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特表2024-508297自動緊急ブレーキに応答して乗員の動きを推定するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】自動緊急ブレーキに応答して乗員の動きを推定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/015 20060101AFI20240216BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20240216BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240216BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240216BHJP
   B60R 21/263 20110101ALN20240216BHJP
   B60R 22/195 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
B60R21/015 312
B60R21/00 992
B60R21/00 993
G08G1/16 C
B60T7/12 C
B60R21/263
B60R22/195
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552093
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 IB2021051633
(87)【国際公開番号】W WO2022180429
(87)【国際公開日】2022-09-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ バートレット
(72)【発明者】
【氏名】カイオラ リー
(72)【発明者】
【氏名】キラン バラスブラマニアン
【テーマコード(参考)】
3D018
3D054
3D246
5H181
【Fターム(参考)】
3D018MA01
3D018PA05
3D054EE11
3D054EE30
3D246DA01
3D246GB30
3D246GC16
3D246HA86A
3D246HA94A
3D246HA95A
3D246HB12A
3D246LA72Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181EE02
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
車両の乗員を保護するための作動可能な安全装置を制御する方法は、車両の衝突が差し迫っていることを決定するために、先進運転者支援システム(ADAS)を利用するステップを含む。差し迫った車両衝突の存在の決定に応答して、質量ばねダンパモデルは、感知された車両の前後方向加速度(IMU_X)を使用して、差し迫った車両衝突の結果として生じる乗員の動きを推定する。推定された乗員の動きを使用して、衝突に応答して、作動可能な安全装置の展開をいかに制御するかを決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員を保護するための作動可能な安全装置を制御する方法であって、前記方法は、
差し迫った車両衝突を感知するステップと、
前記差し迫った車両衝突の感知に応答して、前記差し迫った車両衝突が発生するときに結果として生じる推定される乗員の動きを計算するステップと、
前記推定される乗員の動きに応答して前記作動可能な安全装置を制御するステップと、を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記差し迫った車両衝突を感知するステップは、自動緊急ブレーキ(AEB)減速フラグを受信するステップを含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記AEB減速フラグを受信するステップは、先進運転者支援システム(ADAS)をポーリングするステップを含み、前記先進運転者支援システムは、前記車両の近傍の物体を検出するセンサを実装し、検出された前記物体と前記車両との間の相対速度を計算して前記差し迫った車両衝突を感知し、それに応答して前記AEB減速フラグを出力する、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記AEB減速フラグを、AEBブレーキプロファイルの持続時間を推定する所定の期間ラッチするステップを更に含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記差し迫った車両衝突を感知するステップは、自動緊急ブレーキ(AEB)ブレーキフラグを受信するステップを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記AEB減速フラグを受信するステップは、前記AEB減速フラグについて車両安定システムにポーリングするステップを含み、前記AEBブレーキプロファイルの持続時間全体を通してオンのフラグが立てられる、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記推定される乗員の動きを計算するステップは、乗員の動きを推定するために、ばね質量ダンパモデリングを実行するステップを含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、乗員の動きを推定するために、ばね質量ダンパモデルで車両の前後方向加速度(IMU_X)を評価するステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、乗員の頭部の動きを推定する第1ばね質量ダンパモデルと、乗員の胸部の動きを推定する第2ばね質量ダンパモデルと、を実装するステップを含む、方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、前記ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、シートベルトウェビングの繰り出しを可能にするアンロックされた状態でのシートベルトによる乗員の動きを推定する第1ばね質量ダンパモデルと、シートベルトウェビングの繰り出しをブロックするロックされた状態でのシートベルトによる乗員の動きを推定する第2ばね質量ダンパモデルと、を実装するステップを含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
経時的に車両の前後方向加速度(IMU_X)の大きさを評価するメトリックを実行するステップと、
機械式シートベルトロックに関連する所定の閾値未満に留まる車両の前後方向加速度の大きさに応答して、第1ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、
機械式シートベルトロックに関連する所定の閾値を超える車両の前後方向加速度の大きさに応答して、第2ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、を更に含む方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
作動可能な制御式拘束シートベルトのE‐ロックステータスをポーリングするステップと、
前記E‐ロックステータスがオフであることに応答して、第1ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、
前記E‐ロックステータスがオンであることに応答して、第2ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、を更に含む方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、
シートベルトのバックルのステータスを感知するステップと、
前記シートベルトのバックルのステータスが外されていることに応答して、第2ばね質量ダンパモデルの実装を防止するステップと、を更に含む、方法。
【請求項14】
請求項7に記載の方法であって、前記ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、
シートベルトウェビングの繰り出しを可能にするアンロックされた状態でのシートベルトによる乗員の頭部の動きを推定する第1ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、
シートベルトウェビングの繰り出しを可能にするアンロックされた状態でのシートベルトによる乗員の胸部の動きを推定する第2ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、
シートベルトウェビングの繰り出しをブロックするロックされた状態でのシートベルトによる乗員の頭部の動きを推定する第3ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、
シートベルトウェビングの繰り出しをブロックするロックされた状態でのシートベルトによる乗員の胸部の動きを推定する第4ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
車両の前後方向加速度(IMU_X)の大きさを経時的に評価するメトリックを実行するステップと、
機械式シートベルトロックに関連する所定の閾値未満に留まる車両の前後方向加速度の大きさに応答して、第1および第2ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、
機械式シートベルトロックに関連する前記所定の閾値を超える車両の前後方向加速度の大きさに応答して、第3および第4ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、を更に含む方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記推定される乗員の動きに応答して前記作動可能な安全装置を制御するステップは、
エアバッグを膨張させるためにインフレータの第1ステージおよび/または第2ステージを作動させるかどうかを決定するステップ、
エアバッグを膨張させるためにインフレータの第1ステージおよび/または第2ステージを作動させるタイミングを決定するステップ、
エアバッグから膨張流体を排出するための作動可能なベントを作動させるかどうかを決定するステップ、
エアバッグから膨張流体を排出するための作動可能なベントを作動させるタイミングを決定するステップ、
シートベルトのロードリミッタを作動させるかどうかを決定するステップ、
シートベルトのプリテンショナを作動させるかどうかを決定するステップ、および、
乗員にシートベルトを締め付けるために、作動可能な制御式拘束装置(ACR)を作動させるかどうかを決定するステップ、の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記差し迫った車両衝突が発生するときに結果として生じる前記推定される乗員の動きを計算するステップは、
前記推定される乗員の動きを計算するために、感知される乗員の体重を実装するステップ、
車両構造に対する乗員の位置を計算するために、感知されるシートの位置を実装するステップ、
車両構造に対する乗員の位置を計算するために、感知されるシートの傾きを実装するステップ、
車両構造に対する乗員の位置を計算するために、感知されるステアリングホイールおよび/または計器パネルの位置を実装するステップ、
前記推定される乗員の動きを計算するために、感知されるシートベルトのバックルのステータスを実装するステップ、の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、作動可能な制御式拘束具(ACR)のシートベルトの繰り出し表示をポーリングするステップと、前記推定される乗員の動きの計算に対するフィードバックとして表示されたシートベルトの繰り出しを実装するステップと、を含む、方法。
【請求項19】
車両安全システムであって、
作動可能な安全装置と、
差し迫った車両衝突を感知するセンサと、
推定される乗員の動きに応答して前記作動可能な安全装置を制御するための請求項1に記載の方法を実行するように構成されたコントローラと、を備える、車両安全システム。
【請求項20】
請求項19に記載の車両安全システムであって、
前記作動可能な安全装置は、エアバッグインフレータ、作動可能なエアバッグベント、作動可能なシートベルトリトラクタ、およびシートベルトリトラクタを含む作動可能な制御式拘束具(ACR)の少なくとも1つを備え、
前記センサは、運転者を運転機能において支援するように構成された先進運転者支援システム(ADAS)のセンサを備え、
前記コントローラは、エアバッグコントロールユニット(ACU)を備える、車両安全システム。
【請求項21】
車両安全システムであって、
エアバッグならびに前記エアバッグを膨張および展開させるための膨張流体を供給するように作動可能なインフレータを備えるエアバッグモジュールと、
前記インフレータの作動ならびに前記エアバッグの膨張および展開を制御するように構成されたエアバッグ制御ユニット(ACU)であって、車両の前後方向加速度を測定し、それを示す車両の前後方向加速度(IMU_X)値を提供するように動作する慣性モニタリングユニット(IMU)を備える、エアバッグ制御ユニット(ACU)と、を備え、
前記ACUは、先進運転者支援システム(ADAS)および車両安定性制御システムの少なくとも1つから車両自動緊急ブレーキ(AEB)表示を取得するように構成され、
前記AEB表示に応答して、前記ACUは、質量ばねダンパモデルを実行し、前記IMU_X値に基づいて推定される乗員の動きを計算するように構成されている、車両安全システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この記載は、車両の安全システムに関する。より詳細には、この記載は、車両の自動緊急ブレーキが作動されるときに、車両の乗員の動きを推定するための車両安全システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両安全システムは、作動可能なシートベルトリトラクタおよびエアバッグなど、作動可能な拘束具を含む。車両安全システムはまた、車両の状態および/または乗員の状態を感知するセンサと、センサによって提供される信号を監視するコントローラと、を含む。閾値の大きさを超える車両衝突を検出すると、コントローラは、作動可能な拘束具を作動させて乗員の保護を支援する。
【0003】
先進運転者支援システムは、自動緊急ブレーキなどの機能を提供する。先進運転者支援システムは、車両の周囲の領域を感知して表示するためのレーダ/ライダセンサおよびカメラセンサなどのセンサを含む。先進運転者支援システムはまた、センサから提供される信号を監視するコントローラを含む。自動緊急ブレーキを実装するために、コントローラは、センサからの信号を評価し、差し迫った前面衝突を検出する。差し迫った前面衝突が検出されると、コントローラによって、車両ブレーキが自動的に適用される。
【発明の概要】
【0004】
車両安全システムは、自動緊急ブレーキに応答して乗員の動きを推定する方法を実装する。緊急ブレーキの後に車両が衝突した場合、安全システムは、推定された乗員の動きに応じて、作動可能なシートベルトおよび/またはエアバッグなどの乗員拘束具の作動を適合させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、車両の乗員を保護するための作動可能な安全装置を制御する方法は、差し迫った車両衝突を感知するステップを含む。この方法はまた、差し迫った車両衝突の感知に応答して、差し迫った車両衝突が発生するときに結果として生じる推定される乗員の動きを計算するステップを含む。この方法はさらに、推定される乗員の動きに応答して作動可能な安全装置を制御するステップを含む。
【0006】
差し迫った車両衝突を感知するステップは、自動緊急ブレーキ(AEB)減速フラグを受信するステップを含むことができる。AEB減速フラグを受信するステップは、先進運転者支援システム(ADAS)をポーリングするステップを含むことができる。ADASは、車両の近傍の物体を検出するセンサを実装し、検出された物体と車両との間の相対速度を計算して差し迫った車両衝突を感知し、それに応答してAEB減速フラグを出力する。AEB減速フラグは、AEBブレーキプロファイルの持続時間を推定する所定の期間ラッチすることができる。
【0007】
差し迫った車両衝突を感知するステップは、自動緊急ブレーキ(AEB)ブレーキフラグを受信するステップを含むことができる。AEB減速フラグは、AEB減速フラグについて車両安定システムにポーリングするステップを含むことができて、AEBブレーキプロファイルの持続時間全体を通してオンのフラグが立てられる。
【0008】
推定される乗員の動きを計算するステップは、乗員の動きを推定するために、ばね質量ダンパモデリングを実行するステップを含むことができる。ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、乗員の動きを推定するために、ばね質量ダンパモデルで車両の前後方向加速度(IMU_X)を評価するステップを含むことができる。
【0009】
ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、乗員の頭部の動きを推定する第1ばね質量ダンパモデルと、乗員の胸部の動きを推定する第2ばね質量ダンパモデルと、を実装するステップを含むことができる。
【0010】
ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、シートベルトウェビングの繰り出しを可能にするアンロックされた状態でのシートベルトによる乗員の動きを推定する第1ばね質量ダンパモデルと、シートベルトウェビングの繰り出しをブロックするロックされた状態でのシートベルトによる乗員の動きを推定する第2ばね質量ダンパモデルと、を実装するステップを含むことができる。
【0011】
ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、車両の前後方向加速度(IMU_X)の大きさを経時的に評価するメトリックを実行するステップを含むことができる。第1ばね質量ダンパモデルは、機械式シートベルトロックに関連する所定の閾値未満に留まる車両の前後方向加速度の大きさに応答して実装することができる。第2ばね質量ダンパモデルは、機械式シートベルトロックに関連する所定の閾値を超える車両の前後方向加速度の大きさに応答して実装することができる。
【0012】
ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、作動可能な制御式拘束シートベルトのE‐ロックステータスをポーリングするステップを含むことができる。第1ばね質量ダンパモデルは、E‐ロックステータスがオフであることに応答して実装できる。第2ばね質量ダンパモデルは、E‐ロックステータスがオンであることに応答して実装できる。
【0013】
方法はまた、シートベルトのバックルのステータスを感知するステップと、シートベルトのバックルのステータスが外されていること応答して第2ばね質量ダンパモデルの実装を防止するステップと、を含むことができる。
【0014】
ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、シートベルトウェビングの繰り出しを可能にするアンロックされた状態でのシートベルトによる乗員の頭部の動きを推定する第1ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、シートベルトウェビングの繰り出しを可能にするアンロックされた状態でのシートベルトによる乗員の胸部の動きを推定する第2ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、シートベルトウェビングの繰り出しをブロックするロックされた状態でのシートベルトによる乗員の頭部の動きを推定する第3ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、シートベルトウェビングの繰り出しをブロックするロックされた状態でのシートベルトによる乗員の胸部の動きを推定する第4ばね質量ダンパモデルを実装するステップと、を含むことができる。
【0015】
ばね質量ダンパモデリングを実行するステップは、車両の前後方向加速度(IMU_X)の大きさを経時的に評価するメトリックを実行するステップを含むことができる。第1および第2ばね質量ダンパモデルは、機械式シートベルトロックに関連する所定の閾値未満に留まる車両の前後方向加速度の大きさに応答して実装することができる。第3および第4ばね質量ダンパモデルは、機械式シートベルトロックに関連する所定の閾値を超える車両の前後方向加速度の大きさに応答して実装することができる。
【0016】
推定される乗員の動きに応答して作動可能な安全装置を制御するステップは、以下のいずれかを含むことができる。すなわち、
・エアバッグを膨張させるためにインフレータの第1ステージおよび/または第2ステージを作動させるかどうかを決定するステップ。
・エアバッグを膨張させるためにインフレータの第1ステージおよび/または第2ステージを作動させるタイミングを決定するステップ。
・エアバッグから膨張流体を排出するための作動可能なベントを作動させるかどうかを決定するステップ。
・エアバッグから膨張流体を排出するための作動可能なベントを作動させるタイミングを決定するステップ。
・シートベルトのロードリミッタを作動させるかどうかを決定するステップ。
・シートベルトのプリテンショナを作動させるかどうかを決定するステップ。
・乗員にシートベルトを締め付けるために、作動可能な制御式拘束装置(ACR)を作動させるかどうかを決定するステップ。
【0017】
差し迫った車両衝突が発生するときに結果として生じる推定される乗員の動きを計算するステップは、以下のいずれかを含むことができる。すなわち、
・推定される乗員の動きを計算するために、感知される乗員の体重を実装するステップ。
・車両構造に対する乗員の位置を計算するために、感知されるシートの位置を実装するステップ。
・車両構造に対する乗員の位置を計算するために、感知されるシートの傾きを実装するステップ。
・車両構造に対する乗員の位置を計算するために、感知されるステアリングホイールおよび/または計器パネルの位置を実装するステップ。
・推定される乗員の動きを計算するために、感知されるシートベルトのバックルのステータスを実装するステップ。
【0018】
方法はまた、作動可能な制御式拘束具(ACR)のシートベルトの繰り出し表示をポーリングするステップと、推定される乗員の動きの計算に対するフィードバックとして表示されたシートベルトの繰り出しを実装するステップと、を含むことができる。
【0019】
車両安全システムは、作動可能な安全装置と、差し迫った車両衝突を感知するセンサと、推定される乗員の動きに応答して作動可能な安全装置を制御するための本明細書に開示される方法を実行するように構成されたコントローラと、を含む。作動可能な安全装置は、エアバッグインフレータ、作動可能なエアバッグベント、作動可能なシートベルトリトラクタ、およびシートベルトリトラクタを含む作動可能な制御式拘束具(ACR)のいずれかを含むことができる。センサは、運転者を運転機能において支援するように構成された先進運転者支援システム(ADAS)のセンサを含むことができる。コントローラは、エアバッグコントロールユニット(ACU)を含むことができる。
【0020】
車両安全システムは、エアバッグならびにエアバッグを膨張および展開させるための膨張流体を供給するように作動可能なインフレータを備えるエアバッグモジュールを含む。車両安全システムはエアバッグ制御ユニット(ACU)を含む。ACUは、インフレータの作動ならびにエアバッグの膨張および展開を制御するように構成されている。ACUは慣性モニタリングユニット(IMU)を含む。慣性モニタリングユニット(IMU)は、車両の前後方向加速度を測定し、それを示す車両の前後方向加速度(IMU_X)値を提供するように動作する。ACUは、先進運転者支援システム(ADAS)および車両安定性制御システムの少なくとも1つから車両自動緊急ブレーキ(AEB)表示を取得するように構成されている。AEB表示に応答して、ACUは、質量ばねダンパモデルを実行し、IMU_X値に基づいて推定される乗員の動きを計算するように構成されている。
【0021】
AEB表示に応答して、ACUは、質量ばねダンパモデルを実行して、IMU_X値に基づいて推定される乗員の動きを計算するように構成される。
【0022】
一態様によれば、車両安全システム(慣例では、出願が完了すると、ここに言い換えられた請求項を挿入する)。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一構成例による、車両の乗員の保護を支援する安全システムの概略図である。
図2】安全システムにおいて実装されるアルゴリズムの一部分を示すブロック図である。
図3】安全システムにおいて実装されるアルゴリズムの一部分を示すフローチャートである。
図4】安全システムにおいて実装されるアルゴリズムによって実装されるメトリックの図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、衝突の場合に乗員に与えられる保護を高めるために、乗員の動きの推定を実装する車両安全システムに関する。このシステムは、推定される乗員の動きに応答して、エアバッグおよびシートベルトなどの作動可能な保護装置の作動を適合させることができる。
【0025】
車両安全システム
図1を参照すると、一構成例によれば、車両12は、車両の乗員20の保護を支援する車両安全システム10を含む。システム10は、本明細書ではエアバッグ制御ユニット(ACU)50と称される中央制御ユニットを含む。安全システム10は、ACU50に動作可能に接続された車両センサ52を含む。車両センサ52は、シート重量センサ、シート占有センサ、シート位置センサ、シートリクライニングセンサ、およびシートベルトのバックルのラッチセンサなどの車両/乗員の状態センサを含む。
【0026】
車両センサ52はまた、車両加速度を測定するために使用されるセンサ(例えば、加速度計)を含むこともできる。これらの加速度には、前後方向(X軸)、横方向(Y軸)、および垂直方向(Z軸)が含まれる。ピッチ、ロール、およびヨーなどの他の加速度も測定することができる。車両センサはACU50の外部にあり、ACU50に接続されているものとして示されているが、前述の加速度計などのいくつかのセンサは、ACU50自体に実装できることが理解されよう。ACU50におけるこのセンサの束は、慣性測定ユニット(IMU)54と総称することができる。IMU54は、X軸(IMU_X)、Y軸(IMU_Y)、およびZ軸(IMU_Z)に沿う車両加速度信号を生成することができる。
【0027】
図1において、車両センサ52は、前述の状態信号をACU50に直接提供するものとして示される。しかしながら、ACU50は、車両ベースのコントロールエリアネットワーク(CAN)バス88を介して、他のコントローラまたはモジュールからこれらの信号の一部またはすべてを取得することもできる。例えば、車両12は、乗員分類システム(OCS)を含むことができる。乗員分類システムは、システム10によって与えられる保護を適合させるために、多様なシートベースのセンサ、シートベルトセンサ、および車内に取り付けられたカメラさえ利用する。別の例として、車両12は、車内カメラ、車内レーダセンサ、シート重量センサ、バックルセンサ、シート位置センサ、シート角度センサなどの複数の車内センサからのデータを処理するための車内モニタリングシステム(IMS)を含むことができる。IMSは、センサからの情報を使用することができて、カメラが感知する乗員の位置、レーダが感知する乗員の位置、シート重量センサに測定された乗員の体重、シート位置センサに測定された前方/後方位置、シート角度センサに測定された乗員のリクライニング位置、バックルセンサに測定された乗員の締め付け状態などの情報を使用して、車両の乗員を分類することができる。
【0028】
ACU50はまた、両方共に図1に示される作動可能な制御式拘束装置(ACR)60およびフロントエアバッグ70など、車両12における1つまたは複数の作動可能な保護装置を作動させるように動作可能に接続される。ACU50が作動させることができる他の作動可能な保護装置には、カーテンエアバッグ、胸部エアバッグ、サイドエアバッグ、およびニーエアバッグが含まれる。車両センサ52から得られた信号に応答して、ACU50は、乗員の保護が必要な衝突などの事象の発生を決定し、それに応答して作動可能な拘束具の作動および/または展開を制御するように動作する。
【0029】
図1に示されるように、車両12の乗員20は車両シート30上に位置する。シート30は、シートを車両12のフロア14上に取り付けるためのシートベース32を含む。ベースは、乗員20が座るボトムクッション34、乗員がもたれかかるシートバック36、および乗員の頭部22を受けるヘッドレスト38を支持する。
【0030】
シートベルト40は、ACR60に接続される。図1に示される例示的な構成において、シートベルト40は、乗員のラップ(腰からひざ頭までのももの上の部分)26を横切って伸長可能なラップベルト部分42と、乗員の肩の上および胸部/胴体24を横切って伸長可能なショルダーベルト部分44と、を含む従来の3点式シートベルトである。バックル46は、図1に示される締め付けられた状態で、シートベルト40を固定する。Dリング48は、シートベルト40をACR60に導く。
【0031】
ACR60は、従来のシートベルトリトラクタの用途を果たす。ACRは、シートベルトウェビングを繰り出し、乗員20が、肩部分44およびラップ部分42を乗員の胴部を横切って伸ばし、バックル46を、図1に示される、留められて拘束された状態に係合させることを可能にする。ACRはまた、乗員20がシートベルト40のバックルを外し、乗員を拘束されていない状態にすると、シートベルトウェビングを巻き取る。追加的に、ACR60は、プリテンショナおよび/またはロードリミッタとして機能できるようにするコンポーネントを含むように構成することができる。この目的のために、ACR60は、慣性ロック機構を含む。慣性ロック機構は、例えば、車両の負の加速度に、または本明細書で使用されるような、所定のレベル以上の減速度に応答してロック位置に移動するように構成された磁気ボールまたは球体を含むことができる。
【0032】
ACR60はまた、シートベルトウェビングの繰り出しおよび巻き取りを能動的に制御するように構成されたモータを含む。ACR60は、ACU50に作動的に接続されている。ACU50は、シートベルトウェビングを能動的に繰り出し、巻き取るようにACRを制御するように動作可能である。ここで記載するように、ACU50は、車両センサから受信したデータの評価を通して決定された車両状態に応答して、ACR60の動作を制御するように構成されている
【0033】
ノーマル運転状態が感知されると、ACU50は、図1に示されるように、シートベルト40を、ノーマル拘束状態とし、ベルトからたるみを取り除いてベルトを乗員の胴部に対して維持するのにちょうど十分な軽い量の力で乗員20に対して引かれる状態にするように構成される。ノーマル拘束状態において、ACR60は、普通のシートベルトリトラクタとして機能し、例えば、乗員が前かがみになった場合に容易に繰り出すことができる軽い量の力で、シートベルトウェビングを巻き取る。
【0034】
慣性ロック機構は、車両の減速度が所定のレベルを超えるとリトラクタをロックし、シートベルトの繰り出しを防止する。衝突が発生すると、ACU50は、その事象を感知し、ACR60を作動させて、衝突事象に応答して所望の張力制御を提供するように構成される。従来の荷重制限もここで行うことができる。しかしながら典型的に、それは、本質的に受動的であり、トーションバー/トーションスプリングなどの構造を通じて機械的に提供される。
【0035】
ACR60によって与えられる1つの利点は、例えばオフロード走行、不整地、横滑り、エアボーンの車両状態である危険な運転状態などである、危険な車両状態の検出に応答して、シートベルト40を強化された拘束状態におくことである。強化された拘束状態において、ACR60は、乗員が車両シート30に拘束される度合いを強化するために、乗員20の周囲にシートベルト40を張る。いったん運転状態がノーマルであると決定されると、ACU50は、ACR60を制御して、シートベルト40をノーマル拘束状態におくことができる。有利なことに、ACR60は、車両の危険な状態が検出されたときにシートベルト40を強化された拘束状態におくことができ、危険な車両状態が終了したときにシートベルトをノーマル拘束状態におくことができる。
【0036】
図1に示されるフロントエアバッグ70は、助手席用フロントエアバッグである。運転席用フロントエアバッグなどの他のフロントエアバッグを、安全システム10に実装することができる。その制御および展開は、図示のエアバッグ70に関して本明細書で記載したのと同じ、または類似の方法で、制御することができる。フロントエアバッグ70は、車両12の計器パネル16に取り付けられ、インフレータ72を作動させるACU50に応答して展開可能である。展開されると、フロントエアバッグ70は、計器パネルと乗員20との間に位置し、車両12の計器パネル、ルーフ74、およびフロントガラス76によって境界付けられる空間を、少なくとも部分的に埋める。
【0037】
強化された乗員保護を提供するために、インフレータ72は、車両衝突に応答して常に作動される第1ステージまたはプライマリステージ、および感知された状態がその使用を指示する場合にのみ作動される第2ステージまたはセカンダリステージを備える、2段階のインフレータとすることができる。第2ステージが作動されるかどうかに影響を与えることができる検知された状態には、衝突のシビアリティ、乗員のサイズ、シートの位置、バックルのラッチされた表示などが含まれる。例えば、第1ステージおよび第2ステージは、乗員が大きく(例えば大柄な男性)、シート30が計器パネル16から遠くに位置する場合に、両方とも作動することができる。別の例として、第1ステージは、乗員が小さく(例えば小柄な女性または子供)、シート30が計器パネル16の近くに位置する場合にのみ作動することができる。
【0038】
先進運転者支援システム
車両12はまた、この記載の目的のために、車両安全システム10の一部とみなされる先進運転者支援システム(ADAS)80を含むこともできる。ADAS80は、駐車、車線変更、衝突回避、アダプティブクルーズコントロール、電子安定性制御、アンチロックブレーキ、緊急ブレーキ、トラクションコントロール、死角情報システム、車線逸脱警報などの機能で、車両の運転者を支援する。先進運転者支援システムは、開発され続けており、アクティブステアリングおよび自動運転機能などの追加的機能を提供することができるため、運転者のいない車両も登場するかもしれない。
【0039】
ADAS80は、多様なADASセンサ82およびカメラ84と通信する1つまたは複数のコントローラを含む。センサ82およびカメラ84は、車両12およびその周囲に関する情報をADAS80に提供する。ADAS80は、そのデータを使用して、上に挙げた多様な機能を実行するために必要な計算を実行する。ADAS80は、多くの機能を実行できるため、1つまたは複数の特定のADASの機能を実行するタスクを課された多様な個別のコントローラまたはモジュールを含むことができる。例えば、ADAS80は、安定性制御モジュールおよび/またはアンチロックブレーキシステム(ABS)モジュールを含むことができる。
【0040】
ADAS80およびその関連するセンサ82およびカメラ84の概略図は、車両12に実装され得る任意の、そしてすべてのシステムアーキテクチャを包含することを意図している。図1に示されるように、ADAS80は、CANバス88を介してACU50とデータを送受信することができる。
【0041】
乗員の動きの推定
車両安全システム10は、制御アルゴリズムを実装するように構成される。この制御アルゴリズムは、差し迫った衝突の場合に、感知された車両および/または乗員データを利用して乗員の動きを推定し、その推定された乗員の動きを使用して、作動可能な保護装置、すなわち、ACR60および/またはフロントエアバッグ70の作動および展開を適合させる。この制御アルゴリズムは、例えば、ACU50において実行することができる。衝突が差し迫っているという決定は、ADAS80によって行うことができる。
【0042】
ADAS80は、車両および車両の前方にある他の車両/物体の距離と相対速度を継続的に評価し、衝突が差し迫っているかどうかを決定する。最初に、ADAS80は、自動緊急ブレーキ(AEB)減速フラグを発行し、運転者にブレーキが必要であることを視覚/聴覚/触覚で警告する。状態が解決されない、または悪化すると、ADAS80および/または安定性制御モジュールは、AEBブレーキフラグを発行する。AEBブレーキフラグによって、車両のブレーキが自動的に適用される。部分制動から完全制動まで段階的に自動ブレーキを実行することができる車両もある。
【0043】
有利なことに、システム10によって実装される制御アルゴリズムは、AEBフラグを利用して、感知された車両の前後方向加速度(すなわち、負の加速度、または本明細書で使用されるような、減速度)に基づいて、車両に対する乗員の動きの推定をトリガする。推定される乗員の動きは、車両に対する乗員の頭部および乗員の胸部の動きについて計算される。シートベルト30は繰り出されるように構成されており、いったん車両の減速度が所定のレベルを超えると、ACR60のシートベルト慣性機構はシートベルトの繰り出しを阻止する。そのため、推定された乗員の動きは、最初の乗員の動きは本質的に拘束されていないという事実も、考慮に入れている。したがって、推定された乗員の動きは、シートベルトのアンロックされた成分およびシートベルトのロックされた成分を含む。
【0044】
質量ばねダンパモデル
車両安全システム10によって実装される制御アルゴリズムは、質量ばねダンパモデルを利用して、車両に対する乗員の動きを推定する。衝突に応答して乗員の動きを推定するための質量ばねダンパモデルの使用は、Fooらの米国特許第5,935,182号に開示されている。その開示は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。システム10において実装される質量ばねダンパのモデリングは、Fooらによって開示されたものと類似または同一の方法で、ACU50によって実行される。このモデリングの原理については、次の段落で記載する。
【0045】
乗員の質量ばねモデルは、既知の、または推定された質量を有する乗員を考慮に入れる。車両衝突の場合、衝突の結果として生じる車両加速度によって、乗員は車両に対して前方に動く。したがって、車両加速度がモデルへの入力となる。これは、乗員の動きを推定するために使用される。シートベルトは乗員の前方への動きに逆らう。このために、モデルは、シートベルトの拘束を表すばね定数kを実装する。このモデルはまた、繰り出し、伸縮、荷重制限など、シートベルトシステムに起因する乗員への摩擦効果を表す減衰定数cも実装する。
【0046】
乗員の頭部と胴体が異なる質量を有すること、胴体がシートベルト40によってシート30により密接に拘束されること、および頭部が胴体に対して動くことができることを考慮して、システム10は、質量ばね減衰モデルを使用して、頭部の動きを胴体の動きとは別に推定することができる。エアバッグ70に衝突するのは乗員の胸部であるため、推定される胴体の動きに関する計算は、本明細書では胸部の動きと称される。これらの動きを推定するためにシステム10によって実行される計算は、頭部と胸部の両方に対して同じである。唯一の違いは、頭部/胸部の質量およびそれらに関連する、ばね定数および減衰定数である。
【0047】
追加的に、衝突シナリオにおいて、シートベルトは最初にシートベルトウェビングを繰り出す。そして、最終的にACR60はシートベルト40をロックし、荷重制限機能が引き継ぐ。このため、車両の衝突が、シートベルトがロックされていない繰り出し状態からシートベルトがロックされて荷重制限される状態へと進行するにつれて、質量ばねダンパモデルにおいて実装されるばね定数および減衰定数が変化する。シートベルトのロックの前には、モデルにおいて実装される定数は、ばね定数および減衰定数においてシートベルトをほとんど考慮していない。いったんシートベルトがロックされると、シートベルトが乗員の動きに対して有する著しい影響を考慮して、ばね定数および減衰定数が変更される。このため、システム10は、質量ばねダンパモデリングを使用して乗員の動きを推定するための、4つの異なる数式を実装する。すなわち、
・シートベルトの力なしの、推定される頭部の動き。
・シートベルトの力なしの、推定される胸部の動き。
・シートベルトの力ありの、推定される頭部の動き。
・シートベルトの力ありの、推定される胸部の動き。
【0048】
これらの数式は非常に類似しているため、乗員の動きに関する1つの数式を導出すれば、他の数式の導出を十分に伝えることができる。したがって、推定される乗員の動きを決定するための数式の導出は、この数式が上に列挙した頭部の数式および胸部の数式を表すものであることを理解した上で、推定が行われる身体部分に言及することなく、以下に示される。以下の変数は、システム10において実装される質量ばねダンパモデリングによって実装される。すなわち、
【数1】
【0049】
乗員の動きのための数式は、以下の通りである。すなわち、
【数2】
【0050】
【数3】
を数式の両側に加えると、以下の通りである。すなわち、
【数4】
【0051】
乗員が車両に対して動く距離を表す相対座標xを定義する。すなわち、
【数5】
【0052】
数式(3)を数式(2)に代入すると、一般的な乗員の動きに関する数式が得られる。すなわち、
【数6】
【0053】
数式(4)を使用すると、推定される車両に対する乗員の動き、x、は、車両加速度
【数7】
の入力に基づいて計算することができる。このことから、システム10は、シートベルトの力のシナリオがある場合とない場合の両方で、乗員の頭部と胸部に特有の推定される動きを決定するために、4つの異なる質量ばねダンパモデルを、外挿法によって推定でき、また実装できることが理解されるであろう。
シートベルトの力なしの、推定される頭部の動き。
【数8】
シートベルトの力なしの、推定される胸部の動き。
【数9】
シートベルトの力ありの、推定される頭部の動き。
【数10】
シートベルトの力ありの、推定される胸部の動き。
【数11】
【0054】
図2は、車両安全システム10において実装される乗員の動きの推定アルゴリズム100を示すブロック図である。乗員の頭部および胸部の動きの推定数式(5)~(8)は、アルゴリズム100において実装される質量ばねダンパモデリング関数110において実装される。図2における乗員の動きの推定アルゴリズム100は、モデリング関数110において実装される前にセンサデータが受ける信号調整の一部も示す。本明細書に示される車両安全システムの構成例において、アルゴリズム100の少なくとも一部を、ACU50において実装することができる。
【0055】
図2に示されるように、ACU50に組み込まれたIMU54によって測定された車両の前後方向加速度信号IMU_Xは、信号からエンジン振動または道路振動などの高周波ノイズを除去するために、ローパスフィルタリング関数(LPF102)に提供される。この目的のために、LPF102は、例えば、カットオフ周波数=8Hzを有することができる。LPF102からのローパスフィルタされた加速度信号は、フィルタされた加速度信号を平滑化するために、加速度の移動平均計算関数(AMA104)に提供される。この目的のために、AMA104は、調整可能なウィンドウを有する。ウィンドウは、一実施形態において、0.05秒にすることができる。
【0056】
AMA104からのフィルタされた移動平均信号は、システムにおいてノイズとして作用する可能性のある小さな加速度をフィルタアウトするデッドゾーンフィルタ106に提供される。一実施形態において、デッドゾーンフィルタ106は、±0.05Gの範囲の加速度をフィルタアウトすることができる。ブロック106からの調整された信号は、質量ばねダンパモデル関数110に提供される。質量ばねダンパモデル関数110は、上記の数式(5)~(8)における
【数12】
のように、調整された車両の前後方向加速度IMU_Xを評価して、シートベルトの力ありの場合となしの場合の両方で、乗員の頭部および胸部の動きを推定するように構成される。
【0057】
また図2に示すように、自動緊急ブレーキ減速フラグ(AEB_DECEL)は、ラッチブロック108に提供される。本明細書に示すシステム10の構成例において、AEB_DECELフラグは、ACU50によってADAS60からCANバス88を介して取得することができる。AEB_DECELフラグは、ADAS60が車両12の進路にある別の車両などの物体を検出したこと、衝突が続いて起こる可能性があること、車両の減速が必要であること、を示す。したがって、AEB_DECELフラグは、自動緊急ブレーキを実行するためのコマンドである。AEB_DECEL信号は、AEBブレーキプロファイル全体を通して維持されないため、ブロック108で所定の期間ラッチされる。この期間は、ADAS60によって実装されるブレーキ作動プロファイルに調整することができる。ラッチ期間は、例えば、約3秒とすることができる。
【0058】
ラッチブロック108は、質量ばねダンパモデル関数110のためのブールスイッチとして作用する。質量ばねダンパモデル関数110は、作動されるラッチブロック108またはオンであるラッチブロック108に応答して、数式(5)~(8)の乗員の動きの推定計算を実行するために作動される。図2に示されるように、質量ばねダンパモデル関数110は、自動ブレーキシナリオを検出するADAS60に応答して生じる乗員の頭部および胸部の推定される変位および速度を生成することができる。モデル110によって実行される質量ばねダンパ計算は、既知であり、例えば、参照により本明細書に組込まれる前述のFooらの米国特許第5,935,182号に開示された方法で実行することができる。
【0059】
シートベルトの力の切り替え
図3は、質量ばねダンパモデル関数110によって実装されるシートベルトの力の切り替えプロセスまたは関数120を示すフローチャートである。図3に示されるように、切り替え関数120は、モデル関数110がアクティブである間、すなわち、ラッチブロック108がオンで関数を作動させている間に連続的に更新されるループ関数である
【0060】
ステップまたはブロック122では、シートベルトの作動力がオンであるかどうかについての決定が行われる。この決定は、ACR60の慣性ロック機構が作動されているかどうかである。慣性ロック機構は機械的であり、例えば、所定のレベル以上の車両の減速度に応答してロック位置に移動するように構成された磁気ボールまたは球体であるため、この決定のためにポーリングされ得るアクティブな信号はない。したがって、この決定は、以下の図4に関連して説明されるソフトウェアモデリングを介して行われる。
【0061】
ブロック122において、「オフ」とラベル付けされた線によって示されるように、シートベルトの作動力がオンでないと決定された場合、関数120は、ステップまたはブロック126に進み、シートベルトの力なしのシナリオのための頭部および胸部のばね定数および減衰定数を使用する数式(5)および(6)がモデルにおいて実装される。次に、関数120はステップまたはブロック128に進み、数式(5)および(6)を使用して乗員の変位および速度が計算される。
【0062】
ブロック122において、「オン」とラベル付けされた線によって示されるように、シートベルトの作動力がオンであると決定された場合、関数120はステップまたはブロック124に進み、シートベルトの力ありのシナリオのための頭部および胸部のばね定数および減衰定数を使用する数式(7)および(8)がモデルにおいて実装される。次に、関数120はステップまたはブロック128に進み、数式(7)および(8)を使用して乗員の変位および速度が計算される。
【0063】
シートベルトの力の決定
図4は、シートベルトの作動力がオンであるかオフであるかを決定するためのソフトウェアメトリックを示す図である。このメトリックの決定は、図3の切り替えプロセス/関数120のステップまたはブロック122で実装される。
【0064】
図4に示されるように、モデルは、概して150で示される、シートベルトの力の作動メトリックとして実装される。シートベルトの力の作動メトリック150は、例えば、システムにおいて実装される乗員の動きの推定アルゴリズム100のコンポーネントまたはモジュールとして、システム10において実装される。シートベルトの力の作動メトリック150は、例えば、ACU50において実装される質量ばねダンパモデルモデル110のコンポーネントまたはモジュールとすることができる。
【0065】
シートベルトの力の作動メトリック150は、車両の前後方向加速度IMU_Xを経時的に評価する。ブレーキには負の加速度(減速度)が伴うため、メトリック150は、負の方向の、すなわち、図4に見られる下向きの、加速度値を示す。メトリック150によって評価されるIMU_Xは、図2のデッドゾーンブロック106からの条件付けされて、フィルタされた値とすることができる。メトリック150は、IMU_Xの負の加速度が、ACR60の慣性ロック機構がロックすべき点に対応する所定の大きさを超えるかどうかを決定する。この大きさは、ACR60の特定の構成、特定の車両プラットフォーム、または車両製造業者からの特定の要件に合わせて調整することができる。図4のシートベルトの力の作動メトリック150の実施形態において、図4に破線で示される閾値152によって示されるように、ACR慣性シートベルトロック機構のロックを示す所定のIMU_X減速度値は0.4Gである。しかしながら、この値は、上述したように、調整可能である。
【0066】
メトリック値のシートベルトの力の作動信号のオン/オフ状態との関係が図4に示される。車両の前後方向加速度IMU_Xの大きさは、経時的に評価されて、メトリック150の横軸上に表され、それが所定の大きさを以上であるかどうかを決定する。図4の実施形態において、所定の大きさは0.4Gであり、図4に破線で示される。メトリック150のグラフの表示に示されるように、IMU_Xを表す曲線152は、車両の減速度が生じる時点までゼロGまたはその付近で推移する。その時点で、メトリックはゼロから離れ、IMU_Xの負の加速度の大きさが増加する。この時間、シートベルトの力の作動メトリック150の出力は、オフである。
【0067】
IMU_Xの負の加速度が閾値152をクロスするとき、ACR慣性シートベルトロック機構におけるレイテンシを考慮して時間遅延(ΔT)をトリガすることができる。この時間遅延の間、シートベルトの力の作動メトリック150の出力はオフのままである。いったん時間遅延が満了すると、シートベルトの力の作動メトリック150の出力は、オンに移行して、所定の期間またはメトリックの大きさが閾値(0.4G)を下回るまでオンにラッチされる。
【0068】
メトリック150の実装を通して、シートベルトの力の作動オン/オフの決定が、シートベルトの力の切り替え関数120のブロック122において行われる。関数120は、ACR慣性シートベルトロック機構がロックされているときに、数式(7)および(8)で使用されるより硬いばね定数および減衰定数が質量ばねダンパモデル関数100において実装されることを可能にし、機構がロックされていないときに、より硬くないばね定数が数式(5)および(6)で使用されることを可能にする。乗員の動きの推定アルゴリズム100において実装される定数、パラメータ、および許容誤差の例を以下の表に示す。
【表1】
【0069】
これにより、乗員の動きの推定アルゴリズム100は、シートベルトのロックされた推定値およびシートベルトのアンロックされた推定値の両方を計算することによって、ADAS80によって検出された自動ブレーキシナリオに応答して、乗員の動きおよび速度を、より正確に推定することができる。
【0070】
改善された乗員の動きの推定値は、車両安全システム10によって実装することができて、ACR60および/またはエアバッグ70の制御展開を改善することができる。例えば、安全システム10は、改善されて推定された乗員の変位および/または速度に基づいて、異なる時間および/または異なる程度で、シートベルト40をプレテンションするように構成することができる。別の例として、安全システム10は、改善されて推定された乗員の変位および/または速度に基づいて、各ステージが起動(fire)されるタイミング、またはそもそも第2ステージが起動されるかどうかなどの、インフレータ72の第1ステージおよび第2ステージの作動を制御するように構成することができる。
【0071】
乗員の動きの推定アルゴリズムの改善
有利なことに、車両安全システム10において実装される乗員の動きの推定アルゴリズム100は、上述の計算および決定を実行するために、IMU_XおよびAEB_DECELの2つの入力のみに依存しながら、良好な性能を達成することができる。しかしながら、アルゴリズム100の性能を改善することは可能である。例えば、アルゴリズム100は、アルゴリズムに追加の入力を提供することによって、アルゴリズムに追加のパラメータを供給することによって、またはアルゴリズムにおいて実行される特定の静的な値またはパラメータを動的にすることによって、改善することができる。
【0072】
初期状態の入力
車両安全システム10において実装される乗員の動きの推定アルゴリズム100の性能は、ステアリングホイールおよび/または計器パネルなど、車両構造に対する乗員の推定される位置をより良好に計算するために使用できる追加の入力の提供によって、改善することができる。例えば、AEB_DECELが発行された時間の車両構造に対する乗員の位置を知ることによって、乗員の動きの推定アルゴリズム100は、推定された動きの結果として生じる乗員の位置を決定できる。これは、例えばシートベルトのプリテンショニングおよび/またはインフレータの第1ステージ/第2ステージの作動など、安全装置をいかに展開するかについての決定の通知を支援することができる。
【0073】
初期状態のデータの提供を通してアルゴリズム100の性能の改善を達成するために、図2において概して112で示される、任意の入力を、乗員の動きの推定アルゴリズム100において実装して、アルゴリズムの性能の洗練および/または改善を支援できる。図2に示されるように、追加の入力112は、AEB_BRAKEフラグおよび1つまたは複数の初期状態の入力を含むことができる。追加的な初期状態の入力には、以下の値を提供できる。
【表2】
【0074】
乗員の体重の入力は、定数ではなく動的変数として、乗員の動きの推定数式(5)~(8)において実装できる。推定された体重ではなく実際の乗員の体重を使用することによって、推定される乗員の頭部および胸部の動きの精度および応答性を改善できる。乗員の実際の体重は、数式において実行される頭部の質量(mh)にはそれほど大きな影響を与えないかもしれないが、数式において実行される胴体/胸部の質量(mc)には大きな影響を与える可能性がある。例えば、実際の乗員の体重が乗員の動きの推定アルゴリズム100において利用可能なとき、胸部の質量(mc)を、乗員の体重の所定のパーセンテージとして計算することができる。
【0075】
シートの位置入力および/またはシートの傾き入力および/またはステアリングホイール/計器パネルの位置入力を実装して、乗員と車両構造との間の距離の計算を改善することができる。この距離は、推定された乗員の動きおよび/または速度と併せて使用され、保護装置、すなわちエアバッグ70および/またはACR60の作動をどのように調整するかを決定できる。例えば、これらの入力の任意の組み合わせに基づいて、ACU50は以下を行うことができる。すなわち、
・シートベルトの張りの遅延/加速。
・シートベルトの荷重制限の遅延/加速。
・インフレータの第2ステージ作動の遅延/加速。
・作動可能なエアバックのベンティング(venting)の遅延/加速。
【0076】
例えば、これらの入力が、乗員が計器パネル/ステアリングホイールの近くにいる、または乗員がアウトオブポジション(OOP)の乗員であることを示す場合、ACU50は、シートベルトのプリテンショニングおよび/または荷重制限の大きさおよび/またはタイミングを増加させるようにACR60を制御するように構成できる。追加的に、ACU50はまた、インフレータ72の第1ステージ/第2ステージのタイミングを調整できる。ACU50は、近接する乗員/OOPの乗員のために、そもそも第2ステージを作動させるかどうかを決定できる。ACU50はさらに、近接する乗員/OOP乗員に応答して、アクティブベンティング(active venting)を作動させるかどうかを決定できる。別の例として、これらの入力が、乗員が車両構造から十分に離れていることを示す場合、ACU50は、シートベルトのプリテンショニングの張力および/またはタイミングを減少させるようにACR60を制御できる。ACU50はまた、インフレータ72の第1ステージ/第2ステージのタイミングを調整できる。ACU50はまた、インフレータの第2ステージを作動させる必要があるかどうかを決定できる。ACU50はさらに、乗員と車両構造との間の距離に応答して、アクティブベンティングを作動させるかどうか、またはアクティブベンティングのタイミングを調整するかどうか、を決定できる。
【0077】
バックルのステータスの入力を実装して、乗員がバックルを外した場合のシステム10の応答を改善できる。バックルのステータスの入力が、乗員がバックルを締めていることを示す場合、システム10は、上述したように乗員の動きの推定アルゴリズム100を実装することができる。ACU50は、通常の方法でシートベルトにプレテンションを与えるために、ACR60の作動を制御できる。シートベルトの力ありとシートベルトの力なしの両方の計算(数式(5)~(8))を利用して、乗員の推定された動きに従って、ACRおよびエアバッグ70を展開することができる。バックルのステータスの入力は、第1ステージ/第2ステージの作動およびそのタイミング、ならびにアクティブベンティングの作動とそのタイミングを含むかどうかの決定を支援する。
【0078】
しかしながら、バックルのステータスが、乗員がバックルを締めていないことを示す場合、システム10は、乗員の動きの推定アルゴリズム100の修正バージョンを実装することができる。このシナリオでは、シートベルトのプリテンショニングは無関係である。したがって、ACR60の作動は、不必要であって、乗員の保護を支援しない。このために、乗員の動きの推定アルゴリズム100の修正バージョンが起動されて、シートベルトの力なしの計算のみ、すなわち数式(5)および(6)のみを用いて乗員の推定される動きが計算される。その結果、推定される変位および速度は大幅に増加される。
【0079】
推定された乗員の変位および速度のための増加値を考慮し、シートベルトが乗員の保護の支援に効力がないことを認識して、ACU50は、エアバッグ70の作動を適合させることができる。この適合は、上述したように、エアバッグの作動をさらに適合させるための任意の他の追加の入力の有無にかかわらず、実行できる。例えば、ACU50は、バックルを外した乗員がバックルを締めた乗員よりも早くバッグに衝突するという決定に基づいて、感知された衝突事象に応答してインフレータ72の第1ステージおよび/または第2ステージをより早く作動させることができる。ACU50はまた、アクティブベンティングを適切に制御できる。
【0080】
AEBブレーキフラグ(AEB_BRAKE)
AEBブレーキフラグAEB_BRAKEは、車両安定性制御モジュールによって発行され、乗員の動きの推定アルゴリズム100における実装のために、CANバス88を介してACU50によって受信することができる。AEB_BRAKEフラグは、AEBブレーキプロファイル全体を通してアクティブであり、したがって、AEB_DECELフラグの実装を補足する、またはそのフラグを完全に置き換えるために、使用できる。例えば、AEB_DECELフラグは、上述した方法で使用することができる、すなわち、乗員の動きの推定を開始するためにONにラッチすることができる(図2を参照)。AEB_BRAKEフラグは、AEB_DECELフラグのラッチを解除し、ブロック108における所定のラッチ時間ではなく、AEB_BRAKEフラグの持続時間に継続する乗員の動きの推定で引き継ぐために使用できる。代替的に、AEB_BRAKEフラグはAEB_DECELフラグを置き換えて、乗員の動きの推定が実際のAEBブレーキの間にのみ行われるようにすることもできる。
【0081】
E‐ロックおよびその他のACR機能
ACR60のいくつかの構成は、いわゆるE‐ロックを含むことができる。E‐ロック機能は、従来の機械式シートベルトリトラクタロック機構を、ソレノイドなどの電子式ロック機構で置換する。E‐ロックの作動は、慣性センサを介して制御される。慣性センサは、ACR60にローカルに配置できる、またはACU50内のIMU_X慣性センサにすることもできる。いずれの場合でも、慣性センサが、前述の0.4Gなどの、所定の負の加速度値以上であると、慣性感知が実行される場所であればどこでも、ACR60の内部で、またはACU50で、E‐ロックコマンドを生成することができる。ACU50で実行される場合、E‐ロックコマンドは、CANバス88を介してACR60に送信できる。
【0082】
E‐ロック機能は、図4に示されるシートベルトの力の作動メトリック150を置き換えることができる。E‐ロックコマンドは、したがって、シートベルトの力の切り替えプロセスまたは関数120(図3を参照)のブロック122で行われた決定を置き換えることができる。この場合、決定は、E‐ロックコマンドが存在するかどうかになろう。E‐ロックコマンドが存在する場合、プロセス120はブロック124に進み、シートベルトの力ありの数式(7)および(8)の頭部および胸部のばね定数および減衰定数が、質量ばねダンパモデリングに使用される。E‐ロックコマンドが存在しない場合、プロセス120はブロック126に進み、シートベルトの力なしの数式(5)および(6)の頭部および胸部のばね定数および減衰定数が、質量ばねダンパモデリングに使用される。
【0083】
ACR60によって可能になる別の機能には、ACRインターフェースを介した乗員の動きの推定の改善が伴う。例えば、ACR60は、シートベルトウェビングの繰り出しおよび巻き取りの量を監視またはカウントする繰り出し/巻き取りセンサを含むことができる。これらのセンサは、例えばCANバス88を介して、繰り出し値/巻き取り値をACU50に提供できる。これらの値、特に繰り出し値は、推定された動きではなく、乗員の動きの直接の表示を提供するのに有用であり得る。繰り出し値は、したがって、乗員が動く距離を示すのみのフィードバックとしてだけでなく、乗員の動きが開始されたことを示す積極的な表示としても使用できる。
【0084】
本発明の上記の説明から、当業者は、改良、変更、修正を認識するであろう。例えば、本明細書に示されるシートベルトは、ACR60と関連付けられる。システム10、および、特に本明細書に開示される制御アルゴリズムは、ACR60なしで、また従来のシートベルトリトラクタを有するシートベルトを代わりに使用して、実装できる。もちろん、本明細書で説明するいくつかの機能は、実際は、機能するためにACR60を必要とするが、ACRは、その存在を必要とする機能のためにのみ必要である。当業者の範囲内である、これらおよび他のそのような改良、変更、および/または修正は、添付の特許請求の範囲によってカバーされるように意図されている。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】