(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(54)【発明の名称】動脈系と静脈系の間で血液をシャントする装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240215BHJP
A61M 39/10 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
A61M1/36 143
A61M39/10 120
A61M1/36 107
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549856
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 IB2022052688
(87)【国際公開番号】W WO2022201081
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517112731
【氏名又は名称】インスパイア エム.ディー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク ジェシー
【テーマコード(参考)】
4C066
4C077
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB02
4C066CC01
4C066JJ05
4C066QQ25
4C077AA30
4C077DD20
4C077DD23
4C077EE01
4C077JJ03
4C077JJ16
(57)【要約】
シャンティングシステムは、血流が例えば循環系の動脈側から静脈側までそれを通して通過する場合に調節されるハウジングを含む。ハウジングは、ハウジング構成要素に容易に分離可能であり、その分離可能性は、コネクタディスクから容易に取り外し可能な血液フィルタを含む内部構成要素へのアクセスを可能にし、血液フィルタ及びコネクタディスクは、ハウジング構成要素が結合されるとハウジング内の所定の位置に保持される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャントであって、
血液流入用の第1の導管を受け入れるように構成された第1のハウジングであって、前記第1の導管は、前記第1のハウジング内に延びる、第1のハウジングと、
前記第1の導管と通じるために前記第1のハウジング内に延び、前記第1の導管を通る血流速度を制御するためのレギュレータと、
前記第1のハウジングから取り外し可能に取り付け可能な第2のハウジングと、
を備え、
前記第2のハウジングは、前記第1の導管からの血液を受け入れて保持するための空洞を備えると共に第2の導管を受け入れるように構成されており、前記第2の導管は、前記第2の導管を通る血液の流出のために前記空洞と連通するように構成されている、シャント。
【請求項2】
前記第2のハウジングの前記空洞の中に少なくとも部分的に延びる血液フィルタをさらに備え、前記第2のハウジング内の前記血液フィルタは、前記第1のハウジング内の前記第1の導管と連通する、請求項1に記載のシャント。
【請求項3】
前記第1のハウジングを前記第2のハウジングに結合するためのコネクタをさらに備え、前記第2のハウジングは、前記第1のハウジングから取り外し可能に取り付けられるようになっている、請求項1に記載のシャント。
【請求項4】
前記第1のハウジング及び前記コネクタは、ねじ結合部を形成し、前記第1のハウジングと前記第2のハウジングは、互いに取り外し可能に取り付け可能になっている、請求項3に記載のシャント。
【請求項5】
前記レギュレータは、複数の位置の間で調節可能であり、前記位置の各々は、前記第1の導管を通る血流速度に対応する、請求項1に記載のシャント。
【請求項6】
前記レギュレータは、トリガーレバーを含み、前記トリガーレバーは、前記第1のハウジング内で移動可能に取り付けられている、請求項5に記載のシャント。
【請求項7】
血液が前記第1のハウジングの中に流入するために前記第1のハウジングを貫通して延びる前記第1の導管をさらに含む、請求項1に記載のシャント。
【請求項8】
前記第2のハウジングの前記空洞からの血液流出のために、前記空洞と連通する第2の導管をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のシャント。
【請求項9】
前記第1のハウジングに着座するためのコネクタディスクをさらに含み、前記コネクタディスクは、反対側に配置された第1の側面及び第2の側面を含み、前記第1の側面と前記第2の側面との間に延びる開口を含み、前記コネクタディスクは、前記第1の側面の前記第1の導管と、前記第2の側面の前記血液フィルタとを接続し、これにより、前記第1の導管は、前記開口を介して前記血液フィルタと連通し、前記シャントを通る血流の経路を形成するようになっている、請求項2に記載のシャント。
【請求項10】
前記コネクタディスクは、少なくとも摩擦嵌めで第1の導管と接続するための、前記開口と一致して前記第1の側面から延びる導管コネクタと、前記開口の周りに外向きに延びると共の円周方向に配置された複数のフィンガーとを含み、前記フィンガーは少なくともスナップ嵌めで血液フィルタを受け入れるようになっており、これにより、前記第1の導管、前記導管コネクタ、前記開口及び前記血液フィルタは、シャントを通る血流のための経路を形成するように位置合わせされる、請求項9に記載のシャント。
【請求項11】
前記コネクタディスクを受け入れて前記第1のハウジング内に着座させるために、前記第1のハウジングの内部空洞の中に延びる複数の突出部をさらに備え、前記第1のハウジングが前記第2のハウジングに取り外し可能に取り付けられる場合、前記コネクタディスクは、前記複数の突出部と前記第1のハウジングの中に延びる前記第2のハウジングの一部との間のプレス嵌めによって前記第1のハウジング内に保持される、請求項9に記載のシャント。
【請求項12】
医療装置を組み立てる方法であって、
シャントを提供するステップであって、
前記シャントは、
血液流入用の第1の導管を受け入れるように構成された第1のハウジングと、
前記第1の導管と通じるために前記第1のハウジング内に延び、前記第1の導管を通る血流速度を制御するためのレギュレータと、
前記第1のハウジングから取り外し可能に取り付け可能な第2のハウジングであって、前記第2のハウジングは、前記第1の導管からの血液を受け入れて保持するための空洞を備えると共に第2の導管を受け入れるように構成されている、第2のハウジングと、
を備える、前記シャントを提供するステップと、
前記第1のハウジングにおいて前記第1の導管を前記シャントに取り付けるステップと、
前記第2のハウジングにおいて第2の導管を前記シャントに取り付けるステップと、
を含み、これにより、前記第1の導管と前記第2の導管は、前記シャントを介して互いに連通する、
方法。
【請求項13】
哺乳類患者における血液移送方法であって、
シャントを提供するステップであって、前記シャントが、
血液流入用の第1の導管を受け入れるように構成された第1のハウジングと、
前記第1の導管と通じるために前記第1のハウジング内に延び、前記第1の導管を通る血流速度を制御するためのレギュレータと、
前記第1のハウジングから取り外し可能に取り付け可能な第2のハウジングであって、前記第2のハウジングは、前記第1の導管からの血液を受け入れて保持するための空洞を備えると共に第2の導管を受け入れるように構成されている、第2のハウジングと、
を備える、前記シャントを提供するステップと、
前記第1のハウジングにおいて前記第1の導管を前記シャントに取り付けるステップと、
前記第2のハウジングにいて第2の導管を前記シャントに取り付けるステップと、
前記第1の導管を、前記哺乳類患者の第1の位置で前記哺乳類患者と連通するように配置するステップと、
前記第2の導管を、前記哺乳類患者の第2の位置で前記哺乳類患者と連通するように配置するステップと、
を含み、これにより、前記シャントを介して前記第1の導管と前記第2の導管との間に、血流経路が確立される、方法。
【請求項14】
前記第1の位置は、哺乳類患者の循環系の動脈部分を含み、前記第2の位置は、前記哺乳類患者の循環系の静脈部分を含み、前記血流経路は、シャントを介して、前記第1の導管から前記第2の導管までである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記レギュレータを前記第1の導管に沿った位置で第1の導管に接触する状態に配置し、前記レギュレータを押し下げて前記位置に近接して前記第1の導管に大きさが減少するようにさせることにより、前記血流経路に沿った前記血流を調節するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レギュレータを前記第1の導管に沿った位置で前記第1の導管との押し下げ接触から解放し、前記位置に近接して前記第1の導管に大きさが増大するようにさせることにより、前記血流経路に沿った前記血流を調節するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、同一出願人の2021年3月25日出願の米国仮出願番号第63/165,856号「患者の動脈系と静脈系との間で血液をシャントするための装置(Device For Shunting Blood Between The Arterial And Venous Systems Of A Patient)」に関連し、その優先権を主張するものであり、その開示内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、体液移送装置に関し、特に、患者の動脈系から静脈系への血液の移送におけるシャント及びシャンティング装置及びそれらの使用のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
血液を含む体液移送のための現代の装置は、シャントを含む。血液の場合、シャントは、典型的には、患者の動脈系から静脈系へ血液を移送する役割を果たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示された装置及びシステムは、患者の循環系の動脈側から静脈側への血液のシャンティングを提供し、臨床医が、患者の健康を損なうことなく、血流の妨害又は障害を最小限に抑えながら、手術を行うことを可能にする。例えば、開示された装置及びシステムは、例えば、頸動脈へのステントの挿入など、動脈内膜剥離術、神経血管処置など、ヒト又は動物の病状の治療を助けるために使用される。
【0005】
開示された装置及びシステムは、2つの構成要素のハウジングを含み、これは、患者の動脈に接続される動脈側チューブ(動脈チューブとしても知られる)を受け入れるための構成要素である第1のハウジング構成要素、又はトリガーハウジングと、第1のハウジング構成要素を通過した血液を受け入れるための血液リザーバとして機能する第2のハウジング構成要素である。第2のハウジング構成要素は、血液が静脈側チューブ(静脈チューブとも呼ばれる)を通ってリザーバから出る前に、血液の送出圧力を安定させるために血液を保持し、血液は静脈側チューブを通り静脈を通って循環系に戻る。
【0006】
動脈側チューブは、第1のハウジング構成要素を貫通して延びる。調節可能なトリガー(レギュレータとしても知られる)は、第1のハウジング構成要素の中に延び、動脈側チューブに接触し、動脈側チューブを様々な深さで押し下げ、動脈側チューブの内腔の形状(例えば、直径)を制御し、結果として、動脈側チューブを通る血流速度を調整する(血流速度を調節する)。第2のハウジング構成要素、又はリザーバハウジングは、第1のハウジング構成要素に接合し、動脈側チューブから流入する血液のためのリザーバを含む。静脈側チューブは第2のハウジング構成要素から延びており、血液はこのチューブを通ってリザーバから患者の静脈に流れる。
【0007】
血液フィルタは、リザーバの中に延び、動脈側チューブと整列し、リザーバに流入するすべての血液が濾過を受けるようになっている。フィルタは、フィルタの捕捉機構又は保持器として機能するコネクタディスクによってスナップ嵌めで保持されるため、容易にアクセスでき、装置(ハウジング)から取り外し可能である。コネクタディスクは、第2のハウジング構成要素が第1のハウジング構成要素に接合される際に、第2のハウジング構成要素との圧縮嵌め又はプレス嵌めによって第1のハウジング構成要素の所定の位置に保持される。第1及び第2のハウジング構成要素は、摩擦嵌め、例えばプレス嵌めによって接合されるので互いに容易に分離可能であり、第2のハウジング構成要素の近位端の一部は、第1のハウジング構成要素の遠位端の一部にプレス嵌めを含む摩擦嵌めによって受け入れられるようになっている。コネクタリングは、第1のハウジング構成要素における第2のハウジング構成要素のプレス嵌めを維持し(また、第2のハウジング構成要素が遠位方向に移動するのを防止し)、第1のハウジング構成要素とのねじ係合を含む摩擦係合によって第1のハウジング構成要素に取り付けられる。
【0008】
本開示の実施形態は、シャントに関する。シャントは、血液流入用の第1の導管を受け入れるように構成された第1のハウジングであって、第1の導管は、第1のハウジング内に延びる、第1のハウジングと;第1の導管と通じるために第1のハウジング内に延び、第1の導管を通る血流速度を制御するためのレギュレータと;第1のハウジングから取り外し可能に取り付け可能な第2のハウジングと、を備え、第2のハウジングは、第1の導管からの血液を受け入れて保持するための空洞を備えると共に第2の導管を受け入れるように構成されており、第2の導管は、第2の導管を通る血液の流出のために空洞と連通するように構成されている。
【0009】
随意的に、シャントは、第2のハウジングの空洞の中に少なくとも部分的に延びる血液フィルタをさらに備え、第2のハウジング内の血液フィルタは、第1のハウジング内の第1の導管と連通するようなものである。
【0010】
随意的に、シャントは、第1のハウジングを第2のハウジングに結合するためのコネクタ、例えばコネクタリングをさらに備え、第2のハウジングは、第1のハウジングから取り外し可能に取り付けられるようなものである。
【0011】
随意的に、シャントは、第1のハウジング及びコネクタが、ねじ結合部を形成し、第1のハウジングと第2のハウジングは、互いに取り外し可能に取り付け可能になっているようなものである。
【0012】
随意的に、シャントは、レギュレータが、複数の位置の間で調節可能であり、位置の各々は、第1の導管を通る血流速度に対応するようなものである。
【0013】
随意的に、シャントは、レギュレータが、トリガーレバーを含み、トリガーレバーは、第1のハウジング内で移動可能に取り付けられているようなものである。
【0014】
随意的に、シャントは、血液が第1のハウジングの中に流入するために、第1のハウジングを貫通して延びる第1の導管をさらに含むようなものである。
【0015】
随意的に、シャントは、第2のハウジングの空洞からの血液流出のために、空洞と連通する第2の導管をさらに含むようなものである。
【0016】
随意的に、シャントは、第1のハウジングに着座するためのコネクタディスクをさらに含み、コネクタディスクは、反対側に配置された第1の側面及び第2の側面を含み、第1の側面と第2の側面との間に延びる開口を含み、コネクタディスクは、第1の側面の第1の導管と、第2の側面の血液フィルタとを接続し、これにより、第1の導管は、開口を介して血液フィルタと連通し、シャントを通る血流の経路を形成するようになっているようなものである。
【0017】
随意的に、シャントは、コネクタディスクが、少なくとも摩擦嵌めで第1の導管と接続するための、開口と一致して第1の側面から延びる導管コネクタと、開口の周りに外向きに延びると共に円周方向に配置された複数のフィンガーとを含み、フィンガーは少なくともスナップ嵌めで血液フィルタを受け入れるようになっており、これにより、第1の導管、導管コネクタ、開口及び血液フィルタは、シャントを通る血流のための経路を形成するように位置合わせされるようなものである。
【0018】
随意的に、シャントは、コネクタディスクを受け入れて第1のハウジング内に着座させるために、第1のハウジングの内部空洞の中に延びる複数の突出部をさらに備え、第1のハウジングが第2のハウジングに取り外し可能に取り付けられる場合、コネクタディスクは、複数の突出部と第1のハウジングの中に延びる第2のハウジングの一部との間のプレス嵌めによって第1のハウジング内に保持されるようなものである。
【0019】
本開示の実施形態は、医療装置を組み立てるための方法に関する。本方法は、血液流入用の第1の導管を受け入れるように構成された第1のハウジングと;第1の導管と通じるために第1のハウジング内に延び、第1の導管を通る血流速度を制御するためのレギュレータと;第1のハウジングから取り外し可能に取り付け可能な第2のハウジングであって、第2のハウジングは、第1の導管から血液を受け入れて保持するための空洞を備えると共に第2の導管を受け入れるように構成された第2のハウジングと;を備えるシャントを提供するステップを含む。第1の導管は、第1のハウジングにおいてシャントに取り付けられ(例えば、接合又は結合され);第2の導管は、第2のハウジングにおいてシャントに取り付けられ(例えば、接合又は結合され);それにより、第1の導管及び第2の導管は、シャントを介して互いに連通する。
【0020】
本開示の実施形態は、哺乳類患者における血液移送のための方法に関する。本方法は、血液流入用の第1の導管を受け入れるように構成された第1のハウジングと;第1の導管と通じるために第1のハウジング内に延び、第1の導管を通る血流速度を制御するためのレギュレータと;第1のハウジングから取り外し可能に取り付け可能な第2のハウジングであって、第2のハウジングは、第1の導管から血液を受け入れて保持するための空洞を備えると共に第2の導管を受け入れるように構成された第2のハウジングと;を備えるシャントを提供するステップを含む。第1の導管は、第1のハウジングにおいてシャントに取り付けられ、第2の導管は、第2のハウジングにおいてシャントに取り付けられる。第1の導管は、哺乳類患者の第1の位置で哺乳類患者と連通するように配置され、第2の導管は、哺乳類患者の第2の位置で哺乳類患者と連通するように配置され、シャントを介して、第1の導管と第2の導管との間に血流経路が確立されるようになっている。
【0021】
随意的に、本方法は、第1の位置が哺乳類患者の循環系の動脈部分を含み、第2の位置が哺乳類患者の循環系の静脈部分を含み、血流経路がシャントを介して第1の導管から第2の導管までであるようなものである。
【0022】
随意的に、本方法は、レギュレータを第1の導管に沿った位置で第1の導管に接触する状態に配置し、レギュレータを押し下げてその位置に近接して第1の導管の大きさが減少するようにさせることにより、血流経路に沿った血流を調節するステップをさらに含む。
【0023】
随意的に、本方法は、レギュレータを第1の導管に沿った位置で、第1の導管との押し下げ接触から解放し、その位置に近接して第1の導管の大きさが増大するようにさせることによって、血流経路に沿った血流を調節するステップをさらに含むようなものである。
【0024】
実施形態の非限定的な例は、添付の図面を参照して以下に説明される。2以上の図に現れる同一の構造、要素又は部品には、一般にそれらが現れる全ての図において同じ数字又は文字が付与されている。図示された構成要素及び特徴の寸法は、便宜上及び明確な表示のために選択され、必ずしも縮尺通りに示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の一実施形態によるシャンティングシステムの例示的な図である。
【
図2A】
図1のシャンティングシステムの分解組立図である。
【
図2B】
図1のシャンティングシステムの分解組立図である。
【
図2C】
図1のシャンティングシステムの分解組立図である。
【
図3】本開示の実施形態によるシャンティングシステムのコネクタディスクの斜視図である。
【
図4】
図1のシャントの第1のハウジングの斜視図である。
【
図7A】
図1のシャンティングシステムのトリガーレバーの側面図である。
【
図7B】
図1のシャンティングシステムのトリガーレバーの斜視図である。
【
図8A】
図1のシャンティングシステムの血流経路の切り取り側面図である。
【
図9A】本開示の一実施形態による第1のハウジングの切り取り断面図である。
【
図9B】本開示の一実施形態による第1のハウジングの切り取り断面図である。
【
図9D】本開示の一実施形態による第1のハウジングの切り取り断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(概要)
動脈系から静脈系へ血液を移送するシステムによる血液のシャンティングは、典型的には、患者(例えば、哺乳類患者)の動脈循環系と静脈循環系との間の差圧を用いて達成される。しかしながら、2つの血管入口点、例えば頸動脈と大腿静脈との間で2つの系の間に妨げのない流れが確立されると、その流れが神経-血管系の恒常性を達成する身体の能力を圧倒し、処置中の合併症につながる場合がある。本開示は、差圧を補償し、装置の血液リザーバへの急速な血流(例えば、急速な血流速度)を制御し、恒常性が維持される速度で、血液が静脈系に流れることを可能にする、シャンティングシステム又はシャントを提供する。
【0027】
本開示は、患者の循環系の動脈側から静脈側へ血液が移送されるシャンティングシステムを介して、血流量、例えば血流速度及び/又は圧力を一時的に減少させる装置及びシステムを提供する。シャンティングシステムにおけるこの一時的な血流速度の減少は、凝固及び流体経路の目詰まりのリスクを低減する。
【0028】
本開示は、例えば循環系の動脈側から静脈側へそれを通して通過する際に血流量が調節されるハウジングを含む装置を含むシャンティングシステムを提供する。ハウジングは、ハウジング構成要素に容易に分離可能であり、その分離可能性は、コネクタディスクから容易に取り外し可能な血液フィルタを含む内部構成要素へのアクセスを提供し、血液フィルタ及びコネクタディスクは、ハウジング構成要素が結合されると、ハウジング内の所定位置に保持される。
【0029】
装置は、第1のハウジング構成要素、すなわちトリガーハウジングを含み、このトリガーハウジングは、第2のハウジング構成要素、すなわちリザーバハウジングに機械的に結合する。トリガーハウジング内のトリガーは手動操作することができ、トリガーは、操作されるとトリガーハウジングを通る(及びリザーバハウジング及び静脈側チューブを通る下流側の)血流速度を制御する。
【0030】
トリガーハウジングは、ハウジングを通る流量を減少させるための手動操作可能な調節可能なトリガー(レギュレータとしても知られる)、並びに動脈側チューブの受け入れを可能にする入口ポータルを含むことができる。トリガーハウジングは、動脈側チューブの遠位端(動脈アクセスポイントから血液が入る)を取り付けることができる出口ポータルを有することができる。リザーバハウジングは、血液リザーバとして機能する内部空洞を含み、流入ポータルを介して、トリガーハウジング内の動脈側チューブから血液を受け取る。また、血液リザーバは、流出ポータルを含み、この流出ポータルには静脈側チューブが取り付けられ、動脈側血液は、循環系の静脈側を通って体内に再び入るようになっている。血液フィルタは、血液リザーバを貫通して延び、流入ポータルから血液を受け取る。血液フィルタは、シャントされた血液がフィルタを通って静脈側チューブへの経路を流れ、静脈アクセスポイントを通って静脈系に流入する際に、介入又は他の医療処置によって生じる可能性のあるプラーク又は他のデブリを含む粒子を捕捉する。
【0031】
2つのハウジング構成要素は、コネクタリングによって機械的に結合されており、このコネクタリングは、第1及び第2のハウジング構成要素を接合し、これらを一緒に保持する。第1及び第2のハウジング構成要素は、例えばプレス嵌めによって機械的に接合されるようなものであり、第2のハウジング構成要素の近位端の一部は、第1のハウジング構成要素の遠位端の一部にプレス嵌めを含む摩擦嵌めによって受け入れられるようになっている。コネクタリングは、第1のハウジング構成要素における第2のハウジング構成要素のプレス嵌めを維持し(また、第2のハウジング構成要素が遠位方向に移動するのを防止し)、第1のハウジング構成要素とのねじ係合を含む摩擦係合によって第1のハウジング構成要素に取り付けられる。第2のハウジング構成要素がコネクタリングを圧入する際に、血液フィルタは、この機械的結合によって第1のハウジング構成要素の突出部に接触してハウジング内に保持される。コネクタリングは、血液フィルタにスナップ嵌めされる。血液フィルタは、少なくとも部分的に血液リザーバの中に延びる。スナップ嵌めにより、血液フィルタは、容易かつ迅速にコネクタディスクから取り外し可能(分離可能)になる。血液フィルタのコネクタディスクへのスナップ嵌め、及び接合されたハウジング構成要素(例えば、複数のセクション)並びに接合されたハウジング構成要素によるコネクタディスクのプレス嵌めの両方は、典型的には、接着剤、粘着剤、溶接、テープ、機械的手段、ねじ、釘、リベットなどの締結具を用いない。その結果、ハウジングは容易に分解可能であり、コネクタディスク、及びそれによって保持される血液フィルタは、容易にアクセス可能であり、装置から取り外し可能であり、互いに容易に分離可能である。さらに、開示された装置100a及びシステム100は、その後、追加の締結具及び/又は締結手順なしで、元の構成に再組み立て可能である。
【0032】
上述の機械的摩擦嵌め、例えば、スナップ嵌め、プレス嵌め、圧縮嵌め、ねじ係合は、保持力がハウジング及びその中の構成要素を機械的にしっかりした係合に維持するのに十分であるような方法で、装置及びその構成要素を一緒に保持するので、接着剤又は溶着、ねじ、リベット、クリップなどの接着剤又は締結技術は必要ない。システム構成要素のこの係合は、システムの構成要素の故障のリスクを低減し、使用者が要望通りに血液フィルタを検査及び/又は取り外すためにシステム(例えば、システムのハウジング)を開くことを容易にする。
【0033】
例えば、血液フィルタは、完全な形でハウジングから容易に取り外し可能であり、臨床医によるフィルタ内の粒子の迅速な検査を可能にする。開示されたハウジングのこの構造は、ハウジング構成要素、又はハウジング構成要素内で使用される他の内部構成要素に溶着及び/又は接着され、そのため機械的故障を起こしやすい血液フィルタの問題を回避する。これは、コネクタディスク及び/又は血液フィルタが外れて、処置中に血流を妨げる可能性があり、患者に致命的な結果をもたらす可能性があるからである。
【0034】
いくつかの実施形態では、システムは、システムを通る血流を迅速かつ容易に減少させる又は調節することができるトリガーを有するトリガーハウジングを含む。トリガーハウジングは、典型的には、動脈血管アクセスポイントに取り付けられるチューブの受け入れを可能にする入口ポータルを有する。
【0035】
他の実施形態では、トリガーハウジングは、血液リザーバハウジングを含み、この血液リザーバハウジングは、静脈側チューブが取り付けられるポータルを有し、血液が血液リザーバから静脈アクセスポイントに出ることを可能にする。このシステムは、例えば、動脈側チューブを含み、この動脈側チューブは、トリガーハウジングの中に延び、血液リザーバの入口ポータル又は開口部と連通している。血液リザーバは、典型的には、静脈側チューブが接続する出口ポータルを有し、この出口ポータルは、典型的には、静脈アクセスポイントに接続する。
【0036】
トリガーハウジングは、例えば、ボタンを備えたトリガーレバーを含み、このトリガーレバーは、トリガーレバーをトリガーハウジング内に固定された動脈側チューブに係合させ、動脈側チューブを押し下げて、血液リザーバへの血流の一時的な減少を可能にするために押し下げることができる。また、トリガーレバーは、解除可能であり、動脈側チューブの弾力性と相まって、バネのような方法で係合を解除し、動脈側チューブが管腔サイズを広げるように適応するにつれて血液リザーバへの血流が増加し、トリガーレバーからすべての圧力が解除されると、管腔は元のサイズに戻る。
【0037】
(システムの説明)
本明細書を通して、近位、遠位、内側外側、長手方向、横方向、内向き、外向き、内側、外側、上側、下側、前側、後側、上側、下側、横方向、上流、下流、及びそれらの派生語などの方向及び向きへの言及がある。これらの方向及び向きへの言及は、本開示、及びその実施形態を説明及び解説するための例示的なものであり、いかなる意味においても限定するものではない。
【0038】
図1は、患者の循環系の動脈側から静脈側への血液のシャンティングを可能にするシステム100を示す。システム100は、長手方向軸LAが延びる近位端100ap及び遠位端100adを有するシャント100a(装置としても知られ、これらの用語は本明細書では互換的に使用される)を含む。長手方向軸LAは、近位端PEから遠位端DEまで延びており、これらの「近位」端及び「遠位」端の向きは、本明細書において、システム100及びその構成要素を説明する際に参照目的で使用される。
【0039】
シャント100aは、近位端100apで動脈側チューブ101に取り付けられ、シャント100aの遠位端100adで静脈側チューブ102に取り付けられる。シャント100aは、例えば、2つの結合可能なハウジング構成要素から形成されるハウジング100a’(又は本体、これらの用語は本明細書において互換的に使用される)を含む。これらの構成要素は、第1のハウジング構成要素又はトリガーハウジング103を含み、トリガーハウジング103は、リザーバハウジング105のコネクタリング104がトリガーハウジング103の外面上の対応するねじ山124付きフランジ125(
図2A-2C)に螺合係合(threadably engage)又はねじ留め(screw)することにより、第2のハウジング構成要素又はリザーバハウジング105(又は血液リザーバ)に取り付けられる。システム100は、血液が動脈入口点すなわち出発点から装置100aを通って(第1のハウジング(構成要素)103から第2のハウジング(構成要素)105へ)静脈入口点すなわち終了点まで運ばれるようになっており、この血流の進行方向は「下流」として知られている。例えば、トリガーハウジング103、コネクタリング104、及びリザーバハウジング105は、長手方向軸LAに沿って対称である。
【0040】
動脈側チューブ101は、システム100への血液流入のために、患者の動脈入口点(図示せず)に取り付く。このチューブ101は、例えば、摩擦係合によって、トリガーハウジング103の入口ポータル110に収まる(例えば、トリガーハウジング103に接合又は結合する)。静脈側チューブ102は、システム100から血液を排出するために、患者の静脈入口点(図示せず)に取り付く。また、チューブ102は、例えば、出口ポータル111上の摩擦係合によって、血液リザーバ105の出口ポータル111に取り付く(例えば、接合又は結合される)。
【0041】
トリガーハウジング103は、トリガーハウジング103の内部の、コネクタディスク117(
図2A-2C)から近位に延びる突起部141によって形成されるポートに接続するまで、それを通して延びるように、外向きに延び、動脈側チューブ101の遠位端がトリガーハウジング103に収まり入ることを可能にする入口ポータル110を含む。
【0042】
レギュレータとしても知られるトリガーレバー126(
図2A-2C、
図7A及び
図7Bにより詳細に示す)は、ボタン107及び係合アーム108を含み、そこから外向きに突出するタブ109が延びる。トリガーレバー126は、トリガーハウジング103に形成されたスロット120から外に、例えば上側(上部)に延びる。トリガーレベルボタン107の残りの部分は、トリガーハウジング103の内部空洞118にある。トリガーレベルボタン107の対向するアーム106aの各々に配置されたトリガーレバーピン106は、トリガーハウジング103の反対の位置に配置された取り付け穴112(1つのみ図示)から外に延びており、トリガーレバー126は、トリガーハウジング103に枢動可能に(回転可能に)取り付けられるようになっている。この枢動可能な取り付けにより、トリガーレバー126は、トリガーハウジング103の内側及び外側の様々な位置に、例えば手動で移動又は押し下げることができ、トリガーレバー126の位置は、トリガーハウジング103を通る血流及びそこから下流への血流を調節する。
【0043】
また、
図2A-2Cには、システム100の分解組立図が示されている。トリガーハウジング103は、入口ポータル110、上側近位面のスロット120、及び内部空洞118を含む。トリガーハウジング103は、ハウジング103の遠位端103x’において遠位リム103xで終端する。ねじ付きフランジ125は、トリガーハウジング103と血液リザーバ105とが一緒に接合されたときに、コネクタリング104の近位側移動のための移動制限として機能するように、遠位縁部103x’から、コネクタリング104よりも大径のリングストップ122まで、近位側に延びている。
【0044】
動脈側チューブ101は、トリガーハウジング103の入口ポータル110内に延び、そこでコネクタディスク117の突起部141に接続する(
図8A及び8Bに詳細に示す)。突起部141は、その近位端から遠位方向上向きに離れるように傾斜する外面140を含む。この接続は、
図8Bに示すように、動脈側チューブ101の内壁101aが、典型的には、円周方向突起部140aに及ぶことによって突起部141と係合し、確実な取り付けを形成するようになっている。
【0045】
動脈側チューブ101は、
図5に示すように、トリガーハウジング103の内部空洞118の底部又は下側に形成される表面110aに沿って、受け入れチャネル184に受け入れられる。表面110aは、動脈側チューブ101を所定位置に保持するために、動脈側チューブ101の一部の外径の底面及び側面の周囲にぴったりと適合するように形成されている。例えば、トリガーハウジング103の受け入れチャネル184の遠位底面110aの側面及び底面は、受け入れチャネル184を形成するように、管状のような円形である。受け入れチャネル184の表面110aは、例えば、動脈側チューブ101の形状を鏡映するが、例えば、約120度から270度の間の円弧に沿って(例えば、動脈側チューブ101の上端円周が受け入れチャネル表面184と接触しないようにして)、動脈側チューブ101にぴったりと嵌合する。
【0046】
図3には、長手方向軸線LAに沿って遠位方向(遠位端DEに向かって)に移動すると、トリガーハウジング103に着座するためのコネクタディスク117が詳細に示されている。コネクタディスク117は、例えば、断面が円形であり、内部空洞118の内側に広がる突出部180に対して着座することによって、トリガーハウジング103の内部空洞118の中に適合するようになっている。コネクタディスク117は、内側基部又はプレート117aと、例えば、外側プラットフォーム117cに向かって(長手方向軸線LAの近位端PEに向かって)近位方向外向きにテーパー付けされた外側シリンダ117bとを含む。外側プラットフォーム117cは、その周縁部150に沿って、例えば、第2のセグメント150bの間に2つの第1のセグメント150aを含み、第1セグメント150a及び第2セグメント150bは、異なる高さで円弧長に沿って延びている。第1のセグメント150aは、周縁部150に沿って、長手方向に延びる表面150a’で終端する溝によって形成される。
【0047】
図4及び5を参照すると、第1のセグメント150aは、セットになっている突出部180を受け入れて接触しており、各セットの突出部は同じ高さにある(空洞118内に同じ距離まで延びている)。突出部180のセットは、各第1のセグメント150aのそれぞれの溝内に収まるように、第1のセグメント150aを形成する溝の円弧長(距離)よりもわずかに小さい円弧長に沿って延びるように配置されている。各突出部セットの間には開放領域181がある。例えば、突出部セットは、突出部セット間の開放領域181と同様に、互いに対向して配置されている。
【0048】
例えば、突出部180は、セットで形成され、トリガーハウジング103上のフランジ125の位置に近接して、内側遠位面118の周りに円周方向に延びる。突出部180は、コネクタディスク117の第1のセグメント150aを捕捉して嵌合する大きさである。例えば、突出部180は、直線形状であり、例えば、ナイフ形状である。例えば、2つのセットの突出部があり、それぞれの第1のセグメント150a(例えば、その溝)の対応する円弧長よりわずかに小さい円弧長に広がる。
【0049】
各突出部セットの端部突出部180xは、第1のセグメント150aの溝内に嵌合するように、各第1のセグメント150aの長手方向に延びる面150a’に当接するか又は近接するように配置される。端部突出部180xは、コネクタディスク117が回転移動するのを防止するための停止面又は回転移動限界として機能し、コネクタディスク117は、長手方向軸LAに対して垂直に又は実質的に垂直にトリガーハウジング103の内部空洞118内に着座するようになっている。2つの開放領域181を有する2つの突出部セットが示されているが、突出部180を収容するための溝が第1のセグメント150aに存在し、コネクタディスク117が、実質的に回転自在で、トリガーハウジング103内の長手方向軸に対して垂直に又は実質的に垂直に突出部180に着座するようになっている場合は、対応する開放領域を有する任意の数の突出部セットが許容される。
【0050】
図2B、
図2C及び
図3に戻ると、コネクタディスク117は、突起部141がコネクタディスク117の基部117aの近位側117pから近位方向に延びるようになっている。突起部141は、例えば、突出部180のセットの間の開放領域181を通って延びている。
図8A及び8Bに詳細に示すように、基部117aには、基部117aを通って延びる開口129があり、開口129は突起部141の内腔142(
図8A及び
図8B)と連通すると共に血液フィルタ115の近位部においてハウジングリング113の開口部113aと整列し、トリガーハウジング103と血液リザーバ105との間に血液流路を形成するようになっている。
【0051】
コネクタディスク117の遠位側117dは、円周方向に間隔をあけて形成されその遠位面から外側に延びるフィンガー130を含み、フィンガー130は、そこに形成された窪み131を有する。窪み131は、それぞれのフィンガー130に付加的な摩擦力又は保持力を提供する。フィンガー130は、例えば、コネクタディスク117から遠位方向に内向きの傾斜又はテーパーで延び、フィンガー130の近位部分が血液フィルタのハウジングリング113よりもわずかに大きい直径を有し、一方、フィンガーの遠位端は血液フィルタ115のハウジングリング113の外径よりもわずかに小さい直径を有するようになっている。遠位端のフィンガー130によって形成されるこの小さな直径は、血液フィルタ115をコネクタディスク117内に締まり嵌めで固定する働きをする(例えば、基部117aに当接して又は近接して)。フィンガー130は、弾性材料であるため、これはバネのような挙動を示し、ハウジングリング113を用いることで、血液フィルタ115を上記の締まり嵌めで摩擦係合して保持する。
【0052】
血液フィルタ115のハウジングリング113は、開口部113aを含む。横方向の「U」字形スタビライザー114が、ハウジングリング113から延びている(例えば、遠位方向に)。U字形スタビライザー114は、フィルタ織物材料115aを支持する。血液フィルタ115は、血液フィルタ115が血液リザーバ105の対応する形状の内部空洞165(
図6)に着座するのに適した長さまで延びる。
【0053】
フィルタ織物材料115aは、例えば、ナイロン又はポリプロピレンのような血液適合性材料で作られたクロス織物モノフィラメントである。材料115aは、例えば約100ミクロン以上の粒子を捕捉するのに適している。他の適切なフィルタ織物材料は、例えば、約200ミクロン以上の粒子を捕捉し、さらに他のフィルタ織物材料は、例えば、約300ミクロン以上の粒子を捕捉する。フィルタ織物材料115は、ハウジングリング113の内周の周りに取り付けられ、スタビライザー114に取り付けられ、システム100を通って移動する(例えば、下流で、ハウジングリング113の開口部113xでフィルタ115に入る)流体又は血液がフィルタ115を通って血液リザーバ105に移動するチューブを形成することができる。
【0054】
図6を参照すると、血液リザーバ105は、ストップリングとしても知られる外向きに突出するリング160まで、近位方向外向きにテーパー付けされている。ストップリング160は、リザーバハウジングが(コネクタリング104を介して)トリガーハウジング103に接合されたときに、リザーバハウジング105の移動限界(例えば、停止面)として機能するように、トリガーハウジング103のリム103xと等しい直径を有する。ストップリング160から近位方向に延び、近位端164で終端するカラー161の直径は、ストップリング160より小さい。この寸法により、カラー161は、トリガーハウジング103及び血液リザーバ105が一緒に接合されてシャント100a用のハウジング100a’を形成する際に、コネクタリング117の外側円筒117bとトリガーハウジング103の内部空洞118の内壁118aとの間に嵌合することができる。カラー161の縁部164は、コネクタディスク117のプラットフォーム117cに当接するか又は近接している。
【0055】
出口ポータル111は、リザーバハウジング105から延び、近位方向に延びるフィンガーチューブ162を介してリザーバハウジング105の内部空洞165に開口しており、フィンガーチューブ162は、穴162aの周りに血液リザーバ105の遠位端の内面に形成されている。穴162aは出口ポータル111に通じている。出口ポータル111は、静脈側チューブ102を受け入れて保持する形状である。
【0056】
コネクタリング104は、リザーバハウジング105上で移動されるように設計されており、リガーハウジング103とリザーバハウジング105とが一緒に係合される際に、コネクタリング内側135は、トリガーハウジング103のねじ付きフランジ125上に受け入れられるようになっている。コネクタリング104の内側135には、機械的に確実な摩擦接続を形成するために、その表面に沿って、ねじ付きフランジ125に対して対応するねじが切られている。コネクタリング104は、窪み136を有し、これは使用者に把持面を提供する。コネクタリング104は、リングストップ122によって近位方向への移動が制限されており、このリングストップ122は、コネクタリング104の外径よりも大きい直径までトリガーハウジング103の周囲を円周方向に延びている。
【0057】
コネクタリング104は、その近位端136aがストップリング160上に嵌合することになるように、ストップリング160の直径「T」よりも大きい内径「V」を有する。距離「R」と「T」は、例えば、ほぼ等しく、ここで、「T」はストップリング160の外径であり、「R」はコネクタリング104の内径である。例えば、コネクタリング104の近位端136aは、コネクタリング104が(例えば、コネクタリング104が近位方向に移動しているときに)ストップリング160上を摺動するのに十分な幅を有する、様々な直径のセクションを含む大きさである。遠位端136bは、リングストップ122と面一で嵌合して係合する大きさである。
【0058】
図7A及び7Bは、トリガーレバー126を詳細に示す。トリガーレバー126は、例えば、射出成形のような技術によって、ポリマーのような弾性材料で形成された、例えば、単一部材である。トリガーレバー126は、トリガーレバー126の主要部分又は本体であるボタン107を含む。トリガーレバー126及びボタン107は、例えば、長手方向軸LA’に関して対称である。このトリガーレバー長手方向軸LA’は、例えば、装置100aの長手方向軸LAと平行であり、これと同一平面上にある。
【0059】
トリガーレバー126は、その近位面に形成されたタブ109を有する係合アーム108と、「U」字形の突出部128と、その遠位側のアーム106aの各々に形成された係合ピン106とを含む。タブ109は、近位面109aに沿ってアーム108から突出し、近位面109bに沿って、上向き方向で外向きにテーパー付けされている。アーム108は、弾性材料によってバネのような挙動をするようになっている。従って、アーム108は、近位面109aに沿って、トリガーハウジング103のスロット120の肩部120x(
図5)との当接からタブ109を解放するために、内向きに(例えば、遠位方向)に動かすこと、又は他の方法で屈曲させるか又は押すことができる。加えて、アーム108が下方に動かされると、アーム108は、内側に移動することになり、その外面109bに沿ったタブ109がスロット120の肩部120xに沿ってスライドすると、タブ109が十分に下方に移動してスロット120の肩部120xを超えると、(トリガーレバー126の上方への移動が制限されるように)、アーム108は、所定の位置に跳ね返る(近位方向に移動する)。また、弾性材料は、ピン106をトリガーハウジング103の取り付け穴112にはめ込むこと又は外すことを可能にする。
【0060】
トリガーレバー126の下部にあるU字形突出部128は、トリガーハウジング103の内部で、動脈チューブ101に様々な大きさの圧力を加える(典型的には、手動で加える)ために使用され、例えば、管腔101cをより小さいサイズに変形させることを含む、動脈チューブ101の内腔101cの寸法を変化させて(例えば、動脈チューブ101の直径を減少させて)、そこを通る血流(及び結果的に下流側の、血液フィルタ115、リザーバ105、及び最終的に静脈側チューブ102を通る血流)を調節するようになっている。例えば、「U」字形突出部128は、下面幅「Q」を有するように形成され、ここで「Q」は動脈側チューブ101の幅の100%から40%である。
【0061】
システム100のトリガーハウジング103、コネクタリング104、血液リザーバ105、血液フィルタのリング113及び横方向スタビライザー114、ならびにコネクタディスク117は、硬質ポリカーボネート又は他の適切なプラスチックなどの適切な材料で形成、成形又は作製することができる。これらの構成要素は、典型的には、射出成形及び他のポリマー成形技術などのプロセスによって、単一部材として形成される(随意的に、血液フィルタのリング113及びスタビライザー114が別々に形成され、接着剤及び/又は溶着によって一緒に接合される)。血液フィルタ115及びトリガーレバー126を含む構成要素は、例えば、スナップ嵌め、プレス嵌め、及び/又は圧縮嵌めを含む1つ又は複数のタイプの摩擦嵌めで嵌め込まれ、接着又は溶着の必要性をなくし、システムの構成要素の故障のリスクを低減し、必要に応じて、使用者がシステムを開放して血液フィルタを検査又は取り外すことを容易にする。上述の構成要素は、例えば、着色された、塗装された、透明である又は不透明である、又はこれらの仕上げの組み合わせとすることができる。
【0062】
また、例えば、動脈側チューブ101及び静脈側チューブ102は、Tygon Medical/Surgical Tubing S-50-HLのような可撓性ポリマー材料で作ることができ、動脈及び静脈のそれぞれにアクセスするための瀉血針が取り付けられている。
【0063】
(システム動作)
図8A及び8Bは、動脈チューブ101(トリガーハウジング103内)から、コネクタディスク117を通り、血液フィルタ115(血液リザーバー105内)への血流を詳細に示す図である。
【0064】
図8Aは、コネクタディスク117と、コネクタディスク117の近位側の動脈側チューブ101、及びコネクタディスク117の遠位側の血液フィルタ115との間の接続を示す。コネクタディスク117の基部117aの開口129は、突起部141の内腔142及び動脈側チューブ101の内腔101cと整列する。流体(例えば、血液)の流れAAは、動脈側チューブ101の内腔101cを通って、コネクタディスク117の開口129を通り、血液フィルタ115のハウジングリング113の開口部113aを通って、下流側に流れる前に、血液リザーバ105(例えば、血液リザーバ105の内部空洞165)の中に移動するように示されている。
【0065】
図8Bは、
図8Aの断面図である。流体又は血液の流れ「AA」は、動脈側チューブ101の内腔101cを通って、突起部141の内腔142に入り、次いでコネクタディスク117の基部117aの開口129を通って、下流側に移動するように示されている。次に、血液は下流側に流れ、血液フィルタ115のハウジングリング113を通り、血液フィルタ115のフィルタメッシュ115aを通って、血液リザーバ105に流入する。血液リザーバ105から流出する血液は、出口ポータル111(これには、静脈側チューブ102が取り付けられている)を通り、これを通じて血液が静脈系を通って循環系に戻される。
【0066】
図9A-9Dは、動脈側チューブ101及び下流側の動脈側チューブ101の通る血流量(例えば、血流速度)を制御するために、トリガーハウジング103内に受け入れられた動脈側チューブ101上のトリガーレバー126の動作を示す。これらの図において、血液の流れは下流方向に示され、「AA」で示される。トリガーレバー126は、複数の位置の間で調節可能であり、各位置は、動脈チューブ101に圧力を加える又は圧力を解放する突出部128を移動させて、内腔サイズ/直径を制御する。内腔サイズ/直径は、動脈チューブ101を通る血流速度に対応する。
【0067】
図9Aにおいて、トリガーレバー126の係合アーム108のタブ109は、トリガーハウジング103の肩部120xの上にある。動脈チューブ101の内腔101cは、その突出部128を介してトリガーレバー126が動脈チューブ101に圧力を加えていないため、最大直径にある。内腔101cの内径はXに等しいQ1である。
【0068】
図9Bにおいて、タブ109は、矢印Mで表される力によって、肩部120xの下方に移動しており、この力は、手動の力とすることができ、突出部128は、動脈側チューブ101の外面101bに衝突し、外面101bを内側に移動させ、例えば、内腔が小さくなるようにチューブ101を変形させるようになっている。内腔101cの直径は「X」から「Q2」へと減少し、血流速度が低下する。
【0069】
図9Cは、
図9Bの線9C-9Cに沿った断面図である。この図において、距離「D」は、トリガーハウジング103の内側に位置する動脈側チューブ101の外径を表し、「E」は、トリガーレバー126の「U」字型突出部128の底面の幅を表す。いくつかの実施形態では、長さ「E」は、距離「D」の40%から100%である。その結果、血流量(血流速度)は、遅くすることによって調節される。
【0070】
図9Dにおいて、トリガーレバー126は、矢印Mで表される力(例えば、手動の力)によって完全に押し下げられ、内腔101cの直径を「X」からゼロまで完全に減少させ、動脈チューブ101を閉じるか、さもなければ掴み取る。動脈チューブ101を通る血流はこれで停止する。
【0071】
本明細書に記載の実施形態は、主にシャントによる血液移送に対処するが、本明細書に記載の方法及びシステムは、他の体液の移送、ならびに体内からの流体の排出、及び体内への流体の注入などの他の用途にも使用することができる。
【0072】
上述した実施形態は例示的に挙げられるものであり、本発明は、本明細書で特に示され記載されたものに限定されないことを理解されたい。むしろ、本発明の範囲は、本明細書に記載された様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、ならびに上述の説明を読むことで当業者が想定するであろう、従来技術に開示されていない、それらの変形例及び変更例を含む。参照により本出願に組み込まれた文書は、本明細書において明示的又は暗黙的になされた定義と矛盾する方法でこれらの組み込まれた文書において定義された用語がある限り、本明細書における定義のみを考慮すべきであることを除き、本出願の不可欠な一部とみなされる。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャントであって、
血液流入用の第1の導管を受け入れるように構成された第1のハウジングであって、前記第1の導管は、前記第1のハウジング内に延びる、第1のハウジングと、
前記第1の導管と通じるために前記第1のハウジング内に延び、前記第1の導管を通る血流速度を制御するためのレギュレータと、
前記第1のハウジングから取り外し可能に取り付け可能な第2のハウジングと、
を備え、
前記第2のハウジングは、前記第1の導管からの血液を受け入れて保持するための空洞を備えると共に第2の導管を受け入れるように構成されており、前記第2の導管は、前記第2の導管を通る血液の流出のために前記空洞と連通するように構成されている、シャント。
【請求項2】
前記第2のハウジングの前記空洞の中に少なくとも部分的に延びる血液フィルタをさらに備え、前記第2のハウジング内の前記血液フィルタは、前記第1のハウジング内の前記第1の導管と連通する、請求項1に記載のシャント。
【請求項3】
前記第1のハウジングを前記第2のハウジングに結合するためのコネクタをさらに備え、前記第2のハウジングは、前記第1のハウジングから取り外し可能に取り付けられるようになっている、請求項1に記載のシャント。
【請求項4】
前記第1のハウジング及び前記コネクタは、ねじ結合部を形成し、前記第1のハウジングと前記第2のハウジングは、互いに取り外し可能に取り付け可能になっている、請求項3に記載のシャント。
【請求項5】
前記レギュレータは、複数の位置の間で調節可能であり、前記位置の各々は、前記第1の導管を通る血流速度に対応する、請求項1に記載のシャント。
【請求項6】
前記レギュレータは、トリガーレバーを含み、前記トリガーレバーは、前記第1のハウジング内で移動可能に取り付けられている、請求項5に記載のシャント。
【請求項7】
血液が前記第1のハウジングの中に流入するために前記第1のハウジングを貫通して延びる前記第1の導管をさらに含む、請求項1に記載のシャント。
【請求項8】
前記第2のハウジングの前記空洞からの血液流出のために、前記空洞と連通する第2の導管をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のシャント。
【請求項9】
前記第1のハウジングに着座するためのコネクタディスクをさらに含み、前記コネクタディスクは、反対側に配置された第1の側面及び第2の側面を含み、前記第1の側面と前記第2の側面との間に延びる開口を含み、前記コネクタディスクは、前記第1の側面の前記第1の導管と、前記第2の側面の前記血液フィルタとを接続し、これにより、前記第1の導管は、前記開口を介して前記血液フィルタと連通し、前記シャントを通る血流の経路を形成するようになっている、請求項2に記載のシャント。
【請求項10】
前記コネクタディスクは、少なくとも摩擦嵌めで第1の導管と接続するための、前記開口と一致して前記第1の側面から延びる導管コネクタと、前記開口の周りに外向きに延びると共の円周方向に配置された複数のフィンガーとを含み、前記フィンガーは少なくともスナップ嵌めで血液フィルタを受け入れるようになっており、これにより、前記第1の導管、前記導管コネクタ、前記開口及び前記血液フィルタは、シャントを通る血流のための経路を形成するように位置合わせされる、請求項9に記載のシャント。
【請求項11】
前記コネクタディスクを受け入れて前記第1のハウジング内に着座させるために、前記第1のハウジングの内部空洞の中に延びる複数の突出部をさらに備え、前記第1のハウジングが前記第2のハウジングに取り外し可能に取り付けられる場合、前記コネクタディスクは、前記複数の突出部と前記第1のハウジングの中に延びる前記第2のハウジングの一部との間のプレス嵌めによって前記第1のハウジング内に保持される、請求項9に記載のシャント。
【請求項12】
医療装置を組み立てる方法であって、
シャントを提供するステップであって、
前記シャントは、
血液流入用の第1の導管を受け入れるように構成された第1のハウジングと、
前記第1の導管と通じるために前記第1のハウジング内に延び、前記第1の導管を通る血流速度を制御するためのレギュレータと、
前記第1のハウジングから取り外し可能に取り付け可能な第2のハウジングであって、前記第2のハウジングは、前記第1の導管からの血液を受け入れて保持するための空洞を備えると共に第2の導管を受け入れるように構成されている、第2のハウジングと、
を備える、前記シャントを提供するステップと、
前記第1のハウジングにおいて前記第1の導管を前記シャントに取り付けるステップと、
前記第2のハウジングにおいて第2の導管を前記シャントに取り付けるステップと、
を含み、これにより、前記第1の導管と前記第2の導管は、前記シャントを介して互いに連通する、
方法。
【国際調査報告】