(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】抗Siglec-8抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240216BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240216BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240216BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240216BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240216BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240216BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240216BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240216BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240216BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240216BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240216BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240216BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P37/08
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P11/06
A61P19/02
A61K39/395 D
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/26
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553279
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 US2022070927
(87)【国際公開番号】W WO2022187834
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516166030
【氏名又は名称】アラコス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】トマセヴィック, ネナド
(72)【発明者】
【氏名】ベビントン, クリストファー ロバート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC04
4C076CC07
4C076DD23
4C076DD42
4C076DD51
4C076EE23
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA45
(57)【要約】
本開示は、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む製剤、及びそれに関する製品を提供する。いくつかの実施形態では、製剤は、アルギニン、スクシナート、塩化ナトリウム、及びポリソルベートをさらに含む。本開示の特定の態様は、(a)ヒトSiglec-8に結合する抗体を約5mg/mLから約15mg/mLの濃度で;(b)アルギニンを約50mMから約200mMの濃度で;(c)スクシナートを約5mMから約50mMの濃度で;(d)塩化ナトリウムを約40mMから約150mMの濃度で;及び(e)ポリソルベートを約0.002%から約0.05%の濃度で含み、約5.0から約7.0のpH(例えば、約6.0のpH)を有する製剤(例えば、液体製剤)に関する。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒトSiglec-8に結合する抗体を約5mg/mLから約15mg/mLの濃度で;(b)アルギニンを約50mMから約200mMの濃度で;(c)スクシナートを約5mMから約50mMの濃度で;(d)塩化ナトリウムを約40mMから約150mMの濃度で;及び(e)ポリソルベートを約0.002%から約0.05%の濃度で含む液体製剤であって、前記抗体は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、(1)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1;配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む、前記製剤。
【請求項2】
前記抗体は、約15mg/mLの濃度である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
アルギニンを約100mMから約200mMの濃度で含む、請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
アルギニンを約100mMから約150mMの濃度で含む、請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
アルギニンを約125mMの濃度で含む、請求項1または請求項2に記載の製剤。
【請求項6】
前記アルギニンは、アルギニンHCl塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
スクシナートを約10mMから約50mMの濃度で含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
スクシナートを約10mMから約30mMの濃度で含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
スクシナートを約20mMの濃度で含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記スクシナートは、コハク酸ナトリウム塩である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項11】
塩化ナトリウムを約50mMから約130mMの濃度で含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
塩化ナトリウムを約75mMから約100mMの濃度で含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
塩化ナトリウムを約80mMの濃度で含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
ポリソルベートを約0.01%から約0.05%の濃度で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
ポリソルベートを約0.025%の濃度で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
前記ポリソルベートは、ポリソルベート-80である、請求項1~15のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
前記製剤は、約5.0から約7.0のpHを有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項18】
前記製剤は、約6.0のpHを有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項19】
(a)前記抗体を15mg/mLの濃度で;(b)アルギニンを125mMの濃度で;(c)スクシナートを20mMの濃度で;(d)塩化ナトリウムを80mMの濃度で;及び(e)ポリソルベートを0.025%の濃度で含み、前記製剤のpHは6.0である、請求項1に記載の製剤。
【請求項20】
サイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によって小さな抗体オリゴマーの存在量により測定される場合、凍結融解後、前記製剤中の前記抗体の5%未満が凝集する、請求項1~19のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項21】
サイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によって小さな抗体オリゴマーの存在量により測定される場合、5回の凍結融解後、前記製剤中の前記抗体の5%未満が凝集する、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
サイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によって小さな抗体オリゴマーの存在量により測定される場合、800rpmでの一晩の振盪後、前記製剤中の前記抗体の5%未満が凝集する、請求項1~21のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項23】
紫外可視分光測定によって測定される場合、凍結融解後、前記製剤は、参照標準のA
400nmの約150%未満の400nmにおける吸光度(A
400nm)を有する、請求項1~22のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項24】
紫外可視分光測定によって測定される場合、5回の凍結融解後、前記製剤は、約0.1未満の400nmにおける吸光度(A
400nm)を有する、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
紫外可視分光測定によって測定される場合、800rpmでの一晩の振盪後、前記製剤は、約0.1未満の400nmにおける吸光度(A
400nm)を有する、請求項1~24のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項26】
前記抗体は、Fc領域と、前記Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、前記製剤中の前記抗体の前記N-グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満がフコース残基を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項27】
前記組成物中の前記抗体の前記N-グリコシド結合型炭水化物鎖のいずれもフコース残基を実質的に含まない、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
前記抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び/または配列番号8もしくは9から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項29】
前記抗体は、ヒトIgGのFc領域を含む重鎖Fc領域を含む、請求項28に記載の製剤。
【請求項30】
前記ヒトIgGのFc領域は、ヒトIgG1のFc領域を含む、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
前記ヒトIgG1のFc領域は、非フコシル化されている、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
前記ヒトIgGのFc領域は、ヒトIgG4のFc領域を含む、請求項29に記載の製剤。
【請求項33】
前記ヒトIgG4のFc領域は、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基はKabatにおけるようなEUインデックスに従って番号付けされる、請求項32に記載の製剤。
【請求項34】
前記抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている、請求項29~33のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項35】
前記抗体は、前記Fc領域にADCC活性を改善する少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項34に記載の製剤。
【請求項36】
前記抗体の前記重鎖の少なくとも1つまたは2つは、非フコシル化されている、請求項29~35のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項37】
前記抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、及び/または配列番号20もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項38】
前記抗体は、モノクローナル抗体である、請求項1~37のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか1項に記載の製剤を封入した容器を含む製品。
【請求項40】
前記容器は、ガラスバイアルである、請求項39に記載の製品。
【請求項41】
前記製剤を静脈内に投与することに関する説明書をさらに含む、請求項39または請求項40に記載の製品。
【請求項42】
前記製剤を皮下に投与することに関する説明書をさらに含む、請求項39または請求項40に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月3日に出願された米国仮出願第63/156,121号に対する優先権を主張するものであり、その開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物に関する内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式(CRF)(ファイル名:701712000840SEQLIST.TXT、記録日:2022年2月25日、サイズ:32,868バイト)。
【0003】
本開示は、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む製剤及び/または製品に関する。
【背景技術】
【0004】
Siglec(シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン)は、主に白血球に見られる1回膜貫通細胞表面タンパク質であり、これは、細胞表面複合多糖に結合したシアル酸に対する特異性を特徴とする。Siglecファミリーは、哺乳動物に見られる少なくとも15のメンバーを含む(Pillai et al.,Annu Rev Immunol.,2012,30:357-392)。これらのメンバーとして、シアロアドヘシオン(Siglec-1)、CD22(Siglec-2)、CD33(Siglec-3)、ミエリン関連糖タンパク質(Siglec-4)、Siglec-5、OBBP1(Siglec-6)、AIRM1(Siglec-7)、SAF-2(Siglec-8)、及びCD329(Siglec-9)が挙げられる。ヒトで発現するが、マウスでは発現しないメンバーであるSiglec-8は、新しいヒト好酸球タンパク質を特定する一環として最初に発見された。好酸球による発現に加えて、マスト細胞及び好塩基球によっても発現される。Siglec-8は、硫酸化グリカン、すなわち、6’-スルホ-シアリルルイスXまたは6’-スルホ-シアリル-N-アセチル-S-ラクトサミンを認識し、マスト細胞の働きを抑制することが示されている細胞内免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)ドメインを含む。
【0005】
マスト細胞とともに、好酸球は、特定の組織部位での感染を抑制するなど、有益な機能的役割を果たす炎症反応を促進することができる。炎症反応中、好酸球のアポトーシスは、IL-3及びGM-CSFなどの生存促進サイトカインの活性により阻害される可能性がある。しかしながら、アポトーシスによって速やかに除去されない活性化好酸球の増加は、既に炎症を起こしている部位において好酸球顆粒タンパク質の放出をもたらすことがあり、これが、組織を損傷させ、炎症をさらに悪化させる可能性がある。チャーグシュトラウス症候群、関節リウマチ、アレルギー性喘息など、いくつかの疾患が好酸球の活性化に関連していることが示されている(Wechsler et al.,J Allergy Clin Immunol.,2012,130(3):563-71)。現在、好酸球及びマスト細胞の活動などの炎症に関与する免疫細胞の活動を制御できる治療法が必要とされている。
Siglec-8に結合するヒト化抗体が開発され、現在、前臨床及び臨床試験段階である。例えば、米国特許第9,546,215号を参照。したがって、そのような抗体の保存、輸送、及び投与を可能にすると同時に安定に維持し、凝集を予防する製剤が依然として必要とされている。
特許出願、特許公報、及び科学的文献を含む、本明細書に引用される全ての参照文献は、各個々の参照文献が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9,546,215号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Pillai et al.,Annu Rev Immunol.,2012,30:357-392
【非特許文献2】Wechsler et al.,J Allergy Clin Immunol.,2012,130(3):563-71
【発明の概要】
【0008】
このような要求及びその他の要求を満たすため、本開示は、とりわけ、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む製剤に関する。有利にも、こうした製剤は、向上した安定性を提供し、例えば、撹拌及び/または凍結融解による抗体のオリゴマー化及び凝集を予防する。
【0009】
したがって、本開示の特定の態様は、(a)ヒトSiglec-8に結合する抗体を約5mg/mLから約15mg/mLの濃度で;(b)アルギニンを約50mMから約200mMの濃度で;(c)スクシナートを約5mMから約50mMの濃度で;(d)塩化ナトリウムを約40mMから約150mMの濃度で;及び(e)ポリソルベートを約0.002%から約0.05%の濃度で含み、約5.0から約7.0のpH(例えば、約6.0のpH)を有する製剤(例えば、液体製剤)に関する。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、(1)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体は、約15mg/mLの濃度である。
【0011】
いくつかの実施形態では、製剤は、アルギニンを、例えば、約100mMから約200mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、製剤は、アルギニンを約100mMから約150mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、製剤は、アルギニンを約125mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、アルギニンは、アルギニンHCl塩である。
【0012】
いくつかの実施形態では、製剤は、スクシナートを、例えば、約10mMから約50mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、製剤は、スクシナートを約10mMから約30mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、製剤は、スクシナートを約20mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、スクシナートは、コハク酸ナトリウム塩である。
【0013】
いくつかの実施形態では、製剤は、塩化ナトリウムを、例えば、約50mMから約130mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、製剤は、塩化ナトリウムを約75mMから約100mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、製剤は、塩化ナトリウムを約80mMの濃度で含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、製剤は、ポリソルベートを、例えば、約0.01%から約0.05%の濃度で含む。いくつかの実施形態では、製剤は、ポリソルベートを約0.025%の濃度で含む。いくつかの実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート-80である。
【0015】
いくつかの実施形態では、製剤は、(a)抗体を15mg/mLの濃度で;(b)アルギニンを125mMの濃度で;(c)スクシナートを20mMの濃度で;(d)塩化ナトリウムを80mMの濃度で;及び(e)ポリソルベートを0.025%の濃度で含み、製剤のpHは6.0である。
【0016】
いくつかの実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によって小さな抗体オリゴマーの存在量により測定される場合、凍結融解後、製剤中の抗体の5%未満が凝集する。いくつかの実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によって小さな抗体オリゴマーの存在量により測定される場合、5回の凍結融解後、製剤中の抗体の5%未満が凝集する。いくつかの実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によって小さな抗体オリゴマーの存在量により測定される場合、800rpmでの一晩の振盪後、製剤中の抗体の5%未満が凝集する。いくつかの実施形態では、紫外可視分光測定によって測定される場合、凍結融解後、製剤は、参照標準のA400nmの約150%未満の400nmにおける吸光度(A400nm)を有する。いくつかの実施形態では、紫外可視分光測定によって測定される場合、5回の凍結融解後、製剤は、約0.1未満の400nmにおける吸光度(A400nm)を有する。いくつかの実施形態では、紫外可視分光測定によって測定される場合、800rpmでの一晩の振盪後、製剤は、約0.1未満の400nmにおける吸光度(A400nm)を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、製剤中の抗体のN-グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満がフコース残基を含む。いくつかの実施形態では、組成物中の抗体のN-グリコシド結合型炭水化物鎖のいずれもフコース残基を実質的に含まない。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び/または配列番号8もしくは9から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgGのFc領域を含む重鎖Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgGのFc領域は、ヒトIgG1を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgGのFc領域は、ヒトIgG4を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、及び/または配列番号20もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(a)(1)配列番号10のアミノ酸配列を含むHC-FR1;(2)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(3)配列番号11のアミノ酸配列を含むHC-FR2;(4)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(5)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-FR3;(6)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3;及び(7)配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-FR4を含む重鎖可変領域;及び/または(b)(1)配列番号14のアミノ酸配列を含むLC-FR1;(2)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(3)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-FR2;(4)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2;(5)配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-FR3;(6)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3;及び(7)配列番号18のアミノ酸配列を含むLC-FR4を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(a)(1)配列番号10のアミノ酸配列を含むHC-FR1;(2)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(3)配列番号11のアミノ酸配列を含むHC-FR2;(4)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(5)配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-FR3;(6)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3;及び(7)配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-FR4を含む重鎖可変領域;及び/または(b)(1)配列番号14のアミノ酸配列を含むLC-FR1;(2)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(3)配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-FR2;(4)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2;(5)配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-FR3;(6)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3;及び(7)配列番号18のアミノ酸配列を含むLC-FR4を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc領域にADCC活性を改善する少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖の少なくとも1つまたは2つは、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、組成物中の抗体のN-グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満がフコース残基を含む。いくつかの実施形態では、組成物中の抗体のN-グリコシド結合型炭水化物鎖のいずれもフコース残基を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgGのFc領域を含む重鎖Fc領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgGのFc領域は、ヒトIgG1のFc領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1のFc領域は、非フコシル化されている。いくつかの実施形態では、ヒトIgGのFc領域は、ヒトIgG4のFc領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG4のFc領域は、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基はKabatにおけるようなEUインデックスに従って番号付けされる。いくつかの実施形態では、抗体は、血液好酸球を枯渇させ、及び/またはマスト細胞活性化を阻害する。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0020】
別の態様では、本開示は、任意の上記の実施形態による製剤を封入した容器を含む製品またはキットを提供する。いくつかの実施形態では、容器はガラスバイアルである。いくつかの実施形態では、製品またはキットは、製剤を(例えば、静脈内注入により)静脈内または(例えば、皮下注射により)皮下に投与することに関する説明書をさらに含む。
【0021】
本明細書に記載の種々の実施形態の特性のうちの1つ、一部、または全てを組み合わせて、本開示の他の実施形態が形成され得るということが理解されるものとする。本開示のこれら及び他の態様は、当業者には明らかとなるであろう。本開示のこれら及び他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】ELISAによって測定した、0時点における示した抗Siglec-8抗体製剤の一部としての抗体HEKAのSiglec-8細胞外ドメイン(ECD)との結合を示す。各製剤のEC50値が示される。
【
図1B】ELISAによって測定した、0時点における示した抗Siglec-8抗体製剤の一部としての抗体HEKFのSiglec-8細胞外ドメイン(ECD)との結合を示す。各製剤のEC50値が示される。
【
図1C】ELISAによって測定した、37℃での1週間後における示した抗Siglec-8抗体製剤の一部としての抗体HEKAのSiglec-8細胞外ドメイン(ECD)との結合を示す。各製剤のEC50値が示される。
【
図1D】ELISAによって測定した、37℃での1週間後における示した抗Siglec-8抗体製剤の一部としての抗体HEKFのSiglec-8細胞外ドメイン(ECD)との結合を示す。各製剤のEC50値が示される。
【
図2A】示した抗Siglec-8抗体製剤の紫外可視分光分析の結果を示す。各製剤を4℃での2週間後(製剤#.4)、25℃での2週間後(製剤#.25)、37℃での2週間後(製剤#.37)、または1サイクル(製剤#.FT)もしくは5サイクル(製剤#.FT5×)の凍結融解後にアッセイした。抗体HEKAの400nmにおける吸光度値(A400nm)が示される。
【
図2B】示した抗Siglec-8抗体製剤の紫外可視分光分析の結果を示す。各製剤を4℃での2週間後(製剤#.4)、25℃での2週間後(製剤#.25)、37℃での2週間後(製剤#.37)、または1サイクル(製剤#.FT)もしくは5サイクル(製剤#.FT5×)の凍結融解後にアッセイした。抗体HEKFの400nmにおける吸光度値(A400nm)が示される。
【
図3A】抗Siglec-8抗体製剤のサイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)分析の結果を示す。分子量標準物質、参照HEKA及びHEKF抗体、及びデキストランのSEC-HPLCピークを示す。
【
図3B】抗Siglec-8抗体製剤のサイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)分析の結果を示す。参照と比較した、示した温度における2週間の保存後のpH5緩衝液中の抗体HEKA製剤(表Aを参照)のSEC-HPLCプロフィールを示す。抗体の小さなオリゴマーを示すより小さなピークが
図3Bにおいて分類される。
【
図3C】抗Siglec-8抗体製剤のサイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)分析の結果を示す。参照と比較した、示した温度における2週間の保存後のpH5緩衝液中の抗体HEKF製剤(表Aを参照)のSEC-HPLCプロフィールを示す。抗体の小さなオリゴマーを示すより小さなピークが
図3Cにおいて分類される。
【
図4A】2週間後にサイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によってアッセイした示した抗Siglec-8抗体製剤中で形成された抗体オリゴマーのパーセンテージを示す。抗体HEKAの結果を示す。各製剤を4℃での2週間後(製剤#.4)、25℃での2週間後(製剤#.25)、37℃での2週間後(製剤#.37)、または1サイクル(製剤#.FT)もしくは5サイクル(製剤#.FT5×)の凍結融解後にアッセイした。
【
図4B】2週間後にサイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によってアッセイした示した抗Siglec-8抗体製剤中で形成された抗体オリゴマーのパーセンテージを示す。抗体HEKFの結果を示す。各製剤を4℃での2週間後(製剤#.4)、25℃での2週間後(製剤#.25)、37℃での2週間後(製剤#.37)、または1サイクル(製剤#.FT)もしくは5サイクル(製剤#.FT5×)の凍結融解後にアッセイした。
【
図5A】示した製剤中における示した温度での保存後のHEKA及びHEKF抗体のSDS-PAGE分析の結果を示す。0時点におけるHEKA及びHEKFの還元及び非還元SDS-PAGE分析の結果を示す。
【
図5B】示した製剤中における示した温度での保存後のHEKA抗体のSDS-PAGE分析の結果を示す。1週間後のHEKAの還元/非還元SDS-PAGE分析の結果を示す。
【
図5C】示した製剤中における示した温度での保存後のHEKF抗体のSDS-PAGE分析の結果を示す。1週間後のHEKFの還元/非還元SDS-PAGE分析の結果を示す。
【
図5D】示した製剤中における示した温度での保存後のHEKA抗体のSDS-PAGE分析の結果を示す。2週間後のHEKAの還元/非還元SDS-PAGE分析の結果を示す。
【
図5E】示した製剤中における示した温度での保存後のHEKF抗体のSDS-PAGE分析の結果を示す。2週間後のHEKFの還元/非還元SDS-PAGE分析の結果を示す。
【
図6A】示した抗Siglec-8抗体製剤中のアルギニン濃度の影響の紫外可視分光分析の結果を示す。1サイクル(中央の棒)または5サイクル(最も右の棒)の凍結融解後の(A
400nmを測定することによって)各製剤をアッセイし、凍結融解に供していない対応する抗体製剤(最も左の棒)と比較した。抗体HEKAの結果を示す。
【
図6B】示した抗Siglec-8抗体製剤中のアルギニン濃度の影響の紫外可視分光分析の結果を示す。1サイクル(中央の棒)または5サイクル(最も右の棒)の凍結融解後の(A
400nmを測定することによって)各製剤をアッセイし、凍結融解に供していない対応する抗体製剤(最も左の棒)と比較した。抗体HEKFの結果を示す。
【
図7A】抗Siglec-8抗体製剤のサイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)分析の結果を示す。参照と比較した、1または5回の凍結融解サイクル後のアルギニンを含まない製剤(表Eの緩衝液1を参照)中の抗体HEKA製剤のSEC-HPLCプロフィールを示す。抗体の小さなオリゴマーを示すより小さなピークが分類される。
【
図7B】抗Siglec-8抗体製剤のサイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)分析の結果を示す。参照と比較した、1または5回の凍結融解サイクル後のアルギニンを含まない製剤(表Eの緩衝液1を参照)中の抗体HEKF製剤のSEC-HPLCプロフィールを含む。抗体の小さなオリゴマーを示すより小さなピークが分類される。
【
図8A】抗Siglec-8抗体製剤のサイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)分析の結果を示す。凍結融解に供していない抗体製剤と比較した、1回(製剤#.1 FT)または5回(製剤#.5×)の凍結融解サイクル後の抗体HEKAを含む示した製剤のSEC-HPLCによって測定した小さなオリゴマーのパーセンテージを示す。
【
図8B】抗Siglec-8抗体製剤のサイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)分析の結果を示す。凍結融解に供していない抗体製剤と比較した、1回(#.1 FT)または5回(#.5×)の凍結融解サイクル後の抗体HEKFを含む示した製剤のSEC-HPLCによって測定した小さなオリゴマーのパーセンテージを示す。
【
図9】2日間(左の棒)または4日間(右の棒)の撹拌後の示した濃度のポリソルベート-80を含むHEKA抗体製剤の紫外可視分光分析の結果(A
400nm)を示す。
【
図10】SEC-HPLCによって測定した、示した濃度のポリソルベート-80を含むHEKA抗体製剤のオリゴマー化の割合を示す。
【
図11】400nmにおける吸光度によって測定した凍結融解後のHEKA抗体の凝集に対する製剤組成の影響を示す。
【
図12A】400nmにおける吸光度によって測定した、1日の800rpmでの撹拌後のHEKA抗体の凝集に対する製剤組成の影響を示す。製剤は表Gに記載されている。
【
図12B】SEC-HPLCによって測定した、1日の800rpmでの撹拌後のHEKA抗体のオリゴマー化に対する製剤組成の影響を示す。製剤は表Gに記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I.定義
本開示は、特定の組成物または生体系に限定されず、言うまでもなく変化し得る点は理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、あくまで特定の実施形態を説明する目的のものに過ぎず、これを限定しようとするものではない点も理解されるべきである。本明細書及び付属の請求項で使用する単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容による明確な別段の定めがない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のそのような分子の組み合わせなどを任意に含む。
【0024】
本明細書に使用される「約」という用語は、本技術分野の当業者であれば容易に理解している、それぞれの値に対する通例的な誤差範囲を指す。本明細書で「約」の値またはパラメータを参照することは、その値またはパラメータをそれ自体で対象とする実施形態を含む(かつ記載する)。
【0025】
本開示の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0026】
「抗体」という用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、ポリエピトープ性(polyepitopic)特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、及び一本鎖分子、ならびに抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、及びFv)が含まれる。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において「抗体」と交換可能に使用される。
【0027】
塩基性4鎖抗体単位は、2つの同一軽(L)鎖及び2つの同一重(H)鎖で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、5つの基本的なヘテロ四量体ユニットと併せて、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドからなり、10個の抗原結合部位を含有しているが、一方でIgA抗体は、2~5個の基本的な4本鎖ユニットから構成されており、このユニットは、重合してJ鎖と組み合わさった多価集合体を形成することができる。IgGの場合、4鎖単位は、一般に約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つのジスルフィド共有結合によってH鎖に連結されており、一方で、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて、1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結されている。各H鎖及びL鎖はまた、一定間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、これに続いて、α及びγ鎖のそれぞれでは3個の定常ドメイン(CH)、ならびにμ及びεアイソタイプでは4個のCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、続いてその反対側の端部に定常ドメインを有する。VLはVHと整列し、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖の可変ドメインの間に界面を形成すると考えられる。VH及びVLの組合せが、共に単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Edition,Daniel P.Sties,Abba I.Terr and Tristram G.Parsolw(eds),Appleton & Lange,Norwalk,CT,1994の71ページ及び第6章を参照されたい。
【0028】
脊椎動物種由来のL鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κとλと呼ばれる2つの明確に異なる型のいずれかに割り当てることができる。重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの5つのクラスが存在し、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと表記される重鎖を有する。γ及びαクラスは、CH配列及び機能における比較的わずかな相違に基づいてさらにサブクラスに分類され、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。IgG1抗体は、複数の多型変異体として存在し(Jefferis and Lefranc 2009.mAbs Vol 1 Issue 4 1-7に概説されている)、これらのいずれもが本開示での使用に適している。ヒト集団における一般的なアロタイプ変異体は、文字a、f、n、zで表記されるものである。
【0029】
「単離された」抗体は、その産生環境(例えば、天然または組換え)の成分から特定、分離、及び/または回収されたものである。いくつかの実施形態では、単離されたポリペプチドは、その産生環境からの全ての他の成分との会合を含まない。組換え形質移入細胞に由来する成分などの、その生産環境の混入成分は、一般的に、抗体の研究、診断または治療用途を妨げるであろう物質であり、これには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、(1)例えば、ローリー法により決定して抗体の95重量%超まで、及びいくつかの実施形態では、99重量%超まで、(1)スピニングカップシークエネーターを使用して少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、または(3)クマシー・ブルー、もしくは銀染色を使用する非還元もしくは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離抗体には、組み換え細胞内でインサイツの抗体が含まれるが、これは、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在していないためである。しかしながら、通常、単離ポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0030】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用されるとき、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体を指す、すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、微量で存在し得る可能性のある自然に発生する変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除き、同一である。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖及び/または軽鎖にC末端切断を有する。例えば、1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基が、重鎖及び/または軽鎖のC末端で切断される。いくつかの実施形態では、C末端切断は、重鎖からC末端リシンを除去する。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖及び/または軽鎖にN末端切断を有する。例えば、1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基が、重鎖及び/または軽鎖のN末端で切断される。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を標的とする。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は高度に特異的であり、複数の抗原部位を標的とする(二重特異性抗体または多重特異性抗体など)。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体の集団から得られたものであるという抗体の特性を示し、いずれかの特定の方法による抗体の産生を要するものとして理解されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ技術、及び、ヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全体を有する動物でヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術を含む、様々な技術によって作製することができる。
【0031】
「裸の抗体」という用語は、細胞傷害性部分または放射標識に結合されていない抗体を指す。
【0032】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」、または「全抗体」という用語は、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態にある抗体を指すように、互換的に使用される。具体的には、全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒトの天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。場合によっては、無傷の抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
【0033】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部、インタクト抗体の抗原結合領域及び/または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;直線状抗体(米国.米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995)を参照のこと);一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成される多重特異抗体が挙げられる。
【0034】
抗体のパパイン消化により、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一な抗原結合フラグメントと、容易に結晶化する能力を反映して表記される残りの「Fc」フラグメントとが得られた。Fab断片は、L鎖全体に加えて、H鎖の可変領域ドメイン(VH)、及び1本の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関しては一価であり、すなわち、それは単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理によって、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合されたFab断片におおむね相当し、依然として抗原を架橋することができる単一の大きなF(ab’)2断片が得られる。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体のヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む幾つかの追加の残基を有する点でFab断片と異なる。Fab’-SHは、本明細書において、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離のチオール基を有するFab’の呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、Fab’断片の間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片のその他の化学的結合も公知である。
【0035】
Fc断片は、ジスルフィド結合により互いに保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列によって決まり、この領域は、特定の種類の細胞上に見出されるFc受容体(FcR)によっても認識される。
【0036】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体フラグメントである。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメイン及び1つの軽鎖可変領域ドメインが緊密に非共有結合的に会合した二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗体に抗原結合特異性を付与する、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえも、結合部位全体よりも低い親和性であるが、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0037】
「sFv」または「scFv」とも略される「一本鎖Fv」は、接続されて単一のポリペプチド鎖になるVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。いくつかの実施形態では、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能とする。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照のこと。
【0038】
本開示の抗体の「機能性フラグメント」は、インタクトな抗体の一部分を含み、これには、概して、インタクトな抗体の抗原結合領域若しくは可変領域、またはFcR結合能力を保持するか若しくは修飾されたFcR結合能力を有する抗体のFv領域が含まれる。抗体フラグメントの例としては、線形抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0039】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一か、またはそれと相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一か、またはそれと相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)に加えて、そのような抗体のフラグメントが所望の生物活性を示す限り、そのフラグメントを特に含む(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984)を参照のこと)。本明細書における関心対象のキメラ抗体としては、抗体の抗原結合領域が、例えば、関心対象の抗原でマカクサルを免疫することにより生成される抗体に由来するPRIMATIZED(登録商標)抗体が挙げられる。本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0040】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、非ヒト種、例えば、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類のHVR由来の所望の特異性、親和性、及び/または能力を有する残基(ドナー抗体)で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基が、相当する非ヒト残基で置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含み得る。これらの改変は、結合親和性等の抗体性能をさらに改良するために行うことができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、ここで、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものに対応するが、FR領域には、結合親和性、異性体化、免疫原性等の抗体の性能を向上させる1つ以上の個々のFR残基置換が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、H鎖で6以下、L鎖で3以下である。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常はヒト免疫グロブリンの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994)、ならびに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照のこと。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、単一の抗原部位を標的とする。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、複数の抗原部位を標的とする。代替のヒト化方法が、米国特許第7,981,843号及び米国特許出願公開第2006/0134098号に記載されている。
【0041】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」及び「VL」と呼ばれる場合がある。これらのドメインは、一般に(同じクラスの他の抗体と比較して)抗体の最可変部分であり、抗原結合部位を含む。
【0042】
「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、本明細書で使用される場合、配列において超可変である、及び/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、このうち3つがVHにあり(H1、H2、H3)、3つがVLにある(L1、L2、L3)。天然抗体では、H3及びL3は、6つのHVRの中で最大の多様性を示し、特にH3は、抗体に好適な特異性を与えることにおいて固有の役割を果たすと考えられる(例えば、Xu et al.Immunity 13:37-45(2000);Johnson and Wu in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003))を参照)。実際に、重鎖のみからなる天然のラクダ抗体は、軽鎖の不在下において機能性であり、かつ安定である。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993)及びSheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照のこと。
【0043】
多くのHVR描写が用いられており、これらは本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列の多様性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,MD.(1991))。ChothiaのHVRは、その代わりに構造的ループの位置を指す(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。「接触」HVRは、使用可能な複合結晶構造の解析に基づく。これらのHVRのそれぞれに由来する残基を以下に示す。
ループ Kabat Chothia Contact
L1 L24-L34 L26-L34 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L46-L55
L3 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H32 H30-H35B(Kabat番号付け)
H1 H31-H35 H26-H32 H30-H35(Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H53-H56 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H93-H101
【0044】
別途指示のない限り、可変ドメインの残基(HVR残基及びフレームワーク領域の残基)は、前出のKabat et al.に従って番号付けされる。
【0045】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書中で定義するHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0046】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という表現、及びそれらの変形形態は、Kabatら(上記)における抗体の編成において重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用されている番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用すると、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインには、H2の残基52の後に単一のアミノ酸インサート(Kabatによる残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)が含まれ得る。残基のKabat番号付けは、特定の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによって番号付けされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
【0047】
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンフレームワーク由来またはヒトコンセンサスフレームワーク由来のVLフレームワークまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、または既存のアミノ酸配列変化を含み得る。いくつかの実施形態において、既存のアミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。
【0048】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一率(%)」は、保存的置換を配列同一性の一部として考慮せず、最大の配列同一率(%)が得られるように配列同士を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後の参照ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同じである候補配列内のアミノ酸残基の割合(%)として定義される。アミノ酸配列同一率(%)を決定する目的でのアライメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用して、当該技術分野の技能の範囲内である種々の方法で実現することができる。当業者であれば、比較される配列の完全長にわたって最大のアライメントを得るために必要とされるあらゆるアルゴリズムを含む、配列同士を整列するために適切なパラメータを決定することができる。例えば、特定のアミノ酸配列Bに対する、アミノ酸配列Bとの、またはアミノ酸配列Bと対比した、特定のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一率(%)(あるいは、特定のアミノ酸配列Bに対して、アミノ酸配列Bと、またはアミノ酸配列Bと対比して特定のアミノ酸配列同一率(%)を有する、または含む、特定のアミノ酸配列Aと表現することもできる)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
式中、Xは、配列によってそのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解される。
【0049】
特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに「結合する」、「特異的に結合する」、または「特異的である」抗体は、他のいずれのポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、その特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する抗体である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)の、無関係な非Siglec-8ポリペプチドへの結合は、当該技術分野では周知の方法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって測定されるSiglec-8への抗体結合の約10%未満である。いくつかの実施形態では、Siglec-8に結合する抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦2nM、≦1nM、≦0.7nM、≦0.6nM、≦0.5nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8 M~10-13 M、例えば、10-9 M~10-13 M)の解離定数(Kd)を有する。
【0050】
「抗Siglec-8抗体」または「ヒトSiglec-8に結合する抗体」という用語は、他のいずれのポリペプチドまたは無関係の非Siglec-8ポリペプチドのエピトープに実質的に結合することなくヒトSiglec-8のポリペプチドまたはエピトープに結合する抗体を指す。
【0051】
本明細書で使用する「Siglec-8」という用語は、ヒトSiglec-8タンパク質を指す。この用語はまた、スプライス変異体または対立遺伝子変異体を含む、Siglec-8の天然に存在する変異体も含む。例示的なヒトSiglec-8のアミノ酸配列を、配列番号25に示す。別の例示的なヒトSiglec-8のアミノ酸配列を、配列番号26に示す。いくつかの実施形態では、ヒトSiglec-8タンパク質は、免疫グロブリンのFc領域に融合されたヒトSiglec-8の細胞外ドメインを含む。
ヒトSiglec-8のアミノ酸配列
GYLLQVQELVTVQEGLCVHVPCSFSYPQDGWTDSDPVHGYWFRAGDRPYQDAPVATNNPDREVQAETQGRFQLLGDIWSNDCSLSIRDARKRDKGSYFFRLERGSMKWSYKSQLNYKTKQLSVFVTALTHRPDILILGTLESGHSRNLTCSVPWACKQGTPPMISWIGASVSSPGPTTARSSVLTLTPKPQDHGTSLTCQVTLPGTGVTTTSTVRLDVSYPPWNLTMTVFQGDATASTALGNGSSLSVLEGQSLRLVCAVNSNPPARLSWTRGSLTLCPSRSSNPGLLELPRVHVRDEGEFTCRAQNAQGSQHISLSLSLQNEGTGTSRPVSQVTLAAVGGAGATALAFLSFCIIFIIVRSCRKKSARPAAGVGDTGMEDAKAIRGSASQGPLTESWKDGNPLKKPPPAVAPSSGEEGELHYATLSFHKVKPQDPQGQEATDSEYSEIKIHKRETAETQACLRNHNPSSKEVRG(配列番号25)
ヒトSiglec-8のアミノ酸配列
GYLLQVQELVTVQEGLCVHVPCSFSYPQDGWTDSDPVHGYWFRAGDRPYQDAPVATNNPDREVQAETQGRFQLLGDIWSNDCSLSIRDARKRDKGSYFFRLERGSMKWSYKSQLNYKTKQLSVFVTALTHRPDILILGTLESGHPRNLTCSVPWACKQGTPPMISWIGASVSSPGPTTARSSVLTLTPKPQDHGTSLTCQVTLPGTGVTTTSTVRLDVSYPPWNLTMTVFQGDATASTALGNGSSLSVLEGQSLRLVCAVNSNPPARLSWTRGSLTLCPSRSSNPGLLELPRVHVRDEGEFTCRAQNAQGSQHISLSLSLQNEGTGTSRPVSQVTLAAVGGAGATALAFLSFCIIFIIVRSCRKKSARPAAGVGDTGMEDAKAIRGSASQGPLTESWKDGNPLKKPPPAVAPSSGEEGELHYATLSFHKVKPQDPQGQEATDSEYSEIKIHKRETAETQACLRNHNPSSKEVRG(配列番号26)
【0052】
「アポトーシスを誘導する」または「アポトーシス性」である抗体とは、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞の断片化、及び/または膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成などの標準的なアポトーシスアッセイによって測定されるプログラムされた細胞死を誘導するような抗体である。例えば、本開示の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)のアポトーシス活性は、細胞をアネキシンVで染色することによって示すことができる。
【0053】
抗体「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異型Fc領域)に起因する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプによって異なる。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞活性化が挙げられる。
【0054】
「抗体依存性細胞傷害作用」(Antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)または「ADCC」とは、分泌されたIgが特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合することで、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が、抗原を保持する標的細胞に特異的に結合し、その後、標的細胞を細胞毒素で殺傷する、細胞傷害性の1つの形態である。抗体は、細胞傷害性細胞で「武装」し、この機序により標的細胞を死滅させるために必要である。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFc発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、ADCCを増強する。対象とする分子のADCC活性を評価するには、例えば米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるようなインビトロADCCアッセイを行うことができる。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。上記に代えて、または上記に加えて、目的とする分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,PNAS USA 95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルで評価することもできる。ADCC活性及び他の抗体特性を変化させる他のFc変異体としては、Ghetie et al.,Nat Biotech.15:637-40,1997;Duncan et al,Nature 332:563-564,1988;Lund et al.,J.Immunol 147:2657-2662,1991;Lund et al,Mol Immunol 29:53-59,1992;Alegre et al,Transplantation 57:1537-1543,1994;Hutchins et al.,Proc Natl.Acad Sci USA 92:11980-11984,1995;Jefferis et al,Immunol Lett.44:111-117,1995;Lund et al.,FASEB J9:115-119,1995;Jefferis et al,Immunol Lett 54:101-104,1996;Lund et al,J Immunol 157:4963-4969,1996;Armour et al.,Eur J Immunol 29:2613-2624,1999;Idusogie et al,J Immunol 164:4178-4184,200;Reddy et al,J Immunol 164:1925-1933,2000;Xu et al.,Cell Immunol 200:16-26,2000;Idusogie et al,J Immunol 166:2571-2575,2001;Shields et al.,J Biol Chem 276:6591-6604,2001;Jefferis et al,Immunol Lett 82:57-65.2002;Presta et al.,Biochem Soc Trans 30:487-490,2002;Lazar et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:4005-4010,2006;米国特許第5,624,821号、同第5,885,573号、同第5,677,425号、同第6,165,745号、同第6,277,375号、同第5,869,046号、同第6,121,022号、同第5,624,821号、同第5,648,260号、同第6,194,551号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,277,375号、同第7,335,742号、及び同第7,317,091号により開示されるものが挙げられる。
【0055】
本明細書における「Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230からそのカルボキシル末端まで広がると定義される。本開示の抗体における使用に好適な天然配列Fc領域としては、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4が挙げられる。組換えIgG4抗体で観察される異種性をなくすために、単一のアミノ酸置換(Kabat番号付けによるS228P;IgG4Proと称される)を導入することができる(例えば、Angal,S.et al.(1993)Mol Immunol 30,105-108を参照)。
【0056】
「非フコシル化」または「フコース欠損」抗体とは、Fc領域に結合した炭水化物構造にフコースが少ないかまたはフコースがないFc領域を含むグリコシル化抗体変異体を指す。いくつかの実施形態では、フコースが減少した、またはフコースがない抗体は、ADCC機能が改善されている。非フコシル化抗体またはフコース欠損抗体は、1つの細胞株で産生された同じ抗体のフコース量と比較して、フコースが減少している。いくつかの実施形態では、本明細書で想到される非フコシル化またはフコース欠損抗体組成物は、組成物中の抗体のFc領域に結合したN結合型グリカンの約50%未満がフコースを含む組成物である。
【0057】
「フコシル化」または「フコシル化された」という用語は、抗体のペプチド骨格に結合したオリゴ糖内のフコース残基の存在を指す。具体的には、フコシル化抗体は、抗体のFc領域、例えばヒトIgG1のFcドメインのAsn297位(Fc領域残基のEU番号付け)に結合したN-結合型オリゴ糖の一方または両方の最も内側のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基にα(1,6)-結合型フコースを含む。Asn297はまた、免疫グロブリンのわずかな配列変動のために、297位のアミノ酸約+3個上流または下流、すなわち294位と300位の間に位置し得る。
【0058】
「フコシル化度」は、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)によって評価されるN-グリコシダーゼF処理抗体組成物中の、当該技術分野では周知の方法によって同定される全オリゴ糖に対するフコシル化オリゴ糖のパーセンテージである。「完全フコシル化抗体」の組成物では、本質的にすべてのオリゴ糖がフコース残基を含む、すなわち、フコシル化されている。いくつかの実施形態では、完全フコシル化抗体の組成物は、少なくとも約90%のフコシル化度を有する。したがって、そのような組成物中の個々の抗体は、一般的には、Fc領域中の2個のN結合型オリゴ糖のそれぞれにフコース残基を含む。逆に、「完全非フコシル化」抗体の組成物では、本質的にどのオリゴ糖もフコシル化されておらず、そのような組成物中の個々の抗体は、Fc領域中の2個のN結合オリゴ糖のいずれにもフコース残基を含まない。いくつかの実施形態では、完全非フコシル化抗体の組成物は、約10%未満のフコシル化度を有する。「部分フコシル化抗体」の組成物では、一部のオリゴ糖のみがフコースを含む。そのような組成物中の個々の抗体は、組成物を構成する本質的にすべての個々の抗体がFc領域のN-結合型オリゴ糖中のフコース残基を欠くわけではなく、本質的にすべての個々の抗体がFc領域の両方のN結合型オリゴ糖にフコース残基を含むわけでもない条件で、Fc領域のN-結合型オリゴ糖のどちらにもフコース残基を含まないか、または一方もしくは両方にフコース残基を含むことができる。一実施形態では、部分フコシル化抗体の組成物は、約10%~約80%(例えば、約50%~約80%、約60%~約80%、または約70%~約80%)のフコシル化度を有する。
【0059】
「結合親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性の相互作用の強度のことを指す。いくつかの実施形態では、Siglec-8(本明細書に記載のSiglec-8-Fc融合タンパク質などの二量体であってもよい)に対する抗体の結合親和性は、一般的に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載のものを含む当該技術分野では周知の一般的な方法によって測定することができる。
【0060】
「結合アビディティー」とは、分子(例えば、抗体)の複数の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性の相互作用の強度のことを指す。
【0061】
本明細書に抗体をコードする「単離された」核酸分子とは、核酸分子が産生される環境中で通常、核酸分子に付随する少なくとも1つの混入核酸分子から同定及び分離された核酸分子である。いくつかの実施形態では、単離核酸は、産生環境に付随するいずれの成分とも結合していない。本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする単離核酸分子は、それが自然界で見出される形態または状況以外での形態である。したがって、単離核酸分子は、細胞内に天然に存在する本明細書のポリペプチド及び抗体をコードする核酸とは区別される。
【0062】
「医薬製剤」(あるいは「製剤」)という用語は、活性成分の生物学的活性を有効とするような形態であり、製剤が投与される個体に許容しえない毒性を示すさらなる成分を含有しない製剤を指す。そのような製剤は、無菌である。
【0063】
本明細書で使用される「担体」は、用いられる投与量及び濃度でそれに曝露されている細胞または哺乳動物に非毒性の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む。多くの場合、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸が含まれる酸化予防剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンが含まれる単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;及び/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用する場合、「治療」または「治療する」という用語は、臨床病理学の過程で処置される個体または細胞の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果としては、疾患進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、及び寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、疾患(例えば、Siglec-8関連疾患または障害)に関連する1つ以上の症状が軽減または消失する場合に個体は効果的に「治療される」。例えば、治療によって疾患に罹患した者の生活の質が向上し、疾患の治療に必要な他の薬の用量が減り、疾患の再発の頻度が減り、疾患の重症度が軽減され、疾患の発症もしくは進行が遅延され、及び/または個体の生存期間が延長される場合、個体は「治療」に成功したとみなされる。
【0065】
本明細書で使用する場合、「~と併せて」または「~と組み合わせて」とは、1つの治療モダリティに加えた別の治療モダリティを指す。したがって、「~と併せて」または「~と組み合わせて」とは、個体への1つの治療モダリティの、他の治療モダリティの投与前、投与中、または投与後の投与のことを指す。
【0066】
本明細書で使用する場合、「予防」または「予防する」という用語は、個体における疾患の発症または再発に対する予防を与えることを含む。個体は、疾患の素因を有するか、疾患に罹患しやすいか、または疾患を発症するリスクがある可能性があるが、まだ疾患を診断されていない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、疾患(例えば、Siglec-8関連疾患または障害)の発症を遅らせるために用いられる。
【0067】
本明細書で使用する場合、疾患(例えば、Siglec-8関連疾患または障害)を発症する「リスクのある」個体は、検出可能な疾患または疾患の症状を有していてもいなくてもよく、本明細書に記載される治療方法の前に、検出可能な疾患または疾患の症状を呈していてもいなくてもよい。「リスクがある」とは、個体が、当該技術分野では周知の疾患の発症と相関する測定可能なパラメータである1つ以上のリスク因子を有することを意味する。これらのリスク因子のうちの1つ以上を有する個体は、これらのリスク因子のうちの1つ以上を有さない個体より、疾患を発症する確率が高い。
【0068】
「有効量」とは、所望または指示される効果(治療的結果または予防的結果を含む)を達成するために必要な、投与量及び期間における少なくとも有効な量を指す。有効量は、1回以上の投与で提供され得る。「治療有効量」は、少なくとも特定の疾患の測定可能な改善をもたらすために必要な最小限の濃度である。本明細書における治療有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重などの因子、ならびに個体における所望の反応を誘発する抗体の能力に応じて変化することもある。治療有効量はまた、治療上有益な効果が抗体のあらゆる毒性または有害作用を上回るものである。「予防有効量」は、必要な投与量及び投与期間において、所望の予防的結果を達成するのに有効な量を指す。典型的であって必ずしもそうではないが、疾患の前または早期段階で予防用量が個体において使用されるため、予防有効量は、治療有効量よりも少なくてもよい。
【0069】
「慢性」投与は、急性の形態に対して、初期の治療効果(活性)を長期間維持するような連続的な医薬(複数可)の投与を指す。「間欠」投与は、中断なく連続的に行うのではなく、むしろ本質的に周期的な治療である。
【0070】
「添付文書」という用語は、治療製品の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、及び/またはかかる治療製品の使用に関する警告を含む、治療製品の市販のパッケージに通例含まれる指示書を指して用いられる。
【0071】
本明細書で使用する場合、「個体」または「対象」は哺乳動物である。治療目的での「個体」は、ヒト、飼育動物及び家畜、ならびに動物園の動物、競技用動物、または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、スナネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどを含む。いくつかの実施形態では、個体または対象は、ヒトである。
【0072】
II.抗Siglec-8抗体製剤
本明細書に記載の任意の抗Siglec-8抗体(例えば、Siglec-8に結合する抗体)を含む製剤(例えば、医薬製剤)が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、製剤は、液体製剤である。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約2℃から約8℃の間で保存される。有利にも、これらの製剤は、安定性を改善し、本開示の抗体の(例えば、撹拌または凍結融解後の)凝集及びオリゴマー化を低減することがわかった。
【0073】
A.抗Siglec-8抗体
本明細書に記載の任意の抗Siglec-8抗体は、本開示の製剤における用途を見出すことができる(例えば、下記セクションDを参照)。いくつかの実施形態では、抗体は、本開示の製剤中に約5mg/mLから約15mg/mLの間、または約10mg/mLから約15mg/mLの間の量または濃度で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、または約15mg/mLで存在する。
【0074】
例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、(1)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、抗体は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を含むHC-FR1;配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1;配列番号11のアミノ酸配列を含むHC-FR2;配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2;配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-FR3;配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3;及び配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-FR4を含む重鎖可変領域と、(1)配列番号14のアミノ酸配列を含むLC-FR1;配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1;配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-FR2;配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2;配列番号16のアミノ酸配列を含むLC-FR3;配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3;及び配列番号18のアミノ酸配列を含むLC-FR4を含む軽鎖可変領域と、を含む。そのような抗体のさらなる説明は、例えば、米国特許第9,546,215号で提供されている。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗体は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を含むHC-FR1;配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1;配列番号11のアミノ酸配列を含むHC-FR2;配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2;配列番号12のアミノ酸配列を含むHC-FR3;配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3;及び配列番号13のアミノ酸配列を含むHC-FR4を含む重鎖可変領域と、(1)配列番号14のアミノ酸配列を含むLC-FR1;配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1;配列番号15のアミノ酸配列を含むLC-FR2;配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2;配列番号17のアミノ酸配列を含むLC-FR3;配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3;及び配列番号18のアミノ酸配列を含むLC-FR4を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号8または配列番号21のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む軽鎖と、を含む。他の実施形態では、抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む軽鎖と、を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、血液好酸球を枯渇させ、マスト細胞活性化を阻害する。
【0079】
一態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、モノクローナル抗体である。一態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、抗体フラグメント(抗原結合フラグメントを含む)、例えば、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、または(Fab’)2 フラグメントである。一態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、抗体フラグメント(抗原結合フラグメントを含む)、例えば、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、または(Fab’)2フラグメントを含む。一態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。一態様では、本明細書に記載の任意の抗Siglec-8抗体は、精製される。
【0080】
いくつかの実施形態では、抗体は、以下に限定されないがヒトIgG1またはヒトIgG4のFc領域を含む、ヒトIgGのFc領域を含む重鎖Fc領域を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、例えば、野生型ヒトFc領域と比較して、1つ以上の変異を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Fc領域は、S228P置換(KabatにおけるようなEUインデックスに従ったアミノ酸残基番号付け)を含むヒトIgG4のFc領域である。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。他の実施形態では、抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。他の実施形態では、抗体は、配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている。
【0084】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体を含む製剤であって、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖を含み、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の約50%未満がフコース残基を含む、製剤が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N-グリコシド結合型炭水化物鎖の約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、または約15%未満がフコース残基を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体を含む製剤であって、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN-グリコシド結合型炭水化物鎖を含み、N-グリコシド結合型炭水化物鎖のいずれもフコース残基を実質的に含まない、製剤が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖の1つまたは2つは、非フコシル化されている。
【0085】
一態様では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗Siglec-8抗体に適した製剤(例えば、液体製剤)であって、重鎖可変領域は、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、及び/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(iii)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、製剤が本明細書で提供される。
【0086】
本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、抗体がヒトSiglec-8に結合する能力を保持するという条件で、任意の適当なフレームワーク可変ドメイン配列を含むことができる。本明細書で使用される場合、重鎖フレームワーク領域は「HC-FR1-FR4」で示され、軽鎖フレームワーク領域は「LC-FR1-FR4」で示される。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号10、11、12及び13の重鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれ、HC-FR1、HC-FR2、HC-FR3、及びHC-FR4)を含む。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号14、15、16及び18の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれ、LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3、及びLC-FR4)を含む。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体は、配列番号14、15、17及び18の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれ、LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3、及びLC-FR4)を含む。
【0087】
免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの5つのクラスが存在し、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと表記される重鎖を有する。γ及びαクラスは、さらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられ、例えば、ヒトは以下のサブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2を発現している。IgG1抗体は、複数の多型変異体として存在し(Jefferis and Lefranc 2009.mAbs Vol 1 Issue 4 1-7に概説されている)、これらのいずれもが本明細書の実施例の一部での使用に適している。ヒト集団における一般的なアロタイプ変異体は、文字a、f、n、z、またはこれらの組み合わせで表記されるものである。本明細書の実施例のいずれにおいても、抗体はヒトIgGのFc領域を含む重鎖Fc領域を含んでよい。さらなる実施形態では、ヒトIgGのFc領域は、ヒトIgG1またはIgG4を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG4抗体である。いくつかの実施形態では、ヒトIgG4は、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基はKabatにおけるようなEUインデックスに従って番号付けされる。いくつかの実施形態では、ヒトIgG1は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIgG4は、配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、及び/または配列番号20もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗Siglec-8抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖、及び/または配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体は、活性化好酸球のアポトーシスを誘導する。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体は、休止状態の好酸球のアポトーシスを誘導する。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体は、活性化された好酸球を枯渇させ、マスト細胞活性化を阻害する。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体は、マスト細胞を枯渇または減少させ、マスト細胞活性化を阻害する。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体は、マスト細胞を枯渇またはその数を減少させる。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体は、ADCC活性によってマスト細胞を殺滅する。いくつかの実施形態では、抗体は、組織でSiglec-8を発現するマスト細胞を枯渇または減少させる。いくつかの実施形態では、抗体は、生体液中でSiglec-8を発現するマスト細胞を枯渇または減少させる。
【0089】
B.賦形剤
治療製剤は、所望の純度を有する活性成分(例えば、本開示の抗Siglec-8抗体)を、任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより、保存用に調製される(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,Lippincott Williams & Wiklins,Pub.,Gennaro Ed.,Philadelphia,Pa.2000)。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、緩衝液;アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、メタ重亜硫酸ナトリウムを含む抗酸化剤;防腐剤、等張化剤、安定剤、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);EDTAなどのキレート剤及び/または非イオン性界面活性剤を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、アルギニンを含む。いくつかの実施形態では、アルギニンは、アルギニンHCl塩である。いくつかの実施形態では、アルギニンは、本開示の製剤中に約50mMから約200mMの間、約100mMから約200mM、または約100mMから約150mMの量または濃度で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、アルギニンは、本開示の製剤中に約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、または190を超える量または濃度(mM単位)で存在してもよい。いくつかの実施形態では、アルギニンは、本開示の製剤中に約200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、または60未満の量または濃度(mM単位)で存在してもよい。すなわち、本開示の製剤は、約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、または190の下限及び独立して選択される約200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、または60の上限を有する任意の量または濃度(mM単位)でアルギニンを含んでもよく、この場合、上限は、下限よりも大きい。いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、約155、約160、約165、約170、約175、約180、約185、約190、約195、または約200の量または濃度(mM単位)でアルギニンを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、スクシナートを含む。いくつかの実施形態では、スクシナートは、コハク酸ナトリウム塩である。いくつかの実施形態では、スクシナートは、コハク酸(塩形態)である。いくつかの実施形態では、スクシナートは、本開示の製剤中に約5mMから約50mMの間、約10mMから約30mM、または約10mMから約50mMの量または濃度で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、スクシナートは、本開示の製剤中に約5、10、15、20、25、30、35、40、または45を超える量または濃度(mM単位)で存在してもよい。いくつかの実施形態では、スクシナートは、本開示の製剤中に約50、45、40、35、30、25、20、15、または10未満の量または濃度(mM単位)で存在してもよい。すなわち、本開示の製剤は、約5、10、15、20、25、30、35、40、または45の下限及び独立して選択される約50、45、40、35、30、25、20、15、または10の上限を有する任意の量または濃度(mM単位)でアルギニンを含んでもよく、この場合、上限は、下限よりも大きい。いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、または約50の量または濃度(mM単位)でスクシナートを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムは、本開示の製剤中に約40mMから約150mMの間、約50mMから約130mM、または約75mMから約100mMの量または濃度で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムは、本開示の製剤中に約40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、または140を超える量または濃度(mM単位)で存在してもよい。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムは、本開示の製剤中に約150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、または50未満の量または濃度(mM単位)で存在してもよい。すなわち、本開示の製剤は、約40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、または140の下限及び独立して選択される約150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、または50の上限を有する任意の量または濃度(mM単位)で塩化ナトリウムを含んでもよく、この場合、上限は、下限よりも大きい。いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、または約150の量または濃度(mM単位)で塩化ナトリウムを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、非イオン性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤または洗浄剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療薬の可溶化を助けるために、ならびに撹拌により誘発される凝集から治療タンパク質を保護するために存在させることができ、これにより、活性な治療タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく製剤が剪断表面応力に曝露されることも可能にする。
【0094】
好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ポリオキサマー(polyoxamer)(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50、及び60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用することができる陰イオン性洗浄剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、及びジオクチルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。陽イオン性洗浄剤としては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが挙げられる。本明細書で使用される場合、「ポリソルベート」に対する言及は、TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80などのポリオキシエチレンソルビタンベースの界面活性剤を含む場合がある。
【0095】
いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、ポリソルベートを含む。いくつかの実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート-20またはポリソルベート-80である。いくつかの実施形態では、ポリソルベートは、本開示の製剤中に約0.002%から約0.05%の間、約0.01%から約0.05%、または約0.02%から約0.04%(w/v)の量または濃度で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、ポリソルベートは、本開示の製剤中に約0.002、0.005、0.010、0.015、0.020、0.025、0.030、0.035、0.040、または0.045を超える量または濃度(%、w/v単位)で存在してもよい。いくつかの実施形態では、ポリソルベートは、本開示の製剤中に約0.05または0.050、0.045、0.040、0.035、0.030、0.025、0.020、0.015、0.010、または0.005未満の量または濃度(%、w/v単位)で存在してもよい。すなわち、本開示の製剤は、約0.002、0.005、0.010、0.015、0.020、0.025、0.030、0.035、0.040、または0.045の下限及び独立して選択される約0.05または0.050、0.045、0.040、0.035、0.030、0.025、0.020、0.015、0.010、または0.005の上限を有する任意の量または濃度(%、w/v単位)でポリソルベートを含んでもよく、この場合、上限は、下限よりも大きい。いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、約0.002、約0.005、約0.010、約0.015、約0.020、約0.025、約0.030、約0.035、約0.040、約0.045、または約0.050の量または濃度(%、w/v単位)でポリソルベートを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、約5.0から約7.0の間、例えば、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、または約7.0のpHを有する。
【0097】
緩衝液は、特に安定性がpH依存的である場合、治療有効性を最適化する範囲内でpH(例えば、上記の任意の範囲またはpH値)を制御するために使用され得る。緩衝液は、約50mM~約250mMの範囲の濃度で存在し得る。本開示で使用するのに適した緩衝剤には、上記のものを含む、有機酸及び無機酸の両方ならびにそれらの塩が含まれる。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩。さらに、緩衝液は、ヒスチジン及びトリメチルアミン塩、例えば、トリスから構成されてもよい。
【0098】
防腐剤は、微生物増殖を防止するために添加することができ、典型的には、約0.2%~1.0%(w/v)の範囲で存在する。本開示で使用するのに適した防腐剤としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが挙げられる。
【0099】
「安定剤」として知られている場合もある等張化剤が、組成物中の液体の張性を調整または維持するために存在してもよい。タンパク質及び抗体などの大きい荷電した生体分子とともに使用される場合、それらが、荷電したアミノ酸側鎖群と相互作用し、それにより分子間及び分子内相互作用の可能性を低減するため、それらは、多くの場合、「安定剤」と称される。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮して、約0.1重量%から約25重量%の間または約1から約5重量%の間の任意の量で存在してもよい。いくつかの実施形態では、等張化剤としては、多価糖アルコール、三価以上の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールが挙げられる。
【0100】
さらなる賦形剤としては、(1)増量剤、(2)溶解促進剤、(3)安定剤、及び(4)変性または容器壁への付着を防止する薬剤のうちの1つ以上として働くことができる薬剤が挙げられる。かかる賦形剤としては、多価糖アルコール(上に列挙されるもの);アミノ酸、例えば、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン等;有機糖または糖アルコール、例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;単糖(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);三糖、例えば、ラフィノース;ならびに多糖、例えば、デキストリンまたはデキストランが挙げられる。
【0101】
製剤がインビボ投与に使用されるためには滅菌状態でなければならない。製剤は、滅菌濾過膜を通した濾過によって滅菌させることができる。本明細書における治療用組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルに充填される。
【0102】
投与経路は、適切な方法、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内もしくは関節内経路、局所投与、吸入、または徐放もしくは持続放出手段による注射または注入で、公知かつ受け入れられている方法、例えば、長期間にわたる単回または複数回のボーラスまたは注入により行う。
【0103】
本明細書の製剤はまた、治療されている特定の適応症に対して必要な2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する活性化合物を含有してもよい。そのような活性化合物は、意図される目的に対して効果的な量で一緒に適切に存在する。
【0104】
いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、(a)本開示の抗Siglec-8抗体を約5mg/mLから約15mg/mLの間、または約10mg/mLから約15mg/mLの間の量で;(b)アルギニンを約50mMから約200mMの間、約100mMから約200mM、または約100mMから約150mMの量で;(c)スクシナートを約5mMから約50mMの間、約10mMから約30mM、または約10mMから約50mMの量で;(d)塩化ナトリウムを約40mMから約150mMの間、約50mMから約130mM、または約75mMから約100mMの量で;及び(e)ポリソルベートを約0.002%から約0.05%の間、約0.01%から約0.05%、または約0.02%から約0.04%(w/v)の量で含み、製剤のpHは、約5.0から約7.0の間である。いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、(a)本開示の抗Siglec-8抗体を約5mg/mLから約15mg/mLの間の量で;(b)アルギニンを約50mMから約200mMの間の量で;(c)スクシナートを約5mMから約50mMの間の量で;(d)塩化ナトリウムを約40mMから約150mMの間の量で;及び(e)ポリソルベートを約0.002%から約0.05%の間の量で含み、任意に製剤のpHは、約5.0から約7.0の間である。いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、(a)本開示の抗Siglec-8抗体を15mg/mLの量で;(b)アルギニンを125mMの量で;(c)スクシナートを20mMの量で;(d)塩化ナトリウムを80mMの量で;及び(e)ポリソルベートを0.025%の量で含み、製剤のpHは、6.0である。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1;配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2;配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域と、(1)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1;配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号8または配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号19または27のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号20または21のアミノ酸配列を含む軽鎖と、を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、液体製剤である(例えば、2℃~40℃の温度で液体)。
【0105】
いくつかの実施形態では、本開示の製剤は、抗体(例えば、本開示の抗Siglec-8抗体)の凝集及び/またはオリゴマー化を予防または低減する。いくつかの実施形態では、凝集のパーセンテージは、小さな抗体オリゴマーに存在する抗体のパーセンテージを指す。いくつかの実施形態では、小さな抗体オリゴマーの存在量は、サイズ排除クロマトグラフィー・高速液体クロマトグラフィーによってアッセイされる。理論に束縛されることを望まないが、凝集/オリゴマー化の低減により、治療製剤の輸送または保存の過程で行われる可能性のある凍結融解及び/または撹拌後の製剤の安定性を改善し、それによって製剤の均一性及び/または効力(例えば、製剤の活性成分または薬物)を維持することができると考えられる。
【0106】
例えば、いくつかの実施形態では、凍結融解後、製剤中の抗体の5%未満が凝集する。抗体の凝集/オリゴマー化を測定するための例示的な凍結融解条件及びアッセイについては、下に記載されている。いくつかの実施形態では、製剤は、1、2、3、4、または5サイクルの凍結融解に供される。
【0107】
いくつかの実施形態では、振盪または撹拌後、製剤中の抗体の5%未満が凝集する。抗体の凝集/オリゴマー化を測定するための例示的な撹拌条件及びアッセイについては、下に記載されている。いくつかの実施形態では、製剤は、一晩振盪に供される。いくつかの実施形態では、製剤は、800rpmで一晩;200rpmで2~4日間;500rpmで2~4日間;または200rpmで2日間に続いて500rpmで2日間振盪に供される。
【0108】
いくつかの実施形態では、小さな抗体オリゴマーの存在量は、紫外可視分光測定によってアッセイされる。例えば、いくつかの実施形態では、400nmにおける吸光度(A400nm)が測定される。いくつかの実施形態では、抗体製剤のA400nmは、参照標準のものと比較される。いくつかの実施形態では、参照標準とは、抗体を除いた対応する製剤を指す。
【0109】
例えば、いくつかの実施形態では、凍結融解後、本開示の製剤は、参照標準のA400nmと比較して、約0.1未満のA400nm、または約150%未満のA400nmを有する。例示的な凍結融解条件については、下に記載されている。いくつかの実施形態では、製剤は、1、2、3、4、または5サイクルの凍結融解に供される。
【0110】
いくつかの実施形態では、振盪または撹拌後、本開示の製剤は、参照標準のA400nmと比較して、約0.1未満のA400nm、または約150%未満のA400nmを有する。例示的な撹拌条件については、下に記載されている。いくつかの実施形態では、製剤は、一晩振盪に供される。いくつかの実施形態では、製剤は、800rpmで一晩;200rpmで2~4日間;500rpmで2~4日間;または200rpmで2日間に続いて500rpmで2日間振盪に供される。
【0111】
C.投与
疾患の予防または治療に関して、本開示の活性剤または製剤の適切な投与量は、上述のような治療される疾患の種類、疾患の重症度及び経過、薬剤または製剤が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、以前の治療法、個体の病歴及び薬剤に対する反応、ならびに主治医の裁量に依存することになる。薬剤または製剤は、1回で、または一連の治療にわたって個体に適切に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)または製剤の投与間隔は、約1ヶ月以上である。いくつかの実施形態では、投与間隔は、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月またはそれ以上である。本明細書で使用される場合、投与間隔とは、抗体の1回の投与から次の抗体の投与の間の期間を指す。本明細書で使用される場合、約1ヶ月の間隔は、4週間を含む。したがって、いくつかの実施形態では、投与間隔は、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約16週間、約20週間、約24週間、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、治療は、抗体または製剤の複数回の投与を含み、投与間隔は変化することもある。例えば、初回の投与と2回目の投与の間隔が約1ヶ月であり、それに続く投与間隔が約3ヶ月である。いくつかの実施形態では、初回の投与と2回目の投与の間隔が約1ヶ月であり、2回目の投与と3回目の投与の間隔が約2ヶ月であり、それに続く投与間隔が約3ヶ月である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、一律の用量で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、1用量当たり約0.1mgから約1800mgの投与量で個体に投与される。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、1用量当たり約0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、及び1800mgのいずれかの投与量で個体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、1用量当たり約150mgから約450mgの投与量で個体に投与される。いくつかの実施形態では、抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、1用量当たり約150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、及び450mgのいずれかの投与量で個体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、1用量当たり約0.1mg/kgから約20mg/kgの投与量で個体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、1用量当たり約0.01mg/kgから約10mg/kgの投与量で個体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、1用量当たり約0.1mg/kgから約10mg/kgまたは約1.0mg/kgから約10mg/kgの投与量で個体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kg、または10.0mg/kgのいずれかの投与量で個体に投与される。上記の任意の投与頻度が使用されてもよい。上記の任意の投与頻度が、本明細書に記載の組成物の方法または使用において使用されてもよい。本明細書に記載の抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)による治療の有効性は、1週から3ヶ月毎の間の範囲の間隔で本明細書に記載の任意の手法またはアッセイを使用して評価することができる。いくつかの実施形態では、治療の有効性(例えば、1つ以上の症状の低減または改善)は、ヒトSiglec-8に結合する抗体の投与後、約1ヶ月毎、約2ヶ月毎、約3ヶ月毎、約4ヶ月毎、約5ヶ月毎、約6ヶ月毎またはそれ以上で評価される。いくつかの実施形態では、治療の有効性(例えば、1つ以上の症状の低減または改善)は、約1週間毎、約2週間毎、約3週間毎、約4週間毎、約5週間毎、約6週間毎、約7週間毎、約8週間毎、約9週間毎、約10週間毎、約11週間毎、約12週間毎、約16週間毎、約20週間毎、約24週間毎、またはそれ以上で評価される。
【0112】
ヒトSiglec-8に結合する本明細書に記載の抗体は、本明細書に記載の方法において、単独で、または他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体は、Siglec-8関連疾患または障害を治療及び/または予防するための1つ以上の(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上など)追加の治療薬と共投与されてもよい。
【0113】
上述のそのような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療薬が同じまたは別個の製剤に含まれる場合)及び個別投与を包含し、個別投与の場合、本開示の抗体の投与は、1つ以上のさらなる治療薬の投与前に、投与と同時に、及び/または投与後に行われてよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体の投与と、1つ以上のさらなる治療剤の投与とは、互いの約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、または約6ヶ月以内に行われる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体の投与と、1つ以上のさらなる治療剤の投与とは、互いの約1週間、約2週間、または約3週間以内に行われる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体の投与と、1つ以上の追加の治療薬の投与とは、互いの約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、または約6日以内に行われる。
【0114】
抗Siglec8抗体及び/または1つ以上の追加の治療薬は、以下に限定されない、経口投与、舌下投与、頬側投与、局所(topical)投与、直腸投与、吸入によるもの、経皮投与、皮下注射、皮内注射、静脈内(IV)注射、動脈内注射、筋肉内注射、心臓内注射、骨内注射、腹腔内注射、経粘膜投与、経膣投与、硝子体内投与、関節腔内投与、関節周囲投与、局所(local)投与、皮膚上投与、または任意のそれらの組み合わせを含む、当該技術分野において既知の任意の適した投与経路により投与されてもよい。
【0115】
生物学的活性のアッセイ
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、好酸球を枯渇させ、マスト細胞を阻害する。細胞のアポトーシスを評価するためのアッセイは、当該技術分野では周知のものであり、例えば、アネキシンVによる染色及びTUNNELアッセイがある。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、ADCC活性を誘導する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体は、ADCC活性によりSiglec-8を発現する好酸球を殺滅する。いくつかの実施形態では、組成物は、非フコシル化(すなわち、アフコシル化)抗Siglec-8抗体を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の非フコシル化抗Siglec-8抗体を含む組成物は、部分フコシル化抗Siglec-8抗体を含む組成物と比較して、Siglec-8を発現する好酸球に対するADCC活性を増強する。ADCC活性を評価するためのアッセイは、当該技術分野では周知のものであり、本明細書に記載されている。例示的なアッセイでは、ADCC活性を測定するために、エフェクター細胞と標的細胞を用いる。エフェクター細胞の例としては、ナチュラルキラー(NK)細胞、大顆粒リンパ球(LGL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、ならびにNK及びLGLを含むPBMC、または細胞表面にFc受容体を有する、好中球、好酸球及びマクロファージなどの白血球が挙げられる。エフェクター細胞は、対象となる疾患(例えば、慢性蕁麻疹)を有する個体を含む任意の由来源から分離できる。標的細胞は、評価される抗体が認識できる抗原を細胞表面に発現する任意の細胞である。そのような標的細胞の例としては、細胞表面にSiglec-8を発現する好酸球がある。そのような標的細胞の別の例としては、細胞表面上にSiglec-8を発現する細胞株(例えば、Ramos細胞株)(例えば、Ramos2C10)である。標的細胞は、細胞溶解の検出を可能にする試薬で標識できる。標識試薬としては、例えばクロム酸ナトリウム(Na2
51CrO4)などの放射性物質が挙げられる。例えば、Immunology,14,181(1968);J.Immunol.Methods.,172,227(1994);and J.Immunol.Methods.,184,29(1995)を参照されたい。
【0117】
マスト細胞に対する抗Siglec-8抗体のADCC及びアポトーシス活性を評価するための例示的なアッセイでは、ヒトマスト細胞を、公開されたプロトコールに従って、ヒト組織または生体液から単離する(Guhl et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.,2011,75:382-384;Kulka et al.,In Current Protocols in Immunology,2001,(John Wiley & Sons,Inc.))か、または、例えば、Yokoi et al.,J Allergy Clin Immunol.,2008,121:499-505に記載されるように、ヒト造血幹細胞から分化させる。精製マスト細胞を無菌96ウェルU底プレートで完全RPMI培地に再懸濁し、0.0001ng/ml~10μg/mlの範囲の濃度の抗Siglec-8抗体の存在下または非存在下で30分間インキュベートする。ADCCを誘導するため、各試料を精製されたナチュラルキラー(NK)細胞または新鮮なPBLの存在下及び非存在下でさらに4~48時間インキュベートする。アポトーシスまたはADCCによる細胞殺滅を、マスト細胞(CD117及びFcεR1)を検出するための蛍光標識抗体及び生細胞と死細胞または死にかけている細胞とを識別するためのアネキシンV及び7AADを使用したフローサイトメトリーによって分析する。アネキシンV及び7AAD染色は、製造者の指示に従って行う。
【0118】
いくつかの態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体はマスト細胞媒介活性を阻害する。マスト細胞の総数及び活性化のバイオマーカーとしてマスト細胞トリプターゼが使用されている。例えば、総トリプターゼ及び活性トリプターゼ、ならびにヒスタミン、N-メチルヒスタミン、及び11-β-プロスタグランジンF2を血液または尿で測定して、マスト細胞の減少を評価することができる。例えば、マスト細胞活性アッセイの例については、米国特許出願公開第20110293631号を参照されたい。
【0119】
E.抗体の調製
本明細書に記載の抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)は、抗体を作製するための当該技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法を、以下のセクションでより詳細に記載する。抗体を作製するための技法のさらなる説明は、例えば、米国特許第9,546,215号で見出すことができる。
【0120】
抗体フラグメント
本開示は、抗体フラグメントを包含する。抗体フラグメントは、酵素消化などの従来の手段によって、または組み換え法によって作製することができる。ある特定の状況では、全抗体ではなく抗体フラグメントを使用する利点がある。ある特定の抗体フラグメントの概説については、Hudson et al.(2003)Nat.Med.9:129-134に記載されている。
【0121】
抗体フラグメントを作製するための様々な技術が開発されている。従来、これらのフラグメントは、インタクトな抗体のタンパク質分解消化により得られていた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992)、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)。しかしながら、現在、これらのフラグメントは、組み換え宿主細胞によって直接生成することができる。Fab、Fv、及びScFv抗体フラグメントはいずれもE.coliで発現させ、分泌されることができるため、これらのフラグメントの大量生産を容易に行うことができる。抗体フラグメントは、上述の抗体ファージライブラリから単離することができる。あるいは、Fab’-SHフラグメントをE.coliから直接回収し、化学的に結合させてF(ab’)2フラグメントを形成することもできる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別のアプローチに従って、F(ab’)2フラグメントを組換え宿主細胞の培養物から直接単離することもできる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含むインビボ半減期が延長されたFab及びF(ab’)2 フラグメントが、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体フラグメントを産生するための他の技術は当業者には明らかであろう。特定の実施形態では、抗体は、一本鎖Fvフラグメント(scFv)である。例えば、WO93/16185、米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。Fv及びscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種であり、このため、これらはインビボ使用時の非特異的結合の低減に好適であり得る。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでエフェクタータンパク質の融合が生じるように構築されてもよい。前出のAntibody Engineering,ed.Borrebaeckを参照されたい。抗体フラグメントは、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるような「線状抗体」でもあってもよい。かかる線状抗体は、単一特異性または二重特異性であってもよい。
【0122】
ヒト化抗体
本開示は、ヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化するためのさまざまな方法が当該技術分野で知られている。例えば、ヒト化抗体は、非ヒトの由来源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を含む。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば「インポート」残基と呼ばれ、通常は「インポート」可変ドメインに由来する。ヒト化は、本質的には、Winterの方法(Jones et al.(1986)Nature 321:522-525;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327;Verhoeyen et al.(1988)Science 239:1534-1536)に従って、超可変領域の配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって行うことができる。したがって、こうしたヒト化抗体は、インタクトなヒト可変ドメインよりも大幅に小さい部分が非ヒト種由来の対応する配列によって置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域残基、かつ可能性としてはいくつかのFR残基が、齧歯類抗体中の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
【0123】
ヒト化抗体の作製に使用されるヒト可変ドメインの選択は、軽鎖及び重鎖の双方ともに、抗原性を低減するために非常に重要であり得る。いわゆる「ベストフィット」法によれば、げっ歯類(例えば、マウス)抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、齧歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして認められる(Sims et al.(1993)J.Immunol.151:2296;Chothia et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901)。別の方法は、すべてのヒト抗体の軽鎖または重鎖の特定のサブグループのコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carter et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285;Presta et al.(1993)J.Immunol.,151:2623.)。
【0124】
抗体が、抗原に対する高親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持してヒト化されることがさらに一般的に望ましい。この目標を達成するために、1つの方法に従って、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用して親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に使用されており、当業者には周知のものである。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される立体配座構造を例示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示の検査により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の予想される役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原に結合する能力に影響を与える残基の解析が可能となる。このように、標的抗原(複数可)に対する増加した親和性などの所望の抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント配列及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合への影響に直接かつ最も実質的に関与する。
【0125】
ヒト抗体
本開示のヒト抗Siglec-8抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列(複数可)を既知のヒト定常ドメイン配列(複数可)と組み合わせることによって構築され得る。あるいは、本開示のヒトモノクローナル抗Siglec-8抗体は、ハイブリドーマ法によって作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が、例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)によって説明されている。
【0126】
内因性免疫グロブリン産生の不在下で免疫化時にヒト抗体の全レパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラ及び生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失により、内因性抗体産生の完全な阻害がもたらされることが説明されている。かかる生殖系列変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入により、抗原曝露時にヒト抗体の産生がもたらされる。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)を参照。
【0127】
遺伝子シャッフリングを使用して、ヒト抗体を非ヒト(例えば、齧歯類)抗体から誘導することもでき、ヒト抗体は、出発非ヒト抗体と同様の親和性及び特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従って、本明細書に記載のファージディスプレイ技法によって得られた非ヒト抗体フラグメントの重鎖可変領域または軽鎖可変領域のいずれかが、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置き換えられ、非ヒト鎖/ヒト鎖scFvまたはFabキメラの集団を作り出す。抗原を用いた選択により、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFvまたはFabの単離がもたらされ、そこで、ヒト鎖が一次ファージディスプレイクローンにおける対応する非ヒト鎖の除去時に破壊された抗原結合部位を復元する、すなわち、エピトープがヒト鎖パートナーの選択を管理する。残りの非ヒト鎖を置き換えるためにこのプロセスが繰り返されると、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日公開のPCT WO93/06213を参照のこと)。CDRグラフティングによる非ヒト抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この技法は、非ヒト起源のFRまたはCDR残基を有しない完全なヒト抗体を提供する。
【0128】
抗体変異体
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列改変(複数可)が想定される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異形は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる改変としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/またはそれらへの挿入、及び/またはそれらの置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせが行われて、最終構築に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特性を有することを条件とする。主題の抗体アミノ酸配列が作製された時点で、アミノ酸改変がその配列に導入されてもよい。
【0129】
変異誘発に好ましい位置である本抗体のある特定の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載される「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。ここで、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、及びglu等の荷電残基)が特定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により置き換えられて、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで、置換に対する機能的感受性を実証するアミノ酸位置は、さらなるまたは他の変異体を置換部位に、またはそこの代わりに導入することにより洗練される。したがって、アミノ酸配列変異を導入する部位が予め決定されているが、変異自体の性質は予め決定されている必要はない。例えば、所与の部位での変異の性能を分析するために、alaスキャニングまたはランダム変異誘発が標的コドンまたは領域で行われ、発現された免疫グロブリンが所望の活性についてスクリーニングされる。
【0130】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、及び単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、抗体のN末端またはC末端の、酵素または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの融合が挙げられる。
【0131】
いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖及び/または軽鎖にC末端切断を有する。例えば、1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基が、重鎖及び/または軽鎖のC末端で切断される。いくつかの実施形態では、C末端切断は、重鎖からC末端リシンを除去する。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖及び/または軽鎖にN末端切断を有する。例えば、1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基が、重鎖及び/または軽鎖のN末端で切断される。いくつかの実施形態では、切断型のモノクローナル抗体は、組換え技術によって作製することができる。
【0132】
特定の実施形態では、本開示の抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または低減するように改変される。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合型またはO結合型である。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付加を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素結合の認識配列である。従って、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位をもたらす。O結合型グリコシル化とは、糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。
【0133】
抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、上述の(N結合型グリコシル化部位のための)トリペプチド配列のうちの1つ以上が生成されるかまたは除去されるように、アミノ酸配列を改変することにより簡便に達成される。この改変は、元の抗体の配列への1つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加、欠失または置換によって行うこともできる(O結合型グリコシル化部位の場合)。
【0134】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物を改変することができる。例えば、本抗体のFc領域に結合しているフコースを欠く成熟炭水化物構造を有する抗体が、米国特許出願第US2003/0157108号(Presta,L.)に記載されている。同第US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)も参照されたい。抗体のFc領域に結合した炭水化物中にバイセクトN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を有する抗体が、WO2003/011878(Jean-Mairet)及び米国特許第6,602,684号(Umana et al)に参照されている。抗体のFc領域に結合するオリゴ糖中で少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体が、WO1997/30087(Patel et al.)に報告されている。それらのFc領域に結合した改変炭水化物を有する抗体に関してはWO1998/58964(Raju,S.)及びWO1999/22764(Raju,S.)も参照されたい。修飾されたグリコシル化を有する抗原結合分子に関して、US2005/0123546(Umana et al.)も参照されたい。
【0135】
特定の実施形態では、グリコシル化変異体は、Fc領域を含み、ここで、炭水化物構造は、フコースを欠くFc領域に結合する。かかる変異体は、改善されたADCC機能を有する。場合により、Fc領域は、ADCCをさらに改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位、及び/または334位(残基のEu番号付け)における置換をその中にさらに含む。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体に関連する刊行物の例としては、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生する細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願第2003/0157108 A1号(Presta,L)、及びWO2004/056312 A1号(Adams et al.)(特に実施例11で))、ならびにα-1,6-フコース転移酵素遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004))、及びβ1,4-N-アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT-III)及びゴルジ体μ-マンノシダーゼII(ManII)を過剰発現する細胞が挙げられる。
【0136】
野生型CHO細胞で産生される同じ抗体のフコースの量と比較してフコースが減少した抗体が本明細書で企図される。例えば、抗体は、天然CHO細胞(例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞などの天然グリコシル化パターンを産生するCHO細胞)によって産生された場合にさもなければ有するであろう量よりも少ない量のフコースを有する。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗Siglec-8抗体は、そのN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、5%または1%未満がフコースを含む抗体である。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗Siglec-8抗体は、そのN結合型グリカンのいずれもフコースを含まない抗体であり、すなわち、抗体は、フコースをまったく有さないか、またはフコースを有さないか、または非フコシル化またはアフコシル化されている。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分光分析により測定されるAsn297に付着する全てのグリコ構造体(例えば、複合、混成、及び高マンノース構造体)の合計に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定することができる。Asn297は、Fc領域における約297位(Fc領域残基のEu付番)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、294位~300位の間に位置してもよい。いくつかの実施形態では、抗体の重鎖の少なくとも1つまたは2つが非フコシル化されている。
【0137】
一実施形態では、抗体は、その血清半減期が改善されるように改変される。抗体の血清半減期を増加させるために、例えば、米国米国特許第5,739,277号に記載されるように、サルベージ受容体に結合するエピトープが抗体(特に、抗体断片)に組み込まれ得る。本明細書で使用する場合、用語「サルベージ受容体に結合するエピトープ」とは、IgG分子のインビボ血清半減期の増加を担う、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す(US2003/0190311、米国特許第6,821,505号、米国特許第6,165,745号、米国特許第5,624,821号、米国特許第5,648,260号、米国特許第6,165,745号、米国特許第5,834,597)。
【0138】
別の種類の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基に置き換えられた抗体分子内に少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換変異誘発において対象となる部位としては超可変領域が挙げられるが、FR改変も意図される。保存的置換を表5の見出し「好ましい置換」の下に示す。かかる置換が生物学的活性の望ましい変化をもたらす場合、表5に「例示的な置換」と表示されるか、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載されるより実質的な変化が導入され、産物がスクリーニングされ得る。
【表5】
【0139】
抗体の生物学的性質の実質的な改変は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シートもしくはらせん形構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さ、の維持への置換の影響が顕著に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性に従って群分けされ得る(A.L.Lehninger,in Biochemistry second ed.,pp.73-75,Worth Publishers,New York(1975)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
【0140】
あるいは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて群分けされてもよい。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0141】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーと別のクラスとの交換を伴う。そのような置換残基は、保存的置換部位に、または残りの(保存されていない)部位にも導入され得る。
【0142】
置換変異体の種類の1つは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる開発のために選択される、得られた変異体(複数可)は、それらが生成される親抗体と比較して改変された(例えば、改善された)生物学的特性を有する。かかる置換変異体を生成するための簡便な方法は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟を伴う。簡潔には、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7つの部位)は、各部位に全ての可能なアミノ酸置換を生成するために突然変異される。このようにして生成された抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内にパッケージングされたファージコートタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)の少なくとも一部との融合物として提示される。その後、ファージディスプレイされた変異体は、それらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。改変の超可変領域部位候補を同定するために、抗原結合に顕著に寄与する超可変領域残基を同定するためのスキャニング変異誘発(例えば、アラニンスキャニング)を行うことができる。あるいは、または加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と抗原との間の接触点を特定することが有益であり得る。かかる接触残基及び隣接残基は、本明細書において詳述するものを含む、当該技術分野では周知の方法に従う置換の候補である。かかる変異体が生成されたなら、変異体のパネルを、本明細書に記載されるものを含む、当該技術分野では周知の方法を用いたスクリーニングに供し、1つ以上の関連するアッセイにおいて優れた特性を有する抗体をさらなる開発のために選択することができる。
【0143】
本抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該技術分野で周知の種々の方法により調製される。これらの方法としては、天然源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)、または事前に調製された変異体または本抗体の非変異体バージョンのオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発、及びカセット変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
1つ以上のアミノ酸改変を本開示の抗体のFc領域に導入し、それによりFc領域変異体を生成することが望ましい場合がある。Fc領域変異体は、ヒンジシステインの位置を含む1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。いくつかの実施形態では、Fc領域変異体は、ヒトIgG4のFc領域を含む。さらなる実施形態では、ヒトIgG4のFc領域は、アミノ酸置換S228Pを含み、ただし、アミノ酸残基はKabatにおけるようなEUインデックスに従って番号付けされる。
【0145】
本記述及び当該技術分野の教示に従って、いくつかの実施形態では、本開示の抗体が、例えばFc領域において、野生型対応物抗体と比較して1つ以上の改変を含み得ることが企図される。それにもかかわらず、これらの抗体は、それらの野生型対応物と比較して治療的有用性に必要な実質的に同じ特徴を保持する。例えば、Fc領域にある特定の改変を行うことにより、例えば、WO99/51642に記載されるように、改変された(すなわち、改善または減少のいずれか)C1q結合及び/または補体依存性細胞毒性(CDC)がもたらされると考えられる。Fc領域変異体の他の例に関して、Duncan & Winter Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351号も参照されたい。WO00/42072(Presta)及びWO2004/056312(Lowman)は、FcRsへの改善または減少した結合を有する抗体変異体について記載している。これらの特許公開の内容を本明細書に参照により具体的に援用するShields et al.J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)も参照されたい。母体IgGの胎児への移入の原因である、増加した半減期及び新生児型Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、米国公開特許第2005/0014934A1号(Hinton et al.)に記載される。これらの抗体は、FcRnへFc領域の結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。改変されたFc領域アミノ酸配列及び増加または減少したC1q結合能を有するポリペプチド変異体が、米国特許第6,194,551B1号、WO99/51642に記載されている。これらの特許公開の内容を本明細書に参照により具体的に援用するIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)も参照されたい。
【0146】
7.ベクター、宿主細胞、及び組換え方法
本開示の抗体の組換え産生について、それをコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNA増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。本抗体をコードするDNAは容易に単離され、従来の手技を使用して(例えば、本抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクターの選択は使用される宿主細胞に一部拠る。一般に、宿主細胞は、原核生物起源または真核生物(一般に、哺乳類)起源のいずれかのものである。IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE定常領域等の任意のアイソタイプの定常領域をこの目的のために使用することができ、かかる定常領域を任意のヒトまたは動物種から得ることができることが理解される。
【0147】
真核宿主細胞を使用した抗体の生成
真核生物宿主細胞で使用するためのベクターは、一般に以下の非限定的な成分、すなわち、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上を含む。
【0148】
a)シグナル配列成分
真核宿主細胞で使用するためのベクターは、目的とする成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドも含有し得る。選択された異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識及びプロセシングされ得る(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)。哺乳類細胞発現において、哺乳類シグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。かかる前駆体領域のDNAがリーディングフレーム内で本抗体をコードするDNAにライゲートされる。
【0149】
b)複製起点
一般に、複製起点成分は、哺乳類発現ベクターに必要ではない。例えば、単にSV40起点は初期プロモーターを含有するため、SV40起点が一般に使用される場合もある。
【0150】
c)選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能なマーカとも称される選択遺伝子を含有しても良い。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンへの耐性を付与するタンパク質、(b)関連性がある場合、栄養要求性欠損を補足するタンパク質、または(c)複合培地から入手不可能な重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0151】
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止するための薬物を利用する。異種遺伝子による形質転換に成功した細胞は、薬物耐性を与え、それにより選択レジメンで生存するタンパク質を生成する。かかる優勢選択の例は、薬物である、ネオマイシン、ミコフェノール酸、及びハイグロマイシンを使用する。
【0152】
哺乳類細胞に好適な選択可能なマーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-I及び-II、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等の抗体核酸の取り込みにコンピテントな細胞の特定を可能にするものである。
【0153】
例えばいくつかの実施形態では、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、最初に、DHFRの競合アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地中で全ての形質転換体を培養することによって特定される。いくつかの実施形態では、野生型DHFRが用いられるときに適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL-9096)である。
【0154】
あるいは、抗体、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)等の別の選択可能なマーカーをコードするDNA配列で形質転換または共形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418等の選択可能なマーカー用の選択剤を含有する培地中での細胞成長によって選択され得る(米国特許第4,965,199号を参照)。宿主細胞には、グルタミン合成酵素(GS)が欠損した細胞系を含む、NS0、CHOK1、CHOK1SV、または誘導体が含まれ得る。哺乳動物細胞の選択マーカーとしてGSを使用する方法は、米国特許第5,122,464号及び米国特許第5,891,693号に記載されている。
【0155】
d)プロモーター成分
発現ベクター及びクローニングベクターは、一般に、宿主生物によって認識され、かつ目的のポリペプチド(例えば、抗体)をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーターを含む。真核生物のプロモーター配列は既知である。例えば、実質的に全ての真核遺伝子が、転写が始まる部位からおよそ25~30塩基上流に位置するATに富んだ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70~80塩基上流に見られる別の配列は、Nが任意のヌクレオチドであり得るCNCAAT領域である。大半の真核遺伝子の3’末端は、コード配列の3’末端へのポリA尾部の付加のためのシグナルであり得るAATAAA配列である。特定の実施形態では、これらの配列のいずれかまたはすべてを、真核生物発現ベクターに適当に挿入することができる。
【0156】
哺乳類宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2等)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びシミアンウイルス40(SV40)等のウイルスのゲノムから、異種哺乳類プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターによって制御されるが、但し、かかるプロモーターが宿主細胞系と適合性であることを条件とする。
【0157】
SV40ウイルスの早期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーターは、HindIII E制限断片として好都合に得られる。ウシ乳頭腫ウイルスをベクターとして使用して哺乳動物宿主におけるDNAを発現させるための系は特許第4,419,446号に開示されている。このシステムの改変については特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ-インターフェロンcDNAの発現について記載した、Reyes et al.,Nature 297:598-601(1982)も参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復配列をプロモーターとして使用することができる。
【0158】
e)エンハンサーエレメント成分
より高次の真核生物による本開示の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加する。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用する。例としては、複製起点の後半側のSV40エンハンサー(bp100~270)、ヒトサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、マウスサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後半側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントについて記載したYaniv,Nature 297:17-18(1982)も参照されたい。このエンハンサーは、抗体ポリペプチドコード配列に対して5’位または3’位でベクターにスプライスされるが、一般にプロモーターから5’部位に位置する。
【0159】
f)転写終結成分
真核宿主細胞において使用される発現ベクターはまた、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含有しても良い。かかる配列は、一般的には、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’非翻訳領域、時折、3’非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分中のポリアデニル化断片として転写されたヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026及びそれに開示される発現ベクターを参照されたい。
【0160】
g)宿主細胞の選択及び形質転換
本明細書でのベクターにおけるDNAのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞としては、脊椎動物宿主細胞を含む本明細書に記載のより高次の真核生物細胞が挙げられる。脊椎動物培養細胞(組織培養)の繁殖が日常的な手技になっている。有用な哺乳動物細胞株の例としては、例えば、SV40によって形質転換したサル腎由来細胞CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胎児腎細胞株(293細胞、または増殖のために懸濁培養でサブクローニングした293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞/-DHFR(CHO,Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980))、サル腎由来細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頚部癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎由来細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982))、MRC5細胞、FS4細胞、CHOK1細胞、CHOK1SV細胞または誘導体、ならびにヒト肝癌株(Hep G2)がある。
【0161】
宿主細胞は、抗体産生のために上述の発現またはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切なものとして修飾された従来の栄養培地中で培養される。
【0162】
h)宿主細胞の培養
本開示の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)等の市販されている培地は、宿主細胞の培養に好適である。さらに、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979),Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、または同第5,122,469号、WO90/03430、WO87/00195、または米国再発行特許第30,985号に記載される培地のいずれも宿主細胞の培地として使用することができる。これらの培地のうちのいずれかには、必要に応じて、ホルモン及び/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮成長因等子)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩等)、緩衝液(HEPES等)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジン等)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬物等)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終密度で存在する無機化合物と定義される)、ならびにグルコースまたは等価エネルギー源が補充され得る。当業者には周知の他の任意の補助物質も適当な濃度で添加することができる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞とともにこれまでに使用されているものであり、当業者には明らかであろう。
【0163】
i)抗体の精製
組換え技法を使用する際、本抗体は、細胞内に産生され得るか、または培地に直接分泌され得る。抗体が細胞内で産生される場合、第1のステップとして、微粒子残屑(宿主細胞または溶解フラグメントのいずれか)を、例えば、遠心分離または限外濾過により除去することができる。抗体が培地に分泌される場合、かかる発現系の上清は、一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して最初に濃縮することができる。タンパク質分解を阻害するためのPMSF等のプロテアーゼ阻害剤が前述のステップのうちのいずれかに含まれてもよく、外来性夾雑物の成長を阻止するための抗生物質が含まれてもよい。
【0164】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーが便宜のよい方法である。タンパク質Aの親和性リガンドとしての適合性は、本抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。タンパク質Aは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用され得る(Lindmark et al.,J.Immunol.Methods 62:1-13(1983))。タンパク質Gは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に対して推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、多くの場合アガロースとすることができるが、他のマトリックスも利用可能である。制御された細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定したマトリックスにより、アガロースを用いて達成され得るものよりも流速を早くして処理時間を短くすることが可能となる。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。タンパク質を精製するための他の技法、例えば、イオン交換カラム上での分別、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)上でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム等)上でのクロマトグラフィー、クロマト分画、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿も回収される抗体に応じて利用可能である。
【0165】
任意の予備精製ステップ(複数可)後、目的とする抗体及び混入物質を含む混合物をさらなる精製、例えば、低塩濃度(例えば、約0~0.25Mの塩)で行われる、約2.5~4.5のpHの溶出緩衝液を使用した低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけることができる。
【0166】
一般に、研究、試験、及び臨床使用で使用するための抗体を調製するための様々な方法論が当該技術分野で十分に確立されており、上述の方法論と一致しており、かつ/または当業者により目的とする特定の抗体に適切であるとみなされる。
【0167】
非フコシル化抗体の産生
本明細書では、フコシル化度が低い抗体を調製する方法が提供される。例えば、本明細書で想到される方法としては、これらに限定されるものではないが、タンパク質フコシル化が欠損している細胞株(例えば、Lec13 CHO細胞、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子ノックアウトCHO細胞、β1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIを過剰発現し、さらにゴルジ体μ-マンノシダーゼIIを過剰発現する細胞など)の使用、ならびに抗体の産生に使用される細胞培養培地へのフコース類似体(複数可)の添加が挙げられる(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願第US2003/0157108 A1号、Presta,L;WO 2004/056312 A1;Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);及び米国特許第8,574,907号を参照)。抗体のフコース含有量を減少させるためのさらなる方法としては、米国特許出願公開第2012/0214975号に記載されるGlymaxx技術が含まれる。抗体のフコース含有量を減少させるためのさらなる技術には、抗体の産生に使用される細胞培養培地への1つ以上のグリコシダーゼ阻害剤の添加も含まれる。グリコシダーゼ阻害剤としては、α-グルコシダーゼI、α-グルコシダーゼII、及びα-マンノシダーゼIが挙げられる。いくつかの実施形態では、グリコシダーゼ阻害剤は、α-マンノシダーゼIの阻害剤(例えば、キフネンシン)である。
【0168】
本明細書で使用する場合、「コアフコシル化」とは、N結合型グリカンの還元末端におけるN-アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)へのフコースの付加(「フコシル化」)を指す。そのような方法によって産生される抗体及びその組成物もまた提供される。
【0169】
いくつかの実施形態では、Fc領域(またはドメイン)に結合した複合N-グリコシド結合型糖鎖のフコシル化が低減される。本明細書で使用する場合、「複合N-グリコシド結合型糖鎖」は、一般的にアスパラギン297(Kabatの番号付けによる)に結合するが、複合N-グリコシド結合型糖鎖は他のアスパラギン残基に結合することもできる。「複合N-グリコシド結合型糖鎖」には、コア構造の非還元末端にマンノースのみが組み込まれた高マンノース型の糖鎖は含まれないが、1)コア構造の非還元末端側が、ガラクトース-N-アセチルグルコサミン(「gal-GlcNAc」とも呼ばれる)の1つ以上の分岐を有し、Gal-GlcNAcの非還元末端側が場合によりシアル酸、バイセクトN-アセチルグルコサミンなどを有するような複合型、または2)コア構造の非還元末端側が高マンノースN-グリコシド結合型糖鎖と複合型N-グリコシド結合型糖鎖の両方の分岐を有するようなハイブリッド型が含まれる。
【0170】
いくつかの実施形態では、「複合N-グリコシド結合型糖鎖」は、コア構造の非還元末端側が、0個、1個、または複数個のガラクトース-N-アセチルグルコサミン(「gal-GlcNAc」とも呼ばれる)の分岐を有し、Gal-GlcNAcの非還元末端側が場合によりシアル酸、バイセクトN-アセチルグルコサミンなどの構造をさらに有するような複合型を含む。
【0171】
本方法によれば、一般的に、少量のフコースのみが複合N-グリコシド結合型糖鎖に取り込まれる。例えば、異なる実施形態において、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満の抗体が、組成物中でフコースによるコアフコシル化を有する。いくつかの実施形態では、組成物中でフコースによるコアフコシル化を有する抗体は実質的に存在しない(すなわち、約0.5%未満)。いくつかの実施形態では、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約91%超、約92%超%、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、または約99%超の抗体が、組成物中で非フコシル化されている。
【0172】
いくつかの実施形態では、本明細書において、フコース残基を含むN-グリコシド結合型炭水化物鎖が実質的に存在しない(すなわち、約0.5%未満)抗体が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書において、抗体の重鎖の少なくとも1つまたは2つが非フコシル化されている抗体が提供される。
【0173】
上記のように、様々な哺乳動物宿主発現ベクター系を利用して抗体を発現させることができる。いくつかの実施形態では、培地にフコースは添加されない。いくつかの実施形態では、有効量のフコース類似体が培地に添加される。この関連において、「有効量」とは、抗体の複合N-グリコシド結合型糖鎖へのフコースの取り込みを少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%減少させるのに十分な類似体の量を指す。いくつかの実施形態では、本方法によって製造される抗体は、フコース類似体の非存在下で培養された宿主細胞から産生された抗体と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%の非コアフコシル化タンパク質(例えば、コアフコシル化を欠く)を含む。
【0174】
糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖と、糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合している糖鎖との含有量(例えば、比)は、例えば、実施例に記載されるようにして決定することができる。他の方法としては、ヒドラジン分解や酵素消化(例:生化学実験法23:糖タンパク質糖鎖研究法(学会出版センター)、高橋礼子編(1989年)参照)、放出された糖鎖の蛍光標識または放射性同位体標識の後、標識された糖鎖をクロマトグラフィーで分離することが挙げられる。また、放出された糖鎖の組成は、HPAEC-PAD法で分析することにより決定することができる(例えば、J.Liq Chromatogr.6:1557(1983)参照)。(一般的には米国特許出願公開第2004/0110282号を参照)。
【0175】
III.製品またはキット
別の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)を含む本開示の製剤を含む製品またはキットが提供される。
【0176】
製品またはキットは、容器をさらに含んでもよい。適当な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば、二室バイアル)、シリンジ(一室または二室シリンジ)、及び試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどのさまざまな材料から形成することができる。容器は製剤を保持する。いくつかの実施形態では、容器はガラスバイアルである。例えば、いくつかの実施形態では、ガラスバイアルは、10mgの抗体を含み、抗体は製剤中に約15mg/mLの濃度で存在する。
【0177】
製品またはキットは、容器の表面または容器に付属する、製剤の使用についての指示を示すことができるラベルまたは添付文書をさらに含んでもよい。ラベルまたは添付文書は、製剤が個体におけるSiglec-8関連疾患もしくは障害を治療及び/または予防するための皮下、静脈内、または他の様式の投与に有用であるか、それが意図されることをさらに示してもよい。いくつかの実施形態では、添付文書は、製剤の静脈内投与に関する説明書を含む。いくつかの実施形態では、添付文書は、製剤の皮下投与に関する説明書を含む。いくつかの実施形態では、添付文書は、抗Siglec-8抗体製剤を、例えば、約2℃から約8℃の間、例えば、4℃で保存することに関する説明書をさらに含む。
【0178】
製剤を保持する容器は、一回使用バイアル、または再構成された製剤の繰り返し投与を可能にする複数回使用バイアルであってよい。製造品またはキットは、好適な希釈剤を含む第2の容器を更に含んでもよい。製品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用上の指示を有する添付文書を含む商業的、治療的、及び使用者の視点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0179】
したがって、特定の実施形態では、製品またはキットは、個体に有効量の製剤を投与することを含む、個体においてSiglec-8関連疾患または障害を治療及び/または予防するための方法における抗Siglec-8抗体製剤の使用に関する説明書を含む。特定の実施形態では、製品は、抗Siglec-8製剤を含む医薬と、Siglec-8関連疾患または障害を治療及び/または予防するためにそれを必要とする個体へ医薬を投与することに関する説明書を含む添付文書とを含む。いくつかの実施形態では、添付文書は、治療が、Siglec-8関連疾患または障害を有する個体において1つ以上の症状を、医薬の投与前のベースラインレベルと比較して低減するのに有効であることをさらに示す。いくつかの実施形態では、個体は、抗体を含む医薬の投与前にSiglec-8関連疾患または障害であると診断される。特定の実施形態では、個体は、ヒトである。
【0180】
特定の実施形態では、本開示は、単回用量投与単位用のキットを提供する。このようなキットは、一室または多室のプレフィルドシリンジの両方を含む治療用抗体の水性製剤の容器を含む。例示的なプレフィルドシリンジは、Vetter GmbH、Ravensburg、Germanyより販売されている。
【0181】
別の実施形態では、本明細書において、オートインジェクターで投与するための、本明細書に記載の製剤を含む製造品またはキットが提供される。オートインジェクターは、起動時に患者または管理者によるさらなる必要な操作なしで内容物を投与する注射装置として述べることができる。オートインジェクターは、投与速度が一定である必要があり、投与時間が数分よりも長い場合の治療用製剤の自己投薬に特に適している。
【0182】
別の態様では、本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)を含む製剤を含む製品またはキットが提供される。製品またはキットは、本開示の方法における製剤の使用に関する説明書をさらに含んでもよい。したがって、特定の実施形態では、製品またはキットは、個体に有効量の製剤を投与することを含む、個体においてSiglec-8関連疾患または障害を治療または予防するための方法におけるヒトSiglec-8に結合する抗Siglec-8抗体を含む製剤の使用に関する説明書を含む。特定の実施形態では、製品またはキットは、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む製剤を含む医薬と、Siglec-8関連疾患または障害を治療及び/または予防するためにそれを必要とする個体に医薬を投与することに関する説明書を含む添付文書とを含む。
【0183】
本開示はまた、個体においてSiglec-8関連疾患または障害を治療または予防するための1つ以上の追加の医薬(例えば、第2の医薬)と組み合わせて本明細書に記載の抗Siglec-8抗体(例えば、ヒトSiglec-8に結合する抗体)を含む製剤を含む製品またはキットを提供する。製品またはキットは、本開示の方法における1つ以上の追加の医薬と組み合わせた製剤の使用に関する説明書をさらに含んでもよい。例えば、本明細書の製品またはキットは、任意に第2の医薬を含む容器をさらに含み、この場合、抗Siglec-8抗体を含む製剤は第1の医薬であり、その製品またはキットは、有効量で第2の医薬により個体を治療することに関する説明書をラベルまたは添付文書上にさらに含む。したがって、特定の実施形態では、製品またはキットは、個体においてSiglec-8関連疾患または障害を治療または予防するための方法における1つ以上の追加の医薬と組み合わせたヒトSiglec-8に結合する抗Siglec-8抗体を含む製剤の使用に関する説明書を含む。特定の実施形態では、製品またはキットは、ヒトSiglec-8に結合する抗体を含む製剤を含む医薬(例えば、第1の医薬)と、1つ以上の追加の医薬と、1つ以上の追加の医薬(例えば、第2の医薬)と組み合わせた第1の医薬の投与に関する説明書を含む添付文書とを含む。
【0184】
当然のことながら、本明細書に記載の態様及び実施形態は説明のためのものに過ぎず、それを鑑みさまざまな改変または変更が当業者に示されることになるが、それらは本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0185】
以下の実施例を参照することにより、本開示のより完全な理解が得られるであろう。しかしながら、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当然のことながら、本明細書に記載の実施例及び実施形態は説明のためのものに過ぎず、それを鑑みさまざまな改変または変更が当業者に示されることになるが、それらは本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれるものである。
【0186】
実施例1:抗Siglec-8抗体製剤のpHスクリーニング
この実施例は、抗Siglec-8製剤が凝集せずに最高の安定性を示すであろうpHを求めるために行った一連の実験を説明する。
【0187】
材料及び方法
pHスクリーニング
抗Siglec-8抗体HEKA及びHEKFを、表Aに示す各緩衝液に透析することによって10mg/mLで製剤化した。液体抗体製剤を、1または5回の凍結融解サイクルに供するか、または、示すとおり、4℃、25℃、もしくは37℃で1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、もしくは3ヶ月インキュベートした。
【表A】
【0188】
ELISA
ELISAプレート(Maxisorp 96ウェル、400μLの平底の透明なプレート)を1×PBS中の100μLの0.1μg/mL Siglec-8-ECDでコーティングした後、4℃で一晩インキュベートした。プレートを300μLの1×PBS+0.1%Tween(登録商標)-20で4回洗浄した後、600rpm、室温で1時間振盪しながらPBS-Tween(登録商標)中の2%BSAを200μL/ウェルで使用してブロッキングした。次いで、プレートを300μLの1×PBS+0.1%Tween(登録商標)-20でさらに4回洗浄した。次に、(ブロッキング緩衝液中)1.0μg/mLで開始する試験抗体の5倍希釈系列を100μL/ウェルを使用してプレートに適用し、室温で振盪しながら1時間インキュベートした。次いで、プレートを300μLの1×PBS+0.1%Tween(登録商標)-20でさらに4回洗浄した。100μLの二次抗体(ブロッキング緩衝液中0.2μg/mLのヤギ抗huFab:HRP;Jackson Immunoresearchカタログ番号115-035-071)を各ウェルに添加し、室温で振盪しながら1時間インキュベートした。次に、プレートを300μLの1×PBS+0.1%Tween(登録商標)-20でさらに4回洗浄した。100μLのTMB基質(Sgima T0440-1L)を各ウェルに添加し、5分間発色させた後、100μLの1M硫酸を添加することによって基質発色を停止させた。ELISAプレートを450nmで読み取った。
【0189】
SEC-HPLC
SUPERDEX(商標)200(GE Healthcare)2.8/300mm SECカラムを示した製剤緩衝液中、0.075mL/分の流量で使用した。ピークを以下のように割り当てた:12.0分(min)-ボイド;13.5分-デキストラン;14.1分-880kD;15.5分-444kD;18.0分-150kD;20.0分-67kD;23.0分-27kD(
図3A)。小さな抗Siglec-8抗体オリゴマーは15.4分ピークが観察された一方で、抗体モノマーは18.0分に溶出された。
【0190】
DSC
それぞれの製剤をブランクとして使用し、示差走査熱量測定(DSC)を60℃/時間で行い、20℃から110℃まで監視した(15分のプレスキャンあり)。製剤(表Aを参照)を37℃で2週間インキュベートした後、分析した。
【0191】
紫外可視分光測定
試験した製剤中の目に見える凝集体の存在の測定するために、抗体を含む溶液の400nmにおける吸光度をPerkin Elmer Lambda 35紫外可視分光計で測定した。抗体溶液の吸光度測定値を製剤緩衝液から差し引いた。
【0192】
SDS-PAGE
抗体を、4~20%Invitrogenゲル上におけるドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析して、安定性及び断片化を評価した。分析は、還元及び非還元条件下で行った。
【0193】
結果
抗Siglec-8抗体を、表Aに示したように製剤化し、凍結/融解に供し、上記のELISAによってSiglec-8-ECDとの結合に関してアッセイした。0時点における抗体HEKA及びHEKFの結合曲線及びEC50値をそれぞれ
図1A及び1Bに示す。37℃における1週間のインキュベーション後の同じ抗体製剤の結合曲線及びEC50値をそれぞれ
図1C及び1Dに示す。Siglec-8との抗体の結合は、異なるpH値製剤によっては大きな影響を受けなかった。
【0194】
次に、紫外可視分光測定を使用して、表Aに示した抗Siglec-8抗体製剤を、示した温度または凍結融解(1または5サイクル)での2週間の保存後に分析した。キュベットを400nmの吸光度で1回読み取った。HEKA及びHEKFの結果をそれぞれ
図2A及び2Bに示す。pH6、7、及びHis HEKA製剤において5回の凍結融解サイクル後に粒子が見えたが、それは沈殿せず、最終的に分散した。これらのデータは、抗体HEKAがアルギニンの存在下においてpH6でより安定であったことを示す。
【0195】
SEC-HPLCも使用して、抗Siglec-8抗体製剤中のIgGモノマー対小さなオリゴマーの形成を定量した。抗体オリゴマーのいくらかの増加がより高い温度で観察された(
図3B及び3C)が、全抗体の1%未満であった。HEKFに関してより小さなピークが観察されたが、これも1%未満であった(
図3C)。2週間後にpH5製剤から得られた代表的なピークを示す(表Aを参照)。これらのデータは、可溶性凝集体の存在がpH5、高温で観察されたことを示す。
【0196】
図4A及び4Bはそれぞれ、HEKAまたはHEKFを含む各製剤中のオリゴマーのパーセンテージを示す。示した温度での2週間後または示した数の凍結融解サイクル後に製剤を試験した。これらの結果は、抗体オリゴマーのいくらかの増加がより高い温度で見られるが、全抗体の1%未満であったという観察結果を裏付けた。これらのデータは、アルギニンが抗Siglec-8抗体の安定性を改善することを示唆する。
【0197】
抗Siglec-8抗体製剤を還元及び非還元SDS-PAGEによっても調べた。
図5Aは、0時点における示したHEKA及びHEKF製剤の還元及び非還元SDS-PAGE分析の結果を示す。1週間または2週間後に行った分析を
図5B~5Eに示す。試験したいずれの条件下でも大幅な断片化は観察されなかった。
【0198】
示差走査熱量測定(DSC)も使用して、抗体の安定性を調べた。HEKA及びHEKFに関するDSC分析及びTmピークの結果をそれぞれ表B及びCに示す。抗体は、pH6及びアルギニンの存在下でより良好な安定性を示した。
【表B】
【表C】
【0199】
まとめると、これらの結果は、抗Siglec-8抗体が、例えば、pH7における安定性と比較して、pH6でより良好な安定性を示したことを示す。
【0200】
実施例2:抗Siglec-8抗体製剤中のアルギニン濃度の賦形剤スクリーニング
実施例1に記載されている方法を使用して抗Siglec-8抗体製剤中の抗体の安定性及び凝集に対する影響に関してさまざまな賦形剤を試験した。まず、アルギニン濃度の影響を試験するために一連の製剤を生成した。
【0201】
結果
抗体凝集に対するアルギニン濃度の影響を紫外可視分光測定によって測定した。抗Siglec-8抗体を、表Dに示した緩衝液に従い10mg/mLで製剤化した後、1または5回の凍結融解サイクルに供し、紫外可視分光測定によって分析した。
【表D】
【0202】
図6A及び6Bに示されるとおり、抗Siglec-8抗体製剤中の50~200mMのアルギニンの存在により、凍結融解後のHEKA及びHEKF抗体の凝集が低減された。
【0203】
表Dに示した製剤の抗体オリゴマー化も上記のとおりSEC-HPLCによって分析した。製剤1に関する代表的なピークを
図7A及び7Bに示す。これらの結果は、両方の抗Siglec-8抗体に関して凍結融解後の小さな抗体オリゴマーの極めて小さな増加(≦0.1%)を示す。試験したすべての製剤の結果を
図8A(抗体HEKA)及び8B(抗体HEKF)に示す。100mMを超える濃度のアルギニンの効果が明らかであり、150mMで持続した。
【0204】
まとめると、これらの結果は、抗Siglec-8抗体製剤中におけるアルギニンの存在、特に100mMを超えるアルギニンの濃度が抗体の凝集及びオリゴマー化を低減することを示す。
【0205】
実施例3:抗Siglec-8抗体製剤中のスクロース、スクシナート、及びポリソルベート濃度に関する撹拌試験
抗Siglec-8抗体製剤中の抗体の安定性及び凝集に対する影響に関してさまざまな賦形剤を試験した。次に、スクロース、スクシナート、及びポリソルベート濃度の影響を試験するために一連の製剤を生成した。これらの撹拌試験における安定性を助けるためにスクロース及びポリソルベートを使用した。
【0206】
結果
撹拌後の抗体性能に対するポリソルベート濃度の影響を試験するために一連の緩衝液を構築した。これらの緩衝液は、100mMのアルギニン、40mMのNaCl、20mMのスクシナート、及び0%、0.002%、0.005%、0.01%、0.02%、及び0.05%の濃度のうちの1つのポリソルベート-80を含んでいた。HEKA抗体を10mg/mLで製剤化し、液体製剤を滅菌したガラス製剤バイアルに等分した。バイアルを200rpmで2日間水平に振盪した後、さらに2日間500rpmに加速した。4日後に、400nmにおける吸光度をアッセイした。
【0207】
撹拌実験の結果を
図9に示す。これらの結果は、ポリソルベートを含むすべてのHEKA製剤に関して低い吸光度値を示した。
【0208】
ポリソルベート含有製剤を、次に小さな抗体オリゴマーの形成に関してSEC-HPLCによって分析した。結果の概要を
図10及び表Eに示す。
【表E】
【0209】
400nmにおける吸光度値は、ポリソルベート濃度により大きくは変化しなかったが(
図9)、オリゴマー化の存在はポリソルベートレベルに影響されやすいことがわかった(
図10及び表E)。0.005%まではポリソルベートの濃度が低下するにつれ抗体オリゴマーの割合が増加したが、0.002%及び0%ポリソルベートでは低いオリゴマーレベルが観察された。
【0210】
次に、A
400nmによって測定される、アルギニン、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベートの抗体の凝集に対する影響を試験するために一連の製剤を生成した。ヒスチジンを50mMで使用した。試験したHEKA製剤及び得られた結果を
図11に示す。これらの結果は、アルギニンまたはヒスチジンを含む製剤が凝集を減少させ、スクロース及びポリソルベートが凍結時の抗体の安定性を改善したことを示した。
【0211】
次に、HEKA抗体撹拌後のアルギニン、スクロース、及びポリソルベート濃度の影響を調べた。バイアルを800rpmで1日撹拌したこと以外、上記のとおり撹拌を行った。試験した製剤、及びA
400nm値を表Fに示す。結果を
図12A及び表Fに示す。
【表F】
【0212】
これらの結果は、抗体製剤中のポリソルベートの存在がHEKAの凝集を低減したことを示した。
【0213】
これらの製剤をSEC-HPLCによって小さな抗体オリゴマーの形成に関して分析した(
図12B)。ポリソルベート-80を含まないバイアルは、撹拌後に濁り及びより大きなオリゴマーを示した。ポリソルベート-80を用いずに100mMスクロースを使用しても濁りが生じた。これらの結果は、アルギニン及びポリソルベートの存在により撹拌後にオリゴマー化が少ない抗体製剤がもたらされることを示した。
【0214】
HEKA製剤も凍結融解後の凝集及びオリゴマー化に関して試験した。製剤を生成し、表Gに従って1回の凍結融解サイクル(F/T)、5回の凍結融解サイクル(F/T 5×)、または撹拌(Agit)に供した。これらの製剤は、125mMのアルギニン-HCl、25mMのNaCl、及び20mMのコハク酸ナトリウム、pH6を含んでいた。
【表G】
【0215】
表Gに示されるとおり、吸光度値及びオリゴマー化のパーセンテージは、すべての製剤で一貫して低く、撹拌後に最低の濃度のポリソルベート-80に関してオリゴマー化のわずかな増加が観察された。
【0216】
スクロース及びポリソルベートのアルギニンとの相加効果がpH6で観察された。撹拌安定性データは、バイアルが撹拌された場合(例えば、輸送中)及び/または材料が凍結融解された場合に製剤が抗体の凝集を防いだことを示す。理論に束縛されることを望まないが、スクロースが凍結保護物質として機能し、アルギニンが抗体安定剤として機能し、ポリソルベートが凝集を最小限にするよう作用すると考えられる。
【0217】
実施例4:抗Siglec-8抗体製剤に対する成分除外及び目標重量試験
この実施例の目的は、125mMのアルギニン、80mMの塩化ナトリウム、20mMのスクシナート、及び0.025%のポリソルベート80、pH6.0を含む抗Siglec-8製剤緩衝液中の各成分の働き及び影響を確認することであった。
【0218】
対照として上記のすべての成分を含む製剤、または各成分を一度に1つ除外した製剤を調製した(1Lを二組)。すべての成分の目標重量の下限(20%減)及び上限(20%増)で製剤緩衝液を調製した。pH及び導電率を22.0~24.0℃で測定した。
【0219】
結果を表Hに示す。ポリソルベート80は、添加容積が極めて小さく、試験したパラメータに影響がないため、この試験では評価しなかった。
【表H】
【0220】
結果は、L-アルギニンを除外するとpHの低下につながることを示した。L-アルギニンHClまたは塩化ナトリウムを除外すると導電率の低下につながった。コハク酸を除外するとpHの上昇につながった。
【0221】
理論に束縛されることを望まないが、これらの製剤においてL-アルギニン及びL-アルギニンHClが緩衝液/安定剤として働き、コハク酸が緩衝液として働き、塩化ナトリウムが等張性をもたらし、ポリソルベート80が界面活性剤として働き、注射用水が溶媒であると考えられる。
【0222】
緩衝液調製に対する±20%の目標重量変動の影響を調べるために試験を行った。結果を表Iに示す。
【表I】
【0223】
結果は、成分の割合の変化によるpHへの影響がないことを示した。ただし、導電率に対する直接的な影響が範囲の両端で観察された。導電率基準範囲は22.0~24.0℃で13.35~16.35mS/cmであり、pH基準範囲は5.90~6.10であった。
【0224】
これらの試験により、この製剤緩衝液の各成分の機能が確認された。いずれかの成分を除外すると、緩衝液のpHまたは導電率が基準外になるであろう。目標重量実験により、両端で導電率が基準外になることが示された。
【0225】
実施例5:抗Siglec-8抗体製剤中のポリソルベート濃度に関する凍結/融解及び撹拌試験
この実施例の目的は、0.0%、0.015%、0.025%、及び0.030%のポリソルベート80濃度で調製した4つの抗Siglec-8抗体製剤に対する凍結/融解及び撹拌の影響を評価することであった。
【0226】
5回の凍結/融解サイクルは、以下の製剤を含むHDPEボトル(合計12サンプル)を使用して行った。
●0.0%PS80を含む15mg/mLの抗Siglec-8 HEKA、1回、3回、及び5回の凍結/融解サイクル
●0.015%PS80を含む15mg/mLの抗Siglec-8 HEKA、1回、3回、及び5回の凍結/融解サイクル
●0.025%PS80を含む15mg/mLの抗Siglec-8 HEKA、1回、3回、及び5回の凍結/融解サイクル
●0.030%PS80を含む15mg/mLの抗Siglec-8 HEKA、1回、3回、及び5回の凍結/融解サイクル
【0227】
サンプル体積は、8.0mLのHDPEボトル中に5.6mLとした(70%充填)。-20℃で少なくとも1時間ゆっくりと凍結した後、-80℃で少なくとも1時間凍結を完了させた。同じランでバッチ試験を行う前にすべてのサンプルを室温で融解させた。
【0228】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)、HIAC、及び視覚による検証/外観を使用して分析を行った。TSKgel G3000SWxlカラム(Tosoh#08541)を使用してSEC分析を行った。移動相は、0.2Mのリン酸ナトリウム、pH7.0から構成された。移動相を希釈剤として使用してサンプルを5mg/mLに希釈した。流量は1.0mL/分とした。Agilent 1260 HPLCを使用して周囲温度で分離を行った。280nmにおける吸光度を監視し、ピーク面積を求めるために使用した。フッ化炭素コーティングキャピラリー(FC)カートリッジを備えたICE3装置を使用して周囲温度でicIEFを行った。分離及び分析を助けるために使用した添加物は4M尿素、3~10のpH範囲に及ぶ4%pharmalyte、ならびにそれぞれ4.65及び9.22の低pIマーカー及び高pIマーカーであった。
【0229】
撹拌試験を室温で行った。回転式ミキサーで毎分10回転の撹拌速度を使用した。20の試験サンプルを10Rバイアル中に調製した(7.0mL充填)。
●0.0%PS80を含む15mg/mLの抗Siglec-8 HEKA、0、4、8、24、及び48時間
●0.015%PS80を含む15mg/mLの抗Siglec-8 HEKA、0、4、8、24、及び48時間
●0.025%PS80を含む15mg/mLの抗Siglec-8 HEKA、0、4、8、24、及び48時間
●0.030%PS80を含む15mg/mLの抗Siglec-8 HEKA、0、4、8、24、及び48時間
【0230】
表Jに示されるとおり、凍結/融解試験の結果は、SoloVPE(14.8~14.9mg/mL範囲)において大きな変化を示さなかった。最大5回の凍結/融解サイクルまで0.0%、0.015%、0.025%、及び0.030%のPS80に関してSECにより顕著な傾向及び/または差は観察されなかった(99.2~99.3%のモノマー範囲)。icIEFは、≦1%の%酸性成分、≦1.8%の主成分、及び≦1%の塩基性成分を示した。HIACは、PS80を含むサンプルと比較して、PS80を含まないサンプルでより多くの粒子が観察されたことを示した。1回の凍結/融解でPS80を含まない抗体は、10μMのUSP承認基準(≦6000カウント/容器)を満たしていなかった。3回及び5回の凍結/融解でPS80を含まない抗体は、10μM(≦6000カウント/容器)及び25μM(≦600カウント/容器)のUSP承認基準を満たしていなかった。外観に関しては、PS80を含まないサンプルはいくらかの目に見える粒子を含んでいた。
【0231】
表Kに示されるとおり、撹拌試験の結果は、SoloVPEにより濃度の変化を示さなかった。最大48時間まで0.0%、0.015%、0.025%、及び0.030%のPS80に関してSECにより顕著な傾向及び/または差は観察されなかった(99.2~99.1%モノマー範囲)。HIACは、PS80を含むサンプルと比較して、PS80を含まないサンプルでより多くの粒子が観察されたことを示した。外観に関しては、PS80を含まないサンプルはいくらかの目に見える粒子を含んでいた。
【0232】
凍結/融解及び撹拌の両試験は、ポリソルベート80を含まないサンプルでHIACにより高い粒子数を示した。ポリソルベート80を含まない1回、3回、及び5回の凍結/融解サンプルは、≧10μMまたは≧25μMのいずれの粒子数に関してもUSP承認基準を満たさなかった。これは、製剤中のポリソルベート80の重要性を裏付ける。それぞれの試験において3つすべてのポリソルベート80の濃度は非常に類似した分析結果をもたらし、これは、操作後の製品の品質がほとんど変わらない~まったく変わらないことを示す。これは、0.025%の製剤中のPS80の濃度が正当な目標であり、試験した範囲(0.015%~0.030%)が類似の許容される結果をもたらすことを示唆する。
【表J-1】
【表J-2】
【表J-3】
【表K-1】
【表K-2】
【表K-3】
【0233】
配列
すべてのポリペプチド配列は、特に断らない限り、N末端からC末端の方向に表される。
すべての核酸配列は、特に断らない限り、5’から3’の方向に表される。
2E2 HVR-H1のアミノ酸配列
IYGAH(配列番号1)
2E2 HVR-H2のアミ酸配列
VIWAGGSTNYNSALMS(配列番号2)
2E2 HVR-H3のアミノ酸配列
DGSSPYYYSMEY(配列番号3)
2E2 HVR-L1のアミノ酸配列
SATSSVSYMH(配列番号4)
2E2 HVR-L2のアミノ酸配列
STSNLAS(配列番号5)
2E2 HVR-L3のアミノ酸配列
QQRSSYPFT(配列番号6)
2E2 RHE重鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLTIYGAHWVRQAPGKGLEWVGVIWAGGSTNYNSALMSRFTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCARDGSSPYYYSMEYWGQGTTVTVSS(配列番号7)
2E2 RKA軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIK(配列番号8)
2E2 RKF軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIK(配列番号9)
例示的な重鎖FR1のアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLT(配列番号10)
例示的な重鎖FR2のアミノ酸配列
WVRQAPGKGLEWVG(配列番号11)
例示的な重鎖FR3のアミノ酸配列
RFTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号12)
例示的な重鎖FR4のアミノ酸配列
WGQGTTVTVSS(配列番号13)
例示的な軽鎖FR1のアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSC(配列番号14)
例示的な軽鎖FR2のアミノ酸配列
WFQQKPGQAPRLLIY(配列番号15)
例示的な軽鎖FR3のアミノ酸配列
GIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号16)
例示的な軽鎖FR3のアミノ酸配列
GIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYC(配列番号17)
例示的な軽鎖FR4のアミノ酸配列
FGPGTKLDIK(配列番号18)
HEKA重鎖及びHEKF重鎖のアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLTIYGAHWVRQAPGKGLEWVGVIWAGGSTNYNSALMSRFTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCARDGSSPYYYSMEYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号19)
HEKA軽鎖のアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号20)
HEKF軽鎖のアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSATSSVSYMHWFQQKPGQAPRLLIYSTSNLASGIPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSSYPFTFGPGTKLDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号21)
IgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号22)
IgG4重鎖定常領域のアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG(配列番号23)
Igκ軽鎖定常領域のアミノ酸配列
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号24)
ヒトSiglec-8のアミノ酸配列
GYLLQVQELVTVQEGLCVHVPCSFSYPQDGWTDSDPVHGYWFRAGDRPYQDAPVATNNPDREVQAETQGRFQLLGDIWSNDCSLSIRDARKRDKGSYFFRLERGSMKWSYKSQLNYKTKQLSVFVTALTHRPDILILGTLESGHSRNLTCSVPWACKQGTPPMISWIGASVSSPGPTTARSSVLTLTPKPQDHGTSLTCQVTLPGTGVTTTSTVRLDVSYPPWNLTMTVFQGDATASTALGNGSSLSVLEGQSLRLVCAVNSNPPARLSWTRGSLTLCPSRSSNPGLLELPRVHVRDEGEFTCRAQNAQGSQHISLSLSLQNEGTGTSRPVSQVTLAAVGGAGATALAFLSFCIIFIIVRSCRKKSARPAAGVGDTGMEDAKAIRGSASQGPLTESWKDGNPLKKPPPAVAPSSGEEGELHYATLSFHKVKPQDPQGQEATDSEYSEIKIHKRETAETQACLRNHNPSSKEVRG(配列番号25)
ヒトSiglec-8のアミノ酸配列
GYLLQVQELVTVQEGLCVHVPCSFSYPQDGWTDSDPVHGYWFRAGDRPYQDAPVATNNPDREVQAETQGRFQLLGDIWSNDCSLSIRDARKRDKGSYFFRLERGSMKWSYKSQLNYKTKQLSVFVTALTHRPDILILGTLESGHPRNLTCSVPWACKQGTPPMISWIGASVSSPGPTTARSSVLTLTPKPQDHGTSLTCQVTLPGTGVTTTSTVRLDVSYPPWNLTMTVFQGDATASTALGNGSSLSVLEGQSLRLVCAVNSNPPARLSWTRGSLTLCPSRSSNPGLLELPRVHVRDEGEFTCRAQNAQGSQHISLSLSLQNEGTGTSRPVSQVTLAAVGGAGATALAFLSFCIIFIIVRSCRKKSARPAAGVGDTGMEDAKAIRGSASQGPLTESWKDGNPLKKPPPAVAPSSGEEGELHYATLSFHKVKPQDPQGQEATDSEYSEIKIHKRETAETQACLRNHNPSSKEVRG(配列番号26)
HEKA IgG4重鎖のアミノ酸配列(IgG4はS228P変異を含む)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLTIYGAHWVRQAPGKGLEWVGVIWAGGSTNYNSALMSRFTISKDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCARDGSSPYYYSMEYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG(配列番号27)
【配列表】
【国際調査報告】