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特表2024-508362大動脈弓内に塞栓用フィルタを設置するための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】大動脈弓内に塞栓用フィルタを設置するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/01 20060101AFI20240219BHJP
   A61B 17/22 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61F2/01
A61B17/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544525
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 US2021060178
(87)【国際公開番号】W WO2022177618
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/151,508
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514171463
【氏名又は名称】エンボライン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クレシンスキ, スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル, スコット エム.
(72)【発明者】
【氏名】ドレクセル, マサオ
(72)【発明者】
【氏名】ベルソン, アミル
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM37
(57)【要約】
塞栓用フィルタ位置付けシステムは、血管送達シースと、フィルタカテーテルと、フィルタカテーテルの遠位端に取着される、自己拡張型塞栓用フィルタと、テーパ状拡張器先端部を有する、伸長拡張器とを含む。伸長拡張器は、フィルタカテーテルの中心管腔内に摺動可能に受容され、フィルタカテーテルは、血管送達シースの開口管腔内に摺動可能に受容される。テーパ状拡張器先端部は、血管送達シースの遠位端の遠位に位置付けられ、自己拡張型塞栓用フィルタは、血管送達シースの開口管腔の近位部分において、半径方向に制約される。テーパ状拡張器先端部は、それが、血管送達シースの開口遠位端を被覆し、動脈切開術を通した進入を促進する、拡張された構成と、それが、フィルタカテーテルの中心管腔を通して後退され得る、収縮された構成とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塞栓用フィルタを患者の大動脈弓内に位置付ける方法であって、前記方法は、
塞栓用フィルタ位置付けアセンブリを提供することであって、前記塞栓用フィルタ位置付けアセンブリは、(1)血管送達シースと、(2)前記血管送達シースの開口管腔内に摺動可能に受容されるフィルタカテーテルと、(3)前記フィルタカテーテルの中心管腔内に摺動可能に受容されるガイドワイヤ管腔を有する伸長拡張器と、(4)前記伸長拡張器の遠位端に取着されるテーパ状拡張器先端部と、(5)前記フィルタカテーテルの遠位部分上に担持される塞栓用フィルタとを含む、ことと、
前記血管送達シースの開口遠位端を越えて遠位に延在し、それを被覆するように前記テーパ状拡張器先端部を拡張させ、位置付けることと、
前記塞栓用フィルタ位置付けアセンブリの前記拡張されたテーパ状拡張器先端部を、動脈切開術を通して、前記伸長拡張器の前記ガイドワイヤ管腔内に受容される第1のガイドワイヤを経由して、かつ前記患者の動脈血管系の中に導入することと、
前記塞栓用フィルタ位置付けアセンブリの遠位端を前進させ、前記フィルタカテーテルの前記遠位部分上に担持される前記塞栓用フィルタを、前記患者の大動脈弓内に位置付けることと、
前記塞栓用フィルタの上から前記血管送達シースの遠位部分を後退させ、前記患者の大動脈弓内の前記塞栓用フィルタを拡張させることと、
前記テーパ状拡張器先端部を収縮させ、前記先端部を、前記フィルタカテーテルの前記中心管腔の中に、またはそれを通して、近位に後退させることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記テーパ状拡張器先端部を拡張させることは、前記テーパ状拡張器先端部を膨張させることを含み、前記テーパ状拡張器先端部を収縮させることは、前記テーパ状拡張器先端部を膨張解除させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テーパ状拡張器先端部は、基部を伴う円錐形の幾何学形状を有し、前記血管送達シースの開口遠位端を越えて遠位に延在し、それを被覆するように前記テーパ状拡張器先端部を位置付けることは、前記基部を前記血管送達シースの前記開口遠位端と取外可能に噛合させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記テーパ状拡張器先端部の前記基部は、円筒形であり、前記血管送達シースの前記開口遠位端の内側に嵌合するように構成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記塞栓用フィルタの近位端を閉鎖することと、前記フィルタを、前記血管送達シースの中に戻るように後退させることとをさらに含む、請求項1-4に記載の方法。
【請求項6】
前記塞栓用フィルタの前記近位端を閉鎖することは、前記塞栓用フィルタの前記近位端上の輪状部を締め付けることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記塞栓用フィルタは、前記血管シースの前記遠位部分が、前記塞栓用フィルタの上から後退された後、前記患者の大動脈弓内で自己拡張する、請求項1-6に記載の方法。
【請求項8】
患者内に人工大動脈弁を埋め込むための方法であって、前記方法は、
請求項1-7のいずれか1項に記載のように、前記患者の大動脈弓内に塞栓用フィルタを設置することと、
前記塞栓用フィルタを通して、前記人工大動脈弁を前進させることと、
前記塞栓用フィルタが、前記大動脈弓内の定位置に留まったままである間、前記患者の大動脈弁輪内に前記人工大動脈弁を展開することと
を含む、方法。
【請求項9】
前記塞栓用フィルタを通して、前記人工大動脈弁を前進させることは、
前記伸長拡張器を、前記フィルタカテーテルの前記中心管腔から除去し、前記第1のガイドワイヤを、前記フィルタカテーテルの前記中心管腔内の定位置に残すことと、
前記第1のガイドワイヤを、血管造影ピグテールカテーテルと交換することと、
前記塞栓用フィルタを通して、かつ前記塞栓用フィルタ位置付けアセンブリに平行に、前記大動脈弓を越えて、1つまたはそれを上回る弁設置ガイドワイヤを前進させることと、
前記人工弁を担持する弁設置カテーテルを、前記1つまたはそれを上回る弁設置ガイドワイヤを経由して、前進させることと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
塞栓用フィルタ位置付けシステムであって、
近位止血弁と、開口遠位端と、前記開口遠位端から前記止血弁まで延在する開口管腔とを有する血管送達シースと、
フィルタカテーテルであって、近位端と、遠位端と、それを通る中心管腔とを有するフィルタカテーテルと、
前記フィルタカテーテルの前記遠位端に取着される自己拡張型塞栓用フィルタと、
伸長拡張器であって、近位端と、遠位端と、それを通るガイドワイヤ管腔とを有する伸長拡張器と、
前記伸長拡張器の前記遠位端に取着されるテーパ状拡張器先端部と
を備え、
前記伸長拡張器は、前記フィルタカテーテルの前記中心管腔内に摺動可能に受容されるように構成され、前記フィルタカテーテルは、前記血管送達シースの前記開口管腔内に摺動可能に受容されるように構成され、前記テーパ状拡張器先端部は、前記血管送達シースの前記遠位端の遠位に位置付け可能であり、前記自己拡張型塞栓用フィルタは、前記血管送達シースの前記開口管腔の近位部分において、半径方向に制約されるように構成され、
前記テーパ状拡張器先端部は、それが前記血管送達シースの前記開口遠位端を被覆し、動脈切開術を通した進入を促進する拡張された構成と、それが前記フィルタカテーテルの前記中心管腔を通して後退され得る収縮された構成とを有する、
塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【請求項11】
前記テーパ状拡張器先端部は、円錐形の幾何学形状を有し、基部が、前記血管送達シースの前記開口遠位端と取外可能に噛合するように構成される、請求項10に記載の塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【請求項12】
前記テーパ状拡張器先端部の基部は、円筒形であり、前記血管送達シースの前記開口遠位端の内側に嵌合するように構成される、請求項11に記載の塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【請求項13】
前記フィルタカテーテルの前記近位端に取着されるハンドルをさらに備える、請求項10-12に記載の塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【請求項14】
前記ハンドルは、前記フィルタを前記血管送達シースの中に戻るように後退させることに先立って、前記塞栓用フィルタの近位端を閉鎖するための機構を備える、請求項13に記載の塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【請求項15】
前記塞栓用フィルタの近位端を閉鎖するための前記機構は、前記塞栓用フィルタの前記近位端上の輪状部に結合されるラチェットリトラクタを備える、請求項14に記載の塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【請求項16】
前記塞栓用フィルタは、前記患者の大動脈弓の内壁内で自己拡張し、それに共形化するように構成される円筒形の本体を備える、請求項10-15に記載の塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【請求項17】
前記塞栓用フィルタはさらに、円筒形の本体の中心通路を横断して延在するポートを備え、前記ポートは、拡張可能であり、それを通して前進されるカテーテルおよびガイドワイヤの外側表面に対してシールするように構成される、請求項16に記載の塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【請求項18】
前記円筒形の本体は、編成された、織成された、または織成されていない繊維の布地、フィラメント、またはワイヤを備える、多孔性材料を備える、請求項16または17に記載の塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【請求項19】
前記多孔性材料は、弾力性がある金属、ポリマー材料、可鍛性材料、塑性的に変形可能な材料、形状記憶材料、またはそれらの組み合わせから作製される、請求項18に記載の塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【請求項20】
前記多孔性材料は、所定のサイズを超える塞栓が、それを通して通過することを防止するために選定される細孔サイズを有する、請求項18または19に記載の塞栓用フィルタ位置付けシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その完全な開示が、参照することによって本明細書に組み込まれる、2021年2月19日に出願された、仮特許出願整理番号第63/151,508号(弁理士整理番号第41959-715.101号)の利益を主張する。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、概して、医療用装置および方法に関し、より具体的には、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)および他の大動脈弁手技に先立って、患者の大動脈弓内に、塞栓用フィルタを設置するための方法およびシステムに関する。
【0003】
経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、大動脈弁置換術を必要とする多くの患者のための心臓切開手術に対する好ましい代替手段となっている。最も一般的なアプローチは、「経大腿動脈」であり、本場合では、大腿動脈が、鼠径部内の小さな切開を介してアクセスされ、置換弁が、特殊な送達カテーテルを使用して、大腿動脈から下行大動脈の中に、かつ大動脈弓を越えて前進される。
【0004】
非常に成功している一方、経大腿動脈および他のTAVR手技は、塞栓を解放し、脳塞栓症の有意なリスクを提示し得る。血栓、粉瘤、および脂質等の塞栓粒子は、送達カテーテルの前進および操作によって取り除かれた状態になり、血流に進入し、脳または他の下流の重要臓器内で塞栓し得る。脳塞栓症は、神経心理学的障害、脳卒中、および死にさえつながり得る。他の下流の臓器もまた、塞栓症によって損傷され、機能の低下または臓器不全を結果としてもたらし得る。
【0005】
これらの理由のために、TAVRおよび他のカテーテルベースの手技の間の塞栓保護システムの使用が、提案されている。例えば、共同所有される、第US10,617,509号は、TAVRの間の塞栓の解放によって引き起こされる、脳動脈瘤および他の負の結果のリスクを低減させるために、円筒形の塞栓用フィルタと、そのフィルタを患者の大動脈弓の中に設置するためのシステムとを説明している。塞栓用フィルタは、図1に示されるように、大腿動脈を通して、従来の拡張器と、アクセスシースアセンブリ10とを導入することによって設置される。シースアセンブリ10は、管状アクセスシース12と、テーパ状遠位先端部16を有する、拡張器14とを備える。拡張器先端部16は、中実であり、拡張器14は、軸方向に延在するガイドワイヤ管腔(図示せず)を有し、それを通してガイドワイヤ18を受容する。拡張器14および先端部16が、中実であり、1つの部片であるため、拡張器全体は、アクセスシース12から除去され、アクセスシース管腔を遊離し、フィルタ送達カテーテルを導入しなければならない。第US10,617,509号に説明されるように、別個のフィルタ送達カテーテルは、拡張器を除去した後、剥離シースを使用して、アクセスシース管腔の中に導入される。完全に作動可能であるが、拡張器を除去し、剥離シースを設置し、フィルタ送達カテーテルを導入するために必要とされる時間は、有意なものであり、全体的な手技時間に追加される。
【0006】
これらの理由のために、TAVRおよび他の心臓および血管手技の間、塞栓保護のために、塞栓用フィルタを患者の大動脈弓の中に導入するための改良された方法およびシステムを提供することは、有利であろう。特に、そのような塞栓用フィルタを展開するために必要とされるステップの数を低減させること、および/または全体的な手技時間を低減させることは、有利であろう。これらの目標のうちの少なくともいくつかが、本明細書に説明され、請求される本発明によって充足されるであろう。
【背景技術】
【0007】
2.背景技術の説明
第US10,617,509号が、上記に説明されている。第WO2017/116828号および第US2020/0197151号は、第US10,617,509号に関連する。脳塞栓症を抑制するための他のデバイスが、以下の共同特許および特許出願、すなわち、一体化された塞栓保護デバイスを伴うカテーテルに関する、米国特許第10,166,094号、塞栓保護を伴うイントロデューサシースに関する、米国特許第9,877,821号、灌流シャント装置および方法に関する、米国特許第6,254,563号、塞栓保護デバイスに関する、米国特許出願第2010/0312268号、塞栓保護デバイスに関する、米国特許出願第2004/0215167号、塞栓保護デバイスに関する、PCT出願第WO2004/019817号、流動分配器を伴う大動脈カテーテルおよび脳塞栓を予防するための方法に関する、米国特許第6,371,935号、灌流フィルタカテーテルに関する、米国特許第6,361,545号、灌流シャント装置および方法に関する、米国特許第6,254,563号、灌流シャント装置および方法に関する、米国特許第6,139,517号、外科手術の間、患者を塞栓から保護する方法に関する、米国特許第6,537,297号、埋込可能脳保護デバイスおよび使用方法に関する、米国特許第6,499,487号、関連付けられるフィルタを伴うカニューレに関する、米国特許第5,769,816号、および粉瘤を安定させるための埋込可能管腔内保護デバイスおよびそれを使用する方法に関する、米国特許出願第2003/0100940号(参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されている。米国第8,419,677号および米国第2012/0109056号もまた参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第10,617,509号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/116828号
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0197151号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の側面では、本発明は、塞栓用フィルタを患者の大動脈弓内に位置付けるための方法を提供する。本方法は、患者の血管系の中への導入を促進し、塞栓用フィルタを大動脈弓内に設置するために必要とされるステップおよび時間を低減させる、拡張器構成要素を含む、塞栓用フィルタ位置付けアセンブリを提供することを含む。塞栓用フィルタ位置付けアセンブリは、(1)血管送達シースと、(2)該血管送達シースの開口管腔内に摺動可能に受容される、フィルタカテーテルと、(3)フィルタカテーテルの中心管腔内に摺動可能に受容される、ガイドワイヤ管腔を有する、伸長拡張器と、(4)伸長拡張器の遠位端に取着される、テーパ状拡張器先端部と、(5)フィルタカテーテルの遠位部分上に担持される、塞栓用フィルタとを含む。テーパ状拡張器先端部は、血管送達シースの開口遠位端を越えて遠位に延在し、それを被覆するように、拡張され、位置付けられ、塞栓用フィルタ位置付けアセンブリの拡張されたテーパ状拡張器先端部は、動脈切開術を通して、伸長拡張器のガイドワイヤ管腔内に受容される、第1のガイドワイヤを経由して、かつ患者の動脈血管系の中に導入される。塞栓用フィルタ位置付けアセンブリの遠位端が、フィルタカテーテルの遠位部分上に担持される塞栓用フィルタを、患者の大動脈弓内に位置付けるために、前進され、血管送達シースの遠位部分が、塞栓用フィルタの上から後退され、塞栓用フィルタは、患者の大動脈弓内で拡張される。テーパ状拡張器先端部は、次いで、収縮され、先端部は、フィルタカテーテルのカテーテル管腔の中に、またはそれを通して、近位に後退させられ得る。
【0010】
これらの方法のいくつかの実施例では、テーパ状拡張器先端部を拡張させることは、テーパ状拡張器先端部を膨張させることを含み、テーパ状拡張器先端部を収縮させることは、テーパ状拡張器先端部を膨張解除させることを含んでもよい。
【0011】
これらの方法のいくつかの実施例では、テーパ状拡張器先端部は、基部を伴う、円錐形の幾何学形状を有し得、血管送達シースの開口遠位端を越えて遠位に延在し、それを被覆するように、テーパ状拡張器先端部を位置付けることは、基部を血管送達シースの開口遠位端と取外可能に噛合させることを含む。いくつかの事例では、テーパ状拡張器先端部の基部は、円筒形であり、血管送達シースの開口遠位端の内側に嵌合するように構成されてもよい。
【0012】
これらの方法のいくつかの実施例では、塞栓用フィルタの近位端が、閉鎖されてもよく、フィルタは、血管送達シースの中に戻るように後退されてもよい。具体的な事例では、塞栓用フィルタの近位端を閉鎖することは、塞栓用フィルタの近位端上の輪状部を締め付けることを含んでもよい。
【0013】
これらの方法のいくつかの実施例では、塞栓用フィルタは、血管シースの遠位部分が、塞栓用フィルタの上から後退された後、患者の大動脈弓内で自己拡張する。
【0014】
第2の側面では、本発明は、患者の大動脈弓内に人工大動脈弁を埋め込むための方法を提供する。本方法は、上記および本明細書の任意の場所で説明される方法のいずれかによって、患者の大動脈弓内に塞栓用フィルタを設置することを含む。人工大動脈弁は、塞栓用フィルタを通して前進され、塞栓用フィルタが、大動脈弓内の定位置に留まったままである間、人工大動脈弁が、患者の大動脈弁輪内に展開される。
【0015】
そのような弁埋込方法のいくつかの実施例では、塞栓用フィルタを通して人工大動脈弁を前進させることは、伸長拡張器を、フィルタカテーテルの中心管腔から除去し、第1のガイドワイヤを、フィルタカテーテルの中心管腔内の定位置に残すことを含む。第1のガイドワイヤは、次いで、血管造影ピグテールカテーテルと交換され、1つまたはそれを上回る弁設置ガイドワイヤが、塞栓用フィルタを通して、かつ塞栓用フィルタ位置付けアセンブリに平行に、大動脈弓を越えて、前進される。人工弁を担持する弁設置カテーテルが、次いで、1つまたはそれを上回る弁設置ガイドワイヤを経由して、大動脈弁輪または他の標的場所まで前進される。
【0016】
第3の側面では、本発明は、塞栓用フィルタ位置付けシステムを提供し、これは、(1)近位止血弁と、開口遠位端と、開口遠位端から止血弁まで延在する、開口管腔とを有する、血管送達シースと、(2)近位端と、遠位端と、それを通る中心管腔とを有する、フィルタカテーテルと、(3)フィルタカテーテルの遠位端に取着される、自己拡張型塞栓用フィルタと、(4)近位端と、遠位端と、それを通るガイドワイヤ管腔とを有する、伸長拡張器と、(5)伸長拡張器の遠位端に取着される、テーパ状拡張器先端部とを備える。伸長拡張器は、フィルタカテーテルの中心管腔内に摺動可能に受容されるように構成され、フィルタカテーテルは、血管送達シースの開口管腔内に摺動可能に受容されるように構成される。テーパ状拡張器先端部は、血管送達シースの遠位端の遠位に位置付け可能であり、自己拡張型塞栓用フィルタは、血管送達シースの開口管腔の近位部分において、半径方向に制約されるように構成される。テーパ状拡張器先端部は、それが、血管送達シースの開口遠位端を被覆し、動脈切開術を通した進入を促進する、拡張された構成と、それが、フィルタカテーテルの中心管腔を通して後退され得る、収縮された構成とを有する。
【0017】
本発明の塞栓用フィルタ位置付けシステムのいくつかの実施例では、テーパ状拡張器先端部は、円錐形の幾何学形状を有し、基部が、血管送達シースの開口遠位端と取外可能に噛合するように構成されてもよい。特定の事例では、テーパ拡張器先端部の基部は、円筒形であり、血管送達シースの開口遠位端の内側に嵌合するように構成されてもよい。
【0018】
他の実施例では、本発明の塞栓用フィルタ位置付けシステムはさらに、フィルタカテーテルの近位端に取着される、ハンドルを備えてもよい。特定の事例では、ハンドルは、フィルタを血管送達シースの中に戻るように後退させることに先立って、塞栓用フィルタの近位端を閉鎖するための機構を備えてもよく、例えば、塞栓用フィルタの近位端を閉鎖するための機構は、塞栓用フィルタの近位端上の輪状部に結合される、ラチェットリトラクタを備えてもよい。
【0019】
本発明の塞栓用フィルタ位置付けシステムのいくつかの実施例では、塞栓用フィルタは、患者の大動脈弓の内壁内で自己拡張し、それに共形化するように構成される、円筒形の本体を備えてもよい。特定の事例では、塞栓用フィルタはさらに、円筒形の本体の中心通路を横断して延在する、ポートを備えてもよく、ポートは、拡張可能であり、それを通して前進される、カテーテルおよびガイドワイヤの外側表面に対してシールするように構成される。他の事例では、塞栓用フィルタの円筒形の本体は、編成された、織成された、または織成されていない繊維の布地、フィラメント、またはワイヤを備える、多孔性材料を備えてもよい。例えば、多孔性材料は、弾力性がある金属、ポリマー材料、可鍛性材料、塑性的に変形可能な材料、形状記憶材料、またはそれらの組み合わせから作製される。他の実施例では、多孔性材料は、所定のサイズを超える塞栓が、それを通して通過することを防止するために選定される、ある細孔サイズを有してもよい。
【0020】
(参照による組み込み)
本明細書に述べられる、全ての公開文書、特許、および特許出願は、個々の公開文書、特許、または特許出願がそれぞれ、参照することによって組み込まれることを具体的かつ個々に示される場合と同様に、同一の範囲まで、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の新規の特徴は、添付の請求項において、特定性を伴って記載される。本発明の特徴および利点のより良好な理解が、本発明の原理が利用される例証的実施形態を記載する、以下の詳細な説明を参照することによって取得され、その付随の図面は、以下の通りである。
【0022】
図1図1は、拡張器の管腔から遠位に延在する、ガイドワイヤを伴う、従来の中実拡張器を有する、先行技術血管内シースを示す。
【0023】
図2A図2A-2Cは、本発明による血管送達シースの遠位部分を示し、図2Aでは、バルーン拡張器が、膨張されていない状態、図2Bでは、バルーン拡張器が、膨張された状態、および図2Cでは、膨張されたバルーン拡張器が、シースの遠位先端部の中に近位に引き込まれている状態である。
図2B図2A-2Cは、本発明による血管送達シースの遠位部分を示し、図2Aでは、バルーン拡張器が、膨張されていない状態、図2Bでは、バルーン拡張器が、膨張された状態、および図2Cでは、膨張されたバルーン拡張器が、シースの遠位先端部の中に近位に引き込まれている状態である。
図2C図2A-2Cは、本発明による血管送達シースの遠位部分を示し、図2Aでは、バルーン拡張器が、膨張されていない状態、図2Bでは、バルーン拡張器が、膨張された状態、および図2Cでは、膨張されたバルーン拡張器が、シースの遠位先端部の中に近位に引き込まれている状態である。
【0024】
図3図3は、図2A-2Cの完全長シースを示し、その近位端において、止血弁を含み、拡張器は伴わない。
【0025】
図4図4は、図2A-2Cの血管送達シースの完全長拡張器を示し、近位ハブを含む。
【0026】
図5図5は、本発明によるフィルタカテーテルを示し、その遠位端において、塞栓用フィルタを、その近位端において、ハンドルを有する。
【0027】
図6図6は、フィルタカテーテルシャフトの遠位端に取着される、塞栓用フィルタを示す、一部が切り取られている、詳細図であり、それを通して位置付けられる、血管送達シースアセンブリを有し、膨張可能先端部は、その膨張解除された構成にある。
【0028】
図7図7は、血管送達シースの遠位端から延在する、その膨張された構成における、血管送達シースアセンブリの拡張器の膨張可能先端部を把握する、詳細図である。
【0029】
図8図8は、図7のものと同様の詳細図であり、拡張器の膨張された先端部が、血管送達シースの開口端の中に、患者の大腿動脈に対して近位に引き込まれている。
【0030】
図9A図9A-9Fは、塞栓用フィルタを患者の大動脈弓内に設置し、その後、患者の大動脈弁輪内に人工弁を埋め込むための本発明の血管送達シースアセンブリの使用を図示する。
図9B図9A-9Fは、塞栓用フィルタを患者の大動脈弓内に設置し、その後、患者の大動脈弁輪内に人工弁を埋め込むための本発明の血管送達シースアセンブリの使用を図示する。
図9C図9A-9Fは、塞栓用フィルタを患者の大動脈弓内に設置し、その後、患者の大動脈弁輪内に人工弁を埋め込むための本発明の血管送達シースアセンブリの使用を図示する。
図9D図9A-9Fは、塞栓用フィルタを患者の大動脈弓内に設置し、その後、患者の大動脈弁輪内に人工弁を埋め込むための本発明の血管送達シースアセンブリの使用を図示する。
図9E図9A-9Fは、塞栓用フィルタを患者の大動脈弓内に設置し、その後、患者の大動脈弁輪内に人工弁を埋め込むための本発明の血管送達シースアセンブリの使用を図示する。
図9F図9A-9Fは、塞栓用フィルタを患者の大動脈弓内に設置し、その後、患者の大動脈弁輪内に人工弁を埋め込むための本発明の血管送達シースアセンブリの使用を図示する。
【0031】
図10A図10Aおよび10Bは、フィルタを送達シースの中に戻るように引き込むことに先立って、塞栓用フィルタの端部を閉鎖するためのラチェット機構の使用を図示する。
図10B図10Aおよび10Bは、フィルタを送達シースの中に戻るように引き込むことに先立って、塞栓用フィルタの端部を閉鎖するためのラチェット機構の使用を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の詳細な説明
本特許出願の目的のために、用語「遠位」は、操作者から離れて最も遠く、かつ心臓に最も近いデバイスの端部を指す。これはまた、血流の「上流」方向でもある。用語「近位」は、デバイスが身体の中に導入されているアクセス部位の方向に向かって、操作者により近く、心臓から離れて最も遠いデバイスの端部を指す。これはまた、血流の「下流」方向でもある。
【0033】
本発明では、従来の拡張器は、従来の拡張器のテーパ状先端部と同様の外形の遠位テーパ部を有し、バルーンの膨張および膨張解除を有効にするために、付加的な管腔を伴う、ガイドワイヤを収容するためのガイドワイヤ管腔を有する、より小さな直径のシャフトに取着される、「拡張可能先端カテーテル」、典型的には、「バルーン拡張器」と置換される。本構造体は、血管形成術のために使用される、非伸張性バルーンカテーテルに類似し得、バルーンの形状は、拡張器としてのその使用を促進するように最適化され、典型的には、遠位方向に対向する狭端部を伴う、テーパ状円錐形である。
【0034】
本発明のバルーンまたは他の拡張可能拡張器の主な利点は、関連付けられる介入用または診断用カテーテルが、バルーン拡張器の除去の必要性を伴うことなく、シースを通して、かつバルーン拡張器のシャフトにわたって(すなわち、ひいては、ガイドワイヤを経由して)設置され得ることである。好ましい実施形態では、介入用または診断用デバイスは、シース内のバルーン拡張器にわたって予め装填され、手技時間を節約し、デバイスの使用の容易性を向上することができ、これは、シースの近位端を通して最初に導入するステップをもはや要求しない。
【0035】
実施例として、自己拡張性材料(例えば、形状記憶合金)から作製され得る、塞栓保護フィルタは、圧縮され、バルーン拡張器のシャフトにわたって、シースの遠位端の中に予め装填されることができる。バルーン拡張器は、次いで、バルーン自体が、シースの遠位端に位置するまで抜去され得る。バルーンは、次いで、膨張され、シースの端部と噛合する、幾分剛性である遠位テーパ部を作成することができる。本システム全体は、次いで、ガイドワイヤを経由して、セルジンガ穿刺を通して導入され、治療場所まで前進され得る。シースは、次いで、フィルタの周囲から抜去され、フィルタが、定位置の中で拡張することを可能にする。フィルタの展開後、バルーンは、膨張解除され、バルーン拡張器システム全体が、フィルタおよび取着カテーテルの管腔を通して抜去され、除去され、シース、フィルタ、およびガイドワイヤを後方に残す。
【0036】
本発明のテーパ状バルーンはまた、ポリマー被覆を伴う、機械的に拡張可能なフレーム、またはセルジンガ穿刺を通したシースの挿入の間、一時的な拡張器先端部として作用する、任意の他の拡張可能かつ収縮可能なシステムと置換され得る。
【0037】
いくつかの送達システムは、遠位端において、従来的な拡張器に取って代わり、デバイスが、遠位端において、より小さなシャフトにわたって装填されることを可能にする、ノーズコーン、すなわち、オリーブを使用する。これらの場合では、オリーブは、シースのIDに緊密に噛合される(この場合では、シースを通してそれを除去することが可能である)か、またはシースからその除去を妨げる、シースのODに合致されるかのいずれかであることができる。本発明のバルーン拡張器では、膨張されたバルーンの直径は、シースの直径に合致されるが、バルーンが、折り畳み可能であるため、依然として、除去され、他の介入用デバイスの送達または通過のために、より高い柔軟性を提供することができる。
【0038】
加えて、介入用手技およびデバイスが、複雑性を増加させるにつれて、マルチカテーテルシステムが、身体の中へのそれらの送達のために要求され得る。一実施例は、4つのカテーテルから成る、システムであり、本場合では、各カテーテルは、別個の機能を有する一方、単一の動脈切開術を通して導入されることが可能である。第1の(最外部の)カテーテルは、2つの付加的なデバイスの血管系内のアクセスおよび除去のための運搬手段として作用する。第2のカテーテルは、治療用または予防用デバイスのいずれかに取着される、またはそれを搬送する。第3のバルーン拡張器カテーテルは、動脈切開術を通した挿入を可能にするために、第2のカテーテルを通して通過する。最終的に、診断用カテーテルが、バルーン拡張器カテーテルに取って代わり、単一の動脈切開術において別個の機能を伴う、3つのカテーテルを残す。動脈切開術部を交差させる際の使用のために、(折り畳み可能バルーン拡張器とは対照的に)外側カテーテルの直径に合致される、任意の固定された直径の拡張器、ノーズコーン、またはオリーブは、したがって、大きすぎるため、第2のカテーテルを通して除去されることができず、したがって、診断用カテーテルの設置のために、第2の穿刺/アクセス部位を要求するであろう。
【0039】
ここで図2A-2C、3、および4を参照すると、本発明による血管送達シースアセンブリ20が、開口遠位端24と、近位端26(図3)と、それを通る管腔28とを有する、血管送達シース22を備える。拡張器30は、遠位端34および近位端(図示せず)を有する、シャフト32と、その遠位端において膨張可能な先端部38とを備える。膨張可能先端部38は、図2Aに、その膨張されていない状態において示される。先端部38は、図2Bに示されるように、テーパ状の外形、典型的には、円錐形の外形に膨張されるように成形される。円錐形の構成は、狭形または尖形遠位端40と、その近位端における円筒形基部42とを含む。図2Cに示されるように、拡張器シャフト32は、基部42を血管送達シース22の遠位開口部24の中に引き込むために、近位に引っ張られ得る。いったん膨張された遠位先端部38が、図2Cに示されるように、完全に近位に後退されると、血管送達シースアセンブリ20は、ガイドワイヤ44を経由して導入されるための準備ができ、下記により完全に説明されるように、本発明の血管手技において使用される。シース22は、典型的には、造影剤を導入するため、または他の目的のためのサイドポート48を含み得る、止血弁46を含む。拡張器30は、ガイドワイヤ管腔(図示せず)を有し、典型的には、ガイドワイヤ44を受容するための止血ポート52と、膨張可能先端部38を膨張させるための膨張ポート54とを伴う、ハブ50を含む。
【0040】
ここで図5を参照すると、フィルタカテーテル60は、遠位端64と、近位端66とを有する、シャフト62を備える。シャフト62は、下記により詳細に説明されるであろうように、血管送達シース22の管腔内に嵌合するように寸法指定されるであろう。シャフト62は、典型的には、それ自体が、遠位端64における巾着縫合ループ78を、近位端66におけるハンドル70に接続するための管腔または中心通路を含むであろう。塞栓用フィルタ68、典型的には、共同所有される、米国特許公開第2020/0253709号(その完全な開示が、参照することによって本明細書に組み込まれる)において説明されるタイプの自己拡張型円筒形メッシュフィルタが、シャフト62の遠位端64に、典型的には、巾着縫合ループ78によって固着される。ハンドル70は、典型的には、拡張器30および/または関連付けられるガイドワイヤを受容するように構成される、サイドポート72と、ラチェットプル76とを含む。ラチェットプルは、図10Aおよび10Bに示されるように、「締め付け」られるように構成され、図10Bに示されるように、塞栓用フィルタの近位端を閉鎖するために、巾着縫合部78上に近位張力を印加する。
【0041】
ここで図6を参照すると、患者への導入のための血管送達シースアセンブリ20を調製するために、拡張器30は、最初に、シャフト62の管腔を通して導入され、したがって、これは、塞栓用フィルタ68の内部を通して延在する。拡張器30およびフィルタカテーテル60のサブアセンブリが、次いで、血管送達シース22の中に前進され、したがって、それらがともに、シース22の遠位開口端24を越えて延在する。
【0042】
ここで図7および8を参照すると、血管送達シースアセンブリ24はさらに、これが、伸長し、半径方向に制約されるように、シース22の開口端24を通して、塞栓用フィルタ68を後退させることによって調製される。拡張器30の膨張可能先端部38は、次いで、そのテーパ構成を呈するように膨張される。膨張可能先端部38は、典型的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、または血管形成術バルーンを加工する際に使用されるタイプの他の材料等の非伸張性材料から形成される。膨張可能先端部は、非圧縮性流体、典型的には、生理食塩水を用いて、大腿動脈の中へ、かつ患者の血管系を通した、前進にとって好適な剛性本体を形成するために十分な圧力まで、膨張されるであろう。このように、使用の間、膨張可能先端部は、従来の中実先端拡張器と同様の様式で、性能を発揮するであろう。
【0043】
膨張可能先端部38が、膨張された後、これは、血管送達シース22の開口端24の中に後退されることができる。膨張されるとき、膨張可能先端部38は、典型的には、尖形先端部40と、円筒形基部42とを伴う、略円錐形形状を有し、円筒形基部は、図8に示されるように、シースの開口端24と噛合するように、サイズ指定され、構成され、拡張器は、シース内で近位に後退される。
【0044】
ここで図9A-9Fを参照すると、塞栓用フィルタ68を患者の大動脈弓AA内に設置するための血管送達シースアセンブリ20の使用が、説明されるであろう。血管送達シースアセンブリ20の遠位領域が、図2Cおよび8に示されるような構成にある場合、膨張可能先端部38は、大腿部アクセス部位FASを通して、ガイドワイヤ44を経由して導入される。膨張された先端部38は、介入の本段階において、従来の中実拡張器と同じ様式で作用する。膨張された先端部38および血管送達シース22は、次いで、図9Bに示されるように、患者の大動脈弓AAを越えて前進される。
【0045】
血管送達シースアセンブリ20の遠位部分が、大動脈弓AAを越えて、標的場所に到達した後、送達シース22は、図9Cに示されるように、塞栓用フィルタ68を展開するために後退されるであろう。反動が、シース22の近位端における止血弁46上を近位に引っ張り、シースをフィルタカテーテル60のシャフト62の上に戻るように引っ張ることによって達成され、フィルタが、自己拡張することを可能にし得る。塞栓用フィルタが、展開された後、膨張可能先端部38は、膨張解除され、シース22の管腔28の中に戻るように、近位に引き込まれ得る。典型的には、拡張器30全体は、本時点において、シース22から除去されるであろう。
【0046】
塞栓用フィルタ68が、おそらくは、展開された状態で、別個のガイドワイヤGWが、図9Eに示されるように、大動脈弓AAを越えて、かつフィルタを通して導入され、送達カテーテル92が、ガイドワイヤGWを経由して前進されることができる。送達カテーテル92は、任意の従来の人工大動脈弁、典型的には、Edwards Sapien(R)弁またはMedtronic CoreValve(登録商標)心臓等のバルーン拡張可能大動脈弁を送達するために使用されてもよい。弁が、塞栓用フィルタ68を通して導入され得る方法の詳細が、共同所有される、米国特許公開第2020/0253709号(その完全な開示が、参照することによって本明細書に以前に組み込まれている)に提供されている。
【0047】
人工大動脈弁90が、適切に埋め込まれた後、図9Fに示されるように、弁送達カテーテル90が、除去された後に、塞栓用フィルタ68の除去が続き得る。典型的には、フィルタカテーテルハンドル70上のラチェットプル76は、図10Aおよび10Bに示されるように、フィルタ68をシース22の開口端24の中に引っ張るために、フィルタカテーテル上で、近位に引き込むことに先立って、フィルタ上の巾着縫合ループ78を下方に引き込むために使用される。
【0048】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され、説明されているが、そのような実施形態が、単に実施例として提供されることは、当業者に明白であろう。多数の変形例、変更、および代用が、ここで、本発明から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。本明細書に説明される、本発明の実施形態に対する種々の代替案が、本発明を実践する際に採用され得ることを理解されたい。以下の請求項が、本発明の範囲を定義し、これらの請求項およびそれらの均等物の範囲内の方法および構造が、それによって網羅されることが意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
【国際調査報告】