(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】石英混合結晶相を含むガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
C03C 10/12 20060101AFI20240216BHJP
C03B 32/02 20060101ALI20240216BHJP
C03C 10/08 20060101ALI20240216BHJP
C03C 10/04 20060101ALI20240216BHJP
A61K 6/831 20200101ALI20240216BHJP
A61K 6/833 20200101ALI20240216BHJP
A61K 6/807 20200101ALI20240216BHJP
A61K 6/822 20200101ALI20240216BHJP
A61K 6/818 20200101ALI20240216BHJP
A61C 5/77 20170101ALI20240216BHJP
【FI】
C03C10/12
C03B32/02
C03C10/08
C03C10/04
A61K6/831
A61K6/833
A61K6/807
A61K6/822
A61K6/818
A61C5/77
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548260
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2022054010
(87)【国際公開番号】W WO2022179936
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ランプ, マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ディトマー, マルク
(72)【発明者】
【氏名】リッツベルガー, クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4C089
4C159
4G015
4G062
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089BA01
4C089BA02
4C089BA03
4C089BA04
4C089BA05
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4C159RR11
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4G062QQ16
(57)【要約】
非常に良好な機械特性および光学特性を特徴とし、特に、歯科において修復材料として使用することができる、石英固溶体ガラスセラミックおよびその前駆体が記載される。本発明は、高強度および良好な半透明度を組み合わせて有するガラスセラミックを提供する問題に基づく。ガラスセラミックはまた、広範囲にわたって調整することができる熱膨張係数を有するべきである。ガラスセラミックはまた、歯科修復材に加工するのが容易であり、したがって、修復歯科材料として優れた方式で好適であるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分
【表11】
を含み、少なくとも1つの石英固溶体相を含む、ガラスセラミック。
【請求項2】
少なくとも2つの異なる石英固溶体相を含む、請求項1に記載のガラスセラミック。
【請求項3】
少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの化学量論または非化学量論のアルミノシリケート結晶相、特に好ましくは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの非化学量論のアルミノシリケート結晶相を含む、請求項1または2に記載のガラスセラミック。
【請求項4】
57.0~66.5、好ましくは59.0~66.0、特に好ましくは62.1~65.5重量%のSiO
2を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項5】
13.3~18.0、好ましくは16.1~17.5、特に好ましくは16.5~17.0重量%のLi
2Oを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項6】
0.5~1.7、好ましくは1.1~1.5、特に好ましくは1.2~1.4重量%のK
2Oを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項7】
2.0~3.8、好ましくは1.6~3.6重量%のAl
2O
3を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項8】
4.3~6.0、好ましくは4.5~5.9、特に好ましくは5.1~5.8重量%のP
2O
5を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項9】
7.2~13.0、好ましくは9.0~12.0重量%のZrO
2を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項10】
1.0~8.0、好ましくは1.0~5.5、特に好ましくは1.5~2.5重量%の、Na
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびそれらの混合物の群から選択される一価元素の酸化物Me
I
2Oを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項11】
0.05~5.0、特に0.07~1.5、好ましくは0.08~1.0、特に好ましくは0.09~0.4、最も好ましくは0.1~0.2重量%の、CaO、MgO、SrO、ZnOおよびそれらの混合物の群から選択される二価元素の酸化物Me
IIOを含み、前記Me
IIOが、好ましくはMgOである、請求項1~10のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項12】
0~5.0、好ましくは1.0~4.0、特に好ましくは2.0~3.0重量%の、B
2O
3、Y
2O
3、La
2O
3、Ga
2O
3、In
2O
3およびそれらの混合物の群から選択される三価元素の酸化物Me
III
2O
3を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項13】
1.5~6.0、特に1.55~3.0、好ましくは1.6~1.8、特に好ましくは1.65~1.75の範囲のモル比でSiO
2およびLi
2Oを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項14】
主結晶相として二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウム、好ましくは、主結晶相として二ケイ酸リチウムを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項15】
少なくとも20重量%、好ましくは25~55重量%、特に好ましくは30~55重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項16】
0.2~28重量%、好ましくは0.2~25重量%の石英固溶体相を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載のガラスセラミックの成分を含む、出発ガラス。
【請求項18】
石英固溶体相の結晶化のための核、好ましくはまた二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムの結晶化のための核を含む、請求項17に記載の出発ガラス。
【請求項19】
前記ガラスセラミックおよび前記出発ガラスが、粉末、顆粒、ブランクまたは歯科修復材の形態である、請求項1~16のいずれか一項に記載のガラスセラミックまたは請求項17もしくは18に記載の出発ガラス。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項に記載のガラスセラミックを製造するためのプロセスであって、特に微粒子形態、好ましくは粉末の形態、特に好ましくは粉末成形体の形態の、請求項17または18に記載の出発ガラスを、600~1000℃、好ましくは650~900℃の範囲の少なくとも1回の熱処理に供する、特に焼結する、プロセス。
【請求項21】
好ましくは、歯科修復材をコーティングするため、特に好ましくは歯科修復材を製造するための、歯科材料としての、請求項1~16もしくは19のいずれか一項に記載のガラスセラミック、または請求項17~19のいずれか一項に記載の出発ガラスの使用。
【請求項22】
前記ガラスセラミックまたは前記出発ガラスが、プレスまたは機械加工によって、所望の歯科修復材、特に、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットの形状を与えられる、請求項21に記載の歯科修復材を製造するための使用。
【請求項23】
歯科修復材、特に、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットを製造するためのプロセスであって、請求項1~16もしくは19のいずれか一項に記載のガラスセラミック、または請求項17~19のいずれか一項に記載の出発ガラスが、プレスまたは機械加工によって所望の歯科修復材の形状を与えられる、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科における使用、好ましくは歯科修復材の製造に特に好適な石英固溶体相を含むガラスセラミック、およびこれらのガラスセラミックの製造のための前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
石英固溶体相を含むガラスセラミックは、基本的に従来技術から公知である。
【0003】
DE2507131A1は、20~35重量%のAl2O3および9~15重量%のMgOを含有する特別なアルミノケイ酸マグネシウムガラスセラミックを記載している。ガラスセラミックから作製された基体は、表面層の結晶構造が基体内部の結晶構造とは異なる不均一構造を有する。このようにして生じた表面圧縮応力は、機械特性に対して非常に大きな影響を有するため、表面層の機械加工は機械特性の低下につながりうる。表面層では高温型石英固溶体が検出され、基体内部では低温型石英固溶体が検出された。
【0004】
JP2000/063144Aは、30~60mol%のSiO2および大量のB2O3を含有する保存媒体のための基材の調製のためのアルミノケイ酸マグネシウムガラスを開示している。
【0005】
GB2172282Aは、10~40重量%のAl2O3を含有するアルミノケイ酸マグネシウムガラスセラミックを記載している。ガラスセラミックは、マイクロエレクトロニクス適用、特にアルミニウムなどの基材のコーティングとして意図され、高強度に加えて、7~10の範囲の好適な比誘電率および高い電気抵抗を有する。
【0006】
WO2012/143137A1は、少なくとも10.1重量%のAl2O3を含有し、異なる領域に異なる結晶相を有するガラスセラミック基体を記載している。
【0007】
M.DittmerおよびC.Russelによる論文J. Biomed. Mater. Res. Part B:100B:463-470 (2012)では、主結晶質相として高温型石英または低温型石英固溶体相を含むガラスセラミックであって、少なくとも25.9重量%のAl2O3を含有するガラスセラミックが記載されている。
概して、これらの公知のガラスセラミックにより実現された強度およびまたそれらの光学特性は、歯科材料としての適用に完全には満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第2507131号明細書
【特許文献2】特開2000―063144号公報
【特許文献3】英国特許出願公開第2172282号明細書
【特許文献4】国際公開第2012/143137号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、高強度および良好な半透明度を組み合わせて有するガラスセラミックを提供する問題に基づく。ガラスセラミックはまた、広範囲にわたって調整することができる熱膨張係数を有するべきである。ガラスセラミックはまた、歯科修復材に加工するのが容易であり、したがって、修復歯科材料として優れた方式で好適であるべきである。
【0010】
この問題は、請求項1~16および19に記載の石英固溶体相を含むガラスセラミックによって解決される。また、本発明の主題は、請求項17~19に記載の出発ガラス、請求項20および23に記載のプロセス、ならびに請求項21および22に記載の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるガラスセラミックは、以下の成分
【表2】
を含み、少なくとも1つの石英固溶体相を含むことを特徴とする。
【0012】
本明細書の以下で「石英固溶体相を含むガラスセラミック」とも呼ばれるこのガラスセラミックは、驚くべきことに、修復歯科材料に望ましい機械特性および光学特性の有利な組合せを示す。ガラスセラミックは、高強度を有する一方、プレスまたは機械加工によって、容易に歯科修復材の形状を与えられることができる。さらに、1つまたは複数の石英固溶体相を備えることによって、それにも関わらず、非常に良好な光学特性を実現しうることは予想外であった。これは、多くの二次結晶相がガラスセラミックの光学特性に負の効果を有するためである。例えば、それらは、半透明度を低減することがあり、また、ガラスセラミックに色を付与する可能性を損なうことがあり、これにより、置き換えられることになる天然の歯科材料の色を模倣することが相当困難になる可能性がある。
【0013】
さらに、本発明によるガラスセラミックの熱膨張係数は、形成される石英固溶体相のタイプおよび量によって広範囲にわたって変動しうることが示された。最後に、また、本発明によるガラスセラミックは、それらの形状を失うことなくケイ酸リチウム-石英ガラスセラミックと比較してより高い温度で密に焼結することができることが見出された。
【0014】
「石英固溶体相」という用語は、外来原子が格子間位置または格子位置のいずれかでSiO2の格子に組み込まれたSiO2の結晶相を指す。これらの外来原子は、特に、AlならびにLi、Mgおよび/またはZnでありうる。Alは、好ましくは、Liのモル濃度、Mgのモル濃度の2倍およびZnのモル濃度の2倍の合計に対応するモル濃度で存在しうる。
【0015】
好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、少なくとも2つの異なる石英固溶体相を含有する。
【0016】
少なくとも1つの石英固溶体相は、化学量論または非化学量論の石英固溶体相のいずれであってもよい。化学量論の石英固溶体相とは、ケイ素原子の数および外来原子のうちの1種の数が、x:y(xおよびyは、1~8の範囲、特に1~5の範囲の整数である)の比であるような結晶相を意味する。好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの非化学量論の石英固溶体相を含有する。
【0017】
石英固溶体相のうちの少なくとも1つは、化学量論または非化学量論のアルミノシリケート結晶相であってもよい。好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの化学量論または非化学量論のアルミノシリケート結晶相を含有する。特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの非化学量論のアルミノシリケート結晶相を含有する。この文脈で、化学量論のアルミノシリケート結晶相は、ケイ素原子の数およびアルミニウム原子の数が、x:y(xおよびyは、1~8の範囲、特に1~5の範囲の整数である)の比であるような結晶相であると理解される。化学量論のアルミノシリケート結晶相の例は、ユークリプタイト(LiAlSiO4)、スポジュメン(LiAlSi2O6)、ペタライト(LiAlSi4O10)およびコーディエライト(Mg2Al4Si5O18)である。
【0018】
本発明によるガラスセラミックの石英固溶体相は、特に、CuKα照射を使用したX線粉末回折によって検出することができる。石英固溶体相は、特徴的なピークパターンを示し、その各々は、低温型石英のピークパターンに由来するが、異なる2Θ値にシフトする。
【0019】
本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックは、特に、57.0~66.5、好ましくは59.0~66.0、特に好ましくは62.1~65.5重量%のSiO2を含有する。
【0020】
本発明によるガラスセラミックは、13.3~18.0、好ましくは16.1~17.5、特に好ましくは16.5~17.0重量%のLi2Oを含むことがさらに好ましい。Li2Oにより、ガラスマトリックスの粘度が低下し、したがって、所望の相の結晶化が促進されると想定される。
【0021】
また、ガラスセラミックは、0.5~1.7、好ましくは1.1~1.5、特に好ましくは1.2~1.4重量%のK2Oを含有することが好ましい。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、2.0~3.8、好ましくは1.6~3.6重量%のAl2O3を含有する。
【0023】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、4.3~6.0、好ましくは4.5~5.9、特に好ましくは5.1~5.8重量%のP2O5を含有する。P2O5は、核形成剤として作用すると想定される。
【0024】
ガラスセラミックは、7.2~13.0、好ましくは9.0~12.0重量%のZrO2を含有することがさらに好ましい。
【0025】
また、ガラスセラミックは、1.0~8.0、好ましくは1.0~5.5、特に好ましくは1.5~2.5重量%の、Na2O、Rb2O、Cs2Oおよびそれらの混合物の群から選択される一価元素の酸化物MeI
2Oを含有する。
【0026】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の一価元素の酸化物Me
I
2Oのうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含有する:
【表3】
【0027】
本発明によるガラスセラミックは、好ましくは、0.05~5.0、特に0.07~1.5、好ましくは0.08~1.0、より好ましくは0.09~0.4、最も好ましくは0.1~0.2重量%の、CaO、MgO、SrO、ZnOおよびそれらの混合物の群から選択される二価元素の酸化物MeIIOを含有し、MeIIOは、好ましくはMgOである。二価元素の酸化物MeIIO、とりわけMgOは、1つまたは複数の石英固溶体相の形成を促進し、熱膨張係数および光学特性に対して有害な効果を有しうる、望ましくない結晶相、特にクリストバライトの形成を回避すると考えられる。
【0028】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、2.0重量%未満のBaOを含有する。特に、ガラスセラミックは、BaOを実質的に含まない。
【0029】
好ましくは、ガラスセラミックは、以下の二価元素の酸化物Me
IIOのうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含有する:
【表4】
【0030】
0~5.0、好ましくは1.0~4.0、特に好ましくは2.0~3.0重量%の、B2O3、Y2O3、La2O3、Ga2O3、In2O3およびそれらの混合物の群から選択される三価元素の酸化物MeIII
2O3を含有するガラスセラミックがさらに好ましい。
【0031】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の三価元素の酸化物Me
III
2O
3のうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含有する:
【表5】
【0032】
さらに、0~10.0、特に好ましくは0~8.0重量%の、TiO2、SnO2、CeO2、GeO2およびそれらの混合物の群から選択される四価元素の酸化物MeIVO2を含有するガラスセラミックが好ましい。
【0033】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の四価元素の酸化物Me
IVO
2のうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含有する:
【表6】
【0034】
別の実施形態では、ガラスセラミックは、0~8.0、好ましくは0~6.0重量%の、V2O5、Ta2O5、Nb2O5およびそれらの混合物の群から選択される五価元素の酸化物MeV
2O5を含有する。
【0035】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の五価元素の酸化物Me
V
2O
5のうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含有する:
【表7】
【0036】
別の実施形態では、ガラスセラミックは、0~5.0、好ましくは0~4.0重量%の、WO3、MoO3およびそれらの混合物の群から選択される六価元素の酸化物MeVIO3を含有する。
【0037】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、以下の酸化物Me
VIO
3のうちの少なくとも1種、特にすべてを、示される量で含有する:
【表8】
【0038】
さらなる実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、0~1.0、特に0~0.5重量%のフッ素を含有する。
【0039】
以下の成分のうちの少なくとも1種、好ましくはすべてを、示される量で含有するガラスセラミックが特に好ましい:
【表9】
表中、Me
I
2O、Me
IIO、Me
III
2O
3、Me
IVO
2、Me
V
2O
5およびMe
VIO
3は、上記で定義した通りである。
【0040】
別の特定の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、以下の成分のうちの少なくとも1種、好ましくはすべてを、示される量で含む:
【表10】
【0041】
上記成分のうちの一部は、着色料および/または蛍光剤として役立ちうる。本発明によるガラスセラミックは、さらなる着色料および/または蛍光剤をさらに含有してもよい。これらは、例えば、Bi2O3またはBi2O5から、特に、さらなる無機顔料ならびに/またはdおよびf元素の酸化物、例えば、Mn、Fe、Co、Pr、Nd、Tb、Er、Dy、EuおよびYbの酸化物から選択されてもよい。これらの着色料および蛍光剤によって、ガラスセラミックを容易に着色して、とりわけ天然の歯の材料の、所望の光学特性を模倣することが可能である。これが、1つまたは複数の石英固溶体相の存在にも関わらず容易に可能であることは、驚くべきことである。
【0042】
ガラスセラミックの好ましい実施形態では、SiO2のLi2Oに対するモル比は、1.5~6.0、特に1.55~3.0、好ましくは1.6~1.8、特に好ましくは1.65~1.75の範囲である。驚くべきことに、本発明の石英固溶体相ガラスセラミックの調製は、これらの広範囲内で可能である。
【0043】
本発明によるガラスセラミックは、さらなる結晶相として、特に主結晶相として、二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムを含有することがさらに好ましい。本発明によるガラスセラミックは、さらなる結晶相として、特に主結晶相として、二ケイ酸リチウムを含有することが特に好ましい。
【0044】
「主結晶相」という用語は、ガラスセラミック中に存在するすべての結晶相の最高重量分率を有する結晶相を指す。結晶相の量は、特に、リートベルト法によって決定される。リートベルト法による結晶相の定量的分析のための好適な手順は、例えば、M.Dittmerによる学術論文"Glaser und Glaskeramiken im System MgO-Al2O3-SiO2 mit ZrO2 als Keimbildner", University of Jena 2011に記載されている。
【0045】
本発明によるガラスセラミックは、少なくとも20重量%、好ましくは25~55重量%、特に好ましくは30~55重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含むことが好ましい。
【0046】
本発明によるガラスセラミックは、0.2~28重量%、好ましくは0.2~25重量%の石英固溶体を含むことがさらに好ましい。
【0047】
本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックは、特に良好な機械特性および光学特性を特徴とし、対応する出発ガラスまたは対応する核を有する出発ガラスの熱処理によって形成することができる。したがって、これらの材料は、本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックの前駆体として役立ちうる。
【0048】
形成される結晶相のタイプおよび特に量は、出発ガラスの組成の他、出発ガラスからガラスセラミックを製造するために適用される熱処理によって制御することができる。実施例は、出発ガラスの組成および適用される熱処理を変動させることによってこれを例示する。
【0049】
ガラスセラミックは、好ましくは少なくとも200MPa、特に好ましくは250~460MPaの高い二軸破壊強度を有する。二軸破壊強度は、ISO 6872(2008)(ピストンオン3ボール試験(piston-on-three-balls test))に従って決定した。
【0050】
本発明によるガラスセラミックは、特に3.0~14.0・10-6K-1、好ましくは5.0~14.0・10-6K-1、特に好ましくは7.0~14.0・10-6K-1の熱膨張係数CTE(100~500℃の範囲で測定)を有する。CTEは、ISO 6872(2008)に従って決定した。所望の値への熱膨張計数の調整は、特に、ガラスセラミック中に存在する結晶相のタイプおよび量によって、ならびにガラスセラミックの化学組成によって、行われる。
【0051】
ガラスセラミックの半透明度は、英国規格BS 5612に従うコントラスト値(CR値)に関して決定し、このコントラスト値は、好ましくは40~92であった。
【0052】
本発明によるガラスセラミックの特性の特定の組合せにより、ガラスセラミックは歯科材料として、特に歯科修復材を調製するための材料として、使用することさえ可能になる。
【0053】
本発明はまた、本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックを熱処理によって製造することができる対応する組成の前駆体に関する。これらの前駆体は、対応して構成された出発ガラスおよび対応して構成された核を有する出発ガラスである。「対応する組成」という用語は、これらの前駆体が、ガラスセラミックと同じ量で同じ成分を含有することを意味し、成分は、フッ素を除き、ガラスおよびガラスセラミックについて通常であるように酸化物として計算される。
【0054】
したがって、本発明はまた、石英固溶体相を含む本発明によるガラスセラミックの成分を含有する出発ガラスに関する。
【0055】
したがって、本発明による出発ガラスは、特に好適な量のSiO2、Li2O、K2O、Al2O3、P2O5およびZrO2を含有し、これらは、本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックを形成するのに必要である。さらに、出発ガラスはまた、本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックについて上で示した通りの他の成分を含有してもよい。すべてのそのような実施形態は、本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックの成分についてまた好ましいと示される出発ガラスの成分について好ましい。
【0056】
特に好ましくは、出発ガラスは、粉末、顆粒、または粉末もしくは顆粒からプレスされた粉末成形体の形態である。ガラス溶融物を型に注ぐことによって得られるものなどのガラスモノリスとは対照的に、上述の形態の出発ガラスは、1つ、好ましくはいくつかの石英固溶体相の後続の結晶化が起こりうる大きな内面を有する。これは、ガラスモノリスの結晶化と比較して、1つまたは複数の石英固溶体相を形成するために必要な熱処理ステップがより少なくなるという利点を有しうる。
【0057】
本発明はまた、石英固溶体相の結晶化のための核を含有するそのような出発ガラスに関する。好ましくは、出発ガラスはまた、二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムの結晶化のための核を含有する。
【0058】
出発ガラスは、特に、好適な出発材料の混合物、例えば、カーボネートおよび酸化物を、特に約1500~1700℃の温度で0.5~4時間溶融することによって製造される。特に高い均質性を実現するために、得られたガラス溶融物を水に注いでガラスフリットを形成することができ、次いで、得られたフリットは、再溶融される。
【0059】
次いで、溶融物は、型、例えば、鋼またはグラファイトの型に注がれて、出発ガラスのブランク、いわゆる固体ガラスブランクまたはモノリシックブランクが製造されうる。典型的には、これらのモノリシックブランクは、800~1200℃で5~60分間にわたって保持することによってまず応力解放され、次いで、室温にゆっくり冷却される。
【0060】
好ましい実施形態では、溶融物は、水に注がれてフリットが製造される。このガラスフリットは、摩砕することによって粉末または顆粒に加工することができる。好ましくは、このようにして得られた粉末または顆粒は、必要に応じて、着色剤および蛍光剤などのさらなる成分の添加後、プレスして、ブランク、いわゆる粉末成形体にすることができる。いくつかの異なる色の粉末を使用することによって、異なる色特性のいくつかの領域を有するマルチカラーブランクを、単純な方式で得ることができる。したがって、本発明は、天然の歯の材料の光学特性を特に良好に模倣することができる高度に審美性のマルチカラー歯科修復材の製造を可能にする。
【0061】
出発ガラスの熱処理によって、核を有するさらなる前駆体出発ガラスをまず製造することができる。次いで、本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックは、このさらなる前駆体の熱処理によって製造することができる。あるいは、本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックは、出発ガラスの熱処理によって形成することができる。
【0062】
出発ガラスを、400~600℃、特に450~550℃の温度で、特に5~120分間、好ましくは10~60分間の時間にわたって、熱処理に供して、石英固溶体相の結晶化のための核を有する出発ガラスを製造することが好ましい。
【0063】
出発ガラスまたは核を有する出発ガラスを、600~1000℃、好ましくは650~900℃、特に好ましくは750~900℃の温度で、特に1~240分間、好ましくは5~120分間、特に好ましくは10~60分間の時間にわたって、少なくとも1回の熱処理に供して、石英固溶体相を含むガラスセラミックを製造することがさらに好ましい。特に好ましい実施形態では、出発ガラスまたは核を有する出発ガラスは、600~800℃、好ましくは650~750℃、特に好ましくは650~700℃の温度で、特に1~120分間、好ましくは5~120分間、特に好ましくは10~60分間の時間にわたる第1の熱処理、および次いで、750~950℃、好ましくは800~900℃、特に好ましくは800~850℃の温度で、特に1~120分間、好ましくは5~120分間、特に好ましくは10~60分間の時間にわたる第2の熱処理に供される。
【0064】
したがって、本発明はまた、本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックを製造するためのプロセスであって、特に微粒子形態、好ましくは粉末の形態、特に好ましくは粉末成形体の形態の出発ガラスまたは核を有する出発ガラスを、600~1000℃、好ましくは650~900℃の範囲の温度で、特に1~240分間、好ましくは5~120分間、特に好ましくは10~60分間の時間にわたって少なくとも1回の熱処理に供する、特に焼結する、プロセスに関する。
【0065】
本発明によるプロセスにおいて実施される少なくとも1回の熱処理はまた、本発明による出発ガラスまたは本発明による核を有する出発ガラスの熱間プレスまたは焼結の過程で実施することができる。
【0066】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスは、特に、粉末、顆粒、または小板、立方体もしくは円筒などの任意の形状およびサイズのブランク、例えば、モノリシックブランク、または粉末成形体として存在する。これらの形態において、それらは、例えば、歯科修復材に容易にさらに加工することができる。しかしながら、それらはまた、歯科修復材、例えば、インレー、オンレー、クラウン、ベニア、ファセットまたはアバットメントの形態でもありうる。
【0067】
特に好ましくは、本発明によるガラスセラミックは、マルチカラーブランク、特にマルチカラーの予備焼結されたまたは焼結された粉末成形体の形態である。
【0068】
歯科修復材、例えば、ブリッジ、インレー、オンレー、クラウン、ベニア、ファセットまたはアバットメントは、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスから製造することができる。したがって、本発明はまた、歯科修復材、特にマルチカラー歯科修復材の製造におけるそれらの使用に関する。ガラスセラミックまたはガラスは、プレスまたは機械加工によって所望の歯科修復材の形状を与えられることが好ましい。
【0069】
プレスは、通常、高圧および高温で実施される。プレスは、700~1200℃の温度で実施されることが好ましい。プレスは、2~10barの圧力で実施されることがさらに好ましい。プレスの間、形状の所望の変化は、使用される材料の粘性流によって実現される。本発明による出発ガラス、本発明による核を有する出発ガラスおよび本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックは、プレスに使用することができる。特に、本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、任意の形状およびサイズのブランク、例えば、焼結されていない、部分的に焼結されたまたは密に焼結された形態の、例えば、粉末成形体の形態で使用することができる。
【0070】
機械加工は、通常、材料除去処理によって、特にミリングおよび/または摩砕によって実施される。機械加工は、CAD/CAMプロセスで実施されることが特に好ましい。本発明による出発ガラス、本発明による核を有する出発ガラスおよび本発明による石英固溶体相を含むガラスセラミックは、機械加工に使用することができる。本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、特に、ブランク、例えば、焼結されていない、部分的に焼結されたまたは密に焼結された形態の、例えば、粉末成形体の形態で使用することができる。
【0071】
例えば、プレスまたは機械加工によって所望通りに成形された歯科修復材が製造された後、それを、例えば、用いた多孔質粉末成形体の多孔度を低減するために、さらに熱処理することができる。
【0072】
しかしながら、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスはまた、例えばセラミックおよびガラスセラミックのコーティング材料としても好適である。したがって、本発明は、同様に、特にセラミックおよびガラスセラミックのコーティングのための本発明によるガラスまたは本発明によるガラスセラミックの使用を対象とする。
【0073】
本発明はまた、セラミック、金属、金属合金およびガラスセラミックをコーティングするためのプロセスであって、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスを対応する基材に適用し、高温に供する、プロセスに関する。
【0074】
これは、特に、CAD-CAMによって製造されたオーバーレイを焼結することによって、またはそれを好適なガラスはんだまたは接着剤で合わせ、好ましくはプレスすることによって行うことができる。焼結する場合、ガラスセラミックまたはガラスは、通常の方式で、例えば、粉末として、セラミックまたはガラスセラミックなどのコーティングされる材料に適用され、次いで、高温で焼結される。好ましいプレスにおいて、例えば粉末成形体の形態の、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスは、例えば700~1200℃の高温で、例えば2~10barの圧力を適用しながらプレスされる。特に、EP231773に記載されるプロセスおよびそこに開示されるプレス炉を、この目的のために使用することができる。好適な炉は、例えば、Ivoclar Vivadent AG、Liechtenstein製のProgramat EP 5000である。
【0075】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスの上記の特性に起因して、それらは、歯科における使用に特に好適である。したがって、本発明のさらなる主題は、好ましくは歯科修復材をコーティングするため、特に好ましくは歯科修復材、例えば、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットを製造するための、歯科材料としての、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスの使用である。
【0076】
したがって、本発明はまた、歯科修復材、特に、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウンまたはファセットを製造するためのプロセスであって、本発明によるガラスセラミックまたはガラスに、特にCAD/CAMプロセスで、プレスによってまたは機械加工によって所望の歯科修復材の形状を与える、プロセスに関する。マルチカラー歯科修復材が好ましい。そのような修復により、天然の歯の材料の光学特性を特に良好に模倣することができる。
【0077】
本発明を、非限定例によって、下記に、より詳細に説明する。
【実施例】
【0078】
(実施例1~9)
組成および結晶相
表Iに示す組成を有する合計9種の本発明によるガラスおよびガラスセラミックを、対応する出発ガラスを溶融し、続いて、制御された結晶化のために熱処理することによって製造した。
【0079】
適用した熱処理もまた、表Iに示す。以下の意味を適用する。
Tg DSCによって決定したガラス転移温度
TKbおよびtKb 出発ガラスの核形成のために適用した温度および時間
TCおよびtC 結晶化のために適用した温度および時間
【0080】
この目的のために、出発ガラスをまず、1500~1700℃で、白金-ロジウムるつぼ中で通常の原材料から溶融させた。
【0081】
実施例1~3では、出発ガラスの溶融物を、グラファイトまたは鋼の型に注いで、ガラスモノリスを製造した。これらのガラスモノリスを、応力解放し、室温にゆっくり冷却した。次いでこれらを、核形成のための温度TKbで時間tKbにわたる第1の熱処理、および次いで、結晶化のための温度TCで時間tCにわたる別の熱処理に供した。
【0082】
実施例4~9では、溶融出発ガラスを水に注ぐことによって、ガラスフリット、すなわちガラス顆粒を製造した。ボールまたはモルタルミルを使用して、ガラスフリットを<45μmの粒径に摩砕し、粉末成形プレスを使用して粉末成形体にプレスした。粉末成形体を、必要に応じて、核形成および結晶化のための、温度TKbで時間tKbにわたる熱処理、温度TC1で時間tC1にわたる第1の熱処理、および温度TC2で時間tC2にわたる第2の熱処理に供した。
【0083】
以下の表Iにおける意味:
QMK:石英固溶体相
SP:スポジュメン(LiAlSi
2O
6)
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【国際調査報告】