(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】Claudin-6に対する抗体およびそれの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240216BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240216BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240216BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240216BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240216BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240216BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240216BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240216BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240216BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240216BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/28
A61K39/395 T
A61K47/68
A61K39/395 L
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553178
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 US2022018383
(87)【国際公開番号】W WO2022187275
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521339223
【氏名又は名称】ノヴァロック バイオセラピューティクス, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ハイチュン
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ペイ,イ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ハン
(72)【発明者】
【氏名】ル,フアルイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C085AA14
4C085AA26
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒトCLDN6に結合する抗体およびそれの抗体断片を提供する。本開示の抗体を、抗体ベースの免疫療法で使用して、抗体薬物コンジュゲートによる破壊のため、CLDN6発現がんに対して細胞傷害応答を方向付ける、またはCLDN6発現がんを標的化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)VH:CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、CDR3:配列番号7、VL:CDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、CDR3:配列番号10;
(b)VH:CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、CDR3:配列番号13、VL:CDR1:配列番号14、CDR2:配列番号15、CDR3:配列番号16;
(c)VH:CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、CDR3:配列番号34、VL:CDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、CDR3:配列番号37;
(d)VH:CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号39、CDR3:配列番号40、VL:CDR1:配列番号41、CDR2:配列番号42、CDR3:配列番号43;
(e)VH:CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号44、CDR3:配列番号40、VL:CDR1:配列番号41、CDR2:配列番号45、CDR3:配列番号43;および
(f)VH:CDR1:配列番号46、CDR2:配列番号47、CDR3:配列番号48、VL:CDR1:配列番号49、CDR2:配列番号50、CDR3:配列番号51
を含む、抗CLDN6抗体。
【請求項2】
(a)配列番号1に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号2に記載の配列を有する軽鎖可変領域;
(b)配列番号3に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号4に記載の配列を有する軽鎖可変領域;
(c)配列番号23に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号2に記載の配列を有する軽鎖可変領域;
(d)配列番号24に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号25に記載の配列を有する軽鎖可変領域;
(e)配列番号26に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号27に記載の配列を有する軽鎖可変領域;
(f)配列番号28に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号29に記載の配列を有する軽鎖可変領域;または
(g)配列番号30に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号31に記載の配列を有する軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
【請求項3】
ヒト抗体である、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
【請求項4】
キメラ抗体である、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
【請求項5】
細胞傷害剤にコンジュゲートされている、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗CLDN6抗体。
【請求項6】
完全長抗体である、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
【請求項7】
抗体断片である、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
【請求項8】
前記抗体断片は、Fab、Fab、F(ab)
2、Fd、Fv、scFvおよびscFv-Fc断片、単鎖抗体、ミニボディ、ならびにダイアボディからなる群から選択される、請求項7に記載の抗CLDN6抗体。
【請求項9】
活性成分として、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体の少なくとも1つのおよび医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項10】
活性成分として請求項5のいずれか一項に記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
がんを処置するのに使用するための、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
がんを処置する方法であって、請求項9または10に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項13】
対象においてがんを診断する方法であって、生物学的試料を請求項1から2のいずれか一項に記載の抗体または抗体断片と接触させるステップを含む、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の抗CLDN6抗体をコードする配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項15】
配列番号1~4のいずれか1つに記載の配列をコードする、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項17】
請求項15に記載のポリヌクレオチド、および/または請求項16に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
請求項1に記載の抗CLDN6抗体の作製方法であって、請求項17に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、それの全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月3日出願の、「Claudin-6に対する抗体およびそれの使用」という表題の米国特許第63/240,399号明細書、および2021年3月2日出願の、「Claudin-6に対する抗体およびそれの使用」という表題の米国特許第63/155,304号明細書の優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2022年2月28日に作成された前記ASCIIコピーは、「122863-5006-WO_ST25_Sequence_Listing.TXT」と命名され、34キロバイトのサイズである。
【0003】
分野
本開示は、免疫療法の分野におけるものであり、ヒトClaudin-6(CLDN6)に結合する抗体およびそれの断片、これらの抗体をコードするポリヌクレオチド配列、およびそれらを産生する細胞に関する。本開示は、これらの抗体を含む治療用組成物、ならびにがん検出、予後診断および抗体ベースの免疫療法のためのそれらの使用方法にさらに関する。
【背景技術】
【0004】
Claudin(CLDN)ファミリーは、27のメンバーから構成され、細胞および組織型選択的な方法で異なる発現パターンを示す。Claudinは、上皮および内皮のタイトジャンクション(TJ)内に位置する膜内在性タンパク質である。CLDNは、同じ細胞において(シス相互作用)と隣接細胞上において(トランス相互作用)の両方で互いに相互作用し、組織特異的バリア機能を有するTJの構成をもたらす。個々の細胞型は、1つより多くのclaudinファミリーメンバーを発現する。正常な生理学的状況では、claudinは複数のタンパク質と相互作用し、タイトジャンクションへのシグナル伝達およびタイトジャンクションからのシグナル伝達に密接に関与する(Lal-Nag, M and Morin, P.J., Genome Biol 10: 235, 2009)。
【0005】
CLDNタンパク質は、4つの膜貫通(TM)ヘリックス(TM1、TM2、TM3、およびTM4)ならびに2つの細胞外ループ(EL1およびEL2)を含む。隣接細胞からのclaudinの細胞外ループは、互いに相互作用し、細胞シートをシールし、内腔と基底外空間の間の傍細胞輸送を制御する。claudinタンパク質構造は、異なるファミリーメンバー間で高度に保存され、CLDN6は220アミノ酸を含み、サイズが23kDaであり、claudinに典型的なタンパク質構造を示す。
【0006】
広く発現される多くのClaudinタンパク質とは違い、CLDN6は、選択的発現によって特徴付けられる(Hewitt, et al., BMC Cancer, 6:186, 2006)。CLDN6は、いくつかの型の胚性上皮細胞で発現されるがん胎児性のタイトジャンクション分子である。タイトジャンクションの妨害およびタイトジャンクション分子の制御不全は、がん細胞の顕著な特徴であり、悪性形質転換と関連することが多い。CLDN6発現は、胃腺癌、肺腺癌、および卵巣腺癌、子宮内膜および胚性癌腫、脳の小児腫瘍(例えば、非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍)および胚細胞性腫瘍を含む、様々ながん種で異常に活性化される(Hassimoto et al., J Pharmacol Exp Ther 368:179-186, 2019;Kojima et al., Cancers 2020, 12, 2748)。したがって、CLDN6は、腫瘍関連抗原として同定された。CLDN6は、腫瘍関連抗原として、それが上皮分化およびバリア機能に重要である上皮形態形成の初期の間に発現されるため分化抗原として分類され得る。成人の正常組織ではなく、がんにおけるCLDN6の異なる発現パターンから、抗体へのその細胞表面到達可能性と合わせて、診断ならびに様々ながん種における免疫療法アプローチのための有望な標的としてCLDN6は適切である。
【0007】
CLDN6と他のclaudinタンパク質の間には高度な配列保存がある。他のclaudinタンパク質(例えば、CLDN9、CLDN4およびCLDN3)とのCLDN6の高い相同性は、治療的用途に好適な特性、例えば、特異性、親和性および安全性を有するCLDN6抗体を提供することを困難にする。
【0008】
抗体ベースの免疫療法抗体のためにClaudin6を標的化することは、CLDN6の活性をモジュレート、および/またはCLDN6を発現するがんに対する細胞傷害応答を方向付けることができる。したがって、抗CLDN6抗体の必要性がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、がん細胞に存在するClaudin-6に結合することができる抗CLDN6抗体および断片を提供することにより、上記のニーズを解決する。これらの抗体およびそれの断片は、CRD配列の独自のセット、CLDN6に対する特異性によって特徴付けられ、がん検出、予後診断および免疫療法に有用である。より具体的には、本開示は、ヒトCLDN6に結合する抗体に、およびCLDN-6を発現する腫瘍細胞および/または腫瘍幹細胞の存在を検出するため、腫瘍微小環境に局在する細胞のCLDN6介在性活性をモジュレートするため、またはCLDN6を発現するがんに対する細胞傷害応答を方向付けるためのそれらの使用に関する。
【0010】
一部の実施形態によれば、抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、23、24、26、28および30から選択される重鎖(HC)可変領域の3つのCDR、ならびに、配列番号2、4、25、27、29および31から選択される軽鎖(LC)可変領域の3つのCDR、または、同定された抗体または断片配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれのアナログもしくは誘導体からなる群から選択される一連の6つの相補性決定領域(CDR)配列を含む。
【0011】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、およびCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、およびCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0012】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、およびCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号15、およびCDR3:配列番号16を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0013】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、およびCDR3:配列番号34を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、およびCDR3:配列番号37を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0014】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号39、およびCDR3:配列番号40を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号41、CDR2:配列番号42、およびCDR3:配列番号43を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0015】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号44、およびCDR3:配列番号40を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号41、CDR2:配列番号45、およびCDR3:配列番号43を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0016】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号46、CDR2:配列番号47、およびCDR3:配列番号48を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号49、CDR2:配列番号50、およびCDR3:配列番号51を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0017】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、23、24、26、28および30からなる群から選択される可変重鎖配列を含む。
【0018】
他の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号2、4、25、27、29および31からなる群から選択される可変軽鎖配列を含む。
【0019】
他の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、23、24、26、28および30からなる群から選択される可変重鎖配列、ならびに、配列番号2、4、25、27、29および31からなる群から選択される可変軽鎖配列、を含む。
【0020】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体または抗体断片は、以下の組合せ:
(a)配列番号1を含む可変重鎖配列および配列番号2を含む可変軽鎖配列;
(b)配列番号3を含む可変重鎖配列および配列番号4を含む可変軽鎖配列;
(c)配列番号23を含む可変重鎖配列および配列番号2を含む可変軽鎖配列;
(d)配列番号24を含む可変重鎖配列および配列番号25を含む可変軽鎖配列;
(e)配列番号26を含む可変重鎖配列および配列番号27を含む可変軽鎖配列;
(f)配列番号28を含む可変重鎖配列および配列番号29を含む可変軽鎖配列;ならびに
(g)配列番号30を含む可変重鎖配列および配列番号31を含む可変軽鎖配列
から選択される可変重鎖配列および可変軽鎖配列を含む。
【0021】
一部の実施形態では、細胞傷害剤に共有結合したCLDN6に結合する抗体を含むイムノコンジュゲートが提供され、この場合、抗体は、以下の組合せ:
(a)配列番号1を含む可変重鎖配列および配列番号2を含む可変軽鎖配列;ならびに
(b)配列番号3を含む可変重鎖配列および配列番号4を含む可変軽鎖配列;
(c)配列番号23を含む可変重鎖配列および配列番号2を含む可変軽鎖配列;
(d)配列番号24を含む可変重鎖配列および配列番号25を含む可変軽鎖配列;
(e)配列番号26を含む可変重鎖配列および配列番号27を含む可変軽鎖配列;
(f)配列番号28を含む可変重鎖配列および配列番号29を含む可変軽鎖配列;ならびに
(g)配列番号30を含む可変重鎖配列および配列番号31を含む可変軽鎖配列
から選択される可変重鎖配列および可変軽鎖配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、細胞傷害剤に共有結合したClaudin-6に結合する抗体を含むイムノコンジュゲートが提供され、この場合、抗体は、(a)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、およびCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、およびCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域;(b)CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、およびCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号15、およびCDR3:配列番号16を含む軽鎖可変領域;(c)CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、およびCDR3:配列番号34を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、およびCDR3:配列番号37を含む軽鎖可変領域;(d)CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号39、およびCDR3:配列番号40を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号41、CDR2:配列番号42、およびCDR3:配列番号43を含む軽鎖可変領域;(e)CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号44、およびCDR3:配列番号40を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号41、CDR2:配列番号45、およびCDR3:配列番号43を含む軽鎖可変領域;ならびに(f)CDR1:配列番号46、CDR2:配列番号47、およびCDR3:配列番号48を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号49、CDR2:配列番号50、およびCDR3:配列番号51を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0023】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体およびそれの抗体断片は、表1に開示の1つもしくは複数の重鎖可変領域CDRおよび/または表2に開示の1つもしくは複数の軽鎖可変領域CDRを含む。
【0024】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、以下の構造的および機能的特徴の1つまたは複数を、単独でまたは組合せで呈する:(a)それらの細胞表面にヒトCLDN6を発現する細胞に結合する;(b)Claudin-6-CHO-K1細胞に発現されたCLDN6へのアイソタイプ対照抗体の結合活性よりおよそ20~25倍高いか、またはClaudin-6-HEK293細胞に発現されたCLDN6へのアイソタイプ対照抗体の結合活性よりおよそ20~30倍高いシグナル(例えば、MFI)でClaudin-6-CHO-K1細胞に、およびアイソタイプ対照抗体の結合活性よりも16倍だけ高いシグナルでClaudin-9 HEK293細胞に選択的に結合する;(c)アイソタイプ対照抗体の結合活性よりおよそ25~60倍高いシグナルで等しく、Claudin-6(Claudin-6 CHO-K1細胞)およびClaudin-9(HEK293細胞)を発現する細胞に結合する;(d)CLDN3、CLDN4を発現する細胞に弱く結合するかまたはまったく結合しない;(e)Claudin-6を内因性発現するNEC8細胞に結合するが、Claudin6遺伝子をノックアウトしたNEC8細胞には結合しない;(f)場合により、マウスCLDN6と交差反応する;(g)Claudin-6を内因性発現するNEC8細胞における結合およびエンドサイトーシス介在細胞傷害性の誘導後、Claudin-6陽性細胞の表面から効率的に内部移行される;ならびに(h)その天然構造でCLDN6を持つ細胞に対する1つまたは複数の免疫エフェクター機能を呈し、この場合、1つまたは複数の免疫エフェクター機能が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)、T細胞依存性細胞傷害性(TDCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)、または抗体依存性細胞性食作用(ADCP)から選択される。
【0025】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体は、内因性レベルのClaudin-6を発現するヒト細胞におよびClaudin-6を過剰発現するように改変された宿主細胞に特異的に結合し、Claudin-3およびClaudin-4への結合を示さない。一実施形態では、抗CLDN6抗体は、ヒト精巣胎芽性癌(NEC8細胞)の内因性発現されたCLDN6に結合する。一部の実施形態では、抗CLDN6抗体は、ヒト卵巣癌(OV90細胞)の内因性発現されたCLDN6に結合する。一部の実施形態では、CLDN6特異的抗体または抗体断片は、100nMより低い親和性でヒトClaudin-6に結合する。他の実施形態では、CLDN6/9特異的抗体または抗体断片は、ヒトCLDN6およびヒトCLDN9に選択的に結合する。
【0026】
一部の実施形態では、抗体は、CLDN6を発現する細胞の表面と会合したCLDN6に結合することができる。好ましくは、CLDN6発現細胞は、無傷細胞、特に非透過性細胞であり、抗体によって結合されたCLDN6タンパク質は細胞の表面と会合され、天然、例えば非変性構造を有する。特定の実施形態では、抗体は、実質的に、CLDN9を発現する細胞の表面と会合したCLDN9に結合することができず;またはCLDN4を発現する細胞の表面と会合したCLDN4に結合することができず、および/またはCLDN3を発現する細胞の表面と会合したCLDN3に結合することができない。
【0027】
一実施形態では、抗CLDN6抗体または抗体断片は、CLDN9と比較してCLDN6に選択的に結合し、Claudin-3(CLDN3)、Claudin-4(CLDN4)に結合しない。別の実施形態では、抗CLDN6抗体または抗体断片は、CLDN6とCLDN9の両方に等しく結合する(例えば、いずれかのCLDNへの優先はない)。一部の実施形態では、抗体は、CLDN6を過剰発現するように改変された宿主細胞のいずれか(例えば、293T-CLDN6またはCHO-CLDN6)を使用するFACSベースのアッセイで、約50nMより小さいEC50(例えば、約75nM未満、約50nM未満、約25nM未満、約10nM未満)を呈する。
【0028】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、その天然構造でCLDN6を持つ細胞に対する1つまたは複数の免疫エフェクター機能を呈し、この場合、1つまたは複数の免疫エフェクター機能は、好ましくは、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)、アポトーシスの誘導、および増殖の阻害からなる群から選択され、好ましくは、エフェクター機能はADCCおよび/またはCDCである。
【0029】
一部の実施形態では、抗体またはその断片は、標的化した細胞傷害性、例えば、腫瘍細胞の死滅を提供するように、1つまたは複数の治療エフェクター部分、例えば、放射線標識、細胞毒、治療用酵素、アポトーシスを誘導する薬剤等に接着され得る。一実施形態では、抗CLDN6抗体は、腫瘍細胞の表面上に生じる際に、ヒトCLDN6に特異的に結合し、CLDN6の内部移行を効率的に誘導するかまたは腫瘍細胞の細胞介在性死滅を方向付ける。
【0030】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体は、1つまたは複数の細胞傷害剤、例えば化学療法剤または薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒、細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素的に活性な毒素、またはその断片)、または放射性同位体(例えば、放射性コンジュゲート)にコンジュゲートした抗CLDN6抗体を含むイムノコンジュゲートに組み込まれる。
【0031】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体または抗体断片は、限定はされないが、1つまたは複数の増強されたADCC、CDC、ADCP、TDCC抗体介在性エフェクター機能を有する化合物を生じる、アミノ酸残基置換、突然変異および/または改変を含む、定常領域(すなわち、Fc領域)の置換または改変を含み得る。
【0032】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体または抗体断片は、本明細書に開示の単一の抗CLDN6抗体のVHまたはVLドメイン由来の、6個のCDRまたはそのバリアントを含む。例えば、結合剤は、「NR.N6.Ab1」と指定される抗CLDN6抗体の6個すべてのCDR領域を含み得る。代表的な例では、抗体またはその抗体断片は、本明細書において、「NR.N6.Ab1」と呼ばれる抗ヒトCLDN6抗体の可変重鎖領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ならびに可変軽鎖領域のCDR1、CDR2、およびCDR3を表す、配列番号5~7および配列番号8~10のアミノ酸配列を含み得る。
【0033】
本明細書に開示の任意の抗CLDN6抗体は、完全ヒト、キメラ、CDR移植、ヒト化、もしくは組換え抗体、またはその断片であり得る。代替の実施形態では、開示した抗CLDN6抗体または抗体断片は、二重特異性または多特異性フォーマットを含む、様々な代替のフォーマットでの使用のために開発され得る。
【0034】
一部の実施形態では、CLDN6抗体は、完全長抗体である。一部の実施形態では、抗体は、抗体断片である。さらなる実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、scFvおよびscFv-Fc断片、単鎖抗体、ミニボディ、およびダイアボディからなる群から選択される。
【0035】
本開示は、本明細書に開示の任意の抗CLDN6抗体をコードする核酸も提供する。関連する実施形態では、本開示は、本明細書に開示の抗CLDN6抗体をコードする1つまたは複数の核酸を含むベクターまたは前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0036】
CLDN6抗体およびその抗体断片は、がんの処置のために使用され得る。CLDN6を発現するがん細胞は、CLDN6に対する抗体による治療など、CLDN6を標的化する治療の好適な標的である。がんの治療のためのそのような方法は、CLDN6抗体またはその抗体断片を含む組成物または製剤を、それを必要とする対象に投与するステップを含み得る。
【0037】
例えば、CLDN6抗体またはその抗体断片は、単独で(例えば、単独療法として)、または他の免疫療法剤および/もしくは化学療法との組合せで、投与され得る。一実施形態では、CLDN6抗体または断片を使用して、CLDN6を発現するがん細胞の死滅を媒介するのに好適なADCを調製する。代替の実施形態では、CLDN6抗体を使用して、増強されたADCC、ADCP、TDCC、またはCDDによって腫瘍細胞を死滅させるように設計された組換え抗体を操作により作製する。
【0038】
本開示は、ADCを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、がんを処置する方法も提供し、この場合、ADCは、ペイロードにコンジュゲートした、本明細書に開示の抗CLDN6抗体または抗体断片を含む。一部の実施形態では、方法は、抗CLDN ADCを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含み、この場合、がんは、子宮、精巣、卵巣および肺がんから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本開示の前述の概要、および以下の詳細な説明は、添付の図と併せて読むことで、よりよく理解されよう。本開示を例示する目的で、目下好ましい実施形態を図に示している。しかし、示されたまさにその通りの構成、例および手段に、本開示が限定されないことを理解されたい。
【0040】
【
図1-1】ヒト抗Claudin-6抗体のVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列ならびにそれらのそれぞれのCDR配列(カバットナンバリング)を提供する図である。配列識別子が提供されており、CDRについては可変ドメイン配列に下線が引かれている。
【
図1-2】ヒト抗Claudin-6抗体のVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列ならびにそれらのそれぞれのCDR配列(カバットナンバリング)を提供する図である。配列識別子が提供されており、CDRについては可変ドメイン配列に下線が引かれている。
【
図1-3】ヒト抗Claudin-6抗体のVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列ならびにそれらのそれぞれのCDR配列(カバットナンバリング)を提供する図である。配列識別子が提供されており、CDRについては可変ドメイン配列に下線が引かれている。
【
図1-4】ヒト抗Claudin-6抗体のVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列ならびにそれらのそれぞれのCDR配列(カバットナンバリング)を提供する図である。配列識別子が提供されており、CDRについては可変ドメイン配列に下線が引かれている。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、FACSによる、Claudin-6-CHO-K1トランスフェクト細胞および非トランスフェクト親CHO-K1細胞への抗CLDN6抗体およびアイソタイプ対照抗体の結合を示す図である。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、FACSによる、Claudin-9-HEK293トランスフェクト細胞への抗CLDN6抗体およびアイソタイプ対照抗体の結合を示す図である。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、FACSによる、Claudin-3-CHO-K1トランスフェクト細胞への抗Claudin抗体の結合を示す図である。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、FACSによる、Claudin-4-CHO-K1トランスフェクト細胞への抗Claudin抗体の結合を示す図である。
【
図6】
図6Aおよび6Bは、FACSによる、ヒトCLDN6を内因性発現するNEC8腫瘍細胞への抗CLDN6抗体の結合を示す図である。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、FACSによる、ヒトCLDN6を内因性発現するOV90腫瘍細胞への抗CNDL6抗体の結合を示す図である。
【
図8】
図8Aおよび8Bは、FACSによる、Claudin-3(CLDN3)およびClaudin-4(CLDN4)を内因性発現するMCF7細胞への抗CLDN抗体の結合を示す図である。
【
図9】
図9は、FACSによる、ヒト腫瘍細胞株、NEC8、OV90およびMCF7ならびにClaudin-9-HEK293トランスフェクト細胞へのウサギポリクローナル抗CLDN9抗体の結合を示す図である。
【
図10-1】
図10A、10Bおよび10Cは、FACSによる、Claudin-6過剰発現細胞株に結合する本開示の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2の用量応答曲線を示す図である。Claudin-6を過剰発現するHEK293細胞(10A);Claudin-9を過剰発現するHEK293細胞(10B);およびClaudin-6を過剰発現するCHO細胞(10C)。
【
図10-2】
図10A、10Bおよび10Cは、FACSによる、Claudin-6過剰発現細胞株に結合する本開示の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2の用量応答曲線を示す図である。Claudin-6を過剰発現するHEK293細胞(10A);Claudin-9を過剰発現するHEK293細胞(10B);およびClaudin-6を過剰発現するCHO細胞(10C)。
【
図11】
図11Aおよび11Bは、ヒトCLDN6を内因性発現するNEC8細胞(
図11A)およびOV90細胞(
図11B)におけるNR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2介在抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を示す図である。
【
図12-1】
図12A、12Bおよび12Cは、NEC8腫瘍細胞(
図12A);ヒトCLDN6を内因性発現するOV90腫瘍細胞(
図12B)およびClaudin-6過剰発現細胞株HEK293細胞(
図12C)において、抗Claudin6抗体NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2によって誘導される抗体介在性エンドサイトーシスを示す図である。
【
図12-2】
図12A、12Bおよび12Cは、NEC8腫瘍細胞(
図12A);ヒトCLDN6を内因性発現するOV90腫瘍細胞(
図12B)およびClaudin-6過剰発現細胞株HEK293細胞(
図12C)において、抗Claudin6抗体NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2によって誘導される抗体介在性エンドサイトーシスを示す図である。
【
図13-1】
図13A、13B、13Cおよび13Dは、FACSによる、Claudin-6を過剰発現するHEK293細胞およびClaudin-9を過剰発現するHEK293細胞への抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、NR.N6.Ab6、およびアイソタイプ対照抗体の結合を示す図である。
【
図13-2】
図13A、13B、13Cおよび13Dは、FACSによる、Claudin-6を過剰発現するHEK293細胞およびClaudin-9を過剰発現するHEK293細胞への抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、NR.N6.Ab6、およびアイソタイプ対照抗体の結合を示す図である。
【
図14-1】
図14A、14B、14C、14Dおよび14Eは、FACSによる、Claudin-6を内因性発現するNEC8およびNEC8 Claudin-6遺伝子ノックアウト細胞(NEC8 Claudin-6 KO)への、抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.4.N6.Ab5、NR.N6.Ab6、NR.NR6.Ab1およびアイソタイプ対照抗体の結合を示す図である。
【
図14-2】
図14A、14B、14C、14Dおよび14Eは、FACSによる、Claudin-6を内因性発現するNEC8およびNEC8 Claudin-6遺伝子ノックアウト細胞(NEC8 Claudin-6 KO)への、抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.4.N6.Ab5、NR.N6.Ab6、NR.NR6.Ab1およびアイソタイプ対照抗体の結合を示す図である。
【
図14-3】
図14A、14B、14C、14Dおよび14Eは、FACSによる、Claudin-6を内因性発現するNEC8およびNEC8 Claudin-6遺伝子ノックアウト細胞(NEC8 Claudin-6 KO)への、抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.4.N6.Ab5、NR.N6.Ab6、NR.NR6.Ab1およびアイソタイプ対照抗体の結合を示す図である。
【
図15-1】
図15A、15B、15C、15D、15Eおよび15Fは、FACSによる、Claudin-6を過剰発現するCHO-K1細胞、Claudin-3を過剰発現するCHO-K1細胞およびClaudin-4を過剰発現するCHO-K1細胞への抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、およびNR.N6.Ab6、ならびに2つの陽性対照MAB4620およびMAB4219の結合を示す図である。
【
図15-2】
図15A、15B、15C、15D、15Eおよび15Fは、FACSによる、Claudin-6を過剰発現するCHO-K1細胞、Claudin-3を過剰発現するCHO-K1細胞およびClaudin-4を過剰発現するCHO-K1細胞への抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、およびNR.N6.Ab6、ならびに2つの陽性対照MAB4620およびMAB4219の結合を示す図である。
【
図15-3】
図15A、15B、15C、15D、15Eおよび15Fは、FACSによる、Claudin-6を過剰発現するCHO-K1細胞、Claudin-3を過剰発現するCHO-K1細胞およびClaudin-4を過剰発現するCHO-K1細胞への抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、およびNR.N6.Ab6、ならびに2つの陽性対照MAB4620およびMAB4219の結合を示す図である。
【
図16-1】
図16A、16B、16Cおよび16Dは、FACSによる、Claudin-6を過剰発現するHEK293細胞およびClaudin-9を過剰発現するHEK293細胞への本開示の抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、およびNR.N6.Ab6の用量応答曲線を示す図である。
【
図16-2】
図16A、16B、16Cおよび16Dは、FACSによる、Claudin-6を過剰発現するHEK293細胞およびClaudin-9を過剰発現するHEK293細胞への本開示の抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、およびNR.N6.Ab6の用量応答曲線を示す図である。
【
図17-1】
図17A、17Bおよび17Cは、FACSによる、Claudin-6を内因性発現するNEC8およびNEC8 Claudin-6遺伝子ノックアウト(NEC8 Claudin-6 KO)細胞への本開示の抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、およびNR.N6.Ab6の用量応答曲線を示す図である。
【
図17-2】
図17A、17Bおよび17Cは、FACSによる、Claudin-6を内因性発現するNEC8およびNEC8 Claudin-6遺伝子ノックアウト(NEC8 Claudin-6 KO)細胞への本開示の抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、およびNR.N6.Ab6の用量応答曲線を示す図である。
【
図18-1】
図18A、18B、18Cおよび18Dは、FACSによる、Claudin-6を過剰発現するHEK293細胞、Claudin-9を過剰発現するHEK293細胞、Claudin-6を内因性発現するNEC8細胞およびNEC8 Claudin-6 KO細胞への本開示の抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab1、NR.N6.Ab1N73Dのバリアントおよびアイソタイプ対照の用量応答曲線を示す図である。
【
図18-2】
図18A、18B、18Cおよび18Dは、FACSによる、Claudin-6を過剰発現するHEK293細胞、Claudin-9を過剰発現するHEK293細胞、Claudin-6を内因性発現するNEC8細胞およびNEC8 Claudin-6 KO細胞への本開示の抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab1、NR.N6.Ab1N73Dのバリアントおよびアイソタイプ対照の用量応答曲線を示す図である。
【
図19】
図19Aおよび19Bは、ヒトCLDN6を内因性発現するNEC8細胞(
図19A)およびNEC8 Claudin-6ノックアウト細胞(
図19B)におけるNR.N6.Ab1、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4およびNR.N6.Ab5介在抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を示す図である。
【
図20】
図20Aおよび20Bは、NEC8およびNEC8 Claudin-6ノックアウト細胞におけるNR.N6.PC1、NR.N6.Ab1、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5の内部移行活性を示す図である。
【
図21】
図21Aおよび21Bは、ヒトCLDN6を内因性発現するNEC8腫瘍細胞(
図21A)およびNEC8 Claudin-6ノックアウト細胞(
図21B)における抗Claudin-6抗体NR.N6.Ab1、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4およびNR.N6.Ab5によって誘導された抗体介在性エンドサイトーシスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本開示がより容易に理解することができるように、ある特定の技術的および科学的用語について下に具体的に定義する。本文書の他の場所で特に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者であれば一般に理解される意味を有する。
【0042】
本開示全体をとおして、以下の略語が使用される:
mAbまたはMabまたはMAb - モノクローナル抗体。
CDR - 免疫グロブリン可変領域の相補性決定領域。
VHまたはVH - 免疫グロブリン重鎖可変領域。
VLまたはVL - 免疫グロブリン軽鎖可変領域。
FR - 抗体フレームワーク領域、CDR領域を除外する免疫グロブリン可変領域。
【0043】
「Claudin-6」または「CLDN6」(本明細書では交換可能に使用される)という用語は、好ましくは、ヒトCLDN6、特に、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列のバリアントを含むタンパク質に関する。「CLDN6」という用語は、任意のCLDN6バリアント、例えば翻訳後修飾バリアントおよび構造バリアントを含む。ヒト、カニクイザル、およびマウスCLDN6のアミノ酸配列は、NCBI参照配列:NP_067018.2(ヒト)(配列番号17)、XP_005591080.1(カニクイザル)(配列番号18)、およびNP_061247.1(マウス)(配列番号19)に提供されている。カニクイザルとマウスのCLDN6のオルソログは、それぞれヒトタンパク質と>99%および~88%の同一性を共有する。
【0044】
「CLDN9」という用語は、ヒトCLDN9、特に、配列番号20(NCBI参照配列NP_066192.1)に記載のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列のバリアントを含むタンパク質に関する。ヒトCLDN6およびヒトCLDN9タンパク質は、71.8%の同一性を共有する。
【0045】
「CLDN4」という用語は、ヒトCLDN4、特に、配列番号21(NCBI参照配列NP_001296.1)に記載のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列のバリアントを含むタンパク質に関する。ヒトCLDN6およびヒトCLDN4タンパク質は、59.1%の同一性を共有する。
【0046】
「CLDN3」という用語は、ヒトCLDN3、特に、配列番号22(NCBI参照配列NP_001297.1)に記載のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列のバリアントを含むタンパク質に関する。ヒトCLDN6およびヒトCLDN3タンパク質は、56.7%の同一性を共有する。
【0047】
「パーセンテージ同一性」という用語は、ベストなアライメント後に得られた、比較される2つの配列間で同一のアミノ酸残基のパーセンテージを示すことを意図し、このパーセンテージは統計的に純粋であり、2つの配列間の違いは無作為にそれらの全長にわたり分配されている。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、従来どおり、それらを最適にアラインした後にこれらの配列を比較することによって実施され、配列類似性の局所領域を同定および比較するため、前記比較はセグメントによりまたは「比較のウインドウ」によって実施された。比較のための配列の最適なアライメントは、手動の他に、Smith and Waterman, :1981, Ads App. Math. 2, 482の局所相同アルゴリズムにより、Neddiernan and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48, 443の局所相同アルゴリズムにより、Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl Acad. Sci. USA 85, 2444の類似性探索方法により、またはこれらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,WisのGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)を使用するコンピュータープログラムにより、産生され得る。
【0048】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含めて、種々の抗体構造を包含する。
【0049】
本明細書で使用される「交差反応する」という用語は、本明細書に記載の抗ヒトCLDN6抗体が、異なる種由来のCLDN6に結合する能力を指す。例えば、本明細書に記載の抗体は、別の種由来のCLDN6(例えば、またはラット、またはマウスのCLDN6)にも結合することができる。
【0050】
IgGなどの例示的な抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)および重鎖定常領域で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができる。それぞれのVHおよびVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。
【0051】
超可変領域は一般に、軽鎖可変領域における、アミノ酸残基約24~34(LCDR1;「L」は軽鎖を示す)、50~56(LCDR2)および89~97(LCDR3)からのアミノ酸残基、ならびに、重鎖可変領域における、約31~35B(HCDR1;「H」は重鎖を示す)、50~65(HCDR2)、および95~102(HCDR3)周辺のアミノ酸残基を包含し;Kabat et al., SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)、ならびに/または、超可変ループを形成するそれら残基を包含する(例えば、軽鎖可変領域における、26~32残基(LCDR1)、50~52残基(LCDR2)および91~96残基(LCDR3)、ならびに、重鎖可変領域における、26~32残基(HCDR1)、53~55残基(HCDR2)および96~101残基(HCDR3);Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917。
【0052】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、例えば、当該集団を構成する個々の抗体は、可能性のあるバリアント抗体を除いて、同一でありかつ/または同じエピトープに結合する。例えば、バリアント抗体は、天然に存在する突然変異を含有するかまたはモノクローナル抗体調製物の製造過程で発生するが、こういったバリアントは一般にマイナーな量で存在するものである。様々な決定基(エピトープ)に対して向けられた様々な抗体を通常では含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられたものである。したがって、修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な集団の抗体から得られている抗体の性状を指示するものであり、任意の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、それらに限定されないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含めて、様々な技法によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法およびその他の例示的な方法が、本明細書に記載されている。
【0053】
「キメラ」抗体という用語は、組換え抗体であって、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の相当する配列と同一または相同であるが、一方で、その鎖(複数可)の残部は、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の相当する配列と同一または相同である、組換え抗体、同様に、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、かかる抗体の断片を指す。加えて、相補性決定領域(CDR)移植を実施して、親和性または特異性を始めとする抗体分子のある特定の特性を変えることができる。通常では、可変ドメインはげっ歯類動物などの実験動物(「親抗体」)由来の抗体から得られ、そして定常ドメイン配列はヒト抗体から得られるので、生成するキメラ抗体は、ヒト対象においてエフェクター機能を方向付けることができ、それが由来する親(例えば、マウス)抗体よりも、有害な免疫応答を誘発する可能性が低くなる。
【0054】
「ヒト化抗体」という用語は、重鎖および/または軽鎖の非ヒト(例えば、マウス、ラット、またはハムスター)相補性決定領域(CDR)と一緒に、可変領域において1つまたは複数のヒトフレームワーク領域を含むように改変された抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、CDR領域を除いて完全にヒト型である配列を含む。ヒト化抗体は通常では、非ヒト化抗体と比べてヒトに対する免疫原性が低く、したがってある特定の状況において治療効果を提供する。当業者であれば、ヒト化抗体について知っており、それらを生成するのに適した技法についても知っている。例えば、それらのそれぞれは全内容が参照により本明細書に組み込まれる、Hwang, W. Y. K., et al., Methods 36:35, 2005;Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029-10033, 1989;Jones et al., Nature, 321:522-25, 1986;Riechmann et al., Nature, 332:323-27, 1988;Verhoeyen et al., Science, 239:1534-36, 1988;Orlandi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:3833-37, 1989;米国特許第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,761号明細書;同第5,693,762号明細書;同第6,180,370号明細書;およびSelick et al.、国際公開第90/07861号パンフレットを参照されたい。
【0055】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって生成される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する、および/または当業者にとっては既知のヒト抗体を作製するための技法のいずれかを使用して作製されている、抗体である。ヒト抗体に関する本定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に排除する。ヒト抗体は、Cole et al, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner et al, J. Immunol, 147(I):86-95 (1991)に記載の方法を含めて、当技術分野で既知の種々の技法を使用して生成することができる。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol, 5: 368-74 (2001)もまた参照されたい。ヒト抗体は、トランスジェニック動物に抗原を投与することによって調製することができるが、当該トランスジェニック動物は抗原負荷に応答してかかる抗体を産生するように改変されており、その動物の内因性の遺伝子座は無効とされている、例えば、免疫HuMabマウス(例えば、HuMabマウスに関しては、Nils Lonberg et al., 1994, Nature 368:856-859、国際公開第98/24884号パンフレット、国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22645号パンフレット、国際公開第92/03918号パンフレットおよび国際公開第01/09187号パンフレットを参照されたい)、ゼノマウス(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関しては、米国特許第6,075,181号明細書および同第6,150,584号明細書を参照されたい)またはTrianniマウス(例えば、国際公開第2013/063391号パンフレット、国際公開第2017/035252号パンフレットおよび国際公開第2017/136734号パンフレットを参照されたい)である。
【0056】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。抗体に関し主たる5つのクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)に、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの様々なクラスに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0057】
抗体の「抗原結合ドメイン」という用語(または単に「結合ドメイン」)または同様の用語は、抗原複合体に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合断片の例には、以下が含まれる:(i)Fab断片、VL、VH、CLおよびCHの各ドメインからなる一価の断片、(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片、(iii)VHドメインおよびCHドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341: 544-546)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)合成リンカーによって必要に応じて連結することができる2つ以上の単離されたCDRの組合せ。
【0058】
抗体の「可変ドメイン」(Vドメイン)は、結合を媒介し、特定の抗体の抗原に特異性を付与する。しかし、可変性は、可変ドメインの110個のアミノ酸全長にわたって均等には分布していない。代わりに、V領域は、それぞれが9~12個のアミノ酸長である「超可変領域」またはCDRと本明細書では呼ばれる極度の可変性のより短い領域によって分離された15~30個のアミノ酸からなるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変である区間から、構成される。当業者であれば理解されるように、CDRの正確なナンバリングおよび配置は、様々なナンバリングシステムのうちで異なってもよい。しかし、可変重配列および/または可変軽配列の開示には関連するCDRの開示が含まれることを理解されたい。したがって、各可変重領域の開示は、vhCDR(例えば、vhCDR1、vhCDR2、およびvhCDR3)の開示であり、各可変軽領域の開示は、vlCDR(例えば、vlCDR1、vlCDR2、およびvlCDR3)の開示である。
【0059】
本明細書で使用される用語として「相補性決定領域」または「CDR」とは、特異的抗原認識の媒介を主に担う、重鎖と軽鎖の両ポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。各VLおよび各VHの内には、3つのCDR(CDR1、CDR2、およびCDR3と称される)が存在する。本明細書で特に明記されない限り、CDR領域およびフレームワーク領域は、カバットナンバリングスキームに従ってアノテーションが付けられている(Kabat E. A., et al., 1991, Sequences of proteins of Immunological interest, In: NIH Publication No. 91-3242, US Department of Health and Human Services, Bethesda, Md)。
【0060】
他の実施形態では、抗体のCDRは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、MacCallum RM et al, (1996) J Mol Biol 262: 732-745に従って、または、それらのそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Lefranc M-P, (1999) The Immunologist 7: 132- 136およびLefranc M-P et al, (1999) Nucleic Acids Res 27: 209-212に記載のIMGTナンバリングシステムに従って、決定することができる。また、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Martin A. "Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains," in Antibody Engineering, Kontermann and Diibel, eds., Chapter 31, pp. 422-439, Springer-Verlag, Berlin (2001)も、参照されたい。他の実施形態では、抗体のCDRはAbMナンバリングスキームに従って決定することができ、このスキームはAbM超可変領域を参照とするものであるが、この領域とは、KabatのCDRとChothiaの構造ループとの間の妥協を表し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェア(Oxford Molecular Group,Inc.)により使用されている。
【0061】
「フレームワーク」または「フレームワーク領域」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般には、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4から構成される。
【0062】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンのVLフレームワーク配列またはVHフレームワーク配列の選択において最も普通に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンのVL配列またはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループ由来である。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda Md. (1991), Vols. 1-3にあるような、サブグループである。一実施形態では、VLの場合、サブグループは、Kabat et al.、上掲にあるような、サブグループカッパIである。一実施形態では、VHの場合、サブグループは、Kabat et al.、上掲にあるような、サブグループIllである。
【0063】
「ヒンジ領域」は一般に、ヒトIgG1の216~238(EUナンバリング)または226~251(カバットナンバリング)からのストレッチングとして定義される。ヒンジは、個別の3つの領域、上部、中間(例えばコア)、および下部の各ヒンジにさらに分けることができる。
【0064】
本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義する。本用語には、天然配列のFc領域およびバリアントFc領域が含まれる。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端にまで及ぶ。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても存在しなくてもよい。本明細書で別段の指定がない限り、Fc領域または定常領域のアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)に記載のEUインデックスとも呼ばれるEUナンバリングシステムに従う。
【0065】
「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、当該インタクトな抗体の部分を含む、当該インタクトな抗体とは異なる分子を指す。抗体断片の例としては、それらに限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv)が挙げられる。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる同一の2つの抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映する表記である、残りの「Fc」断片とが生成される。Fab断片は、重(H)鎖の可変領域ドメイン(VH)とともに軽(L)鎖全体、および1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)から構成される。抗体のペプシン処理により、単一の大きいF(ab)2断片が得られ、これは、およそ、二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド連結のFab断片に相当しており、依然として抗原を架橋することができる。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端にさらなる数個の残基を有する点でFab’断片とは異なる。Fab’-SHは、Fab’に関する本明細書における表記であるが、この場合、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つ。F(ab’)2抗体断片は当初、Fab’断片の間にヒンジシステインを有する、Fab’断片の対として生成されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0066】
「Fv」は、緊密な、非共有結合の会合にある1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインとの二量体から構成される。これらの2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基を与えるとともに抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖にそれぞれ由来の3ループ)が生じる。
【0067】
「sFv」または「scFv」とも略される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に接続されたVH抗体ドメインおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合にとって所望の構造を形成することを可能にする、ポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間にさらに含む。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0068】
抗体の「抗原結合ドメイン」という用語(または、単に「結合ドメイン」)または同様の用語は、抗原複合体に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合断片の例には、以下が含まれる、(i)Fab断片、VL、VH、CLおよびCHの各ドメインからなる一価の断片、(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片、(iii)VHドメインおよびCHドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., Nature 341: 544-546, 1989)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)合成リンカーによって必要に応じて連結することができる2つ以上の単離されたCDRの組合せ。
【0069】
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、特に、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体をカバーするが、この場合、VH-VL単位が多重エピトープ特異性を有する(例えば、1つの生体分子上の異なる2つのエピトープまたは異なる生体分子上の各エピトープに結合することができる)。かかる多重特異性抗体としては、それらに限定されないが、完全長抗体、2つ以上のVLドメインおよびVHドメインを有する抗体、二重特異性ダイアボディおよびトリアボディが挙げられる。「多重エピトープ特異性」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。
【0070】
「デュアル特異性(Dual specificity)」または「二重特異性(bispecificity)」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の異なる2つのエピトープに特異的に結合する能力を指す。しかし、二重特異性抗体とは対照的に、デュアル特異性抗体はアミノ酸配列が同一である2つの抗原結合アームを有し、各Fabアームは2つの抗原を認識することができる。デュアル特異性によって、抗体は、単一のFabまたはIgG分子として異なる2つの抗原と高親和性を持って相互作用することが可能となる。一実施形態によれば、IgG1形態にある多重特異性抗体は、各エピトープに、5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、または0.1μM~0.001pMの親和性で結合する。「単一特異性」とは、1つのエピトープのみに結合する能力を指す。多重特異性抗体は、完全な免疫グロブリン分子と類似の構造を有することができ、Fc領域、例えば、IgG Fc領域を含む。かかる構造には、それらに限定されないが、IgG-Fv、IgG-(scFv)2、DVD-Ig、(scFv)2-(scFv)2-Fcおよび(scFv)2-Fc-(scFv)2が含まれ得る。IgG-(scFv)2の場合、scFvは、重鎖もしくは軽鎖のいずれかのN末端もしくはC末端のいずれかに付着させることができる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「二重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、多くはヒトまたはヒト化抗体を指す。本開示では、結合特異性の一方は、CLDN6の方に向けることができ、もう一方は、任意の他の抗原、例えば、細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、ウイルス由来タンパク質、ウイルスによってコードされたエンベロープタンパク質、細菌に由来するタンパク質、または細菌性表面タンパク質等に向けることができる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「ダイアボディ」という用語は、2つのポリペプチド鎖を含む二価の抗体を指し、この場合、各ポリペプチド鎖は、同じペプチド鎖上のVHドメインとVLドメインとの分子内会合を可能とするには短すぎるリンカー(例えば、アミノ酸5個で構成されるリンカー)によって連結されたVHドメインとVLドメインを含む。この配置により、各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補ドメインと強制的に対になってホモ二量体構造を形成する。したがって、「トリアボディ」という用語は、3つのペプチド鎖を含む三価の抗体を指し、ペプチド鎖のそれぞれが、同じペプチド鎖内におけるVHドメインとVLドメインとの分子内会合を可能とするには極端に短いリンカー(例えば、アミノ酸1~2個から構成されるリンカー)によって連結された1つのVHドメインと1つのVLドメインを含有する。
【0073】
「単離された抗体」という用語は、本明細書に開示の種々の抗体を説明して使用される場合、抗体が発現された細胞からまたは細胞培養物から特定されかつ分離および/または回収された抗体を意味する。単離された抗体または抗体断片には、抗体または抗体断片のバリアントが含まれ得るが、これは、抗体または抗体断片の作製、精製、および/または保存過程で発生する1つまたは複数の翻訳後修飾(例えば、C末端リジンクリッピング)を有する。その天然環境の混入成分とは、ポリペプチドの診断的または治療的用途を通常では妨害すると思われる物質であり、混入成分には酵素、ホルモン、およびその他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。一部の実施形態では、単離された抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)の各アプローチによって決定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価方法の概説については、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)を参照されたい。好ましい実施形態では、抗体は、(1)スピニングカップ配列決定装置の使用によりN末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(2)クマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を使用して非還元条件下または還元条件下でSDS-PAGEによって均一になるまで、精製される。
【0074】
抗体の標的分子への結合に関して、「特異的結合」、あるいは特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピト-プ「に特異的に結合する」またはそれ「に特異的」であるという用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較した分子の結合を決定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子、例えば過剰な非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、特異的結合は、プロ-ブへの標識標的の結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害される場合に、指摘される。本明細書で使用される「特異的結合」、あるいは特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピト-プ「に特異的に結合する」またはそれ「に特異的」であるという用語は、例えば、10-4M以下、代替的に10-5M以下、代替的に10-6M以下、代替的に10-7M以下、代替的に10-8M以下、代替的に10-9M以下、代替的に10-10M以下、代替的に10-11M以下、代替的に10-12M以下の標的に対するKdを有する分子、または、10-4M~10-6Mもしくは10-6M~10-10Mもしくは10-7M~10-9Mの範囲のKdを有する分子によって示され得る。当業者であれば理解するように、親和性およびKDの値は反比例している。抗原に対する高親和性は、低いKD値によって測定される。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、ある分子が、実質的に他のいずれのポリペプチドまたはポリペプチドエピト-プにも結合することなく、CLDN6にまたはCLDN6エピト-プに結合する、結合を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「CLDN6に結合する」という用語は、抗体または抗原結合断片が、内因性ヒトCLDN6が正常細胞または悪性細胞の表面上に、またはCLDN6を過剰発現するように改変された組換え宿主細胞の表面上に存在する場合に、内因性ヒトCLDN6を認識しかつこれに結合する能力を指す。
【0076】
本明細書で使用される「親和性」という用語は、抗体のエピトープへの結合強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag](式中、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は未結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は未結合抗原のモル濃度である)として定義される解離定数Kdにより与えられる。親和性定数Kaは、1/Kdにより定義される。mAbの親和性を決定する方法は、Harlow, et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988)、Coligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)、およびMuller, Meth. Enzymol. 92:589-601 (1983)に見出すことができ、これらの参照文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。mAbの親和性を決定する当分野においてよく知られている一標準法は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置による分析によるもの)の使用である。
【0077】
「エピトープ」は、抗体とその抗原(複数可)との間の相互作用の部位(単数または複数)を指示する、技術用語である。(Janeway, C, Jr., P. Travers, et al. (2001). Immunobiology: the immune system in health and disease. Part II, Section 3- 8. New York, Garland Publishing, Inc.):によって:「抗体は一般に、タンパク質などの大分子の表面上の小領域のみを一般に認識する…」と記載されているように:[ある特定のエピトープ]が、タンパク質の折り畳みによって一緒にされた、[抗原]ポリペプチド鎖の異なる部分からのアミノ酸で構成される可能性が高い。この種の抗原決定基は、認識される構造が、抗原のアミノ酸配列中では不連続であるが3次元構造では一緒になっているタンパク質のセグメントから構成されるので、立体配座エピトープまたは不連続エピトープとして知られている。対照的に、ポリペプチド鎖の単一セグメントから構成されるエピトープは、連続エピトープまたは線状エピトープと称される(Janeway, C. Jr., P. Travers, et al. (2001). Immunobiology: the immune system in health and disease. Part II, Section 3-8. New York, Garland Publishing, Inc.)。
【0078】
「KD」という用語は、本明細書で使用される場合、kdのkaに対する比(例えば、kd/ka)から得られ、モル濃度(M)として表される、平衡解離定数を指す。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定するための好ましい方法には、好ましくはFortebio Octet REDデバイスを使用するバイオレイヤー干渉法(BLI)解析、好ましくはBIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴システムなどのバイオセンサーシステムを使用する表面プラズモン共鳴、またはフローサイトメトリーおよびスキャッチャード解析が含まれる。
【0079】
薬剤および特定の活性(例えば、細胞への結合、酵素活性の阻害、免疫細胞の活性化または阻害)に関する「EC50」とは、かかる活性に関して薬剤の最大の応答または効果の50%を生じる当該薬剤の効果的濃度を指す。薬剤および特定の活性に関する「EC100」とは、かかる活性に関して薬剤の実質的に最大の応答を生じる当該薬剤の効果的濃度を指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、「抗体薬物コンジュゲート」(ADC)という用語は、合成リンカーを介して細胞傷害剤(ペイロードとして知られる)に共有結合で連結された組換えモノクローナル抗体からなるイムノコンジュゲートを指す。イムノコンジュゲート(抗体薬物コンジュゲート、ADC)は、高度に強力な抗体ベースのがん療法のクラスである。ADCは、合成リンカーを介して細胞傷害剤(ペイロードとして知られる)に共有結合で連結された組換えモノクローナル抗体からなる。ADCは、モノクローナル抗体の特異性および小分子化学療法薬物の効力を兼ね備えるとともに、高度に細胞傷害性の小分子薬物部分の腫瘍細胞への直接的な標的化送達を容易にする。
【0081】
本明細書で使用される場合、「エンドサイトーシス」という用語は、真核細胞が原形質膜のセグメント、細胞表面受容体、および細胞外液からの成分を内部移行するプロセスを指す。エンドサイトーシスのメカニズムには、受容体介在性エンドサイトーシスが含まれる。「受容体介在性エンドサイトーシス」という用語は、リガンドがその標的に結合すると、膜陥入および挟持を引き起こし、内部移行され、サイトゾルに送達されるか、適当な細胞内区画に移される、生物学的メカニズムを指す。
【0082】
「バイスタンダー効果」という用語は、抗体薬物コンジュゲートによって標的とされた腫瘍細胞に隣接した健康な細胞の標的細胞介在性死滅を指す。バイスタンダー効果とは一般に、抗原陽性標的細胞から隣接した抗原陰性の健康細胞へと拡散することができる疎水性の細胞傷害薬の細胞流出によって引き起こされる。バイスタンダー効果の有無は、イムノコンジュゲートを作製するのに使用されるリンカーと共役化学の態様に起因する可能性がある。
【0083】
抗体Fc領域とある特定のFc受容体との相互作用に由来する「エフェクター機能」という用語には、それらに必ずしも限定されないが、Clq結合、補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合、ADCC、抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)、T細胞依存性細胞傷害性(TCDD)などのFcyR介在性エフェクター機能、および細胞表面受容体の下方調節が含まれる。かかるエフェクター機能には、一般に、Fc領域が抗原結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることが必要である。
【0084】
本明細書で使用される場合、「抗体ベースの免疫療法」および「免疫療法」という用語は広義には、抗CLDN6抗体、二重特異性分子、抗原結合ドメイン、または抗CLDN6抗体もしくはそれの抗体断片もしくはCDRを含む融合タンパク質のターゲティング特異性に依存して、CLDN6発現細胞に及ぼす直接的または間接的な影響を媒介する、任意の形態の療法を指して、使用される。本用語は、ネイキッド抗体、二重特異性抗体(T細胞結合、NK細胞結合、およびその他の免疫細胞/エフェクター細胞結合の各方式を含めて)、抗体薬物コンジュゲートを使用する処置の方法、抗CLDN6キメラ抗原受容体を含むように改変されたT細胞(CAR-T)またはNK細胞(CAR-NK)、およびCLDN6特異的結合剤を含む腫瘍溶解性ウイルスを使用する細胞療法、ならびに抗CLDN6抗体の抗原結合配列を送達することによる遺伝子療法を包含することを意図するものであり、かつ、in vivoで相当する抗体断片を発現させることを意図するものである。
【0085】
Claudinタンパク質ファミリー
Claudinは、上皮または内皮細胞シートに見出されるものなど、分極細胞型の最突端細胞-細胞接着ジャンクションである、タイトジャンクションの主要な構造タンパク質を含む膜内在性タンパク質である。
【0086】
ヒトのタンパク質のclaudinファミリーは、サイズが22~34kDaの範囲である、少なくとも24のメンバーから構成される。すべてのclaudinは、両方のタンパク質末端が膜の細胞内面に局在し、2つの細胞外(EC)ループ、EC1およびEC2の形成をもたらすテトラスパニン形態を持つ。典型的には、EC1は、サイズが約50~60アミノ酸であり、EC2はEC1より小さく、通常およそ25アミノ酸を含む。ECループは、タイトジャンクションの形成をもたらす、直接の同種親和性相互作用、およびclaudinのある特定の組合せでは、異種親和性相互作用を媒介する。
【0087】
Claudin-6
Claudin6(CLDN6)は、通常、220アミノ酸の前駆体タンパク質としてヒトで発現され;その最初の21アミノ酸は、シグナルペプチドを構成する。CLDN6前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、NCBI参照配列NP067018.2として、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)のウェブサイトで公に利用可能であり、本明細書では配列番号17として提供される。
【0088】
発現CLDN6は、セミノーマ、胚性癌腫および卵黄嚢腫瘍を含む胚細胞腫瘍、ならびに胃腺癌、肺腺癌、卵巣腺癌、および子宮内膜癌の一部の症例で高く発現される(Ushiku T, et al., Histopathology 61(6):1043-1056, 2012、Hewitt KJ, Agarwal R, Morin PJ. The claudin gene family: expression in normal and neoplastic tissues. BMC Cancer 2006; 6; 186;Micke, P. et al. (2014) Aberrantly activated Claudin-6 and 18.2 as potential therapy targets in non-small-cell lung cancer. Int. J. Cancer 135, 2206-2214;Lal-Nag, M. et al. (2012) Claudin-6: a novel receptor for CPE-mediated cytotoxicity in ovarian cancer. Oncogenesis 1, e33; Ben-David, U. et al. (2013) Immunologic and chemical targeting of the tight junction protein Claudin-6 eliminates tumorigenic human pluripotent stem cells. Nat. Commun. 4, 1992)。
【0089】
ヒトCLDN6タンパク質は、細胞外ドメイン(ECD)がヒトCLDN9タンパク質配列と非常に近く、ECD1では>98%の同一性およびECD2では>91%の同一性を有する。ヒトCLDN4もまた、ECD配列がヒトCLDN6と近く、ECD1では>84%の同一性およびECD2では>78%の同一性を有する。CLDN6に対するモノクローナル抗体(MAb)の発見は、それらの細胞外ドメインで3つのアミノ酸のみ(ECD1に2つおよびECD2に1つ)がCLDN6と異なる内因性発現されたClaudin-9(CLDN9)の高い相同性によって妨げられてきた。CLDN4、CLDN6、およびCLDN9タンパク質の推定されるカニクイザルタンパク質ECD配列は、それぞれのヒトECD配列と100%同一である。したがって、開示された抗ヒトCLDN6抗体および断片は、カニクイザルCLDN6と交差反応すると予想される(データは示さない)。さらに、Claudin-6遺伝子は、異なる種間で高度に保存され、例えばヒトおよびマウス遺伝子は、DNAおよびタンパク質レベルで88%の相同性を示す。
【0090】
がん処置のためのCLDN6標的化
ここ数年、タイトジャンクションはがん細胞の増殖、形質転換および転移に役割を果たすことが、より確証的になっている。claudinの制御不全は、上皮細胞のタイトジャンクションの破壊をもたらし、次いで、細胞極性の欠損および上皮完全性の障害を生じる。腫瘍細胞によるCLDN6の過剰発現は、腫瘍細胞の脱分化の結果としてclaudinの局在の制御不全、または異常な血管新生を有する腫瘍塊内で効率的に養分を吸収するように急速に増殖するがん組織の必要性と関連し得る(Morin PJ., Cancer Res. 1;65(21):9603-6, 2005)。細胞間接着の減少およびがん細胞の移動性の増加は、上皮の間葉転移(EMT)の主なイベント、がん進行および転移の重要なステップであると示唆される。
【0091】
抗CLDN6抗体
本開示の抗CLDN6抗体(NR.N6.Ab1、NR.N6.Ab2、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5およびNR.N6.Ab6)は、ヒトCLDN6またはヒトCLDN6/9に選択的に結合する。本開示の抗体およびそれの断片は、CLDN6に対するCDR配列の独自のセットによって特徴付けられ、単剤療法として、または他の抗がん剤との組合せでがん免疫療法に有用である。
【0092】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはその抗体断片は、以下の構造的および機能的特徴の1つまたは複数を、単独でまたは組合せで呈する:(a)それらの細胞表面にヒトCLDN6を発現する細胞に結合する;(b)アイソタイプ対照抗体の結合活性よりおよそ20~25倍高いか、またはClaudin-6-HEK293細胞に発現されたCLDN6へのアイソタイプ対照抗体の結合活性よりおよそ20~30倍高いシグナル(例えば、MFI)でClaudin-6 CHO-K1細胞に選択的に結合する;(c)アイソタイプ対照抗体の結合活性よりおよそ25~60倍高いシグナルで等しく、Claudin-6(Claudin-6 CHO-K1細胞)およびClaudin-9(HEK293細胞)を発現する細胞に結合する;(d)CLDN3、CLDN4を発現する細胞に弱く結合するかまたはまったく結合しない;(e)Claudin-6を内因性発現するNEC8細胞に結合するが、Claudin6遺伝子をノックアウトしたNEC8細胞には結合しない;(f)場合により、マウスCLDN6と交差反応する;(g)Claudin-6を内因性発現するNEC8細胞における結合およびエンドサイトーシス介在細胞傷害性の誘導後、Claudin-6陽性細胞の表面から効率的に内部移行される;ならびに(h)その天然構造でCLDN6を持つ細胞に対する1つまたは複数の免疫エフェクター機能を呈し、この場合、1つまたは複数の免疫エフェクター機能が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)、T細胞依存性細胞傷害性(TDCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)、または抗体依存性細胞性食作用(ADCP)から選択される。
【0093】
一実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、表1に開示の一連のCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVHを含む。例えば、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、表1に開示の抗CLDN6抗体の1つにおいてそういったCDRに相当する一連のCDR(例えば、NR.N6.Ab1のCDR)を含むことができる。
【0094】
別の実施形態では、抗CLDN6抗体は、表2に開示の一連のCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を有するVLを含む。例えば、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、表2に開示の抗CLDN6抗体の1つまたは複数においてそういったCDRに相当する一連のCDR(例えば、NR.N6.Ab2のCDR)を含むことができる。
【0095】
代替の実施形態では、抗CNDN6抗体またはそれの抗体断片は、表1に開示の一連のCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVH、ならびに表2に開示の一連のCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を有するVLを含む。
【0096】
一実施形態では、抗体は、ヒトCLDN6に特異的に結合する、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体、またはそれの抗原結合部分とすることができる。一実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、キメラ抗体またはヒト化抗体としてフォーマットされた、NR.N6.Ab1またはNR.N6.Ab2抗体のCDR領域の6つすべてを含む。
【0097】
【0098】
【0099】
一実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、
(i)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、CDR3:配列番号7;
(ii)CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、CDR3:配列番号13;
(iii)CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、CDR3:配列番号34;
(iv)CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号39、CDR3:配列番号40;
(v)CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号44、CDR3:配列番号40;および
(vi)CDR1:配列番号46、CDR2:配列番号47、CDR3:配列番号48
からなる群から選択される一連の相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)を有するVHを含む。
【0100】
一実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、
(i)CDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、CDR3:配列番号10;
(ii)CDR1:配列番号14、CDR2:配列番号15、CDR3:配列番号16;
(iii)CDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、CDR3:配列番号37;
(iv)CDR1:配列番号41、CDR2:配列番号42、CDR3:配列番号43;
(v)CDR1:配列番号41、CDR2:配列番号45、CDR3:配列番号43;および
(vi)CDR1:配列番号49、CDR2:配列番号50、CDR3:配列番号51、
からなる群から選択される一連の相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)を有するVLを含む。
【0101】
別の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、
(a)
(i)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、CDR3:配列番号7;
(ii)CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、CDR3:配列番号13;
(iii)CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、CDR3:配列番号34;
(iv)CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号39、CDR3:配列番号40;
(v)CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号44、CDR3:配列番号40;および
(vi)CDR1:配列番号46、CDR2:配列番号47、CDR3:配列番号48;
からなる群から選択される一連の相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)を有するVHと、
(b)
(i)CDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、CDR3:配列番号10;
(ii)CDR1:配列番号14、CDR2:配列番号15、CDR3:配列番号16;
(iii)CDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、CDR3:配列番号37;
(iv)CDR1:配列番号41、CDR2:配列番号42、CDR3:配列番号43;
(v)CDR1:配列番号41、CDR2:配列番号45、CDR3:配列番号43;および
(vi)CDR1:配列番号49、CDR2:配列番号50、CDR3:配列番号51、
からなる群から選択される一連の相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)を有するVLと、
を含む。
【0102】
一実施形態では、抗体は、
(i)VH:CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、CDR3:配列番号7、
VL:CDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、CDR3:配列番号10;
(ii)VH:CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、CDR3:配列番号13、
VL:CDR1:配列番号14、CDR2:配列番号15、CDR3:配列番号16;
(iii)VH:CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、CDR3:配列番号34、
VL:CDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、CDR3:配列番号37;
(iv)VH:CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号39、CDR3:配列番号40、
VL:CDR1:配列番号41、CDR2:配列番号42、CDR3:配列番号43;
(v)VH:CDR1:配列番号38、CDR2:配列番号44、CDR3:配列番号40、
VL:CDR1:配列番号41、CDR2:配列番号45、CDR3:配列番号43;および
(vi)VH:CDR1:配列番号46、CDR2:配列番号47、CDR3:配列番号48、
VL:CDR1:配列番号49、CDR2:配列番号50、CDR3:配列番号51
からなる群から選択される一連の相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を有する、VHおよびVLの組合せを含む。
【0103】
一実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、23、24、26、28および30群から選択される可変重鎖配列、ならびに/または配列番号2、4、25、27、29および31から選択される可変軽鎖配列を含む。
【0104】
一実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、一対の可変重鎖配列と可変軽鎖配列を含み、これは以下の組合せから選択される:配列番号1を含む可変重鎖配列と配列番号2を含む可変軽鎖配列;配列番号3を含む可変重鎖配列と配列番号4を含む可変軽鎖配列;配列番号23を含む可変重鎖配列と配列番号2を含む可変軽鎖配列;配列番号24含む可変重鎖配列と配列番号25を含む可変軽鎖配列;配列番号26を含む可変重鎖配列と配列番号27を含む可変軽鎖配列;配列番号28を含む可変重鎖配列と配列番号29を含む可変軽鎖配列および;配列番号30を含む可変重鎖配列と配列番号31を含む可変軽鎖配列。当業者であれば、可変軽鎖および可変重鎖を独立して選択して、または混合およびマッチさせて、上で特定されたペアリングとはまったく別である、可変重鎖と可変軽鎖の組合せを含む抗CLDN6抗体を調製することができることを、さらに理解するであろう。
【0105】
代替の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、一対の可変重鎖配列と可変軽鎖配列を含み、これは以下の組合せから選択される:配列番号1と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号2と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;配列番号3と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号4と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;配列番号23と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号2と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;配列番号24と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号25と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;配列番号26と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号27と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;配列番号28と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号29と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;および配列番号30と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号31と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列。当業者であれば、可変軽鎖および可変重鎖を独立して選択して、または混合およびマッチさせて、上で特定されたペアリングとはまったく別である、可変重鎖と可変軽鎖の組合せを含む抗CLDN6抗体を調製することができることを、さらに理解するであろう。
【0106】
一部の実施形態では、抗体は完全長抗体である。他の実施形態では、抗体は、例えば、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、および相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、およびCLDN6選択的結合をそのポリペプチドに付与するのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドからなる群から選択される抗体断片を始めとする抗体断片である。
【0107】
一部の実施形態では、本明細書に開示の抗CLDN6抗体の可変領域ドメインは、C末端アミノ酸で、少なくとも1つの他の抗体ドメインまたはそれの断片に共有結合で付着させることができる。したがって、例えば、可変領域ドメインに存在するVHドメインは、免疫グロブリンCH1ドメインまたはそれの断片に連結することができる。同様に、VLドメインはCKドメインまたはそれの断片に連結することができる。このように、例えば、抗体はFab断片とすることができるが、この場合、抗原結合ドメインは、会合したVHドメインおよびVLドメインを含有し、これらドメインは、そのC末端で、それぞれCH1ドメインおよびCKドメインに共有結合で連結されている。CH1ドメインをさらなるアミノ酸で伸長させて、例えば、Fab断片に見られるようなヒンジ領域またはヒンジ領域ドメインの一部を供給すること、または、抗体のCH2ドメインおよびCH3ドメインなどのさらなるドメインを供給することができる。
【0108】
したがって、一実施形態では、抗体断片は、本明細書に記載の少なくとも1つのCDRを含む。抗体断片は、本明細書に記載の、少なくとも2、3、4、5、または6つのCDRを含むことができる。抗体断片は、本明細書に記載の抗体の少なくとも1つの可変領域ドメインをさらに含むことができる。可変領域ドメインは、任意のサイズであってもアミノ酸組成であってもよいが、全体として、ヒトCLDN6への結合を担う少なくとも1つのCDR配列を、例えば、本明細書に記載のCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3を含むことになるが、これは、1つまたは複数のフレームワーク配列に隣接しているかまたはそれとインフレームである。
【0109】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体はモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗CLDN6抗体はヒト抗体である。代替の実施形態では、抗CLDN6抗体はマウス抗体である。一部の実施形態では、抗CLDN6抗体はキメラ抗体、二重特異性抗体、またはヒト化抗体である。
【0110】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含む。当業者であれば、保存的アミノ酸置換とは、1つのアミノ酸と、類似した構造的または化学的特性、例えば類似した側鎖などを有する別のアミノ酸との置換であると理解するであろう。例示的な保存的置換は、当技術分野において、例えば、Watson et al., Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Publication Company, 4th Ed. (1987)に記載されている。
【0111】
「保存的改変」とは、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に有意に影響することがないまたはこれを変えることがないアミノ酸改変を指す。保存的改変には、アミノ酸の置換、付加、および欠失が含まれる。保存的置換とは、アミノ酸が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーについては十分に定義されており、それとしては、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン)、芳香族側鎖(例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン)、脂肪族側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)、アミド(例えば、アスパラギン、グルタミン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および含硫側鎖(システイン、メチオニン)を有するアミノ酸が挙げられる。さらに、アラニンスキャニング突然変異誘発について既に記載されているように(MacLennan et al. (1998), Acta Physiol Scan Suppl 643: 55-67、Sasaki et al. (1998), Adv Biophys 35: 1-24)、ポリペプチド中の任意の天然残基をアラニンで置換することもできる。本開示の抗体に対するアミノ酸置換は、既知の方法によって、例えばPCR突然変異誘発によって行うことができる(米国特許第4,683,195号明細書)。
【0112】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、23、24、26、28または30に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、可変重鎖配列を含む。他の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、23、24、26、28または30の可変重鎖配列を含む抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片の結合活性および/または機能活性を保持する。さらに他の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、23、24、26、28または30の可変重鎖配列を含み、かつ、重鎖可変配列に、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4または1~5の保存的アミノ酸置換を有する。さらに別の実施形態では、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号1、3、23、24、26、28または30の1つまたは複数のフレームワーク領域に包含される(カバットのナンバリングシステムに基づく)。
【0113】
特定の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、23、24、26、28または30に記載の抗CLDN6重鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変重鎖配列を含む、可変重鎖配列を含み、フレームワーク領域に1つまたは複数の保存的アミノ酸置換(カバットのナンバリングシステムに基づく)を含み、配列番号1、3、23、24、26、28または30に記載の可変重鎖配列と配列番号2、4、25、27、29または31に記載の可変軽鎖配列とを含む抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片の結合活性および/または機能活性を保持する。
【0114】
一部の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号2、4、25、27、29または31に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、可変軽鎖配列を含む。他の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号2、4、25、27、29または31の可変軽鎖配列を含む抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片の結合活性および/または機能活性を保持する。さらに他の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号2、4、25、27、29または31の可変軽鎖配列を含み、かつ、軽鎖可変配列に、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4または1~5の保存的アミノ酸置換を有する。さらに別の実施形態では、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号2、4、25、27、29または31の1つまたは複数のフレームワーク領域に包含される(カバットのナンバリングシステムに基づく)。
【0115】
特定の実施形態では、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、配列番号2、4、25、27、29または31に記載の抗CLDN6軽鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列を含み、フレームワーク領域に1つまたは複数の保存的アミノ酸置換(カバットのナンバリングシステムに基づく)を含み、配列番号1、3、23、24、26、28または30に記載の可変重鎖配列と配列番号2、4、25、27、29または31に記載の可変軽鎖配列とを含む抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片の結合活性および/または機能活性を保持する。
【0116】
本開示の抗体の治療効果は、その有効性および効力を改善する細胞傷害薬または細胞傷害剤へのコンジュゲーションによって増強され得る。一部の実施形態では、抗体は、細胞傷害性エフェクター剤、例えば放射性同位体、薬物、または細胞毒に結合したCLDN-6特異的抗体を含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0117】
本開示の抗CLDN6抗体は、二重特異性T細胞結合抗体、またはNK細胞を再指令する二重特異性分子、または細胞療法、例えばCAR-T療法を含む、腫瘍へと患者のエフェクター細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)を方向付ける、CLDN6またはCLDN6/9選択的結合による、抗体ベースの免疫療法を開発するためにも使用され得る。
【0118】
例示的な態様では、本開示の抗CLDN6抗体またはそれの断片は、2つの異なるおよび別個の抗原に結合することができる二重特異性抗体の形態の抗原結合タンパク質へと組み込まれ得る。50を超えるフォーマットの二重特異性抗原結合タンパク質が当技術分野で公知であり、その一部は、Kontermann and Brinkmann, Drug Discovery Today 20(7): 838-847 (2015);Zhang et al., Exp Hematol Oncol 6: 12 (2017);Spiess et al.,, Mol Immunol.; 67(2 Pt A):95-106 (2015)に記載される。例示的な一態様では、二重特異性抗体の抗CDLN6抗原結合タンパク質成分は、完全長抗体である。代替の実施形態では、二重特異性抗原結合タンパク質は、任意の本開示の抗体のLCおよびHC可変領域を含む抗CLDN6 scFvを含む。
【0119】
様々な態様では、抗原結合断片は重鎖可変領域に基づき、他の態様では、抗原結合断片は軽鎖可変領域に基づく。例示的な態様では、抗原結合断片は、HC可変領域とLC可変領域の両方の少なくとも一部を含む。例示的な態様では、二重特異性抗原結合タンパク質は、本開示のCLDN6抗体のLCまたはHC可変領域の両方でなければ少なくとも1つおよび第2の抗原に特異的な第2の抗体のLCおよびHC可変領域の両方でなければ少なくとも1つを含む。例示的な例では、二重特異性抗原結合タンパク質は、本開示のCLDN6抗体のLCおよびHC可変領域ならびに第2の抗原に特異的な第2の抗体のLCおよびHC可変領域を含むscFvを含む。
【0120】
例示的な実施形態では、抗原結合タンパク質は二重特異性であり、CLDN6および第2の抗原に結合する。例示的な例では、第2の抗原は、T細胞によって発現される細胞表面タンパク質である。例示的な態様では、細胞表面タンパク質は、T細胞受容体(TCR)の成分、例えば、CD3である。例示的な例では、第2の抗原はT細胞活性化をアシストする共刺激分子、例えばCD40または4-1BB(CD137)である。代替の例示的な例では、第2の抗原は、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA4、IDO、KIR、LAG3、NOX2、PD-1、TIM3、VISTA、またはSIGLEC7から選択される免疫チェックポイント分子(例えば、免疫チェックポイント経路に含まれるタンパク質)である。場合により、免疫チェックポイント分子は、PD-1、LAG3、TIM3、またはCTLA4である。
【0121】
本明細書に記載の抗CLDN6抗体、または抗原結合部分、二重特異性抗体、またはCLDN6結合剤を含む融合タンパク質は、CLDN6を発現する細胞と関連する疾患の抗体ベースの治療のために使用され得る。例えば、抗体は、CLDN6を発現する細胞と関連する固形腫瘍がん疾患、例えば、乳がん、肺がん、卵巣がん、精巣がん、膵臓がん、胃がん、胆嚢がんおよび尿路上皮がんを処置するために使用され得る。
【0122】
様々な実施形態では、本明細書で提供される抗CLDN6抗体は、限定はされないが、薬物動態の変更、血清半減期の増加、結合親和性の増加、免疫原性の減少、産生の増加、Fc受容体(FcR)へのFcリガンド結合の変更、ADCC、CDC、ADCP、TDCCの増強または減少、グリコシル化および/またはジスルフィド結合の変更ならびに結合特異性の改変を含む、好ましい特徴を有する化合物を生じるアミノ酸残基置換、突然変異および/または改変を含むが、これに限定されない、定常領域(すなわち、Fc領域)の置換または改変を含み得る。Fcエフェクター機能が改善した抗体または抗体断片は、例えば、FcドメインとFc受容体(例えば、FcyRI、FcyRIIAおよびB、FCYRIIIおよびFcRn)の間の相互作用に含まれるアミノ酸残基の変化によって生成され、細胞傷害性の増加をもたらし得る。
【0123】
細胞傷害性細胞の活性化の重要なステップは、免疫エフェクター細胞のFcγRIIIa(CD16A)へのmAbの結合であり、この相互作用の強さは、抗体アイソタイプ、抗体Fc領域のグリコシル化パターンおよびFcγRIIIa多形によって決定される。多くの論文が、臨床試験に由来する抗体ベースのがん治療におけるFcγR介在性エフェクター機能の役割を示す発見を報告している。研究結果は、臨床応答(例えば、抗体有効性)とヒトFcγRを活性化する特定のalloformの間の関係を示す。158F対立遺伝子を持つ患者は、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、インフリキシマブおよびイピリムマブを含むある特定の治療抗体ならびに作用の主要なメカニズムとしてADCCを利用する他の治療抗体への臨床応答の減少を示すことが報告された。改善されたFcgR結合プロファイルを有するように改変された抗体は、優れた抗腫瘍応答を駆動し、大きな臨床的有用性を付与することが報告された。
【0124】
活性化および阻害FcγRの発見は、免疫エフェクター細胞を活性化して特定の機能を実施するように設計された活性化/阻害(A:I)比によって特徴付けられるFcγR結合活性を有することに基づいて「目的に合った」治療抗体の設計に注目した探索研究努力をもたらした。モノクローナル抗体(mAb)によるがんの免疫療法は、ADCC、ADCPおよび/またはCDC活性を含む様々なメカニズムにより腫瘍細胞の除去を促進する。実際には、いくつかの認可されたmAbの治療活性は、エフェクター細胞に発現された低親和性Fcγ受容体へのFcγ領域の結合に依存する。
【0125】
いくつかの論文は、最適化されたFcgR結合プロファイルおよび細胞介在性エフェクター機能を最適化するのに好適な活性化/阻害(A:I)比を有するバリアントヒトIgG1 Fcドメイン(CH領域)を設計するタンパク質工学戦略の使用の成功を報告する。特定の努力は、低親和性受容体FcγIIIaのFcドメインの親和性の増加に注目した。Fcドメイン内の多くの突然変異は、Fc受容体の結合を直接または間接的に増強し、結果として細胞の細胞傷害性を著しく増強することが同定された(Lazar, G.A. PNAS 103:4005-4010 (2006)、Shields, R.L. et al, J. Biol. Chem. 276:6591-6604 (2001) Stewart, R. et al., Protein Engineering Design and Selection 24: 671-678 (2011) (Richards, J.O. et al, Mol. Cancer Ther. 7:2517-2575 (2008)。
【0126】
CLDN6結合
本明細書で提供される抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、非共有結合および可逆的な方法でCLDN6に結合する。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質のCLDN6への結合強度は、その親和性、抗原結合タンパク質の結合部位とエピトープの間の相互作用の強度の測定で記載され得る。様々な態様では、抗原結合タンパク質の親和性は、フローサイトメトリーまたは蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)ベースのアッセイを使用して測定またはランク付けされる。フローサイトメトリーベースの結合アッセイは、当技術分野で公知である。例えば、Cedeno-Arias et. al., Sci Pharm 79(3): 569-581 (2011);Rathanaswami et. al., Analytical Biochem 373: 52- 60 (2008);およびGeuijen et. al., J Immunol Methods 302(1-2): 68-77 (2005)を参照。選択性は、CLDN6、またはCLDNファミリーメンバーの抗原結合タンパク質によって示されるKDに基づき、KDは、当技術分野で公知の技術、例えば、表面プラズモン共鳴、FACSベースの親和性アッセイによって決定され得る。
【0127】
様々な態様では、CLDN6抗体の相対親和性は、異なる濃度のCLDN6抗体がCLDN6を発現する細胞とインキュベートされ、放射された蛍光(抗体-抗原結合の直接測定である)が決定される、FACSベースのアッセイによって決定される。各用量または濃度の蛍光をプロットする曲線が作成される。最大値は、蛍光が定常に達するかまたは最大に達する最低濃度であり、結合飽和が起こる場合である。最大値の半分は、EC50またはIC50が考えられ、最低EC50/IC50を有する抗体は、同じ方法で試験した他の抗体と比較して最高の親和性を有すると考えられる。
【0128】
一態様では、細胞は、CLDN6を過剰発現するように遺伝子改変される。例えば、細胞は、CLDN6を発現するように改変されたHEK293TまたはCHO細胞である。代替の態様では、細胞は、CLDN6を内因性発現する確立された体液腫瘍細胞株である。様々な態様では、細胞は、ヒト細胞株(例えば、卵巣細胞株、子宮内膜細胞株、生殖細胞腫瘍細胞株、肺細胞株、消化管(GI)細胞株、肝細胞株、肺細胞株等)由来の細胞である。
【0129】
一実施形態では、本開示の抗CLDN6抗体または抗体断片は、CLDN9と比較してCLDN6に選択的に結合し、claudin-3(CLDN3)またはclaudin-4(CLDN4)に結合しない。代替の実施形態では、抗CLDN6抗体または抗体断片は、CLDN6とCLDN9の両方に等しく結合し(例えば、いずれかのCLDNの優先はない)およびclaudin-3(CLDN3)またはclaudin-4(CLDN4)に結合しない。
【0130】
CLDN6内部移行および用量依存性細胞傷害性
抗Claudin-6抗体-薬物抗体IMAb027を含むADCである、IMAB027-vcMMAEの安全性および抗腫瘍活性の前臨床特徴付けは、以下を評価する研究を含む:様々なCLDN6+ヒト卵巣がん(OC)および精巣がん(TC)細胞株におけるIMAB027の内部移行;XTT代謝アッセイによる細胞培養で評価した結合特徴(FACSによる)および細胞生存およびIMAB027-vcMMAE介在細胞傷害性作用(直接および間接バイスタンダー)(Tureci, et al,AACR; Cancer Res 2018;78 (13Suppl): Abstract # 1778)。
【0131】
Tureci, et al.は、IMAB027 ACDがCLDN6を発現する細胞株に強く結合し、CLDN6を発現する細胞株によって内部移行され、ng/mLオーダーのEC50値で100%までCLDN6+OC細胞およびTC細胞の生存を低減し得ることを報告した。さらに、コンジュゲーション後、IMAB027-vcMMAEは、抗体依存性細胞の細胞傷害性および補体依存性細胞傷害性によるCLDN6+細胞死を誘導するIMAB027の能力を保持した。CLDN6を発現しない細胞株は、単一培養のIMAB027-vcMMAEによって影響されないが、CLDN6+およびCLDN6陰性細胞の共培養では、IMAB027-vcMMAEはバイスタンダー効果を発揮し、標的担持CLDN6+細胞に加えて、共培養したCLDN6陰性細胞の死を生じる。したがって、CLDN6に特異的なモノクローナル抗体は、CLDN6の誘導性および効果的な内部移行を媒介することができ、CLDN6を発現する腫瘍細胞に細胞傷害剤を送達するのに有用であることが公知である。
【0132】
最大結合能、EC50、細胞表面内部移行および細胞傷害性のin vitro評価に基づき、本開示の抗CLDN6抗体は、がんの処置のためのADCベースの標的化抗体としての使用の好適性を評価され得る。したがって、本開示の抗CLDN6抗体は、がんの処置のための抗体ベースの免疫療法の方法での使用のための内部移行する部位特異的ADCの開発のためのADCベースの標的化抗体としての使用に好適である。
【0133】
CLDN6に特異的な本開示の抗体は、CLDN6の誘導性内部移行および効率的な内部移行を媒介することができ、それは、ADCコンジュゲート二次抗体が存在する場合に、用量依存性細胞傷害性にいたる。CLDN6を過剰発現するHEK293細胞株では、細胞死滅の観察されたEC50は、1.73nM~2.19nMの範囲である。がん細胞株NEC8では、細胞死滅のEC50は、0.1nM~0.2nMの範囲である。がん細胞株OV90では、細胞死滅のEC50は、1.08nM~2.32nMの範囲である。
【0134】
CLDN6 ADCC
標的細胞の表面上に発現されるCLDN6の結合の結果として、本開示の抗体は作用の1つまたは複数のメカニズム、例えば細胞傷害剤の送達により、またはADCC-、CDC-、またはTDCC-介在性溶解を方向付けることにより標的細胞死を媒介することができる。一実施形態では、標的細胞は、原発性または転移性がん細胞である。
【0135】
一部の態様では、本開示の抗CLDN6産生抗体は、死滅を媒介するそれらの能力(例えば、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)、T細胞依存性細胞傷害性(TDCC)、および/または細胞増殖の阻害)および/またはCLDN6を発現する細胞の食作用について評価され得る。
本開示の抗CLDN6抗体は、内因性に、またはヒトCLDN6を過剰発現するように改変された宿主細胞によって、CLDN6を発現する標的細胞に対してADCCを方向付けることもできる。がん細胞株NEC8では、ADCC活性のEC50は、0.40nM~9.83nMの範囲である。がん細胞株OV90では、ADCC活性のEC50は、0.3nM~0.75nMの範囲である。
【0136】
抗体ベースの免疫療法
腫瘍抗原を標的とする抗体を使用する抗体ベースの免疫療法の目標は、正常な組織を害することなくがん細胞を排除することである。したがって、腫瘍学における抗体ベースの免疫療法の有効性および安全性は、意図された作用メカニズム、免疫系の関連エフェクター機能および腫瘍特異的または腫瘍関連標的抗原の性質よって大いに異なる。
【0137】
本開示の抗体は、直接腫瘍細胞を死滅させるようにペイロード(例えば、放射性同位体、薬物または毒素)の標的化にも使用することができ、または免疫エフェクター細胞への化学療法の細胞傷害性副作用のために障害され得る抗腫瘍免疫応答を含み得る作用の補足的なメカニズムにより腫瘍を攻撃する従来の化学療法剤と相乗的に使用することができる。
【0138】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)とは、高度に強力な抗体ベースのがん療法のクラスである。ADCは、合成リンカーを介して細胞傷害剤(ペイロードとして知られる)に共有結合で連結された組換えモノクローナル抗体からなる。ADCは、モノクローナル抗体の特異性と小分子化学療法薬の効力を兼ね備えるとともに、高度に細胞傷害性の小分子薬物部分の腫瘍細胞への直接的な標的化送達を容易にする。ADCの標的化性質により、全身曝露が限定されることと相まって薬物効力の向上が可能となる。合わせて、これらの特性により、副作用はより少なくかつ治療ウインドウがより広いという望ましい特徴がADCに付与される(Peters et al., Biosci Rep, 35(4):e00225, 2015)。
【0139】
ADC標的としての使用に適した細胞表面抗原は、2つの重要な特性によって特徴付けられる:(i)標的細胞による高発現レベルおよび正常組織では発現が限定的またはまったくないこと、ならびに、(ii)抗体結合に応答した効率的な内部移行。CLDN6は、子宮内膜がん、卵巣がんおよび精巣がんおよび肺がん(NSCLC)を含む複数のがんで過剰発現する。発現されたCLDNタンパク質の実質的な部分は、腫瘍形成細胞表面と会合したままであり、それにより本開示の抗体またはADCの局在および内部移行を可能にする証拠がある。
【0140】
本明細書で使用される場合、「内部移行する」抗体は、会合した抗原または受容体への結合時に細胞によって取り込まれる(任意の細胞毒とともに)ものである。治療適用のため、内部移行は、好ましくはそれを必要とする対象においてin vivoで起こるであろう。内部移行されたADCの数は、抗原発現細胞、特に抗原発現がん幹細胞を死滅させるのに十分であり得る。全体として、細胞毒またはADCの効力により、一部の例では、細胞への単一抗体分子の取込みは、抗体が結合する標的細胞を死滅させるのに十分である。例えば、ある特定の薬物は、高い効力があり、抗体にコンジュゲートした毒素のわずかな分子の内部移行が腫瘍細胞を死滅させるのに十分である。哺乳動物細胞への結合時に抗体が内部移行するかどうかは、以下の実施例に記載されるものを含む様々な当技術分野で認識されるアッセイによって決定され得る。
【0141】
抗体薬物コンジュゲートの生成は、適切な任意のペイロード薬、合成リンカーおよび共役化学を使用して、当業者に知られている任意の技法によって行うことができる。当業者であれば、ADCについて知っており、以下のことついても知っている:ADCの開発には、いくつかの要因に関する評価が必要であり、この要因には、標的抗原の生物学、抗体の特異性、ペイロード薬の細胞傷害性および作用のメカニズム、リンカーの安定性および切断、リンカー付着の部位、および共役化学によって作製されるADCの不均一性のレベルが含まれる。不均一性であると、抗体ごとに付着した細胞傷害性分子の数に関して、効能がない種(薬物ペイロードではない)と、抗体1分子当たり4つを超える薬物部分(高負荷)を有する種(この種はより迅速にクリアされるとともに毒性の一因となる可能性がある)とを含有する薬物製品の作製がもたらされるおそれがある。さらに、効力のない種(細胞傷害性ペイロードのまったくない抗体)が存在すると、ADC標的抗原への結合にあたり競合することによって、効力が低下する可能性がある。したがって、一定した薬物:抗体比(DAR)によって特徴付けられる抗体の均一な混合物を含むADC薬物製品を作製することが望まれる。
【0142】
目下臨床評価にあるADC候補の大部分は、細胞傷害性ペイロードとして薬物の主要な3つのクラスのうちの1つ、すなわちメイタンシノイド、アウリスタチンおよびPBD二量体を用いる;しかし、他のクラスのペイロード、例えば、カリケアマイシン(ゲムツズマブオゾガマイシンおよびイノツズマブオゾガマイシン向け)、デュオカルマイシン、エキサテカン、またはSN-38も使用される(Shim et al., Biomolecules, 10(3):360, 2020)。一般的に言えば、細胞傷害性薬物は、チューブリン阻害剤(アウリスタチンおよびメイタンシノイド)として、またはDNA構造のかく乱物質として、いずれかで作用するが、このかく乱物質には、デュオカルマイシン(DNAアルキル化)、カリケアマイシン(DNA二本鎖切断)、SN-38およびエキサテカンなどのカンプトテシンアナログ(トポイソメラーゼ阻害剤)、またはピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体(DNA鎖架橋)(Shim et al.)が含まれる。
【0143】
リンカーの重要な機能の1つは、血液循環においてADCの安定性を維持することであり、一方で、標的細胞による内部移行の際に毒素放出を可能とすることである。適切なリンカーを特定するための過程で考慮すべき重要なパラメータには、リンカーの切断性および共役化学の詳細(すなわち、連鎖の位置および性質)が含まれる。広義では、リンカーは、切断性および非切断性という広い2つのカテゴリーに分類される。切断性リンカーは、血流中の正常な生理的状態とがん細胞の細胞質に存在する細胞内状態との間の差異を利用する(Peters et al., Biosci Rep, 35(4):e00225, 2015)。ADC-抗原複合体が内部移行された後の微小環境の変化によって、リンカーの切断が引き起こされ、細胞傷害性ペイロードが放出され、標的抗原を発現する標的がん細胞へと毒性が効果的に送り込まれる。広義では、3つのタイプの切断性リンカーがある:ヒドラゾン、ジスルフィドおよびペプチドの各リンカー。対照的に、非切断性リンカーは単に、ADC抗原の内部移行に続くリソソーム分解のプロセスのみに依存する。ADC-抗原複合体の内部移行の後、リソソーム内のプロテアーゼ酵素が抗体のタンパク質構造を分解し、リンカーに付着した単一のアミノ酸(通常はシステインまたはリジン)と、実薬として細胞質に放出される細胞傷害剤とが得られる。リンカー化学が、ADCの特異性、効力、活性および安全性の重要な決定要因であることはよく知られている。
【0144】
当業者であれば、TSA-またはTAA特異的抗体へのリンカー-ペイロードのコンジュゲーションに使用するのに適したタンパク質の化学修飾のための多くの技法があることを、認識するであろう。当業者であれば、共役化学の様々な方法によって、薬物付着の数と部位にわたる様々なレベルの制御が提供され、作製される抗CLDN6 ADCの薬物動態、毒性および治療ウインドウが影響を受ける可能性があることを認識するであろう。抗体薬物コンジュゲートは、従来の技法に従って抗体に薬物を結合させることによって調製することができる。治療的部分を抗体にコンジュゲートするための技法は、当業者によく知られている、例えば、以下を参照されたい、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985);“Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、およびThorpe et al., “The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”, Immunol. Rev., 62: 119-58 (1982)。
【0145】
当業者であれば、従来のコンジュゲーション技法(天然アミノ酸配列組成の結果として、抗体に存在する表面に露出したリジン残基またはシステイン残基のいずれかへのコンジュゲーションを含む)に加えて、抗CLDN6特異的イムノコンジュゲートを調製するのに使用することができる部位特異的薬物コンジュゲーションに関する、他の多数の方法があることを理解するであろう。部位特異的共役化学法は、抗体の結合親和性を変化させることなく、比較的均一なADC生成物を作製することを意図する。一般的に言えば、抗体の部位特異的コンジュゲーションには以下の3つの戦略が主として使用される:改変されたシステインの使用、非天然アミノ酸の組込みおよび、酵素的コンジュゲーションであって、部位特異的様式でタンパク質の翻訳後修飾を生成する細菌酵素(例えば、トランスグルタミナーゼ、グリコトランスフェラーゼ、ソルターゼ、またはホルミルグリシン生成酵素)に特異的に反応するように設計された抗体の反応部位を使用した、酵素的コンジュゲーション。治療的部分を抗体に部位特異的にコンジュゲートするための技法は、当業者によく知られており、これには、それらに限定されないが、米国特許第7,723,485号明細書;同第8,937,161号明細書;同第9,000,130号明細書;同第9,884,127号明細書;同第9,717,803号明細書;同第10,639,291号明細書;同第10,357,472;米国特許出願公開第2015/0283259号明細書;同第2017/0362334号明細書;同第2018/0140714号明細書;および国際公開第2013/092983号パンフレット;同第2013/092998号パンフレット;同第2014/072482号パンフレット;同第2014/202773号パンフレット;同第2014/202775号パンフレット;同第2015/155753号パンフレット;同第2015/191883号パンフレット;同第2016/102632号パンフレット;同第2017/059158号パンフレット;同第2018/140590号パンフレットおよび同第2018/185526号パンフレットに、開示の方法が含まれる。
【0146】
代替の実施形態では、本開示の抗CLDN6抗体または抗体断片は、免疫系のエフェクター細胞と、好ましくは、ADCC、TDCC、CDC、またはADCPによって、相互作用し得る(Kubota, T. et al. (2009) Cancer Sci. 100 (9), 1566-1572;Nazarian et al., J. Bio. Scre., 2015, 20(4) 519-527)。
【0147】
本開示の文脈の「免疫エフェクター機能」という用語は、免疫系の成分によって媒介される任意の機能を含み、腫瘍播種および転移の阻害を含む、腫瘍増殖の阻害および/または腫瘍発生の阻害をもたらす。好ましくは、免疫エフェクター機能は、がん細胞の死滅をもたらす。好ましくは、本開示の文脈の免疫エフェクター機能は、抗体介在性エフェクター機能である。そのような機能は、補体依存性細胞傷害性(CDC)、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)、腫瘍関連抗原を持つ細胞におけるアポトーシスの誘導を含む。
【0148】
抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)は、エフェクター細胞の細胞死滅能を記載し、好ましくは、抗体によってマークされている標的細胞を必要とする。エフェクター細胞は、B細胞、T細胞、キラー細胞、NK細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、マスト細胞、および/または好塩基球を含み得;より具体的には、エフェクター細胞は、T細胞またはNK細胞である。ある特定の態様では、ADCCは、抗体が腫瘍細胞上の抗原に結合すると生じ、抗体Fcドメインは免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcR)に結合する。Fc受容体のいくつかのファミリーが同定され、特定の細胞集団は、既定したFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、様々な程度の急速な腫瘍崩壊を直接誘導するメカニズムとみなすことができ、抗原提示および腫瘍に対するT細胞応答の誘導をもたらす。好ましくは、ADCCのin vivo誘導は、腫瘍に対するT細胞応答および宿主由来の抗体応答をもたらすであろう。
【0149】
補体依存性細胞傷害性(CDC)は、抗体によって方向付けられ得る別の細胞死滅方法である。IgMは、補体活性化の最も有効なアイソタイプであるが、IgG1およびIgG3は両方とも、古典的な補体活性化経路によるCDCの方向付けにも非常に有効である。
【0150】
あるいは、本明細書で提供される本開示の抗CLDN6抗体は、腫瘍を処置する養子免疫遺伝子治療で利用され得る。一実施形態では、本開示の抗体(例えば、scFv断片)は、キメラ抗原受容体(CAR)を生成するために使用され得る。「CAR」は、本開示の抗CLDN抗体またはそれの免疫反応性断片(例えば、ScFv断片)、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内ドメインを含むECDから構成される融合タンパク質である。一実施形態では、CARを発現するように遺伝的に改変されたT細胞、ナチュラルキラー細胞または樹状細胞は、CLDN6を発現する腫瘍細胞を特異的に標的化する対象の免疫系を刺激するように、がんを患う対象へと導入され得る。
【0151】
抗体を産生する方法
抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片は、当技術分野で知られている任意の方法によって作製することができる。例えば、レシピエントは、可溶性組換えClaudin-6(CLDN6)タンパク質またはその担体タンパク質とコンジュゲートされたCLDN6ペプチドの断片で免疫することができる。適切な任意の免疫方法を使用することができる。かかる方法としては、アジュバント、他の免疫刺激剤、反復ブースター免疫、および1つまたは複数の免疫経路の使用を挙げることができる。
【0152】
ヒトCLDN6の任意の好適な供給源は、本明細書に開示の組成物および方法の非ヒトまたはヒト抗CLDN6抗体の生成のための免疫原として使用することができる。
【0153】
様々な形態のCLDN6抗原を使用して、生物学的に活性な抗CLDN6抗体の特定のための免疫応答を誘発させることができる。したがって、誘発CLDN6抗原は、単独でまたは1つもしくは複数の免疫原性増強剤との組合せの、単一のエピトープであっても、多重のエピトープであっても、タンパク質全体であってもよい。一部の態様では、誘発抗原は、単離された可溶性完全長タンパク質、または完全長配列未満を含む可溶性タンパク質である(例えば、CLDN6、ECD1および/またはECD2の細胞外ドメイン/ループを単独でまたは組み合わせて含むペプチドで免疫する)。本明細書で使用される場合、「部分」という用語は、必要に応じて、目的の抗原の免疫原性エピトープを構成する、最小数のアミノ酸または核酸を指す。目的の細胞の形質転換に適したあらゆる遺伝的ベクターを用いることができ、それには、アデノウイルスベクター、プラスミド、およびカチオン性脂質などの非ウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0154】
マウス、げっ歯類、霊長類、ヒト等などの種々の哺乳動物宿主から、モノクローナル抗体(mAb)を調製することが望ましい。かかるモノクローナル抗体を調製する技法に関する記載が、例えば、Sties et al. (eds.) BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY (4th ed.) Lance Medical Publication, Los Altos, CAに、およびそこで引用される参考文献;Harlow and Lane (1988) ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL CSH Press; Goding (1986) MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE (2nd ed.) Academic Press, New York, NYに見出すことができる。通常では、所望の抗原で免疫した動物由来の脾臓細胞が、普通には骨髄腫細胞との融合によって、不死化される。Kohler and Milstein, (196) Eur. J. Immunol. 6:511-519を参照されたい。不死化についての代替の方法としては、エプスタイン・バーウイルス、癌遺伝子、もしくはレトロウイルスを用いる形質転換、または当該分野において知られている他の方法が挙げられる。例えば、Doyle et al. (eds. 1994 and periodic supplements) CELL AND TISSUE CULTURE: LABORATORY PROEDURES, John Wiley and Sons, New York, NYを参照されたい。抗原に対する所望の特異性および所望の親和性の抗体の産生のために、単一の不死化細胞から生じるコロニーをスクリーニングする。かかる細胞により産生されるモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹膜腔への注入を含めて、種々の技法によって増大することができる。あるいは、例えば、Huse et al. (1989) Science 246: 1275-1281に概説された一般的プロトコルに従って、ヒトB細胞由来のDNAライブラリをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはそれの抗原結合断片をコードするDNA配列を単離することができる。したがって、抗体は、当技術分野で熟練した研究者によく知られている様々な技法によって得ることができる。
【0155】
他の適切な技法には、ファージ、酵母、ウイルスまたは類似のベクターにおける抗体のライブラリの選択が関与する。例えば、Huse et al.上掲;およびWard et al. (1989) Nature 341:544-546を参照されたい。本明細書で開示のポリペプチドおよび抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体を含めて、改変の有無にかかわらず使用することができる。しばしば、ポリペプチドおよび抗体は、検出可能なシグナルを供給する物質を、共有結合または非共有結合のいずれかで連結することによって、標識されることもある。科学文献と特許文献どちらにおいても、幅広い様々の標識およびコンジュゲーションの技法が、知られており、広く報告されている。適切な標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害因子、蛍光性の部分、化学発光性の部分、および磁性粒子等が挙げられる。かかる標識の使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号明細書;同第3,850,752号明細書;同第3,9396,345号明細書;同第4,277,437号明細書;同第4,275,149号明細書;および同第4,366,241号明細書が挙げられる。また、組換え免疫グロブリンも産生させることができる、Cabilly米国特許第4,816,567号明細書;およびQueen et al. (1989) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86: 10029-10023を参照されたい;または、トランスジェニックマウスにおいて作製することができる、Nils Lonberg et al., (1994), Nature 368:856-859;およびMendez et al. (1997) Nature Genetics 15: 146-156;TRANSGENIC ANIMALS AND METHODS OF USE (国際公開第2012/62118号パンフレット)、Medarex、Trianni、Abgenix、Ablexis、OminiAb、Harbourおよびそのほかの技法を参照されたい。
【0156】
一部の実施形態では、CLDN6および/またはClaudinファミリーの他の関連するメンバーに結合する産生された抗体の能力は、標準的な結合アッセイを使用して、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)、FoteBio(BLI)、Gator(BLI)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫蛍光、フローサイトメトリー解析(FACS)、または内部移行アッセイを使用して、評価することができる。
【0157】
ハイブリドーマまたは宿主細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが通常の精製技法である。プロテインAのアフィニティーリガンドとしての適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトガンマ1、ガンマ2、またはガンマ4の各重鎖をベースとする抗体を精製することができる(例えば、Lindmark et al., 1983 J. Immunol. Meth. 62:1-13を参照されたい)。プロテインGが、すべてのマウスアイソタイプにおよびヒトガンマ3に推奨される(例えば、Guss et al., 1986 EMBO J. 5:1567-1575を参照されたい)。アフィニティーリガンドが付着されるマトリクスはほとんどの場合アガロースであるが、その他のマトリクスも利用可能である。多孔性ガラス(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリクスによって、アガロースで得ることができるよりも早い流速および短い処理時間が可能となる。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)レジン(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿などのタンパク質精製向けの他の技法も、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0158】
任意の予備的精製ステップに続いて、目的の抗体と混入物を含む混合物を、通常では低塩濃度(例えば、約0~0.25M塩から)で行うが、pH約2.5~4.5の間にての溶出緩衝剤を使用する低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供することができる。
【0159】
また、本開示の抗体または抗体断片をコードする単離されたポリヌクレオチド配列により表わされるヌクレオチド配列の全部または一部(例えば、可変領域をコードする部分)に、本明細書で定義の、低、中および高のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする、核酸も含まれる。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズする部分は典型的には、少なくとも15(例えば、20、25、30または50)ヌクレオチド長である。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズする部分は、抗CLDN6ポリペプチド(例えば、重鎖可変領域または軽鎖可変領域)をコードする核酸またはその相補鎖の一部または全部の配列と少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%同一である。本明細書に記載のタイプのハイブリダイズする核酸は、例えば、クローニングプローブ、プライマー、例えば、PCRプライマーまたは診断プローブとして使用することができる。
【0160】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
他の実施形態は、抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片をコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチド、上記ポリヌクレオチドを含むベクター、および宿主細胞、ならびに上記抗体を作製するための組換え技法を包含する。単離されたポリヌクレオチドは、例えば、完全長モノクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体分子、および抗体断片から形成された多重特異性抗体を含めて、所望の任意の形態の抗CLDN6抗体をコードすることができる。
【0161】
一部の実施形態には、配列番号1、3、23、24、26、28および30のアミノ酸配列を有する抗体または抗体断片の重鎖可変領域をコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドが含まれる。一部の実施形態には、配列番号2、4、25、27、29および31のいずれかのアミノ酸配列を有する抗体または抗体断片の軽鎖可変領域をコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドが含まれる。
【0162】
一実施形態では、単離されたポリヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1含む可変重鎖配列および配列番号2を含む可変軽鎖配列;
(b)配列番号3を含む可変重鎖配列および配列番号4を含む可変軽鎖配列;
(c)配列番号23を含む可変重鎖配列および配列番号2を含む可変軽鎖配列;
(d)配列番号24を含む可変重鎖配列および配列番号25を含む可変軽鎖配列;
(e)配列番号26を含む可変重鎖配列および配列番号27を含む可変軽鎖配列;
(f)配列番号28を含む可変重鎖配列および配列番号29を含む可変軽鎖配列;ならびに
(g)配列番号30を含む可変重鎖配列および配列番号31を含む可変軽鎖配列
のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有する抗体または抗体断片をコードする。
【0163】
別の実施形態では、単離されたポリヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号2と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;
(b)配列番号3と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号4と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;
(c)配列番号23と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号2と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;または、
(d)配列番号24と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号25と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;
(e)配列番号26と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号27と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;
(f)配列番号28と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号29と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;ならびに
(g)配列番号30と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号31と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有する抗体または抗体断片をコードする。
【0164】
抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片をコードする配列を含むポリヌクレオチドを、当技法分野で知られている、1つまたは複数の調節配列または制御配列に融合することができ、かつ、それを当技術分野において知られている適切な発現ベクターまたは宿主細胞に含有せしめることができる。重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド分子それぞれを、独立して、ヒト定常ドメインなどの定常ドメインをコードするポリヌクレオチド配列に融合することができ、その結果、インタクトな抗体の作製が可能となる。あるいは、ポリヌクレオチドまたはその一部を互いに融合することができ、その結果、単鎖抗体の作製用の鋳型がもたらされる。
【0165】
組換え産生の場合、抗体をコードするポリヌクレオチドを、クローニング用(DNAの増幅)または発現用の複製可能なベクターに挿入する。組換え抗体を発現させるための適切な多くのベクターが利用可能である。ベクター成分としては一般に、それらに限定されないが、以下の1つまたは複数が挙げられる:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。
【0166】
抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片はまた、融合ポリペプチドとして産生されてもよく、この場合、抗体または断片は、シグナル配列などの異種ポリペプチド、または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのアミノ末端に特異的な切断部位を有する他のポリペプチドと融合されている。選択された異種シグナル配列は典型的には、宿主細胞によって認識されプロセシングされる(すなわちシグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。抗CLDN6抗体シグナル配列を認識かつプロセシングしない原核宿主細胞の場合、シグナル配列を、原核生物のシグナル配列によって置換することができる。シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、リポタンパク質、熱安定性エンテロトキシンIIリーダー等とすることができる。酵母での分泌の場合、天然シグナル配列を、例えば、酵母インベルターゼアルファ因子(サッカロマイセス(Saccharomyces)およびクルイベロマイセス(Kluyveromyces)のアルファ因子リーダーを含めて)、酸性ホスファターゼ、C.アルビカンス(C. albicans)グルコアミラーゼ、または国際公開第90/13646号パンフレットに記載のシグナルから得られるリーダー配列で置換することができる。哺乳動物細胞では、哺乳動物シグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルを使用することができる。かかる前駆体領域のDNAを、抗CLDN6抗体をコードするDNAにリーディングフレーム内でライゲートする。
【0167】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、1つまたは複数の選択された宿主細胞においてベクターが複製することを可能とする核酸配列を含有する。一般には、クローニングベクター内でのその配列は、ベクターが宿主染色体DNAとは独立して複製することを可能とするものであり、これは複製起点または自律複製配列を含む。様々な細菌、酵母、およびウイルスについて、かかる配列はよく知られている。プラスミドpBR322由来の複製起点は大半のグラム陰性細菌にとって適切であり、2-υ.プラスミド起点は酵母に適切であり、種々のウイルス性起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、およびBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般には、複製成分の起点は、哺乳動物発現ベクターには必要とされない(SV40起点は、初期プロモーターを含有するという理由だけで、通常では使用することができる)。
【0168】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、発現の特定を容易にする選択マーカーをコードする遺伝子を含有することができる。通常の選択マーカー遺伝子は、抗生物質もしくはその他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質をコードする、または代替的には補完性の栄養要求性欠損症である、あるいは他の選択肢では、選択マーカー遺伝子は複合培地に存在しない特定の栄養分を供給する、例えば、上記遺伝子はバシラス綱(Bacilli)のためのD-アラニンラセミ化酵素をコードする。
【0169】
組成物および処置方法
本開示はまた、上皮細胞由来の原発性または転移性がんを有する患者の処置のための治療薬として使用するための抗CLDN6抗体またはそれの抗体断片を含む、例えば、医薬組成物を始めとする組成物を提供する。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、腫瘍細胞を死滅させるためにがん患者に投与される。例えば、本明細書に記載の組成物を使用して、CLDN6を発現または過剰発現するがん細胞の存在によって特徴付けられる固形腫瘍の患者を処置することができる。一部の態様では、本開示の組成物を使用して、乳がん、肺がん、卵巣がん、精巣がん、膵臓がん、胃がん、胆嚢がんまたは尿路上皮がんを処置することができる。
【0170】
一部の態様では、がんの処置は、組合せ戦略が特に望ましい分野である、なぜなら、2つ、3つ、4つ、またはさらに多い制がん薬/療法の組合せ作用によって、しばしば、単剤療法アプローチの影響よりもかなり強い相乗効果が生みだされるからである。本明細書で提供される薬剤および組成物(例えば、医薬組成物)は、単独で、または手術、放射線照射、化学療法および/または骨髄移植(自家、同系、同種または非血縁)などの従来の治療レジメンとの組合せで使用することができる。薬剤および組成物はまた、抗腫瘍剤、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害剤、免疫チェックポイント阻害剤、共刺激分子、キナーゼ阻害剤、血管新生阻害剤、小分子標的治療薬およびマルチエピトープ戦略のうちの1つまたは複数との組合せで使用してもよい。したがって、別の実施形態では、がん処置は、種々の他の薬物と効果的に組み合わせることができる。
【0171】
一処置方法では、抗CLDN6抗体を含む医薬組成物は、抗CLDN6抗体または抗体断片にコンジュゲートしているかまたはコンジュゲートしていないかいずれかで、治療剤または毒剤をさらに含んでもよい。特定の実施形態では、抗CLDN6抗体を使用して、CLDN6を発現および/または過剰発現する標的腫瘍に、細胞傷害性ペイロードを含むADCを送り込む。代替の実施形態では、抗CLDN6抗体を使用して、CLDN6およびCLDN9を発現および/または過剰発現する標的腫瘍に、細胞傷害性ペイロードを含むADCを送り込む。
【0172】
本開示のCLDN6抗体は、単独で、またはがんを処置するのに有用である他の組成物との組合せでのいずれかで投与することができる。一実施形態では、本開示の抗体は、単独で、またはがんを処置するのに有用な他の抗体を始めとする他の免疫療法との組合せでのいずれかで投与することができる。例えば、一実施形態では、他の免疫療法とは、ヒトプログラムされた細胞死タンパク質1(PD-1)、PD-L1およびPD-L2、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、NKG2A、B7-H3、B7-H4、CTLA-4、GITR、VISTA、CD137、TIGITならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される免疫チェックポイント分子に対する抗体である。代替の実施形態では、第2の免疫療法は、腫瘍特異抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)に対する抗体である。各組合せは、本開示の別々の実施形態を表す。
【0173】
本明細書で論議の治療剤の組合せは、二重特異性もしくは多重特異性結合剤もしくは融合タンパク質の成分として、または医薬的に許容される担体に含まれる単一組成物として同時に投与することができる。あるいは、療法薬の組合せは、医薬的に許容される担体に含まれる各薬剤を有する別々の組成物として同時に投与してもよい。別の実施形態では、治療剤の組合せを順次に投与する場合もある。
【0174】
医薬組成物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1995に開示のものなどの従来の技法に従って、医薬的に許容される担体または希釈剤、ならびにその他の任意の既知のアジュバントおよび賦形剤とともに製剤化することができる。一部の態様では、医薬組成物は、がんを処置するのに対象に投与される。
【0175】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される担体」には、生理学的に適合性のあるあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮の各投与(例えば、注射または注入による)に適している。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち抗体、二重特異性分子および多重特異性分子を、物質でコーティングして、化合物を不活性化するおそれのある酸およびその他の自然条件の作用から当該化合物を保護することができる。
【0176】
通常では、注射による投与用の組成物は、無菌等張水性緩衝剤の溶液である。必要であれば、医薬はまた、可溶化剤、および注射部位の疼痛を緩和するためのリグノカインなどの局所麻酔薬を含んでいてもよい。一般に、成分は、別々に供給されるか、または単位剤形で一緒に混合されて、例えば、活性薬剤の量を表示するアンプルまたはサシェットなどの密封容器内の、凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として供給される。医薬は、輸注によって投与する場合、無菌の医薬品等級の水または生理食塩水を含有する点滴瓶を用いて投薬することができる。医薬は、注射によって投与する場合、成分を投与前に混合することができるように、無菌注射用水または生理食塩水のアンプルを供給することができる。
【0177】
本開示の組成物は、当技術分野で知られている様々な方法によって投与することができる。当業者であれば理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて異なる。活性化合物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化による送達系を含めて、制御放出製剤などの、急速な放出に対して化合物を保護することになる担体とともに調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤を調製する方法は一般に当業者に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0178】
代替の実施形態では、従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入法を使用して、本明細書に記載の抗体またはそれの断片をコードする核酸を哺乳動物細胞または標的組織中に導入することができる。かかる方法を使用して、抗体をコードする核酸をin vitroで細胞に投与することができる。一部の実施形態では、抗体またはそれの断片をコードする核酸を、in vivoまたはex vivo遺伝子治療用途のために投与する。他の実施形態では、遺伝子送達技法を使用して、細胞ベースのモデルまたは動物モデルにおいて抗体の活性について研究する。非ウイルスベクター送達システムには、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、およびリポソームなどの送達ビヒクルと複合体化された核酸が含まれる。ウイルスベクター送達システムには、細胞への送達後にエピソーム性のゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有する、DNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれる。かかる方法は当技術分野でよく知られている。
【0179】
本開示の改変されたポリペプチドをコードする核酸の非ウイルス送達の方法には、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、およびDNAの薬剤強化取込みが含まれる。リポフェクション法およびリポフェクション試薬は当技術分野でよく知られている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性および中性脂質には、Felgner、国際公開第91/17424号パンフレット、国際公開第91/16024号パンフレットのものが含まれる。細胞(ex vivo投与)または標的組織(in vivo投与)に送達することができる。免疫脂質複合体などの標的化リポソームを含めて、脂質:核酸複合体の調製は、当業者によく知られている。
【0180】
本明細書に記載の抗体をコードする核酸の送達用のRNAウイルスベースまたはDNAウイルスベースのシステムを使用すると、ウイルスを体内の特定の細胞に標的化するとともにウイルスペイロードを核に輸送するための、高度に発展した方法の利点が生かされる。ウイルスベクターを患者に直接投与することができる(in vivo)、またはそれらを使用してin vitroで細胞を処理することができ、そして改変細胞を患者に投与する(ex vivo)。本開示のポリペプチドの送達向けの従来のウイルスベースのシステムとして、遺伝子導入用のレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルスの各ベクターを挙げることができる。ウイルスベクターは現在、標的細胞および組織における遺伝子導入の最も効率的かつ汎用的な方法である。宿主ゲノムにおける統合が、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスの遺伝子導入法を用いて可能であり、多くの場合、挿入された導入遺伝子の長期的発現をもたらす。加えて、高度の形質導入効率が、様々な多くの細胞型および標的組織において観察されている。
【0181】
医薬組成物中の有効成分の投薬量レベルは、対象にとって毒性がなく、特定の対象、組成物および投与様式に関して所望の治療反応を達成するのに効果的である、有効成分の量が得られるように、変えることができる。選択される投薬量レベルは、採用する本開示の特定の組成物の活性、投与の経路、投与の時間、採用する特定の化合物の排泄速度、処置の期間、採用する特定の組成物との組合せで使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的健康、および以前の病歴等の医学分野でよく知られている要因を含めて様々な薬物動態の要因に左右されるであろう。
【0182】
本明細書に記載の医薬組成物は、有効量で投与することができる。「有効量」とは、単独で、もしくはさらなる用量とともに所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患のまたは特定の状態の処置の場合、所望の反応は好ましくは、疾患の経過の阻害に関連する。このことは、疾患の進行を遅延させること、および特に、疾患の進行を中断または好転させることを含む。
【0183】
本開示の広範な範囲は、以下の例を参照して最もよく理解されるが、本例は本開示を特定の実施形態に限定することを意図するものではない。本明細書に記載される特定の実施形態は、例としてのみ提供されるものであり、本開示は、添付の特許請求の範囲の条件によって、かかる特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲を含めて、制限されるものである。
【実施例】
【0184】
一般方法
免疫沈降、クロマトグラフィー、および電気泳動を始めとするタンパク質精製の方法が記載されている。例えば、Coligan et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vol. 1, John Wiley and Sons, Inc., New York.を参照されたい。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、およびタンパク質のグリコシル化が記載されている。例えば、Coligan et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vol. 2, John Wiley and Sons, Inc., New York;Ausubel et al. (2001) Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 3, John Wiley and Sons, Inc., NY, N.Y., pp. 16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich, Co. (2001) Products for Life Science Research, St. Louis, Mo.; pp. 45-89;Amersham Pharmacia Biotech (2001) BioDirectory, Piscataway, N.J., pp. 384-391を参照されたい。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の産生、精製、および断片化が記載されている。Coligan et al. (2001) Current Protocols in Immunology, Vol. 1, John Wiley and Sons, Inc., New York;Harlow and Lane (1999) Using Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; Harlow and Lane、上掲。
【0185】
抗Claudin-6抗体を含有するハイブリドーマまたは細胞培養物の上清を、HiTrapプロテインGカラム(GE、カタログ番号17040401)によって、製造業者の手順に従って精製した。簡単に説明すると、上清を5CVのDPBS(Gibco、カタログ番号14190-136)によって平衡化し、シリンジ/注入ポンプ(Legato 200、KDS)を介して、周囲温度および3分間の滞留時間でロードした。カラムを5CVのDPBSで洗浄し、4CVのpH2.8溶出緩衝剤(Fisher Scientific、カタログ番号PI21004)によって溶出を行った。溶出を分画し、画分を1M Tris-HCL、pH8.5(Fisher Scientific、カタログ番号50-843-270)で中和し、A280(DropSense96、Trinean)によってアッセイした。ピーク画分をプールし、緩衝剤をDPBSに交換した。遠心フィルター(EMD Millipore、カタログ番号UFC803024)を、4,000×gで2分間、DPBS中で平衡化した。精製した試料をロードし、DPBSを添加し、試料を4,000×g、5~10分間回転で、総DPBS体積が≧6DVになるまで回転させた。最終プールをA280によって分析した。
【0186】
分子生物学の標準方法が記載されている。例えば、Maniatis et al., (1982) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Wu (1993) Recombinant DNA, Vol. 217, Academic Press, San Diego, Calif.を参照されたい。標準方法は、Ausbel et al. (2001) Current Protocols in Molecular Biology, Vols. 1-4, John Wiley and Sons, Inc. New York, N.Y.にもみられ、これには、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA突然変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、複合糖質およびタンパク質発現(Vol.3)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)が記載されている。
【0187】
エレクトロポレーションまたは脂質ベースのトランスフェクションを使用してヒト(Homo sapiens)Claudinタンパク質(表3の参照タンパク質配列)を発現するpcDNA3.1ベースのプラスミドを、選択された宿主細胞(すなわち、CHO-K1またはHEK293)にトランスフェクトすることによって、ヒトClaudin-6、Claudin-9、Claudin-3、またはClaudin-4を発現する安定な細胞株を生成した。ジェネティシンまたはピューロマイシンを使用して、統合された細胞を選択した。抗生物質選択の7~10日後、標識抗体を使用したFACSまたは段階希釈によって、安定したクローンを単離した。増殖後、フローサイトメトリーにより安定したクローンをClaudinタンパク質発現についてさらに確認した。マウスおよびカニクイザルClaudin-6(表3の参照配列)は、それぞれ脂質ベースのトランスフェクションを使用して、HEK293T細胞において一過性に発現させた。
【0188】
NEC8/CLDN6ノックアウト細胞株は、CRISPR-Cas9システムを使用して作成した。簡単に説明すると、CLDN6 Exon2を標的化するsgRNAをリボヌクレオタンパク質複合体として使用して、エレクトロポレーションによってNEC8細胞に
トランスフェクトした。ノックアウト細胞プールをソーターによって得て、NGSによって確かめた。KO細胞プールは、フローサイトメトリーによってさらに確かめた。
【0189】
【0190】
ハイブリドーマクローンについて重鎖および軽鎖の可変領域の配列を下記のように決定した。全RNAは、Qiagen(Germantown、MD、USA)製のRNeasy Plus Mini Kitを使用して、1~2×106個のハイブリドーマ細胞から抽出した。CDNAは、Takara(Mountainview、CA、USA)製のSMARTer RACE 5’/3’Kitを使用して5’RACE反応を実行することによって生成した。PCRを、NEB(Ipswitch、MA、USA)製のQ5 High-Fidelity DNA Polymeraseを使用して実行して、適当な免疫グロブリンの3’マウス定常領域に対する遺伝子特異的プライマーとの組合せで、Takara Universal Primer mixを使用して重鎖および軽鎖からの可変領域を増幅した。重鎖および軽鎖について増幅可変領域を2%アガロースゲル上でランし、適当なバンドを切り取り、次いでQiagen製のMini Elute Gel Extraction Kitを使用してゲル精製した。精製PCR産物を、Invitrogen(Carlsbad、CA、USA)製のZero Blunt PCR Cloning Kitを使用してクローニングし、Takara製のStellar Competent E.Coli細胞に形質転換し、LB寒天培地+50μg/mLカナマイシンプレートに播種した。直接コロニーサンガー配列決定をGeneWiz(South Plainfield、NJ、USA)によって実行した。生成するヌクレオチド配列を、IMGT V-QUESTを使用して分析して、生産的再編成を特定し、翻訳されたタンパク質配列を分析した。CDR決定は、Kabatナンバリングに基づいた。
【0191】
選択されたVH鎖またはVL鎖をPCR増幅し、ヒトIgG1(Uniprot P01857)またはヒトカッパ軽鎖(UniProt P01834)由来の定常領域を内部に有するpcDNA3.4ベースの発現ベクターにクローニングした。プロバイダーのExpi293発現システムプロトコルに従って、対になった重鎖-および軽鎖-発現プラスミドをExpi293細胞(Thermo Fisher Scientific)にトランスフェクトした。トランスフェクションの5日後に、遠心分離により培養上清を回収した。組換え抗体を、プロテインAカラムおよびPBS pH7.2に交換した緩衝剤を使用する1ステップの親和性精製によって精製した。
【0192】
蛍光活性化細胞ソーティング検出システム(FACS(登録商標))を含めて、フローサイトメトリーの方法が利用可能である。例えば、Owens et al. (1994) Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice, John Wiley and Sons, Hoboken, N.J.;Givan (2001) Flow Cytometry, 2nd ed.; Wiley-Liss, Hoboken, N.J.;Shapiro (2003) Practical Flow Cytometry, John Wiley and Sons, Hoboken, N.J.を参照されたい。例えば、診断試薬として使用するための、核酸プライマーおよびプローブ、ポリペプチド、ならびに抗体を含めて、核酸を修飾するのに適切な蛍光試薬が、利用可能である。Molecular Probes (2003) Catalogue, Molecular Probes, Inc., Eugene, Oreg.;Sigma-Aldrich (2003) Catalogue, St. Louis, Mo.。
リガンド/受容体相互作用を特徴付けるための標準技法が利用可能である。例えば、Coligan et al. (2001) Current Protocols in Immunology, Vol. 4, John Wiley, Inc., New Yorkを参照されたい。特定の作用機構を備える抗体の特性評価に適当な抗体機能特性評価の標準方法も、当業者にはよく知られている。
【0193】
抗CLDN6抗体(64A)をベースとする社内製抗CLDN6抗体を、本明細書では「NR.N6.PC1」(PC1)と呼ばれるが、国際公開第2012/156018号パンフレットで公開された公共で利用可能な情報に基づいて調製した(VH、配列番号36;およびVL、配列番号35)。PC1抗体を使用して、実施例で使用されるトランスフェクト細胞および腫瘍細胞株によるClaudin-6発現を確認し、本明細書で開示の抗CLDN6特異的抗体を評価しかつ特徴付けるために使用される結合アッセイおよび機能アッセイを確立した。第2の社内製CLDN6/9反応性抗体(hsC27.22)を、本明細書で「NR.N6.PC2」(PC2)と呼ばれるが、国際公開第2015/069794号パンフレットで公開された公共で利用可能な情報に基づいて調製した(VH、配列番号67;およびVL、配列番号65)。
【0194】
例えば、抗原性断片、リーダー配列、タンパク質折り畳み、機能的ドメイン、CDRアノテーション、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である。
【0195】
[実施例1]
抗CLDN-6抗体の生成
ヒト抗体VHおよびVL遺伝子を発現する、ヒトIgG トランスジェニックマウス、Trianniマウスを免疫することによって、完全ヒト抗ヒトCLDN6抗体を生成した(例えば、国際公開第2013/063391号パンフレット、TRIANNI(登録商標)マウス)。
【0196】
免疫:上記のTRIANNIマウスを、ヒトClaudin-6遺伝子を含有するDNAおよびヒトClaudin-6遺伝子を安定にトランスフェクトしたCHO細胞を含む免疫原の注射によって免疫した。TRIANNIマウスは、尾静脈注射によってDNAで免疫した。ヒトClaudin-6をトランスフェクトしたCHO細胞は、腹腔内(IP)注射、皮下(SC)注射、尾根部注射またはFootpad注射した。
【0197】
免疫応答を、後眼窩採血によってモニタリングした。血漿をフローサイトメトリー(FACS)またはイメージング(下記のように)によってスクリーニングした。十分な抗Claudin-6力価を備えるマウスを融合に使用した。マウスを腹腔内、尾根部または静脈内に免疫原で追加免疫し、その後、屠殺し、脾臓およびリンパ節を取り出した。
【0198】
抗Claudin-6抗体を産生するマウスの選択:Claudin-6に結合する抗体を産生するマウスを選択するために、免疫マウスからの血清を、Claudin-6を発現しない対照細胞(CHO細胞)ではなく、Claudin-6タンパク質を発現する細胞(Claudin-6遺伝子をトランスフェクトしたCHO)への結合について、FACSまたはイメージングによってスクリーニングした。
【0199】
FACSの場合、簡単に説明すると、Claudin-6-CHO細胞または親CHO細胞を、免疫マウスからの血清の希釈液とともに4℃で2時間インキュベートした。細胞を2%PFA(Alfa Aesar、カタログ番号:J61899)によって4℃で15分間固定し、次いで洗浄した。Alexa 647標識ヤギ抗マウスIgG抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:A-21235)を用いて、4℃で1時間インキュベーション後、特異的抗体結合を検出した。フローサイトメトリー解析を、フローサイトメトリー機器(Intellicyte、IQue plus、Sartorius)で実行した。
【0200】
加えて、マウス血清をイメージングによって試験した。簡単に説明すると、Claudin-6-CHO細胞を、免疫マウスからの血清の希釈液とともにインキュベートした。細胞を洗浄し、パラホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、二次Alexa488ヤギ抗マウス抗体およびHoechst(Invitrogen)を用いて、特異的抗体結合を検出した。プレートをスキャンし、イメージングマシン(Cytation 5、Biotek)で解析した。
【0201】
CLDN6に対する抗体を産生するハイブリドーマの生成:本開示のヒト抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、脾細胞およびリンパ節細胞を、免疫マウスから単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適当な不死化細胞株に融合した。生成するハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングした。例えば、免疫マウスからの脾細胞、リンパ節細胞の単細胞懸濁液を、電気融合によって等数のSp2/0マウスIgG非分泌性骨髄腫細胞(ATCC、CRL1581)に融合した。細胞を平底96ウェル組織培養プレートに播種し、これに続いて選択培地(HAT培地)で約1週間インキュベーションし、次いでハイブリドーマ培養培地に切り替えた。細胞播種の概10~14日後に、個々のウェルからの上清を、上記のようにイメージングまたはFACSによってスクリーニングした。抗体分泌性ハイブリドーマを24ウェルプレートに移し、再びスクリーニングし、抗Claudin-6がなおも陽性である場合、陽性ハイブリドーマを、単一細胞ソーターを使用するソーティングによって、サブクローニングした。サブクローンを、上記のようにイメージングまたはFACSによって再びスクリーニングした。次いで、安定したサブクローンをin vitroで培養して、精製および特性評価のための少量の抗体を生成した。
【0202】
[実施例2]
抗CLDN6抗体の結合特異性
本開示の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2の結合特異性を、Claudin-6トランスフェクト細胞株、Claudin-6-CHO-K1(GenScript、商品番号U3288DL180_3)および親CHO細胞(CHO-K1、ATCC、CCL-61)を使用して、FACSによって評価した。簡単に説明すると、Claudin-6-CHO-K1細胞、対(verse)、親CHO-K1細胞を、抗CLDN-6抗体と、4℃で2時間インキュベートした。細胞を2%PFA(Alfa Aesar、カタログ番号:J61899)によって4℃で15分間固定し、次いで洗浄した。Alexa 647標識ヤギ抗ヒトIgG抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:A-21445)を用いて、4℃で1時間インキュベーション後、特異的抗体結合を検出した。フローサイトメトリー解析を、フローサイトメトリー機器(Intellicyte、IQue plus、Sartorius)で実行した。
【0203】
図2Aおよび
図2Bに、本開示の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2が、5μg/mlで染色するアイソタイプ対照抗体と比較して、それぞれ28倍および24倍のMFIで、Claudin-6-CHO-K1トランスフェクト細胞(GenScript、商品番号U3288DL180_3)に結合したことを示す。対照抗体NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2は、アイソタイプ対照抗体と比較して、25倍のMFIでClaudin-6-CHO-K1に結合した。すべての抗体は、親CHO-K1細胞に結合しなかった(
図2Aおよび2B)。
【0204】
本開示の抗Claudin-6抗体の結合特異性は、FACSにより、Claudin-9への結合についてさらに評価した。簡単に説明すると、Claudin-9-HEK293細胞(GenScript、商品番号U3288DL180_4)を、組換えClaudin-6抗体と4℃で2時間インキュベートした。細胞を2%PFA(Alfa Aesar、カタログ番号:J61899)によって4℃で15分間固定し、次いで洗浄した。Alexa Fluor 647をコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG二次抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:A-21445)を用いて、4℃で1時間インキュベーション後、特異的抗体結合を検出した。フローサイトメトリー解析を、フローサイトメトリー機器(Intellicyte、IQue plus、Sartorius)で実行した。
【0205】
図3Aおよび3Bに、FACS(5μg/mlの濃度の抗体)による、陽性対照NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2とともに、本開示のClaudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2の、HEK293親細胞と比較したClaudin-9-HEK293細胞への結合活性を示した。NR.N6.Ab1は、アイソタイプ対照と比較して16倍のMFIでClaudin-9-HEK293細胞に結合し;NR.N6.Ab2は、アイソタイプ対照と比較して53倍のMFIでClaudin-9-HEK293細胞に結合した。対照抗体NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2は、それぞれアイソタイプ対照抗体よりも15倍および32倍高いMFIでヒトClaudin-9-HEK293細胞に結合した。NR.N6.Ab1の結合パターンはNR.N6.PC1と類似し、NR.N6.Ab2の結合パターンはNR.N6.PC2と類似した。すべての試験抗体は、親HEK293細胞に結合しなかった(
図3Aおよび3B)。先行研究では、Claudin-6のアミノ酸配列が、細胞外(ECL)ループ1(ECL-1)およびループ2(ECL-2)でClaudin-9、3、および4と非常に相同であることが示された(ヒトCLDN6、9、3および4のECL1およびEC2ループのアミノ酸配列間の%同一性をまとめた表4および5を参照)(Biochemical et Biophysica Acta 1778 (2008) 631-645)。したがって、これらのClaudinファミリーメンバーを発現する細胞に結合する抗Claudin-6抗体の能力を評価することが重要である。
【0206】
【0207】
【0208】
本開示の抗CLDN6抗体の結合特性をさらに評価するため、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2(ハイブリドーマの上清から精製)ならびに2つの社内製陽性対照、NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2を、Claudin-3-CHO-K1およびClaudin-4-CHO-K1細胞への結合について試験した。結合は、Claudin-3および4陽性対照抗体として天然のエピトープを認識する抗Claudin3抗体(R&D、カタログ番号MAB4620)および抗Claudin-4抗体(R&D、カタログ番号MAB4219)を使用して、上記のようにFACSによって評価した。
【0209】
図4Aおよび4Bに、NR.N6.Ab1が、アイソタイプ対照よりも12倍高いMFIでClaudin-3-CHO-K1トランスフェクト細胞に結合したことを示す。比較して、抗claudin3対照抗体MAB4620は、5μg/mlの濃度でアイソタイプ対照よりも61倍高いMFIでClaudin-3-CHO-K1細胞に結合した。この観察は、NR.N6.Ab1がCLDN3に選択的であると特徴付けられ得ることを示すが、NR.N6.Ab1結合は、ヒトCLDN3を内因性発現するMCF7細胞を使用する追跡FACS解析で観察されなかった。この相違は、ヒト細胞による内因性発現と比較して、CHO-K1トランスフェクト細胞によるCLDN6発現における構造的な違いにより得る。他の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab2は、Claudin-3トランスフェクトCHO-K1細胞に結合しなかった。2つの陽性対照抗体、NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2もまた、Claudin-3-CHO-K1細胞に結合しなかった。
【0210】
図5Aおよび5Bに、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2がClaudin-4-CHO-K1細胞に結合しないことを示す。陽性対照抗Claudin-4抗体MAB4219は、アイソタイプ対照よりも33倍高いMFIでClaudin-4-CHO-K1に結合した。NR.N6.PC1は、Claudin-4-CHO-K1細胞に結合しなかったが、NR.N6.PC2は、アイソタイプ対照よりも4.5倍高いMFIでClaudin-4-CHO-K1細胞に結合した。
【0211】
先行研究では、NEC8(精巣胚細胞腫瘍細胞株)が内因性ヒトClaudin-6を高発現し、OV90(卵巣がん細胞株)が低レベルのClaudin-6を発現することが確立された。本開示の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2が、NEC8細胞およびOV90細胞上に発現されたCLDN6に結合できるかどうか決定するため、これら2つの抗体を、2つの陽性対照抗体、NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2とともに、FACSによって評価した。簡単に説明すると、NEC8細胞およびOV90細胞を、Claudin-6組換え抗体、NR.N6.Ab1、NR.N6.Ab2、NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2と、4℃で2時間インキュベートした。細胞を2%PFA(Alfa Aesar、カタログ番号:J61899)によって4℃で15分間固定し、次いで洗浄した。Alexa Fluor 647をコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG二次抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:A21445)を用いて、4℃で1時間インキュベーション後、特異的抗体結合を検出した。フローサイトメトリー解析を、フローサイトメトリー機器(Intellicyte、IQue plus、Sartorius)で実行した。
【0212】
図6Aおよび6Bからの結果は、本開示の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2が、それぞれアイソタイプ対照と比較して27倍および25倍高いMFIでNEC8細胞に結合できることを示した。陽性対照抗体NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2は、アイソタイプ対照と比較して、それぞれ19倍および20倍の結合活性でNEC8細胞に結合した。
【0213】
図7Aおよび7Bに、本開示の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2が、それぞれアイソタイプ対照抗体よりも19倍および17倍高いMFIでOV90に結合することを示した。陽性対照抗体、NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2は、それぞれアイソタイプ対照よりも20倍および15倍高いMFIでOV90細胞に結合した。
【0214】
本開示の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2(ハイブリドーマから精製)、2つの陽性対照抗体、NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2は、陽性対照抗体として抗Claudin-3抗体(R&D、MAB4620)および抗Claudin-4抗体(R&D、MAB4219)を使用するFACSによって、MCF7細胞株(Claudin-3および4を発現することが知られている内因性細胞株、国際公開第2019/056023号パンフレット)への結合についても評価した。
【0215】
図8Aおよび8Bに、本開示の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2はMCF7細胞に結合しないが、抗Claudin-3抗体(MAB4620)および抗Claudin-4抗体(MAB4219)は、それぞれアイソタイプ対照よりも20倍および15倍高いMFIでClaudin-3およびClaudin-4に結合したことを示した。対照抗体NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2もMCF7細胞に結合しなかった。
【0216】
3つの腫瘍細胞株、NEC8、OV90およびMCF7を、それらのClaudin-9の発現レベルについて評価するため、Claudin-9-HEK293細胞株とともに、これら3つの細胞株を、上記したFACSプロトコルにより、陽性対照として細胞内C末端エピトープ(Invitrogen、カタログ番号PA5-67431)に特異的な抗Claudin-9ポリクローナル抗体を使用するFACSによって試験した。
【0217】
図9に、抗Claudin-9陽性対照抗体はNEC8およびOV90細胞株に結合せず、アイソタイプ対照抗体と比較してMCF7細胞株において非常に低い結合シグナルを有したが、抗Claudin-9抗体は、Claudin-9-HEK293細胞に強く結合した(アイソタイプ対照と比較して13倍高いMFI)ことを示した。これらの結果は、ヒト細胞株、NEC8、OV90およびMCF7がClaudin-9を発現しないことを示す。
【0218】
全体として、上記のFACS結合実験の結果は、本開示の抗体NR.N6.Ab1が、アイソタイプ対照と比較してCLDN6に強く結合し、Claudin-9に弱く結合することを示す。NR.N6.Ab1は、検出可能だが弱い結合シグナル(陽性対照の20%)でCLDN3に結合するが、CLDN3陽性対照抗体は、アイソタイプ対照と比較してずっと高い結合シグナル(61倍)を有した。NR.N6.Ab1は、CLDN4-CHO-K1細胞およびMCF7細胞(CLDN3およびCLDN4を発現する)に結合しない。これらの結果は、NR.N6.Ab1がClaudin-6に選択的に結合することを示す。
【0219】
データは、抗CLDN-6抗体、NR.N6.Ab2がClaudin-6および9に強く結合し、Claudin-3またはClaudin-4に結合しないことをさらに示す。
【0220】
抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2ならびに関連陽性対照(PC)抗体のClaudin-6-CHO-K1細胞、Claudin-9-HEK293細胞、Claudin-3-CHO-K1細胞、Claudin-4-CHO-K1細胞、Claudin-6内因性発現細胞株NEC8およびOV90、ならびにClaudin-3および4内因性発現細胞株MCF7への結合特異性は、以下の表6に要約する。結合選択性は、抗CLDN抗体のMFIとアイソタイプ対照抗体のMFIを比較することによって決定した。注:[-]は、アイソタイプ対照と比較して結合が観察されないことを示す;n/dはデータがないことを示す;およびアスタリスク(*)によってマークした挿入は、図面内に示していないデータを提供する。
【0221】
【0222】
NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2を、FACSにより、Claudin-6過剰発現細胞株へのそれらの結合親和性について評価した。簡単に説明すると、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2を、NR.N6.PC1およびNR.N6.PC2とともに、連続希釈し、Claudin-6を過剰発現するHEK293、Claudin-9を過剰発現するHEK293、およびClaudin-6を過剰発現するCHOへの結合について、上記のようにFACSにより試験した。
【0223】
図10A、10Bおよび10Cに、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2が、用量依存性の様式でこれらの試験細胞株に結合したことを示す。EC
50値は、以下の表7に要約した。
【0224】
FACS実験からの結果は、NR.N6.Ab1が高親和性でClaudin-6に結合することを示す(EC50は、Claudin-6-HEK293細胞では0.55nM、およびClaudin-6-CHO細胞では0.97nM)。それは、Claudin-6-HEK293細胞への結合と比較して、低親和性(6.72nM)でClaudin-9-HEK293細胞に結合した。これらの試験細胞株におけるNR.N6.Ab1結合パターンは、陽性対照NR.N6.PC1と類似している。
抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab2は、類似の親和性、それぞれClaudin-6-HEK293細胞では、1.00nMのEC50で、Claudin-9-HEK293細胞では1.49nMで、Claudin-6およびClaudin-9に結合した。それは、低nMのEC50(6.88nM)でClaudin-6-CHO細胞に結合した。これらの細胞株における結合パターンおよび親和性は、陽性対照NR.N6.Ab2と類似している。
【0225】
【0226】
[実施例3]
Claudin-6を内因性発現する腫瘍細胞における抗体依存性細胞傷害性(ADCC)
様々なヒトClaudin-6陽性細胞に結合した抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2のADCC活性を、生物発光アッセイによって測定した。簡単に説明すると、抗CLDN6抗体をRPMI+4%低IgG FBSを含有するアッセイ緩衝剤で連続希釈し、個々の標的細胞株とADCCエフェクター細胞の混合物に添加した。ADCCエフェクター細胞は、結合したClaudin-6抗体のFc部分を認識すると活性化されるCD16Aを発現するJurkat細胞である。エフェクター細胞の活性化は、製造元の取扱説明書に従って、Promega生物発光アッセイ(Promega、カタログ番号E6130)を使用して検出した。
【0227】
ADCC活性を、内因性レベルのClaudin-6発現、および他のClaudinファミリーメンバー、例えばClaudin3、4および9を欠損する、NEC8細胞株で測定した。
【0228】
図11Aおよび表8に示すように、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2は両方ともNEC8細胞のADCC活性を増強した。NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2は、それぞれ0.64nMおよび2.77nMのEC
50値を呈した。
【0229】
【0230】
上の例に記載したように、Claudin-6は、OV90細胞において低発現である。
図11Bおよび表9に示すように、ADCC活性は、OV90細胞におけるNR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2についても観察した。NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2は、それぞれ0.3nMおよび0.75nMのEC
50レベルを呈し、それはNR.N6.PC1およびNR.N6.PC2のEC
50値、0.28nMおよび0.52nMに匹敵する。
【0231】
【0232】
[実施例4]
抗体介在性エンドサイトーシス(ADC)
Claudin-6陽性細胞に結合した本開示のClaudin-6特異的抗体のエンドサイトーシスを、抗ヒトIgG Fc-MMAF抗体と一緒の標的結合抗体の共内部移行を使用する細胞傷害性ベースのエンドサイトーシスアッセイによって測定した。
【0233】
NEC8、OV90、およびHEK-Claudin-6細胞を増殖培地(それぞれ、Puromycin 0.5μg/mLを含む、RPMI1640+10%FBS、Media199(1:1)を有するMCDB+15%FBS、DMEM+10%FBS)中で培養した。細胞を回収し、それぞれの増殖培地に再懸濁し、アッセイプレートに播種した。細胞を37℃で一晩インキュベートした。抗CNDL6抗体を、MMAFコンジュゲートFab抗hFc断片(Moradec、カタログ番号AH-202AF-50)とともにプレインキュベートし、次いで、細胞プレートに添加し、さらなる96時間インキュベートした。細胞力価Glo(Promega、カタログ番号G7570)を添加して、各ウェルの細胞生存率を評価した。Neo2プレートリーダー(BioTek)を使用してシグナルを定量化した。
【0234】
表10および
図12Aで示されるように、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2ならびに社内製陽性対照抗体は、0.1~0.2nMの範囲のEC
50値で、Claudin-6を内因性発現するNEC8細胞においてエンドサイトーシス介在細胞傷害性が誘発された。
【0235】
【0236】
OV90は、NEC8細胞より低発現レベルでも、Claudin-6を内因性発現する細胞株である。表11および
図12Bに示すように、エンドサイトーシス介在細胞傷害性はすべての試験抗体にわたり類似している。NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2は、それぞれ1.08および2.32nMのEC
50値を呈する。
【0237】
【0238】
組換えによりClaudin-6を発現するように作成されたHEK293細胞株は、エンドサイトーシス介在細胞傷害性を試験するためにも使用した。
図12Cおよび表12に示すように、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab2ならびに社内製陽性対照抗体はすべて、エンドサイトーシス介在細胞傷害性を方向付ける。EC
50値は、それぞれ1.73~2.19nMの範囲である。
【0239】
【0240】
[実施例5]
抗CLDN6抗体の結合特異性
抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5およびNR.N6.Ab6を、FACSにより、Claudin-6-HEK293(GenScript、商品番号U3288DL180_3)およびClaudin9-HEK293細胞(GenScript、商品番号U3288DL180_4)ならびに陰性HEK293細胞(ATCC、CRL1573)への結合について評価した。簡単に説明すると、Claudin-6-HEK293、Claudin-9-HEK293およびHEK293細胞を、Claudin-6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4およびNR.N6.Ab5組換え抗体、ならびにNR.N6.Ab6(ハイブリドーマの上清から精製)と、4℃で2時間インキュベートした。細胞を2%PFA(Alfa Aesar、カタログ番号:J61899)によって4℃で15分間固定し、次いで洗浄した。本明細書で使用する場合、「組換え抗体」という用語は、ヒトIgG1定常領域を含むように改変された抗体を意味する。組換え抗体(NR.N6.Ab3~Ab5)は、Alexa Fluor 647をコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG二次抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:A21445)を用いて、精製抗体NR.N6.Ab6は、Alexa Fluor 647をコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:A21235)を用いて、4℃で1時間インキュベーション後、特異的抗体結合を検出した。フローサイトメトリー解析を、フローサイトメトリー機器(Intellicyte、IQue plus、Sartorius)で実行した。
【0241】
図13A、13B、13Cおよび13Dに、本開示の抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5およびNR.N6.Ab6が、5μg/ml(NR.N6.Ab3~5)および10μg/ml(NR.N6.Ab6)で染色するアイソタイプ対照抗体と比較して、それぞれ31倍、23倍、24倍および60倍のMFIで、Claudin-6-HEK293トランスフェクト細胞に結合したことを示す。これらの抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5およびNR.N6.Ab6は、5μg/ml(NR.N6.Ab3~5)および10μg/ml(NR.N6.Ab6)で染色するアイソタイプ対照抗体と比較して、それぞれ5倍、2倍、2倍および47倍のMFIで、Claudin-9-HEK293トランスフェクト細胞に結合した。
【0242】
この結果は、抗CLDN6抗体が、Claudin-9よりもClaudin-6に優先的に結合することを示す。
【0243】
抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5およびNR.N6.Ab6ならびにNR.N6.Ab1が、CLDN6を内因的に発現するNEC8細胞およびCLDN6遺伝子ノックアウトNEC8(NEC8 Claudin-6 KO)細胞上に結合できるかどうか決定するため、これらの抗体を、アイソタイプ対照抗体とともに、FACSによって評価した。簡単に説明すると、NEC8細胞およびNEC8 Claudin-6 KO細胞を、Claudin-6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5(組換え)、NR.N6.Ab6(ハイブリドーマの上清から精製)およびNR.N6.Ab1(組換え)と、4℃で2時間インキュベートした。細胞を2%PFA(Alfa Aesar、カタログ番号:J61899)によって4℃で15分間固定し、次いで洗浄した。組換え抗体(NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab3~Ab5)には、Alexa Fluor 647をコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG二次抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:A21445)を用いて、NR.N6.Ab6(ハイブリドーマの上清から精製)には、Alexa Fluor647をコンジュゲートした抗マウスIgG(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:A21235)を用いて、4℃で1時間インキュベーション後、特異的抗体結合を検出した。フローサイトメトリー解析を、フローサイトメトリー機器(Intellicyte、IQue plus、Sartorius)で実行した。
【0244】
図14A、14B、14C、14Dおよび14Eに、本開示の抗CLDN6抗体、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、NR.N6.Ab6、およびNR.N6.Ab1が、それぞれ20倍、19倍、21倍、23倍および32倍のMFIで、Claudin-6を内因性発現するNEC8細胞に結合したことを示す。これらは、5μg/ml(NR.N6.Ab3~5)または10μg/ml(NR.N6.Ab6)で染色するアイソタイプ対照抗体と比較して、NEC8 CLDN6遺伝子ノックアウト細胞に結合しなかった。NR.N6.Ab1は、実施例2で先に報告したのと類似の結合パターンを示した(14E)。
【0245】
NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5(組換え抗体)、およびNR.N6.Ab6(ハイブリドーマの上清から精製)の結合特性をさらに評価するため、実施例2に記載のように、FACSにより、Claudin-6-CHO-K1、Claudin-3-CHO-K1およびClaudin-4-CHO-K1細胞への結合について試験した。抗Claudin抗体は、天然エピトープ(マウス抗Claudin3 IgG2a(R&D、MAB4620)、マウス抗Claudin4 IgG2a(R&D、MAB4219))を認識した。米国特許出願公開第2016/0222125号明細書の抗体をClaudin3およびClaudin4陽性対照として使用して、CHO-K1細胞におけるClaudin3およびClaudin4の発現レベルを確かめた。
【0246】
図15A、15B、15Cおよび15Dは、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5およびNR.N6.Ab6が、用量依存性の様式でClaudin-6-CHO-K1細胞に結合するが、それらはClaudin-3-CHO-K1およびClaudin-4-CHO-K1細胞に結合しないことを確立した。
図15Eおよび15Fに、陽性対照抗体、MBA4620(抗Claudin3)およびMBA4219(抗Claudin4)が、それぞれ用量依存性の様式で、Claudin-3-CHO-K1およびClaudin4-CHO-K1に結合することを示す。
【0247】
データは、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5およびNR.N6.Ab6が、Claudin-6に強く結合し、Claudin-3もしくはClaudin-4に結合しないかまたはClaudin-4への限定された結合活性によって特徴付けられるか(NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab6)のいずれかをさらに実証した。
【0248】
表13は、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、およびNR.N6.Ab6、ならびに関連陽性対照抗体のClaudin-6-HEK293細胞、Claudin-6-CHO-K1細胞、Claudin-9-HEK293細胞、Claudin-3-CHO-K1細胞、Claudin-4-CHO-K1細胞、NEC8のClaudin-6内因性発現細胞株およびClaudin-6遺伝子ノックアウトのNEC8細胞への結合プロファイルを要約する。結合選択性は、抗CLDN6抗体のMFIとアイソタイプ対照抗体のMFIを比較することによって決定した。注:[-]は、アイソタイプ対照と比較して結合が観察されないことを示し、*はCLDN6遺伝子ノックアウト細胞を示す。
【0249】
【0250】
抗CLDN6抗体を、FACSにより、Claudin-6過剰発現細胞株へのそれらの結合親和性についても評価した。簡単に説明すると、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、およびNR.N6.Ab5(組換え抗体)、ならびにNR.N6.Ab6(ハイブリドーマの上清から精製)を、連続希釈し、Claudin-6を過剰発現するHEK293、Claudin-9を過剰発現するHEK293、Claudin-6を過剰発現するCHO、およびClaudin-6を内因性発現するNEC8への結合について、上記のようにFACSにより試験した。
【0251】
図16Aおよび16Cに、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5、およびNR.N6.Ab6は、用量依存性の様式でClaudin-6-HEK293細胞に結合するが、それらはClaudin-9-HEK293細胞に最小限にのみ結合する(
図16B)かまたは弱く結合する(16C)ことを示す。
図16Aおよび16Bは、NR.N6.Ab1の結合活性を要約する。
【0252】
親HEK293細胞では顕著な結合は検出されなかった(
図16D)。マウスIgGアイソタイプ対照は、いずれの細胞株にも結合しないNR.N6.Ab6を含む(データは示さない)。
【0253】
図17Aに、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、およびNR.N6.Ab5の、用量依存性の様式での、Claudin-6を内因性発現するNEC8細胞への結合およびNEC8 Claudin-6ノックアウト細胞への結合の完全な欠損を確立した(
図17B)。
図17Cに、NR.N6.Ab6が、NEC8細胞に結合し、NEC8 Claudin-6ノックアウト細胞に結合しないことを示した。
【0254】
これらの結果は、本開示の抗体、NR.N6.Ab3、4、5および6が、Claudin-6に特異的におよび優先的に結合することを示した。
【0255】
これらの抗Claudin-6抗体のClaudin-6-HEK293、Claudin-6-CHO-K1およびNEC8に結合するEC50値(2回の実験から抽出した)を以下の表14に示す。注:#は、CLDN6を内因性発現するヒト細胞株を示す。
【0256】
【0257】
データは、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4、NR.N6.Ab5およびNR.N6.Ab6が、Claudin-6発現細胞株に、Claudin-6-HEK293では4.11nM~15.67nM;Claudin-6-CHO細胞では3.06nM~4.79nM;およびNEC8細胞では3.27nM~8.34nMの範囲のEC50値で結合することを確立した。
【0258】
シークエンスしたVHおよびVLは、通常、N結合型グリコシル化部位およびシステイン残基の付加/欠損を含む明らかな責任について調べた。例として、NR.N6.Ab1(配列番号1)のVHは、FR3(N末端から数えてN73)にN結合型グリコシル化部位を含有する。N結合型グリコシル化は、相同生殖系列配列によって導かれるAsnからAspへの突然変異によって除去され、配列番号23を生じる。
【0259】
NR.N6.Ab1およびアイソタイプ対照抗体とともにNR.N6.Ab1バリアントN73Dを、上記のようにFACSにより、Claudin-6-HEK293、Claudin-9-HEK293、Claudin-6を内因性発現するNEC8細胞およびNEC8 Claudin-6ノックアウト細胞へのそれらの結合特異性および親和性について評価した。
【0260】
Claudin-6-HEK293細胞およびClaudin-6を内因性発現するNEC8細胞に結合する抗Claudin-6抗体、NR.N6.Ab1 N73DおよびNR.N6.Ab1のEC50値は、2回の実験から抽出され、表15に要約する。
【0261】
【0262】
図18A、18Bおよび18Cに、用量依存性の様式で、NR.N6.Ab1およびNR.N6.Ab1バリアントN73DがClaudin-6-HEK293細胞(18A)およびNEC8細胞(18C)に結合し、NR.N6.Ab1バリアントN73Dが親NR.N6.Ab1への類似の結合プロファイルを呈することを示す。それらは、ずっと低い活性でClaudin-9-HEK293細胞に結合し(18B)、NEC8 Claudin-6ノックアウト細胞には結合しなかった(18D)。
【0263】
[実施例6]
Claudin-6を内因性発現する腫瘍細胞における抗体依存性細胞傷害性(ADCC)
NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4およびNR.N6.Ab5ならびにNR.N6.Ab1のADCC活性を、生物発光アッセイによって測定した。簡単に説明すると、抗CLDN6抗体をRPMI+4%低IgG FBSを含有するアッセイ緩衝剤で連続希釈し、個々の標的細胞株とADCCエフェクター細胞の混合物に添加した。ADCCエフェクター細胞は、結合したClaudin-6抗体のFc部分を認識すると活性化されるCD16Aを発現するJurkat細胞である。エフェクター細胞の活性化は、製造元の取扱説明書に従って、Promega生物発光アッセイ(Promega、カタログ番号E6130)を使用して検出した。
【0264】
ADCC活性を、内因性レベルのClaudin-6発現を有し、および他のClaudinファミリーメンバー、例えばClaudin3、4および9を欠損する、NEC8、ならびにNEC Claudin-6 KO(NEC8 Claudin-6ノックアウト細胞株)で測定した。
【0265】
図19Aおよび表16に示すように、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4およびNR.N6.Ab5は、それぞれ6.43nM、9.83nMおよび3.78nMのEC
50値でNEC8細胞のADCC活性を誘導した。NR.N6.Ab1(陽性対照として含まれる)は、0.64nMの先のEC50値と比較して、0.40nMのEC50値でADCC活性を一貫して呈した(実施例3、表8)。すべてのEC
50値は、2回の実験から抽出した。NEC8 Claudin-6 KO細胞ではADCC活性が検出されなかった(19B)。
【0266】
【0267】
[実施例7]
抗CLDN6抗体の内部移行
NR.N6.Ab1、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4およびNR.N6.Ab5の内部移行は、NEC8、またはNEC8 Claudin-6ノックアウト細胞を使用する免疫蛍光イメージングアッセイによって測定した。細胞を、10%FBSを含むRPMI-1640を含有する完全培地中に播種し、37℃で一晩インキュベートした。抗体を、まず、Alexa Fluor(商標)488抗体標識キット(ThermoFisher、A20181)を使用して、蛍光色素と化学的にコンジュゲートさせた。過剰量のコンジュゲートしていない色素は、Zeba(商標)スピン脱塩カラム、40K MWCO(ThermoFisher、87766)を使用して除去した。次いで細胞を、4℃で4時間、10μg/mlの蛍光標識した抗体とインキュベートした。抗体のプレ結合後、相当するプレートを37℃で0、4および24時間インキュベートした後、室温で15分間、パラホルムアルデヒドで細胞を固定した。固定した細胞をPBSで3回洗浄した後、室温で1時間、抗Alexa Fluor488抗体(ThermoFisher、A11094)とインキュベートし、細胞外細胞表面シグナルをクエンチした。内部移行した抗体の蛍光シグナルは、Cytation Imager(Biotek、VT)を使用して、細胞のイメージングおよび蛍光強度の定量により評価した。
【0268】
図20Aおよび20Bに、NEC8細胞に内部移行したが、NEC8 Claudin6 KO細胞には内部移行しない本開示の抗体を示す。ヒトIgG1アイソタイプ対照抗体を、NEC8細胞またはNEC8 Claudin-6 KO細胞のいずれかとインキュベートすると、内部移行シグナルは検出されなかった。この観察は、本開示の抗体の内部移行は、特異的な細胞表面上のClaudin-6タンパク質への結合によることを示す。
【0269】
[実施例8]
抗CLDN6抗体による抗体介在性エンドサイトーシス
Claudin-6陽性細胞に結合したNR.N6.Ab1、NR.N6.Ab3、NR.N6.Ab4およびNR.N6.Ab5抗体のエンドサイトーシスは、抗ヒトIgG Fc-MMAF抗体と一緒に標的結合抗体の共内部移行に基づき、細胞傷害性ベースのエンドサイトーシスアッセイによって測定した。
【0270】
NEC8およびNEC8 Claudin-6ノックアウト細胞を、増殖培地(RPMI1640+10%FBS)中で培養した。細胞を回収して増殖培地中に再懸濁し、アッセイプレートに播種した。細胞を、37℃で一晩インキュベートした。抗Claudin-6抗体を、MMAFコンジュゲートFab抗hFc断片(Moradec、カタログ番号AH-202AF-50)とともにプレインキュベートし、次いで、細胞プレートに添加し、さらなる72時間インキュベートした。細胞力価Glo(Promega、カタログ番号G7570)を添加して、各ウェルの細胞生存率を評価した。Neo2プレートリーダー(BioTek)を使用してシグナルを定量した。
【0271】
図21Aおよび表17に示すように、本開示の抗Claudin6抗体は、0.14~0.51nMの範囲のEC
50値でNEC8細胞株において抗体介在性エンドサイトーシスを誘導した。NEC8 Claudin6 KO細胞株では、エンドサイトーシス由来細胞傷害性は検出されなかった(
図21B)。
【0272】
【0273】
特に指示のない限り、明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件等を表現するすべての数は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解すべきである。したがって、そうではないと指示のない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲において記載する数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて異なってもよい近似値である。少なくとも、均等論の原則を特許請求の範囲に適用することを限定しようとする試みではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁の数値を考慮してかつ通常の四捨五入技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0274】
本開示の幅広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の例において記載される数値はできるだけ正確に報告されている。いずれの数値も、しかし、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含有する。
【0275】
本開示を説明する文脈で(特に以下の特許請求の範囲の文脈で)使用される「a」、「an」、「the」という用語、および類似の指示対象は、本明細書に特に指示のない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方をカバーすると解釈される。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、範囲に入る各個別の値に個々に言及することの省略方法としての役割を果たすことが意図されている。本明細書に特に指示のない限り、個々の値はそれぞれ、本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に特に指示のない限り、またはさもなければ文脈と明らかに矛盾しない限り、適切な任意の順序で行うことができる。本明細書で提供されるあらゆる例、または例示的な言い回し(例えば「などの(such as)」)の使用は、単に、本開示をより良く例示することを意図するものであり、特に主張しない限り開示の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言い回しも、特許請求されていない要素が本発明の実施にとって必須であることを示すものと解釈すべきではない。
【0276】
本明細書に開示された開示の代替要素または実施形態の群分けは、限定であると解釈すべきではない。各群の構成要素は、個々に、または群の他の構成要素もしくは本明細書に見出される他の構成要素との任意の組合せで、言及することができかつ特許請求することができる。ある群の1つまたは複数の構成要素が、便宜上および/または特許性の理由から、群に包含され、または群から削除され得る。なんらかのかかる包含または削除が生じる場合、本明細書は、改変された群を含み、したがって、添付の特許請求の範囲で使用される全マーカッシュ群の書面による明細を満足するものである。
【0277】
本開示のある特定の実施形態が、発明者らが知っている本開示を実施するためのベストモードを含めて、本明細書に記載されている。もちろん、それら記載の実施形態の変形例は、前述の説明を読み解くことで当業者であれば明らかとなるであろう。本発明者らは、当業者であれば必要に応じてかかる変形を採用すると考えており、本開示が本明細書に具体的に記載のもの以外の方法で実行されることを意図している。したがって、本開示は、適用法が許すなら、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙された主題の改変形態および均等物すべてを包含する。さらに、それらの可能なすべての変形における上記の要素の任意の組合せも、本明細書に特に指示のない限り、またはさもなければ文脈と明らかに矛盾しない限り、本開示によって包含される。
【0278】
本明細書に開示の具体的な実施形態は、「からなる」または「から本質的になる」という言い回しを使用して、特許請求の範囲においてさらに限定することができる。出願されたか、補正によって追加されたかにかかわらず、特許請求の範囲において使用される場合、「からなる」という移行句は、特許請求の範囲に規定されてないいかなる要素をも、ステップをもまたは成分をも、排除する。「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲を、特定された材料またはステップ、ならびに基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。そのように特許請求される本開示の実施形態が、本明細書に本質的にまたは明示的に説明されており、本明細書において有効である。
【0279】
本明細書に開示された本開示の実施形態は、本開示の原理の例示であることが理解されよう。採用することができる他の改変は、本開示の範囲内である。したがって、一例であって限定されないが、本開示の代替の構成が本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本開示は、示されかつ記載されたように厳密にそのものに限定されるものではない。
【0280】
本開示を、種々の具体的な材料、手順および例を参照することによって、本明細書で説明し、例示してきたが、本開示は、その目的のために選択された材料および手順の特定の組合せに限定されるものではないと理解される。かかる詳細の多数の変形が、当業者であれば理解されるように、暗に含まれ得る。本明細書および例は、例示的なものに過ぎないと考えられ、本開示の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって指示されることが意図される。本願で参照されたすべての参考文献、特許、および特許出願は、これらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】