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特表2024-508068LPG燃焼を改善するための均一系触媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(54)【発明の名称】LPG燃焼を改善するための均一系触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20240215BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240215BHJP
   C10L 3/12 20060101ALI20240215BHJP
   C07F 5/00 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
B01J31/22 M
B01J37/04 102
C10L3/12
C07F5/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516525
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 IN2022050738
(87)【国際公開番号】W WO2023126957
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202141061004
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523089139
【氏名又は名称】ヒンドゥスタン ペトロリアム コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボウミク,サンディップ
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン,クリシュナマーシー
(72)【発明者】
【氏名】ナイク,ソニヤ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィ,バラスブラマニアム
【テーマコード(参考)】
4G169
4H048
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA21C
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BB12A
4G169BB12C
4G169BC02C
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC43C
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD01C
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD02C
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD04C
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD06C
4G169BE06C
4G169BE08A
4G169BE08C
4G169BE11A
4G169BE11B
4G169BE11C
4G169BE14C
4G169BE20A
4G169BE20B
4G169BE36A
4G169BE36B
4G169BE36C
4G169CD01
4G169DA02
4G169FA01
4G169FB05
4G169FC02
4G169FC06
4G169FC07
4G169FC10
4H048AA03
4H048AB44
4H048VA20
4H048VA30
4H048VB10
(57)【要約】
本発明は、LPG及びすすの燃焼の両方を著しく改善することができ、火炎温度を高め、加熱を速め、調理時間を短縮し、燃料消費量を低下させる、Ce(IV)錯体単独、又はCe(III)錯体との混合物中のCe(IV)錯体を含む均一系セリウム(Ce)触媒組成物を開示する。セリウム(III)錯体は、セリウム(III)2-エチルヘキサン酸であり、セリウム(IV)錯体は、アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]であり、L1は、2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノンである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化石油ガス(LPG)の燃焼を改善するための均一系触媒組成物であって、前記組成物は、
セリウム(IV)錯体単独、又は
セリウム(III)錯体との混合物中のセリウム(IV)錯体を含み、
前記セリウム(III)錯体は、セリウム(III)2-エチルヘキサン酸であり、
前記セリウム(IV)錯体は、アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]であり、
L1は、2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノンである、
前記組成物。
【請求項2】
全触媒組成物のうち、前記Ce(III)錯体は、33~100重量%の量で存在し、前記Ce(IV)錯体は、25~100重量%の量で存在する、請求項1に記載の均一系触媒組成物。
【請求項3】
前記セリウム(III)錯体は、前記全液化石油ガス(LPG)組成物の1.5~15ppmの濃度範囲で存在する、請求項1に記載の均一系触媒組成物。
【請求項4】
前記セリウム(IV)錯体は、前記全液化石油ガス(LPG)組成物の0.8~10ppmの濃度範囲で存在する、請求項1に記載の均一系触媒組成物。
【請求項5】
前記セリウム(III)及びセリウム(IV)錯体は、1:1~3:1の重量比で存在する、請求項1に記載の均一系触媒組成物。
【請求項6】
前記セリウム(III)及びセリウム(IV)錯体は、2:1の最適重量比で存在する、請求項5に記載の均一系触媒組成物。
【請求項7】
前記触媒組成物は、前記液化石油ガス(LPG)の火炎温度を最大10%上昇させる、請求項1に記載の均一系触媒組成物。
【請求項8】
前記触媒組成物は、前記全液化石油ガス(LPG)燃料組成物のうち2.5~20ppmの濃度範囲で存在する、請求項1に記載の均一系触媒組成物。
【請求項9】
液化石油ガス(LPG)の燃焼を改善するための均一系触媒組成物の製造方法であって、前記方法は、
(a)アセチルアセトン及びエタノールアミンをメタノール溶液中で反応させ、24時間攪拌することによる2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノン(L1)の合成、
(b)L1及びCe(NO・6HOをジメチルホルムアミド溶媒中150℃で反応させ、15時間維持することによるアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]の合成、
(c)45℃で15時間、アセチルアセトン、トリエチルアミン及びCe(NO・6HOをメタノール溶液中で反応させることによるテトラアセチルアセトナートセリウム(IV)[Ce(acac)]の合成、
(d)2-エチルヘキサン酸ナトリウム及び硝酸セリウム六水和物を反応させ、5時間攪拌することによるセリウム(III)2-エチルヘキサン酸の合成、並びに
(e)セリウム(III)2-エチルヘキサン酸及びアクア(2-N-(2-ヒドロキ
シエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]を含むセリウム(III)及びセリウム(IV)錯体の混合物の調製を含む、
前記方法。
【請求項10】
均一系触媒組成物をドープした液化石油ガス(LPG)の製造方法であって、前記方法は、
(a)セリウム(III)2-エチルヘキサン酸をアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]とヘキサン中で混合して溶液を形成するステップであって、L1は、2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸である、形成するステップ、及び
(b)ステップ(a)の溶液を圧縮ガスシリンダー中の液化石油ガス(LPG)に加えるステップを含む、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化石油ガス(LPG)の燃焼を著しく改善することができる、Ce(IV)錯体単独、又はCe(III)錯体との混合物中のCe(IV)錯体を含む均一系セリウム(Ce)触媒組成物に関する。本触媒組成物をLPG燃料に添加すると、LPG消費量を低減する一方火炎温度及び加熱速度が著しく改善される。本発明はまた、均一系触媒組成物の製造方法、及び均一系触媒組成物をドープしたLPG燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調理用ガスLPGの主要な成分であるC/C炭化水素の燃焼は、複雑な現象であり、組成、個々の成分の発熱量、すすの形成、酸素流などのいくつかの主要なパラメータによって決定的に決まる。したがって、燃焼効率を改善するために、種々の可能性を検討する。また、燃料の単位質量当たりに発生する熱は、炭化水素の組成、すなわちC/C比、C/Cオレフィンの有無などに直接依存する。しかしながら、LPGの組成が最適であり、様々な外的要因に依存することを考慮すると、LPG燃焼動力学を改善するために触媒を用いることが唯一の有効な方法である。
【0003】
炭化水素燃焼の改善のためのいくつかのこのような触媒は、文献で報告されている。Excellene Ltdによる米国特許第5236467号には、トーチガス用にメチルエチルケトン及びメチルterブチルエーテルの使用が開示される。I G Corp.による米国特許第3591355号では、メタノールなどの液体アルカノール並びにペンタン及びイソペンタンなどのアルカンの混合物の添加が提案され、一方個人による米国特許第3989479号には、LPGの燃焼動力学を改善するためにメタノールを添加することが開示される。Bharat Petroleum Corp. Ltdによる米国特許第8163042号では、燃料及び酸素の両方の燃焼量を低減する有機金属化合物、芳香族アミンを基本ガスに添加することが報告される。
【0004】
さらに、助燃剤もLPGの燃焼動力学を改善すると考えられてよい。しかしながら、このような添加剤/助燃剤はどれも、LPGの理論的発熱量を全く調節できないことに留意すべきである。原則として、任意の燃焼ブースター/助燃剤を用いると、動力学が速くなるので、調理が速くなる。しかしながら、燃焼ブースター/助燃剤はプロセスの熱力学に影響を及ぼすことはできないので、LPG燃焼からの熱出力全体を改善できるものはない。
【0005】
所定のLPG燃料の最大限の発熱量を実現するためには、化学量論量の酸素の存在下完全燃焼が起こる必要があると留意すべきである。このような燃焼では、酸素が豊富で、色が青く、光度が低い「酸化炎」を生じる。しかしながら、実際の調理条件ではバーナーの細孔や開口部にすす及び他の堆積物が形成されるため、LPG燃料は化学量論的な必要条件より少ない酸素しか得られないことが多い。その結果、LPGは高光度の低い火炎温度で燃焼する。したがって、最適な火炎及び最大の発熱量を実現するにはすすの燃焼が重要だと考えられ、これによりLPG燃料の消費量が著しく低減することになる。
【0006】
ランタニド、特にセリウム(Ce)酸化物及び錯体は、燃焼改良触媒として広く用いられてきた。プロパン燃焼を著しく改善し、完全燃焼温度を低下させるために均一系Ce系触媒を用いる多くの先行文献がある。しかしながら、均一系Ce錯体についての相当する文献は非常にわずかしか存在しない。
【0007】
個人による米国特許第8741798号には、セリウム(III)2-エチルヘキサン
酸を含む炭化水素酸化用の触媒が開示され、この触媒は、炭化水素の酸化に対する改善、すなわち効率的な酸化、温度の低下、及び燃費の改善を提供する。これらの触媒を用いるディーゼル燃料の酸化実験では、全燃料消費量を約10%~20%減少させた。
【0008】
Chevron USA Inc.による米国特許出願第4264335号には、ガソリンに少量のセリウム(III)又はセリウム(IV)2-エチルヘキサン酸を取り入れることによりガソリンのオクタン必要条件の増加を抑制することが開示される。燃料組成物は、多量のガソリン及びガソリンのガロン当たり溶液中約0.05~約10gの2-エチルヘキサン酸のセリウム(III)又はセリウム(IV)塩を含む。
【0009】
Corning Glass Worksによる米国特許出願第4424165号には、Ce+3のβ-ジケトナート錯体、MCe(fod)であって、Mは、Na、Li、K、Cs及びRb群から選択される、錯体が開示される。Ce(fod)は、先行技術のセリウムのβ-ジケトナート錯体を熱安定性及び揮発性の両方に関して上回る著しい利点をもたらす。この錯体は、充分な高温での分解に対しても安定である。この錯体は、硝酸セリウム(Ce(NO.6HO)のメタノール溶液、Hfodのメタノール溶液、NaOH及びヘキサンを用いることにより調製される。生成物は、NaCe(fod)及びCe(fod)の結晶混合物である。
【0010】
Rhodia Ltdによる米国特許出願第5449387号には、炭化水素燃料の清浄燃焼用などの、触媒として適している、化学式(HO)[CeO(A)・(AH)を有する、新規なセリウム(IV)酸化化合物が開示される。この化合物は、燃焼促進剤として働く。これらのセリウム(IV)酸化化合物を車両排気管のフィルター又はすすトラップ(リザーバー)に取り入れてもよく、これらは、様々な可燃性物質又は燃料の燃焼により生じる炭素含有粒子を捕捉するよう設計されている。
【0011】
Osvaldo A. Serraらは、セリウム(III)β-ジケトナートCe(hdacac)(Hhdacac)・2HOの合成を開示し、この物質は、ディーゼル/バイオディーゼル応用のすす放出を低減するための触媒として働く。物質の両親媒性により、この錯体は非極性燃料に溶解することができ、したがって、ディーゼル/バイオディーゼルすすの酸化を効率的に触媒するセリウム(IV)酸化物粒子を生成する。さらに、この錯体は、均一系CeO球形ナノ粒子の可溶性前駆体として機能することができる。
【0012】
Ziang Suらは、金属酸化物触媒の触媒燃焼性能を強化するための新生の方法となることができる均質界面の設計に関連付けている。豊富なCe-Ce均質界面があるメソ結晶性CeO触媒を、セルフフレーミング法により合成すると、この触媒は触媒性能の改善を示す。CeOメソ結晶は、様々な酸素空孔を形成することにより優れた酸化還元特性及び酸素吸蔵量を有する。
【0013】
本発明の発明者らは、調理時間及びLPG燃料消費量を著しく低減することができる調理ガスLPG用の均一系触媒組成物を開発するよう努めた。均一系触媒組成物は、Ce(IV)錯体を含む。触媒性能を高めると予測されるセリウムの+3及び+4の酸化状態間の低い酸化還元ポテンシャル障壁を利用するために、均一系セリウム触媒組成物はまた、最適比率のCe(IV)錯体とCe(III)錯体の混合物も含む。さらに、リガンド構造は、触媒性能を強めるために合成的に改良されてきた。生じた触媒組成物は、すす及びLPG燃焼を同時に改善するのに役立ち、これにより火炎がLPG燃料に接近するので確実に燃焼動力学を速め、酸素利用可能性を高める。このことにより、火炎温度が高くなり、加熱が速くなり、燃料消費量が低下する。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、LPGの燃焼を改善することができる、Ce(IV)錯体単独、又はCe(III)錯体との混合物中のCe(IV)錯体を含む均一系セリウム(Ce)触媒組成物を開示する。触媒組成物はまた、すすの燃焼も改善し、火炎温度を高め、加熱を速め、燃料消費量を低下させる。Ce(III)錯体は、セリウム(III)2-エチルヘキサン酸であり、Ce(IV)錯体は、アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(H2O)(NO3)2]であり、L1は、2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノンである。
【0015】
発明の技術的利点
本発明は、引用した先行技術を上回る以下の利点を有する。
(i)両Ce(III)(セリウム(III)2-エチルヘキサン酸)及びCe(IV)(アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(H2O)(NO3)2])錯体は、個々に火炎温度を上昇させるが、Ce(III)及びCe(IV)錯体の混合物については正の相乗効果が観察される。Ce-C1錯体、すなわちアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]は特に、類似するβ-ジケトナート、Ce-C2錯体、すなわちテトラアセチルアセトナートセリウム(IV)と比較して性能の著しい改善を示す。このことは、Ce-C1錯体に存在し、アセチルアセトンの求核性を改善するよう特に設計された、リガンドL1を原因とすることができる。均一系Ce触媒組成物をLPG燃料に添加することによる火炎温度の上昇は、最大10%である。また、Ce(III)及びCe(IV)錯体の最適重量比2:1で最高火炎温度が達成される。火炎温度は、触媒組成物の濃度が上昇するにつれて直線的に上昇し、触媒組成物の濃度約12.5ppmで最適となり、この濃度を超えると上昇速度は減少する。
(ii)触媒組成物は、すすの燃焼を改善するのに役立ち、これにより酸素がLPG燃料へ接近しやすくなり、したがってLPG燃料消費量を減少させる。
(iii)触媒組成物は、加熱を速め、これにより調理時間を減少させる。
(iv)触媒組成物の濃度が上昇するにつれて加熱時間及び燃料消費量の直線的減少が観察される。
【0016】
発明の目的
均一系触媒組成物であって、この組成物は、Ce(IV)錯体単独、又はセリウム(III)錯体との混合物中のセリウム(IV)錯体を含み、このセリウム(III)錯体は、セリウム(III)2-エチルヘキサン酸であり、このセリウム(IV)錯体は、アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]であり、L1は、2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノンである、組成物を提供することが本発明の主な目的である。
【0017】
LPG燃焼を改善する均一系触媒組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0018】
均一系触媒組成物の製造方法であって、このプロセスは、2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノン(L1)の合成、アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]:Ce-C1の合成、テトラアセチルアセトナートセリウム(IV)[Ce(acac)]:Ce-C2の合成、セリウム(III)2-エチルヘキサン酸:Ce-C3の合成、及びセリウム(III)2-エチルヘキサン酸(Ce-C3)及びアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO](Ce-C1)を含むセリウム(III)及び
セリウム(IV)錯体の混合物の調製を含む、方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、均一系セリウム触媒組成物をドープしたLPGの製造方法を提供することである。
略語
Ce:セリウム
セリウム(III):Ce(III)
セリウム(IV):Ce(IV)
LPG:液化石油ガス
[Ce(acac)]:テトラアセチルアセトナートセリウム(IV)
L1:2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノン
Ce-C1:アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO
Ce-C2:テトラアセチルアセトナートセリウム(IV)[Ce(acac)
Ce-C3:セリウム(III)2-エチルヘキサン酸
IR:赤外分光法
NMR:核磁気共鳴分光法
XPS:X線光電子分光法
FLIR:前方監視型赤外線装置
DMF:ジメチルホルムアミド
【発明を実施するための形態】
【0020】
当業者であれば、本開示が明確に記載されているもの以外に変形及び変更を受けることがあることを理解されるであろう。本開示には、全てのこのような変形及び変更が含まれると理解されるべきである。本開示はまた、個別に又は集合的に、本明細書に言及される又は示される、全てのこのような方法のステップ、システムの特徴及びこのようなステップ又は特徴のいずれか又はそれ以上のものの全ての組み合わせも含む。
【0021】
定義
本開示をさらに説明する前に便宜上、本願において使用される特定の用語及び例をここに集める。これらの定義は、本開示の残りに照らして読まれ、当業者によるように理解されるべきである。本明細書において用いられる用語は、当業者にとって認識され、知られる用語の意味を有するが、便宜及び完全性のため、特定の用語及び用語の意味を以下に述べる。
【0022】
冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、1つ又は1つより多い(すなわち、少なくとも1つ)冠詞の文法的対象を指すために用いられる。
【0023】
用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」は、追加の要素を含んでよい包括的で、オープンな意味で用いられる。「のみから成る(consists of only)」と解されることは意図されていない。
【0024】
本願を通して、文脈により別段の要求がない限り、単語「含む(comprise)」、及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、述べられた要素若しくはステップ又は要素若しくはステップの群を包含するが、他のいかなる要素若しくはステップ又は要素若しくはステップの群を除外するわけではないことを意味すると理解される。
【0025】
用語「含む(including)」は、「含むが、限定されない(includin
g but not limited to)」を表すために用いられる。「含む(including)」及び「含むが、限定されない(including but not
limited to)」は、互換的に用いられる。
【0026】
別段の定めがない限り、本明細書において用いられる全ての技術及び科学用語は、本開示が属する技術文書の当業者が通常理解するのと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似する又は同等のいかなる方法及び材料を本開示の実施又は試験に用いることができるが、好ましい方法及び材料を今記載する。本明細書において言及される全ての刊行物は、参照により本明細書中に援用される。
【0027】
本開示は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が制限されるべきでなく、特定の実施形態は例示目的のみを意図する。機能的に等価な生成物及びプロセスは、本明細書に記載されるとおり、明らかに本開示の範囲内である。
【0028】
本発明は、液化石油ガス(LPG)の燃焼を改善するための均一系Ce触媒組成物に関する。この組成物は、Ce(IV)錯体単独、又はCe(III)錯体との混合物中のCe(IV)錯体を含み、このCe(III)錯体は、セリウム(III)2-エチルヘキサン酸であり、このCe(IV)錯体は、アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]であり、L1は、2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノンである。
【0029】
さらに別の実施形態において、触媒組成物は、全LPG燃料組成物の2.5~20ppmの濃度範囲で存在する。
【0030】
本発明の別の実施形態において、全触媒組成物のうち、Ce(III)錯体は、33~100重量%の量で存在し、Ce(IV)錯体は、25~100重量%の量で存在する。
【0031】
本発明の別の実施形態において、混合物中のセリウム(III)及びセリウム(IV)錯体は、1:1~3:1の重量比で存在し、最適重量比は2:1である。
【0032】
別の実施形態において、均一系セリウム触媒混合物は、濃度1.5~15ppmのCe(III)錯体、すなわちセリウム(III)2-エチルヘキサン酸、及び濃度0.8~10ppmのCe(IV)錯体、すなわちアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]を含む。
【0033】
本発明の別の実施形態において、Ce(III)(セリウム(III)2-エチルヘキサン酸)及びCe(IV)(アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(H2O)(NO3)2])錯体は、いずれも個々に火炎温度を上昇させるが、Ce(III)及びCe(IV)錯体の混合物については正の相乗効果が観察される。均一系Ce触媒混合物をLPG燃料に添加することによる火炎温度の上昇は、最大10%である。また、Ce(III)及びCe(IV)錯体の最適重量比2:1で最高火炎温度が達成される。火炎温度は、触媒混合物の濃度が上昇するにつれて直線的に上昇し、触媒混合物の濃度約12.5ppmで最適となり、この濃度を超えると上昇速度は減少する。
【0034】
別の実施形態において、均一系Ce触媒組成物の製造方法は、以下を含む。
(a)アセチルアセトン及びエタノールアミンをメタノール溶液中で反応させ、24時間攪拌することによる2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノン(L1
)の合成、
【化1】

(b)2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノン(L1)及びCe(NO・6HOをジメチルホルムアミド溶媒中150℃で反応させ、15時間維持することによるアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]の合成。化合物アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]は、Ce-C1として知られ、
【化2】

(c)45℃で15時間、アセチルアセトン、トリエチルアミン及びCe(NO・6HOをメタノール溶液中で反応させることによるテトラアセチルアセトナートセリウム(IV)[Ce(acac)]の合成。化合物テトラアセチルアセトナートセリウム(IV)[Ce(acac)]は、Ce-C2として知られ、
【化3】

(d)2-エチルヘキサン酸ナトリウム及び硝酸セリウム六水和物を反応させ、5時間攪拌することによるセリウム(III)2-エチルヘキサン酸の合成。化合物セリウム(III)2-エチルヘキサン酸は、Ce-C3として知られ、並びに
(e)セリウム(III)2-エチルヘキサン酸(Ce-C3)及びアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO](Ce-C1)を含むセリウム(III)及びセリウム(IV)錯体の混合物の調製。
【0035】
別の実施形態において、Ce-C1錯体、すなわちアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]は、Ce-C2錯体、すなわちテトラアセチルアセトナートセリウム(IV)と比較して性能の著しい改善を示す。このことは、リガンドL1を原因とすることができ、リガンドL1は、錯体化した金属中心(Ce(IV)錯体)の電子の有効性を上昇させ、錯体化した金属中心(Ce(IV)錯体)の形式電荷を低減するようアセチルアセ
トンから修飾される。これにより、酸化還元対(Ce(III)及びCe(IV)錯体)の触媒効率は著しく改善される。
【0036】
別の実施形態において、均一系触媒組成物をドープしたLPGの製造方法は、
(a)セリウム(III)2-エチルヘキサン酸(Ce-C3)をアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO](Ce-C1)とヘキサン中で混合して溶液を形成するステップ、及び
(b)ステップ(a)の溶液を圧縮シリンダー中のLPG燃料に加えるステップを含む。
【0037】
別の実施形態において、前述の触媒組成物は、LPG燃焼中のすすの形成を低減する。
【0038】
別の実施形態において、前述の触媒組成物は、加熱速度を上昇させ、これにより調理時間及びLPG燃料消費量を低減する。
【実施例
【0039】
本発明の基本的側面を記載してきたので、以下の非限定的な実施例を用いて基本的側面の具体的な実施形態を説明する。当業者は、本発明の本質を変えることなく、本発明に多くの変形をすることができると理解するだろう。
【0040】
実施例1:Ce(III)及びCe(IV)錯体の合成
(A)2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタノン(L1)の合成:
2-アミノエタノールのメタノール溶液(36.6g,0.6mol)をペンタン-2,4-ジオンの攪拌したメタノール溶液(60.1g,0.6mol)に滴下し、総体積を600mLに保持した。縮合反応中に発生した水を除去するために硫酸ナトリウムを加え、混合物を12時間攪拌した。生じた黄色い溶液を、ジクロロメタンを加えることにより希釈し、ろ過し、溶媒を減圧下で除去して98%の収率を得た(84.3g)。
【化4】
【0041】
(B)アクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO]:Ce-C1の合成
炉内乾燥した1つ口丸底フラスコ中で、5mLのジメチルホルムアミド(DMF)にL1(143.21mg,1.2mmol)を入れた。温度を100℃に維持し、Ce(NO・6HOの水溶液0.5mL(130.3mg,0.3mmol)を滴下した。添加が完了したら、温度を150℃に上げ、15時間維持した。その後、メタノールを加えて暗褐色の沈殿物を得て、ろ液が透明になるまで複数回、メタノール、エタノール、及びエーテルでよく洗浄した。
【0042】
IR及びNMR解析を用いてCe-C1錯体の特徴を明らかにした。特徴づけデータは、IR(ニート,cm-1)1516,1349,1062,827;H NMR(500MHz,DMSO-d):δ8.31(s,1H),1.90(s,1H),1.23(s,2H),0.85(s,1H),-0.09(m,6H)を含む。
【化5】
【0043】
(C)テトラアセチルアセトナートセリウム(IV)[Ce(acac)]:Ce-C2の合成
炉内乾燥した1つ口丸底フラスコ中で、アセチルアセトン(300.39mg,3mmol)及びトリエチルアミン(303.57mg,3mmol)を25mLメタノールに溶解した。Ce(NO・6HO(217.22mg,0.5mmol)を別で10mLメタノールに溶解した。金属溶液をリガンド溶液に磁気攪拌しながら室温で滴下した。生じた溶液を45℃で15時間加熱した。その後溶液を蒸発させ、ろ液が透明になるまで複数回、メタノール、エタノール、及びジエチルエーテルで洗浄した。最後に、生じた粉末錯体を真空系で乾燥させた。
【化6】
【0044】
(D)セリウム(III)2-エチルヘキサン酸:(Ce-C3)の合成
炉内乾燥した1つ口丸底フラスコ中で、水酸化ナトリウム(240.6g,6.015mol)を1.5Lミリポア水に溶解し、約30分間攪拌した後室温に冷却した。この溶液に2-エチルヘキサン酸(867.7g,6.016mol)を加え、約2時間攪拌して2-エチルヘキサン酸ナトリウムの均一な単分子層溶液を形成した。この2-エチルヘキサン酸ナトリウムの調製済溶液に硝酸セリウム六水和物(653g,1.503mol)を加え、5時間よく攪拌した。得られた固体を2Lのn-ヘキサンに溶解し、分液漏斗を用いることにより水を分離し、NaSO上で乾燥させ、n-ヘキサンを60℃で1時間、ロータリーエバポレーターで蒸発させ、セリウム(III)2-エチルヘキサン酸を生じた。
【0045】
IR及びNMR解析を用いてCe-C3錯体の特徴を明らかにした。特徴づけデータは、IR(ニート,cm―1)2959,2873,2861,1696,1536,1459,1381,1319,1295,1269,1227。H NMR(500MHz,CDCl):δ0.70-0.92(m,10H),0.94-1.24(m,2H),1.30-1.53(m,2H),2.43(s,1H)を含む。
【0046】
実施例2:Ce(III)及びCe(IV)錯体の混合物の調製
セリウム(III)及びセリウム(IV)錯体、すなわちセリウム(III)2-エチルヘキサン酸(Ce-C3)及びアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO](Ce-C1)を含む混合物を調製する。
【0047】
実施例3:均一系セリウム触媒をドープしたLPGの調製
1.266gのセリウム(III)2-エチルヘキサン酸(Ce-C3)を0.633gのアクア(2-N-(2-ヒドロキシエチルイミノ)-4-ペンタン酸)ジニトロセリウム(IV)[Ce(L1)(HO)(NO](Ce-C1)と共に100mlのヘキサンに溶解して溶液を形成する。したがって、Ce(III)及びCe(IV)の重量比は2:1である。この溶液10mlを圧縮シリンダー中の19kgのLPGに加える。このものは、組成物Cat-IIIを指し、燃焼及び最適化試験のために実施例4においてさらに用いる。
【0048】
実施例4:触媒組成物の燃焼試験及び最適化
均一系触媒による触媒燃焼は、同一金属の様々な酸化状態形態の格子欠陥により又は格子中の異なる金属ドーパントにより促進されることが多い。燃焼触媒の活性金属としてセリウム(Ce)が好ましいことが多いのは、酸化状態間のポテンシャル障壁が比較的低い複数の安定した酸化状態のためである。本発明の試験において、発明者らは、異なる酸化状態の有機セリウム錯体を最適化し、有機セリウム錯体のLPG燃焼に対する効率を評価した。
【0049】
(A)触媒組成物の火炎温度の上昇
実験の目的で、濃度10ppm(重量/重量)の金属添加物をLPG燃料に加え、環境大気流下従来の真鍮バーナーで燃焼した。マスフローコントローラによりLPG流量を10g/分に一定に保った。火炎温度は、前方監視型赤外線(FLIR)カメラにより測定した。試験用に、カメラを火炎から1mの固定距離、仰角30°に設定した。完全火炎温度プロファイルは、1FPSの高解像度カメラにより捕捉した。各試験では、1000フレームを記録した。固定座標での平均火炎温度を、定量比較のために連続した100フレーム(フレーム番号501~600)にわたり算出した。得られた結果を表1において考察する。
【表1】
【0050】
表1の結果から分かるように、均一系セリウム触媒をLPGに加えると、火炎温度が最大10%上昇したのが分かり、この温度は同等の鉄錯体、すなわちトリス-2-エチルヘ
キサン酸鉄(III)錯体と比較して著しく高い。最適化した重量比2:1のCe-C3(Ce(III)錯体)及びCe-C1(Ce(IV)錯体)では、火炎温度が最大値まで上昇した。混合触媒系の火炎温度の上昇は個別に添加した場合より著しく高いので、混合酸化状態錯体間の相乗効果は明らかである。
【0051】
表2は、重量%の点で様々な触媒組成物を用いたFLIR温度測定を開示する。
【表2】
【0052】
表2から分かるように、全触媒組成物のうちCe(III)錯体は33~100重量%の量で存在し、Ce(IV)錯体は25~100重量%の量で存在する。
【0053】
(B)触媒濃度についての火炎温度の上昇
同一の触媒組成物(Cat-III)、すなわち比率2:1のCe-C3(Ce(III)錯体)及びCe-C1(Ce(IV)錯体)を用いてさらなる試験を行った。触媒濃度の効果を同一実験条件下FLIRカメラにより評価し、表3に開示する。
【表3】
【0054】
表3から、触媒濃度が上昇するにつれ火炎温度が上昇することが観察される。火炎温度は、触媒混合物の濃度が上昇するにつれて直線的に上昇し、触媒混合物の濃度約12.5ppmで最適となり、この濃度を超えると上昇速度は減少する。均一系Ce触媒混合物をLPG燃料に添加することによる火炎温度の最大上昇は、最大10%である。さらに、全LPG組成物のうちのCe(III)錯体の濃度は1.5~15ppmで変わり、Ce(IV)錯体の濃度は0.8~10ppmで変わる。
【0055】
(C)調理時間及びLPG消費量に対する効果
調理時間及びLPG消費量に対する効果を調べるために、以下の実験を行った。ミリポア水(25℃での抵抗率:18MΩ-cm)1kgを1.5Lの密閉断熱チャンバー内で、様々な濃度の触媒をドープしたLPG(2:1比)を燃焼することにより、25℃から100℃に加熱した。結果を表4に開示する。
【表4】
【0056】
表4の結果から分かるように、添加量が増加するにつれて加熱時間及び消費した燃料の両方が着実に減少した。以前述べたように、LPG燃料消費量が低くなることは、火炎温度又は速い反応速度単独よりもLPGのすす燃焼効率に良く相関することができる。
【0057】
(E)すすの燃焼に対する効率
すすのより効率的な燃焼についての直接的証拠を、X線光電子分光法(XPS)により取得した。LPG燃焼の前と120分後に、個々のバーナーの開口部からすすを集めた。すす中に見出される炭素の様々な酸化状態を解析するためにC1sピークを監視した。結合エネルギーモードで1486.4eVのAlKα線種を用いてC1sピークのHRスペクトルをステップサイズ0.5eVで記録した。得られたスペクトルをデコンボリューションし、解析し、結果を表5に示す。
【表5】
【0058】
個別の炭素の種類の正規化した割合を解析用に検討した。表5に見られるように、286.7及び288.4に生じるデコンボリューションしたピークを酸素化された炭素化学種に帰属した。したがって、これらのピークの割合が増加することは、燃焼度が高くなることを常に示す。ブランクLPGは、全ての酸素化された化学種の割合に感知できるほどの変化を示さなかった。ブランクLPGではむしろ、燃焼が0分の3.0%から120分時点の2.8%までわずかな減少を示した(286.7及び288.4eVピークの加算)。他方で、10ppmのCat-IIIをドープしたLPG燃料では、全酸素化された化学種の燃焼が0分の2.9%から120分時点の10%まで著しい増加を示した(286.7及び288.4eVピークの加算)。これらの結果から、添加物をドープしたLPGの場合にはすすのより効率的な燃焼が実証され、すすがより効率的に燃焼されるとLPG燃焼効率も改善される。
【国際調査報告】