(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ざ瘡になり易い皮膚の日々のケアに有用な局所用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/362 20060101AFI20240219BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20240219BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240219BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240219BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240219BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240219BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K8/362
A61K8/365
A61Q19/10
A61K8/44
A61K8/60
A61K8/37
A61K8/9789
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546046
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2022052102
(87)【国際公開番号】W WO2022162175
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506260401
【氏名又は名称】ピエール ファーブル デルモ-コスメティック
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE DERMO-COSMETIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】シャヴェス,フェルナンダ
(72)【発明者】
【氏名】アマド,ジュリアナ
(72)【発明者】
【氏名】ゴドリー,アンヌ ロール
(72)【発明者】
【氏名】デュプラン,エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】メートル,マルティーヌ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA121
4C083AB032
4C083AB051
4C083AC182
4C083AC291
4C083AC292
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC661
4C083AC662
4C083AD391
4C083AD392
4C083BB01
4C083CC23
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD41
4C083EE10
4C083EE12
(57)【要約】
本開示は、コハク酸および乳酸の角質溶解組合せ物を含む局所用組成物、例えば化粧的局所用組成物、および油性皮膚、ざ瘡になり易い皮膚、ざ瘡になった皮膚およびざ瘡治療を受けた皮膚の日々のケアのためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.コハク酸および、一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸、好ましくは、乳酸からなるアルファヒドロキシ酸を含む角質溶解物質の組合せ物;
b.一つまたはそれ以上の生理学的に許容できる担体および/またはアジュバント、
を含む局所用組成物であって、
コハク酸およびアルファヒドロキシ酸の総量は該組成物の総量に対して約1重量%~約8重量%の範囲であり、コハク酸/総アルファヒドロキシ酸の質量比は1またはそれ以上である、該局所用組成物。
【請求項2】
局所洗浄用組成物である、請求項1に記載の局所用組成物。
【請求項3】
前記担体が、水である、請求項1または2に記載の局所用組成物。
【請求項4】
前記一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸が乳酸からなり、コハク酸/乳酸の質量比が1.5またはそれ以上かつ4またはそれ以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項5】
前記角質溶解物質の組合せ物が、コハク酸および乳酸からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項6】
溶液、ローション、フォームまたはゲルの形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項7】
一つまたはそれ以上の界面活性剤をアジュバントとして含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項8】
ココイルグルタミン酸二ナトリウム、ココグルコシドクエン酸二ナトリウムおよびデシルグルコシドの混合物を界面活性剤として含む、請求項7に記載の局所用組成物。
【請求項9】
サリチル酸を含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項10】
前記アジュバントが抗脂漏剤を含み、前記抗脂漏剤が、2,3-ジヒドロキシプロピルドデカノエート、サバル抽出物、カボチャ種子油、ウルチカ・ジオイクの抽出物およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項11】
前記アジュバントがポアリファイナーを含み、前記ポアリファイナーがレンス・エスクレンタ種子抽出物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の局所用組成物。
【請求項12】
油性皮膚、ざ瘡になり易い皮膚、ざ瘡になった皮膚および/またはざ瘡治療を受けた皮膚を洗浄するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の局所用組成物の使用。
【請求項13】
皮膚の油性を制御するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の局所用組成物の使用。
【請求項14】
表皮の完全な状態を制御しながら角質層の硬さを軽減するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の局所用組成物の使用。
。
【請求項15】
皮膚を洗浄するための化粧方法であって、
a.請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を、あらかじめ湿らせた皮膚に適用すること
b.任意に、水で乳化させること、
c.皮膚を洗い流すこと、および
d.皮膚を乾燥させること、
を含む、該方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コハク酸および乳酸の角質溶解組合せ物を含む局所用組成物、例えば化粧的局所用組成物(cosmetic topical composition)、油性皮膚、ざ瘡になり易い皮膚(acne-prone skin)、ざ瘡になった皮膚(acne-affected skin)およびざ瘡治療を受けた皮膚の日々のケアのためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ざ瘡は、複数の要因によって引き起こされ、さまざまな種類の病斑の出現につながる、人間の皮膚の毛嚢脂腺性毛包の最も一般的な慢性疾患である。ざ瘡は、慢性免疫炎症性疾患であり、世界中で約9億人が罹患しており、そのほとんどが若者(有病率80%~85%)であり、男女問わないが、罹患している多くは成人女性である。
ざ瘡は、多因子の病原により、皮膚において肥厚性瘢痕を引き起こしやすい面皰、丘疹、嚢胞、小結節および膿疱の形成により皮膚が見苦しい外観を呈し、その結果、罹患した個人に身体的および感情的な変化を引き起こす皮膚科学的状態である。(LIMA, 2006; MANFRINATO, 2009)
遺伝的影響を伴うこの多くの病因には、4つの現象が関係している:すべての段階での炎症過程、毛包口の遠位部分の角化異常、脱漏(皮脂の量的および質的変化)、アンドロゲンホルモンの影響、およびキューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)の存在であり、その悪性度は、毛包環境と、患者の自然免疫の一部である、細胞膜に存在する受容体に対する高い抗原力とに依存する。
【0003】
さまざまな種類のざ瘡は、症状の程度または臨床的進展に応じて、軽度、中等度または重度の非炎症性ざ瘡または炎症性ざ瘡に分類できる(MANFRINATO, 2009)。非炎症性ざ瘡は、炎症状態ではない面皰の存在を特徴とし、炎症性ざ瘡は、病斑の強度、量および特徴に応じて4段階に分類される:
-グレードIざ瘡(面皰を生じやすいざ瘡-非炎症性):油性皮膚、炎症性病斑のない開いた面皰と閉じた面皰;
-グレードIIざ瘡(炎症性丘疹膿疱性ざ瘡):開いた面皰と閉じた面皰、丘疹および膿疱;
-グレードIIIざ瘡(炎症性結節性-嚢胞性ざ瘡):油性皮膚、開いた面皰と閉じた面皰、膿疱、小結節および嚢胞;
-グレードIVざ瘡(劇症型ざ瘡):原因不明で突然発症する、主に男性が罹患する感染性および全身性のざ瘡。まれではあるが、これは壊滅的で深刻である。劇症型ざ瘡の病因は尋常性ざ瘡(ニキビ)の病因と同じではない。毛嚢脂腺毛包の閉塞、分泌過多、ホルモン因子といった同じ過程で起こるものではない。場合によっては、罹患個体は、潰瘍に発展する丘疹、膿疱、小結節を有する。
【0004】
毎日の皮膚の洗浄を含む毎日の皮膚ケアは、ざ瘡の管理を成功させる上で重要な要素であると考えられている。薬物治療は、長期的には紅斑、剥皮、浮腫、乾燥、ざらつきなどの副作用を引き起こすか、掻痒や灼熱感などの症状を引き起こすことがある。これらの反応は、活性成分(例えば、レチノイド、過酸化ベンゾイル、一部の局所抗生物質など)によって引き起こされる直接的な影響、またはビヒクルの特性によって生じることがある。したがって、すでに敏感になっている皮膚にさらに傷つけることを避けるように、適切な日々の皮膚ケア製品を選択することが最も重要である。さらに、皮膚ケア製品を適切に選択することで、皮膚科治療に対する個人のコンプライアンスが高まり、皮脂の生成を刺激し、最終的にざ瘡の重症度を高める可能性のある皮膚の過剰な洗浄を控えることができる。
【0005】
多くの皮膚ケア製品が市場で入手可能であるが、皮膚に優しく、油性皮膚、ざ瘡になり易い皮膚、ざ瘡になった皮膚および/またはざ瘡治療を受けた皮膚の状態を改善するのに役立つ局所用組成物の必要性が依然として残っている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、
a.コハク酸および一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸、好ましくは、乳酸からなるアルファヒドロキシ酸を含む角質溶解物質の組合せ物;
b.一つまたはそれ以上の生理学的に許容できる担体および/またはアジュバント、
を含む局所用組成物であって、
コハク酸およびアルファヒドロキシ酸の総量は該組成物の総量に対して約1重量%~約8重量%の範囲であり、コハク酸/総アルファヒドロキシ酸の質量比は1またはそれ以上である、局所用組成物に関する。
【0007】
本発明はまた、油性皮膚、ざ瘡になり易い皮膚、ざ瘡になった皮膚および/またはざ瘡治療を受けた皮膚を洗浄するための、皮膚の油性を制御するための、および/または表皮の完全な状態を制御しながら角質層の硬さを軽減するための、本明細書に開示されている局所用組成物に関する。
【0008】
本発明はまた、
a.本明細書に開示されている組成物を、あらかじめ湿らせた皮膚に適用すること
b.任意に、水で乳化させること、
c.皮膚を洗い流すこと、および
d.皮膚を乾燥させること、
を含む、皮膚を洗浄する化粧方法に関する。
【0009】
本発明のさらなる態様は、本明細書および特許請求の範囲に開示されているとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1A:角質層の弾性の測定と分析。対照と比較した弾性率の阻害パーセンテージ(2人のドナーの平均):対照-未処理-、1重量%のサリチル酸、0.6重量%のコハク酸、0.36重量%の乳酸、および0.36重量%の乳酸+0.6重量%のコハク酸。
【0011】
【
図1B】
図1B:表皮深層の細胞間接着(表皮の完全な状態の対照)の測定と分析。サリチル酸と比較した弾性率の阻害パーセンテージ(2人のドナーの平均):1重量%のサリチル酸、0.36重量%の乳酸+0.6重量%のコハク酸。
【0012】
【
図2】
図2:体幹の全体的な病斑数、エラーバー:95%CI、***p-値≦0.001。
【0013】
定義
用語「約」とは、本発明の文脈において、当該の値が示された値よりも10%、特に5%、特に1%低くても高くてもよいことを意味する。
【0014】
これには、表示された値と、表示された値より10%、特に5%、特に1%低いまたは高い値が含まれる。例として、範囲が約Xから約Yまで変動すると言われる場合、これには、XからYまでの範囲、および任意選択でXより10%、特に5%、特に1%低い値、およびYより10%、特に5%、特に1%高い値が含まれる。
【0015】
本明細書で使用される用語「角質溶解物質」とは、角質化した閉塞を軟化し、中断させ、溶解し、可溶化し、または緩める物質を意味する。
【0016】
本発明の説明
驚くほどに、コハク酸および一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸、特に本明細書に開示されている乳酸、の組合せ物を含む局所用組成物が、コハク酸およびアルファヒドロキシ酸、特に乳酸の、表皮の完全な状態を保存しながらもたらす殺菌と角質溶解との組み合わせ作用のおかげで、ざ瘡になり易い皮膚、ざ瘡になった皮膚および/またはざ瘡治療を受けた皮膚の状態を効率的に改善することが見出された。
【0017】
本明細書で使用される「アルファヒドロキシ酸」は、一つのヒドロキシル基がカルボン酸官能基のアルファの炭素に結合している有機カルボン酸を意味する。
適当なアルファヒドロキシ酸の例として、乳酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸およびマンデル酸があるが、これらに限定されない。
【0018】
いくつかの態様において、本発明の局所用組成物は、
a.コハク酸および一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸(好ましくは、乳酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マンデル酸およびこれらの組合せからなる群から選択される)を含む角質溶解物質の組合せ物;
b.一つまたはそれ以上の生理学的に許容できる担体および/またはアジュバント、
を含み;
コハク酸および総アルファヒドロキシ酸の総量は該組成物の総量に対して約1重量%~約8重量%の範囲であり、コハク酸/総アルファヒドロキシ酸の質量比は、1またはそれ以上、好ましくは1.5またはそれ以上である。
【0019】
いくつかの好ましい態様において、本発明の局所用組成物は、
a.コハク酸および、乳酸からなるアルファヒドロキシ酸を含む角質溶解物質の組合せ物;
b.一つまたはそれ以上の生理学的に許容できる担体および/またはアジュバント、
を含み;
コハク酸および乳酸の総量は該組成物の総量に対して約1重量%~約8重量%の範囲であり、コハク酸/乳酸の質量比は、1またはそれ以上、好ましくは1.5またはそれ以上である。
【0020】
本明細書で使用される「局所用組成物」とは、ヒトの皮膚に適用するための組成物を意味する。局所用組成物は、化粧的局所用組成物または医薬/皮膚科学的局所用組成物(pharmaceutical/dermatological topical composition)であってもよい。
【0021】
本明細書で使用される「化粧的局所用組成物」とは、皮膚ケア組成物を意味する。
皮膚ケア組成物は一般に、皮膚を洗浄、保護、保湿、および/または皮膚を処置するため、すなわち、それらが適用される皮膚の状態を改善するうえで有益な物質を与えるために使用される。
【0022】
本発明の局所用組成物は、皮膚ケアに適した任意の形態であってもよい。
例えば、局所用組成物は、溶液、ミセル溶液、ローション、エマルジョン、懸濁液、クリーム、軟膏、セラム、マスク、フォーム(foam)またはゲルの形態であってもよい。溶液、ローション、フォームおよびゲルが好ましいことがある。本明細書に記載の適当な担体およびアジュバントの選択は、組成物の選択された形態に大きく左右される。
【0023】
局所用組成物は、好ましくは、4.5~5.1、例えば4.8~5.1の範囲のpHを有する。
【0024】
本発明の組成物は、油性皮膚またはざ瘡になり易い皮膚、ざ瘡になったおよび/またはざ瘡治療を受けた個人の洗浄に適する。したがって、いくつかの好ましい実施態様において、本発明は、
a.コハク酸および一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸(好ましくは、乳酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マンデル酸およびこれらの組合せからなる群から選択される)を含む角質溶解物質の組合せ物;
b.一つまたはそれ以上の生理学的に許容できる担体および/またはアジュバント、
を含む、局所洗浄用組成物であって、
コハク酸およびアルファヒドロキシ酸の総量は該組成物の総量に対して約1重量%~約8重量%の範囲であり;コハク酸/総アルファヒドロキシ酸の質量比は1またはそれ以上、好ましくは1.5またはそれ以上である、
局所用洗浄組成物に関する。
【0025】
いくつかの好ましい実施態様において、本発明は、
a.コハク酸および、乳酸からなるアルファヒドロキシ酸を含む角質溶解物質の組合せ物;
b.一つまたはそれ以上の生理学的に許容できる担体および/またはアジュバント、
を含む局所洗浄用組成物であって、
コハク酸および乳酸の総量は該組成物の総量に対して約1重量%~約8重量%の範囲であり;コハク酸/乳酸の質量比は1またはそれ以上、好ましくは1.5またはそれ以上である、局所洗浄用組成物に関する。
【0026】
本明細書に開示されるコハク酸とアルファヒドロキシ酸、特に乳酸との組合せ物を含む局所洗浄用組成物は、局所的な皮膚反応(例えば、乾燥、刺激)を引き起こすことなく、また皮脂産生の過補償を引き起こすことなく、効率的かつ穏やかに皮膚を洗浄することが見出された。局所洗浄用組成物は、汚れ、汚染および過剰な皮脂を効率的に除去する。皮膚の油性やテカリが瞬時に軽減され、艶消し効果および/またはシミ防止効果が長時間持続することが観察されている。
さらに、前述したように、また以下でさらに詳述するように、局所洗浄用組成物は、油性皮膚、ざ瘡になり易い皮膚、ざ瘡になった皮膚およびざ瘡治療を受けた皮膚の状態を改善するのに役立つ。
【0027】
局所洗浄用組成物は、好ましくは水性組成物である。すなわち、局所洗浄用組成物は、油性組成物でも、エマルションタイプの組成物でも、溶媒系組成物(例えば、アルコール系組成物)でもない。
好ましい局所洗浄用組成物は単相組成物である。
【0028】
局所洗浄用組成物は液体であることが好ましい。好ましくは、局所洗浄用組成物は、環境温度(25℃)で、広い範囲内で変化する粘度、例えば500~3500cPs、好ましくは1400~3500cPsの範囲の粘度を有し得る。粘度は、通常、粘度計ブルックフィールドDV1RVを用いて25℃で測定される。
【0029】
いくつかの実施態様において、局所洗浄用組成物は水性ゲルの形態である。局所洗浄用組成物は、一般に、洗い流し組成物である。「洗い流し組成物」とは、短時間(数秒または数分)皮膚に適用され、その後水で洗い流される組成物を意味する。
【0030】
局所用組成物は、パッケージから用具(例えば、綿パッド、布)上に、または皮膚上に直接分配することができる液体として供給されてもよい。あるいは、局所用組成物をワイプに吸収させてもよい。
【0031】
局所用組成物の成分、特に局所洗浄用組成物の成分は、本明細書において以下に記載される通りである。
【0032】
角質溶解物質
局所用組成物は、コハク酸および一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸、特に乳酸を含む角質溶解物質の組合せ物を含む。コハク酸および一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸、特に乳酸により、皮膚の角質化表皮を効率的に軟化して分離する(角質層の接着性を緩和させる)ことで、表皮の完全な状態を保存しながら皮膚の落屑を引き起こす相乗効果をもたらることが見出された。その結果、皮膚の硬さの低下が観察されることがある。角質溶解物質は、面皰栓(すなわち、毛包を詰まらせる角質化細胞が詰まった固体角質の塊)の除去に役立ち、面皰の拡大に寄与する角質化細胞の継続的な蓄積を軽減する。結果として、毛穴サイズの減少が観察されることがある。
【0033】
さらに、コハク酸と一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸、特に乳酸との組み合わせは、殺菌作用をもたらす。コハク酸および一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸、特に乳酸は、ざ瘡の原因となる可能性のあるキューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)、スタフィルオコックス・アウロイス(Staphylococcus aureus)およびスタフィルオコックス・エピデルミス(Staphylococcus epidermis)を標的とするのに効果的であることが示されているが、キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)がざ瘡の主な誘因である。
【0034】
典型的には、局所用組成物はさらなる角質溶解物質を含まない。
【0035】
いくつかの実施態様において、局所用組成物はサリチル酸を含まない。
【0036】
いくつかの実施態様において、局所用組成物はサリチル酸の誘導体を含まない。
【0037】
いくつかの実施態様において、局所用組成物はレゾルシノール、硫黄および過酸化ベンゾイルを含まない。
【0038】
好ましい実施態様において、アルファヒドロキシ酸は乳酸からなる。
【0039】
好ましい実施態様において、角質溶解物質の組合せ物は、コハク酸および乳酸からなる。
【0040】
局所用組成物中のコハク酸およびアルファヒドロキシ酸の総量は、該組成物の総量に対して約1重量%~8重量%、例えば約2重量%~8重量%、または約3重量%~8重量%、または約4重量%~8重量%、または約4重量%~7重量%、または約4重量%~6重量%の範囲であり、または約5重量%である。
【0041】
アルファヒドロキシ酸が乳酸からなる場合、局所用組成物中のコハク酸および乳酸の総量は、該組成物の総量に対して約1重量%~8重量%、例えば約2重量%~8重量%、または約3重量%~8重量%、または約4重量%~8重量%、または約4重量%~7重量%、または約4重量%~6重量%の範囲であり、または約5重量%である。
【0042】
局所用組成物がさらなる角質溶解物質を含まない場合、該局所用組成物は、該組成物の総量に対して約1重量%~8重量%、例えば約2重量%~8重量%、または約3重量%~8重量%、または約4重量%~8重量%、または約4重量%~7重量%、または約4重量%~6重量%、または約5重量%の角質溶解物質の組合せ物を含む。
【0043】
コハク酸/総アルファヒドロキシ酸の質量比は、1またはそれ以上、好ましくは1.5またはそれ以上、より好ましくは1.6またはそれ以上である。好ましくは、コハク酸/総アルファヒドロキシ酸の質量比は、4またはそれ以下、あるいは3またはそれ以下、あるいは2またはそれ以下、あるいは1.7またはそれ以下である。
【0044】
アルファヒドロキシ酸が乳酸からなる場合、コハク酸/乳酸の質量比は、1またはそれ以上、好ましくは1.5またはそれ以上、より好ましくは1.6またはそれ以上である。好ましくは、コハク酸/乳酸の質量比は、4またはそれ以下、あるいは3またはそれ以下、あるいは2またはそれ以下、あるいは1.7またはそれ以下である。
【0045】
いくつかの実施態様において、局所用組成物は、該組成物の総量に対して約0.5重量%~約6重量%、好ましくは約1重量%~約6重量%、または約2重量%~約6重量%、または約3重量%~約6重量%、または約2重量%~約4重量%のコハク酸、および約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約5重量%、または約1重量%~約4重量%または約2重量%~約5重量%または約1重量%~約3重量%のアルファヒドロキシ酸を含む。
【0046】
いくつかの実施態様において、アルファヒドロキシ酸が乳酸からなる場合、該局所用組成物は、該組成物の総量に対して約0.5重量%~約6重量%、好ましくは約1重量%~約6重量%、または約2重量%~約6重量%、または約3重量%~約6重量%、または約2重量%~約4重量%のコハク酸、および約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約5重量%、または約1重量%~約4重量%または約2重量%~約5重量%または約1重量%~約3重量%の乳酸を含む。
【0047】
生理学的に許容できる担体および/またはアジュバント
本発明の組成物は局所適用を目的としており、一つまたはそれ以上担体および/または賦形剤は生理学的に許容できるものでなければならない。
【0048】
用語「生理学的に許容できる」とは、皮膚(例えば、体、顔、まぶた)および粘膜(例えば、唇)と適合すること、すなわち、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応などを誘発しないことを意味する。
【0049】
適当な担体およびアジュバントの選択は、局所用組成物の選択された形態に大きく依存する。
【0050】
担体
局所用組成物は、該組成物の約10重量%~約90重量%、例えば、約10重量%~約70重量%または約15重量%~約60重量%の一つまたはそれ以上の担体を含む。
【0051】
生理学許容できる担体は、有機溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6-ヘキサントリオール、エタノール、およびこれらの混合物)、シリコーン溶媒、油類、脂質および/またはワックスであり得るが、局所用組成物の生理学的に許容できる担体は一般に水である。好ましくは、水は唯一の担体として使用される。このように、局所用組成物は、好ましくは、水性組成物であり、すなわち、局所用組成物は、油性組成物、エマルジョン-タイプの組成物、溶媒系組成物(例えば、アルコール系組成物)ではない。したがって、好ましい実施態様において、局所用組成物は、油相および油含有成分を含まない。
【0052】
アジュバント
局所用組成物はまた、化粧品または皮膚科分野において一般的なアジュバント、例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤、保湿剤、活性剤(例えば、植物抽出物、ビタミン)、防腐剤、乳化剤、香料を含む。これらの様々なアジュバントの量は検討中の分野で従来使用されている量、例えば、局所用組成物の総量に対して約0.0001重量%~約30重量%、または約0.0001重量%~約20重量%、または局所用組成物の総量に対して約0.01重量%~約20重量%である。
【0053】
局所用組成物は、好ましくは、油相や油含有成分を含まなく、局所用組成物は、一般に乳化剤を含まない。乳化剤は、皮膚の脱水に寄与するかもしれない。
【0054】
局所用組成物は、一つまたはそれ以上の界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、重合界面活性剤であってもよく、非重合界面活性剤であってもよい。界面活性剤は局所用組成物に、洗浄に関する利点、泡立つ性質およびレオロジー性質を与える。界面活性剤または界面活性剤の組合せは通常穏やかであり、これは、界面活性剤が十分な洗浄を与えるが、皮膚を過度に乾燥させないことを意味する。
【0055】
局所用組成物中の界面活性剤の総量は、該組成物の総量に対して約1重量%~約30重量%、例えば、約1重量%~20重量%または約1重量%~15重量%の範囲であり得る。界面活性剤は、陽イオン性、陰イオン性、双性イオン性、両性、非イオン性、またはこれらの組合せであってもよい。原理的にはどのような界面活性剤クラスでも使用できるが、洗浄用途に使用される場合、局所用組成物は通常、陰イオン性界面活性剤、または一つまたはそれ以上の陰イオン性界面活性剤と他の界面活性剤クラスから選択される一つまたはそれ以上の界面活性剤との組み合わせで配合される。したがって、局所用組成物、特に局所洗浄用組成物は、約1重量%~約20重量%、例えば、約1重量%~約18重量%または約1重量%~約15重量%の一つまたはそれ以上の陰イオン性界面活性剤、および約1重量%~約15重量%、例えば、約1重量%~約12重量%または約1重量%~約10重量%の、他の界面活性剤から選択される界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤を含む。
【0056】
本発明において多種多様な陰イオン性界面活性剤が有用である。陰イオン性界面活性剤は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミンなどの対イオンを含み得る。陰イオン性界面活性剤の非限定的例として、カルボン酸塩、サルコシン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、イセチオン酸塩、タウリン酸塩、リン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩およびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。カルボン酸塩、サルコシン酸塩、イセチオン酸塩、タウリン酸塩、リン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩およびこれらの混合物からなる群から選択される陰イオン性界面活性剤、またはカルボン酸塩、タウリン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩からなる群から選択される陰イオン性界面活性剤、または乳酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩およびこれらの混合物からなる群から選択される陰イオン性界面活性剤、特にグルタミン酸塩、が好ましい。適当な陰イオン性界面活性剤には、アミノ酸系陰イオン性界面活性剤、例えばココイルグルタミン酸二ナトリウム(disodium cocoyl glutamate)が含まれるがこれらに限定されない。好ましくは、界面活性剤は、ココイルグルタミン酸二ナトリウム、ココグルコシドクエン酸二ナトリウム(disodium coco glucoside citrate)またはこれらの組合せである。
【0057】
本明細書において有用な非イオン性界面活性剤には、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸エステル、アルコキシル化脂肪アルコールエーテル、スクロースエステルおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものが含まれるがこれらに限定されない。好ましい非イオン性界面活性剤はデシルグルコシドである。
【0058】
本明細書で有用な両性界面活性剤には、脂肪族ラジカルが直鎖または分枝鎖であり得、脂肪族置換基の一つが約8~約18個の炭素原子を含み、一つがカルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェートまたはホスホネートなどの陰イオン性水溶性基を含む、脂肪族第2級アミンおよび第3級アミンの誘導体として広く説明されている界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
有用な両性界面活性剤には、ココアンホ酢酸塩、ココアンホジ酢酸塩、ラウロアンホ酢酸塩、ラウロアンホジ酢酸塩およびこれらの混合物からなる群が含まれる。
いくつかの実施態様において、局所用組成物は両性界面活性剤を含まない。
【0060】
本明細書において有用な双性イオン性界面活性剤には、脂肪族ラジカルが直鎖または分枝鎖であり得、脂肪族置換基の一つは約8~約18個の炭素原子を含み、一つがカルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェートまたはホスホネートなどの陰イオン性基を含む、脂肪族4級アンモニウム、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物の誘導体として広く説明されている界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
有用な双性イオン性界面活性剤には、ベタイン、アンホ酢酸塩およびスルホベタイン、例えば、コカミドプロピルベタイン、ラウリルアンホ酢酸ナトリウムおよびコカミドプロピルヒドロキシスルタインが含まれる。
【0062】
いくつかの実施態様において、局所用組成物は、双性イオン性界面活性剤を含まない。
【0063】
いくつかの実施態様において、局所用組成物は、界面活性剤として少なくとも一つのアミノ酸系界面活性剤、好ましくは、少なくともココイルグルタミン酸二ナトリウムを含む。アミノ酸系界面活性剤の量は、該組成物の総量に対して約0.1重量%~約12重量%または約2重量%~約10重量%、好ましくは約5重量%~約10重量%の範囲であり得る。
【0064】
いくつかの実施態様において、局所用組成物は、本明細書に開示されている割合であってもよい少なくとも一つのアミノ酸系界面活性剤、好ましくは少なくともココイルグルタミン酸二ナトリウム、およびアミノ酸系界面活性剤とは異なる少なくとも一つの界面活性剤、例えば、少なくともココグルコシドクエン酸二ナトリウムまたは少なくともデシルグルコシドを含む。
【0065】
好ましくは、局所用組成物は、陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤の混合物を含む。
【0066】
したがって、局所用組成物は両性界面活性剤および双性イオン性界面活性剤を含まないことが理解されるべきである。より具体的には、いくつかの実施態様において、局所組成物は、ココイルグルタミン酸二ナトリウム、ココグルコシドクエン酸二ナトリウムおよびデシルグルコシドの混合物を含む。
【0067】
一般に、前記混合物は、組成物の総量に対して約0.1重量%~約12重量%のココイルグルタミン酸二ナトリウム、約0.5重量%~約6重量%のココグルコシドクエン酸二ナトリウムおよび約1重量%~約15重量%のデシルグルコシドを含む。
【0068】
いくつかの実施態様において、一つまたはそれ以上の陰イオン性界面活性剤と他のクラスの界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤との質量比は、約50/50である。
【0069】
局所用組成物は、増粘剤、例えばセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース)、デンプンおよびデンプン誘導体、アクリル酸およびアクリレートポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール誘導体、天然ガム(例えば、ザンサンガム、スクレログルカンガムおよび/またはカラギーナンガム)および塩(例えば、塩化ナトリウム)を含み得る。いくつかの実施態様において、増粘剤は、セテアレス60ミリスチルグリコールである。
【0070】
局所用組成物は、防腐剤、例えば安息香酸またはその塩、ベンジルアルコール、ソルビン酸またはその塩、尿素(例えば、イミダゾリジニル尿素、ジアゾリジニル尿素)、パラベン、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、PHMB(ポリヘキサメチレンビグアナイド)、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセロール、サリチル酸またはその塩および安息香酸ナトリウムを含み得る。
【0071】
局所用組成物は、さらなる活性剤を含んでもよい。活性剤は、適用される皮膚の状態をさらに改善する物質である。
【0072】
適当な活性剤は、抗脂漏剤および/またはポアリファイナー(pore refiner:毛穴修復材)であり得る。抗脂漏剤の例として、2,3-ジヒドロキシプロピルドデカノエート、サバル(sabal)抽出物、カボチャ種子油、ウルチカ・ジオイク(urtica dioic)の抽出物およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されなく、好ましくは、2,3-ジヒドロキシプロピルドデカノエートである。ポアリファイナー(pore refiner)の例として、レンス・エスクレンタ種子(Lens esculenta seed)抽出物が挙げられるが、これに限定されない。
【0073】
しかしながら、局所用組成物は、一般に抗ざ瘡剤、特にイヒチオール(ichtyol)、レチノイン酸および/またはグルコン酸亜鉛を含まない。
【0074】
いくつかの実施態様において、局所用組成物は、以下の成分を含む:
【表1】
【0075】
本発明のさらなる実施態様
【0076】
いくつかのさらなる態様において、本発明は、
a.コハク酸および一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸を含む角質溶解物質の組合せ物;
b.一つまたはそれ以上の生理学的に許容できる担体および/またはアジュバント、
を含む局所用組成物であって;
コハク酸およびアルファヒドロキシ酸の総量は、該組成物の総量に対して約1重量%~約8重量%の範囲である、局所用組成物に関する。
【0077】
いくつかの実施態様において、アルファヒドロキシ酸は、乳酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マンデル酸およびこれらの組合せからなる群から選択され、より好ましくは、アルファヒドロキシ酸は乳酸である。
【0078】
局所用組成物中のコハク酸およびアルファヒドロキシ酸の総量は、該組成物の総量に対して約2重量%~8重量%、または約3重量%~8重量%、または約4重量%~8重量%、または約4重量%~7重量%、または約4重量%~6重量%の範囲であり得、または約5重量%である。
【0079】
いくつかの好ましい実施態様において、局所用組成物のコハク酸/総アルファヒドロキシ酸の質量比は、1またはそれ以上、好ましくは1.5またはそれ以上、より好ましくは1.6またはそれ以上である。好ましくは、コハク酸/総アルファヒドロキシ酸の質量比は、4またはそれ以下、あるいは3またはそれ以下、あるいは2またはそれ以下、あるいは1.7またはそれ以下である。
【0080】
いくつかの実施態様において、局所用組成物は、該組成物の総量に対して約0.5重量%~約6重量%、好ましくは約1重量%~約6重量%、または約2重量%~約6重量%、または約3重量%~約6重量%、または約2重量%~約4重量%のコハク酸、および約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約5重量%、または約1重量%~約4重量%または約2重量%~約5重量%または約1重量%~約3重量%の総アルファヒドロキシ酸を含む。
【0081】
いくつかの好ましい実施態様において、アルファヒドロキシ酸は乳酸からなる。
【0082】
いくつかのさらなる態様において、本発明は、
a.コハク酸および一つまたはそれ以上のアルファヒドロキシ酸を含む角質溶解物質の組合せ物;
b.一つまたはそれ以上の生理学的に許容できる担体および/またはアジュバント、
を含む局所洗浄用組成物であって、
コハク酸およびアルファヒドロキシ酸の総量は、該組成物の総量に対して約1重量%~約8重量%の範囲である、局所洗浄用組成物に関する。
【0083】
いくつかの実施態様において、アルファヒドロキシ酸は、乳酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マンデル酸およびこれらの組合せからなる群から選択され、より好ましくは、アルファヒドロキシ酸は乳酸である。
【0084】
局所洗浄用組成物中のコハク酸およびアルファヒドロキシ酸の総量は、該組成物の総量に対して約2重量%~8重量%、または約3重量%~8重量%、または約4重量%~8重量%、または約4重量%~7重量%、または約4重量%~6重量%の範囲であり得、または約5%である。
【0085】
いくつかの好ましい実施態様において、局所洗浄用組成物のコハク酸/総アルファヒドロキシ酸の質量比は、1またはそれ以上、好ましくは1.5またはそれ以上、より好ましくは1.6またはそれ以上である。好ましくは、コハク酸/総アルファヒドロキシ酸の質量比は、4またはそれ以下、あるいは3またはそれ以下、あるいは2またはそれ以下、あるいは1.7またはそれ以下である。
【0086】
いくつかの実施態様において、局所洗浄用組成物は、該組成物の総量に対して約0.5重量%~約6重量%、好ましくは約1重量%~約6重量%、または約2重量%~約6重量%、または約3重量%~約6重量%、または約2重量%~約4重量%のコハク酸、および約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約5重量%、または約1重量%~約4重量%または約2重量%~約5重量%または約1重量%~約3重量%のアルファヒドロキシ酸を含む。
【0087】
いくつかの好ましい実施態様において、アルファヒドロキシ酸は乳酸からなる。
【0088】
これらの局所用組成物のさらなる態様は、本明細書の上記、例えば、「角質溶解物質」および「生理学的に許容できる担体および/またはアジュバント」の項に開示されているとおりであり得る。
【0089】
方法および使用
局所用組成物は、油性皮膚、ざ瘡になり易い皮膚(acne-prone skin)、ざ瘡になった皮膚(acne-affected skin)および/またはざ瘡治療を受けた皮膚(acne-treated skin)の保護、洗浄、保湿、処置に使用され得る。より具体的には、局所洗浄用組成物は、油性皮膚、ざ瘡になり易い皮膚、ざ瘡になった皮膚および/またはざ瘡治療を受けた皮膚の洗浄に使用され得る。
【0090】
したがって、本発明は、油性皮膚、ざ瘡になり易い皮膚、ざ瘡になった皮膚および/またはざ瘡治療を受けた皮膚の保護、洗浄または保湿のための、本明細書に開示されている局所用組成物の化粧品的使用に関する。
【0091】
本発明はまた、皮膚の油性を制御するため、または持続的な抗菌作用をもたらすため、または皮膚の細菌叢に有益に作用するため、または表皮の完全な状態を制御しながら角質層の硬さを低下させるための、本明細書に開示される局所用組成物の化粧品的使用にも関する。
【0092】
化粧品的使用は、本明細書に記載の局所用組成物の有効量を、それを必要とする個人、特に顔または体幹の皮膚に適用することを含む。適用は、毎日、例えば1日2回、例えば朝に1回、夜に1回の割合で行われてもよい。適用は、1週間から数週間、さらには数ヶ月の範囲の期間にわたって、好ましくは少なくとも3週間にわたって行われてもよい。
【0093】
本発明はまた、油性皮膚、ざ瘡になり易い皮膚、ざ瘡になった皮膚および/またはざ瘡治療を受けた皮膚の状態を改善するための化粧(非治療的)方法であって、本明細書に記載の局所用組成物の有効量を、それを必要とする個人に適用することを含む方法に関する。
【0094】
本発明はまた、皮膚を洗浄するための化粧方法であって、
a.本明細書に記載の組成物を、あらかじめ湿らせた皮膚に、好ましくは1日2回(例えば、朝と夜)適用すること;
b.任意に、水で乳化させること;
c.一般に徹底的に洗い流すこと;および
d.皮膚を乾燥させること、
を含む方法に関する。
【0095】
持続効果を得るには、適用を少なくとも3週間、好ましくは少なくとも4週間繰り返してもよい。
【0096】
本発明はまた、本明細書に開示されている局所用組成物の治療的使用に関する。
【0097】
本発明はまた、ざ瘡の処置における、本明細書に開示されている局所用組成物の使用に関する。
【0098】
本発明はまた、ざ瘡の処置のための医薬の調製における、本明細書に開示されている局所用組成物の使用に関する。
【0099】
本発明はまた、ざ瘡を処置する方法であって、本明細書に記載の局所用組成物の有効量を、それを必要とする個体に適用することを含む方法に関する。
【0100】
本発明はまた、ざ瘡の処置における使用のための、本明細書に開示されている局所用組成物に関する。
【0101】
本発明の実施態様を以下の実施例によって説明するが、これらの実施例は例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0102】
【0103】
【0104】
実施例2:コハク酸と乳酸との組み合わせ(コハク酸/乳酸の質量比は1.67)の相乗的角質溶解効果
【0105】
角質溶解効果は、皮膚外植片において原子間力顕微鏡法(AFM)を使用して、試験した剤によって誘発される皮膚の生物力学特性の調節(皮膚の硬さの調節)を観察することによって評価した。
【0106】
ドナーよる外植片1本と処理
外植片によって3つの異なる領域を測定した
1領域で最低12の測定
【0107】
プロトコール:
皮膚外植片
35歳~43歳の女性の胸部皮膚から1.2cmの皮膚パンチを作成した。乳酸とコハク酸を単独または混合して使用する3つの局所処理(コハク酸/乳酸比1.67)を適用する。1回目と2回目の適用は1時間以内、3回目の適用は3時間以内に行う。処理後、皮膚外植片を液体窒素中で凍結させ、-80℃で保存する。処理した皮膚外植片から20μmの凍結切片を作成した。皮膚外植片の凍結切片の機械的性質を、角質層および表皮領域でAFM測定によって評価する。
【0108】
原子間力顕微鏡(AFM)
AFM押し込み実験を、倒立光学DMI8(Leica)およびトップビューBrukerに取り付けられたResolve Bioscope(Bruker Nano Surface、Santa Barbara、CA)を用いて行った。皮膚の硬さの測定はすべて、円錐形の先端を備えたカンチレバーを用いて行った。カンチレバーを皮膚表面の凹凸に合わせて動かせた。この変形は、皮膚表面サンプルの生体力学的パラメータと相関するレーザー光線の偏向によって定量化した。弾性率の定量的測定を用いて、処理後の角質層または表皮の細胞間接合部の硬さを評価した。硬さの阻害は、処理した対照外植片と未処理の対照外植片との間で計算した。
【0109】
結果:結果を
図1Aおよび1Bに示す(対照-未処理-、1wt%のサリチル酸、0.6wt%のコハク酸、0.36wt%の乳酸、および0.36wt%の乳酸+0.6wt%のコハク酸)。
【0110】
コハク酸と乳酸との組合せ物は、角質層の弾性率の強力な阻害(角質層の硬さの強力な低下)を誘導するが、コハク酸と乳酸単独では有意な効果を示していない(
図1A)。この阻害は、参照角質溶解物質(サリチル酸)よりも強力である。
【0111】
表皮深層の細胞間接着の測定と分析では、コハク酸と乳酸の組合せ物が、参照角質溶解物質(サリチル酸)と比較して、表皮深層の細胞間接着を有意に保護することが示された(
図1B)。
【0112】
実施例3:本発明による組成物のインビトロでの抗菌効果
【0113】
ざ瘡皮膚では、キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)がざ瘡の主な誘因である。ただし、スタフィロコッカス・エピデルミデス(Staphylococcus epidermidis)などの他の共生生物も重要な役割を果たすことがある。ざ瘡患者における腸内菌共生バランス失調(dysbiosis)は、S.エピデルミデス(S. epidermidis)の数の減少と、毛嚢脂腺単位におけるC.アクネス(C. acnes)の系統型の選択による超定着に関連していることが知られている。
この変化は、自然免疫の異なる活性化レベルをもたらし、結果的に、炎症性尋常性ざ瘡の重症度のレベルが異なくなる。最近の研究では、ざ瘡の生理病理学におけるS.エピデルミデス(S. epidermidis)の有益な役割は、C.アクネス(C. acnes)による毛嚢脂腺単位の超定着を制限し、尋常性ざ瘡の炎症の程度を軽減することによって起こることが確認されている。
【0114】
実施例1Bによる製品に暴露した後、時間-殺菌方法(Time kill methodology)(CEN, I.S. EN-1040;2006:化学消毒剤および防腐剤の基本的な殺菌活性の評価のための化学消毒剤および防腐剤の定量的懸濁試験-試験方法および要件相1)を適用して、微生物Cアクネス、S.エピデルミデス(S. epidermidis)およびSアウレウス(S aureus)を定量化した。
【0115】
結果:30秒で、C.アクネスの初期集団の99,9999%(6log)超の減少が観察され、5分間でSアウレウス(S aureus)の初期微生物集団の99,9%(3log)の減少が観察され、5分間でS.エピデルミデスの初期集団の最大94,44%(1,26log)の減少が観察された。
【0116】
この製品は、皮膚細菌叢に全体的に以下のような有益な作用をもたらす:
-証明された病原体(Cアクネス、Sアウレウス(S aureus))を減少
-および、共生生物(S.エピデルミデス)には影響なし。
【0117】
実施例4~7:以下の使用中試験で使用した製品は、実施例1Bによる組成物である。
【0118】
実施例4:使用直後および使用28日後のSebumeter(登録商標)測定による抗油性効果を評価するための使用中試験
【0119】
参加者:ざ瘡の傾向がある、つまりざ瘡になり易い(顔と体幹にざ瘡病斑:顔と体幹に少なくとも合計10~40個のざ瘡病斑がある対象)、油性皮膚(皮脂計値>100μg/cm2(カジュアルレベル)の16歳から40歳までの健康な対象30名(各対象は独自の対照)。
【0120】
プロトコール:28日間(治験製品の適用期間)対象に、あらかじめ湿らせた皮膚に組成物を1日2回(朝と夜)適用し、水で乳化させ、洗い流し、乾燥させなければならなかった。
【0121】
製品(D1)の最初の適用は、訓練を受けた技術者の監督の下、対象によってランダム化した半顔に行った。試験中の他のすべての適用は、自宅で通常の使用条件下で行った。
【0122】
訪問の計画は以下のようにした:
-訪問1:D1
-訪問2:D8
-訪問3:最終訪問(D29)
【0123】
対象の皮膚の油性は、前頭部を、Sebumeter(登録商標)を用いて機器測定することによって評価した。
【0124】
結果:28日間の製品使用後、組成物による油性の制御効果(-11.13%)が観察された。このように、試験した製品により、28日間の使用後に油性を制御することができるようになる(油性の増加なし)。
【0125】
実施例5:28日間使用後の抗ざ瘡効果を評価するための使用中試験
【0126】
参加者:ざ瘡の傾向がある、つまりざ瘡になり易い(顔と体幹のざ瘡病斑)、油性皮膚の16~40歳の健康な対象30名(各対象は独自の対照)。
【0127】
プロトコール:28日間対象に、あらかじめ湿らせた皮膚に組成物を1日2回(朝と夜)適用し、水で乳化させ、洗い流し、乾燥させなければならなかった。
【0128】
28日間の使用後に、訓練を受けた皮膚科医により顔と体幹におけるざ瘡病斑(開いた面皰、閉じた面皰、丘疹、膿疱および小結節)をカウントした。
【0129】
結果:28日間の製品使用後、顔におけるざ瘡病斑の総量は有意にに減少し(-33%)(p<0.001)、これは顔の皮膚に対する抗ざ瘡効果を証明している。
【0130】
28日間の製品使用後、体幹のざ瘡病斑の総量は有意に減少し(-49%)(p<0.001)、これは、皮膚の体幹に対する抗ざ瘡効果を証明している(
図2)。
【0131】
上記の通り、試験した製品は、面皰を形成せず、またざ瘡を発生させない。
【0132】
実施例6:7日間および28日間の使用後の毛穴の進展を評価するための使用中試験
【0133】
参加者:ざ瘡の傾向がある(顔と体幹のざ瘡病斑)、油性皮膚の16~40歳の健康な対象30名(各対象は独自の対照)。
【0134】
プロトコール:28日間対象に、あらかじめ湿らせた皮膚に組成物を1日2回(朝と夜)適応し、水で乳化させ、洗い流し、乾燥させなければならなかった。
【0135】
皮膚科専門医は、7日間および28日間の使用後に毛穴の臨床評価を行った。
【0136】
結果:7日間の製品使用後(-3.3%)、28日間の製品使用後(-25.8%)、目に見える毛穴が有意に減少しました(p<0.001)。毛穴のサイズは、7日間の製品使用後(-19.1%)、28日間の製品使用後(-36.1%)に、有意に減少した(p<0.001)。
【0137】
実施例7:組成物を主観的に評価するための使用中試験
【0138】
参加者:ざ瘡の傾向がある(顔と体幹のざ瘡病斑)、油性皮膚の16~40歳の健康な対象30名(各対象は独自の対照)。
【0139】
プロトコール:28日間対象に、あらかじめ湿らせた皮膚に組成物を1日2回(朝と夜)適用し、水で乳化させ、洗い流し、乾燥させなければならなかった。
【0140】
対象に、試験製品の使用に関して経験した主観的な意見を報告するよう求めた。
【0141】
結果:28日間使用した後、組成物は次のように評価された:
-皮膚を乾燥させることなく優しく洗浄:8.2/10、組成物について、対象の90%が≧5、76.67%が≧8と評価した。
-油性とテカリの軽減:8.37/10、組成物について、対象の96.67%が≧5、76.67%が≧8と評価した。
【国際調査報告】