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特表2024-508350揚力発生システムおよびこのようなシステムを備えた船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】揚力発生システムおよびこのようなシステムを備えた船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 9/04 20200101AFI20240219BHJP
   F15D 1/12 20060101ALI20240219BHJP
   F03D 3/00 20060101ALI20240219BHJP
   F03D 9/32 20160101ALI20240219BHJP
【FI】
B63H9/04
F15D1/12
F03D3/00
F03D9/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540670
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 FR2022050268
(87)【国際公開番号】W WO2022175622
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】2101534
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523245078
【氏名又は名称】サン レッシュ アーシュテ アンデュ ノーティック
【氏名又は名称原語表記】CENT RECH ARCHIT INDU NAUTIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】パリュー ドゥ ラ バリエール,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェドレンヌ,ジェローム
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA12
3H178AA32
3H178AA47
3H178BB31
3H178DD26X
(57)【要約】
本発明は、揚力発生システム(101)であって、翼(1)であって、翼の外部と翼(1)の内部(102)との間の接続を確立するように設計された少なくとも1つの吸引開口(12)を有する翼(1)と、吸引装置とを備える揚力発生システム(101)に関する。揚力発生システム(101)は、軸線(A1)に対して実質的に平行な軸線を基準として回動することができるように翼(1)が取り付けられた支持体(4)を備える。吸引装置は、ファン(3)であって、翼(1)の外側に位置し、翼(1)の内部(102)に流体接続されて、空気を翼の前記少なくとも1つの吸引開口(12)を通じて吸い込み、吸い込まれた空気をファン(3)の出口を通じて排出する、ファン(3)を備える。ファン(3)は、羽根車(30)であって、羽根車を取り囲んで、羽根車によって排出される空気を案内するのに役立つダクトを画定するシュラウド(31)によって取り囲まれた羽根車(30)と、翼の軸線(A1)に対して実質的に平行な軸線を基準として羽根車(30)を回転するためのモータとを備え、ファン(3)のシュラウド(31)は、ファンの羽根車(30)の軸線(A30)に対して実質的に直交する軸線(A32)を備えた出口(32)を有する。本発明はまた、対応する船舶に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動する空気(FI)内に配置されて、揚力を発生させることを意図した揚力発生システム(101)であって、
- セイル(1)と呼ばれる、軸線(A1)に沿って細長い中空体であって、前記セイルの周壁(10)が、吸引開口と呼ばれる、前記セイルの外側を前記セイル(1)の内側(102)に連通させるように設計された少なくとも1つの開口(12)を有する、中空体と、
- 空気を少なくとも1つの前記吸引開口(12)を通して吸い込むことを可能にする吸引装置と
を備える、揚力発生システム(101)において、
前記揚力発生システム(101)は、前記セイルを支持する支持体(4)であって、前記支持体(4)に対して前記セイル(1)は、前記セイルの前記軸線(A1)に対して実質的に平行な軸線を基準として回動可能となるように取り付けられている、支持体(4)を備え、
前記吸引装置は、ファン(3)であって、前記セイル(1)の外側に位置し、前記セイル(1)の前記内側(102)に連通して、空気を前記セイルの前記少なくとも1つの吸引開口(12)を通して吸い込み、吸い込まれた前記空気を前記ファン(3)の出口を介して排出する、ファン(3)を備え、
前記ファン(3)は、羽根車(30)であって、前記羽根車を取り囲んで、前記羽根車によって排出される前記空気を案内することができるダクトを画定するハウジング(31)によって取り囲まれた羽根車(30)と、前記セイルの前記軸線(A1)に対して実質的に平行な軸線を基準として前記羽根車(30)を回転駆動するためのモータとを備え、前記ファン(3)の前記ハウジング(31)は、前記ファンの前記羽根車(30)の前記軸線(A30)に対して実質的に直交する軸線(A32)の出口(32)を有する
ことを特徴とする、揚力発生システム(101)。
【請求項2】
前記セイル(1)の下端部と前記ファン(3)との間に少なくとも部分的に延在する中空の接続要素(13)であって、前記セイル(1)と前記ファン(3)との間の流体連通を可能にする中空の接続要素(13)を備える、請求項1記載のシステム(101)。
【請求項3】
前記接続要素(13)は、前記ファン(3)に連通する開口を有する形状適合壁を備える、請求項2記載のシステム(101)。
【請求項4】
前記形状適合壁は、前記形状適合壁の前記開口の周囲と前記セイル(1)の前記内側の面とに延在する環状の要素(130)を備え、前記環状の要素(130)の断面は、湾曲した、例えば凸状のプロファイルを有し、これによって、前記セイル(1)と前記ファン(3)との間で空気流が受ける圧力降下が制限される、請求項3記載のシステム(101)。
【請求項5】
前記ファン(3)は、前記支持体(4)を取り囲む仮想のハウジング内に収容されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の揚力発生システム。
【請求項6】
前記ファン(3)は遠心ファンである、請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム(101)。
【請求項7】
前記ファン(3)は斜流ファンである、請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム(101)。
【請求項8】
前記セイル(1)は、垂直揚力を発生させる装置を備え、前記装置は、前記セイルの一方の端部および/または他方の端部の近傍に取り付けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載のシステム(101)。
【請求項9】
垂直揚力を発生させる前記装置は、少なくとも、前記セイルの前記軸線(A1)に対して実質的に直交する軸線を基準として運動可能であるように取り付けられた部材を備える、請求項8記載のシステム(101)。
【請求項10】
垂直揚力を発生させる前記装置は、空気を外側から前記セイルの前記内側に吸い込むことを可能にする吸引システムを備える、請求項8または9記載のシステム(101)。
【請求項11】
前記セイル(1)の前記周壁(10)は、前記周壁(10)に対して運動することができるフラップ(14)であって、負圧面の空気流を正圧面の空気流から分離することができるフラップ(14)を備える、請求項1から10までのいずれか1項記載のシステム(101)。
【請求項12】
前記セイル(1)の前記周壁(10)は、2つの吸引開口(12)と、フラップ(14)などの遮蔽システムであって、前記吸引開口(12)の一方を選択的に遮蔽し、他方の前記吸引開口(12)を露出させることを可能にする遮蔽システムとを有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のシステム(101)。
【請求項13】
前記ファン(3)の前記ハウジング(31)は、可変断面の排出ダクトによって延長されており、断面は、好ましくは、前記排出ダクトの出口端部に向かって減少している、請求項1から12までのいずれか1項記載のシステム(101)。
【請求項14】
前記セイルおよび場合によっては前記セイルの前記支持体を、前記セイルの前記軸線(A1)に対して実質的に直交する軸線、好ましくは実質的に水平な軸線を基準として傾斜させることを可能にする傾斜システムを備える、請求項1から13までのいずれか1項記載のシステム(101)。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の少なくとも1つの揚力発生システム(101)を備える船舶(100)であって、前記ファン(3)は、前記セイル(1)と前記船舶の前記甲板(111)との間に位置し、前記セイル(1)は、前記セイルの前記軸線(A1)に対して実質的に平行な軸線を基準として前記船舶の前記甲板に対して回動可能であるように取り付けられている、船舶(100)。
【請求項16】
前記支持体は、前記セイルが鉛直に起立し、前記セイルの前記軸線(A1)に対して実質的に平行な軸線を基準として回動するとき、前記支持体(4)が前記船舶の前記甲板に対して固定されたままであるように配置されている、請求項15記載の船舶(100)。
【請求項17】
前記ファン(3)は、前記セイルが鉛直に起立し、前記セイルの前記軸線(A1)に対して実質的に平行な軸線を基準として回動するとき、前記ファン(3)の前記ハウジング(31)が前記船舶の前記甲板に対して固定されたままであるように配置されている、請求項15または16記載の船舶(100)。
【請求項18】
前記ファン(3)の前記ハウジング(31)の前記出口(32)の前記軸線(A32)は、前記船舶の艫の方に向けられていて、好ましくは、前記船舶の長手方向軸線に対して実質的に平行である、請求項15から17までのいずれか1項記載の船舶(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、流動する空気内に配置されて、揚力を発生させることを意図したシステム、または揚力発生器に関する。風力推進式の移動体の場合、こういったシステムは風力原動機としても知られている。
【背景技術】
【0002】
細長い中空体と、中空体の周壁に沿って形成された吸引領域と、中空体の内側に収容された吸引手段とを備える風力原動機は、先行技術、特に特許文献1から公知である。原動機の周壁での吸引により、原動機の壁からの空気流の流れ剥離を制限することができる。
【0003】
このように、特許文献1には、幾つかのファンを収容する本体を備えたセイルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国追加特許公開第2503286号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こういった原動機の性能を向上させることができるようにすることが所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明の1つの主題は、流動する空気内に配置されて、揚力を発生させることを意図した揚力発生システムであって、
- セイルと呼ばれる、軸線に沿って細長い中空体であって、セイルの周壁が、吸引開口と呼ばれる、セイルの外側をセイルの内側に連通させるように設計された少なくとも1つの開口を有する、中空体と、
- 空気を少なくとも1つの前記吸引開口を通して吸い込むことを可能にする吸引装置と
を備える、揚力発生システムにおいて、
揚力発生システムは、セイルを支持する支持体であって、支持体に対してセイルは、セイルの軸線に対して実質的に平行な軸線を基準として回動可能となるように取り付けられている、支持体を備え、
前記吸引装置は、ファンであって、セイルの外側に位置し、セイルの内側に連通して、空気をセイルの少なくとも1つの吸引開口を通して吸い込み、吸い込まれた空気をファンの出口を介して排出する、ファンを備え、
ファンは、羽根車であって、羽根車を取り囲んで、羽根車によって排出される空気を案内することができるダクトを画定するハウジングによって取り囲まれた羽根車と、セイルの軸線に対して実質的に平行な軸線を基準として羽根車を回転駆動するためのモータとを備え、ファンのハウジングは、ファンの羽根車の軸線に対して実質的に直交する軸線の出口を有する
ことを特徴する、揚力発生システムである。
【0007】
吸引装置を、(中空体または翼型プロファイルとも呼ばれる)セイルの外側に位置決めすることは、吸引装置の選択に関する限り、吸引装置の設置面積がセイルの内側の寸法によって制約されないことを意味し、吸引装置がセイルの内側に収容される先行技術の解決手段とは異なっている。したがって、特に効果的であると共にセイル全体に吸引流量を提供することができる直径と回転速度との組み合わせを選択することにより、効率を最大化するファンを選択することが可能となる。
【0008】
ファンの主要な機能は、セイルを換気することである。好ましくは、ファンは、セイルの下端部の可能な限り近傍に位置する。
【0009】
したがって、本発明によるシステムは、遠心型のファンまたは斜流型のファンを使用して、セイルの断面積を増大させる必要なく、揚力発生システムから所望の推進性能を得ることが可能となる。
【0010】
同じ効率およびセイルの内側に位置する吸引手段で揚力発生システムの動作点を取得するためには、吸引手段が、セイルに沿って分散された幾つかのモジュールに分割される必要があり、これにより、システムの複雑性と、製造・保守コストとが増加してしまう。
【0011】
遠心ファンは、セイルの根元に配置されてよい。
【0012】
本発明によるシステムが船舶の甲板に取り付けられているとき、ファンのハウジングは、船舶の甲板に対して固定される。このようにして、対応するファンの空気出口を、船舶の長手方向軸線に沿って船舶の艫の方に向けることによって、空気を船舶の長手方向軸線に対して平行に排出することが可能となる。したがって、排出された空気は、噴流効果により推進力に寄与する。
【0013】
吸引手段がセイルの内側に配置される先行技術から公知の解決手段では、空気が排出される方向がモータの配向に左右されるため、排出された空気は、必ずしも船舶の軸線に沿って船舶を推進させる力に寄与するとは限らない。
【0014】
船舶の甲板上に固定されるように意図された支持体に対して回動することができるようにセイルを取り付けることにより、セイルが、好ましくはセイルの鉛直軸線を基準として回転することが可能になり、その結果、セイルは、見かけの風の方向に対して自らを配向する。
【0015】
有利には、セイルの下側部分に位置するオリフィスにより、ファンとセイルの内側との間の直接的な連通が可能になる。この構成により、中間ダクトで発生する圧力降下を減じることができる。特定の一実施形態によれば、ファンの直径よりも短い長さのダクト、例えばファンの直径が2m程度の場合には、数十cmの長さのダクトを、セイルとファンとの間に位置決めしてよい。
【0016】
ファンは、システムの無視できない質量を占める。このファンがセイルの基礎に配置されているという事実は、多くの利点をもたらす。
【0017】
内蔵型マスは、船舶の加速を被る。ファンがセイルの外側かつ根元に配置されているという事実は、セイルに加わる力が大幅に軽減されることを意味する。具体的には、ここでは、船舶の加速度と組み合わされる2種類の力が存在する。一方は、遠心ファンの質量に直接関係する慣性力であり、他方は、ファンの回転から生じるジャイロ力である。これにより、システムの構造が軽量化され、製造コストが削減される。
【0018】
ファンをセイルの根元に配置することにより、アクセスが容易になり、メンテナンス作業が容易になる。
【0019】
特定の一態様によれば、吸引装置は、船舶の甲板に取り付けられるとき、セイルの下であって、船舶の甲板とセイルとの間に位置している。
【0020】
仏国追加特許公開第2503286号明細書では、各々のファンが、セイルの外側ではなく、セイルの内側に位置していることに留意されたい。
【0021】
本発明によれば、セイルがセイルの軸線を基準として回動しても、ファンは回動したり配向を変えたりしないことが理解される。
【0022】
発生システムはまた、技術的に許容される任意の組み合わせで考慮される以下の特徴のうちの1つ以上を備えることができる。
【0023】
一実施形態によれば、システムは、セイルの下端部とファンとの間に少なくとも部分的に延在する中空の接続要素であって、セイルとファンとの間の流体連通を可能にする中空の接続要素を備える。
【0024】
一実施形態によれば、接続要素は、ファンに連通する開口が形成された形状適合壁を備える。
【0025】
一実施形態によれば、形状適合壁は、形状適合壁の開口の周囲とセイルの内側の面とに延在する環状の要素を備え、前記環状の要素の断面は、湾曲した、例えば凸状のプロファイルを有し、これによって、セイルとファンとの間で空気流が受ける圧力降下が制限される。
【0026】
一実施形態によれば、ファンは、支持体を取り囲む仮想のハウジング内に収容されている。言い換えると、ファンは、支持体の全体的な設置面積内に含まれている。
【0027】
一実施形態によれば、ファンは遠心ファンである。
【0028】
一実施形態によれば、ファンは斜流ファンである。
【0029】
一実施形態によれば、セイルは、垂直揚力を発生させる装置を備え、この装置は、セイルの一方の端部および/または他方の端部の近傍に取り付けられている。
【0030】
一実施形態によれば、垂直揚力を発生させる装置は、少なくとも、セイルの軸線に対して実質的に直交する軸線を基準として運動可能であるように取り付けられた部材を備える。
【0031】
一実施形態によれば、垂直揚力を発生させる装置は、空気を外側からセイルの内側に吸い込むことを可能にする吸引システムを備える。
【0032】
一実施形態によれば、セイルの周壁は、周壁に対して運動することができるフラップであって、負圧面の空気流を正圧面の空気流から分離することができるフラップを備える。
【0033】
一実施形態によれば、フラップの長さはセイルの長さに等しい。
【0034】
一実施形態によれば、セイルの周壁は、2つの吸引開口と、フラップなどの遮蔽システムであって、吸引開口の一方を選択的に遮蔽し、他方の吸引開口を露出させることを可能にする遮蔽システムとを有する。
【0035】
一実施形態によれば、ファンのハウジングは、可変断面の排出ダクトによって延長されており、断面は、好ましくは排出ダクトの出口端部に向かって減少している。
【0036】
一実施形態によれば、システムは、セイルおよび場合によってはセイルの支持体を、セイルの軸線に対して実質的に直交する軸線、好ましくは実質的に水平な軸線を基準として傾斜させることを可能にする傾斜システムを備える。
【0037】
本発明はまた、上記の実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの揚力発生システムを備える船舶であって、ファンは、セイルと船舶の甲板との間に位置し、セイルは、セイルの軸線に対して実質的に平行な軸線を基準として船舶の甲板に対して回動可能であるように取り付けられている、船舶に関する。
【0038】
特定の一態様によれば、支持体は、セイルが鉛直に起立し(つまり、船舶の甲板に対して垂直であるとき)、セイルの軸線に対して実質的に平行な軸線を基準として回動するとき(つまり、セイルの動作中、セイルが鉛直であり、支持体がセイルの軸線に対して直交する軸線を基準として傾斜する可能性のないとき)、支持体が船舶の甲板に対して固定されたままであるように配置されている。
【0039】
特定の一態様によれば、ファンは、セイルが鉛直に起立し、セイルの軸線に対して実質的に平行な軸線を基準として回動するとき、ファンのハウジングが船舶の甲板に対して固定されたままであるように配置されている。
【0040】
一実施形態によれば、ファンのハウジングの出口の軸線は、船舶の艫の方に向けられていて、好ましくは、船舶の長手方向軸線に対して実質的に平行である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明の更なる特徴および利点は、単に例示的で非限定的な以下の説明からさらに明らかになり、以下の説明は、添付の図面と併せて読まれるべきである。
図1】本発明の一実施形態による幾つかの揚力発生システムを備えた船舶の斜視図である。
図2図1のIIの詳細図である。
図3】本発明の一実施形態による揚力発生システムの斜視図であり、入射空気流の一部がファンによってセイルに吸い込まれたのち排出される様子を示している。
図3A】セイルが支持体に対して異なる角度に配向されている、図3の揚力発生システムの斜視図である。
図4図3の揚力発生システムを上から見た図である。
図5図4の揚力発生システムの下側部分のA-A断面図である。
図5A】揚力発生システムの下側部分の要素の構成を見やすくするための、揚力発生システムの下側部分の概略図である。
図6図4の揚力発生システムの下側部分の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の概念は、本発明の概念の実施形態を示す添付の図面を参照して、以下でより詳細に説明される。図面では、要素のサイズおよび要素の相対的なサイズは、明確にするために誇張されている場合がある。同様の符号は、図面全体を通じて、同様の要素を指す。しかしながら、本発明のこの概念は、多くの異なる形態で実施されてよく、本明細書で説明する実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この説明を完全にするために提供され、本発明の概念の範囲を当業者に伝えるために提供される。
【0043】
本明細書全体を通じて、「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される機能、構造、または特定の特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「一実施形態では」という表現が明細書全体を通じて様々な箇所で現れる場合、これは必ずしも同一の実施形態を指すわけではない。さらに、機能、構造、または特定の特徴は、1つ以上の実施形態で任意の適切な方法で組み合わされてよい。
【0044】
図1を参照すると、船舶100の甲板111に取り付けられた多数の揚力発生システム101が示されている。
【0045】
以下の説明は、1つの揚力発生システム101について行われるが、幾つかの揚力発生システム101にも適用される。
【0046】
図2に示すように、揚力発生システム101は、流動する空気流FI内に配置され、それにより揚力を発生させることが可能である。以下に詳述するように、この揚力発生システム101は、セイルの寸法を増大させることなく、より優れた推進性能を提供する。
【0047】
セイル
揚力発生システムは、軸線A1に沿って細長い中空体1を備える。中空体は一般にセイルと呼ばれる。
【0048】
セイルは、空気力学的なプロファイルを有する。種々異なる形状のプロファイルが採用されてよい。図示の例では、プロファイルは卵形である。
【0049】
セイルの周壁10は、セイル1の内側102に連通することができる吸引開口と呼ばれる少なくとも1つの開口12を有する。図示された例では、周壁10は、好ましくはセイルのプロファイルの対称軸線を中心として対称的に分布した2つの吸引開口12を有する。
【0050】
中空体には、可動のフラップ14が設けられている。フラップにより、風が船舶の一方の側から吹くか他方の側から吹くかにかかわらず、セイルのプロファイルの曲率を変更し、揚力を増大させることができる。船舶は、ポートタックまたはスターボードタックの両方で航行することができる。一実施形態によれば、フラップの運動により、一方の吸引開口12を遮蔽し、他方の吸引開口12を露出させることができる。
【0051】
1つの特定の態様によれば、図5および図5Aでより具体的に示されるように、セイル1の下端部は、セイル1の下端部とファン3との間に少なくとも部分的に延在する中空の接続要素13を備え、セイル1とファン3との間で流体連通が提供される。接続要素13は、中空体の内側の空気流のための通路断面が、以下に説明される遠心ファン3の羽根車30(またはロータ)の開口301に適合することを可能にする開口を有する形状適合壁を備える。羽根車はブレード付きの羽根車であってよい。以下に説明するように、ファンはまた斜流型であってよい。斜流ファンまたは遠心ファンに言及する場合、特にファン全体の設置面積を決定する場合、このことは、ファンの羽根車およびハウジングを共に意味していることに留意されたい。
【0052】
吸引装置
揚力発生システムは、セイル1の内側102に連通する吸引装置を備え、空気が、セイルの周壁に形成された前記少なくとも1つの開口12を通して吸い込まれる。
【0053】
各々の吸引開口12は、セイルに沿って変化することができる開口の寸法または開口の多孔率を有しており、例えばセイルに沿った位置に従って吸い込まれる空気の量を変化させることができる。各々の開口12は格子の形態で形成されてよい。
【0054】
図4図6にさらに具体的に示すように、前記吸引装置は、ファン3であって、羽根車30と、羽根車30を回転駆動するためのモータ(図示せず)と、羽根車30の周囲に延在するハウジング31(羽根車周囲の固定部分)とを備えるファン3によって形成される。(渦巻き形のハウジングまたはシュラウドとも呼ばれる)ハウジング31は、羽根車を取り囲んで、好ましくは螺せん形のダクトを画定する本体の形態をとり、羽根車によって排出される空気が出口32まで導かれる。ハウジング31の幾何学形状により、ファンの吸入効率を向上させることができる。
【0055】
ファン3は、吸い込まれた空気流を自由大気に排出するように構成されている。ファン3は、ファン3のハウジング31の出口32の軸線に対して実質的に直交する軸線A30の空気入口を有する。言い換えると、空気が吸い込まれる方向は、空気がファンのハウジング31から出る方向に対して実質的に直交している。空気入口の軸線A30は、好ましくは、出口32の軸線に対して直交するが、軸線A30に対して直交する平面に関して、ハウジング31の出口32の出口軸線A32の1°または数度の小さな角度、例えば5°未満の角度の傾角が存在してもよいことが理解される。ハウジング31の出口32は、好ましくは排出される空気を加速させるように構成された排出ダクトを備えることができる。
【0056】
図示の例では、ファンは遠心ファンである。図示の実施形態によれば、羽根車30は、ブレード付きの羽根車30である。ブレード付きの羽根車30は、セイルの内側102に連通する空気入口301を有する。特に、空気入口301は、(以下で説明される)配向リング2などの配向機構の開口と接続要素13の開口とを介してセイルの内側102に連通する。代替的に、ファンは斜流型であってよい。斜流ファンは遠心ファンとは異なり、斜流ファンでは、羽根車から出た空気が、空気入口の軸線に対して30°~80°の角度をなす方向でハウジングに入る。遠心ファンでは、羽根車から出た空気が、空気入口の軸線に対して直交する方向でハウジングに入る。
【0057】
本発明による揚力発生システム101では、ファンが遠心型であっても斜流型であっても、ハウジング31の出口32から出る空気は、実際に吸引軸線に対して直交して出ることに留意されたい。
【0058】
遠心ファン3は、セイル1の外側に位置して、セイル1の内側102と流体連通しており、空気が、セイル1の周壁10に形成された各々の開口12を通して吸い込まれ、吸い込まれた空気が、遠心ファン3のハウジング31の出口32を介して排出される。排出された空気流FEは、揚力発生システム101が搭載された船舶100の推進力に寄与する。
【0059】
遠心ファン3の出口32は、船舶の艫の方に向けられている。有利には、ファン3のハウジングは、支持体4ひいては船舶の甲板に固定され、その結果、出口32もまた固定される。
【0060】
形状適合壁の開口は、セイルの内側の面に延在する周方向の要素130によって画定されており、周方向の要素130の断面は、中空体の内側から見た場合、湾曲した、好ましくは凸状の(膨らんだ)形状を有する。図示された例では、この要素130は、円環状の全体形状を有する。したがって、形状適合壁は、吸い込まれた空気流のためのガイドを提供し、それによって、吸い込まれた空気流が中空体の内側と遠心ファン3との間を循環するときに、吸い込まれた空気流が受ける圧力降下を制限する。
【0061】
支持体
システム101は、セイル1が回動可能に取り付けられる支持体4を備える(図3および図3A)。好ましくは、セイルは、セイルの長手方向軸線A1に対して実質的に平行な軸線を基準として支持体4に対して回動するように取り付けられる。回動軸線は、好ましくはセイルの長手方向軸線A1に対して平行であるが、回動軸線は、軸線A1に対して1°または数度の小さな角度、例えば、5°未満の角度をなしてもよいことが理解される。軸線A1は、好ましくは、セイルの回転軸線と一致する。
【0062】
したがって、システム101が船舶100の甲板111に取り付けられると、セイル1は、セイル1の(鉛直)長手方向軸線を基準として回動し、見かけの風の方向に対して自体配向することができる。
【0063】
セイル1が船舶の甲板にセイル1の支持体4を介して直立するシステムの使用形態では、支持体4は甲板に対して固定される。図示された例では、支持体は、幾つかの脚片の集合の形態をとる。支持体は、カウリングまたはフェアリングで覆われてよい。
【0064】
システムは、配向リング2などの配向機構であって、セイル1(好ましくはセイルの下側面103)と支持体4との間に介在し、セイル1が軸線A1に対して実質的に平行なセイル1の回動軸線を基準として支持体4に対して回動可能となるように構成された配向機構を備える。図示の例では、配向機構は、遠心ファン3の空気入口の開口301、すなわちブレード付きの羽根車30の空気入口の開口に面して位置決めされた中央開口を備える。
【0065】
図示の例では、遠心ファン3は、支持体4を取り囲む仮想のハウジング内に収容されている。言い換えると、ファン3は、支持体4の全体的な設置面積内に位置し、それにより、船舶の甲板上のシステム101の設置面積を制限することが可能になる。
【0066】
図示されていない実施形態によれば、セイルは、セイルの一方の端部および/または他方の端部の近傍に取り付けられた、垂直揚力を発生させる装置を備える。好ましくは、垂直揚力を発生させる装置は、垂直揚力を発生させる平坦な表面または異形成形された表面を備える。垂直揚力を発生させる装置は、少なくとも、セイルの軸線に対して実質的に直交する軸線を基準として運動可能であるように取り付けられた部材を備えることができ、少なくとも、垂直揚力を発生させる装置の部材がセイルに対して傾斜することが可能になる。
【0067】
システム101は、セイルおよび場合によってはセイルの支持体を水平軸線を基準として傾斜させることを可能にする傾斜機構を備えることができる。
【0068】
傾斜システムは、セイルおよび場合によってはセイルの支持体を、システムが船舶の甲板に取り付けられたときに、セイルが船舶の甲板に対して垂直に起立する直立位置と、システムが船舶の甲板に取り付けられたときに、セイルが船舶の甲板に対して実質的に平行に延在する傾斜位置との間で運動させることを可能にする。
【0069】
セイルが鉛直に起立し、セイルの軸線に対して実質的に平行な軸線を基準として回動するとき、すなわち、セイルの動作中、セイルが鉛直であり、支持体がセイルの軸線に対して水平な軸線を基準として傾斜する可能性のないとき、支持体は、船舶の甲板に対して固定されたままである。同じく、セイルが鉛直に起立し、セイルの軸線に対して実質的に平行な軸線を基準として回動するとき、ファンは、ファンのハウジングが船舶の甲板に対して固定されたままであるように配置される。
【0070】
本発明は、図面に示された実施形態に限定されない。
【0071】
加えて、「備える」または「有する」などの用語は、他の要素または他のステップを含むことを排除するものではない。さらに、上記の実施形態の1つを参照して説明した特徴またはステップは、上記の他の実施形態の他の特徴またはステップと組み合わせて採用されてよい。
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図5A
図6
【国際調査報告】