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特表2024-508205多剤耐性病原体に対する抗菌活性を有するペプチド実体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】多剤耐性病原体に対する抗菌活性を有するペプチド実体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/00 20060101AFI20240216BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
A61K45/00
A61K38/16
A61P31/00
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K31/407
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523524
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 CU2021050011
(87)【国際公開番号】W WO2022105948
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】2020-0086
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518390701
【氏名又は名称】セントロ デ インベスティガシオン イ デサロージョ デ メディカメントス.セイデエエメ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モンテロ - アレホ、ヴィヴィアン
(72)【発明者】
【氏名】ペルドモ - モラレス、ローランド
(72)【発明者】
【氏名】バスケス - ゴンザレス、アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】ガレイ - ペレス、イルダ エリサ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZB352
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CC08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZB32
4C086ZB35
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、細菌性であり、かつ既存の抗生物質に対して多剤耐性である微生物として存在する病原性微生物に対して活性である合成ペプチド系化合物を記載する。本発明はまた、前記ペプチドを含有する併用療法を記載する。ペプチド系化合物及びその組合せを含む医薬組成物が、その使用及びそれを使用することができる治療方法と共に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、抗菌活性を有するペプチド。
【請求項2】
各配列に存在するシステイン(Cys、C)がジスルフィド結合を形成しており、末端のカルボキシル末端の残基はアミド化されていることをさらに特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
Xaaが、D型又はL型のアルギニン(Arg、R)及びリジン(Lys、K)からなる群から独立して選択され、ただし、Xaa残基の少なくとも4つがアルギニンであることを条件とすることをさらに特徴とする、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
細菌感染症を有する患者への、多剤耐性現象の発生を制御するための併用療法であって、請求項1~3に記載される群から選択される少なくとも2つの配列を前記患者に投与することを含む、併用療法。
【請求項5】
細菌感染症を有する患者への、多剤耐性現象の発生を制御するための併用療法であって、請求項1から3に定義される群から選択される配列をベータラクタム系抗生物質と共に前記患者に投与することを含む、併用療法。
【請求項6】
ベータラクタム系抗生物質がカルバペネムである、請求項5に記載の併用療法。
【請求項7】
微生物感染症を治療及び/又は予防するための医薬組成物であって、
a)有効成分としての治療有効量の請求項1~3に記載される群から選択されるペプチドと、
b)1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と
を含む、医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~3に記載される群から選択される第2のペプチドを有効成分としてさらに含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ベータラクタム系抗生物質を有効成分としてさらに含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
ベータラクタム系抗生物質がメロペネムである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~3に記載の群から選択されるペプチド、請求項4~6に記載の併用療法から選択される併用療法、又は請求項7~10に記載の医薬組成物から選択される医薬組成物の使用であって、前記使用が、微生物感染症の予防及び/又は治療のための医薬品を製造するための使用であることから特徴付けられる、使用。
【請求項12】
感染症がESKAPE群に属するグラム陰性菌又はグラム陽性菌の病原性株によって引き起こされる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
グラム陰性菌が、既存の抗生物質に対して多剤耐性を示し、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoneae)、アシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomona aeruginosa)、及び大腸菌(Escherichia coli)を含む群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
グラム陽性菌が、既存の抗生物質に対して多剤耐性を示し、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含む群から選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
微生物感染症を治療又は予防する方法であって、請求項1~3に記載の群から選択されるペプチド、請求項4~6に記載の併用療法から選択される併用療法、又は請求項7~10に記載の医薬組成物から選択される医薬組成物を、治療有効量で微生物感染症を有する対象に投与することを含む、方法。
【請求項16】
感染症がESKAPE群に属するグラム陰性菌又はグラム陽性菌の病原性株によって引き起こされる、請求項15に記載の治療方法。
【請求項17】
グラム陰性菌が、既存の抗生物質に対して多剤耐性を示し、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoneae)、アシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomona aeruginosa)、及び大腸菌(Escherichia coli)を含む群から選択される、請求項16に記載の治療方法。
【請求項18】
グラム陽性菌が、既存の抗生物質に対して多剤耐性を示し、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含む群から選択される、請求項16に記載の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ペプチド実体、組合せ、及びそれらを含む医薬組成物、並びに医薬品の製造及び細菌感染症を治療する方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質耐性は、細菌及び真菌のような病原菌が、それらを死滅させるように設計された薬物を無効にする又は回避する能力を発達させる場合に生じる。これは、病原菌が死滅せず、増殖し続けることを意味する。抗生物質に耐性のある病原菌によって引き起こされる感染症は、治療が困難であり、時には不可能である。ほとんどの場合において、抗生物質耐性感染症は、長い入院、追加の医療フォローアップ訪問、及び高価で毒性のある治療代替法を必要とすることをこれに付け加えると、問題の複雑さはさらに大きくなる。抗生物質耐性は、他の疾患における耐性現象で生じるように、身体が抗生物質に対して耐性になりつつあることを意味するものではなく、むしろ、細菌は、それらを死滅させるように設計された抗生物質に対して耐性になっている。この問題は、投与される抗生物質の用量を増加させることによって解決されず、これは毒性の追加のリスクも表す。抗生物質耐性は、生活のあらゆる段階の人々、並びに健康、獣医学及び農業産業に影響を及ぼす可能性があり、世界で最も深刻かつ緊急の健康問題の1つになっている。耐性感染症のリスクを完全に回避することはできないが、一部の人々、例えば慢性疾患を有する人々は他の人々よりもリスクが高い。抗生物質の有効性が失われると、感染症を治療し、公衆衛生に対する脅威を制御する能力が失われる(https://www.cdc.gov/drugresistance/intl-activities/amr-challenge.html)。さらに、様々な非感染性疾患シナリオのほとんどにおいて、臨床医はまた、例えば、関節置換、臓器移植、抗炎症療法、がん、並びに糖尿病、喘息、及び関節リウマチなどの慢性疾患の治療において、抗生物質の使用を介した感染症を予防する能力に依存している。
【0003】
既存の抗生物質に対する耐性に寄与する重要な代謝経路及び機構を標的とするアジュバントと組み合わせて抗生物質を使用するために多大な努力がなされてきた(透過剤、ラクタマーゼ阻害剤、流出ポンプ阻害剤、クオラムセンシング阻害剤、毒素の阻害剤など)。抗生物質とアジュバントとのこのような組合せによる成果はこれまで不十分であるため、これらの薬物に対する耐性に対処するためのさらなる代替手段が求められている。
【0004】
2017年の初め以来、世界保健機関(WHO)は、新しい抗生物質が緊急に必要とされている12種類の薬物耐性細菌を含む優先病原体のリストを世界中で公表している。この報告は、多剤耐性グラム陰性菌に対する新しい抗生物質を開発することの重要性及び差し迫った必要性を強調している。(https://www.who.int/news-room/detail/27-02-2017-who-publishes-list-of-bacteria-for-which-new-antibiotics-are-urgently-needed参照)。抗生物質耐性の発生率が最も高いと報告されている微生物の中には、カルバペネムに耐性であるアシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)種、カルバペネムに耐性である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)種、及びカルバペネムに耐性でありESBLを産生する腸内細菌(Enterobacteriaceae)種がある。さらに、バンコマイシンに耐性であるエンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)種及びメチシリンに耐性である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)種などの中程度の発生率を有する他の微生物が挙げられる。
【0005】
抗菌ペプチド(AMP)が細菌膜と相互作用して細胞溶解を引き起こす能力により、抗菌ペプチドは、既存の抗生物質に対する病原体の耐性の現象に対抗するための有望な代替物となっている[Mulani,MS,et al.,Emerging Strategies to Combat ESKAPE Pathogens in the Era of Antimicrobial Resistance:A Review.Frontiers in microbiology,2019.10:p.539-539]。天然AMPの膜溶解機構は、耐性機構が特異的な薬物標的に急速に出現するため、潜在的に有望な治療代替法である[Mourtado,R.,et al.,Design of stapled antimicrobial peptides that are stable,non-toxic and kill antibiotic-resistant bacteria in mice.Nature Biotechnology,2019.37(10):p.1186-1197]。この意味で、今日、新たな外用抗感染剤の必要性は、感染性疾患、具体的には未解決の及び/又は多剤耐性微生物によって引き起こされる感染性疾患に対抗するためにより緊急である。
【0006】
一般的に、AMPは、細菌などの負に帯電した細菌膜に対して選択的であり、それらの細胞傷害性は、それらの表面に中性電荷を提示する真核生物に対して中程度である。AMPの抗菌機構における特徴的な要素は、細胞質膜との相互作用であり、したがって、電荷及び疎水性は、抗菌活性の発現にとって重要な特性である。一旦ペプチド-膜結合が起こると、作用機構は一般に、溶解孔の形成又はペプチド凝集体の形成による膜の不安定化を伴う。他の非溶解機構には、細胞の脱分極、及び細胞質ゾルへの移行、及び細胞内標的(核酸、酵素など)への結合が含まれる[Hale,J.D.and R.E.Hancock,Alternative mechanisms of action of cationic antimicrobial peptides on bacteria.Expert Rev Anti Infect Ther,2007.5(6):p.951-9.]。
【0007】
イセエビ(Panulirus ssp)属の甲殻類の血リンパからの天然鋳型からの治療候補の証拠はない。β型抗菌ペプチドデフェンシンの新しいファミリーの存在が、近年、イセエビのパヌリラスアーガス(Panulirus argus)の血球において記載された[Montero-Alejo,V.,et al.,Defensin-like peptide from Panulirus argus relates structurally with beta-defensin from vertebrates.Fish Shellfish Immunol,2012.33(4):p.872-9.][Montero-Alejo,V.,et al.,Panusin represents a new family of beta-defensin-like peptides in invertebrates.Dev Comp Immunol,2017.67:p.310-321]。プロフェノールオキシダーゼ活性化系を調節するトリプシン型プロテアーゼ阻害剤の新しいファミリーも、この甲殻類において同定された[Perdomo-Morales,R.,et al.,The trypsin inhibitor panulirin regulates the prophenoloxidase-activating system in the spiny lobster Panulirus argus.J Biol Chem,2013.288(44):p.31867-79][WO/2013/113296.PERDOMO,M.R.,et al.,Composition from lobster hemocyte extract for detection of lipopolysaccharides,peptidoglycans,and 1,3-beta-d-glucans.2014.]。上記のように、多剤耐性(MDR)病原体の現象及びこの問題に対処することを可能にする新しい治療代替法の欠如により、抗菌活性及び新規な作用機序を有する新しい分子を探索することが必要となっている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3の配列を含む群からの合成ペプチド配列であって、多剤耐性細菌によって引き起こされる微生物感染症の予防及び治療における潜在的な治療用途を有する合成ペプチド配列を提供する。
【0009】
本発明はさらに、細菌感染症を有する患者への、多剤耐性現象の発生を制御するための併用療法であって、配列番号1~3を含む群から選択される少なくとも2つの配列を患者に投与することを含む、併用療法を提供する。また、配列番号1~3を含む群から選択される配列をベータラクタム系抗生物質と共に患者に投与することを含む併用療法も提供する。より具体的には、ベータラクタム系抗生物質クラスがカルバペネムであるこの併用療法を提供する。
【0010】
本発明の別の目的は、有効成分としての配列番号1~3からなる群から選択されるペプチドと、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。本発明の別の目的は、配列番号1~3からなる群から選択される第2のペプチドを有効成分としてさらに含む医薬組成物である。本発明の別の目的は、配列番号1~3からなる群から選択されるペプチド及びベータラクタム系抗生物質も含む医薬組成物である。この目的の特定の実施形態は、抗生物質がメロペネムである場合である。
【0011】
本発明に記載のペプチドは、細菌感染症を治療するための薬物の製造に使用することができる。本発明の特徴的な態様は、特にグラム陰性菌によって引き起こされる感染症の治療におけるその使用である。本発明を実施する特定の形態は、ESKAPE群に属する病原性株、例えばクレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoneae)種、アシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)種、緑膿菌(Pseudomona aeruginosa)種、及び大腸菌(Escherichia coli)種によって引き起こされる感染症の治療における、より具体的には、既存の抗生物質に対して多剤耐性である前記種の臨床分離株におけるその治療的使用である。
【0012】
本発明の別の特定の態様は、グラム陽性菌によって引き起こされる感染症の治療におけるその使用である。本発明を実施する特定の形態は、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)種又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)種の群から選択される病原性株によって引き起こされる感染症の治療における、より具体的には、既存の抗生物質に対して多剤耐性である前記種の臨床分離株におけるその使用であろう。
【0013】
本発明の別の目的は、微生物感染症を治療又は予防する方法であって、組合せ又は医薬組成物のいずれかの配列番号1~3からなる群から選択されるペプチドを投与することを含む、方法である。特定の実施形態は、ESKAPE群に属する病原性株によって感染症が引き起こされる場合である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】RP-HPLCによる精製及びESI-MS/MSによる配列チェックを示す図である。a)配列番号1、b)配列番号2、c)配列番号3。
図2】異なる細胞型に対する配列番号1、配列番号2及び配列番号3のペプチドの毒性効果の評価を示す図である。A)ウィスターラットの赤血球に対する異なるペプチド濃度でインビトロで決定された溶血率。B)Hep2細胞株に対する異なるペプチド濃度でインビトロで決定された細胞生存率。ペプチド濃度は、細菌増殖の90%致死濃度(LD90)値よりも最大10倍高い値をカバーするために使用した。
図3】細菌クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)及び緑膿菌(Pseudomona aeruginosa)の死滅時間の評価を示す図である。A)配列番号1、B)配列番号2、C)配列番号3。各場合において、抗生物質メロペネムを使用して、クレブシエラニューモニエ(K.pneumoniae)の死滅時間及び緑膿菌(P.aeruginosa)細菌に対する抗生物質シプロフロキサシンを比較した。評価した時間におけるコロニー数の3logの減少は、選択した細菌に対する致死効果を実証している。
図4】ペプチド配列:A)配列番号1、B)配列番号2、C)配列番号3の存在下でのヒト全血培養物からのLPS誘導性IL-6放出の阻害、及び参照としてのポリミキシンB(PMB)のLPS中和活性との比較を示す図である。
図5】カブトガニ血球抽出液(LAL)法によって決定されたペプチドのLPS中和活性を示す図である。異なる濃度のペプチドをLPS(0.5EU/ml)と共にインキュベートした。LAL法は、ペプチドの存在下で活性LPSの存在(回収率)を決定することを可能にする。LALアッセイの応答の用量依存的阻害を、各ペプチド変異体について2nM~20μMの濃度範囲でLPSチャレンジに対して得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、細菌性であり、かつ既存の抗生物質に対する多剤耐性微生物として現れる病原性微生物に対抗する新しい合成ペプチド化合物に基づく代替物を提供する。驚くべきことに、ロブスターのパヌリラスアーガス(P.argus)の血球中で同定された天然ペプチドの異なるファミリーから設計されたキメラハイブリッド構造は、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)種、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)種、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoneae)種、アシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)種、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)種及び大腸菌(Eccherichia coli)種を含む多剤耐性抗生物質株に対して抗菌活性を示す。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、配列番号1、配列番号2、及び/若しくは配列番号3、又は配列番号1~3と少なくとも80%の同一性を有するペプチド構造の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列のリストが示される。
【0017】
好ましい実施形態では、配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3の群に含まれる選択された配列は、固相ペプチド合成(SPPS)法を用いた化学合成によって得られる。とはいえ、これらの配列の一次構造には、L型又はD型で生じ得るアルギニン又はリジンに対応する少なくとも6個の塩基性アミノ酸が存在し、好ましい実施形態では、得られる配列は少なくとも4残基のアルギニンを含有しなければならない。
【0018】
本発明は、配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3の群に含まれる選択された配列の少なくとも1つを含む併用療法を記載する。前記併用療法では、ペプチドは、同時又は連続的に投与することができる同じ製剤又は異なる製剤中に見出すことができる。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、有効成分としての配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3からなる群から選択される少なくとも1つの合成ペプチドと、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3の配列の、対象における微生物感染症の予防及び/又は治療における使用を提供する。本発明のペプチド配列は、ヒト及び/又は動物において感染症を引き起こすグラム陰性及びグラム陽性菌株に対する溶菌効果を有するので、広域スペクトル抗菌性である。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明は、細菌増殖の阻害剤であり、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)種、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)種、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoneae)種、アシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)種、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)種及び大腸菌(Eccherichia coli)種の群からの選択された病原性微生物に対して殺菌活性を有する、配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3の前記ペプチド配列の使用を提供する。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明は、配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3のペプチド配列の、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)種、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)種、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoneae)種、アシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)種、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)種、及び大腸菌(Eccherichia coli)種などの多剤耐性病原性微生物の増殖阻害剤としての使用を提供する。その結果、全ての抗生物質多剤耐性微生物はペプチド化合物に感受性であり、動力学的微量希釈法で1.0~8.0μMの間のCL90値を示した。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3のペプチド配列の、30分未満の時間での初期細菌量の3logの減少を得るための使用を提供する。これらは、選択された細菌クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(ATCC1003)及び緑膿菌(Pseudomona aeruginosa)(ATCC9027)に対する抗生物質メロペネム及びシプロフロキサシンと比較して細菌量の減少を達成するための迅速性を提供するというのは事実である。
【0024】
好ましい実施形態では、配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3のペプチド配列が、グラム陰性菌の外膜の主要かつ毒性成分であるリポ多糖又はLPSの中和活性を示すことが例示される。好ましくは、ペプチド配列は、全血培養物中のLPS誘導性炎症促進性サイトカイン放出を阻害し、LAL(カブトガニ血球抽出液)試薬に対するLPS応答を阻害する。
【0025】
本発明はさらに、臨床分離株由来のクレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)種及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)種の多抗生物質耐性株のインビトロ培養物における配列番号1-配列番号2、配列番号1-配列番号3及び配列番号2-配列番号3の組合せから得られる相乗的抗菌効果を例示する実施形態を提供する。
【0026】
本発明はさらに、微生物感染症と診断された対象を治療する方法であって、治療有効量の配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3によって形成される群から選択されるペプチドの1つを投与することを含む、方法を提供する。好ましい実施形態では、前記感染症は、既存の抗生物質に対して多剤耐性であるグラム陰性及びグラム陽性菌によって引き起こされる感染症である。本発明はさらに、前記治療方法が、配列番号の配列の選択されたペプチドが組み合わされる場合に、より速い抗菌応答を保証することを提供する。配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3、診療所からのクレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)種及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)種株のインビトロ培養物におけるカルバペネム系抗生物質と共に組み合わされる。
【0027】

例1.
ペプチド実体の合成。
ペプチド合成のために、Fmoc-Am-OHスペーサーで官能化されたChemmatrix樹脂(0.7mmol/gの置換)を使用した。以下をアミノ酸の側鎖の保護基として使用した。Cys、Asn、His、及びGlnに対してトリチル(Trt);Argに対して2,2,4,6,7-ペンタメチル-ジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf);Lysに対してBoc;Ser、Thr、Asp、Tyr、及びGluに対してtBu。Nα-アミノ基を保護するFmoc基を、ピペリジンのDMF中20%溶液での処理(2×10分)によって除去した。各脱保護工程後、DMFで5分間4回洗浄した。各アミノ酸とスペーサーのカップリングは、DIC/Oxyma(エチル-2-シアノ-2-(ヒドロキシミノ)アセタート)による活性化法により行った。4当量の試薬及びDMFを溶媒として使用した。カップリング反応の完了を、遊離アミノ基の存在に感受性であるニンヒドリン法によって検証した[Kaiser,E.,et al.,Color test for detection of free terminal amino groups in the solid-phase synthesis of peptides.Anal Biochem,1970.34(2):p.595-8]。全ての洗浄及び反応を機械的撹拌を用いて行い、溶媒又は試薬を真空濾過によって除去した。アミノ酸側鎖の脱保護及び樹脂からのペプチドの分離は、TFA/H2O/EDT/TIS(94/2.5/2.5/1)溶液(Cys又はMetを含有するペプチドの場合)で25℃にて2時間処理することによって行った。TFAに溶解した固定されていないペプチドを-20℃に冷却したエーテル中で沈殿させ、水中の40%アセトニトリル溶液に再溶解し、凍結乾燥した。続いて、Gonzalezらによって記載された処理によって配列を検証した[Gonzalez,J.,et al.,Effect of the position of a basic amino acid on C-terminal rearrangement of protonated peptides upon collision-induced dissociation.J Mass Spectrom,1996.31(2):p.150-8.]。ナノスプレーイオン化源を備えたQ-Tof1又はQ-Tof2直交ハイブリッド構成分光計(Micromass、英国)でESI-MSスペクトルを得た。ヨウ化ナトリウム及びヨウ化セシウム溶液を、分光計の較正のための基準として使用した。マススペクトルの処理には、Masslynxバージョン3.5プログラム(Micromass、英国)を用いた。最後に、設計された配列に対応するペプチドの分取精製を行った。分取RP-HPLC精製をLabChrom装置(Merck Hitachi、ドイツ)で行った。RP-C18(Vydac、25×250mm、25μm)のカラムを使用し、5mL/分の流量で50分間、移動相Bの15~45%の直線勾配から分離を行った。移動相A:水中0.1%TFA(v/v)、移動相B:アセトニトリル中0.05%TFA(v/v)の組成を用いた。50mgの各粗ペプチドを注入した。クロマトグラムは波長226nmで取得した。
【0028】
例2.
MDRに対するインビトロでの抗菌効果の評価
エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoneae)、アシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及び大腸菌(Escherichia coli)の臨床細菌分離株から、LB寒天ウェッジ上で、ミューラー・ヒントン液体培地(MH)にhoeを播種し、180rpmで一晩軌道振盪しながら37℃で増殖させた。その後、5mLのMHに100μLの増殖物を接種することによってワーキング培養物(working culture)を調製し、37℃で2時間又は3時間インキュベートした。培養物が0.45~0.55の間の650nmでの光学密度(OD)に達したとき、増殖は停止した。このOD範囲では、培養物は10CFU/mLの濃度であると考えられる[Ericksen,B.,et al.,Antibacterial activity and specificity of the six human {alpha}-defensins.Antimicrob Agents Chemother,2005.49(1):p.269-75]。細菌懸濁液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で10CFU/mLに希釈し、これをワーキング培養物(working culture)として使用した。ペプチドを滅菌PBに所望の濃度に溶解し、50μLを滅菌96ウェルポリプロピレンプレート(Eppendorf、ドイツ)に適用した。ペプチドの2倍連続希釈物(二重反復)をPB中で作製し、50μLのワーキング培養物(working culture)を各ウェルに適用した。プレートを37℃で2時間インキュベートして、ペプチドと細菌膜との相互作用を可能にした。続いて、100μLの二重濃縮MH培地を全てのウェルに添加し、マイクロプレートリーダ(BioTek Instruments、米国)を使用して37℃で15時間、5分ごとに650nmでODを記録することによって、微生物増殖を速度論的に追跡した。最後に、増殖曲線を分析し、データの数学的処理により、CFUに関してペプチド濃度と生存率との間の関係を得ることができた。データをLog[ペプチド]型対ODの応答の式に当てはめることによって、微生物増殖の90%の致死濃度(LC90)を決定することが可能である(表1)。このようにして、臨床分離株由来の多剤耐性グラム陰性及びグラム陽性微生物の株に対する各配列についての細菌培養物のCL90の3回の個々の実験の平均を報告する。
表1.臨床分離株由来の多剤耐性株(ESKAPE群由来)に対する配列番号1、配列番号2及び配列番号3の細菌培養物の90%の致死濃度(LC90)で表した値。値は、独立した実験から得られた濃度の範囲を表す。
【表1】

例3.
細胞傷害性評価
【0029】
ペプチドの溶血活性をウィスターラット赤血球で評価した。採取した血液に、採取装置(Monovette、Sarstedt、ドイツ)内でヘパリンを補充した。血液を1000×gで10分間25℃で遠心分離し(Hettich、ドイツ)、赤血球ペレットを滅菌生理食塩水で連続して3回洗浄した。血漿を含まない赤血球を生理食塩水で希釈して、4%(v/v)の最終濃度にした。各ペプチドの2倍連続希釈物を等量の赤血球と混合し、U底マイクロプレート(Sero-Wel、Bibby Sterilin、英国)中37℃で1時間インキュベートした。0.1%(v/v)のPBS及びTriton-X100を、それぞれ0%及び100%溶血の対照として使用した。インキュベーションが終了したら、プレートを1000gで5分間遠心分離し、上清を平底ポリスチレンマイクロプレートに移し、赤血球によるヘモグロビンの放出を示す540nmでの吸光度を測定した。溶血率(%H)を、2回の独立した反復から式1に従って計算し、式中、H0%及びH100%は、それぞれPBS及びTritonX-100を用いた対照のAbs540nmに対応し、各ペプチド濃度について得られたAbs540nmの値のHペプチドに対応する。
【数1】
【0030】
同様に、Hep2細胞における配列番号1~3によって表されるペプチドの細胞傷害効果を決定した。完全にコンフルエントな細胞単層(1×10細胞/ウェル)を48時間後に播種した96ウェルプレートを使用した。増殖培地をプレートから除去し、SFBIを含まない培養培地に溶解した100μLのペプチドを6.25μM~100μMの異なる濃度でウェルあたり添加した。評価するペプチドの濃度ごとに6つのウェルを使用し、残りのウェル(6)には、SFBIを含まない培養培地100μLを添加し、後者は細胞対照を構成した。プレートを37℃、5%CO雰囲気で72時間インキュベートし、毎日観察して、細胞傷害性を示す細胞単層の可能性のある形態学的変化を決定した。この後、生細胞中の活性ミトコンドリア酵素によるMTT化合物の減少に基づく比色アッセイを使用して、全てのウェルにおいて細胞生存率を決定した[Mosmann,T.,Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival:application to proliferation and cytotoxicity assays.J Immunol Methods,1983.65(1-2):p.55-63]。PBS中5mg/mLの濃度の10μLのMTT溶液を各ウェルに添加した。細胞を再び、遮光して、5%CO雰囲気中、37℃で4時間インキュベートした。その後、培地の全内容物をプレートから除去し、上清を濾紙上に慎重にデカントした。形成された沈殿物を、100μLの無水DMSOを各ウェルに添加し、プレートを5分間慎重に振盪することによって再懸濁した。プレートの吸光度を、統合プログラムGen5バージョン2.00.18を備えたELX808マルチウェルプレート分光光度計(BIOTEK、米国)において、630nmの参照フィルターを用いて540nmで読み取った。ペプチドの各濃度に関連する細胞生存率を以下のように計算した。
【数2】

AbsCT:ペプチドで処理した細胞培養物の平均吸光度値。AbsCC:100%細胞生存率とみなされる細胞対照の平均吸光度値。各ペプチド濃度について二重反復でアッセイを実施した。図は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3によって表されるペプチドのインビトロ細胞傷害性アッセイの2つの変異体を示す。
【0031】
例4.
時間死滅の評価。
この方法は、初期細菌濃度CFUの少なくとも3log(1000倍)の減少を達成するために、配列番号1、配列番号2及び配列番号3によって表されるペプチド、並びに抗生物質メロペネム及びシプロフロキサシンによって必要とされる時間の決定に基づく。時間依存性死を、文献[12]に記載されているように、わずかな修正を加えて、緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCC9027)及びクレブシエラニューモニエ(K.pneumoniae)(ATCC1003)菌株に対して評価した。細菌のワーキング培養物(working culture)(1×10CFU/mL)を、最終容量1ml(v/v)で、試験する株について示されるMICの2倍の濃度の全ての抗菌剤に曝露した。抗菌剤を含まないPBS(pH7.4)中の接種材料を対照とみなした。接種後、全ての懸濁液を37℃でインキュベートした。培養物の100μlアリコートを異なる所定時間(5、10、15、20、30、60、90、及び120分)で取り出し、これを滅菌PBSで100倍希釈し、ミューラー・ヒントン寒天プレート上に広げた。プレートを37℃で24時間インキュベートし、総コロニー数を数えることによって細胞生存を決定した。CFU対時間曲線を各ペプチド化合物について構築し、参照抗生物質と比較した。細菌死時間は、グラム陰性株の感受性対照として使用される既存の抗生物質よりも設計された配列では短い。
【0032】
例5.
単球活性化試験(MAT)によるLPSの中和活性の評価。
この方法は、炎症促進性応答を生じる剤によって誘導された全血培養物中に放出された炎症促進性サイトカインの決定に基づく。LPSを炎症促進性応答の主な誘導物質として使用した。配列番号1、配列番号2及び配列番号3によって表されるペプチドの影響を決定するために、LPSの存在下及び/又は非存在下でのエクスビボシステムにおいて、IL-6サイトカインの放出をELISAによって決定した。このために、全血培養物を、0.25EU./mLの固定濃度のLPS(スパイク)の存在下及び非存在下で、0.05~50nMをカバーするペプチドの一連の希釈物と共にRPMI-1640培地(Sigma、米国)中でインキュベートした。培養物をUltimaIIインキュベータ(Revco Products、米国)中、37℃、5%COで20時間インキュベートした。続いて、50μLのサンプルを抽出し、サイトカイン濃度を、各サイトカインについての標準及び各サイトカインに対する捕捉抗体及びビオチン化モノクローナル抗体を使用して決定した。0.05EU/mL~2000EU/mLの範囲の国際LPS標準の曲線とRPMI中の全血との共インキュベーションを同じプレートで行った。試験を三重反復で行い、得られた値の平均値及び標準偏差を、GraphPad Prism vプログラム.5.0(GraphPad Software,Inc.、米国)を用いて計算した。各試験条件(配列番号1~3に対応するペプチドを含む及び含まないLPS)で得られたサイトカイン放出値を比較するために、多重スチューデント検定を使用した。LPSと共インキュベートした異なる濃度のペプチドとLPS対照との間の効果を比較するために、単純分類ANOVAを使用し、続いてダネットの多重比較検定を使用した。
【0033】
設計された配列は、全血培養物中のLPSによって媒介される炎症促進性サイトカイン(IL-6)の発現の阻害活性を示す。
【0034】
例6.
LAL PYROCHROME発色アッセイによるLPSの中和活性の評価。
ペプチドの中和活性は、LAL速度論的発色アッセイ(PYROCHROME(登録商標)、ACC、米国)を使用して、細菌エンドトキシン(LPS)に対する配列番号1、配列番号2及び配列番号3によって表される。ACC、米国から供給された全てのパイロジェンフリー材料を使用して試験を実施した。試験条件は、製造業者の指示に従った。評価すべきペプチドを、0.5EU/mlの一定のエンドトキシンチャレンジ(LPS)を用いて、20μMの初期濃度から一連の1:10希釈(v/v)で試験した。異なるペプチド濃度及びLPSチャレンジを、非発熱性マイクロプレート(ACC、米国)中、37℃で5分間インキュベートした。続いて、LAL試薬を添加し、反応速度を、マイクロプレート分光光度計において37℃で15秒間隔で1時間、450nmで測定した。黄色の発色の出現は、LALに含まれる発色基質からのp-ニトロアニリンの放出によるものであり、これはサンプル中の遊離LPSの存在によってのみ加水分解され、基質の加水分解をもたらす酵素カスケードを活性化する。KC4ソフトウェアを使用して、評価したペプチドによって中和又は隔離されていない遊離又は活性LPSの量に変換されるLPS回収率を得た。
【0035】
例7.
細菌生存に対する配列番号1、配列番号2及び配列番号3によって表される異なるペプチド変異体間の組合せから得られる抗菌効果の評価。
抗生物質に多剤耐性であるグラム陰性菌クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)及びグラム陽性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の臨床分離株由来の株のみを選択して、ペプチド間の組合せ試験を行った。実験は、「チェッカーボード」として記載された試験又はチェッカーボードの方法に従って実施された[Huang,R.-y.,et al.,Isobologram Analysis:A Comprehensive Review of Methodology and Current Research.Frontiers in Pharmacology,2019.10:p.1222]この試験は、相乗作用(FICI≦0.5)、相加作用(0.5<FICI≦1)、不関作用(1<FICI≦2)及び拮抗作用(FICI>2)のように得られる効果の分類を確立する式3に従った分画阻害濃度指数(FICI)の決定を可能にする。
【数3】

式中、MIC:化合物Aの最小発育阻止濃度;MIC:化合物Bの最小発育阻止濃度;MICAB:Bと組み合わさって増殖を阻害するAの最小濃度;MICBA:Aと組み合わさって増殖を阻害するBの最小濃度。チェッカーボード実験は、滅菌96ウェルポリプロピレンプレート(Eppendorf、ドイツ)で行った。各細菌の単離コロニーを使用して、PBS中で1×105CFU細菌培養物を作成し、これをワーキング培養物(working culture)と呼んだ。さらに、ペプチドの64μMストック溶液をPBS中で調製した。各ペプチドのPBSでの2倍希釈を50μLの最終容量で行った。ペプチドAを列(2~11)に配置し、ペプチドBをプレートの行(B~F)に配置した。このようにして、ペプチドA(0.25~16μM)とペプチドB(0.075~16μM)との間のペプチド濃度の組合せのために、プレートの60個の内部ウェルを使用した。最初の列及び最後の行は、それぞれ組み合わされていないAペプチド及びBペプチドの濃度に対応していた。細菌増殖の対照として、50μLのPBSをプレートの列及び外側の行の全てのウェルに添加した。その後、50μLのワーキング細菌培養物(working bacterial culture)を全てのウェルに添加し、プレートを37℃で2時間インキュベートした。最後に、100μLの二重濃縮MHブロス(MHB)を全てのウェルに分注し、プレート分光光度計(BioTek Instruments、米国)で、37℃で15時間、650nmでODを測定し、5分間隔でOD値を記録することによって、微生物増殖を速度論的に追跡した。細菌増殖阻害(MIC)値は、プレートの最も外側のウェルでインキュベートしたMHB培地のブランク(対照)と同様の値とした。以下の表は、3つの独立した実験で得られた結果の平均を示す。
表2.配列番号1、配列番号2及び配列番号3に含まれるペプチド配列間の組合せで証明される相乗作用をチェックするチェッカーボード試験。
【表2】
【0036】
例8
分画阻害濃度指数(FICI)を表すことによる、配列番号1、配列番号2及び配列番号3によって表されるペプチドと抗生物質メロペネムとの組合せにおける相乗作用の評価。
チェッカーボード法を使用して、臨床分離株由来の多剤耐性細菌クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoneae)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対するメロペネムと配列番号1、配列番号2及び配列番号3によって表されるペプチドとの間の相乗作用を評価した。使用したチェッカーボード法の手順は、例7に記載したものと同様である。この場合、メロペネムを化合物Aとして、ペプチドを化合物Bとして試験した。表3に示す結果は、特定された分画阻害濃度指数(FICI)(fractional inhibitory concentration index)に基づき、以下の分類に従っている:相乗作用(FICI≦0.5)、相加作用(0.5<FICI≦1)、不関作用(1<FICI≦2)及び拮抗作用(FICI>2)。全てのハイブリッド変異体は、抗生物質に対するグラム陰性菌クレブシエラニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)及びグラム陽性多剤耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の臨床分離株に対してメロペネムと組み合わせた場合に相乗的抗菌効果を生じる(表3)。
表3.配列番号1、配列番号2及び配列番号3とメロペネム(カルバペネム)との組合せで証明される相乗作用を検証するチェッカーボード試験。
【表3】
【配列表フリーテキスト】
【0037】
配列表1 <223>合成構築物
<223>Xaa=少なくとも4つのArg残基を有する、L又はDコンフォメーションにおけるArg又はLys
<223>アミド化
配列表2 <223>合成構築物
<223>Xaa=少なくとも4つのArg残基を有する、L又はDコンフォメーションにおけるArg又はLys
<223>アミド化
配列表3 <223>ハイブリッドペプチドに対する合成変異体
<223>Xaa=少なくとも4つのArg残基を有する、L又はDコンフォメーションにおけるArg又はLys
<223>アミド化
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2024508205000001.app
【国際調査報告】