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特表2024-508207がんに対する組み合わせ治療におけるLTBRアゴニスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】がんに対する組み合わせ治療におけるLTBRアゴニスト
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240216BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240216BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61K45/06
C07K16/28
C07K16/46
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533647
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2021083595
(87)【国際公開番号】W WO2022117572
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】20211335.3
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21166846.2
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514185600
【氏名又は名称】ブイアイビー ブイゼットダブリュ
【氏名又は名称原語表記】VIB VZW
【住所又は居所原語表記】Suzanne Tassierstraat 1,9052 Gent,Belgium
(71)【出願人】
【識別番号】512320560
【氏名又は名称】カトリック ユニヴェルシテット ルーヴェン
(71)【出願人】
【識別番号】596099561
【氏名又は名称】ブレイエ・ユニバージテイト・ブリュッセル
【氏名又は名称原語表記】VRIJE UNIVERSITEIT BRUSSEL
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルガース,ガブリエレ
(72)【発明者】
【氏名】アレン,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ドムブレヒト,ブルノ
(72)【発明者】
【氏名】メールシース,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ギンデラーヒター,ジョー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE03
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、Treg枯渇剤およびLTBRアゴニストを含む組み合わせに関する。かかる組み合わせは、がんの処置における使用のために特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
- リンフォトキシンベータ受容体(LTBR)アゴニスト;および
- 調節性T細胞(Treg)枯渇剤
を含む、組み合わせ。
【請求項2】
Treg枯渇剤が、Tregの細胞表面マーカーに結合し、細胞傷害活性を有する、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
Tregの細胞表面マーカーが、CCR8、CCR4、CTLA4、CD25、TIGIT、OX40、ICOS、CD38、GITR、4-1BB、NRP1、およびLAG-3からなる群より選択される、請求項2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
Tregの細胞表面マーカーが、CCR8またはCTLA4である、請求項2または3に記載の組み合わせ。
【請求項5】
Treg枯渇剤の細胞傷害活性が、
- 抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導するか、
- 補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導するか、
- 抗体依存性細胞貪食(ADCP)を誘導するか、
- 細胞傷害性T細胞またはTヘルパー細胞に結合してこれを活性化するか、または
- 細胞傷害性ペイロードを含む、
細胞傷害性部分の存在により引き起こされる、請求項2~4のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項6】
細胞傷害性部分が、例えば、脱フコシル化を通して、またはADCC、CDCおよび/もしくはADCPを増大させる変異を含むことにより、ADCC、CDC、および/またはADCP活性を増大させるように操作されている、フラグメント結晶化可能(Fc)領域部分、特にFc領域部分を含む、請求項5に記載の組み合わせ。
【請求項7】
Treg枯渇剤が、ADCC、CDCまたはADCP活性を有するCCR8に結合する抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組み合わせを含む、組成物。
【請求項9】
LTBRアゴニスト性部分およびTregを枯渇させる部分を含む、二重特異性分子であって、細胞傷害活性を有する、前記二重特異性分子。
【請求項10】
医薬としての使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組み合わせ、請求項8に記載の組成物、または請求項9に記載の二重特異性分子。
【請求項11】
がんの処置における使用のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組み合わせ、請求項8に記載の組成物、または請求項9に記載の二重特異性分子。
【請求項12】
がんが、乳癌、子宮体癌、肺癌、胃癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、結腸直腸癌、および腎臓癌からなる群より選択される、請求項11に記載の使用のための組み合わせ、組成物、または二重特異性分子。
【請求項13】
がんの処置における使用のためのLTBRアゴニストであって、処置が、Treg枯渇治療をさらに含む、前記LTBRアゴニスト。
【請求項14】
請求項13に記載の使用のためのLTBRアゴニストであって、
ここで、LTBRアゴニストが、LTBRアゴニスト性抗体であり;かつ
ここで、Treg枯渇治療が、ADCC、CDCおよび/またはADCP活性を有するCCR8に結合する抗体の投与を含む、
前記LTBRアゴニスト。
【請求項15】
がんの処置における使用のためのTreg枯渇剤であって、処置が、LTBRアゴニストの投与をさらに含む、前記Treg枯渇剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、リンフォトキシンベータ受容体(LTBR)アゴニストおよび調節性T細胞(Treg)枯渇剤を含む組み合わせ、ならびにかかる組み合わせを含む組成物に関する。本発明は、がんの処置における組み合わせ治療において、特に有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
Treg細胞は、適応免疫系の不可欠な構成成分の1つであり、それにより、それらは、自己抗原に対する寛容性を維持すること、および自己免疫疾患を予防することに寄与する。しかし、Treg細胞はまた、多くの異なるがんの腫瘍微小環境において高度に濃縮されていることが見出される。腫瘍微小環境において、Treg細胞は、主要関連抗原(TAA)特異的T細胞免疫を低下させ、それにより効果的な抗腫瘍活性を妨げることにより、免疫回避に寄与する。Treg細胞による高い腫瘍浸潤は、したがって、しばしば、がん患者における浸潤性の表現型および予後不良と関連する。
【0003】
腫瘍浸潤性Treg細胞の重要性、および抗腫瘍免疫を阻害することにおけるそれらの潜在的な役割を認めることにより、腫瘍微小環境においてTreg細胞を調節するための複数の戦略が提案されてきた。いくつかの研究は、Tregを枯渇させることは、腫瘍免疫を増強し、重要な治療上の利益を提供することを示してきた(例えば、Tanaka and Sakaguchi 2019, Eur J Immuno 49:1140-1146を参照)。
【0004】
抗体により媒介される腫瘍Treg細胞の殺傷のために、腫瘍浸潤性Treg細胞上で発現される表面分子は、それらが他のT細胞と比較して、腫瘍浸潤性Treg細胞上で特異的に、またははるかに高いレベルで発現される場合は特に、良好な標的である。例えば、CCケモカイン受容体4(CCR4)は、抑制性Treg細胞上で高度に発現される。モガムリズマブ(KW-0761)は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を増大させるために脱フコシル化されたFc領域を有する、抗CCR4抗体である。Treg上のCCR4への結合およびそのADCC活性を通して、モガムリズマブは、FoxP3CD4 Tregを枯渇させることができる(Kurose et al. 2015, J Thorac Oncol 10:74-83およびSugiyama et al. 2013, PNAS 110:17945-17650)。モガムリズマブは、日本および米国において承認されており、単剤治療において、または抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体との組み合わせにおいて、モガムリズマブによるいくつかの臨床治験が進行中である。
【0005】
CD25は、Treg細胞機能の重要な表面の特徴であり、その発現は、Foxp3により制御される。マウスおよびヒトにおける腫瘍浸潤性Treg細胞は、CD25を高度に発現する。ADCC活性が増強された抗CD25抗体は、腫瘍内Treg細胞を効果的に枯渇させ、Treg細胞の割当に対するエフェクターを増加させ、確立した腫瘍に対する制御を改善することが示されている(Vargas et al. 2017, Immunity 46:577-586)。同じ著者はまた、抗CD25抗体によるTreg枯渇が、PD-1の遮断と相乗効果を生じることを観察した。
【0006】
別の例として、Gタンパク質共役型CCケモカイン受容体タンパク質CCR8(CKRL1/CMKBR8/CMKBRL2)およびその天然のリガンドであるCCL1は、がんと、特に腫瘍環境におけるT細胞の調節と関連づけられることが知られている。Eruslanovら(Clin Cancer Res 2013, 17:1670-80)は、ヒトがん組織におけるCCR8発現の上方調節を示し、原発性のヒト腫瘍が相当な量の天然のCCR8リガンドであるCCL1を産生することを示した。このことは、CCL1/CCR8系が免疫回避に寄与することを示し、CCR8シグナルの遮断ががんの処置のための魅力的な戦略であることを示唆する。Hoelzingerら(J Immunol 2010, 184:8633-42)は、同様に、CCL1の遮断がTregの抑制性機能を阻害し、Tregの応答に影響を及ぼすことなく腫瘍免疫を増強することを示す。Wangら(PloSONE 2012, e30793)は、腫瘍浸潤性FoxP3+T細胞上でのCCR8の発現の増大を報告し、CCR8を遮断することは、Tregの腫瘍中への遊走の阻害をもたらし得ることを示唆する。腫瘍浸潤性Treg上でのCCR8の高い、かつ比較的特異的な発現に起因して、がんの処置におけるこのTreg集団の調節および枯渇のために、CCR8に対するモノクローナル抗体が用いられてきた(例えば、WO2018112032 A1およびWO2019/157098 A1)。WO2018/181425 A1は、抗CCR8mAbによるTregの枯渇は、腫瘍免疫を増強することができることを示した。この効果は、抗CCR8抗体によるTreg枯渇を抗PD-1抗体治療と組み合わせることにより増大し、これはさらに、同じ腫瘍型による再負荷からもマウスを保護したWO2018/181425 A1)。それらの中和活性を通して、これらの抗体は、腫瘍中へのTregの遊走を阻害し、Tregの抑制性機能を逆転させ、および腫瘍内Tregを枯渇させる(WO2019/157098 A1)。最近、Wangら(Cancer Immunol Immonother 2020、https://doi.org/10.1007/s00262-020-02583-y)は、CCR8の遮断は、腫瘍内Tregを脆弱な表現型へと不安定化させ、同時に抗腫瘍免疫を再活性化し、抗PD-1の治療上の利益を増大させることができることを示した。
【0007】
CTLA-4は、免疫チェックポイントとして機能するタンパク質受容体である。CTLA-4の重要な機能は、抗原提示細胞におけるCD80/86発現の下方調節により、通常型のT細胞の活性化を阻害することである。CTLA-4は、ナイーブなTreg上で構成的に発現されるが、一方で、その発現は、腫瘍浸潤性Treg細胞において上方調節される。エフェクターおよびTreg細胞の両方の上でのCTLA-4の阻害性活性の遮断は、腫瘍退縮を誘導することができる抗腫瘍エフェクターT細胞活性の増強をもたらす。Treg細胞コンパートメント上での抗CLTA-4抗体の活性は、腫瘍浸潤性Treg細胞の選択的な枯渇を介して媒介され、これは、Fcガンマ受容体を発現するマクロファージを必要とし(Simpson et al. 2013, J Exp Med 210:1695-1710)、増強されたADCC活性は、抗腫瘍応答を増強する(Selby et al. 2013, Cancer Immunol Res 1:32-42)ことが示唆されている。
【0008】
CD38は、CD38陰性のTregよりも免疫抑制性が高いTregの集団により発現される。ADCC、CDCおよびADCP活性を有する抗CD38抗体による患者の処置は、CD38陽性の免疫抑制性Treg細胞を枯渇させた(Krejcik et al. 2016, Bood 128:384-394)。
【0009】
TIGITは、Tregのサプレッサー機能を促進するTreg上の共阻害性受容体(coinhibitory receptor)である。ADCC活性を有する抗TIGIT抗体は、単剤治療において、および抗PD-1との組み合わせにおいて、Tregを優先的に枯渇させ、抗腫瘍効力を誘導することが示されている(Leroy et al. 2018, Cancer Res 78(13 Suppl) Abstract LB-114)。
【0010】
Treg上のICOS発現は、血液または脾臓におけるものよりも腫瘍微小環境において高く、このことは、優先的な腫瘍内Tregの枯渇のためのその有用性を示し、これは、マウス腫瘍において確認された(Sainson et al. 2019, https://doi.org/10.1101/771493)。MEDI-570およびKY1044などのADCC活性を有する抗ICOS抗体は、現在、臨床治験において、単剤治療または抗PD-L1抗体との組み合わせ治療において試験されている。
【0011】
OX-40、4-1BBおよびGITRは、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーであり、Treg細胞構成的に発現され、T細胞受容体刺激により上方調節されるが、一方、それらは、通常型T細胞においては、T細胞受容体刺激の後でのみ、誘導される。抗OX-40抗体によるFcガンマ受容体を活性化することを介するTreg枯渇は、例えば、Bulliardら(2014, Immunol Cell Biol 92:475-80)により示されている。
【0012】
がん治療における腫瘍浸潤性Treg細胞の枯渇は、前臨床および臨床研究において抗腫瘍効力を示したが、一方、治療の効力および期間に関して、さらなる改善がなお必要とされる。
【発明の概要】
【0013】
発明の要旨
本発明者らは、今や、驚くべきことに、請求の範囲において詳述されるとおりのTreg枯渇剤およびLTBRアゴニストを含む組み合わせが、上述の必要性を満たすことを見出した。特に、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の組み合わせにおいて定義されるとおりのTreg枯渇剤およびLTBRアゴニストが用いられる場合に、相乗効果が観察されることを見出した。本発明の組み合わせは、したがって、改善された腫瘍治療を提供する。
したがって、本発明の目的は、Treg枯渇剤およびLTBRアゴニストを含む組み合わせを提供することである。
【0014】
好ましい態様において、Treg枯渇剤は、Tregの細胞表面マーカーに結合し、細胞傷害活性を有する。
好ましくは、Tregの細胞表面マーカーは、CCR8、CCR4、CTLA4、CD25、TIGIT、OX40、ICOS、CD38、GITR、4-1BB、NRP1およびLAG-3からなる群より選択される。
特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、CCR8、CLTA4、CCR4、CD25、TIGIT、およびICOS;好ましくはCCR8、CLTA4、CD25、およびCCR4;最も好ましくはCCR8またはCTLA4から選択される。別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、CCR8、CCR4、CD25、TIGIT、およびICOS;好ましくはCCR8、CD25、およびCCR4;最も好ましくはCCR8から選択される。
【0015】
別の好ましい態様において、Treg枯渇剤の細胞傷害活性は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導するか、補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導するか、抗体依存性細胞貪食(ADCP)を誘導するか、T細胞に結合してこれを活性化するか、または細胞傷害性ペイロードを含む、細胞傷害性部分の存在により引き起こされる。
本発明の特定の態様において、細胞傷害性部分は、フラグメント結晶化可能(Fc)領域部分を含み、特にFc領域部分は、例えば、脱フコシル化を通して、またはADCC、CDCおよび/もしくはADCPを増大させる変異を含むことにより、ADCC、CDC、および/またはADCP活性を増大させるように操作されている。
【0016】
さらにさらなる態様において、Treg枯渇剤は、Tregの細胞表面マーカーに結合し、ADCC、CDCまたはADCP活性を有する抗体である。さらなる態様において、Treg枯渇剤は、ADCC、CDCまたはADCP活性を有するCCR8に結合する抗体である。
本発明の別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、(a)ADCC、CDCおよび/またはADCP活性を有するFc領域部分、ならびに(b)Tregの細胞表面マーカーに結合する少なくとも1つのシングルドメイン抗体部分を含む。
【0017】
別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、Tregの細胞表面マーカーの非遮断性結合剤である。
本発明の別の目的は、本発明の組み合わせを含む組成物を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、LTBRアゴニスト性部分およびTregを枯渇させる部分を含む二重特異性分子提供することであって、ここで、二重特異性分子は、細胞傷害活性、ならびにこれをコードする核酸を有する。
本発明のさらなる目的は、医薬としての使用のための、Treg枯渇剤およびLTBRアゴニストを含む組み合わせ、かかる組み合わせを含む組成物、ならびにLTBRアゴニスト性部分およびTregを枯渇させる部分を含む二重特異性分子提供することであって、ここで、二重特異性分子は、細胞傷害活性を有する。
【0019】
本発明の別の目的は、がんの処置における使用のための、Treg枯渇剤およびLTBRアゴニストを含む組み合わせ、かかる組み合わせを含む組成物、ならびにTregを枯渇させる部分およびLTBRアゴニスト性部分を含む二重特異性分子を提供することであって、ここで、二重特異性分子は、細胞傷害活性を有する。好ましくは、がんは、乳癌、子宮体癌(uterine corpus cancer)、肺癌、胃癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、結腸直腸癌、および腎臓癌からなる群より選択される。
本発明のさらに別の目的は、がんの処置における使用のためのLTBRアゴニスト提供することであって、ここで、処置は、Treg細胞枯渇治療をさらに含む。
【0020】
特定の態様において、LTBRアゴニストは、LTBRアゴニスト性抗体であり;かつ、Treg細胞枯渇治療は、ADCC、CDCおよび/またはADCP活性を有するCCR8に結合する抗体の投与を含む。
本発明のさらなる目的は、がんの処置における使用のためのTreg枯渇剤であって、ここで、処置は、LTBRアゴニストの投与をさらに含む。
【0021】
Treg枯渇剤およびLTBRアゴニストに加えて、治療は、さらなる活性成分を含んでもよい。さらなる態様において、さらなる活性成分は、チェックポイント阻害剤である。チェックポイント阻害剤は、チェックポイントタンパク質がそれらのパートナータンパク質に結合して、それにより免疫系の機能を活性化することを遮断する化合物である。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、B7-1およびB7-2からなる群より選択されるタンパク質を遮断する。より好ましくは、チェックポイント阻害剤は、PD-1またはPD-L1を遮断する。好ましい例として、抗PD-1および抗PD-L1抗体が挙げられる。本発明における使用のための好ましい免疫チェックポイント阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、JTX-4014、スパルタリズマブ(spartalizumab)、カムレリズマブ(camrelizumab)、シンチリマブ(sintilimab)、チスレリズマブ(tislelizumab)、トリパリマブ(toripalimab)、ドスタルリマブ(dostarlimab)、INCMGA00012、AMP-224、AMP-514、KN035、AUNP12、CK-301、CA-170およびBMS-986189から選択される。
【0022】
好適には、本発明における使用によるTreg枯渇剤とチェックポイント阻害剤とは、Tregの細胞表面マーカーおよび免疫チェックポイントに結合する抗体などの、単一の分子中に含まれていてもよい。したがって、特定の態様において、本明細書において記載されるとおりのTreg枯渇剤は、Tregの細胞表面マーカーならびにPD-1、PD-L1、B7-1およびB7-2からなる群より選択されるタンパク質に結合する二重特異性抗体である。好適には、本明細書において記載されるとおりのTreg枯渇剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、JTX-4014、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタルリマブ、INCMGA00012、AMP-224、AMP-514、KN035、AUNP12、CK-301、CA-170およびBMS-986189の、PD-1またはPD-L1に結合する部分を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、マウスCCR8によるラマの免疫化から誘導された2つのVHH(VHH-01およびVHH-06)の、全長マウスCCR8へのそれらの結合についてのフローサイトメトリーによる評価を、Hek293細胞において過剰発現されたN末端欠失マウスCCR8に対して図示する。
図2図2は、VHH-Fc-14がBW5147細胞におけるデキサメタゾン誘導性アポトーシスに対するリガンドCCL1の保護活性を機能的に阻害する潜在能力についての評価を図示する。
図3図3は、ADCC活性を有するCCR8のFc融合体であるVHH-Fc-43、ならびにアイソタイプ対照による、腫瘍内Treg枯渇の効果を示す。
【0024】
図4図4は、VHH-Fc-43およびアイソタイプ対照による循環中のTregに対する効果を示す。
図5図5は、MC38腫瘍における、腫瘍が播種された第0日から、第25日における治験のエンドポイントまでの、腫瘍増殖に対するVHH-FC-43およびVHH-16の単剤治療のin vivoでの効果を、アイソタイプならびにVHH-Fc-43とVHH-16とによる組み合わせ治療と比較して示す。
図6図6は、アイソタイプ、VHH-FC-43およびVHH-16の単剤治療、ならびにVHH-Fc-43およびVHH-16の組み合わせ治療で処置された腫瘍についての、カプラン・マイヤー生存曲線を示す。動物は、それらの腫瘍が2000mmの倫理的なエンドポイントに達した場合に安楽死させた。
【0025】
図7図7は、アイソタイプ(第21日)、VHH-FC-43およびVHH-16の単剤治療(第25日)、ならびにVHH-Fc-43とVHH-16との組み合わせ治療(第25日)により処置された腫瘍において見出された、HEVの数の定量を、腫瘍領域ごとに表す。各々の状態について、3個体の処置マウスからの各々1つの腫瘍からの切片を分析し、Zen Blueソフトウェアプログラムを用いてDAPI陽性の核の輪郭を描くことにより、合計の腫瘍領域を計算した。
図8図8は、VHH-Fc-43およびVHH-16組み合わせ治療により処置された腫瘍において同定された、「成熟した」外見を有する三次リンパ組織様構造(TLS)を示す。矢印は、大量のB220陽性B細胞からなる組織化された構造を取り囲むMECA-79陽性HEVを示す。
【0026】
図9図9は、MC38腫瘍における、腫瘍が播種された第0日から、第25日における臨床エンドポイントまでの、腫瘍増殖に対する抗CTLA-4およびVHH-16の単剤治療のin vivoでの効果を、アイソタイプ、ならびに抗CTLA-4およびVHH-16による組み合わせ治療と比較して示す。これらの実験において用いられた抗CTLA-4は、マウスIgG2aを含むmAbであり、それにより、抗CTLA-4 IgGがTreg細胞を枯渇させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明は、以下において、特定の態様に関して、および特定の図面を参照して記載されるであろうが、本発明は、それに限定されない。
本明細書において別段に定義されない限り、本発明に関連付けられて用いられる科学的および技術的用語は、当業者により一般的に理解される意味を有するべきである。さらに、文脈により別段に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含むべきであり、複数形の用語は、単数形を含むべきである。一般に、本明細書において記載される分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸の化学に関連付けられて用いられる命名法、およびこれらの技術は、当該分野において周知であり、一般的に用いられるものである。
【0028】
本明細書において前に記載されるとおり、本発明は、Treg枯渇剤およびLTBRアゴニストを含む組み合わせを提供する。かかる組み合わせは、本発明の組み合わせにおいて定義されるとおりのTreg枯渇剤およびLTBRアゴニストが組み合わせたがん治療として投与される場合に観察される相乗効果に起因して、特に有用である。
【0029】
Treg枯渇剤
本明細書において用いられる場合、用語「Treg枯渇剤」とは、対象のTregの著しい部分を枯渇させる(deplete)(除去する(ablate))ことができる分子を表す。いくつかの態様において、対象において、Treg細胞の大部分が除去される。いくつかの態様において、対象において、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%より多くのTregが除去される。特定の態様において、Treg枯渇剤は、Treg細胞に結合し、これを枯渇させる。さらなる特定の態様において、Treg枯渇剤は、Treg細胞の細胞表面の表面マーカーに結合して、その細胞傷害活性を通してその枯渇を誘導することができる分子である。さらなる特定の態様において、Treg枯渇剤は、組織浸潤性Tregおよび循環血Tregなどの他のTregよりも高い程度まで、腫瘍内Tregを枯渇させる。別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、他のT細胞より高い程度まで、腫瘍内Tregを枯渇させる。さらに別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、腫瘍内Tregを枯渇させ、腫瘍微小環境における、好ましくは腫瘍における、Tregに対するエフェクターT細胞の比を増大させる。特定の態様において、Treg枯渇は、単離されたヒトTregまたは腫瘍浸潤性リンパ球を、化合物により、および必要とされる場合にはNK細胞またはPBMCなどのエフェクター細胞の存在下において、処置すること、ならびに、処置後に生存するTreg細胞の数を分析することにより測定され、これは、本質的には、Pablosら(BMC Immunology 2005, 6:6 doi:10.1186/1471-2172-6-6)により記載されるとおりである。あるいは、および一態様においては補足的に、Treg枯渇は、PBMCに化合物を添加し、4時間後に生存するTregのレベルを測定することにより、検証してもよい。あるいは、Treg枯渇は、PBMCを化合物と共にインキュベートし、磁気ビーズを用いて化合物に結合した細胞をキャプチャーし、その後、キャプチャーされない細胞をFACS分析することを通して、検証され、これは、本質的には、Sugiyamaら(Proc Natl Acad Sci U S A 2013 Oct 29;110(44):17945-50. doi: 10.1073/pnas.1316796110)において記載されるとおりとおりである。Treg枯渇を決定するための好適なin vivoアッセイは、Tregを枯渇させる化合物のマウスへの投与の後での、腫瘍浸潤性の免疫細胞の腫瘍FACS分析を含む。
【0030】
さらに別の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、Tregの細胞表面において、別のT細胞の細胞表面上のマーカーの発現と比較して、過剰発現されるマーカーである。より特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、腫瘍浸潤性Tregの細胞表面上で、末梢Treg細胞上でのその発現と比較して、過剰発現されるマーカーである。
【0031】
好ましくは、Tregの細胞表面マーカーは、CCR8、CCR4、CTLA4、CD25、TIGIT、OX40、ICOS、CD38、GITR、4-1BB、NRP1、およびLAG-3からなる群より選択される。特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、CCR8、CCR4、CD25、TIGIT、およびICOS;好ましくはCCR8、CD25、およびCCR4から選択される。
【0032】
したがって、特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、CCケモカイン受容体4(CCR4)である。CCR4に結合する抗体であって細胞傷害活性を有するものは、例えば、WO2013166500 A1、WO2016057488 A1およびWO2016178779 A1において開示されている。特定の態様において、本発明における使用のためのTreg枯渇剤は、モガムリズマブである。
【0033】
別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、CTLA4、別名、CTLA-4または細胞傷害性T-リンパ球関連タンパク質4である。CTLA4に結合する抗体は、例えば、WO2013003761 A1およびWO2017106372 A1において開示されている。特定の態様において、本発明における使用のためのTreg枯渇剤(depletory)は、イピリムマブまたはトレメリムマブである。
【0034】
別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、CD25である。インターロイキン-2受容体アルファ鎖(別名、CD25)は、ヒトにおいてIL2RA遺伝子によりコードされるタンパク質である。インターロイキン2(IL2)受容体アルファ(IL2RA)およびベータ(IL2RB)鎖は、共通のガンマ鎖(IL2RG)と一緒に、高アフィニティーIL2受容体を構成する。好適なCD25結合抗体は、例えば、WO2017174331 A1、WO2018167104 A1およびWO2019175220 A1において開示され、これらの全ては、本明細書において参考として援用される。特定の態様において、本発明における使用のためのCD25に結合する抗体は、RG6292、別名、RO7296682である。
【0035】
別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、TIGITである。TIGIT(別名、IgとITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains))は、一部のT細胞およびナチュラルキラー細胞(NK)上に存在する免疫受容体である。それはまた、WUCAMおよびVstm3としても同定される。本発明における使用のための好適なTIGIT結合抗体は、例えば、WO2015009856 A2、WO2016028656 A1、WO2016106302 A1、WO2017053748 A2、WO2017152088 A1、およびWO2019023504 A1において開示されている。さらなる態様において、Treg枯渇剤は、チラゴルマブ(tiragolumab);WO2019023504 A1の配列番号221のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号222のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、抗体;またはWO2019023504 A1の配列番号219のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号220のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、抗体である。
【0036】
別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、OX40である。OX40(別名、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー4(TNFRSF4)またはCD134)は、二次的な共刺激性分子である。本発明における使用のための好適なOX40結合抗体は、例えば、WO2018031400 A1、WO2007062245 A2、WO2018202649 A1、WO2016179517 A1、およびWO2018112346 A1において開示されている。特定の態様において、Treg枯渇剤は、KHK4083、ATOR-1015、INCAGN01949、およびABBV-368から選択される。別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、以下から選択される抗体である:
・WO2007062245 A2の配列番号9の位置20~141におけるアミノ酸からのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびWO2007062245 A2の配列番号10の位置21~129におけるアミノ酸からのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体;
・WO2018202649 A1の配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびWO2018202649 A1の配列番号89のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体;
・WO2016179517 A1の配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびWO2016179517 A1の配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体;ならびに
・WO2018112346 A1の抗体Hu3738。
【0037】
別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、ICOSである。ICOS(別名、誘導性T細胞共刺激分子(Inducible T-cell COStimulator)またはCD278)は、ICOS遺伝子によりコードされる免疫チェックポイントタンパク質である。それは、活性化T細胞上で発現されるCD28スーパーファミリー共刺激性分子である。本発明における使用のための好適なICOS結合抗体は、例えば、WO2008137915 A2、WO2016154177 A2、WO2012131004 A2、WO2018029474 A2、およびWO2018187613 A2において開示されている。特定の態様において、Treg枯渇剤は、KY-11044、KY-1055、XmAb23104、ボプラテリマブ(vopratelimab)、およびMEDI-570から選択される。別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、以下から選択される抗体である:
・ボプラテリマブ;
・WO2018029474 A2の配列番号408のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびWO2018029474 A2の配列番号415のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体;ならびに
・WO2008137915A2の配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびWO2008137915A2の配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体。
【0038】
さらに別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、CD38である。CD38(表面抗原分類38、別名、サイクリックADPリボースヒドロラーゼ)は、CD4+、CD8+、Bリンパ球およびナチュラルキラー細胞を含む多くの免疫細胞の表面上で見出される糖タンパク質である。CD38はまた、鎖相棒接着、シグナル伝達およびカルシウムシグナル伝達においても機能する。本発明における使用のための好適なCD38結合抗体は、例えば、WO2016210223 A1、WO2012092616 A1、WO2008047242 A2、およびWO2015066450 A1において開示されている。別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、以下から選択される抗体である:
・ダラツムマブ;
・イサツキシマブ;ならびに
・WO2012092616 A1の配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびWO2012092616 A1の配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体。
【0039】
別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、GITRである。GITR(グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質、別名、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18(TNFRSF18)または活性化誘導性(activation-inducible)TNFRファミリー受容体(AITR))もまた、共刺激性免疫チェックポイント分子であって、CD25+/CD4+調節性T細胞により維持される優性な免疫学的自己寛容において、重要な役割を果たすものである。本発明における使用のための好適なGITR結合抗体は、例えば、WO2015187835 A2、WO2016054638 A1、WO2016081746 A2、WO2015184099 A1、およびWO2016057846 A1において開示されている。別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、以下から選択される抗体である:
・WO2015187835 A2の抗体28F3.IgG1の重鎖および軽鎖可変領域を有する、抗体;
・WO2015184099 A1の配列番号206のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびWO2015184099 A1の配列番号208のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体;
・WO2016057846 A1の配列番号99のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびWO2016057846 99 A1の配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体。
【0040】
別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、4-1BBである。4-1BB(別名、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9)、CD137、およびリンパ球活性化誘導型(induced by lymphocyte activation:ILA))もまた、共刺激性免疫チェックポイント分子である。好適な分子として、ウレルマブおよびウトミルマブ(utomilumab)、ならびに細胞傷害活性、特にADCC活性が増大したこれらの誘導体が挙げられる。
【0041】
別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、NRP1である。NRP1(別名、ニューロピリン-1)は、VEGFおよびセマフォリンファミリーメンバーの両方についての、チロシンキナーゼ受容体に対する膜結合型共受容体である。NRP1は、血管新生、軸索ガイダンス、細胞の生存、遊走および浸潤において多目的な役割を果たし、Treg上で高度に発現される。本発明における使用のための好適な分子として、WO2007056470、WO2012006503 A1、WO2014058915 A2、およびWO2018119171 A1において開示される抗体、ならびに細胞傷害活性、特にADCC活性が増大したそれらの誘導体が挙げられる。特定の態様において、Treg枯渇剤は、ベセンクマブ(vesencumab)である。別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、WO2018119171 A1のMAB12の重鎖および軽鎖可変領域を含む。
【0042】
さらに別の特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、LAG3である。LAG3(リンパ球活性化遺伝子3、別名、CD223)は、免疫チェックポイント受容体である。本発明における使用のための好適なLAG3結合抗体は、例えば、WO2014140180 A1;WO2014008218 A1; US20160176965 A1;WO2016028672 A1;およびWO2010019570 A2において開示されている。別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、WO2014140180 A1の配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびWO2014140180 A1の配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体である。
【0043】
より好ましくは、Tregの細胞表面マーカーは、CCR8である。CCR8は、ベータ-ケモカイン受容体ファミリーのメンバーであって、これは、G共役型受容体に類似する7回膜貫通型タンパク質であると予測される。同定されたCCR8のリガンドとして、その天然のコグネートなリガンドであるCCL1(I-309が挙げられる。本発明者らは、CCR8を標的とすることを通したTregの修飾により、腫瘍反応性のエフェクターT細胞および末梢Treg細胞(例えば、循環血Treg細胞)を保存しつつ、腫瘍浸潤性Treg細胞を特異的に枯渇させることが可能となることを見出した。
【0044】
「特異的結合」、「特異的に結合する(bind specifically)」、および「特異的に結合する(specifically bind)」とは、特に、Treg枯渇剤が、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12Mまたは10-13M未満の目的のマーカー/抗原について、解離定数(K)を有することを意味するものと理解される。好ましい態様において、解離定数は、10-8M未満、例えば、10-9M、10-10M、10-11M、10-12Mまたは10-13Mの範囲である。Treg枯渇剤の膜標的に対するアフィニティーは、例えば、ウイルス様粒子を用いる表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(PCT出願公開番号WO2005/012359において記載されるとおりのBIAcoreアッセイなど);細胞酵素結合免疫吸着(ELISA);および蛍光励起セルソーティング(FACS)の読み出し値により、決定してもよい。見かけのKdまたはEC50値を決定するための好ましい方法は、21℃において、マーカーを過剰発現する、特にhuCCR8を過剰発現する細胞により、FACSを用いることによるものである
【0045】
当業者により理解されるであろうとおり、原則的に、Tregの細胞表面マーカーに結合するTreg枯渇剤のうちの任意の型を、本発明において用いることができ、Treg枯渇剤の異なる型は、当業者にとって容易に利用可能であるか、または当該分野において典型的な知識を用いて作製することができる。特定の態様において、Treg枯渇剤の結合部分は、タンパク質性であり、ことさらには、Treg枯渇性ポリペプチドである。さらなる態様において、Treg枯渇剤の結合部分は、抗体ベースのもの、または非抗体ベースのものであり、好ましくは抗体ベースのものである。非抗体ベースのTreg枯渇剤として、これらに限定されないが、アフィボディー(affibody)(登録商標)、Kunitzドメインペプチド、モノボディー(アドネクチン(adnectin)、アンティカリン(anticalin)(登録商標)、設計されたアンキリンリピートドメイン(DARPin)、センティリン(centyrin)、フィノマー(fynomer)、アビマー(avimer);アフィリン(affilin);アフィチン(affitin)、ペプチドなどが挙げられる。
【0046】
本明細書において記載される場合、用語「抗体」、「抗体フラグメント」および「活性な抗体フラグメント」とは、抗原、特にCCR8タンパク質に特異的に結合することができる免疫グロブリン(Ig)ドメインまたは抗原結合ドメインを含むタンパク質を指す。「抗体」は、さらに、天然のソースまたは組み換えソースから誘導される完全な免疫グロブリンであってもよく、完全な免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。抗体は、免疫グロブリン分子の多量体、例えば四量体であってもよい。好ましい態様において、Treg枯渇剤は、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分が、抗体または活性な抗体フラグメントであるものを含む。本発明のさらなる側面において、Treg枯渇剤は、抗体である。本発明のさらなる側面において、抗体は、モノクローナルである。抗体は、付加的に、または代替的に、ヒト化されているか、またはヒトのものであってもよい。さらなる側面において、抗体は、ヒトのものであるか、または任意の場合において、ヒト対象におけるその使用および投与を可能にする形式および特徴を有する抗体である。抗体は、これらに限定されないが、マウス、ラット、ニワトリ、ウサギ、ヤギ、ウシ、非ヒト霊長類、ヒト、ヒトコブラクダ(dromedary)、ラクダ(camel)、ラマ、アルパカおよびサメを含む任意の種に由来してよい。
【0047】
用語「抗原決定フラグメント」は、前記の完全なポリクローナルまたはモノクローナル抗体の抗原結合部分であって、標的抗原またはその単一の鎖に特異的に結合する能力を保持するもの、抗体を含む融合タンパク質、または抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された立体構造を指すことを意図される。抗原決定フラグメントは、Fab;Fab’;F(ab’);Fcフラグメント;シングルドメイン抗体(sdAbまたはdAb)フラグメントを含むが、これらに限定されない。これらのフラグメントは、当該分野における通常の方法を用いることにより、例えば、パパイン(Fabフラグメントを生成するため)またはペプシン(F(ab’)フラグメントを生成するため)などの酵素によるタンパク質分解的切断により、完全な抗体から誘導される。本明細書において用いられる場合、抗原決定フラグメントはまた、単鎖可変フラグメント(scFv)などの重鎖および/または軽鎖可変領域を含む融合タンパク質を指す。
【0048】
本明細書において用いられる場合、用語「モノクローナル抗体」とは、均一な抗体集団を有する抗体組成物を指す。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原性部位に対して向けられている。さらに、典型的には様々な決定因子(エピトープ)に対して向けられた様々な抗体を含む、通常の抗体(ポリクローナル)調製物とは対照的に、各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に対して向けられている。本発明のTreg枯渇剤は、好ましくは、Tregの細胞表面マーカーに、特にCCR8またはCTLA4に、ことさらにはCCR8に結合するモノクローナル抗体部分を含む。
【0049】
本明細書において用いられる場合、用語「ヒト化された抗体」とは、ヒトおよび非ヒト(マウスまたはウサギなど)の抗体配列の最適な組み合わせ、すなわち、抗体のヒト内容物は最大化されているが、非ヒト抗体の可変領域に起因し得る結合アフィニティーの喪失をほとんどまたは全く引き起こさない組み合わせを同定するための分子モデリング技術により生成された抗体を指す。例えば、ヒト化された抗体、別名キメラ抗体は、非ヒト抗体からの相補性決定領域(CDR)を「ヒト化する」か、またはこれを非免疫原性にするために、ヒト抗体からの、ヒトフレームワーク領域の、および定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0050】
本明細書において用いられる場合、用語「ヒト抗体」とは、ヒトにより産生され得るか、および/または当業者に公知であるかまたは本明細書において開示されるヒト抗体を作製するための技術のうちのいずれかを用いて作製された抗体のものに対応するアミノ酸配列を有する、抗体を意味する。また、用語「ヒト抗体」は、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を包含することが、理解される。1つのかかる例は、マウス軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。
【0051】
本発明の一側面において、Treg枯渇剤は、活性な抗体フラグメントを含む。用語「活性な抗体フラグメント」とは、任意の抗体または抗体様構造の部分であって、それ自体が抗原決定基またはエピトープに対して高いアフィニティーを有し、かかる特異性の理由となる1つ以上の抗原結合部位、例えば相補性決定領域(CDR)を含むものを指す。非限定的な例として、免疫グロブリンドメイン、Fab、F(ab)’2、scFv、重鎖-軽鎖二量体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、シングルドメイン抗体(sdAbまたはdAb)、ナノボディー(Nanobodies)(登録商標)、および完全軽鎖または完全重鎖などの単鎖構造、ならびに抗原に結合するように操作されている抗体定常ドメインが挙げられる。本発明を鑑みた前記フラグメントの「活性」についてのさらなる要件は、前記フラグメントがTregの細胞表面マーカー、特にCCR8に結合することができることである。用語「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」またはより具体的には「免疫グロブリン可変ドメイン」(「IVD」と略される)は、相補性決定領域により中断されたフレームワーク領域から本質的になる免疫グロブリンドメインを意味する。典型的には、免疫グロブリンドメインは、4つの「フレームワーク領域」から本質的になり、これらは、当該分野において、および下で、それぞれ、「フレームワーク領域1」または「FR1」として;「フレームワーク領域2」または「FR2」として;「フレームワーク領域3」または「FR3」として;および「フレームワーク領域4」または「FR4」として言及される;これらのフレームワーク領域は、3つの「相補性決定領域」または「CDR」で中断され、これらは、当該分野において、および下で、それぞれ、「相補性決定領域1」または「CDR1」として;「相補性決定領域2」または「CDR2」として;および「相補性決定領域3」または「CDR3」として言及される。したがって、免疫グロブリン可変ドメインの一般的な構造または配列は、以下のとおり示すことができる:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。それは、抗原結合部位を担持することにより抗体に抗原に対する特異性を与える、免疫グロブリン可変ドメイン(IVD)である。典型的には、通常の免疫グロブリンにおいて、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)とは相互作用して、抗原結合部位を形成する。この場合、VHおよびVLのいずれの相補性決定領域(CDR)も、抗原結合部位に寄与するであろう。すなわち、6つのCDRの合計が、抗原結合部位形成に関与するであろう。上の定義を考慮すると、従来の4鎖抗体(IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE分子など;当該分野において公知)の、またはかかる通常の4鎖抗体から誘導される、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、例えばジスルフィド連結されたFvおよびscFvフラグメント、またはダイアボディー(全て当該分野において公知)の、抗原結合ドメインは、軽鎖および重鎖可変ドメインなどの(会合した)免疫グロブリンドメインのペアにより、すなわち、それぞれの抗原のエピトープに一緒に結合する免疫グロブリンドメインのVH-VLペアにより、抗原のそれぞれのエピトープに結合する。シングルドメイン抗体(sdAb)とは、本明細書において用いられる場合、形式FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4による、4つのフレームワーク領域(FR)および3つの相補性決定領域(CDR)を含むアミノ酸配列を有するタンパク質を指す。本発明のシングルドメイン抗体は、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(「ISVD」と略される)と等価であり、抗原結合部位が、単一の免疫グロブリンドメイン上に存在し、これにより形成される分子を指す。このことが、シングルドメイン抗体を、2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの可変ドメインが相互作用して抗原結合部位を形成する、「通常の」抗体またはそれらのフラグメントと区別する。シングルドメイン抗体の結合部位は、単一のVH/VHHまたはVLドメインにより形成される。したがって、シングルドメイン抗体の抗原結合部位は、3つ以下のCDRにより形成される。かかるシングルドメインは、それが単一の抗原結合単位(すなわち、単一の抗原結合ドメインが、機能的な抗原結合単位を形成するために、別の可変ドメインと相互作用する必要がないような、単一可変ドメインから本質的になる機能的な抗原結合単位)を形成することができる限りにおいて、軽鎖可変ドメインの配列(例えば、VL配列)もしくはその好適なフラグメント;または重鎖可変ドメインの配列(例えば、VH配列もしくはVHH配列)もしくはその好適なフラグメントであってよい。
【0052】
したがって、一態様において、Tregの細胞表面マーカーに結合し、細胞傷害活性を有するTreg枯渇剤は、上で詳述されるとおり、少なくとも1つのシングルドメイン抗体部分を含む。好ましくは、Tregの細胞表面マーカーに結合し、細胞傷害活性を有するTreg枯渇剤は、少なくとも2つのシングルドメイン抗体部分を含む。
【0053】
本発明のさらなる態様において、Treg枯渇剤は、上で詳述されるとおり、少なくとも1つのFc領域部分、および、Tregの細胞表面マーカーに、特にCCR8に結合する、少なくとも2つのシングルドメイン抗体部分を含む。好ましくは、Treg枯渇剤は、ペプチドリンカーにより一緒に連結された、少なくとも1つのFc領域部分、および、Tregの細胞表面マーカーに、特にCCR8に結合する、少なくとも2つのシングルドメイン抗体部分を含む、遺伝子操作されたポリペプチドである。Fc領域部分および/またはシングルドメイン抗体部分領域のアミノ酸配列は、ヒトについての免疫原性を低下させるためにヒト化されていてもよい。
【0054】
特に、シングルドメイン抗体は、ナノボディー(Nanobody)(登録商標)(本明細書において定義されるとおり)またはその好適なフラグメントであってよい(注意:Nanobody(登録商標)、Nanobodies(登録商標)およびNanoclone(登録商標)は、Sanofiの会社であるAblynx N.V.の登録商標である)。ナノボディー(Nanobodies)(登録商標)の一般的な説明については、以下のさらなる記載への参照が行われ、および例えばWO2008/020079などの先行技術において記載される。「VHHドメイン」、別名VHH、VHH抗体フラグメントおよびVHH抗体は、もともとは、「重鎖抗体」の(すなわち、「軽鎖を除いた抗体」の)抗原結合免疫グロブリン(Ig)(可変)ドメインとして記載されてきた(例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-8 (1993)を参照)。用語「VHHドメイン」は、これらの可変ドメインを、従来の4鎖抗体において存在する重鎖可変ドメイン(これは、本明細書において「VHドメイン」として言及される)と、および従来の4鎖抗体において存在する軽鎖可変ドメイン(これは、本明細書において「VLドメイン」として言及される)と区別するために選択された。VHHおよびナノボディー(Nanobodies)(登録商標)についてのさらなる説明については、一般的な背景技術として言及されるMuyldermansによる総説論文(Reviews in Molecular Biotechnology 74: 277-302, 2001)ならびに以下の特許出願への参照が行われる:Vrije Universiteit BrusselのWO94/04678、WO95/04079およびWO96/34103;UnileverのWO94/25591、WO99/37681、WO00/40968、WO00/43507、WO00/65057、WO01/40310、WO01/44301、EP 1134231およびWO02/48193;Vlaams Instituut voor Biotechnologie(VIB)のWO97/49805、WO01/21817、WO03/035694、WO03/054016およびWO03/055527;Algonomics N.V.およびAblynx N.V.のWO03/050531;National Research Council of CanadaによるWO01/90190;Institute of AntibodiesによるWO03/025020(=EP 1433793);ならびにAblynx N.V.によるWO04/041867、WO04/041862、WO04/041865、WO04/041863、WO04/062551、WO05/044858、WO06/40153、WO06/079372、WO06/122786、WO06/122787およびWO06/122825、およびさらなる公開されたAblynx N.V.による特許出願。これらの参考文献において記載されるとおり、ナノボディー(Nanobody)(登録商標)(特にVHH配列および部分的にヒト化されたナノボディー(Nanobody)(登録商標))は、特に、フレームワーク配列のうちの1つ以上における1つ以上の「ホールマーク(Hallmark)残基」の存在により特徴づけることができる。ナノボディー(Nanobody)(登録商標)のヒト化および/またはラクダ化、ならびに他の修飾、部分またはフラグメント、誘導体または「ナノボディー(Nanobody)(登録商標)融合」、多価または多重特異性コンストラクト(リンカー配列のいくつかの非限定的な例を含む)、ならびにナノボディー(Nanobody)(登録商標)およびそれらの調製物の半減期を延長するための様々な修飾を含む、ナノボディー(Nanobody)(登録商標)のさらなる説明は、例えば、WO08/101985およびWO08/142164において見出すことができる。VHHおよびナノボディー(Nanobodies)(登録商標)は、全長抗体の結合のアフィニティーおよび特異性を完全に保持する、最小の抗原結合フラグメントの1つである(例えば、Greenberg et al., Nature 374:168-73 (1995);Hassanzadeh-Ghassabeh et al., Nanomedicine (Lond), 8:1013-26 (2013)を参照)。
【0055】
さらに、フルサイズの抗体については、VHHおよびナノボディー(Nanobodies)(登録商標)などの単一可変ドメインを、ヒト化に供する、すなわち、最も近いヒト生殖系列配列との配列同一性の程度を増大させることができる。特に、ヒト化された免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばVHHおよびナノボディー(Nanobodies)(登録商標)は、ヒト化置換(本明細書においてさらに定義されるとおりの)であるか、および/またはこれに対応する少なくとも1つの単一のアミノ酸残基(および特に、少なくとも1つのフレームワーク残基)が存在する、シングルドメイン抗体であってもよい。潜在的に有用なヒト化置換は、天然に存在するVHH配列のフレームワーク領域の配列を、1つ以上の近接して関連するヒトVH配列の対応するフレームワーク配列と比較することにより、確認することができ、その後、そのように決定された潜在的に有用なヒト化置換のうちの1つ以上(またはそれらの組み合わせ)を、前記VHH配列中に導入することができ、結果として生じるヒト化されたVHH配列を、標的に対するアフィニティーについて、安定性について、発現の容易性およびレベルについて、および/または他の所望される特性について、試験することができる。この方法において、限定された程度の試行錯誤により、当業者は、他の好適なヒト化置換(またはその好適な組み合わせ)を決定することができる。
【0056】
ヒト化されたシングルドメイン抗体、特にVHHおよびナノボディー(Nanobodies)(登録商標)は、対応する天然に存在するVHHドメインと比較して低下した免疫原性などの、いくつかの利点を有し得る。ヒト化される、により、ヒト患者における投与の際の免疫原性が軽微であるか存在しないように変異していることが意味される。ヒト化置換は、結果として生じるヒト化されたアミノ酸配列および/またはVHHが、抗原結合能力などのVHHの有利な特性をなお保持するように選択されるべきである。本明細書において提供される説明に基づいて、当業者は、一方でのヒト化置換により提供される有利な特性と他方での天然に存在するVHHドメインの有利な特性との間の、所望される、または好適なバランスを、最適化するかまたはこれを達成することができる、ヒト化置換またはヒト化置換の好適な組み合わせを選択することができるであろう。かかる方法は、技術を有する受信者により公知である。ヒトのコンセンサス配列を、ヒト化のための標的配列として用いることができるが、また、他の手段も当該分野において公知である。1つの代替物は、当業者がヒト生殖系列アレルの数をアラインメント(例えば、これに限定されないが、IGHV3アレルのアラインメントなど)して、前記アラインメントを標的配列中のヒト化のために好適な残基の同定のために用いる方法を含む。また、ヒト生殖系列アレルの標的配列に対して最も相同なサブセットを出発点としてアラインメントして、好適なヒト化残基を同定してもよい。あるいは、VHHを分析して、ヒトアレルにおけるその最も近接した相同体を同定し、ヒト化コンストラクトの設計のために用いる。ラクダ科のVHHに適用されるヒト化技術もまた、特定のアミノ酸(単独で、または組み合わせにおいて)の置き換えを含む方法により行うことができる。前記置き換えは、文献から知られるものに基づいて選択してもよく、公知のヒト化の研究から、ならびに、天然のVHH配列と比較したヒトコンセンサス配列、または目的のVHH配列と最も類似するヒトアレルからのものである。WO08/020079の表A-5~A-8において示されるVHHのエントロピーおよびVHHの可変性についてのデータから観察することができるとおり、フレームワーク領域中のいくつかのアミノ酸残基は、ヒトとラクダ科との間で、他のものよりもよく保存されている。一般に、本発明は、その最も広義において、これに限定されないが、任意の置換、欠失または挿入は、好ましくは、あまり保存されていない位置において行われる。また、一般に、アミノ酸置換は、アミノ酸の欠失または挿入よりも好ましい。例えば、ヒト様のクラスのラクダ科シングルドメイン抗体は、ヒトまたは他の種に由来する通常の抗体において典型的に見出される疎水性FR2残基を含むが、その親水性の喪失を、位置103における、二本鎖抗体からのVHにおいて存在する保存されたトリプトファン残基を置換する、他の置換により代償している。かくして、これら2つのクラスに属するペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域に対して高いアミノ酸配列相同性を示し、前記ペプチドは、それからの望ましくない免疫応答を予想することなく、かつさらなるヒト化の負担を伴うことなく、ヒトに直接的に投与してもよい。実際に、いくつかのラクダ科VHH配列は、ヒトVHフレームワーク領域に対して高い配列相同性を示し、したがって、前記VHHは、それからの免疫応答を予想することなく、かつさらなるヒト化の負担を伴うことなく、患者に直接的に投与してもよい。
【0057】
ヒト化の間に、既存の抗体(例えばWO2012/175741およびWO2015/173325への参照が行われる)に、例えば、位置:11、13、14、15、40、41、42、82、82a、82b、83、84、85、87、88、89、103または108のうちの少なくとも1つにおいて、好適な変異、特に置換を導入して、結合が低下したポリペプチドを作製することができる。本発明のアミノ酸配列および/またはVHHは、任意のフレームワーク残基において、例えば1つ以上のホールマーク残基(下で定義されるとおり)において、または1つ以上の他のフレームワーク残基(すなわち、非ホールマーク残基)、またはその任意の好適な組み合わせにおいて、好適にヒト化されていてもよい。本発明のアミノ酸配列、VHHまたはポリペプチドを発現するために用いられる宿主生物に依存して、かかる欠失および/または置換はまた、翻訳後修飾のための1つ以上の部位(1つ以上のグリコシル化部位など)が取り除かれるような方法において設計されてもよく、これは、当業者の能力の範囲内であろう。あるいは、例えば部位特異的ペグ化を可能にするための、官能基(本明細書において記載されるとおり)の付着のための1つ以上の部位を導入するために、置換または挿入が設計されてもよい。
【0058】
いくつかの場合において、典型的なラクダ科のホールマーク残基のうちの少なくとも1つであって、位置37、44、45および/または47において親水性の特徴を有するものが、置き換えられる(WO2008/020079の表A-03を参照)。ヒト化の別の例として、FR1における、位置1、5、11、14、16および/または28などの位置;FR3における、73、74、75、76、78、79、82b、83、84、93および/または94などの位置;ならびにFR4における、10、103、104、108および/または111などの位置の残基の置換が挙げられる(WO2008/020079の表A-05~A08を参照;全ての番号付けは、Kabatに従う)
【0059】
本発明の一側面において、本発明の組み合わせにおいて定義されるとおりのTreg枯渇剤は、単一特異性である。下でさらに議論されるとおり、代替的な側面において、本発明のTreg枯渇剤は、二重特異性である。
【0060】
本明細書において用いられる場合、「二重特異性」とは、単一の抗原もしくはポリペプチド上で、または2つの異なる抗原もしくはポリペプチド上で、2つの区別し得るエピトープに結合する能力を有するTreg枯渇剤を指す。
本明細書において議論されるとおりの本発明の二重特異性Treg枯渇剤は、体細胞雑種などの生物学的方法;または細胞株における、もしくは生体内での、所望される構造をコードする非ネイティブなDNA配列の発現などの遺伝学的方法;化学的方法(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的もしくは他の方法による1つ以上の分子的実体への会合、例えばそのフラグメントの別の結合剤により);またはそれらの組み合わせを介して、生成することができる。
【0061】
単一特異性または二重特異性のTreg枯渇剤を生成することを可能にする技術および製品は、当該分野において公知であり、代替的な形式、Treg枯渇剤-薬物抱合体、Treg枯渇剤設計方法、in vitroスクリーニング方法、定常領域、翻訳後および化学的な修飾、Fcドメイン工学などのがん細胞の死を引き起こすための改善された特徴に関してもまた、文献において広範に総説されているとおりである(Tiller K and Tessier P, Annu Rev Biomed Eng. 17:191-216 (2015);Speiss C et al., Molecular Immunology 67:95-106 (2015);Weiner G, Nat Rev Cancer, 15:361-370 (2015);Fan G et al., J Hematol Oncol 8:130 (2015))。
【0062】
本明細書において用いられる場合、「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体などのTreg枯渇剤が結合する抗原上の部位を指す。当該分野において周知であるとおり、エピトープは、近接したアミノ酸(直鎖状エピトープ)、またはタンパク質の三次フォールディングにより並置された非近接のアミノ酸(立体構造的エピトープ)のいずれからのものであってよい。近接したアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への暴露によっても保持されるが、一方、三次フォールディングにより形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒による処置によって失われる。エピトープは、典型的には、ユニークな空間的立体配置中に、少なくとも3個、およびより通常では少なくとも5個または8~10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的立体配置を決定する方法は、当該分野において周知であり、例えば、X線結晶学および2-D核磁気共鳴が挙げられる。例えば、Methods in Molecular Biology、第66巻中のEpitope Mapping Protocols、Glenn E. Morris編(1996年)を参照。
【0063】
さらに本発明により、本発明の組み合わせにおいて定義されるとおりのTreg枯渇剤は、Treg細胞の細胞表面マーカーに結合し、細胞傷害活性を有する。「細胞傷害性」または「細胞傷害活性」とは、本明細書において用いられる場合、Treg枯渇剤が、それが結合する細胞に対して毒性となる能力を指す。本発明の記載から当業者には明らかであるとおり、本発明に関して、任意の型の細胞傷害性を用いることができる。重要であるのは、本発明のTreg枯渇剤が、CCR8などのTreg細胞の細胞表面マーカーに結合し、それが結合する細胞に対して毒性を引き起こす能力である。細胞傷害性は、直接的な細胞傷害性であってよく、ここで、Treg枯渇剤自体が、細胞に直接損傷を与える(例えば、それが化学療法的なペイロードを含むことから)、または、それは間接的であってもよく、ここで、Treg枯渇剤は、細胞に損傷を引き起こす細胞外の機構を含む(例えば、抗体依存性細胞活性を誘導する抗体)。とりわけ、本発明のTreg枯渇剤は、免疫系に、それが結合する細胞を破壊または取り除くようにシグナルを与えることができてもよく、または、Treg枯渇剤は、それが結合する細胞を破壊するための細胞傷害性ペイロードを担持してもよい。特に、細胞傷害活性は、細胞傷害性部分の存在により引き起こされる。かかる細胞傷害性部分の例として、抗体依存性細胞活性(ADCC)を誘導するか、補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導するか、抗体依存性細胞貪食(ADCP)を誘導するか、T細胞に結合してこれを活性化するか、または細胞傷害性ペイロードを含む、部分を含む。最も好ましくは、前記細胞傷害性部分は、抗体依存性細胞活性(ADCC)を誘導する。
【0064】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)とは、Fc受容体を発現する非特異的細胞傷害性細胞において、細胞により媒介される反応であって、標的細胞上のTreg枯渇剤を認識し、その後、標的細胞の溶解を引き起こすものを指す。Fc受容体を発現非特異的細胞傷害性細胞の例として、ナチュラルキラー細胞、好中球およびマクロファージが挙げられる。
【0065】
補体依存性細胞傷害(CDC)とは、補体の存在下における標的の溶解を指す。補体活性化経路は、補体系の第1の補体(C1q)の、コグネートな抗原と複合体化したTreg枯渇剤への結合により開始される。
【0066】
抗体依存性細胞貪食(ADCP)とは、Fc受容体を発現する貪食細胞(マクロファージなど)が、標的細胞上のTreg枯渇剤を認識し、それにより標的細胞の貪食がもたらされる、細胞により媒介される反応を指す。
CDC、ADCCおよびADCPは、当該分野において公知のアッセイを用いて測定することができる(Vafa et al. Methods 2014 Jan 1; 65(1):114-26 (2013))。
【0067】
細胞傷害活性はまた、例えば、細胞傷害性部分が、Tregの細胞表面マーカーとは区別し得る、好ましくはCCR8とは区別し得る、細胞傷害性T細胞またはTヘルパー細胞のマーカーに結合し、その結合が、前記細胞傷害性T細胞またはTヘルパー細胞の活性化をもたらすことにより、細胞傷害性T細胞またはTヘルパー細胞に結合してこれを活性化する細胞傷害性部分により引き起こされ得る。細胞傷害性T細胞またはTヘルパー細胞の活性化は、本発明のTreg枯渇剤が結合する細胞に対する、細胞傷害性T細胞またはTヘルパー細胞の細胞傷害活性を誘導する。したがって、特定の態様において、本発明のTreg枯渇剤は、Tregの細胞表面マーカーに、好ましくはCCR8に結合し、かつ、細胞傷害性T細胞またはTヘルパー細胞に結合してこれを活性化する。例えば、細胞傷害性部分は、CD3に結合してもよい。さらなる態様において、細胞傷害性部分は、CD3に結合する抗体またはその抗原決定フラグメントを含む。したがって、本発明のTreg枯渇剤は、Tregの細胞表面マーカーに、好ましくはCCR8に、およびCD3に結合してもよい。かかるTreg枯渇剤は、腫瘍内Tregに結合し、T細胞の細胞傷害活性をこれらのTregに向け、それにより、腫瘍環境からそれらを枯渇させる。特定の態様において、本発明のTreg枯渇剤は、Tregの細胞表面マーカーに、特にCCR8に結合する部分、およびCD3に結合する部分を含み、ここで、少なくとも1つの部分は、抗体ベースであり、特にここで、両方の部分が、抗体ベースである。したがって、特定の態様において、本発明は、Tregの細胞表面マーカーに、好ましくはCCR8に特異的に結合する抗体またはその抗原決定フラグメント、およびCD3に特異的に結合する抗体またはその抗原決定フラグメントを含む、二重特異性コンストラクトを提供する。
【0068】
細胞傷害性ペイロードとは、細胞傷害性ペイロードと接触する細胞に対して直接的な損傷効果を引き起こす任意の分子的実体を指す。細胞傷害性ペイロードは、当業者に公知である。特定の態様において、細胞傷害性ペイロードは、化学的実体である。かかる細胞傷害性ペイロードの特定の例として、トキシン、化学療法剤および放射性同位元素または放射性核種が挙げられる。さらなる態様において、細胞傷害性ペイロードは、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞骨格破壊剤、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチドアナログおよび前駆体アナログ、ペプチド抗菌剤、白金ベースの剤、レチノイド、ビンカアルカロイドおよび誘導体、ペプチドまたは小分子トキシン、ならびに放射性同位元素からなる群より選択される剤を含む。化学的実体は、当該分野において公知の技術を用いて、タンパク質性の阻害剤、例えば、抗体または抗原決定フラグメントにカップリングすることができる。かかるカップリングは、共有結合によるものであっても非共有結合によるものだってもよく、カップリングは、易動性または可逆性であってもよい。
【0069】
当該分野において周知であるとおり、IgG抗体のFc領域は、いくつかの細胞Fcγ受容体(FcγR)と相互作用して、下流のエフェクター機構を刺激してこれを調節する。5つの活性化受容体、すなわち、FcγRI(CD64)、FcγRlla(CD32a)、FcγRllc(CD32c)、FcγRllla(CD16a)およびFcyRlllb(CD16b)、ならびに1つの阻害性受容体FcγRllb(CD32b)が存在する。IgG抗体と免疫系とのコミュニケーションは、FcγRにより制御され、かつ媒介され、これは、抗体により感知され、収集された情報を、免疫系に中継し、バイオ医薬品(biotherapeutics)に関しては特に、自然免疫系と適応免疫系との間のリンクを提供する(Hayes J et al., 2016. J Inflamm Res 9: 209-219)。
【0070】
IgGのサブクラスは、FcγRに結合するそれらの能力において異なり、その差次的な結合が、ある範囲の機能的応答を誘発するそれらの能力を決定する。例えば、ヒトにおいて、FcγRlllaは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)の活性化に関与する主要な受容体であり、lgG3と、すぐ後に続くlgG1は、この受容体に対して最も高いアフィニティーを示し、このことは、ADCCを強力に誘導するそれらの能力を反映している。lgG2は、この受容体に対してより弱い結合を示している一方で、ヒトlgG2アイソタイプを有するTreg枯渇剤もまた、Tregを効果的に枯渇させることが見出されている。
【0071】
本発明の好ましい態様において、本発明のTreg枯渇剤は、抗体エフェクター機能、特にヒトにおける抗体エフェクター機能を含む。特定の態様において、本発明のTreg枯渇剤は、FcγRに高アフィニティーで、好ましくは活性化受容体に高アフィニティーで結合する。好ましくは、Treg枯渇剤は、FcγRIおよび/またはFcγRllaおよび/またはFcγRlllaに、高アフィニティーで結合する。特に好ましくは、Treg枯渇剤は、FcγRlllaに結合する。特定の態様において、Treg枯渇剤は、少なくとも1つの活性化Fcγ受容体に、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、または10-13M未満の解離定数により、結合する。FcγRの結合は、いくつかの手段を通して得ることができる。例えば、細胞傷害性部分は、フラグメント結晶化可能(Fc)領域部分を含んでもよく、またはそれは、FcγRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分などの結合部分を含んでもよい。
【0072】
したがって、一態様において、細胞傷害性部分は、フラグメント結晶化可能(Fc)領域部分を含む。本発明に関して、用語「フラグメント結晶化可能(Fc)領域部分」とは、重鎖の定常領域を含んでなり、抗体Fc受容体および補体系のいくつかの他のタンパク質への結合の原因であり、それによりADCC、CDC、および/またはADCP活性を誘導する、免疫グロブリン分子の結晶化可能フラグメントを指す。
一態様において、Fc領域部分は、ADCC、CDCおよび/またはADCP活性を増大させるように操作されている。
【0073】
ADCCは、Fc部分グリカンからフコース部分を減少させるかまたはこれを取り除く方法により、および/またはIgG1などの免疫グロブリンのFc領域に対する特異的変異(例えば、S298A/E333/K334A、S239D/I332E/A330LまたはG236A/S239D/A330L/I332E)の導入を通して、増大させてもよい(Lazar et al. Proc Natl Acad Sci USA 103:2005-2010 (2006);Smith et al. Proc Natl Acad Sci USA 209:6181-6 (2012))。ADCPもまた、ヒトIgGのFc部分に対する特異的変異の導入により増大させてもよい(Richards et al. Mol Cancer Ther 7:2517-27 (2008))。増大したADCC、CDCおよびADCP活性のための結合剤を操作するための方法は、Saunders(Frontiers in Immunology 2019, 1296)およびWangら(Protein Cell 2019, 9:63-73)において記載されている。
【0074】
本発明の特定の態様において、Fc領域部分を含むTreg枯渇剤は、ADCC応答を誘発するために最適化され、言い換えれば、ADCC応答は、Fc領域部分を含む他のもの(リガンドの、特にCCL1の、その受容体への、特にCCR8への結合を阻害しないもの、および例えば未修飾抗CCR8モノクローナル抗体を含む)と比較して増強されるか、増大するか、または改善される。好ましい態様において、Treg枯渇剤は、増強されたADCC応答を誘発するように操作されている。
【0075】
本発明の好ましい態様において、Fc領域部分を含むTreg枯渇剤は、ADCP応答を誘発するように最適化され、言い換えれば、ADCP応答は、Fc領域部分を含む他のもの(リガンドの、特にCCL1の、その受容体への、特にCCR8への結合を阻害しないもの、および例えば未修飾抗CCR8モノクローナル抗体を含む)と比較して、増強されるか、増大するか、または改善される。
【0076】
別の態様において、細胞傷害性部分は、Fcガンマ受容体に結合する、ことさらには、FcγR、特にFcγRIおよび/またはFcγRllaおよび/またはFcγRllla、特にFcγRlllaなどの活性化受容体に結合してこれを活性化する部分を含む。FcγRに結合する部分は、本明細書において前に記載されるとおり、抗体ベースであっても非抗体ベースであってもよい。抗体ベースである場合、部分は、その可変領域を通してFcγRに結合してもよい。
【0077】
特定の態様において、本発明のTreg枯渇剤は、CCR8結合剤である。本明細書において記載される場合、特異的抗原の「結合剤」という用語は、前記抗原に特異的に結合することができる分子を表す。CCR8結合剤は、本明細書において用いられる場合、CCR8に特異的に結合することができる分子を指す。かかる結合剤はまた、本明細書において、「CCR8結合剤」としても言及される。
【0078】
したがって、特定の態様において、CCR8結合剤は、ADCC活性を有するモノクローナル抗体である。かかる抗体は、当該分野において、例えばWO2020138489 A1から公知であり、これは、参照により本明細書において含まれる。特定の態様において、本発明のためのCCR8結合剤は、WO2020138489 A1において開示される抗体、特に、WO2020138489 A1の請求の範囲において提示されるとおりの抗体から選択される。さらなる態様において、本発明のためのCCR8結合剤は、WO2020138489 A1において開示されるヒト化抗体、特に、WO2020138489 A1の請求の範囲において提示されるとおりのヒト化抗体から選択される。別の特定の態様において、本発明のためのCCR8結合剤は、WO2020138489 A1からの抗体10A11、2C7もしくは19D7またはそのヒト化されたバリアント;特に、10A11またはそのヒト化されたバリアント;ことさらには、ヒト化10A11抗体である。別の特定の態様において、それは、19D7、より好ましくはヒト化19D7抗体である。
【0079】
1つの好ましい態様において、本発明のためのCCR8結合剤は、WO2020138489 A1の配列番号59を含む軽鎖可変領域および配列番号41を含む重鎖可変領域を含む抗CCR8抗体である。さらなる態様において、軽鎖定常領域は、WO2020138489 A1の配列番号52を含み、重鎖定常領域は、配列番号53を含む。
特定の態様において、CCR8結合剤は、抗CCR8抗体であり、これは、特にIgG抗体、ことさらにはIgG1またはIgG4である。
【0080】
本発明の特定の側面において、Treg枯渇剤は、非遮断性結合剤である。利点として、腸および/または皮膚のTreg集団に対する副作用の軽減、および樹状細胞遊走のリンパ節への阻害の不在またはその低下が挙げられる。さらに、特にPD-1/PD-L1阻害剤などのチェックポイント阻害との組み合わせにおいて、非遮断性CCR8結合剤などの遮断性Treg枯渇剤を用いるTreg枯渇は、腫瘍微小環境における好中球を増大することが観察されている。本発明のこの側面において、非遮断性CCR8結合剤などの非遮断性Treg枯渇剤は、好中球の増大に対して、より低い効果を有し得、それにより、より高い抗腫瘍効力を提供する。
【0081】
「非遮断性」結合剤とは、それが、リガンドの細胞表面マーカーへの結合を遮断しないか、または実質的に遮断しないことを意味する。例えば、非遮断性CCR8結合剤は、CCR8リガンドの、CCR8タンパク質への結合を遮断しない。さらなる態様において、Treg枯渇剤は、それが結合する細胞表面マーカーの活性化を調節しない結合剤である。かかる態様において、Treg枯渇剤は、作用性(agonising)または拮抗性の結合剤ではない。したがって、かかる態様において、Treg枯渇剤は、作用性または拮抗性の抗体ではない。
【0082】
好ましくは、非遮断性CCR8結合剤は、CCL1、CCL8、CCL16、およびCCL18から選択される少なくとも1つのリガンドの、CCR8への結合を遮断せず、特に、それは、CCL1またはCCL18のCCR8への結合を遮断せず、好ましくは、CCL1のCCR8への結合を遮断しない。
【0083】
リガンドのマーカーへの、特にCCR8への結合の遮断は、当該分野において公知方法により決定してもよい。その例として、これらに限定されないが、CCL1などのリガンドのCCR8への結合、CCR8発現細胞のCCL1などのリガンドへの遊走、CCL1などのCCR8リガンドによる細胞内Ca2+レベルの増大、CCL1などのリガンドによるデキサメタゾン誘導性アポトーシスからのレスキュー、およびCCL1刺激などのCCR8リガンド刺激に対して感受性の遺伝子の発現におけるバリエーションの測定が挙げられる。
【0084】
「非遮断性」、「非リガンド遮断性」、「遮断しない」または「遮断することなく」などへの言及は、本発明の非遮断性Treg枯渇剤が、Treg細胞表面マーカーを介するリガンドのシグナル伝達を遮断しないか、または実質的に遮断しない態様を含む。すなわち、非遮断性Treg枯渇剤は、Treg枯渇剤の不在下におけるリガンドシグナル伝達と比較して、リガンドシグナル伝達のうちの50%未満を阻害する。本明細書において記載されるとおりの本発明の特定の態様において、非遮断性Treg枯渇剤は、Treg枯渇剤の不在下におけるリガンドシグナル伝達と比較して、リガンドシグナル伝達のうちの40%、35%、30%未満、好ましくは約25%未満を阻害する。特定の態様において、リガンドシグナル伝達のパーセンテージは、Treg枯渇剤の細胞表面マーカーへの結合EC50の、少なくとも10倍、特に少なくとも50倍、ことさらには、少なくとも100倍であるTreg枯渇剤モル濃度において測定される。別の態様において、リガンドシグナル伝達のパーセンテージは、リガンドのモル濃度の少なくとも10倍、特に少なくとも50倍、ことさらには、少なくとも100倍である、Treg枯渇剤、例えばCCR8結合剤の、モル濃度において測定される。
【0085】
非遮断性Treg枯渇剤、特に非遮断性CCR8結合剤は、少なくとも1つのリガンドの、細胞表面マーカーへの、特にCCR8への結合を妨害することなく、または少なくとも1つのリガンドの、マーカー、特にCCR8への結合を実質的に妨害することなく、細胞表面マーカーの、特にCCR8の結合を可能にする。マーカー、例えばCCR8を介する、リガンドシグナル伝達、例えばCCL1シグナル伝達は、例において議論されるとおり、および当該分野において公知であるとおりの方法により、測定してもよい。Treg枯渇剤の、特にCCR8結合剤の、存在または不在下におけるリガンドシグナル伝達の比較は、同じ、または実質的に同じ条件下において行うことができる。
【0086】
いくつかの態様において、CCR8シグナル伝達は、cAMPの放出を測定することにより、決定することができる。具体的には、組み換え(ヒト)CCR8受容体を安定的に発現するCHO-K1細胞(EuroscreenFASTから入手可能なFAST-065Cなど)を、KRHのアッセイバッファー中で懸濁する:5mMのKCl、1.25mMのMgSO、124mMのNaCl、25mMのHEPES、13.3mMのグルコース、1.25mMのKH2PO、1.45mMのCaCl、0.5g/lのBSAに、1mMのIBMXを補充したもの。CCR8結合剤は、100nMの濃度において添加し、30分間にわたり21℃でインキュベートする。アッセイバッファー中の5μMのフォルスコリンおよび(ヒト)CCL1の混合物を、5nMのCCL1の最終アッセイ濃度に達するまで添加する。アッセイ混合物を、次いで、30分間にわたり21℃でインキュベートする。溶解バッファーの添加および1時間のインキュベーションの後で、cAMPの濃度を測定する。cAMPは、例えば、Cisbio製のHTRFキットなどにより、製造者のアッセイ条件(カタログ#62AM9PE)を用いて、蛍光レベルを決定することにより、測定することができる。非遮断性Treg枯渇剤は、結合剤を欠く対照と比較して、cAMPの量の50%未満、特に40%未満、ことさらには30%未満、例えば20%未満などの変化をもたらす。好ましくは、非遮断性Treg枯渇剤は、対照と比較して、cAMPのうちの10%未満、より好ましくは5%未満の変化をもたらす。
【0087】
非遮断性CCR8結合剤を含むがこれに限定されない非遮断性Treg枯渇剤を作製するための技術は、当業者に利用可能である。非限定的な例として、抗体は、全長表面マーカーマーカーまたは表面マーカーフラグメントを含む細胞表面マーカー抗原を用いる免疫化を通して作製することができ、作製された抗体を、表面マーカー遮断活性の不在についてスクリーニングすることができる。特定の態様において、抗体は、リガンド結合に関与しない表面マーカーフラグメントを用いる免疫化を通して作成される。非遮断性抗体は、N末端領域、特に膜貫通ドメインの間には位置しないN末端細胞外領域から誘導されるマーカーフラグメント、特にCCR8フラグメントによる免疫化を通して得てもよい。したがって、特定の態様において、本発明のTreg枯渇剤は、マーカーのN末端領域においてCCR8に結合する。1つの特定の態様において、Treg枯渇剤は、CCR8のN末端領域、およびCCR8の膜貫通ドメインの間に位置する1つ以上の細胞外ループに結合する。別の態様において、Treg枯渇剤は、CCR8のN末端領域に結合し、CCR8の膜貫通ドメインの間に位置する細胞外ループには結合しない。さらに別の特定の態様において、Treg枯渇剤は、CCR8の膜貫通ドメインの間に位置する1つ以上の細胞外ループに結合する。別の特定の態様において、Treg枯渇剤のエピトープは、前記N末端領域において位置する。さらに別の態様において、Treg枯渇剤のエピトープは、膜貫通ドメインの間の細胞外ループにおいては位置しない。
【0088】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において定義されるとおりのTreg枯渇剤をコードする核酸分子を提供する。いくつかの態様において、かかる提供された核酸分子は、コドン最適化された核酸配列を含んでもよい。別の態様において、核酸は、例えば細菌、酵母、昆虫、魚、マウス、サルまたはヒトの細胞などの宿主細胞における発現のために適切な核酸ベクター中の発現カセット中に含まれる。いくつかの態様において、本発明は、所望される結合剤を発現する異種性核酸分子(例えば、DNAベクター)を含む宿主細胞を提供する。
【0089】
いくつかの態様において、本発明は、上で定義されるとおりの単離されたTreg枯渇剤を調製する方法を提供する。いくつかの態様において、かかる方法は、核酸(例えば、ベクターを含むか、および/またはベクターを介して宿主細胞に送達され得る、異種性核酸)を含む、宿主細胞を培養することを含んでもよい。好ましくは、宿主細胞(および/または異種性核酸配列)は、Treg枯渇剤が宿主細胞から分泌され、細胞培養上清から単離されるように、配置され、構築される。
【0090】
LTBRアゴニスト
本明細書において記載される場合、用語「LTBRアゴニスト」とは、受容体LTBRに対して特異的なリガンドを指し、これは、受容体への結合の作用を有し、したがって、リガンド依存的な受容体活性を特異的に刺激する化合物である(任意のリガンドの不在下において決定された基線レベルとは区別し得るものとして)。この作用はまた、単に、受容体刺激作用または受容体活性化作用としても言及される。さらに、「アゴニスト」に対する同義語としては、「アクチベーター」、「刺激因子」、「受容体活性化リガンド」がある。アゴニストは、天然の化合物、天然の化合物から誘導された半合成の化合物、および合成の化合物を含む。LTBRアゴニストは、当該分野において公知であり、それらは、高内皮小胞(high endothelial vesicles:HEVs)および三次リンパ球構造(TLS)の誘導に関与する。
【0091】
LTBR、別名、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー3(TNFRSF3)は、アポトーシスおよびサイトカイン放出に関与するリンホトキシンに対する細胞表面受容体である。それは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである。それは、上皮および骨髄系の系列の細胞を含むほとんどの細胞型の表面上で発現されるが、TおよびBリンパ球においては発現されない。当該タンパク質は、リンホトキシン膜形態(リンホトキシン-アルファとリンホトキシン-ベータとの複合体)に特異的に結合する。コードされるタンパク質およびそのリガンドは、リンパ系組織の発生および組織化において役割を果たす。
【0092】
リンホトキシン-アルファ/ベータ/ベータ(リンホトキシン-αββ)は、リンホトキシン-アルファの1つのサブユニットまたはコピーおよびリンホトキシン-ベータの2つのサブユニットまたはコピーを含んでなる、ヘテロ三量体の種である。リンホトキシン-αββは、リンホトキシンベータ受容体(LTBR)に結合する。LTBRの活性化は、シグナル伝達イベントを開始させ、CXCL12、CXCL13、CCL19、およびCCL21を含むがこれらに限定されないケモカインの発現をもたらす。これらのケモカインは、樹状細胞、T細胞およびB細胞の遊走を誘導して、胚中心を確立するように働く。リンホトキシン-αββは、したがって、本発明における適用のために好適なLTBRアゴニストおよびHEV誘導因子である。
【0093】
LIGHT、別名、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)は、TNFスーパーファミリーのメンバーであり、その受容体は、リンホトキシンベータ受容体(LTBR)、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(herpes virus entry mediator:HVEM)、およびデコイ受容体3(DcR3)として同定されている。LIGHTは、「homologous to lymphotoxin, exhibits inducible expression and competes with HSV glycoprotein D for binding to herpesvirus entry mediator, a receptor expressed on T lymphocytes」の略語である。表面抗原分類の用語において、それは、CD258として分類される。このタンパク質は、リンパ様細胞の活性化のための共刺激因子として機能し得る。それは、既知のLTBRアゴニストおよびHEV誘導因子である。
【0094】
当業者により理解されるであろうとおり、原則的に、LTBRのアゴニストの任意の型を、本発明において用いることができ、アゴニストの異なる型は、当業者にとって容易に入手可能であるか、小分子および生物製剤(biologics)または生物製剤から誘導される分子を含む、当該分野における典型的な知識を用いて作製することができる。特定の態様において、LTBRアゴニストの結合部分は、タンパク質性であり、ことさらにはLTBRアゴニスト性ポリペプチドである。さらなる態様において、LTBRアゴニストの結合部分は、抗体ベースであるかまたは非抗体ベースであり、好ましくは抗体ベースである。非抗体ベースのアゴニストとして、これらに限定されないが、アフィボディー(登録商標)、Kunitzドメインペプチド、モノボディー(アドネクチン)、アンティカリン(登録商標)、設計されたアンキリンリピートドメイン(DARPins)、センティリン、フィノマー、アビマー;アフィリン;アフィチン、ペプチドなどが挙げられる。
【0095】
特定の態様において、LTBRアゴニストは、リンホトキシン-αββ、LIGHTまたはLTBRに結合するフラグメントまたはその模倣物から選択される。別の態様において、LTBRアゴニストは、リンホトキシンアルファまたはリンホトキシンベータを含む。さらなる態様において、LTBRアゴニストは、リンホトキシンアルファおよびリンホトキシンベータ、特に1つのリンホトキシンアルファ部分および2つのリンホトキシンベータ部分を含む、融合ペプチドである。かかるLTBRアゴニストは、例えば、WO2018119118 A1およびWO9622788 A1において開示され、これらは、本明細書において参考として援用される。特定の態様において、LTBRアゴニストは、WO2018119118 A1の配列番号16、配列番号17、または配列番号18を含む。
【0096】
LIGHTおよびLIGHT模倣ペプチドもまた、当該分野において、例えばWO2018119118 A1から、公知である。ある態様において、LTBRアゴニストは、LIGHT(例えば、ヒトLIGHT)またはそのフラグメントを含む。非限定的な例として、LTBR-結合部分は、LIGHTまたはそのフラグメントの細胞外ドメインを含む。ある態様において、LTBRアゴニストは、LIGHTホモ三量体を含む(例えば、単鎖LIGHTホモ三量体)。例えば、LTBRアゴニストは、ヒトLIGHTの細胞外ドメイン、ヒトLIGHTの細胞外ドメインに対して少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアント、またはそのフラグメントを含んでもよい。ある態様において、LTBRアゴニストは、WO2018119118 A1の配列番号85に対して、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または100%の配列同一性を有するポリペプチド(例えば、LIGHTホモ三量体)を含んでもよい。いくつかの態様において、LTBRアゴニストは、単鎖ポリペプチドである。ある態様において、LTBRアゴニストは、WO2018119118 A1の配列番号86に対して、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。例えば、LTBRアゴニストは、WO2018119118 A1の配列番号86を含んでもよい。いくつかの態様において、LTBRアゴニストは、HVEMに結合するかまたはこれを活性化する能力を有する、変異体LIGHTホモ三量体を含む。
【0097】
特定の態様において、LTBRアゴニストは、細胞傷害活性を有しない。さらなる態様において、LTBRアゴニストは、ADCC、CDCまたはADCP活性を有しない。別の態様において、LTBRアゴニストは、それが結合する細胞の溶解を引き起こさない。別の特定の態様において、LTBRアゴニストは、それが結合する細胞を枯渇させない。
【0098】
好ましい態様において、アゴニストは、抗体または活性な抗体フラグメントであるLTBRアゴニスト性部分を含む。本発明のさらなる側面において、アゴニストは、抗体(「アゴニスト性抗体」)である。LTBRに特異的に結合するアゴニスト性抗体は、当該分野において公知である。例えば、WO2006/114284 A2、WO2004/058191 A2、およびWO02/30986 A2を参照;これらの各々は、本明細書により本明細書において参考として援用される。本発明のさらなる側面において、抗体は、モノクローナルである。抗体は、付加的に、または代替的に、ヒト化されていても、ヒトのものであってもよい。さらなる側面において、抗体は、ヒトのものであるか、または任意の場合において、ヒト対象におけるその使用および投与を可能にする形式および特徴を有する抗体である。抗体は、これらに限定されないが、マウス、ラット、ニワトリ、ウサギ、ヤギ、ウシ、非ヒト霊長類、ヒト、ヒトコブラクダ(dromedary)、ラクダ(camel)、ラマ、アルパカおよびサメを含む任意の種から誘導してよい。
【0099】
本発明の一側面において、LTBRアゴニストは、活性な抗体フラグメントを含む。
別の態様において、上で詳述されるとおりのLTBRアゴニストは、少なくとも1つのシングルドメイン抗体部分を含む。好ましくは、LTBRアゴニストは、少なくとも2つのシングルドメイン抗体部分を含む。
本発明のさらなる態様において、上で詳述されるとおりのLTBRアゴニストは、少なくとも1つのFc領域部分、およびLTBRに結合する少なくとも2つのシングルドメイン抗体部分を含む。好ましくは、LTBRアゴニストは、少なくとも1つのFc領域部分と、LTBRに結合する少なくとも2つのシングルドメイン抗体部分とが、ペプチドリンカーにより一緒に連結されたものを含む、遺伝子操作されたポリペプチドである。Fc領域部分および/またはシングルドメイン抗体部分領域のアミノ酸配列は、ヒトのために免疫原性を低下させるためにヒト化されていてもよい。
【0100】
特に、シングルドメイン抗体は、ナノボディー(Nanobody)(登録商標)(本明細書において定義されるとおりの)またはその好適なフラグメントであってよい(注意;ナノボディー(Nanobody)(登録商標)、ナノボディー(Nanobodies)(登録商標)およびナノクローン(Nanoclone)(登録商標)は、Sanofiの会社であるAblynx N.V.の登録商標である)。さらに、完全サイズの抗体については、VHHおよびナノボディー(Nanobodies)(登録商標)などの単一可変ドメインを、ヒト化に供して、ヒト化されたシングルドメイン抗体を得ることができる。別の特定の態様において、LTBRアゴニストは、Fcドメインを含まない。さらなる特定の態様において、LTBRアゴニストは、1つ以上のシングルドメイン抗体部分を含み、Fcドメインを含まない。Techniques for generating LTBRアゴニストを作製するための技術は、当業者に利用可能である。
【0101】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において定義されるとおりのLTBRアゴニストをコードする核酸分子を提供する。いくつかの態様において、かかる提供された核酸分子は、コドン最適化された核酸配列を含んでもよい。別の態様において、核酸は、例えば、細菌、酵母、昆虫、魚、マウス、サルまたはヒトの細胞などの宿主細胞における発現のために適切な核酸ベクター中の発現カセット中に含まれる。いくつかの態様において、本発明 所望される結合剤を発現する異種性核酸分子(例えば、DNAベクター)を含む宿主細胞を提供する。
【0102】
いくつかの態様において、本発明は、上で定義されるとおりの単離されたLTBRアゴニストを調製する方法を提供する。いくつかの態様において、かかる方法は、核酸(例えば、ベクターを含むか、および/またはこれを介して宿主細胞に送達され得る、異種性核酸)を含む、宿主細胞を培養することを含んでもよい。好ましくは、宿主細胞(および/または異種性核酸配列)は、LTBRアゴニストが宿主細胞から分泌され、細胞培養上清から単離されるように、配置され、構築される。
【0103】
組み合わせ
上述のとおり、本発明者らは、驚くべきことに、本発明の組み合わせにおいて定義されるとおりのTreg枯渇剤およびLTBRアゴニストが用いられた場合に、相乗効果を観察した。本発明の1つの目的は、したがって、Treg枯渇剤およびLTBRアゴニストを含む組み合わせである。本明細書においてなされた開示から理解されるであろうが、本明細書において記載される特定のTreg枯渇剤と特定のLTBRアゴニストとの組み合わせは、本発明の目的である。それに対してさらに、好ましい態様であるものとして言及されるTreg枯渇剤と、好ましい態様であるものとして言及されるLTBRアゴニストとの組み合わせは、組み合わせ、組み合わせを含む組成物、およびかかる組み合わせに関する治療に関して、好ましい態様を構成する。
【0104】
好ましい態様において、Treg枯渇剤は、Treg細胞の細胞表面マーカーに結合し、細胞傷害活性を有する。
別の好ましい態様において、Treg細胞の細胞表面マーカーは、CCR8、CCR4、CTLA4、CD25、TIGIT、OX40、ICOS、CD38、GITR、4-1BB、NRP1、およびLAG-3からなる群より選択される。特定の態様において、Tregの細胞表面マーカーは、CCR8、CCR4、CD25、TIGIT、およびICOS;好ましくはCCR8、CD25、およびCCR4から選択される。
【0105】
より好ましい態様において、Treg細胞の細胞表面マーカーは、CCR8である。したがって、かかる好ましい態様において、Treg枯渇剤は、CCR8結合剤である。
さらに好ましい態様において、Treg枯渇剤の、特にCCR8結合剤の細胞傷害活性は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導するか、補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導するか、抗体依存性細胞貪食(ADCP)を誘導するか、T細胞に結合してこれを活性化するか、または細胞傷害性ペイロードを含む、細胞傷害性部分の存在により引き起こされる。
【0106】
好ましくは、細胞傷害性部分は、フラグメント結晶化可能(Fc)領域部分を含む。
有利には、Fc領域部分は、例えば、脱フコシル化を通して、またはADCC、CDCおよび/もしくはADCPを増大させる変異を含むことにより、ADCC、CDC、および/またはADCP活性を増大させるように操作されている。
【0107】
さらに好ましい態様において、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤は、Tregの細胞表面マーカーに、特にCCR8に結合する、少なくとも1つのシングルドメイン抗体部分を含む。
特定の態様において、本発明の組み合わせは、本明細書において「Tregを枯渇させる抗体」としてもまた言及される、ADCC、CDCおよび/またはADCP活性を有するマーカー結合抗体、特にCCR8に結合する抗体、ならびにLTBRアゴニスト性抗体を含む。したがって、特定の態様において、Treg枯渇剤およびLTBRアゴニストの両方は、抗体、特に、区別し得る抗体である。好ましい態様において、Treg枯渇剤は、CCR8、CCR4、CTLA4、CD25、TIGIT、OX40、ICOS、CD38、GITR、4-1BB、NRP1、およびLAG-3に結合する抗体であり、LTBRアゴニストは、LTBRに結合するアゴニスト性抗体である。さらなる特定の態様において、Treg枯渇剤は、CCR8に結合する抗体であり、LTBRアゴニストは、LTBRに結合するアゴニスト性抗体である。
【0108】
別の態様において、本発明の組み合わせは、1つ以上の薬学的に受入可能な担体またはそれの賦形剤をさらに含む。一態様において、前記の1つ以上の薬学的に受入可能な担体またはそれの賦形剤は、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤、および/またはLTBRアゴニストと共に存在することができる。したがって、本発明の組み合わせは、前記1つ以上の薬学的に受入可能な担体またはそれの賦形剤、およびLTBRアゴニストと共に、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤を含む、第1の組成物を含んでもよく;または、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤と、LTBRアゴニストを前記の1つ以上の薬学的に受入可能な担体またはそれの賦形剤と共に含む、第2の組成物とを含む;または、前記第1および第2の組成物、すなわち、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤を、前記1つ以上の薬学的に受入可能な担体またはそれの賦形剤と共に、およびLTBRアゴニストを、前記1つ以上の薬学的に受入可能な担体またはその賦形剤と共に含む。
【0109】
本明細書において用いられるとおりの組み合わせは、2つの特徴(Treg枯渇およびLTBR作用)の組み合わせを指す。これらの特徴は、単一の分子、例えばTreg結合部分およびLTBR作用部分を含む分子において、存在してもよい。二重特異性抗体は、本発明を実施するための可能性であるが、本明細書において下に記載されるであろうとおり、特定の、および好ましい態様において、本発明における使用のためのTreg枯渇剤およびLTBRアゴニストは、区別し得る分子である。より特定の態様において、Treg枯渇剤は、本明細書において記載されるとおりの細胞傷害性CCR8に結合する抗体などの抗体であり、LTBRアゴニストは、区別し得る分子であり、好ましくはLTBRアゴニスト性抗体であり。さらなる好ましい態様において、LTBRアゴニストは、本明細書において定義されるとおりの細胞傷害性部分を含まない。
【0110】
組成物
本発明の別の目的は、本発明の組み合わせを含む組成物である。したがって、本発明の組成物は、Tregの細胞表面マーカーに、特にCCR8に結合し、細胞傷害活性を有する、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤、およびLTBRアゴニストを含む。
【0111】
好ましい態様において、本発明の組成物は、本明細書においてまた「Treg枯渇性抗体」、特に、CCR8結合抗体として言及される、ADCC、CDCおよび/またはADCP活性を有する、マーカー結合抗体、およびLTBRアゴニスト性抗体を含む。
さらに好ましい態様において、本発明の組成物は、1つ以上の薬学的に受入可能な担体またはそれの賦形剤をさらに含む。
【0112】
二重特異性分子
本発明のさらに別の側面は、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分、およびLTBRアゴニスト性部分を含む、二重特異性分子であって、ここで、二重特異性分子は、細胞傷害活性を有する。
本明細書において用いられる場合、「二重特異性」とは、2つの区別し得るエピトープ、または2つの異なる抗原もしくはポリペプチド(このうち一方はLTBR抗原またはポリペプチドである)に結合する能力を有する分子を指す。
【0113】
好ましい態様において、二重特異性分子の細胞傷害活性は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導するか、補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導するか、抗体依存性細胞貪食(ADCP)を誘導するか、T細胞に結合してこれを活性化するか、または細胞傷害性ペイロードを含む、Tregを枯渇させる部分により、特にCCR8結合部分により、引き起こされる。
【0114】
特定の態様において、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分は、タンパク質性、ことさらには、Treg枯渇性ポリペプチド(すなわち、マーカーに結合するポリペプチド)、特にCCR8結合ポリペプチドである。さらなる態様において、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分は、抗体ベースであるかまたは非抗体ベースであり、好ましくは抗体ベースである。好ましい態様において、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分は、抗体または活性な抗体フラグメントである。
【0115】
別の態様において、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分は、少なくとも1つのシングルドメイン抗体部分を含む。好ましくは、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分は、少なくとも2つのシングルドメイン抗体部分を含む。
【0116】
さらなる態様において、細胞傷害性部分は、CD3に結合する抗体またはその抗原決定フラグメントを含む。したがって、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分は、Tregの細胞表面マーカーに、特にCCR8およびCD3に、結合してもよい。かかるTreg枯渇剤は、腫瘍内Tregに結合して、これらのTregに対するT細胞の細胞傷害活性を指揮し、それにより、腫瘍環境からそれらを枯渇させる。特定の態様において、本発明のTreg枯渇剤は、Tregの細胞表面マーカーに、特にCCR8に結合する部分、および、CD3に結合する部分を含み、ここで、少なくとも1つの部分は、抗体ベースであり、特にここで、両方の部分が抗体ベースである。したがって、特定の態様において、本発明は、Tregの細胞表面マーカーに、特にCCR8に特異的に結合する抗体またはその抗原決定フラグメント、およびCD3に特異的に結合する抗体またはその抗原決定フラグメントを含む、二重特異性コンストラクトを提供する。
【0117】
一態様において、細胞傷害性部分は、フラグメント結晶化可能(Fc)領域部分を含む。本発明の文脈内において、用語「フラグメント結晶化可能(Fc)領域部分」とは、重鎖の定常領域を含んでなり、抗体Fc受容体および補体系のいくつかの他のタンパク質への結合の原因となり、それによりADCC、CDC、および/またはADCP活性を誘導する、免疫グロブリン分子の結晶化可能フラグメントを指す。
【0118】
本発明のさらなる態様において、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分は、少なくとも1つのFc領域部分、およびTregの細胞表面マーカーに、特にCCR8に結合する少なくとも2つのシングルドメイン抗体部分を含む。好ましくは、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分は、少なくとも1つのFc領域部分と、Tregの細胞表面マーカーに、特にCCR8に結合する少なくとも2つのシングルドメイン抗体部分とが、ペプチドリンカーにより一緒に連結されたものを含む、遺伝子操作されたポリペプチドである。Fc領域部分および/またはシングルドメイン抗体部分領域のアミノ酸配列は、ヒトのために免疫原性を低下させるためにヒト化されていてもよい。
【0119】
一態様において、Fc領域部分は、ADCC、CDCおよび/またはADCP活性を増大させるように操作されている。
本発明の特定の態様において、Fc領域部分を含む、Tregを枯渇させる部分、特にCCR8結合部分は、ADCC応答を誘発するように最適化され、すなわち、Fc領域部分を含む他のもの、特に他のCCR8結合剤(リガンドの、特にCCL1の、そのTregの細胞表面マーカーへの、特にCCR8への結合を阻害しないものを含む)と比較して、ADCC応答が増強されるか、増大するか、または改善される。好ましい態様において、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤は、増強されたADCC応答を誘発するように操作されている。
【0120】
本発明の好ましい態様において、Fc領域部分を含む、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤は、ADCP応答を誘発するように最適化され、すなわち、他のもの、特にFc領域部分を含む他のもの、特に他のCCR8結合剤(リガンドの、特にCCL1の、その受容体(細胞表面マーカー)への、特にCCR8への結合を阻害しないものを含む)と比較して、ADCP応答が増強されるか、増大するか、または改善される。
【0121】
別の態様において、細胞傷害性部分は、Fcガンマ受容体に結合する部分、ことさらには、FcγR、特に、FcγRIおよび/またはFcγRllaおよび/またはFcγRlllaなどの活性化受容体、特にFcγRlllaに結合してこれを活性化する部分を含む。FcγRに結合する部分は、本明細書において前に記載されるとおり、抗体ベースであっても、非抗体ベースであってもよい。抗体ベースである場合、部分は、その可変領域を通してFcγRに結合してもよい。
【0122】
本明細書において議論されるとおりの本発明の二重特異性分子は、体細胞雑種などの生物学的方法;または細胞株における、もしくは生体内での、所望される結合剤の構造をコードする非ネイティブなDNA配列の発現などの遺伝学的方法;化学的方法(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的もしくは他の方法による1つ以上の分子的実体への会合、例えばそのフラグメントの別の結合剤により);またはそれらの組み合わせを介して、生成することができる。
【0123】
二重特異性分子を生成することを可能にする技術および製品は、当該分野において公知であり、これは、文献において、代替的な形式、Treg枯渇剤-薬物抱合体、Treg枯渇剤設計方法、in vitroスクリーニング方法、定常領域、翻訳後および化学的な修飾、Fcドメイン工学などのがん細胞の死を引き起こすための改善された特徴に関してもまた、広範に総説されているとおりである(Tiller K and Tessier P, Annu Rev Biomed Eng. 17:191-216 (2015);Speiss C et al., Molecular Immunology 67:95-106 (2015);Weiner G, Nat Rev Cancer, 15:361-370 (2015);Fan G et al., J Hematol Oncol 8:130 (2015))。
【0124】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において定義されるとおりの二重特異性分子をコードする核酸分子を提供する。いくつかの態様において、かかる提供された核酸分子は、コドン最適化された核酸配列を含んでもよい。別の態様において、核酸は、例えば細菌、酵母、昆虫、魚、マウス、サルまたはヒトの細胞などの宿主細胞における発現のために適切な核酸ベクター中の発現カセット中に含まれる。いくつかの態様において、本発明は、所望される結合剤を発現する異種性核酸分子(例えば、DNAベクター)を含む宿主細胞を提供する。
【0125】
特定の態様において、本発明の二重特異性分子は、治療核酸として投与される。本明細書において用いられる用語「治療核酸」とは、任意の核酸分子であって、真核生物(例えば、ヒトなどの哺乳類)中に導入された場合に治療効果を有し、本発明の結合剤をコードするDNAおよびRNA分子を含むものを指す。
【0126】
処置
本発明のさらなる目的は、医薬としての使用のための、本明細書において記載されるとおりの特徴を提示する組み合わせ、かかる組み合わせを含む組成物、本明細書において記載されるとおりの特徴を提示する二重特異性分子、ならびにかかる二重特異性分子をコードする核酸である。
本発明の別の目的は、がんの処置における使用のための、本明細書において記載されるとおりの特徴を提示する組み合わせ、かかる組み合わせを含む組成物、本明細書において記載されるとおりの特徴を提示する二重特異性分子、ならびにかかる二重特異性分子をコードする核酸である。
【0127】
本発明のさらに別の目的は、がんの処置における使用のための、本明細書において記載されるとおりの特徴を提示するTreg枯渇剤、特にCCR8結合剤であって、ここで、処置は、本明細書において記載されるとおりの特徴を提示するLTBRアゴニストの投与をさらに含む。
好ましくは、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤は、Tregを枯渇させる抗体、特にTregの細胞表面マーカーに、特にCCR8に結合する、CCR8に結合する抗体であり、ADCC、CDCおよび/またはADCP活性を有し;かつ、LTBRアゴニストは、LTBRアゴニスト性抗体である。
【0128】
本発明のなお別の目的は、がんの処置における使用のための、本明細書において記載されるとおりの特徴を提示するLTBRアゴニストであって、ここで、処置は、本明細書において記載されるとおりの特徴を提示するTreg枯渇剤、特にCCR8結合剤の投与をさらに含む。
さらなる態様において、本発明は、本発明の組み合わせ、かかる組み合わせを含む組成物、本発明の二重特異性分子、ならびにかかる二重特異性分子をコードする核酸を投与することを含む、対象における疾患を処置するための方法を提供する。好ましくは、疾患はがんであり、特に固形腫瘍の処置である。
【0129】
さらなる態様において、本発明は、対象において疾患を処置するための方法を提供し、該方法は、以下:
- 本明細書において定義されるとおりのTreg枯渇剤を投与すること;および
- 本明細書において定義されるとおりのLTBRアゴニストを投与すること、
のステップを含み、
ここで、両方の投与は、別々に、同時に、または連続的に行われる。
【0130】
別の特定の態様において、本発明は、Treg枯渇治療を経験している対象において疾患を処置するための方法を提供し、当該方法は、LTRBアゴニストを前記対象に投与することを含む。
好ましくは、疾患は、がん、特に固形腫瘍の処置である。
【0131】
本発明の好ましい態様において、本明細書において記載されるとおりの本発明の側面の対象は、哺乳動物、好ましくはネコ、イヌ、ウシ、ロバ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ハムスター、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットであるが、最も好ましくは対象は、ヒトである。したがって、本明細書において記載されるとおりの全ての側面において、対象は、好ましくはヒトである。
【0132】
本明細書において用いられる場合、用語「がん」、「がん性」または「悪性の」とは、典型的には調節されない細胞増殖により特徴づけられる、哺乳動物における生理学的状態を指すか、またはこれを説明する。
本明細書において用いられる場合、用語「腫瘍」とは、それが、がんを診断されているか、がんを有することが疑われる対象に適用される場合、任意のサイズの、悪性であるか、または潜在的に悪性である新生物または組織塊を指し、原発腫瘍および続発性の新生物を含む。用語「がん」、「悪性腫瘍」、「新生物」、「腫瘍」および「細胞腫」はまた、本明細書において、細胞増殖の制御の著しい喪失により特徴づけられる異常な増殖表現型を示す腫瘍および腫瘍細胞を指すために、互換的に用いることができる。一般に、処置のための目的の細胞として、前癌性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性および非転移性の細胞が挙げられる。本開示の教示は、任意のおよび全ての腫瘍に関連し得る。
【0133】
腫瘍の例として、これらに限定されないが、細胞腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫および肉腫が挙げられる。かかるがんのより特定の例として、扁平細胞癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞癌(HCC)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、胃腸(管)癌、腎癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、メラノーマ、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形神経膠芽腫、子宮頚癌、脳癌、胃癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、および頭頸部癌が挙げられる。
【0134】
一側面において、腫瘍は、固形腫瘍を含む。固形腫瘍の例は、肉腫(組織、例えば海綿骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管性、造血性または線維性結合組織中の、間葉系由来の形質転換した細胞から生じるがんを含む)、細胞腫(上皮細胞から生じる腫瘍を含む)、中皮腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫などである。固形腫瘍を含む腫瘍として、限定することなく、脳癌、肺癌、胃癌、十二指腸癌、食道の癌、乳癌、結腸および直腸の癌、腎癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、メラノーマ、口腔癌、肉腫、眼の癌、甲状腺癌、尿道癌、膣癌、頚部癌、リンパ腫などが挙げられる。
【0135】
別の特定の態様において、腫瘍は、浸潤性乳癌、結腸腺癌、頭頸部扁平上皮癌、胃腺癌、肺腺癌(NSCLC)、肺扁平細胞癌(NSCLC)、腎淡明細胞癌(kidney renal clear cell carcinoma)、皮膚性メラノーマ、食道癌、子宮頚癌、肝細胞癌、メルケル細胞癌、小細胞肺癌(SCLC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、尿路上皮癌、高マイクロサテライト不安定性(Microsatellite Instability-High:MSI-H)癌およびミスマッチ修復欠損(dMMR)癌からなる群より選択される。
【0136】
さらなる態様において、腫瘍は、乳癌、子宮体癌、肺癌、胃癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、結腸直腸癌、および腎臓癌からなる群より選択される。なおさらなる態様において、腫瘍は、浸潤性乳癌、結腸腺癌、頭頸部扁平上皮癌、胃腺癌、肺腺癌(NSCLC)、肺扁平細胞癌(NSCLC)、腎淡明細胞癌、および皮膚性メラノーマからなる群より選択される。一側面において、がんは、CCR8を発現する腫瘍を含み、これは、これらに限定されないが、乳癌、子宮体癌、肺癌、胃癌、頭頸部扁平上皮癌、皮膚癌、結腸直腸癌、および腎臓癌を含む。1つの特定の態様において、腫瘍は、乳癌、結腸腺癌、および肺癌からなる群より選択される。
【0137】
本明細書において用いられる場合、用語「投与」とは、薬物、プロドラッグ、抗体または他の剤、または治療的処置を、生理学的な系(例えば、対象、またはin vivo、in vitroもしくはex vivoの細胞、組織、および臓器)に与える行為を指す。ヒトの身体への投与の例示的な経路は、口(経口)、皮膚(経皮)、口腔粘膜(頬側)、耳を通したもの、注射によるもの(例えば、静脈内で、皮下で、腫瘍内で、腹腔内で、など)その他であってよい。本発明のTreg枯渇剤の、またはLTBRアゴニストの投与という用語は、Treg枯渇剤の、またはLTBRアゴニストの、直接的投与、ならびに、対象において当該核酸からTreg枯渇剤またはLTBRアゴニストが生成されるように、Treg枯渇剤またはLTBRアゴニストをコードする核酸を投与することによる、間接的投与を含む。Treg枯渇剤の、またはLTBRアゴニストの投与は、したがって、in vivoでのTreg枯渇剤またはLTBRアゴニストの生成をもたらすDNAおよびRNA治療方法を含む。
【0138】
腫瘍を「処置する」または「処置すること」への言及は、本明細書において用いられる場合、例えば、腫瘍細胞の数の減少、腫瘍サイズの減少、周辺の臓器中へのがん細胞の浸潤の速度の低下、または腫瘍転移もしくは腫瘍増殖の速度の低下などの、少なくとも1つの治療効果の達成を定義する。本明細書において用いられる場合、用語「調節する」とは、化合物の、細胞の機能(細胞の増殖、浸潤、血管新生、アポトーシスなどを含むがこれらに限定されない)のある側面に影響を及ぼす(例えば、これを促進するか処置される)活性を指す。
【0139】
がんにおける正の治療効果は、多数の方法(例えば、Weber (2009) J Nucl Med 50, 1S-10S)において測定することができる。例として、腫瘍増殖阻害に関して、国立癌研究所(National Cancer Institute:NCI)の基準によれば、T/C≦42%は、抗腫瘍活性の最小レベルである。T/C(%)=処置された腫瘍容積の中央値/対照の腫瘍容積の中央値×100により、T/C<10%は、高い抗腫瘍活性レベルであるとみなされる。いくつかの態様において、治療有効量により達成される処置は、無増悪生存(PFS)、無病生存(DFS)または全生存(OS)のうちのいずれかである。PFSは、「腫瘍進行までの時間」としても言及され、処置の間および後の、がんが増殖しない時間の長さを示し、患者が完全な応答または部分的な応答を経験した時間の量、ならびに患者が安定した疾患を経験した時間の量を含む。DFSは、処置の間および後の、患者が疾患を有しないでい続ける時間の長さを指す。OSは、ナイーブまたは未処置の個体または患者と比較した、平均余命の延長を指す。
【0140】
「予防(prevention)」(または予防(prophylaxis))への言及は、本明細書において用いられる場合、がんの症状の発症を遅延させるかまたはこれを予防することを指す。予防(prevention)は、絶対的(疾患が全く生じないようなもの)であっても、一部の個体において、または限定された量の時間の間のみ、効果的であってもよい。
【0141】
本発明の好ましい側面において、対象は、確立された腫瘍を有し、すなわち、対象は、例えば固形腫瘍として分類される腫瘍を既に有する。したがって、本発明は、本明細書において記載されるとおり、対象が固形腫瘍などの腫瘍を既に有する場合に用いることができる。したがって、本発明は、既存の腫瘍を処置するために用いることができる治療選択肢を提供する。本発明の一側面において、対象は、既存の固形腫瘍を有する。本発明は、予防(prevention)として、または好ましくは処置として、固形腫瘍を既に有する対象において用いてもよい。一側面において、本発明は、予防剤(preventative)または予防剤(prophylaxis)である。
【0142】
一側面において、本明細書において記載されるとおりの本発明を用いて、例えば他のがんの処置(例えば所与のがんのための標準治療処置)と比較して、腫瘍退縮が増強されてもよく、腫瘍増殖が損なわれるかまたは減少してもよく、および/または生存時間が延長されてもよい。
本発明の一側面において、本明細書において記載されるとおりの、腫瘍の処置または予防(prevention)の方法は、腫瘍を有する対象を同定する、好ましくは固形腫瘍を有する対象を同定するステップをさらに含む。
【0143】
本明細書において記載される治療の投与レジメンであって、腫瘍を有する患者を処置するために効果的であるものは、患者の疾患の状態、年齢および体重、ならびに治療が対象において抗がん応答を誘発する能力などの要因に依存して変化し得る。適切な投与量の選択は、当業者の能力の範囲内であろう。例えば、0.01、0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40または50mg/kg。いくつかの態様において、かかる量は、投与レジメンによる投与のために適切な単位投与量(またはその分子と分母が同じ数の分数(a whole fraction))であって、関連がある集団に投与された(すなわち、治療的投与レジメンにより)場合に、所望されるかまたは有益な治療成績と相関すると決定されているものである。
【0144】
本明細書において記載されるとおりの本発明の任意の側面による組み合わせ、組成物および二重特異性分子は、医薬組成物の形態におけるものであってもよく、これは、付加的に、薬学的に受入可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む。本明細書において用いられる場合、用語「薬学的に受入可能な担体」または「薬学的に受入可能な賦形剤」は、活性成分と組み合わされた場合に、当該成分が生物学的活性を保持することを可能にする、任意の材料を含む。薬学的に受入可能な担体は、組成物を増強または安定化するか、組成物の調製を容易にするために用いることができる。薬学的に受入可能な担体として、当業者には公知であるとおり、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などであって、生理学的に適合可能であるものが挙げられる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990年、pp.1289-1329;Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Pharmaceutical Press、2011年;およびこれらのその後のバージョンを参照)。前記薬学的に受入可能な担体の非限定的な例は、標準的な薬学的担体のうちのいずれか、例えば、リン酸緩衝化食塩水溶液、水、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、および多様な型の湿潤化剤を含む。
【0145】
これらの組成物として、例えば、液体、半固体および固体の投与処方物、例えば液体の溶液(例えば、注射可能および注入可能な溶液)、分散または懸濁液、錠剤、丸剤、またはリポソームが挙げられる。いくつかの態様において、好ましい形態は、意図される投与の様式および/または治療的適用に依存して変化し得る。組み合わせ、組成物または二重特異性分子を含む医薬組成物は、限定することなく、経口、粘膜、吸入による、局所、頬側、鼻、直腸または非経口(例えば、静脈内、注入、腫瘍内、節内、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、経皮、または対象の組織の物理的侵害を伴う他の種類の投与、および組織の侵害を通しての医薬組成物の投与)を含む、当該分野において公知の任意の適切な方法により投与することができる。かかる処方物は、例えば、皮内、腫瘍内もしくは皮下投与のために、または静脈内注入のために好適である、注射可能または注入可能な溶液の形態であってもよい。特定の態様において、結合剤または核酸は、静脈内投与される。投与は、間欠投与を含んでもよい。あるいは、投与は、少なくとも選択された期間にわたる、他の化合物の投与と同時に、またはその間の、持続投与(例えば、灌流)を含んでもよい。
【0146】
本発明の処方物は、一般にの、本発明の組み合わせにおいて定義されるとおりの、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤、およびLTBRアゴニストの、治療有効量を含む。「治療的レベル」、「治療有効量」または「治療的量」とは、投与された活性剤の量または濃度であって、状態の症状を軽減または予防するために、状態を安全に処置するために適切であるものを意味する。
【0147】
いくつかの態様において、本発明の組み合わせにおいて定義されるとおりの、Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤、およびLTBRアゴニストは、徐放性処方物、例えばインプラント、経皮貼付剤、およびマイクロカプセル化された送達系などの、迅速な放出および/または分解に対してそれを保護する担体と共に調製することができる。生分解性の、生体適合性のポリマーを用いることができる。
【0148】
当業者は、例えば、送達の経路(例えば、経口、対、静脈内、対、皮下、対、腫瘍内など)は、投与量に影響を及ぼし得、および/または、必要とされる投与量は、送達の経路に影響を及ぼし得ることを、理解するであろう。例えば、特定の部位または位置内(例えば、腫瘍内)での特に高い濃度の剤が目的となる場合、集中的な送達(例えば、この例においては、腫瘍内送達)が望ましいおよび/または有用である場合がある。所与の治療レジメンについて経路および/または投与スケジュールを最適化する場合に考慮されるべき他の要因として、例えば、処置されている特定のがん(例えば、型、ステージ、位置など)、対象の臨床的状態(例えば、年齢、全体的な健康など)、組み合わせ治療の存在または不在、および医師に公知の他の要因が挙げられ得る。特定の態様において、Treg枯渇剤は、静脈内投与される。別の特定の態様において、LTBRアゴニストは、静脈内投与される。さらなる特定の態様において、Treg枯渇剤およびLTBRアゴニストは、静脈内投与される。
【0149】
医薬組成物は、典型的には、製造および貯蔵の条件下において、無菌かつ安定であるべきである。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、懸濁液、リポソーム、または高い薬物濃度に好適な他のオーダーされた構造として処方することができる。無菌の注射可能溶液は、結合剤を、必要とされる量において、必要に応じて上で列挙された材料のうちの1つまたは組み合わせと共に、好適な溶媒中に組み込み、その後、ろ過滅菌することにより、調製することができる。非経口投与のための処方物として、これらに限定されないが、本明細書において議論されるとおり、懸濁液、溶液、油性または水性のビヒクル中のエマルジョン、ペースト、および移植可能な持続放出または生分解性の処方物が挙げられる。無菌の注射可能な処方物は、非毒性の非経口的に受入可能な希釈剤または溶媒を用いて調製してもよい。本発明による使用のための各々の医薬組成物は、使用される投与量および濃度において対象にとって非毒性である、薬学的に受入可能な分散剤、湿潤化剤、懸濁剤、等張化剤、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、担体、賦形剤、塩、または安定化剤を含んでもよい。好ましくは、かかる組成物は、所与の方法および/または投与の部位と適合可能な、例えば非経口(例えば、皮下、皮内、または静脈内注射)、腫瘍内、または腫瘍周囲投与のための、がんの処置における使用のための薬学的に受入可能な担体または賦形剤を、さらに含んでもよい。
【0150】
本発明による使用のための処置方法または組成物の態様は、全ての対象において正の治療効果を達成することにおいては効果的ではない場合があるが、一方で、良好な医療行為、ならびに、スチューデントt検定、X検定、マン・ホイットニーによるU検定、クラスカル・ウォリス検定(H検定)、ヨンクヒール・タプストラ検定およびウィルコクソン検定などの当該分野に置いて公知の任意の統計学的試験により決定された場合に統計学的に有意な数の対象と一致する、医薬組成物および投与レジメンを用いることにおいては、それは効果的であるはずである。
【0151】
本明細書において、前におよび後に、腫瘍、腫瘍疾患、細胞腫またはがんが言及される場合、元の臓器または組織における、および/または任意の他の位置における転移もまた、腫瘍および/または転移の位置がどこであろうと、代替的に、または付加的に、関連付けられる。
【0152】
いくつかの態様において、がんに対する異なる剤が、本発明の組み合わせ、組成物または二重特異性分子と組み合わせて、同じまたは異なる送達の経路を介して、および/または異なるスケジュールにより、投与されてもよい。代替的に、または付加的に、いくつかの態様において、第1の活性剤の1つ以上の用量は、1つ以上の他の活性剤と、実質的に同時に、および、いくつかの態様においては、一般的な経路を介して、および/または単一の組成物の部分として、投与される。当業者は、さらに、本発明により提供される組み合わせ治療のいくつかの態様は、相乗効果を達成することを理解するであろう;いくつかのかかる態様において、組み合わせにおいて利用される1つ以上の剤の用量は、実質的に異なっても(例えば、低くとも)よく、および/または、剤が異なる治療レジメンにおいて(例えば、単剤治療として、および/または異なる組み合わせ治療の部分として)利用される場合に、標準的であるか、好ましいか、または必要とされるものに対して、代替的な経路により送達されてもよい。
【0153】
いくつかの態様において、2つ以上の活性剤が本発明により利用される場合、かかる剤は、同時に、または連続的に投与することができる。いくつかの態様において、1つの剤の投与は、別の剤の投与に対して、特に時間を合わせる。例えば、いくつかの態様において、第1の剤は、特定の効果が観察されるように(または観察されることが予想される、例えば、所与の投与レジメンと特定の目的の効果との間の相関を示す集団研究に基づいて)投与される。いくつかの態様において、組み合わせにおいて投与される剤についての所望される相対的な投与レジメンは、例えばex vivo、in vivoおよびin vitroモデルを用いて、評価されるかまたは経験的に決定され得る;いくつかの態様において、かかる評価または経験的決定は、in vivoで、患者の集団において(例えば、相関が確立されるように)、または代替的に、目的の特定の患者において、行われる。
【0154】
「組み合わせにおける」またはさらなる治療の投与を含む処置は、本発明による任意の側面の投与の前か、これと同時化、またはこれの後の、付加的な治療の投与を指し得る。組み合わせ処置は、したがって、同時、別々、または連続的に、投与することができる。
【0155】
別の態様において、本発明は、上記の組み合わせ、組成物および/または二重特異性分子を含む、キットを提供する。いくつかの態様において、キットは、薬学的に受入可能な担体またはそれの賦形剤をさらに含む。他の関連する態様において、キット中の上の組み合わせの構成成分のうちのいずれかは、単位用量、特に本明細書において記載される投与量において存在する。さらなる態様において、キットは、上の組み合わせの構成成分のうちのいずれかを対象に投与することにおける使用のための説明書を含む。1つの特定の態様において、キットは、本明細書において記載されるとおりのTreg枯渇剤、特にCCR8結合剤、およびLTBRアゴニストを含む。Treg枯渇剤、特にCCR8結合剤およびLTBRアゴニストは、同じ組成物中に、または異なる組成物中に存在する。
【0156】
1つの特定の態様において、本発明は、本明細書において記載されるとおりの組み合わせ、組成物および/または二重特異性分子を含む、パッケージを提供し、ここで、パッケージは、免疫チェックポイント阻害剤による処置も受ける腫瘍患者に結合剤を投与するための説明書を伴うリーフレットを、さらに含む。
【0157】
さらに別の特定の態様において、本発明は、本明細書において記載されるとおりの疾患の処置のための医薬の製造のための、LTBRアゴニストの使用を提供し、ここで、処置は、本明細書において記載されるとおりのTreg枯渇剤の投与をさらに含む。別の特定の態様において、本発明は、本明細書において記載されるとおりの疾患の処置のための医薬の製造のための、本明細書において記載されるとおりのTreg枯渇剤の使用を提供し、ここで、処置は、LTBRアゴニストの投与をさらに含む。別のさらなる態様において、本発明は、本明細書において記載されるとおりの疾患の処置のための医薬の製造のための、本明細書において記載されるとおりのLTRBアゴニストおよびTreg枯渇剤の使用を提供する。本発明は、本明細書において記載されるとおりの疾患、特にがんの処置のための、本明細書において記載されるとおりの医薬組成物をさらに提供する。
【0158】
本発明は、ここで、以下の例によりさらに説明されるであろう。例は、図面を参照して、本発明を実施することにおいて当業者を補佐するために役立つことを意図され、決して、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0159】

以下の例は、本発明のある好ましい態様および側面を示し、さらに図示するために提供され、それらの範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【0160】
例1:LTBRレポーターアッセイ
安定なLTBRレポーター細胞株の作製
ヒト細胞株背景における機能的シグナル伝達を保証するために、マウスオルトログの細胞内部分がヒトのカウンターパートにより置き換えられた、マウス-ヒトキメラLTBRコード配列を担持する、トランスジェニックコンストラクトを作製した。ヒトNFβBルシフェラーゼレポーターHEK293安定細胞株(Signosis、cat.#SL-0012)を、37℃および5%COで、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)ならびに100U/mLのペニシリンおよびストレプトマイシン(Gibco)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco)中で、培養した。トランスフェクションの前に、細胞を、6ウェルのプレート(Greiner)の1ウェルあたり7.5×10細胞の密度で播種し、一晩培養した。40%のおおよそのコンフルエンスに達した後、FUGENE HDトランスフェクション試薬(Promega)を用いて、マウス-ヒトキメラLTBR導入遺伝子を担持する直鎖化したpcDNA3.1で、細胞をトランスフェクトした。6時間後、細胞上清を注意深く取り除き、フレッシュな完全DMEMで置き換えた。48時間後、発現カセットを保有するジェネテシン耐性の遺伝子導入体を選択するために、培養培地を、500μg/mLのG-418(Thermofisher Scientific)を含むように置き換えた。培地を、2~3日毎に交換し、3週間後に、モノクローナル系統を得るために、1ウェルあたり10細胞から開始して、1:2の限界希釈を行った。LTBRを発現するモノクローナル系統の同定は、フィコエリトリン標識マウス抗マウスLTBR mAb 5G11(Abcam、cat.#ab65089)を用いて、フローサイトメトリーにおいて10細胞を得ることに基づいた(Attune NxT、Thermofisher Scientific)。
【0161】
レポーターアッセイ
細胞を、ポリ-D-リジン(PDL)コートされた96ウェルのプレート(Greiner)において、6.0×10細胞/ウェルの密度において播種し、37℃および5%COで、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)ならびに100U/mLのペニシリンおよびストレプトマイシン(Gibco)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco)中で、一晩培養した。化合物(VHHおよびmAb)を、様々な濃度において6時間にわたりインキュベートし、LTBRに対してNFκB転写を誘導するそれらのアゴニスト性活性について評価した。Steadylite plusレポーター遺伝子アッセイ系(PerkinElmer、cat.#6066756)を製造者の説明書に従って用いて、EnSight(商標)マルチモードプレートリーダー(PerkinElmer)上でルシフェラーゼ活性を測定した。用量依存的様式においてレポーターを活性化するアゴニスト性抗マウスLTBR mAb 5G11(Abcam、cat.#ab65089)の滴定により、安定レポーター細胞株の最終QCを行った。
【0162】
例2:マウスCCR8 VHHの作製
CCR8 DNAの免疫
ラマおよびアルパカのCCR8のDNAによる免疫化を、本質的にはPardon E.ら著(A general protocol for the generation of Nanobodies for structural biology, Nature Protocols, 2014, 9(3), 674-693)ならびにHenry K.A.およびMacKenzie C.R.編(Single-Domain Antibodies: Biology, Engineering and Emerging Applications. Lausanne: Frontiers Media)において開示されるとおり行った。簡単に述べると、動物を、4回、2週間の間隔で、2mgの、発現ベクターpVAX1(ThermoFisher Scientific Inc.、V26020)中に挿入されたマウスCCR8をコードするDNAで免疫化し、その後、血液試料を採取した。3か月後、全ての動物に、2mgの同じDNAの単一の投与を行い、その後、血液試料を採取した。
【0163】
ファージディスプレイライブラリー調製
末梢血単核細胞(PBMC)から誘導されたファージディスプレイライブラリーを、Pardon E.ら著(A general protocol for the generation of Nanobodies for structural biology, Nature Protocols, 2014, 9(3), 674-693)ならびにHenry K.A.およびMacKenzie C.R.編(Single-Domain Antibodies: Biology, Engineering and Emerging Applications. Lausanne: Frontiers Media)において記載されるとおりに、調製して用いた。VHHフラグメントを、MYCおよびHis6タグを含むM13ファージミドベクター中に挿入した。指数関数的に増殖しているEscherichia coli TG1[(F’traD36 proAB laclqZ ΔM15)supE thi-1 Δ(lac-proAB)Δ(mcrB-hsdSM)5(rK- mK-)]細胞を感染させ、その後、VCSM13ヘルパーファージで二次感染(surinfection)させることにより、ライブラリーをレスキューした。
【0164】
ファージディスプレイライブラリーを、pVAX1中に挿入されたマウスCCR8を一過性にトランスフェクトされたHEK293T細胞と、その後のpVAX1中に挿入されたマウスCCR8で一過性にトランスフェクトされたCHO-K1細胞とにおける、2回の連続的な選択ラウンドに供した。第2の選択ラウンドから溶離したファージを感染させたE. coli TG1細胞から、ポリクローナルファージミドDNAを調製した。これらの試料からのPCRによりVHHフラグメントを増幅し、N末端PelBシグナルペプチドおよびC末端FLAG3およびHis6タグを有するフレームにおいて、E. coli発現ベクター中にサブクローニングした。エレクトロコンピテントE. coli TG1細胞を、結果として生じるVHH-発現プラスミドライゲーション混合物により形質転換させ、個々のコピーを、96ディープウェルプレート中で増殖させた。本質的にはPardon E.ら(A general protocol for the generation of Nanobodies for structural biology, Nature Protocols, 2014, 9(3), 674-693)において記載されるとおり、モノクローナルVHHを発現させた。細菌ペレットを一晩冷凍し、その後、PBS中で再懸濁して細胞デブリを取り除くことにより、VHHを含む粗周辺質抽出物を調製した。
【0165】
CCR8選択のアウトプットについてのスクリーニング
CCR8を発現する組み換え細胞を、細胞を解離させた非酵素的溶液(Sigma Aldrich、C5914-100mL)を用いて回収し、FACSバッファー中で1.0×10細胞/mlの最終濃度まで再懸濁した。VHHを含む粗周辺質抽出物の希釈物(FACSバッファー中、1:5)を、FACSバッファー中で5μg/mlにおいて、マウス抗FLAGビオチン化抗体(Sigma Aldrich、F9291-1MG)と共に、30分間にわたり振盪しながら室温においてインキュベートした。細胞懸濁液を、96ウェルのv底プレート中に分注し、VHH/抗体混合物と共に1時間、氷上で振盪しながらインキュベートした。VHHの細胞への結合は、FACSバッファー中1:400希釈(0.18μg/ml)におけるストレプトアビジンR-PE(Invitrogen、SA10044)と共に、30分にわたり暗室において氷上で振盪しながらインキュベートすることにより検出した。一過性にトランスフェクトされた細胞株上でのmCCR8の表面発現は、2μg/mlにおけるPE抗マウスCCR8(Biolegend、150311)抗体により確認した。
【0166】
マウスのCCR8免疫化および選択キャンペーンから生じたVHHクローンを、フローサイトメトリーにより、mCCR8により、またはN末端欠失マウスCCR8(デルタ16-3XHA)プラスミドDNAにより先にトランスフェクトされたHEK293細胞への結合について、模擬(mock)トランスフェクトされた対照細胞と比較して、スクリーニングした。3つの細胞株の間の所与のVHHクローンの結合(蛍光強度中央値)シグナルの比較により、N末端マウスCCR8結合剤(すなわち、mCCR8細胞に対して結合するが、マウスCCR8(デルタ16-3XHA)もしくは対照細胞に対しては結合しない)としての、または細胞外ループmCCR8結合剤(すなわち、mCCR8細胞に対して、およびマウスCCR8(デルタ16-3XHA)に対して結合するが、対照細胞に対しては結合しない)としての、前記クローンの分類が可能となった。
【0167】
一価CCR8 VHHの精製および評価
CCR8に結合するVHHをコードする合成DNAフラグメントを、E. coli 発現ベクター中に、IPTG誘導性lacプロモーターの制御下において、N末端PelBシグナルペプチドとインフレームで、周辺質のカウンターパートのターゲティング、ならびにC末端FLAG3およびHis6タグのために、サブクローニングした。エレクトロコンピテントE. coli TG1細胞を形質転換し、生じたクローンの配列を決定した。VHHタンパク質を、これらのクローンから、本質的にはPardon E.ら(A general protocol for the generation of Nanobodies for structural biology, Nature Protocols, 2014, 9(3), 674-693)において記載されるとおり、IMACクロマトグラフィーとその後の脱塩により精製した。
【0168】
マウスのCCR8免疫化キャンペーンから得られた2つの精製されたVHH(本明細書において以後、VHH-01およびVHH-06)を、フローサイトメトリーにより、mCCR8に対するそれらの結合について、N末端欠失mCCR8と比較して、選択および評価した。この判定の結果を、図1においてまとめる。VHH-01は、全長およびN末端欠失マウスCCR8の両方に結合し、一方、VHH-06は、全長マウスCCR8のみに結合する。
【0169】
一価CCR8 VHHについての結合および機能の特徴づけ
cAMPの均一系時間分解蛍光(Homogenous Time Resolved Fluorescence:HTRF)アッセイ
cAMP蓄積実験において、2つの選択された一価のVHH(VHH-01およびVHH-06)を、それらが、マウスCCR8を提示するCHO-K1細胞に対して、マウスCCL1シグナル伝達を機能的に阻害する潜在能力について評価した。
【0170】
組み換えマウスCCR8を安定的に発現するCHO-K1細胞は、試験の前に、抗生物質を含まない培地中で増殖させ、PBS-EDTA(5mMのEDTA)でフラッシュすることにより脱離させ、遠心分離により回収し、KHRバッファー(5mMのKCl、1.25mMのMgSO、124mMのNaCl、25mMのHEPES、13.3mMのグルコース、1.25mMのKHPO、1.45mMのCaCl、0.5g/lのBSAに、1mMのIBMXを補充したもの)中で再懸濁した。12マイクロリットルの細胞を、三つ組みにおいて、6マイクロリットルのVHH(最終濃度:1μM)と混合し、30分間にわたりインキュベートした。その後、フォルスコリンとマウスCCL1(R&D Systems、845-TC)との混合物6マイクロリットルを、そのEC80値に対応する最終濃度において添加した。プレートを、次いで、30分間にわたり室温でインキュベートした。溶解バッファーの添加および1時間のインキュベーションの後で、HTRFキット(Cisbio、62AM9PE)により、製造者の仕様書に従って、蛍光比を測定した。
【0171】
1μMにおいて、VHH-01は、cAMPレベルに対するCCL1の作用を阻害したが、一方、VHH-06は、cAMPレベルを対象(PBS)と比較して変更しなかった。これらのデータは、VHH-01は、CCR8の遮断性結合剤であるが、一方、VHH-06は非遮断性結合剤であることを示す。
【0172】
Ca 2+ 放出アッセイ
VHH-01が、mCCR8を提示するCHO-K1細胞上でのマウスCCL1シグナル伝達を機能的に阻害する潜在能力を、Ca2+放出実験においてさらに評価した。
組み換え細胞(マウスCCR8を安定的に発現するCHO-K1 mt-エクオリン)を、18時間にわたり、抗生物質を含まない培地中で増殖させ、PBSEDTA(5mMのEDTA)でフラッシュすることにより温和に脱離させ、遠心分離により回収し、アッセイバッファー(HEPES+0.1% BSAを添加したDMEM/ハムF12、プロテアーゼフリー)中で再懸濁した。細胞を、次いで、室温で、少なくとも4時間にわたり、セレンテラジンh(Molecular Probes)と共にインキュベートした。細胞とVHH(最終濃度:1μM)との混合物100μlの第1の注射の30分後に、100μlのマウスCCL1(R&D Systems、845-TC)を、EC80値に対応する最終濃度において添加し、混合物中に注入した。結果として生じたスペクトル発光を、Functional Drug Screening System 6000(FDSS 6000、Hamamatsu)を用いて記録した。
VHH-01は、実際、94%による強力なCa2+放出の阻害をもたらし、VHH-01がCCR8の遮断性結合剤であることを確認した。
【0173】
例3.CCR8 VHH-Fc融合物の作製
CCR8 VHH-Fc融合物の合成および精製
VHH-Fc-14は、抗CCR8 VHHを、フレキシブルGlySerリンカー(10GS)により分離したマウスIgG2aFcドメインと組み合わせることにより作製した。VHH-Fc-14は、2つのVHH-06結合剤に加えて、2つのVHH-01結合剤を含む。コンストラクトを、pcDNA3.4哺乳動物発現ベクター中に、発現された組み換えタンパク質を細胞外環境に指向させるために、マウスIg重鎖V領域102シグナルペプチドとインフレームで、クローニングした。DNAの合成およびクローニング、細胞トランスフェクション、Expi293F細胞におけるタンパク質生成、ならびにタンパク質A精製は、Genscript(GenScript Biotech B.V., Leiden, Netherlands)により行われた。
【0174】
CCR8 VHH-Fc融合物によるCCR8の結合の確認
多価VHH-Fc融合物VHH-Fc-14を、BW5147細胞上で内因的に発現したマウスCCR8に結合するその能力について、フローサイトメトリー実験により評価した。細胞を、様々な濃度の多価VHH-Fc融合物と共に、30分間にわたり4℃でインキュベートし、その後、30分間にわたり4℃で、AF488ヤギ抗マウスIgG(Life Technologies、A11029)またはAF488ラバ抗ラットIgG(Life Technologies、A21208)と共にインキュベートし、その後、2回の洗浄ステップを行った。TOPRO3(Thermo Fisher Scientific、T3605)を用いて死細胞を染色した。VHH-Fc-14の結合は、9.14±0.39MのpEC50値を有する(n=6)(平均±標準偏差)。
【0175】
CCR8 VHH-Fc融合物による機能的阻害
アポトーシスアッセイ
VHH-Fc-14を、アポトーシスアッセイにおいて、アゴニスト性リガンドCCL1の作用を機能的に阻害するその能力について試験した。
デキサメタゾンは、CCR8を内因的に発現するマウスリンパ腫BW5147細胞において細胞死を誘導する。デキサメタゾン誘導性細胞死は、アンタゴニストリガンドCCL1の添加により逆転させることができる(Van Snick et al., 1996, Journal of immunology, 157, 2570-2576;Louahed et al., 2003, European Journal of Immunology, 33, 494-501;Spinetti et al., 2003, Journal of Leukocyte Biology, 73, 201-207;Denis et al., 2012, PLOS One, 7, e34199)。50μlの細胞(イスコフ-ダルベッコ培地+10%FBS、50μMの2-ME、1.25mMのl-グルタミン中で、2.75×10細胞/mlにおいて播種される)を、30μlのVHH-Fc融合物の連続希釈物と共に30分間にわたり37℃でインキュベートした。次いで、デキサメタゾン(Sigma-Aldrich、D4902)とヒトCCL1(Biolegend、582706)との混合物20μlを、各々10nMの最終濃度まで添加した。48時間の37℃でのインキュベーションの後で、ATPlite 1-step litを製造者の説明書に従って用いて(Perkin Elmer, 6016736)、細胞の生存率を定量した。この判定のこれらの結果を、図2において表す。
VHH-Fc融合物VHH-Fc-14は、アッセイにおいて、9.29±0.22MのpIC50値(n=9)(平均±標準偏差)により、強力な機能的阻害を提供する。
【0176】
cAMPアッセイ
VHH-Fc-14を、例2において記載されるとおり、cAMPアッセイにおいて試験した。VHH-Fc-14は、50nM以上の濃度において、8.54MのpIC50値により、cAMPシグナルの100%の阻害を提供し、このことは、やはり、それが遮断性CCR8結合剤であることを確認する。
【0177】
例4.CCR8 VHH-Fc融合物は腸Tregレベルに影響を及ぼす
腫瘍内および他のTregレベルに対する細胞傷害性CCR8結合剤の効果を研究するために、VHH-Fc-14を、ADCC活性が増大した、およびこれが消失したVHH-Fc融合物を得るために修飾した。増大したADCC活性は、VHH-Fc-14の脱フコシル化(a-fucosylation)(VHH-Fc-43)を通して得られた。あるいは、VHH-Fc-14において、LALAPG Fc変異の挿入を通してADCC活性を消失させた(VHH-Fc-41)(Lo et al., 2017, Journal of Biological Chemistry, 292, 3900-3908)。コンストラクトを、哺乳動物発現ベクターであるpQMCFベクター中に、分泌シグナルペプチドとインフレームでクローニングし、CHOEBNALT85 1E9細胞にトランスフェクトし、その後、発現させ、タンパク質Aおよびゲルろ過クロマトグラフィー(Icosagen Cell Factory, Tartu, Estonia)を行った。Fc部分のCH2ドメインにおいて脱フコシル化N-グリカンを有するバージョンは、GlymaxX技術を担持するCHOEBNALT85細胞株における発現から得られた(ProBioGen AG, Berlin, Germany)(Icosagen Cell Factory, Tartu, Estonia)。タンパク質を、0.22mmで無菌ろ過した。280nmにおける吸光度の測定によりタンパク質濃度を決定し、SDS-PAGEおよび分子ふるいクロマトグラフィーにより純度を決定した。LAL試験(Charles-River Endochrome)により、エンドトキシンレベルを判定した。対照であるmIgG2aアイソタイプは、BioXCellから購入した。VHH-Fc-41(9.33MのpEC50値(n=1))およびVHH-Fc-43(9.23±0.17MのpEC50値(n=2))は、BW5147細胞上のCCR8に同等に結合する。加えて、VHH-Fc-41(9.51±0.02MのpIC50値(n=2))およびVHH-Fc-43(9.39±0.11MのpIC50値(n=4))(平均±標準偏差)はいずれも、BW147アポトーシスアッセイにおいて、CCL1の作用を強力に阻害する。全ての値は、平均±標準偏差として示す。
【0178】
ADCC活性を伴う、およびこれを伴わない、これらの遮断性CCR8 VHH-Fc融合物の効果を試験するために、3×10細胞のLLC-OVA細胞(200μl)を、メスC57BL/6マウス(6~12週)において皮下注射した。第4日において、マウスを、200μgの抗CCR8 VHH-Fc(VHH-Fc-41もしくはVHH-Fc-43)またはマウスIgG2a(対照)で、週1回(すなわち、第4、11日)処置した(nマウス/群=5)。
第16日において、マウスを安楽死させ、各々のマウスから腫瘍、血液および腸を採取した。
【0179】
組織を小片に切断し、その後、10U・ml-1のコラゲナーゼI、400U・ml-1のコラゲナーゼIVおよび30U・ml-1のDNaseI(Worthington)で、25分間にわたり37℃で処置することにより、腫瘍シングルセル懸濁液を得た。組織を、その後、押し潰し、ろ過した(70μm)。得られた細胞懸濁液から、赤血球溶解バッファー(155mMのNH4Cl、10mMのKHCO3、500mMのEDTA)を用いて赤血球細胞を取り除き、その後、RPMIで中和した。白血球のみが残されるまで繰り返される5分間にわたる赤血球溶解バッファー中でのインキュベーションのラウンドを通して、血液の赤血球細胞を枯渇させた。
【0180】
先に記載されるとおり(C. C. Bain, A. McI. Mowat, CD200 receptor and macrophage function in the intestine, Immunobiology 217, 643-651 (2012))、腸のシングルセル懸濁液を調製した。赤血球の溶解の後で、得られたシングルセル懸濁液を、FACSバッファー(2%のFCSおよび2mMのEDTAにより濃縮されたPBS)中で再懸濁し、計数した。全てのシングルセル懸濁液を、染色の前に15分間にわたり、ラット抗マウスCD16/CD32(2.4G2;BD Biosciences)または抗ヒトFcブロック試薬(Miltenyi)と共に、プレインキュベートした。洗浄の後で、フレキシブルな生存率色素eFluor506(eBioscience)(1:200)で、30分間にわたり、4℃で、および暗室において試料を染色した。その後、30分間にわたり、4℃で、および暗室において試料を、洗浄し、染色した。サイトカイン/ケモカインおよび転写因子の細胞内染色を、、製造者のプロトコルに従って行った:それぞれ(カタログN°554715;BD Biosciences)および(カタログN°00-5523;Invitrogen)。BD FACSCantoII(BD Biosciences)を用いてFACSデータを得、FlowJo(TreeStar, Inc.)を用いて分析した。
【0181】
図3において示すとおり、ADCC活性を有するCCR8遮断性Fc融合物であるVHH-Fc-43により、腫瘍においてTregを枯渇させるが、一方、ADCC活性を欠くVHH-Fc-41については、腫瘍内Treg枯渇は観察されない。いずれのコンストラクトについても、循環中のTregの枯渇は観察さなかった(図4)。
【0182】
例5:LTBRアゴニスト性シングルドメイン抗体部分の作製
免疫化
組み換えタンパク質によるラマおよびアルパカの免疫化を通して、本質的には他の場所で記載されるとおり(Pardon et al., 2014)(Henry and MacKenzie, 2018)、VHHを作製した。簡単に述べると、動物を、6回、1週間の間隔において、50μgの組み換えマウスLTBR-マウスIgG2A Fcキメラタンパク質(R&D Systems、cat.♯1008-LR)で免疫化し、その後、血液試料を採取した。
【0183】
ファージディスプレイライブラリー調製
末梢血単核細胞(PBLC)から誘導されたファージディスプレイライブラリーを、他の場所で記載されるとおり(Pardon et al., 2014;Henry and MacKenzie, 2018)、調製して用いた。VHHフラグメントを、MYCおよびHis6タグを含むM13ファージミドベクター中に挿入した。指数関数的に増殖するEscherichia coli TG1[(F’traD36 proAB laclqZ ΔM15) supE thi-1 Δ(lac-proAB) Δ(mcrB-hsdSM)5(rK- mK-)]細胞を感染させて、その後、VCSM13ヘルパーファージで二次感染させることにより、ライブラリーをレスキューした。マウスLTBR免疫化ファージライブラリーを、マウスLTBR-マウスIgG2A Fcキメラタンパク質(R&D Systems、cat.♯1008-LR)上で、Fcに結合するVHHを除去するために50倍過剰量の総マウスIgGの存在下において、2回の連続した選択のラウンドに供した。個々のコロニーを、96-ディープウェルのプレート中で、異なる選択のラウンドから溶離したファージに感染したE. coli TG1細胞から増殖させた。モノクローナルVHHを、本質的には前に記載されるように発現させた(Pardon et al., 2014)。細菌のペレットを一晩凍結して、その後、PBS中で再懸濁し、遠心分離して細胞デブリを取り除くことにより、VHHを含む粗周辺質抽出物を調製した。
【0184】
LTBR選択アウトプットのスクリーニング
ELISAをマウスLTBRに結合させることにより、免疫化および選択のキャンペーンからのVHHのクローンを、粗周辺質抽出物として、コーティングされていない対照と比較して、スクリーニングした。バイオレイヤー干渉法(biolayer interferometry)により、結合を確認した。
【0185】
ELISA
PBS中、pH7.4で希釈された1μg/mlのmLTBR-mFc(R&D Systems、cat.♯1008-LR)を、96ウェルのマイクロタイタープレート上にコーティングし、その後、PBS(Marvel)中の4%の乾燥スキムミルクでブロッキングした。次いで、モノクローナルVHHクローンからの1:5希釈の粗周辺質抽出物を添加し、その後、いずれもPBS中1%の乾燥スキムミルク中の、1:1000の抗c-myc抗体9E10(Merck、cat.♯11667203001)および1:5000希釈における抗マウスIgG-HRP(Jackson Immuno Research、cat.♯715-035-150)により検出した。適用の間に、プレートを0.05%のTweenを補充したPBS、pH7.4で洗浄した。反応の発生は、100μlのHRP基質TMB(Thermo Fisher、cat.♯00-4201-56)を用いて行われた。100μlの0.5MのHSO(Fisher Scientific、cat.♯J/8430/15)の添加により反応を停止させ、プレートリーダー上でOD450において読み出した。クローンP002MP07G04は、mLTBR-mFcに対して4.458の、これに対してコーティングしていない対照に対しては0.042の、OD450での結合シグナルを有した。
【0186】
バイオレイヤー干渉法(BLI)
バイオレイヤー干渉法(BLI)は、生体分子の相互作用を測定するための、標識フリーの技術であって、バイオセンサーチップ上の固定されたタンパク質の層および内部参照層の2つの表面から反射される白色光の干渉のパターンを分析するものである。バイオセンサーチップに結合した分子の数の任意の変化が、干渉パターンのシフトを引き起こし、それをリアルタイムで測定することができる。バイオセンサーチップ表面上に固定されたリガンドと溶液中の分析物との間の結合が、バイオセンサーチップにおいて光学的厚みの増大を生じ、これが波長のシフトをもたらし、これが、生物学的な層の厚みの変化の直接的な尺度となる。動力学的結合パラメーターであるオフ速度(off-rate)(koff)および解離定数(K)を、Octet RED96eマシン(ForteBio)において製造者の手順に従って決定し、Data Analysis 9.0ソフトウェア(ForteBio)を用いて分析した。抗マウスIgG Fcキャプチャー(ForteBio、cat.#18-5088)チップ上で捕捉されたマウスLTBR-Fc(R&D Systems、cat.♯1008-LR)を、クローンP002MP07G04の1/5希釈された周辺質抽出物中に浸漬し、これは、1.8×10-02-1のkoff値をもたらした。
【0187】
レポーターアッセイ
クローンP002MP07G04を、モノクローナルファージ粒子の上に、多量体の様式においてディスプレイし、レポーターアッセイにおいてスクリーニングして、そのアゴニスト性の潜在能力を無関係な対照と比較して評価した。したがって、2つの異なる形式のモノクローナルファージを評価した:(i)VCSM13によりレスキューされたファージであって、ファージ1粒子あたりある範囲(1~5つ)のVHHフラグメントをディスプレイするもの、および(ii)ヘルパーファージによりレスキューされたファージ(Progen、cat.♯PRHYPE-XS)であって、ファージ1粒子あたり5つのVHHフラグメントをディスプレイするもの。したがって、クローンP002MP07G04は、無関係な対照と比較して、それぞれ4.7および3.2のレポーターアッセイシグナル比を生じ、このことは、P002MP07G04の多価ディスプレイが、マウスLTBRを活性化することができることを示唆している。
【0188】
一価LTBR VHHの生成、精製およびin vitroでの特徴づけ
VHHをコードする合成DNAフラグメントを注文し、E. coli発現ベクター中に、IPTG誘導性lacプロモーターの制御下において、N末端PelBシグナルペプチド(これは、組み換えタンパク質を周辺質コンパートメントへと志向させる)ならびにC末端FLAG3およびHIS6タグとインフレームで、サブクローニングした。エレクトロコンピテントE. coli TG1細胞を形質転換し、結果として生じたクローンの配列を検証した。よく確立された手順に従って(Pardon et al., 2014)、IMACクロマトグラフィーとその後の脱塩により、これらのクローンからVHHタンパク質を精製した。
【0189】
精製された一価P002MP07G04について、抗マウスIgG Fcキャプチャー(ForteBio, cat. #18-5088)チップ上で捕捉されたマウスLTBR-Fc(R&D Systems、cat.♯1008-LR)に対して、55nMの結合KDがBLIにより決定された。
【0190】
100nMの精製された一価P002MP07G04を、そのC末端HIS6タグを通して、抗HisタグmAb(Genscript、cat.♯A00186-100)により、2:1のモル比において、架橋した。この二量体のP002MP07G04のディスプレイは、レポーターアッセイにおいて、LTBR受容体活性化作用を与え、NFκBシグナル対バックグラウンド比は6.8であった。対照的に、架橋されていない一価P002MP07G04は、レポーターアッセイにおいて、100nMにおいては活性ではなかった。
【0191】
多価LTBR VHHの生成、精製およびin vitroでの特徴づけ
20GSフレキシブルGlySerリンカーにより分離された3つのP002MP07G04構成要素と1つの抗血清アルブミン構成要素SA26h5(WO/2019/016237)とを組み合わせた四価VHHであるVHH-16を、本質的には前に記載されるとおり作製した(Maussang et al., 2013;De Tavernier et al., 2016)。多価コンストラクトを、Pichia pastoris発現ベクター中に、AOX1メタノール誘導性プロモーターの制御下において、発現された組み換えタンパク質を細胞外環境へ指向させるN末端Saccharomyces cerevisiaeアルファ接合因子シグナルペプチドとインフレームで、クローニングし、配列を検証した。Pichia pastorisにおける形質転換および発現、ならびにタンパク質A精製による精製は、本質的には前に記載されるとおり行われた(Lin-Cereghino et al., 2005; Schotte et al., 2016)。When tested in the レポーターアッセイにおいて試験される場合、VHH-16は、9.35±0.03の平均(±標準偏差)pEC50値(n=3)で、マウスLTBRを活性化した。
【0192】
例6:LTBRアゴニストとの組み合わせにおける、およびMC38同系マウスモデルにおける腫瘍増殖に対する、Treg枯渇剤の効果
マウスMC38腫瘍モデルを用いて、VHH-Fc-43を用いて、およびLTBRアゴニスト、VHH-16を用いて、抗CCR8の単剤治療および組み合わせ治療の有効性を試験した。
第0日において、5×10のMC38細胞(0.1mlの細胞懸濁液)を、8週齢のメスC57BL/6Jマウスの右側腹部中に皮下注射した。第7日において、動物は、約125mmの平均腫瘍サイズに達し、各10個体の4群に分けられた。マウスに、隔週で、3週間にわたり、200μgのマウスIgG2a、200μgのP00500043、40μgのVHH-16、または200μgのVHH-FC-43+40μgのVHH-16の組み合わせを注射した。体重および腫瘍負荷を、隔週で、3週間の試験の期間にわたり測定した。ノギスで二次元において腫瘍を測定して増殖をモニタリングし、マウスの腫瘍が2000mmの倫理的エンドポイントを超えた場合、そのマウスを安楽死させた。
【0193】
mmにおける腫瘍サイズは、以下から計算した:
腫瘍容積=(w×l)×0.52
ここで、w=mmにおける腫瘍の幅であり、l=mmにおける腫瘍の長さである。
【0194】
4つのコホートについての平均腫瘍サイズを、第0日から開始して第25日まで、図5において表す。単剤治療はいずれも、第14日~第25日に、アイソタイプ対照に対して、腫瘍増殖を制御することにおいて効果的であり、一方、組み合わせの抗CCR8およびLTBRアゴニスト処置は、加えて、両方の単剤治療に対して、第14日に開始して、第25日においてステージを終了し始める腫瘍負荷を減少させることにおいて相乗効果をもたらす。これはまた、全てのアイソタイプ処置された動物(10/10)は、第25日までに2000mmの倫理的エンドポイントに達したが、一方、3/10のVHH-FC-43単剤治療処置された動物、および4/10のVHH-16単剤治療処置された動物のみが、エンドポイントに達したという、カプラン・マイヤー生存曲線において反映される。さらに、組み合わせVHH-FC-43+VHH-16治療の組み合わせで処置されたマウス(0/10)はいずれも、エンドステージに達しなかった(図6)。多様な処置群を比較する混合効果モデルによる二方向ANOVAは、単剤治療および組み合わせ治療の両方と、アイソタイプ対照との間に、第14~21日(高い腫瘍負荷に起因して9/10のマウスを安楽死させたとき)に、統計学的有意差が存在すること、ならびに、組み合わせ治療は、第14~25日においてVHH-16よりも、および第14日においてVHH-FC-43よりも、統計学的に優れていることを示す。ログランク検定は、生存率データを用いて行われ、全ての処置群とアイソタイプ対照との間で、およびVHH-16単剤治療について組み合わせ治療に対して(p値=0.0297)、生存率が増大したことを示した。組み合わせ治療について、VHH-FC-43に対して、生存率の増大に向かう傾向が存在する(p値=0.0676)。図7は、全てのコホートについて、アイソタイプおよび処置された腫瘍において見出される高内皮細静脈(HEV)の数の定量を、HEVの数/腫瘍面積と共に示す。末梢節(peripheral node)アドレシン抗体、AF488抗MECA79(M79)で染色された腫瘍に対して、免疫蛍光染色を行った。推定HEVが同定された場合、AF568抗CD31を用いて血管染色を評価した。HEVが存在する場合、連続的に染色されるCD31陽性血管の管腔側において、非連続的なMECA79シグナルが存在する。各々の腫瘍からの2つの切片を手作業でカウントして、各々の条件について3~4個体の処置マウスから平均を求め、Zen Blueソフトウェアプログラムを用いてDAPI陽性の核の面積から腫瘍面積を計算した。結果は、組み合わせ処置された腫瘍において、各々の単剤治療に対して、HEVの誘導の増大を示し、HEVの局在は、VHH-16単剤治療処置されたマウスにおける腫瘍周囲から、組み合わせ処置された動物における腫瘍中の深部へとシフトする(データは示さず)。加えて、大量のB220陽性B細胞からなる組織化された構造を取り囲む、多数のMECA-79陽性HEV(矢印)からなる、「成熟した」外見の三次リンパ組織様構造(TLS)が、4/6の組み合わせ処置された腫瘍において見出される(図8)。加えて、組み合わせ処置された腫瘍内の深部におけるいくつかのHEVは、多数の個々のB細胞により取り囲まれていた。まとめると、腫瘍負荷の減少、生存率増大に向かう傾向、ならびに組み合わせ処置された動物における、増大したHEVおよびTLS誘導は、LTBR受容体活性化作用とTreg枯渇治療との相乗的活性を示す。
【0195】
例7:MC38同系マウスモデルにおける腫瘍増殖に対する、LTBRアゴニストとの組み合わせにおけるTreg枯渇性抗CTLA4の効果
マウスMC38腫瘍モデルを用いて、Treg枯渇活性を有する抗CTLA4の単剤治療、およびVHH-16を用いるLTBRアゴニストとの組み合わせ治療の有効性を試験した。これらの実験において用いられた抗CTLA4抗体は、以前に記載されている抗mCTLA4 9D9抗体に基づくが、ここで、マウスIgG2bが、マウスIgG2a定常領域により置き換えられている。マウスIgG2aは、それが、マウスにおいてより強力なADCC活性を提供することから選択される(Selby MJ. et al., 2013. Anti-CTLA-4 antibodies of IgG2a isotype enhance antitumor activity through reduction of intratumoral regulatory T cells. Cancer Immunol Res. 1(1):32-42)。
【0196】
第0日において、5×10のMC38細胞(100μL)を、メスC57BL/6Jマウス(7~9週)において皮下注射した。第7日において、動物は、約116mmの平均腫瘍サイズに達し、各々10個体の4群、すなわち、マウスIgG2a(対照)、抗CTLA4単剤治療、CHH-16単剤治療、および抗CTLA4+VHH-16の組み合わせに分けられた。マウスに、第7日から開始して、隔週で3週間にわたり、200μgのマウスIgG2a(対照)および40μgのVHH-16を腹腔内注射した。200μgの抗CTLA4による処置は、第10日に開始し、マウスは、3週間にわたり、週1回投与された。体重および腫瘍負荷は、隔週で、3週間の試験の期間にわたり測定した。ノギスで二次元において腫瘍を測定して、増殖をモニタリングした。
mmにおける腫瘍サイズは、以下から計算した:
腫瘍容積=(w×l)×0.52
ここで、w=mmにおける腫瘍の幅であり、l=mmにおける腫瘍の長さである。
【0197】
4つのコホートについての腫瘍サイズ中央値(mmにおける)を、第0日に開始して、第25日まで、図9において表す。抗CTLA4およびVHH-16により単剤治療として処置されたコホートは、第18日から、アイソタイプ対照と比較して、より小さな腫瘍サイズを示した。さらに、抗CTLA4によるTreg枯渇とLTBRアゴニスト処置との組み合わせは、腫瘍負荷を減少させることにおいて相乗効果をもたらし、この処置群におけるマウスの大多数において、腫瘍の停滞または退縮すらもたらした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】