(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】定量的質量分析による臨床抗体応答のためのELISAの較正
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240216BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20240216BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240216BHJP
C07K 16/08 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N30/72 C
G01N27/62 V
G01N27/62 D
C07K16/08 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545982
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2022054795
(87)【国際公開番号】W WO2022180212
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516257833
【氏名又は名称】ヤンセン ファッシンズ アンド プリベンション ベーフェー
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN VACCINES & PREVENTION B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】サドフ,ジェラルド,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルウィリゲン,アンネ-ミエケ,イヴォンヌ,ヴィルヘルミナ
(72)【発明者】
【氏名】スティー,ダニエル,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スニークス-ヴリース,エブリン
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ケルクホフ,トーマス,ルドウィック,ゲルトルーディス,マチルダ
【テーマコード(参考)】
2G041
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041EA12
2G041FA12
2G041GA09
2G041HA01
2G041JA02
2G041LA08
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA50
4H045EA53
(57)【要約】
臨床抗体応答についてELISA読み出しを較正する方法が記載される。特に、本発明は、定量的質量分析によるワクチンに対する臨床抗体応答についてELISA読み出しを較正するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、前記方法は、
i.前記抗原と前記抗原に結合した前記抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、前記抗体を含有する較正物質を前記抗原と接触させる工程と、
ii.ELISA検出法によって、前記較正物質中の前記抗体の相対量を判定する工程と、
iii.前記抗原と前記抗原に結合した前記抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、前記較正物質を前記抗原と接触させることによって、工程iを繰り返す工程と、
iv.前記1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
v.前記抗体のプロテオタイピックペプチドを含む混合物を生成するために、前記1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程であって、前記プロテオタイピックペプチドは、前記抗体のFc領域において生じる、消化する工程と、
vi.前記プロテオタイピックペプチドの質量応答を測定するために、前記混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vii.前記プロテオタイピックペプチドの前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって、前記較正物質中の前記抗体の前記絶対量を判定する工程であって、前記参照曲線は、前記プロテオタイピックペプチドの質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、判定する工程と、
viii.工程iiにおいて前記ELISAによって判定された、前記較正物質中の前記抗体の前記相対量を、工程viiにおいて判定された、前記較正物質中の前記抗体の前記絶対量に相関させるための変換係数を確立する工程と、
ix.前記抗原と前記抗原に結合した前記抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、前記試料を前記抗原と接触させる工程と、
x.前記ELISA検出法によって、前記試料中の前記抗体の前記相対量を判定する工程と、
xi.前記試料中の前記抗体の前記絶対量を判定するために、前記変換係数を適用する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
工程iの前に前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線を得ることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程viiにおいて、前記プロテオタイピックペプチドの絶対量が、まず、前記プロテオタイピックペプチドの前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線と比較することによって判定され、次いで、前記較正物質中の前記抗体の前記絶対量が、前記プロテオタイピックペプチドの前記絶対量に基づいて判定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料は、前記抗原若しくは同じウイルス由来の関連抗原を含むワクチンを投与された対象から、又は前記抗原を含むウイルスと接触した対象から得られた試料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ワクチンは、予防ワクチン又は治療ワクチンであり、好ましくは呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対するワクチン、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対するワクチン、インフルエンザウイルスに対するワクチン、エボラウイルスに対するワクチン、A型、B型、C型若しくはD型肝炎ウイルスに対するワクチン、又はSARS-COV-2に対するワクチンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗原は、RSV-B F抗原である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料中の前記抗体は、前記抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体は、免疫グロブリンG(IgG)のうちの1つ又は2つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記試料は、血清、血漿又は別の生物学的流体試料である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記較正物質は、血清、血漿又は別の生物学的流体試料である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程vは、前記1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を変性させる工程、還元する工程、アルキル化する工程及び/又は希釈する工程のうちの1つ又は2つ以上を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のうちの1つ又は2つ以上を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記プロテオタイピックペプチドは、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程viの前に前記混合物を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを更に含み、好ましくは前記LCは、高速液体クロマトグラム(HPLC)である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記定量的質量分析は、タンデム質量分析である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記定量的質量分析は、多重反応モニタリング(MRM)又は選択反応モニタリング(SRM)含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記定量的質量分析は、並列反応モニタリング(PRM)を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の前記質量応答を測定することを更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線と比較することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
RSV抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中の前記RSV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、前記方法は、
i.前記RSV抗原と前記抗原に結合した前記抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、前記試料を前記RSV抗原と接触させる工程と、
ii.前記1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドを含む第1の混合物を生成するために、前記1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、前記第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.前記プロテオタイピックペプチドの質量スペクトルを生成するために、前記第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.前記質量スペクトルから前記プロテオタイピックペプチドの質量応答を測定する工程と、
vii.前記プロテオタイピックペプチドの前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって、前記試料において前記RSV抗原に特異的な前記抗体の前記絶対量を判定する工程であって、前記参照曲線は、前記プロテオタイピックペプチドの質量分析応答を前記プロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、判定する工程と、を含む、方法。
【請求項21】
工程iの前に前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線を得ることを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程viiにおいて、前記プロテオタイピックペプチドの絶対量が、まず、前記プロテオタイピックペプチドの前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線と比較することによって判定され、次いで、前記RSV抗原に特異的な前記抗体の前記絶対量が、前記プロテオタイピックペプチドの前記絶対量に基づいて判定される、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記定量的質量分析は、タンデム質量分析である、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記定量的質量分析は、多重反応モニタリング(MRM)、選択反応モニタリング(SRM)、又は並列反応モニタリング(PRM)を含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の前記質量応答を測定することを更に含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線と比較することを更に含む、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
HIV抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中の前記HIV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、前記方法は、
i.前記HIV抗原と前記抗原に結合した前記抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、前記試料を前記HIV抗原と接触させる工程と、
ii.前記1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドと配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドとを含む第1の混合物を生成するために、前記1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、前記第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.前記プロテオタイピックペプチドの各々の質量スペクトルを生成するために、前記第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.前記質量スペクトルから前記プロテオタイピックペプチドの各々の質量応答を測定する工程と、
vii.前記プロテオタイピックペプチドの各々の前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線と比較することによって、前記試料において前記HIV抗原に特異的な前記抗体の前記絶対量を判定する工程であって、前記参照曲線は、前記プロテオタイピックペプチドの質量分析応答を前記プロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、判定する工程と、を含む、方法。
【請求項28】
工程iの前に前記プロテオタイピックペプチドの各々の前記参照曲線を得ることを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
工程viiにおいて、配列番号1のアミノ酸配列を有する前記プロテオタイピックペプチドの絶対量は、前記プロテオタイピックペプチドの前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線と比較することによって判定され、次いで、前記HIV抗原に特異的な抗体IgG1、3及び4の絶対量は、前記プロテオタイピックペプチドの前記絶対量に基づいて判定される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
工程viiにおいて、配列番号2のアミノ酸配列を有する前記プロテオタイピックペプチドの絶対量は、前記プロテオタイピックペプチドの前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線と比較することによって判定され、次いで、前記HIV抗原に特異的な抗体IgG2の絶対量は、前記プロテオタイピックペプチドの前記絶対量に基づいて判定される、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記試料中の前記抗体の前記絶対量は、前記抗体IgG1、3、及び4の前記絶対量と前記抗体IgG2の前記絶対量との合計である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記定量的質量分析は、タンデム質量分析である、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記定量的質量分析は、多重反応モニタリング(MRM)、選択反応モニタリング(SRM)、又は並列反応モニタリング(PRM)を含む、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の前記質量応答を測定することを更に含む、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の前記質量応答を対応する前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線と比較することを更に含む、請求項27~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
SARS-COV-2抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中の前記SARS-COV-2抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、前記方法は、
i.前記SARS-COV-2抗原と前記抗原に結合した前記抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、前記試料を前記SARS-COV-2抗原と接触させる工程と、
ii.前記1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドと配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドとを含む第1の混合物を生成するために、前記1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、前記第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.前記プロテオタイピックペプチドの各々の質量スペクトルを生成するために、前記第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.前記質量スペクトルから前記プロテオタイピックペプチドの各々の質量応答を測定する工程と、
vii.前記プロテオタイピックペプチドの各々の前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線と比較することによって、前記試料において前記SARS-COV-2抗原に特異的な前記抗体の前記絶対量を判定する工程であって、前記参照曲線は、前記プロテオタイピックペプチドの質量分析応答を前記プロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、判定する工程と、を含む、方法。
【請求項37】
工程iの前に前記プロテオタイピックペプチドの各々の前記参照曲線を得ることを更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
工程viiにおいて、配列番号1のアミノ酸配列を有する前記プロテオタイピックペプチドの絶対量は、前記プロテオタイピックペプチドの前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線と比較することによって判定され、次いで、前記SARS-COV-2抗原に特異的な抗体IgG1、3及び4の絶対量は、前記プロテオタイピックペプチドの前記絶対量に基づいて判定される、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
工程viiにおいて、配列番号2のアミノ酸配列を有する前記プロテオタイピックペプチドの絶対量は、前記プロテオタイピックペプチドの前記質量応答を前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線と比較することによって判定され、次いで、前記SARS-COV-2抗原に特異的な抗体IgG2の絶対量は、前記プロテオタイピックペプチドの前記絶対量に基づいて判定される、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記試料中の前記抗体の前記絶対量は、前記抗体IgG1、3、及び4の前記絶対量と前記抗体IgG2の前記絶対量との合計である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記定量的質量分析は、タンデム質量分析である、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記定量的質量分析は、多重反応モニタリング(MRM)、選択反応モニタリング(SRM)、又は並列反応モニタリング(PRM)を含む、請求項36~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の前記質量応答を測定することを更に含む、請求項36~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の前記質量応答を対応する前記プロテオタイピックペプチドの前記参照曲線と比較することを更に含む、請求項36~43のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、臨床抗体応答についてELISA読み出しを較正する方法に関する。特に、本発明は、定量的質量分析によるワクチンに対する臨床抗体応答についてELISA読み出しを較正するための方法に関する。
【0002】
発明の背景
現在、臨床試験におけるワクチン製品に対する一次免疫応答は、免疫アッセイによって使用されるウイルス反応性血清の参照材料との比較に基づいて、任意の単位で読み出されるELISAなどの免疫アッセイによって分析されている(Aydin2015)。このタイプの読み出しは、異なる参加者の免疫応答を同じ臨床研究内の群間で比較するのに十分な情報を与えるが、免疫応答の大きさに関する情報を与えない。このため、異なる標的抗原にわたって様々なワクチン製品間の免疫応答を正確に比較すること、又は正確に同じアッセイ及び参照材料が使用されないときに、臨床日を前臨床データと比較することは、不可能である。
【0003】
このタイプのELISAに関しては、定量的質量分析はヒト血清における他の抗体から抗原特異的抗体を区別することができないので、免疫アッセイから離れて、代わりにヒト血清における抗原特異的抗体の読み出しとして定量的質量分析を使用する実用的な可能性はない。
【0004】
活性医薬品が循環において直接測定され得る治療とは対照的に、ワクチンの薬力学的応答は、免疫原に対する免疫系の応答に基づく。多くの独特な方法で標的抗原に結合することができるポリクローナル血清試料におけるワクチン特異的抗体の濃度は、均一な結合化学量論及び親和性を有するモノクローナル抗体に基づいて、参照標準に対して確実に評価されることができない。自然に感染した、又はワクチン接種によってヒトのコホートに由来するポリクローナル血清に基づく参照標準は、様々な濃度でのある範囲の抗体特異性を含有し、ワクチン応答を評価するための適切な参照となる。
【0005】
臨床免疫アッセイを較正するために定量的質量分析を使用することが可能であり(Pan,Aebersoldら2009)、それによって、アッセイの読み出しを血清1ml当たりのIgG/IgAの単位での絶対量にする。これは、ワクチンに対する臨床応答の実際の大きさを与え、更に、それを同じウイルスに対する他のワクチン製品に対する応答と比較する可能性を可能にする。更に、それは、臨床データを前臨床データと比較する可能性を可能にする。
【0006】
しかしながら、ワクチン誘発免疫応答の絶対較正を可能にする質量分析の使用は、報告されていない。免疫応答の絶対読み出しの確立に関してかなりの量の先行技術文献が存在するが、それは、研究室にわたって広く実施され得る許容された標準の確立、参照標準としての既知の濃度を有する精製抗体の使用、又は抗体の免疫精製に続く直接定量に依存している。
【0007】
ELISAは、その極めて高い特異性、高スループット、単純さ、規制上の許容性のために、臨床試料における免疫応答を測定するための最も好ましい検出方法であり、抗原特異的抗体を測定する目的のための唯一の実用的な解決策である。したがって、上述の2つの技術、ELISA及び定量的質量分析(quantitative mass spectrometry、qMS)の新しい組み合わせの開発が必要とされている。
【0008】
発明の概要
本発明は、ELISAの任意の読み出しを抗原特異的抗体の絶対量に変換することを可能にする、定量的質量分析によって臨床抗体応答のELISA読み出しを較正することによってこの必要性に対処する。本発明は、臨床分析の主力であるELISAが、qMSの全ての利点、すなわち、絶対免疫グロブリン読み出し(Calderon-Celis、Encinarら2018)とともに使用され得るように、2つの周知の技術、ELISA及び定量的質量分析(qMS)を組み合わせる。したがって、ELISA参照材料の応答を定量するためにqMSを使用することによって、ELISAの任意の読み出しは、免疫グロブリンの絶対量に変換され得る。
【0009】
一般的な態様では、本出願は、試料中の抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法に関する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本方法は、
i.抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、抗体を含有する較正物質を抗原と接触させる工程と、
ii.ELISA検出法によって、較正物質中の抗体の相対量を判定する工程と、
iii.抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、較正物質を抗原と接触させることによって、工程iを繰り返す工程と、
iv.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
v.抗体のプロテオタイピックペプチドを含む混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
vi.プロテオタイピックペプチドの質量応答を測定するために、混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって、較正物質中の抗体の絶対量を判定する工程と、
viii.工程iiにおいてELISAによって判定された、較正物質中の抗体の相対量を、工程viiにおいて判定された、較正物質中の抗体の絶対量に相関させるための変換係数を確立する工程と、
ix.試料中の抗体の絶対量を判定するために、変換係数を適用する工程と、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの参照曲線を得ることを更に含み、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける。
【0012】
いくつかの実施形態では、工程viiにおいて、プロテオタイピックペプチドの絶対量は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって第1に判定され、次いで、較正物質中の抗体の絶対量は、プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、
x.抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料を抗原と接触させる工程と、
xi.ELISA検出法によって試料において抗体の相対量を判定する工程と、
xii.工程viiiにおいて確立された変換係数を適用することによって、試料において抗体の絶対量を判定する工程と、を更に含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、試料は、抗原若しくは同じウイルス由来の関連抗原を含むワクチンを投与された対象から、又は抗原を含むウイルス若しくは抗原的に関連するウイルスと接触した対象から得られた試料である。
【0015】
いくつかの実施形態では、ワクチンは、予防ワクチン又は治療ワクチンであり、好ましくは呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus、RSV)に対するワクチン、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、HIV)に対するワクチン、インフルエンザウイルスに対するワクチン、エボラウイルスに対するワクチン、A型、B型、C型若しくはD型肝炎ウイルスに対するワクチン、又はSARS-COV-2に対するワクチンである。
【0016】
ある特定の実施形態では、抗原は、RSV-B抗原、好ましくはRSV-B F抗原である。
【0017】
ある特定の実施形態では、抗原は、HIV抗原、好ましくはモザイク(Mosaic)gp140である。
【0018】
ある特定の実施形態では、抗原は、SARS-COV-2抗原、好ましくはスパイク抗原(SARS-COV-2 S)である。
【0019】
いくつかの実施形態では、試料中の抗体は、抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4などの、免疫グロブリンG(immunoglobulin G、IgG)のうちの1つ又は2つ以上を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、試料は、血清、血漿又は別の生物学的流体試料、好ましくはヒト血清である。
【0022】
いくつかの実施形態では、較正物質は、血清、血漿又は別の生物学的流体試料、好ましくはヒト血清である。
【0023】
いくつかの実施形態では、試料中の抗体は、較正物質として使用された抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する。
【0024】
いくつかの実施形態では、工程vは、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を変性させる工程、還元する工程、アルキル化する工程及び/又は希釈する工程のうちの1つ又は2つ以上を更に含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、プロテオタイピックペプチドは、抗原に特異的な抗体において、好ましくは抗体のFc領域において生じ、より好ましくは配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程viの前に混合物を液体クロマトグラフィー(liquid chromatography、LC)に供することを更に含み、好ましくはLCは、高速液体クロマトグラム(high performance liquid chromatogram、HPLC)である。
【0027】
いくつかの実施形態では、定量的質量分析は、タンデム質量分析であり、好ましくは多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring、MRM)、選択反応モニタリング(selected reaction monitoring、SRM)、又は並列反応モニタリング(parallel reaction monitoring、PRM)を含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量(intact mass)の質量応答を測定することを含む。更なる実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む。
【0029】
別の態様では、本出願は、RSV抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中のRSV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法は、
i.RSV抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料をRSV抗原と接触させる工程と、
ii.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドを含む第1の混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.プロテオタイピックペプチドの質量スペクトルを生成するために、第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.質量スペクトルからプロテオタイピックペプチドの質量応答を測定する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって、試料においてRSV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する工程と、を含む、方法に関する。
【0030】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの参照曲線を得ることを更に含み、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける。
【0031】
いくつかの実施形態では、定量的質量分析は、タンデム質量分析であり、好ましくは多重反応モニタリング(MRM)、選択反応モニタリング(SRM)、又は並列反応モニタリング(PRM)を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答を測定することを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む。
【0034】
別の態様では、本出願は、HIV抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中のHIV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法は、
i.HIV抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料をHIV抗原と接触させる工程と、
ii.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドと配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドとを含む第1の混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.プロテオタイピックペプチドの各々の質量スペクトルを生成するために、第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.質量スペクトルからプロテオタイピックペプチドの各々の質量応答を測定する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの各々の質量応答をプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線と比較することによって、試料においてHIV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する工程であって、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量分析応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、判定する工程と、を含む、方法に関する。
【0035】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線を得ることを更に含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、定量的質量分析は、タンデム質量分析であり、好ましくは多重反応モニタリング(MRM)、選択反応モニタリング(SRM)、又は並列反応モニタリング(PRM)を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の質量応答を測定することを更に含む。
【0038】
別の態様では、本出願は、SARS-COV-2抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中のSARS-COV-2抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法は、
i.SARS-COV-2抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料をSARS-COV-2抗原と接触させる工程と、
ii.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドと配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドとを含む第1の混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.プロテオタイピックペプチドの各々の質量スペクトルを生成するために、第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.質量スペクトルからプロテオタイピックペプチドの各々の質量応答を測定する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの各々の質量応答をプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線と比較することによって、試料においてSARS-COV-2抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する工程であって、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量分析応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、判定する工程と、を含む、方法に関する。
【0039】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線を得ることを更に含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、定量的質量分析は、タンデム質量分析であり、好ましくは多重反応モニタリング(MRM)、選択反応モニタリング(SRM)、又は並列反応モニタリング(PRM)を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の質量応答を測定することを更に含む。
【0042】
本発明の他の態様、特徴、及び利点は、発明の詳細な説明、並びにその好ましい実施形態及び添付の特許請求の範囲を含む以下の開示より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
上記の概要、及び本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより良く理解されるであろう。しかしながら、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解するべきである。
【
図1】実施例1に記載のペプチドVVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号1)の質量応答を示す。ピーク面積は、相対存在量で表される。
【
図2】分光光度読み出しによって得られた、RSV-B F抗原に結合した抗RSV-B抗原抗体陽性ヒト血清についてのELISA参照標準曲線を示す。発光は、相対発光量(Relative light unit、RLU)で表される。
【
図3】ELISA参照材料であるRSV-B F抗原陽性ヒト血清のqMS分析の実験設定を開示する。
【
図4】抗RSV-B F抗原抗体陽性ヒト血清に対する質量分析によって読み出された抗原結合IgGの量で生成されたELISA参照標準曲線の直線部分を開示する。
【
図5】実施例2に記載されるペプチドVVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号1)及びVVSVLTVVHQDWLNGK(配列番号2)の質量応答を示す。ピーク面積は、相対存在量で表される。
【
図6】分光光度読み出しによって得られた、HIV抗原に結合した抗HIV抗原(モザイクgp140)抗体陽性ヒト血清についてのELISA参照標準曲線を示す。読み出しは、450nm波長での光学密度(Optical Density、OD450)で表される。
【
図7】抗HIV抗原抗体陽性ヒト血清に対する質量分析によって読み出された抗原結合IgGの量で生成されたELISA参照標準曲線の直線部分を開示する。
【
図8】実施例3に記載されるペプチドVVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号1)及びVVSVLTVVHQDWLNGK(配列番号2)の質量応答を示す。ピーク面積は、相対存在量で表される。
【
図9】分光光度読み出しによって得られた、SARS-COV-2抗原に結合した抗SARS-COV-2抗原抗体陽性ヒト血清についてのELISA参照標準曲線を示す。発光は、相対発光量(RLU)で表される。
【
図7】抗SARS-COV-2抗原抗体陽性ヒト血清に対する質量分析によって読み出された抗原結合IgGの量で生成されたELISA参照標準曲線の直線部分を開示する。
【0044】
詳細な記述
「背景技術」において、また、本明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載し、これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0045】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。本明細書に引用する全ての特許、公開された特許出願及び刊行物は、参照によってあたかもその全体が本明細書に記載されているように組み込まれる。
【0046】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0047】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対して多くの均等物を認識するか、又は確認することができよう。かかる均等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0048】
本明細書及び以下の特許請求の範囲を通して、文脈上必要としない限り、「含む(comprise)」という用語並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、指定の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を含むが、任意のその他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を除外するものではないことを意味すると、理解されよう。本明細書に使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」又は「含む(including)」という用語に置き換えることができ、又は場合によって本明細書に使用される場合、「有する(having)」という用語に置き換えることもできる。
【0049】
本明細書に使用される場合、「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲の要素において指定されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。本明細書に使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程は除外しない。本出願の態様又は実施形態に関連して本明細書で使用するとき、本開示の範囲を変化させるために、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、及び「有する」という上記用語のいずれかを、「からなる」又は「から本質的になる」という用語に置き換えることができる。
【0050】
本明細書に使用される場合、複数の列挙された要素間の「及び/又は」という接続的な用語は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書に使用される場合、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。
【0051】
特に断らない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、通常、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1mg/mL~10mg/mLの濃度範囲は、0.9mg/mL~11mg/mLを含む。本明細書で使用するとき、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0052】
本明細書で使用するとき、「対象」とは、本出願の実施形態による方法によって治療される、又は治療された任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。本明細書に使用される場合、「哺乳動物」という用語は、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル又は類人猿などの非ヒト霊長類(non-human primate、NHP)、ヒトなど、より好ましくはヒトが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本出願の読者を助けるため、明細書の記載は、様々な段落若しくはセクションにおいて、及び/又は本出願の様々な実施形態において分けられている。これらの分離は、段落又はセクション又は実施形態の実体を別の段落又はセクション又は実施形態の実体から切り離すものとみなされるべきではない。反対に、当業者であれば、本明細書の記載が広範な用途を有し、想到され得る様々な段落、パラグラフ、及び文章の全ての組み合わせを包含することを理解するであろう。いかなる実施形態の考察も、単なる例示であることを意味するものであり、特許請求の範囲を含む本開示の範囲がこれらの実施例に限定されることを示唆することを意図するものではない。
【0054】
本明細書で互換的に使用される「生物学的試料」という用語は、生物から得られた様々な試料タイプを包含し、診断又は監視アッセイで使用され得る。この用語は、血液及び生物学的起源の他の液体試料、生検標本又は組織培養物又はそれに由来する細胞、及びその子孫などの固体組織試料を包含する。この用語は、特定の成分に対する試薬での処理、可溶化、又は濃縮などによって、それらの調達後に任意の方法で操作された試料を包含する。この用語は、臨床試料を包含し、細胞培養物、細胞上清、細胞可溶化物、血清、血漿、生物学的流体、及び組織試料中の細胞も含む。
【0055】
本明細書で使用するとき、「抗体」という用語は、広義で使用され、かつヒト、ヒト化、複合、及びキメラ抗体を含む、免疫グロブリン又は抗体分子、並びにモノクローナル又はポリクローナルである抗体フラグメントを含む。一般に、抗体は、特定の抗原に対する結合特異性を示すタンパク質又はペプチド鎖である。抗体は、単量体又は多量体であることができ、任意の種に由来することができ、例えば、IgM、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4)、IgD、IgA、又はIgEであることができる。
【0056】
本明細書で使用するとき、「抗原結合フラグメント」という用語は、例えば、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、単鎖抗体分子(scFv)、単一ドメイン抗体(sdab)scFv二量体(二価ダイアボディ)、1つ又は2つ以上のCDRを含む抗体の一部分から形成される多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、又は抗原に結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体フラグメントなどの抗体フラグメントを指す。
【0057】
本明細書で使用するとき、「モノクローナル抗体(monoclonal antibody、mAb)」という用語は、単一分子組成物の抗体の調製物を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ポリクローナル抗体」という用語は、同じ抗原又は異なる抗原上のいくつかの異なる特異的抗原決定基に、結合するか又はそれと反応することができる、異なる抗体分子の組成物を指す。ポリクローナル抗体の抗原特異性の可変性は、ポリクローナル抗体を構成する個々の抗体の可変領域、特に相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3に位置づけられる。
【0059】
「抗原特異的抗体」という用語は、抗原と抗体と間の結合を指し、抗原が、多くの他の多様な抗体の存在下であっても、すなわち、抗体の不均一な混合物中で、優先的に結合することを示すために、抗体と会合する能力を特徴とする。例えば、抗原特異的抗体は、KDが1×10-7M以下、好ましくは1×10-8M以下、より好ましくは5×10-9M以下、1×10-9M以下、5×10-10M以下、又は1×10-10M以下で抗原に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを指す。「KD」という用語は、Kd対Ka(すなわち、Kd/Ka)の比から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指す。結合剤のKD値は、本開示を考慮して当該技術分野における方法を用いて判定することができる。例えば、ある抗体のKDは、表面プラズモン共鳴法を使用することによって、例えば、Biacore(登録商標)システムのようなバイオセンサーシステムを使用することなどによって、又は例えば、Octet RED96システムなどのバイオレイヤーインターフェロメトリー技術を使用することによって、求めることができる。抗体のKDの値が小さいほど、抗体が標的抗原に結合する親和性が高い。
【0060】
抗体の「絶対量」という用語は、重量、モル、重量濃度、又はモル濃度、好ましくは重量濃度又はモル濃度の単位での量を指す。
【0061】
「ワクチン」という用語は、特定の感染症に対する能動的獲得免疫を提供する生物学的製剤を指す。ワクチンは、典型的には、ウイルスを含む疾患を引き起こす微生物に似た薬剤を含有する。例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチンは、HIVウイルスの1つ又は2つ以上の部分/フラグメントを含有又はコードし、HIVウイルスの部分/フラグメントはHIV抗原とも呼ばれる。ワクチンは、予防的(天然又は「野生」病原体による将来の感染の影響を予防又は改善するため)又は治療的(例えば、研究されているがんに対するワクチン)であることができる。
【0062】
免疫応答を測定するためのELISA
ELISAは、その極めて高い特異性、高スループット及び単純さ、並びに抗原特異的抗体を測定するその能力のために、ヒト血清試料における免疫応答を測定するための最も好ましい検出方法である。種特異的二次抗体の助けを借りて血清抗体を検出する間接ELISAは、この目的のために一般的に使用される。間接ELISAにおける第1の工程は、マイクロタイタープレートのウェルにおける標的抗原の固定化である。抗原は、マイクロタイタープレートのウェルに非特異的に(吸着)又は特異的に(例えば、ストレプトアビジンを介して)吸着され得る。抗原特異的抗体の検出は、2段階プロセスであり、第一に、血清若しくは血漿抗体又は精製及び未標識一次抗体が、特異的抗原に結合し、第二に、一次抗体の宿主種に対して指向性のある二次検出抗体が適用される。所望の読み出し方法に応じて、二次検出抗体は、例えば、フルオロフォア又は特定の基質を検出可能な生成物(比色、化学発光、又は蛍光など)に変換することができる酵素で特異的に標識される。例えば、酵素は、以下の酵素、
・タンパク質とのコンジュゲーションにしばしば使用される西洋ワサビペルオキシド(HRP)であって、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(o-phenylenediamine dihydrochloride、OPD)を、琥珀色生成物に変換するもの、
・HRPは、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine、TMB)を青色生成物に変換し、硫酸又はリン酸の存在下で黄色になり、
・HRPは、増強化学発光(enhanced chemiluminescence、ECL)基質を発光しながら生成物に変える、
・HRPは、2,2’-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩(ABTS)を、緑色生成物に変換するもの、及び
・アルカリホスファターゼは、p-ニトロフェニルホスフェート(PNPP)を、黄色の生成物に変換するもののうちの1つであることができる。
【0063】
ウイルス抗原でのワクチン接種後のヒト血清において抗原特異的免疫グロブリンの量を判定するための間接的ELISAの設定のために、多くのプロトコールが確立されている。例えば、マルチウェルプレートは、ウイルス標的抗原でコーティングされ、十分なインキュベーション時間の後、洗浄されてブロックされる。次いで、連続希釈されたヒト血清及び対照は、添加され、十分に長くインキュベートされて、血清抗体を抗原に結合することを可能にする。次いで、プレートは、再度洗浄され、標識二次抗体は、添加され、プレートは、十分に長くインキュベートされる。最終洗浄工程の後、基質は、添加され、得られた比色又は発光結果は、読み出される。最後に、得られた結果は、定量的質量分析(qMS)によって絶対量に変換される必要がある、任意の値をもたらす参照材料のシグナルと比較される。
【0064】
定量的質量分析(qMS)によるELISA結果の較正
本出願は、概して、定量的質量分析(qMS)によるヒト血清において免疫応答についてのELISA結果の較正に関し、これは、ELISAの任意の読み出しを抗原特異的抗体の絶対量に変換することを可能にする。
【0065】
1つの一般的な態様では、本出願は、試料中の抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法は、
i.抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、抗体を含有する較正物質を抗原と接触させる工程と、
ii.ELISA検出法によって、較正物質中の抗体の相対量を判定する工程と、
iii.抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、較正物質を抗原と接触させることによって、工程iを繰り返す工程と、
iv.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
v.抗体のプロテオタイピックペプチドを含む混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
vi.プロテオタイピックペプチドの質量応答を測定するために、混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって、較正物質中の抗体の絶対量を判定する工程と、
viii.工程iiにおけるELISAによって判定された、較正物質中の抗体の相対量を、工程viiにおいて判定された、較正物質中の抗体の絶対量に相関させるための変換係数を確立する工程と、
ix.試料中の抗体の絶対量を判定するために、変換係数を適用する工程と、を含む、方法に関する。
【0066】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの参照曲線を得ることを更に含み、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける。
【0067】
いくつかの実施形態では、工程viiにおいて、プロテオタイピックペプチドの絶対量は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって第1に判定され、次いで、較正物質中の抗体の絶対量は、プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される。
【0068】
いくつかの実施形態では、本方法は、
x.抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料を抗原と接触させる工程と、
xi.ELISA検出法によって試料において抗体の相対量を判定する工程と、
xii.変換係数を適用することによって、試料において抗体の絶対量を判定する工程と、を更に含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、抗原を含むワクチンを投与された対象から、又はワクチン接種されていないが抗原を含むウイルスに感染した対象から採取された試料を指す。例えば、対象は、ワクチンを投与された健康な参加者若しくは患者、又はウイルスと接触した健康な参加者若しくは患者であり得る。好ましくは、患者は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、又はA型、B型、C型若しくはD型肝炎ウイルスなどのウイルスに感染したことがあるか、又は感染している。ワクチンは、予防ワクチン又は治療ワクチンであることができる。ワクチンの例としては、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対するワクチン、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対するワクチン、インフルエンザウイルスに対するワクチン、エボラウイルスに対するワクチン、A型、B型、C型若しくはD型肝炎ウイルスに対するワクチン、又はSARS-COV-2ウイルスに対するワクチンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
試料は、対象から直接得られた生物学的試料であることができる。それはまた、例えば、生物学的試料が遠心分離され、凍結され、解凍された後などの、生物学的試料の処理済み試料であることができる。
【0071】
ある特定の実施形態では、試料は、血清、血漿、又は別の生物学的流体試料、好ましくは血清である。
【0072】
好ましくは、試料は、較正物質に対するそのELISA応答に基づいて、未試験試料又は未知試料である。
【0073】
本出願の実施形態によれば、較正物質は、ELISA検出法における参照材料である。ELISAの例は、直接ELISA、間接ELISA、サンドイッチELISA、逆ELISA、又は競合/阻害ELISAであることができる。
【0074】
ある特定の実施形態では、較正物質は、血清、血漿又は別の生物学的流体試料、好ましくは血清である。
【0075】
本出願の実施形態によれば、ELISAにおける参照材料の応答は、抗体の絶対量を得るために、定量的質量分析(qMS)によって較正され得る。本出願におけるqMSは、1つ又は2つ以上のプロテオタイピックペプチドの使用を必要とする、任意の質量分析(mass spectrometry、MS)ベースの標的タンパク質定量であることができる。
【0076】
プロテオタイピックペプチドは、MSベースの標的化プロテオミクス法によって確実に観察される可能性が最も高いタンパク質配列においてペプチドである。それらは、タンデム質量分析計によって調べられる試料混合物において目的のタンパク質の定性的及び定量的同定に非常に有用である。MSベースの標的タンパク質定量のための最適なプロテオタイピックペプチドの選択は、経験的アプローチ又はインシリコ分析によって行うことができる。
【0077】
伝統的に、本出願におけるプロテオタイピックペプチドは、そのアミノ酸配列が、(1)抗体のポリクローナル混合物に特有であり、典型的にはタンパクの定常領域の一部であり、(2)血漿/血清において存在し得る他のタンパクには見出されない、特徴的なトリプシンペプチドである(Halquist及びThomas Karnes、2011)。
【0078】
血漿/血清におけるmAb定量についてのLC-MS/MSベースのアッセイは、伝統的に、mAb試料のトリプシン消化と、それに続く特徴的なトリプシンペプチドの定量に依存してきた。特徴的なトリプシンペプチドアプローチは、mAbの干渉のない定量を確実にするが、この様式で開発されたアッセイは、1つの分析物にのみ適用されることができ、したがって、各新薬候補は、前臨床動物研究におけるその定量を容易にするために、完全に新規なアッセイの開発を必要とする。
【0079】
本出願の実施形態によれば、プロテオタイピックペプチドは、免疫複合体が単離されたときに、標的抗体、例えば、抗原特異的抗体においてのみ生じる、特異的プロテオタイピックペプチドである。このタイプのプロテオタイピックペプチドは、抗体及びFc融合タンパク質候補のポリクローナル混合物の大部分のFc領域において見出される普遍的代替ペプチドである。単一の普遍的代替ペプチドに基づく、このアプローチは、血漿試料において抗体及びFc融合タンパク質候補の種々のポリクローナル混合物を定量することが可能である。
【0080】
ある特定の実施形態では、特異的プロテオタイピックペプチドは、ヒトIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)のFc領域において生じる。このようなペプチド配列は、4つの一般的な特徴を有する。
(1)本配列は、抗体及びFc融合タンパク質候補のヒトポリクローナル混合物において存在しなければならず、したがって、種々のこのようなタンパク質候補を含む開発プログラムにわたるその一般的な適用可能性を可能にする。
(2)本配列は、ヒトmAb及びFc融合タンパク質分析物のトリプシン消化から確実に産生される。
(3)本配列は、良好なクロマトグラフィーピーク形状、適切なクロマトグラフィー保持及び効率的なイオン化などの有利なLC-MS/MS特性を有する。
(4)本配列は、前臨床薬物開発研究において典型的に使用される任意の動物種に存在する任意の血漿/血清タンパク質のタンパク質配列において見出されず、したがって、血漿タンパク質由来の干渉がない定量を確実にする(Furlong、Ouyangら2012)。
【0081】
ある特定の実施形態では、好ましい特定のプロテオタイピックペプチドは、表1に列挙される。
【0082】
【0083】
いくつかの実施形態では、抗原は、RSV抗原、HIV抗原、インフルエンザウイルス抗原、エボラウイルス抗原、又はA型、B型、C型若しくはD型肝炎ウイルス抗原であることができる。
【0084】
ある特定の実施形態では、抗原は、RSV-B抗原、好ましくはRSV-B F抗原である。
【0085】
ある特定の実施形態では、抗原は、HIV抗原、好ましくはモザイクgp140である。
【0086】
ある特定の実施形態では、抗原は、SARS-COV-2抗原、好ましくはスパイク抗原(SARS-COV-2 S)である。
【0087】
いくつかの実施形態では、試料中の抗体は、抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4などの、免疫グロブリンG(IgG)のうちの1つ又は2つ以上を含む。好ましくは、これらの抗体は、表1に列挙されるプロテオタイピックペプチドのうちの1つを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、工程ivは、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を変性させる工程、還元する工程、アルキル化する工程及び/又は希釈する工程のうちの1つ又は2つ以上を更に含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程viの前に混合物を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを更に含み、好ましくはLCは、高速液体クロマトグラム(HPLC)である。
【0091】
いくつかの実施形態では、定量的質量分析は、タンデム質量分析である。好ましくは、定量的質量分析は、多重反応モニタリング(MRM)又は選択反応モニタリング(SRM)又は並列反応モニタリング(PRM)を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答を測定することを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのフラグメント質量の質量応答を測定することを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのフラグメント質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む。
【0096】
本出願の実施形態によれば、抗原に特異的な抗体の絶対量は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定される。
【0097】
プロテオタイプペプチドの参照曲線は、当該技術分野において公知の任意の方法によって得られることができる。例えば、このような参照曲線を確立するために、異なる量のプロテオタイピックペプチドを含有する較正物質は、同じ較正物質の希釈によって、又は較正物質中の異なる量のプロテオタイピックペプチドをスパイクすることによってのいずれかで得られる。較正物質の各量/濃度について、プロテオタイピックペプチドの質量応答は、本出願の方法に従って判定される。次いで、プロテオタイピックペプチドの絶対量は、プロテオタイピックペプチドの参照曲線を得るために、質量応答に対してプロットされる。したがって、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量応答を、抗原に特異的なプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける。
【0098】
本出願の実施形態によれば、抗原に特異的な抗体の絶対量を判定するときに、プロテオタイピックペプチドの絶対量は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって第1に判定される。次いで、抗原に特異的な抗体の絶対量は、1)プロテオタイピックペプチドの絶対量、2)抗体と対応するプロテオタイピックペプチドとの間のモル比又は重量比、及び3)ELISAにおいて使用される血清の希釈係数に基づいて判定される。
【0099】
いくつかの実施形態では、較正物質中の抗体の絶対量は、モル濃度又は重量濃度で表され得る。
【0100】
本出願の実施形態によれば、較正物質中の抗体の相対量は、工程iiにおいてELISAによって判定される。ELISAの例としては、直接ELISA、間接ELISA、サンドイッチELISA、逆ELISA、又は競合/阻害ELISAが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
いくつかの実施形態では、変換係数は、工程iiにおけるELISAによって判定された抗体の相対量を、工程viiにおいて判定された抗体の絶対量に相関させるために確立される。いくつかの実施形態では、変換係数は、抗体の絶対量に対する抗体の相対量に関連付ける式又はプロット又は曲線として表され得る。
【0102】
変換係数の確立後、抗体の相対量は、変換係数を相対量に適用することによって絶対量に変換される。試料における抗体の絶対量は、参照材料において抗体の絶対量の発現に依存して、モル濃度又は重量濃度で表され得る。例えば、判定された参照材料における抗体の絶対量がモル濃度で表される場合、試料における抗体の絶対量はまた、モル濃度で表され、参照材料における抗体の絶対量が重量濃度で表される場合、試料における抗体の絶対量はまた、重量濃度で表される。
【0103】
いくつかの実施形態では、試料における抗体の絶対量は、抗体の絶対量をqMSによって判定されたプロテオタイピックペプチドの質量応答に間接的に関連付ける、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と直接比較することによって判定される。
【0104】
いくつかの実施形態では、参照曲線は、シグモイド曲線である。ある特定の実施形態では、抗体の絶対量は、参照曲線との直接比較によって、又はシグモイド曲線フィッティングによって判定される。
【0105】
いくつかの実施形態では、プロテオタイピックペプチドの絶対量は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、抗体の絶対量は、1)プロテオタイピックペプチドの絶対量、2)抗体と対応するプロテオタイピックペプチドとの間のモル比又は重量比、及び3)ELISAにおいて使用される血清の希釈係数に基づいて判定される。
【0106】
いくつかの実施形態では、2つ以上のプロテオタイピックペプチドは、本方法において使用され得る。更なる実施形態では、試料において抗原に特異的な抗体の絶対量は、抗体IgG1、2、3、及び4の絶対量の合計である。
【0107】
例えば、方法は、配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチド、及び配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドを使用することができる。次に、抗体IgG1、3及び4の絶対量は、配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドの参照曲線に基づいて判定され、抗体IgG2の絶対量は、配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドの参照曲線に基づいて判定される。次いで、抗原に特異的な抗体の絶対量は、抗体IgG1、3及び4の絶対量と抗体IgG2の絶対量との合計である。
【0108】
別の一般的な態様では、本出願はまた、RSV抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中のRSV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法は、
i.RSV抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料をRSV抗原と接触させる工程と、
ii.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドを含む第1の混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.プロテオタイピックペプチドの質量スペクトルを生成するために、第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.質量スペクトルからプロテオタイピックペプチドの質量応答を測定する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって、試料においてRSV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する工程と、を含む、方法に関する。
【0109】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの参照曲線を得ることを更に含み、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける。
【0110】
いくつかの実施形態では、工程viiにおいて、プロテオタイピックペプチドの絶対量は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって第1に判定され、次いで、RSV抗原に特異的な抗体の絶対量は、プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される。
【0111】
いくつかの実施形態では、試料は、血清、血漿、又は別の生物学的流体試料、好ましくは血清である。
【0112】
ある特定の実施形態では、試料は、例えば、生物学的試料が遠心分離され、凍結され、解凍された後などの、生物学的試料の処理済み試料である。
【0113】
いくつかの実施形態では、RSVワクチンは、予防ワクチン又は治療ワクチンである。
【0114】
本出願の実施形態によれば、較正物質は、ELISA検出法における参照材料である。ELISAの例は、直接ELISA、間接ELISA、サンドイッチELISA、逆ELISA、又は競合/阻害ELISAであることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、試料において抗体は、RSV抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する。
【0116】
ある特定の実施形態では、RSV抗原は、RSV-B抗原、好ましくはRSV-B F抗原である。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4などの、免疫グロブリンG(IgG)のうちの1つ又は2つ以上を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、プロテオタイピックペプチドは、抗体のFc領域で生じる。
【0119】
いくつかの実施形態では、プロテオタイピックペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、工程iiは、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を変性させる工程、還元する工程、アルキル化する工程及び/又は希釈する工程のうちの1つ又は2つ以上を更に含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、定量的質量分析(qMS)は、タンデム質量分析である。好ましくは、定量的質量分析は、多重反応モニタリング(MRM)又は選択反応モニタリング(SRM)又は並列反応モニタリング(PRM)を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、本方法の工程viは、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答を測定することを更に含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、本方法の工程viは、プロテオタイピックペプチドのフラグメント質量の質量応答を測定することを更に含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのフラグメント質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む。
【0126】
別の一般的な態様では、本出願はまた、HIV抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中のHIV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法は、
i.HIV抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料をHIV抗原と接触させる工程と、
ii.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドと配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドとを含む第1の混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.プロテオタイピックペプチドの各々の質量スペクトルを生成するために、第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.質量スペクトルからプロテオタイピックペプチドの各々の質量応答を測定する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの各々の質量応答をプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線と比較することによって、試料においてHIV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する工程であって、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量分析応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、判定する工程と、を含む、方法に関する。
【0127】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線を得ることを更に含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、工程viiにおいて、配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドの絶対量は、当該プロテオタイピックペプチドの質量応答を当該プロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、HIV抗原に特異的な抗体IgG1、3及び4の絶対量は、当該プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される。
【0129】
いくつかの実施形態では、工程viiにおいて、配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドの絶対量は、当該プロテオタイピックペプチドの質量応答を当該プロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、HIV抗原に特異的な抗体IgG2の絶対量は、当該プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される。
【0130】
更なる実施形態では、試料中の抗体の絶対量は、抗体IgG1、3、及び4の絶対量と抗体IgG2の絶対量との合計である。
【0131】
いくつかの実施形態では、試料は、血清、血漿、又は別の生物学的流体試料、好ましくは血清である。
【0132】
ある特定の実施形態では、試料は、例えば、生物学的試料が遠心分離され、凍結され、解凍された後などの、生物学的試料の処理済み試料である。
【0133】
いくつかの実施形態では、HIVワクチンは、予防ワクチン又は治療ワクチンである。
【0134】
本出願の実施形態によれば、較正物質は、ELISA検出法における参照材料である。ELISAの例は、直接ELISA、間接ELISA、サンドイッチELISA、逆ELISA、又は競合/阻害ELISAであることができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、試料において抗体は、HIV抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する。
【0136】
ある特定の実施形態では、HIV抗原は、モザイクgp140である。
【0137】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4などの、免疫グロブリンG(IgG)のうちの1つ又は2つ以上を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、プロテオタイピックペプチドは、抗体のFc領域で生じる。
【0139】
いくつかの実施形態では、工程iiは、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を変性させる工程、還元する工程、アルキル化する工程及び/又は希釈する工程のうちの1つ又は2つ以上を更に含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、定量的質量分析(qMS)は、タンデム質量分析である。好ましくは、定量的質量分析は、多重反応モニタリング(MRM)又は選択反応モニタリング(SRM)又は並列反応モニタリング(PRM)を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、本方法の工程viは、プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の質量応答を測定することを更に含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、本方法の工程viは、プロテオタイピックペプチドの各々のフラグメント質量の質量応答を測定することを更に含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の各々の質量応答を対応するプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドの各々のフラグメント質量の質量応答を対応するプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む。
【0145】
別の一般的な態様では、本出願はまた、SARS-COV-2抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中のSARS-COV-2抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法は、
i.SARS-COV-2抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料をSARS-COV-2抗原と接触させる工程と、
ii.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドと配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドとを含む第1の混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.プロテオタイピックペプチドの各々の質量スペクトルを生成するために、第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.質量スペクトルからプロテオタイピックペプチドの各々の質量応答を測定する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの各々の質量応答をプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線と比較することによって、試料においてSARS-COV-2抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する工程であって、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量分析応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、判定する工程と、を含む、方法に関する。
【0146】
いくつかの実施形態では、本方法は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線を得ることを更に含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、工程viiにおいて、配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドの絶対量は、当該プロテオタイピックペプチドの質量応答を当該プロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、SARS-COV-2抗原に特異的な抗体IgG1、3及び4の絶対量は、当該プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される。
【0148】
いくつかの実施形態では、工程viiにおいて、配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドの絶対量は、当該プロテオタイピックペプチドの質量応答を当該プロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、SARS-COV-2抗原に特異的な抗体IgG2の絶対量は、当該プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される。
【0149】
更なる実施形態では、試料中の抗体の絶対量は、抗体IgG1、3、及び4の絶対量と抗体IgG2の絶対量との合計である。
【0150】
いくつかの実施形態では、試料は、血清、血漿、又は別の生物学的流体試料、好ましくは血清である。
【0151】
ある特定の実施形態では、試料は、例えば、生物学的試料が遠心分離され、凍結され、解凍された後などの、生物学的試料の処理済み試料である。
【0152】
いくつかの実施形態では、SARS-COV-2ワクチンは、予防ワクチン又は治療ワクチンである。
【0153】
本出願の実施形態によれば、較正物質は、ELISA検出法における参照材料である。ELISAの例は、直接ELISA、間接ELISA、サンドイッチELISA、逆ELISA、又は競合/阻害ELISAであることができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、試料において抗体は、SARS-COV-2抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する。
【0155】
ある特定の実施形態では、SARS-COV-2抗原は、SARS-COV-2 Sである。
【0156】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4などの、免疫グロブリンG(IgG)のうちの1つ又は2つ以上を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、プロテオタイピックペプチドは、抗体のFc領域で生じる。
【0158】
いくつかの実施形態では、工程iiは、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を変性させる工程、還元する工程、アルキル化する工程及び/又は希釈する工程のうちの1つ又は2つ以上を更に含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、定量的質量分析(qMS)は、タンデム質量分析である。好ましくは、定量的質量分析は、多重反応モニタリング(MRM)又は選択反応モニタリング(SRM)又は並列反応モニタリング(PRM)を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、本方法の工程viは、プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の質量応答を測定することを更に含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、本方法の工程viは、プロテオタイピックペプチドの各々のフラグメント質量の質量応答を測定することを更に含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の各々の質量応答を対応するプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロテオタイピックペプチドの各々のフラグメント質量の質量応答を対応するプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む。
【0164】
実施形態
本発明は以下の非限定的な実施形態も提供する。
【0165】
実施形態1は、試料中の抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法が、
i.抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、抗体を含有する較正物質を抗原と接触させる工程と、
ii.ELISA検出法によって、較正物質中の抗体の相対量を判定する工程と、
iii.抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、較正物質を抗原と接触させることによって、工程iを繰り返す工程と、
iv.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
v.抗体のプロテオタイピックペプチドを含む混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
vi.プロテオタイピックペプチドの質量応答を測定するために、混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって、較正物質中の抗体の絶対量を判定する工程と、
viii.工程iiにおいてELISAによって判定された、較正物質中の抗体の相対量を、工程viiにおいて判定された、較正物質中の抗体の絶対量に相関させるための変換係数を確立する工程と、
ix.試料中の抗体の絶対量を判定するために、変換係数を適用する工程と、を含む、方法である。
【0166】
実施形態1aは、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの参照曲線を得ることを更に含み、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、実施形態1に記載の方法である。
【0167】
実施形態1bは、工程viiにおいて、プロテオタイピックペプチドの絶対量が、まず、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、較正物質中の抗体の絶対量が、プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される、実施形態1又は1aに記載の方法である。
【0168】
実施形態1cは、
x.抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料を抗原と接触させる工程と、
xi.ELISA検出法によって試料において抗体の相対量を判定する工程と、
xii.変換係数を適用することによって、試料において抗体の絶対量を判定する工程と、を更に含む、実施形態1又は1a又は1bに記載の方法である。
【0169】
実施形態2は、試料が、抗原を含むワクチンを投与された対象から、又は抗原を含むウイルスと接触した対象から得られる、実施形態1~1cのいずれか1つに記載の方法である。
【0170】
実施形態2aは、対象が、健康な参加者又は患者である、実施形態2に記載の方法である。
【0171】
実施形態2bは、患者が、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、A型、B型、C型又はD型肝炎ウイルス、及びSARS-COV-2ウイルスからなる群から選択されるウイルスに感染している、実施形態2aに記載の方法である。
【0172】
実施形態3は、ワクチンが、予防ワクチン又は治療ワクチンである、実施形態2~2bのいずれか1つに記載の方法である。
【0173】
実施形態3aは、ワクチンが、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、エボラウイルスに対するもの、A型、B型、C型若しくはD型肝炎ウイルスに対するもの、又はSARS-COV-2ウイルスに対するものである、実施形態3に記載の方法である。
【0174】
実施形態4は、抗原が、RSV抗原、HIV抗原、インフルエンザウイルス抗原、エボラウイルス抗原、A型肝炎抗原、B型肝炎抗原、C型肝炎抗原、D型肝炎抗原、及びSARS-COV-2抗原からなる群から選択される、実施形態1~3aのいずれか1つに記載の方法である。
【0175】
実施形態4aは、抗原が、RSV-B抗原、好ましくはRSV-B F抗原である、実施形態4に記載の方法である。
【0176】
実施形態4bは、抗原が、HIV抗原、好ましくはgp140又はgp120、より好ましくはgp140クレードCである、実施形態4に記載の方法である。
【0177】
実施形態4cは、抗原が、SARS-COV-2抗原、好ましくはスパイク抗原(SARS-COV-2 S)である、実施形態4の方法である。
【0178】
実施形態5は、抗体が、免疫グロブリンG(IgG)のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施形態1~4cのいずれか1つに記載の方法である。
【0179】
実施形態5aは、IgGが、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である、実施形態5に記載の方法である。
【0180】
実施形態5bは、試料中の抗体が、抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する、実施形態5に記載の方法である。
【0181】
実施形態6は、プロテオタイピックペプチドが、抗原に特異的な抗体において生じる、実施形態1~5bのいずれか1つに記載の方法である。
【0182】
実施形態6aは、プロテオタイピックペプチドが、抗原に特異的な抗体のFc領域において生じる、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法である。
【0183】
実施形態6bは、プロテオタイピックペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態1~6aのいずれか1つに記載の方法である。
【0184】
実施形態7は、試料が、血清、血漿又は別の生物学的流体試料、好ましくは血清である、実施形態1~6bのいずれか1つに記載の方法である。
【0185】
実施形態7aは、試料が、生物学的試料の処理済み試料である、実施形態7に記載の方法である。
【0186】
実施形態7bは、生物学的試料が、遠心分離され、凍結され及び/又は解凍される、実施形態7aに記載の方法である。
【0187】
実施形態8は、較正物質が、血清、血漿又は別の生物学的流体試料である、実施形態1~7bのいずれか1つに記載の方法である。
【0188】
実施形態9は、工程ivが、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を変性させる工程、還元する工程、アルキル化する工程及び/又は希釈する工程のうちの1つ又は2つ以上を更に含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法である。
【0189】
実施形態9aは、工程ivの前に混合物を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを更に含み、好ましくはLCは、高速液体クロマトグラム(HPLC)である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0190】
実施形態10は、定量的質量分析が、タンデム質量分析である、実施形態1~9aのいずれか1つに記載の方法である。
【0191】
実施形態10aは、定量的質量分析が、多重反応モニタリング(MRM)を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0192】
実施形態10bは、定量的質量分析が、選択反応モニタリング(SRM)を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0193】
実施形態10cは、定量的質量分析が、並列反応モニタリング(PRM)を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0194】
実施形態10dは、PRMが、ESI-Q-Orbitrap質量分析計に接続されたC18ナノLCを含む、実施形態10cに記載の方法である。
【0195】
実施形態11は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答を測定することを更に含む、実施形態1~10cのいずれか1つに記載の方法である。
【0196】
実施形態11aは、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む、実施形態11に記載の方法である。
【0197】
実施形態11cは、プロテオタイピックペプチドのフラグメント質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む、実施形態1~10cのいずれか1つに記載の方法である。
【0198】
実施形態11dは、プロテオタイピックペプチドのフラグメント質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む、実施形態11cに記載の方法である。
【0199】
実施形態12は、較正物質中の抗体の絶対量が、重量濃度又はモル濃度で表される、実施形態1~11dのいずれか1つに記載の方法である。
【0200】
実施形態12aは、試料における抗体の絶対量が、重量濃度又はモル濃度で表される、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法である。
【0201】
実施形態13は、RSV抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中のRSV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法が、
i.RSV抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料をRSV抗原と接触させる工程と、
ii.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドを含む第1の混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.プロテオタイピックペプチドの質量スペクトルを生成するために、第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.質量スペクトルからプロテオタイピックペプチドの質量応答を測定する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって、試料においてRSV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する工程と、を含む、方法である。
【0202】
実施形態14は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの参照曲線を得ることを更に含み、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、実施形態13に記載の方法である。
【0203】
実施形態14aは、対象が、健康な参加者又は患者である、実施形態14又は14aに記載の方法である。
【0204】
実施形態14bは、患者が、RSV感染患者である、実施形態14aに記載の方法である。
【0205】
実施形態14cは、プロテオタイピックペプチドの絶対量が、まず、プロテオタイピックペプチドの質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、RSV抗原に特異的な抗体の絶対量が、プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される、実施形態13~14bのいずれか1つに記載の方法である。
【0206】
実施形態15は、ワクチンが、予防ワクチン又は治療ワクチンである、実施形態13~14cのいずれか1つに記載の方法である。
【0207】
実施形態16は、抗原が、RSV-B抗原、好ましくはRSV-B F抗原である、実施形態13~15のいずれか1つに記載の方法である。
【0208】
実施形態17は、抗体が、免疫グロブリンG(IgG)のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施形態13~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0209】
実施形態17aは、IgGが、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である、実施形態17に記載の方法である。
【0210】
実施形態17bは、試料において抗体が、RSV抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する、実施形態17に記載の方法である。
【0211】
実施形態18は、プロテオタイピックペプチドが、RSV抗原に特異的な抗体において生じる、実施形態13~17bのいずれか1つに記載の方法である。
【0212】
実施形態18aは、プロテオタイピックペプチドが、RSV抗原に特異的な抗体のFc領域において生じる、実施形態13~18のいずれか1つに記載の方法である。
【0213】
実施形態19は、試料が、血清、血漿又は別の生物学的流体試料、好ましくは血清である、実施形態13~18aのいずれか1つに記載の方法である。
【0214】
実施形態19aは、試料が、生物学的試料の処理済み試料である、実施形態19に記載の方法である。
【0215】
実施形態19bは、生物学的試料が、遠心分離され、凍結され及び/又は解凍される、実施形態19aに記載の方法である。
【0216】
実施形態20は、工程iiが、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を変性させる工程、還元する工程、アルキル化する工程及び/又は希釈する工程のうちの1つ又は2つ以上を更に含む、実施形態13~19bのいずれか1つに記載の方法である。
【0217】
実施形態21は、定量的質量分析が、タンデム質量分析である、実施形態13~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0218】
実施形態21aは、定量的質量分析が、多重反応モニタリング(MRM)を含む、実施形態13~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0219】
実施形態21bは、定量的質量分析が、選択反応モニタリング(SRM)を含む、実施形態13~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0220】
実施形態21cは、定量的質量分析が、並列反応モニタリング(PRM)を含む、実施形態13~21のいずれか1つに記載の方法である。
【0221】
実施形態21dは、PRMが、ESI-Q-Orbitrap質量分析計に接続されたC18ナノLCを含む、実施形態21cに記載の方法である。
【0222】
実施形態22は、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答を測定することを更に含む、実施形態13~21dのいずれか1つに記載の方法である。
【0223】
実施形態22aは、プロテオタイピックペプチドのインタクト質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む、実施形態22に記載の方法である。
【0224】
実施形態22bは、プロテオタイピックペプチドのフラグメント質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む、実施形態13~21dのいずれか1つに記載の方法である。
【0225】
実施形態22cは、プロテオタイピックペプチドのフラグメント質量の質量応答をプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む、実施形態22bに記載の方法である。
【0226】
実施形態23は、試料における抗体の絶対量が、重量濃度又はモル濃度で表される、実施形態13~22cのいずれか1つに記載の方法である。
【0227】
実施形態24は、HIV抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中のHIV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法が、
i.HIV抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料をHIV抗原と接触させる工程と、
ii.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドと配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドとを含む第1の混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.プロテオタイピックペプチドの各々の質量スペクトルを生成するために、第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.質量スペクトルからプロテオタイピックペプチドの各々の質量応答を測定する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの各々の質量応答をプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線と比較することによって、試料においてHIV抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する工程であって、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量分析応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、判定する工程と、を含む、方法である。
【0228】
実施形態24は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線を得ることを更に含む、実施形態23に記載の方法である。
【0229】
実施形態25は、工程viiにおいて、配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドの絶対量が、当該プロテオタイピックペプチドの質量応答を当該プロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、HIV抗原に特異的な抗体IgG1、3及び4の絶対量が、当該プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される、実施形態23又は24に記載の方法である。
【0230】
実施形態25aは、工程viiにおいて、配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドの絶対量が、当該プロテオタイピックペプチドの質量応答を当該プロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、HIV抗原に特異的な抗体IgG2の絶対量が、当該プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される、実施形態23~25のいずれか1つに記載の方法である。
【0231】
実施形態25bは、試料中の抗体の絶対量が、抗体IgG1、3、及び4の絶対量と抗体IgG2の絶対量との合計である、実施形態23~25aのいずれか1つに記載の方法である。
【0232】
実施形態26は、対象が、健康な参加者又は患者である、実施形態23~25bのいずれか1つに記載の方法である。
【0233】
実施形態26aは、患者が、HIV感染患者である、実施形態26に記載の方法である。
【0234】
実施形態27は、ワクチンが、予防ワクチン又は治療ワクチンである、実施形態23~26aのいずれか1つに記載の方法である。
【0235】
実施形態28は、抗原が、モザイクgp140である、実施形態23~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0236】
実施形態29は、抗体が、免疫グロブリンG(IgG)のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施形態23~28のいずれか1つに記載の方法である。
【0237】
実施形態29aは、IgGが、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である、実施形態29に記載の方法である。
【0238】
実施形態29bは、試料において抗体が、HIV抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する、実施形態29に記載の方法である。
【0239】
実施形態30は、プロテオタイピックペプチドが、HIV抗原に特異的な抗体において生じる、実施形態23~29bのいずれか1つに記載の方法である。
【0240】
実施形態30aは、プロテオタイピックペプチドが、HIV抗原に特異的な抗体のFc領域において生じる、実施形態23~30のいずれか1つに記載の方法である。
【0241】
実施形態31は、試料が、血清、血漿又は別の生物学的流体試料、好ましくは血清である、実施形態23~30aのいずれか1つに記載の方法である。
【0242】
実施形態31aは、試料が、生物学的試料の処理済み試料である、実施形態30に記載の方法である。
【0243】
実施形態31bは、生物学的試料が、遠心分離され、凍結され及び/又は解凍される、実施形態31aに記載の方法である。
【0244】
実施形態32は、工程iiが、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を変性させる工程、還元する工程、アルキル化する工程及び/又は希釈する工程のうちの1つ又は2つ以上を更に含む、実施形態23~31bのいずれか1つに記載の方法である。
【0245】
実施形態33は、定量的質量分析が、タンデム質量分析である、実施形態23~32のいずれか1つに記載の方法である。
【0246】
実施形態33aは、定量的質量分析が、多重反応モニタリング(MRM)を含む、実施形態23~33のいずれか1つに記載の方法である。
【0247】
実施形態33bは、定量的質量分析が、選択反応モニタリング(SRM)を含む、実施形態23~33のいずれか1つに記載の方法である。
【0248】
実施形態33cは、定量的質量分析が、並列反応モニタリング(PRM)を含む、実施形態23~33のいずれか1つに記載の方法である。
【0249】
実施形態33dは、PRMが、ESI-Q-Orbitrap質量分析計に接続されたC18ナノLCを含む、実施形態33cに記載の方法である。
【0250】
実施形態34は、プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の質量応答を測定することを更に含む、実施形態23~33dのいずれか1つに記載の方法である。
【0251】
実施形態34aは、プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の質量応答を対応するプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む、実施形態34に記載の方法である。
【0252】
実施形態34bは、プロテオタイピックペプチドの各々のフラグメント質量の質量応答を測定することを更に含む、実施形態23~33dのいずれか1つに記載の方法である。
【0253】
実施形態34cは、プロテオタイピックペプチドの各々のフラグメント質量の質量応答を対応するプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む、実施形態34bに記載の方法である。
【0254】
実施形態35は、試料における抗体の絶対量が、重量濃度又はモル濃度で表される、実施形態23~34cのいずれか1つに記載の方法である。
【0255】
実施形態36は、SARS-COV-2抗原を含むワクチンを投与された対象由来の試料中のSARS-COV-2抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する方法であって、方法が、
i.SARS-COV-2抗原と抗原に結合した抗体とを含む1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を形成するために、試料をSARS-COV-2抗原と接触させる工程と、
ii.1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を単離する工程と、
iii.配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドと配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドとを含む第1の混合物を生成するために、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を消化する工程と、
iv.第2の混合物を生成するために、第1の混合物を液体クロマトグラフィー(LC)、好ましくは高速液体クロマトグラム(HPLC)に供する工程と、
v.プロテオタイピックペプチドの各々の質量スペクトルを生成するために、第2の混合物を定量的質量分析に供する工程と、
vi.質量スペクトルからプロテオタイピックペプチドの各々の質量応答を測定する工程と、
vii.プロテオタイピックペプチドの各々の質量応答をプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線と比較することによって、試料においてSARS-COV-2抗原に特異的な抗体の絶対量を判定する工程であって、参照曲線は、プロテオタイピックペプチドの質量分析応答をプロテオタイピックペプチドの絶対量に関連付ける、判定する工程と、を含む、方法である。
【0256】
実施形態37は、工程iの前にプロテオタイピックペプチドの各々の参照曲線を得ることを更に含む、実施形態36に記載の方法である。
【0257】
実施形態38は、工程viiにおいて、配列番号1のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドの絶対量が、当該プロテオタイピックペプチドの質量応答を当該プロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、SARS-COV-2抗原に特異的な抗体IgG1、3及び4の絶対量が、当該プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される、実施形態36又は37に記載の方法である。
【0258】
実施形態38aは、工程viiにおいて、配列番号2のアミノ酸配列を有するプロテオタイピックペプチドの絶対量が、当該プロテオタイピックペプチドの質量応答を当該プロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することによって判定され、次いで、SARS-COV-2抗原に特異的な抗体IgG2の絶対量が、当該プロテオタイピックペプチドの絶対量に基づいて判定される、実施形態36~38のいずれか1つに記載の方法である。
【0259】
実施形態38bは、試料中の抗体の絶対量が、抗体IgG1、3、及び4の絶対量と抗体IgG2の絶対量との合計である、実施形態36~38aのいずれか1つに記載の方法である。
【0260】
実施形態39は、対象が、健康な参加者又は患者である、実施形態36~38bのいずれか1つに記載の方法である。
【0261】
実施形態39aは、患者が、SARS-COV-2感染患者である、実施形態39に記載の方法である。
【0262】
実施形態39bは、抗原が、SARS-COV-2 Sである、実施形態36~39aのいずれか1つに記載の方法である。
【0263】
実施形態40は、ワクチンが、予防ワクチン又は治療ワクチンである、実施形態36~39bのいずれか1つに記載の方法である。
【0264】
実施形態41は、抗体が、免疫グロブリンG(IgG)のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施形態36~40のいずれか1つに記載の方法である。
【0265】
実施形態41aは、IgGが、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である、実施形態41に記載の方法である。
【0266】
実施形態41bは、試料において抗体が、SARS-COV-2抗原の同じ又は異なるエピトープに結合する、実施形態41に記載の方法である。
【0267】
実施形態42は、プロテオタイピックペプチドが、SARS-COV-2抗原に特異的な抗体において生じる、実施形態36~41bのいずれか1つに記載の方法である。
【0268】
実施形態42aは、プロテオタイピックペプチドが、SARS-COV-2抗原に特異的な抗体のFc領域において生じる、実施形態36~42のいずれか1つに記載の方法である。
【0269】
実施形態43は、試料が、血清、血漿又は別の生物学的流体試料、好ましくは血清である、実施形態36~42aのいずれか1つに記載の方法である。
【0270】
実施形態43aは、試料が、生物学的試料の処理済み試料である、実施形態43に記載の方法である。
【0271】
実施形態43bは、生物学的試料が、遠心分離され、凍結され及び/又は解凍される、実施形態43aに記載の方法である。
【0272】
実施形態44は、工程iiが、1つ又は2つ以上のタンパク質複合体を変性させる工程、還元する工程、アルキル化する工程及び/又は希釈する工程のうちの1つ又は2つ以上を更に含む、実施形態36~43bのいずれか1つに記載の方法である。
【0273】
実施形態45は、定量的質量分析が、タンデム質量分析である、実施形態36~44のいずれか1つに記載の方法である。
【0274】
実施形態45aは、定量的質量分析が、多重反応モニタリング(MRM)を含む、実施形態36~45のいずれか1つに記載の方法である。
【0275】
実施形態45bは、定量的質量分析が、選択反応モニタリング(SRM)を含む、実施形態36~45のいずれか1つに記載の方法である。
【0276】
実施形態45cは、定量的質量分析が、並列反応モニタリング(PRM)を含む、実施形態36~45のいずれか1つに記載の方法である。
【0277】
実施形態45dは、PRMが、ESI-Q-Orbitrap質量分析計に接続されたC18ナノLCを含む、実施形態45cに記載の方法である。
【0278】
実施形態46は、プロテオタイピックペプチドの各々のインタクト質量の質量応答を測定することを更に含む、実施形態36~45dのいずれか1つに記載の方法である。
【0279】
実施形態46aは、プロテオタイピックペプチドのそれぞれのインタクト質量の質量応答を対応するプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む、実施形態46に記載の方法である。
【0280】
実施形態46bは、プロテオタイピックペプチドの各々のフラグメント質量の質量応答を測定することを更に含む、実施形態36~45dのいずれか1つに記載の方法である。
【0281】
実施形態46cは、プロテオタイピックペプチドの各々のフラグメント質量の質量応答を対応するプロテオタイピックペプチドの参照曲線と比較することを更に含む、実施形態46bに記載の方法である。
【0282】
実施形態47は、試料における抗体の絶対量が、重量濃度又はモル濃度で表される、実施形態36~46cのいずれか1つに記載の方法である。
【実施例】
【0283】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく、上で説明される実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本説明によって定義されるように本出願の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【0284】
実施例1.RSV抗原特異的IgGの絶対量の判定のためのプロテオタイピックペプチドの使用
本実施例は、定量的質量分析(qMS)分析とELISAとを組み合わせることによる、抗RSV-B F抗原(RSV-B F抗原についての配列番号11)IgG陽性ヒト血清における抗原特異的IgG抗体の絶対量の判定のための、任意のヒトIgG1、3及び4について特異的なプロテオタイピックペプチドの使用を記載する。
【0285】
ELISA参照材料(ウイルス感染個体から単離されたプールされたIgG含有血清)のqMS分析における第1の工程は、プロテオタイピックペプチド、目的の特定のタンパク質(すなわち、ヒトIgG1、3及び4抗体)においてのみ生じるペプチドを選択することである。本発明の原理を証明するために、ヒトIgG1、3及び4のFc領域について特異的なペプチド、すなわちVVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号1、Furlong、Ouyangら2012;Furlong、Zhaoら2013)を選択した。この特異的ペプチドの合成バージョンを得て、0.4~1000pg/試料の範囲において既知濃度のプロテオタイピックペプチドを添加(「スパイク」)することにより、プロテオタイピックペプチドの較正曲線を作成することによって、その適合性を試験するために使用した。較正試料は、多重反応モニタリングモード(MRM)においてESI-triple quad質量分析計に接続された逆相液体クロマトグラフィーによって分析した。
図1では、線形性は、ペプチドの質量分析MS2応答(Log10変換ピーク面積で報告されるペプチドのフラグメント質量)と添加ペプチドの既知濃度(Log10変換pg/試料で報告される)との間に観察されることができ、それによって、混合物におけるペプチドの量、その後のIgGの量を定量的に判定するために使用するのに適切であるものにすることができる。したがって、この線形用量応答は、qMS分析が試料混合物においてヒト抗RSV-B Fタンパク質抗体の量を定量的に判定するために適切であることを確立する。
【0286】
通常の方法においてRSV-B F ELISAを実行するときに(上記のように)、RSV-B F特異的ヒト血清抗体(結果)の検出のための発光読み出しが使用される。この発光読み出しは、任意であり、相対発光量(RLU)で測定される。結果を半定量的にするために、試料の結果は、EU/mlで表される抗RSV-B Fタンパク質IgG陽性ヒト血清参照の比として表される。ELISAにおけるRSV-B Fタンパク質陽性ヒト血清参照の抗体結合を測定する、発光読み出しから得られた希釈曲線は、
図2に示される。この曲線の直線部分(±1350~328050EU/ml)は、未知のヒト血清試料における免疫応答を定量するために、使用される。しかしながら、量は、任意の値である、1ml当たりのELISA単位(EU/ml)で表される。この値を絶対にするために、曲線は、質量分析によって測定される必要がある。
【0287】
EU/mLにおける任意の値をpg IgG/mlにおける絶対値に変換するために、ELISA参照標準曲線の参照標準曲線試料を、質量分析によって測定した。これは、通常のELISAの最初の2つの工程を実行することによって達成した:(1)RSV-B Fタンパク質(配列番号11)をELISAプレートにコーティングし、かつ(2)抗RSV-B Fタンパク質抗体陽性ヒト血清で生成された参照標準曲線試料を、ELISAプレートに添加して異なる濃度を得た(
図3参照)。その後、全ての非結合抗体を洗い流した。プレートに結合した残りの抗体及びタンパク質を除去し、8M尿素の添加によって変性させた。複数のウェルからの変性抗体及びタンパク質を、分析中の感度を増加させるために、RSV-B F抗原陽性血清の濃度に基づいて、プールした(96ウェルプレートのn=16ウェル)。抗体及びタンパク質の還元及びアルキル化後、抗体及びタンパク質を、2M尿素で希釈し、トリプシンを、37℃で3時間消化のために添加した。最後に、試料を、固相抽出によって脱塩し、MRMモードにおいてLC ESI triplequad分析によって分析した。
【0288】
ELISA参照標準曲線の線形部分からの異なる試料について得られたMS2ピーク面積を、
図1に示される曲線からの線形回帰の式を使用して、Log10変換pg IgG/mlに変換し、ELISAにおける血清希釈係数によって乗算し、その後、EU/mLにおける参照材料のLog10変換希釈に対してプロットした(表2及び
図4を参照)。結果は、質量分析結果がまた、希釈曲線のこの部分において線形であることを示す。しかしながら、プロットのY軸上の任意の相対発光量(RLU)で表される分光光度読み出しを得る代わりに、ここで、pg IgG/mlで表される抗原結合IgGの絶対量を示す。
【0289】
【0290】
この時点から、
図4で得られた式(10Log pg IgG/ml=(0.9367
*10Log EU/ml)-1.6207)は、通常のELISAからのELISA読み出し(EU/mlで表される)をpg IgG/mlで表されるIgGの絶対量に変換するために、適用され得る。これは、pg IgG/mlで表される絶対量において、将来の発光ELISA希釈曲線において得られたIgG抗体の量を表すことを可能にする。ELISA読み出し値は実験依存的であり得るが、絶対IgG量は、同一の設定及び材料又はブリッジングを通して分析的に等価であることが示されている材料を用いて実行された全ての実験について有効である。その後、全ての未知の血清試料は、標準ELISAによって分析されることができ、読み出し(例えば、発光値)は、通常行われるように参照材料と比較して表されことができるが、IgG濃度の単位は、pg IgG/mlで表される絶対値である。
【0291】
実施例2.HIV抗原特異的IgGの絶対量の判定のためのプロテオタイピックペプチドの使用
本実施例は、定量的質量分析(qMS)分析とELISAとを組み合わせることによって、抗HIV抗原(モザイクgp140)IgG陽性ヒト血清における抗原特異的IgG抗体の絶対量の判定のための、任意のヒトIgG1、3及び4又はIgG2について特異的なプロテオタイピックペプチドの使用を記載する。
【0292】
この実施例では、2つのプロテオタイピックペプチド:第一に、ヒトIgG1、3及び4抗体について特異的である、実施例1にも記載されたペプチドVVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号1)、第二に、ヒトIgG2に特異的なVVSVLTVVHQDWLNGK(配列番号2、Furlong、Ouyangら2012;Furlong、Zhaoら2013)を選択した。これらの特異的ペプチドの合成バージョンを得て、1~1000pg/分析試料の範囲において既知濃度のプロテオタイピックペプチドを添加(「スパイク」)することにより、プロテオタイピックペプチドの各々の較正曲線を作成することによって、それらの適合性を試験するために使用した。較正試料は、多重反応モニタリングモード(MRM)においてESI-triple quad質量分析計に接続された逆相液体クロマトグラフィーによって分析した。
図5では、線形性は、両方のペプチドの質量分析MS2応答(Log10変換ピーク面積で報告されるペプチドのフラグメント質量)と添加ペプチドの既知濃度(Log10変換pg/試料で報告されるペプチド)との間に観察されることができ、それによって、混合物におけるペプチドの量、その後のIgGの量を定量的に判定するために使用するのに適切であるものにすることができる。したがって、この線形用量応答は、qMS分析が試料混合物においてヒト抗HIV IgG抗体の量を定量的に判定するために適切であることを確立する。
【0293】
通常の方法においてこのHIV ELISAを実行するときに(上記のように)、HIV特異的ヒト血清抗体(結果)の検出のために読み出された450nmでの光学密度(OD450)は、使用される。このOD450読み出しは、任意であり、吸収単位(Absorption unit、AU)で測定される。結果を半定量的にするために、試料の結果は、EU/mlで表される抗HIVタンパク質IgG陽性ヒト血清参照の比として表される。ELISAにおけるHIVタンパク質陽性ヒト血清参照の抗体結合を測定する、OD450読み出しから得られた希釈曲線は、
図6に示される。この曲線の直線部分(±150~37000EU/mL)は、未知のヒト血清試料における免疫応答を定量するために、使用される。しかしながら、量は、任意の値である、1mL当たりのELISA単位(EU/mL)で表される。この値を絶対にするために、曲線は、質量分析によって測定される必要がある。
【0294】
EU/mL単位の任意の値をμg IgG/mLにおける絶対値に変換するために、ELISA参照標準曲線の参照標準曲線試料を、質量分析によって測定した。これは、通常のELISAの最初の2つの工程実行することによって達成した:(1)モザイクgp140抗原をELISAプレートにコーティングし、かつ(2)抗HIVタンパク質/抗原抗体陽性ヒト血清で生成された参照標準曲線試料を、ELISAプレートに添加して異なる濃度を得た(
図3参照)。その後、全ての非結合抗体を洗い流した。プレートに結合した残りの抗体及びタンパク質を除去し、8M尿素の添加によって変性させた。複数のウェルからの変性抗体及びタンパク質を、分析中の感度を増加させるために、HIV抗原陽性血清の濃度に基づいて、プールした(96ウェルプレートのn=16ウェル)。抗体及びタンパク質の還元及びアルキル化後、抗体及びタンパク質を、2M尿素で希釈し、トリプシンを、37℃で3時間消化のために添加した。最後に、試料を、固相抽出によって脱塩し、MRMモードにおいてLC ESI triplequad分析によって分析した。
【0295】
ELISA参照標準曲線の直線部分からの異なる試料について得られたMS2ピーク面積を、
図5に示されるIgG1、3、及び4並びにIgG2の曲線からの線形回帰の式を使用して、両方の選択されたペプチドについてそれぞれμg IgG/mLのIgG1、3、及び4並びにIgG2の絶対量に変換した。その後、IgG1、3、及び4並びにIgG2値を、各ELISA参照標準曲線点についての総IgG濃度を得るために、合計した。最後に、得られた総IgG値を、Log10変換し、ELISAにおける血清希釈係数によって乗算し、EU/mL単位における参照材料のLog10変換希釈に対してプロットした(表3及び
図7を参照)。結果は、質量分析結果がまた、希釈曲線のこの部分において線形であることを示す。しかしながら、プロットのY軸上の任意の相対OD450単位(AU)で表される分光光度読み出しを得る代わりに、ここで、μg IgG/mLで表される抗原結合IgGの絶対量を示す。
【0296】
【0297】
この時点から、
図7で得られた式(10Logμg IgG/mL=(0.420
*10Log EU/mL)+0.406)は、通常のELISAからのELISA読み出し(EU/mLで表される)をμg IgG/mLで表されるIgGの絶対量に変換するために、適用され得る。これは、μg IgG/mLで表される絶対量において、将来の光学密度ELISA希釈曲線において得られたIgG抗体の量を表すことを可能にする。ELISA読み出し値は実験依存的であり得るが、絶対IgG量は、同一の設定及び材料又はブリッジングを通して分析的に等価であることが示されている材料を用いて実行された全ての実験について有効である。その後、全ての未知の血清試料は、標準ELISAによって分析されることができ、読み出し(例えば、発光値)は、通常行われるように参照材料と比較して表され得るが、IgG濃度の単位は、μg IgG/mLで表される絶対値である。
【0298】
実施例3.SARS-COV-2抗原特異的IgGの絶対量の判定のためのプロテオタイピックペプチドの使用
本実施例は、定量的質量分析(qMS)分析とELISAとを組み合わせることによって、SARS-COV-2陽性ヒト血清における抗原特異的IgG抗体の絶対量の判定のための、任意のヒトIgG1、3及び4又はIgG2について特異的なプロテオタイピックペプチドの使用を記載する。
【0299】
この実施例では、2つのプロテオタイピックペプチド:第一に、ヒトIgG1、3及び4抗体について特異的である、実施例1にも記載されたペプチドVVSVLTVLHQDWLNGK(配列番号1)、第二に、ヒトIgG2に特異的なVVSVLTVVHQDWLNGK(配列番号2、Furlong、Ouyangら2012;Furlong、Zhaoら2013)を選択した。これらの特異的ペプチドの合成バージョンを得て、1~1000pg/分析試料の範囲において既知濃度のプロテオタイピックペプチドを添加(「スパイク」)することにより、プロテオタイピックペプチドの各々の較正曲線を作成することによって、それらの適合性を試験するために使用した。較正試料は、多重反応モニタリングモード(MRM)においてESI-triple quad質量分析計に接続された逆相液体クロマトグラフィーによって分析した。
図8では、線形性は、両方のペプチドの質量分析MS2応答(Log10変換ピーク面積で報告されるペプチドのフラグメント質量)と添加ペプチドの既知濃度(Log10変換pg/試料で報告されるペプチド)との間に観察されることができ、それによって、混合物におけるペプチドの量、その後のIgGの量を定量的に判定するために使用するのに適切であるものにすることができる。したがって、この線形用量応答は、qMS分析が試料混合物においてヒト抗SARS-COV-2 IgG抗体の量を定量的に判定するために適切であることを確立する。
【0300】
通常の方法においてこのSARS-COV-2 ELISAを実行するときに(上記のように)、SARS-COV-2特異的ヒト血清抗体(結果)の検出のための発光読み出しは、使用される。この発光読み出しは、任意であり、相対発光量(RLU)で測定される。結果を半定量的にするために、試料の結果は、EU/mlで表される抗SARS-COV-2タンパク質IgG陽性ヒト血清参照の比として表される。ELISAにおけるSARS-COV-2タンパク質陽性ヒト血清参照の抗体結合を測定する、発光読み出しから得られた希釈曲線は、
図9に示される。この曲線の直線部分(±450~33000EU/mL)は、未知のヒト血清試料における免疫応答を定量するために、使用される。しかしながら、量は、任意の値である、1mL当たりのELISA単位(EU/mL)で表される。この値を絶対にするために、曲線は、質量分析によって測定される必要がある。
【0301】
EU/mL単位の任意の値をμg IgG/mLにおける絶対値に変換するために、ELISA参照標準曲線の参照標準曲線試料を、質量分析によって測定した。これは、通常のELISAの最初の2つの工程を実行することによって達成した:(1)SARS-COV-2抗原をELISAプレートにコーティングし、かつ(2)抗SARS-COV-2タンパク質/抗原抗体陽性ヒト血清で生成された参照標準曲線試料を、ELISAプレートに添加して異なる濃度を得た(
図3参照)。その後、全ての非結合抗体を洗い流した。プレートに結合した残りの抗体及びタンパク質を除去し、8M尿素の添加によって変性させた。複数のウェルからの変性抗体及びタンパク質を、分析中の感度を増加させるために、SARS-COV-2抗原陽性血清の濃度に基づいて、プールした(96ウェルプレートのn=16ウェル)。抗体及びタンパク質の還元及びアルキル化後、抗体及びタンパク質を、2M尿素で希釈し、トリプシンを、37℃で3時間消化のために添加した。最後に、試料を、固相抽出によって脱塩し、MRMモードにおいてLC ESI triplequad分析によって分析した。
【0302】
ELISA参照標準曲線の直線部分からの異なる試料について得られたMS2ピーク面積を、
図8に示される曲線からのIgG1、3、及び4並びにIgG2についての線形回帰の式を使用して、両方の選択されたペプチドについてそれぞれμg IgG/mLのIgG1、3、及び4並びにIgG2の絶対量に変換した。その後、IgG1、3、及び4並びにIgG2値を、各ELISA参照標準曲線点についての総IgG濃度を得るために、合計した。最後に、得られた総IgG値を、Log10変換し、ELISAにおける血清希釈係数によって乗算し、EU/mL単位における参照材料のLog10変換希釈に対してプロットした(表4及び
図10を参照)。結果は、質量分析結果がまた、希釈曲線のこの部分において線形であることを示す。しかしながら、プロットのY軸上の任意の相対発光で表される分光光度読み出しを得る代わりに、ここで、μg IgG/mLで表される抗原結合IgGの絶対量を示す。
【0303】
【0304】
この時点から、
図10で得られた式(10Logμg IgG/mL=(0.857
*10Log EU/mL)-2.00)は、通常のELISAからのELISA読み出し(EU/mLで表される)をμg IgG/mLで表されるIgGの絶対量に変換するために、適用され得る。これは、μg IgG/mLで表される絶対量において、将来の光学密度ELISA希釈曲線において得られたIgG抗体の量を表すことを可能にする。ELISA読み出し値は実験依存的であり得るが、絶対IgG量は、同一の設定及び材料又はブリッジングを通して分析的に等価であることが示されている材料を用いて実行された全ての実験について有効である。その後、全ての未知の血清試料は、標準ELISAによって分析されることができ、読み出し(例えば、発光値)は、通常行われるように参照材料と比較して表され得るが、IgG濃度の単位は、μg IgG/mLで表される絶対値である。
【0305】
本明細書に記載された実施例及び実施形態は、例示のみを目的としたものであり、上述の実施形態に対する変更は、その広範な発明概念から逸脱することなくなされ得ることが理解される。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨及び範囲内の修正をも包含することを意図するものと理解される。
【0306】
参考文献
1.Aydin,S.(2015).「A short history,principles,and types of ELISA,and our laboratory experience with peptide/protein analyses using ELISA.」Peptides72:4-15.
2.Calderon-Celis,F.、J.R.Encinar及びA.Sanz-Medel(2018).「Standardization approaches in absolute quantitative proteomics with mass spectrometry.」Mass Spectrometry Reviews37(6):715-737.
3.Furlong,M.T.、Z.Ouyang、S.Wu、J.Tamura、T.Olah、A.Tymiak及びM.Jemal(2012).「A universal surrogate peptide to enable LC-MS/MS bioanalysis of a diversity of human monoclonal antibody and human Fc-fusion protein drug candidates in pre-clinical animal studies.」Biomedical Chromatography26(8):1024-1032.
4.Furlong,M.T.、S.Zhao、W.Mylott、R.Jenkins、M.Gao、V.Hegde、J.Tamura、A.Tymiak及びM.Jemal(2013).「Dual universal peptide approach to bioanalysis of human monoclonal antibody protein drug candidates in animal studies.」Bioanalysis5(11):1363-1376.
5.Halquist MS及びThomas Karnes H(2011).「Quantitative liquid chromatography tandem mass spectrometry analysis of macromolecules using signature peptides in biological fluids.」 Biomedical Chromatography;25:47-58.
6.Pan,S.、R.Aebersold、R.Chen、J.Rush、D.R.Goodlett、M.W.McIntosh、J.Zhang及びT.A.Brentnall(2009).「Mass Spectrometry Based Targeted Protein Quantification:Methods and Applications.」Journal of Proteome Research8(2):787-797.
【配列表】
【国際調査報告】