(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】ステント装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/90 20130101AFI20240219BHJP
【FI】
A61F2/90
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551088
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2022008077
(87)【国際公開番号】W WO2022181806
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 講
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA47
4C267BB26
4C267BB40
4C267EE03
4C267HH04
4C267HH07
(57)【要約】
ステント装置は、円筒状ステント本体を形成する第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤであって、円筒状ステント本体が内部空隙空間を囲む、第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤと、一次連結構造と、二次連結構造とを含む。一次連結構造は、第1のステントワイヤから形成されて第1のループ開口部を画定する第1のループと、第1のループ開口部を通る第2のステントワイヤとを含む。二次連結構造は、互いの上を通る第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤを含む。第1のステントワイヤは、第1の山及び第1の谷を含み、第1のループは、第1のステントワイヤの第1の山又は第1の谷に位置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状ステント本体を形成する第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤであって、前記円筒状ステント本体が内部空隙空間を囲む、第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤと、
一次連結構造と、
二次連結構造と、
を備え、
前記一次連結構造が、前記第1のステントワイヤから形成されて第1のループ開口部を画定する第1のループと、前記第1のループ開口部を通る前記第2のステントワイヤとを含み、
前記二次連結構造が、互いの上を通る前記第1のステントワイヤ及び前記第2のステントワイヤを含み、
前記第1のステントワイヤが、第1の山及び第1の谷を含み、前記第1のループが、前記第1のステントワイヤの前記第1の山又は前記第1の谷に位置する、ステント装置。
【請求項2】
前記二次連結構造がループを含まない、請求項1に記載のステント装置。
【請求項3】
前記二次連結構造において、前記第1のステントワイヤ及び前記第2のステントワイヤがループを形成することなく各々の上を通る、請求項1に記載のステント装置。
【請求項4】
前記第2のステントワイヤが、第2の山及び第2の谷を含み、前記二次連結構造を形成する前記第1のステントワイヤの一部が、前記第1の山であり、前記二次連結構造を形成する前記第2のステントワイヤの一部が、前記第2の谷であり、
前記二次連結構造において、前記第1の山が前記第2の谷に位置する、請求項2に記載のステント装置。
【請求項5】
前記一次連結構造が第2のループを含む、請求項1に記載のステント装置。
【請求項6】
前記第2のループが、前記第2のステントワイヤから形成され、第2のループ開口部を画定する、請求項5に記載のステント装置。
【請求項7】
前記第2のループ開口部を形成する前記第2のステントワイヤの一部が、前記第1のループ開口部を通る、請求項6に記載のステント装置。
【請求項8】
前記第2のループが、前記第2のステントワイヤの山又は谷に形成される、請求項6に記載のステント装置。
【請求項9】
前記第2のループが前記第1のステントワイヤから形成され、第2のループ開口部を画定し、
前記一次連結構造が、前記第1のステントワイヤから形成される前記第2のループを含む、請求項5に記載のステント装置。
【請求項10】
前記第1のループ及び前記第2のループが、二重ループ構造の一部であり、
前記第1のループが、前記第1のループ及び前記第2のループの最も遠位にある、請求項9に記載のステント装置。
【請求項11】
前記一次連結構造が第3のループを含む、請求項5に記載のステント装置。
【請求項12】
前記第3のループが、前記第1のステントワイヤ及び前記第2のステントワイヤのうちの一方から形成され、第3のループ開口部を画定する、請求項11に記載のステント装置。
【請求項13】
前記一次連結構造が第4のループを含む、請求項11に記載のステント装置。
【請求項14】
前記第4のループが、前記第1のステントワイヤ及び前記第2のステントワイヤのうちの一方から形成され、第4のループ開口部を画定する、請求項13に記載のステント装置。
【請求項15】
前記第1のループ、前記第2のループ、前記第3のループ及び前記第4のループが、2つの二重ループ構造を形成する、請求項14に記載のステント装置。
【請求項16】
前記一次連結構造の数が、前記二次連結構造の数以下である、請求項1に記載のステント装置。
【請求項17】
前記第1のステントワイヤが、交互の山及び谷に沿った3つの連続したループを含まない、請求項1に記載のステント装置。
【請求項18】
前記第1のステントワイヤが、4つの連続する交互の山及び谷のうちの1つのループを含む、請求項1に記載のステント装置。
【請求項19】
前記第1のステントワイヤが、4つの連続する交互の山及び谷のうちの2つのループを含む、請求項1に記載のステント装置。
【請求項20】
前記ステント装置が、
前記ステント装置を運ぶ能力を有するシースと、
前記ステント装置を前記シースから押し出すためのプッシャと、
を含むステント送達システムを備える、請求項1に記載のステント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ステント装置に関し、特にステント装置が曲げられるときに、軸方向短縮を防止し、ステント装置の柔軟性を理想的な割合で得るために、ステントワイヤが互いに連結しているステント装置に特に関する。ステントワイヤの連結の計算された配置は、ステント及びステントが配置される患者にプラスの効果の変動をもたらす。
【0002】
本出願は、2021年2月26日に出願された米国仮出願第63/154,181号に基づき、その優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
図20は、関連技術(特許文献1)で開示されたステント装置の図である。
図20には、山110a、110b、110c及び110dと、谷120a、120b、120c及び120dとを各々有するステントワイヤ100a、100b、100c及び100dが開示されている。山と谷とは、互いに「捕捉される」ことがあり、例えば、
図20において符号102で示す位置で、第2のステントワイヤ100bの山110bは、第1のステントワイヤ100aの谷120aに捕捉される。一方、山と谷とは、互いに「捕捉されない」ことがあり、例えば、
図20において符号104で示す位置で、第2のステントワイヤ100bの山110bは、第1のステントワイヤ100aの谷120aに捕捉されない。従来技術では、山110a,110b,110c,110dの数と谷120a,120b,120c,120dの数は、谷120a,120b,120c,120dに捕捉される山110a,110b,110c,110dと、谷120a,120b,120c,120dに捕捉されない山110a,110b,110c,110dとが2:1の割合で繰り返されるように、3の倍数に設定されることが好ましい。比率を2:1ではなく、3:1や2:2とすることも可能であるが、ステント100a,100b,100c,100d間の接続部の数が少なくなるため、外力が加わった際にステントワイヤ100間の接続部が損傷するおそれがある。
【0004】
図21は、関連技術(特許文献2)で開示された別のステント装置の図である。
図21は、メッシュ12’がフィラメント13’及び14’で形成されているメッシュパターンを有するネット11’を開示している(「メッシュ(mesh)」又は「メッシュ(meshes)」という用語は、実際のコード又はワイヤネットワークを指し、それらの間の空間を指すのではない)。フィラメント13’と14’との交差部15’は、あらゆる場合に目19を形成し、フィラメントの一方のみが他方のフィラメントの周りにループされる。径方向の支持強度は、目19によって増大されるが、軸方向の圧縮によるステントの短縮は、目19に起因して可能ではない。
【0005】
関連技術のステント装置の欠点は、ステント装置を人体に挿入した後に軸方向の圧縮によって生じるステント装置の軸方向短縮を含む。軸方向短縮は、ステント装置の管腔が人体内で拡張され得る範囲を制限する。関連技術のステント装置の欠点はまた、ステントワイヤのあらゆる交差部に形成される目に起因するステント装置の軸方向短縮の不能及び柔軟性の欠如を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0226282号明細書
【特許文献2】米国特許第6,221,100号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、実際の使用を考慮して効率的な構造を有するステント装置を設計することが必要とされており、これにより、関連技術のステント装置の制限及び欠点に起因する1つ以上の問題が実質的に回避されるであろう。本開示の目的は、ループ状連結領域及び非ループ状連結領域の配置を有するステント装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示されるステント装置の実施形態は、内部空隙空間を囲む円筒状ステント本体を形成する第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤと、一次連結構造と、二次連結構造とを含む。一次連結構造は、第1のステントワイヤから形成されて第1のループ開口部を画定する第1のループと、第1のループ開口部を通る第2のステントワイヤとを含み、二次連結構造は、互いの上を通る第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤを含む。第1のステントワイヤは、第1の山及び第1の谷を含み、第1のループは、第1のステントワイヤの第1の山又は第1の谷に位置する。
【0009】
開示されるステント装置の実施形態において、二次連結構造は、ループを含まなくてもよい。
【0010】
本開示のステント装置の実施形態では、二次連結構造において、第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤは、ループを形成することなく各々の上を通ってもよい。
【0011】
開示されるステント装置の実施形態において、第2のステントワイヤは、第2の山及び第2の谷を含むことができ、二次連結構造を形成する第1のステントワイヤの一部は、第1の山であり得、二次連結構造を形成する第2のステントワイヤの一部は、第2の谷であり得、二次連結構造において、第1の山は、第2の谷に位置することができる。
【0012】
開示されるステント装置の実施形態は、第2のループを含む一次連結構造をさらに含む。
【0013】
開示されるステント装置の実施形態において、第2のループは、第2のステントワイヤから形成されてもよく、第2のループ開口部を画定してもよい。
【0014】
開示されるステント装置の実施形態において、第2のループ開口部を形成する第2のステントワイヤの一部は、第1のループ開口部を通ってもよい。
【0015】
開示されるステント装置の実施形態において、第2のループは、第2のステントワイヤの山又は谷に形成されてもよい。
【0016】
開示されるステント装置の実施形態において、第2のループは、第1のステントワイヤから形成されてもよく、第2のループ開口部を画定してもよく、一次連結構造は、第1のステントワイヤから形成される第2のループを含んでもよい。
【0017】
開示されるステント装置の実施形態において、第1のループ及び第2のループは、二重ループ構造の一部であってもよく、第1のループは、第1のループ及び第2のループの最も遠位にあってもよい。
【0018】
開示されるステント装置の実施形態において、一次連結構造は、第3のループを含んでもよい。
【0019】
開示されるステント装置の実施形態において、第3のループは、第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤのうちの一方から形成されてもよく、第3のループ開口部を画定してもよい。
【0020】
開示されるステント装置の実施形態において、一次連結構造は、第4のループを含んでもよい。
【0021】
開示されるステント装置の実施形態において、第4のループは、第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤのうちの一方から形成されてもよく、第4のループ開口部を画定してもよい。
【0022】
開示されるステント装置の実施形態において、第1のループ、第2のループ、第3のループ及び第4のループは、2つの二重ループ構造を形成してもよい。
【0023】
開示されるステント装置の実施形態において、一次連結構造の数は、二次連結構造の数以下であってもよい。
【0024】
開示されるステント装置の実施形態において、第1のステントワイヤは、交互の山及び谷に沿った3つの連続したループを含まなくてもよい。
【0025】
開示されるステント装置の実施形態において、第1のステントワイヤは、4つの連続した交互の山及び谷の間に1つのループを含んでもよい。
【0026】
開示されるステント装置の実施形態は、第1のステントワイヤが、4つの連続する交互の山及び谷の間に2つのループを含んでもよいことをさらに含む。
【0027】
開示されるステント装置の実施形態は、ステント装置を運ぶ能力を有するシースと、ステント装置をシースから押し出すためのプッシャとを含む、ステント送達システムをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0028】
ループの特定の種類は変化する可能性があり、ループ状でない連結領域はステント装置の曲げやすさに寄与し、ループ状連結領域はステント装置が曲げられるときの軸方向短縮を防止するのに寄与する。縦軸に平行なステント装置の長手方向において、すなわち、軸方向において、ループ状連結領域を連続的又は非連続的に配置することができる。他の実施形態では、ループ状連結領域は、2つ以上、あるいは2~4つの順次に配置されたループ状連結領域にわたって連続している。そのような改良されたステント装置は、効率的な構造を有し、関連する医療処置の実用的な投与を提供する。目的の少なくとも1つ又はいくつかは、本明細書中に開示されるステント装置によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ステント装置に関連するステント装置送達システムの実施形態を示す図である。
【
図2A】ステント本体が折り畳まれた状態にあるステント装置の概略図を示す図である。
【
図2B】ステント本体が拡張状態にあるステント装置の概略図を示す図である。
【
図3】ステント本体の一実施形態の拡大図であり、ステントワイヤの一態様を示す。
【
図4】ステント本体の一実施形態の拡大図であり、ステントワイヤの一態様を示す。
【
図5A】ステント装置の概略図であり、ステント本体の領域におけるステントワイヤの配置を示す。
【
図5B】拡大図によるステント装置の概略図であり、ステント本体の領域におけるステントワイヤの配置を示す。
【
図5C】ステント装置の概略図であり、ステント本体の領域におけるステントワイヤの配置を示す。
【
図5D】拡大図によるステント装置の概略図であり、ステント本体の領域におけるステントワイヤの配置を示す。
【
図6A】真っ直ぐな構成及び曲がった構成で患者の体内に配置されたステント装置の概略図である。
【
図6B】真っ直ぐな構成及び曲がった構成で患者の体内に配置されたステント装置の概略図である。
【
図6C】真っ直ぐな構成及び曲がった構成で患者の体内に配置されたステント装置の概略図である。
【
図7A】ステント本体が異なる力の条件下にあるときの、異なる連結機構を有するステントワイヤの態様を示す概略図である。
【
図7B】ステント本体が異なる力の条件下にあるときの、異なる連結機構を有するステントワイヤの態様を示す概略図である。
【
図8A】異なる種類のループの詳細と、軸方向短縮及び屈曲に対するそれぞれの相対順位を示す表である。
【
図8B】ステントワイヤの連結部の構造の一実施形態を示す模式図である。
【
図8C】ステントワイヤの連結部の構造の一実施形態を示す模式図である。
【
図9】各ループの機能に影響を与え得る要因の詳細を示す表である。
【
図10A】ステントワイヤの連結部の構造の一実施形態を示す模式図である。
【
図10B】ステントワイヤの連結部の構造の一実施形態を示す模式図である。
【
図11A】ステントワイヤの連結部の構造の一実施形態を示す模式図である。
【
図11B】ステントワイヤの連結部の構造の一実施形態を示す模式図である。
【
図12】ステント装置における連結部の位置、分布及び位置関係を示す模式図である。
【
図13】ステント装置における連結部の割り当てを示す概略図であり、一実施形態における連結ブロックの詳細及び配置を示す。
【
図14A】ステント装置における連結部の割り当てを示す概略図であり、別の実施形態における連結ブロックの詳細及び配置を示す。
【
図14B】ステント装置における連結部の割り当てを示す概略図であり、別の実施形態における連結ブロックの詳細及び配置を示す。
【
図15A】連結部の概略図及び例示的なステント装置の比較写真である。
【
図15B】連結部の概略図及び例示的なステント装置の比較描写である。
【
図15C】連結部の概略図及び例示的なステント装置の比較描写である。
【
図15D】連結部の概略図及び例示的なステント装置の比較描写である。
【
図16A】ステント装置の柔軟性に対する異なる連結部の効果を示す連結部の模式図である。
【
図16B】ステント装置の柔軟性に対する異なる連結部の効果を示す連結部の模式図である。
【
図16C】ステント装置の柔軟性に対する異なる連結部の効果を示す連結部の模式図である。
【
図17】他の連結部についてステント装置の柔軟性に対する効果を示す連結部の模式図である。
【
図18】ステント装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図19】ステント装置の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の説明では、特定の構造及び/又は方法を参照する。しかしながら、以下の参考文献は、これらの構造及び/又は方法が先行技術を構成することの承認として解釈されるべきではない。出願人は、そのような構造及び/又は方法が本発明に対する先行技術として認められないことを実証する権利を明確に留保する。
【0031】
追加の特徴及び利点は、以下の説明に記載され、その説明から部分的に明らかになるか、又は本発明の実施によって習得され得る。開示されるステント装置の目的及び他の利点は、本明細書及びその特許請求の範囲、ならびに添付の図面において特に指摘される構造によって実現及び達成されるであろう。
【0032】
本明細書で使用される「患者」という用語は、ありとあらゆる生物を含み、「対象」という用語を含む。患者は、ヒト又は動物であり得る。
【0033】
他のシステム、方法、特徴、及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を検討することによって当業者に明らかである、又は明らかになるであろう。すべてのそのような追加のシステム、方法、特徴、及び利点は、この説明内に含まれ、本開示の範囲内にあり、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。この項のいかなる内容も、それらの特許請求の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。更なる態様及び利点は、開示された入力装置の実施形態に関連して以下に説明される。開示された入力装置の前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例及び説明であり、特許請求される開示されたステント装置の更なる説明を提供することを意図していることが理解されるべきである。
【0034】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、同様の符号が同様の要素を示す添付の図面と関連して読むことができる。
【0035】
すべての図面を通して、各構成要素の寸法は、明瞭にするために適宜調整されている。見やすさのために、いくつかの例では、図中の名称付きの特徴の一部のみに参照番号が付されている。
【0036】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、同様の符号が同様の要素を示す添付の図面に関連して読むことができ、
図1は、ステント装置送達システム101の図である。ステント送達システム101は、先端部分102と、ステント装置104と、シース106と、二ポートハブ108と、サイドポート110と、回転可能なハンドルロック112と、内側ハンドル114とを含む。シース106は、内側シースと外側シースとの二層構造を有する。シース106は、先端部分102において二層の間に保持された縮径されたステント装置104を有する。先端部分102は、内側シース及び内側ハンドル114に接続されている。外側シースは、二ポートハブ108及び回転可能なハンドルロック112に接続されている。ステント送達システム101が先端部分102及びステント装置104を所望の位置に配置した後、先端部分102における外側シースは、内側ハンドル110を固定して、回転可能なハンドルロック112を送達システム101の近位側に引っ張ることによって近位側に向かってスライドし、ステント装置104は、縮径から設計された直径まで自己拡張させられる。外側シースがステント装置104の全長のスライドを終了した後、送達システム101及びステント装置104は分離され、ステント装置104は患者の体内に埋め込まれるために離れる。
【0037】
図2Aは、ステント本体が収縮状態にあるステント装置104の図である。ステント本体が収縮するときに生じる軸方向短縮の程度は、ステントワイヤの連結構造に依存する。ステント装置104は、ステント装置104の送達が患者の血管及び他の狭い空間を通じて行われるように、収縮状態でステント送達システム101に挿入される。
図2Bに示すように、自己拡張型ステントであるステント装置104が処置部に到達してステント送達システム101から押し出された後、ステント本体は、処置部を拡張することによって処置を行うためにステントが設計されたサイズに自己拡張する。
【0038】
図3は、ステント装置104のステント本体を形成するステントワイヤのパターンを示す。ステントワイヤは、円筒状ステント本体(以下、「ステント本体」という)を形成する。ステント本体は、内部空隙空間を含む。ステント本体は、ステント本体の内側管腔側を画定する。
図3に開示されるように、ステントワイヤは、互いに交差し、ステントセル302等のステントワイヤによって囲まれたセルを形成する。
図3では、例えば、ステントワイヤ304がステントワイヤ306,308,310と交差するときのステントワイヤ304の位置関係を観察することによって、ステントワイヤの相互接続又は重なり合いを見ることができる。ステントワイヤ304は、ステントワイヤ304がステントワイヤ306の下に入る交差部312で、ステントワイヤ306と交差する。その後、ステントワイヤ304は、ステントワイヤ304がステントワイヤ308を乗り越える交差部314で、ステントワイヤ308と交差する。そして、ステントワイヤ304は、次の交差部316でステントワイヤ310の下に入る。各交差部における交差するワイヤに対するステントワイヤ304の交互の下及び上の位置は、
図3に示されるステント本体の全体にわたって繰り返される。
【0039】
図4は、ステント装置104のステント本体を形成するステントワイヤの別のパターンを示す。
図3と同様に、ステント装置104のステントワイヤは、互いに交差し、ステントセル402等のステントワイヤによって囲まれたセルを形成する。
図4に示されるステント本体におけるステントワイヤの相互接続又は重なり合いは、
図3におけるものと比較してより複雑である。例えば、ステントワイヤ404及び406は交差部408で互いに交差するが、ステントワイヤ404及び406の各々は屈曲し、連結交差部412を形成するステントワイヤ404及び410等、それぞれの更なるステントワイヤとの連結構造を形成する。ステントワイヤ404及び410は互いに独立して移動することができるので、連結交差部412の領域内のステントワイヤ404及び410は、連結式ステントセル414を形成することができる。
【0040】
図5A~
図5Dは、ステント装置104において生じる軸方向短縮のメカニズムを示している。
図5Bは、
図5Aの領域502の拡大図を示し、軸方向短縮が生じていないステント装置104のステント本体のステントワイヤを示す。
図5Bでは、各ステントワイヤは、隣接するステントワイヤの山504と谷506とが互いに交差した状態で、連結部が軸方向に最も離間した状態で軸方向(
図5Aに示す矢印Aで表される)に離間している。隣接するステントワイヤの構造の類似性に応じて、交差部508の位置を均一に分布させることができる。
図5Dは、
図5Cの領域502の拡大図を示し、軸方向短縮の一例を示す。
図5Dでは、隣接するステントワイヤの山504及び谷506がもはや交差部508の位置を形成していない状態で、ステントワイヤは互いにより密に詰め込まれており、ステントワイヤが重なり合う配置に向かって移動しているため、ステントワイヤは互いに入り混じっている。軸方向短縮は、
図5Aの距離D1と
図5Cの距離D2とを比較することによって明らかである。
【0041】
図6A~
図6Cは、患者の体内に挿入した後のステント装置204の柔軟性の利点を示す。
図6Aは、患者の処置部530に挿入されたステント装置204を開示している。
図6Aにおいて、ステント装置204は、真っ直ぐな構成である。
図6Bは、処置部530内に挿入されて屈曲構成にあるステント装置204を開示している。ステント装置204は、十分な柔軟性を有することにより、処置部530の屈曲角度に応じて屈曲することができる。しかしながら、
図6Cに開示されるように、ステント装置が十分な柔軟性を欠いている場合、又は柔軟性がない場合、処置部530の屈曲角度にしたがって屈曲することができない。この柔軟性の欠如に起因して、
図6Cに示される部分532とステント装置204が接触するのを防止するために、ステント装置204を処置部530に挿入するための高度な技術が必要とされる。
【0042】
図7A及び
図7Bは、ステント装置のステント本体を形成するステントワイヤの2種類の連結構造を示す。ステントワイヤは、典型的には、山及び谷(すなわち、山702及び谷704)を形成する。所定のステントワイヤにおける山と谷は、ステント本体の周方向に交互に繰り返される。第1の連結型706(二次連結構造ともいう)を
図7A及び
図7Bに示す。第1の連結型706は、第1のステントワイヤを第2のステントワイヤに通すことによって互いに連結する2本のステントワイヤによって形成される。特に、第1の連結型706は、ステント装置が軸方向に拡張されるときに第1のステントワイヤの山702が第2のステントワイヤの谷704に位置し、その上を通るように、第1のステントワイヤを第2のステントワイヤの上に通すことを特徴とする。第1の連結型706における第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤのこの配置により、一方のステントワイヤの山702は、他方のステントワイヤの谷704に位置する。第2の連結型708(一次連結構造ともいう)も
図7A及び
図7Bに示されており、第2のステントワイヤ上にループを形成する第1のステントワイヤによって互いに連結される2本のステントワイヤによって形成される(結果として、第2のステントワイヤは、第1のステントワイヤのループによって形成される開口部を通る)。第1の連結型706は、ループを含まずに形成されてもよい。
【0043】
図7Bに示すように、第1の連結型706を構成する2本のステントワイヤは、互いに対して相対的に移動して緩むことができるため、ステント装置に対して軸方向に力が加えられた場合には、軸方向短縮が生じる。例えば、第1のステントワイヤの山702は、他方のステントワイヤの谷704に対して移動することができ、山702は、谷704から係合解除されるようになり、例えば、1本のステントワイヤの山702は、他方のステントワイヤの谷704から外れるようになることができる。これに対して、
図7Bにも示すように、第2の連結型708を形成するステントワイヤは、第2の連結型708を形成するステントワイヤ同士の係合が解除されず、ステント装置に対して軸方向に力が加えられた場合であっても第2の連結型708の構造を有するステント本体が軸方向短縮を示さない点で、ループ構造によって互いに対する動きが制約される。しかしながら、たとえ第2の連結型708を形成するステントワイヤが互いに係合解除されなくても、第1のステントワイヤのループ構造を通る第1のステントワイヤは、いくつかの実施形態では、ループ構造を有するステントワイヤに対して第1のステントワイヤが周方向に移動するように移動することができる。加えて、第1のステントワイヤが何らかの軸方向位置変動(山及び谷のパターン等)を伴う構造を有する限りにおいて、2本のステントワイヤは、いくつかの実施形態では、軸方向の相対運動も有することができるが、そのような軸方向運動は、ループ構造を通るそれぞれの第1のステントワイヤの山から谷までの距離によって制約される。相対的な周方向の動きと相対的な軸方向の動きとの組み合わせは、第2の連結型708を組み込んだステント装置においても生じ得る。
【0044】
一般的に言えば、ステント装置は、複数のステントワイヤによって、又は単一のステントワイヤから作製され得る。連結構造は、互いに絡み合うために2本以上のステントワイヤを必要とするように思われるかもしれないが、単一のステントワイヤを使用して、単一のステントワイヤによって様々な連結構造を形成することによって円筒状ステント構造全体を構築することができる。
【0045】
図8Aは、ステント本体の第2の連結型708構造を形成するために使用することができる例示的な6種類の連結部を開示する図表である。様々な例示的な種類の第2の連結型708構造は各々、ステントワイヤを使用する少なくとも1つのループを含む。いくつかの実施形態では、第2の連結型708構造は、最初のステントワイヤのみに1つのループを含み、他のステントワイヤはループを有さず(すなわち、ループしていない)、他の実施形態では、第2の連結型708構造は、2本のステントワイヤの1本に1つ以上のループがあり、2本のステントワイヤの他方にループが1つもないか又は1つ以上のループがある組み合わせを含む。
【0046】
以下、
図8A~
図8Cを用いて、例示的な6種類の連結部について説明する。第2の連結型No.Iは、単一ループを形成する第1のステントワイヤと、ループを形成しない他方のステントワイヤとによって形成される。第2の連結型No.Iは、
図7A及び
図7Bにも示されている。第2の連結型No.IIは、二重ループを形成する第1のステントワイヤと、ループを形成しない他方のステントワイヤとによって形成される。ループのないステントワイヤは、二重ループの一方又は他方の開口部を通ることができるが、典型的には、ループのないステントワイヤは、2つのループの遠位を通る(
図8Aに示すように)。
図8Bは、第2の連結型No.IIの模式図である。AとCとの間に二重ループが形成され、2つの交差部802及び804を形成する。ここで、AからBは「外向きワイヤ」であり、BからCは「内向きワイヤ」である。
図8Bにおいて、外向きワイヤは、交差部802及び804の両方において、内向きワイヤの下を通る。第2の連結型No.IIIは、第2の連結型No.IIと同様である。
図8Cは、第2の連結型No.IIIの模式図である。AとCとの間に二重ループが形成され、2つの交差部806及び808を形成する。ここで、AからBは「外向きワイヤ」であり、BからCは「内向きワイヤ」である。
図8Cにおいて、外向きワイヤは、交差部802において内向きワイヤの下を通り、外向きワイヤは、804において内向きワイヤの上を通る。換言すれば、第2の連結型No.IIIでは、交差部806で山になるステントワイヤは、交差部808で山になるステントワイヤとは異なる。このため、第2の連結型No.IIとは異なり、第2の連結型No.IIIでは、外向きワイヤと内向きワイヤがねじれており、第2の連結型No.IIIの二重ループは第2の連結型No.IIよりも堅固になっている。ループのないステントワイヤは、二重ループの一方又は他方の開口部を通ることができるが、典型的には、ループのないステントワイヤは、2つのループの遠位を通る(
図8Aに示すように)。第2の連結型No.IVは、単一ループを形成する2本のステントワイヤによって形成される。2つの単一ループは、
図8Aに示すように互いに相互接続されている。第2の連結型No.Vは、二重ループを形成する第1のステントワイヤと、単一ループを形成する他方のステントワイヤとによって形成される。単一ループは、単一ループのワイヤが二重ループの一方又は他方の開口部の1つを通ることによって二重ループと相互接続されるが、典型的には、単一ループは2つのループの遠位を通る(
図8Aに示すように)。最後に、第2の連結型No.VIは、2本のステントワイヤが二重ループを形成することによって形成される。第1のステントワイヤのループは、第2のステントワイヤのループと相互接続されるが、典型的には、両方の二重ループ構造の遠位ループが互いに通る(
図8Aに示すように)。
図8Cに開示されているように、第2の連結型No.V及びNo.VIの二重ループ構造を、
図8Bに開示されている構造と比較してより堅固にするために、外向き及び内向きワイヤの絡み合いをより複雑な構造(すなわち、ねじれている)にすることができる。
【0047】
2本のステントワイヤ上のループなし、単一ループ、及び二重ループの組み合わせに応じて、軸方向短縮及び柔軟性(屈曲)は変化し得る。例えば、
図8Aに示すように、関与するループの数に起因して、軸方向短縮のレベルは第2の連結型No.IからNo.VIに増大し、ステント装置の柔軟性のレベルは第2の連結型No.VIからNo.Iに増大する。
【0048】
図9は、各種の第2の連結型に含まれる各ループの機能に影響を与え得る4つの要因(要因F1~F4)を開示した図表である。因子F1は、ループのサイズである。ループのサイズを増大させることにより、連結部におけるステントワイヤの自由度が増大し、ステント装置の全体的な柔軟性が向上する。因子F2は、ループの形状である。ループの非対称な形状は、ループを形成するステントワイヤの柔軟性に不均一性を生じさせ、連結部の柔軟性に不均一性をもたらす可能性がある。因子F3は、ループ回転の方向である。ループの回転の方向を変えることにより、連結部を構成するステントワイヤの柔軟性増大及び柔軟性低下の方向を調整することができる。因子F4は、ループの立ち上がりである。ループの立ち上がり構造は、ステント装置の表面を不均一にし、これにより、患者の治療部分内でのステント装置の移動を最小化又は防止し得る。
【0049】
図10A及び
図10Bは、ステント装置の軸方向短縮を防止するために、2本のステントワイヤにどのようにループを形成するかを示す(すなわち、第2の連結型No.IV、No.V、No.VI)。
図10Aは、単一の第2の連結部型No.I.を形成する2本のステントワイヤを示す。ステント装置に軸方向に力が加えられる場合、第2の連結部型No.Iのループ1002は、他のステントワイヤに沿って、例えば、周方向の移動に沿ってスライドし、ステントワイヤ間の(軸方向の)距離を減少させ、ステント装置の軸方向短縮を生じさせることができる。これに対して、
図10Bに示すように、2本のステントワイヤは、それぞれのステントワイヤに1つのループが形成された単一の第2の連結部型No.IVを形成しており、2本のステントワイヤに形成されたループ1004は、ループ1004のスライドを防止し、ステントワイヤ間の距離(軸方向)の維持に寄与し、ステント装置の軸方向短縮が生じることを防止する。第1のワイヤと第2のワイヤの両方がループを形成する第2の連結部No.V,No.VIは、第2の連結部型No.IVと同様の効果を奏する。
【0050】
図11A及び
図11Bは、ステント装置の軸方向短縮を防止するために2本のステントワイヤに二重ループをどのように形成するかを示す(すなわち、第2の連結部型No.IV)。
図11Aには、第2の連結部型No.IVを形成する2本のステントワイヤが開示されており、各ステントワイヤに1つのループが形成されている。例えば
図2Aに記載されるようなステント送達システムを埋め込むために必要なステント装置の収縮によって、周方向の力がステントワイヤに加えられる。
図11Aに示すように、周方向に力が加えられた後、ループの形状は軸方向に延長され(距離1102aと距離1102bを比較)、軸方向に力が加えられた場合に軸方向短縮が発生するためのより多くの空間を提供することができる。例えば、各ループ内の開放空間1104はステントワイヤに対して軸方向の移動の自由度を与え、
図11Aに示す矢印M1によって示すように移動することができる。これに対して、
図11Bに示すように、2本のステントワイヤが、両方のステントワイヤに二重ループが形成された第2の連結部型No.VIを形成している場合には、周方向に力が加わっている場合(
図11Bの右側)と、周方向に力が加わっていない場合(
図11Bの左側)とで、ループの形状の軸方向距離の差(距離1106aと距離1106bを比較)は、
図11Aの構成よりも大幅に小さくなる。軸方向の全長は二重ループ構造の軸方向長さに関連するが、相互接続されるループ内の開放空間1108は、
図11Bに示す矢印M2によって示すように制限されるステントワイヤの軸方向移動の自由度のための空間を提供する。距離M2が距離M1未満であることにより、
図11Bの二重ループは、ステント装置が
図11Aの単一ループ構造よりも大きな程度で収縮状態に置かれたときに又はその後に軸方向に力が加えられた場合の、軸方向短縮を最小限に抑え、防止する。
【0051】
図12は、ステント装置内の連結部の2つのバリエーション、すなわち、第1の連結部及び第2の連結部の割り当てを示す。第1の連結部は、本明細書に開示される第1の連結部型に一致するステントワイヤ間の接続を有し、第2の連結部は、本明細書に開示される第2の連結部型に一致するステントワイヤ間の接続を有する。右側の概略図は、円筒状ステント装置の2つの異なる連結部の位置を示し、円筒状ステント装置は、シート状構造として示されている。白ドットは、第1の連結部、例えば連結構造内にループを有さない構造を表し、黒ドットは、第2の連結部、例えば連結構造内に少なくとも1つのループを有する構造を表す。
図12の実施形態では、第2の連結部は、軸方向に直線状に位置している。
【0052】
図13は、単一のステントワイヤ1302を共有して連結ブロック1304を構成する、隣り合う4つの連結部(周方向)の関係を示している。
図13に開示されるように、連結ブロックは、4つの連続する連結部を形成する2つの隣接するステントワイヤと連結するためにステントワイヤを必要とする。周方向にステント装置の長さにわたって延びる複数のそのような連結ブロック1304が存在する(例えば、
図13に示す領域1300内の4つの連結ブロック1304は、連結ブロック1304の列を形成する)。このような連結ブロック1304の列は、軸方向に複数延びている。連結ブロック1304の各列内では、1つの連結ブロック1304内に含まれる4つの隣接する連結部の配置が異なる。例えば、領域1300内の連結ブロック1304a、1304b、1304cのそれぞれは、1つの第2の連結部と、3つの第1の連結部とを有し(白ドット(第1の連結部を表す)と、黒ドット(第2の連結部を表す)で示す)、領域1300内の連結ブロック1304dは、第2の連結部を有していない。連結ブロック1304dの拡大図を
図13に示す。連結ブロック1304dの拡大図では、単一のステントワイヤ1302が、他の2つのステントワイヤと連結部1306,1308,1310,1312で連結しており、4つの連結部のそれぞれが第1の連結部である。
【0053】
図13に示すように、いずれかの連結ブロック1304における4つの隣接する連結部のうちの第2の連結部の位置は、周方向の位置に応じてステント装置内で変化する。このため、連結ブロック1304aでは、第2の連結部は第2の位置であり、連結ブロック1304bでは、第2の連結部は第3の位置であり、連結ブロック1304cでは、第2の連結部は第4の位置となっている。ステントワイヤは、繰り返しパターンで相互接続される。第1のステントワイヤの最初の2つの連続する山は、隣接するステントワイヤの最初の2つの連続する谷によって捕捉され、その後、第1のステントワイヤの1つの後続の山は、隣接するステントワイヤの1つの後続の谷によって捕捉されない。第1のステントワイヤは、交互の山及び谷に沿った3つの連続ループを含まずに形成されてもよい。
【0054】
図14Aは、第1の連結部及び第2の連結部の交互の割り当て(数及び位置)を示すステント本体の概略図である。連結ブロック1402は、軸方向に並ぶ2つの連結部を開示し、一方の連結部が第1の連結部であり、他方が第2の連結部である。連結ブロック1404は、軸方向に並ぶ2つの連結部を開示し、両方の連結部が第2の連結部である。連結ブロック1404は、2つ以上の第2の連結部が軸方向に並んで配置される。これにより、連結ブロック1402よりも良好にステント装置の軸方向短縮を防止することができる。第2の連結部は、必ずしも連続して並ぶ必要はない。第2の連結部が同一軸方向に複数配列されていることは、ステント装置の軸方向短縮を防止することに寄与する。
【0055】
図14Bは、第1の連結部及び第2の連結部の交互の割り当て(数及び位置)を示すステント本体の別の概略図である。連結ブロック1406は、斜め方向に整列した2つの連続する第2の連結部を開示する。換言すれば、連結ブロック1406において、第2の連結部は、ステントワイヤの連続する山及び谷に形成される。連結ブロック1406の構造は、連結ブロック1402よりもステント装置の軸方向短縮を防止する。連結ブロック1408は、斜めに整列した4つの連続する第2の連結部を開示する。連結ブロック1408のこの構成は、連結ブロック1406よりも良好にステント装置の軸方向短縮を防止することができる。斜め方向に連結ブロック1406よりも多くの第2の連結部を配置することは、ステント装置の軸方向短縮を防止することに寄与するが、第2の連結部の数は4つである必要はない。
【0056】
図15A~
図15Dは、ステント装置における実際の実装1402に対する様々な連結ブロック1400を示す。
図15A~
図15Dには連結ブロック1400a,1400b,1400c,1400dが開示されており、これらは各々、2つの第1の連結部(すなわち、ループを含まない)(白ドットで示す)と、2つの第2の連結部(すなわち、少なくとも1つのループを含む)(黒ドットで示す)とを有する。
図15A~
図15Dには、第2の連結型No.VIの形態の第2の連結部1402aが開示されており、連結部を形成する2本のステントワイヤは二重ループを含む。
【0057】
図16A~
図16Cは、連結ブロック1500内の第2の連結部の割り当て、例えば数及び位置と、ステント装置の柔軟性に対するそのような異なる割り当ての影響との間の関係を示す。
図16Aは、1つの第2の連結部(第2の連結型No.I)(黒ドットで表されている)及び3つの第1の連結部(第1の連結型、すなわちループなし)(白ドットで表されている)を有する連結ブロックを開示している。線の概略図は、ステントワイヤの関係、及び第2の連結部が第1の連結部とどのように相互作用するかを示す。線の概略図は、力がステント装置に周方向に加えられると(
図16Aに示す矢印1602)、緩く連結された第1の連結部が、ステントワイヤに入り混じる余地を与え、ステント装置の柔軟性をもたらすことを示している(例えば、第1の連結部内のステントワイヤが離れて分離した領域P1を参照されたい)。しかしながら、第2の連結部はその連結関係を維持する。
【0058】
図16B及び
図16Cは、2つの第2の連結部(第2の連結型No.I)(黒ドットで表されている)及び2つの第1の連結部(第1の連結型、すなわちループなし)(白ドットで表されている)を有する連結ブロックの別の例を開示している。線の概略図はまた、力がステント装置に周方向に加えられると(
図16B及び
図16Cに示す矢印1604,1606,1608及び1610)、緩く連結された第1の連結部が、ステントワイヤに入り混じる余地を与え、ステント装置の柔軟性をもたらすことを示している(例えば、第1の連結部内のステントワイヤが離れて分離した領域P2及びP3を参照されたい)。しかしながら、第2の連結部はその連結関係を維持する。
【0059】
第1の連結部に対する第2の連結部の数の比は、理想的には1:3又は2:2、あるいは0.15から0.60、0.15から0.40、0.15から0.30、0.25から0.40、又は0.40から0.60である。
【0060】
図17は、3つの第2の連結部(第2の連結型No.I)(黒ドットで表されている)及び1つの第1の連結部(第1の連結型、すなわちループなし)(白ドットで表されている)を有する連結ブロック1600を開示している。線の概略図は、この実施形態において、力がステント装置に周方向に加えられると(
図17に示す矢印1702)、緩く連結された第1の連結部が、ステントワイヤに入り混じる余地を与えず、ステント装置の柔軟性をもたらさないことを示している。この柔軟性の欠如は、一般に、3つ以上の第2の連結部を含む連結ブロックに見られる。
【0061】
図18は、ステント装置の製造方法の一例を示す。ステント装置の製造方法は、円筒状シャフト1802を有する治具1800を準備する工程と、少なくとも1本のステントワイヤ1804を、シャフト1802の近位端からシャフト1802の遠位端まで、シャフト1802の長手方向軸の周りに螺旋状に巻き付ける編組工程とを含む。治具1800は、シャフト1802の外周に取り付けられる複数のピン1806を有し、ピン1806を挿入するためにシャフト1802の外周の移行点に穴が形成される。シャフト1802の穴は、
図12に示す第1の連結部の白ドット及び第2の連結部の黒ドットに対応する。シャフト1802の穴は、シャフト1802の長手方向に延びてシャフト1802の円周を複数に等分する複数の周方向分割線と、シャフト1802の周方向に延びてシャフト1802の長さを複数に等分する複数の長さ分割線との交点に位置する。治具1800を準備する工程では、シャフト1802の各穴にピン1806が取り付けられる。穴に取り付けられた複数のピン1806は、シャフト1802の長手方向軸の周りの螺旋経路に沿って配置される。
【0062】
編組工程中、ステントワイヤ1804の一端はアンカーピン1808に固定され、ステントワイヤ1804は、アンカーピン1808から、長さ分割線上に位置する最も近いピンである開始ピン1806aまで延在する。ステントワイヤ1804は、開始ピン1806aからシャフト1802の周方向に延び、シャフト1802の長手方向軸周りにジグザグ状に巻かれる。この工程は、複数の巻かれたステントワイヤ1804を形成する。このとき、ステントワイヤ1804は、一方の長さ分割線上のピン1806と、一方の長さ分割線の遠位側に隣接する他方の長さ分割線上のピン1806とを交互に通過しながら、周方向にジグザグ状に延在する。これにより、一方の長さ分割線上のピン1806に山が形成され、他方の長さ分割線上のピン1806に谷が形成される。
【0063】
図19は、ステント装置の製造方法の一例をさらに示す。
図19に示すように、ステントワイヤ1804aは、ピン1806を交互にジグザグ状に通過しながら周方向に延び、山1902と谷1904を形成する。ステントワイヤ1804bは、ピン1806を交互にジグザグ状に通過しながら周方向に延び、山1906と谷1908を形成する。ステントワイヤ1804bは、ピン1806の周りにループを形成し、ステントワイヤ1804aと連結して、ステントワイヤ1804bの第2の谷1908にループ1910を形成することができ、これは単一ループ又は複数のループであってもよく、前述の実施形態で説明した様々な種類の連結部を形成する。
【0064】
本発明をその好ましい実施形態に関連して説明したが、具体的に説明されていない追加、削除、修正、及び置換を、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができることが当業者には理解されよう。
【0065】
開示されるステント装置の実施形態は、0.15から0.60、あるいは0.15から0.40又は0.15から0.30又は0.25から0.40又は0.40から0.60である二次連結構造の数に対する一次連結構造の数の比をさらに含む。
【0066】
開示されるステント装置の実施形態は、ステントカバーをさらに含み、ステントカバーは、円筒状ステント本体の外周面の少なくとも一部を覆う。
【0067】
開示されるステント装置の実施形態は、ステントカバーをさらに含み、ステントカバーは、円筒状ステント本体の内周面の少なくとも一部を覆う。
【0068】
開示されるステント装置の実施形態は、ステントカバーをさらに含み、ステントカバーの第1の部分は、円筒状ステント本体の外周面の少なくとも一部を覆い、ステントカバーの第2の部分は、円筒状ステント本体の内周面の少なくとも一部を覆う。
【0069】
開示されるステント装置の実施形態において、2つのループは、交互の山及び谷に沿って連続的に配置されてもよい。
【0070】
開示されるステント装置の実施形態は、交互の山及び谷に沿って連続的に配置されていない2つのループをさらに含む。
【0071】
開示されるステント装置の実施形態は、第2のステントワイヤと連結する2つのループをさらに含む。
【0072】
開示されるステント装置の実施形態は、非対称である第1のループをさらに含む。
【0073】
開示されるステント装置の実施形態は、ステント装置の内腔から見て外側に突出する第1のループをさらに含む。
【0074】
開示されるステント装置の実施形態は、単一ワイヤである第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤをさらに含む。
【産業上の利用可能性】
【0075】
改良されたステント装置は、効率的な構造を有し、関連する医療処置の実用的な投与を提供する。
【符号の説明】
【0076】
101 ステント送達システム
104 ステント装置
706 第1の連結型(二次連結構造)
708 第2の連結型(一次連結構造)
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状ステント本体を形成する第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤであって、前記円筒状ステント本体が内部空隙空間を囲む、第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤと、
一次連結構造と、
二次連結構造と、
を備え、
前記一次連結構造が、前記第1のステントワイヤから形成されて第1のループ開口部を画定する第1のループと、前記第1のループ開口部を
1回だけ通る前記第2のステントワイヤとを含み、
前記二次連結構造が、互いの上を通る前記第1のステントワイヤ及び前記第2のステントワイヤを含み、
前記第1のステントワイヤが、第1の山及び第1の谷を含み、前記第1のループが、前記第1のステントワイヤの前記第1の山又は前記第1の谷に位置する、ステント装置。
【請求項2】
前記二次連結構造がループを含まない、請求項1に記載のステント装置。
【請求項3】
前記二次連結構造において、前記第1のステントワイヤ及び前記第2のステントワイヤがループを形成することなく各々の上を通る、請求項1に記載のステント装置。
【請求項4】
前記第2のステントワイヤが、第2の山及び第2の谷を含み、前記二次連結構造を形成する前記第1のステントワイヤの一部が、前記第1の山であり、前記二次連結構造を形成する前記第2のステントワイヤの一部が、前記第2の谷であり、
前記二次連結構造において、前記第1の山が前記第2の谷に位置する、請求項2に記載のステント装置。
【請求項5】
前記一次連結構造が第2のループを含む、請求項1に記載のステント装置。
【請求項6】
前記第2のループが、前記第2のステントワイヤから形成され、第2のループ開口部を画定する、請求項5に記載のステント装置。
【請求項7】
前記第2のループ開口部を形成する前記第2のステントワイヤの一部が、前記第1のループ開口部を通る、請求項6に記載のステント装置。
【請求項8】
前記第2のループが、前記第2のステントワイヤの山又は谷に形成される、請求項6に記載のステント装置。
【請求項9】
前記第2のループが前記第1のステントワイヤから形成され、第2のループ開口部を画定し、
前記一次連結構造が、前記第1のステントワイヤから形成される前記第2のループを含む、請求項5に記載のステント装置。
【請求項10】
前記第1のループ及び前記第2のループが、二重ループ構造の一部であり、
前記第1のループが、前記第1のループ及び前記第2のループの最も遠位にある、請求項9に記載のステント装置。
【請求項11】
前記一次連結構造が第3のループを含む、請求項5に記載のステント装置。
【請求項12】
前記第3のループが、前記第1のステントワイヤ及び前記第2のステントワイヤのうちの一方から形成され、第3のループ開口部を画定する、請求項11に記載のステント装置。
【請求項13】
前記一次連結構造が第4のループを含む、請求項11に記載のステント装置。
【請求項14】
前記第4のループが、前記第1のステントワイヤ及び前記第2のステントワイヤのうちの一方から形成され、第4のループ開口部を画定する、請求項13に記載のステント装置。
【請求項15】
前記第1のループ、前記第2のループ、前記第3のループ及び前記第4のループが、2つの二重ループ構造を形成する、請求項14に記載のステント装置。
【請求項16】
前記一次連結構造の数が、前記二次連結構造の数以下である、請求項1に記載のステント装置。
【請求項17】
前記第1のステントワイヤが、交互の山及び谷に沿った3つの連続したループを含まない、請求項1に記載のステント装置。
【請求項18】
前記第1のステントワイヤが、4つの連続する交互の山及び谷のうちの1つのループを含む、請求項1に記載のステント装置。
【請求項19】
前記第1のステントワイヤが、4つの連続する交互の山及び谷のうちの2つのループを含む、請求項1に記載のステント装置。
【請求項20】
前記ステント装置が、
前記ステント装置を運ぶ能力を有するシースと、
前記ステント装置を前記シースから押し出すためのプッシャと、
を含むステント送達システムを備える、請求項1に記載のステント装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
開示されるステント装置の実施形態は、内部空隙空間を囲む円筒状ステント本体を形成する第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤと、一次連結構造と、二次連結構造とを含む。一次連結構造は、第1のステントワイヤから形成されて第1のループ開口部を画定する第1のループと、第1のループ開口部を1回だけ通る第2のステントワイヤとを含み、二次連結構造は、互いの上を通る第1のステントワイヤ及び第2のステントワイヤを含む。第1のステントワイヤは、第1の山及び第1の谷を含み、第1のループは、第1のステントワイヤの第1の山又は第1の谷に位置する。
【国際調査報告】