(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(54)【発明の名称】回収を熱的に増強した統合型接触器を含む水回収システム
(51)【国際特許分類】
E03B 3/28 20060101AFI20240215BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
E03B3/28
B01D53/04 230
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540578
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 US2022015369
(87)【国際公開番号】W WO2022170137
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、デイビッド アール.
(72)【発明者】
【氏名】リシアンスキ、ヴィタリ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ステラ、アルバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】エルノ、ダニエル ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012CA02
4D012CB16
4D012CD01
4D012CG01
4D012CG02
4D012CH01
4D012CK06
(57)【要約】
【課題】空気中の水分から飲料水を生成できる水回収システムであって、所要エネルギーが低く砂漠空気のような環境湿度で動作できるものを提供する。
【解決手段】
水回収システムは、該システムに加湿入口ガスのような第1の流体流を供給する第1の流体流入口と、該システムに、加湿入口ガスよりも温度の高いガスのような第2の流体流を供給する第2の流体流入口とを含む。1以上の接触器が、第1の流体流入口及び第2の流体流入口と流体連通している。1以上の接触器は、その内部に、第1の流体流の流れ及び水の吸着のための第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインと、第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインと熱連通する、第2の流体流の流れのための第2の流体隔離された流体ドメインと、凝縮液を捕捉して凝縮の潜熱を第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインに再循環するための第3の流体隔離された流体ドメインとを画成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水回収システム(100)であって、当該水回収システム(100)が、
当該水回収システム(100)に第1の流体流(106,152)の流れを供給する第1の流体流入口(110)及び当該水回収システム(100)に第2の流体流(108,154)の流れを供給する第2の流体流入口(107)と、
第1の流体流入口(110)及び第2の流体流入口(107)と流体連通する1以上の接触器(112)と
を備えており、前記1以上の接触器(112)が、その内部に、
第1の流体流(106,152)の流れ及び水の吸着のための第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)と、
第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)と熱連通する、第2の流体流(108,154)の流れのための第2の流体隔離された流体ドメイン(148)と、
凝縮液を捕捉して凝縮の潜熱を第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)に戻して再循環するための第3の流体隔離された流体ドメイン(150)と
を画成する、水回収システム(100)。
【請求項2】
第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)が、吸着剤で被覆された流路(156)を画成する、請求項1に記載の水回収システム(100)。
【請求項3】
第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)が、吸着剤材料(158)で充填された流路によって画成される、請求項1に記載の水回収システム(100)。
【請求項4】
第3の流体隔離された流体ドメイン(150)が、第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)と熱連通している、請求項1に記載の水回収システム(100)。
【請求項5】
前記1以上の接触器(112)が、第1の流体流入口(110)及び第2の流体流入口(107)と流体連通する第1の接触器(112)と、第1の流体流入口(110)及び第2の流体流入口(107)と流体連通する第2の接触器(124)とを備えており、第1の接触器(112)と第2の接触器(124)が、連続運転のため交互サイクルで動作する、請求項1に記載の水回収システム(100)。
【請求項6】
第2の接触器(124)が脱着ユニットとして動作する際に、第1の接触器(112)が吸着ユニットとして動作する、請求項5に記載の水回収システム(100)。
【請求項7】
第2の接触器(124)が吸着ユニットとして動作する際に、第1の接触器(112)が脱着ユニットとして動作する、請求項5に記載の水回収システム(100)。
【請求項8】
第1の流体流(106)が周囲空気である、請求項1に記載の水回収システム(100)。
【請求項9】
加湿入口ガス(106)から水を除去する方法であって、当該方法が、
第1の流体流経路(156)と流体連通する第1の接触器(112)及び第2の流体流経路(160)と流体連通する第2の接触器(124)を用意するステップであって、第1の接触器(112)と第2の接触器(124)が水回収システム(100)の連続運転のため交互サイクルで動作する、ステップと、
水回収システム(100)の第1の流体流経路(156)に第1の流体流(106)を入力するステップであって、第1の流体流(106)が加湿入口ガスを含む、ステップと、
水回収システム(100)の第2の流体流経路(160)に第2の流体流(108)を入力するステップであって、第2の流体流(108)が第1の流体流(106)よりも温度の高いガスを含む、ステップと、
第1の流体流経路(156)と流体連通する第1の接触器(112)を、吸着サイクル又は脱着サイクルの一方で動作させると同時に、第2の流体流経路(160)と流体連通する第2の接触器(124)を吸着サイクル又は脱着サイクルの他方で動作させるステップであって、水回収システム(100)の連続運転をもたらす、ステップと
を含んでおり、
第1及び第2の接触器(112,124)の各々が、
第1の流体流(106)の流れ及び水分の吸着のための第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)と、
第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)への熱伝達を介して脱着を助長するため、第2の流体流れ(108)の流れのための第2の流体隔離された流体ドメイン(148)は、。
凝縮液を捕捉して凝縮の潜熱を第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)に再循環して脱着をさらに促進するための第3の流体隔離された流体ドメイン(150)と
を備える、方法。
【請求項10】
第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)が、吸着剤材料(158)の最大水吸着容量に達するまで吸着剤材料(158)に水を吸着するための吸着剤で被覆された流路(156)を画成しており、第2の流体隔離された流体ドメイン(148)が、適切な温度勾配を駆動して脱着を開始するための加温流路(160)を画成しており、第3の流体隔離された流体ドメイン(150)が、凝縮水を捕捉し、凝縮の潜熱を第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(146)に効率的に再循環させるための凝縮器流路(162)を画成している、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、水回収システムに関するものであり、さらに具体的には、吸着剤及び熱増強回収策を用いて空気から水を抽出するための1以上の接触器を含む水回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関によると、40億人(世界の人口の半数超)が毎年1か月以上十分な飲料水を有しておらず、そのうち5億人は一年中十分な飲料水を入手できない。空気から飲料水を作ることは、水不足の問題を軽減するための有望なアプローチである。空気から水を抽出する既存の技術として、塩又は吸着剤を用いる除湿がある。しかし、これらのアプローチはエネルギー集約的であり、低湿度レベルでは動作しない。
【0003】
そこで、空気中の水分から飲料水を生成できる新規な水回収システムであって、好適には所要エネルギーが低くしかも乾燥環境(例えば、砂漠空気)の典型的な湿度で動作できるものを開発できれば望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2009/223236明細書
【発明の概要】
【0005】
本開示の態様では、新規な水回収システムを提供する。新規な水回収システムは、吸着剤及び熱増強回収を用いた水の抽出のための1以上の接触器を含む。本システムは、水回収システムに第1の流体流の流れを供給する第1の流体流入口と、水回収システムに第2の流体流の流れを供給する第2の流体流入口と、第1の流体流入口及び第2の流体流入口と流体連通する1以上の接触器とを含む。第1の流体流は加湿入口ガスを含み、第2の流体流は加湿入口ガスよりも温度の高いガスを含む。1以上の接触器は、その内部に、第1の流体流の流れ及び水の吸着のための第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインと、第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインへの熱伝達を介して脱着を助長する第2の流体流の流れのための第2の流体隔離された流体ドメインと、凝縮液を捕捉して凝縮の潜熱を第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインに再循環して脱着をさらに促進する第3の流体隔離された流体ドメインとを画成する。
【0006】
本開示の別の態様では、新規な水回収システムを提供する。新規な水回収システムは、吸着剤及び熱増強回収を用いた水の抽出のための1以上の接触器を含む。本システムは、水回収システムに第1の流体流の流れを供給する第1の流体流経路と、水回収システムに第2の流体流の流れを供給する第2の流体流経路と、第1の流体流経路及び第2の流体流経路と流体連通する第1の接触器と、第1の流体流経路及び第2の流体流経路と流体連通する第2の接触器とを含んでおり、第1の接触器と第2の接触器は連続運転のため交互サイクルで動作する。第1の流体流は加湿入口ガスを含み、第2の流体流は加湿入口ガスよりも温度の高いガスを含む。第1及び第2の接触器の各々は、その内部に、第1の流体流の流れ及び水の吸着のための第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインと、第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインへの熱伝達を介して脱着を助長する第2の流体流の流れのための第2の流体隔離された流体ドメインと、凝縮液を捕捉して凝縮の潜熱を第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインに再循環して脱着をさらに促進する第3の流体隔離された流体ドメインとを画成する。
【0007】
本開示のさらに別の態様では、加湿入口ガスから水を除去するための新規な方法を提供する。新規な方法は、第1の流体流経路と流体連通する第1の接触器及び第2の流体流経路と流体連通する第2の接触器を用意するステップを含む。第1の接触器と第2の接触器は、水回収システムの連続運転のため交互サイクルで動作する。本方法は、水回収システムの第1の流体流経路に第1の流体流を入力するステップと、水回収システムの第2の流体流経路に第2の流体流を入力するステップと、第1の流体流と流体連通する第1の接触器を吸着サイクル又は脱着サイクルの一方で動作させると同時に、第2の流体流経路と流体連通する第2の接触器を吸着サイクル又は脱着サイクルの他方で動作させて、水回収システムの連続運転をもたらす、ステップとを含む。第1の流体流れは加湿入口ガスを含み、第2の流体流れは第1の流体流れよりも温度の高いガスを含む。第1及び第2の接触器の各々は、第1の流体流の流れ及び水の吸着のための第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインと、第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインへの熱伝達を介して脱着を助長する第2の流体流の流れのための第2の流体隔離された流体ドメインと、凝縮液を捕捉して凝縮の潜熱を第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインに再循環して脱着をさらに促進する第3の流体隔離された流体ドメインとを備える。
【0008】
本願で開示する技術の上記その他の特徴、態様及び利点については、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによって理解を深めることができよう。添付の図面は、本明細書の内容の一部をなすものであり、本技術の様々な実施形態を例示するとともに、発明の詳細な説明と併せて本技術の原理を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本願で開示する技術の上記その他の特徴、態様及び利点については、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。図面を通して、同様の部材には同様の符号を付した。
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る加湿入口ガスから水を回収するための例示的な水回収システムにおける第1のサイクルの概略図。
【
図2】本開示の一実施形態に係る加湿入口ガスから水を回収するための例示的な水回収における第2のサイクルの概略図。
【
図3】本開示の一実施形態に係る
図1及び
図2の加湿入口ガスから水を回収するための例示的なシステムの水回収サイクルの概略図。
【0011】
本明細書及び図面で繰返し用いられる符号は、記載された実施形態の同一又は類似の特徴又は構成要素を表すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の明細書及び特許請求の範囲では、多くの用語に言及するが、それらは以下の意味をもつと定義される。
【0013】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0014】
「任意」又は「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合とを包含する。
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量の修飾語であって、その数量が関係する基本機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動し得る数量を表すために適用される。したがって、「約」、「実質的に」及び「略」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。場合によっては、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。本明細書及び特許請求の範囲において、数値限定の範囲は互いに結合及び/又は交換可能であり、かかる範囲は、前後関係等から明らかでない限り、その範囲に含まれるあらゆる部分範囲を特定しかつ包含する。
【0016】
本明細書で用いる「流体」という用語は、限定されるものではないが、空気、気体、液体及び蒸気を始めとする、あらゆる流動媒体又は材料を包含する。
【0017】
以下で詳しく説明する通り、新規な水回収システムの様々な実施形態について紹介する。新規な水回収システムは、吸着剤及び熱増強回収策を用いて、周囲空気のような周囲の流体から水を抽出するための1以上の接触器を含む。開示するシステムは、吸着剤を接触器に一体化するとともに効率的なエネルギー回生を用いることによって、高い水抽出コストの問題を解決する。高表面積の吸着剤内蔵接触器は、システム性能に大きく貢献する。接触器は、3つの流体隔離され、独立した大規模並列流体ドメイン、すなわちa)周囲空気の流れを供給してその周囲空気から水の吸着するための第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインと、b)高温空気流体の流れを供給して、吸着剤内蔵流体ドメインへの顕熱の伝達によって脱着を促進する第2の流体隔離された流体ドメイン(高温空気流体ドメインとも呼ばれる)と、c)凝縮水を捕捉して凝縮の潜熱を吸着剤内蔵流体ドメインに効率的に再循環して脱着をさらに促進する第3の流体隔離された流体ドメインとを含む独自の三叉設計を特徴とする。吸着剤の再生中、第2のドメインからの熱によって吸着剤内蔵流体ドメインから水分が放出され、その水分は接触器の第3の流体ドメインで凝縮される。水の凝縮時に放出される熱は、第3の流体ドメインから第1の流体ドメインに回収されて、第2の流体ドメインから吸着剤に供給される追加の熱と併せて吸着剤の再生に用いられる。
【0018】
図1及び
図2を参照すると、エンジンシステムにおける水吸収ユニットとして機能する水回収システム100の例示的な実施形態が示してある。水回収システム100は、脱着を助長するためにエンジン(例えば、内燃機関、ガスタービン)の運転中に生成される燃焼ガスを利用して、水蒸気を含む周囲の加湿環境(周囲空気又は他の適切な空気源又は他の流体など)から水を除去するように構成されている。交互に、水回収システム100は、吸着モード又は脱着モードで動作し得る。
図1及び
図2の水回収システム100には、連続運転のための2つの接触器(後述)が組み込まれている。
図1は、第1のサイクル102(サイクルA-後述)での動作時の水回収システム100を示す。
図2は、第2のサイクル104(サイクルB-後述)での動作時の水回収システム100を示す。
【0019】
水回収システム100は、周囲空気のような加湿入口ガス流106から水を除去するように構成されている。世界の多くの人にとって十分な飲料水が不足しており、周囲空気から水を安価かつ効率的に除去することがますます重要になっている。本願で開示する水回収システム100は、吸着剤を1以上、好ましくは2以上の接触器(後述)と一体化するとともに、効率的なエネルギー回生を適用することによって、高い水抽出コストの問題を解決する。高表面積の吸着剤内蔵接触器及び接触器での低い圧力降下は、水回収システム100の性能に大きく貢献する。水回収システム100は、加湿入口ガス流106よりも温度の高い高温ガス流108を利用することによって、効率的なエネルギー回生をもたらす。高温ガス流は、加熱流体源(例えば、限定されるものではないが、天然ガスその他の可燃性燃料をエンジン内で点火した後に排気ガスを供給できるガスタービン又は内燃機関など)に由来する。高温ガス流108からの熱は、水回収システム100内に画成された流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン(後述)への熱伝達によって脱着を助長する。エンジンは、加湿ガスをそれぞれの接触器を通して移動させる任意構成要素の送風機116に機械的動力又は電力を供給する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、水回収システム100は、入口110で水回収システム100に入る第1の流体流、特に加湿入口ガス流106を含む。一実施形態では、加湿入口ガス流106は、ガスの体積を減少させて、水回収システム100のサイズ及び重量を減らすために、最初に冷却してもよい。加湿入口ガス流106は、第1の接触器112に供給される。図に示す実施形態では、加湿入口ガス流106は、第1の接触器112に到達する前に、任意構成要素のフィルタ114及び任意構成要素の送風機116を通過する。
【0021】
図に示す実施形態では、排気ガス、特に高温ガス流108は、天然ガスその他の可燃性燃料118と空気120をエネルギーのためにエンジン122内で点火した後に生成される。エンジン122内で燃焼させた後、排気ガス流、特に高温ガス流108は第2の接触器124に供給される。適宜、高温ガス流を接触器に入る前に空気と混合して流れの温度下げてもよい。この場合も、水回収システム100は、高温ガス流108からの熱によって、加湿入口ガス流106から水を除去するように構成される。
【0022】
前述の通り、水回収システム100は、2つの接触器、特に交互の吸着サイクル及び脱着サイクル(
図1のサイクルA及び
図2のサイクルB)をもたらす第1の接触器112及び第2の接触器124を含む。さらに具体的には、この実施形態では、
図1に最もよく示されているように、サイクルAに際して、第1の接触器112は、加湿入口ガス流106が第1の接触器112を通過する吸着ユニットとして機能し、第2の接触器124は、高温ガス流108が第2の接触器124を通過する脱着ユニットとして機能する。前述の通り、連続的水分除去のため、第1の接触器112、さらに具体的には、吸着剤材料が第1の接触器112内で消費されると、第1の接触器112は、
図2に最もよく示されるように、脱着ユニットとして働き、第2の接触器124は、吸収ユニットとして働く。このようにして、空気からの連続的な水生産が達成される。
【0023】
運転中、加湿入口ガス流106は、水回収システム100の下部で乾燥ガス排出流126として吸着接触器から出て、出口128を介して大気中に排出してもよいし、或いはエネルギー回収のためさらに処理又は再循環してもよい。サイクルAの運転中、
図1に示すように、第1の接触器112が吸着ユニットとして働き、第2の接触器124が脱着ユニットとして働くとき、乾燥ガス排気流126は第1の接触器112から排出され、精製水流130は第2の接触器124の下部から出て、続いて追加の精製のような追加の処理に付される。サイクルBの運転中、
図2に示すように、第1の接触器112が脱着ユニットとして働き、第2の接触器124が吸着ユニットとして働くとき、乾燥ガス排気流126は第2の接触器112から排出され、精製水流130は、第1の接触器112の下部から出て、続いて追加の精製のような追加の処理に付される。
【0024】
さらに、運転中、加湿入口ガス流106よりも温度の高い高温ガス流108は、第2の接触器124(サイクルA)又は第1の接触器112(サイクルB)を通過して、それぞれの接触器内の第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインへの熱伝達によって脱着を助長する(後述)。高温ガス流108は、水回収システム100を冷却エンジン排気流132として出る。一実施形態では、膨張機134が含まれており、水回収システム100の部品に追加の動力を提供する。
【0025】
図1及び
図2に示す水回収システム100は、個々の接触器112,124及びそれらを通る流体流の流れを明らかにするための断面図である。水回収システム100は、単一の接触器又は複数の接触器を含むことができ、所与のシステムで使用するために選択される接触器の数は、加湿入口ガス流106中の水分濃度、高温ガス流106の体積、連続運転の要望などに、少なくとも部分的に依存する。
【0026】
次に
図3を参照すると、
図1及び
図2の水回収システム100で使用するための、第1又は第2の接触器112,124と略同様の単一の接触器142の幾何形状及び周期的動作140の概略が示してある。接触器142は、3つに流体隔離され、独立した大規模並列流体ドメイン(全体を符号144で示す)を画成する独特の三叉設計を特徴とする。並列流体ドメインは、(i)第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン146と、(ii)第2の流体隔離された流体ドメイン148と、(iii)第3の流体隔離された流体ドメイン150とを含んでおり、各々、流体の流れのための流体流経路又は流路を画成する。本明細書で用いる「流体隔離」という用語は、流体の混合又はそれらの直接接触を防ぐため、各ドメインを通る流体が別のドメイン内の流体から隔離されていることを意味する。吸着段階での運転中、第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン146は、加湿入口ガス流106(
図1及び
図2)のような第1の流体流152の流れを供給して水を吸着する。第2の流体隔離された流体ドメイン148は、高温ガス流108(
図1及び
図2)のような第2の流体流154の流れを供給し、脱着段階での運転中、第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインへの熱伝達を介して脱着を助長する。第3の流体隔離された流体ドメイン150は、脱着段階での運転中、凝縮液を捕捉して凝縮の潜熱を第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメインに再循環する。
【0027】
第1の流体ドメイン146は、その内部に、第1の流体流152、さらに具体的には加湿入口流の流れ及び水の吸着のための吸着剤内蔵流路又は流れ経路156を画成する。第2の流体ドメイン148は、第2の流体流流路又は流れ経路、さらに具体的には、吸着剤内蔵流路156(特に第1の流体ドメイン146)への顕熱の伝達によって脱着を促進するための加温流路160を画成する。第3の流体ドメイン150は、凝縮水を捕捉して凝縮の潜熱を吸着剤内蔵流路156(特に第1の流体ドメイン146)に効率的に再循環して脱着をさらに促進するための凝縮器流路又は流れ経路162を画成する。
【0028】
運転中、加湿入口ガス(例えば周囲空気)のような第1の流体流152は、最初に吸着剤内蔵流路156(特に第1の流体ドメイン146)を通って導かれる。吸着剤材料158がその最大水吸着容量に達するまで、水分を吸着剤材料158に吸着させる。一実施形態では、吸着剤材料158は、MOF-303のような金属有機構造体(MOF;metal-organic frameworks)、SAPO-34のようなゼオライト、BasoliteA520などを含んでいてもよい。一実施形態では、吸着剤内蔵流路156は、吸着剤材料158で被覆されていてもよいし、吸着剤材料158で装荷/充填されていてもよいし、或いは吸着剤材料158で形成/作製されていてもよい。代替的な実施形態では、設計は、接触器を吸着剤自体から製造(例えばバインダージェット法による)し、再生/脱着サイクル中の吸着剤による水の再吸着を防ぐために接触器の流路の一部をシリカナノ皮膜、フッ素化シラン及びフルオロポリマー皮膜のような疎水性皮膜で被覆することを含んでいてもよい。図に示すように、入口加湿ガス流又は第1の流体流152からの水の吸着に続いて、乾燥ガス流153が第1の流体ドメイン146から出力される。
【0029】
図に示すように、ステップ2で、接触器142内で脱着が行われる。このステップでは、吸着剤内蔵流路156を流れる加湿入口ガスの第1の流体流152が遮断され(「×」印で示す)、第1の流体ドメイン146での脱着をもたらすために、第2の流体ドメイン148によって画成される加温流路160を通る高温ガスの流れ、さらに具体的には第2の流体流154が開かれる。一実施形態では、第2の流体流154は、第1の流体流152よりも温度が高い。好ましい実施形態では、第2の流体流154は85℃を超える温度を有する。これは、第2の流体流154から第1の流体ドメイン146内の吸着剤材料158への熱伝達をもたらして脱着を開始させるための、適切な温度勾配を生じる。冷却された出力ガス流155がもたらされる。吸着剤内蔵流路156の温度が85℃に達すると、吸着材158は水蒸気166の形で水分を放出し、水蒸気はステップ3で第1の流体ドメイン146から第3の流体ドメイン150内に画成される凝縮器流路162へと引き込まれる。接触器142の先頭に位置するファン164は、水蒸気166を第1の流体ドメイン146から凝縮器流路162に引き込むのに役立つ。ステップ3で、水蒸気166は、ファン164によって、凝縮器流路162へと導かれる。ファン164は凝縮器流路162内の全圧(0.2bar正圧)を上昇させ、それによって、水蒸気166が過飽和となって、凝縮器流路162の壁で凝縮する点まで水蒸気166の分圧が上昇し、
図1及び
図2の精製水流130と略同様の精製水170として出力される。ステップ4で、凝縮の際に放出される潜熱が凝縮器流路162から第1の流体ドメイン146、特に吸着剤内蔵流路156へと流れ、それによって脱着プロセスを継続する際に脱着に必要とされる熱エネルギーが劇的に減少する。凝縮の潜熱の再循環によって、一貫した迅速な脱着が促進され、プロセス効率が格段に向上する。なお、説明の便宜上
図3では別々に示したが、ステップ2~4は実際の運転では連続的に、かつ矢印168で示すようにステップ1と共に周期的に起こる。
【0030】
本開示の水回収システム100は、、吸着剤材料158のための、MOF、ゼオライト又は他の親水性材料のような周知の吸着剤材料と共に、
図3の接触器142のような1以上の接触器を備えることができる。本システムは、入口加湿ガス又は第1の流体流152から水を吸収するために、吸着剤材料158及び接触器142を適切な分圧で利用することができる。
【0031】
連続的な水分除去のための2つの接触器、すなわち
図1及び
図2の第1の接触器112及び第2の接触器124の交互サイクルの使用は、各接触器が大規模並列流体ドメインを有している場合には、圧力降下を生じ、流体の分離は間接的な熱交換をもたらす。接触器は、例えばバインダージェット技術のような積層造形技術又は他の製造手段を用いて製造することができる。上述の凝縮の潜熱を捕捉する吸着剤内蔵熱交換は、飲料水を生成できる燃料効率の高い2サイクルシステムアーキテクチャを可能にする。上述のシステムは、広範な湿度で低いエネルギー必要量で動作する能力をもたらすことによって、商業的利点をもたらす。本技術は、遠隔地、軍事前線作戦基地、災害救援などで展開できる。追加の市場機会として、消費者用水の供給、工業用水の回収、淡水化などが挙げられる。
【0032】
上述の水回収システムの様々な実施形態は、低湿度レベルの周囲空気のような加湿入口ガスから少ないエネルギー利用量で水を抽出する能力を劇的に向上させる。吸着剤と接触器との一体化及び効率的なエネルギー回生、特に脱着を助長するための顕熱の吸着剤流路への伝達によって、エネルギー必要量が低く、乾燥環境の典型的な湿度レベルで動作する能力を備えたシステムが得られる。一例として、接触器の三股設計の使用によって、加湿入口ガス中の水の熱増強回収が可能となり、システム全体の運転コストが減少する。各接触器が三叉設計を含み、特に大規模並列流路を含む、連続水分除去のための2以上の接触器の交互サイクルの使用は、低い圧力降下をもたらし、上述の間接的な熱交換は、水回収システムでの効率的なエネルギー回生を助ける。したがって、上述の水回収システム及び接触器設計の様々な実施形態は、飲料水を生成する燃料効率の高い2サイクルシステムアーキテクチャをもたらす。
【0033】
本願で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本発明を限定するものではない。本願で開示する範囲は、それらの範囲の上下限及びすべての中間数値を包含するとともに、それらを組合せることができる。「組合せ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などを包含する。さらに、本願において、「第1の」、「第2の」などの用語は、順序、品質又は重要性を示すものではなく、ある構成要素を他の構成要素から区別するために用いられるものであり、また、不定冠詞は数量を示すものではなく、その不定冠詞が付されたものが1以上存在することを意味する。数量に関して用いられる「約」という修飾語は、記載された数値を包含し、文脈によって左右される意味を有する(例えば、特定の数量の測定に付随する誤差の程度を含む)。複数形の接尾語「s」が括弧書きで付された用語は、その用語の単数形及び複数形を両方包含することを示し、その用語の1又は複数を包含する(例えば、「colorant(s)」は、1又は複数の着色剤を包含する。)。本願明細書を通して、「一実施形態」、「別の実施形態」、「実施形態」などという記載は、その実施形態に関して記載した特定の構成要素(例えば、特徴、構造及び/又は特性)が本願に記載された1以上の実施形態に含まれていることを意味し、その他の実施形態に存在していても存在していなくてもよい。さらに、記載された複数の構成要素を適切に組合せて様々な実施形態としてもよい。
【0034】
別途定義しない限り、本願で用いる用語は(技術用語及び科学用語を含めて)すべて、本発明の実施形態が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。さらに、常用辞書に定義されているような用語は、関連技術及び本願で開示する技術と関連するそれらの意味と一致する意味を有するものとして解すべきであり、本願においてその旨明示されていない限り、理想化された又は過度に形式的な語義に解すべきではない。
【0035】
例示的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲内で様々な変更をなすことができ、ある要素を均等なもので置き換えることができることは当業者には明らかであろう。さらに、本発明の本質的な技術的範囲内で、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるべく数多くの修正を加えることができる。したがって、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0036】
100 水回収システム
106 第1の流体流
107 第2の流体流入口
108 第2の流体流
110 第1の流体流入口
112 第1の接触器
124 第2の接触器
142 接触器
146 第1の流体隔離された吸着剤内蔵流体ドメイン
148 第2の流体隔離された流体ドメイン
150 第3の流体隔離された流体ドメイン
152 第1の流体流
154 第2の流体流
156 吸着剤内蔵流路
158 吸着剤材料
160 加温流路
162 凝縮器流路
164 ファン
166 水蒸気
【国際調査報告】