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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】複合神経調節技法
(51)【国際特許分類】
   A61K 41/00 20200101AFI20240219BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K41/00
A61P25/00
A61P3/00
A61P3/10
A61P3/04
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547043
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022014585
(87)【国際公開番号】W WO2022169712
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/145,664
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】プレオ,クリストファー・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コーテロ,ヴィクトリア・ユージニア
(72)【発明者】
【氏名】アッシュ,ジェフリー・マイケル
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084AA19
4C084MA70
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA70
4C084ZC03
4C084ZC21
4C084ZC35
4C084ZC51
4C084ZC75
(57)【要約】
【課題】複合神経調節技法を提供する。
【解決手段】代謝障害を治療するための複合神経調節技法が開示されている。複合神経調節技法は、二重部位神経調節または単一部位神経調節を含み得る。実施形態において、神経調節は、薬物治療との併用療法として投与され得る。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合神経調節治療方法であって、
代謝障害を有する被験体の第1の関心領域に第1の超音波エネルギーを印加するステップと、
前記第1の超音波エネルギーとは異なる時間に、前記被験体の第2の関心領域に第2の超音波エネルギーを印加するステップと、
を含み、
前記第2の関心領域は前記被験体の胃腸組織にある、方法。
【請求項2】
前記代謝障害が糖尿病である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記代謝障害がII型糖尿病である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記代謝障害が肥満またはインスリン抵抗性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数の超音波の印加後の循環グルコース濃度を示す評価装置からのフィードバックを受信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被験者の治療前の循環グルコース濃度を受け取るステップを含み、複数の超音波印加後の循環グルコース濃度は、該治療前の循環グルコース濃度よりも低い、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の超音波エネルギーを印加することと、前記第2の超音波エネルギーを印加することとは、1時間未満の時間間隔で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の関心領域が肝臓にあり、肝または肝門脈叢を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の関心領域が上腸間膜神経叢または後胃神経を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記代謝障害を治療するために、前記第1の超音波エネルギーを前記第1の関心領域に印加し、前記第2の超音波エネルギーを前記第2の関心領域に印加することを毎日1回、複数日間繰り返すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記代謝障害を治療するために、前記第1の超音波エネルギーを前記第1の関心領域に印加し、前記第2の超音波エネルギーを前記第2の関心領域に印加することを1ヶ月に1回未満繰り返すステップを含み、前記代謝障害が糖尿病前症またはインスリン抵抗性である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複合神経調節治療方法であって、
代謝障害を有する被験体の第1の関心領域に第1の超音波エネルギーを印加して、上行グルコースセンサ求心性経路を神経調節するステップと、
神経内分泌野を神経調節するために、前記第1の超音波エネルギーとは異なる時間に、前記被験体の第2の関心領域に第2の超音波エネルギーを印加するステップと、
を含み、前記第2の関心領域は被験体の胃腸組織にある、方法。
【請求項13】
複合神経調節治療方法であって、
代謝障害を有する被験者の内臓の関心領域に超音波エネルギーを印加して、上行グルコースセンサ求心性経路を神経調節するステップと、
前記超音波エネルギーを印加した後に、ホルモン剤または受容体経路薬剤を投与するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記ホルモン剤または前記受容体経路薬剤が標準推奨用量より少ない量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複合神経調節治療方法であって、
代謝障害を有する被験者の関心領域に超音波エネルギーを印加するステップを含み、前記関心領域が胃底部を含む、方法。
【請求項16】
複合神経調節システムであって、
エネルギー印加コントローラを含み、
前記エネルギー印加コントローラは、
代謝障害を有する被験者の第1の関心領域に第1の超音波エネルギーを集中させ、前記関心領域は肝臓の部分領域であり、
前記第1の関心領域に第1のパワーレベルで第1の時間、前記第1の超音波エネルギーを印加し、
前記被験者の第2の関心領域に第2の超音波エネルギーを集中させ、該第2の関心領域は肝臓の外側にあり、
前記第2の関心領域への前記第2の超音波エネルギーの印加を、第2のパワーレベルおよび第2の時間量で駆動するように構成され、
前記第2のパワーレベルは前記第1のパワーレベルよりも高く、
前記第2の時間量は前記第1の時間量よりも短い、複合神経調節システム。
【請求項17】
前記第1の関心領域に前記第1の超音波エネルギーを印加するように構成された第1のエネルギー印加装置と、前記第2の関心領域に前記第2の超音波エネルギーを印加するように構成された第2のエネルギー印加装置とを備える、請求項16に記載の複合神経調節システム。
【請求項18】
前記第1の超音波エネルギーおよび前記第2の超音波エネルギーを前記第2の関心領域に印加するように構成されたエネルギー印加装置を備える、請求項16に記載の複合神経調節システム。
【請求項19】
前記第1の超音波エネルギーおよび前記第2の超音波エネルギーは、前記被験者に対して1時間未満の時間間隔で印加される、請求項16に記載の複合神経調節システム。
【請求項20】
前記第2の超音波エネルギーは、前記第1の超音波エネルギーが印加されてから少なくとも5分後に印加される、請求項19に記載の複合神経調節システム。
【請求項21】
前記第2の関心領域が、胃腸組織の部分領域である、請求項16に記載の複合神経調節システム。
【請求項22】
前記第1のパワーレベルは、前記第1の超音波エネルギーを約200W/cm以下のピーク音響強度で印加させる、請求項16に記載の複合神経調節システム。
【請求項23】
前記第1のパワーレベルは、前記第1の超音波エネルギーを約10mW/cm以下の平均音響強度で印加させる、請求項16に記載の複合神経調節システム。
【請求項24】
前記第1の時間は少なくとも15分であり、前記第2の時間は5分未満である、請求項16に記載の複合神経調節システム。
【請求項25】
複合神経調節治療方法であって、
代謝障害を有する被験体の関心領域に超音波エネルギーを印加するステップを含み、該関心領域が胃腸組織を含み、該印加された超音波エネルギーが、該被験体に自律神経シグナル応答を引き起こすのに十分である、方法。
【請求項26】
前記自律神経シグナル応答が、視床下部の活動または機能の変化を介して検出される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、神経調節に関し、より具体的には、エネルギー源から印加されるエネルギーおよび/または薬物治療と併用される神経調節を含む、複合神経調節治療を用いる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
神経調節はさまざまな臨床症状の治療に用いられてきた。たとえば、脊髄に沿ったさまざまな場所への電気刺激は、慢性腰痛の治療に用いられてきた。このような治療は、周期的に電気エネルギーを発生させ、それを組織に印加して特定の神経線維(nerve fibers)を活性化し、その結果、痛みの感覚を減少させるインプラント型装置(implantable device:埋め込み型装置)によって行われる。脊髄刺激の場合、刺激電極は一般に硬膜外腔に配置されるが、パルス発生器は電極からやや離れた位置、例えば腹部や臀部に配置されてもよいが、導線を介して電極に接続される。特定の標的神経またはその近傍に配置された電極は、神経線維の活動電位を誘発することによって神経調節を行い、その結果、神経シナプスで神経伝達物質が放出され、次の神経とシナプス伝達が行われる。このような伝播は、埋め込まれた電極(implanted electrodes)が一度に多くの神経や軸索を刺激するため、相対的に大きく、あるいは所望よりも拡散した生理学的効果をもたらす可能性がある。神経経路は複雑で相互に連結しているため、より的を絞った変調効果の方が臨床的に有用かもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0388132号明細書
【図面の簡単な説明】
【0004】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明を添付の図面を参照しながら読むと、よりよく理解されるであろう。
【0005】
図1】本開示の実施形態による、視床下部代謝制御中枢と、グルコースおよび栄養素の利用可能性に関するホルモン/内分泌およびニューロン/感覚情報の統合におけるその役割の概略図である。
図2】本開示の実施形態による、視床下部におけるグルコース興奮性ニューロン集団とグルコース抑制性ニューロン集団の概略図である。
図3A】本開示の実施形態による、腸-肝-脳軸から視床下部への自律神経入力の概略図である。
図3B】本開示の実施形態による、腸-肝-脳軸から視床下部への自律神経入力の概略図である。
図4】門脈センサの非侵襲的超音波神経調節と、本開示の実施形態による摂食状態シグナル伝達を模倣してグルコース廃棄を誘発するための追加刺激とを組み合わせた複合神経調節技法の概略図である。
図5A】毎日肝門脈叢(単一部位)を刺激している間の動物モデルにおけるグルコースコントロールを示す。
図5B】単一部位治療後の超音波停止に伴う、図5Aの効果持続期間の3日での停止を示す。
図6】二重部位刺激(すなわち、肝門脈叢と上腸間膜叢)後の動物モデルにおける長期寛解を示しており、低用量GLPアゴニストであるリラグルチドを用いた二重部位刺激では、さらに寛解が延長したことを示す。
図7】薬物単独と、単一部位刺激と薬物治療を組み合わせた神経調節の併用との動物モデルにおける寛解期間を比較したものである。
図8A】後期ZDF(Zucker diabetic fatty rats)動物におけるデュアルサイト刺激の複合神経調節の結果としての循環グルコースに対する効果を示す。
図8B】後期ZDF動物における二部位刺激の複合神経調節の結果としての循環グルコースに対する効果を示す。
図9】動物モデルにおけるメトホルミン治療中の二部位(デュアルサイト)対単一部位(シングルサイト)刺激を示す。
図10A】神経調節療法の併用、単一部位刺激、および対照の動物モデルにおける非絶食時血糖濃度を示す。
図10B】異なる単一部位刺激部位/標的単独の動物モデルにおける血漿中GLP-1濃度を示す。
図10C】異なる単一部位刺激部位/標的単独の動物モデルにおける循環インスリン濃度を示す。
図10D】異なる単一部位刺激部位/標的単独の動物モデルにおけるGABA濃度を示す。
図10E】異なる単一部位刺激部位/標的単独の動物モデルにおける循環グルカゴン濃度を示す。
図11】神経調節療法の併用、単一部位刺激、および対照の動物モデルにおける急性経口ブドウ糖負荷試験における循環グルコース濃度を示す。
図12】神経調節療法併用モデル動物および対照動物における、さまざまな開始時点および中止時点における非絶食時循環グルコース濃度を示している。
図13A】急性経口ブドウ糖負荷試験における循環グルコース濃度を、栄養補助剤を用いた単一部位刺激および対照の動物モデルで示したものである。
図13B】急性経口ブドウ糖負荷試験における循環グルコース濃度を、栄養補助剤を用いた単一部位刺激および対照の動物モデルで示したものである。
図14】本開示の実施形態によるパルス発生器を用いた神経調節システムの概略図である。
図15】本開示の実施形態による神経調節システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、1つまたは複数の具体的な実施形態について説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装のすべての特徴が本明細書に記載されているわけではない。このような実際の実装の開発では、あらゆるエンジニアリングまたは設計プロジェクトと同様に、システム関連およびビジネス関連の制約への準拠など、開発者の特定の目標を達成するために、実装ごとに異なる多数の実装固有の決定を行わなければならないことが理解されるべきである。さらに、このような開発努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する通常の技術者にとっては、設計、製造、および製造の日常的な事業であることが理解されるべきである。
【0007】
本明細書で示される例または図解は、それらが使用されるいかなる用語または用語の制限、制限、または明示的な定義とみなされるものではない。代わりに、これらの例または図示は、様々な特定の実施形態に関して記載され、例示的なものとしてのみ見なされる。当業者であれば、これらの例または図解が使用される任意の用語または用語は、本明細書においてそれとともに、または他の場所で与えられるか、または与えられない他の実施形態を包含し、すべてのそのような実施形態は、その用語または用語の範囲内に含まれることが意図されることを理解するであろう。このような非限定的な例および図示を指定する言語には、これらに限定されないが、以下が含まれる。「例えば:for example」、「実例としては:for instance」、「~など:such as」、「含む:including」、「特定の実施形態において:in certain embodiments」、「いくつかの実施形態において:in some embodiments」、および「実施形態において:in one (an) embodiment」。
【0008】
本明細書に提供されるのは、神経調節エネルギーの適用を含む複合神経調節技法(combined neuromodulation techniques:神経調節技法の組み合わせ技法)である。複合神経調節技法は、複合神経調節技法の結果である目標となる生理学的結果(targeted physiological outcomes、例えば、生理学的状態の治療、予防、治癒、または寛解を引き起こす)を引き起こす。例えば、本明細書で提供されるような複合神経調節技法は、医薬または他の神経調節治療の効果を増強または増加させるため、および/または以前は治療に抵抗性であった患者または反応性が低かった患者を反応性にさせるために使用され得る。実施形態において、複合神経調節技法は、生理学的制御経路(physiological control pathway)の異なる部分を標的とするために、2つ以上の異なる関心領域における神経調節治療を含む。実施形態において、複合神経調節技法は、少なくとも1つの関心領域を標的とする神経調節治療と、少なくとも1つの薬物治療(pharmaceutical treatment)とを含む。
【0009】
複合技術の実施形態では、第1の部位(例えば、複合神経調節技法の第1の部分)における神経調節を使用して、医薬治療を増強し、および/または患者の第2の部位もしくは異なる部位における神経調節を増強することができる。したがって、増強は、標準用量または推奨用量(standard or recommended dose)を調整するために、医薬治療または複合神経調節用量を変更することを可能にし得る。一例では、神経調節がない場合に投与される標準用量と比較して、同じ臨床効果を得るために患者に投与される医薬治療組成物(pharmaceutical treatment composition)の量が少なくなる。したがって、治療組成物の投与量が少なくなるため、治療費が安くなる可能性がある。さらに、患者はより低用量の薬物治療(certain drug regimens)にさらされることになり、その結果、副作用のリスクが減少し、特定の薬物レジメンをより長期間にわたって投与することが可能になる。別の例では、1つまたは複数の標的部位における神経調節エネルギーは、所望の生理学的結果を達成するために、関心領域内の特定の治療標的により少ない神経調節エネルギーが適用されるように、複合治療の増強に基づいて調節(例えば、低下)され得る。
【0010】
増強は、複合神経調節技法の第1の部分(first part of the combined neuromodulation technique)が複合神経調節技法の第2の部分の臨床効果を増強するような双方向性であってもよいし、その逆であってもよい。一実施形態では、神経調節は、医薬治療の臨床効果または神経調節の効果の一方または両方を増強するために、医薬治療も受けている患者に提供される。例えば、薬学的治療の投与は、神経調節の成功(例えば、生理学的効果を引き起こすために患者の関心領域への神経調節エネルギーの適用の成功)に関連する患者内の分子または細胞の存在またはレベルを活性化または変化させることができる。したがって、薬物治療は、神経調節を増強するように作用し得るか、または神経調節に対する患者の応答を改善し得る。同様に、2部位治療プロトコル(two-site treatment protocol)の一方または両方の部位における神経調節は、他方の部位における臨床効果を増強する役割を果たすことがある。
【0011】
超音波は、脾臓(免疫細胞および免疫系機能(immune cells and immune system function)を調節する神経を活性化する)および肝臓(グルコース/栄養素感知および代謝系機能(glucose/nutrient sensing and metabolic system function)を調節する神経を活性化する)を含む器官およびその周辺の末梢神経野(peripheral nerve fields、求心性および求心性の神経野(efferent and afferent nerve fields)の両方)を刺激することができる。実施形態において本明細書に提供されるのは、遺伝的脂肪糖尿病ザッカー(ZDF:Fatty Diabetic Zucker)齧歯類モデルにおいてさえも、II型糖尿病の長期寛解を提供するという予期せぬ結果をもたらす、超音波治療の抗糖尿病効果を改善する技術である。実施形態において、本技術は、感覚野(sensory field)の超音波神経調節(すなわち、上行グルコースセンサ求心性経路の肝/肝門脈叢神経調節:hepatic/hepatoportal plexus neuromodulation of the ascending glucose sensor afferent pathway)および消化管からの神経内分泌野の超音波神経調節(すなわち、グルカゴン様ペプチド(GLP:glucagon-like pepti)分泌および関連するホルモンおよび求心性経路の刺激)の両方を使用する、視床下部代謝制御中枢の二重刺激治療を含む。実施形態において、複合神経調節技法は、感覚野の超音波神経調節(すなわち、上行グルコースセンサ求心性経路の肝/肝門脈叢神経調節)および内分泌標的の医薬的活性化(すなわち、リラグルチド;GLPアゴニスト:liraglutide; GLP agonist)を含む。実施形態において、複合神経調節技法は、神経調節エネルギーの標的として、上腸間膜神経叢、下腸間膜神経叢、および/または胃底(the superior mesenteric plexus, the inferior mesenteric plexus, and/or the fundus of the stomach)を標的とすることを含む。
【0012】
複合神経調節技法の開示された部分は、同時に投与(administer)されてもよいし、組み合わせの異なる部分を時間的に分離して投与してもよい。一実施形態では、組み合わせの異なる部分は、互いに30分以内または互いに60分以内に適用され得る。一実施形態において、組み合わせの異なる部分は、少なくとも5分間隔てて適用され得る。本明細書で提供されるのは、相乗的な二部位効果を可能にする肝臓対消化管の時間的に分離された神経調節を提供する二部位刺激間の特定の時点(specific time points between dual-site stimulation)であり、開示されるタイミングは、示される独特の結果(すなわち、長期間の糖尿病寛解:long term diabetes remission)を得るために摂食中に起こるであろう求心性シグナル伝達と一致するように設計される。従って、本明細書で提供されるように、複合的神経調節治療は、複合的神経調節の最初のエネルギー適用によって引き起こされるグルコース動態に合わせることができる。一実施形態では、2回目以降の治療は、最初の40分~60分のより高いグルコース期間内に適用または投与される。一実施形態では、2回目以降の治療は、低下したグルコース期間内で、最初の40分~60分の後に適用または投与される。複合神経調節の異なる部分は、1回の患者の診察で一緒に投与される治療の一部であってもよい。
【0013】
複合神経調節技法は、異なる日、週、または月に投与される複数の複合神経調節を含む患者の治療計画(treatment regimen:治療レジメン)の一部であってもよいことが理解されるべきである。本明細書に開示されるような複合神経調節は、患者の進行または臨床状態に基づいて、治療レジメンの過程で変更または調整され得る。調整には、エネルギー適用パラメータおよび/または薬剤用量の調整が含まれ得る。
【0014】
神経調節技法の組み合わせによる予期せぬ効果としては、上記2つの二重調節技法(two dual-modulation techniques)を用いた糖尿病動物モデル(diabetic animal models)における長期寛解(long-term remission)が挙げられる。さらに、肝部位(すなわち肝門部神経叢:hepatoportal nerve plexus)の超音波活性化は、以前に実証されたよりも低い超音波出力を用いて実証されている。この低出力による活性化は、以前に説明された高出力による活性化/神経調節よりも長い持続時間/刺激時間にわたって肝部位を刺激することによって達成される。
【0015】
開示された複合神経調節技法の実施形態は、代謝障害を有する患者を治療するための医薬治療および神経調節技法を含む。本開示の特定の実施形態は、血糖調節の文脈で議論される。図1は、視床下部代謝制御中枢(hypothalamic metabolic control center)の概略図であり、グルコースおよび栄養素の利用可能性に関するホルモン/内分泌および神経/感覚情報(hormonal/endocrine and neuronal/afferent sensory information)の統合におけるその役割を示している。視床下部内の特定の核はグルコースの恒常性維持に機能し、末梢の効果組織(肝臓、腸、筋肉、膵臓など)と連携して、感覚情報に基づいて全身のグルコース「セットポイント:set point」(すなわち、目標血糖濃度:target blood glucose concentration)を仲介することがある。さらに、ホルモン/内分泌および神経/自律神経入力(hormonal/endocrine and nerve/autonomic inputs)の両方からの感覚情報を統合(integrating sensory information)する脳のこの領域の重要性は、ホルモンおよび神経伝達物質受容体を含み、循環血液との統合(視床下部正中隆起および回旋器官:at the median eminence of the hypothalamus and circumventricular organs)および求心性末梢感覚神経への直接的および間接的接続を介してホルモンおよび自律神経環境の両方を監視するこの領域の細胞/神経集団の存在によって裏付けられている。
【0016】
図2は、視床下部におけるグルコース興奮性ニューロン集団とグルコース抑制性ニューロン集団(glucose-excited and glucose-inhibited neuronal populations in the hypothalamus)の模式図である。現在のグルコース濃度に基づいてファイヤリングレート(firing rates:発火率)を増減させる感覚ニューロンの集団は、糖調節系の構成要素である。視床下部の弧状核(ARC:arcuate nucleus)内の細胞集団(すなわち、正中隆起(median eminence、血液へのアクセス)の近くに位置する部位)は、(直接および他の核からの間接的な)入射/遠心性感覚ニューロン神経支配を持ち、室傍核(PVN:paraventricular nucleu)のような主要な代謝制御中枢への遠心性出力を持つ。POMC(pro-opiomelanocortin:プロオピオメラノコルチン)/CART(コカインおよびアンフェタミン制御転写物:cocaine- and amphetamine-regulated transcript)ニューロンは、全身の食欲減退(および食欲抑制/満腹感)に関連し、NPY(神経ペプチドY:neuropeptide Y)/AgRP(アゴチ関連ペプチド:agouti-related peptide)ニューロンは、食欲刺激(および食欲増進)に関連する。このニューロン集団は、図2に示すように、グルコース廃棄対グルコース取り込み(glucose disposal vs. glucose uptake)の急性作用(acute effects)を有する。さらに、これらのニューロンは、NPY/AgRP側への抑制性入力として機能する抑制性GABA(ガンマアミノ酪酸:Gamma aminobutyric acid)ニューロンとも関連している。
【0017】
図3A図3Bは、腸-肝臓-脳軸(gut-liver-brain axis)から視床下部への自律神経入力を示す。図3Aは腸/肝臓の門脈-中腸栄養センシング(intestine/liver portal-mesenteric nutrient sensing)の概略図である。肝門脈叢(hepatoportal plexus)には、視床下部と連絡する一連の求心性ニューロン(a set of afferent neurons)がある。これらのニューロンは門脈と肝動脈(portal vein and hepatic artery)に関連しており、肝臓への門脈と末梢の血液供給の間のグルコースの勾配(gradient)に基づいてファイヤリングレートを変化させる(例えば、食事は腸からの血液によるグルコースの増加、あるいは門脈と肝動脈のグルコース濃度の上昇に関連する)。この部位を刺激し、これらのニューロンを活性化することは、糖尿病の動物モデルに対して、例えば毎日の刺激条件下で、多大な効果をもたらす。
【0018】
しかし、図3Bに示すように、この肝門脈叢の機能は、門脈内の「食物:food」(すなわちグルコース)の直接的な検出以上に依存している。相互作用のひとつに、腸管インクレチンおよび自律神経感覚系との相互作用がある。肝グルコースセンサのファイヤリングレートを変化させることに加え、食物を摂取し、消化管内に栄養分が存在すると、消化管壁を覆う細胞(the cells lining the gastrointestinal tract wall.)からインクレチン(incretins、およびその他のホルモン)が分泌される。これらのホルモンは複数の機能を果たす:1)胃の運動と排出を変化させる(門脈グルコースセンサファイヤリングのキネティクス/持続時間(kinetics/duration of portal glucose sensor firing)を変化させる可能性がある)、2)消化管内の腸管ホルモン依存性感覚ニューロン(gut hormone dependent sensory neurons)のファイヤリングレート/シグナル伝達を調節する(これらは栄養受容体によっても調節され、視床下部に投射されることが知られている)、3)循環系に波及し、直接的な神経経路ではなく血液を介して正中隆起/脳室下部の器官(median eminence/circumventricular organs)を通じて視床下部の機能を変化させる。
【0019】
図4は、門脈センサ(portal sensors)の超音波神経調節と追加刺激(別の標的での別の超音波神経調節または薬物治療であり得る)を含む複合神経調節技法の概略図である。二重部位または二重刺激の神経調節は、刺激を停止した後でも糖尿病の「寛解:remission」または長期的な血糖コントロールをもたらすが、これは本開示の実施形態の予期せぬ結果である。摂食時に活性化され、代謝系の変化を引き起こす(そして健康的な糖調節に必要な)経路が複数存在する。非侵襲的技術(non-invasive tec)として、複合神経調節の一部としての超音波神経調節技法は、複数の経路を刺激または誘発するために使用することができる。これは、超音波で2つ以上の経路を刺激すること(すなわち、上記のように肝門部と消化管部位の両方(both the portahepatic and a gastrointestinal site)を刺激すること)、あるいは、超音波刺激で1つの経路を刺激すること(すなわち、神経治療)と薬物(すなわち、ホルモンまたは受容体経路)を併用することで行うことができる。さらに、このように「二重刺激」は、摂食状態や食事中の「自然な」シグナル伝達を模倣するために、時間や間隔をあけて行うことができる。
【0020】
実施例
以下のセクションでは、本明細書で提供される実施例の複数の態様に関する実験パラメータと実験結果を示す。
【0021】
材料と方法
1.1MHzシングルエレメント集束超音波システム
1.1MHzシングルエレメント集束超音波システムには、信号5発生器(signal 5 generator、モデル33120A、Agilent Technologies Inc.、カリフォルニア州サンタクララ)、RFパワーアンプ(モデル350L、Electronics & Innovation Ltd.、ニューヨーク州ロチェスター)、および1.1MHz集束シングルエレメント超音波トランスデューサ(モデルH102、Sonic Concepts Inc.)トランスデューサは、マッチングネットワーク(Model H102, Sonic Concepts Inc.)トランスデューサーエレメントは直径64mm、曲率半径63.2mm10で、中央に直径20mmの穴があり、そこに画像誘導用の小型イメージングトランスデューサーを挿入することができる。トランスデューサーは、脱気した水で満たされた高さ6cmのプラスチック製スタンドオフコーンを介して動物に音響的に結合された。
【0022】
波形の公称設定を以下に示す。
キャリア周波数-1.1MHz
135mVpk-pk信号発生器振幅
150マイクロ秒パルス長
5Hzパルス繰り返し周波数
最大負圧=0.78MPa
刺激時間=合計3分(解剖学的部位ごと)
パルス平均強度(Isppa)=23W/cm
時間平均強度(Ispta)=6,263mW/cm
MI=0.6
TI=0.7
【0023】
システムの音響性能(acoustic performance)は、ISO/IEC 17025:2017認定研究所(Acertara Acoustic Labs, Longmont, CO)で特性評価された。上記の設定の下で、3つの別々の20システムを特性評価し、平均1.79(±0.10標準偏差)の機械的指数MI、1.87(±0.11)MPaの軽減ピーク負圧pr.3、125.7(±15.0)W/cmの軽減空間ピークパルス平均強度Isppa.3、94.3(±11.2)mW/cmの軽減空間ピーク時間平均強度Ispta.3を得た。MIの良好な直線性(0.9947 R2)は、100mVpk-to-pkから200mVpk-to-pkの振幅範囲で観察されたため、音響出力25は他の振幅、パルス持続時間、パルス繰り返し周波数に合理的に直線的に外挿することができる。シミュレーションされた圧力プロファイルは、Field II120,121を使用して横方向に1.8mm、深さ方向に6mmの全幅半分最大振幅を持つ。ピークの-6dB径は、認定研究所においてXスキャン軸で1.45(±0.02)mm、Yスキャン軸で1.46(±0.02)mmと測定された。
【0024】
神経調節開始前の超音波スキャンには、Vivid E9超音波システム(GEヘルスケア:商標)または11Lプローブ(GEヘルスケア:商標)を使用した。プローブの撮像ビームは超音波刺激ビームと一直線上にあった。そのため、超音波ビームが関心領域に当てられていることを、標的とした臓器/リンパ節の画像(Vivid E9上で可視化された画像)を用いて確認することができた。
【0025】
以下のパラメータは、低出力(例えば、トリクル:trickle)神経調節実験に使用される代替のハンドヘルド超音波システムに関するものである。
GE V-scanハンドヘルド超音波システム(GEヘルスケア:商標)。設定#117-腹部/深部プローブのプリセット、ユニットはカラーモードに設定(MI:1.0、Tis:1.2)
この設定での焦点深度は4.1cmと見積もられた。
上述のプロトタイプの刺激に比べ、これらの設定はより低出力の刺激を提供する。
キャリア周波数-1.8MHz
PRF=68Hz
デューティ・サイクル=0.0048
Isppa(ピーク音響インテンシティ)=200W/cm
Ispta(平均音響インテンシティ)=10mW/cm
刺激時間-20分(解剖学的部位ごと)
【0026】
以下は、使用した糖尿病モデル動物および超音波神経調節法に関するものである。
2型糖尿病モデル動物
Zucker糖尿病性脂肪(ZDF)ラットモデル
成体雄性ZDFラット(Charles River,Kingston,NY USA)は8週齢前に到着するように注文した。すべての動物に高カロリーのげっ歯類用飼料(Purina 5008)を与え、水は自由摂取とした。すべてのラットは25℃で12時間の明暗サイクルで飼育され、ストレス反応によるグルコース測定値の交絡の可能性を最小限にするため、実験実施前にハンドリングを行いながら最低1週間馴化させた。すべての手順は、GEグローバルリサーチ(商標)のInstitutional Animal Care and Use Committee (IACUC)によって承認されたプロトコルのもと、National Institutes of Health (NIH)のガイドラインに従って行われた。ZDF動物は、ストレスによる循環グルコースの変化を防ぐため、毎日ハンドリングして馴化させた。8週間後、ZDFげっ歯類は糖尿病表現型の急速な進展(rapid development of the diabetic phenotype)を示し始め、次にSham-CTRL(コントロール)またはpFUS(末梢集束超音波:peripheral focused ultrasound)治療群に分け、急性または慢性の超音波刺激(acute or chronic ultrasound stimulation)を行った。
【0027】
すべてのラットを1-4%イソフルランで1L/minO2で麻酔した。その後、ラットを水循環式加温パッドの上に置き、直腸体温計のプローブで体温を維持した。腹部は完全に剃毛し、後で肝系または消化器系にある神経叢を刺激できるように、毛をネアーで完全に取り除いた。肝門部、眼底、上腸間膜神経および下腸間膜神経の部位を、特注の超音波画像装置(Vivid E9;GEヘルスケア:商標)を用いて特定した。その後、これらの位置に永久マーカーで印をつけ、超音波刺激プローブを標的部位にあてた。
【0028】
単一部位刺激条件:
肝/門脈、眼底、上腸間膜神経叢、下腸間膜神経叢のいずれかの部位の標的を特定した後、pFUSプロトタイプ装置またはハンドヘルド超音波装置のいずれかを使用して、以下のいずれかの指定超音波治療を行った。
プロトタイプのpFUS装置は、その後3分間の刺激を与えた(1.1MHz、150バーストサイクル、500μsバースト周期)。
携帯型超音波診断装置では、低出力設定で20分間の刺激を与えた(1.8MHz、パルス繰り返し周波数68Hz、デューティ・サイクル0.0048%)。
【0029】
ラットの血糖値は、慢性試験では毎日、急性試験およびOGTT試験では5分間隔で監視された。慢性試験では、循環マーカー分析のため、週単位で血液サンプルを追加採取した。最終的な血液サンプルは安楽死時に採取され、循環インスリンレベルの評価に用いられた。
【0030】
デュアルサイト刺激条件:単一部位刺激試験の後、単一部位刺激試験で同定されたリード標的部位(門脈領域、上腸間膜神経叢など:portal region, superior mesenteric nerve plexus)の組み合わせを、1回のセッション中に組み合わせて試験した。
【0031】
プロトタイプのpFUS装置では、刺激(1.1MHz、1パルス200mV、150バーストサイクル、500μバースト周期)をターゲットごとに3分間、各部位に加えた。例えば、最初にpFUSを肝門脈領域に3分間印加した。肝門脈領域へのpFUS刺激の直後にプローブを上腸間膜神経領域に移動し、2回目のpFUSを適用した。肝および上腸間膜領域へのpFUSの適用は、最初の刺激部位を交互に変えながら毎日変化させた(例えば1日目:肝pFUS->上腸間膜pFUS、2日目:上腸間膜pFUS->肝pFUSなど)。最初の解剖学的標的部位と2番目、あるいは2番目と3番目の解剖学的標的部位の刺激の間には、約5分の遅延期間があった。
【0032】
ハンドヘルド型超音波装置では、ハンドヘルドを使用した上述の低出力刺激を各ターゲットにつき20分間、各領域に適用した。プロトタイプのpFUS装置と同様に、ハンドヘルド型超音波装置も最初は1つのターゲット(標的)に、次いで2つ目のターゲットに適用し、ターゲットの交替は毎日行った(例:1日目:肝pFUS->上腸間膜pFUS、2日目:上腸間膜pFUS->肝pFUSなど)。ただし、ハンドヘルド装置の場合は、結果を混乱させる可能性のあるハンドヘルド装置の発熱をいくぶん抑えるため、標的刺激と標的刺激の間に20分間の休息時間を設けた。
【0033】
尾静脈(tail vein)から採取した血液サンプルは、FreestyleFreedom Lite(Abbott Diabetes Inc.フリースタイルフリーダムライトメーターは、少量の血液(0.3uL)を使用するため、採血後に総量を回復させるために追加の輸液は必要なかった。
【0034】
ラットは麻酔をかけ、尾静脈カテーテル20を留置し、ベースライン血液サンプルを採取する前に一晩絶食させた(12~16時間)。ベースライン検体の採取後すぐにpFUS刺激を1回行い、動物を麻酔から回復させた。回復後、経口注射器で2g/kgのグルコース溶液を単回経口投与した。グルコース投与後、尾静脈からカテーテル採血により5分ごとに血液サンプルを採取した。すべての処置は、GEグローバルリサーチ(商標)のInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)に従って行われた。AUC-OGTT(経口ブドウ糖負荷試験:oral glucose tolerance test)の算出には、ベースライン時およびブドウ糖過負荷から120分後のブドウ糖濃度から求めた曲線下面積(AUC:area under the curve )を考慮した。
【0035】
開示された神経調節技法には、患者への医薬治療の投与が含まれる。薬学的治療は、神経調節技法と組み合わせた場合に所望の治療効果または臨床効果を有する任意の化合物、薬剤、薬物、治療、または他の治療用量、レジメン、またはプロトコルであり得る。薬学的治療は、一例として、経口、非経口、静脈内、局所、吸入、または粘膜投与の薬物の1つ以上を含むことができる。
【0036】
薬剤介入とpFUS療法の併用は、有効期間だけでなく、治療効果に対する二重療法の効果を判定するために試験された。メトホルミンとリラグルチド(metformin and liraglutide)に関するヒトでの用量反応関係を用いて、最低有効量(less than or equal to efficacious dose affecting、ED20)を選択した。この用量(ED20)は、典型的な低用量の選択肢として、服用した集団の20%に量的効果(全部か皆無か:all or nothing)をもたらす用量を示している。
【0037】
メトホルミン(33-100mg)は味覚嫌悪を避けるために滅菌水に配合し、血漿中半減期が6.2時間であることを考慮して、1日2回、12時間間隔で経口シリンジ投与した。この投与レジメン(タイミング)はヒトで使用されているものと同じであり、朝夕の食事の前に投与する。
【0038】
リラグルチド(20μg-50μg)は、非経口注射用にリン酸二ナトリウム二水和物(disodium phosphate dihydrate)1.42mg、プロピレングリコール14mg、フェノール5.5mg、水で製剤化され、1日1回皮下注射された。この投与方法は、リラグルチドの血漿中半減期が約15時間と長いことを考慮したもので、すべての症例で午前中に投与される。
【0039】
図5Aは、毎日の肝門脈叢(単一部位)刺激中の動物モデルにおけるグルコースコントロールを示す。図5Bは、超音波の停止に伴う図5Aの効果の持続期間の3日での停止を示す。毎日の刺激は、図5Aに示されるように、ZDFモデルにおいて高血糖を予防または逆転させるのに適切である。しかしながら、図5Bに示されるように、超音波処置の停止時に、高血糖はわずか3日で戻る。また、ナイーブ/非糖尿病コホート(naive/non-diabetic cohort)の刺激に関連するデータ、および見せかけのコントロール(sham control、すなわち、超音波プローブの配置はあるが、刺激/超音波エネルギー送達はない)の結果にも示されており、無治療のZDFモデルにおいて予想される血糖の漸進的上昇(すなわち、糖尿病の進行)を表している。従って、図5Aで実証された循環グルコースの超音波媒介制御は、図5Bに示されるように、超音波刺激用量の停止後、制御されない状態に戻るが、一方、集束超音波を用いた別の群は、循環グルコースの減少を実証する。
【0040】
図6は、二重部位刺激(すなわち、肝門脈叢および上腸間膜叢、データ100に示す結果)後の動物モデルにおけるより長期の寛解、および二重部位刺激を低用量GLPアゴニストであるリラグルチド(low dose GLP agonist liraglutide)と追加的に使用した場合のさらに長期の寛解(データ102に示す結果)を示す。この結果は、二重部位刺激(すなわち、肝門脈叢と上腸間膜叢の両方への刺激)により、血糖がさらに低下することを示している(7日間毎日刺激した後)。さらに、7日間の治療後、実験の残りの期間は超音波刺激を停止(8日目)したが、超音波停止後36日間(追加治療なし)、平均血糖値は200mg/dL以下のままであった。これは、ZDFモデルで報告された寛解期間の中で最も長い期間の一つである。
【0041】
さらに、GLPアゴニストであるリラグルチド(すなわち、上腸間膜神経叢刺激部位(superior mesenteric plexus stimulus location)に関連するエフェクター組織を標的とする薬物;102)による低用量治療に加えて二部位刺激を行った場合、ZDF動物が200mg/dL未満を維持した期間はさらに延長した(やはり、8日目の超音波停止後;超音波後56日間、血糖値は200mg/dL未満を維持した)。
【0042】
図7は、薬物単独治療と、単一部位刺激と薬物治療とを組み合わせた神経調節の動物モデルにおける寛解期間を比較したものである。図6に示された二重治療の結果とは対照的に、図7は、薬物単独治療(すなわち、低用量のリラグルチド;200に示されたデータ)または薬物治療プラス単一の肝門脈叢刺激治療(すなわち、門脈部位のみの超音波を7日間行い、8日目以降は薬物のみ;202に示されたデータ)では、同じ長期寛解が得られないことを示している。リラグルチド治療を継続しても(データ200)、血糖は13日以内(超音波検査後)に200mg/dL以上に上昇した。単一部位刺激(すなわち、7日間の肝門脈叢刺激のみ)は、200mg/dL以下の残存期間を21日間に改善したが、長期寛解(すなわち、ZDFモデルにおいて4週間を超える寛解となる可能性がある)には至らなかった。一実施形態において、開示された治療効果は、2つ以上の薬剤の投与によって達成され得ることが理解されるべきである。
【0043】
図8A~8Bは、後期ZDF動物(late-stage ZDF animal)における二部位刺激の複合神経調節の結果としての循環グルコースに対する効果を示す。別の実験では、二重部位超音波刺激治療(すなわち、肝門脈叢および上腸間膜叢刺激)が、後期ZDFコホート(平均血糖がすでに400mg/dL超(>400 mg/dL)に達していた)において実施された。以前にZDFモデルで長期寛解を示した数少ない治療法(すなわち、脳室内(icv:intracerebroventricula)腔または弧状核の下にある脳室へのFGF1注射後4週間の寛解)は、すでに病気の進行がかなり進んでいる(すなわち、平均グルコースが300mg/dL以上)ZDF動物では効果がなかった。しかし、図8Aに示すように、超音波刺激で治療した11匹の動物のうち7匹は、5日間の毎日の超音波刺激の後、30日間の寛解(200mg/dL以下のグルコースレベル)で反応した(その後、6日目に超音波治療を中止した)。興味深いことに、図8Bに示すこの後期段階のコホートの動物のうち4匹は、超音波治療中止後8日目までに血糖値の上昇を示し、17日目、27日目、および34日目にさらに1日の「ボーラス:bolus」二重部位刺激を受けたが、高血糖に進行し続けた(各刺激が血糖値の一過性の低下をもたらしたにもかかわらず)。このデータから、神経調節を併用した治療による長期寛解は、インスリンシグナルが無傷であることと関連している可能性が示された。
【0044】
図9は、動物モデルにおけるメトホルミン治療中の二重部位対単一部位刺激を示す。追加の実験コホート(additional experimental cohort)において、低用量の抗糖尿病薬メトホルミン(anti-diabetic drug Metformin、すなわち、代替の、非GLP経路の糖尿病薬:non-GLP pathway diabetes medication)の投与の有無にかかわらず、単一部位刺激および二重部位刺激治療(ここでも、超音波刺激を7日間行い、その後、実験の残りの期間は停止する)を行った。二重部位刺激のデータであるデータ300は、二重超音波刺激(薬物なし)コホートにおいて、超音波停止後の長期寛解(すなわち4週間」より長く)の達成を再び示している。二重部位刺激は肝臓(肝門脈叢刺激:hepatoportal plexus)と消化管(上腸間膜叢刺激:superior mesenteric plexus stimulation)の刺激であった。しかし、このコホートに低用量のメトホルミンを加えても寛解延長には至らなかった(図6でGLP作動薬を用いた場合と同様;データ302)。データ304に示すメトホルミン単独コホートは、一時的に200mg/dL以下に低下したが、リラグルチド単独コホートほど有効ではなかった(血糖の絶対的低下または200mg/dL以下になった時間の長さの点で)。同様に、データ306に示すメトホルミン+単部位(肝門脈叢)刺激群は、図6に示すように、血糖低下時間の点で単部位+リラグルチドコホートほど有効ではなかった。
【0045】
図10A-Eは、二重部位、多数部位、単一部位超音波刺激(dual-site, multi-site, or single-site ultrasound stimulations:デュアルサイト、マルチサイト、またはシングルサイト超音波刺激)のデータを示す。図10Aにおいて、血糖は、上述の二重部位治療(すなわち、肝門脈叢刺激および上腸間膜叢刺激;データ400として示す)、複数の単一部位(すなわち、肝門脈叢/肝臓(データ402として示す)単独、または上腸間膜叢/肝臓(データ403として示す)単独)での刺激を14日間継続してモニターした。すなわち、肝門脈叢/肝臓(データ402として示す)単独、または上腸間膜叢/GI(データ404として示す)単独)、または三重刺激(すなわち、肝門脈叢/肝臓、上腸間膜叢/GI、さらに膵臓への直接刺激)。以前の報告では、膵臓を直接刺激するとインスリンの分泌が増加することを示した(グルカゴンには影響なし)。
【0046】
肝臓およびGI部位の刺激により、ZDFモデルコホート(ZDF model cohorts)における血中グルコースは、200mg/dL未満の値まで急速に減少した(データ404として示す)。第3の部位(膵臓;データ406として示す)の追加は、血中グルコース値における付加的な利益または減少をもたらさなかった。単一部位刺激処置(すなわち、肝臓またはGI刺激;402、404)の両方は、14日目にグルコースの同じ減少を達成しなかった血中グルコースのより遅い減少(二重刺激処置と比較して)をもたらした。超音波を伴わない見せかけのコントロール/プローブ配置(sham control/probe placement)を受けたZDFは、グルコースレベルのいかなる減少も示さなかった。図10Bは、単一部位刺激単独の動物モデルにおける血漿GLP-1濃度を示す。図10Cは、単一部位刺激単独の動物モデルにおける循環インスリン濃度を示す。図10Dは、単一部位刺激単独の動物モデルにおけるGABA濃度を示す。図10Eは、単一部位刺激単独の動物モデルにおける循環グルカゴン濃度を示す。図10B~Eに示すように、膵臓刺激により血中インスリン濃度が上昇し(図10C)、GI刺激によりGLP濃度(図10B)およびGABA濃度(図10D)が上昇した。
【0047】
図11は、神経調節療法、単一部位刺激、および対照を組み合わせた動物モデルにおける急性経口グルコース負荷試験における循環グルコース濃度を示す。ZDFモデルにおいて、肝臓刺激単独(データ500に示す;門脈領域刺激: portal region stimulus)は、見せかけのコントロール(データ502に示す)と比較して、改善されたグルコース調節をもたらした。すなわち、グルコース値は経口グルコース負荷試験中の40分後に減少した。驚くべきことに、消化管(GI)部位のいずれも、これらの短期/急性OGTT試験中に改善を示さず、各異なるGI部位は、OGTTグルコース曲線に対して異なる効果を示した。すなわち、上腸間膜神経叢、下腸間膜神経叢(データ503に示す)、または胃底の単一部位刺激は、見せかけのコントロールと比較して、OGTTの最初の40分間にグルコースレベルを上昇させた。さらに、2つの腸間膜部位は試験中(200分まで)グルコースレベルが高かった。興味深いことに、上腸間膜叢と門脈部位の二重刺激により、OGTT曲線動態は、最初の40分間は単一の消化管部位と同様の曲線を示したが、40~200分の間は単一の肝臓部位と同様の曲線を示した。そして、上の図における二重部位刺激の長期的利益は明らかであり、深いものであるが(すなわち、ZDFモデルにおける長期寛解)、GI刺激のさらなる利益は、急性OGTTテストではなかなか明らかにはならない。さらなる驚くべき結果は、二重部位刺激(データ504に示す)と胃底刺激(データ506に示す)との間の同様の動態であり、単一の自律神経刺激部位が「混合:mixed」または二重部位刺激治療と同様の結果をもたらし得ることを示唆している。実施形態において、開示された寛解結果は、単一部位刺激で達成され得ることが理解されるべきである。一実施形態において、胃腸組織の単一部位刺激は、代謝障害の寛解を誘導し得る。一実施形態において、単一部位刺激は、本明細書に開示されるような二部位刺激の合計時間であってもよい。
【0048】
図12は、さまざまな開始時点および停止時点における、神経調節療法を併用した動物モデルおよび対照における非絶食循環グルコース濃度(non-fasted circulating glucose concentrations)を示す。図5-11のデータは、比較的高出力レベル(すなわち、6,263mW/cm)のプロトタイプ超音波システムを使用して生成されたが、これはキャビテーションおよび/または組織損傷に関連するレベルよりはるかに低い。図12は、ハンドヘルド/バッテリー駆動の超音波システム(すなわち、~10mW/cmで上述のGEVscan:商標)を使用した、はるかに低い出力での超音波刺激もまた、神経調節の結果をもたらすことが可能であることを示している。しかし、このコホート(低出力刺激)では、各解剖学的部位は20分間治療/刺激された(すなわち、デュアル部位では各部位40分または20分、トリプル部位では各部位20分の60分)。以前のすべての高出力刺激試験では、各部位の刺激時間はわずか3分であった。また、このコホートでは、単一部位の刺激は0日目に開始され、GI部位は11日目に二重刺激治療のために追加され、膵臓は25日目に追加された。上に示したように、複数部位刺激の追加は、単一部位刺激単独と比較して、グルコースのさらなる減少をもたらした。すべての超音波治療は32日目に中止された。このコホートでは、開始時の血中濃度は非常に高く(図8よりさらに高い)、超音波治療中止後の寛解は約15日間続いた。
【0049】
図13Aは、栄養付与と制御を伴う単一部位刺激(single-site stimulations with nutrient support and controls)の動物モデルおよび対照における急性経口ブドウ糖負荷試験における循環グルコース濃度を示す。図13Bは、栄養付与と予備制御を伴う単一部位刺激および対照の動物モデルにおける急性経口グルコース負荷試験における循環グルコース濃度を示す。図13Aに示すように、肝臓単独刺激(データ600に示す;門脈領域刺激)は、見せかけのコントロール(データ602に示す)と比較して、改善されたグルコース調節をもたらした。すなわち、グルコース値は、経口グルコース負荷試験中の40分後に減少した。一方、胃腸管(GI)部位のいずれも、単独で投与された場合、これらの短期/急性OGTT中に改善を示さなかったが、GI刺激とオメガ3脂肪溶液の単一回経口投与(single oral dos)との組み合わせは、最初の40分間は、単一のGI部位と類似したOGTT曲線動態を生じたが、40~200分の間の期間中は、単一の肝臓部位と類似した動態を生じた。さらに、オメガ-3-脂肪溶液と単一部位GI刺激との組み合わせは、二重部位刺激(肝臓およびGI)と同一のOGTT曲線(図13B)を生じ、栄養付与と組み合わせたこの単一自律神経刺激部位が、「混合」または二重部位刺激処置と同様の結果をもたらす可能性があることを示唆した。
複合神経調節法における神経調節
【0050】
本明細書で提供される1つ以上の関心領域(例えば、単一部位または多部位)の神経調節は、標的化された関心領域または部位(例えば、刺激部位または部位)だけにエネルギーを局所的かつ非切除的に適用(local and nonablative application)し、関心領域または部位の外側にエネルギーを適用しないことを可能にする。エネルギー印加は、標的化された関心領域の外側、例えば、関心領域を含む同じ器官、組織または構造において、または標的化された関心領域を含まない他の器官および構造において、下流効果を誘発し得る。いくつかの実施形態において、下流効果は、例として視床下部の領域において誘導され得る。エネルギー印加はまた、エネルギー印加部位から上流の標的神経に沿って効果を誘導してもよい。いくつかの実施形態では、下流効果または上流効果が誘導される一以上の関心領域の外側の領域に直接エネルギーを印加することなく、一以上の関心領域の外側の効果を達成することができる。したがって、局所的エネルギー印加は、局所的効果、下流効果および/または上流効果を含み得る全身的効果を実現または達成するために使用され得る。対象となる領域または関心領域は、非神経細胞または体液とシナプスを形成する軸索末端を有する体内の任意の組織または構造であってよい。一例では、関心領域は、脾臓、肝臓、膵臓、胃腸組織などの臓器や構造の部分領域であってもよい。別の例では、関心領域はリンパ系組織にあってもよい。
【0051】
対象とする領域への神経調節は、生理学的プロセスに変化を及ぼし、被験者の1つ以上の生理学的経路を中断、減少、または増強(interrupt, decrease, or augment)して、所望の生理学的結果をもたらす可能性がある。さらに、局所的なエネルギー印加は全身的な変化をもたらす可能性があるため、異なる生理学的経路が、異なる方法で、かつ体内の異なる位置で変化して、特定の対象に対して標的化された神経調節によって引き起こされ、かつ標的化された神経調節に特徴的な、対象における生理学的変化の全体的な特徴的プロファイルを引き起こす可能性がある。これらの変化は複雑であるが、本発明の神経調節技法は、治療された被験者に対して、神経調節の結果であり、対象領域へのエネルギーの適用または他の介入なしでは達成できない可能性のある、1つまたは複数の測定可能な標的生理学的結果を提供する。さらに、他の種類の介入(例えば、複合的な神経調節の一部としての薬物治療)は、神経調節によって引き起こされる生理学的変化を促進または増強する可能性がある。
【0052】
本明細書で議論される複合神経調節技法は、関心分子の濃度の変化(例えば、増加、減少)および/または関心分子の特性の変化という生理学的結果を引き起こすために使用され得る。すなわち、1つ以上の関心対象分子(例えば、第1の関心対象分子、第2の関心対象分子など)の選択的調節は、1つ以上の関心対象領域(例えば、1つ以上の組織(例えば、第1の組織、第2の組織など)における1つ以上の関心領域(例えば、第1の関心領域、第2の関心領域など)へのエネルギー印加の結果として、分子の濃度(循環、組織)または特性(共有結合修飾:covalent modification)を制御する。関心分子の調節は、発現、分泌、タンパク質の転位(expression, secretion, translocation of proteins)などの分子の特性の変化、およびエネルギー適用それ自体に由来するか、またはイオンチャネルに直接影響を及ぼす分子の結果としてのイオンチャネル効果に基づく直接的な活性変化を含み得る。対象分子の調節は、神経調節の結果として予想される濃度変化や濃度変動が起こらないように、分子の所望の濃度を維持することを指す場合もある。目的の分子の調節とは、酵素を介した共有結合修飾(リン酸化、アセチル化、リボシル化など(phosphorylation, aceylation, ribosylation, etc)の変化)など、分子の特性に変化を起こすことを指す場合もある。すなわち、関心分子の選択的調節は、分子濃度および/または分子特性を意味しうることが理解されるべきである。目的の分子は、炭水化物(単糖類、多糖類)、脂質、核酸(DNA、RNA)、またはタンパク質の1つ以上のような生物学的分子であり得る。特定の実施形態では、関心分子は、ホルモン(アミンホルモン、ペプチドホルモン、ステロイドホルモン:an amine hormone, a peptide hormone, or a steroid hormone)などのシグナル伝達分子であってもよい。
【0053】
本明細書に記載される特定の実施形態は、グルコース代謝および関連障害の治療のために、標的化された生理学的結果を引き起こす複合神経調節技法を提供する。グルコース調節は複雑であり、異なる局所的および全身的代謝経路が関与する。標的領域/関心領域へのエネルギー印加は、グルコース調節を改善するために、これらの代謝経路に特徴的な変化を引き起こす。いくつかの実施形態において、1つ以上の関心領域における調節は、糖尿病(すなわち、1型糖尿病または2型糖尿病)、高血糖、敗血症、外傷、感染、生理学的ストレス、糖尿病に関連する痴呆、肥満、または他の摂食障害もしくは代謝障害(diabetes (i.e., type 1 or type 2 diabetes), hyperglycemia, sepsis, trauma, infection, physiologic stress, diabetes-associated dementia, obesity, or other eating or metabolic disorders)を含むがこれらに限定されない障害を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態において、神経調節は、体重減少の促進、食欲の制御、悪液質の治療、または食欲増進(weight loss, control appetite, treat cachexia, or increase appetite)のために使用され得る。一例では、生理学的ストレスは、医学的に定義され、高血糖を呈する外科的例だけでなく、様々な急性医学的状態(感染、重傷/外傷、心臓発作、バイパス:infection, severe injury/trauma, heart attack, bypass)を含むことができる。例えば、膵臓を直接刺激すると食欲が増進し、肝臓を直接刺激するとNPYが減少し、満腹のシグナルが促進される。目標とする生理学的結果には、被験者の循環(すなわち血中)グルコース濃度を、正常なグルコースレベルに関連する所望の濃度範囲内になるように調整すること、および高血糖または低血糖を回避することが含まれ得る。このようにして、目的の分子の選択的な調節が達成されうる。この調節は、所望のグルコース濃度(すなわち、所望のグルコースエンドポイント)を引き起こすために、標的化された神経調節を介して、血液中または組織中の糖調節ホルモンの変化を誘導した結果であると考えられる。さらに、グルコース調節は、病気の診断を受けていないが、糖尿病予備軍であったり、健康的な体重を維持することを望んでいる健康な患者にとって有益である。
【0054】
そのために、開示された神経調節技法は、神経調節システムと共に使用され得る。図14は、エネルギーの印加に応答してシナプスの神経伝達物質放出および/または構成要素(例えば、シナプス前細胞、シナプス後細胞)の活性化を達成するための神経調節のためのシステム1010の概略図である。描かれているシステムは、エネルギー印加装置1012(例えば、超音波トランスデューサ)に結合されたパルス発生器1014を含む。エネルギー印加装置1012は、例えば、リード線または無線接続を介して、エネルギーパルスを受信するように構成され、そのパルスは、使用中に、被験者の内部組織または器官の関心領域に向けられ、その結果、標的化された生理学的結果(targeted physiological outcome)をもたらす。特定の実施形態では、パルス発生器1014および/またはエネルギー印加装置1012は、生体適合部位(biocompatible site、例えば、腹部)に移植され得、リードまたはリード線は、エネルギー印加装置1012およびパルス発生器1014を内部に結合する。例えば、エネルギー印加装置1012は、容量性微細加工超音波トランスデューサ(capacitive micromachined ultrasound transducer)などのMEMSトランスデューサであってもよい。
【0055】
特定の実施形態では、エネルギー適用装置1012および/またはパルス発生器1014は、例えば、パルス発生器1014に順番に指示を提供し得るコントローラ(制御装置)1016と無線で通信し得る。他の実施形態では、パルス発生器1014は、体外装置(extracorporeal device)であってもよく、例えば、被験者の体外の位置から経皮的(transdermally)にまたは非侵襲的にエネルギーを印加するように動作してもよく、特定の実施形態では、コントローラ1016内に統合されていてもよい。パルス発生器1014が体外式である実施形態では、エネルギー適用装置1012は、介護者によって操作され、エネルギーパルスが所望の内部組織に経皮的に送達されるように、被験者の皮膚上またはその上の場所に位置決めされ得る。所望の部位にエネルギーパルスを印加するように位置決めされると、システム10は、神経調節を開始して、目標とする生理学的結果または臨床効果を達成することができる。
【0056】
特定の実施形態では、システム10は、コントローラ1016に結合され、変調の標的生理学的結果が達成されたかどうかを示す特性を評価する評価装置1020を含み得る。一実施形態では、目標とする生理学的結果は局所的であり得る。例えば、変調は、組織構造の変化、特定の分子の濃度の局所的な変化、組織の変位、流体の動きの増加など、局所的な組織または機能の変化をもたらす可能性がある。
【0057】
変調は全身的または非局所的な変化(systemic or non-local changes)をもたらす可能性があり、目標とする生理学的結果は、循環分子の濃度変化、またはエネルギーが直接加えられた関心領域を含まない組織の特性の変化に関連する可能性がある。一例では、変位(displacement)は所望の変調の代理測定値であってもよく、期待される変位値を下回る変位測定値は、期待される変位値が誘導されるまで変調パラメータの変調をもたらす可能性がある。したがって、評価装置1020は、いくつかの実施形態において濃度変化を評価するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、評価装置1020は、器官のサイズおよび/または位置の変化を評価するように構成された撮像装置であってもよい。システム10の描かれた要素は別々に示されているが、要素の一部または全部は互いに組み合わされてもよいことが理解されるべきである。さらに、要素の一部または全部は、互いに有線または無線で通信してもよい。
【0058】
評価に基づいて、コントローラ1016の変調パラメータが変更され得る。例えば、所望の変調が、定義された時間ウィンドウ(例えば、エネルギー印加の処置開始後5分、30分)内または処置開始時のベースラインに対する濃度(1つ以上の分子の循環濃度または組織濃度)の変化に関連する場合、パルス周波数または他のパラメータのような変調パラメータの変更が所望され得、その結果、パルス発生器1014のエネルギー印加パラメータまたは変調パラメータを定義または調整するために、オペレータによって、または自動フィードバックループを介して、コントローラ1016に提供され得る。
【0059】
本明細書で提供されるシステム1000は、様々な変調パラメータに従ってエネルギーパルスを提供することができる。例えば、変調パラメータは、連続的なものから断続的なものまでの様々な刺激時間パターンを含み得る。断続的刺激では、エネルギーは、信号オン時間の間、ある周波数で一定時間供給される。信号オン時間の後には、信号オフ時間と呼ばれるエネルギーが供給されない時間が続く。変調パラメータには、刺激印加の周波数と持続時間も含まれる。印加頻度は、連続的であってもよいし、様々な時間帯、例えば、1日又は1週間内に供給されてもよい。治療持続時間は、数分から数時間までを含むがこれに限定されない様々な時間持続することができる。特定の実施形態において、特定の刺激パターンによる治療持続時間は、例えば72時間間隔で繰り返される1時間持続してもよい。特定の実施形態において、治療は、より高い頻度、例えば3時間ごとに、より短い持続時間、例えば30分間で行われてもよい。治療持続時間や周波数などの変調パラメータに従ったエネルギーの印加は、所望の結果を得るために調節可能に制御され得る。
【0060】
図15は、システム1010の特定の構成要素のブロック図である。本明細書で提供されるように、神経調節のためのシステム1010は、被験者の組織に適用するための複数のエネルギーパルスを発生するように適合されたパルス発生器1014を含むことができる。パルス発生器1014は、別体であってもよいし、コントローラ1016などの外部装置に統合されていてもよい。コントローラ1016は、装置を制御するためのプロセッサ1030を含む。ソフトウェアコードまたは命令は、プロセッサ1030が装置の様々な構成要素を制御するために実行するために、コントローラ1016のメモリ1032に格納される。コントローラ1016および/またはパルス発生器1014は、1つまたは複数のリード線1033を介して、またはワイヤレスでエネルギー印加装置1012に接続され得る。
【0061】
コントローラ1016はまた、臨床医が変調プログラムに選択入力または変調パラメータを提供できるように適合された入出力回路1034およびディスプレイ1036を有するユーザインターフェースを含む。各変調プログラムは、パルス振幅、パルス幅、パルス周波数などを含む1組以上の変調パラメータを含むことができる。パルス発生器1014は、コントローラ装置1016からの制御信号に応答してその内部パラメータを変更し、リード線1033を通してエネルギー印加装置1012が適用される対象に伝送されるエネルギーパルスの刺激特性を変化させる。定電流、定電圧、複数の独立した電流源または電圧源などを含むがこれらに限定されない、任意の適切なタイプのパルス発生回路を採用することができる。印加されるエネルギーは、電流振幅とパルス幅持続時間の関数である。制御装置1016は、変調パラメータを変更することによって、および/または、ある時間にエネルギー印加を開始することによって、または、ある時間にエネルギー印加をキャンセル/抑制することによって、エネルギーを調節可能に制御することを可能にする。一実施形態では、エネルギー印加装置の調節可能な制御は、被験者内の1つ以上の分子(例えば、循環分子:circulating molecule)の濃度に関する情報に基づいている。情報が評価装置1020からのものである場合、フィードバックループが調節可能な制御を駆動することができる。例えば、評価装置1020によって測定される循環グルコース濃度が所定の閾値または範囲を超える場合、コントローラ1016は、関心領域(例えば、肝臓)に対して、および循環グルコースの減少に関連する変調パラメータを用いて、エネルギー印加を開始してもよい。エネルギー印加の開始は、グルコース濃度が所定の(例えば、所望の)閾値の上方または所定の範囲の外側に漂うことによってトリガされてもよい。別の実施形態において、調節可能な制御は、エネルギーの最初の適用が、所定の時間枠(例えば、1時間、2時間、4時間、1日)内に、目標とする生理学的結果(例えば、目的の分子の濃度)の予想される変化をもたらさない場合に、調節パラメータを変更する形態であってもよい。
【0062】
一実施形態では、メモリ1032は、オペレータによって選択可能な異なる動作モードを記憶する。例えば、記憶された動作モードは、肝臓、膵臓、消化管、脾臓の関心領域(regions of interest in the liver, pancreas, gastrointestinal tract, spleen)などの特定の治療部位に関連する変調パラメータのセットを実行するための命令を含み得る。異なる部位は異なる関連変調パラメータを有することができる。オペレータにモードを手動で入力させるのではなく、コントローラ1016が選択に基づいて適切な命令を実行するように構成してもよい。別の実施形態では、メモリ1032は、異なるタイプの治療に対する動作モードを記憶する。例えば、活性化は、組織機能の抑制または遮断に関連するものに対して、異なる刺激圧力または周波数範囲に関連する場合がある。具体例では、エネルギー印加装置が超音波トランスデューサである場合、時間平均パワー(時間平均強度)およびピーク正圧は、1mW/cm~30,000mW/cm(時間平均強度)および0.1MPa~7MPa(ピーク圧力)の範囲である。一例では、熱損傷およびアブレーション/キャビテーションに関連するレベルを避けるために、関心領域において時間平均強度は35W/cm未満である。別の具体例では、エネルギー印加装置が機械的アクチュエータである場合、振動の振幅は0.1~10mmの範囲である。選択された周波数は、エネルギー印加のモード、例えば超音波または機械的アクチュエータに依存することがある。
【0063】
別の実施形態では、メモリ1032は、所望の結果を達成するために変調パラメータの調整または修正を可能にする較正または設定モードを記憶する。一例では、刺激は、低いエネルギーパラメータから開始し、自動的または操作者の入力を受信したときに漸増する。このようにして、操作者は、変調パラメータが変更されている間、誘導効果(induced effects)の調整を達成することができる。
【0064】
システム1000はまた、エネルギー印加装置1012の焦点を合わせることを容易にする撮像装置を含み得る。一実施形態では、撮像装置(imaging device)は、異なる超音波パラメータ(周波数、開口数、またはエネルギー)が、関心領域を選択する(例えば、空間的に選択する)ため、およびターゲティングとそれに続く神経調節のために選択された関心領域にエネルギーを集束させるために適用されるように、エネルギー印加装置1012と統合されるか、またはエネルギー印加装置1012と同じ装置であり得る。別の実施形態では、メモリ1032は、器官または組織構造内の関心領域を空間的に選択するために使用される1つまたは複数の標的化モードまたは集束モードを記憶する。空間的選択(spatial selection)は、関心領域に対応する器官の容積を識別するために器官の部分領域を選択することを含み得る。空間的選択は、本明細書で提供されるような画像データに依存してもよい。空間的選択に基づいて、エネルギー印加装置1012は、関心領域に対応する選択された容積に焦点を合わせることができる。例えば、エネルギー印加装置1012は、最初にターゲティングモード(targeting mode)で動作して、関心領域を識別するために使用される画像データをキャプチャするために使用されるターゲティングモードエネルギーを印加するように構成されてもよい。ターゲティングモードエネルギーは、レベルではなく、かつ/または優先的活性化に適した変調パラメータで印加される。しかしながら、関心領域が特定されると、コントローラ1016は、次に、優先的活性化に関連する変調パラメータに従って処置モードで動作し得る。
【0065】
コントローラ1016はまた、変調パラメータの選択への入力として、目標とする生理学的結果に関連する入力を受け取るように構成され得る。例えば、組織の特性を評価するために撮像モダリティが使用される場合、コントローラ1016は、特性の計算された指数またはパラメータを受信するように構成され得る。指数又はパラメータが予め定義された閾値以上であるか以下であるかに基づいて、変調パラメータが変更されることがある。一実施形態では、パラメータは、患部組織の組織変位の尺度または患部組織の深さの尺度とすることができる。他のパラメータは、1つまたは複数の関心分子の濃度を評価すること(例えば、閾値またはベースライン/コントロールに対する濃度の変化、変化率、濃度が所望の範囲内にあるかどうかの決定のうちの1つまたは複数を評価すること)を含み得る。さらに、エネルギー印加装置1012(例えば、超音波トランスデューサ)は、コントローラ1016の制御下で動作して、a)標的組織内の関心領域を空間的に選択するために使用され得る組織の画像データを取得し、b)関心領域に変調エネルギーを印加し、c)標的化された生理学的結果が生じたことを決定するために(例えば、変位測定を介して)画像を取得することができる。このような実施形態では、撮像装置、評価装置1020、およびエネルギー印加装置1012は、同じ装置であってもよい。
【0066】
別の実施態様では、所望の変調パラメータセットもまた、コントローラ1016によって記憶され得る。このようにして、被験者固有のパラメータを決定することができる。さらに、このようなパラメータの有効性を経時的に評価することができる。特定のパラメータセットの有効性が経時的に低下する場合、被験者は活性化された経路に対する感受性の低下(insensitivity)を起こしている可能性がある。システム10が評価装置1020を含む場合、評価装置1020はコントローラ1016にフィードバックを提供してもよい。特定の実施形態では、フィードバックは、標的生理学的結果の特性を示すユーザまたは評価装置1020から受信され得る。コントローラ1016は、変調パラメータに従ってエネルギー印加装置にエネルギーを印加させ、フィードバックに基づいて変調パラメータを動的に調整するように構成され得る。例えば、フィードバックに基づいて、プロセッサ1016は、評価装置1020からのフィードバックに応答して、変調パラメータ(例えば、超音波ビームまたは機械的振動の周波数、振幅、またはパルス幅)をリアルタイムで自動的に変更してもよい。
【0067】
一例として、本発明の技術は、代謝障害を有する被験者を治療するために使用することができる。本技術はまた、グルコース調節障害(disorders of glucose regulation)を有する被験体において血糖値を調節するために使用することもできる。従って、本技術は、対象分子のホメオスタシスを促進するため、または1つ以上の対象分子(例えば、グルコース、インスリン、グルカゴン、またはそれらの組み合わせ)の所望の循環濃度もしくは濃度範囲を促進するために使用され得る。一実施形態において、本技術は、循環(すなわち、血中)グルコースレベルを制御するために使用され得る。一実施形態では、血中グルコースレベルを正常範囲内の動的平衡に維持するために、以下の閾値を使用することができる:
絶食時(Fasted):
50mg/dL(2.8mmol/L)未満:インスリンショック(Insulin Shock)
50~70mg/dL(2.8~3.9mmol/L):低血糖/低血糖症
70~110mg/dL(3.9~6.1mmol/L):正常値
110~125mg/dL(6.1~6.9mmol/L):高値/障害(糖尿病予備軍)
125(7mmol/L):糖尿病患者
非絶食時(食後約2時間):
70-140mg/dL:正常
140-199mg/dL(8-11mmol/L):高値または「境界域」/糖尿病予備軍
200mg/dL超:(11mmol/L):糖尿病
例えば、循環グルコース濃度を約200mg/dL未満および/または約70mg/dL超に維持するために、本技術を使用することができる。本技術は、グルコースを約4~8mmol/Lまたは約70~150mg/dLの範囲に維持するために使用することができる。本技術は、対象(例えば、患者)の正常な血糖範囲を維持するために使用されてもよく、ここで、正常な血糖範囲は、体重、年齢、臨床歴などの患者の個々の要因に基づく個別化された範囲であってもよい。したがって、1つまたは複数の関心領域へのエネルギーの印加は、関心分子の所望の最終濃度に基づいてリアルタイムで調整されてもよく、評価装置1020からの入力に基づいてフィードバックループで調整されてもよい。例えば、評価装置1020が循環グルコースモニタまたは血糖モニタである場合、リアルタイムのグルコース測定値がコントローラ16への入力として使用され得る。
【0068】
エネルギー印加装置1012は、非限定的な例として肝臓として示される標的にエネルギーを印加することが可能な超音波トランスデューサ(例えば、非侵襲性超音波トランスデューサまたは携帯型超音波トランスデューサ)を含むことができる。エネルギー印加装置1012は、超音波トランスデューサを制御するための制御回路を含み得る。プロセッサ1030の制御回路は、エネルギー印加装置1012と一体であってもよいし(例えば、統合コントローラ1016を介して)、別個の構成要素であってもよい。超音波トランスデューサはまた、所望の関心領域または標的関心領域を空間的に選択し、取得された画像データに基づいて標的組織または構造の関心領域に印加エネルギーを集中させることを支援するために、画像データを取得するように構成されてもよい。
【0069】
関心領域内の所望の標的は、軸索末端と非神経細胞のシナプスを含む内部組織または器官であってもよい。シナプスは、標的の関心領域に焦点を合わせた超音波トランスデューサーの焦点領域内で軸索末端にエネルギーを直接印加することによって刺激され、シナプス空間への分子の放出を引き起こすことができる。例えば、軸索末端は肝細胞とシナプスを形成し、神経伝達物質の放出および/またはイオンチャネル活性の変化が、グルコース代謝の活性化などの下流効果を引き起こす。一実施形態では、肝刺激または変調とは、肝門部または肝門部に隣接する関心領域の変調を指すことがある。
【0070】
エネルギーは、関心領域に集中または実質的に集中され、内部組織または器官の一部のみ、例えば、組織の総容積の約50%、25%、10%、または5%未満に集中され得る。一実施形態では、エネルギーは、標的組織内の2つ以上の関心領域に適用されてよく、2つ以上の関心領域の総体積は、組織の総体積の約90%、50%、25%、10%、または5%未満であってよい。ある実施形態では、エネルギーは、組織の総体積の約1%~50%のみに、組織の総体積の約1%~25%のみに、組織の総体積の約1%~10%のみに、または組織の総体積の約1%~5%のみに印加される。特定の実施形態では、標的組織の関心領域内の軸索末端のみが、印加されたエネルギーを直接受けて神経伝達物質を放出し、一方、関心領域外の刺激されていない軸索末端は、実質的なエネルギーを受けず、したがって、同様に活性化/刺激されない。いくつかの実施形態では、エネルギーを直接受ける組織の部分の軸索末端は、変化した神経伝達物質放出を誘導するであろう。この態様において、組織部分領域は、粒状様式で神経調節の標的とされてもよく、例えば、1つ以上の部分領域が選択されてもよい。いくつかの実施形態において、エネルギー適用パラメータは、所望の複合生理学的効果を誘導するために、エネルギーを直接受ける組織内の神経成分または非神経成分のいずれかの優先的活性化を誘導するように選択され得る。特定の実施形態では、エネルギーは、約25mm以下の体積内に集束または集中させることができる。特定の実施形態では、エネルギーは、約0.5mm-50mmの体積内に集束または集中されうる。関心領域内にエネルギーを集束または集中させるための焦点体積および焦点深度は、エネルギー印加装置1012のサイズ/構成によって影響され得る。エネルギー印加の焦点体積は、エネルギー印加装置1012の焦点のフィールドによって定義されてもよい。
【0071】
本明細書で提供されるように、エネルギーは、標的化された生理学的結果を達成するために標的化された方法でシナプスを優先的に活性化するために、関心領域または領域にのみ実質的に適用される可能性があり、組織全体にわたって一般的または非特異的な方法で実質的に適用されることはない。
【0072】
開示された実施形態の技術的効果には、超音波刺激治療の改善を引き起こすために、開示された複合神経調節技法を使用することが含まれる。一実施形態では、すでに薬物治療を受けている糖尿病患者に対して行われる超音波刺激は、以下の可能性がある。1)現在服用している薬物(およびそれに続く副作用)の投与量の減少を可能にする、2)患者を多剤投与から単剤投与に移行させる(金銭的節約の可能性がある)、または3)薬物治療の代わりに多部位超音波刺激を使用することにより、すべての薬物治療をなくす。さらに、糖尿病への進行を予防するために、食事療法や運動指導に加えて、糖尿病予備軍(例えば、インスリン抵抗性を有する被験者)に対して多部位超音波検査を開始することもできる。また、食事療法や運動療法を強化するために、不定期(月1回や四半期に1回など)に超音波を投与することもある。
【0073】
さらに、単刺激超音波治療を単剤治療と併用し、2つの治療が重なり合うおよび/または相乗的な分子経路および/または神経経路に作用するようにすることもできる。本明細書で開示するような二部位超音波治療と比較した肝臓超音波とGLPアゴニストの治療は、例示的な事例である。
【0074】
本明細書では、開示の一部として実施例を使用し、また、当業者であれば、任意の装置またはシステムの製造および使用、ならびに組み込まれた任意の方法の実行を含め、開示された実施形態を実施できるようにする。特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者に思いつく他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1010:システム 1012:エネルギー印加装置 1014:パルス発生器 1016:コントローラ 1020:評価装置 1030:プロセッサ 1032:メモリ 1033:リード線 1034:入出力回路 1036:ディスプレイ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
【国際調査報告】