(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】基材表面にモチーフを生成するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20240216BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20240216BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240216BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240216BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20240216BHJP
B05C 11/02 20060101ALI20240216BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20240216BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D3/12 E
B05D1/36 Z
B05D3/12 C
B05C5/00 101
B05C9/14
B05C11/02
B05C13/02
B05C11/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552019
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 ES2022070100
(87)【国際公開番号】W WO2022180292
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516277439
【氏名又は名称】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AA55
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4F042DF17
4F042DF20
(57)【要約】
本発明は、基材(1;4)表面にモチーフ(7)を生成するための方法及びシステムに関し、この方法は、基材(1;4)を少なくとも部分的に覆うベース層(2)を提供すること、ベース層(2)内又はベース層(2)表面に複数の液滴を供給することと、液滴を含むか又は液滴から少なくとも部分的に定められる液体(3)の少なくとも一部を移行面(S)に移行することとを連続して含み、移行面(S)に移行することは、モチーフ(7)を少なくとも部分的に現すために、移行面(S)がベース層(2)表面で滑ることなく移行面(S)と液体(3)の間で接触した時に、液体が移行面へ付着することによってなされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(1;4)表面にモチーフ(7)を生成するための方法であって、
前記基材(1;4)を少なくとも部分的に覆うベース層(2)を提供すること、
前記ベース層(2)内又は前記ベース層(2)表面に複数の液滴を供給することと、
前記液滴を含むか又は前記液滴によって少なくとも部分的に定められる液体(3)の少なくとも一部を移行面(S)に移行することと
を連続して含み、前記移行面(S)への移行は、前記モチーフ(7)を少なくとも部分的に現すために、前記移行面(S)が前記ベース層(2)表面で滑ることなく前記液体(3)と接触した時に、前記液体が前記移行面へ付着することによってなされる、モチーフ(7)の生成方法。
【請求項2】
前記移行面(S)が移行ローラ(10)の転がり面である、請求項1に記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項3】
前記移行面(S)が移行シート(15)の前面である、請求項1に記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項4】
前記移行シート(15)は、特に移行シート供給スプール(81)から及び/若しくは移行シート回収スプール(82)へ、又は閉鎖周回路で、連続的に供給される、請求項3に記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項5】
前記液体(3)は、前記基材(1;4)が搬送される間に又は前記基材(1;4)が固定されたままである間に移行される、請求項1から4のいずれかに記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項6】
前記移行面(S)は、特に追加の液体(3)が前記移行面(S)に移行される間に、移行された前記液体(3)が清掃される、請求項1から5のいずれかに記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項7】
前記移行面(S)は、前記液体(3)と接触した時に、前記ベース層(2)の表面と実質的に適合するような形態を有し、特に前記移行面(S)は、パネル(1)の形態若しくはシート(4)の形態の基材に対して実質的に平坦であり、及び/又は前記移行面(S)は実質的に平滑であり、及び/又は前記移行面(S)は実質的に弾性変形可能である、請求項1から6のいずれかに記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項8】
前記移行面(S)は、50μm以下、特に15μm以下の表面粗さを有する、請求項1から7のいずれかに記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項9】
複数の連続した移行ステップを含む、請求項1から8のいずれかに記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項10】
前記移行面(S)は、特に前記液体(3)が移行される時に、前記ベース層(2)に押し付けられる及び/又は前記ベース層(2)に近づけられる、請求項1から9のいずれかに記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項11】
特に異なる複数の移行面(S)について、連続的に、前記ベース層(2)に対する圧力が増加し及び/又は前記ベース層の表面に対する前記移行面(S)の高さが減少する、請求項10に記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項12】
前記液体(3)を移行する前及び/又は移行した後に、前記ベース層(2)を少なくとも不完全に固化させることを含み、特に、前記複数の液滴が供給される時に、前記ベース層(2)は少なくとも部分的に液体である、請求項1から11のいずれかに記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項13】
前記液体(3)を移行する際に、前記ベース層(2)の表面張力、すなわち表面エネルギーを前記移行面(S)の表面エネルギーよりも大きくするために、前記液体(3)を移行する前に前記ベース層(2)が少なくとも不完全に固化される、請求項12に記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項14】
前記ベース層(2)、供給された前記液滴及び/又は前記液体(3)が、硬化によって、特に放射線によって、更に特に電磁放射線によって、好ましくはUVによって少なくとも不完全に固化される、請求項1から13のいずれかに記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項15】
前記液滴が選択的に、特にデジタルパターンに従って、更に特にデジタル印刷によって、好ましくはインクジェットによって供給される、請求項1から14のいずれかに記載のモチーフ(7)の生成方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の方法を実施する基材(1;4)表面にモチーフ(7)を生成するためのシステムであって、
前記ベース層(2)を備えた前記基材(1;4)を搬送するための基材搬送手段(60)と、
前記ベース層(2)内又は前記ベース層(2)表面に前記液滴を供給するための液滴供給手段(30)と
を含み、前記移行面(S)が前記液体(3)と接触した時に、前記液体(3)を前記移行面(S)に移行するための前記移行面(S)を備えた少なくとも1つの移行要素(10)を含み、前記接触が、前記基材(1;4)の移行と同期して、前記ベース層(2)表面で滑らないように構成されている、システム。
【請求項17】
清掃用生産物(56’)、特に前記移行面(S)に移行された移行液体(3’)の生成物の溶媒なしで前記移行面(S)を清掃するための乾式清掃手段(58、511)を含み、前記移行液体(3’)の同じ生成物に清掃手段を適用せずに、前記移行液体(3’)の生成物の固化、乾燥及び/又は蒸発によって、前記乾式清掃手段(58、511)による前記移行面(S)からの前記移行液体(3’)の生成物の分離を容易にするための補助乾式清掃手段(90)を更に含む、請求項16に記載のモチーフ(7)の生成システム。
【請求項18】
前記補助乾式清掃手段(90)は、熱放射による加熱手段、特に電磁放射による加熱手段、更に特にIRによる加熱手段(93、94);熱伝導による加熱手段、特に前記移行要素(10)の加熱による加熱手段(96);硬化手段、特に電磁放射による硬化手段、更に特にUVによる硬化手段(91、92);及び/又は送風手段、特に加熱空気の送風による送風手段を含む、請求項17に記載のモチーフ(7)の生成システム。
【請求項19】
前記補助乾式清掃手段(90)は、前記移行面(S)からの前記移行液体(3’)の生成物の分離前及び/又は分離中に、特に前記分離が行われる前記乾式清掃手段(90)の周囲において、前記移行要素(10)表面の前記移行液体(3’)の生成物に適用されるように構成されている、請求項17又は18に記載のモチーフ(7)の生成システム。
【請求項20】
清掃用生産物(56’)、特に前記移行面(S)に移行される移行液体(3’)の生成物の溶媒の存在下で前記移行面(S)を清掃するための湿式清掃手段(56、56’、512)を含み、前記湿式清掃手段(56、56’、512)によって塗布された清掃用生産物(56’)を、同じ清掃用生産物(56’)に清掃手段を適用せずに、前記清掃用生産物(56’)の乾燥及び/又は蒸発によって、前記移行面(S)から除去するための補助湿式清掃手段(90’)を更に含む、請求項16に記載のモチーフ(7)の生成システム。
【請求項21】
前記補助湿式清掃手段(90’)は、熱放射による加熱手段、特に電磁放射による加熱手段、更に特にIRによる加熱手段(95);熱伝導による加熱手段、特に前記移行要素(10)の加熱による加熱手段(96);及び/又は送風手段(97)、特に加熱空気の送風による送風手段(97)を含む、請求項20に記載のモチーフ(7)の生成システム。
【請求項22】
前記湿式清掃手段(56、56’、512)は、前記清掃用生産物(56’)の再利用手段(59、591)を含み、前記清掃用生産物(56’)は、清掃用生産物再循環周回路(59、591)を通じて再利用のために再循環される、請求項20又は21に記載のモチーフ(7)の生成システム。
【請求項23】
前記再利用手段(59、591)は、前記清掃用生産物(56’)のリサイクル手段(592、593、594)、更に特に前記清掃用生産物(56’)の蒸留によるリサイクルを更に含む、請求項22に記載のモチーフ(7)の生成システム。
【請求項24】
前記清掃用生産物(56’)は、55~150g/mol、好ましくは100~125g/mの分子量を有し、特にブチルグリコールである、請求項20から23のいずれかに記載のモチーフ(7)の生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面に例えば浮き彫りや質感などのモチーフを生成するための方法及びシステムに関し、基材の表面に延在するベース層表面に、モチーフを定める複数の液滴が、例えばデジタルインクジェット印刷によって供給される。
【0002】
本発明は、特に家具、ドア及び床用のパネル、ドア及び窓枠用のプロファイル材などの、建築及び家具用の製品を製造する分野において適用可能である。
【背景技術】
【0003】
現在、基材の表面に延在するベース層表面に、例えばデジタルインクジェット印刷によって、複数の液滴を供給することによって基材表面にモチーフを生成する方法及びシステムがよく知られている。これらの方法及びシステムは、彫刻又は成形などの、基材表面にモチーフを生成するための他の方法及びシステムと比較して、その高い柔軟性及び精度の利点を有する。
【0004】
例えば、特許文献1は、基材表面に延在する液体ベース層表面にデジタルインクジェット印刷を行うことにより、基材表面に浮き彫りを生成する方法を開示している。液滴と液体ベース層は互いに非混和性であるように構成されており、それによりベース層が固化した後に浮き彫りを生成するためにベース層内に取り込まれ、射出された液滴は、液滴が供給されたベース層の液面をはじく。
【0005】
同様に、特許文献2は、基材表面に延在する液体ベース層表面にデジタルインクジェット印刷を行うことにより、基材表面に浮き彫りを生成する方法及びシステムを開示している。液滴は、液体ベース層に対してマスキング効果を提供するように構成されており、液滴が供給された位置で液体ベース層の硬化又は加熱放射線の通過を遮断することにより、液体ベース層の固化を阻害する。ベース層が固化すると、固化が阻害された液滴の下に位置する材料は軟らかいか又は不完全に固化するため、浮き彫りを生成するためにベース層から容易に除去されることができる。その材料及び液滴の除去のために、ブラシや吸引などの手段が言及されている。
【0006】
同様に、特許文献3は、基材表面に延在する液体ベース層表面でのデジタルインクジェット印刷によって、基材表面に浮き彫りを生成する方法を開示している。液体ベース層表面に射出された液滴は、液滴が液体ベース層に衝突した時の液滴の衝撃若しくは運動量、液滴及び液体ベース層の粘度及び/又は表面張力により、ベース層に凹の浮き彫りを生成する。
【0007】
同様に、特許文献4は、基材表面に延在する液体ベース層表面でのデジタルインクジェット印刷によって、基材表面に浮き彫りを形成する方法及びシステムを開示している。液滴とベース層は固化され、例えばUVによって硬化され、液滴は、例えばUV吸収剤などの硬化阻害剤により、固化を阻害又は変更するように構成され、それにより液滴が供給されたベース層の領域は、ベース層の他の部分よりも軟らかい又は脆い。その結果、その領域における液滴とベース層の混合物に相当する生成物は、浮き彫りを生成するためにベース層から容易に除去されることができる。その生成物の除去のために、ブラッシング、空気又は水の噴射、テープ又は粘着ローラ又は溶剤などの手段が言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/092688号明細書
【特許文献2】国際公開特許第2010/070485号公報
【特許文献3】国際公開特許第2011/126148号公報
【特許文献4】国際公開特許第2020/039361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
生成物(生成物は、本発明の状況では通常は、供給された液滴を含むか又は供給された液滴によって少なくとも部分的に定められるものとして理解される)を除去するための既知の手段は、生成物を十分に除去するために必要とされ得る磨耗のために、得られるモチーフの鮮明さ又は明瞭さを失わせるという欠点を有する。生成物の除去は、引きずる力によって行われるか、又はその生成物を飛ばす可動要素又は流体要素によってその生成物がベース層から除去される、取り出される又は分離されるような方法で行われる。
【0010】
粘着ローラ又は粘着テープの使用、すなわち粘着剤を備えたローラ又はテープの使用は、供給された液滴から生じた生成物を除去するために固体の状態にする必要があることに加えて、ベース層に付着した微量の粘着剤でベース層の表面を汚す傾向があるという欠点を有し、ベース層の表面から粘着剤を除去する追加の工程が必要となり、接着剤の除去や分離に必然的な磨耗により、得られるモチーフの鮮明さ又は明瞭さが失われやすい。更に、溶剤の使用はまた、溶剤自体の作用によってベース層の表面に起こりうる品質低下の欠点を有する。
【0011】
加熱、蒸発又は乾燥によって、供給された液滴により生じた生成物を除去することも、先行技術において知られている。代わりに又は補足的に、その生成物の跡は、特に得られたモチーフでのベース層と共に、固化、特に硬化されて残ることができる。
【0012】
得られた生成物を加熱、乾燥又は蒸発させることによって除去するための手段は、少なくとも一定の深さを有する浮き彫りなどの特定のモチーフを得ることを可能にするのに十分な量の生成物を除去するのに有効でない場合があるという欠点を有する。
【0013】
更に、生成物を除去するための公知の手段はまた、生成物が除去される時に、生成物がその手段に、例えばブラシの毛に蓄積されるか、又は予測できない若しくは管理されない方法でまき散らされるという事実の結果として、その清掃又は保守が困難であるという欠点も有する。
【0014】
現在知られている方法に鑑みて、本発明は、上述した欠点を解決することが可能な、基材表面にモチーフを生成するための代わりの又は補足的な方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前項で述べた目的を達成し、更に本明細書から明らかになる追加の利点を提供するために、本発明は、連続して基材を少なくとも部分的に覆うベース層を提供することと、前記ベース層内又は前記ベース層表面に複数の液滴を供給することと、該液滴を含むか又は該液滴によって少なくとも部分的に定められる液体の少なくとも一部を移行面に移行することとを含み、前記移行面への移行は、モチーフを少なくとも部分的に現すために、前記移行面が前記ベース層表面で滑ることなく前記液体と接触した時に、前記移行面に前記液体が付着することによってなされる、基材表面にモチーフを生成するための方法を提供する。
【0016】
本発明の状況では、モチーフは、特に、装飾又は浮き彫りとして理解されことができる。浮き彫りは、特に、三次元の表面又は質感として理解されることができる。モチーフは装飾的又は機能的であることができる。装飾的なモチーフの例としては、艶消し仕上げや、岩や木などの天然の表面を模した質感である。機能的モチーフの例としては、弾性、接着性、強度、表面粗さなどの基材の物理的特性、基材の光学的特性、触覚特性などを変更するためのモチーフである。微細構造の機能的モチーフは、生物学、光学、電子工学などの分野で使用されることができる。例えば、光学ではフレネルレンズの製造に、電子工学では回路、特にマイクロ流体導管の製造に、生物分野では薬物の製造に使用される。
【0017】
本発明の方法を適用して得られる浮き彫りは、凸(ベース層表面での突起)又は凹(ベース層内の窪み)とされることができる。このモチーフは、例えば、ベース層から移行液体を除去することによって、ベース層の下に先に塗布された背景が見えるようにされる、いわゆる下地印刷により構成されることもできる。下地印刷は、有利には、その特徴によりインクジェットでは印刷できないインク(例えば、固体粒子、特に金属粒子を含むインク)を用いて、本発明の方法の後で見えるようになる背景にそのインクを塗布することにより、装飾を得ることを可能にする。
【0018】
本発明によれば、供給された液滴から生じる液体の移行面への移行は、接着によって、すなわち、特に移行面がベース層表面で滑ることなく、生じる液体が移行面と接触する際に、その表面を湿らせることによって行われる。その液体の移行は、本発明によれば、移行面がベース層表面で滑ることなく移行面とその液体とが互いに接触する時に、移行面とその液体との間に作用するファンデルワールス力などの分子間力の作用によって行われ、したがってベース層に対して接線方向でのその液体を引きずる要素を防止する。この接線方向の要素を防止することにより、本発明では、供給された液滴により生じた生成物(液体)を、接触時に接線方向に局所的に大きく変形又は移動させることなく除去することが可能となり、したがってモチーフが現れる際に生成物がベース層で滑って、その結果、得られるモチーフの鮮明さ又は明瞭さに不具合が生じることを防止することができる。
【0019】
供給された液滴から生じる液体の移行面への移行は、その生じる液体が移行面と接触する時に行われ、移行面はベース層の表面と面しているか又は対向している。
【0020】
移行面は、移行ローラの転がり面とすることができる。ベース層表面での移行ローラの転動は、滑ることなく行われる。このために、好ましくは、移行ローラの回転は、特に基材の搬送と同期した方法で、つまりベース層と接触しての転がり面(移行面)の線速度がベース層に対して実質的にゼロとなるようにして作動される。移行ローラがベース層表面を滑ることなく転がる場合、ベース層に対する転がり面の相対速度はゼロであり、移行は静的な方法で局所的に行われるので、移行液体が液滴の供給位置に対して滑る結果として生じるモチーフでの欠陥を防止することができる。
【0021】
本発明によれば、移行面は、移行液体と接触するためにベース層又は基材と面している又は対向する任意の面とすることができる。例えば、ベース層に面している移行シートの前面であることもできる。同様に、移行要素としての移行ローラ又は移行シート(連続又は不連続)の代わりに、移行面によって構成されるいずれかの他の要素、例えば、ベース層に面する前面(移行面)を備えたプレートを使用することも考えられる。
【0022】
ベース層は、少なくとも部分的に基材表面に延在する。液体ベース層は、例えば、ローラ、スプレー、又は印刷、特にインクジェットによって塗布されることができる。
【0023】
液滴は、特に少なくとも部分的に液体であるベース層内又はベース層表面に供給され、液滴が供給された位置において、供給された液滴が液体ベース層に定着し、液体ベース層内に取り込まれ、及び/又は液体ベース層を置換するようにされる。モチーフは、特に移行液体を少なくとも部分的に、より特定の場合においては完全に除去することによって、ベース層表面に少なくとも部分的に現れて、ベース層内に又はベース層表面に形成される。特に、ベース層内で移行液体が占める体積が除去された時に、ベース層に浮き彫りが形成されることができる。
【0024】
液滴が供給された時に移行液体の特定の粘度、密度又は表面張力を得るために、例えば液滴の組成及び/又は液体ベース層の組成や、例えば液滴の射出速度又は射出量などの液体ベース層内若しくは表面への液滴の供給方法のパラメータ及び/又は本発明の方法の他のパラメータを変更することによって、供給された液滴が、供給された位置において液体ベース層内に定着し、液体ベース層内に取り込まれ、及び/又は液体ベース層を置換するようにして、得られるモチーフを調節する又は得られるモチーフに影響を与えることが可能である。このために、背景技術の項で挙げた開示の実用的な内容は、本発明による基材表面にモチーフを生成するための方法及びシステムに適用可能である限り、参照により本明細書に援用される。
【0025】
必要とされるモチーフを得るために変更されることができる本発明の方法の他のパラメータとしては、例えば、液滴、移行液体及び/又はベース層の固化若しくは硬化の程度、移行液体が移行される時に移行面によって加えられる圧力又は移行面がベース層の表面で配置される高さなどである。ベース層、液滴又は移行液体の固化の程度、特に硬化の程度は、固化が完了するまでに伝達される全エネルギーに対して、例えば放射又は熱によって伝達される、エネルギーの量によって決められることができる。
【0026】
特に、移行面に対する/又は移行面での移行液体の付着性又は湿潤性を増大させるため及び/又はベース層の付着性又は湿潤性を減少させるために、その液体が移行される時に、移行面の表面エネルギーが、好ましくは移行されるその液体の表面張力よりも大きくなるように及び/又はベース層の表面張力若しくは表面エネルギー以下となるように、液滴が供給される際の液体ベース層、液滴、及び/若しくは移行液体の粘度及び/若しくは表面張力、並びに/又は本発明の方法の少なくとも1つのパラメータが選択されることが考えられる。
【0027】
同様に、前の段落で述べたのと同じ目的で、移行液体が移行される時に移行液体の粘度が好ましくはベース層の粘度よりも小さくなるように、液滴が供給される時の液体ベース層、液滴及び/若しくは移行液体の粘度及び/若しくは表面張力、並びに/又は本発明の方法の少なくとも1つのパラメータが選択されることが考えられる。
【0028】
特に、移行液体は、ベース層よりも粘性が低くかつ低い表面張力を有し、一方で移行面の表面張力、すなわち表面エネルギーは、移行液体が移行される時に移行液体の表面張力よりも高い。これにより、その液体と移行面との間の分子間力により、接着による移行面へのその液体の移行が促進される。更に、移行液体が移行される際の移行液体の粘度を増加させることによって、内部の分子間力により、移行液体の内部凝集力を増加させることができ、したがって粘度を変更することによって、各移行において除去されるその液体の量に影響を与えることが可能である。
【0029】
好ましくは、移行液体が移行される時の移行液体の表面張力及び/又は粘度は、移行液体により移行面を湿らせることを促進するのに十分低いことが望ましい。同様に、好ましくは、移行液体が除去される時のベース層の表面張力及び/又は粘度は、ベース層により移行面を湿らせることを妨げるのに十分高くあるべきである。
【0030】
好ましくは、本発明によれば、ベース層は、移行面によって移行液体を移行する前に、ベース層の表面張力、すなわち表面エネルギーが移行面の表面エネルギー以上となるまで、少なくとも不完全に固化される。
【0031】
ベース層、供給された液滴及び/又は移行液体の固化は、例えば硬化によって、特に放射線によって、更に特に電磁放射線によって、好ましくはUVによって行われることができる。本発明の状況では、硬化という用語は重合の概念を含む。代わりに又は補足的に、固化は、例えば加熱、乾燥及び/又は蒸発などによって行われることができる。
【0032】
好ましくは、液滴は選択的に、より具体的にはパターン、例えばデジタルパターンに従って、特にデジタル印刷、好ましくはインクジェットによって供給される。特に、デジタルパターンは、例えば浮き彫りなどのモチーフがベース層の少なくとも1つの領域での画像と同期するようにして、基材での画像と位置合わせされる。これにより、例えば木目やひび割れを含む木材や岩石などの自然な色や質感を、より現実的に模倣することが可能である。
【0033】
本発明によれば、移行液体は、少なくとも部分的に供給された液滴によって定められるか又はその液滴を含む。つまり、移行液体の少なくとも一部は、供給された液滴のそれ自体による及び/又はベース層との相互作用による物理的及び/又は化学的変化、特に供給された液滴とベース層との間での化学反応、混合又は非混和性によって生じることができる。
【0034】
好ましくは、液滴及び/又は移行液体は、ベース層の固化に対して、液滴及び/又は移行液体の固化を無効にする又は阻害するように構成されてもよい。特に、液滴及び/又は移行液体は、ベース層よりも低い程度で固化するように、つまり、例えばベース層が完全に固化された時に、液滴及び/又は移行液体が不完全に固化されるように構成されることができる。例えば、水などの非硬化性材料の液滴又は移行液体を使用することによって、その固化を無効にすることが可能である。同様に、例えば、UV吸収剤によってUV硬化による固化を阻害することが可能である。
【0035】
ベース層、特に液体であるベース層は、例えば、UV重合性樹脂、特にアクリル樹脂又はアクリレート樹脂から構成されることができる。液滴は、UV重合性樹脂、特にアクリル樹脂又はアクリレート樹脂を更に含んでもよい。液滴は、硬化阻害剤、例えば、特にベース層と比較して、電磁放射線を不十分に吸収するように構成された硬化阻害剤を含んでもよい。UV硬化阻害剤の例は、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン及び/又はオキサミドである。同様に、液滴は、例えば界面活性剤などの表面張力増大剤を含むことができる。同様に、液滴は、例えば水及び/又はアルコール若しくはグリコールなどの溶媒である粘度低下剤を含むことができる。
【0036】
好ましくは、移行液体は、ベース層を少なくとも不完全に固化させる前及び/又はベース層を少なくとも不完全に固化させた後に、移行面によって少なくとも部分的に除去される。供給された液滴及び/又は移行液体は、少なくとも不完全に、特にベース層と共に固化されることができる。つまり、ベース層、液滴及び/又は移行液体は、本発明の方法において固化されるように、特に硬化可能であるように構成されることができる。
【0037】
液滴を供給する前に、液体ベース層を少なくとも不完全に固化させることも考えられる。これにより、液滴を供給することによって特定のモチーフを得るためのパラメータ、特に液滴が供給される際のベース層、液滴及び/又は移行液体の粘度及び/又は表面張力を調整することが可能になる。
【0038】
移行面は、ベース層に対して調節可能な圧力を加えるように、及び/又はベース層の表面に対して特定の高さに配置されるためにベース層に近づけられるように構成されることができる。そのために、移行面は、基材表面に対して高さを調節可能であることができる。高さを低くすることで、ベース層により大きな圧力を与えること、またその逆が可能である。同様に、高さの調節は特に、異なる厚さの液体ベース層及び/又は基材に、本発明の方法を適合することを可能にする。
【0039】
例えば線形アクチュエータによる、移行表面の高さを変位させる手段に加えて、例えばローラなどの反対圧力要素を含む補助圧力手段の使用が考えられる。
【0040】
本発明では、複数の移行面の使用が考えられる。これにより、連続する複数の移行面によって移行液体を徐々に除去することが可能である。連続する複数の移行面は、本発明の方法において連続的に適用される複数の移行面(連続する複数の移行ステップ)として理解されることができ、特に、本発明の方法に従ってモチーフを生成するシステムにおいて連続的に配置される。
【0041】
ベース層は、連続する複数の移行の適用の間に少なくとも不完全に固化されてもよい。つまり、ベース層は、本発明の方法での連続する複数の移行面の一連の適用時間の間に固化され、特に固化手段は、本発明の方法に従ってモチーフを生成するシステムにおいて、その連続する複数の移行面の間に配置される。また、1つの移行面(又は異なる複数の移行面)によって加えられる圧力が連続的に増加すること、及び/又はベース層の表面に対する移行面(1つ又は複数)の高さが連続的に減少することも考えられる。特に、ベース層に対して後の移行面によって加えられる圧力は、ベース層に対して前の移行面によって加えられる圧力よりも大きい。これにより、本発明の方法が進むにつれて、より深くに位置する移行液体の除去が促進される。
【0042】
好ましくは、本発明によれば、移行面は、除去された移行液体により生じた生成物が清掃される。これによれば、移行液体の清掃は、供給された液滴から生じた生成物が多かれ少なかれその除去領域の周囲に分散して、吸引手段などの補助的な清掃システムを必要とする、先行技術において知られている既知の清掃システムと異なり、連続的で容易となる。
【0043】
好ましくは、移行面は固体である。特に、移行面は、少なくとも部分的に液体を含まない。好ましくは、移行面には少なくとも部分的に接着剤がない。接着剤は、のりなどの固体を結合するための物質として理解されることができる。
【0044】
好ましくは、移行面は、移行液体と接触した時にベース層の表面と実質的に適合するような形態を有する。特に、移行面は、パネルの形態の基材若しくはシートの形態の基材に対して実質的に平らであるか、又は移行面の曲率は、基材若しくはベース層の曲率と実質的に同じである。また好ましくは、移行面は少なくとも基材の全幅に及ぶ。
【0045】
移行面は、実質的に平滑であることが考えられる。実質的に平滑な移行面は、特に2μm以下、更に特に1μm以下の表面粗さ(ISO規格4288:1998に従って測定されたRa)を有するものとして理解されることができる。これにより、移行面の清掃が容易になる。
【0046】
しかしながら、移行面の湿潤性を高めるために、例えば移行面に刻み目をつけることによって、十分に大きな粗さ、特に2μm(ISO規格4288:1998に従って測定されたRa)を超える粗さが提供されることができる。好ましくは、粗さは50μm以下、より好ましくは15μm以下(ISO規格4288:1998に従って測定されたRa)であり、それによりその清掃を大きく妨げることなく、移行面の湿潤性を高めることができる。
【0047】
移行面が実質的に変形可能であることも考えられる。実質的に変形可能な表面とは、本発明の方法によってベース層に得られる浮き彫りに適応することができ、浮き彫りを形成するベース層の表面と実質的に接触すると理解されることができる。
【0048】
本発明によれば、木目や亀裂を含む岩石や木材などの天然物を模した浮き彫りや質感を備えたモチーフを得ることができる。好ましくは、500μmまで、特に50~200μmの厚さで塗布されたベース層に対して、ベース層の厚さまでの深さ、特に1~500μm、更に特に2~200μm、更に特に3~50μmの深さの浮き彫りを得ることができる。
【0049】
実質的に変形可能な移行面は、転がり面に実質的に軟らかい材料、例えばゴム、特にEPDM(エチレンプロピレンジエン)を使用することによって得ることができる。本発明の目的において、実質的に軟らかいとは、特に、ISO7619-1:2011に従って測定されたショアAスケール(Shore-A)での硬度が50以下、好ましくは30以下であることと理解されることができる。
【0050】
代わりに又は補足的に、移行面の材料は、ベース層に対して除去されるべき移行液体の必要量に基づいて、転がり面の表面エネルギー又は表面張力の高い値がその湿潤性に有利に働き、又は逆も同様であることを考慮して、適切な表面エネルギー又は表面張力を有するものを選択することができる。この観点で、例えば、多孔質又は低密度の材料の使用は、表面張力効果又は毛管効果により移行液体の吸収を促進する。
【0051】
発明が解決しようとする課題の項で述べた目的を達成することに加えて、本明細書から導かれる追加の利点を提供するために、本発明は、上述した本発明の方法を実行することによって基材の表面にモチーフを生成するように構成されたシステム、特に装置又は機械もまた提供する。
【0052】
本発明によるシステムは、ベース層を備えた基材を搬送するための基材搬送手段と、ベース層内又はベース層表面に液滴を供給するための液滴供給手段とを含む。このシステムは、移行面が前記液体と接触した時に前記液体を移行面に移行するための移行面を備えた少なくとも1つの移行要素を更に含み、その接触が基材の移行と同期して、ベース層表面で滑らないように構成されていることを特徴とする。
【0053】
この同期は、特に、搬送されている基材又は固定されたままの基材となされることができる。例えば、移行要素が、滑ることなく基材表面を転がる移行ローラの形態を有する場合、それによればベース層と接触するローラのベース層に対する相対速度がゼロである。同様に、例えば移行要素が、ベース層と接触するシート又はプレートの形態である場合、それによれば基材の搬送に対応する方向において、シート又はプレートのベース層に対する相対速度がゼロである。
【0054】
搬送手段は、コンベアベルトを含むことができる。液滴供給手段は、少なくとも1つのデジタル印刷ヘッド、特にインクジェットを含むことができる。
【0055】
更に、本発明のシステムは、ベース層、液滴及び/又は移行液体を固化するための固化手段を含むことができる。固化手段は、硬化手段を含むことができ、特に放射線源、更に特に電磁放射線源、好ましくはUV放射線源を含むことができる。電磁放射線硬化手段は、可変波長を有することができる。
【0056】
本発明のシステムは更に、ベース層、特に液体であるベース層を塗布するための手段、ベース層に対して移行面を押圧する及び/又は高さを変位させるための手段、除去された移行液体により生じた生成物を清掃するための手段などを含むことができる。好ましくは、本発明のシステムは、上述された方法を実行するように構成された制御手段を含む。
【図面の簡単な説明】
【0057】
限定ではなく例示として以下に記載される本発明の様々な実用的な実施形態を説明することの助けとなる以下の図が、含まれる。
【
図1】本発明によるモチーフを生成するための方法及びシステムの第1の実施形態を概略的に示し、そこでは使用される基材はパネルの形態である。
【
図2】本発明によるモチーフを生成するための方法及びシステムの第2の実施形態を概略的に示し、そこでは使用される基材はシートの形態である。
【
図3】第1の実施形態に適用可能な、本発明によるローラの形態の移行要素による移行の実施形態を概略的に示す。
【
図4】第2の実施形態に適用可能な、本発明によるローラの形態の移行要素による移行の追加の実施形態を概略的に示す。
【
図5-8】第1及び第2の実施形態の両方に適用可能な、本発明による連続シートの形態の移行要素による移行のそれぞれの追加の実施形態を概略的に示す。
【
図9A-9D】本発明によるモチーフを生成するための方法及びシステムの第3の実施形態を概略的に示し、そこでは第1及び第2の実施形態と異なり、移行は基材が固定されたままで行われ、移行は基材がシステム内で搬送される間に行われる。移行は、プレートの形態の移行要素によって行われる。
【
図10-11】第1から第3の実施形態のいずれにも適用可能な、本発明による連続シートの形態の移行要素による移行のそれぞれの追加の実施形態を概略的に示す。
【
図12a-12c.13a-13e】移行液体清掃手段の異なる実施形態を概略的に示し、そのそれぞれが、独立して又は組み合わされて、先の図の実施形態に適用可能である。
【
図13c.13d】更に補助清掃手段の異なる実施形態を概略的に示し、
図13eは、清掃用生産物を再利用するための手段、特に清掃用生産物をリサイクルするための手段の実施形態を概略的に示す。これらの追加の実施形態は、それぞれが独立して又は組み合わされて、先の図の実施形態に同じように適用可能である。
【
図14】本発明による例示の実施形態に従って得られる浮き彫りの部分的な領域に対応するデジタルパターンを示す。
【
図15a.16a.17a】
図14に示されたデジタルパターンに基づいて本発明に従って得られた浮き彫りの写真を示す。
【
図15b.16b.17b】先行技術の比較方法に従って得られた浮き彫りの写真を示し、ここでは移行液体の除去が、本発明のように移行ローラによってでなく、ブラッシングによって行われる。
【
図18】
図14、15a、16a、17aに対応する本発明の例示の実施形態の変形例に基づく方法及びシステムのパラメータを表すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、本発明によるシステムの第1の実施形態の概略側面図を示し、そこでは基材(1)はパネルの形態である。図において、基材(1)は、対応する方法のステップが実行されながら、そのシステムの複数の異なるステーションを通って左から右の方向に前進して搬送されることができる。基材(1)を移動させるために搬送手段(60)が使用され、この搬送手段(60)は、それ自体公知の方法で、例えばコンベアベルト(63)又はローラコンベアテーブルを含む。
【0059】
図1に示すシステムの第1のステーションでは、液体ベース層(2)が、液体ベース層塗布手段(20)により基材(1)表面に塗布される。液体ベース層塗布手段(20)は、図示の実施形態ではローラによる塗布用のものであり、それ自体公知の方法で、塗布ローラ(21)及び添加ローラ(22)を含む。
【0060】
図1に見られるように、次に液滴が液滴供給手段(30)によって液体ベース層(2)に供給される。この液滴供給手段(30)は、図示の実施形態では、少なくとも1つのインクジェット印刷ヘッド(31)を含むデジタル印刷用のものである。各印刷ヘッド(31)は、それ自体公知の方法で、モチーフ(7)、この場合には浮き彫り又は質感の形態のモチーフ(7)を生成するために液滴が供給される異なる位置又は画素に対応する複数の液滴ノズルを含む。モチーフ(7)は、液体(3)を除去することによって現れる。
【0061】
供給された液滴は、それ自体公知の方法で、特に、粘度、表面張力、又は表面エネルギー、及び密度などのベース層(2)及び/又は液滴の特徴、並びに液滴の射出速度及び射出量などの液滴の供給パラメータにより、液滴が供給された位置において液体ベース層(2)に定着し、液体ベース層(2)に取り込まれ、及び/又は液体ベース層(2)を置換する。これらの特徴又はパラメータを変更して、得られるモチーフ(7)の特徴を操作することができ、特に、これは液滴が液体ベース層(2)の表面に堆積又は衝突する際の液滴の運動量を変化させることによって、液滴とベース層との間に作用する流体力学的な力に影響を及ぼし、また分子間接着力及び/又は凝集力に影響を及ぼす。
【0062】
本発明の方法又はシステムによれば、モチーフ(7)は、供給された液滴により生じた液体(3)を、移行によりベース層(2)から除去することによって基材(1)表面に得られる。言い換えれば、モチーフ(7)は、供給された液滴によって少なくとも部分的に定められるか、又は供給された液滴を少なくとも部分的に含む。モチーフ(7)を得る方法に応じて、上記の移行液体(3)は、例えば、供給された液滴からの液体のみを含むか、又は供給された液滴からの液体と、液滴が供給された位置における液体ベース層(2)からの液体との混合物からなる。供給された液滴により生じた液体(3)を除去することによってモチーフを得ることができる様々な方法が知られており、それらの全ては本発明に適用されることができる。
【0063】
引き続き
図1の実施形態では、ベース層(2)で移行液体(3)が形成されると、ベース層固化手段(40)が適用される。ベース層固化手段(40)は、図示の実施形態では、少なくとも1つの最初のUV硬化ランプ(41)によるUV放射硬化であり、その放射は、ベース層(1)と移行液体(3)との集まりに適用される。これらの最初のUV硬化ランプ(41)により、ベース層(2)に部分的な硬化が提供され、これにより本発明の方法のその後のステップ又は本発明のシステムのその後のステーションでは、特にベース層(2)を除去することなく、特に本発明による少なくとも1つの移行ローラ(10、11、12、13)によって、移行面(S)に液体(3)を移行することによって、移行液体(3)を除去することが可能になる。
【0064】
図1に示す実施形態では、3つの連続する移行ローラ(11、12、13)が適用され、それらがベース層(2)上を転がる時に移行液体(3)を徐々に除去するように構成されている。そのために、後の各移行ローラは、そのそれぞれの転がり面(S)、すなわち移行面(S)を通じて、ベース層(2)に対して増大する圧力を及ぼし、ローラ(11、12、13)は、基材(1)に対して次第に低い高さに配置される。本発明によれば、液体(3)は移行ローラ(11、12、13)による移行によって除去され、転がり面(S)の液体(3)との付着又は湿潤によって移行液体(3)が転がり面(S)に移行されるようにして、転がり面(S)がベース層(2)表面を転がる。
【0065】
図1の実施形態に示される各移行ローラ(11、12、13)について、移行液体清掃手段(50)が備えられ、これはブレード(51)の形態を取ることができ、ブレード(51)で転がり面(S)を掻き取ることによって、転がり面(S)から移行液体(3)を清掃するように構成されている。
【0066】
最後に、ベース層固化手段(40)が適用される。この固化手段は、
図1に示す実施形態では、少なくとも1つの最後のUV硬化ランプ(42)によってUV硬化させる。これらの最後のUV硬化ランプ(42)により、ベース層(2)は、モチーフ(7)が得られるまで完全な硬化が与えられる。
【0067】
図2は、本発明によるシステムの第2の実施形態の概略側面図を示し、そこでは第1の実施形態と異なり、基材(4)は連続シートの形態である。基材(4)は連続的に供給されて、対応する方法のステップが実行されながら、本発明のシステムの複数の異なるステーションを通る。基材(4)は、供給スプール(5)から供給され、基材(4)にモチーフ(7)が形成されると、回収スプール(6)に回収される。
【0068】
有利なことに、本発明は、いずれの形状又は構成の基材(1;4)にも適用されることができる。特に、連続シートなどの剪断応力に対する機械的抵抗が低い基材(4)は、剪断応力を受けてそのシートが破れる傾向にあるので、先行技術の方法は、例えばブラッシングによって、供給された液滴により生じた液体又は生成物を除去するためにベース層(2)に与えられなければならない磨耗力が、その基材(4)に適用されることを妨げるが、その先行技術の方法と異なり、本発明の方法は、シート(連続又は不連続)の形態の基材(4)に適用されることができる。
【0069】
従来技術と異なり、本発明によれば、供給された液滴により生じた液体(3)の除去は、実質的に分子間力の相互作用によって、すなわち静的な態様において又は静的若しくは準静的な態様である傾向を示して、ベース層から移行面への移行によって行われる。このようにして、より薄いシートなどの剪断応力に対する抵抗力が低い基材に適用されるモチーフを生成するために、適用された液滴により生じた生成物を有利に除去することが可能である。
【0070】
図1に示す第1の実施形態と同様に、
図2に示す第2の実施形態では、塗布ローラ(21)と添加ローラ(22)とを含むローラによるベース層塗布手段(20)によって、液体ベース層(2)が最初に基材(4)の表面に塗布される。次に、少なくとも1つのインクジェット印刷ヘッド(31)を含むインクジェット液滴供給手段(30)によって、液滴がベース層(2)で移行液体(3)を定めるようにして、液滴が供給される。
【0071】
同様に、
図2に示すこの第2の実施形態によるシステムは、最初のUV硬化ランプ(41)及び最後のUV硬化ランプ(42)によって形成される電磁放射硬化によるベース層固化手段(40)を含む。第1の実施形態と異なり、この第2の実施形態は、清掃ブレード(51)を含む対応する移行液体清掃手段(50)を備えた、単一の移行ローラ(10)を組み込んでいる。
【0072】
引き続き
図2では、基材(4)の搬送手段(60)は、それ自体公知の方法で、基材(4)のためのガイドローラ(図示せず)を含むことができる。同様に、液滴の供給領域及び/又は固化領域において、基材(1;4)の望ましくない変位、従って印刷及び/又は固化の欠陥を防止するために、本発明のシステムは基材の位置固定手段を組み込むことができる。基材(1;4)の位置固定手段は、例えば、それ自体公知の方法で、基材の吸引チャンバの形態とすることができる。望ましくない変位を防止するためのこれらの手段もまた、それ自体公知の方法で、特にパネルの形態の基材(1)に関する第1の実施形態に適用可能である。
【0073】
図3は、本発明による移行液体除去手段(3)の実施形態の概略側面図を示し、これは、例えば、
図1に示す第1の実施形態に適用可能であると共に、説明される他の実施形態と組み合わされることができる。
【0074】
図3により詳細に見られるように、本発明のシステムは、移行ローラ(10)の転がり面(S)によって、移行ローラ(10)がベース層(2)上を転がる際に、移行ローラ(10)を回転させるための移行ローラアクチュエータ(14)を含む。移行ローラアクチュエータ(14)は、基材(1)の搬送と同期して、移行ローラ(10)がベース層(2)表面を滑ることなく転がることができるように構成される。
【0075】
やはり
図3に見られるように、移行ローラ(10)は、基材(1)の反対側で作用するカウンターローラ(10’)を用いてベース層(2)を圧迫する。本発明のシステムは更に、移行ローラ(10)の高さ変位(71)のために、線形アクチュエータの形態で、ベース層(2)に対する移行ローラ押圧手段(70)を含む。
【0076】
図3はまた、コンベアベルト(63)を含む基材搬送手段(60)をより詳細に示しており、それは少なくとも1つのコンベアベルトガイドローラ(61、62)によってガイドされ、コンベアベルトアクチュエータ(64)によって作動される。
【0077】
図4は、本発明による移行液体除去手段(3)の実施形態の概略側面図を示し、それは、例えば、
図2に示す第2の実施形態に適用可能であると共に、説明される他の実施形態と組み合わされることができる。
【0078】
図4により詳細に見られるように、本発明のシステムは、移行ローラ(10)の転がり面(S)によって、移行ローラ(10)がベース層(2)上を転がる際に、移行ローラ(10)を回転させるための移行ローラアクチュエータ(14)を含む。移行ローラアクチュエータ(14)は、移行ローラ(10)がベース層(2)表面を滑ることなく転がることができるように構成される。
【0079】
図3に示す実施形態と同様に、
図4の実施形態では、移行ローラ(10)は、基材(4)の反対側で作用するカウンターローラ(10’)を用いてベース層(2)に押し付けられる。同様に、本発明のシステムは、移行ローラ(10)の高さ変位(71)のために、線形アクチュエータの形態で、ベース層(70)に対する移行ローラ押圧手段を更に含む。カウンターローラ(10’)は、基材(4)のシートのガイドを容易にするために、アクチュエータ(14’)によって回転される。
【0080】
図5~8は、本発明による移行液体除去手段のそれぞれの追加の実施形態の概略側面図を示しており、これらは、例えば、第1及び第2の実施形態の両方に適用可能であると共に、互いに組み合わされること及び説明される他の実施形態と組み合わされることができる。
【0081】
図5に示す実施形態では、上述した実施形態と異なり、移行面(S)は、移行ローラ(10)の一部を構成する代わりに、移行シート(15)の一部を構成する。図示の移行シート(15)は連続している。つまり、供給スプール(81)から回収スプール(82)へ連続的に供給される。この
図5に示す実施形態によれば、ベース層(2)から除去された移行液体(3)は、回収スプール(82)の廃棄のために又は回収スプール(82)を供給スプール(81)として再利用することを可能にするその後の処理のために、回収スプール(82)に蓄積されることが考えられる。
【0082】
図6に示す実施形態では、上述の実施形態と異なり、移行面(S)は、移行ローラ(10)の一部を構成する代わりに移行シート(15)の一部を構成し、更に移行シート(15)は、閉鎖周回路で連続的に供給される。つまり、移行シート(15)は無端ベルトの形態である。移行シート(15)は、ガイドローラ(83)によって閉鎖周回路でガイドされる。このようにして、清掃手段(50;51)又は加圧手段(70;73)などの補助手段を設置することができるように、例えばこの
図6に見られるように加圧ローラ(72)の上方の空間を利用することによって、本発明のシステムにおいてより大きな利用可能空間が達成される。
【0083】
図7に示す実施形態では、移行シート(15)は、複数のガイドローラ、この場合は2つのガイドローラ(83)と、複数の加圧ローラ(72)、この場合は2つの連続する加圧ローラ(72)とによって閉鎖周回路で連続的に搬送される。有利には、この
図7に示されるように連続する加圧ローラ(72)の間に、特に移行シート(15)が透明である場合について、例えば少なくとも1つのUV放射ランプ(43)などの電磁放射硬化手段の形態で、ベース層固化手段(40)が設置されることができる。これにより、この領域において移行シート(15)が、ベース層(2)表面を滑ることなくベース層(2)と接触したままである結果として、つまり本発明のシステムにおける基材(1)の搬送のための前進運動と連動する結果として、移行シート(15)とベース層(2)との間の空気又は酸素の量を低減することによって、ベース層(2)又は移行液体(3)の固化、特に硬化を最適化することが可能である。
【0084】
図7に示すガイドローラ(83)の代わりに、
図8に示すように、摺動ガイド要素(85)が使用されることができ、それは移行シート(15)と摺動要素(85)との間の摩擦を低減するために、適した材料及び形状からなる。同様に、加圧ローラ(72)の代わりに、摺動加圧要素(74)が使用されることができる。
【0085】
図9a~9dは、本発明による第3の実施形態の連続するステップを示しており、そこでは移行は、基材(1)が固定されたままで、プレート(16)の形態の移行要素によって行われる。
図9aにおいて基材(1)に対して一旦配置された移行要素(16)は、
図9bにおいてベース層(2)と接触するまで下降する。次に、
図9cにおいて移行要素(16)は上昇されて、ベース層(2)から液体(3)を取り除く。次に、移行面(S)が清掃される(50)。
【0086】
図10及び11に示す実施形態では、移行要素はシート(15)の形態である。移行面(S)は、
図10では基材(1)が固定されたまま、
図11では基材(1)が搬送される間に、ベース層(2)に対して押圧される。後者の場合、移行シート(15)は、ベース層(2)上で滑ることなく供給される。つまり、ベース層(2)と一体的に移動する。
図9a~9d、10に示す実施形態に関して、移行液体(3)がより深く除去されることに伴い、ベース層(2)の同じ表面に面して移行液体(3)と接触するように、移行面(S)が連続的に上昇及び下降することが考えられる。
【0087】
特に
図7~11に示される実施形態に存在する別の利点は、移行面(S)が移行液体(3)と接触し、特にベース層(2)に対する移行面(S)の2つの加圧時点の間に、移行面(S)がベース層に面したまま又は対向したままであるという特徴から得られる。例えば、
図7、8、10、11に示されるように、移行シートは、連続する2つの加圧要素(72;74)の間で連続的に延在する接触面により、一定の長さと時間に亘ってベース層(2)と接触する。同様に、
図9a~9dに示されるように、移行プレート(16)の前面は、一定の長さと時間に亘ってベース層(2)と接触する。このようにして、その接触時間を長くすることによって、移行面(S)への移行液体(3)の付着を促進することが可能となる。
【0088】
図12A~12C、13A、13Bは、移行面(S)に移行された液体により生じた生成物を清掃するための手段(50)の実施形態の概略側面図を示す。それは、本発明の実施形態に適用可能であると共に、互いに組み合わされること及び説明される他の実施形態と組み合わされることが可能である。
【0089】
図12a~12cに見られるように、図示の清掃手段(50)は、移行ローラ(10)の一部を構成する転がり面(S)に適用されているが、例えば、いずれかの他の移行要素(例えば、移行シート(15)又は移行プレート(16))の一部を構成する移行面(S)にも適用されることができる。
図13A、13Bでは、清掃手段(50)は、移行シート(15)の一部を構成する移行面(S)に適用されているが、いずれかの他の移行要素の一部を構成する転がり面に適用されることもできる。
【0090】
図12aは、複数の清掃ブレード、この場合には2つの連続した清掃ブレード(51、52)の形態の清掃手段(50)を示す。移行された液体(3)のそのブレードによる捕集を容易にするために、例えば、移行された液体(3)により生じた生成物の溶媒などの清掃用生産物(56’)が、特に清掃用生産物アプリケータ(56)によって適用されることができる。
【0091】
図12bは、清掃ブレード(53’)によって清掃されるようにされた、移行液体(3)により生じた生成物を除去する清掃ローラ(53)の形態の清掃手段(50)を示す。清掃ローラ(53)の外周面は、例えば金属製であるなど、実質的に剛性を有するように構成されることができる。このようにして、ブレードとその面との接触による摩耗によれば、その面が変形可能である場合よりも、清掃ローラ(53)により大きな耐摩耗性を提供することが可能である。同様に、ブレードとローラでの起こり得る引っ掛かりを防止することによって、本発明のシステムの安全性が高められる。清掃後の生産物を回収するために、清掃用生産物回収タンク(57)が配置されることができる。
【0092】
図12cは、清掃ブラシ(54)の形態の清掃手段(50)を示す。清掃ブラシ(54)には、清掃用生産物供給タンク(59)から供給される清掃用生産物を含浸させることができる。
図13aは更に、加圧空気ブロワー(55)などの流体清掃ブロワーの形態の清掃手段(50)を示し、それは移行生成物を除去することを可能にし、及び/又は移行生成物に添加された清掃用生産物を、その除去のために乾燥させることを可能にする。
図13bは、更に清掃された移行生成物を吸引するための清掃吸引器(58)を含む清掃手段(50)を示す。
【0093】
例えば
図13c~13eに示されるように、本発明によれば、システムは、移行面(S)の移行液体(3’)を清掃するため移行面(S)の乾式清掃手段(58、511)及び/又は湿式清掃手段(56、56’、512)を、それぞれ清掃用生産物(56’)の非存在下又は存在下で含む。清掃用生産物(56’)は、特に移行面(S)に移行された移行液体(3’)の生成物を溶解する溶媒、特に清掃用生産物(56’)を移行液体(3’)の生成物と混合して、移行液体(3’)の生成物を溶解する溶媒であり、この生成物は液体又は少なくとも不完全に固化した状態である。
【0094】
特に、
図13c、13dは、第1の乾式清掃ブレード(511)の形態の乾式清掃手段(90)を示す。第1の乾式清掃ブレード(511)は、移行液体(3’)の生成物を分離するために移行面(S)を乾式で掻き取ることによって、つまり、移行面(S)に清掃用生産物を塗布せずに、移行面(S)を清掃するように構成されている。同じ
図13c、13dは、第2の湿式清掃ブレード(512)の形態の湿式清掃手段、つまり、ブレード(512)が移行面(S)を掻き取る際に、移行液体(3’)の生成物が清掃用生産物と混合又は清掃用生産物に含浸されて、移行面(S)を清掃するように構成された湿式清掃手段も示しており、それにより移行面(S)からの生成物の除去を容易にする。
【0095】
乾式清掃手段(58、511)及び湿式清掃手段(56、56’、512)を移行ローラ(10)表面で個別に又は組み合わせて使用すること、並びに先に説明した実施形態と組み合わせて使用すること、例えば移行ローラ(10)をいずれかの他のタイプの移行要素に置き換えることは、排除されない。同様に、例えばブラシ、ローラ、ブロワー又は吸引などの、一般に乾式又は湿式で適用されることができるブレード以外の清掃手段の他の実施形態も考えられる。例えば、
図13c、13dは、真空吸引機(58)の形態の乾式清掃手段も示す。
【0096】
同じ
図13c、13dは、清掃手段がその清掃機能を実行するのを助けるように構成された補助清掃手段を更に示す。補助清掃手段は、その機能に応じて2つの主なタイプに区別され、本明細書ではそれぞれ補助乾式清掃手段(90)及び補助湿式清掃手段(90’)と称する。
【0097】
補助乾燥清掃手段(90)は、乾燥清掃手段(58、511)による移行液体(3’)の生成物の移行面(S)からの分離を、その移行液体(3’)の生成物の固化、乾燥及び/又は蒸発によって促進する補助清掃手段である。したがって、補助乾燥清掃手段(90)は乾燥清掃手段(58、511)に適用され、その手段は、乾燥清掃手段(58、511)の外部にあるか又はそれとは異なるものである。これらの補助乾燥清掃手段(90)は、例えば、乾燥清掃手段(58、511)によって移行面(S)から清掃される生成物(3’)の、IRランプ(93、94)を備えたヒータなどの加熱手段、送風手段(特に加熱された空気を用いた)、及び/又は電磁放射、特にUV(91、92)による硬化手段を含むことができる。
【0098】
補助乾式清掃手段(90)は、乾式清掃手段(58、511)によって行われる移行面からの生成物(3’)の除去の前及び/又は除去中に適用されることができる。特に、移行液体(3’)の生成物へのこれらの補助手段(90)の適用は、その生成物が移行面(S)から分離される清掃手段(例えば、ブレード、ブラシ、ローラ、ブロワー、真空吸引機など)の周囲で行われることが考えられる。補助乾式清掃手段(90)は、移行面(S)への生成物(3’)の付着力が弱くなる結果として、機械的又は流体的手段による移行面(S)からの生成物(3’)の分離を容易にする。これらの補助乾式清掃手段(90)はまた、清掃手段の表面に堆積し得る液体残留物がある表面よりも、固体残留物がある表面を清掃する方が一般的に容易であるため、清掃手段自体の保守を簡単にすることもできる。
【0099】
更に、補助湿式清掃手段(90’)は、移行面(S)の湿式清掃手段(56、56’、512)によって塗布された清掃用生産物(56’)、特に移行面(S)に移行された移行液体(3’)の生成物の溶媒を、乾燥及び/又は蒸発させることによって制御された方法で除去する補助清掃手段であり、したがって湿式清掃手段(56、56’、512)に適用可能である。補助湿式清掃手段(90’)によって行われる清掃用生産物(56’)の除去は、同じ清掃用生産物(56’)に乾式清掃手段(90)又は湿式清掃手段(90’)を適用しないときに行われることが考えられる。
【0100】
これらの補助湿式清掃手段(90’)は、例えば、IRランプ(95)を備えたヒータなどの加熱手段、及び/又は送風手段(97)(特に加熱された空気を用いた)を含むことができる。これらの補助手段(90’)は、清掃用生産物(56’)が塗布された後で、移行液体(3)を移行するために移行面(S)がベース層(2)と接触する前に、移行面(S)表面に適用される。補助湿式清掃手段(90’)により、移行面(S)がベース層(2)表面で移行液体(3)と接触した時に、移行液体(3)を移行要素(10)に適切に移行するために、移行面(S)が適切な付着特性(湿潤性又は表面張力など)を有するように調整することが可能になる。
【0101】
同様に、補助乾式清掃手段(90)及び補助湿式清掃手段(90’)として、熱伝導によって移行要素(10)自体を加熱することも考えられる。例えば
図13c、13dに示されるように、移行ローラ(10)は、移行面に少なくとも局所的に、加熱のための電気抵抗を含むことができるヒータ(96)によって加熱される。これらの補助清掃手段(96)は、乾式清掃手段によって除去されるまで移行面(S)表面に移行液体(3’)が残っている間に移行要素に移行された移行液体(3’)の生成物を加熱することによる補助乾式清掃手段(90)と、移行面(S)から除去するために清掃用生産物(56’)の残留物を加熱することによる補助湿式清掃手段(90’)の両方として使用可能であるという利点を有する。
【0102】
本発明によれば、システムが、清掃用生産物(56’)を再利用するための手段を備えた湿式清掃手段を含んでもよいことが考えられる。
図13eは、湿式清掃手段(56、56’、512)に適用される清掃用生産物の再利用手段(59、591)を示す。清掃用生産物(56’)を再利用するためのこれらの手段(59、591)は、清掃用生産物供給タンク(59)と、例えばアプリケータ(56)による移行面(S)への清掃用生産物の塗布との間に、清掃用生産物循環ダクト(591)を通じて、その再利用のために清掃用生産物(591)を再循環するための手段を含む。
【0103】
同様に、
図13eにも示されているように、再利用手段(59、591)は、再利用される清掃用生産物のための清掃用生産物リサイクル手段(592、593、594)を含む。清掃用生産物リサイクル手段(592、593、594)は、リサイクルユニット(593)(例えば、清掃用生産物の蒸留による)を含むことができ、リサイクルユニット(593)は、清掃用生産物循環ダクト(592)によって清掃用生産物供給タンク(59)に接続され、清掃用生産物の蒸留によるリサイクル廃棄物は、排出ダクト(594)により取り出される。
【0104】
溶剤の清掃用生産物としては、例えばアセトン、ブチルグリコール、及びジプロピレングリコールメチルエーテル(分子量の小さいものから大きいものへの順)を用いることができる。高分子量の溶剤は揮発性が低く、処理及び再利用が容易であるという利点がある。しかしながら、上記で説明したように、移行要素(10)表面に清掃用生産物(56')が存在すると、接触中の湿潤特性又は表面張力特性が変化する可能性があることを考慮すると、移行面(S)への清掃用生産物(56')の塗布後に、移行要素(10)がベース層(2)との接触に戻って更なる移行液体(3)を再度除去する前に、清掃用生産物の蒸発を促進するために、清掃用生産物の揮発性が十分に高いのも興味深いものである。したがって、適切な妥協解決手段は、例えばブチルグリコールなどの分子量が55~150g/mol、好ましくは100~125g/mの清掃用生産物(56’)、特に移行液体(3’)の生成物の溶媒を使用することである。更に、清掃用生産物の揮発性は、極性が高いほど清掃用生産物の揮発性が低くなることを考慮して、その極性を変更することによって変化させることができる。清掃用生産物(56’)が移行液体(3’)の生成物を適切に溶解するために、その生成物の適切な極性も選択されることができ、好ましくは実質的に類似である。
【0105】
本発明によれば、異なるステップを実行するための異なる特定の手段を含むシステムについて説明したことは、通常はそのステップを含むモチーフを生成するための方法にも適用され、本発明による方法は、説明されたシステム又は手段を直接的に使用することに必ずしも限定されないことを意味する。
【0106】
本発明の方法の一実施形態によるベース層に凹の浮き彫り又は窪みを形成する実施例
この実施例のために、厚さ5mmのSPC(Stone Plastic Composite)パネルの形態の基材を使用した。予め処理された基材の平坦な前面に、液体ベース層をローラで塗布した。塗布した液体ベース層の特徴は、以下の通りである。
組成物:UV硬化性透明重合樹脂
粘度(25℃):7.5Pa・S
表面張力(25℃):22mN/m
密度(25℃):1.4g/cm3
厚さ:175μm
【0107】
次に、液滴をデジタルインクジェット印刷によって液体ベース層表面に射出した。供給した液滴の特徴は、以下の通りである。。
組成物:液体ベース層に使用した樹脂との対比で、不十分にUV硬化性である透明重合樹脂
粘度(25℃):11mPa・S
表面張力(25℃):35mN/m
密度(25℃):1.0g/cm3
射出速度:5m/S
射出量:25~45pL
【0108】
次に、ベース層と移行液体の集まり(液滴と液体ベース層の混合物)に対して、ベース層が不完全に硬化(γ≒25%)するまで、最初のUV電磁放射線を照射した。照射は、Ga及びHgのUVランプにより、120W/cmで行った。上記最初のUV照射が適用されると、ベース層の測定表面エネルギー(25℃)は58mN/mであった。
【0109】
次いで、実質的に平滑な転がり面(移行面)を備え、基材の平坦面に対応して基材の全幅を覆う、以下の特徴を有する本発明による4つの連続する移行ローラを使用して移行液体を除去した。
転がり面の材質:EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、硬度25ショアA、ISO国際標準規格7619-1:2011に従って測定
転がり面の粗さ:2μm(ISO国際標準規格4288に従って測定されたRa)
移行ローラの外径(転がり面に相当):245mm
転がり面の表面エネルギー:56mN/m
【0110】
移行ローラは、圧力を高めながらベース層を押圧することによって適用され、ベース層の表面レベルから始めて、それぞれの連続する移行ローラの高さを、約50μmずつに対応させて下げた。
【0111】
最後に、ベース層と(残りの)移行液体の集まりに、ベース層の硬化エネルギーが完了するまで、最後のUV電磁放射線を照射した。照射は、Ga及びHgUVランプにより、120W/cmで行った。測定された総エネルギー(UV-A、UV-B、UV-Cの範囲での最初及び最後の放射エネルギーの合計)は440mJ/cm2であった。
【0112】
後の仕上げ層も処理も適用されず、浮き彫りは得られたベース層で直接得られた。
【0113】
説明した例示の実施形態は、最初のUV硬化と最後のUV硬化との間での移行ローラの数(N)を変化させ、更に最初の硬化度(γ)を変化させることによってなされた。
図18のグラフは、最初の硬化度の値γ≒25%(下側曲線)、γ≒75%(中間曲線)及びγ≒100%(上側曲線)について、硬化を連続するローラ間で行わずに、連続する各移行ローラ(N=1~8)への移行後に結果としての除去された移行液体を、全体に対する除去された移行液体の割合(%p)として示す。
【0114】
このグラフに見られるように、最初の硬化の程度が低いほど、特にγ≒25%で、より少ない数(N)の移行ローラでより多くの量の移行液体を除去することができる。更に、その最初の硬化は、移行液体のないベース層が転がり面に移行されることが防止されて、移行液体のみが移行されるように、最初の硬化でのベース層の表面エネルギーが、転がり面の表面エネルギー以上であれば十分である。
【0115】
上記の例示の実施形態と、ブラッシングによるベース層の凹の浮き彫り又は窪みの生成との比較
説明した例示の実施形態で使用したものと同じ特徴を有する基材を使用した。同様に、液体ベース層及び液滴も、同じ特徴及び同じ方法で提供された。
【0116】
説明した例示の実施形態と異なり、ベース層と移行液体の集まり(液滴と液体ベース層の混合物)に、ベース層が完全に硬化(γ≒100)するまで、つまり440mJ/cm2の総エネルギーを加えることによって、1回の最初のUV電磁放射線を照射した。
【0117】
次いで、説明した例示の実施形態とほぼ同量の移行液体を除去するために、金属ブラシを備えた2つの連続するブラッシングローラを用いたブラッシングによって移行液体を除去した。第1のブラッシングローラは、基材の前進方向でベース層と接触して線速度で適用され、一方で第2の次に続くブラッシングローラは反対方向に適用された。使用されたブラッシングローラは、以下の特徴を有する。
外径:220mm
毛の長さ:40mm
回転速度:650rpm
【0118】
後の仕上げ層も処理も適用されず、浮き彫りは得られたベース層で直接得られた。
【0119】
図14は、得られた浮き彫りの一部領域(実寸で7cm×10cmの領域に相当)について、液滴のデジタルインクジェット印刷で処理されたデジタルパターンを示す。このデジタルパターンはグレースケール画像の形態をしており、そこでは黒色は浮き彫りの最大深さ(175μm)を表し、白色は深さがない(ベース層と同じ高さである)ことを示す。
【0120】
図15aは、
図14に示したデジタルパターンに対応する部分的な領域についての、説明した本発明による例示の実施形態に基づいて得られた浮き彫りの平面視の垂直写真である。
図16aは、15aと同じ写真の拡大された詳細を示す。
【0121】
図17aは、
図16aの写真と同じ部分的な領域についての、本発明による例示の実施形態に基づいて得られた浮き彫りの角度を付けての写真である。
【0122】
図15a、16a、17aと異なり、
図15b、16b、17bは、同じデジタルパターンで得られた同じ部分的な領域に対応するが、ブラッシングによって凹の浮き彫りを生成する例を適用して得られた浮き彫りについての写真を示す。
【0123】
これらの図から明らかなように、本発明による例示の実施形態によって得られた浮き彫りは、金属ブラシの摩耗による欠陥がないだけでなく、ブラッシングによる例では知覚できない窪みを備えた領域を有しており、より高い精細度を有する。ブラッシングの金属ブラシによる磨耗の結果として、粗野な外観を有する表面を備えたモチーフを得ることが興味深いと思われるかもしれないが、他方の場合では、完全に滑らかであるか又は適切な光沢を有する表面を得ることが興味深いと思われることができる。そのために本発明によれば、移行液体を除去するために、ブラシ又は他の公知の除去手段の使用を省略又は低減することができる。しかしながら、本発明によれば、その公知の手段を補完的に使用することもできる。
【符号の説明】
【0124】
1 パネルの形態の基材
2 ベース層
3 移行液体
4 連続シートの形態の基材
5 連続シートの形態の基材供給スプール
6 連続シートの形態の基材回収スプール
7 得られたモチーフ
10 移行ローラ
10’ 移行ローラのカウンターローラ
11 第1の移行ローラ
12 第2の移行ローラ
13 第3の移行ローラ
14 移行ローラ回転アクチュエータ
14 移行カウンターローラの回転アクチュエータ
15 移行シート
16 移行プレート
16’ 移行プレートのカウンターローラ
20 液体ベース層塗布手段
21 ベース層塗布ローラ
21’ ベース層塗布ローラのカウンターローラ
22 ベース層添加ローラ
30 液滴供給手段
31 インクジェットヘッド
40 固化手段
41 最初のUV硬化ランプ
42 最後のUV硬化ランプ
43 中間のUV硬化ランプ
50 移行液体清掃手段
51 移行面清掃ブレード
52 追加の移行面清掃ブレード
53 清掃ローラ
53’ 清掃ローラ清掃ブレード
54 移行面清掃ブラシ
55 清掃空気ブロワー
56 清掃用生産物アプリケータ
56’ 清掃用生産物
57 清掃用生産物回収タンク
58 清掃吸引器
59 清掃用生産物供給タンク
511 乾式清掃ブレード
512 湿式清掃ブレード
591 清掃用生産物の再利用のための清掃用生産物循環ダクト
592 清掃用生産物のリサイクルのための清掃用生産物循環ダクト
593 清掃用生産物の蒸留によるリサイクルユニット
594 清掃用生産物の蒸留によるリサイクル廃棄物排出ダクト
60 基材搬送手段
61 第1のコンベヤベルトガイドローラ
62 第2のコンベヤベルトガイドローラ
63 基材コンベヤベルト
64 コンベアベルトガイドローラの回転アクチュエータ
70 基材に対する移行面押圧手段
71 移行ローラの変位アクチュエータ
72 移行シートの加圧ローラ
72’ 加圧ローラのカウンターローラ
73 加圧ローラの変位アクチュエータ
74 移行シートの摺動加圧要素
74’ 摺動加圧要素のカウンターローラ
75 摺動加圧要素の変位アクチュエータ
76 加圧ローラの回転アクチュエータ
77 移行プレートの変位アクチュエータ
80 移行シート連続供給手段
81 移行シート供給スプール
82 移行シート回収スプール
83 移行シートのガイドローラ
84 移行シートのガイドローラの回転アクチュエータ
85 移行シートの摺動ガイド要素
90 補助乾式清掃手段
90’ 補助湿式清掃手段
91 乾式清掃前のUV硬化ランプ
92 乾式清掃中のUV硬化ランプ
93 乾式清掃前のIR加熱ランプ
94 乾式清掃中のIR加熱ランプ
95 湿式清掃後のIR加熱ランプ
96 熱伝導ローラヒーター
97 湿式清掃後の空気ブロワー
S 移行面
%p 移行液体除去率
N 移行ローラ数
γ ベース層の最初の硬化度
【国際調査報告】