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▶ ラニ セラピューティクス, エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】血友病Aの治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/37 20060101AFI20240219BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240219BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
A61K38/37
A61P7/04
A61K47/60
A61K9/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547844
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 US2022017454
(87)【国際公開番号】W WO2022182712
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/153,017
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514002891
【氏名又は名称】ラニ セラピューティクス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イムラン,ミール エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハシム,ミール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC14
4C076CC41
4C076EE23
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DC15
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZA53
(57)【要約】
本開示は、概して、第VIII因子を含有する嚥下可能なデバイスを使用する血友病Aの治療に関し、デバイスは、治療有効量の第VIII因子を腹膜内に送達し、所望の薬物動態及び治療結果を達成するように構造化及び製剤化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血友病Aを治療する方法であって、血友病Aを有する対象に、第VIII因子(FVIII)を含む組成物から形成されるか、又は前記組成物を含有するペイロードを含有する嚥下可能なデバイスを経口投与することを含み、前記デバイスは、前記FVIIIを前記対象の腹膜腔内に送達するように構造化され、前記投与は、1日2回、1日1回、2日に1回、又は3日に1回の頻度で行われる、方法。
【請求項2】
血友病Aを治療する方法であって、血友病Aを有する対象に、第VIII因子(FVIII)を含む組成物から形成されるか、又は前記組成物を含有するペイロードを含有する嚥下可能なデバイスを経口投与することを含み、前記デバイスは、前記FVIIIを前記対象の腹膜腔内に送達するように構造化され、前記デバイスは、約30IU/kg~約300IU/kgの用量のFVIIIを含有する、方法。
【請求項3】
血友病Aを治療する方法であって、血友病Aを有する対象に、第VIII因子(FVIII)を含む組成物から形成されるか、又は前記組成物を含有するペイロードを含有する嚥下可能なデバイスを経口投与することを含み、前記デバイスは、前記FVIIIを前記対象の腹膜腔内に送達するように構造化され、前記方法は、少なくとも72時間及び最大120時間にわたって前記対象を破綻出血から保護するのに有効である、方法。
【請求項4】
前記破綻出血は、自然出血である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記デバイスは、毎日投与される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記デバイスは、約1,000IU~約12,000IUの用量のFVIIIを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記デバイスは、3,000IU、6,000IU、又は9,000IUの用量のFVIIIを含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記FVIIIを含む組成物は、固形組織貫通部材を構成する中空の生分解性マイクロニードルに充填された乾燥組成物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記FVIIIは、長期循環型のFVIIIである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記FVIIIは、組換えヒトPEG化FVIIIである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、又は7日に1回から選択される頻度で前記デバイスを前記対象に投与することを含む、請求項2~4又は6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記FVIIIの用量は、約75IU/kg、約100IU/kg、約125IU/kg、約150IU/kg、約175IU/kg、約200IU/kg、約225IU/kg、約250IU/kg、又は約275IU/kgから選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記FVIIIの用量は、約50IU/kg~約250IU/kg、約50IU/kg~約200IU/kg、約50IU/kg~約150IU/kg、又は約50IU/kg~約100IU/kgである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、又は少なくとも96時間、及び最大120時間から選択される期間にわたって、前記対象における止血又は正常化された凝固障害を維持するのに有効である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、又は少なくとも96時間、及び最大120時間、破綻出血及び/又は自然出血から前記対象を保護するのに有効である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、等用量のFVIIIの静脈内投与と同等又はそれよりも長い期間にわたって、前記対象においてFVIIIを治療レベルに維持するのに有効である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ペイロードは、前記嚥下可能なデバイスの経口摂取後に、前記対象の腸壁を貫通するように、及び/又は前記対象の腹膜腔内に挿入されるように構造化された固形組織貫通部材の形態である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記デバイスは、複数のペイロード又は用量のFVIIIを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記デバイスは、1つ以上のペイロード又は用量を異なる時間に前記対象の前記腹膜腔内に送達するように構造化されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記デバイスは、2、3、4、又は5以上のペイロード又は用量のFVIIIを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記嚥下可能なデバイスは、カプセル内に含まれる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
血友病Aの治療に使用するための嚥下可能なデバイスであって、前記デバイスは、第VIII因子(FVIII)を含む組成物から形成されるペイロードを含有し、前記デバイスは、前記FVIIIを対象の腹膜腔内に送達するように構造化され、前記治療は、1日2回、1日1回、2日に1回、又は3日に1回の頻度で前記嚥下可能なデバイスを投与することを含む、デバイス。
【請求項23】
血友病Aの治療に使用するための嚥下可能なデバイスであって、前記デバイスは、第VIII因子(FVIII)を含む組成物から形成されるペイロードを含有し、前記デバイスは、前記FVIIIを前記対象の腹膜腔内に送達するように構造化され、前記デバイスは、前記対象の体重に基づいて、約30IU/kg~約300IU/kgの用量のFVIIIを含有する、デバイス。
【請求項24】
第VIII因子(FVIII)を含む組成物から形成されるか、又は前記組成物を含有するペイロードを含有する、血友病Aの治療に使用するための嚥下可能なデバイスであって、前記デバイスは、前記FVIIIを前記対象の腹膜腔内に送達するように構造化され、それによって、少なくとも72時間及び最大120時間にわたって前記対象を破綻出血から保護し、前記破綻出血は、任意で自然出血である、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119(e)に基づき、2021年2月24日に出願された米国仮出願第63/153,017号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して、第VIII因子を含有する経口組成物を使用する血友病Aの治療に関する。より具体的には、治療は、治療有効量の第VIII因子を腹膜内に送達し、所望の薬物動態及び治療結果を達成するように構造化及び製剤化される、本明細書に開示される経口剤形(嚥下可能なデバイス)を使用する。
【背景技術】
【0003】
以下の考察は、単に読者が本開示を理解するのを助けるために提供されており、それに対する先行技術を記載又は構成することは認められていない。
【0004】
血友病Aは、血液が正常に凝固しない遺伝性出血障害である。血友病Aを有する人々は、傷害、手術、又は歯科処置後に正常よりも多く出血する。この障害は、重度、中等度、又は軽度であり得る。重度の症例では、軽度の傷害後に、又は傷害がない場合であっても重度の出血が発生する(自然出血)。関節、筋肉、脳、又は器官への出血は、疼痛、変形、及び他の重篤な合併症を引き起こし得る。血友病Aは、血液凝固を形成するのに必要な第VIII因子と呼ばれるタンパク質のレベルが低いことによって引き起こされる。血友病Aは主に男性が侵されるが、女性にも起こり得る。
【0005】
この障害は、X連鎖劣性様式で遺伝し、第VIII因子タンパク質をコードするF8遺伝子の変化(突然変異)によって引き起こされる。血友病Aの診断は、典型的には、臨床症状及び血液中の凝固因子の量を測定する特定の臨床検査を通じて行われる。主な治療は補充療法であり、療法中、第VIII因子が静脈にゆっくり滴下又は注射される。実際に、注射又は注入が、現在の標準治療である。投与後の第VIII因子の短い半減期及びこの障害の慢性的性質のために、このような注射/注入は、患者の生涯にわたって頻繁に行われなければならない。更に、補充療法で治療された患者は、依然として病的出血(しばしば「破綻出血」と呼ばれる)を経験する可能性がある。
【0006】
第VIII因子補充療法のための別の投与経路が研究されてきたが、注射又は注入を必要としない血友病Aを治療する方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
治療有効量の第VIII因子(FVIII)を腹膜に送達し、所望の薬物動態及び治療結果を達成するように構造化及び製剤化されたFVIIIを含有する経口剤形を使用する血友病Aの治療が本明細書に記載される。
【0008】
一態様では、本開示は、血友病Aを治療する方法であって、血友病Aを有する対象に、第VIII因子(FVIII)を含む組成物から形成されるか、又は第VIII因子(FVIII)を含む組成物を含有するペイロードを含有する嚥下可能なデバイスを経口投与することを含み、デバイスは、FVIIIを、腸壁内へ、及び腸壁を通じて対象の腹膜腔内へ送達するように構造化される、方法を提供する。ペイロードは、嚥下可能なデバイスの経口摂取後に、対象の腸壁を貫通するように、及び/又は対象の腹膜腔内に挿入されるように構造化される、固形組織貫通部材の形態であってもよい。嚥下可能デバイスは、カプセル内に配置され得る。本方法は、少なくとも72時間及び最大120時間、対象を破綻出血から保護するのに有効であり得、破綻出血は、自然出血であり得る。
【0009】
一態様では、本開示は、血友病Aを処置する際に使用するための嚥下可能なデバイスを提供し、デバイスは、第VIII因子(FVIII)を含む組成物から形成されるか、又は当該組成物を含有するペイロードを含有し、ペイロードは、デバイスの経口摂取後に、対象の腸壁を貫通し、対象の腹膜腔内に挿入され、それによって、FVIIIを対象の腹膜腔内に送達するように構造化された固形組織貫通部材の形態である。腹膜腔内へのペイロードの送達によって、対象は、少なくとも72時間及び最大120時間、破綻出血から保護され得、破綻出血は、自然出血であり得る。
【0010】
任意の実施形態による嚥下可能なデバイスと関連付けられる方法、使用、及び指示は、1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、又は7日に1回から選択される頻度での対象への投与を含むか、又はそれを指示してもよい。
【0011】
キットは、任意の実施形態による1つ以上の嚥下可能なデバイスと、デバイスを摂取するための説明書とを含んでもよい。
【0012】
任意の実施形態による嚥下可能なデバイスは、対象の体重に基づいて、約30IU/kg~約300IU/kgの用量のFVIIIを含有し得る。
【0013】
任意の実施形態による嚥下可能なデバイスは、3,000IU、6,000IU、又は9,000IUの用量のFVIIIを含む、約1,000IU~約12,000IUの用量のFVIIIを含有し得る。FVIIIの用量は、約75IU/kg、約100IU/kg、約125IU/kg、約150IU/kg、約175IU/kg、約200IU/kg、約225IU/kg、約250IU/kg、又は約275IU/kgから選択され得る。FVIIIの用量は、対象の体重に基づいて、約50IU/kg~約250IU/kg、約50IU/kg~約200IU/kg、約50IU/kg~約150IU/kg、又は約50IU/kg~約100IU/kgであり得る。用量は、50IU/kg未満、例えば、1日2回以上与えられる用量であり得る。
【0014】
任意の実施形態による嚥下可能なデバイス中のFVIIIは、長期循環型のFVIIIであってもよい。FVIIIは、組換えヒトPEG化FVIIIであってもよい。
【0015】
任意の実施形態による嚥下可能デバイスは、対象の腹膜腔内へのFVIIIの遅延/制御放出を提供するように構造化されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、デバイスは、複数のペイロード又は用量のFVIIIを含有してもよく、ペイロード又は用量を異なる時間に対象の腹膜腔内に送達するように構成されてもよい。遅延/制御放出のために構造化されたデバイスは、2、3、4、又は5つ以上のペイロード又はFVIIIの用量を含有し得る。
【0016】
任意の実施形態による方法及び使用のいずれかは、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、又は少なくとも96時間、及び最大120時間から選択される期間にわたって、対象における止血又は正常化凝固障害を維持するのに有効であり得る。
【0017】
任意の実施形態による方法及び使用のいずれかは、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、又は少なくとも96時間、及び最大120時間の間、破綻出血及び/又は自然出血から対象を保護するのに有効であり得る。
【0018】
任意の実施形態による方法及び使用のいずれかは、等用量のFVIIIの静脈内投与と同等又はそれよりも長い期間にわたって、対象においてFVIIIを治療レベルに維持するのに有効であり得る。
【0019】
本明細書に開示される方法又は使用のいずれかの具体的な実施形態では、FVIIIを含む組成物は、固形組織貫通部材を構成する中空の生分解性マイクロニードルに充填された乾燥組成物である。
【0020】
本明細書に説明される嚥下可能なデバイスの任意の実施形態は、生分解性であってもよい。
【0021】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例として提供され、本開示又は特許請求の範囲を限定することなく、特許請求される本開示の更なる説明を提供することが意図される。他の目的、利点、及び新規な特徴は、以下の図面の簡単な説明及び本開示の詳細な説明から当業者には容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】少なくとも2つの非順応性セクション及び少なくとも1つのヒンジを伴う、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例を示す。
図2】少なくとも2つの非順応性セクション及び少なくとも1つのヒンジを伴う、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例を示す。
図3】少なくとも2つの非順応性セクション及び少なくとも1つのヒンジを伴う、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例を示す。
図4】少なくとも2つの非順応性セクション及び少なくとも1つのヒンジを伴う、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例を示す。
図5図5A図5B図5C図5D図5E、及び図5Fは、少なくとも2つの非順応性セクション及び少なくとも1つのヒンジを伴う、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例を示す。
図6】少なくとも2つの非順応性セクション及び少なくとも2つのヒンジを伴う、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例を示す。
図7A】少なくとも1つの非順応性セクション及び少なくとも2つのヒンジを伴う、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例を示す。
図7B】少なくとも1つの非順応性セクション及び少なくとも2つのヒンジを伴う、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例を示す。
図8A】少なくとも2つの非順応性セクション及び少なくとも2つのヒンジを伴う、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例を示す。
図8B】少なくとも2つの非順応性セクション及び少なくとも2つのヒンジを伴う、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例を示す。
図9A】本明細書に開示されるカプセルのカプセル構造の一実施形態の例を示す。
図9B】本明細書に開示されるカプセルのカプセル構造の一実施形態の例を示す。
図10A】折り畳まれる及び/又は巻かれる前の本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素の一実施形態の例と、本明細書に開示されるようなカプセルの一実施形態の例とを示す。
図10B】カプセル内に拡張可能な構成要素を配置する前の、折り畳まれた及び/又は巻かれた配置の一実施形態における図10Aの拡張可能な構成要素を示す。
図10C図10Bの折り畳まれたかつ/又は巻かれた配置で、カプセル内に配置された図10Aの拡張可能な構成要素を示す。
図11A】デバイスが内腔を横断する際の、分解性カプセル内の拡張可能な構成要素を含む、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスを含む嚥下可能カプセルの一実施形態の例を示す。
図11B】デバイスが内腔を横断する際の、分解性カプセル内の拡張可能な構成要素を含む、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスを含む嚥下可能カプセルの一実施形態の例を示す。
図11C】デバイスが内腔を横断する際の、分解性カプセル内の拡張可能な構成要素を含む、本明細書に開示されるような自己サイズ調節式デバイスを含む嚥下可能カプセルの一実施形態の例を示す。
図11D】拡張可能な構成要素が内腔内で拡張するときの回転図における図11Cの拡張可能な構成要素の進行を示す。
図11E】拡張可能な構成要素が内腔内で拡張するときの回転図における図11Cの拡張可能な構成要素の進行を示す。
図11F】拡張可能な構成要素が内腔内で拡張するときの回転図における図11Cの拡張可能な構成要素の進行を示す。
図12】内腔内で完全に伸ばされた状態の拡張可能な構成要素を含む自己サイズ調節式デバイスの一実施形態の例を示す。
図13A】1つの非順応性セクションを備え、かつヒンジを有しない拡張可能な構成要素を含む、自己サイズ調節式デバイスの一実施形態の例を示す。
図13B】2つの非順応性セクション及び1つのヒンジを備える拡張可能な構成要素を含む、自己サイズ調節式デバイスの一実施形態の例を示す。
図14】FVIIIの腹膜腔内注射(IP注射)投与後対本明細書に開示されるFVIIIのカプセル送達投与後の活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を示す。
図15】本明細書に開示されるFVIIIのIP注射投与対FVIIIのカプセル送達投与の後のFVIII活性レベルを示す。
図16】IP注射用量対カプセル送達用量についてのデータの比較、具体的には、FVIII活性に対してプロットしたWBCT(図16)を示す。
図17】IP注射用量対カプセル送達用量についてのデータの比較、具体的には、FVIII活性に対してプロットしたaPTT(図17)を示す。
図18】嚥下可能なデバイスを包含する、本明細書に開示されるようなカプセルの実施形態を示す。挿入図Aは、完全に組み立てられた腸溶性コーティングカプセルを示す。概略図Bは、カプセルの様々な部分及び構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
血友病Aを有する人々は、頻繁な静脈内FVIII注射の生涯にわたる負担に直面する。経口FVIII療法の利便性は、これらの患者のコンプライアンス及び生活の質を大幅に改善するであろう。
【0024】
本開示は、第VIII因子(FVIII)を含む組成物から形成されるか、又は当該組成物を含有するペイロードを含有する嚥下可能なデバイスを使用して、血友病Aを治療する方法を提供し、デバイスは、FVIIIを、対象の腸壁内へ、及び腸壁を通じて、又は腹膜腔内へ送達するように構造化される。ペイロードは、嚥下可能なデバイスの経口摂取後に、対象の腸壁を貫通するように、及び/又は対象の腹膜腔内に挿入されるように構造化される、固形組織貫通部材の形態であってもよい。嚥下可能なデバイスは、カプセル内に配置され得る。
【0025】
I.定義
本明細書で使用される用語が、特定の実施形態を記載するためのものに過ぎず、限定するものとしては意図されていないことを理解されたい。
【0026】
本明細書で使用される技術的及び科学的用語は、別途定義されない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。他に特定されない限り、当業者に公知の材料及び/又は方法は、本明細書に提供されるガイダンスに基づいて、本明細書に記載される方法を実施する際に利用することができる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形の用語は、文脈から明らかでない限り、複数の指示対象を含む。単数形の物体への参照は、明示的に述べられていない限り、「唯一の」を意味することを意図しておらず、むしろ「1つ以上」を意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「例えば」、「など」、「例えば」、「ある例について」、「別の例について」、「の例」、「例として」、及び「等」は、1つ以上の非限定的な例のリストが先行又は後続することを示す。列挙されていない他の例も本開示の範囲内であることを理解されたい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「実質的に」及び「約」という用語は、数値と共に使用される場合、記載された数値並びに数値の±10%までを意味する。例えば、「約10」は、「10」及び「9以上11以下の範囲」の両方として理解されるべきである。
【0030】
本明細書で使用される場合、「A/B」の形態又は「A及び/又はB」の形態の語句は、(A)、(B)、又は(A及びB)を意味する。「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」という形式の句は、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)、又は(A、B、及びC)を意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「備える(comprising)」、「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」は、組成物及び方法が列挙された要素を含むが、他のものを排除しないことを意味することが意図される。
【0032】
本明細書で使用する場合、FVIIIに対する「治療有効量」という語句は、そのような治療を必要とする対象において薬物が投与される特定の薬理学的効果を提供するFVIIIの用量を指す。治療有効量は、血友病Aを有する対象において、出血現象又は事象(例えば、破綻出血又は自然出血)のリスクを低下させる、減少させる、改善する、若しくは排除する、及び/又は凝固機能を改善する(例えば、止血又は正常化凝固障害を達成する)のに有効であり得る。FVIIIの治療有効量は、そのような用量が当業者によって治療有効量であるとみなされたとしても、全ての個々の対象において血友病Aを治療するのに必ずしも有効であるとは限らないことが強調される。当業者であれば、特定の対象を治療するために必要とされるような標準的な実践に従って、治療有効量を調節することができる。治療有効量は、例えば、対象の年齢及び体重、並びに/又は対象の全体的な健康、並びに/又は治療されている対象の状態の重症度に基づいて変動し得る。治療有効量は、破綻出血などの出血現象又は事象を予防し得る。
【0033】
「治療レベル」という用語は、FVIII及び破綻出血の治療に関して使用される場合、正常化された凝固障害若しくは止血を提供し、及び/又は血友病Aのリスク若しくは発生率を低下させるのに十分な、対象における循環FVIIIの量を意味する。
【0034】
「破綻出血」という用語は、FVIII又は血友病Aを処置するための別の薬剤による予防処置にもかかわらず生じる出血を指す。「自然出血」は、任意の損傷又は明らかな原因がない場合に生じる破綻出血の一種である。
【0035】
「止血」という用語は、血管壁を通る血流の停止、出血の停止、又は出血の停止など、血流を減速及び停止させる生理学的プロセスを指す。
【0036】
「正常化された凝固障害」という用語は、全血凝固時間(WBCT)によって測定される、血友病対象についての許容可能な凝固時間を指す。「正常化された凝固障害」は、血内医師が「正常化された凝固」として記載し得るものとは異なり得ることに留意すべきである。例えば、非血友病のヒトは、8~12分の「正常な」WBCTを有し得るが、血友病についての20分のWBCTは、当業者によって「正常な凝固」とみなされ得る。
【0037】
「個体」、「対象」、及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、任意の個々の動物対象、例えば、ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、又はヒトを指す。特定の実施形態では、対象、個体、又は患者はヒトである。
【0038】
「構成要素」という用語は、本明細書では、考察中のデバイス、組成物、又はシステムを一緒に構成する1つ以上のアイテムのセットのうちの1つのアイテムを指す。構成要素は、固体、粉末、ゲル、プラズマ、流体、気体、又は他の構成であり得る。例えば、デバイスは、デバイスを構造化するために一緒に組み立てられる複数の固体構成要素を含み得、デバイス内に配置される流体構成要素を更に含み得る。別の例として、組成物は、単独の構成要素、又は組成物を作製するために一緒に混合される2つ以上の構成要素を含み得る。組成物は、流体、スラリー、粉末、又は固体(例えば、錠剤又は微小錠剤などの凝縮又は固化された形態)であり得る。デバイス又はシステムは、1つ以上の組成物及び/又は1つ以上の他の構成要素を含むことができる。
【0039】
「設計する(design)」という用語又はその文法的変形(例えば、「設計」又は「設計された」)は、例えば、公差の推定値(例えば、部品公差及び/又は製造公差)及び遭遇すると予想される環境条件(例えば、温度、湿度、外部又は内部の周囲圧力、外部又は内部の機械的圧力、外部又は内部の機械的圧力によるストレス、製品の年齢、又は貯蔵寿命、又は体に導入された場合は生理学、体の化学、体液又は組織の生物学的組成、体液又は組織の化学組成、pH、種、食事、健康、性別、年齢、祖先、疾患、又は組織の損傷)に基づいて意図的に組み込まれた特性を指す。送達前及び/又は送達後の実際の公差及び環境条件が特性に影響を及ぼす可能性があり、したがって、同じ設計を有する異なる構成要素、デバイス、組成物、又はシステムが、それらの特性に関して異なる実際の値を有する可能性があることを理解されたい。設計には、製造前又は製造後のバリエーション又は修正も含まれる。
【0040】
構成要素、デバイス、組成物、又はシステムに関連する「製造」という用語又はその文法的変形(例えば、「製造する」又は「製造された」)は、本明細書では、構成要素、デバイス、組成物、又はシステムを作製又は組み立てることを指す。製造は、全体的若しくは部分的に手作業で、かつ/又は全体的若しくは部分的に自動化された方法で行うことができる。
【0041】
「構造化された」という用語又はその文法的変形(例えば、「構造」又は「構造化」)は、本明細書では、概念又は設計、又はその変形、又はそれに対する修正(そのような変更又は修正が製造前、製造中、製造後のいずれに生じているか)に従って製造される構成要素、デバイス、組成物、又はシステムを指し、そのような概念又は設計が文書に取り込まれるかどうかは問わない。
【0042】
「分解する(degrade)」という用語又はその文法的変形(例えば、「分解する(degrading)」、「分解した」、「分解可能な」、及び「分解」)は、本明細書では、溶解、化学的分解(生分解を含む)などによる弱化、部分分解、又は完全分解、分解、化学修飾、機械的分解、又は崩壊を指し、これには、溶解、崩壊、変形、しぼませる、又は収縮も含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
「非分解性」という用語は、予想される環境で少なくとも予想される期間に、劣化が最小限であるか、又は特定の許容可能な設計パーセンテージ内であるという予想を指す。
【0044】
「FVIII組成物」及び「FVIIIの組成物」という用語は、本明細書において互換的に使用することができ、構成要素の少なくとも1つがFVIIIである1つ以上の構成要素を含む組成物を指す。FVIII組成物は、例えば、唯一の活性剤として、又は1つ以上の追加の活性剤を含むFVIIIを含むことができる。
【0045】
用語「FVIII」は、ヒト血漿に由来するFVIII又は組換えFVIIIのいずれかを指し得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「遅延剤」は、組成物からの1つ以上の他の成分(複数可)の放出速度を遅くするために組成物中に含まれる成分を指す。遅延剤は、例えば、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(l-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、別のポリマー、又はヒドロゲルであり得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、FVIIIの「長期循環型」又は「長期作用型」は、FVIIIのインビボ半減期(例えば、循環)を延長する遅延剤で修飾された型を指す。「FVIIIの長期循環型」は、PEG、PLA、PGA、PEO、PLLA、PDLA、又は別のポリマー、ヒドロゲル、又は他の遅延剤のいずれかにコンジュゲートされたFVIIIを含み得る。
【0048】
本明細書では、デシリットル(dl)、ミリリットル(ml)、マイクロリットル(μl)、国際単位(IU)、センチメートル(cm)、ミリメートル(mm)、ナノメートル(nm)、インチ(in)、キログラム(kg)、グラム(gm)、ミリグラム(mg)、マイクログラム(μg)、ナノグラム(ng)、ミリモル(mM)、摂氏度(℃)、華氏度(°F)、ミリトール(mTorr)、時間(hr)、分(min)、又は秒(s又はsec)、ミリ秒(ms)、マイクロ秒(μs)、又はナノ秒(ns)などの標準単位に様々な略字が使用され得る。
【0049】
II.血友病A
第VIII因子(第8因子)欠損症又は古典的血友病とも呼ばれる血友病Aは、凝固タンパク質であるFVIIIの欠損又は欠陥によって引き起こされる遺伝性障害である。これは親から子供に伝えられるが、発見された症例の約1/3は、過去の家族歴を有さない。それにもかかわらず、血友病Aは、遺伝性疾患である。血友病の遺伝子は、X染色体上に保有され、したがって、血友病Aは、X連鎖劣性様式で遺伝する。
【0050】
血友病Aの症例の約60%は重度と考えられ、これは、対象のFVIIIレベルが1%未満であることを意味する。症例の約15%は中等度(1~5%のFVIIIレベル)と考えられ、症例の約25%は軽度(5%~30%のFVIIIレベル)と考えられる。FVIIIの「正常」範囲は、例えば、50%を超えるレベルである。本明細書に開示される技術は、軽度、中等度、及び/又は重度の血友病Aを治療することができる。
【0051】
血友病Aを有する人々は、他の人々よりも長く出血する。出血は、内部で、関節及び筋肉に、又は外部で、小さな切断、歯科処置、若しくは負傷から生じ得る。軽度の血友病Aを有する人々は、一般に、典型的には重篤な傷害、外傷、又は手術後にのみ出血を経験する。多くの場合、軽度の血友病は、損傷、手術、又は抜歯が長期出血をもたらすまで診断されない。最初の現象は、成人期まで発生しない場合がある。軽度の血友病を有する女性は、重度の月経出血を経験することが多く、出産後に出血する(広範囲に出血する)可能性がある。中等度の血友病Aを有する人々は、傷害後に出血現象を有する傾向があり、時には自然出血を経験することがある。重度の血友病Aを有する人々は、傷害後に出血を経験し、頻繁な自然出血現象-明らかな原因なしに起こる出血-しばしば関節及び筋肉への出血-を有する場合がある。
【0052】
血友病Aのためのほとんどの従来の治療は、欠損タンパク質、FVIIIの置換に焦点を当てており、したがって、ヒトは、血餅を形成することができ、したがって、障害に関連する出血を低減又は排除することができる。したがって、血友病Aを治療するための主な薬剤は、濃縮FVIII生成物である。このタンパク質補充療法は、一般に、腕若しくは手の静脈内に、又は胸部のポートを通じて注射又は注入される。血流中に十分な凝固因子を維持して出血を防ぐために、重度の血友病(又は中等度の血友病、及びおそらく軽度の血友病)を有する患者は、典型的には、予防と呼ばれる定期的な治療レジメンを処方される。これは、人が規則的なスケジュールで薬剤を注入することを意味する。例えば、FVIIIが体内でどれだけ長く持続するかに応じて、1日に複数回、毎日、1日おき、又は3日に1回である。このタイプの予防は、現在、処置を必要とする対象において血友病Aを処置するための標準治療であり、重度の血友病Aを有するほとんどの人々にとって最適な療法であると考えられている。注射及び注入の現在の標準治療にもかかわらず、多くの対象は、対象が予防を受けているにもかかわらず、自然に又は負傷の結果として生じる破綻出血を依然として経験する。実際に、破綻出血の予防及び制御時間の長さは、血友病Aの治療における成功の尺度と考えられており、現在の療法は改善の余地がかなりある。
【0053】
III.治療方法及び薬学的使用
血友病Aを治療するための現在の標準治療は、欠損又は欠陥タンパクを置換するために、生涯にわたるFVIIIの定期的な注射及び/又は注入を必要とする。更に、FVIII補充療法(すなわち、予防)の現在の標準でさえ、長期間にわたって破綻出血を予防することができない。本開示は、治療される対象の腹膜腔内にFVIIIを効果的に送達し、長期間にわたって破綻出血を予防する経口投与経路を提供することによって、この制限に対処する。開示される用量、投薬スケジュール、及びレジメンは、止血及び/又は正常化された凝固障害によって実証されるように、血友病Aの有効な予防的処置及び制御を提供し、開示される処置は、現在の標準又はケアよりも簡便であり、かつ低侵襲性である。
【0054】
本開示は、FVIIIを含有する経口剤形(例えば、嚥下可能デバイス)を用いて血友病Aを治療する方法を提供する。本開示はまた、FVIIIを含有する経口剤形を用いて、血友病Aを有する対象を破綻出血から保護する(例えば、破綻出血のリスクを低減する)方法を提供する。本開示は、血友病Aを処置するため、及び/又は血友病Aを有する対象を破綻出血から保護するための、FVIIIを含有する記載された経口剤形の使用を提供する。
【0055】
本明細書に記載される方法において使用される剤形は、血友病Aを有する対象の腸壁内へ及び腸壁を通じて、又は腹膜腔内に第VIII因子を送達するように構造化された嚥下可能なデバイス(すなわち、経口剤形)であり得る。一般に、デバイスは、FVIIIを含む組成物から形成されるか、又は当該組成物を含有するペイロードを含有する。ペイロードは、デバイスの経口摂取後に、対象の腸壁を貫通し、対象の腸壁内へ及び腸壁を通じて、又は腹膜腔内に挿入され、それによって、FVIIIを対象の腹膜腔内に送達するように構造化された固形組織貫通部材として成形されてもよい。ペイロードは、組成物から形成され得るか、又は組成物を含有し得る。デバイスは、生分解性カプセル内に包含され得る。デバイスは、生分解性であってもよい。そのようなデバイスの特定の実施形態を、以下により詳細に記載する。本明細書に開示される方法及び使用を実践する際の使用に好適なそのようなデバイスの他の実施形態は、米国特許公開公報第2019/0133937号及び同第2020/0222318号に開示されており、それらの全内容は、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0056】
したがって、本開示は、血友病Aを治療すること、及び/又は破綻出血及び/又は自然出血から血友病Aを有する対象を保護することにおける使用のための、本明細書に開示される実施形態のいずれかのFVIII含有カプセル/デバイスを提供する。本開示はまた、血友病Aを処置するため、及び/又は血友病Aを有する対象を破綻出血及び/若しくは自然出血から保護するための、本明細書に開示される実施形態のいずれかのFVIII含有カプセル/デバイスの前述の実施形態のいずれかの使用を提供する。
【0057】
以下のセクションは、FVIII組成物、投薬、投薬レジメン/スケジュール、臨床エンドポイント、並びに開示される方法及び使用の更なる実施形態に関する更なる詳細を提供する。
【0058】
より具体的には、本開示は、血友病Aを有する対象に、FVIIIを含む組成物から形成されるか、又は当該組成物を含むペイロードを含有する嚥下可能なデバイスを経口投与することを含む、血友病Aを治療する方法を提供する。ペイロードは、デバイスの経口摂取後に、対象の腸壁を貫通し、対象の腹膜腔内に挿入されるように構造化された固形組織貫通部材の形態であってもよい。そのような嚥下可能なデバイスの経口投与は、例えば、1~3日毎に1回の頻度又はそれ未満の頻度で繰り返されてもよい。ペイロードは、FVIIIを含む組成物から形成され得るか、又はそれを含有し得る。ペイロードは、対象が注射による疼痛を感じないように、鋭い刺激に対して非感受性である小腸の壁にペイロードが注射されるまで、消化(GI)管環境から保護される(例えば、ペイロードに到達する流体の進入による分解から保護される)。
【0059】
本開示はまた、血友病Aを治療する方法であって、血友病Aを有する対象に、FVIIIを含む組成物を含むペイロードを含有する嚥下可能なデバイスを経口投与することを含む方法を提供する。ペイロードは、デバイスの経口摂取後に、対象の腸壁を貫通し、対象の腹膜腔内に挿入され、それによってFVIIIを対象の腹膜腔内に送達するように構造化された固形組織貫通部材の形態であってもよい。ペイロードは、組成物から形成され得るか、又は組成物を含有し得る。一実施形態では、デバイスは、対象の体重に基づいて、約30IU/kg~約300IU/kgの用量のFVIIIを含有する。
【0060】
本開示はまた、FVIIIを含む組成物を含むペイロードを含有する嚥下可能なデバイスを、血友病Aを有する対象に経口投与することを含む、血友病Aを有する対象を破綻出血から保護する方法を提供する。ペイロードは、デバイスの経口摂取後に、対象の腸壁を貫通し、対象の腹膜腔内に挿入され、それによってFVIIIを対象の腹膜腔内に送達するように構造化された固形組織貫通部材の形態であってもよい。ペイロードは、組成物から形成され得るか、又は組成物を含有し得る。本方法は、少なくとも72時間及び最大120時間、対象を破綻出血から保護するのに有効であり得、破綻出血は、自然出血であり得る。
【0061】
本開示はまた、血友病Aを治療するか、又は破綻出血から血友病Aを有する対象を保護する際に使用するための、FVIIIを含む組成物を含有する嚥下可能なデバイスを提供する。ペイロードは、デバイスの経口摂取後に、対象の腸壁を貫通し、対象の腹膜腔内に挿入され、それによってFVIIIを対象の腹膜腔内に送達するように構造化された固形組織貫通部材の形態であってもよい。ペイロードは、組成物から形成され得るか、又は組成物を含有し得る。破綻出血は、自然出血であり得る。デバイスは、1~3日毎の頻度又はそれ未満の頻度で投与され得る。デバイスは、対象の体重に基づいて、約30IU/kg~約300IU/kgの用量のFVIIIを含有し得る。治療の結果として、対象は、少なくとも72時間及び最大120時間にわたって破綻出血から保護され得る。
【0062】
開示された方法及び使用は、複数の理由のために、血友病Aのための現在の標準治療を超える有意な改善を提供する。例えば、血友病Aに対する経口投与治療は、現在のところ存在しない。むしろ、現在の治療は、注射を介して投与される。したがって、本開示の方法及び使用は、満たされていない要求を満たすことができる。更に、開示された方法及び使用は、より便利な投薬レジメン又はスケジュールを可能にすることができる。本明細書の実施例は、本明細書に開示されるデバイスの単回投与が、対象に、破綻出血、自然出血事象からの保護、及び血友病Aの症状からの一般的な保護を、3、4、又は5日間以上提供できることを示す。それにもかかわらず、便宜上、デバイスは、コンプライアンスを向上させるために単純な毎日のルーチンを確立するように、1日1回投与され得る。重要なことに、FVIIIの過剰投与は一般に問題ではないので、更に高用量を毎日送達することができる。したがって、別段の指定がない限り、開示される方法及び使用は、毎日の投与(1日1回)を包含する。しかしながら、開示される方法及び使用はまた、1日に複数回、1日おき、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、又は7日に1回(週に1回)の投与を包含する。
【0063】
開示される方法及び使用は、長期作用型FVIII(例えば、PEG化FVIII)を含むFVIII組成物を包含し、ペイロード内に含有されるFVIII組成物の第1の用量をある時点で放出し、ペイロード内に含有されるFVIII組成物の別の用量を後の時点で放出するように構造化される遅延放出ペイロードを更に包含する。例えば、遅延放出ペイロードは、1つのFVIII組成物(長期作用型又は非長期作用型のいずれか)又は複数の異なるFVIII組成物(例えば、1つ以上の長期作用型FVIII組成物及び長期作用型ではない1つ以上のFVIII組成物)の複数の例などの複数のFVIII組成物を含んでもよく、複数のFVIII組成物のそれぞれは、異なる時間に遅延放出ペイロードから放出される。好適な遅延/制御放出ペイロード及びそれらを含有するデバイスの例は、PCT/US2020/054559に開示されており、その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。異なる時間に放出される複数のFVIII組成物を含有するそのような遅延放出ペイロードは、遅延放出ペイロードを含むデバイスの摂取間の期間の持続時間を、単回用量ペイロードと比較して数日又は数週間増加させることができる。あるいは、デバイスは、例えば、連続投与レジメンをシミュレートするために、複数のペイロード又は用量のうちのペイロード又は用量を頻繁に送達するように構成することができる。これらの実施形態のいずれかに関して、デバイスは、複数のペイロード又はFVIIIの用量を含有してもよく、デバイスは、ペイロード又は用量を異なる時間に対象の腹膜腔内に送達するように構造化され得る。遅延/制御放出のために構造化されたデバイスは、2、3、4、又は5つ以上のペイロード又はFVIIIの用量を含有してもよい。
【0064】
開示された方法及び使用はまた、従来の注射又は注入よりも低い用量を必要とする利点を提供する。したがって、開示される方法及び使用における使用のために、デバイスは、約1,000IU~約12,000IUの用量のFVIIIを含有し得る。例えば、用量は、約1,000IU、約1,500IU、約2,000IU、約2,500IU、約3,000IU、約3,500IU、約4,000IU、約4,500IU、約5,000IU、約5,500IU、約6,000IU、約6,500IU、約7,000IU、約7,500IU、約8,000IU、約8,500IU、約9,000IU、約9,500IU、約10,000IU、約10,500IU、約11,000IU、約11,500IU、又は約12,000IUであり得る。特定の実施形態では、デバイスは、3,000IU、6,000IU、又は9,000IUの用量のFVIIIを含有し得る。
【0065】
本明細書に開示される方法及び使用における使用に適した用量は、治療される対象の体重に基づき得る。例えば、FVIIIの用量は、約75IU/kg、約80IU/kg、約85IU/kg、約90IU/kg、約95IU/kg、約100IU/kg、約105IU/kg、約110IU/kg、約115IU/kg、約120IU/kg、約125IU/kg、約130IU/kg、約135IU/kg、約140IU/kg、約145IU/kg、約150IU/kg、約155IU/kg、約160IU/kg、約165IU/kg、約170IU/kg、約175IU/kg、約180IU/kg、約185IU/kg、約190IU/kg、約195IU/kg、約200IU/kg、約205IU/kg、約210IU/kg、約215IU/kg、約220IU/kg、約225IU/kg、約230IU/kg、約235IU/kg、約240IU/kg、約245IU/kg、約250IU/kg、約255IU/kg、約260IU/kg、約265IU/kg、約270IU/kg、又は約275IU/kgから選択され得る。特定の実施形態では、FVIIIの用量は、対象の体重に基づいて、約50IU/kg~約250IU/kg、約50IU/kg~約200IU/kg、約50IU/kg~約150IU/kg、又は約50IU/kg~約100IU/kgであり得る。更なる特定の実施形態では、FVIIIの用量は、50IU/kg~150IU/kgであり得る。投薬が対象の体重に基づく場合、本開示は、20~150kgなどの全ての異なる体重の患者を企図する。例えば、非肥満成人対象は、50~90kg又は60~80kgであり得る。肥満成人対象は、100~150kgの範囲内であり得る。小児対象(例えば、18歳未満の対象)は、20~60kgであり得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、FVIIIを含む組成物は、固形組織貫通部材を構成する中空の生分解性マイクロニードル内に充填された乾燥組成物である。しかしながら、FVIIIを含む組成物の形態は特に限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、FVIIIを含む組成物は、固形組織貫通部材を構成する生分解性マイクロニードルに形成される乾燥組成物であってもよい。そのような実施形態は、米国特許公開公報第2019/0133937号及び同第2020/0222318号により詳細に記載されており、それらの内容全体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0067】
治療される対象における使用に適した任意の形態のFVIIIが使用され得る。上記のように、FVIIIは、PEG化FVIIIなどの長期循環(長期作用)型のFVIIIであってもよい。他の部分を使用して、FVIIIの半減期を増加させ得る。例えば、FVIIIの長期循環型は、PLA、PGA、PEG、PEO、PLLA、PDLA、又は別のポリマー、又はヒドロゲルにコンジュゲートされたFVIIIを含み得る。追加的に又は代替的に、FVIIIは、組換えヒトFVIIIなどの組換えFVIIIであってもよい。FVIIIは、組換えヒトPEG化FVIIIであってもよい。FVIIIは、ヒト血漿に由来してもよい。
【0068】
開示された方法及び使用は、驚くべきことに、本明細書に開示されるような嚥下可能なデバイスの単回投与後の長時間にわたって、止血を維持し、破綻出血及び/又は自然出血から保護することが示された。例えば、治療された対象は、本明細書に開示される単回投与後に、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、又は少なくとも96時間、及び最大120時間以上から選択される期間、止血又は正常化された凝固障害を維持し得る。追加的に又は代替的に、処置された対象は、本明細書に開示される単回投与後、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、又は少なくとも96時間、及び最大120時間以上、破綻出血及び/又は自然出血から保護され得る。
【0069】
また驚くべきことに、開示される方法及び使用は、等用量のFVIIIの静脈内投与と同等又はそれよりも長い期間にわたって、対象においてFVIIIを治療レベルに維持し得る。例えば、開示される方法及び使用は、本明細書に開示されるような単回投与後、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、若しくは少なくとも96時間、及び/又は最大120時間以上、対象においてFVIIIを治療レベルに維持し得る。
【0070】
開示される方法及び使用は、破綻出血のリスクを低下させるか又は予防するのに十分なFVIII曝露を維持する処置レジメン(例えば、投薬スケジュール)を含み得る。例えば、破綻出血は、本明細書に開示されるような単回投与後、少なくとも72時間、最大120時間以上防止され得る。例えば、治療される対象は、本明細書に開示される単回投与後、少なくとも72時間、少なくとも78時間、少なくとも84時間、少なくとも90時間、少なくとも96時間、少なくとも102時間、少なくとも108時間、少なくとも114時間、120時間、又はそれ以上、破綻出血を経験し得ない。
【0071】
IV.FVIIIを送達するための経口剤形
一般に、開示される方法及び使用は、対象における血友病Aを治療するために企図される。ヒト対象において、ヒトの年齢及び大きさは限定されず、小児、成人、及び老人対象、並びに体重又は身長が正常範囲である対象、正常範囲を上回る対象、又は正常範囲を下回る対象を含み得る。
【0072】
上記のように、本明細書に記載される方法において使用される剤形は、FVIIIを含む組成物から作製されるか、又は当該組成物を含むペイロードを含有する嚥下可能なデバイスである。ペイロードは、デバイスの経口摂取後に、対象の腸壁を貫通し、対象の腹膜腔内に挿入され、それによってFVIIIを対象の腸壁又は腹膜腔内に送達するように構造化された固形組織貫通部材の形態であってもよい。ペイロードは、組成物から形成され得るか、又は組成物を含有し得る。そのようなデバイスの特定の実施形態を、以下により詳細に記載する。本明細書に開示される方法及び使用を実践する際の使用に好適なそのようなデバイスの他の実施形態は、米国特許公開公報第2019/0133937号及び同第2020/0222318号に開示されており、それらの全内容は、参照することによって全文が本明細書に組み込まれる。本明細書に開示又は参照される任意のデバイスは、任意に、カプセル内に配置されてもよい。典型的には、デバイスの構成要素を形成するために使用される材料は、食品グレード、食品添加物、活性若しくは不活性食品成分、又はGRAS(FDAによって一般的に安全と認められている)として分類される。デバイス(任意のカプセルシェルを含む)は、生分解性であり得る。
【0073】
図18は、本開示の一実施形態による嚥下可能なデバイスを図示する。図示されるように、デバイスは、カプセル内に配置され、カプセルは、000サイズのHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)カプセルなどの任意の好適なサイズの嚥下可能カプセル、又は図18の挿入図Aに図示されるカプセルなどであってもよい。カプセルは、腸溶性ポリマー(例えば、消化管内の標的pHで溶解するポリマー)などの腸溶性コーティングと共に提供され得る。例えば、腸溶性コーティングは、胃の酸性環境における溶解を回避するために、6超のpHで溶解するように選択することができる。
【0074】
デバイスが腸溶性コーティングされたカプセルに組み込まれる実施形態では、カプセルが胃を出て十二指腸に入った後、小腸の高い腸pHが腸溶コーティング及びカプセルシェルを溶解し、デバイスの内部及びその中に含まれる成分を腸液に曝露する。
【0075】
デバイスは、腸壁内へのペイロードの送達を達成するための機構を含有してもよい。一実施形態では、機構は、デバイスが小腸内などの標的送達部位にあるときにトリガされるアクチュエータを含む。
【0076】
図18の実施形態では、デバイスは、密封ポリエチレンバルーン(密封バルーンと表示される)と、送達構築物(マイクロシリンジと表示される)と、2つの反応物及び弁の形態のアクチュエータとを含有し、それらの全ては、腸壁内へのペイロードの送達を達成するための機構をともに構成する。この実施形態では、マイクロシリンジは、ペイロード(マイクロニードルと表示される)を含む。反応物A及び反応物Bと表示された2つの反応物(例えば、クエン酸及び炭酸水素カリウム)は、初期状態において弁(反応弁と表示される)によって分離される。腸液などの流体に曝露されると(例えば、カプセルが分解した後)、弁の一部が分解し、2つの反応物が混合することを可能にし、バルーンを拡張させるガス(例えば、二酸化炭素又は他の無害ガス)の形成をもたらす。バルーンの膨張は、マイクロシリンジを腸の長軸に対して垂直に整列させ、マイクロシリンジからマイクロニードルを排出し、マイクロニードルを腸壁内へ及びそれを通じて注入するために必要とされる力を提供するのに十分な圧力をバルーン内に構築する。マイクロニードルの展開後、バルーンは収縮し、バルーン及び他の構成要素は、通常の排便によりGI管を通じて排出される。
【0077】
一般に、腸壁内へのペイロードの送達を達成するための機構は、種々の機械的、電気的、電気機械的、及び/又は化学的構成要素を含んでもよい。例えば、バネ、レバー、及び/又は様々な可動構成要素が一緒に機構を構成してもよい。
【0078】
ペイロードは、ペイロードが腸壁内に送達される直前まで(例えば、ms又はμsの単位で)、保護エンクロージャ内に配置されてもよい。例えば、図18の実施形態では、マイクロニードルは、初期状態ではマイクロシリンジ内に封止されてもよく、マイクロシリンジから腸壁内へ放出されると、マイクロシリンジ上のシールを穿孔又は破断して、マイクロシリンジから外へ通過してもよい。
【0079】
腸壁を通過して腹膜腔内に入った後、ペイロードは、湿潤組織環境において溶解又は分解して、腹膜腔内の血管系にFVIII組成物を放出する。ペイロードは、FVIII組成物が配置される中空デバイスであってもよく、又はペイロード自体がFVIII組成物から形成される(例えば、FVIII組成物は、所望のサイズ及び形状に圧縮され得る)。一実施形態では、FVIII組成物は、円筒形状の微小錠剤又は他の形状の微小錠剤に圧縮される。一実施形態において、非圧縮形態又は圧縮形態のFVIII組成物は、分解性シェル内に配置され、微小錠剤を含有するシェルがペイロードである。一実施形態では、シェルはほぼニードル状である。ペイロードの分解は、腸壁への注射の1、2、3、4、若しくは5分以内、又はそれより長く起こり得る。ペイロードの特性(例えば、構造又は材料)は、ペイロードからのFVIIIの放出を遅延させ得る。
【0080】
デバイスは、デバイスが対象のGI管を通って進む際にデバイスの追跡を補助するために、放射性標識などの検出可能なマーカーを含んでもよい。マーカーの例としては、硫酸バリウム(その分散は、デバイス内部への流体侵入及びペイロードの切迫した送達を示す)及びビスマスが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、任意で、GI管に沿った成分の通過をX線撮影で追跡するために、並びにその排出を確認するために、デバイスに含まれる成分上又は成分中に含まれ得る。
【0081】
図18に示される実施形態に類似し得る一実施形態では、バルーンは、自己サイズ調節式である。自己サイズ調節式バルーンを含む実施形態に関して、バルーンは、本明細書では、「拡張可能な構成要素」と称される。
【0082】
いくつかの実施形態では、拡張可能な構成要素には、複数のセクションが含まれる。拡張可能な構成要素の拡張された構成において、セクションのうちの少なくとも1つが非順応性であり、セクションのうちの少なくとも1つが順応性である。順応性とは、セクションが容易に変形する可能性がある状態を指し、非順応性とは、セクションが変形に抵抗する状態を指す。
【0083】
拘束がない場合、各セクションは完全に伸ばされた状態に拡張され、拡張可能な構成要素は最大寸法に達する。これは、例えば、拡張可能な構成要素を形成するために使用される材料及び/又は実装されている拡張モジュールの容量に依存する場合がある(例えば、膨張による拡張の場合、最大寸法は、拡張モジュールから利用できる膨張力の制限、又は拡張可能な構成要素の1つ以上の材料の伸縮係数によって影響を受ける可能性がある)。拡張モジュールは、腸壁内へのペイロードの送達を達成するための機構の一部である。
【0084】
各順応性セクションは、ヒンジと同様に動作するため、便宜上、ヒンジと呼ばれる。拡張可能な構成要素が完全に伸ばされた状態(各セクションが完全に伸ばされる)では、各ヒンジは、各非順応性セクションの対応する設計寸法よりも実質的に小さい少なくとも1つの設計寸法(幅、長さ、及び/又は円周)を有する。
【0085】
拡張可能な構成要素が拡張するにつれて、拡張可能な構成要素によってGI管の内腔の内部に及ぼされる力と、拡張可能な構成要素に接する内腔の力との間の均衡を反映する形状を達成する。別の言い方をすれば、拡張可能な構成要素は完全には伸びない可能性があり、内腔によって拘束された場合、ヒンジの周りで屈曲する傾向がある。この屈曲は、非順応性セクションの対応する寸法と比較してヒンジの寸法が小さいためであり、拡張可能な構成要素の拡張された構成においては、ヒンジの剛性が非順応性セクションの剛性と比較して低くなる。
【0086】
このようにして、拡張可能な構成要素は、非順応性セクション(以下、NCSと呼ぶことができる)が内腔内壁に押し付けられるまで拡張し、拡張可能な構成要素を、少なくともそのような送達を達成するのに十分な時間、FVIII組成物を内腔壁に送達するのに適した位置に維持する。次いで、拡張可能な構成要素は収縮させ得る。
【0087】
膨張可能な構成要素は、収縮後に除去することができ、その場で分解するために放置することができ、又は内腔から通過させることができる。拡張可能な構成要素は、分解可能な材料から構造化することができ、その結果、拡張可能な構成要素は、標的部位の環境に曝された後、設計された期間後に分解する。
【0088】
いくつかの実施形態では、自己サイズ調節式デバイスは、内腔内に存在する物質によって送達が影響を受けるのを回避するのに特に適している。例えば、自己サイズ調節式バルーンデバイスは、物質を邪魔にならないように押し出す及び/又は内腔壁に接して物質を圧縮するために、拡張可能な構成要素の急速な拡張による能力を有し、更なる拡張を伴わないで送達技術及び送達されるべきFVIIIの組成物に対する所望の送達速度に適切な程度まで拡張することが可能である。GI内腔への送達のために構造化された自己サイズ調節式バルーンデバイスの場合、自己サイズ調節式バルーンデバイスは、対象が摂食状態又は絶食状態にあるかどうかにかかわらず、そのような送達を達成することができる(つまり、GI内腔に消化物が存在するか否かにかかわらず、送達が達成される)。
【0089】
図1~4は、拡張可能な構成要素が最大寸法まで拘束なく伸ばされた完全に伸ばされた状態の拡張可能な構成要素の実施形態の例を示す(これは、例えば、他の考慮事項の中でも、拡張可能な構成要素に使用される材料及び拡張モジュールの能力に依存する場合がある)。検討の便宜上、任意に割り当てられたx-y-z座標系が示され、図1~4の拡張可能な構成要素がx-y参照平面に示されている。各拡張可能な構成要素には、示されているx-y平面に2つのNCS及び1つのヒンジが含まれている。
【0090】
図1を参照すると、拡張可能な構成要素100は、ヒンジ110によって分離されたNCS105及びNCS106を含む。図1Aに示されるこの実施形態のこの図では、NCS105の寸法x1は、NCS106の寸法x3よりも大きく、x1及びx3の両方が、ヒンジ110の寸法x2よりも大きい。別の言い方をすれば、x1/x3>1、x1/x2>1、及びx3/x2>1である。更に、この実施形態のこの図では、NCS105の寸法y1は、NCS106の寸法y2よりも大きい。したがって、この図では、NCS105はNCS106よりも高く、かつ長くなっている。
【0091】
多くの場合、拡張可能な構成要素(例えば、拡張可能な構成要素100)の細長い形状は、拡張可能な構成要素が位置付けられる内腔の中心軸と整列した長い寸法(例えば、長さL)を有する拡張可能な構成要素をもたらす。
【0092】
図1に示される実施形態では、ヒンジ110は、NCS105及びNCS106よりもはるかに狭い(それぞれ、x2<<x1及びx2<<x3)ので、NCS105及びNCS106は、A及びBとラベル付けされた矢印によって示されるように、ヒンジ110の周りのx-y平面において、互いに向かって又は離れて屈曲することができ、これにより、拡張可能な構成要素100が、不均一な内腔表面及び/又は一貫性のない内腔直径に対応することを可能にし得る。
【0093】
図2を参照すると、拡張可能な構成要素200は、ヒンジ210によって分離されたNCS205及びNCS206を含む。この図では、拡張可能な構成要素200は、図1に示されているように、拡張可能な構成要素100と同様である。NCS205の寸法x4は、NCS206の寸法x6よりも大きく、x4及びx6の両方が、ヒンジ210の寸法x5よりも大きい。また、NCS205の寸法y3は、NCS206の寸法y4よりも大きい。しかしながら、図2に示すx5は、図1に示すx2よりも約3倍大きい。したがって、NCS205及びNCS206は、x-y平面内で互いに向かって又は離れて屈曲する能力を有し、それは、x-y平面内で互いに向かって又は離れて屈曲するNCS105及びNCS106の能力よりも小さく、また依然として、ある程度の柔軟性を維持して、拡張可能な構成要素200が不均一な内腔表面及び/又は一貫性のない内腔直径に対応できるようにする。
【0094】
図1図2とを比較することによって見られるように、ヒンジ(例えば、ヒンジ110又はヒンジ210)の寸法は、所望の幅を有するように設計することができる。拡張可能な構成要素の幅及び他の寸法は、例えば、特定の用途に適するように、拡張可能な構成要素を構造化するために使用される材料の量を最小限に抑え、製造コストを削減し、又は製造速度を上げるように設計することができる。
【0095】
図3を参照すると、拡張可能な構成要素300は、ヒンジ310によって分離されたNCS305及びNCS306を含む。NCS305の寸法x7は、NCS306の寸法x9よりも大きく、x7及びx9の両方がヒンジ310の寸法x8よりも大きい。この実施形態では、NCS305の寸法y5は、NCS306の寸法y6にほぼ等しく、寸法の別の変形例を示している。
【0096】
図4を参照すると、拡張可能な構成要素400は、ヒンジ410によって分離されたNCS405及びNCS406を含む。この実施形態では、NCS405の寸法x10は、NCS406の寸法x12よりも小さく、x10及びx12は両方とも、ヒンジ410の寸法x11よりいくらか大きく、NCS405の寸法y7は、NCS406の寸法y8の約2倍大きく、NCS406寸法の別の変形例を示している。
【0097】
NCS及びヒンジの他の比較寸法は、本開示の範囲内である。例えば、x-y平面のヒンジの寸法は、その平面のNCSの寸法よりも大きくなる場合がある。更に、寸法は特定のセクション(NCS又はヒンジ)内でz方向に変化する場合がある。
【0098】
図5A~5Fは、視野が回転したときに(ここでは、y-z平面に回転)、それぞれ図1、2、3、4の拡張可能な構成要素100、200、300、又は400のうちの1つ以上がどのように見えるかなどの拡張可能な構成要素の実施形態の例を示す。図5A~5Fに関して便宜上、非順応性セクションはNCS505、506として参照され、順応性セクションはヒンジ510として参照される。
【0099】
NCS505及びNCS506は、ヒンジ510の周りのy-z平面内で互いに向かって又は互いに離れて屈曲することができ、これにより、拡張可能な構成要素が様々な内腔の直径及び形状に対応することができる。
【0100】
図5A~5Fに見られるように、拡張可能な構成要素の形状は、回転した(例えば、側面)図において、回転していない(例えば、正面)図における場合と同様に、変化することが可能である。例えば、NCS505、506の一方(又は両方)は、実質的に平坦であるか、いくらか丸みを帯びているか、かなり丸みを帯びているか、又は他の曲率である表面を有し得る。
【0101】
上記の検討から、様々なセクション(各NCS及び各ヒンジ)のそれぞれが、他のセクションと比較して所望の絶対寸法並びに所望の寸法を有するように設計され得ることが明らかであろう。例えば、ヒンジは、同じx-y平面内の特定のNCSの幅以上であるx-y平面内の幅を有する一方で、そのy-z平面におけるその特定のNCSの幅よりも実質的に小さいy-z平面内の幅を有し得る。
【0102】
拡張可能な構成要素の実施形態のいくつかの例に関して図1~4及び図5A~5Fを見ると、本開示による、2つの非順応性セクション(NCS)及び1つの順応性セクション(ヒンジ)を有する拡張可能な構成要素のための多種多様な設計があり得ることが明らかであろう。様々な実施形態では、本開示による拡張可能な構成要素は、より一般的に、1つ以上のNCS及び1つ以上のヒンジを有する。
【0103】
自己サイズ調節式デバイスの拡張可能な構成要素は、2つ以上の平面のそれぞれに1つ以上のセクションを有するように構造化することができる。例えば、図1の第1のx-y平面に示される拡張可能な構成要素100は、y-z平面で見られるように、拡張可能な構成要素100がY-形、X-形、又はその他の多面的な形状を形成するように、第2のx-y平面に追加のNCS及び/又はヒンジセクションを有するように構造化され得る。プロングは、1つ以上のNCSを含む若しくはNCSなし、かつ/又は1つ以上のヒンジを含む若しくはヒンジなしの場合がある。
【0104】
拡張可能な構成要素には、ヒンジ領域での順応性を高めるための弱化機能が含まれている場合がある。
【0105】
図6は、示されている図において2つのNCS、NCS605及びNCS606を有する拡張可能な構成要素600を示している。拡張可能な構成要素600は、この実施形態では楕円形として示される開口部615を画定する。別の言い方をすれば、拡張可能な構成要素600は、開口部615として示される弱化機能を含む。開口部615内の材料の省略は、2つのヒンジ、ヒンジ610及びヒンジ611を残す。完全に伸ばされたヒンジ610及び611は、それぞれ、NCS605及びNCS606の対応する設計寸法よりも実質的に小さい少なくとも1つの設計寸法(幅、長さ、及び/又は円周)を有し、これは、NCS605、606に対してヒンジ610、611の順応性の増加を提供する。拡張可能な構成要素600は、この実施形態では、ヒンジ610、611の周りで屈曲する傾向がある。ヒンジ610、611は、類似又は異なる寸法を有し得る。別の視野に回転すると、拡張可能な構成要素600は、図5A~5Fに示される形状を含む、様々な形状を有することができる。
【0106】
図7A及び図7Bは、単一のNCS705及び2つのヒンジ、ヒンジ710及びヒンジ711を有する拡張可能な構成要素700を示している。拡張可能な構成要素700は、図7Aのx-y平面に示され、ヒンジ711がヒンジ710の後ろに隠されるように、図7Bのy-z平面に示されている。この実施形態では、ヒンジ710、711自体が、順応性を提供しながら、内腔の内面に対して圧力を加えるように動作する。
【0107】
図8A及び図8Bは、3つのNCS、NCS805、NCS806、及びNCS807、並びに2つのヒンジ、ヒンジ810及びヒンジ811を有する拡張可能な構成要素800を示す。拡張可能な構成要素800は、図8Aのx-y平面に示され、ヒンジ811がヒンジ810の後ろに隠され、NCS807がNCS806の後ろに隠されるように、図8Bのy-z平面に示されている。
【0108】
図7A及び図8Aから分かるように、拡張可能な構成要素700及び拡張可能な構成要素800は、示されるx-y平面において類似しているように見える。しかしながら、90度回転すると(例えば、それぞれ、図7B及び図8Bに示されるように、y-z平面に示されるように)、NCS806及びNCS807(図8B)は、z方向の寸法を有するように拡張することが分かり、そのz方向の寸法はヒンジ710及び711の対応する寸法よりも実質的に大きい(図7B)。
【0109】
拡張可能な構成要素は、カプセル内に配置され得る。
【0110】
図9A及び図9Bは、カプセルの実施形態の例を示す。図9Aでは、カプセル900は、円筒形の本体905と、本体905の上又は中に取り付けられた2つのエンドキャップ910とを含む。カプセル900の3つの構成要素のうちの少なくとも1つ(円筒形の本体905、第1のエンドキャップ910、及び/又は第2のエンドキャップ910)は分解可能である。エンドキャップ910を所定の位置に保持するために、エンドキャップ910を本体905の上又は中に接着又は圧入することができる。図9Bでは、カプセル950は、嵌め込まれた部分920及び部分921を含む。部分920、921のうちの少なくとも1つは分解可能である。部分920、921は、一緒に接着又は圧入嵌め込みすることができる。カプセルサイズの例には、000、00、及び0カプセルサイズが含まれる。図9A、9Bに示される以外のカプセル形状、例えば、球形又は卵形、又は不規則な形状、又は第1の軸に関して対称であり、第1の軸に垂直な第2の軸に関して非対称である形状(例えば、卵形)、又は少なくとも1つの平らな面を有する形状も使用可能である。
【0111】
いくつかの実施形態では、自己サイズ調節式デバイスは、拡張可能な構成要素上及び/又はカプセル上(カプセルが含まれる場合)に分解性コーティングを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、コーティングは、拡張可能な構成要素に直接適用されて、拡張可能な構成要素をカプセルシェル内に配置する代わりに、自己サイズ調節式デバイスの製造を完了する。コーティングは、拡張可能な構成要素を完全に覆って密封することができるか、又は拡張可能な構成要素の一部を覆うことができる。例えば、コーティングは、特定の条件下で分解して、自己サイズ調節式バルーンデバイスの1つ以上の分解性構成要素を露出させる可能性がある。次に、1つ以上の分解性構成要素は、曝露後に分解し、膨張性構成要素の膨張を開始するか、又は、膨張性構成要素を膨張させるためにガスが使用される一実施形態では、ガスを放出して、FVIII組成物の送達後に膨張性構成要素を収縮させる、などを行う。
【0113】
拡張可能なデバイス及び/又はカプセル上のコーティングは、不透明な材料(例えば、内容物が見えないようにするため)、着色された材料(例えば、自己サイズ調節式デバイスに含まれるFVIII組成物を特定するための色分けを提供するため)、及び/又は顕著なフレーバー又は匂い(例えば、興味をそそぐ望ましくないフレーバー又は匂い、又は興味を促すための望ましいフレーバー又は匂い)を含む材料であり得るか、又はそれらを含み得る、それぞれは、自己サイズ調節式デバイスが標的送達部位にFVIII組成物を送達することを可能にするのに十分な溶解性又は分解性を有する。
【0114】
コーティング及び/又はカプセルの全て又は一部は、標的部位で予想される条件下の特定の時間長の後で、例えば、配置後の設計期間の後、又は特定の化学物質、又はカプセルに対して加えられる特定の値又は範囲のpH、温度、若しくは圧力、又は前述の組み合わせ、によって分解するように設計され得る。一実施形態では、カプセルは、外部トリガ、例えば、カプセル内の機構がカプセルを裂く又は壊すように無線で送信されるトリガで分解するように設計されている。
【0115】
本開示による自己サイズ調節式デバイスのいくつかの実施形態は、摂取を介して治療用FVIII組成物をGI内腔壁内に送達するために使用されてもよい。自己サイズ調節式デバイスは、カプセルを含み得る。自己サイズ調節式デバイスは、胃又は腸内などのGI管内の特定の位置で分解するように設計された、カプセル及び/又は拡張可能な構成要素上のコーティング(例えば、上記のようなコーティング)を含み得る。一実施形態では、カプセル及び/又はコーティングの全部又は一部は、特定の化学物質の存在下で、又はGI管内の標的部位で予想される条件(例えば、pH、温度、カプセルに対して加えられる圧力、又は前述の組み合わせの特定の値又は範囲)の下の特定の時間長の後で分解するように設計されている。一実施形態では、コーティングは、グアーガム又はキサンタンガムなどの飲み込み性を改善するための材料を含む。
【0116】
図10A~10Cは、本明細書に説明されるような嚥下可能なデバイスである、自己サイズ調節式デバイス1050を組み立てる例を図示する。図10Aは、拡張可能な構成要素1000の一実施形態及びカプセルシェル1010の一実施形態を示す。拡張可能な構成要素1000の外寸は、カプセル1000の内寸法より数倍大きくてもよい。例えば、拡張可能な構成要素1000の一実施形態の最長寸法は、カプセルシェル1010の内部長さより2倍~5倍大きくてもよい。カプセルの内寸に対する拡張可能な構成要素の外寸の他の比率は、本開示の範囲内である。図10Bは、カプセルシェル1010の内寸よりも小さい配置1001に折り畳まれたかつ/又は巻かれた拡張可能な構成要素1000を示している。図示のように、配置1001は、この実施形態では、折り紙スタイルの複雑な配置に折り畳まれかつ/又は巻かれている。図10Cは、カプセル1010に配置された配置1001、及び一緒に組み立てられたカプセルシェル1010を示す(例えば、エンドキャップ910が本体905の上又は中に取り付けられている図9Aのように、又は部分920、921が嵌め込みされている図9Bのように)。デバイス1050は、拡張可能な構成要素1000(配置1001にある)及びカプセルシェル1010を含み、拡張モジュール、送達構成要素、1つ以上のコーティング、及び収縮弁など、示されていない他の構成要素を含み得る。
【0117】
図11A図11Fは、デバイス1050が、GI管内の標的送達部位に提供され、拡張可能な構成要素1000を位置付けて、治療用FVIII組成物をGI内腔1110の内腔壁1111内に送達する方法の例を示す。図11A図11Cに戻ると、デバイス1050は、デバイス1050の進行方向(矢印で示される)にほぼ垂直な視野から示されているが、図11D図11Fのデバイス1050は、内腔1110を見ているように示されている(例えば、図11A図11Cの図から約90度)。
【0118】
図11Aは、弛緩状態(例えば、蠕動収縮の間)で示される内腔1110内のデバイス1050を示す。この実施形態では、デバイス1050の外径は、GI管のこの点での内腔1110の内径よりも小さい。デバイス1050は、例えば、蠕動、流体力学、及び/又は重力の動作を介して、内腔1110を横断する。
【0119】
図11Bは、設計された標的部位に到達した後、又は設計された標的部位を表す条件(例えば、pH)に遭遇した後、デバイス1050が内腔1110を横断し続けるにつれて、カプセルシェル1010が分解する(又は破壊又は分解するようにトリガされる)ことを示す。例えば、腸内の送達に関して、標的部位は、一般的な領域(例えば、小腸)、より特定の領域(例えば、空腸)、又は特定の組織領域(例えば、マークされている組織領域)にあり得る。
【0120】
図11Cは、カプセルシェル1010の分解に続いて(又は同時に)、拡張可能な構成要素1000がその折り畳まれたかつ/又は巻かれた配置から展開し始めることを示している。
【0121】
図11Dは、ほとんど広げられた拡張可能な構成要素1000を示し、図11Eは、拡張された(例えば、拡張モジュールによって)ときの拡張可能な構成要素1110を示している。
【0122】
図11Fは、拡張後の拡張可能な構成要素1000を示している。この実施形態では、拡張可能な構成要素1000は、基準線1120がほぼ直線になるまで、内腔1110によって拘束されていなければ拡張することができたであろう。しかしながら、内腔1110は、拡張可能な構成要素1000に対して力を及ぼし、これにより、拡張可能な構成要素1000がヒンジ1002で屈曲される。次に、拡張可能な構成要素1000のNCS1003及びNCS1004は、内腔1110の内腔壁(例えば、内腔の反対側)に押し付けて、拡張可能な構成要素1000を位置付けて、内腔壁又はその中に治療用FVIII組成物を送達する。ヒンジ1002はまた、内腔壁を圧迫する可能性がある。一実施形態では、蠕動運動は、拡張可能な構成要素1000をその拡張状態に内腔1110を介して動かすことができる。一実施形態では、拡張可能な構成要素1000は、蠕動の間でさえ、拡張可能な構成要素1000をほぼ同じ位置にしっかりと保持するのに十分な内圧(表面張力と組み合わされて)を有し得る。一実施形態では、拡張可能な構成要素1000は、表面粗さ又は表面突起を含んでおり、拡張可能な構成要素1000の位置を維持するのを助ける。
【0123】
拡張可能な構成要素の拡張は、任意の適切な拡張モジュールによって達成することができる。一実施形態では、バネ機構が圧縮状態から解放されて、堅い又は柔らかい材料のフィラー片を展開して外側に押し出し、それにより拡張可能な構成要素を拡張する。一実施形態では、2つ以上の反応物が一緒に混合されてガスを形成し、それによって拡張可能な構成要素を拡張させる。一実施形態では、材料は急速に燃焼してガスを生成し、それによって拡張可能な構成要素を拡張させる。他の拡張モジュールは、本開示の範囲内にある。
【0124】
図12は、拡張可能な構成要素1250を含む自己サイズ調節式デバイス1210が位置付けられている内腔1200を示している。この実施形態では、拡張可能な構成要素1250に対する内腔1200の力は、拡張可能な構成要素1250のヒンジ1251を実質的に屈曲させるのに十分ではないので、拡張可能な構成要素1250は、ほぼ完全に伸ばされた状態にある。別の言い方をすれば、拡張可能な構成要素1250のヒンジ1251の屈曲は、この内腔1200内のこの位置では無視できる。
【0125】
拡張可能な構成要素1250は、ガスの生成によって拡張されてもよく、拡張可能な構成要素1250内から内腔1200にガスを放出して拡張可能な構成要素1250を収縮させるための弁1255を含んでもよい。弁1255は、1つ以上の構成要素を含み得る。一実施形態では、弁1255は、流体(例えば、生物学的物質)の存在下で分解して、拡張可能な構成要素1250によって定義されるポート又は開口部を明らかにするピンチ弁である。一実施形態では、弁1255は、拡張可能な構成要素1250のポート又は開口部上の材料又はコーティングの一部であり、材料又はコーティングのその部分は、拡張可能な構成要素1250が治療用FVIII組成物を送達した後、一定期間で分解するように設計されている。一実施形態では、弁1255は手動で開かれる。
【0126】
FVIIIの治療用組成物(又は複数の治療用組成物)は、任意の構成(例えば、固体、流体、スラリー、又は粉末として)の拡張可能な構成要素1250内に保管することができる。治療用組成物(複数可)は、任意の構成で(例えば、固体、流体、スラリー、又は粉末として)送達することができる。いくつかの実施形態では、治療用組成物の2つ以上の構成要素は、送達前に拡張可能な構成要素1250内で混合される。一実施形態では、拡張可能な構成要素1250は、治療用組成物が通って送達される開口部1261を画定するポータル1260などのポータルを含む。組織貫通部材を含む実施形態では、組織貫通部材は、ポータルを通じて送達され得る。
【0127】
治療用FVIII組成物は、治療用FVIII組成物が拡張可能な構成要素1250から、内腔1200を通じて、及びそれを越えて(例えば、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜、及び内腔1200の外壁を通じて、腹膜腔内へ)強制的に放出されるように、能動的に放出される。そのような実施形態では、治療用FVIII組成物は、ポータル1260などの1つ以上の入口を通じて放出されてもよい。
【0128】
FVIIIの治療用組成物は、送達機構によって拡張可能な構成要素1250から強制的に放出され得る。例えば、固体組成物(例えば、錠剤、ペレット、又は尖った形態)に関して、治療用FVIII組成物は、固体組成物を拡張可能な構成要素1250から迅速に射出するように開放されるバネ機構の手段によって、又はピストンがバネ機構又はガス膨張によって動かされて、固体組成物を拡張可能な構成要素1250から迅速に押し出すピストン機構の手段によって、放出されることができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、治療用FVIII組成物が通って送達される拡張可能な構成要素1250の表面は、約5mm~20mmの長さに沿って内腔1200の壁に接触する。
【0130】
いくつかの実施形態では、治療用FVIII組成物は、複数の表面から、拡張可能な構成要素1250から送達される。そのような実施形態は、FVIII組成物から形成される、又はそれを含有する、2つ以上の組織貫通部材を含んでもよい。
【0131】
図13Aは、1つのNCS1310を含み、ヒンジを含まない拡張可能な構成要素1305を含む自己サイズ調節式デバイス1300の一実施形態を示す。図13Bは、2つのNCS、NCS1360及びNCS1361、並びにそれらの間のヒンジ1365を含む拡張可能な構成要素1355を含む自己サイズ調節式デバイス1350の一実施形態を示す。これらの実施形態に関して、拡張可能な構成要素1305の幅W1は、拡張可能な構成要素1355の幅W2と同様であるが、拡張可能な構成要素1305の高さH1は、拡張可能な構成要素1355の高さH2よりも小さい。
【0132】
同じ設計に従って構造化された複数のデバイス1300(図13A)は、NCS1310の不適合性のために内腔内で完全に膨張したとき、NCS1310のほぼ同じ最大円周(y-z平面)を有し、その結果、拡張可能な構成要素1305は、様々な異なる内部内腔周囲に著しくは適合しない。したがって、異なるサイズのデバイス1300は、異なる動物種及び/又はある種内の異なる対象に適切であり得る。対照的に、同じ設計に従って構造化された複数のデバイス1350(図13B)は、内腔内で完全に膨張した場合に、同じ最大円周を持たない可能性が高い。なぜなら、各デバイス1350は、膨張した場合であっても、ヒンジ1365の柔軟性(不適合性、屈曲)により、膨張した内腔のサイズに調節されるからである。内腔内のデバイス1350に関する最大円周は、デバイス1350が内腔内でとる形状(例えば、部分的に伸ばされた形状又は完全に伸ばされた形状)の最大円周を指す。
【0133】
デバイス1300、1350の図と同様のデバイス設計が準備されている。参照の便宜のために、図13A及び図13Bで使用される識別番号は、以下の検討においてこれらの試験デバイスを説明するために使用される。これらのトライアルデバイスの場合、拡張モジュールには2つの反応物(重曹及びクエン酸)と、2つの反応物を分離する生分解性ピンチ弁1370が含まれていた。弁1370は、分解し、反応物が混合して二酸化炭素を生成し、拡張可能な構成要素1305又は拡張可能な構成要素1355を膨張させるように設計された。
【0134】
種々の試験のために、試験デバイスは、3つの例示的設計:デバイスA、デバイスB、及びデバイスCのうちの1つに従って構築された。デバイスA及びデバイスBはデバイス1300(図13A)と同様であり、デバイスCはデバイス1350(図13B)と同様であった。
【0135】
デバイスAは、完全に膨張して拘束されていない場合、最大円周(y-z平面で)が約65mmであった。デバイスBは、完全に膨張して拘束されていない場合、最大円周(y-z平面で)が約68mmであった。分かりやすくするために、デバイスA及びデバイスBの形状及び幅は似ているが(デバイスAの幅及びデバイスBの幅はW1にほぼ等しい)、デバイスBはデバイスAよりも高かった(例えば、デバイスAの高さはH1に等しく、デバイスBの高さはH1よりも大きかった)。デバイスCは、完全に膨張して拘束されていない場合、最大円周(y-z平面で)が約80mmであった。
【0136】
拡張されると、デバイスAの拡張可能な構成要素1305の内部容積V1は、約8立方センチメートル(cc)であったが、デバイスCの拡張可能な構成要素1355の内部容積V2は、約4ccであった。膨張可能な構成要素1355の体積の減少は、部分的には、デバイス1350のNCS1360及びNCS1361によるものであり、それらはそれぞれ、及びまとめてデバイス1300のNCS1310よりも小さい円周(y-z平面において)を有する。拡張可能な構成要素1355の全高H2がデバイスAの拡張可能な構成要素1305の全高H1よりも大きいにもかかわらず、デバイスCの拡張可能な構成要素1355の体積の減少が達成された。拡張な構成要素1355の高さを大きくすることにより、より大口径の内腔への展開が可能となった。拡張可能な構成要素1355のより小さな体積により、同じ内圧を達成するために拡張可能な構成要素1305に必要とされる反応物の量と比較して、必要とされる反応物の量の減少が可能になった。
【0137】
いくつかの実施形態では、送達機構1375はピストンを含んでもよく、当該ピストンは、ピストンに対する二酸化炭素の圧力によってピストンを急速に移動させ、治療用FVIII組成物を送達し、FVIII組成物の固体形態を内腔の壁に排出させる。組織貫通部材を含む実施形態では、組織貫通部材は、ピストンを介して送達されてもよい。
【0138】
いくつかの実施形態では、拡張可能な構成要素の円周を増やすと(デバイスBと比較してデバイスA)、一連の対象全体でより良い送達速度がもたらされ得る。しかしながら、特定のヒトにおける送達速度が、ヒンジのないデバイスの最大円周(y-z平面内)によって影響を受ける可能性があるため、一部の治療処置では、治療処置の前又は治療処置の開始時に、ヒト毎に複数のデバイス(それぞれ最大円周が異なる)で試験を行い、どのデバイスサイズがそのヒトに使用するのに最も適切かを特定することができる可能性がある。
【0139】
いくつかの実施形態では、ヒンジを含む拡張可能な構成要素の単一のサイズ及び設計(例えば、デバイスC)が、高い割合の対象でうまく使用できる。デバイスCと同様に構造化されたデバイスの場合、対象に餌を与えても、デバイスを摂取する前に数時間絶食させても、送達速度は一定であることが示された。
【0140】
拡張可能な構成要素にヒンジを追加することは、一貫したサイズのデバイスの使用を可能にする。本開示によるヒンジ式拡張可能な構成要素の単一の設計は、内腔の内壁の選択された範囲の円周にわたって高い送達速度で内腔にFVIIIの組成物を送達することができる。一実施形態では、デバイスは、ヒトの小腸内に送達するように設計されており、選択された範囲は、約10mm~約100mm、又は約20mm~約80mmである。いくつかの実施形態では、様々な動物種にわたるGI管に沿った様々な場所(例えば、胃、小腸、大腸、結腸)のいずれかでの使用に適した自己サイズ調節式デバイスは、約5mm~約500mmの選択された範囲を有するように設計される。他の範囲を選択することができ、体内の異なる種類の内腔、又は他の種類の内腔に対して異なる範囲を選択することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、拡張可能な構成要素は、第1の視野角から見える少なくとも1つのヒンジと、第1の視野角から回転した第2の視野角から見える複数のヒンジとで設計され、その結果、3つ以上のセクション(NCS及び/又はヒンジ)のそれぞれが拡張可能な構成要素のセクションは、拡張可能な構成要素が配置されている内腔に接触する。この構造は、複数のヒンジのコンプライアンスを可能にして、拡張可能な構成要素をより広い選択された範囲の内腔円周に適合させることができる。
【0142】
ヒンジを使用する設計コンセプトのもう1つの利点は、ヒンジを使用しない拡張可能な構成要素と比較して、拡張可能な構成要素の総表面積を減らすことができる一方で、単一の自己サイズ調節式デバイス設計を多種多様な動物界の種、及び種内の多種多様な対象における多種多様な内腔での適用に使用することが可能になる。したがって、必要な材料の量を低減することができる。この材料の削減は、反応物の量の削減と共に、コスト削減をもたらし得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、拡張可能な構成要素は、全体を通じて1種類の材料を使用して構造化される。一実施形態では、拡張可能な構成要素は、2つ以上の異なる材料を使用して構造化される。いくつかの実施形態では、拡張可能な構成要素のコンプライアンスのレベルは、拡張可能な構成要素の特定の領域での材料の厚さに基づいて調整することができる。いくつかの実施形態では、拡張可能な構成要素のコンプライアンスのレベルは、拡張可能な構成要素の特定の領域に同じ材料又は異なる材料の層を追加することによって調整することができる。拡張可能な構成要素を構造化するために使用できる材料の例には、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、架橋ポリマー、シリコーン、ポリウレタン、又は他のエラストマー若しくはポリマーが含まれる。
【0144】
いくつかの実施形態では、送達機構(例えば、送達機構1375)は、ペイロードに直接又は他の方法で動作可能に結合されて、ペイロードの表面に力を加えてそれを内腔壁内へ前進させる前進デバイス(例えば、ピストン又はロッド)を含む。送達機構は、拡張可能な構成要素が拡張されるときに内腔壁と作動可能に接触するか、そうでなければ密接に位置付けられ得、その結果、ペイロードは、送達の表面と内腔壁との間に最小のギャップで、又はギャップなしで内腔壁内に直接射出される。これにより、自己サイズ調節式デバイスの送達速度が向上する可能性がある。組織貫通部材を含む実施形態では、組織貫通部材は、前進デバイスを介して送達されてもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、自己サイズ調節式デバイスは、ピストンに取り外し可能に結合されたペイロードを含み、その結果、ペイロードが内腔壁に前進した後、ペイロードがピストンから分離する。組織貫通部材を含む実施形態では、ペイロードは、組織貫通部材内に形成又は含有され、ピストンに取り外し可能に結合されてもよい。
【0146】
ペイロードに所望の構造的特性及び材料特性(例えば、内腔壁に挿入するためのカラム強度、又はペイロードの崩壊、したがって治療用FVIII組成物の放出を制御するための多孔性及び/又は親水性)を与えるために特定の材料を選択することができる。例えば、ペイロードが組織貫通部材として形成される場合、ある材料がより好適であり得る一方で、ペイロードが組織貫通部材内に含有される場合、他の材料がより好適であり得る。一実施形態では、ペイロードの先端は、先端の硬度及び組織貫通特性を高めるために、スクロース、マルトース、又は他の糖などの分解性材料を含むか、又はそれらでコーティングされている。内腔壁内に位置付けられると、ペイロードは、組織内の間質液によって分解され、その結果、治療用FVIII組成物が溶解し、血流に吸収される可能性がある。サイズ、形状、化学組成などのペイロードの特性を選択して、数秒、数分、又は数時間で薬物の溶解と吸収を可能にすることができる。溶解速度は、崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、又はカルボキシメチルセルロースなどの架橋ポリマー)などの様々な賦形剤を介して制御することができる。崩壊剤の選択は、内腔壁内の環境(例えば、血流及び蠕動収縮の平均数)に合わせて特別に調整することができる。
【0147】
ペイロードは、完全にFVIII組成物から製造することができ、又はFVIII組成物を含む空洞を定義することができる。自己サイズ調節式デバイスは、1つ以上のペイロードを含み、送達することができ、そのそれぞれは、別のペイロードと同じ又は異なるFVIII組成物を含有することができる。各ペイロードは、異なる特性を有することができる。例えば、2つのペイロードは、それぞれの組成物を同時に送達するように設計され得る(例えば、1つの組成物の2つのインスタンス、又は2つの組成物のそれぞれ1つのインスタンス)、又は(例えば、同じFVIII組成物の後続用量を提供するために、又はその後に異なるFVIII組成物を提供するために)異なる時間にそれぞれの組成物を送達するように設計され得る。
【0148】
特定の実施形態を説明及び図示してきたが、1つの実施形態の構成要素又は特徴を、他の実施形態からの1つ以上の構成要素又は特徴と組み合わせるか、又は置換することができることを理解されたい。更に、要素、特性、構成要素、特徴、ステップなどの任意の肯定的な記載について、本開示は、その要素、値、特性、構成要素、特徴、ステップなどの除外を具体的に想定する。また、図は必ずしも縮尺通りに描かれていない場合があることを理解されたい。本開示における芸術的表現と実際の装置との間には、製造プロセスなどの変動性のために区別があり得る。具体的に例解されていない本開示の他の実施形態が存在し得る。よって、明細書及び図面は、限定的なものではなく、例解的なものとみなされるべきである。
【0149】
以下の実施例は本発明を例示するために与えられる。しかしながら、本発明はこれらの実施例に記載される特定の条件又は詳細に限定されないことが理解されるべきである。
【0150】
実施例
実施例1-第VIII因子カプセルデバイスの調製
PEG化された組換えヒトFVIIIの溶液(adynovate(登録商標))を凍結乾燥して、粉末を得た。3,000IU/微小錠剤の用量を目標として、無菌条件下で凍結乾燥粉末を使用して微小錠剤を製造した。FVIII活性は、生物学的活性が高いままであり、再形成及び微小錠剤化によって実質的に分解されないことを確実にするために、各処理ステップにおいて標準的な発色アッセイを使用して評価した。FVIII微小錠剤は、図18を参照して上述したように、単一の微小錠剤を含有する中空マイクロニードルの形態のペイロード、及び単一のペイロードを含有するカプセルデバイスと共に、カプセル内のデバイスに組み込まれた。FVIII充填カプセルデバイスを中間状態で輸送し、2~8℃で1週間保存した。カプセルデバイスのFVIII活性を、製造日及び1週間後に判定した。FVIII活性は、製造時と1週間後で実質的に同じであった。
【0151】
実施例2-経口的に送達された第VIII因子は、血友病Aのイヌにおける止血を正常化する。
第1の血友病Aのイヌは、FVIIIの直接腹膜腔内(IP)注射を受けた。IP注射によって送達された用量は、約150IU/kgのPEG化FVIII(adynovate(登録商標))であった。IP注射されたFVIIIは、嚥下可能カプセルデバイス及び本明細書に開示される方法によって、カプセル送達されたFVIIIの試験に対する比較(参照)データを提供した。次に試験について説明する。
【0152】
PEG化ヒト組換えFVIII(adynovate(登録商標);約2,650IU)からなる微小錠剤を用いて、実施例1と同様に、経口摂取可能なカプセルデバイスを調製した。カプセルは、研究を開始する1週間前に研究施設に輸送し、2~8℃で保存した。第2の覚醒血友病Aのイヌにカプセルを経口投与した。イヌは16.8kgであった。したがって、用量は約158IU/kgであり、上記のIP注射FVIIIに使用された約150IU/kgに匹敵した。GI管を横切るカプセルの通過を追跡するために、並びに連続血液試料採取を開始するための展開時間(T=0)を判定するために、カプセルが胃の中にある間はカプセルの摂取後30分毎に、次いでカプセルが小腸の中にあるときは5~15分毎に、腹部X線撮像を行った。胃内容排出時間(GET)及び腸展開時間(IDT)を追跡し、記録した。GETは、カプセルの摂取の時間から、胃から小腸への確認された排出の時間まで測定された。IDTは、小腸内へのカプセルの確認された進入の時間から、マイクロニードルが腸壁内に、したがって腹膜腔に送達された時間まで測定された。GETは60分であり、IDTは50分であった。
【0153】
IP注射用量及び嚥下可能カプセルデバイス送達用量の両方について、連続血液試料(10mL)をクエン酸ナトリウム処理チューブに7日間にわたって採取して、FVIIIレベル及び活性を測定することによって薬物動態(PK)パラメータの変化を評価し、全血凝固時間(WBCT)、トロンボエラストグラフィ(TEG)、及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を評価することによって薬力学的(PD)パラメータの変化を評価した。PK評価は、ChromogenixによるCOAMATIC(登録商標)FVIIIアッセイを用いて行った。
【0154】
表1は、この研究のために行われたPK及びPD試験を要約し、説明する。
【0155】
【表1】
【0156】
FVIIIの嚥下可能カプセルデバイス送達用量からのPK及びPDパラメータを、FVIIIのIP注射用量からのPK及びPDパラメータと比較した。各試験の場合、T=0は、嚥下可能なデバイスのマイクロニードルが腸壁内へ、したがって、カプセル送達用量については腹膜腔に送達された時間、及びIP注射用量については注射の時間であった。
【0157】
カプセル送達用量及びIP注射用量の両方が、血漿FVIII濃度及び活性の同時変化(図15)を伴って、最大3日間、凝固障害を正常化した(図14)。本明細書に開示される方法及び使用によるカプセル送達FVIII投与によるPK及びPD変化の時間経過及びパターンは、FVIIIのIP注射投与後のものと類似していた。イヌは、研究期間を通して正常で健康なままであった(既存の血友病A状態を除く)。
【0158】
表2は、カプセル送達FVIII用量(投与の「カプセル」FVIII経路)及びIP注射FVIII用量(投与の「IP」FVIII経路)のTEGパラメータを示す。WBCTアッセイは、TEGデータの結果に密接に対応し、これを裏付けた。
【0159】
【表2】
【0160】
上記の考察及び図示されるデータから分かるように、本明細書に開示される方法及び使用に従って投与されるFVIIIの単回カプセル送達用量は、少なくとも3日間、血友病Aのイヌモデルにおいて止血マーカーを回復させた。データ及び図はまた、IP注射が、PK及びPDパラメータにおける変化の開始及び時間経過に対して著しい類似性を示すように、血友病Aイヌにおける止血を回復させたことを示す。
【0161】
PK-PD分析は、FVIII活性に対してプロットされたWBCT(図16)及びFVIII活性に対してプロットされたaPTT(図17)などの、IP注射用量対カプセル送達用量についてのデータの著しい類似性によって示されるように、FVIIIペイロードが腹膜腔に首尾よく送達されたことを示す。
【0162】
これらのデータは、特にFVIIIの頻繁な静脈内注射を必要とする現在の標準治療と比較した場合に、本明細書に開示される方法の驚くべき利点を強調するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】