(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(54)【発明の名称】アルミナを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C01F 7/306 20220101AFI20240215BHJP
【FI】
C01F7/306
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553563
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 AU2022050180
(87)【国際公開番号】W WO2022183251
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521370813
【氏名又は名称】アルコア オブ オーストラリア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALCOA OF AUSTRALIA LIMITED
【住所又は居所原語表記】Cnr Davy and Marmion Streets,Booragoon,Western Australia 6154 Australia
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラマッキア,ロバート ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB04
4G076BA13
4G076BC02
4G076DA30
(57)【要約】
アルミニウム含有材料から高純度アルミナを調製するためのプロセスが提供される。アルミニウム含有材料を分解して塩化アルミニウム液を得るプロセス、塩化アルミニウム液から塩化アルミニウム六水和物固体を結晶化させるための第1の結晶化容器、任意選択で、塩化アルミニウム六水和物固体を溶解させ、再結晶化させるための1つ以上の後続の結晶化容器、及び塩化アルミニウム六水和物固体を熱処理して高純度アルミナを得るための熱処理手段。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化アルミニウム液から高純度アルミナを調製する方法であって、前記方法が、
溶液中に塩化アルミニウム及び1つ以上の不純物を含む塩化アルミニウム液を用意することと、
1つ以上の結晶化段階(複数可)において前記塩化アルミニウム液から塩化アルミニウム六水和物固体を沈殿させることであって、沈殿させることが、前記1つ以上の不純物の少なくとも一部分が前記液中に残るように前記液に塩化水素ガスを散布することを含み、塩化アルミニウム六水和物固体を沈殿させることが、前記結晶化段階(複数可)のうちの少なくとも1つにおいて前記塩化アルミニウム液に種晶添加することをさらに含む、前記沈殿させることと、
前記塩化アルミニウム六水和物固体及び前記液を前記1つ以上の結晶化段階(複数可)から分離することと、
前記分離された塩化アルミニウム六水和物固体を処理して高純度アルミナを形成することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
アルミニウム六水和物固体を沈殿させる前に、前記塩化アルミニウム液が、約1g/L~約100g/Lの溶液中のアルミニウム濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルミニウム六水和物固体を沈殿させる前に、前記塩化アルミニウム液が、約60g/L~約80g/Lの溶液中のアルミニウム濃度を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルミニウム六水和物固体を沈殿させる前に前記溶液中のアルミニウム濃度を所望の濃度まで上昇させるために、可溶性アルミニウム含有材料を前記塩化アルミニウム液に溶解させることをさらに含む、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
2つ以上の結晶化段階を含み、前記2つ以上の結晶化段階のうちの第1段階が種晶添加を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記塩化アルミニウム液にアルミニウム含有種晶が種晶添加される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミニウム含有種晶が、95%超のアルミニウム化合物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アルミニウム含有種晶が、塩化アルミニウム六水和物、及び/または高純度アルミナを含む、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記塩化アルミニウム六水和物種晶が、1つ以上の結晶化段階からの塩化アルミニウム六水和物固体を含み、及び/または前記高純度アルミナ種晶が、前記分離された塩化アルミニウム六水和物固体を処理することによって生成される高純度アルミナを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記液に塩化アルミニウム六水和物結晶が種晶添加される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記液に、0.1g/L~50g/Lの量で塩化アルミニウム六水和物結晶が種晶添加される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記液に、5g/L~40g/Lの量で塩化アルミニウム六水和物結晶が種晶添加される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
塩化アルミニウム六水和物固体が、前記塩化アルミニウム液から沈殿させられることが、約40℃~約80℃の温度で実施される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
2つ以上の結晶化段階において塩化アルミニウム液から塩化アルミニウム六水和物固体を沈殿させることを含み、分離された塩化アルミニウム六水和物固体が、結晶化段階間において水中で分解されて、前記塩化アルミニウム液を生成する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
第1の結晶化段階における前記塩化アルミニウム液が、1つ以上の後続の結晶化段階よりも低い塩酸濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の結晶化段階における前記塩化アルミニウム液が、最大約9Mの塩酸濃度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの後続の結晶化段階における前記塩化アルミニウム液が、少なくとも約10Mの塩酸濃度を有する、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
結晶化段階において塩化アルミニウム六水和物固体を沈殿させることは、前記塩化アルミニウム液が2つ以上の沈殿段階を経ることを含み、前記沈殿段階が直列になっている、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
1つの沈殿段階において沈殿させられた塩化アルミニウム六水和物固体が、前記直列の沈殿段階における後に続く沈殿段階の前記液に種晶添加するために使用される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記分離された塩化物六水和物固体を処理して高純度アルミナを形成することが、前記分離された塩化物六水和物固体を1つ以上の加熱段階において熱分解することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記分離された塩化アルミニウム六水和物固体を熱分解することが、前記分離された塩化アルミニウム六水和物固体を約200℃~約900℃の第1の温度で加熱し、前記熱分解された固体を約1000℃~約1300℃の第2の温度でか焼することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上の不純物が、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、リン(P)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、またはそれらの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記形成された高純度アルミナが、99.99%超のアルミナを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記形成された高純度アルミナが、99.999%超のアルミナを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記塩酸アルミニウム液が、アルミニウム含有材料を塩酸中で分解することによって形成される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
先行請求項のいずれか1項に記載の方法によって調製される高純度アルミナ。
【請求項27】
高純度アルミナが、99.99%超のアルミナを含む、請求項26に記載の高純度アルミナ。
【請求項28】
前記高純度アルミナが、99.999%超のアルミナを含む、請求項27に記載の高純度アルミナ。
【請求項29】
請求項1~25のいずれか1項に記載の方法により1つ以上の不純物を含むアルミニウム含有材料から高純度アルミナを調製するためのシステムであって、前記システムが、
前記アルミニウム含有材料を分解して1つ以上の不純物を含む塩化アルミニウム液を得るための酸分解装置と、
前記酸分解装置から前記塩化アルミニウム液を受け取るため、ならびに前記1つ以上の不純物の少なくとも一部分が前記液中に残るように前記液に塩化水素ガスを散布することによって、及び前記塩化アルミニウム液に種晶添加することによって塩化アルミニウム六水和物固体を沈殿させるための、第1の結晶化容器と、
任意選択で、前記塩化アルミニウム六水和物固体を再結晶化させる1つ以上の後続の結晶化容器と、
形成された塩化アルミニウム六水和物を残っている液から分離するための、各結晶化容器に接続された分離手段と、
前記塩化アルミニウム六水和物固体を熱処理して高純度アルミナを得るための熱処理手段と、を含む、前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミナを調製する方法、特に高純度アルミナを調製し、精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度アルミナは、高輝度放電ランプ、LED、精密光学素子用、携帯型デバイス用、テレビ画面用、及び時計窓用のサファイアガラス、レーザー用の合成宝石、宇宙及び航空産業における構成要素、ならびに高強度セラミックツールにおける主要な材料としての使用を含めた、広範な技術応用で使用される。それはまた、アノードセルとカソードセルとの間の電気絶縁体として作用するため、リチウムイオン電池においても使用され得る。いずれの顕著な不純物もセル間の望ましくない電子輸送を促すため、高純度仕様は、この後者の応用において特に必要である。
【0003】
高純度アルミナは、高純度アルミニウム金属を酸と反応させてアルミニウム塩溶液を生成し、その後、溶液を濃縮し、濃縮された塩溶液を噴霧焙焼して酸化アルミニウム粉末を得ることによって、アルミニウム金属から直接作製され得る。この方法は、不純物の混入の可能性を低減するために高純度アルミニウム供給原料から高純度アルミナを調製するという前提に基づく。
【0004】
代替として、アルミナは他の供給原料から調製されてもよいが、各供給原料は、供給原料に存在する不純物の結果として、好適なレベルの純度まで処理することに対して課題を提示する。
【0005】
精錬所または冶金グレードのアルミナは、バイヤー法によってボーキサイトから生成された水酸化アルミニウムの直接か焼によって製造され得る。しかしながら、これらのか焼グレードのアルミナは、0.15~0.50%のソーダ含量を有する場合があり、これは上記で考察した応用には高すぎる。
【0006】
カオリン等のアルミナ質粘土は、酸化アルミニウム、及び酸化ケイ素の形態での比較的高いケイ素含量を含む。かかるアルミナ質粘土の浸出中に、アルミナ質粘土中の酸化物として見出される鉄、チタン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びリン等のいくつかの不純物がアルミニウムと共に溶液中に浸出する。
【0007】
故に、様々なアルミニウムの供給源から高純度アルミナを一貫して調製するための代替のより効率的なプロセスを開発する必要性がある。
【0008】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品等のいかなる考察も、これらの内容の一部分または全てが先行技術の基礎の一部を形成するということ、またはそれらが添付の特許請求の範囲の各々の優先日より前に存在していたような本開示に関連する分野において共通の一般的知識であったということを認めるものとして見なされるべきではない。
【発明の概要】
【0009】
本開示により、塩化アルミニウム液から高純度アルミナを調製する方法が提供され、該方法は、
溶液中に塩化アルミニウム及び1つ以上の不純物を含む塩化アルミニウム液を用意することと、
1つ以上の結晶化段階(複数可)において塩化アルミニウム液から塩化アルミニウム六水和物固体を沈殿させる(precipitating)ことであって、沈殿させることが、1つ以上の不純物の少なくとも一部分が該液中に残るように該液に塩化水素ガスを散布することを含み、塩化アルミニウム六水和物固体を沈殿させることが、該結晶化段階(複数可)のうちの少なくとも1つにおいて該塩化アルミニウム液に種晶添加することをさらに含む、該沈殿させることと、
該塩化アルミニウム六水和物固体及び該液を該1つ以上の結晶化段階(複数可)から分離することと、
分離された塩化アルミニウム六水和物固体を処理して高純度アルミナを形成することと、を含む。
【0010】
本開示により、本明細書に開示されるそのいずれかの態様、実施形態、または実施例に記載の方法によって調製される高純度アルミナがさらに提供される。
【0011】
本開示により、1つ以上の不純物を含むアルミニウム含有材料から高純度アルミナを調製するためのシステムがさらに提供され、該システムは、
アルミニウム含有材料を分解して1つ以上の不純物を含む塩化アルミニウム液を得るための酸分解装置と、
酸分解装置から塩化アルミニウム液を受け取るため、ならびに1つ以上の不純物の少なくとも一部分が液中に残るように液に塩化水素ガスを散布することによって、及び塩化アルミニウム液に種晶添加することによって塩化アルミニウム六水和物固体を沈殿させるための、第1の結晶化容器と、
任意選択で、塩化アルミニウム六水和物固体を再結晶化させるための1つ以上の後続の結晶化容器と、
形成された塩化アルミニウム六水和物を残っている液から分離するための、各結晶化容器に接続された分離手段と、
塩化アルミニウム六水和物固体を熱処理して高純度アルミナを得るための熱処理手段と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
これより、添付の図面を参照して、好ましい実施形態を単なる例としてさらに記載し、例示する。
【0013】
【
図1】高純度アルミナを調製する方法の実施形態の代表的な流れ図である。
【0014】
【
図2A】塩化アルミニウム六水和物の種晶無添加(unseeded)及び種晶添加(seeded)沈殿物の不純物レベルについての比較データを提供する。
【
図2B】塩化アルミニウム六水和物の種晶無添加及び種晶添加沈殿物の不純物レベルについての比較データを提供する。
【
図2C】塩化アルミニウム六水和物の種晶無添加及び種晶添加沈殿物の不純物レベルについての比較データを提供する。
【
図2D】塩化アルミニウム六水和物の種晶無添加及び種晶添加沈殿物の不純物レベルについての比較データを提供する。
【
図2E】塩化アルミニウム六水和物の種晶無添加及び種晶添加沈殿物の不純物レベルについての比較データを提供する。
【
図2F】塩化アルミニウム六水和物の種晶無添加及び種晶添加沈殿物の不純物レベルについての比較データを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、高純度アルミナを生成する方法に関する。
【0016】
<一般用語>
本明細書全体を通じて、特段明記されない限り、または文脈上、特に必要とされていない限り、単一のステップ、物質の組成、ステップの群または物質の組成の群への言及は、これらのステップ、物質の組成、ステップの群、または物質の組成の群の1つ及び複数(すなわち、1つ以上)を包含すると解釈されるものとする。故に、本明細書で使用されるとき、文脈による明確な別段の定めがない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」には複数の態様が含まれる。例えば、「a」への言及には、単一のみでなく2つ以上も含み、「an」への言及には、単一のみでなく2つ以上も含み、「the」への言及には、単一のみでなく2つ以上を含み、その他も同様である。
【0017】
本明細書に記載の本開示の各実施例は、特段明記されない限り、ありとあらゆる他の実施例に必要な変更を加えて準用される。本開示は、本明細書に記載の特定の実施例により範囲を限定されないものとし、このような特定の実施例は、例示目的のみであることが意図される。機能的に同等の生成物、組成物、及び方法が、本明細書に記載される本開示の範囲内に明確にある。
【0018】
「及び/または」、例えば、「X及び/またはY」という用語は、「X及びY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味またはいずれかの意味に明示的な支持を提供するものと見なされよう。
【0019】
本明細書を通じて、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」等の変形は、述べられた要素、整数もしくはステップ、または要素の群、整数の群もしくはステップの群を含むことを黙示するが、いかなる他の要素、整数もしくはステップ、または要素の群、整数の群もしくはステップの群をも排除することを黙示するものではないことが理解されよう。
【0020】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法及び材料を、本発明の実施または試験で使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。矛盾する場合は、本明細書が定義を含めて優先する。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定することは意図されない。
【0021】
本明細書で使用される「約」という用語は、所与の値または範囲の5%以内、より好ましくは1%以内を意味する。例えば、「約3.7%」は、3.5~3.9%、好ましくは3.66~3.74%を意味する。「約」という用語がある範囲の値に関連付けられている場合、例えば「約X%~Y%」の場合、「約」という用語は、列挙される範囲の下限(X)値及び上限(Y)値の両方を修飾することを意図する。例えば、「約20%~40%」は「約20%~約40%」と同等である。
【0022】
<特定の用語>
本明細書で使用される「アルミナ」という用語は、酸化アルミニウム(Al2O3)、特に結晶多形相α、γ、θ、及びκを指す。高純度アルミナは、高輝度放電ランプ、LED、精密光学素子用、携帯型デバイス用、テレビ画面用、及び時計窓用のサファイアガラス、レーザー用の合成宝石、宇宙及び航空産業における構成要素、高強度セラミックツール、またはリチウムイオン電池における電気絶縁体を含むがこれらに限定されない種々の応用における主要な材料としての使用に好適な、約99.99%の純度、例えば、>99.99%の純度(4N)または>99.999%の純度(5N)を有するAl2O3を指す。
【0023】
本明細書で使用される「アルミニウム含有材料」という用語は、10%超の含量(当量のAl2O3の重量%に基づいて)を有する任意の材料を指す。かかるアルミニウム含有材料の例としては、ギブサイト(γ-Al(OH)3)、バイヤライト(α-Al(OH)3)、ノルドストランダイト、ドイライト(doyleite)、もしくはドーソナイト(NaAl(OH)2.CO3)等の酸可溶性水酸化アルミニウム化合物、ジアスポア(α-AlO(OH))もしくはベーマイト(γ-AlO(OH))、アルミン酸三カルシウム六水和物(TCA)等の酸可溶性オキシ水酸化アルミニウム化合物、またはアルミナ質ゲーサイト(Fe(Al)OOH)等のAl置換オキシ水酸化鉄(iron hydroxy oxide)が挙げられるが、これらに限定されない。この用語は、天然に存在する材料、例えばカオリン等のアルミナ質粘土、またはプロセスの生成物もしくは副生成物を包含する。例として、アルミニウム含有材料は、か焼炉ダスト、DSP、及び赤泥等の、バイヤー法に源を発するアルミナ生成の副生成物であってもよく、これらは典型的には>10重量%(当量のAl2O3)のアルミニウム含量を有する。
【0024】
本明細書で使用されるとき、結晶化は、液体溶液からの固体材料の沈殿(沈殿物)を指す。固体材料の沈殿は、材料を不溶性形態に変換すること、及び/または材料の溶解度を低減するように溶液の特性を変化させることによって起こる。
【0025】
アルミナ生成における水酸化アルミニウムのか焼は微粒子を生み出し、これがか焼炉ダストとして放出され得る。か焼炉ダストの放出は、か焼炉の煙突上の静電集塵装置等の種々の収集技法の使用によって低レベルに軽減され、制御され得る。ESPダストは、静電集塵装置によって捕捉される微粒子残留物である。か焼炉ダスト粒子は、アルミナ、ならびに吸蔵ソーダ及び表面ソーダが混入した種々の(オキシ)水酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウム化合物を含み得る。
【0026】
DSPは、バイヤー法内で沈殿するいくつかの酸可溶性シリカ含有化合物を説明するために使用される総称である。DSPは主として、[NaAlSiO4]6.mNa2X.nH2Oの一般式を有するバイヤー-ソーダライトであり、式中、「mNa2X」は、ゼオライトのケージ構造内に挿入された包含されるナトリウム塩を表し、Xは、炭酸イオン(CO3
2-)、硫酸イオン(SO4
2-)、塩化物イオン(Cl-)、アルミネート(AlO4)-)であり得る。DSPは、バイヤー法における、分解回路の前の「脱シリカ」回路で形成し、また分解回路自体でも形成する。DSPは最終的にボーキサイト残留物(例えば、赤泥)の一部となる。さらに、シリカは、脱シリカ回路においてシリカ含量を低減しても、バイヤー法全体を通じて溶液中で過飽和であり得ることが当業者には理解されよう。結果として、DSPはまた、槽、管、及び加熱器の内部表面上のスケールとしても形成し得る。
【0027】
本明細書で使用される「ソーダ」及び「ソーダ含量」という用語は、材料の総重量当たりの重量パーセンテージ(重量%)として報告される、Na2O、及び材料に存在するNa2Oの量を指す。高純度アルミナのソーダ含量は、低くなければならないことが理解されよう。「表面ソーダ」への言及は、粒子の表面上の吸着したNa2Oの存在に関し、一方で、「吸蔵ソーダ」への言及は、別の材料に封入されたソーダに関する。
【0028】
か焼は、固体が空気もしくは酸素の不在下またはその制御された供給下で加熱されて、一般に固体の分解をもたらして、二酸化炭素、結晶化の水、もしくは揮発性物質が除去されるか、または水酸化アルミニウムからアルミナへの変換等の相変態を生じさせる、熱処理プロセスである。かかる熱処理プロセスは、シャフト炉、ロータリーキルン、多段焼却炉、及び流動床反応器等の炉または反応器で実施され得る。
【0029】
「大気における沸点」という用語は、液体またはスラリーが大気圧で沸騰する温度を指して使用される。沸点はまた、液体またはスラリー中の種々の溶質及びそれらの濃度により様々であり得ることが理解されよう。
【0030】
<高純度アルミナを調製するためのプロセス>
図1を参照して、本開示により、1つ以上の不純物を含むアルミニウム含有材料から高純度アルミナを調製するためのプロセス及びシステムが提供される。システム(100)は、アルミニウム含有材料(102)を分解して塩化アルミニウム液(121)を得るための酸分解装置(110)と、酸分解装置(110)から塩化アルミニウム液(121)を受け取るため、ならびに1つ以上の不純物の少なくとも一部分が液中に残るように液に塩化水素ガス(103)を散布することによって、及び塩化アルミニウム液に種晶添加(104)することによって塩化アルミニウム六水和物(131)固体を沈殿させるための、第1の結晶化容器(130)と、任意選択で、塩化アルミニウム六水和物固体を再結晶化させる1つ以上の後続の結晶化容器(160)と、形成された塩化アルミニウム六水和物(141、142、171)を残っている液から分離するための、各結晶化容器(130、160)に接続された分離手段(140、170)と、塩化アルミニウム六水和物固体(141、171)を熱処理して高純度アルミナ(181)を得るための熱処理手段(180)とを含む。
【0031】
<<塩化アルミニウム液からの塩化アルミニウム六水和物固体の結晶化>>
高純度アルミナ(181)は、種々のアルミニウム含有材料(102)、例えばカオリン等のアルミナ質粘土、またはバイヤー法等のプロセスの生成物もしくは副生成物から調製されてもよい。しかしながら、これらの材料の多くは、所望の最終生成物の高純度閾値(約99.99%)に対して高い不純物含量を有する。高純度閾値を達成するための不純物の除去または制御は、技術的に困難である。
【0032】
下記にさらに詳述されるように、アルミニウム含有材料(102)は、溶液中に塩化アルミニウム及び1つ以上の不純物を含む塩化アルミニウム液を形成するために、いくつかの前処理ステップ及び処理ステップを経てもよい。
【0033】
記載されるプロセス全体を通じた不純物の種類及びレベルは、いくつかの要因、主としてアルミニウム含有材料(102)の供給源に依存するが、記載されるプロセスのステップは各ステップでの不純物のレベルの低減をもたらすことを目指す一方で、高純度アルミナ(181)の生成において着手される種々のプロセスのステップ中に新たな不純物が導入される場合があることが理解されよう。
【0034】
「不純物(単数)」または「不純物(複数)」という用語は、存在するいずれの非アルミニウム化合物をも包含することが意図される。特に、最終生成物に関して、「不純物(単数)」または「不純物(複数)」は、酸化アルミニウム(Al2O3)ではないいずれの材料をも意味する。高純度アルミナのグレードは、最終生成物中の不純物の総レベル(組成を問わず)に基づき、このうち>99.99%のAl2O3の純度(すなわち0.01%未満の不純物)を有する生成物は「4N」と等級付けされ、>99.999%のAl2O3の純度(すなわち0.001%未満の不純物)を有する生成物は「5N」と等級付けされる。
【0035】
非限定的な例として、少なくとも1つの不純物は、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、リン(P)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、またはそれらの組み合わせであり得る。一例では、不純物は、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、リン(P)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)のうちの1つ以上によって提供される。
【0036】
最終生成物中の個々のまたは総計の不純物は、約1000ppm、500ppm、400ppm、300ppm、200ppm、100ppm、90ppm、80ppm、70ppm、60ppm、50ppm、40ppm、30ppm、20ppm、10ppm、または5ppm未満であり得る。
【0037】
一例では、任意の1つの不純物の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。ある例では、カリウム(K)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、リン(P)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、ナトリウム(Na)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、ケイ素(Si)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、カルシウム(Ca)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、鉄(Fe)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、マグネシウム(Mg)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、チタン(Ti)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、銅(Cu)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、モリブデン(Mo)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、クロム(Cr)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、ガリウム(Ga)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、亜鉛(Zn)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。
【0038】
結晶化前の塩化アルミニウム液の溶液中のAl濃度は、少なくとも約1g/L、約10g/L、約20g/L、約30g/L、約40g/L、約50g/L、約60g/L、約70g/L、約80g/L、または約90g/Lであり得る。結晶化前の塩化アルミニウム液の溶液中のAl濃度は、約100g/L、約90g/L、約80g/L、約70g/L、約60g/L、約50g/L、約40g/L、約30g/L、約20g/L、または約10g/L未満であり得る。ある実施形態では、結晶化前の塩化アルミニウム液の溶液中のAl濃度は、約1~100g/Lの範囲、例えば、上記の上限濃度及び/または下限濃度のうちの任意の2つの間の範囲、例えば、約10~90g/L、または50~85g/L、または約60~80g/Lであり得る。結晶化を容易にするために、塩化アルミニウム液中のAl濃度は、好ましくは溶液の飽和濃度であるかまたはそれをちょうど下回る。
【0039】
図1に示されるシステム(100)を参照して、アルミニウム含有材料(102)は、酸分解装置(110)において塩酸(101)で分解される。
図1に示される実施形態では、分解は、未分解の固体及び塩化アルミニウム液(121)を含むスラリー(111)をもたらし、次いでこれが分離装置(120)において分離され得る。しかしながら、酸分解後に固体材料が残らない場合、この分離ステップは必要とされない場合があることが理解されよう。
【0040】
溶液中に塩化アルミニウム及び1つ以上の不純物を含む調製された塩化アルミニウム液(121)は、塩化アルミニウム六水和物固体(141)を沈殿させると共に、不純物の少なくとも一部分を液中に残すために、結晶化段階を経る。第1の結晶化容器(130)における結晶化は、バッチモードまたは連続モードで実施されてもよいことが理解されよう。加えて、結晶化は、単一の反応器(容器)で、または沈殿した塩化アルミニウム六水和物固体の濃度が各容器中で増加するように直列に配置された複数の反応器で実施されてもよい。
【0041】
結晶化容器(130)において、液中の塩化物濃度は、塩化アルミニウム六水和物に関して飽和濃度以上に上昇させられ、それによって塩化アルミニウム六水和物が溶液から沈殿することを促す。例えば、初期塩化物濃度は、少なくとも約6Mに上昇させられてもよい。別の例では、初期塩化物濃度は、少なくとも約7M、8M、9M、10M、または11Mに上昇させられてもよい。初期塩化物濃度は、約12M、11M、10M、9M、8M、または7M未満をもたらすように上昇させられてもよい。初期塩化物濃度は、これらの上限量及び下限量のうちの任意の2つの間の範囲の量、例えば、約6M~12M、7M~11Mの塩化物、または8M~10Mをもたらすように上昇させられてもよい。特定の一例では、初期塩化物濃度は、約9Mである。
【0042】
液中の塩化物濃度は、塩化水素ガス(103)を散布することによって容易に上昇させることができる。いくつかの実施形態では、塩化物濃度は、塩化水素ガスを継続的に散布することによって上昇させられる。代替として、散布は、沈殿プロセス中に周期的に一時停止させてもよい。液への散布は、塩化水素ガスの初期部分が液中に導入された後に一時停止させてもよく、例えば、散布は、塩化水素ガスの50%が液に導入された後に一時停止させてもよい。有利なことに、液体ではなく塩化水素ガスの散布が、液に望ましくない不純物が混入する可能性を低減し得る。
【0043】
沈殿のために直列になった複数の反応器を使用し、したがってより小さな体積の溶液が処理されるようにすることは、酸濃度、温度、及び他の沈殿条件の改善された制御を可能にし得、したがって塩化アルミニウム六水和物固体の結晶化の速度の改善された制御を提供し得ることが理解されよう。
【0044】
塩酸及び塩化水素ガスならびに塩化アルミニウム液の腐食性は、プロセス機器の腐食により該プロセスへの不純物の導入につながり得る。このため、プロセス機器部品が可能な限り塩酸及び塩化水素ガスに対して不活性の材料で形成されることを確実にする、及び/またはプロセス機器部品を酸の攻撃から保護するよう注意が払われる。
【0045】
固体沈殿は、少なくとも約(℃単位)25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95の温度で実施されてもよい。固体沈殿は、約(℃単位)100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、または30未満の温度で実施されてもよい。固体沈殿は、これらの上限量及び下限量のうちの任意の2つの間の温度、例えば、約25℃~100℃、30℃~90℃、または40℃~80℃で実施されてもよい。
【0046】
固体沈殿は、少なくとも約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、または7時間の期間にわたって実施されてもよい。固体沈殿は、約7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、または2時間未満の期間にわたって実施されてもよい。固体沈殿は、上限量及び/または下限量のうちの任意の2つによって規定される範囲の期間、例えば、約1時間~6時間、または約2~4時間にわたって実施されてもよい。特定の一例では、その期間は約3時間である。
【0047】
濃縮液には、結晶化のキネティクスを補助すると共に、得られた生成物の純度を改善するように種晶添加(104)が行われ得る。種晶(104)の組成は、塩化アルミニウム液からの塩化アルミニウム六水和物の結晶化を促進するための任意の好適な材料であり得、例えば、濃縮液には、塩化アルミニウム六水和物またはアルミナ結晶等のアルミニウム含有種晶が種晶添加され得る。結晶化の種晶添加用の塩化アルミニウム六水和物またはアルミナ結晶は、該プロセスの他の段階からリサイクルされてもよい。
【0048】
塩化アルミニウム液には、少なくとも約0.1g/L、約1g/L、約5g/L、約10g/L、約15g/L、約20g/L、約25g/L、約30g/L、約35g/L、約40g/L、約45g/L、または約50g/Lの量で塩化アルミニウム六水和物結晶が種晶添加され得る。調製された塩化アルミニウム液には、約60g/L、約55g/L、約50g/L、約45g/L、約40g/L、約35g/L、約30g/L、約25g/L、約20g/L、約15g/L、約10g/L、または約5g/L未満の量で塩化アルミニウム六水和物結晶が種晶添加され得る。調製された塩化アルミニウム液には、上限量及び/または下限量のうちの任意の2つによって規定される範囲、例えば、約0.1g/L~60g/L、約1g/L~50g/L、または約10g/L~55g/Lで、塩化アルミニウム六水和物結晶が種晶添加され得る。他の例では、種晶添加される塩化アルミニウム六水和物結晶の範囲量は、0.1~1g/L、1~5g/L、5~10g/L、10~15g/L、15~20g/L、20~25g/L、25~30g/L、30~35g/L、35~40g/L、40~45g/L、または45~50g/Lであり得る。他の例では、他の好適な種晶材料に対して、範囲を含めたこれらの種晶添加量が規定され得る。
【0049】
種晶(104)は、結晶化容器(すなわち沈殿反応器)(130)への導入前に塩化アルミニウム液に添加され得る。このステップにおいて、種晶添加及び結晶化前にAl濃度を所望のレベルまで増加させるために、追加の可溶性アルミニウム含有材料が塩化アルミニウム液に添加され得る。
【0050】
結晶化(130)が複数の反応器で実施される場合、反応器のうちの1つ以上に塩化アルミニウム六水和物結晶が種晶添加(104、106)されてもよい。ある実施形態では、結晶化(130)が直列になった複数の反応器で実施される場合、直列になった1つの反応器から後続の反応器に供給される沈殿した塩化アルミニウム六水和物固体を含む液は、後続の反応器において沈殿物の種晶を添加するように作用し得る。一例では、散布により上昇した塩化物レベルの結果として沈殿が起こり、第1の反応器から後続の反応器に流れる塩化アルミニウム六水和物スラリーが、ある割合の塩化アルミニウム六水和物固体を運搬し、これが後続の反応器に種晶添加するように作用するため、複数の反応器のうちの第1の反応器には種晶添加が行われない場合がある。pH、散布速度、流出口の流量等の直列の反応器における条件は、固体が1つの反応器から後続の反応器に流れる速度を変化させるように、及び結晶化の速度を制御するように制御することができる。
【0051】
沈殿後、次いで不純物の少なくとも一部分を含有する液は、液から1つ以上の不純物、特にCa、Fe、K、Mg、Na、P、Si、Ti、Cu、Mo、Cr、Ga、及びZnを枯渇させるために精製プロセスを経てもよい。沈殿後に分離された液もまた、塩酸をリサイクルするための精製プロセスを経てもよい。
【0052】
不純物の濃度をさらに低減するために、沈殿した塩化アルミニウム六水和物固体は任意選択で、高純度アルミナ(181)への熱分解及びか焼(180)の前に1つ以上のさらなる精製及び再結晶化ステップ(190)を経てもよい。例えば、沈殿した塩化アルミニウム六水和物固体(105)が水(106)中で分解されて、塩化アルミニウム、及び第1の結晶化段階(130)から残っているあらゆる不純物を含む塩化アルミニウム液(151)を形成してもよい。次いでこの液が、第1の結晶化段階(130)に関して上述した様態で、散布(107)及び種晶添加(106)を含む1つ以上の追加の結晶化(160)を経て、残っている液中にさらなる不純物を残しつつ、沈殿した塩化アルミニウム六水和物固体(171、172)を生成してもよい。
【0053】
さらなる精製及び再結晶化ステップ(190)は、固体を処理して高純度アルミナ(181)を形成する前に好適に純粋な塩化アルミニウム六水和物固体(171)に達するために必要な回数だけ繰り返すことができることが理解されよう。しかしながら、固体中に残っている不純物が、濾過後に収集された固体の熱分解及びか焼(180)から生成されようアルミナが高純度アルミナに対する純度要件を満たすのに十分に低い実施形態では、繰り返される分解(150)及び結晶化(160)は必要とされない場合がある。
【0054】
複数の結晶化段階が実施される場合、種晶添加は、結晶化段階のうちのいくつかまたは全てにおいて実施されてもよいが、全ての結晶化段階で実施される必要はない。ある例では、種晶添加は、アルミニウム含有材料の塩酸分解において生成される塩化アルミニウム液に存在する不純物の大部分を残しながら塩化アルミニウム六水和物固体を生成するために、複数の結晶化段階のうちの第1段階のみで実施されてもよい。
【0055】
下記にさらに詳述される実施例2及び
図2A~2Fに関して、ならびに特に溶液「高3」についての結果を参照して、種晶添加の有益性と、沈殿した塩化アルミニウム六水和物固体へのさらなる不純物の導入の可能性とを天秤にかけて検討しなければならない。標的不純物、例えばカリウムを低減しようとする場合、より後の結晶化段階での種晶添加が有益な場合があり、その場合、種晶添加が使用されるときに濃度のさらなる顕著な低減が見られ得る(
図2Bを参照されたい)。
【0056】
ある実施形態では、アルミニウム含有種晶は、液への不純物の導入を最小限に抑えるために90%、95%、98%、または99%超のアルミニウム化合物を含む。別の実施形態では、アルミニウム含有種晶は、液への不純物の導入を最小限に抑えるために90%、95%、98%、99%、99.9%、99.99%、または99.999%超のアルミニウム六水和物固体のアルミニウム六水和物固体である。他の例では、アルミニウム含有種晶中の不純物の総量は、1%、0.1%、0.01%、0.001%、または0.0001%未満である。
【0057】
非限定的な例として、種晶に存在する不純物は、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、リン(P)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、またはそれらの組み合わせを含み得る。一例では、不純物は、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、リン(P)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)のうちの1つ以上によって提供される。
【0058】
種晶中の個々のまたは総計の不純物は、約1000ppm、500ppm、400ppm、300ppm、200ppm、100ppm、90ppm、80ppm、70ppm、60ppm、50ppm、40ppm、30ppm、20ppm、10ppm、または5ppm未満であり得る。
【0059】
一例では、任意の1つの不純物の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。ある例では、カリウム(K)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、リン(P)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、ナトリウム(Na)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、ケイ素(Si)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、カルシウム(Ca)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、鉄(Fe)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、マグネシウム(Mg)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、チタン(Ti)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、銅(Cu)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、モリブデン(Mo)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、クロム(Cr)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、ガリウム(Ga)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。別の例では、亜鉛(Zn)の不純物は、約(ppm単位)50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1未満である。
【0060】
複数の分解及び結晶化段階が存在するプロセスにおいて、作動条件は、各段階で同じである必要はなく、生成物の純度の増加に応じて変動させてもよい。一例では、上記で考察したように、結晶化段階にわたって種晶添加の存在を変動させることができる。追加として、複数の結晶化段階において種晶添加が提供される場合、異なる段階に対して種晶の量または種類を変動させてもよく、例えば、後続の結晶化に対して種晶の量を減少させてもよい。
【0061】
別の例では、異なる結晶化段階に対して塩酸濃度を変動させてもよい。より高い塩酸濃度は、液から沈殿する塩化アルミニウム六水和物固体の量を増加させようが、これはまた、沈殿した固体中のより高濃度の不純物をもたらす場合がある。逆に、より低い濃度は、より純粋な沈殿物をもたらすとはいえ、液中により多くのアルミニウムを残す場合がある。
【0062】
ある実施形態では、該プロセスは、2つ以上の結晶化段階、特に3つの結晶化段階を含む。第1の結晶化段階における塩酸の濃度は、後続の結晶化段階のうちの少なくとも1つよりも低い。例えば、第1の結晶化段階における塩酸の濃度は、約10M、9M、または8M未満であり得、後続の結晶化段階のうちの少なくとも1つにおける塩酸の濃度は、それぞれ11M、10M、または9M超であり得る。別の例では、3つの結晶化段階が設けられる場合、第1の結晶化段階における塩酸の濃度は、およそ9Mであり得、第2の結晶化段階における塩酸濃度は、およそ10.5Mであり得、第3の結晶化段階における塩酸濃度は、およそ10Mであり得る。
【0063】
ある実施形態では、唯一の結晶化段階または各結晶化段階は、直列に配置された複数の反応器で実施される。かかる実施形態では、塩酸の濃度は、直列になった最終反応器において上述したような濃度を達成するように、直列になった反応器において漸増させられてもよい。
【0064】
<<アルミニウム含有材料からの塩化アルミニウム液の調製>>
受け取ったままの状態のアルミニウム含有材料は、塩化アルミニウム液を形成するための分解を経る前に1つ以上の前処理ステップを経てもよい。該前処理ステップ(複数可)は、濃縮、材料から砂もしくは石英等の脈石を枯渇させるための重力分離、または1μm~200μmの粒径への粉砕を含むがこれらに限定されない、いずれか1つ以上の選鉱プロセスであり得る。
【0065】
か焼炉ダスト等のある特定のアルミニウム含有材料は、吸蔵ソーダ及び表面ソーダを含み得ることが理解されよう。か焼炉ダストがプロセス回路に入る前に、か焼炉ダストを二酸化炭素で洗浄集塵して表面ソーダを重炭酸ナトリウムとして除去することによって、表面ソーダがか焼炉ダストから容易に除去され得る。次いで、洗浄集塵されたか焼炉ダストはその後、プロセス回路に入る前に濾過され、水で洗浄されて重炭酸ナトリウムが除去され得る。
【0066】
代替として、可溶性の表面ソーダは、水で洗浄することによってか焼炉ダストから少なくとも部分的に除去され得る。次いで、洗浄されたか焼炉ダストはその後、プロセス回路に入る前に濾過され得る。
【0067】
ある実施形態では、バイヤー法回路からギブサイト供給流が提供され得、ここで、ギブサイト供給流は任意選択で、バイヤー法回路内のアルカリ溶液から等の1つ以上の再結晶化ステップに供され、それによって供給流から1つ以上の不純物、特にソーダが枯渇されていてもよい。
【0068】
別の実施形態では、カオリン等のアルミナ質粘土供給流が提供され得る。
【0069】
高純度アルミナを調製するためのプロセスは、アルミニウム含有材料を塩酸で分解して塩化アルミニウム液を生成することを含み得る。塩酸は、5M~12MのHCl、6~11MのHCl、6~10MのHCl、または7M~9MのHClの濃度を有し得る。
【0070】
得られた塩化アルミニウム液のHClの濃度は、0M~2Mの範囲であり得る。例えば、得られた塩化アルミニウム液のHClの濃度は、約0M、0.5M、1M、1.5M、または2Mであり得る。分解ステップは、バッチモードまたは連続モードで実施されてもよいことが理解されよう。分解ステップは、単一の反応器(容器)で、または直列になった各容器内の液中のHClの濃度が約10Mから約2Mまで段階的序列で減少するように直列に配置された複数の反応器(例えば、3つの容器等の最大5つの容器)で実施されてもよい。
【0071】
得られた混合物は、最大50w/w%の初期固体含量を有し得るが、混合物の固体含量は分解が進行するにつれて減少することが理解されよう。
【0072】
酸分解は、周囲温度から、得られた塩化アルミニウム液の大気における沸点までの温度で実施されてもよい。酸分解は、少なくとも約(℃単位)25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95の温度で実施されてもよい。酸分解は、約(℃単位)100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、または30未満の温度で実施されてもよい。酸分解は、これらの上限量及び下限量のうちの任意の2つの間の温度、例えば、約25℃~100℃、50℃~95℃、70℃~90℃、または75℃~85℃、例えば約80℃で実施されてもよい。
【0073】
分解の速度は、温度、固体の濃度、及び得られた分解混合物中の酸濃度に依存することが理解されよう。酸分解は、少なくとも約15分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、または7時間の期間にわたって実施されてもよい。酸分解は、約7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、または1時間未満の期間にわたって実施されてもよい。固体沈殿は、上限量及び/または下限量のうちの任意の2つによって規定される範囲の期間、例えば、約15分間~6時間、または約2~4時間にわたって実施されてもよい。特定の一例では、その期間は約3時間である。
【0074】
酸可溶性化合物の溶解が完了した後、得られた塩化アルミニウム液は、必要とされる場合、濾過、重力分離、遠心分離等といった任意の好適な従来の分離技法によって、あらゆる残っている固体から分離される。固体は、分離中に1回以上の洗浄を経てもよいことが理解されよう。
【0075】
塩化アルミニウム液は、例えば上述した様態で、塩化アルミニウム六水和物固体を沈殿させるための結晶化を経る前にさらなる前処理を経てもよい。
【0076】
例えば、1つのかかる前処理は、塩化アルミニウム液をイオン交換樹脂、特にカチオン交換樹脂と接触させることを含み得る。
【0077】
代替として、かかる前処理の別の例は、塩化アルミニウム液を、任意選択で錯化剤と組み合わせて、吸着剤と接触させて1つ以上の不純物を吸着することを含み得る。好適な吸着剤には、活性アルミナ、シリカゲル、活性炭、モレキュラーシーブ炭素、モレキュラーシーブゼオライト、及びポリマー吸着剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
前処理のなおも別の例は、1つ以上の不純物の塩化物塩を選択的に沈殿させることを含み得る。例えば、液を冷却し、HClガスを散布して、塩化ナトリウムの塩析を促してもよい。
【0079】
かかる前処理のさらなる例は、液を錯化剤と反応させることを含み得、ここで、錯化剤は、1つ以上の不純物と選択的に錯体を形成することができる。このようにして、錯体を形成した不純物は、塩化アルミニウム六水和物固体が生成されるときに溶液中に残り得る。錯化剤は、Na、Fe、またはTiに対して選択的であり得る。Naに対する好適な錯化剤には、クラウンエーテル、ラリアート型クラウンエーテル、及びクリプタンド等の大環状ポリエーテルが含まれるが、これらに限定されない。ナトリウムに対して良好な選択性を示す好適なクラウンエーテルには、15-クラウン5、12-クラウン4、及び18-クラウン6が含まれる。かかるクラウンエーテルは、水溶液中に可溶性である。Feに対する好適な錯化剤には、ビピリジル及びテルピリジルリガンド等のポリピリジルリガンド、ポリアザ大環状化合物が含まれるが、これらに限定されない。Tiに対する好適な錯化剤には、O、N、S、P、またはAsドナーを組み込む大環状リガンドが含まれるが、これらに限定されない。他の金属錯化剤には、EDTA、NTA、ホスホネート、DPTA、IDS、DS、EDDS、GLDA、MGDA等の重金属キレート剤が含まれ得る。
【0080】
かかる前処理の依然として別の例は、溶媒抽出を含み得る。好適なキャリアは、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロアルカン、及び1-オクタノール等の長鎖アルコールを含むがこれらに限定されない非極性溶媒であり得る。上記で考察したクラウンエーテル錯化剤は、一般に非極性溶媒よりも水中に可溶性である。したがって、ベンゾ基及び長鎖脂肪族官能基等の疎水基の添加による上記で考察したクラウンエーテル錯化剤の修飾は、非極性溶媒中でのクラウンエーテル錯化剤の分配を改善し得る。
【0081】
不純物がナトリウムである、いくつかの実施形態では、塩化アルミニウム液は、それを半透性カチオン選択膜、特にナトリウム選択膜に通して、ナトリウム不純物を液から分離することによって精製され得る。
【0082】
上述したもの等の任意の前処理を経た後、得られた塩化アルミニウム液は、溶液中のAl濃度を増加させるために蒸発器で濃縮され得る。蒸発後の塩化アルミニウム液の溶液中のAl濃度は、少なくとも約1g/L、約10g/L、約20g/L、約30g/L、約40g/L、約50g/L、約60g/L、約70g/L、約80g/L、または約90g/Lであり得る。蒸発後の塩化アルミニウム液の溶液中のAl濃度は、約100g/L、約90g/L、約80g/L、約70g/L、約60g/L、約50g/L、約40g/L、約30g/L、約20g/L、または約10g/L未満であり得る。ある実施形態では、蒸発後の塩化アルミニウム液の溶液中のAl濃度は、約1~100g/Lの範囲、例えば、上記の上限濃度及び/または下限濃度のうちの任意の2つの間の範囲、例えば、約10~90g/L、または50~85g/L、または約60~80g/Lであり得る。結晶化を容易にするために、蒸発後の塩化アルミニウム液中のAl濃度は、好ましくは溶液の飽和濃度であるかまたはそれをちょうど下回る。
【0083】
次いで、濃縮液は、塩化アルミニウム六水和物固体を塩化アルミニウム液から沈殿させるために、例えば上記で詳述した様態で処理される。
【0084】
<<沈殿した塩化物六水和物固体からの高純度アルミナの生成>>
固体沈殿が完了した後、得られた塩化アルミニウム六水和物固体は、残っている液から分離(140、170)され、塩酸で洗浄される。濾過、重力分離、遠心分離、分類等といった任意の好適な従来の分離技法が使用されてもよい。固体は、分離中に1回以上の洗浄を経てもよいことが理解されよう。
【0085】
分離された液及び合わせた洗浄液は、上流で生成された塩化アルミニウム六水和物固体の濾過のための洗浄媒体として使用するために好都合にリサイクルされてもよい。代替としてまたは追加として、分離及び洗浄された塩化アルミニウム六水和物固体の一部または全てを使用して、上流の1つ以上の結晶化プロセスのステップに種晶添加してもよい。
【0086】
分離された塩化アルミニウム六水和物固体を任意選択で、水中に溶解し、得られた溶液を精製プロセスに供してもよい。さらなる精製プロセスは、上述した精製プロセスのうちのいずれか1つであってもよく、除去されなければならない標的不純物または溶液中の残っている不純物の残留濃度に応じて、同じまたは異なるプロセスであってもよい。
【0087】
次いで、収集された固体(141、171)を200℃~900℃の第1の温度まで加熱して、固体を熱分解してもよい。熱分解中に塩化水素ガスが発生し、これは塩化アルミニウム六水和物固体の生成において使用するためにリサイクルされてもよい。
【0088】
分解された固体は、その後、1000℃~1300℃でか焼(180)されて、高純度アルミナを生成する。か焼中に発生し得るいずれの塩化水素ガスも、塩化アルミニウム六水和物固体の生成において使用するためにリサイクルされてもよい。
【0089】
本開示によるステップの実施、例えば特に、1つ以上の沈殿ステップにおける種晶添加の使用、及び該プロセスのステップ中に新たな不純物の導入を最小限に抑えることにより、アルミニウム含有材料から形成された初期塩化アルミニウム液からの不純物の除去を制御すること、及び塩化アルミニウム六水和物固体中の不純物の包含を低減するための対策をとることによって、広範なアルミニウム含有材料から99.99%超の純度(4N)または99.999%超の純度(5N)のより高純度のアルミナが確実に達成され得る。
【0090】
結晶化中の不純物の導入を最小限に抑えることを補助するために、形成された高純度アルミナの一部分は任意選択で、上流の1つ以上の沈殿ステップにおいて塩化アルミニウム液に種晶添加するためにリサイクルされてもよい。
【0091】
本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に対して多数の変形及び/または修正が行われてもよいことが当業者には理解されよう。したがって、本実施形態は、全ての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。
【実施例】
【0092】
以下の実施例は、例示としてのみ理解されるべきである。したがって、以下の実施例は、本開示の実施形態をいかなるようにも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0093】
<実施例1-3回沈殿段階プロセスのモデリング>
実験データに基づいて、
図1によるプロセスに従うと共に3つの沈殿段階を用いて、水酸化アルミニウムの処理に対するモデリングを実施した。
【0094】
以下の条件に従った方法に対してモデリングを実施した。
【0095】
<<アルミニウム含有材料の分解>>:アルミニウム含有材料を連続撹拌反応器において9MのHCl中、3時間の平均滞留時間で80℃にて分解し、得られたスラリーを、溶液中に塩化アルミニウム及びいくつかの不純物を含む清澄化した塩化アルミニウム液から分離することに基づいて、モデリングを実施した。
【0096】
<<沈殿ステップ>>:塩化アルミニウム六水和物固体を沈殿させるために、塩化水素ガスを連続撹拌結晶化容器において清澄化した塩化アルミニウム液に吹き込むこと基づいて、モデリングを実施した。結晶化容器は、直列になった3つの結晶化槽を含み、このうちHClレベルは第3の槽におけるおよそ9Mの濃度まで漸増させ、およそ50℃の温度であった。得られた生成物流を分離し、その後、分離された塩化アルミニウム六水和物固体は第2及び第3の分解/結晶化プロセスを経、このうちHClレベルは第2の結晶化容器の第3の槽においておよそ10.5Mで及び第3の結晶化容器の第3の槽においておよそ10Mでモデリングする。
【0097】
いくつかの不純物に関する、3つの結晶化容器の各々の後の得られた塩化アルミニウム六水和物固体のモデリング純度を下記の表1に要約する。
【表1】
【0098】
<実施例2-不純物除去に対する種晶添加の効果>
AlCl3溶液を、アルミニウム含有材料を塩酸中で分解することによって調製した。AlCl3溶液から、低不純物レベル(低1、低2)、高不純物レベル(高1、高2、高3)、及び中間不純物レベル(混合)の溶液を調製した。
【0099】
溶液を、40~60℃の温度に制御したジャケット付き丸底フラスコに入れた。溶液にHClガスを散布することによって塩化アルミニウム六水和物固体の沈殿を実施した。HClガスは、塩酸を提供する酸のスポイト中のある体積の塩酸を濃硫酸の撹拌溶液中に入れることによって生成した。放出したHClガスを窒素キャリアガスと合わせ、丸底フラスコ中の溶液に吹き込んだ。
【0100】
種晶添加実験では、出発溶液にもまた塩化アルミニウム六水和物を5、22.5、または40g/Lで種晶添加した。種晶添加実験の条件を下記の表2に要約する。
【表2】
【0101】
同様の実験条件下で実施した種晶無添加沈殿物と比較した種晶添加沈殿物から得られた不純物であるリン、カリウム、カルシウム、クロム、及びガリウムのレベルを
図2A~2Fに提示する。
【0102】
図2A~2Fで実証されるように、種晶添加沈殿物は典型的に、種晶無添加沈殿物よりも低いレベルの不純物の包含をもたらした。いくつかの不純物に関しては、最終濃度は種晶添加及び種晶無添加沈殿物について同様であったが、かかる低減は、4N(すなわち>99.99%の純度)または5N(すなわち>99.999%の純度)の高純度アルミナに要求される高純度レベルに達するために必要であることが理解されよう。
【0103】
不純物は、種晶により生成物に導入される場合があることが理解されよう。種晶添加速度が高い場合、最終生成物中の不純物レベルは、新たに沈殿した生成物に含まれる不純物よりもむしろ種晶中の不純物レベルの関数であり得る。ある特定の不純物に関して、また添加される種晶の量に応じて、種晶により導入されるレベルは、これらの特定の不純物のレベルが対応する種晶無添加システムで観察されるものよりも高いことにつながり得る。例えば、これは、最も高い種晶添加速度(40g/L)で種晶添加した試験におけるカルシウム(
図2C)、クロム(
図2D)、及び鉄(
図2F)に関して観察された。種晶添加速度及び使用した種晶の純度は、特定のレベルの標的不純物を有する生成物、ならびに同時に4N及び5NのHPAを生成するために要求される最終生成物中の不純物の総レベルを得るように変動させることができる。
【国際調査報告】