(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】天然の全デンプンベースの脂肪代替物
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20240214BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240214BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L29/00
A23L5/00 N
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023553661
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 AU2022050192
(87)【国際公開番号】W WO2022187896
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522255177
【氏名又は名称】ファブル ホールディングス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】フラー ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE02
4B035LG12
4B035LG21
4B035LP03
4B035LP43
4B036LE02
4B036LF17
4B036LH12
4B036LH13
4B036LP01
4B036LP17
(57)【要約】
食品は、植物ベースの基材、および植物ベースの基材と混合された天然の全デンプンベースの脂肪代替物を含む。天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、小麦、キビ、米、大麦、オート麦、ライ麦、ソルガムおよびトウモロコシからなる群から選択される穀物の粉末形態、植物ベースの脂肪、ならびに水を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベジタリアン食品に使用するための天然の全デンプンベースの脂肪代替物であって、天然の全デンプン、植物ベースの脂肪、および水を含み、前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、約10%(w/v)、約5%(w/v)、約4%(w/v)、約3%(w/v)、約2%(w/v)または約1%(w/v)以下の1つ以上のゲル化剤、増粘剤、乳化剤および/または食用ガムを含む、天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項2】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、1%(w/v)以下の1つ以上のゲル化剤、増粘剤、乳化剤および/または食用ガムを含む、請求項1に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項3】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、ゲル化剤、増粘剤、乳化剤および/または食用ガムを含まない、請求項2に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項4】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、約0.75~1.5:0.25~1:1~1.5、または約0.75~1.25:0.25~0.75:1~1.5、または約1:0.5:1.3の比で前記天然の全デンプン、前記植物ベースの脂肪、および水を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項5】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、室温で固体状態であるコロイド状エマルジョンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項6】
前記天然の全デンプンが、小麦、キビ、米、大麦、オート麦、ライ麦、ソルガムおよびトウモロコシからなる群から選択される穀物の粉末形態を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項7】
前記天然の全デンプンが、もち米粉(GRF)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項8】
前記植物ベースの脂肪が、精製、脱色および脱臭された(RBD)油を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項9】
前記油がココナッツ油である、請求項8に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項10】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、乾燥重量または体積のうちの1つで測定した総量に対応するパーセンテージで、以下の成分、
天然の全デンプンの粉末形態、約10%~約70%
植物ベースの脂肪、約5%~約40%
水、約10%~約70%
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項11】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、乾燥重量または体積のうちの1つで測定した総量に対応するパーセンテージで以下の成分:
もち米粉(GRF)、約10%~約70%
RBDココナッツ油、約5%~約40%
水、約10%~約70%
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項12】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、約30%~約40%(w/v)のGRFおよび約15%~約20%(w/v)のココナッツ油を含む、請求項11に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項13】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物がビーガンである、請求項1~12のいずれか一項に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物を製造する方法であって、以下のステップ:
前記植物ベースの脂肪、前記天然の全デンプンおよび水を混合して混合物を形成するステップと、
任意選択で前記混合物を同時に撹拌しながら成分の混合物を調理するステップと、
前記混合物を室温に冷却するステップと、
前記混合物中のデンプンが実質的に老化するまで、前記混合物を約1~4℃の範囲の温度に冷蔵するステップと、
必要に応じて前記混合物を粒子に加工するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記混合物を調理するステップが、蒸気を使用することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
植物ベースの基材および請求項1~13のいずれか一項に記載の天然の全デンプンベースの脂肪代替物を含む、ベジタリアン食品。
【請求項17】
請求項16に記載の食品を製造する方法であって、以下のステップ:
前記植物ベースの脂肪、前記天然の全デンプンおよび水を混合して混合物を形成するステップと、
任意選択で前記混合物を同時に撹拌しながら成分の混合物を調理するステップと、
前記混合物を室温に冷却するステップと、
前記混合物中のデンプンが実質的に老化するまで、前記混合物を約1~4℃の範囲の温度に冷蔵するステップと、
必要に応じて前記混合物を粒子に加工するステップと
植物ベースの基材と混合するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の食品を製造する方法であって、以下のステップ:
前記植物ベースの脂肪、前記天然の全デンプンおよび水を混合して混合物を形成するステップと、
任意選択で前記混合物を同時に撹拌しながら成分の混合物を調理するステップと、
前記混合物を室温に冷却するステップと、
必要に応じて前記混合物を粒子に加工するステップと、
前記混合物を植物ベースの基材と混合するステップと、
混合した前記混合物中のデンプンが実質的に老化するまで、混合した前記混合物を約1~4℃の範囲の温度に冷蔵するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、概して、食品に使用するためのデンプンベースの組成物の分野に関する。特に、本主題は、様々な食品において動物性脂肪、天然デンプンおよび/または加工デンプンの代わりに使用できる天然の全デンプンベースの脂肪代替物に関する。
【背景技術】
【0002】
デンプンベースの脂肪代替物は、乳製品、焼いた食品、サラダドレッシング、およびマヨネーズを含むが、これらに限定されない様々な食品に広く使用されている。また、新たに出現した植物ベースの代替肉では、食品に水分、結合または食感などの1つ以上の物理化学的特徴を付与するデンプンベースの脂肪が使用され始めており、その結果、食品は1つ以上の官能特性、例えば、口当たりまたは味を通じて消費者の知覚に影響を与えている。デンプンベースの脂肪は、植物ベースまたは動物ベースのいずれかの供給源からのタンパク質と組み合わせて提供される動物ベースの脂肪の摂取により通常感じられる官能特性を実質的に模倣する必要がある。これらの官能特性の多くは依然として大部分の消費者にとって望ましいものであるため、同じまたは類似の機能性を提供する(すなわち、食品中の動物性脂肪成分の使用によって付与される特徴を模倣することによって)代用品に対する長年にわたるニーズは、天然デンプン、またはさらに加工デンプンの両方を使用したにもかかわらず、ほとんど満たされていないままであった。食品中の動物性脂肪成分に関連する特徴を模倣したいというこの欲求は、植物ベースの食事の人気の高まりとともに大幅な増加を示している消費者の需要にも現れている。
【0003】
一方で、天然デンプンは、トウモロコシ、ワキシートウモロコシ、高アミローストウモロコシ、米、小麦、タピオカおよびジャガイモなどの自然食物源を使用して得ることができ、加工をほとんどまたは全く必要としないが、これらの天然デンプンは、食感の改質および/または食品の濃縮化の実現の際の使用に最適である。さらに、これらの天然デンプンには、冷水にほとんど溶けないままであり、例えば、使用される正確な温度に応じて異なる程度に膨潤する場合があるという欠点もある。これにより、特にこれらの天然デンプンが使用される食品の製造業者にとって一貫した問題が発生する。
【0004】
さらに、場合によっては、天然デンプンがゲル化した後に典型的に起こるプロセスである天然デンプンの老化が、天然デンプンの機能的特性の主要な決定要因となる。この老化は、次いで、限定されないが、品質、受容性、栄養価および最終食品の保存期間を含む態様に影響を与える可能性がある天然デンプンの機能的特性が老化によって得られるため、食品加工用途における天然デンプンの使用を決定付ける。他の場合、デンプンの老化は、パンおよび他のデンプンが豊富な食品などの一部の食品の老化に大きく寄与するため、望ましくない影響を与えると考えられる。なぜなら、これは、保存期間および消費者の受け入れの低下を引き起こし、同時に大量の食品の廃棄物を生じる可能性があるためである。これは、食品製造業者がそのような食品を製造する際に克服すべき他の課題となっていることに加えられる。
【0005】
一方、加工デンプン(デンプン誘導体としても知られる)は、使用が意図されている場合、天然デンプンの既存の特性を、食品加工用途の特定の要件に適合するように有利に変更できるように天然デンプンを物理的、化学的または酵素的に処理することによって天然デンプンから主に調製または誘導される。しかしながら、代替肉のスペースの現在の状況(landscape)は、自然に存在する、および/または最小限に加工され、食品ガム、乳化剤(emulsifier)、充填剤および増粘剤などの不必要な添加物を実質的に欠く、顧客ベースが求める成分の増加によって主に推進されていることもよく知られている。このため、加工デンプンは、食品の製造に使用するには理想的ではない場合があり、少なくともそのよう実直な顧客による消費には好ましくない。
【0006】
特に植物ベースの代替肉の消費者による使用に適したデンプンベースの脂肪代替物を作製するために、デンプンベースの脂肪代替物は、好ましくは少なくとも以下の条件を満たす必要がある。
a)デンプンベースの脂肪代替物は、室温、すなわち、約20~27℃の温度で固体、または非流動性を維持すべきである、
b)デンプンベースの脂肪代替物は、合理的な調理温度、例えば、35~60℃の温度で溶けるべきである、
c)デンプンベースの脂肪代替物は、植物ベースの肉製品の製造に使用される場合、様々な粒径に加工でき、しかも一貫した特性および/または容易に制御可能な特性を備えるべきである、
d)デンプンベースの脂肪代替物は、その望ましい特徴を保持するために、相当な量のゲル化剤および/または増粘剤を含むべきではない、
e)デンプンベースの脂肪代替物は、そのような植物ベースの肉製品が冷蔵、冷凍される場合、またはそのような植物ベースの肉製品が保存されている場合、またはある場所から別の場所に輸送されている場合に、一貫した特性および/または容易に制御可能な特性を備えるべきである。
【0007】
前述の条件のほとんどは、一部の加工デンプンベースの脂肪代替物によって満たされる場合があるが、自然(natural)であり、次いで、食品の作製に使用されるように最小限の加工を施されたデンプンベースの脂肪代替物の配合物が依然として必要とされている。
【0008】
別様で特定の食品を製造するのに必要とされる動物性脂肪または加工された脂肪代替物の量を回避するか、または少なくとも軽減する、改良されたデンプンベースの脂肪代替物を開発することは、実用的および商業的に魅力的であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述した先行技術の欠点を克服もしくは改善すること、または少なくとも有用な代替物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
動物性脂肪、天然デンプンおよび加工デンプンの使用に伴う前述の制限および問題を克服するために、本開示は、動物性脂肪、天然デンプン、および以前は様々な食品を作製するために使用されていた加工デンプンの代用物または代替物として機能することができる天然の全デンプンベースの脂肪代替物を提供する。
【0011】
したがって、第1の態様において、本開示は、天然の全デンプン、植物ベースの脂肪、および水を含む、ベジタリアン食品(vegetarian food product)に使用するための天然の全デンプンベースの脂肪代替物であって、天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、約10%(w/v)、約5%(w/v)、約4%(w/v)、約3%(w/v)、約2%(w/v)または約1%(w/v)以下の1つ以上のゲル化剤、増粘剤(thickening agent)、乳化剤(emulsifying agents)および/または食用ガムを含む、天然の全デンプンベースの脂肪代替物を提供する。
【0012】
本開示の天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、水および植物ベースの脂肪との天然の全デンプンのコロイド状エマルジョンを使用して生成される。開示された天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、加工(改質、抽出、または精製)デンプンを使用する必要がなく、好ましくは、消費者に胃腸の問題を引き起こす可能性がある増粘剤(thickener)、ガム、ゲル化剤および/または乳化剤を使用せずに、飽和脂肪、例えば動物性脂肪に典型的な食感品質および官能特性を達成する。
【0013】
本開示の天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、脂肪様の形成特性、飽和脂肪に特有の脂肪様の室温凝固特性および低熱融解特性を有利に模倣するために所望の最終的な官能特徴または特性を開発することができる意図的な老化プロセスを受ける。天然の全デンプンベースを使用することによって、天然の全デンプンベースが受ける老化のプロセスにより、これらの好ましい特徴が現れる。
【0014】
開示された天然の全デンプンベースの脂肪代替物の成分の組み合わせ間の反応は、一連の好ましい初期特徴を達成するのに役立ち、また、時限的で構造化された意図的な老化プロセスを通じて、脂肪様の形成特性、脂肪様の室温凝固特性および低熱融解特性などの一連の最終的な所望の特徴を達成するのに役立つことが企図される。
【0015】
本発明の別の態様は、植物ベースの基材および天然の全デンプンベースの脂肪代替物を含むベジタリアン食品を提供する。
【0016】
さらに別の実施形態によれば、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、室温で固体状態であるコロイド状エマルジョンの形態である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、小麦、キビ、米、大麦、オート麦、ライ麦、ソルガムおよびトウモロコシからなる群から選択される穀物の粉末形態、植物ベースの脂肪、ならびに水を使用して形成される。
【0018】
他の実施形態において、天然の全デンプンは、部分的に、米粉を使用して形成され、好ましくは、天然の全デンプンは、部分的に、もち米粉(GRF)を使用して形成される。
【0019】
本開示の一実施形態によれば、植物ベースの脂肪は、精製、脱色および脱臭された(RBD)油を含み、油は、好ましくは、室温で固体または半固体である。本発明の好ましい実施形態において、油はココナッツ油である。
【0020】
本発明のさらなる態様は、食品を作製する際に後で使用するための天然の全デンプンベースの脂肪代替物を作製する方法を提供する。この方法は、以下のステップ:
植物ベースの脂肪、天然の全デンプンおよび水を混合して混合物を形成するステップと、
任意選択で混合物を同時に撹拌しながら成分の混合物を調理するステップと、
混合物を室温に冷却するステップと、
混合物中のデンプンが実質的に老化するまで、混合物を約1~4℃の温度の範囲の温度に冷蔵するステップと、
必要に応じて混合物を粒子に加工するステップと
を含む。
【0021】
本発明の別の態様は、本発明の食品を製造する方法であって、以下のステップ:
植物ベースの脂肪、天然の全デンプンおよび水を混合して混合物を形成するステップと、
任意選択で混合物を同時に撹拌しながら成分の混合物を調理するステップと、
混合物を室温に冷却するステップと、
混合物中のデンプンが実質的に老化するまで、混合物を約1~4℃の温度の範囲の温度に冷蔵するステップと、
必要に応じて混合物を粒子に加工するステップと
植物ベースの基材と混合するステップと
を含む、方法を提供する。
【0022】
本発明の別の態様は、本発明の食品を製造する方法であって、以下のステップ:
植物ベースの脂肪、天然の全デンプンおよび水を混合して混合物を形成するステップと、
任意選択で混合物を同時に撹拌しながら成分の混合物を調理するステップと、
混合物を室温に冷却するステップと、
必要に応じて混合物を粒子に加工するステップと、
混合物を植物ベースの基材と混合するステップと、
混合した混合物中のデンプンが実質的に老化するまで、混合した混合物を約1~4℃の温度の範囲の温度に冷蔵するステップと
を含む、方法を提供する。
【0023】
本開示の1つおよびさらなる態様および特徴は、本開示を例示し、限定することを意図するものではない実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【0024】
開示された主題の例示された実施形態は、図面を参照することによって最もよく理解され、図面全体を通じて同様の部分は同様の番号で示されている。以下の説明は、例としてのみ意図されており、本明細書で請求される開示された主題と一致するデバイスおよびプロセスの特定の選択された実施形態を単に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の一実施形態による、天然の全デンプンベースの脂肪代替物を作製するための複数のステップを示す方法の例示的なフローチャートである。
【
図2a】本開示の一実施形態による、
図1の方法からのステップのサブステップを示す別の例示的なフローチャートである。
【
図2b】本開示の一実施形態による、
図1の方法からの別のステップのサブステップを示すさらに別の例示的なフローチャートである。
【
図2c】本開示の一実施形態による、
図1の方法からのさらに別のステップのサブステップを示すさらに別の例示的なフローチャートである。
【
図2d】本開示の一実施形態による、
図1の方法からのさらに別のステップのサブステップを示すさらに別の例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書全体を通じて、「一実施形態(a embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、または「一実施形態(one embodiment)」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、開示された主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な場所に現れる「一実施形態において(in an embodiment)」または「一実施形態において(in one embodiment)」という語句は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではない。
【0027】
法令(statute)に従って、本発明は、多かれ少なかれ構造的または系統的特徴に特有の言語で説明されている。「含む」という用語、ならびに「含んでいる」および「からなる」などのその変形は、全体を通じて包括的な意味で使用され、あらゆる追加の特徴を除外するものではない。本明細書に記載される手段は本発明を実施する好ましい形態を含むため、本発明は示されるか、または記載される特定の特徴に限定されないことを理解されたい。したがって、本発明は、当業者によって適切に解釈される添付の特許請求の範囲の適切な範囲内でその任意の形態または修正を請求される。
【0028】
本明細書および特許請求の範囲(存在する場合)を通して、文脈上別段の要求がない限り、「実質的に」、「少なくとも」、または「約」という用語は、その用語によって修飾される範囲の値に限定されないことが理解されるであろう。例えば、「約」という用語は、引用された値の±5%、または±2.5%、または±1%、または±0.5%の範囲を包含し得る。さらに、記載された特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、開示された主題の実施形態の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が提供される。しかしながら、当業者は、開示された主題が、1つ以上の特定の詳細を用いずに、または本明細書に開示された構造、成分、および材料の代替または置換として他の構造、成分、および材料を用いて実施できることを認識するであろう。他の場合には、本明細書に開示される1つ以上の構造、成分、および材料が完全に省略されてもよく、その代わりに同等の構造、成分、および材料が使用されてもよい。また、本開示では、本発明の態様に関する主題を曖昧にすることを避けるために、周知の構造、材料、または動作については詳細に説明されていない。
【0029】
天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、食品の作製に使用するために提供され、脂肪代替物は、天然の全デンプン、植物ベースの脂肪および水を含む。本発明の実施形態では、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、約10%~約70%(w/v)の天然の全デンプン、および約5%~約40%(w/v)の植物ベースの脂肪、および約10%~70%(v/v)の水を含み得る。
【0030】
本発明の脂肪代替物はベジタリアン製品であり、好ましくはビーガン(vegan)である(動物性脂肪を含まない)。好ましくは、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は室温で固体または半固体であり、この特徴は、相当な量の増粘剤、ガム、ゲル化剤および/または乳化剤を添加することなく達成される。固体または半固体とは、脂肪代替物が室温で非流動性であることを意味する。
【0031】
好ましくは、本発明の天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、相当な量の、例えば、キサンタムガム、グアーガム、アカシアガム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カードラン、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガム、レシチン、カルビメチセルロース(carbymethycellulose)、コラーゲン、トラガカントガム、タピオカ、クズウコン、寒天、ペクチン、ポリソルベート80、モノグリセリド、トリグリセリド、グリセリン、グリセロールなど、およびそれらの組み合わせなどのゲル化剤、増粘剤、乳化剤および/または食用ガム(これらの用語はしばしば同じ成分に対して互換的に使用される)を含まない。
【0032】
このような作用物質は、多くの場合、室温で固体または半固体になるように製品を増粘、ゲル化、および/または結合させる目的で脂肪代替物に使用される。しかしながら、胃腸障害の潜在的な原因とみなされていることに加えて、これらの成分の添加は、調理される食品の使用時に脂肪代替物の溶け方を変える可能性があるため、本発明の天然の全デンプンベースの脂肪代替物の特徴に望ましくない影響を与える場合がある。特に、本発明の天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、相当な量の前述のゲル化剤、増粘剤、乳化剤および/または食用ガムを使用せずに、室温で所望の食感および粘度を達成する。
【0033】
好ましくは、本発明の天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、約10%(w/v)、約5%(w/v)、約4%(w/v)、約3%(w/v)、約2%(w/v)または約1%(w/v)以下の1つ以上のゲル化剤、増粘剤、乳化剤および/または食用ガムを含む。他の好ましい実施形態において、本発明の天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、ゲル化剤、増粘剤、乳化剤および/または食用ガムを含まない。
【0034】
天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、穀物の粉末形態、植物ベースの脂肪、および水を含む。穀物の選択は、最終脂肪代替製品もしくは最終食品の所望の特徴および風味プロファイルによって、および/または穀物の利用可能性に基づいて決定され得る。穀物は、小麦、キビ、米、大麦、オート麦、ライ麦、ソルガムおよびトウモロコシからなる群から選択されるいずれの穀物であってもよいが、その穀物は、好ましくは米粒である。本明細書に開示される「粉末」という用語は、穀物の粉末形態が重力下で自由に流動できる微粒子または顆粒から構成されるように、穀物の乾燥および製粉された調製物を示すために使用される。本発明で使用される天然の全デンプンは、一般に水に可溶であり、天然の全デンプンベースの脂肪代替物の形成に使用する前に化学的または酵素的に加工されていない任意の天然の全デンプンであり得ることが理解されるであろう。
【0035】
天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、単一種類の天然の全デンプンを含んでもよく、または2種類以上の天然の全デンプンを含んでもよい。2種類以上の穀物が、小麦、キビ、米、大麦、オート麦、ライ麦、ソルガム(sorghum)およびトウモロコシ(maize)からなる群から選択される場合、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、それらの様々な組み合わせを含んでもよい。特に、好ましい実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、一般にもち米(waxy riceまたはsticky rice)と呼ばれるもち米粉(GRF)を少なくとも含む粉末穀物を含む。
【0036】
本明細書で使用される「植物ベースの脂肪」という用語は、植物から抽出され、天然の全デンプンベースの脂肪代替物での使用に適し得る任意の脂肪または油を含むものとみなすことができる。「脂肪」という用語は、一般に、室温で通常固体または半固体である物質に関連し得ると理解されるが、本開示の目的では、植物ベースの脂肪は、室温、すなわち20~27℃の温度で固体、半固体またはさらに液体状態であってもよいが、植物ベースの脂肪は、好ましくは室温で固体または半固体である。
【0037】
植物ベースの脂肪は、ココナッツ油、大豆油、ヒマワリ油、オリーブ油、パーム油、キャノーラ油、綿実油、落花生油、菜種油、ゴマ油からなる群から選択される任意の脂肪もしくは油、ならびにナッツ由来および種子由来の油、および/またはそれらの組み合わせおよび/またはそれらの誘導体であってもよい。本明細書の実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、単一の植物ベースの脂肪または2つ以上の植物ベースの脂肪のいずれかを使用して形成され得る。天然の全デンプンベースの脂肪代替物が2つ以上の植物ベースの脂肪を使用して形成される場合、2つ以上の植物ベースの脂肪は、植物ベースの脂肪の組み合わせを含んでもよく、次いでそれらの各々は同様に室温で固体、半固体またはさらに液体であってもよい。特に好ましい実施形態において、植物ベースの脂肪は、室温で固体であり、ココナッツ油、ココアバター、パーム油、パーム核油、植物性ショートニングおよび/またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。さらに好ましい実施形態において、植物ベースの油は、RBDココナッツ油またはRBDパーム油などの精製、脱色および脱臭された(bleached and deodorized:RBD)油であってもよく、精製ステップは、好ましくは物理的精製プロセスを使用して実施される。
【0038】
本明細書の実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物についての配合物は、使用される天然の全デンプンおよび/または植物ベースの脂肪の種類、ならびに食品における天然の全デンプンベースの脂肪代替物の最終用途、および食品自体の種類によって影響を受け得るパーセンテージの範囲でコア成分を含む。
【0039】
例えば、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、約10%~約70%(w/v)の1つ以上の天然の全デンプン、または約10%~約50%(w/v)の1つ以上の天然の全デンプン、または約20%~約60%(w/v)の1つ以上の天然の全デンプン、または約25%~約50%(w/v)の1つ以上の天然の全デンプン、または約30%~約45%(w/v)の1つ以上の天然の全デンプン、または約30%~約40%(w/v)の1つ以上の天然の全デンプン、または約36%(w/v)の1つ以上の天然の全デンプンを含み得る。天然の全デンプンは、本発明の食品および脂肪代替物を作製するために植物ベースの脂肪と混合する前にゼラチン化することができるが、上述のパーセンテージ範囲は天然の全デンプンの乾燥重量を示す。
【0040】
さらなる例において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、約5%~約40%(w/v)の1つ以上の植物ベースの脂肪、または約10%~約30%(w/v)の1つ以上の植物ベースの脂肪、または約10%~約20%(w/v)の1つ以上の植物ベースの脂肪、または約15%~約20%(w/v)の1つ以上の植物ベースの脂肪、または約18%(w/v)の1つ以上の植物ベースの脂肪を含み得る。
【0041】
加工中に発生する脱水が、最終製品、すなわち天然の全デンプンベースの脂肪代替物における各成分の重量または体積のいずれかで量を表す最終パーセンテージに影響を与え得るため、前述のパーセンテージは、天然の全デンプンベースの脂肪代替物を製造するために、開始時、すなわち加工前の混合物に添加される各成分の量を反映していることが理解されるであろう。好ましい実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、一般に、液体成分として水を含むが、水が、追加的または任意選択で、他の成分または香味料を含んでもよいことが理解されるであろう。例えば、水成分は原料であってもよく、または代替として必要に応じて可溶化塩もしくは糖を含んでもよい。
【0042】
本発明の一実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、コロイド状エマルジョンの形態である。コロイド状エマルジョンは、粉末化された天然の全デンプンの存在下では、混合物がもはや単なる水中油型エマルジョンではないという点で、従来のエマルジョンとは区別され得る。さらなる実施形態において、コロイド状エマルジョンは室温で固体状態である。本発明の他の実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、約20%~約50%(w/v)の天然の全デンプン、および約10%~約30%(w/v)の植物ベースの脂肪、および約10%~70%(v/v)の水を含む。本発明のさらなる実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、約30%~約40%(w/v)の天然の全デンプン、および約15%~約20%(w/v)の植物ベースの脂肪、および約10%~70%(v/v)の水を含む。本発明の別の実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、約36%(w/v)の天然の全デンプンおよび約18%(w/v)の植物ベースの脂肪を含む。
【0043】
好ましい実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、様々な濃度で、もち米粉(GRF)を含む天然の全デンプン、ココナッツ油を含む植物ベースの脂肪および水を使用して形成される。例えば、本明細書の実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、約10%~約70%(w/v)の1つ以上の天然の全デンプン、および約5%~約40%(w/v)の1つ以上の植物ベースの脂肪を含み、天然の全デンプンの1つはGRFであり、植物ベースの脂肪の1つはココナッツ油である。本発明の他の実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、約10%~約70%(w/v)のGRFおよび約5%~約40%(w/v)のココナッツ油を含み得る。本発明の他の実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、約30%~約40%(w/v)のGRFおよび約15%~約20%(w/v)のココナッツ油を含む。
【0044】
天然の全デンプンベースの脂肪代替物の出発混合物に含まれる粉末化された天然の全デンプン、植物ベースの脂肪および水の相対量はまた、比によって決定することができ、天然の全デンプン、植物ベースの脂肪、および水は、約0.75~1.5:0.25~1:1~1.5、または約0.75~1.25:0.25~0.75:1~1.5、または好ましくは約1:0.5:1.3の割合で互いに混合される。この比は、使用される天然の全デンプンおよび植物ベースの脂肪に応じて変動し得る。これらの割合の範囲は、混合物が受ける老化プロセス中の少なくとも20%の水分損失を考慮するだけでなく、天然の全デンプンベースの脂肪代替物のための混合物の配合が、室温で固体状態を効果的に維持するコロイド状エマルジョンであることを確実にし、脂肪様の形成特性(fat-like forming property)、脂肪様の室温凝固特性および飽和脂肪に特有の低熱融解特性の模倣などの、天然の全デンプンベースの脂肪代替物の最終的な好ましい特徴の開発の成功をもたらす。
【0045】
本発明の食品は、開示された天然の全デンプンベースの脂肪代替物と組み合わせて植物ベースの基材を含む。一実施形態において、植物ベースの基材は、例えば、植物ベースの代替肉であり得る。好ましい実施形態において、植物ベースの代替肉はキノコを含む。好ましくは、植物ベースの基材は、動物由来の肉製品または細胞を含まないという点でベジタリアン(vegetarian)である。より好ましくは、植物ベースの基材は、動物由来の製品を含まないビーガンである。
【0046】
本発明の天然の全デンプンベースの脂肪代替物および/または食品を作製する開示された方法において、植物ベースの脂肪、天然の全デンプンおよび水は、任意の適切な容器中で任意の適切な方法を使用して混合され得る。混合する手段は、限定されないが、混合する成分の体積、混合する成分の比率、混合する成分の状態(すなわち、天然の全デンプンが前処理されているかどうか、デンプンの粉砕サイズ、植物由来の脂肪が、室温で固体、半固体または液体であるかどうか)などの様々な要因によって影響を受け、それらによって決定され得る。混合は手動で行ってもよく、またはフードミキサもしくは高速ミキサなどの機械的混合装置により行ってもよい。
【0047】
本発明の食品を作製する際に後で使用するための天然の全デンプンベースの脂肪代替物を作製する方法の様々な実施形態において、混合物は、冷却および冷蔵のために別の容器に移す前に、1つの容器内で撹拌しながら混合および/または調理され得る。他の実施形態において、混合物は、例えば、トレイなどの同じ容器内で調理され、冷却され、冷蔵され得る。調理するステップは、a)混合物を調理するために蒸気、電気もしくはガス加熱を備えたミキサ/撹拌器を使用すること、b)各シートが所定の厚さを有するようにシートを形成するための大きなトレイに混合物を注ぐこと、および/またはc)スチームオーブンで蒸すこと、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。
【0048】
食品を作製する際に後で使用するための天然の全デンプンベースの脂肪代替物を作製する方法の実施形態は、少なくとも天然の全デンプンおよび植物ベースの脂肪を混合した後に測定した水の一部を添加することに依存する。これらの実施形態において、天然の全デンプンは、例えば、糊化プロセスによって前処理されてもよく、この場合、天然の全デンプンは水を吸収し、熱にさらされると膨張する。これらの実施形態において、糊化した天然の全デンプンを、ろう状の混合物(waxy mixture)を形成するために植物ベースの脂肪代替物と混合することができ、次いでその混合物を、必要に応じて、混合物の任意選択の同時撹拌を伴って、または伴わずに成分の混合物を調理する前に水を添加することによって水和することができる。
【0049】
この方法の加工ステップは、粒子形態で天然の全デンプンベースの脂肪代替物を形成するために、または最終的な天然の全デンプンベースの脂肪代替製品を得るためにさらなる冷蔵および/もしくは老化を依然として必要とする加工混合物を形成するために、冷却、冷蔵および/または老化した混合物を、細かく刻む、おろす、砕く、細断する、切断する、粉砕することを含み得る。混合物を調理、冷却および冷蔵した後に加工ステップを実施する場合、好ましい加工方法は、ミンチプレートを使用して細かく刻むこと(mincing)である。
【0050】
混合物の加工は、部分的には、混合物を調理する前または直後に実施することもできる。これらの実施形態において、混合物の加工は、押出法、または依然として不完全であるか、または半固体のみであり得る混合物に適した任意の他の機械的方法を介して、天然の全デンプンベースの脂肪代替物の粒子を形成するステップを含み得る。混合物は、その混合物が、室温、高温(hot)、温暖(warm)、低温、または冷蔵である間に押し出すか、混合物中のデンプンが実質的に老化する前、もしくは混合物中のデンプンが実質的に老化した後に押し出すか、またはさらに、混合物が押し出された後に老化が進行できるように、混合物中のデンプンが部分的にのみ老化している段階で押し出すことができる。天然の全デンプンベースの脂肪代替物の粒子形態のサイズおよび形状は、押出機プレートの穴のサイズおよび形状によって操作および決定され得る。
【0051】
例えば、本発明の一実施形態において、食品を作製する際に後で使用するために天然の全デンプンベースの脂肪代替物を作製する方法は、天然の全デンプン、植物ベースの脂肪および水を含む全ての成分を測定するステップと、適切な量の水を使用して天然の全デンプンを糊化するステップと、糊化された天然の全デンプンを混合するステップとを含み得る。次いで、得られたろう状の乾燥混合物を、押出法によって混合物を混合物の粒子に加工する前に、適切な量の水で水和させることができる。好ましくは、押し出された粒子は互いに付着しないように十分に形成される。次いで、粒子の十分な老化を達成するために粒子を調理、冷却および/または冷蔵することができる。
【0052】
他の実施形態において、混合物の加工は、食品を作製する際に後で使用するために天然の全デンプンベースの脂肪代替物を作製する方法の間に、混合物を対象食品に組み込むステップを含み得る。組み込みは、調理段階の前後、または冷却段階の前後、または冷蔵段階の前後で行うことができるので、組み込みは、測定された成分の全てを混合した後の任意の段階で行うことができる。これらの実施形態において、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、食品中で調理、冷却、冷蔵および老化され得るか、または天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、食品中で冷却、冷蔵および老化され得るか、または天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、食品中で冷蔵および老化され得る。好ましくは、天然の全デンプンベースの脂肪代替物を食品に組み込む場合、脂肪代替物は、食品の内部にパイプで送られるように調理され、粘性のある状態にされ、それによって食品中に脂肪代替物のポケットが形成される。
【0053】
以下の詳細な説明は、図面を参照して行われる。例示的な実施形態は、本開示を例示するために説明されるものであり、特許請求の範囲によって定義されるその範囲を限定するものではない。当業者であれば、以下の説明において多数の等価の変形例を認識するであろう。
【0054】
図1は、本開示の一実施形態による、食品を作製する際に後で使用するための天然の全デンプンベースの脂肪代替物を作製する方法100を示す例示的なフローチャートである。ステップ102において、方法100は、老化プロセスの間の少なくとも20%の水分損失を考慮して、天然の全デンプン、植物ベースの脂肪および水を含む全ての成分を測定することを含む。ステップ104において、方法100は、混合装置を使用して測定された全ての成分を混合して混合物を形成することをさらに含む。ステップ106において、方法100は、任意選択で混合物を同時に撹拌しながら成分の混合物を調理することをさらに含む。本発明の実施形態において、調理するステップ106は、蒸気、電気またはガス加熱などの代替方法を使用して実施されてもよいが、そのような方法はいずれも、混合物のカラメル化または焦げを一般に回避するように選択されるであろう。
【0055】
蒸気を利用する事象では、調理中の撹拌は必要でなくてもよく、混合物の深さが1~25mmの範囲のトレイで混合物を調理することができる。この場合、混合物は、同じトレイ内で、連続プロセスで、または単一トレイ内で層状に調理、冷却および冷蔵することができる。
【0056】
対照的に、調理のための電気加熱の使用では、このような種類の加熱は、好ましくは撹拌を伴い、任意選択で混合物を後で冷却および冷蔵するためのトレイに移す。
【0057】
図2aに最もよく示されているように、成分の混合物を調理するステップ106において、この方法は、追加的または任意選択で、サブステップ106aに示されるように、蒸気、電気またはガス加熱を備えたミキサを使用して、混合物を調理するステップ、サブステップ106bに示されるように、各シートが、約1~25mm、または好ましくは5mm~10mm、または10~15mmの範囲の所定の厚さを有するようにシートを形成するための大きなトレイに混合物を注ぐステップ、およびサブステップ106cに示されるように、シートの中心部における混合物の温度が、少なくとも60℃の温度、または少なくとも70℃の温度、または少なくとも80℃の温度に達するまで混合物を蒸すステップのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0058】
ステップ108において、方法100は、混合物を室温まで冷却することをさらに含む。混合物は、追加的または任意選択で、冷却された混合物が1つ以上のシートに形成されるように、例えばトレイ内で冷却されてもよく、各シートは、約1~25mm、または5mm~10mm、または10mm~15mmの範囲の所定の厚さを有する。
図2bに示されるように、混合物を冷却するためのステップ108のサブステップ108aにおいて、方法100は、追加的または任意選択で、冷却プロセスを加速させるためにシートをワイヤ冷却ラック上に置くステップを含んでもよい。
【0059】
ステップ110において、方法100は、混合物中のデンプンが実質的に老化するまで、混合物を約1~4℃の範囲の温度まで冷蔵することをさらに含む。
図2cに示されるように、混合物を冷蔵するためのステップ110のサブステップ110aにおいて、方法100は、追加的または任意選択で、混合物中のデンプンが、少なくともシートの中心部において老化するまで、ワイヤ冷却ラックを使用して、36~48時間、約1~4℃の範囲の温度で冷却器内にシートを配置するステップを含み得る。本発明の他の実施形態において、シートは、5mm~10mmの厚さで形成される場合、冷蔵および老化のために単に互いの上に積層され、層の数は、1~4℃の温度の中心部の温度が維持されるという要件によってのみ制限される。
【0060】
ステップ108~110の各々が実行される温度および継続時間は、使用される天然の全デンプンまたは植物ベースの脂肪に応じて変化し、また、天然の全デンプンの脂肪代替物および/または天然の全デンプンの脂肪代替物が使用される食品の所望の特性などの他の要因によって影響を受け得る。例えば、場合によっては、より少ない程度の老化が所望されてもよく、そのような場合、老化プロセスを発生させるために、より短いインキュベーションまたは冷却時間が実装され得る。他の場合、天然の全デンプンベースの脂肪代替物を実質的に老化させることが所望される場合、インキュベーションまたは冷却時間を増加させることができる。
【0061】
ステップ112において、方法100は、必要に応じて混合物を粒子に加工することをさらに含む。
図2dに最もよく示されているように、混合物を加工するステップ112aにおいて、方法100は、追加的または任意選択で、3mm~4.5mmのミンチプレートを使用して老化した混合物シートを細かく刻んで、粒子の形態で天然の全デンプンベースの脂肪代替物を形成することを含み得る。脂肪代替物は、最終用途の要件に応じて大きいまたは小さい粒子を生成するために加工され得ることは理解されるであろう。粒子は、任意の適切な手動もしくは機械的手段、またはそれらの任意の組み合わせ、例えば、方法の異なる段階で利用され得る押出プロセスなどを使用して形成され得る。
【0062】
図2dに最もよく示されているように、混合物を加工するステップ112bにおいて、方法100は、追加的または任意選択で、天然の全デンプンベースの脂肪代替物の粒子が、各粒子が約10mm~15mmの好ましい範囲の所定の長さを有するように所定の間隔で、a)砕けやすく、b)分解されているかどうかを判定することを含み得る。また、
図2dに示されるように、混合物を加工するステップ112cにおいて、方法100は、追加的または任意選択で、天然の全デンプンベースの脂肪代替物の粒子を包装容器に入れることを含み得る。さらに、
図2dに示されるように、混合物を加工するステップ112dにおいて、方法100は、追加的または任意選択で、天然の全デンプンベースの脂肪代替物の粒子を含む包装容器を、天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、食品を作製する際に使用されることを意図するまで、凍結することを含み得る。
【0063】
一実施形態において、加工のステップ112を実施する際に、粒子がa)湿ったままで互いに付着していることを示す場合、またはb)自然に10~15mmの長さに分解されないか、もしくはより長い長さで形成されたままである場合、方法100は、粒子をさらに12時間冷却器に供することを含み得る。
【0064】
本明細書に開示される実施形態として、天然の全デンプンベースの脂肪代替物を使用して食品が形成され、そうするために、食品を形成するプロセスが、天然の全デンプンベースの脂肪代替物を作製するために最初に本明細書に開示された方法100を利用することもここで企図される。また、食品を作製するとき、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、好ましくは、その凍結状態で、可能な限り最小限に、かつ低速で植物ベースの基材に添加される。
【0065】
これにより、食品の最終的または合計の分量に対して天然の全デンプンベースの脂肪代替物を過剰に使用しないように、植物ベースの基材の所与の量または分量に応じて、天然の全デンプンベースの脂肪代替物は、好ましくは、可能な限り最小限に添加され得ることが想定される。さらに、本明細書の実施形態において、GRFを使用すると、ゲル化、または結合、活性化が比較的高温で起こり、シートの中心部の温度が約80℃の温度である場合、この比較的高温では、コロイドが分散し得るので、シートの厚さは5mm~10mmまたは10mm~15mmになる。また、このようにするために、植物ベースの脂肪は、好ましくは35℃の温度を超える温度で液相のままであり得る。コロイド中に十分な水分が存在する限り、エマルジョンが首尾よく完成し得る。さらに、GRFは本質的に比較的純粋なアミロペクチンであり、すなわち約またはほぼ1:10のアミロース-アミロペクチン比を有すると考えられるため、GRF中のアミロペクチンのゲル化が老化プロセスの間の主な考慮事項となるであろう。ほとんどの天然のデンプンはアミロースとアミロペクチンの組み合わせであるとみなされているが、GRFは、その高いアミロペクチン濃度のために、ろう状、粘着性、またはねばねばした性質であることが当該技術分野で知られている。したがって、本明細書の実施形態におけるGRFの使用は、濃縮化のため、また、食感品質を与えるため、次いで、様々な食品における動物性脂肪の使用に典型的に関連し、それから経験される官能特性を与えるための潜在的な媒体としても機能するように有益に役立つことができる。
【0066】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わせることができることが理解されるであろう。また、当業者であれば、現在予見できない、または予想外の様々なこれらの代替、修正、変形、または改良を後で行うことができ、それらも特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0067】
上記の説明は、天然の全デンプンベースの脂肪代替物を作製するために使用される装置、例えば、混合装置、スチームオーブン、トレイ、ワイヤ冷却ラック、冷却器および他の装置の具体的な詳細を提供していない。当業者はそのような詳細に精通しており、それらの技術からの逸脱が本明細書で明示的に記載されない限り、例えば関連技術から公知の技術、または後に開発された技術が、本開示を実現する目的で利用されてもよい。したがって、当業者は、本開示を実現する目的のために適切な装置を選択し、容易に配備することができる。したがって、さらに、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示を限定することを意図したものではない。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然の全デンプン、植物ベースの脂肪、および水を含
むベジタリアンの天然の全デンプンベースの脂肪代替物を製造する方法であって、前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が
、約1%(w/v)以下の1つ以上のゲル化剤、増粘剤、乳化剤および/または食用ガムを
更に含
み、前記方法は、
前記天然の全デンプン、前記植物ベースの脂肪、および水を組み合わせるステップであって、前記天然の全デンプン、前記植物ベースの脂肪、および水を約0.75~1.5:0.25~1:1~1.5、または約0.75~1.25:0.25~0.75:1~1.5、または約1:0.5:1.3の比で組み合わせて成分の混合物を形成するステップと、
成分の混合物を、任意選択で前記混合物を同時に撹拌しながら調理して、調理した混合物を形成するステップと、
前記調理した混合物を室温に冷却して冷却した混合物を形成するステップと、
前記冷却した混合物中のデンプンが実質的に老化するまで、前記冷却した混合物を約1~4℃の範囲の温度に冷蔵するステップと、
必要に応じて前記老化した混合物をベジタリアンの天然の全デンプンベースの脂肪代替物の粒子に加工するステップと、を含み、
前記方法によって製造される前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物は室温で固体であり、前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が35~60℃の範囲の温度で溶けるように低い熱融解温度を有する、方法。
【請求項2】
前記混合物を調理するステップが、蒸気を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が、ゲル化剤、増粘剤、乳化剤および/または食用ガムを含まない、請求項2に記載の
方法。
【請求項4】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物が
、コロイド状エマルジョンである、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記天然の全デンプンが、小麦、キビ、米、大麦、オート麦、ライ麦、ソルガムおよびトウモロコシからなる群から選択される穀物の粉末形態を含む、請求項1
に記載の方法。
【請求項6】
前記天然の全デンプンが、もち米粉(GRF)を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記植物ベースの脂肪が、精製、脱色および脱臭された(RBD)油を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記油がココナッツ油である、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記天然の全デンプン、前記植物ベースの脂肪、および水を組み合わせて、乾燥重量または体積のうちの1つで測定した総量に
対するパーセンテージで、以下の成分、
天然の全デンプンの粉末形態、約10%~約70%
植物ベースの脂肪、約5%~約40%
水、約10%~約70%
の混合物を形成する、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記天然の全デンプン、前記植物ベースの脂肪、および水を組み合わせて、乾燥重量または体積のうちの1つで測定した総量に
対するパーセンテージで以下の成分:
もち米粉(GRF)、約10%~約70%
RBDココナッツ油、約5%~約40%
水、約10%~約70%
の混合物を形成する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記天然の全デンプン、前記植物ベースの脂肪、および水を組み合わせて、乾燥重量または体積のうちの1つで測定した総量に対するパーセンテージで以下の成分:
もち米粉(GRF)、約30%~約40%
RBDココナッツ油、約15%~約20%
水、約40%~約55%
の混合物を形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記天然の全デンプンベースの脂肪代替物がビーガンである、請求項1
に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の方法によって製造されるベジタリアン又はビーガンの天然の全デンプンベースの脂肪代替物。
【国際調査報告】