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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/06 20060101AFI20240216BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20240216BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20240216BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20240216BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20240216BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C08F299/06
C09D175/14
C09D4/00
C09D4/02
C08G18/44
C08G18/42
C08G18/67 010
C08G18/72
C08F290/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546176
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 IB2022050799
(87)【国際公開番号】W WO2022167907
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/145,520
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287388
【氏名又は名称】サンスター・エンジニアリング・アメリカズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sunstar Engineering Americas Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【弁理士】
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】ハウ,スティーブン エリック
(72)【発明者】
【氏名】リーメン,エドワード トーマス
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J034CA01
4J034CB01
4J034DA01
4J034DA05
4J034DB03
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034FA01
4J034FA02
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034FE02
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA23
4J034JA32
4J034RA07
4J034SA01
4J038DG191
4J038DG211
4J038FA111
4J038KA04
4J038MA14
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA041
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC141
4J127BD421
4J127BD481
4J127BE241
4J127BE242
4J127BE24Y
4J127BF142
4J127BF14X
4J127BF611
4J127BF612
4J127BF61X
4J127BF61Y
4J127BF621
4J127BF622
4J127BF62X
4J127BF62Y
4J127BG041
4J127BG042
4J127BG04Y
4J127BG181
4J127BG182
4J127BG18X
4J127BG271
4J127BG272
4J127BG27Y
4J127BG281
4J127BG282
4J127BG28X
4J127CB151
4J127CB152
4J127CC021
4J127CC022
4J127EA12
4J127FA00
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】保型性に優れ塗布形状の自由度に優れ、迅速に被膜化可能である、または、経済性に優れたマスキング材を、提供することにある。また、硬化後の物性(例えば引裂強度)に優れ、硬化後の剥離の際、マスキング材がちぎれたりするという問題を解決するマスキング材を提供する。
【解決手段】(式1):
(CH2=C(R1)-CO-O-R2-O-CO-NH-R3-NH-CO)-R4
[式中、
のそれぞれは独立して水素原子又はメチル基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~8の脂肪族基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~30の芳香族基又は脂肪族基であり、
はポリカーボネート骨格および/またはポリエステル骨格を有する数平均分子量500以上の芳香族基又は脂肪族基であり、
nは2~4の整数である。]
で表されるプレポリマー(A1)、及び
(式2):
(CH2=C(R5)-CO-O-R6-O-CO-NH)-R7
[式中、
のそれぞれは独立して水素原子又はメチル基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~8の脂肪族基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~30の芳香族基又は脂肪族基である。
mは2~4の整数である。]
で表される非ポリマー(A2)を含む硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(式1):
(CH2=C(R1)-CO-O-R2-O-CO-NH-R3-NH-CO)-R4
[式中、
のそれぞれは独立して水素原子又はメチル基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~8の脂肪族基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~30の芳香族基又は脂肪族基であり、
はポリカーボネート骨格および/またはポリエステル骨格を有する数平均分子量500以上の芳香族基又は脂肪族基であり、
nは2~4の整数である。]
で表されるプレポリマー(A1)、及び
(式2):
(CH2=C(R5)-CO-O-R6-O-CO-NH)-R7
[式中、
のそれぞれは独立して水素原子又はメチル基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~8の脂肪族基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~30の芳香族基又は脂肪族基である。
mは2~4の整数である。]
で表される非ポリマー(A2)
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
前記プレポリマー(A1)の数平均分子量が1000以上5000以下であり、前記非ポリマー(A2)の数平均分子量が750以下である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記プレポリマー(A1)を15重量%以上、かつ、前記非ポリマー(A2)を15重量%以上含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
硬化後において10℃~30℃のtanδが0.07以上である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
その他アクリル性モノマー(A3)を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
固体粒子(B)を10重量%以上含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
リン含有開始剤を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の硬化性組成物を含む、硬化性マスキング材。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化性マスキング材を用いて、基材表面の少なくとも一部をマスクするマスキング部材を設けることを含む、マスキング工程;
前記マスキング部材を硬化させることを含む、硬化工程;
前記マスキング部材を剥離して前記基材表面の一部を露出させることを含む、露出工程;及び
前記基材表面の露出された部分に他の部材を結合させることを含む、結合工程;
を含む、結合体の製造方法。
【請求項10】
さらに、
前記基材に塗装を施すことを含む、塗装工程
を含む、請求項9に記載の結合体の製造方法。
【請求項11】
前記マスキング工程において、前記硬化性マスキング材を厚み0.1mm以上で塗布して前記基材表面の少なくとも一部をマスクすることを含む、請求項9に記載の結合体の製造方法。
【請求項12】
前記マスキング工程において、前記硬化性マスキング材を幅5mm以上で塗布して前記基材表面の少なくとも一部をマスクすることを含む、請求項9に記載の結合体の製造方法。
【請求項13】
前記基材が樹脂である、請求項9に記載の結合体の製造方法。
【請求項14】
ロボットを用いる、請求項9に記載の結合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物、当該硬化性組成物を含む硬化性マスキング材、当該硬化性組成物を用いた結合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種製品に対して塗装を行う際、所定の箇所のみに塗装が施されるように、マスキングして基材の一部を保護することが行われている。従来は、テープ等のフィルム状の物品を貼り付ける方法によりマスキングしていたが、この方法は、取扱い性の観点から、自動化が容易ではない。テープ等のフィルム状の物品の代わりに、樹脂を溶剤に分散もしくは溶解させてなるマスキング材を基材に塗布することが知られている(特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国6284826B1
【特許文献2】米国2003/0149164A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の溶剤型のマスキング材は、保型性が劣るために、塗布形状の自由度が低く取扱い性が問題となる。特にこれはロボット等を用いて塗布プロセスを自動化する際に問題となる。また、従来の溶剤型のマスキング材は、マスキング材の剥離性を高めるために乾燥炉の設置が必要となり、経済的でない。本発明の目的は、保型性に優れ塗布形状の自由度に優れ、迅速に被膜化可能である、または、経済性に優れたマスキング材を、提供することにある。また、本発明の目的は、硬化後の物性(例えば引裂強度)に優れ、硬化後の剥離の際、マスキング材がちぎれたりするという問題を解決するマスキング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は次のとおりである。
[項1]
(式1):
(CH2=C(R1)-CO-O-R2-O-CO-NH-R3-NH-CO)-R4
[式中、
のそれぞれは独立して水素原子又はメチル基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~8の脂肪族基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~30の芳香族基又は脂肪族基であり、
はポリカーボネート骨格および/またはポリエステル骨格を有する数平均分子量500以上の芳香族基又は脂肪族基であり、
nは2~4の整数である。]
で表されるプレポリマー(A1)、及び
(式2):
(CH2=C(R5)-CO-O-R6-O-CO-NH)-R7
[式中、
のそれぞれは独立して水素原子又はメチル基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~8の脂肪族基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~30の芳香族基又は脂肪族基である。
mは2~4の整数である。]
で表される非ポリマー(A2)
を含む硬化性組成物。
[項2]
前記プレポリマー(A1)の数平均分子量が1000以上5000以下であり、前記非ポリマー(A2)の数平均分子量が750以下である、項1に記載の硬化性組成物。
[項3]
前記プレポリマー(A1)を15重量%以上、かつ、前記非ポリマー(A2)を15重量%以上含む、項1に記載の硬化性組成物。
[項4]
硬化後において10℃~30℃のtanδが0.07以上である、項1に記載の硬化性組成物。
[項5]
その他アクリル性モノマー(A3)を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
[項6]
固体粒子(B)を10重量%以上含む、項1に記載の硬化性組成物。
[項7]
リン含有開始剤を含む、項1に記載の硬化性組成物。
[項8]
項1に記載の硬化性組成物を含む、硬化性マスキング材。
[項9]
項8に記載の硬化性マスキング材を用いて、基材表面の少なくとも一部をマスクするマスキング部材を設けることを含む、マスキング工程;
前記マスキング部材を硬化させることを含む、硬化工程;
前記マスキング部材を剥離して基材表面の一部を露出させることを含む、露出工程;及び
前記基材表面の露出された部分に他の部材を結合させることを含む、結合工程;
を含む、結合体の製造方法。
[項10]
さらに、
前記基材に塗装を施すことを含む、塗装工程
を含む、項9に記載の結合体の製造方法。
[項11]
前記マスキング工程において、前記硬化性マスキング材を厚み0.1mm以上で塗布して前記基材表面の少なくとも一部をマスクすることを含む、項9に記載の結合体の製造方法。
[項12]
前記マスキング工程において、前記硬化性マスキング材を幅5mm以上で塗布して前記基材表面の少なくとも一部をマスクすることを含む、項9に記載の結合体の製造方法。
[項13]
前記基材が樹脂である、項9に記載の結合体の製造方法。
[項14]
ロボットを用いる、項9に記載の結合体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態の硬化性組成物を含む硬化性マスキング材は、保型性に優れるため、目的の部位のみに塗布可能であり塗布形状の自由度に優れる。さらに、迅速に被膜形成でき経済性に優れ、かつ剥離性に優れる。このように、本発明の実施形態の硬化性組成物は取扱い性に優れるため、ロボット等による自動化が容易であり、作業性を向上できる。さらに、本発明の実施形態の硬化性組成物は、基材の汚染が少なく、その後の工程に悪影響を及ぼしにくい。さらに本願発明によれば、硬化後の物性に優れ、スムーズに剥離可能なマスキング材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<硬化性組成物>
本発明の実施形態における硬化性組成物は、
(式1):
(CH2=C(R1)-CO-O-R2-O-CO-NH-R3-NH-CO)-R4
[式中、R1のそれぞれは独立して水素原子又はメチル基であり、
R2のそれぞれは独立して炭素数1~8の脂肪族基であり、
R3のそれぞれは独立して炭素数1~30の芳香族基又は脂肪族基であり、
R4はポリカーボネート骨格および/またはポリエステル骨格を有する分子量500以上の芳香族基又は脂肪族基であり、
nは2~4である。]
で表されるプレポリマー(A1)、及び
(式2):
(CH2=C(R5)-CO-O-R6-O-CO-NH)-R7
[式中、R5のそれぞれは独立して水素原子又はメチル基であり、
R6のそれぞれは独立して炭素数1~8の脂肪族基であり、
R7のそれぞれは独立して炭素数1~30の芳香族基又は脂肪族基である。
mは2~4である。]
で表される非ポリマー(A2)
を含む。
【0008】
[プレポリマー(A1)]
本発明の実施形態における硬化性組成物は、
(CH2=C(R1)-CO-O-R2-O-CO-NH-R3-NH-CO)-R4 (式1)
[式中、R1のそれぞれは独立して水素原子又はメチル基であり、
R2のそれぞれは独立して炭素数1~8の脂肪族基であり、
R3のそれぞれは独立して炭素数1~30の芳香族基又は脂肪族基であり、
R4はポリカーボネート骨格および/またはポリエステル骨格を有する分子量500以上の芳香族基又は脂肪族基であり、
nは2~4である。]
で表されるプレポリマー(A1)を含む。
【0009】
はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基である。
【0010】
は脂肪族基であり、脂肪族炭化水素基であってよく、好ましくはアルキレン基である。
【0011】
の炭素数は1~8であり、1以上、2以上、又は3以上であってよく、8以下、7以下、又は6以下であってよい。
【0012】
の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、及びブチレン基が挙げられる。
【0013】
は芳香族基又は脂肪族基であり、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であってよい。
【0014】
3の炭素数は1~30であり、2以上、4以上、6以上、8以上、又は10以上であってよく、28以下、24以下、20以下、又は16以下であってよい。
【0015】
はジイソシアネート化合物に由来する基であってよい。すなわち、当該基はジイソシアネート化合物から2個の-NCO基を取り除いたものであってよい。ジイソシアネート化合物は、脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートであってよく、硬化後の物性の観点から、脂肪族ジイソシアネートが好ましい。脂環族ジイソシアネートは単環式脂環族ジイソシアネートまたは多環式脂環族ジイソシアネート(例えば二環式脂環族ジイソシアネート、三環式脂環族ジイソシアネート、橋架環式脂環族ジイソシアネート等)であってもよい。
【0016】
ジイソシアネート化合物の例としては、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネ-ト、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等の非環式脂肪族ジイソシアネート;1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネ-ト、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)若しくはこれらの混合物)(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシネートメチル)シクロヘキサン(1,3-または1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン若しくはその混合物)(水添XDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート(水添TDI)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート(水加TMXDI)等の単環式脂環族ジイソシアネート;ノルボルネンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジイソシアナートメチルビシクロヘプタン、ジ(ジイソシアナートメチル)トリシクロデカン等の多環式(例えば、橋架環式)脂環族ジイソシアネート; トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネ-ト若しくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-,p-フェニレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート若しくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート若しくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、ナフタレンジイソシアネート(1,5-、1,4-または1,8-ナフタレンジイソシアネート若しくはその混合物)(NDI)、ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、及び3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
はポリカーボネート骨格および/またはポリエステル骨格を有する分子量500以上の芳香族基又は脂肪族基である。
【0018】
はn価である。nは2~4の整数であって、好ましくは2である。
【0019】
ポリカーボネート骨格とは、
(式21):
-[-R41-O-C(=O)-O-]
(式中、R41は二価の炭化水素基であり、qは整数である。)
で示される骨格であってよい。
【0020】
41は芳香族または脂肪族であってよく、好ましくは直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキレン基であり、より好ましくは直鎖状のアルキレン基である。R41の炭素数は1~15であってよく、例えば2~10、好ましくは3~7である。R41の具体例としては、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等が挙げられる。ポリカーボネート骨格中、それぞれのR41は同一または異なっていてもよい。
【0021】
qは3以上であってよく、例えば5以上、好ましくは10以上である。
【0022】
ポリエステル骨格とは、
(式22):
-[C(=O)-R42-O-]
(式中、R42は二価の炭化水素基であり、rは整数である。)
で示される骨格であってよい。
【0023】
42は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキレン基であってよく、直鎖状のアルキレン基であることが好ましい。R42の炭素数は1~15であってよく、例えば2~10、好ましくは2~7である。R42の具体例としては、R42の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等が挙げられる。ポリカーボネート骨格中、それぞれのR42は同一または異なっていてもよい。
【0024】
rは3以上であってよく、例えば5以上、好ましくは10以上である。
【0025】
あるいは、ポリエステル骨格とは、
式(23):
-[-C(=O)-R43-C(=O)O-R44-O-]
(式中、R43およびR44は、それぞれ独立して二価の炭化水素であり、sは整数である。)
で示される骨格であってもよい。
【0026】
例えばR43は2価の炭素数6~10の芳香族基(例えばフェニレン基(p-フェニレン基))または炭素数1~15のアルキレン基(例えば、炭素数2~10のアルキレン基)などであってよく、好ましくは炭素数2~7のアルキレン基である。R44は炭素数1~15のアルキレン基であってよく、例えば炭素数2~10のアルキレン基であり、好ましくは炭素数2~8のアルキレン基である。
【0027】
sは3以上であってよく、例えば5以上、好ましくは10以上である。
【0028】
の数平均分子量は500以上であり、750以上、1000以上、1250以上、1500以上、又は2500以上であってよく、好ましくは750以上である。Rの数平均分子量は10000以下、7500以下、5000以下、4000以下、3000以下、又は2500以下であってよく、好ましくは4000以下である。ここで、数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
【0029】
プレポリマー(A1)の数平均分子量は750以上、1000以上、1500以上、2000以上、2500以上、又は3000以上であってよく、好ましくは1000以上である。プレポリマー(A1)の数平均分子量は10000以下、7500以下、5000以下、4000以下、3000以下、又は2500以下であってよく、好ましくは5000以下である。分子量が上記範囲にあると、硬化後の物性と粘度の点で有利である。なお、数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
【0030】
プレポリマー(A1)の40℃における粘度は、1Pa・s以上であってよく、例えば10Pa・s以上であり、好ましくは20Pa・s以上である。プレポリマー(A1)の40℃における粘度は、200Pa・s以下であってよく、例えば150Pa・s以下であり、好ましくは100Pa・s以下である。プレポリマー(A1)の40℃における粘度が上記範囲にあることで、塗布性及び剥離性がより好適となる。20mmプレートを備えたレオメーター(TA instruments社製DHR-3)を用いて、回転速度0.42rpm、40℃で行われる。
【0031】
[非ポリマー(A2)]
本発明の実施形態における硬化性組成物は、
式(2):
(CH2=C(R5)-CO-O-R6-O-CO-NH)-R7
[式中、
のそれぞれは独立して水素原子又はメチル基であり、
のそれぞれは独立して炭素数1~8の脂肪族基であり、
は独立して炭素数1~30の芳香族基又は脂肪族基である。
mは2~4である。]
で表される非ポリマー(A2)を含む。
【0032】
はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基である。
【0033】
は脂肪族基であり、脂肪族炭化水素基であってよく、好ましくはアルキレン基である。
【0034】
の炭素数は1~8であり、1以上、2以上、3以上であってよく、8以下、7以下、又は6以下であってよい。
【0035】
の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、及びブチレン基が挙げられる。
【0036】
は芳香族基又は脂肪族基であり、芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であってよい。
【0037】
の炭素数は1~30であり、2以上、4以上、6以上、8以上、又は10以上であってく、28以下、24以下、20以下、又は16以下であってよい。
【0038】
はポリイソシアネート化合物に由来する基であってよい。すなわち、ポリイソシアネート化合物からm個の-NCO基を取り除いた基であってよい。mは2~4の整数であってよく、好ましくは2である。ポリイソシアネート化合物は、脂肪族ポリイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネートであってよく、硬化後の物性の観点から、脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。脂環族イソシアネートは単環式脂環族ポリイソシアネートまたは多環式脂環族ポリイソシアネート(例えば二環式脂環族ポリイソシアネート、三環式脂環族ポリイソシアネート、橋架環式脂環族ポリイソシアネート等)であってもよい。
【0039】
ポリイソシアネート化合物の例としては、上記Rの説明におけるジイソシアネート化合物の他、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
非ポリマー(A2)の数平均分子量は100以上、200以上、300以上、400以上、又は500以上であってよい。非ポリマー(A2)の数平均分子量は750以下、700以下、650以下、600以下、550以下、又は500以下であってよい。分子量が上記範囲にあると、硬化後の物性と粘度の点で有利である。なお、数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値であってよい。
【0041】
[その他アクリル性モノマー(A3)]
硬化性組成物は、その他アクリル性モノマー(A3)を含んでよい。その他アクリル性モノマー(A3)を含むことにより、硬化後の物性の点で有利である。
【0042】
その他アクリル性モノマー(A3)におけるアクリル性重合基(アクリレート基、アクリルアミド基等)の数は1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上であってもよく、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、1以下であってよく、例えば1、2又は3である。
【0043】
その他のアクリル性モノマー(A3)はウレタン基及び/又はウレア基を有していても有していなくてもよく、有していないことが好ましい。
【0044】
その他アクリル性モノマー(A3)の数平均分子量は100以上、200以上、300以上、400以上、又は500以上であってよい。その他アクリル性モノマー(A3)の数平均分子量は1000以下、750以下、700以下、650以下、600以下、550以下、又は500以下であってよい。なお、数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値であってよい。
【0045】
その他アクリル性モノマー(A3)の例としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート(ここで、アルキル基の炭素数は1以上、3以上、5以上、7以上、10以上、12以上であってよく、30以下、27以下、24以下、20以下、16以下であってよい。);ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテルアクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;スチレン、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等の芳香族基含有モノマー;2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有モノマー;トリメチルシリルアクリレート、トリアルコキシシリルアクリレート等のSi基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、3-(アクリロイルオキシ)プロパン-1-スルホン酸等の酸性官能基含有モノマー及びそれらの塩;アダマンチルアクリレート、シクロへキシルアクリレート等の環状基含有モノマー;1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル(メタ)アクリレート等の含フッ素モノマー;アクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド等のアミド系モノマー等が挙げられる。
【0046】
[固体粒子(B)]
本発明の実施形態の硬化性組成物は、固体粒子(B)を含む。固体粒子(B)は常温で固体の粒子であり、本発明が目的とする硬化性組成物が得られる限り、特に制限されることはない。固体粒子(B)としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、酸化物、又は水酸化物;ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等のシリカ;カーボンブラック、グラファイト等のカーボン;アルミナ、タルク、マイカ、クレー等の鉱物フィラー;ガラスビーズ;シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、プラスチックバルーン等のバルーン;ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などの有機繊維;ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン等のセラミックフィラー;及びクリソタイル、ワラストナイト等の針状結晶性フィラー等が挙げられる。固体粒子(B)は、表面処理(例えば、脂肪酸処理)された粒子であってもよい。
【0047】
固体粒子(B)の中心粒径は、0.003μm以上であってよく、例えば0.5μm以上である。また、固体粒子(B)の中心粒径は、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。中心粒径とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器において測定された重量累積粒度分布の50%径である。
【0048】
固体粒子(B)は、塗布性及び剥離性をより良好にする観点から、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、酸化物又は水酸化物、シリカ、若しくはアルミナ等であってよく、中でも炭酸塩、特に炭酸カルシウムが好ましい。
【0049】
[重合開始剤(C)]
本発明の実施形態の硬化性組成物は重合開始剤を含むことができる。重合開始剤は、例えば、光開始剤及び/または熱開始剤である開始剤であり得、本発明が目的とする硬化性組成物が得られる限り、特に制限されることはない。光マスキングに硬化性組成物を用いる場合には、通常、光開始剤を用いる。重合開始剤の例として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、2-アリルベンゾイン、2-クロルベンゾイン等のベンゾイン系開始剤;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、α-アミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロルベンゾフェノン、4-クロルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントソン等のチオキサントン系開始剤; アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤; 過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤;アントラキノン、2-クロルアントラキノン、フェナントレン等のキノン系開始剤;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド系開始剤及びフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル等のホスフィネート系開始剤を含むリン含有開始剤、等が挙げられる。
【0050】
重合開始剤はリン含有開始剤、特にリン含有芳香族系開始剤(例えば、芳香族ホスフィネート)を含んでもよい。硬化性組成物を厚塗り(例えば厚み0.2mm以上、特に0.5mm以上)した場合、指数関数的に光の透過率が減少するため、硬化性組成物全体が硬化しにくくなることが問題となることがある。本発明の実施形態における硬化性組成物において、プレポリマー(A)と固体粒子(B)とリン含有開始剤とを組合せることにより、より深部への硬化性と速硬化性を兼ね備えることができる。これは硬化性組成物を厚塗りした場合に特に有効である。十分に硬化させた後、焼き付け塗装等の後続の工程を行うことで、剥離性がより良好となる。
【0051】
[その他成分]
本発明の実施形態の硬化性組成物は、その他成分を含むことができ、本発明が目的とする硬化性組成物が得られる限り、その他の成分は特に制限されることはない。
【0052】
硬化性組成物は、その他成分の一つとして、プレポリマー(A1)、非ポリマー(A2)、その他アクリル性モノマー(A3)以外のモノマー又はポリマー等を含んでもよい。
【0053】
硬化性組成物は、その他成分の一つとして、酸化防止剤を含んでもよい。酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤(例えばヒンダードフェノール類等)、芳香族アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤を含むことにより、高温加熱後においてもマスキング材の剥離性が良好となる。
【0054】
硬化性組成物は、その他成分として、着色剤(例えばベンガラ、酸化チタン、他の着色顔料、染料等)、溶媒(例えば水、極性有機溶剤、非極性有機溶剤等)、シラン化合物(アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、ビニル基などの官能基を有するシラン化合物)、ポリオキシアルキレン基を有してよいエポキシ化合物、可塑剤、紫外線吸収剤・光安定剤(例えばベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等)、揺変剤(例えばコロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、水添ひまし油等)、粘度調整剤、増感剤、重合禁止剤などを適量範囲で含んでよい。
【0055】
[硬化性組成物の組成]
プレポリマー(A1)の量は、硬化性組成物に対して、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、又は40重量%以上であってよく、好ましくは10重量%以上である。プレポリマー(A)の量は、硬化性組成物に対して、90重量%以下、75重量%以下、60重量%以下、45重量%以下、又は30重量%以下であってよく、好ましく60重量%以下である。
【0056】
非ポリマー(A2)の量は、硬化性組成物に対して、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、又は40重量%以上であってよく、好ましくは10重量%以上である。非ポリマー(A2)の量は、硬化性組成物に対して、90重量%以下、75重量%以下、60重量%以下、45重量%以下、又は30重量%以下であってよく、好ましく60重量%以下である。
【0057】
モノマー(A3)の量は、硬化性組成物に対して、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下であってよい。硬化性組成物中、モノマー(A3)の量が上記範囲にあることで、硬化物中に未反応物が残りにくく、マスキング材を除去した時に基材をより汚染しにくい。
【0058】
固体粒子(B)の量は、硬化性組成物に対して、0%、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又は25重量%以上であってよい。固体粒子(B)の量は、硬化性組成物に対して、65重量%以下、50重量%以下、35重量%以下、又は15重量%以下であってよい。
【0059】
重合開始剤(C)の量は、硬化性組成物に対して、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、又は0.5重量%以下であってよい。重合開始剤(C)の量は、硬化性組成物に対して、5重量%以下であってよく、4重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、又は2重量%以下であってよい。
【0060】
その他成分の量は、硬化性組成物に対して、0.1重量%以上であってよく、例えば1重量%以上である。その他成分の量は、硬化性組成物に対して、25重量%以下であってよく、例えば10重量%以下である。なお、重量%は、溶媒を除く部分を基準としてもよい。
【0061】
硬化性組成物中、酸化防止剤の含有量は、0.01重量%以上、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、又は1重量%以上であってよい。酸化防止剤の含有量は、7.5重量%以下、5重量%以下、3.5重量%以下、1.5重量%以下、又は1重量%以下であってよい。
【0062】
[硬化性組成物の粘度]
硬化性組成物の40℃における粘度は、10Pa・s以上、20Pa・s以上、又は30Pa・s以上であってよく、例えば50Pa・s以上であり、好ましくは100Pa・s以上である。また、硬化性組成物の40℃における粘度は、300Pa・s以下、250Pa・s以下、又は200Pa・s以下であってよく、好ましくは180Pa・s以下である。硬化性組成物の40℃におけるTI(チキソトロピーインデックス)値は、0.3以上、0.6以上、又は0.8以上であってよく、例えば1以上である。また、硬化性組成物の40℃におけるTI値は、3以下、2.5以下、又は2以下であり、好ましくは1.8以下である。本発明の実施形態の硬化性組成物は上記の粘度またはTI値を示す流体の形態であってよい。硬化性組成物の粘度またはTI値が上記範囲にあることで、塗布性及び剥離性がより好適となる。TI値は0.42rpmにおける粘度と4.2rpmにおける粘度の比から算出する。
【0063】
[硬化性組成物の硬化後の粘弾性]
硬化後の硬化性組成物(硬化物)は、10℃~30℃の範囲において、そのtanδが0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、又は0.14以上であってよく、好ましくは0.08以上、より好ましくは0.10以上である。硬化後の硬化性組成物(硬化物)は、10℃~30℃の範囲において、そのtanδが0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.25以下、0.20以下、又は0.18以下であってよく、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下である。本願発明における硬化性組成物を用いることで、上記特有のtanδを有する硬化物が得られ、良好な硬化物の物性が発現する。Tanδは、例えばPerkin Elmer DMA 8000を用いて、1Hz、1℃/秒の速度で測定される。
【0064】
<硬化性マスキング材>
本発明の実施形態の硬化性マスキング材は、上記硬化性組成物を含み、基材の一部をマスクすることができれば特に制限されることはない。塗装の際にマスキング材を用いて基材表面をマスクすることにより、マスクされた基材表面が塗装されることを防ぐことができる。
【0065】
<結合体の製造方法>
本発明は更に新たな結合体の製造方法を提供し、それは、マスキング工程、硬化工程、露出工程、及び結合工程を含む。さらに、マスキング工程後(好ましくは硬化工程後)、露出工程前において、塗装工程を含んでもよい。
【0066】
本発明の実施形態の結合体の製造方法において、必要により乾燥工程に供してもよいが、乾燥工程を減じるまたは乾燥工程なしでも被膜化可能である。作業性の観点から、乾燥工程を減じることが好ましく、より好ましくは乾燥工程を設けない。したがって、乾燥炉を必要としなくてもよい。
【0067】
[マスキング工程]
マスキング工程は、基材表面の少なくとも一部をマスクするマスキング部材を設けることを含む。マスキング部材は上記の硬化性マスキング材を基材表面に塗布することにより得られる。
【0068】
硬化性マスキング材は、幅広厚膜ビード状に塗布されてよい。ノズルの形状は、丸ビード用ノズル、きしめんビード用ノズル、扁平状ノズルなどであってよく、目的に応じて選択されてよい。ある程度の幅広のマスキングを必要とする場合は、きしめんビード用ノズルや扇ノズルが好ましい。吐出速度との調整によりショットノズルやスリットノズルなどを用いて幅広に塗布する方法やスワール塗布やスプレー塗布などによって、さらに幅広に塗布することも可能である。例えば、コンテナから材料供給ホースを介して、供給ポンプを用いて、基材上へ硬化性組成物が供給されてよい。塗布用のディスペンサーがロボットに固定され、目的の部位に自動塗布されてもよい。供給されるマスキング材の塗布量を安定化するために、供給ポンプとディスペンサーの間に定量ポンプを設置してよい。定量装置付の供給ポンプやディスペンサーを使用してもよい。
【0069】
硬化性マスキング材の塗布厚みが0.1mm以上、0.2mm以上、0.5mm以上、1mm以上、1.5mm以上、3mm以上、又は5mm以上であってよい。硬化性マスキング材の塗布厚みは30mm以下、15mm以下、又は10mm以下であってよい。塗布厚みが上記範囲であることで、塗装後において塗装膜と硬化後のマスキング材が一体化しにくくなるため、硬化後のマスキング材のみを剥がすのが容易となる。例えば、ロボットが搭載するつまみ治具または剥離治具等により自動的にマスキング材を剥がすことがより容易となる。
【0070】
硬化性マスキング材の塗布幅が3mm以上、5mm以上、又は10mm以上であってよい。硬化性マスキング材の塗布幅は、75mm以下、50mm以下、又は30mm以下であってよい。
【0071】
上記の、硬化性マスキング材の塗布厚み及び塗布幅は、硬化後または塗装後における厚み及び幅を意味してもよい。
【0072】
基材は限定されず、金属、樹脂(例えば、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等)、ガラス、セラミック等であってよい。
【0073】
[硬化工程]
硬化工程は、上記マスキング部材を硬化させることを含む。本発明の実施形態の硬化物は、剥離時においても容易に破損しない適度な柔軟性と強靱性を備える。また、本発明の実施形態の硬化性マスキング部材は速硬化性に優れる。
【0074】
本発明の実施形態におけるマスキング部材の硬化は重合開始剤を活性化させ重合を進行させることにより行われる。マスキング部材の硬化は、硬化性組成物を光照射または加熱することにより行われてよい。作業性の観点から、硬化は光照射(例えば、UV照射、可視光照射等)により行われることが好ましい。
【0075】
硬化性マスキング材が光硬化性の場合、内部に光源(例えばUV光源、可視光光源)を有するコンベアに部材ごと通すことによる方法や、光源をロボットに持たせて塗布部へ照射する方法などによって硬化が可能である。また、塗布用のディスペンサーと光源とを同一のロボットに持たせて塗布と硬化を同時に行うこともできる。光源としては、白熱電球、蛍光灯、ハロゲンランプ、水銀ランプ、キセノンランプ等の従来型の光源を使用してもよいし、LED光源を使用してもよい。
【0076】
光硬化に用いる光の波長は、100~900nmであってよく、例えば200~500nm、好ましくは300~450nmである。放射照度は100mW/cm以上であってよく、例えば200mW/cm以上であり、100W/cm以下であってよく、例えば50W/cm以下である。本発明の実施形態における硬化性組成物は、より優れた速硬化性を有するため、作業性を向上させることができる。作業性の観点から、光照射時間は、1分以下であってよく、好ましくは30秒以下、より好ましくは10秒以下、さらに好ましくは5秒以下、よりさらに好ましくは3秒以下、特に好ましくは1秒以下であり、また、0.1秒以上であってよく、例えば、0.3秒以上である。
【0077】
硬化性マスキング材が熱硬化性の場合、オーブン、熱風装置、近赤外ランプ、またはこれらを備えたロボット等を用いることによって硬化させることが出来る。加熱温度は80~150℃であってよく、好ましくは60~130℃、より好ましくは70℃~120℃である。硬化のための加熱時間は、作業性の観点から、1分未満であってよく、好ましくは30秒未満、より好ましくは10秒未満である。
【0078】
従来、厚膜でマスキング材を塗布した場合、加熱や光照射といった硬化処理に供しても、マスキング材全体が硬化せず、基材に残渣が付着するという問題が生じることがあった。本発明の実施形態の硬化性マスキング材は、迅速に硬化可能であり、かつ硬化後においても適度な力学強度を有するため、幅広厚膜で塗布した場合においても、剥離する際にちぎれたりすることなく、一体として剥離することが容易である。更に本発明における硬化性マスキング材は、剥離後の基材を汚染しないため、露出された表面に接着剤を塗布する際の接着性に悪影響を与えない。
【0079】
[塗装工程]
塗装工程は、マスキング工程後(好ましくは硬化工程後)、露出工程前において、基材表面に塗装を施すことを含む。塗装は、例えば、ハケ塗り、スプレー塗装、浸漬塗り、粉体塗装、静電塗装、光硬化塗装、焼付け塗装などの各種方法により行われてよい。塗装・乾燥のために、80℃以上に加熱してもよく、例えば100℃以上、120℃以上、150℃以上、または180℃以上に加熱される。加熱時間は、30秒~600分であってよく、例えば5分~150分である。
【0080】
[露出工程]
露出工程は、硬化後のマスキング部材を剥離して基材表面の少なくとも一部を露出させることを含む。
【0081】
[結合工程]
結合工程は、基材表面の露出された部分に他の部材を結合させることを含む。他の部材を結合させるために、接着剤を基材表面に塗布してもよい。接着剤を塗布する前に基材表面に対してプライマー処理などの前処理を行ってもよい。なお、本発明の実施形態の硬化性マスキング材を用いた場合、基材からマスキング部材を剥離後、接着阻害成分が基材表面に残らないために他の部材との接着性が良好である。プライマー処理などの前処理をせずとも基材表面と他の部材とを結合させることができる。
【実施例
【0082】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、特に特記がない限り、部及び%は重量基準である。
【0083】
略語の意味は以下のとおりである。
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
UH200:Eternacoll UH-200(ポリカーボネートジオール、Mn=2000、宇部興産社製)
2200A:CAPA2200A(ポリエステルジオール、Mn=2000、Ingevity社製)
上記に結合(-)を付加したもの(例えば、HEA-)は、それに由来する誘導体構造を意味する。
【0084】
試験方法は次のとおりである。
【0085】
[光硬化]
光硬化は下記の条件により行った。
波長:395nmUV
光源:LED14W/cm2 距離1インチ
光照射時間:光照射時間3秒
【0086】
[塗装]
塗装は下記の条件により焼付塗装で行った。
塗料:アクリル系塗料
条件:100℃又は140℃で40分
【0087】
[Tanδ]
Tanδは、Perkin Elmer DMA 8000を用いて、少なくとも-70℃から120℃まで、1Hz、1℃/秒の速度で記録した。
【0088】
[引張強度]
JIS K 6251またはASTM D412に準拠して、厚さ約0.1~1mmの硬化したシート材料を作成し、次に、シートをダンベル状2号型の形に打ち抜き、試験機を用いて300 mm / minの引張速度で引張強度を測定した。
【0089】
[伸び]
JISK6251またはASTM D412に準拠して、引張強度を測定する際の最大伸び率を測定した。
【0090】
[引裂強度]
厚さ約0.35mmの材料の硬化シートをASTM D 624に従って作製した。次いで、このシート材料を打ち抜いてダイC形状のシートを作製し、電気機械式装置上で速度500mm/minで引裂強度を測定した。
【0091】
[剥離性の評価(塗装なし)]
基材(ポリプロピレン樹脂)上に硬化性組成物(マスキング材)を所定の厚みで塗布し、上記の条件でUV硬化させ、次いで硬化物を基材から手で剥離した。剥離性の評価基準は次のとおりである。
【0092】
[剥離性の評価(塗装後)]
硬化性組成物を基材(PP)上に所定の厚さで塗布し、上記の状態でUV硬化させた。硬化性組成物の硬化に続いて、基材と組成物をトップコート、次いでクリアコートで塗装した。その後、硬化物を基材から剥離した。剥離性の評価基準は次のとおりである。
【0093】
[マスキング部材除去後の接着剤の接着性]
接着性試験は、マスキング材の塗布、硬化、塗装およびマスキング部材除去の後に行われる。基材表面にプライマーを塗布し、5分後に接着剤を塗布し、標準条件(20℃x65%)にて7日養生後、接着性試験を行う。接着性試験は、JASO M338-89の剥離接着性表価方法に準じる。
プライマー:435-97 (サンスター技研株式会社製)
接着剤:Penguin Cemment#560 (サンスター技研株式会社製)
評価基準は次のとおりである。
【0094】
[合成]
合成方法は次のとおりである。
【0095】
アクリル成分3
攪拌翼の付いた反応窯に、水酸基価56のポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製UH-200)1000gと過剰のイソフォロンジイソシアネート(IPDI)659gを加え攪拌しながら70℃で3時間反応を行いNCO12.6%のイソシアネート末端プレポリマーとモノマーの混合物を得た。さらにヒドロキシエチルアクリレート(HEA)573gを加え、窒素雰囲気下に80℃で3時間反応させて、アクリレート両末端ポリカーボネートプレポリマーとウレタンジアクリレートの混合物を得た。計算上のプレポリマーとウレタンジアクリレートの比率は60:40であった。
【0096】
アクリル成分4
攪拌翼の付いた反応窯に、水酸基価56のポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製UH-200)1000gと過剰のイソフォロンジイソシアネート(IPDI)455gを加え攪拌しながら70℃で3時間反応を行いNCO8.95%のイソシアネート末端プレポリマーとモノマーの混合物を得た。さらにヒドロキシエチルアクリレート(HEA)359gを加え、窒素雰囲気下に80℃で3時間反応させて、アクリレート両末端ポリカーボネートプレポリマーとウレタンジアクリレートの混合物を得た。さらにイソボルニルアクリレート96g加え、冷却した。計算上のプレポリマーとウレタンジアクリレートとモノアクリレートの比率は70:25:5であった。
【0097】
アクリル成分5
攪拌翼の付いた反応窯に、水酸基価56のポリエステルジオール(Ingevity社製 CAPA2200A)1000gと過剰のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)503gを加え攪拌しながら70℃で3時間反応を行いNCO13.9%のイソシアネート末端プレポリマーとモノマーの混合物を得た。さらにヒドロキシエチルアクリレート(HEA)579gを加え、窒素雰囲気下に80℃で3時間反応させて、アクリレート両末端ポリカーボネートプレポリマーとウレタンジアクリレートの混合物を得た。計算上のプレポリマーとウレタンジアクリレートの比率は60:40であった。
【0098】
アクリル成分6
攪拌翼の付いた反応窯に、水酸基価56のポリエステルジオール(Ingevity社製 CAPA2200A)1000gと過剰のイソフォロンジイソシアネート(IPDI)455gを加え攪拌しながら70℃で3時間反応を行いNCO8.95%のイソシアネート末端プレポリマーとモノマーの混合物を得た。さらにヒドロキシエチルアクリレート(HEA)359gを加え、窒素雰囲気下に80℃で3時間反応させて、アクリレート両末端ポリカーボネートプレポリマーとウレタンジアクリレートの混合物を得た。さらにイソボルニルアクリレート96g加え冷却後取り出した。計算上のプレポリマーとウレタンジアクリレートとモノアクリレートの比率は70:25:5であった。
【0099】
[実施例1~16、比較例1~5]
表1に示す原料を表1に示す組成(重量部)でプラネタリーミキサーにより混合し、硬化性組成物を得た。表中に示す各原料は主成分であって、多量化物(例えば二量化物)等のような製造上の副生成物を含み得る。得られた硬化性組成物を用いて、上記試験を行った。試験結果を表2に示す。

【表1】

【0100】
表中に示した原料は具体的には次のとおりである:

【0101】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、例えば、部材のマスキングを必要とする各種製造工程に用いることができる。例えば、本発明における硬化性組成物は、ロボット等により自動化された製造工程(例えば自動車の製造工程)において使用されるマスキング材として好適に利用できる。
【国際調査報告】