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特表2024-508449PDGF-BBを利用した血管形成能が増進した骨髄由来血管内皮前駆細胞の製造方法およびこれを利用した血管形成不全-関連疾患治療用細胞治療剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-27
(54)【発明の名称】PDGF-BBを利用した血管形成能が増進した骨髄由来血管内皮前駆細胞の製造方法およびこれを利用した血管形成不全-関連疾患治療用細胞治療剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20240219BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20240219BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240219BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240219BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240219BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20240219BHJP
   C07K 14/49 20060101ALI20240219BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240219BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K35/44
A61K35/28
A61P9/00
A61P3/10
A61P13/12
A61P27/02
A61K38/22
A61P43/00 121
A61P7/06
C12N5/0775
C07K14/49
C12N15/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551795
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 KR2022002713
(87)【国際公開番号】W WO2022182164
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0026420
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】512139102
【氏名又は名称】ユニバーシティ-インダストリー コーオペレイション グループ オブ キョンヒ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY-INDUSTRY COOPERATION GROUP OF KYUNG HEE UNIVERSITY
(71)【出願人】
【識別番号】523013466
【氏名又は名称】エルピス・セル・セラピューティクス
【氏名又は名称原語表記】ELPHIS CELL THERAPEUTICS
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ヨンスク
(72)【発明者】
【氏名】キム,スナ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドヨン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BD39
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084DB55
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA55
4C084ZA81
4C084ZC35
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA33
4C087ZA55
4C087ZA81
4C087ZC35
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA23
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、PDGF-BBを利用した血管形成能が増進した骨髄由来血管内皮前駆細胞の製造方法およびこれを利用した血管形成不全-関連疾患治療用細胞治療剤の製造方法に関し、具体的に、本発明は、分離した血管内皮前駆細胞にPDGF-BBを処理して培養するステップを含む血管形成能が増進した血管内皮前駆細胞の製造方法、血管内皮前駆細胞およびPDGF-BBを有効成分として含む血管形成促進用組成物、分離した血管内皮前駆細胞、間葉系幹細胞およびPDGF-BBを混合するステップを含む血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤の製造方法および前記方法により製造された血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤に関する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離した血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)にPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を処理して培養するステップを含む、血管形成能が増進した血管内皮前駆細胞の製造方法。
【請求項2】
血管内皮前駆細胞は、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC:bone marrow-endothelial progenitor cell)であることを特徴とする、請求項1に記載の血管形成能が増進した血管内皮前駆細胞の製造方法。
【請求項3】
PDGF-BBが処理された血管内皮前駆細胞は、
細胞移動増進、細胞生存率増進、細胞増殖増進および基質外タンパク質であるlaminin β1の発現増加を有することを特徴とする、請求項1に記載の血管形成能が増進した血管内皮前駆細胞の製造方法。
【請求項4】
分離した血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)、間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stem cell)およびPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を有効成分として含む、血管形成不全-関連疾患の治療のための血管形成促進用組成物。
【請求項5】
前記血管内皮前駆細胞は、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC:bone marrow-endothelial progenitor cell)であることを特徴とする、請求項4に記載の血管形成不全-関連疾患の治療のための血管形成促進用組成物。
【請求項6】
分離した血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)、間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stem cell)およびPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を混合するステップを含む、血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤の製造方法。
【請求項7】
前記分離した血管内皮前駆細胞と間葉系幹細胞は、1:1~2:1の細胞数割合で混合されたことを特徴とする、請求項6に記載の血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤の製造方法。
【請求項8】
血管内皮前駆細胞は、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞であり、前記間葉系幹細胞は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞であることを特徴とする、請求項6に記載の血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤の製造方法。
【請求項9】
前記血管形成不全-関連疾患は、虚血性疾患、糖尿病性潰瘍、壊疽、閉塞性血管疾患、心血管疾患または局所貧血であることを特徴とする、請求項6に記載の血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤の製造方法。
【請求項10】
前記虚血性疾患は、虚血性心筋梗塞、虚血性心臓疾患、虚血性血管疾患、虚血性眼疾患、虚血性腎不全、虚血性網膜症、虚血性脳卒中または虚血性下肢疾患であることを特徴とする、請求項9に記載の血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤の製造方法。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか一項に記載の方法により製造された、血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤。
【請求項12】
細胞治療剤は、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞とヒト骨髄由来間葉系幹細胞が1:1~2:1の細胞数割合で混合されており、血管形成能を有することを特徴とする、請求項11に記載の血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤。
【請求項13】
前記細胞治療剤は、骨髄内投与、静脈投与、皮下投与、筋肉内投与または腹腔投与用であることを特徴とする、請求項11に記載の血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤。
【請求項14】
前記血管形成不全-関連疾患は、虚血性疾患、糖尿病性潰瘍、壊疽、閉塞性血管疾患、心血管疾患または局所貧血であることを特徴とする、請求項11に記載の血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤。
【請求項15】
前記虚血性疾患は、虚血性心筋梗塞、虚血性心臓疾患、虚血性血管疾患、虚血性眼疾患、虚血性腎不全、虚血性網膜症、虚血性脳卒中または虚血性下肢疾患であることを特徴とする、請求項14に記載の血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤。
【請求項16】
請求項4または5に記載の血管形成促進用組成物を個体に投与するステップを含む、血管形成不全-関連疾患の予防または治療方法。
【請求項17】
請求項6乃至10のうち選択されるいずれか一項に記載の製造方法により製造された細胞治療剤を個体に投与するステップを含む、血管形成不全-関連疾患の予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDGF-BBを利用した血管形成能が増進した骨髄由来血管内皮前駆細胞の製造方法およびこれを利用した血管形成不全-関連疾患治療用細胞治療剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)は、末梢血液で最初に突き止められた細胞であって、血管新生を促進する細胞である。
【0003】
新たな血管は、新生血管形成(angiogenesis)、動脈新生(arteriogenesis)および脈管形成(vasculogenesis)過程によって生成されるが、新生血管形成過程は、既に存在する成熟した血管内皮細胞(endothelial cell)から育つ血管内皮細胞の増殖および移動と関連があり、動脈新生は、既に存在する小動脈連結(arteriolar connection)を側部血管(collateral vessels)でリモデリングする過程であり、脈管形成は、血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells)が成熟した血管内皮細胞へ分化される過程を通じて進行される。したがって、骨髄から出て循環する血管内皮前駆細胞は、血管損傷部位に移動し、新たに形成される血管への直接的な挿入または多様な新生血管形成および栄養因子の分泌を通じて新たな血管形成に関与する。
【0004】
したがって、血管内皮前駆細胞は、再生医学分野および再血管新生を通じた治療目的に潜在的な標的として注目されている。よって、血管内皮前駆細胞の機能を増加させるための研究が進行されているが、一例として、生体外(ex vivo)遺伝子を変形させた組換えEPCsの製造に対する研究が進行されたことがあり、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor(VEGF))または低酸素症誘導因子-1α(hypoxiainducible factor-1α)を利用してEPCsの新生血管形成能力(pro-angiogenic capacity)を増加させる技術が研究されたことがある。
【0005】
しかし、従来のこのような方法は、血管内皮前駆細胞を血管損傷部位に適用した場合、損傷組織環境による細胞の低い移植率と低い活性化という限界が存在して、目的とする治療効果を得ることができない問題点がある。
【0006】
また、既存の血管内皮前駆細胞を利用した治療法は、患者血液からleukapheresisおよびFACS方法を通じて単純分離したCD34+細胞を最小細胞操作(minimally manipulated cell therapy)方法で濃縮して血管形成が必要な心筋梗塞部位などに移植して血管再生治療に適用したことがあるが、このような治療法は、血管内皮前駆細胞の細胞数(血中の血管内皮前駆細胞頻度:0.02~0.0002%)および活性度において患者別の変化が大きく、移植後、一定水準の心臓拍出力増加(例:contractility(LVEF、左室駆出率)が処置前の約50%から処置後の約55%に増加)を具現することができず、新医療技術として患者に活用されていない。
【0007】
したがって、血管内皮前駆細胞の血管形成能を効果的に増進させて血管形成不全-関連疾患の細胞治療剤として有用に使用できるための新たな技術の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明者らは、骨髄から分離した血管内皮前駆細胞を培養継代別に細胞特性を分析して血管再生能力を評価し、PDGF-BBを血管内皮前駆細胞に処理する場合、血管内皮前駆細胞の血管形成能、細胞移動、細胞増殖および細胞生存率を効果的に向上できることを確認し、さらに血管内皮前駆細胞と間葉系幹細胞が混合した混合細胞にPDGF-BBを処理して共培養する場合、さらに増進した血管形成能効果があることを確認した。したがって、本発明者らは、血管内皮前駆細胞の血管形成能を効果的に向上できる新たな細胞治療剤の製造方法を確立することで、本発明を完成した。
【0009】
したがって、本発明の目的は、PDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を利用した血管形成能が増進した血管内皮前駆細胞の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、分離した血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)、間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stem cell)およびPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を有効成分として含む、血管形成不全-関連疾患の治療のための血管形成促進用組成物を提供することである。
【0011】
本発明のまた他の目的は、分離した血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)、間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stem cell)およびPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を混合するステップを含む、血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤の製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のまた他の目的は、本発明の方法により製造された、血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の本発明の目的を達成するために、本発明は、分離した血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)にPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を処理して培養するステップを含む、血管形成能が増進した血管内皮前駆細胞の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の一実施例において、前記血管内皮前駆細胞は、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC:bone marrow-endothelial progenitor cell)と言える。
【0015】
本発明の一実施例において、PDGF-BBが処理された血管内皮前駆細胞は、細胞移動増進、細胞生存率増進、細胞増殖増進および基質外タンパク質であるlaminin β1の発現増加を有するものであってよい。
【0016】
また、本発明は、分離した血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)、間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stem cell)およびPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を有効成分として含む、血管形成不全-関連疾患の治療のための血管形成促進用組成物を提供する。
【0017】
本発明の一実施例において、前記血管内皮前駆細胞は、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC:bone marrow-endothelial progenitor cell)と言える。
【0018】
また本発明は、分離した血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)、間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stem cell)およびPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を混合するステップを含む、血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の一実施例において、前記分離した血管内皮前駆細胞と間葉系幹細胞は、1:1~2:1の細胞数割合で混合されたものであってよい。
【0020】
本発明の一実施例において、前記血管内皮前駆細胞は、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞であり、前記間葉系幹細胞は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞であってよい。
【0021】
本発明の一実施例において、前記血管形成不全-関連疾患は、虚血性疾患、糖尿病性潰瘍、壊疽、閉塞性血管疾患、心血管疾患または局所貧血であってよい。
【0022】
本発明の一実施例において、前記虚血性疾患は、虚血性心筋梗塞、虚血性心臓疾患、虚血性血管疾患、虚血性眼疾患、虚血性腎不全、虚血性網膜症、虚血性脳卒中または虚血性下肢疾患であってよい。
【0023】
また本発明は、本発明の方法により製造された、血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤を提供する。
【0024】
本発明の一実施例において、前記細胞治療剤は、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞とヒト骨髄由来間葉系幹細胞が1:1~2:1の細胞数割合で混合されており、血管形成能を有するものであってよい。
【0025】
本発明の一実施例において、前記細胞治療剤は、骨髄内投与、静脈投与、皮下投与、筋肉内投与または腹腔投与用であってよい。
【0026】
本発明の一実施例において、前記血管形成不全-関連疾患は、虚血性疾患、糖尿病性潰瘍、壊疽、閉塞性血管疾患、心血管疾患または局所貧血であってよい。
【0027】
本発明の一実施例において、前記虚血性疾患は、虚血性心筋梗塞、虚血性心臓疾患、虚血性血管疾患、虚血性眼疾患、虚血性腎不全、虚血性網膜症、虚血性脳卒中または虚血性下肢疾患であってよい。
【0028】
また本発明は、前記血管形成促進用組成物を個体に投与するステップを含む、血管形成不全-関連疾患の予防または治療方法を提供する。
【0029】
また本発明は、前記製造方法により製造された細胞治療剤を個体に投与するステップを含む、血管形成不全-関連疾患の予防または治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、PDGF-BBが処理された血管内皮前駆細胞が増進した血管形成能、細胞移動、細胞生存率および細胞増殖能を有するということを突き止め、さらに、血管内皮前駆細胞と間葉系幹細胞の混合細胞にPDGF-BBを処理する場合、さらに増進した血管形成能を確認することで、究極的に本発明は、血管形成不全-関連疾患の効果的な治療のための新たな細胞治療剤およびその製造方法を提供することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1a】本発明に係るヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の特性を分析した結果であって、継代前(P0)におけるヒトBM-EPCコロニー形成能を確認したものである。
図1b】本発明に係るヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の特性を分析した結果であって、二重蛍光染色を遂行して血管内皮前駆細胞のマーカー発現(FITC-UEA-I binding:緑色、vWF:赤色)を観察したものである。
図1c】本発明に係るヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の特性を分析した結果であって、2継代~4継代(P2~P4)別に調整されたBM-EPCの培地に含有された成長因子の濃度を測定したものである。
図1d】本発明に係るヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の特性を分析した結果であって、1継代~3継代(P1~P3)で細胞表面マーカーが発現された細胞を柔細胞分析器で分析したものである。
図1e】本発明に係るヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の特性を分析した結果であって、3継代~6継代(P3~P6)でBM-EPCのチューブ形成能を分析した結果である。
図1f】本発明に係るヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の特性を分析した結果であって、3継代のBM-EPCをヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)の有無によるチューブ形成能を分析した結果を示したものである。
図2】継代培養によるヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)のPDT(population doubling time)を測定した結果である。
図3】TNF-a処理による血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の炎症性付着因子発現変化をウェスタンブロットで分析した結果である。
図4】試験管内でVEGF、HGFおよびPDGF-BBの各処理濃度別の血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の血管形成能を分析した結果であって、左側図面は、各成長因子を処理して4時間後のBM-EPC血管形成能を確認したイメージ結果であり、右側グラフは、メッシュ(meshes)数、接合(junctions)数、セグメント(segment)数および全長(total length)を定量的に測定した結果である。
図5】PDGF-BBの処理濃度別、時間別の血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の血管形成能を分析した結果である。
図6】PDGF-BBの処理濃度別、時間別の血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の移動能力増加を確認した結果であって、血管内皮前駆細胞の断層にスクラッチで傷を入れた後、PDGF-BB処理による血管内皮前駆細胞の細胞移動による傷回復程度を確認したものである。
図7】PDGF-BBの処理による血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の細胞生存率(細胞活性)増加活性を確認した結果であって、継代別(P2、P3、P4)の血管内皮前駆細胞にPDGF-BBを濃度別に処理した後、細胞生存率をWSTアッセイで分析した結果である。
図8】PDGF-BBの処理による血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の細胞増殖活性をBrdUアッセイ方法で確認した結果である。
図9】PDGF-BBの処理による血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の細胞外基質タンパク質の発現変化を分析した結果であって、PDGF-BB処理濃度別Laminini-β1の発現程度を免疫蛍光染色およびウェスタンブロットで分析した結果である。
図10】PDGF-BBの処理による血管内皮前駆細胞(BM-EPC)のPDGFRβ内在化増加を確認した結果であって、PDGF-BBを濃度別に処理して24時間後、血管内皮前駆細胞でVEGFR2およびPDGFRβを免疫蛍光染色で観察した結果である。
図11】PDGF-BB処理による血管内皮前駆細胞と骨髄間葉系幹細胞の血管形成能を分析したものであって、血管内皮前駆細胞と骨髄間葉系幹細胞を共培養してPDGF-BB処理濃度および処理時間による血管形成能を顕微鏡で観察した写真であり、また下記のグラフは、各実験群に対するメッシュ(meshes)数、接合(junctions)数、セグメント(segment)数および全長(total length)を定量的に測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、血管形成能が増進した血管内皮前駆細胞の製造方法、これを利用した血管形成不全-関連疾患の治療のための新たな細胞治療剤およびその製造方法を提供することに特徴がある。
【0033】
血管は、血管内皮細胞が増殖して生成される。発生初期に血管形成が起こり、その後には、本来あった毛細血管から新たな血管が形成される血管新生が起こる。血管新生は、傷が治る場合などの特別な場合にのみ身体で許容され、それ以外には厳格に抑制される。
【0034】
また、血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)は、骨髄から派生された細胞であって血管を形成する内皮細胞(endothelial cell)で成熟になり得る細胞である。全体血液で特定のマーカーであるCD31、CD34、CD133、CD144およびCD309の検出として血管内皮前駆細胞に同定することができる。血管内皮前駆細胞は、血管の再生(re-endothelialization)と新血管形成(neovascularization)に重要な役割をする。
【0035】
一方、血管形成が過多に発生するようになると、疾病悪化の主な原因にもなるが、血管の未形成もまた深刻な疾病の原因になっている。特に、血管の未形成、すなわち血管形成不全は、壊死、潰瘍および虚血などを誘発することができ、この場合、組織や機関の機能異常を誘発する。また動脈硬化症、心筋梗塞および狭心症のような疾病も円滑でない血液供給が原因になっている。
【0036】
そのため、血管の不全(未形成)による低酸素状態または低栄養状態の誘発による組織損傷を減少させ、円滑な組織再生のためには、新たな血管形成を誘導するか促進させる役割が非常に重要である。
【0037】
特に、血管新生は、傷ついた肌組織が再生されるための必須の傷回復過程に必ずしも伴わなければならない。傷の初期ステップには、細胞の壊死と血管の破壊による炎症反応が起こるようになり、この炎症反応の以後に血液成分の脱血管現象、血小板の活性化および血液凝固とともに、カリクレイン、トロンビンおよびプラスミンなどのような生物学的媒介物質が形成される一連の過程を経ることになる。
【0038】
一方、このような血管形成の不全で発生する疾患の治療方法として、血管損傷を再生させる生体内の内在性幹細胞を活用する方法および血管内皮前駆細胞または血管内皮前駆細胞類似細胞を活用する方法が適用されたが、未だ有意な効能を確認することができず、基底疾患のある患者は、血管内皮前駆細胞の数と活性が正常健康人に比べて非常に低くいため、血管内皮前駆細胞の細胞数を増進させ、血管形成能を増進させ得る技術が要求されている。
【0039】
よって、本発明者らは、血管形成不全-関連疾患の治療のための効果的な細胞治療剤として血管内皮細胞の血管形成能を増進させ得る方法を研究したが、その結果、PDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を血管内皮前駆細胞に処理して培養した場合、PDGF-BBが処理された血管内皮前駆細胞の血管形成能が増進されるだけでなく、細胞活性および細胞増殖も遥かに向上することを突き止めた。
【0040】
そのため、本発明は、分離した血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)にPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を処理して培養するステップを含む、血管形成能が増進した血管内皮前駆細胞の製造方法を提供することができる。
【0041】
本発明において、前記血管内皮前駆細胞は、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC:bone marrow-endothelial progenitor cell)であってよい。
【0042】
また前記分離した血管内皮前駆細胞にPDGF-BBを処理することは、血管内皮前駆細胞の培養培地にPDGF-BBを添加する方法で遂行されることができ、このとき、前記血管内皮前駆細胞は、1~3(P1~P3)継代培養した血管内皮前駆細胞を使用することができ、好ましくは、2~3(P2~P3)継代培養した血管内皮前駆細胞を使用することができる。
【0043】
前記「継代培養」は、細胞増殖方法の一つであって、細胞の代を継ぐために5~7日ごとに周期的に新たな培地に移植させることを意味し、具体的に「継代(passage)」は、培養容器で初期種培養から同一の培養容器に細胞が盛んに育つ時期(confluence)までの細胞の成長を意味する。
【0044】
本発明の一実施例においては、継代別の血管内皮前駆細胞にPDGF-BBを処理した後、血管内皮前駆細胞の細胞活性度(細胞生存率)を分析したが、P1~P3継代の血管内皮前駆細胞においては、PDGF-BB処理によって細胞活性度が増加したことと示されたのに対し、P4継代においては、PDGF-BB処理による有意な差がないことと示された。したがって、PDGF-BBの処理は、P1~P3継代の分離した血管内皮前駆細胞に処理することが好ましい。
【0045】
前記PDGF-BBの処理は、10~40ng/mlの濃度になるように培養培地に処理することができる。
【0046】
前記培養は、当業界において使用される細胞培養培地で遂行することができ、本発明の一実施例においては、0.2%FBSが添加されたa-MEM培地を利用して培養した。
【0047】
本発明の一実施例によれば、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞の培養培地に新生血管形成促進因子であるVEGF、HGFおよびPDGF-BBをそれぞれ処理し、血管網形成可否に対する構造を観察したが、VEGFおよびHGFでは血管網形成効果が不備であることと示されているのに対し、特異的にPDGF-BBを処理した群でのみ血管形成が遥かに増加されていることと示された。
【0048】
これを通じて、本発明者らは、血管形成能が向上した血管内皮前駆細胞の製造のための方法として、PDGF-BBを利用することができることを確認した。
【0049】
本発明において、PDGF-BBが処理された血管内皮前駆細胞は、血管網形成が増加されているだけでなく、血管内皮前駆細胞の細胞移動増進、細胞生存率増進、細胞増殖増進および基質外タンパク質であるlaminin β1の発現増加も共に有する特徴があることを実験を通じて確認した。
【0050】
したがって、本発明は、分離した血管内皮前駆細胞にPDGF-BBを処理して培養するステップを含む血管形成能が増進した血管内皮前駆細胞の製造方法を提供することができ、また分離した血管内皮前駆細胞にPDGF-BBを処理して培養するステップを含む血管内皮前駆細胞の細胞数を増進させる方法を提供することができる。
【0051】
それだけでなく、本発明は、血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)およびPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を有効成分として含む、血管形成促進用組成物も提供することができる特徴がある。
【0052】
本発明の血管形成促進用組成物は、血管内皮前駆細胞およびPDGF-BBを共に有効成分として含んでおり、先立って記述したように、PDGF-BBによる血管形成能が増進した血管内皮前駆細胞によって細胞移動、細胞生存率、細胞増殖を促進させる作用を通じて血管形成を促進させる特徴がある。
【0053】
したがって、本発明に係る前記血管形成促進用組成物は、血管形成不全と関連する疾患を予防または治療することができる効果があるので、本発明は、前記血管形成促進用組成物を有効成分として含有する血管形成不全-関連疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することができる。
【0054】
本発明に係る前記血管形成促進用組成物によって予防または治療することができる血管形成不全-関連疾患としては、これに制限されないが、虚血性疾患、糖尿病性潰瘍、壊疽、閉塞性血管疾患、心血管疾患および局所貧血であってよく、前記虚血性疾患は、これに制限されないが、虚血性心筋梗塞、虚血性心臓疾患、虚血性血管疾患、虚血性眼疾患、虚血性腎不全、虚血性網膜症、虚血性脳卒中および虚血性下肢疾患を含むことができる。
【0055】
本発明に係る前記血管形成促進用組成物または血管新生不全-関連疾患の予防または治療用薬学的組成物は、生理活性成分として薬学的に有効な量の有効成分を単独で含むか、一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含むことができる。
【0056】
前記において、「薬学的に有効な量」とは、前記生理活性成分が動物またはヒトに投与されて、目的とする生理学的または薬理学的活性を示すのに十分な量を言う。しかし、前記薬学的に有効な量は、投与対象の年齢、体重、健康状態、性別、投与経路および治療期間などによって適切に変化することができる。
【0057】
また、前記において、「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与されるとき、通常的に胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似した反応を引き起こさないことを言う。前記担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油を有することができる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤および防腐剤などをさらに含むことができる。
【0058】
また、本発明の組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延した放出を提供することができるように、当業界に公知の方法を用いて剤形化されることができ、非経口投与のための多様な形態で剤形化されることができる。
【0059】
非経口投与用剤形の代表的なものは、注射用剤形であって、等張性水溶液または懸濁液が好ましい。注射用剤形は、適合した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して当業界に公知の技術によって製造することができる。例えば、各成分を食塩水または緩衝液に溶解させて注射用で剤形化されることができる。
【0060】
本発明に係る組成物は、経皮、皮下、静脈または筋肉を含む様々な経路を通じて投与されることができ、活性成分の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重および患者の重症度などの様々な因子によって適切に選択されることができる。また、本発明の組成物は、目的とする効果を上昇させることができる公知の化合物とも並行して投与することができる。
【0061】
また本発明は、血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤の製造方法を提供することができ、前記方法は、分離した血管内皮前駆細胞(EPC:endothelial progenitor cell)、間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stem cell)およびPDGF-BB(Platelet derived growth factor-BB)を混合するステップを含む。
【0062】
前記本発明の細胞治療剤の製造方法において、前記分離した血管内皮前駆細胞と間葉系幹細胞は、1:1~2:1の細胞数割合で混合された混合細胞であってよく、好ましくは、血管内皮前駆細胞と間葉系幹細胞を2:1の細胞数割合で混合して使用することができる。
【0063】
前記「間葉系幹細胞(MSC)」は、骨、軟骨、脂肪、筋肉細胞を含む多様な中胚葉性細胞へ分化できる多能性幹細胞(multipotent stem cell)を意味する。前記間葉系幹細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜、絨毛膜、脱落膜または胎盤に由来したものであってよく、好ましくは、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC、Bone Marrow- Mesenchymal Stem Cell)であってよい。間葉系幹細胞は、身体損傷が発生した部位に直接移動して損傷した組織および細胞を再生する能力を有しており、体外で容易に増殖することができ、様々な細胞形態へ分化が可能な多能性細胞であって、遺伝子治療と細胞治療において有用な標的として利用されている。
【0064】
本発明において使用した前記血管内皮前駆細胞は、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞であってよい。
【0065】
また本発明に係る前記細胞治療剤の製造において、間葉系幹細胞に代って血管周囲細胞(pericyte)を使用してもよい。
【0066】
前記「血管周囲細胞(pericyte)」は、血管内皮と特異な局所接触を形成する、微小血管系の基底膜内に位置した血管壁細胞を意味する。Rouget細胞、外膜細胞(adventitial cell)または壁細胞(mural cell)とも呼ばれる小血管周囲の結合織細胞であって、血管内皮外部の10%~50%を取り囲んでいることと知られている。細長い収縮性細胞であり、基底膜外部で毛細血管前細動脈周囲を囲んでいる。
【0067】
前記血管周囲細胞は、相対的に未分化した多能性細胞であり、血管を支持する機能をし、必要に応じて線維芽細胞、平滑筋または大食細胞へも分化することができる。また、前記血管周囲細胞は、血管新生だけでなく、血-脳障壁安定性に重要な役割をし、血管内細胞に対する接着力で微小血管系で血流を調節することができる。
【0068】
そのため、本発明に係る前記細胞治療剤の製造は、PDGF-BBの処理によって血管内皮前駆細胞の血管形成能を増進させることができ、また間葉系幹細胞または血管周囲細胞との共培養を通じて、血管新生、血管再生および血管障壁の安定性をさらに増進させ得る。
【0069】
よって、本発明は、血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤の製造方法を提供することができるだけでなく、前記方法により製造された血管形成不全-関連疾患の治療のための細胞治療剤を提供することができる。
【0070】
前記本発明の前記細胞治療剤は、前記細胞を収容するための支持体、好ましくは、生分解性支持体をさらに含むことができる。前記生分解性支持体は、フィブリングルー、ヒアルロン酸、ゼラチン、コラーゲン、アルギン酸、セルロース、ペクチン、キチン、ポリグリコール酸、またはポリ乳酸のようなヒドロゲルであってよいが、これに限定されるものではない。
【0071】
また、前記細胞治療剤は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでよく、前記薬学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれらの成分のうち1種以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液および静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。
前記細胞治療剤は、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形で製剤化することができ、骨髄内投与、静脈投与、皮下投与、筋肉内投与または腹腔投与用として使用されることができる。
【0072】
また本発明に係る前記細胞治療剤が治療しようとする疾患である血管形成不全-関連疾患は、虚血性疾患、糖尿病性潰瘍、壊疽、閉塞性血管疾患、心血管疾患および局所貧血からなる群より選択されるものであってよい。
【0073】
前記虚血性疾患は、これに制限されないが、虚血性心筋梗塞、虚血性心臓疾患、虚血性血管疾患、虚血性眼疾患、虚血性腎不全、虚血性網膜症、虚血性脳卒中および虚血性下肢疾患からなる群より選択されるものであってよい。
【0074】
また本発明は、前記血管形成促進用組成物を個体に投与するステップを含む、血管形成不全-関連疾患の予防または治療方法を提供する。
【0075】
また本発明は、前記製造方法により製造された細胞治療剤を個体に投与するステップを含む、血管形成不全-関連疾患の予防または治療方法を提供する。
【0076】
以下、本発明の構成要素と技術的特徴を、次の実施例を通じてより詳細に説明しようとする。しかし、下記実験例は、本発明の内容を例示するものであるだけであって、発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0077】
<実験例1>実験方法
1-1.細胞培養およびEPC特成分析
ヒトBM単核球細胞(MNC)は、STEMCELL Technologies Inc(カナダバンクーバー)で購入して使用した。EPC培養のために、BM-MNCは、I型コラーゲン(CellMatrix、VA、USA)でコーティングされた100mmディッシュで内皮成長培地-2(EGM-2、Lonza、Basel、Switzerland)で培養した。培地は7日まで毎日入れ替わり、以後には、3日ごとに入れ替った。EPCは、70~80%のコンフルエンス(confluency)状態で継代培養した。MSC培養のためには、BM-MNCを100mmディッシュで間葉系幹細胞成長培地(MSCGM、Lonza)で培養した。培地は、3日ごとに入れ替わり、70~80%のコンフルエンス(confluency)状態で継代培養した。
【0078】
免疫蛍光(IF:immunofluorescence)染色のために、BM-EPC(1.0×10)をコラーゲンタイプIコーティングカバースリップで培養して3.7%ホルムアルデヒドで固定し、0.2%Triton x-100バッファーで10分間透過させ、20%正常ヤギ血清を利用してブロッキングした。フルオレセ(FITC)-標識されたUEA-Iレクチン(Sigma Aldrich、St.Louis、MO)を利用してUlex europaeus agglutinin(UEA)-Iレクチン結合を遂行した。以後、1次抗体として、Von Willebrand factor(vWF、abcam、Cambridge、England)、PDGFRβ(abcam)、VEGFR2(abcam)およびLaminin(Santa Cruz、California、USA)を使用し、2次抗体として、Alexa fluor 488または568-接合された2次抗体を使用した。カバースリップは、DAPI(VECTOR、Burlingame、CA)を含むマウンティング培地を利用してマウンティングした。イメージは、蛍光顕微鏡(Leica、Wetzlar、Germany)を利用して修得した。
【0079】
表面マーカーであるUEA-I(VECTOR)、vWF(abcam)、CD31、CD309、CD105、CD45およびCD34の発現分析は、Novocyte(Agilent、CA、USA)を利用して遂行し、Novosoftware(Agilent)で分析した。
【0080】
BM-EPCのTNF-αの反応分析のために、BM-EPC(1.0×10)をコラーゲンタイプI型がコーティングされた6ウェルプレートに培養し、10ng/ml TNF-α(PeproTech Inc、Rocky Hill、USA)を添加して24時間培養した後、ICAM-1(abcam)およびVCAM-1(Santa Cruz)の発現水準をウェスタンブロットで分析した。
【0081】
1-2.ELISA分析
EPC(2.0×10細胞)を100mm培養ディッシュで培養してEPC調整培地(conditioned medium)を4日目に収集した。以後、HGF、TGF-β1、VEGFおよびPDGF-BBの水準をQuantikine ELISA(R&D systems、Minneapolis、USA)メーカーの指針によって測定した。吸光度は、マイクロプレートリーダー(Biotek、VT、USA)を利用して450nmで測定した。
【0082】
1-3.チューブ形成アッセイ
Matrigel(Corning Inc、NY、USA)をウェル当たり10μlでμ-スライド(Ibidi、Grafelfing、Germary)に処理した。EPC(4.0×10)またはEPC(4.0×10)とMSC(2.0×10)の混合細胞を0.2%FBSが含有されたα-MEM(GIBCO、NY、USA)培地で懸濁し、Matrigelにシーディングした後、0-40ng/ml濃度のVEGF、HGFおよびPDGF-BB(PeproTech)処理下で培養した。以後、イメージは顕微鏡(Leica)で修得した。
【0083】
1-4.細胞生存率分析およびBrdU(5-Bromo-2’-deoxyuridine)細胞標識
細胞生存率分析のために、EPC(1.0×10/well)をコラーゲンタイプIでコーティングされた96ウェルプレートにシーディングし、0.2%FBSが含有されたEBM-2で18時間の間飢餓状態を維持した後、0、10、20および40ng/mlのPDGF-BBを24時間の間それぞれ処理した。WST分析は、製造企業の指針に従って遂行した(Roche、Basel、Switzerland)。また吸光度は、マルチプレートリーダー(Biotek)を利用して450nmで測定した。
【0084】
BrdU細胞標識のために、EPC(1.0×10/well)をコラーゲンタイプIがコーティングされたカバースリップで培養し、以後、新鮮な培地で20ng/ml PDGF-BBを20時間の間処理した後、10μM BrdU(Sigma Aldrich)を添加して4時間の間培養した。以後、10分間メタノール溶媒を利用して固定化した。その後、カバースリップを37℃で1時間の間2N HClで処理して0.1Mホウ酸塩緩衝液で中和した後、BrdU(Roche)を検出するために1次抗体を処理し、以後、FITC接合2次抗体(Invitrogen、California、USA)を処理して培養し、PI(Sigma Aldrich)で対照染色し、イメージは蛍光顕微鏡(Leica)で得た。
【0085】
1-5.ウェスタンブロット
BM-EPC溶解物を2mM PMSF(Sigma Aldrich)が添加された溶解緩衝液(Cell signaling、Danvers、MA)で修得した。タンパク質濃度は、BCA分析(Thermo Scientific、Waltham、MA)で測定した。EPC溶解物および調整培地は、SDS-PAGE電気泳動し、ニトロセルロース膜に移動させた。以後、VCAM-1(Santa Cruz)、ICAM-1(abcam)、laminin-β1(Santa Cruz)およびα-tubulin(Sigma Aldrich)を検出するための1次抗体を使用し、HRP結合- 2次抗体(BD、San Jose、CA、USA)を添加して反応させた。以後、抗体反応が完了したメンブレインは、EZ-Western Lumi Pico(Dogen、Seoul、Korea)を利用して現像し、chemilluminatorを使用して信号を検出した後、ImageJソフトウェアで定量化した。
【0086】
1-6.傷治療アッセイ(スクラッチアッセイ)
コラーゲンタイプIでコーティングされた6ウェルプレート上のEPC細胞断層を0.2%FBS+EBM-2で18時間の間飢餓状態を維持させた。以後、200μlピペットチップで細胞を掻き出し、1xDPBSで洗浄した後、0、10、20ng/mlのPDGF-BBが含有された0.2%FBS+α-MEM培地で培養した。傷治癒過程は、顕微鏡(Leica)で観察した。
【0087】
1-7.統計分析
すべてのデータは、平均±標準偏差で表示し、P値<0.05未満の場合、有意な値で考慮した(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【実施例2】
【0088】
<実験例2>ヒト骨髄単核球細胞(Human BM mononuclear cell(MNC))由来血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell;EPC)の表現型および特徴分析
コロニー形成を有するヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)をヒト骨髄単核球細胞から分離し、血管内皮前駆細胞(BM-EPC)のコロニーは玉石形態(cobblestone morphology)よりはスピンドル形態(spimdle morphology)に近い形態を有することと示された(図1a)。分離した血管内皮前駆細胞の表現型確認のために、免疫蛍光染色、ELISA、柔細胞分析、Matrigelチューブ形成分析を遂行した。内皮系統細胞の一般的なマーカーであるUEA-1レクチン結合およびvWFマーカーの発現は、二重蛍光染色を通じて確認した(図1b)。
【0089】
以後、HGF、TGF-β1、VEGFおよびPDGF-BBのような主要血管新生因子をELISA方法で各継代別BM-EPC条件培地で測定した。その結果、ヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)は、HGF、TGF-β1およびVEGFを分泌することと示され、発現水準は継代によって減少したことと示され、すべての2~4継代培養ではPDGF-BBを分泌しないことと示された(図1c)。
【0090】
また、細胞表面マーカーの発現水準を柔細胞分析を通じて測定したが、1-3継代培養されたヒトBM-EPCは、CD31(<2%)、CD309(<3%)、CD45(<2%)およびCD34(<1%)の低い発現を示したが、CD105は、高い発現(>95%)を見せた(図1d)。また、BM-EPCは、1-3回継代培養で蛍光染色で確認したように、高いUEA-I結合(>99%)とvWF(>99%)発現をすることを確認した。また、Matrigelチューブ形成分析によれば、BM-EPCは、3回継代培養までチューブ形成能力が非常に低いことと示されたが、4-6回継代培養でチューブ形成能を示した(図1e)。
【0091】
また、3回継代培養でBM-EPCは、チューブ形成能が非常に低いことと示されたが、BM-EPC対BM-MSCの細胞数が2:1割合で混合して存在する場合、よく形成された血管ネットワークを確認することができた(図1f)。
【0092】
したがって、このような結果を通じて、本発明者らは、ヒト骨髄単核球細胞由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)はコロニー形成能を有し、3回継代培養(P3)まで細胞が2倍数となる時間が約1.5日であって非常に速く分裂する細胞群であることを確認した(図2)。また、BM-EPCは、初期継代で非常に速く分裂することができ、VEGF、HGFおよびTGF-β1のような血管新生因子を分泌し、BM-MSC細胞とともに培養する場合、血管網形成がさらに増進したことと示された。そのため、このような結果は、BM-EPCおよびBM-MSCの共培養による混合細胞を多様な虚血性および慢性血管疾患治療のための細胞治療剤として有用に使用することができることを示す。
【実施例3】
【0093】
<実験例3>TNF-α処理による血管内皮前駆細胞の炎症性付着因子発現増加確認
TNF-αは、血管内皮細胞でICAM-1およびVCAM-1のような前炎症性付着因子の発現を上向き調節することと知られている。よって、本発明者らは、本発明のヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)がTNF-α処理時に前炎症性因子の発現を誘導することができるのか、ウェスタンブロット分析を通じて分析した。
【0094】
その結果、BM-EPCは、ICAM-1を発現していないが、TNF-α処理時、ICAM-1発現が有意に増加することと示された(図3A)。また、BM-EPCは、TNF-α処理時にVCAM-1発現を顕著に上向き調節することと示された(図3B-C)。
【0095】
このような結果を通じて、本発明者らは、BM-EPCがTNF-α処理時、炎症性反応を誘導することができ、これを通じて、本発明のBM-EPCが血管内皮細胞の特徴を有していることが分かる。
【実施例4】
【0096】
<実験例4>血管形成因子の処理によるヒト骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の血管形成能力増進効果分析
血管内皮細胞の新生血管形成促進因子として知られているVEGF、HGF、PDGF-BBが血管内皮前駆細胞の血管網形成能力に影響を与えるのかを確認するために、血管内皮前駆細胞(4.0×10cells/well)を0.2%FBSが含まれたα-MEM培地に広げ、VEGF、HGFおよびPDGF-BBをそれぞれ濃度別に(0、10、20、40ng/ml)含み、μ-slideのMatrigelに分注した後、血管網形成可否をメッシュ(meshes)の数、接合部の数、セグメントの数および二つの接合の間の全長に対して観察した。
【0097】
その結果、図4に示したように、VEGFは、血管内皮前駆細胞の血管形成能力に有意な差を見せないことと示されたが、PDGF-BBは、血管内皮前駆細胞の血管形成能力を濃度依存的に大きく増加させることと示された。また、HGF処理群でも血管内皮前駆細胞の血管形成能力が増加されることと示されたが、血管形成能力の増加幅は、PDGF-BBを処理した群には及ばないことと示された。
【0098】
したがって、本発明者らは、血管内皮前駆細胞の血管形成能力を効果的に増進させ得る細胞活性化方法としてPDGF-BBの処理が非常に有用であることが分かる。
【0099】
また、先立って実施例を通じて、BM-EPCではPDGF-BBが分泌しないことを確認したが、傷条件下では豊かな量で存在することを確認した。よって、本発明者らは、3回継代培養されたBM-EPCでPDGF-BBを濃度別(0、10、20、40ng/ml)に処理した後、18時間の間を持続的にモニタリングしてチューブ形成能を観察した。
【0100】
その結果、図5に示したように、PDGF-BBの処理濃度依存的にヒトBM-EPCのメッシュ(meshes)数、接合部数、セグメント数および二つの接合間の全長が増加されることと示され、血管網形成が増進することが確認できた。
【実施例5】
【0101】
<実験例5>PDGF-BB処理による骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)の細胞反応分析
5-1.血管内皮前駆細胞の細胞移動に及ぶ影響
PDGF-BB処理による血管内皮前駆細胞の移動能力変化を分析するために、血管内皮前駆細胞にスクラッチ損傷後、ギャップフィーリング(gap filling)速度を測定した。具体的に、6ウェルで血管内皮前駆細胞(1.0×10cells/well)を培養後、18h飢餓状態を進行した後、血管内皮前駆細胞の細胞断層を200μlチップで掻いた後、PBSで2回洗浄した。その後、0.2%FBSが入っているα-MEM培地にPDGF-BBを濃度別(0、10、20ng/ml)に処理した後、傷治癒(wound closure)過程を測定した。
【0102】
その結果、図6に示したように、PDGF-BBを処理していない群に比べてPDGF-BBを処理した群で血管内皮前駆細胞の細胞移動が増進されることと示された。
【0103】
5-2.血管内皮前駆細胞の細胞生存率に及ぶ影響
PDGF-BB処理による継代別の血管内皮前駆細胞の生存率変化を分析したが、このために、96ウェルに血管内皮前駆細胞(1.0×10cells/well)を培養後、18時間の間飢餓状態を維持した後、PDGF-BBを濃度別(0、10、20、40ng/ml)に24h処理し、血管内皮前駆細胞にWST-1溶液を処理した後、450nmで吸光度を測定して細胞生存率を分析した。
【0104】
その結果、図7に示したように、P2およびP3継代の血管内皮前駆細胞では、PDGF-BBの処理濃度に比例して細胞生存率が増加したことと示されたが、P4では、PDGF-BB処理による有意な差を確認することができなかった。
【0105】
5-3.血管内皮前駆細胞の細胞増殖に及ぶ影響
PDGF-BB処理による血管内皮前駆細胞の細胞増殖変化を分析したが、このために、24ウェルのカバースリップに血管内皮前駆細胞(1.0×10cells)を培養後、18時間の間飢餓状態を維持した後、PDGF-BBを濃度別(0、20ng/ml)に24時間処理した。そして、PDGF-BB処理後20時間になる時点に10μM BrdUを4時間処理し、S-phase進入する細胞数を測定した。また、血管内皮細胞を3.7%ホルムアルデヒドで固定させて透過化(permeabilization)した後、1次および2次抗体を順次に処理後、PI染色で核染色を遂行した。蛍光顕微鏡でPI陽性細胞のうちBrdU陽性細胞を係数して細胞増殖程度を分析した。
【0106】
その結果、図8に示したように、PDGF-BBを処理していない群に比べてPDGF-BBを処理した群で血管内皮前駆細胞の細胞数が増加されて細胞増殖が起こったことを確認した。
【0107】
5-4.laminin β1、VEGFR2およびPDGFRβの発現に及ぶ影響
PDGF-BB処理による血管内皮前駆細胞の基質外タンパク質であるlaminin β1の発現程度を蛍光染色とウェスタンブロットを通じて分析した。このために、24ウェル内のカバースリップに血管内皮前駆細胞(1.0×10cells)を培養後、18時間の間飢餓状態を維持した後、PDGF-BBを濃度別(0、10、20ng/ml)に24時間の間処理した。血管内皮細胞を3.7%ホルムアルデヒドで固定させ、透過化(permeabilization)した後、laminin β1に対する1次抗体を処理し、以後、2次抗体を処理した後、DAPI染色後、laminin β1発現程度を分析した。
【0108】
その結果、9に示したように、PDGF-BBの処理濃度に比例して、血管内皮前駆細胞のlaminin β1発現が増加されることと示された。このような結果は、血管内皮前駆細胞の培養液に対するウェスタンブロット結果でも同一に示された。
【0109】
また、PDGF-BB処理による血管内皮前駆細胞のVEGFR2およびPDGFRβの発現変化分析のために、VEGFR2およびPDGFRβに対する抗体を利用して前記のような方法で分析したが、その結果、図10に示したように、血管内皮前駆細胞でVEGFR2の発現が観察されず、PDGF-BBの処理がVEGFR2の発現には影響を与えられないことと示された。
【0110】
一方、PDGF-BBの処理濃度に比例して、PDGFRβ内在化(internalization)は増加されることと示された。これは、先立って確認した結果のように、PDGF-BBの処理により細胞移動能力増加、細胞生存率増加、細胞増殖増加、基質外タンパク質であるlaminin β1の発現増加と関連性があるものと予想される。
【実施例6】
【0111】
<実験例6>骨髄由来血管内皮前駆細胞(BM-EPC)と間葉系幹細胞との共培養およびPDGF-BB処理による効果的な血管網増加確認
本発明者らは、前記実施例の実験を通じてBM-EPCにPDGF-BBを処理する場合、血管網の増加活性があることを確認した。よって、本発明者らは、BM-EPCの血管網形成能をさらに増進させ得る方法として、BM-EPCを間葉系幹細胞と共培養し、ここにPDGF-BBを処理する場合、血管網形成能を効果的に増進させ得るのかを確認するための実験を遂行した。
【0112】
このために、血管内皮前駆細胞(4.0×10cells/well)と間葉系幹細胞(2.0×10cells/well)を2:1割合(細胞数の比)で0.2%FBSが含まれたα-MEM培地に懸濁させ、PDGF-BBを濃度別に(0、10、20、40ng/ml)処理した後、これらの細胞培養物をμ-slideのMatrigelに分注して、血管網形成程度を観察した。
【0113】
その結果、図11に示したように、血管内皮前駆細胞と間葉系幹細胞を共培養した群の場合、血管内皮前駆細胞を単独培養した群に比べて血管網形成能が増加したことと示された。また、血管内皮前駆細胞と間葉系幹細胞を共培養した群にPDGF-BBを処理した場合、処理濃度に比例して血管形成能力がさらに増加したことと示された。
【0114】
したがって、このような結果を通じて、本発明者らは、血管内皮前駆細胞と間葉系幹細胞を含む混合細胞を血管網形成を増進させ、血管再生能力を増進させ得る複合幹細胞治療剤として使用可能であることが分かり、特に、これらの混合細胞にPDGF-BBを処理する場合、血管網形成能をさらに増進させ得ることが分かる。
【0115】
そのため、本発明において考案したPDGF-BBが処理された血管内皮前駆細胞および間葉系幹細胞の混合細胞は、血管網形成能の減少に起因する虚血性疾患などの治療のための新たな細胞治療剤として使用されることができる。
【0116】
今まで本発明に対してその好ましい実施例を中心に検討した。本発明の属す技術分野における通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形された形態で具現され得ることを理解できるはずである。そのため、開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にあるすべての相違点は、本発明に含まれたものと解析されなければならないだろう。
【0117】
本発明は、保健福祉部の先端医療技術開発(R&D)研究事業(自己骨髄間葉系幹細胞と血管内皮前駆細胞の複合幹細胞治療剤開発、課題固有番号:1465032804、課題細部番号:HI18C1492010021)の支援を受けて遂行した。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】