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特表2024-508187マイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板及びその製造方法
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  • 特表-マイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板及びその製造方法 図1
  • 特表-マイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板及びその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(54)【発明の名称】マイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240215BHJP
   C22C 38/50 20060101ALI20240215BHJP
   C21D 8/00 20060101ALN20240215BHJP
【FI】
C22C38/00 301A
C22C38/50
C21D8/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555140
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2021131106
(87)【国際公開番号】W WO2023040034
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111091034.2
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226115
【氏名又は名称】南京鋼鉄股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 一新
(72)【発明者】
【氏名】▲チァオ▼ 明亮
(72)【発明者】
【氏名】趙 柏杰
(72)【発明者】
【氏名】唐 春霞
(72)【発明者】
【氏名】王 軍
(72)【発明者】
【氏名】崔 強
(72)【発明者】
【氏名】陳 林恒
(72)【発明者】
【氏名】尹 雨群
(72)【発明者】
【氏名】劉 涛
(72)【発明者】
【氏名】秦 玉栄
(72)【発明者】
【氏名】孟 令明
【テーマコード(参考)】
4K032
【Fターム(参考)】
4K032AA01
4K032AA04
4K032AA11
4K032AA14
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA22
4K032AA23
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032AA35
4K032AA36
4K032BA01
4K032CA02
4K032CC03
4K032CD02
4K032CD03
(57)【要約】
本発明は、C:0.05~0.08%、Si:0.30~0.50%、Mn:1.25~1.35%、P:0.010~0.014%、S≦0.003%、Nb:0.020~0.030%、Ti:0.010~0.020%、V:0.040~0.050%、Cu:0.25~0.40%、Ni:0.25~0.35%、Cr:0.45~0.55%、Mo:0.03~0.08%、Alt:0.020~0.040%といった重量割合の成分で製錬されてなり、残部がFe及び不純物であることを特徴とするマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板を開示し、そのマイクロモリブデンの含有量によって鋼板の製造コストを削減し、鋼板の降伏強度は500~600MPaであり、降伏比≦0.85であり、鋼板の最大厚さは80mmに達することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C:0.05~0.08%、Si:0.30~0.50%、Mn:1.25~1.35%、P:0.010~0.014%、S≦0.003%、Nb:0.020~0.030%、Ti:0.010~0.020%、V:0.040~0.050%、Cu:0.25~0.40%、Ni:0.25~0.35%、Cr:0.45~0.55%、Mo:0.03~0.08%、Alt:0.020~0.040%といった重量割合の成分で製錬されてなり、残部がFe及び不純物であることを特徴とするマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板。
【請求項2】
前記鋼板は、粒状ベイナイト及びフェライト組織からなることを特徴とする請求項1に記載のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板。
【請求項3】
製錬、連続鋳造、加熱、圧延及び焼戻しを含み、その圧延方法は二段圧延を採用し、粗圧延温度は950~1150℃であり、仕上げ圧延開始温度は850~900℃であり、仕上げ圧延終了温度は800~850℃であり、熱間圧延後に鋼板に対して層流冷却を行い、冷却速度は5~20℃/sであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記連続鋳造方法は、ダイナミック軽圧下の鋳造プロセスを採用することを特徴とする請求項3に記載のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記製錬方法は、LF精錬プロセス及びRH真空プロセスを採用することを特徴とする請求項3に記載のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記加熱方法の鋳片加熱温度は1160~1200℃であり、炉内で235~350min加熱することを特徴とする請求項3に記載のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記焼戻し方法の温度は500~550℃であり、焼戻し時間は50~150minであることを特徴とする請求項3に記載のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板及びその製造方法に関し、具体的にはマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
現在、耐候性鋼は、設計ライフサイクル全体にわたってコストが低く、メンテナンスが簡単であり、環境に優しいなどの特性を有するため、橋梁の設計建設に広く適用されている。降伏比は、鋼構造橋梁の構築安全性を評価する重要な指標の1つであり、降伏比が高過ぎた鋼材は、力を受けて降伏した後に破断しやすいが、低降伏比の鋼材は、力を受けて降伏した後に大幅に歪み強化され、引張強度がより高くなる。しかしながら、その強度の増加につれて、降伏比は低いレベルに益々制御されにくくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高強度を有すると同時に低降伏比を維持し、その衝撃靱性及び可塑性を高めるマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に記載のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板は、C:0.05~0.08%、Si:0.30~0.50%、Mn:1.25~1.35%、P:0.010~0.014%、S≦0.003%、Nb:0.020~0.030%、Ti:0.010~0.020%、V:0.040~0.050%、Cu:0.25~0.40%、Ni:0.25~0.35%、Cr:0.45~0.55%、Mo:0.03~0.08%、Alt:0.020~0.040%といった重量割合の成分で製錬されてなり、残部がFe及び不純物であることを特徴とする。
【0005】
各金属の成分及び含有量の本発明における役割は以下の通りである。
【0006】
Cu:0.25%~0.40%について、銅は、鋼材において固溶強化の役割を果たし、適量の銅は、鋼材の靱性に影響を与えることなく、鋼材の強度と耐食性能を高めることができる。
【0007】
Cr:0.45%~0.55%について、クロムは、鋼材の降伏強度を高めることができるが、その降伏比に悪影響を与えるだけでなく、クロム元素の埋蔵量が少ないため、本願においてクロムの含有量を減らし、他の金属に置き換えている。
【0008】
Mo:0.03%~0.08%について、固溶強化金属として、モリブデンは、鋼材の焼入性及び熱硬化性を大幅に向上させ、焼戻し脆性を顕著に低減することができる。本発明は、圧延プロセスを制御することで、鋼板の強度を向上させ、鋼板におけるモリブデンの含有量を低減し、485MPa級の耐候性橋梁鋼の製造コストを削減する。
【0009】
更に、前記鋼板は、粒状ベイナイト及び少量のフェライトにより複合して構成され、粒状ベイナイトと少量のフェライトからなる金属組織は微細で均一であり、鋼板が良好な可塑性と靱性を有することに役立ち、且つ強度を維持しながら低い降伏比を維持することができる。
【0010】
更に、前記鋼板の製造プロセスは、製錬、連続鋳造、加熱、圧延及び焼戻しを含み、その圧延プロセスは二段圧延を採用し、その粗圧延温度は950~1150℃であり、仕上げ圧延開始温度は850~900℃であり、仕上げ圧延終了温度は800~850℃であり、熱間圧延後に鋼板に対して層流冷却を行い、冷却速度は5~20℃/sであることを特徴とする。冷却速度が小さければ、鋼板における靱性組織がより多くなり、鋼板の衝撃靱性と可塑性を高めることができる。
【0011】
更に、前記連続鋳造プロセスは、ダイナミック軽圧下の鋳造プロセスを採用し、ダイナミック軽圧下の連続鋳造により鋳片の内部品質を改善し、鋳片中央のマクロ偏析とミクロ偏析のレベルを低減することができる。
【0012】
更に、前記製錬プロセスは、LF精錬プロセス及びRH真空処理プロセスを含む。LF精錬は、鋼鉄中の不純物を高度に制御し、大型の介在物による鋼板の靱性への悪影響を回避するために用いられ、RH真空プロセスは、溶鋼の純度を高め、溶鋼の品質を保証するために用いられ、後で鋳片の内部品質を改善するために基礎を築く。
【0013】
更に、前記加熱プロセスの鋳片加熱温度は1160~1200℃であり、炉内で235~350min加熱する。
【0014】
更に、前記焼戻しプロセスの温度は500~550℃である。焼戻し時間は50~150minである。
【発明の効果】
【0015】
1、鋼板性能を改良する。本発明により製造された鋼板は、降伏強度が500~600MPaであり、その降伏比≦0.85であり、板厚の1/4箇所の-23℃での衝撃エネルギー≧240Jであり、伸び率≧20%であり、TNDT無延性遷移温度は-50℃であり、鋼板の最大厚さは80mmに達することができる。2、鋼板のコストを節約する。本発明は、鋼板成分の微調整と圧延方法を組み合わせ、性能を向上させると同時に、貴金属の使用を減らし、製造時の材料コストを節約する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の鋼板の組織形態図である。
図2】実施例2の鋼板の組織形態図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に合わせて本発明の技術的解決手段を更に説明する。
【0018】
実施例1
本実施例のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板は、厚さが16mmであり、その成分の重量百分率が、C:0.05%、Si:0.50%、Mn:1.29%、P:0.010%、S:0.0014%、Alt:0.040%、Nb:0.030%、V:0.040%、Ti:0.020%、Ni:0.25%、Cr:0.45%、Mo:0.02%、Cu:0.40%であり、残りがFe及び不可避的な不純物である。
【0019】
まず、転炉吹錬後、鋼材に対して、LF精錬により合金の成分を調節するとともに、RH真空処理により溶鋼の純度を高め、その後、ダイナミック軽圧下技術により連続鋳造を行い、厚さ260mmの鋳片を1200℃まで加熱し、283min加熱した後に出湯し、出湯温度は1200度であり、出湯後に鋼材が制御圧延・制御冷却段階に入り、圧延を粗圧延及び仕上げ圧延に分け、粗圧延温度は1091℃であり、仕上げ圧延開始温度は890℃であり、仕上げ圧延終了温度は852℃であり、圧延後に層流冷却を行い、その冷却自己焼き戻し温度は538℃であり、冷却速度は20℃/sである。
【0020】
この成分及びプロセスを採用して製造した鋼板の性能は、表1~表3に示す通りである。
【0021】
実施例2
本実施例のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板は、厚さが32mmであり、その成分の重量百分率が、C:0.07%、Si:0.38%、Mn:1.30%、P:0.012%、S:0.0010%、Alt:0.036%、Nb:0.025%、V:0.047%、Ti:0.014%、Ni:0.32%、Cr:0.50%、Mo:0.05%、Cu:0.28%であり、残りがFe及び不可避的な不純物である。
【0022】
まず、転炉吹錬後、鋼材に対して、LF精錬により合金の成分を調節するとともに、RH真空処理により溶鋼の純度を高め、その後、ダイナミック軽圧下技術により連続鋳造を行い、厚さ260mmの鋳片を1169℃まで加熱し、281min加熱した後に出湯し、出湯後に鋼材が制御圧延・制御冷却段階に入り、圧延を粗圧延及び仕上げ圧延に分け、粗圧延温度は1166℃であり、仕上げ圧延開始温度は860℃であり、仕上げ圧延終了温度は819℃であり、圧延後に層流冷却を行い、その冷却温度は547℃であり、冷却速度は12.6℃/sである。
【0023】
この成分及びプロセスを採用して製造した鋼板の性能は、表1~表3に示す通りであり、そのミクロ組織形態図は図1に示される。
【0024】
実施例3
本実施例のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板は、厚さが32mmであり、その成分の重量百分率が、C:0.06%、Si:0.45%、Mn:1.28%、P:0.012%、S:0.0012%、Alt:0.038%、Nb:0.030%、V:0.045%、Ti:0.012%、Ni:0.29%、Cr:0.48%、Mo:0.06%、Cu:0.32%であり、残りがFe及び不可避的な不純物である。
【0025】
まず、転炉吹錬後、鋼材に対して、LF精錬により合金の成分を調節するとともに、RH真空処理により溶鋼の純度を高め、その後、ダイナミック軽圧下技術により連続鋳造を行い、厚さ260mmの鋳片を1168℃まで加熱し、279min加熱した後に出湯し、出湯後に鋼材が制御圧延・制御冷却段階に入り、圧延を粗圧延及び仕上げ圧延に分け、粗圧延温度は1119℃であり、仕上げ圧延開始温度は858℃であり、仕上げ圧延終了温度は809℃であり、圧延後に層流冷却を行い、その冷却温度は549℃であり、冷却速度は12.5℃/sである。
【0026】
この成分及びプロセスを採用して製造した鋼板の性能は、表1~表3に示す通りであり、そのミクロ組織形態図は図2に示される。
【0027】
実施例4
本実施例のマイクロモリブデン型耐候性橋梁鋼板は、厚さが65mmであり、その成分の重量百分率が、C:0.08%、Si:0.32%、Mn:1.35%、P:0.014%、S:0.0013%、Alt:0.025%、Nb:0.028%、V:0.050%、Ti:0.010%、Ni:0.35%、Cr:0.55%、Mo:0.08%、Cu:0.26%であり、残りがFe及び不可避的な不純物である。
【0028】
まず、転炉吹錬後、鋼材に対して、LF精錬により合金の成分を調節するとともに、RH真空処理により溶鋼の純度を高め、その後、ダイナミック軽圧下技術により連続鋳造を行い、厚さ260mmの鋳片を1193℃まで加熱し、267min加熱した後に出湯し、出湯後に鋼材が制御圧延・制御冷却段階に入り、圧延を粗圧延及び仕上げ圧延に分け、粗圧延温度は1120℃であり、仕上げ圧延開始温度は855℃であり、仕上げ圧延終了温度は805℃であり、圧延後に層流冷却を行い、その冷却温度は500℃であり、冷却速度は7.5℃/sである。
【0029】
この成分及びプロセスを採用して製造した鋼板の性能は、表1~表3に示す通りである。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
図1及び図2に示すように、実施例1及び実施例2の組織には、大粒径のMA島組織がなく、粒状ベイナイトの他、少量のフェライト組織を更に含有する。このような構造により、鋼板は、強度が十分でありながら、有益な可塑性と靱性を維持し、且つ鋼材の低降伏比を維持することができる。表1~表3のデータにより示されるように、本発明の製造方法で製造された実施例1及び実施例2の機械的特性は、いずれもその設計レベルに達することができ、降伏強度は、500~600MPaの間にあり、伸び率≧20%であり、降伏比≦0.85であり、-23℃での衝撃エネルギー≧240Jであり、TNDT無延性遷移温度は-50℃であった。
図1
図2
【国際調査報告】