(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】抗Mcl1抗体を投与することによる癌を監視するための材料及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20240216BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240216BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240216BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240216BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240216BHJP
A61K 31/553 20060101ALI20240216BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K31/553
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543373
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2022014401
(87)【国際公開番号】W WO2022165240
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キェルツェフスカ,アグニエシュカ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ボイル,マイケル・シー
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC75
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4H045AA10
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗原をMcl-1に予期せぬ高い結合で結合させる任意の形態の抗Mcl-1抗体、及びその断片を提供し、Mcl-1を発現する癌細胞を監視する方法で有用なツール、並びにそのような癌細胞を含む癌、特に血液由来の癌を治療する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗Mcl-1抗体又はその抗原結合断片であって、配列番号4の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号6の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号16の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号17の重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び配列番号18の重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含むか、又は配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、配列番号12のLCDR3、配列番号22のHCDR1、配列番号23のHCDR2、及び配列番号24のHCDR3を含む、抗Mcl-1抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号27又は配列番号31の軽鎖可変領域配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
配列番号28又は配列番号32の重鎖可変領域配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記重鎖可変領域配列が、配列番号28に記載される場合、配列番号27の前記軽鎖可変領域配列を、又は前記重鎖可変領域配列が、配列番号32に記載される場合、配列番号31の前記軽鎖可変領域配列を更に含む、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体又は断片が、単鎖抗体又は断片である、請求項1に記載の抗体又は断片。
【請求項6】
単鎖可変断片(scFv)中に含まれる。請求項5に記載の抗体断片。
【請求項7】
前記抗体断片が、
(a)scFv;
(b)Fab;又は
(c)(Fab’)2である、請求項5に記載の抗体断片。
【請求項8】
完全にヒトである、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項9】
免疫グロブリンG(IgG)アイソタイプ抗体又は断片である、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項10】
モノクローナル抗体の形態である、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項11】
二重特異性抗体、三重特異性抗体、単鎖可変断片(scFv)、ジスルフィド結合安定化単鎖可変断片(ds-scFv)、シングルドメイン抗体(sdAb)、単鎖Fab断片(scFab)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、Fab、F(ab’)
2、VHH/VH断片、ペプチボディ、キメラ抗原受容体(CAR)、又は二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)の形態である、請求項1に記載の抗体又はその断片。
【請求項12】
医薬組成物であって、薬学的に許容される担体と、治療有効量の、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合若しくは免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片と、を含む、医薬組成物。
【請求項13】
対象において癌細胞の治療を監視する方法であって、
(a)前記対象の前記細胞を、請求項1に記載の抗体又はその断片と接触させることと;
(b)前記抗体又はその断片の前記細胞又はその内容物との結合を検出することと;
(c)前記細胞中のMcl-1のレベルを決定することと;
(d)前記細胞中の前記Mcl-1のレベルを対照と比較することであって、前記対照が、非癌細胞に特徴的なMcl-1の既知のレベル、前記対象の非癌細胞中のMcl-1のレベル、又は異なる時点での前記対象の癌細胞中のMcl-1のレベルである、比較することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記監視することが、ELISA、競合的ELISA、表面プラズモン共鳴分析、インビトロ中和アッセイ、インビボ中和アッセイ、FACSソーティングを伴う免疫組織化学的アッセイ、又はFACSソーティングを伴わない免疫組織化学的アッセイであるアッセイを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記癌細胞が、白血病細胞、リンパ腫細胞、又は骨髄腫細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記癌治療が、式I:
【化1】
のAMG176の投与を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記癌治療が、式II:
【化2】
のAMG397の投与を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記癌細胞が、骨髄性白血病細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記癌細胞が、臓器癌細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体又はその断片が、配列番号4の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号6の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号16の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号17の重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び配列番号18の重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含むモノクローナル抗体又はその断片であり、或いは抗体又はその断片は、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、配列番号12のLCDR3、配列番号22のHCDR1、配列番号23のHCDR2、及び配列番号24のHCDR3を含むモノクローナル抗体又はその断片である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体又はその断片が、配列番号27の前記軽鎖可変領域配列、配列番号28の前記重鎖可変領域配列、又は配列番号31の前記軽鎖可変領域、及び配列番号32の重鎖可変領域を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体又はその断片が、単鎖抗体、単鎖可変断片(scFv)、scFv、Fab、F(ab’)2、二重特異性抗体、三重特異性抗体、単鎖可変断片(scFv)、ジスルフィド結合安定化単鎖可変断片(ds-scFv)、シングルドメイン抗体(sdAb)、単鎖Fab断片(scFab)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、Fab、F(ab’)
2、VHH/VH断片、ペプチボディ、キメラ抗原受容体(CAR)、又は二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)の形態である、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
対象において、癌を治療する方法であって、治療有効量の、請求項1に記載の抗Mcl-1抗体又はその断片を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項24】
前記癌細胞が、白血病細胞、リンパ腫細胞、又は骨髄腫細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌細胞が、骨髄性白血病細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記癌細胞が、臓器癌細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体又はその断片が、配列番号4の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号6の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号16の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号17の重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び配列番号18の重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含むモノクローナル抗体又はその断片であり、或いは抗体又はその断片は、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、配列番号12のLCDR3、配列番号22のHCDR1、配列番号23のHCDR2、及び配列番号24のHCDR3を含むモノクローナル抗体又はその断片である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体又はその断片が、配列番号27の前記軽鎖可変領域配列、配列番号28の前記重鎖可変領域配列、又は配列番号31の前記軽鎖可変領域、及び配列番号32の前記重鎖可変領域を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体又はその断片が、単鎖抗体、単鎖可変断片(scFv)、scFv、Fab、F(ab’)2、二重特異性抗体、三重特異性抗体、単鎖可変断片(scFv)、ジスルフィド結合安定化単鎖可変断片(ds-scFv)、シングルドメイン抗体(sdAb)、単鎖Fab断片(scFab)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、Fab、F(ab’)
2、VHH/VH断片、ペプチボディ、キメラ抗原受容体(CAR)、又は二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)の形態である、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月29日に出願された米国仮特許出願第63/143,682号明細書の米国特許法第119条(e)の下での優先権利益を主張するものであり、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本開示の一部である配列表は、テキストファイルとして本明細書と同時に提出されている。配列表を含むテキストファイルの名称は、「55149_Seqlisting.txt」であり、これは、2022年1月28日に作成され、16,178バイトのサイズである。配列表の内容は、全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
本開示は、免疫療法の監視、特に癌免疫療法の監視に関連する材料及び方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
誘導性骨髄性白血病タンパク質1(Mcl-1)の過剰発現は、ヒトの癌に共通する特徴である。Mcl-1が過剰発現すると、癌細胞がプログラム細胞死(アポトーシス)を受けることが回避され、広範な遺伝子損傷があるにもかかわらず細胞が生存することが可能となる。Mcl-1は、タンパクのBcl-2ファミリーのメンバーである。Bcl-2ファミリーは、プロアポトーシスメンバー(BAX及びBAKなど)を含み、これらは、活性化すると、ミトコンドリア外膜中にホモオリゴマーを形成し、これは、アポトーシス誘発の一段階であるポア形成及びミトコンドリア内容物の放出をもたらす。Bcl-2ファミリーの抗アポトーシスメンバー(Bcl-2、Bcl-xL、及びMcl-1など)は、BAX及びBAKの活性を遮断する。他のタンパク質(BID、BIM、BIK及びBADなど)は、更なる調節機能を示す。
【0005】
研究から、Mcl-1阻害剤が癌の処置のために有用であり得ることが示されている。Mcl-1は、多くの癌において過剰発現される。Beroukhim et al.,Nature 463:899-890(2010)を参照されたい。周辺のMcl-1及びBc1-2-1-1抗アポトーシス遺伝子の増幅を含む癌細胞は、生存のために、これらの遺伝子の発現に依存している。Beroukhim et al。Mcl-1は、多数の癌細胞におけるアポトーシスの再開のための関連する標的である。Lessene et al.,Nat.Rev.Drug.Discov.,7:989-1000(2008);Akgul,Cell.Mol.Life Sci.66(2009);及びMandelin et al.,Expert Opin.Ther.Targets 11:363-373(2007)を参照されたい。
【0006】
脊椎動物の免疫系は、厳密な抗原に特異的に結合するか、又はそれを認識する抗体の産生によって特徴付けられる免疫応答を生じさせることができることが知られている。モノクローナル抗体の開発及び抗体形態の急増により、抗体技術は一般的に非特異的治療薬に関連する副作用を最小限に抑えながら、特定の疾患及び障害と闘おうとするための重要な武器になることにつながった。化合物、(1S,3’R,6’R,7’S,8’E,11’S,12’R)-6-クロロ-7’-メトキシ-11’,12’-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H,15’H-スピロ[ナフタレン-1,22’[20]オキサ[13]チア[1,14]ジアザテトラシクロ[14.7.2.0
3,6.0
19,24]ペンタコサ[8,16,18,24]テトラエン]-15’-オン13’,13’-ジオキシド(AMG 176)は、骨髄細胞白血病1(Mcl-1)の阻害剤として有用である。この化合物は、式Iを有する。
【化1】
【0007】
化合物(1S,3’R,6’R,7’R,8’E,11’S,12’R)-6-クロロ-7’-メトキシ-11’,12’-ジメチル-7’-((9aR)-オクタヒドロ-2H-ピリド[1,2-a]ピラジン-2-イルメチル)-3,4-ジヒドロ-2H,15’H-スピロ[ナフタレン-1,22’-[20]オキサ[13]チア[1,14]ジアザテトラシクロ[14.7.2.0
3,6.0
19,24]ペンタコサ[8,16,18,24]テトラエン]-15’-オン13’,13’-ジオキシド(AMG 397)もまた、骨髄細胞白血病1(Mcl-1)の阻害剤として有用である。この化合物は、式IIを有する。
【化2】
【0008】
その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,562,061号明細書は、Mcl-1阻害剤としてのAMG 176を開示しており、その調製のための方法を提供している。
【0009】
その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,300,075号明細書は、Mcl-1阻害剤としてのAMG 397を開示しており、その調製のための方法を提供している。
【0010】
Mcl-1を調節する新しい化合物が開示されているが、新しい抗体及び抗体製剤が、例えば、抗癌療法においてMCL-1を阻害しようとする進行を監視するために必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第9,562,061号明細書
【特許文献2】米国特許第10,300,075号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Beroukhim et al.,Nature 463:899-890(2010)
【非特許文献2】Lessene et al.,Nat.Rev.Drug.Discov.,7:989-1000(2008)
【非特許文献3】Akgul,Cell.Mol.Life Sci.66(2009)
【非特許文献4】Mandelin et al.,Expert Opin.Ther.Targets 11:363-373(2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、Mcl-1抗原に対して予期せぬ高い結合特性(例えば、親和性(affinity)、結合性(avidity)、及び感受性)を示す任意の形態の抗体、及びその断片などの抗原結合タンパク質を提供する。比較試験は、Mcl-1に対する市販の免疫組織化学的(IHC)抗体が、癌治療の監視において有用なMcl-1レベルを検出することに失敗することを示した。Mcl-1は、様々な血液癌及び臓器ベースの癌における過剰発現が見出されていたBcl-2ファミリーからの誘導性骨髄性白血病細胞分化タンパク質である。本開示の抗原結合タンパク質を用いることで、Mcl-1のレベルを経時的に測定することによって、癌治療を監視する方法が実現可能になった。Mcl-1を過剰発現する細胞によって特徴付けられる癌の治療を監視する開示された方法は、そのような癌を標的とするいかなる癌治療も監視するのに有用である。そのような癌を標的とする例示的な癌治療には、AMG 176又はAMG 397が含まれ、これらの療法ともMcl-1阻害剤である。Mcl-1発現の検出は、AMG 176の投与などの癌治療に対する薬理学的応答の指標をもたらすことができる。AMG 176は、式(I)のコア構造を有する。
【化3】
【0014】
別のMcl-1阻害剤であるAMG 397の構造は、式IIに示される。
【化4】
【0015】
一態様では、本開示は、配列番号4の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号6の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号16の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号17の重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び配列番号18の重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含むか、又は配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、配列番号12のLCDR3、配列番号22のHCDR1、配列番号23のHCDR2、及び配列番号24のHCDR3を含む抗Mcl-1抗体又はその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号27又は配列番号31の軽鎖可変領域配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号28又は配列番号32の重鎖可変領域配列を含み、その中で、重鎖可変領域配列が配列番号28で記載される場合に、抗体が配列番号27の軽鎖可変領域を更に含むか、又は重鎖可変領域が配列番号32で記載される場合に、配列番号31の軽鎖可変領域を更に含むいくつかの実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、抗体又は断片は単鎖抗体又は断片であり、抗体断片が単鎖可変断片(scFv)に含まれている実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、抗体断片は、(a)scFv;(b)Fab;又は(c)(Fab’)2である。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、完全にヒトである。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、免疫グロブリンG(IgG)アイソタイプ抗体又は断片である。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、モノクローナル抗体の形態である。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、二重特異性抗体、三重特異性抗体、単鎖可変断片(scFv)、ジスルフィド結合安定化単鎖可変断片(ds-scFv)、シングルドメイン抗体(sdAb)、単鎖Fab断片(scFab)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、Fab、F(ab’)2、VHH/VH断片、ペプチボディ、キメラ抗原受容体(CAR)、又は二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)の形態である。
【0016】
本開示の別の態様は、薬学的に許容される担体と、治療有効量の、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片若しくは免疫学的に機能する免疫グロブリン断片と、を含む医薬組成物である。
【0017】
本開示の更に別の態様は、対象において、癌細胞の治療を監視する方法であって、(a)対象の細胞を請求項1に記載の抗体又はその断片と接触させることと;(b)抗体又はその断片の細胞への結合若しくはその含有量を検出することと;(c)細胞中のMcl-1のレベルを決定することと;(d)細胞中のMcl-1のレベルを対照と比較することと、を含み、対照は非癌細胞に特徴的なMcl-1の既知のレベル、対象の非癌性細胞におけるMcl-1のレベル、又は異なる時点での対象の癌細胞におけるMcl-1のレベルである、方法である。いくつかの実施形態では、監視することは、ELISA、競合的ELISA、表面プラズモン共鳴分析、インビトロ中和アッセイ、インビボ中和アッセイ、FACSソーティングを伴う免疫組織化学的アッセイ、又はFACSソーティングを伴わない免疫組織化学的アッセイであるアッセイを含む。いくつかの実施形態では、癌細胞は、白血病細胞、リンパ腫細胞、又は骨髄腫細胞である。いくつかの実施形態では、癌治療は、式IのAMG 176の投与を含む。
【化5】
【0018】
いくつかの実施形態では、癌治療は、式IIのAMG 397の投与を含む。
【化6】
【0019】
いくつかの実施形態では、癌細胞は、骨髄性白血病細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、臓器癌細胞である。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号4の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号6の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号16の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号17の重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び配列番号18の重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含むモノクローナル抗体又はその断片であり、或いは抗体又はその断片は、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、配列番号12のLCDR3、配列番号22のHCDR1、配列番号23のHCDR2、及び配列番号24のHCDR3を含むモノクローナル抗体又はその断片である。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号27の軽鎖可変領域配列、配列番号28の重鎖可変領域配列、又は配列番号31の軽鎖可変領域、及び配列番号32の重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、単鎖抗体、単鎖可変断片(scFv)、scFv、Fab、F(ab’)2、二重特異性抗体、三重特異性抗体、単鎖可変断片(scFv)、ジスルフィド結合安定化単鎖可変断片(ds-scFv)、シングルドメイン抗体(sdAb)、単鎖Fab断片(scFab)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、Fab、F(ab’)2、VHH/VH断片、ペプチボディ、キメラ抗原受容体(CAR)、又は二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)の形態である。
【0020】
本開示の更に別の態様は、治療有効量の、本明細書に開示される抗Mcl-1抗体又はその断片を対象に投与することを含む、対象において癌を治療する方法である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、白血病細胞、リンパ腫細胞、又は骨髄腫細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、骨髄性白血病細胞である。いくつかの実施形態では、癌細胞は、臓器癌細胞である。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号4の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号6の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号16の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号17の重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び配列番号18の重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含むモノクローナル抗体又はその断片であり、或いは抗体又はその断片は、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、配列番号12のLCDR3、配列番号22のHCDR1、配列番号23のHCDR2、及び配列番号24のHCDR3を含むモノクローナル抗体又はその断片である。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号27の軽鎖可変領域配列、配列番号28の重鎖可変領域配列、又は配列番号31の軽鎖可変領域、及び配列番号32の重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、単鎖抗体、単鎖可変断片(scFv)、scFv、Fab、F(ab’)2、二重特異性抗体、三重特異性抗体、単鎖可変断片(scFv)、ジスルフィド結合安定化単鎖可変断片(ds-scFv)、シングルドメイン抗体(sdAb)、単鎖Fab断片(scFab)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、Fab、F(ab’)2、VHH/VH断片、ペプチボディ、キメラ抗原受容体(CAR)、又は二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)の形態である。
【0021】
本開示の他の特徴及び利点は、図面を含めて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変更形態及び修正形態は、詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明及び具体的な実施例は、好ましい実施形態を示してはいるものの、単に例として提供されていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】Mcl-1免疫源に対するウサギ抗体免疫応答である。ビオチン標識Mcl-1タンパク質でコーティングされた384ウェルプレート上で、ウサギ血清を連続希釈することによってELISAアッセイを実行した。試料吸光度値から図示される曲線を得た。A)ウサギJ3643の早期出血からのMcl-1免疫応答である。B)ウサギJ3643の後期出血から得られたMcl-1免疫応答である。
【
図2】ウサギモノクローナル抗体の組換えレスキューを可能にするための完全長Mcl-1に対するB細胞のクローン培養プレート中へのFACSソーティングである。
【
図3】Mcl-1に対する相対的親和性によってランク付けされた抗体のパネルをもたらした制限された抗原結合スクリーンの結果が呈示されている。異なる抗原コーティング濃度でのビーズマルチプレックスである。18時間のインキュベーションを用いて平衡化を達成した。
【
図4】高スループットのエピトープビニングで5つのビニングを特定した。
図3で特定された抗Mcl-1抗体のパネルは互いにビニングされて、概念的エピトープ空間マップを作成した。
【
図5】Mcl-1阻害剤であるAMG176のバイオマーカー開発の支援におけるウサギクローン性増殖ダイレクトレスキュー(CEDR)ワークフローである。ウサギを、当該技術分野において既知の標準的プロトコルを使用して免疫化した。簡単に言うと、動物の脾臓を採取し、分離させ、単細胞浮遊液を凍結させた。解凍したウサギ脾臓細胞を、FACS Aria IIIにより、ビオチン化Mcl-1タンパク質(及びAlexa Fluor 647にコンジュゲートしたストレプトアビジンにより検出される)及びAlexa Fluor 488にコンジュゲートした抗ウサギIgG抗体で384ウェルプレート中にシングルセルソーティングした。細胞を、FBS、10%の活性化ウサギ脾臓細胞上清(TSN)、及びフィーダー細胞培養物で補充された100μl/ウェルのRPMI培地中にソーティングした。モノクローナル培養及びB細胞増殖における7日後に、培養上清をその後のアッセイのために収集し、抗体配列の配列決定及び組換えレスキューのために、ウサギB細胞を溶解した。各エピトープビニングからの最も高い親和性の、Mcl-1選択性の、代表的な抗体をクローニング及び発現のために選択した。これらの抗体を、免疫組織化学的にアッセイし(IHC)、抗体リード化合物11P5及び11B14を特定した。11P5を、コンパニオン診断(CDx)アッセイ開発に前進させるために選択した。
【
図6】Mcl-1で免疫化されていないウサギからのIgG抗体に含まれるウサギアイソタイプ対照である。これらのウサギアイソタイプ対照抗体は、本明細書に開示される方法によって生成される抗Mcl-1抗体を評価する上で有用であった。ウサギアイソタイプ対照抗体を5μg/mlで用いて、パネルA~Hに示されるように、8つの細胞型を調べた。A)AMO1、B)DMS-23、C)RPMI8226、D)AGS、E)QPM2、F)G361、G)Colo205、及びH)SKMM2。
【
図7】抗Mcl-1抗体4019を、1μg/mlで用いて、パネルA~Hに示されるように、8つの細胞型を調べた。A)AMO1、B)DMS-23、C)RPMI8226、D)AGS、E)QPM2、F)G361、G)Colo205、及びH)SKMM2。
【
図8】抗Mcl-1抗体5H16を、5μg/mlで用いて、パネルA~Hに示されるように、8つの細胞型を調べた。A)AMO1、B)DMS-23、C)RPMI8226、D)AGS、E)QPM2、F)G361、G)Colo205、及びH)SKMM2。
【
図9】抗Mcl-1抗体6A3を、1μg/mlで用いて、パネルA~Hに示されるように、8つの細胞型を調べた。A)AMO1、B)DMS-23、C)RPMI8226、D)AGS、E)QPM2、F)G361、G)Colo205、及びH)SKMM2。
【
図10】腫瘍細胞株の免疫組織化学分析である。抗Mcl-1モノクローナル抗体11P5を、1μg/mlで用いて、8つの異なる腫瘍細胞株、すなわちAMO1、DMS-23、RPMI8226、AGS、OPM2、G361、Colo205、及びSKMM2を調べた。調べた細胞を、免疫組織化学染色及び顕微鏡検査に供する前に、従来の技術を使用して、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)した。結果は、抗体11P5が各試験された腫瘍細胞株の特異的細胞質染色を呈することを明らかにしている。
【
図11】抗Mcl-1抗体11B14を、1μg/mlで用いて、パネルA~Hに示されるように、8つの細胞型を調べた。A)AMO1、B)DMS-23、C)RPMI8226、D)AGS、E)QPM2、F)G361、G)Colo205、及びH)SKMM2。
【
図12】比較抗体結合である。A)患者07H-3971の扁桃腺細胞が、1μg/mlでのウサギアイソタイプ対照抗体を用いた免疫組織化学染色に供され;B)患者07H-3971の扁桃腺細胞が、0.5μg/mlでの抗Mcl-1抗体11P5を用いた免疫組織化学染色に供され;C)患者07H-3971の扁桃腺細胞が、0.5μg/mlの抗Mcl-1抗体11B14を用いた免疫組織化学染色に供された。
【
図13】患者07H-3971の扁桃腺細胞が、1.0μg/mlでの抗Mcl-1抗体4019を用いた免疫組織化学染色に供された。
【
図14】比較抗体結合である。左パネル:患者04H-391の骨髄細胞が、1μg/mlでのウサギアイソタイプ対照抗体を用いた免疫組織化学染色に供され;B)患者04H-391の骨髄細胞が、0.5μg/mlでの抗Mcl-1抗体11P5を用いた免疫組織化学染色に供された。
【
図15】比較抗体結合である。左パネル:患者04H-391の骨髄細胞が、1μg/mlでのウサギアイソタイプ対照抗体を用いた免疫組織化学染色に供され;B)患者04H-391の骨髄細胞が、0.5μg/mlでの抗Mcl-1抗体11B14を用いた免疫組織化学染色に供された。
【
図16】発現分析である。Mcl-1、Bcl-2及びBcl-xLの発現レベルを、実施例6で特定されたモノクローナル抗体を使用して、8つの腫瘍細胞株で測定した。図に示した結果は、この技術が単一の分析で全ての細胞株を比較するために利用されたことを明らかにし、細胞株中のMcl-1、Bcl-2及びBcl-xLの発現の順位付けしたレベルを示す。
【
図17】抗Mcl-1抗体による細胞内構造の免疫組織化学染色である。左パネル:患者145676からの扁桃腺組織を、抗Mcl-1モノクローナル抗体11B14を用いて調べた。右パネル:患者145676からの扁桃腺組織を、抗Mcl-1モノクローナル抗体11P5を用いて調べた。IHCの結果は、両方の抗Mcl-1抗体が、主に胚中心リンパ球を染色することを明らかにした。
【
図18】骨髄中の骨髄腫細胞の分別染色である。左パネル:患者145676の骨髄細胞を、抗Mcl-1抗体11B14を用いて調べた。右パネル:患者145676の骨髄細胞を、抗Mcl-1抗体11P5を用いて調べた。結果は、抗Mcl-1モノクローナル抗体11P5が、骨髄の骨髄腫細胞の特異的細胞質染色を呈したが、抗Mcl-1モノクローナル抗体11B14は、特異的細胞質染色を呈さないことを示した。
【
図19】骨髄中の骨髄腫細胞の分別染色である。左パネル:患者145676の骨髄細胞を、抗Mcl-1抗体11B14を用いて調べた。右パネル:患者145676の骨髄細胞を、抗Mcl-1抗体11P5を用いて調べた。結果は、モノクローナル抗Mcl-1抗体11P5が、骨髄の骨髄腫細胞の特異的細胞質染色を呈したが、モノクローナル抗Mcl-1抗体11B14は、特異的細胞質染色を呈さないことを示した。
【
図20】脱灰骨髄中の骨髄腫細胞の分別染色である。左パネル:患者16863の脱灰骨髄細胞を、抗Mcl-1抗体11B14を用いて調べて、得られたFFPE処理骨髄腫細胞をIHC分析に供した。右パネル:患者16863の脱灰骨髄細胞を、抗Mcl-1抗体11P5を用いて調べて、得られたFFPE処理骨髄腫細胞をIHC分析に供した。結果は、抗Mcl-1モノクローナル抗体11P5が、脱灰FFPE処置骨髄中の骨髄腫細胞の特異的細胞質染色を呈したが、抗Mcl-1モノクローナル抗体11B14は、特異的細胞質染色を呈さないことを示した。
【
図21】IHCアッセイについての陰性対照の評価である。左パネル:患者390527の精巣組織からの細胞を、IHCアッセイにおいて抗Mcl-1モノクローナル抗体11P5を用いて調べた。中央パネル:患者390527の精巣組織からの細胞を、IHCアッセイにおいて抗Bcl-2モノクローナル抗体(Agilent DAKOカタログ番号M0887)を用いて調べた。右パネル:患者390527の精巣組織からの細胞を、IHCアッセイにおいて抗Bcl-xLモノクローナル抗体(Cell Signaling Technologyカタログ番号2764)を用いて調べた。結果は、ヒト精巣からの細胞がMcl-1及びBcl-2についてのIHCアッセイのための適切な陰性対照を提供するが、Bcl-xLについてのIHCアッセイのための適切な陰性対照を提供しないことを立証した。
【
図22】IHCアッセイについての陰性対照の評価である。左パネル:患者5692の子宮組織からの細胞を、IHCアッセイにおいて抗Mcl-1モノクローナル抗体11P5を用いて調べた。中央パネル:患者5692の子宮組織からの細胞を、IHCアッセイにおいて抗Bcl-2モノクローナル抗体(Agilent DAKOカタログ番号M0887)を用いて調べた。右パネル:患者5692の子宮組織からの細胞を、IHCアッセイにおいて抗Bcl-xLモノクローナル抗体(Cell Signaling Technologyカタログ番号2764)を用いて調べた。結果は、ヒト子宮からの細胞がMcl-1についてのIHCアッセイのための適切な陰性対照を提供するが、Bcl-2についてのIHCアッセイのための適切な陰性対照を提供しないことを立証した。Bcl-xLについての結果は、Bcl-xLが内部陰性を有することを示した。
【
図23】IHCアッセイについての陰性対照の評価である。左パネル:患者12209の卵巣組織からの細胞を、IHCアッセイにおいて抗Mcl-1モノクローナル抗体11P5を用いて調べた。中央パネル:患者12209の卵巣組織からの細胞を、IHCアッセイにおいて抗Bcl-2モノクローナル抗体(Agilent DAKOカタログ番号M0887)を用いて調べた。右パネル:患者12209の卵巣組織からの細胞を、IHCアッセイにおいて抗Bcl-xLモノクローナル抗体(Cell Signaling Technologyカタログ番号2764)を用いて調べた。結果は、ヒト卵巣組織からの細胞がMcl-1、Bcl-2、又はBcl-xLについてのIHCアッセイのための適切な陰性対照を提供しなかったことを立証した。
【
図24】IHCアッセイについての陰性対照の評価である。左パネル:患者12400の脳組織からの細胞を、IHCアッセイにおいてウサギ陰性対照を用いて調べた。中央パネル:患者12400の脳組織からの細胞を、IHCアッセイにおいてマウス陰性対照を用いて調べた。右パネル:患者12400の脳組織からの細胞を、IHCアッセイにおいて抗Mcl-1モノクローナル抗体11P5を用いて調べた。結果は、ヒト脳からの細胞が、バックグラウンド染色のために、陰性対照として使用するために不適切であることを立証した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に記載されるのは、特異的抗Mcl-1抗体の発見をもたらす免疫化レジメン、B細胞スクリーニングの取り組み、及び組換え抗体レスキューの取り組みである。この取り組みから得られる抗体は、当該技術分野において既知の抗体と比較して、驚くほど優れた結合親和性及び特異性を示し、これは、例えば癌治療のモニターとして、インビトロ及びインビボでMcl-1レベルを監視するためのスクリーニングアッセイを開発するための根拠を提供した。
【0024】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換に対しては、従来の手法(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)を使用されてもよい。酵素反応及び精製手法は、製造業者の仕様書に従って又は当該技術分野で一般に行われているように、又は本明細書に記載したように行わられてもよい。上記手法及び手順は、一般に、当該技術分野で周知の方法に従い、また本明細書全体にわたって引用且つ考察されている様々な一般的且つより具体的な参考文献に記載されるように実施されてもよい。例えば、Sambrook et al.,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい。この文献はいかなる目的に対しても参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
特定の定義が提示されていない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学並びに医薬品化学及び薬化学に関連して使用される用語、またそれらの実験手順及び実験手法は、当該技術分野でよく知られ、且つ一般に使用されているものである。同様に、従来の手法は、化学合成、化学分析、医薬調製物、製剤及び患者の送達並びに処置に使用することができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、実験誤差による変動を説明することを意図する。本明細書で報告される全ての測定値は、特に明確に述べない限り、この用語が明確に用いられているかどうかに関わりなく、用語「約」によって修飾されると理解される。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が特に明確に指示しない限り複数形指示対象を含む。用語「例えば」及び「など」並びにその文法上の等価物については、特に明記されない限り、語句「及び限定されない」が続くと理解される。
【0027】
本開示の抗体に関する語句「生物学的特性」、「生物学的特徴」、及び用語「活性」は、本明細書では互換的に使用され、限定されないが、エピトープ親和性及び特異性(例えば、ヒトMcl-1に結合する抗ヒトMcl-1ヒト抗体)、標的化ポリペプチドの活性を拮抗する能力(例えば、Mcl-1の活性)、抗体のインビボ安定性、及び抗体の免疫原性が挙げられる。当該技術分野において認識される抗体の他の特定可能な生物学的特性又は特徴としては、例えば、交差反応性(すなわち、一般に、Mcl-1の非ヒトホモログとの、又は他のタンパク質若しくは組織との)、及び哺乳動物細胞においてタンパク質の高い発現レベルを維持するための能力が挙げられる。前述の特性又は特徴は、限定されないが、ELISA、競合的ELISA、表面プラズモン共鳴分析、インビトロ及びインビボ中和アッセイ、並びにヒト、霊長類、又は任意の他の適切な供給源を含む異なる供給源からの組織接点を用いた免疫組織化学的検査が挙げられる当該技術分野において承認されている手法を使用して観察又は測定することができる。抗ヒトMcl-1ヒト抗体の特定の活性及び生物学的特性は、以下の実施例に更に詳細に記載される。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「生物学的試料」は、生きているもの又は以前に生きていたものからの任意の量の物質を含むが、これらに限定されない。このような生物には、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、及び他の動物が含まれるが、これらに限定されない。このような物質には、血液、血清、尿、細胞、器官、組織、骨、骨髄、リンパ節及び皮膚が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「標識」又は「標識される」は、例えば、放射性標識されたアミノ酸の組み込みによるか、又は標識されるアビジン(例えば、光学法又は比色分析法によって検出することができる蛍光マーカー、化学発光マーカー、又は酵素活性などの検出可能なマーカーを含むストレプトアビジン)によって検出され得るビオチン部分のポリペプチドの連結による、検出可能なマーカーの組み込みを指す。ある特定の実施形態では、標識は、治療のためのものでもあり得る。ポリペプチド及び糖タンパク質を標識する種々の方法が、当該技術分野において既知であり、本明細書に開示される方法で有利に使用され得る。ポリペプチドの標識の例としては、放射性同位体若しくは放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90U、99mTc、111In、125I、及び131I)、蛍光標識(例えば、フルオレセインイソチオシアネート若しくはFITC、ローダミン、又はランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光標識、ビオチン基などのハプテン標識、及び二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、又はエピトープタグ)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、標識は、潜在的な立体障害を低減するために、様々な長さのスペーサーアーム(例えば、(CH2)n、式中nは、約20未満である)によって連結される。
【0030】
本明細書で使用され、対象物に適用される用語「天然に存在する(naturally occurring)」又は「ネイティブ」は、対象物を天然で見出すことができるという事実を指す。例えば、自然界の供給源から単離することができ、ヒトによって意図的に改変されていない生物体(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチドは、天然に存在する。本明細書で使用される用語「天然に存在しない(non-naturally occurring)」又は「非ネイティブ」は、天然では見られないか、又はヒトによって構造的に改変されたか若しくは合成された物質を指す。例えば、「天然に存在しない」は、当該技術分野において既知の突然変異誘発技術を使用して生成され得るポリヌクレオチドバリアント、又はそのようなポリヌクレオチドバリアントによって生成されるポリペプチドバリアントなどのバリアントを指すことができる。そのようなバリアントとしては、例えば、1つ以上のヌクレオチドが関与し得るヌクレオチド置換、欠失、又は付加によって生成されるものが挙げられる。ポリヌクレオチドバリアントは、コーディング領域又は非コーディング領域若しくはその両方で変更され得る。コーディング領域における変更は、保存的若しくは非保存的アミノ酸置換、欠失、又は付加を生じ得る。その中でも特に確実なものは、サイレント置換、付加、欠失、及び保存的置換であり、これらは抗Mcl-1抗体の特性及び活性を変更しない。当業者であれば、当該技術分野において周知の方法を使用して、そのようなバリアントを生成する方法を容易に決定することができる。用語「天然型ヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含む。用語「修飾ヌクレオチド」は、修飾又は置換された糖基などを有するヌクレオチドを含む。用語「オリゴヌクレオチド結合」は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート、及びホスホロアミデートなどを含む。例えば、LaPlanche et al.,Nucl Acids Res.,14:9081(1986);Stec et al.,J Am.Chem.Soc.,106:6077(1984);Stein et al.,Nucl.Acid.Res.,16:3209(1988);Zon et al.,Anti-Cancer Drug Design,6:539(1991);Zon et al.,OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES:A PRACTICAL APPROACH,pp.87-108(F.Eckstein,Ed.;1991),Oxford University Press,Oxford England;Stec et al.,米国特許第5,151,510号明細書;Uhlmann et al.,Chemical Reviews,90:543(1990)を参照されたく、これらの開示は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの検出又はそのハイブリダイゼーションを可能にするために、検出可能な標識を含み得る。
【0031】
「単離されたタンパク質」という用語は、対象タンパク質が、(1)それと共に天然に見られると想定される他のタンパク質を少なくともいくつかは含まないか、(2)例えば、同じ供給源、例えば、同じ種に由来する他のタンパク質を実質的に含まないか、(3)異なる種に由来する細胞によって発現されるか、(4)天然ではそれと結合されるポリヌクレオチド、脂質、糖質、若しくは他の物質の少なくとも約50パーセントが分離されているか、(5)「単離されたタンパク質」が、天然ではそれと結合されるタンパク質の部分とは結合されない(共有結合的若しくは非共有結合的な相互作用によって)か、(6)天然ではそれと結合されないポリペプチドと(共有結合的若しくは非共有結合的な相互作用によって)作動可能に結合されるか、又は(7)天然には存在しないことを意味する。そのような単離されたタンパク質は、合成起源のゲノムDNA、cDNA、mRNA若しくは他のRNA又はそれらの任意の組合せによってコードされ得る。一実施形態では、単離されたタンパク質は、その使用を妨害するであろう、その天然環境において見出されるタンパク質若しくはポリペプチド又は他の夾雑物を実質的に含まない。
【0032】
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、ネイティブタンパク質、すなわち天然に存在する、及び具体的には非組換え細胞、又は遺伝子操作された若しくは組換え細胞によって産生されるタンパク質の配列を有する分子を意味し、ネイティブタンパク質のアミノ酸配列を有する分子又はネイティブ配列の1つ以上のアミノ酸からの欠失、それに対する付加、及び/又はその置換を有する分子を含む。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、具体的には、抗Mcl-1抗体、又は抗Mcl-1抗体の1つ以上のアミノ酸からの欠失、それへの付加、及び/又はその置換を有する配列を包含する。
【0033】
用語「ポリペプチド断片」は、アミノ末端の欠失、カルボキシル末端の欠失、及び/又は内部の欠失を有するポリペプチドを指す。ある特定の実施形態では、断片は、少なくとも5~約500のアミノ酸長である。ある特定の実施形態では、断片は、少なくとも5、6、8、10、14、20、50、70、100、110、150、200、250、300、350、400、又は450のアミノ酸長であることを理解されたい。特に有用なポリペプチド断片は、結合ドメイン、特に抗原結合ドメインを含む機能ドメインを含み、特にここでは、抗原はヒトMcl-1のエピトープである。抗Mcl-1抗体の場合、有用な断片としては、CDR領域、重鎖若しくは軽鎖の可変ドメイン、抗体鎖の一部若しくは2つのCDRを含むその可変領域のみなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
用語「抗原」は、抗体などの選択的結合剤による結合を受ける能力を有し、更に、その抗原のエピトープに結合する能力を有する抗体を生成するために動物において使用することが可能な分子又は分子の一部を指す。抗原は、1つ以上のエピトープを有してもよい。
【0035】
「抗原結合タンパク質」は、抗原に特異的に結合するタンパク質である。例示的な抗原結合タンパク質としては、抗体又はその抗原結合断片の任意の形態が挙げられる。
【0036】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリン又はT細胞受容体への特異的結合が可能である抗原上の任意の部位を含む。ある特定の実施形態では、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、リン酸基、又はスルホニル基などの化学的に活性な表面分類の分子を含み、ある特定の実施形態では、三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有し得る。エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。ある特定の実施形態では、抗体は、それがタンパク質及び/又は高分子の複合体混合物中のその標的抗原を優先して認識する場合に、特異的に結合すると言える。ある特定の実施形態では、抗体は、平衡解離定数が約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、又は約10-12M未満である場合に、抗原に特異的に結合すると言える。
【0037】
抗体は、2つの抗体が同一又は立体的に重複するエピトープを認識する場合、参照抗体と「本質的に同じエピトープ」に結合する。2つの抗体が同一又は立体的に重複するエピトープに結合するかどうかを決定するための迅速で最も広く使用されている方法は、標識抗原又は標識抗体を使用して、多数の異なる形式で構成され得る競合アッセイである。通常、抗原を基材上に固定化し、標識抗体の結合を遮断する非標識抗体の能力を、放射性同位体又は酵素標識を用いて測定する。
【0038】
本発明による抗体結合及び特異性の評価において、過剰な抗体が受容体に結合したリガンドの量を、少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%、又はそれ以上減少させる場合(例えば、インビトロ競合的結合アッセイを使用して測定されるとき)、抗体はリガンドの受容体への付着を実質的に阻害する。
【0039】
「抗体」又は「抗体ペプチド」は、無傷の抗体、又は特異的結合のために無傷の抗体と競合するその結合断片を指す。ある特定の実施形態では、結合断片は、組換えDNA技術によって作製される。更なる実施形態では、結合断片は、無傷の抗体の酵素的又は化学的切断によって作製される。結合断片としては、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、及び単鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成要素から同定、分離、及び/又は回収されたものである。その天然環境の汚染物質構成要素は、抗体のアッセイ、診断、又は治療における使用を妨げ得る材料であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質又は非タンパク質物質を含み得る。ある特定の実施形態では、抗体は、(1)ローリー法による決定で抗体が95重量%を超えるまで、又は99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によってN末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を十分に得られる程度まで、又は(3)クマシーブルー又は銀染色を用いて、還元条件下又は非還元条件下でSDS-PAGEによって均質になるまで精製される。単離された抗体は、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないため、組換え細胞内のインサイチュの抗体を含む。
【0041】
「中和抗体」は、それが結合する標的抗原のエフェクター機能を遮断するか、又は実質的に低減させることができる抗体分子である。したがって、「中和」抗Mcl-1抗体は、Mcl-1のエフェクター機能を遮断するか、又は実質的に低減させることができる。「実質的に低減させる」は、標的抗原(例えば、ヒトMcl-1)のエフェクター機能の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%の低減を意味することが意図される。
【0042】
用語「特異的結合剤」は、標的に特異的に結合する天然に存在する分子、又は天然には存在しない分子を指す。特異的結合剤の例としては、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、及び脂質が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、特異的結合剤は抗体である。
【0043】
用語「Mcl-1に対する特異的結合剤」は、Mcl-1の任意の部分に特異的に結合する特異的結合剤を指す。ある特定の実施形態では、Mcl-1に対する特異的結合剤は、Mcl-1に特異的に結合する抗体である。
【0044】
例として、抗体は、その抗体が標識されるとき、対応する非標識抗体によって標的から離れて競合できる場合、標的に「特異的に結合する」。
【0045】
本明細書で使用される用語「免疫学的機能的免疫グロブリン断片」は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の少なくともCDRを含有するポリペプチド断片を指す。本開示の免疫学的機能的免疫グロブリン断片は、抗原に結合することができる。ある特定の実施形態では、抗原は、受容体に特異的に結合するリガンドである。これらの実施形態では、本開示の免疫学的機能的免疫グロブリン断片の結合は、リガンドのその受容体への結合を妨げ、受容体へのリガンドの結合から生じる生物学的応答を妨害する。一実施形態では、本開示の免疫学的機能的免疫グロブリン断片は、Mcl-1に特異的に結合する。好ましくは、この断片は、ヒトMcl-1に特異的に結合する。
【0046】
用語「作動可能に連結した」は、この用語が適用される成分が好適な条件下でその固有機能を実施すること、又は予想若しくは意図した通りに作動することが可能になる関係にあることを意味する。例えば、タンパク質コーディング配列に「作動可能に連結した」制御配列は、少なくとも部分的には制御配列によってタンパク質コーディング配列の発現が制御されるようにそれに連結されており、これにより典型的には、制御配列の転写活性に適合する条件下で、コーディング配列の発現をもたらす。
【0047】
用語「医薬品」、「薬剤」、又は「薬物」は、対象、例えば、患者に適切に投与されるとき、所望の治療効果を誘導することができる化学化合物、化学化合物の混合物、生体高分子、又は生物学的物質から作製された抽出物を指す。本明細書に開示される1つ又は複数の抗体を含む医薬組成物に関する「薬学的有効量」という表現は、患者などの対象において、外部刺激に対する感度閾値の低下(健康な対象で観察されるレベルに匹敵するレベルまでこの感度閾値が戻った状態で)を排除することができる前記医薬組成物の量を意味すると理解される。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「賦形剤」は、あらゆる薬学的に許容される添加物、担体、希釈剤、補助剤、又は有効活性成分(API)以外の他の成分を意味し、これらは、典型的には、製剤化及び/又は患者への投与のために含まれる。Handbook of Pharmaceutical Excipients,5th Edition,Rowe,et al.,eds.,Pharmaceutical Press,2005,Hardback,928,0853696187。
【0049】
本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド」は、少なくとも10ヌクレオチド長の一本鎖又は二本鎖核酸ポリマーを意味する。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチド又はいずれかの型のヌクレオチドの組換え形態であり得る。修飾には、ブロモウリジンなどの塩基修飾、アラビノシド及び2’,3’-ジデオキシリボースなどのリボース修飾、並びにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート及びホスホロアミデートなどのヌクレオチド間結合の修飾が含まれる。用語「ポリヌクレオチド」には、具体的には、DNA又はRNAの一本鎖形態及び二本鎖形態が含まれる。
【0050】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」は、天然に存在するオリゴヌクレオチド結合及び/又は天然に存在しないオリゴヌクレオチド結合によって一緒に連結された、天然に存在するヌクレオチド及び修飾されたヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、一般に一本鎖であり、200ヌクレオチド以下の長さを有するメンバーを含むポリヌクレオチドサブセットである。ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、10~60のヌクレオチド長である。ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20~40のヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドは、例えば、遺伝子変異体の構築において使用するための一本鎖又は二本鎖であり得る。本開示のオリゴヌクレオチドは、タンパク質コーディング配列に関してセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。
【0051】
本明細書で使用される用語「制御配列」は、それらが作動可能に連結しているコーディング配列の発現、処理、及び/又は細胞内局在化に影響を及ぼし得るポリヌクレオチド配列を指す。そのような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態では、原核生物向けの制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列を含み得る。他の特定の実施形態では、真核生物向けの制御配列は、転写因子のための認識部位を1つ又は複数含むプロモーター、転写エンハンサー配列、転写終結配列及びポリアデニル化配列を含み得る。ある特定の実施形態では、「制御配列」は、リーダー配列及び/又は融合パートナー配列を含み得る。
【0052】
用語「ベクター」は、それが連結された別の核酸を細胞中に運び入れることができる核酸分子を含む。ベクターの一種である「プラスミド」は、環状二本鎖DNAループを指し、追加のDNAセグメントがこれに連結され得る。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、このウイルスベクターでは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得る。特定のベクターは、このベクターが導入された宿主細胞中での自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時にこの宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それにより宿主のゲノムと一緒に複製される。更に、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書においては、「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技術の実行において有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミドである。本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態である場合に、同じ意味で用いられ得る。しかしながら、同等の役割を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などの発現ベクターの他の形態も本開示によって企図される。
【0053】
語句「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を含む。そのような用語は、特定の対象の細胞を指すだけではなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されることが当業者に理解できるだろう。ある特定の改変が変異又は環境的影響のいずれかに起因して後続世代において生じ得るため、そのような子孫は、事実上、親細胞と同一であり得ないが、依然として本明細書において使用される用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。細菌、酵母、バキュロウイルス、及び哺乳動物発現系(並びに、ファージディスプレイ発現系)を含む多種多様の宿主発現系を、本開示の抗体を発現するために使用することができる。好適な細菌発現ベクターの例は、pUC19である。抗体を組換え的に発現させるために、宿主細胞は、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNA断片を担持する1つ以上の組換え発現ベクターでトランスフェクトされ、それにより軽鎖及び重鎖が宿主細胞中で発現され、宿主細胞が培養されている培地中に分泌されることができ、条件培地(conditioned medium)をもたらす。抗体は、当該技術分野において周知の技術を使用して、条件培地から回収することができる。標準的な組換えDNA方法論を使用して、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を得て、これらの遺伝子を組換え発現ベクター中に組み込み、そして宿主細胞中にベクターを導入し、これは、例えば、Sambrook et al.,2001,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratories、Ausubel,F.M.et al.,(eds.),CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,Greene Publishing Associates,(1989)及び米国特許第4,816,397号明細書に記載される通りに行われる。
【0054】
用語「形質導入」は、1つの細菌から別の細菌への、通常はファージによる遺伝子の導入を指すために使用される。「形質導入」はまた、レトロウイルスによる真核生物細胞配列の取得及び導入を指す。
【0055】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来性又は外因性DNAの取り込みを指すために使用され、外因性DNAが細胞膜の内部に導入された場合、細胞は「トランスフェクト」されている。多くのトランスフェクション技法が当該技術分野で周知であり、また、本明細書で開示されている。例えば、Graham et al.,1973,Virology 52-456;Sambrook et al.,2001,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratories;Davis et at,1986,BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Elsevier;及びChu et al.,1981,Gene 13:197を参照されたい。そのような技法は、1つ以上の外因性DNA分子を好適な宿主細胞に導入するために使用することができる。
【0056】
本明細書で使用される用語「形質転換」は、細胞の遺伝的特徴の変化を指し、細胞が新しいDNAを含有するように改変された場合、細胞は形質転換されている。例えば、細胞は、そのネイティブな状態から遺伝子改変されるように形質転換される。トランスフェクション又は形質導入に続き、形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込むことにより、その細胞からのDNAで組換えられてもよく、又はエピソームエレメントとして複製されることなく一過性に維持されてもよく、又はプラスミドとして独立して複製されてもよい。DNAが細胞分裂しながら複製される場合、細胞は安定的に形質転換されていると見なされる。
【0057】
全ての化合物、及びその薬学的に許容される塩は、水及び溶媒などの他の物質と共に見出すことができる(例えば、水和物及び溶媒和物)。
【0058】
抗原結合タンパク質
本明細書に提供されるのは、Mcl-1に結合する抗原結合タンパク質である。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、アポトーシスを阻害し、それによって細胞の生存を向上させるMcl-1のアイソフォーム1に結合する。本開示の抗原結合タンパク質は、当該技術分野で知られる抗原結合タンパク質の多くの形態の任意の形態をとることができる。様々な実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質は、抗体、抗原結合抗体断片、抗体タンパク質生成物、又は抗体誘導体の形態をとる。
【0059】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は抗体を含むか、抗体から本質的になるか、又は抗体からなる。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、重鎖及び軽鎖を含み、且つ可変領域及び定常領域を含む、従来の免疫グロブリン型を有するタンパク質を指す。例えば、抗体は、同一のポリペプチド鎖の対が2つある「Y字型」構造であり、各対が1つの「軽」鎖(通常、分子量が約25kDaである)及び1つの「重」鎖(通常、分子量が約50~70kDaである)を有する、IgGであり得る。抗体は、1つの可変領域及び1つの定常領域を有する。IgG型において、可変領域は、一般に、約100~110又はそれを超えるアミノ酸長であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、これらは主に抗原認識に関与し、異なる抗原に結合する他の抗体と実質的に異なる。定常領域は、抗体が免疫系の細胞及び分子を動員することを可能にする。可変領域は、各天然に存在する軽鎖及び重鎖のN末端領域で見出され、一方、定常領域は、天然に存在する重鎖及び軽鎖のC末端部分から作られている。(Janeway et al.,“Structure of the Antibody Molecule and the Immunoglobulin Genes”,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,4th ed.Elsevier Science Ltd./Garland Publishing,(1999))。
【0060】
抗体のCDRの一般的な構造及び特性は周知である。簡潔に説明すると、抗体の骨格において、CDRは、重鎖及び軽鎖の可変領域中のフレームワーク内に埋め込まれており、そこで抗原結合及び抗原認識に大きい役割を果たす領域を構成する。1つの可変領域は、通常、少なくとも3つの重鎖又は軽鎖のCDRを含み(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883も参照されたい)、それらは、フレームワーク領域(Kabat et al.,1991によってフレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3及びFR4と呼ばれている;Chothia and Lesk,1987も参照されたい)内にある。関連する実施形態において、フレームワークの残基が改変される。改変され得る重鎖フレームワーク領域は、重鎖CDR残基を囲む、H-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4と示される領域内にあり、改変され得る軽鎖フレームワーク領域の残基は、軽鎖CDR残基を囲む、L-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4と示される領域内にある。フレームワーク領域内のアミノ酸は、例えば、ヒトフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークにおいて同定される任意の好適なアミノ酸で置換され得る。
【0061】
抗体は、当該技術分野において知られるいかなる定常領域も含み得る。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖に分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ又はイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義する。IgGは、以下に限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む、いくつかのサブクラスを有する。IgMは、以下に限定されないが、IgM1及びIgM2を含む、サブクラスを有する。本開示の実施形態は、抗体のこのようなクラス又はアイソタイプの全てを含む。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ型又はラムダ型軽鎖定常領域、例えばヒトカッパ型又はラムダ型軽鎖定常領域であり得る。重鎖定常領域は、例えば、アルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型又はミュー型の重鎖定常領域、例えばヒトアルファ型、ヒトデルタ型、ヒトイプシロン型、ヒトガンマ型又はヒトミュー型の重鎖定常領域であり得る。したがって、様々な実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のいずれか1つを含むアイソタイプIgA、IgD、IgE、IgM、又はIgGの抗体である。様々な態様では、抗体は、半減期/安定性を改善するために、又は抗体を発現/商業的生産により適したものにするために、天然に存在する対応物と比較して1つ以上のアミノ酸の改変を含む定常領域を含む。様々な例では、抗体は定常領域を含み、ここでは天然に存在する対応物では存在するC末端のLys残基が除去又は切り取られている。
【0062】
抗体は、モノクローナル抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、哺乳動物、例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒトなどにより産生された天然に存在する抗体に実質的に類似する配列を含む。この点において、抗体は、哺乳動物抗体、例えば、マウス抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ハムスター抗体、ヒト抗体などと見なされ得る。ある特定の態様では、抗原結合タンパク質は、抗体、例えばヒト抗体である。ある特定の態様では、抗原結合タンパク質は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。用語「キメラ抗体」は、2つ以上の異なる抗体由来のドメインを含む抗体を指す。キメラ抗体は、例えば、ある種由来の定常ドメインと、別の種由来の可変ドメインとを含み得るか、又はより一般的には少なくとも2つの種由来のアミノ酸配列のストレッチを含有し得る。キメラ抗体はまた、同一種内の2つ以上の異なる抗体のドメインを含み得る。用語「ヒト化」は、抗体に関して使用される場合、ヒト抗体領域に非常によく似るように遺伝子操作された領域を有し、それによって抗体のヒト化形態の免疫原性を低下させる抗体を指す。典型的には、遺伝子操作は、抗体のフレームワーク領域及び定常領域などのCDR以外の領域に焦点を合わせる。この遺伝子操作は、元の非ヒト抗体の結合特性を保持しながら、免疫原性を低下させる。例えば、ヒト化は、マウス抗体などの非ヒト抗体からヒト抗体へのCDRの移植を含み得る。ヒト化はまた、非ヒト配列をヒト配列に更に類似させるために選択アミノ酸置換を含み得る。ヒト抗体の重鎖及び軽鎖の定常領域に関する配列情報を含む情報は、Uniprotデータベースを介して、また抗体工学及び産生の分野の技術者によく知られた他のデータベースを介して公に利用可能である。例えば、IgG2定常領域は、UniprotデータベースからUniprot番号P01859として入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
抗体は、パパイン及びペプシンなどの酵素により切断して断片にし得る。パパインは、抗体を切断して、2個のFab断片及び1個のFc断片を生じる。ペプシンは、抗体を切断して、F(ab’)2断片及びpFc’断片を生じる。本開示の様々な態様では、抗原結合タンパク質は、抗体の抗原結合断片(すなわち、抗原結合抗体断片、抗原結合断片、又は抗原結合部分)である。様々な例では、抗原結合性抗体断片は、Fab断片又はF(ab’)2断片である。
【0064】
少なくとも約12~150kDaの分子量範囲及び単量体(n=1)から二量体(n=2)まで、三量体(n=3)まで、四量体(n=4)まで、及びより高い可能性がある結合価(n)範囲に広がる代替的な抗体形式の範囲拡大を生じさせるために抗体の構造が利用されており;このような代替的な抗体形式は、本明細書中で「抗体タンパク質生成物」と呼ばれる。抗体タンパク質生成物には、完全な抗体構造に基づくもの及び完全な抗原結合能を保持する抗体フラグメントを模倣するもの、例えば、scFv、Fab及びVHH/VHが含まれる。同族抗体の完全な抗原結合部位を保持する比較的小さい抗原結合断片は、Fv断片であり、これは、完全に可変(V)領域からなる。可溶性で柔軟なアミノ酸ペプチドリンカーを使用して、scFvの形成においてVL及びVH領域を連結させて(一本鎖断片可変、又はより一般的には一本鎖可変断片)、分子を安定化させるか、又は定常(C)ドメインをV領域に加えてFab断片(断片、抗原結合)を生成する。scFv断片及びFab断片はいずれも、宿主細胞(例えば原核生物宿主細胞)中で容易に産生され得る。他の抗体タンパク質生成物として、下記が挙げられる:ジスルフィド結合安定化scFv(ds-scFv)、一本鎖Fab(scFab)、並びにオリゴマー化ドメインに連結されたscFvからなる様々な型を含む、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディ、又はミニボディ(ミニAb)のような二量体抗体型及び多量体抗体型。最小の断片は、ラクダ科動物重鎖抗体並びにシングルドメイン抗体(sdAb)のVHH/VH領域である。新規の抗体型を作製するために最も頻繁に使用される構築ブロックは、約15個のアミノ酸残基のペプチドリンカーにより連結された重鎖及び軽鎖由来のVドメイン(VHドメイン及びVLドメイン)を含む一本鎖可変(V)-ドメイン抗体断片(scFv)である。ペプチボディ又はペプチド-Fc融合体は、更に別の抗体タンパク質生成物である。ペプチボディの構造は、Fcドメインにグラフトされた生物学的に活性なペプチドからなる。ペプチボディは、当該技術分野において既知である。融合タンパク質である本開示の抗原結合タンパク質の他の形態としては、キメラ抗原受容体(CAR)及び二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)が挙げられる。
【0065】
本開示による更に他の抗体タンパク質生成物には、単鎖抗体(SCA);上述したダイアボディ;トリアボディ;及びテトラボディ;二重特異性若しくは三重特異性抗体などが挙げられる。二重特異性抗体は、下記の様々な主要なクラスに分類され得る:BsIgG、付加IgG、二重特異性抗体(BsAb)断片、二重特異性融合タンパク質、及びBsAbコンジュゲート。例えば、Spiess et al.,Molecular Immunology 67(2)Part A:97-106(2015)を参照されたい。
【0066】
様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、これらの抗体タンパク質生成物のいずれか1つを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、scFv、Fab VHH/VH、Fv断片、ds-scFv、scFab、二量体の抗体、多量体の抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ミニAb、ペプチボディ、ラクダ科の重鎖抗体のVHH/VH、sdAb、二重特異性抗体若しくは三重特異性抗体、BsIgG、付加IgG、BsAb断片、二重特異性融合タンパク質、又はBsAbコンジュゲートのうちのいずれか1つを含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0067】
様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、単量体形態、又はポリマー(例えば、オリゴマー、又は多量体)形態の抗体タンパク質生成物である。抗体が2つ以上の個別の抗原結合領域断片を含む特定の実施形態では、抗体は、抗体により認識され、結合される個別のエピトープの数に依って、二重特異性、三重特異性若しくは多重特異性又は二価、三価若しくは多価と見なされる。「多重特異性」又は「多機能性」抗体以外の二価の抗体は、ある特定の実施形態では、同一の抗原特異性を有する結合部位を含むと理解される。
【0068】
様々な実施形態で、抗Mcl-1抗体又はその抗体変異体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、単鎖抗体、単量体抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、F(ab’)2断片、scFab断片、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、及びIgG4抗体からなる群から選択される。
【0069】
様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、治療剤に連結される。治療剤は、化学療法剤、サイトカイン、及び増殖因子、細胞傷害性剤などが挙げられるが、これらに限定されない当該技術分野において既知の任意の治療薬であり得る。
【0070】
親和性及び結合性
本明細書に提供される抗原結合タンパク質は、非共有結合性且つ可逆性の様式でMcl-1に結合する。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質のMcl-1に対する結合強度は、抗原結合タンパク質の結合部位とMcl-1エピトープとの間の相互作用の強度の尺度である、その親和性の観点から説明することができる。様々な態様では、本明細書に提供される抗原結合タンパク質は、Mcl-1に対する高親和性を有し、したがって、低親和性抗原結合タンパク質よりも短い時間でより多量のMcl-1に結合するであろう。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、少なくとも105mol-1、少なくとも106mol-1、少なくとも107mol-1、少なくとも108mol-1、少なくとも109mol-1又は少なくとも1010mol-1である平衡会合定数KAを有する。当業者によって理解されるように、KAは、pH、温度及びバッファ組成を含む因子によって影響され得る。
【0071】
様々な実施形態では、Mcl-1に対する抗原結合タンパク質の結合強度は、その感受性の観点から説明することができる。KDは、平衡解離定数、抗原結合タンパク質とMcl-1との間のkoff/konの比である。KDとKAとは、反比例する。KD値は、抗原結合タンパク質の濃度(特定の実験に必要な抗原結合タンパク質の量)と相関しているため、KD値が低い(低い濃度)ほど、抗原結合タンパク質の親和性が高まる。様々な態様では、Mcl-1への抗原結合タンパク質の結合強度は、KDの観点から説明することができる。様々な態様では、本明細書に提供される抗原結合タンパク質のKDは、約10-1、約10-2、約10-3、約10-4、約10-5、約10-6以下である。様々な態様では、本明細書で提供される抗原結合タンパク質のKDは、マイクロモル、ナノモル、ピコモル又はフェムトモルである。様々な態様では、本明細書に提供される抗原結合タンパク質のKDは、約10-4~10-6、又は10-7~10-9、又は10-10~10-12、又は10-13~10-15、又は10-9~10-12、又は10-9~10-15の範囲内である。様々な態様では、本明細書に提供される抗原結合タンパク質のKDは、約1.0×10-12M~約1.0×10-8Mの範囲内である。様座な態様では、抗原結合タンパク質のKDは、約1.0×10-11M~約1.0×10-9Mの範囲内である。
【0072】
様々な態様では、抗原結合タンパク質の親和性は、フローサイトメトリー又は蛍光活性化セルソーティング(FACS)ベースのアッセイを使用して、測定又はランク付けされる。フローサイトメトリーベースの結合アッセイは、当該技術分野において既知である。例えば、Cedeno-Arias et al.,Sci Pharm 79(3):569-581(2011);Rathanaswami et al.,Analytical Biochem 373:52-60(2008);及びGeuijen et al.,J Immunol Methods 302(1-2):68-77(2005)を参照されたい。様々な態様では、抗原結合タンパク質の親和性は、Trikha et al.,Int J Cancer 110:326-335(2004)及びTam et al.,Circulation 98(11):1085-1091(1998)に記載されるような競合アッセイを使用して測定又はランク付けされる。Trikh et al.において、抗原を発現する細胞をラジオアッセイで使用した。125I標識抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の細胞表面抗原の結合は、懸濁液中の細胞で測定される。様々な態様では、Mcl-1抗体の相対的親和性は、FACSベースのアッセイを介して決定され、この中でフルオロフォアにコンジュゲートしたMcl-1抗体の異なる濃度が、Mcl-1を発現する細胞とインキュベートされ、発せられた蛍光(抗体-抗原結合の直接的尺度である)が決定される。各容量又は濃度についての蛍光をプロットする曲線が作成される。最大値は、蛍光が平坦域に達するか又は最大値に達する最低濃度であり、これは結合飽和が生じたときである。最大値の半分は、EC50又はIC50と考えられ、最低のEC50/IC50を有する抗体は、同じ様式で試験された他の抗体に対して、最高の親和性を有すると見なされる。
【0073】
様々な態様では、競合的結合阻害アッセイで決定されるようなIC50値は、抗原結合タンパク質のKDを近似する。様々な態様では、競合アッセイは、参照抗体、フルオロフォアにコンジュゲートした二次抗体、及びMcl-1を発現する細胞を用いて行われるFACSベースのアッセイである。様々な態様では、細胞を遺伝子操作して、Mcl-1を過剰発現させる。いくつかの態様では、その細胞は、Mcl-1を発現するようにウイルスベクターで形質導入されたHEK293T細胞である。代替の態様では、その細胞は内因的にMcl-1を発現する。FACSベースのアッセイを行う前に、いくつかの態様では、Mcl-1を内因的に発現する細胞が、低Mcl-1発現細胞又は高Mcl-1発現細胞として予め決定される。いくつかの態様では、細胞は、癌細胞又は腫瘍細胞である。様々な態様では、細胞は、細胞株、例えば、血液細胞株、卵巣細胞株、子宮内膜細胞株、膀胱細胞株、肺細胞株、胃腸(GI)細胞株、肝臓細胞株、肺細胞株などに由来する細胞である。本開示の抗原結合タンパク質の様々なアッセイでは、抗原結合タンパク質は、ヒトMcl-1への結合に対して参照抗体と競合する。参照抗体の結合における低下は、インビトロ競合的結合アッセイによって決定されるように、本開示の抗原結合タンパク質のMcl-1への結合の存在、強度、及び/又は程度を示す。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトMcl-1と参照抗体との間の結合性相互作用を阻害し、その阻害はIC50によって特徴付けられる。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、ヒトMcl-1と参照抗体との間の結合性相互作用の阻害に関して約2500nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、約2000nM未満、約1500nM未満、約1000nM未満、約900nM未満、約800nM未満、約700nM未満、約600nM未満、約500nM未満、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、又は約100nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、又は約10nM未満のIC50を示す。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、Mcl-1への結合に対して、Mcl-1に結合することが知られている参照抗体(この参照抗体は、本開示の抗原結合タンパク質のいずれかとは異なる)に対して競合する。
【0074】
結合性は、抗体-抗原複合体の総合強度の尺度となる。それは、3つの主なパラメータ:エピトープに対する抗原結合タンパク質の親和性、抗原結合タンパク質とMcl-1の両方の価数、及び相互作用する部分の構造配置に依存する。抗原結合タンパク質の価数(抗原結合部位の数)が大きくなればなるほど、それが結合することができる抗原(Mcl-1)の量が大きくなる。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、Mcl-1に対する結合性を有する。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、多価である。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、二価である。様々な例では、抗原結合タンパク質は、一価である。
【0075】
交差反応性
様々な実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質はMcl-1に結合し、Bcl-2ファミリーのいかなる他のメンバーにも結合せず、すなわちBcl-2ファミリーのいかなる他のメンバーとも交差反応しない。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、Mcl-1に特異的である。様々な実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質は、Bcl-2ファミリーの別のタンパク質に対する抗原結合タンパク質の選択性よりも、少なくとも10倍大きい、5倍大きい、4倍大きい、3倍大きい、2倍大きいMcl-1に対する選択性を有する。様々な実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質は、任意の他のBcl-2ファミリータンパク質に対する抗原結合タンパク質の選択性よりも、少なくとも10倍大きい、5倍大きい、4倍大きい、3倍大きい、2倍大きいMcl-1に対する選択性を有する。選択性は、Mcl-1に対する、又はBcl-2ファミリーメンバーに対して抗原結合タンパク質によって示されるKDに基づくことができ、KDは表面プラズモン共鳴又はFACSベースの親和性アッセイなどの当該技術分野において既知の技術によって決定され得る。
【0076】
競合アッセイ
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、ヒトMcl-1と参照抗体との間の結合相互作用を阻害し、この参照抗体は、Mcl-1に結合することが知られているが、本開示の抗原結合タンパク質ではない。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトMcl-1への結合で参照抗体と競合し、それにより、インビトロ競合的結合アッセイによって決定される、参照抗体に結合するヒトMcl-1の量を低減させる。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトMcl-1と参照抗体との間の結合性相互作用を阻害し、その阻害はIC50によって特徴付けられる。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、ヒトMcl-1と参照抗体との間の結合性相互作用の阻害に関して約2500nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、約2000nM未満、約1500nM未満、約1000nM未満、約900nM未満、約800nM未満、約700nM未満、約600nM未満、約500nM未満、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、又は約100nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、又は約10nM未満のIC50を示す。
【0077】
様々な例において、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトMcl-1への結合で参照抗体と競合し、それにより、インビトロ競合的結合アッセイによって決定される、参照抗体に結合するヒトMcl-1の量を低減させる。様々な態様では、インビトロ競合的結合アッセイはFACSベースのアッセイであり、ここでは参照抗体のFcに結合するフルオロフォアにコンジュゲートした二次抗体の蛍光が、本開示の抗原結合タンパク質の特定の量の不在下又は存在下で測定される。様々な態様では、FACSベースのアッセイは、参照抗体、フルオロフォアにコンジュゲートした二次抗体、及びMcl-1を発現する細胞を用いて行われる。様々な態様では、細胞を遺伝子操作して、Mcl-1を過剰発現させる。いくつかの態様では、その細胞は、Mcl-1を発現するようにウイルスベクターで形質導入されたHEK293T細胞である。代替の態様では、その細胞は内因的にMcl-1を発現する。FACSベースのアッセイを行う前に、いくつかの態様では、Mcl-1を内因的に発現する細胞が、低Mcl-1発現細胞又は高Mcl-1発現細胞として予め決定される。いくつかの態様では、細胞は、癌細胞又は腫瘍細胞である。様々な態様では、細胞は、細胞株、例えば、血液細胞株、卵巣細胞株、子宮内膜細胞株、膀胱細胞株、肺細胞株、胃腸(GI)細胞株、肝臓細胞株、肺細胞株などに由来する細胞である。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、Mcl-1を内因的に発現する細胞の1つ以上によって、内因的に発現されたMcl-1に高い親和性で結合する。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、FACSベースの競合的結合阻害アッセイで決定されるような、約3000nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、FACSベースの競合的結合阻害アッセイで決定されるような、約2500nM未満、約2000nM未満、約1750nM未満、約1500nm未満、約1250nm未満、約1000nm未満、約750nM未満、又は約500nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、FACSベースの競合的結合阻害アッセイで決定されるような、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nm未満、約75nm未満、約50nm未満、約25nM未満、又は約10nM未満のIC50を示す。
【0078】
他の結合アッセイ、例えば、抗原又はそのエピトープへの結合に関して二次抗体と競合する抗体の能力を試験する競合的結合アッセイ又は競合アッセイは、当該技術分野において既知である。例えば、Trikha et al.,Int J Cancer 110:326-335(2004);Tam et al.,Circulation 98(11):1085-1091(1998)、米国特許出願公開第20140178905号明細書、Chand et al.,Biologicals 46:168-171(2017);Liu et al.,Anal Biochem 525:89-91(2017);及びGoolia et al.,J Vet Diagn Invest 29(2):250-253(2017)を参照されたい。また、2つの抗体を比較する他の方法も当該技術分野において既知であり、これには、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)が含まれる。SPRを使用して、本開示の抗原結合タンパク質及び参照抗体の結合定数を決定することができ、2つの結合定数が比較され得る。
【0079】
抗体産生の方法及び関連方法
抗原結合タンパク質(例えば、抗体、抗原結合抗体断片及び抗体タンパク質生成物)を作製する好適な方法は、当該技術分野で知られる。例えば、抗体を生成するための標準的なハイブリドーマ法は、例えば、Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988)及びCA.Janeway et al.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,NY(2001)において記載されている。
【0080】
宿主の種に応じて、様々なアジュバントを用いて免疫学的応答を増大させ、宿主によるより大きな抗体産生をもたらし得る。そのようなアジュバントとしては、フロイントの完全及び不完全アジュバント、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、及びリゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、並びにジニトロフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。BCG(カルメットとゲランのバチルス)及びコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)は、潜在的に有用なヒトアジュバントである。
【0081】
抗体産生の他の方法を、表1にまとめる。
【0082】
【0083】
抗体をMcl-1のエピトープへ結合するための能力について試験する方法は、抗体がどのように産生されるかに関係なく当該技術分野において既知であり、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降法、SPR、及び競合的阻害アッセイなどの任意の抗体-抗原結合アッセイが挙げられる(例えば、Janeway et al.、及び米国特許出願公開第2002/0197266号明細書を参照されたい)。
【0084】
ある特定の実施形態では、抗体変異体としては、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較してグリコシル化部位の数及び/又はタイプが変化した、グリコシル化変異体が挙げられる。ある特定の実施形態では、タンパク質変異体は、ネイティブなタンパク質よりも数が多い又は少ないN結合グリコシル化部位を含む。N結合グリコシル化部位は、配列:Asn-Xaa-Ser又はAsn-Xaa-Thrによって特徴付けられ、Xaaと表されるアミノ酸残基は、プロリンを除く任意のアミノ酸残基であり得る。この配列を作り出すためのアミノ酸残基の置換は、N結合炭水化物鎖の付加のために、可能性のある新しい部位を提供する。代わりに、この配列を削除する置換によって既存のN結合炭水化物鎖が除去される。また、1つ以上のN結合グリコシル化部位(典型的には天然に存在するもの)が削除されて、1つ以上の新しいN結合部位が生成される、N結合炭水化物鎖の再配置がもたらされる。更なる抗体変異体としては、親アミノ酸配列と比較して、別のアミノ酸(例えば、セリン)によって1つ以上のシステイン残基が欠失又は置換されているシステイン変異体が挙げられる。システイン変異体は、不溶性封入体の単離後など、抗体が生物学的に活性な立体構造に再折り畳みしなければならない場合に有用であり得る。システイン変異体は、一般に、天然タンパク質よりも少ないシステイン残基を有し、通常は、不対システインから生じる相互作用を最小限にするために偶数を有する。
【0085】
追加の実施形態では、抗体変異体は、改変Fc断片又は修飾重鎖定常領域を含む抗体を含み得る。「結晶化する断片」を意味するFc断片、又は重鎖定常領域は、抗体上で変更された結合特性を付与するための突然変異によって改変され得る。例えば、Burton and Woof 1992,Advances in Immunology 51:1-84;Ravetch and Bolland,2001,Annu.Rev.19:275-90、Shields et al.,2001,Journal of Biol.Chem 276:6591-6604;Telleman and Junghans,2000,Immunology 100:245-251;Medesan et al.,1998,Eur.J.Immunol.28:2092-2100を参照されたい(これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる)。そのような突然変異としては、置換、付加、欠失、又はそれらの任意の組合せを挙げることができ、典型的には、本明細書に記載の方法に従って、並びに当該技術分野において既知の方法に従って、1つ以上の変異原性オリゴヌクレオチドを使用する部位特異的突然変異誘発によって産生される(例えば、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,3rd Ed.,2001,Cold Spring Harbor,N.Y.及びBerger et al.,METHODS IN ENZYMOLOGY,Volume 152,Guide to Molecular Cloning Techniques,1987,Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.を参照されたく、これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0086】
ある特定の実施形態では、アミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ得、(2)酸化に対する感受性を低下させ得、(3)結合親和性を変更させ得、及び/又は(4)そのようなポリペプチドに対する他の物理化学的若しくは機能的特性を付与又は改変し得る。ある特定の実施形態によれば、単一又は複数のアミノ酸置換(ある特定の実施形態では保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列(ある特定の実施形態では、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分)内で行われ得る。ある特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、典型的には、親配列の構造的特性を実質的に変化させない(例えば、保存的置換のアミノ酸は、らせん型などの親配列を特徴付ける二次構造を破壊しないか、又は破壊しない傾向がある)。当該技術分野において認識されているポリペプチドの二次構造及び三次構造の例は、PROTEINS,STRUCTURES AND MOLECULAR PRINCIPLES,(Creighton,Ed.),1984,W.H.Freeman and Company,New Yorkに;INTRODUCTION TO PROTEIN STRUCTURE(C.Branden and J.Tooze,eds.),1991,Garland Publishing,New York,N.Y.に;及びThornton et al.,1991,Nature 354:105に記載されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
本開示は、重鎖及び軽鎖を含む抗体を提供し、重鎖及び軽鎖は、一緒になってMcl-1に特異的に結合することができる抗原結合構造を形成する。完全長重鎖は、可変領域ドメイン(VH)並びに3つの定常領域ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を含む。典型的には、VHドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、CHドメインはカルボキシル末端にある。用語「重鎖」は、本明細書で使用される場合、完全長重鎖及びその断片を包含する。完全長軽鎖は、可変領域ドメイン(VL)及び定常領域ドメイン(CL)を含む。重鎖と同様に、軽鎖の可変領域ドメインは、典型的には、ポリペプチドのアミノ末端にある。用語「軽鎖」は、本明細書で使用される場合、完全長軽鎖及びその断片を包含する。F(ab)断片は、1本の軽鎖と、1本の重鎖のCH1及び可変領域とで構成される。F(ab)分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。F(ab’)断片は、1本の軽鎖と、2本の重鎖間に鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab’)2分子を形成し得るように、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域のより多くを含む1本の重鎖とを含む。Fv領域は、重鎖及び軽鎖の両方に由来する可変領域を含むが、定常領域を欠いている。単鎖抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが可動性リンカーによって連結されることで単一のポリペプチド鎖を形成しているFv分子であり、この単一のポリペプチド鎖によって抗原結合領域が形成される。単鎖抗体は、国際公開第88/01649号パンフレット並びに米国特許第4,946,778号明細書及び同第5,260,203号明細書に詳細に論じられており、これらは関連する部分で参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
以下の実施例は、例示のために提供されるものであり、本明細書に開示される主題の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0089】
実施例1
ウサギ免疫化-ウサギクローン性増殖ダイレクトレスキュー(CEDR):採取、ソーティング、上清、及び溶解物生成
ウサギを、当該技術分野において標準的であるプロトコルを使用して、Mcl-1で免疫化した。動物の脾臓を採取し、解離させ、凍結させた。融解したウサギ免疫細胞を、ビオチン化Mcl-1及びAlexa Fluor 647にコンジュゲートしたストレプトアビジン、並びにAlexa Fluor 488にコンジュゲートした抗ウサギIgG抗体を用いて調べて、Mcl-1抗体を発現する細胞を特定した。次いで、検出された細胞をFACS Aria IIIでソーティングし、FBS、10%の活性化ウサギ脾臓細胞上清(TSN)、及びフィーダー細胞培養物で補充したRPMI培地を、100μl/ウェル含有する384ウェルプレートに入れた。モノクローナル培養及びB細胞増殖における7日後に、培養上清をその後のアッセイのために収集し、抗体配列の配列決定及び組換えレスキューのために、ウサギB細胞を溶解した。
【0090】
各エピトープビニング(
図4を参照)からの最高の親和性の、Mcl-1選択的な代表抗体を、クローニング及び発現のために選択した。これらの抗体を免疫組織化学的(IHC)にアッセイし、これにより11P5及び11B14をもたらす抗Mcl-1抗体を特定した。
【0091】
溶解されたB細胞から抗体を組換え的にレスキューするために、溶解物を、最初に、mRNA Catcher PLUS精製キット(Invitrogen/Thermo Fisher)を使用して精製した。この精製工程に続いて、cDNAを合成し、抗体配列をウサギIgG特異的プライマーを使用して増幅した。抗体配列を分析し、クローニングのために特徴的な配列を選択した。配列を発現ベクターpTT5中にクローニングし、293fectin一過性トランスフェクションシステムを使用して、製造業者(Thermo Fisher)によって提供された手順に従って、HEK293T細胞中で発現させた。IHCアッセイを用いて、精製された抗体が、Mcl-1タンパク質に選択的に結合することを確認した。11P5抗Mcl-1抗体を、コンパニオン診断(CDx)の開発のために選択した。
【0092】
【0093】
実施例2
Mcl-1タンパク質に対するELISA
ウサギモノクローナル抗体を含む、免疫化ウサギから単離されたB細胞に由来する細胞培養上清を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって、Mcl-1タンパク質への結合についてスクリーニングした。培地結合プレートのウェルを、最初に、ニュートラビジンで4℃にて一晩コーティングし、BioTekプレート洗浄器を使用して、90μLのPBSで3回洗浄し、次いで1%のミルク/1×PBSのアッセイ希釈液で遮断した。次いで、ビオチン化Mcl-1を、ニュートラビジンコート培地結合プレートのウェル中で固定化させ、PBSで3回洗浄した。次いで、ウサギCEDR上清を、50μLのアッセイ容量に1:5の希釈で室温(RT)にて1時間添加した。次いで、結合した抗体を、ヤギ-抗ウサギ二次抗体にコンジュゲートした西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Jackson ImmunoResearch)、及び3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)(Neogen)基質を用いて、製造業者が定めたプロトコルに従って特定した。プレートウェルを、プレートリーダーにおいて450nmでの吸光度測定にかけた。このアッセイにおける固定化Mcl-1に対する結合についての閾値は、無関係な(すなわち、対照)ウサギ上清が添加されたウェルにおいて測定された吸光度と比較して、吸光度の3倍の増加であった。
【0094】
実施例3
Bcl-2/Bcl-xL計数スクリーン
Mcl-1に結合する抗体をELISAによってBcl-2及びBcl-xLに対する交差反応性について評価した。簡単に言うと、Bcl-2及びBcl-xLタンパク質を、培地結合プレートのウェルにおいて37℃にて1時間別々にコーティングし、BioTekプレート洗浄器を使用して、90μLのPBSで3回洗浄し、次いで1%のミルク/1×PBSのアッセイ希釈液で遮断した。次いで、ウサギCEDR上清をRTにて1時間ウェルに添加した。次いで、結合した抗体を、ヤギ-抗ウサギ二次抗体にコンジュゲートした西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Jackson ImmunoResearch)及びTMB基質を用いて、製造業者が定めたプロトコルに従って特定した。プレートを、プレートリーダーにおいて450nmでの吸光度測定にかけた。このアッセイにおける固定化Bcl-2又はBcl-xLに対する結合についての閾値は、無関係な(すなわち、対照)ウサギ上清が添加されたウェルにおいて測定された吸光度と比較して、吸光度の3倍の増加であった。
【0095】
実施例4
エピトープビニング(相対的エピトープビニング/プロファイリング)
エピトープを特性化するための一般的な方法は、競合実験によるものである。互いに競合する抗体は、標的上の同じ又は重なり合う部位に結合すると考えることができる。この実施例は、Mcl-1への結合についての競合を決定する方法を記載し、多数の抗体に適用される場合の方法の結果を記載している。
【0096】
ビニング実験は多数の方法で行うことができ、利用される方法は、アッセイ結果に対する効果を有し得る。本明細書に開示されるビニング実験において、Mcl-1が1つの参照抗体によって結合され、別のもので調べられた。参照抗体がプローブ抗体の結合を妨害する場合には、抗体は同じビニングに分類された。抗体が利用される順序が重要である。抗体Aが参照抗体として利用され、抗体Bの結合を遮断した場合、逆が常に真実であるとは限らず:参照抗体として使用された抗体Bは、必ずしも抗体Aの標的への結合を遮断するわけではない。ここには、いくつかの要因がある:抗体の結合は、二次抗体の結合を妨害する標的における立体構造変化を引き起こす可能性があるか、又は重なり合っているが互いに完全に塞がれていないエピトープは、二次抗体が標的との十分に高い親和性の相互作用をなお有しており、結合を可能にする可能性がある。一般に、競合がいずれかの順序で観察される場合、抗体は互いにビニングすると言われ、両方の抗体が互いに遮断することができる場合には、エピトープがより完全に重なり合っている傾向性が高い。
【0097】
この実施例で記載される実験について、修正された抗体間競合アッセイを用いて、Mcl-1特異的抗体の相対的エピトープビニングプロファイルを、高スループット様式で決定した。簡単に言うと、各個々の抗体を、配列が多様であった以前のMcl-1 CEDRキャンペーンから選択された参照抗体のパネルとの結合を競合する能力について試験した。次いで、参照抗体パネルとの各試験抗体の競合/結合のパターンを決定し、他の試験抗体から生じたパターンと比較した。次いで、個々のテスト抗体の競合/結合プロファイル間の相関の程度を比較した。同様な競合/結合プロファイルを示す抗体を、互いにビニングした(グループ分けした)(例えば、ビニングプロファイルA、Bなど)。
【0098】
ビオチン化Mcl-1タンパク質を、ストレプトアビジンでコーティングした独自のバーコードが付けられたLumAvidinビーズ(Luminex Corporation)にRTにて暗所で30分間結合させて、ビーズを遠心分離でペレット化させることによって、PBS+2%のFBS(FACS緩衝液)で2回洗浄した。参照抗体上清試料を、抗原コートビーズと共に、RTにて暗所で1時間インキュベートし、3回洗浄した。ビーズを、非特異的結合部位を遮断するためのStabilGuard(登録商標)(Surmodics)を含有するFACS緩衝液中に再懸濁させた。参照抗体が結合した抗原コートビーズをプールし、次いで、試験抗体(CEDR上清)試料(又は陰性対照)を含有する個々の試料ウェルに分けた。ビーズと試験抗体を、RTにて暗所で1時間インキュベートし、2回洗浄した。次いで、試料をAlexa Fluor(登録商標)488 IgG断片特異的検出抗体と共にRTにて暗所で15分間インキュベートし、1回洗浄し、FACS緩衝液中に再懸濁させた。試料をiQue(商標)Screener Platform(Intellicyt)を使用して分析した。
【0099】
個々の試験抗体の抗体競合/結合プロファイルを決定するために、参照のみの抗体結合シグナルが各競合/結合反応についての参照プラス試験抗体シグナル(すなわち全参照抗体組にわたって)から差し引かれた。個々の抗体結合プロファイルを、各競合/結合反応についての正味の結合値の集まりとして定義した。次いで、個々のプロファイル間の類似度を、試験抗体プロファイルの各々の間の相関係数を計算することによって評価した。その後、互いにより高い類似度を示す試験抗体を、共通ビニングプロファイルにグループ分けした。個別のビニングプロファイルは、低い相関度を示した。この方法を使用して、Mcl-1結合抗体を、5つの独自のビニングプロファイルに更に細分化した。
【0100】
実施例5
制限抗原アッセイ(親和性ランク付け)
抗体と抗原の相互作用強度(相対的結合親和性)を評価するために、Mcl-1特異的CEDR上清を制限抗原結合アッセイで試験した。滴定された少量のビオチン化Mcl-1タンパク質を、ストレプトアビジンコートLumAvidin Beads(登録商標)(Luminex Corporation)と共にRTにて暗所において30分間インキュベートし、次いで、FACS緩衝液で2回洗浄し、遠心分離でビーズをペレット化した。ビーズを、StabilGuard(登録商標)(Surmodics)を含有するFACS緩衝液中に再懸濁させた。次いで、抗原結合ビーズを、CEDR上清試料と共にRTにて暗所において18時間インキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄し、Alexa Fluor(登録商標)488 IgG断片特異的検出抗体と共にRTにて暗所において15分間インキュベートし、1回洗浄し、最後にFACS緩衝液中に再懸濁させた。試料をiQue(商標)Screener Platform(Intellicyt)を使用して分析した。このアッセイ法において、標的(Mcl-1)への抗体結合シグナルの程度は、測定された蛍光強度と相関し、したがって、パネルにわたって親和性の相対比較を可能にする。
【0101】
本明細書で引用される参考文献のそれぞれは、引用の文脈から明らかであるように、その全体又は関連部分が参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
特許請求される主題がその詳細な説明と併せて説明されたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される、特許請求される主題の範囲を例示することを意図し、限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。他の態様、利点及び変更形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【0103】
実施例6
免疫組織化学アッセイ
市販の免疫組織化学(IHC)試薬を、IHCによってBcl-2及びBcl-xLの発現を評価するために使用した。本明細書に開示される抗Mcl-1モノクローナル抗体11P5は、腫瘍細胞、全組織、及び脱灰骨試料中を含め、Mcl-1に敏感且つ特異的に結合することを示した。Bcl-2の発現レベルの測定は、抗Bcl-2モノクローナル抗体(カタログ番号MO887)クローン124マウスIgG1(Agilent DAKO)を10μg/mLで使用して達成した。適格な陰性対照を、精巣組織を調べることによって得た。Bcl-xLの発現レベルを、抗Bcl-xLモノクローナル抗体(カタログ番号2764)クローン54H6ウサギIgG(Cell Signaling Technology)を、1:400の希釈で使用して測定した。適格な陰性対照を得るために、子宮の子宮筋層組織を調べることを伴った。Mcl-1発現の測定を、抗Mcl-1ウサギIgG抗体(Amgen)を0.25μg/mLで使用することで得た。適格な陰性対照を得るために、精巣及び子宮組織、並びにSKMM2細胞株を調べることを伴った。
【0104】
8つの腫瘍細胞株を、抗Mcl-1モノクローナル抗体を使用して分析して、免疫組織化学的検査によってMcl-1の発現レベルを評価した。
図6~11に示される結果は、抗Mcl-1抗体4019、5H16、6A3、11P5、及び11B14が腫瘍細胞株中のMcl-1に対して、免疫反応性を有することを立証している。更に、抗Mcl-1抗体は、腫瘍細胞株中のMcl-1の発現レベルに対する様々な程度の免疫反応性を有し、細胞株AMO1(図ではA)が最も高い発現を有し、細胞株SKMM2(図ではH)が最も低い発現を有した(Mcl-1の発現は、
図16でランク付けされている)。
図10及び11は、抗体4019、11P5、及び11B14が抗体5H16及び6A3と比べてより強い免疫反応性を示すことを立証しており、したがって全組織における更なる特性評価のために選択された。
図12及び13は、11P5及び11B14(
図12)が、扁桃リンパ球を適切に免疫染色するが、4019(
図13)は適切に免疫染色しないことを立証している。
図14及び15は、抗体11P5が抗体11B14(
図15)よりも骨髄細胞中のMcl-1の強い免疫染色を表すこと(
図14)を立証している。
図17、18、19、及び20は、抗体11P5がリンパ組織における(扁桃腺及び骨髄、
図17~19)、並びに脱灰組織における(骨髄、
図20)免疫組織化学的検査によるMcl-1の検出で、11B14よりも優れていることを立証している。
【配列表】
【国際調査報告】