(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】遺伝子操作された、植物由来の細胞外小胞を含む組成物およびそのワクチンとしての使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240219BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240219BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240219BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240219BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20240219BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20240219BHJP
C12N 15/30 20060101ALI20240219BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20240219BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240219BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240219BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240219BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240219BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240219BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20240219BHJP
A61K 39/002 20060101ALI20240219BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20240219BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240219BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240219BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240219BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240219BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240219BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240219BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240219BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240219BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240219BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240219BHJP
C07K 14/44 20060101ALN20240219BHJP
C07K 14/37 20060101ALN20240219BHJP
C07K 14/195 20060101ALN20240219BHJP
C07K 14/005 20060101ALN20240219BHJP
C07K 14/165 20060101ALN20240219BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/88
C12N5/10
C12N15/11 Z
C12N15/33
C12N15/31
C12N15/30
C12N15/50
A61K9/10
A61K47/24
A61K47/46
A61K39/00 H
A61K39/12
A61K39/02
A61K39/00 K
A61K39/002
A61K39/215
A61K47/42
A61K47/26
A61K47/36
A61P31/14
A61P35/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61K48/00
A61P37/04
C07K14/47
C07K14/44
C07K14/37
C07K14/195
C07K14/005
C07K14/165
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542731
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2022050590
(87)【国際公開番号】W WO2022152771
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】102021000000569
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521412342
【氏名又は名称】エヴォバイオテック・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】EVOBIOTECH S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】カムッシ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ガイ,キアーラ
(72)【発明者】
【氏名】ポマット,マルゲリータ アルバ カーロッタ
(72)【発明者】
【氏名】デ ローザ,フランチェスコ ジュゼッペ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA88X
4B065AA88Y
4B065AA90Y
4B065BA05
4B065BA30
4B065CA45
4B065CA46
4C076AA16
4C076AA95
4C076BB01
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4C076CC06
4C076CC27
4C076CC32
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4C076CC35
4C076DD63
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4C076FF68
4C084AA13
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4C084MA55
4C084MA59
4C084NA13
4C084ZB09
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4C084ZB35
4C084ZB37
4C085AA03
4C085BA02
4C085BA07
4C085BA51
4C085BA71
4C085BB01
4C085CC01
4C085CC31
4C085DD62
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA10
4H045BA09
4H045CA01
4H045DA50
4H045EA31
(57)【要約】
本発明は、ワクチンとして使用するための、非免疫調節性の、操作された、植物由来の細胞外小胞(EV)を含む組成物を提供し、前記小胞は、タンパク質抗原をコードする外来核酸分子を負荷されている。さらに、前記組成物を調製するための方法を提供し、この方法は、1以上のポリカチオン性物質および1以上の糖分子を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチンとして用いるための、非免疫調節性の、遺伝子操作された、植物由来の細胞外小胞(EV)を含む組成物であって、
前記細胞外小胞(EV)が、外側脂質層および内側脂質層を含む脂質二重膜によって区画化されており;
少なくとも1つのタンパク質抗原をコードする外来核酸分子を内包しており;かつ
20~500nm、好ましくは200~300nmの範囲の直径を有し;
前記EVの脂質二重膜を横切る膜電位が、+5~-5mVの範囲であり;そして、
前記組成物中のEVの44%以下が、脂質二重層膜の外層にホスファチジルセリンを含む、組成物。
【請求項2】
負荷された外来核酸分子が、DNA、cDNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、プレmRNA、長鎖RNA、コーディングRNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、直鎖RNA、RNAオリゴヌクレオチド、自己複製RNA(レプリコンRNA)、レトロウイルスRNAおよびウイルスRNA(vRNA)からなる群より選択される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
負荷された外来核酸分子が、配列番号14、17、19および50からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むmRNA分子である、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
コードされた少なくとも1つのタンパク質抗原が、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原および原生生物抗原からなる群より選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
コードされた少なくとも1つのタンパク質抗原が、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、(前立腺の6回膜貫通上皮抗原1)(STEAP1)、受容体チロシン-タンパク質キナーゼerbB-2、細胞表面関連ムチン1タンパク質(MUC1)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2)、がん原遺伝子B-Raf、がん原遺伝子c-Kit、GTPase NRas、黒色腫関連抗原1、黒色腫関連抗原1タンパク質、NY-ESO-1タンパク質、SARS-COV-2のスパイクタンパク質、SARS-COV-2のNタンパク質、SARS-COV-2のMタンパク質、A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質、A型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼタンパク質、B型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼタンパク質、HIV1のエンベロープタンパク質、HIV2のエンベロープタンパク質、HPVのメジャーカプシドタンパク質L1、HPVのマイナーカプシドタンパク質L2、狂犬病リッサウイルスの糖タンパク質、ヒトサイトメガロウイルスの糖タンパク質、C型肝炎ウイルスのエンベロープ糖タンパク質E1E2、RSVの融合タンパク質、ザイールエボラウイルスのスパイク糖タンパク質、ジカウイルスのタンパク質prM、ジカウイルスのセリンプロテアーゼNS3、ジカウイルスのセリンプロテアーゼサブユニットNS2B、ジカウイルスのエンベロープタンパク質E、ジカウイルスのカプシドタンパク質C、濃染顆粒タンパク質6を含むトキソプラズマ・ゴンディタンパク質、ロプトリータンパク質2A、ロプトリータンパク質18、表面抗原1、表面抗原2A、トキソプラズマ・ゴンディ頂端膜抗原1、SARS-CoV-2スパイク(S)RBDタンパク質、およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択される、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
コードされた少なくとも1つのタンパク質抗原が、配列番号1-13、15、16、18および20-49からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
EV中の負荷された外来核酸分子の含有量が、20~200ng/10
9EV、好ましくは30~100ng/10
9EVの範囲内である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
EVが、レモンおよびオレンジを含むシトラス属、キウイフルーツを含むマタタビ属、ズッキーニを含むかぼちゃ属、キャベツおよびケールを含むアブラナ属、ザクロを含むザクロ属、ブルーベリーを含むスノキ属、およびセロリを含むアピウム属からなる群より選択される1種以上の植物由来である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
1種以上のポリカチオン性物質をさらに含み、前記1以上のポリカチオン性物質は、静電的相互作用を介してEVの脂質二重膜の外側脂質層と結合する、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
1以上のポリカチオン性物質が、プロタミン、カチオン性ペプチド、ポリペプチド、多糖類、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、およびそれらの何れかの組合せを含むカチオン性タンパク質からなる群より選択され、前記1以上のポリカチオン性物質が、好ましくは0.001~2μg/10
10 EVの範囲の量で組成物中に存在する、請求項9に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
EVがさらに1以上の糖分子を負荷されており、前記1以上の糖分子が、静電相互作用および水素結合を介して、EVに負荷された外来核酸分子と結合している、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
1以上の糖分子が、二糖、糖アルコール、多糖、およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択され、EV中の1以上の糖分子の含有量が、好ましくは0.1~10mg/10
10EVの範囲である、請求項11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
経口、経鼻または非経口投与に適した形態である、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、
(i)植物由来の細胞外小胞(EV)の懸濁液を1以上のポリカチオン性物質と接触させ、混合して、第1の混合物を得る工程;
(ii)核酸分子の調製物を1以上の糖分子と接触させ、混合し、第2の混合物を得る工程であって、前記核酸分子は少なくとも1つのタンパク質抗原をコードする、工程;
(iii)前記第1の混合物および前記第2の混合物を混和して、第3の混合物を得る工程;および
(iv)前記第3の混合物に、予め決定された量の水を添加する工程であって、前記予め決定された量の水の、前記第3の混合物の量に対する比が、5:1~15:1の範囲内で構成される、工程
を含む、方法。
【請求項15】
工程(iv)で得られた組成物を、好ましくは濾過によって濃縮することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1以上のポリカチオン性物質が、プロタミン、カルシトニンペプチド、プレクタシン、ラクトフェリン、スペルミンまたはスペルミジンなどのプロタミン様タンパク質、ヌクレオリン、ヒストン、細胞浸透性ペプチド(CPP)を含む、カチオン性タンパク質;ヒスチジン富化ペプチド、アルギニン富化ペプチド、リシン富化ペプチド、カチオン性アルギニン富化ペプチド(CARP)を含む、カチオン性ペプチド;ポリアルギニン、ポリリシン、ポリヒスチジン、ヒスチジン富化ペプチド、アルギニン富化ペプチド、リシン富化ペプチドを含む、ポリペプチド;キトサン、多硫酸化グリコサミノグリカン(PSGAG)などのグリコサミノグリカン、カチオン性デキストランを含む、多糖類;グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択される、ならびに/または、1以上の糖分子が、トレハロース、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース、キトビオース、コジビオース、ニゲロース、イソマルトース、β,β-トレハロース、α,β-トレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、トレハルロース、ツラノース、マルツロース、ロイスクロース、イソマルツロース、ゲンチオビウロース、マンノビオース、メリビオース、メリビウロース、ルチノース、ルチヌロース、キシロビオースを含む、二糖類;アラビトール、エリスリトール、グリセロール、HSH、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールを含む、糖アルコール;デンプン、グリコーゲン、ガラクトゲン、イヌリン、アラビノキシラン、セルロース、キチンおよびペクチンを含む、多糖類、およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択される、請求項14または15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ワクチンとしておよび/または予防用途に用いるための、植物由来の細胞外小胞を含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、外来核酸分子を負荷された、非免疫調節性の、遺伝子操作された、植物由来の細胞外小胞(EV)を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ワクチン接種は、感染性および非感染性疾患を予防および制御するための最も効果的な公衆衛生介入の1つである。ワクチンには、生弱毒化ワクチン、不活化ワクチン、サブユニットワクチンまたは組換えワクチンまたは結合型ワクチン、トキソイドワクチン、および核酸ベースのワクチンなど種々のタイプがある。
【0003】
核酸ベースのワクチンには、ウイルスベクター、プラスミドDNAおよびmRNAが含まれる。これらのワクチンは、広く防御免疫応答を誘導する能力があり、迅速かつ柔軟な製造プロセスで製造できる可能性があるため、従来のワクチンアプローチに代わる有望な選択肢として出現した。核酸ベースのワクチンの中でも、RNAワクチンには他のワクチンに比べ、いくつかの利点がある。実際、RNAワクチンは真核生物の汚染物質を含まないという特徴がある。DNAワクチンとは対照的に、RNAワクチンは、作用するために核に到達する必要がなく、プラスミドDNAワクチンは免疫宿主のゲノムに組み込まれ得るため、より安全である。この点で、mRNA分子はコード化された抗原に対する免疫反応を誘導する。
【0004】
このメカニズムは、レポーター遺伝子、ウイルス抗原、腫瘍抗原およびアレルゲンを含む種々の標的遺伝子で証明されている。しかしながら、mRNAの不安定性、高い自然免疫原性、非効率的なインビボ送達が、RNAワクチンの臨床適用を制限している。これらのワクチンが直面する主な課題は細胞内送達である。mRNAは分解酵素に対して感受性が高いため、体内の生理的条件下では高度に不安定である。
【0005】
現在までのところ、臨床適用においてmRNA分子は、カチオン性ポリマーとの複合体化、あるいはリポソーム、カチオン性ナノ粒子、EV模倣ナノ小胞またはポリペプチドベースの小胞とも呼ばれる合成脂質ナノ粒子(LNP)を用いてビークル化され、その効果を高めている。LNPはmRNAを酵素から保護し、安定性を高め、RNAの循環寿命およびインビボ送達を向上させる。LNP粒子は、mRNA分子を種々の合成脂質またはポリマーと混合することによって作製される。しかしながら、LNPは非効率的な送達システムである。
【0006】
実際、LNPは意図しない組織に蓄積する可能性があり、それによって目的の標的組織への効果が制限され、LNPは細網内皮系または単核食細胞系によって速やかにクリアランスされるという特徴がある(Koppers-Lalic D., et al. Adv Drug Deliv Rev. 2013 Mar;65(3):348-56)。さらに、LNPはインビボで炎症反応およびアポトーシスを誘導し得る。
【0007】
さらに、LNPの細胞内取り込みはエンドサイトーシスを介し、細胞のオートファジー-リソソーム経路を活性化し得る。ナノ粒子のエンドサイトーシスによってオートファゴソームが生成され、その後にリソソームと融合して内容物が消化されることを示す証拠が多くある。
【0008】
近年、細胞外小胞(EV)を用いてLNPの限界を克服する試みがなされている。実際、EVは細胞から自然に分泌されるものであり、LNPのような合成ナノ材料に比べて安全である。EVは、その自然な作用機序を利用し、免疫原性、細胞毒性、外来粒子の投与、限られた細胞取り込み、および粒子の化学的集合化を含む、集合粒子(assembled-particle)の制限のいくつかを克服できる。EVの取り込み経路はLNPのそれとは異なり、リソソームへの捕捉を受けずに細胞質に放出されるため、オートファジー-リソソーム経路を誘発する可能性は低い。さらに、EVはサイズが小さいため、急速な貪食から逃れることができ、血管内皮を通過して標的細胞まで循環しながら核酸を着実に運び、送達できる。
【0009】
さらに、EVは、生体適合性、循環中の低クリアランス、毒性の低さ、安全性の懸念の低さ、特異性の高さにおいて、LNPと比較していくつかの利点を示す(Sancho-Albero M, et al (2020) “Use of exosome as vectors to carry advanced therapies”. RSC Adv 10, 23975-23987)。EVは天然由来であるため、その膜には高い生体適合性があり、受容細胞に効率よく取り込まれる。さらに、植物由来のEVは胃の環境に耐性があり、経口投与後に腸に到達できる。核酸分子を内包したEVは、RNA干渉、神経変性疾患に対するRNAベースの遺伝子治療、癌、miRNAおよびsiRNA分子を用いた癌ワクチンを含む、複数の臨床適用のために研究されてきた。
【0010】
US20200069594は、コード化および非コード化核酸分子を含む治療薬を送達するための、カチオン性ポリマーを含む植物由来の細胞外小胞の使用を記載している。
【0011】
EVが核酸分子を保護し送達できることは、当技術分野でよく知られている。ワクチン製剤の場合、EVの有益な活性は主に、例えば、HBVのワクチン製剤について実施されたJesus Sらの研究(Jesus S., et al “Exosome as adjuvants for the recombinant hepatitis B antigen: First report”. Eur J Pharm Biopharm. 2018 Dec; 133:1-11)に示されるように、自然免疫系細胞および適応免疫系細胞に対する促進効果に基づいている。
【0012】
WO2020191361は、細胞性免疫反応を誘導するワクチンとしてのEVの使用、および種々の疾患の処置および/または予防を記載している。
【0013】
WO2020050808は、ワクチン適用におけるアジュバントとしての植物由来のエクソソームの使用について、免疫系細胞を活性化または抑制するこれらの小胞の免疫調節特性とともに記載している。
【0014】
種々の植物から単離された細胞外小胞は、腸内の炎症を抑えることにより、免疫系の細胞に調節作用を及ぼすことが示されている。植物源としては、クルクミン(Ohno M., et al, “Nanoparticle curcumin ameliorates experimental colitis via modulation of gut microbiota and induction of regulatory T cells” PLoS One. (2017) Oct 6;12(10):e0185999)、ショウガ(Zhang M., et al, (2016) “Edible ginger-derived nanoparticles: A novel therapeutic approach for the prevention and treatment of inflammatory bowel disease and colitis-associated cancer”, Biomaterials 101:321-40)、オレンジ(Berger E., et al, “Use of Nanovesicles from Orange Juice to Reverse Diet-Induced Gut Modifications in Diet-Induced Obese Mice” (2020) Mol Ther Methods Clin Dev. 18:880-892)、ブドウ、グレープフルーツおよびニンジン(Ju S, et al. “Grape exosome-like nanoparticles induce intestinal stem cells and protect mice from DSS-induced colitis” (2013) Mol Ther. 21(7):1345-57)が挙げられる。さらに、ブルーベリー由来のEVは、TNF-αで刺激された内皮細胞における炎症性遺伝子の遺伝子発現を減少させ、TNF誘導性細胞毒性および酸化ストレスから内皮細胞を保護することが示されている(De Robertis M, et al. “Blueberry-Derived Exosome-Like Nanoparticles Counter the Response to TNF-α-Induced Change on Gene Expression in EA.hy926 Cells” (2020) Biomolecules 10(5):742)。
【0015】
EVの有益な効果にもかかわらず、これらの小胞の免疫調節特性は、ワクチン適用において重大な制限となる可能性がある。実際、免疫系の非特異的な活性化または阻害は、ワクチンにとって有害となり得る。免疫抑制活性を有するEVの使用は、免疫細胞の反応を阻害することにより、ワクチンの効率を著しく低下させる可能性がある。さらに、EVに対する免疫応答の発生は、ワクチンのクリアランスを促進し得る。逆に、免疫刺激性EVによる免疫系の促進は有害であり、対象の免疫系の有害な活性化および/または過剰反応を引き起こす可能性がある。小胞に対する免疫反応は、ワクチンの反復接種を制限する可能性がある。さらに、小胞の自然免疫による感知は、抗原発現の阻害に関連し、免疫応答に悪影響を及ぼし得る(Pardi N, et al “mRNA vaccines - a new era in vaccinology” (2018) Nat Rev Drug Discov. 17(4):261-279)。以上をまとめると、EVが免疫系に及ぼす影響から、ワクチン製剤にEVを用いることの重大な欠点が明らかになった。
【0016】
先行技術の限界および欠点を克服するために、本発明は、ワクチンとして用いるための、非免疫調節性の、遺伝子操作された、植物由来の細胞外小胞(EV)を含む組成物、ならびに添付の特許請求の範囲の独立項に定義される前記組成物の調製方法を提供する。従属項は、特許請求される組成物および方法のさらなる有利な特徴を特定する。添付の特許請求の範囲の主題は、本明細書の不可欠な部分を形成する。
【発明の概要】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、ワクチンとして用いるための、非免疫調節性の、遺伝子操作された、植物由来の細胞外小胞(EV)を含む組成物に関し、ここで、前記細胞外小胞(EV)は、外側脂質層および内側脂質層を含む脂質二重層膜によって区切られており、少なくとも1つのタンパク質抗原をコードする外来核酸分子を内包し、かつ20~500nm、好ましくは200~300nmの範囲の直径を有し、前記EVの脂質二重膜を横切る膜電位は、+5~-5mVの範囲であり、そして組成物中のEVの44%以下が、脂質二重層膜の外層にホスファチジルセリンを含む。
【0018】
本明細書で用いる用語“細胞外小胞(EV)”は、実質的にすべての生細胞によって放出される粒子の不均一な集団を意味し、それらはリン脂質二重層によって区切られるか、またはカプセル化され、脂質、タンパク質、核酸、およびそれらが由来する細胞に由来する他の分子を運ぶ。これらの小胞には主に、細胞膜の出芽によって放出されるマイクロ小胞、およびエンドソーム構成成分に由来するエクソソームがある。細胞外小胞は“粒子”、“微粒子”、“ナノベシクル”、“マイクロベシクル”、“エクソソーム”と称される。脂質組成およびタンパク質含量によって決定されるEV固有の細胞標的化特性ならびに循環におけるEV固有の安定性により、これらの小胞(EV)は治療薬送達のためのビヒクルとして適格である。
【0019】
本明細書で用いる用語“免疫調節”とは、免疫応答を増強(免疫刺激)または低下(免疫抑制)させることにより、免疫系の機能を変化させるプロセスを意味する。従って、本明細書で用いる表現“非免疫調節性EV”とは、免疫系に促進作用も免疫抑制作用も及ぼさない細胞外小胞を意味する。
【0020】
本明細書で用いる用語“遺伝子操作されたEV”とは、小胞のドナー細胞に外来性の核酸分子を添加することにより、異種成分を発現するようにインビトロで改変された細胞外小胞を意味する。したがって、遺伝子操作されたEVは、天然に存在しない小胞であることを意図している。
【0021】
本明細書の文脈における表現“内包”とは、例えばトランスフェクション、形質転換または形質導入などの手段により、細胞外小胞、例えば植物由来のEVに核酸分子を導入することを意味する。
【0022】
本明細書で用いる用語“外来核酸分子”とは、本発明のEVの天然カーゴの一部ではない異種核酸分子に関する。表現“異種”とは、本発明による細胞外小胞とは別の動物または別の植物種由来の核酸分子、または異なるドナー細胞、異なる条件、または遺伝子改変されたドナー細胞由来の核酸分子を意味する。
【0023】
本明細書で用いる用語“抗原タンパク質”とは、免疫反応を引き起こすことができるタンパク質分子を意味する。
【0024】
本発明により、植物由来のEVに添加される外来核酸分子は、好ましくは、以下からなる群から選択される:DNA、cDNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、プレmRNA、長鎖RNA、コーディングRNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、直鎖RNA、RNAオリゴヌクレオチド、自己複製RNA(レプリコンRNA)、レトロウイルスRNA、ウイルスRNA(vRNA)。
【0025】
本発明の好ましい態様において、外来核酸分子はメッセンジャーRNA(mRNA)分子である。本発明の文脈において、外来mRNA分子は、例えば5’キャップ構造、5’UTR、オープンリーディングフレーム、3’UTR、ポリAテールなどの1以上の修飾を含んでいてもよい。
【0026】
本発明によれば、組成物中のEVは、単一の核酸分子、または2以上の核酸分子の組み合わせを含み得る。
【0027】
本発明の好ましい一態様において、EV中の添加された外来核酸分子の含有量は、20~200ng/109 EV、好ましくは30~100ng/109 EV、より好ましくは40~60ng/109EVの範囲である。
【0028】
本発明によるEVへの外来核酸分子の添加は、例えば、エレクトロポレーション、超音波処理、リポフェクトアミン介在、マイクロインジェクション、共インキュベーション、透析および凍結融解サイクルを含む、当技術分野で公知の多くの種々の技術によって達成され得る。
【0029】
本発明では、20~500nm、好ましくは100~400nm、より好ましくは200~300nmの範囲の直径を有する細胞外小胞を用いる。
【0030】
本発明によれば、組成物中のEVの脂質二重層膜を横切る膜電位の値は、+5~-5mV、好ましくは+2~-4mV、より好ましくは0~-3mVの範囲である。
【0031】
本発明のさらに好ましい態様において、EVの膜電位の値は-2mVである。
【0032】
本発明による組成物において、組成物中の全EVの(≦)44%以下の量のEVは、脂質二重層膜の外層中のホスファチジルセリンを含む。
【0033】
好ましくは、脂質二重層膜の外層にホスファチジルセリンを含む組成物中のEVの量は、全EVの25%から44%、より好ましくは全EVの35%から44%、さらに好ましくは全EVの40%から44%の範囲内で構成される。
【0034】
本発明で用いられる植物由来EVは、好ましくは、以下からなる群より選択される1以上の植物由来である:レモンおよびオレンジを含むシトラス属;キウイフルーツを含むマタタビ属;ズッキーニを含むカボチャ属;キャベツおよびケールを含むアブラナ属、ザクロを含むザクロ属、ブルーベリーを含むスノキ属;および、セロリを含むアピウム属。
【0035】
本発明の範囲には、単一の植物種に由来するEVを含む組成物および複数の植物種に由来するEVを含む組成物の両方が含まれる。植物由来のEVは、そのままの形でも、化学修飾を加えても使用できることが理解されている。
【0036】
好ましくは、本発明による組成物中の植物由来EVは、果汁、植物の一部または植物細胞の培養液から精製される。植物の細胞や部位は、葉、果肉、芽、新芽に由来する。
【0037】
EVの適切な精製技術には、超遠心分離、ろ過、タンジェンシャルフローろ過が含まれるが、これらに限定ない。植物由来EVの精製に用いる最も適切な方法の選択は、当業者の知識および技術の範囲内である。
【0038】
本発明の一態様では、本発明の組成物中のEVの総タンパク質含量は、100~200ng/1010 EV、より好ましくは120~160ng/1010 EVの範囲である。
【0039】
別の態様において、本発明の組成物中の全RNA含有量は、20~200ng/109 EV、より好ましくは30~100ng/109 EV、さらにより好ましくは40~60ng/109 EVの範囲である。
【0040】
表現“総タンパク質含有量”とは、内在性タンパク質カーゴ(EVの内部および膜含有量)および本発明で用いるEV中の負荷タンパク質の両方を含む。
【0041】
本明細書において、表現“全RNA含有量”とは、本発明のEV中の内因性RNAカーゴおよび負荷された外来RNAの両方を含む。
【0042】
後記の実施例セクションでさらに説明するように、本発明者らは、驚くべきことに、上記で定義される構造的および機能的特徴を有する遺伝子操作された植物由来EVは、いかなる免疫調節活性も示さないこと、すなわち、免疫系の細胞に影響を与える能力がなく、これらの細胞の活性化および効力を促進することも低下させることもないことを見出した。
【0043】
天然の植物由来のEVとは異なり、本発明の天然由来でないEVは、有利なことに、免疫系の細胞にそれ自体何ら影響を及ぼすことなく、抗原分子を標的細胞に送達できる。したがって、本発明によるEVの使用は、EVベースのワクチン製剤に関連する安全性の懸念を克服し、免疫系の有害な活性化または阻害を回避することを可能にし、それによってワクチンの有効性を高める。
【0044】
さらに、本発明のEVは、受容細胞に核酸薬剤を効率的に添加し輸送(vehicle)し、環境劣化から保護することが証明されている。特に、胃環境に対する耐性が高いため、本発明による組成物の経口投与が可能である。
【0045】
投与後、負荷されたEVとマクロファージおよび樹状細胞を含む抗原提示細胞(APC)との相互作用により、抗原提示細胞への核酸分子の移行が可能になる。標的細胞では、DNA分子およびmRNA分子を含む核酸分子が発現され、タンパク質抗原の翻訳につながる。その後、抗原はAPCの表面に提示され、腫瘍細胞または病原体に対する免疫細胞の特異的な活性化を直接誘導し、効率的な免疫防御を可能にする。
【0046】
上記に例示したような天然由来ではないEVの有利な特徴のおかげで、本発明の組成物はワクチンとしての使用に特に適している。
【0047】
本発明において、本発明の組成物は、既存の疾患の処置のためのワクチンとして、またはこの疾患の発症を予防するための予防的に使用できる。
【0048】
本発明のEVに包含された外来核酸分子によってコードされる例示的なタンパク質抗原としては、細菌、ウイルス、真菌、原虫および腫瘍抗原、それらの哺乳動物ホモログ、ならびに獣医学的または産業的に関心のある動物由来のホモログが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
従って、本発明の組成物は、感染症または癌疾患の処置または予防に特に有用である。
【0050】
例示的な癌疾患としては、膀胱癌、子宮頸癌、腎細胞癌、精巣癌、結腸直腸癌、肺癌、頭頸部癌、卵巣癌、リンパ腫、肝臓癌、神経膠芽腫、黒色腫、骨髄腫、白血病、膵臓癌などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
例示として、感染性疾患は、ウイルス性疾患、細菌性疾患、真菌性疾患または原虫性疾患であってよく、例えば、COVID-19病、インフルエンザ、HPV感染症、HIV感染症、ライノウイルス感染症、肝炎、フラビウイルス感染症、脳炎、髄膜炎、胃腸炎、コレラ、ジフテリア、クラミジア、結核、腸チフス、性感染症(STI)、マラリア、真菌症、トキソプラズマ症などであり得るが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の一態様において、EVに添加された外来核酸分子によってコードされる少なくとも1つの抗原は、ヒトカリクレイン関連ペプチダーゼ3(前立腺特異的抗原(PSA)とも呼ばれる)、ヒト前立腺幹細胞抗原(PSCA)、ヒト前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ヒトメタロレダクターゼ(前立腺の6回膜貫通上皮抗原1(STEAP1))、ヒト受容体チロシン-タンパク質キナーゼerbB-2(チロシンキナーゼ型細胞表面受容体HER2とも呼ばれる)、ヒト細胞表面関連ムチン1タンパク質(MUC1)(乳癌関連抗原DF3とも呼ばれる)、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2)、ヒトセリン/スレオニンプロテインキナーゼB-raf(プロトオンコジーンB-Rafとも呼ばれる)、ヒトマスト細胞/幹細胞増殖因子受容体キット(プロトオンコジーンc-Kitとも呼ばれる)、ヒトGTPase NRas(形質転換タンパク質N-Rasとも呼ばれる)、ヒト黒色腫関連抗原1、ヒト黒色腫関連抗原1タンパク質、ヒトNY-ESO-1タンパク質、およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択される腫瘍抗原である。
【0053】
本発明の別の態様において、少なくとも1つのタンパク質抗原は、黄色ブドウ球菌、結核菌、クラミジア・トラコマティス、化膿レンサ球菌、肺炎球菌、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・マヨニイ(例えば、ライム病)、クレブシエラ属菌、緑膿菌、腸球菌属菌、プロテウス属菌(例えば、バルガリス、ミラビリス、ペンネリ)、淋菌、エンテロバクター属、アクチノバクター属、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)、マイコプラズマ属、クロストリジウム・ディフィシル、バチルス・アンスラシス、ビブリオコレラ、クロストリジウム・ボツリヌス、クロストリジウム・テタニ、サルモネラ属、トレポネーマ・パリダム、プラスモディウム属、およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択される細菌由来の細菌抗原である。
【0054】
本発明のさらに別の態様において、少なくとも1つのタンパク質抗原は、ブラストミセス、クリプトコックス・ガッティ、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、フザリウム、アスペルギルス、カンジダ、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・アウ リス、クリプトコッカス、ヒストプラズマ、ブラストミセス、コクシジオイデス、ムコールマイテス(Mucormycetes)、ニューモシスチス・イロベチイ、デルマトファイト(dermatophyte)、スポロトリックス、およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択される真菌由来の真菌抗原である。
【0055】
さらに別の態様では、少なくとも1つのタンパク質抗原は、プラスモジア種(例えば、バイバックス(vivax)および熱帯熱マラリア原虫)、ジアルジア・インテスチナリス(Giardia intestinalis)、ヘキサミタ・サルモニス、ヒストモナス・メレアグリディス、トリコモナス・フィータス、ディエンタメーバ・フラジリス(Dientamoeba fragilis)、トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis)、リーシュマニア、トリパノソーマ・クルーズ(Trypanosoma cruzi)、トリパノソーマ・ブルース・ローデンシエンシス(Trypanosoma brucei rhodensiense)、トリパノソーマ・ブルース・ガンビエンス(Trypanosoma brucei gambiense)、プラスモジウム・パラサイト(Plasmodium parasite)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、ネグレリア、アカントアメーバ、卵菌類(Peronosporomycetes)、フィトフソラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、ジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)、ジアルジア・デュオデナリス、トキソプラズマ・ゴンディ、バランチジウム・コリ(Balantidium Coli)、タイレリア・パルバ(Theileria parva)、タイレリア・アヌラタ(Theileria annulate)、リピケファルス・アペンディキュトゥス(Phipicephalus appendiculatus)、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択される原虫由来の原虫抗原である。
【0056】
好ましくは、原虫抗原は、トキソプラズマ・ゴンディの濃密顆粒タンパク質6(GRA6)、ロプトリータンパク質2A(ROP2A)、ロプトリータンパク質18(ROP18)、表面抗原1(SAG1)、表面抗原2A(SAG2A)、頂端膜抗原1(AMA1)、およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択される。
【0057】
さらなる態様において、少なくとも1つのタンパク質抗原は、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルスHIV(例えば、HIV-1、HIV-2)、A型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス(ヒトガンマヘルペスウイルス4(エプスタインバールウイルス)、単純ヘルペスウイルス2(HSV2)、ヒトヘルペスウイルス8、インフルエンザウイルス(例えば、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス)、サイトメガロウイルス、クリミア・コンゴ出血熱オルトナイロウイルス、コロナウイルス、ヒトポリオーマウイルス2、BKウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV、SARS-Cov-2、COVID-19)、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)、ノロウイルス、フィロウイルス(クエバ、マールブルグ、エボラウイルス)、チクングニアウイルス、ヒトαヘルペスウイルス3(HHV-3)または水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、風疹ウイルス、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、ブニヤウイルス(例えば、ハンタウイルス)、アリーナウイルス(例えば、リンパ球性絨毛膜炎マーマアレナウイルス(LCMV)およびラッサウイルス)、フラビウイルス(デングウイルス、ジカウイルス、日本脳炎、西ナイル、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)および黄熱)、ライノウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、エンテロウイルス(例えば、ポリオ)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ムンプスウイルス、コクサッキーウイルス、麻疹ウイルス、アストロウイルス(例えば、胃腸炎)、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヒトパピローマウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エプスタイン-バールウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、ヒトTリンパ好性ウイルス、メルケル細胞ポリオーマウイルスを含む発癌性ウイルス、およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択されるウイルス由来のウイルス抗原である。
【0058】
本発明の好ましい態様によれば、ウイルス抗原は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2またはSARS-COV-2またはCOVID-19の表面糖タンパク質とも呼ばれるスパイクタンパク質、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2またはSARS-COV-2またはCOVID-19のヌクレオカプサイドリン酸化タンパク質とも呼ばれるNタンパク質、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2またはSARS-COV-2またはCOVID-19の膜糖タンパク質とも呼ばれるMタンパク質、A型インフルエンザウイルスH5N1のヘマグルチニン(HA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH3N2のヘマグルチニン(HA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH1N1のヘマグルチニン(HA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH7N9のヘマグルチニン(HA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH1N1のヘマグルチニン(HA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH2N2のヘマグルチニン(HA)タンパク質、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH5N1のノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH1N1のノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH3N2のノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH7N9のノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH9N2のノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH2N2のノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、A型インフルエンザウイルスH1N1のノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、B型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、ヒト免疫不全ウイルス(HIV1)のエンベロープタンパク質、ヒト免疫不全ウイルス(HIV2)のエンベロープタンパク質、ヒトパピローマウイルス(HPV)のメジャーカプシドタンパク質L1、ヒトパピローマウイルス(HPV)のマイナーカプシドタンパク質L2、狂犬病リッサウイルスの糖タンパク質、ヒトサイトメガロウイルスの糖タンパク質、C型肝炎ウイルスのエンベロープ糖タンパク質E1E2、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の融合タンパク質(F)、ザイールエボラウイルスのスパイク糖タンパク質、ジカウイルスのタンパク質prM、ジカウイルスのセリンプロテアーゼNS3、ジカウイルスのセリンプロテアーゼサブユニットNS2B、ジカウイルスのエンベロープタンパク質E、ジカウイルスのカプシドタンパク質C、SARS-CoV-2スパイク(S)RBDタンパク質、およびそれらの何れかの組合せからなる群より選択される。
【0059】
例示的な態様において、上記で定義されたコードされた少なくとも1つのタンパク質抗原は、配列番号1-13、15、16、18および20-49からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれらからなる。
【0060】
本発明の別の態様では、EVに添加される外来核酸分子は、配列番号14、17、19および50からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなるmRNA分子である。より具体的には、配列番号14、17、19および50はそれぞれ、SARS-COV-2のSタンパク質、Nタンパク質、Mタンパク質およびスパイク(S)RBDタンパク質をコードするmRNA配列に対応する。
【0061】
本発明によれば、組成物は、単一の外来核酸分子を負荷した遺伝子操作された植物由来のEV、あるいは、異なる外来核酸分子を負荷した遺伝子操作された植物由来のEVの組合せを含み得ることが想定される。
【0062】
本発明の範囲内のタンパク質抗原は、抗原免疫原性および/または安定性を改善するために、1以上の修飾を含み得ることが理解される。例示的な修飾には翻訳後修飾が含まれる。
【0063】
本発明の組成物は、単独でまたは他のワクチンと組み合わせて使用できる。
【0064】
一態様では、本発明の組成物は、1以上のポリカチオン性物質をさらに含み、前記1以上のポリカチオン性物質は、静電相互作用を介してEVの脂質二重層膜の外側脂質層と結合している。
【0065】
好ましくは、1以上のポリカチオン性物質は、プロタミン、カルシトニンペプチド、プレクタシン、ラクトフェリン、プロタミン様タンパク質、例えばスペルミンまたはスペルミジン、ヌクレオリン、ヒストン、細胞浸透性ペプチド(CPP)を含むカチオン性タンパク質;ヒスチジン富化ペプチド、アルギニン富化ペプチド、リシン富化ペプチド、カチオン性アルギニン富化ペプチド(CARP)を含むカチオン性ペプチド;ポリ-アルギニン、ポリ-リシン、ポリ-ヒスチジン、ヒスチジン富化ペプチド、アルギニン富化ペプチド、リシン富化ペプチドを含むポリペプチド;キトサン、多硫酸化グリコサミノグリカン(PSGAG)などのグリコサミノグリカン、カチオン性デキストランを含む多糖類;グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)などからなる群より選択される。
【0066】
好ましいポリカチオン物質はプロタミンである。
【0067】
好ましくは、組成物中の1以上のポリカチオン性物質の含有量は、0.001~2μg/1010 EV、より好ましくは0.05~1μg/1010 EV、さらにより好ましくは0.1~0.4μg/1010 EVの範囲である。
【0068】
本発明によれば、1以上のポリカチオン性物質を単独で、または組み合わせて使用できる。ポリカチオン性物質は、そのままの形でも、化学修飾を加えても使用できることが理解される。このような成分は、個別に、または組み合わせて使用できる。
【0069】
本発明の別の態様では、本発明の組成物中のEVは、さらに1以上の糖分子を添加されており、前記1以上の糖分子は、静電相互作用および水素結合を介して、EVに添加された外来核酸分子と結合している。
【0070】
好ましくは、1以上の糖分子は、トレハロース、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース、キトビオース、コジビオース、ニゲロース、イソマルトース、β、β-トレハロース、α,β-トレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、トレハルロース、ツラノース、マルツロース、ロイスクロース、イソマルツロース、ゲンチオビウロース、マンノビオース、メリビオース、メリビウロース、ルチノース、ルチヌロース、キシロビオースを含む二糖類;アラビトール、エリスリトール、グリセロール、HSH、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール;デンプン、グリコーゲン、ガラクトゲン、イヌリン、アラビノキシラン、セルロース、キチンおよびペクチンなどの多糖類からなる群より選択される。
【0071】
好ましい糖分子はトレハロースである。トレハロースは非還元性の二糖類であり、タンパク質および核酸を安定化させる細胞保護剤として一般的に用いられている。さらに、トレハロースはRNAの二次構造を分解できる。
【0072】
好ましくは、本発明のEV中の1以上の糖分子の含有量は、0.1~10mg/1010 EV、より好ましくは0.5~5mg/1010 EV、さらにより好ましくは1~2mg/1010 EVの範囲である。
【0073】
別の態様において、本発明のEV中の1以上の糖分子の含有量は、0.1~20mg/μgの負荷外来核酸、好ましくは1~10mg/μgの負荷外来核酸、より好ましくは2~6mg/μgの負荷外来核酸の範囲である。
【0074】
糖分子は、そのままの形でも、化学修飾を加えても使用できることが理解される。このような成分は、個別に、あるいは組み合わせて使用できる。
【0075】
使用前に、本発明の組成物中の天然由来ではないEVを凍結乾燥し、水で再懸濁できる。あるいは、本発明の組成物に用いられる天然由来のEVは、新鮮に調製したものでも、4℃、-20℃または-80℃で保存したものでもよい。
【0076】
本発明の組成物は、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、エマルジョン、シロップ剤、エアロゾル剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤および懸濁剤を含む、いくつかの投与可能な形態で製剤化できる。
【0077】
本発明の組成物は、要すれば、常套法に従って、適切な賦形剤、保存剤、溶媒または希釈剤を含有していてもよい。
【0078】
賦形剤の例としては、スクロース、D-マンノース、D-フルクトース、デキストロース、無水ラクトース、D-トレハロース、D-ソルビトールなどの糖類;ヒト血清アルブミン、加水分解カゼイン、MRC-5細胞タンパク質、加水分解ゼラチン、CRM197担体タンパク質、植物、酵母、細菌、卵由来のタンパク質などのタンパク質;アスパラギン、フェニルアラニン、アルギニン、ヒスチジンなどの必須アミノ酸および非必須アミノ酸;塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムを含むナトリウム;リン酸カリウム、ポラクリリンカリウム、一塩基性および二塩基性リン酸カリウム、塩化カリウムを含むカリウム;ステアリン酸マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、グルタミン酸、セルロース、微結晶セルロース、酢酸フタル酸セルロース、アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アモルファスヒドロキシリン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、クエン酸、クエン酸鉄アンモニウム、ヒマシ油、ネオマイシン、ストレプトマイシン、アミノグリコシド、カナマイシン、ゲンタマイシン、クロルテトラサイクリン、アムホテリシンB、プラスドンC、アルコール、アセトン、塩化ベンゼトニウム、ホルムアルデヒド、グリセリン、アスコルビン酸、トロメタモール、尿素、グルタルアルデヒド、2-フェノキシエタノール、ポリソルベート80(Tween80)、ポリミキシンB、チオシアン酸アンモニウム、トロメタミン、宿主細胞DNAベンゾナーゼ、ホルマリン、リン酸緩衝生理食塩水、ポリソルベート20、デオキシコール酸塩、二塩基性十二水和物、一塩基性脱水物、ホルマリン、ポリミキシンB、β-プロピオラクトン、ヒドロコルチゾン、スクアレン、トリオレイン酸ソルビタン、バリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、オクトキシノール-10(TRITON X-100)、コハク酸α-トコフェロール、臭化セチルトリメチルアンモニウム、β-プロピオラクトン、チメロサール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、フェノール、β-プロピオラクトン、DMEM、HEPES、ポリジメチルシロキサン、ビタミン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、3-O-脱アシル化-4’モノホスホリルリピドA(MPL)、脂質、コレステロール、パンテノール、グアーガムを含むガム類、四ホウ酸ナトリウムを含むホウ酸およびホウ酸塩、グリセロール、アラントイン、トリエタノールアミン、アルギン酸、プルロニック(pluronic)、P188、P331を含むポロキサマー;PEG8000を含むPEG;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールを含むグリコール;シチコリン(シチジン-5-ジホスホコリン;CDP-コリン)、コレステロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の組成物に用いるのに適した防腐剤の例示的な限定されない例としては、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベンなどのパラベン、DMDMヒダントイン、イミダゾリジニル尿素およびグルタルアルデヒドなどのホルムアルデヒド供与体、フェノール誘導体、安息香酸、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0080】
本発明で用いる適切な溶媒または希釈剤は、精製水、エタノールおよびベンジルアルコールから選択できる。
【0081】
本発明によれば、ワクチンとして使用するためにアジュバントを組成物に添加できることが企図される。
【0082】
本発明の免疫原性組成物における使用に好適なアジュバントの例示的な限定されない例としては、水酸化アルミニウム、リン酸カリウムアルミニウム、AS04などのアルミニウム塩、カルシウム塩、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩などの鉱物組成物;フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、MF59、AF03、AS03、AS02、グルコピラノシド脂質アジュバント(GLA-SE)、グルコピラノシル脂質アジュバント(GLA)などの水中油型および油中水型エマルションを含むエマルション;腸内細菌リポ多糖(LPS)の非毒性誘導体、モノホスホリルリピドA(MPL)、3-O-脱アシル化MPL(3dMPL)、リピドA、OM-174などの大腸菌由来リピドAを含む、細菌または微生物誘導体;CpGモチーフを含むヌクレオチド配列を含む免疫刺激性オリゴヌクレオチド、細菌の二本鎖RNA、回文配列またはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチド、ADPリボシル化毒素および解毒化誘導体、RC529;環状GMP-AMPアジュバント、STINGアゴニスト、CAF01、免疫刺激性複合体(ISCOM)、ISCOMATRIX、AS01;ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル製剤、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)微粒子などのポリマー粒子、ポリホスファゼン(PCPP)、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(ブライズベール)およびSaponaria officinalis(ソープルート)由来のサポニンなどのサポニン製剤、QS7、QS17、QS18、QS21、QH-A、QH-B、QH-Cなどの精製製剤;インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12等)などのサイトカインを含むヒト免疫調節剤、インターフェロン(例えば、インターフェロン-γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子;エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア、またはポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体、キトサンおよびそれらの誘導体などの粘接着剤を含む生体接着剤および粘接着剤;N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、およびN-アセチル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2’-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミンMTP-PE)を含むムラミルペプチド;イミクアモドおよびその同族体を含むイミダゾキノロン化合物;ビロソーム(virosome)およびウイルス様粒子(VLP)が挙げられる。
【0083】
本発明の組成物は、経口、経鼻、皮下を含む非経腸、腹腔内、静脈内、皮内、筋肉内、脾臓内、および結節内を含む種々の経路で投与されてもよい。
【0084】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口投与、経鼻投与または非経腸投与に適した形態である。
【0085】
投与量、投与回数および投与頻度は、処置または予防すべき疾患、患者の特性などの種々の要因に応じて決定され、当業者が通常の知識を用いて決定できる。
【0086】
さらに、本発明の組成物は凍結乾燥でき、コールドチェーン貯蔵の必要なく安定である。
【0087】
上記定義の特徴を有する組成物の調製方法も、本発明の範囲内である。
【0088】
本発明によれば、本発明の方法は以下の工程を含む:
(i) 植物由来の細胞外小胞(EV)の懸濁液を1以上のポリカチオン性物質と接触させ、混合して第1の混合物を得る工程;
(ii) 核酸分子の調製物を1以上の糖分子と接触させ、混合して第2の混合物を得る工程、前記核酸分子は少なくとも1つのタンパク質抗原をコードする;
(iii) 前記第1の混合物および前記第2の混合物を混合して、第3の混合物を得る工程;および
(iv) 前記第3の混合物に、予め決められた量の水を添加する工程、前記第3の混合物の量に対する前記予め決められた量の水の比率は、5:1~15:1の範囲内、好ましくは8:1~12:1の範囲内で構成される。
【0089】
予め決められた量の水と第3の混合物の量の好ましい比率は10:1である。
【0090】
要すれば、本発明の方法は、工程(iv)で得られた組成物を濃縮することをさらに含んでいてよい。濃縮技術はよく知られており、例えば、ろ過、超遠心分離、タンジェンシャルフローろ過、クロマトグラフィーおよび沈降などが挙げられる。当業者であれば、組成物を濃縮する技術を知っており、そのような適切な方法を使用できる。
【0091】
本発明の方法の一態様において、工程(i)において、混合は、30~40℃の範囲の温度で、好ましくは37℃で、30分から2時間の間、好ましくは1時間、第1の混合物をインキュベートする工程をさらに含む。
【0092】
本発明の方法の別の態様では、工程(ii)において、混合は、第2の混合物を、0~25℃の範囲の温度で、好ましくは20℃で、5~30分間、好ましくは10分間インキュベートする工程をさらに含む。
【0093】
本発明の方法のさらに別の態様では、工程(iii)において、混合は、第3の混合物を、30~40℃の範囲の温度で、好ましくは37℃で、1~5時間の間、好ましくは3時間インキュベートする工程をさらに含む。
【0094】
本発明の方法のさらなる態様では、工程(iv)は、0~10℃の範囲の温度で、好ましくは4℃で、5~24時間の間、好ましくは12時間のインキュベーション工程をさらに含む。
【0095】
本発明の方法で用いるのに適するポリカチオン性物質および糖分子は、組成物を参照して上述した通りである。
【0096】
いかなる理論にも囚われることなく、本発明者らは、ポリカチオン性物質が植物由来EVの脂質二重層膜の電荷を変化させ、核酸分子の当該膜外表面への吸着を可能にすると考えている。さらに本発明者らは、前記糖が核酸分子を保護する役割を果たし、植物由来のEVへのこれらの分子の効率的な導入が可能になると考えている。
【0097】
好ましくは、第1の混合物中の植物由来EVの濃度は、前記第1の混合物の総容量に対して5x1010から1012EVs/mlの範囲内、より好ましくは、前記第1の混合物の総容量に対して1x1011から5x1011EVs/mlの範囲内で構成される。
【0098】
本発明の方法による第1の混合物は、塩、好ましくはNaCl、より好ましくは前記第1の混合物の総容量に対して0.9%(w/v)の濃度のNaClをさらに含んでいてもよい。
【0099】
本発明の方法の一態様において、1以上のポリカチオン性物質は、前記第1の混合物の総容量に対して0.1~2μg/ml、好ましくは前記第1の混合物の総容量に対して0.1~1μg/ml、より好ましくは前記第1の混合物の総容量に対して0.4~0.6μg/mlの範囲内で構成される濃度で前記第1の混合物中に存在する。
【0100】
本発明の別の態様において、核酸分子は、前記第2の混合物の総容量に対して0.1~10μg/ml、好ましくは前記第2の混合物の総容量に対して0.1~1μg/ml、より好ましくは前記第2の混合物の総容量に対して0.1~0.5μg/mlの範囲内で構成される濃度で、前記第2の混合物中に存在する。
【0101】
本発明によるさらに別の態様において、前記1以上の糖分子は、前記第2の混合物の総容量に対して1~20%(w/v)、好ましくは前記第2の混合物の総容量に対して1~10%(w/v)、より好ましくは前記第2の混合物の総容量に対して1~5%(w/v)の範囲内で構成される濃度で、前記第2の混合物中に存在する。
【0102】
本発明の方法によれば、工程(i)における植物由来のEVを含む懸濁液とポリカチオン性物質との混合、および/または工程(ii)における核酸分子の調製物と1以上の糖分子との混合は、好ましくは少なくとも30秒間、ボルテックスによって行うことができる。
【0103】
本発明によれば、本方法は、エレクトロポレーション、超音波処理、トランスフェクション、インキュベーション、細胞押し出し、サポニン介在透過化および凍結融解を含むがこれらに限定されない、植物由来のEVへの核酸分子の添加を改善するためのさらなる操作を含んでいてよいことが想定される。
【0104】
本発明の別の態様は、ワクチンとして用いるための、上記で定義したような方法によって得られる、非免疫調節性の、操作された、植物由来の細胞外小胞(EV)を含む組成物である。
【0105】
試験例
以下の試験セクションは、専ら、実施した試験の説明のために提供されるものであり、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。以下の試験セクションでは、添付の図面を参照する:
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】
図1は、実施例1における本発明の遺伝子操作された植物由来EVの特性を、天然植物由来EVと比較して示したものである。キウイフルーツの天然EV(A)および本発明の遺伝子操作されたEV(B)のナノサイト分析による代表的な画像であり、サイズに統計的有意差があることが示されている。ナノサイトで分析した、天然植物由来EVおよび本発明の遺伝子操作された植物由来EVのn=3調製物の平均直径の統計解析(C)。E1=キャベツEV由来の遺伝子操作されたEV、E2=ブルーベリーEV由来の遺伝子操作されたEV。p:**** <0.001。
【
図2】
図2は、実施例1においてEVで測定した脂質二重膜を横切る膜電位(Z電位)の値を示す。膜電位は、天然EV(ネイティブEV)ならびにズッキーニ(E1)およびブルーベリー(E2)由来の本発明の遺伝子操作されたEVにおいて、mVolt(mV)として測定した。統計的有意性は、遺伝子操作された植物由来EVで測定された膜電位と、天然植物由来EVで測定された値を比較して算出した。p:*** <0.005。各データセットについてN=3の試験を行った。データは平均値±標準偏差(SD)で示す。
【
図3】
図3Aは、10
10個のEV中のタンパク質のナノグラム(ng)で表した、実施例1における天然植物由来EVおよび本発明の遺伝子操作された植物由来EVのタンパク質含量を示す。測定は、天然植物由来EV(ネイティブEV)ならびにザクロ(E1)およびキウイフルーツ(E2)の遺伝子操作された植物由来EVについて行った。統計的有意性は、遺伝子操作された植物由来EVのタンパク質含量と、天然植物由来EVで測定された値を比較して算出した。p:** <0.01。各データセットについてN=3の試験を行った。
図3Bは、脂質二重層膜の外層にホスファチジルセリンを含む実施例1の本発明の組成物中のEVの割合を示す。小胞膜の外層におけるホスファチジルセリンの存在は、天然植物由来EV(ネイティブEV)を含む組成物ならびにキャベツ(E1)およびブルーベリー(E2)由来の遺伝子操作された植物由来EVを含む組成物において分析した。各サンプルにおいて、ホスファチジルセリン含量は、アネキシンVに対する染色および細胞蛍光測定法(FACS)を用いて測定し、蛍光シグナルの割合で表した。ホスファチジルセリンを含む遺伝子操作された植物由来EVの割合を、天然植物由来EVと比較して統計的有意性を算出した。p:** <0.01。各データセットについてN=3の試験を行った。データは平均値±標準偏差(SD)で示す。
【0107】
【
図4】
図4は、実施例1における、本発明の遺伝子操作された植物由来EVの免疫調節アッセイの結果を示す。PBMC細胞をザクロ由来の遺伝子操作された植物由来EV(50.000粒子/細胞)と共に48時間インキュベートし、細胞増殖をBrdU取り込みで測定した。(A)ヒストグラムは、未処理のPBMC(CTR)および本発明のEVで刺激したPBMCの吸光度(平均±SD)を示す。吸光度は細胞増殖に正比例する。本発明のEVで刺激したPBMCの増殖率は、対照(CTR)と比較して変化せず、統計的に有意ではなかった。次に、リンパ球をLPS(用量100ng/ml)で活性化させ、本発明のEV(用量50.000粒子/細胞)で48時間刺激し、BrdU取り込みにより増殖を測定した。(B)ヒストグラムは、非刺激PBMC(CTR-)、LPSで処理したPBMC(CTR+)、LPSおよびザクロ由来の本発明のEVで処理したPBMC(E1)、ならびにLPSおよびキウイフルーツ由来の本発明のEVで処理したPBMC(E2)の吸光度(平均±SD)を示す。吸光度は細胞増殖に正比例する。LPSは、未処理の細胞と比較してPBMCの増殖を有意に活性化するが、LPSおよび本発明のEVで刺激したPBMCの増殖率は、LPSで処理したPBMCと比較して変化せず、統計的に有意ではなかった。また、蛍光色素CFSEを用いてPBMCの増殖を測定した。PBMCを本発明のEV(50.000小胞/細胞の用量)で24時間刺激した後、フローサイトメトリーで増殖を分析した(C、D)。ヒストグラム(C)は、未処理のPBMC(CTR)と、キャベツ(E1)、セロリ(E2)およびズッキーニ(E3)由来の本発明のEVで刺激したPBMCの蛍光FITC強度(平均±SD)を示す。本発明のEVの異なるサンプルで刺激したPBMCの増殖率は、CTRと比較して変化せず、統計的に有意ではなかった。実際、CTR、E1、E2およびE3のフローサイトメトリー解析のヒストグラムは完全に重なっていた(D)。p:* ns > 0.05。
【
図5】
図5は、実施例1におけるEVの全RNA含量を示す。天然植物由来EVならびにセロリ(E1)、ザクロ(E2)およびキウイフルーツ(E3)由来の遺伝子操作された植物由来EVの全RNA含量を測定した。総RNA量は、RNA抽出後の各サンプルに含まれるRNAの絶対量で測定し、小胞数(ng/10
9小胞)に対して正規化したRNA量(ng)で表した。統計学的有意性は、本発明のEVの各サンプルの総RNA含量値を、天然植物由来のEVと比較して算出した。p:* <0.05、*** <0.005、**** <0.001。各データセットについてN=3の実験を行った。データは平均値±標準偏差(SD)で示す。
【
図6】
図6は、実施例2における、本発明の操作された植物由来EVに添加された外来核酸分子の量を示す。アッセイには、SARS-CoV-2のヌクレオカプシド(N)タンパク質をコードするmRNA分子を用い、キウイフルーツ(E1、E3)およびセロリ(E2、E4)の植物由来EV(天然EV)および遺伝子操作されたEVにおいて、添加された核酸分子をqRT-PCRで測定した。mRNAの用量は2種用いた:サンプルE1およびE2には0.1μg/ml、サンプルE3およびE4には1μg/mlを用いた。添加されたmRNAの量は、記載の方法に従ってRQ値で表した。統計的有意性は、本発明のEVの各サンプル中の添加された核酸の量を、天然植物由来のEVと比較して算出した。p:**** <0.001。各データセットについてN=3の実験を行った。データは平均値±標準偏差(SD)で示す。
【
図7】
図7は、実施例3における、本発明の遺伝子操作された植物由来EVに添加された核酸分子の、分解環境に対する耐性を示す。試験にはmRNA分子を用い、qRT-PCR法で測定した。グラフは、出発物質と比較して、分解アッセイ後も存在するmRNA分子の割合を示し、本発明のEVにおいてmRNAが合計100%保存されていることを示している。(A)酵素分解に対する耐性はRNAseで処理した後に測定し、(B)胃腸環境に対する耐性は胃のような溶液で処理した後に評価した。すべての実験において、対照としてネイキッド(naked)mRNAを用いた。試験は、ザクロ(7A)およびキウイフルーツ(7B)由来の、遺伝子操作された植物由来EVを用いて行われた。統計的有意性は、本発明のEVに保存されている核酸の割合と、ネイキッドmRNAとを比較して算出した。p:**** <0.001。各データセットについてN=3の実験を行った。データは平均値±標準偏差(SD)で示す。
【
図8】
図8は、実施例4における、本発明の遺伝子操作された植物由来EVに添加された核酸分子の保存に対する耐性を示す。これらの実験では、セロリ(E1)およびキウイフルーツ(E2)由来のEVに、SARS-CoV-2のヌクレオカプシド(N)タンパク質をコードするmRNA分子を添加した。凍結乾燥後、+4℃で7日間貯蔵したEV中に保存されたmRNA量をqRT-PCRアッセイで測定し、開始量に対するパーセンテージで表した。各データセットについてN=3の試験を行った。データを平均値±標準偏差(SD)で示す。
【0108】
【
図9】
図9は、実施例5における、本発明の遺伝子操作された植物由来EVに添加された核酸分子の受容細胞への移行を示す。SARS-CoV-2のヌクレオカプシド(N)タンパク質をコードするmRNA分子を添加した本発明のEVをマクロファージと共にインキュベートした。24時間後、分子解析(qRT-PCR)を用いて受容細胞のmRNA量を測定し、ハウスキーピングとしてGAPDHで正規化し、方法のセクションに記載したようにRQ値で表した。RQ値は対照(未処理細胞、NT)に対して正規化され、RQ値が1とは、mRNAがサンプル中で検出されないことを意味する。マクロファージは、天然植物由来EV(ネイティブEV)、遺伝子操作された植物由来EV(E1、E2、E3)、核酸添加なしでmRNAと共にインキュベートした植物由来EV(EV+mRNA)、ネイキッドmRNAで処理した。受容細胞を50,000粒子/細胞の用量で処理した。キャベツ(E1)、ザクロ(E2)およびキウイフルーツ(E3)由来のEVを用いて試験を行った。統計学的有意性は、各サンプルのmRNAのRQ値を対照(NT)としての未処理細胞と比較して計算した。p:*** <0.005、**** <0.001。各データセットについてN=3の試験を行った。データは平均値±標準偏差(SD)で示す。
【
図10】
図10は、実施例5の受容細胞において、本発明の遺伝子操作された植物由来EVが担持する核酸分子の機能性を示す。これらの試験では、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするmRNA分子を添加した本発明のEVを、(A)内皮細胞および(B)マクロファージを受容細胞としてインキュベートした。24時間共インキュベート後、受容細胞における外来mRNAによってコードされるタンパク質の発現を、サイトフルオロメトリー分析(FACS)を用いて蛍光シグナルとして検出した。受容細胞を、天然植物由来EV(ネイティブEV)、本発明の遺伝子操作された植物由来EV、またはネイキッドmRNAで、50.000粒子/細胞の用量で処理した。試験は、ズッキーニ(
図10A)およびケール(
図10B)の植物由来EVを用いて行った。統計的有意性は、各サンプルのシグナル強度のパーセンテージを、対照として未処理の細胞(NT)と比較して算出した。p:*** <0.005、**** <0.001。各データセットについてN=3の試験を行った。データは平均値±標準偏差(SD)で示す。
【
図11】
図11は、実施例5において、本発明の遺伝子操作された植物由来EVが運ぶ核酸分子で処理した標的受容細胞におけるタンパク質発現を示す。これらの試験のために、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S1)RBDタンパク質(配列番号50)、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質完全タンパク質(配列番号14)、またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質(配列番号17)をコードするmRNA分子を添加した本発明のEVを、受容細胞としての内皮細胞と共にインキュベートした。24時間の共インキュベート後、受容細胞における外来mRNAがコードするタンパク質の発現を、蛍光標識二次抗体を用いて検出し、蛍光シグナルをサイトフルオロメトリー解析(FACS)で測定した。受容細胞は、1.2x10
10粒子の用量の天然植物由来EV(ネイティブEV)または本発明の遺伝子操作された植物由来EVで処理された。試験はオレンジ由来EVを用いて行った。統計的有意性は、各サンプルのシグナル強度のパーセンテージを、対照として未処理の細胞(NT)と比較して算出した。p:**** <0.001。各データセットについてN=3の実験を行った。データは平均値±標準偏差(SD)で示す。
【
図12】
図12は、天然EVではなく、核酸で遺伝子操作された本発明の植物由来EVが、実施例6でマクロファージに取り込まれた後、リンパ球を活性化できることを示している。これらの試験のために、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S1)RBDタンパク質(配列番号50)、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質完全タンパク質(配列番号14)、またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質(配列番号17)をコードするmRNA分子を添加した本発明のEVを、受容細胞としてのAPC細胞(マクロファージ)と共にインキュベートした。APCにEVを組み込んだ後、PBMC細胞を加え、遺伝子操作されたEVによる処理を5日毎に2回繰り返した。最後に、リンパ球を細胞蛍光分析(FACS)で分析した。CD4+の発現によって同定されたリンパ球は、その活性化について評価した。リンパ球活性化は、リンパ球増殖の増加(A)およびリンパ球CD4+のリンパ球活性化マーカーCD25+(B)およびHLADR+(C)の発現の増加として測定した。細胞を、1.2x10
10粒子の用量で、天然植物由来EV(ネイティブEV)または本発明の遺伝子操作された植物由来EVで処理した。試験はオレンジ由来のEVを用いて行った。統計的有意性は、各サンプルのシグナル強度のパーセンテージを、対照として未処理の細胞(NT)または天然EVで処理した細胞と比較して算出した。陽性対照は、ビーズヒトT-アクティベーターCD3/CD28(CTR+)および精製タンパク質(SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質RBDタンパク質(Sタンパク質)、またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質))で処理したものである。p:* <0.05、** <0.01、*** <0.005、**** <0.001。各データセットについてN=3の試験を行った。データは平均値±標準偏差(SD)で示す。
【
図13】
図13は、実施例7において、天然EVではなく、核酸で遺伝子操作した本発明の植物由来EVが、マウスに特異的免疫応答を誘導できることを示している。このグラフは、ワクチン接種により誘導されたSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S1)RBDタンパク質に特異的なIgA免疫グロブリンの吸光度測定を示す。この試験では、マウスは0日目および21日目に免疫され、35日目に屠殺後血清を分析した。SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質RBD(S1)をコードするmRNA分子で遺伝子操作されたEV(ネイティブEV)またはEVでマウスを処理した。筋肉内または経口投与で処置を行った。IgA誘導としての体液性免疫応答は、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質RBD(S1)でコーティングしたELISAプレートを用いたELISAにより評価した。各投与経路について、天然EVおよび遺伝子操作されたEVのシグナル強度を比較し、統計的有意性を算出した。p: * <0.05、** <0.01。各データセットともN=3動物である。データは平均値±標準偏差(SD)で示す。
【発明を実施するための形態】
【0109】
材料および方法
細胞外小胞の単離
新鮮な果汁(キウイフルーツ、ザクロ、ブルーベリー、オレンジ、レモン)または新鮮な植物抽出物(ズッキーニ、キャベツ、ケール、セロリ)から細胞外小胞を単離した。果汁または抽出物を、繊維を除去するために孔を順に小さくしていき濾過した。その後、差動超遠心またはタンジェンシャルフローろ過でEVを精製した。差動超遠心分離では、果汁を1,500gで30分間遠心分離し、破片およびその他の汚染物質を除去した。その後、10,000gで超遠心し、次いで100,000gで1時間、4℃で超遠心することでEVを精製した(Beck-man Coulter Optima L-90K)。最終ペレットを1%DMSOを加えたリン酸緩衝生理食塩水で再懸濁し、0.22マイクロメートルフィルターでろ過して滅菌した。
【0110】
細胞外小胞は、使用するか、または-80℃で長期貯蔵した。タンジェンシャルフローろ過では、まず、デプスフィルターシートディスクSupracap 50(Pall社製)でろ過し、繊維および破片を除いて果汁を清澄化した。その後、タンジェンシャルフローろ過カセットTFF Omega(Pall Cadence)を用いて、ろ過した果汁を濃縮およびダイアフィルトレーションにより精製した。最後に、タンジェンシャルフロー濾過で得られた残渣物(retentate)を0.2nmフィルターで濾過して滅菌した。
【0111】
ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)
ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)は、405nmレーザーおよびNTA 3.1分析ソフトウェアを備えたNanoSight LM10システム(Malvern)を用いて、EVの寸法およびプロファイルを定義するために用いた。レーザー光源を照射した試料中のEVのブラウン運動をカメラで記録し、ストークス-アインシュタイン方程式を通してNTAによりサイズおよび濃度のパラメータに変換した。カメラレベルはすべて16で、各サンプルについて30秒間のビデオを3本録画した。簡単に説明すると、精製したEVを1mlの小胞を含まない生理食塩水(Fresenius Kabi)で1:2000に希釈した。NTA取得後の設定を最適化し、全サンプルで一定に保ち、その後、各ビデオを分析し、EVの平均、最頻値および濃度を測定した。
【0112】
本発明のEVの産生
本発明の遺伝子操作された植物由来EVを以下のような連続工程で製造した。簡単に説明すると、植物由来のEVをカチオン性ペプチドと混合し、37℃で1時間反応させた。調製した核酸分子を糖と混合し、20℃で10分間反応させた。その後、2つの溶液を混合し、37℃で3時間反応させた。次いで、反応液に水を加え、4℃で12時間静置した。残存する遊離核酸分子から遺伝子操作された植物由来のEVを精製するため、サンプルを100,000gで、4℃で2時間、超遠心分離(Beckman Coulter Optima L-90 K, Fullerton, CA, USA)して洗浄し、サンプルを生理食塩水に再懸濁した。
【0113】
EV膜電位の測定
分析を、ゼータサイザー(Zeta-sizer)ナノ粒子径測定装置(Malvern Instruments, Malvern, UK)を用いて行った。すべてのサンプルは、ろ過した(カットオフ値=200nm)生理食塩水溶液中、25℃で分析した。ゼータ電位(スリップ面)は、小胞からxの距離で発生し、分散液中の隣接する、同様に帯電した小胞間の静電反発の程度を示す。
【0114】
タンパク質抽出および定量
プロテアーゼ阻害剤およびホスファターゼ阻害剤のカクテル(Sigma-Aldrich、St. Louis、Missouri、USA)を添加したRIPA緩衝液(150nM NaCl、20nM Tris-HCl、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、1%デオキシコール酸、1% トライトン X-100、pH7.8)を用いて、EVサンプルからタンパク質を抽出した。タンパク質含量は、BCA タンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific, Waltham, Massachusetts, USA)を用いて、製造元のプロトコールに従って定量した。簡単に説明すると、10μlのサンプルを96ウェルプレートのウェルに分注し、ウシ血清アルブミン(BSA)で確立した直線標準曲線を用いて総タンパク質濃度を測定した。
【0115】
ホスファチジルセリン分析
ホスファチジルセリン分析のために、EVサンプルをアネキシンV FITCおよびFITCアイソタイプ(Miltenyi Biotec、Germany)で30分間染色し、取得前に生理食塩水で希釈した。サンプルは、CytExpertソフトウェアを備えたCytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter)を用いたサイトフルオロメトリー分析によって特徴付けし、FITCアイソタイプをバックグラウンドとして、各サンプルについてシグナル陽性率を測定した。
【0116】
RNA抽出および定量
miRNeasy ミニキット(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて、製造元のプロトコールに従ってEVおよび細胞から全RNAを単離し、水に再懸濁した。サンプルのRNA濃度は分光光度計(mySPEC, VWR, Radnor, PA, USA)を用いて定量した。
【0117】
qRT-PCRによるmRNA検出
RNAサンプルから、High-Capacity cDNA 逆転写キット(Applied Biosystems)を用いてcDNAを得た。5ナノグラムのcDNAをSYBR GREEN PCR マスターミックス(Applied Biosystems)に添加し、96ウェルQuantStudio12 K Flex リアルタイムPCR(qRT-PCR)システム(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)で実行した。GAPDHは細胞サンプルのハウスキーピング遺伝子として用いた。全サンプルにおけるmRNA発現の倍変化(Rq)を、対照サンプルに対する2-ΔΔCtとして計算した。
【0118】
細胞培養
ヒト微小血管内皮細胞(HMEC)を、初代ヒト皮膚微小血管内皮細胞をシミアンウイルス40で不死化して得た。HMECは、bullet kit(EBM、Lonza、Basel、Switzerland)および1mlのMycozap CL(Lonza)を添加した内皮細胞基本培地(Endothelial Basal Medium)中で培養した。マクロファージMV-4-11細胞株(ATCC(登録商標)CRL9591(商標))はATCCから入手し、10%ウシ胎児血清を添加したイスコフ改変ダルベッコ培地(ATCC、USA)で培養した。末梢血単核球(PBMC)は以下のようにして単離した:健康なボランティアドナーの全血をPBSで1:1に希釈し、30mlを50ml遠心チューブに入れ、15mlのヒストパック(Sigma-Aldrich)の上に静かに重ねた。PBMCを含む白濁層を50mlの遠沈管に集め、40mlのPBSで希釈し、洗浄のために300gで5分間遠心することを2回繰り返した。ペレット化した細胞を数え、トリパンブルー染色を用いて生存率を推定した。細胞を10%ウシ胎仔血清を添加したRPMIで24ウェルプレート上で培養した。
【0119】
受容細胞への核酸導入
本発明の遺伝子操作された植物由来EVに添加されたeGFP mRNAの細胞内への取り込みを評価するため、これらの小胞をHMEC細胞およびマクロファージと共にインキュベートした。合計50,000個の受容(レシピエント)細胞/ウェルを24ウェルプレートに播種し、50,000個の小胞/受容細胞で刺激した。24時間後、細胞をよく洗浄し、トリプシンで剥離し、CytExpertソフトウェアを備えるCytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter Optima L-90 K、Fullerton、CA、USA)を用いてFACSで翻訳されたGFPタンパク質の蛍光を測定した。
【0120】
インビトロ核酸分解アッセイ
本発明のEVに添加された核酸分子の酵素分解に対する耐性を調べるため、本発明者らはRNAseアッセイを実施した。簡単に説明すると、サンプルを、0.4mg/mLの濃度で、37℃で30分間、RNase A(ThermoFisher Scientific)で処理した。RNase阻害剤(Thermo Fisher Scientific)を用い、製造元のプロトコールに従って反応を停止させ、10mLポリカーボネートチューブ(SW 90 Tiローター、Beckman Coulter Optima L-90 K超遠心機)を用いて100,000g、2時間、4℃で超遠心してサンプルを洗浄した。最終的に、EVペレットのサンプルを生理食塩水緩衝液に再懸濁し、分子解析を行った。
【0121】
本発明のEVに添加された核酸分子の胃消化に対する抵抗性を調べるため、本発明者らは胃消化アッセイを実施した。簡単に説明すると、18.5%w/vのHCl(pH2.0)、24mg/mLの胆汁エキス、ペプシン溶液(0.1NのHCl、pH2.0中80mg/mL、Sigma)および0.1NのNaHCO3中の4mg/mLのパンクレアチン(Sigma)を含む胃様溶液を調製した。水溶液中の各EVサンプル1μlを、胃様溶液1.34μLと共に37℃で60分間、ゆっくり回転させながらインキュベートした。胃様溶液のpH値は1NのNaHCO3で6.5に調整され、腸液と呼ばれた。その後、EVサンプルを腸液中でさらに60分間インキュベートした。本発明のEVに添加された核酸分子の安定性を、上記のように分子分析によって評価した。すべての耐性試験において、対照としてネイキッドRNAを用いた。
【0122】
サンプルの凍結乾燥
サンプルは、Heto lyolab 3000(Thermo Fisher Scientific)を用いて3時間凍結乾燥し、4℃で7日間保存した。保存時点の後、EVサンプルは分子分析を用いて核酸含有量を分析した。こうして測定された含有量は、凍結乾燥保存前の開始量と比較した。
【0123】
免疫細胞活性化アッセイ
フローサイトメトリー分析によりPBMCの増殖を評価するため、製造元の指示に従って、PBMCをCellTrace Cell Proliferation キット(Invitrogen, ThermoFisher Scientific)のCFSE色素で染色した。その後、PBMCを48ウェルプレートに50,000細胞/ウェルの密度で播種した。遺伝子操作された本発明の植物由来EVがPBMCの増殖に影響を及ぼすかどうかを評価するために、PBMCを50,000粒子/細胞の用量でこれらの小胞で刺激した。非刺激PBMCを対照として用いた。24時間培養後、PBMCを回収し、CytoExpertソフトウェア(Beckman Coulter)を備えるCytoFLEXフローサイトメーターで蛍光を測定した。CFSE色素はFITC蛍光として検出される。
【0124】
ブロモデオキシウリジン(BrdU)取り込みアッセイでPBMCの増殖を分析するために、PBMCを96ウェルプレートに20,000細胞/ウェルの密度で播種し、10μlのBrdU標識溶液(BrdU比色アッセイ、Roche)を各ウェルに加えた。遺伝子操作された本発明の植物由来EVがPBMCの増殖に影響を及ぼすかどうかを評価するために、PBMCを50,000粒子/細胞の用量でこれらの小胞で刺激した。非刺激PBMCを対照として用いた。さらに、本発明のEVが活性化PBMCの増殖を減少させるかどうかを評価するために、PBMCを50,000粒子/細胞の用量でこれらの小胞と100ng/ml濃度のLPS(大腸菌由来、Sigma-Aldrich)で刺激した。非刺激PBMCを陰性対照として用いた。48時間培養後、刺激の影響を分析した。アッセイは製造元の指示に従って行った。吸光度はELISAリーダーで420nm、基準波長は490nmで測定した。各条件の平均吸光度を算出した。吸光度は増殖率に正比例する。
【0125】
タンパク質発現の検出
標的細胞におけるタンパク質発現を評価するために、内皮細胞を1.2x1010 EVで刺激した。アッセイした細胞サンプルには、未処理細胞(NT)、植物由来の天然EVで処理した細胞、およびSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S1)RBDタンパク質(配列番号50)、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質完全タンパク質(配列番号14)、またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質(配列番号17)をコードするmRNA分子で遺伝子操作された本発明の植物由来のEVで処理した細胞が含まれる。24時間後、細胞をよく洗浄し、トリプシンで剥離し、製造元(Inside Stain Kit, Miltenyi Biotec)の指示に従って固定および透過処理した。その後、タンパク質の発現を検出するための特異抗体(SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質およびヌクレオカプシドタンパク質に対する抗体、Invitrogen)で細胞を室温で30分間染色した。洗浄後、蛍光二次抗体(Alexa Fluor Plus 594または488、Invitrogen、ThermoFisher Scientific)を室温で1時間添加した。洗浄後、細胞を適切な緩衝液に再懸濁し、CytExpertソフトウェア(Beckman Coulter Optima L-90 K、Fullerton、CA、USA)を備えるCytoFLEXフローサイトメーターを用いてFACSで取得した。
【0126】
リンパ球活性化アッセイ
APCへの組み込み後にリンパ球活性化を誘導する本発明の遺伝子操作されたEVの能力を評価するために、マクロファージを24ウェルプレートに20.000細胞/ウェルずつ播種し、1.2x1010 EVで刺激した。アッセイした細胞サンプルには、未処理細胞(NT)、植物由来の天然EVで処理した細胞、およびSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S1)RBDタンパク質(配列番号50)、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質完全タンパク質(配列番号14)、またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質(配列番号17)をコードするmRNA分子で遺伝子操作された本発明の植物由来EVで処理した細胞が含まれる。組み込み後、PBMCを200.000細胞/ウェルの濃度で加え、EVによる処理を5日後に繰り返した。初回処置から10日後、細胞を採取し、CD4、CD25およびHLA DRの蛍光抗体で、適切なアイソタイプ(Miltenyi Biotec)を用いて、室温で30分間染色した。洗浄後、細胞を取得した。
【0127】
増殖解析のために、使用したPBMCはあらかじめCellTrace Cell Proliferation キット(Invitrogen, ThermoFisher Scientific)のCSFE色素で製造元の指示に従って染色した。
【0128】
最後に、サンプルをCytExpertソフトウェア(Beckman Coulter Optima L-90 K、Fullerton、CA、USA)を備えるCytoFLEXフローサイトメーターでFACS解析した。
【0129】
マウスワクチン接種
6~10週齢の雌BALB/cAnNCrlマウスに、mRNA30μgに相当する用量の本発明の遺伝子操作された植物由来EVを0日目および21日目に2回免疫し、35日目に屠殺した。マウスを、植物由来の天然EV、またはSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質RBD(S1)をコードするmRNA分子で操作した本発明の植物由来EVで、経口(経管投与)および筋肉内(右脚)の経路で処置した。屠殺後、血液を採取して抗体検出用の血清を分離した。
【0130】
抗体測定
血清中のSARS-CoV-2特異的IgA抗体価をELISA法で測定した。簡単に説明すると、MaxiSorp ELISAプレート(Nunc社製)に、1ウェルあたり100μlの50mM炭酸ナトリウム/炭酸水素塩pH9.6緩衝液中、1μg/mlのSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Thermofisher Scientific)を4℃で一晩コーティングした。コーティングしたプレートを200μlの1X PBSで3回洗浄し、1ウェルあたり200μlの1X PBS中3% BSAで飽和させた。プレートを1×PBSで3回洗浄し、3%BSAおよび100倍希釈マウス血清で2時間インキュベートした。その後、1ウェルあたり200μlの1X PBSで3回洗浄し、1ウェルあたり100μlの1:10,000に希釈した二次ロバ抗マウスIgA HRP結合抗体と共にインキュベートした。二次抗体と共にインキュベーション後、プレートを1ウェルあたり200μlの1X PBSで5回洗浄し、1ウェルあたり100μlのTMB(Thermofisher Scientific)で30分間発色させた。反応は、1ウェルあたり100μlの停止液(Thermofisher Scientific)を加えて停止させた。450nmの吸光度をプレートリーダーで読み取った。
【0131】
統計解析
データ解析は、グラフパッド8のデモ版を用いて行った。結果は平均値±標準偏差(SD)で表した。一元配置分散分析(ANOVA)はグループ間の統計的差異を立証するために用いられ、スチューデントのt検定は2標本間の比較に用いた。p<0.05を最小有意水準とした。
【実施例】
【0132】
結果/実施例
実施例1
本発明の方法の実現可能性を調べるために、本発明者らは、異なる植物由来のEVを遺伝子操作し、粒子サイズおよび表面電荷などの物理的特性の観点からEVを特徴付けるために常套的に用いられている多くの特徴に従ってそれらを特徴付けた(Thery C.et al, (2018) “Minimal information for studies of extracellular vesicles 2018 (MISEV2018): a position statement of the International Society for Extracellular Vesicles and update of the MISEV2014 guidelines”; Journal of Extracellular Vesicles, 7:1, 1535750, DOI: 10.1080/20013078.2018.1535750)。
図1は、キウイフルーツ、キャベツ、ブルーベリーなどを含む種々の植物に由来する本発明のEVの大きさを示す。ザクロ、ケール、セロリ、コートレット、オレンジ、レモンなど、他の植物由来のEVでも同様の結果が得られた。粒子径はEVの基本的なパラメータである。得られたデータから、本発明のEVは天然植物由来EVと比較して平均直径が大きいことが示された(
図1A、B、C)。EVサイズの測定は、本発明者らにより、ナノ粒子トラッキング分析(NTA)法で実施した。NTA法は、液体懸濁液中の試料のナノ粒子サイズ分布を得るために、光散乱およびブラウン運動の両方の特性を利用する、EVサイズ測定に最も使用されている方法である。特にNTAは、レーザービームが照射されたサンプルチャンバー内で、ブラウン運動下で移動する粒子の平均二乗変位を評価するために、光散乱を介して粒子運動を追跡することで機能する。粒子の追跡によって拡散定数を計算でき、これは流体力学的直径を計算するストークス・アインシュタイン方程式に用いられる。ストークス・アインシュタイン方程式は、懸濁液の温度および粘度も考慮に入れている。本発明者らによって実施された分析の結果は、本願発明のEVが、天然の植物由来EVに比べてサイズが大きいことを示し、天然植物由来EV小胞の直径が100~150nmで、平均直径は134±6nmであったのに対し、本発明のEVの直径は200~250nmの範囲で、平均直径は220nmであった。サイズ分布から、本発明のEVの直径は20~500nmであり、好ましくは200~300nmの範囲であることが示された。
【0133】
遺伝子操作された本発明の植物由来EVの膜特性を特徴づけるために、小胞膜電位を測定した。実際、ゼータ電位はEVの表面電位を測定する一般的な方法であり、表面電荷およびコロイド安定性の指標として用いられている。EVの表面電荷は、その表面に発現する分子の性質に依存して変化し、ヒト身体のような分散系におけるEVの相互作用に影響を与え、生物学的プロセスにおけるEVの活性を規定する。例えば、表面電荷は、細胞の取り込みおよび細胞毒性など、粒子に関連するさまざまな生物学的プロセスに影響を与えることが知られている。ゼータ電位は、粒子間の静電気または電荷の反発/引きつけの大きさの尺度であり、電場をかけ、その結果生じる粒子の速度を測定することによって決定される懸濁液中の電気泳動移動度から測定できる(電気泳動光散乱)(Midekessa G, et al. Zeta Potential of Extracellular Vesicles: Toward Understanding the Attributes that Determine Colloidal Stability。ACS Omega。2020 Jun 30;5(27):16701-16710。doi: 10.1021/acsomega.0c01582。PMID: 32685837; PMCID: PMC7364712.)。
図2に示すように、植物由来のEVは表面電荷がマイナスであることが知られており、膜電位(Z電位)は-10から-15mVolt、平均値は-13mVoltであった。これに対し、本発明の遺伝子操作された植物由来EVは、膜電位が0から-3mVolt、平均値-2mVoltの異なる膜を利用した。上記の試験は、ズッキーニ(E1)およびブルーベリー(E2)に由来する遺伝子操作された植物由来EVで行われたが、キウイフルーツ、キャベツ、ケール、ザクロ、レモン、オレンジ、セロリなど、他の植物由来のEVでも同様の結果が得られた。
【0134】
本発明のEVをさらに特徴づけるために、これらの小胞および天然植物由来EVのタンパク質含量を測定した(
図3A)。こうして得られたデータから、本発明のEVは120~160ng/10
10EVの範囲の高いタンパク質含量を有するのに対し、天然植物由来EVは50~100ng/10
10EVの範囲であることが確認された。本発明者らは、ザクロ(E1)およびキウイフルーツ(E2)の遺伝子操作された植物由来EVで試験を行ったが、同様の結果は、ズッキーニ、キャベツ、ケール、ブルーベリー、レモン、オレンジおよびセロリなどの他の植物由来のEVでも得られた。
【0135】
さらに、本発明者らは、本発明のEVの膜をより特徴付けるために、専用の試験を行った。当技術分野で知られているように、天然EVでは、ホスファチジルセリン(PS)は主に細胞膜の外表面に位置している。理論はともかく、本発明者らは、浸透圧ストレスによる膜再配列の際、PSはリン脂質二重膜中の非対称分布を失い、本発明のEVでは膜の内側に移動すると考えている。小胞の細胞外膜におけるホスファチジルセリンの検出は、蛍光標識アネキシンVによって行われた。実際、アネキシンVは小胞膜上のPSに特異的に結合することが知られている。アネキシンVの蛍光シグナルの量は、EV膜外表面のPS含量を反映する(Montoro-Garcia S, et al. “An innovative flow cytometric approach for small-size platelet microparticles: influence of calcium”. Thromb Haemost. 2012 Aug;108(2):373-83)。本発明者らによって得られた結果は、本発明の組成物中のEVの割合≦44%が膜の外層にホスファチジルセリンを有し(
図3B)、その割合は40~44%の範囲であり、平均値は43%であった。これとは異なり、天然植物由来のEVを含む組成物では、膜の外層にホスファチジルセリンを有する小胞の割合は55~48%で、平均値は49%であった。
【0136】
上記の試験は、キャベツ(E1)およびブルーベリー(E2)から得た遺伝子操作された植物由来EVで行ったが、キウイフルーツ、レモン、オレンジ、ズッキーニ、ケール、ザクロおよびセロリなど他の植物由来のEVでも同様の結果が得られた。
【0137】
さらなる評価として、本発明者らは、本発明の遺伝子操作された植物由来EVの免疫調節活性を評価する目的で、専用の試験を行った。簡単に説明すると、PBMC、すなわちヒト血液由来のリンパ球、単球およびその他の免疫細胞の混合集団を本発明のEVで刺激し、細胞増殖率を測定した。
【0138】
図4Aに示すように、ザクロ由来の本発明のEVで48時間刺激したPBMCの増殖率は、未処理のPBMCと同じであることから、これらの小胞はPBMCの増殖を促進せず、免疫刺激作用を示さないことが示唆される。さらに、本発明のEVが免疫抑制効果を有するかどうかを検証するために、本発明者らは、炎症反応を誘導し、リンパ球増殖を促進することが知られているLPSでPBMCを処理した後、本発明の遺伝子操作された植物由来EVで細胞を刺激した。
図4Bに示すように、LPSによって活性化されたPBMCの増殖率は、本発明のEV(ザクロ(E1)およびキウイフルーツ(E2)由来)によって影響を受けなかった。
【0139】
これらの結果から、本発明のEVには免疫刺激作用も免疫抑制作用もないことが確認された。
【0140】
さらに、フローサイトメトリーでPBMCの増殖を検出できる蛍光色素(CFSE)でPBMCを染色した。
図4Cおよび
図4Dに示すように、キャベツ(E1)、セロリ(E2)およびズッキーニ(E3)由来の遺伝子操作された植物由来EVで刺激したPBMCの増殖率は、刺激していないPBMCと同じであった。同様の結果は、ブルーベリー、レモン、オレンジ、ケールなど、他の植物の遺伝子操作されたEVでも得られた。
【0141】
まとめると、上記の結果は、本発明の遺伝子操作された植物由来のEVは、免疫細胞の活性化および増殖を刺激することも抑制することもできないことを示しており、小胞の植物起源にかかわらず、これらの小胞の非免疫調節特性を確認している。
【0142】
最後に、本発明のEVおよび天然植物由来のEVの総RNA含量を測定した(
図5)。得られたデータから、本発明のEVは天然小胞に比べてRNA含量が高く、その範囲は30~100ng/10
9EVであり、平均値は50ng/10
9EVであった。天然植物由来EVのRNA含量は5~15ng/10
9 EVで、平均値は10ng/10
9 EVである。試験は、セロリ(E1)、ザクロ(E2)およびキウイフルーツ(E3)の遺伝子操作されたEVで行われたが、同様の結果は、ズッキーニ、キャベツ、ケール、レモン、オレンジ、およびブルーベリーなど、他の植物由来のEVでも得られた。
【0143】
これらのデータをまとめると、本発明の遺伝子操作された植物由来EVは、天然植物由来EVとは大きく異なることがわかる。特に、外来核酸の添加により、植物由来のEVの構造および機能には、天然小胞と比較して驚くべきことに独特の変化が生じ、その結果、平均直径が大きくなり、表面電荷が高くなり、ホスファチジルセリン含量が低下し、かつ免疫系細胞に対する免疫調節効果が失われる。
【0144】
実施例2
本発明のEVが核酸送達のためのビークルとして適していることを確認する目的で、mRNA分子を内部に担持させることによって遺伝子操作されたEVを作製し、添加されたmRNAの量をqRT-PCR分析によって測定した(
図6)。得られた結果から、本発明のEVは、核酸分子の用量を増加させて添加できることがわかった。実際、キウイフルーツ(E1およびE3)およびセロリ(E2およびE4)から、2つの異なる用量のmRNA(E1およびE2は0.1μg/ml、E3およびE4は1μg/ml)を用いて、遺伝子操作されたEVを作製した。核酸用量の増加は、小胞内のmRNA量の増加として検出可能であった(それぞれE1およびE2に対してE3およびE4)。同様の結果は、ズッキーニ、キャベツ、ケール、レモン、オレンジ、ザクロおよびブルーベリーなど、他の植物由来のEVでも得られた。これらのデータをまとめると、本発明のEVは添加された核酸分子をカプセル化し、その量を増やすことができることが確認された。
【0145】
実施例3
本発明者らは、本発明のEVによる、添加された核酸分子を分解から保護する能力を評価するために、専用の試験を行った(
図7)。特に、これらの研究は、遺伝子操作された本発明の植物由来EVが、添加された核酸分子を分解酵素(RNAse)による処理から保護できることを示した。簡単に言えば、RNAseによるEV処理後、qRT-PCR分析により、添加されたmRNAの約80%が本発明の小胞内に依然として存在することが明らかになったが、対照として用いたネイキッドmRNAはほとんど完全に分解された(
図7A)。
【0146】
さらなる実験により、胃腸環境を模倣した胃様溶液で小胞を処理すると、添加されたmRNAの約90%がまだEVに存在したのに対し、ネイキッドmRNAはほとんど完全に分解されたため、本発明のEVは、添加された核酸分子を保護できることが示された(
図7B)。上記の試験は、ザクロ(
図6A)およびキウイフルーツ(
図6B)由来の遺伝子操作された植物由来EVで行ったが、同様の結果は、ズッキーニ、キャベツ、ケール、ブルーベリー、レモン、オレンジおよびセロリなどの他の植物由来のEVでも得られた。
【0147】
これらのデータをまとめると、本発明のEVは、カプセル化された外来核酸を分解条件から保護することがわかる。さらに、胃腸環境からの保護は、本発明の使用のための組成物の経口投与を支持する。
【0148】
実施例4
本発明の植物由来EVは、効率的に凍結乾燥され、保存され得る。特に、EVを凍結乾燥し、+4℃で7日間保存した後でも、小胞内の添加されたmRNAの含量は、開始時の状態に比べて減少しなかった(
図8)。試験は、セロリ(E1)およびキウイフルーツ(E2)の植物由来の遺伝子操作されたEVで行われたが、同様の結果は、ズッキーニ、キャベツ、ケール、ブルーベリー、レモン、オレンジおよびザクロなどの他の植物由来のEVでも得られた。
【0149】
これらのデータから、本発明のEVは、-80℃のような核酸医薬の保存に一般的な超低温を用いる必要はなく、容易に凍結乾燥され、+4℃または室温で効率的に保存できることが確認された。
【0150】
実施例5
本発明者らはさらに、遺伝子操作された本発明の植物由来EVが、添加された核酸を受容細胞に送達するために用いるのに適していることを確認した(
図9)。これらの試験では、マクロファージを例示的受容細胞として用い、これらの細胞におけるmRNA分子の転移をqRT-PCR分析によって測定した。特に、上記の試験は、異なる種類の植物(E1、E2、E3)由来の本発明のEVが、未処理細胞(未処理、NT)に対して、mRNA分子をマクロファージに転移させることができるのに対し、天然植物由来のEV(ネイティブEV)、核酸添加なしでmRNAと共インキュベートした植物由来のEV(EV+mRNA)、およびネイキッドmRNAでは、mRNA転移が検出されなかったことを確認した。試験は、キャベツ(E1)、ザクロ(E2)およびキウイフルーツ(E3)の遺伝子操作された植物由来のEVで行われたが、同様の結果は、ズッキーニ、セロリ、ケール、レモン、オレンジ、ブルーベリーなどの他の植物由来のEVでも得られた。
【0151】
レシピエント細胞に送達された核酸がその機能活性を維持することを証明するために、GFPタンパク質をコードするmRNA分子を含む本発明のEVをアッセイした。受容細胞に組み込まれた後、mRNAが機能すればGFPタンパク質に翻訳され、機能性タンパク質の蛍光が細胞内で検出される。
【0152】
本発明者らによって実施された試験によれば、本発明のEVによって運ばれたmRNAは機能的であり、内皮細胞(
図10A)およびマクロファージ(
図10B)において蛍光シグナルとして検出可能であったが、天然植物由来(ネイティブEV、
図10A)またはネイキッドmRNA(ネイキッドmRNA、
図10B)を用いた場合には機能的mRNAの移行は見られなかった。試験は、ズッキーニ(
図10A)およびケール(
図10B)の遺伝子操作された植物由来EVで行ったが、セロリ、キャベツ、キウイフルーツ、ブルーベリー、レモン、オレンジおよびザクロなどの他の植物由来のEVでも同様の結果が得られた。
【0153】
さらに本発明者らは、遺伝子操作された本発明の植物由来EVが、タンパク質抗原に翻訳される機能的mRNAを受容細胞に移行し、正しく折り畳まれた抗原として発現できることを確認した(
図11)。試験の過程で、ウイルスタンパク質抗原の異なる配列をコードするmRNA分子を含む本発明のEVをアッセイした:配列番号50、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S1)RBDタンパク質;配列番号14、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質完全タンパク質;配列番号17、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質。内皮細胞に組み込まれた後、mRNAは機能すればタンパク質に翻訳され、特異的抗体によって検出される。
図11は、本発明の遺伝子操作された植物由来EVが、mRNAを標的細胞に移行でき、標的細胞はmRNAを特異的タンパク質抗原に翻訳するのに対し、未処理細胞(NT)または遺伝子操作されたものではなく天然植物由来EVで処理した細胞ではタンパク質抗原が検出されなかったことを示している。
【0154】
これらのデータをまとめると、本発明のEVは、マクロファージなどの抗原提示細胞(APC)を含むさまざまなタイプの受容細胞に、外来核酸分子を効率的に送達でき、同時に核酸の機能およびタンパク質に翻訳される能力を保持できることが確認された。このように、正しく折り畳まれた発現タンパク質は、APCによる免疫を促進する抗原として機能できる。さらに、上記のように行われた試験から、本発明のEVは、ウイルス抗原(SARS-CoV-2のヌクレオカプシド(N)タンパク質およびスパイク糖タンパク質)またはGFPのような他のタンパク質のような異なるタンパク質をコードする核酸分子と共に用いるのに適していることが示された。
【0155】
実施例6
本発明者らはさらに、遺伝子操作された本発明の植物由来EVが、抗原を発現および提示するAPC細胞に核酸を送達し、特異的免疫活性化を刺激できることを確認した(
図12)。これらの試験では、マクロファージが例示的なAPC受容細胞として用いられ、PBMC、すなわちヒト血液中のリンパ球、単球、その他の免疫細胞の混合集団と共にインキュベートする前に、本発明の遺伝子操作されたEVで刺激した。試験のために、本発明のEVは、例として用いられるウイルスタンパク質抗原の異なる配列をコードするmRNA分子を含んでアッセイされた:配列1、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S1)RBDタンパク質;配列2、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質完全タンパク質;配列3、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質。リンパ球の活性化を、10日後にFACS分析を用いて、リンパ球(細胞CD4+)の増殖の増加、活性化マーカーCD25およびHLA DRの発現として測定した。リンパ球の増殖を検出するために、PBMCはフローサイトメトリーでPBMCの増殖を検出できる蛍光色素(CFSE)でも染色した。
図12Aに示すように、遺伝子操作された植物由来のEVで刺激されたリンパ球CD4+の増殖率は、陰性対照、未処理細胞(NT)および天然EVで処理した細胞と比較して増加している。予想通り、陽性対照はリンパ球増殖を刺激した:ヒトT-アクティベーターCD3/CD28(CTR+)および精製タンパク質(SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質RBDタンパク質(Sタンパク質)、またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質))。リンパ球の増殖率の増加は、その活性化を示している。
【0156】
さらに、本発明の遺伝子操作された植物由来EVによるAPCの刺激は、リンパ球における活性化マーカーCD25(
図12B)およびHLA DR(
図12C)の発現を増加させた。
【0157】
本発明の植物由来EVによる刺激は、CD4+リンパ球による両方の活性化マーカーの発現増加を誘導し、免疫細胞の活性化を示した。この刺激は、陰性対照、未処理細胞(NT)、および天然植物由来EVで処理した細胞と比較した。予想通り、陽性対照はリンパ球増殖を刺激した:ヒトT-アクティベーターCD3/CD28(CTR+)および精製タンパク質(SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質RBDタンパク質(Sタンパク質)、またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質))。
【0158】
全体として、上記の結果は、本発明の遺伝子操作された植物由来のEVが、APC(マクロファージなど)への取り込み後に免疫応答を活性化し、異なるタンパク質抗原をコードする異なる核酸分子でアッセイできることを示している。
【0159】
これらのデータをまとめると、本発明の植物由来EVは、機能的なmRNAをAPCに伝達でき、そのmRNAは正しく折り畳まれたタンパク質抗原に翻訳され、免疫反応を特異的に活性化できる。注目すべきは、天然植物由来EVではなく、本発明の遺伝子操作された植物由来EVのみがリンパ球活性化を誘導したことである。
【0160】
実施例7
ワクチンとして用いるための核酸送達のためのビークルとしての本発明によるEVの適合性を示す目的で、インビボマウスモデルでの実験を行った。
【0161】
特に、マウスを2回免疫し(2回の処置の間は3週間あける)、最後の投与から2週間後に血清中の特異的抗体の存在を測定した。マウスに、天然植物由来EV(ネイティブEV)、または例えばSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質RBD(S1)のようなウイルスタンパク質抗原をコードするmRNA分子で遺伝子操作された本発明の植物由来EV(遺伝子操作されたEV)を、筋肉内または経口投与経路を用いて投与した。
【0162】
図13は、マウス血清中のSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質RBD(S1)に特異的なIgA抗体の測定を示す。本発明の遺伝子操作された植物由来EVを用いたワクチン接種は、経口投与および筋肉内投与のいずれにおいても、天然植物由来EVを用いたワクチン接種と比較して、特異的抗体の産生を誘導した。経口投与後に検出された抗体陽性反応は、本発明の使用のための組成物が胃腸環境から保護されていることを示している。
【0163】
これらのデータをまとめると、本発明の植物由来EVは、核酸を担持でき、APCに移行し、正しく折り畳まれた抗原に翻訳され、免疫反応を活性化し、インビボで特異的抗体を産生するため、ワクチンとして使用するのに適していることがわかる。本発明のEVは免疫刺激作用も免疫抑制作用も示さないため、免疫応答の活性化は抗原に特異的である。さらに、遺伝子操作された本発明の植物由来EVは、核酸を分解から効率的に保護でき、異なる経路でのワクチン投与を可能にする。
【配列表】
【国際調査報告】