている、請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の試験装置。
【請求項17】
好ましくは同じ寸法の1つまたは複数のスペーサ板(10)は、前記基材(17)と前記ベース板(9)との間に配設され、前記容器(2)用の開口部(11)および前記ネジ付きロッド(12)用の貫通孔(13)は、前記スペーサ板(10)に設けられるとともに、前記スペーサ板(10)は前記基材(17)に結合して固定される、請求項16に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状の基材に対する粘着性を有する面状のボディの粘着力を試験するための方法に関し、好ましくは、多層の経皮吸収治療システムの粘着力を評価するための方法に関し、該方法を実行するための試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮吸収治療システム(TTS)は、一定の貼付期間にわたって人間の皮膚を介して有効成分を継続的に供給できるようにすることを目的とした、層状に構築された面状の医薬品である。ニコチンプラスター、乗り物酔いと戦うことを目的としたプラスター、および特に閉経期の女性に対するTTSによるホルモン補充療法は、確かにここで最もよく知られた例である。経皮吸収治療システムでは、一般に、活性物質キャリアフィルム、すなわち、活性物質を含有するとともに皮膚に付着するポリマー化合物でコーティングされたキャリアフィルムが提供される。この場合、補助剤の有無にかかわらず、1つ以上の活性物質をポリマーマトリックスに埋め込むことができる。このシステムでは、追加の粘着性を有するキャリア層を、すなわち、活性物質を含まない粘着剤でコーティングして、活性物質キャリアフィルムの裏側、皮膚とは反対側に配置されるキャリア層をさらに設けることができる。キャリア層は、活性物質キャリアフィルムをエッジで覆い、皮膚への粘着力を改善するために設けられている。この種の経皮吸収治療システムの一例は、例えば米国特許出願公開第2017/0290779号明細書に開示されている。
【0003】
重要な特性の1つは、このような経皮吸収治療システムが皮膚上で十分に安全にかつ長期にわたって粘着することである。単純な絆創膏は、粘着力が低下した場合に簡単に交換でき、健康への影響はなく、経済的にも重要ではないが、経皮吸収治療システムが皮膚から剥がれると活性物質の供給が中断されるため、より深刻な結果を招く可能性がある。
【0004】
ロシア国特許第2210753号明細書は、皮膚および他の同様の材料の緩和特性を決定およびチェックを行うために使用できる試験器具を開示している。
【0005】
この試験器具を使用すると、サンプルを破壊することなく自動モードで高精度に、弾性特性、粘性特性および塑性特性の最大15個の指標の複合体と、内部のミクロおよびマクロの構造のさまざまな要素の可動性を反映する、その変形挙動を最もよく特徴付ける材料の緩和時間のスペクトルとを取得できる。
【0006】
中国実用新案第208476753号明細書は、作業台、グリップブロック、固定プレートおよびターンテーブルを備える、紙/樹脂の袋を検出するための装置を開示している。この装置は、特に、作業台の表面にノッチ(2)が設けられており、このノッチが作業台のプレート表面にしっかりと接続されていることを特徴とする。
【0007】
中国実用新案第204556478号明細書は、布地の摩擦変色堅牢度の試験装置を開示している。サンプルを2度クランプする必要がなくなるため、作業効率の向上を可能にするとともに作業コストを削減する。
【0008】
米国特許出願公開第2017/0290779号明細書は、ホストの皮膚または粘膜に活性物質を放出するための装置に関する。特に、この文献は、活性物質の移動を最小限に抑える経皮プラスター、および連続製造プロセスでデバイスを製造するプロセスに関する。
【0009】
独国実用新案第20005615号明細書は、プラスターの引き剥がし粘着力を測定して、それによって人間の皮膚に対するプラスターの粘着性を標準化された条件下で測定することを可能にするための装置を開示している。
【0010】
国際公開第98/46980号は、医療用粘着テープなどの粘着シート状構造、特に人間または哺乳動物の皮膚上の経皮吸収治療システム(TTS)などの粘着貼付(application)システムの粘着挙動を測定するための方法および装置に関する。
【0011】
用途によっては、経皮吸収治療システムの活性物質プラスターに含まれる薬理活性物質が高価であるので、切断ロスを最小限に抑えるために、活性物質プラスターは角張った形状、例えば正方形に切断されることがしばしばである。ただし、角張ったプラスターは、皮膚から剥がれやすくなる。粘着力を高めるために追加の固定プラスターを上に貼ったとしても、それが偶発的に活性物質の望ましくない移行現象を引き起こす可能性があり、そのような手段は必ずしも粘着力の向上につながるとは限らず、さらに経済的ではない。
【0012】
したがって、適切な粘着力と合理的で経済的なシステム構成とを組み合わせた設計および構成に到達するために、粘着特性を事前に試験することが望ましい。
【0013】
しかしながら、これまで、人間の皮膚への長期粘着力を評価するための十分に有益な試験方法および試験装置が不足している。特に、皮膚の患部の動きと、湿気や汗によるシステムへの長期的な負荷を同時にシミュレートすることは困難である。
【0014】
表面上での層または面状貼付の粘着力を定常的に試験するための様々な装置および方法が、従来技術において知られている。
【0015】
独国実用新案第20005615号明細書は、人間の皮膚上でのプラスターの粘着強度を測定するための装置を開示している。この装置では、持ち上げ装置がネジ(thread)によってプラスターに接続されており、除去中の引張力が力センサーによって測定される。一方では、被験者が必要であること、また他方では、取り外しに必要な引張力の絶対測定は可能であるものの、肌の動きや水分量の変化の間での長期的な粘着力に関する情報が得られないことは、間違いなく欠点である。
【0016】
国際公開第98/46980号は、試験のために弾性キャリアフィルムに貼付される、経皮吸収治療システムを含む粘着シート状構造の粘着挙動を決めるための方法および装置を開示している。キャリアフィルムが試験セルでクランプされ、特に磁気撹拌子を用いて、シート状構造の反対側からの規定の負荷力によって、交互の弾性歪みの付与および緩和を繰り返しの時間間隔で受ける。ここでの欠点は、自由にクランプされるとともに中央のみで支持されたキャリアフィルムの上側に作用するオブジェクト/磁気撹拌子によって負荷がかかることである。その結果、重量に関連した力と、加速度に関連した力とが、シート状構造にさらに作用して、結果をゆがめる可能性がある。
【0017】
したがって、本発明の目的は、例えば人間の皮膚に貼付されるこの種のボディを含む、面状の基材に貼付される面状のボディが受ける、実際に生じる負荷状況および周囲条件をシミュレートするとともに、簡単な定性評価を可能にするとともに十分に有益である、面状の基材に対する粘着性を有する面状のボディの粘着力の定性評価のための改良された試験方法および改良された装置を提供することである。
【0018】
この目的は、独立請求項1の特徴によって達成される。この目的は、請求項13に記載の試験装置の特徴によって同様に達成される。さらに有利な実施形態は、それぞれの従属請求項に開示されている。
【発明の概要】
【0019】
はじめに、粘着性を有する面状のボディを面状の基材に粘着的に貼付し、その後、基材を、好適には完全に飽和するまで湿らせるか、または含浸させる。この後、粘着性を有する面状のボディとは反対側の基材の側に作用する(acting on the side of the substrate facing away from the adhesive, planar body)ダンベル形状の撹拌ロッドの形態を有する要素によって、機械的な力が面状の基材に作用する。より具体的には、次のような方法である。力の作用により、粘着性を有する面状のボディの粘着領域が位置する少なくとも部分において、基材が繰り返しまたは振動的に可逆的に変形する。所定の負荷ポピュレーション(load population)を含む一定の時間が経過した後、機械的負荷が終了し、粘着性を有する面状のボディの残りの粘着力、特にその端部での残りの粘着力が評価される。
【0020】
本発明によれば、面状の基材を繰り返し変形させる力は、磁気攪拌装置によって駆動され、上部が開口した容器において可動であるダンベル形状の磁気撹拌子によって、このような方法で、または以下の方法によってもたらされることがここで想定される。これは、ダンベル形状の磁気撹拌子が基材の下で回転しながら基材を変形させるという事実によるものである。したがって、変形のための力のベクトルは、容器開口部の外の方向を指す。
【0021】
これにより、再現可能な負荷ポピュレーション、つまり、たとえば面状の基材の規定された変形や単位時間あたりの変形の繰り返しに関連した期間の明確な仕様によって記述される、非常にシンプルで有益な試験方法が提供される。単位時間当たりの変形回数は、例えば、変形に使用されるオブジェクトの特定の回転速度によって設定できる。
【0022】
既知の従来技術と比較して、ここで採用される面状の基材の下側からの負荷は、ダンベル形状の磁気撹拌子の自重または面状の基材に作用する重力による、負荷に対する望ましくない影響を排除する。これにより、ボディ部分の皮膚に貼り付けられた面状のボディ上のボディ部分の動きによって実際に与えられる負荷がシミュレートされる。
【0023】
試験により、ウォッシュレザー(セーム革)、スプリットレザーまたはグレイン合成皮革フィルムの形態の面状の基材が、試験基材として有利に使用できることが示された。ウォッシュレザーおよびスプリットレザーは、貼付された粘着性を有する面状のボディまたはTTSに対する水分負荷とその影響の変化を特によくシミュレートするが、たとえば、グレイン合成皮革フィルムは、皮膚の表面構造をほぼシミュレートする。本発明に係る方法を使用して、複数のこれらのシート状基材上でTTSの挙動を連続的に試験すると、その粘着の有益な概要が得られる。もちろん、特定の条件下では、人工皮膚を、さらには動物や人間の皮膚を、面状の基材として使用することも可能である。
【0024】
別の有利な実施形態は、面状の基材を、飽和または含浸まで、好ましくは純水で飽和まで、湿らせることにある。これにより、TTSの場合、医療用途でよく使用される水性アクリレート粘着剤に対する水分の影響をシミュレートできる。この種の粘着剤は、環境に有害な物質を放出しないため、容易に使用できるが、水や湿気には弱い。純水は、脱イオン水、純水、または脱イオン水とも呼ばれ、通常の湧き水や水道水に含まれる、アニオンとカチオンとして溶解する塩分を含まない水(H2O)である。
【0025】
別の有利な実施形態は、面状の基材を振動的に変形させる力が、その表面に直角な基材の撓みを生じさせる圧力として構成され、撓みが粘着領域において移動または回転することにある。このような直角に移動する撓みは、伸長と折り畳みが繰り返される四肢の皮膚領域、例えば関節領域の動きに比較的近い。これは、この点で有利であり、力の作用中に面状の基材が張力下に置かれるという点で有利な別の実施形態によって裏付けられる。
【0026】
再現可能な負荷ポピュレーションを提供するために、別の有利な実施形態は、面状の基材を振動的に変形させる力が、磁気攪拌装置によって駆動され、容器において可動であるダンベル形状の磁気撹拌子によって作用することにある。試験研究室の専門用語で「撹拌フリー(flea)」とも呼ばれる磁気撹拌子は、好ましくは、24時間にわたって100rpm~120rpmの回転速度で、平坦な基材を変形させながら平坦な基材の下で回転する。この後、貼付された粘着性を有する面状のボディのエッジ領域における前述の浮き上がり用の光学試験でも、有益な結果が得られる。
【0027】
別の有利な実施形態は、ダンベル形状の磁気撹拌子を収容する容器が潤滑剤で満たされ、好ましくは容器の体積の50%~75%が純水で満たされることにある。ダンベル形状の磁気撹拌子の形状および材料に応じて、材料は、すなわち、面状の基材の負荷がかかった表面と、振動的に可逆的な変形の間に面状の基材に接触するダンベル形状の磁気撹拌子の表面との間にかなりの摩擦を生成する。これは、摩耗による面状の基材の損傷または破壊につながる可能性がある。純水を含む潤滑剤を容器に充填すると、この摩擦が有利に低減され、他方では、試験期間中において、面状の基材の湿潤が所望の限度内に保たれる。
【0028】
本発明に係る方法を実施するために、特に適切な試験装置は、上部が開口した容器、好ましくは円筒形のビーカーと、ダンベル形状の磁気撹拌子の形態を有する要素と、を有するものである。要素は、容器において可動に配置され、容器縁の上方に垂直に突出している。試験装置はさらに、容器における要素の回転運動および/または撹拌運動をもたらす駆動装置を備える。駆動装置は、容器の下に配置された磁気攪拌装置(7)として構成される。
【0029】
面状の基材を配置するために構成された容器開口部は、容器開口部の領域を越えて突出することができ、回転運動および撹拌運動をもたらす要素を覆うことができる。面状の基材の上面には、このような方法で設けられる。粘着性を有する面状のボディは、少なくとも部分的に容器開口部の上方で、回転運動および/または撹拌運動の領域に位置し、試験装置を完成させる。この装置はさらに、面状の基材を固定するための保持装置を有する。この保持装置は、容器の開口部を越えて突出する基材表面に係合でき、保持装置の下面が容器開口部をクランプし、場合によっては容器開口部および可動の要素に跨がるような方法で面状の基材を固定できる。
【0030】
試験装置のさらなる有利な発展は、容器縁を越えて突出する可動の要素がダンベル形状の構成、すなわち、端部でボールまたはディスクに接続されたロッドの形状であることにある。ボールまたはディスクの直径は容器の内縁の高さよりも大きく、その結果、ダンベル形状の要素は、その端部に配置されたボールまたはディスクが容器縁を垂直に越えた状態で突出する。
【0031】
要素のこのような構成では、必要な機械的負荷は、ダンベル形状の要素のボールまたはディスクと、面状の基材との間の離間した2つの接触点に作用する力によって影響を受ける。このような要素の回転動作または撹拌動作は十分にねじれ無しであり、反力に関してバランスが保たれている。そのため、面状の基材の数点のみで一定の負荷ピークが発生することはあり得ない。
【0032】
試験装置の別の有利な実施形態は、可動の要素が、磁性の、好ましくはプラスチックでコーティングされた磁気撹拌子として構成されることにある。これにより、世界中で入手可能であり且つ既知の標準コンポーネントを利用することが可能になる。既知の磁気撹拌子、撹拌フリーまたは撹拌磁石は、通常、摩擦を低減するためにプラスチック(例えば、PTFE)またはガラスでコーティングされており、さらに化学的に不活性である。
【0033】
試験装置の別の有利な実施形態は、保持装置が容器用のレセプタクルまたは貫通した開口部を備えたベース板を有することにある。ベース板のエッジ領域には、レセプタクルまたは開口部の周囲に、好ましくは対称的かつ等距離に、配置された保持装置またはクランプ装置が設けられる。特に、蝶ナットを備えた単純なネジ付きロッドがここで使用でき、これにより、ネジ付きロッド用の対応する打ち抜き部分を備えた面状の基材を取り付けることができる。したがって、一方では、容器はベース板上に確実に保持され、撹拌運動によって移動することはできない。他方では、非常に簡単な方法で調整可能な張力が面状の基材に提供され、その張力は例えば基材とベース板との間の座金を使用して、必要に応じて細かく変化させることができる。
【0034】
試験装置の別の実施形態は、最も可変で可能な張力および調整の点で同様に有利であり、面状の基材とベース板との間に1つまたは複数のスペーサ板が設けられることにある。これらのスペーサ板にはそれぞれ、容器用のおよびネジ付きロッド用の貫通孔が設けられている。ネジ付きロッドは、ベース板の開口またはレセプタクルと一致し、好ましくはベース板と同じ寸法である。スペーサ板は、蝶ナットを備えたネジ付きロッドによって面状の基材に結合して固定でき、同様に、異なる容器の高さおよび可動の要素の寸法での張力を適応させることに役立つ。
【0035】
粘着性を有する面状のボディの残りの粘着力の定性的試験は、その単純さのために有利であり、剥離現象についての目視検査が実行されることにある。所定の負荷ポピュレーションが実行された後、機械的負荷が終了し、上述したように、粘着性を有する面状のボディの残りの粘着力、特にその端部での残りの粘着力が、視覚的に評価される。つまり、端部での粘着力の低下は、端部の剥離および浮き上がりから明らかである。剥離は目視検査によって容易に確認でき、例えば、粘着性を有する面状のボディの円周の大まかな割合で説明できる。
【0036】
異なる場所でおよび異なる人によって試験が実施される場合であっても、試験の比較可能性を確立するには、粘着性を有する面状のボディの残りの粘着力を決定するのに定量的方法がより適していることは言うまでもない。定量的な記述は、機械的負荷の終了後に、粘着性を有する面状のボディと面状の基材との間に残る粘着領域を決定することによって有利に達成できる。
【0037】
これは、粘着性を有する面状のボディ上に配置された、メッシュによって、好ましくは透明なメッシュフィルムによって、有利に達成される。盛り上がった、もはや粘着していない表面部分は、例えば、粘着性を有する面状のボディの膨らみまたはしわの形で、メッシュまたはメッシュフィルムを通じて目に見える。このように、粘着性を有する面状のボディの「まだ粘着している」表面部分の、その全領域に対する比率を決定できる。
【0038】
これは、面状の基材に結合されたTTSを参照した簡単な例で説明されて、機械的負荷の終了後に残りの粘着強度が評価される。残りの粘着特性を定量的に決定するために、TTSの全領域に対して、負荷後にまだ粘着している領域が設定される。この目的のために、メッシュを備えた透明なフィルム(フィルムとしてのミリ紙など)が、負荷の後にTTS上に配置される。盛り上がった領域および全領域は、グリッドの正方形を数えることによって決定できるようになった。この差は、まだ付着している領域の大きさを示す。以下が適用される。
【0039】
【表1】
H=試験後の粘着領域の割合
G=全試験領域
A=試験後に切り離された領域
【0040】
簡単にするために、全領域は計算によって決定されることもできる。
【0041】
【0042】
透明で粘着性を有する面状のボディの残りの粘着力を評価する別の有利な方法は、粘着性を有する面状のボディの透明な表面部分に対する不透明な表面部分の比率を同様の方法で決定することにある。これは、透明な粘着層が面状の基材にしっかりと粘着している領域ではほぼ透明であるが、非粘着領域ではかなり不透明に見えるという効果を利用している。これは、粘着剤と空気との相境界では、粘着剤と基材との相境界とは異なる屈折特性および反射特性が生じるという事実によるものである。
【0043】
この方法の別の有利な実施形態では、機械的負荷の前後での面状の基材からの引き剥がし力を測定して比較することによって、粘着性を有する面状のボディの残りの粘着力を定量的に評価することもできる。これは、例えば90°剥離試験または180°剥離試験として実施できる、従来技術で知られている剥離試験によって実施することが好ましい。基材の表面に平行に作用する引き離し力によってのみ基材が負荷されるので、180°剥離試験は、比較的柔らかい基材の場合により適している。
【0044】
本発明は、例示的な実施形態によってさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】取り付けられた面状の基材のない本発明に係る試験装置を示す。
【
図2】
図1における本発明に係る試験装置のベース板を示す。
【
図3】
図1による本発明に係る試験装置のスペーサ板を示す。
【
図4】
図1における本発明に係る試験装置に使用するための面状の基材を示す。
【
図5】
図1に示す本発明に係る試験装置の動作状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明に係る試験装置1の全体図を示すが、明確にするために、最初は、取り付けられた面状の基材17が除かれている。
【0047】
ここでは円筒形のビーカー2の形をしている、上部が開口している容器は、その中に可動の要素、つまり可動に配置されてプラスチックでコーティングされた、ダンベル形状の磁気撹拌子3(攪拌フリー(flea)とも呼ばれる)は、はっきりと見ることができる。ダンベル形状の磁気撹拌子3は、その端部がディスク4,5に接続されたロッド6からなる。ダンベル形状の磁気撹拌子3は、その中央のロッド形状領域/ロッド6内において磁気コア(ここでは特に図示せず)を有する。
【0048】
ディスク4,5は、ビーカー2の上縁から4mm突出する。
【0049】
ここで、磁気攪拌装置7は、磁気コアを有するダンベル形状の磁気撹拌子3を駆動するために使用され、磁気攪拌装置は、そのテーブル8内に、回転速度が調整可能な少なくとも1つの電気駆動回転磁石を有する。この種の磁気攪拌装置7は既知であるため、ここではこれ以上説明しない。テーブル8内の回転磁石は、ダンベル形状の磁気撹拌子3の磁気コアに作用し、同様に磁気撹拌子3を回転運動させる。
【0050】
もちろん、ダンベル形状の磁気撹拌子3は、すなわち、粘着された試験片とは反対側の面状の基材17の側に作用し、基材17に機械的に負荷を与える要素である。ダンベル形状の磁気撹拌子3は、ここで使用されるダンベル形状以外の形状、たとえばローラー形状の要素、または円形の経路上を積極的に案内されるボールなどの形状を有するように構成されることができる。要素の駆動は、例えば回転ユニオンを介して容器内に直接延在するシャフトによって撹拌要素に接続される電気モーターなど、別の方法で構成されることができる。
【0051】
さらに、
図1は、
図2および
図3においてもより明確に示されるように、ベース板9およびスペーサ板10を示す。ベース板9およびスペーサ板10には、ビーカー2用の開口部11が設けられている。あるいは、ベース板9におけるそのような開口部11は、ビーカー2のレセプタクルとして、すなわち、ベース板9に設けられてビーカー2のほぼ外径を有する凹部として、構成されることもできる。もちろん、ベース板9およびスペーサ板10の両方は、この例示的な実施形態とは異なる幾何学的構成、例えばここで提供される矩形以外の形状であってもよい。同じことが、容器用の開口部11またはレセプタクル、および容器自体にも当てはまる。
【0052】
ベース板9のエッジ領域では、開口部11の周囲に配置されたネジ付きロッド12が、ベース板9の対応するネジ付き穴にねじ込まれている。スペーサ板10は、ネジ付きロッド12と一致する貫通孔13を有する。対応する数で配置された座金14および蝶ナット15とともに、ネジ付きロッド12、ベース板9およびスペーサ板10は、面状の基材17用の保持装置を形成する。面状の基材17には、貫通孔13と一致する打ち抜き部16が設けられている。これは
図4において見ることができる。ここで、面状の基材17は、「セーム革」とも呼ばれるウォッシュレザーからなる。
【0053】
閉じられているかまたはクランプされた保持装置または取り付け具は、
図5において見ることができる。
図5では、試験装置1の全体が、組み立てられた状態で、すなわち動作状態ですぐに使用できる状態で、示されている。
【0054】
ここで、面状の基材17が円筒形ビーカー2の上に配置され、ネジ付きロッド12、座金14および蝶ナット15の助けを借りて、ベース板9の上に配置されたスペーサ板10上にしっかりとクランプされていることを見ることができる。したがって、ビーカー2およびダンベル形状の磁気撹拌子3は、この見方または配置では面状の基材17の下に位置して、
図5では見ることができない。
【0055】
テーブル8、ビーカー2およびダンベル形状の磁気撹拌子3の構成を備えた磁気攪拌装置7を介した駆動は、すでに上述されている。
【0056】
試験される粘着性を有する面状のボディ18は、面状の基材17に貼付され(applied)、この場合、粘着的に貼付される経皮吸収治療システム(TTS)として構成される。図から見ることができるように、粘着性を有する面状のボディ18、すなわち試験片は、部分的に容器開口部の上方に位置するとともに撹拌動作の領域に位置して、すなわちこの場合、その全領域の約1/3に位置する。したがって、この試験配置では、TTS18のエッジ領域19は、ダンベル形状の磁気撹拌子3を介して作用する変形および力によって、特に強い応力を受ける。
【0057】
本発明に係る試験装置1では、ダンベル形状の磁気撹拌子3の自重による負荷、または、面状の基材に作用する重力による負荷が回避される。
【0058】
この配置で実行された残りの粘着力の試験および試験装置1は、ダンベル形状の磁気撹拌子3が110rpmで回転する試験装置1の24時間の動作後において、目立った剥離がエッジ領域19において検出できないことを示した。
【符号の説明】
【0059】
1…試験装置
2…上部が開口しているビーカー
3…ダンベル形状の磁気撹拌子(撹拌フリー)
4…磁気撹拌子のエンドディスク
5…磁気撹拌子のエンドディスク
6…磁気撹拌子の中央の棒状領域
7…磁気攪拌装置
8…磁気攪拌装置のテーブル
9…ベース板
10…スペーサ板
11…ビーカー用の開口部
12…ネジ付きロッド
13…貫通孔
14…座金
15…蝶ナット
16…打ち抜き部
17…面状の基材
18…粘着性を有する面状のボディ(TTS)
19…面状のボディのエッジ領域
【国際調査報告】