(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(54)【発明の名称】LSD用量を調節するためのジェノタイピング又はフェノタイピングの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K  31/48        20060101AFI20240215BHJP        
   A61K  45/00        20060101ALI20240215BHJP        
   A61P  25/22        20060101ALN20240215BHJP        
   A61P  25/24        20060101ALN20240215BHJP        
   A61P  25/30        20060101ALN20240215BHJP        
   A61P  25/00        20060101ALN20240215BHJP        
【FI】
A61K31/48 
A61K45/00 
A61P25/22 
A61P25/24 
A61P25/30 
A61P25/00 
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548822
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 IB2022051857
(87)【国際公開番号】W WO2022189907
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522340934
【氏名又は名称】ユニヴェルシテートスピタル  バーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉  良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫  敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口  昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤  和彦
(72)【発明者】
【氏名】リヒティ,マティアス  エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィゼリ,パトリック  ラファエル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZA02
4C084ZA12
4C084ZC39
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZC39
(57)【要約】
  LSDの使用前に患者の遺伝的特徴を評価し、患者の遺伝的特徴に基づいてLSDを患者に投与し、被験者に最大のプラスの主観的急性効果を生み出し、及び/又は不安及びマイナスの効果を低減することにより、患者の治療に際してLSDを投与する方法。患者の代謝及び遺伝子マーカーを決定し(例えば、患者におけるCYP2D6活性を評価する、及び/又は5HTR1A  rs6295及び5HTR2A  rs6313遺伝子型を評価することによって)、代謝活性及び遺伝子プロファイルに基づいてLSDの用量を調節し、上記用量のLSDを患者に投与し、被験者に最大のプラスの主観的急性効果を生み出し、及び/又は不安及びマイナスの効果を低減することにより、LSDの好ましい用量を決定する方法。CYP2D6阻害剤の存在の評価に基づきLSDの用量を決定する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  患者の治療に際してLSDを投与する方法であって、以下:
  LSD、その類似体、その誘導体、及びその塩からなる群から選択される組成物の使用前に、患者の遺伝的特徴を評価するステップ;
  患者の遺伝的特徴に基づいて前記組成物を前記患者に投与するステップ;並びに
  前記患者に最大のプラスの主観的急性効果を生み出し、及び/又は不安及びマイナスの効果を低減するステップ
を含む方法。
【請求項2】
  前記評価ステップが、CYP及びセロトニン受容体の遺伝子変異体を同定することとしてさらに規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
  前記評価ステップが、CYP26Dの多型を同定することとしてさらに規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
  前記投与ステップが、機能性CYP2D6個体における用量と比較して、非機能性CYP2D6を有する患者では50%用量を投与することとしてさらに規定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
  前記評価ステップが、5HTR1A  rs6295及び5HTR2A  rs6313遺伝子型を同定することとしてさらに規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
  LSDの好ましい用量を決定する方法であって、
  患者の代謝及び/又は遺伝子マーカーを決定するステップ;
  前記代謝及び遺伝子活性(薬理遺伝学)に基づいて、LSD、その類似体、その誘導体、及びその塩からなる群から選択される組成物の用量を調節するステップ;
  前記患者に前記用量の組成物を投与するステップ;並びに、
  前記患者に最大のプラスの主観的急性効果を生み出し、及び/又は不安及びマイナスの効果を低減するステップ
を含む方法。
【請求項7】
  前記決定ステップが、患者におけるCYP2D6活性を評価する、及び/又は5HTR1A  rs6295及び5HTR2A  rs6313遺伝子型を評価することとしてさらに規定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
  CYP26D活性が低いか、又は存在しない場合、前記調節ステップが、機能性CYP26Dに対する用量の50%に前記用量を調節することとしてさらに規定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
  前記代謝活性が、酵素的消化に関連する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
  前記薬理学的活性が、受容体に対する活性又はそれらとの結合に関連する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
  CYP2D6阻害剤の存在の評価に基づいて、LSDの用量を決定する方法であって、
  患者においてCYP2D6阻害の可能性がある併用薬を評価するステップ;
  患者におけるCYP2D6活性を評価するステップ;
  LSD、その類似体、その誘導体、及びその塩からなる群から選択される組成物を前記患者に投与するステップ;並びに
  前記患者に最大のプラスの主観的急性効果を生み出し、及び/又は不安及びマイナスの効果を低減するステップ
を含む方法。
【請求項12】
  前記併用薬が、セロトニン再取り込み阻害剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
  前記投与ステップの前に、セロトニン再取り込み阻害剤を用いた治療を停止するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
  前記停止ステップが、前記投与ステップの最大2週間前に実施される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
助成金の情報
  本出願の研究は、スイス国立科学財団(Swiss National Science Foundation)からの助成金(助成金番号320030_170249及び32003B_185111)によって部分的に支援された。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
  本発明は 遺伝子検査、並びに治療に際してヒトに使用されるLSDの用量の調節、及びその効果の予測を行う方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術
  リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)は、不安、うつ病、依存症、人格障害などを含む多くの適応症の心理療法を補助するために使用することができ、さらには、群発頭痛、片頭痛などの他の障害の治療にも使用することができる(Hintzen & Passie, 2010; Liechti, 2017; Nichols, 2016; Passie et al., 2008)。LSDは、セロトニン受容体である5HT2A受容体をターゲティングする。LSDの効果としては、思考、感情、周囲の認識の変化、瞳孔の拡張、血圧の上昇、体温の上昇が挙げられる。
【0004】
  LSD支援治療/心理療法で一般的に使用される用量は、100~200μgである。100μgの用量は、或る代表的な研究(Holze et al., 2019)においてヒトに主観的効果をもたらし、これは(平均±SD)8.5±2.0時間(範囲:5.3~12.8時間)持続した。他の研究では、LSDの効果は、100μg用量の投与後8.2±2.1時間(範囲:5~14時間)、200μg用量の投与後11.6±1.7時間(範囲:7~19.5時間)同様に持続した(Dolder et al., 2017b)。
【0005】
  LSDの急性主観的効果は、ほとんどのヒトにおいてほぼプラスの効果である(Holze et al., 2021b; Schmid et al., 2015)。しかし、使用されるLSDの用量、設定(環境)、並びにLSDを使用する人の性格特性を含むセットに応じて、しかしまた、恐らく人に存在する代謝酵素及びLSDの作用部位(セロトニン受容体)の個別の特性などのその他の要因に応じて、多くのヒトにLSDのマイナスの主観的効果(不安)もある。
【0006】
  急性のマイナスの心理的作用のリスクは、ヒトへのサイケデリック物質の使用の主要な障害である。LSD支援心理療法で発生した場合の不安は、患者と治療医の両方にとって重大な問題となり得る。急性不安は、患者にとって非常に苦痛であることに加えて、うつ病患者の不良の長期転帰に関連している(Roseman et al., 2017)。さらに、サイケデリック支援療法中の不安反応は、追加的管理、セラピストのより大きな関与、長期のセッション、及び急性の心理的及び薬理学的介入を必要とする場合がある。従って、主な安全性の懸念は、身体的な有害作用ではなく、心理的な有害作用に関連するものである(Nichols, 2016; Nichols & Grob, 2018)。いくつかの研究は、よりプラスの経験がサイケデリックのより大きな治療的長期的効果を予測することを示したため、サイケデリックに対する全体的なプラスの急性反応の誘発は重要である(Garcia-Romeu et al., 2014; Griffiths et al., 2016;Ross et al., 2016)。健康な被験者においても、LSDを含むサイケデリックスに対するプラスの急性反応は、ウェルビーイングに対するよりプラスの長期間効果に関連していることが示されている(Griffiths et al., 2008;Schmid & Liechti, 2018)。
【0007】
  中度の予期不安は、薬物の効果の開始時に一般的である(Studerus et al., 2012)。16人の健康なヒトを対象とした試験では、200μgのLSDを投与した後、2人の被験者に顕著な不安が観察された。この不安は、思考制御の喪失、肉体離脱、及び自己の喪失の恐怖に関連しており(Schmid et al., 2015)、サイロシビンについても同様のことが記載されていた(Hasler et al., 2004)。悪い薬物作用(薬物投与から任意の時点で、0~100%のスケールで50%以上)は、200μgのLSDの高用量投与後16人の被験者のうち9人(56%)に、また中度100μg用量のLSD投与後24人の被験者のうち3人(12.5%)で認められた(Dolder et al., 2017a)。同様に、別の研究では、100μgのLSDを投与した後、24人の被験者のうち7人(29%)に一過性の悪い薬物作用が報告された(Holze et al., 2019a)。これらのマイナスの主観的薬物作用は一過性であり、別の又は/及び類似の時点で良好な薬物効果を報告した被験者で発生したが、マイナスの反応が問題である。
【0008】
  マイナスの薬物作用に対処するための1つの解決策は、一般的にサイケデリックの用量を減らすことであるが、これは少なくとも部分的に薬の有効性も低下させるため、用量の減少は一部の患者でのみ必要であり、他の患者では必要ない場合がある。
【0009】
  薬理遺伝学的アプローチは、いくつかの薬に使用されているが、これまでのところ、LSDの用量調節を可能にするLSDの薬理遺伝学に関して利用可能な情報はない。薬理遺伝学がどのように適用されるかに関して、先行技術に指導するものはない。
【0010】
  これとは別に、インビトロ代謝研究は、いくつかのシトクロムP450(CYP)アイソフォーム(例えば、CYP2D6、CYP1A2、CYP2C9)はLSDの代謝に関与していることを示すが、インビボデータが欠落しており、LSDの投与量変更へのそのような研究の適用も欠落している。
【0011】
  LSDのサイケデリック効果は、主に5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)2A受容体(5HTR2A)でのアゴニズムによって媒介される(Holze et al., 2021b; Kraehenmann et al., 2017)。しかし、LSD結合は、5HTR1A、5HTR2B及び5HTR2Cなどの他の5-HT受容体に対する部分アゴニストとしても作用する(Rickli et al., 2016)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
  有害な薬物作用を低減するために、LSDの正確な用量、並びにLSDの個別化された用量が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
  本発明は、LSD使用前に患者の遺伝的特徴を評価し、患者の遺伝的特徴に基づいてLSDを患者に投与し、被験者に最大のプラスの主観的急性効果を生み出し、及び/又は不安及びマイナスの効果を低減することにより、患者の治療に際してLSDを投与する方法を提供する。
【0014】
  本発明は、患者の代謝及び遺伝子マーカーを決定し(例えば、患者におけるCYP2D6活性を評価する、及び/又は5HTR1A  rs6295及び5HTR2A  rs6313遺伝子型を評価することによって)、代謝活性及び遺伝子プロファイルに基づいてLSDの用量を調節し、上記用量のLSDを患者に投与し、被験者に最大のプラスの主観的急性効果を生み出し、及び/又は不安及びマイナスの効果を低減することによって、好ましい用量のLSDを決定する方法を提供する。
【0015】
  本発明はまた、患者においてCYP2D6阻害の可能性がある併用薬を評価し、患者におけるCYP2D6活性を評価し、患者にLSDを投与して、患者に最大のプラスの主観的急性効果を生み出し、及び/又は不安及びマイナスの効果を低減することによって、CYP2D6阻害剤の存在の評価に基づいてLSDの用量を決定する方法を提供する。
【0016】
図面の説明
  本発明の利点は、添付の図面に関連して考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照することによって、よりよく理解されるようなるため、これらの利点は容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
            【
図1】遺伝的に決定された非機能性(赤)又は機能性(青)CYP2D6酵素を有する被験者へのLSD投与後24時間にわたるモデル化されたLSD血漿濃度-時間曲線のグラフである。
 
            【
図2】無限曲線下面積(AUC∞)(zスコア)として表される、LSD血漿曝露に対する参加者の体重(kg)の線形回帰モデルのグラフを示す。
 
            【
図3】LSDの薬物動態に対するCYP2D6の効果の表を示す。
 
            【
図4】主要なLSD代謝物O-H-LSDの薬物動態に対するCYP2D6の影響の表を示す。
 
            【
図5】LSDの主観的及び自律神経的効果に対するCYP2D6の影響の表を示す。
 
            【
図6】LSDによって誘導される情緒の急性変化に対するCYP2D6の影響の表を示す。
 
            【
図7】LSDの効果に対するHTR1B  rs6296遺伝子型の影響の表を示す。
 
            【
図8】LSDの効果に対するHTR1A  rs6295遺伝子型の影響の表を示す。
 
            【
図9】LSDの効果に対するHTR2A  rs6313の効果の表を示す。
 
            
            【
図11】CYP2D6のアレル頻度及び分類の表を示す。
 
            【
図12】CYP2C19遺伝子型のアレル頻度及び活性スコアの表を示す。
 
            【
図13】試験した遺伝子型内の一塩基多型頻度の表を示す。
 
            
            
            【
図16】LSDによって誘導される情緒の変化の表を示す。
 
            【
図17】LSD薬物動態に対するCYP2D6活性スコアの影響の表を示す。
 
            【
図18】LSD薬物動態に対するCYP2C19活性スコアの影響の表を示す。
 
            【
図19】LSDの薬物動態に対するCYP1A2遺伝子型の影響の表を示す。
 
            【
図20】LSDの薬物動態に対するCYP2C19遺伝子型の影響の表を示す。
 
            【
図21】LSDの薬物動態に関するCYP2B6  rs3745274の表を示す。
 
            【
図22】LSDの薬物動態に関するCYP1A2  rs762551遺伝子型の表を示す。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
  本発明は、薬理遺伝学を使用して、投与前に患者(ヒト)へのLSDの用量をより良好に規定する方法を提供する。本明細書の方法は、LSD患者に個別化された治療を提供する。
【0019】
  より具体的には、本発明は、LSDの使用前に患者の遺伝的特徴を評価することによって、患者の治療におけるLSDを用量決定し、患者の遺伝的特徴、療法士を養成するための使用、又は健康な被験者におけるいずれか他の法的に規制された設定に基づく用量でLSDを患者に投与し、被験者に最大のプラスの主観的急性効果を生み出す方法を提供する。また、この方法を使用して、LSDの不安及びマイナスの作用を軽減することもできる。
【0020】
  本発明のさらなる目標は、LSD投与の有効性を最大化すること、又は少なくとも安全性を維持し、有害作用を最小限に抑えながら、多様な患者集団を有効に治療できるようにすることである。
【0021】
  LSDは、本出願全体にわたって言及されるが、その類似体、その誘導体、又はそれらの塩も使用することができることは理解すべきである。本発明は、LSD類似体がLSDに類似したCYP2D6によって部分的に代謝される場合、LSD類似体の用量最適化を可能にする。
【0022】
  患者の遺伝的特徴を評価した後、それらを使用して、LSDに対してより大きな又はより有害な反応を予測する遺伝子プロファイルを有する患者への用量を調節することができる。具体的には、LSDの代謝に関与する酵素の活性の低下又はLSDの薬理学的標的における遺伝子変化を決定し、LSDの用量を調節することができる。好ましくは、LSDは、治療状況、又は健康な被験者を対象とする法的に規制された状況(限定はされないが、臨床試験など)で投与される。
【0023】
  本発明は、ヒトへの制御LSD投与の大量のサンプルからの精神測定、薬物動態、及び遺伝子データを使用して、LSDの急性効果に関してLSDの主要な代謝酵素と標的受容体の両方の薬理遺伝学を決定し、それにより、遺伝的特徴に基づいてLSD用量を調節するためのデータ及び具体的な指示を新たに提供する。
【0024】
  また、本明細書で使用される方法に加えて、年齢、性格、治療状況、その人の過去のサイケデリック体験などを含む追加の変数も、LSDの適切な用量を決定するのに有用であり得るが、それらは本発明の一部ではない。
【0025】
  本発明は、臨床試験からのデータを使用して、健康な被験者におけるLSDの薬物動態及び急性効果に対するCYP遺伝子内の遺伝子多型の影響を調べる。上記試験は、仮特許出願後に公開されている(Vizeli et al., 2021)。LSDは、5HTR2A及び1A/B受容体と強力に結合し、そのサイケデリック作用は、5HTR2Aの活性化に依存するため、これらの受容体遺伝子の遺伝子変異によって緩和することができる。従って、本発明は、本発明に必要なデータを導き出すために、4つの無作為化プラセボ対照二重盲検第1相試験からプールされた81人の健康な被験者において、CYPの一般的な遺伝子変異体(CYP2D6、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2B6)及びセロトニン受容体(5HTR1A、5HTR1B、及び5HTR2A)を同定した。
【0026】
  上記試験は、遺伝的に決定されたCYP2D6機能性が、LSDの薬物動態に大きな影響を与えることを示した。機能性CYP2D6アレルのない個体(低活性代謝者)は、機能性CYP2D6アレルのキャリアであった個体と比較して、LSD半減期値が長く、親薬物及び主要代謝物2-オキソ-3-ヒドロキシLSD(O-H-LSD)曲線下面積の血漿濃度が約75%高かった。非機能性CYP2D6代謝者はまた、機能性CYP2D6代謝者と比較して、LSDに応答してより大きな情緒の変化、及びより長い主観的効果持続時間も示した。LSDの薬物動態又は急性効果への影響は、他のCYPでは観察されなかった。
【0027】
  LSDの標的受容体中の変異体も、5D-ASCスケールでのLSDの急性効果を弱く緩和した。具体的には、2つのHTR2A  rs6313  Aアレルのキャリアは、Gアレルキャリアよりも低い情緒の変化(合計5D-ASCスコア及び自我消滅の不安)を示した。HTR1A  rs6295  Gアレルのホモ接合型キャリアは、Cアレルのキャリアと比較して、より低い総合5D-ASC、幻覚再構造化、及び至福の状態の評価を報告した。
【0028】
  総合すると、本発明は、遺伝子多型が、ヒトにおけるLSD効果に影響を及ぼすことを示している。具体的には、CYP2D6の遺伝子多型は、LSDの薬物動態及び主観的効果に有意な影響を及ぼした。従って、これを使用して、開発された本発明を用いた遺伝子検査及び知見の解釈に基づいてLSDの用量を定めることができる。
【0029】
  LSDの用量は、機能性CYP2D6個体への用量と比較して、非機能性CYP2D6の患者では50%になり得る(即ち、200μgに対して100μg)。
【0030】
  従って、本発明は、患者における代謝及び遺伝子マーカーを決定することによって(例えば、CYP2D6活性を評価し、及び/又は5HTR1A  rs6295及び5HTR2A  rs6313遺伝子型を評価することによって)、LSDの好ましい用量を決定し、遺伝的又はそれ以外で決定された薬理学的標的受容体の代謝活性及び遺伝的特徴(即ち、CYP2D6活性、及び/又は5HTR1A  rs6295及び5HTR2A  rs6313遺伝子型)に基づいてLSDの用量を調節し、上記用量のLSDの用量を患者に投与する方法を提供する。代謝活性は、酵素消化に関連し得る。薬理学的活性は、受容体(5-HT1及び5-HT2などの主要な作用部位)への活性化又は結合に関連し得る。受容体をコードする遺伝子の遺伝子型は、結合、サイケデリック効果、実際の有効性などを増大又は低減し得る。これらの薬理遺伝学的効果を理解することにより、個別の患者又は遺伝子シグネチャーを共有する明確に定義された患者群に合わせてその効果を適切に調整するように、用量を調節することができる。
【0031】
  本発明はまた、患者においてCYP2D6阻害の可能性がある併用薬を評価し、患者におけるCYP2D6活性を評価することによって、CYP2D6阻害剤の存在の評価に基づいてLSDの用量を決定し、患者にLSDを投与して、患者に最大のプラスの主観的急性効果を生み出し、及び/又は不安及びマイナスの効果を低減する方法を提供する。一部の患者は、フルオキセチン又はパロキセチンなどのCYP2D6阻害剤として作用し得るセロトニン再取り込み阻害剤で治療される。そのような個体はまた、遺伝学のためにCYP2D6活性を低下させ得る。従って、酵素が再生できるように、LSD治療の開始前に、CYP2D6阻害剤を停止する(最大2週間)か、又はCYP2D6阻害剤の存在下で減少するようにLSDの用量を調節することができる。
【0032】
  本発明はさらに、5-HT受容体遺伝子における一般的な変異が、LSDによって誘導される情緒の急性変化に影響を及ぼすことも示している。この薬理遺伝学的効果は、現在のデータ及び使用説明を使用することにより、LSD研究及びLSD支援心理療法で考慮することができる。
【0033】
  本発明の化合物は、個別の患者の臨床状態、投与部位及び投与方法、投与のスケジュール作成、患者の年齢、性別、体重、及び医療従事者には周知の他の要因を考慮して、適正な医療行為に従って投与及び用量決定される。このように、本明細書の目的のための薬学的に「有効な量」は、当技術分野で周知であるような考察事項によって決定される。この量は、改善を達成するために有効でなければならず、こうした改善には、限定はされないが、生存率の改善若しくはより迅速な回復、又は症状の改善若しくは排除、並びに当業者によって適切な手段として選択されるような他の指標を含む。
【0034】
  本発明の方法において、本発明の化合物は、様々な方法で投与することができる。 尚、化合物として投与することができ、単独で、又は薬学的に許容される担体、希釈剤、アジュバント及びビヒクルと組み合わせて有効成分として投与することができることに留意すべきである。化合物は、経口、舌下、皮下、経皮、又は静脈内、筋肉内、及び鼻腔内投与及び注入技法を含め、非経口的に投与することができる。また、化合物のインプラントも有用である。治療を受ける患者は温血動物であり、特にヒトを含む哺乳類である。薬学的に許容される担体、希釈剤、アジュバント及びビヒクル並びにインプラント担体は、一般に、本発明の有効成分と反応しない不活性で、非毒性の固体若しくは液体充填剤、希釈剤又は封入材料を指す。
【0035】
  用量は、単回投与又は数日間にわたる複数回投与であってよい。治療は一般に、疾患プロセス及び薬物有効性の期間並びに治療を受ける患者の種に比例する期間を有する。
【0036】
  本発明化合物を非経口的に投与する場合、一般に、単位用量注射形態(溶液、懸濁液、エマルジョン)で製剤化される。注射に適した医薬製剤としては、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射液又は分散液中で再形成するための滅菌粉末が挙げられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒体であり得る。
【0037】
  適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合には必要な粒子サイズの維持によって、さらには界面活性剤の使用によって維持することができる。非水性ビヒクル、例えば、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、ダイズ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、又はピーナッツ油及びミリスチン酸イソプロピルなどのエステルを、化合物組成物の溶媒系として使用することもできる。さらに、抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、及び緩衝液を含む、組成物の安定性、無菌性、及び等張性を高める様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の阻止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にすることができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むのが望ましいであろう。注射可能な医薬形態の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらされ得る。しかしながら、本発明によれば、使用される任意のビヒクル、希釈剤、又は添加剤は、化合物と適合性でなければならないであろう。
【0038】
  滅菌注射液は、本発明の実施に際して使用される化合物を、所望されるように、様々な他の成分と一緒に、必要量の適切な溶媒に含有させることによって調製することができる。
【0039】
  本発明の薬理学的製剤は、様々なビヒクル、アジュバント、添加剤、及び希釈剤などの任意の適合性担体を含有する注射可能な製剤として患者に投与することができ;又は本発明で使用される化合物は、徐放性皮下インプラント又は標的化送達系、例えば、モノクローナル抗体、ベクター送達、イオン導入、ポリマーマトリックス、リポソーム、及びミクロスフェアの形態で患者に非経口的に投与することができる。本発明で有用な送達システムの例としては、以下が挙げられる:5,225,182;5,169,383;5,167,616;4,959,217;4,925,678;4,487,603;4,486,194;4,447,233;4,447,224;4,439,196;及び4,475,196。他の多くのそのようなインプラント、送達システム、及びモジュールは、当業者に周知である。
【0040】
  本発明を、以下の実験例を参照することによりさらに詳細に説明する。これらの実施例は、あくまで例示を目的として提供され、特に明示されない限り限定することを意図するものではない。このように、本発明は、決して以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる任意の及び全ての変形を包含すると解釈されるべきである。
【実施例】
【0041】
実施例1
  本発明は、本明細書に詳細に提示された臨床試験のプール解析からのデータに基づいて開発された。この試験は、仮特許出願の出願後に公開された(Vizeli et al., 2021)。
【0042】
試験の背景
  その広範な使用にもかかわらず、LSDの代謝は十分に理解されていない。近年の2つのインビトロ研究では、LSDの代謝におけるシトクロムP450酵素(CYP)の関与が明らかにされた(Luethi et al., 2019; Wagmann et al., 2019)。ヒト肝ミクロソームを用いた或る試験では、CYP2D6、3A4、及び2E1が、LSDの6-ノル-LSD(ノル-LSD)へのN-脱メチル化に寄与するのに対し、CYP2C9、CYP1A2、CYP2E1、及びCYP3A4は、主要代謝物2-オキソ-3-ヒドロキシ-LSD(O-H-LSD)の形成に関与することが明らかにされた(Luethi et al., 2019)。ヒト肝臓S9画分を用いた別の試験では、CYP2C19と3A4がノル-LSDの形成に関与し、CYP1A2とCYP3A4がLSDのヒドロキシル化に寄与することが判明した(Wagmann et al., 2019)。
【0043】
  一部のCYP(即ち、CYP2D6、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19)は、異なる表現型をもたらす共通の機能的遺伝子多型を有する(Gaedigk, 2013; Hicks et al., 2015; Hicks et al., 2013; Preissner et al., 2013; Sachse et al., 1997; Sachse et al., 1999)。ほとんどの場合、CYP2D6は、異なる基礎遺伝子型を有する低活性型代謝者(PM、白人では5~10%)から超高活性型速代謝者(UM、3~5%)まで、いくつかの表現型を示す(Sachse et al., 1997)。LSD代謝CYP、特にCYP2D6の遺伝子変異体(Luethi et al., 2019)は、LSDの薬物動態、さらには個体内のLSDの血漿濃度-時間曲線に密接に関連するその急性効果に影響を与え得る(Holze et al., 2019; Holze et al., 2021a; Holze et al., 2021b)。CYP2D6遺伝子型は、物質支援心理療法にも使用される物質である3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)(Schmid et al., 2016; Vizeli et al., 2017)の薬物動態に影響を与えることも以前に示されている(Schmid et al., 2021)。
【0044】
  本発明の一部としてのこの分析では、LSDの薬物動態パラメータ及びその急性主観的効果に対する重要なCYP(CYP2D6、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2B6)の顕著な遺伝子多型の影響を検証した。
【0045】
  より強力且つよりプラスの急性効果は、サイケデリック支援療法で治療される患者の長期的な治療結果(Griffiths et al., 2016; Roseman et al., 2017;Ross et al., 2016)及びさらには健康な被験者におけるプラスの長期的効果(Griffiths et al., 2008;Schmid & Liechti, 2018)を予測すると考えられるため、サイケデリックスの主観的効果の質及び程度は特に注目される。
【0046】
  LSDは、5HTR1A、5HTR2B及び5HTR2Cサブタイプを含むいくつかの5-HT受容体に極めて強力に結合し、そこで部分アゴニストとして作用する(Eshleman et al., 2018; Kim et al., 2020; Rickli et al., 2016; Wacker et al., 2017)。しかし、LSDの様々なサイケデリック効果は、主に5HTR2Aにおけるアゴニズムによって媒介されると考えられる(Holze et al., 2021b; Kraehenmann et al., 2017; Preller et al., 2017)。5-HTシステムの主要な標的をコードする遺伝子の変異は、LSDの急性効果を緩和し得る。
【0047】
  これまでのところ、LSD又は他のサイケデリックスの薬理遺伝学に関するデータはない。
【0048】
  しかし、一塩基多型(SNP)HTR2A  rs6313は、「良好な薬物効果」、「薬物嗜好」、又は「他者に対する親近感」などのMDMA効果に弱く影響した(Vizeli et al., 2019)。
【0049】
  さらに、rs6313  SNPのCアレルは、より低い発現と関連しており、これは、自殺、他人の視点を採用する能力の低下、痛みを観察する際の不安の増大、及びコミュニケーションの問題に関連していることが判明した(Ghasemi et al., 2018; Gong et al., 2015; Polesskaya et al., 2006)。
【0050】
  さらに、5HTR1AをコードするHTR1A遺伝子のrs6295  SNPは、物質使用障害において一定の役割を果たし得る(Huang et al., 2004)。大うつ病性障害に罹患したrs6295のGアレルの女性ホモ接合型キャリアは、Cアレルのキャリアと比較して、5-HT再取り込み阻害剤による治療からより多くの恩恵を受けた(Houston et al., 2012)。
【0051】
  5HTR1B受容体をコードするHTR1Bのrs6296  SNPは、小児期の攻撃的行動に影響を与えることが判明した。Cアレルに対してホモ接合型であった個体は、Gアレルを有する個体よりも攻撃的であった(Hakulinen et al., 2013)。5-HT受容体は、向精神薬の最も研究されている薬理学的標的の1つである。しかし、これは、ヒトにおける古典的なセロトニン作動性サイケデリックス物質の薬理遺伝学に関する最初の情報である。
【0052】
  以下:CYP2D6、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19及びCYP2B6を含むLSDの分解に関与するに関与している主要な代謝酵素、又はHTR1A、HTR1B、及びHTR2Aを含むLSDの主要な標的における遺伝子多型が、健康な被験者におけるLSDの急性効果の薬物動態を緩和するか否かを試験した。
【0053】
  LSDが本発明を開発するために使用されたが、CYP2D6が、LSDのように代謝に寄与する場合、LSD類似体又は誘導体も使用され得る。
【0054】
  さらに、全てのサイケデリックスは、主に5-HT1/2受容体を介して作用するため、HTR1A、HTR1B、及びHTR2A遺伝学は、サイロシビン、メスカリン、ジメチルトリプタミン(DMT)などの他のサイケデリックスの薬理遺伝学的投薬にも同様に使用することができる。
【0055】
方法
試験デザイン
  これは、各々が無作為化、二重盲検プラセボ対照、クロスオーバーデザインを使用し、同じ研究室で実施された4つの第1相試験のプール解析であった(Dolder et al., 2017b; Holze et al., 2021b; Holze et al., 2020; Schmid et al., 2015)。
【0056】
  試験は全て、ClinicalTrials.gov(試験1:NCT01878942、試験2:NCT02308969、試験3:NCT03019822、及び試験4:NCT03321136)で登録された。試験には、合計84人の健康な被験者が含まれた。試験1(Schmid et al., 2015)及び試験4(Holze et al., 2021b)にはそれぞれ16人の被験者が含まれ、試験2には24人の被験者が含まれた(Dolder et al., 2017b)。試験3には29人の被験者が含まれた(Holze et al., 2020)。
【0057】
  試験1では、各被験者は、200μgのLSD又はプラセボの単回投与を受けた。試験2及び3では、各被験者は、100μgのLSD又はプラセボの単回投与を受けた。試験4では、各被験者は、25、50、100、及び200、並びに200μgのLSD+40mgのケタンセリン(5-HT2Aアンタゴニスト)を投与された。このプール解析では、試験4の同じ被験者に使用された4つのLSD用量の平均データが使用された。200μgのLSD+40mgケタンセリン条件は、薬物動態解析に使用したが、LSDの効果の解析には使用しなかった。
【0058】
  試験は全て、地元の倫理委員会によって承認され、ヘルシンキ宣言(Declaration of Helsinki)に従って実施された。LSDの使用は、スイス、ベルンにあるスイス連邦公衆衛生局(Swiss Federal Office for Public Health)(Bundesamt fuer Gesundheit)によって承認された。参加者全員から書面によるインフォームドコンセントを得た。被験者は全て、彼らの参加に対して対価が支払われた。
【0059】
  用量と用量の間のウォッシュアウト期間は、試験1及び2では7日、試験3及び4では10日とした。テストセッションは、静かな病院の試験病棟で実施され、1回のセッション毎に参加するのは一人の被験者のみであった。被験者は、急性薬物効果を経験している間、常に監督下にあった。参加者は、病院のベッドに快適に横たわり、ほとんどが音楽を聴いていて、身体活動に従事していなかった。LSDは、午前中、規格化少量朝食の後に投与された。含まれる試験の詳細な概要を
図10(表S1)に示す。
 
【0060】
被験者
  ヨーロッパ系で25~60歳(平均±SD=30±8歳)の合計85人の健康な被験者は、大部分がバーゼル大学(University of Basel)のキャンパスから募集され、試験に参加した。1人の参加者は、最後のLSDセッションの前に終了し、1人の参加者は最初のテストセッションの前に参加を停止し、2人の参加者はジェノタイピングに同意せず、その結果、81人の被験者(女性は41人)の分析のための最終データセットが得られた。被験者の平均±SD体重は、70±12kg(範囲:50~98kg)であった。25歳未満の参加者は、精神病性障害の発生率が高く、しかも、若齢であるほど、幻覚剤に対するより不安な反応に関連しているため、試験への参加から除外された(Studerus et al., 2012)。除外基準には、精神障害の病歴、身体疾患、喫煙(>10本/日)、10回以上の違法薬物使用の生涯歴(過去の大麻使用を除く)、過去2か月以内の違法薬物使用、及び試験中の違法薬物使用(試験セッション前に実施された尿検査によって決定された)が含まれた。22人の被験者は、以前に幻覚剤の経験があり、そのうち16人の被験者は、以前にリゼルグ酸ジエチルアミド(1~3回)を使用したことがあり、5人の被験者は、以前にサイロシビン(1~3回)を使用したことがあり、1人の被験者は、以前にジメチルトリプタミン(4回)、メスカリン(1回)、及びサルビア・ディビノラム(salvia divinorum)(3回)を使用したことがあった。
【0061】
治験薬
  LSDベース(Lipomed AG Arlesheim, Switzerland)は、試験1及び2でではゼラチンカプセルとして(Dolder et al., 2017b;Schmid et al., 2015)、又は試験3及び4で96%エタノール中の飲用溶液として(Holze et al., 2021b; Holze et al., 2020)経口摂取されるように調製した。
【0062】
  各試験で使用された用量を表S1に示す。含量の均一性及び長期安定性のデータは、試験3~4で使用された用量について利用可能であり(Holze et al., 2019; Holze et al., 2021b; Holze et al., 2020)、投与されたLSDベースの正確な実際の平均用量を
図10に示す(表S1)。
 
【0063】
  試験1及び2で使用された計画平均用量は、後に、より低いことが検出され、使用された実際の用量は、試験1及び2からの曲線下面積(AUC)値と、試験3及び4からのAUC値の比較に基づいて推定された(Holze et al., 2019)。用量は、体重又は性別に合わせて調節しなかった。
【0064】
薬物動態解析
  薬物動態パラメータは、Phoenix WinNonlin 6.4(Certara, Princeton, NJ, USA)のノンコンパートメント解析を使用して計算した。E
max値は、観測データから直接取得した。AUC及びAUEC値は、線形log台形法を使用して計算した。AUC値は、全ての試験で最後に測定された濃度(AUC
10)まで計算され、無限大(AUC∞)に外挿された。さらに、Phoenix WinNonlin 6.4では、一次入力、一次消去を伴い、且つラグタイムなしの1-コンパートメントモデルを使用して、機能性及び非機能性CYP2D6群におけるLSDの薬物動態を比較し、100μgのLSDベースの投与後の経時的なLSD濃度(
図1)を説明する。この分析には、81人の被験者全員のデータが含まれていた。試験4の場合、100μg用量のみが含まれた。主観的反応のオンセット、オフセット、及び持続時間は、Phoenix WinNonlinで、個々の最大反応の10%を閾値とするVAS「任意の薬物効果」-時間曲線を用いて決定した。
 
【0065】
生理的効果
  血圧、心拍数、及び体温は、LSD又はプラセボ投与の前と、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、及び10時間後に反復して評価した。収縮期及び拡張期血圧及び心拍数は、自動オシロメトリック装置(OMRON Healthcare Europe NA, Hoofddorp, Netherlands)を用いて測定した。測定は、1分間隔で、少なくとも5分の休止時間の後に2回反復で実施した。分析のために平均値を算出した。平均動脈圧(MAP)は、拡張期血圧+(収縮期血圧-拡張期血圧)/3として算出した。二重積(RPP)は、収縮期血圧×心拍数として計算した。コア(鼓膜)温度は、Genius 2耳式体温計(Tyco Healthcare Group LP, Watertown, NY, USA)を用いて測定した。
【0066】
主観的効果
  ビジュアルアナログスケール(VAS、
図14、表S5)は、左側の「全くない」から右側の「極端に」まで記された100mmの水平線(0~100%)として提示された。「親近感」、「話し好き」、「率直」、「集中」、「思考速度」、及び「信頼」などの主観的効果は、双方向(±50mm)であった。VASは、LSD又はプラセボ投与の前と、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、及び10時間後に適用した。
 
【0067】
  5次元の変性意識状態(5D-ASC)スケール(Dittrich, 1998; Studerus et al., 2010)を急性薬物効果の終了時に処理して、ピーク薬物応答を遡及的に評価した。意識の変化を表す主なサブスケールは、海洋の無限性(OB)、自我消滅の不安(AED)、幻覚再構造化(VR)である(
図16)。
 
【0068】
ジェノタイピング
  QIAamp DNA QIAamp DNA Blood Mini Kit(Qiagen, Hombrechtikon, Switzerland)及び自動QIAcubeシステムを用いて、全血からゲノムDNAを抽出した。SNPジェノタイピングは、市販のTaqMan  SNPジェノタイピングアッセイ(LuBio Science, Lucerne, Switzerland)を用いて実施した。以下のSNP及びそれぞれのアレルをアッセイした:HTR1A  rs6295(アッセイ:C_11904666_10)、HTR1B  rs9296(アッセイ:C_2523534_20)、HTR2A  rs6313(アッセイ:C_3042197_1_)、CYP1A2*1F  rs762551(アッセイ:C_8881221_40)、CYP2B6  rs3745274(アッセイ:C_7817765_60)、CYP2C9*2(rs1799853、アッセイ:C_25625805_10)、CYP2C9*3(rs1057910、アッセイ:C_27104892_10)、CYP2C19*2  rs4244285(アッセイ:C_25986767_70)、CYP2C19*4(rs28399504、アッセイ:C_30634136_10)、CYP2C19*17(rs12248560、アッセイ:C_469857_10)、CYP2D6*3(rs35742686、アッセイ:C_32407232_50)、CYP2D6*4(rs3892097、アッセイ:C_27102431_D0、及びrs1065852、アッセイ:C_11484460_40)、CYP2D6*6(rs5030655、アッセイ:C_32407243_20)、CYP2D6*9(rs5030656、アッセイ:C_32407229_60)、CYP2D6*10(rs1065852)、CYP2D6*17(rs28371706、アッセイ:C_2222771_A0、及びrs16947、アッセイ:C_27102425_10)、CYP2D6*29(rs59421388、アッセイ:C_3486113_20)、並びにCYP2D6*41(rs28371725、アッセイ:C_34816116_20、及びrs16947)。CYP2D6遺伝子欠失(アレル*5)及び重複/増殖(アレル*xN)は、TaqManコピー数アッセイ(Hs04502391_cn)を用いて決定した。CYP2D6の活性スコアは、確立されたガイドラインに従って割り当てた(Caudle et al., 2020; Crews et al., 2012; Gaedigk et al., 2008; Hicks et al., 2015; Hicks et al., 2013)。LSDの薬物動態学的及び薬力学的効果に対するCYP2D6機能の明確な作用を確認するために、被験者を、非機能性CYP2D6(PM、活性スコア=0)及び機能性CYP2D6(活性スコア>0)に分類した。CYP2C9の活性スコアは、ワルファリン(warfarin)の相対代謝活性を用いて生成した(Gage et al., 2008; Hashimoto et al., 1996)。遺伝的に決定されたCYP1A2活性誘導性を、被験者の喫煙状態(1日当たり>5本のタバコ=喫煙者;rs762551  AA=誘導性)と組み合わせた(Sachse et al., 1999; Vizeli et al., 2017)。予測されたCYP2C19中活性型代謝者(IM)は、CYP2C19*1/*2及びCYP2C19*2/*17を含み、通常活性型代謝者(EM)は、CYP2C19*1/*1を含み、UMは、CYP2C19*17/*17及びCYP2C19*1/*17の両方を含んだ(Hicks et al., 2013)。サンプル内にCYP2С19PMは認められなかった。CYP2B6の場合、低下した活性SNP  rs3745274(516G>T、CYP2B6*6又はCYP2B6*9、アッセイ:C_7817765_60)が決定された。CYP2D6及びCYP2C9の分類のためのアレル頻度は、それぞれ
図11及び12(表S2及びS3)に示されている。試験されたSNP頻度は全て、Allele Frequency Aggregator (ALFA) Projectデータバンクと同等であり、
図13(表S4)(L.Phan, 2020)に列挙される。
 
【0069】
統計解析
  全てのデータは、統計計算のためのR言語及び環境を使用して解析した(R Core Team, 2019)。遺伝子型の影響を調べるために、LSD(ΔLSD-プラセボ)の薬物動態パラメータ又は効果を、遺伝子型を群間因子として用いる一元配置分散分析(ANOVA)を使用して比較した。データは、試験間で考えられる遺伝子型の不均等な分布によって実際の値に偏りが生じ得るため、試験毎に実際の値及びzスコアとして表示する。
【0070】
  性別又は体重と薬物への曝露との間に相関関係が認められなかったため、統計は性別又は体重について補正されなかった(LSD  AUC∞)(
図2、S1)。
図2に示すように、離れた個体は非機能性CYP2D6として識別された。パラメトリック統計量に対する外れ値及び関連する非正規データ分布の影響を最小限に抑えるために、ノンパラメトリック統計(ウィルコクソン符号順位検定及びクラスカル・ウォリス検定)を用いて、LSDの薬物動態及び効果に対するCYP2D6の影響について結果を確認した。LSD  AUC∞値は、試験毎にz正規化した。ドットの色は、男性(濃い青)又は女性(赤)の参加者を示す。塗りつぶされたドットは、非機能性CYP2D6遺伝子型を示す。性別又は体重は、血漿中のLSDの濃度に対して関連性のある影響をもたなかった。
 
【0071】
  有意性のレベルは、p<0.05に設定した。薬物動態分析のp値は、特定の酵素(即ち、CYP2D6)活性の影響に関する仮説が先験的に作成されたため、多数の試験について補正されなかった。セロトニン受容体SNP(rs6295、rs6296、及びrs6313)の解析については、SNPの加法遺伝子型モデルを用いて一次解析を実施した。劣性又は優性モデル解析を実施したが、その結果は、加法モデルが有意である場合にのみ報告される。セロトニン受容体遺伝子型解析では、代謝酵素の違いによって生じ得るLSDの血漿濃度の差は、LSD  AUC∞zスコアを共変量として含有させることにより説明された。
【0072】
結果
  LSDは、プラセボと比較して、全てのスケールで有意な急性主観的効果をもたらし、血圧、心拍数、及び体温を適度に上昇させた(
図14、表S5)。性別又は体重の差は、LSDの効果の薬物動態を関連して変化させなかった(
図2)。
 
【0073】
LSDの薬物動態及び急性効果に対するCYP遺伝子型の影響
  CYP2D6機能は、LSDの薬物動態及び急性効果に有意に影響した(
図3~5、表1a~c及び
図1)。具体的には、遺伝的にCYP2D6  PM(非機能性)として分類された被験者は、機能性CYP2D6キャリアと比較して有意に大きいAUC∞及びAUC
10値によって統計的に証明されるように(
図3、表1a)、血漿中でLSDへの曝露が高かった(
図1)。
図1では、影付きの領域は、平均の標準誤差を示す。CYP2D6非機能性(N=7)及び機能性(N=74)被験者は、それぞれ、用量(平均±SD)100±30μgのLSD及び98±35μgのLSDを受けた。半減期及びAUC値の両方が、機能性CYP2D6酵素と比較して、非機能性の被験者で有意に増加した。さらに、CYP2D6  PMは、機能性CYP2D6被験者と比較して、代謝の低下と一致するT
1/2値も長かった(
図3、表1a)が、LSDのC
maxは有意に影響されなかった。さらに、LSD濃度に対する影響と並行して、O-H-LSD  AUC∞値は、機能性CYP2D6被験者と比較すると、CYP2D6  PMで大きく(
図4、表1b)、O-H-LSDへの変換がCYP2D6とは無関係であることを示している。100μgのLSD用量の投与についてのコンパートメントモデリングは、CYP2D6  PM対機能性被験者のLSD  AUC∞及びC
max値を示し、それぞれ、24169±13112対13819±6281pg/mL*h(F
1,79=13.8;p<0.001)及び2369±891対2061±999pg/mL(F
1,79=0.62;p=0.43)であった(
図1)。全てのCYP2D6遺伝子型活性スコア群の間で解析したところ、より低いCYP2D6活性は、LSDへの有意に高い曝露とも関連していた(
図17、表S6)。
 
【0074】
  LSDの薬物動態への影響(
図1)と一致して、CYP2D6  PMは、LSDに対する急性の主観的反応の実質的により長い持続時間(
図5、表1c)、並びに機能性CYP2D6被験者と比較して有意に大きな情緒の変化を示した(
図6、表1d)。具体的には、5D-ASC総計、AEDサブスケール(肉体離脱、制御及び認知障害、並びに不安など)、並びにVRサブスケール(コンプレックスイメージ及びエレメンタリーイメージ並びに知覚表象の意味の変化など)の評価は、機能性CYP2D6被験者と比較してPMで有意に増加した(
図6、表1d)。CYP2D6遺伝子型は、LSDに対する自律神経反応に関連する影響を及ぼさなかった(
図5、表1c)。
 
【0075】
  CYP2D6とは対照的に、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C19、及びCYP2C9を含む他のCYPの遺伝子多型は、LSDの薬物動態又は主観的若しくは自律神経的効果に対して関連影響を及ぼさなかった(
図17~22、表S7a-b及びS8a-c)。
 
【0076】
LSDに対する応答に対する5-HT受容体遺伝子型の影響
  図7~9(表2a~c)は、LSDに対する急性の主観的及び自律神経反応への5-HT受容体遺伝子(HTR1A、HTR1B、及びHTR2A)の多型の影響を示す。5-HT受容体遺伝子多型は、5D-ASC、即ち、HTR2A  rs6313及びHTR1A  rs6295に対して小さな影響を示した。2つのHTR2A  rs6313  Aアレルのキャリアは、Gアレルキャリア(F
1,78=5.16、p<0.05)よりも5D-ASC総合スコア(F
1,78=5.88、p<0.05)及びAEDサブスケールの評価が低かった。HTR1A  rs6295  Gアレルのホモ接合型キャリアは、Cアレルのキャリアよりも5D-ASC総合スコア及びVRサブスケールで評価が低かった(それぞれF1
1,78=6.87、p<0.05及びF
1,78=7.75、p<0.01)。バイタルパラメータは、ここで試験された遺伝子型のいずれにも影響されなかった。
 
【0077】
試験結果の解釈
  これは、ヒトにおけるLSDの薬物動態及び急性効果に対する遺伝子多型の影響を調べる最初の解析である。
【0078】
  主な発見は、CYP2D6の遺伝子多型がLSDの薬物動態、及び続いて主観的効果に有意に影響するということであった。これにより、CYP2D6遺伝子の検査を新規に使用して、個体のLSDの理想的な用量を予測すると共に、過剰摂取及び不安などの関連する副作用を低減することができる。
【0079】
  加えて、5-HT受容体遺伝子の一般的な変異も、LSDによって誘発される情緒の急性変化に弱く影響し、個体におけるLSDの理想的な用量をさらに、又は個別に定めることを可能にした。但し、この効果の緩和の影響及び程度は、CYP2D6遺伝子のそれよりも弱い。
【0080】
  LSDは、人体でほぼ完全に代謝され、ごく少量の親薬物(約1%)が尿中に排泄される(Dolder et al., 2015)。ヒト肝ミクロソーム及びヒト肝S9画分を用いたインビトロ試験は、LSDの代謝におけるCYP酵素の役割を示した(Luethi et al., 2019; Wagmann et al., 2019)。具体的には、CYP2D6は、LSDからノルLSDへのN-脱メチル化に関与している(Luethi et al., 2019)。本試験は、CYP2D6が、ヒトのLSDの代謝に関与していること、特に、遺伝子多型がヒトのLSDに対する代謝及び急性反応の両方に影響を与えるという新たなインビボエビデンスを提供する。ヒトの血漿ノルLSD濃度は、高感度の方法であっても、それを測定するにはほとんどが低すぎる(Steuer et al., 2017)。しかし、非機能性CYP2D6遺伝子型を有する個体のLSD及びO-H-LSD血漿濃度の両方に増加が認められ、ノルLSDの形成におけるCYP2D6の役割と一致したが、O-H-LSDは一致しなかった。従って、CYP2D6は、LSDの分解において重要な役割であるが、その主要代謝物O-H-LSDの形成においてそうではない。
【0081】
  CYP2D6の役割は、選択的CYP2D6阻害有り及びなしで、LSDを使用した薬物間相互作用試験でさらに調べることができる。LSDは、精神障害のある患者に治療薬として使用することができ、CYP2D6阻害剤(主に、フルオキセチン及びパロキセチン)としても作用するセロトニン再取り込み阻害剤治療を使用することができるため、これも注目に値する。従って、本発明は、本発明を適用するアルゴリズム内で又は当業者によって、CYP2D6阻害又は誘導電位を有する薬剤の同時使用に関する情報を追加することによりさらに精緻にすることができる。
【0082】
  他のCYP酵素に関しては、CYP2C19は、インビトロでノルLSDの形成に関与していた(Wagmann et al., 2019)。しかし、本試験ではLSDの薬物動態に対するその遺伝子型の影響は認められず、LSDの用量の調節は必要ないと思われる。
【0083】
  さらに、CYP2C9及びCYP1A2は、LSDのO-H-LSDへのヒドロキシル化に寄与することが報告された(Luethi et al., 2019; Wagmann et al., 2019)。CYP2C9はまた、リゼルグ酸モノエチルアミド(LAE)へのN-脱エチル化を触媒する(Wagmann et al., 2019)。しかし、LSDの薬物動態に対するCYP2C9遺伝子型の影響は、ヒトにおいて本試験では観察されなかった。CYP1A2に関しては、現在までに一般的な機能喪失多型は同定されていない。しかし、CYP1A2は、C/A及びC/C遺伝子型と比較して、一般的なSNP  rs762551  A/A遺伝子型を有する被験者のタバコ喫煙により誘導性である(Sachse et al., 1999)。従って、CYP1A2活性誘導性を、被験者の喫煙状態(1日当たり>5本=喫煙者)と組み合わせた。MDMAを用いた同様の薬理遺伝学的試験では、喫煙が少ない、及び/又は非誘導性多型を有する被験者と比較して、1日に6~10本の巻きタバコを吸い、しかもCYP1A2の誘導遺伝子型を有する被験者において、より高いMDAレベル(MDMAの微量代謝物)が認められた(Vizeli et al., 2017)。本試験では、CYP1A2遺伝子型/喫煙者の状態の影響は、LSDの薬物動態には認められなかった。しかし、喫煙者で、しかも誘導性CYP1A2遺伝子型を有するという両方の要件を満たした被験者は本試験に登録された5名のみだった。このように、本データは、CYP1A2遺伝子型に基づくLSDの用量の調節がないことを示している。
【0084】
  LSDに対する代謝酵素の薬理遺伝学的影響は、MDMAとかなり類似していると見受けられる。精神活性物質であるLSDとMDMAの両方について、CYP2D6の多型のみが薬物動態及び主観的効果に実質的に影響を与えるようだ(Vizeli et al., 2017)。但し、MDMAは、CYP2D6とそれ自身の代謝を阻害するため(即ち、自己阻害)、CYP2D6遺伝子型変動の効果は限定的であり、投与後最初の2時間の間のMDMA効果の開始中にのみ明らかである(Schmid et al., 2016)。
【0085】
  対照的に、LSDの場合、CYP2D6遺伝子型の緩和は、吸収及び初期効果ピークではなく、排泄段階の後半でより重要になり、LSDのAUC及び半減期並びにその効果の持続時間を増加させると見受けられる。CYP2D6  PMは、機能性CYP2D6酵素を有する個体よりも約75%多い総薬物曝露(より大きなAUC値)を示した。有意でない約15%高い平均ピーク濃度しかなかった。従って、AUC∞によって反映される総薬物曝露は、主にピーク後の排泄の減少によって決定された。このパターンは、LSDの主観的効果でも認めることができる。VASのピーク効果は、異なるCYP遺伝子型間で相違はなかったが、全日にわたる精神の主観的変化を反映する5D-ASC評価は、CYP2D6の機能性によって明確な差を示した。非機能性CYP2D6群は、全体的に増加した意識状態の変化を報告し、特に肉体離脱、制御及び認知障害、不安、コンプレックスイメージ、エレメンタリーイメージ、及び知覚の意味の変化の評価が高かった。
【0086】
  LSDに対する急性主観的反応への遺伝的影響は臨床的に関連性があるため、本発明は、用量を調節し、脆弱な被験者における過剰摂取の問題を一部解決する上で、実質的に有用で、しかも有効である。
【0087】
  健康な被験者と患者を対象としたいくつかの試験によって、急性の主観的経験の程度及び質と、LSDを含むサイケデリックスの長期的な影響との関連が判明した(Griffiths et al., 2008; Griffiths et al., 2016; Roseman et al., 2017; Ross et al., 2016; Schmid & Liechti, 2018)。典型的には、より大きな物質誘発性OB及びより神秘的なタイプの効果は、より有益な長期的効果と関連している可能性がある。具体的には、本解析で用いた5D-ASC評価尺度に関しては、急性サイロシビン誘発性OBが高く、しかもAEDスコアが低いほど、うつ病患者において5週間時点でより良好な治療転帰が予測されたが、VRスコアは有意な効果を示さなかった(Roseman et al., 2017)。
【0088】
  LSD(200μg)に対する急性反応についても、不安障害患者へのLSD投与後2~5週間で、プラスのOB、マイナスのAED、並びにうつ病、不安、及び全体的な心理的苦痛に対する有益な効果とVRスコアとの関連なしという、同じ予測パターンがあった(Liechti personal communication)。
【0089】
  CYP2D6  PMが、主にAED及びVRでより高いLSD誘発評価を示したが、OBスコアは示さなかったことを考えると、これらの被験者は、特に、より急性の不安と、恐らく治療効果の低下を伴って全体的により困難な急性経験を有することが予想される。
【0090】
  ジェノタイピングを含む本発明は、LSD支援療法を受ける患者において特に有用であると予想される。現在の知見に基づいて、CYP2D6  PMは、機能性CYP2D6個体で使用されるものよりも約50%低い用量の恩恵を受けると予想される。現在のデータとアプローチに基づくこの直接的な結果は、100μgと比較して、200μgという高用量のLSDは、より高いOB評価をもたらさなかったが、5D-ASCに対するAED及び不安を増大させるという観察と一致している(Holze et al., 2021b)。
【0091】
  本発明は、それがさらに開発されるにつれ、その実施に伴っていくつかの変更を必要とし得る。プラセボ対照試験でLSDを受けた健康なヒト被験者の利用可能な最大のサンプルを使用して開発されたにもかかわらず、サンプルサイズはまだ比較的小さい。サンプルサイズは、機能的に非常に異なる遺伝子型(即ちCYP2D6)の影響を検出するのに十分であったが、本発明を開発するために使用されたサンプルは、より小さな影響緩和を検出するには小さすぎた可能性がある。
【0092】
  さらに、CYP3A4は、LSDの代謝に特定の役割を果たし得るが、多型はまれである(Werk & Cascorbi, 2014)。従って、CYP3A4ジェノタイピングについては有用ではないが、フェノタイピングが、本発明に対する変更又は延長として使用及び追加され得る。
【0093】
  本発明はまた、併用薬物とLSDとの間の薬物間相互作用を考慮する際にも有用である。LSDを使用する前に、CYP2D6阻害剤を停止して、酵素が再生するのに十分な時間(最大2週間)を確保するべきである。或いは、CYP2D6阻害剤の存在下では、LSDの用量は、本発明の知見に基づいて50%減少させるべきである。
【0094】
  結論として、これは、ヒトにおけるLSDの薬物動態と急性効果に対する遺伝子多型の影響を調べた最初の試験である。CYP2D6の遺伝子多型は、薬物動態に有意な影響を及ぼし、その後、LSDの主観的効果に有意な影響を及ぼした。他のCYPでは、LSDに対する薬物動態又は反応への影響は観察されなかった。さらに、5-HT受容体遺伝子の一般的な突然変異は、LSDの主観的効果を弱く緩和した。
【0095】
  本出願全体を通して、米国特許を含む様々な刊行物が、著者及び年により参照され、特許は番号により参照される。これらの刊行物の完全な引用は以下に列挙する通りである。上記の刊行物及び特許の開示は、その全体が、本発明が関連する最新技術をより十全に説明するために、参照により本出願に組み込まれる。
【0096】
  本発明は、例示的な方法で説明されており、使用されている用語は、限定ではなく説明の言葉の性質にあることが意図されていることを理解されたい。
【0097】
  明らかに、以上の教示に照らして、本発明の多くの修正及び変形が可能である。従って、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明は具体的に記載される以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【0098】
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【国際調査報告】