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特表2024-508333カテニンmRNAを含む組成物および骨折を治すためのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-26
(54)【発明の名称】カテニンmRNAを含む組成物および骨折を治すためのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20240216BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240216BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240216BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61K47/64
A61P19/00
A61K9/48
A61K9/51
A61K45/00
A61K31/7088
C12N15/12 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553341
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 US2022018366
(87)【国際公開番号】W WO2022187263
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/155,263
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522057766
【氏名又は名称】ステッドマン・フィリポン・リサーチ・インスティテュート
(71)【出願人】
【識別番号】523183770
【氏名又は名称】チェルシー・バーニー
(71)【出願人】
【識別番号】523331577
【氏名又は名称】ラルフ・マルキュシオ
(71)【出願人】
【識別番号】523331588
【氏名又は名称】ジョン・ピー・クック
(71)【出願人】
【識別番号】523331599
【氏名又は名称】ダニエル・エル・キス
(71)【出願人】
【識別番号】523331603
【氏名又は名称】フランチェスカ・タラバリ
(71)【出願人】
【識別番号】523331614
【氏名又は名称】アンナ-ローラ・ネルソン
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】チェルシー・バーニー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・マルキュシオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ・フォンターナ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・エル・マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ピー・クック
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・エル・キス
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスカ・タラバリ
(72)【発明者】
【氏名】ニコル・エアハルト
(72)【発明者】
【氏名】アンナ-ローラ・ネルソン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC09
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZA961
4C084ZA962
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZA96
(57)【要約】
本開示は、損傷、疾患、または欠損のせいで骨がないまたは減少した局所的領域において骨修復を改善する、骨治癒を加速する、および/または新しい骨を生成する目的で骨形成を刺激する方法であって、β-カテニンmRNA複合体を含む組成物を対象に投与することを含む方法に関係する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において骨治癒を刺激し、骨治癒を加速し、および/または骨治癒を改善する方法であって、β-カテニンmRNA複合体を含む組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
骨治癒は骨折治癒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
骨再生は対象において刺激される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
再生は対象における骨折部位内で生じる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
β-カテニンmRNAは機能獲得型変異を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
β-カテニンGOFmRNAの1つまたはそれ以上のコドンは、i)mRNAの安定性および/もしくは翻訳可能性を最適化する;ならびに/またはii)mRNAの免疫原性を低減するように改変されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
β-カテニンmRNAは環状である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
β-カテニンmRNA複合体は、脂質トランスフェクティング剤にカプセル化されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
脂質トランスフェクティング剤は脂質ナノ粒子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
β-カテニンmRNA複合体はミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)に結合している、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
MCMは球状または桿状である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
MCMは、Ca2+および/またはPO 3-を含むミネラルコーティングを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
MCMは、少なくとも1つの化学ドーパントを含むミネラルコーティングを含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの化学ドーパントはフッ化物またはストロンチウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
組成物は骨伝導性移植片をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
骨伝導性移植片は、自家移植片、同種移植片、ミネラル除去された骨基質、およびコラーゲンスキャフォールドからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
組成物は注射を経て対象に投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
注射は対象の骨欠損内に対して行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象は骨折を有し、組成物は、膜内骨膜修復期中または骨折治癒の軟骨内修復期の終了時に投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
対象は骨折を有し、組成物は、膜内骨膜修復期中および骨折治癒の軟骨内修復期の終了時に投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
β-カテニンmRNA複合体を含む組成物。
【請求項22】
β-カテニンmRNAは機能獲得型変異を有する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
β-カテニンGOFmRNAの1つまたはそれ以上のコドンは、i)mRNAの安定性および/もしくは翻訳可能性を最適化する;ならびに/またはii)mRNAの免疫原性を低減するように改変されている、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
β-カテニンmRNAは環状である、請求項21~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
β-カテニンmRNA複合体は、脂質トランスフェクティング剤にカプセル化されている、請求項21~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
脂質トランスフェクティング剤は脂質ナノ粒子である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
β-カテニンmRNA複合体はミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)に結合している、請求項21~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
MCMは球状または桿状である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
MCMは、Ca2+および/またはPO 3-を含むミネラルコーティングを含む、請求項27または28に記載の組成物。
【請求項30】
MCMは、少なくとも1つの化学ドーパントを含むミネラルコーティングを含む、請求項27~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
少なくとも1つの化学ドーパントはフッ化物またはストロンチウムである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
組成物は骨伝導性移植片をさらに含む、請求項21~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
骨伝導性移植片は、自家移植片、同種移植片、ミネラル除去された骨基質、およびコラーゲンスキャフォールドからなる群から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
対象において骨治癒を刺激し、骨治癒を加速し、および/または骨治癒を改善するのに使用するための請求項21~33のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、対象において骨折修復を促進する方法であって、ミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)に結合したβ-カテニンmRNA複合体を含む組成物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0002】
本出願は、PCT国際特許出願として2022年3月1日に出願されており、2021年3月1日に出願された米国特許仮出願第63/155,263号の利益および優先権を主張する。前記特許文献の全開示は参照によってその全体を組み入れる。
【0003】
配列表
本出願は配列表を含み、これはASCIIフォーマットで電子的に提出されており、本明細書に参照によりその全体をここに組み入れる。前記ASCIIコピーは、2022年2月24日に作成され、18472-0015USU1_SL.txtと名付けられ、サイズは12キロバイトである。
【背景技術】
【0004】
骨折は、世界的に一番よくある損傷の1つである。遷延または偽関節のような骨折治癒での合併症は、健常な個人のおおよそ10~15%で起こると推定されている(非特許文献1)。しかし、治癒不良率は、高速損傷に続いてまたは、糖尿病、肥満、老化、エストロゲン欠乏、栄養障害、および喫煙を含む高併存症を抱えた個人において50%に近づく(非特許文献2)。ランセット委員会は、開放骨折の処置を、問題がある治癒を駆動するその傾向ならびに患者の生活の質および治療費負担に対してこれが生み出すきわめて大きな影響に基づいて、世界の健康を改善する3つの最も価値が高い外科手術技法の1つとして挙げた(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。したがって、骨折修復を増強するためのアプローチという未だ対処されていない臨床的必要性が残っている。
【0005】
治癒不十分な骨折を処置する現在の標準治療は、生体力学的安定性を増やすまたは骨移植の適用を通じて治癒を促進する外科的介入である。骨自家移植は、依然としてこれらの場合に骨治癒を増強するための貴重な標準臨床技法である。自家移植は良好な治療結果と関連しているが、骨採取は手術時間および合併症のリスクを約60%増やし、高発生率の供与部位罹患率と関連しており、大きな欠損を充填するのに入手可能な骨は不十分である。移植骨はいくつかの形状因子では容易に入手可能であるが、製品不良率は20~40%の間と報告されている(非特許文献6;非特許文献7)。高齢患者での外科手術のリスクを回避するために、外科的介入に先立ってこれらの患者は最長1年間モニターされることが多い。その結果、高齢の骨折患者は長期の回復期間を経験することが多く、脆弱性、うつ状態、および自立心の喪失が増加してしまい、進行性の合併症が病的状態を増加させる。骨再生を刺激する非外科的治療薬を開発し有効にすれば、骨折治癒での臨床選択肢および結果を改善することができると考えられる。しかし、骨折修復を促進するまたは偽関節を処置する薬理剤でFDA承認されたものはない(非特許文献8)。したがって、非外科的送達プラットホームを通じて骨折治癒を刺激する治療薬の未だ対処されていない臨床的必要性もある。
【0006】
骨は、真の再生潜在力を備えた数少ない器官の1つである。治癒過程は、胚発生プログラムを繰り返して、内軟骨性骨化の過程を通じて軟骨テンプレートから間接的に骨を形成する(非特許文献9)。内軟骨性骨化の細胞および分子機序についての理解が近年著しく向上してきた。最近の研究によれば、軟骨細胞は新しい骨を生み出す骨芽細胞になることが実証されている(非特許文献10)。しかし、骨折治癒について調査中の大半の治療薬は、直接的、または膜内の骨修復を促進することを目指している(非特許文献11)。現在の治療法と骨折修復の内在性の機序の間のこのような断絶が、既存の骨誘導治療薬を用いた結果が不十分であるまたは一致しないことを潜在的に説明している。
【0007】
骨形成タンパク質(BMP)は、BMP2を外科的に移植されたコラーゲンスポンジ上に結合させる臨床製品であるINFUSE(登録商標)と共に最も広く認識されている骨誘導性タンパク質である。INFUSE(登録商標)は、脛骨骨折という狭い適応内でFDA承認を受けているが、幅広いオフラベル使用がかつて報告された。BMPの臨床使用は、高いコスト、臨床効果の限られた証拠、および深刻なオフターゲット効果のせいで支持されなくなった(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。最近では、副甲状腺(FORTEO(登録商標)、TYMLOS(登録商標))またはWnt(EVENITY(登録商標)、PROTELOS(登録商標))経路に作用することにより、骨粗鬆症性骨折を予防するように設計されたいくつかの全身性骨同化作用薬も市場に出ている。それぞれの全身性骨同化作用薬が、齧歯類モデルにおいて増強された骨折治癒の臨床前証拠をいくらか有するが、現在まで臨床的有用性の証拠はない(非特許文献15;非特許文献16)。
【0008】
もう1つの骨誘導プログラムであるWntシグナル伝達は、β-カテニン依存性カノニカル経路およびβ-カテニン非依存性非カノニカル経路に従って分類される。一部の証拠により非カノニカル経路が骨形成の調節において役割を果たす可能性があることが示唆されているが、カノニカルWnt/β-カテニン経路は骨形成および膜内骨修復を促進するその役割が十分に確立している(非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20)。軟骨内骨形成および修復中のカノニカルWntシグナル伝達の役割を確定するために行われた研究は限られている。近年では、軟骨細胞が軟骨内骨発生(非特許文献21)および修復(非特許文献22)中に骨芽細胞になることを実証する研究が急速に拡大し検証されてきた。最新のデータでは、カノニカルWnt経路が、軟骨細胞から骨芽細胞変換に必要な重要な「分子スイッチ」の機能を果たすことが示唆されている(非特許文献23)。
【0009】
カノニカルWnt経路のいくつかのモジュレーターは、臨床前および臨床モデルで試験された。細胞内輸送および経路活性化を可能にするにはWntリガンドの脂質修飾が必要である。したがって、組換えWntリガンドの簡単な製造および送達は経済的ではない(非特許文献24)。大多数の商業戦略が、Wntシグナル伝達を間接的に活性化するために経路阻害因子に対して中和抗体を利用する。代わりに、天然元素であるフッ化物およびストロンチウムがWntシグナル伝達を活性化することが明らかにされている。フッ化物は、破壊複合体の活性を遮断しWnt阻害因子の分泌を減少させることにより機能する。ストロンチウムは、同時に骨形成を増加させ骨吸収を減少させて、スクレロスチンの発現を減少させWnt3aおよびWnt11の発現を増加させることによりWnt経路に作用することが明らかにされている。しかし、現在まで、これらのWnt活性化アプローチは効果的ではなく(非特許文献15;非特許文献16)、骨折修復を加速するその能力について試験されておらず、高度に生理活性があり局在化されたWnt活性化療法を生み出すためには代替のアプローチが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Giannoudisら 2005年 Injury 36 S3:S20~27頁
【非特許文献2】Hellwinkel and Miclau 2020年 JBJS Rev 8:e1900221
【非特許文献3】Mearaら、2015年 Lancet 386:569~624頁
【非特許文献4】Bagguleyら、2019年 BMJ Open 9:e029812
【非特許文献5】O’Neillら、2011年 Spine J 11:641~646頁
【非特許文献6】Enneking and Campanacci 2001年 J Bone Joint Surg、Amer 83巻-A:971~986頁
【非特許文献7】Wheeler and Enneking 2005年 Clin orthopaed related res 36~42頁
【非特許文献8】Kostenuik and Mirza 2017年 J Orthopaed res:offic pub Orthopaed Res Soc 35:213~223頁
【非特許文献9】Bahneyら、2019年 J orthopaed res:office pub Orthopaed Res Soc 37:35~50頁
【非特許文献10】Bahneyら、2014年 J Bone Miner Res 29:1269~1282頁
【非特許文献11】Almubarakら、2015年 Bone 83:197~209頁
【非特許文献12】Benglisら、2008年 Neurosurg 62:ONS423~431頁
【非特許文献13】Carrageeら、2011年 The Spine J:office J N Am Spine Soc 11:471~491頁
【非特許文献14】Tannoury and An 2014年 The Spine J:office J N Am Spine Soc 14:552~559頁
【非特許文献15】Schemitschら、2020年 J Bone Joint Surg、Amer 102巻:693~702頁
【非特許文献16】Bhandariら、2020年 J Bone Joint Surg、Amer 102巻:1416~1426頁
【非特許文献17】Monroeら、2012年 Gene 492:1~18頁
【非特許文献18】Schupbachら、2020年 Bone 138:115491頁
【非特許文献19】Wongら、2018年 Front Bioeng Biotechnol 6:58頁
【非特許文献20】Grigoryanら、2008年 Genes & Dev 22:2308~2341頁
【非特許文献21】Yangら、2014年 PNAS USA 1302703111
【非特許文献22】Wongら、2020年 J orthopaed res:office pub Orthopaed Res Soc 24904
【非特許文献23】Wongら、2020年 bioRxiv 2020.2003.2011.986141
【非特許文献24】Takadaら、2006年 Dev Cell 11:791~801頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、本開示は、損傷、疾患、または欠損のせいで骨がないまたは減少している局所領域において骨修復を改善し、骨治癒を加速し、および/または新しい骨を生成する目的で骨形成を刺激する方法であって、β-カテニンmRNA複合体を含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。一態様では、本開示は、対象において骨治癒を刺激し、骨治癒を加速し、および/または骨治癒を改善する方法であって、β-カテニンmRNA複合体を含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。β-カテニンmRNA「複合体」とは、mRNAが安定化/送達剤と複合体化していることを意味する。一実施形態では、骨治癒は骨折治癒である。本開示に従った方法の一実施形態では、対象は正常な骨治癒を有する。別の実施形態では、対象は遷延したまたは偽関節骨治癒を有する。
【0012】
別の態様では、本開示は、対象において骨折修復を加速するための方法であって、β-カテニンmRNA複合体を含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0013】
別の態様では、本開示は、対象において変形治癒、遷延治癒、または偽関節を処置する方法であって、β-カテニンmRNA複合体を含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0014】
本開示に従った方法の一実施形態では、対象において骨再生が刺激される。「刺激される」とは、本明細書で使用される場合、促進されるまたは増強されることを意味する。別の実施形態では、骨再生は対象の骨折部位内で生じる。
【0015】
別の態様では、本開示は、対象において骨再生を刺激するための方法であって、β-カテニンmRNA複合体を含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0016】
本開示に従った方法の一実施形態では、対象においてWntシグナル伝達経路が活性化される。用語「活性化される」とは、本文脈で使用される場合、オンにされることを意味する。
【0017】
本開示に従った方法の一実施形態では、β-カテニンmRNA(複合体の)は、破壊されにくいβ-カテニンmRNAである。「破壊されにくい」とは、本明細書で使用される場合、リン酸化するおよび/またはユビキチン化することができず、それに続くプロテアソーム分解の標的にすることができない改変β-カテニンタンパク質を産生するmRNA配列のことである。同様に、この改変は、機能獲得型変異を有するβ-カテニンmRNAと呼ぶことができる。「破壊されにくい」または「機能獲得型」(「GOF」)β-カテニンタンパク質は、カノニカルWntシグナル伝達経路の下流活性化をもたらす。
【0018】
本開示に従った方法の一実施形態では、β-カテニンGOFmRNAの1つまたはそれ以上のコドンは、i)mRNAの安定性および/もしくは翻訳可能性を最適化するならびに/またはii)mRNAの免疫原性を減少させるように改変されている。
【0019】
本開示に従った方法の一実施形態では、β-カテニンmRNA(複合体の)は環状である。別の実施形態では、β-カテニンmRNAは直鎖状である。
【0020】
本開示に従った方法の一実施形態では、β-カテニンmRNA複合体は、脂質トランスフェクト剤にカプセル化されている。別の実施形態では、脂質トランスフェクト剤は脂質ナノ粒子である。さらに別の実施形態では、脂質ナノ粒子は有機相と水相の組合せを含み、有機相はエタノール中に脂質を含む。さらなる実施形態では、脂質は、DLin-MC3、DSPC、コレステロール、およびDMG-PEGである。さらにさらなる実施形態では、脂質DLin-MC3、DSPC、コレステロール、およびDMG-PEGは、約50対約10.5対約38対約1.5の比である。
【0021】
本開示に従った方法の一実施形態では、β-カテニンmRNA複合体は、ミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)に結合している。別の実施形態では、mRNAは、脂質トランスフェクト剤にカプセル化され、こうして得られた複合体はMCMに結合される。さらに別の実施形態では、mRNAそれ自体がMCMに結合している。
【0022】
本開示に従った方法の一実施形態では、MCMは球状または桿状である。別の実施形態では、MCMは生体適合性である。さらに別の実施形態では、MCMは生分解性である。
【0023】
本開示に従った方法の一実施形態では、MCMは、Ca2+および/またはPO 3-を含むミネラルコーティングを含む。別の実施形態では、MCMは、少なくとも1つの化学ドーパントを含むミネラルコーティングを含む。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの化学ドーパントはフッ化物またはストロンチウムである。MCMの化学ドーピングは、β-カテニンmRNAのトランスフェクションを改善しうる。
【0024】
本開示に従った方法の一実施形態では、MCMは生分解性スキャフォールド上に捕捉される。本開示に従った方法の別の実施形態では、MCMはハイドロゲル上に捕捉される。別の実施形態では、ハイドロゲルはアルギン酸である。
【0025】
本開示に従った方法の一実施形態では、組成物は骨伝導性移植片をさらに含む。別の実施形態では、骨伝導性移植片は、自家移植片、同種移植片、ミネラル除去された骨基質、およびコラーゲンスキャフォールドからなる群から選択される。
【0026】
本開示に従った方法の一実施形態では、組成物は注射を介して対象に投与される。別の実施形態では、組成物は、皮下または経皮注射を介して投与される。さらに別の実施形態では、組成物は、対象に局所的に注射される。「局所的に」とは、骨治癒および/または骨再生が望まれる部位に直接的に、を意味する。さらに別の実施形態では、組成物は、対象の骨欠損中におよび/またはこれに近接して注射される。語句「骨欠損」とは、本明細書で使用される場合、骨裂け目、分節骨欠損、骨亀裂、骨折皮膚硬結、壊死骨、および/または限局性骨減少症のことである。
【0027】
本開示に従った方法の一実施形態では、対象は骨折を有し、組成物は、膜内骨膜修復期中または骨折治癒の軟骨内修復期の終了時に投与される。別の実施形態では、対象は骨折を有し、組成物は、膜内骨膜修復期中および骨折治癒の軟骨内修復期の終了時に投与される。さらに別の実施形態では、対象は骨折を有し、組成物は、最初の骨膜治癒応答を促進するために急性炎症に続いてまたは軟骨内修復を促進するために治癒の軟皮膚硬結期に投与される。
【0028】
本開示に従った方法の一実施形態では、β-カテニンmRNA複合体は、組成物を投与するとMCMから徐々に放出される。本開示に従った方法の別の実施形態では、カノニカルWntシグナル伝達は組成物を投与すると活性化される。本開示に従った方法のさらに別の実施形態では、組成物を投与すると軟骨が骨に軟骨内変換される。
【0029】
一態様では、本開示は、β-カテニンmRNA複合体を含む組成物を提供する。
【0030】
本開示に従った組成物の一実施形態では、β-カテニンmRNAは、破壊されにくいβ-カテニンmRNAである。本開示に従った組成物の別の実施形態では、β-カテニンmRNAは機能獲得型変異を有する。別の実施形態では、β-カテニンGOFmRNAの1つまたはそれ以上のコドンは、i)mRNAの安定性および/もしくは翻訳可能性を最適化するならびに/またはii)mRNAの免疫原性を減少させるように改変されている。
【0031】
本開示に従った組成物の一実施形態では、β-カテニンmRNAは環状である。別の実施形態では、β-カテニンmRNAは直鎖状である。
【0032】
本開示に従った組成物の一実施形態では、β-カテニンmRNA複合体は、脂質トランスフェクト剤にカプセル化されている。別の実施形態では、脂質トランスフェクト剤は脂質ナノ粒子である。さらに別の実施形態では、脂質ナノ粒子は有機相と水相の組合せを含み、有機相はエタノール中に脂質を含む。さらなる実施形態では、脂質は、DLin-MC3、DSPC、コレステロール、およびDMG-PEGである。さらにさらなる実施形態では、脂質DLin-MC3、DSPC、コレステロール、およびDMG-PEGは、約50対約10.5対約38対約1.5の比である。
【0033】
本開示に従った組成物の一実施形態では、β-カテニンmRNA複合体は、ミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)に結合している。
【0034】
本開示に従った組成物の一実施形態では、MCMは球状または桿状である。別の実施形態では、MCMは生体適合性である。さらに別の実施形態では、MCMは生分解性である。
【0035】
本開示に従った組成物の一実施形態では、MCMは、Ca2+および/またはPO 3-を含むミネラルコーティングを含む。別の実施形態では、MCMは、少なくとも1つの化学ドーパントを含むミネラルコーティングを含む。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの化学ドーパントはフッ化物またはストロンチウムである。
【0036】
本開示に従った組成物の一実施形態では、MCMは生分解性スキャフォールド上に捕捉される。本開示に従った組成物の別の実施形態では、MCMはハイドロゲル上に捕捉される。別の実施形態では、ハイドロゲルはアルギン酸である。
【0037】
一実施形態では、本開示に従った組成物は骨伝導性移植片をさらに含む。別の実施形態では、骨伝導性移植片は、自家移植片、同種移植片、ミネラル除去された骨基質、およびコラーゲンスキャフォールドからなる群から選択される。
【0038】
ある特定の実施形態では、本開示に従った医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。
【0039】
一実施形態では、本開示に従った組成物は、注射を介した投与用に処方される。別の実施形態では、組成物は皮下または経皮注射用に処方される。
【0040】
ある特定の実施形態では、本開示に従った組成物は、対象において骨治癒を刺激する、骨治癒を加速する、および/または骨治癒を改善するのに使用することを目的とする。一実施形態では、骨治癒は骨折治癒である。
【0041】
一実施形態では、本開示に従った組成物は、対象において骨折修復を加速するのに使用することを目的とする。
【0042】
別の実施形態では、本開示に従った組成物は、対象において変形治癒を処置するのに使用することを目的とする。さらに別の実施形態では、変形治癒は、遷延治癒または偽関節である。
【0043】
別の実施形態では、本開示に従った組成物は、対象において骨再生を刺激するのに使用することを目的とする。別の実施形態では、骨再生は対象の骨折部位内で生じる。
【0044】
一実施形態では、本開示に従った組成物を投与すれば、対象においてWntシグナル伝達経路が活性化される。
【0045】
追加の実施形態では、本開示に従った方法または組成物は、骨粗鬆症徴候において有用である。さらなる実施形態では、骨粗鬆症徴候は骨粗鬆症骨折である。さらにさらなる実施形態では、骨粗鬆症骨折は非定型的大腿骨頸部骨折である。
【0046】
追加の実施形態では、本開示に従った方法または組成物は、頭蓋顔面徴候において有用である。さらなる実施形態では、頭蓋顔面徴候は、狭頭症/頭蓋縫合早期癒合症、口蓋裂、下顎骨骨折、頭蓋骨骨折、および頭蓋骨欠損からなる群から選択される。
【0047】
他の実施形態は、次の詳述される説明を検討すれば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、脛骨骨折のマウスモデルにおける軟骨内骨折修復の局面およびタイムラインの略図を示す。
図2図2は、タンパク質の送達のためのミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)の模式図を示す。
図3-1】図3A~3Gは、MCMおよびFMCMを用いた処置後の軟骨細胞特徴付けを示す。(図3A)により、0~250μgのMCMを用いて処置された軟骨細胞のPresto Blue定量化は細胞毒性効果を示さない。12.5μg/ウェルのMCMまたはFMCMを用いて処置された軟骨細胞の時間的遺伝子発現は、(図3B)MCMが3~24時間からオステオカルシン発現を刺激すること、およびFMCMが下流Wnt遺伝子(図3C)アキシン2および(図3D)Cntb1を有意に活性化することを示す。(n=3~4、p<0.05、<0.01、***<0.001)。(図3E)は、処置間で比較される分泌されたアルカリホスファターゼのレベルを示す。(図3F)は、処置間で比較されるオステオポンチン(Opn)についてのqRT-PCR結果を示す。(図3G)は、MCMおよびFMCM処置に続く細胞生存率を示す。
図3-2】図3-1の続き。
図3-3】図3-2の続き。
図3-4】図3-3の続き。
図4-1】図4A~4Dは、リポフェクタミン単独、MCM、またはFMCMで送達されたATDC5軟骨細胞での(図4A)ホタルルシフェラーゼの時間的遺伝子発現を示す。(図4B)は、図4Aに示される対数変換分析結果なしでのホタルRNA発現を示す。(図4C)は、リポフェクタミン単独、MCM、またはFMCMで送達されたATDC5軟骨細胞でのIL1βの時間的発現を示す。(図4D)は、非トランスフェクト(NT)軟骨細胞、ならびに脂質ナノ粒子(LNP)を用いてmRNAを、LNP-MCMを用いてmRNAを、およびLNP-FMCMを用いてmRNAをトランスフェクトした軟骨細胞についての3時間、6時間、24時間、48時間、および72時間時点でのホタルルシフェラーゼ発現(mRNA発現)を示す。
図4-2】図4-1の続き。
図4-3】図4-2の続き。
図5-1】図5A~5Eは、(図5A)ピン安定化脛骨骨折、(図5B)皮膚硬結内注射、(図5C)MCMのみ、mRNAのみ、またはmRNA-MCMの骨折後7~13日目(注射後1~7日目)のIVIS画像;(図5D)IVISの半定量;(図5E)FRX皮膚硬結でのFFLuc発現を示す。
図5-2】図5-1の続き。
図5-3】図5-2の続き。
図6-1】図6A~6Qは、カノニカルWntをβ-catGOFで活性化すると骨形成を有意に増加させ骨折修復を加速することを示す。(図6A、6C、6E、6G、6I、6K-野生型、6B、6D、6F、6H、6J、6L-GOF)Hall Brundt’s四重染色(HBQ組織学)は、修復中すべての時間で骨折カルスにおいて増加した骨形成(赤色)および減少した軟骨(青色)を示す。(図6M)アキシン2遺伝子発現は、骨折皮膚硬結で骨折の10日後にβ-catGOFにより上方調節される。(図6N:全皮膚硬結、図6O:%骨、図6P:%軟骨、図6Q:%骨髄)組織形態計測定量化により、骨折皮膚硬結での骨の増加および軟骨組成の減少が確かめられる。N=5/群/時間、スケール=1000μm、()=p<0.05、(**)=p<0.01。
図6-2】図6-1の続き。
図6-3】図6-2の続き。
図6-4】図6-3の続き。
図6-5】図6-4の続き。
図6-6】図6-5の続き。
図6-7】図6-6の続き。
図7図7は、circβ-catGOFmRNAの略図を示す。
図8図8Aおよび8Bは、負の対照と比べてリポフェクタミンにまたは操作された脂質ナノ粒子(LNP)にカプセル化された25μgのルシフェラーゼmRNAを用いて処置されたATDC5軟骨細胞での(図8A)ホタルルシフェラーゼおよび(図8B)IL1βの時間的遺伝子発現を示す。(n=3~4、p<0.05、**<0.01)
図9-1】図9A~9Dは、(図9A(タイムライン)、図9B(相対的発現グラフ)):NGFの膜内/初期送達、または(図9C(タイムライン)、図9D(相対的発現グラフ)):NGFの後期/軟骨内送達に続く骨形成および血管形成遺伝子の時間的発現を示す。(n=3~4、p<0.05、**<0.01)
図9-2】図9-1の続き。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本方法を説明する前に、本開示が、記載される特定の方法、および実験条件に限定されず、したがって、方法および条件は変動しうることは理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的としており、限定的であることを意図していないことも理解されるべきである。なぜならば、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。
【0050】
別段定義されなければ、本明細書で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料に類似するまたは等価であるいかなる方法および材料も本開示の実行または試験において使用可能であるが、ここでは好ましい方法および材料が記載される。本明細書で言及されるすべての刊行物は、参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0051】
定義
用語「骨折(fractureまたはbone fracture)」とは、本明細書で使用される場合、骨の連続性の部分的または完全な切断のことである。骨の骨折は閉鎖または開放(化合物)でもよい。骨の骨折は脱臼でもよい。疲労骨折は、毛髪様骨折とも呼ばれるが、骨折でもある。骨折は、横、らせん、斜、圧迫、粉砕、剥離、嵌入、等でもよい。骨折は、X線像、磁気共鳴画像法(MRI)、骨スキャン、コンピュータ断層撮影(CT/CATスキャン)、または他の公知の方法により診断してもよい。
【0052】
骨折処置は伝統的に、骨折の位置、種類、および重症度に依拠する。処置は、骨を整復し、続いて石膏またはファイバーグラスキャストによる固定化、骨を整復し、続いて機能的キャストまたは副木による部分的な固定化、添え木を介した支持/部分的な固定化、内固定を用いた観血的整復、外固定を用いた観血的整復、および臨床医に公知である他の方法を含んでよい。
【0053】
語句「治療有効量」とは、投与の目的である所望の効果を生み出す量のことである。一実施形態では、治療有効量は、骨形成の速度および/または量を増加させる量である。ある特定の実施形態では、骨がより良好に治癒していることおよび/またはより多くの骨が形成されたことの臨床的判定は、(1)X線、(2)コンピュータ処理された/コンピュータ断層撮影(CT)、(3)減少した痛み、(4)減少した可動性、および(5)アルカリホスファターゼ、骨特異的アルカリホスファターゼ、P1NP、CTX、コラーゲン(タイプ)10のような上昇したバイオマーカーのうちの1つまたはそれ以上に基づく。他の実施形態では、骨がより良好に治癒していることおよび/またはより多くの骨が形成されたことの非臨床的判定は、遺伝子またはタンパク質レベルでのWntシグナル伝達の活性化、組織学および/またはCTにより測定される骨治癒(例えば、より多くの骨およびより少ない軟骨)、ならびにバイオマーカーのうちの1つまたはそれ以上に基づく。
【0054】
正確な量は処置の目的に依拠し、公知の技法を使用して当業者により確かめられる(例えば、Lloyd(1999)、The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding参照)。ある特定の実施形態では、本開示に従った組成物または本開示に従って使用するため(例えば、方法において)の組成物は、β-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)、脂質トランスフェクト剤、および/またはミネラル被覆マイクロ粒子のそれぞれの治療有効量を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、動物、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトのことである。したがって、本開示の対象は、ヒトおよびチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種のような他の霊長類;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマのような家畜;イヌおよびネコのような飼いならされた哺乳動物;マウス、ラット、およびモルモットのような齧歯類を含む実験動物;ニワトリ、シチメンチョウならびに他のキジ目のトリ、アヒル、ガチョウ、および同類のトリのような家禽、野鳥、および猟鳥を含む鳥類を含んでよいが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。この用語は、ヒトを含む哺乳動物を含み、対象は骨欠損もしくは骨折を有しおよび/または骨再生を必要とする。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」または「処置(treatment)」とは、それを必要とする対象における骨折の治癒のことである。この用語は、実際の骨折の治癒を含み、さらにまたは代わりに、骨折と関連する症状、例えば、痛み、炎症、減少した可動性、等を回復させることを含む。用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」または「処置(treatment)」とは、それを必要とする対象における骨再生を刺激することでもある。
【0057】
骨折治癒
骨折治癒は、損傷を受けた骨の天然の形態および機能を完全に回復させることができる動的再生過程である。大多数の骨折は、長い骨形成中に内軟骨性骨化(EO)と関連付ける過程で軟骨中間物を通じて間接的に治癒する(図1)。長期の骨折に続いて、血腫が形成されて出血を止め、破片を含み、修復を開始する炎症促進性応答の引き金を引く(Kolarら、2010年、Tissue Engineering、Part B、Reviews 16:427~434頁;Xingら、2010年、J Orthopaedic Res 28:1000~1006頁)。骨膜および骨内膜前駆細胞は、骨分化を受けて、膜内骨化を通じて骨折に近接する既存の骨末端に沿って新たな骨を形成する(Colnotら、2009年、J Bone Miner Res 24:274~282頁)。骨折裂け目では、骨膜前駆細胞は軟骨細胞に分化し、間接的にEOにより骨を生じる仮の軟骨基質を生成する(Leら、2001年、J Orthopaed Res 19:78~84頁)。軟骨皮膚硬結は、軟骨細胞の骨芽細胞への変換を通じて骨に成熟する(Huら、2017年、Development 144:221~234頁;Zhouら、2014年、PloS genetics 10:e1004820;Yangら、2014年、PNAS USA 1302703111)。その後、新たに形成された骨梁骨は皮質骨に再造形する(Drissiら、2016年、J Cellular Biochem 117:1753~1756頁)。
【0058】
骨折治癒は、炎症段階(骨折血腫形成)、回復/修復段階(その間身体は骨折部位中におよびその周囲に軟骨および組織を成長させ、皮膚硬結が成長し、骨折を安定化し、骨梁骨が組織皮膚硬結に取って代わる)、および骨再造形段階(その間、骨梁骨は固体骨で置き換えられる)を含む。骨折治癒/修復の炎症段階中、生物学的過程である血腫、炎症、および間葉系幹細胞の動員が起こる。骨折治癒/修復の軟骨形成および骨膜応答段階中、生物学的過程である軟骨形成および内軟骨性骨化、膜内骨化での細胞増殖、血管内殖、ならびに血管新生が起こる。骨折治癒/修復の軟骨吸収および一次骨形成段階中、生物学的過程である活発な骨形成、骨細胞動員および網状骨形成、軟骨細胞アポトーシスおよび基質タンパク質分解、破骨細胞動員および軟骨吸収、ならびに血管新生が起こる。最後に、骨折治癒/修復の二次骨形成および再造形段階中、生物学的過程である骨芽細胞活性と一体となった骨再造形および骨髄の確立が起こる(Al-Aqlら、2008年、J Dent Res 87(2):107~118頁)。
【0059】
したがって、本開示に従った方法または組成物の一実施形態では、骨治癒は新しい骨の形成を含み、新たに形成された骨はより大きい骨梁数、結合密度、および/または骨塩量を含む。別の実施形態では、骨治癒は、対象における軟骨容積の減少および対象における骨量の増加を含む。さらに別の実施形態では、組成物を投与すると、対象における軟骨容積は少なくとも約10%減少し、対象における骨量は少なくとも約10%増加する。さらに別の実施形態では、組成物を投与すると、対象における軟骨容積は少なくとも約25%減少し、対象における骨量は少なくとも約25%増加する。特定の実施形態では、軟骨容積の%減少および/または骨量の%増加は、局所的である(処置に対して)。
【0060】
ある特定の実施形態では、対象は正常な骨折治癒を経験しない。特定の実施形態では、そのような対象は、変形治癒(変形した非解剖学的位置での骨折治癒は、機能的におよび/または美容的に受け入れられないことがある)、遷延(有意に長く、例えば、予想される/平均骨折治癒時間の約2倍)、または偽関節(折れた骨が結合しない)骨折治癒を経験する場合がある。
【0061】
平均骨折治癒時間は、特定の骨および/または骨の領域の血液供給のレベルに応じて異なる場合がある。例えば、脊椎、手首、等のような高血液供給の領域に存在する骨折は、船状骨(腕骨)、脛骨(脚骨)、等のような低血液供給の領域に存在する骨折よりも早期に治癒する。平均骨折治癒時間は、対象の年齢に応じても変動する場合があり、同じ骨折でも高齢者では治癒するのに子供の2倍時間がかかる場合がある。臨床医は、治癒時間の一般的範囲を知っており、対象での遷延骨折治癒を明らかにすることができる。
【0062】
一実施形態では、骨および/または骨折治癒を刺激することは、軟骨をより迅速に骨に変換することおよび/または骨の質を改善することおよび/またはより良好な骨構造を形成することを含む。
【0063】
一実施形態では、骨および/または骨折治癒を加速することは、軟骨をより迅速に骨に変換することを含む。
【0064】
一実施形態では、骨および/または骨折治癒を改善することは、骨の質を改善することおよび/またはより良好な骨構造を形成することを含む。
【0065】
別の態様では、本開示は、骨折を有する対象を処置するための方法であって、本開示に従った組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。別の実施形態では、骨折において骨形成が増える。
【0066】
臨床医は、公知の方法を使用して骨治癒および/または再生の必要性を評価することができる。ある特定の実施形態では、臨床医は、本開示に従った組成物の投与のために、経験に基づく判断力、患者が報告する苦痛の減少、骨折の増加した堅さ/可動性、およびX線での「濁った」外見を使用して軟皮膚硬結期がいつピークに達するかを推定する。
【0067】
β-カテニンmRNA
β-カテニンは、生理的恒常性において中心的役割を果たしている多機能性タンパク質である(Shangら、2017年 Oncotarget 8(20):33972~33989頁)。β-カテニンは、Wntシグナル伝達経路の中枢の成分であり、タンパク質安定性、細胞内局在、および転写活性のレベルで厳重に調節されている。実際、Wntはβ-カテニンの主要調節因子であり、β-カテニン依存性(カノニカルWnt)と非依存性(非カノニカルWnt)シグナル伝達経路の両方を調節している。
【0068】
合成β-カテニンmRNAは、β-カテニンタンパク質、タンパク質断片、またはペプチドの合成用の鋳型を提供し、細胞中でβ-カテニンペプチドおよびタンパク質の産生を誘導するためのβ-カテニンコード情報用の多用途送達システムを提供する。
【0069】
カノニカルWnt経路の活性化をもたらす破壊されにくいβ-カテニン遺伝子が本明細書で開示される。このβ-catGOF構築物は、i)野生型β-カテニンからエクソン3を削除して、約3.2kb配列を生み出すことにより作製される(Haradaら、1999年 EMBO J 18:5931~5942頁)。エクソン3は、破壊複合体によるβ-カテニンのプロテアソーム分解を引き起こすリン酸化部位を含有する。したがって、エクソン3が削除されると、β-カテニンリン酸化媒介分解を妨げることにより下流Wntエフェクターが転写される。
【0070】
別の実施形態では、β-カテニンGOFmRNAのウリジン残基すべてがプソイドウリジンで置き換えられている。別の実施形態では、プソイドウリジンは、1-メチル-3’-プソイドウリジンである。追加の実施形態では、β-カテニンGOFmRNAは、mRNAキャッピング、非翻訳領域(UTR)を組み入れる、および/またはポリAテールを付加することを介して改変されている。このようにして改変されたβ-catGOFmRNAは、より長い発現(したがって、より高度なWntシグナル伝達活性化)、より少ない細胞毒性/免疫原性、増強された安定性、および/または増加したトランスフェクションを示す。即時の改変は直鎖状mRNAに対してである。
【0071】
配列番号1は、エクソン3を欠く非分解性β-カテニンの完全オープンリーディングフレームの配列を提供する。配列番号2は、コドン最適性を使用してコドンの一部を置換し安定性を改善した配列を提供する。配列番号3は、mRNAによりコードされるタンパク質の配列を提供し、特に配列番号1と2の両方が同じタンパク質をもたらすことを示す。
【0072】
環状になるように操作されているβ-catGOFmRNAが本明細書でさらに開示される。circRNAはその直鎖状対応物に優るいくつかの利点を有する。第1に、circRNAのほうが、細胞RNアーゼの主な標的である5’および3’末端を欠くので、インビボではかなり安定している。これにより、コードされたタンパク質が発現される量および持続期間の両方が増加する(Wesselhoeftら、2019年 Mol Cell 74:508~520頁)。第2に、circRNAは5’末端を欠くので、効率的な翻訳に5’キャップを必要としない。微量の非キャップドmRNAは免疫応答を誘導することがあるので、これは意義深い。したがって、一実施形態では、β-catGOFタンパク質はcircRNAから発現される。特定の実施形態では、環状mRNAは、それでも、上で繰り返された改変ヌクレオシド(プソイドウリジンで置き換えられたウリジン)、他の潜在的なコドン最適化/置換、および/またはUTRを有するが、キャッピングもポリAテールもないと考えられる。
【0073】
脂質トランスフェクティング剤
mRNAは、急速分解に対するその感受性のせいで、薬学的応用で有用であるには不安定すぎると長い間考えられてきた。しかし、mRNAは、改変を介して最適化されて、その細胞内安定性、翻訳効率および取込みを増やすことができる(Beckら、2021年 Mol Cancer 20:69頁)。
【0074】
脂質トランスフェクティング剤を用いれば、β-カテニンmRNAを安定化し、保護し、その送達/取込みを増強することができる。例えば、脂質ナノ粒子製剤は、β-カテニンmRNAを細胞外RNアーゼから保護し、インビボでのその取込みを改善することができる。脂質ナノ粒子は、静電気的相互作用およびmRNA分子の濃縮によりβ-カテニンmRNAとの複合体化を可能にするために、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体と一緒にまたはなしで、プロタミンのようなポリマー、ならびに/またはカチオン性およびイオン化脂質を含んでよい(Zengら、2020年 Curr Top Microbiol Immunol 10.1007/82_2020_217)。脂質は、3つのドメイン:水溶性頭部、疎水性テール領域および2つのドメイン間のリンカーを含有する両親媒性分子である。mRNA送達についてはカチオン性脂質、イオン化脂質、および他のタイプの脂質が調査された(Houら、2021年 Nat Rev Mater 6(12):1078~1094頁)。脂質ナノ粒子-mRNA製剤は、典型的には、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミン)、コレステロールまたはポリエチレングリコール(PEG)機能化脂質(PEG-脂質)のようなカチオン性およびイオン化脂質以外の脂質成分を含有し、これらの脂質成分は、粒子安定性、送達効率、忍容性、および体内分布のようなナノ粒子特性を改善することができる。特定の実施形態では、β-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)は、脂質ナノ粒子にカプセル化されている。
【0075】
ミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)
骨治癒を刺激するための新規のバイオ医薬品としてのβ-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)を検証することに加えて、局所的および制御された送達のための臨床移行に適切な技術プラットホームが本明細書で開示される。
【0076】
ミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)は治療送達プラットホームとして本明細書で開示される。MCMは、タンパク質、ペプチド、酵素、および核酸の局在的および持続性送達用に確立された5~10μ径の注射可能な生体模倣型粒子である。MCMは、均一なリン酸カルシウムミネラルコーティングを有する5~8μmの吸収性β型リン酸三カルシウムコアで構成されている。リン酸カルシウムは、改変模擬体液(mSBF)と一緒のインキュベーションにより沈殿され、バイオ医薬品に結合し安定化するための高表面積を提供するナノメートルスケールの薄片状ミネラルコーティングの核形成および成長をもたらす(Schmidt-Schultz and Schultz 2005年 Biol Chem 386:767~776頁)(図2)。MCMの走査型電子顕微鏡観察により、ミネラル沈着が高表面積を有する生体模倣形態をどのようにして創造するかが説明される(示されていない)。バイオ医薬品の結合およびMCMからの放出は、ミネラルコーティングの物理化学的特性により容易にモジュレートできる。特定の実施形態では、MCMの生理化学的組成は、(1)Wntシグナル伝達を活性化し、(2)骨折部位へのmRNA複合体の治療送達を増強するフッ化物またはストロンチウムの添加(「フッ化物-またはストロンチウムドープ)により改変される。別の実施形態では、MCMにマグネシウムを添加することができる。さらに別の実施形態では、MCMは、フッ化物、ストロンチウム、およびマグネシウムのうちの1つよりも多くを添加することができる。
【0077】
したがって、本開示は、対象においてWntシグナル伝達経路を活性化するために、骨治癒を刺激するために、骨治癒を加速するために、骨治癒を改善するために、骨修復を加速するために、変形治癒を処置するために、および/または骨再生を刺激するために対象へのミネラル被覆マイクロ粒子(すなわち、β-カテニンmRNA複合体なしで)の投与をさらに想定している。
【0078】
ある特定の実施形態では、MCMは生体適合性および/または生分解性である。本明細書で使用される場合、用語「生体適合性」とは、生体系または生体組織、例えば、動物または動物組織、例えば、ヒトまたはヒト組織との適合性を意味し、毒性も傷害性も生理的反応性もなく、および/または有害な免疫反応を引き起こさない。本明細書で使用される場合、用語「生分解性」とは、例えば、動物対象において、例えば、ヒト対象において、天然系またはその天然成分により特に無害な産物に分解される性能を意味する。
【0079】
MCMは任意の3次元の形を有することができる。ある特定の実施形態では、MCMの構造は、高アスペクト比から利益を得るように選択される。例えば、棒、長方形、ワイヤー、および同類のものは高アスペクト比を有する。追加の実施形態では、MCMは、高い臨床的関連のある非外科的送達技術を可能にするように設計される。その小さなサイズのせいで、MCMは、局所的に、例えば、骨折部位に経皮送達のために容易に注射することができ、正常な治癒過程を妨げないはずである。同時に、MCMは血流に入って漂っていくことがないほど大きい。
【0080】
ある特定の実施形態では、β-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)はMCMに結合している。そのような結合は、さらなる実施形態では、静電気的相互作用およびミネラル「フレーク」の大きな表面積に起因する、を含む吸着を介する。さらなる実施形態では、MCMがβ-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)に結合すると、mRNAを安定化する。さらに、MCMにより提供される制御された放出は、より少ないmRNAという要件をもたらすことがある。なぜならば、mRNAはゆっくり提供され急速に分解されないからである。したがって、ある特定の実施形態では、β-カテニンmRNAは、非結合複合体として投与される場合よりもMCMに結合している場合のほうがその生物活性を達成するのに少量で済む。
【0081】
ある特定の実施形態では、MCMは、β-カテニンmRNA-LNP(脂質トランスフェクティング剤、例えば、脂質ナノ粒子との複合体)がMCMに結合した後は貯蔵安定性のために凍結または凍結乾燥される。他の実施形態では、MCMは、β-カテニンmRNAがMCMに結合した後は貯蔵安定性のために凍結または凍結乾燥される。さらに他の実施形態では、MCMとβ-カテニンmRNA複合体は、治療現場で集合される/混合される。
【0082】
骨治癒および骨再生のためのWntシグナル伝達およびその活性化
Wntシグナル伝達経路は、β-カテニン依存性カノニカル経路およびβ-カテニン非依存性非カノニカル経路(平面内細胞極性およびCa2+媒介経路を含む)に従って分類される骨誘導プログラムである(Gammons and Bienz 2018年 Curr Opin Cell Biol 51:42~49頁)。一部の証拠により非カノニカル経路が骨形成の調節において役割を果たす可能性があることが示唆されている(Chenら、2007年 PLoS med 4:e249)が、カノニカルWnt/β-カテニン経路は骨形成および膜内骨修復を促進するその役割が十分に確立している(Monroeら、2012年 Gene 492:1~18頁)。カノニカルWntシグナル伝達は、転写コアクチベーターであるβ-カテニンの機能を通じて増殖、分化、自己再生、および生存のような細胞過程に関与している遺伝子の転写を調節している。この経路が不活性である場合、β-カテニンには多タンパク質「破壊」複合体が結合し、これによりβ-カテニンはリン酸化され、β-カテニンをユビキチン化および最後にプロテアソーム分解の標的にする(Stamos and Weis 2013年 Cold Spring Harb Perspect Biol 5(1):a007898)。しかし、WntリガンドがFrizzledおよびLRP5/6共受容体に結合することにより経路が活性化されると、破壊複合体が壊され、β-カテニンが細胞質内で蓄積して核に移動し標的遺伝子の転写を活性化することが可能になる。
【0083】
β-カテニンをもはやリン酸化されなくなるように変異させると、ユビキチン化および分解が妨げられ、Wntシグナル伝達経路が活性化される。フッ化物またはストロンチウムのような化学ドーパントも破壊複合体を壊すことができて、Wntシグナル伝達経路の活性化が可能になる。
【0084】
比較すると、軟骨内骨形成および修復中のカノニカルWntシグナル伝達の役割を確定するための研究はほとんど行われていない(Wongら、2018年 Front Bioeng Biotechnol 6:58頁)。軟骨内骨成長および修復中に軟骨細胞は骨芽細胞になる。さらに、カノニカルWnt経路はおそらく、軟骨細胞から骨芽細胞への運命変化に必要なキーとなる「分子スイッチ」として機能する。したがって、Wnt経路は、膜内と軟骨内骨修復の両方で重大な、おそらく決定的でさえある役割を果たす可能性があり、その一過性の活性化は本開示に従った方法および組成物により達成される。
【0085】
本明細書で開示される改変/GOF β-カテニンmRNAの送達を通じたWntシグナル伝達の活性化は、Wnt経路が永久に「オン」の状態であることを妨げる細胞内mRNA発現の公知の過渡性のせいで、Wnt経路を活性化する他の治療戦略よりも安全であることが示されている。これは重大なことである。なぜならば、核でのβ-カテニンの蓄積はc-MycおよびサイクリンD-1のような癌遺伝子の転写を促進することがあり、これらの癌遺伝子が永久に「オン」の状態である場合、結腸がん、肝細胞癌、膵臓がん、肺がん、および卵巣がんを含むがんの発癌および/または腫瘍進行をもたらすおそれがあるからである(Shangら、2017年 Oncotarget 8(20):33972~33989頁)。
【0086】
Wnt活性化mRNA複合体
フッ化物-またはストロンチウムドープMCMのWnt活性化能力と協同するためには、Wnt経路は、MCMを利用して安定化したβ-カテニンmRNAを送達することにより直接活性化できる。新規の「機能獲得型」(GOF)β-カテニン配列は本明細書で開示されており、β-カテニンがタンパク質分解を可能にするリン酸化部位を欠くトランスジェニックマウスから改作される(Haradaら、1999年 EMBO J 18:5931~5942頁)。この配列のトランスジェニック発現は、マウスにおける骨折修復を効果的に促進する(Wongら、2020年 bioRxiv 2020.2003.2011.986141)。mRNAの非ウイルス送達は、最近、COVID19ワクチンでの高い安全性および効能を示した臨床的に実行可能なアプローチである。なぜならば、このアプローチは、遺伝物質の伝統的ウイルスベースの送達を回避して、安全プロファイルが増強され、挿入変異のリスクがなく、効能のための核局在化の要件がないからである。β-catGOFmRNAを送達すれば、経路を活性化するWntリガンドを送達する必要性を回避することができ、局所的にトランスフェクトされた細胞内でのみ直接的細胞自律的活性化を生じることができると考えられる。伝統的に、mRNA療法は一過性(時間スケール)であり、経路を長期間または永久に活性化しようとする場合には問題になることがあるが、骨折修復中のWntシグナル伝達のような内在性修復サイクルの一部である一過性過程を後押しするためにはmRNA療法が一過性であることは理想的である。したがって、カノニカルWnt経路を活性化する新規の臨床的に関連する移行可能な戦略はとてつもない治療的潜在力を有する。
【0087】
整形外科的適用のためのmRNAを開発することを目的とする先駆的研究はほとんどなかった。mRNAを種々の生体材料プラットホーム上にmRNAを負荷することによりトランスフェクトされるBMPに関連する骨再生研究は、新たな骨を形成する有望な結果を示したが、送達プラットホームはそれでも外科移植を必要とし、インビボ免疫原性および効能についての調査は限られていた。したがって、注射可能なmRNA治療薬により、追加の外科手術の必要性は軽減され、治療的送達ウィンドウの最適化が可能になると考えられる。
【0088】
投与
本開示の一態様は、β-カテニンmRNAを含む組成物を対象に投与することを含む。本開示のさらなる態様は、β-カテニンmRNAを含む組成物を対象に投与することを含む。本開示のさらにさらなる態様は、脂質トランスフェクティング剤にカプセル化されたβ-カテニンmRNAを含む組成物を対象に投与することを含む。本開示のさらにさらなる態様は、β-カテニンmRNAまたはミネラル被覆マイクロ粒子に結合したβ-カテニンmRNA-LNPを含む組成物を対象に投与することを含む。本開示のある特定の実施形態に従った方法および使用を実行する際には、本開示に従った組成物が対象に投与される。
【0089】
ある特定の実施形態では、本開示に従った組成物は局所的に投与される。用語「局所的な」および「局所的に」とは、本明細書で使用する場合、(骨折という文脈では)骨欠損、骨折裂け目中またはこれに近接する、骨折部位に近接する、骨折皮膚硬結に近接する、骨膜に沿って、および/または骨髄内管内のことである。さらなる実施形態では、組成物は、対象の組織に、骨折皮膚硬結で、この隣に、またはこの近傍に投与してもよい。用語「局所的な」または「局所的に」とは、骨治癒および/または再生が望まれる場所を指すこともできる。「局所的に」とは、骨治癒および/または再生が望まれる部位に直接にまたは直接これに近接して、を意味する。さらに別の実施形態では、組成物は対象の骨欠損中に注射される。
【0090】
いかなる都合のよい投与様式でも用いうる。投与様式は、注射(例えば、経皮的に、皮下に、静脈内に、または筋肉内に、髄腔内に)を含みうるが、これに限定されない。
【0091】
ある特定の実施形態では、β-カテニンmRNA、脂質トランスフェクティング剤、および/またはMCMは、所定の期間にわたり標的位置に局在する。用語「局在する」は本明細書ではその従来の意味で使用され、例えば、50mmまたはそれよりも少ない、例えば40mmまたはそれよりも少ない、例えば30mmまたはそれよりも少ない、例えば25mmまたはそれよりも少ない、例えば20mmまたはそれよりも少ない、例えば15mmまたはそれよりも少ない、例えば10mmまたはそれよりも少ない、例えば9mmまたはそれよりも少ない、例えば8mmまたはそれよりも少ない、例えば7mmまたはそれよりも少ない、例えば6mmまたはそれよりも少ない、例えば5mmまたはそれよりも少ない、例えば4mmまたはそれよりも少ない、例えば3mmまたはそれよりも少ない、例えば2mmまたはそれよりも少ない、例えば1mmまたはそれよりも少ない、例えば0.5mmまたはそれよりも少ない所定の領域、例えば0.1mmまたはそれよりも少ない、例えば0.05mmまたはそれよりも少ない、および0.001mmまたはそれよりも少ない所定の領域を含む、標的部位の所定の領域内に、投与されたβ-カテニンmRNA、脂質トランスフェクティング剤、および/またはMCMを集中するまたは蓄積することである。一部の例では、組成物中の投与されたβ-カテニンmRNA、脂質トランスフェクティング剤、および/またはMCMの10%またはそれよりも多くは、標的部位の領域内に局在し、組成物中の投与されたβ-カテニンmRNA、脂質トランスフェクティング剤、および/またはMCMの、例えば25%またはそれよりも多く、例えば50%またはそれよりも多く、例えば55%またはそれよりも多く、例えば60%またはそれよりも多く、例えば65%またはそれよりも多く、例えば70%またはそれよりも多く、例えば75%またはそれよりも多く、例えば80%またはそれよりも多く、例えば85%またはそれよりも多く、例えば90%またはそれよりも多く、例えば95%またはそれよりも多く、例えば96%またはそれよりも多く、例えば97%またはそれよりも多く、例えば98%またはそれよりも多く、例えば99%またはそれよりも多く、例えば99.9%またはそれよりも多くは、例えば50mmまたはそれよりも少ない領域内、例えば40mmまたはそれよりも少ない、例えば30mmまたはそれよりも少ない、例えば25mmまたはそれよりも少ない、例えば20mmまたはそれよりも少ない、例えば15mmまたはそれよりも少ない、例えば10mmまたはそれよりも少ない、例えば9mmまたはそれよりも少ない、例えば8mmまたはそれよりも少ない、例えば7mmまたはそれよりも少ない、例えば6mmまたはそれよりも少ない、例えば5mmまたはそれよりも少ない、例えば4mmまたはそれよりも少ない、例えば3mmまたはそれよりも少ない、例えば2mmまたはそれよりも少ない、例えば1mmまたはそれよりも少ない、例えば0.5mmまたはそれよりも少ない、例えば0.1mmまたはそれよりも少ない、例えば0.05mmまたはそれよりも少ない、および0.001mmまたはそれよりも少ない所定の領域を含む、標的部位の領域内に局在する。
【0092】
組成物
本開示は、対象において骨治癒を刺激する、対象において骨治癒を加速する、および/または対象において骨治癒を改善するのに使用するためのβ-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)、脂質トランスフェクティング剤、および/またはミネラル被覆マイクロ粒子を含む組成物(医薬組成物)を提供する。本開示は、対象において骨折修復を加速するのにも使用するためのβ-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)、脂質トランスフェクティング剤、および/またはミネラル被覆マイクロ粒子を含む組成物を提供する。本開示は、対象において変形治癒を処置するのにも使用するためのβ-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)、脂質トランスフェクティング剤、および/またはミネラル被覆マイクロ粒子を含む組成物(医薬組成物)を提供する。本開示は、対象において骨再生を刺激するのに使用するためのβ-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)、脂質トランスフェクティング剤、および/またはミネラル被覆マイクロ粒子を含む組成物(医薬組成物)を提供する。本開示は、対象においてWntシグナル伝達を活性化するのにも使用するためのβ-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)、脂質トランスフェクティング剤、および/またはミネラル被覆マイクロ粒子を含む組成物(医薬組成物)を提供する。
【0093】
本開示に従った組成物は、改善された移送、送達、耐性、および同類のものを提供するために製剤中に組み入れられる適切な賦形剤、および/または他の薬剤と一緒に投与することができる。多数の適切な製剤をすべての薬剤師に知られている処方集に見出すことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有ベシクル(LIPOFECTIN(商標)のような)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型乳濁液、乳濁液カーボンワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボンワックスを含有する半固体混合物を含む。Powellら、「非経口製剤用の賦形剤の概説」PDA(1998)、J Pharm Sci Technol 52:238~311頁も参照のこと。
【0094】
ある特定の実施形態では、賦形剤は単に水であり、一実施形態では、医薬品グレードの水である。他の実施形態では、賦形剤はバッファーであり、一実施形態では、バッファーは薬学的に許容できる。バッファーは、限定せずに、生理食塩水、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸、コハク酸、リン酸、酢酸、アスパラギン酸、またはいずれか2つもしくはそれよりも多いバッファーの組合せも含みうる。
【0095】
他の実施形態では、生分解性基質またはスキャフォールドが組成物に含まれる。さらなる実施形態では、MCMは生分解性基質またはスキャフォールド上で捕捉される。追加の実施形態では、基質は粘稠性であるが、それでも流動性であり、他の実施形態では、基質は固体、半固体、ゼラチン状またはその中間のいずれかの密度である。したがって、種々の実施形態では、限定せずに、基質はコラーゲン、ゼラチン、グルテン、エラスチン、アルブミン、キチン、ヒアルロン酸、セルロース、デキストリン、ペクチン、ヘパリン、アガロース、フィブリン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、Matrige(商標)(エンジェルブレス-ホーム-スウォーム(EHS)マウス肉腫から抽出された可溶化基底膜調製物により形成されるハイドロゲル)、ハイドロゲルオルガノゲル、またはその混合物および/もしくは組合せである。再び、当業者であれば、いかなる医薬品グレードの基質も本開示の組成物における使用に受け入れられることを認識する。
【0096】
β-カテニンmRNAの量は、適用部位、処置されている状態および望まれる生物活性のタイプならびにmRNAがそれ単独で、脂質トランスフェクティング剤にカプセル化されて、および/またはミネラル被覆マイクロ粒子に結合して投与されているかどうかに依拠することができる。
【0097】
一実施形態では、MCMはマウス対象に約0.5mg/kg~約50mg/kgの濃度で投与される。別の実施形態では、この濃度範囲は、投与される(ヒト対象に)約0.04mg/kg~約4mg/kg MCMのヒト等価用量範囲に置き換えられる。さらに別の実施形態では、MCMのヒト用量は、平均ヒトサイズ75kgに基づいて約3mg~約300mg MCMに標準化される。
【0098】
一実施形態では、β-カテニン(例えば、β-カテニンGOF)mRNAは、0.1mg/1mg~約1mg mRNA/1mg MCMの濃度でMCMに結合しており、これはマウス対象に送達される約0.05mg/kg~約50mg/kg mRNAの結果となる。別の実施形態では、この範囲は、約0.004mg/kg~約4mg/kg mRNAのヒト等価用量範囲に置き換えられる。さらに別の実施形態では、ヒト用量は、平均ヒトサイズ75kgに基づいて約0.3mg~約300mg mRNAに標準化される。
【0099】
一部の実施形態では、MCMによるβ-カテニンmRNAの放出は持続放出である。「持続放出」とは、1分もしくはそれよりも長い、5分もしくはそれよりも長い、10分もしくはそれよりも長い、15分もしくはそれよりも長い、30分もしくはそれよりも長い、45分もしくはそれよりも長い、1時間もしくはそれよりも長い、6時間もしくはそれよりも長い、12時間もしくはそれよりも長い、1日もしくはそれよりも長い、2日もしくはそれよりも長い、4日もしくはそれよりも長い、6日もしくはそれよりも長い、8日もしくはそれよりも長い、10日もしくはそれよりも長い、12日もしくはそれよりも長い、14日もしくはそれよりも長い、16日もしくはそれよりも長い、18日もしくはそれよりも長い、または20日もしくはそれよりも長い経過にわたってのような、MCMが投与部位との接触を維持されている全時間にわたってmRNAの一定で連続する送達を提供するようにmRNAがMCMと会合していることを意味する。
【0100】
他の実施形態では、MCMは時間をかけて分解可能であり、一定量のMCMが分解した後β-カテニンmRNAを送達する。例えば、投与部位で、MCMの10%毎に分解した後、例えばMCMの15%毎に分解した後、例えばMCMの20%毎に分解した後、例えばMCMの25%毎に分解した後、例えばMCMの30%毎に分解した後、およびMCMの33%毎に分解した後を含めて、一定量のβ-カテニンmRNAが送達されうる。
【0101】
さらに他の実施形態では、本開示で用いられる個々のMCMは、標的部位で投与されると直ちに、相当量のβ-カテニンmRNAを放出し、投与されると直ちにβ-カテニンmRNAの、例えば50%またはそれよりも多く、例えば60%またはそれよりも多く、例えば70%またはそれよりも多く、例えば90%またはそれよりも多くが放出される。したがって、ある特定の実施形態では、バースト放出動力学が示される。さらに他の実施形態では、MCMはβ-カテニンmRNAを、実質的にゼロ次放出速度でのような、実質的に一次放出速度でまたは実質的に二次放出速度でのような所定の速度で放出する。
【0102】
一実施形態では、MCMは、ターゲティング分子の結合パートナーを発現する標的細胞または組織と相互作用する前記ターゲティング分子と会合している。特定の実施形態では、ターゲティング分子は、限定せずに、細胞接着分子、細胞接着分子リガンド、標的細胞型の表面で発現されるエピトープに対して免疫特異的な抗体、および結合対の任意のメンバーから選択され、結合対の1つのメンバーは目的の標的細胞または組織上で発現される。別の実施形態では、MCMの静電気帯電は高度にマイナスの基質を軟骨に引き付けるように最適化される。
【0103】
ある特定の実施形態では、β-カテニンmRNA/MCMに結合しているβ-カテニンmRNAの用量は、投与される対象の年齢および大きさ、骨折のタイプ/重症度、骨折の位置、状態、投与経路、ならびに同類のものに応じて変動してよい。本明細書で開示されるβ-カテニンmRNA/MCMに結合しているβ-カテニンmRNAが患者の骨折を処置するために使用される場合、β-カテニンmRNA/MCMに結合しているβ-カテニンmRNAを通常は約0.1~約100mg/体重1kgの単一用量で投与するのが都合がよい。特定の実施形態では、用量/投与量は、投与部位/標的部位でのMCMからのβ-カテニンmRNAの平均放出に基づいている。
【0104】
ある特定の実施形態では、処置(投与)の頻度および期間は調整可能である。ある特定の実施形態では、本明細書で開示されるβ-カテニンmRNA/MCMに結合しているβ-カテニンmRNAは、初回量として投与し、続いてβ-カテニンmRNA/MCMに結合しているβ-カテニンmRNAの2回目または複数回のそれに続く用量が初回量の量とほぼ同じまたはそれよりも少ないことが可能である量で投与することができ、それに続く用量は、治癒パラメータの十分な進行の欠如に基づいて少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1カ月、またはそれよりも長く隔てられる。ある特定の実施形態では、治癒パラメータの十分な進行の欠如は、X線写真で石灰化がない、X線写真で低石灰化、苦痛の減少がない、苦痛の最小の低減、安定性の増加がない、および/または安定性の最小の増加を含む。臨床医は、患者の診断および特有の状態に基づいて患者ごとに処置の頻度および期間を変更することができると考えられる。
【0105】
本開示の組成物は、ある特定の実施形態では、標準針と注射器を用いて皮下にまたは経皮的に投与することができる。さらに、ペン型送達デバイスは、本開示の組成物を送達するのに直ちに用途がある。そのようなペン型送達デバイスは、再利用可能であるまたは使い捨てが可能である。再利用可能なペン型送達デバイスは一般に、組成物を含有する付け替え可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の組成物がすべて投与され、カートリッジが空になった後は、空のカートリッジはすぐに処分され組成物を含有する新たなカートリッジで置き換えることができる。その後、ペン型送達デバイスは再利用することができる。使い捨てが可能なペン型送達デバイスでは、付け替え可能なカートリッジはない。もっと正確に言えば、使い捨てが可能なペン型送達デバイスは、デバイス内の貯蔵器に入れた組成物で事前に満たされている。貯蔵器の組成物が空になった後は、デバイス全体が処分される。
【0106】
治療用途
本開示に従った、β-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンmRNA)、β-カテニンmRNA-脂質トランスフェクティング剤、ミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)、β-カテニンmRNA-MCM、およびβ-カテニンmRNA-脂質トランスフェクティング剤-MCMは、特定の実施形態では、それを必要とする対象(それを必要とする対象は骨欠損、骨折、および同類のものに関連する状態または障害または疾患に罹っている場合がある)において、骨欠損または骨折の処置に、骨治癒の刺激に、骨治癒の加速に、骨治癒の改善に、変形治癒、遷延治癒、または偽関節の処置に、骨再生の刺激に、および/またはWntシグナル伝達の活性化に有用である。追加の実施形態では、本開示に従った、β-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンmRNA)、β-カテニンmRNA-脂質トランスフェクティング剤、ミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)、β-カテニンmRNA-MCM、およびβ-カテニンmRNA-脂質トランスフェクティング剤-MCMはそれぞれが、骨壊死または限局性骨減少症の処置に有用である。
【0107】
本開示の追加の実施形態では、本開示に従った、β-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンmRNA)、β-カテニンmRNA-脂質トランスフェクティング剤、ミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)、β-カテニンmRNA-MCM、およびβ-カテニンmRNA-脂質トランスフェクティング剤-MCMはそれぞれが、特定の実施形態では、骨欠損または骨折の処置のための、骨治癒の刺激のための、骨治癒の加速のための、骨治癒の改善のための、変形治癒、遷延治癒、または偽関節の処置のための、骨再生の刺激のための、および/またはWntシグナル伝達の活性化のための医薬組成物または薬剤の調製に使用される。さらなる実施形態では、本開示に従った、β-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンmRNA)、β-カテニンmRNA-脂質トランスフェクティング剤、ミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)、β-カテニンmRNA-MCM、およびβ-カテニンmRNA-脂質トランスフェクティング剤-MCMはそれぞれが、骨壊死または限局性骨減少症の処置のための医薬組成物または薬剤の調製に使用される。本開示のさらに別の実施形態では、本開示に従った、β-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンmRNA)、β-カテニンmRNA-脂質トランスフェクティング剤、ミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)、β-カテニンmRNA-MCM、およびβ-カテニンmRNA-脂質トランスフェクティング剤-MCMはそれぞれが、骨折の処置に、骨治癒の刺激に、骨治癒の加速に、骨治癒の改善に、変形治癒の処置に、骨再生の刺激に、および/またはWntシグナル伝達の活性化に有用である当業者に公知である別の薬剤または別の療法を用いた補助治療として使用される。
【0108】
組合せ療法
本開示に従った方法および組成物の一部の実施形態では、追加の療法または治療薬が対象に投与される。さらなる実施形態では、追加の療法または治療薬は、骨治癒、骨折修復/処置、骨再生、および/またはWntシグナル伝達活性化のために使用される公知の療法または薬剤である。
【0109】
一部の実施形態では、追加の療法または治療薬は、タンパク質サプリメント(例えば、リジン、アルギニン、プロリン、グリシン、システイン、グルタミンを含む)、抗酸化剤(例えば、ビタミンE、ビタミンC、リコペン、アルファリポ酸)、ミネラルサプリメント(例えば、カルシウム、鉄、カリウム、亜鉛、銅、リン、生理活性シリコン)、ビタミンサプリメント(例えば、B(B6)、C、D、および/またはK)、ハーブサプリメント(例えば、コンフリー、アルニカ、ホーステイルグラス、シッサス・クアドラングラリス(Cissus quadrangularis))、抗炎症性栄養物(例えば、ケルセチン、フラボノイド、オメガ3脂肪酸、タンパク質分解酵素)、および運動を含むがこれらに限定されない。他の実施形態では、追加の療法または治療薬は、R-スポンジン、ノリン、およびWntタンパク質を含むがこれらに限定されないWntシグナル伝達活性化剤である。さらに他の実施形態では、追加の療法または治療薬は、プロ軟骨形成(例えば、TGFbまたはおそらくPTH/PTHrPでさえ)薬である。
【0110】
一実施形態では、追加の療法/治療薬は、本開示に従った組成物と組み合わせて投与される。本明細書で使用される場合、用語「と組み合わせて」とは、少なくとも1つの追加の治療薬/療法を本開示に従った組成物の投与に先立って、これと同時に、またはこの後で投与してもよいことを意味する。用語「と組み合わせて」とは、本開示に従った組成物と少なくとも1つの追加の治療薬/療法の逐次または同時投与も含む。
【0111】
別の実施形態では、追加の療法/治療薬は、本開示に従った組成物と同時に投与される。「同時」投与は、本開示の目的のために、例えば、本開示に従った組成物と少なくとも1つの追加の治療薬/療法の単一剤形でのまたは互いに約30分もしくはそれよりも短い時間内に対象に投与される別々の剤形での対象への投与を含む。別々の剤形で投与される場合、それぞれの剤形は同じ経路により(例えば、本開示に従った組成物と少なくとも1つの追加の治療薬/療法の両方が経皮的に投与されうる、等);あるいは、それぞれの剤形が異なる経路により投与されてよい(例えば、本開示に従った組成物は経皮的に投与されてよく、少なくとも1つの追加の治療活性成分は経口的に投与されてよい)。いずれにしても、単一剤形で、同じ経路により別々の剤形で、または異なる経路により別々の剤形で成分を投与することはすべて、本開示の目的のための「同時投与」と見なされる。本開示の目的のため、少なくとも1つの追加の治療薬/療法の投与に「先立っての」、「これと同時の」または「この後での」(それらの用語は本明細書において上で定義されている)本開示に従った組成物の投与は、少なくとも1つの追加の治療薬/療法と「組み合わせた」本開示に従った組成物の投与と見なされる。
【0112】
キット
追加の態様では、本開示はキットを提供し、キットは、本明細書で開示される、β-カテニンmRNA(例えば、β-カテニンGOFmRNA)、脂質トランスフェクティング剤、および/またはミネラル被覆マイクロ粒子を含む組成物を調製するのに必要な少なくとも1つまたはそれ以上の、例えば、複数の成分を含む。ある特定の実施形態では、それぞれの成分の1つまたはそれ以上は個別の容器(例えば、ポーチ)のような包装されたキットとして提供してよい。キットは、測定および応用装置(例えば、注射器)のような主題の方法を実行するための他の成分、ならびにビーカーおよび容量フラスコのような溶液用の容器をさらに含んでよい。一実施形態では、キットは、無菌バイアルおよび注射に先立ってバイアルから吸引するための針を含んでよい。別の実施形態では、キットは、凍結乾燥製品または注射前に混ぜ合わせる2つの凍結乾燥バイアルを含んでよい。さらに別の実施形態では、キットは、デュアルバレル注射器を含んでよく、片方に凍結乾燥製品を、もう一方側に混ぜ合わされる混合液体/ゲル含有し;混合は注射器中または針中で行われてよい。
【0113】
さらに、キットは、主題となる方法を実行に移す方法についての段階的説明書を含んでよい。したがって、説明書は、添付文書として、そのキットまたは成分の容器を標識化して(すなわち、包装またはサブパッケージングに関連している)、等でキット中に存在していてよい。他の実施形態では、説明書は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、CR-ROM、プロッピーディスク、等上に存在する電子記憶データファイルとして存在している。さらに他の実施形態では、実際上の説明書はキット中に存在しないが、遠隔ソースから、例えば、インターネットを介して説明書を入手する手段が提供される。
【0114】
実施例
以下の実施例は、本開示の方法および組成物の作製方法および使用方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために提供されており、発明者らが自分たちの開示と見なしているものの範囲を限定することを意図していない。使用される数(例えば、量、温度、等)に関して正確さを保証するように図ってきたが、一部の実験誤差と偏差は考慮されるべきである。別段指示されなければ、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、室温は約25℃であり、圧力は大気またはほぼ大気である。
【実施例1】
【0115】
骨形成活性化および骨折皮膚硬結への増強されたmRNA送達のため生体模倣マイクロ粒子のミネラル組成を調整する
Wnt経路を活性化しmRNA送達を増強するためのバイモーダル生体材料プラットホームとしての既存のミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)の化学組成を改変するため、骨形成を刺激するその潜在力についてフッ化物またはストロンチウムの添加を試験した(Panら、2014年 Toxicol Lett 225:34~42頁;Fromigueら、2010年 J Biol Chem 285:25251~25258頁)。これらの化学ドーパントがmRNAトランスフェクション動力学をどのようにして変化させるかも評価した。なぜならば、これはmRNA送達の、改善が必要な側面だからである。現在、トランスフェクション動力学は、mRNA送達だけのためにカチオン性脂質ビヒクルを使用する場合、依然として時間からおそらく1~2日のオーダーのままである。したがって、MCMへのmRNA非依存性化学修飾により、mRNAトランスフェクション効率を増加させる、mRNA発現を延長する、およびWnt経路活性化を刺激する目的で、レポーターmRNA構築物のMCM送達がインビトロおよびインビボで試験され最適化される。したがって、MCM系はインビボ骨折修復に最適化される。MCMのミネラル組成にフッ化物またはストロンチウムが含まれると、Wnt経路の活性化を通じて骨形成が刺激され、骨折部位でのmRNAの発現が延長された。
【0116】
注射可能生体模倣プラットホームとしてのミネラル被覆マイクロ粒子(MCM)
MCMプラットホームは、カノニカルWnt経路活性化およびmRNAの送達に最適化される。ある特定の実施形態では、提唱されるアプローチの成功に欠かせないMCMプラットホームの能力は、以下の(1)吸収性β-リン酸三カルシウム(β-TCP)マイクロ粒子の表面に順応性のあるミネラル被覆を生み出す能力、(2)治療バイオ医薬品(例えば、成長因子、酵素、mRNA)に結合しこれを持続的に放出するMCMの能力、および/または(3)バイオ医薬品を時間的に制御された様式で局所的に放出する能力のうちの1つまたはそれ以上を含む。第1に、β-TCPマイクロ粒子上にミネラル被覆を成功裏に創造する方法は、水溶液に時間をかけてゆっくり溶解するナノ多孔性層で全表面を均一に覆うことが確認された(図2)。第2に、持続放出プロファイルを有するMCMへのタンパク質の効率的結合は、その静電気的特徴にもかかわらずミネラルコーティングのタンパク質への広い適用性を示していた(Orthら、2017年 Eur Cell Mater 33:1~12頁;Dangら、2016年 Stem cells transl med 5:206~217頁;Orthら、2019年 J orthop res 37:821~831頁)。核酸複合体はミネラルコーティングに高効率的に(70%を超える)結合した(Choi and Murphy 2010年 Acta Biomater 6:3426~3435頁)。第3に、タンパク質放出は長期に及ぶ時間枠にわたり部位特異的様式で達成された。ミネラルコーティングの特性(例えば、多孔性、形態、化学組成、溶解速度)がコーティング成長のために使用される条件により規定されることを考慮すると、バイオ医薬品送達は、コーティング成長溶液中への化学ドーパントの添加により体系的にモジュレートすることができることが実証された(Choiら、2013年 Sci Reports 3:1567頁)。
【0117】
mRNA非依存性Wnt経路活性化のためのMCMの化学ドーピング
骨形成を増強するために生体材料中に化学ドーパントを含めば、バイオ医薬品送達に固有の安定性問題を克服する利点があるが、ドーパントの全身投与よりも毒性が弱く副作用が少ない。なぜならば化学ドーパントは生体材料内に共局在しているからである(Marxら、2020年 Bone Rep 12:100273頁)。フッ化物およびストロンチウムは、それによるWntの活性化に基づいて本明細書では重点的に取り組んだ。
【0118】
フッ化物はMCMのミネラルコーティング中に成功裏に取り込まれて、遅くなったミネラル溶解、変化したコーティング形態、ならびにカルシウムおよびBMP2の延長された放出が実証された(Yuら、2014年 Adv Func Mater 24:3082~3093頁)(データは示されず)。フッ化物ドープMCMは、mRNA送達をインビトロでは安定化することも明らかにされた(Fontanaら、2019年 Mol Ther Nucl Acids 18:455~464頁)が、フッ化物はmRNA療法についてインビボでは試験されていない。さらに、フッ化物ドープMCMによるWnt経路の活性化は現在まで試験されていない。フッ化物は、スクレロスチン、GSK-3β、およびDkk-1のようなWntアンタゴニストを阻害することによりWntシグナル伝達経路を活性化する。実際、フッ化物に曝露された細胞のほうが、β-カテニンの蓄積が多く、骨形成マーカーであるRunx2、アルカリホスファターゼ、コラーゲンI、およびオステオネクチンの発現が増加することが明らかにされた(Panら、2014年 Toxicol Lett 225:34~42頁)。ミネラルコーティング中にフッ化物を組み込めば、長い送達動力学のためにmRNAが安定化され、Wnt経路はmRNA非依存的様式で活性化されることが可能だと考えられる。
【0119】
ストロンチウムも本明細書では化学ドーパントとして添加された。フッ化物の場合と同じように、ストロンチウムはWnt経路を活性化して骨形成を増加し同時に骨吸収を減少させることが明らかにされている(Buehlerら、2001年 Bone 29:176~179頁)。さらに、ストロンチウム増強生体材料は、生理活性、細胞増殖、骨治癒および骨結合の点でインビトロおよびインビボにおいて可溶性ストロンチウムよりも一貫して性能がよい(Marxら、2020年 Bone Rep 12:100273頁)。したがって、フッ化物を含むことを試験することに加えて、ミネラル層内のストロンチウムドーピングは、SBFそれぞれ50mLに対して0.5~50mMの濃度で試験された。フッ化物ドープMCMに関してはインビトロ試験が実行された。
【0120】
改変模擬体液(mSBF)中で4.2mMの炭酸水素イオン(HCO )と7日間インキュベートさせたβ-TCPマイクロ粒子を本明細書でのベースラインMCM系として使用した(Yuら、2014年 Adv Func Mater 24:3082~3093頁)。フッ化物は、mSBF50mLにフッ化ナトリウム(NaF)1、10、または100mMを組み入れることにより3つの異なる濃度でこのベースライン系に添加された(Yuら、2014年 Adv Func Mater 24:3082~3093頁)。ストロンチウムもmSBFに添加された3つの異なる濃度(0.5、5、または50mM)で試験された。MCMは、食糧および医学的利用に容認できるACSグレード試薬を使用して合成し、180℃で16時間殺菌して、リボヌクレアーゼを破壊し最終的エンドトキシンを取り除いた。コーティング形成の最後に、バイオミネラルコーティングは、刊行物に以前詳述されているように、走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギー分散X線分光分析(EDS)、X線回折(XRD)、およびフーリエ変換赤色分光法(FT-IR)を使用して形態および組成について分析された(Leeら、2011年 Adv Mater 23:4279~4284頁)。
【0121】
MCMの骨形成能力は最初、インビトロで骨髄由来ヒト間充織間質細胞(hMSC)および軟骨形成細胞系ATDC5を使用して試験された。なぜならば、これらは、治癒の第1段階中の骨折皮膚硬結内の一次細胞型であるからである。細胞は、組織培養プレートにおいて標準基本培地中12ウェル20,000細胞/ウェルで培養された。12.5~250μgのMCMをそれぞれのウェルに添加し、3~48時間培養した。次に、細胞の代謝性健康は、標準TriZOLプロトコルを使用するmRNA単離のために回収する前にPresto Blueで非破壊的に分析された。骨形成遺伝子(オステオポンチン、オステオカルシン、アルカリホスファターゼ)、下流Wnt経路遺伝子(アキシン2、ctnb1)104、およびアポトーシス遺伝子(カスパーゼ3)が分析された。肥大軟骨細胞をすべてのインビトロ試験に使用した。
【0122】
フッ化物(FMCM)およびストロンチウム(SMCM)ドーピングは、骨形成を促進する細胞増殖および能力について、ベースラインMCM、非MCM(負の対照)、および標準骨形成培地(正の対照)と比較された。さらなる厳密さのため、Wnt活性化を、ATDC5中にトランスフェクトされたTOPFlashレポーターシステムを使用して定量化した。TOPFlashは、TCF/LEF結合部位を含有するベクター、変異TCF/LEF部位を有するFOPFlashベクター(負の対照)、および正規化によりトランスフェクション効率を補正するための構成的に活性化されたRenillaルシフェラーゼベクターを含んだ。インビトロ試験はすべて最小でも4~6反復で実行された。複数の群にわたって比較する場合、ANOVAを実行して、統計的有意差があるかどうかを判定し、続いてテューキーHSD事後検定を行った。骨形成特徴付けは、種々の骨形成マーカー(オステオポンチン(Opn)、オステオカルシン(Ocn)、および下流カノニカルWntマーカーであるアキシン2)についてqRT-PCRを使用することにより決定した。予備試験では、12.5~250μgのMCM濃度ではATDC5細胞に逆細胞傷害性を引き起こさなかった(図3A)が、オステオカルシン(図3B)およびWnt経路マーカー(図3C、3D)を時間依存的に有意に上方調節することができることが示された。実際、処置間の細胞の数にも(図3A)分泌されたアルカリホスファターゼ処置のレベルにも(図3E)有意差は見られなかった。さらに、MCMは、FMCMと比べて試験されたすべての濃度で有意に多いOcn発現を有し(図3B)、25および125μgでFMCMよりも有意に多いOpn発現を有する(図3F)ことが見出されたが、FMCMはすべての時点でより多くのアキシン2発現を有していた(図3C)。最後に、MCMおよびFMCM処置に続いて細胞生存率を測定した(図3G)。
【0123】
本技術をさらに確認するため、臨床関連マウス骨折モデルを利用して、修復の複雑な(全動物)状況において組織特異的応答を保証した。マウス手術を実行して脛骨骨折モデルでの骨折治癒結果を調べた。なぜならば、脛骨は最もよく骨折する骨の1つであり、その末梢位置および体重負荷での直接的な役割のせいで治癒が遅延する割合がより高いからである(Praemerら、1992年 Musculoskeletal conditions US、第1版)。現在は、多くの脛骨骨折は、相対的な安定性を与える髄内釘を使用して臨床的に固定されている。したがって、本明細書ではピン安定化中間シャフト脛骨骨折(図5A)が使用された。
【0124】
インビトロでの結果に基づいて、Wnt経路の最も強い活性化を示す2つのMCM組成物をプラセボ(負の対照)と比べてインビボで試験した。MCMを、膜内対軟骨内修復に対するその影響を試験するため2つの異なる濃度で骨折の6日後に注射した(Riveraら、2020年 Sci Rep 10:22241頁)。MCMの初期の再生および炎症応答は、以前と同じように薬物送達3日後に定量化した(Moriokaら、2019年 Sci Rep 9:12199頁)。骨折皮膚硬結は脛骨および周囲の筋肉から剥ぎ取って局所的再生および炎症応答を定量化した。mRNAはTriZOLを使用して抽出し、cDNAは逆転写し、qRT-PCRは、確認されたSYBRプライマーを使用して下流Wnt標的、軟骨形成マーカー、骨形成マーカー、および炎症促進性マーカー(Tnfα、Il1β、Il6)について実施した。増加したWnt標的および骨マーカーは骨同化作用効果を示すものであり、炎症マーカーに有意な変化がないことはMCMが免疫原性ではないことを示している。末梢血、脾臓および肝臓組織も採取して、全身性炎症がMCMにより引き金が引かれるのかどうかを判定した。脾臓/肝臓組織は、炎症性マーカーに対してqRT-PCRにより分析した(Moriokaら、2019年 Sci Rep 9:12199頁)。血液中の炎症促進性マーカーはELISAにより分析した。以前のデータセット(Workingら、2020年 J orthopaed res:office pub Orthopaed Res Soc 24776頁)から平均および標準偏差を利用して、GPowerを使用して検定力分析を実行し、パワー=0.8およびα=0.05を達成するには3マウス/群が必要であることを決定した。5マウス/群は、厳密さを保証し、MCM送達での潜在的な変動に対応する。その結果、全部で25マウスについて単一エンドポイント(MCM送達の3日後)で、5マウス/群、3群(2MCM組成物、1対照)、および2MCM濃度が存在した。ANOVAおよびテューキーHSD事後検定を以前と同じように使用した。
【0125】
定量的μCTおよび組織形態計測はMCM送達を用いた骨折修復への機能的変化を定量化するための主要結果尺度である
骨折後14日目の減少した軟骨の割合および骨の割合の増加は、骨折修復が改善されていることを示す。骨折は4%PFAで固定され、μCTは本発明者らのScanco μCT80スキャナーを使用して完了した。骨塩量、骨量、骨梁幅、および骨梁密度を計算した(Riveraら、2021年 bioRxiv doi.org/10.1101/2021.11.16.468864)。その後、脚を脱灰し、パラフィンに包埋した。連続切片(10μm)は切断し、10番目のスライドごとにHall Brunt’s Quadruple(HBQ)で染色して、骨(赤色)と軟骨(青色)を識別した。組織容量および骨折皮膚硬結組成は、盲検サンプル上で組織形態計測の標準原理を使用して定量化された。軟骨の割合および骨の割合を捕捉することに加えて、骨折皮膚硬結組成を包括的に特徴付けるために線維組織容量および骨髄空間も定量化された。
【0126】
体重差について補正された際に、成獣マウスの骨折治癒での性別関連差は以前見出されず、したがって、オスとメスの数が等しい混合が使用された。公表されている研究(Wongら、2020年 bioRxiv 2020.2003.2011.986141;Riveraら、2020年 Sci Rep 10:22241頁)から平均および標準偏差を使用して、GPowerにおいて検定力分析を実行し、パワーレベル>80%、効果量d=1.5および有意水準5%を達成するには組織形態測定およびμCT45には10マウス/群/時間が必要であることを決定した。複数群の統計的比較は、一元配置ANOVA(α=0.05)により実行された。テューキーHSD事後分析はANOVAによる統計的有意差のあるデータセットに関して実行して、どちらの群が統計的に異なるのかを判定した。上と同じ群に基づいて、この分析は、全部で50マウスについて単一エンドポイント(骨折14日後)で、10マウス/群、3群(2MCM組成物、1対照)、および2MCM濃度を必要とした。骨折修復での年齢関連遅延を回避するため、試験したマウスすべてが10~14週齢であった(Clarkら、2017年 Curr osteopor rep 15:601~608頁)。
【0127】
mRNA送達動力学を延長し細胞傷害性を低減するためのMCMの化学ドーピング
Wnt活性化機能を果たすことに加えて、MCMは、細胞内トランスフェクションを改善しカチオン性脂質ベクターの細胞傷害性をインビトロで有意に軽減することによりmRNA送達を増強することができる(Fontanaら、2019年 Mol Ther Nucl Acids 18:455~464頁)。具体的には、MCM媒介mRNA送達は有益であった。なぜならば、MCMはmRNA複合体を徐々に送達し、それによって細胞膜に対するその破断効果を軽減するからである。MCMは、おそらく、ミネラルコーティングから溶解する局所的に増加する濃度のCa2+およびPO 3-の存在のせいで、mRNA内部移行を増加させるエンドソーム活性も刺激する。
【0128】
トランスフェクション効率、またはトランスフェクションの規模、およびトランスフェクション動力学、またはトランスフェクションの持続期間は、送達プラットホームのそれぞれについて評価した。MCMとFMCMの両方が、リポフェクタミン(商標)のようなmRNAを保有し安定化する脂質複合体を必要とする。送達プラットホームを処方するため、先ず脂質小胞は核酸と複合体を形成する。MCMを添加した後、脂質-核酸複合体はミネラルコーティングと物理的に相互作用する。ホタルルシフェラーゼ(FLuc)mRNAは、qRT-PCRを使用してトランスフェクションを定量化するためのレポーター遺伝子として使用した。FMCMは処置に続く3時間でトランスフェクションを有意に増強することが見出された(図4B、p=0.019)。2(-ΔCt)の対数変換分析は、送達プラットホーム間の粒状の違いを示している(図4A)。予備データは、FMCMがホタルルシフェラーゼmRNAの発現を増強するが、インビトロで軟骨細胞での炎症促進性IL1βの(図4C)、ならびにインビトロで軟骨細胞でのIL-4の発現を有意に減少させることを支持している(データは示されず)。免疫原性はmRNA送達と頻繁に関連しているので、炎症性応答を最小化する遺伝子送達プラットホームを開発することが重要であった。最後に、レポーターmRNAが脂質ナノ粒子(LNP)にカプセル化され軟骨細胞(骨折皮膚硬結の細胞)上で処置されると、軟骨細胞からのレポーターmRNAの時間依存性発現が示された。12ウェルプレートでの20,000細胞/ウェルでは、処置は、0.25μg mRNA/ウェルでLNP-mRNA複合体、および25μg/ウェルでMCMまたはFMCMからなっていた。MCMとフッ化物ドープMCMは、LNP単独と比べて脂質ナノ粒子(LNP)を用いたmRNAトランスフェクションを改善した(図4D)。さらに、フッ化物ドープMCM(FMCM)は、細胞中への最も迅速なトランスフェクション、最も長い発現と共に、最大規模のmRNA発現をもたらした。
【0129】
ピン安定化マウス脛骨骨折にmRNAを送達するMCMを使用する最初のインビボ研究を行った(図5A)。ホタルルシフェラーゼmRNA(10μg/マウス、Trilink Biotech カタログ番号L-7202-100)を標準的な市販のカチオン性脂質ベクターであるリポフェクタミン(商標)(カタログ番号LMRNA001)中に製造業者のプロトコルに従ってカプセル化し、その後、OptiMEMの撹拌器上、室温で1時間100μgのMCMとインキュベートした。次に、MCM単独、リポフェクタミン(商標)(Luc/mRNA/Lipo)中のルシフェラーゼmRNA、またはMCM-Luc/mRNA/Lipoを、手術に続いて6日間骨折皮膚硬結に経皮的に送達した(図5B)。発現の規模と長さの半定量的評価を提供するため、IVISを使用してルシフェラーゼ発現をインビボで長軸方向に測定した(図5C)。骨折皮膚硬結内でのルシフェラーゼ発現も遺伝子レベルで定量化した(図5D)。最後に、IVSIイメージング結果を確認するため、骨折皮膚硬結からRNAを採取し、qRT-PCRによりホタルルシフェラーゼについて探索した。MCMプラットホームのほうが、多くのルシフェラーゼmRNA発現を有することが示された(図5E)。IVISイメージングおよびmRNA発現から明らかなように、ルシフェラーゼ発現は依然として骨折領域に高度に局在したままであり、MCMは骨折皮膚硬結でルシフェラーゼの発現を有意に延長した。したがって、複合体化mRNAのための送達担体として使用した場合、MCMは非ウイルスベクターの細胞傷害性をかなり軽減し、mRNA複合体の細胞内部移行を促進し、トランスフェクション効率を改善し、トランスフェクション動力学を拡張することができた。
【0130】
予備データに基づけば、MCMプラットホームがmRNAの送達を有意に増強し延長することができるという強力な証拠がある。MCM、FMCM、またはSMCMを、従来のレポーター構築物としてルシフェラーゼを使用するリポフェクタミンおよびプラセボ対照と比べて、インビトロ(MSC、軟骨細胞、例えば、図4A、4C)とインビボ(骨折皮膚硬結、例えば、図5A、5D)の両方でmRNA送達の規模および動力学を改善するその能力について厳密に試験した。MCMの量は上記の結果に基づいて固定され、mRNA濃度は0.1μg mRNA/μg MCM~1μg mRNA/μg MCMまで変更された。予備研究では脚を除いてルシフェラーゼ発現は観察されなかった(図5C)が、血液細胞、脾臓、肝臓、および肺でのルシフェラーゼの全身発現について調べるためIVISおよびmRNAを使用して徹底的な生体内分布研究を行った。確固たる免疫組織化学プロトコル(Huら、2017年 Dev 144:221~234頁;Wongら、2020年 bioRxiv 2020.2003.2011.986141;Wongら、2020年 J orthopaed res:office pub Orthopaed Res Soc doi:10.1002/jor.24904)を使用して、どの細胞がトランスフェクトされるかを明らかにした。生来の炎症性応答の活性化は、標準的な全血球差によりおよび骨折皮膚硬結および脾臓での炎症促進性遺伝子を測定することにより測定される。骨折皮膚硬結中への局所的マクロファージ(F480)および好中球(Ly6)浸潤は、組織形態計測を使用して免疫組織化学から定量化される(Clarkら、2020年 Aging Cell 19:e13112)。アポトーシスはカスパーゼ3およびTUNEL染色により評価される(Huら、2017年 Dev 144:221~234頁)。炎症応答は予測もされ効果的な骨折治癒にも必要であり(Bahneyら、2019年 J orthopaed res:offic pub Orthopaed Res Soc 37:35~50頁)、したがって、プラセボと比べて25%よりも多くアポトーシスおよび炎症を増加させる結果基準のみが臨床的に意味があると見なされ除外された。インビトロ試験はすべて最小でも4~6反復で行われた。インビボ研究では、予備データに基づく検定力分析(図5A~5D)は、パワーレベル>80%、効果量d=1.5および有意水準5%を達成するには6マウス/群が必要であることを示していた。したがって、実験計画は、全部で108マウスについて2つのエンドポイント(送達3日後および7日後)2mRNA濃度で、6マウス/群、5群(3MCM組成物、リポフェクタミンのみ、プラセボ対照)を含んだ。マウス研究は、同数のオスとメスマウスを用い成獣野生型マウスで行った。複数の群にわたって比較する場合、ANOVAを実行して統計的有意差があるかどうかを判定し、続いてテューキーHSD事後検定を行った。性別依存性応答を試験した。
【0131】
したがって、本実施例は、ミネラルドーパントのmRNA非依存性組み入れによりWntシグナル伝達を活性化し、宿主免疫応答を減少させてmRNAの発現を延長するために、注射可能な送達プラットホームとしてのMCMの化学特性を目的に合わせるように設計された。予備データ(図3A~3G)に基づいて、化学ドーパント(フッ化物、ストロンチウム)のうちの1つまたは両方は、生理活性プラットホームとしてのカノニカルWnt経路を活性化して骨形成を促進すると予想された。特定の実施形態では、(1)プラセボと比べてアキシン2/Cntb1遺伝子発現およびTOPFlash活性により測定された有意に増強されたWnt活性化、(2)インビトロおよびインビボで増加した骨形成遺伝子発現、ならびに(3)プラセボと比べてMCMを用いたインビボでの14日目の増加した骨形成は効能を示す。特定の実施形態では、mRNA送達を改善する目的では、(1)IVISおよびルシフェラーゼqRT-PCRにより測定される有意の増強したルシフェラーゼ発現、(2)延長されたルシフェラーゼ発現、ならびに(3)リポフェクタミン送達単独と比べて減少した炎症応答は効能を示す。骨折皮膚硬結へのMCMの経皮的送達は、最小の異所的効果でmRNAの局所化された発現を生じるはずである。万一、目的の領域の外側でMCMが漏出した場合、ミネラルコーティングの全体的な電荷は、骨折中の負電荷軟骨細胞との静電気相互作用を増強するように変えることができる。これにより、細胞-MCM相互作用は増加し、MCMが目的の領域から離れることができる可能性が最小化されると考えられる。代わりに、MCMは、正しい場所に固定するため、アルギン酸のようなポリマー担体と一緒に同時注入することができると考えられる(Krebsら、2010年 J biomed mater res、Pt A 92:1131~1138頁)。万一、トランスフェクション動力学が理想的でない場合、複数のレベルで治療介入がありうる。例えば、ミネラルコーティングの化学特性を変化させることが、mRNAの持続性発現を可能にするのに十分ではない場合、β-TCPコア材料をもっと長いまたはもっとゆっくりした分解速度を有するように変えることができる。
【実施例2】
【0132】
カノニカルWntシグナル伝達の直接的活性化のためのβ-カテニンmRNA脂質ナノ粒子複合体の最適化
注入して骨折皮膚硬結でのカノニカルWntシグナル伝達を直接的に活性化することができる新規のβ-catGOFmRNA複合体を操作により作製するために、骨折皮膚硬結で一過性に誘導された場合骨折修復を加速することが実証されているβ-catGOFトランス遺伝子(図6A~6Q)は、修飾ヌクレオシド、最適化非翻訳領域(UTR)、ポリ(A)テール、および真新しいキャッピング(clean capping)を付加することによりmRNA治療薬に移行された。β-catGOFmRNA治療薬は、安定性を増加させる、翻訳を改善する、および免疫原性を減少させることを目標に機能的に試験することができる複数の配列を開発するためコドン最適性を用いることにより最適化された。次に、最適化直鎖状β-catGOFmRNAのインビトロおよびインビボ効能を新規の環状β-catGOFmRNA(circRNA)構築物と比較して、mRNA発現動力学をおよびWnt経路活性化をさらに改善して免疫原性を低減した。mRNAは最初、トランスフェクションのための非最適化カチオン脂質として標準的な市販の試薬であるLipofectamine(商標)を用いて送達された。次に、リポフェクタミン(商標)-関連細胞傷害性を低減することを目標に、臨床グレードの操作された脂質ナノ粒子を、mRNA用の送達ベクターとして試験した。治療mRNAおよび脂質ナノ粒子は両方が組織特異的応答を有することが分かっているので、応用特異的な様式で設計され試験されるべきである。操作された脂質ナノ粒子内に送達されたmRNA構築物最適化(ヌクレオシド修飾、コドン最適性、circRNA)は細胞内発現を延長し、Wnt経路活性化を増幅し、骨折皮膚硬結内で炎症性応答を最小化する可能性がある。
【0133】
カノニカルWntシグナル伝達を活性化するβ-catGOFmRNA治療構築物
カノニカルWntシグナル伝達は、膜内骨化において不可欠な役割を果たし(Monroeら、2012年 Gene 492:1~18頁)、この経路は骨への軟骨の軟骨内転換にも必要である(Houbenら、2016年 Dev 143:3826~3838頁)。治療的に、Wnt経路は直接活性化するのが困難である。なぜならば、Wntリガンドは脂質付加されているからである(Willertら、2003年 Nature 423:448~452頁)。その結果、既存のWnt治療薬(FDA承認されたEVENITY(登録商標)のような)は、親水性抗体をWnt阻害剤に送達してWnt経路を間接的に活性化する(Canalis 2013年 Nat Rev Endocrinol 9:575~583頁)。EVENITY(登録商標)は骨粗鬆症の処置においてタンパク同化性が判明しているが、骨折修復での効能を調べる臨床研究では、利益がないことが明らかにされており(Schemitschら、2020年 J Bone Joint Surg、Amer 102巻:693~702頁)、モノクローナル抗体の全身送達では局在化した修復を刺激するのは不十分であることを示している。したがって、mRNA技術は、Wntシグナル伝達を直接活性化して骨折修復を促進するのに有用になりうることが考えられる。
【0134】
トランスジェニックマウスを使用して、破壊しにくいβ-カテニントランス遺伝子(β-catGOF)の条件付き発現が、骨折後6~10日から一過性に誘導されると骨修復を加速することが示された(図6A~6Q)。β-catGOF構築物は、野生型β-カテニンからエクソン3の削除により生成された約3.2kb配列である(Haradaら、1999年 EMBO J 18:5931~5942頁)。エクソン3は、破壊複合体によるβ-カテニンのプロテアソーム分解を引き起こすリン酸化部位を含有する。次に、このエクソンを削除すれば、β-カテニンのリン酸化媒介分解を防ぐことにより下流Wntエフェクターが転写される(Stewartら、2000年 J Bone Miner Res15:166~174頁)。Wnt標的遺伝子アキシン2のqRT-PCR分析により、カノニカルWntシグナル伝達がβ-catGOFトランス遺伝子の誘導により過活性化されることが確かめられた(図6M)。対照と比べたすべての時点で骨折皮膚硬結中の増加した骨および減少した軟骨の割合により証明されるように、機能的レベルでは、β-catGOF発現は骨折修復を加速した(図6Oおよび6P)。このように、組織形態計測的な定量化により、骨折皮膚硬結中の増加した骨および減少した軟骨組成が確かめられた。画像は、軟骨細胞および肥大軟骨細胞に取り囲まれた骨折皮膚硬結内の新たな骨梁(網状)骨の形成を描いている。
【0135】
このβ-catGOFトランス遺伝子配列は、RNAcoreを使用してmRNA治療薬に移行された。β-catGOFmRNA治療薬は、野生型β-カテニンからのエクソン3削除部分を含有する(トランス遺伝子中で)が、追加の改変:高い翻訳可能性と安定性の両方を与えることが分かっている非翻訳領域(UTR)の組み入れ、すべてのウリジン残基の1-メチル-3’-プソイドウリジンへの置き換え、高効率のmRNAの真新しいキャッピング、ポリ(A)テール、およびレポーターエレメントとしてのナノルシフェラーゼを含有する。ヌクレオシド修飾は、免疫原性を低減しmRNA療法の有効性を増加させる肝要な進歩であることが判明しているので、核心設計の一部であった(Krienkeら、2021年 Science 371:145~153頁;Corbettら、2020年 NEJM 383:1544~1555頁)。まとめると、記載されるmRNA修飾はベースラインβ-catGOFmRNAを表し、機能性を改善するために配列特異的および組織特異的変化を加えるプラットホームとしての役目を果たす。
【0136】
治療的に有用な安定性および翻訳プロファイルを有するβ-catGOFmRNA構築物を操作により作製するため、コドン最適性が用いられる。真核細胞系のRNA生物学でのコドン最適性(Presnyakら、2015年 Cell 160:1111~1124頁;Medina-Munozら、2021年 Genome Biol 22:14頁)は、細菌系でのコドン最適性とははっきり異なり、細菌系ではtRNA存在量に対応する変化に取り組むだけである。コドン最適性についての最近の研究では、ある特定の同義コドンがmRNA安定性の追加の程度および/または特定のアミノ酸に対する他のコドンよりも効率的な翻訳を与えることが明らかにされた(Presnyakら、2015年 Cell 160:1111~1124頁;Forrestら、2020年 PloS one 15:e0228730)。コドン最適性についてはいくつかの指針となる原則が明確化されており、第1に、コドン最適性は組織特異的および細胞型特異的であり、第2に、グアノシンとシトシンに富んだコドンのほうがそれらのヌクレオチドを欠くコドンよりも最適になる可能性が高いことである(Maugerら、2019年 PNAS USA 116:24075~24083頁)。ウリジンの存在を最小にすることは、mRNA治療薬の免疫原性可能性も低減するので、mRNA療法では一般的慣行である。いくつかの一般的に公開されているアルゴリズム(例えば、icodon.org)を用いれば、コドン最適性を計算し、細胞培養実験において評価する3つの異なるmRNA配列を生み出すことができる。これらの3つの試験されたmRNA構築物はすべて、mRNAを標識してトランスフェクション用の標準的非最適化カチオン性脂質ベクターとしてのリポフェクタミン(商標)中にカプセル化されるナノルシフェラーゼレポーターエレメントを含有している。最も長い細胞発現、最高レベルのWnt経路活性化、およびインビトロで最小の炎症性/細胞傷害性応答を示すmRNA複合体がベースライン直鎖状mRNAとして選択される。
【0137】
操作された環状RNAを通じた構造的増強
RNAcoreは、環状配列内リボソーム進入部位(IRES)からタンパク質を発現することにより環状RNA(circRNA)を生み出す能力を有する(Wesselhoeftら、2019年 Mol Cell 74:508~520頁)。circRNAはその直鎖状対応物に優るいくつかの利点がある。第1に、circRNAのほうがインビボでかなり安定している。なぜならば、circRNAは、細胞RNaseの主な標的である5’および3’末端を欠くからである。これにより、コードされたタンパク質が発現される量と持続期間の両方が増加する。第2に、環状RNAは5’末端を欠くので、効率的な翻訳に5’キャップを必要としない。微量のキャップのないmRNAは免疫応答を誘導することがあるので、これは重要である。この技術は、細胞培養実験を使用して、ベースラインと最適化直鎖状mRNA構築物の両方と比較される新規のcircβ-catGOF図7)を創造するのに適用される。最も長い細胞発現、最高レベルのWnt経路活性化、および最小の炎症を生み出すmRNA療法は、インビボ確認の候補β-catGOFmRNAである。
【0138】
β-catGOFmRNA治療薬のインビトロ確認
治療直鎖状および環状β-catGOFのトランスフェクション効率および動力学は、先ず、軟骨細胞(ATDC5)およびMSCにおいてインビトロで試験した。なぜならば、これらは骨折皮膚硬結内の一次細胞型であるからである。トランスフェクション効率は、ルシフェラーゼ発現を定量化するqRT-PCRおよびルミノメーターにより、ナノルシフェラーゼ(β-catGOFmRNA構築物にコードされる)を発現する細胞のパーセンテージを定量化することにより試験された。ルシフェラーゼ発現は2時間目で開始して定量化され、発現がもはや検出可能でなくなるまで続いた。
【0139】
機能的確認試験は、Wnt経路標的(アキシン2、cntb1l)に対するqRT-PCRおよびTOPFlash蛍光レポーターシステムを使用して、β-catGOFmRNA複合体での処置に続いてカノニカルWnt経路活性化の規模および時間的順序を測定した。β-catGOFmRNA複合体は正の対照としてWnt3aリガンド(50ng/mL)と(Hannouschら、2008年 PloS one 3:e3498)、負の対照としてスクランブルドmRNA、リポフェクタミン単独、およびプラセボと比較された。インビトロ試験はすべて最小でも4~6反復で行った。複数の群にわたって比較する場合、ANOVAを、続いてテューキーHSD事後検定を行った。
【0140】
外来性mRNAは細胞特異的自然免疫応答を刺激することが分かっているので、種々のβ-catGOFmRNAで処置された軟骨細胞およびMSCの免疫およびアポトーシス応答を比較した。細胞傷害性は、RealTime-Glo(商標)アネキシン5を使用して細胞アポトーシスを定量化するため、非破壊PrestoBlue(商標)細胞生存率アッセイおよびフローサイトメトリーを使用してインビトロで評価された。qRT-PCRを使用してカノニカル炎症促進性遺伝子(Tnfα、Il-1β、Il-6)を測定した。最終的なβ-catGOFmRNAは、Wnt活性化を最大にして最も少ない炎症表現型を生み出すmRNA構造に基づいて選択された。
【0141】
mRNA療法の臨床前骨折モデル確認
最終的なβ-catGOFmRNA療法のインビトロ確認および選択に続いて、骨折修復の標的臨床応用において効能が確かめられた。mRNA複合体(10μgのmRNA)は、手術6日後に骨折に局所的に注射された。トランスフェクション効率および動力学は、ナノルシフェラーゼ-β-catGOFmRNA複合体の発現の規模および長さの半定量的評価を提供するため、IVIS上での毎日のライブイメージングを使用して骨折皮膚硬結内で可視化された(図5C)。インビトロ系でのTOPFlashに類似して、インビボ蛍光トランスジェニックWntレポーターマウスが開発されており(Barolo 2006年 Oncogene 25:7505~7511頁)、毎日IVISを使用してWnt経路活性化の可視化を可能にする。2種のWntレポーターモデル:アキシン2-eGPマウス104(Jackson 016998)(Riveraら、2020年 Sci Rep 10:22241頁)、ならびに6 LEF/TCFコンセンサス結合部位およびpTOFLASH129由来の最小プロモーターを有するins-TOPeGFPマウス(Jackson 013752)を利用した。トランスフェクション効率および経路活性化の定量的評価は、骨折皮膚硬結組織からRNAを単離しqRT-PCRを使用してルシフェラーゼおよびアキシン2発現を定量化することによるイメージングに続いて行った。最後に、どの細胞がトランスフェクトされWnt経路を活性化しているのかを判定するため免疫組織化学を実行した(Bahneyら、2014年 J Bone Miner Res 29:1269~1282頁)。発現は、送達後1週間までの間、またはルシフェラーゼ発現がなくなるまで毎日定量化された。インビトロ試験の場合と同様に、インビボでのβ-catGOFmRNA複合体の機能性は、正の対照としてWnt3aリガンド(25mg/kg)と比較され、負の対照としてスクランブルドmRNA、空のカチオン性脂質、およびプラセボ注射が実行された(最小で5マウス/群)。統計的有意性は、ANOVA、続いてテューキーHSDを使用して検定された。
【0142】
最終的なβ-catGOFmRNAの免疫原性、細胞傷害性、および体内分布も治療薬送達に続く1、3、および5日目に評価された。炎症応答が予測され効果的な骨折治癒に役立つ;したがって、アポトーシスおよび炎症をプラセボと比べて25%よりも多く増加させる結果基準は臨床的に意味があると見なされた。これらの分析は、上記のβ-catGOFmRNAの機能性を試験するのに使用したのと同じマウスで行われた。
【0143】
臨床移行のために操作された脂質ナノ粒子
本明細書ではmRNAの非ウイルス送達が使用された。なぜならば、非ウイルス送達は、挿入変異のリスクなしでウイルス送達よりも増加した安全性プロファイルを提供するからである。しかし、非ウイルスmRNAトランスフェクションは、カチオン性脂質ベクターがなければ非常に非効率的である。リポフェクタミン(商標)のような市販の脂質ベクターは、mRNAの安定性を増し、細胞内部移行を促進するが、これらのベクターに関連する毒性は臨床移行を妨げる。臨床移行可能なmRNA療法を開発するため、良好なトランスフェクション効率を維持しつつ細胞傷害性を低減することを目標に、リポフェクタミン(商標)を臨床グレードの操作された脂質ナノ粒子(LNP)と比較した。マイクロ流体ミキシングを使用して有機相と水相を急速に化合して再現可能な様式でナノ粒子を処方するためベンチトップNanoAssemblr(商標)を使用してLNPを合成した。有機相はエタノール中の脂質(DLin-MC3、DSPC、コレステロール、DMG-PEGを50:10.5:38:1.5の比で)で構成され、mRNAは水相として酢酸ナトリウムバッファー(pH=4)に溶解させておいた。合成されたLNPは1×PBS中一晩透析され、特徴付けに先立って無菌化のため0.22μmのフィルターを使用して濾過された。これらのmRNA-LNPはおよそ60~80nmのサイズで90%のRNAカプセル化効率を達成した。4℃で保存すると、mRNA-LNPは少なくとも4週間は安定であり、現在市場に出ている典型的なリポソーム製剤の安定性に似ていた。
【0144】
LNPがリポフェクタミンに匹敵するmRNA送達を達成できるかどうかを試験するため、mRNA発現の効率および動力学をATDC5およびMCSにおいて評価した。予備データによれば、操作されたLNPは、リポフェクタミンと比べてルシフェラーゼの少なくとも同等の発現をもたらすことが示唆される(図8A)。脂質ベクターの細胞傷害性および炎症応答も、リポフェクタミンと比べた操作されたLNPの相対的細胞傷害性を判定するために評価された。予備データによれば、LNPが軟骨細胞において炎症促進性IL1β応答を減少させることがさらに示唆された(図8B)。さらなる厳密性のため、蛍光LNPを用いて細胞内輸送および内部移行分析を実行した。これらの研究では、細胞を96ウェルプレートに蒔き、生細胞イメージングを促進するためOkolab Bioreactor上でNikon蛍光顕微鏡を使用して撮像した。それに続いて細胞は48時間後4%パラホルムアルデヒドで固定し、エンドソーム(EEA1)、リソソーム(LAMP1)および核(DAPI)に対してLNPを局在させるため抗体で染色した。染色された細胞はNISエレメントおよびImageJを使用して分析された。特定の実施形態では、リポフェクタミンと同等のまたはこれよりも良好な細胞トランスフェクションを達成するmRNA-LNP濃度を定義するのが望ましい。インビトロ試験はすべて最小でも4~6反復で行った。群は、ANOVAを、続いてテューキーHSD事後を使用して比較された。
【0145】
β-catGOFトランス遺伝子が骨折修復を加速できるという遺伝的証拠に基づいて、これはおそらく効果的なmRNA治療薬に移行させることができる。コドン最適性で操作された環状β-catGOFmRNA治療薬は、mRNA構築物の最大安定性、増強された翻訳およびWnt経路活性化を生み出し、誘導された免疫原性は最小量である可能性がある。β-catGOFmRNA療法の量(10μg)は最初はBMP mRNA骨再生研究に基づいて選択されたが、mRNA駆動Wnt活性化がWnt3a(25mg/kg)送達による場合よりも低い場合は、もっと広範囲な用量確認研究を完了させることができる。操作されたLNPはおそらく、リポフェクタミン(商標)と比べてトランスフェクション効率を改善し、細胞毒性を低減して、臨床移行可能なmRNA複合体を生み出す。circRNA設計は新規なので、1つの懸念は、circRNAがその化学修飾および三次構造のせいでLNP中に効率的にカプセル化されない場合があることである。これにより、インビトロおよびインビボでのmRNA-LNPの効能が低減されることがある。しかし、最適化された直鎖状β-catGOFmRNAは、異なる比の脂質を使用してLNP処方を調整しながらLNP内で試験することができた。特定の実施形態では、臨床的に関連する増加した免疫反応なしでWnt3a媒介タンパク質活性化に匹敵するmRNA技術を用いて局所的Wnt活性化を刺激すると効能を示した。
【実施例3】
【0146】
骨折修復のマウスモデルにおいてWnt活性化プラットホームの治療効能の比較
組合せβ-catGOF-MCMプラットホームの治療効能を、Wnt経路を刺激する代わりのアプローチという文脈、具体的には、MCMのみ、β-catGOFmRNA複合体のみ、局在的なWnt3a注射、およびWntアゴニストEVENITY(登録商標)の全身投与(適切な対照と一緒に)でマウス骨折モデルにおいて試験した。mRNAベースのアプローチは、既存の技術ギャップを解決してカノニカルWntシグナル伝達を直接活性化し、Wnt経路の最強の活性化を生じるはずであり、MCMプラットホームと協同してmRNA療法の以前の限界に取り組むことができた。さらに、Wnt活性化療法の初期(膜内)または後期(軟骨内)送達のほうがより効果的であるかどうかを判定するための試験が実行された。骨折治癒および炎症応答は、修復の時間経過を通じてずっと標準技法(遺伝子発現、μCT、組織形態計測)、ならびにコラーゲンX骨折バイオマーカー(Workingら、2020年 J orthopaed res:office pub Orthopaed Res Soc doi:10.1002/jor.24776)を使用して厳密に定量化された。β-catGOF-MCM療法は軟骨内骨折治癒を効果的に加速する可能性がある。
【0147】
骨折治癒のための療法を試験する場合、既定では大半の薬物は骨折直後に与えられ、したがって膜内骨形成を標的にする。新規の治療薬を骨折治癒でのその内在性発現に対応するタイミングで送達することにより新規の治療薬の効能を改善する試み(「発生工学」)が本明細書に記載されている。治療薬送達のタイミングの重要性は、神経成長因子(NGF)の局所的注射は、後で修復の軟骨内段階に送達された場合、骨形成を上方調節するだけであり、骨折皮膚硬結での内在性NGF発現に相互に関係があることを示すことにより実証された(図9A~9D)。Wntシグナル伝達は膜内修復と骨肉内修復の両方にとって重大な意味を持つので、Wnt活性化にとって何が最良のタイミングかははっきりしない。これは、本明細書に開示されるWnt活性化治療薬を骨折の3日後または6日後に送達してそれぞれ膜内または軟骨内修復を標的にすることにより試験された。骨折時の治療薬の送達は臨床的に不適切である。なぜならば内在性再生には最初の炎症段階が鎮静する必要があるからである。
【0148】
β-catGOF-MCM治療薬複合体のインビボ確認
高い臨床関連性を維持するため、本明細書で開示されるβ-catGOF-MCM複合体は、臨床前ピン安定化マウス脛骨骨折モデルおよび治癒の厳密な評価を使用して確認された。マウス安定化脛骨骨折は上記の通りであり図5Aに示されている。治療薬注射は、骨折後3日目または6日目に、上記の通りに蛍光透視下でハミルトン注射器を使用して与えられ図5Bに示される。実験群は以下の実験および対照群:負の対照、正の対照(Wnt3aリガンド)、MCMのみ、mRNA複合体(MCMなし)、mRNA-MCM、および製薬同等を含む。
【0149】
療法の初期再生応答および生体分布は、上に詳述される通りに薬物送達3日後qRT-PCRにより定量化された。手短に言えば、これは、確認されているSYBR Greenプライマーを使用して、標準軟骨形成マーカー、骨形成マーカー、炎症促進性マーカー、およびアポトーシスマーカーと共にWnt標的の遺伝子発現分析を含む。全身性炎症も、脾臓でWnt発現のオフターゲット発現を探しつつ、CBCを使用して評価された。上記の成分のそれぞれで広範囲な生体分布が行われるので、上記の結果に基づいてプラットホームおよび標的にされるアッセイにより安全性が比較された。以前公表されたデータセット(Moriokaら、2019年 Sci Reports 9:12199頁)からの平均および標準偏差を利用して、GPowerを使用して検定力分析を実行し、パワー=0.8およびα=0.05を達成するには3マウス/群が必要であることを決定した。処置に関連するいかなる追加の変動にも対応するため、5マウス×6群(全部で30)が計画された。ANOVAおよびテューキーHSD事後検定を使用して、以前と同じように有意性を評価した。
【0150】
上に詳述される通りに、骨折修復の機能的変化は、一次結果基準として定量的μCTおよび組織形態計測により測定された。群による治癒の速度と程度の両方を定量化するため、動物は骨折の10日後、14日後、21日後および28日後に評価された。Scanco μCT80スキャナーを使用して、骨塩量、骨量、骨梁幅、および骨梁密度が計算された。続いて、組織容量および骨折皮膚硬結組成は、盲検サンプル上で組織形態計測の標準原理を使用して定量化された。軟骨の割合および骨の割合を捕捉することに加えて、骨折組織を包括的に特徴付けるために、以前のように、線維組織容量および骨髄空間が定量化された。検定力分析およびサンプルサイズ正当化により、μCTおよび組織形態測定には10マウス/群/時間が必要であることが得られた。6群および2つの薬物送達開始時間(3日目または6日目)を考慮すると、この研究を完了するには全部で180マウスが必要であった。複数群の統計的比較は、ANOVA(α=0.05)により、続いてテューキーHSD事後分析により実行された。骨折修復での年齢関連効果を回避するため、試験したマウスすべてが10~14週齢であり、両方の性別で試験した。
【0151】
骨折皮膚硬結の生物学的組成を定量化するための循環コラーゲンX(「Cxm」)バイオマーカーを使用すれば、骨折治癒の定量化が付け加えられる(Coghlanら、2017年 Sci Transl Med 9: doi:10.1126/scitranslmed.aan4669)。コラーゲンXは軟骨細胞肥大のカノニカルマーカーであり、軟骨が骨に変わるときに一過性に発現される(図1)。Cxmレベルは骨折治癒において遺伝子およびタンパク質発現と相関があった(Workingら、2020年 J orthopaed res:office pub Orthopaed Res Soc doi:10.1002/jor.24776)。この血清バイオアッセイは、対照対治療処置を受けたマウスでの修復の分子シグネチャの比較を可能にする新規の非破壊長期的測定である。血液は、骨折の3日前および14日後に尾部静脈から(約25μl、非破壊)、その後研究の最終時点で心臓穿孔により収集された。
【0152】
本明細書で開示される骨折治癒におけるWnt活性化β-catGOF-MCMプラットホームの確認が実行された。mRNAベースのアプローチは、既存の技術ギャップを解決し、カノニカルWntシグナル伝達を直接活性化してWnt経路の最強の活性化をもたらすはずであり、MCMプラットホームと協同してmRNA療法の以前の限界に取り組むことができた。特定の実施形態では、効能は、もっと早期の骨形成をもたらす療法を開発するという臨床目的に基づいている。
【0153】
本開示は、本明細書に記載される特定の実施形態により範囲を限定されるべきではない。実際、本明細書に記載される開示に加えて、本開示の種々の改変は、前述の記載および添付の図面から当業者には明らかになる。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内に収まることが意図されている。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
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図6-7】
図7
図8
図9-1】
図9-2】
【配列表】
2024508333000001.app
【国際調査報告】