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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(54)【発明の名称】単一点変異の検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20240215BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240215BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240215BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240215BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240215BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240215BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20240215BHJP
【FI】
G01N21/65
G01N21/64 F
G01N33/53 M
C12N15/09 Z ZNA
C12Q1/02
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6816 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550728
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 GB2021052835
(87)【国際公開番号】W WO2022090747
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】2017378.7
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522259751
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ バーミンガム
(71)【出願人】
【識別番号】523163886
【氏名又は名称】ウィグナー リサーチ センター フォー フィジックス
(71)【出願人】
【識別番号】523163897
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ペーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フォッシー,ジョン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレシュ,ミクロス
(72)【発明者】
【氏名】グエン,フイ ヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ホロム,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,ジェームス エイチ.アール.
(72)【発明者】
【氏名】シク,アッティラ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,フェレンツ
【テーマコード(参考)】
2G043
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043EA03
2G043FA06
2G043KA01
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA17
4B063QQ03
4B063QQ52
4B063QR56
4B063QR90
4B063QS34
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、ラマン活性部分が組み込まれたオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を含み、ラマン活性部分がオリゴヌクレオチド又はそのオリゴヌクレオチドの塩基に組み込まれている遺伝子プローブ、並びに標的核酸中の単一点変異ヌクレオチドを決定するための関連する方法、使用、キット及び組成物に関する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラマン活性部分が組み込まれたオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を含む遺伝子プローブであって、前記ラマン活性部分が前記オリゴヌクレオチド又はそのオリゴヌクレオチドの塩基に組み込まれている遺伝子プローブ。
【請求項2】
前記遺伝子プローブが、標的核酸中の単一標的化ヌクレオチドのアイデンティティを決定するのに適する、請求項1に記載の遺伝子プローブ。
【請求項3】
前記ラマン活性部分が、1800~2800cm-1の細胞サイレント範囲内の周波数で共鳴する部分を含むか、又はそれからなる、請求項1又は2に記載の遺伝子プローブ。
【請求項4】
前記ラマン活性部分が、ジイン基、アルキン基、アジド基、ニトリル/シアノ基、金属-カルボニル錯体、炭素-13標識体、及び重水素基から選択される1以上の官能基を含むか、又はそれらからなる、請求項1~3のいずれかに記載の遺伝子プローブ。
【請求項5】
前記ラマン活性部分が、アルキン基を含むか、又はそれからなる、請求項1~4のいずれかに記載の遺伝子プローブ。
【請求項6】
前記ラマン活性部分が、塩基に組み込まれて、ラマン活性分子を形成する、請求項1~5のいずれかに記載の遺伝子プローブ。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチド中にラマン活性分子を含み、前記ラマン活性分子が式II~IXのいずれか1つを含むか又はそれからなり、場合により、前記アルキン基が代替ラマン活性部分で置換されている、請求項1~6のいずれかに記載の遺伝子プローブ。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドが10個以上のヌクレオチドを含む、請求項1~7のいずれかに記載の遺伝子プローブ。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドが20量体鎖である、請求項1~8のいずれかに記載の遺伝子プローブ。
【請求項10】
前記ラマン活性部分、又は前記ラマン活性部分を含むラマン活性分子が、前記オリゴヌクレオチドが標的核酸とハイブリダイズ/二重鎖化するときに、調べられるヌクレオチドと対向する位置に位置付けられる、請求項1~9のいずれかに記載の遺伝子プローブ。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチドが、
P21オリゴヌクレオチド:5’-AGTCGCGXCTCAGCT-3’、又はその相補配列;
BRAF V600Eオリゴヌクレオチド:5’-AGATTTCXCTGTAGC-3’、又はその相補配列;
KRASオリゴヌクレオチド:5’-TACGCCAXCAGCTCC-3’、又はその相補配列
を含むか、又はそれらからなり、それらの中のXが、前記ラマン活性部分を含むヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の部位である、請求項1~10のいずれかに記載の遺伝子プローブ。
【請求項12】
遺伝子プローブのアレイであって、別々のウェルで、又は別々の表面上又は同じ表面の空間的に分離された領域に提供される請求項1~11のいずれかに記載の2以上の遺伝子プローブを含む遺伝子プローブのアレイ。
【請求項13】
標的核酸のプール中の標的核酸中の単一点変異ヌクレオチドを決定する方法であって、
-単一点変異ヌクレオチドを検出することができ、
前記標的核酸と実質的に相補的なオリゴヌクレオチドを含む遺伝子プローブであって、
前記遺伝子プローブのラマン活性部分が、調べられる標的核酸のヌクレオチドと対になるように配置される塩基位置にある請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子プローブを提供すること;
-前記遺伝子プローブが前記標的核酸にハイブリダイズするように、前記遺伝子プローブと前記標的核酸のプールとを接触させること;
-二重鎖形成によって生じるラマン周波数シフトをラマン分光法により測定すること
を含む方法。
【請求項14】
前記標的核酸のラマン周波数シフトが、既知の参照標準、及び/又は既知の対照分子と比較される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記参照標準が、外部較正バンドを提供する窒素ガスに基づく、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記標的核酸のプールが、細胞、細胞溶解物、体液試料、又は核酸試料を含む試料中に存在する、請求項13~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記標的核酸が、疾患若しくは病態又は既知の一塩基変異と関連付けられる、請求項13~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記標的核酸のプール中の標的核酸の一塩基アイデンティティを決定するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子プローブの使用。
【請求項19】
対象における単一点変異と関連付けられる病態の診断及び/又は予後診断のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子プローブの使用。
【請求項20】
前記標的核酸のプール中の標的核酸の単一点変異の検出及び/又は比率の分析のためのキットであって、
-請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子プローブであって、前記ラマン活性部分が、調べられる前記標的核酸のヌクレオチドと対になるように配置される位置にある遺伝子プローブ;及び
-前記プローブ濃度を決定するための内部参照標準であって、前記液体中に既知濃度の分子を含む内部参照標準
を含むキット。
【請求項21】
請求項1~11のいずれか一項に記載の複数の遺伝子プローブを含む組成物。
【請求項22】
対象における既知の単一点変異と関連付けられる病態の状態を決定する方法であって、
前記単一点変異を含み得る標的核酸を含む前記対象からの試料を提供すること;
請求項12~17のいずれかに記載の方法に従って、前記単一点変異を有していない標的核酸に対する、前記試料中の単一点変異の存在又は割合を決定すること、
を含み、
前記単一点変異の存在又は割合が、前記対象における前記単一点変異と関連付けられる病態の状態を示す方法。
【請求項23】
ラマン分光アッセイで外部較正バンドを提供するためのNガスの使用。
【請求項24】
ラマン分光アッセイが、外部較正バンドを提供するためのNガスの使用と共に試料にて行われ、場合により、前記Nガスが空気中の周囲Nガスである、ラマン分光法の方法。
【請求項25】
核酸のプール中の標的核酸を検出する方法であって、
-前記標的核酸を検出することができ、
前記標的核酸と実質的に相補的なオリゴヌクレオチドを含む遺伝子プローブであって、
前記遺伝子プローブのラマン活性部分が、調べられる標的核酸のヌクレオチドと対になるように配置される塩基位置にある請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子プローブを提供すること;
-前記遺伝子プローブが前記標的核酸にハイブリダイズするように、前記遺伝子プローブと前記核酸のプールとを接触させること;
-二重鎖形成によって生じるラマン周波数シフトをラマン分光法により測定すること
を含む方法。
【請求項26】
試料中のマイクロRNAなどの標的核酸を検出するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子プローブの使用。
【請求項27】
本明細書に記載の低分子ノンコーディングRNAの存在と関連付けられる、対象の脳震盪の診断及び/又は予後診断のための、例えば対象の唾液における請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子プローブの使用。
【請求項28】
試料中の標的核酸の検出及び/又は分析のためのキットであって、
-請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子プローブであって、前記ラマン活性部分が、調べられる標的核酸のヌクレオチドと対になるように配置される位置にある遺伝子プローブ;及び
-場合により、前記プローブ濃度を決定するための内部参照標準であって、液体中に既知濃度の分子を含む内部参照標準
を含むキット。
【請求項29】
対象における標的核酸と関連付けられる病態の状態を決定する方法であって、
前記単一点変異を含み得る標的核酸を含む、又は潜在的に含む前記対象からの試料を提供すること;
請求項1~28のいずれかに記載の方法に従って前記標的核酸の存在又はレベルを決定すること
を含み、
前記標的核酸の存在又はレベルが、前記対象における前記標的核酸と関連付けられる病態の状態を示す方法。
【請求項30】
核酸二重鎖であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の遺伝子プローブを含む核酸二重鎖が標的核酸と二重鎖になり、前記遺伝子プローブ内に組み込まれた前記ラマン活性部分が前記標的核酸の塩基と対をなす塩基である核酸二重鎖。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
遺伝子配列の単一点変異(一塩基多型すなわちSNPを含む)は、アルツハイマー病や特定の種類の癌などの様々なヒトの疾患のマーカーである。個別化医療の実用化のために、高い特異性と感度で単一遺伝子座の点変異を検出することが継続的に必要とされている。異なるDNA塩基を識別できるプローブの設計は、遺伝的要素を有するそのような疾患の診断を改善することを目指している研究分野である。
【背景技術】
【0002】
単一点変異を検出するためのいくつかの市販の又は文献に基づく方法がある。これらには、酵素ベースのアプローチ、及び蛍光アッセイが含まれる。酵素ベースの方法は非常に正確であるが、時間と費用がかかる。したがって、点変異体の検出の最も一般的な方法は、ハイブリダイゼーションアッセイと、通常は蛍光色素タグ付きDNAベースのプローブの使用を伴う。このような塩基識別(ハイブリダイゼーション)システムの主な課題は、検出限界を下げることと検出速度を上げることの両方である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
蛍光色素標識アッセイは、生体試料中の自動蛍光や光退色という固有の制限に悩まされる可能性がある。電気化学的アッセイは、蛍光色素標識法に比べていくつかの利点があり、主なものは検出限界が100フェムトモルまで低いことである。電界効果トランジスタ(FET)の使用は、実際に検出限界を高め、高感度のDNAセンサーをチップに搭載する可能性を提供する。この分野では有望な開発が行われているが、特異性のさらなる向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明の目的は、改良された単一点変異検知法を提供し、自動蛍光及び/又はバックグラウンド蛍光の固有の制限の現在の課題を克服し、そのような単一点変異検知のための改良されたプローブを提供することである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、ラマン活性部分が組み込まれたオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体を含む遺伝子プローブであって、ラマン活性部分がオリゴヌクレオチド又はその類似体の塩基に組み込まれている遺伝子プローブが提供される。
【0006】
該遺伝子プローブは、標的核酸中の単一標的化ヌクレオチドのアイデンティティを決定するためのものであり得る。該遺伝子プローブは、マイクロRNAなどの核酸のアイデンティティ又は存在を決定するためのものであり得る。
【0007】
ラマン分光法は、化学反応時の結合スイッチング、立体配座変化、及び非結合(静電、双極子、水素結合など)相互作用による分子の振動特性の変化によって引き起こされる光散乱を測定する。水素結合は、核酸(DNA及びRNA)ハイブリダイゼーションにおける塩基対形成中に重要な役割を果す。本発明は、高い特異性を有するDNAハイブリダイゼーションを検出するためのラマン分光法の使用を特定する。この分野でラマン分光法を使用する際の問題は、通常、実際の生体状況での分子の濃度が低いことである。しかし、標識されていない分子のラマンタグと誘導されたラマン分光法の提供により、生物学的プロセスのリアルタイムイメージングが可能になった。さらに、本発明は、標的鎖結合効率の違いではなく、むしろ二重鎖形成時に経験する環境の違いを通じて異なる読み出し情報を生成するシステムを使用する。これにより、任意の選択された固定温度(例えば、室温又は生理学的温度)で検知を行うことができ、二重鎖が形成されているかどうか、及び一致又は不一致の塩基がプローブ塩基に提示されているかどうかを判断することができる。
【0008】
ラマン活性部分
一実施形態では、ラマン活性部分は、1800~2800cm-1などの細胞サイレント範囲内の周波数で共鳴する分子/部分を含むか、又はそれからなる。ラマン活性部分は、およそ2050~約2250cm-1の領域の周波数で共鳴し得る。
【0009】
ラマン活性部分は、ジイン基、アルキン基、アジド基、ニトリル/シアノ基、金属-カルボニル錯体、炭素-13標識体、及び重水素基から選択される1以上の官能基を含むか、又はそれらからなり得る。一実施形態では、ラマン活性部分は、アルキン基を含むか、又はそれからなる。これらの基の複数の共役形態が提供されてもよく、例えばラマン活性部分は、複数の共役アルキン並びにアルキンの複数の場合を含むか、又はそれらからなり得る。当業者なら、他のラマン活性部分が使用され得ることを認識する。
【0010】
塩基又は塩基類似体に組み込まれたラマン活性部分は、共に「ラマン活性分子」を形成し得る。特に、「ラマン活性分子」は、アルキン基などのラマン活性部分を含むヌクレオチド塩基又はその類似体を含むか、又はそれからなり得る。
【0011】
一実施形態では、ラマン活性分子は、核酸塩基のアルキン誘導体を含むか、又はそれからなる。核酸塩基のアルキン誘導体は、オリゴヌクレオチド配列に組み込まれ得る。ラマン活性分子は核酸塩基を置換し得る(すなわち、選択された位置での正常な核酸塩基に加えてオリゴヌクレオチド骨格上に固定されなくてよい)。
【0012】
別の実施形態では、ラマン活性分子は、核酸塩基の複数の共役アルキン誘導体を含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、ラマン活性分子は、核酸塩基のジイン誘導体を含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、ラマン活性分子は、核酸塩基のアジド誘導体を含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、ラマン活性部分は、核酸塩基のニトリル誘導体を含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、ラマン活性部分は、核酸塩基の金属-カルボニル錯体誘導体を含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、ラマン活性部分は、核酸塩基の重水素標識分子誘導体を含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、ラマン活性部分は、核酸塩基の炭素-13標識誘導体を含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、ラマン活性部分は、核酸塩基のシアノ誘導体を含むか、又はそれからなる。用語「核酸塩基の誘導体」は、本明細書に記載のそれらのラマン活性部分などのラマン活性部分を含むように改変された核酸塩基を意味することが意図される。
【0013】
アルキンは、例えば、式Iに従って、5-エチニル-dU-CEホスホロアミダイトの部分としてオリゴヌクレオチドに組み込むことができる。これには、標準的なプロトコルによってオリゴヌクレオチド配列への即座の組み込みを可能にする官能性の例が含まれ、描かれたホスホロアミダイト及びDMT(N,N-ジメチルトリプタミン)基が例として挙げられるが、これらに限定されない。
【化1】
【0014】
オリゴヌクレオチドの骨格に5-エチニル-dU-CEホスホロアミダイトを組み込むと、DMT基が喪失し、例えば、式IIに従って、ホスホロアミダイトが酸化されて、DNAの骨格に一般的にみられるリンVになる。
【化2】
【0015】
当業者なら、5-エチニル-dU-CEホスホロアミダイトが、その中にラマン活性アルキン部分を有するウラシルホモログを提供することを認識するであろう。そのような分子は、標的核酸への遺伝子プローブのハイブリダイゼーションにおいて自然にアデニンと塩基対をなす。反対のチミジン、シトシン又はグアニンと塩基対形成を試みると、不一致と見なされる。5-エチニル-dU-CEホスホロアミダイトは、例えばRNAにおいてはウラシル、又は例えばDNAにおいてはチミジンを置換し得る。一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、式IIに提供される構造を含む。
【0016】
式III~IXは、ラマン活性分子としてオリゴヌクレオチドに組み込まれるアルキン含有塩基類似体の代替例を提供する。式IIIのアルキン類似体は、市販のEdU(チミン(T)の代理)に由来する。式IVのアルキン類似体は、EdUの合成可能な異性体(チミン(T)の代理)に由来する。式Vのアルキン類似体は、合成可能なアルキン含有シトシン(A)類似体である。式VIのアルキン類似体は、合成可能なアルキン含有シトシン(C)類似体である。式VIIのアルキン類似体は、合成可能なアルキン含有シトシン(A)類似体である。式VIIIのアルキン類似体は、アルキン含有シトシン(C)類似体の合成可能な異性体である。式IXのアルキン類似体は、合成可能なアルキン含有シトシン(G)類似体である。
【化3】
【0017】
オリゴヌクレオチド中のラマン活性分子は、本明細書に記載の式II~IXのいずれか1つを含むか、又はそれからなり得る。オリゴヌクレオチド中のラマン活性分子は、アルキン基が、例えば、本明細書に記載のものから選択される代替ラマン活性部分で置換されていることを除いて、本明細書に記載の式II~IXのいずれか1つを含むか又はそれからなり得る。オリゴヌクレオチド中のラマン活性分子は、アルキン基が異なる位置(好ましくはオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション能に影響を及ぼさない位置)に位置付けられ、場合により、アルキン基が、例えば、本明細書に記載のものから選択される代替ラマン活性部分で置換され得ることを除いて、本明細書に記載の式II~IXのいずれか1つを含むか、又はそれからなり得る。一実施形態では、オリゴヌクレオチド中のラマン活性分子は、本明細書に記載の式IIを含むか、又はそれからなる。オリゴヌクレオチド中のラマン活性分子は、アルキン基が、例えば、本明細書に記載のものから選択される代替ラマン活性部分で置換されていることを除いて、本明細書に記載の式IIのいずれか1つを含むか、又はそれからなり得る。一実施形態では、オリゴヌクレオチド中のラマン活性分子は、本明細書に記載の式IIIを含むか、又はそれからなる。オリゴヌクレオチド中のラマン活性分子は、アルキン基が、例えば、本明細書に記載のものから選択される代替ラマン活性部分で置換されていることを除いて、本明細書に記載の式IIIのいずれか1つを含むか、又はそれからなり得る。
【0018】
一実施形態では、複数(すなわち2以上)のラマン活性部分が遺伝子プローブ内に提供される。例えば、単一のラマン活性分子が提供されてもよく、これは、その中に組み込まれた2以上のラマン活性部分を有してよい。単一のラマン活性分子に、その中に組み込まれた1以上のラマン活性部分を提供してよい。
【0019】
一実施形態では、遺伝子プローブのオリゴヌクレオチドは、例えば、標的核酸中の複数の標的ヌクレオチドを調べるための、複数(すなわち2以上)のラマン活性分子、部分又は単位(例えば、ラマン活性部分を含む2以上の塩基誘導体)を含む。複数のラマン活性分子、部分又は単位は、最大5、10、15又は20個のラマン活性分子、部分又は単位であり得る。別の実施形態では、複数のラマン活性分子、部分又は単位は、最大20個のラマン活性分子、部分又は単位であり得る。各ラマン活性分子は、互いに異なるラマン活性部分を有してよい。
【0020】
オリゴヌクレオチド
当業者なら、オリゴヌクレオチドが相補的な標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションを提供するのに十分な長さであり得ることを認識するであろう(これは、標的とされる特異的点変異以外で相補的であり得る)。該オリゴヌクレオチドは、10個以上のヌクレオチドを含み得る。該オリゴヌクレオチドは、15個以上のヌクレオチドを含み得る。例えば、該オリゴヌクレオチドは、10~1000ヌクレオチド、10~500ヌクレオチド、15~1000ヌクレオチド、15~500ヌクレオチド、10~60ヌクレオチド、又は10~50、又は10~40、又は12~30、又は15~25ヌクレオチドからなり得る。一実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約10~90ヌクレオチドであり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約10~100ヌクレオチド、又はそれ以上であり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも約12ヌクレオチドであり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約15ヌクレオチドであり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約30ヌクレオチド以下であり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約200ヌクレオチド以下であり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約1000ヌクレオチド以下であり得る。
【0021】
該オリゴヌクレオチドは、一実施形態では、長さが約150ヌクレオチド以下であり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約100ヌクレオチド以下であり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約90ヌクレオチド以下であり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約40ヌクレオチド以下であり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約30ヌクレオチド以下であり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約20ヌクレオチド以下であり得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、長さが約10~約30ヌクレオチドであり得る。
【0022】
最も好ましくは、該オリゴヌクレオチドは、約20量体鎖であってよく、好ましくは合成効率(より短い)及び特異性(より長い)の理想的なシナリオを指す。これは、遺伝子プローブとその標的のハイブリダイゼーション時に、一致と単一の不一致の違いを見る良い機会を提供する。修飾が20量体鎖の中央にある場合、ハイブリダイゼーション時に、遺伝子プローブと一致する鎖と不一致の鎖の間により大きな検出可能な違いがあるが、これは任意の所定の長さの配列に沿った任意のポイントでのラマン活性プローブの組み込みを排除しない。
【0023】
該オリゴヌクレオチドは、DNAを含むか、又はそれからなり得る。該オリゴヌクレオチドは、RNAを含むか、又はそれからなり得る。一実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、オリゴリボヌクレオチドである。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、DNA又はRNAと同等の相補性を有する機能性核酸の類似体又は誘導体などの核酸の類似体又は誘導体を含むか、又はそれからなり得る。該オリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、及び/又はヌクレオチド類似体の組み合わせを含み得る。核酸類似体は、PNA又はLNAを含み得る。
【0024】
ラマン活性部分、又はラマン活性部分を含むラマン活性分子は、オリゴヌクレオチドの末端に位置していなくてもよいことを除いて、オリゴヌクレオチド内の任意の適切な位置に位置付けられ得る。ラマン活性部分、又はラマン活性部分を含むラマン活性分子は、オリゴヌクレオチドが標的核酸とハイブリダイズ/二重鎖化されるときに、調べられるヌクレオチド(例えば、単一点変異又は潜在的な単一点変異)に対向する位置に位置付けられ得る。一実施形態では、ラマン活性部分、又はラマン活性部分を含むラマン活性分子は、オリゴヌクレオチドの実質的に中央に(例えば、15量体についてはヌクレオチドの8位又はそれに隣接し、さらに例えば、20量体についてはヌクレオチド10又は11位又はそれに隣接し、さらに例えば、21量体についてはヌクレオチド11位又はそれに隣接して)位置付けられる。隣接は、すぐ隣のヌクレオチドであると理解される。オリゴヌクレオチドの実質的中央とは、中央2、中央3、中央4、中央5、又は中央6個の塩基の1つであり得る。
【0025】
該オリゴヌクレオチドは、既知/事前に決定された配列を含み得る。該オリゴヌクレオチドは、標的核酸配列と相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、ラマン活性部分、又はラマン活性部分を含むラマン活性分子の位置を除いて、標的核酸配列に100%相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、標的核酸配列と少なくとも約95%、又は少なくとも約90%相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、標的核酸配列と少なくとも約80%相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、例えばオリゴヌクレオチドの設計に従って一致又は不一致であり得るラマン活性部分を含む塩基位置(例えば、ラマン活性部分を含むラマン活性分子の位置)を除いて、オリゴヌクレオチドの全長に沿って標的核酸配列と実質的に相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、少なくとも約8個の連続するヌクレオチドの長さに沿って標的核酸配列と相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、少なくとも約10個の連続するヌクレオチドの長さに沿って標的核酸配列と相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、少なくとも約14個の連続するヌクレオチドの長さに沿って標的核酸配列と相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、少なくとも約15個の連続するヌクレオチドの長さに沿って標的核酸配列と相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、少なくとも約20個の連続するヌクレオチドの長さに沿って標的核酸配列と相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズすることができるように標的核酸配列と十分に相補的であり得る。該オリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下などで標的核酸にハイブリダイズし得る。実際に、単一点変異のラマン活性プローブは、単一点変異を示す配列と一致するか、又はその単一点変異との不一致を含む場合があり、いずれの場合も、一致シナリオと不一致シナリオの差は、ラマン分光法によって検出される診断上の違いを提供する。
【0026】
一実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、P21オリゴヌクレオチド:5’-AGTCGCGXCTCAGCT-3’(又はその相補配列)を含むか、又はそれからなり、Xは、ラマン活性部分を含むヌクレオチド又はヌクレオチド類似体(ラマン活性分子)の部位である。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、BRAF V600Eオリゴヌクレオチド:5’-AGATTTCXCTGTAGC-3’(又はその相補配列)を含むか、又はそれからなり、Xは、ラマン活性部分を含むヌクレオチド又はヌクレオチド類似体(ラマン活性分子)の部位である。一実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、KRASオリゴヌクレオチド:5’-TACGCCAXCAGCTCC-3’(又はその相補配列)を含むか、又はそれからなり、Xは、ラマン活性部分を含むヌクレオチド又はヌクレオチド類似体の部位である。
【0027】
遺伝子プローブのオリゴヌクレオチドは、標的核酸ハイブリダイゼーションの存在下及び/又は非存在下で線状構造を有してよい。遺伝子プローブのオリゴヌクレオチドは、二次構造を有していなくてもよく、例えば、該オリゴヌクレオチドは、ヘアピンループ構造を形成するように配置されなくてよい。一実施形態では、該遺伝子プローブは、遺伝子プローブとして作用するためにオリゴヌクレオチドの立体構造変化を必要としない。一実施形態では、その標的への遺伝子プローブの結合は、オリゴヌクレオチドの立体構造変化をもたらさない。
【0028】
一実施形態では、遺伝子プローブ(又はその複数)は、溶液中で遊離している(すなわち固定されていない)。代替実施形態では、遺伝子プローブ(又はその複数)は、表面に固定又は吸着される。表面に固定又は吸着されると、遺伝子プローブ又は遺伝子プローブのグループは、例えば、アレイ内で異なる他の遺伝子プローブ(複数可)から空間的に分離され得る。それらは配列が異なっていてもよく、かつ/又は異なるラマン活性分子を有してよい。
【0029】
当業者は、遺伝子プローブのオリゴヌクレオチドを表面に固定又は吸着するためのクリックケミストリーなどの多くの技術及び化学に精通している。
【0030】
表面は、平坦な表面であるか、又は金属ナノ粒子などのナノ粒子の表面であり得る。一般に、任意の適切な化学を用いて、オリゴヌクレオチドを表面に固定してよく、例えば、クリックケミストリーを用いて、オリゴヌクレオチド上の化学基と表面上の拮抗する/相補的反応基との反応によってオリゴヌクレオチドをナノ粒子表面に固定してよい。表面及び/又はオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドを表面に固定するための反応基又は荷電基を含み得る。固定は、チオールアンカーの使用を介してよい。一実施形態では、チオールアンカーは、オリゴヌクレオチド上のチミン塩基に結合し得る。アンカーは、ホスホロアミデート結合を含み得る。あるいは、アンカーはトリアゾールを含み得る。
【0031】
該オリゴヌクレオチドは、EDC(EDAC;1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩とも呼ばれる)、又はDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)などのカルボジイミド架橋剤を用いた不動化によって固定され得る。例えば、該オリゴヌクレオチドは、ステアリン酸又はオクタデシルアミンで修飾された表面上にカルボジイミドリンカーを用いて不動化することによって固定され得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、第一級アミノ基又はアミノエタンチオールで表面修飾される際に、EDCなどのカルボジイミド架橋剤を用いた不動化によって固定され得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、ssDNAなどの核酸の結合を介してリン酸末端表面上に固定され得る。リン酸は、MBPA(メルカプトブチルリン酸)を含み得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、表面上のアルミニウムアルケンビスホスホネートの膜上への核酸の結合を通して固定され得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、核酸塩基のアミノ基を介して表面上のメルカプトシランコーティング上に固定され得る。別の実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、官能化されたポリピロールを用いて固定され得る。
【0032】
核酸は、Pividoriら Biosensors & Bioelectronics15;pp.191-303,2000で論じられている共有結合架橋反応のいずれか1つを用いて固定され得る。
【0033】
該オリゴヌクレオチドは、アンカーを形成するための反応基を含む修飾ヌクレオチドを含み得る。表面に結合するための反応基は、アンカーユニットと呼ばれることがある。該オリゴヌクレオチドは、アンカーとして使用するための修飾チミンを含み得る。アンカーは、修飾チミンを含み得る。修飾チミンは、アンカーユニットで修飾されたデオキシチミジン(dT)を含み得る。アンカーユニットは、ジチオールなどのチオール基を含み得る。アンカーユニットは、表面アンカーとして少なくとも2つ又は3つのジチオールを含み得る。アンカーユニットは、チミンのC5位などのチミンに結合したプロパギルアミドペンタノール(propagylamidopentanol)リンカーを含み得る。一実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、表面アンカーとして3つのジチオールを含むアンカーユニットで修飾されたデオキシチミジン(dT)と、チミンのC5位に結合したプロパギルアミドペンタノールユニットとを含む修飾チミンを含み得る。アンカーを形成する反応基は、ストレプトアビジンと連結するためのビオチンを含むか、又はビオチンと連結するためのストレプトアビジンを含み得る。
【0034】
該オリゴヌクレオチドは、シランカップリング剤を使用して、アンカー結合を形成する適切な反応基で修飾された核酸プローブに連結するための官能基(チオール、アミン、又はアルデヒドなど)を表面に導入することにより修飾された表面に固定され得る。
【0035】
DNAの鎖上のチオール修飾を介してオリゴヌクレオチドを表面に共有結合で結合させ、共有結合、例えばS-Auを形成することは当技術分野で公知である。Sandstrom,P.ら,Langmuir19,7537-7543(2003)を参照されたい。
【0036】
ナノ粒子表面などの表面をチオール修飾DNAで共有結合でコーティングするために最も広く使用されている方法は、Mirkinグループによって開発された「塩熟成」法である。Hurst,S.J.ら,Anal.Chem.78,8313-8(2006)を参照されたい。チオール化オリゴヌクレオチドは、塩濃度がゆっくりと増加する前に、1回の添加で表面(複数可)/ナノ粒子に付加される。この塩濃度の増加は、一度に塩を添加しすぎるとクエン酸安定化ナノ粒子が凝集するため、何時間にもわたって行われる。塩は、負に帯電したオリゴヌクレオチド間の反発力を低減し、表面上のより緊密なパッキングを可能にするため、表面の最大コーティングを可能にする。
【0037】
代替コーティング法の中で、Zhangらは、DNA結合工程中に溶液のpHを3.0に下げると、ナノ粒子表面などの表面を迅速に被覆できることを発見した。Zhang,X.ら,J.Am.Chem.Soc.7266-7269(2012)を参照されたい。
【0038】
オリゴヌクレオチドにチオール結合基を付加し、続いてチオール基を介して結合する技術は、オリゴヌクレオチドを表面に固定するために本発明において使用することができる。
【0039】
チオクト酸結合基を使用することも当技術分野において公知である。これは、金表面を使用すると、単一のチオール結合と比較してより安定であることが分かっている。ビスチオール化付加物は、ジスルフィドの還元時に形成され、両方の硫黄原子を介して金に結合することができる。Dougan,J.ら,Nucleic Acids Res.35,3668-75(2007)を参照されたい。
【0040】
そのため、活性化されたエステル形態のチオクト酸を、例えば、Stokes,R.J.ら,Chem.Commun.(Camb).2811-2813(2007)に記載されているように合成することができる。一方、オリゴヌクレオチド骨格(例えば5’末端)にアミン基を付加して、アミン末端オリゴヌクレオチドを提供することができる。次いで、活性化エステルをアミド結合の形成によってアミン末端オリゴヌクレオチドに結合し、チオクト酸修飾オリゴヌクレオチドを得ることができる。
【0041】
オリゴヌクレオチドにチオクト酸結合基を付加し、続いて、チオクト酸結合基を介して結合するこの技術は、オリゴヌクレオチドを表面に固定するために本発明で使用することができる。
【0042】
しかし、本発明は、チオクト酸結合基を介した結合に限定されないことが理解されよう。
【0043】
結合基を付加するためにオリゴヌクレオチドが修飾される技術では、通常、結合基とオリゴヌクレオチドの間に、スペーサー領域と呼ばれることもあるスペーサー基が存在する。このスペーサー基とそのサイズを変更することは知られている。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)スペーサー基を使用することが知られており、ちょうど10A塩基又は10T塩基からなるスペーサー基と比較すると、表面上へのオリゴヌクレオチドのローディングを増加させることがわかっている。Hurst,S.J.,ら,Anal.Chem.78,8313-8(2006)を参照されたい。
【0044】
同じ参考文献では、超音波処理が表面上のDNAコーティングのレベルを大幅に増加させることも記載されている。超音波処理は、非特異的に結合したDNAの量を減らし、DNAが結合するためのより多くの表面を露出させることができると提案された。
【0045】
そのため、本発明では、表面に固定されるオリゴヌクレオチドの量を増加させることを補助するために、結合基とオリゴヌクレオチドとの間にスペーサー基、例えば、PEGスペーサー基を含めることができる。
【0046】
代替的に又は追加的に、本発明では、表面に固定されたオリゴヌクレオチドの量を増加させることを補助するために、超音波処理を使用することができる。例えば、10秒以上、又は15秒以上、例えば、20~60秒の超音波処理が使用され得る。
【0047】
オリゴヌクレオチドを表面に結合させるための当技術分野で知られている別の方法は、第四級アンモニウム鎖などの高度にカチオン性の化合物で表面を修飾することである。次いで、負に帯電した表面は、静電相互作用によってカチオン性ナノ粒子と結合する。これは、ナノ粒子を用いて細胞にDNA鎖をうまく送達するためにSandhuらによって使用されている。Sandhu,K.K.ら,Bioconjug.Chem.13,3-6(2002)を参照されたい。
【0048】
ナノ粒子の表面修飾を介して、例えば、第四級アンモニウム鎖による官能化によってカチオン性にさせるための結合のこの技術は、オリゴヌクレオチドを表面に固定するために本発明において使用することができる。
【0049】
オリゴヌクレオチドを表面に固定させる利点は、生物学的媒体中で及び細胞侵入時に(例えば、表面がナノ粒子表面である場合)、表面に不動化されたDNA鎖は、そうでなければDNAを迅速に分解するヌクレアーゼに対してより抵抗性を示す傾向があることである。したがって、本発明の遺伝子プローブは、生物学的環境における標的種(例えばmRNA)のプロービングに有用である。
【0050】
単一標的化ヌクレオチド
単一標的化ヌクレオチドは、単一点変異などの既知又は未知のヌクレオチド修飾であり得る。一実施形態では、ヌクレオチド修飾は、癌を引き起こすことが知られているヌクレオチドへの修飾を含むか、又はそれからなる。一実施形態では、ヌクレオチド修飾は、天然若しくは合成の修飾を含むか、又はそれからなる。
【0051】
アレイ
本発明による2以上の異なる遺伝子プローブは、アレイで、例えば別々のウェルで提供されてよい。
【0052】
したがって、本発明の別の態様によれば、遺伝子プローブのアレイであって、別々のウェルに、又は別々の表面上又は同じ表面の空間的に分離された領域に提供された本発明による2以上の遺伝子プローブを含む遺伝子プローブのアレイが提供される。
【0053】
該遺伝子プローブは、他の異なる遺伝子プローブ(例えば、標的化された代替ヌクレオチドを有する)に対して区画化されてよい。
【0054】
アレイは、本発明の第1の態様による2以上、又は5以上、又は10以上、又は50以上、又は100以上の遺伝子プローブを含み得る。
【0055】
アレイ内の複数の遺伝子プローブは、互いに同じでも、又は異なっていてもよい。例えば、1つの遺伝子プローブのオリゴヌクレオチドは、同じ表面上の別の遺伝子プローブに対して異なる標的核酸にハイブリダイズするように配置されてよい。追加的に又は代替的に、1つの遺伝子プローブのオリゴヌクレオチドは、同じ表面上の別の遺伝子プローブに対して同じ標的核酸内の異なるヌクレオチド位置を調べるために配置されてよい。これは、ラマン活性部分、又はラマン活性部分を含むラマン活性分子をオリゴヌクレオチド骨格内の異なる位置に提供することによって、又はラマン活性部分若しくはラマン活性部分を含むラマン活性分子に隣接するヌクレオチドの配列を改変又はシフトすることによって配置されてよい。追加的又は代替的に、遺伝子プローブのラマン活性部分及び/又はラマン活性分子は、他の遺伝子プローブ(複数可)のラマン活性部分及び/又はラマン活性分子とは異なっていてよい。例えば、それらは異なる周波数で共鳴するように配置されてよい。
【0056】
方法
本発明の別の態様によれば、標的核酸のプール中の標的核酸中の単一点変異ヌクレオチドを決定する方法であって、
-単一点変異ヌクレオチドを検出することができ、
標的核酸と実質的に相補的なオリゴヌクレオチドを含む本発明による遺伝子プローブであって、
遺伝子プローブのラマン活性部分が、調べられる標的核酸のヌクレオチドと対になるように配置される塩基位置にある、遺伝子プローブを提供すること;
-遺伝子プローブが標的核酸にハイブリダイズするように、遺伝子プローブと標的核酸のプールとを接触させること;
-二重鎖形成によって生じるラマン周波数シフトをラマン分光法により測定すること
を含む方法が提供される。
【0057】
有利には、本方法は、単一点変異の存在から迅速で、安価かつ信頼性の高い読み出し情報を提供する。DNA配列を標的とするか、又は必要に応じてmRNA転写産物を間接的に(例えば、cDNA形成、次いで、PCR増幅を介して)又は直接的に(例えば、細胞内のmRNA検出)及びリアルタイムで分析することができる。さらに有利には、本発明の方法は、標的鎖結合効率の違いではなく、むしろ二重鎖形成時に経験する環境の違いを通じて、異なる読み出し情報を生成する。これにより、二重鎖形成が生じる限り、選択された任意の固定温度(例えば、室温又は生理学的温度)で検知を行うことができる。当業者は、所与の温度におけるハイブリダイゼーションの最適化のために配列長を含むオリゴヌクレオチドの特性を適合させることができる。
【0058】
本発明の別の態様によれば、核酸のプール中の標的核酸を検出する方法であって、
-標的核酸を検出することができ、
標的核酸と実質的に相補的なオリゴヌクレオチドを含む本発明による遺伝子プローブであって、
遺伝子プローブのラマン活性部分が、調べられる標的核酸のヌクレオチドと対になるように配置される塩基位置にある遺伝子プローブを提供すること;
-遺伝子プローブが標的核酸にハイブリダイズするように、遺伝子プローブと核酸のプールとを接触させること;
-二重鎖形成によって生じるラマン周波数シフトをラマン分光法により測定すること
を含む方法が提供される。
【0059】
遺伝子プローブのラマン活性部分は、A、T/U、C、又はGの類似体であるヌクレオチド類似体に組み込まれてよい。そのようなヌクレオチド類似体は、標的核酸の標的ヌクレオチドと一致していても、又は不一致であってもよい。
【0060】
遺伝子プローブと標的核酸との間の二重鎖形成時に生じるラマン周波数シフトは、単一点変異の一致又は不一致などの、ヌクレオチドのアイデンティティに応じて異なり得る。遺伝子プローブと標的核酸との間の二重鎖形成時に生じるラマン周波数シフトは、一致、不一致、及び場合により特定のヌクレオチドA、T/U、C、又はGを区別するのに十分であり得る。一実施形態では、標的核酸についてのラマン周波数シフトは、既知の参照標準、及び/又は既知の対照分子と比較される。
【0061】
一実施形態では、参照標準は、空気中の周囲窒素ガスに基づく。別の実施形態では、参照標準は窒素ガスに基づく。一実施形態では、ラマン分光法は、窒素雰囲気中、又は周囲雰囲気(空気)中の窒素などの窒素を含む雰囲気中で行われる。一実施形態では、Nガスは、ラマン分光法中の参照標準として作用するために、試料上を通過してレーザービームに入る。一実施形態では、Nガスのラマンモードは、外部較正バンドとして使用される。一実施形態では、Nガスのラマンモードは、外部較正バンドとして使用され、ラマン周波数シフトは、一致するヌクレオチド対照の既知の値又は測定されたラマン周波数と比較される。Nガスは空気中に存在し得る。
【0062】
当業者なら、高分解能ラマン測定のために、特に異なる試料セットのラマンモード周波数が高精度で比較される必要がある場合に、較正が重要であることを認識する。ラマンバンドの主な較正要件は、それらの強度、バンド幅、安定性(熱的、時間的など)である。また、高精度測定の場合、(回折格子の)機械的な動きによる誤差を防ぐために、較正用ラマンバンドの周波数は、測定されるバンド周波数の領域(スペクトルウィンドウ)に近い必要がある。当技術分野において参照として頻繁に使用される520cm-1のSiバンドは、特に高周波ラマンモードの測定について、そのような基準を満たさない。アルキン伸縮振動の領域には既知の標準較正ラマンバンドはない(約2100cm-1)。しかし、有利には、N分子の伸縮振動に特徴的な2329.6cm-1のバンドが存在する。アルキンモード周波数の正確な測定のための参照標準としてこのバンドを使用する利点は、次のとおりである:Nバンドはラマン活性があり、狭く(約5m-1)、広い温度範囲で安定しており、その周波数はアルキンバンドの周波数と1つのスペクトルウィンドウに位置づけられている。さらに、このバンドの使用は、純粋な窒素含有ガスと空気からのN分子の両方を使用できるため、非常に簡単で便利である。
【0063】
標的核酸の不一致ヌクレオチドが決定され得る。一実施形態では、遺伝子プローブと標的核酸との間の不一致は、一致よりも大きな周波数シフトを生じさせる。一致したヌクレオチドに対するラマン周波数の増加は、標的ヌクレオチドが不一致ヌクレオチドであると決定し得る。ラマン周波数シフトは、一致したヌクレオチドラマン周波数に対して少なくとも+0.2cm-1であり得る。別の実施形態では、ラマン周波数シフトは、一致したヌクレオチドラマン周波数に対して少なくとも+0.5cm-1であり得る。
【0064】
一実施形態では、温度は、約4℃~約40℃の範囲の固定温度で維持される。別の実施形態では、温度は、約20℃~約40℃の範囲の固定温度で維持される。別の実施形態では、温度は、約37℃などの生理学的温度である。本発明の方法及び使用は、本明細書では室温で実施され得る。室温は、約24℃、例えば約20~26℃であり得る。本発明の方法は、オリゴヌクレオチド及び標的核酸の融解温度未満又は実質的にそれ未満、例えばオリゴヌクレオチド及び標的核酸の融解温度の少なくとも5℃未満で実施され得る。本発明の方法は、40℃、35℃、32℃、30℃、又は28℃未満で実施され得る。
【0065】
標的核酸は、0.25mM~1mMの濃度で提供され得る。一実施形態では、標的核酸は、少なくとも0.1mMの濃度で提供される。別の実施形態では、標的核酸は、少なくとも0.25mMの濃度で提供される。別の実施形態では、標的核酸は、少なくとも0.5mMの濃度で提供される。
【0066】
標的核酸のプールは、試料中に存在し得る。試料は、細胞(例えば全細胞)、細胞溶解物、体液試料、又は精製若しくは部分精製された核酸の試料などの核酸試料を含み得る。一実施形態では、試料は、真核生物細胞などの細胞又は細胞の集団を含む。標的核酸は、真核生物、原核生物又はウイルスの核酸であり得る。真核生物の核酸は、哺乳動物又は真菌の核酸であり得る。一実施形態では、標的核酸はヒトである。標的核酸は、疾患若しくは病態又は既知のSNPと関連付けられ得る。標的核酸配列は、DNA又はRNAを含むか、又はそれからなり得る。標的核酸配列は、DNAとRNAの混合物を含み得る。標的核酸配列は、ゲノム核酸を含み得る。標的核酸配列は、ウイルスRNA;mRNA;ncRNA;低分子RNA;及びsiRNA;又はそれらの組み合わせを含み得る。標的核酸配列は、ミトコンドリア核酸を含み得る。標的核酸配列は、染色体及び/又は非染色体DNAを含むか、又はそれらからなり得る。一実施形態では、標的核酸は、循環腫瘍DNA(ctDNA)などの循環DNAを含む。
【0067】
一実施形態では、標的核酸は、疾患若しくは病態又は既知の一塩基変異と関連付けられる。
【0068】
一実施形態では、標的核酸配列はmRNA転写産物を含む。別の実施形態では、標的核酸配列は、mRNA転写産物から形成されたcDNAを含み得る。PCR増幅は、例えば、cDNAが検出される場合に、分析前にコピー数を増加させるために使用され得る。
【0069】
一実施形態では、標的核酸は、疾患又は病態のバイオマーカーである。一実施形態では、標的核酸は、脳震盪傷害、又はそうでなければ脳震盪傷害の疑いと関連付けられるRNAである。特に、参照により本明細書に組み込まれるPietroら(Br J Sports Med2021;0:1-10.doi:10.1136/bjsports-2020-103274)は、例えば、スポーツ関連脳震盪からの脳震盪の診断に使用できる唾液の低分子ノンコーディングRNA(sncRNA)の役割を指摘している。
【0070】
一実施形態では、標的核酸は、低分子ノンコーディングRNA(そうでなければマイクロRNAとして知られている)、好ましくはPietroら(Br J Sports Med2021;0:1-10.doi:10.1136/bjsports-2020-103274)に記載の唾液の低分子ノンコーディングRNAである。一実施形態では、標的核酸は、let-7a-5p、miR-143-3p、miR-103a-3p、miR-34b-3p、RNU6-7、RNU6-45、Snora57、snoU13.120、tRNA18Arg-CCT、U6-168、U6-428、U6-1249、Uco22cjg1、及びYRNA_255から選択される低分子ノンコーディングRNAの1以上又は全部を含む。一実施形態では、標的核酸は、let-7及びRNU6ファミリーマイクロRNAを含む。好ましい実施形態では、標的核酸はLet-7f-5pを含む。別の実施形態では、標的核酸は、Let-7f-5p、並びにmiR-143-3p、miR-103a-3p、miR-34b-3p、RNU6-7、RNU6-45、Snora57、snoU13.120、tRNA18Arg-CCT、U6-168、U6-428、U6-1249、Uco22cjg1、及びYRNA_255から選択される1、2、3、4、5、6、7若しくは8、又はそれ以上の核酸を含む。
【0071】
標的核酸は、脳震盪で過剰発現する可能性があるlet-7a-5p、let-7f-5p、miR-107、miR-148a-3p、miR-135b-5p、miR-21-5p、miR-34b-3p、miR-103a-3p及びRNU6-45のうちの1以上、並びに脳震盪で過小発現する可能性があるmiR-1246を含み得る。
【0072】
一実施形態では、標的核酸は、7a-5p、miR-143-3p、miR-103a-3p、miR-34b-3p、RNU6-7、RNU6-45、Snora57、snoU13.120、tRNA18Arg-CCT、U6-168、U6-428、U6-1249、Uco22cjg1及びYRNA_255のうちの1以上又は全部を含む。
【0073】
細胞又は細胞の集団は、真核生物又は原核生物であり得る。細胞又は細胞集団は、哺乳動物又は真菌であり得る。細胞又は細胞集団はヒトであり得る。細胞、細胞の集団、又は試料は、患者に由来し得る。例えば、それは、病態を有する患者、又は病態を有する疑いのある患者、又は病態を有する危険性のある患者であり得る。細胞、細胞の集団、又は試料は、未知の病態の患者に由来し得る。標的核酸、細胞又は細胞集団は、単一点変異と関連付けられる病態を有する、又は有すると疑われる、又は有する危険性のある対象からのものであり得る。標的核酸における単一点変異は、疾患又は病態と関連付けられ得る。標的核酸における単一点変異は、疾患又は病態を示し得る。指示は診断的又は予後的であり得る。指示は、疾患又は病態を発症する危険性又は可能性の指示であり得る。このような病態は、癌又はアルツハイマー病を含み得る。別の実施形態では、病態は鎌状赤血球貧血であり得る。当業者なら、本発明が、単一点変異と関連付けられる任意の疾患又は病態を検出及びモニタリングするのに有用であることを認識するであろう。
【0074】
単一点変異と関連付けられる病態又は疾患は、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌又は黒色腫などの癌を含み得る。肺癌は、PIK3CA、KRAS、NRAS、AKT1、ALK、若しくはEGFRの遺伝子、又はそれらの組み合わせにおける単一点変異と関連付けられ得る。結腸直腸癌は、KRAS及び/又はPIK3CAの遺伝子における単一点変異と関連付けられ得る。乳癌は、BRAFの単一点変異と関連付けられ得る。前立腺癌は、BRAFの単一点変異(BRAF 600E)と関連付けられ得る。
【0075】
SNPと関連付けられる病態は、アルツハイマー病又は鎌状赤血球貧血を含み得る。アルツハイマー病は、P21遺伝子の単一点変異と関連付けられ得る。
【0076】
単一点変異は、P21、BRAF、PIK3CA、KRAS、NRAS、AKT1、ALK、及びEGFRから選択される遺伝子のいずれか、又はそれらの組み合わせにあり得る。
【0077】
癌は、いくつかの乳癌及び前立腺癌などのBRAF遺伝子における単一点変異と関連付けられる癌を含み得る。アルツハイマー病は、P21遺伝子内のSNPと関連付けられ得る。単一点変異は、アルツハイマー病と関連付けられるP21遺伝子塩基転換(rs1801270;CからA)を含み得る。単一点変異は、癌と関連付けられるBRAF遺伝子塩基転換(V600E;X=TからA)を含み得る。
【0078】
標的核酸は、BRAF遺伝子、又はP21遺伝子の配列を含み得る。一実施形態では、標的核酸は、P21リボ核酸標的:3’-UCAGCGCXGAGUCGA-5’を含み、Xは単一点変異の部位である。別の実施形態では、標的核酸は、P21デオキシリボ核酸標的:3’-TCAGCGCXGAGTCGA-5’を含み、Xは単一点変異の部位である。別の実施形態では、標的核酸は、BRAF単一点変異核酸標的:3’-TCTAAAGXGACATCG-5’を含み、Xは単一点変異の部位である。別の実施形態では、標的核酸は、KRASデオキシリボ核酸標的:3’-GGA GCT GXT GGC GTA-5’を含み、Xは単一点変異の部位である。
【0079】
単一点変異と関連付けられる病態は脳震盪を含み得る。
【0080】
一実施形態では、単一点変異は、代替ヌクレオチドに対する一塩基の配列変異を含む。変異/多型の対象となるヌクレオチドは、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、若しくはグアニン(G)、又はRNAの場合には、アデニン(A)、ウラシル(U)、シトシン(C)、若しくはグアニン(G)を含み得る。
【0081】
本発明の別の態様によれば、本発明による、標的核酸のプール中の標的核酸の一塩基アイデンティティを決定するための遺伝子プローブの使用が提供される。
【0082】
本発明の別の態様によれば、対象における単一点変異と関連付けられる病態の診断及び/又は予後診断のための、本発明による遺伝子プローブの使用が提供される。
【0083】
本発明の別の態様によれば、試料中のマイクロRNAなどの標的核酸を検出するための本発明による遺伝子プローブの使用が提供される。
【0084】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の低分子ノンコーディングRNAの存在と関連付けられる対象における脳震盪の診断及び/又は予後診断のための、例えば対象の唾液における本発明による遺伝子プローブの使用が提供される。
【0085】
本発明の別の態様によれば、標的核酸のプール中の標的核酸の単一点変異の検出及び/又は比率の分析のためのキットであって、
-本発明による遺伝子プローブであって、ラマン活性部分が、調べられる標的核酸のヌクレオチドと対になるように配置される位置にある遺伝子プローブ;及び
-場合により、プローブ濃度を決定するための内部参照標準であって、液体中に既知濃度の分子を含む内部参照標準
を含むキットが提供される。
【0086】
本発明の別の態様によれば、試料中の標的核酸の検出及び/又は分析のためのキットであって、
-本発明による遺伝子プローブであって、ラマン活性部分が、調べられる標的核酸のヌクレオチドと対になるように配置される位置にある遺伝子プローブ;及び
-場合により、プローブ濃度を決定するための内部参照標準であって、液体中に既知濃度の分子を含む内部参照標準
を含むキットが提供される。
【0087】
内部参照標準は、ハイブリダイゼーション反応に影響を与えない、かつ/又は関与しない場合がある。好ましくは、内部参照標準は、記録された関心領域内に検出可能なラマンピークを有するように配置される。内部参照標準は、ラマン活性分子、例えばアルキン基などのラマン活性部分を含む分子を含み得る。
【0088】
該キットは、ラマン分光が可能な分光器をさらに備えてよい。追加的に、又は代替的に、該キットは、例えばシリンダー内に提供された窒素ガスを含み得る。
【0089】
該キットは、リン酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液を含み得る。該キットは、dsDNAを一本鎖に変換するT4エキソヌクレアーゼなどのエキソヌクレアーゼを含み得る。該キットは、標的核酸のLAMP又はPCR増幅などの増幅用のプライマー及び/又はポリメラーゼをさらに含み得る。プライマーは、ループ介在等温増幅(LAMP)用のループプライマーを含み得る。該キットは、RNA配列をcDNAに変換するための逆転写酵素をさらに含み得る。
【0090】
試料は、対象由来の唾液試料であり得る。唾液試料などの試料は、脳震盪が疑われてから48時間以内に採取され得る。唾液試料などの試料は、脳震盪が疑われてから36~48時間以内に採取され得る。唾液試料などの試料は、脳震盪が疑われてから24~48時間以内に採取され得る。
【0091】
プローブの組成
本発明の別の態様によれば、本発明による複数(例えば2以上)の遺伝子プローブを含む組成物が提供される。
【0092】
該組成物は、緩衝溶液などの溶液をさらに含み得る。緩衝溶液は、リン酸ナトリウム緩衝液を含み得る。
【0093】
オリゴヌクレオチド配列に言及する場合、当業者なら、1以上の置換が許容されてよいこと、場合により、標的配列にハイブリダイズする能力、又は置換が標的配列中に存在する場合には、標的配列として認識される能力を維持するように配列中に2個の置換が許容され得ることを理解するであろう。配列アイデンティティへの言及は、標準/デフォルトパラメータを用いたBLAST配列アラインメント(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)によって決定され得る。例えば、配列は、少なくとも99%のアイデンティティを有し、本発明に従って依然として機能し得る。他の実施形態では、配列は、少なくとも98%のアイデンティティを有し、本発明に従って依然として機能し得る。別の実施形態では、配列は、少なくとも95%のアイデンティティを有し、本発明に従って依然として機能し得る。
【0094】
本発明の別の態様によれば、対象における既知の単一点変異と関連付けられる病態の状態を決定する方法であって、
単一点変異を含み得る標的核酸を含む対象からの試料を提供すること;
本発明の方法に従って、単一点変異を有していない標的核酸に対する、試料中の単一点変異の存在又は割合を決定すること、
を含み、
単一点変異の存在又は割合が、該対象における単一点変異と関連付けられる病態の状態を示す方法が提供される。
【0095】
本発明の別の態様によれば、対象における標的核酸と関連付けられる病態の状態を決定する方法であって、
単一点変異を含み得る標的核酸を含む、又は潜在的に含む対象からの試料を提供すること;
本発明の方法に従って標的核酸の存在又はレベルを決定すること
を含み、
標的核酸の存在又はレベルが、該対象における標的核酸と関連付けられる病態の状態を示す方法が提供される。
【0096】
一実施形態では、状態は、病態についての診断及び/又は予後診断を提供し得る。追加的又は代替的に、状態は、病態の進行を含み得る。さらに追加的又は代替的に、状態は、病態の重大度を含み得る。病態は、例えば、傷害に関連する脳震盪であり得る。標的核酸は、疾患又は病態のバイオマーカーであり得る。標的核酸は、脳震盪と関連付けられる本明細書に記載の1以上のマイクロRNAを含み得る。
【0097】
他の態様
本発明の別の態様によれば、核酸二重鎖であって、本発明による遺伝子プローブを含み、標的核酸と二重鎖になり、遺伝子プローブ内に組み込まれたラマン活性部分が標的核酸の塩基と対をなす塩基である核酸二重鎖が提供される。
【0098】
一実施形態では、核酸二重鎖は、二次構造又は三次構造を有していない。一実施形態では、核酸二重鎖は、ヘアピンループ構造を有していない。
【0099】
標的核酸の塩基は、例えば、調べられる/検出されるべき単一点変異であり得る。
【0100】
本発明の別の態様によれば、標的核酸のプール中の標的核酸の単一点変異の比率又は一塩基アイデンティティを決定するための本発明による遺伝子プローブの使用が提供される。
【0101】
使用はインビトロであり得る。別の実施形態では、使用はインビボであり得る。
【0102】
本発明の別の態様によれば、対象における単一点変異と関連付けられる病態の診断及び/又は予後診断のための本発明による遺伝子プローブの使用が提供される。
【0103】
単一点変異と関連付けられる病態又は疾患は、乳癌、肺癌、結腸直腸癌又は黒色腫などの癌を含み得る。肺癌は、PIK3CA、KRAS、NRAS、AKT1、ALK、若しくはEGFRの遺伝子、又はそれらの組み合わせにおける単一点変異と関連付けられ得る。結腸直腸癌は、KRAS及び/又はPIK3CAの遺伝子の単一点変異と関連付けられ得る。乳癌は、BRAFの単一点変異と関連付けられ得る。
【0104】
単一点変異と関連付けられる病態は、アルツハイマー病又は鎌状赤血球貧血を含み得る。アルツハイマー病は、P21遺伝子の単一点変異と関連付けられ得る。
【0105】
単一点変異は、P21、BRAF、PIK3CA、KRAS、NRAS、AKT1、ALK、及びEGFRから選択される遺伝子のいずれか、又はそれらの組み合わせにあり得る。
【0106】
単一点変異と関連付けられる病態は、バレット食道又は結腸直腸癌などの癌を含み得る。結腸直腸癌は、MLH1メチル化と関連付けられ得る。単一点変異は、MLH1のメチル化を含み得る。
【0107】
本発明の別の態様によれば、ラマン分光アッセイで外部較正バンドを提供するためのNガスの使用が提供される。
【0108】
本発明の別の態様によれば、ラマン分光法であって、ラマン分光アッセイが、外部較正バンドを提供するためのNガスの使用と共に試料にて行われるラマン分光法が提供される。
【0109】
本明細書に記載の遺伝子プローブの文脈における用語「遺伝子(genetic)」は、核酸配列の分析又は検査が可能であるセンサー又はプローブを意味すると理解される。このような用語には、遺伝子配列、遺伝子間配列、又は核酸の任意の配列が含まれるが、これらに限定されない。合成核酸配列はまた、分析/検査が可能であり得る。
【0110】
本明細書で使用される用語「関連付けられる病態又は疾患」は、単一点変異によって直接的又は間接的に引き起こされる対象の疾患又は病態を含むと理解される。単一点変異は、病態又は疾患につながる単一の原因的変化であっても、又はそうでなくてもよく、例えば、単一点変異は、他の寄与因子と関連して病態又は疾患に寄与し得る。関連は臨床関連であり得る。関連は統計的関連であり得る。単一点変異の検出及び/又は特定の比率の発見は、対象において疾患若しくは病態を有するか又は発症する危険性が高いことを示し得る。他の変化、症状又は臨床徴候は、病態若しくは疾患の状態、診断又は予後診断の決定に寄与するために使用され得る。
【0111】
本明細書で使用される用語「単一点変異」は、一塩基多型(SNP)、体細胞突然変異、ヌクレオチド塩基の変化などの一塩基修飾及び一塩基突然変異、又はメチル化などの塩基の修飾を含む、所与の配列に対する任意の標準的又は非標準的な変異を含むと理解される。変化又は変異は、野生型に対する、又は集団内のより一般的な塩基若しくは既知のサブグループに対する、又は疾患若しくは病態と関連付けられない塩基に対するものであり得る。一実施形態では、単一点変異は、既知の配列などの標準配列/対照配列に対するものであり得る。
【0112】
用語「含む」は、具体的に言及された全ての特徴並びにオプションの、追加の、不特定のものを包含するものとして意図されるが、用語「からなる」は、指定された特徴のみを含む。用語「含む」は、本明細書では用語「からなる」で置き換えることができる。
【0113】
用語「塩基」は、系、配列若しくは分子又はそれらの類似体の核酸塩基部分を指すことが意図される。
【0114】
用語「オリゴヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチド(核酸のポリマー)を含む分子として当業者によって理解され得るが、他の特徴及び構造も提供され得る。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、本質的に核酸のポリマーからなり得る。用語「オリゴヌクレオチド類似体」は、天然に存在する核酸分子に類似しており、塩基対形成及び相補的核酸へのハイブリダイゼーションに関して核酸分子と実質的に同じように機能することができるポリマー分子を指し得る。当業者なら、例えば、代替骨格構造と連結した塩基を有する適切なオリゴヌクレオチド類似体に気付くであろう。
【0115】
当業者なら、本発明の1つの実施形態又は態様のオプションの特徴が、適切な場合に、本発明の他の実施形態又は態様に適用可能であり得ることを理解するであろう。
【0116】
添付の図面を参照して、単なる例として本発明の実施形態をここでより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1図1:核酸塩基複合体の構造(左)及び
【化4】
振動領域におけるエチニル標識核酸塩基分子とそれらの複合体のシミュレートしたラマンスペクトル(右)(A、G、U及びCはそれぞれアデニン、グアニン、ウラシル及びシトシン分子を示す;El-エチニル標識分子。計算値(B3LYP/6-311++G(df,pd))。複合体のラマンスペクトルを、0.9578によってスケーリングした。スペクトルをシミュレートするために、半値全幅(FWHM)が3cm-1のローレンツ型関数を使用した。
図1B図1B:エチニルウラシルと核酸塩基複合体の構造(左)及び
【化5】
振動領域における異なる複合体のシミュレートしたラマンスペクトル(右)(A、G、U、mU及びCはそれぞれアデニン、グアニン、ウラシル、メチルウラシル及びシトシン分子を示す;El-エチニル標識分子。計算値(B3LYP/6-311++G(d,p))。複合体のラマンスペクトルを、0.95845によってスケーリングした。スペクトルをシミュレートするために、半値全幅(FWHM)が1cm-1のローレンツ型関数を使用した。
図2図2:(A)アルキン及びN2伸縮振動の領域におけるDNA配列のベースライン補正し、曲線に適合させたラマンスペクトル、(B)異なる試料のラマンスペクトルにおけるアルキンラマンモード周波数の変動、及び(C)外部較正バンドとして使用されるN2ガスのラマンモード(XはEdU分子を示す)。
図3図3:(A)アルキン及びN2伸縮振動の領域におけるBRAF DNA配列のベースライン補正し、曲線に適合させたラマンスペクトル、(B)異なる試料のラマンスペクトルにおけるアルキンラマンモード周波数の変動、及び(C)外部較正バンドとして使用されるN2ガスのラマンモード(XはEdU分子を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0118】
実施例
遊離ラマン活性分子と比較したワトソン-クリック塩基対のラマンシフトを計算するために、コンピューターシミュレーションを実施した。一致するワトソン-クリック塩基対分子の窒素含有部分の水素結合にて計算を行った。データ(図1)から、プリン対形成C:G及びG:C複合体が最も有望であることが示唆され、より大きな周波数シフト(δ約+6.5及び-4.5cm-1、それぞれ)が実証された。ピリミジン対形成El-U:A及びA:Uの組み合わせでは、(約-1.7及び-0.5cm-1)の予測される周波数シフトが得られた。5-エチニル-dU-CEホスホロアミダイトが商業的に入手可能であることから、El-U:Aの組み合わせを発明者らの研究のために選択した。この場合、予測される周波数シフトは小さい(約-1.7cm-1)が、依然として高解像度実験のラマンスペクトルで解決することができる。
【0119】
塩基対のアルキンラマンモード間で周波数シフトがより大きい(δ約+6.5及び-4.5cm-1、それぞれ)計算されたC:G及びG:C複合体が最も有望であるが、TからAへの変異が検出される臨床的関連性は、Aの検出(EI-Uによる)が優先されることを意味した。この場合、予測される周波数シフトは小さい(約-1.7cm-1)が、依然として高解像度実験のラマンスペクトルで解決することができる。
【0120】
プローブ配列への市販の5-エチニル-dU-CEホスホロアミダイトの包含は、ラマンのアルキンで行われ、塩基Aの自然な塩基相補体である。
【0121】
【化6】
【0122】
材料をGlen Researchから購入し、15量体鎖を作るために固体支持体DNA合成装置で、製造業者の指示に従って直接使用した。プローブ鎖及び標的鎖は全て、表1に強調表示されているように中央に修飾を施した。プローブ鎖は、XがEdUであるCXCを有し、標的鎖はGXGであり、ここでのXは4つの核酸塩基(A、T、C、G)である。これにより、全ての組み合わせの一致と不一致の測定が可能になり、アルキンプローブの反対側の塩基のアイデンティティが明らかになる可能性がある。
【0123】
15量体鎖を作る理由は、プローブと標的のハイブリダイゼーション時に、一致と単一の不一致の違いを見る最良の機会を提供するためである。これは、修飾が15量体鎖の中央にある場合、ハイブリダイゼーション時にプローブと一致する鎖と不一致の鎖の間に熱力学的/検出可能な違いがあるためである。選択した試験用の鎖は、原理実証(POP)試験のための代替シグナル伝達モダリティの開発において、タッカーと同僚によって研究されている。
【0124】
作製した配列
表1.自動DNA合成装置で合成したオリゴ鎖
【表1】
【0125】
配列合成手順:
合成(Ultramild試薬):
全ての核酸塩基、試薬及び溶媒は、それ以上精製することなく供給元から購入して使用した。オリゴヌクレオチドは、Applied Biosystems ABI 394(Foster City,CA,30 U.S.A)で合成した。Pac-dA、iPr-Pac-dG、Ac-dC、dTの標準ホスホロアミダイトは、LGC Genomicsから購入した。5-エチニル-dU-CEホスホロアミダイトは、Glen Researchから購入し、直接使用した。ホスホロアミダイトを無水アセトニトリルに0.1Mの濃度まで溶解した。LGC GenomicsのSynBase(商標)CPG 1000/110固体担体上で、鎖を1μモルスケールで合成した。
【0126】
鎖が完成した樹脂をメタノール中の炭酸カリウム(0.05M)の1ml溶液に入れ、一晩放置し、酢酸(6μl)で中和した。溶媒をThermo Scientific speed vacで除去した。乾燥粉末を1mlの超純水に再溶解し、GE HealthcareのNAP-10脱塩カラムに通して、残留樹脂と炭酸カリウムを除去した。回収した溶液を精製前に冷凍庫で保管した。
【0127】
精製と特性評価:
セミ分取HPLC精製を、Agilent Technologies 1260インフィニティシステムでPhenomenex Clarity5μmオリゴ-RP LC 250×10mmカラムを使用して実施した。回収した画分を蒸発乾固し、Milli-Q水(1ml)に再溶解し、NAP-10カラム(GE Healthcare)を用いて脱塩し、カラムから1.5mlまで溶出させた。純度を、Agilent Technologies 1260インフィニティシステムでPhenomenex Clarity5μmオリゴRP LC 250×4.6mmカラムを用いた分析HPLCによって決定した。UV/vis吸光度を260nmでモニターした。
【0128】
オリゴヌクレオチドの精製に、HPLCグレード水(Fisher Scientific)中でのHPLCグレードのアセトニトリル(Fisher Scientific)と0.1Mのトリエチルアミンアセテート(TEAA)の溶媒勾配システムを採用した。
【0129】
純粋なオリゴヌクレオチドを、Waters Xevo G2-XS質量分析計でのネガティブモードエレクトロスプレー質量分析によって特徴付けた。試料濃度を、ShimadzuのBioSpecNanoマイクロボリュームUV-Vis分光光度計を使用した260nmでの光学密度とランベルトベールの法則によって決定し、吸光係数をIntegrated DNA Technologiesのオリゴアナライザーから得た。
【0130】
一致と不一致のTMの結果(POPプローブ)
配列を取得し、二重鎖形成時の修飾の安定化/不安定化効果を、熱融解(Tm)温度を測定することによって決定した。結果は、修飾がハイブリダイゼーション時の鎖の安定性に影響を及ぼさないようであることを示した(表2のエントリー1及び3を比較)。しかし、不一致鎖にはわずかにより大きな不安定化効果があった(表2のエントリー2と4を比較)。数値は、改変したプローブと改変していないプローブの両方で、一致と不一致の間におよそ10℃の差があった。また、調製した生物学的に関連する配列に注意を向けた。BRAF 600Eは、前立腺癌の単一点変異である(Tは野生型であり、Aは癌性変異体を示す)。したがって、このSNIPを迅速に検出する能力が強く望まれる。エントリー5と6の結果は、約10℃で野生型(不一致)と癌性(一致)に違いがあることを示している。これは、以前に観察した15量体鎖のDNA安定性と一致している。これは、アルキンプローブが親構造を不安定にせず、非侵入型プローブであることに価値を与えることを示している。
【0131】
表2
【表2】
【0132】
ラマン分光法
フリーの鎖、野生型に結合した鎖(健康なモデル-1つの不一致)及び変異型に結合した鎖(疾患モデル-不一致なし)の間でアルキンのシグナルの小さな変化を確実に検出するために必要な精度には、新しい分光法の開発が必要であった。
【0133】
高分解能を達成するための参照標準として、空気中の周囲窒素ガスのラマンシグナルを最初に使用することを本明細書に開示する。
【0134】
完全一致(El-U:A)及び不一致(El-U:mU、El-U:mU、El-U:C、El-U:G)ハイブリダイゼーション中にEdUアルキンラマンピークシフトを予測するために、モデリングを行った。モデリング予測(図1B)は、ラマン測定を実施したときに支持された(表3を参照されたい)。一本鎖プローブ(X=EdU)は2118.4cm-1で伸縮を示した。完全一致鎖(EdUとA)とのハイブリダイゼーションでは、2119.2cm-1でわずかなシフトがあった。1塩基の不一致を含む他の鎖(EdUとT、C、又はG)の結果は、より大きなシフトをもたらした(表3)。EdUとTの不一致は、2118.4cm-1→2120.5cm-1の最大シフトをもたらした。シフトの程度は不一致塩基ごとに異なり、改変の反対側の不一致塩基のアイデンティティを特定できたことが示唆された。シフトの値は予測値と一致しないが、シフトの方向は計算値/予測値(El-U:Cを除く)の図1Bとよく一致している。しかし、そのような計算、及び特にその中の幾何学的最適化は、多数の原子からなるシステムの場合、常にいくつかの制限があるが、実験はシステム全体のラマン応答を記録する。したがって、予測と測定の違いを過度に解釈すべきでない。基本的な結果は、ラマン分光法がヌクレオシドハイブリダイゼーションと一塩基不一致を検出するために使用できることである。
【0135】
表3.一致した鎖と不一致の鎖からのラマンシグナルのシフト
【表3】
【0136】
(BRAF)
また、調製した生物学的に関連するBRAF 600E配列に注目した。一本鎖プローブ(S6、エントリー1、表4)は、2118.7cm-1にピークがあり;一致鎖(S7、A、癌性変異体、エントリー2、表4)とのハイブリダイゼーション時に、2119.4cm-1へのわずかなシフトがあった。不一致鎖(T、野生型、エントリー3、表4)では、2120.3cm-1に移動するシフトはより大きかった。ここでの結果から、ラマン分光法がBRAF 600E変異SNIPを検出するために使用できることが示された。
【0137】
表4.一致鎖と不一致鎖を有するBRAF配列のラマンシフト
【表4】
【0138】
脳震盪関連RNA:
【表5】
【0139】
【表6】
図1
図1B
図2
図3
【国際調査報告】