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  • 特表-積層グレージング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】積層グレージング
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240219BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20240219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240219BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B32B17/06
B32B27/30 102
B60J1/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550017
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2022054221
(87)【国際公開番号】W WO2022179977
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】21159427.0
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】青木 時彦
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AG00D
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK23B
4F100AK23C
4F100AK51B
4F100AK68B
4F100BA03B
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100GB07
4F100GB32
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JD06B
4F100JD06C
4F100JH01B
4F100JK13B
4F100JL10C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4G061AA11
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB16
4G061CB19
4G061CB20
4G061CD02
4G061CD18
(57)【要約】
本発明は、中間層組立体によって一緒に積層された第1のガラスパネル及び第2のガラスパネルを含み、中間層組立体が、多層音響熱可塑性中間層を含む、積層グレージングを開示する。中間層組立体が、低い音響性能を有し、且つ多層音響熱可塑性中間層と第1のガラスパネル又は第2のガラスパネルとの間に配置された熱可塑性層をさらに含む。多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)は、熱可塑性層の光透過率(TLd)の50%以上であり、好ましくは、多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)は、熱可塑性層の光透過率(TLd)の60%以上であり、より好ましくは、多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)は、熱可塑性層の光透過率(TLd)の65%以上である。本発明は、関連する方法及び使用を開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層組立体(3)によって一緒に積層された第1のガラスパネル(1)及び第2のガラスパネル(2)を含み、前記中間層組立体が、多層音響熱可塑性中間層(31)を含む、積層グレージング(10)において、
前記中間層組立体は、低い音響性能を有し、且つ前記多層音響熱可塑性中間層と前記第1のガラスパネル又は前記第2のガラスパネルとの間に配置された熱可塑性層(32)をさらに含むこと、及び
前記多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)は、前記熱可塑性層の光透過率(TLd)の50%以上であり(TLc≧0.5TLd)、好ましくは、前記多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)は、前記熱可塑性層の光透過率(TLd)の60%以上であり(TLc≧0.6TLd)、より好ましくは、前記多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)は、前記熱可塑性層の光透過率(TLd)の65%以上である(TLc≧0.65TLd)こと
を特徴とする積層グレージング(10)。
【請求項2】
前記熱可塑性層の光透過率(TLd)は、前記多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)の80%以下であり(TLd≦0.8TLc)、好ましくは、前記熱可塑性層の光透過率(TLd)は、前記多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)の75%以下である(TLd≦0.75TLc)、請求項1に記載の積層グレージング。
【請求項3】
前記多層音響熱可塑性中間層は、軟質熱可塑性中間層(313)と、第1の熱可塑性中間層(311)と、第2の熱可塑性中間層(312)とを含み、前記軟質熱可塑性中間層(313)は、前記第1の熱可塑性中間層と前記第2の熱可塑性中間層との間に挟まれる、請求項1又は2に記載の積層グレージング。
【請求項4】
前記熱可塑性層は、ポリビニルブチラールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項5】
前記熱可塑性層は、リサイクル材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項6】
前記第1のガラスパネル及び前記第2のガラスパネルの厚さは、2.1mm以下、好ましくは1.9mm以下、より好ましくは1.7mm以下、さらにより好ましくは1.6mm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項7】
前記多層音響熱可塑性中間層の厚さは、0.8mm以下、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.55mm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項8】
前記熱可塑性層は、前記多層音響熱可塑性中間層より薄い、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項9】
前記熱可塑性層の厚さは、0.5mm以下、好ましくは0.4mm以下、より好ましくは0.38mm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項10】
前記多層音響熱可塑性中間層の厚さ及び前記熱可塑性層の厚さの合計は、0.85mm以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項11】
前記熱可塑性層は、入射角10度の発光体D65によって定義される以下の透過色
45≦L≦55
-3.0≦a≦1.0
-1.0≦b≦3.0
を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の積層グレージングを製作する方法において、前記第1のガラスパネルと前記第2のガラスパネルとの間に前記中間層組立体を配置するステップの前に、前記中間層組立体の層を一緒に組み立てるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の積層グレージングとグレージング組立体との色を合わせる方法において、
A.前記グレージング組立体のa及びbを計算するステップ、
B.ステップAにおいて計算したaに略等しいaを有する積層グレージングを有するように熱可塑性層を選択するステップ、
C.第1のガラスパネルと前記第2のガラスパネルとの間に、多層音響熱可塑性中間層とともに、前記選択された熱可塑性層を組み立てるステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の積層グレージングにおける熱可塑性層の使用であって、前記積層グレージングと、前記積層グレージングの隣に配置されたグレージング組立体との色を合わせながら、第1のガラスパネルと第2のガラスパネルとの間の形状の不整合を吸収するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、積層グレージング、特に音響積層グレージングに関する。そのような積層グレージングは、一般に、外部ノイズによる外乱を低減させるために車両又は建物に使用される。
【背景技術】
【0002】
今日、プライバシー及び音響快適性は、建物又は車両内において重要である。
【0003】
プライバシーは、グレージングの前のカーテンで得ることができる。着色ガラス及び/又は反射コーティングを使用することで、グレージングの前のプライバシーを向上させることができる。
【0004】
外部ノイズによる外乱を低減させることによって音響快適性を増加させるために、いくつかの技術が存在する。
【0005】
第1の技術は、気体が充填された隙間によって分離された2つのガラスパネルを有する多重グレージングを取り付けることであり、2つ以上のガラスパネルは、異なる周波数を吸収するために異なる厚さを有する。そのような多重グレージングは、主に熱的分離を向上させるために使用されるが、厚く、確実ではない。
【0006】
別の技術は、少なくとも1つのプラスチック中間層によって分離された2つ以上のガラスパネルを意味する積層グレージングを取り付けることである。従来の中間層は、音響性能を有さず、したがって、高い減衰係数を有する特別な中間層、すなわちその音響性能のために開発された音響中間層が、外部ノイズによる外乱を低減させるため、防音をさらに改善するために使用される。残念ながら、これらの中間層は、多くの場合、高価であるか、又はその使用条件に必要とされる機械的性質が十分ではない。例えば、機械的性質は、建物又は自動車の窓のための安全窓に関して不十分である。
【0007】
これらの単層音響中間層は、0~10℃のガラス転移温度(Tg)を有し、あまりにも軟質であるため、室温で取り扱うことができない。
【0008】
そのような単層音響中間層の取り扱いを改善し、積層グレージングの安全性を改善するために、単層音響中間層と、第2の中間層である、不十分な音響性能を有する標準的な中間層とを有する音響積層グレージングが欧州特許第0763420B1号明細書から知られている。
【0009】
そのような音響中間層は、1つ又は複数のベースポリマーに加えて、高い減衰性又は低い剛性を与える可塑剤を含有する。音響中間層及び標準的な中間層は、化学的分離、すなわち2つの他の中間層の化学的分離を確実にすることが意図された材料から作られる薄い(50μm)PETフィルムによって分離される。この化学的分離は、可塑剤の移行を避けるために使用される。
【0010】
音響中間層は、製作及び購入するには高価である。そのため、積層グレージングがプライバシー及び音響快適性のために使用されるとき、求められるプライバシーレベルに応じて、いくつかの着色ガラス及び/又はいくつかの着色音響中間層が在庫として保管される。それは、多くの資金が在庫のために妨げられることを意味する。
【0011】
その上、エコロジー及び環境保護が一層重要になっている。中間層は、二酸化炭素排出量を減少させて、コストを低下させるためにリサイクル材料から作ることができる。しかし、このリサイクル材料は、使用される中間層及び/又は異なる供給元からの中間層スクラップの混合から作られる。このようなリサイクル材料に関する主な問題は、起源が異なることによる化学安定性の欠如である。その化学安定性が不十分なため、可塑剤の移行が増加し、音響性能が低下する。したがって、音響中間層は、リサイクル材料から作られない。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、第1の態様において、中間層組立体によって一緒に積層された第1のガラスパネル及び第2のガラスパネルを含む積層グレージングに関する。中間層組立体は、多層音響熱可塑性中間層を含む。
【0013】
本発明の第1の態様で定義される解決策は、中間層組立体が、低い音響性能を有し、且つ多層音響熱可塑性中間層と第1のガラスパネル又は第2のガラスパネルとの間に配置された熱可塑性層をさらに含むことに基づく。
【0014】
解決策は、多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)が熱可塑性層の光透過率(TLd)の50%以上であり、好ましくは、多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)が熱可塑性層の光透過率(TLd)の60%以上であり、より好ましくは、多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)が熱可塑性層の光透過率(TLd)の65%以上であることにも基づく。
【0015】
驚くべきことに、熱可塑性層は、建物又は車両内のプライバシーを与えることを可能にする一方、多層音響熱可塑性中間層及び熱可塑性層の存在は、可塑剤の移行を減少させて、積層グレージングの音響性能を維持する。
【0016】
驚くべきことに、熱可塑性層の存在のために中間層組立体の厚さがより厚い場合でも、熱可塑性層は、第1のガラスパネルと第2のガラスパネルとの間の形状の不整合を吸収する。
【0017】
本発明は、第2の態様において、第1の態様による積層グレージングにおける熱可塑性層の使用であって、積層グレージングと、積層グレージングの隣に配置されたグレージング組立体との色を合わせながら、第1のガラスパネルと第2のガラスパネルとの間の形状の不整合を吸収するための使用に関する。
【0018】
本発明は、特許請求の範囲又は記載される実施形態に列挙される特徴のすべての可能な組合せに関することに留意されたい。
【0019】
以下の説明は、自動車用途に関するが、本発明は、建物又は輸送用途のような他の分野に適用可能であり得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
ここで、本発明の本態様及び他の態様は、実例として提供され、限定するものではない本発明の様々な例示的実施形態を示す添付図面を参照してさらに詳細に記載される。図面は、概略図であり、正確な縮尺ではない。図面は、決して本発明を限定しない。より多くの利点が例で説明される。
【0021】
図1】本発明による積層グレージングの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の目的は、上記の問題を軽減し、プライバシー及び音響快適性の必要性を解決することである。
【0023】
本発明の別の利点は、第1のガラスパネルと第2のガラスパネルとの間の形状の不整合を吸収することができる中間層組立体を有する積層グレージングを提供することである。
【0024】
本発明の別の利点は、特に、積層グレージングが、別の組立体及び/又は組成で作ることができる別のグレージングの隣に配置されるとき、特定の色を非常に限定的な在庫と合わせることである。したがって、本発明は、限定された在庫で、積層グレージングと、積層グレージングの隣に配置されたグレージング組立体との色を合わせることができ、在庫の流動性を増加させる。
【0025】
以下の説明では、特に明記しない限り、「略」という表現は、10%以内、好ましくは5%以内であることを意味する。
【0026】
「含む」という用語が本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、それは、他の要素又はステップを排除しない。単数名詞に言及するとき、不定冠詞又は定冠詞、例えば「1つの(a)」又は「1つの(an)」、「その(the)」が使用される場合、これは、何らかの他のものが具体的に記載されない限り、その名詞の複数形を含む。
【0027】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲における第1、第2などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも時間的、空間的、ランク順又は任意の他の方法で順序を記載するために使用されない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載されるか又は示される以外の順序で作動可能であることが理解されるべきである。
【0028】
本発明の第1の態様によると、本発明は、中間層組立体3によって一緒に積層された第1のガラスパネル1及び第2のガラスパネル2を含む積層グレージング10に関する。
【0029】
積層グレージングは、建物などの静止物体の開口を閉じるか、又は列車、ボートなどの移動体の開口を閉じるために使用することができる。
【0030】
通常、ガラスパネルの材料は、例えば、ソーダ石灰シリカガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス又は自動車用途で特に知られている熱可塑性ポリマー又はポリカーボネートなどの他の材料である。本出願を通したガラスへの言及は、限定であるとみなすべきではない。
【0031】
積層グレージングは、知られている切断方法を使用することにより、平面図における長方形などの開口に適合する任意の形状を有することができる。積層グレージングを切断する方法として、例えば、レーザー光が積層グレージングを切断するために積層グレージングの表面上に照射される方法又はカッターホイールが機械的に切断する方法を使用することができる。積層グレージングは、用途、例えばフロントガラス、車幅灯、自動車のサンルーフ、列車の側方グレージング、建物の窓などに適合させるために任意の形状を有し得る。
【0032】
ガラスパネルは、フロート法、溶融法、リドロー法、プレス成形法又は引上法などの知られている製造方法で製造することができる。多層グレージング窓の製造方法として、生産性及びコストの観点からフロート法を使用することが好ましい。
【0033】
各パネルは、独立して処理及び/若しくは着色されることができ、且つ/又は美的価値、断熱性能、安全性などを改善するために異なる厚さを有することができる。多層グレージング窓2の厚さは、アプリケーションの要件に従って設定される。
【0034】
各ガラスパネルは、セキュリティ要件の仕様を尊重するために処理、すなわち焼きなまし、焼きもどしなどを行うことができる。透明誘電体パネルは、独立して、クリアな、或いは特定の組成で又は例えば追加のコーティング若しくはプラスチック層を加えることにより着色された有色の透明誘電体パネルであることができる。
【0035】
各ガラスパネルは、独立して処理及び/若しくは着色され得、且つ/又は美的価値、安全性などを改善するために異なる厚さを有することができる。
【0036】
好ましくは、保管コストを低下させるために、ガラスパネルは、同じ組成を有し、好ましくは、第1のガラスパネルの光透過率(TLg1)及び第2のガラスパネルの光透過率(TLg2)は、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。
【0037】
いくつかの実施形態において、積層グレージングの光透過率(TLlg)は、25%以下、好ましくは22%以下、より好ましくは20%以下、さらにより好ましくは17%以下である。
【0038】
平面図における多層グレージング窓の形状は、通常、長方形である。用途に応じて、形状は、長方形に限定されず、特に車両のフロントガラス又はバックライトのためのトラペーズ、特に車両の車幅灯のための三角形又は円形などであることができる。
【0039】
さらに、多層グレージング窓は、フレーム内に組み立てることができるか、又は車体にダブルスキンファサード若しくは多層グレージング窓を維持することができる任意の他の手段で実装されることができる。気密及び/又は液密を確実にするか、多層グレージング窓の固定を確実にするか、又は外部要素を多層グレージング窓に加えるために、いくつかのプラスチック要素を多層グレージング窓に固定することができる。いくつかの実施形態において、マスキング要素、例えばエナメル層は、多層グレージング窓の周囲の部分の上に加えることができる。
【0040】
静止物体又は移動体内の熱的快適性のために、コーティングシステムは、多層グレージング窓の1つのインタフェース上に存在することができる。このコーティングシステムは、一般に、金属ベース層を使用し、赤外光は、この種類の層で高屈折する。このようなコーティングシステムは、通常、低エネルギー多層グレージング窓を実現するために使用される。
【0041】
いくつかの実施形態では、コーティングシステムは、例えば、除霜機能及び/若しくは防曇機能を加え、且つ/又は例えば建物若しくは車両の内部の蓄熱を減少させるか若しくは寒候期に内部の熱を維持するために、多層グレージング窓上で加えられる加熱可能なコーティングであることができる。しかし、コーティングシステムは、薄く、大部分は目に対して透明である。
【0042】
通常、コーティングシステムは、多層グレージング窓2のインタフェースの表面の大部分を覆う。
【0043】
コーティングシステムは、異なる材料の層から作ることができる。いくつかの実施形態において、例えば自動車のフロントガラスでは、コーティングシステムは、多層グレージング窓の1つの主要な面の大部分にわたって導電性であることができる。コーティング除去される部分が適切に設計されない場合、これは、加熱される点などの問題を引き起こす可能性がある。
【0044】
好適なコーティングシステムは、例えば、導電性フィルムである。好適な導電性フィルムは、例えば、透明な誘電体、金属フィルム及び透明な誘電性の、ITO又はフッ素が添加された酸化スズ(FTO)などを連続的に積層することによって得られた積層フィルムである。好適な金属フィルムは、例えば、Ag、Au、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1つを主成分として含有するフィルムであることができる。
【0045】
通常、コーティングシステムの放射率は、0.4以下、好ましくは0.2以下、特に0.1以下、0.05以下又はさらに0.04以下である。
【0046】
コーティングシステムは、金属ベースの低放射性コーティングシステムを含むことができる。このようなコーティングシステムは、通常、赤外線放射反射材料に基づく1つ以上、例えば2つ、3つ又は4つの機能層と、少なくとも2つの誘電体コーティングとを含む薄層のシステムであり、各機能層は、誘電体コーティングによって囲まれる。本発明のコーティングシステムは、特に少なくとも0.010の放射率を有することができる。機能層は、一般に、厚さが数ナノメートル、大部分は約5~20nmの銀の層である。誘電体層は、一般に、透明であり、金属酸化物及び/又は窒化物の1つ又は複数の層から作られる。これらの異なる層は、例えば、磁界支援型の陰極スパッタリングなど、より一般的に「マグネトロンスパッタリング」と呼ばれる真空蒸着技術によって堆積される。誘電体層に加えて、各機能層は、バリア層によって保護されることができるか、又は湿潤層上への堆積によって改善されることができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、コーティングシステムを有するグレージングパネルを通した送信及び受信を最大化するために、コーティング除去部分は、コーティングシステムによる減衰を低下させるために使用することができる。
【0048】
本発明によると、中間層組立体3は、多層音響熱可塑性中間層31と、多層音響熱可塑性中間層と第1のガラスパネル又は第2のガラスパネルとの間に配置された熱可塑性層32とを含む。熱可塑性層は、低い音響性能を有する。
【0049】
音響という用語は、熱可塑性中間層が優れた減衰機能を有することを意味する。この減衰機能は、ISO/PAS 16940で測定されたときの第1の共振点の0.2より大きい損失係数を有することによって特徴付けられる。
【0050】
多層という用語は、多層音響熱可塑性中間層がいくつかの層311、312、313から作られることを意味する。
【0051】
好ましくは、多層音響熱可塑性中間層は、第1の熱可塑性中間層311と、第2の熱可塑性中間層312と、軟質熱可塑性中間層313とを含み、軟質熱可塑性中間層は、第1の熱可塑性中間層と第2の熱可塑性中間層との間に挟まれる。
【0052】
本発明によると、積層グレージングの良好な音響性能を有するために、軟質熱可塑性中間層313の剪断弾性率は、20℃における第1の熱可塑性中間層311及び第2の熱可塑性中間層312の剪断弾性率よりも少なくとも略50%だけ小さい。好ましくは、軟質熱可塑性中間層313の剪断弾性率は、20℃における第1の熱可塑性中間層311及び第2の熱可塑性中間層312の剪断弾性率の略2倍だけ小さく、より好ましくは、軟質熱可塑性中間層313の剪断弾性率は、20℃における第1の熱可塑性中間層311及び第2の熱可塑性中間層312の剪断弾性率の略5倍だけ小さく、さらにより好ましくは、軟質熱可塑性中間層313の剪断弾性率は、20℃における第1の熱可塑性中間層311及び第2の熱可塑性中間層312の剪断弾性率の略10倍だけ小さい。好ましい実施形態において、第1の熱可塑性中間層311及び第2の熱可塑性中間層312の剪断弾性率は、略同じである。
【0053】
好ましくは、音響熱可塑性物質、第1の中間層及び第2の中間層の組成は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)、スチレンアクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレンメチルメタクリレート共重合体(SMMA)及びこれらの任意の混合物、架橋樹脂、イオノプラスト、イオノマーを含み、好ましくはPVB、EVA又はPUを含む。より好ましくは、適合性のために且つコストを削減するために、音響熱可塑性物質、第1の中間層及び第2の中間層の組成は、ポリビニルブチラールを含む。
【0054】
多層音響熱可塑性中間層の組成は、可塑剤をさらに含む。
【0055】
好ましくは、高い性能を維持しながら製造プロセスを最適化するために、第1の熱可塑性中間層311及び第2の熱可塑性中間層312の組成は、同じである。
【0056】
いくつかの好ましい実施形態において、熱可塑性層の組成は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)、スチレンアクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレンメチルメタクリレート共重合体(SMMA)及びこれらの任意の混合物、架橋樹脂、イオノプラスト、イオノマーを含み、好ましくはPVB、EVA又はPUを含む。
【0057】
好ましい実施形態において、熱可塑性層の組成は、PVBを含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、熱可塑性層は、積層グレージングの音響性能を維持しながらコストを削減するために、少なくとも2つ以上の化学組成を含むリサイクル材料を含む。
【0059】
2つ以上の組成を有するリサイクル材料は、基本中間層樹脂、可塑剤の種類及び量又は1つの製品に混合される粘着制御イオンに関して異なる化学作用があることを意味する。ガラス処理装置が積層プロセスにおいてガラス外縁から余剰分を中間層から切除し、異なる中間層製品又は製造業者からそれらを収集し、リサイクル中間層製造業者が選別を行うことなくこの余剰分を原料として使用するとき、これが起こる可能性がある。
【0060】
通常、標準的なPVB中間層は、押出プロセスによって作られる。この従来のプロセスは、以下のステップを含む。
1)PVB樹脂、可塑剤及び粘着制御イオン又は紫外線ブロッカーなどの他の微量の化学成分を混合及び溶解するステップ。
2)溶融材料をシートに押し出すステップ。
3)押し出されたシートを冷却するステップ。
4)厚さが均一である中心領域上に集めるために、シートの縁部を選別するステップ。
5)シートをロールに巻き取るステップ。
【0061】
プロセスステップ4)の切断されたシートは、リサイクル材料として使用されて、プロセス1)に混合される。これらの作業は、単一且つ固有のPVB製造業者で行われる。したがって、PVBの化学組成は、常に同じままである。
【0062】
しかしながら、本発明では、言及されるリサイクル材料は、多くの場合、いくつかのPVB製造からの異なるPVB組成を利用するガラス製造のガラス積層プロセスから生じる。したがって、リサイクルPVBの組成は、異なる種類のPVB樹脂、可塑剤、粘着制御イオン及び/又は紫外線吸収剤を含有する可能性があるため、従来のプロセスで使用される前述の標準的なPVBよりも多様で不安定である。
【0063】
本発明によると、本発明で使用されるリサイクルPVBの組成は、200,000~400,000の異なるレベルのPVB樹脂分子量を含有する可能性がある。これは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定することができる。
【0064】
本発明によると、本発明で使用されるリサイクルPVBの組成は、2つ以上の種類の粘着制御イオンも含有する可能性がある。イオンは、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、硫黄(S)、リン(P)、ロジウム(Rh)又はパラジウム(Pd)から作ることができる。これらのイオンの存在は、XRF(蛍光X線分析)によって検出可能である。
【0065】
本発明によると、異なる種類のPVB樹脂又は粘着制御イオンから作られるリサイクルPVBシートは、前述の軟質熱可塑性中間層に対してより高い反応性を有する可能性もあり、PVB樹脂の分解又は軟質層から隣接層への可塑剤の移行などの劣化をもたらす。したがって、PVBから作られるリサイクルPVB層及び軟質熱可塑性層を分離することは、非常に重要である。
【0066】
好ましくは、良好なプライバシーを有しながら音響性能を保証するために、熱可塑性層は、多層音響熱可塑性中間層と第2のガラスパネルとの間に配置される。
【0067】
本発明によると、発光体A/2度によって定義される多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)は、熱可塑性層の光透過率(TLd)の50%以上であり、好ましくは、多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)は、熱可塑性層の光透過率(TLd)の60%以上であり、より好ましくは、多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)は、熱可塑性層の光透過率(TLd)の65%以上である。これらの光透過率の測定は、厚さ3mmのガラスの2つのクリアなガラスシートを多層音響熱可塑性中間層と積層することによって行われる。
【0068】
ガラスに使用されるクリアという用語は、厚さ2mmのガラスについて略88%より大きい光透過率を意味する。
【0069】
中間層のクリアという用語は、前記クリアなガラスの2つのシートで積層された中間層について略85%より大きい光透過率を意味する。
【0070】
好ましくは、熱可塑性層の光透過率(TLd)は、多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)の80%以下であり、好ましくは、熱可塑性層の光透過率(TLd)は、多層音響熱可塑性中間層の光透過率(TLc)の75%以下である。これらの光透過率の測定は、厚さ3mmのガラスの2つのクリアなガラスシートを熱可塑性層と積層することによって行われる。
【0071】
図1によると、厚さは、Z軸で測定される一方、X及びY軸は、平面を定義したものである。好ましくは、第1のガラスパネル及び第2のガラスパネルの表面は、X軸及びY軸によって定義される平面と略平行である。
【0072】
本発明によると、第1のガラスパネル及び第2のガラスパネルの厚さは、2.1mm以下、好ましくは1.9mm以下、より好ましくは1.7mm以下、さらにより好ましくは1.6mm以下である。
【0073】
いくつかの実施形態において、第1のガラスパネル及び第2のガラスパネルの厚さは、0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらにより好ましくは0.7mm以上である。
【0074】
本発明によると、多層音響熱可塑性中間層の厚さは、0.85mm以下、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.55mm以下である。
【0075】
いくつかの実施形態において、多層音響熱可塑性中間層の厚さは、0.40mm以上、好ましくは0.45mm以上、より好ましくは0.50mm以上である。
【0076】
本発明によると、音響性能を最適化するために、熱可塑性層は、多層音響熱可塑性中間層より薄い。
【0077】
好ましくは、熱可塑性層の厚さは、0.5mm以下、好ましくは0.4mm以下、より好ましくは0.38mm以下であり、第1のガラスパネルの表面と第2のガラスパネルの表面との間の許容差及び不整合の吸収を可能にする。
【0078】
好ましくは、熱可塑性層の厚さは、0.3mm以上、好ましくは0.35mm以上である。
【0079】
いくつかの実施形態において、音響性能を維持するために、多層音響熱可塑性中間層の厚さ及び熱可塑性層の厚さの合計は、0.85mm以上である。
【0080】
いくつかの好ましい実施形態において、良好なプライバシーを有するために、積層グレージングは、発光体D65入射角10度によって定義される透過色:
45≦L≦55
-3.0≦a≦1.0
-1.0≦b≦3.0
を有し、入射角10度の発光体Aによって定義される積層グレージングの光透過率(TLg)は、15%~25%である(15%≦TLg≦25%)。
【0081】
いくつかの好ましい実施形態において、コスト、保管及び取り扱いを減らすために、第1のガラスパネル及び第2のガラスパネルは、クリアなガラスパネルである。
【0082】
いくつかの好ましい実施形態において、コスト、保管及び取り扱いを減らすために、多層音響熱可塑性中間層は、クリアな多層音響熱可塑性中間層である。
【0083】
クリアという用語は、ガラスパネル又は/及び中間層などの物体の光透過率が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であることを意味する。
【0084】
好ましい実施形態によると、第1のガラスパネルの厚さは、1.6mmであり、第2のガラスパネルの厚さは、1.6mmであり、多層音響熱可塑性中間層の厚さは、0.5mmであり、熱可塑性層の厚さは、0.38mmである。第1のガラスパネル及び第2のガラスパネルは、ソーダ石灰ガラスパネルである。多層音響熱可塑性中間層の第1の熱可塑性中間層及び第2の熱可塑性中間層は、PVBであり、軟質熱可塑性中間層は、PVBであり、20℃における第1の熱可塑性PVB中間層311及び第2の熱可塑性PVB中間層312の剪断弾性率より略50%だけ小さい剪断弾性率を有する。熱可塑性層は、リサイクルPVBである。このような好ましい実施形態において、異なるPVBグレードを使用できることが理解される。
【0085】
本発明は、第1の態様による積層グレージングを製作する方法を提供する。この方法は、第1のガラスパネルと第2のガラスパネルとの間に熱可塑性層とともに多層音響熱可塑性中間層を配置するステップの前に、多層音響熱可塑性中間層の中間層を一緒に組み立てるステップを含む。
【0086】
本発明は、本発明の第1の態様による積層グレージングと、その隣に配置されることができるグレージング組立体との色を合わせる方法をさらに含む。この方法は、以下のステップを含む。
A.グレージング組立体のa及びbを計算するステップ。
B.ステップAにおいて計算されたaに略等しいaを有する積層グレージングを有するように熱可塑性層を選択するステップ。
C.第1のガラスパネルと第2のガラスパネルとの間の多層音響熱可塑性中間層とともに、選択された熱可塑性層を組み立てるステップ。
【0087】
本発明は、第2の態様において、本発明の第1の態様による積層グレージングにおける熱可塑性層の使用であって、積層グレージングと、積層グレージングの隣に配置されたグレージング組立体との色を合わせながら、第1のガラスパネルと第2のガラスパネルとの間の形状の不整合を吸収するための使用を提供する。
図1
【国際調査報告】