(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(54)【発明の名称】炎症、線維症及び肺疾患を治療するためのペリオスチン抗体の使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240215BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240215BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240215BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240215BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240215BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P11/00
A61P29/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553553
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2022055605
(87)【国際公開番号】W WO2022184910
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】516017684
【氏名又は名称】ユニバーシテ ド オルレアン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペレス-クルス,マグディエル
(72)【発明者】
【氏名】リッフェル,ベルンハルト
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085DD62
4C085GG01
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA52
4H045EA60
(57)【要約】
本発明は、MPC5B4抗ペリオスチンモノクローナル抗体が、様々な動物モデルにおける炎症、線維症、並びに肺炎症及び呼吸器疾患の悪化を効果的に予防及び治療することができるという驚くべき発見に基づく。MPC5B4抗ペリオスチンモノクローナル抗体は、ペリオスチンタンパク質(POSTN)のファシクリン(FAS)1-1ドメイン内に位置するアミノ酸配列136~151に対応する配列5番号1のペプチド配列を特異的に認識し、αvβ3インテグリンへのその結合を阻害する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品としての使用のための、ペリオスチンのファシクリン(FAS)1-1ドメイン中の配列番号1のペプチド配列を特異的かつ高親和性で認識する、モノクローナル抗ペリオスチン抗体、又はその機能的抗原結合性断片。
【請求項2】
炎症性、線維性又は呼吸器障害の治療を必要としている対象において、炎症性、線維性又は呼吸器障害を治療するための使用のための、請求項1に記載のモノクローナル抗ペリオスチン抗体。
【請求項3】
前記障害が、喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、例えば、特発性肺線維症(IPF)、気腫及び肺炎症又はウイルス、真菌若しくは細菌感染から生じる呼吸器疾患からなる群において選択される、請求項2に記載の使用のためのモノクローナル抗ペリオスチン抗体。
【請求項4】
前記障害が、COVID19疾患の症状型である、請求項3に記載の使用のためのモノクローナル抗ペリオスチン抗体。
【請求項5】
IgG、好ましくはIgG1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗ペリオスチン抗体。
【請求項6】
ヒトPOSTNのαvβ3インテグリンへの結合を、30μg/mL未満のIC
50で阻害する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗ペリオスチン抗体。
【請求項7】
約0.08の配列番号1との解離定数(K
D)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗ペリオスチン抗体。
【請求項8】
オボアルブミンにコンジュゲートされた配列番号1又はPOSTNでマウスを免疫することによって産生されており、前記マウスが乳酸脱水素酵素上昇ウイルスに予め感染している、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗ペリオスチン抗体。
【請求項9】
キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗ペリオスチン抗体。
【請求項10】
ヒトIgG1重鎖にN297A変異を導入することによって組換え改変されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗ペリオスチン抗体。
【請求項11】
前記機能的断片が、請求項7に記載の抗体と同じ解離定数を有するFab、Fab’、F(ab’)
2又はFv断片である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗ペリオスチン抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MPC5B4抗ペリオスチンモノクローナル抗体が、様々な動物モデルにおける炎症、線維症、並びに肺炎症及び呼吸器疾患の悪化を効果的に予防及び治療することができるという驚くべき発見に基づく。MPC5B4抗ペリオスチンモノクローナル抗体は、ペリオスチンタンパク(periostin protein、POSTN)のファシクリン(fasciclin、FAS)1-1ドメイン内に位置するアミノ酸配列136~151に対応する配列番号1のペプチド配列を特異的に認識し、αvβ3インテグリンへのその結合を阻害する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、病原体、刺激物及び損傷細胞などの有害な刺激を除去し、治癒過程を開始するための身体の自然防御機構である。一般に、炎症は、急性又は慢性の炎症として分類される。急性の炎症は、本来、損傷領域を固定し、免疫系を活性化して損傷を治癒するのに役立つ有益な過程であるが、例えば、COVID-19における死亡の主な原因である急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome、ARDS)などの急性の炎症
をもたらし得る。他方、慢性の炎症は、治癒過程を開始しようとする誤った試みにおいて健康な組織を破壊し得るので、問題となる1。
【0003】
気道炎症は、通常、病原体によって、又は毒素、汚染物質、刺激物、及びアレルゲンへの曝露によって引き起こされる。TLRは、病原体によって共有される分子パターンを認識し、活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NF-κB)などの経路を介して炎症細胞を活性化して、増殖因子、ケモカイン、インターロイキン8(interleukin 8、
IL-8)及び腫瘍壊死因子アルファ(tumor necrosis factor alpha、TNF-α)な
どの炎症促進性サイトカインを産生する。IL-8は好中球動員を誘発し、TNF-αは、肺毛細血管における内皮細胞接着分子の発現を誘導する。更に、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(matrix metalloproteinase-9、MMP-9)、細胞間接着分子1(intercellular adhesion molecule-1、ICAM-1)、血管細胞接着分子-1(vascular cell adhesion molecule-1、VCAM-1)、シクロオキシゲナーゼ-2(cyclooxygenase-2、COX-2)、及び細胞質ホスホリパーゼA2(cytosolic phospholipase A2、cPLA2)などの既知の炎症標的タンパク質の多くは、様々な刺激に応答して気道炎症に特異的に関連する1。
【0004】
肺は、体内の全ての器官に必須の酸素を供給するための重要な器官であり、過剰な炎症は生命を脅かす可能性がある。炎症と抗炎症との間の微妙なバランスは、肺ホメオスタシス(恒常性維持)にとって不可欠である。
【0005】
世界保健機関によれば、肺及び気道炎症性疾患の有病率は、世界中で何百万人もの患者に関して、ここ30年でかなり増加している。これらの重要な疾患の中で、世界中で5億人を超える人々が罹患している喘息及び慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)を挙げることができる。
【0006】
喘息の現在のコンセンサス定義は、「喘鳴、息切れ、胸苦しさ及び咳などの、時間と共に強度が変化し、可変気流閉塞を伴う呼吸器症状の履歴によって定義される、慢性気道炎を通常特徴とする異質性の疾患」である。喘息を有する患者は、可変気流閉塞及び気道過敏性(airway hyper-responsiveness、AHR)を有する。喘息は、欧州の成人人口の1
0%~12%が罹患している。重度の疾患を有する患者は、軽度~中程度の喘息の主要な治療である従来の抗炎症性コルチコステロイドに十分に応答しない2。
【0007】
一方、COPDは、通常進行性であり、有害な粒子又はガスに対する気道及び肺における亢進された慢性の炎症反応に関連する持続性の気流制限を特徴とする。増悪及び共存症は、個々の患者における全体的な重症度に寄与する。COPDは、今後5年以内に世界中で罹患率及び死亡率の第4位から第3位の主な原因に上昇すると予想される。世界保健機関によれば、世界で約300万人が毎年COPDの結果として死亡している。先進国では、COPDの主要な危険因子は喫煙であり、喫煙者はCOPD患者の90%超を占める。発展途上国では、調理に使用されるバイオマス燃料及び他の環境汚染物質が主要な要因である。COPDの病理学的特徴は、肺(lung)実質破壊(肺気腫(pulmonary emphysema
))、小(末梢)気道の炎症(呼吸細気管支炎)、及び中心気道の炎症である。炎症は、全てのこれらの区画(中枢及び末梢気道並びに肺実質)内で起こる。気流閉塞の主な部位は、COPDにおける小気道及び肺実質である2。
【0008】
特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis、IPF)は、急速かつ不可逆性の
肺(lung)機能低下を特徴とする慢性進行型線維性肺(lung)疾患の一種である。肺の組織は硬くなり、肺の空気/肺胞を取り囲む組織に影響を及ぼす。症状は、典型的には、息切れ及び空咳の漸進的な開始を含む。合併症には、肺高血圧症、心不全、肺炎、又は肺塞栓症が含まれ得る。原因は不明である。危険因子としては、喫煙、特定のウイルス感染、及びこの状態の家族歴が挙げられる。根底にある機構は、肺の進行性線維症を含む。世界中で約500万人が罹患している。診断後の平均寿命は約4年である。
【0009】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、重篤な病気の患者の生命を脅かす状態であり、不十分な酸素化、肺浸潤、及び発症の鋭敏さによって特徴付けられる。顕微鏡レベルでは、この障害は毛細血管内皮損傷及びびまん性肺胞損傷に関連する。ARDSは、誘発事象の7日以内に始まる急性障害として定義され、心原性肺水腫(cardiogenic pulmonary edema)のいかなる証拠も存在しない両側性肺浸潤(bilateral lung infiltrate)及び重度の進行性低酸素血症を特徴とする。ARDSは、患者の動脈血中の酸素濃度(PaO2)対吸入空気中の酸素濃度(FiO2)の割合で定義される。これらの患者は、300未満のPaO2/FiO2比を有する。一旦ARDSが発症すると、患者は、通常、様々な程度の肺動脈血管収縮を有し、その後、肺高血圧症を発症し得る。ARDSは高い死亡率を有し、この状態と戦うための有効な治療様式はほとんど存在しない3。
【0010】
ほとんどの慢性の炎症性疾患に共通して、コルチコステロイドは、喘息気道における炎症を弱めることができ、この疾患に関連する1秒努力呼気肺活量(forced expiratory volume in one second、FEV1)の低下の逆転及び正常レベルへのAHRの減少をもたらす。しかしながら、コルチコステロイドは喘息患者を治癒せず、喘息の症状の多くは治癒せず、炎症はコルチコステロイドを中止すると再発する。更に、重篤な喘息患者は、コルチコステロイドにほとんど応答せず、しばしば、入院を必要とするより頻繁な増悪、及び従来の治療によって制御されない疾患の慢性的性質に関連するうつ病を有する。COPD患者において、コルチコステロイド治療は、口腔咽頭カンジダ症、しわがれ声、及び肺炎のリスクの増加などの副作用を伴う。
【0011】
他の処置は、複数のサイトカイン4、ケモカイン、及びTGF-βなどの増殖因子5を含む、肺炎症に関与している炎症性メディエーターを標的化することを含む。炎症シグナル伝達の複雑さを考慮すると、単一のメディエーターを遮断することは、これらの複雑な疾患において非常に有効である可能性は低く、メディエーターアンタゴニストは、これまで、コルチコステロイドなどの広範囲の抗炎症作用を有する薬物と比較して非常に有効であることが証明されていない。例えば、COPDにおける抗TNFαの効果の欠如は、関節リウマチなどの他の慢性の炎症性疾患において見られる有益な効果とは全く対照的である。
【0012】
加えて、非特異的免疫抑制治療の使用は、患者の免疫防御を低下させ、患者をウイルス又は細菌感染に対して感受性にするので、しばしば副作用を誘発する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これに関連して、これらの患者を予防し、治療し、更には最終的に治癒させることができる新規の有効な薬物が緊急に必要とされている。なぜなら、これらの薬物は、個々の患者の福祉に対して、また関連する莫大な社会的費用に対しても重大な影響を及ぼすからである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、本明細書において、ペリオスチンタンパク質(POSTN)上の特定のドメインに高度に特異的であり、その標的の1つ、すなわちインテグリンαvβ3へのPOSTNの結合を阻害し、したがって炎症性細胞の遊走を阻害することができるモノクローナル抗体の炎症性肺疾患に対する有益な効果を実証する。それらの結果は、当該抗体が、いくつかの動物モデルにおいて炎症、肺線維症及び増悪を低減することを示す(
図2~
図6及び
図8参照)。その高い特異性及びαvβ3へのPOSTN結合に特異的な強い阻害活性は、肺炎症及び線維症におけるPOSTNの有害作用を遮断するためのその高い治療可能性を説明すると考えられる。
【発明の効果】
【0015】
ペリオスチンのαvβ3のみに対する結合から生じる、シグナル伝達事象を遮断することにより、本発明の抗体は、肺炎症を有利に予防及び治療するが、全体的な定常状態免疫応答に影響を及ぼさない。したがって、この提案された治療は、非特異的免疫抑制治療を使用することによって観察される副作用を誘導しない。
【0016】
これはまた、特定のサイトカインを標的とする新規な治療4又は抗IgE中和治療を含む新規な治療よりも有益であり、これらもまた感染の危険性を高める。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】パパインがマウスにおいてPOSTN産生を増加させることを示す。(A)アレルギー性喘息におけるPOSTN産生を誘導するパパインの能力を評価するために、マウスを25μgパパインで気管内(i.t.)処置したか又は処置しなかった。パパイン投与48時間後にマウスを安楽死させた。B)BALF(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)試料中のPOSTNレベルをELISAによって定量化した。結果を平均±SEM(n=5)として表す。2日目の統計分析は、マン-ホイットニー検定を用いて決定した。
*対照マウスと比較してp<0.05。
【
図2-1】POSTNの遮断が喘息における肺炎症を予防することを記載する。A)喘息を予防する抗POSTN抗体処置の能力を評価するために、マウスに抗POSTN MPC5B4抗体又はアイソタイプ対照抗体(12.5、5、2.5mg/kg;i.p.)を注射した。1時間後、マウスを、25μgのパパインで鼻腔内に3日間処置するか又は処置せずに、重度の喘息を誘導した。マウスを4日目に安楽死させた。B)アレルギー性喘息におけるモノクローナル抗POSTN抗体の用量反応試験。BALF中の好酸球及びリンパ球数。結果を平均±SEM(n≧5)として表す。4日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#パパイン処置マウスと比較してp<0.05。
【
図2-2】POSTNの遮断が喘息における肺炎症を予防することを記載する。A)喘息を予防する抗POSTN抗体処置の能力を評価するために、マウスに抗POSTN MPC5B4抗体又はアイソタイプ対照抗体(12.5、5、2.5mg/kg;i.p.)を注射した。1時間後、マウスを、25μgのパパインで鼻腔内に3日間処置するか又は処置せずに、重度の喘息を誘導した。マウスを4日目に安楽死させた。B)アレルギー性喘息におけるモノクローナル抗POSTN抗体の用量反応試験。BALF中の好酸球及びリンパ球数。結果を平均±SEM(n≧5)として表す。4日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#パパイン処置マウスと比較してp<0.05。
【
図3-1】POSTNの全身性遮断が喘息における肺炎症を予防することを開示する。A)喘息を予防するための抗POSTN抗体全身治療の能力を評価するために、マウスに抗POSTN MPC5B4又はアイソタイプ対照抗体(12.5mg/kg:i.p.)を注射した。注射の1時間後、マウスを25μgパパインで3日間鼻腔内処置したか又は処置せず、重度の喘息を誘導した。マウスを4日目に安楽死させた。B)全細胞、C-D)好酸球、リンパ球及び単球の浸潤を、投与後4日目にBALF中でモニターした。D)肺における好酸球及びCCL17産生を、4日目にELISAによって肺において定量化した。E)抗POSTN抗体を伴う又は伴わないパパインの3回の投与後4日目の肺の組織損傷。結果を平均±SEM(n=5)として表す。4日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#パパイン処置マウスと比較してp<0.05。
【
図3-2】POSTNの全身性遮断が喘息における肺炎症を予防することを開示する。A)喘息を予防するための抗POSTN抗体全身治療の能力を評価するために、マウスに抗POSTN MPC5B4又はアイソタイプ対照抗体(12.5mg/kg:i.p.)を注射した。注射の1時間後、マウスを25μgパパインで3日間鼻腔内処置したか又は処置せず、重度の喘息を誘導した。マウスを4日目に安楽死させた。B)全細胞、C-D)好酸球、リンパ球及び単球の浸潤を、投与後4日目にBALF中でモニターした。D)肺における好酸球及びCCL17産生を、4日目にELISAによって肺において定量化した。E)抗POSTN抗体を伴う又は伴わないパパインの3回の投与後4日目の肺の組織損傷。結果を平均±SEM(n=5)として表す。4日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#パパイン処置マウスと比較してp<0.05。
【
図3-3】POSTNの全身性遮断が喘息における肺炎症を予防することを開示する。A)喘息を予防するための抗POSTN抗体全身治療の能力を評価するために、マウスに抗POSTN MPC5B4又はアイソタイプ対照抗体(12.5mg/kg:i.p.)を注射した。注射の1時間後、マウスを25μgパパインで3日間鼻腔内処置したか又は処置せず、重度の喘息を誘導した。マウスを4日目に安楽死させた。B)全細胞、C-D)好酸球、リンパ球及び単球の浸潤を、投与後4日目にBALF中でモニターした。D)肺における好酸球及びCCL17産生を、4日目にELISAによって肺において定量化した。E)抗POSTN抗体を伴う又は伴わないパパインの3回の投与後4日目の肺の組織損傷。結果を平均±SEM(n=5)として表す。4日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#パパイン処置マウスと比較してp<0.05。
【
図3-4】POSTNの全身性遮断が喘息における肺炎症を予防することを開示する。A)喘息を予防するための抗POSTN抗体全身治療の能力を評価するために、マウスに抗POSTN MPC5B4又はアイソタイプ対照抗体(12.5mg/kg:i.p.)を注射した。注射の1時間後、マウスを25μgパパインで3日間鼻腔内処置したか又は処置せず、重度の喘息を誘導した。マウスを4日目に安楽死させた。B)全細胞、C-D)好酸球、リンパ球及び単球の浸潤を、投与後4日目にBALF中でモニターした。D)肺における好酸球及びCCL17産生を、4日目にELISAによって肺において定量化した。E)抗POSTN抗体を伴う又は伴わないパパインの3回の投与後4日目の肺の組織損傷。結果を平均±SEM(n=5)として表す。4日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#パパイン処置マウスと比較してp<0.05。
【
図4-1】POSTNの遮断が、重度喘息における肺炎症を局所的に低減することを示す。A)喘息を予防する抗POSTN抗体局所治療の能力を評価するために、マウスは抗POSTN MPC5B4(10、1mg/kg;i.t.)を気管内注射された。注射の1時間後、マウスを25μgパパインで3日間処置したか又は処置せず、喘息を誘導した。マウスを4日目に安楽死させた。B)全細胞、C)マクロファージ、好酸球、リンパ球、及び好中球の浸潤を、投与後4日目にBALF中でモニターした。D)POSTN及びMPO産生を、ELISAによってBALFにおいて定量化した。結果を平均±SEM(n≧3)として表す。4日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#パパイン処置マウスと比較してp<0.05。
【
図4-2】POSTNの遮断が、重度喘息における肺炎症を局所的に低減することを示す。A)喘息を予防する抗POSTN抗体局所治療の能力を評価するために、マウスは抗POSTN MPC5B4(10、1mg/kg;i.t.)を気管内注射された。注射の1時間後、マウスを25μgパパインで3日間処置したか又は処置せず、喘息を誘導した。マウスを4日目に安楽死させた。B)全細胞、C)マクロファージ、好酸球、リンパ球、及び好中球の浸潤を、投与後4日目にBALF中でモニターした。D)POSTN及びMPO産生を、ELISAによってBALFにおいて定量化した。結果を平均±SEM(n≧3)として表す。4日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#パパイン処置マウスと比較してp<0.05。
【
図4-3】POSTNの遮断が、重度喘息における肺炎症を局所的に低減することを示す。A)喘息を予防する抗POSTN抗体局所治療の能力を評価するために、マウスは抗POSTN MPC5B4(10、1mg/kg;i.t.)を気管内注射された。注射の1時間後、マウスを25μgパパインで3日間処置したか又は処置せず、喘息を誘導した。マウスを4日目に安楽死させた。B)全細胞、C)マクロファージ、好酸球、リンパ球、及び好中球の浸潤を、投与後4日目にBALF中でモニターした。D)POSTN及びMPO産生を、ELISAによってBALFにおいて定量化した。結果を平均±SEM(n≧3)として表す。4日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#パパイン処置マウスと比較してp<0.05。
【
図4-4】POSTNの遮断が、重度喘息における肺炎症を局所的に低減することを示す。A)喘息を予防する抗POSTN抗体局所治療の能力を評価するために、マウスは抗POSTN MPC5B4(10、1mg/kg;i.t.)を気管内注射された。注射の1時間後、マウスを25μgパパインで3日間処置したか又は処置せず、喘息を誘導した。マウスを4日目に安楽死させた。B)全細胞、C)マクロファージ、好酸球、リンパ球、及び好中球の浸潤を、投与後4日目にBALF中でモニターした。D)POSTN及びMPO産生を、ELISAによってBALFにおいて定量化した。結果を平均±SEM(n≧3)として表す。4日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#パパイン処置マウスと比較してp<0.05。
【
図5-1】POSTNの阻害が、重度喘息モデルにおいて肺炎症及びコラーゲン沈着を低減することを示す。A)抗POSTN抗体処置の喘息治療能力を評価するため、マウスを生理食塩水ビヒクル、又は1、2、14、及び21日目にパパイン(25μg i.n.)を4回投与して処置して喘息を誘導し、14、18、及び21日目に抗POSTN抗体MPC5B4(12.5mg/kg;i.p.)を伴う又は伴わなかった。マウスは22日目に安楽死させた。22日目にマウスを安楽死させた。B)全細胞、好酸球、リンパ球、マクロファージ及び好中球の浸潤を、22日目にBALF中でモニターした。C)肺における組織損傷、可溶性コラーゲンタンパク質及びコラーゲンメッセージ転写を22日目にモニターした。結果を平均±SEM(n=3)として表す。
*対照アイソタイプ処置マウスと比較してp<0.05。
【
図5-2】POSTNの阻害が、重度喘息モデルにおいて肺炎症及びコラーゲン沈着を低減することを示す。A)抗POSTN抗体処置の喘息治療能力を評価するため、マウスを生理食塩水ビヒクル、又は1、2、14、及び21日目にパパイン(25μg i.n.)を4回投与して処置して喘息を誘導し、14、18、及び21日目に抗POSTN抗体MPC5B4(12.5mg/kg;i.p.)を伴う又は伴わなかった。マウスは22日目に安楽死させた。22日目にマウスを安楽死させた。B)全細胞、好酸球、リンパ球、マクロファージ及び好中球の浸潤を、22日目にBALF中でモニターした。C)肺における組織損傷、可溶性コラーゲンタンパク質及びコラーゲンメッセージ転写を22日目にモニターした。結果を平均±SEM(n=3)として表す。
*対照アイソタイプ処置マウスと比較してp<0.05。
【
図5-3】POSTNの阻害が、重度喘息モデルにおいて肺炎症及びコラーゲン沈着を低減することを示す。A)抗POSTN抗体処置の喘息治療能力を評価するため、マウスを生理食塩水ビヒクル、又は1、2、14、及び21日目にパパイン(25μg i.n.)を4回投与して処置して喘息を誘導し、14、18、及び21日目に抗POSTN抗体MPC5B4(12.5mg/kg;i.p.)を伴う又は伴わなかった。マウスは22日目に安楽死させた。22日目にマウスを安楽死させた。B)全細胞、好酸球、リンパ球、マクロファージ及び好中球の浸潤を、22日目にBALF中でモニターした。C)肺における組織損傷、可溶性コラーゲンタンパク質及びコラーゲンメッセージ転写を22日目にモニターした。結果を平均±SEM(n=3)として表す。
*対照アイソタイプ処置マウスと比較してp<0.05。
【
図5-4】POSTNの阻害が、重度喘息モデルにおいて肺炎症及びコラーゲン沈着を低減することを示す。A)抗POSTN抗体処置の喘息治療能力を評価するため、マウスを生理食塩水ビヒクル、又は1、2、14、及び21日目にパパイン(25μg i.n.)を4回投与して処置して喘息を誘導し、14、18、及び21日目に抗POSTN抗体MPC5B4(12.5mg/kg;i.p.)を伴う又は伴わなかった。マウスは22日目に安楽死させた。22日目にマウスを安楽死させた。B)全細胞、好酸球、リンパ球、マクロファージ及び好中球の浸潤を、22日目にBALF中でモニターした。C)肺における組織損傷、可溶性コラーゲンタンパク質及びコラーゲンメッセージ転写を22日目にモニターした。結果を平均±SEM(n=3)として表す。
*対照アイソタイプ処置マウスと比較してp<0.05。
【
図5-5】POSTNの阻害が、重度喘息モデルにおいて肺炎症及びコラーゲン沈着を低減することを示す。A)抗POSTN抗体処置の喘息治療能力を評価するため、マウスを生理食塩水ビヒクル、又は1、2、14、及び21日目にパパイン(25μg i.n.)を4回投与して処置して喘息を誘導し、14、18、及び21日目に抗POSTN抗体MPC5B4(12.5mg/kg;i.p.)を伴う又は伴わなかった。マウスは22日目に安楽死させた。22日目にマウスを安楽死させた。B)全細胞、好酸球、リンパ球、マクロファージ及び好中球の浸潤を、22日目にBALF中でモニターした。C)肺における組織損傷、可溶性コラーゲンタンパク質及びコラーゲンメッセージ転写を22日目にモニターした。結果を平均±SEM(n=3)として表す。
*対照アイソタイプ処置マウスと比較してp<0.05。
【
図6-1】抗POSTN抗体MPC5B4による処置が肺(pulmonary)線維症モデルにおいて肺(lung)炎症を予防することを示す。A)線維症を予防する抗POSTN抗体予防的処置の能力を評価するために、マウスに、3用量のモノクローナル抗POSTN MPC5B4又はアイソタイプ対照抗体(1.25mg/kg;i.p.)を0日目、5日目及び10日目に投与した。1回目の抗体注射の1時間後、マウスをブレオマイシン(BLM、3mg/kg i.n.)で処置するか又は処置せずに、肺線維症を誘導した。マウスを14日目に安楽死させた。B)モノクローナル抗POSTN抗体の治療効果を分析するために、Aと同様に、BLM投与後7日目及び10日目に、2用量のMPC5B4を腹腔内経路により投与した。C)BLM投与後14日目に、全細胞、好中球及びリンパ球の浸潤をBALF中でモニターした。
【
図6-2】抗POSTN抗体MPC5B4による処置が肺(pulmonary)線維症モデルにおいて肺(lung)炎症を予防することを示す。A)線維症を予防する抗POSTN抗体予防的処置の能力を評価するために、マウスに、3用量のモノクローナル抗POSTN MPC5B4又はアイソタイプ対照抗体(1.25mg/kg;i.p.)を0日目、5日目及び10日目に投与した。1回目の抗体注射の1時間後、マウスをブレオマイシン(BLM、3mg/kg i.n.)で処置するか又は処置せずに、肺線維症を誘導した。マウスを14日目に安楽死させた。B)モノクローナル抗POSTN抗体の治療効果を分析するために、Aと同様に、BLM投与後7日目及び10日目に、2用量のMPC5B4を腹腔内経路により投与した。C)BLM投与後14日目に、全細胞、好中球及びリンパ球の浸潤をBALF中でモニターした。
【
図7】LPSがマウスにおいてPOSTN産生を増加させることを示す。A)POSTN産生を誘導するLPSの能力を評価するために、マウスをLPS(10μg i.t.)で処置したか又は処置しなかった。LPS投与48時間後にマウスを安楽死させた。B)BALF試料中のPOSTNレベルをELISAによって定量化した。結果を平均±SEM(n=3~4)として表す。2日目の統計分析は、マン-ホイットニー検定を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。
【
図8-1】POSTNの遮断が感染による肺炎症を予防することを開示している。A)増悪を予防する抗POSTN抗体処置の能力を評価するために、マウスにMPC5B4又は抗GM-CSF抗体(12.5mg/kg;i.p.)を注射した。注射の1時間後、マウスをLPSで処置したか又は処置しなかった(1μgを鼻腔内投与)。LPS投与の24時間後にマウスを安楽死させた。B)全細胞、好中球及びリンパ球浸潤を、LPS投与の24時間後にBALF中でモニターした。結果を平均±SEM(n≧5)として表す。統計分析は、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#LPS処置マウスと比較してp<0.05。
【
図8-2】POSTNの遮断が感染による肺炎症を予防することを開示している。A)増悪を予防する抗POSTN抗体処置の能力を評価するために、マウスにMPC5B4又は抗GM-CSF抗体(12.5mg/kg;i.p.)を注射した。注射の1時間後、マウスをLPSで処置したか又は処置しなかった(1μgを鼻腔内投与)。LPS投与の24時間後にマウスを安楽死させた。B)全細胞、好中球及びリンパ球浸潤を、LPS投与の24時間後にBALF中でモニターした。結果を平均±SEM(n≧5)として表す。統計分析は、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#LPS処置マウスと比較してp<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の態様において、本発明は、ペリオスチンのファシクリン(FAS)1-1ドメイン中の配列番号1(APSNEAWDNLDSDIRR)のペプチド配列を特異的かつ高親和性で認識するモノクローナル抗ペリオスチン(POSTN)IgG抗体又はその抗原結合性断片の、好ましくは肺疾患、炎症性疾患又は呼吸器疾患を予防及び/又は治療するための医薬としての使用に関する。
【0019】
Orecchiaら、201115によって開示されたOC-20抗体(IgM)が、POSTNのFas 1-2ドメインに結合し、ペリオスチンの(FAS)1-1ドメインには結合しないことは注目に値する。更に、OC-20抗体は、αvβ3及びαvβ5インテグリンの両方(αvβ3インテグリンのみならず)に対する阻害活性を有する。この抗体は、肺(lung)線維症の低減23及びマウスモデルにおける空気アレルゲンに対する炎症反応24に対して効果を有するが、ヒト肺(pulmonary)線維症に対するその治療
的使用は、提案も示唆もされていない。より重要なことに、これらの研究のいずれも、ヒトにおける治療薬として抗体を使用することを提案していない。これは、試験した抗体が、ヒトPOSTNではなくマウスPOSTNを認識するIgMであった(したがって、補体を活性化することができる)という事実による可能性がある。
【0020】
本発明の抗体
「抗体」という用語は、本明細書において最も広い意味で使用され、具体的には、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEなどの任意のアイソタイプのモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、並びに抗原結合性断片を包含する。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明の抗体はモノクローナルIgGであり、これは他のタイプの免疫グロブリンと比較してより強い免疫応答を誘発する。より好ましい実施形態では、本発明の抗体はモノクローナルIgG1であり、すなわち、それは2つのγ1重鎖を含有する。IgG1アイソタイプは、ヒト血清中に見出される最も豊富なアイソタイプであるだけでなく、最もよく研究され、最もよく理解されているヒト抗体形態でもある。更に、IgG1活性プロファイルは、POSTNなどの可溶性標的に合理的に適合する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、ほぼ均一な抗体集団から生じる抗体を指す。より詳細には、集団の個々の抗体は、最小限の割合で見出され得るいくつかの可能な自然発生変異を除いて同一である。言い換えれば、モノクローナル抗体は、単一の細胞クローン(例えば、ハイブリドーマ、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた真核生物宿主細胞、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた原核生物宿主細胞など)の増殖から生じる均質な抗体集団からなり、一般に、1つ及び唯一のクラス並びにサブクラスの重鎖と、唯一の型の軽鎖とによって特徴付けられる。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、抗原上の単一エピトープに対して向けられ、当該エピトープは例えば配列番号1のペプチドである。連続アミノ酸によって形成されるこのエピトープの配列は、典型的には、変性剤への曝露の際に保持される。
【0023】
配列番号1のエピトープ(APSNEAWDNLDSDIRR)は、ヒトペリオスチン蛋白(POSTN)のファシクリン(FAS)1-1ドメイン内に位置するアミノ酸配列136-151に対応する。この高度に保存されたドメインはまた、マウスペリオスチン蛋白にも存在し、145位に単一の保存的点変異D-Eを有し(APSNEAWENLDSDIRR、配列番号14と称する)、これも当該モノクローナル抗体によってエピトープとして認識される。
【0024】
ヒトPOSTNタンパク質は、以下の番号でUniProtに記載されている7つのアイソフォームを有する。
Q15063アイソフォーム1、ヒト):配列番号2
Q15063-2アイソフォーム2、ヒト):配列番号3
Q15063-3アイソフォーム3、ヒト):配列番号4
Q15063-4アイソフォーム4、ヒト):配列番号5
Q15063-5アイソフォーム5、ヒト):配列番号6
Q15063-6アイソフォーム6、ヒト):配列番号7
Q15063-7アイソフォーム7、ヒト):配列番号8
【0025】
それらの全ては、配列番号1を含有する。
マウスPOSTNタンパク質は、以下の番号でUniProtに記載される5つのアイソフォームを有する。
Q62009アイソフォーム1、マウス):配列番号9
Q62009-2アイソフォーム2、マウス):配列番号10
Q62009-3アイソフォーム3、マウス):配列番号11
Q62009-4アイソフォーム4、マウス):配列番号12
Q62009-5アイソフォーム5、マウス):配列番号13
【0026】
それらの全ては、145位に単一の保存的点変異D-Eを有する配列番号1を含有する。
【0027】
ペリオスチン(POSTN)は、タンパク質のマトリックス細胞ファミリーのメンバーである。マトリックス細胞タンパク質は、細胞外マトリックス(extracellular matrix、ECM)及び細胞表面受容体の両方に結合するそれらの能力によって定義される。POSTNは、気道発達及び肺胞上皮修復に関与することが知られており、気管支肺異形成症を有する乳児において特に上方制御される6。POSTNは、インテグリン受容体との細胞間相互作用に影響を及ぼし、線維化サイトカイン及び増殖因子の産生及び局在化に影響を及ぼす7,8。POSTNは、他のECMタンパク質及び酵素との相互作用を介して、組織リモデリング及びコラーゲン架橋を促進する9。これは、肺を含むいくつかの異なるヒト組織において発現される。POSTNは、炎症及び間質性線維症の進展における重要な因子であると考えられており、喘息及び間質性肺疾患(ILD)を含むいくつかの慢性肺疾患の病因に関与している7。
【0028】
ペリオスチン(POSTN)は、マウス骨芽細胞株において骨芽細胞特異的因子2として最初に同定され10、骨膜及び歯周靭帯において発現される。これが「OSF-2」、「OSF2」及び「PDLPN」とも呼ばれている理由である。
【0029】
POSTN分子は、N末端領域内のシステインリッチドメイン、4つのファシクリンIドメイン、及びC末端領域内の選択的スプライシングドメインから構成される。
【0030】
興味深いことに、最大9つのスプライスバリアントが同定されているが、全長転写物は、全てのエキソン11を含む93.3kDaの分泌タンパク質をコードする。
【0031】
POSTNは、I型コラーゲン及びフィブロネクチンに結合し、コラーゲン線維形成に関与することが示されている8。POSTNはインテグリンαvβ3、αvβ5、及びα6β4に結合し、Akt/プロテインキナーゼB(Protein kinase B、PKB)及び接着斑キナーゼ(Focal adhesion kinase、FAK)シグナル伝達経路の活性化をもたらし、
細胞生存、血管新生及び低酸素誘導性アポトーシスに対する抵抗性を促進する12。それはまた、C末端に依存して、ヘパリン、フィブロネクチン、コラーゲンV及びテネイシンCなどのいくつかのECMタンパク質に結合し、それによって、ECM原線維形成8及び様々な腫瘍の転移に影響を及ぼすことによって腫瘍細胞の浸潤性を増強する13。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、ヒト及びマウスタンパク質POSTNの全てのアイソフォームの、上皮細胞によって発現されたαvβ3インテグリンへの結合を阻害することができる。言い換えれば、本発明は、ヒト及びマウスPOSTNタンパク質の全てのアイソフォームの、上皮細胞によって発現されたαvβ3インテグリンとの相互作用を阻害することができる、拮抗抗体又はその抗原結合性断片を提供する。
【0033】
本発明の抗体又はその抗原結合性断片の阻害活性は、ヒト又はマウスPOSTNのαvβ3及び/又はFieldら、2016
14に開示されているようなαvβ被覆ELISAプレートに対する結合への影響を評価することにより、決定することができる。Fieldら
14の
図2aの条件において、POSTN結合を阻害するためのIC
50が30μg/mL未満である場合、阻害活性を結論付けることができる。
【0034】
本発明の抗体の阻害活性はまた、組換えヒト又はマウスPOSTN又はそのFasl-1ドメインに応答して、ECFCなどの遊走細胞の遊走に対するその影響を研究すること
によって実証することができる。Fieldら
14に開示されているように(
図5)、本発明の抗体は、好ましくは、POSTNによって誘導されるECFCの遊走を陰性対照のレベルまで減少させることができる。
【0035】
本発明の抗体又はその抗原結合性断片の高い特異性及び強い阻害活性は、以下の実施例部分に示されるように、ヒト肺疾患のマウスモデルにおいて観察される強い効果を説明すると考えられる。
【0036】
実際、本出願の抗体は、配列番号1に対して高い親和性を有する。より好ましくは、それらは、配列番号1との非常に低い解離定数を有する。例えば、この非常に低い解離定数は、50nM以下であり、ピコモル範囲(10-12M)まで達し得る。より具体的には、本発明の抗体又はその機能的抗原結合性断片は、約0.08の配列番号1との解離定数(dissociation constant、KD)を有する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「KD」という用語は、特定の抗体/抗原相互作用の解離定数を指す。本明細書で使用される場合、「結合親和性」又は「結合の親和性」という用語は、一般に、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別段の指示がない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体及び抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的には、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は、一般に、抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるのに対して、高親和性抗体は、一般に、抗原により速く結合し、より長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で公知であり、そのうちのいずれも本発明の目的のために使用することができる。Fieldら14に開示されているものなどの競合ペプチドを用いた競合実験も行うことができる。
【0038】
抗POSTN抗体(MPC5B4)の滴定を、ペリオスチン被覆プレート上で行った。これは、実際の親和性計算を可能にしないが、アビディティの概念を与える。ヒトPOSTN(0.0063nM、Kd=0.08)及びマウスPOSTN(0.00419nM)について、50%最大結合率を計算した。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明の抗体又はその機能的断片は、ヒトPOSTNタンパク質における任意の他のエピトープに結合しない(全ての他のエピトープに対して1mMを超える解離定数を有するため)。具体的には、それは、Orecchiaら、201115によって開示されたOC-20抗体(IgM)のように、POSTNのFas 1-2ドメインに結合しない。
【0040】
本発明の抗体の取得
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、Field et al,201614によって開示された「MPC5B4」と呼ばれるIgG1モノクローナル抗体であり得、これは、Ludwig Institute for Cancer Research(Avenue Hippocrate 74,Box B 1.74.03 B-1200
Brussels,Belgium)において要求に応じて利用可能である。
【0041】
Fieldら、201614に開示されているように、他の効率的なモノクローナル抗体は、オボアルブミン(ovalbumin、OVA)などの免疫原性担体にコンジュゲートされ
たエピトープ(配列番号1)又は配列番号2~13からなる群から選択される配列を有する全POSTNタンパク質でマウスを免疫することによって産生することができる。この
コンジュゲーションは、任意の従来の手段によって行うことができる。当該コンジュゲーションの例は、Fieldら14に示されており、ここでは、最初に、完全長POSTNを、0.1M MES緩衝液pH4.8中の10mM N-ヒドロキシスルホスクシンイミドの存在下で100mM N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドと1時間重合させた。0.1M酢酸緩衝液pH5.8に対して透析した後、重合POSTNをグルタルアルデヒド活性化OVAにコンジュゲートさせた。更なる詳細は、Uyttenhove Cら、201116に記載されている。
【0042】
Fieldら14において示唆されているように、例えば、感染血漿の腹腔内注射によって、B細胞活性化特性を有する一本鎖ポジティブセンスRNAエンベロープアルテリウイルスである乳酸脱水素酵素上昇ウイルス(lactate dehydrogenase-elevating virus、
LDV)ウイルスをマウスに感染させることによって、免疫系が強力に刺激されたマウスにおいて抗体を産生することが好ましい17。
【0043】
あるいは、先行技術において報告されているように、内因性POSTNタンパク質を有さない(すなわち、POSTNタンパク質のアイソフォームを有さない)POSTN欠損マウスを使用することができる(Fieldら14の議論において引用されている論文を参照されたい)。
【0044】
Fieldらは、このようなワクチン接種手順がマウスの免疫自己寛容を破り、TGFβ1と交差反応することなく、配列番号2~13のヒト及びマウスPOSTNタンパク質の配列番号1を特異的に認識するいくつかの抗体を生成することを可能にすることを示唆している。
【0045】
これらのマウスは、10μgのPOSTN(配列番号2~13の任意のアイソフォーム)又はオボアルブミン(OVA)にコンジュゲートされた配列番号1で、好ましくは週間隔で数回、例えば2週間隔で3回、足蹠において免疫することができる。5μgのPOSTN(配列番号2~13の任意のアイソフォーム又は配列番号1のエピトープ)の静脈内注射を、骨髄腫細胞との細胞融合の4日前に行うことができる。
【0046】
これらの免疫化されたマウスは、POSTNタンパク質中の配列番号1エピトープに特異的に結合する抗体を生成するリンパ球を産生する。これらのリンパ球を収集し、次いでポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する。このように調製されたハイブリドーマ細胞は、好ましくは融合していない親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する1つ以上の物質を含有する適切な培養培地中に播種し、増殖させることができる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含み(HAT培地)、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する。好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル産生を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性であるものである。これらの中で、好ましい骨髄腫細胞株は、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego,California USAから入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、並びにAmerican Type Culture Collection、Rockville,Maryland USAから入手可能なSP-2又はX63-Ag8-653細胞などのマウス骨髄腫株である。
【0047】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクロ
ーナル抗体の結合特異性は、インビトロ結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay、RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunoabsorbent assay、ELISA))によって決定される。
【0048】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によってサブクローニングし、標準的な方法によって増殖させることができる。この目的のための適切な培養培地としては、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が挙げられる。
【0049】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインG又はプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィ)によって、培養培地、腹水液、又は血清から適切に分離される。
【0050】
更なる実施形態では、抗体又は抗体断片は、McCafferty et al.,Nature,348:552-554(1990)に記載される技術を使用して生成される抗体ファージライブラリから単離され得る。Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)は、ファージライブラリを用いたマウス及びヒト抗体の単離をそれぞれ記載している。その後発表された論文には、チェーンシャフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の生産(Marks et al.,Biotechnology,10:779-783(1992))、同様に非常に大きなファージライブラリを構築する戦略としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組換えが記載されている(Waterhouse et al.,Nuc.Acid.Res.,21:2265-2266(1993))。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する実行可能な代替法である。
【0051】
本発明の抗体の特異性/アビディティは、例えば、配列番号1のポリペプチド、ヒトPOSTN(任意のアイソフォーム)、マウスPOSTN(任意のアイソフォーム)又は他の関連タンパク質で被覆されたマイクロプレートを使用して、ELISA実験によって評価することができる。目的の抗体の選択は、それらの相対的なアビディティ/特異性に基づいて行われる。
【0052】
Fcドメインにおける変異
ここで、本発明は、好ましくは、天然形態の抗体に関するものではない、すなわち、それらは、それらの自然環境から採取されたものではなく、天然源からの精製によって単離又は得られたものであるか、あるいは遺伝子組換え又は化学合成によって得られたものであることを理解しなければならない。したがって、それらは、以下に記載されるような「非天然」アミノ酸を有し得る。
【0053】
例えば、以下のアミノ酸変異を導入することによって、本発明の抗体又は断片の半減期を増加させることが可能である。
・M252Y/S254T/T256E(「YTE」):この変異は、IgG又はFcドメインのIgGリサイクリング受容体FcRnへの結合を増加させ、半減期の延長をもたらす18。
・M428L/N434S(「LS」):この変異は、IgG又はFcドメインのIgGリサイクリング受容体FcRnへの結合を増加させ、半減期の延長をもたらす19。
・L309D/Q311H/N434S(「DHS」):この変異は、IgG又はFcドメインのIgGリサイクリング受容体FcRnへの結合を増加させ、半減期の延長をも
たらす20。
・T307A/E380A/N434A:この変異は、IgG又はFcドメインのIgGリサイクリング受容体FcRnへの結合を増加させ、半減期の延長をもたらす21。
【0054】
更に、本発明の抗体及び断片は、ヒトにおける処置及び/又は治療において使用されることが意図されるので、それらの潜在的な免疫原性及び有害な効果は、任意の手段によって最小化されるべきである。
【0055】
したがって、当技術分野で既に提案されているように、それらのエフェクター機能を改変するために、これらの抗体のFc領域を改変することが推奨される。特に、受容体FcγR(FcγRI、FcγRII、FcγRIII、FcγRIIIA、FcγRIIIB、Fcγn)の活性化だけでなく、オプソニン作用、細胞病原体の溶解、及び炎症反応において重要な役割を果たす補体のC1q成分の活性化も回避するために、抗体のFc領域を変異させる方がよい。
【0056】
本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、IgG重鎖のC末端領域を定義するために使用される。境界はわずかに変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226からカルボキシ末端まで伸長すると定義される。IgGのFc領域は、2つの定常ドメイン、CH2及びCH3を含む。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、通常、アミノ酸231~アミノ酸341に及ぶ。ヒトIgG Fc領域のCH3ドメインは、通常、アミノ酸342~447に及ぶ。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、通常、アミノ酸231~340に及ぶ。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対合していないという点で独特である。むしろ、2つのN結合分岐炭水化物鎖が、無傷の天然IgGの2つのCH2ドメイン間に挿入されている。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「エフェクター機能を欠く」Fc領域は、Fc受容体に結合せず、及び/又は補体のC1q成分に結合せず、このような結合に特徴的な生物学的応答を誘発しない。
【0058】
その通常のグリコシル化部位でグリコシル化されていない(又は「アグリコシル化」されている)Fc領域を生成することによって、抗体のエフェクター機能を損なうことが可能である。
【0059】
「グリコシル化部位」という用語は、糖残基の付着のための位置として哺乳動物細胞によって認識されるアミノ酸残基を指す。オリゴ糖などの炭水化物が結合するアミノ酸残基は、通常、アスパラギン(N-結合)、セリン(O-結合)、及びトレオニン(O-結合)残基である。特異的結合部位は、通常、「グリコシル化部位配列」と呼ばれる特徴的なアミノ酸配列を有する。N結合型グリコシル化のためのグリコシル化部位配列は、-Asn-X-Ser-又は-Asn-X-Thr-(式中、Xはプロリン以外の従来のアミノ酸のうちのいずれかであり得る)である。ヒトIgGのFc領域は、CH2ドメインの各々に1つずつ、2つのグリコシル化部位を有する。ヒトIgGのCH2ドメイン中のグリコシル化部位で生じるグリコシル化は、297位のアスパラギン(Asn 297)でのN結合型グリコシル化である。
【0060】
特に、本発明の抗体のFc領域を、以下の変異のうちのいずれかで変異させることによって改変することが可能である。
・N297A:この変異は、N-グリコシル化を受けることができるアスパラギンを置換する。このN-グリコシル化は、IgGのFc領域とヒト低親和性FcγR(CD32A、CD32B、CD32C、CD16A、CD16B)との間の相互作用に必要である。それは、IgGの高親和性FcγR、FcγRI/CD64との相互作用に影響を及ぼ
さない。
・N297D:FcγR結合に対して同じ結果を有するN297Aと同様の変異。
・L234A、L235A(LALA):この二重変異は、IgGのFc領域とヒト低親和性FcγR(CD32A、CD32B、CD32C、CD16A、CD16B)との間の相互作用を消失させる。それは、IgGの高親和性FcγR、FcγRI/CD64との相互作用に影響を及ぼさない。
・L234A、L235A、P329G(LALAPG):この三重変異は、低親和性FcγR(CD32A、CD32B、CD32C、CD16A、CD16B)であろうと高親和性FcγR(CD64)であろうと、IgGのFc領域と全てのヒトFcγRとの間の相互作用を消失させる。
【0061】
この変異のうちのいずれかを使用して、ヒトに安全に投与することができる効率的な治療用抗体を生成することができる。
【0062】
更に、治療用抗体の有効性を高め、有害な副作用を低減するための当技術分野で公知の全ての変異が本明細書に包含される。
【0063】
抗体のヒト化
別の態様では、本発明は、遺伝子工学又は化学合成によって得ることができるキメラ抗体若しくはヒト化抗体、又は抗原結合性断片に関する。具体的には、本発明のPOSTN抗体はキメラ抗体である。
【0064】
本明細書で使用される「キメラ抗体」という用語は、所与の種の抗体に由来する天然可変領域(軽鎖及び重鎖)を、当該所与の種とは異種の種の抗体の軽鎖及び重鎖の定常領域と組み合わせて含有する抗体を指す。したがって、本明細書で使用される「キメラ抗体」は、可変領域が異なる種の、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する定常領域に連結されるように、定常領域又はその一部が改変、置換又は交換されている抗体である。「キメラ抗体」はまた、定常領域が異なる種の、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する可変領域に連結されるように、可変領域又はその一部が改変、置換又は交換されている抗体も指す。このようなキメラ抗体又はその断片は、組換え工学によって調製され得る。例えば、キメラ抗体は、プロモーターと、本発明の非ヒトモノクローナル抗体、特にマウスの可変領域をコードする配列と、ヒト抗体定常領域をコードする配列とを含む組換えDNAをクローニングすることによって産生することができる。1つのこのような組換え遺伝子によってコードされる本発明によるキメラ抗体は、例えば、マウス-ヒトキメラであり得、この抗体の特異性は、マウスDNAに由来する可変領域によって決定され、そのアイソタイプは、ヒトDNAに由来する定常領域によって決定される。
【0065】
別の態様において、本発明は、ヒト化抗体又はその抗原結合性断片を提供する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体を指す。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのCDR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体において見出されない残基を含み得る。これらの改変は、結合親和性などの抗体性能を更に洗練するために行うことができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全て又は実質的に全ては非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てはヒト免疫グロブリン配列のもので
あるが、FR領域は、結合親和性、異性化、免疫原性などの抗体性能を向上させる1つ以上の個々のFR残基置換を含んでいてもよい。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、典型的には、重(H)鎖で6個以下、軽(L)鎖で3個以下である。ヒト化抗体は、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。
【0067】
ヒト化の目標は、抗体の完全な抗原結合親和性及び特異性を維持しながら、ヒトへの導入のためのマウス抗体などの異種抗体の免疫原性を低下させることである。ヒト化抗体、又は他の哺乳動物による非拒絶に適合させた抗体は、リサーフェシング(resurfacing)
及びCDR移植などのいくつかの技術を用いて作製することができる。本明細書中で使用される場合、表面再構成技術は、分子モデリング、統計分析及び変異誘発の組み合わせを使用して、抗体可変領域の非CDR表面を、標的宿主の公知の抗体の表面に類似するように改変する。
【0068】
抗体の再表面化のための戦略及び方法、並びに異なる宿主内で抗体の免疫原性を低下させるための他の方法は、米国特許第5,639,641号に開示されている。簡単に述べると、好ましい方法では、(1)抗体重鎖及び軽鎖可変領域のプールの位置アラインメントを生成して、重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク表面露出位置のセットを得、ここで、全ての可変領域についてのアラインメント位置は少なくとも約98%同一である。(2)重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク表面露出アミノ酸残基のセットが、齧歯類抗体(又はその断片)について定義される。(3)齧歯類表面露出アミノ酸残基のセットと最も密接に同一である重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク表面露出アミノ酸残基のセットが同定される;(4)ステップ(2)で定義された重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク表面露出アミノ酸残基のセットが、齧歯類抗体の相補性決定領域のいずれかの残基の原子から5オングストローム(Å)以内にあるアミノ酸残基を除き、ステップ(3)で同定された重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク表面露出アミノ酸残基のセットで置換され、(5)結合特異性を有するヒト化齧歯類抗体が産生される。抗体は、CDR移植(欧州特許第0239400号、国際公開第91/09967号、米国特許第5,530,101号及び米国特許第5,585,089号)、ベニアリング又はリサーフェシング(欧州特許第0592106号、欧州特許第0519596号)、及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含む他の様々な技術を使用してヒト化することができる。ヒト抗体は、ファージディスプレイ法(米国特許第4,444,887号、米国特許第4,716,111号、米国特許第5,545,806号、及び米国特許第5,814,318号)を含む、当技術分野で公知の様々な方法によって作製することができる。
【0069】
免疫原性を減少させるための上記の方法の代替として、又はそれに加えてのいずれかで使用され得る別の技術は、本発明の抗体の「脱免疫化」である。脱免疫化技術は、抗体及び他のタンパク質生物学的治療剤からのTヘルパー(Th)細胞エピトープの同定及び除去を含む。Th細胞エピトープは、MHCクラスII分子に結合する能力を有するタンパク質内の短いペプチド配列を含む。ペプチド-MHCクラスII複合体は、T細胞によって認識され得、そしてTh細胞の活性化及び分化を誘発し得、これは、B細胞との相互作用を介して免疫原性を開始及び維持するために必要であり、したがって、投与された生物学的治療剤に特異的に結合する抗体の分泌を生じる。抗体脱免疫化のために、Th細胞エピトープは、例えば、ヒトMHCクラスII分子へのペプチドの結合を予測するためのコンピュータベースの方法によって、抗体配列内で同定される。T細胞による認識を避けるために、このようにして同定されたTh細胞エピトープは、アミノ酸置換によってタンパク質配列から除去される。これは、例えば、治療用タンパク質中のTh細胞エピトープをコードする核酸配列を改変するための部位特異的変異誘発などの標準的な分子生物学技術の使用によって達成することができる。このようにして、抗体又は抗原結合性断片は、HAMA(ヒト抗マウス抗原性)及び/又は抗イディオタイプ応答が低減又は回避されるよ
うに改変され得る。したがって、特定の実施形態では、本発明の抗体は、それらの配列中に存在する任意のTh細胞エピトープを除去するように改変され得る。このような結合分子は、本明細書中で脱免疫化抗体と呼ばれる。
【0070】
本発明のヒト化抗体は、好ましくは、上記のマウス抗体MPC5B4から生じる。より好ましくは、それらはFieldら14に開示されたマウス抗体MPC5B4から生じる。
【0071】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、配列番号1に特異的に結合し、ヒト及びマウスPOSTN(任意のアイソフォーム)と上皮細胞上のそれらのインテグリンリガンドとの間の相互作用、並びにその後のシグナル伝達を阻害するヒト化抗体又はその抗原結合性断片を提供する。
【0072】
別の特定の実施形態では、本発明の阻害抗体又は抗原結合性断片は、完全ヒトである。本明細書で使用される「完全ヒト」という用語は、そのアミノ酸配列がヒトに由来する(すなわち、ヒトを起源とするか、又はヒトにおいて見出され得る)抗体又は抗原結合性断片に関する。
【0073】
本発明の抗体断片
本発明はまた、上記で定義したように、本発明の阻害抗体の機能的断片を使用することによって実施することができる。「機能的断片」は、無傷な抗体の一部を含み、一般に無傷な抗体の抗原結合領域又は可変領域を含み、ここではヒト及びマウスPOSTNタンパク質中の配列番号1を認識する。それらは、好ましくは、上記で定義された本発明の抗体と同じ阻害活性を有する。
【0074】
特に、本発明による機能的断片は、ヒト及びマウスPOSTNの、上皮細胞によって発現されたαvβ3インテグリンへの結合を阻害することができる。この阻害活性は、ヒトPOSTNの、Fieldら
14に開示されるような、αvβ3及び/又はαvβ5で被覆されたELISAプレートへの結合に対する抗体断片の影響を評価することにより、決定することができる。機能的断片は、ヒト及びマウスPOSTN結合を阻害するそのIC
50が、Fieldら
14の
図2aの条件において30μg/mL未満である場合に、本発明による阻害活性を示す。当該断片の阻害活性はまた、組換えヒト又はマウスPOSTN又はそのFasl-1ドメインに応答して、ECFCなどの内皮細胞の遊走に対するその影響を研究することによって実証することができる。Fieldら
14に開示されているように(
図5)、本発明の機能的断片は、POSTNによって誘導されるECFCの遊走を陰性対照のレベルまで減少させることができる。
【0075】
「抗体断片」は、無傷な抗体の一部、好ましくは無傷な抗体の抗原結合領域及び/又は可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体(米国特許第5,641,870号参照)、一本鎖抗体分子及び抗体断片から形成される多重特異性抗体がある。
【0076】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合性断片と、容易に結晶化する能力を反映する名称である残りの「Fc」断片とを生成した。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(variable region domain of the H chain、VH)及び1
つの重鎖の第1の定常ドメイン(first constant domain of one heavy chain、CH1)と共に全L鎖からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。
【0077】
抗体のペプシン処理は、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合されたF
ab断片にほぼ対応し、依然として抗原を架橋することができる単一の大きなF(ab’)2断片を生じる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に数個の追加の残基を有することによってFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的結合もまた公知である。
【0078】
本明細書で使用される「Fv」という用語は、完全な抗原認識及び結合部位を含有する最小抗体断片を指す。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインとが強固に非共有結合した二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりも親和性は低いが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0079】
「sFv」又は「scFv」とも略される「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に接続されたVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは更に、VHドメインとVLドメインとの間に、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを含む。
【0080】
本発明の抗体又は断片は、多重特異性、特に二重特異性であってもよい。したがって、それは、二重特異性IgG、IgG-scFv2、(scFv)4-IgG、(Fab’)2、(scFv)2、(dsFv)2、Fab-scFv融合タンパク質、(Fab-scFv)2、(scFv)2-Fab、(SCFV-CH2-CH3-SCFV)2、バイボディ(bibody)、トリボディ(tribody)、二重特異性ダイアボディ、ジスルフィ
ド安定化(ds)ダイアボディ、「ノブイントゥホール(knob-into whole)」ダイアボ
ディ、一本鎖ダイアボディ(single-chain diabody、scDb)、タンデムダイアボディ(tandem diabody、TandAb)、フレキシボディ(flexibody)、DiBiミニ抗体
(miniantibody)、[(scFv)2-Fc]2、(scDb-CH3)2、(scDb-Fc)2、Di-ダイアボディ、Tandemabなどからなる群において選択され得る。
【0081】
本明細書中で使用される場合、用語「ダイアボディ」は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間対合が達成され、それによって二価断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片を生じるように、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10残基)を有するsFv断片(前の段落を参照のこと)を構築することによって調製される小さな抗体断片をいう。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第93/11161号により詳細に記載されている。
【0082】
より詳細には、本発明は、抗体断片Fv、Fab、(Fab’)2、Fab’、scFv、scFv-Fc及びダイアボディの中から選択される機能的断片、又は化学改変によって半減期が延長された任意の断片を提供する。
【0083】
上記で引用した化学改変は、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールの付加(PEG化)(PEG化断片は、Fv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab’)2-PEG及びFab’-PEGと呼ばれる)などであってもよく、又はリポソーム、マイクロスフェア若しくはポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(
PLGA)への組み込みによるものであってもよく、当該断片は、特に、それが生じる抗体の活性を一般的な様式で、部分的であっても発揮することが顕著に可能である、本発明のCDRを少なくとも6つ有する。
【0084】
好ましくは、当該抗原結合性断片は、それらが由来する抗体の可変重鎖又は軽鎖の部分配列を含むか又は包含し、当該部分配列は、それが生じる抗体と同じ結合特異性及び十分な親和性、好ましくはそれが生じる抗体の親和性の少なくとも1/100、より好ましくは少なくとも1/10に等しい親和性を保持するのに十分である。
【0085】
好ましくは、この抗原結合性断片は、Fv、scFv、Fab、F(ab’)2、F(ab’)、scFv-Fc、又はダイアボディのタイプのものである。これらは、一般的に、それらが由来する抗体と同じ結合特異性を有する。
【0086】
本発明によれば、本発明の抗原結合性断片は、ペプシン若しくはパパインを含む酵素消化などの方法によって、及び/又は化学的還元によるジスルフィド架橋の切断によって、上記の抗体から得ることができる。抗原結合性断片はまた、当業者に公知の組換え遺伝学技術によって、又は例えば、自動ペプチド合成機(例えば、Applied BioSystemsなどによって販売されているもの)によるペプチド合成によって得ることができる。
【0087】
治療方法
上記のように、本発明の抗体又は断片は、ヒト及びマウスPOSTNタンパク質中の配列番号1のエピトープに高い親和性で特異的に結合する。したがって、それらは、ECFCにおいて実証されているように、インテグリン媒介性細胞内シグナル伝達及び炎症細胞遊走などのPOSTN誘導性機能を阻害することができる。POSTNは、Th2サイトカインIL-4及びIL-13に応答して気管支上皮細胞によって発現され、気管支喘息における上皮下線維症の構成要素を表す22。
【0088】
結果として、本発明の抗体及び断片は、炎症性及び線維性呼吸器障害を予防又は治療するのに特に有用である。
【0089】
本明細書で使用される場合、「炎症性及び線維性呼吸器障害」という用語は、肺組織の望ましくない炎症から生じる状態又は疾患を指す。そのような状態には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、及び喘息などのいくつかの慢性疾患が含まれる。他の障害は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)又は感染から生じるものを含む。
【0090】
より一般的には、本発明の方法に従って予防、処置又は管理され得る炎症性障害としては、喘息、慢性閉塞性肺(pulmonary)疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARD
S)、肺(pulmonary)線維症、例えば、特発性肺(pulmonary)線維症(IPF)、気腫及び肺(lung)炎症又はウイルス、真菌若しくは細菌感染から生じる呼吸器疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
特定の実施形態では、本発明の抗体又はその断片は、例えばベータコロナウイルスによるウイルス感染によって誘発される呼吸器疾患を治療するために使用することができる。ヒトにおけるベータコロナウイルス感染は、通常、感染患者の症状の観察に基づいて医療専門家によって診断される。診断を確認するために、追加の生物学的試験、すなわち血液及び/又は痰及び/又は気管支肺胞洗浄液試験が必要とされる場合がある。ベータコロナウイルスによる感染は、例えば、呼吸器検体の分子生物学的検出及び/若しくはウイルス滴定によって、又は当該ベータコロナウイルスに特異的な抗体について血液をアッセイすることによって確定することができる。従来の診断方法は、当業者に周知であるPCRな
どの分子生物学の技術を含む。
【0092】
この特定の実施形態では、本発明の抗体又はその断片は、症候性COVID19疾患を治療するために使用することができる。本発明の文脈において、「COVID-19疾患」という用語は、SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)による感染に関連する疾患を意味する。本発明の文脈において、「症候性COVID-19疾患」は、COVID-19疾患の少なくとも1つの症状を示す患者によって特徴付けられる。COVID-19疾患の最も一般的な症状は、発熱、筋肉痛、頭痛、倦怠感、味覚及び嗅覚の喪失、並びに空咳、呼吸困難及び酸素不足などの呼吸器症状である。症候性疾患は、疾患又は感染のキャリアであるが症状を経験しない患者を特徴とする無症候性疾患とは対照的である。
【0093】
別の特定の実施形態では、本発明の抗体又はその断片は、軽度のCOVID19疾患が「重度の形態」、すなわち、重篤な症状(例えば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS))によって特徴付けられるCOVID19疾患に悪化することを予防するために使用され得、この重篤な症状は、任意のユニット、特に、重篤な感染の場合には、集中治療室(intensive care unit、ICU)における患者の入院を必要とする。本発明の文脈において、略
語「ICU」は、集中治療室、集中治療薬を提供する病院又は医療施設の専門部門を指す。
【0094】
この特定の実施形態では、本発明の抗体又は断片は、75歳を超える、又は65~74歳のヒト患者に優先的に投与される。実際、これらの人々は、通常、当該ウイルスに感染した場合、若い人々よりも高い死亡率を有する。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療すること」、「治療」などは、障害(例えば、炎症性障害)の症状及び/又はそれに関連する症状を減少又は改善することを指す。障害又は状態を治療することは、排除されないが、障害、状態又はそれに関連する症状が完全に除去されることを必要としないことが理解される。
【0096】
本明細書中で使用される場合、「それを必要とする」対象において疾患を「治療すること」又は「それを必要とする」対象を「治療すること」は、疾患の少なくとも1つの症状が減少又は予防されるように、当該障害に罹患している対象を薬物治療(例えば、医薬品の投与)に供することを意味する。本明細書中で使用される場合、治療は、予防投与(すなわち、病理学的事象の開始前の投与)、及びARDS又は慢性疾患(例えば、喘息又はBPCO)における発作又は増悪の予防を含む。
【0097】
一実施形態では、「対象」は、不適切な肺又は呼吸器炎症を特徴とする障害に罹患している哺乳動物を指す。「対照対象」は、肺/気道が炎症も線維化もない哺乳動物を指す。当該哺乳動物には、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタ、ブタ、ヒツジ及びサルが含まれる。ヒト対象は、本明細書では「患者」と称される。
【0098】
別の実施形態では、本発明はまた、上述の疾患のうちのいずれかの予防又は治療のための薬物及び/又は医薬品及び/又は医薬組成物の調製のための本発明の抗体又は断片の使用に関する。
【0099】
当該薬物/医薬品/医薬組成物は、本発明の抗体又はその機能的抗原結合性断片を含む。好ましくは、本発明の抗体/断片に加えて、種々の希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、及び当該分野で周知の他の物質を含む。より一般的には、本発明の抗体/断片に加えて、薬学的に許容される担体を含有する。
【0100】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容される担体」としては、生理学的に適合性である、任意の及び全ての溶媒、緩衝液、塩溶液、分散媒、被覆、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。担体のタイプは、意図される投与経路に基づいて選択することができる。様々な実施形態では、担体は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、経皮又は経口投与に適している。薬学的に許容される担体としては、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質のための媒体及び薬剤の使用は、当該分野で周知である。静脈内注入のための代表的な薬学的組成物は、250mlの滅菌リンゲル溶液及び100mgの組み合わせを含有するように作製され得る。非経口的に投与可能な化合物を調製するための実際の方法は、当業者に公知又は明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA.(1985)、及びその第18版及び19版により詳細に記載され、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
本発明の組成物中の抗体/断片は、好ましくは有効量で製剤化される。「有効量」は、呼吸器疾患の予防又は治療などの所望の結果を達成するために必要な用量及び期間で有効である量を指す。「治療有効量」は、特定の疾患状態の治療経過に影響を及ぼすのに十分な量を意味する。治療的有効量はまた、治療的に有益な効果が薬剤の任意の毒性又は有害な効果を上回る量である。
【0102】
別の態様では、本発明は、医薬品としての本発明の抗体又はその抗原結合性断片の使用に関する。また、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の医薬組成物に関する。
【0103】
患者に投与される本発明の組成物中の抗体の投与量は、典型的には、患者の体重の約0.1mg/kg~約10mg/kg、例えば、患者の体重の約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、及び約10mg/kgである。好ましくは、患者に投与される抗体の投与量は、患者の体重の約1mg/kg~約9mg/kgである。他の実施形態では、本発明の組成物中の抗体の投与量は、患者の体重の約0.1、約0.3、約1.0又は約3.0mg/kgである。
【0104】
本発明の抗体は、例えば、病気の性質、患者の状態及び抗体の半減期のような因子に依存して、治療する医師の判断に従って、例えば、毎日、毎週、隔週、又は任意の他の適切な間隔で投与され得る。好ましい例では、対象は、約0.1~約10mg/kg体重の範囲の本発明の抗体又は断片で、1~3週間に1回、約1~約10週間、好ましくは約2~約8週間、より好ましくは約3~約7週間、更により好ましくは約4、約5、又は約6週間治療される。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、1日1回、1日2回、又は1日3回投与される。他の実施形態では、医薬組成物は、週1回、週2回、2~3週間毎に1回、月1回、6週間毎に1回、2ヶ月毎に1回、年2回、又は年1回投与される。治療のために使用される抗体の有効投与量は、特定の治療の過程にわたって増加又は減少し得ることもまた理解される。
【0105】
最も好ましい実施形態では、本発明の組成物は、約30分間にわたって静脈内投与される。他の実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも約1時間、少なくとも約30分、又は少なくとも約15分にわたって静脈内投与される。
【0106】
より一般的には、治療用途のために、本発明の抗体は、ボーラスとして、又はある期間にわたる連続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、くも膜下腔内、経口、局所、又は吸入経路によって対象に投与され得る。
【0107】
最も好ましい実施形態では、本発明の組成物は、スプレーを用いて吸入によって投与される。
【実施例】
【0108】
本明細書において本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に対して多数の修正を行うことができ、他の構成を考案することができることを理解されたい。
【0109】
I.材料及び方法
マウス
雄の8週齢C5BL/6マウスをJanvier Labs(Saint Berthevin,France)から購入した。マウスを12時間の明暗サイクル下で維持し、それらに標準実験食を与えた。全ての研究は、フランス国立科学研究センター(Centre national de la recherche scientifique、CNRS)のInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。
【0110】
マウスにおけるパパイン誘導性肺炎症モデル
パパイン(Calbiochem、Darmstadt,Germany)の投与によって喘息を誘導した後、マウスを2~3%イソフルオラン及び2%O2によって麻酔した。パパインを滅菌NaCl溶液に溶解した。動物を、鼻腔内又は気管内投与された25μgパパインを含有する40μl溶液で3回感作した。マウスを喘息誘導後4日目に屠殺した。対照動物はいずれも未処置であった。
【0111】
パパイン投与の4日後にマウスをCO2吸入により安楽死させ、BALFを収集した。ISOTON II(酸を含まない平衡電解質溶液Beckman Coulter、Krefeld,Germany)での炉灌流(hearth perfusion)後、肺を収集し、分析のためにサンプリングした。
【0112】
マウスにおけるブレオマイシン誘導性肺線維症モデル
ブレオマイシン(Merck KGaA,Darmstadt,Germany)の投与によって肺線維症を誘導した後、マウスを2~3%イソフルオラン及び2%O2によって麻酔した。ブレオマイシンを滅菌NaCl溶液に溶解した。動物を、鼻腔内投与される3mg/kgを含有する40μlの溶液で3回感作した。気腫誘導後14日目にマウスを屠殺した。対照動物はいずれも未処置であった。BALF及び肺を収集し、分析のためにサンプリングした。
【0113】
マウスにおけるLPS誘導性肺感染モデル
マウスを2~3%イソフルオラン及び2%O2で麻酔した後、LPSの投与によって喘息を誘導した。LPSを滅菌NaCl溶液に溶解した。動物を、鼻腔内又は気管内投与された1μgのLPSを含有する40mlの溶液で3回感作した。LPS投与の24時間後にマウスを屠殺した。対照動物はいずれも未処置であった。マウスをCO2吸入により安楽死させ、BALFを収集した。ISOTON IIでの炉灌流後、肺を収集し、分析のためにサンプリングした。
【0114】
抗体投与
抗POSTN(MPC5B4)又はアイソタイプ対照(IgG1)抗体を、示された時点で与えた(
図2A、
図3A、
図4A、
図5A~
図5B及び
図6A)。異なる用量のモノ
クローナル抗体(12.5、5、2.5mg/kg;i.p.又は10、3、1mg/kg;i.t.)を用量応答研究に使用した。
【0115】
試料サイズ及び統計分析
Prism 5(GraphPad software、San Diego,CA)を用いて統計分析を行った。結果を、ノンパラメトリック検定(マンホイットニー検定)、確率(P)に関して表されるT検定を用いて分析した。p<0.05の場合、差は有意であるとみなした。全てのデータを平均±SEMとして表した。
【0116】
II.結果
パパインはPOSTN産生を増加させる。
ペリオスチン(POSTN)産生を誘導するパパインの能力を評価するために、C57BL/6マウスを25μgのパパインで気管内処置したか、又は処置しなかった。マウスに1用量のパパインを投与した(
図1A)。パパイン投与の48時間後にPOSTNレベルを測定した。パパイン処置マウスは、対照マウスと比較して、気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid、BALF)中のPOSTNのレベルの有意な増加を示す(
図1B)。
【0117】
抗POSTN抗体は、喘息における肺炎症を予防する。
モノクローナルマウス抗POSTN抗体(MPC5B4、IgG1アイソタイプ)は、インテグリンαvβ3とのPOSTN結合部位相互作用(aal40-l50)を遮断する
14。MPC5B4による処置は、肺炎症におけるPOSTNシグナル伝達調節の影響を評価するために含まれた。C57BL/6マウスに抗POSTN又はアイソタイプ対照抗体を注射した(12.5、5、2.5mg/kg;i.p.)。注射の1時間後、マウスをパパイン(25μg i.n.)で処置するか又は処置せずに、アレルギー性喘息を誘導した。マウスに3用量のパパインを3日間連続で投与した(
図2A)。細胞数を、最初の投与の4日後に気管支肺胞洗浄液(BALF)及び肺においてモニターした。用量応答分析は、喘息アレルギーにおける肺炎を制御するための抗POSTN抗体療法の有効性を示す(
図2B)。対照群としてのパパイン処置マウスは、総細胞数、好酸球及びリンパ球数の増加を示した(
図2B)。更に、パパイン処置マウスは、抗POSTN療法が、肺炎症からレシピエントマウスを保護し、BALF中の好酸球及びリンパ球数を有意に減少させたことを示す(
図2B)。しかしながら、対照アイソタイプ抗体療法は、レシピエントマウスを炎症から保護することができなかった。
【0118】
用量応答研究の後、C57BL/6マウスに抗POSTN又はアイソタイプ対照抗体(12.5mg/kg;i.p.)を注射した。注射の1時間後、マウスを25μgのパパインで処置するか又は処置せずにアレルギー性喘息を誘導した。マウスに3用量のパパインを3日間連続で投与した(
図3A)。細胞数を、最初の投与の4日後にBALF及び肺においてモニターした。対照群としてのパパイン処置マウスは、総細胞数(
図3B)、好酸球、リンパ球及び単球数(
図3C~
図3D)の増加を示した。更に、パパイン処置マウスは、抗POSTN療法が肺炎症からレシピエントマウスを保護し、好酸球及びリンパ球数を有意に減少させることを示した(
図2B~
図2C)。しかしながら、対照アイソタイプ抗体療法は、レシピエントマウスを炎症から保護することができなかった。胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARC/CCL17)は、マウスにおいてTh2優位の炎症反応を誘導する。パパイン処置マウスは、肺におけるCCL17レベルの増加を示したが、抗POSTN抗体処置は、CCL17産生を減少させた(
図3D)。一方、パパイン処置マウスは、4日後に組織学的スコア気腫によって測定される肺における組織損傷を有意に増加させた。抗POSTN抗体処置は、肺組織損傷を低減した(
図3E)。
【0119】
抗POSTN抗体の局所投与は、肺炎症を予防する。
肺炎症におけるPOSTNの影響を評価するためにも、気管内経路による抗POSTN抗体MPC5B4による局所治療を含めた。C57BL/6マウスに、抗POSTN抗体MPC5B4(10、1mg/kg;i.t.)を注射した。注射の1時間後、マウスを25μgパパインで処置したか又は処置せずに、アレルギー性喘息を誘導した。マウスに3用量のパパインを投与した(
図4A)。細胞数を、最初の投与の4日後にBALF中でモニターした。対照群としてのパパイン処置マウスは、総細胞数、好酸球、リンパ球、好中球及びマクロファージ数の増加を示した(
図4B、C)。更に、パパイン処置マウスは、抗POSTN療法が肺炎症からレシピエントマウスを保護し、好酸球、リンパ球、及び好中球数を有意に減少させることを示した(
図4B、C)。
【0120】
パパイン処置マウスは、肺におけるPOSTN及びミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase、MPO)レベルの増加を示したが、抗POSTN抗体処置は、POSTN産生
を減少させた(
図4D)。
【0121】
抗POSTN抗体は、慢性重症パパイン誘導性喘息を遮断する。
慢性重症喘息を処置する抗POSTN抗体の能力を評価するために、マウスを生理食塩水ビヒクルで、又は1日目、2日目、更に14日目及び21日目にパパイン(25μg i.n.)の4回投与で処置した(
図5A)。抗POSTN抗体MPC5B4(12.5mg/kg;i.p.)を14、18及び21日目に投与すると、この重度喘息モデルにおいて肺炎症及びコラーゲン沈着が減少した。総細胞、好酸球、リンパ球、マクロファージ及び好中球の浸潤は、アイソタイプ対照処置マウスと比較して、抗POSTN MPC5B4抗体後の肺組織損傷、可溶性コラーゲンタンパク質及びコラーゲンメッセージ転写(
図5C)と同様に、22日目にBALFにおいて減少した(
図5B)。
【0122】
抗POSTN抗体は、肺線維症を低減する。
肺線維症におけるPOSTNシグナル伝達調節の影響を評価するために、モノクローナル抗POSTN抗体(MPC5B4)による処置も含めた。C57BL/6マウスに、抗POSTN又はアイソタイプ対照抗体(12.5mg/kg;i.p.)を注射した。最初の注射の1時間後に、マウスに予防的処置として3用量のモノクローナル抗体を投与し(
図6A)、マウスをブレオマイシン(3mg/kg;i.n.)で処置するか又は処置せずに、肺線維症を誘導した。細胞数を、最初の投与の14日後にBALF及び肺においてモニターした。対照群としてのブレオマイシン処置マウスは、総細胞、好中球及びリンパ球数の増加を示した(
図6B及び
図6C)。更に、ブレオマイシン処置マウスは、予防的抗POSTN(Pro)が肺線維症からレシピエントマウスを保護し、好中球及びリンパ球数を有意に減少させたことを示した(
図6C)。しかしながら、対照アイソタイプ抗体は、レシピエントマウスを線維症から保護することができなかった(
図6C)。
【0123】
一方、モノクローナル抗体を2回投与して、その治療効果を示した(
図6B)。ブレオマイシン処置マウスは、治療用モノクローナル抗POSTN(MPC5B4)処置(Ther)が、14日後にBALF中の炎症細胞数によって測定される肺炎症を有意に低減したことを示した(
図6C)。肺の病理組織学的分析は、ブレオマイシン処置マウスにおけるMPC5B4処置が、アイソタイプ対照抗体処置マウスと比較して、炎症及び組織リモデリングを有意に改善することを示した(図示せず)。14日目の統計分析を、一元配置分散分析検定多重比較を用いて決定した。
*対照未処置マウスと比較してp<0.05。#ブレオマイシン処置マウスと比較してp<0.05。
【0124】
LPSはPOSTN産生を増加させる。
ペリオスチン産生を誘導するLPSの能力を評価するために、C57BL/6マウスを10μgのLPS又は生理食塩水ビヒクルで気管内処置し、POSTNレベルを48時間後に測定した。LPS処置マウスは、対照マウスと比較して、BALF中のPOSTNの
レベルの有意な増加を示した(
図7B)。
【0125】
抗POSTN抗体は、増悪における肺炎症を予防する。
肺疾患の増悪におけるPOSTNシグナル伝達調節の影響を評価するために、MPC5B4による処置を含めた。C57BL/6マウスに、抗POSTN MPC5B4又は抗GMCSF抗体(12.5mg/kg;i.p.)を注射した。注射の1時間後、マウスを1μgのLPSで処置したか又は処置せずに炎症を誘導した。マウスに1用量のLPSを投与した(
図8A)。細胞数を24時間でBALF中でモニターした。対照群としてのLPS処置マウスは、総細胞数、好中球及びリンパ球数の増加を示した(
図8B)。更に、抗POSTN療法は、肺に対してレシピントマウスを保護した。炎症は、LPS誘導性炎症を遮断するための参照化合物として使用される抗GM-CSF抗体と同様のレベルまで、BALF中の好中球及びリンパ球数を有意に減少させる(
図8B)。
【0126】
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