IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリールセータ エーハゥーエッフの特許一覧

特表2024-508372注意欠陥/多動性障害の治療又は予防に使用するための化合物
<>
  • 特表-注意欠陥/多動性障害の治療又は予防に使用するための化合物 図1
  • 特表-注意欠陥/多動性障害の治療又は予防に使用するための化合物 図2
  • 特表-注意欠陥/多動性障害の治療又は予防に使用するための化合物 図3
  • 特表-注意欠陥/多動性障害の治療又は予防に使用するための化合物 図4
  • 特表-注意欠陥/多動性障害の治療又は予防に使用するための化合物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】注意欠陥/多動性障害の治療又は予防に使用するための化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/40 20060101AFI20240219BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20240219BHJP
   C07D 211/90 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/4458 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20240219BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C07C229/40
A61P25/14
A61K31/216
A61K31/4422
C07D211/90 CSP
A61K31/517
A61P43/00 121
A61K31/4458
A61K31/137
A61K31/16
A61K31/138
A61K31/165
C07D405/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546027
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2022052142
(87)【国際公開番号】W WO2022162199
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】2101291.9
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2101292.7
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2101296.8
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523176196
【氏名又は名称】スリールセータ エーハゥーエッフ
【氏名又は名称原語表記】3Z EHF
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,カール エーギル
(72)【発明者】
【氏名】ソルスタインソン,ハラルドゥル
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB04
4C063CC82
4C063DD31
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC21
4C086BC24
4C086BC46
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA10
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA09
4C206FA21
4C206GA19
4C206GA28
4C206HA31
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZC75
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB21
4H006BJ50
4H006BM72
4H006BS10
4H006BT10
4H006BU46
(57)【要約】
本発明は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用するための、アセクロフェナク、アムロジピンもしくはドキサゾシン、又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和物を提供する。本発明はまた、ADHDの治療又は予防のためのキット及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)で示される化合物、
【化1】
又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和物であり、

注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用するための、化合物。
【請求項2】
前記化合物が、約1mg~1000mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の用量で投与される、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記化合物の用量が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg又は600mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の用量で、1日1回用量として投与される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記化合物の用量が、100mg、150mg、200mg、250mg又は300mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の用量で、1日2回、3回又は4回の用量で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
下記の式(II)で示される化合物、
【化2】
又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和物であり、
注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用するための、化合物。
【請求項6】
前記化合物が約0.1mg~10mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の用量で投与される、請求項5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記化合物の用量が、2mg、2.5mg、5.0mg、7.5mg又は10mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の用量で、1日1回用量として投与される、請求項5又は6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記化合物の用量が、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg又は5mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の用量で、1日2回、3回又は4回の用量で投与される、請求項5~7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
下記の式(III)で示される化合物、
【化3】
又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和物であり、
注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用するための、化合物。
【請求項10】
前記化合物が約0.1mg~16mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の用量で投与される、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記化合物の用量が、1mg、2mg、4mg又は8mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の用量で1日1回用量として投与される、請求項9又は10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記化合物の用量が、1mg、2mg、4mg又は8mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の用量で、1日2回、3回又は4回投与される、請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
前記化合物が、1つ以上の更なる療法的介入、例えば、食事療法的介入、心理学的介入及び/又は薬理学的介入と同時に、連続的に又は別個に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
前記化合物が、メチルフェニデート、デクスアンフェタミン、リスデキサンフェタミン、アトモキセチン及びグアンファシンから選択される1つ以上の更なる薬理学的介入と同時に、連続的に又は別個に投与される、請求項13に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
請求項1、5又は9に記載の用量の前記化合物を、ADHDを有することが知られているか、ADHDを有する疑いがあるか、又はADHDを発症する危険性がある患者に投与する工程を含む、ADHDの治療又は予防のための方法。
【請求項16】
ADHDの治療のための医薬の製造のための、請求項1、5又は9に記載の化合物の使用。
【請求項17】
請求項1、5又は9に記載の化合物と、1つ以上の更なる薬理学的介入と、食事療法的介入のための説明書及び/又は心理学的介入のための説明書と、を含む、キット。
【請求項18】
ADHDの治療又は予防に使用するための、請求項17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療及び/又は予防に関する。本発明はまた、ADHDの治療及び/又は予防において有用性を見出す投薬レジメン及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
注意欠陥/多動性障害(ADHD)は、注意、多動性、若しくは衝動性のレベルの障害、又はそれらの組み合わせを特徴とする。この状態は、世界中の18歳未満の個人のおよそ5%に影響を及ぼし、症例のおよそ65%が成人期まで症状が持続する。成人におけるADHDの有病率は、世界中でおよそ2.5%であると推定されている(非特許文献1)。
【0003】
ADHDの病因は複雑であり、完全には理解されていない。しかしながら、ドーパミン作動性神経伝達の障害は、ADHD患者の共通の特徴であると考えられている。近年の研究はまた、Latrophilin 3(LPHN3、ADGRL3とも称される)遺伝子における遺伝子変異が、ADHDと強く関連していることも見出している(非特許文献2)。ゼブラフィッシュにおける更なる研究は、ゼブラフィッシュLPHN3ホモログであるlatrophilin3.1(lphn3.1)の下方調節が、多動性を引き起こすことを示している(非特許文献3及び非特許文献4)。これらの研究はまた、lphn3.1の下方調節が異常なドーパミン作動性神経伝達に関連していることを示唆している。
【0004】
ADHDのための確立された治療としては、精神刺激薬(例えば、メチルフェニデート、デキサンフェタミン及びリスデキサンフェタミン)、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(例えば、アトモキセチン)、並びにα2-アドレナリンアゴニスト(例えば、グアンファシン及びクロニジン)等の薬理学的治療が挙げられる。ADHDの治療には、単剤療法として、又は薬理学的治療と組み合わせてのいずれかの非薬理学的療法の使用も含まれ得る。ADHDを有する患者に有益となり得る非薬理学的治療の例としては、認知行動療法(CBT)、食事治療(例えば、補助脂肪酸、及び人工食品色素の除外)、並びに運動プログラムが挙げられる。
【0005】
UK National Institute for Health and Care Excellence(NICE)ガイドライン等の臨床ガイドラインは、小児又は青年期におけるADHDの治療にはメチルフェニデート、アトモキセチン及びデキサンフェタミンの使用を推奨し、成人におけるADHDの治療にはリスデキサンフェタミン又はメチルフェニデートを推奨する。しかしながら、ADHDのためのこのような治療の承認された使用にもかかわらず、それらの限られた有効性及び/又は有害作用に起因して、依然として論争の的となっている(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Thapar & Cooper,The Lancet,2016,387(10024),1240-1250
【非特許文献2】Arcos-Burgos et al.,2010,Molecular Psychiatry,15,1053-1066
【非特許文献3】Lange et al.Mol Psychiatry 2012,17,946-954
【非特許文献4】Lange et al.,2018,Prog Neuropsychopharm Biol Psych,84,181-189
【非特許文献5】Cortese et al.,2018,The Lancet,Psychiatry,5(9),727-738
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、良好な臨床的忍容性を示す一方で、臨床上の利益を提供するADHDのための更なる治療に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用するための、式(I)に記載の化合物
【0009】
【化1】
又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和物であり、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用するための、化合物を提供する。
【0010】
本発明は、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用するための、式(II)に記載の化合物
【0011】
【化2】
又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和物であり、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用するための、化合物も提供する。
【0012】
本発明は、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用するための、式(III)に記載の化合物
【0013】
【化3】
又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和物であり、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用するための、化合物も提供する。
【0014】
本発明は更に、ADHDの治療及び/又は予防のための方法であって、ある用量の式(I)、(II)又は(III)の化合物を、ADHDを有することが知られている、又はそれが疑われるか、又はADHDを発症するリスクがある患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0015】
本願発明者らは、ADHDのゼブラフィッシュ(Danio rerio)モデルにおいて、式(I)、(II)又は(III)の化合物が、Lphn3.1ノックアウトゼブラフィッシュ幼生における多動性及び運動衝動性等のADHD症状を減少させるのに驚くほど効果的であることを見出した。
【0016】
本発明はまた、ADHDの治療及び/又は予防のための医薬の製造のための、式(I)、(II)又は(III)に記載の化合物の使用を提供する。
本発明は、式(I)、(II)又は(III)に記載の化合物と、1つ以上の更なる薬理学的介入と、食事療法的介入のための説明書及び/又は心理学的介入のための説明書と、を含む、キットを更に提供する。本発明のキットは、ADHDの治療又は予防における用途を見出す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】Lphn3.1遺伝子のホモ接合性ノックアウトを有するゼブラフィッシュ幼生(本明細書では「Lphn3.1 HOM」と称される)及び野生型Lphn3.1遺伝子を有するゼブラフィッシュ幼生(本明細書では「Lphn3.1 WT」と称される)の速度(mm/秒)の24時間の記録のスペクトログラムを示す。両方の幼生群に、ビヒクル対照(すなわち、DMSOのみ)を投与した。スペクトログラムに示されている灰色の領域は、実験の消灯フェーズを示す(5回の30分間のフェーズ、第1のフェーズは、午後1時30分に開始し、その後、午後10時に開始し、明朝の午前8時に終了する、消灯された10時間の夜期間が続く)。
図2】5回の30分間の点灯フェーズ中にLphn3.1 HOM及びLphn3.1 WT幼生が移動した平均距離の差を示す棒グラフを示す。遺伝子型とビヒクル(すなわちDMSO)との間で、有意な相互作用は観察されなかった(f=1,003、df=1、p=0.317)。Lphn3.1 HOMとLphn3.1 WT幼生との間で、移動した距離に対する遺伝子型の有意な効果が観察された(f=117,67、df=1、p<0.001)。ナイーブ(すなわち、試験化合物又はビヒクル対照のいずれも受けなかった幼生)とDMSO処置された幼生との間で、ビヒクルに有意な効果は示されなかった(f=0,222 df=1、p=0.638)。
図3】アセクロフェナク、アトモキセチン(図3ではトモキセチン塩酸塩と称される)、又はビヒクル対照(すなわち、DMSOのみ)を受けたLphn3.1 HOM幼生が移動した距離の比較を示す。プロット上の破線は、ビヒクル対照による処置後の5回の点灯フェーズにわたってLphn3.1 HOM幼生が移動した平均距離を示す(n=189)。点線は、1μMアトモキセチン塩酸塩による処置後の5回の点灯フェーズにわたってLphn3.1 HOM幼生が移動した平均距離を示す(n=24)。点は、5回の点灯フェーズにわたってLphn3.1 HOM幼生が移動した平均距離に対する、1μM、10μM又は30μMの投薬量でのアセクロフェナクの効果を示す(n=24)(全てのデータは±SEMで示される)。アセクロフェナクで処置された幼生とビヒクル対照を受けた幼生との間で、統計的に有意な差が認められた(f=3,479、df=3、p=0.017、2回目:f=7,035、df=3、p<0.001)。
図4】アムロジピン、アトモキセチン(図4ではトモキセチン塩酸塩と称される)、又はビヒクル対照(すなわち、DMSOのみ)を受けたLphn3.1 HOM幼生が移動した距離の比較を示す。プロット上の破線は、ビヒクル対照による処置後の5回の点灯フェーズにわたってLphn3.1 HOM幼生が移動した平均距離を示す(n=189)。点線は、1μMアトモキセチン塩酸塩による処置後の5回の点灯フェーズにわたってLphn3.1 HOM幼生が移動した平均距離を示す(n=24)。点は、5回の点灯フェーズにわたってLphn3.1 HOM幼生が移動した平均距離に対する、1μM、10μM又は30μMの投薬量でのアムロジピンの効果を示す(n=24)(全てのデータは±SEMで示される)。アムロジピンで処置された幼生とビヒクル対照を受けた幼生との間で、統計的に有意な差が認められた(f=23,684、df=3、p<0.001、2回目:f=31,699、df=3、p<0.001)。
図5】ドキサゾシン、アトモキセチン(図5ではトモキセチン塩酸塩と称される)、又はビヒクル対照(すなわち、DMSOのみ)を受けたLphn3.1 HOM幼生が移動した距離の比較を示す。プロット上の破線は、ビヒクル対照による処置後の5回の点灯フェーズにわたってLphn3.1 HOM幼生が移動した平均距離を示す(n=189)。点線は、1μMアトモキセチン塩酸塩による処置後の5回の点灯フェーズにわたってLphn3.1 HOM幼生が移動した平均距離を示す(n=24)。点は、5回の点灯フェーズにわたってLphn3.1 HOM幼生が移動した平均距離に対する、1μM、10μM又は30μMの投薬量でのドキサゾシンの効果を示す(n=24)(全てのデータは±SEMで示される)。ドキサゾシンで処置された幼生とビヒクル対照を受けた幼生との間で、統計的に有意な差が認められた(f=14,642、df=3、p<0.001、2回目:f=29,29、df=3、p<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の発明者らは、式(I)、(II)及び(III)に記載の化合物が、ADHDの治療又は予防に驚くほど効果的であることを見出した。
【0019】
以下でより詳細に考察されるように、本願発明者らは、アセクロフェナク、アムロジピン、及びドキサゾシンが、ADHDのモデルにおいてゼブラフィッシュ幼生の活動の減少に驚くほど効果的であることを見出した。本願発明者らによって使用されるADHDモデルは、Latrophilin 3(lphn.3.1)遺伝子のホモ接合性ノックアウトを保有するゼブラフィッシュを使用する。ヒトにおける対応するlphn.3.1遺伝子(すなわち、LPHN3)における変異は、ヒトにおけるADHDのリスク要因として強く関与している(Arcos-Burgos et al.,2010,Mol Psychiatry 15,1053-1066、及びLange et al.,Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry,2018,84(A),181-189)。ゼブラフィッシュにおけるlphn.3.1遺伝子の機能は、ヒトにおいて観察された機能と相関関係にあることがわかっている。本願発明者らによって使用されるゼブラフィッシュモデルにおいて、ADHD様挙動表現型(例えば、多動性及び運動衝動性)は、lphn3.1遺伝子のホモ接合性ノックアウトを保有するゼブラフィッシュ幼生において観察される。本願発明者らは、ADHDのゼブラフィッシュモデルを使用して、通常には変形性関節症、慢性関節リウマチ、及び強直性脊椎炎の治療に使用される非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であるアセクロフェナクが多動性及び運動衝動性等のADHD挙動を減少させるのに驚くほど効果的であることを発見した。また、本願発明者らは、ADHDのゼブラフィッシュモデルを使用して、通常には高血圧及び狭心症の治療に使用されるジヒドロピリジン系カルシウムチャンネル遮断薬であるアムロジピン、並びに通常には高血圧症及び良性前立腺肥大症の症状の治療に使用されるα1受容体遮断薬であるドキサゾシンが多動性及び運動衝動性等のADHD挙動を減少させるのに驚くほど効果的であることを発見した。
【0020】
そのため、本発明はADHDの治療又は予防に使用するために、式(I)、(II)又は(III)の化合物(すなわち、それぞれアセクロフェナク、アムロジピン又はドキサゾシン)、または薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和物を提供する。
【0021】
疑義を避けるために、本文書では、式(I)、(II)又は(III)の化合物は、別段の記載がない限り、その全ての塩、及びその溶媒和物を含むことが意図される。
【0022】
式(I)、(II)又は(III)の化合物は有機化学の当業者が周知の方法を使用して調製することができる。本発明での使用に好適な式(I)、(II)又は(III)の化合物の薬学的調製物は、市販の供給源から入手可能である。例えば、式(I)の化合物の薬学的調製物はPRESERVEX(R)という名で市販され、式(II)の化合物の薬学的調製物はISTIN(R)という名で市販され、式(III)の化合物の薬学的調製物はCARDURA(R)という名で市販されている。式(I)、(II)又は(III)の化合物のジェネリック薬学的調製物も入手可能である。
【0023】
疑義を避けるために、本文書では、式(II)及び(III)の化合物は、別段の記載がない限り、その全ての鏡像異性体を含むことが意図される。また、疑義を避けるために、本文書における式(I)、(II)及び(III)の化合物は、軽微な、構造的な差異によって異なる化合物を含むことが意図され、本明細書に記載のADHDモデルにおけるアセクロフェナク、アムロジピン、及びドキサゾシンに類似の特性を示すことが想定される。
【0024】
式(I)、(II)又は(III)の化合物は塩または溶媒和物を形成し得る。本発明での使用に好適な式(I)、(II)又は(III)の化合物の塩は、対イオンが薬学的に許容されるものである。しかしながら、薬学的に許容されない対イオンを有する塩の使用は、例えば、式(I)、(II)又は(III)の化合物及びその薬学的に許容される塩、並びに生理学的に機能的な誘導体の調製において中間体として使用するために、本発明の範囲内である。 本発明に従った使用に好適な塩としては、有機酸又は無機酸で形成されたものが挙げられる。具体的には、本発明に従って使用するために酸で形成される好適な塩には、鉱酸、非置換若しくは(例えば、ハロゲンによる)置換である1~4個の炭素原子のアルカンカルボン酸等の強力な有機カルボン酸、例えば、飽和若しくは不飽和ジカルボン酸、例えば、ヒドロキシカルボン酸、例えば、アミノ酸で形成される塩、又は有機スルホン酸、例えば、非置換若しくは(例えば、ハロゲンによる)置換である(C~C)-アルキル-若しくはアリール-スルホン酸で形成される塩が挙げられる。薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フタル酸、アスパラギン酸、並びにグルタミン酸、リジン、及びアルギニン酸から形成される酸付加塩が含まれる。塩に存在し得る好適なカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、特にナトリウム、カリウム及びカルシウム、並びにアンモニウム又はアミノカチオンが挙げられる。
【0025】
有機化学の当業者は、多くの有機化合物が、溶媒と複合体を形成し、それらが反応するか、又はそこから沈殿若しくは結晶化し得ることを理解するであろう。これらの複合体は、「溶媒和物」として知られている。例えば、水との複合体は、「水和物」として知られている。複合体は、化学量論量又は非化学量論量で溶媒を組み込んでもよい。溶媒和物は、Water-Insoluble Drug Formulation,2nd ed R.Lui CRC Press,page 553、及びByrn et al Pharm Res 12(7),1995,945-954に記載されている。溶液中で構成される前に、式(I)、(II)又は(III)の化合物は、溶媒和物の形態にあってもよい。本発明に従った医薬としての使用に好適な式(I)、(II)又は(III)の化合物の溶媒和物は、会合する溶媒が薬学的に許容されるものである溶媒和物である。例えば、水和物は、薬学的に許容される溶媒和物である。
【0026】
レシピエントに投与されると、式(I)、(II)又は(III)の化合物、又はその活性代謝産物又は残基に変換可能である化合物は、「プロドラッグ」として知られる。したがって、ある特定の実施形態では、式(I)、(II)又は(III)の化合物は、プロドラッグの形態で提供され得る。プロドラッグは、例えば、体内で、例えば血液中での加水分解によって、医療効果を有するその活性形態に変換され得る。薬学的に許容されるプロドラッグはT.Higuchi and V.Stella,Prodrugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.T.Higuchi and V.Stella,Prodrugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.に記載されている。“Design of Prodrugs” ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985及びEdward B Roche,ed.,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press 1987に記載されており、それらは本明細書に参考によって組み込まれる。
【0027】
医薬組成物
式(I)、(II)又は(III)の化合物を単独で投与することが可能であるが、組成物中に、特に、薬学的組成物中に存在することが好ましい。本発明の薬学的組成物は、式(I)、(II)又は(III)の化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む。
【0028】
薬学的組成物としては、経口、非経口(皮下、皮内、骨内注入、筋肉内、血管内(ボーラス又は注入)、及び髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸及び局所(皮膚、口腔、舌下及び眼内を含む)投与に好適なものが挙げられるが、最も好適な経路は、治療中の対象の特徴、例えば、人種、年齢、体重、性別、医学的状態、ADHDの特定の型(例えば、「衝動型/多動型」、「不注意型」及び「複合型」ADHD)及びその重症度、並びに他の関連する医学的要因及び物理的要因に依存し得る。
【0029】
非経口投与のための製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、バクテリオスタット、及び製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の滅菌注射溶液、並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量又は複数用量の容器、例えば、密封アンプル及びバイアル中に提示されてもよく、使用直前に、滅菌液体担体(例えば、生理食塩水又は注射用水)の添加のみを必要とする凍結乾燥(lyophilised)状態で保管することができる。即時注射溶液及び懸濁液は、本明細書に記載の種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。非経口投与のための例示的な組成物には、注射用の溶液又は懸濁液が含まれ、これには、例えば、好適な非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒(例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム溶液)、又は他の好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤(合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む)、並びに脂肪酸(オレイン酸を含む)、又はCremaphorが含有され得る。
【0030】
経鼻投与、エアロゾル投与又は吸入投与のための組成物としては、生理食塩水中の溶液が含まれ、これには、例えば、ベンジルアルコール又は他の好適な防腐剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、及び/又は当該技術分野で知られているもの等の他の可溶化剤又は分散剤が含有され得る。
【0031】
直腸投与用の製剤は、担体(例えば、ココアバター、合成グリセリドエステル、又はポリエチレングリコール)と共に、坐薬として提示され得る。このような担体は、典型的には、常温では固体であるが、直腸腔内で液化及び/又は溶解して、薬物を放出する。
【0032】
口内の局所投与(例えば、頬側投与又は舌下投与)のための製剤には、例えば、ロゼンジ(スクロース又はアカシア又はトラガカント等の風味付け基剤中に活性成分を含む)、及びパスティル(ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等の基材中に活性成分を含む)が含まれる。局所投与のための例示的な組成物には、プラスチベース(ポリエチレンでゲル化した鉱油)等の局所担体が含まれる。
【0033】
経口投与に好適な薬学的組成物は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル、カシェ又は錠剤等の別個の単位として、粉末又は顆粒として、水性液体又は非水性液体の溶液又は懸濁液として、又は水中油の液体エマルション又は油中水の液体エマルションとして、提示され得る。式(I)、(II)又は(III)の化合物はまた、ボーラス、舐剤、又はペーストとして提示され得る。薬学的組成物は、対象に投与されると、式(I)、(II)又は(III)の化合物のゆっくりとした又は制御された放出をもたらす形態で任意選択的に存在し得る。 様々な薬学的に許容される担体及びその製剤は、標準的な製剤化の論文、例えば、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。また、Wang,Y.J.and Hanson,M.A.,Journal of Parenteral Science and Technology,Technical Report No.10,Supp.42:2S,1988も参照されたい。
【0034】
好ましい単位投薬量組成物は、式(I)、(II)又は(III)の化合物の探索用量又は治療用量、又はその適切な一部を含有する組成物である。
好ましい実施形態では、本発明に従った使用のための組成物は、本質的に式(I)、(II)又は(III)の化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とから構成される。
【0035】
本発明に従って使用するための式(I)の化合物を含む例示的な組成物は1つ以上の以下の薬学的に許容される担体を含む:微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コポビドン、パルミトステアリン酸グリセリル、ポリビニルピロリドン(例えば、ポビドンK30)、ハイプロメロース、ポリエチレングリコール、無水コロイダルシリカ、ジステアリン酸グリセロール、タルク、二酸化チタン。本発明に従って使用するための式(I)の化合物を含む更なる例示的な組成物はコア及びコーティングを有する錠剤であって、コアは微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、及びパルミトステアリン酸グリセリルを含み、コーティングは、ハイプロメロース、ポリエチレングリコール、及び二酸化チタンを含む。
【0036】
本発明に従って使用するための式(II)の化合物を含む例示的な組成物は1つ以上の以下の薬学的に許容される担体を含む:リン酸水素カルシウム、微結晶性セルロース、グリコール酸でん粉ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、無水リン酸水素カルシウム、無水コロイダルシリカ。発明に従って使用するための式(II)の化合物を含む更なる例示的な組成物はグリコール酸でん粉ナトリウム、無水リン酸水素カルシウム、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウムを含む錠剤である。発明に従って使用するための式(II)の化合物を含む更なる例示的な組成物はパラオキシ安息香酸メチル、プロピレングリコール、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、精製水、グリセロール、液状マルチトールを含む経口液剤である。
【0037】
本発明に従って使用するための式(III)の化合物を含む例示的な組成物は1つ以上の以下の薬学的に許容される担体を含む:乳糖、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(例えばK29~32)、フマル酸ステアリルナトリウム、微結晶性セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、グリコール酸でん粉ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、無水コロイダルシリカ、ポリエチレンオキシド、塩化ナトリウム、ハイプロメロース、酸化鉄、二酸化チタン、酢酸セルロース、マクロゴール、水酸化アンモニウム、プロピレングリコール、メタクリル酸・酢酸エチルコポリマー。発明に従って使用するための式(III)の化合物を含む更なる例示的な組成物はコア及びコーティングを有する錠剤であって、コアはポリエチレンオキシド、微結晶性セルロース、ポビドン、ブチルヒドロキシトルエン、α-トコフェロール、コロイダル無水シリカ、及びフマル酸ステアリルナトリウムを含み、コーティングはメタクリル酸・酢酸エチルコポリマー、コロイダル無水シリカ、マクロゴール、及び二酸化チタンを含む。
【0038】
特に上述の成分に加えて、本発明における使用のための製剤は、問題となる製剤のタイプを考慮して、当該技術分野の従来の他の薬剤を含み得ることを理解すべきである。
【0039】
本発明に従って使用するための組成物は、1つ以上の更なる治療剤を含んでもよい。本発明に従って使用するための組成物中に存在し得る更なる治療剤の例としては、限定されないが、メチルフェニデート、アンフェタミン(例えば、デキサンフェタミン)、リスデキサンフェタミン、アトモキセチン、ビロキサジン、クロニジン、及びグアンファシンが挙げられる。典型的には、1つ以上の更なる治療剤は、アンフェタミン、メチルフェニデート、及びリスデキサンフェタミン等の精神刺激薬である。
【0040】
注意欠陥/多動性障害(ADHD)
本願発明者らは、式(I)、(II)及び(III)の化合物、及びその薬学的組成物が、ADHDを有することが知られている、又はその疑いがある対象においてADHDの症状を減少させること、又はその発生を遅らせること、ADHDを発症するリスクがあることが知られている、又はその疑いがある対象においてADHDを予防することに特に効果的であることを見出した。
【0041】
したがって、本発明に従って使用するための式(I)、(II)又は(III)の化合物、又はその薬学的組成物を、ADHDを有することが知られている、又はその疑いがある対象、又はADHDを発症するリスクがあることが知られている、又はその疑いがある対象に投与し得る。対象は、ヒト対象、例えば、ヒト患者であり得る。ヒト対象は、小児(例えば、約10歳未満)、青年期(例えば、約10~19歳の年齢)であってもよく、成人(例えば、約18~21歳の年齢より上)であってもよい。
【0042】
ADHDを有することが知られている、又はその疑いがある対象は、注意のレベルの障害を伴わない、衝動性及び多動性の挙動を特徴とするADHD(すなわち、「衝動型/多動型」ADHD)を有し得る。又は、ADHDを有することが知られている、又はその疑いがある対象は、多動性又は衝動性を伴わない、注意のレベルの障害を特徴とするADHD(すなわち、「不注意型」ADHD)を有し得る。又は、ADHDを有することが知られている、又はその疑いがある対象は、多動性及び衝動性の挙動と注意のレベルの低下との組み合わせを特徴とするADHD(すなわち、「複合型」ADHD)を有し得る。
【0043】
ADHDを発症するリスクがあることが知られている、又はその疑いがある対象は、ADHDの発症について知られている、又はその疑いがある遺伝的素因を有する対象であり得、例えば、対象は、Latrophilin 3(LPHN3)遺伝子中に変異を有し得る。ADHDに関与する更なる遺伝子変異の例が報告されており(例えば、参照により本明細書に組み込まれるFaraone and Larsson,Molecular Psychiatry,2019,24,562-575を参照されたい)、例えば、セロトニントランスポーター(5HTT)遺伝子、ドーパミントランスポーター(DAT1)遺伝子、D4ドーパミン受容体(DRD4)遺伝子、D5ドーパミン受容体(DRD5)遺伝子、セロトニン1B受容体遺伝子(HTR1B)、及びシナプトソーム関連タンパク質(SNAP25)遺伝子のうちの1つ以上の遺伝子の変異が挙げられる。加えて、又はその代わりに、ADHDを有することが知られている、又は発症するリスクが疑われている対象は、妊産婦の妊娠前肥満、子癇前症、高血圧、アセトアミノフェン曝露、及び妊娠中の喫煙、及び小児アトピー性疾患等のADHDと関連する1つ以上の潜在的な環境リスク要因に曝露されていた対象であり得る。
【0044】
加えて、ADHDを有することが知られている、又はその疑いがある、又はADHDを発症するリスクがあることが知られている、又はその疑いがある対象は、うつ病、不安障害、反抗挑戦性障害(ODD)、行為障害、睡眠の問題(例えば、不眠症の入眠障害)、自閉スペクトラム症(ASD)、双極性障害、てんかん、トゥレット症候群、及び/又はディスレクシア等の学習障害等の他の状態の徴候又は症状も有する場合がある。典型的には、対象は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)又はInternational Classification of Diseases(ICD)に定められたADHDについての診断基準を満たす対象である。
【0045】
加えて、ADHDを有することが知られているか、若しくは有する疑いがある対象、又はADHDを発症するリスクがあることが知られているか、若しくはその疑いがある対象は、物質乱用障害、例えば、アンフェタミン等の精神刺激薬の中毒及び/又は乱用にも罹患している場合がある。
【0046】
例えば、本発明に従って使用するための式(I)、(II)又は(III)の化合物、又はその組成物は、1つ以上の確立された精神刺激薬ベースのADHD治療(例えば、メチルフェニデート、デキサンフェタミン、及びリスデキサンフェタミン)が、対象が物質乱用障害のリスクを有する、その病歴を有する、又は現在罹患しているために不適切である、とみなされる場合に投与し得る。
【0047】
本願発明者らは、ADHDのゼブラフィッシュモデルを使用して、式(I)、(II)又は(III)の化合物が、多動性及び運動衝動性の減少に驚くほど効果的であることを示した。ADHDのゼブラフィッシュモデルにおける多動性及び運動衝動性の低減に対する式(I)、(II)又は(III)の化合物の有効性は、式(I)、(II)又は(III)の化合物を、多動性及び/又は衝動性の挙動を特徴とするADHD(すなわち、「衝動型/多動型」ADHD又は「複合型」ADHD)のための特に魅力的な治療にする。したがって、ある特定の実施形態では、本発明に従って使用するための式(I)、(II)又は(III)の化合物、又はその薬学的組成物を、注意のレベルの障害を伴わない、衝動性及び多動性の挙動を特徴とするADHD(すなわち、「衝動型/多動型」ADHD)、又は多動性及び衝動性の挙動と注意のレベルの低下との組み合わせを特徴とするADHD(すなわち、「複合型」ADHD)を有することが知られている、又はその疑いがある対象に投与し得る。
【0048】
本発明に従って使用するための式(I)、(II)又は(III)の化合物、又はその組成物は、1つ以上の確立されたADHD治療(例えば、メチルフェニデート、デキサンフェタミン、リスデキサンフェタミン、アトモキセチン、ビロキサジン、グアンファシン、及びクロニジン)が、ADHDの症状及び/又は誘導された耐えがたい有害作用のうちの1つ以上の減少に効果的ではなかった対象に投与し得る。確立されたADHD治療によって引き起こされることが知られているか、又は引き起こされる疑いがある有害作用の例としては、睡眠障害、食欲不振、血圧上昇、発育阻害、概日リズムの破壊、及び神経毒性が挙げられる。
【0049】
本明細書に記載の式(I)、(II)又は(III)の化合物、及びその組成物は、ADHDを治療又は予防する方法において有用性を見出し、上述の方法は、式(I)、(II)又は(III)の化合物、またはその組成物を、ADHDを有することが知られているか、又はその疑いがある患者、又はADHDを発症するリスクがあることが知られているか、又はその疑いがある患者に投与するステップを含む。式(I)、(II)又は(III)の化合物は、ADHDの治療又は予防のための医薬の製造においても用途を見出す。
【0050】
投薬レジメン
治療効果を達成するために必要とされる式(I)、(II)、又は(III)の化合物の量は、特定の投与経路、及び治療中の対象の特徴、例えば、人種、年齢、体重、性別、医学的状態、ADHDの特定の型(例えば、「衝動型/多動型」、「不注意型」及び「複合型」ADHD)及びその重症度、並びに他の関連する医学的要因及び物理的要因に応じて変化する。通常の熟練した医師は、ADHDの治療又は予防に必要な式(I)、(II)、又は(III)の化合物の有効量を容易に決定し、投与することができる。
【0051】
式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、対象及び治療されるADHDの特徴に応じて、毎日(1日数回を含む)、2日毎又は3日毎、毎週、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎、あるいは単回用量としても投与され得る。
【0052】
式(I)の化合物(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)は、投与当たり約1mg~1000mgの量で投与され得る。例えば、対象に少なくとも1mg、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも40mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも70mg、少なくとも80mg、少なくとも90mg、少なくとも100mg、少なくとも150mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、又は1000mgが投与され得る。
【0053】
典型的には、式(I)の化合物は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、又は600mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の1日1回用量として投与される。代替的に、式(I)の化合物は、100mg、150mg、200mg、250mg、又は300mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)、1日に2回、3回、又は4回の用量として投与される。例えば、1日当たり100mgの1日用量は、50mgの2回の別個の用量として投与されてもよく、1回目の用量は、午前中に投与され、2回目の用量は、夕方に投与される(例えば、午後6時以降)。又は、例えば、1日当たり200mgの1日用量は、100mgの2回の別個の用量として投与されてもよく、1回目の用量は、午前中に投与され、2回目の用量は、夕方に投与される。
【0054】
式(II)の化合物(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)は、投与当たり約0.1mg~10mgの量で投与され得る。例えば、対象に少なくとも0.1mg、少なくとも0.5mg、少なくとも1mg、少なくとも1.5mg、少なくとも2mg、少なくとも2.5mg、少なくとも3mg、少なくとも4mg、少なくとも5mg、少なくとも6mg、少なくとも7mg、少なくとも8mg、少なくとも9mg、少なくとも10mgが投与され得る。
【0055】
典型的には、式(II)の化合物は、約1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、又は10mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の1日1回用量として投与される。例えば、2mg、2.5mg、5mg、7.5mg、又は10mgの1日1回用量である。代替的に、式(II)の化合物は、約1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、又は5mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の1日に2回、3回、又は4回の用量として投与される。例えば、1日当たり5mgの1日用量は、2.5mgの2回の別個の用量として投与されてもよく、例えば、1回目の用量は、午前中に投与され、2回目の用量は、夕方に投与される(例えば、午後6時以降)。又は、例えば、1日当たり10mgの1日用量は、2回の別個の用量として投与されてもよく、例えば、5mgの1回目の用量は、午前中に投与され、5mgの2回目の用量は、夕方に投与される。
【0056】
式(III)の化合物(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)は、投与当たり約0.1mg~16mgの量で投与され得る。例えば、対象に少なくとも0.5mg、少なくとも1mg、少なくとも2mg、少なくとも3mg、少なくとも4mg、少なくとも5mg、少なくとも6mg、少なくとも7mg、少なくとも8mg、少なくとも9mg、少なくとも10mg、少なくとも11mg、少なくとも12mg、少なくとも13mg、少なくとも14mg、少なくとも15mg、少なくとも16mgが投与され得る。典型的には、式(III)の化合物は、約1mg、2mg、4mg、8mg、又は16mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の1日1回用量として投与される。代替的に、式(III)の化合物は、1mg、2mg、4mg、8mg、又は16mg(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)の、1日に2回、3回、又は4回の用量として投与される。
【0057】
ある特定の実施形態では、式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、組成物として投与される。好ましくは、組成物は、本発明に従った使用のための薬学的組成物である。
【0058】
式(I)、(II)、又は(III)の化合物を本発明において唯一の活性成分として使用してもよいが、それを1つ以上の更なる療法的介入と組み合わせて使用することも可能であり、このような組み合わせの使用は、本発明の一実施形態を提供する。更なる療法的介入の例としては、薬理学的介入、食事療法的介入、及び心理学的介入が挙げられる。
【0059】
更なる薬理学的介入は、ADHDの治療若しくは予防に有用な治療剤、又は他の薬理学的に活性な物質であり得る。そのような薬剤は、当該技術分野において既知である。本発明で使用するための更なる治療剤の例としては、本明細書に記載されるものが挙げられる。典型的には、更なる治療剤は、アンフェタミン、メチルフェニデート、及びリスデキサンフェタミン等の精神刺激薬である。好適な食事療法的介入の例としては、例えば、補助脂肪酸、及び食事からの人工食品色素の除外が挙げられる。好適な心理学的介入の例として、例えば、認知行動療法(CBT)が挙げられる。
【0060】
1つ以上の更なる療法的介入を、式(I)、(II)、又は(III)の化合物の投与と同時に、連続的に、又は別個に使用し得る。そのような組み合わせの個々の構成要素は、療法の経過中の異なる時間に別個に、又は分割された組み合わせ形態若しくは単一の組み合わせ形態で同時に、投与され得る。通常の熟練した医師は、所望の治療効果を有するために必要な1つ以上の療法的介入の有効量を容易に決定し、投与することができる。
【0061】
本発明に従った使用のための好ましい単位投薬量組成物は、有効用量、又はその適切な一部の式(I)、(II)、又は(III)の化合物を含有するものである。 特定の組成物からの式(I)、(II)、又は(III)の化合物の放出はまた、例えば、組成物が好適な制御放出賦形剤を含有する場合、持続型であってもよい。
【0062】
キット
本発明は、式(I)、(II)、又は(III)の化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と、任意選択的に、ADHDの治療又は予防に有用な1つ以上の更なる治療剤と、を含むキットを提供する。そのような更なる治療剤の例としては、本発明での使用に好適であり、任意選択的に更なる治療剤として本発明の薬学的組成物中に存在するものが挙げられる。
【0063】
本発明のキットはまた、ADHDに好適な食事療法的介入のための説明書及び/又は心理学的介入のための説明書を含有し得る。例えば、キットは、治療を受ける対象に好適な栄養計画のための説明書を含んでいてもよく、及び/又はキットは、認知行動療法(CBT)のための説明書/ガイダンスを含んでいてもよい。
【0064】
本発明のキットは、ADHDの治療及び予防における使用を見出す。
【0065】
疑義を避けるために、本発明に従ったキット中に存在する式(I)、(II)、又は(III)の化合物は、本発明に従った使用に好適な形態及び量である。好適な薬学的組成物及び製剤が本明細書に記載される。当業者は、本発明のキットに含むこと及び、本発明に従った使用に好適な式(I)、(II)、又は(III)の化合物の量を容易に決定することができる。
【0066】
代謝物
式(I)、(II)、又は(III)の化合物の活性代謝物は、注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用され得る。化合物が式(I)、(II)、又は(III)の化合物の活性代謝物である実施形態において、化合物は式(I)、(II)、又は(III)の化合物で処理された細胞から単離され得る、又は標準的な有機化学技術を使用して調製され得る。疑義を避けるために、本発明に従って使用される化合物が式(I)、(II)、又は(III)の化合物の活性代謝物である場合に、その化合物は式(I)、(II)、又は(III)の化合物について本明細書に記載されている方法と同じ方法で、組成物の形態でおよび/又は薬剤として使用され得る。
【0067】
ある特定の実施形態において、本発明に従って使用される化合物は式(I)の化合物の活性代謝物である。式(I)の化合物は、ヒトでは活性代謝物である4―ヒドロキシ―アセクロフェナク、ジクロフェナク、及び4―ヒドロキシ―ジクロフェナクに代謝されることが既知である。そのため、ある特定の実施形態において、本発明は注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療又は予防に使用される式(I)の化合物の代謝物も提供し、ここで代謝物は式(IV)による化合物であり、
【0068】
【化4】
ここで、Rが水素またはOHの場合、及びRが水素の場合は、Rが水素であり、さらに、RがOHの場合はRが水素又は―CHCOOHであり、又はその薬学的に許容される塩または溶媒和化合物である。
【0069】
ある特定の実施形態において、式(IV)の化合物において、 R1及び R2はそれぞれ水素である。すなわち、式(IV)の化合物はジクロフェナクである。式(IV)の化合物がジクロフェナクである場合、その化合物は商業的供給源から入手され得る。例えば、式(IV)の化合物がジクロフェナクである場合、その化合物はVOLTAREN(登録商標)という名前で市販されている製品、又はそのジェネリック医薬品であり得る。
【0070】
均等物
本発明は、本明細書において広範かつ包括的に説明されている。当業者は、本明細書に記載されている全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が、例示的であることを意図しており、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される特定の1つ又は複数の用途に依存するであろうことを容易に理解するであろう。当業者であれば、通常範囲を超えない実験を使用して、本明細書に記載の本発明のある特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は確定することができるであろう。したがって、前述の実施形態は、単なる例として提示され、添付の特許請求の範囲及びそれと均等物の範囲内で、本発明は、具体的に記載されるか、特許請求されるもの以外で実施されてもよいことを理解されたい。本発明は、本明細書に記載の各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法に関する。加えて、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が、相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。更に、包括的な開示に含まれる、より狭い種及び亜属の群の各々も、本発明の一部を形成する。これは、除去された材料が本明細書に具体的に記載されているかどうかにかかわらず、その属から任意の主題を除去する但し書き又は負の制限を伴う本発明の包括的な明細書を含む。
【0071】
参照による組み込み
本明細書で言及又は引用される文献、特許、及び特許出願、並びに他の全ての文書及び電子的に入手可能な情報の内容は、各個々の刊行物が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されるのと同じ程度に、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。出願人らは、任意のそのような文献、特許、特許出願、又は他の物理的文書及び電子的文書からのありとあらゆる資料及び情報を本出願に物理的に組み込む権利を留保する。
以下の実施例は、本発明を例示する。
【実施例
【0072】
ダニオレリオは、生物学的精神医学での人気を得ている。その豊富な挙動レパートリー、十分に確立された挙動アッセイ及び自動化された挙動アッセイの利用可能性は、ゼブラフィッシュを様々なヒト脳障害の有用なモデルにする。脳生理学に関与する神経経路は、全ての主要な神経伝達物質系及び高い遺伝的相同性を含め、高度に保存されている。遺伝子編集技術は、ヒトの障害の正確なモデリングを可能にする。本明細書に記載のADHDのlphn3.1ノックアウトモデルは、ヒトADHDの特徴、すなわち、多動性、既知のドーパミンアゴニストに対する過敏症、及び既知の抗ADHD化合物の投与後の表現型のレスキューを強固に示す。
【0073】
材料及び方法:
ラトロフィリン3(Lphn3.1)遺伝子のノックアウトを保有するゼブラフィッシュの幼生をCRISPR-Cas9によって生成した。ゼブラフィッシュは、3L又は10Lのマルチタンク定流システム(Aquatic Habitats、Apopka,FL,USA)中、14:10の明:暗サイクルに維持した。挙動解析のために、Lphn3.1遺伝子のホモ接合性ノックアウトを保有する総数881の受精後(dpf)6日の胚を試験に使用した。Lphn3.1遺伝子のホモ接合性ノックアウトを保有する成体ゼブラフィッシュ、及び野生型Lphn3.1遺伝子を有する成体ゼブラフィッシュに、TetraMinフレーク(Tetra Holding GmbH、Melle,Germany)及び生きているアルテミアといった様々な餌を1日に3回与えた。水温を28.5℃で一定に保持し、1日当たり10%の率で交換した。 卵を午前10時00分~午後12時00分の間に収集し、2Lタンクに入れた。次の日に、死亡した卵を除去し、タンクを清掃した。卵を、メチレンブルーと混合したシステム水中、28.5℃で4日間インキュベートした。本試験の全ての手順は、National Bioethics Committee of Icelandの規則(規則460/2017)に厳密に準拠して実施され、承認された。
【0074】
遺伝子型決定
ウエスタンブロットを使用して、Lphn3.1遺伝子のノックダウンについて株を検証した。
【0075】
挙動記録
5dpfで、幼生を、水系中の96マイクロウェルプレート(Nunc、Roskilde,Denmark)の個々のウェルに配置した。マイクロウェルプレートを、24個の赤外線カメラ(Ikegami,ICD-49E;Ikegami Tsushinki Co,Japan)を備えた特注の活動モニタリングシステムに移し、これを28.5℃に温度調節し、日光から遮断し、下から白色光(255 lx;明期)及び赤外光(0 lx;暗期)を照射した。幼生の挙動を、5Hzで、二次元で追跡した。幼生を、記録前の24時間、活動モニタリングシステムに放置して順応させた。除外基準は、幼生が追跡されなかった記録中の試料の割合に基づいていた。閾値を10%に設定したため、総記録時間の90%未満しか追跡されなかった幼生を試験から除外した。
【0076】
運動アッセイ
24時間の順応期間の後、挙動記録を行った。運動活動を、30分間の間隔で提示された交互の明条件及び暗条件の間に、6dpfで午後1時00分~午後6時00分の間に記録した。この期間に、幼生が移動した平均距離(mm)を、明条件に移行直後の5回の別個の30分間隔中の総遊泳距離の平均として計算した。
【0077】
実施例1:ADHDのゼブラフィッシュモデルにおけるアトモキセチンと比較したアセクロフェナク、アムロジピン又はドキサゾシンの有効性
Lphn3.1遺伝子のホモ接合性ノックアウト(本明細書では「Lphn3.1 HOM」と称する)を保有するゼブラフィッシュ幼生及び野生型Lphn3.1遺伝子(本明細書では「Lphn3.1 WT」と称する)を保有するゼブラフィッシュの幼生を、挙動記録を開始する前に、市販のADHD治療薬であるアトモキセチン塩酸塩(トモキセチン塩酸塩)、アセクロフェナク(Prestwick,67400 Illkirch,France)、アムロジピン(Prestwick,67400 Illkirch,France)、ドキサゾシン(Prestwick,67400 Illkirch,France)、又はビヒクル対照にさらした。
【0078】
記録当日に、薬物の調製を行った。蒸留水(Invitrogen、Paisley,PA4 9RF,UK)を使用して、ストック溶液から薬物を希釈した。各薬物の3つの異なる濃度、1μM、10μM及び30μMを使用した。加えて、ビヒクル対照群に対して、0.03% DMSO(Sigma-Aldrich、St.Louis,USA)溶液を調製した。記録当日の午前11時30分から午後12時30分の間に、薬物及びビヒクル対照をマイクロウェルに追加した。
【0079】
データを、EthoVision XT(Version 11.5.2016、Noldus)を使用して取得し、解析のためにMicrosoft Excelにエクスポートした。統計解析は、IBM SPSS Statistics for Windows、バージョン 26(IBM corp.、Armonk,N.Y.,USA)を使用して行った。Microsoft Excel及びGraphPad Prism Software(Version 5.01、GraphPad Software Inc.)を使用して図を製作した。データは、平均±平均の標準誤差(s.e.m)として示される。Lphn 3.1ナイーブ(すなわち、試験化合物又はビヒクル対照を投与されていない未処置の幼生)及びDMSO幼生(すなわち、DMSOビヒクル対照のみを投与されている幼生)の分析に対しては、統計的差異を、二元配置ANOVAを使用して評価した。アセクロフェナクで処置したLphn3.1幼生の分析に対しては、統計的差異を、Dunnett両側事後分析を用いた一元配置ANOVAを使用して評価した。 P<0.05は、統計的に有意と考えられた。
【0080】
結果:
記録の24時間後、Lphn3.1 HOM幼生は、顕著な多動性表現型を示すことが明らかになった。Lphn3.1 HOM幼生について、消灯後のより高いピーク速度(ゼブラフィッシュの活動の典型的な短い増加を引き起こす)、及び点灯期間中のより高い総平均速度が観察された(図1)。図1では、Lphn3.1 HOM幼生の活動が、上側の線で示され、Lphn3.1 WT幼生の活動が、下側の線で示されている。幼生の全体的な活動パターンは、あらゆる期間を統計解析のために選択することができることを示唆していた。
【0081】
点灯期間中に移動した平均距離を使用することで、第1に、ホモ接合性幼生は、野生型と比較して実に統計的に有意に運動過剰であり、第2に、ビヒクル(DMSO)は挙動に影響を及ぼさなかったことが実証された(図2)。
【0082】
アトモキセチン、アセクロフェナク、アムロジピン、及びドキサゾシンはそれぞれ、野生型幼生において速度を増加させることが発見された。アセクロフェナク、アムロジピン及びドキサゾシンの効果を、アトモキセチンの最適用量と比較した(それぞれ図3、4及び5参照)。ビヒクル対照を投与されたLphn3.1 HOM幼生との比較は、アセクロフェナク、アムロジピン、及びドキサゾシンの全ての用量が、ビヒクル対照及び未処置の幼生とは有意に(用量依存的に)異なることを明らかにした。これらのデータは、アセクロフェナク、アムロジピン、及びドキサゾシンがLphn3.1 HOM幼生におけるADHD様表現型を減少させるのに有効であることを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】