(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】石英混合結晶相を含むガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
C03C 10/12 20060101AFI20240216BHJP
C03C 10/08 20060101ALI20240216BHJP
C03C 10/04 20060101ALI20240216BHJP
C03B 32/02 20060101ALI20240216BHJP
A61K 6/15 20200101ALI20240216BHJP
A61K 6/807 20200101ALI20240216BHJP
A61K 6/822 20200101ALI20240216BHJP
A61K 6/831 20200101ALI20240216BHJP
A61K 6/833 20200101ALI20240216BHJP
A61C 5/77 20170101ALI20240216BHJP
【FI】
C03C10/12
C03C10/08
C03C10/04
C03B32/02
A61K6/15
A61K6/807
A61K6/822
A61K6/831
A61K6/833
A61C5/77
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548259
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2022054006
(87)【国際公開番号】W WO2022179935
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ランプ, マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ディトマー, マルク
(72)【発明者】
【氏名】リッツベルガー, クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4C089
4C159
4G015
4G062
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089BA01
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4C089BA03
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4G062QQ16
(57)【要約】
非常に良好な機械特性および光学特性を特徴とし、特に、歯科において修復材料として使用することができる、石英固溶体ガラスセラミックおよびその前駆体が記載される。本発明は、高強度および良好な半透明度を組み合わせて有するガラスセラミックを提供する問題に基づく。ガラスセラミックはまた、広範囲にわたって調整することができる熱膨張係数を有するべきである。ガラスセラミックはまた、歯科修復材に加工するのが容易であり、したがって、修復歯科材料として優れた方式で好適であるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分
【表11】
を含み、少なくとも2つの異なる石英固溶体相を含む、ガラスセラミック。
【請求項2】
少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの非化学量論の石英固溶体相を含む、請求項1に記載のガラスセラミック。
【請求項3】
少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの化学量論または非化学量論のアルミノシリケート結晶相、特に好ましくは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの非化学量論のアルミノシリケート結晶相を含む、請求項1または2に記載のガラスセラミック。
【請求項4】
Cu
Kα照射によるX線粉末回折におけるその最高強度反射ピークが、各々、25~26.7° 2Θの範囲、好ましくは25.5~26.6° 2Θの範囲、特に好ましくは25.8~26.5° 2Θの範囲である、少なくとも2つの異なる石英固溶体相を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項5】
Cu
Kα照射によるX線粉末回折におけるその最高強度反射ピークが、少なくとも0.2° 2Θ、好ましくは少なくとも0.3° 2Θ、特に好ましくは少なくとも0.4° 2Θの間隔、特に、0.2~0.7° 2Θ、好ましくは0.3~0.6° 2Θ、特に好ましくは0.4~0.5° 2Θの間隔を有する2つの異なる石英固溶体相を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項6】
70.0~79.0、好ましくは73.0~76.0重量%のSiO
2を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項7】
7.5~13.0、好ましくは9.0~12.0重量%のLiO
2を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項8】
2.0~6.5、好ましくは3.0~6.0重量%のAl
2O
3を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項9】
1.0~7.0、好ましくは2.5~5.0、特に好ましくは3.0~4.4重量%のP
2O
5を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項10】
1.0~8.0、好ましくは1.0~5.5、特に好ましくは1.5~2.5重量%の、K
2O、Na
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物の群から選択される一価元素の酸化物Me
I
2Oを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項11】
0~5.0、好ましくは1.0~3.5、特に好ましくは1.5~2.5重量%のK
2Oを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項12】
0~9.0、好ましくは2.0~8.0、特に好ましくは3.0~7.0重量%の、CaO、MgO、SrO、ZnOおよびそれらの混合物の群から選択される二価元素の酸化物Me
IIOを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項13】
0~6.0、特に0.1~6.0、好ましくは1.0~5.5、より好ましくは2.0~5.0、特に好ましくは2.5~4.5、最も好ましくは3.0~4.0重量%のMgOを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項14】
0~5.0、好ましくは1.0~4.0、特に好ましくは2.0~3.0重量%の、B
2O
3、Y
2O
3、La
2O
3、Ga
2O
3、In
2O
3およびそれらの混合物の群から選択される三価元素の酸化物Me
III
2O
3を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項15】
2.2~6.0、好ましくは2.8~5.0、特に好ましくは3.0~4.0の範囲のモル比でSiO
2およびLi
2Oを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項16】
主結晶相として二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウム、好ましくは、主結晶相として二ケイ酸リチウムを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項17】
少なくとも20重量%、好ましくは25~55重量%、特に好ましくは30~55重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項18】
0.2~28重量%、好ましくは0.2~25重量%の石英固溶体相を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載のガラスセラミックの成分を含む、出発ガラス。
【請求項20】
2つの異なる石英固溶体相の結晶化のための核、好ましくはまた二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムの結晶化のための核を含む、請求項19に記載の出発ガラス。
【請求項21】
前記ガラスセラミックおよび前記出発ガラスが、粉末、顆粒、ブランクまたは歯科修復材の形態である、請求項1~18のいずれか一項に記載のガラスセラミックまたは請求項19もしくは20に記載の出発ガラス。
【請求項22】
請求項1~18のいずれか一項に記載のガラスセラミックを製造するためのプロセスであって、特に微粒子形態、好ましくは粉末の形態、特に好ましくは粉末成形体の形態の、請求項19または20に記載の出発ガラスを、800~1000℃、好ましくは850~950℃の範囲の少なくとも1回の熱処理に供する、特に焼結する、プロセス。
【請求項23】
好ましくは、歯科修復材をコーティングするため、特に好ましくは歯科修復材を製造するための、歯科材料としての、請求項1~18もしくは21のいずれか一項に記載のガラスセラミックまたは請求項19~21のいずれか一項に記載の出発ガラスの使用。
【請求項24】
前記ガラスセラミックまたは前記出発ガラスが、プレスまたは機械加工によって、所望の歯科修復材、特に、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットの形状を与えられる、請求項23に記載の歯科修復材を製造するための使用。
【請求項25】
歯科修復材、特に、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットを製造する方法であって、プレスまたは機械加工によって、請求項1~18もしくは21のいずれか一項に記載のガラスセラミックまたは請求項19~21のいずれか一項に記載の出発ガラスが、所望の歯科修復材の形状を与えられる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科における使用、好ましくは歯科修復材の製造に特に好適な石英固溶体相を含むガラスセラミック、およびこれらのガラスセラミックの製造のための前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
石英固溶体相を含むガラスセラミックは、基本的に従来技術から公知である。
【0003】
DE2507131A1は、45~65重量%のSiO2、20~35重量%のAl2O3および9~15重量%のMgOを含有する特別なアルミノケイ酸マグネシウムガラスセラミックを記載している。ガラスセラミックから作製された基体は、表面層の結晶構造が基体内部の結晶構造とは異なる不均一構造を有する。このようにして生じた表面圧縮応力は、機械特性に対して非常に大きな影響を有するため、表面層の機械加工は機械特性の低下につながりうる。表面層では高温型石英固溶体が検出され、基体内部では低温型石英固溶体が検出された。
【0004】
JP2000/063144Aは、30~60mol%のSiO2および大量のB2O3を含有する保存媒体のための基材の調製のためのアルミノケイ酸マグネシウムガラスを開示している。
【0005】
GB2172282Aは、30~55重量%のSiO2および10~40重量%のAl2O3を含有するアルミノケイ酸マグネシウムガラスセラミックを記載している。ガラスセラミックは、マイクロエレクトロニクス適用、特にアルミニウムなどの基材のコーティングとして意図され、高強度に加えて、7~10の範囲の好適な比誘電率および高い電気抵抗を有する。
【0006】
WO2012/143137A1は、少なくとも10.1重量%のAl2O3を含有し、異なる領域に異なる結晶相を有するガラスセラミック基体を記載している。
【0007】
WO2015/155038A1は、歯科における使用のための石英固溶体相を含むガラスセラミックを記載している。いくつかの石英固溶体相を含有するガラスセラミックは、記載されていない。
【0008】
M.DittmerおよびC.Russelによる論文J. Biomed. Mater. Res. Part B:100B:463-470 (2012)では、主結晶質相として高温型石英または低温型石英固溶体相を含むガラスセラミックであって、最大55.1重量%のSiO2および少なくとも25.9重量%のAl2O3を含むガラスセラミックが記載されている。
概して、これらの公知のガラスセラミックにより実現された強度およびまたそれらの半透明度は、歯科材料としての適用に完全には満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第2507131号明細書
【特許文献2】特開2000―063144号公報
【特許文献3】英国特許出願公開第2172282号明細書
【特許文献4】国際公開第2012/143137号
【特許文献5】国際公開第2015/155038号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、高強度および良好な半透明度を組み合わせて有するガラスセラミックを提供する問題に基づく。ガラスセラミックはまた、広範囲にわたって調整することができる熱膨張係数を有するべきである。ガラスセラミックはまた、歯科修復材に加工するのが容易であり、したがって、修復歯科材料として優れた方式で好適であるべきである。
この問題は、請求項1~18および21に記載の2つの異なる石英固溶体相を含むガラスセラミックによって解決される。また、本発明の主題は、請求項19~21に記載の出発ガラス、請求項22および25に記載のプロセス、ならびに請求項23および24に記載の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるガラスセラミックは、以下の成分
【表2】
を含み、少なくとも2つの異なる石英固溶体相を含むことを特徴とする。
【0013】
本明細書の以下で「複数の石英固溶体相を含むガラスセラミック」とも呼ばれるこのガラスセラミックは、驚くべきことに、修復歯科材料に望ましい機械特性および光学特性の有利な組合せを示す。ガラスセラミックは、高強度を有する一方、プレスまたは機械加工によって、容易に歯科修復材の形状を与えられることができる。さらに、複数の石英固溶体相を備えることによって、それにも関わらず、非常に良好な光学特性を実現しうることは予想外であった。これは、多くの二次結晶相がガラスセラミックの光学特性に対して負の効果を有するためである。例えば、それらは、半透明度を低減することがあり、また、ガラスセラミックに色を付与する可能性を損なうことがあり、これにより、置き換えられることになる天然の歯の材料の色を模倣することが相当困難になる可能性がある。
【0014】
さらに、本発明によるガラスセラミックの熱膨張係数は、形成される石英固溶体相のタイプおよび量によって広範囲にわたって変動しうることが示された。最後に、また、本発明によるガラスセラミックは、それらの形状を失うことなくケイ酸リチウム-石英ガラスセラミックよりも高い温度で密に焼結することができることが見出された。
【0015】
「石英固溶体相」という用語は、外来原子が格子間位置または格子位置のいずれかでSiO2の格子に組み込まれたSiO2の結晶相を指す。これらの外来原子は、特に、AlならびにLi、Mgおよび/またはZnでありうる。Alは、好ましくは、Liのモル濃度、Mgのモル濃度の2倍およびZnのモル濃度の2倍の合計に対応するモル濃度で存在しうる。
【0016】
石英固溶体相は、化学量論および非化学量論の石英固溶体相のいずれでもありうる。化学量論の石英固溶体相とは、ケイ素原子の数および外来原子のうちの1種の数が、x:y(xおよびyは、1~8の範囲、特に1~5の範囲の整数である)の比であるような結晶相を意味する。好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの非化学量論の石英固溶体相を含む。
【0017】
石英固溶体相のうちの少なくとも1つは、化学量論または非化学量論のアルミノシリケート結晶相であってもよい。好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの化学量論または非化学量論のアルミノシリケート結晶相を含む。特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの非化学量論のアルミノシリケート結晶相を含む。この文脈で、化学量論のアルミノシリケート結晶相は、ケイ素原子の数およびアルミニウム原子の数が、x:y(xおよびyは、1~8の範囲、特に1~5の範囲の整数である)の比であるような結晶相であると理解される。化学量論のアルミノシリケート結晶相の例は、ユークリプタイト(LiAlSiO4)、スポジュメン(LiAlSi2O6)、ペタライト(LiAlSi4O10)およびコーディエライト(Mg2Al4Si5O18)である。
【0018】
本発明によるガラスセラミックは、好ましくは、CuKα照射によるX線粉末回折における最高強度でのその反射ピークが、各々、25~26.7° 2Θの範囲、好ましくは25.5~26.6° 2Θの範囲、特に好ましくは25.8~26.5° 2Θの範囲である、少なくとも2つの異なる石英固溶体相を含む。
【0019】
さらに、CuKα照射によるX線粉末回折における最高強度でのその反射ピークが、少なくとも0.2° 2Θ、好ましくは少なくとも0.3° 2Θ、特に好ましくは少なくとも0.4° 2Θの間隔、特に、0.2~0.7° 2Θ、好ましくは0.3~0.6° 2Θ、特に好ましくは0.4~0.5° 2Θの間隔を有する2つの異なる石英固溶体相を含むガラスセラミックが好ましい。
【0020】
本発明によるガラスセラミックの石英固溶体相は、特に、Cu
Kα照射を使用したX線粉末回折によって検出することができる。石英固溶体相は、特徴的なピークパターンを示し、その各々は、低温型石英のピークパターンに由来するが、異なる2Θ値にシフトする。これは、実施例19で得られたガラスセラミックのX線粉末回折パターンによって、
図1に例示されている。
図1において、PDF-4+ 2020(国際回折データセンター(International Centre for Diffraction Data))データベースに含まれるいくつかのピークパターンが、X線粉末回折パターン下で再現される。低温型石英(α-SiO
2)のピークパターンは、文字「A」で印を付け、26.6~26.7° 2Θの間の最高強度でのピークを示す。X線粉末回折図において、そのピークパターンが、低温型石英のピークパターンと比較してより小さな2Θ値にシフトし、最高強度でのそのピークがそれぞれ26.5° 2Θおよび26.0° 2Θに位置する、2つの石英固溶体相を見ることができる。
【0021】
本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックは、特に、70.0~79.0、特に好ましくは73.0~76.0重量%のSiO2を含む。
【0022】
本発明によるガラスセラミックは、7.5~13.0、特に好ましくは9.0~12.0重量%のLi2Oを含むことがさらに好ましい。Li2Oにより、ガラスマトリックスの粘度が低下し、したがって、所望の相の結晶化が促進されると想定される。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、2.0~6.5、特に好ましくは3.0~6.0重量%のAl2O3を含む。
【0024】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、1.0~7.0、好ましくは2.5~5.0、特に好ましくは3.0~4.4重量%のP2O5を含む。P2O5は、核形成剤として作用すると想定される。
【0025】
また、ガラスセラミックは、1.0~8.0、好ましくは1.0~5.5、特に好ましくは1.5~2.5重量%の、K2O、Na2O、Rb2O、Cs2Oおよびそれらの混合物の群から選択される一価元素の酸化物MeI
2Oを含むことが好ましい。
【0026】
特に好ましくは、ガラスは、以下の一価元素の酸化物Me
I
2Oのうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含む:
【表3】
【0027】
特に好ましい実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、0~5.0、好ましくは1.0~3.5、特に好ましくは1.5~2.5重量%のK2Oを含む。
【0028】
さらに、ガラスセラミックは、0~9.0、好ましくは2.0~8.0、特に好ましくは3.0~7.0重量%の、CaO、MgO、SrO、ZnOおよびそれらの混合物の群から選択される二価元素の酸化物MeIIOを含む。
【0029】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、2.0重量%未満のBaOを含む。特に、ガラスセラミックは、BaOを実質的に含まない。
【0030】
好ましくは、ガラスセラミックは、以下の二価元素の酸化物Me
IIOのうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含む:
【表4】
【0031】
特に好ましい実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、0~6.0、特に0.1~6.0、好ましくは1.0~5.5、より好ましくは2.0~5.0、とりわけ好ましくは2.5~4.5、最も好ましくは3.0~4.0重量%のMgOを含む。
【0032】
さらに、0~5.0、好ましくは1.0~4.0、特に好ましくは2.0~3.0重量%の、B2O3、Y2O3、La2O3、Ga2O3、In2O3およびそれらの混合物の群から選択される三価元素の酸化物MeIII
2O3を含むガラスセラミックが好ましい。
【0033】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の三価元素の酸化物Me
III
2O
3のうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含む:
【表5】
【0034】
さらに、0~10.0、特に好ましくは0~8.0重量%の、ZrO2、TiO2、SnO2、CeO2、GeO2およびそれらの混合物の群から選択される四価元素の酸化物MeIVO2を含むガラスセラミックが好ましい。
【0035】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の四価元素の酸化物Me
IVO
2のうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含む:
【表6】
【0036】
別の実施形態では、ガラスセラミックは、0~8.0、好ましくは0~6.0重量%の、V2O5、Ta2O5、Nb2O5およびそれらの混合物の群から選択される五価元素の酸化物MeV
2O5を含む。
【0037】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の五価元素の酸化物Me
V
2O
5のうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含む:
【表7】
【0038】
別の実施形態では、ガラスセラミックは、0~5.0、好ましくは0~4.0重量%の、WO3、MoO3およびそれらの混合物からなる群から選択される六価元素の酸化物MeVIO3を含む。
【0039】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の酸化物Me
VIO
3のうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含む:
【表8】
【0040】
さらなる実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、0~1.0、特に0~0.5重量%のフッ素を含む。
【0041】
以下の成分のうちの少なくとも1種、好ましくはすべてを、示される量で含むガラスセラミックが特に好ましい:
【表9】
表中、Me
I
2O、Me
IIO、Me
III
2O
3、Me
IVO
2、Me
V
2O
5およびMe
VIO
3は、上記で定義した通りである。
【0042】
別の特定の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、以下の成分のうちの少なくとも1種、好ましくはすべてを、示される量で含む:
【表10】
【0043】
上記成分のうちの一部は、着色料および/または蛍光剤として役立ちうる。本発明によるガラスセラミックは、さらなる着色料および/または蛍光剤をさらに含有してもよい。これらは、例えば、Bi2O3またはBi2O5から、特に、さらなる無機顔料ならびに/またはdおよびf元素の酸化物、例えば、Mn、Fe、Co、Pr、Nd、Tb、Er、Dy、EuおよびYbの酸化物から選択されてもよい。これらの着色料および蛍光剤によって、ガラスセラミックを容易に着色して、とりわけ天然の歯科材料の、所望の光学特性を模倣することが可能である。これが、いくつかの石英固溶体相の存在にも関わらず容易に可能であることは、驚くべきことである。
【0044】
ガラスセラミックの好ましい実施形態では、SiO2のLi2Oに対するモル比は、2.2~6.0、好ましくは2.8~5.0、特に好ましくは3.0~4.0の範囲である。これらの広範囲内で、本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックの調製が可能であることは驚くべきことである。
【0045】
本発明によるガラスセラミックは、さらなる結晶相として、特に主結晶相として、二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムを含有することがさらに好ましい。本発明によるガラスセラミックは、さらなる結晶相として、特に主結晶相として、二ケイ酸リチウムを含有することが特に好ましい。
【0046】
「主結晶相」という用語は、ガラスセラミック中に存在するすべての結晶相の最高重量分率を有する結晶相を指す。結晶相の量は、特に、リートベルト法によって決定される。リートベルト法による結晶相の定量的分析のための好適な手順は、例えば、M.Dittmerによる学術論文"Glaser und Glaskeramiken im System MgO-Al2O3-SiO2 mit ZrO2 als Keimbildner", University of Jena 2011に記載されている。
【0047】
本発明によるガラスセラミックは、少なくとも20重量%、好ましくは25~55重量%、特に好ましくは30~55重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含むことが好ましい。
【0048】
本発明によるガラスセラミックは、0.2~28重量%、好ましくは0.2~25重量%の石英固溶体を含むことがさらに好ましい。
【0049】
本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックは、特に良好な機械特性および光学特性を特徴とし、対応する出発ガラスまたは対応する核を有する出発ガラスの熱処理によって形成することができる。したがって、これらの材料は、本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックの前駆体として役立ちうる。
【0050】
形成される結晶相のタイプおよび特に量は、出発ガラスの組成の他、出発ガラスからガラスセラミックを製造するために適用される熱処理によって制御することができる。実施例は、出発ガラスの組成および適用される熱処理を変動させることによってこれを例示する。
【0051】
ガラスセラミックは、好ましくは少なくとも200MPa、特に好ましくは250~460MPaの高い二軸破壊強度を有する。二軸破壊強度は、ISO 6872(2008)(ピストンオン3ボール試験(piston-on-three-balls test))に従って決定した。
【0052】
本発明によるガラスセラミックは、特に3.0~14.0 10-6・K-1、好ましくは5.0~14.0・10-6K-1、特に好ましくは7.0~14.0・10-6K-1の熱膨張係数CTE(100~500℃の範囲で測定)を有する。
CTEは、ISO 6872(2008)に従って決定される。所望の値への熱膨張計数の調整は、特に、ガラスセラミック中に存在する結晶相のタイプおよび量によって、ならびにガラスセラミックの化学組成によって、行われる。
【0053】
ガラスセラミックの半透明度は、英国規格BS 5612に従うコントラスト値(CR値)に関して決定し、このコントラスト値は、好ましくは40~92であった。
【0054】
本発明によるガラスセラミック中に存在する特性の特定の組合せにより、ガラスセラミックは歯科材料として、特に歯科修復材の調製のための材料として、使用することさえ可能になる。
【0055】
本発明はまた、本発明の複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックを熱処理によって製造することができる対応する組成の前駆体に関する。これらの前駆体は、対応して構成された出発ガラスおよび対応して構成された核を有する出発ガラスである。「対応する組成」という用語は、これらの前駆体が、ガラスセラミックと同じ量で同じ成分を含有することを意味し、成分は、フッ素を除き、ガラスおよびガラスセラミックについて通常であるように酸化物として計算される。
【0056】
したがって、本発明はまた、本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックの成分を含有する出発ガラスに関する。
【0057】
したがって、本発明による出発ガラスは、特に、好適な量のSiO2、Li2OおよびAl2O3を含有し、これらは、本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックを形成するのに必要である。さらに、出発ガラスはまた、本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックについて上で示した通りの他の成分を含有してもよい。すべてのそのような実施形態は、本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックの成分についてまた好ましいと示される出発ガラスの成分について好ましい。
【0058】
特に好ましくは、出発ガラスは、粉末、顆粒、または粉末もしくは顆粒からプレスされた粉末成形体の形態である。ガラス溶融物を型に注ぐことによって得られるものなどのガラスモノリスとは対照的に、上述の形態の出発ガラスは、いくつかの石英固溶体相の後続の結晶化が起こりうる大きな内面を有する。
【0059】
本発明はまた、複数の石英固溶体相の結晶化のための核を含有するそのような出発ガラスに関する。好ましくは、出発ガラスは、二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムの結晶化のための核をさらに含有する。
【0060】
特に、出発ガラスは、好適な出発材料の混合物、例えば、カーボネートおよび酸化物を、特に約1500~1700℃の温度で0.5~4時間溶融することによって製造される。特に高い均質性を実現するために、得られたガラス溶融物を水に注いでガラスフリットを製造することができ、次いで、得られたフリットは、再度溶融される。
【0061】
次いで、溶融物は、型、例えば、鋼またはグラファイトの型にキャストされて、出発ガラスのブランク、いわゆる固体ガラスブランクまたはモノリシックブランクが製造されうる。通常、次いで、これらのモノリシックブランクは、例えば、800~1200℃で5~60分間維持することによって応力解放され、次いで室温にゆっくり冷却される。
【0062】
好ましい実施形態では、溶融物は、水に注がれてフリットが製造される。このガラスフリットは、摩砕することによって粉末または顆粒に加工することができる。好ましくは、このようにして得られた粉末または顆粒は、必要な場合、着色剤および蛍光剤などのさらなる成分の添加後、プレスして、ブランク、いわゆる粉末成形体にすることができる。
【0063】
出発ガラスの熱処理によって、核を有するさらなる前駆体出発ガラスをまず製造することができる。このさらなる前駆体の熱処理によって、次いで、本発明によるいくつかの石英固溶体相を含むガラスセラミックを製造することができる。あるいは、本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックは、出発ガラスの熱処理によって形成することができる。
【0064】
出発ガラスを、400~600℃、特に450~550℃の温度で、好ましくは5~120分間、特に10~60分間の時間にわたって熱処理に供して、複数の石英固溶体相の結晶化のための核を有する出発ガラスを製造することが好ましい。
【0065】
出発ガラスまたは核を有する出発ガラスを、800~1000℃、好ましくは850~950℃の温度で、特に1~120分間、好ましくは5~120分間、特に好ましくは10~60分間の時間にわたって熱処理に供して、複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックを製造することがさらに好ましい。
【0066】
したがって、本発明はまた、本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックを製造するためのプロセスであって、特に微粒子形態、好ましくは粉末の形態、特に好ましくは粉末成形体の形態の出発ガラスまたは核を有する出発ガラスを、800~1000℃、好ましくは850~950℃の範囲の温度で、特に1~120分間、好ましくは5~120分間、特に好ましくは10~60分間の時間にわたって少なくとも1回の熱処理に供する、特に焼結する、プロセスに関する。
【0067】
本発明によるプロセスにおいて実施される少なくとも1回の熱処理はまた、本発明による出発ガラスまたは本発明による核を有する出発ガラスの熱間プレスまたは焼結の過程で実施することができる。
【0068】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスは、特に、粉末、顆粒、または小板、立方体もしくは円筒などの任意の形状およびサイズのブランク、例えば、モノリシックブランク、または粉末成形体として存在する。これらの形態において、それらは、例えば、歯科修復材に容易にさらに加工することができる。しかしながら、それらはまた、歯科修復材、例えば、インレー、オンレー、クラウン、ベニア、ファセットまたはアバットメントの形態でもありうる。
【0069】
歯科修復材、例えば、ブリッジ、インレー、オンレー、クラウン、ベニア、ファセットまたはアバットメントは、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスから調製することができる。したがって、本発明はまた、歯科修復材の製造におけるそれらの使用に関する。ガラスセラミックまたはガラスは、プレスまたは機械加工によって所望の歯科修復材の形状を与えられることが好ましい。
【0070】
プレスは、通常、高圧および高温下で実施される。プレスは、700~1200℃の温度で実施されることが好ましい。プレスは、2~10barの圧力で実施されることがさらに好ましい。プレスの間、形状の所望の変化は、使用される材料の粘性流によって実現される。本発明による出発ガラス、本発明による核を有する出発ガラスおよび本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックは、プレスに使用することができる。特に、本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、任意の形状およびサイズのブランク、例えば、焼結されていない、部分的に焼結されたまたは密に焼結された形態の、例えば、粉末成形体の形態で使用することができる。
【0071】
機械加工は、通常、材料除去処理によって、特にミリングおよび/または摩砕によって実施される。機械加工は、CAD/CAMプロセスで実施されることが特に好ましい。本発明による出発ガラス、本発明による核を有する出発ガラスおよび本発明による複数の石英固溶体相を含むガラスセラミックは、機械加工に使用することができる。このため、本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、特に、ブランク、例えば、焼結されていない、部分的に焼結されたまたは密に焼結された形態の、例えば、粉末成形体の形態で使用することができる。
【0072】
例えば、プレスまたは機械加工によって所望の形状の歯科修復材が製造された後、それを、例えば、用いた多孔質粉末成形体の多孔度を低減するために、さらに熱処理することができる。
【0073】
しかしながら、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスはまた、例えばセラミックおよびガラスセラミックのコーティング材料としても好適である。したがって、本発明は、同様に、特にセラミックおよびガラスセラミックのコーティングのための本発明によるガラスまたは本発明によるガラスセラミックの使用を対象とする。
【0074】
本発明はまた、セラミック、金属、金属合金およびガラスセラミックをコーティングするためのプロセスであって、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスを対応する基材に適用し、高温に供する、プロセスに関する。
【0075】
これは、特に、CAD-CAMによって製造されたオーバーレイを焼結することによって、またはそれを好適なガラスはんだまたは接着剤で合わせ、好ましくはプレスすることによって行うことができる。焼結する場合、ガラスセラミックまたはガラスは、通常の方式で、例えば、粉末として、セラミックまたはガラスセラミックなどのコーティングされる材料に適用され、次いで、高温で焼結される。好ましいプレスにおいて、例えば粉末成形体の形態の、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスは、例えば700~1200℃の高温で、例えば2~10barの圧力を適用しながらプレスされる。特に、EP231773に記載されるプロセスおよびそこに開示されるプレス炉を、この目的のために使用することができる。好適な炉は、例えば、Ivoclar Vivadent AG、Liechtenstein製のProgramat EP 5000である。
【0076】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスの上記の特性に起因して、それらは、歯科における使用に特に好適である。したがって、本発明のさらなる主題は、好ましくは歯科修復材をコーティングするため、特に好ましくは歯科修復材、例えば、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットを製造するための、歯科材料としての、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスの使用である。
【0077】
したがって、本発明はまた、歯科修復材、特に、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットを製造するためのプロセスであって、本発明によるガラスセラミックまたはガラスに、特にCAD/CAMプロセスで、プレスによってまたは機械加工によって所望の歯科修復材の形状を与える、プロセスに関する。
【0078】
本発明を、非限定例によって、下記に、より詳細に説明する。
【実施例】
【0079】
(実施例1~24)
組成および結晶相
【0080】
表Iに示す組成を有する合計24種の本発明によるガラスおよびガラスセラミックを、対応する出発ガラスを溶融し、続いて、制御された結晶化のために熱処理することによって製造した。
【0081】
適用した熱処理もまた、表Iに示す。以下の意味を適用する。
Tg DSCによって決定したガラス転移温度
TSおよびtS 出発ガラスを溶融するために適用した温度および時間
TKbおよびtKb 出発ガラスの核形成のために適用した温度および時間
TCおよびtC 結晶化のために適用した温度および時間
T焼結およびt焼結 焼結のために適用した温度および時間
Tプレスおよびtプレス 熱間プレスによる結晶化のために適用した温度および時間
CR値 以下を使用して英国規格BS 5612に従って決定したガラスセラミックのコントラスト値:
機器:分光計CM-3700d(Konica-Minolta)
測定パラメーター:
測定面:7mm×5mm
測定タイプ:拡散反射(Remission)/反射
測定範囲:400nm~700nm
試料サイズ:
直径:15~20mm
厚さ:2mm+/-0.025mm
面平行度:+/-0.05mm
表面粗度:約18μm
CTE 100~500℃の範囲で測定したISO 6872(2008)によるガラスセラミックの熱膨張係数
σBiax 歯科規格ISO 6872(2008)に従って測定した二軸破壊強度
【0082】
この目的のために、出発ガラスをまず、空気雰囲気中、温度TSで時間tSにわたって、白金-ロジウムるつぼ中で通常の原材料から溶融させた。
【0083】
実施例1~23では、溶融出発ガラスを水に注ぐことによって、ガラスフリット、すなわち、ガラス顆粒を製造した。ボールまたはモルタルミルを使用して、ガラスフリットを<45μmの粒径に摩砕し、粉末成形プレスを使用して粉末成形体にプレスした。
【0084】
必要に応じて、核形成のための温度TKbで時間tKbにわたる熱処理後に、粉末成形体を温度T焼結で時間t焼結にわたってち密体に焼結し、その間に、核形成および結晶化処理を同時に行った。
【0085】
こうして得られた焼結ブランクを続いて、必要に応じて、温度Tプレスで時間tプレスにわたって、熱間プレスによって成形した。
【0086】
実施例24では、出発ガラスの溶融物をグラファイトの型にキャストして、ガラスモノリスを製造した。これらのガラスモノリスを、キャスト直後に、温度TKbで時間tKbにわたる第1の熱処理に供して核を形成し、次いで、室温にゆっくり冷却した。続いて、それらを、温度TCで時間tCにわたる熱処理に供して結晶化を行った。
【0087】
以下の表Iにおける意味:
QMK:石英固溶体相
QMK1:1. 石英固溶体相
QMK2:2. 石英固溶体相
LAS:アルミノケイ酸リチウム(Li
2O・Al
2O
3・7.5SiO
2)
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0088】
室温でのCuKα照射による、実施例19で得られたガラスセラミックのX線回折によってもたらされたX線回折パターンを
図1に示す。このX線回折パターンにおいて、PDF-4+ 2020データベース(国際回折データセンター)からの以下の結晶相の特徴的なピーク(ピークパターン)が再現され、これに、文字A~Dで印を付ける:
A:低温型石英(α-SiO
2)
B:高温型石英(β-SiO
2)
C:二ケイ酸リチウム(Li
2Si
2O
5)
D:リン酸リチウム(Li
3PO
4)
【0089】
X線回折パターンにおいて、そのピークパターンが、低温型石英のピークパターンと比較してより小さな2Θ値にシフトし、最高強度ピークがそれぞれ26.5° 2Θおよび26.0° 2Θである、2つの石英固溶体相が確認できる。
【国際調査報告】