(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(54)【発明の名称】コーティングされたフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 7/04 20200101AFI20240215BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240215BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240215BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240215BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240215BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240215BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240215BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
C08J7/04 B CES
B32B27/32 Z
B32B7/023
B32B7/027
B32B27/26
B32B27/30 A
B32B27/40
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544295
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2021062634
(87)【国際公開番号】W WO2022164516
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】グオ、インゾン
(72)【発明者】
【氏名】フー、ジェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ジエ
【テーマコード(参考)】
3E086
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA15
3E086BB51
4F006AA12
4F006AB24
4F006AB37
4F006AB65
4F006AB69
4F006BA02
4F006BA13
4F006BA15
4F006CA07
4F100AK05A
4F100AK25B
4F100AK51B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02B
4F100CC01B
4F100EH46B
4F100GB15
4F100JJ03B
4F100JK09B
4F100JL16A
4F100JM01B
4F100JN21B
4F100YY00A
(57)【要約】
リサイクル特性を有する光沢コーティングされたフィルムであって、(a)リサイクル可能なポリオレフィンの少なくとも1つのフィルム層と、(b)少なくとも1つのコーティング層と、の組み合わせを備え、少なくとも1つのコーティング層は、水性コーティング組成物及び水分散性ポリイソシアネートを含み、コーティング層は、リサイクル特性を有し、少なくとも1つのコーティング層は、リサイクル可能なポリオレフィンの少なくとも1つのフィルム層の片側の面の少なくとも一部に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装物品のためのリサイクル特性を有する光沢コーティングされたフィルムであって、
(a)リサイクル可能なポリオレフィンの少なくとも1つのフィルム層と、
(b)前記リサイクル可能なポリオレフィンの前記少なくとも1つのフィルム層の1つの面の一部に配置された少なくとも1つのコーティング層と、の組み合わせを備え、
前記少なくとも1つのコーティング層は、水性コーティング組成物を含み、
前記コーティング層は、(1)130℃以上の耐熱シール性、
(2)1.81キログラムの荷重下で50回以上の摩擦サイクルの耐摩耗性、
(3)90光沢単位以上の60°の光沢特性、及び(4)前記コーティング層を有しないフィルムと比較して、性能の変化が50パーセント未満であるリサイクル特性を有する、フィルム。
【請求項2】
前記耐熱シール性が、130℃~220℃であり、
前記耐摩耗性が、50回の摩擦サイクル~2000回の摩擦サイクルであり、
前記60°の光沢特性が、90光沢単位~130光沢単位であり、前記リサイクル特性が、リサイクルされた材料を全く使用せずに同じ方法で再処理された対照未加工フィルムと比較して、0.01パーセント~50パーセント未満の性能の変化である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記リサイクル可能なポリオレフィンの少なくとも1つのフィルム層が、ポリエチレンである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのコーティング層が、ヒドロキシル官能化エマルションと、無機顔料材料を含まない添加剤とを用いて配合された水性アクリルコーティングであり、前記水性アクリルコーティングが、水分散性脂肪族ポリイソシアネートを用いて硬化されている、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
請求項1に記載の光沢コーティングされたフィルムから作製された包装物品。
【請求項6】
請求項5に記載の光沢コーティングされたフィルムから作製されたリサイクル物品。
【請求項7】
リサイクル特性を有する光沢コーティングされたフィルムを製造するための方法であって、
(I)
(a)リサイクル可能なポリオレフィンフィルム基材と、
(b)水性コーティング組成物と、を提供する工程と、
(II)工程(I)の前記水性コーティング組成物を前記ポリオレフィン基材の面の少なくとも一部に適用して、水性コーティング組成物コーティング層を形成する工程と、
(III)前記水性コーティング組成物を硬化して、工程(II)の前記ポリオレフィン基材の1つの面の少なくとも一部に配置された硬化コーティング層を形成して、コーティングされたフィルムを形成する工程と、を含み、
前記コーティング層は、(1)130℃以上の耐熱シール性、
(2)1.81キログラムの荷重下で50回以上の摩擦サイクルの耐摩耗性、
(3)90光沢単位以上の60°の光沢特性、及び(4)前記コーティング層を有しないポリオレフィンフィルムと比較して、性能の変化が50パーセント未満であるリサイクル特性を有する、方法。
【請求項8】
リサイクルフィルム物品を製造するための方法であって、
(i)請求項4に記載の包装物品を提供する工程と、
(ii)工程(A)からの前記包装物品を所定のサイズの複数の断片に断片化する工程と、
(iii)工程(B)からの前記複数の断片をペレット化して、所定のサイズの複数のペレットを形成する工程と、
(iv)工程(C)からの前記ペレットを加工して、リサイクルフィルム物品を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法によって製造されたリサイクルフィルム物品。
【請求項10】
水性コーティング組成物であって、
(A)少なくとも1つのヒドロキシル官能化エマルションポリマーと、
(B)少なくとも1つの架橋剤と、
(C)水と、
(D)少なくとも1つのウレタン系増粘剤と、
(E)少なくとも1つのスリップ剤と、
(F)少なくとも合体剤と、を含み、
前記水性コーティング組成物は、ポリオレフィンフィルム基材上にコーティング層を提供し、
前記コーティング層は、(1)130℃以上の耐熱シール性、
(2)1.81キログラムの荷重下で50回以上の摩擦サイクルの耐摩耗性、
(3)90光沢単位以上の60°の光沢特性、及び(4)前記コーティング層を有しないフィルムと比較して、性能の変化が50パーセント未満であるリサイクル特性を有する、水性コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされたフィルムに関し、より具体的には、本発明は、(a)ポリオレフィンポリマー層と(b)有益なリサイクル特性を有する水性コーティング層との組み合わせを含む、コーティングされたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの生産能力及び世界的な消費量が連続的に増加するにつれて、プラスチック廃棄物によって引き起こされる生態系への累積的で取り返しのつかない損害は、広く一般に知られており、関心が高まっている。軟包装業界は、主にプラスチック物品によって占められている主要な分野の1つである。したがって、フィルムメーカー、包装コンバーター、及びブランド所有者は全て、プラスチック汚染を低減する、又はより理想的には排除するための道を早急に模索している。プラスチック汚染問題を有意に最小化又は排除する持続可能な解決策を提供するためのアプローチの中には、新規のリサイクル可能なプラスチック包装材料を開発することがある。包装製品のコンバーター及び製造業者は、様々な製品を包装するための100パーセント(%)リサイクル可能な又は堆肥化可能な包装物品を目標とする計画を既に開始している。
【0003】
従来の軟包装設計は、典型的には、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、二軸延伸ポリプロピレン(bi-axially oriented polypropylene、BOPP)、金属化PET、金属化延伸ポリプロピレン(oriented polypropylene、OPP)、アルミニウム箔、ナイロン/ポリイミドなどの異なる材料から構成される様々な機能層を積層することに基づく。印刷可能層又はバリア層を提供する上記の機能層は、一般に、接着層を介して、低密度ポリエチレン(low density polyethylene、LDPE)又はシール可能OPPなどのシール可能層と積層される。互いに積層された異なる材料のために、作製された軟包装材料はリサイクル不可能となり、様々な異なるフィルム(及び層)を分離し、各材料を個々にリサイクルするための経済的に実用的かつ技術的に効率的なプロセスは、まだ発見されていない。
【0004】
例えば、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)、二軸延伸ポリエチレン(bi-axially oriented polyethylene、BOPE)及びLDPE、BOPP及びLDPE、BOPE及びBOPPなど、異なるポリオレフィンフィルム層をアクリル系又はポリウレタン(polyurethane、PU)系のいずれかである従来の接着剤を使用して一緒に積層することは、上記の得られた積層フィルムからのプラスチック包装材料にリサイクル特性を提供するための大きな課題である。上記フィルムを積層するのに使用される従来の積層接着剤は、主鎖化学においてポリオレフィンと非常に異なっており、通常高度に架橋されているので、この従来の包装設計を容易にリサイクルできる状態にする実現可能性は非常に限られている。包装材料の機械的リサイクル性を達成するために、単一タイプの材料から包装フィルムを作製することが好ましく、期待されている。しかしながら、材料は、パウチなどの包装物品を作製するためにヒートシール可能でなければならず、一般に、シール可能なポリオレフィンフィルムは、HDPEから作製されたものであっても、耐熱シール性が低くなり、そのため、包装材料を作製するために単一タイプの材料フィルムを直接使用することはほとんど不可能である。
【0005】
従来、ヒートシール可能なポリオレフィンフィルムを作製するために使用される1つの方法は、コーティングされたフィルムがシール条件下で耐熱性であるように、有機溶媒中の芳香族ポリイソシアネートと組み合わせたポリオール成分から作製される溶剤系のPU光沢コーティングでポリオレフィンフィルムをコーティングすることである。例えば、国際公開第2020005927(A1)号、同第2019240921(A1)号、及び同第2016196168(A1)号は、コーティングされたフィルム及びそのようなフィルムから形成された物品を開示しており、コーティングされたフィルムは、(a)エチレン系ポリマーフィルムと(b)PUコーティングとを備え、コーティングされたフィルムは、シール条件下で耐熱性である。しかしながら、溶剤系コーティングはリサイクル性に限界がある。
【0006】
従来、ヒートシール可能なポリオレフィンフィルムを作製するために使用される別の方法は、ポリオレフィンフィルムを水性コーティングでコーティングすることである。例えば、米国特許第5,188,867(A)号は、アクリルコポリマー中に分散された固体材料と組み合わせた水性アクリルコポリマーでコーティングされた熱可塑性フィルムを開示している。上記特許は、ポリオレフィンフィルムに適用される、アクリルエマルション、無機ブロッキング剤、及びワックススリップ剤を含むアクリルコーティングを提供している。別の例において、カナダ特許第2381315(C)号は、フィルム形成コーティングポリマー、添加剤、及び顔料を含む水系の水性コーティングを使用して、印刷された表面フィルム上に高光沢コーティングを生成する方法を開示している。上記の既知の方法は、コーティングされたヒートシール可能なポリオレフィンフィルムを提供するが、既知の方法は、無機顔料粒子などの固体材料を含有する添加剤を有するコーティング配合物を使用し、したがって、リサイクル特性を有するコーティングされたポリオレフィンフィルムを提供しない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の1つの目的は、包装用途に有用なリサイクル可能な光沢コーティングされたポリオレフィンフィルムを提供することであり、コーティングされたフィルムは、耐熱シール性及び耐摩耗性を有し、ポリオレフィンフィルムの一方の側は、無機顔料粒子を含有せずにヒドロキシル官能化エマルションと添加剤とを用いて配合された水性(waterborne、WB)アクリルコーティング組成物から作製されたコーティング層を有する。
【0008】
本発明の別の目的は、ポリオレフィンのみの材料から構成することができ、機械的にリサイクル可能な包装材料を得るための包装材料などの物品を作製するために使用することができるヒートシール可能なコーティングされたポリオレフィンフィルムを提供することである。ヒートシール可能でリサイクル可能なポリオレフィンフィルムの使用は、コンバーター及び製造業者がプラスチック汚染問題を軽減するのを助ける大きなステップである。
【0009】
本発明によれば、フィルムの一方の側にヒートシール性を有し、同時に、新規の耐ヒートシール性コーティング層を介してフィルムの他方の側に耐シール性(すなわち、耐熱シール性)を有する、ヒートシール可能及びリサイクル可能なポリオレフィンフィルムが作製される。一実施形態では、耐ヒートシール性コーティング層は、水分散性ポリイソシアネートで架橋された新規配合WBアクリルコーティングを含む。好ましい実施形態では、WBアクリルコーティングは、ヒドロキシル官能化アクリルエマルションと添加剤とから配合され、WBコーティングは無機顔料粒子を含有しない。
【0010】
耐熱シール性コーティング層は、有利なことに、高光沢(すなわち、強化されたHDPE透明性及びパッケージ色忠実度)特性、摂氏205度(℃)超での耐シール性、より低い摩擦係数(coefficient of friction、COF)特性、及びポリオレフィンフィルムの耐摩耗性特性の著しい増加をポリオレフィンフィルムに提供する。本発明のコーティングを有するコーティングされたポリオレフィンフィルムを使用することにより、包装用途のための全体的にポリオレフィンのみの包装材料を構成することが可能になり、包装材料の有益な機械的リサイクル性が達成される。フィルムが有利なリサイクル可能な特性を有することに加えて、フィルムの他の有益な特性としては、長いポットライフ及び高い耐摩耗性が挙げられる。
【0011】
一実施形態によれば、本発明は、耐熱シール性であり、リサイクル可能なコーティングされたポリオレフィンフィルムに関する。コーティングされたフィルムは、(a)リサイクル可能なポリオレフィンポリマー層と、(b)リサイクル特性を有するWBアクリル系高光沢コーティング層との組み合わせを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記のコーティングされたフィルムを製造するための方法を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は、ペレット、単層フィルム、多層フィルム、単層積層体、多層積層体、包装材料、成形製品などの上記のコーティングされたフィルムから作製された第1の物品を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記の第1の物品のうちのいずれか1つに由来するリサイクルされた材料から作製された後続の第2の物品を含む。
【0015】
有利なことに、上記WBアクリル系光沢コーティングフィルムを組み込んで作製された第1の物品は、包装産業のための現在のリサイクル特性ガイドラインに従ってリサイクルプロセスに供することができる。例えば、アクリル系システムである本発明のWBアクリル系コーティング組成物を、全ポリエチレン高密度ポリエチレンフィルム又は全ポリプロピレンフィルムなどのポリマーフィルム構造と組み合わせて利用することにより、第1の物品と実質的に同じである特性及び性能を有する新しい第2の物品を作製するように再加工することができるフィルム構造が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
WBアクリル系コーティングを有するポリオレフィンフィルム物品に関して、本明細書における「リサイクル可能」及び「リサイクル性」は、機械的リサイクル可能又は機械的リサイクル性を意味し、WBアクリル系コーティングを有するフィルム物品が、所望の性能及び所望の特性を有する別の後続のリサイクル物品を作製するために機械的に再加工可能であることを意味する。
【0017】
ポリオレフィンフィルム物品に関して、本明細書における「ヒートシール可能」及び「ヒートシール性」は、フィルムの一方の側がコーティング層でコーティングされ、フィルムの他方の側がコーティングされていない2つの側を有し、フィルムの非コーティング側はヒートシール可能であり、フィルムのコーティング側はヒートシール可能ではないフィルムを意味する。
【0018】
1つの幅広い実施形態では、本発明は、店頭でリサイクルすることができる包装材料を製造するためのリサイクル可能なコーティングされたフィルム構造を含む。リサイクル可能なコーティングされたフィルムは、コーティング層でコーティングされた少なくとも1つのヒートシール可能でリサイクル可能なポリオレフィンフィルム層基材の組み合わせを含む。コーティング層は、ポリオレフィンフィルム層の1つの面の少なくとも一部に配置される。
【0019】
本発明の1つ以上の実施形態によれば、ヒートシール可能でリサイクル可能なコーティングされたフィルム構造の成分(a)であるポリオレフィンフィルム層は、例えば、エチレン系ポリマーを含むポリオレフィンフィルムを含み、ヒートシール可能でリサイクル可能なコーティングされたフィルム構造の成分(b)であるコーティング層は、例えば、リサイクル特性を有するリサイクル可能なWBアクリル系高光沢コーティング層を含み、リサイクル可能なWBコーティング層は、ポリオレフィン層と相溶性である。一般に、リサイクル可能なポリマーフィルム層は、外側(又は外部若しくは上部)面及び内側(又は内部若しくは底部)面を有し、コーティング層は、外側(又は外部若しくは上部)面及び内側(又は内部若しくは底部)面を有する。コーティング層の内部面の少なくとも一部は、ポリオレフィンフィルム層の外部面の少なくとも一部と接触している。好ましい実施形態では、コーティング層の外側面は、コーティングされたフィルム構造全体(すなわち、ポリオレフィン層+コーティング層)の外側面を形成する。例えば、一般的な実施形態では、本発明のコーティングされたフィルムは、(a)ポリエチレン(PE)フィルムなどの少なくとも1つのポリオレフィンフィルム層と、(b)ポリオレフィンフィルムに結合されたWBアクリル系コーティング層とを含む。所望であれば、1つ以上の他の任意選択のフィルム層基材を上記フィルム構造に加えて、多層フィルム構造を製造することができる。
【0020】
1つ以上の実施形態では、本発明のフィルム構造を作製するために使用される成分(a)であるポリオレフィンフィルムウェブ又は層は、1つ以上のポリオレフィン又はオレフィンポリマーから作製される単一層(単層)を含んでよく、又は、フィルム構造は、1つ以上のポリオレフィン層から作製された多層構造を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「オレフィン系ポリマー」、「オレフィンポリマー」、及び「ポリオレフィン」という用語は、重合形態で(ポリマーの重量に基づいて)過半量のオレフィンモノマー、例えば、エチレン又はプロピレンを含み、かつ任意に1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。「ポリマー」という用語は、同一又は異なる種類に限らず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために通常は用いられる「ホモポリマー」という用語、並びに2つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指す「コポリマー」を包含する。
【0021】
他の実施形態では、本発明のポリオレフィンフィルムは、2層以上の層を備える多層フィルムであり得る。本明細書に記載されるように、「多層フィルム」は、2層以上の層を有する任意のフィルムを意味する。例えば、多層フィルムは、2、3、4、5、又はそれ以上の層を有し得る。多層フィルムは、フィルムの記載を支援するために文字で示された層を有するものとして記載され得る。例えば、コア層B、並びに2つの外部層A及びCを有する3層フィルムは、A/B/Cとして示され得る。同様に、2つのコア層B及びC、並びに2つの外部層A及びDを有する構造体は、A/B/C/Dとして示されることになる。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンフィルムは、3~11又は3~7などの3~35の奇数の層を有する共押出フィルムであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、ポリオレフィンフィルム層は、3層のポリエチレンから構成される3層多層フィルムであってもよい。
【0022】
1つ以上の実施形態では、ポリオレフィン層は、エチレン系ポリマーを含み得る。本明細書に記載されるように、「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」は、(>)50モル%超のエチレンモノマー由来単位を含むポリマーを意味するものとする。これには、エチレン系ホモポリマー又はコポリマー(単位が2つ以上のコモノマーに由来することを意味する)が含まれる。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態としては、LDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)、極低密度ポリエチレン(ultra low density polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(very low density polyethylene、VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒によるLLDPE、中密度ポリエチレン(medium density polyethylene、MDPE)、及びHDPEが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ポリオレフィン層は、HDPE、LDPE、LLDPE、MDO PE、BOPE、及びこれらの混合物などの1つ以上のポリオレフィン層を含むことができる。
【0023】
1つの好ましい実施形態では、ポリオレフィンフィルム層は、第2の層に接着される、機械方向延伸プロセス又は二軸延伸プロセスのいずれかを使用して作製された延伸単層又は多層PEフィルムを含むことができる。
【0024】
別の好ましい実施形態では、ポリオレフィンフィルム層は、HDPE、LLDPE、及びLDPEの1つ以上の層を含む多層フィルムであり得る。
【0025】
更に別の好ましい実施形態では、ポリオレフィンフィルム層は、ポリプロピレン(polypropylene、PP)フィルム又はBOPPフィルム層であり得る。
【0026】
更に別の好ましい実施形態では、ポリオレフィンフィルム層は、ポリエチレンとプロピレンとのコポリマーのフィルム層であり得る。
【0027】
本発明のヒートシール可能でリサイクル可能なフィルムを形成するために使用される第1のポリオレフィンフィルム層の厚さは、例えば、一実施形態では、12ミクロン(μm)~500μm、別の実施形態では、20μm~250μm、及び更に別の実施形態では、25μm~100μmであり得る。
【0028】
更に、本明細書で記載されるように、「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」又は「高分岐ポリエチレン」と称される場合もあり、ポリマーが、過酸化物などのフリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100メガパスカル[MPa])超の圧力で、オートクレーブ又は管型反応器内で部分的又は完全に単独重合又は共重合されることを意味すると定義される(例えば、米国特許第4,599,392号を参照)。LDPE樹脂は典型的には、0.916グラム/立法センチメートル(g/cm3)~0.940g/cm3の範囲内の密度を有する。
【0029】
本明細書に記載されるように、「LLDPE」という用語には、チーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製された樹脂、並びにビス-メタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)、ホスフィンイミン、及び幾何拘束型触媒が含まれるが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂;並びにビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも称される)が含まれるが、これらに限定されないポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂が含まれ得る。LLDPEは、直鎖状の、実質的に直鎖状の、又は不均一なエチレン系コポリマー又はホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、例えば、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、及び同第5,733,155号に更に定義されている、実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号に記載されているような均一に分岐したエチレンポリマー、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されたものなどの不均一分岐状エチレンポリマー、及びこれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は米国特許第5,854,045号に開示されているものなど)を含む。LLDPE樹脂は、当該技術分野において既知の任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、若しくはスラリー重合、又はこれらの任意の組み合わせを介して作製され得る。LLDPE樹脂は、当該技術分野において既知の任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、若しくはスラリー重合、又はこれらの任意の組み合わせを介して作製され得る。
【0030】
更に、本明細書に記載されるように、「HDPE」という用語は、一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又は更にはメタロセン触媒を用いて調製される、約0.940g/cm3以上の密度を有するポリエチレンを指す。1つ以上の実施形態では、ポリオレフィンフィルム層は、エチレン系ポリマーを含む外層を含む多層フィルムであり得る。
【0031】
そのようなエチレン系ポリマーの例としては、Dow Incから市販されているものを挙げることができ、限定されないが、例えば、ELITE(商標)5960G、ELITE(商標)5390、DOW(商標)DGDP-6097、DOW(商標)DMDA-8905NT、DOW(商標)DGDC-2100NT、及びDow Inc.又はExxon Mobilなどの他の供給業者から市販されている類似の公知のポリマーが挙げられる。
【0032】
1つ以上の実施形態では、ポリオレフィンフィルム層は、(≦)1ミリメートル(mm)以下、例えば、≦900μm、≦800μm、≦700μm、≦600μm、≦500μm、≦400μm、≦300μm、又は更には≦200μmの厚さを有し得る。ポリオレフィンフィルム層は、(≧)1μm、≧5μm、≧10μm、≧20μm、≧30μm、≧40μm、又は更には≧50μm以上の厚さを有し得る。当業者により理解されるように、多層フィルムでは、異なる層の厚さは、同じであっても異なっていてもよく、層の厚さは、本明細書の開示に基づいて当業者に公知の技術によって選択されてもよい。
【0033】
更に他の実施形態では、コーティングされたポリオレフィンフィルムのポリオレフィンフィルム層は、リサイクル可能な積層用接着剤で一緒に積層された様々な異なるポリオレフィンフィルムの積層を含んでもよい。
【0034】
ポリオレフィン層をコーティングするために使用される成分(b)であるフィルム構造のコーティング層は、リサイクル特性を有するコーティング組成物から有利に形成される。リサイクル可能なコーティングを含有するフィルム構造から製造された物品、例えば包装物品では、リサイクル可能なフィルム構造から作製される包装物品に対して許容可能なリサイクル特性が付与される。
【0035】
一実施形態では、本発明において有用なWBコーティング組成物としては、例えば、水分散性ポリイソシアネートで架橋された新規配合WBアクリルコーティングが挙げられる。好ましい実施形態では、WBアクリルコーティングは、ヒドロキシル官能化アクリルエマルションと無機顔料粒子以外の添加剤とから配合される。いくつかの好ましい実施形態では、添加剤は、例えば、合体剤、レオロジー調整剤、湿潤剤、分散剤、スリップ剤、及びこれらの混合物を含むことができる。1つの好ましい実施形態では、コーティング組成物は、例えば、アクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、及びこれらの混合物を含むことができる。
【0036】
一実施形態では、水分散性ポリイソシアネート架橋剤としては、水分散性脂肪族ポリイソシアネート、例えば、Dow Inc.から市販されているMOR-FREE CR 9-101を挙げることができる。
【0037】
本発明のコーティング組成物は、新鮮な農産物、冷凍農産物、肉、液体食品、乾燥食品、及び一般的なスナックを包装するためなどの包装製品を製造するために後で使用されるフィルムを作製するのに有用である。
【0038】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、長いポットライフ特性を有利に有する。例えば、ポットライフは、1つの一般的な実施形態では3時間(hr)~12時間、別の実施形態では4時間~12時間、別の実施形態では5時間~10時間、更に別の実施形態では6時間~8時間の範囲であり得る。好ましい実施形態では、コーティング組成物のポットライフは6時間を超える。コーティング組成物のポットライフが(<)3時間未満であると、組成物の適用処理中にランニング能力の問題が生じる。ポットライフはコーティング能力によって測定され、これは所与の時間において許容可能なコーティング外観を依然として達成することを意味する。
【0039】
本発明において有用なコーティング組成物は、他の既知のコーティング組成物と比較して、例えば、高い光沢、優れた耐摩耗性、ヒートシール耐性、及び低いCOFを含むいくつかの他の有益な特性を有する。
【0040】
1つ以上の実施形態によれば、コーティング層を含むコーティングされたフィルムのコーティング層面の外側面の少なくとも一部は、所望の光学的光沢仕上げを有する。本明細書に記載されるように、これらの光学特性は、コーティングされたフィルムの製造中に現在開示されている処理工程により達成される。例えば、1つ以上の実施形態では、コーティング層を備えるコーティングされたフィルムの面の少なくとも一部は、60°(60度)で60光沢単位~130光沢単位の光沢を有する。本明細書に記載されるように、光沢は、ASTM D2457規格を利用することにより測定される。追加の実施形態では、60°での光沢単位は、40光沢単位~50光沢単位、50光沢単位~60光沢単位、60光沢単位~70光沢単位、70光沢単位~80光沢単位、80光沢単位~90光沢単位、90光沢単位~100光沢単位、100光沢単位~130光沢単位、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。例えば、60°での光沢は、40光沢単位~130光沢単位の範囲内であり得る。他の実施形態では、60°での光沢は、少なくとも50光沢単位、少なくとも60光沢単位、少なくとも70光沢単位、少なくとも80光沢単位、又は少なくとも90光沢単位;最大≦130光沢単位、≦120光沢単位、≦110光沢単位、≦100光沢単位、又は≦90光沢単位であり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、コーティング層は、有利には、高い耐摩耗性を有する。例えば、耐摩耗性は、サザランド摩擦抵抗試験による1つの一般的な実施形態では、50回以上の摩擦サイクル回数;別の実施形態では、50回の摩擦サイクル回数~2,000回の摩擦サイクル回数;更に別の実施形態では、50回の摩擦サイクル回数~1,000回の摩擦サイクル回数の範囲であり得る。50回の摩擦サイクルより低い耐摩耗性は、包装加工及び輸送中に包装擦り傷及び損傷外観を引き起こす可能性がある。したがって、50回以上の摩擦サイクル回数のより多い摩擦サイクル回数が好ましい。
【0042】
いくつかの実施形態では、コーティング層は、有利には、コーティング層の一方の側に高い耐熱シール性を有して、非コーティング側がヒートシール可能な条件に供されるフィルム構造を提供する。例えば、コーティング層の耐熱シール性は、1つの一般的な実施形態では≧130℃;別の実施形態では135℃~220℃;更に別の実施形態では140℃~210℃、更に別の実施形態では150℃~205℃の温度範囲内であり得る。130℃より低い耐熱シール性は、非効率的なヒートシールをもたらし、220℃より高い耐熱シール性は、コーティング側のヒートシール耐性の破損をもたらし得る。したがって、パウチング及び包装加工ラインに関する問題が生じる。
【0043】
コーティングされたフィルム構造のポリオレフィン層上のコーティング層のコーティング重量は、1つの一般的な実施形態では、1平方メートルあたり1.1グラム(gsm又はg/m2)から最大4.0gsm;別の実施形態では、1.6gsm~3.2gsmの範囲であり得る。1.1gsm未満のコーティング重量を有するコーティング層は、より低い性能をもたらし、4.0gsmを超えるコーティング重量を有するコーティング層は、外観、より高いコスト、及び乾燥効率などに関する潜在的な問題を引き起こす可能性がある。
【0044】
コーティング層がポリオレフィン層に適用され、硬化されると、ポリオレフィン層の一方の側の面上にコーティング層が生成され、コーティング側及び非コーティング側を有するコーティングされたフィルムが得られる。いくつかの実施形態では、コーティングされたフィルムの非コーティング側は、コーティングされたフィルムをヒートシール条件下で包装物品などの物品に形成することができるように、十分に高いヒートシール特性を有する。例えば、コーティングされたフィルムのヒートシール性は、1つの一般的な実施形態では、130℃~220℃;別の実施形態では、140℃~210℃、更に別の実施形態では、150℃~205℃の温度範囲であり得る。130℃未満のヒートシール性を有するコーティングされたフィルムは、非効率的かつ不満足にヒートシールされるパッケージなどのヒートシールされた物品をもたらし、次にパッケージの漏れが生じる。220℃より高いヒートシール特性を有するコーティングされたフィルムは、例えば、コーティング側での包装外観及びヒートシール耐性不良に関連する問題を引き起こす可能性があり、これはパウチング及び包装加工ラインでの問題につながる可能性がある。
【0045】
いくつかの実施形態では、コーティングされたフィルムはまた、例えば、ポリオレフィンフィルムの改善された色保持を含む他の有益な特性を有する。
【0046】
本発明のフィルム構造は、上記成分層(a)及び(b)に加えて、他の任意選択の基材層、成分(c)を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、ポリオレフィンフィルム構造は、ポリオレフィン層の上面上に印刷層を含んでもよく、印刷層はコーティング層と接触してもよく、したがって、印刷層がポリオレフィン層とコーティング層との間に配置される多層フィルム構造を形成する。そのような実施形態では、コーティング組成物は、印刷層上に直接適用され得る。印刷層は、製品の詳細及び他の包装情報を様々な色で示すためのインク層であり得る。印刷層は、1つの一般的な実施形態では≦15μm、別の実施形態では≦10μm、更に別の実施形態では≦5μm、更に別の実施形態では≦2.5μmであってもよい。
【0047】
別の実施形態では、印刷層は、コーティングされたポリオレフィンフィルムの別の側にあってもよく、別のヒートシール可能なポリオレフィンフィルム又は別の多層ポリオレフィンフィルムと積層接着剤で更に積層される。
【0048】
所望であれば、シーラント層、バリア層、タイ層など、又はこれらの組み合わせなどの特定の機能を有する任意の層を、共押出又は積層接着剤による積層のいずれかによって、コーティングされたフィルム構造に追加することができる。
【0049】
1つ以上の実施形態では、任意の層が使用される場合、任意の層の厚さは、例えば、一実施形態では1μm~100μm、別の実施形態では2μm~70μm、更に別の実施形態では3μm~50μmであってよい。
【0050】
1つの幅広い実施形態では、本発明のヒートシール可能でリサイクル可能なコーティングされたフィルムは、上記のコーティング組成物をポリオレフィンフィルム基材の面上に適用して、ポリオレフィンフィルム基材の面上にコーティング層を形成することによって製造される。1つ以上の実施形態によれば、本発明のコーティングされたフィルムは、ポリオレフィンフィルム層の外側面の少なくとも一部に未硬化コーティング組成物を適用する工程と、未硬化コーティング組成物を硬化させてポリオレフィン層上にコーティング層を形成し、本発明のコーティングされたフィルム構造を得る工程とを一般的に含む方法によって作製され得る。未硬化コーティング組成物の適用は、ポリオレフィン層の外側面がコーティング層の内側面と接触するようなものであってもよい。
【0051】
例えば、1つの一般的な実施形態では、ヒートシール可能でリサイクル可能なフィルムを製造する方法は、(I)(a)ポリオレフィンフィルム基材と、(b)コーティング組成物とを提供する工程と、(II)コーティング組成物をポリオレフィン基材の面の少なくとも一部に適用して、コーティング層を形成する工程と、(III)リサイクル可能なコーティング組成物を硬化して、工程(II)のポリオレフィン基材の上面上に硬化コーティング層を形成して、コーティングされたフィルムを形成する工程と、を含む。本明細書に記載されるように、ポリオレフィン層基材にコーティング組成物を「適用する」ことは、コーティング組成物又は配合物をフィルム基材に適用する当技術分野で既知の任意の従来の手段によって、コーティング組成物をポリオレフィン層と接触させることを含み得る。例えば、コーティング組成物は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、マイヤーロッドドローダウン(Meyer rod drawdown)などを含む従来のフィルム形成装置及びプロセスを使用して適用することができる。いくつかの実施形態では、上述のコーティング適用プロセスは、一実施形態では、積層プロセス工程が使用される前に、又は別の実施形態では、積層プロセスが使用された後に行われてよい。
【0052】
1つ以上の実施形態では、未硬化コーティング組成物の適用は、従来の積層機での積層プロセスによって実施され得る。例えば、1つ以上の実施形態によれば、未硬化コーティング組成物は、ポリオレフィンフィルム層が機械方向に平行移動するときに、ポリオレフィンフィルム層に適用され得る。すなわち、ポリオレフィンフィルム層は、未硬化コーティング組成物が適用されている間、機械方向に搬送され得る。本明細書に記載されるように、機械方向は、フィルムが積層機などの加工機械の上へ又は中へ流れる方向を指す。未硬化コーティング組成物は、滑面ロール又はグラビアロールのいずれかを用いてポリオレフィンフィルム層上に堆積され得、これは、少なくとも部分的に、未硬化コーティング組成物の粘度により選択され得る。ポリオレフィンフィルム層は、ロール形態で始まり、巻き出されて機械方向に搬送されてもよく、そこで未硬化コーティング組成物がポリオレフィン層に適用され、次にポリオレフィン層がロールに再び巻き取られる。
【0053】
本明細書に開示される実施形態によれば、未硬化コーティング組成物の適用に続いて、未硬化コーティング組成物を乾燥及び硬化させて、ポリオレフィン層の表面上に配置された硬化コーティング組成物層を含むコーティング層を形成することができる。硬化は「受動的」であり得、これは、硬化が、未硬化コーティング組成物を周囲条件で一定時間静止させることにより起こることを意味する。あるいは、硬化は、コーティング組成物で硬化を起こさせることができる高温、赤外(IR)放射線、又は他のメカニズムへの曝露により促進され得る。いくつかの実施形態では、硬化は、ポリオレフィンフィルム層及び未硬化コーティング組成物が積層後にロール状にある間に起こり得る。一定期間後、未硬化コーティング組成物は固化し、コーティング層を有するコーティングされたフィルムを含むフィルムのロールを形成する。
【0054】
本発明のコーティングされたフィルムは、例えば、食品又は非食品のいずれかを包装するための包装用途及びラミネート用途、リサイクル可能な包装を容易に利用する産業において使用することができる。例えば、本発明のコーティングされたフィルムは、リサイクルする前に、様々な包装材料及び製品を製造するための包装用途において使用することができる。例えば、コーティングされたフィルムは、食用穀物/豆類のバルク包装、種子の包装、レンズマメ及び穀類の包装、肥料の包装、油料種子の包装、砂糖の包装、塩の包装、医薬品の包装、他の食料品の包装、及びバスソルト、洗剤ポッドなどのパーソナルケア物品に使用することができる。コーティングされたフィルムはまた、赤ちゃん用ウェットティッシュ、女性用衛生製品、シリアルバー、プロテインバー、チーズ及び菓子製品の包装材として使用され得る。リサイクル可能なフィルムについての、包装物品に使用される場合の他の有利な機能及び用途は、例えば、厳しい気象条件に対する耐性、高い引張強度、堅牢な落下試験耐性、優れた光学的外観、及び漏出に対する耐性を含む。
【0055】
本発明の利点の1つは、本発明のコーティングされたフィルムから作製された使用済みの未加工物品を、リサイクルプロセスを通して容易に加工することができることである。リサイクル後、先の未加工物品からリサイクルされた材料を使用して、後続のリサイクルされたフィルムを作製することができ、ひいては後続のリサイクルされたフィルムを使用して、リサイクル物品を作製することができる。得られた後続のリサイクルされたフィルムを有利に使用して、先の未加工物品に非常に近い特性及び性能を有する後続のリサイクル物品を製造することができる。例えば、リサイクルされた物品からのリサイクルされた材料で作製された新しい単層のリサイクルされたフィルム構造は、リサイクルされた材料なしで同じように再加工される対照未加工フィルムに対して、50%未満の性能の変化を呈する特性を有することができる。いくつかの実施形態では、新しい単層フィルム構造は、一実施形態では0%~<50%、別の実施形態では0.01%~<40%、更に別の実施形態では0.1%~<30%の範囲の性能の変化を呈する特性を有することができる。リサイクルされたフィルム構造及びリサイクルされたフィルム構造のリサイクル性能は、The Association of Plastic Recyclersのリサイクル性ガイドラインを満たす。
【実施例】
【0056】
以下の本発明の実施例(発明例)及び比較例(比較例)(まとめて「実施例」とする)は、本発明を更に詳細に説明するために本明細書で提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。他に指示がない限り、全ての部及びパーセンテージは重量基準である。
【0057】
以下の実施例で使用する様々な材料を、表Iに記載する。
【0058】
【0059】
実施例1~9並びに比較例A及びB-コーティング組成物
パートA:コーティング配合物を調製するための一般的手順
表IIに記載の発明例1~9のコーティング配合物を以下のように調製する。
【0060】
高速ミキサーを使用して、成分を表IIに記載の配合に示される所与の量で混合する。アクリルエマルションポリマーを最初に混合容器に入れ、続いて脱泡剤を入れる。次いで、室温(RT、約23℃)で混合しながら、他の添加剤を混合容器中の混合物に1つずつ添加する。
【0061】
ウェブコーティングを、コーティング組成物をポリオレフィンフィルム基材上に適用する前に、オーバーヘッドミキサー下で適切な混合比で水分散性脂肪族ポリイソシアネートと混合する。次いで、コーティングされたフィルム基材を90℃の乾燥オーブン中で約2分間(min)乾燥させる。
【0062】
表IIIに記載の比較例A及び比較例Bのコーティング配合物を、製品製造業者の技術データシート(Technical Data Sheet、TDS)に示される推奨に従って調製する。例えば、比較例A又はBのコーティング配合物を、高速ミキサーを用いて、オーバーヘッド混合下で生成物を成す2つの成分を混合することによって調製し、次いで、コーティング組成物を、RTで所与の混合比でポリオレフィン基材上にコーティングし、90℃の乾燥オーブン中で約2分間乾燥させる。
【0063】
比較例Cは、ELITE(商標)5960 PEの非コーティングポリエチレンフィルムである。
【0064】
パートB:コーティングされたフィルム試料を調製するための一般的手順
パートAの手順を使用して調製した湿潤コーティング組成物を、#2ドローダウンバーを備えたK-コーターを用いて、HDPEフィルム(ELITE 5960から作製、厚さ50μm)の面上にコーティングする。コーティングの目標重量は、3.0g/m2~3.5g/m2である。フレキソプルーファ内に120Qアニロックスロールを備えたQDプリンタも使用して、フレキソ印刷プロセスにおける試験のためのコーティングされたフィルム試料を調製し、1.3g/m2~2.0g/m2のコーティング重量を目標とする。
【0065】
湿潤コーティング組成物をHDPEフィルム上に適用した後、湿潤コーティング組成物を90℃で2分間乾燥させ、次いで、コーティングされたフィルム試料を室温で7日間保持した後、コーティングされたフィルム試料をコーティング性能試験に供する。
【0066】
表IIは、発明例1~発明例9のコーティング組成物の配合物の成分及び配合物の特性を記載する。湿潤コーティング組成物試料の粘度及びポットライフを測定する。粘度は、Signatureシリーズ粘度カップ、ザーン#3カップを使用して測定する。
【0067】
表IIIは、比較例A及び比較例Bのコーティング組成物の2つの市販の配合物及び配合物の特性を記載する。湿潤コーティング組成物試料の粘度及びポットライフを測定する。粘度は、Signatureシリーズ粘度カップ、ザーン#2カップを使用して測定する。
【0068】
【表2】
*MOR-FREE(商標)CR-9-101と混合する前に測定した。
【0069】
【表3】
**低粘度のためにSignatureザーン#2カップを使用。
【0070】
比較例C
比較例Cは、50μmの厚さを有するHDPE多層フィルム自体(ELITE(商標)5960)である。
【0071】
実施例10~18並びに比較例D及びE-コーティングされたフィルム
コーティング性能試験
硬化コーティングを、ASTM D2457に基づいて、60°及び20°(20度)の光沢について試験した。光沢は、室温で光沢計を用いて測定した。
【0072】
硬化コーティングを、対面サザランド摩耗について試験した。サザランド摩耗は、ASTM D5265に従って、SUTHERLAND(登録商標)2000RUB試験機及び1.81キログラム(kg)荷重を用いて試験した。
【0073】
硬化コーティングのCOFを、制御室(25℃、湿度50%)においてTesting Machines Inc.製のCOF試験機で測定した。
【0074】
耐熱シール性は、テフロンコーティングされた加熱ジョーを備えたヒートシーラーを使用して、0.276MPaの圧力及び1秒の持続時間で205℃でコーティング側を向かい合わせにヒートシールすることによって評価した。コーティングが互いに粘着せず、フィルムが封止後に著しく収縮しなかった場合、コーティングを「合格」と指定した。コーティングが互いに粘着した場合、及び/又はフィルムが封止後に著しく収縮した場合、コーティングを「不合格」と指定した。表IVは、コーティングされたフィルムのコーティング性能結果を記載する。
【0075】
【表4】
***試験せず。
****コーティングされたフィルム試料は、50μmのHDPE上に122M/分でLabocombiパイロットコーターを使用して調製した。試料を室温で7日間硬化させた後にデータを収集した。コーティング重量=1.5g/m
2
【0076】
【0077】
添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、改変及び変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本発明のいくつかの態様は、本明細書において、好ましい又は特に有利であるとして特定されるが、本発明は、必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。
【0078】
単数形を使用する特許請求の範囲において、複数形の可能性もまた含むことは明らかであろう。例えば、コーティング層への言及は、少なくとも1つのコーティング層への言及も暗黙的に含む。
【0079】
以下の特許請求の範囲のうちの1つ以上は、「ここで(wherein)」という用語を移行句として利用することに留意されたい。本発明を定義する目的で、「ここで」という用語は、構造の一連の特徴の列挙を導入するために使用される制限のない移行句として特許請求の範囲に導入され、より一般的に使用される制限のない「を含む」というプリアンブル用語と同様に解釈されるべきであることに留意されたい。
【国際調査報告】