(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】黒酵母由来のエキソソームを含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/99 20170101AFI20240214BHJP
A61K 8/96 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 36/062 20060101ALI20240214BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240214BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K8/99
A61K8/96
A61Q19/00
A61K36/062
A61K35/12
A61P17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575334
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 KR2022002582
(87)【国際公開番号】W WO2022177406
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0023575
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517421150
【氏名又は名称】エクソコバイオ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヒョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ム・ヒョン・ジン
(72)【発明者】
【氏名】スン・フン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・スン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジン・ウォン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083CC03
4C083DD08
4C083DD12
4C083DD17
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C083EE16
4C087BC11
4C087BC90
4C087CA10
4C087CA50
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
本発明は、黒酵母由来のエキソソームを有効成分として含む皮膚改善用化粧料組成物、具体的に、皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーン改善、皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚保湿及び/又は美白用化粧料組成物を提供する。本発明の化粧料組成物は、皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーン改善、皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚保湿及び/又は美白効果に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒酵母(Aureobasidium pullulans)由来のエキソソームを有効成分として含む、皮膚状態改善用化粧料組成物。
【請求項2】
前記皮膚状態改善は、皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーン改善、皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚保湿又は皮膚美白である、請求項1に記載の皮膚状態改善用化粧料組成物。
【請求項3】
前記黒酵母由来のエキソソームは、黒酵母培養液又は黒酵母醗酵物、若しくはこれらと同等の黒酵母の生物学的溶液から分離されたものである、請求項1又は請求項2に記載の皮膚状態改善用化粧料組成物。
【請求項4】
ローション剤、液剤、クリーム剤、沈積マスク剤、ゲル剤、エアロゾール剤及び粉末剤で構成された群から選択される少なくとも1種の剤形である、請求項1又は請求項2に記載の皮膚状態改善用化粧料組成物。
【請求項5】
パッチ、マスクパック又はマスクシートの少なくとも一面に塗布されるか沈積されるものである、請求項1又は請求項2記載の皮膚状態改善用化粧料組成物。
【請求項6】
黒酵母由来のエキソソームを有効成分として含む皮膚状態改善用化粧料組成物を哺乳動物の皮膚に適用させる段階を含む、哺乳動物の皮膚を改善させる美容方法。
【請求項7】
前記皮膚状態改善は、皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーン改善、皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚保湿又は皮膚美白である、請求項6に記載の美容方法。
【請求項8】
前記哺乳動物は、ヒト、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウマ、ウシ、サル又はブタである、請求項6又は請求項7に記載の美容方法。
【請求項9】
前記皮膚状態改善用化粧料組成物を哺乳動物の皮膚に適用させる段階は、(a)前記皮膚状態改善用化粧料組成物を哺乳動物の皮膚に直接塗布する段階、又は(b)前記皮膚状態改善用化粧料組成物が塗布されるか沈積されたパッチ、マスクパック又はマスクシートを哺乳動物の皮膚に接触又は付着する段階、又は前記(a)及び(b)を順次に進行する段階である、請求項6又は請求項7に記載の美容方法。
【請求項10】
前記(a)段階では、ローション剤又はクリーム剤の剤形の皮膚状態改善用化粧料組成物が用いられる、請求項9に記載の美容方法。
【請求項11】
(c)前記(b)段階以後に前記パッチ、マスクパック又はマスクシートを哺乳動物の皮膚から除去し、前記皮膚状態改善用化粧料組成物を哺乳動物の皮膚に塗布する段階をさらに含む、請求項9に記載の美容方法。
【請求項12】
前記(c)段階では、ローション剤又はクリーム剤の剤形の皮膚状態改善用化粧料組成物が用いられる、請求項11に記載の美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒酵母由来のエキソソームを有効成分として含む皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーン改善、皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚保湿及び/又は美白用化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の老化が起こると、皮膚の弾力が減少し、皮膚のシワが増加するようになるが、皮膚の弾力減少及び皮膚のシワ形成は、コラーゲンの合成が減少し、コラーゲンを分解する酵素であるMMP(matrix metalloproteinase)の発現が促進されて現れるものとして知られている。
【0003】
皮膚のシワ改善に効果的であるとして知られている物質としては、アデノシン、レチノイン酸(retinoic acid)などがあるが、アデノシンは、臨床での効能がわずかであり、レチノイン酸は、妊娠可能な女性に使用することができず、紅斑などの副作用がある。それによって、植物や天産物の有効成分を活用した皮膚抗老化用機能性化粧品が最近注目を集めている。しかし、植物抽出物を有効成分として含む機能性化粧品は、皮膚に塗布した後に溶液が蒸発する過程で異物感が発生することがあり、効果の持続時間が短いという問題がある。
【0004】
ヒトの皮膚色を決定するメラニン(melanin)は、メラニン細胞(melanocyte)から生成される。具体的に、メラニンは、生体内に存在するアミノ酸であるチロシン(tyrosine)を基質とし、メラノサイトに存在するチロシナーゼ(tyrosinase)などの酵素による重合化酸化反応により形成される黒褐色の色素である。このように形成されたメラニンは、メラノサイトの樹状突起を通じてケラチノサイト(keratinocyte)という表皮細胞に移動することになる。ケラチノサイトに移動したメラニンは、ケラチノサイトが表皮から離れるときに皮膚から一緒に離れることで除去され得る。しかし、生体内にメラニンを分解する酵素がないので、一度形成されたメラニンは生体内では分解されない。したがって、皮膚を明るくするためには、メラニンの生成を抑制することが重要である。
【0005】
化粧品としての美白剤の研究は、最近、情緒的に白い皮膚を好む東洋圏の生活レベルの向上と共に皮膚の黒化が紫外線による皮膚老化であると認識されながらその必要性が徐々に増大している。それによって、アスコルビン酸(ascorbic acid)、ハイドロキノン(hydroquinone)、グルタチオン(glutathione)、アルブチン(arbutin)などのチロシナーゼ阻害活性を示す物質が化粧料や医薬品に配合されて用いられてきたが、これらのうち大部分は、効果が不十分であるか剤形上不安定な面があって活用度が下がる。特に、ハイドロキノンのような化合物は、強い脱色作用を示し、それ自体が皮膚の感作性を有しているので、皮膚のアレルギーなどを誘発し得、正常的な皮膚の機能を変化させて白斑症を誘発するなどの副作用を示し、皮膚に対する安全性の側面からその使用が制限されている。
【0006】
皮膚は、人体の1次的な保護障壁であって、体内の水分を保存し、過度な発散を防止し、外部からの多様な刺激(化学物質、大気汚染物質、乾燥した環境、紫外線など)に対して人体を保護する。皮膚は、大きく表皮、真皮、そして皮下脂肪からなっており、表皮は、さらに角質層、顆粒層、有棘層、基底層に区分される。角質形成細胞と角質細胞間の脂質膜で構成された表皮の角質層が正常的に形成されている場合に皮膚の保護機能が維持され得る。角質形成細胞の水分を保持する機能、そして角質細胞間の脂質膜の水分損失を阻む機能によりヒトは皮膚の水分保有量を約30%に維持し得る。
【0007】
ヒトの角質形成細胞では、水分とグリセロールを細胞内に輸送する膜貫通タンパク質であるアクアポリン3(aquaporin 3、AQP3)が発現される。AQP3は、細胞間の水分及びグリセロールの移動を調節するタンパク質であって、AQP3遺伝子の発現が抑制されたマウスモデルで皮膚障壁が損傷され、皮膚の弾力と水分含有能力が低下することが確認された。
【0008】
また、ヒアルロン酸は、皮膚の天然保湿因子として表皮層で水分を保持する重要な基質である。ヒアルロン酸の合成酵素であるヒアルロナン合成酵素2(hyaluronan synthase 2、HAS2)とヒアルロナン合成酵素3(HAS3)は、皮膚の表皮で発現し、皮膚の保湿能力を評価する指標として使用されることもある。
【0009】
最近には、環境や生活パターンの変化、社会生活から発生する各種ストレスと環境汚染、化粧習慣によるひんぱんな洗顔などの原因により角質層の水分が減少して皮膚が乾燥し、表面が荒れるようになり、皮膚がつやを失ってくすんで見えるなどの現象が発生して皮膚保湿に関する問題はその重要性が一層大きくなっている。
【0010】
したがって、皮膚のシワ改善、皮膚の弾力改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーン改善、皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚美白及び/又は皮膚保湿などの皮膚状態の改善効果に卓越しているとともに副作用がなく、使用が簡便な新しい美容素材の開発が必要である。
【0011】
一方、最近細胞分泌物(secretome)に細胞の行動(behavior)を調節する様々な生体活性因子が含まれているという研究が報告されており、特に、細胞分泌物内には、細胞間シグナル伝達機能を有する「エキソソーム(exosome)」が含まれており、その成分と機能に対する研究が活発に進められている。
【0012】
細胞は、細胞外環境に様々な膜(membrane)タイプの小胞体を放出するが、通常、このような放出小胞体を細胞外小胞(Extracellular vesicles、EVs)と呼んでいる。細胞外小胞は、細胞膜由来小胞体、エクトソーム(ectosomes)、シェディング小胞体(shedding vesicles)、マイクロパーティクル(microparticles)、エキソソームなどと呼ばれており、場合によっては、エキソソームとは区別して用いられることもある。
【0013】
エキソソームは、細胞膜の構造と同じ二重リン脂質膜からなる数十乃至数百ナノメートルサイズの小胞体であって、内部には、エキソソームカーゴ(cargo)と呼ばれるタンパク質、核酸(mRNA、miRNA等)などが含まれている。エキソソームカーゴには、広範囲のシグナル伝達要素(signaling factors)が含まれており、これらのシグナル伝達要素は、細胞タイプに特異的で分泌細胞の環境に応じて異なるように調節されることが知られている。エキソソームは、細胞が分泌する細胞間のシグナル伝達媒体であって、これにより伝達された様々な細胞シグナルは、標的細胞の活性化、成長、移動、分化、脱分化、死滅(apoptosis)、壊死(necrosis)を含む細胞の行動を調節するとして知られている。エキソソームは、由来した細胞の性質及び状態に応じて特異的な遺伝物質と生体活性因子が含まれている。増殖する幹細胞由来のエキソソームの場合、細胞の移動、増殖及び分化のような細胞行動を調節し、組織再生に関する幹細胞の特性が反映されている(Nature Review Immunology 2002(2) 569-579)。
【0014】
すなわち、細胞のアバターと呼ばれるエキソソームは、細胞と類似して成長因子のような生体活性因子を含んでいるが、生体活性因子を細胞と細胞の間に積んで運ぶ伝達体としての役目、すなわち、細胞と細胞の間の交信の役目をする。エキソソームは、幹細胞、免疫細胞、線維芽細胞及び癌細胞などの動物細胞から放出されるだけでなく、植物、細菌(bacteria)、菌類(fungi)、藻類(algae)など多様な生物の細胞からも放出されるものとして知られている。
【0015】
黒酵母(Aureobasidium pullulans)は、自然界に広く存在する不完全菌類であり、メラニン色素を生成し、培養条件によって菌体外にβ-1,3-1,6-グルカンを大量生産する菌類である。黒酵母は、30℃で最適成長を有し、10℃~35℃で成長する。黒酵母が生産する高分子多糖類であるプルラン(pullulan)は、食品工業でゼリーなどの物性の付与に用いられている。また、液状食品をプルラン(pullulan)のフィルム内に入れる新しい食品が開発されている。黒酵母由来のベータグルカンは、培地中に生合成される菌体外多糖であって、精製する必要がなく、水溶性であるので加工が容易である。
【0016】
したがって、黒酵母は、食品、化粧品分野などで広く活用されている。しかし、黒酵母に由来するエキソソームの分離・精製及び特性分析に関する研究は、未だに不十分な状態である。したがって、黒酵母に由来するエキソソームに関するより綿密な特性分析及び機能に関する研究が必要である。
【0017】
微生物の醗酵物や培養液を使用した化粧品が紹介されているが、一部の醗酵物や培養液は、敏感な皮膚を持つ人に皮膚トラブル、皮膚の赤み又は皮膚炎などの副作用を起こすこともある。
【0018】
一方、前記した背景技術として説明された事項は、本発明の背景に対する理解を深めるためのものに過ぎず、本発明の「先行技術」として利用され得るという承認として引用したものではないことを理解しなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Nature Review Immunology 2002(2) 569-579
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のような状況で、本発明者らは、黒酵母の醗酵物や培養液に比べて効果が改善された化粧料組成物を開発するために研究し、黒酵母に由来するエキソソームが皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーン改善、皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚保湿及び皮膚美白効能に優れていることを確認し、本発明を完成した。
【0021】
したがって、本発明の目的は、黒酵母由来のエキソソームを有効成分として含む皮膚状態改善用化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するために、本発明は、黒酵母(Aureobasidium pullulans)由来のエキソソームを有効成分として含む皮膚状態改善用化粧料組成物を提供する。
【0023】
本明細書で用いられた用語「黒酵母(Aureobasidium pullulans)」は、Aureobasidium属に属する菌類であって、菌糸がなく運動性及び光合成能を有しない単細胞生物である。黒酵母は、自然界に広く存在する不完全菌類であり、メラニン色素を生成し、培養条件によって菌体外にβ-1,3-1,6-グルカンを大量生産する。
【0024】
本明細書で用いられた用語「エキソソーム(exosomes)」は、黒酵母から細胞外空間に分泌又は放出された膜構造を有するナノサイズの小胞を意味し、エキソソーム類ベシクル又はエキソソーム類パーティクルとも定義される。
【0025】
本明細書で用いられた用語「黒酵母由来のエキソソーム」と言う用語は、例えば、黒酵母培養液又は黒酵母醗酵物、若しくはこれらと同等の黒酵母の生物学的溶液から分離されるか黒酵母自体から分泌及び/又は放出されたエキソソームを全て含むことを意味する。黒酵母由来のエキソソームを生産するために、当業界で使われているか今後に用いられ得る多様な黒酵母菌株を用いることができ、実施例で用いられた黒酵母菌株は、本発明で用いられ得る黒酵母菌株の一例として理解しなければならず、本発明は、これに制限されるものではない。
【0026】
本明細書で用いられた用語「皮膚の状態改善」は、皮膚状態の悪化と係わる症状の程度を減少させることを言い、皮膚状態は、皮膚弾力、皮膚シワ、皮膚のキメ、皮膚トーン、皮膚明るさ、皮膚再生、皮膚美白及び皮膚保湿と係わるパラメータであってもよい。
【0027】
具体的に、「皮膚の弾力改善」は、コラーゲン合成を促進するなど皮膚の脂肪組織の体積を増加させて垂れた皮膚組織を収縮させる効果と共に皮膚の弾力を維持あるいは増加させることを意味する。
【0028】
また、「皮膚シワ」は、皮膚が老衰して生じた細かい線を意味するが、遺伝子による原因、皮膚真皮に存在するコラーゲンとエラスチンの減少、外部環境などにより誘発され得る。したがって、本明細書で用いられる用語である「皮膚のシワ改善」は、皮膚にシワが生成されることを抑制又は阻害したり、既に生成されたシワを緩和したりすることを意味する。
【0029】
一方、本明細書で用いられる用語である「皮膚トーン」は、皮膚の色が濃いか薄いかの程度の状態を意味し、「皮膚のトーン改善」は、一定しない皮膚のトーンを一定にすることを意味する。「皮膚美白」と「皮膚の明るさ改善」は、メラニンなどの色素の過多により明度が減少した皮膚の明度を増加させるか、又は皮膚の明度を一定レベルに維持することを含む。
【0030】
また、「皮膚再生」は、皮膚の外部及び内部原因により損傷された皮膚組織が回復することを言う。前記外部原因としては、紫外線、外部汚染物質、創傷、外傷などが挙げられ、前記内部原因としては、疾病、ストレスなどが挙げられる。「皮膚保湿」は、皮膚の水分が減少することを阻害又は抑制するか皮膚の水分含有量を増加させて皮膚表面を滑らかにし、ツヤを付与することを言う。
【0031】
下記実施例から確認できるように、前記黒酵母由来のエキソソームは、皮膚線維芽細胞に伝達され(
図2)、コラーゲン合成を増加させる(
図3)。また、メラノーマ細胞では、メラニンの生成を抑制し(
図5)、ヒアルロン酸合成酵素又はアクアポリン合成を促進する。
【0032】
したがって、黒酵母由来のエキソソームを含む化粧料組成物は、皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーン改善、皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚美白及び皮膚保湿効果からなる群より選択される一つ以上の効果を示すことができる。
【0033】
一方、本発明の皮膚状態改善用化粧料組成物は、ローション剤、液剤、クリーム剤、沈積マスク剤、ゲル剤、エアロゾール剤及び粉末剤で構成された群から選択される少なくとも1種の剤形で作られ得る。
【0034】
前記ローション剤は、化粧料組成物の有効成分と乳化剤などを混合して油性成分と水性成分を均質化させた後に粘液状に作った剤形を言い、クリーム剤は、化粧料組成物の有効成分と乳化剤などを混合して油性成分と水性成分を均質化させた後に半固形状に作った剤形を言う。また、液剤は、化粧料組成物の有効成分と他の成分を溶剤などに溶かして液状に作った剤形であり、ゲル剤は、液体を浸透させた分子量が大きい有機分子からなった半固形状を言う。
【0035】
沈積マスク剤は、ローション剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤などを不織布などの支持体に沈積して作った剤形であって、パッチ、マスクパック、マスクシートなどで作られ得る。エアロゾール剤は、原液を同じ容器又は他の容器に充填した噴射剤(液化気体、圧縮気体など)の圧力を利用して霧状、泡沫状などで噴出するものを言う。また、粉末剤とは、均質に粉末状又は微粒状に作ったものを言い、賦形剤などを用いることができる。
【0036】
例えば、本発明の皮膚状態改善用化粧料組成物は、ローション剤又はクリーム剤に作られるか、若しくはパッチ、マスクパック又はマスクシートの少なくとも一面に塗布されるか沈積され得る。
【0037】
一方、本発明の皮膚状態改善用化粧料組成物は、皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーン改善、皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚保湿及び/又は皮膚美白などを目的として用いられ、当業界で通常的に製造されるいかなる形態にも製造され得る。例えば、パッチ、マスクパック、マスクシート、柔軟化粧水、栄養化粧水、収れん化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、アイクリーム、クレンジングクリーム、エッセンス、アイエッセンス、クレンジングローション、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、サンスクリーン、口紅、石鹸、シャンプー、界面活性剤含有クレンジング、入浴剤、ボディローション、ボディクリーム、ボディオイル、ボディエッセンス、ボディ洗浄剤、染毛剤、ヘアトニックなどに製造され得るが、これに限定されるものではない。
【0038】
一方、本発明の一具体例の皮膚状態改善用化粧料組成物は、本発明の効果を損傷しない範囲内で化粧料組成物に通常的に利用される成分、例えば、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、乳化剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤などを必要に応じて追加で含むことができる。
【0039】
また、本発明の一具体例の皮膚状態改善用化粧料組成物は、黒酵母由来のエキソソーム以外に、その作用(皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚再生、皮膚保湿、皮膚のトーンや皮膚の明るさ改善、皮膚美白、皮膚美容など)を損傷させない限度で、従来から使用されてきた皮膚改善剤、抗酸化剤及び/又は保湿剤と混合して使用することができる。例えば、本発明の黒酵母由来のエキソソームは、ハイドロゲル、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウムなど)、又はヒアルロン酸ゲルのうち少なくとも1種に担持又は混合されてもよい。本発明の一具体例の化粧料組成物において、前記ハイドロゲルの種類は限定されないが、好ましくは、ゲル化高分子を多価アルコールに分散させて得たハイドロゲルであってもよい。前記ゲル化高分子は、プルロニック、精製寒天、アガロース、ゲランガム、アルギン酸、カラギーナン、カシアガム、キサンタンガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、ペクチン、セルロース、グアーガム及びローカストビーンガムからなる群より選択された少なくとも1種であってもよく、前記多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール及びグリセリンからなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。
【0040】
また、本発明の皮膚状態改善用化粧料組成物は、一般皮膚化粧料に配合される化粧学的に許容可能な担体を1種以上追加で含むことができ、通常の成分として、例えば、油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などと適切に配合され得るが、これに制限されるものではない。
【0041】
本発明の剤形が粉末剤又はエアロゾール剤である場合には、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、ポリアミドパウダー又はこれらの混合物が利用され得、特に、エアロゾール剤である場合には、追加的にクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルのような推進剤を含むことができる。
【0042】
本発明の剤形がクリーム剤又はゲル剤である場合には、担体成分として動物繊維、植物繊維、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク又は酸化亜鉛などが利用され得る。
【0043】
本発明の剤形が液剤のうち溶液又は乳濁液である場合には、担体成分として溶媒、溶媒化剤又は乳濁化剤が利用され得、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエード、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルが利用され得る。
【0044】
本発明の剤形が液剤のうち懸濁液である場合には、担体成分として水、エタノール又はプロピレングリコールのような液状希釈剤、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガロース又はトラガカントなどが利用され得る。
【0045】
本発明の他の様相は、前記皮膚状態改善用化粧料組成物を哺乳動物の皮膚に適用させる段階を含む治療用を除いた哺乳動物の皮膚を改善させる美容方法を提供する。
【0046】
前記哺乳動物は、ヒト、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウマ、ウシ、サル又はブタであってもよいが、これに制限されない。
【0047】
本発明の美容方法において、皮膚の状態改善とは、皮膚組織の外観及び感じの視覚的及び/又は触覚的に知覚し得る肯定的な変化を意味する。例えば、皮膚の状態改善とは、皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーン改善、皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚保湿及び/又は皮膚美白であってもよい。
【0048】
本発明で、前記皮膚状態改善用化粧料組成物を哺乳動物の皮膚に適用させる段階は、(a)前記皮膚状態改善用化粧料組成物を哺乳動物の皮膚に直接塗布する段階、又は(b)前記皮膚状態改善用化粧料組成物が塗布されるか沈積されたパッチ、マスクパック又はマスクシートを哺乳動物の皮膚に接触又は付着する段階、又は前記(a)及び(b)を順次に進行する段階であってもよい。前記(a)段階では、ローション剤又はクリーム剤の剤形の皮膚状態改善用化粧料組成物が用いられ得る。
【0049】
また、本発明の美容方法は、(c)前記(b)段階以後に前記パッチ、マスクパック又はマスクシートを哺乳動物の皮膚から除去し、前記皮膚状態改善用化粧料組成物を哺乳動物の皮膚に塗布する段階をさらに含むことができる。前記(c)段階では、ローション剤又はクリーム剤の剤形の皮膚状態改善用化粧料組成物が用いられ得る。
【0050】
一方、本発明に記載した全ての成分は、好ましくは、化粧品安全基準などに関する規定及び中国の「化粧品安全技術規範」で規定した最大使用値を超過しない範囲内で本発明の組成物に含まれ得る。
【発明の効果】
【0051】
本発明の化粧料組成物は、皮膚の弾力改善、皮膚のシワ改善、皮膚のキメ改善、皮膚のトーンや皮膚の明るさ改善、皮膚再生、皮膚保湿及び/又は皮膚美白効果に優れているので、皮膚状態改善の用途として有用に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、本発明の黒酵母由来のエキソソームに対してNTA(nanoparticle tracking analysis)を行って得た粒子サイズ分布と粒子数を示したグラフである。
【
図2】
図2は、蛍光染色された黒酵母由来のエキソソームがヒト皮膚線維芽細胞に伝達されたことを示した細胞蛍光顕微鏡イメージである(緑色:細胞内に伝達されたエキソソーム、青色:細胞核)。
【
図3】
図3は、ヒト皮膚線維芽細胞に黒酵母由来のエキソソームを低濃度及び高濃度で処理した後の相対的なコラーゲン量を示したグラフである。
【
図4】
図4は、蛍光染色された黒酵母由来のエキソソームがメラノーマ細胞に伝達されたことを示した細胞蛍光顕微鏡イメージである(緑色:細胞内に伝達されたエキソソーム、青色:細胞核)。
【
図5】
図5は、メラノーマ細胞に酵母由来のエキソソームを低濃度及び高濃度で処理した後にメラニン生成量が減少したことを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明を下記の実施例でより詳細に記述する。ただし、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものに過ぎず、本発明の権利範囲を制限したり限定するものではない。本発明の詳細な説明及び実施例から、本発明が属する技術分野の通常の技術者が容易に類推できることは本発明の権利範囲に属するものと解釈される。本発明に引用された参考文献は、本発明に参考として統合される。
【0054】
明細書全体で、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含みうることを意味する。
【実施例】
【0055】
<実施例1:黒酵母由来のエキソソームの製造>
【0056】
黒酵母菌株であるAureobasidium Pullulans OFY11-1菌株(KCTCから入手;寄託番号14158BP)を振とう培養した後、培養培地を遠心分離してペレット化して黒酵母細胞を除去した。
【0057】
黒酵母細胞が除去された培養液から、タンジェント流濾過装置(Tangential Flow Filtration;TFF)を利用して黒酵母由来のエキソソームを分離した。
【0058】
分離した黒酵母由来のエキソソームのサイズと濃度は、NS300(Malvern Panalyticalから購入)を利用したナノ粒子トラッキング分析(nanoparticle tracking analysis;NTA)で確認した(
図1)。
【0059】
<実施例2:黒酵母由来のエキソソームの皮膚線維芽細胞への伝達能の確認>
【0060】
黒酵母由来のエキソソームがヒト皮膚線維芽細胞(Human Dermal Fibroblast;HDF、ATCCから購入)内に伝達するか否かを次のように確認した。
【0061】
実施例1で準備した黒酵母由来のエキソソームの膜を蛍光染色するためにPKH67(Sigma-Aldrich)蛍光染料と反応させた。反応後、反応液をMW3000(Thermo Fisher)のカラムで分画してエキソソーム膜に染色されていない遊離PHK67(free PKH67)蛍光染料を除去した。陰性対照群としては、PKH67蛍光染料を緩衝溶液と反応させた後、MW3000で分画したものを用いた。PKH67で染色されたエキソソームをあらかじめ培養して準備したヒト皮膚線維芽細胞とともに培養した後、時間によるエキソソームの細胞内伝達有無を蛍光顕微鏡で観察した。細胞核の染色には、ヘキスト(Hoechst)蛍光染料(Thermo Fisher)を用い、細胞膜の染色には、CellMask Orange蛍光染料(Thermo Fisher)を用いた。
【0062】
蛍光顕微鏡で黒酵母由来のエキソソームの細胞内への伝達有無を確認した結果、緑色蛍光が細胞内部に時間の経過に応じて蓄積されることを確認して、黒酵母由来のエキソソームが細胞内に伝達されることが分かった(
図2)。
【0063】
<実施例3:黒酵母由来のエキソソームのコラーゲンの生成促進効果の確認>
【0064】
ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)が含まれたDMEM培地に分散されたヒト皮膚線維芽細胞を24-ウェルプレートに各ウェル当たり5x104濃度で分株して24時間の間培養した。
【0065】
その後、実施例1で準備した黒酵母培養液又は黒酵母由来のエキソソームを無血清培地に希薄してヒト皮膚線維芽細胞に処理し、ヒト皮膚線維芽細胞を24時間培養した。ヒト皮膚線維芽細胞を利用したコラーゲン生成効能の確認のために実験群を次のように分類した:
【0066】
(1)陰性対照群(
図3で「対照群」で表示):無血清培地のみ処理した実験群;
【0067】
(2)黒酵母培養液処理群(
図3で「CM」で表示):実施例1で準備した黒酵母培養液を無血清培地に希釈して処理した実験群(粒子数基準処理濃度:3.0X10
9粒子/mL);
【0068】
(3)黒酵母由来のエキソソームの低濃度処理群(
図3で「低濃度エキソソーム」で表示):実施例1で準備した黒酵母由来のエキソソームを低濃度で無血清培地に希釈して処理した実験群(粒子数基準処理濃度:3.0X10
9粒子/mL);
【0069】
(4)黒酵母由来のエキソソームの高濃度処理群(
図3で「高濃度エキソソーム」で表示):実施例1で準備した黒酵母由来のエキソソームを高濃度で無血清培地に希釈して処理した実験群(粒子数基準処理濃度:3.0X10
10粒子/mL)。
【0070】
ヒト皮膚線維芽細胞を24時間培養後に培養液を回収して遠心分離した後、遠心分離された培養液を準備した。ヒト皮膚線維芽細胞から合成されて培養液に蓄積されたコラーゲン量をプロコラーゲンタイプIC-ペプチド(procollagen type IC-peptide、PIP)に対するEIAキット(Takaraから購入)で測定した。測定されたコラーゲン量をMTTアッセイキット(Sigma-Aldrichから購入)で測定した総細胞数で分けて正規化させることによって相対的なコラーゲンの量を決定した。
【0071】
その結果、黒酵母由来のエキソソームは、陰性対照群に比べてヒト皮膚線維芽細胞でコラーゲン合成を著しく増加させ、特に、処理濃度が増加するにつれてコラーゲン合成を一層増加させることが確認できた(
図3)。すなわち、本発明の黒酵母由来のエキソソームは、濃度依存的にヒト皮膚線維芽細胞でコラーゲン合成を増加させることが確認できた。
【0072】
また、同一濃度(粒子数基準処理濃度:3.0X10
9粒子/mL)で、黒酵母培養液処理群より黒酵母由来のエキソソームの低濃度処理群でヒト皮膚線維芽細胞のコラーゲン生成量が多いことが分かった(
図3)。
【0073】
したがって、本発明の黒酵母由来のエキソソームを有効成分として含有する化粧料組成物は、コラーゲン合成を増加させる活性を有し、黒酵母由来のエキソソームは、皮膚のシワ改善、皮膚の弾力改善及び/又は皮膚再生用機能性化粧料組成物の有効成分として有用に活用され得る。
【0074】
<実施例4:黒酵母由来のエキソソームのマウスメラノーマ細胞への伝達能の確認>
【0075】
黒酵母由来のエキソソームがマウスメラノーマ(B16F10;ATCCから購入)内に伝達されるか否かを次のように確認した。
【0076】
実施例1で準備した黒酵母由来のエキソソームの膜を蛍光染色するためにPKH67蛍光染料と反応させた。反応後、反応液をMW3000カラムで分画してエキソソーム膜に染色されていない遊離PKH67蛍光染料を除去した。陰性対照群としては、PKH67蛍光染料を緩衝溶液と反応させた後、MW3000で分画したものを用いた。PKH67で染色されたエキソソームをあらかじめ培養して準備したB16F10細胞とともに培養した後、時間によるエキソソームの細胞内への伝達有無を蛍光顕微鏡で観察した。細胞核の染色は、ヘキスト蛍光染料を用い、細胞膜染色には、CellMask Orange蛍光染料を用いた。
【0077】
蛍光顕微鏡で黒酵母由来のエキソソームの細胞内への伝達有無を確認した結果、緑色蛍光が細胞内部に時間の経過に応じて蓄積されることを確認して、黒酵母由来のエキソソームがメラノーマ細胞内に伝達されることが分かった(
図4)。
【0078】
<実施例5:メラニン生成の抑制効果>
【0079】
黒酵母由来のエキソソームの美白効果をメラノーマ細胞に対するメラニン生成の抑制程度を通じて確認した。前記メラノーマ細胞は、マウス黒色腫に由来する細胞であり、メラニンという黒色の色素を分泌する。メラノーマ細胞を48-ウェルプレートに各ウェル当たり8x103濃度で分株した後、10%ウシ胎児血清を含むフェノールレッド未含有DMEM培地で24時間培養した。
【0080】
その後、実施例1で準備した黒酵母由来のエキソソームをメラニン合成刺激剤であるα-MSH(α-melanocyte stimulating hormone)が混合された培養培地に希釈した後、メラノーマ細胞に処理し、メラノーマ細胞を48時間培養した。実験群は次のように分類した:
【0081】
(1)陰性対照群(
図5で「陰性対照群」で表示):メラニン合成刺激剤であるa-MSHが混合された培養培地を処理した実験群;
【0082】
(2)陽性対照群(
図5で「陽性対照群」で表示):メラニン合成刺激剤であるa-MSHとアルブチン(Arbutin)(最終濃度:1mM)を混合した培養培地を処理した実験群;
【0083】
(3)黒酵母由来のエキソソームの低濃度処理群(
図5で「低濃度エキソソーム」で表示):メラニン合成刺激剤であるa-MSHと低濃度の黒酵母由来のエキソソームを混合した培養培地を処理した実験群(粒子数基準処理濃度:3.0X10
9粒子/mL);
【0084】
(4)黒酵母由来のエキソソームの高濃度処理群(
図5で「高濃度エキソソーム」で表示):メラニン合成刺激剤であるa-MSHと高濃度の黒酵母由来のエキソソームを混合した培養培地を処理した実験群(粒子数基準処理濃度:3.0X10
10粒子/mL)。
【0085】
メラノーマ細胞を48時間培養した後、培養液を回収して洗浄溶液(PBS;Thermo Fisherから購入)でメラノーマ細胞を洗浄した。
【0086】
前記回収された培養培地とCCK-8アッセイ試薬(Dojindoから購入)を混合して5%のCO2、37℃の条件で2時間インキュベーションした後、上層液を96-ウェルプレートに移して450nmで吸光度を測定した。また、洗浄されたメラノーマ細胞に10% DMSOを混合した1N NaOH(Merck-Milliporeから購入)を処理した後、プレートを密封して85℃で20分間加熱してメラノーマ細胞内のメラニンを抽出した。抽出したメラニンは、405nmで吸光度を測定してメラニン量を計算した。
【0087】
その結果、黒酵母由来のエキソソームは、濃度依存的にメラノーマ細胞のメラニン合成を減少させることが確認できた(
図5)。
【0088】
したがって、本発明の黒酵母由来のエキソソームを有効成分として含有する化粧料組成物は、美白効果を有し、黒酵母由来のエキソソームは、皮膚のトーンや皮膚の明るさ改善、及び/又は皮膚美白のための機能性化粧料組成物の有効成分として有用に活用され得る。
【0089】
<実施例6:ヒアルロン酸合成酵素又はアクアポリン合成の促進効果の確認>
【0090】
ヒト角質形成細胞(HaCaT)を6-ウェル細胞培養プレートに各ウェル当たり2x105濃度で分株し、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地で24時間培養した。その後、培地を10% FBS及びカルシウム(Ca2+)が含まれていないDMEM培地に交替した後、黒酵母由来のエキソソームを培地に希釈して24時間処理した。24時間が経過した後に細胞を回収して冷却されたリン酸緩衝溶液(PBS)で洗浄し、RNeasy mini kit(Qiagen、Germany)で全体RNAを抽出した。抽出したRNAを主型としてcDNA Synthesis Kit(PhileKorea、Korea)で逆転写反応を行ってcDNAを合成した。合成されたcDNAは、定量した後、水で希釈して全ての反応に同一量を用いた。TaqMan(登録商標) Universal Master Mix IIとTaqMan(登録商標) Gene Expression Assays(Thermo Fisher、USA)、HAS2プライマー(ID:Hs00193435_m1)及びAQP3プライマー(ID :HS01105469_G1)を用いた。StepOnePlus(登録商標)リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、USA)でリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(quantitative real time PCR)を行った。
【0091】
実験結果は、ハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene)であるグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase;GAPDH)を基準としてΔΔCt方法で計算して示した。黒酵母由来のエキソソームを処理しない陰性対照群のmRNA発現量を約1.0とし、これを基準として実験群のHAS2(hyaluronan synthase 2)及びAQP3(aquaporin 3)遺伝子の発現程度を数値化した(表1~2)。
【0092】
【0093】
【0094】
黒酵母由来のエキソソーム処理によるヒアルロン酸合成酵素であるHAS2遺伝子の発現程度を測定した結果、表1から確認できるように、黒酵母由来のエキソソームを処理しない無処理群に比べ、黒酵母由来のエキソソームを処理した場合、濃度依存的にHAS2遺伝子の発現が増加することを確認し、最大約3倍にHAS2遺伝子の発現が増加することを確認した。
【0095】
また、黒酵母由来のエキソソームの処理による膜貫通タンパク質であるアクアポリン3,AQP3遺伝子の発現程度を測定した結果、表2から確認できるように、黒酵母由来のエキソソームを処理しない無処理群に比べ、黒酵母由来のエキソソームを処理した場合、濃度依存的にAQP3遺伝子の発現が増加することを確認し、最大約4.5倍にAQP3遺伝子の発現が増加することを確認した。
【0096】
したがって、本発明の黒酵母由来のエキソソームを有効成分として含む化粧料組成物は、ヒアルロン酸あるいはアクアポリン合成の増加を通じた皮膚の保湿剤効果を有し、皮膚保湿用化粧料組成物の有効成分として有用に活用され得る。
【0097】
以上、本発明を前記実施例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正、変更をすることができ、このような修正と変更も本発明に属するものであることがわかるであろう。
【国際調査報告】