(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】低摩擦係数ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20240216BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240216BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20240216BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C08L23/04
C08L83/04
C08K5/20
H01B7/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541762
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2022013882
(87)【国際公開番号】W WO2022169648
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ポール ジェイ.ブリガンディ
(72)【発明者】
【氏名】モハメド エッセギール
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー エー.サーバ
(72)【発明者】
【氏名】アミット ケー.チョーダリー
【テーマコード(参考)】
4J002
5G309
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB151
4J002CP032
4J002CP082
4J002CP092
4J002CP102
4J002CP122
4J002CP132
4J002CP142
4J002EP016
4J002FD010
4J002FD030
4J002FD040
4J002FD170
4J002FD206
4J002GQ00
4J002GQ01
5G309MA14
(57)【要約】
ポリマー組成物は、ASTM D792に従って測定されたときに、0.926g/cc~0.970g/ccの密度を有するエチレン系ポリマーと、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、550,000g/mol~650,000g/molの重量平均分子量を有するポリジメチルシロキサンと、を含む。組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、30,000g/mol~300,000g/molの重量平均分子量を有するポリジメチルシロキサンを含まない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
ASTM D792に従って測定されたときに、0.926g/cc~0.970g/ccの密度を有するエチレン系ポリマーと、
ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、550,000g/mol~650,000g/molの重量平均分子量を有するポリジメチルシロキサンと、を含み、前記組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、30,000g/mol~300,000g/molの重量平均分子量を有するポリジメチルシロキサンを含まない、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物は、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、90重量%以上の前記エチレン系ポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマー組成物は、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて、10重量%以下の前記ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定されたときに、0.926g/cc~0.940g/ccの密度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物は、脂肪酸アミドを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリマー組成物は、脂肪酸アミドを含まない、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、2,000g/mol~15,000g/molの重量平均分子量を有する第2のポリジメチルシロキサンを更に含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリマー組成物は、ASTM D1894に従って測定されたときに、0.25以下の未エージング摩擦係数を示す、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリマー組成物は、55℃で336時間のエージング後にASTM D1894に従って測定されたときに、0.25以下のエージング後摩擦係数を示す、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
被覆導体であって、
導体と、
前記導体の周りに配設されている、請求項1に記載の前記ポリマー組成物と、を含む、被膜導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本開示は、全般的にはポリマー組成物に関し、より具体的には、低摩擦係数を示すポリマー組成物に関する。
【0002】
序論
ワイヤ及びケーブルは、構造物におけるファイバ高密度化を高めるために、既存の導管及びダクト内に吹き込まれる、かつ/又は押し込まれることが多い。そうすることにより、新しいインフラストラクチャと既存のインフラストラクチャとの両方の使用が最大になる。ワイヤ及びケーブルをこのような方法で効果的に設置するために、ワイヤ及びケーブル上のジャケットのポリマー組成物は、低摩擦係数(coefficient of friction、「COF」)を有する必要がある。ポリマー組成物の低摩擦係数は、ワイヤ及びケーブルが設置中に表面に沿った摺動に抵抗しないことを確実にする。典型的には、ジャケットのポリマー組成物は、この用途において最も効果的であるために、ASTM D1894に従って測定されたときに、0.25以下の未エージングCOFを示す必要がある。
【0003】
ポリマー組成物のCOFの低減は、様々な添加剤を使用して試みられてきた。このような添加剤の一例は、スリップ剤である。スリップ剤は、加工中又は使用環境においてポリマー組成物表面上の潤滑剤として機能する。これらのスリップ剤は、多くの場合、ポリマー組成物の表面に移動する又はブルーミングすることによって機能し、その表面で、COFを低減する被膜を提供する。有利なことに、表面におけるスリップ剤の濃度は、ポリマー材料全体において必要とされるスリップ剤をより少なくすることをもたらす。スリップ剤の例としては、エルカ酸アミド及び低分子量シロキサンが挙げられる。
【0004】
多くの場合、ポリマー組成物内のスリップ剤は、経時的にブルーミングし、それにより、低COFを示すジャケットの能力を低下させる。スリップ剤の早期ブルーミングは、製造後であるがワイヤ又はケーブルが設置される前のポリマー組成物の長期保管が、COFを使用不能なレベルまで劣化させるおそれがあるので、不利である。したがって、典型的には、ポリマー組成物はまた、55℃で336時間のエージング後にASTM D1894に従って測定されたときに、0.25のCOF(すなわち、「エージング後COF」)を示さなければならない。
【0005】
また、高分子ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、「PDMS」)を使用してポリマー組成物の摩擦係数を低下させることも試みられている。例えば、米国特許出願公開第2020/0199336(A1)号(「'336公報」)は、30,000g/mol~300,000g/mol未満の重量平均分子量(「Mw」)を有する第1のPDMSと、300,000g/mol~2,000,000g/molのMwを有する第2のPDMSと、を含むスリップ剤ブレンドを使用する組成物を開示しており、この組成物は、0.25のCOFを有する。‘336公報では、低密度ポリエチレン中で300,000g/mol~2,000,000g/molのMwを有するPDMS(例えば、CS1及びCS2)のみを使用すると、それぞれ0.65及び0.70の高いCOFを示すことを実証している。
【0006】
上記を考慮すると、550,000g/mol~650,000g/molのMwを有する単一のポリジメチルシロキサンを使用するが、0.25以下の未エージングCOF及び0.25以下のエージング後COFの両方を達成することができるポリマー組成物を発見したことは驚くべきことであろう。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、550,000g/mol~650,000g/molのMwを有する単一のポリジメチルシロキサンを使用するが、0.25以下の未エージングCOF及び0.25以下のエージング後COFの両方を達成することができるポリマー組成物を提供する。
【0008】
本発明は、0.926g/cc~0.970g/ccの密度を有するエチレン系ポリマーを含むポリマー組成物において、550,000g/mol~650,000g/molのMwを有するPDMSを利用することが、上記の特性を達成することができるという発見の結果である。理論に束縛されるものではないが、PDMSのMw及び粘度は、溶融配合中にエチレン系ポリマー内の均一な分散をもたらすと考えられる。それにより、PDMSの均一な分散は、0.25の未エージングCOFを提供する。更に、エチレン系ポリマーの半結晶性ドメイン及びPDMSのMwは、経時的なPDMSの移動に抵抗するように機能し、それにより、ブルーミングする添加剤に依存する組成物とは異なり、0.25のエージング後COFを保持する。
【0009】
ポリマー組成物は、ワイヤ及びケーブルのジャケットとして特に有用である。
【0010】
本開示の第1の特徴によれば、ポリマー組成物は、ASTM D792に従って測定されたときに、0.926g/cc~0.970g/ccの密度を有するエチレン系ポリマーと、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、550,000g/mol~650,000g/molの重量平均分子量を有するポリジメチルシロキサンと、を含む。組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、30,000g/mol~300,000g/molの重量平均分子量を有するポリジメチルシロキサンを含まない。
【0011】
本開示の第2の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて90重量%以上のエチレン系ポリマーを含む。
【0012】
本開示の第3の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%以下のポリジメチルシロキサンを含む。
【0013】
本開示の第4の特徴によれば、エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定されたときに、0.926g/cc~0.940g/ccの密度を有する。
【0014】
本開示の第5の特徴によれば、ポリマー組成物は、脂肪酸アミドを含む。
【0015】
本開示の第6の特徴によれば、ポリマー組成物は、脂肪酸アミドを含まない。
【0016】
本開示の第7の特徴によれば、ポリマー組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、2,000g/mol~15,000g/molの重量平均分子量を有する第2のポリジメチルシロキサンを更に含む。
【0017】
本開示の第8の特徴によれば、ポリマー組成物は、ASTM D1894に従って測定されたときに、0.25以下の未エージング摩擦係数を示す。
【0018】
本開示の第9の特徴によれば、ポリマー組成物は、55℃で336時間のエージング後にASTM D1894に従って測定されたときに、0.25以下のエージング後摩擦係数を示す。
【0019】
本開示の第10の特徴によれば、被覆導体は、導体と、導体の周囲に配設されたポリマー組成物と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物はAを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0021】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0022】
試験方法は、試験方法番号でハイフン付きの2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)(旧称、米国材料試験協会、American Society for Testing and Materials)を指し、IECは、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分がポリマー組成物の総重量に占める重量のパーセンテージを示す。
【0024】
本明細書において、メルトインデックス(I2)値は、2.16キログラム(Kilogram、kg)の質量を用いて190セルシウス度(℃)でASTM法D1238に従って決定された値を指し、10分当たりに溶出されるグラム数(「g/10分」)の単位で提供される。本明細書において、メルトインデックス(I21)値は、21.6kgの質量を用いて190セルシウス度(℃)でASTM法D1238に従って決定された値を指し、10分当たりに溶出されるグラム数(g/10分)の単位で提供される。
【0025】
本明細書における密度値は、23℃でASTM D792に従って決定された値を指し、1立方センチメートル当たりのグラム数(「g/cc」)の単位で提供される。
【0026】
本明細書で使用される「収縮」という用語は、IEC 60811-503(シースの収縮試験)に従って測定されたときに、ジャケット又は他のシース材料の周期的温度(又はフィールド)収縮を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、Chemical Abstract Services登録番号(「CAS#」)は、本文書の優先日の時点でChemical Abstract Serviceによって化学化合物に直近で割り当てられた固有の数字識別子を指す。
【0028】
ポリマー組成物
ポリマー組成物は、エチレン系ポリマー及びポリジメチルシロキサンを含む。ポリマー組成物は、未エージングCOF及びエージング後COFの両方を示す。本明細書で使用される場合、未エージングCOFは、意図的なエージング又はその製造後の試験の遅延のないポリマー組成物が示すCOFである。本明細書で使用される場合、エージング後COFは、55℃の温度で336時間(すなわち、2週間)保持された後、加熱前に意図的な遅延又はエージングなしで、ポリマー組成物が示すCOFである。
【0029】
ポリマー組成物の未エージングCOFは、ASTM D1894に従って測定されたときに、0.01以上、又は0.02以上、又は0.04以上、又は0.06以上、又は0.08以上、又は0.10以上、又は0.12以上、又は0.14以上、又は0.16以上、又は0.18以上、又は0.20以上、又は0.22以上、又は0.24以上、一方で同時に、0.25以下、又は0.24以下、又は0.22以下、又は0.20以下、又は0.18以下、又は0.16以下、又は0.14以下、又は0.12以下、又は0.10以下、又は0.08以下、又は0.06以下、又は0.04以下、又は0.02以下であり得る。
【0030】
ポリマー組成物のエージング後COFは、ASTM D1894に従って測定されたときに、0.01以上、又は0.02以上、又は0.04以上、又は0.06以上、又は0.08以上、又は0.10以上、又は0.12以上、又は0.14以上、又は0.16以上、又は0.18以上、又は0.20以上、又は0.22以上、又は0.24以上、一方で同時に、0.25以下、又は0.24以下、又は0.22以下、又は0.20以下、又は0.18以下、又は0.16以下、又は0.14以下、又は0.12以下、又は0.10以下、又は0.08以下、又は0.06以下、又は0.04以下、又は0.02以下であり得る。
【0031】
ポリマー組成物は、ASTM D792に従って測定されたときに、0.940g/cc以上、又は0.941g/cc以上、又は0.942g/cc以上、又は0.943g/cc以上、又は0.944g/cc以上、又は0.945g/cc以上、又は0.946g/cc以上、又は0.947g/cc以上、又は0.948g/cc以上、又は0.949g/cc以上、又は0.950g/cc以上、又は0.951g/cc以上、又は0.952g/cc以上、又は0.953g/cc以上、又は0.954g/cc以上、一方で同時に、0.955g/cc以下、又は0.954g/cc以下、又は0.953g/cc以下、又は0.952g/cc以下、又は0.951g/cc以下、又は0.950g/cc以下、又は0.949g/cc以下、又は0.948g/cc以下、又は0.947g/cc以下、又は0.946g/cc以下、又は0.945g/cc以下、又は0.944g/cc以下、又は0.943g/cc以下、又は0.942g/cc以下、又は0.941g/cc以下の密度を有し得る。
【0032】
ポリマー組成物は、実施例の項で提供される試験方法に従って測定されたときに、3.0%以下の周期的な収縮を示し得る。例えば、ポリマー組成物は、3.0%以下、又は2.9%以下、又は2.8%以下、又は2.7%以下、又は2.6%以下、又は2.5%以下、又は2.4%以下、又は2.3%以下、又は2.2%以下、又は2.1%以下、又は2.0%以下、又は1.9%以下、又は1.8%以下、又は1.7%以下、又は1.6%以下、又は1.5%以下、又は1.4%以下、又は1.3%以下、又は1.2%以下、又は1.1%以下、又は1.0%以下、又は0.9%以下、又は0.8%以下、又は0.7%以下、又は0.6%以下、又は0.5%以下、又は0.4%以下、又は0.3%以下、又は0.2%以下、又は0.1%以下の周期的な収縮を示し得る。
【0033】
ポリマー組成物は、実施例の項で提供される試験方法に従って測定されたときに、1.00%以下の24時間収縮率を示し得る。例えば、ポリマー組成物は、1.00%以下、又は0.95%以下、又は0.90%以下、又は0.85%以下、又は0.80%以下、又は0.75%以下、又は0.70%以下、又は0.65%以下、又は0.60%以下、又は0.55%以下、又は0.50%以下、又は0.45%以下、又は0.40%以下、又は0.35%以下、又は0.30%以下、又は0.25%以下、又は0.20%以下、又は0.15%以下、又は0.10%以下、又は0.05%以下の24時間収縮率を示し得る。
【0034】
ポリマー組成物は、0.1g/10分以上、又は0.3g/10分以上、又は0.5g/10分以上、又は0.7g/10分以上、又は0.8g/10分以上、又は0.9g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.5g/10分以上、又は2.0g/10分以上、又は2.5g/10分以上、又は3.0g/10分以上、又は3.5g/10分以上、又は4.0g/10分以上、又は4.5g/10分以上、又は5.0g/10分以上、又は5.5g/10分以上、又は6.0g/10分以上、又は6.5g/10分以上、又は7.0g/10分以上、又は7.5g/10分以上、又は8.0g/10分以上、又は8.5g/10分以上、又は9.0g/10分以上、又は9.5g/10分以上、一方で同時に、10.0g/10分以下、又は9.5g/10分以下、又は9.0g/10分以下、又は8.5g/10分以下、又は8.0g/10分以下、又は7.5g/10分以下、又は7.0g/10分以下、又は6.5g/10分以下、又は6.0g/10分以下、又は5.5g/10分以下、又は5.0g/10分以下、又は4.5g/10分以下、又は4.0g/10分以下、又は3.5g/10分以下、又は3.0g/10分以下、又は2.5g/10分以下、又は2.0g/10分以下、又は1.5g/10分以下、又は1.0g/10分以下、又は0.9g/10分以下、又は0.8g/10分以下、又は0.7g/10分以下、又は0.5g/10分以下、又は0.3g/10分以下のメルトインデックス(I2)を有し得る。
【0035】
ポリマー組成物は、50g/10分以上、又は55g/10分以上、又は60g/10分以上、又は65g/10分以上、又は70g/10分以上、又は75g/10分以上、又は80g/10分以上、又は85g/10分以上、又は90g/10分以上、又は95g/10分以上、一方で同時に、100g/10分以下、又は95g/10分以下、又は90g/10分以下、又は85g/10分以下、又は80g/10分以下、又は75g/10分以下、又は65g/10分以下、又は60g/10分以下、又は55g/10分以下の高荷重メルトインデックス(I21)を有し得る。
【0036】
ポリマー組成物は、70以上、又は75以上、又は80以上、又は85以上、又は90以上、又は95以上、又は100以上、又は105以上、一方で同時に、110以下、又は105以下、又は100以下、又は95以下、又は90以下、又は85以下、又は80以下、又は75以下のメルトフロー比(I21/I2)を有し得る。
【0037】
エチレン系ポリマー
上記のように、ポリマー組成物は、エチレン系ポリマーを含む。本明細書で使用される場合、「エチレン系」ポリマーは、モノマーの50重量%超がエチレンであるポリマーであるが、他のコモノマーを用いることもできる。エチレン系ポリマーは、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンなどの1つ以上のC3~C20α-オレフィンコモノマーと、を含み得る。エチレン系ポリマーは、単峰性又は多峰性の分子量分布を有し得、単独で、又は1つ以上の他の種類のエチレン系ポリマーと組み合わせて(例えば、モノマーの組成及び含有量、触媒の調製法、分子量、分子量分布、密度などが互いに異なる2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンド)使用され得る。エチレン系ポリマーのブレンドが使用される場合、ポリマーは、任意の反応器内プロセス又は反応器後プロセスによってブレンドされ得る。
【0038】
エチレン系ポリマーは、核磁気共鳴法(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)又はフーリエ変換赤外(Fourier-Transform Infrared、FTIR)分光法を使用して測定されたときに、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、又は95量%以上、又は96重量%以上、又は97重量%以上、又は97.5重量%以上、又は98重量%以上、又は99重量%以上、一方で同時に、99.5重量%以下、又は99重量%以下、又は98重量%以下、又は97重量%以下、又は96重量%以下、又は95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下、又は90重量%以下、又は85重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下のエチレンを含み得る。エチレン系ポリマーの他の単位としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンなどの、C3、又はC4、又はC6、又はC8、又はC10、又はC12、又はC16、又はC18、又はC20α-オレフィンを挙げることができる。
【0039】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、又は91重量%以上、又は92重量%以上、又は93重量%以上、又は94重量%以上、又は95重量%以上、又は96重量%以上、又は97重量%以上、又は97.5重量%以上、一方で同時に、98重量%以下、又は97重量%以下、又は96重量%以下、又は95重量%以下、又は94重量%以下、又は93重量%以下、又は92重量%以下、又は91重量%以下、又は90重量%以下、又は85重量%以下のエチレン系ポリマーを含み得る。
【0040】
エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定されたときに、0.926g/cc~0.970g/ccの密度を有する。例えば、エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定されたときに、0.926g/cc以上、又は0.928g/cc以上、又は0.930g/cc以上、又は0.932g/cc以上、又は0.934g/cc以上、又は0.936g/cc以上、又は0.938g/cc以上、又は0.940g/cc以上、又は0.942g/cc以上、又は0.944g/cc以上、又は0.946g/cc以上、又は0.948g/cc以上、又は0.950g/cc以上、又は0.952g/cc以上、又は0.954g/cc以上、又は0.956g/cc以上、又は0.958g/cc以上、又は0.960g/cc以上、又は0.962g/cc以上、又は0.964g/cc以上、又は0.966g/cc以上、又は0.968g/cc以上、一方で同時に、0.970g/cc以下、又は0.968g/cc以下、又は0.966g/cc以下、又は0.964g/cc以下、又は0.962g/cc以下、又は0.960g/cc以下、又は0.958g/cc以下、又は0.956g/cc以下、又は0.954g/cc以下、又は0.952g/cc以下、又は0.950g/cc以下、又は0.948g/cc以下、又は0.946g/cc以下、又は0.944g/cc以下、又は0.942g/cc以下、又は0.940g/cc以下、又は0.938g/cc以下、又は0.936g/cc以下、又は0.934g/cc以下、又は0.932g/cc以下、又は0.930g/cc以下、又は0.928g/cc以下の密度を有し得る。
【0041】
ポリジメチルシロキサン
ポリマー組成物は、ポリジメチルシロキサンを含む。PDMSは、置換されていなくてもよく、置換されていてもよい。「置換PDMS」とは、PDMSの少なくとも1つのメチル基が置換基で置換されているPDMSである。置換基の非限定的な例としては、ハロゲン原子(塩素、フッ素、臭素、及びヨウ素など)、ハロゲン原子含有基(クロロメチル基、ペルフルオロブチル基、トリフルオロエチル基、及びノナフルオロヘキシル基など)、酸素原子含有基(ヒドロキシ基、アルコキシ基(メトキシ基及びエトキシ基など)、(メタ)アクリルエポキシ基、及びカルボキシル基など)、窒素原子含有基(アミノ官能基、アミド官能基、及びシアノ官能基など)、硫黄原子含有基(メルカプト基など)、水素、C2~C10アルキル基(エチル基など)、C2~C10アルキニル基、アルケニル基(ビニル基及びヘキセニル基など)、アリール基(フェニル基及び置換フェニル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキサン基など)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。置換メチル基は、末端メチル基であってもよく、非末端メチル基であってもよい。好適な置換PDMSの非限定的な例としては、少なくとも1つのアルキルがC2~C10アルキルであるトリアルキルシリル末端PDMS、ジアルキルヒドロキシシリル末端PDMS、ジアルキル水素シリル末端PDMS、ジアルキルアルケニルシリル末端PDMS、ジアルキルビニルシリル末端PDMS、ジメチルヒドロキシシリル末端PDMS、及びジメチルビニルシリル末端PDMSが挙げられる。
【0042】
PDMSは、以下により詳細に記載されるゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、550,000g/mol~650,000g/molの重量平均分子量を有する。例えば、PDMSは、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、550,000g/mol以上、又は560,000g/mol以上、又は570,000g/mol以上、又は580,000g/mol以上、又は590,000g/mol以上、又は600,000g/mol以上、又は610,000g/mol以上、又は620,000g/mol以上、又は630,000g/mol以上、又は640,000g/mol以上、一方で同時に、650,00g/mol以下、又は640,000g/mol以下、又は630,000g/mol以下、又は620,000g/mol以下、又は610,000g/mol以下、又は600,000g/mol以下、又は590,000g/mol以下、又は580,000g/mol以下、又は570,000g/mol以下、又は560,000g/mol以下のMwを有し得る。ポリマー組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、30,000g/mol~300,000g/molの重量平均分子量を有するポリジメチルシロキサンを含まないか、又は別様に含まない。本明細書で使用される場合、「含まない(free of)」という用語は、ポリマー組成物が、それが含まないとされる材料を0.01重量%以下含むことを意味すると定義される。
【0043】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、又は0.5重量%以上、又は1重量%以上、又は2重量%以上、又は3重量%以上、又は4重量%以上、又は5重量%以上、又は6重量%以上、又は7重量%以上、又は8重量%以上、又は9重量%以上、一方で同時に、10重量%以下、又は9重量%以下、又は8重量%以下、又は7重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下のPDMSを含み得る。
【0044】
第2のポリジメチルシロキサン
ポリマー組成物は、550,000g/mol~650,000g/molのMwを有するPDMSよりも低いMwを有する第2のポリジメチルシロキサンを含み得る。第2のPDMSは、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよく、上記の事項のいずれかで終端されていてもよい。
【0045】
第2のPDMSは、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、2,000g/mol~15,000g/molの重量平均分子量を有する。例えば、PDMSは、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、2,000g/mol以上、又は3,000g/mol以上、又は4,000g/mol以上、又は5,000g/mol以上、又は6,000g/mol以上、又は7,000g/mol以上、又は8,000g/mol以上、又は9,000g/mol以上、又は10,000g/mol以上、又は11,000g/mol以上、又は12,000g/mol以上、又は13,000g/mol以上、又は14,000g/mol以上、一方で同時に、15,00g/mol以下、又は14,000g/mol以下、又は13,000g/mol以下、又は12,000g/mol以下、又は11,000g/mol以下、又は10,000g/mol以下、又は9,000g/mol以下、又は8,000g/mol以下、又は7,000g/mol以下、又は6,000g/mol以下、又は5,000g/mol以下、又は4,000g/mol以下、又は3,000g/mol以下のMwを有し得る。
【0046】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、又は0.5重量%以上、又は1重量%以上、又は2重量%以上、又は3重量%以上、又は4重量%以上、又は5重量%以上、又は6重量%以上、又は7重量%以上、又は8重量%以上、又は9重量%以上、一方で同時に、10重量%以下、又は9重量%以下、又は8重量%以下、又は7重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下のPDMSを含み得る。
【0047】
脂肪酸アミド
ポリマー組成物は、脂肪酸アミドを含んでもよく、又は脂肪酸アミドを含まなくてもよい。「脂肪酸アミド」は、構造(I)に対応する分子を示し、
【0048】
【化1】
式中、Rは、C
3~C
27のアルキル部分である。Rは、C
11~C
25、又はC
15~C
23のアルキル部分であり得る。Rは、C
21のアルキル部分であり得る。Rは、飽和、モノ不飽和、又はポリ不飽和であり得る。使用に好適な脂肪酸アミドの具体例としては、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、及びベヘン酸アミドが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、脂肪酸アミドは、2つ以上の脂肪酸アミドの混合物であり得る。
【0049】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.05重量%以上、又は0.1重量%以上、又は0.2重量%以上、又は0.3重量%以上、又は0.4重量%以上、又は0.5重量%以上、又は0.6重量%以上、又は0.7重量%以上、又は0.8重量%以上、又は0.9重量%以上、又は1.0重量%以上、又は1.1重量%以上、又は1.2重量%以上、又は1.3重量%以上、又は1.4重量%以上、一方で同時に、1.5重量%以下、又は1.4重量%以下、又は1.3重量%以下、又は1.2重量%以下、又は1.0重量%以下、又は0.9重量%以下、又は0.8重量%以下、又は0.7重量%以下、又は0.6重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.4重量%以下、又は0.3重量%以下、又は0.2重量%以下の脂肪酸アミドを含み得る。
【0050】
添加剤
ポリマー組成物は、酸化防止剤、加工助剤、カップリング剤、紫外線安定剤(UV吸収剤を含む)、帯電防止剤、カーボンブラック、追加の成核剤、スリップ剤、潤滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エクステンダオイル、酸捕捉剤、難燃剤、及び金属不活性化剤の形態で追加の添加剤を含み得る。ポリマー組成物は、0.01重量%~5重量%の追加の添加剤のうちの1つ以上を含み得る。添加剤は、ニート成分として個々に添加されてもよく、組み合わされてもよく、かつ/又は1つ以上のマスターバッチに添加されてもよい。
【0051】
ポリマー組成物は、1つ以上のヒンダードアミン光安定剤を含む。HALSは、プラスチック及びポリマーにおいて安定剤として使用されるアミン官能基を含有する化学化合物である。これらの化合物は、テトラメチルピペリジンの誘導体であり得、UV光への曝露によるフリーラジカル酸化の影響からポリマーを保護するために主に使用される。HALSは、ポリ(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール-alt-1,4-ブタン二酸)(CAS#65447-77-0)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(CAS#52829-07-9)、ジ-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート(CAS#63843-89-0)、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(CAS#129757-67-1)、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ](CAS#71878-19-8)、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N’’’-1,2-エタンジイルビス[N-[3-[[4,6-ビス[ブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]プロピル]-N’,N’’-ジブチル-N’,N’’-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-(CAS#106990-43-6)、1,6-ヘキサンジアミン、N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとのポリマーのN-ブチル-1-ブタンアミン及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの反応生成物(CAS#192268-64-7)、のうちの1つ以上を含み得る。HALSの例は、BASF(Ludwigshafen、Germany)から商品名TINUVIN(商標)622及びCHIMASSORB(商標)944で市販されているものである。ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~1.0重量%のHALSを含み得る。例えば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、又は0.2重量%以上、又は0.3重量%以上、又は0.4重量%以上、又は0.5重量%以上、又は0.6重量%以上、又は0.7重量%以上、又は0.8重量%以上、又は0.9重量%以上、一方で同時に、1.0重量%以下、又は0.9重量%以下、又は0.8重量%以下、又は0.7重量%以下、又は0.6重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.4重量%以下、又は0.3重量%以下、又は0.2重量%以下のHALSを含み得る。
【0052】
ポリマー組成物は、ガラスファイバ又はナノ複合材を含む様々な鉱物系充填剤などの1つ以上の粒子状充填剤を含み得る。充填剤、特により高いアスペクト比(長さ/厚さ)を提供する細長い粒子又は小板状の粒子を含む充填剤は、弾性率及び押出後の収縮特性を改善し得る。充填剤(複数可)は、20μm未満、10μm未満、又は5μm未満のメジアンサイズ又はd50を有し得る。充填剤は、ポリマー組成物中の湿潤又は分散を促進するために表面処理されてもよい。好適な充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、シリカ、石英、溶融石英、タルク、雲母、粘土、カオリン、ウォラストナイト、長石、水酸化アルミニウム、及びグラファイトが挙げられるが、これらに限定されない。充填剤は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、2~30重量%、又は5~30重量%の範囲の量でポリマー組成物に含まれてもよい。
【0053】
加工助剤は、ポリテトラフルオロエチレン又はフッ素化エチレンプロピレンなどのフッ素樹脂の金属塩、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムなどのカルボン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はエルカ酸などの脂肪酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、又はN,N’-エチレンビス-ステアリン酸アミドなどの脂肪アミド、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、エチレンオキシドのポリマー、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、植物ワックス、石油ワックス、非イオン性界面活性剤、シリコーン流体及びポリシロキサンを含み得る。
【0054】
酸化防止剤は、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シンナメート)]メタンなどのヒンダードフェノール、ビス[(β-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メチルカルボキシエチル)]-スルフィド、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)-ヒドロシンナメート、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト及びジ-tert-ブチルフェニル-ホスホナイトなどのホスファイト及びホスホナイト、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ化合物、様々なシロキサン、重合2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、n,n’-ビス(1,4-ジメチルペンチル-p-フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、混合ジ-アリール-p-フェニレンジアミン、及び他のヒンダードアミン劣化防止剤又は安定剤を含み得る。
【0055】
配合及び被覆導体の形成
ポリマー組成物の成分は、溶融ブレンドのためにバッチミキサー又は連続ミキサーに添加されて、溶融ブレンドされた組成物を形成し得る。成分は、他の成分とブレンドするために、任意の順序で、又は最初に1つ以上のマスターバッチを調製して添加することができる。溶融ブレンドは、最高溶融ポリマーの融点を超える温度で行われ得る。次に、溶融ブレンドされた組成物を、押出機若しくは射出成形機に送達するか、又はダイを通過させて所望の物品に成形するか、あるいは材料の保管又は調製のためにペレット、テープ、ストリップ、若しくはフィルム、又は他の形態に変換して次の成形又は加工工程に供給する。任意選択で、ペレット又は何らかの類似の構成に成形される場合、ペレットなどを粘着防止剤で被覆して、保管中の取り扱いを容易にすることができる。
【0056】
配合設備の例としては、BANBURY(商標)又はBOLLING(商標)密閉式ミキサーなどの密閉式ミキサーが挙げられる。代替的に、FARRELL(商標)連続ミキサー、WERNER(商標)及びPFLEIDERER(商標)二軸スクリューミキサー、又はBUSS(商標)混錬連続押出機などの、連続単軸又は二軸スクリューミキサーを使用してもよい。利用するミキサーの種類、及びミキサーの動作条件は、粘度、体積抵抗率、及び押出表面平滑性などの組成物の特性に影響を及ぼす。
【0057】
被覆導体は、このポリマー組成物から形成され得る。被覆導体は、導体及び被覆を含む。被覆は、ポリマー組成物を含む。本ポリマー組成物は、導体の周囲に少なくとも部分的に配設されて、被覆導体を製造する。導体は、導電性金属又は光透過性構造体を含み得る。
【0058】
被覆導体を製造するためのプロセスは、ポリマー組成物を混合し、押出機中で少なくともポリマー成分の溶融温度まで加熱してポリマー溶融ブレンドを形成し、次いで、ポリマー溶融ブレンドを導体上に被覆することを含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触又は間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出成形可能な状態にある。
【0059】
ポリマー組成物は、導体の上及び/又は周りに配設されて、被覆を形成する。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的に若しくは部分的に覆うか、又はそうでなければ取り囲むか、若しくは包み得る。被覆は、導体を取り囲む唯一の構成要素であり得る。代替的に、被覆は、導体を包む多層ジャケット又はシースのうちの1層であってもよい。被覆は、導体と直接接触し得る。被覆は、導体を取り囲む絶縁層に直接接触し得る。
【実施例】
【0060】
材料
EP1は、カーボンブラックを含み、0.945g/ccの密度及び190℃で10分当たり0.75gのメルトフローレートを有する中密度ポリエチレンである。EP1は、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から入手できる。
【0061】
EP2は、0.935g/ccの密度及び190℃で10分当たり0.65gのメルトフローレートを有する中密度ポリエチレンである。EP2は、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から入手できる。
【0062】
EP3は、0.935g/ccの密度及び190℃で10分当たり0.79gのメルトフローレートを有するUNIPOL(商標)II二峰性中密度ポリエチレンである。
【0063】
PAは、3M(Saint Paul,Minnesota,USA)から入手できる、商品名DYNAMAR(商標)FX 5912で市販されているフッ素樹脂加工助剤である。
【0064】
シリコーンゴムは、ジメチルビニルシロキシ末端化され、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、696,000g/molのMwを有する35重量%のポリジメチルシロキサンのブレンドであり、残部は、EP2である。シリコーンゴムのPDMSは、the Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手できる。
【0065】
シリコーン液体は、トリメチルシロキシ末端化され、ゲル浸透クロマトグラフィに従って測定されたときに、5,000g/mol~12,000g/molのMwを有する5重量%のポリジメチルシロキサンのブレンドであり、残部は、EP2である。シリコーン液体のPDMSは、the Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手できる。
【0066】
FAAは、112-84-5のCAS#を有するエルカ酸アミドであり、Croda(East Yorkshire,United Kingdom)からCRODAMIDE(商標)ERとして入手できる。
【0067】
CBは、45重量%のカーボンブラックを含むカーボンブラックマスターバッチであり、the Dow Chemical Company(Midland,MI)からAXELERON(商標)GP A-0037 BK CPDとして市販されている。
【0068】
試料の調製
本発明の実施例(「IE」)1~6及び比較例(「CE」)1~4を、標準的な2翼ポリエチレンロータを備えたミニラボBANBURY(商標)(1.2kg)密閉式バッチミキサーで調製した。実施例の全ての材料を同時に添加し、160℃の落下温度まで混合した。IE7、IE8、CE5、及びCE6は、標準的な2翼ポリエチレンロータを備えたBANBURY(商標)密閉式ミキサーで調製した。全ての材料を同時に添加し、175℃の落下温度まで混合した。
【0069】
180℃で予熱したアーバープレス上でペレットを圧縮成形することによって実施例のプラークを調製した。ペレットを1.905ミリメートルの成形型に入れた。実施例を180℃に4分間加熱し、次いで、3.45メガパスカル(「MPa」)の圧力で3分間、続いて17.24MPaの圧力で3分間プレスした。実施例をプレス内で毎分15℃で冷却し、次いで、試験要件に従って調整した。熱エージングを意図したプラークを55℃に予熱したオーブンに入れ、336時間後に取り出した。次いで、試験前に、プラークを23℃、相対湿度50%で24時間調整した。
【0070】
実施例のジャケットは、180℃~240℃で、Davis-Standardからの6.35cmワイヤ押出ラインを使用して、毎分91メートルで、0.8mmの壁厚で、導体上にポリマー組成物を押出すことによって調製した。導体を取り出し、ジャケット試料を収縮試験前に室温で24時間調整した。
【0071】
試験方法
ゲル浸透クロマトグラフィ:ポリジメチルシロキサンの重量平均分子量は、トリプル検出能力を使用してGPC(Viscotek(商標)GPC Max)によって測定される。Viscotek(商標)TDA305ユニットには、示差屈折計、オンライン差圧粘度計、及び低角光散乱(LALS:7°及び90°の検出角度)が装備されている。移動相は、トルエンHPLCグレードのものである。カラムは、VarianのPL Gel Mixed Cカラム2本(7.5×300mm、5μmの粒径)と、VarianのPL Gel Guardカラム1本(7.5×300mm)であり、5フラクトム(fractom)注入体積、流量1mL/分、実行時間37分である。カラム及び検出器の温度は40℃である。使用するソフトウェアは、Omnisec 4.6.1(Viscotek(商標))である。既知の濃度の狭ポリスチレン標準(Mw68,100g/mol)を注入することによって、検出器を較正する。
【0072】
メルトインデックス(「MI」)を、I2(190℃で2.16kg)及びI21(190℃で21.6kg)の両方について、ASTM D1238に従って試験した。メルトフローレートは、I21でのメルトインデックスをI2で割った比率(「MFR」)である。
【0073】
密度を、厚さ1.27ミリメートルの圧縮成形試験片についてASTM D792に従って試験した。
【0074】
摩擦係数を、摩擦計を使用してASTM D1894に従って測定した。試料のCOFが測定される基材は、高密度ポリエチレンシートである。各試料について、新しい基材を使用する。試験前に、試料を23℃、相対湿度50%で48時間調整した。
【0075】
周期的温度収縮戻り試験を、ワイヤ製造後に導体から取り出したジャケット試料に対して実施した。周期的温度収縮戻りは、40℃~100℃まで0.5℃/分のランプ速度で、オーブン中でジャケット試料を調整することによって行われた。試料を100℃で60分間保持し、次いで、温度を0.5℃/分の速度で40℃に戻した。ジャケットを40℃で20分間保持し、次いで、温度サイクルを更に4回繰り返して合計5サイクルとした。収縮は、試験前から試験後までのジャケットの長さのパーセント変化として報告され、長さ61cmの試験片に対して1.6mmまで正確な定規を使用して測定された。24時間(「24Hr」)収縮は、ワイヤ試料から導体を取り出し、1.22メートル(4フィート)の試料を切断し、23℃で24時間保管した後の試料の長さを測定することによって測定した。
【0076】
シリコーンゴム又はシリコーン液体中のPDMSの重量%に実施例のゴム又は液体の重量%を掛けることによって、PDMS含有量を計算した。
【0077】
結果
表1は、IE1~8及びCE1~CE6の組成及び特性を提供する。「nm」と表示されている箇所は、特性が測定されなかったことを表す。
【0078】
【0079】
表1から分かるように、IE1~IE3へのシリコーンゴムの組み込みにより、組成物が0.25未満の未エージングCOFを示すことができるが、IE1~IE4のエージング後COFも0.25未満であることから実証されるように、COF安定性も示すことができる。IE4~IE6は、低分子量シリコーン及びエルカ酸アミドが有益に添加され得ることを実証しているが、CE2~CE6は、550,000g/mol~650,000g/molの重量平均分子量を有するポリジメチルシロキサンなしでは、組成物が未エージングCOF要件を満たすことができないか、又はエージング後のCOF安定性を実証しないことを明らかにしている。
【国際調査報告】