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特表2024-508257ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20240216BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20240216BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20240216BHJP
   C04B 41/89 20060101ALI20240216BHJP
   C04B 35/569 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B01D71/02
B01D69/00
C04B38/00 303Z
C04B41/89 K
C04B35/569
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548880
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 CN2022087871
(87)【国際公開番号】W WO2022228227
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202110448901.7
(32)【優先日】2021-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110450376.2
(32)【優先日】2021-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523306438
【氏名又は名称】南京瀚深材料科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】袁林峰
(72)【発明者】
【氏名】マーチャー,ジョニー
【テーマコード(参考)】
4D006
4G019
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006MA09
4D006MA22
4D006MC03X
4D006NA39
4G019FA13
4G019FA15
(57)【要約】
ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜及びその調製方法である。担体を基礎として分離層を一回だけ直接塗布する工程を採用しており、即ち、担体の焼結後、分離層を直接塗布し、焼結後にさらに炭素除去を行えばよいということである。焼結工程を最適化し、かつ製膜液の配合を最適化することで、塗布時に毛細ろ過及び薄膜形成過程で炭化ケイ素の微粒子が担体の細孔内に進入することを防止し、平均孔径が10μm以上の炭化ケイ素担体上に平均孔径が0.2μm以下の分離層を直接塗布することを実現することができ、塗布時に炭化ケイ素微粒子が担体の細孔内に進入することを効果的に阻止している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法であって、該方法が、
(1) マルチチャンネル管状素材を調製し、かつマルチチャンネル管状素材を高温焼結して、第1平均孔径の細孔構造を有する担体を調製するステップと、
(2) 担体を立たせ、被覆層スラリーをステップ(1)で調製して得られた担体の底部からチャンネルに投入し、被覆層スラリーが前記担体の頂部に到達し、所定時間保持した後、チャンネル内の被覆層スラリーを放出してチャンネル被覆層を形成し、ここで、前記被覆層スラリーの粒子は前記担体表面と同性の電荷を帯びている、ステップと、
(3) ステップ(2)で調製したチャンネル被覆層を乾燥させるステップと、
(4) 不活性雰囲気の保護条件下で、前記チャンネル被覆層を高温焼結し、第2平均孔径を有する細孔構造を形成して分離層を作製するステップと、
(5) ステップ(4)で得られた分離層に対して高温酸化焼結を行って、残留炭素を除去するステップと、
を含むことを特徴とする、ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)の担体の調製が、
第1粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉及び第1助剤と水を混合した後、マルチチャンネル管状素材を押出成形し、さらに素材の焼結を行い、素材の再結晶により、チャンネルの壁に第1平均孔径を有する細孔構造を形成するステップを更に含むことを特徴とする、
請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項3】
前記第1粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉は炭化ケイ素粉I及び炭化ケイ素粉IIを含み、前記炭化ケイ素粉Iのメジアン径が前記炭化ケイ素粉IIのメジアン径の5~30倍であることを特徴とする、請求項2に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項4】
前記炭化ケイ素粉Iのメジアン径が10~30μmの間、前記炭化ケイ素粉IIのメジアン径が0.5~6μmの間であることを特徴とする、請求項3に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項5】
前記第1助剤が、接着剤と、可塑剤と、分散剤とを含むことを特徴とする、請求項3に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項6】
前記炭化ケイ素粉I、前記炭化ケイ素粉II、前記接着剤、前記可塑剤、前記分散剤及び前記水の質量比が、(50~75):(10~20):(4~8):(1~3):(1~3):(10~20)であることを特徴とする、請求項5に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項7】
ステップ(1)において、マルチチャンネル管状素材を高温焼結する前に、前記マルチチャンネル管状素材を乾燥させることを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、前記被覆層スラリーは第2粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉及び第2助剤を水と混合して作製され、前記第2粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉は炭化ケイ素粉III及び炭化ケイ素粉IVを含み、前記炭化ケイ素粉IIIのメジアン径が前記炭化ケイ素粉IVのメジアン径の3~8倍であることを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項9】
前記炭化ケイ素粉IIIのメジアン径が0.5~6μmの間、前記炭化ケイ素粉IVのメジアン径が0.1~3μmの間であることを特徴とする、請求項8に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項10】
前記第2助剤は接着剤、可塑剤、分散剤、消泡剤及び界面活性剤を含み、
そのうち、前記炭化ケイ素粉III、前記炭化ケイ素粉IV、前記接着剤、前記可塑剤、前記分散剤、前記消泡剤、前記界面活性剤及び前記水の質量比が(5~15):(5~15):(3~10):(5~15):(0~1.5):(0~1.5):(1~5):(50~80)であることを特徴とする、請求項8に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項11】
前記被覆層スラリーのpH値が6~10の間であることを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項12】
前記被覆層スラリーを、まず、
直径8~10mmのアルミナボールを添加し、12~48時間転がり研磨を行うという前処理方法によって処理してから、チャンネルに投入することを特徴とする、
請求項8~10のいずれか一項に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項13】
被覆層スラリーを20~100mm/sの速度でチャンネルに投入することを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項14】
ステップ(2)において、前記所定時間が3~15秒であることを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項15】
ステップ(1)または(4)において、素材の高温焼結及びチャンネルの高温焼結の過程で、脱ガム処理を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項16】
ステップ(1)において、素材の高温焼結の温度が2000~2400℃の間であることを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項17】
前記チャンネル被覆層の高温焼結中の温度が1600~2000℃の間であることを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法により調製される、ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜。
【請求項19】
前記第1平均孔径が10μm以上であり、前記第2平均孔径が0.15μm~0.2μmであることを特徴とする、請求項18に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜。
【請求項20】
前記セラミックろ過膜は、細孔を有する担体と、細孔を有する分離層から成り、かつ中間層を含まず、そのうち、前記細孔を有する担体中の細孔の平均孔径が前記細孔を有する分離層中の細孔の平均孔径の20倍またはそれ以上であることを特徴とする、ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜。
【請求項21】
前記細孔を有する担体中の細孔の平均孔径が10μm以上で、前記細孔を有する分離層中の細孔の平均孔径が0.2μm以下であることを特徴とする、請求項20に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜。
【請求項22】
前記細孔を有する分離層中の細孔の平均孔径が0.15μm~0.2μmの間であることを特徴とする、請求項20に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックろ過膜の技術分野、具体的にはハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炭化ケイ素膜の調製では、セラミック膜と同様、その構造はサンドイッチ構造、即ち支持層、中間層及び分離層である。支持層は膜の担体であり、主に膜の機械強度を保証する。分離層は実質的なろ過分離作用を果たす。担体孔径は分離層粒子の少なくとも25倍以上であることが多いため、従来の工程では、支持層と分離層の間に中間層を塗布することで、分離層の調製過程でその粒子が支持層に浸透することを防止する必要があった。しかし、中間層の存在により、客観的にスループットが低下し、また従来の工程における担体、中間層及び分離層の細孔孔径間の差が小さく、通常は1~5倍の間で変化するので、スループットが低くなり、難易度が上がっている。
【0003】
図1に示すように、炭化ケイ素膜の従来工程の調製プロセスでは、少なくとも3回の焼結を行う必要があり、調製工程は相対的に複雑で、コストが高く、製品は塗布を繰り返すことで歩留まりが悪くなり、スループットも低い。従来の工程では、塗布及び高温焼結(通常は2000~2400℃、アルゴンなどの不活性ガスによる保護条件下で焼結)の度に、高温酸化(700~1200℃、通気条件下で行う)を行う必要があり、それによって高温焼結で残留した炭素を除去している。これらの炭素は、素材またはコーティングスラリーに含まれる接着剤、分散剤などの有機物に由来する。炭素は疎水性物質であるため、炭素を除去しなければ、塗布時にスラリー中の溶媒/水が毛細管力により担体孔内に入り込むことが非常に難しくなり、最終的に塗膜を形成することができない。
【0004】
そのため、従来の工程では、高温焼結後に製品に対して酸化処理を行う必要があった。担体は、酸化して炭素を除去することで表面が親水性になり、孔径も相対的に大きくなるので、スラリー溶媒/水が毛細管力によって担体孔内に進入し、最終的に塗膜を形成するのに有利であるが、被覆層スラリー中の被覆層粒子の粒径が十分に大きければ、毛細管力によって担体に進入させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】(国際調査報告を参照)
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、焼結工程後に炭素を除去しないハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過体の調製方法、即ち担体の焼結後に酸化除炭を行わず、残留している炭素を残すという調製方法を提供することにあり、具体的には、被覆層スラリー及び調製工程を最適化することによって、表面張力を低下させ、担体が疎水性である情況でも被覆層スラリーを毛細管力を利用して塗布することができ、担体表面と塗布する粒子が同性の電荷を帯びることで生じる同性の反発作用を利用して、被覆層微粒子を平均孔径が10μm以上である担体上に塗布する。
【0007】
本発明の第1の面(観点)では、以下のステップを含む、ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過体の調製方法を提示している。即ち、各ステップは、
(1)マルチチャンネル管状素材を調製し、かつマルチチャンネル管状素材を高温焼結して、第1平均孔径の細孔構造を有する担体を調製する。
(2)担体を立たせ、被覆層スラリーをステップ(1)で調製して得られた担体の底部からチャンネルに投入し、被覆層スラリーが上記担体の頂部に到達し、所定時間保持した後、チャンネル内の被覆層スラリーを放出して、チャンネル被覆層を形成する。そのうち、上記被覆層スラリーの粒子は上記担体表面と同性の電荷を帯びている。
(3)ステップ(2)で調製したチャンネル被覆層を乾燥させる。
(4)不活性雰囲気の保護条件下で上記チャンネル被覆層を高温焼結し、第2平均孔径を有する細孔構造を形成し、分離層を作製する。及び、
(5)ステップ(4)で得られた分離層を高温酸化焼結し、残留炭素を除去する。
【0008】
好適には、上記担体の調製は、具体的に以下のプロセスを含む。
第1粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉を第1助剤及び水と混合した後、マルチチャンネル管状素材を押出成形し、さらに素材の焼結を行い、素材の再結晶により、チャンネルの壁に第1平均孔径を有する細孔構造を形成して、担体を作製する。
好適には、上記第1粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉は炭化ケイ素粉Iと炭化ケイ素粉IIを含み、炭化ケイ素粉Iのメジアン径は炭化ケイ素粉IIのメジアン径の5~30倍である。より好適には、上記炭化ケイ素粉Iのメジアン径は10~30μmの間、炭化ケイ素粉IIのメジアン径は0.5~6μmの間である。
好適には、上記第1助剤は接着剤、可塑剤及び分散剤を含む。より好適には、上記炭化ケイ素粉I、炭化ケイ素粉II、接着剤、可塑剤、分散剤と水の質量比は(50~75):(10~20):(4~8):(1~3):(1~3):(10~20)である。
好適には、素材を高温焼結する前に、マルチチャンネル管状素材を乾燥させることをさらに含む。
【0009】
好適には、上記被覆層スラリーは第2粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉及び第2助剤と水を混合して作製され、上記第2粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉は炭化ケイ素粉IIIと炭化ケイ素粉IVを含み、炭化ケイ素粉IIIのメジアン径は炭化ケイ素粉IVのメジアン径の3~8倍である。
好適には、上記炭化ケイ素粉IIIのメジアン径は0.5~6μmの間、上記炭化ケイ素粉IVのメジアン径は0.1~3μmの間である。
好適には、上記第2助剤は接着剤、可塑剤、分散剤、消泡剤及び界面活性剤を含み、そのうち、炭化ケイ素粉III、炭化ケイ素粉IV、接着剤、可塑剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤と水の質量比は(5~15):(5~15):(3~10):(5~15):(0~1.5):(0~1.5):(1~5):(50~80)である。
好適には、上記被覆層スラリーのpH値は6~10の間である。
好適には、上記被覆層スラリーは、まず、
直径8~10mmのアルミナボールを添加し、12~48時間転がり研磨を行うという前処理方法によって処理した後、チャンネルに投入される。
好適には、上記被覆層スラリーは20~100mm/sの速度で上記チャンネルに進入する。
好適には、上記ステップ(2)において、上記所定時間は3~15秒である。
【0010】
好適には、上記チャンネル被覆層の高温焼結及び素材の高温焼結の過程には、脱ガム処理が含まれている。例えば、アルゴン雰囲気保護条件下で300~500℃まで昇温し、2~5時間保温して、素材とチャンネル被覆層に対する脱ガムを行うのである。
脱ガムの完了後、高温焼結を行って、炭化ケイ素粒子に対する再結晶を実現する。
好適には、上記チャンネル被覆層再結晶の焼結温度は素材再結晶の焼結温度より低い。より好適には、上記チャンネル被覆層再結晶の焼結温度は1600~2000℃の間であり、素材再結晶の焼結温度は2000~2400℃の間である。
好適には、被覆層スラリー中の粒子は担体表面と同性の電荷を帯びている。
【0011】
本発明の第2の面(観点)では、上記ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法に基づいて調製された、担体と分離層から成り、かつ中間層を含まないハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜を提供している。
特に好適には、上記第1平均孔径は10μm以上、第2平均孔径は0.2μm以下である。特に好適には、第2平均孔径は0.15μm~0.2μmである。
【0012】
本発明の第3の面(観点)では、ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜を提供しており、上記セラミックろ過膜は、細孔を有する担体と、細孔を有する分離層から成り、しかも中間層を含まない。そのうち、上記細孔を有する担体中の細孔の平均孔径は上記細孔を有する分離層中の細孔の平均孔径の20倍またはそれ以上である。
好適には、上記細孔を有する担体中の細孔の平均孔径は10μm以上であり、上記細孔を有する分離層中の細孔の平均孔径は0.2μm以下である。
好適には、上記細孔を有する分離層中の細孔の平均孔径は0.15μm~0.2μmの間である。
【0013】
従来技術と比べて、本発明はセラミックろ過膜の調製工程に対する調整と最適化を行って、従来の工程の中の中間層及び中間層の調製過程を排除し、被覆層スラリーの配合を最適化し、担体が焼結、調製された後には酸化、炭素除去を行わず、残留している炭素を利用して担体の細孔をある程度塞ぐという作用を果たすことで、分離層炭化ケイ素の微粒子が担体孔内に進入する確率を引き下げると同時に、被覆層スラリーの粒子と担体表面の同性電荷の排斥作用を結び付けて、被覆層スラリーを塗布する際に、毛細ろ過及び薄膜形成過程で微粒子が担体の細孔内に進入することを防止している。
【0014】
本発明の工程の最適化によって、平均孔径が10μm以上の炭化ケイ素担体上に平均孔径150nmの炭化ケイ素膜分離層を直接塗布し、炭化ケイ素膜を限外ろ過応用レベルで2回焼結することによりろ過膜の調製を完成させることを実現することができ、従来のセラミック膜が多層構造(担体、中間層及び分離層)を必要とし、かつ少なくとも3回の焼結を要するという欠点を回避しており、中間層の調製がなくなっているので、生産コストが大幅に下がり、しかも製品の合格率は向上している。
【0015】
それと同時に、本発明で調製するセラミックろ過膜は、炭化ケイ素担体と分離層のみで構成され、大孔径担体上での高倍率孔径の分離層の調製を実現しており、中間層を含まないので、従来の同等の孔径規格のろ過膜製品と比べて、本発明は、スループットが大幅に上昇し、テストによると、スループットの上昇は30%以上に達している。
【0016】
前述の構想及び以下でさらに詳述している追加の構想のすべての組み合わせは、そのような構想が互いに矛盾しない状況であれば、本開示の発明の主題の一部とみなすことができるということを理解しておかなければならない。また、保護を請求する(発明)主題のすべての組み合わせは、本開示の発明の主題の一部とみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面の中で、各図面に示されている同一またはほぼ同一の各構成部分は、同一の符号を用いて表すことができる。明確にするという観点から、各図においては、すべての構成部分に符号が付けられているわけではない。ここでは、例を挙げ、かつ図面を参照して本発明の各方面の実施例を説明している。ここで、
【0018】
図1図1は、従来の工程で三段階焼結と酸化を採用しているセラミックろ過膜調製工程のフローチャートである。
図2図2は、本発明の例示的実施例において中間層の調製を削除したセラミックろ過膜の工程フローチャートである。
図3図3は、本発明の例示的実施例におけるセラミックろ過膜の調製過程の例である。
図4図4は、本発明の例示的実施例におけるセラミックろ過膜の調製過程の中の炭化ケイ素担体の調製過程の例である。
図5図5は、本発明の例示的実施例におけるセラミックろ過膜の調製過程の中の分離層の調製及び炭素除去過程の例である。
図6図6は、図1に示す従来の工程を用いて調製した、担体、中間及び分離層を含むセラミック体の概略図である。
図7図7は、実施例1のセラミックろ過膜調製方法を用いて得られた炭化ケイ素セラミック膜の概略図であり、その中には中間層は含まれていない。
図8図8は、実施例1のセラミックろ過膜調製方法を用いて得られた炭化ケイ素セラミック膜の担体の孔径測定図であり、そのうち、担体孔径の平均値は10.5μmである。
図9図9は、実施例1のセラミックろ過膜調製方法を用いて得られた炭化ケイ素セラミック膜の分離層の孔径測定図であり、そのうち、分離層孔径の平均値は0.15μmである。
図10図10は、実施例2のセラミックろ過膜調製方法を用いて得られた炭化ケイ素セラミック膜の担体孔径図であり、その中には中間層は含まれておらず、担体孔径の平均値は15μmである。
図11図11は、実施例2のセラミックろ過膜調製方法を用いて得られた炭化ケイ素セラミック膜の分離層の孔径測定図であり、そのうち、分離層孔径の平均値は0.2μmである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の技術内容をさらに理解するために、ここに具体的な実施例を挙げ、かつ付属の図面と結び付けて説明する。
【0020】
本開示では、図面を参照して本発明の各面を記述しており、図面には多くの説明による実施例を示している。本開示の実施例は、本発明のすべての面を含むことを意味しているわけではない。上で紹介している様々な構想及び実施例、及び以下でより詳細に記述している構想及び実施形態は、多くの方式における任意の1種類によって実施することができるが、これは、本発明で開示されている構想及び実施例が、いかなる実施形態にも限定されないことによる。また、本発明で開示しているいくつかの面は、単独で、または本発明で開示している他の面との任意の適切な組み合わせにより使用することができる。
【0021】
図1に示すような従来のサンドイッチ構造のセラミック膜の調製工程では、調製過程で少なくとも3回の焼結を行う必要があり、かつ塗布及び高温焼結の度に、それに対して高温酸化を行って、高温焼結で残留した炭素を除去する必要があるので、調製工程が相対的に複雑で、コストが高く、製品には複数回の塗布が必要なので、歩留まりが悪い。図6は、従来の焼結工程により調製した、典型的なサンドイッチ構造を有するセラミック膜の例であり、典型的な担体、中間層及び分離層構造を有し、かつ中間層の孔径平均値は分離層の孔径平均値の約2倍で、しかも中間層の存在と、中間層と分離層の孔径の低倍比により、スループットが影響を受けてかなり低下している。
【0022】
図2に示すように、本発明は改善されたセラミックろ過膜の調製方法を提供することを目的としており、中間層及びその調製過程を排除し、担体を基礎として一回で分離層を直接塗布する工程を採用している。即ち、担体の焼結後、分離層を直接塗布し、焼結後に炭素除去を行えばよいのである。焼結工程を最適化し、かつ製膜液の配合を最適化することで、塗布時に毛細ろ過及び薄膜形成過程で炭化ケイ素の微粒子が担体の細孔構造内に進入することを防止し、平均孔径が10μm以上の炭化ケイ素担体上に平均孔径が150nmの細孔の分離層を直接塗布することを実現することができ、塗布時に被覆層スラリーの炭化ケイ素微粒子が担体の孔内に進入することを有効に阻止する。これにより、セラミック膜の従来の調製工程において複数回の塗布、即ち少なくとも2回の塗布(まず担体上に中間層を塗布し、次に中間層上に分離層を塗布する)と3回の焼結が必要であるという欠点を回避することができ、それにより生産コストが下がり、製品の合格率が上がっている。中間層を排除しているので、同等の孔径のセラミック膜のスループットを大幅に高めることもできる。
【0023】
本発明の調製方法は、特に大孔径担体を基礎として細孔構造の孔径差が20倍以上に達する分離層のセラミックろ過膜を調製することに適用され、調製するセラミックろ過膜構造は、大孔径の担体及び担体表面に付着する分離層のみで構成され、特に担体細孔の平均孔径値(第1孔径D1)は分離層細孔の平均孔径値(第2孔径D2)の20倍またはそれ以上であり、以下の実施例では、平均孔径10μm以上の細孔構造を有する炭化ケイ素担体に、平均孔径が0.2μmを下回る細孔構造の分離層を直接塗布することを例として説明を進める。
【0024】
図に示すように、本発明の調製方法の例示的な実現について、より具体的に説明する。
【0025】
図3に示す調製工程プロセスには、マルチチャンネル管状素材を調製し、かつマルチチャンネル管状素材を高温で焼結して、第1平均孔径の細孔構造を有する担体を調製することと、担体を立たせ、被覆層スラリーを調製して得られた担体の底部からチャンネルに投入し、被覆層スラリーが上記担体の頂部に到達し、所定時間保持した後、チャンネル内の被覆層スラリーを放出してチャンネル被覆層を形成することと、そのうち、上記被覆層スラリーの粒子は上記担体表面と同性の電荷を帯びていることと、チャンネル被覆層を乾燥させることと、不活性雰囲気の保護条件下で、上記チャンネル被覆層を高温焼結し、第2平均孔径を有する細孔構造を形成し、分離層を作製することと、分離層に対して高温酸化焼結を行って、残留炭素を除去することと、が含まれる。
【0026】
本発明の1つの具体的な例として、ハイスループットで低コストの炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製を例に挙げると、そのプロセスには、
第1粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉を第1助剤及び水と混合した後、マルチチャンネル管状素材を押出成形し、さらに素材の高温焼結を行い、素材の再結晶により、チャンネルの壁に第1平均孔径を有する細孔構造を形成して担体を作製することと、
担体を立たせ、被覆層スラリーを担体の底部から各チャンネルに投入し、被覆層スラリーが担体の頂部に到達して所定の時間保持した後、チャンネル内の被覆層スラリーを放出してチャンネル被覆層を形成することと、そのうち、前記被膜層スラリーは第2粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉及び第2助剤と水を混合して作製され、かつスラリーのpH値は6~10の間に制御されていることと、
チャンネル被覆層を乾燥させることと、
雰囲気保護条件下で、チャンネル被覆層を高温焼結することにより、第2平均孔径を有する細孔構造を形成して分離層を作製することと、
分離層に対して高温酸化焼結を行って分離層に残留する炭素を除去することと、が含まれる。
【0027】
素材が再結晶する前に、マルチチャンネル管状素材を乾燥させることが含まれることが特に望ましい。例えば、マルチチャンネル管状素材を乾燥室内で24~48時間乾燥させる。乾燥室内で制御する環境条件は、相対湿度20~60%、温度25~50℃である。乾燥の過程では、素材チャンネルに流速0.5~2m/sで温風を通す。
【0028】
好適には、上記第1粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉は炭化ケイ素粉Iと炭化ケイ素粉IIを含み、炭化ケイ素粉Iのメジアン径は炭化ケイ素粉IIのメジアン径の5~30倍である。特に、上記炭化ケイ素粉Iのメジアン径は10~30μmの間、炭化ケイ素粉IIのメジアン径は0.5~6μmの間である。
【0029】
例示的な第1助剤は接着剤、可塑剤及び分散剤を含む。特に好適には、炭化ケイ素粉I、炭化ケイ素粉II、接着剤、可塑剤、分散剤と水の質量比は(50~75):(10~20):(4~8):(1~3):(1~3):(10~20)である。
【0030】
好適には、上記接着剤は、特にメチルヒドロキシエチルセルロースまたはポリビニルアルコールを選択することができ、可塑剤にはポリエチレングリコールまたはフタル酸エステルを採用し、分散剤にはアクリル系ポリマーを採用する。
【0031】
好適には、上記第2粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉は炭化ケイ素粉IIIと炭化ケイ素粉IVを含み、炭化ケイ素粉IIIのメジアン径は炭化ケイ素粉IVのメジアン径の3~8倍である。特に、炭化ケイ素粉IIIのメジアン径は0.5~6μmの間、上記炭化ケイ素粉IVのメジアン径は0.1~3μmの間である。
【0032】
特に好適には、炭化ケイ素粉IIIと炭化ケイ素粉IVのメジアン径をいずれも0.1~1.5μmの間に制御することで、200μm以下の孔径の細孔構造を有効的に調製することができる。
【0033】
本発明の実施例におけるメジアン径は、粒径中間値とも呼ばれることを理解しておかなければならない。
【0034】
例示的な第2助剤は、接着剤、可塑剤、分散剤、消泡剤及び界面活性剤を含み、そのうち、炭化ケイ素粉III、炭化ケイ素粉IV、接着剤、可塑剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤と水の質量比は(5~15):(5~15):(3~10):(5~15):(0~1.5):(0~1.5):(1~5):(50~80)である。
【0035】
好適には、上記接着剤にはメチルヒドロキシエチルセルロースまたはポリビニルアルコールのうちの少なくとも1種を用いることができる。可塑剤にはポリエチレングリコールまたはフタル酸エステルを採用し、分散剤にはアクリル系ポリマーを採用し、消泡剤にはシリコーンポリエーテル類を採用し、界面活性剤にはアルコール類を採用する。
【0036】
前述の質量比に基づいて均一に混合した後の被覆層スラリーを、まず、
直径8~10mmのアルミナボールを添加し、12~48時間転がり研磨を行うという前処理方法によって処理してから、チャンネルに投入する。
【0037】
好適には、本発明のいくつかの実施例では、上記被覆層スラリーを20~100mm/sの速度で上記チャンネルに投入するよう制御している。より好適には、被覆層スラリーは、担体頂部に到達した後、3~15秒保持されて有効な塗布を実現し、毛細管作用によって被覆層を形成する。
【0038】
このように、被覆層スラリーの配合を最適化することによって、担体の焼結調製後に、酸化炭素除去を行わず、残留している炭素を利用して担体の細孔をある程度塞ぐという作用を果たし、これによって分離層炭化ケイ素の微粒子が担体孔内に進入する確率を引き下げ、被覆層スラリーの粒子と担体表面の同性電荷の排斥作用を結び付けて、被覆層スラリーを塗布する際に、毛細ろ過及び薄膜形成過程において微小粒子が担体の細孔内に進入することを回避している。
【0039】
任意選択的に、被覆層スラリーの配置過程では、様々な方式、例えば流体(スラリー)の特性調節やpH調節などによりその粒子(炭化ケイ素粒子)と担体表面に同性の電荷を帯びさせるようコントロールすることができ、その中の1種類、または2種類以上の手段の組み合わせを用いて実現することができる。
【0040】
例えば、第2粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉及び第2助剤と水を混合して作製した分離層被覆層スラリーの配置において、スラリーのpH値を6~10の間に制御することにより、被覆層スラリー中の粒子が担体表面と同性の電荷を帯び、同性電荷の反発作用により、被覆層スラリー中の粒子が担体の孔径内に入ることを阻止することができる。
【0041】
図4図5に示す工程のように、本発明のいくつかの実施例では、チャンネル被覆層の高温焼結及び素材の高温焼結過程の中に、脱ガム処理が含まれている。例えば、アルゴン雰囲気保護条件下で加熱昇温を行い、300~500℃まで昇温し、2~5時間保温して、素材と被覆層に対する脱ガムを行う。
【0042】
脱ガムの完了後、再結晶の保温範囲まで再度加熱して昇温し、再結晶を行う。最後に炉で室温まで冷却する。
【0043】
具体的な実施過程において、チャンネル被覆層再結晶の焼結温度は素材再結晶の焼結温度より低い。好適には、チャンネル被覆層再結晶の焼結温度は1600~2000℃の間、素材再結晶の焼結温度は2000~2400℃の間である。
【0044】
前記素材とスラリーの原料は、いずれも市販ルートで購入可能である。好適には、炭化ケイ素粉Iの純度は98%を上回り、炭化ケイ素粉IIの純度は99%を上回る。炭化ケイ素粉IIIと炭化ケイ素粉IVの純度は99%を上回る。
【実施例
【0045】
以下では、具体的な例と結び付けて、上記の調製方法について説明する。
【0046】
[実施例1]
1)炭化ケイ素素材の成形及び焼結
原材料の選択:炭化ケイ素粉I、炭化ケイ素粉II、メチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、アクリル系ポリマー及び水を、質量比60:18:6:2:2:12に基づいて取り、準備しておく。
炭化ケイ素粉Iのメジアン径は炭化ケイ素粉IIのメジアン径の20倍である。炭化ケイ素粉Iのメジアン径は20μmで、純度は98%を上回り、炭化ケイ素粉IIのメジアン径は1μmで、純度は99%を上回る。
【0047】
原材料の混合:まず液体を加えてから粉体を加えるという順序で、選択した原材料を割合に基づいて室温(摂氏20~25度)で混合し、均一な混合物を形成する。
【0048】
成形:得られた混合物を押出成形機に投入し、押出圧力120MPaの条件下でマルチチャンネル管状素材に成形する。
【0049】
乾燥:素材を押し出して、乾燥室で24時間乾燥させる。相対湿度は50~60%、温度は25~30℃で、素材チャンネルに流速2m/sで温風を通す。
【0050】
高温焼結再結晶:乾燥後の素材に対して、アルゴン雰囲気保護条件下で高温焼結を行う。500℃まで昇温し、2時間保温して、素材に対する脱ガムを行う。脱ガムの完了後、2400℃まで昇温する。焼結昇温過程は18時間で、素材に対して再結晶焼結を行い、5時間保温し、最後に炉で室温まで冷却する。
【0051】
2)炭化ケイ素被覆層の塗布
スラリーの調製:炭化ケイ素粉III、炭化ケイ素粉IV、メチルヒドロキシエチルセルロース、フタル酸エステル、アクリル系ポリマー分散剤、シリコーンポリエーテル系消泡剤、アルコール系界面活性剤PEGと水を、質量比15:10:5:8:1.5:1.5:3:56で均一に混合し、pHを8~9に制御し、直径8~10mmのアルミナボールを添加して48時間転がり研磨を行い、被覆層スラリーを得る。
炭化ケイ素粉IIIのメジアン径は炭化ケイ素粉IVのメジアン径の5倍である。
炭化ケイ素粉IIIのメジアン径は1.5μmで、純度は99%を上回り、炭化ケイ素粉IVのメジアン径は0.3μmで、純度は99%を上回る。
【0052】
被覆層の塗布:担体を垂直に立たせ、被覆層スラリーを80mm/sの速度で底部から担体チャンネルに投入し、被覆層スラリーが担体頂部に到達したところで4秒間停止し、最後に担体チャンネル内の被覆層スラリーを放出し、毛細管作用を利用して被覆層を形成する。
【0053】
被覆層の乾燥:調製した炭化ケイ素膜を乾燥室で24時間乾燥させる。相対湿度50~60%、温度25~30℃で、素材チャンネルに流速2m/sで温風を通す。
【0054】
高温焼結再結晶:乾燥後の炭化ケイ素膜をアルゴン雰囲気保護条件下で高温焼結する。500℃まで昇温し、2時間保温して、炭化ケイ素膜に対する脱ガムを行う。脱ガムの完了後、1600℃まで昇温し、再結晶焼結を行い、5時間保温して、最後に炉で室温まで冷却する。焼結昇温過程は20時間である。
【0055】
酸化焼結:通気条件下で、得られた炭化ケイ素膜に対して800℃で酸化焼結を行い、これによって残留炭素を除去し、膜の機械強度を高める。得られる製品は100%再結晶炭化ケイ素膜であり、図7に示すように、分離層の厚さは約47.9μmで、担体表面に付着しており、しかも中間層を含まない。
【0056】
測定の結果、調製されたセラミック膜担体の細孔構造の孔径平均値は10.5μm(図8を参照)であり、分離層の細孔構造の孔径平均値は0.15μm(図9を参照)であり、大孔径担体の調製を実現し、かつそれに基づいて平均値孔径の小さい(0.15μm)分離層の塗布と調製を実現しており、ろ過水の水質を保証すると同時に、大孔径の担体によってハイスループットも保障している。
【0057】
[実施例2]
1)炭化ケイ素素材体の成形及び焼結
原材料の選択:炭化ケイ素粉I、炭化ケイ素粉II、メチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、アクリル系ポリマー及び水を、質量比65:15:5:1:1:13に基づいて取り、準備しておく。
炭化ケイ素粉Iのメジアン径は炭化ケイ素粉IIのメジアン径の15倍である。炭化ケイ素粉Iのメジアン径は30μmで、純度は98%を上回り、炭化ケイ素粉IIのメジアン径は2μmで、純度は99%を上回る。
【0058】
原材料の混合:まず液体を加えてから粉体を加えるという順序で、選択した原材料を割合に基づいて室温(摂氏20~25度)で混合し、均一な混合物を形成する。
【0059】
成形:得られた混合物を押出成形機に投入し、押出圧力120MPaの条件下でマルチチャンネル管状素材に成形する。
【0060】
乾燥:素材を押し出して、乾燥室で24時間乾燥させる。相対湿度は50~60%、温度は25~30℃、で素材チャンネルに流速2m/sで温風を通す。
【0061】
高温焼結再結晶:乾燥後の素材に対して、アルゴン雰囲気保護条件下で高温焼結を行う。500℃まで昇温し、2時間保温して、素材に対する脱ガムを行う。脱ガムの完了後、2400℃まで昇温する。焼結昇温過程は25時間で、素材に対して再結晶焼結を行い、5時間保温し、最後に炉で室温まで冷却する。
【0062】
2)炭化ケイ素被覆層の塗布
スラリーの調製:炭化ケイ素粉III、炭化ケイ素粉IV、メチルヒドロキシエチルセルロース、フタル酸エステル、アクリル系ポリマー分散剤、シリコーンポリエーテル系消泡剤、アルコール系界面活性剤PEG及び水を、質量比15:15:6:6:1.5:1.5:4:51で均一に混合し、pHを7~8に制御し、直径8~10mmのアルミナボールを添加して48時間転がり研磨を行い、被覆層スラリーを得る。
炭化ケイ素粉IIIのメジアン径は炭化ケイ素粉IVのメジアン径の5倍である。
炭化ケイ素粉IIIのメジアン径は1.5μmで、純度は99%を上回り、炭化ケイ素粉IVのメジアン径は0.3μmで、純度は99%を上回る。
【0063】
被覆層の塗布:担体を垂直に立たせ、被覆層スラリーを80mm/sの速度で底部から担体チャンネルに投入し、被覆層スラリーが担体頂部に到達したところで3秒間停止し、最後に担体チャンネル内の被覆層スラリーを放出し、毛細管作用を利用して被覆層を形成する。
【0064】
被覆層の乾燥:調製した炭化ケイ素膜を乾燥室で24時間乾燥させる。相対湿度50~60%、温度25~30℃で、素材チャンネルに流速2m/sで温風を通す。
【0065】
高温焼結再結晶:乾燥後の炭化ケイ素膜をアルゴン雰囲気保護条件下で高温焼結する。500℃まで昇温し、2時間保温して、炭化ケイ素膜に対する脱ガムを行う。脱ガムの完了後、1800℃まで昇温する。焼結昇温過程は25時間で、再結晶焼結を行い、5時間保温し、最後に炉で室温まで冷却する。
【0066】
酸化焼結:通気条件下で、得られた炭化ケイ素膜に対して800℃で酸化焼結を行い、これによって残留炭素を除去し、膜の機械強度を高める。得られる製品は100%再結晶炭化ケイ素膜である。
【0067】
測定の結果、調製されたセラミック膜担体の細孔構造の孔径平均値は15μm(図10参照)であり、分離層の細孔構造の孔径平均値は0.2μm(図11参照)であり、かつ中間層は含まれていない。
【0068】
上記の実施例で調製されたセラミック膜に基づいて、実施例1、2で調製されたセラミック膜の試験を行ったところ、試験結果から、調製されたセラミック膜の担体の細孔構造の孔径平均値は10μm以上(図8、10)であり、分離層の細孔構造の孔径平均値は0.2μm以下(図9、11)であり、大孔径担体の調製を実現し、これに基づいて小孔径の分離層の塗布と調製を実現していることがわかった。本発明の技術では特に、分離層の細孔孔径と担体の細孔孔径の差が20倍またはそれ以上に達するセラミックろ過膜の調製を実現している。以上の実施例の原材料と調製工程によって、担体の細孔平均孔径が10μm以上で、分離層の細孔平均孔径が0.2μm以下の炭化ケイ素セラミック膜の調製を実現することができ、特に好適には、分離層の細孔平均孔径を0.15μm~0.2μmの範囲内に制御することで、低コスト、ハイスループットのセラミックろ過膜の調製を実現することができる。
【0069】
本発明の実施例1で調製した炭化ケイ素セラミック膜でテストを行うと同時に、平均孔径が(0.15μm)に近い従来のサンドイッチ構造のセラミック膜を選択して本発明で調製したセラミック膜と比較したところ、従来の炭化ケイ素膜(サンドイッチ構造)と新型の炭化ケイ素膜(中間層を除去)の純水のスループットの比は、3000LMH/bar vs 4000LMH/barであり、本発明の工程で調製したセラミック膜のスループットが30%以上明らかに向上していることがわかった。また、多孔質試験の結果では、本発明で調製されたセラミック体は、多孔率が42%以上に達しており、ハイスループットろ過を実現している。
【0070】
本実施例1で調製したセラミック膜の被覆層構造について強度試験を行ったところ、試験結果の分離層(即ち膜)はかなり高い機械強度を有し、曲げ強度は25MPa以上に達していた。複数組の試験用膜の測定結果では、35MPa前後を保持することができている。
【0071】
本発明は、上記のように好適な実施例を挙げているが、それらは本発明を限定するためのものではない。本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明の主旨及び範囲を逸脱しなければ、様々な変更や修飾を行うことができる。よって、本発明の保護範囲は、請求の範囲による画定に基づくものと見なすべきである。
【符号の説明】
【0072】
(なし)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法であって、該方法が、
(1) マルチチャンネル管状素材を調製し、かつマルチチャンネル管状素材を高温焼結して、第1平均孔径の細孔構造を有する担体を調製するステップと、
(2) 担体を立たせ、被覆層スラリーをステップ(1)で調製して得られた担体の底部からチャンネルに投入し、被覆層スラリーが前記担体の頂部に到達し、所定時間保持した後、チャンネル内の被覆層スラリーを放出してチャンネル被覆層を形成し、ここで、前記被覆層スラリーの粒子は前記担体表面と同性の電荷を帯びている、ステップと、
(3) ステップ(2)で調製したチャンネル被覆層を乾燥させるステップと、
(4) 不活性雰囲気の保護条件下で、前記チャンネル被覆層を高温焼結し、第2平均孔径を有する細孔構造を形成して分離層を作製するステップと、
(5) ステップ(4)で得られた分離層に対して高温酸化焼結を行って、残留炭素を除去するステップと、
を含むことを特徴とする、ハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)の担体の調製が、
第1粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉及び第1助剤と水を混合した後、マルチチャンネル管状素材を押出成形し、さらに素材の焼結を行い、素材の再結晶により、チャンネルの壁に第1平均孔径を有する細孔構造を形成するステップを更に含むことを特徴とする、
請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項3】
前記第1粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉は炭化ケイ素粉I及び炭化ケイ素粉IIを含み、前記炭化ケイ素粉Iのメジアン径が前記炭化ケイ素粉IIのメジアン径の5~30倍であることを特徴とする、請求項2に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項4】
前記炭化ケイ素粉Iのメジアン径が10~30μmの間、前記炭化ケイ素粉IIのメジアン径が0.5~6μmの間であることを特徴とする、請求項3に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項5】
前記第1助剤が、接着剤と、可塑剤と、分散剤とを含むことを特徴とする、請求項3に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項6】
前記炭化ケイ素粉I、前記炭化ケイ素粉II、前記接着剤、前記可塑剤、前記分散剤及び前記水の質量比が、(50~75):(10~20):(4~8):(1~3):(1~3):(10~20)であることを特徴とする、請求項5に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項7】
ステップ(1)において、マルチチャンネル管状素材を高温焼結する前に、前記マルチチャンネル管状素材を乾燥させることを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、前記被覆層スラリーは第2粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉及び第2助剤を水と混合して作製され、前記第2粒径不整合度を有する炭化ケイ素粉は炭化ケイ素粉III及び炭化ケイ素粉IVを含み、前記炭化ケイ素粉IIIのメジアン径が前記炭化ケイ素粉IVのメジアン径の3~8倍であることを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項9】
前記炭化ケイ素粉IIIのメジアン径が0.5~6μmの間、前記炭化ケイ素粉IVのメジアン径が0.1~3μmの間であることを特徴とする、請求項8に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項10】
前記第2助剤は接着剤、可塑剤、分散剤、消泡剤及び界面活性剤を含み、
そのうち、前記炭化ケイ素粉III、前記炭化ケイ素粉IV、前記接着剤、前記可塑剤、前記分散剤、前記消泡剤、前記界面活性剤及び前記水の質量比が(5~15):(5~15):(3~10):(5~15):(0~1.5):(0~1.5):(1~5):(50~80)であることを特徴とする、請求項8に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項11】
前記被覆層スラリーのpH値が6~10の間であることを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項12】
前記被覆層スラリーを、まず、
直径8~10mmのアルミナボールを添加し、12~48時間転がり研磨を行うという前処理方法によって処理してから、チャンネルに投入することを特徴とする、
請求項8~10のいずれか一項に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項13】
被覆層スラリーを20~100mm/sの速度でチャンネルに投入することを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項14】
ステップ(2)において、前記所定時間が3~15秒であることを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項15】
ステップ(1)または(4)において、素材の高温焼結及びチャンネルの高温焼結の過程で、脱ガム処理を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項16】
ステップ(1)において、素材の高温焼結の温度が2000~2400℃の間であることを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【請求項17】
前記チャンネル被覆層の高温焼結中の温度が1600~2000℃の間であることを特徴とする、請求項1に記載のハイスループット炭化ケイ素セラミックろ過膜の調製方法。
【国際調査報告】